(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】防食組成物
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
C23F11/00 F
C23F11/00 G
C23F11/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558474
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057838
(87)【国際公開番号】W WO2022200535
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500336306
【氏名又は名称】ロックウール アクティーゼルスカブ
【住所又は居所原語表記】Hovedgaden 584, 2640 Hedehusene, DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハズマ オサマ
(72)【発明者】
【氏名】マットソン リッケ
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン アンドレアス ルンドタング
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ミッケル オステルガールド
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA01
4K062AA05
4K062BA10
4K062BA14
4K062BB06
4K062BB30
4K062DA05
4K062FA04
4K062GA08
(57)【要約】
本発明は、防食組成物及び材料に防食特性を付与するためのそのような組成物の使用、ならびにそのような組成物を含む材料に関する。本発明の第一の態様によれば、式Me
2O・xSiO
2(式中、xは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、式Me
2O:nP
2O
5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分又はその水和物、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸又はその塩を含む、防食組成物が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 式Me
2O・xSiO
2(式中、xは0.5~4.0であり、例えばxは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、
- 式Me
2O:nP
2O
5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分、又はその水和物、
- 6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸、又はその塩
を含む、防食組成物。
【請求項2】
前記アルカリ金属ケイ酸塩成分が、Na
2SiO
3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属リン酸塩成分が、Na
3PO
4等のリン酸ナトリウムである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸成分が、式HO
2C(CH
2)
nCO
2Hのジカルボン酸成分であり、ここで、好ましくは、nは2~20、特に4~10、例えばn=8である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属ケイ酸塩成分、アルカリ金属リン酸塩成分、及びカルボン酸成分の重量割合が、アルカリ金属ケイ酸塩成分、アルカリ金属リン酸塩成分、及びカルボン酸成分の総重量に基づいて、
60~96重量部、例えば70~93重量部、例えば75~90重量部のアルカリ金属ケイ酸塩成分、
1~25重量部、例えば2~20重量部、例えば3~15重量部のアルカリ金属リン酸塩成分、及び
1~20重量部、例えば2~15重量部、例えば5~12重量部のカルボン酸成分
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、石鹸、界面活性剤、例えばアルカリ安定性水分散性界面活性剤、例えばアルカリ安定性水溶性界面活性剤、例えば乳化界面活性剤のリストから選択される界面活性化合物をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、
100~500g/l、例えば150~300g/lのNa
2SiO
3
2~50g/l、例えば10~20g/lのセバシン酸
20~80g/l、例えば30~60g/lのNa
3PO
4
0.1~100g/lの界面活性化合物、例えば
0.05~50g/lのアルカリ安定性界面活性剤、及び任意選択で
0.1~100g/lの乳化補助界面活性剤
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも1つのシリコーン化合物、例えばシリコーン樹脂、例えば反応性シリコーン樹脂、例えばポリアルキルエトキシシロキサン、ポリメチルエトキシシロキサン、ポリフェニルエトキシシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンの群から選択される反応性シリコーン樹脂を含む、疎水性物質をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、1つ以上の水混和性有機溶媒、例えばアルコール、例えばイソプロパノールをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ミネラルウール製品、例えばストーンウール又はグラスウール、及びエアロゲル製品からなる群から選択される製品に防食特性を付与するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物が、ミネラルウール製品、例えば、前記ミネラルウール製品の表面層に分散されている、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記製品が、パイプ部分、屋根製品、ファサード製品、マット、ワイヤマットから選択される、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む、ミネラルウール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食組成物、材料に防食特性を付与するためのそのような組成物の使用、及びそのような組成物を含む材料に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食は、金属と周囲環境との間の化学反応の結果として起こる金属の劣化である。腐食は、酸化物、水酸化物又は硫化物等の、より化学的に安定した形態への金属の変換を伴う。
【0003】
鋼の腐食は、水及び酸素の存在下で発生する。鋼部品の腐食は大きな経済問題であり、多くの場合、鋼構造物の維持及び更新コストの大部分を占める。
【0004】
非常に具体的な問題は、断熱材によって断熱されている鋼部品に影響を与える保温材下腐食(CUI)の問題である。鋼構造物は、多くの場合、熱損失を避けるために断熱される。このような断熱は、周囲の環境よりもはるかに熱い又は冷たい鋼構造物にとって望ましい場合がある。CUIは特に、例えば、石油及びガス産業のパイプラインのような周期的な温度変化を受ける鋼構造物の断熱下で発生する。
【0005】
鋼の腐食は水及び酸素の存在下で発生するため、鋼構造と接触する水の存在は腐食の主な要因となる。熱損失を避けるために鋼構造物を囲む断熱材は、周囲に断熱材がなく水と鋼構造物との接触が継続する場合よりも、長時間、水と鋼構造物との接触を維持する傾向があるため、そのような断熱材は腐食の増加に寄与する可能性がある。鋼は一般に、0℃~175℃の温度範囲でCUIの影響を受けやすくなる。最も頻繁に発生するタイプのCUIは、湿った断熱材が炭素鋼と接触した場合に発生する可能性のある炭素鋼の一般腐食及び孔食、ならびに水溶性塩化物の作用によって、又は断熱材が適切な要件を満たしていない場合に主に引き起こされる特定のタイプの腐食であるオーステナイト系ステンレス鋼の外部応力腐食トラッキング(ESCT)である。腐食表面はほとんどが断熱システムによって隠されており、検査のために断熱材を取り外すか、又は金属破損の事象が事故につながるまでは観察されないため、CUIを可能な限り管理することが非常に重要である。
【0006】
CUIを回避するために、断熱鋼構造は、多くの場合、水の浸入を防ぐための追加の被覆材で覆われる。しかしながら、経験上、水は、多くの場合、被覆システムの故障もしくは損傷を介して、又は周期的な温度変化を受ける構造内の湿った空気を介して侵入することが示されている。また、気密性の低い取り付けによって内部から、又は洪水等の事象によって外部から水が鋼構造と接触する場合もある。
【0007】
CUIを回避するために、石油及びガス産業のパイプライン等の鋼構造は、多くの場合、鋼部品を保護層、例えば、亜鉛又はアルミニウム等の他の金属でコーティングすることによって腐食から保護される。しかしながら、このようなコーティング層は決して完全な保護層ではなく、これらの保護対策は非常にコストがかかる可能性があり、大規模なパイプラインシステムでは経済的に受け入れられない場合がある。
【0008】
隔離下での腐食の形態であれ、他の形態の腐食であれ、あらゆる形態の腐食によって引き起こされる多大な経済的損害を考慮して、腐食を回避するために数多くの戦略が開発されてきた。1つの戦略は、材料に撥水性を付与することによって水の侵入を防ぐことである。別の戦略は、接触後に材料から水を素早く消失させることによって、材料が湿る時間を短縮することである。別の戦略は、腐食防止剤の使用である。
【0009】
異なる組成の多くの腐食防止剤が過去に提案されてきたが、これらの防食組成物の多くは、有効性を欠くこと、及び/又は高価なこと、及び/又は取り扱いが困難なこと、及び/又は人体及び/又は環境に有害なことという問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、防食効果が高く、経済的に有利であり、取り扱いが容易で、人体にも環境にも無害な防食組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、様々な材料、特に、ストーンウール又はグラスウール等のミネラルウール製品及び他の繊維材料からなる群から選択される材料に防食特性を付与するための防食組成物の使用を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、このような防食組成物を含むミネラルウール製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様によれば、式Me2O・xSiO2(式中、xは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、式Me2O:nP2O5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分又はその水和物、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸又はその塩を含む、防食組成物が提供される。
【0014】
本発明の第二の態様によれば、ストーンウール又はグラスウール等のミネラルウール製品及び他の繊維材料からなる群から選択される材料等の材料に防食特性を付与するための、式Me2O・xSiO2(式中、xは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、式Me2O:nP2O5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分又はその水和物、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸又はその塩を含む、組成物の使用が提供される。
【0015】
本発明の第三の態様によれば、式Me2O・xSiO2(式中、xは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、式Me2O:nP2O5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分又はその水和物、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸又はその塩を含む組成物を含む、ミネラルウール製品又は他の繊維材料等の材料が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、記載の金属ケイ酸塩成分、記載の金属リン酸塩成分及び記載のカルボン酸を含むこのような組成物により、非常に効果的な防食組成物を調製することができることを見出した。言及した全ての成分は、かなり安価で、取り扱いが容易で、人体にも環境にも有害ではない。したがって、本発明による防食組成物は、これまで知られている防食組成物には見られない特性の独特の組み合わせを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】1時間での昇温/降温を含む、60℃×18時間、150℃×4時間の温度サイクルである(24時間の合計サイクル時間)。サイクル開始時に水を40mlで高速注入した後、60℃で18時間にわたって、2.5ml/時間の速度で注入した。
【
図4】腐食防止剤を用いたProrox PS960で試験してから21サイクル後のクーポンの上面である。沈着物の除去なし。
【
図5】腐食防止剤を用いたProrox PS960で試験してから21サイクル後のクーポンの底面である。沈着物の除去なし。
【
図6】腐食防止剤を用いたProrox PS960での試験からのクーポンの底面の拡大図である。沈着物の除去なし。
【
図7】腐食防止剤を用いたProrox PS960での試験からの試験クーポンA-21-6の拡大図である。洗浄後。
【
図8】標準的なProrox PS960で試験してから21サイクル後のクーポンの上面である。沈着物の除去なし。
【
図9】標準的なProrox PS960で試験してから21サイクル後のクーポンの底面である。沈着物の除去なし。
【
図10】標準的なProrox PS960で試験してから21サイクル後のクーポンの側面である。沈着物の除去なし。
【
図11】標準的なProrox PS960での試験からのクーポンの底面の拡大図である。沈着物の除去なし。
【
図12】標準的なProrox PS960での試験からの試験クーポンB-21-6の拡大図である。洗浄後。
【
図13】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techで試験してから21サイクル後の試験Aの分解である。クーポンの上面、沈着物の除去なし。
【
図14】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techで試験してから21サイクル後のクーポンの試験Aの底面である。沈着物の除去なし。
【
図15】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techでの試験からの試験クーポンA-22-4の拡大図である。洗浄後。
【
図16】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techでの試験からの試験クーポンA-22-6の拡大図である。洗浄後。
【
図17】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techで試験してから21サイクル後の試験Bの分解である。クーポンの上面、沈着物の除去なし。
【
図18】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techで試験してから21サイクル後のクーポンの試験Bの底面である。沈着物の除去なし。
【
図19】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techでの試験からの試験クーポンB-22-2の拡大図である。洗浄後。
【
図20】腐食防止剤を用いたProrox PS960 WR-Techでの試験からの試験クーポンB-22-3の拡大図である。洗浄後。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、式Me2O・xSiO2(式中、xは0.5~3.0である)の1つ以上のアルカリ金属ケイ酸塩成分、式Me2O:nP2O5(式中、nは0.33~1である)の1つ以上のアルカリ金属リン酸塩成分又はその水和物、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸又はその塩を含む、防食組成物を対象とする。
【0019】
一実施形態では、本発明による防食組成物は固体の混合物の形態である。
【0020】
一実施形態では、本発明による防食組成物は水溶液/水分散液の形態である。
【0021】
(アルカリ金属ケイ酸塩成分)
本発明者らは、式Me2O・xSiO2(式中、xは0.5~4.0であり、例えばxは0.5~3.0である)のアルカリ金属ケイ酸塩成分が、非常に効果的な防食組成物に使用できることを見出した。これらの成分は、安価で、取り扱いが容易で、人体にも環境にも無害である。
【0022】
一実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩成分は、式Na2O・xSiO2x(式中、x=1又は2である)、例えば、Na2SiO3のケイ酸ナトリウムである。
【0023】
一実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩成分は、Me2O・xSiO2(式中、xは0.5である)に相当するNa4O4Si(オルトケイ酸ナトリウム)である。
【0024】
式Na2O・xSiO2x(式中、x=1又は2である)のケイ酸ナトリウム、例えばNa2SiO3等のアルカリ金属ケイ酸塩成分は、結晶水を保持できることが指摘されている。
【0025】
(アルカリ金属リン酸塩成分)
本発明者らは、驚くべきことに、式Me2O:nP2O5(式中、nは0.33~1である)又はその水和物のアルカリ金属リン酸塩が、非常に効果的な防食組成物に使用できることを見出した。これらのアルカリ金属リン酸塩成分は安価で、取り扱いが容易で、人体及び環境に完全に無害である。
【0026】
一実施形態では、アルカリ金属リン酸塩成分は、Na3PO4等のリン酸ナトリウムである。
【0027】
(カルボン酸成分)
本発明者らは、驚くべきことに、6~22個、例えば7~14個の炭素原子を有するカルボン酸又はその塩が、非常に効果的な防食組成物に使用できることを見出した。これらのカルボン酸成分は、安価で、取り扱いが容易で、人体にも環境にも完全に無害である。
【0028】
一実施形態では、カルボン酸成分は、式HO2C(CH2)nCO2Hのジカルボン酸成分であり、好ましくは、nは2~20、特に4~10、例えばn=8である。
【0029】
一実施形態では、カルボン酸成分は、例えばステアリン酸ナトリウム等の石鹸の形態である。
【0030】
(成分の重量割合)
原則として、本発明の防食組成物の成分は、任意の重量割合で使用することができる。
【0031】
一実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩成分、アルカリ金属リン酸塩成分、及びカルボン酸成分の重量割合は、アルカリ金属ケイ酸塩成分、アルカリ金属リン酸塩成分及びカルボン酸成分の総重量に基づいて、60~96重量部、例えば70~93重量部、例えば75~90重量部のアルカリ金属ケイ酸塩成分、1~25重量部、例えば2~20重量部、例えば3~15重量部のアルカリ金属リン酸塩成分、及び1~20重量部、例えば2~15重量部、例えば5~12重量部のカルボン酸成分である。
【0032】
一実施形態では、組成物は水溶液/水分散液であり、水溶液/水分散液の総体積に基づいて、4~30グラム/リットル、例えば6~20グラム/リットル、例えば8~14グラム/リットルのアルカリ金属ケイ酸塩成分、0.1~5グラム/リットル、例えば1~3.5グラム/リットル、例えば2~2グラム/リットルのアルカリ金属リン酸塩成分、及び0.1~10グラム/リットル、例えば0.2~5グラム/リットル、例えば0.3~1.5グラム/リットルのカルボン酸成分を含む。
【0033】
別の実施形態では、組成物は水溶液/水分散液であり、
100~500g/l、例えば150~300g/lのNa2SiO3;2~50g/l、例えば10~20g/lのセバシン酸;20~80g/l、例えば30~60g/lのNa3PO4
を含む。
【0034】
(さらなる成分)
本発明による防食組成物は、組成物の特性をさらに改善することができるさらなる成分を含んでもよい。
【0035】
一実施形態では、組成物は、少なくとも1つのシリコーン化合物、例えばシリコーン樹脂、例えば反応性シリコーン樹脂、例えばポリアルキルエトキシシロキサン、ポリメチルエトキシシロキサン、ポリフェニルエトキシシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンの群から選択される反応性シリコーン樹脂を含む、疎水性物質をさらに含む。
【0036】
一実施形態では、本発明による組成物は、疎水性物質の総重量に基づいて、30~60重量パーセントの量のポリメチルエトキシシロキサン、及び1~5重量パーセントの量のオクチルトリエトキシシランを含む疎水性物質と、乳化剤と、必要に応じて微量のエタノールとを含む。
【0037】
一実施形態では、本発明による組成物は、1つ以上のアルカリ安定性水分散性界面活性剤を含む。
【0038】
本発明の枠組みにおいて、界面活性化合物は、2つの液体の間、気体と液体との間、又は液体と固体との間の表面張力を低下させる化合物として理解されるべきである。
【0039】
別の実施形態では、本発明による組成物は、1つ以上のアルカリ安定性水溶性界面活性剤を含む。
【0040】
一実施形態では、本発明による組成物は、石鹸、界面活性剤、例えばアルカリ安定性水分散性界面活性剤、例えばアルカリ安定性水溶性界面活性剤、例えば乳化界面活性剤のリストから選択される界面活性化合物を含む。
【0041】
一実施形態では、本発明による組成物は、
100~500g/l、例えば150~300g/lのNa2SiO3
2~50g/l、例えば10~20g/lのセバシン酸
20~80g/l、例えば30~60g/lのNa3PO4
0.1~100g/lの界面活性化合物、例えば
0.05~50g/lのアルカリ安定性界面活性剤、及び任意選択で
0.1~100g/lの乳化補助界面活性剤
を含む。
【0042】
一実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つのシリコネート化合物、例えば有機修飾水ガラス、例えばアルカリ金属有機シリコネート、例えばカリウムメチルシリコネートを含む。
【0043】
一実施形態では、本発明による組成物は水溶液/水分散液であり、0.01~20グラム/リットル、例えば0.05~15グラム/リットル、例えば0.1~10グラム/リットルのシリコーン化合物を含む。
【0044】
一実施形態では、組成物は、1つ以上の水混和性有機溶媒をさらに含む。
【0045】
一実施形態では、水混和性有機溶媒は、アルコール、例えばイソプロパノールである。
【0046】
一実施形態では、本発明による組成物は、
5~60g/l、例えば25~45g/lのNa2SiO3
0.5~5g/l、例えば1.5~3.5g/lのセバシン酸
2~15g/l、例えば4~10g/lのNa3PO4
50~500ml/l、例えば150~350ml/lのイソプロピルアルコール
を含む。
【0047】
一実施形態では、組成物は、1つ以上の界面活性剤をさらに含む。
【0048】
一実施形態では、本発明による組成物は、
100~500g/l、例えば150~300g/lのNa2SiO3
2~50g/l、例えば10~20g/lのセバシン酸
20~80g/l、例えば30~60g/lのNa3PO4
0.05~50g/lのアルカリ安定性界面活性剤
0.1~100g/lの乳化補助界面活性剤
を含む。
【0049】
(組成物の使用)
本発明はまた、材料に防食特性を付与するための上記組成物の使用も対象とする。防食特性を付与するために組成物を使用することができる材料には主な制限はない。
【0050】
一実施形態では、本発明は、ストーンウール又はグラスウール等のミネラルウール製品、及び他の繊維材料からなる群から選択される製品に防食特性を付与するための上記の防食組成物の使用を対象とする。
【0051】
一実施形態では、本発明は、ストーンウール又はグラスウール断熱製品等のミネラルウール断熱製品、及び他の繊維材料製の断熱製品の群から選択される断熱製品に防食特性を付与するための上記の防食組成物の使用を対象とする。
【0052】
一実施形態では、防食組成物の使用は、その組成物が、ミネラルウール断熱製品等のミネラルウール製品、又はエアロゲル断熱製品等の他の繊維材料等の製品中に分散されるようなものである。
【0053】
一実施形態では、この分散系は、ミネラルウール断熱製品等のミネラルウール製品、又はエアロゲル断熱製品等の他の繊維材料の、0.5~10cmの厚さを有する表面層等の表面層上で分散が起こるようなものである。
【0054】
一実施形態では、使用は、製品がパイプ部分、屋根製品、ファサード製品、マット、ワイヤマットから選択されるような使用である。
【0055】
(製品)
本発明はまた、上記の防食組成物によって処理された材料を対象とする。
【0056】
一実施形態では、製品は、ミネラルウール製品である。
【0057】
一実施形態では、製品は、エアロゲルである。
【0058】
一実施形態では、製品は、改善された防食特性、特に断熱下の改善された防食特性を有するミネラルウール製品又は他の繊維材料である。
【0059】
本発明は、以下の例によってさらに説明される。
【0060】
本発明による防食組成物の性能を試験するために、本発明による防食組成物を含む市販のProrox PS960のストーンウールパイプ部分のCUI性能を、本発明による防食組成物を含まない標準的なストーンウールパイプ部分のProrox PS960の防食性能と比較した。
【0061】
(試験セットアップ及び試験条件)
試験セットアップは、一般にASTM G189-07に従うが、次の変更がなされている。
・ 試料間のPTFEスペーサを特殊なシリコーンOリングに置き換えた
・ 試験装置及びクーポンのクランプは、システムの熱膨張に対抗するためにスプリング圧縮システムを使用して達成する
・ リング形成された試験クーポンは、6.35mmのASTM G189-07の幅と比較して14.3mmの幅である。
【0062】
ASTM G189-07に記載されている試験方法及び装置と比較して、どの変更も緩和とみなすことはできない。
【0063】
(装置)
以下のシミュレーション装置を使用する。
a)14.3mmの幅及び60mmの直径、600グリット磨き仕上げの炭素鋼パイプ、ASTM A106グレードBから作製されたリング状の試験クーポン。
b)シール及び分離のためのOリング。
c)パイプ断熱材、φ160外径、φ60内径、腐食防止剤を伴うもの及び伴わないもの。
d)アルミニウムパイプジャケット。
e)2つの端部片から構成される特別に設計された試験リグ、その間に試験リングが取り付けられている。
f)構成を締め付けるためにコイルスプリングが取り付けられたねじ付きロッド。コイルスプリングにより、熱による伸びを吸収し得ることを保証する。
g)循環ならびにパイプ及びホース接続を備えたJulabo Corio加熱/冷却槽。この槽は時間/温度制御に従ってプログラム可能である。
h)60℃及び150℃で動作できる液体循環非腐食性熱媒体。断熱材の下のパイプ表面の温度を測定する熱電対。
i)制御コンピュータ。
j)試験中の温度を記録するためのデータロガー。
k)コントローラを備えた試験液体送出システム/計量ポンプ。
l)シリコーンシーラント。
m)ヒータと設置の間の加熱パイプの断熱。
【0064】
試験セットアップの概略図は
図1に見ることができ、試験セットアップの写真は
図2に見ることができる。
【0065】
(試験条件)
2つの別々の試験を実施した。試験中の条件は次の通りである。
【0066】
試験1:
a)以下の温度条件でのサイクル試験、試験サイクルのグラフ表示については
図3も参照のこと。試験サイクルごとの水の総注入量は85mlであり、21日間の試験全体では1785mlの総注入量である。
【表1】
b)試験持続期間21サイクル(21日間)。
c)試験溶液は、脱イオン水である。
d)試験溶液は、42.9mm離れて配置された2本の供給チューブを介して断熱材の上部から入る。
図1及び
図2を参照のこと。
e)断熱材は、断熱材の底部にある中央の穴から排出される。
図1を参照のこと。
f)14.3mmの幅及び60mmの直径、600グリット磨き仕上げの炭素鋼パイプ、ASTM A106グレードBから作製された6つの同一のリング形状の試験クーポン。
g)断熱材はシリコーンを使用して試験パイプにシールされ、長さ25cmの環状部が形成される。断熱材はステンレス鋼線を使用してパイプ表面に堅く固定される。外側のアルミニウムジャケットはホースクランプを使用して断熱材の周囲に固定され、シリコーンを使用して長手方向でフランジの端部にシールされる。
【0067】
試験2:
試験条件は試験1と同一であるが、試験サイクルごとに注入される水の体積を多くしている。試験サイクルごとの水の総注入量は119mlであり、21日間の試験全体では2499mlの総注入量である。
【表2】
【0068】
(試験した防食組成物)
2つの異なる濃度の防食組成物を2つの試験で使用し、異なる技術でストーンウール断熱材に適用したが、処理したパイプ断熱材1立方センチメートル当たりの防食組成物の濃度は同じ結果となった。
【0069】
試験1:
60mmの内径を有する500mmの長さのパイプ断熱材に防食組成物を塗布するには、10mmの深さを有するパイプ断熱材の内層を処理するために、合計0.85リットルの防食組成物混合物を必要とする。試験した本発明による防食組成物は、以下の通りである。
33.75g/lのNa2SiO3+2.25g/lのセバシン酸+6.75g/lのNa3PO4+250ml/lのイソプロピルアルコール及び750ml/lの脱塩水。
【0070】
腐食防止剤を、1Lサイズのプラスチック容器に0.75リットルの脱塩水を入れて混合し、次に以下の順序で以下の化学物質を混合することによって試験片に塗布した:
1. 33.75gのケイ酸ナトリウムNa2SiO3を撹拌/振盪しながら溶解させた。
2. 2.25gのセバシン酸を撹拌又は振盪しながら溶解させた。
3. 6.75gのリン酸三ナトリウムNa3PO4を溶解させた。
最終的には、0.75Lの混合物ごとに0.25LのIPAが使用される。
【0071】
次に、溶液をパイプ断熱材の内側に、最初にIPA、次に防食混合物を噴霧して、断熱材製品の内層が約10mmの深さまで完全に含浸することを確実にし、次いでそれを乾燥させる。
【0072】
次に、防食組成物で現在処理された断熱材試料を、上記の試験1に従ってCUI性能について試験する。
【0073】
試験2:
60mmの内径を有する500mmの長さのパイプ断熱材に防食組成物を塗布するには、10mmの深さを有するパイプ断熱材の内層を処理するために、合計0.13リットルの防食組成物混合物を必要とする。試験した本発明による防食組成物は、以下の通りである。
220g/lのNa2SiO3+14.67g/lのセバシン酸+44g/lのNa3PO4+10g/lの乳化補助界面活性剤+4g/lのアルカリ安定性界面活性剤。
【0074】
全ての化学物質を上記の順序で脱塩水に溶解し、1リットルに調整した。
【0075】
次に、この溶液をパイプ断熱材の内側に噴霧し、断熱材製品の内層を約10mmの深さで完全に含浸させ、次いで乾燥させる。
【0076】
次に、防食組成物で現在処理された断熱材試料を、上記の試験2に従ってCUI性能について試験する。
【0077】
(結果)
21回の試験サイクルの終了後、試験片をDI水及びナイロンブラシで洗浄し、エタノールですすぎ、乾燥させて、表面から遊離した腐食生成物及び断熱材を除去してから、最初の計量を行う。この後、DS/EN ISO8407に従って、抑制された16wt%の塩酸に浸漬することによって試験片から腐食生成物を除去した。すすいだ後、試験片を再度計量した。
【0078】
腐食生成物を除去した後、局所的な腐食の程度を推定し(該当する場合)、孔食の深さを測定した(該当する場合)。
【0079】
結果を、表1(腐食防止剤を用いたProrox PS960での試験1)、表2(Prorox PS960での試験1)、及び表3(腐食防止剤を用い、試験中に水注入量を多くしたProrox PS960での試験2)にまとめる。
【0080】
沈着物及び腐食生成物の除去前後の、腐食防止剤を用いてProrox PS960で試験した試験クーポンの試験1からの写真を
図4~7に見ることができる。
【0081】
沈着物及び腐食生成物の除去前後の、Prorox PS960で試験した試験クーポンの試験1からの写真を
図8~12に見ることができる。
【0082】
沈着物及び腐食生成物の除去前後の、腐食防止剤を用いてProrox PS960で試験した試験クーポンの試験2からの写真を
図13~20に見ることができる。
【0083】
試験1:腐食防止剤を用いたProrox PS960
腐食防止剤を用いたProrox PS960での試験からの結果に関しては、試験クーポンA-21-1の重量結果には誤差があり、これは、クーポンの非露出面にある元のミルスケールの一部が洗浄中に除去されたためであるので、誤った重量減少結果になる。検査の際、クーポンには腐食はなく、10倍の倍率を使用して1つのみの非常に浅い小さな孔(pit)のような攻撃が観察された。
【0084】
試験クーポンA21-6では、小さな直径の孔が1つ検出された。
【0085】
試験したクーポンではごく少数の小さく浅い局所的な攻撃が観察され、影響を受ける表面の領域の決定に関連する固有の不確実性及び測定誤差に起因して、誤解を招く結果をもたらす可能性があるため、局所的な腐食速度の計算を実施していない。
【0086】
21サイクルの試験中に、試験から排出された水は 、わずかにアルカリ性(約pH8~10)であると測定した。
【0087】
【0088】
(Prorox PS960)
試験の結果として試験クーポンで観察された腐食攻撃は、断熱材及び金属表面の湿潤特性により本質的に局所的ではあるものの、顕著な孔食を引き起こさず、代わりに、腐食生成物の除去の際に腐食は外観上全体的に観察される。
図12を参照のこと。
【0089】
21サイクルの試験中に、試験から排出される水はわずかにアルカリ性(約pH8)からわずかに酸性(約pH6)になることが測定された。
【0090】
【0091】
試験2 腐食防止剤を用いたProrox PS960
この試験は、試験1よりも40%多い水注入体積で2回実施した。
【0092】
検査の際、クーポンには腐食はなく、10~50倍の倍率で検査すると、浅い局所的な腐食のある小さな領域のみが観察された。これらの局所的な腐食攻撃の合計面積は、露出した試料の合計面積の0.5%未満であった。
【0093】
試験したクーポンで観察されたごく少数の小さくて浅い局所的な攻撃、ならびに影響を受ける表面の領域の決定に関連する固有の不確実性及び測定誤差に起因して、表3の局所的な腐食速度の計算は、誤解を招く結果を与える可能性があるため実施していない。12個の全ての試験クーポン及び21回の試験サイクルに基づいて計算した年間均一腐食速度の平均は、2.22μm/年である。
【0094】
21サイクルの試験中に、試験A及びBから排出される水はわずかにアルカリ性(約pH8~10)であることが測定された。
【0095】
【0096】
(結論)
改変されたASTM G189-7試験スケジュールは、パイプ基材にスペーサを使用せずに、腐食防止化合物による処理の有無にかかわらずストーンウール断熱材を試験することに成功した。腐食防止化合物を含浸させたストーンウール断熱材は、標準的なストーンウールパイプ断熱材を使用して実施した試験と比較して、パイプ試験片の腐食速度が顕著に低下する。21回の試験サイクルに基づいて計算した年間均一腐食速度は、防食断熱材を使用した試験基材では平均して約14分の1になる。
【国際調査報告】