(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】デジタル電気動作の自動範囲設定の方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
H02J1/00 309T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558509
(86)(22)【出願日】2022-03-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022022069
(87)【国際公開番号】W WO2022204582
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515149292
【氏名又は名称】ボルトサーバー インコーポレーティッド
【氏名又は名称原語表記】VOLTSERVER,INC.
【住所又は居所原語表記】42 Ladd Street,Unit 227,East Greenwich,Rhode Island 02818,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100216150
【氏名又は名称】香山 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ケイシー
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165CA01
5G165EA01
5G165FA05
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA09
5G165JA07
5G165KA01
5G165KA04
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA03
(57)【要約】
パケットエネルギ伝送動作パラメータのセットは、デジタル電力システムにおける安全、効率及び/又はレジリエンスを最適化するように自動的に構成される。送電線の安全な動作を即座に排除しないパケットエネルギ伝送動作のための限界のセットが構成され、セット内の各限界は、送電線と直列又は並列のインピーダンス、デジタル電力システムの動作効率及び/又は電圧若しくは電流信号インテグリティに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する。送電線の動作が測定され、及び測定値が限界と比較される。限界の少なくとも1つが超過されるとき、何れの限界が超過されたかに基づいて、変更された限界のセットが自動的に構成される(又は新しい構成が生成される)。測定、比較及び再構成は、許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は所定の時間限界が超過されるまで繰り返される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の送電チャネルであって、各送電チャネルは、それぞれの送電線上のパケットエネルギ伝送を管理する、1つ又は複数の送電チャネルを含むデジタル電力システムにおける、安全、効率及びレジリエンスから選択される少なくとも1つの要素を最適化するパケットエネルギ伝送動作パラメータのセットを自動的に構成する方法であって、常時安全シーケンスで実行され、
e)前記送電線の安全な動作を即座に排除しないパケットエネルギ伝送動作のための限界のセットを構成するステップであって、前記セット内の各限界は、以下のパラメータ:前記送電線と直列又は並列のインピーダンス、前記デジタル電力システムの動作効率及び電圧又は電流信号インテグリティの少なくとも1つに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する、ステップと、
f)前記送電線の前記動作の特性を測定し、且つ測定値を前記限界と比較するステップと、
g)前記限界の少なくとも1つが超過されるとき、何れの限界が超過されたかに基づいて、変更された限界のセットを自動的に構成するステップと、
h)許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は所定の時間限界が超過されるまで、(b)及び(c)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記限界が超過されるとき、前記送電線の前記動作を停止するステップと、
前記変更された限界のセットが構成された後、前記送電線の前記動作を再開するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更された限界のセットは、前記限界の少なくとも1つが超過された後に構成され、前記送電線の動作は、前記少なくとも1つの超過された限界が所定の最大値だけ超過されていない限り、中断されない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変更された限界のセットの前記構成を所定の期間だけ遅延させて、前記限界のセットが1回又は複数回通過されることを確認することを可能にするステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変更された限界のセットを、以前の限界値、最近の測定値又は両方に少なくとも部分的に基づいて計算するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
それぞれの限界のセットは、少なくとも、バイアスなしのサンプル期間中の電圧低下の限界と、バイアスありのサンプル期間中の電圧低下の限界とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧低下限界は、前記送電線の線間抵抗の所定の範囲が前記デジタル電力システムの検出能力内であることを確実にするように構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の時間限界は、前記限界の少なくとも1つが超過される大きさに応じた計算値である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数の送電チャネルであって、各送電チャネルは、それぞれの送電線上のパケットエネルギ伝送を管理する、1つ又は複数の送電チャネルを含むデジタル電力システムにおける、安全、効率及びレジリエンスから選択される少なくとも1つの要素を最適化するパケットエネルギ伝送動作パラメータのセットを自動的に構成する方法であって、常時安全シーケンスで実行され、
a)構成された限界に適合し、且つ安全なパケットエネルギ伝送動作を即座に排除しない前記送電線の動作のために、制御装置及び測定装置の少なくとも1つを構成するステップであって、各限界は、以下のパラメータ:前記送電線と直列又は並列のインピーダンス、前記デジタル電力システムの動作効率及び電圧又は電流信号インテグリティの少なくとも1つに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する、ステップと、
b)パケットエネルギ伝送動作中に前記送電線の特性を測定し、且つ測定値を前記限界と比較するステップと、
c)前記限界の少なくとも1つが超過されるとき、何れの限界が超過されたか、及び以前に構成されたか又は新たに構成されたかの何れかの限界との適合性に基づいて、前記制御装置及び前記測定装置の少なくとも1つの新しい構成へと自動的に構成するステップと、
d)許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は故障のために動作が許容され得ないと判断されるまで、(b)及び(c)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記限界が超過されるとき、パケットエネルギ伝送動作を停止するステップと、
前記制御装置及び測定装置の前記少なくとも1つの前記新しい構成が構成された後、前記動作を再開するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御装置及び測定装置の前記少なくとも1つの前記新しい構成は、前記既存の限界の少なくとも1つが超過された後に構成され、パケットエネルギ伝送動作は、前記既存の限界が所定の期間又は所定の値を超えて超過されていない限り、継続する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記制御装置及び測定装置の前記少なくとも1つの前記新しい構成の前記構成を所定の期間だけ遅延させて、前記デジタル電力システムにおける安全、効率及びレジリエンスを向上させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置及び測定装置の前記少なくとも1つの前記新しい構成は、前記構成及び前記測定装置による測定の少なくとも1つに基づく計算の結果として構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記制御装置及び前記測定装置の前記少なくとも1つの各構成は、前記送電線が通電されていないときに行われる前記測定のための少なくとも1つのサンプル期間中、前記送電線に適用される少なくとも1つのバイアスレベルを再構成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記制御装置及び前記測定装置の前記少なくとも1つの各構成は、前記測定のためのサンプル期間の長さを再構成することを含み、前記再構成は、前記送電線が通電を停止されているときに行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
サンプル期間の前記長さは、期間全体の長さを再構成することなく再構成され、期間全体は、連続するサンプル期間及び伝送期間を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル期間の前記長さは、前記送電線が前記送電線の前記動作において同じデューティサイクル又は異なるデューティサイクルの何れかで通電される伝送期間の再構成と共に再構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの制御装置及び測定装置の各構成は、異なるセンサの構成、ハードウェア又はソフトウェアフィルタの構成、少なくとも分解能、トポロジ及び速度を含む異なるアナログ-デジタル変換構成の構成並びに解析に使用するためのサンプルの異なるサブセットの構成の少なくとも1つを再構成することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電システム安全保護装置、例えば停電又は安全上の危険が生じた場合、特に、個人が、露出した導体と接触した場合、電力を検出及び切断するための電子モニタリングを備える配電システムに関する。本発明は、一般的な配電及び具体的な例として例えば電気自動車の充電、電気通信又は代替エネルギ電力システムに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
下記の背景技術の説明は、開示される本発明から得られた後知恵を反映している場合があり、これらの特徴は、必ずしも先行技術と認められない。
【0003】
デジタル電力又はデジタル電気は、電力がエネルギの離散的な制御可能ユニットで分配される任意の電力フォーマットとして特徴付けることができる。パケットエネルギ伝送(PET)は、新しいタイプのデジタル電力プロトコルであり、米国特許第8,068,937B2号明細書(Eaves‘937号)、米国特許第8,781,637B2号明細書(Eaves‘637号)及び国際公開第2017/139289A1号パンフレットのEaves‘289号に開示されている。
【0004】
従来のアナログ電力システムと比較したデジタル電力伝送システムの主な区別要因は、電気エネルギが離散的なユニットに分離され、エネルギの個別ユニットを、安全、効率、レジリエンス、制御又はルーティングの最適化の目的のために使用され得るアナログ及び/又はデジタル情報に関連付け得ることである。PETシステムでは、エネルギが離散的な数量又は量で伝送されるため、これを「デジタル電力」又は「デジタル電気」と呼ぶことができる。
【0005】
Eaves‘637号に記載されているように、電源コントローラ及び負荷コントローラは、送電線によって接続される。Eaves’637号の電源コントローラは、周期的に送電線を電源から絶縁(切断)して、少なくとも送電線絶縁直前及び直後に電源コントローラ端子に存在する電圧特性を解析する。送電線が絶縁されている期間は、Eaves‘637号では「サンプル期間」と呼ばれており、電源が接続されている期間は、「伝送期間」と呼ばれる。サンプル期間前、その間及びその後の送電線の電圧の上昇及び低下速度から、その送電線上に異常な状態が存在するかどうかがわかる。測定可能な異常には、短絡回路、高い送電線抵抗又は送電線に不適正に接触した個人の存在が含まれるが、これらに限定されない。
【0006】
Eaves‘637号は、電源及び負荷コントローラ間で送電線によって送信され得る、安全性をさらに向上させるか又はエネルギ伝送の全体的特長、例えば全体的エネルギ若しくは負荷コントローラ端子における電圧を提供するデジタル情報も記載している。電力のために使用されるものと同じデジタル送電線上での1つの通信方法は、米国特許第9,184,795B2号明細書(Eaves‘795号)にさらに記載及び詳述されている。
【0007】
デジタル配電システムの1つの応用は、システムの電源側から負荷側にデジタルフォーマットにより、上昇した電圧で直流(DC)電力を安全に分配することである。
【0008】
米国特許第9,853,689B2号明細書(Eaves‘689号)は、様々な構成のEaves‘637号の電源側のコンポーネントの、デジタル送電器と呼ばれる装置へのパッケージングを記載している。
【0009】
米国特許第9,419,436B2号明細書(Eaves‘436号)は、様々な構成のEaves‘637号の負荷側のコンポーネントの、デジタル受電器と呼ばれる装置へのパッケージングを記載している。
【0010】
米国特許第9,893,521B2号明細書(Lowe‘521号)は、パケットエネルギ伝送を用いて、デジタル電力ネットワーク内で複数の電源及び複数の負荷を安全に接続する概念を紹介している。電力制御素子(PCE)の概念は、Lowe 2014号でデジタル電力ネットワーク内の主コンポーネントとして紹介された。
【0011】
米国特許出願公開第2018/0313886A1号明細書(Mlyniec‘886号)は、デジタル電線のインテグリティを検証する方法を記載しており、これは、サンプル期間中に送電線にバイアスを加える方法、第一及び第二の送電線でのそれぞれのサンプル期間の開始時点を同期させる方法並びに他の方法を含む。
【0012】
米国特許第10,714,930B1号明細書(Weiss‘930号)は、配電システム内の送電線のインピーダンスを測定するための搬送波検出の利用を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、パケットエネルギ伝送のための動作パラメータのセットを自動的に構成する方法及び装置が説明され、この装置及び方法の様々な実施形態は、後述の要素、特長及びステップの幾つかを含み得るか又は全てを含み得る。
【0014】
本明細書では、デジタル電力システムにおける安全、効率及びレジリエンスの要素の1つ以上を最適化するパケットエネルギ伝送動作パラメータのセットの自動構成の方法が記載される。デジタル電力システムは、1つ又は複数の送電チャネルを含む。各送電チャネルは、それぞれの送電線上のパケットエネルギ伝送を管理し、この方法は、「常時安全」シーケンスで行われる。方法は、送電線の安全な動作を即座に排除しない送電線の動作のための限界のセットを構成するステップを含み、各限界は、以下のパラメータ:送電線と直列又は並列のインピーダンス、デジタル電力システムの動作効率、電圧信号インテグリティ又は電流信号インテグリティの少なくとも1つに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する。動作中の送電線の特性が測定され、且つこれらの限界と比較される。限界の1つが超過されたとき、何れの限界が超過されたかに基づいて新しい限界のセットが自動的に構成される。測定し、新しい限界を構成するプロセスは、許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は所定の時間限界が超過されるまで繰り返される。
【0015】
後述の方法は、以前のEaves‘637号及びMlyniec‘886号の研究をもとに、デジタル電気故障検出に関する動作範囲を、感電及び火災の安全を損なうことなく自動的に最大にする新規な方法に焦点を当てることによって成り立っている。デジタル電気システム内に存在し得る幾つかの変数、例えば送電線にどの程度の線間静電容量があるかなどは、静的方法が使用された場合に正確な測定、制御及び限界評価において課題となる。
【0016】
デジタル電力又はデジタル電気は、離散的で制御可能なエネルギユニットで電力が分配される何れの電力フォーマットによっても特徴付けることができる。デジタル電気システムは、周期的に送電線を電源及び負荷の両方から絶縁して、故障又は人体と送電ワイヤとの接触の可能性を反映するアナログ線特性を解析する。線故障の検出には、送電線の電圧、電流又はその両方の周期的な測定が含まれる。電源と負荷との間の距離等のシステムパラメータは、変化するため、これらの測定、手法及び限界は、パフォーマンス能力を最大にしながら、常に安全な動作を確保するために適応される。本開示の方法は、これらの測定に適用される測定装置及び限界の自動範囲設定を通して適応型の要求事項を満たし、安全を損なわずに性能を最大にするために使用され得る。
【0017】
本明細書では、パケットエネルギ伝送の実行中、送電線故障を特定する際に使用される測定に適用される限界及び測定装置の自動範囲設定の方法が説明される。方法及びこの方法を実行するための装置の各種の実施形態は、後述の要素、特徴及びステップの幾つかを含み得るか又は全てを含み得る。
【0018】
第一の方法において、パケットエネルギ伝送動作の初期限界のセットが構成され、ある限界が超過されると、その送電線への給電が停止され、(パケットエネルギ伝送が止められ、送電線への出力が中断される)、超過された限界に基づいて新しい限界のセットが自動的に構成される。限界が構成され、送電線の電力が回復した後、プロセスは、人体の感電及び電気火災のリスクを防止するという安全動作要件を犠牲にすることなく、適切な限界のセットが見つかるまで繰り返される。
【0019】
第二の方法では、初期の動作限界のセットが構成され、パケットエネルギ伝送動作は、1つ又は複数の限界が超過されるまで継続され、超過されると、送電線への電力を中断することなく1つ又は複数の限界が再構成される。動作しながら限界を再構成するプロセスは、適当な構成が特定されるまで、又は安全動作が確保される最大期間が超過されるまで繰り返され、その時点で送電線への電力が中断される。
【0020】
第三の方法では、初期の動作パラメータのセットが構成され、ある限界が超過されると、常時安全シーケンスで変更後の動作パラメータのセットが自動的に構成される。この動作パラメータの再構成は、動作が限界超過によって停止された後に行われるか又は動作中に行われ得る。これには、新しい限界も構成されることが必要又は不要であり得る。
【0021】
常時安全物品の概念は、本明細書では、常に全ての合理的な動作条件下において、ある選択された安全規格を満たすように設計されたものを指す。例えば、設計者が、安全の定義を、IEC 60479-1のDC-4領域の閾値を超えないようにすることによる心室細動の回避であると選択した場合、DC-4領域が全ての合理的時動作条件下で超過されることがなければ、その場合にのみ、ある物品が常時安全となる。全ての合理的動作条件への言及は、本明細書では、予測不能な天災、極端な破局故障モード及び他のイベント等、確率的に起こりにくい事象を除く条件を指すために使用される。IEC 61508は、例えば、動作条件を評価する際に考慮される事象に関する幾つかの指針が規定されている。「常時」とは、極端に高い成功確率として使用され、前記確率の評価条件及びその許容可能閾値も、選択された安全規格によって定義される。IEC 62368-1等の安全規格の場合、試験対象装置に故障を生じさせ、その装置が依然として所定の安全水準を維持するかを評価することが典型的である。
【0022】
Mlyniec‘886号で教示されているように、バイアスをかけた測定を、バイアスをかけない測定と組み合わせて実行し、有効な送電線間インピーダンスを計算することができ、この場合、このインピーダンスは、特にリンギングが抑えられ、電源コントローラと負荷コントローラとの間の電圧差が無視できる程度である場合、少なくとも電源コントローラの正の出力16及び電源コントローラの負の出力23に接続された並列抵抗器及びコンデンサを含む。限界は、これらの計算されたインピーダンス値に直接適用することができる。これらの値は、最後に取得した測定値で更新することが可能であり、常に最新の値が使用される。
【0023】
本開示の方法は、測定値、手法、限界又はそれらの何れかの組合せの再構成を、非自動的手段を通して実行することができる公知の既存の技術から拡張したものである。例えば、これらの非自動的手段は、人による手作業での装置の再構成及び/又はこれらの様々な測定、手法、限界若しくはそれらのあらゆる組合せを取得/実行/実装するための異なる物理的デバイスの使用を含み得る。同様の例において、これらの非自動的手段は、ある人がこれらの測定、手法、限界又はそれらのあらゆる組合せを再構成するために送信するソフトウェアコマンドを含み得る。今後、これらの開示される方法を通して、これらの再構成を実行するために自動的手段を利用することにより、動作の大幅な改善を実現することができる。
【0024】
高い送電線間静電容量は、Mlyniec‘886号で教示されているように、線間抵抗低下の効果を隠すことがあり得る。この高い静電容量は、正しいシステム構成内及び不良構成を通して様々な方法で存在し得る。一例として、送電線理論では、ケーブル内の2つの導体は、相互静電容量を有することが知られている。この静電容量は、多くの場合、単位長さごとに表現される(例えば、ピコファラド毎フィート)。あるケーブルの長さが増大すると、総静電容量が増大する。これらの線間減衰限界を超えた場合、電源コントローラには、それ以前に考えられたものより高い又は低い静電容量があり得ることが示唆され、電源コントローラは、この相違が、ケーブルの長さがより長いか又はより短いことに起因し得ると結論付けることができる。
【0025】
他の例では、Lowe‘521号に記載されているように、PETシステム内の同じ送電器に複数の受電器が接続され得る。これらの受電器の各々は、
図1にコンデンサ(C
2)9として示されているように、より多くの静電容量を含むため、これらの受電器は、並列に追加されてより大きい静電容量を生成し得る。これらの高くなった線間静電容量で動作するようにシステムを構成した場合、より低い静電容量レベルでの理想的な動作ができなくなる可能性があり、少なくとも、その理由は、バイアスが強すぎる可能性があるか、又は測定及び限界が、敏感すぎる可能性があることである。本開示の方法を使用することにより、高い線間静電容量のこれらの効果を、それが送電線、複数の受電器又は他の何れの手段に起因するかを問わずに克服して、ユーザが介入することなく、様々な取り得る構成範囲にわたる動作を可能にし得る。
【0026】
要約すれば、デジタル電力システム内での故障検出の点で安全な配電のための動作範囲は、人体の感電の安全も電気火災の安全も損なうことなく、自動的に最大化することができる。自動範囲設定は、多くの方法で実現され得、例えば測定装置の再構成、異なる技術の使用、前回の測定に基づく異なる限界のセットの構成及び過去の測定に基づく新しい限界のダイナミックな計算等であり、必ずしも動作を止める必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】デジタル電気システムのある実施形態のブロック図である。
【
図3】測定値が予想範囲から外れたときに動作が停止する場合のPET波形を示す。
【
図4】
図3と異なる限界のセットを使用して動作をエラーなく再開することができる場合のPET波形を示す。
【
図5】故障を生じることなく新しい限界を使用するように動作を適応させることができる場合のPET波形を示す。
【
図6】新しい限界への適応によって測定値が予想範囲から外れたときに動作を停止しなければならない場合のPET波形を示す。
【
図7】故障を生じることなく異なるバイアスを使用することによって動作を適応させることができる場合のPET波形を示す。
【
図8】故障を生じることなくデューティサイクルを再構成することによって動作を適応させることができる場合のPET波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面では、同様の参照文字は、異なる図を通して同じ又は類似の部品を指す。図面は、必ずしも正しい縮尺によるとは限らず、代わりに後述の例の特定の原理を図解することに重点が置かれている。文章(単語、参照文字及び/又は数字)を含む図面について、文章を含まない図面の別のバーションも本開示の一部と理解されるものとし、このような文章を含まない正式な差し替え用図面にそれが置き換えられ得る。
【0029】
本発明の各種の態様の上述及び他の特徴及び利点は、本発明のより広い範囲内の様々な概念及び特定の実施形態に関する以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。上記で紹介し、後により詳細に論じる主題の各種の態様は、多くの方法の何れによっても実装され得、これは、その主題が何れの特定の実装方法にも限定されないためである。特定の実装及び用途の例は、主に例示を目的として提供される。
【0030】
本明細書において特に別段の定義、使用又は特徴付けがなされない限り、本明細書で使用される用語(技術用語及び専門用語を含む)は、関連する技術分野に関するそれぞれの許容される意味と矛盾しない意味を有すると理解されるものとし、本明細書でそのように明確に定義されない限り、理想化された又は過剰に正式な意味で解釈されないものとする。
【0031】
本開示において、ある要素が他の要素の「上にある」、それに「接続される」、「連結される」、それと「接触している」等と述べられる場合、それは、そうではないと明記されない限り、他方の要素の直接上にあるか、それに接続されるか、それに連結されるか若しくはそれと接触するか又は介在する要素が存在し得る。
【0032】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的とし、例示的な実施形態を限定しようとするものではない。本明細書で使用される限り、「1つの(a)」及び「1つの(an)」等の単数形は、文脈上そうでないことが示されない限り、複数形も含むことが意図される。加えて、「包含する」、「包含している」、「含む」及び「含んでいる」という用語は、明記された要素又はステップの存在を明示するが、1つ又は複数の他の要素又はステップの存在又は追加を排除しない。
【0033】
最初に、Eaves‘637号及びMlyniec‘886号に記載された代表的なデジタル電力システムが
図1に示されている。システムは、電源1と少なくとも1つの負荷2とを含む。PETプロトコルは、動作スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24によって開始されて、電源1を送電線77及び78から周期的に切断する。スイッチが開(非導通)状態であるとき、線は、絶縁ダイオード(D
1)4及びダイオード(D
2)37により、負荷2にあり得る蓄積エネルギからも絶縁される。他の実施形態では、本明細書に記載の方法を実施する際に1つのスイッチを開閉し得、且つ/又は1つのダイオードを絶縁し得る。さらに、1つ又は複数のダイオードを使用するとき、1つ又は複数の制御可能な双方向又は単方向ソリッドステートスイッチを使用することができる。
【0034】
Eaves‘637号では、D1及びD2の代わりに使用することができる代替的なスイッチの幾つかのバージョンが提供されており、本明細書に記載の方法で使用された場合、何れのバージョンでも同じ結果を得ることができる。コンデンサ(C3)5は、回路の負荷側のエネルギ蓄積要素を表す。
【0035】
送電線77及び78は、固有の送電線間(又はクロスライン)抵抗(R4)6及び静電容量(C1)7を有する。PETシステムアーキテクチャには、Eaves‘637号に記載されているように、追加の線間抵抗(R3)8及び静電容量(C2)9が追加される。スイッチ3が開かれた瞬間には、C1及びC2は蓄積された電荷を有しており、これはR4及びR3の相加値に反比例する速度で減衰する。静電容量(C3)5は、絶縁ダイオード(D1)4の逆阻止作用により、抵抗R3及びR4を通して放電しない。コンデンサ(C1及びC2)に含まれる電荷の量は、それを通した電圧に比例し、電源-コントローラの負の出力23に関して、電源コントローラ18によって電源-コントローラの正の出力16において、且つ負荷-コントローラの負の入力79に関して、負荷コントローラ19によって負荷-コントローラの正の入力17において測定することができる。
【0036】
Eaves‘637号に記載されているように、C
1及びC
2に蓄積されたエネルギの減衰速度は、送電線77及び78上のクロスライン故障の存在を示すことができる。Eaves‘637号で提示されている正常な動作と故障の違いが
図2に示されている。
【0037】
当技術分野では一般的な追加の要素がこのシステムに組み込まれる。電源コントローラ18は、スイッチ(S7)27及びスイッチ(S8)28を二次的保護として使用し、1つのコンポーネントが故障した場合、例えばスイッチ(S1)3が短絡によって故障した場合に切断することができるようにする。これらの二次的スイッチS7及びS8は典型的には、動作が開始されると故障がない限り閉じたままである。以下のプリチャージ回路コンポーネント、すなわち抵抗器(R1)10、抵抗器(R6)26、スイッチ(S2)11及びスイッチ(S6)25により、電流制限ソフトスタート機能が使用可能となる。電流制限アース-グランドバランスは、抵抗器(R7)31、抵抗器(R8)32及び抵抗器(R9)33によって提供される。これらの高い抵抗値は、R9を通したアース-グランド障害電流を電流制限しながら、R7及びR8のための合致するインピーダンス値を使用することにより、高電圧の電源端子に関してアースグランド34を中心結合する。
【0038】
別のフェイルセーフ保護も存在する。スイッチ(S9)36は、フェイルセーフクローバ回路を提供し、これは、電源コントローラ18によって又はEaves‘637号において切断に関して記載されているような他の何れかのモニタ用「ウォッチドッグ」要素によって能動的に無効化される。ヒューズ(F1)29及びヒューズ(F2)30は、標準的な回路保護要素であり、クローバスイッチ(S9)36と共に、主スイッチ3及び24と二次スイッチ27及び28が故障し、電源1にオフにするように命令することができない場合に電源を切断する方法を提供する。
【0039】
抵抗器(R2)12及びスイッチ(S3)13を含むバイアス回路により、Mlyniec‘886号において教示されるように、送電線インテグリティを検証することができる。このバイアス回路は、抵抗器(R5)14及びスイッチ(S4)15を含む他方のバイアス回路と共に、電源コントローラ18と負荷コントローラ19との間のインライン通信に使用され、これはEaves通信特許において教示されている。電源コントローラ18と負荷コントローラ19との間の別の銅線又は光ファイバ通信回線を使用した通信は、通信リンク22によって示されている。同期信号15は、Mlyniec‘886号において教示されているように、送電線インテグリティを改善するための追加手段として複数の電源コントローラの時間同期に使用される。
【0040】
再び
図1を参照すると、スイッチ(S1)3、電源コントローラ18、抵抗器(R
1)10、スイッチ(S2)11、抵抗器(R
3)8、抵抗器(R
2)12、スイッチ(S3)13、スイッチ(S5)24、スイッチ(S6)25、抵抗器(R
6)26、スイッチ(S7)27、スイッチ(S8)28、ヒューズ(F1)29、ヒューズ(F2)30、抵抗器(R
7)31、抵抗器(R
8)32、抵抗器(R
9)33及びスイッチ(S9)36の組合せを送電器20と呼ぶことができる。スイッチ(S4)15、抵抗器(R
5)14、負荷コントローラ19、ダイオード(D
1)4、コンデンサ(C
2)9、コンデンサ(C
3)5及びダイオード(D
2)37の組合せを受電器21と呼ぶことができる。
【0041】
第一の方法において、Eaves‘637号において教示されているように、サンプル期間中の電圧低下率がチェックされて、それが起こるのが速すぎるか又は遅すぎるかが評価される。Mlyniec‘886号において教示されているように、バイアスがかけられているサンプル期間中の電圧低下速度は、所定の最大及び所定の最小値と比較される。これら2つの動作の結果に基づいて、電源コントローラ18は、線間静電容量の量が、所定の最小値又は所定の最大値の何れが超過されたかに応じて、それ以前に考えられていたものより大きい又は小さい可能性があると結論付けることができる。電源コントローラ18は、線間静電容量が、以前に予想されたものより大きいか又は小さいと結論付けた場合、電源コントローラ18は、より最適化された動作が可能となるような行動を実行することができる。
【0042】
電源コントローラ18は、より最適化された動作が可能となるような行動を幾つかの方法で実行することができる。電源コントローラ18は、この新しい距離範囲内で最小線間抵抗故障が常に確実に検出されるように最適化された別の所定の最小値及び所定の最大値のセットを構成することができる。電源コントローラ18は、かけられるバイアスの量を再構成して、それが静電容量の影響に、より適切に対抗するようにすることができ、このバイアスが抵抗値、電流源若しくはシンク又は他の何れのバイアス提供手段かを問わない。電源コントローラ18は、デューティサイクル、周期又はその両方を再構成することによってオフ時間を変更し、次に予想される静電容量の量を最適に測定することができるようにし得る。電源コントローラ18は、異なるセンサ、フィルタ、ゲイン、バイアスオフセット、ACカプリング、ADC分解能及びハードウェア再構成、ファームウェア再構成又はその両方によって信号品質を最大にするための他の既知の方法を使用して、次に予想される静電容量範囲において最適な測定を実現することができる。
【0043】
例えば、電源コントローラ18は、電源-コントローラの負の出力23に関して電圧検知のために設計された回路を使用することによって点16で電圧を測定する。電圧センサとして使用される回路の設計において、ハードウェアコンポーネントを構成する際に、入力信号レベル、所望の出力信号、予想される信号対ノイズ比及び他の制約が考慮される。入力信号が小さい電圧レベル範囲を有することが予想される場合、これは、出力信号対ノイズ比を最大にするゲインを有するように設計され得る。このように構成されたゲイン値を有するこの回路は、入力信号範囲が大きくなると動作しない。回路がこのより大きい入力信号範囲をサポートするように設計される場合、入力信号範囲が小さいときの信号対ノイズ比が低くなり、誤った測定が行われることになり得る。そのため、異なる予想動作範囲に対応するために複数の電圧センサ回路が実装される場合、電源コントローラ18は、何れの限界が超過されたかに基づいて、使用すべき最適なセンサを決定することができる。
【0044】
他の例では、送電器20は、既知のハードウェア又はソフトウェアフィルタリング実装を使用することにより、信号対ノイズ比を改善することができる。フィルタを使用する場合、信号の一部が、それが誤った結論を導く程度まで変化され得る。例えば、60Hz未満の周波数のみを通過させるローパスフィルタは、120Hzでノイズがある場合に改善された信号対ノイズ比を提供することができるが、このローパスフィルタは、所望の信号が240Hzの周波数を有することが予想される場合には受け入れられず、それは、この周波数もフィルタによって低下されるためである。送電器20がフィルタを実装することができる1つの方法は、電圧センサの入力又は出力上におけるものである。例えば、電源コントローラ18は、フィルタを用いずに又は信号の周波数コンテンツの大部分を通過させるフィルタを用いて動作を開始することができる。信号インテグリティが低いことから超過される可能性のある限界に基づいて、電源コントローラ18は、所望の信号に影響を与えずに、識別されたノイズを標的とするフィルタを構成することができる。このフィルタ実装は、既知の手法を用いて、代わりにソフトウェアでも実現され得る。
【0045】
他の例では、電源コントローラ18は、最適化のために異なるアナログ-デジタル変換(ADC)パラメータを構成することができる。ADC回路は、様々な方法で構成され得、これには、少なくとも速度、分解能及びトポロジの構成が含まれる。高速化により、同じ時間でより多くのサンプルを取ることができるが、このような高速化はノイズの増大と分解能の低下の原因となり得る。分解能の増大により、信号のより小さい変化を区別し得るが、このような分解能の増大は、より多くのノイズ及びエラー並びに低速化の原因になり得る。例えば、2.56Vの最大信号をサポートするように設計された場合、ADCは8ビット分解能で0.01Vの小さい変化を検出することができるが、10ビットの分解能では、このADCは0.0025Vの小さい変化を検出することができる。この10ビット分解能は、典型的には、均等な8ビット分解能と比較して、より低速であり、よりノイズが大きい。速度と分解能の特定の組合せのみをサポートするADCには様々なトポロジがあり、これは、例えば、シグマ-デルタ及び逐次比較型レジスタ(SAR)である。そのため、異なる速度及び分解能が標的とされるため、これらの標的には異なるADCトポロジが必要となり得る。例えば、電源コントローラ18は、高速のADC速度、低い分解能、SARトポロジを用いて動作を開始することを好む可能性がある。ある限界が超過され、それが低分解能の形態で信号インテグリティが低いことを示す場合、電源コントローラ18は、その後の測定に、代わりにより低速を必要とするより高分解能及びシグマデルタトポロジを構成することができる。
【0046】
電源コントローラ18は、Eaves‘637号及びMlyniec‘886号に記載されているPETアルゴリズムに固有の他の再構成を行うことができ、これは例えば、送電線インテグリティ及びサンプル期間評価のために使用される第一のサンプルのタイミングを再構成することによる解析に使用する異なるサンプルサブセットを構成すること、送電線インテグリティの評価に使用するためのサンプルの数を再構成すること、オフ時間の長さを再構成して、周期、デューティサイクル又はその両方を再構成することにより、収集されるサンプルをより多く又は少なくできるようにすること等である。例えば、送電線インテグリティの査定に使用される第一のタイミングは、サンプル期間の開始からより長い時間に設定して、切り替えの影響による波形の不安定部分を回避することができる。この第一のサンプルは、できるだけ長い時間にわたって送電線インテグリティ評価のためのサンプリングデータにより、統計的に最も有意な結果が提供されるのを待つことによってさらに制約される。例えば、サンプリングはサンプル期間の開始にできるだけ近い時点から始めることができる。この第一のサンプルのタイミングを所期の用途におけるシステムの挙動に基づいて構成することはしたがって、設計の選択である。周期が再構成された場合、同期信号15の再構成も必要となり得る。同じ又は異なる故障がその後の試行においても発生した場合、電源コントローラ18は、これらの手順をその実装ハードウェア及びファームウェアの限界まで繰り返すことができる。
【0047】
制御及び測定を最適化するために電源コントローラ18が実行することができるこれらの行動の1つの詳細な例は、バイアスレベルの再構成を含む。このバイアスの実装の一例が
図1において抵抗(R
2)12とスイッチ(S3)13の形態で示されている。この2つのコンポーネントを繰り返して、電源-コントローラの正の出力16と電源-コントローラの負の出力23との間でR
2 12とS
2 13と並列に送電線77及び78に接続することができる。これらのスイッチ(S3)13の独立した制御により、異なるバイアスレベルをかけることができる。この例では、スイッチ(S3)13の組合せが開いているか閉じているかに応じて、3つのバイアスレベルと1つの無バイアスレベルがある。電源コントローラ18がある限界の超過を検出すると、より最適な測定精度が得られる異なるバイアスレベルが構成される。例えば、電圧変化又は電圧の勾配が小さすぎることによってある限界が超過された場合、より低抵抗のバイアスをその後の測定で使用して、よりよい信号対ノイズ比を実現し、それにより精度を高めることができる。限界がどのように定義されたかに応じて、この再構成では使用される新しいバイアスレベルの要素に合わせて限界を調整する必要がある。
【0048】
他の例において、電源コントローラ18が安全、効率及びレジリエンスの要素を最適化し得る場合、サンプル期間の持続時間が再構成される。この例では、電源コントローラ18が限界の超過を検出すると、その後のサンプル期間には異なるサンプル期間の持続時間を使用することができる。例えば、電圧変化又は電圧の勾配が小さすぎることによってある限界が超過された場合、次のサンプル期間により長いサンプル期間を使用することにより、信号対ノイズ比を増大させ、それにより測定の精度を高めることができる。限界がどのように定義されたかに応じて、この再構成では新しい持続時間の要素に合わせて限界を調整する必要がある。
【0049】
上で詳述した、バイアスレベルの再構成とサンプル期間の長さの再構成を含む例のどちらにおいても、最も極端なバイアスレベル及び最も長いサンプル期間を使用することが常に望ましいとは限らない理由がある。バイアスレベルを再構成する場合、送電線の静電容量を構成されたバイアスレベルに且つそれから充電及び放電する必要があるため、効率が低下し得る。サンプル期間の場合、より長いサンプル期間には、サンプル期間中に負荷への電圧供給を保持するために、より大型でより高価なコンデンサが必要となり得る。何れの場合も、より低電圧から再びオンにすることから生じ得るより大きい過渡電流により、電磁環境両立性の問題が生じ得、それにより過剰なノイズが発生し、電源コントローラ18若しくは負荷コントローラ19又は他の外部デバイスの適正な動作が妨害される。
【0050】
図3は、この第一の方法によって説明されるように、限界のセット間の切り替えの例を示しており、この例では誤った電圧限界が構成された場合の初期試行を示している。この第一のサンプル期間Bでは、減衰の最終電圧は、電圧上限38と電圧下限39との間の予想範囲と比較される。これらの限界は、絶対的な限界又はサンプル期間でそれより前にサンプリングされた点に対する相対的なものであり得るが、絶対限界又は相対量は、伝送期間Aより前に決定される。この例では、サンプル期間Bの最終電圧が電圧限界38及び39内に含まれ、それにより、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24は、再びオンになり、動作を続ける。
【0051】
図3のサンプル期間D中、負のバイアスがかけられる。サンプル期間B中に使用されるものと異なる電圧上限40と電圧下限41を含むセットが使用される。これらの限界も、絶対的な限界又はサンプル期間中のそれ以前の点に対する相対的なものであり得るが、これらの限界は、伝送期間Aより前に決定される。この例において、サンプル期間Dの最終電圧は、予想範囲から外れている。これは、故障があること又は異なる限界のセットを選択しなければならないことを示唆する。その結果、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24はオフのままであり、電源コントローラ18は、次の起動が始まった後に使用すべき新しい限界のセットを構成する。この場合、最終電圧が電圧上限40より高いため、電源コントローラ18は、それ以前に予想されたものより大きい線間静電容量、より小さい線間抵抗又はその両方があり得る。電源コントローラ18は、したがって、それぞれ正常及び負のバイアスがかけられたサンプル期間B及びDの両方のためにより高い限界を構成する。
【0052】
図4は、
図3に示された試行の終了後の、そのような後続の試行を示す。
図4では、同じ信号が示されているが、電圧限界42~45は
図3のそれぞれの限界38~41に関して高くなっている。
図4のサンプル期間Bは、最終電圧が依然として電圧上限42と電圧下限43との間の予想範囲内に含まれることを示しているが、最終電圧は、したがって、電圧下限39が使用される
図3における以前のものより電圧下限43に近付いている。
図4のサンプル期間Dは、最終電圧が電圧上限44及び電圧下限45によって与えられる新しい予想範囲内に含まれることを示す。その結果、電源コントローラ18は、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24は再びオンになり、動作を続けることができる。
【0053】
第二の方法において、バイアスがかけられないサンプル期間中の電圧低下速度を使用して、次のバイアスがかけられるサンプル期間中の許容可能な最小及び許容可能な最大電圧低下速度を計算するすることができる。バイアスがかけられるこの次のサンプル期間は、その低下率をこれらの許容可能な最小及び許容可能な最大値と比較して、動作を継続し得るか否かを判断する。動作を継続し得る場合、バイアスがかけられた状態で最後に測定された電圧低下速度を用いて、バイアスがかけられない次のサンプル期間中の電圧低下の許容可能な最小及び許容可能な最大速度を計算することができる。これをこのように交互に継続して、何れの時点においても、故障がすでに存在し、それが交互のバイアスの使用によって検出されない状態で電源コントローラ18が許容可能な限界を設定することがないことを確実にすることができる。
【0054】
バイアスがかけられる場合とかけられない場合[例えば、抵抗器12及びスイッチ13を介する]の限界間の関係は、既知の電気回路解析法を用いて計算することができる。一例では、抵抗器12がバイアスとして使用される場合、回路は、電気工学で一般的であるように、RC減衰回路として表現され得る。この回路は、ある時点での合成等価線間静電容量を通した電圧を、合成等価線間静電容量を通した初期電圧、合成等価線間抵抗及び合成等価線間静電容量に関係付ける既知の関係を示す。等価線間静電容量には、コンデンサ7、コンデンサ9及び並列であり得る他の何れかの静電容量が含まれる。等価線間抵抗は、抵抗器8、抵抗器6及び並列であり得る他の何れかの抵抗、例えば線間故障抵抗を含む。この式は、線間静電容量と並列に組み合わされる既知のバイアス抵抗器12の値がある場合及びない場合に形成され得、その結果、2つの未知数、すなわちバイアス抵抗器12を除く合成等価線間抵抗と合成等価線間静電容量を含む2つの式が得られ、これらの2つの未知数は代数手段によって解かれる。したがって、この2つの式のセットにより、代数操作は、故障試験のための限界と比較される所望の項、例えば線間抵抗及び静電容量等のためのこの2つの式セットを構成することができる。この代数操作の結果としてこれらの限界を構成する際の主要な動機は、ゼロと明示された上側閾値との間の抵抗範囲がゼロより大きい全ての静電容量値について構成された限界を常に超過することが数学的に保証されるのを確実にすることである。同様の手法は他の形態のバイアス、例えば定電流源又は定電流シンクにも適用することができる。この場合、限界がパルス-パルスベースで再構成される場合、このバイアスは、パルス-パルスベースで再構成され得、且つ信号品質を最大にし得る。同じオフ時間内にバイアスを再構成して信号品質を改善すること、同じオフ時間内に情報を得た上で決定を下すために必要な全ての測定値を得ること又はその両方も可能であろう。
【0055】
図5は、この第二の方法の例を示しており、限界が電圧勾配限界(ボルト毎秒)と比較してチェックされ、これらの限界がパルス-パルスベースで再定義される。サンプル期間Bにおいて、電源コントローラは、電圧勾配上限47と電圧勾配下限48で示されるように、勾配の予想範囲として使用すべき限界の初期推定を行う。この例において、実際の電圧勾配46は、その範囲内に含まれなかった。電源コントローラ18は、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24が再びオンになり、後の時点で2回目のチェックを行えるようにし、これは負のバイアスがかけられるサンプル期間D内に行われる。電圧勾配49がチェックされるときまでに、電源コントローラ18は、サンプル期間Bからの実際の電圧勾配46を用いて、電圧勾配上限50と電圧勾配下限51によって与えられるサンプル期間Dの予想範囲を計算する。この例では、実際の電圧勾配49は50及び51でマークされるこの予想範囲に含まれる。電源コントローラ18はその結果、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24を再びオンにし、また別のサンプル期間Fに続き、そこでは、サンプル期間Bと同様に、バイアスがかけられない。電圧勾配52がチェックされるときまでに、電源コントローラ18は、サンプル期間Dからの実際の電圧勾配49を用いて、電圧勾配上限53と電圧勾配下限54によって与えられる、サンプル期間Fの予想範囲を計算する。故障が存在せず、信号がサンプル期間Bから大きくは変化せず、電圧勾配限界の数学的計算が正しくい場合、電源コントローラ18は、実際の電圧52が53及び54によってマークされる予想範囲内にあると結論を下し、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24を再びオンにできるようにする。動作条件及び故障のない状態が続く限り、動作は、伝送期間C、サンプル期間D、伝送期間E及びサンプル期間Fで示されるシーケンスで続けられ、最終的にユーザの介入又は他の手段によって停止される。
【0056】
図6は、
図5と同じアプローチを示しているが、クロスライン故障が存在している。
図6では、サンプル期間は初期チェックを示しており、そこでは電源コントローラ18は、初期予想範囲を確定し、これはそれぞれ
図5の電圧勾配上限47と電圧勾配下限48と同じであり得る電圧勾配上限56と電圧勾配下限57によって与えられる。この場合、実際の電圧勾配55は、クロスライン故障が存在するため、電圧勾配下限57よりかなり低い。電源コントローラ18は、スイッチ(S1)3とスイッチ(S5)24を再びオンにして、サンプル期間Dでのその後のチェックにおいて結果を検証する。電圧勾配58がチェックされるときまでに、電源コントローラ18は、サンプル期間Bからの実際の電圧勾配55を使用して、電圧勾配上限59と圧勾配下限60によって与えられるサンプル期間Dの予想範囲を計算する。この例では、クロスライン故障のために、実際の電圧勾配58は依然として電圧勾配上限及び下限59及び60によってマークされる予想範囲の境界から外れる。これらの限界59及び60が計算されており、それにより最小の線間抵抗故障が常に検出されるため、この2回目のチェックで不合格となったことは、電源コントローラ18に対して、クロスライン抵抗故障があり得ることを示唆し、電源コントローラ18は、規格及び他の安全ガイドラインによって規定されているように、電源コントローラ18が故障の存在を再びチェックすることができるようになるまで、送電線77及び78への電力が中断されたままにする。
【0057】
第一及び第二の方法の要素をミックスした変形形態も実施され得る。例えば、第一の方法で一定の限界のセットを使用するアプローチを、送電線77及び78に印加される電圧をオフにせずにこれらのセットを再構成することと組み合わせて使用することができ、あるセットは、バイアスがかけられないサンプル期間と、バイアスがかけられるサンプル期間との両方の上限及び下限を提供する。あるセットが再構成されるとき、4つの限界全てが同時に再構成され、電源コントローラ18が事前に故障を検出しない限り、少なくとも次の2つのサンプル期間に使用される。電源コントローラ18が、その境界から外れるサンプル期間を検出するときには常に、これは、次に、あり得るインターバルで使用される限界のセットを再構成するためにフラッグをセットすることができる。最後の3つのサンプル期間の2つにその上限及び下限から外れる信号がある場合、電源コントローラ18は、故障があると判断し、故障が解消されるまで再びオンにしない。理想的には、電源コントローラ18は、次の限界のセットを再構成する前に第二の方法で述べた計算方法と同じ計算を行い、使用すべき理想セットを推定する。代替的に、電源コントローラ18が新しい限界のセットが必要であると判断すると、電源コントローラ18は限界のセットを順番に実行することができ、依然として最後の3つのサンプル期間の2つが所定の限界から外れていればオフにするというロジックに従う。
【0058】
実行する方法を選択する中で、動作電圧及びあり得る故障電流を考慮することが重要である。より高い電圧、より長い伝送期間又はその両方で、心室細動(VF)のリスクから、多数のパルスが生成されるようにすることは、許容不能であり得る。この場合、第二の方法は、使用可能な解決策でない場合がある。これらのVFのリスクが許容できる程度に低い場合、アップタイムと信頼性を高めるために第二の方法が優先され得る。
【0059】
第三の方法では、動作パラメータは自動的に、常時安全シーケンスで安全、効率及びレジリエンスの要素の1つ以上を最適化するように構成することができる。限界が超過されると、電源コントローラ18は、故障によって動作を停止した後又は動作中の何れかで新しい動作パラメータを構成することができ、これには、実装に応じて新しい限界も必要となり得る。新しい動作パラメータを用いて、測定された信号は、制御を実行するか、又は信号に新しい効果を生じさせるか若しくは信号の品質を改善するための異なる測定手法を提供するかの何れかによって変更される。
【0060】
図7は、バイアスの大きさが、故障のない常時安全シーケンスでの動作を最適化するようにバイアスの大きさを適応させ得る例を示す。図の第一のサンプル期間Bで、負のバイアスがかけられ、その結果、実際の電圧勾配61は電圧勾配上限62と電圧勾配下限63によって確定される許容可能な範囲より低い。このように実際の電圧勾配61が許容可能な範囲より低くなるまで低下するのは様々な要因、例えばクロスライン抵抗故障が存在すること又はクロスライン静電容量が予想より低いこと等により得る。電源コントローラ18は、スイッチ(S1)3及びスイッチ(S5)24を再びオンにして、サンプル期間Dでのその後のチェックで結果を検証する。実際の電圧勾配64は電圧勾配限界65及び66に含まれるため、電源コントローラ18は、重大なクロスライン抵抗故障がないと特定し得る。電源コントローラ18は、その後のサンプル期間Fでより大きさの小さいバイアスを使用することができる。このように小さいバイアスにより、電圧低下はサンプル期間Bと比較してより小さくなり、それにより電磁環境両立性、信頼性及び効率を改善する電流スパイクの減少並びに心室細動のリスクを増大させる心臓への累積的効果の原因となり得るより低い電圧閾値がさらに回避されること等の利点が提供される。サンプル期間Fで、より小さい大きさのバイアスによって実際の電圧勾配67は限界68及び69の許容可能範囲内に入る。この新しいバイアスの大きさは、常時安全シーケンスで進むための新しい電圧勾配限界の計算をリトリガし、限界68及び69、限界71及び72又は両方の限界ペアを再構成することによって実現することができる。
【0061】
図8は、サンプル期間の持続時間を常時安全シーケンスで適応させ得る例を示す。第一のサンプル期間Bでは、減衰の最終電圧は、限界73及び74間の予想範囲から外れ得る。これは、クロスラインインピーダンス故障によるものであり得るが、これは、例えば、低い信号対ノイズ比によるものであり得、それは、信号が小さい予想範囲からわずかに外れる原因となる。電源コントローラは、スイッチ(S1)3及とスイッチ(S5)24を再びオンにして、その後のサンプル期間Dではより長いサンプル期間を実行する。より長いサンプル期間により、電圧変化がより大きくなると予想される。信号対ノイズ比のこのような増大により、より高い精度の測定及び故障限界比較が電源コントローラによって行われて、実際に故障があるかが確認されるようにすることができる。最終電圧が限界75及び76間の予想範囲内に含まれる場合、
図8ら示されるように、電源コントローラは再びより短い持続時間のサンプル期間に戻って、システム性能パラメータの中でも効率を向上させることができる。
【0062】
バイアスの大きさを適応させることとサンプル期間の持続時間を適応させることのこれら2つの例のどちらにおいても、これらの適応は、チェックされる限界が再構成されないように実行することができる。例えば、チェックされる限界として電圧勾配又は電圧の大きさを比較する代わりに、電源コントローラはチェックされる限界にクロスラインインピーダンスを使用することができる。このクロスラインインピーダンス限界は、これらの動作変更に基づいて変更する必要のない限界に設定することができる。例えば、人体のインピーダンスで利用可能なデータに基づいて、構成された統計的分布内の全ての人体が検出範囲内に含まれるように限界を設定することができる。したがって、限界は再構成する必要がなく、代わりに動作変更が測定値からの計算に組み込まれる。計算速度、計算精度及びコンポーネントの選択中に当業者が一般的に評価する他の制約の形の十分なサポートを有する電源コントローラは、新しいバイアスレベル又は新しいサンプル期間の持続時間を測定されたクロスラインインピーダンスのその計算内に組み込むことができる。
【0063】
概要、派生及び範囲
これらの同じ手法は、それが電源コントローラに適用されたのと同じ方法で負荷コントローラに適用され得る。例えば、負荷コントローラは、送電線の動作の測定を行い、通信リンク22を用いて電源コントローラに対してデジタル電力伝送を継続し得るか否かを示すことができる。
【0064】
これらの同じ手法は、電圧の代わりに電流を解析することによって実行され得る。例えば、オフ時間中に2つの異なるバイアス抵抗器からの電流を用いて、回路内の送電線間静電容量及び他の送電線間抵抗を推定して、故障があるか否かを特定し得る。これらの測定、バイアス又はその両方は、より小さい又はより大きい送電線間静電容量が推定されるのに応じて適切に増減することができる。
【0065】
第二の方法で説明した限界での初期推定は、幾つかの方法で設定され得る。初期推定を行う1つの方法の一例は、ファームウェア又は同様の手段を介して電源コントローラ内で一定のデフォルトを設定することである。他の例は、この初期推定を幾つかの事前試験に基づいて、例えば過去の動作又は起動モードから設定することである。この起動モードでは、電圧を安全レベルに保持することができるか、又はこの安全閾値より高く、且つ本格稼働中に使用されるピークレベルより低い電圧レベルで反応するために、より長い時間を提供することができる。より長い時間が与えられた場合、本明細書に記載されるか又は当業者に知られている手法を用いて較正を行い、例えばクロスライン静電容量及び抵抗を推定して、限界の初期推定を計算することができるようにし得る。
【0066】
図5及び
図6において、電圧勾配限界は線形の傾斜として示されている。これらの限界を設定するための他の方法は、上限及び下限の各々についての曲線及び他の非線形関数であり得る。例えば、RC-減衰式には、指数関数減衰である電圧と時間との関係があることが知られている。この関数は、上限及び下限の計算に使用され得る。
【0067】
説明した送電線間抵抗故障検出の全ての方法において、電圧低下速度は、限界と直接比較することができる。電圧低下速度の直接比較の代わりに又はそれに加えて、電圧低下速度は、抵抗及び静電容量を含む送電線間インピーダンスを示す値を計算するために使用され得、限界値がこれらのインピーダンス値に適用される。
【0068】
送電線間インピーダンス故障検出の場合、インピーダンスを測定するための他の既知の方法を使用することができる。例えば、Weiss‘930号で開示されている搬送波変化検出方式を用いて送電線間インピーダンスを特定し得る。したがって、これを使用して限界を設定し、本明細書に記載の自動範囲設定方式を使用することができる。
【0069】
限界の再構成は、本明細書では、プロセッサによって実行される自動動作として記載される。これに関して、特に別段の断りがない限り、「構成する」、「再構成する」という用語は特定のメモリ位置から特定の値をロードする条件付きロジックを指し得るが、初期デフォルト値がロードされる際等、条件なしロジックブランチも指し得る。
【0070】
コンピュータ実装
コントローラ18及び19は、制御アルゴリズムを実行するためのマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス又は他の適当なデジタル回路構成等のロジックデバイスを含むコンピュータの形態であり得、本開示のシステム及び方法は、コンピューティングシステム環境で実装され得る。このシステム及び方法との使用に好適であり得る、よく知られたコンピューティングシステム環境及びそのコンポーネントの例には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルド又はラップトップデバイス、タブレットデバイス、スマートフォン、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラム可能な民生用電子機器、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステム又はデバイスの何れかを含む分散型コンピューティング環境などが含まれるが、これらに限定されない。ロジックデバイスのコンポーネントには、コンピュータプロセッサ、メモリとして機能するコンピュータ可読記憶媒体及びメモリを含む各種のシステムコンポーネントをコンピュータプロセッサに連結するシステムバスが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0071】
方法は、メモリに記憶された非一時的コンピュータ実行可能命令、例えばプログラムモジュールにアクセスするコンピュータプロセッサを介して実行され得る。一般に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実行するか、特定の種類のデータを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等が含まれる。方法は、分散型コンピューティング環境でも実施され得、この場合、タスクは、通信ネットワークを通してリンクされたリモート処理装置によって実行される。
【0072】
本明細書において実施形態を説明する際、明瞭を期して具体的な用語が使用されている。説明を目的として、具体的な用語は、少なくとも、同様の結果を実現するために同様の方法で動作する技術的及び機能的均等物を含むことが意図される。加えて、特定実施形態が複数のシステム要素又は方法ステップを含む幾つかの例において、これらの要素又はステップは、1つの要素又はステップに置き換えられ得る。同様に、1つの要素又はステップは、同じ目的にかなう複数の要素又はステップに置き換えられ得る。さらに、様々な特性のパラメータ又は他の値が実施形態に関して本明細書で明示される場合、これらのパラメータ又は値は、特に別段の明記がない限り、1/100、1/50、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2、2/3、3/4、4/5、9/10、19/20、49/50、99/100等だけ上下に(若しくは1、2、3、4、5、6、8、10、20、50、100等の係数で上方に)又はその丸め概算により若しくは明示されたパラメータの上下の上述の変量の何れかまでの範囲内で調整することができる(例えば、明示されたパラメータが100であり、変量が1/100である場合、パラメータの値は、0.99~1.01の範囲内であり得る)。さらに、参照しやすいように連続する接頭文字が追加されているか否かを問わず、特定の順序で方法が説明される場合及びステップ/ステージが説明される場合、別段の明記又は用語及び語句からの黙示がない限り、そのステップ/ステージは、それらが説明されている順序に時間的に限定されると解釈されないものとする。
【0073】
本教示に適合する追加の例を以下の番号の付与された項目に記す:
1.1つ又は複数の送電チャネルであって、各送電チャネルは、それぞれの送電線上のパケットエネルギ伝送を管理する、1つ又は複数の送電チャネルを含むデジタル電力システムにおける、安全、効率及びレジリエンスから選択される少なくとも1つの要素を最適化するパケットエネルギ伝送動作パラメータのセットを自動的に構成する方法であって、常時安全シーケンスで実行され、
a)送電線の安全な動作を即座に排除しないパケットエネルギ伝送動作のための限界のセットを構成するステップであって、セット内の各限界は、以下のパラメータ:送電線と直列又は並列のインピーダンス、デジタル電力システムの動作効率及び電圧又は電流信号インテグリティの少なくとも1つに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する、ステップと、
b)送電線の動作の特性を測定し、且つ測定値を限界と比較するステップと、
c)限界の少なくとも1つが超過されるとき、何れの限界が超過されたかに基づいて、変更された限界のセットを自動的に構成するステップと、
d)許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は所定の時間限界が超過されるまで、(b)及び(c)を繰り返すステップと
を含む方法。
2.限界が超過されるとき、送電線の動作を停止するステップと、
変更された限界のセットが構成された後、送電線の動作を再開するステップと
をさらに含む、第1項の方法。
3.変更された限界のセットは、限界の少なくとも1つが超過された後に構成され、送電線の動作は、その少なくとも1つの超過された限界が所定の最大値だけ超過されていない限り、中断されない、第1項の方法。
4.変更された限界のセットの構成を所定の期間だけ遅延させて、限界のセットが1回又は複数回通過されることを確認することを可能にするステップをさらに含む、第3項の方法。
5.変更された限界のセットを、以前の限界値、最近の測定値又は両方に少なくとも部分的に基づいて計算するステップをさらに含む、第3項又は第4項の方法。
6.それぞれの限界のセットは、少なくとも、バイアスなしのサンプル期間中の電圧低下の限界と、バイアスありのサンプル期間中の電圧低下の限界とを含む、第1~5項の何れか一項の方法。
7.電圧低下限界は、送電線の線間抵抗の所定の範囲がデジタル電力システムの検出能力内であることを確実にするように構成される、第6項の方法。
8.所定の時間限界は、限界の少なくとも1つが超過される大きさに応じた計算値である、第1~7項の何れか一項の方法。
9.1つ又は複数の送電チャネルであって、各送電チャネルは、それぞれの送電線上のパケットエネルギ伝送を管理する、1つ又は複数の送電チャネルを含むデジタル電力システムにおける、安全、効率及びレジリエンスから選択される少なくとも1つの要素を最適化するパケットエネルギ伝送動作パラメータのセットを自動的に構成する方法であって、常時安全シーケンスで実行され、
a)構成された限界に適合し、且つ安全なパケットエネルギ伝送動作を即座に排除しない送電線の動作のために、制御装置及び測定装置の少なくとも1つを構成するステップであって、各限界は、以下のパラメータ:送電線と直列又は並列のインピーダンス、デジタル電力システムの動作効率及び電圧又は電流信号インテグリティの少なくとも1つに基づく測定及び計算の少なくとも1つのための制約を規定する、ステップと、
b)パケットエネルギ伝送動作中に送電線の特性を測定し、且つ測定値を限界と比較するステップと、
c)限界の少なくとも1つが超過されるとき、何れの限界が超過されたか、及び以前に構成されたか又は新たに構成されたかの何れかの限界との適合性に基づいて、制御装置及び測定装置の少なくとも1つの新しい構成へと自動的に構成するステップと、
d)許容可能な動作範囲が識別されるまで、又は故障のために動作が許容され得ないと判断されるまで、(b)及び(c)を繰り返すステップと
を含む方法。
10.限界が超過されるとき、パケットエネルギ伝送動作を停止するステップと、
制御装置及び測定装置の少なくとも1つの新しい構成が構成された後、動作を再開するステップと
をさらに含む、第9項の方法。
11.制御装置及び測定装置の少なくとも1つの新しい構成は、既存の限界の少なくとも1つが超過された後に構成され、パケットエネルギ伝送動作は、既存の限界が所定の期間又は所定の値を超えて超過されていない限り、継続する、第9項の方法。
12.制御装置及び測定装置の少なくとも1つの新しい構成の構成を所定の期間だけ遅延させて、デジタル電力システムにおける安全、効率及びレジリエンスを向上させるステップをさらに含む、第11項の方法。
13.制御装置及び測定装置の少なくとも1つの新しい構成は、構成及び測定装置による測定の少なくとも1つに基づく計算の結果として構成される、第9~12項の何れか一項の方法。
14.制御装置及び測定装置の少なくとも1つの各構成は、送電線が通電されていないときに行われる測定のための少なくとも1つのサンプル期間中、送電線に適用される少なくとも1つのバイアスレベルを再構成することを含む、第9~13項の何れか一項の方法。
15.制御装置及び測定装置の少なくとも1つの各構成は、測定のためのサンプル期間の長さを再構成することを含み、再構成は、送電線が通電を停止されているときに行われる、第9~14項の何れか一項の方法。
16.サンプル期間の長さは、期間全体の長さを再構成することなく再構成され、期間全体は、連続するサンプル期間及び伝送期間を含む、第15項の方法。
17.サンプル期間の長さは、送電線が送電線の動作において同じデューティサイクル又は異なるデューティサイクルの何れかで通電される伝送期間の再構成と共に再構成される、第15項の方法。
18.少なくとも1つの制御装置及び測定装置の各構成は、異なるセンサの構成、ハードウェア又はソフトウェアフィルタの構成、少なくとも分解能、トポロジ及び速度を含む異なるアナログ-デジタル変換構成の構成並びに解析に使用するためのサンプルの異なるサブセットの構成の少なくとも1つを再構成することを含む、第9~17項の何れか一項の方法。
【0074】
本発明がその特定の実施形態に関して図示され、説明されており、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な置換形態及び変更形態がなされ得ることがわかるであろう。さらに、他の態様、機能及び利点も本発明の範囲に含まれ、必ずしも本発明の全ての実施形態が前述の利益の全部を実現するか又は特徴の全部を有する必要はない。さらに、本明細書で1つの実施形態に関して述べられたステップ、要素及び特徴は、他の実施形態に関しても同様に使用され得る。本文全体を通して引用された参照文献、論文記事、特許、特許出願等を含む参考文献の内容は、あらゆる目的のために参照によってその全体が本明細書に援用され、これらの参考文献及び本開示からの実施形態、特徴、特徴付け及び方法のあらゆる適当な組合せは、本発明の実施形態に含まれ得る。さらに、背景の項で明示されたコンポーネント及びステップは、本開示の一部であり、本発明の範囲内で本開示の何れかの箇所に記載されているコンポーネント及びステップと共に又はその代わりに使用することができる。
【国際調査報告】