(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】離散カーボンナノチューブを含む付加製造のための分散体
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20240311BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240311BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240311BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240311BHJP
【FI】
B01J13/00
C08L101/00
C08K3/04
C01B32/168
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558445
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022021737
(87)【国際公開番号】W WO2022204398
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322888
【氏名又は名称】モレキュラー レバー デザイン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ボスニャーク,クリヴ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】スウォッガー,カート ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ローダー,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノヴァ,オルガ
【テーマコード(参考)】
4G065
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含む、付加製造複合材料ブレンドを製造するための付加製造組成物および方法に関する。このような組成物は、放射線硬化、焼結または溶融融着の場合に特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、前記酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超かつ最大約30重量%の範囲で存在し、前記分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブが離散している、付加製造分散体。
【請求項2】
前記酸化離散カーボンナノチューブが内面および外面を含み、各表面は内面酸化種含有量および外面酸化種含有量を含み、前記内面酸化種含有量が前記外面酸化種含有量と少なくとも約20%異なり、および100%もの高さで異なる、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記酸化離散カーボンナノチューブが、酸化離散単層カーボンナノチューブ、酸化離散二層カーボンナノチューブ、および酸化離散多層カーボンナノチューブの組み合わせから形成された、酸化離散カーボンナノチューブの直径が二峰性または三峰性分布を有する酸化離散カーボンナノチューブの混合物を含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、共有結合している、請求項1に記載の分散体。
【請求項5】
前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、約50~約20,000ダルトンの範囲内の平均分子量を含み、前記酸化離散カーボンナノチューブに対する前記離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の重量分率が、約0.02超かつ約0.8未満である、請求項1に記載の分散体。
【請求項6】
前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、前記結合した分散剤に接触している材料と混和性である、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
架橋性アクリレート部分の少なくとも一部と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含み、前記離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、エーテルの群から選択される分子単位を含む、付加製造分散体。
【請求項8】
前記分子単位がエチレンオキシドを含む、請求項7に記載の分散体。
【請求項9】
重量%で前記分散体の約0.1重量%~約30重量%の、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素繊維、シリカ、ケイ酸塩、ハロイサイト、粘土、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラス、難燃剤およびタルクからなる群から選択されるフィラーをさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
熱可塑性物質、熱硬化性物質、およびエラストマーからなる群の部材をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項11】
約0.01~約1マイクロメートルの粒子直径をさらに有するコアシェルエラストマーをさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項12】
約1nm~約20マイクロメートルの粒子直径を有する半導体、金属および、またはセラミックの粉末をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項13】
アニオン性、カチオン性、非イオン性および双性イオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエーテルイミン、ポリエーテル、デンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した少なくとも1つの追加の分散剤をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項14】
前記酸化離散カーボンナノチューブが、約0.1重量%~約20重量%の窒素原子を含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項15】
熱可塑性部分の少なくとも一部分と、離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、前記離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超かつ最大約30重量%の量で存在する、付加製造分散体。
【請求項16】
前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、窒素中約500℃未満で約5重量%未満の灰分で少なくとも部分的に熱分解する、請求項15に記載の分散体。
【請求項17】
複数のカーボンナノチューブが離散している、請求項15に記載の分散体。
【請求項18】
付加製造によって製造された部品が、約100億オーム/スクエア未満の電気抵抗を有する、請求項1に記載の分散体。
【請求項19】
酸化離散カーボンナノチューブの前記分散体中の濃度2.5×10
-5g/mlに対する500nmにおけるUV可視吸収が、吸光度約0.5単位超である、請求項1に記載の分散体。
【請求項20】
限定するものではないが、金属および金属合金、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、グラファイトおよびグラフェンなどの熱伝導性材料の群から選択されるフィラーをさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項21】
細菌、ウイルス、真菌、および生物学的薬剤と相互作用することができる種からなる群から選択される生物学的に反応性の種をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項22】
電子部品を少なくとも部分的にカプセル化するための付加製造分散体であって、
架橋性部分の少なくとも一部分と、
酸化離散カーボンナノチューブと、
を含み、
前記酸化離散カーボンナノチューブが、前記酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を含み、
前記酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超かつ最大約30重量%の範囲で存在し、ならびに、
前記分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブが離散している、
付加製造分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月25日に出願された米国一部継続出願第17/212,612号の優先権を主張するものである。本出願はまた、2021年2月26日に出願された米国特許出願第17/187,658号(それ自体が、2018年6月19日に出願された米国特許出願第16/012,265号の一部継続出願である)、現在の米国特許第10,934,447号(2016年10月7日に出願された米国特許出願第15/288,553号の一部継続出願である)、現在の米国特許第9,636,649号(2016年8月1日に出願された米国特許出願第15/225,215号の一部継続出願であった)、2016年9月12日に許可され、発行された米国特許第9,493,626号(2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,931号の一部継続出願であった)、および発行された米国特許第9,422,413号(2015年10月27日に出願された米国特許出願第14/924,246号の継続出願であった)および発行された米国特許第9,353,240号(2013年6月11日に出願された米国特許第13/993,206号の継続出願である)、および発行された米国特許第9,212,273号(2010年12月14日に出願された米国仮出願第61/423,033号の利益を主張する、2011年12月12日に出願されたPCT/EP2011/072427号に対する優先権を主張するものであった)にも関連する。上記の米国特許出願および/または付与された特許はすべて、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本出願はまた、米国特許出願第62/319,599号;同第14/585,730号;同第14/628,248号;および同第14/963,845号に関連する。
【0002】
本発明は、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含む、付加製造複合材料ブレンドを製造するための付加製造組成物および方法に関する。このような組成物は、放射線硬化、焼結または溶融融着の場合に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、一般に架橋性モノマーまたはオリゴマー、ポリマー、金属、セラミック、および生体適合性材料である材料の層を重ねることによって3D物体を構築する技術を説明するための適切な名称である。AM技術に共通しているのは、コンピュータ、3Dモデリングソフトウェア(Computer Aided DesignまたはCAD)、機械装置および積層材料の使用である。CADスケッチが生成されると、AM装置は、CADファイルからデータを読み取り、液体、粉末、シート材料または他のそのようなテープの連続層を積層方式でレイダウンまたは付加して、3D物体を製造する。AMという用語は、3Dプリンティング、高速プロトタイピング(RP)、直接デジタル製造(DDM)、積層製造および積層造形(additive fabrication)のようなサブセットを含む多くの技術を包含する。
【0004】
液体放射線硬化性樹脂は、レーザーなどのエネルギー源によって選択的に架橋(または硬化)される。光硬化性樹脂の配合努力は、汎用プラスチックおよび加工ポリマーの特性をシミュレートするための機械的性能向上に焦点を当ててきた。光硬化性樹脂の機械的性能の改善は、特別なモノマーおよび硬化剤の開発、連鎖成長機構の変更、重合の混合モードの利用ならびに添加剤およびフィラーの包含によって達成することができる。しかし、耐熱変形性、剛性、および衝撃強度などのそれらの特性のバランスには依然として多くの制限がある。
【0005】
フィラーの添加は、不撓性(stiffness)などの選択されたAM用途の特定の性能要件を満たすために利用されてきた。SiO2およびAl2O3などの無機フィラーは、液槽光重合(vat photopolymerization)によって製造された部品の強度および不撓性を改善することが示されているが、多くの場合、はるかに長い望ましくない硬化時間を伴う。また、これらのフィラーは、初期樹脂粘度を高くし、粘度安定性を悪くし、フィラーがベース樹脂から分離する傾向があることが多い。ベース架橋性樹脂配合物に望ましくない追加の硬化時間を生じさせないフィラーが引き続き必要とされている。
【0006】
したがって、機械的、熱的、電気的、磁気的および化学的特性が向上した部品を製造し、高い硬化速度、低い粘度、並外れた安定性、および高いグリーン強度などの厳しい重合樹脂要件を満たす放射線硬化性樹脂が必要とされている。特に、上述の硬化速度要件のために、導電性カーボンブラックで少なくとも100億オーム/スクエアの抵抗に達することが課題であった。
【0007】
粉末材料(金属、セラミック、またはポリマー)を利用するAM方法では、焼結能力および二次加工前のグリーン強度を改善することが望ましい。バインダーの選択は、部品製造を成功させるために不可欠であると考えられている。第1に、バインダーは噴射可能でなければならない。理想的なバインダーは、低粘度を有し、剪断応力下で安定であり、粉末供給原料との良好な相互作用を有し、完全に燃え尽き、長い貯蔵寿命を有する。一般的な液状結合剤は、ブチラール樹脂、ポリビニル、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、およびポリエーテル-ウレタンである。場合によっては、特に焼結がより高い温度で行われる場合、より高い強度のポリマーバインダーが望ましい。
【0008】
金属粉末およびセラミック粉末のためのバインダーは、典型的には、シリカ、硝酸アルミニウムまたは膜形成ポリマー分散体などの無機粒子の水性または非水性分散体である。バインダー系へのナノ粒子の組み込みは、充填粉末床の空隙を充填し、したがって焼結性を改善し、部品密度を増加させ、収縮を減少させる。ナノ粒子の融点は、ナノ粒子径の減少と共に指数関数的に低下する。したがって、バインダー中のナノ粒子は、原料粉末よりも低い温度で焼結し、大きな粒子を融合させることができ、したがって構成要素のグリーン強度を改善する。金属、サーマット(cermat)またはセラミックの焼結または硬化の温度において低い灰残留含有量を有するバインダーを有することが望ましい。
【0009】
ポリマー粉末用のバインダーは、典型的には、ポリマー供給原料の膨潤を促進して相互拡散および絡み合いによる粒子の合体をもたらす溶媒または溶媒混合物からなる。膜形成ポリマー分散体の溶液も同様にバインダーとして使用することができる。デンプン、プラスター、およびセメントなどの親水性粉末を加工するには、水性バインダーが必要である。疎水性ポリマー粉末(例えば、ポリ乳酸またはPLA)は、有機溶媒を使用して加工することができる。ポリマー粉末用のこれらの種類のバインダーは、部品への融着のために熱可塑性フィラメントをコーティングするために使用することもできる。
【0010】
カーボンナノチューブは、チューブ内の壁の数、単層、二層および多層によって分類することができる。カーボンナノチューブの各壁は、キラルまたは非キラル形態にさらに分類することができる。カーボンナノチューブの炭素原子の一部が窒素原子で置換されていてもよい。カーボンナノチューブは、現在、非常に限られた商業的使用を有する凝集したカーボンナノチューブボールまたはバンドルとして製造されている。ポリマー複合材料における補強剤としてのカーボンナノチューブの使用は、カーボンナノチューブが意義深い有用性を有すると予測される領域である。しかしながら、これらの用途におけるカーボンナノチューブの利用は、個別化されたカーボンナノチューブを確実に製造することが一般的に不可能であるために妨げられてきた。ポリマー中の複合材料としてのカーボンナノチューブの性能向上の可能性を最大限に達成するために、アスペクト比、すなわち長さ対直径比は10より大きくなければならない。所与のチューブの長さに対する最大アスペクト比は、各チューブが別のチューブから完全に分離されたときに達成されると解釈される。カーボンナノチューブの束は、例えば、この束の平均長さをこの束の直径で割った、複合材料の有効アスペクト比を有する。
【0011】
カーボンナノチューブを溶液中で脱束または解きほぐすための様々な方法が開発されている。例えば、カーボンナノチューブは、攻撃的な酸化手段によって大幅に短縮され、次いで、希薄溶液中に個々のナノチューブとして分散され得る。これらのチューブは、高強度複合材料には適さない低いアスペクト比を有する。カーボンナノチューブはまた、界面活性剤の存在下での超音波処理によって、非常に希薄な溶液中に個々に分散され得る。カーボンナノチューブを水溶液中に分散させるために使用される例示的な界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムまたは臭化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。いくつかの例では、個別化カーボンナノチューブの溶液は、ポリマー被覆カーボンナノチューブから調製され得る。個別化単層カーボンナノチューブ溶液も、多糖類、ポリペプチド、水溶性ポリマー、核酸、DNA、ポリヌクレオチド、ポリイミド、およびポリビニルピロリドンを使用して、非常に希薄な溶液で調製されているが、これらの希薄溶液は付加製造には適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、付加製造分散体およびその部品を製造するための新規な組成物および方法に関する。
【0013】
一実施形態において、本発明の組成物は、架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、該酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の範囲で存在し、前記分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブが離散している付加製造分散体を含む。
【0014】
好ましくは、酸化離散カーボンナノチューブは内面および外面を含み、各表面は内面酸化種含有量および外面酸化種含有量を含み、内面酸化種含有量は外面酸化種含有量と少なくとも約20%異なり、および100%もの高さで異なる。
【0015】
酸化離散カーボンナノチューブは、酸化離散単層カーボンナノチューブ、酸化離散二層カーボンナノチューブ、および酸化離散多層カーボンナノチューブの組み合わせから形成された、酸化離散カーボンナノチューブの直径が二峰性または三峰性分布を有する酸化離散カーボンナノチューブの混合物を含み得る。
【0016】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、好ましくは共有結合している。
【0017】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、好ましくは、約50~約20,000ダルトンの範囲内の平均分子量を含み、酸化離散カーボンナノチューブに対する離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の重量分率は、約0.02超~約0.8未満である。
【0018】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、好ましくは該結合した分散剤に接触している材料と混和性である。
【0019】
本発明の第2の実施形態は、架橋性アクリレート部分の少なくとも一部と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含み、前記離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤がエーテルの群から選択される分子単位を含む、付加製造分散体である。
【0020】
第2の実施形態の分子単位は、好ましくはエチレンオキシドを含む。
【0021】
第1または第2の実施形態は、重量%で分散体の約0.1重量%~約30重量%のフィラーをさらに含むことができ、好ましくはフィラーは、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素繊維、シリカ、ケイ酸塩、ハロイサイト、粘土、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラス、難燃剤およびタルクからなる群から選択される。
【0022】
第1または第2の実施形態は、熱可塑性物質、熱硬化性物質、およびエラストマーからなる群の部材をさらに含むことができる。
【0023】
第1または第2の実施形態は、コアシェルエラストマーをさらに含むことができ、該エラストマーは、好ましくは、約0.01~約1マイクロメートルの直径を有する粒子を含む。
【0024】
第1または第2の実施形態は、半導体、金属、またはセラミックの粉末をさらに含むことができ、該粉末は、約1nm~約20マイクロメートルの粒子直径を含む。
【0025】
第1または第2の実施形態は、アニオン性、カチオン性、非イオン性および双性イオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエーテルイミン、ポリエーテル、デンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した少なくとも1つの追加の分散剤をさらに含むことができる。
【0026】
酸化離散カーボンナノチューブが約0.1重量%~約20重量%の窒素原子を含む第1または第2の実施形態。
【0027】
本発明の第3の実施形態は、熱可塑性部分の少なくとも一部分と、離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、該離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の量で存在する付加製造分散体である。
【0028】
第3の実施形態は、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した、窒素中約500℃未満における少なくとも部分的熱分解による灰分が約5重量%未満である分散剤を含むことができる。
【0029】
第3の実施形態は、複数の離散カーボンナノチューブを含むことができる。
【0030】
3つの実施形態のいずれも、約100億オーム/スクエア未満の電気抵抗を有する、付加製造によって製造された部品を含むことができる。
【0031】
3つの実施形態のいずれも、酸化離散カーボンナノチューブの分散体中濃度2.5×10-5g/mlに対する500nmにおけるUV可視吸収が、吸光度約0.5単位超である分散体を含むことができる。
【0032】
3つの実施形態のいずれも、限定するものではないが、金属および金属合金、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、グラファイトおよびグラフェンなどの熱伝導性材料の群から選択されるフィラーをさらに含むことができる。
【0033】
3つの実施形態のいずれも、細菌、ウイルス、真菌、および生物学的薬剤と相互作用することができる種からなる群から選択される生物学的に反応性の種をさらに含むことができる。
【0034】
酸化カーボンナノチューブは、限定するものではないが、カルボン酸、ヒドロキシル、ケトンおよびラクトンなどの化学単位を導入する、濃硝酸、過酸化物および過硫酸塩などの酸化媒体にさらされたカーボンナノチューブである。酸化離散カーボンナノチューブは、酸化離散単層カーボンナノチューブ、酸化離散二層カーボンナノチューブ、または酸化離散多層カーボンナノチューブからなる群から選択される。
【0035】
酸化離散カーボンナノチューブはまた、内面および外面を含むことができ、各表面は、内面酸化種含有量(内部酸素種が外部酸素種と異なり得るため、内部酸素含有種含有量とも呼ばれる)および外面酸化種含有量(内部酸素種が外部酸素種と異なり得るため、外部酸素含有種含有量とも呼ばれる)を含み、内面酸化種含有量は外面酸化種含有量と少なくとも20%異なり、および100%もの高さで異なり、好ましくは内面酸化種含有量は外面酸化種含有量よりも少ない。内面酸化種含有量は、カーボンナノチューブ重量に対して最大3重量パーセント、好ましくはカーボンナノチューブ重量に対して約0.01~約3重量パーセント、より好ましくは約0.01~約2重量パーセント、最も好ましくは約0.01~約1重量パーセントであり得る。特に好ましい内面酸化種含有量は、カーボンナノチューブ重量に対して0~約0.01重量パーセントである。外面酸化種含有量は、カーボンナノチューブ重量に対して約0.1~約65重量パーセント、好ましくはカーボンナノチューブ重量に対して約1~約40重量パーセント、より好ましくは約1~約20重量パーセントであり得る。これは、所与の複数のナノチューブの外部酸化種含有量をその複数のナノチューブの総重量と比較することによって決定される。
【0036】
酸化離散カーボンナノチューブは、酸化離散単層カーボンナノチューブ、酸化離散二層カーボンナノチューブ、および酸化離散多層カーボンナノチューブの組み合わせから形成された、酸化離散カーボンナノチューブの直径が二峰性または三峰性分布を有する酸化離散カーボンナノチューブの混合物をさらに含み得る。好ましくは、酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、過半数の酸化離散多層カーボンナノチューブ、より好ましくは過半数の酸化離散二層カーボンナノチューブ、さらにより好ましくは過半数の酸化離散単層カーボンナノチューブを含む。過半数の意味は、分散体中に存在するすべてのカーボンナノチューブの50重量%超である。
【0037】
本発明の別の実施形態において、付加製造分散体の酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、水素結合しており、好ましくはイオン結合しており、より好ましくは共有結合している。
【0038】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブは、約50~約20,000ダルトンの範囲の分子量からなる、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤をさらに有する。好ましくは、結合した分散剤の分子量範囲は、約60~約5000ダルトン、より好ましくは約70~約1000ダルトンである。酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-酸素結合、炭素-硫黄結合およびケイ素-酸素結合の群から選択される化学単位からなる。架橋性マトリックスの存在下で、結合した分散剤の化学単位は、マトリックスに架橋できることが好ましい。
【0039】
酸化離散カーボンナノチューブに対する離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の重量分率は、約0.02超~約0.8未満である。好ましくは、結合した分散剤の重量分率は、約0.03~約0.6、より好ましくは約0.05~約0.5、最も好ましくは約0.06~約0.4である。
【0040】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、該分散剤と接触する材料と良好な相容性を有するようなものから選択される。ここでの良好な相容性は、酸化カーボンナノチューブが個々のまたは離散したカーボンナノチューブとして分散され得るような十分な量の電子相互作用、ファンデルワールス相互作用、イオン相互作用または双極子相互作用を意味することである。好ましくは、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、熱力学的に混和性、すなわち、該分散剤と接触する材料と均一な混合物を形成するようなものから選択される。
【0041】
離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、エチレンオキシド分子単位をさらに含むことができる。結合した分散剤は、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド分子単位の混合物を含むことがより好ましい。離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の混合物、または異なる種類の結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの混合物が存在し得る。
【0042】
本発明の別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、窒素中500℃未満における熱分解による分散剤の灰分が約5重量%未満であるようにさらに選択されてもよい。好ましくは、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、窒素中約500℃未満における熱分解による分散剤の灰分が約1重量%未満であり、より好ましくは、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤は、窒素中約400℃未満における熱分解による分散剤の灰分が約1重量%未満である。
【0043】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブは、酸化離散カーボンナノチューブの長さ対直径の比として知られているアスペクト比が約10~約10000からなる。酸化離散単層カーボンナノチューブの場合、アスペクト比は約300~約10000であることが好ましく、酸化離散二層カーボンナノチューブの場合、アスペクト比は約150~約5000であることが好ましく、酸化離散多層カーボンナノチューブの場合、アスペクト比は約40~約500であることが好ましい。
【0044】
酸化離散カーボンナノチューブのアスペクト比は、単峰性分布または多峰性分布(二峰性または三峰性分布など)であり得る。多峰性分布は、均等な分布範囲(例えば、あるL/D範囲が50%および別のL/D範囲が約50%)のアスペクト比を有することができる。分布は非対称であってもよく、これは、比較的少ないパーセントの離散ナノチューブが特定のL/Dを有し得る一方で、より多くの量が別のアスペクト比分布を含み得ることを意味する。
【0045】
本発明の一実施形態は、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブが、分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%までの重量範囲で存在することである。好ましくは、分散体中に存在する、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの重量範囲は、分散体の総重量に基づいて約0.01~約10%重量、より好ましくは約0.01~約5%重量である。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブは離散している。好ましくは、分散体中に存在する、酸化カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化カーボンナノチューブの少なくとも約51重量%が離散しており、好ましくは分散体中に存在する、酸化カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化カーボンナノチューブの少なくとも約65重量%が離散しており、より好ましくは、分散体中に存在する、酸化カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化カーボンナノチューブの少なくとも約75重量%が離散しており、最も好ましくは、分散体中に存在するカーボンナノチューブの少なくとも約85重量%が離散している。
【0047】
本発明の別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、重量%で分散体の総重量に対して約0.05重量%~約80重量%のフィラーを含む。好ましくは、フィラーの重量%は、分散体の総重量に対して約0.05%~約30%、最も好ましくは約0.1%~約10%である。
【0048】
フィラーは、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素繊維、シリカ、ケイ酸塩、ハロイサイト、粘土、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラス、燃焼抑制剤(flame retardant)およびタルクからなる群から選択される。フィラーは、ほぼ球形の粒子、ロッド、繊維またはプレートの形状であってもよい。好ましくは、フィラーは、約1nm超~約10マイクロメートル未満の少なくとも1つの寸法規模を有し、より好ましくは約5nm超~約2マイクロメートル未満の少なくとも1つの寸法規模を有し、最も好ましくは約10nm超~約1マイクロメートル未満の少なくとも1つの寸法規模を有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブを含む分散体は、少なくとも2つの異なるフィラーの混合物をさらに含む。いくつかの実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブを含む分散体は、粒径、熱伝導率、充填または分子量によって変化し得る異なる種の単一フィラーの混合物をさらに含む。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、分散体は、光架橋性モノマー、オリゴマーまたはポリマーをさらに含む。架橋性モノマー、オリゴマーまたはポリマーは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ウレタン、アクリレート、アルキルアクリレート、シアノニトリル、シアノアクリレート、ニトリル、エポキシ、アミド、アミン、アルコール、エーテルおよびエステルの群から選択される分子単位を含む。
【0051】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、熱可塑性物質をさらに含む。酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、熱可塑性物質をコーティングすることができ、または酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブは、熱可塑性物質内に分散され得る。好ましい熱可塑性物質は、非晶質および半結晶性熱可塑性物質の群から選択され、限定するものではないが、これらには、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート-アクリロニトリルブタジエンスチレンブレンド(PC-ABS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、例えば、限定するものではないがナイロン12、ナイロン11、ナイロン6およびナイロン6,6など、ポリビニルアルコールおよびコポリマー、ポリビニルブチレートおよびコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびコポリマー、ポリエーテルおよびコポリマーが含まれる。熱可塑性物質は、直鎖ポリマー、グラフト化ポリマー、コームポリマーまたはブロックポリマーであってもよい。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、エラストマーをさらに含む。エラストマーは、限定するものではないが、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、水素化スチレン-ブタジエン、ブチルゴム、ポリイソプレン、スチレン-イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエン、シリコーン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、水素化および非水素化ニトリルゴム、ハロゲン変性エラストマー、ポリオレフィンエラストマーフルオロエラストマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。エラストマーは、非架橋または架橋、グラフト化またはコポリマーであってもよい。
【0053】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、ガラス転移温度が25℃未満のポリマー耐衝撃性改良剤をさらに含む。耐衝撃性改良剤は、ポリエーテル、ポリエステル、ビニルポリマー、ポリビニルコポリマー、ポリオレフィンポリアクリレート、ポリウレタン、ポリアミドおよびポリシロキサン、それらのブレンドおよびコポリマーの群から選択される。それらは、限定するものではないが、エポキシ、ヒドロキシル、イソシアネート、およびカルボン酸基などの反応性基でさらに官能化されてもよい。
【0054】
耐衝撃性改良剤は、分散体の主マトリックス材料から相分離されているが、良好な結合または熱力学的相互作用を有することが好ましい。ブロックコポリマーまたはコアシェルポリマーである耐衝撃性改良剤の組成物がより好ましい。コアシェルポリマーの例は、アクリレートまたはブタジエンベースのPARALOID(商標)耐衝撃性改良剤である。より好ましくは、耐衝撃性改良剤は、UV可視波長範囲における放射線の散乱を最小限に抑えるために、マトリックスの屈折率値の少なくとも0.03単位以内、より好ましくは0.02単位以内の屈折率値を有する。
【0055】
コアシェル粒子は、2つ以上のコアおよび/または2つ以上のシェルを含むことができる。さらに、コア-シェル粒子とエラストマー粒子との混合物を使用することができる。一実施形態において、2つの異なる直径の耐衝撃性改良剤が特定の比率で使用される。異なる直径を有する2つの異なる耐衝撃性改良剤の使用は、液体放射線硬化性樹脂の粘度を低下させる効果を有する。一実施形態において、耐衝撃性改良剤の組成は、約7対1の直径比(例えば、140nm粒子対20nm粒子)および約4対1の重量%である。別の実施形態において、耐衝撃性改良剤の組成は、約5対1の直径比および約4対1の重量%比である。別の実施形態において、耐衝撃性改良剤の組成は、約5対1の直径比および約6対1の重量%比である。
【0056】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体中の耐衝撃性改良剤の相分離ドメインサイズは、直径が約0.005マイクロメートル超~約1マイクロメートル未満、好ましくは直径が0.01マイクロメートル超~約0.8マイクロメートル未満、最も好ましくは直径が約0.05マイクロメートル超~約0.6マイクロメートル未満であり得る。
【0057】
耐衝撃性改良剤は、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体中に、分散体の少なくとも約0.1重量%~約30重量%未満、好ましくは少なくとも約0.5%超~約15%未満、最も好ましくは少なくとも約2%~約10%未満で存在し得る。
【0058】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、金属粉末をさらに含む。金属粉末は、元素周期表に列挙されている金属元素のいずれかを含むことができる。金属はまた、金属酸化物、炭化物、ケイ化物もしくは窒化物、または他の元素との合金の形態であってもよい。好ましい金属粉末は、限定するものではないが、ステンレス鋼、インコネル、青銅、銅、銀、白金、タングステン、アルミニウム、コバルト、白金、および炭化タングステンのクラスを選択することができる。より好ましくは、金属粉末は、約1nm超~約20マイクロメートル未満の粒子直径を有する。より効果的な焼結のために、二峰性の金属粉末粒子直径分布を有することがさらに好ましいと思われる。金属粉末粒子分布において、より大きな粒径の数が過半数であることがさらに好ましい。
【0059】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、セラミック粉末をさらに含む。セラミック粉末は、限定するものではないが、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、シリカ、窒化ホウ素および炭化ケイ素ならびにそれらのブレンドのクラスから選択することができる。好ましくは、セラミック粉末は、約1nm超~約20マイクロメートル未満の粒子直径を有する。セラミックのより効果的な焼結のために、二峰性のセラミック粉末の粒子直径分布を有することがさらに好ましいと思われる。セラミック粉末の粒子分布において、より大きな粒径の数が過半数であることがさらに好ましい。
【0060】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、焼結形態のサーメットである場合、セラミック粉末と金属粉末との混合物をさらに含む。好ましいサーメットは、元素周期表の第4~第6の元素群の炭化物、窒化物、ホウ化物、およびケイ化物に基づく。
【0061】
本発明の別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、アニオン性、カチオン性、非イオン性および双性イオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエーテルイミン、ポリエーテル、デンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した少なくとも1つの追加の分散剤をさらに含む。両親媒性ポリマーの群から選択される非共有結合ポリマー分散剤が好ましい。
【0062】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した追加の分散剤の分子量は、好ましくは約100~約400,000ダルトンの範囲、より好ましくは約1000~約200,000ダルトンの範囲、最も好ましくは約10,000~約100,000ダルトンの範囲である。
【0063】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した追加の分散剤は、酸化離散カーボンナノチューブに付着した追加の分散剤と、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤との重量比が約0.01~約2で分散体中に存在することができる。好ましくは、重量比は、約0.1~約1、最も好ましくは約0.2~約0.75である。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態は、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体が、有機溶媒をさらに含むことである。好ましい有機溶媒は、アルコール、エーテル、ケトン、ジオキソラン、アセテート、グリコールおよびそれらの混合物の群から選択される。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態は、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体が、水をさらに含むことである。
【0066】
本発明の一実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、静電気散逸性である。好ましくは、分散体は、100億オーム/スクエア未満、より好ましくは1000万オーム/スクエア未満の表面抵抗率を有する。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、約0.1重量%~約20重量%の窒素原子をさらに含む。
【0068】
本発明の一実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体の500nmにおけるUV可視吸収は、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体中濃度2.5×10-5g/mlに対して吸光度約0.5単位超である。好ましくは、吸収単位は、同じ濃度の酸化カーボンナノチューブおよび同じ測定波長において0.75を超え、最も好ましくは、同じ濃度の酸化カーボンナノチューブおよび同じ測定波長において1単位を超える吸光度である。
【0069】
本発明のさらに別の実施形態において、フィラーは、チャー形成剤、膨張剤、および気相中の反応、例えば限定するものではないが、有機ハロゲン化物(ハロアルカン)からなる難燃剤の群から選択することができる。
【0070】
一実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、限定するものではないが、金属および金属合金、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、グラファイトなどの熱伝導性材料の群から選択されるフィラーを含む。
【0071】
別の実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、限定するものではないが、ニッケル、鉄、コバルトならびにそれらの合金および酸化物を含有する材料などの、磁性および強磁性材料の群から選択されるフィラーを含む。
【0072】
本発明の一実施形態は、約1MHzを超える周波数、好ましくは約1GHzを超える周波数において電磁吸光度(electromagnetic absorbance)または電磁遮蔽を提供する磁性または強磁性粒子をさらに含む、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体である。電子伝導性フィラー粒子をさらに含む、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体もまた、無線周波数の遮蔽のために望ましい。
【0073】
さらに別の実施形態において、架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む分散体は、少なくとも部分的に放射線によって架橋され、その後の後硬化は、架橋性部分の少なくとも一部分を含み、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブは、熱的または照射的方法によって最終的な所望の部品性能を達成し、最終的な所望の部品性能を達成するための後硬化までの時間は、酸化離散カーボンナノチューブを含まない分散体より10%短く、好ましくは25%短い時間であり、より好ましくは50%短い時間である。
【0074】
別の実施形態において、架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む分散体は、噴射可能である。
【0075】
別の実施形態において、架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む分散体は、酸化離散カーボンナノチューブを含有しない同様の分散体よりも約10%低い放射電力を用いて、好ましくは約25%低い放射電力を用いて、より好ましくは酸化離散カーボンナノチューブを含まない同様の分散物よりも約50%低い放射電力を用いて焼結され得る材料をさらに含む。
【0076】
一実施形態において、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、エラストマーをさらに含み、ここで、最終部品は、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含まない同様の分散体よりも、繰り返し疲労下での破壊に対する少なくとも約20%高い耐性、好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約100%高い破壊に対する耐性を示す。
【0077】
他の実施形態
【0078】
実施形態1.架橋性部分の少なくとも一部分と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、該酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の範囲で存在し、前記分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブが離散している付加製造分散体。
【0079】
実施形態2.酸化離散カーボンナノチューブが内面および外面を含み、各表面は内面酸化種含有量および外面酸化種含有量を含み、内面酸化種含有量が外面酸化種含有量と少なくとも約20%異なり、および100%もの高さで異なる、実施形態1に記載の分散体。
【0080】
実施形態3.酸化離散カーボンナノチューブが、酸化離散単層カーボンナノチューブ、酸化離散二層カーボンナノチューブ、および酸化離散多層カーボンナノチューブの組み合わせから形成された、酸化離散カーボンナノチューブの直径が二峰性または三峰性分布を有する酸化離散カーボンナノチューブの混合物を含む、実施形態1に記載の分散体。
【0081】
実施形態4.酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、共有結合している、実施形態1に記載の分散体。
【0082】
実施形態5.酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、約50~約20,000ダルトンの範囲内の平均分子量を含み、酸化離散カーボンナノチューブに対する離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の重量分率が、約0.02超~約0.8未満である、実施形態1に記載の分散体。
【0083】
実施形態6.酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、該結合した分散剤に接触している材料と混和性である、実施形態1に記載の分散体。
【0084】
実施形態7.架橋性アクリレート部分の少なくとも一部と、酸化離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブとを含み、前記離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、エーテルの群から選択される分子単位を含む、付加製造分散体。
【0085】
実施形態8.分子単位がエチレンオキシドを含む、実施形態7に記載の分散体。
【0086】
実施形態9.重量%で分散体の約0.1重量%~約30重量%の、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素繊維、シリカ、ケイ酸塩、ハロイサイト、粘土、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラス、難燃剤およびタルクからなる群から選択されるフィラーをさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0087】
実施形態10.熱可塑性物質、熱硬化性物質、およびエラストマーからなる群の部材をさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0088】
実施形態11.約0.01~約1マイクロメートルの粒子直径をさらに含むコアシェルエラストマーをさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0089】
実施形態12.約1nm~約20マイクロメートルの粒子直径を有する半導体、金属および、またはセラミックの粉末をさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0090】
実施形態13.アニオン性、カチオン性、非イオン性および双性イオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびそのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエーテルイミン、ポリエーテル、デンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、酸化離散カーボンナノチューブの側壁に付着した少なくとも1つの追加の分散剤をさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0091】
実施形態14.酸化離散カーボンナノチューブが約0.1重量%~約20重量%の窒素原子を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0092】
実施形態15.熱可塑性部分の少なくとも一部分と、離散カーボンナノチューブの少なくとも1つの側壁上に結合した分散剤を有する離散カーボンナノチューブとを含む付加製造分散体であって、該離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の量で存在する付加製造分散体。
【0093】
実施形態16.酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤が、窒素中約500℃未満で約5重量%未満の灰分で少なくとも部分的に熱分解する、実施形態15に記載の分散体。
【0094】
実施形態17.複数のカーボンナノチューブが離散している、実施形態15に記載の付加製造分散体。
【0095】
実施形態18.付加製造によって製造された部品が、約100億オーム/スクエア未満の電気抵抗を有する、実施形態1に記載の分散体。
【0096】
実施形態19.酸化離散カーボンナノチューブの分散体中濃度2.5×10-5g/mlに対する500nmにおけるUV可視吸収が、吸光度約0.5単位超である、実施形態1に記載の分散体。
【0097】
実施形態20.限定するものではないが、金属および金属合金、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、グラファイトおよびグラフェンなどの熱伝導性材料の群から選択されるフィラーをさらに含む、実施形態1に記載の分散体。
【0098】
実施形態21.電子部品を少なくとも部分的にカプセル化するための付加製造分散体であって、
架橋性部分の少なくとも一部分と、
酸化離散カーボンナノチューブと、
を含み、
該酸化離散カーボンナノチューブが、該酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を含み、
該酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の範囲で存在し、ならびに、
前記分散体中に存在する複数のカーボンナノチューブが離散している、
付加製造分散体。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下の説明では、本明細書に開示される本実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な量、サイズなどの特定の詳細が説明される。しかしながら、本開示がそのような具体的な詳細なしで実施され得ることは、当業者には明らかであろう。多くの場合、そのような考慮事項などに関する詳細は、本開示の完全な理解を得るために必要ではなく、関連分野の当業者の技能の範囲内であるため省略されている。
【0100】
本明細書で使用される用語の大部分は当業者に認識可能であるが、明示的に定義されていない場合、用語は当業者によって現在受け入れられている意味を採用するものとして解釈されるべきであることを理解されたい。用語の構成がそれを無意味または本質的に無意味にする場合、定義はWebster’s Dictionary,3 rd Edition,2009から採用されるべきである。定義および/または解釈は、本明細書に具体的に記載されていない限り、または有効性を維持するために組み込まれる必要がある場合を除き、関連するまたは関連しない他の特許出願、特許、または刊行物から組み込まれるべきではない。
【0101】
様々な実施形態において、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含む付加製造分散体であって、該酸化離散カーボンナノチューブが、前記分散体の総重量に基づいて0超~最大約30重量%の量で存在し、前記分散体中に存在する複数の酸化カーボンナノチューブが離散している分散体が開示される。
【0102】
鉄、アルミニウムまたはコバルトなどの金属触媒を使用する製造されたままのカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ内に会合または捕捉されたかなりの量の触媒を、5重量%以上も保持することができる。これらの残留金属は、腐食が増強されるために電子デバイスなどの用途において有害である可能性があり、またはエラストマー複合材を硬化させる際の加硫過程を妨げる可能性がある。さらに、これらの二価または多価金属イオンは、カーボンナノチューブ上のカルボン酸基と会合し、その後の分散過程におけるカーボンナノチューブの離散化を妨げる可能性がある。一実施形態において、約50,000ppm未満、好ましくは約10,000ppm未満の残留金属濃度を含む、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含む分散体が開示される。残留触媒濃度は、窒素中、25℃から800℃まで5℃/分で加熱し、次いでガスを空気に切り替え、800℃で30分間保持することによる熱重量測定を用いて好都合に決定することができる。残灰の%は、出発材料の重量と比較した残っている材料の重量によって決定される。次いで、エネルギー分散型X線および走査型電子顕微鏡を使用して、灰を金属型について分析することができる。あるいは、酸化離散カーボンナノチューブを分散媒から分離し、原子吸光技術を用いて分析することができる。
【0103】
酸化離散カーボンナノチューブの酸化レベルは、カーボンナノチューブに共有結合した酸素化種の重量による量として定義される。カーボンナノチューブ上の酸素化種の重量パーセントを決定するための熱重量測定法は、約5mgの乾燥した酸化カーボンナノチューブを取り、乾燥窒素雰囲気中で室温から800℃まで5℃/分で加熱する工程を含む。200℃から600℃までの重量減少パーセントを、酸素化種の重量減少パーセントとみなす。酸素化種は、フーリエ変換赤外分光法、FTIRを、特に1680~1730cm-1の波長範囲で使用して定量化することもできる。
【0104】
酸化カーボンナノチューブは、カルボン酸または誘導体カルボニル含有種から構成される酸化種を有することができる。誘導体カルボニル種は、ケトン、第四級アミン、アミド、エステル、アシルハロゲン、一価金属塩などを含むことができる。代替的に、または付加的に、カーボンナノチューブは、ヒドロキシルから選択されるか、またはヒドロキシル含有種、ケトンおよびラクトンから誘導される酸化種を含み得る。
【0105】
離散、あるいは剥離したという用語によって知られている用語は、ここでは、実質的にそれらの長さに沿って分離された、すなわち束ねられていない個別のカーボンナノチューブを意味すると解釈される。アスペクト比は、カーボンナノチューブの長さ対直径比として定義される。カーボンナノチューブの束が存在する場合、アスペクト比は束の長さ対直径比とみなされる。絡み合ったカーボンナノチューブの球状ボールの場合、アスペクト比は1とみなされる。
【0106】
所望の用途に基づいて、酸化離散カーボンナノチューブのアスペクト比は、単峰性分布または多峰性分布(二峰性または三峰性分布など)であり得る。多峰性分布は、均等な分布範囲(例えば、あるL/D範囲が50%および別のL/D範囲が約50%)のアスペクト比を有することができる。分布は非対称であってもよく、これは、比較的少ないパーセントの離散ナノチューブが特定のL/Dを有し得る一方で、より多くの量が別のアスペクト比分布を含み得ることを意味する。酸化離散カーボンナノチューブのアスペクト比は、例えば、有機溶媒中の分散体の希釈物および走査型電子顕微鏡を用いて決定することができる。
【0107】
本明細書に記載の用途に使用するのに適し得るカーボンナノチューブの製造業者としては、例えば、Southwest Nanotechnologies、ZeonanoまたはZeon、CNano Technology、Nanocyl、ACS Materials、American Elements、Chasm Technologies、Haoxin Technology、Hanwha Nanotech Group、Hyperion Catalysis、KH Chemical、Klean Commodities、LG Chem、Nano-C、NTP Shenzhen Nanotech Port、Nikkiso、Raymor、Saratoga Energy、SK Global、Solid Carbon Products、Sigma Aldrich、Sun Nanotech、Thomas Swan、TimesNano、Tokyo Chemical Industry、XF NanoおよびOCSiAlが挙げられる。
【0108】
離散カーボンナノチューブを得るための方法は、カーボンナノチューブに高い機械的力を加えることである。剪断中、試料は、106~108ジュール/m3もの高いエネルギー密度を生成することができる処理ス装置を用いて、剪断(乱流)および/またはキャビテーションによって生成される強い破壊力を加えられる可能性がある。本明細書を満たす装置としては、限定するものではないが、超音波装置、キャビテーション装置、機械的ホモジナイザ、圧力ホモジナイザおよびマイクロフルイダイザが挙げられる。そのようなホモジナイザの一例が米国特許第756,953号に示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。追加の剪断装置には、限定するものではないが、HAAKE(商標)ミキサー、Brabenderミキサー、Omniミキサー、Silversonミキサー、コロイドミル、Gaullinホモジナイザ、および/または二軸スクリュー押出機が含まれる。剪断処理後、カーボンナノチューブ束はほぐされており、それにより、より多数のナノチューブの表面および/またはナノチューブの表面のより多くの部分が周囲環境に露出される。典型的には、所与の出発量の絡み合った、受け取ったままのカーボンナノチューブおよび作製されたままのカーボンナノチューブに基づいて、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約95%、および100%もの多さの、広い表面積が酸化された複数のカーボンナノチューブがこの工程から得られ、チューブの少数、通常はチューブの極少数が密に束ねられたままであり、そのような密に束ねられたナノチューブの表面には実質的にアクセスできない。
【0109】
Bosnyakらは、様々な特許出願(例えば、米国特許出願公開第2012-0183770号および米国特許出願公開第2011-0294013号)において、酸化および剪断力を賢明かつ実質的に同時に使用することによって離散カーボンナノチューブを作製し、それによってナノチューブの内面および外面の両方を、典型的には内面および外面においてほぼ同じ酸化レベルまで酸化し、個別の、または離散したチューブを得た。
【0110】
多くの実施形態では、本発明は、以前のBosnyakらの出願および開示とは異なる。カーボンナノチューブを酸化し、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に分散剤を結合させる工程において、カーボンナノチューブのフィブリル化の程度は、酸素含有種の程度または種類が異なるカーボンナノチューブの集合体、および酸化カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤にも影響を及ぼし得る。例えば、チューブの多くが幹として整列している場合、幹のコア内のチューブは、幹の最外部のチューブよりも、例えば硝酸との反応時に酸素化種を含有する可能性が低い。修飾カーボンナノチューブのより均一な集合体のために、カーボンナノチューブを修飾するための反応に際してカーボンナノチューブの離散構造または開放構造を有することが望ましい。限定するものではないが、二相材料の導電率などのいくつかの用途では、カーボンナノチューブ束のフィブリル化度を制御して、酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤の分布を得ることが望ましいと思われる。
【0111】
酸化離散カーボンナノチューブの側壁上に結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを含む分散体は、最初に酸化離散カーボンナノチューブを作製し、次いで該酸化離散カーボンナノチューブの側壁上または端部に分散剤を結合させることによって、または代替的に酸化カーボンナノチューブを作製し、次いで該酸化カーボンナノチューブの側壁上または端部に分散剤を結合させ、次いで結合した分散剤を有するカーボンナノチューブを離散させることによって作製することができる。
【0112】
カーボンナノチューブに共有結合した分散剤の化学的性質を制限するものではないが、カーボンナノチューブ上のカルボン酸基を使用して、選択された分散剤のアミン官能基と反応させることが好都合(convent)である。適切な分散剤の例は、限定するものではないが、アミン末端化ポリエーテルであるHuntsman Corporationの市販品、Jeffamineである。Jeffamineシリーズは、プロピレンオキシド対エチレンオキシドの比ならびにアミノ化の程度が異なり得る。あるいは、カーボンナノチューブ上に存在するヒドロキシル基を、選択された分散剤のカルボキシル基、イソシアネート基またはグリシジル基と反応させることができる。カーボンナノチューブの側壁に分子を共有結合させるための他の有用な化学部分としては、限定するものではないが、アジド、ハロゲン化アシルおよびシラン部分が挙げられる。
【0113】
結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、付加製造において有利に使用することができ、カーボンナノチューブによって急速に吸収されて熱を生成する1テラヘルツまでの近赤外から高周波の放射を使用することによって、加工および部品性能を改善することができる。この効果を使用して、架橋性分子を完全に硬化させるのに必要な時間を改善し、材料の焼結を改善し、部品の焼結歪みを低減することができる。
【0114】
適切な耐衝撃性改良剤の例は、エラストマー、より好ましくは予め製造されたエラストマー粒子である。これらのエラストマーは、0℃未満、好ましくは-20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0115】
耐衝撃性改良成分の粒径は、例えば、動的光散乱ナノ粒子サイズ分析システムを使用することによって達成することができる。そのようなシステムの例は、Horiba Instruments,Inc.から入手可能なLB-550機である。粒径を測定する好ましい方法は、ISO13320:2009に従ったレーザー回折粒径分析である。そのような分析に関する情報は、Setting New Standards for Laser Diffraction Particle Size Analysis.Alan Rawle and Paul Kippax,Laboratory Instrumentation News,January 21,2010に見出すことができる。
【0116】
分析に使用される液体放射線硬化性樹脂または溶媒からのモノマーは、測定された平均粒径に影響を及ぼし得る。さらに、レーザー回折による分析は、溶媒または他の低粘度分散媒の使用を必要とし得る。これらの溶媒は、測定された平均粒径に影響を及ぼし得る。本研究の目的のために、分散平均粒径とは、所与の配合物の列挙されたモノマーに曝露され、分散され、次いで、レーザー回折粒径分析のための溶媒としてプロピレンカーボネートを使用して分析された粒子を指す。耐衝撃性改良剤粒子の分散体を、希薄プロピレンカーボネート溶液中で、典型的には、10gのプロピレンカーボネート中0.1~0.4gの分散体の濃度で使用して、粒径分析に供した。
【0117】
結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体に混合することができる適切な耐衝撃性改良成分は、エチレンまたはプロピレンと1またはそれ以上のC2-C12オレフィンモノマーとのコポリマーに基づくエラストマーである。
【0118】
そのような例は、エチレン/プロピレンコポリマー、または任意選択的に第3の共重合可能なジエンモノマー、例えば、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジ-シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンおよびテトラヒドロインデンを含むエチレン/プロピレンコポリマー(EPDM);エチレン/α-オレフィンコポリマー、例えばエチレン-オクテンコポリマーおよびエチレン/α-オレフィン/ポリエンコポリマーである。
【0119】
他の適切なエラストマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンランダムコポリマー、スチレン/イソプレンランダムコポリマー、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、エチレン/アクリレートランダムコポリマーおよびアクリルブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/(メタ)アクリレート(SBM)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)およびそれらの水素化バージョン、SEBS、SEPS)ならびに(SIS)およびイオノマーである。
【0120】
適切な市販のエラストマーは、Shellによって製造されたKraton(SBS、SEBS、SIS、SEBSおよびSEPS)ブロックコポリマー、Arkemaによって製造されたNanostrengthブロックコポリマーE20、E40(SBM型)およびM22(フルアクリル)、Lotrylエチル/アクリレートランダムコポリマー(Arkema)およびSurlynイオノマー(Dupont)である。
【0121】
任意選択的に、例えばエポキシ、オキセタン、カルボキシルまたはアルコールなどの反応性基を含有するように修飾されてもよい。この修飾は、例えば、反応性グラフト化または共重合によって導入することができる。後者の市販例は、Arkema製のLotaderランダムエチレン/アクリレートコポリマーAX8840(グリシジルメタクリレート/GMA修飾)、AX8900およびAX8930(GMAおよび無水マレイン酸修飾/MA)である。
【0122】
任意選択的に、エラストマーは、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体内に混合した後に架橋されてもよい。架橋構造は、従来の方法を介して導入することができる。このような材料に使用される架橋剤の例として、任意選択的にジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性モノマーと組み合わせた過酸化物、硫黄、クレゾールなどを挙げることができる。
【0123】
一実施形態において、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体内に混合することができる耐衝撃性改良剤は、予め製造されたエラストマー粒子である。エラストマー粒子は、乳化重合によって製造されたラテックスから単離することによって得られるもの、または組成物の別の成分でその場で調製することによって得られるものを含む、様々な手段によって調製され得る。
【0124】
このような予め製造されたエラストマー粒子の適切な市販の供給源は、様々な製造者から様々な平均粒径で入手可能なPB(ポリブタジエン)もしくはPBA(ポリブチルアクリレート)格子、またはEPDM、SBS、SISもしくは任意の他のゴムの乳化によって得られた格子である。
【0125】
任意選択的に、エラストマーは架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造は、従来の方法によって導入することができる。このような材料に使用される架橋剤の例として、任意選択的にジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性モノマーと組み合わせた過酸化物、硫黄、クレゾールなどを挙げることができる。
【0126】
任意選択的に、例えばグラフト化によってまたは乳化重合の第2段階中に導入することができるシェルが粒子上に存在してもよい。そのような粒子の例は、ゴムコアおよびガラス状シェルを含有するコアシェル耐衝撃性改良剤粒子である。コア材料の例は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルゴム(例えば、ポリブチルアクリレートゴム)、スチレン/ブタジエンランダムコポリマー、スチレン/イソプレンランダムコポリマー、またはポリシロキサンである。シェル材料またはグラフトコポリマーの例は、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)と、シアン化ビニル(例えばアクリロニトリル)または(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)との(コ)ポリマーである。
【0127】
任意選択的に、反応性基は、グリシジルメタクリレートとの共重合などの共重合によって、または反応性官能基を形成するためのシェルの処理によってシェルに組み込むことができる。適切な反応性官能基には、限定するものではないが、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ビニルエーテル基、および/またはアクリレート基が含まれる。
【0128】
これらのコア-シェル型エラストマー粒子の適切な市販品は、例えば、限定するものではないが、Resinous Bond RKB(Resinous Chemical Industries Co.,Ltd.によって製造されたエポキシ中のコアシェル粒子の分散体)、Durastrength D400、Durastrength 400R(Arkema Group製)、Paraloid EXL-2300(非官能性シェル)、Paraloid EXL-2314(エポキシ官能性シェル)、Paraloid EXL-2600、Paraloid KM 334、およびParaloid EXL 2300 Gである。ParaloidコアシェルエラストマーはDow Chemical Co.によって製造され、Genioperl P53,Genioperl P23,Genioperl P22はWacker Chemicalによって製造され、Kane Ace MX製品はKanekaによって製造されている。
【0129】
そのようなエラストマー粒子の他の例は、「アルキル」がC1-C6アルキルであるジアルキルシロキサン繰り返し単位を含み得る架橋ポリオルガノシロキサンゴムである。そのような粒子は、Blockの米国特許第4,853,434号に開示された方法によって製造することができ、当該特許は参照により本明細書に組み込まれる。粒子は、好ましくは粒子の表面に、オキシラン、グリシジル、オキセタン、ヒドロキシル、ビニルエステル、ビニルエーテル、もしくは(メタ)アクリレート基、またはそれらの組み合わせなどの反応性基を含むように修飾されてもよい。市販のポリオルガノシロキサンエラストマー粒子の例は、Albidurである。
【0130】
EP 2240(A)、Albidur EP 2640、Albidur VE 3320、Albidur EP 5340、Albidur EP 5640、およびAlbiflex 296(エポキシまたはビニルエーテル樹脂中の粒子の分散体、Hanse Chemie、Germany)、Genioperl M 41C(エポキシ中分散体、Wacker Chemical)、Chemisnow MX SeriesおよびMP Series(綜研化学株式会社)。本発明で使用するためのコアシェル粒子を製造するために使用することができる他の材料は、例えば、Nakamura et al,J Appl.Polym.Sci.v 33 n 3 Feb.20,1987 p 885-897,1987に見出すことができ、当該文献では、ポリ(ブチルアクリレート)コアとポリ(メチルメタクリレート)シェルとを有するコア-シェル材料が開示されている。シェルは、エポキシド基を含有するように処理されている;Saija,L.M.and Uminski,M.,Surface Coatings International Part B 2002 85,No.B2,June 2002,p.149-53、この文献には、ポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート)から調製され、MMAまたはAMPSで処理されて表面上にカルボン酸基を有する材料を生成するコアおよびシェルを有するコアシェル材料が記載されており;Aerdts,A.M et al,Polymer 1997 38,No.16,1997,p.4247-52、この文献には、そのコアとしてポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリブタジエンを使用する材料が記載されている。エポキシ化ポリ(メチルメタクリレート)をシェルに使用する。エポキシド部位は、この材料のシェル上の反応性部位である。別の実施形態において、グリシジルメタクリレートおよびメチルメタクリレートがシェル中のコモノマーとして使用される。
【0131】
コアシェル粒子は、2つ以上のコアおよび/または2つ以上のシェルを含むことができる。さらに、コア-シェル粒子とエラストマー粒子との混合物を使用することができる。架橋性モノマーまたはオリゴマーを含む分散体の粘度を低下させるために、2つの異なる直径の耐衝撃性改良剤を特定の比率で使用することができる。例えば、耐衝撃性改良剤の組成は、約7対1の直径比(すなわち、直径140nmの粒子対20nmの粒子)および約4対1の重量%比である。
【0132】
エラストマーまたは耐衝撃性改良剤の選択の別の望ましい特徴は、UV可視波長範囲の放射線の散乱を最小限に抑えるために、分散される材料の屈折率値の少なくとも0.03単位以内、より好ましくは0.02単位以内の屈折率値を有するエラストマーまたは耐衝撃性改良剤の組成物を選択することである。そのような混合物の例は、屈折率1.47のParaloid KM 334、および屈折率1.48のウレタンジメタクリレートであるDymax BR-952である。
【0133】
結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、重量%で分散体の約0.1重量%~約30重量%の、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、還元グラフェン、炭素繊維、シリカ、ケイ酸塩、ハロイサイト、粘土、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ガラス、難燃剤およびタルクからなる群から選択されるフィラーをさらに含む。フィラーはまた、分散体内のそれらの結合および分布を改善するために表面修飾され得る。表面処理の例は、シリカ粒子へのシランカップリング剤の使用である。
【0134】
分散体の熱伝導率を決定する一般的な方法は、既知の熱流束を試料に適用することであり、試料の定常状態の温度に達すると、試料の厚さにわたる温度差が測定される。一次元熱流および等方性媒体を仮定した後、フーリエの法則を使用して、測定された熱伝導率を計算する。
【実施例】
【0135】
実施例1
Tuball(商標)(OCSiAl)の酸化
撹拌機および凝縮器を取り付けた1リットルのガラス反応器内で、500グラムの67%重量の硝酸を95℃に加熱する。酸に、5グラムの受け取ったままの単層カーボンナノチューブ(Tuball(商標))を加える。受け取ったままのふわふわしたカーボンナノチューブは、長さが数ミリメートル、直径がミリメートルであり得る密に束ねられた木の幹の形態を有する。溶液を約95℃に5時間維持しながら、酸とカーボンナノチューブとの混合物を混合する。反応期間の終わりに、酸化単層カーボンナノチューブを濾過して酸を除去し、逆浸透(RO)水でpH3~4まで洗浄する。得られたCNTは、約3.6%まで酸化され、4.4%の金属残留物を含有していた。
【0136】
実施例2
多層カーボンナノチューブ、CNano Flotube 9000の酸化
65%の硝酸を含有する4リットルの濃硝酸を、超音波処理器および撹拌機を取り付けた10リットルの温度制御された反応槽に加える。40グラムの非離散多層カーボンナノチューブ、CNano corporation製のグレードFlowtube 9000を、酸混合物を撹拌し、温度を85℃に維持しながら反応器槽に装填する。超音波処理器の出力を130~150ワットに設定し、反応を3時間継続する。3時間後、粘性溶液を5マイクロメートルのフィルターメッシュを有するフィルターに移し、100psiの圧力を用いて濾過することによって酸混合物の多くを除去する。濾過ケークを4リットルの脱イオン水で1回洗浄し、続いてpH9超の4リットルの水酸化アンモニウム溶液で1回洗浄し、次いで4リットルの脱イオン水でさらに2回洗浄する。最終洗浄により得られたpHは4.5である。濾過ケークの少量のサンプルを真空中100℃で4時間乾燥させ、前述のように熱重量分析を行う。繊維上の酸化種の量は2.4重量%であり、走査型電子顕微鏡によって決定される平均アスペクト比は60である。残留触媒含有量は2,500ppmと決定される。
【0137】
実施例3
酸化単層カーボンナノチューブへの分散剤の共有結合。
固形分6.6重量%の、水を含むウェットケークの形態の実施例1からの酸化単層カーボンナノチューブを使用する。ウェットケーク30.3gをイソプロパノール30gと混合し、次いで、イソプロパノール350gおよび水622gに溶解した3gのJeffamine M2005モノアミン末端ポリエーテルを撹拌しながら添加する。撹拌を10分間継続する。スラリーをWaring Blenderに移し、高速で10分間ブレンドする。
【0138】
次いで、スケールが20マイクロメートルを超える大きな構造が光学顕微鏡によって観察されなくなるまで、スラリーを、温度45℃未満に維持した実験室規模のホモジナイザに通す。
【0139】
次いで、得られた混合物をブフナーフィルターおよび#2ワットマン濾紙を用いて13で濾過し、100cm3の35重量%イソプロピルアルコール水溶液で4回洗浄する。次いで、洗浄したウェットケークを、最初に対流式オーブン中で120℃において固形分95%まで乾燥させ、次いで真空オーブン中で150℃において1時間乾燥させる。これを表1においてSWNT MBと呼ぶ。
【0140】
200~600℃の範囲で窒素中5℃/分でTGA分析を行い、47%の共有結合ポリエーテルを得た。
【0141】
実施例4
酸化多層カーボンナノチューブへの分散剤の共有結合。
固形分5重量%の、水を含むウェットケークの形態の実施例2からの酸化多層カーボンナノチューブを使用する。ウェットケーク40gをイソプロパノール30gと混合し、次いで、イソプロパノール350gおよび水622gに溶解した2gのJeffamine M2005モノアミン末端ポリエーテルを撹拌しながら添加する。撹拌を10分間継続する。スラリーをWaring Blenderに移し、高速で10分間ブレンドする。
【0142】
次いで、スケールが20マイクロメートルを超える大きな構造が光学顕微鏡によって観察されなくなるまで、スラリーを、温度45℃未満に維持した実験室規模のホモジナイザに通す。
【0143】
次いで、得られた混合物をブフナーフィルターおよび#2ワットマン濾紙を用いて13で濾過し、100cm3の35重量%イソプロピルアルコール水溶液で4回洗浄する。次いで、洗浄したウェットケークを、最初に対流式オーブン中で120℃において固形分95%まで乾燥させ、次いで真空オーブン中で150℃において1時間乾燥させる。
【0144】
200~600℃の範囲で窒素中5℃/分でTGA分析を行い、18%の共有結合ポリエーテルを得た。
【0145】
実施例5
ナイロン粉末のコーティング
ナイロン11は、直径10マイクロメートル未満の小さな粉末顆粒に粉砕される。実施例4のカーボンナノチューブ1gを、ポリビニルピロリドン(分子量約24,000ダルトン)(Sigma Aldrich)1gと共にイソプロパノールアルコール水溶液(50/50)200gに溶解することによって分散体を作る。100gのナイロン11粉末を修飾カーボンナノチューブ分散体内で撹拌し、1時間撹拌する。次いで、材料を対流式オーブン内で110℃で乾燥させる。乾燥させた材料をボールミルに1時間入れて、乾燥分散体のコーティングを有するナイロン11の微細分散体を得る。
【0146】
次いで、粉末をSLS付加製造工程で使用して、導電率が向上し、100億オーム/スクエア未満の抵抗を有する強力な部品を製造することができる。共有結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブのコーティングは、赤外線または高周波放射による部品の改善された焼結後アニーリングを可能にする。
【0147】
実施例6
セラミック粉末のコーティング
直径10マイクロメートル未満の酸化アルミニウム粉末顆粒を使用する。実施例4のカーボンナノチューブ1gを、分子量約24,000ダルトン(Sigma Aldrich)1gと共にイソプロパノールアルコール200g中に溶解し、Thinkyミキサーで2000rpmにおいて5分間混合することによって分散体を作る。分散体を酸化アルミニウム粉末の層上に選択的に噴射し、アルコールを乾燥によって除去する。
【0148】
粉末は、酸化離散カーボンナノチューブの乾燥した分散体によって結合され、次いで焼結されて強い部品を製造することができる。共有結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの分散体は、セラミック部品のグリーン強度を著しく改善し、共有結合した分散剤は焼結中に除去される。酸化離散カーボンナノチューブを使用して、電場/磁場、または赤外線もしくは高周波放射による加熱を誘導することができる。
【0149】
実施例7
放射線硬化性樹脂の混合
液槽光重合のための放射線硬化性組成物は、成分を秤量し、容器に入れることによって調製される。均質な樹脂混合物が得られるまで、混合物を室温または高温(80℃まで)において機械的に撹拌する。調製された組成物は液槽光重合装置で加工され、製造された試験片は以下に記載される試験方法に従って分析される。
【0150】
三次元試験片の作製。
【0151】
液槽光重合装置を用いて三次元試験片を調製するために使用される一般的な手順は以下の通りである。放射線硬化性樹脂を液層(vat)に注ぐ。製造パラメータは、標準的な黒色樹脂および25μmの層厚として設定した。そのモードにおいて、部品製造前に樹脂を31℃に加熱する。樹脂の組成に応じて、所望の重合エネルギーを提供するのに十分な数のレーザーパスを使用した。材料を405nmの範囲で発光するレーザーに曝露した。最初に、層が完全に硬化されていない「未硬化品(green part)」が形成される。硬化下で、さらに硬化した場合に結合によって連続層がより良好に接着可能となる。製造された「未硬化品(green part)」を機械から取り出し、イソプロピルアルコールで洗浄し、空気中で乾燥させ、405nmの多方向LEDランプを備えた硬化チャンバ内で後硬化させる。特に明記しない限り、すべての試験片を室温で30分間硬化チャンバ内で後硬化させた。
【0152】
試験方法
【0153】
樹脂は、所望の粘度および湿潤挙動の要件を満たすように調製される。粘度および湿潤挙動は、再コーティング深さ(放射線曝露前の層厚)に直接影響を及ぼし、これはz方向の構築解像度に影響する。HR 20 Discovery Hybrid Rheometer(TA Instruments)を使用して、新たに調製した樹脂の粘度データを収集した。40mmの2.002°ステンレス鋼ペルチェプレートをフロースイープ実験に使用した。対数掃引は、剪断速度1.0e-3~8000 1/秒まで室温で掃引することによって行った。追加の流動温度勾配試験を、剪断速度6 1/秒および25℃~から80℃まで2℃/分の勾配速度で行った。表2は、3つの例示的な組成物について、剪断速度0での粘度を示す。データは、最終的な樹脂配合物中の、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの含有量増加と共に、粘度が指数関数的に増加することを示す。温度勾配の結果を表3に示し、比較点25℃、50℃、および80℃における結果を示す。結果は、温度の上昇と共に、一定の剪断速度で粘度が指数関数的に低下することを示している。
【0154】
【0155】
【0156】
表6は、実施例7.1、実施例7.2および対照7.1として標識された各光硬化性組成物の成分を列挙している。注:TPO量およびOB量は、総組成百分率にはカウントされない。
【0157】
【0158】
液槽光重合装置を用いて製造した引張IV型試験片(ASTM D638)を試験することによって引張データを収集した。すべての試験片を垂直に製造した。後硬化の24時間以上後に、引張強度、ヤング率、および破断伸度の試験を行った。引張試験は、室温および湿度を制御するための対策がなされておらず、バーが2日間平衡化されなかったことを除いてASTM D638に従って行われ、ASTM D638は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。試験は、Instron試験機(モデル5985)で行った。報告されたデータは、3回の測定の平均である。表8は、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブを組成物に添加していない対照と比較した、例えば7.1および7.2の最高引張強度、降伏強度およびヤング率を示す。これらの例は、結合した分散剤を有する酸化離散カーボンナノチューブの添加が、酸化離散カーボンナノチューブを含まない樹脂と比較して、引張強度および降伏強度の両方ならびにヤング率を増加させることを示す。
【0159】
【0160】
アイゾット衝撃強度を決定するための硬化試験片は、試験片がASTM D-256 A規格に従って設計され、3.2mm×12.7mm×63.5mm(厚さ×幅×長さ)の寸法を有することを除いて、引張バーの場合と同様にして調製した。試験片を、Ray-Ran製の電動ノッチカッターを使用してノッチ加工した。アイゾット衝撃を、2.75 Jの振り子を備えたRay-RanによるUniversal Pendulum Impact Systemを使用して測定した。報告されたデータは、3回の測定の平均である。
【0161】
実施例7.1~7.4の衝撃強度を表10に示す。これらの実施例は、結合した分散剤を有する離散酸化カーボンナノチューブの添加が、酸化離散カーボンナノチューブを含まない樹脂と比較して、製造された試験片の衝撃強度を著しく増強させることを示す。
【0162】
【0163】
表12は、実施例7.3、実施例7.4および対照2として標識された各光硬化性組成物の成分を列挙している。
【0164】
【国際調査報告】