(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】離散的な磁束方向付け磁石アセンブリ及びそれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 21/12 20060101AFI20240311BHJP
H02K 1/2792 20220101ALI20240311BHJP
H02K 1/2783 20220101ALI20240311BHJP
【FI】
H02K21/12 M
H02K1/2792
H02K1/2783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558706
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022021613
(87)【国際公開番号】W WO2022204329
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362641
【氏名又は名称】マインケ ライナー
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】マインケ ライナー
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621BB02
5H621HH01
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA07
5H622CB04
5H622PP03
(57)【要約】
磁気アレイ及びそれに関連したシステム。一例として挙げる機械用アレイは、複数の離散的な磁気セグメントを含む。これらのセグメントをアレイに配置する際などに、強磁性体の影響から離して配置すると、各セグメントは同じ最大磁場強度を有する磁極を含む。当該セグメントを、(i)アレイに沿った回転磁界を有する円周アレイに沿って順番に形成し、(ii)磁場が互いに相互作用を起こすように、各セグメントを隣のセグメントに十分近接して順番に配置すると、ハルバッハ配列で観察されるのと同様の磁束チャネリングが得られる。本発明の別の実施形態では、磁束チャネリングを発生させるために、セグメントを互いに物理的に接触させていてもよいし、アレイ内で互いに隣接するセグメント間の磁場が相互に作用して磁束チャネリングをもたらすように、十分に近接させた状態で間隔を空けて配置してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期電気機械であって、
フレームと、
前記フレームに沿った方向に延びる中心軸を中心として同軸に配置された第1の回転子及び固定子巻線であって、前記固定子巻線が前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子が前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた、前記第1の回転子及び前記固定子巻線と、を備え、
前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有し、前記第1の回転子は、第1の複数の離散的な磁気セグメントを含み、各セグメントは、
(i)中心軸に平行な方向に、自身の主要側面に沿った、幅に対して細長い長さを有し、
(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、
(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面から外側を向く表面を有し、前記中心軸の周囲に円周方向に配置された第1の同様な磁気セグメントのアレイに固定配置される前に、前記セグメントを回転可能とし、
(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、
(v)前記中心軸に沿って延在し、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記中心軸に面する内周側と前記中心軸から離れる方向を向く外周側とを有する磁気セグメントの第1の円周アレイを一体的に形成し、かつ、
(vi)異なるセグメントからの磁場を相加的に結合または低減させるために、1つまたは複数の他のセグメントに十分に近接して配置され、それによって、前記第1の円周アレイにおける正味の磁場強度を付与し、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方において磁場強度を増大させるのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度を低減させる、
同期電気機械。
【請求項2】
前記第1の複数のセグメントの前記主要側面は、断面における前記所定の形状が円形または楕円形となるように、円筒形または楕円筒形である、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項3】
前記第1の複数のセグメントの主要側面は、軸対称である、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項4】
前記第1のアレイ内の全ての磁気セグメントは、前記第1の複数のセグメントのみで構成されている、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項5】
前記第1のアレイの全てのセグメントは、双極子磁石である請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項6】
前記第1の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトされた角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成され、前記シーケンスに沿って、前記離散的な磁気セグメントの異なるセグメント間の磁極の前記角度方向が、前記シーケンスにおける位置の関数として、前記中心軸に直交する方向に回転され、それにより、最大磁場強度方向の回転を含む、前記磁極の前記角度方向の回転シーケンスを提供する、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項7】
前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方における前記低減した磁場強度に対する、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方における前記増大した磁場強度は、前記磁極の前記角度方向の前記回転シーケンスに起因する、請求項6に記載の同期電気機械。
【請求項8】
前記シーケンス内の異なる磁気セグメント間における、磁場パターンの角度方向の回転シフトの前記シーケンスにおいて、前記第1の磁気セグメントのアレイが構成され、かつ、磁気セグメントの前記第1の円周アレイが前記中心軸を中心に回転するとき、前記増大した磁場強度に関連する磁場成分が、トルク発生のために主に前記固定子巻線の磁場成分と相互作用する、請求項6に記載の同期電気機械。
【請求項9】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントのうちの1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項2に記載の同期電気機械。
【請求項10】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントのうちのn個未満の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣の要素の前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項11】
前記第1のアレイの磁気セグメントの前記主要側面は、互いに間隔を空けて配置される、請求項1記載の同期電気機械。
【請求項12】
前記第1のアレイの磁気セグメントの前記主要側面は、互いに接触している、請求項1記載の同期電気機械。
【請求項13】
前記固定子巻線は、内側固定子巻線距離Wiと外側固定子巻線距離Woとの間に延在し、固定子巻線距離Wi及び前記外側固定子巻線距離Woは、各々、前記中心軸から測定され、
前記第1の回転子は、内側距離IRiと外側距離IRoとの間に延在する内側回転子IRであり、距離IRi及びIRoは、各々、前記中心軸から測定され、IRo<Wiであり、
前記機械は、前記内側回転子IRに対して外側の回転子として配置される、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた外側回転子ORをさらに含み、前記第2の回転子ORは、外側回転子内側距離ORiと外側回転子外側距離ORoとの間に延在し、距離ORi及びORoは、各々、前記中心軸から測定され、前記外側回転子ORは、前記中心軸に沿って延在する円周状または円筒状の表面を有し、
前記外側回転子ORは、第2の複数の離散的な磁気セグメントを含み、前記第2の複数の離散的な磁気セグメントにおける各セグメントは、特徴的な磁場パターンを有し、かつ
(i)互いに対して空間的に平行な方向に固定配置され、
(ii)前記軸に沿って延在し、第2の円周アレイを一体的に形成し、
(iii)第2の安定化構造体内に配置可能であり、
(iv)トルク発生のために前記固定子巻線と相互作用するように前記中心軸を中心に回転可能である、
請求項1に記載の同期電気機械または請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項14】
前記第2の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトする角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成され、磁場パターンの前記角度方向は、異なる磁気エレメントは間で前記中心軸に直交する方向に回転する、請求項13に記載の同期電気機械。
【請求項15】
前記磁場パターンの空間的回転は、前記第2のアレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大した磁場強度を提供するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少した磁場強度を提供するような方法で磁束を構成する、請求項14に記載の同期電気機械。
【請求項16】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントのうちの1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項13に記載の同期電気機械。
【請求項17】
前記第2のアレイは、m個の磁気セグメントを含み、前記m個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項16に記載の同期電気機械。
【請求項18】
前記アレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントの内のn個未満のセグメント間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項13に記載の同期電気機械。
【請求項19】
前記第1の複数のセグメントのいずれも、同一の磁化エレメントとして形成されず、その後、前記同一のエレメントから異なる形状に成形または機械加工され、その後、エレメント形状に関する位置の関数として前記最大磁場強度方向が変化する一連の異なる形状のエレメントとして順序付けられる、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項20】
同期電気機械であって、
フレームと、
前記フレームに沿った方向に延びる中心軸を中心として同軸の第1の回転子及び固定子巻線であって、前記固定子巻線が前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子が前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた、前記第1の回転子及び前記固定子巻線と、を備え、
前記第1の回転子と前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有し、前記第1の回転子は、第1の複数の離散的な磁気セグメントを含み、各セグメントは、
(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、
(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、
(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向く表面を有し、前記中心軸を中心として円周方向に配置された第1の同様な磁気セグメントのアレイに固定配置される前に、前記セグメントを前記表面を中心として回転可能とし、
(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、
(v)同様の特徴的な最大磁場強度方向を有する磁極を含み、かつ、
(vi)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、同様な磁気セグメントの前記第1の円周アレイを一体的に形成し、前記アレイは、シーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの前記磁極を有する前記シーケンスにおいて構成され、この結果、前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向がシフトする、
同期電気機械。
【請求項21】
前記第1の複数のセグメントの前記主要側面は、断面における前記所定の形状が円形または楕円形となるように、円筒形または楕円筒形である、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項22】
前記第1の複数のセグメントの各々の各主要側面は、軸対称である、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項23】
前記第1のアレイは、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントのみで構成されている、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項24】
前記第1のアレイの全てのセグメントは、双極子磁石である、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項25】
前記第1の複数のセグメントにおける複数のセグメントは、パイ型形状のエレメントではなく、かつ、前記最大磁場強度方向が前記パイ型及び非対称形状のエレメントに関する位置の関数として変化する非対称形状のエレメントに形成されない、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項26】
前記第1の複数のセグメントにおける複数のセグメントは、着磁後に非対称形状のエレメントに形成されないので、前記最大磁場強度方向は、前記形状エレメントとは異なるエレメントに関する位置の関数として変化することが可能である、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項27】
前記第1の複数のセグメントのいずれも着磁されず、その後、成形または機械加工され、その後、前記最大磁場強度方向がエレメントの形状に関する位置の関数として変化する一連のエレメントとして順序付けられる、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項28】
磁気セグメントの前記第1の円周アレイは、前記軸に面する内周側と、前記軸から離れる方向を向く外周側とを有し、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方において磁場強度が増大するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度が減少する、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項29】
磁気セグメントの前記第1の円周アレイが前記中心軸を中心に回転するとき、前記増大した磁場強度を示す前記アレイの前記一方の側の磁場は、トルク発生のために主に前記固定子巻線の磁場と相互作用する、請求項28に記載の同期電気機械。
【請求項30】
前記シフトは、前記増大した磁場強度をもたらす、請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項31】
その内部に一連の開口部を有し、円筒形状の平面に沿って形成された支持構造体をさらに含み、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントの各々が、前記開口部の各開口部内に回転可能に配置されることで前記シフトを提供する、請求項28に記載の同期電気機械。
【請求項32】
前記支持構造体は、互いに接合された一連のプレス積層体を含み、前記積層体は、非磁性材料を含む、請求項31に記載の同期電気機械。
【請求項33】
前記固定子巻線は、内側固定子巻線距離Wiと外側固定子巻線距離Woとの間に延在し、前記内側固定子巻線距離Wi及び前記外側固定子巻線距離Woは、各々、前記中心軸から測定され、
前記第1の回転子は、内側距離IRiと外側距離IRoとの間に延在する内側回転子IRであり、前記内側距離IRi及び前記外側距離IRoは、前記中心軸からそれぞれ測定され、IRo<Wiであり
前記機械は、前記内側回転子IRに対して外側回転子として配置される、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた外側回転子ORをさらに備え、前記第2の回転子ORは、外側回転子内側距離ORiと外側回転子外側距離ORoとの間に延在し、前記外側回転子内側距離ORi及び前記外側回転子外側距離ORoは、各々、前記中心軸から測定され、前記外側回転子ORは、前記中心軸に沿って延在する円周状または円筒状の表面を有し、
前記外側回転子ORは、第2の複数の離散的な磁気セグメントを含み、前記第2の複数の離散的な磁気セグメントにおける各セグメントは、特徴的な磁場パターンを有し、かつ
(i)互いに対して空間的に平行な方向に固定配置され、
(ii)前記軸に沿って延在し、第2の円周アレイを一体的に形成し、
(iii)第2の安定化構造体内に配置可能であり、
(iv)トルク発生のために前記固定子巻線と相互作用するように前記中心軸を中心に回転可能である、
請求項20に記載の同期電気機械。
【請求項34】
前記第2の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトする角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成され、磁場パターンの前記角度方向は、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する、請求項33に記載の同期電気機械。
【請求項35】
前記磁場パターンの空間的回転は、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大した磁場強度を提供するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少した磁場強度を提供するような方法で磁束を構成する、請求項34に記載の同期電気機械。
【請求項36】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントのうちの1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項33に記載の同期電気機械。
【請求項37】
前記第2のアレイは、m個の磁気セグメントを含み、前記m個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項36に記載の同期電気機械。
【請求項38】
前記第2のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントの内のn個未満の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項33に記載の同期電気機械。
【請求項39】
前記第1の回転子の前記第1のアレイにおける前記第1の複数の磁気セグメントから半径方向内側に、前記第1の回転子と同軸に配置された、磁束方向付け内側バック鉄心をさらに含み、前記固定子巻線は、前記第1の回転子と前期内側バック鉄心との間のエアギャップに沿って延在するように、前記第1の回転子と前記内側バック鉄心との間に配置される、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項40】
同期機を組み立てる方法であって、
第1の回転子及び固定子巻線をフレームに取り付けるステップであって、前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記フレームに沿う方向に延びる中心軸を中心として他方に対して同軸であり、前記固定子巻線は、前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子は、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられる、ステップ、を含み、
前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有するように形成され、
前記第1の回転子は、第1のアレイに構成された少なくとも第1の複数の離散的な磁気セグメントを有するように形成され、各セグメントは、
(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、
(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、
(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向く表面を有し、前記中心軸を中心として周方向に配置された前記第1の同様な磁気セグメントのアレイにセグメントを固定配置する前に、前記セグメントを前記表面を中心として軸周りに回転可能とし、前記第1の磁気セグメントのアレイは、前記中心軸に面する内周側と、前記中心軸から離れる方向を向く外周側とを有し、
(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ、
(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記第1の同様な磁気セグメントの円周アレイを一体的に形成し、第1のアレイは、第1の順序付けシーケンス内の位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する前記第1の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第1の順序付けシーケンスの前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向のシフトが生じ、前記シフトの結果、前期第1のアレイの一方の側で磁場強度が増大するのに対して、前記第1のアレイの他方の側で磁場強度がより減少する、
方法。
【請求項41】
回転機械またはギアボックスで用いるのに適した磁気システムであって、少なくとも第1の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、中心軸に沿って延びる第1のアレイ構造体を少なくとも備え、前記第1の複数のセグメントの各セグメントは、
(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、
(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、
(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向く表面を有し、前記中心軸を中心として周方向に配置された前記第1の同様な磁気セグメントのアレイに各セグメントを固定配置する前に、セグメントを前記表面を中心として軸周りに回転可能であり、
(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ、
(v)前記中心軸と平行な方向に延びるように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記第1の同様な磁気セグメントのアレイを一体的に形成し、前記第1のアレイは、第1の順序付けシーケンス内の位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する前記第1の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第1の順序付けシーケンスの前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向がシフトする、
磁気システム。
【請求項42】
前記第1の複数のセグメントは、1つまたは複数の他のセグメントと接触して、もしくは、1つまたは複数の他のセグメントに十分に近接して配置されることで、異なるセグメントからの磁場を相加的に結合または低減させ、それによって前記第1のアレイ構造体に関する正味の磁場強度を付与し、前記アレイの内周側または外周側の一方において磁場強度が増大するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度が減少する、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項43】
前記磁気セグメントは、順番に配列されており、前記磁気セグメントは、他の磁気セグメントに対して軸周りに回転されることで、前記セグメント間で特徴的な前記最大磁場強度方向の向きを順次シフトさせ、それによって前記アレイの片側で前記増大した磁場強度をもたらす、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項44】
支持構造体をさらに含み、
前記支持構造体により、前記第1の複数の磁気セグメントは、前記中心軸及び互いに対して固定された位置を占め、かつ
前記磁極間の前記特徴的な前記最大磁場強度方向の向きの相対的な前記シフトが固定される、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項45】
前記支持構造体は、前記磁気セグメントが配置される一連のチャネルまたは窪みを含む、請求項44に記載の磁気システム。
【請求項46】
前記磁気セグメントと前記チャネルまたは窪みとは、セグメントの回転位置をロックし、磁場方向の相対的な前記シフトを所定の位置に固定する、相補的な形状または嵌合機能を有する、請求項45に記載の磁気システム。
【請求項47】
その内部に一連の開口部を有し、前記中心軸に沿って形成された支持構造体をさらに含み、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントが軸周りに回転され、かつ前記開口部内に配置されることで、前記アレイに沿って前記シフトを順次提供する、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項48】
支持構造体は、互いに接合された一連のプレス積層体を含み、前記積層体は、非磁性材料を含む、請求項47に記載の磁気システム。
【請求項49】
少なくとも第2の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、前記中心軸に沿って延在する第2のアレイ構造体をさらに含み、前記第2の複数のセグメントの各セグメントは、
(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、
(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、
(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面から外側を向く表面を有し、前記中心軸の周囲に周方向に配置された同様の磁気セグメントの第2のアレイにセグメントを固定配置する前に、セグメントを表面を中心として軸方向に回転可能とし、
(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ、
(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第2の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、同様の磁気セグメントの前記第2のアレイを一体的に形成し、前記第2のアレイは、第2の順序付けシーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する、前記第2の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第2の順序付けシーケンスにおける前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向のシフトがシフトする、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項50】
前記第2の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトする角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成され、磁場パターンの前記角度方向は、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する、請求項49に記載の磁気システム。
【請求項51】
前記磁場パターンの空間的回転は、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大した磁場強度を提供するのに対して、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少した磁場強度を提供するような方法で磁束を構成する、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項52】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項53】
前記第2のアレイは、m個の磁気セグメントを含み、前記m個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項49に記載の磁気システム。
【請求項54】
前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントの内のn個未満の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる、請求項41に記載の磁気システム。
【請求項55】
前記第1の回転子の前記第1のアレイにおける前記第1の複数の磁気セグメントから半径方向外側に、前記第1の回転子と同軸に配置されたバック鉄心をさらに含み、前記固定子巻線は、前記第1の回転子と前記バック鉄心との間のエアギャップに沿って延在し、前記エアギャップ内に増大した半径方向の磁束密度を生成する、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項56】
前記バック鉄心は、前記回転子と同期して回転するように機械的に結合されることで、前記バック鉄心に磁化を生じさせるような変化磁場の存在を回避、低減また排除する、請求項55記載の同期電気機械。
【請求項57】
前記磁束方向付け内側バック鉄心は、前記回転子と同期して回転するように機械的に結合され、前記バック鉄心に磁化を生じさせるような変化磁場の存在を回避、低減または排除する、請求項39記載の同期電気機械。
【請求項58】
前記第1のアレイと前記第2のアレイとの間に、それぞれのアレイと同軸に整列して配置された強磁性セグメントを含む円周アレイをさらに含む、請求項49に記載の磁気システム。
【請求項59】
同期電気機械または磁気ギアボックスで用いるための磁気アレイであって、
複数の離散的な磁気セグメントを含み、
前記セグメントのそれぞれを、アレイに配置する前などに、強磁性体の影響から離して配置すると、各セグメントは、同じ最大磁場強度を有する磁極を含み、
各セグメントは、磁場方向の変化を伴う円周アレイに沿ったシーケンスに配置され、これによって、各セグメントの磁場が前記シーケンス内の隣のセグメントの前記磁場に対して空間的に回転され、
各セグメントは、前記シーケンス内の前記隣のセグメントに十分に近接して配置され、前記磁場が互いに相互作用して磁束チャネリングをもたらす、
磁気アレイ。
【請求項60】
各セグメントは、前記シーケンス内の隣のセグメントと物理的に接触しており、前記アレイ内で互いに隣接するセグメント間の前記磁場の相互作用が磁束チャネリングをもたらす、請求項59記載の磁気アレイ。
【請求項61】
各セグメントは、前記シーケンス内の隣のセグメントと間隔を空けている一方、十分に近接して配置されることで、前記アレイ内の互いに間隔を空けて隣接するセグメント間の前記磁場が相互作用して磁束チャネリングをもたらす、請求項59記載の磁気アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2021年3月23日に出願された「離散的な磁束方向付け磁石アセンブリ」と題された米国仮特許出願第63/165,107号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、同期電気機械に関するものであり、より詳しくは、本発明の実施形態には、モータ及び発電機の電力密度及びトルク密度を向上させるためのシステム及び方法が含まれる。
【背景技術】
【0003】
電気機械の質量に対する電力比とトルク比、すなわち電力密度とトルク密度を高めることは、航空機、ターボシャフト発電、風力発電など、機械の質量とサイズが重要なより幅広い新しい用途に電力を導入するための鍵である。既存の機械技術では、5kW/kgオーダーの電力密度を達成することが可能であるが、これは多くの新しい用途では制限の要因となる。より高い電力密度とトルク密度を実現するさらなる設計の改善は、電気自動車などの既存の用途にも利益をもたらすだろう。潜在的な利点として、エネルギの変換と伝送の両方における高効率化、さらに二酸化炭素排出量、熱発生、規制排出量の削減などが挙げられる。
【0004】
理論上、最も高い電力密度とトルク密度を達成できるのは、完全超伝導同期機であり、その場合、25kW/kgオーダー以上の電力密度が可能になると思われる。しかしながら、超伝導固定子巻線における交流損失には、低回転でしか対応できない。直流回転子を備えた部分的に超伝導を用いた機械は、原理的には数テスラのエアギャップ磁束密度を発生させることができ、それによってより高い電力密度とトルク密度を達成できる可能性がある。しかしながら、必要なバック鉄心の磁気飽和により、エアギャップ内の磁束密度は2テスラ未満に制限され、バック鉄心の重量が重いため、実現可能な電力密度とトルク密度はさらに制限される。回転を伴う超伝導システムにおいては、極低温の必要性と、クエンチの検出と防止の複雑さから、はるかに高い電力レベルとトルク密度に達しない限り、超伝導機器の技術の普及は困難である。
【0005】
1973年、イギリス系アメリカ人の物理学者John C. Mallinsonは、磁化方向が一定の振幅で空間的に回転する磁束である平面構造の、新しいクラスの磁化パターンに関する磁気理論を発表した。このような配列された永久磁石セグメントのアレイでは、アレイの片側で磁場が増大する一方で、アレイの反対側では磁場がゼロ近くまで打ち消される。Mallinson,J.C., IEEE Transactions on Magnetics,Vol.MAG-9,No.4,pp678-682,December 1973を参照。磁化方向が空間的に回転するパターンでは、磁石セグメントの配列において、磁束がセグメントからセグメントへと流れる。このようなアセンブリの応用例として、1980年にKlaus Halbachが、加速器の荷電粒子ビーム光学系とそれに対応するビームラインのために発明したハルバッハ配列がある。Halbach,Klaus,Nuclear Instruments and Methods,169 (1): 1-10 “Design of Permanent Multipole Magnets with Oriented Rare Earth Cobalt Material” (1980)を参照。
【0006】
粒子加速器の用途では、荷電粒子ビームを曲げたり、集束させたり、色度補正(chromatic corrections)をかけたりする必要がある。これは、正確に配置された一定数の極対を含む電磁コイルを用いて行われる。荷電粒子ビームを曲げるための双極子配列は、N極とS極を1つずつ有する1つの極対、すなわちn=1からなる。荷電粒子ビームを集束させるためのコイルの構成は、2つのN極と2つのS極を含む、n=2の四極子配置である。異なる運動量を持つ粒子を正確な焦点に集束させる色度補正では、n=3以上の高次の極対が必要となる。一般に、無限長のアパーチャの断面における所望の磁場は、いわゆる多極子成分の重ね合わせ、すなわち、選択された多極子、例えば双極子、四極子、六極子などの組み合わせとして記述または合成することができる。荷電粒子ビーム光学に使用される磁場は、従来の光学レンズに求められる厳しい要求と同様に、高精度でなければならない。数学的には、各磁石が単一の多極子次数、例えば純粋な四極子(n=2)からなり、それよりも低次や高次の項が寄与しない場合に、この精度要求が満たされる。
【0007】
ハルバッハ配列は、荷電粒子ビーム光学系に必要な高い磁場均一性を提供する。これらの磁石アセンブリでは、任意の点における磁束の方向は、極座標において以下の式で与えられる。
ここで、B
remは残留磁束密度の大きさであり、pは極対の数を示す整数である。添え字「r」は磁場の半径方向成分を表し、添え字「q」は磁場の接線方向成分を表す。pを正の値にすると、アレイの半径方向外向きの磁場が生成され、pを負の値にすると、アレイの半径方向内向き、すなわち円柱の中心軸に向かう磁場が生成される。
【0008】
電気機械にも、荷電粒子ビーム光学系で必要とされるのと同じ多極子構成が必要とされるが、磁場均一性の要件は荷電粒子ビーム光学系よりも厳しいものではない。同期機の回転子では、永久磁石ハルバッハ配列により、必要な多極子構成を簡単かつエネルギ効率よく実現することができ、配列の片側で磁束密度を増大させることにより、電力密度とトルク密度を向上させることができる。しかしながら、ハルバッハ配列、特に極数の多いハルバッハ配列は製造コストが高いため、普及が進んでいない。
【0009】
効率的でありながら電力密度とトルク密度に関して同期機の性能を大幅に向上させるためには、実証済みのコンセプトと、改善された製造技術及び最適化手法とを統合した、新しい設計トポロジが必要である。また、ハルバッハ配列で実証された磁束チャネリングの利点を、例えば超伝導コイルの構成に拡張して実装する新しいトポロジも必要である。本発明に係るコンセプトは、ハルバッハ配列の製造の複雑さを回避する磁束チャネリングの新しいアプローチにより、同期機の性能を大幅に向上させる解決策を提示するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前例のない電力密度とトルク密度、及び効率の向上を可能にする電気機械について、複数の改良された設計が提示されている。これらのコンセプトは、超伝導コイルだけではなく、永久磁石をベースにした機械にも適用が可能である。永久磁石を磁場生成システムとして使用することで、極低温に伴う複雑さや、回転システムに電気エネルギを供給する必要性を回避することができる。一方、超伝導回転子は、はるかに高い磁束密度を実現する可能性を秘めている。本発明はまた、磁気ギアボックスの実現、及び磁気ギアボックスと電気機械との統合を可能にする。以下に示される実施形態は単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0011】
ハルバッハ配列が、交互に並ぶN極とS極からなる従来の磁石アセンブリよりも、同期機の磁場生成回転子に大きな利点をもたらすことはよく知られている。円周アレイにおける磁束チャネリングにより、磁束を必要とするアレイの片側の磁束密度が向上する一方、磁束が不要な反対側の磁束密度はゼロ近くまで減少する。ハルバッハ配列のような、必要に応じた磁束チャネリングを生成する設計コンセプトが開示されている。この設計コンセプトは、ハルバッハ配列とは異なり、高回転数で動作する機械に必要な高い機械的安定性を有し、製造コストを大幅に削減しながら、非常に小型のシステムから非常に大型のシステムまでの拡張性を提供する。開示された磁束チャネリングのシステムと方法は、超伝導回転子に直接適用可能である。
【0012】
一実施形態では、エアギャップ内の磁場成形に必要なバック鉄心の磁化損失をなくし、フリンジ磁界を低減することで、機械の効率を向上させる。別の実施形態では、バック鉄心をなくすことで、電力密度とトルク密度の大幅な増加を達成する。
【0013】
モータまたは発電機と統合することが可能な磁気ギア装置により、電気機械の電力密度とトルク密度をさらに向上させることが可能である。磁気ギア装置では、開示されている上記磁束チャネリングのコンセプトは、(i)従来のハルバッハ配列と比較して大幅に削減されたコストで高い機械的強度、(ii)従来の機械ギアまたは磁気ギアよりも大幅に高い単位質量当たりの動力伝達、(iii)99%を超える可能性のあるギア効率、及び、(iv)最小限のメンテナンスまたはメンテナンスなしの本来備わっている過負荷防止、を実現する。
【0014】
電気機械における電力密度とトルク密度のさらなる最適化には、固定子巻線における電流負荷を増大させ、したがって、信頼性の高い動作を保証するために非常に効果的な放熱と冷却も必要となる。固定子巻線の最大電流負荷は、ビッターマグネット技術(Soobin An, A Feasibility Study to Apply the Bitter Magnet to Electric Power Devices, MT-26, Sept. 2019を参照)によって達成することができる。このビッターマグネット技術では、導体は、冷却材と発熱導体とを直接接触させる冷却材の流れのために最適化された孔パターンを含む銅シートで構成される。ビッターマグネット技術は、費用対効果の高い製造方法を用いながら、優れた放熱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の例示的な実施形態によれば、回転機械またはギアボックスで用いるのに適した磁気システムであって、少なくとも第1の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、中心軸に沿って延在する第1のアレイ構造体を少なくとも備え、第1の複数の磁気セグメントは、各々、(i)その幅に対して細長い長さを有し、中心軸と平行な方向にその主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向く表面を有し、中心軸の周囲に周方向に配置された同様の第1の磁気セグメントのアレイ(以下、単に第1のアレイともいう)にセグメントを固定配置する前に、セグメントをその表面を中心に軸方向に回転可能とし、(iv)各主要側面が、第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面が延びる方向と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、第1の同様の磁気セグメントのアレイを一体的に形成し、前記第1のアレイは、第1の順序付けシーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する、前記第1の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、第1の順序付けシーケンスにおける磁気セグメント間で磁極の角度方向がシフトする。磁気システムにおける前記第1の複数のセグメントが、1つまたは複数の他のセグメントと接触して、もしくは十分に近接して配置されることで、異なるセグメントからの磁場を相加的に結合または低減させ、それによって第1のアレイ構造体に関する正味の磁場強度を付与し、アレイの内周側または外周側の一方において磁場強度が増大するのに対して、アレイの内周側または外周側の他方において磁場強度が減少する。一連の実施形態では、磁気セグメントは、順序付けシーケンスに存在し、磁気セグメントが他の磁気セグメントに対して軸方向に回転されることで、セグメント間で特徴的な最大磁場強度方向の向きを順次シフトさせ、それによってアレイの片側で増大した磁場強度をもたらす。磁気システムは、支持構造体をさらに含んでもよく、支持構造体により、第1の複数の磁気セグメントは、中心軸及び互いに対して固定された位置を占め、磁場極間の特徴的な前記最大磁場強度方向の向きの相対的な前記シフトが固定される。前記支持構造体は、前記磁気セグメントが配置される、一連のチャネルまたは溝を含んでもよい。前記磁気セグメントと前記チャネルまたは溝とは、磁場方向の相対的な前記シフトを所定の位置に固定するために、セグメントが回転位置を所定の位置にロックする相補的な形状または嵌合機構を有してもよい。別の実施形態では、前記磁気システムは、内部に一連の開口部を有し、前記中心軸に沿って形成された支持構造体を含み、前記アレイに沿って前記シフトをシーケンシャルに提供するために、軸方向に回転され、かつ開口部内に配置された前記第1の複数の離散的な磁気セグメントを含む。前記支持構造体は、互いに接合された一連のプレス積層体を含んでもよく、前記積層体は非磁性材料を含む。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記磁気システムは、少なくとも第2の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、前記中心軸に沿って延在する第2のアレイ構造体をさらに含み、前記第2の複数のセグメントは、各々、(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向にその主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面から外側を向く表面を有し、前記中心軸の周囲に周方向に配置された同様の第2の磁気セグメントのアレイ(以下、単に第2のアレイともいう)にセグメントを固定配置する前に、セグメントをその表面を中心に軸方向に回転可能とし、(iv)その主要側面が前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第2の複数の磁気セグメントの他のセグメントと組み合わせて、同様の前記第2の磁気セグメントのアレイを一体的に形成し、前記第2のアレイは、第2の順序付けシーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する、前記第2の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第2の順序付けシーケンスにおける前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向のシフトがシフトする。例示的な実施形態では、磁気セグメントの前記第2のアレイは、磁場パターンの前記角度方向が、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する、磁場パターンの角度方向を回転シフトするエレメントのシーケンスを提供するように構成される。前記システムの他の実施形態では、前記磁場パターンの前記空間的回転は、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大された磁場強度を提供するのに対して、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少された磁場強度を提供するような方法で、前記磁束を構成する。また、他の実施形態では、前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含み、前記n個のセグメントの内の1つ1つの全てのセグメント間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。別の実施形態では、前記第2のアレイは、m個の磁気セグメントを含み、前記m個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。前記第1のアレイは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる前記n個のセグメントのうちの1つよりも少ない磁場パターンを有するn個の磁場セグメントを含んでもよい。
【0017】
また、本発明によれば、フレームに沿った方向に延びる中心軸を中心としてそれぞれが他方に対して同軸に配置された第1の回転子及び固定子巻線を有し、前記固定子巻線が前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子が前記フレーム及び前記固定子巻線に対して相対的に回転するように前記フレームに取り付けられている同期電気機械が提供される。前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有する。前記第1の回転子は、第1の複数の離散的な磁気セグメントを含み、各セグメントは、(i)前記中心軸と平行な方向にその主要側面に沿った、その幅に対して細長い長さを有し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面から外側を向く表面を有し、前記中心軸の周囲に周方向に配置された第1の同様な磁気セグメントのアレイに固定配置する前に、セグメントを回転可能とし、(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、(v)前記中心軸に沿って延在し、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記中心軸に面する内周側と前記中心軸から離れる方向を向く外周側とを有する前記第1の磁気セグメントの円周アレイ(以下、単に第1の円周アレイともいう)を一体的に形成し、かつ、(vi)異なるセグメントからの磁場を相加的に結合または低減させるために、1つまたは複数の他のセグメントに十分に近接して配置され、それによって、前記第1の円周アレイにおける正味の磁場強度を付与し、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方において磁場強度を増大させるのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度を低減させる。前記第1の複数のセグメントの前記主要側面は、断面における前記所定の形状が円形または楕円形となるように、例えば、円筒形または楕円筒形となるようにしてもよい。前記第1の複数のセグメントの主要側面は、軸対称であってもよいが、これに限定されない。一連の実施形態では、前記第1のアレイ内の全ての磁気セグメントが、前記第1の複数のセグメントのみで構成される。別の一連の実施形態では、前記第1のアレイの全てのセグメントが双極子磁石である。前記第1の磁気セグメントのアレイが、磁場パターンの回転シフトされた角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成され、前記シーケンスに沿って、前記離散的な磁気セグメントの異なるセグメント間の磁極の前記角度方向が、前記シーケンスにおける位置の関数として、前記中心軸に直交する方向に回転され、それにより、最大磁場強度方向の回転を含む、前記磁極の前記角度方向の回転シーケンスを提供するように構成されてもよい。前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方における前記低減した磁場強度に対する、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方における前記増大した磁場強度の大きさは、磁極ごとのセグメントの数と、前記磁極の前記特有のシーケンス及び回転の角度とに部分的に依存し得る。別の一連の実施形態では、n個の磁気セグメントを含む前記第1のアレイでは、前記n個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンが、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。前記第1のアレイがn個の磁気セグメントを含む場合、前記n個のセグメントのうちのn個未満のセグメント間の前記磁場パターンが、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられることもある。前記第1のアレイの磁気セグメントの前記主要全て、互いに間隔を空けて配置されてもよいし、または互いに接触していてもよい。
【0018】
前述の同期電気機械の実施形態は、第2の回転子を含んでもよい:前記固定子巻線は、内側固定子巻線距離Wiと外側固定子巻線距離Woとの間に延在し、内側固定子巻線距離Wi及び外側固定子巻線距離Woは、各々、前記中心軸から測定されたものである。前記第1の回転子は、内側距離IRiと外側距離IRoとの間に延在する内側回転子IRであり、距離IRi及びIRoは、各々、前記中心軸から測定されたものであり、IRo<Wiである。前記機械は、前記内側回転子IRに対して外側の回転子ORとして配置される、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた前記第2の回転子を備え、前記第2の回転子ORは、外側回転子内側距離ORiと外側回転子外側距離ORoとの間に延在し、距離ORi及びORoは、各々、前記中心軸から測定され、前記外側回転子ORは、前記中心軸に沿って延在する円周状または円筒状の表面を有する。前記外側回転子ORは、第2の複数の離散的な磁気セグメントを含み、前記第2の複数の磁気セグメントにおける各セグメントは、特徴的な磁場パターンを有し、かつ(i)互いに対して空間的に平行な方向に固定配置され、(ii)前記軸に沿って延在し、第2の円周アレイを一体的に形成し、(iii)第2の安定化構造体内に配置可能であり、(iv)トルク発生のために前記固定子巻線と相互作用するように前記中心軸を中心に回転可能である。
【0019】
第2の回転子を含む上述の機械においては、磁気セグメントの前記第2のアレイが、磁場パターンの前記角度方向が、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する、磁場パターンの角度方向を回転シフトするエレメントのシーケンスを提供するように構成されてもよい。前記磁場パターンの前記空間的回転は、前記第2のアレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大された磁場強度を提供するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少された磁場強度を提供するような方法で、前記磁束を構成することが可能である。前記第1のアレイがn個の磁気セグメントを含む場合、一実施形態では、前記n個のセグメントのうちの1つ1つの間の前記磁場パターンが、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。前記第2のアレイがm個の磁気セグメントを含む場合、別の実施形態によれば、前記m個のセグメントのうちの1つ1つの間の前記磁場パターンが、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。上記の異なる一連の実施形態について、前記第2のアレイがn個の磁気セグメントを含む場合、前記n個のセグメントのうちのn個未満のセグメント間の前記磁場パターンが、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。
【0020】
別の一連の実施形態によれば、フレームに沿った方向に延びる中心軸を中心として他方に対してそれぞれ同軸の第1の回転子及び固定子巻線を備え、前記固定子巻線が前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子が前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられている同期電気機械が提供される。前記第1の回転子と前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有し、前記第1の回転子は、第1の複数の離散的な磁気セグメントを含み、各セグメントは、(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向く表面を有し、前記中心軸を中心として周方向に配置された同様な磁気セグメントの前記第1のアレイに固定配置される前に、前記セグメントをその表面を中心に回転可能とし(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、(v)同様の特徴的な最大磁場強度方向を有する磁極を含み、かつ(vi)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記第1の同様な磁気セグメントの円周アレイを一体的に形成し、前記アレイは、前記シーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの前記磁極を有する前記シーケンスにおいて構成され、この結果、前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向がシフトする。
【0021】
前記第1の複数のセグメントの前記主要側面は、断面における前記所定の形状が円形または楕円形となるように、円筒形または楕円筒形としてもよい。前記第1の複数のセグメントの各々の各主要側面は、軸対称であってもよい。前記第1のアレイは、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントのみで構成されてもよい。前記第1のアレイの全てのセグメントが双極子磁石であってもよい。前記機械にかかる実施形態においては、前記第1の複数のセグメントにおける複数のセグメントは、パイ型形状のエレメントではなく、かつ前記最大磁場強度方向がエレメント形状に関する位置の関数として変化する非対称形状のエレメントに形成されないことを要求されてもよい。他の実施形態では、前記第1の複数のセグメントにおける複数のセグメントは、着磁後に非対称形状のエレメントに形成されないので、前記最大磁場強度方向は、前記形状エレメントとは異なるエレメントに関する位置の関数として変化することができる。
【0022】
本発明の開示された実施形態によれば、前記第1の複数のセグメントにおけるセグメントのいずれも、同一の磁化エレメントとして形成されず、その後、前記同一のエレメントから異なる形状に成形または機械加工され、その後、エレメント形状に関する位置の関数として前記最大磁場強度方向が変化する一連の異なる形状のエレメントとして順序付けられる。他の実施形態によれば、前記第1の複数のセグメントにおけるセグメントのいずれも、前記最大磁場強度方向が前記エレメント形状に関する位置の関数として変化する一連のエレメントとして成形及び順序付けられることはない。前述した機械の場合、磁気セグメントの前記第1の円周アレイが、前記軸に面する内周側と、前記軸から離れる方向を向く外周側とを有するため、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方において磁場強度が増大するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度が減少する。また、他の実施形態によれば、磁気セグメントの前記第1の円周アレイが前記中心軸を中心に回転するとき、前記増大した磁場強度を示す前記アレイの前記一方の側の磁場は、トルク発生のために主に前記固定子巻線の磁場と相互作用する。上述した機械の実施形態は、その内部に一連の開口部を有し、円筒形状の平面に沿って形成された支持構造体をさらに含み、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントの各々が、前記開口部の1つの中に回転可能に配置されて前記シフトを提供する。このような支持構造体は、互いに接合された一連のプレス積層体を含んでもよく、この積層体は非磁性材料を含む。前述の機械は、内側回転子及び外側回転子を含んでいてもよい。例えば、前記固定子巻線は、内側固定子巻線距離Wiと外側固定子巻線距離Woとの間に半径方向に延在し、固定子巻線距離Wi及び外側固定子巻線距離Woが、各々、前記中心軸から測定される場合、前記第1の回転子は、内側距離IRiと外側距離IRoとの間に延在する内側回転子IRとして配置され、距離IRi及びIRoは、各々、前記中心軸から測定され、IRo<Wiである。前記機械は、前記内側回転子IRに対して外側の回転子として配置され、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられた外側回転子ORをさらに含み、前記第2の回転子ORは、外側回転子内側距離ORiと外側回転子外側距離ORoとの間に延在し、距離ORi及びORoは、各々、前記中心軸から測定され、前記外側回転子ORは、前記中心軸に沿って延在する円周状または円筒状の表面を有する。前記外側回転子ORは、第2の複数の離散的な磁気セグメントを含み、前記第2の複数のセグメントにおける各セグメントは、特徴的な磁場パターンを有し、かつ、(i)互いに対して空間的に平行な方向に固定配置され、(ii)前記軸に沿って延在し、第2の円周アレイを一体的に形成し、(iii)第2の安定化構造体内に配置可能であり、(iv)トルク発生のために前記固定子巻線と相互作用するように前記中心軸を中心に回転可能である。前記第2の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトする角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成されてもよく、磁場パターンの前記角度方向は、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する。前記磁場パターンの前記空間的回転は、前記アレイの前記内周側または前記外周側の一方に減少した磁場強度を提供するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方には増大した磁場強度を提供するような方法で、前記磁束を構成してもよい。前記第1のアレイは、n個の磁気セグメントを含んでもよく、前記n個のセグメントの1つ1つの全ての間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられてもよい。別の実施形態によれば、m個の磁気セグメントを含む前記第2のアレイでは、前記m個のセグメントの1つ1つの全ての間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。さらに別の実施形態によれば、n個の磁気セグメントを含む前記第2のアレイでは、前記n個のセグメントのうちのn個未満の1つ1つのセグメント間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。
【0023】
同期機を組み立てる方法も提供される。第1の回転子及び固定子巻線はフレームに取り付けられ、前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記フレームに沿う方向に延びる中心軸を中心として他方に対して同軸であり、前記固定子巻線は、前記フレームに固定的に取り付けられ、前記第1の回転子は、前記フレーム及び前記固定子巻線に対して回転するように前記フレームに取り付けられる。前記第1の回転子及び前記固定子巻線は、各々、前記中心軸に沿って延びる円周面を有するように形成され、前記第1の回転子は、第1のアレイに構成された少なくとも第1の複数の離散的な磁気セグメントを有するように形成され、各セグメントは、(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向くような表面を有し、前記中心軸を中心として周方向に配置された前記第1の同様な磁気セグメントのアレイにセグメントを固定配置する前に、セグメントを前記表面を中心として軸周りに回転可能とし、前記第1の磁気セグメントのアレイは、前記中心軸に面する内周側と、前記中心軸から離れる方向を向く外周側とを有し、(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ、(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記第1の同様な磁気セグメントのアレイを一体的に形成し、第1のアレイは、第1の順序付けシーケンス内の位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する前記第1の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第1の順序付けシーケンスの前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向のシフトが生じ、前記シフトの結果、前記第1のアレイの一方の側で磁場強度が増大するのに対して、前記第1のアレイの他方の側で磁場強度がより減少する。
【0024】
また、回転機械またはギアボックスで用いるのに適した磁気システムであって、少なくとも第1の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、中心軸に沿って延在する第1のアレイ構造体を少なくとも備え、前記第1の複数のセグメントの各セグメントは、(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面の外側を向くような表面を有し、前記中心軸を中心として周方向に配置された前記第1の同様な磁気セグメントのアレイに各セグメントを固定配置する前に、セグメントを前記表面を中心として軸周りに回転可能であり、(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ、(v)前記中心軸と平行な方向に延びるように配置され、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、前記第1の同様な磁気セグメントのアレイを一体的に形成し、前記第1のアレイは、第1の順序付けシーケンス内の位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する前記第1の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第1の順序付けシーケンスの前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向がシフトする。
【0025】
前記磁気システムの一連の実施形態において、前記第1の複数のセグメントが、1つまたは複数の他のセグメントと接触して、もしくは、1つまたは複数の他のセグメントに十分に近接して配置されることで、異なるセグメントからの磁場を相加的に結合または低減させ、それによって前記第1のアレイ構造体に関する正味の磁場強度を付与し、前記アレイの内周側または外周側の一方において磁場強度が増大するのに対して、前記アレイの前記内周側または前記外周側の他方において磁場強度が減少する。前記磁気セグメントは、全体として順番に配列されていてもよく、前記磁気セグメントを他の磁気セグメントに対して軸周りに回転させ、前記セグメント間で特徴的な前記最大磁場強度方向の向きを順次シフトさせ、それによって前記アレイの片側で前記増大した磁場強度をもたらす。前記磁気システムは、前記第1の複数の磁気セグメントが前記中心軸に対して、かつ互いに対して固定された位置を占め、前記磁極間の特徴的な前記最大磁場強度方向の向きの相対的な前記シフトが固定される支持構造体をさらに含んでもよい。前記支持構造体は、前記磁気セグメントが配置される一連のチャネルまたは溝を含んでもよい。したがって、前記磁気セグメントと前記チャネルまたは溝とは、セグメントの回転位置をロックし、磁場方向の相対的な前記シフトを所定の位置に固定する、相補的な形状または嵌合機能を有してもよい。開示された実施形態では、前記支持構造体は、その内部に形成され、かつ前記中心軸に沿って形成された一連の開口部を含んでいてもよく、前記第1の複数の離散的な磁気セグメントが軸周りに回転され、かつ前記開口部内に配置されることで、前記アレイに沿って前記シフトを順次提供する。前記支持構造体は、互いに接合された一連のプレス積層体を含んでもよく、前記積層体は、非磁性材料からなる。
【0026】
前述の磁気システムは、少なくとも第2の複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む、前記中心軸に沿って延在する第2のアレイ構造体をさらに含んでもよく、前記第2の複数のセグメントの各セグメントは、(i)その幅に対して細長い長さを有し、前記中心軸と平行な方向に、その主要側面に沿って延在し、(ii)最大磁場強度方向と、同じ最大磁場強度とを含む、同様の特徴的な磁場分布を有する磁極を含み、(iii)断面が所定の形状を有する表面であって、前記最大磁場強度方向がその表面から外側を向く表面を有し、前記中心軸の周囲に周方向に配置された同様の磁気セグメントの第2のアレイにセグメントを固定配置する前に、セグメントを表面を中心として軸方向に回転可能とし、(iv)その主要側面が、前記第1の複数のセグメントの他のセグメントの前記主要側面と平行な方向に延びるように固定配置され、かつ(v)前記中心軸と平行な方向に延在するように配置され、前記第2の複数のセグメントの他のセグメントと組み合わせて、同様の磁気セグメントの前記第2のアレイを一体的に形成し、前記第2のアレイは、第2の順序付けシーケンスにおける位置の関数として互いに対して回転する前記磁気セグメントの磁極を有する、前記第2の順序付けシーケンスとして構成され、この結果、前記第2の順序付けシーケンスにおける前記磁気セグメント間の前記磁極の角度方向のシフトがシフトする。前記第2の磁気セグメントのアレイは、磁場パターンの回転シフトする角度方向を含むエレメントのシーケンスを提供するように構成されてもよく、磁場パターンの前記角度方向は、異なる磁気エレメント間で前記中心軸に直交する方向に回転する。また、前記磁場パターンの空間的回転は、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の一方に増大した磁場強度を提供するのに対して、前記第1のアレイの前記内周側または前記外周側の他方には減少した磁場強度を提供するような方法で、前記磁束パターンを構成してもよい。一実施形態では、n個の磁気セグメントを含む前記第1のアレイでは、前記n個のセグメントの内の1つ1つの間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。別の実施形態では、m個の磁気セグメントを含む前記第2のアレイでは、前記m個のセグメントの1つ1つの全ての間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。また、別の実施形態では、前記第1のアレイがn個の磁気セグメントを含む場合、前記n個のセグメントのうちのn個未満の1つ1つのセグメント間の前記磁場パターンは、前記シーケンス内の隣のエレメントの前記磁場パターンの前記角度方向に対する、前記角度方向の回転シフトによって特徴付けられる。
【0027】
本発明による電気機械の実施形態は、前記第1の回転子の前記第1のアレイにおける前記第1の複数の磁気セグメントから半径方向外側に配置され、前記第1の回転子と同軸に配置されたバック鉄心を含み、前記固定子巻線は、前記第1の回転子と前記バック鉄心との間のエアギャップに沿って延在し、前記エアギャップ内に増大した半径方向の磁束密度を生成する。前記バック鉄心は、前記回転子と同期して回転するように機械的に結合されてもよく、前記バック鉄心に磁化を生じさせるような変化磁場の存在を回避、低減また排除する。
【0028】
前記機械が、例えば、前記第1の回転子の前記第1のアレイにおける前記第1の複数の磁気セグメントから半径方向内側に、前記第1の回転子と同軸に配置された、磁束方向付け内側バック鉄心(flux directing inner back iron)を含む場合、前記内側バック鉄心は、前記回転子と同期して回転するように機械的に結合されてもよく、前記内側バック鉄心に磁化を生じさせるような変化磁場の存在を回避、低減また排除する。
【0029】
前記磁気システムが磁気エレメントを備える前記第2のアレイ構造体を含む場合、前記システムは、前記第1のアレイと前記第2のアレイとの間に、それぞれのアレイと同軸に整列して配置された強磁性セグメントを含む円周アレイをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【0031】
【
図1】
図1は、従来の先行技術の同期機の断面図である。
【0032】
【
図2a】
図2aは、隣接するセグメントに対して磁化方向が逆平行であるパイ型エレメントから構成される円筒形磁石アセンブリの部分図である。
【0033】
【
図2b】
図2bは、隣接するセグメント間で磁化方向が45°ずつ順次回転するパイ型セグメントから構成される円筒形磁石アセンブリの部分図である。
【0034】
【
図3】
図3は、セグメント化された回転子磁石アセンブリを備えたシャフトに沿って取られた、同期機の断面側面図である。
【0035】
【
図4】
図4は、セグメント化された回転子磁石を有し、バック鉄心が機械ハウジングに固定されていないものの、回転子と共に回転するように機械的に結合されている同期機の断面側面図である。
【0036】
【
図5】
図5は、セグメント化された回転子磁石アセンブリが当該同期機の外周に配置され、バック鉄心が機械シャフトに隣接して配置され、かつ機械ハウジングに取り付けられている同期機の断面側面図である。
【0037】
【
図6】
図6は、セグメント化された回転子磁石アセンブリを有し、バック鉄心が、機械ハウジングに固定される代わりに回転子と機械的に結合されて回転する同期機の断面側面図である。
【0038】
【
図7】
図7は、バック鉄心を含まず、セグメント化されたデュアル回転子アセンブリを有する同期機の断面側面図である。
【0039】
【
図8】
図8は、各々が円筒形状の磁気セグメントからなる5つの極対を有する2つの同心分離磁束方向アレイを示す、機械のシャフトに沿って取られた断面図であり、内側磁束方向付けアレイが1極あたり3つのセグメントから成り、外側磁束方向付けアレイが1極あたり5つのセグメントから成る断面図である。
【0040】
【
図9】
図9は、例示的な楕円形開口部を有する棒状磁気セグメントを支持するためのリング形状の支持構造体を示す、機械のシャフトに沿って取られた断面図であり、矢印は楕円形開口部の円筒形アレイにおけるそれぞれの長軸の方向と、そこに挿入される磁気セグメントの潜在的な磁場方向とを示す断面図である。
【0041】
【
図10】
図10は、同心円状にある2つの磁束が方向付けられた磁石アレイを示す、機械の断面図であり、各アレイが、楕円形状の磁気セグメントが挿入される楕円形開口部を組み込んだ5極対を有する断面図である。
【0042】
【
図11】
図11は、
図9に示す支持リングの1つの例示的な開口部内に端から端まで挿入された複数の永久磁石サブセグメントで構成される例示的な磁気セグメントを有する機械の斜視図である。
【0043】
【
図12】
図12は、楕円形状の磁気セグメントとエアギャップ内の矩形状の強磁気セグメントとがそれぞれ組み合わされた磁極からなる例示的な円筒形アレイを有する磁気歯車システムの、円筒形の対称軸に横切る平面に沿って取られた磁気ギアシステムの断面図である。
【0044】
離散的な磁気セグメント、またはそれらセグメントが配置される関連する開口部は、図中では円形または楕円形の形状で示されている。それらの形状内に描かれた矢印は、配置されたセグメントの磁化方向または回転シフト、もしくはセグメントが配置される楕円形状の開口部の向きに対応している。図中では、同様の参照番号は、同様の構成要素を示すために使用されている。本発明の特徴は概略的に図示されているが、本発明の特徴を強調するために、様々な詳細、関係性、及び性質が自明な構成要素は図示されない場合があることは理解されたい。図示された様々な特徴は、実際の縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態に関連する特定の特徴をさらに詳細に記述する前に、本発明は、主として、新規かつ非自明な構成要素及びプロセス工程の組み合わせで存在するものであることに留意されたい。当業者には自明であろう記述で本開示を不明瞭なものにしないよう、特定の従来の構成要素及びステップは省略されるか、または詳細には記述されない。一方、図面及び明細書には、本発明を理解するための適切な他の要素及びステップがより詳細に記載されている。開示されている実施形態は、本発明による構造体または方法における制限を定義するものではないし、必須であるより許容的であり、かつ網羅的であるより例示的な特徴を含む例を提示することのみを目的としたものである。加えて、本発明及び特許請求の範囲における記載の明確性を確保するために、以下で用語の簡単な説明を行う。
【0046】
本明細書で使用する「円周(Circumferential)」とは、軸または本体形状、例えば、回転子、固定子、またはセグメントのアレイなどの周りに部分的または全体的に延在する構成を指す。例えば、直線軸に沿ってその軸の周りに完全に延在する固定子巻線などの、閉じた本体形状の外面は、その外面が軸の周りに部分的または完全に延在するため、円周形状(circumferential shape)を有する。このような閉じた本体形状は、例えば、軸に沿って延在する円筒形または円筒形のような本体形状を有する電気巻線であってもよい。
【0047】
「円周アレイ(Circumferential array)」とは、軸を中心に、または本体形状を中心に、円周方向に配列されたセグメントのアレイを指す。
【0048】
「セグメントの円筒形アレイ(Cylindrical array of segments)」とは、軸または本体形状の周りに、部分的または全体的に円周方向に延在する、例えば一連の棒磁石のような一連の構成された離散的なセグメントのアレイを指し、実在または仮想の円筒面に沿って空間的属性を提供するように、セグメントを平行なセグメントのシーケンスとして配置するようにしてもよい。空間的属性は、空間における幾何学的な特徴、もしくは、実際または仮想の円筒面における位置の関数として磁場分布及び磁束密度に関連してもよい。
【0049】
「円筒状(Cylindrical-like)」とは、複数の別個の壁部または直径のばらつきを有していても、円筒体の形状及び対称性に類似しているか、または十分に近似している形状を指す。
【0050】
「離散的な磁気セグメント(Discrete magnetic segment)」(単に「セグメント」とも呼ばれる)とは、永久磁石または電磁石(例えば電磁コイル)である。永久磁石の場合、セグメントは棒状の、すなわち細長い構造体の形態であってもよい。この構造体は、モノリシックであってもよいし、セグメントの所望の長さを実現するために、サイズが小さく、端から端まで、すなわち磁極から磁極まで配列された複数のサブセグメント、つまり複数の磁石を構成されていてもよい。永久磁石セグメントは、断面においていかなる特定の形状にも限定されず、本発明の実施形態で用いるために開示されるこのようなセグメントは、直線軸に沿って延在する細長い形状を有し、断面、すなわち軸に直交する平面に沿って切り取れた面において、いかなる特定の形状にも限定されない。このようなセグメントの断面形状は、例えば、円形、円筒形、楕円形、対称、または非対称であってもよい。
【0051】
「磁束チャネリング(Flux channeling)」とは、磁場に関する文脈では、複数の磁気ソースから発せられる磁束の相互作用に起因する正味の磁場パターンを指す。一例として、円周方向に配列された磁石のアレイの場合、磁束チャネリングは、個々のアレイの磁石について非対称な磁場分布をもたらすことが可能である。従来のハルバッハ配列では、磁場の相互作用により、磁石アレイの片側で磁場強度を増大させ、そのアレイのもう片側では磁場強度を減少させることが可能である。
【0052】
「棒状構造体(Rod shaped structure)」とは、直線軸に沿って延在する細長い部材を意味し、長軸に直交する平面に沿ってみた当該構造体の形状は限定されない。本発明によるアレイを形成するために用いられる離散的な磁気セグメントは、一般に、長軸を中心に延びる細長い形状であり、断面、すなわち、長軸に直交する平面に沿った断面において、様々な形状を有してもよい。
【0053】
「断面形状(Shape in cross section)」とは、離散的な磁気セグメントまたはコイルに関して、当該セグメントの長軸、例えば、そのセグメントの細長い形状が延びている方向に沿った直線軸に、直交する平面に沿った形状を意味する。
【0054】
従来の同期機の先行技術である実施形態を
図1に示す。コンセプトは、発電機とモータとで同じである。発電機の場合、機械エネルギは、この機械の回転シャフト104に供給される。この機械エネルギは、固定子巻線102からの出力として利用可能な電気エネルギに変換される。モータの場合、あらゆる種類の推進力のために、電気エネルギが固定子巻線102に供給され、回転シャフト104で利用可能な機械エネルギに変換される。
【0055】
図1に示す概略図は、同期電気機械の基本的な機能を示している。固定子102と回転子100は、共通の軸に沿って同心円状に配置され、固定子巻線102Wは、各巻線に流れる電流が主に軸方向、すなわちシャフト104の方向に沿うように構成されている。同期機の固定子は、回転磁界を発生させるために適切な位相の複数の巻線102W(図示せず)で構成することができる。理想的かつ最適には、従来の機械の回転子の磁力線は、共通の軸から半径方向に、すなわち固定子巻線の電流の主な方向と直交する半径方向に延びることが望ましい。
【0056】
回転子100は、機械エネルギをシステムに伝達したり、システムから排出したりするものであり、機械シャフト104に結合されている。この回転子は、同心円状のバック鉄心103に囲まれており、このバック鉄心103に沿って、いわゆるエアギャップ102がこれら回転子とバック鉄心の間に存在する。固定子巻線102Wは、エアギャップGに配置される。永久磁石または電磁石101で構成される回転子100は、固定子巻線102Wによって生成される磁場と相互に作用するための磁界をエアギャップ内に提供する。機械エネルギを電気エネルギに変換するため、シャフト104にトルクを加えて回転子100を回転させると、変化する回転子の磁束と固定子巻線内の電流の流れとの相互作用により、固定子巻線の端子に起電力(emf)が誘導され、このシステムは発電機として動作する。モータとして動作する場合、固定子巻線102Wを励磁するために適切な位相シフトを有する交流電圧が印加されると、当該機械の軸周りに回転磁界が発生する。固定子巻線によって発生する回転磁界と回転子磁石101の磁場との相互作用により、この固定子巻線を励磁するために印加される交流電圧の周波数に同期して当該回転子が回転する。
【0057】
回転子磁石101と固定子巻線102との間で最大のエネルギ伝達を達成するためには、固定子巻線エアギャップG内の磁場を半径方向に向ける必要がある。従来のモータに関して述べたように、固定子巻線の導体に作用するローレンツ力FはF=I×Bで与えられ、ここで全ての量はベクトル量である。Iは固定子巻線102の電流を表し、Bはこの固定子巻線を流れる電流と相互作用するエアギャップ内の回転子磁石によってもたらされる磁束密度である。ベクトル外積によって与えられる力は、電流の方向Iと磁束密度の方向Bが互いに直交するときに最大値を持つ。ローレンツ力は、2つの量の間の角度が0°のときにゼロとなる。この関係から分かるように、当該固定子巻線の導体は軸方向を向いているので、当該回転子の磁場方向がその共通軸に対して半径方向を向いているときに、機械出力が最適化される。バック鉄心103が磁場生成回転子を取り囲むことで、回転子の磁力線を半径方向により一層整列させることが可能である。
【0058】
上記同期機の動力は次の関係式で与えられる:
ここで、ωは回転速度、Lは機械の軸方向の長さ、Dはエアギャップ内の固定子巻線の平均直径、B
Rはエアギャップ内の磁束密度、Asは固定子巻線の電流負荷である。この式は、当該機械の動力が固定子巻線のエアギャップ内の磁束密度に比例することを示している。当該回転子に必要とされる円筒形システムの磁束密度は、そのシステムが円筒形ハルバッハ配列にあるような磁気エレメントの磁束チャネリングアレイを備える場合に、高めることが可能である。このような磁石構成においては、各磁極はエレメントに分割され、個々のエレメントの磁化方向は、エレメントからエレメントへと変化する。従来の永久磁石は、アレイの対向する面にN極とS極を有するが、アレイにおけるエレメントからエレメントへと磁化方向を適切に回転させることにより、磁石の磁束が曲がり、すなわちチャネリングし、ほとんどそのアレイの片側だけに磁束を発生させることが可能である。この場合、永久磁石または電磁石で構成されるリング型磁石アセンブリは、実質的に内向きまたは外向きの磁束のみを有するように製造することが可能である。この磁場の屈曲(磁束チャネリングと呼ばれる)により、出現する磁束の大部分がシステムの片側に限定されるだけでなく、対向するN極とS極を有する従来の磁石と比較して、出現する磁束密度の大幅な向上をもたらす。本発明による磁束チャネリングアレイによって達成可能な磁場の屈曲は、場合によっては2倍ほど向上させることが可能である。
【0059】
原理的には、磁場生成回転子システムが、対向するN極とS極を有する従来の磁石アセンブリの代わりに、例えばパイ型の磁気セグメントからなる従来のハルバッハ配列を備えた磁束チャネリングアレイとして実装される場合、同期機の出力を大幅に向上させることができる。
図2aに示されるような従来の磁石アセンブリの性能と、
図2bに示されるような磁束チャネリングアレイを組み込んだシステムの性能との比較から、従来のシステムに対して磁束チャネリングアレイを組み込んだシステムの利点は明らかである。
【0060】
図2bは、各磁極が4つのエレメント121から構成される完全なハルバッハ配列の2つの磁極を示している。このアレイの各パイ型エレメント121は、異なる磁化方向を有する。永久磁石の磁場強度は、磁石の形状に依存し、磁場は、空気ではなく近傍の強磁性体の存在に強く依存する。組み立てられたパイ型セグメントでは、強磁性体のリラクタンスが空気と比べて低いことに基づいて、磁力線がセグメントからセグメントへとチャネリングされる。一方、同じパイ型エレメントが空気中にある場合、その磁力線の一部はエレメント自体を通って戻るため、外側で測定できる磁場は減少する。ハルバッハ配列の全てのパイ型エレメントが同じ残留磁場B
remに磁化されている場合、組み立てられたシステムは、式1及び式2で与えられる理想的な磁場構成に非常によく近似させることができる。
【0061】
完全なハルバッハ配列の磁束チャネリングに基づいて、リングの内側122の磁束密度を高め、外側123の磁束密度を消すことができ、あるいは、逆に、リングの外側のみで磁束密度を高めることもできる。しかしながら、実際には、各セグメントの長手方向軸を中心に磁化方向121が変化するパイ型永久磁石の製造は、かなり複雑で時間を要し、コストも高くなる。これは、複数の永久磁石が同一の磁化方向121を持つ直方体として製造されることに起因する。着磁された平行六面体は、その後必要に応じた磁化方向を得るために個別に機械加工される。永久磁石材料の脆性と硬度特性、及び他の強磁性材料の近傍で作用する強い力に基づくと、製造及び組立工程は複雑かつ困難であり、多くの用途にとって望ましいほど実用的なものではない。
【0062】
さらに、相反する強力な磁力の存在下で、ドーナツのような形状にピースを組み立て、それらを互いに接合することは複雑なプロセスである。得られたアセンブリは、通常、その後、機械的な堅牢性を獲得するためにオーバーラップされる。多くの用途では、このようなアセンブリに要する最終的なコストは、結果として得られる利点を上回り、従来機械のサイズを単に大型化することで電力とトルクを増加させる方が経済的なように思われる。
【0063】
しかしながら、例示的な実施形態における、全てのセグメントが同一の磁化方向を有する離散的な磁気セグメントを含む本発明による磁束チャネリングアレイ(
図10を参照)を用いれば、従来のハルバッハ配列に期待されるのと同様の利点をもたらす同期電気機械を実現することがより実用的かつ経済的になる。
【0064】
本発明による例示的なシステム130の一実施形態が、磁場発生回転子を形成するための機械のシャフト104に取り付けられた磁束チャネル永久磁石アレイ107と共に
図3に示されている。磁石アレイ107の表現は概略的なものである。アレイ107の4つのサブセグメントが示されているのは、このセグメントが個々の磁気サブセグメントの集合体であることを示すためだけである。磁気セグメントが当該アセンブリ内でどのように配向されているかを示すものではない。回転子の半径方向外側に配置され、かつ回転子と同軸に配置された同心のバック鉄心103の助けにより、固定子巻線102Wが配置されている、回転子100の磁場とバック鉄心103との間のエアギャップGに、半径方向に増大された磁束密度が生成される。
【0065】
電気機械の効率は、回転子の回転磁界に伴う磁場の変化にさらされるバック鉄心の磁化損失に強く影響される。
図4に示すシステム135のように、バック鉄心を回転子に機械的に結合することで、これらの磁化損失を大幅に低減することができる。この場合、バック鉄心111は、回転子108と同期して回転するように機械的に結合されているため、バック鉄心111の磁化を引き起こす磁場の変化が発生しない。
【0066】
図5に示す本発明の別の実施形態によれば、磁束チャネルアレイ113は、固定子102の外側に中心軸から離れた側に面して配置され、磁束方向付け鉄心112が、固定子102の内側に中心軸に面して配置されている。この構成により、機械の寸法が同じであっても、固定子102と回転子磁石アレイ113の間のエアギャップGにさらに高い磁束密度を発生させることが可能になり、それによって、より高い電力密度及びトルク密度を得ることができる。また、
図6のシステム45を参照すると、鉄心112が再び磁束チャネルアレイ113に機械的に結合することで、鉄心の磁化損失が減少する。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態によれば、
図7に示すシステム150は、エアギャップ102における電気機械の磁束密度のさらなる改善を示すものであり、この電気機械は、外側バック鉄心(例えば、
図3~
図6に示す)を離散的な磁気セグメント110からなる別の磁束チャネリングアレイに置き換えることで達成される。この場合、上述のものと同様に、内側磁束チャネリングアレイ109は、外向きの磁束を発生させ、バック鉄心に代わる外側磁束チャネリングアレイ110は、内向きの磁束を発生させる。対向する磁束チャネリングアレイ(109及び110)は、(i)所望の半径方向の磁束方向、(ii)内側及び外側磁束チャネリングアレイの重ね合わせによって得られるエアギャップ内の磁束密度のさらなる向上、及び、(iii)さらなる遮蔽が不要なフリンジ磁界、を提供する。対向する2つの磁束チャネリングアレイ(109及び110)は、回転子108に機械的に結合されており、それによってシャフト104に機械的に結合されている。
【0068】
バック鉄心を必要とする機械構成とは対照的に、対向する磁束チャネリングアレイを用いると、エアギャップ内のより高い磁束密度が実現可能になる。鉄は2テスラ付近で磁気飽和を示すため、エアギャップ内の磁束密度はこの値までに制限しなければ、この鉄は空気のように作用し、その役割を失うこととなる。2テスラ未満であっても、エアギャップ内の磁場を半径方向に向けてフリンジ磁界を抑えるためには、エアギャップ内の磁束密度に応じてバック鉄心の厚みを増す必要がある。しかしながら、鉄の厚みが増すと機械重量が増加し、磁束密度の増加による電力密度とトルク密度の増加を打ち消すことになる。対向する磁束チャネリングアレイのコンセプトによってこの制限が取り除かれ、エアギャップ内の磁束密度が数テスラの永久磁石に代わり、超伝導双極子コイルを使用することが可能になる。
【0069】
米国特許出願US2018/0226190では、アレイ全体が単一のステップで着磁されるハルバッハ配列の製造プロセスが開示されている。これは、ハルバッハリング周りの方位角位置の関数として連続的に変化する磁束方向を生成する着磁コイルの助けにより、達成される(式1及び式2を参照)。この技術を適用するには、直径が50mm~200mmで、最大磁極数が12未満の範囲内に限られたアレイが最適である。NdFeBのような永久磁石素材の着磁には、数テスラの磁束密度が必要とされる。このため、風力発電機に必要とされるような大型の連続ハルバッハ配列の製造は現実的ではない。必要とされる着磁コイルは非常に大型化し、それに応じてインダクタンスも非常に大きくなる。数テスラの磁束密度で必要なパルス磁場を発生させるには、非常に高い電圧と電力が必要である。半径方向に十分な厚みを持つ20以上の極子数を必要とする電気機械用のリングの着磁には、さらなる困難が伴うことになる。着磁プロセスに必要な多極コイルの内部磁場は、そのシステムの中心に向かって指数が増加するにつれて低下する。4極、すなわち4つの極を有するシステムの場合、その磁束密度は、半径の関数として直線的に減少する。一般的なn極子の場合、磁束密度は1/rn-1として減少する。中心に向かって磁束密度が急激に低下するため、所与の半径方向の厚みを持つリング状の磁石の内側においては、着磁に十分な磁束密度を得ることはますます困難となる。この現象を克服するためには、半径方向への均一な着磁のために必要な磁束密度で当該リングを貫通するために、非常に大きな着磁磁界が必要となる。
【0070】
前述したように、適切に磁化されたパイ型のセグメントから構成される従来のハルバッハ配列は、製造の複雑さがその普及を妨げてきた。多くの用途において、このようなアセンブリにかかる最終的なコストは、結果として得られる利点を上回るので、従来機械のサイズを大型化することによって電力とトルクを増加させる方が経済的である。
【0071】
本発明によれば、従来のハルバッハ配列を回転機械に組み込む製造上の困難は、連続的なリング状の配列を必要とする設計、または離散的なパイ型ピースで形成された円筒形アセンブリを必要とする設計以外の別の設計に基づくことで回避することができる。本発明の実施形態は、円筒形状の表面、すなわち円筒平面の輪郭に沿って延在するアレイに配置された、離散的な永久磁石もしくは離散的な通常の導電コイルまたは超伝導コイルからなる、磁束方向付け磁石アセンブリを提供する。アレイ内の個々の磁石は、円筒形状の表面の中心軸と平行な方向に延在している。
【0072】
図8を参照すると、回転電気機械または磁気ギアとして動作するのに適した、同心円状に配置された2つの磁束方向付け磁石アセンブリの断面図が示されている。円303は、各々、棒状の永久磁石または双極子コイルであり、本明細書においては磁気セグメントと呼ぶ。好ましい実施形態では、リングの1つにおける全ての磁気セグメント303は、同様に磁化された同一のものである。しかしながら、磁束チャネリングに必要な磁化方向を生成するために、各エレメントは互いに対して回転される。各磁気セグメントに求められる当該磁化方向は、矢印で示されている。また、内側リング(302)の磁気セグメントも、外側リング300のエレメントと同等のものとすることができる。
【0073】
図示されている実施形態は、デュアル回転子モータまたは発電機としての動作に適している。他の実施形態は、
図4、
図5及び
図6に示す概念図のように、単一の回転子を有する機械に適用可能な単一の磁束方向付け磁石アセンブリで構成されてもよい。
図8を参照すると、各磁束方向付け磁石アセンブリ300及び302は、コイル、または、ポールセグメントと呼ばれる棒状エレメントの形態をした一連の永久磁石を含んでもよい。セグメントが永久磁石である実施形態の場合、セグメントは、互いに間隔を空けて配置されていてもよいが、主要側面と呼ばれる隣接ポールセグメントの表面は、近接していてもよいし、互いに接触していてもよい。
図8に示す断面は、棒状セグメントの各アレイに共通の円筒軸対称を横切る平面に沿って取られたものである。同心円状ペアのうちの棒状セグメントの内側アレイ302は、図示された磁化方向によって決定される半径方向外向きの磁束を投射し、同心円状ペアの外側アレイ300は、図示された磁化方向によって決定される半径方向内向きの磁束を投射する。例示的な棒状磁気エレメント(300及び302)のアレイは、各々、個々の棒状磁気セグメントが適切な磁化方向を有する、磁束方向付け磁気アセンブリとして構成される。
図8に示す実施形態は、5極対を有する磁場を生成する。このような離散的な磁石のアセンブリは、各々、対称軸方向に円筒面内で延在する。外側に投射された磁束を有する内側磁気アレイ302の場合、各磁極は3つのセグメントで構成される。外側磁気アレイ300では、各磁極は5つのセグメントで構成される。図示されている磁化方向は、式1及び式2によって求めることができ、便宜上、再度ここに示す。
式1と式2で与えられるこの理想的な構成は、1磁極当たりのセグメント数が多いことにより、最もよく近似される。しかしながら、1磁極当たり5つのセグメントから成る場合でも、本発明の実施に適した理想的な構成に近い近似値を実現できることを示している。
【0074】
図8に示された棒状セグメントの2つのアレイ300及び302の同心配置は、同期電気機械用の回転子として用いることができ、その基盤となるコンセプトは、磁気ギアの動作にも適用可能である。モータの用途においては、固定子巻線は、棒状磁気セグメントの内側アレイ302と外側アレイ300との間のエアギャップに配置される。固定子巻線に流れる電流は、
図8の断面に沿った平面に垂直な方向に流れ、かつ、この固定子巻線の導体にかかるローレンツ力は、導体に流れる電流と周囲の磁束とのクロス積F=I×Bによって与えられるので、同心円状で対向アレイは、各々、最適化されたトルクを実現するために必要とされる、半径方向に向けられた磁束密度を生成する。
【0075】
上述の棒状エレメントの同心円状アレイを組み込んだ電気機械及び磁気ギアの実用的な用途においては、その磁極対の数、磁極当たりのセグメントの数、個々の磁石の断面形状、これら2つの磁石アレイ間のエアギャップ、及びこれらアレイの半径方向の厚さを、それぞれ最適化することで可能な限り最良の磁束チャネリングを実現し得る。
【0076】
磁束方向付け磁石アレイの各棒状磁石、すなわち永久磁石または双極子コイルの形状は、断面で見たときに、対称または非対称な様々な形状であってよい。
【0077】
一実施形態では、棒状磁気セグメントは、均一に間隔を空けて連なる同様な円筒形のセグメントであり、各磁束方向付け磁石アセンブリの円筒形アレイパターンを集合的に形成する。この例では、永久磁石の各々がその円筒形状の軸方向を空ける方向に磁化方向を有しており、磁石が当該アセンブリに関する位置の関数として個々に回転されることで、従来のハルバッハ配列におけるパターンに類似した、磁極に沿って周期的にシフトする磁化方向のパターン、及び任意の指定された多極構成nのために必要な磁化方向を提供するようにしてもよい。
【0078】
例示的な棒状の永久磁石(
図8では円筒形状として概略的に示されている)は、各々、一連の開口部または穿孔部601に挿入される。開口部は、
図9に示すような円筒形状の支持構造体600に形成することができる。支持構造体は、永久磁石セグメントを挿入するための精密開口部601を有するプレス積層体で製造することができる。このような積層体は、0.01mm以下の精度で、比較的低コストで製造することができる。この積層体の材料は、非磁性体、例えば、チタンを主成分とすることができ、比較的高強度で低密度の支持構造体を実現することができる。
【0079】
モータの励磁中、図示された磁束方向付け磁気セグメントの同心円状アレイの個々の磁石は、作用するローレンツ力に反応して、円筒形状の支持構造体内で、当該磁石の位置の回転を引き起こす可能性のあるトルクを経験する。このような回転は、例えば、
図10に示すような楕円形の断面を持つ磁石を使用し、支持構造体の開口部が、作用するローレンツ力の下で棒状磁気セグメントを所定の位置に固定する相補的な形状を有することによって、防止することができる。もしくは、棒状磁石を適切なエポキシ樹脂などで支持構造体に化学的に接着し、回転や軸方向の移動を防止するか、または、断面が例えば円形状であるような主要側面の表面に、支持構造体の嵌合用のキー溝と連動するキーを含めてもよい。
【0080】
開示された実施形態の特徴は、アレイが、利用可能ないかなる永久磁石材料でも製造可能な種類の離散的な磁石を含むことができ、例えば、利用可能な最高グレードのNdFeB(例えば、N52)などが挙げられる。永久磁石の製造及び着磁プロセスのさらなる開発を必要とすることはない。エアギャップ内の非常に大きな磁束密度BR(式3を参照)を要する、最高の電力密度及びトルク密度を伴う用途においては、超伝導双極子コイルをその磁気エレメントとして使用することができる。この場合、2つのリングの全てのコイルを直列にするか、または適宜、外側リングの電流と内側リングの電流を異なるものにすることができる。
【0081】
複数の穿孔部のうちの1つについて
図11の部分図に示されているように、軸方向に長いセグメント長を有するアレイを必要とする設計の場合、永久磁石の複数の離散的なサブセグメント400を、積層支持構造体401の各穿孔部内に端から端まで挿入することができる。複数の磁石を同じ開口部内に配置するにあたり、斥力を克服する必要はなく、同じ開口部内に端から端まで挿入された磁石を互いに接着する必要はない。
【0082】
本開示における間隔を空けて配置された磁気エレメントの離散的なアレイは、離散的なパイ型ピースで形成された従来のハルバッハ配列よりも機械的堅牢性が著しく高く、それゆえ高回転数で動作する電気機械によく適していると期待される。従来のハルバッハ配列は、脆性素材のセグメントを接着し、一般的にガラスエポキシでオーバーラップしたものである。
【0083】
従来のハルバッハ配列と比較すると、本開示における磁束方向付け離散的な磁石アセンブリの製造は、小さなエアギャップを横切るように磁束の向きを変える、より経済的な製造プロセスである。特筆すべきは、アセンブリ内の全ての棒状磁石セグメントは同一にできることである。軸方向の長さが長い磁石セグメントを個々の短い磁石で組み立てる場合、リング内の全ての棒状セグメントが等しい残留磁場を持つように、選別プロセスを適用することができる。永久磁石の製造では、磁石ごとに残留磁場のばらつきが数パーセントあるのが一般的である。全ての磁石を測定し、それに応じて選別することで、棒状セグメント間の磁場強度のばらつきを最小限に抑え、機械のトルクリップルを回避することができる。
【0084】
ほとんど全てのサイズで、エアギャップにおいて最も高い磁束密度を持つ、費用対効果の高い磁束方向付け離散的な磁気アセンブリを製造することが可能であることから、この技術は、米国特許3,378,710号に開示されているような磁気ギアボックスにより適している。
【0085】
図12は、磁束チャネリング磁石アセンブリを含む一対の同心円筒形アレイ(500及び502)において、間隔を開けて配置された離散的な棒状磁気セグメント505に係る、別の実施形態を概略的に示している。多数の強磁性セグメント504を含む第3のリング503は、2つの磁束チャネリング磁石アレイリングの間の隙間に配置されている。図示された実施形態は、永久磁石を含む2つのリング(500及び502)と、強磁性セグメント503を有する挿入リングを備える。これら2つのリングは、磁束チャネリングアセンブリである。
【0086】
図12は、2つのアレイの共通の対称軸を横切る平面に沿った断面図である。各円筒形アレイのエレメント(505)は、前の図(
図8及び
図10)と同様に、2つの仮想的な同心円筒形面の一方に沿って延在している。アレイの一方が共通軸を中心として回転している間に、異なるリングの磁石(505)及び強磁性セグメント(504)が互いに接近すると、これらの異なるエレメントは互いに引き付けまたは反発し、2つの回転可能なリングにおいて、機械式ギアの噛み合い歯に機能的に類似した挙動を示す。磁気エレメントのアレイは、従来の機械式ギアと同等程度の運動比を提供するが、磁気式ギアは互いに接触することなく機能する。そのため、相互作用面/嵌合面の機械的摩耗がなく、ノイズも発生しない。歯車は損傷なく滑ることが可能となる。磁気エレメントの内側アレイ及び外側アレイには同数の極対があるため、システムは、最大許容トルク伝達で従来のクラッチのように機能する。磁束方向付け離散的な磁石アセンブリは、従来のS-N磁石アセンブリよりも有益なギアシステムを提供するが、その理由の一つは、従来のアセンブリはバック鉄心を必要とし、エアギャップにおいて同じ高磁束密度が得られないからである。本発明は、高いトルク伝達密度を有する費用対効果の高い磁気ギアシステムを提供する。
【0087】
この磁気ギア装置は、本開示における同期電気機械の実施形態と結合することができる。非常に低い回転数、すなわち20RPM未満の風力発電機の場合、磁気ギアを風力駆動プロペラに接続することができるが、この磁気ギアの実装により、発電機を著しく高い回転数で駆動することができる。電気機械の電力は回転数に比例するため、それに応じて発電機を小型化することができ、発電機の出力周波数が上がることで、必要な整流が容易になる。風力発電機における機械式ギアボックスは、システム全体の中で最も平均故障間隔が短いエレメントであることが判明しているため、本来的にスリップ機能を備えた磁気ギアボックスは、信頼性を大幅に向上させる。
[本発明の特徴と特質]
【0088】
本発明は、磁束チャネリング技術を限られた用途に限定してきた制約なしに使用することを可能にする。
【0089】
図2bは、各磁極が4つのエレメント121で構成される完全なハルバッハ配列の2つの磁極を示す。アレイの各パイ型エレメント121は異なる磁化方向を有する。永久磁石の磁場強度は、磁石の形状に依存し、磁場は空気の代わりに近傍の強磁性体の存在に強く依存する。組み立てられたパイ型セグメントでは、強磁性体のリラクタンスが空気と比べて低いことに基づいて、磁力線がセグメントからセグメントへとチャネリングされる。一方、同じパイ型エレメントが空気中にある場合、その磁力線の一部はエレメント自体を通って戻るため、そのエレメントの外側で測定できる磁場は減少する。任意の磁化方向を有するパイ型ピース121は、それらの磁化方向に関して対称性を持たない。この対称性の破れにより、
図2bに示すように磁化方向が異なり、接触していないピースは、それらの内側と外側との磁束密度に大きな違いを示すことになる。その結果、
図2bのように磁化方向が異なり、接触していないピースは、それぞれが同様の最大磁場強度を示すことはない。しかしながら、ハルバッハ配列の全てのパイ型エレメントが同じ残留磁場B
remに磁化され、
図2bに示すように互いに接触している場合、この組み立てられたシステムを、式1及び式2で与えられる理想的な磁場構成に非常によく近似させることができる。
【0090】
一実施形態では、回転機械で用いるためのアレイは、複数の同様の離散的な磁気セグメントを含む。これらのセグメントをアレイに配置する前などに、間隔を空けて配置すると、各セグメントは同じ最大磁場強度を有する磁極を含む。磁束チャネリングは、当該セグメントが、(i)アレイに沿って順番に回転磁界を有する円周アレイに形成し、(ii)磁場が互いに相互作用するように、各セグメントをアレイに沿って順番に隣のセグメントに十分近接して配置する、とその効果を発揮することができる。本発明の様々な実施形態において、磁束チャネリングを発生させるためには、セグメントを互いに物理的に接触させてもよいし、アレイ内で互いに隣接するセグメント間の磁場が相互に作用して磁束チャネリングをもたらすように十分に近接させた状態で、間隔を空けて配置してもよい。
【0091】
特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、その要素を等価物で置き換えることが可能であることは、当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】