(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】生産物の抗炎症反応を特徴づけるための方法、キットおよび組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240311BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240311BHJP
A61K 35/50 20150101ALN20240311BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
C12Q1/02
A61K35/50
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558703
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022021614
(87)【国際公開番号】W WO2022204330
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362548
【氏名又は名称】オルガノジェネシス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】モーリー,ケイティ,シー.
(72)【発明者】
【氏名】キマーリング,ケリー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】バーネット,ミランダ,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】カマ―,メアリー,ローズ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BB20
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4B063QA01
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4C087BB58
4C087ZB11
(57)【要約】
羊膜由来材料を定量化ないし標準化する方法、および、特定の疾患または状態が羊膜由来材料を用いた治療に反応するかどうかを決定する方法が必要である。
そこで本発明は、生産物の抗炎症活性を定量するための方法であって、前記生産物または前記生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;前記生産物または前記生産物由来の前記物質を、前記試験システムで第1の期間培養すること;前記生産物または前記生産物由来の前記物質が、活性化された細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;および前記生産物の値を前記生産物に関連付けること、を含む方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産物の抗炎症活性を定量するための方法であって、
前記生産物または前記生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;
前記生産物または前記生産物由来の前記物質を、前記試験システムで第1の期間培養すること;
前記生産物または前記生産物由来の前記物質が、活性化された細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;および
前記生産物の値を前記生産物に関連付けること、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記生産物または前記生産物由来の物質が、抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、付加的な前記生産物の値を生成すること、および
付加的な前記生産物の値を前記生産物に関連付けること、を含む方法。
【請求項3】
前記生産物が、羊膜由来生成物、および羊膜懸濁液同種移植片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生産物由来の前記物質が、前記生産物から生成された条件培地、および、前記生産物から生成された条件培地から単離された因子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試験システムが、間葉系間質細胞株、および、活性化可能な表現型を保持する形質転換ヒト滑膜細胞株からなる群から選択される細胞株を含むインビトロのシステムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試験システムの前記細胞または組織を活性化因子と第2の期間接触させることによって、前記活性化された細胞または組織を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化因子が、IL-1β、TNF-α、およびIL-1βとTNF-αの両方の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症誘発性メディエーターが、IL-lαおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻止因子、オンコスタチンM、IL-8、IL-17、およびIL-18からなる群から選択されるサイトカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗炎症メディエーターが、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長メディエーターI、および線維芽細胞成長メディエーターからなる群から選択されるサイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
生産物の抗炎症活性を標準化する方法であって、
前記生産物または前記生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;
前記生産物または前記生産物由来の前記物質を、試験システムを使って第1の期間培養すること;
前記生産物または前記生産物由来の前記物質が、活性化細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;
生産物の値を参照値と比較して標準値を確定すること;および
標準値を生産物と関連付けること、を含む方法。
【請求項11】
前記試験システムの活性化された細胞または組織に標準を添加すること;
前記標準を、前記試験システムを使って第1の期間培養すること;および
前記標準が前記活性化された細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、参照値を生成すること、によって参照値が確定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、さらに、
前記生産物または生産物由来の物質が、抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、付加的な生産物の値を生成すること;
前記付加的な生産物の値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を確定すること;および
前記付加的な標準値を生産物に関連付けること、を含む方法であり、
ここでは、前記試験システムの活性化された細胞または組織に標準を添加すること;
前記標準を試験システムで第1の期間培養すること;および、前記標準が前記活性化された細胞または組織からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して付加的な標準値を生成すること、
によって、前記付加的な標準値が確定される。
【請求項13】
前記生産物が、羊膜由来生成物および羊膜懸濁同種移植片からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記生産物に由来する物質が、生産物から生成された条件培地、および、生産物から生成された条件培地から単離された因子からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記試験システムが、間葉系間質細胞株、および活性化可能な表現型を保持する形質転換ヒト滑膜細胞株からなる群から選択される細胞株を含むインビトロのシステムである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記試験システムの細胞または組織を活性化因子と第2の期間接触させることによって、前記活性化された細胞または組織を生成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化因子が、IL-Iβ、TNF-α、およびIL-IβとTNF-αの両方からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症誘発性メディエーターが、IL-lαおよびIL-Iβ、TNF-α、IL-6、白血病阻止因子、オンコスタチンM、IL-8、IL-17、およびIL-18からなる群から選択されるサイトカインである、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記抗炎症メディエーターが、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-lra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長メディエーターI、および線維芽細胞成長メディエーターからなる群から選択されるサイトカインである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
被験体への生産物の投与に先立ち、被験体への前記生産物の投与が被験体に抗炎症効果を生じさせる可能性があるかどうかを判定する方法であって、
試験システムの活性化された細胞または組織に生産物または生産物由来の物質を添加すること;
前記生産物または生産物由来の物質を前記試験システムで第1の期間培養すること;
前記生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;
前記生産物の値を参照値と比較して標準値を確定すること;および
前記標準値を閾値と比較して、標準値が閾値以上である場合、被験体に抗炎症効果が生じる可能性が高くなるようにすること、を含む方法。
【請求項21】
標準を前記試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;
前記標準を前記試験システムで第1の期間培養すること;および
前記標準が前記活性化された細胞または組織からの炎症誘発性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して参照値を生成すること、によって参照値が確定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記生産物または生産物由来の物質が、抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、付加的な生産物の値を生成すること;
前記付加的な生産物の値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を確定し、付加的な標準値が閾値以上である場合、被験体に抗炎症効果が生じる可能性が高くなること、
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記試験システムの活性化された細胞または組織に標準を添加すること;
前記標準を前記試験システムで第1の期間培養すること;および
前記標準が前記活性化された細胞または組織からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して付加的な参照値を生成すること、
によって前記付加的な参照値が確定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生産物が、羊膜由来生成物および羊膜懸濁同種移植片からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記生産物に由来する物質が、前記生産物を培養培地中で培養することによって生成される条件培地、および、前記生産物を培養培地中で培養することによって生成される条件培地から単離される因子からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記試験システムが、間葉系間質細胞株および活性化可能な表現型を保持する形質転換ヒト滑膜細胞株からなる群から選択される細胞株を含むインビトロのシステムである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記試験システムの細胞または組織を活性化因子と第2の期間接触させることによって、前記活性化された細胞または組織を生成するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化因子が、IL-Iβ、TNF-α、およびIL-IβとTNF-αの両方からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記炎症誘発性メディエーターが、IL-lαおよびIL-Iβ、TNF-α、IL-6、白血病阻止因子、オンコスタチンM、IL-8、IL-17、およびIL-18からなる群から選択されるサイトカインである、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記抗炎症メディエーターが、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-lra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長メディエーターI、および線維芽細胞成長メディエーターからなる群から選択されるサイトカインである、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関節疾患は、関節の軟部組織、軟骨、および軟骨下骨が侵される変性疾患である。関節疾患の2つの典型的な形態は、関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA)である。滑膜関節を構成する軟骨、腱、および骨の不可逆的細胞傷害は、RAおよびOAの両方の特徴である。OAは3000万人以上の米国人が罹患している。RAおよびOAは、生体力学的、生化学的および遺伝的因子が関与する緩徐進行性疾患である。これらの経路はそれぞれ、軟骨基質を破壊し、軟骨細胞における代謝反応を変化させることにより、軟骨におけるRAおよびOAの損傷の一因となりうる。早期疾患において、軟骨細胞は、一過性の増殖反応、初期の修復の試みとしての軟骨基質の合成増加、および、異化性サイトカインと基質分解酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)、アグリカナーゼ、PA、カテプシンを含む)の合成増加を示す。プロテオグリカンの局所的消失およびII型コラーゲンの開裂は、最初は軟骨表面で起こり、病変の進行とともに軟骨基質の水分量の増加および引張強度の減少をもたらす。関節軟骨の破壊を引き起こすサイトカイン、特に炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1βおよび腫瘍壊死因子(TNF)-α、の中心的な役割は、この分野で十分に確立されている。生物学的には、炎症性サイトカインであるIL-IβおよびTNF-αはMMPとともに、関節破壊が見られる原因となる。
【0002】
軟骨はプロテオグリカンとII型コラーゲンで構成されている一方、腱と骨は主にI型コラーゲンで構成されている。RAが全身のあらゆる多数の関節を苦しめる自己免疫疾患であるのとは対照的に、OAは少数の関節で発症し、通常は常習的な酷使または怪我に起因する。どちらの疾患でも、IL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインが、細胞外基質のすべての成分を分解し得る酵素であるMMPの産生を刺激する。MMP-1とMMP-13は、コラーゲン分解の過程を律速するため、RAとOAにおいて重要な役割を果たしている。MMP-1は主に関節を満たす滑膜細胞によって産生され、MMP-13は軟骨に存在する軟骨細胞の産物である。その他のMMP-2、MMP-3およびMMP-9といったMMPの発現も関節炎で上昇し、これらの酵素は関節の非コラーゲン基質成分を分解する。
【0003】
関節組織への好中球およびマクロファージの浸潤がない場合でも、炎症性サイトカインのレベルの上昇がRAおよびOAの滑液で測定されている。炎症作用に関与するサイトカインの産生源は完全には解明されていないが、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞および軟骨細胞が潜在的な源である。
【0004】
炎症は骨の治癒過程においても重要な役割を果たす。特にTNF-αは、骨折血腫内の初期炎症性サイトカインのひとつであり、初期濃度上昇は骨折部位への間葉系間質細胞(MSC)の漸増に必須である。高濃度の炎症性サイトカインへの長期曝露は、骨治癒に有害となりうる。例えば、IL-1βおよびTNF-αに長期曝露した後のラットの中足骨の培養において、軟骨細胞増殖の低下およびアポトーシスの増加が観察されている。またTNF‐αへの高い曝露は、骨芽細胞の石灰化を減少させ、破骨細胞形成を増加させ、マウスモデルにおいてより高い非癒合率をもたらすことが示されている。いくつかの研究では、TNF‐αおよびIL‐1βの抑制効果が、IL‐1受容体拮抗薬(IL‐1Ra)およびIL‐1またはTNF‐αの抑制剤による治療によって、軽減されうることが示されている。
【0005】
変性椎間板環境では、TNF-αおよびIL-1の両方が、増加したレベルで存在することが報告されている。変性椎間板における炎症性IL-1βおよびTNF-αのレベルの増加は、環境を異化状態に導く可能性がある。さらに、これらの炎症性サイトカインの存在下で、IVD細胞はマクロファージに対する化学誘引物質を産生し、さらに、椎間板における重要な同化因子である、著しく下方抑制した成長分化因子5を産生する。椎間板の髄核部分の大部分は脊椎固定術中に取り除かれるが、このプロセスは完全ではなく、脊椎固定術のアプローチによって異なる。特に、腰椎経椎間孔椎体間固定術(TLIF)を用いた椎間板調製中には、椎間板の70~80%のみが除去されることがわかっている。加えて、線維輪は脊椎固定術中に完全には除去されず、椎間板腔の炎症環境が部分的に残存することを示唆している。MSCやマクロファージを含む、様々な細胞型が、骨の癒合を活発にする炎症反応において役割を果たしている。
【0006】
MSCは近年、特に骨治癒において、免疫調節の細胞型と認識されている。MSCの免疫抑制活性は、TNF-αによって活性化される核内因子κB経路を介して媒介されることが示されている。最近の研究では、特定のToll様受容体(TLR)への曝露が、MSCを炎症性または抗炎症性表現型に分極化することが示されている。これらの活性化されたMSCは、骨折後のTNF-αおよびIL-1βの減少において役割を果たすことが示され、より良い再生転帰につながっている。最近の研究はまた、骨治癒におけるMSC-マクロファージ間クロストークの重要性を示し、MSCがインビトロでマクロファージの炎症誘発反応を抑制することを示している。特に、免疫調節はMSC細胞治療のための主要な作用機序の一つであると考えられ、MSCが骨治癒において果たす役割を強調している。
【0007】
サイトカインと成長因子は関節組織内で産生され、滑液中に放出され、それらはオートクラインーパラクライン様式で常在細胞に作用する。これらのサイトカインと成長因子の多くは正常なホメオスタシスに低レベルで必要であるが、これらの因子が増加した量で産生されるか、または時間的に制約されない方法で産生される場合、それらはRAとOAの発症の一因となる可能性がある。主な炎症性サイトカイン(一般には異化性である)には、IL-1αおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチンM、IL-8、IL-17、およびIL-18が含まれるが、これらに限定されない。滑膜細胞(膝関節の内層を覆う滑膜の細胞)は、IL-1β、TNF-α、およびMMPを産生することが示されている。さらに、滑膜細胞は炎症性サイトカインや他の炎症性細胞によって産生される他の炎症性シグナルにも反応しうる。
【0008】
また抗炎症性サイトカインは、産生されると、炎症性サイトカインの作用を打ち消すことがある。これらの抗炎症性サイトカインには、プロテアーゼ阻害剤(マトリックスメタロプロテアーゼ3、TIMP-3など)、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1ra、およびインターフェロン(IFN)-γが含まれるが、これらに限定されない。加えて、形質転換成長因子(TGF)-β/骨形成蛋白質(BMP)ファミリーのメンバー、インスリン様成長因子I、および線維芽細胞成長因子(FGF)は、炎症および軟骨破壊の影響に対抗する可能性のある基質蛋白質の合成を促進するため、軟骨の主要な同化因子であると考えられている。炎症過程におけるサイトカインの役割をさらに複雑にしているのは、数種のサイトカインが、炎症促進および抗炎症作用の両方を有する可能性がある。これらのサイトカインには、IL-1ra、IL-6、およびTGF-βが含まれるが、これらには限定されない。
【0009】
炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインは治療的介入のための有望な標的を提供するが、この技術は、RAおよびOAを含むがこれらに限定されない関節疾患の治療に有効な、さらなる治療療法を必要としている。羊膜由来材料の使用は、関節疾患(RAおよびOAを含むがこれらに限定されない)の治療、および、炎症反応のダウンレギュレーションの過程を含む関連疾患および症状の治療に有望であることを示している。しかしながら、羊膜由来材料はヒトの出発物質に由来するため、多くの場合、羊膜由来材料の治療効果(例えば、炎症反応をダウンレギュレートする能力など)は供給者によって異なり、同じ供給者からの生産物であっても異なっている。さらに、羊膜由来材料を含む製品を標準化することは困難であり、特定の疾患または症状が羊膜由来材料を含む生産物を用いた治療に反応するかどうかを決定することは困難である。
【0010】
結果として、様々な疾患および状態の治療のための羊膜由来材料の品質と一貫性を管理する必要性が依然としてある。この技術は、羊膜由来材料を定量化ないし標準化する方法、および、特定の疾患または状態が羊膜由来材料を用いた治療に反応するかどうかを決定する方法が必要である。本開示は、これらおよび他の満たされていないニーズに対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、関節疾患などの、しかしこれらに限定されない、ヒト疾患および状態における抗炎症反応をモデル化する抗炎症反応を産生するように最適化されたモデルシステムの使用に関する。本開示モデルシステムは、本明細書に開示される様々な方法で使用することができる。
【0012】
従って、特定の非限定的な実施形態において、本開示は、生産物、特に治療用生物学的生産物の抗炎症作用を決定するための試験方法、組成物、およびキットを提供する。特定の非限定的な実施形態において、本開示は、少なくとも1つの炎症性サイトカインないし少なくとも1つの抗炎症性サイトカインの産生ないし活性に対する、生産物、特に治療用生物学的生産物の効果を決定するための試験方法、組成物、およびキットを提供する。
【0013】
特定の非限定的な実施形態において、本開示は、少なくとも1つの炎症性サイトカインないし少なくとも1つの抗炎症性サイトカインの産生ないし活性に対する生産物の作用を決定することにより、生産物、特に治療用生物学的生産物の抗炎症作用を定量するための試験方法、組成物、およびキットを提供する。
【0014】
特定の非限定的な実施形態において、本開示は、少なくとも1つの炎症性サイトカインないし少なくとも1つの抗炎症性サイトカインの産生ないし活性に対する生産物の作用を決定することにより、生産物、特に治療用生物学的生産物の抗炎症作用を標準化するための試験方法、組成物、およびキットを提供する。
【0015】
特定の非限定的な実施形態において、本開示は、生産物の被験体への投与に先立って、生産物の被験体への投与が被験体に抗炎症作用を生じさせる可能性があるか否かを決定するための試験方法、組成物、およびキットを提供する。
【0016】
このような試験方法、組成物、およびキットは、炎症のある状態を患っているか、または患っている可能性のある被験者が、生産物、特に治療用生物学的生産物によってうまく治療されるかどうかを決定するために、使用することができる。
【0017】
特定の実施形態において、本開示は、生産物の抗炎症活性を定量する方法に関するものであり、その方法は以下を含む:生産物または生産物由来の物質を、試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;生産物または生産物由来の物質を試験システムで第1の期間培養すること;生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;および、生産物の値を生産物と関連付けること。いくつかの実施形態において、本方法はさらに以下を含む:生産物または生産物に由来する物質が、抗炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、付加的な生産物の値を生成すること;および、付加的な生産物の値を生産物と関連付けること。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、生産物の抗炎症活性を標準化する方法に関するものであり、その方法は以下を含む:生産物または生産物由来の物質を、試験システムの活性化された細胞または組織に添加すること;生産物または生産物由来の物質を試験システムで第1の期間培養すること;生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、生産物の値を生成すること;生産物の値を参照値と比較して標準値を決定すること;および、標準値を生産物に関連付けること。
【0019】
本方法のいくつかの実施形態において、参照値は以下により決定される:試験システムで活性化された細胞または組織に参照値を添加すること;標準を試験システムで第1の期間培養すること;および、標準が活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、参照値を生成すること。いくつかの実施形態において、本方法はさらに以下のステップを含む:生産物または生産物由来の物質が、抗炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、付加的な生産物の値を生成するステップ;付加的な生産物の値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定するステップ;および、付加的な標準値を生産物に関連付けるステップ。ここで、付加的な標準値は以下によって決定される:標準を試験システムで活性化された細胞または組織に添加すること;第1の期間、標準を試験システムで培養すること;そして、標準が活性化された細胞または組織からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、付加的な標準値を生成すること。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、生産物の被験体への投与に先立って、生産物の被験体への投与が被験体に抗炎症作用を生じさせる可能性があるか否かを決定する方法に関するものであり、その方法は以下を含む:生産物または生産物由来の物質を、試験システムで活性化された細胞または組織に添加すること;生産物または生産物由来の物質を試験システムで第1の期間培養すること;生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、生産物の値を生成すること;生産物の値を参照値と比較して標準値を決定すること;および、標準値が閾値以上である場合、被験体に抗炎症効果が生じる可能性が高くなるよう、標準値を閾値と比較すること。
【0021】
本方法のいくつかの実施形態では、参照値は以下によって決定される:試験システムの活性化された細胞または組織に標準を添加すること;第1の期間、試験システムで標準を培養する;および、参照値を生成するために、標準が活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定すること。いくつかの実施形態において、本方法はさらに以下を含む:生産物または生産物由来の物質が抗炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定し、付加的な生産物の値を生成すること;付加的な標準値が閾値以上である場合には、被験体に抗炎症作用が生じる可能性が高くなるよう、付加的な生産物の値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定すること。いくつかの実施形態において、付加的な参照値は以下により決定される:試験システムの活性化された細胞または組織に標準を添加すること;第1の期間、標準を試験システムで培養する;および、標準が活性化された細胞または組織からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激する程度を決定して、付加的な参照値を生成すること。
【0022】
本方法のいくつかの実施形態において、生産物は、羊膜由来生産物、および、羊膜懸濁同種移植片からなる群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、生産物由来の物質は、生産物から生成される条件培地、および、生産物から生成される条件培地から単離される因子、からなる群から選択される。
【0023】
本方法のいくつかの実施形態では、試験システムはインビトロのシステムである。いくつかの実施形態において、このインビトロのシステムは間葉系間質細胞株を含む。いくつかの実施形態において、このインビトロのシステムは活性化可能な表現型を保持する形質転換ヒト滑膜細胞株を含む。いくつかの実施形態において、この細胞株はSW982細胞株である。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法は、試験システムの細胞または組織を活性化因子と第2の期間接触させることによって、活性化された細胞または組織を生成するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、第2の期間とは24時間から96時間である。いくつかの実施形態において、活性化因子は、IL-1β、TNF-α、およびIL-1βとTNF-αの両方を組み合わせたもの、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、活性化因子とは濃度0.25~6ng/mlのIL-1βおよび濃度1~15ng/mlのTNF-αである。
【0025】
本方法のいくつかの実施形態では、第1の期間とは24時間から72時間である。いくつかの実施形態において、本方法は、生産物の値に基づいて、メーカーまたはベンダーが、生産物が使用に適しているかどうかを決定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、生産物の値に基づいて、医療提供者が治療決定を行うステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、生産物の値、付加的な生産物の値、または生産物の値と付加的な生産物の値の両方に基づいて、生産物が使用に適しているかどうかをメーカーまたはベンダーが決定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、生産物の値、付加的な生産物の値、または生産物の値と付加的な生産物の値の両方に基づいて、医療提供者が治療決定を行うステップをさらに含む。
【0026】
本方法のいくつかの実施形態では、炎症性メディエーターとはサイトカインである。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL-1αおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、およびIL-18、からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、炎症性メディエーターとはプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、プロテアーゼとはマトリックスメタロプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、抗炎症メディエーターとはサイトカインである。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長メディエーターI、および、線維芽細胞成長メディエーター、からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗炎症メディエーターとはプロテアーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ阻害剤とはマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤である。
【0027】
以下の図面を例として参照することで、本開示の以下の詳細な説明がよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】細胞の、より高い継代(「古い細胞」)とより低い継代(「新しい細胞」)との比較、細胞密度、およびTNF-αタンパク質レベルに対するウェル条件のランダム化の影響を示すELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;各群n=3。適切なINF細胞条件対照に対するダネットの多重比較検定により、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。高継代とは、継続的に継代された(10回以上)細胞であり、連続保持の間にフラスコ内でコンフルエンシーまたはオーバーコンフルエンシーに達した可能性がある。低継代という用語は、アッセイで使用する前に約1~5回の間に解凍および継代された細胞を指す。
【
図2】TNF-αタンパク質レベルに対するCO
2の影響を示すELISAデータのグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。適切なINF細胞条件対照に対するダネットの多重比較検定により、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図3】TNF-αタンパク質レベルに対する活性化因子濃度の効果を示すELISAデータのグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;各群n=1-3。適切なINF細胞条件対照に対するダネットの多重比較検定により、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図4】100%または50%の羊膜懸濁同種移植片の条件培地の存在下または非存在下での後のTNF-αタンパク質レベルによって示される炎症の減少率のグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;各群n=1-3。適切なINF細胞条件対照に対するダネットの多重比較検定により、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図5】活性化因子による72時間のプライミング後(羊膜懸垂同種移植片条件培地による処理の直前、t0)のTNF-αタンパク質レベルに対する活性化因子の効果を示すELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;各群n=3。適切なAM細胞条件対照に対するダネットの多重比較検定により、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図6】無細胞対照におけるTNF-αタンパク質レベルを表示するELISAデータのグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;NuCel(マサチューセッツ州カントンのOrganogenesisオルガノジェネシス社から入手できるASA)/プールされた陽性対照(PPC)条件培地(CM)は各群n=3;無細胞対照は各群n=1。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す;PはPPCを表す。
【
図7】NuCel CMおよびPPC CMのTNF-αタンパク質レベルの減少率のグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図8】TNF-αタンパク質レベルに対するいくつかの被験物質(TA)TA1、TA2、およびPPC CM処理の効果を示すELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;各群n=3。INF対照に対するダネットの多重比較検定により、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図9】TNF-αタンパク質レベルに対するNuCel CMおよびPPC CM最小用量曲線処理の効果を示すELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;各群n=3。INF対照に対するダネットの多重比較検定により、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す。
【
図10】無細胞対照におけるTNF-αタンパク質レベルを表示するELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;TAI/TA2/PPC CMは各群n=3;無細胞対照は各群n=1。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す;Pはプールされた陽性対照(PPC)を表す。
【
図11】無細胞対照におけるTNF-αタンパク質レベルを表示するELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;NuCel/PPC CMは各群n=3;無細胞対照は各群n=1。AMはアッセイ培地を表す;INFはAM内の活性化因子のみを表す;Pはプールされた陽性対照(PPC)を表す。
【
図12】2つのオペレータ間の
図8および
図9からTNF-αタンパク質レベルに対するPPC CM処理の効果を表示するELISAデータのグラフ表示である。平均±標準偏差が報告されている;各群n=3。AMはアッセイ培地を表す;INFは活性化因子のみを表す。
【
図13】2つのオペレータ間の
図8および
図9からPPC CMのTNF-αタンパク質レベルの減少率を示すELISAデータのグラフ表示である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。INFはAM内の炎症のみを示す。
【
図14】リカバリ対照のTNF-αタンパク質レベルを表示するELISAデータのグラフ表示である。報告された平均;各群n=1。ASAは羊水懸垂同種移植片を表す;CMは条件培地を表す。
【
図15】HFLSモデルにおけるTNF-α,IL-1β,IL-1raに対するASA処理の効果を示す図である。未処理群と比較した対応のあるt検定により、*はp<0.05である。
【
図16A】HIG82モデルにおけるTNF-αに対するASA CMまたは個々の成分処理の効果を示す図である。**=p<0.01***=p<0.001、一元配置分散分析(ANOVA)およびダネットの多重比較検定。斜線の入った棒線はASAの50%CMを示す。AM=炎症性サイトカインまたはASAが添加されていないアッセイ培地のみ;CM=ASA条件培地。
【
図16B】HIG82モデルにおけるTNF-αに対するASA CMまたは個々の成分処理の効果を示す図である。**=p<0.01***=p<0.001、一元配置分散分析(ANOVA)およびダネットの多重比較検定。斜線の入った棒線はASAの50%CMを示す。AM=炎症性サイトカインまたはASAが添加されていないアッセイ培地のみ;CM=ASA条件培地。
【
図17A】SW982モデルにおけるTNF-αに対するASA CMまたは個々の成分処理の効果を示す図である。**=p<0.01***=p<0.001****=p<0.0001、一元配置分散分析(ANOVA)およびダネットの多重比較検定。斜線の入った棒線はASAの50%CMを示す。AM=炎症性サイトカインまたはASAが添加されていないアッセイ培地のみ;CM=ASA条件培地。
【
図17B】SW982モデルにおけるTNF-αに対するASA CMまたは個々の成分処理の効果を示す図である。**=p<0.01***=p<0.001****=p<0.0001、一元配置分散分析(ANOVA)およびダネットの多重比較検定。斜線の入った棒線はASAの50%CMを示す。AM=炎症性サイトカインまたはASAが添加されていないアッセイ培地のみ;CM=ASA条件培地。
【
図18】SWA982モデルにおけるASA処理によるTNF-αレベルの減少率を示す図である。
【
図19A】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCのTNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。各プレート内のテューキーの多重比較検定により、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。
【
図19B】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCのTNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。各プレート内のテューキーの多重比較検定により、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。
【
図20A】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCのTNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。処理細胞(
図19に示すものと同じ塗りつぶされた棒線)と比較した無細胞対照(斜線の入った)におけるTNF-αレベル。報告された平均±標準偏差;各群n=3(塗りつぶされた棒線)、無細胞対照の各群n=1(斜線の入った)。
【
図20B】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCのTNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。処理細胞(
図19に示すものと同じ塗りつぶされた棒線)と比較した無細胞対照(斜線の入った)におけるTNF-αレベル。報告された平均±標準偏差;各群n=3(塗りつぶされた棒線)、無細胞対照の各群n=1(斜線の入った)。
【
図21A】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCについての、炎症のみからのTNF-αタンパク質レベルの減少率を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。
【
図21B】hTERT-adMSCおよびプライマリbmMSCについての、炎症のみからのTNF-αタンパク質レベルの減少率を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。
【
図22】TNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。各プレート内のテューキーの多重比較検定により、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。
【
図23】はTNF-αタンパク質レベルに対するASA処理の効果を示す図である。処理細胞からの上清(
図22に示すものと同じ塗りつぶされた棒線)と比較した無細胞対照(斜線)におけるTNF-αレベル。報告された平均±標準偏差;各群n=3(塗りつぶされた棒線)、各群n=1(斜線の入った棒線)。
【
図24】炎症のみからのTNF-αタンパク質レベルの減少率を示す図である。報告された平均±標準偏差;各群n=3。
【発明を実施するための形態】
【0029】
羊膜由来物質の使用は、関節疾患を含むがそれに限定されない、様々な疾患および状態の治療において有望であることが示されている。特に羊膜由来生産物は、OA、RA、脊椎固定術および骨治癒の治療に使用されている。
【0030】
残念ながら、羊膜由来生産物の治療効果は、少なくとも部分的には羊膜由来生産物間の異なる特性のために、予測が困難である。さらに、羊膜由来生産物の治療的可能性を評価するための標準値に関して、羊膜由来生産物は一般的に標準化されていない。その結果、関節疾患を含むがそれに限定されない、様々な疾患や状態の治療のために、羊膜由来生産物の品質と一貫性を管理する必要性が残っている。
【0031】
本開示は、生産物、特に羊膜由来生産物の活性、好ましくは抗炎症活性を定量化ないし標準化する方法を提供する。その結果、本開示は、本技術の欠点およびニーズに対する解決法を提供する。さらに、本開示は、生産物(特に羊膜由来生産物)を被験体に投与する前に、生産物を被験体に投与したときに抗炎症効果を生じる可能性があるかどうかを決定する方法を提供する。ここに開示された本方法の使用を通じて、本開示は、羊膜由来生産物を含むがこれに限定されない、様々な治療用途のための生産物のより広範な使用を可能にする。
【0032】
試験システムおよび活性化された試験システム
本開示の方法、組成物及びキットでは、様々な試験システムを用いることができる。試験システムは、インビトロの試験システム又はインビボの試験システムであり得る。好ましい実施形態では、試験システムはインビトロの試験システムである。
【0033】
本試験システムは、試験されるべき病態または状態の病理生態学の代表的な細胞または組織から成る。この細胞または組織は、いかなる生命体のものであってもよい。好ましくは、細胞または組織は哺乳類由来のものであり、より好ましくは霊長類由来であり、より好ましくはヒト由来である。例えば、関節疾患を調査するための試験システムの場合、その試験システムは、関節疾患の病理生態学の代表的な細胞または組織を含み得る。1つの実施形態では、その細胞は形質転換細胞株である。別の実施形態では、その細胞は非形質転換細胞株である。1つの実施形態では、試験システムはOAの病理生態学の代表的な細胞株を含み、その試験システムは好ましくはインビトロのシステムである。1つの実施形態では、試験システムはOAの病理生態学の代表的な細胞株を含み、その試験システムは好ましくはインビトロのシステムである。
【0034】
試験システムが関節疾患を調査するために使用される場合、その試験システムは、好ましくは、炎症反応を産生することができる細胞または組織を包含する。試験システムの細胞または組織は、好ましくは、初代の滑膜細胞培養で観察される「活性化可能な表現型」を保持し、これは、細胞または組織が活性化因子で刺激されたときに炎症反応を生じることを意味する。活性化可能な表現型を有する形質転換細胞株の使用は、初代滑膜細胞培養の変動および拡大限界特性がなくても、滑膜細胞に典型的な炎症反応の研究を可能にする。関節疾患の病理生態学の代表的な試験システムで使用される細胞株は、ヒト線維芽細胞様滑膜細胞(HFLS;滑膜組織由来のヒトプライマリ細胞株;Cell Application,Inc.Cat.No.408K-05a)、ヒトマクロファージ様滑膜細胞(HMLS;滑膜組織由来のヒトプライマリ細胞株)、HIG-82(ウサギ滑膜細胞株;ATCCCat.No.CRL-1832;Georgescu et al.,In Vitro Cellular & Developmental Biology,24(10),pages 10151022,1988)、SW982(ヒト滑膜肉腫細胞株;ATCC Cat.No.HTB-93)、初代骨髄由来間葉系幹細胞(bmMSC)およびhTERT不死化adMSC(ASC52telo;hTERT-adMSC)を含む間葉系間質細胞、を含むが、これらに限定されない。
【0035】
試験システムの細胞または組織は、活性化因子によって活性化される。代表的な活性化因子には、ホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)、IL-1βおよびTNF-αが含まれるが、これらに限定されない。活性化可能な表現型を有する細胞または組織が活性化因子で刺激されると、細胞株または組織は、炎症性メディエーターの産生を含む炎症反応を産生することによって応答し、ヒト疾患で観察される炎症反応を模倣する。炎症性メディエーターには、成長因子、サイトカインおよびプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。代表的な炎症性成長因子およびサイトカインには、IL-1αおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17ないしIL-18が含まれるが、これらに限定されない。代表的な炎症性プロテアーゼには、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9および/またはMMP-13などのMMPが含まれるが、これらに限定されない。好ましい炎症性メディエーターには、IL-1β、TNF-α、MMP-1および/またはMMP-13などが含まれるが、これらに限定されない。活性化可能な表現型を有する細胞または組織が活性化因子で刺激されると、細胞株または組織もまた、抗炎症メディエーターの産生を含む抗炎症反応を産生することによって応答し、ヒト疾患で観察される炎症反応を模倣する。抗炎症メディエーターには、成長因子、サイトカインおよびプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。代表的な抗炎症性サイトカインおよび成長因子には、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形態形成タンパク質、インスリン様成長因子Iおよび/または線維芽細胞成長因子が含まれるが、これらに限定されない。代表的な抗炎症性プロテアーゼ阻害剤には、メタロプロテアーゼ阻害剤3(TIMP-3)が含まれるが、これに限定されない。好ましい抗炎症性メディエーターには、IL-1ra、IL-6、および/またはTIMP-3が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
活性化因子は、炎症反応を誘発する任意の濃度で使用することができる。炎症反応は、活性化因子を試験システムに添加した後、1つ以上の炎症性メディエーターの濃度を特定することによって測定することができる。1つの実施形態では、活性化因子は、1つ以上の炎症性メディエーターの最大産生(または最大産生の30%以内)を誘導する濃度で使用される。このような濃度は、活性化因子が試験システムに添加された後の時点(例えば、24時間、48時間、もしくは72時間以上)における用量反応曲線を用いて決定することができる。上述のようないずれの炎症誘発性メディエーターも、観察されて、炎症反応を決定することができる。好ましい実施形態では、IL-1β、TNF-α、MMP-1、および/またはMMP-13が観察される。さらに好ましい実施形態では、TNF-αが観察される。
【0037】
活性化因子は、炎症反応を誘発するのに十分な時間、試験システムで培養され得る。炎症反応は、活性化因子が試験システムに添加された後、1つ以上の炎症性メディエーターの濃度を測定することによって観察することができる。1つ以上の炎症性メディエーターの最大産生(または最大産生の30%以内)を誘発する活性化因子の濃度は、そのような期間を決定するために使用することができる。1つの実施形態において、1つ以上の炎症性メディエーターの最大産生(または最大産生の30%以内)を誘発する期間、活性化因子を試験システムで培養する。このような期間は、活性化因子が試験システムに添加された後、1つ以上の炎症性メディエーターの濃度を経時的に(例えば、24時間、48時間、72時間以上)測定することによって決定することができる。上述のようないずれの炎症性メディエーターも、観察されて、炎症反応を決定することができる。好ましい実施形態では、IL-1β、TNF-α、MMP1、および/またはMMP-13が観察される。さらに好ましい実施形態では、TNF-αが観察される。
【0038】
1つの実施形態では、活性化因子とはTNF-αである。TNF-αが活性化因子である場合、TNF-αは、上述のように炎症反応を誘発する任意の濃度で、試験システムに添加または試験システムと接触され得る。1つの実施形態では、TNF-αは濃度0.1から50ng/mlの範囲で使用される。ある程度の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は、0.1~30ng/ml、0.5~20ng/ml、0.75~15ng/ml、1~15ng/ml、2~10ng/ml、5~15ng/ml、もしくは8~12ng/mlである。別の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は10ng/mlである。
【0039】
TNF-αが活性化因子である場合、TNF-αは、上述したように炎症反応を引き起こすのに十分な期間、試験システムで培養することができる。1つの実施形態では、その期間は12時間から144時間である。ある程度の好ましい実施形態では、その期間は12~120時間、12~96時間、12~72時間、24~72時間、48~72時間、60~80時間、もしくは65~75時間である。別の好ましい実施形態では、その期間は72時間である。前項で述べたいずれの濃度のTNF-αも、開示された期間を組み合わせて使用することができる。1つの好ましい実施形態において、開示された期間を組み合わせて使用されるTNF-αの濃度は、8~12ng/mlもしくは10ng/mlである。
【0040】
別の実施形態では、活性化因子とはIL-1βである。IL-1βが活性化因子である場合、IL-1βは、上述のように炎症反応を誘発する任意の濃度で、試験システムに添加または試験システムと接触され得る。1つの実施形態では、IL-1βは0.01から10ng/mlの範囲の濃度で使用される。ある程度の好ましい実施形態では、IL-1βの濃度は、0.01~8ng/ml、0.1~7ng/ml、0.25~6ng/ml、0.5~5ng/ml、0.5~4ng/ml、0.75~3ng/ml、もしくは0.5~2ng/mlである。別の好ましい実施形態では、IL-1βの濃度は1ng/mlである。
【0041】
IL-1βが活性化因子である場合、IL-1βは、上述したように炎症反応を引き起こすのに十分な期間、試験システムで培養することができる。1つの実施形態では、その期間は12時間から144時間である。ある程度の好ましい実施形態では、その期間は12~120時間、12~96時間、12~72時間、24~72時間、48~72時間、60~80時間、もしくは65~75時間である。別の好ましい実施形態では、その期間は72時間である。前項で述べたいずれの濃度のIL-1βも、開示された期間を組み合わせて使用することができる。1つの好ましい実施形態において、開示された期間を組み合わせて使用されるIL-1βの濃度は、0.5~2ng/mlもしくは1ng/mlである。
【0042】
別の実施形態では、活性化因子はIL-1βおよびTNF-αである。IL-1βおよびTNF-αが活性化因子である場合、IL-1βおよびTNF-αは、上述のように炎症反応を誘発する任意の濃度で、試験システムに添加または試験システムと接触され得る。1つの実施形態では、TNF-αは0.1から50ng/mlの範囲の濃度で使用され、IL-1βは0.01から10ng/mlの範囲の濃度で使用される。ある程度の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は0.1~30ng/ml、0.5~20ng/ml、0.75~15ng/ml、1~15ng/ml、2~10ng/ml、5~15ng/ml、もしくは8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は0.01~8ng/ml、0.1~7ng/ml、0.25~6ng/ml、0.5~5ng/ml、0.5~4ng/ml、0.75~3ng/ml、もしくは0.5~2ng/mlである。別の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlである。別の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は10ng/mlであり、IL-1βの濃度は1ng/mlである。
【0043】
IL-1βおよびTNF-αが活性化因子である場合、IL-1βおよびTNF-αは、上述したように炎症反応を引き起こすのに十分な期間、試験システムで培養することができる。1つの実施形態では、その期間は12時間から144時間である。ある程度の好ましい実施形態では、その期間は12~120時間、12~96時間、12~72時間、24~72時間、48~72時間、60~80時間、もしくは65~75時間である。別の好ましい実施形態では、その期間は72時間である。前項で述べたいずれの濃度のIL-1βおよびTNF-αも、開示された期間を組み合わせて使用することができる。1つの好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlである。別の好ましい実施形態では、TNF-αの濃度は10ng/mlであり、IL-1βの濃度は1ng/mlである。
【0044】
活性化因子が試験システムに添加された後、試験システムの細胞または組織は活性化された細胞または組織となる。試験システムの活性化された細胞または組織は、炎症性メディエーターの産生および/または活性の増加、さらに特定の場合には抗炎症性メディエーターの産生および/または活性の増加に伴って、活性化因子に反応するので、本試験システムは生産物または生産物由来の物質が炎症性メディエーターおよび抗炎症性メディエーターの産生および/または活性に及ぼす影響を決定することを可能にする。関節疾患の治療に有用な生産物は、好ましくは、1つまたはそれ以上の炎症性メディエーターの産生および/または活性を減少させ、1つまたはそれ以上の抗炎症性メディエーターの産生および/または活性を増加させ、または1つまたはそれ以上の炎症性メディエーターの産生および/または活性を減少させると同時に1つまたはそれ以上の抗炎症性メディエーターの産生および/または活性を増加させる。そのような炎症性メディエーターおよび抗炎症性メディエーターが本明細書に記載されている。好ましくは、生産物または生産物由来の物質が、IL-1β、TNF-α、ないしMMP(MMP-1およびMMP-13といったものであり、これらに限定されない)の産生および/または活性を阻害し、ないしはIL-1ra、IL-6、ないしTIMP-3の産生および/または活性を増加させる。
【0045】
生産物または生産物由来の物質が1つまたはそれ以上の炎症誘発性メディエーターの産生および/または活性を低下させるか、または1つまたはそれ以上の抗炎症メディエーターの産生および/または活性を増加させるかどうかを決定する際には、生産物または生産物由来の物質の影響を、活性化因子に曝露されているが生産物には曝露されていない対照と比較する。炎症誘発性メディエーターおよび抗炎症メディエーターは、本技術分野で公知の任意の方法によって検出することができる。タンパク質が検出される場合、好ましい検出方法はELISAである。市販されているELISAキットは、本明細書に記載されているメディエーターの全てではないにしても、ほとんどのメディエーターに対して利用可能である。種々のタンパク質に特異的な抗体も同様に産生することができ、市販されている試薬と共に利用することができる。核酸が検出される場合、好ましい検出方法はPCRアッセイである。市販されているPCRキットは、ここに記載されているメディエーターの全てではないにしても、ほとんどのメディエーターに対して利用可能である。種々の核酸に特異的なプローブないしプライマーも同様に産生することができ、市販の試薬とともに利用することができる。
【0046】
ここで使用される用語「産生」は、特定のメディエーターをエンコードするmRNAの合成および/または特定のメディエーターに対応するタンパク質の合成を意味する。場合によっては、核酸(例えばmRNA)の産生の減少が早い時点で起こり、タンパク質の産生の減少が遅い時点で起こる(核酸の産生が減少する場合としない場合がある)。したがって、特定の実施形態において、産生という言葉は核酸の合成を指し、核酸合成に対する生産物または生産物由来の物質の効果の決定は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触されてから2~48時間後および/または48~96時間後に決定される。特定の実施形態において、産生という言葉はタンパク質の合成を指し、タンパク質合成に対する生産物または生産物由来の物質の効果の決定は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触されてから2~48時間後および/または48~96時間後に決定される。1つの好ましい実施形態では、産生の減少とはタンパク質の産生の減少を指す。別の好ましい実施形態では、産生の減少とはタンパク質の産生の減少を指し、特にその効果は後の時点(例えば、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触されてから48~96時間後)で決定される。
【0047】
炎症性メディエーターの産生の減少は、炎症性メディエーターをエンコードする核酸の産生の減少、炎症性メディエーター蛋白質の産生の減少、または前述のこれらの組み合わせを意味する。特定の実施形態において、炎症性メディエーターをエンコードする核酸の産生の減少は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。特定の実施形態において、炎症性メディエーター蛋白質の産生の減少は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0048】
1つの好ましい実施形態では、産生の減少とはTNF-αタンパク質の産生の減少を意味する。別の好ましい実施形態では、産生の減少とはTNF-αタンパク質の産生の減少を意味し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0049】
別の好ましい実施形態では、産生の減少とはIL-1βタンパク質の産生の減少を意味する。別の好ましい実施形態では、産生の減少はIL-1βタンパク質の産生の減少を意味し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0050】
別の好ましい実施形態では、産生の減少とはMMPタンパク質の産生の減少を意味する。別の好ましい実施形態では、産生の減少はMMPタンパク質の生産の減少を意味し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。特定の態様において、MMPとはMMP-1、MMP-13、MMP-2、MMP-3、もしくはMMP-9である。特定の態様において、MMPはMMP-1またはMMP-13である。
【0051】
別の例として、抗炎症メディエーターの産生の増加は、抗炎症メディエーターをエンコードする核酸(mRNAなど)の産生の増加、抗炎症メディエーター蛋白質の産生の増加、または前述のこれらの組み合わせを意味する。特定の実施形態では、抗炎症メディエーターをエンコードするRNAの産生の増加は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。特定の実施形態では、抗炎症メディエーター蛋白質の産生の増加は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0052】
1つの好ましい実施形態において、産生の増加とはIL-6タンパク質の産生の増加を指す。別の好ましい実施形態では、産生の増加はIL-6タンパク質の産生の増加を指し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0053】
1つの好ましい実施形態において、産生の増加とはIL-1raタンパク質の産生の増加を指す。別の好ましい実施形態では、産生の増加はIL-1raタンパク質の産生の増加を指し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0054】
1つの好ましい実施形態において、産生の増加とはTIMP-3タンパク質の産生の増加を指す。別の好ましい実施形態では、産生の増加はTIMP-3タンパク質の産生の増加を指し、特にその効果は、生産物または生産物由来の物質が試験システムに添加または接触された後の早い時点(例えば2~48時間)および/または遅い時点(例えば48~96時間)で決定される。
【0055】
試験システムの細胞株または組織は、細胞または組織の生存能力が維持されるような条件下で、保持または培養され得る。本技術を熟知した人であれば、過度な実験をしなくても、そのような条件を決定することができる。本試験システムの細胞株又は組織は、販売業者が推奨する細胞株または組織の条件に従って、維持または培養され得る。細胞株のための典型的な培養条件には、サイトカイン、成長因子、ホルモン、および/またはウシ/ウシ胎児血清が補充された、必須栄養素(アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル)を供給する、適切な完全成長培地の使用が含まれる。細胞株または組織は、O2および/またはCO2の適切な濃度を有する適切に制御された環境で、物理化学的に調整された環境(例えば、pH、浸透圧、温度)において、維持または培養され得る。
【0056】
細胞または組織を活性化因子、生産物、または生産物由来の物質に曝露する場合、アッセイ培地が使用され得る。アッセイ培地は、補充されたサイトカイン、成長因子、ホルモン、および/またはウシ/ウシ胎児血清の濃度が成長培地の濃度よりも、例えば50%以下または以上低いという点で、成長培地と異なる。特定の実施形態では、アッセイ培地はウシ/ウシ胎児血清を0~50%含み、付加的なサイトカイン、成長因子、あるいはホルモンを含まない。本明細書に記載される試験システムにおいて好ましくは、成長培地は細胞を適切な密度にまで培養するために使用される。細胞が適切な密度に達すると、成長培地は、活性化因子、生産物および/または生産物由来の物質への試験システムの曝露のために、アッセイ培地に置き換えられる。
【0057】
好ましい実施形態では、細胞株はSW982細胞株である。SW982細胞は、本明細書に記載のように維持され、培養され得る。1つの実施形態では、SW982細胞は、10%ウシ胎児血清(コーニングComing社、ニューヨーク州コーニング)(L-15増殖培地)を添加したライボビッツLeibowitz L-15培地(ハイクローンHyClone社、イリノイ州シカゴ)で培養される。SW982細胞は、ATCCプロトコルに従って培養、継代された。L-15培地は、CO2のない培養器で使用するために処方されているので、SW982細胞は、CO2のない培養器の中で、フェノール系のふた(培養器との空気交換を防ぐ)を有するフラスコに入れて培養される。
【0058】
SW982細胞用のアッセイ培地は、L-15増殖培地と比較して、低濃度のサイトカイン、成長因子、ホルモン、およびウシ胎児血清を含む。1つの実施形態では、SW982細胞用のアッセイ培地は、50%(v/v)のL-15増殖培地および50%の基礎(補充されていない)L-15培地を含む。
【0059】
生産物由来の生産物または物質
種々の生産物は、本明細書に記載された方法、組成物およびキットと共に使用することができる。1つの実施形態において、その生産物とは治療用生物学的生産物である。特定の実施形態において、その生産物とは羊膜由来生産物である。
【0060】
羊膜環境は、外傷後の組織修復を支持する可能性を有する生物学的成分が豊富である。胎盤膜は、独自の機能を有する多層の独特な組織から成る。その膜の最も内側の層は羊膜と呼ばれ、羊膜は羊膜嚢内に羊水を包含するための柔軟かつ強固なバリアを提供する。胎盤膜の絨毛膜層は、妊娠期間に子宮壁に付着するもので、滑らかで血液はない。さらに、羊膜と絨毛膜は、コラーゲン、プロテオグリカン、エラスチン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外基質成分を含み、組織内の細胞に強固な足場を提供する。遺伝子発現解析では、羊膜がIL-1αおよびIL-1βを抑制し、MMPの活性を阻害することによって、周囲組織の抗炎症環境を促進する可能性を示唆している。加えて、羊膜は、インスリン様成長因子I、TGF-β、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、および血管内皮成長因子などの、ただしこれらに限定されない、治療上有用な数多くの成長因子を含む。
【0061】
特定の実施形態において、生産物とはヒト羊膜懸垂同種移植片(ASA)である。特定の実施形態において、ヒトASAは、米国食品医薬品局のGood Tissue Practices要件および米国組織バンク協会の基準に従って処理された、提供されたヒト胎盤から得られる。ASAは、微粒子化されたヒト羊膜および羊水細胞を含む。これらの成分は結合され、低温保存される。推奨されるASAはReNu(登録商標)(Organogenesisオルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)である。別の推奨されるASAはNuCel(登録商標)(Organogenesisオルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)である。
【0062】
1つの実施形態では、生産物由来の物質とは条件培地(CM)である。CMは、適切な条件下で一定期間(例えば1~6日間)生産物を培養し、培地を収集することによって生成することができる;CMは、将来の利用のために(例えば4°Cで)任意に滅菌ろ過して保存することができる。CMは、生産物によって分泌される因子(例えば、サイトカイン、成長因子、プロテアーゼ、および他の因子などであるが、これらに限定されない)を含み、被験体への投与の際の生産物からの成長因子およびサイトカインの放出をモデル化するために使用される。したがって、CMは、被験体への投与の際に生産物によって分泌される因子を反映する。
【0063】
1つの実施形態では、生産物由来の物質とはASA由来のCMである。このようなASA由来のCMは、ASAを適切な培養培地で一定期間(例えば1~6日間)培養し、培養培地を回収することによって調製することができる;ASA CMは、将来の利用のために(例えば4°Cで)任意に滅菌ろ過して保存することができる。ASAは、任意の所望する期間、培地の中で培養することができる。1つの実施形態では、その期間は1~6日間である。ASA CMは、任意の所望する温度、好ましくは4°Cで、生成することができる。特定の実施形態において、ASA CMは、FBS(ウシ胎児血清)を5~10%含む成長培地、または、FBSを0.1~5%含む成長培地で、ASAを培養することによって調製される。1つの実施形態において、ASA CMは、FBS(2.5%)、1%L-グルタミン、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンとともにDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)の中で、4°Cで4日間、オービタルロッカー(振とう機)の上でASAを培養することによって生成される。使用時には、100%CMを必要に応じて希釈する(典型的にはAMの中で)。凍結保存されたASAが使用される場合、培養段階の前に、凍結保存されたASAは解凍され、DMSO(ジメチルスルホキシド)成分を除去するために処理される。ペレット化されたASAの成分は、適切な培地に再懸濁される。
【0064】
別の実施形態では、生産物由来の物質は、上述のように生成されたCMから単離された因子である。特定の実施形態では、因子が単離されたCMはASA CMである。この分野に精通した人であれば、CMから望ましい因子を精製する方法に気づくであろう。
【0065】
生産物の抗炎症作用を定量する方法
本開示はまた、生産物の抗炎症活性を定量する方法を提供する。本明細書で考察されるように、多くの治療用生物学的生産物は異なる活性および/または特性を有する。例えば、ASAのような羊膜由来生産物は、2つのドナーに由来すると、異なる抗炎症活性を有する可能性がある。結果として、治療的生物学的生産物、特にASAのような羊膜由来生産物の、抗炎症活性などの活性を定量する方法を提供することは有益であろう。
【0066】
1つの実施形態において、本開示は生産物の抗炎症活性を定量する方法を提供する。第1の実施形態において、生産物の抗炎症活性を定量する方法は、以下の工程を含む:(i)試験システムの細胞または組織に活性化因子を添加すること;(ii)活性化因子を試験システムの細胞または組織と一定期間培養し、活性化された細胞または組織を生成すること;(iii)生産物または生産物由来の物質を試験システムに添加すること;(iv)生産物または生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織と一定期間培養すること;(v)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、生産物の値を生成する程度を決定すること;また、(vi)生産物の値を生産物と任意に関連付けること。このような方法は、さらに以下のような工程を含む:(vii)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物の値を生成する程度を決定すること;および、(viii)付加的な生産物の値を生産物と任意に関連付けること。
【0067】
上記の第1の実施形態の方法では、本明細書に記載される任意の試験システムを使用することができ、試験システムにおける細胞または組織を活性化する任意の方法を使用することができる。
【0068】
第1の実施形態の好ましい態様では、細胞または組織はSW982細胞株であり、活性化因子はIL-1βおよびTNF-αであり、TNF-αは0.1から50ng/mlの範囲の濃度で使用され、IL-1βは0.01から10ng/mlの範囲の濃度で使用され、IL-1βおよびTNF-αは試験システムと共に12時間から144時間の間培養される。第1の実施形態のさらに好ましい態様において、TNF-αの濃度は、0.1~30ng/ml、0.5~20ng/ml、0.75~15ng/ml、1~15ng/ml、2~10ng/ml、5~15ng/ml、または8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は、0.01~8ng/ml、0.1~7ng/ml、0.25~6ng/ml、0.5~5ng/ml、0.5~4ng/ml、0.75~3ng/ml、または0.5~2ng/mlである。第1の実施形態のさらに好ましい態様において、TNF-αの濃度は8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlであるか、またはTNF-αの濃度は10ng/mlであり、IL-1βの濃度は1ng/mlである。第1の実施形態のさらに好ましい態様において、時間は、12~120時間、12~96時間、12~72時間、24~72時間、48~72時間、60~80時間、65~75時間、または72時間である。本項に記載されたいかなる濃度のIL-1βおよびTNF-αも、開示された時間と組み合わせて使用することができる。好ましくは、TNF-αの濃度は8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlであるか、またはTNF-αの濃度は10ng/mlであり、IL-1βの濃度は1ng/mlである。
【0069】
第2の実施形態において、生産物の抗炎症活性を定量するための方法は、以下の工程を含む:(i)試験システムの活性化された細胞または組織に生産物または生産物由来の物質を添加する工程;(ii)生産物または生産物由来の物質を試験システムで一定期間培養する工程;(iii)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して生産物の値を生成する程度を決定する工程;および、(iv)生産物の値を生産物と任意に関連付ける工程。このような方法は、さらに次の工程を含むことができる:(v)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの抗炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物の値を生成する程度を決定する工程;および(vi)付加的な生産物の値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0070】
第2の実施形態の方法では、本明細書に記載の任意の活性化試験システムを使用することができる。第2の態様の特定の実施形態では、活性化試験システムは、第1の実施形態の好ましい態様についての記載のようにして生成される。
【0071】
第1から第2の実施形態における方法の好ましい態様において、生産物とは、好ましくは羊膜由来生産物であり、これはASAなどであるがこれに限定されない。好ましいASAには、限定されないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)を含む。第1および第2の実施形態における方法の好ましい態様において、生産物は、試験システムで2~5日間または3日間培養される。
【0072】
第1および第2の実施形態における方法の好ましい態様において、生産物由来の物質は試験システムの活性化された細胞または組織に添加される。好ましくは、生産物由来の物質とは羊膜由来生産物由来のCMであり、これはASAなどであるがこれに限定されない。好ましいASAには、限定されないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)を含む。CMは100%CMであってもよいし、CMが希釈されたものでもよい(75%CM、50%CM、25%CMなど)。CMを希釈する場合、アッセイ培地の中で希釈されるのが望ましい。第1および第2の実施形態の方法における好ましい態様において、ASA CMは、試験システムで2~5日間または3日間培養される。
【0073】
第1および第2の実施形態における方法の好ましい態様において、生産物または生産物由来の物質は、本明細書に記載される1つまたは複数の炎症誘発性メディエーターの産生および/または活性を減少させ、さらに/または、1つまたは複数の抗炎症メディエーターの産生および/または活性を増加させる。減少される炎症誘発性メディエーターには、成長因子、サイトカイン、およびプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。減少される代表的な炎症誘発性成長因子及びサイトカインには、IL-1αおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、IL-18が含まれるが、これらに限定されない。減少される代表的な炎症誘発性プロテアーゼには、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9、および/またはMMP-13といったMMPが含まれるが、これらに限定されない。減少される好ましい炎症誘発性メディエーターには、IL-1β、TNF-α、MMP-1および/またはMMP-13が含まれるが、これらに限定されない。増加する代表的な抗炎症性サイトカイン及び成長因子には、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形態形成タンパク質、インスリン様成長因子-I、および/または線維芽細胞成長因子が含まれるが、これらに限定されない。増加する代表的な抗炎症性プロテアーゼ阻害剤には、メタロプロテアーゼ阻害剤3(TIMP-3)が含まれるが、これに限定されない。増加する好ましい抗炎症性メディエーターには、IL-1ra、IL-6、および/またはTIMP-3が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
第3の実施形態において、生産物の抗炎症活性を定量する方法は次の工程を含む:(i)SW982細胞株を含む試験システムにIL-1βおよびTNF-αを添加する工程;(ii)活性化SW982細胞株を生成するために、IL-1βおよびTNF-αを試験システムのSW982細胞株と一定期間培養する工程;(iii)試験システムにASA CMを添加する工程;(iv)ASA CMを試験システムの活性化SW982細胞株と2~4日間培養する工程;(v)ASA CMが、TNF-αの産生および任意に活性化SW982細胞株からの1つまたはそれ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を阻害または刺激して、生産物の値を生成する程度を決定する工程;および(vi)任意に生産物の値を生産物と関連付ける工程。このような方法は、さらに次の工程を含む:(vii)ASA CMが活性化SW982細胞株からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物の値を生成する程度を決定する工程;および(viii)付加的な生産物の値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0075】
第4の実施形態において、生産物の抗炎症活性を定量する方法は、次の工程を含む:(i)ASACMを試験システムの活性化SW982細胞株に添加する工程;(ii)ASACMを試験システムの活性化SW982細胞株で2~4日間培養する工程;(iii)ASA CMが、TNF-αの産生および必要に応じて活性化SW982細胞株からの1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を阻害または刺激して、生産物の値を生成する程度を決定する工程;および、(iv)任意に生産物の値を生産物と関連付ける工程。このような方法は、さらに次の工程を含む:(v)ASA CMが、活性化SW982細胞株からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物の値を生成する程度を決定する工程;および、(vi)付加的な生産物の値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0076】
第3および第4の実施形態の方法における好ましい態様において、ASAとはヒトASAである。好ましいASAには、限定はされないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)が含まれる。
【0077】
第3および第4の実施形態の好ましい態様において、ASA CMは希釈されない(すなわち100%ASA CM)。他の好ましい態様においては、ASA CMは希釈される(たとえば、75%ASA CM、50%ASA CM、25%ASA CMなど)。ASA CMが希釈される場合、好ましくは、アッセイ培地で希釈される。第3および第4の実施形態の方法の好ましい態様において、ASA CMは試験システムで3日間培養される。
【0078】
第3および第4の実施形態の方法の好ましい態様において、ASA CMは、TNF-αの産生および任意に1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を減少させ、および/または、本明細書に記載される1つ以上の抗炎症性メディエーターの産生および/または活性を増加させる。減少する炎症性メディエーターには、成長因子、サイトカイン、およびプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。代表的な減少する炎症性成長因子およびサイトカインには、IL-1αおよびIL-1β、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、IL-18が含まれるが、これらに限定されない。代表的な減少する炎症性プロテアーゼには、限定はされないが、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9および/またはMMP-13などのMMPが含まれるが、これらに限定されない。減少する好ましい炎症性メディエーターには、TNF-αに加えて、IL-1β、MMP-1、および/またはMMP-13が含まれるが、これらに限定されない。代表的な増加する抗炎症性サイトカインおよび成長因子には、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長因子-I、および/または線維芽細胞成長因子が含まれるが、これらに限定されない。増加する阻害剤である代表的な抗炎症性プロテアーゼには、メタロプロテアーゼ阻害剤3(TIMP-3)などが含まれるが、これらに限定されない。好ましい増加する抗炎症性メディエーターには、IL-1ra、IL-6、および/またはTIMP-3が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
第3および第4の実施形態の方法の好ましい態様において、製造業者または販売業者は、生産物が使用に適しているかどうかを決定し、そして/または、医療提供者は、生産物値に基づいて治療決定を行う。第3および第4の実施形態の方法の好ましい態様において、製造業者または販売業者は、生産物が使用に適しているかどうかを決定し、そして/または、医療提供者は、生産物値、付加的な生産物値、または生産物値と付加的な産物値の両方に基づいて、治療決定を行う。
【0080】
上述したように、試験システムの細胞または組織は、炎症性メディエーターおよび/または抗炎症メディエーターの産生および/または活性の増加により、活性化因子に応答する。その結果、本開示の試験システムは、試験システムの細胞または組織によって産生される炎症性および抗炎症メディエーターの産生および/または活性に対する、生産物または生産物由来の物質の影響を決定する方法を提供する。本明細書に記載される試験システムのアウトプットは、炎症性メディエーターが阻害されるかまたは抗炎症メディエーターが刺激される程度を反映する、生産物値および/または付加的な生産物値である。
【0081】
生産物値の例として、生産物がTNF-αの産生を(対照値と比較して)60%阻害することが見出され、本明細書に開示される試験システムによって決定されるように50pg/ml濃度のTNF-αをもたらすことが見出された場合、生産物値はいずれかの値であり得る。定量化された生産物値は、エンドユーザーが生産物の抗炎症活性などの潜在的活性を評価することを可能にする。
【0082】
本明細書に記載のように決定された生産物値は、多くの方法で使用することができる。生産物値は、医療提供者が治療の決定を行うために用いることができる。さらに、生産物値は、生産物を受け入れるか拒否するために用いることができ、従って、再現性のある品質管理関数として機能する。
同様のアプローチは、付加的な生産物値にも適用される。
【0083】
生産物の抗炎症活性を標準化する方法
本開示はまた、生産物の抗炎症活性を標準化する方法を提供する。本明細書で論じられるように、多くの治療的生物学的生産物は異なる活性および/または特性を有する。例えば、2つの供与体由来のASAなどの羊膜由来生産物は、異なる抗炎症活性を有する可能性がある。その結果、特にASAのような羊膜由来生産物などといった治療的生物学的生産物の、抗炎症活性などの活性を標準化する方法を提供することは有益であろう。
【0084】
第5の実施形態において、生産物の抗炎症活性を標準化する方法は、次のような工程を含む:(i)試験システムの細胞または組織に活性化因子を添加する工程;(ii)活性化因子を試験システムの細胞または組織と一定期間培養し、活性化された細胞または組織を生成する工程;(iii)生産物または生産物由来の物質を試験システムに添加する工程;(iv)生産物または生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織と一定期間培養すること;(v)生産物または生産物由来の物質が活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、生産物値を生成する程度を決定する工程;(vi)生産物値を参照値と比較して、標準値を決定する工程;そして、(vii)標準値を生産物と任意に関連付ける工程。このような方法は、さらに、以下の工程を含む:(viii)生産物又は生産物由来の物質が、活性化された細胞又は組織からの抗炎症性メディエーターの産生、活性、又は産生及び活性の両方を阻害又は刺激し、付加的な生産物値を生成する程度を決定する工程;(ix)付加的な生産物値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定する工程;および、(x)付加的な標準値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0085】
第5の実施形態の方法では、本明細書に記載されるいかなる試験システムも使用することができ、試験システムの細胞または組織を活性化するいかなる方法も使用することができる。
【0086】
第5の実施形態の好ましい態様では、細胞または組織とはSW982細胞株であり、活性化因子はIL-1βおよびTNF-αであり、TNF-αは0.1~50ng/mlの範囲の濃度で使用され、IL-1βは0.01~10ng/mlの範囲の濃度で使用され、IL-1βおよびTNF-αは試験システムで12時間から144時間の間培養される。第5の実施形態のさらに好ましい態様において、TNF-αの濃度は、0.1~30ng/ml、0.5~20ng/ml、0.75~15ng/ml、1~15ng/ml、2~10ng/ml、5~15ng/ml、または8~12ng/mlであり、IL-1βの濃度は、0.01~8ng/ml、0.1~7ng/ml、0.25~6ng/ml、0.5~5ng/ml、0.5~4ng/ml、0.75~3ng/ml、または0.5~2ng/mlである。第5の実施形態のさらに好ましい態様では、TNF-αの濃度が8~12ng/mlであって、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlであるか、または、TNF-αの濃度が10ng/mlであって、IL-1βの濃度が1ng/mlである。第5の実施形態のさらに好ましい態様では、期間は、12~120時間、12~96時間、12~72時間、24~72時間、48~72時間、60~80時間、65~75時間、または72時間である。本項に記載されたいかなる濃度のIL-1βおよびTNF-αも、ここに開示された時間と組み合わせて使用することができる。好ましくは、TNF-αの濃度が8~12ng/mlであって、IL-1βの濃度は0.5~2ng/mlであるか、または、TNF-αの濃度が10ng/mlであり、IL-1βの濃度は1ng/mlである。
【0087】
第6の実施形態において、生産物の抗炎症活性を標準化するための方法は、以下の工程を含む:(i)生産物または生産物由来の物質を試験システムの活性化された細胞または組織に添加する工程;(ii)生産物または生産物由来の物質を試験システムと一定期間培養する工程;(iii)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、生産物値を生成する程度を決定する工程;(iv)生産物値を参照値と比較して標準値を決定する工程;および、(v)標準値を生産物と任意に関連付ける工程。このような方法は、さらに次の工程を含むことができる。(vi)生産物または生産物由来の物質が、活性化された細胞または組織からの抗炎症性メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激し、付加的な生産物値を生成する程度を決定する工程;(vii)付加的な生産物値を付加的な参照値と比較し、付加的な標準値を決定する工程;および、(viii)付加的な標準値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0088】
第6の実施形態の方法では、本明細書に記載されているいかなる試験システムも使用することができる。第2の態様の特定の実施形態では、試験システムは、第5の実施形態の好ましい態様について記載されているように、活性化される。
【0089】
第5から第6の実施形態での方法の好ましい態様では、生産物は、好ましくは、限定はされないが、ASAなどの羊膜由来生産物である。好ましいASAには、限定はされないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)を含む。第5から第6の実施形態での方法の好ましい態様において、生産物は試験システムと2~5日間または3日間培養される。
【0090】
第5から第6の実施形態での方法の好ましい態様において、生産物由来の物質は試験システムの活性化された細胞または組織に添加される。好ましくは、この生産物由来の物質は、限定はされないが、ASAなどの羊膜由来生産物からのCMである。好ましいASAには、限定はされないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)が含まれる。CMは100%CMであってもよいし、希釈した(例えば、75%CM、50%CM、25%CMなど)CMでもよい。CMを希釈する場合、アッセイ培地の中で希釈されるのが望ましい。第1から第2の実施形態の方法の好ましい態様において、ASA CMは、試験システムと2~5日間または3日間培養される。
【0091】
第5から第6の実施形態の方法の好ましい態様において、生産物または生産物由来の物質は、本明細書に記載される1つ以上の炎症誘発性メディエーターの産生および/または活性を減少させ、および/または、1つ以上の抗炎症メディエーターの産生および/または活性を増加させる。減少する炎症誘発性メディエーターには、限定はされないが、成長因子、サイトカイン、およびプロテアーゼが含まれる。代表的な減少する炎症誘発性成長因子およびサイトカインには、限定はされないが、IL-1αおよびIL-1β、TNF-α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、IL-18が含まれる。代表的な減少する炎症誘発性プロテアーゼには、限定はされないが、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9、および/またはMMP-13などのMMPが含まれる。好ましい減少する炎症誘発性メディエーターには、限定はされないが、IL-1β、TNF-α、MMP-1、および/またはMMP-13などが含まれる。代表的な増加する抗炎症性サイトカインおよび成長因子には、限定はされないが、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形成タンパク質、インスリン様成長因子-1、および/または線維芽細胞成長因子などが含まれる。代表的な増加する抗炎症性プロテアーゼ阻害剤には、限定はされないが、メタロプロテアーゼ阻害剤3(TIMP-3)などが含まれる。好ましい増加する抗炎症性メディエーターには、限定はされないが、IL-1ra、IL-6、および/またはTIMP-3が含まれる。
【0092】
第7の実施形態において、生産物の抗炎症活性を標準化する方法は、次の工程を含む:(i)SW982細胞株を含む試験システムに、IL-1βおよびTNF-αを添加する工程;(ii)活性化SW982細胞株を生成するために、IL-1βおよびTNF-αを試験システムのSW982細胞株と一定期間培養する工程;(iii)ASA CMを試験システムに添加する工程;ASA CMを試験システムの活性化SW982細胞株と2~5日間培養する;(iv)ASA CMがTNF-αの産生、および必要に応じて活性化SW982細胞株から1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を阻害または刺激し、生産物値を生成する程度を決定する工程;(vi)生産物値を参照値と比較して、標準値を決定する工程;および(vii)標準値を生産物と任意に関連付ける工程。このような方法は、さらに次のような工程を含む:(viii)ASA CMが、活性化SW982細胞株からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物値を生成する程度を決定する工程;(ix)付加的な生産物値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定する工程;および(x)付加的な標準値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0093】
第8の実施形態において、生産物の抗炎症活性を標準化する方法は、次の工程を含む:(i)ASA CMを試験システムの活性化SW982細胞株に添加する工程;(ii)ASA CMを試験システムの活性化SW982細胞株と2~5日間培養する。(iii)ASA CMがTNF-αの産生および必要に応じて活性化SW982細胞株からの1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を阻害または刺激して、生産物値を生成する程度を決定する工程;(iv)生産物値を参照値と比較して、標準値を決定する工程;(v)標準値を生産物と任意に関連付ける工程。このような方法は、さらに次の工程を含む:(vi)ASA CMが活性化SW982細胞株からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激して、付加的な生産物値を生成する程度を決定する工程;(vii)付加的な生産物値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定する工程;および(viii)付加的な標準値を生産物と任意に関連付ける工程。
【0094】
第7および第8の実施形態の方法の好ましい態様において、ASAはヒトASAである。好ましいASAには、限定はされないが、ReNu(登録商標)およびNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)が含まれる。
【0095】
第7および第8の実施形態の好ましい態様において、ASA CMとは原液(つまり100%ASA CM)である。別の好ましい態様において、ASA CMは希釈されたもの(たとえば、75%ASA CM、50%ASA CM、または25%ASA CMなど)である。ASA CMが希釈される場合、好ましくは、アッセイ培地の中で希釈される。第3および第4の実施形態の好ましい態様において、ASA CMは試験システムと3日間培養される。
【0096】
第7および第8の実施形態の方法の好ましい態様において、ASA CMは、TNF-αおよび任意に1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を減少させ、および/または、本明細書に記載される1つ以上の抗炎症性メディエーターの産生および/または活性を増加させる。減少する炎症性メディエーターには、限定はされないが、成長因子、サイトカイン、およびプロテアーゼが含まれる。代表的な減少する炎症性成長因子およびサイトカインには、限定はされないが、IL-1αおよびIL-1β、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、IL-18が含まれる。代表的な減少する炎症性プロテアーゼには、限定はされないが、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9、および/またはMMP-13といったMMPが含まれるが、限定はされない。好ましい減少する炎症性メディエーターには、TNF-αに加えて、限定はされないが、IL-1β、MMP-1、および/またはMMP-13が含まれる。代表的な増加する抗炎症性サイトカインおよび成長因子には、限定はされないが、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-1受容体拮抗薬(IL-1ra)、IFN-γ、TGF-β、骨形態形成タンパク質、インスリン様成長因子-I、および/または線維芽細胞成長因子が含まれる。代表的な増加する抗炎症性プロテアーゼ阻害剤には、限定はされないが、メタロプロテアーゼ阻害剤3(TEMP-3)が含まれる。好ましい増加する抗炎症性メディエーターには、限定はされないが、IL-1ra、IL-6、および/またはTEMP-3が含まれる。
【0097】
上述したように、試験システムの細胞または組織は、炎症性メディエーターおよび/または抗炎症性メディエーターの産生および/または活性の増加により、活性化因子に応答する。その結果、本開示の試験システムは、試験システムの細胞または組織によって産生される炎症性および抗炎症性メディエーターの産生および/または活性に対する生産物または生産物由来の物質の影響を決定する方法を提供する。本明細書に記載される試験システムのアウトプットは、炎症性メディエーターが阻害されるか、または抗炎症性メディエーターが刺激される程度を反映する、生産物値および/または付加的な生産物値である。生産物値および/または付加的な生産物値は、標準値および付加的な標準値を生成するための参照値と比較することができる。好ましい実施形態では、生産物値は参照値で除算される。これらの値の使用について本明細書に記載されている。
【0098】
参照値はさまざまな方法で生成できる。1つの例として、参照値は規定の値にすることができる。この規定値は、当技術分野で既知の情報(例えば、TNF-αの産生の75%の減少が、疾患または状態の治療に有益であることが知られている)に基づいて決定または設定され得る。ある生産物の生産物値がTNF-αの産生の70%の減少であると決定される場合、生産物の標準値は0.93(生産物値を参照値で割った値;0.70/0.75)となるであろう。
【0099】
あるいは、参照値は標準を用いて経験的に決定されてもよい。参照値が経験的に決定される場合、参照値は、生産物値を決定するために使用されるのと同じ試験システムおよび同じ条件を用いて、決定されることが好ましい。参照値は、一度に決定され、複数の生産物値のための参照値として使用されてもよいし、または、生産物値ごと(例えば、参照値は生産物値と並行して決定される)に別々に決定されてもよい。標準の生産物値が、本明細書に開示する試験システムを用いて45pg/ml TNF-αと決定される場合、45pg/ml TNF-αが参照値と決定される。生産物値が50pg/ml TNF-αと決定される場合、生産物の標準値は1.1(生産物値を参照値で割った値;50/45)となるであろう。
【0100】
参照値は、単一の炎症性メディエーターおよび/または単一の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。参照値は、複数の炎症性メディエーターおよび/または単一の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。参照値は、単一の炎症性メディエーターおよび/または複数の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。さらに、参照値は、炎症性メディエーターのグループおよび/または抗炎症メディエーターのグループに対して決定することができる。
【0101】
参照値を生成するために、様々な標準を使用することができる。好ましくは、標準は生産物と同じである。たとえば、生産物がASAの場合、標準もまたASAである。標準と生産物が同じタイプである場合、標準が生産物の平均的な活性を反映するように、標準は様々な個々の生産物をプーリングして取得できる。特定の実施形態では、生産物はASAであり、ASAから生成されたCMはここに記載されている試験システムに添加され、さらに標準は複数のASA(例えば5~100の個々のASA)から生成されたプールされたCMである。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは100%(原液)で使用される。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは、限定はされないが、25%、50%、および/または75%などの100%未満(適したAMで希釈するのが好ましい)で使用される。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは100%(原液)および100%未満(適したAMで希釈するのが好ましい)、例えば、限定されないが、25%、50%、および/または75%など、で使用される。このような実施形態では、1つ以上またはすべてのプールされたASA CMの値を参照値として使用し、対応するASA CMの値と比較して、ここに記載されているように標準値を生成することができる。このような標準値は個別に使用することができ、もしくは、決定された1つ以上またはすべての標準値の平均を取ることもできる。
【0102】
あるいは、標準は、ASAである生産物と使用するための小分子標準などといった生産物とは異なることがある。このような標準は、疾患または状態に有益な効果を有することが知られている薬物または化合物の濃度となり得る。あるいは、標準は、疾患または状態における炎症反応を低下させることが知られている薬物または化合物の濃度となり得る。さらに、標準は、疾患または状態における、限定はされないがTNF-αなどの炎症性メディエーターの産生および/または活性を低下させることが知られている薬物または化合物の濃度となり得る。
【0103】
本明細書に記載されているように決定された標準値は、多くの方法で使用することができる。この標準値は、医療提供者が治療の決定を行うために使用することができる。さらに、この標準値は、生産物を受け入れるか拒否するために使用することができ、従って、再現性のある品質管理機能としての役割を果たす。
【0104】
同じアプローチは、抗炎症メディエーター、付加的な生産物値、付加的な参照値、および付加的な標準値にも適用される。
【0105】
生産物による被験体への抗炎症作用が生じやすいかどうかを判定する方法
本開示はまた、抗炎症効果が生産物によって被験体に生じる可能性があるかどうかを決定する方法を提供する。多くの治療的生物学的生産物は異なる活性および/または特性を有するので、生産物が所与の疾患又は状態に及ぼすかもしれない効果を推定することは困難である。炎症を阻害することは関節疾患の治療において重要であるので、生産物が被験者に投与されたときに望むような抗炎症効果を有するかどうかを使用者に知らせる方法を提供することは有益であろう。例えば、第1のASAを患者に投与するとOAの症状は完全に軽減されたが、一方で第2のASAを患者に投与してもOAの症状は部分的にしか軽減されなかった。このような転帰の違いは、患者同士のOAの重症度、2つのASAの抗炎症活性の違い、または2つのASAが患者に投与された方法に起因する可能性がある。ここに記載された方法を通じて、医療提供者は、治療転帰の違いとなる第2の潜在的な理由を排除することができる。
【0106】
特定の実施形態では、第9の実施形態の被験者は関節疾患に苦しんでいる。本明細書で使用される関節疾患という用語は、炎症反応の亢進を伴う関節に影響を及ぼす疾患および状態を意味する。代表的な関節疾患には、OA、RAおよび腱炎が含まれるが、これらに限定されない。別の特定の実施形態では、第9の実施形態の被験者はOAに苦しんでいる。別の特定の実施形態では、第9の実施形態の被験者はRAに苦しんでいる。別の特定の実施形態では、第9実施形態の被験者は腱炎に苦しんでいる。
【0107】
第9の実施形態では、生産物を被験者に投与する前に、生産物によって被験者に抗炎症効果が生じる可能性があるかどうかを決定する方法が提供される。第9の実施形態の一態様において、標準値は、上述した第5から第8の実施形態のいずれかの方法に従って決定され、さらに第5から第8の実施形態に適用される好ましい態様において説明されるようなものを含む。以外に以下のように改変される。さらに、第9の実施形態のこの態様は、標準値を閾値と比較することをさらに含む。標準値が閾値以上である場合、被験者に抗炎症効果が生じる可能性が高い。標準値が閾値未満である場合、被験者に抗炎症効果が生じる可能性は低い。
【0108】
第9の実施形態の例示的な方法を以下に示す。ここでは、標準値は上述の第8の実施形態に従って決定される。
【0109】
生産物を被検者に投与する前に、生産物により被検者に抗炎症効果が生じる可能性があるか否かを決定する方法、この方法は次の工程を含む:(i)試験システムの活性化SW982細胞株にASA CMを添加する工程;(ii)ASA CMを試験システムの活性化SW982細胞株と2~5日間培養する工程;(iii)ASA CMが、TNF-αおよび活性化SW982細胞株からの任意の1つ以上の付加的な炎症性メディエーターの産生を阻害または刺激して、生産物値を生成する程度を決定する工程;(iv)生産物値を参照値と比較して標準値を決定する工程;(v)標準値を閾値と比較する工程;および(vi)標準値と閾値との比較を任意に生産物と関連付ける工程、ここでは標準値が閾値以上の場合、被験者に抗炎症効果が生じる可能性が高い。
【0110】
このような方法は、さらに次のような工程を含む:(vii)ASA CMが活性化SW982細胞株からの抗炎症メディエーターの産生、活性、または産生と活性の両方を阻害または刺激し、付加的な生産物値を生成する程度を決定する工程;(viii)付加的な生産物値を付加的な参照値と比較して、付加的な標準値を決定する工程;(ix)付加的な標準値を付加的な閾値と比較する工程;および、(vi)任意で、付加的な標準値と付加的な閾値との比較を生産物に関連付ける工程。ここでは、付加的な標準値が付加的な閾値以上の場合、被験者に抗炎症効果が生じる可能性が高い。
【0111】
上述したように、試験システムの細胞または組織は、炎症性メディエーターの産生および/または活性の増加と共に活性化因子に応答する。その結果、本開示の試験システムは、試験システムの細胞または組織によって産生される炎症性メディエーターおよび/または抗炎症メディエーターの産生および/または活性に対する、生産物または生産物由来の物質の影響を決定することにより、例えば関節疾患などの炎症反応を伴う疾患または状態に対する、生産物の期待できる影響を決定する方法を提供する。本明細書に記載される試験システムのアウトプットは、炎症性メディエーターが阻害されるか抗炎症メディエーターが刺激される程度を反映する、生産物値および/または付加的な生産物値である。生産物値および/または付加的な生産物値を参照値または付加的な参照値と比較して、標準値および付加的な標準値を生成することができる。好ましい実施形態では、生産物値/付加的生産物値は、それぞれ参照値/付加的参照値で除算される。これらの値の使用法は、本明細書に記載される。
【0112】
参照値は、さまざまな方法で生成できる。1つの例として、参照値は規定の値にすることができる。この規定値は、当技術分野で既知の情報(例えば、TNF-αの産生の75%の減少)に基づいて決定または設定されてもよい。生産物の生産物値がTNF-αの産生の80%の減少であると決定される場合、生産物の標準値は1.1(生産物値を参照値で除算した値;0.8/0.75)であろう。
【0113】
あるいは、参照値は標準を用いて経験的に決定されてもよい。参照値が経験的に決定される場合、参照値は生産物値を決定するために使用されるのと同じ試験システムおよび同じ条件を用いて決定されることが好ましい。参照値は、一度に決定され、複数の生産物値の参照値として使用されてもよいし、生産物値ごと(例えば、参照値は生産物値と並行して決定される)に別々に決定されてもよい。標準の生産物値が、本明細書に開示する試験システムを用いて60pg/ml TNF-αと決定される場合、60pg/ml TNF-αが参照値であると決定される。生産物値が55pg/ml TNF-αの産生を有すると決定される場合、生産物の標準値は0.92(生産物値を参照値で除算した値;55/60)となる。
【0114】
参照値は、単一の炎症性メディエーターおよび/または単一の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。参照値は、複数の炎症性メディエーターおよび/または単一の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。参照値は、単一の炎症性メディエーターおよび/または複数の抗炎症性メディエーターに対して決定することができる。さらに、参照値は、炎症性メディエーターのグループおよび/または抗炎症性メディエーターのグループに対して決定することができる。
【0115】
様々な標準は、参照値を生成するために使用することができる。この標準は、ASA生産物で使用する低分子標準などといった生産物とは異なる場合がある。このような標準は、疾患または状態に対して有益な効果を有することが知られている薬物または化合物の濃度でありうる。あるいは、標準は、疾患または状態における炎症反応を低下させることが知られている薬物または化合物の濃度でありうる。さらに、標準は、疾患または状態におけるTNF-αなどであり、これに限定されない、炎症性メディエーターの産生および/または活性を低下させることが知られている薬物または化合物の濃度でありうる。
【0116】
あるいは、標準は生産物と同じものである。たとえば、生産物がASAの場合、標準もASAである。好ましくは、標準は、疾患または状態に対して有益な効果を有することが示されており、および/または、疾患または状態における炎症効果を減少させることが示されている。標準と生産物が同じタイプである場合、標準が生産物の平均活性を反映するように、様々な個々の生産物をプーリングすることによって標準を得ることができる。特定の実施形態では、生産物はASAであり、ASAから生成されたCMは本明細書に記載された試験システムに添加され、また、標準は、複数のASA(たとえば、5~100の個々のASA)から生成されたプールされたCMである。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは、100%(原液)で使用される。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは、限定はされないが25%、50%、および/または75%など、100%未満(適当なAMで希釈するのが好ましい)で使用される。別の実施形態では、ASA CMおよびプールされたASA CMは、100%(原液)および、限定はされないが25%、50%、および/または75%など、100%未満(適当なAMで希釈するのが好ましい)で使用される。このような実施形態では、1つ以上またはすべてのプールされたASA CM値を参照値として使用し、対応するASA CM値と比較して、本明細書に記載されているように標準値を生成することができる。このような標準値を個別に使用することも、決定された1つ以上またはすべての標準値の平均を取ることもできる。
【0117】
1つの実施形態において、本明細書に記載されているように決定された標準値は、閾値と比較され、生産物の被験者への投与によって抗炎症効果が被験者に生じる可能性があるかどうかを決定する。標準値が閾値以上である場合、生産物は、被験者への投与時に抗炎症効果を有する可能性がありそうだと決定される。反対に、標準値が閾値未満である場合、生産物は、被験者への投与時に抗炎症効果を有する可能性がなさそうだと決定される。
【0118】
閾値は、例えば、TNF-α産生の70%減少または50pg/ml未満のTNF-α濃度が疾患または状態の治療において有益であること、または疾患または状態における炎症を減少させることが知られているといった知識のような、当該技術分野において公知の情報に基づいて決定され得る。このアプローチでは、TNF-α産生の70%以上の減少または50pg/ml未満のTNF-α濃度の標準値を有する生産物のみが、被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いと決定される。
【0119】
閾値は、参照値(すなわち標準値)に対する生産物値の関係に基づいて決定され得る。閾値は、生産物値が参照値以上である生産物のみが被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いとみなされるように、1.0であってもよい。例えば、参照値がTNF-α産生の60%阻害であり、生産物値がTNF-α産生の58%阻害である場合、標準値は0.97(生産物値を参照値で除算した値;0.58/0.60)であり、生産物は被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が低いであろうと判断される。あるいは、参照値よりわずかに小さいか大きい生産物値を有する生産物が被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いとみなされるように、閾値は0.75であってもよい。例えば、参照値が80pg/ml TNF-αであり、生産物値が60pg/ml TNF-αである場合、標準値は0.75(生産物値を参照値で除算した値;60/80)であり、生産物は被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いであろうと判断される。さらには、参照値よりもわずかに高い生産物値を有する生産物が被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いとみなされるように、閾値は1.1であってもよい。例えば、参照値が59pg/ml TNF-αであり、生産物値が71pg/ml TNF-αである場合、標準値は1.2(生産物値を参照値で除算した値;71/59)であり、この生産物は被験者に投与されたときに抗炎症効果を有する可能性が高いであろうと判断される。
【0120】
閾値は、所定の疾患または状態によって異なることがある。例えば、閾値はOAとRAで差があり得る。好ましい実施形態では、閾値は、参照値に0.75~0.99または0.85~0.99または0.95~0.99を乗じた値以上である。別の好ましい実施形態では、閾値は、参照値に1~1.25または1~1.15または1~1.05を乗じた値以上である。
【0121】
別の実施形態では、標準値は、生産物の被験者への投与によって抗炎症効果が被験者に生じる可能性があるかどうかを決定するために、直接使用される。1つの実施形態において、標準値が0.75より大きい場合、0.80より大きい場合、0.85より大きい場合、0.95より大きい場合、その生産物は被験者への投与時に抗炎症効果を有する可能性があると決定される。別の実施形態では、標準値が1、1.1、1.2、または1.25より大きい場合、その生産物は被験者への投与時に抗炎症効果を有する可能性があると決定される。
【0122】
同じアプローチは、抗炎症メディエーター、付加的な生産物値、付加的な参照値、および付加的な標準値に適用される。
【0123】
キット
本開示はまた、本明細書に記載された第1から第9の実施形態の方法のような、開示された方法を実行するためのキットを提供する。1つの実施形態において、本開示は、生産物の抗炎症活性を定量するためのキットを提供する。別の実施形態において、本開示は、生産物の抗炎症作用を標準化するためのキットを提供する。さらに別の実施形態において、本開示は、生産物を被験者に投与する前に、生産物の被験者への投与が被験者に抗炎症作用を生じさせる可能性があるかどうかを決定するためのキットを提供する。
【0124】
特定の実施形態において、本開示のキットは、生産物または生産物由来の物質が、本明細書に記載の活性化された細胞または組織からの炎症性メディエーターおよび/または抗炎症メディエーターの産生および/または活性を阻害または刺激する程度を決定するための、必要な材料および試薬を含む。
【0125】
特定の実施形態において、本開示のキットは、以下の1つ以上を含む。
(i)第1から第9の実施形態の方法で使用するための細胞または組織;好ましくは、細胞または組織は、ヒト一次細胞株またはヒト形質転換細胞株である;より好ましくは、細胞または組織は、ヒト線維芽細胞様滑膜細胞株、ヒトマクロファージ様滑膜細胞、HIG-82細胞株、またはSW982細胞株である;
(ii)細胞または組織、特に(i)に記載された細胞株を刺激するための試薬で、1つ以上の炎症性メディエーターおよび/または1つ以上の抗炎症性メディエーターを産生する;好ましくは、その試薬はIL-1βおよび/またはTNF-αである;
(iii)生産物、好ましくは羊膜由来生産物、より好ましくはASA生産物;好ましいASA生産物はReNu(登録商標)またはNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)である;
(iv)生産物由来の物質、好ましくは生産物によって生成されたCM、より好ましくは(iii)に記載されたASAによって生成されたCM;
(v)参照値または付加的な参照値を決定するために使用する標準;
(vi)(i)の細胞または組織を培養するため、および/または(iv)のCMを産生するための細胞培養培地;および
(vii)本明細書に記載された第1から第9の実施形態の1つ以上の方法を実行するための指示。
【0126】
生産物および組成物
本開示はまた、生産物または生産物を含む組成物を提供し、ここでは、生産物または組成物は関連する生産物値を有する。生産物値は、生産物または組成物に直接(例えば、生産物にマイクロプリントされるか、または組成物を含む容器にプリントされる)関連してもよく、もしくは生産物または組成物に間接的に(例えば、生産物または組成物とともに提供される材料にプリントされる)関連してもよい。
【0127】
本開示はまた、生産物または生産物を含む組成物を提供し、ここでは、生産物または組成物は関連する標準値を有する。標準値は、生産物または組成物に直接(例えば、生産物にマイクロプリントされるか、または組成物を含む容器にプリントされる)関連してもよく、もしくは生産物または組成物に間接的に(例えば、生産物または組成物とともに提供される材料にプリントされる)関連してもよい。
【0128】
本開示はまた、生産物または生産物を含む組成物を提供し、ここでは、生産物または組成物は標準値と閾値との関連した比較を有する。標準値と閾値との比較は、生産物または組成物に直接(例えば、生産物にマイクロプリントされるか、または組成物を含む容器にプリントされる)関連してもよく、もしくは生産物または組成物に間接的に(例えば、生産物または組成物とともに提供される材料にプリントされる)関連してもよい。
【0129】
上記のいずれにおいても、生産物が組成物の一部である場合、その組成物は、適切な希釈剤、担体、および培地をさらに含むことができる。
【0130】
上記のいずれにおいても、生産物または生産物を含む組成物は、凍結保存することができる。
【0131】
上記のいずれにおいても、生産物とは生物学的治療用生産物である。上記のいずれにおいても、生産物とは羊膜由来生産物である。上記のいずれにおいても、生産物とはヒトASAである。上記のいずれにおいても、生産物とはReNu(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)である。上記のいずれにおいても、生産物とはNuCel(登録商標)(オルガノジェネシス社、マサチューセッツ州カントン)である。
【0132】
材料と方法
いくつかの実施形態において、ヒト滑膜肉腫細胞(SW982)をATCC(バージニア州マナッサス)から取得して、10%ウシ胎児血清(FBS)(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)を添加したライボビッツL-15培地(ハイクローン社、イリノイ州シカゴ)で培養した。SW982細胞は、初代ヒト細胞に特徴的な変異および拡大の限界なしに、初代滑膜細胞培養の活性化可能な表現型を保持する滑膜肉腫細胞株である。しかしながら、HIG-82、ヒト線維芽細胞様滑膜細胞またはヒトマクロファージ様滑膜細胞のような他の細胞は、開示された方法に適合する。SW982細胞をATCCプロトコルに従って培養し、継代した。ライボビッツL-15培地はCO2のない培養器での使用のために処方されているので、細胞は、培養器との空気交換を起こさないフェノール系のふたを有するフラスコで培養し、CO2のない培養器に設置した。完全増殖培地はL-15培地+10%ウシ胎児血清であった。アッセイ培地は、全ての実験において、L-15基礎培地の中の50%(v/v)完全増殖培地であった。
【0133】
条件培地(CM)は羊水懸濁同種移植片(ASA、ReNu(登録商標)またはNuCel(登録商標)、オルガノジェネシス社)を解凍し、続いてDMSO成分を除去するために250×gで5分間遠心分離することにより調製した。上清を除去して廃棄し、ASAのペレット化成分をASA 1mL(元の容量)当たりアッセイ培地1mLの濃度でアッセイ培地中に再懸濁し、4°Cで4日間穏やかに回転させて培養した。次に懸濁液を250×gで5分間遠心分離し、CMの上清を集め、使用前に0.22pmポリエーテルサルフォン(PES)フィルター(Millex(商標)-GP滅菌シリンジフィルター、SLGP033RS,MilliporeSigma社,マサチューセッツ州バーリントン)を用いて滅菌濾過した。
【0134】
細胞播種密度の範囲は約25,000細胞/ウェル未満から約37,000細胞/ウェル以上であり、25,000細胞/ウェルでは開示した方法の経過において適切なコンフルエンシーが得られた。しかし、他の播種密度は開示した方法およびシステムと相性が良い。細胞株によって異なる、互換性のある増殖培地を用いて、播種を行う。CO2の影響を受けない培養器での培養は、活性化因子のみの処理を施した細胞とASA CM処理の細胞間でのTNF-α産生レベルにおいてより大きな絶対差をもたらし、それゆえに、SW982細胞を用いた望ましい培養条件である。しかしながら、特に他の細胞株が利用される場合、0%より高い、特に5%またはいくつかの例では5%より高いCO2レベルが可能である。培養は一般的に約37°Cで行われる。Parafilm M(商標)(Bemis Company,Inc.社,ウィスコンシン州ニーナ)または同様のセルフシーリングの熱可塑性被覆材料を使用することは、開示された方法と互換性があるが、任意である。他の非シール性被覆は、細胞の汚濁を低減するのに互換性があるが、細胞へのCO2の接近を防止または低減しない可能性がある。様々な実施形態において、細胞は、フラスコ、ウェルプレート、または他の無菌細胞培養容器で播種される。これらの容器は、密封または被覆される場合もあれば、または密封または被覆されずに放置される場合もある。細胞培養のための容器は、紫外線照射、70%イソプロピルアルコールとの接触、または当該技術分野で公知の他の滅菌手段によって、滅菌される。
【0135】
一晩付着した後、細胞は任意でスコアリングされるか、または視覚的にコンフルエンシーを評価される。しかしながら、付着は、細胞株および増殖条件によって、より長い期間またはより短い期間の培養時間で起こる。その後、細胞は、AM単独または活性化因子を含むAMで72時間プライミングされる。プライミング期間は、場合によっては、72時間以上または未満である。アッセイ培地は、L-15基底培地中の50%(v/v)の完全なL-15増殖培地である。しかし、AMは、いくつかの例で使用される増殖培地の異なる割合で、使用される増殖培地に基づいて変化し得る。特定の実施形態では、活性化因子は、1ng/mLのIL-1β(例えば、Invitrogenインビトロジェン社カタログ番号RILIBI,カリフォルニア州カールスバッド)および10ng/mLのTNF-α(例えば、Millipore社カタログ番号GF023、マサチューセッツ州バーリントン)を含むが、他の濃度のIL-1βおよびTNF-αを使用することができ、IL-1βおよびTNF-αは上記の濃度または他の濃度で単独で使用することができる。炎症反応をより大きくまたはより小さくすることが望まれる場合、一方または両方のサイトカインの異なる濃度が可能である。さらに、IL-1α、IL-6、白血病阻害因子、オンコスタチン-M、IL-8、IL-17、および/またはIL-18のような他のサイトカインは、ここに開示された方法の他の実施形態において互換性があり、IL-1βおよび/またはTNF-αと組み合わせるかまたはその代わりとして使用することができる。活性化因子は、使用する直前に単独でAMに添加される;サイトカインは、原液から少量添加される。72時間後、必要に応じて、AMおよび活性化因子群のサンプルをスコアリングまたは視覚的にコンフルエンシーを調べ、すべての培地は、試験対象となる生産物または生産物由来の物質(たとえばASA CM)とともに新鮮な活性化因子を含む、新鮮なAMに置き換えられる。
【0136】
活性化因子がIL-1βおよびTNF-αである場合、10ng/mLのTNF-αの投与はアッセイ培地間で最大のアッセイウィンドウを提供し、1ng/mLのIL-1bを使用したとき、活性化因子は単独で集団になる。しかしながら、開示された方法では、他の濃度のTNF-αおよびIL-1βが予期される。
【0137】
実施例に記載された実験では、細胞は、AM単独、活性化因子(IL-1βおよびTNF-αなど)を有するAM、または、100%ないし25~75%ASA CMまたはプールされた陽性対照(pooled positive control:PPC)CM中の活性化因子を有するAMのいずれかを受ける。PPC CMが望まれる場合、NuCelの市販ロットを用いて作成され、生産物の様々なバッチからほぼ同等の寄与でPPC CMが生成されることを確保する。活性化因子は、前述の任意の組み合わせで上記のように使用することができる。炎症性サイトカインは、使用直前にAMおよびCMの両方に独立して添加される。さらに、各処理条件からの約400μLの残りの培地は、細胞のないウェルまたは容器に任意に配置される。処理後約48時間後、AMおよび活性化因子群のそれぞれからのサンプルは、任意にスコアリングまたは視覚的にコンフルエンシーを評価される。空のウェルまたは容器に配置された各処理群からの残りの培地を構成し、細胞と同じ条件に従う、無細胞対照におけるTNF-αのレベルは、無細胞対照が望まれない場合に決定される。
【0138】
上清は、炎症性メディエーター/抗炎症性メディエーター産生の分析のために約48時間培養した後に採取され、TNF-αタンパク質産生は好ましい炎症性因子となっている。しかしながら、分析前の他の時間の培養も可能である。上清は、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)で使用するまで-80°Cの場所に置き保存する。TNF-α濃度は市販のキット(例えば、DTA00D、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定され、製造業者の指示に従ってELISAが実施された。遺伝子発現分析のために、細胞を400μLのRNAzol中に採取し、-80°Cで保存する。市販のPicoGreen(商標)アッセイ(Thermo Fisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)は、本明細書に開示される方法と共に使用することができる。
【0139】
さらに、クオンチキンイムノアッセイ対照群248(QC248,R&D Systems社,ミネソタ州ミネアポリス)のような対照材料が必要に応じて利用される。これらの対照は、製造業者の指示に従って再懸濁し、実行される。TNF-α ELISAがCM中のTNF-αタンパク質をリカバリできることを確認するために、リカバリおよび選択性対照が必要に応じて含まれる。標準TNF-αは、単独で(リカバリ対照)、およびプライミングに用いる500pg/mLのIL-1βとともに(選択性対照)、500pg/mLで50%CMに添加される。しかしながら、アッセイ対照のための他の量の標準TNF-αは、開示された方法と互換性がある。
【0140】
遺伝子発現分析が望まれる場合、細胞は上述のように採取され得る。1つの実施形態では、Direct-zol(商標)MicroPrep Plusカラム(Zymo Researchザイモリサーチ社)を用いてRNAを抽出、単離し、Veriti サーマルサイクラー(Applied Biosystemsアプライドバイオシステムズ社)上でVerso cDNA合成キット(ThermoFisher Scientificサーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて逆転写によりcDNAを得る。TaqManプローブ(Life Technologiesライフテクノロジーズ社)を用いて、QuantStudio(商標)3リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystemsアプライドバイオシステムズ社)を使った関連標的の遺伝子発現を評価した。Ct値はQuantStudio(商標)Design and Analysisソフトウェアを用いたデータから得られ、2ΔΔCt法を用いてハウスキーピング遺伝子(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、GAPDH)と比較したフォールドチェンジを決定した。代表的な炎症性および抗炎症性メディエーターに対する適切なTaqManプローブを以下の表1に示す。
【表1】
【0141】
すべての統計解析は、GraphPad Prism(GraphPad Software社)などの市販のソフトウェアを使用して行われる。一元配置分散分析(ANOVA)とダネットの多重比較検定を実行する。すべてのグラフについて、平均±標準偏差が報告される。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。すべてのグラフで、塗りつぶされた棒線は100%の投与を表し、斜線の入った棒線は50%の投与を表す。他の統計解析の形態は、本明細書には記載されていない実施形態で実施され、開示された方法と互換性がある。
【実施例】
【0142】
次に示す実施例は、上記の方法と結果のある一部を示している。次の実施例は、単なる例示として示してあり、限定するものではない。
【0143】
[実施例1]
細胞密度が37,000細胞/ウェルおよび25,000細胞/ウェルにおける高継代(古い細胞)および低継代(新しい細胞)の影響を検討した。この実施例では、高継代という用語は、連続的に継代され(10回以上)、連続的に維持するうちにフラスコ内でコンフルエンシーまたはオーバーコンフルエンシーに達した細胞を指す。低継代という用語は、アッセイで使用する前に約1~5回解凍、継代された細胞を指し、これらの細胞は、継代中に細胞が継代間で90%より高いコンフルエンシーに達しないように注意深く管理されたものである。
【0144】
SW982を、密度が25,000細胞/ウェルまたは37,000細胞/ウェルである800μLの増殖培地で12ウェルプレートの中で播種し、一晩付着させ、これを合計7プレートを用意した。4つのプレートは、継代30(「新しい細胞」)で25,000細胞/ウェルのSW982細胞を有し、1つのプレートは、継代30(「新しい細胞」)で37,000細胞/ウェルのSW982細胞を有し、1つのプレートは、継代37で37,000細胞/ウェル(「古い細胞」)のSW982細胞を有し、そしてもう1つのプレートは、継代37で25,000細胞/ウェル(「古い細胞」)のSW982細胞を有した。増殖培地は10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したライボビッツL-15培地(HyCloneハイクローン社、イリノイ州シカゴ)であった。
【0145】
SW982培養のための市販の指示書ではCO2および空気の混合培養条件を推奨していないため、CO2のない環境を提供するために5%CO2を含む培養器の中でパラフィルムの中にプレートを被覆することと、CO2のない培養器の中でパラフィルムM(商標)なしでプレートを置くこととの違いも調べた。このようにして、すべてのプレートをパラフィルムM(商標)で被覆し、5%CO2を含む培養条件の下で培養器の中に置いたが、例外的に1つのプレートだけ、パラフィルムM(商標)なしで培養器の中に置いた。パラフィルムM(商標)なしの追加のプレートを、CO2がほぼない培養器中に置いた。この実施例においてグループのランダム化も検討し、ランダム化されなかった(つまり、各カラムは同じ条件を表す)プレートを、プレート上の条件をランダムに割り当てたプレートと比較した。ランダム化は、random.orgで入手可能なランダマイザーのような、市販のリストランダマイザーを用いて実施した。
【0146】
約24±4時間の細胞接着の後、アッセイ培地(AM)単独または活性化因子を含むAMで72時間細胞をプライミングした。アッセイ培地は、L-15基底培地の中で50%(v/v)の完全増殖培地であった。活性化因子は、1ng/mLのIL-1β(Invitrogenインビトロジェン社カタログ番号RIL1BI、ロット番号U1287721A、カリフォルニア州カールスバッド)と2ng/mLのTNF-α(Milliporeミリポア社カタログ番号GF023、ロット番号2946036、マサチューセッツ州バーリントン)から成っていた。72時間後、すべての培地を新鮮な培地と交換した。AM単独、活性化因子(IL-1βおよびTNF-α)を有するAM、もしくは100%または50%ASA CM中の活性化因子を有するAMのいずれかを受けた細胞を、前述のように調製した。処理後48時間後、各細胞密度条件を表すAMおよび活性化因子群の各々から1つのウェルをコンフルエンシーについてスコア化し、その結果を表2に示した。一般的に、高継代細胞は低継代細胞よりも速く成長し、よりコンフルエントになるが、一方で、プレートのランダム化およびParafilm M(商標)被覆はほとんど影響しなかった。しかし、CO
2がほぼない培養器で培養した細胞は、Parafilm M(商標)被覆の有無にかかわらず、5%CO
2の培養条件に曝露した細胞と比較して、より高いコンフルエンシーが得られた。
【表2】
【0147】
培養48時間後に上清を採取してTNF-αタンパク質の産生を分析し、本技術分野で広く知られた方法に従ってプレートを4°Cで4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。製造業者の指示に従い、直ちに上清をELISAに使い、市販のキット(DTA00D、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いてTNF-α濃度を測定した。
【0148】
市販のGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて統計解析を行った。一元配置分散分析(ANOVA)とダネットの多重比較検定を行った。すべてのグラフで、平均±標準偏差を示している。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。すべてのグラフにおいて、塗りつぶされた棒線は100%の投与を表し、斜線の入った棒線は50%の投与を表す。すべての実験のサンプル数を図の凡例で示す。
【0149】
低継代処理群間の細胞密度の比較において、結果は、試験されたどちらの密度もASA CM処理後のTNF-αダウンレギュレーションの有意な傾向を維持し(p<0.0001)、各処理群内で類似のTNF-αレベルを有することを示す(
図1)。さらに、高継代処理群の試験も、有意な傾向を維持することを示し(活性化因子INFと比較したASA CMのp<0.0001)、どちらの播種密度も各処理群内で類似のTNF-αレベルをもたらす。低継代処理群と高継代処理群の両方とも類似のTNF-αレベルを有し、両処理群ともASA CM処理後にTNF-αたんぱく質レベルの有意な低下を示した。プレートランダム化の研究では、TNF-αの有意なダウンレギュレーションはASA CM処理後に維持され(p<0.0001)、TNF-αタンパク質レベルは非ランダム化プレートで生成されたものと類似している。従って、
図1の結果から、継代数、播種密度、およびプレートランダム化はTNF-αレベルに有意な影響を与えず、同様に、ウェル条件のプレートランダム化はTNF-αレベルに有意な影響を与えないように思われる。
【0150】
次に、
図2の結果が示すように、培養CO
2条件がTNF-αタンパク質レベルに及ぼす影響を検討した。細胞をCO
2なしの培養器またはフェノール系のふたのあるフラスコ(培養器との空気交換なし)で培養した。細胞を12ウェルプレートに入れて播種(25,000細胞/ウェル)した後、一方のプレートを5%CO
2培養器(パラフィルムなし)に置き、他方のプレートをCO
2なしの培養器に置いた。CO
2ありとCO
2なしを比較した結果を検討すると、いずれの場合も、ASA CMによる処理は活性化因子と比較してTNF-αレベルを有意に低下させた(p<0.0001)。TNF-αのダウンレギュレーションが双方の条件においてASAによる処理の結果として観察された一方、CO
2の影響を受けない培養器で維持されたプレートでは、全体的なTNF-αレベルは実質的に高かった。さらに、培養中にCO
2を伴いParafilm M(商標)で被覆した状態を
図1に示す(「25k新規細胞」群)。この群は、
図2に示すように、Parafilm M(商標)の被覆なしでCO
2と培養した25,000細胞/ウェル群から生じたものと比較して、実質的に同等のTNF-αレベルを有することが見出された。これらの結果は、Parafilm M(商標)被覆が培養中のCO
2との相互作用を完全には防止しないことを示す。
【0151】
[実施例2]
この実施例では、IL-1β濃度を1ng/mLに一定に保ちつつ、SW982細胞にTNF-αの量を10ng/mL、5ng/mL、2ng/mLと変化させて投与した場合の効果を検討する。継代29のSW982細胞を4つの12ウェルプレートの800μLの成長培地中に25,000細胞/ウェルの密度で播種し、CO2のない培養器の中で一晩付着させた。成長培地は10%ウシ胎児シ血清(FBS)を添加したライボビッツL-15培地(ハイクローン社、イリノイ州シカゴ)であった。
【0152】
約24±4時間の付着後、細胞をアッセイ培地(AM)単独または活性化因子を含むアッセイ培地で72時間プライミングした。アッセイ培地は、基底培地(ライボビッツL-15)で50%(v/v)の完全増殖培地であった。活性化因子は、1ng/mLのIL-1β(Invitrogenインビトロジェン社カタログ番号RIL1BI、ロット番号U1287721A、カリフォルニア州カールスバッド)と、10ng/mL、5ng/mL、または2ng/mLのTNF-α(Milliporeミリポア社カタログ番号GF023、ロット番号2946036、マサチューセッツ州バーリントン)から成っていた。72時間後、すべての培地を新鮮な培地と交換した。AM単独、活性化因子(1ng/mLのIL-1βおよび10ng/mL、5ng/mL、または2ng/mLのTNF-α)を有するAM、もしくは100%または50%ASA CM中の活性化因子(1ng/mLのIL-1βおよび10ng/mL、5ng/mL、または2ng/mLのTNF-α)を有するAMのいずれかを受けた細胞を、前述のように調製した。活性化因子は使用直前にAMとCMの両方に独立して添加された。培養48時間後に上清を採取してTNF-αタンパク質の産生を分析し、本技術分野で広く知られた方法に従ってプレートを4°Cで4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。上清をELISAで使用するまで-80°Cで保存した。TNF-αレベルを市販のキット(DTA00D、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定し、製造業者の指示に従ってELISAを実施した。
【0153】
統計解析は市販のGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて実施された。一元配置分散分析(ANOVA)とダネットの多重比較検定を行った。すべてのグラフで、平均±標準偏差を示している。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。すべてのグラフにおいて、塗りつぶされた棒線は100%の投与を表し、斜線の入った棒線は50%の投与を表す。すべての実験のサンプル数を図の凡例で示す。
【0154】
TNF-α応答への活性化因子の効果を特性化して、どのTNF-α濃度がAM対照と活性化因子単独群の間で最大のアッセイウィンドウをもたらすかを決定した。さらに、これらの異なる濃度のTNF-α処理におけるASA CMへの応答を特性化した。TNF-α ELISAの結果を
図3に示す。10ng/mLのTNF-αの投与では、活性化因子単独群において高濃度のTNF-αが認められ、ASA CM処理後にTNF-αタンパク質レベルが有意に低下した(100%:p<0.0001;50%:p<0.001)。5ng/mLのTNF-α処理群では、TNF-α処理に対する反応はより小さかったが、それでもASA CMに反応してTNF-αタンパク質レベルが有意に低下した(100%:p<0.0001;50%:p<0.001)。2ng/mLのTNF-α処理群では、さらに低い炎症反応が観察され、ASA CMに反応してTNF-αの低下も見られた(100%:p<0.01;50%:n=1、統計解析なし)。
【0155】
ASA CM処理が正規化され、
図4の下方に減少率として示されたとき、10ng/mLおよび5ng/mLの両方のTNF-αの投与は、100%および50%のASA CM処理後、非常に類似した有意な炎症の低下をもたらした(それぞれ、p<0.0001およびp<0.001)。しかし、2ng/mL処理群では、100%CMでのTNF-αのより高い減少率の傾向が観察された一方で、全体的な炎症レベルは、10ng/mLおよび5ng/mLのTNF-α処理群で観察されたものよりはるかに低かった(
図3)。
【0156】
この研究では、SW982細胞の初期プライミングを検討して、AM対照と比較した炎症の増加レベルを最適化し、処理終了時に観察される炎症レベルと比較する(
図3)。炎症性サイトカインによるプライミングの72時間後のTNF-α ELISAの結果(処理直前、t0)を
図5に示す。10ng/mLのTNF-α処理群では、AM対照と比較してt0でTNF-αレベルの有意な増加があった(p<0.0001)。t0では、10ng/mLのTNF-α処理群のTNF-αレベルは560pg/mLであった(
図5)が、実験終了時には、10ng/mLのTNF-α処理群のTNF-αレベルは753pg/mLであった(
図3)。5ng/mLのTNF-α処理群では、t0時のTNF-αレベルがAM対照と比較して有意な増加があり(p<0.0001)、その値はt0では311pg/mL(
図5)、研究終了時には273pg/mL(
図3)であった。2ng/mLのTNF-α処理群では、t0時のTNF-αレベルがAM対照と比較して有意な増加があり(p<0.001)、t0では164pg/mLのTNF-α(
図5)、研究終了時には99pg/mL(
図3)であった。10ng/mLのTNF-α処理群では、TNF-αレベルで測定されたように、炎症が持続し、t0から研究終了時まで増加する;5ng/mLおよび2ng/mLのTNF-α処理群では、炎症レベルは一定であるか、t0から最終時点に向けて減少する。持続したTNF-α減少傾向、アッセイ培地と活性化因子単独群との間のより大きな差、CM処理群の結果としての減少、およびt0から実験終了時までのTNF-αレベルの持続/増加から、10ng/mLのTNF-αをSW982細胞とともに使用することが理想的であると結論づけられた。
【0157】
[実施例3]
プール陽性対照(PPC)およびASA(NuCel(登録商標))CMを市販ロット(ロット番号184670903)から用いて、力価(potency)アッセイの再現性を検討した。さらに、用量曲線を実行して、ASA CMの異なる割合に対する応答を評価した。PPCはNuCelの市販ロットを用いて作成し、5バッチ分をそれぞれ30バイアル作り、PPC CMが様々なバッチからほぼ等しい寄与で生成されることが確かめられた。
【0158】
継代31(融解から+3、100%コンフルエント)のSW982細胞のフラスコを使用し、成長培地中の25,000細胞/ウェルで、1つの12ウェルプレートのすべてと、もう1つの12ウェルプレートのうちの8ウェルに播種した。用量曲線のために、さらに2つの12ウェルプレートにこの細胞密度で播種した。すべてのプレートをCO2のない37°Cの培養器に入れた。増殖培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したライボビッツL-15培地(ハイクローン社、イリノイ州シカゴ)であった。
【0159】
一晩付着させた後、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点し、細胞をAM単独または活性化因子を含むAMで72時間プライミングした。AMは基底培地で50%(v/v)の完全増殖培地であった(ライボビッツL-15)。活性化因子は、1ng/mLのIL-1β(Invitrogenインビトロジェン社カタログ番号RIL1BI、カリフォルニア州カールスバッド)と10ng/mLのTNF-α(Milliporeミリポア社カタログ番号GF023、マサチューセッツ州バーリントン)から成っていた。活性化因子を使用直前にAMに単独で添加した。72時間後、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点し、全ての培地を新鮮な培地と交換した。細胞は、AM単独、活性化因子(IL-1bおよびTNF-α)を有するAM、または、100%または50%のPPC CMまたはASA CMの活性化因子を有するAMのいずれかを受けた。活性化因子を使用直前にAMとCMの両方に単独で加えた。用量曲線のために、細胞を100%、75%、50%、25%、または10%のASA CMで処理した。さらに、各処理条件からの約400μLの残りの培地を細胞のないウェルの中に置いた。処理の約48時間後に、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点した。各採取点におけるAMおよび活性化因子(INF)群の細胞のコンフルエンシーを表3に示す。
【表3】
【0160】
各処理群から残されて空のウェルに置かれ、細胞と同じ条件となった残りの培地から成る、無細胞対照のTNF-αレベルを
図6に示す。これらのELISAの結果は、全ての無細胞対照のTNF-αレベルがそれに対応する細胞よりも実質的に低いことを示しており、細胞自体が、各条件内で活性化因子が供給する量を超えて、TNF-αを産生していることを示している。
【0161】
上清を約48時間の培養後に回収し、TNF-αタンパク質産生を分析した。上清をー80°Cに置き、ELISAで使用するまで保存した。TNF-αレベルを市販のキット(DTA00D、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定し、製造業者の指示に従って実施した。すべての統計解析は、市販のGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて実施された。一元配置分散分析(ANOVA)とダネットの多重比較検定を行った。すべてのグラフで、平均±標準偏差を示している。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。すべてのグラフにおいて、塗りつぶされた棒線は100%の投与を表し、斜線の入った棒線は50%の投与を表す。
【0162】
アッセイの再現性を評価するため、炎症の減少率を
図7に示す。これらの実験をそれぞれの炎症単独の対照値に正規化すると、100% ASA CMとPPC CMによる処理に対する反応と50%のASA CMとPPC CMに対する反応は類似していた。100%および50%のASA CMとPPC CM群の両方とも、投与後のTNF-αレベルの減少の保持を認めた。
【0163】
アッセイノ再現性ガコレラノ研究デ示サレタ。マタ、細胞ガ無細胞対照カラ測定サレタモノヨリモ高イレベルデTNF-αヲ過剰ニ産生スルコトガ確認サレ、TNF-αノ読ミ出シハ、適用ガアル場合、活性化因子オヨビソノ後ノ処置ニ対スル細胞応答ニ起因スルコトガ示サレタ。
【0164】
[実施例4]
本研究では、2つの臨床ロット(TA1およびTA2)から生成されたASA CMを用いて、比較としてPPC CMと、また1つの独立したオペレーターとともに、力価アッセイの試行を行った。さらに、NuCelの市販ロットからのASA CMと75%PPC CMの追加投与を用いたPPC CMによる処理を検討した。臨床ロットとPPCバイアルを研究所で受け取り、市販ベンダーの推奨に従って保管した。
【0165】
SW982細胞を継代29(融解から+1、コンフルエント90%未満)で用いた。12ウェルプレートに25,000細胞/ウェルで播種し、CO2なしで37°Cで培養器に置いた。増殖培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したライボビッツL‐15培地(ハイクローン社、イリノイ州シカゴ)であった。
【0166】
一晩約24±4時間の付着後、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点し、細胞をAM単独または活性化因子を含むAMで72時間プライミングした。アッセイ培地は基底培地で50%(v/v)の完全増殖培地であった(ライボビッツL‐15)。活性化因子は、1ng/mLのIL-1β(Invitrogenインビトロジェン社カタログ番号RIL1BI、カリフォルニア州カールスバッド)と10ng/mLのTNF-α(Milliporeミリポア社カタログ番号GF023、マサチューセッツ州バーリントン)から成っていた。炎症性サイトカインをAMに単独で使用直前に添加した。72時間後、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点し、全ての培地を新鮮な培地と交換した。
【0167】
細胞は、AM単独、活性化因子(IL-1bおよびTNF-α)を有するAM、または、100%または50%のPPC CMまたはASA CMの活性化因子を有するAMのいずれかを受けた。炎症性サイトカインをAMとCMの両方に単独で使用直前に添加した。用量曲線に対して、細胞を100%、75%、または50%のASA CMまたはPPC CMで処理した。さらに、各処理条件からの約800μLの残りの培地を、細胞のないウェルに入れた。処理の約48時間後、AMおよび活性化因子群のそれぞれから1つのウェルをコンフルエンシーについて採点した。各採取点におけるAMおよび活性化因子(INF)群の細胞のコンフルエンシーを表4に示す。
【表4】
【0168】
上清を約48時間の培養後に回収し、TNF-αタンパク質産生を分析した。上清を-80°Cに置き、ELISAで使用するまで保存した。TNF-αレベルを市販のキット(DTA00D、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定し、製造業者の指示に従って実施した。さらに、クオンチキンイムノアッセイ対照群248(QC248,R&D Systems社,ミネソタ州ミネアポリス)を用いた。これらの対照を、製造業者の指示に従って再懸濁し、実行した。TNF-α ELISAがASA CM中のTNF-αタンパク質をリカバリできることを確認するために、リカバリおよび選択性対照を含めた。キットに含まれる標準TNF-αを、単独で(リカバリ対照)、およびプライミングに用いる500pg/mLのIL-1βとともに(選択性対照)、500pg/mLで50%CMに添加した。
【0169】
すべての統計解析は、市販のGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて行った。一元配置分散分析(ANOVA)とダネットの多重比較検定を実行した。すべてのグラフにおいて、平均±標準偏差を示している。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を示す。すべてのグラフにおいて、塗りつぶされた棒線は100%の投与を表し、斜線の入った棒線は50%の投与を表す。
【0170】
TNF-α ELISAを実行し、2つの臨床ロット(1904および1905)および対照としてのPPC CMによる処理後の炎症に対する応答を決定した。これらの結果を
図8に示す。TAI,TA2,PPC CMからのASA CMの追加はすべて、治療後のTNF-αレベルの有意な低下をもたらす(50% PPC CM以外はすべてp<0.0001;50% PPC CMはp<0.001)。これらの結果は、CMの投与量の減少がTNF-αのより効果の弱いダウンレギュレーションをもたらすことから予想された通りである。さらに、PPC CMは試験品と同様の結果を示した。
【0171】
次に、ASA CMとPPC CMの市販ロットを用いて、50%、75%、および100% CMの投与を行った。TNF-α ELISAの結果を
図9に示す。100%、75%、および50%用量のNuCel CMおよびPPC CMによる処理後に、TNF-αレベルの有意な低下が観察される(50%PPC CM以外はすべてp<0.01;50%PPC CMはp<0.001)。さらに、明らかな用量反応が観察され、より高用量のCMでより大きなレベルの低下が観察される。
【0172】
空のウェルに置いて細胞と同じ条件にさらされた各処理群からの培地で構成された、無細胞対照におけるTNF-αのレベルを調べた。その結果を
図10および
図11に示す。TA1およびTA2のASA CMと
図10のPPC CMの値は
図8と同じであり、
図11のASA CMとPPC CMの値は
図9で示されたものと同じである。
図10と
図11の両方で、無細胞対照のTNF-αのレベルはすべて、対応する細胞のものよりも低い。この結果は、細胞自体が各条件において炎症刺激がもたらすものを超えてTNF-αを産生していることを示している。
【0173】
力価アッセイの再現性を評価するために、
図12は
図8および
図9でのPPM CMの結果を同じグラフに描いたものであり、
図13は
図8および
図9でのPPM CMの結果に対するTNF-αの減少率を示している。
図12では、100%および50%PPC CM処理後のTNF-αレベルの減少は有意であり、実験間で類似している。各群の平均変動係数(CV)を比較すると、活性化因子群は14%CV、100%PPC CM群は23%CV、50%PPC CM群は22%CVであった。
図13では、PPC CMの結果を炎症に正規化すると、100%PPC CM群と50%PPC CM群の両方で類似した値が得られ、ここでもアッセイの再現性が強調されている。100%PPC CMのCV値は6%であるが、50%PPC CMの値は34%である。
【0174】
研究により、TNF-α ELISAがCM中のTNF-αタンパク質のリカバリを可能にすること、積極的治療であること、を確認した。TNF-αレベルの結果を
図14に示す。
図14では、キットに含まれている500pg/mLのTNF-α標準を、製造業者の指示に従って希釈液中で実行した。これにより、501pg/mLのTNF-α値が返された。100%NuCel CMをTNF-αを添加せずに単独で実行して、8pg/mLのTNF-αが測定された。50%NuCel CMと500pg/mLのTNF-αを用いたリカバリ対照は506pg/mLのTNF-α値を返したが、50%NuCel CM、500pg/mLのTNF-α、および500pg/mLのIL-1βを含む選択性対照は558pg/mLのTNF-αの値を返した。これらの結果は、CM中のTNF-αを、IL-1βの有無の両方で、正確に定量するTNF-α ELISAの能力を確かにするものである。特に、ASA CMとNuCel CMは互換性があるものとして、本研究で使用されている。
【0175】
異なる実験間の相対的な力価を比較するために用いられる、力価に関する単一の報告可能な指標を評価するために、様々な用量でのTNF-α読み出しの減少率を同じ用量でPPC CMに正規化し、各用量での相対的な力価を報告し、その後、単一の読み出しに対して平均化した。PPC CMと比較して100%、75%、および50%ASA CM用量の相対的な力価を表5に示す。平均値、標準偏差、および平均パーセント変動係数(CV)を示す。この指標に基づき、NuCel ASAロットは約104±7%の力価と示せるであろう。
【表5】
【0176】
この実施例ではアッセイの再現性と、2つのASA臨床ロットとPPC CMがTNF-αレベルの有意な減少を維持したことを確認した。75%を含む3用量でのPPC CMと比較した相対的力価の使用も評価した。加えて、TNF-αアッセイのためのイムノアッセイ対照セットの有用性を確認し、リカバリおよび選択性対照もまた、TNF-α ELISAがCM中のTNF-αタンパク質を検出できることを確認した。最後に、力価アッセイ間の比較に使用できる相対的力価を計算した。
【0177】
[実施例5]
3つの異なるモデルを用いて、炎症のダウンレギュレーションにおけるASAの力価を検討した。本研究では、HFLSを用いて炎症刺激下に細胞を置くことにより、OAのインビトロのモデルを作成した。プライミング期間の後、これらの細胞をヒトASAからの条件培地に曝露した。そして、HFLSの上清中のタンパク質レベルを測定することにより応答を測定した。ASAによる処理は、炎症性サイトカインのレベルを低下させ、抗炎症性サイトカインのレベルを増加させた。
【0178】
ヒト組換えIL‐1β(インビトロジェン社)とTNF-α(コーニング社)を、OAに対して生理的に関連するレベルで使用した(それぞれ、1ng/mLおよび10ng/mL)。HFLS(Cell Applications社)を、滑膜細胞増殖培地(Cell Applications社)を用いて製造業者のプロトコルに従って増殖させた。全ての細胞をダブリング4~6で用いた。CMはASAを解凍し、DMSOを除去するために250×gで5分間遠心分離し、ASAの元の体積に等しいアッセイ培地(75%滑膜細胞基礎培地(サプリメントなし)および25%滑膜細胞増殖培地;低血清)中でペレットを再懸濁させることにより、調製した。再懸濁したASAをオービタルロッカー上で4°Cで4日間調整し、サイトカインの大部分を放出し、新鮮なアッセイ培地中で25%v/vに希釈し、使用前に滅菌ろ過し、放出されたタンパク質のみを残し、膜または細胞成分を残さなかった。
【0179】
炎症性滑膜細胞モデルに対するASAの効果を研究するために、正常HFLSを12ウェル組織培養プレート中に37,000細胞/ウェルの密度で播種し、標準培養条件下で一晩付着させた。細胞を、アッセイ培地(低レベルのサプリメント)または炎症性サイトカイン(1ng/mLヒトIL-1βおよび10ng/mLヒトTNF-α)を含むアッセイ培地で、72時間プライミングした。最初のプライミング後、すべての培地を交換し、新鮮な培地および新鮮な炎症性サイトカインに置き換えた。ウェルのうちの半分はASA CM+新鮮な炎症性サイトカインを受け、残りの半分はアッセイ培地+新鮮な炎症性サイトカインを受けた。処理の48時間後、上清と細胞回収して、タンパク質レベルと遺伝子発現をそれぞれ評価した。
【0180】
上清を-80°Cで凍結した後、ELISAキット(R&Dシステムズ社)を用いてIL-1β、TNF-α、IL-1Ra、および他の関連するタンパク質レベルを分析した。それに続く代表的な条件培地の評価では、IL-1βとTNF-αおよび約2ng/mLのIL-1raが低レベル~検出不能なレベルであることを明らかにした。ASAによる処理は、
図15に示すように、炎症性サイトカイン、TNF-αおよびIL-1βの有意な減少をもたらし、TNF-αに見られる最大の効果を示した。また、抗炎症性IL-1ra濃度に有意な増加が見られ、TIMP-3レベルにも、小さいが有意な増加が見られた(データは示されていない)。
【0181】
全体として、炎症モデルを用いて、正常なヒト線維芽細胞様滑膜細胞をASAで処理すると、炎症性サイトカインレベルのダウンレギュレーションと抗炎症性サイトカインおよびプロテアーゼ阻害剤のアップレギュレーションが生じることが決定づけられた。
【0182】
ウサギ滑膜細胞(HIG-82)は、初代ウサギ滑膜細胞培養の活性化可能な表現型を保持する自然不死化ウサギ滑膜細胞である。HIG-82細胞株をATCC(バージニア州マナッサス)から得て、10%ウシ胎児血清(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)と抗生物質ー抗真菌溶液(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)を添加したHam’s F12培地(Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド)で培養した。アッセイのために、HIG‐82細胞を12ウェルプレート中に37,000細胞/ウェルの密度で播種し、一晩付着させた。実施例5でHFLSモデルのために上述したのと同じプロトコルに従いつつ、細胞を1ng/mLウサギIL-1βおよび10ng/mLウサギTNF-αでプライミングした。ASA CMを、同実施例5で上述したように、HFLSモデルのために調製した。合計10ロットのASAをこのモデルで評価した。加えて、羊膜粒子と細胞成分の別々の寄与を評価するのに、異なるドナーからのものを研究所で調製して、その2つの成分を臨床生産物のために混合する前に凍結した、3つのロット材料を用いた。
【0183】
このモデルでは複数のサイトカインを分析したが、HFLSモデルに関しては、TNF-αレベルに最大の影響が見られ(
図16参照)、ASA-CM(条件培地)の50%と100%用量の両方で見られたタンパク質発現の有意な減少があり、平均79%の減少であった。個々の成分を評価すると、TNF-αレベルへの有意な影響が液体成分だけに見られた。
【0184】
遺伝子発現ではいくつかの有意な変化が見られ、最も顕著なものとしては、IL-1β発現の減少とMMP-1発現の増加、およびTIMP‐1のタンパク質発現の増加であったが、IL-1β、MMP-1、およびIL-1raのタンパク質レベルには、このモデルでは有意な影響は見られなかった。
【0185】
SW982細胞株をATCC(バージニア州マナッサス)から得て、10%ウシ胎児血清(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)を添加したライボビッツL-15培地(ハイクローン社、シカゴ)で培養した。L-15はCO2が存在しない場合で使用するように処方されており、従って、気体の交換を減らすため、培養プレートをパラフィルムで包み、5%CO2の培養器で培養した。アッセイのために、SW982細胞を12ウェルプレート中に37,000細胞/ウェルの密度で播種し、ヒトIL-1βおよびTNF-αをプライミングのために使用したことを除いて、上記実施例5で開示されたHIG-82モデルの他のすべての方法に従った。
【0186】
HFLSおよびHIG-82モデルと同様に、
図17に示すとおり、TNF-αレベルに最大の影響が見られた。HIG-82細胞株と比較して、有意な減少が膜と液体成分の両方で別々に見られた。このモデルでは、IL-1β遺伝子発現の有意な減少と、逆にIL-1βタンパク質レベルの増加が見られ、さらにIL-1raタンパク質レベルの有意な増加も見られた。
【0187】
図17の非処理炎症群におけるTNF-αの発現量を比較することでわかるように、このモデルおよび他のモデルで実施された別々の実験では、一定でない炎症反応が認められた。この変動の影響を最小限に抑えるために、TNF-αレベルの減少率を、同じ実験で実施された炎症対照と比較して計算することで、データを正規化することができる(
図18参照)。この分析では、ASAの10ロットすべてが50%CM用量で試験されたときに有意な減少を示し、この10ロットのうち9ロットは100%用量レベルで有意な減少を示した(ロット191570903で統計を行うにはサンプルが不十分)。多くのサンプルで、100%用量で平均77%(範囲67~87%)の減少、および50%用量で平均53%(範囲29~87%)の減少をともなう用量反応が見られた。
【0188】
上記の結果は、関連するヒト膝滑膜細胞モデルにおいて、ASAが炎症関連因子のバランスに影響を与え、抗炎症性サイトカインであるIL-1raおよびTIMP-3を増加させ、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-1βを減少させることを示している。同様の応答は、特にTNF-αレベルの低下において、2つの形質転換細胞モデル、すなわち、自然形質転換ウサギ滑膜細胞株であるHIG-82およびヒト滑膜肉腫細胞株であるSW982で見られたことから、両細胞株は制御可能な炎症表現型を保持し、ASAの力価をモニターするためのインビトロな細胞に基づいた方法として使用できることが確認された。
【0189】
[実施例6]
本発明者らは、2つのMSC炎症特性評価試験、1つはbmMSCとhTERT-adMSCの両方を用いた試験、もうひとつはhTERT-adMSCのみを用いた試験、を実施した。
【0190】
初代骨髄由来MSC(bmMSC)とhTERT不死化adMSC(ASC52telo;hTERT-adMSC)をATCC(バージニア州マナッサス)から得た。プライマリ細胞を、bmMSC用の間葉系幹細胞増殖キットを補充したATCC MSC基礎培地で規定どおりに培養し、製造業者の指示どおりに継代した。hTERT-adMSCを、10%ウシ胎児血清(FBS)(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)および抗生物質ー抗真菌溶液(P/S/A)(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(コーニング社、ニューヨーク州コーニング)で規定どおりに培養し、製造業者の指示どおりに継代した。DMEM+10%FBS+P/S/Aは、すべての実験において、アッセイ培地(AM)の対照として、5%FBSが補充されたプライマリ細胞および不死化細胞の両方を用いた播種実験のための増殖培地(GM)として機能した。
【0191】
条件培地(CM)を調整するために、羊水懸濁同種移植片(ASA、オルガノジェネシス社、アラバマ州バーミンガム)を解凍し、600xgで5分間遠心分離してDMSO成分を除去した。上清を除去し、廃棄した。そして、ASAのペレット化成分を1mLのASA(元の体積)当たり1mLのAMの濃度でAMの中で再懸濁し、穏やかに回転させながら4°Cで~3日間培養した。そして、懸濁液を600xgで5分間遠心分離し、次いで、上清(CM)を回収し、0.22pmポリエーテルサルフォン(PES)フィルター(Millex(商標)-GP滅菌シリンジフィルター、SLGP033RS,MilliporeSigmaミリポアシグマ社,マサチューセッツ州バーリントン)を用いて滅菌濾過して、使用前に未希釈で(100%)またはAM中で希釈して使用した。
【0192】
2ロットのASAに対するMSC応答を、1つのbmMSC(70017992)およびhTERT不死化adMSC(ASC52telo、hTERT-adMSC)のプライマリーロットを用いて評価した。MSCを20,000細胞/ウェルで12ウェルプレートに播種し、20ng/mL TNF-α(GF023、ミリポア社、マサチューセッツ州バーリントン)および1ng/mL IL-1β(RIL1B1、インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)でプライミングする前に4~8時間付着させ、炎症表現型を誘導した。約72時間のプライミング後、細胞を100%、75%、または50%ASA CM(上述のように調製した)で新鮮な炎症性サイトカインと処理した。アッセイ培地対照(炎症刺激を受けないAM)および炎症単独(プライミング後に新鮮なサイトカインを投与されASA処理を受けなかったINF)はプレートワイズな対照として機能する。処理日に、すべての条件からの残りの処理を空のプレートに加え、無細胞対照として機能させたところ、観察された反応が実際に細胞媒介性のものであることを確認できた。TNF-αタンパク質レベルの分析のため、約48時間の処理後に上清を採取し、細胞をRNAzol(400pL)の中に採取した。
【0193】
上清を-80°Cに置き、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で使用するまで保存した。TNF-αレベルを市販キット(DTA00D、R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定した。ELISAを製造業者の指示どおりに実施した。
【0194】
IL-1βおよびTNF-αによるプライミング後にhTERT-adMSCおよびbmMSCをASA CMで処理すると、
図19に示すように、両被験物質(2つのASAロット、それぞれTA1とTA2とする)の100%、75%、および50%用量で有意な減少が示された。すべてのAMサンプルは最低標準(15.6pg/mL)以下であり、そのように報告されている。hTERT-adMSCの3プレートすべての平均INFは3067.4pg/mLでCVは6.0%であったが、初代bmMSCの平均INFは4948.2pg/mLでCVは16.8%であった。
【0195】
また、無細胞対照におけるTNF-αレベルを細胞上清サンプルと比較して、細胞自体が各処理条件に対して供給されるものを超えてTNF-αを産生していることを確認した。このデータを
図20に示す。塗りつぶされた棒線は比較のために
図19に示したものと同じであり、無細胞対照は斜線の入った棒線として示されている。注目すべきこととして、すべての用量プレートを処理するために同じストックが使用されるが、AMとINFの無細胞対照は100%のグループにのみ示されている。
【0196】
そして、INFからの減少率を、各用量で試験された各被験物質について記載されているように計算した(
図21参照)。TA1およびTA2の被験物質はいずれも、すべての用量でTNF-αレベルの用量依存的減少がもたらされた。
【0197】
hTERT-adMSCおよび初代bmMSCの両方とも、100%、75%および50%のCM用量において、TNF-αレベルを有意に減少させることができ、用量依存的に、各条件でもたらされたものを超えるTNF-αレベルを産生した。さらに、両細胞型とも、すべての用量においてTNF-αレベルの用量依存的な減少があった。
【0198】
2ロットのASAに対するMSC応答をhTERT不死化adMSC(ASC52telo、hTERT-adMSC)を用いて評価した。MSCを20,000細胞/ウェルで12ウェルプレートに播種し、炎症表現型を誘導するために20ng/mL TNF-α(GF023、ミリポア社、マサチューセッツ州バーリントン)および1ng/mL IL-1β(RILIBI、インビトロジェン社、カリフォルニア州カールスバッド)でプライミングする前に4~8時間付着させた。約72時間のプライミング後、細胞を新鮮な炎症性サイトカインとともに100%、75%または50%ASA CM(上述のように調製)で処理した。アッセイ培地対照(炎症刺激を受けたことのないAM)および炎症単独(プライミング後に新鮮なサイトカインを投与されたがASA処理を受けなかったINF)はプレートワイズな対照として機能する。処理日に、すべての条件からの残りの処理を空のプレートに加え、無細胞対照として機能させ、観察された反応が実際に細胞媒介であることを確認できた。TNF-αタンパク質レベルの分析のために処理の約48時間後に上清を採取し、細胞をRNAzol(400μL)に回収した。
【0199】
上清を-80°Cに置き、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で使用するまで保存した。TNF-αレベルは市販キット(DTA00D、R&Dシステムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を用いて測定した。ELISAは製造業者の指示どおりに実施した。
【0200】
IL-1βおよびTNF-αによるプライミング後にhTERT-adMSCをASA条件培地(CM)で処理すると、
図22に示すように、両被験物質(ASAロット、それぞれTA1およびTA2とする)の100%、75%、および50%用量で有意なダウンレギュレーションが生じた。すべてのアッセイ培地(AM)サンプルは最低標準(15.6pg/mL)以下であり、そのように報告されている。3プレートすべての平均INFは3560.9pg/mLであり、CVは8.5%であった。
【0201】
また、無細胞対照におけるTNF-αレベルを処理細胞サンプルと比較して、細胞自体が各処理条件に対して供給される量を超えてTNF-αを産生していることを確認した。このデータを
図23に示す。塗りつぶされた棒線は比較のために
図22に示すものと同じであり、無細胞対照は斜線の入った棒線として示されている。注目すべきこととして、すべての用量プレートを処理するために同じストックが使用されるが、AMとINFの無細胞対照は100%のグループにのみ示されている。
【0202】
次に、各用量で試験された各被験物質について記載されているように、INFからの減少率を計算したものを、
図24に示す。1906および1908の被験物質はいずれも、すべての用量でTNF-αレベルの用量依存的減少がもたらされた。
【0203】
この結果、hTERT-adMSCが、試験された100%、75%、および50%のCM用量において、TNF-αレベルを有意に減少させることができ、各条件でもたらされたものを超えるTNF-αレベルを産生したことが示された。さらに、hTERT-adMSCは、すべての用量でTNF-αレベルの用量依存的減少があった。
【0204】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換および変更を本明細書で行うことができると理解されるべきである。本明細書に記載される方法や、アッセイ、およびその様々な実施形態は例示である。本明細書に記載される方法およびアッセイの、他の様々な実施形態も可能である。
【国際調査報告】