(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】リターンマニホールド用のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20240311BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K27/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558430
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022022013
(87)【国際公開番号】W WO2022204553
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598096131
【氏名又は名称】フスコ インターナショナル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUSCO INTERNATIONAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン トム
(72)【発明者】
【氏名】クンダート アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュコップフ キャセイ
【テーマコード(参考)】
3H051
3H056
【Fターム(参考)】
3H051CC11
3H051FF07
3H056AA08
3H056BB32
3H056CA02
3H056CD02
(57)【要約】
リターンマニホールドは、第1ワークポート、第2ワークポート、第3ワークポート、および第4ワークポートを有し、第1チャンバーおよび第2チャンバーを画定する。このリターンマニホールドは、第1ワークポートおよび第1チャンバーの間に設けられる背圧ディスクと、第1チャンバーおよび第2チャンバーの間に設けられるバイパスディスクと、背圧ディスクおよびバイパスディスクの間に付勢される背圧ばねと、バイパスディスクに付勢されるバイパスばねとを備える。背圧ディスクおよびバイパスディスクが油圧機械的に結合されることにより、バイパスディスクの移動は、背圧ディスクに作用する力を変化させ、背圧ディスクの移動は、バイパスディスクに作用する力を変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧システム用のリターンマニホールドであって、前記油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有し、
前記リターンマニホールドは、
前記主制御弁の下流に設けられ、前記主制御弁に流体連結する第1ワークポート、前記下流制限部の入口側に流体連結する第2ワークポート、および前記タンクに流体連結するタンクワークポートと、
前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間に設けられ、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体フローが禁止される閉位置と、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体連結が許容される開位置との間に移動可能に構成される背圧ディスクと、
前記流体フローがクーラーをバイパスして前記第1ワークポートから前記タンクワークポートへ流れることを許容する開位置へ移動可能に構成されるバイパスディスクと、
前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクの間に付勢され、前記バイパスディスクに作用する第1方向の力を発生させる背圧ばねと、
前記バイパスディスクに作用し、前記第1方向とは反対の第2方向の力を発生させるように、前記バイパスディスクに付勢されるバイパスばねと、
を備え、
前記背圧ばねと前記バイパスばねとは、直列に配置されることを特徴とする、リターンマニホールド。
【請求項2】
前記背圧ディスク、前記バイパスディスク、前記背圧ばね、および前記バイパスばねは、ハウジング内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のリターンマニホールド。
【請求項3】
前記第1ワークポートにおける圧力が前記背圧ばねによって前記背圧ディスクに作用する力を超える圧迫力を発生させる際、前記背圧ディスクが前記閉位置から前記開位置に移動するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載にリターンマニホールド。
【請求項4】
前記ハウジングは、第1チャンバーと、第2チャンバーとを画定し、
前記第1チャンバーは、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間に配置され、
前記バイパスディスクは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のリターンマニホールド。
【請求項5】
前記バイパスディスクは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の圧力低下が増加することにつれて、前記開位置へ向かって移動するように構成されることを特徴とする、請求項4に記載のリターンマニホールド。
【請求項6】
油圧システム用のリターンマニホールドであって、前記油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有し、
前記リターンマニホールドは、
第1ワークポート、第2ワークポート、およびタンクワークポートを有するハウジングであって、前記ハウジングが第1チャンバーおよび第2チャンバーを画定し、前記第1ワークポートが前記主制御弁に流体連結し、前記第2ワークポートが前記下流制限部の入口側に流体連結し、前記タンクワークポートが前記タンクに流体連結するように構成されるハウジングと、
前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に設けられる背圧ディスクと、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間に設けられるバイパスディスクと、
前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクの間に付勢される背圧ばねと、
前記バイパスディスクに付勢されるバイパスばねと、
を備え、
前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクは、油圧機械的に結合されることにより、前記バイパスディスクの移動が前記背圧ディスクに作用する力を変化させ、前記背圧ディスクの移動が前記バイパスディスクに作用する力を変化させることを特徴とする、リターンマニホールド。
【請求項7】
前記背圧ディスクは、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体フローが禁止される閉位置と、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体連結が許容される開位置との間に移動可能であることを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項8】
前記バイパスディスクは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の流体フローが許容される開位置へ移動可能であることを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項9】
前記背圧ばねは、前記バイパスディスクに作用する第1方向の力を発生することを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項10】
前記バイパスばねは、前記バイパスディスクに作用し、前記第1方向とは反対の第2方向の力を発生させることを特徴とする、請求項9に記載のリターンマニホールド。
【請求項11】
前記背圧ばねおよび前記バイパスばねは、直列に配置されることを特徴とする、請求項10に記載のリターンマニホールド。
【請求項12】
前記背圧ディスクは、前記第1ワークポートにおける圧力が前記背圧ばねによって前記背圧ディスクに作用する力を超える圧迫力を発生させた際、閉位置から、前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に流体フローが提供される開位置へ移動するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項13】
前記バイパスディスクは、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の圧力低下が増加することにつれて、開位置へ向かって移動するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項14】
前記ディスクは、ポペットの形状に形成されることを特徴とする、請求項6に記載のリターンマニホールド。
【請求項15】
油圧システム用のリターンマニホールドであって、前記油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有し、
前記リターンマニホールドは、
第1ワークポート、第2ワークポート、およびタンクワークポートを有するハウジングであって、前記ハウジングが第1チャンバーおよび第2チャンバーを定義し、前記第1ワークポートが前記主制御弁に流体連結し、前記第2ワークポートが前記下流制限部の入口側に流体連結し、前記タンクワークポートが前記タンクに流体連結する、ハウジングと、
前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に設けられる背圧弁と、
前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間に設けられるバイパス弁と、
前記バイパス弁に付勢されるバイパスばねと、
を備え、
前記背圧弁および前記バイパス弁は、油圧機械的に結合されることにより、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の圧力低下が前記背圧弁および前記バイパス弁の両方の位置に影響することを特徴とする、リターンマニホールド。
【請求項16】
前記背圧弁および前記バイパス弁の間に付勢される背圧ばねをさらに備えることを特徴とする、請求項15に記載のリターンマニホールド。
【請求項17】
前記背圧弁は、前記第1ワークポートにおける圧力が前記背圧ばねによって前記背圧弁に作用する力を超える圧迫力を発生させた際、閉位置から、前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に流体フローが提供される開位置へ移動するように構成されることを特徴とする、請求項16に記載のリターンマニホールド。
【請求項18】
前記バイパス弁は、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の圧力低下が増加することにつれて、開位置へ向かって移動するように構成されることを特徴とする、請求項17に記載のリターンマニホールド。
【請求項19】
前記背圧弁は、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体フローが禁止される閉位置と、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体連結が許容される開位置との間に移動可能であることを特徴とする、請求項16に記載のリターンマニホールド。
【請求項20】
前記バイパス弁は、流体フローが前記下流制限部をバイパスして前記第1ワークポートから第4ワークポートへ流れることが許容される開位置へ移動可能であることを特徴とする、請求項16に記載のリターンマニホールド。
【請求項21】
前記バイパス弁は、流体フローが前記第1チャンバーから前記第2チャンバーへ流れることが許容される開位置へ移動可能であることを特徴とする、請求項16に記載のリターンマニホールド。
【請求項22】
前記背圧弁および前記バイパス弁の間に付勢される背圧ばねをさらに備え、
前記背圧ばねは、前記バイパス弁に作用する第1方向の力を発生させることを特徴とする、請求項16に記載のリターンマニホールド。
【請求項23】
前記バイパスばねは、前記バイパス弁に作用し、前記第1方向に反対する第2方向の力を発生させることを特徴とする、請求項22に記載のリターンマニホールド。
【請求項24】
前記背圧ばねおよび前記バイパスばねは、直列に配置されていることを特徴とする、請求項23に記載のリターンマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月26日に出願された米国仮特許出願第63/166,839号に基づき優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述)
適用されない。
【背景技術】
【0003】
オフハイウェイ機械/車両には、通常、油圧制御され得る1つ以上の機能が含まれている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、オフハイウェイ機械で使用される油圧システムのリターンライン内の圧力を制御する目的で使用されるリターンマニホールドのためのシステムおよび方法を提供する。リターンマニホールドには、リターン背圧装置およびバイパス装置の両方を含むことができる。リターン背圧装置は、主制御弁(main control valve,MCV)からのリターンフローを制限できる。バイパス装置は、主制御弁の下流にある装置(例えば、熱交換器、クーラー、フィルターなど)での圧力低下を制限し、フローが下流にある装置をバイパスすることを許容する。
【0005】
本開示は、一態様において、油圧システム用のリターンマニホールドを提供する。前記油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有する。前記リターンマニホールドは、前記主制御弁の下流に設けられ、前記主制御弁に流体連結する第1ワークポートと、前記下流制限部の入口側に流体連結する第2ワークポートと、前記タンクに流体連結するタンクワークポートと、を有する。前記リターンマニホールドは、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間に設けられる背圧ディスクと、流体フローがクーラーをバイパスして前記第1ワークポートから前記タンクワークポートへ流れることを許容する開位置へ移動可能に構成されるバイパスディスクとを有する。前記背圧ディスクは、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体フローが禁止される閉位置と、前記第1ワークポートおよび前記第2ワークポートの間の流体連結が許容される開位置との間に移動可能である。前記リターンマニホールドは、前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクの間に付勢される背圧ばねと、バイパスばねとをさらに有する。前記背圧ばねは、前記バイパスディスクに作用する第1方向の力を発生させ、前記バイパスばねは、前記バイパスディスクに作用し、前記第1方向とは反対の第2方向の力を発生させるように、前記バイパスディスクに付勢される。前記背圧ばねと前記バイパスばねとは、直列に配置される。
【0006】
本開示は、一態様において、油圧システム用のリターンマニホールドを提供する。前記油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有する。前記リターンマニホールドは、第1ワークポート、第2ワークポート、およびタンクワークポートを有するハウジングを有する。前記ハウジングは、第1チャンバーおよび第2チャンバーを定義する。前記第1ワークポートは、前記主制御弁に流体連結し、前記第2ワークポートは、前記下流制限部の入口側に流体連結し、前記タンクワークポートは、前記タンクに流体連結する。前記リターンマニホールドは、前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に設けられる背圧ディスクと、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間に設けられるバイパスディスクと、前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクの間に付勢される背圧ばねと、前記バイパスディスクに付勢されるバイパスばねと、を有する。前記背圧ディスクおよび前記バイパスディスクは、油圧機械的に結合される(hydro-mechanically coupled)ことにより、前記バイパスディスクの移動が前記背圧ディスクに作用する力を変化させ、前記背圧ディスクの移動が前記バイパスディスクに作用する力を変化させる。
【0007】
本開示は、一態様において、油圧システム用のリターンマニホールドを提供する。油圧システムは、主制御弁と、前記主制御弁の下流に設けられる下流制限部と、タンクとを有する。前記リターンマニホールドは、第1ワークポート、第2ワークポート、およびタンクワークポートを有する。前記ハウジングは、第1チャンバーおよび第2チャンバーを定義する。前記第1ワークポートは、前記主制御弁に流体連結し、前記第2ワークポートは、前記下流制限部の入口側に流体連結し、前記タンクワークポートは、前記タンクに流体連結する。前記リターンマニホールドは、前記第1ワークポートおよび前記第1チャンバーの間に設けられる背圧弁と、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間に設けられるバイパス弁と、前記バイパス弁に付勢されるバイパスばねと、をさらに有する。前記背圧弁および前記バイパス弁は、油圧機械的に結合されることにより、前記第1チャンバーおよび前記第2チャンバーの間の圧力低下が前記背圧弁および前記バイパス弁の両方の位置に影響する。
【0008】
本開示の前述および他の態様ならびに利点は、以下の説明から明らかになる。この説明では、本明細書の一部を形成する添付図面が参照され、本開示の好ましい構成が一例として示されている。しかしながら、このような構成は必ずしも本開示の全範囲を表すものではなく、本開示の範囲を解釈するために特許請求の範囲および本明細書を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の以下の詳細な説明を考慮すると、本発明自体がより良く理解され、そして上記以外の特徴、態様および利点が明らかになる。このような詳細な説明は、以下の図面を参照して行う。
【0010】
【
図1】本開示の各態様に係るリターンマニホールドを含む油圧システムの概略図である。
【
図2】本開示の各態様に係るリターンマニホールドの断面図である。
【
図3】油圧回路における
図2のリターンマニホールドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の任意の態様を詳細に説明する前に、本開示は、以下の説明に記載されているあるいは以下の図面に示されている構造およびコンポーネントの配置における適用例の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の構成も可能であり、様々な方法で実施または実現することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は説明目的としたものであり、本開示を限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。本明細書における「有する」、「含む」、または「備える」およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。別段の指定または制限がない限り、「取り付けられる」、「接続される」、「支持される」、および「結合される」という用語およびその変形は広く使用され、直接的および間接的な取り付け、接続、支持、および結合の両方を包含し得る。さらに、「接続される」および「結合される」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。
【0012】
以下の議論は、当業者が本開示の態様を作成および使用できるようにするために提示される。図示の構成に対する様々な変更は当業者には容易に明らかであり、本明細書の一般的な原理は、本開示の態様から逸脱することなく他の構成および用途に適用することができる。したがって、本開示の態様は、図示の構成に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、異なる図面における同様の要素には同様の参照用符号が付けられている。これらの図面は、必ずしも縮尺通りである必要がなく、選択された構成を示しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本明細書に提供される非限定的な例には多くの有用な代替例があり、本開示の範囲内に含まれることを認識するであろう。
【0013】
本明細書における「下流」および「上流」という用語の使用は、流体のフローに対する方向を示す用語である。「下流」という用語は流体フローの方向に対応し、「上流」という用語は流体フローの方向と反対の方向を指す。
【0014】
通常、油圧システムは、リターン回路に制限を加え、かつ、主制御弁の下流に配置されるデバイス、例えば、熱交換器、オイルクーラー、およびフィルターなどを有する。多くの場合、オイルクーラーおよび/またはフィルターがオイルリターンラインに設けられている。このリターンラインは、バイパス弁およびリターン背圧弁を有してもよい。バイパス弁は、クーラーおよび/またはフィルターにおける圧力低下が一定の大きさに達する場合に開く。これは、高いリターンフロー、あるいはオイルクーラーもしくはフィルターが損傷する/詰まることに起因する可能性があり、その結果、フローが制限されるあるいは妨げられる。リターン背圧弁は、油圧システムの機能部にアンチボイドフロー(anti-void flow)を提供するようにリターンライン圧力を動作レベルに維持する。
【0015】
油圧システムにおいて、リターン背圧弁は通常、クーラーおよびクーラーバイパス弁から離れて設けられる(すなわち、それらはリターンラインに沿って異なる場所に配置される、あるいは背圧機能およびバイパス機能を制御する複数の弁が独立して動作する)。このような従来の構成では、リターンラインに沿って離れた2つの弁のためにより多くの実装空間(packaging space)が必要となり、そしてリターン背圧弁およびクーラーバイパス弁の分離によって性能が低下する。
【0016】
本開示は、全体としてバイパス機能およびリターン背圧機能を単一のデバイスに組み込むリターンマニホールドを提供し、そこでリターン背圧機能およびバイパス機能の動作が油圧機械的に結合される(hydro-mechanically coupled)。バイパス機能およびリターン背圧機能を単一のデバイスに組み込むことは、従来の油圧システムと比較して実装空間を改善し、回路性能を向上させる。
【0017】
図1は、オフハイウェイ機械/車両(例えば、掘削機、バックホーローダー、ダンプトラック、ブルドーザなど)上の1つ以上の機能部102の動作を制御することができる油圧システム100を示す。油圧システム100は、ポンプ104を備え、ポンプ104は、加圧されたタンク106または貯蔵装置106から作動流体(例えば、オイル)をポンプ104の下流に配置された主制御弁108に供給するように構成される。主制御弁108は、機能部102への流体フローおよび機能部102からの流体フローを制御することによって機能部102の動作を制御でき、1つ以上のスプール、ポペット、電気油圧弁などを含んでもよい。機能部102は、油圧制御されるオフハイウェイ車両/機械上の任意の構成要素(例えば、アクチュエータ、バケット、モータ、マストなど)であり得る。図示される非限定的な例では、油圧システム100は、機能部102への流体フローを制御する単一の主制御弁108を有するが、他の構成も可能である。例えば、単一の主制御弁108は、複数の機能部への流体フローおよび複数の機能部からの流体フローを制御することができ、または複数の主制御弁108は、単一の機能部への流体フローおよび単一の機能部からの流体フローを制御することができる。
【0018】
主制御弁108の下流では、リターンライン110または導管110が主制御弁108とタンク106との間の流体連結を提供する。リターンマニホールド112は、リターンライン110上の主制御弁108とタンク106との間に配置されている。すなわち、主制御弁108からタンク106に向かう方向に流れる流体は、リターンマニホールド112を通過する。リターンマニホールド112は、リターンマニホールド112を通過する流体の少なくとも一部がタンク106に戻る前に下流制限部114を通過し流れることを許容する。本明細書で説明するように、リターンマニホールド112は、リターンマニホールド112の上流のリターンライン110内に所定量の背圧が確実に維持され、かつ、リターンフローがクーラー114を通過しない代わりにタンク106に直接導かれることで選択的にバイパスすることができるように構成される。この構成は、背圧機能およびバイパス機能のために、リターンラインに沿って配置される2つの分離されたデバイスを有する従来の油圧システムと比べて、いくつかの利点を提供する。いくつかの非限定的な例では、下流制限部114は、熱交換器、オイルクーラー、フィルター、またはバイパスを必要とするリターン導管に制限部を加えて構成される同等構造の形態であってもよい。
【0019】
図2および
図3を参照すると、リターンマニホールド112がより詳細に示されている。図示の非限定的な例では、リターンマニホールド112は、第1ワークポート118または入口ワークポート118、第2ワークポート120またはクーラー入口ワークポート120、第3ワークポート122またはクーラー出口ワークポート122、および第4ワークポート124またはタンクワークポート124を有するハウジング116を含む。ハウジング116は、第1チャンバー126または第1キャビティ126、および第2チャンバー128または第2キャビティ128を画定する。第1チャンバー126および第2チャンバー128はハウジング116の内部に配置され、第1チャンバー126は第1ワークポート118と第2ワークポート120との間に配置され、そして第2チャンバー128は第3ワークポート122と第4ワークポート124との間に配置される。いくつかの非限定的な例では、リターンマニホールド112は、第3ワークポート122を有しておらず、下流制限部114の出口側は、リターンマニホールド112を通過せずにタンク106内に直接流入してもよい。
【0020】
保持ロッド130は、ハウジング116の内部を通って延びている。図示される非限定的な例では、保持ロッド130は、第1ワークポート118、第1チャンバー126、および第2チャンバー128を通って延びるようにハウジング116を通って長手方向に延びている。言い換えれば、保持ロッド130は、ハウジング116の第1端132からハウジング116の反対側の第2端134まで延びている。保持ロッド130は、ハウジング116のねじ穴136によってハウジング116に固定することができる(例えば、ハウジング116に対する変位が防止される)ことができる。すなわち、保持ロッド130は、ハウジング116のねじ穴136にねじ込まれるねじ部137を含む。図示の非限定的な例では、ねじ穴136はハウジング116の第2端部134に配置されている。他の非限定的な例では、ねじ穴136は貫通穴であってもよく、保持ロッド130をハウジング116に固定するためにナットが使用されてもよい。
【0021】
保持ロッド130は、その上に配置される背圧ディスク138または背圧弁138と、バイパスディスク140またはバイパス弁140とを含む。すなわち、保持ロッド130は、背圧ディスク138およびバイパスディスク140が保持ロッド130の外面に沿って摺動できるように、背圧ディスク138およびバイパスディスク140を通って延在する。図示の非限定的な例では、背圧ディスク138は、第1ワークポート118と第1チャンバー126との間に配置され、そしてバイパスディスク140は、第1チャンバー126と第2チャンバー128との間に配置される。いくつかの実施形態では、背圧ディスク138およびバイパスディスク140はポペットの形態であってもよい。
【0022】
背圧ディスク138は、保持ナット142と背圧ばね144との間に付勢されている。背圧ばね144は、保持ロッド130を取り囲み、かつ、背圧ディスク138とバイパスディスク140との間に延びる。言い換えれば、背圧ばね144は、背圧ディスク138とバイパスディスク140との間に付勢され、かつ、それらの両方に係合する。背圧ディスク138が保持リング142に当接するため、背圧ばね144は、バイパスディスク140に背圧ディスク138から離れる方向(例えば、
図2の視点における右方向へ)の付勢力を与える。バイパスディスク140は、背圧ばね144とバイパスばね146との間に付勢されている。バイパスばね146は、保持ロッド130を取り囲み、バイパスディスク140と保持ナット136との間に延びる。言い換えれば、バイパスばね146は、バイパスディスク140と保持ナット136の間に付勢され、バイパスディスク140と保持ナット136との両方に係合する。保持ナット136は、保持ロッド130にしっかりと取り付けられており(例えば、保持ロッドに対して相対移動できない)、かつ、バイパスばね146は保持ナット136に当接しているため、バイパスばね146は、バイパスディスクに背圧ディスク138に向かう方向(例えば、
図2の視点における左方向へ)の付勢力を提供する。すなわち、背圧ばね144は、バイパスディスク140に第1方向の付勢力を与え、そしてバイパスばね146は、バイパスディスク140に第1方向とは反対の第2方向の付勢力を与える。図示の非限定的な例では、背圧ばね144は、バイパスばね146と直列に配置されている結果、背圧ディスク138またはバイパスディスク140の一方の動きが他方の動きに影響を与える。このように、例えば、背圧ディスク138は、バイパスディスク140に油圧機械的に結合される(すなわち、背圧ばね144が背圧ディスク138とバイパスディスク140とを接続し、第1チャンバー126および第2チャンバー128の間の圧力差もバイパスディスク140の位置に影響を与える)。
【0023】
一般的に、背圧ばね144およびバイパスばね146は、さまざまな構成に設計されることができる。図示の非限定的な例では、背圧ばね144およびバイパスばね146は、コイルの数、ワイヤの直径などについて同様の設計を有する。しかし、他の非限定的な例では、背圧ばね144およびバイパスばね146は、(例えば、ばね定数、コイルの数、ワイヤの直径、および自由長等のうちの1つ以上において)互いに異なって設計されてもよい。いくつかの非限定的な例では、背圧ディスク138およびバイパスディスク140は、ばねではなく、それらの間に剛性の高い機械的結合を提供するスペーサを用いて接続されてもよい。
【0024】
一般的に、背圧ディスク138は、第1ワークポート118から第1チャンバー126内への流体フローを制限するように構成され、バイパスディスク140は、第1チャンバー126から第2チャンバー128内への流体フローを制限するように構成されている。背圧ディスク138および背圧ばね144にわたる圧力低下から生じる力のバランスは、保持ロッド130に沿った背圧ディスク138の位置(例えば、第1ワークポート118および第1チャンバー126間の制限量)を決める。バイパスディスク140、背圧ばね144、およびバイパスばね146にわたる圧力低下から生じる力のバランスは、保持ロッド130に沿ったバイパスディスク140の位置(例えば、第1チャンバー126および第2チャンバー128の間の制限量)を制御する。図示の非限定的な例では、背圧ディスク138は、バイパスディスク140よりも大きな直径を定義する。いくつかの非限定的な例では、背圧ディスク138は、バイパスディスク140と同じ直径を定義してもよい。いくつかの非限定的な例では、背圧ディスク138は、バイパスディスク140よりも小さい直径を定義してもよい。
【0025】
リターンマニホールド112の動作については、
図1から
図3を参照して説明する。一般的に、リターンマニホールド112は、リターンマニホールド112の上流のリターンライン110内の背圧を維持し、かつ、選択的に下流制限部114をバイパスすることができる。主制御弁108からのリターンフローは、第1ワークポート118に導かれる。最初に、背圧ディスク138に作用する圧力が、背圧ディスク138に対し、背圧ばね144の力を越える力を発生させるほど大きくないとき、背圧ディスク138は、第1ワークポート118から第1チャンバー126への流体フローが実質的にブロックされる閉位置にある。具体的には、この閉位置において、背圧ディスク138は、第1ワークポート118内に画定される第1孔148内に配置される。第1ワークポート118における圧力が、背圧ディスク138に作用し、背圧ばね144の力を超えて、かつ、背圧ディスク138を(例えば、
図2の視点における右方向へ)第1孔148を越えて流体が第1ワークポート118から第1チャンバー126内に流入する開位置に変位させる力を発生させるほどの大きさに増加するまで、背圧ディスク138は、第1チャンバー126内への流体フローを実質的に阻止し続ける。このように、例えば、背圧ディスク138および背圧ばね144は、リターンライン110内の所定の背圧の数値を維持する(すなわち、所定の圧力が第1ワークポート118で生じるまで、背圧ディスク138が開位置に移動しない)。
【0026】
背圧ディスク138が、流体フローが第1チャンバー126内に流入することが許容される開位置に向かって移動することにつれて、背圧ばね144が圧縮されることにより、バイパスディスク140を第1チャンバー126と第2チャンバー128との間の流体フローが許容される開位置へ向かって促すように、バイパスディスク140に作用する力が増加する。開位置に向かって移動する背圧ディスク138によって提供される、バイパスディスク140上に作用するこの追加の付勢力は、背圧ばね144とバイパスばね146との間の直列配置、および背圧ディスク138とバイパスディスク140との間の油圧機械的結合から生じる結果である。
【0027】
背圧ディスク138が開位置に移動し、流体フローが第1チャンバー126内に流入することが許容されることにつれて、流体は、第2ワークポート120から流出して下流制限部114の入口側に流入し、下流制限部114を通って、下流制限部114の出口川から第3ワークポート122に流入し、そして第2チャンバー128内に流入する。本明細書に記載するように、いくつかの非限定的な例では、下流制限部114の出口側はタンク106に直接接続され、リターンマニホールド112は第3ワークポート122を含まなくてもよい。下流制限部114は、第2ワークポート120と第3ワークポート122との間に制限部を定義し(例えば、
図3を参照)、その結果、第1チャンバー126内の圧力が第2チャンバー128内の圧力よりも高くなる。第1チャンバー126と第2チャンバー128との間における圧力低下(第2ワークポート120と第3ワークポート122との間における圧力低下と同じ)は、バイパスディスク140に作用し、バイパスディスク140を閉位置から開位置に向かって促す力を発生させる。
【0028】
閉位置では、バイパスディスク140は、ハウジング116内の第1チャンバー126と第2チャンバー128との間に画定されたバイパス孔150内に配置され、第1チャンバー126から第2チャンバー128への流体フローが実質的に阻止される。第1チャンバー126と第2チャンバー128との間の圧力低下が増加することにつれて、バイパスディスク140はバイパス孔150に沿って変位し、最終的にはバイパス孔150を越えて開位置まで変位する。言い換えれば、第1チャンバー126および第2チャンバー128の間の圧力低下と背圧ばね144との合力は、バイパスばね146によってバランスが取れる。圧力低下が増加するにつれて、バイパスばね146は圧縮され、バイパスディスク140は、開位置に向かって(例えば、
図2の視点における右方向へ)移動する。開位置では、バイパスディスク140は、第1チャンバー126から第2チャンバー128への流体フローを許容する。これにより、流体フローの少なくとも一部が下流制限部114をバイパスし、第1ワークポート118から第4ワークポート124へ、そしてタンク106へと流れることが可能になる。
【0029】
背圧ばね144とバイパスばね146との間の直列配置、および背圧ディスク138とバイパスとの間の油圧機械的結合により、バイパスディスク140を開位置へ向かって促すように増加する圧力低下は、同じく背圧ディスク138をさらに開くように促す。一般的に、背圧ディスク138とバイパスディスク140との間の油圧機械的結合による結果は、バイパスディスク140に作用する力を変化させるような背圧ディスク138の移動を引き起こすことであり、またその逆も同様である。上述したように、背圧ディスク138が開位置に向かって移動すると、バイパスディスク140に作用する力は、バイパスディスク140を開位置に向けて付勢する方向に増加する。したがって、流体機械的結合により、第1チャンバー126と第2チャンバー128との間の圧力低下を引き起こし、背圧ディスク138とバイパスディスク140との両方の位置に影響を与える。第3ワークポート122からのフローと第1チャンバー126から第2チャンバー128へ流れるバイパスフローとによる混合フローは、第4ワークポート124へ導かれ、そしてタンク106に導かれる。本明細書に記載されるように、いくつかの非限定的な例では、下流制限部114から戻るフローは、第3ワークポート122に流入せず、直接タンク106に流入することが可能である。
【0030】
本明細書に記載されるように、リターンマニホールド112は、背圧ばね144とバイパスばね146とを直列に積み重ね、かつ、背圧ディスク138とバイパスディスク140とを油圧機械的に結合するという利点を提供する。したがって、一方のディスク、例えば背圧ディスク138の動きは、他方のディスク、例えばバイパスディスク140の動きに影響を与え、またその逆も同様である。この構成により、下流側バイパス装置を備えた従来の背圧装置と比較して性能を向上させることができる。さらに、背圧ディスク138、バイパスディスク140、背圧ばね144、およびバイパスばね146を単一の装置として共通のハウジング116内に配置することにより、リターンマニホールド112の実装空間のサイズおよび設置面積が削減されることにより、主制御弁108の下流に配置される部品の数を削減し、そしてコストを削減する。
【0031】
本明細書では、明瞭で簡潔な説明を記載できるようにいくつかの実施形態を説明したが、本発明の趣旨から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分解したりできることが意図されていることが理解されるとありがたい。例えば、本明細書に記載されるすべての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるとありがたい。
【0032】
したがって、本発明を特定の実施形態および実施例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではなく、他の多くの実施形態、実施例、使用例、および変形例、そしてこれらの実施形態、実施例および使用例からの変更も本明細書に添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。本明細書で引用される各特許文献および刊行物の開示全体は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本発明の様々な特徴および利点は、特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】