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特表2024-512042迅速なCOVID-19検出のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】迅速なCOVID-19検出のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240311BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240311BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240311BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/6888 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558426
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022021138
(87)【国際公開番号】W WO2022204023
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,098
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ソン,シン
(72)【発明者】
【氏名】レイフ,ジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ10
4B063QQ28
4B063QR08
4B063QR50
4B063QR62
4B063QS26
4B063QX01
(57)【要約】
本開示は、病原性生物の検出に関する組成物及び方法を提供する。具体的には、本開示は、SARS-CoV-2感染症に罹患しているか又は罹患していると疑われている対象由来のサンプル中のウイルスRNAの検出及び/又は定量に関する組成物及び方法を提供する。本開示の組成物及び方法は、迅速な逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)を使用して、患者サンプル中の病原性生物(例えば、SARS-CoV-2)の存在を検出する及び/又は定量するための、携帯可能であり、安価であり、迅速であり、且つ正確なアッセイプラットフォームを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応を実施するための組成物であって、
DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液;
カオトロピック剤;並びに
少なくとも1種の賦形剤
を含み、
ここにおいて、前記組成物は凍結乾燥されて、RT-LAMP反応混合物を形成する
前記組成物。
【請求項2】
前記カオトロピック剤は、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の賦形剤は、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記賦形剤は、トレハロースである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記RT-LAMP反応混合物を、対象由来の生体サンプルと混合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記病原性生物は、RNAウイルスである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記病原性生物は、SARS-CoV-2である、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記プライマーは、下記の配列:
配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマー
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
対象由来の生体サンプル中の病原性生物を検出する方法であって、
(a)対象由来の生体サンプルと、請求項1に記載のRT-LAMP反応混合物とを、反応容器中で組み合わせるステップ;
(b)少なくとも60℃の温度で少なくとも20分にわたり、前記反応容器をインキュベートするステップ;及び
(c)前記反応容器の目視検査を実施して、前記生体サンプルが病原性生物の存在に関して陽性であるかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項18】
ステップ(a)の前に、少なくとも90℃の温度で少なくとも5分にわたり、前記生体サンプルをインキュベートするステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応容器は断熱されており、且つ実質的に一定温度で液体を収容するように構成されている、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応容器は、前記液体の温度を測定するための装置を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記RT-LAMP反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記RT-LAMP反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記RT-LMAP反応混合物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記病原性生物は、RNAウイルスである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記病原性生物は、SARS-CoV-2である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られる、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応混合物を生成する方法であって、
DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液と、カオトロピック剤及び少なくとも1種の賦形剤とを、容器中に組み合わせるステップ;並びに
前記容器を凍結乾燥プロセスに供して、RT-LAMP反応混合物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項29】
前記カオトロピック剤は、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の賦形剤は、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記賦形剤は、トレハロースである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記反応混合物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、Tween 20をさらに含む、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記病原性生物は、RNAウイルスである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記病原性生物は、SARS-CoV-2である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項41】
前記プライマーは、下記の配列:
配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマー
を含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年3月22日に出願された米国仮特許出願第63/164,098号に対する優先権及び利益を主張するものであり、その全体が及び全ての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
政府による資金援助
[0002]本発明は、全米科学財団(National Science Foundation)から授与されたFederal Grant番号CCF 1617791及びCCF 1813805での政府支援を受けて行われた。連邦政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
電子的に提出された資料の参照による組み込み
[0003]本明細書中において全体が参照により組み込まれているのは、本明細書と同時に提出され且つ下記のように特定された、コンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表である:2022年3月21日に作成された、「40653-601_SEQUENCE_LISTING_ST25」という名称の2,382バイトのASCII(Text)ファイル。
【0002】
[0004]本開示は、病原性生物の検出に関する組成物及び方法を提供する。具体的には、本開示は、SARS-CoV-2感染症に罹患しているか又は罹患していると疑われている対象由来のサンプル中のウイルスRNAの検出及び/又は定量に関する組成物及び方法を提供する。本開示の組成物及び方法は、逆転写ループ介在等温増幅(reverse-transcription loop-mediated isothermal amplification)(RT-LAMP)を使用して、患者サンプル中の病原性生物(例えば、SARS-CoV-2)の存在を検出する及び/又は定量するための、携帯可能であり、安価であり、迅速であり、且つ正確なアッセイプラットフォームを提供する。
【背景技術】
【0003】
[0005]COVID-19パンデミックは、数百万人の命を奪い、世界中で前例のない経済的、社会的、及び構造的な課題を突きつけている。ワクチン接種の導入及び検査へのアクセスの改善はパンデミックの制御に役立っているが、SARS-CoV-2の新しいバリアントに起因する伝播及び感染(ワクチン接種後のブレイクスルー症例を含む)は世界の公衆衛生及び経済にとって引き続き負担となっている。有効なSARS-CoV-2監視には、伝播の連鎖を断ち切るために感染者を迅速に特定すべく、迅速な結果を伴う頻繁な検査が必要である。しかしながら、ドライブスルー検査等の集中型検査モデルは、医療従事者の曝露リスクを高める可能性があり、また、高価な施設、訓練を受けた人員、及び高度な実験機器(典型的にはRT-qPCR)に依存しており、多くの場合には、タイムリーな検査結果が得られない。この遅延は、SARS-CoV-2の症候性/無症候性伝播のリスクに起因して、有効な監視及び疾病管理の取り組みに有害な可能性がある。多くの高所得国では検査室が広く利用可能であるが、ほとんどの中低所得国では、高度なSARS-CoV-2検出技術の幅広い適用のための十分な施設及び訓練を受けた人員が不足している。迅速な抗原検査は、使用が容易であり且つ安価であり、ウイルス負荷が高い症候性患者のスクリーニングには有効である、一方で、全体的に偽陽性及び偽陰性の割合が(核酸検査と比較して)高いことから、最前線の診断として適切ではない。新しく出現したSARS-CoV-2の伝播ホットスポットを迅速に特定し、全ての潜在的伝播経路(前症候性、症候性、無症候性)からのウイルス拡散を抑制するために、堅牢な分散型検査モデルには、信頼性が高く、使用しやすく、且つ製造及び大規模集団への配布が安価な、手頃な価格の核酸家庭用検査の開発が必要であるだろう。
【0004】
[0006]パンデミックが始まると、研究者らは、標準的なRT-qPCR検査の実用的な限界を克服するために、迅速な分子アッセイを開発しようとしてきた。いくつかの候補核酸増幅プロトコルの中で、RT-LAMPは、標的RNA配列上の8つの異なる領域を認識する6つのプライマーのセットを使用してRNAの迅速な指数関数的増幅を達成する単純な方法であり、サンプルの純度を厳密に要求することなく、標的RNAの高い特異性及び感度での検出を可能にする。これにより、現在のSARS-CoV-2検査ワークフローの主要なボトルネックとなっている高度なRNA単離及び精製プロセスが不要となる。さらに、単純なpHベースの比色読み取りとの適合性により、目視検査による検査結果の解釈が容易となり、これにより、RT-LAMPは安価なポイントオブケア用途に適している。現在までに、SARS-CoV-2検出のために多くのRT-LAMPアッセイが提案されており、いくつかはFDA緊急使用許可(EUA)を取得している。しかしながら、これらの検査のほとんどは性能が最適化されていないこと又は1回の検査当たりの費用が法外であることのいずれかに起因して、頻繁な家庭での検査についての必要性を満たし得ない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0007]本開示の態様は、逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応を実施するための組成物を含む。この態様に従って、この組成物は、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液;カオトロピック剤;並びに少なくとも1種の賦形剤を含む。いくつかの態様では、この組成物は、凍結乾燥されて、RT-LAMP反応混合物を形成する。
【0006】
[0008]いくつかの態様では、カオトロピック剤は、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0007】
[0009]いくつかの態様では、少なくとも1種の賦形剤は、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される。いくつかの態様では、賦形剤は、トレハロースである。いくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0008】
[0010]いくつかの態様では、組成物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む。
【0009】
[0011]いくつかの態様では、組成物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む。
【0010】
[0012]いくつかの態様では、組成物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む。
[0013]いくつかの態様では、RT-LAMP反応混合物を、対象由来の生体サンプルと混合する。いくつかの態様では、生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られる。
【0011】
[0014]いくつかの態様では、LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む。いくつかの態様では、病原性生物は、RNAウイルスである。いくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2である。
【0012】
[0015]いくつかの態様では、プライマーは、下記の配列:配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマーを含む。
【0013】
[0016]本開示の態様はまた、対象由来の生体サンプル中の病原性生物を検出する方法も含む。この態様に従って、この方法は、(a)対象由来の生体サンプルと、本明細書で説明されているRT-LAMP反応混合物とを、反応容器中で組み合わせるステップ;(b)少なくとも60℃の温度で少なくとも20分にわたり、この反応容器をインキュベートするステップ;及び(c)この反応容器の目視検査を実施して、生体サンプルが病原性生物の存在に関して陽性であるかどうかを決定するステップを含む。
【0014】
[0017]いくつかの態様では、この方法は、ステップ(a)の前に、少なくとも90℃の温度で少なくとも5分にわたり、生体サンプルをインキュベートするステップをさらに含む。
【0015】
[0018]この方法のいくつかの態様では、反応容器は断熱されており、且つ実質的に一定温度で液体を収容するように構成されている。この方法のいくつかの態様では、反応容器は、液体の温度を測定するための装置を含む。
【0016】
[0019]この方法のいくつかの態様では、RT-LAMP反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む。
【0017】
[0020]この方法のいくつかの態様では、RT-LAMP反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む。
【0018】
[0021]この方法のいくつかの態様では、RT-LMAP反応混合物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む。この方法のいくつかの態様では、LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む。
【0019】
[0022]この方法のいくつかの態様では、病原性生物は、RNAウイルスである。いくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2である。
[0023]この方法のいくつかの態様では、生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られる。
【0020】
[0024]本開示の態様はまた、逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応混合物を生成する方法も含む。この態様に従って、この方法は、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液と、カオトロピック剤及び少なくとも1種の賦形剤とを、容器中に組み合わせるステップ;並びにこの容器を凍結乾燥プロセスに供して、RT-LAMP反応混合物を形成するステップを含む。
【0021】
[0025]この方法のいくつかの態様では、カオトロピック剤は、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される。この方法のいくつかの態様では、カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである。この方法のいくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0022】
[0026]この方法のいくつかの態様では、少なくとも1種の賦形剤は、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される。この方法のいくつかの態様では、賦形剤は、トレハロースである。この方法のいくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0023】
[0027]この方法のいくつかの態様では、反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む。
【0024】
[0028]この方法のいくつかの態様では、反応混合物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む。
【0025】
[0029]この方法のいくつかの態様では、反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む。
【0026】
[0030]この方法のいくつかの態様では、LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む。
[0031]この方法のいくつかの態様では、病原性生物は、RNAウイルスである。この方法のいくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2である。
【0027】
[0032]この方法のいくつかの態様では、プライマーは、下記の配列:配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】[0033]本開示の一態様に従う、サンプル採取から検査結果の読み取りまでのCOVID-19家庭検査の概略図。
図2】[0034]熱勾配試験による様々なRT-LAMP製剤の比較及び最適化。全ての凍結乾燥(lyo)サンプルを、RT-LAMP実験前に、1日にわたり室温で保存した。溶液中の新鮮なサンプル(sol)を、RT-LAMP実験時に調製した。各セットに関して、最適なインキュベーション温度を、速い反応(即ち、真陽性までの短い時間)及び最小限の偽陽性(即ち、真陽性と偽陽性との間の長い分離)の両方を達成する温度として決定した。偽陽性を白色の星印で示す。至適温度のRT-LAMP反応を、緑色の枠で示す。
図3】[0035]様々なプライマーセットに基づく様々なRT-LAMP製剤の比較及び最適化。全てのlyoサンプルを、RT-LAMP実験前に、1日にわたり室温で保存した。新鮮なサンプルを、RT-LAMP実験時に調製した。緑色のボックスは、信頼性のある結果が得られる許容可能なインキュベーション温度を示す。偽陽性を、白色の星印で示す。3Mのトレハロースの添加により、偽陽性が劇的に減少したが、真陽性までの時間がわずかに遅れた。凍結乾燥されたRT-LAMP反応により、より広い適合範囲のインキュベーション温度が可能になった。全体として、(3M トレハロース+1M GuHCl)lyoセットは、真陽性までの短い時間、広範囲の許容温度、及び低い偽陽性率という点で最適であった。
図4A】[0036]長期室温貯蔵のためのワンポット凍結乾燥の最適化。(図4A)様々な濃度でデキストランを添加した、凍結乾燥されたRT-LAMP試薬の外観。(図4B)凍結乾燥した検査キットを室温で3日にわたり保存した後に実行したRT-LAMP検査。緑色のボックスは、60分までに偽陽性を示さない最適温度でのRT-LAMP反応を示す。青色のボックスは、50分以下のインキュベーションにわたり広範囲の温度を許容するRT-LAMP反応を示す。偽陽性を、白色の星印で示す。
図4B】[0036]長期室温貯蔵のためのワンポット凍結乾燥の最適化。(図4A)様々な濃度でデキストランを添加した、凍結乾燥されたRT-LAMP試薬の外観。(図4B)凍結乾燥した検査キットを室温で3日にわたり保存した後に実行したRT-LAMP検査。緑色のボックスは、60分までに偽陽性を示さない最適温度でのRT-LAMP反応を示す。青色のボックスは、50分以下のインキュベーションにわたり広範囲の温度を許容するRT-LAMP反応を示す。偽陽性を、白色の星印で示す。
図5】[0037]長期室温貯蔵に関する2種の凍結乾燥製剤(デキストランあり及びデキストランなし)の比較。凍結乾燥された検査キットを、10日にわたり室温で保存し、次いでRT-LAMPを実施するために再構成した。真陰性及び真陽性を、それぞれ(-)及び(+)で表示する。偽陽性を、白色の星印で示す。
図6】[0038]冷蔵(4℃)での30日間貯蔵後での凍結乾燥された検査キットの性能。最適(3M+GuHCl)lyo製剤に関する検査感度及び特異度の分析的検証。真陰性及び真陽性を、それぞれ(-)及び(+)で表示する。
図7】[0039]リアルタイムLAMPによるNEBプライマーセットの初期試験。2つのテンプレートなしコントロールを含む単一希釈系列に関して示された蛍光曲線。溶液で行った反応。この実験の時点ではSARS-CoV-2コントロールRNAが市販されていなかったことから、IDT gBlocks(商標)遺伝子断片を、代理標的テンプレートとして使用した。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。
図8】[0040]リアルタイムLAMPによるShenyangプライマーセットの初期試験。2つのテンプレートなしコントロールを含む単一希釈系列に関して示された蛍光曲線。溶液で行った反応。この実験の時点ではSARS-CoV-2コントロールRNAが市販されていなかったことから、IDT gBlocks(商標)遺伝子断片を、代理標的テンプレートとして使用した。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。
図9】[0041]リアルタイムLAMPによるNEBプライマーセットのさらなる試験。4つのテンプレートなしコントロールを含む二倍の連続希釈に関して示された増幅曲線(バックグラウンド補正済み)。凍結乾燥された試薬により行った反応(最適化前の予備製剤化)。この実験の時点ではSARS-CoV-2コントロールRNAが市販されていなかったことから、IDT gBlocks(商標)遺伝子断片を、代理標的テンプレートとして使用した。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。
図10】[0042]リアルタイムLAMPによるShenyangプライマーセットのさらなる試験。4つのテンプレートなしコントロールを含む二倍の連続希釈に関して示された増幅曲線(バックグラウンド補正済み)。凍結乾燥された試薬により行った反応(最適化前の予備製剤化)。この実験の時点ではSARS-CoV-2コントロールRNAが市販されていなかったことから、IDT gBlocks(商標)遺伝子断片を、代理標的テンプレートとして使用した。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。
図11】[0043]RTリアルタイムLAMPによるNew Yorkプライマーセットの初期試験。各パネルにおいて、2つのテンプレートなしコントロールを含む単一希釈系列に関して、蛍光曲線を示す。標的テンプレートは、Twist BiosciencesからのSARS-CoV-2合成コントロールRNAであった。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。(図11A)溶液ベースのRT-LAMP、1回目の複製。(図11B)溶液ベースのRT-LAMP、2回目の複製。(図11C)凍結乾燥された試薬からのRT-LAMP(最適化前の予備製剤化)。
図12】[0044]RTリアルタイムLAMPによるHarvardプライマーセットの初期試験。各パネルにおいて、2つのテンプレートなしコントロールを含む単一希釈系列に関して、蛍光曲線を示す。標的テンプレートは、Twist BiosciencesからのSARS-CoV-2合成コントロールRNAであった。コピー数は、反応当たりの標的テンプレートの総コピーを示す。(図12A)溶液ベースのRT-LAMP、1回目の複製。(図12B)溶液ベースのRT-LAMP、2回目の複製。(図12C)凍結乾燥された試薬からのRT-LAMP(最適化前の予備製剤化)。
図13】[0045]2つの凍結乾燥されたRT-LAMP製剤の分析感度比較。(図13A)3M lyo+GuHCl sol。(図13B)(3M+GuHCl)lyo。全てのlyoサンプルを、RT-LAMP実験前に、1日にわたり室温で保存した。新鮮なサンプル(sol)を、RT-LAMP実験日に調製し、基準として実験に含めた。各反応物を、指定の最適温度でインキュベートした。列番号は、20μLの反応物当たりの総RNAコピーを示す。偽陽性を、白色の星印で示す。
図14】[0046]2つの凍結乾燥されたRT-LAMP製剤のさらなる感度分析。(図14A)3M lyo+GuHCl sol。(図14B)(3M+GuHCl) lyo。全てのlyoサンプルを、RT-LAMP実験前に、1日にわたり室温で保存した。各反応物を、指定の最適温度でインキュベートした。列番号は、20μLの反応物当たりの総RNAコピーを示す。偽陽性を、白色の星印で示す。
図15】[0047]冷蔵庫(4℃)中での10日間貯蔵後の、Harvardプライマーセットを使用する、凍結乾燥された検査の性能。(図15A)最適(3M+GuHCl)lyo製剤の検査感度及び特異度の分析的検証。(図15B)3Mのトレハロースを含みGuHClを含まない、凍結乾燥された検査の性能。真陰性及び真陽性を、それぞれ(-)及び(+)で表示する。温度最適化の重要性は、(図15B)の結果により示されているように明らかである。
図16】[0048]冷蔵庫(4℃)中での10日間貯蔵後の、Color Genomicsプライマーセットを使用する、凍結乾燥された検査の性能。65.5℃でのRT-LAMPインキュベーション温度。真陰性及び真陽性を、それぞれ(-)及び(+)で表示する。偽陽性を、白色の星印で示す。
図17】[0049]長期室温貯蔵の凍結乾燥サイクル最適化。(A)1時間凍結乾燥。(B)1時間の凍結乾燥、及び10分間の45℃二次乾燥。(C)1時間の凍結乾燥、及び30分間の45℃二次。(D)1時間の凍結乾燥、及び1時間の45℃二次乾燥。(E)真空濃縮器を使用しない1時間の凍結乾燥。(A)~(D)を、凍結乾燥機に接続された真空濃縮器中で実行した。上部のパネルは、凍結乾燥、貯蔵、及び再構成後のRT-LAMP検査キットの外観を示す。下部のパネルは、室温での10日間貯蔵後のRT-LAMP試験結果を示す。最も性能の良いセットを、緑のボックスで表示する。偽陽性を、白色の星印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0050]迅速で信頼性が高い核酸検査へのアクセスは、特に、新規のバリアントに起因するワクチンのブレイクスルーリスクの増大という背景において、SARS-CoV-2パンデミックの制御で重要な役割を果たし続けている。本開示の態様は、実験室の機器を使用することなく自己管理での家庭での検査のための迅速で低コスト(約2UED)の使いやすい核酸検査キットを提供する。サンプルから回答までのワークフロー全体(例えば、非侵襲的なサンプル採取、ワンステップRNA調製、魔法瓶中での逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)、及び比色検査結果の直接目視検査)は、60分未満かかる。コールドチェーンなしでの長期保存を容易にするために、比色RT-LAMP検査に必要な全ての生化学試薬を単一のマイクロチューブで保存すべく、高速ワンポット凍結乾燥プロトコルが開発された。特に、凍結乾燥されたRT-LAMPアッセイにより、溶液ベースのRT-LAMP反応と比較した偽陽性の減少、及びより広範囲のインキュベーション温度に対する耐性の増強が実証された。模擬SARS-CoV-2感染サンプルに対して行われた検証試験から、前鼻腔スワブ及び歯肉スワブの両方からのSARS-CoV-2ウイルスの複数のバリアントの迅速な検証が確認された。プライマーセットの簡単な変更により、本明細書で説明されている凍結乾燥されたRT-LAMP家庭用検査を、世界的な公衆衛生上重要な他の病原体及び感染性疾患に関する低コストの監視プラットフォームとして容易に適合させ得る。
【0030】
[0051]セクションの見出しは、このセクション及び本開示全体で使用される場合、単に構成目的であり、限定することが意図されているものではない。
1.定義
[0052]別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有する。矛盾している場合には、定義を含む本書が支配することとなる。好ましい方法及び材料が下記で説明されているが、本明細書で説明されているものと類似の又は等価の方法及び材料を、本開示の実施又は試験で使用し得る。本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で開示されている材料、方法、及び例は、一例にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0031】
[0053]「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含む(contain(s))」という用語、及びこれらの変形は、本明細書で使用される場合、付加的な行為又は構造の可能性を排除しないオープンエンドな移行句、用語、又は単語であることが意図されている。単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に示さない場合、複数の参照物を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書で提示された態様又は要素「を含む」他の態様、「からなる」他の態様、及び「から本質的になる」他の態様も企図する。
【0032】
[0054]本明細書における数値範囲の記載に関して、同程度の精度でその間に介在する各数値が明示的に企図されている。例えば、6~9の範囲の場合には、6及び9に加えて数字7及び8も企図されており、範囲6.0~7.0の場合には、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に企図されている。
【0033】
[0055]「と相関する」は、本明細書で使用される場合、比較することを指す。
[0056]「由来する」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞又は生体サンプル(例えば、血液、組織、体液等)を指しているか、又は細胞又は生体サンプルが、ある時点で指定の供給源から得られたことを示す。例えば、個体由来の細胞は、この個体から直接得られた(例えば、改変されていない)初代細胞を表し得る。場合によっては、所与の供給源に由来する細胞は、1回又は複数回の細胞分裂及び/又は細胞分化を受けており、元の細胞はもはや存在しないが、存続している細胞(例えば、全ての世代からの娘細胞)は、同じ供給源に由来すると理解される。この用語には、直接得られたもの、単離されて培養されたもの、又は得られたものを凍結し解凍したものが含まれる。「由来する」という用語はまた、組織又は細胞から得られた細胞の構成成分又は断片も指し得、これらとして、タンパク質、核酸、膜又は膜の断片、及び同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
[0057]「単離する」又は「単離された」という用語は、細胞又は分子(例えば、核酸又はタンパク質)に言及する場合には、この細胞又は分子が、その自然の、元の、又は以前の環境から分離されるか又は分離されていることを示す。例えば、単離細胞は、その宿主個体由来の組織から取り出され得るが、他の細胞の存在下(例えば、培養物中)で存在し得るか、又は宿主個体に再導入され得る。
【0035】
[0058]「対象」及び「患者」は、本明細書で互換的に使用される場合、哺乳類及びヒトを含むがこれらに限定されない、あらゆる脊椎動物を指す。いくつかの態様では、対象は、ヒト又は非ヒトであり得る。対象又は患者は、他の形態の処置を受けている場合がある。
【0036】
[0059]「哺乳類」は、本明細書で使用される場合、哺乳綱のあらゆるメンバーを指しており、限定されないが下記が挙げられる:ヒト並びに非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、及び他の類人猿及びサル種;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、ラクダ、及びウマ;家畜化哺乳類、例えば、イヌ及びネコ;実験動物、例えば、齧歯類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及び同類のもの。この用語は、特定の年齢又は性別を意味するものではない。そのため、成体及び新生児の対象、並びに胎児は、雄か雌かに関わりなく、この用語の範囲に含まれることが意図されている。
【0037】
[0060]本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」、又は「処置」という用語は、本明細書ではそのような用語が適用される疾患及び/若しくは傷害、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の反転、緩和、又は進行の阻害を説明するためにそれぞれ互換的に使用される。対象の状態に応じて、この用語はまた、疾患を予防することも指しており、疾患の発症を予防すること、又は疾患(例えば、ウイルス感染症)と関連する症状を予防することが含まれる。処置を、急性又は慢性のいずれかで実施し得る。この用語はまた、疾患による苦痛に先立って、疾患の重症度を軽減するか、又はそのような疾患と関連する症状を軽減することも指す。そのような苦痛に先立つ疾患の予防又は重症度の軽減は、投与時では疾患により苦しめられていない対象への処置の投与を指す。「予防すること」はまた、疾患又はそのような疾患と関連する1つ若しくは複数の症状の再発を予防することも指す。
【0038】
[0061]組成物「の投与」及び「を投与すること」という用語は、本明細書で使用される場合、処置が必要な対象に本開示の組成物を提供することを指す。本開示の組成物を、局所投与し得(例えば、皮膚又は体腔表面との接触)、経口投与し得、非経口投与し得(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射若しくは注入、皮下注射、又はインプラント)、噴霧により投与し得、膣、直腸、舌下、又は局所への投与経路により投与し得、各投与経路に適切な従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含む適切な投与量単位製剤で、単独で製剤化し得るか、又は一緒に製剤化し得る。
【0039】
[0062]本明細書で使用される場合、「有効な量」という用語は、一般に、例えば研究者又は臨床医が求めている組織、システム、動物、又はヒトの生物学的反応又は医学的反応を誘発することとなる薬物又は医薬品の量を意味する。さらに、「治療上有効な量」という用語は、一般に、そのような量を投与されていない対応する対象と比較して、疾患、障害、若しくは副作用の処置、治癒、予防、若しくは寛解の改善をもたらすか又は疾患若しくは障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語はまた、その範囲内で、正常な生理機能を増強するのに有効な量も含む。
【0040】
[0063]「相対変動」としても既知である「変動係数」(CV)は、分布の平均で除算された分布の標準偏差と等しい。
[0064]「構成成分」、「複数の構成成分」、又は「少なくとも1つの構成成分」は、一般に、標準物質、コントロール、感度パネル、容器、緩衝液、希釈剤、塩、酵素、酵素の補因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液として)、停止液、及び同類のものを指しており、これらは、本明細書で説明されている方法及び当該技術分野で既知の他の方法に従って、尿、唾液、全血、血清、又は血漿サンプル等の検査サンプルを評価するためのキットに含まれ得る。一部の構成成分は、溶液であり得るか、又はアッセイでの使用のための再構成用に凍結乾燥され得る。
【0041】
[0065]「コントロール」は、本明細書で使用される場合、一般に、測定系が許容境界(例えば、一端の研究用途のアッセイに適した測定値から他端の市販のアッセイの品質仕様によって確立された分析境界までの範囲の境界)内の結果が継続的に得られることを保証するために測定系の性能を評価することを目的とする試薬を指す。このことを達成するために、コントロールは、患者の結果を示すものであるべきであり、任意選択的に、測定に対する誤差(例えば、試薬の安定性、キャリブレーターの変動性、装置の変動性、及び同類のもの)の影響を何らかの形で評価すべきである。
【0042】
[0066]「ダイナミックレンジ」は、本明細書で使用される場合、アッセイの読み取りが分析試料中の標的分子又は分析物の量に比例する範囲を指す。ダイナミックレンジは、標準曲線の直線性の範囲であり得る。
【0043】
[0067]「ブランク限界(LoB)」は、本明細書で使用される場合、分析物を含まないブランクサンプルの複製物を検査する場合に見出されると予想される見かけ上の最高分析物濃度を指す。
【0044】
[0068]「検出限界(LoD)」は、本明細書で使用される場合、指定の信頼度で検出され得る測定物(即ち、測定が意図されている量)の最低濃度を指す。信頼度は、典型的には95%であり、偽陰性測定値の可能性は5%である。LoDは、LoBと確実に区別される可能性が高く且つ検出が可能な最低分析物濃度である。LoDを、測定されたLoBと、低濃度の分析物を含むことが分かっているサンプルの検査用複製物との両方を利用することにより決定し得る。本明細書で使用されているLoD用語は、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI) protocol EP17-A2(“Protocols for Determination of Limits of Detection and Limits of Quantitation;Approved Guideline-Second Edition,”EP17A2E,by James F.Pierson-Perry et al.,Clinical and Laboratory Standards Institute,June 1,2012)の定義に基づいている。
【0045】
[0069]「定量限界(LoQ)」は、本明細書で使用される場合、分析物が確実に検出され得るだけでなく、偏り及び不正確さに関する事前に定義されたいくつかの目標も満たされる最低濃度を指す。LoQは、LoDと同等であり得るか、又ははるかに高濃度な可能性がある。
【0046】
[0070]「直線性」とは、指定の操作範囲にわたる方法又はアッセイの実際の性能が、どの程度直線に近いかを指す。直線性を、理想的な直線からの偏差(即ち、非直線性)で測定し得る。「直線性からの逸脱」は、フルスケールのパーセントで表され得る。本明細書に開示されている方法のいくつかでは、アッセイのダイナミックレンジにわたる直線性(DL)からの10%未満の逸脱が達成される。「直線的」は、列挙された例示的な範囲又は値について又はわたり、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、又は約8%以下の変動が存在していることを意味する。
【0047】
[0071]「感度」は、本明細書で使用される場合、一般に、検査により陽性と予測される真の陽性の割合を指しており、「特異度」は、本明細書で使用される場合、検査により陰性と予測される真の陰性の割合を指す。例えば、ROC曲線は、検査の感度を1特異度の関数として示す。ROC曲線下の面積が大きいほど、この検査の予測値が強い。検査の有用性の他の有用な尺度は、陽性予測値と陰性予測値である。陽性予測値は、実際に陽性である、検査で陽性である人の割合のことである。陰性予測値は、実際に陰性である、検査で陰性である人の割合のことである。
【0048】
[0072]「基準レベル」は、本明細書で使用される場合、診断、予後、又は治療効果を評価するために使用され且つ様々な臨床パラメータ(例えば、疾患の存在、疾患の病期、疾患の重症度、疾患の進行、非進行、又は改善等)と本明細書で結びつけられているか又は関連付けられるアッセイカットオフ値を指す。しかしながら、基準値は、使用されるアッセイの性質に応じて異なり得ること、及びアッセイを比較して標準化し得ることは、公知である。さらに、本開示により提供される説明に基づいて、他のアッセイに関する特定の基準レベルを得るために、本明細書の開示を他のアッセイに適合させることは、当業者の通常の技術の範囲内である。基準レベルの正確な値はアッセイ間で異なり得るが、本明細書で説明されている知見は、一般的に適用可能であり、且つ他のアッセイに外挿可能なはずである。
【0049】
[0073]対象(例えば、患者)の「リスク評価」、「リスク分類」、「リスク特定」、又は「リスク階層化」は、本明細書で使用される場合、対象に関する治療決定を、より多くの情報に基づいて行い得るような、疾患の発症又は疾患の進行を含む将来の事象の発生リスクを予測するための、バイオマーカー等の因子の評価を指す。
【0050】
[0074]「サンプル」、「検査サンプル」、「検体」、「対象からのサンプル」、及び「患者サンプル」は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され得、且つ全血等の血液サンプル、組織、皮膚、尿、血清、血漿、唾液、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞若しくは組織、内皮細胞、白血球、又は単球であり得る。サンプルを、患者から得られたものとして直接使用し得るか、又は本明細書で論じられているいくつかの方法若しくは当該技術分野で既知の他の方法で、例えば、ろ過、蒸溜、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活化、試薬の添加、及び同類のものにより前処理して、このサンプルの特性を変更し得る。
2.検出アッセイ
[0075]本開示の態様は、自己管理でのCOVID-19診断のための安価なワンポット凍結乾燥比色RT-LAMP分子検査キットを提供する。この検査キットの低コスト及び単純性に加えて、この検査キットは、専門的な機器又は訓練を受けた人員を必要とすることなく1時間以内に容易に完了し得るユーザーフレンドリーな家庭用検査ワークフローを特徴とする(表1)。
【0051】
[0076]
【0052】
【表1】
【0053】
[0077]具体的には、本開示の態様は、比色RT-LAMPを凍結乾燥するための単純なワンポットプロトコルを提供する。等温増幅反応に必要な全ての試薬を単一のマイクロチューブに素早く保存し得、長期保存、安価な流通、及び何度も液体を移す必要のない単純な検査ワークフローを容易にする。反応緩衝液から酵素を別に凍結乾燥するための高度な実験手順を必要とする、凍結乾燥されたLAMP/RT-LAMPの先行研究とは異なり、ワンポット凍結乾燥プロトコルの単純さ及び堅牢さにより、分子検査キットを安価に大量生産することが容易となる。RT-LAMPアッセイを、通常の魔法瓶中で試験し、様々な魔法瓶中での温度偏差に対する耐性を検証した。特に、試験では、より大きなサンプル投入量が好都合に許容される(即ち、RT-LAMPアッセイで一般的に使用される1μL~5μLのサンプル量とは対照的に、試験では、20μLのRT-LAMP反応用の凍結乾燥試薬を再水和するために20μLのスワブサンプルが直接受け入れられる)。さらに、通常は正確な量の液体を複数回移す従来の分子診断とは対照的に、この検査では、検査ワークフロー全体で1回のピペッティングステップ(低コストの使い捨て移送ピペットを使用する)のみが必要である。
【0054】
[0078]現在入手可能な他のCOVID-19検査プラットフォームと比較して、本開示の迅速な分子検査キットは、手頃な価格で頻繁な家庭内検査を可能にする良好な見込みを示す。低コスト及び単純性に起因して、この検査は、特にCOVID-19が依然として猛威を振るい且つワクチン接種が遅れている、資源に乏しい地域において、世界的な人口規模の監視の差し迫った必要性に潜在的に対処するために、短期間での大量生産が可能であり得る。自宅で検査を都合よく実施し得ないユーザーのために、この検査キットはまた、地元の薬局又は移動研究所等のポイントオブケア(point-of-care)環境でも容易に使用され得、サンプルのバッチ試験を、専用の乾燥浴若しくは水浴又は類似の熱源を使用して、現場で容易に実行し得る。この場合にも、患者は、提供されたスワブと採取チューブとを使用してサンプルを自分で採取し、次いで、このサンプルを薬局に返すだろう。本開示のRT-LAMPアッセイの高速ターンアラウンドに起因して、検査結果を、1時間以内に患者に返し得る。
【0055】
[0079]ポイントオブケア/ベッドサイド検査に本明細書に記載されている検査を使用する利点として、検査ワークフローのさらなる簡略化、及び検査の品質管理の改善が挙げられる。しかしながら、この代替構成は、技術者が患者サンプルを取り扱う必要があり得、そのため、強化された予防措置(例えば、PPEの使用、手指衛生、頻繁な器具の汚染除去)を注意深く遵守し、全てのサンプルが受け取り時に完全に不活性化されることを保証しなければならない。理想的には、リスクを軽減し且つ検査のスループットを向上させるために、サンプル取り扱いプロトコルを、薬局で自動化するだろう。さらに、オールインワンの凍結乾燥された比色RT-LAMP検査キットを、プライマーセットを変更するだけで、様々なRNA又はDNAターゲットの検出に迅速に適応させ得ることに留意することが重要である。この注目すべき柔軟性は、検査キット及び検査ワークフローの簡便性及び信頼性と相まって、世界的に公衆衛生上重要な感染症(例えば、デング熱、結核、マラリア)を含む他の病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌)の低コストの分散型監視のための頑強なモデルプラットフォームを可能にする大きな見込みを持っている。
【0056】
[0080]上記に説明に従って、本開示の態様は、SARS-CoV-2感染症に罹患しているか又は罹患していると疑われている対象由来のサンプル中のウイルスRNAの検出及び/又は定量に関する組成物及び方法を含む。本開示の組成物及び方法は、迅速な逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)を使用して、患者サンプル中の病原性生物(例えば、SARS-CoV-2)の存在を検出する及び/又は定量するための、携帯可能であり、安価であり、迅速であり、且つ正確なアッセイプラットフォームを提供する。ステップ1では、対象は、前鼻腔スワブ又は歯肉スワブを使用して、サンプルを自己採取する。ステップ2では、対象は、このスワブを、採取チューブ内の培地に入れる。次いで、対象は、スワブをチューブの壁に緩やかにこすりつけ、及び/又は転がす(例えば、約10回転がす)。次いで、対象は、スワブをチューブの側面に押し付けて残った液体を絞り出し、次いでスワブを廃棄してチューブを再度キャップする。ステップ3では、対象は、魔法瓶に熱水(約95℃)を入れる。サンプル採取チューブの蓋が堅く固定されていることを確認し、対象は、それを魔法瓶の中に入れる。次いで、対象は、このボトルを閉め、約10分にわたりインキュベートする。ステップ4では、対象は、採取チューブを取り出して氷上で冷却し、あらゆる破片を底に沈下させる。次いで、対象は、使い捨て注入器を使用して、採取チューブからサンプル約20μLを吸引する。ステップ5では、対象は、サンプルを、凍結乾燥RT-LAMP反応チューブに分注する。対象は、再度キャップし、反応チューブを静かに撹拌して混合物を再懸濁させる(気泡の混入を回避する)。ステップ6では、対象は、温度計又は温度ステッカー(キットに含まれている)を使用して、魔法瓶中の水温を約67℃に調整する。次いで、対象は、RT-LAMP反応チューブをフォームフローター(foam floater)に組み立て、ボトルに入れる。対象は、ボトルを密閉し、約40分にわたりインキュベートする。ステップ7では、対象は、反応チューブを取り出し、氷上で冷却する。次いで、目視検査を実施して、対象のサンプルがCOVID-19に対して陽性であるか又は陰性であるかを決定し得る(ピンク色=陰性;黄色=陽性)。
【0057】
[0081]上記の方法に従って、本開示は、逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応を実施するための組成物を含む。いくつかの態様では、この組成物は、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液、カオトロピック剤、並びに少なくとも1種の賦形剤を含む。いくつかの態様では、この組成物は、凍結乾燥されて、RT-LAMP反応混合物を形成する。
【0058】
[0082]いくつかの態様では、カオトロピック剤として、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、複数種のカオトロピック剤が、本開示の組成物に含まれ得る。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約5mM~約100mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約25mM~約100mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約50mM~約100mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約75mM~約100mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約5mM~約75mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約5mM~約50mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約5mM~約25mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約25mM~約75mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、カオトロピック剤は、約25mM~約50mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0059】
[0083]いくつかの態様では、カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約40mM~約80mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約60mM~約80mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約60mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約40mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約40mM~約80mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約40mM~約60mMの範囲の再構成濃度(即ち、再構成組成物の最終濃度)を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0060】
[0084]いくつかの態様では、本明細書で説明されているRT-LAMP反応を実施するための組成物は、少なくとも1種の賦形剤を含む。いくつかの態様では、賦形剤として、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、複数種の賦形剤が、本開示の組成物に含まれ得る。いくつかの態様では、賦形剤は、約1w/v%~約100w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約25w/v%~約100w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約50w/v%~約100w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約75w/v%~約100w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約1w/v%~約75w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約1w/v%~約50w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約1w/v%~約25w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、賦形剤は、約25w/v%~約75w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0061】
[0085]いくつかの態様では、賦形剤は、トレハロースである。いくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、トレハロースは、約10w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、トレハロースは、約15w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約15w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約10w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。いくつかの態様では、トレハロースは、約10w/v%~約15w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0062】
[0086]いくつかの態様では、本明細書で説明されているRT-LAMP反応を実施するための組成物は、可視pH指示薬を含む。いくつかの態様では、可視pH指示薬として、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、この組成物は、複数種の可視pH指示薬を含む。
【0063】
[0087]いくつかの態様では、本明細書で説明されているRT-LAMP反応を実施するための組成物は、この反応を実行するための1種又は複数種のプライマーを含む。いくつかの態様では、この組成物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマー(例えば、配列番号1~6又は配列番号7~12)を含むLAMPプライマーミックスを含む。いくつかの態様では、これらのプライマーは、下記の配列:配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマーを含む。いくつかの態様では、これらのプライマーは、下記の配列:配列番号7のF3プライマー;配列番号8のB3プライマー;配列番号9のFIPプライマー;配列番号10のBIPプライマー;配列番号11のLoopFプライマー;及び配列番号12のLoopBプライマーを含む。
【0064】
[0088]いくつかの態様では、LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む。いくつかの態様では、この病原性生物は、RNAウイルスである。いくつかの態様では、この病原性生物は、プラス鎖一本鎖RNAウイルスである。いくつかの態様では、RNAウイルスは、コロナウイルス(例えば、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、β-CoV;ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、β-CoV;ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、α-CoV;ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、α-CoV;重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、β-CoV;中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、β-CoV;及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、β-CoV)、又はこのバリアント若しくは誘導体である。いくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2、又はこの任意のバリアント若しくは誘導体である。他の態様では、病原性生物は、マイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1(hPIV1)、シミアンウイルス(SV5、PIV5)、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、フニンウイルス、及びラッサ熱ウイルス)である。本開示に基づいて当業者に認識されるように、任意の好適なRT-LAMPプライマーセットを、病原性生物に関連するポリヌクレオチドを標的とし、その後、本明細書でさらに説明されている組成物及び方法を使用して、この病原性生物を検出する及び/又は定量するために設計し得る。
【0065】
[0089]いくつかの態様では、本明細書で説明されているRT-LAMP反応を実施するための組成物は、この反応を実行するための1種又は複数種の追加の試薬を含む。いくつかの態様では、この1種又は複数種の追加の試薬として、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
[0090]上記の態様に従って、本明細書で説明されているRT-LAMP反応混合物を、1例の対象又は複数例の対象由来の生体サンプルと混合する(例えば、図1を参照されたい)。いくつかの態様では、この生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られるか、又は由来する。本明細書で使用される場合、「サンプル」、「検査サンプル」、「検体」、「対象由来のサンプル」、及び「患者サンプル」という用語は、互換的に使用され得、且つ血液(例えば、全血)、組織、皮膚、尿、血清、血漿、唾液、羊水、脳脊髄液、胎盤の細胞若しくは組織、内皮細胞、白血球、又は単球のサンプルであり得る。サンプルを、患者から得られたものとして直接使用し得るか、又は本明細書で論じられているいくつかの方法若しくは当該技術分野で既知の他の方法で、例えば、ろ過、蒸溜、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活化、試薬の添加、及び同類のものにより前処理して、このサンプルの特性を変更し得る。このサンプルを、病原性生物に感染しているか又は感染していると疑われている対象から得ることができる。
【0067】
[0091]本開示の態様はまた、対象由来の生体サンプル中の病原性生物を検出する方法も含む。この態様に従って、この方法は、(a)対象由来の生体サンプルと、本明細書で説明されているRT-LAMP反応混合物とを、反応容器中で組み合わせるステップ;(b)少なくとも60℃の温度で少なくとも20分にわたり、この反応容器をインキュベートするステップ;及び(c)この反応容器の目視検査を実施して、生体サンプルが病原性生物の存在に関して陽性であるかどうかを決定するステップを含む。いくつかの態様では、この方法は、ステップ(a)の前に、少なくとも90℃の温度で少なくとも5分にわたり、生体サンプルをインキュベートするステップをさらに含む。
【0068】
[0092]この方法のいくつかの態様では、反応容器は断熱されており、且つ実質的に一定温度で液体を収容するように構成されている。この方法のいくつかの態様では、反応容器は、液体の温度を測定するための装置を含む。いくつかの態様では、液体の温度を測定するための装置は、温度計又は温度ステッカーであり得る。
【0069】
[0093]上記で説明したように、この方法に従って使用されるRT-LAMP反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬を含む。この方法のいくつかの態様では、RT-LAMP反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む。
【0070】
[0094]この方法のいくつかの態様では、この方法に従って使用されるRT-LAMP反応混合物は、この反応を実行するための1種又は複数種のプライマーを含むLAMPプライマーミックスを含む。いくつかの態様では、この組成物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマー(例えば、配列番号1~6又は配列番号7~12)を含むLAMPプライマーミックスを含む。いくつかの態様では、これらのプライマーは、下記の配列:配列番号1のF3プライマー;配列番号2のB3プライマー;配列番号3のFIPプライマー;配列番号4のBIPプライマー;配列番号5のLoopFプライマー;及び配列番号6のLoopBプライマーを含む。いくつかの態様では、これらのプライマーは、下記の配列:配列番号7のF3プライマー;配列番号8のB3プライマー;配列番号9のFIPプライマー;配列番号10のBIPプライマー;配列番号11のLoopFプライマー;及び配列番号12のLoopBプライマーを含む。この方法のいくつかの態様では、病原性生物は、RNAウイルスである。いくつかの態様では、この病原性生物は、プラス鎖一本鎖RNAウイルスである。この方法のいくつかの態様では、RNAウイルスは、コロナウイルス(例えば、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、β-CoV;ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、β-CoV;ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、α-CoV;ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、α-CoV;重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、β-CoV;中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、β-CoV;及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、β-CoV)、又はこのバリアント若しくは誘導体である。この方法いくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2又はこのバリアントである。この方法の他の態様では、病原性生物は、マイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1(hPIV1)、シミアンウイルス(SV5、PIV5)、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、フニンウイルス、及びラッサ熱ウイルス)である。この方法のいくつかの態様では、生体サンプルは、対象の口及び/又は鼻腔から得られる。
【0071】
[0095]本開示の態様はまた、逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)反応混合物を生成する方法も含む。この態様に従って、この方法は、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含む反応緩衝液と、カオトロピック剤及び少なくとも1種の賦形剤とを、容器中に組み合わせるステップ;並びにこの容器を凍結乾燥プロセスに供して、RT-LAMP反応混合物を形成するステップを含む。
【0072】
[0096]この方法のいくつかの態様では、カオトロピック剤は、n-ブタノール、エタノール、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ尿素、及び尿素からなる群から選択される。この方法のいくつかの態様では、カオトロピック剤は、塩酸グアニジンである。この方法のいくつかの態様では、塩酸グアニジンは、約20mM~約80mMの範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0073】
[0097]この方法のいくつかの態様では、少なくとも1種の賦形剤は、スクロース、トレハロース、デキストラン、ラクトース、グルコース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、ゼラチン、デキストロース、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジアミン四酢酸、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される。この方法のいくつかの態様では、賦形剤は、トレハロースである。この方法のいくつかの態様では、トレハロースは、約5w/v%~約20w/v%の範囲の再構成濃度を生じるのに十分な凍結乾燥前濃度で存在している。
【0074】
[0098]この方法のいくつかの態様では、この反応混合物は、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、及びm-クレゾールパープルからなる群から選択される、可視pH指示薬をさらに含む。この方法のいくつかの態様では、この反応混合物は、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LoopFプライマー、及びLoopBプライマーを含むLAMPプライマーミックスをさらに含む。この方法のいくつかの態様では、この反応混合物は、dNTP、トリス塩酸塩、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、ベタイン、及びTween 20をさらに含む。
【0075】
[0099]この方法のいくつかの態様では、LAMPプライマーミックスは、病原性生物由来のRNAに対応するcDNA配列に特異的なプライマーを含む。この方法のいくつかの態様では、この病原性生物は、RNAウイルスである。この方法のいくつかの態様では、この病原性生物は、プラス鎖一本鎖RNAウイルスである。いくつかの態様では、RNAウイルスは、コロナウイルス(例えば、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、β-CoV;ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、β-CoV;ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、α-CoV;ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、α-CoV;重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、β-CoV;中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、β-CoV;及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、β-CoV)、又はこのバリアント若しくは誘導体である。この方法のいくつかの態様では、病原性生物は、SARS-CoV-2である。この方法の他の態様では、病原性生物は、マイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1(hPIV1)、シミアンウイルス(SV5、PIV5)、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、フニンウイルス、及びラッサ熱ウイルス)である。
3.材料及び方法
[0100]RT-LAMPプライマー:いくつかの公開されたSARS-CoV-2 RT-LAMPプライマーセットを、検出感度、偽陽性率及び偽陰性率、反応速度、並びに試験再現性の観点で注意深くスクリーニングした(図7~12)。最良の性能のプライマーセット(表2)を、凍結乾燥された比色RT-LAMP家庭用検査セットでのさらなる特徴付け及び最適化のために選択した。
【0076】
[0101]
【0077】
【表2】
【0078】
[0102]このプライマーセットは、SARS-CoV-2ウイルスゲノムのORF1a遺伝子を標的としており、現在懸念されているSARS-CoV-2バリアントの変異による影響が最小限に抑えられる。追加のプライマーセット(表3)を試験して、ワンポット凍結乾燥プロトコルの信頼性が高い性能を確認した。
【0079】
[0103]
【0080】
【表3】
【0081】
[0104]RT-LAMP試薬:WarmStart(登録商標)Colorimetric LAMP 2X Master Mix(New England Biolabs,カタログM1800L)を、検査キット用のRT-LAMPマスターミックスとして使用した。RT-LAMPプライマーを、標準的な脱塩を行ったカスタムDANオリゴとしてIDTに注文した。プライマーを、ヌクレアーゼフリー水(Sigma-Aldrich)に再懸濁させて混合して、2μMのF3プライマー、2μMのB3プライマー、16μMのFIPプライマー、16μMのBIPプライマー、4μMのLoopFプライマー、及び4μMのLoopBプライマーからなる10×プライマーミックスを形成した。RT-LAMP反応を、総反応量20μLで実行した。具体的には、合成SARS-CoV-2 RNAコントロール(Twist Bioscience,カタログ102024)で実行した全ての分析実験において、凍結乾燥されたRT-LAMP試薬を、サンプル 5μL+ヌクレアーゼフリー水 15μLで再構成した。別途指定されない限り、人為的SARS-CoV-2スワブサンプルで実行した検証実験では、サンプル 20μL(サンプル 5μL+ヌクレアーゼフリー水 15μLと対照的)を、凍結乾燥されたRT-LAMPミックスに直接添加した。
【0082】
[0105]比色RT-LAMPの高速ワンポット凍結乾燥:3Mトレハロース溶液を、D-(+)-トレハロース二水和物粉末(Sigma-Aldrich,分子量378.33g/mol) 0.5gを、ヌクレアーゼフリー水 440.5μLに溶解させ、続いて、激しくボルテックスし、10分にわたり60℃で加熱してトレハロースを完全に溶解させて過飽和溶液を得ることにより調製した。これにより、総量が約760μLの溶液が得られ、これは、約1.75Mの有効トレハロース濃度に相当した。アッセイの原型には、少量の溶液のみが必要であったことから、測定を簡潔で一貫して保つために、別途指定されない限り、この得られた溶液を、本文全体を通して3Mのトレハロースと称した。次いで、トレハロース溶液を、0.2μmシリンジフィルタ(VWR)に通してろ過することにより滅菌し、続いて短時間ボルテックスして遠心分離して、気泡を除去した。一貫性のために、1MのGuHCl溶液を、最終量をさらに調整することなく塩酸グアニジン粉末(VWR,分子量95.53g/mol) 0.1gをヌクレアーゼフリー水 1046.8μLに直接溶解させることにより、同様に調製した。GuHCl溶液が入ったチューブを、アルミニウムホイルで覆って遮光した。比色RT-LAMP凍結乾燥製剤の構成成分を、所定の比率で混合して(表4)、0.2mL PCRチューブに分注し、1時間にわたり-20℃で凍結させた。
【0083】
[0106]
【0084】
【表4】
【0085】
[0107]最後に、チューブを、キャップを開いたまま、真空乾燥機(VirTis Freezemobile 12SL)に接続された真空濃縮器(Savant Speedvac SVC-100H)に素早く移した。凍結乾燥を、約10ミリトールのチャンバー圧及び約-40℃のコンデンサー温度で、1時間にわたり実行した。RT-LAMP凍結乾燥プロトコルの最適化の詳細を、図12~17に示す。
【0086】
[0108]サーモサイクラ中での比色RT-LAMP:サンプル又は非テンプレートコントロール(NTC)が入っているRT-LAMPマイクロチューブをボルテックスし、スピンダウンし、氷上で短時間冷却した後に、プレインキュベーション写真を撮った。RT-LAMPマイクロチューブを、規定の温度で60分にわたりサーモサイクラ中でインキュベートし、30、40、50、及び60分で撮影して色の変化を評価した。チューブを、氷上で短時間冷却して色を安定させた後に、撮影した。最適なRT-LAMPインキュベーション温度を、勾配サーマルサイクラ(Eppendorf MasterCycler)中において設定された温度勾配(T=65℃、G=5℃)で反応を実行することにより識別した。コンタミネーションを回避するために、RT-LAMPチューブを、インキュベーション反応後に決して再度開けるべきではない。
【0087】
[0109]魔法瓶中での比色RT-LAMP:ウイルスRNAの調製及びRT-LAMPのインキュベーションの両方を、魔法瓶中で行った。沸騰したての水を入れて、約2分にわたり魔法瓶を予熱し、次いで廃棄した。次に、沸騰水を魔法瓶に再度入れ、約97度まで冷却し、その後、ウイルスを添加したサンプルとNTC(ウイルス無添加のスワブ培地)を、魔法瓶(蓋をしている)中で10分にわたりインキュベートし、次いで5分にわたり氷上で冷却して、細胞残屑を沈殿させた。次に、熱不活性化サンプル「上清」(即ち、細胞残屑を含まない)又はNTC 20μLを、使い捨てトランスファーピペットを使用して、RT-LAMPマイクロチューブに移した。マイクロチューブを再度キャップして軽くはじいて、凍結乾燥されたRT-LAMP試薬を再懸濁させ、次いで氷上で冷却した後、プレインキュベーション写真を写した。一方、マグカップに沸騰水を入れ、約70℃まで冷却した後に魔法瓶に注いだ。水を、約67℃までさらに冷却した後、サンプルを添加した。次に、RT-LAMPマイクロチューブを、60分にわたり、蓋を固く閉じた魔法瓶中でインキュベートし、30、40、50、及び60分で撮影した。インキュベーション中に、マイクロチューブを、RT-LAMP反応を活性化させるために、垂直に且つ十分に水に浸漬されているようにフォームフローター上で固定した。最後に、チューブを魔法瓶から取り出し、氷上で短時間冷却して色を安定させた後、試験結果の読み取りのために撮影した。
【0088】
[0110]
【0089】
【表5】
【実施例
【0090】
4.実施例
[0111]本明細書で説明されている本開示の方法の他の好適な変更及び適合が容易に適用可能であり及び認識可能であり、且つ本開示の範囲又は本明細書で開示されている側面及び態様から逸脱することなく、好適な等価物を使用して行い得ることが、当業者に容易に明らかであるだろう。本開示を詳細に説明したが、下記の実施例を参照することにより、同じことがより明確に理解されることとなり、この実施例は、本開示のいくつかの側面及び態様を説明することのみが意図されているにすぎず、本開示の範囲を限定すると見なすべきではない。本明細書で言及される全ての雑誌参考文献、米国特許、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
[0112]本開示は、下記の非限定的な実施例で示される複数の側面を有する。
実施例1
[0113]従来の分子アッセイは、検査ワークフローの複雑さ、特殊な機器への依存、試薬の冷凍保存の厳密な要求、並びに製造及び流通の高コストのために、訓練を受けていない個人が家庭で便利に使用し得ない。COVID-19の真に安価で迅速な信頼性の高い家庭用検査を可能にするために、凍結乾燥された比色RT-LAMPのみに基づいて、オールインワン分子家庭用検査キットを開発しており、自己管理での検査を行うために、通常の魔法瓶及び温度計のみが必要とされる。迅速なワンポット凍結乾燥プロトコルを開発して、比色RT-LAMP検査に必要な全ての試薬を単一のマイクロチューブに迅速に保存し、長期安定性、安価な流通、及び家庭用検査キットの便利な使用が容易となった。特に、凍結乾燥されたRT-LAMPアッセイは、従来の溶液ベースのRT-LAMP反応と比較して、偽陽性が減少しており、且つ広範囲のインキュベーション温度に対して高い耐性を示した。臨床サンプルマトリックスからのウイルス検出を可能にするために、低コストの保存可能な試薬に基づいて、ワンステップRNA調製プロトコルを適応させた。非侵襲的なサンプル採取(前鼻腔スワブ又は歯肉スワブ)、迅速な抽出不要RNA調製、魔法瓶内での最適化されたRT-LAMP反応、及び最終的な検査結果の比色解釈等のサンプルから回答までのワークフロー全体(図1)にかかる時間は、60分未満である。
【0092】
[0114]RT-LAMP反応は、低温(典型的には-20℃)で保存しなければならない活性酵素成分(即ち、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素)に依存している。家庭用検査での使用のためにRT-LAMP試薬を保存すべく、凍結乾燥(freeze drying)としても既知である凍結乾燥(lyophilization)を採用して、検査キットの保存期間を延長し、且つ好都合な温度下(例えば、典型的な家庭用冷蔵温度又は室温)での検査キットの流通、取り扱い、及び保存を容易にした。凍結乾燥された検査キットはまた、ピペッティングのステップ数も減少させて、使いやすさを向上させ且つコンタミネーションを最小限に抑える。しかしながら、凍結乾燥は、典型的には、設計して最適化することが困難な可能性がある凍結、一次乾燥、及び二次乾燥の3段階を含む高価で時間のかかるプロセスである。
【0093】
[0115]本明細書でさらに説明されているように、本開示の態様は、単一の条件下で一次乾燥及び二次乾燥の両方を完了させることにより乾燥時間を最短に抑える高速ワンポット凍結乾燥プロセスを含む。分子生物学的アッセイ用に開発された先行の凍結乾燥プロトコルとは異なり、本開示のプロトコルでは、反応緩衝液及び酵素を別々に凍結乾燥する必要がない。代わりに、簡略化されたプロトコルでは、単一のマイクロチューブ中における比色RT-LAMPに必要な全ての試薬のワンポット凍結乾燥が可能となり(表4)、凍結乾燥プロセス全体を2時間以内に完了し得る。トレハロース及びデキストランを、凍結乾燥中の凍結保護(cryoprotection)及び凍結保護(lyoprotection)、並びに長期保存での安定性の増強を提供するための候補賦形剤として試験した。加えて、反応速度及び比色RT-LAMPの感度を改善するために、塩酸グアニジン(GuHCl)を、最適化された製剤に含めた。最近公開されたRT-LAMPプライマーの複数のセットを試験し、ウイルスゲノムのORF1a遺伝子を標的とし且つ最近のSARS-CoV-2バリアント由来の変異による影響を最小限に抑える、性能が良好なプライマーセット(表2)により、RT-LAMPアッセイを最適化した。
【0094】
実施例2
[0116]典型的な溶液ベースのRT-LAMP反応と比較して、最適化された濃度でのトレハロースの添加により、RT-LAMP偽陽性の発生が有意に減少することを観察した。反応速度のわずかな低下は、GuHClの添加により緩和された。特に、凍結乾燥されたRT-LAMP反応はまた、溶液ベースのRT-LAMP反応と比較してインキュベーション温度の適合範囲が広く、そのため、正確な温度制御を必要としない反応インキュベーションのための通常の魔法瓶の使用に耐えるためのアッセイの堅牢性が改善される。具体的には、図2に示すように、凍結乾燥アッセイ(「3Mトレハロース+1M GuHCl)lyo」)が、試験した温度勾配全体(60.7℃~70.0℃)にわたり確実に実施され、この温度勾配内のほとんどの温度で、20分という早い段階で真陽性が明確に読み取られ、50分のインキュベーションまでに偽陽性はなかった。対照的に、同じプライマーとマスターミックス製剤に基づく溶液ベースのRT-LAMPアッセイ(「Fresh sol」)は、狭い範囲の適合温度、より遅い転換、及び偽陽性のより早い発生を示した。ワンポット凍結乾燥の有益な効果も図3で観察しており、図3では、様々な公開されたRT-LAMPプライマーセットに基づくアッセイに関して、同様の温度勾配実験を実行した。ワンポット凍結乾燥アッセイの性能の増強は、RT-LAMP製剤中でのトレハロースの含有に部分的に起因するという仮説を立てた。凍結保護剤及び熱保護剤としての役割に加えて、トレハロースは、先行文献において、DNA二重鎖を不安定にする効果を有することが見出された。そのような効果は、等温増幅反応の特異性及び収率の改善に役立ち、このことは、実験データからの観察と一致する。室温での凍結乾燥されたRT-LAMPアッセイの保存期間を潜在的に延長するためのデキストランの添加効果(図4)も調べたが、デキストランの添加は、凍結乾燥されたRT-LAMPアッセイの性能を有意に増強するようには見えなかった(図5)。
【0095】
実施例3
[0117]合成されたSARS-CoV-2 RNA(Twist Bioscience)を使用したインハウス検証によると、本明細書で説明されている検査キットは、室温(約20~22℃)で少なくとも10日間及び典型的な家庭用冷蔵温度(4℃)で30日間にわたり安定なままであり、両方の貯蔵条件下で、1回の反応当たり100コピーのウイルスRNA(即ち、5コピー/μL)まで再現可能な検出限界で、95%以上の分析感度及び99%超の分析特異性が達成される(図5及び図6)。人為的な前鼻腔スワブサンプル及び歯肉スワブサンプルの分析結果によると、この検査では、複数のSARS-CoV-2バリアント、及び様々な地域からの分離株が成功裏に検出された。本開示のアッセイの簡便さにより、SARS-CoV-2の新たに出現したバリアント、並びに公衆衛生上重要な他の病原体及び疾患を検出するためのプライマーセットの迅速な変更が可能となる。
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【配列表】
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【国際調査報告】