(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】同相・直交位相(IQ)処理を用いたコヒーレントLIDARシステムにおけるゴースト低減技術
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20240311BHJP
【FI】
G01S17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558729
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-23
(86)【国際出願番号】 US2022021784
(87)【国際公開番号】W WO2022221021
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エシャ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ペリン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサ クマール バルガブ
(72)【発明者】
【氏名】ムートリ ラジェンドラ ツシャール
(72)【発明者】
【氏名】ナカムラ ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ジウスティーニ カルロ
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084AD02
5J084BA48
5J084BB01
5J084BB04
5J084BB14
5J084BB15
5J084BB16
5J084BB28
5J084CA08
5J084CA48
5J084CA49
5J084EA01
(57)【要約】
光検出および測距(LIDAR)システムは、LIDARシステムの視野内のターゲットに向けて少なくともアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む光ビームを送信し、ターゲットから反射されるアップチャープおよびダウンチャープのリターン信号を受信する。同LIDARシステムは、1つまたは複数の前記リターン信号にIQ処理を行い、少なくとも1つのアップチャープ、および少なくとも1つのダウンチャープに対して、前記リターン信号の周波数領域におけるベースバンド信号を生成する。同ベースバンド信号は、少なくとも1つのアップチャープ周波数に関連する第1ピークセットと、少なくとも1つのダウンチャープ周波数に関連付けられる第2ピークセットを含む。同LIDARシステムは、第1ピークセットおよび第2ピークセットを使用してターゲット位置を決定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップa~eを含む方法。
a.光検出および測距(LIDAR)システムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信する。
b.前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する。
c.前記ターゲットに関連付けられるピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
d.前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。ここで、前記IQ処理は、前記ターゲットに関連付けられるピークのうち1つまたは複数の信号強度を減少させる。
e.前記ターゲットに関連付けられるピークを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、下記a~eを具備する方法。
a.前記ターゲットに関連付けられるピークは、第1ピークセットおよび第2ピークセットを含む。
b.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
c.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
d.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して前記ターゲットの位置を決定する手順は、下記ステップaおよびbを含む、方法。
a.前記第1ピークセットから前記第1の真のピークを選択し、前記第2ピークセットから前記第2の真のピークを選択する。
b.前記第1の真のピークおよび前記第2の真のピークに基づいて、前記ターゲットの位置を決定する。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記1つまたは複数の周波数範囲のセットは、前記LIDARシステムのエゴ速度に基づくものである、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記IQ処理は、下記ステップa~cを実行する、方法。
a.前記リターン信号のセットに基づいて、第1の信号と第2の信号を生成する。ここで、前記第1の信号は、前記第2の信号から90度シフトされる。
b.第3の信号を生成する。ここで、前記第3の信号は、前記第1の信号と虚数単位を組み合わせて生成する。
c.前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、前記IQ処理は、前記合成信号に高速フーリエ変換を適用する、方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法であって、前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する手順は、下記ステップaまたはbを含む、方法。
a.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算する。
b.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算する。
【請求項8】
請求項7記載の方法であって、前記光ビームがアップチャープの場合には前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合には前記第2の信号に前記第3の信号を加算することにより、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定するために処理する周波数範囲を減少させる、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、さらに、
前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にない場合、同相・直交位相(IQ)回路の使用を自制する、方法。
【請求項10】
光検出および測距(LIDAR)システムであって、:
同LIDARシステムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信し、前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する光スキャナと、;
前記リターン信号から時間領域でLIDARターゲット距離に対応する周波数を含むベースバンド信号を生成する光学処理装置と、;
前記光学処理装置に接続される信号処理装置と、;を備えており、
前記信号処理装置は、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに下記ステップa~cを行わせる命令を格納するメモリと、を含む、LIDARシステム。
a.前記ターゲットに関連付けられるピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
b.前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。ここで、前記IQ処理は、前記ターゲットに関連付けられるピークのうち1つまたは複数の信号強度を減少させる。
c.前記ターゲットに関連付けられるピークを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【請求項11】
請求項10記載のLIDARシステムであって、下記a~eを具備する、LIDARシステム。
a.前記ターゲットに関連付けられるピークは、第1ピークセットおよび第2ピークセットを含む。
b.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
c.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
d.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【請求項12】
請求項11記載のLIDARシステムであって、前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して前記ターゲットの位置を決定する手順は、下記ステップaおよびbを含む、LIDARシステム。
a.前記第1ピークセットから前記第1の真のピークを選択し、前記第2ピークセットから前記第2の真のピークを選択する。
b.前記第1の真のピークおよび前記第2の真のピークに基づいて、前記ターゲットの位置を決定する。
【請求項13】
請求項10記載のLIDARシステムであって、前記1つまたは複数の周波数範囲のセットは、前記LIDARシステムのエゴ速度に基づいて変動する、LIDARシステム。
【請求項14】
請求項10記載のLIDARシステムであって、前記IQ処理を実行するために、さらに下記ステップa~cを行う、LIDARシステム。
a.前記リターン信号のセットに基づいて、第1の信号と第2の信号を生成する。ここで、前記第1の信号は、前記第2の信号から90度シフトされる。
b.第3の信号を生成する。ここで、前記第3の信号は、前記第1の信号と虚数単位を組み合わせて生成する。
c.前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する。
【請求項15】
請求項14記載のLIDARシステムであって、前記IQ処理を実行するために、さらに前記合成信号に高速フーリエ変換を適用する、LIDARシステム。
【請求項16】
請求項14記載のLIDARシステムであって、前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成するために、さらに下記ステップaまたはbを行う、LIDARシステム。
a.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算する。
b.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算する。
【請求項17】
請求項16記載のLIDARシステムであって、前記光ビームがアップチャープの場合には前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合には前記第2の信号に前記第3の信号を加算することにより、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定するために処理する周波数範囲を減少させる、LIDARシステム。
【請求項18】
請求項10記載のLIDARシステムであって、さらに、
前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にない場合、同相・直交位相(IQ)回路の使用を自制する、LIDARシステム。
【請求項19】
LIDAR(光検出および測距)システムであって、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに下記動作a~cを行わせる命令を格納するメモリと、を含む、LIDARシステム。
a.前記LIDARシステムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信する。
b.前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する。
c.前記ターゲットに関連付けられるピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
d.前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。ここで、前記IQ処理は、前記ターゲットに関連付けられるピークのうち1つまたは複数の信号強度を減少させる。
e.前記ターゲットに関連付けられるピークを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【請求項20】
請求項19記載のLIDARシステムであって、下記a~eを具備する、LIDARシステム。
a.前記ターゲットに関連付けられるピークは、第1ピークセットおよび第2ピークセットを含む。
b.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
c.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
d.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年3月24日に出願された米国仮特許出願第63/165,601号および2022年3月23日に出願された米国特許出願第17/702,595号に基づく優先権およびその利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、LIDAR(光検出および測距)システムに関するもので、より詳細には、コヒーレントLIDARシステムにおけるゴースト低減に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムなどのLIDARシステムは、ターゲットの周波数チャープ照射のための波長可変な赤外線レーザと、送信信号のローカルコピーに組み合わされるターゲットからの後方散乱光または反射光を検出するためのコヒーレント受信器とを使用する。同受信器において、上記ローカルコピーにターゲットまでの往復時間だけ遅延したリターン信号(例:戻り信号)を混合(合成)することで、システム視野内の各ターゲットまでの距離に比例する周波数を有する信号が生成される。
周波数のアップスイープとダウンスイープは、検出されたターゲットの距離と速度を検出するために使用されることがある。しかしながら、LIDARシステムおよびターゲット(または複数のターゲット)の1つ以上が移動している場合、どのピークがどのターゲットに対応しているかを特定する必要があるところ、各ターゲットに、対応するピークを正確に関連付けることが難しくなるという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下、本発明の態様、すなわち、コヒーレントLIDARシステムにおけるゴースト低減のためのシステムおよび方法にかかる発明の各態様について説明する。
【0005】
本発明の一態様による方法は、下記ステップa~eを含む。
a.光検出および測距(LIDAR)システムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信する。
b.前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する。
ここで、前記リターン信号のセットは、
前記ターゲットと前記LIDARシステムとの間の相対運動によって生じる、少なくとも1つのアップチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトアップチャープ周波数と、少なくとも1つのダウンチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトダウンチャープ周波数とを含み、
前記ドップラーシフトアップチャープ周波数および前記ドップラーシフトダウンチャープ周波数は、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのアップチャープ周波数に関連付けられる第1ピークセットと、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのダウンチャープ周波数に関連付けられる第2ピークセットと、を生成する。
c.前記ターゲットに関連付けられるピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
d.前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。
e.前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【0006】
本発明の一態様による方法において、
下記a~cを具備する方法。
a.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
b.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
c.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【0007】
本発明の一態様による方法において、
前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して前記ターゲットの位置を決定する手順は、下記ステップaおよびbを含む、方法。
a.前記第1ピークセットから前記第1の真のピークを選択し、前記第2ピークセットから前記第2の真のピークを選択する。
b.前記第1の真のピークおよび前記第2の真のピークに基づいて、前記ターゲットの位置を決定する。
【0008】
本発明の一態様による方法において、
前記1つまたは複数の周波数範囲のセットは、前記LIDARシステムのエゴ速度に基づくものである。
【0009】
本発明の一態様による方法において、
前記IQ処理は、下記ステップa~cを実行する、方法。
a.前記リターン信号のセットに基づいて、第1の信号と第2の信号を生成する。ここで、前記第1の信号は、前記第2の信号から90度シフトされる。
b.第3の信号を生成する。ここで、前記第3の信号は、前記第1の信号と虚数単位を組み合わせて生成する。
c.前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する。
【0010】
本発明の一態様による方法において、
前記IQ処理は、前記合成信号に高速フーリエ変換を適用する。
【0011】
本発明の一態様による方法において、
前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する手順は、下記ステップaまたはbを含む。
a.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算する。
b.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算する。
【0012】
本発明の一態様による方法において、
前記光ビームがアップチャープの場合には前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合には前記第2の信号に前記第3の信号を加算することにより、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定するために処理する周波数範囲を減少させる。
【0013】
本発明の一態様による方法において、さらに、
前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にない場合、同相・直交位相(IQ)回路の使用を自制する。
【0014】
本発明の一態様によるLIDARシステムは、
同LIDARシステムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信し、前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する光スキャナと、;
前記リターン信号から時間領域でLIDARターゲット距離に対応する周波数を含むベースバンド信号を生成する光学処理装置と、;
前記光学処理装置に接続される信号処理装置と、;を備えており、
前記信号処理装置は、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに下記ステップa~cを行わせる命令を格納するメモリと、を含む、LIDARシステム。
ここで、前記リターン信号のセットは、前記ターゲットと前記LIDARシステムとの間の相対運動によって生じる、少なくとも1つのアップチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトアップチャープ周波数と、少なくとも1つのダウンチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトダウンチャープ周波数とを含み、
前記ドップラーシフトアップチャープ周波数および前記ドップラーシフトダウンチャープ周波数は、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのアップチャープ周波数に関連付けられる第1ピークセットと、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのダウンチャープ周波数に関連付けられる第2ピークセットと、を生成するものである。
a.前記ターゲットに関連付けられるピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
b.前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。
c.前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【0015】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
下記a~cを具備する、LIDARシステム。
a.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
b.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
c.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【0016】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して前記ターゲットの位置を決定する手順は、下記ステップaおよびbを含む。
a.前記第1ピークセットから前記第1の真のピークを選択し、前記第2ピークセットから前記第2の真のピークを選択する。
b.前記第1の真のピークおよび前記第2の真のピークに基づいて、前記ターゲットの位置を決定する。
【0017】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記1つまたは複数の周波数範囲のセットは、前記LIDARシステムのエゴ速度に基づいて変動する。
【0018】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記IQ処理を実行するために、さらに下記ステップa~cを行う。
a.前記リターン信号のセットに基づいて、第1の信号と第2の信号を生成する。ここで、前記第1の信号は、前記第2の信号から90度シフトされる。
b.第3の信号を生成する。ここで、前記第3の信号は、前記第1の信号と虚数単位を組み合わせて生成する。
c.前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成する。
【0019】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記IQ処理を実行するために、さらに前記合成信号に高速フーリエ変換を適用する。
【0020】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記第3の信号と前記第2の信号を組み合わせて合成信号を生成するために、さらに下記ステップaまたはbを行う。
a.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算する。
b.前記光ビームがアップチャープの場合、前記第2の信号に前記第3の信号を加算し、前記光ビームがダウンチャープの場合、前記第2の信号から前記第3の信号を減算する。
【0021】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、
前記光ビームがアップチャープの場合には前記第2の信号から前記第3の信号を減算し、前記光ビームがダウンチャープの場合には前記第2の信号に前記第3の信号を加算することにより、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定するために処理する周波数範囲を減少させる。
【0022】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、さらに、
前記ターゲットに関連付けられるピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にない場合、同相・直交位相(IQ)回路の使用を自制する。
【0023】
本発明の一態様によるLIDARシステムは、
LIDAR(光検出および測距)システムであって、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに下記動作a~cを行わせる命令を格納するメモリと、を含む、LIDARシステム。
a.前記LIDARシステムの視野内のターゲットに向けて少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を含む1つまたは複数の光ビームを送信する。
b.前記ターゲットから、前記1つまたは複数の光ビームに基づくリターン信号のセットを受信する。
ここで、前記リターン信号のセットは、前記ターゲットと前記LIDARシステムとの間の相対運動によって生じる、少なくとも1つのアップチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトアップチャープ周波数と、少なくとも1つのダウンチャープ周波数からシフトされるドップラーシフトダウンチャープ周波数とを含み、前記ドップラーシフトアップチャープ周波数および前記ドップラーシフトダウンチャープ周波数は、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのアップチャープ周波数に関連付けられる第1ピークセットと、前記ターゲットの位置に対応して前記少なくとも1つのダウンチャープ周波数に関連付けられる第2ピークセットと、を生成する。
c.前記ターゲットに関連するピークが、前記ターゲットの位置または速度を正確に算出する確率の低い信号属性値を含む1つまたは複数の周波数範囲のセット内にあるかどうかを決定する。
d.前記ターゲットに関連するピークが前記1つまたは複数の周波数範囲のセット内にある場合、受信した前記リターン信号のセットの1つまたは複数に同相・直交位相(IQ)処理を実行する。
e.前記第1ピークセットおよび前記第2ピークセットを使用して、前記ターゲットの位置、速度、反射率のうち1つまたは複数を決定する。
【0024】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおいて、下記a~cを具備する、LIDARシステム。
a.前記第1ピークセットは、第1の真のピークおよび第1のイメージピークを含む。
b.前記第2ピークセットは、第2の真のピークおよび第2のイメージピークを含む。
c.前記IQ処理は、前記第1のイメージピークの第1の信号強度と、第2のイメージピークの第2の信号強度とを減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の種々の態様を明確にするために、後述の詳細な説明(実施形態)で参照される図面を示す。なお図中の同一の符号は同一の要素である。
【0026】
【
図1】本発明の実施形態によるLIDARシステムを示すブロック図である。
【0027】
【
図2】本発明の実施形態によるLIDAR波形の一例を示す時間-周波数図である。
【0028】
【
図3A】本発明の実施形態によるLIDARシステムを示すブロック図である。
【0029】
【
図3B】本発明の実施形態によるLIDARシステムの電気光学系を示すブロック図である。
【0030】
【
図4】本発明の実施形態による信号処理装置を示すブロック図である。
【0031】
【
図5】本発明の実施形態による、ターゲットに対する信号ピークを示す信号強度-周波数図である。
【0032】
【
図6】本発明の実施形態による、ピーク選択のための信号処理装置の一例を示すブロック図である。
【0033】
【
図7A】本発明の実施形態による周波数範囲を示す信号強度-周波数図である。
【0034】
【
図7B】本発明の実施形態による周波数範囲を示す信号強度-周波数図である。
【0035】
【
図8】本発明の実施形態によるピーク選択のための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態による、ドップラーシフトに起因するゴーストを自動的に低減するためのLIDARシステムおよびその方法について説明する。
本発明の実施形態におけるLIDARシステムは、輸送、製造、計測、医療、仮想現実(バーチャル・リアリティ)、拡張現実(AR)、セキュリティシステムなど、任意のセンシング市場において実施することができるが、これらに限定されるものではない。その他、実施形態で説明されるLIDARシステムは、自動運転支援システムや自動運転車の空間認識を支援する周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンドの一部として実装される。
【0037】
ここで説明される実施形態のLIDARシステムは、コヒーレントスキャン技術を使用して、ターゲットから返ってくる信号(リターン信号)を検出し、コヒーレントヘテロダイン信号(異なる周波数の信号同士を組み合わせたもの)を生成する。そして、この信号から、ターゲットの距離および速度の情報を取得することができる。
このような信号(1つまたは複数の信号)は、周波数のアップスイープ(アップチャープ)と周波数のダウンスイープ(ダウンチャープ)を含むことがある。これらは、単一の光源から出力される場合も、別々の光源から出力される場合もある(つまりアップスイープを出力する光源と、ダウンスイープを出力する光源とが異なる場合もある。)。その結果、アップチャープによる周波数ピークと、ダウンチャープによる周波数ピークとの2つの異なるピークをターゲットに関連付けてターゲットの距離と速度を決定するために使用することができる。
しかしながら、このようなLIDARシステムでは、信号を処理するときにピークイメージが発生する場合もある。ピークイメージは、検出されたピークと、ターゲットの位置および/または速度との間で対応関係(関連性)の弱い信号属性(例:SNR値)のデータ(例:グラフィカルデータ)を含み得る。したがって、このようなピークイメージがLIDARシステムによってターゲットを検出するために使用されると、LIDARシステムは、ターゲットに関連する位置、速度(速さ)を処理するために誤ったデータを使用することになる。なお、このような方法で用いられるピークイメージは”ゴースト”と呼ばれることもある。
本実施形態の技術によれば、上昇(アップ)および下降(ダウン)のスイープ/チャープに位相変調を導入することにより、上記の問題に対処することができる。これにより、LIDARシステムは、予想されるピーク形状と、ピークやピークイメージとを照合し、ピーク(例:真のピーク)とピークイメージとを区別することができる。
イメージピークとは対照的に、真のピークは、ターゲットの位置および/または速度に対して強い対応関係(関連性)をもつ信号属性(例:SNR値)のデータ(例:グラフィカルデータ)を含む。したがって、LIDARシステムは、このような真のピークに基づいてターゲットの位置、速度(速さ)を確実に特定することができる。なお、ピークイメージは、「イメージピーク」と称することもある。
【0038】
図1は、一実施態様によるLIDARシステム100を示している。
LIDARシステム100は、いくつかの構成要素のいずれか1つまたは複数を含むものであるが、
図1に示すよりも少ない構成要素または追加の構成要素を含んでもよい。
図1に示すように、LIDARシステム100は、フォトニクスチップ上に実装された光学回路101を有する。光学回路101には、能動光学構成要素と受動光学構成要素との結合体が含まれている。いくつかの例では、能動光学構成要素は、異なる波長の光ビームを有し、1つ以上の光増幅器、1つ以上の光検出器などを含んでいる。
【0039】
自由空間光学系115は、光信号を伝送し、能動光回路の適切な入力/出力ポートに光信号をルーティングして操作するための1つ以上の光導波路を含む。自由空間光学系115にはまた、タップ、波長分割マルチプレクサ(WDM)、スプリッタ/コンバイナ、偏光ビームスプリッタ(PBS)、コリメータ、カプラなどの1以上の光学構成要素が含まれている。一態様では、自由空間光学系115には、偏光状態を変換し、受信した偏光を、例えば、PBSを使用して光検出器に導くための構成要素が含まれている。また、自由空間光学系115には、異なる周波数を有する光ビームを軸(例:高速軸)に沿って異なる角度で偏向させる回折素子がさらに含まれる場合がある。
【0040】
本実施形態のLIDARシステム100は、1つ以上のスキャニングミラーを有する光スキャナ102を備えている。これらのスキャニングミラーは、スキャニングパターンに従って環境をスキャンする光信号を誘導するために、回折素子の高速軸に直交または実質的に直交する軸(例:低速軸)に沿って回転可能になっている。例えば、スキャニングミラーは、1つ以上のガルバノメータによって回転可能である。
光スキャナ102はまた、環境内の任意の物体に反射した、リターン光ビームを収集し、これを光学回路101の光回路構成要素に戻すように導く。例えば、リターン光ビームは、偏光ビームスプリッタによって光検出器に向けられる。なお、光スキャナ102には、ミラーやガルバノメータに加えて、1/4波長板、レンズ、反射防止コーティングされた光学窓などが含まれる場合がある。
【0041】
LIDARシステム100には、光学回路101および光スキャナ102を制御およびサポートするために、LIDAR制御装置110が設けられている。LIDAR制御装置110には、LIDARシステム100に必要な処理装置が含まれている。
一態様による処理装置は、マイクロプロセッサ、中央処理装置などの1つ以上の汎用処理装置であり、具体的には、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、または他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサである。
また、上記処理装置は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:現場プログラム可能ゲートアレイ)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等の特殊用途処理装置の1つ以上であってもよい。
一態様によるLIDAR制御装置110は、データを格納するメモリと、処理デバイスによって実行される命令を含むことができる。同メモリ502としては、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスクメモリ、コンパクトディスク読み取り専用(CD-ROM)やコンパクトディスク読み取り書き込みメモリ(CD-RW)などの光学ディスクメモリ、または任意の他のタイプの非一時的メモリが採用される。
【0042】
一態様では、LIDAR制御装置110には、DSPなどの信号処理ユニット112が設けられる。これにより、LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103を制御するためのデジタル制御信号を出力する。そのデジタル制御信号は、信号変換ユニット106を介してアナログ信号に変換される。例えば、信号変換ユニット106には、デジタル/アナログ変換器が含まれる。
光学ドライバ103は、光学回路101の能動光学構成要素に駆動信号を供給し、レーザや増幅器などの光源を駆動する。一態様では、複数の光源を駆動するために、複数の光学ドライバ103および信号変換ユニット106を設けてもよい。
【0043】
LIDAR制御装置110はまた、光スキャナ102に対してデジタル制御信号を出力するように構成されている。モーション制御装置105は、LIDAR制御装置110から受信した制御信号に基づいて、光スキャナ102のガルバノメータを制御することができる。具体的には、デジタル/アナログ変換器を使用して、LIDAR制御装置110からの座標ルーティング情報を、光スキャナ102のガルバノメータによって処理可能な信号に変換することができる。
一態様では、モーション制御装置105は、光スキャナ102の構成要素の位置または動作に関する情報をLIDAR制御装置110に送り返すこともできる。具体的には、アナログ/デジタル変換器を使用して、ガルバノメータの位置に関する情報をLIDAR制御装置110が処理可能な信号に順次変換することができる。
【0044】
LIDAR制御装置110は、さらに、入力されたデジタル信号を解析するように構成されている。これに関連して、LIDARシステム100には、光学回路101によって受信された1つ以上のビームを測定するための光受信器104が設けられている。具体的には、光受信器104としての基準ビーム受信器は、能動光学構成要素からの基準ビームの信号強度(振幅)を測定し、アナログ/デジタル変換器により同基準ビーム受信器からの信号を、LIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する。
また、光受信器104としてのターゲット受信器は、ビート周波数変調光信号の形でターゲットの距離と速度に関する情報を搬送する光信号を計測する。この場合、光信号の反射ビームは、ローカル発振器の第2の信号(ローカルコピー)と混合され得る。光受信器104には、ターゲット受信器からの信号をLIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する高速アナログ/デジタル変換器を設けることができる。
一態様では、光受信器104からの信号は、LIDAR制御装置110に受信される前に、信号調整ユニット107による信号調整の対象となり得る。例えば、光受信器104からの信号は、リターン信号の増幅のために信号調整ユニット107のオペアンプに供給され、そのオペアンプによって増幅された信号がLIDAR制御装置110に供給されるようにしてもよい。
【0045】
一部のアプリケーション(応用例)では、LIDARシステム100には、環境の画像をキャプチャするように構成された1つ以上の撮像装置108、同システムの地理的位置を提供するように構成された全地球測位システム(GPS)109、または他のセンサ入力を追加的に設けることもできる。
また、LIDARシステム100には画像処理装置114を設けることができる。この場合、同画像処理装置114は、撮像装置108および全地球測位システム(GPS)109から画像および地理的位置を受信し、画像および位置またはそれに関連する情報を、LIDAR制御装置110またはLIDARシステム100に接続された他のシステムに送信するように構成することができる。
【0046】
一部の態様による処理として、LIDARシステム100は、非縮退光学光源を用いて2次元で距離および速度を同時に測定するように構成される。この機能により、周囲環境の距離、速度、方位角および仰角について遠距離測定がリアルタイムで可能になる。
【0047】
一態様によるスキャンプロセスは、光学ドライバ103およびLIDAR制御装置110から開始される。LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103に1つ以上の光ビームをそれぞれ変調するように指示し、これらの変調信号は光学回路101の受動光学回路を通って自由空間光学系115のコリメータに伝送される。同コリメータは、上記変調信号を光スキャナ102に誘導し、光スキャナ102はモーション制御装置105で定義され事前にプログラムされたパターンで環境をスキャンする。光学回路101には、光ビームが光学回路101を出る際に光の偏光状態を変換する偏光波長板(PWP)を設けてもよい。一例として偏光波長板は1/4波板または1/2波板を採用することができる。
偏光された光ビームの一部は、光学回路101に戻るように反射され得る。例えば、LIDARシステム100で使用されるレンズ系またはコリメート系は、自然な反射特性または反射コーティングを有する場合があり、これにより光ビームの一部が光学回路101に反射される。
【0048】
環境から反射された光信号は、光学回路101を通して受信器(光受信器104)に送られる。このとき、光の偏光状態は変換されているため、光学回路101に反射して戻ってきた偏光光の一部とともに偏光ビームスプリッタで反射される。その結果、反射された光信号は、光源と同じ光ファイバまたは導波路には戻らず、それぞれ別の光受信器に反射される。これらの信号は互いに干渉し、混合(合成)された信号を生成する。
ターゲットから戻ってくる各ビーム信号は、時間シフトされた波形を生成し、これら2つの波形間の時間的位相差によって光受信器(光検出器)で計測されるビート周波数を発生させる。そして、その混合(合成)された信号は光受信器104に反射されることになる。
【0049】
光受信器104で受信したアナログ信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)によりデジタル信号に変換される。次いで、同デジタル信号は、LIDAR制御装置110に送信される。
同装置の信号処理ユニット112は、同デジタル信号を受信しそれらを処理する。
一態様では、信号処理ユニット112は、モーション制御装置105およびガルバノメータ(図示されない)から位置データを受信し、画像処理装置114から画像データを受信する。これにより、信号処理ユニット112は、光スキャナ102が追加ポイントをスキャンする際に、環境内のポイントの距離と速度に関する情報を有する3Dポイントクラウドを生成することができる。
信号処理ユニット112はまた、3Dポイントクラウドを画像データと重ね合わせて、周囲の物体の速度および距離を決定する場合もある。
LIDAR制御装置110はさらに衛星ベースのナビゲーション位置データを処理して正確な全地球的位置情報を提供する場合もある。
【0050】
図2は、一実施形態において、LIDARシステム100のようなLIDARシステムがターゲット環境をスキャンするために使用可能なFMCWスキャニング信号201の時間-周波数
図200である。この例において、f
FM(t)と表示されたスキャニング信号201は、チャープ帯域幅Δf
Cおよびチャープ周期T
Cを持つ鋸歯状波形(鋸歯「チャープ」)である。
鋸歯の傾きは、k=(Δf
C/T
C)である。
図2にはまた、一実施形態におけるターゲットリターン信号202(リターン信号)が示される。f
FM(t-Δt)で示されるターゲットリターン信号202は、スキャニング信号201の時間遅延バージョンであり、Δtは、スキャニング信号201によって照射されたターゲットとの間の往復時間である。この往復時間はΔt=2R/vで与えられる。ここで、Rはターゲットの距離、vは光ビームの速度である光速cである。
したがって、同ターゲットの距離Rは、R=c(Δt/2)として計算できる。
リターン信号202がスキャニング信号と光学的に混合されると、距離依存の差周波数(「ビート周波数」)Δf
R(t)が生成される。ビート周波数Δf
R(t)は、鋸歯の傾きkによって時間遅延Δtと線形の関係にある。
つまり、Δf
R(t)=kΔtとなる。ターゲット距離RはΔtに比例するため、ターゲット距離RはR=(c/2)(Δf
R(t)/k)として計算することができる。すなわち、距離Rはビート周波数Δf
R(t)と線形の関係にある。
ビート周波数Δf
R(t)は、例えば、LIDARシステム100の光受信器104でアナログ信号として生成される。このビート周波数は、例えば、LIDARシステム100の信号調整ユニット107内のアナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル化される。このようにしてデジタル化されたビート周波数信号は、LIDARシステム100内の信号処理ユニット(例:信号処理ユニット112)でデジタル処理される。
ただし、ターゲットがLIDARシステム100に対して相対速度を有する場合、ターゲットリターン信号202には一般に周波数オフセット(ドップラーシフト)が含まれることに注意する必要がある。ドップラーシフトは別途検出されてリターン信号の周波数を補正するために使用されるため、
図2では簡略化と説明の容易化のためドップラーシフトは表示されていない。
また、ADCのサンプリング周波数は、エイリアシングを発生させずにシステムで処理可能な最高のビート周波数に決定されることに注意する必要がある。一般的に処理可能な最高周波数はサンプリング周波数の半分(すなわち「ナイキスト限界」)である。例えば、限定はしないが、ADCのサンプリング周波数が1ギガヘルツである場合、エイリアシングなしで処理できる最高ビート周波数(Δf
Rmax)は500メガヘルツである。この限界は、システムの最大ターゲット距離R
max=(c/2)(Δf
Rmax/k)で決まり、これは鋸歯の傾きkを変更することによって調整することができる。
一例では、ADCからのデータサンプルは連続的であってもよいが、後述する後続のデジタル処理は、LIDARシステム100の所定の周期性に関連付けられる「時間セグメント」に分割することができる。例えば、限定はしないが、時間セグメントは、チャープ周期T
Cの数、または前述の光スキャナによる方位角方向の回転数に対応する。
【0051】
図3Aは、一実施形態によるLIDARシステム300を示すブロック図である。
LIDARシステム300は、FMCW(周波数変調連続波)赤外線(IR)光ビーム304のような光ビームを送信し、光スキャナ301の視野(FOV)内のターゲット312などから光ビーム304の反射によるリターン信号313を受信する光スキャナ301を備える。
LIDARシステム300はまた、リターン信号313から時間領域でLIDARターゲット距離に応じた周波数を含むベースバンド信号314を生成する光学処理装置302を備える。光学処理装置302には、LIDARシステム100で説明した自由空間光学系115、光学回路101、光学ドライバ103および光受信器104等の構成要素が含まれる場合がある。
LIDARシステム300はさらに、信号処理装置303を備える。この信号処理装置303は、ベースバンド信号314のエネルギー(信号強度)を周波数領域で計測し、このエネルギー計測値をLIDARシステムノイズの推定値と比較して、周波数領域の信号ピークが検出ターゲットを示す尤度(確率)を決定するものである。信号処理装置303には、LIDARシステム100における信号変換ユニット106、信号調整ユニット107、LIDAR制御装置110および信号処理ユニット112等の構成要素が含まれる場合がある。
【0052】
図3Bは、一実施形態によるLIDARシステムの電気光学系350の一例を示すブロック図である。電気光学系350は、
図1で説明した光スキャナ102と同様な光スキャナ301を備える。電気光学系350にはまた、上記のように、LIDARシステム100で説明した自由空間光学系115、光学回路101、光学ドライバ103および光受信器104等の構成要素を含む光学処理装置302が含まれる。
【0053】
光学処理装置302には、周波数変調連続波(FMCW)からなる光ビーム304を生成するための光源305が設けられる。光源305からの光ビーム304は光カプラ306に向けられ、光ビーム304の一部が偏光ビームスプリッタ(PBS)307に送られる。光ビーム304のサンプル308(基準ビーム)は、光カプラ306から光検出器(PD)309に送られる。
PBS307は、光ビーム304を偏光させて光スキャナ301に向けるように設定される。光スキャナ301は、電気光学系350の筐体320内でLIDARウィンドウ311の視野(FOV)310をカバーする方位角および仰角の範囲で、光ビーム304を用いてターゲット環境をスキャンするように設定される。なお、
図3Bでは説明の簡略化のため方位角スキャンのみが示されている。
【0054】
図3Bに示すように、光ビーム304は、所定の方位角(または角度範囲)で、LIDARウィンドウ311を通過し、ターゲット312に照射される。ターゲット312からのリターン信号313は、LIDARウィンドウ311を通過し、光スキャナ301によってPBS307に戻される。
【0055】
リターン信号313は、ターゲット312からの反射により光ビーム304とは異なる偏光をもってPBS307を通して光検出器(PD)309に導かれる。光検出器(PD)309では、リターン信号313が光ビーム304のローカルサンプル308と光学的に混合され、時間領域で距離依存ベースバンド信号314が生成される。この距離依存ベースバンド信号314は、光ビーム304のローカルサンプル308とリターン信号313との間の周波数差対時間(すなわち、ΔfR(t))である。
距離依存ベースバンド信号314は、周波数領域であってもよく、少なくとも1つのアップチャープ周波数および少なくとも1つのダウンチャープ周波数の信号を、リターン信号313と混合することによって生成され得る。少なくとも1つのダウンチャープ周波数の信号は、ターゲットとLIDARシステムの少なくとも一方の相対運動に比例して時間的に遅延するようにしてもよい。
【0056】
図4は、ベースバンド信号314を処理する信号処理装置303の一実施形態を示す詳細なブロック図である。前述したように、信号処理装置303には、LIDARシステム100の信号変換ユニット106、信号調整ユニット107、LIDAR制御装置110、および信号処理ユニット112等の構成要素が含まれる場合がある。
【0057】
信号処理装置303は、アナログ-デジタル変換器(ADC)401、時間領域信号プロセッサ402、ブロックサンプラ403、離散フーリエ変換(DFT)プロセッサ404、周波数領域信号プロセッサ405、およびピーク検索プロセッサ406を備える。信号処理装置303の各構成ブロックは、例えばハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアの組み合わせにより実装することができる。
【0058】
図4では、時間領域で連続したアナログ信号であるベースバンド信号314がADC401によってサンプリングされ、一連の時間領域サンプル315が生成される。時間領域サンプル315は、時間領域信号プロセッサ402によって処理され、さらなる処理のために調整される。例えば時間領域信号プロセッサ402は、望ましくない信号の成分を取り除くか、後続の処理に適した形にするために、重み付けやフィルタリングを適用することがある。そして、時間領域信号プロセッサ402の出力信号316がブロックサンプラ403に送信される。
ブロックサンプラ403は、時間領域サンプル315の出力信号316をN個のサンプル317(Nは1より大きい整数)のグループに分け、DFTプロセッサ404に送信する。DFTプロセッサ404は、N個の時間領域サンプル317のグループを、ベースバンド信号314の帯域幅をカバーする周波数領域のN個の周波数ビンまたはサブバンド318に変換する。N個のサブバンド318は、周波数領域信号プロセッサ405に送られて、さらなる処理のために調整される。例えば、周波数領域信号プロセッサ405は、ノイズ低減のためにサブバンド318を再サンプリングおよび/または平均化する場合がある。また、周波数領域信号プロセッサ405は、後述するように、信号統計量やシステムノイズ統計量を計算する場合もある。その後、処理されたサブバンド319がピーク検索プロセッサ406に送られ、LIDARシステム300の視野内のターゲットを表す信号ピークが検索されることになる。
【0059】
図5は、一実施形態における複数のターゲットの信号ピークを示す信号強度-周波数
図500の例である。
LIDARシステム(例:FMCW LIDARシステム)は、環境をスキャンし、その環境内のターゲットの距離と速度を決定するために、アップチャープとダウンチャープの周波数変調(ここではアップスイープとダウンスイープとも称する。)を生成することができる。
一例として、単一の光源によりアップチャープとダウンチャープの両方を生成することができ、また、他の例としてLIDARシステムにアップチャープを含む信号を生成する光源と、ダウンチャープを含む信号を生成する別の光源とを設けることができる。
アップチャープおよびダウンチャープからのリターン信号に対応して生成されたビート周波数(すなわちピーク周波数)を使用することで、信号処理装置は、ターゲットの距離および/または速度の1つ以上を決定することができる。例えば、一実施形態による信号処理ユニット112は、それぞれのピークに対応する複数の周波数を使用してLIDARシステムからの距離を計算することにより、ターゲットの距離を決定するように設定される。
前述したように、信号処理ユニット112は、少なくとも1つのアップチャープ周波数、および少なくとも1つのダウンチャープ周波数を、1つ以上のリターン信号と混合することによって、周波数領域のベースバンド信号を生成することができる。ここで、少なくとも1つのダウンチャープ周波数は、ターゲットおよび/またはLIDARシステムの少なくとも1つの相対運動に比例して時間的に遅延するようにしてもよい。ベースバンド信号には、ピーク505A、505B、510A、および510Bが含まれることがあり、また、追加のピーク(
図5には示されていない)が含まれることがある。
【0060】
一実施形態による信号処理ユニット112は、ピークに対応する複数の周波数の差を使用して、ターゲットの速度を決定するように設定され得る。ただし、
図5に示すように、ベースバンド信号にイメージピーク(「ミラーイメージ」、「イメージゴースト」などと称することもある。)が存在する状況が生じる場合がある。これにより、LIDARシステムは、望ましい「真の」ターゲットやピーク(「真のイメージ」または「真のピーク」とも称する。)ではなく、誤った(または「偽の」)ターゲットを検出することがある。
【0061】
図5に示すように、信号強度-周波数
図500には、ピーク505A、ピーク505B、ピーク510A、およびピーク510Bが含まれる。周波数0(例:0ヘルツ、0テラヘルツなど)も信号強度-周波数
図500に示されている。ピーク505A、505B、510A、および510Bは、LIDARシステムの信号処理ユニット(例:
図1に示される信号処理ユニット112)によって処理および/または解析されるベースバンド信号に存在する場合がある。これについて以下で詳細に説明する。
ピーク505Bは、ピーク505Aの鏡像である場合がある。例えば、ピーク505B(ピーク505C)は、周波数0を挟んで反転され、ピーク505Aと同じ特性(例:同じ曲率または形状)を共有している。ピーク505B(ピーク505C)は、ピークイメージまたはイメージピークとも称する場合がある。ピーク505B(ピーク505C)は、ピーク505Aに共役対称であり、その逆もまた同様である。
ピーク510Bは、ピーク510Aの鏡像である場合がある。例えば、ピーク510B(ピーク510C)は、周波数0を挟んで反転され、ピーク510Aと同じ特性(例:同じ曲率または形状)を共有している。ピーク510B(ピーク510C)も、ピークイメージまたはイメージピークと称することがある。
一部の想定において、ピーク505Aは、ターゲットの位置(ピーク位置)から周波数方向の上方にシフト(例:移動)される。ピーク505Aは、アップシフトされたピーク、ドップラーシフトされたピーク、またはF
upと称することがある。
ピーク510Aは、ターゲットの位置から周波数方向の下方にシフトされる。ピーク510Aは、ダウンシフトされたピーク、ドップラーシフトされたピーク、またはF
dnと称することがある。
ピークのシフトは、LIDARシステム(例:FMCWまたは類似のLIDARシステム)のターゲットおよび/またはセンサの一つ以上の移動により生じ得る。例えば、ターゲットが移動している場合、LIDARセンサ(例:
図1に示される光学スキャナ102および/または光学回路101など)を含むデバイス(例:車両、スマートフォンなど)が移動している場合、または同ターゲットと同デバイスが特定の地点に対して相対的に移動している場合である。
【0062】
ピーク505Aが周波数方向の上方にシフト(アップシフト)されたため、ピーク505B(ピークイメージ)は対応する負の周波数に位置している。例えば、ピーク505Aが周波数Jにシフトされた場合、ピーク505Bは周波数-Jに位置することになる。
また、ピーク510Aが周波数方向の下方にシフト(ダウンシフト)されたため、ピーク510B(ピークイメージ)は対応する正の周波数に位置している。
ピーク505Bは-Fupと称することがあり、ピーク510Bは-Fdnと称することがある。
一部の実施形態では、ピーク505A(および対応するピーク505B)はアップチャープ信号(例:特定のターゲットからのアップチャープ信号)に対応し、510A(および対応するピーク510B)はダウンチャープ信号に対応する。他の実施形態では、ピーク505A(および対応するピーク505B)はダウンチャープ信号に対応し、510A(および対応するピーク510B)はアップチャープ信号(例:特定のターゲットからのダウンチャープ信号)に対応し得る。
【0063】
一部の実施形態では、LIDARシステム(例:
図1に示されたLIDARシステム100の信号処理ユニット112)はピーク505Aを選択するように構成される。例えば、ターゲットが近距離にある場合に(例:LIDARの第1の閾値範囲内)、同LIDARシステム(例:
図1に示された信号処理ユニット112)は、最高周波数のピーク(例:ピーク505A)を、ピークイメージと判断せず、ターゲットに対応する真のピークと判断して選択することができる。
このように信号処理ユニット112は、発生しているゴーストのタイプ(例:近距離ゴーストまたは遠距離ゴースト)に基づいてピーク505Aを選択するように構成される。したがって、同LIDARシステム(例:
図1に示された信号処理ユニット112)は、ターゲットに関連する距離または範囲を決定する際に、ピーク505Aを選択すべきであることを決定することができる。さらに、同LIDARシステム(例:
図1に示された信号処理ユニット112)はまた、ピーク505Aを真のピーク(ピークイメージではない)と決定することで、ピーク505B(ピーク505Aの負の周波数を有する)がピークイメージであることを決定することができる。一部の実施形態では、同LIDARシステムは、ピーク505Bを除去(例:ピークイメージを除去)するように構成してもよい。
【0064】
前述したように、一実施形態のLIDARシステムでは、ピークイメージ(例:ピーク505Bおよびピーク510Bなど)が存在する状況も生じ得る。例えば、ハードウェアや計算リソースのために、ビート信号が実際のサンプリングを経て周波数ピークが正とみなされることがあるが、ターゲットがより近距離にある場合(例:LIDARシステムの第1の閾値範囲内など)、負のドップラーシフトによりビート周波数ピークが負になることがある。例えば、ダウンシフトにより、ピーク510Aは負の周波数をもっている。
従来のシステムでは、本開示の実施形態とは対照的であるが、ピーク510Aの代わりにピーク510Bが選択され、ターゲットの位置を特定する際に問題が発生する場合がある。
例えば、ピーク505Aとピーク510Aが使用される場合、ターゲットの位置は次のように決定される:(Fup-Fdn)/2。したがって、ターゲット(真のターゲット位置)はピーク505Aとピーク510Aの中間(図示省略)に向かって決定され得る。これに対し、ピーク505Aとピーク510Bが使用される場合、ターゲットの位置(ゴーストまたはゴーストターゲットの位置)は次のように決定されてしまう:(Fup+Fdn)/2。
【0065】
ドップラーシフトがない場合、ベースバンド信号のピークは、正の周波数に存在することができる。しかしながら、ドップラーシフトがある場合には、近距離のターゲットに対応するピークが0Hzに近い負の周波数にシフトする可能性があり、また、遠距離のターゲットに対応するピークが-((サンプリング周波数)/2)に近い負の周波数にシフトする可能性がある。したがって、LIDARシステムは、どのピークが真のピークに対応するかを特定する必要があり、仮に偽のピークが選択された場合には、ゴーストが発生し得る(例:LIDARシステムによってゴーストイメージが検出される可能性がある)。
同相・直交位相(IQ)処理がない場合、ピーク505Bは、ピーク505Cと同じ高さ(例:信号強度)および形状になり、ピーク510Bは、ピーク510Cと同じ高さ(例:信号強度)および形状になり得る。ピーク505Bがピーク505Cの高さ/信号強度のままであり、ピーク510Bがピーク510Cの高さ/信号強度のままである場合、LIDARシステム100は、ターゲットの位置、速度、および/または反射率を決定する際に、間違ったピーク(例:ピーク505Bおよび/または510B)を選択することが起こりやすい。
【0066】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、リターン信号(例:受信信号)に同相・直交位相(IQ)処理を実行することができる。リターン信号のIQ処理により、LIDARシステムは、ベースバンド信号内の真のピークをより簡単に、迅速に、効率的に特定等することできる。以下、このようなIQ処理について詳しく説明する。
【0067】
一実施形態では、LIDARシステム(例:
図1に示されているLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、リターン信号に基づいて直交信号および同相信号を生成することにより、リターン信号にIQ処理を行うことができる。この直交信号は、対応する同相信号から90度シフトされ得る。
同LIDARシステムは、リターン信号をこれに対応する送信信号(例:送信信号のローカルコピー)でダウンシフトすることで、同相信号を生成することができる。例えば、混合モジュールは、リターン信号および送信信号を受信し、リターン信号を同送信信号でダウンシフトして同相信号を生成することができる。
また、同LIDARシステムは、リターン信号をこれに対応する送信信号の90度位相シフトバージョン(例:対応する送信信号を90度位相シフトしたもの)でダウンシフトすることで、直交信号を生成することができる。例えば、上記とは別の混合モジュールは、リターン信号、および送信信号の90度位相シフトバージョンを受信し、リターン信号を同送信信号の90度位相シフトバージョンでダウンシフトして直交信号を生成することができる。上記の送信信号の90度位相シフトバージョンは、後述するように、位相シフトモジュールによって生成することができる。
【0068】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、同相信号と直交信号とを加算(例:結合、混合など)することにより、合成信号を生成することができる。この合成信号は、混合信号、集約信号、合計信号などと呼ばれることもある。
LIDARシステムはまた、合成信号に高速フーリエ変換(FFT)を実行することができる。例えば、合成信号がFFTモジュールに供給されると、同FFTモジュールが合成信号に高速フーリエ変換を適用してベースバンド信号の周波数スペクトルを生成する。
【0069】
一実施形態において、合成信号は複素信号となり得る(例:複素数または虚数成分を含む信号)。合成信号が複素信号であることで、合成信号の高速フーリエ変換が対称ではなくなる可能性がある。
例えば、IQ処理前には、ピーク505B(例:イメージピーク)はピーク505Aの正確な鏡像となり得る(例:ピーク505B(ピーク505C)はピーク505Aと同じ大きさ/高さになる)。しかしながら、IQ処理後には、ピーク505Bの大きさ/高さはピーク505Aの大きさ/高さに比べて減少、抑制、最小化されるように変化し得る。
別の例として、IQ処理前には、ピーク510B(例:イメージピーク)はピーク510Aの正確な鏡像となり得る(例:ピーク505B(ピーク505C)はピーク510Aと同じ大きさ/高さになる)が、IQ処理後には、ピーク510Bの大きさ/高さは、ピーク510Aの大きさ/高さに比べて減少、抑制、最小化されるように変化し得る。
合成信号(例:複素信号)はI+(j*Q)として表すことができる。ここで、Iは同相信号、Qは直交信号、jは虚数単位である。
【0070】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、送信信号がアップチャープである場合に、同相信号から直交信号を減算することにより同相信号と直交信号とを合成(例:合計)することができる。例えば、リターン信号に対応する送信信号が周波数のアップスウィープをもっていた場合、LIDARシステムは、同相信号から信号j*Qを減算(または同相信号に信号j*Qの負の値を加算)することで、同相信号と直交信号とを合成することができる。
【0071】
一つの実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、送信信号がダウンチャープであった場合に、同相信号と直交信号とを加算することで、これらの信号を合成することができる。例えば、リターン信号に対応する送信信号が周波数のダウンスウィープをもっていた場合、LIDARシステムは同相信号と、jを乗算した直交信号(j*Q)とを加算することで複素信号(合成信号)を生成することができる。
【0072】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、ピーク505A、505B、510A、および510Bを使用して、ターゲット位置(例:ターゲットの場所)、ターゲット速度(例:ターゲットの速度)、およびターゲット反射率(例:ターゲットの反射率)の一つ以上を決定することができる。
例えば、IQ処理後、ピーク505Bと510B(例:イメージピーク)の大きさ/高さは減少し、または抑制され得る。同LIDARシステムは、最大の大きさ/高さをもつピークを使用して、ターゲットの位置、速度、および反射率の一つ以上を特定(例:計算)することができる。
具体的には、LIDARシステムは、ピーク505Aと505Bを含むピークセット(例:ピークペア)からピーク505Aを選択することができる。LIDARシステムはまた、ピーク510Aと510Bを含むピークセット(例:ピークペア)からピーク510Aを選択することもできる。この結果、LIDARシステムは、ピーク505Aと510Aに基づいてターゲット位置、ターゲット速度、およびターゲット反射率を決定することができる。
【0073】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、アップチャープの場合には同相信号から信号j*Qを減算し、ダウンチャープの場合には同相信号に直交信号を加算することで、ターゲット位置、ターゲット速度、およびターゲット反射率の一つまたは複数を決定するために処理する周波数範囲を減少させることができる。
ドップラーシフトがない場合、与えられたチャープのビート周波数F
peakは、チャープ率(α)にターゲットへの往復時間(τ)を乗じたものに等しくなる。ドップラーシフトがない場合のビート周波数は、
F
peak=ατ
として表せる。アップスウィープの場合、αは正であるため、F
peakは正の周波数にあり、対応するイメージピークは負の周波数にある。ダウンスウィープの場合、αは負であるため、F
peakは負の周波数にあり、対応するイメージピークは正の周波数にある。
LIDARシステムによって処理される周波数の範囲または量を減少させるために、合成信号は、アップチャープの場合にはI-(j*Q)として、ダウンチャープの場合にはI+(j*Q)として決定(例:生成、算出、構築など)され得る。これにより、ドップラーシフトがない場合に全ての真のピークが正の周波数になる可能性がある。例えば、ピーク510Aの位置は正の周波数になり得る。この結果、LIDARシステムは、真のピーク(例:ピーク505Aと510A)を特定する際に、より小さな範囲または量の周波数(例:正の周波数)を処理(例:分析、スキャンなど)することが可能になる。
ドップラーシフトがある場合、与えられたチャープのビート周波数は、
F
peak=|α|τ+D
として表せる。ここで、Dはドップラーシフトである。したがって、一つまたは複数の真のピークは、ドップラーシフトのために負の周波数に位置し得る。ただし、特定の最大ドップラーシフトD
maxに対して、真のピークの位置は、-D
maxから0、または-F
sample/2から-F
sample/2+D
maxの範囲の負の周波数に制限され得る(F
sampleはサンプリング周波数)。
LIDARシステムによって処理される周波数の範囲または量を減少させるために、合成信号は、アップチャープの場合にはI+(j*Q)として、ダウンチャープの場合にはI-(j*Q)として決定(例:生成、算出、構築など)され得る。これにより、全ての真のピークが負の周波数になる可能性がある。また、ドップラーシフトに伴って、真のピークは特定の正の周波数に位置する可能性がある(ドップラーシフトが発生したときに真のピークは常に負ではない。)。この結果、LIDARシステムは、真のピーク(例:ピーク505Aと510A)を特定する際に、より小さな範囲または量の周波数(例:負の周波数)を処理することができる。
【0074】
一実施形態において、LIDARシステム(例:
図1に示されるLIDARシステム100の信号処理ユニット112)は、ターゲットがゴーストを発生させる可能性のある一つまたは複数の範囲内にあるかどうかを判定することができる。例えば、
図7に示すように、LIDARシステムは、ターゲットに関連付けられるピークのいずれかが近距離ゴーストの範囲(例:近距離でゴーストが発生する可能性のある周波数の範囲)または遠距離ゴーストの範囲(例:遠距離でゴースティングが発生する可能性のある周波数の範囲)内にあるかどうかを判定することができる。
また、同LIDARシステムは、真のピークおよびイメージピークの位置から、ゴーストが発生するかどうかを判定または推定することができる(例:ゴーストが発生する可能性があるかどうか)。ターゲットの周波数ピークのいずれかが、ゴーストの発生する可能性のある周波数範囲の一つまたは複数のセット内にある場合、LIDARシステムは、上述のようにIQ処理を実行することができる。ターゲットがゴーストの発生する可能性のある範囲の一つまたは複数のセット内にない場合、LIDARシステムはIQ処理を自制し(例:IQ処理を実行しないで)、これに代えてリアル処理を実行することができる。例えば、LIDARシステムは、IQ回路、モジュール、コンポーネントなどの使用を自制するように設定される。
【0075】
一実施形態において、LIDARシステムは、LIDARシステムの速度に基づいて、ゴーストの発生する可能性のある周波数範囲のセットを変更、調整、修正などすることができる。例えば、LIDARシステムが、存在する車両の速度/速度(例:エゴ速度)に基づいて、ゴーストが発生する可能性のある周波数範囲のセットの境界を増加/減少させることができる。
【0076】
図6は、本開示に従ってピークを選択(例:決定、選出、算出など)するための一例を示す処理モジュール600のブロック図である。
処理モジュール600は、LIDARシステムの信号処理システムの一部に設定することができる。例えば
図3Aおよび
図4に示されているように、処理モジュール600は、LIDARシステム300の信号処理装置303の一部とすることができる。他の例では、処理モジュール600は、
図1に示された信号処理ユニット112の一部であってもよい。さらに他の例として、
図4に示されているように、処理モジュール600の一部は、信号処理装置303の時間領域信号プロセッサ402およびDFTプロセス404に含まれていてもよい。
このような処理モジュールは、混合モジュール601、混合モジュール602、シフトモジュール(位相シフトモジュール)611、アナログデジタルコンバータ(ADC)621、ADC622、混合モジュール631、合成モジュール641、およびFFTモジュール651を含む。混合モジュール601、混合モジュール602、シフトモジュール611、ADC 621、ADC622、混合モジュール631、合成モジュール641、およびFFTモジュール651の各々は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0077】
前述したように、処理モジュール600は、リターン信号(例:
図2に示されるターゲットリターン信号202)を受け取り、そのリターン信号を混合モジュール601および混合モジュール602に提供することができる。混合モジュール601は、(リターン信号に対応する)送信信号によって、リターン信号を混合、シフト、ダウンシフトなどしてダウンシフト信号605を生成することができる。ダウンシフト信号605はADC621に提供され、ADC621はダウンシフト信号605に基づいて同相信号(I)を生成することができる。
【0078】
シフトモジュール611は、送信信号を90度シフトさせ、90度シフトした送信信号を混合モジュール602に提供することができる。混合モジュール602は、90度シフトした送信信号によって、リターン信号を混合、シフト、ダウンシフトなどしてダウンシフト信号606を生成することができる。ダウンシフト信号606は、ADC622に提供され、ADC622はダウンシフト信号606に基づいて直交信号(Q)を生成することができる。
この直交信号は混合モジュール631に提供される。混合モジュール631において複素数または虚数成分jを受け取ることになる。つまり、混合モジュール631は、直交信号Qと虚数成分jと混合して信号j*Qを生成することができる。
【0079】
同相信号Iおよび信号j*Qは、合成モジュール641に提供され、合成モジュール641は同相信号Iと信号j*Qを組み合わせて合成信号(I+(j*Q))を生成することができる。合成信号I+(j*Q)がFFTモジュール651に提供されると、FFTモジュール651は合成信号I+(j*Q)に対してFFTを実行し、ベースバンド信号を生成することができる。
【0080】
前述したように、合成信号I+(j*Q)は複素信号であるため、合成信号I+(j*Q)のFFTは対称でなくなる可能性がある。つまり合成信号にFFTを行った後にイメージピークの大きさ/高さは、真のピークの大きさ/高さと比較して、減少、抑制、最小化等され得る。これにより、LIDARシステムは、真のピークをより簡単かつ迅速に効率的に特定することができる。
【0081】
また、前述したように、LIDARシステムは、ターゲットに関連付けられる周波数ピークが、ゴーストの発生する可能性のある周波数範囲の1つまたは複数のセット内にあるかどうかを判定してもよい。
ターゲット(周波数ピーク)がゴーストの発生する可能性のある周波数範囲の1つまたは複数のセット内にない場合、LIDARシステムはIQ処理の実行を自制することができる(例:IQ処理を実行しない)。例えば、LIDARシステムは、混合モジュール602、シフトモジュール611、ADC622、および混合モジュール631の使用を中止するか、または電源を切ることができる。
【0082】
図7Aは、本開示による周波数範囲を示す信号強度-周波数
図700である。
信号強度-周波数
図700には、0の周波数(例:0ヘルツ、0テラヘルツなど)が示される。また、同
図700には周波数D
MAX,DNも示される。D
MAX,DNは、LIDARシステムが物体を検出する際に考慮できる最大または閾値負のドップラーシフト(例:物体がLIDARシステムから離れて移動するときに発生するドップラーシフト)を意味する。
信号強度-周波数
図700にはD
MAX,UPも示される。D
MAX,UPは、LIDARシステムが物体を検出する際に考慮できる最大または閾値正のドップラーシフト(例:物体がLIDARシステムに向かって移動するときに発生するドップラーシフト)を意味する。
また、信号強度-周波数
図700には、ナイキスト周波数F
NYQUISTも示される。さらに、同
図700には、周波数F
NYQUIST-D
MAX,UPも示される。
【0083】
0とDMAX,DNの間の周波数範囲は、近距離ゴーストの発生する可能性がある第1の周波数の範囲となり得る。FNYQUIST-DMAX,UPとFNYQUISTの間の周波数範囲は、遠距離ゴーストの発生する可能性がある第2の周波数の範囲となり得る。DMAX,DNとFNYQUIST-DMAX,UPの間の周波数範囲は、ゴーストが発生しない第3の周波数の範囲となり得る。
【0084】
実施形態によるLIDARシステムは、ゴーストが近距離または遠距離で発生するかどうかを判定するために、検出されたピークを解析することができる。一部の実施形態では、第1のチャープ/スウィープの正のピークがDMAX,DNよりも小さく、第2のチャープ/スウィープの正のピークが2*DMAX,DNよりも小さい場合、近距離ゴーストの低減を適用することができる。
他の実施形態では、第1のチャープ/スウィープの正のピークがFNYQUIST-DMAX,UPよりも大きく、第2のチャープ/スウィープの正のピークが(FNYQUIST-(2*DMAX,UP))よりも大きい場合、遠距離ゴーストの低減を適用することができる。
さらに他の実施形態では、上記の両方の正のピークが範囲(DMAX,DN,FNYQUIST-DMAX,UP)内にある場合に、ゴースト低減(例:IQ処理なし)の適用を自制するすることができる。
【0085】
一実施形態のLIDARシステムでは、近距離または遠距離ゴーストの低減を適用すべきか否かを判定するために、ピーク検出に代えて、エネルギー検出を使用することができる。
一例として、ピーク検出は、より多くの計算リソース(例:処理リソース、処理容量、処理能力)やメモリを使用することがあり、また、実行により多くの時間を要することがある。一実施形態のLIDARシステムでは、ピークを検出するのではなく、特定の周波数範囲内のエネルギーの総量を検出(例:エネルギー検出)することで、どのタイプのゴースト低減を使用すべきかをより迅速および/または効率的に決定することができる。
【0086】
図7Bは、本開示による周波数範囲を示す信号強度-周波数
図750である。
信号振幅-周波数
図750には、周波数0(例:0ヘルツ、0テラヘルツなど)が示される。また、同
図750には、周波数-F
NYQUIST、-F
NYQUIST+D
MAX,UP、-D
MAX,DN、およびF
NYQUISTも示される。D
MAXは、前述と同様に、LIDARシステムが物体を検出する際に考慮できる最大または閾値のドップラーシフト(例:物体がLIDARシステムから離れて移動するときに発生するドップラーシフト)を意味する。
【0087】
前述したように、LIDARシステムによって処理される周波数の範囲または量を減少させるために、合成信号には、アップチャープ用としてI-(j*Q)を、ダウンチャープ用としてI+(j*Q)をそれぞれ決定(例:生成、算出、構築など)することができる。これにより、ドップラーシフトが存在しない場合、すべての真のピークを正の周波数にすることができる。真のピークが正の周波数にある場合、LIDARシステムは正の周波数のピークのみをスキャンすることができる(例:負の周波数のピークをスキャンしない)。
また、合成信号には、アップチャープ用としてI+(j*Q)を、ダウンチャープ用としてI-(j*Q)を決定することができる。これにより、すべての真のピークを負の周波数にすることができる。真のピークが負の周波数にある場合、LIDARシステムは負の周波数のピークのみをスキャンすることができる(例:正の周波数でピークをスキャンしない)。
【0088】
ドップラーシフトがない場合に真のピークが強制的に正の周波数になるよう設定されている状況において、ドップラーシフトの存在はピークを負の周波数へと移動させる要因となり得る。
近距離ゴーストが発生している場合、真のピークは-DMAX,DNと0の間の周波数範囲に存在する可能性がある。この場合、LIDARシステムは、-DMAX,DNと0の間の周波数範囲で真のピークを探索することができる。
遠距離ゴーストが発生している場合、真のピークはFNYQUISTと(FNYQUIST + DMAX)の間の周波数範囲(アップチャープとダウンチャープの両方に適用される)に存在することがあり、これは-FNYQUISTから(-FNYQUIST + DMAX,DN)の範囲にエイリアスされる。この場合、LIDARシステムは-FNYQUISTから-FNYQUIST+DMAX,UPの周波数範囲で真のピークを探索することができる。
真のピークは-(FNYQUIST-DMAX,UP)と-DMAX,DNの周波数の間に位置することはない。このため、LIDARシステムは-(FNYQUIST-DMAX,UP)と-DMAX,DNの周波数範囲を探索することはない。
このように特定の周波数範囲(例:FNYQUISTと(FNYQUIST+DMAX,UP)の間)を解析し、他の周波数範囲(例:(FNYQUIST+DMAX,UP)と-DMAX,DNの間)の解析を避けることにより、LIDARシステムは真のピークをより迅速かつ/または効率的に(例:エネルギーや処理能力を少なく使用して)特定することができる。
ドップラーシフトがない場合に真のピークが強制的に負の周波数になるよう設定されている状況においては、ドップラーシフトの存在がピークを正の周波数へ移動させる可能性があるが、この場合も上記と同様に真のピークを特定することができる。
【0089】
図8は、本開示に従ってピークを選択するためのLIDARシステム、例えばLIDARシステム100、またはLIDARシステム300における方法800を示すフローチャートである。
方法800は、ハードウェア(例:回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、プロセッサ、処理デバイス、中央処理装置(CPU)、システムオンチップ(SoC)など)、ソフトウェア(例:処理デバイス上で動作/実行される命令)、ファームウェア(例:マイクロコード)またはそれらを組み合わせで構成される処理ロジックによって実行することができる。
一部の実施形態において、方法800は、LIDARシステムの信号処理システムによって実行することができる(例:
図3Aおよび
図4に示すLIDARシステム300の信号処理装置303)。
【0090】
方法800は、操作(ステップ)805で開始され、ここで処理ロジックは、光検出および測距(LIDAR)システムの視野内のターゲットに向けて、アップチャープ周波数変調およびダウンチャープ周波数変調を含む1つまたは複数の光ビームを送信する。同処理ロジックは、オプションとして、1つまたは複数の光ビームに位相変調を導入することができる。
操作(ステップ)810において、同処理ロジックは、ターゲットから反射されたアップチャープおよびダウンチャープの1つまたは複数のリターン信号を受信する。
【0091】
ブロック(ステップ)815において、同処理ロジックは、ターゲットのピークが1つまたは複数のゴースト範囲内にあるかどうかを決定する(例:遠距離ゴーストまたは近距離ゴーストが発生する距離内にあるかどうか)。ターゲットピークが1つまたは複数のゴースト範囲内にない場合、同処理ロジックは、前述の
図5で説明したように、ベースバンド信号に基づいてターゲットの位置を操作(ステップ)825で決定することができる。同処理ロジックはまた、操作(ステップ)815でLIDARシステムの速度に基づいてゴースト範囲を設定、決定、調整、変更などしてもよい。
【0092】
ターゲットピークが1つまたは複数のゴースト範囲内にある場合、同処理ロジックは、同
図5で説明したように、ブロック(ステップ)820でIQ処理を実行することができる。例えば、同処理ロジックは、同相信号および直交信号を生成し、直交信号に虚数単位(例:j)を組み合わせ、これらの合成信号にFFTを実行するなどの操作を行うことができる。このようなIQ処理により、ベースバンド信号内のイメージピークの信号強度/高さを減少、抑制などさせることができる。
ブロック(ステップ)825において、同処理ロジックは、ベースバンド信号内で最も信号強度/高さが高いピーク(例:真のピーク)に基づいてターゲットの位置を決定することができる。
【0093】
前述した説明では、本発明の実施形態を理解しやすくするために、特定のシステム、構成要素、方法などの具体例を複数示しているが、当業者であればこれらの具体例の説明がなくても本発明を実施しうる。また、公知の構成要素や方法はその詳細が省略されるか、単純なブロック図の形式で示されることがあるが、これは本発明の理解を容易にするためである。したがって、開示された内容は単に例示であり、一事例は他の例示と異なる場合があっても、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0094】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」という表現が使用される場合、それらの実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書のいくつかの箇所で「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が現れている場合、必ずしも同じ実施形態を示すものではない。
【0095】
ここで説明されている方法の操作は特定の順序で示されているが、各方法の操作の順序は変更されることがあり、特定の操作を逆順で行ってもよいし、少なくとも一部の操作を他の操作と同時に行ってもよい。異なる操作の指示または補助的な操作は、断続的または交互に行うことができる。
【0096】
上記に記載されている発明の実施例についての説明(要約に記載されている内容を含む)は、詳細で網羅的であることを意図しているものではなく、開示された具体的形態に限定するものでもない。本発明の具体的な実施態様および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識する範囲で種々の同等な変更を行うことができる。
ここで使用される「例」または「例示的」の語は、例、実例または説明として役立つことを意味するために使用されている。本明細書において「例」または「例示」と説明された態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示」という用語の使用は、概念を具体的な形で示すことを意図している。
本明細書において使用される「または」の用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」として解釈されることを意図している。
つまり、特に指定されていない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」という表現は、自然な包括的順列のいずれかを意味する。つまり、XがAを含む場合、XがBを含む場合、あるいはXがAおよびBの両方を含む場合、前述のいずれの場合にも、「XはAまたはBを含む」という条件を満たすことになる。
さらに、本明細書および添付された特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、特に指定されていない限り、文脈から単数形であることが明らかでない場合には「1つまたは複数」を意味するものと解釈される。
さらに、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のような用語が使用される場合、これらの用語は異なる要素を区別するための識別子として使用されるもので、数字の指定に従って必ずしも順序を示すものではない。
【国際調査報告】