(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】繊維性植物材料のリグニン修飾のための無廃棄物処理およびリグニン修飾された繊維性植物材料
(51)【国際特許分類】
B27K 3/20 20060101AFI20240311BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B27K3/20
B27K5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558737
(86)(22)【出願日】2022-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022041779
(87)【国際公開番号】W WO2023028356
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,リアンビン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユー
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA13
2B230AA30
2B230BA01
2B230CA01
2B230EA30
(57)【要約】
天然繊維性植物材料、例えば木材または竹の片は、化学的溶液で浸透されることができ、続いて、少なくとも80℃の温度を受けて、その中に修飾リグニンを有する繊維性植物材料の軟化片を生成できる。軟化片中の修飾リグニンの含有率は、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有率の少なくとも90%であることができる。軟化片中に保持された修飾リグニンは、天然リグニンの高分子鎖よりも短い高分子鎖を有することができる。軟化片は、高密度化処理を受けることができ、例えば、高強度材料を生成し、または、続いて乾燥処理を受けることができ、例えば、可撓性または異方性の弾性材料を生成できる。天然繊維性植物材料の処理は、黒液または他の廃液の製造を回避あるいは少なくとも減少することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つまたは複数の化学溶液を天然繊維性植物材料片に浸透させることと、
(b)前記(a)の後に、1つ以上の化学溶液をその中に有する天然繊維性植物材料片を、繊維性植物材料の軟化片を生成するように第1の時間の間少なくとも80℃の第1の温度に供することと、を含み、
前記(b)の後の軟化片中の修飾リグニンの含有量は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり、
前記(b)の後の軟化片中に保持された修飾リグニンは、前記(a)の前の天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量よりも短い高分子鎖を有する、方法。
【請求項2】
前記(b)の後の軟化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(b)の後、天然繊維性植物材料の軟化片は、前記1つ以上の化学溶液の塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩は、繊維性植物材料の軟化片内に固定化された実質的にpH中性の塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩は、前記1つ以上の化学溶液と、前記(b)の間に前記1つ以上の化学溶液によって生成された天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの酸性分解生成物との反応によって形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の化学溶液は、アルカリ性溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ性溶液は、p-トルエンスルホン酸、NaOH、NaOH + Na
2SO
3/Na
2SO
4、NaOH + Na
2SO
4、NaHSO
3 + SO
2 + H
2O、NaHSO
3 + Na
2SO
3、NaOH + Na
2SO
3、NaOH/NaH
2O
3 + AQ、NaOH/Na
2S + AQ、NaOH + Na
2SO
3 + AQ、Na
2SO
3 + NaOH + CH
3OH + AQ、NaHSO
3 + SO
2 + AQ、NaOH + Na
2Sx(式中、AQは、アントラキノン、NaOHは、LiOHまたはKOHで置換されたNaOH)、またはこれらの任意の組合せ、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の温度は、80~180℃の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の温度は、120~160℃の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記天然繊維材料片に浸透した前記1つ以上の化学溶液は、(b)の間に消費される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記(b)の間に、前記天然繊維材料片に浸透した前記1つ以上の化学溶液の少なくとも90%が消費される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記(b)の後の繊維性植物材料の軟化片は、実質的に中性のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の時間は、少なくとも1時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の時間は、1~5時間の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記(a)の前の天然繊維性植物材料片の第1の含水量は、前記(a)の後のその中の1つ以上の化学溶液を有する天然繊維性植物材料片の第2の含水量よりも少ないことと、
前記(b)の後の繊維性植物材料の軟化片の第3の含水量は、第1の含水量と第2の含水量との間であることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1の含水量は、20重量%未満であることと、
第2の含水量は、50重量%より大きいことと、
第3の含水量は、50重量%未満であることと、
または、上記の任意の組合せ、であることと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記(b)の前記第1の温度に供することは、蒸気を使用して、前記天然繊維性植物材料片を、その中の前記1つ以上の化学溶液と共に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
蒸気を用いた前記加熱は、前記天然繊維性植物材料片を用いて、前記1つ以上の化学溶液と共に、圧力反応器中で、またはフロースルー蒸気反応器中で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記(b)の後に、
(c)繊維性植物材料の軟化片を圧縮して、繊維性植物材料の高密度化片を生成することを更に含み、
前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも大きい第1の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の密度は、少なくとも1.15g/cm
3である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の密度は、1.0g/cm
3未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の密度は、少なくとも1.2g/cm
3である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の密度は、少なくとも1.3g/cm
3である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記圧縮することは、繊維性植物材料の軟化片の長手方向の成長方向と交差する方向である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記(c)の前の繊維性植物材料の前記軟化片は、繊維性植物材料の前記高密度化片の前記長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に沿った第2の厚さの少なくとも2倍で、前記長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に沿った第1の厚さを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の厚さは、前記第2の厚さの3~5倍である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、500nm~2500nmの第1の波長範囲において35%以下の最大反射率を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記(c)の後の前記繊維性植物材料の高密度化片の、500nm~1000nmの第2の波長範囲にわたる反射率は、0~20%の範囲内である、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも500MPaの強度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記圧縮することは、少なくとも5MPaの圧力で前記繊維性植物材料の軟化片をプレスすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記圧縮することは、前記繊維性植物材料の軟化片を、5~20MPaの範囲の圧力でプレスすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記圧縮することは、少なくとも80℃の第2の温度に供しながら、前記繊維性植物材料の軟化片をプレスすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の温度は、80~180℃の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の温度は、100~160℃の範囲内である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記圧縮することは、軟化した繊維性植物材料片を第1の圧力で2回目としてプレスし、続いて第2の圧力で3回目に更にプレスし、
ここで、(i)前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高く、(ii)第3の時間は、第2の時間よりも高く、または(i)および(ii)の両方を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記軟化片を第1のプレス温度に供する間に、前記第1の圧力で前記第2の時間の前記プレスを行い、前記軟化片を前記第1のプレス温度よりも高い第2のプレス温度に供する間に、前記第2の圧力で前記第3の時間の前記プレスを行う、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の圧力は、約1MPa以下であり、
前記第2の圧力は、約5MPa以上であり、
前記第1の時間は、約5分以下であり、
前記第2の時間は、約20分以上であり、
前記第1のプレス温度は、約65℃以下であり、
前記第2のプレス温度は、約120℃以上であり、
または、上記の任意の組合せ、である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記(a)の前の天然繊維性植物材料片の第1の含水量は、前記(c)の後の繊維性植物材料高密度化片の第4の含水量よりも大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の含水量は、10~20重量%の範囲内であり、
前記第4の含水量は、10重量%未満であり、
または、上記の両方である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記(c)の後の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり、
前記(c)の後の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%であり、
または、上記の両方である、請求項19記載の方法。
【請求項41】
前記(c)の後、繊維性植物材料の高密度化片は、前記1つ以上の化学溶液の塩を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項42】
前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、実質的に中性のpHを有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
繊維性植物材料の高密度化片は、前記(c)の前に1つ以上の化学溶液を除去するために、いかなるすすぎも行わずに形成される、請求項19に記載の方法。
【請求項44】
前記(b)は、繊維性植物材料の高密度化片を生成するために、繊維性植物材料の軟化片を圧縮することを含み、前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも高い第1の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記(b)の後に、前記(a)の前に、繊維性植物材料の軟化片を乾燥させ、天然繊維性植物材料の天然微細構造中の管腔を崩壊させて繊維性植物材料の自己高密度化片を形成することを更に含み、
繊維性植物材料の自己高密度化片は、天然繊維性植物材料の第2の密度よりも高い第3の密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
前記乾燥は、室温で空気中において乾燥することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第3の密度は、1.0g/cm
3より大きく、前記第2の密度は、0.5g/cm
3より小さい、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
繊維性植物材料の自己高密度化片は、300MPaよりも大きい強度を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記(b)の後に、繊維性植物材料の軟化片を乾燥させ、天然の繊維性植物材料の天然の微細構造の開いた管腔を保持する乾燥片を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記乾燥は、凍結乾燥、臨界点乾燥、溶媒交換、またはそれらの任意の組合せ、を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記乾燥片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に垂直な方向に沿って実質的に弾性であり、前記長手方向の成長方向に平行な方向に沿って実質的に非弾性である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記(b)の後に、
(d) 繊維性植物材料の軟化片を乾燥させて、そこから水分を除去し、繊維性植物材料のセルロース系長手方向細胞の少なくともいくつかの管腔を崩壊させ、乾燥片が15重量%以下の含水量を有するようにすることと、
(e)繊維性植物材料の再水和片を生成し、乾燥片に流体ショック処理を行って、流体ショック処理は乾燥片を水分に曝露し、前記再水和片は、少なくとも35重量%の含水量を有することと、
(f)繊維性植物材料の再水和片を、実質的に平坦な平面構成から非平面の三次元構成に成形することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記(f)の間の再水和片の含水量は、少なくとも50重量%である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記(f)の後に、
(g)成形された繊維性植物材料片を乾燥させて、前記繊維性植物材料片から水分を除去し、前記繊維性植物材料片の形状を設定し、非平面の三次元構成の繊維性植物材料の剛性モノリシック片を形成し、ここで、前記剛性モノリシック片は、15重量%以下の含水量を有することを更に含む、請求項52に記載の方法:
【請求項55】
前記(g)の乾燥は、空気またはガス流に曝露すること、空気またはガスの停滞体積に曝露すること、真空に曝露すること、室温に曝露すること、室温を超える温度に加熱すること、または上記の任意の組合せ、を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記(b)の後に、
繊維性植物材料の軟化片を部分的に乾燥させて水分の幾らかを除去し、繊維性植物材料の部分的乾燥片は、少なくとも35重量%の含水量を有することと、
繊維性植物材料の部分的乾燥片を、実質的に平坦な平面構成から非平面の三次元構成に成形することと、を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記(a)の前の天然繊維性植物材料片は、セルロース系細胞壁によって形成された開放管腔の天然微細構造を有し、前記(b)によって生成された前記軟化片は、前記セルロース系細胞壁によって形成された前記開放管腔を保持する、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記(a)および前記(b)は、黒液または他の廃液を生成することなく行われる、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
請求項1~56のいずれか1項に記載の方法によって形成された、繊維性植物材料の軟化片。
【請求項61】
請求項19~48のいずれか1項に記載の方法によって形成された、繊維性植物材料の高密度化片。
【請求項62】
請求項49~56のいずれか1項に記載の方法によって形成された、繊維性植物材料の乾燥片または成形片。
【請求項63】
少なくとも1.0g/cm
3の密度を有する繊維性植物材料の高密度化片と、その中の修飾リグニンと、を含み、
修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有する、構造。
【請求項64】
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%である、請求項63に記載の構造。
【請求項65】
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、少なくとも20重量%である、請求項63に記載の構造。
【請求項66】
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、請求項63に記載の構造。
【請求項67】
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、少なくとも15重量%である、請求項63に記載の構造。
【請求項68】
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.15g/cm
3である、請求項63に記載の構造。
【請求項69】
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.2g/cm
3である、請求項63に記載の構造。
【請求項70】
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.3g/cm
3である、請求項63に記載の構造。
【請求項71】
天然繊維性植物材料の密度は、1.0g/cm
3未満である、請求項63に記載の構造。
【請求項72】
繊維性植物材料の高密度化片は、微細構造繊維性植物材料内に固定化されたアルカリ性化学物質の塩を含む、請求項63に記載の構造。
【請求項73】
前記塩は、実質的にpH中性である、請求項72に記載の構造。
【請求項74】
繊維性植物材料の高密度化片は、10重量%未満の含水量を有する、請求項63に記載の構造。
【請求項75】
繊維性植物材料の高密度化片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に圧縮されており、その結果、繊維性植物材料の微細構造中のセルロース系細胞壁によって形成される管腔が実質的に崩壊している、請求項63に記載の構造。
【請求項76】
繊維性植物材料の高密度化片は、500~2500nmの第1の波長範囲において、35%以下の最大反射率を有し、
繊維性植物材料の高密度化片は、500~1000nmの第2の波長範囲にわたる、0~20%の範囲の反射率を有し、
または、上記の両方である、請求項63記載の方法。
【請求項77】
繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも500MPaの強度を有する、請求項63に記載の構造。
【請求項78】
繊維性植物材料の高密度化片は、空気乾燥によって誘導される自己高密度化によって形成され、少なくとも300MPaの強度を有する、請求項63に記載の構造。
【請求項79】
繊維性植物材料の高密度化片は、1.0g/cm
3を超える密度を有し、天然繊維性植物材料は、0.5g/cm
3未満の密度を有する、請求項78に記載の構造。
【請求項80】
前記高密度化片は、非平面の三次元構成を有する、請求項63に記載の構造。
【請求項81】
修飾リグニンをその中に有し、天然繊維性植物材料の天然微細構造の開放管腔を保持する繊維性植物材料の乾燥片を含み、
前記修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの高分子鎖よりも短い高分子鎖を有する、構造。
【請求項82】
繊維性植物材料の乾燥片中の前記修飾リグニンの含有量は、、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%である、請求項81に記載の構造。
【請求項83】
繊維性植物材料の乾燥片中の前記修飾リグニンの含有量は、少なくとも20重量%である、請求項81に記載の構造。
【請求項84】
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、請求項81に記載の構造。
【請求項85】
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、少なくとも15重量%である、請求項81に記載の構造。
【請求項86】
繊維性植物材料の乾燥片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に垂直な方向に沿って実質的に弾性であり、前記長手方向の成長方向に平行な方向に沿って実質的に非弾性である、請求項81に記載の構造。
【請求項87】
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、請求項63~86のいずれか1項に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月27日に出願された発明の名称「繊維性植物材料のリグニン修飾のための無廃棄物処理およびリグニン修飾された繊維性植物材料」である米国仮出願第63/237,625号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦支援研究に関する表明)
本発明は、米国エネルギー省、先進研究プロジェクト庁-エネルギー(ARPA-E)によって与えられたDEAR0001025の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0003】
本開示は一般に、繊維性植物材料の処理に関し、より詳細には、繊維性植物材料中の天然リグニンを修飾するための無廃棄物(または少なくとも廃棄物が低減された)処理、およびそれから得られる製品に関する。
【背景技術】
【0004】
繊維性植物材料は、持続可能な社会に向けて、広範囲の再生不能および/または石油系製品に取って代わる可能性を有している。天然木を高性能、低コストおよび持続可能な構造材料に加工することに関する最近の進歩は、建設、自動車および航空宇宙産業において広く使用されている既存の構造材料(例えば、鋼および他の合金)に取って代わる有望な経路を開く。例えば、天然木からリグニンおよびヘミセルロースを部分的に除去し、続いて高密度化することによって調製された高密度化木材は、580MPaの強度を示す。ナノセルロースフィルムはまた、セルロースの高い重合度を維持しながら、90%のリグニンを除去することによって1GPaまでの強度で製造されて来た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のリグニン除去技術では、脱リグニンプロセスが比較的大量の化学物質を消費し、比較的大量の液体廃棄物を生成し、追加の動作コスト、エネルギー消費、および環境問題を引き起こす。開示される主題の実施形態は、とりわけ、上述の問題および欠点のうちの1つまたは複数に対処し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示される主題の実施形態は、リグニン修飾繊維性植物材料、および繊維性植物材料のリグニン修飾のための実質的に無廃棄物処理を提供する。いくつかの実施形態では、天然繊維性植物材料(例えば、木材、竹など)は、例えば、天然植物微細構造の天然チャネル(例えば、繊維性植物材料の長手方向細胞のセルロース系壁によって形成された管腔)を介して、1つまたは複数の化学物質で浸透または注入され得る。次いで、化学的に浸透させた植物材料を加熱して、軟化された植物材料を得ることができ、この軟化された植物材料は、天然植物材料のセルロース系微細構造、ならびに出発材料中に存在したほとんどまたは実質的に全てのリグニンを保持する。いくつかの実施形態において、保持されたリグニンは例えば、天然リグニンと比較して短縮された高分子鎖を有するように修飾され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセスは、液体廃棄物(例えば、黒液)を全くまたは最小限に生成することができない。むしろ、リグニンおよび/またはヘミセルロースの解重合断片は、軟化した植物材料の微細構造内に固定化することができる。いくつかの実施形態では、修飾を生成するために使用される化学物質のほとんどまたは実質的に全てを、加熱中にリグニンおよびヘミセルロースと反応させて、例えば、中性pHを有する軟化植物材料を生成することができる。いくつかの実施形態では、軟化した植物材料は、所望の機械的特性(例えば、強度の増加、可撓性の増加、異方性弾性など)を有する構造材料を得るために、高密度化(例えば、プレスによる)および/または乾燥に供することができる。いくつかの実施形態では、処理によって生成される任意の流体(例えば、高密度化の間に絞り出される流体、および/または乾燥の間に蒸発した流体もしくは蒸気が逃げる流体)は、修飾および/またはそれから得られる塩を生成するために使用される任意の化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0008】
1つ以上の実施形態では、本方法は、1つ以上の化学溶液を用いて天然繊維性植物材料片に浸透させることを含むことができる。本方法は、浸透後、1つまたは複数の化学溶液を含む天然繊維性植物材料片を、その中で、繊維性植物材料片を軟化させるように、第1の時間の間、少なくとも80℃の第1の温度に供することを更に含むことができる。軟化片中の修飾リグニンの含有量は、天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり得る。軟化片中に保持された修飾リグニンは、繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有することができる。
【0009】
1つ以上の実施形態では、構造は、繊維性植物材料の高密度化片を含むことができる。繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも1.0g/cm3の密度およびその中の修飾リグニンを有することができる。修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有することができる。
【0010】
1つ以上の実施形態では、構造は、繊維性植物材料の乾燥片を含むことができる。繊維性植物材料の乾燥片は、その中に修飾リグニンを有することができ、天然繊維性植物材料の天然微細構造の開放内腔を保持することができる。修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有することができる。
【0011】
本開示の様々な革新のいずれも、組み合わせて、または別々に使用することができる。この概要は、以下の詳細な説明において更に説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図するものでもない。開示された技術の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、実施形態について、必ずしも一定の縮尺で描かれていない添付の図面を参照して説明する。適用可能な場合、いくつかの要素は、基礎となる特徴の例示および説明を助けるために、簡略化されるか、またはそうでなければ図示されない場合がある。図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【
図1】
図1は、開示される主題の1つまたは複数の実施形態による、天然繊維性植物材料のリグニン修飾の簡略化された概略図である。
【
図2A】
図2Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、天然木の半径方向、長手方向、および回転方向の切断片、ならびにin situリグニン修飾を受け得る天然木の半径-接線平面における断面を図示する。
【
図2B】
図2Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾を受け得る天然の竹セグメントの簡略化された部分切欠図図示。
【
図2C】
図2Cは、
図2Bの天然の竹セグメントの茎の拡大画像(上部)と、茎壁の階層的微細構造を示す更なる拡大画像(下部)とを示す。
【
図3A】
図3Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の天然リグニン、天然ヘミセルロース、および天然セルロースのそれぞれのin situ修飾のための例示的な反応を示す。
【
図3B】
図3Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の天然リグニン、天然ヘミセルロース、および天然セルロースのそれぞれのin situ修飾のための例示的な反応を示す。
【
図3C】
図3Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の天然リグニン、天然ヘミセルロース、および天然セルロースのそれぞれのin situ修飾のための例示的な反応を示す。
【
図4A】
図4Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料のリグニン修飾のための実質的に廃棄物を含まない処理の一般化された方法の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図4B】
図4Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、リグニン修飾繊維性植物材料を高密度化するための方法の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図4C】
図4Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、リグニン修飾繊維性植物材料を成形するための方法の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図4D】
図4Dは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、リグニン修飾繊維性植物材料を可撓性または異方性弾性構造に形成するための方法の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図4E】
図4Eは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、リグニン修飾繊維性植物材料を自己高密度化するための方法の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図5A】
図5Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の浸透した化学物質を活性化してリグニン修飾繊維性植物材料を形成するための様々な加熱構成の簡略化された概略図である。
【
図5B】
図5Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の浸透した化学物質を活性化してリグニン修飾繊維性植物材料を形成するための様々な加熱構成の簡略化された概略図である。
【
図5C】
図5Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、繊維性植物材料中の浸透した化学物質を活性化してリグニン修飾繊維性植物材料を形成するための様々な加熱構成の簡略化された概略図である。
【
図6A】
図6Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾を有する天然木材および軟化木材の測定された組成のグラフである。
【
図6B】
図6Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、天然木、化学浸透木材、in situリグニン修飾を伴う軟化木材、およびin situリグニン修飾を伴う高密度化木材について測定された含水量のグラフである。
【
図6C】
図6Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾を有する天然木および高密度化木材についての応力対歪みのグラフである。
【
図7A】
図7Aは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、高密度化、部分的脱リグニン化木材および高密度化木材についての測定された反射率データをin situリグニン修飾と比較するグラフである。
【
図7B】
図7Bは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、高密度化された、部分的に脱リグニン化された木材および高密度化された木材についての測定された灰分含有量をin situリグニン修飾と比較するグラフである。
【
図7C】
図7Cは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、高密度化、部分的脱リグニン化木材および高密度化木材についての測定された熱水抽出物をin situリグニン修飾と比較するグラフである。
【
図7D】
図7Dは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾および高密度化された部分的脱リグニン化木材を有する高密度化木材から得られた熱水抽出溶液のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESIMS)によって得られたグラフである。
【
図7E】
図7Eは、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾および高密度化された部分的脱リグニン化木材を有する高密度化木材から得られた熱水抽出溶液のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESIMS)によって得られたグラフである。
【
図8】
図8は、開示される主題の1つ以上の実施形態による、化学浸透木材、in situリグニン修飾を伴う軟化木材、in situリグニン修飾を伴う予備乾燥軟化木材、およびin situリグニン修飾を伴う高密度化木材についての測定された含水量のグラフである。
【
図9】
図9は、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾を有する高密度化竹についての応力対歪みのグラフである。
【
図10】
図10は、開示される主題の1つ以上の実施形態による、in situリグニン修飾を有する自己高密度化木材についての応力対歪みのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的な考慮事項
本明細書の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載される。開示された方法およびシステムは、決して限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに互いの様々な組合せおよび下位組合せで、開示される様々な実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。方法およびシステムは、任意の特定の態様、特徴、またはそれらの組合せ、に限定されず、開示される実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。任意の実施形態または例からの技術は、他の実施形態または実施例のうちの任意の1つまたは複数において説明される技術と組み合わせることができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例示的なものにすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。
【0014】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便利な提示のために特定の順番で説明されるが、特定の順序付けが、以下で説明される特定の言語によって必要とされない限り、この説明の方式は、並べ替えを包含することを理解されたい。たとえば、連続して説明される動作は、場合によっては並べ替えられるか、または同時に実行され得る。更に、簡略化のために、添付の図面は、開示された方法が他の方法と併せて使用され得る様々な方法を示していない場合がある。更に、説明は、開示された方法を説明するために、「提供する」または「達成する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の操作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なり得、当業者によって容易に認識可能である。
【0015】
数値範囲の開示は、特に断りのない限り、終点を含む範囲内の各離散点を指すものと理解されるべきである。別段の指示がない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量、百分率、温度、時間などを表す全ての数は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、別段の暗示的または明示的な指示がない限り、または文脈がより明確な構成を有すると当業者によって適切に理解されない限り、記載される数値パラメータは、当業者に知られているように、求められる所望の特性および/または標準試験条件/方法下での検出の限界に依存し得る近似値である。議論された先行技術から実施形態を直接的かつ明示的に区別する場合、実施形態番号は、「約」という単語が列挙されない限り、近似ではない。「実質的に」、「およそ」、「約」、または同様の言語が特定の値と組み合わせて明示的に使用される場合は常に、明示的に別段の定めがない限り、その値の10%までの変動が意図される。
【0016】
方向および他の相対参照は、本明細書における図面および原理の説明を容易にするために使用され得るが、限定することを意図されない。例えば、「内側」、「外側」、「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「内部」、「外部」、「左」、「右」、「前」、「後」、「後側」などの特定の用語が使用され得る。このような用語は、適用可能な場合、特に例示された実施形態に関して、相対的な関係を扱うときの説明のいくつかの明瞭さを提供するために使用される。しかしながら、このような用語は、絶対的な関係、位置、および/または向きを暗示することを意図するものではない。例えば、物体に関して、「上」部分は、単に物体を裏返すことによって「下」部分になり得る。それにもかかわらず、それは依然として同じ部分であり、対象物は同じままである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味し、また、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数への言及を含む。用語「または」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、言及された代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組合せ、を指す。
【0018】
本明細書に記載される様々な構成要素、パラメータ、動作条件などの代替があるが、それらの代替は、必ずしも同等であり、かつ/または等しく良好に機能することを意味しない。また、特に明記しない限り、選択肢が好ましい順序で列挙されていることも意味しない。特に明記しない限り、以下に定義する基のいずれも、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0019】
別段の説明がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本開示の主題の特徴は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0020】
用語の概要
以下は、開示される主題の様々な態様の説明を容易にし、開示される主題の実施において当業者を案内するために提供される。
【0021】
繊維性植物原料: 成長した天然状態における植物界の光合成真核生物の一部(例えば、機械的手段などによる切断部分)。いくつかの実施形態では、木質植物材料は、木材(例えば、広葉樹または針葉樹)、竹(限定されないが、例えば、モウソウチク(Moso)、フィロスキタスヴィヴァックス(Phyllostachys vivax)、コウチク(Phyllostachys viridis)、マダケ(Phyllostachys bambusoides)、およびクロチク(Phyllostachys nigra)のいずれか)、アシ(reed=リード)(例えば、一般的なアシ(Phragmites australis)、巨大アシ(Arundo donax)、ビルマ葦(Neyrudia reynaudiana)、クサヨシ(reed canary-grass)(Phalaris arundinacea)、リードスイートグラス(Glyceria maxima)、スモールリード(small-reed)(Calamagrostis species)、ペーパーリード(Cyperus papyrus)、タマミクリ(bur-reed)(Sparganium species)、ガマ(reed-mace)(Typha species)、ケープサッチングリード(Elegia tectorum)、サッチングリード(Tamnochortusinsignia)、または草(例えば、イネ目(Poales order)またはイネ科(Poaceae)から選択される種)を含む。例えば、木材は、限定されるものではないが、バスウッド、オーク、ポプラ、アッシュ、アルダー、アスペン、バルサ木材、ブナ、ブナ、カバノキ、チェリー、バターナッツ、チェスナッツ、ココボロ、エルム、ヒッコリー、メープル、オーク、パダウク、プラム、クルミ、ヤナギ、イエロー、イエローポプラ、バルドサイプレス、スギ、サイプレス、ダグラスフィア、フィア、ヘムロック、カラマツ、パイン、レッドウッド、スプルース、タマラック、シンバ、およびイチイを含む。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、植物材料は、リグニン、ヘミセルロース、およびセルロースから構成される任意のタイプの繊維性植物であり得る。例えば、植物材料は、バガス(例えば、サトウキビまたはソルガム茎の加工残渣から形成される)またはわら(例えば、イネ、コムギ、キビまたはトウモロコシなどの穀類植物の加工残渣から形成される)であり得る。
【0022】
連続片: 複数の小片(例えば、ラミネート)を接合または積層することによって形成された単一片とは対照的に、単一の連続した繊維性植物材料片(例えば、単一の木材から採取された連続した木材片)であって、加工に供される。いくつかの実施形態では、連続片は、本質的に、繊維性植物材料からなる(例えば、植物材料の単一の連続片から形成されるが、任意選択で、例えば、耐候性を改善するため、または疎水性を提供するために、表面コーティングまたは添加剤を含む)。
【0023】
リグニンの特徴: いくつかの実施形態では、リグニン特性は、繊維性植物材料中のリグニンの天然型または天然型の特徴(例えば、含量)を指す。したがって、修飾されたリグニンの特徴は、リグニンを解重合するためにin situで修飾された(例えば、OH-との化学反応によって)繊維性植物材料のセクションにおけるリグニンの特徴を指すことができ、解重合されたリグニンは、植物材料内に保持される。いくつかの実施形態では、修飾植物材料(例えば、軟化植物材料)内のリグニン含有量は、前記修飾前のリグニン含有量の少なくとも90%(例えば、≧95%)であり得る。リグニン修飾前後の繊維性植物材料中のリグニン含量は、当技術分野で公知の技術、例えば、Laboratory Analytical Procedure (LAP) TP-510-42618 for “Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass,” Version 08-03-2012, published by National Renewable Energy Laboratory (NREL), ASTM E1758-01(2020) for “Standard Test Method for Determination of Carbohydrates in Biomass by High Performance Liquid Chromatography,” published by ASTM International, and/or Technical Association of Pulp and Paper Industry (TAPPI), Standard T 222-om-83, “Standard Test Method for Acid-Insoluble Lignin in Wood”を使用して評価することができる。
【0024】
含水量: 植物材料の微細構造内に保持される流体、典型的には水の量。いくつかの実施形態では、含水量(MC)は、以下の式:
を用いて、オーブン乾燥試験によって、例えば、植物材料をオーブン乾燥(例えば、103℃で6時間)することによって達成される重量変化を計算することによって決定することができる。代替的または追加的に、当技術分野における公知の技術、例えば、ASTM Internationalによって発行された「木材および木材ベースの材料の直接的な含水量測定のための標準試験方法」のためのASTM D4442-20(2020)に開示された電気湿度計または他の技術を使用して、含水量をアクセスして取り扱うことができ、この標準は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
長手方向の成長方向(L): 植物(例えば、木)がその根またはその本体から成長する方向(例えば、
図2Aの木200からの幹202の方向L)。繊維性植物材料の繊維細胞、導管、および/または仮道管の細胞壁を形成するセルロースナノファイバーは一般に、長手方向と整列され得る。場合によっては、繊維性植物材料の長手方向は、概して垂直であってもよく、および/または植物の水蒸散流の方向(例えば、木の根から)に対応してもよい。長手方向は、繊維性植物材料の半径方向および接線方向に垂直であり得る。
【0026】
半径方向の成長方向(R): 繊維性植物材料の中心部分から外側に延びる方向(例えば、
図2Aの木200からの幹202の方向R)。いくつかの実施形態では、繊維性植物材料の放射組織細胞(例えば、
図2Aの木材微細構造210の放射組織細胞220)は、半径方向に沿って延在することができる。場合によっては、天然繊維性植物材料の半径方向は、概して水平であってもよい。半径方向は、繊維性植物材料の長手方向および接線方向に垂直であり得る。
【0027】
接線方向の成長方向(T)または円周方向: 繊維性植物材料の特定の切断における長手方向および半径方向の両方に垂直な方向(例えば、
図2Aの木200からの幹202の方向T)。場合によっては、天然繊維性植物材料の接線方向は、概して水平であってもよい。いくつかの実施形態では、接線方向は、繊維性植物材料の成長リングに従うことができる。
【0028】
弾性: (本質的に、植物材料、1つ以上のコーティングを有する植物材料、またはポリマーで充填された植物材料の複合体からなる)修飾植物材料が圧縮力に抵抗し、その圧縮力が除去されたときにその元の形状およびサイズに戻る能力。いくつかの実施形態では、微細構造保存乾燥プロセス(例えば、凍結乾燥、溶媒交換、および/または臨界点乾燥)に供される修飾植物材料は、接線方向に沿ってのみ実質的に弾性であり得るが、半径方向および長手方向に沿って実質的に非弾性であり得る。
【0029】
黒液: 天然植物材料の処理(例えば、軟化植物材料を形成するための天然植物材料のリグニンの修飾)において使用される、リグニン残基、ヘミセルロース、および他の無機化学物質の水溶液。
【0030】
自己高密度化: 軟化した植物材料の乾燥(例えば、空気乾燥)から生じる軟化した植物材料の高密度化、例えば、30重量%を超える含水量(例えば、30~50重量%を含む)から10重量%未満の含水量(例えば、3~8重量%を含む)までの高密度化。いくつかの実施形態では、自己高密度化は、いかなる外部プレスも無しで、または最小限の圧縮(例えば、100kPa以下)でのみ実施することができる。いくつかの実施形態では、自己高密度化は、例えば、乾燥によって誘導される植物材料の任意の湾曲、屈曲、または他の望ましくない形状変化を回避するか、または少なくとも低減するために、軟化した植物材料の形状を乾燥時に拘束するように設計された型、クランプ、または他の構造を使用して実施することができる。
【0031】
導入部
開示される主題の実施形態は、例えば、天然繊維性植物材料のリグニンの修飾のための方法、その高密度化を可能にするための方法、およびそのようなリグニン修飾繊維性植物材料から形成される構造を提供する。例えば、
図1に示されるような浸透段階102の間、天然繊維性植物材料104は、例えば、繊維性植物材料の微細構造中のセルロース系細胞壁によって形成された天然管腔106を介して、1つ以上の化学物質で浸透または注入され得る。例えば、微細構造は、ヘミセルロースおよびリグニン接着性マトリックス114によって一緒に結合されたセルロースフィブリル112の複合体110から形成された、長手方向に延在する繊維細胞壁を有することができ、これは、強くかつ剛性である。
【0032】
活性化すると(例えば、80~180℃などの高温での加熱を介して)、浸透した化学物質は、in situで天然リグニンを修飾することができる。例えば、
図1に示されるような活性化段階118の間に、天然リグニンの高分子鎖は、より小さなセグメント124に分解され得、それによって、未修飾微細構造のセルロース系管腔106を依然として保持しながら、修飾繊維性植物材料のためのより柔軟な複合体122をもたらす。リグニン修飾複合体の結果として、軟化した繊維性植物材料は、より容易に高密度化され得るか、または他の方法で更なる加工(例えば、乾燥)に供され得る。いくつかの実施形態では、高密度化のためのプレスは、繊維性植物材料の長手方向の成長方向(L)に実質的に垂直な方向に沿ってもよい。例えば、高密度化段階128の間に、軟化した材料を圧縮して高密度化材料130を形成することができ、ここで、
図1の132に示すように、予め開いたセルロース系管腔106が実質的に潰れる。あるいは、いくつかの実施形態では、高密度化のためのプレスは、長手方向の成長方向と交差する方向に沿って、または長手方向の成長方向に平行であってもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、高密度化材料130は自己高密度化によって、例えば、著しい外部圧縮なしに空気中で乾燥させることによって形成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、天然繊維性植物材料104の幅Wiは、高密度化植物材料130の幅W2の少なくとも2倍(例えば、少なくとも3~5倍)であり得る。加えて、高密度化された植物材料は、天然繊維性植物材料と比較して増加した密度を有することができる。例えば、高密度化植物材料は、少なくとも1.15g/cm3(例えば、少なくとも1.2g/cm3、または少なくとも1.3g/cm3)の密度を有してもよく、一方、天然繊維性植物材料は、1.0g/cm3未満(例えば、0.9g/cm3未満、または0.5g/cm3未満)の密度を有する可能性がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、浸透した化学物質は、溶液中で水酸化物(OH-)イオンを生成する化学物質、例えばアルカリ性化学物質を含むことができる。繊維性植物材料のアルカリへの長期曝露は、セルロースを分解する可能性がある(これは次に、機械的特性の低下をもたらす可能性がある)ので、浸透した化学物質の量および/または加熱の持続時間は、繊維性植物材料内のアルカリ性化学物質の全てが完全に反応して中性の軟化植物材料を得ることを確実にするように選択することができる。例えば、加熱後、一部の液体134を繊維性植物材料130から絞ってpHを測定し、アルカリが完全に反応したかどうかを決定することができる。しかし、そのような押出液134(もしあれば)は主に、いくつかの無機塩、ならびにセルロースおよびヘミセルロースの分解生成物を含有するが、黒液は含有しない。あるいはいくつかの実施形態では、軟化した植物材料は、活性化段階118の後であるが、高密度化段階128の前に乾燥(例えば、空気乾燥)に供することができ、例えば、軟化した植物材料の含水量を低減し、それによって、プレス中の液体134の生成を回避、最小化、または少なくとも低減する。過剰な乾燥は、高密度化と不適合である植物材料のための剛性または非可撓性構造をもたらし得るので、いくつかの実施形態では、予備乾燥は、含水量を10重量%超、例えば、10~20重量%(両端を含む)の範囲(例えば、~15重量%)に低減するのに有効であり得る。いくつかの実施形態では、高密度化後の植物材料130は、8~10重量%未満、例えば、3~8重量%の範囲(例えば、4~6重量%を含む)の含水量を有することができる。
【0035】
プレス後、またはそうでなければ、in situリグニン修飾を生じる化学的活性化の後に繊維性植物材料を乾燥させる場合、水の除去は、修飾された植物材料内の分解生成物を固定化することができる。これらの物質の全て(または少なくとも大部分)は、中性であるので、長期曝露は、セルロースの分解を引き起こさず、それによって加工植物材料の改善された機械的特性を確実にする。従来の脱リグニンでは、脱リグニンされた植物材料のpHは、一般に13より高く、脱リグニンされた植物材料は、中性pHを達成するために洗浄されなければならないので、化学処理後の洗浄工程が必要である。これは、かなりの量の水を消費するだけでなく(それによってかなりの量の廃水を生成する)、かなりの処理時間(例えば、8”×4”×2.5”ブロックの木材を洗浄するために72時間)も必要とする。対照的に、開示される主題の実施形態は、繊維性植物材料のリグニン修飾において化学物質を消費することによって、廃水の生成を回避するか、または少なくとも低減する。
【0036】
全ての化学物質は、in situリグニン修飾を生成するために消費されるので、得られる軟化植物材料は、中性pHを示すことができる。更に、黒液および他の廃水の生成は、従来の脱リグニンプロセスと比較して、回避、最小化、または少なくとも低減することができる。更に、天然のヘミセルロースおよびリグニンの分解産物は全て、軟化した植物材料のチャネルの内部に固定化される。言い換えれば、浸潤アルカリ化学物質による処理は、繊維性植物材料内のリグニンおよびヘミセルロースを修飾することができるが、そうでなければ、繊維性植物材料からリグニンおよびヘミセルロースを除去することはできない。結果として、処理された植物材料の化学的含有量および組成は、出発天然植物材料と実質的に同じであり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、in situリグニン修飾は、加工植物材料のリグニン含量の10%以下の減少をもたらし得る。例えば、加工された植物材料(例えば、軟化された植物材料および/または高密度化された植物材料)中の修飾されたリグニンの含有量(例えば、重量%基準で)は、天然植物材料中に元々存在する天然リグニンの含有量の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)であり得る。例えば、in situ修飾後、加工された植物材料は、軟材については25重量%以上、硬材については20重量%以上、または竹については26重量%以上のリグニン含有量を有することができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、in situ修飾は、加工植物材料のヘミセルロース含量の10%以下の減少をもたらすことができる。例えば、加工植物材料(例えば、軟化植物材料および/または高密度化植物材料)中の修飾ヘミセルロースの含有量(例えば、重量%基準)は、天然植物材料中に元々存在する天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)であり得る。
【0038】
上記のように、いくつかの実施形態では、天然繊維性植物材料は、天然木であり得る。天然木は、様々な相互接続された細胞を含む、および/またはそれによって画定される独特の三次元多孔質微細構造を有する。例えば、
図2Aは、長手方向に延びる細胞領域内の木材繊維細胞216の六角形アレイ内に導管212が配置される広葉樹微細構造210を示す。導管および繊維細胞は、木材の長手方向Lに沿って延在することができる。したがって、各導管212の管腔は、長手方向Lに実質的に平行である延長軸214を有することができ、各繊維細胞216の管腔は、長手方向Lに実質的に平行である延長軸218を有することができる。接線方向Tに沿って隣接する領域間に配置される、複数の放射組織細胞220が配置される半径方向に延在する細胞領域である。放射組織細胞220は、木材の半径方向Rに沿って延在することができる。したがって、各放射組織細胞220の管腔は、木材の半径方向Rに実質的に平行な延長軸222を有することができる。細胞内ラメラは、導管212、繊維細胞216、および放射組織細胞220の間に配置され、細胞を相互接続するように機能する。軟材は、広葉樹と同様の微細構造を有することができるが、木材の長手方向Lに延在する仮道管によって導管および木材繊維が置き換えられている。
【0039】
元の木材片の切断方向は、最終構造における細胞内腔の配向を決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、天然木片は、木200の幹202から垂直または長手方向(例えば、長手方向の木材成長方向Lに平行)に切断され得、その結果、長手方向に延在する細胞の管腔は、長手方向に切断された長手方向切断木片206の主面(例えば、最大表面積)に実質的に平行に配向される。長手方向切断木片206において、接線方向Tは、主面に対して実質的に垂直であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、天然木片は、長手方向に延在する細胞の管腔が半径方向に切断された半径方向切断木片204の主面に対して実質的に垂直に配向されるように、水平方向または半径方向に(例えば、長手方向の木材成長方向Lに対して垂直に)切断され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、天然木片が長手方向細胞の管腔が回転方向切断木片208の主面に実質的に平行に配向されるように、回転方向(例えば、長手方向の木材成長方向Lに垂直であり、幹202の円周方向に沿って)に切断され得る。いくつかの実施形態では、天然木片は、長手方向切断方向、半径方向切断方向、および回転切断方向の間の任意の他の配向で切断することができる。いくつかの実施形態では、木片の切断方向は、最終加工木材の特定の機械的特性(例えば、最終構造における接線方向のみに沿った弾性の方向)を決定し得る。
【0040】
あるいは、いくつかの実施形態では、天然繊維性植物材料は、天然竹であり得る。
図2Bは、その自然発生状態にある竹セグメント250の部分破断図を示す。セグメント250は、内部節隔膜256によって形成される節254によって、茎壁252の長さに沿って内部節領域258に分割される、中空内部領域262を囲む茎壁252を有する。茎壁252は、リグニンマトリックスに埋め込まれた竹セグメント250の長手方向L(例えば、竹成長方向、または中空内部領域262によって画定される軸に実質的に平行な方向)に沿って延在する繊維を有する。1本または複数本の枝スタブ260は、特定の内部節領域258から延在することができ、そこから新しい竹セグメントのための茎壁が成長し得る(たとえば、したがって、新しいセグメントのための異なる長手方向を画定する)根として働くことができる。
【0041】
茎壁252内で、竹は、栄養輸送を提供する多孔質細胞および機械的支持を提供する高密度細胞を有する階層的細胞構造を示す。例えば、
図2Cは、竹セグメント250の断面の画像を示し、特に、茎壁252を構成する実質細胞264、導管266、および繊維束268の微細構造を示す。繊維束268は、高度に整合されており、長手方向Lと実質的に平行に伸び、一方、実質細胞264は、長手方向Lに対して平行または垂直方向となり得る。繊維束268の密度は、半径方向に沿って増加し、その結果、外面に最も近い竹セグメント250の外側部分は、中空内部領域262に最も近い竹の内側部分とは異なる機械的特性を有する。
【0042】
各導管266は、長手方向Lに沿って延在する開いた管腔を画定することができる。更に、繊維束268を形成する基本繊維は、その中心に不規則な小さい管腔を有することもできる。繊維束268、実質細胞264、および導管266は、リグニンおよびヘミセルロースから構成されるポリマーマトリックスを介して互いに接着する。天然の微細構造はまた、繊維の長手方向壁上の孔開口、実質細胞によって導入される多孔性、および/または隣接する繊維間の開放細胞間空間を示すことができる。開示される主題の実施形態は、高密度化および/または更なる加工のために竹を軟化させるために、この天然ポリマーマトリックスをin situで修飾することができる。
【0043】
in situ修飾
いくつかの実施形態では、繊維性植物材料に浸透したアルカリ化学物質は、天然リグニンと反応して、その修飾を引き起こすことができる。例えば、いくつかの実施形態では、天然リグニンを修飾して、リグニン高分子鎖をセグメントに切断することができる。
図3Aに示されるように、浸潤アルカリ化学物質(例えば、NaOH)からのOH
-イオン302は、リグニン300中のフェノール性ヒドロキシル基と反応することができ、同時に、OH
-イオンは、リグニン高分子中の連結結合を切断させることもでき、したがって、リグニン高分子鎖を短縮する。修飾されたリグニンの結果として、加工された植物材料は、軟化される。加えて、リグニン分解生成物304は、浸潤アルカリ化学物質(例えば、NaOH)と反応して、フェノールの塩(例えば、フェノールのナトリウム塩)を形成することができる。
【0044】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、繊維性植物材料に浸透したアルカリ化学物質は、天然ヘミセルロースと反応して、その修飾(例えば、分解)を引き起こすことができる。例えば、
図3Bに示されるように、OH
-イオンは、剥離反応によってヘミセルロース310の分解を引き起こし、それによって酸性分解生成物を生成することができる。これらの酸性生成物は、アルカリ化学物質(例えば、NaOH)と反応して、最終加工植物材料内に固定化され得る中性塩を形成し得る。例えば、ヘミセルロース分解生成物は、浸潤アルカリ化学物質(例えば、NaOH)と反応して、アルデュロン酸の塩312、314、316(例えば、アルデュロン酸のナトリウム塩)を形成することができる。
【0045】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、繊維性植物材料に浸透したアルカリ化学物質は、天然セルロースと反応して、その修飾(例えば、分解)を引き起こすことができる。例えば、
図3Cに示されるように、OH
-イオンは、剥離反応によってセルロース320の分解を引き起こし得る。分解生成物は、アルカリ化学物質(例えば、NaOH)と反応して中性塩を形成することができ、最終加工植物材料内に固定化することができる。例えば、セルロース分解生成物は、浸潤アルカリ化学物質(例えば、NaOH)と反応して、グルコン酸塩322(例えば、グルコン酸塩のナトリウム塩)を形成することができる。セルロース鎖中の還元末端基は、アルカリ条件下で脱離しやすく、それによって、新しい還元基を露出させることができる。新しい還元末端の生成は、セルロース高分子からの還元末端の反復除去を可能にすることができる。したがって、かなりの量のグルコン酸塩(例えば、ナトリウム塩)を形成することができる。いくつかの実施形態では、最終in situリグニン修飾木材中のグルコン酸塩が(例えば、フェノールの塩および/またはアルデュロン酸の塩と比較して)優勢であり得る。
【0046】
処理方法
図4Aは、リグニン修飾繊維性植物材料を形成するための方法400を示す。方法400は、処理工程402で開始することができ、ここでは、天然繊維性植物材料片が調製、準備される。例えば、処理工程402の準備は、木材片を親木から切断すること、除去すること、または別様に分離することを含むことができる。いくつかの実施形態では、切断により天然繊維性植物材料を実質的に平坦な平面構造に形成することができ、セルロース繊維の方向は、構造の平面に平行に延在する(例えば、長手方向切断または回転方向切断)か、または構造の平面に垂直に延在する(例えば、半径方向切断)。任意選択で、いくつかの実施形態では、調製することは、天然繊維性植物材料片の前処理、例えば、後続の処理の準備(例えば、ストリップへのスライス)における特定の形状への天然セルロース系材料の形成、またはそれらの任意の組合せ、において、任意の望ましくない材料または汚染を除去するための洗浄を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、切断により、木材を任意の1次元(例えば、厚さおよび幅が両方ともその長さよりも少なくとも1桁小さい細長い構造)、2次元(例えば、厚さが少なくともその長さおよび幅よりも1桁小さい実質的に平坦な平面構造)、または3次元(例えば、厚さ、幅、および長さが全て互いに1桁以内であるブロック)構造に形成することができる。いくつかの実施形態では、天然植物繊維性植物材料片は、その接線方向が最終生成物中の所望の弾性の方向に実質的に平行であるように提供(および/または形成)され得る(例えば、処理工程460に供される)。
【0047】
方法400は、処理工程404に進むことができ、ここで、天然繊維性植物材料片に1つ以上の化学物質を浸透させて、その中のリグニンを修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態では、浸透は、1つ以上の化学物質を含有する溶液中に天然繊維性植物材料片を真空下で浸漬することによることができる。いくつかの実施形態では、化学溶液は、OH-イオンを有するか、さもなければ溶液中でOH-イオンを生成することができる少なくとも1つの化学成分を含有することができる。いくつかの実施形態では、溶液中の化学物質のうちの1つ、いくつか、または全ては、アルカリ性であり得る。いくつかの実施形態では、化学溶液は、p-トルエンスルホン酸、NaOH、LiOH、KOH、Na2O、またはそれらの任意の組合せ、を含む。化学物質の例示的な組合せとしては、p-トルエンスルホン酸、NaOH、NaOH + Na2SO3/Na2SO4、NaOH + Na2SO4、NaOH + Na2S、NaHSO3 + SO2 + H2O、NaHSO3 + Na2SO3、NaOH + Na2SO3、NaOH/Na2O3+ AQ、NaOH/Na2S + AQ、NaOH + Na2SO3 + AQ、Na2SO3 + NaOH + CH3OH + AQ、NaHSO3 + SO2 + AQ、NaOH + Na2Sx(式中、AQは、アントラキノン、NaOHは、LiOHまたはKOHで置換されたNaOH)、またはこれらの任意の組合せ、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0048】
例えば、いくつかの実施形態では、繊維性植物材料(例えば、バスウッド)の断片を、容器内の化学溶液(例えば、2~5% NaOH)に浸漬することができる。次いで、容器を真空ボックスに入れ、真空にかけることができる。このようにして、繊維性植物材料中の空気を引き出して負圧を形成することができる。真空ポンプがオフにされると、繊維性植物材料の内部の負圧は、その中の天然のチャネル(例えば、長手方向の細胞によって画定される管腔)を通して、溶液を繊維性植物材料の中に吸い込むことができる。このプロセスは、繊維性植物材料内部のチャネルが化学溶液で充填され得るように、1回より多く(例えば、3回)繰り返すことができる(例えば、約2時間)。このプロセスの後、含水量は、~10.2%(例えば、天然木の場合)から~70%以上に増加することができる。いくつかの実施形態では、化学浸透は、加熱せずに、例えば、室温(20~30℃、例えば、~22~23℃)で実施することができる。いくつかの実施形態では、化学溶液は、繊維性植物材料のセルロース系微細構造の破壊を回避するために撹拌されない。
【0049】
方法400は、処理工程406に進むことができ、ここで、修飾は、浸潤した繊維性植物材料片を高温、例えば、80℃超(例えば、80~180℃、例えば、120~160℃)に供することによって活性化され得、それによって、軟化した(例えば、天然繊維性植物材料と比較して軟化した)繊維性植物材料をもたらす。いくつかの実施形態では、処理工程406の高温への曝露は、蒸気加熱を介して、例えば、密閉反応器内で生成された蒸気を介して、フロースルー反応器内の蒸気流を介して、および/または過熱蒸気発生器からの蒸気を介して達成することができる。代替的に、または追加的に、いくつかの実施形態では、処理工程406の高温への曝露は、例えば、蒸気を別個に使用することなく、1つまたは複数の加熱要素からの熱エネルギーの伝導および/または放射を介して、乾式加熱によって達成することができる。いくつかの実施形態では、処理工程406の間、浸潤した繊維性植物材料片を、例えば、1~5時間の第1の時間(例えば、繊維性植物材料のサイズに応じて、より厚い片は、より長い加熱時間を必要とする)、高温に供することができる。いくつかの実施形態では、第1の時間の後、例えば、反応器の圧力解放(例えば、リリーフバルブ)を開くことによって、繊維性植物材料の浸透片の加熱によって生成された任意の蒸気を解放することができる。例えば、いくつかの実施形態では、圧力解放は、修飾植物材料中の~50%の水分を除去するのに有効であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、軟化した植物材料は、30~50重量%(両端を含む)の範囲の含水量を有することができる。
【0050】
処理工程406の後、方法400は、決定工程407に進むことができ、ここで、軟化された植物材料は、例えば、最終的な高密度化プロセス中に生成される任意の廃液を回避または少なくとも低減するために、更なる処理の前に予備乾燥に供されるべきかどうかが決定される。予備乾燥が所望される場合、方法400は、処理工程408に進むことができ、ここで、軟化した植物材料を予備乾燥に供することができる。いくつかの実施形態では、予備乾燥は、空気乾燥プロセスを含むことができ、例えば、軟化した繊維性植物材料を静止空気または移動空気中で自然に乾燥させることができ、この空気は、室温(例えば、~22~23℃)または高温(例えば、23℃超)などの任意の温度であり得る。代替的にまたは追加的に、乾燥は、空気乾燥プロセス、真空支援乾燥プロセス、オーブン乾燥プロセス、凍結乾燥プロセス、臨界点乾燥プロセス、マイクロ波乾燥プロセス、または上記の任意の組合せ、を含むが、これらに限定されない、導電性、対流性、および/または放射性加熱プロセスのいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、予備乾燥は、軟化した植物材料の含水量を低減するのに有効であり得るが、植物材料がその軟化した性質を失うほどの水分を除去しすぎない(例えば、含水量が~8~10重量%以上になるように)。いくつかの実施形態では、予備乾燥は、植物材料の含水量を、30重量%超(例えば、30~50重量%)から、例えば、10~20重量%(例えば、~15重量%)の範囲内に低減するのに有効であり得る。水分は、加熱および/または予備乾燥(例えば、蒸発による)を介して軟化した植物材料から除去され得るが、除去された水分は、in situリグニン修飾からの残留塩および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。むしろ、いくつかの実施形態では、化学物質が修飾によって実質的に消費され得、残留塩は、軟化植物材料の微細構造内に保持され得る。
【0051】
処理工程408の後、または決定工程407で予備乾燥が望まれなかった場合、方法400は、決定工程409を介して、1つまたは複数の所望の用途に応じて軟化した植物材料の更なる処理に進むことができる。いくつかの実施形態では、軟化植物材料が処理工程410で高密度化に供されて、例えば、高強度(例えば、~560MPaなどの500MPaを超える)を有する高密度化繊維性植物材料を生成することができる。いくつかの実施形態では、高密度化または他の関連処理は、例えば、2020年7月16日に公開された「強力および強靭な構造用木材材料ならびにその製造方法およびその使用」という発明の名称の米国出願公開第2020/0223091号、または2021年6月3日に公開された「竹構造体およびその製造方法ならびにその使用」という発明の名称の国際公開WO2021/108576号に記載されているようなものであり得、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。代替的にまたは追加的に、軟化された植物材料は例えば、3-D成形可能または3-D成形された植物材料を製造するために、処理工程430で成形に供することができる。いくつかの実施形態では、成形または他の関連処理は、例えば、2021年10月28日に公開された「成形可能および成形されたセルロース系構造材料、ならびにその成形および使用のためのシステムおよび方法」という発明の名称の国際公開WO2021/216803号に記載されているようなものであり得、これは参照により本明細書に組み込まれる。代替的にまたは追加的に、軟化された植物材料は、処理工程460で乾燥に供されて、可撓性構造または異方性弾性構造を形成することができる。いくつかの実施形態では、乾燥または他の関連処理は、例えば、2020年9月10日に公開され、「可撓性木材構造体およびデバイスならびにその製造方法および使用」いう発明の名称の米国特許出願公開第2020/0282591号、または2022年5月27日に出願された「異方性弾性を有する木材材料およびその製造方法ならびに使用」という発明の名称の係属中の国際出願PCT/US22/31289号に記載されているようなものであり得、これらの出願は、参照により本明細書に組み込まれる。代替的にまたは追加的に、軟化植物材料は、処理工程470で乾燥に供されて、高密度化構造、例えば、高強度(例えば、~304MPaなどの300MPaを超える)を有する自己高密度化繊維性植物材料を形成することができる。
【0052】
方法400の後、処理された繊維性植物材料は、特定の用途で使用することができ、または特定の用途で使用するために適合させることができる。例えば、修飾された植物生成物は、機械加工、切断、または他の方法で連続片を特定の形状に形成するなどの更なる加工に供することができる。修飾された植物生成物の使用は、修飾された植物生成物それ自体の使用、または異なる植物種(従来の、修飾された、または他の方法によるもの)および/または非植物材料(例えば、金属、金属合金、プラスチック、セラミック、複合材料など)と一緒に組み合わせて、異種複合構造を形成することを含み得る。
【0053】
方法400の工程402~410、430、460、および470のうちのいくつかは、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法400の工程402~410、430、460、および470が別々に図示および説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程は、一緒に(同時にまたは連続して)組み合わされ、実行され得る。更に、
図4Aは、工程402~410、430、460、および470の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それらに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に行われてもよい。
【0054】
全ての化学物質が処理工程402~406で消費されるので、得られる軟化植物材料は、中性pHを示すことができる。更に、従来の脱リグニン化プロセスとは異なり、処理工程402~406によって黒液を全く作り出さないか、または最小限に抑制することができ、天然セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分解生成物は全て、軟化した植物材料のチャネル内部に固定化することができる。
【0055】
図4Bを参照すると、軟化した繊維性植物材料を高密度化するための方法410が示されている。例えば、軟化した繊維性植物材料は、
図4Aの方法400に従って調製、準備することができる。方法410は、任意の処理工程412に進むことができ、そこでは、圧縮前に、軟化した繊維性植物材料の内部修飾を行うことができる。「内部」という用語は、処理工程412の修飾を指すために使用されるが、いくつかの実施形態では、修飾が軟化植物材料の外部特徴ならびに内部特徴に適用されてもよく、一方、他の実施形態では、修飾が他の特徴に影響を及ぼすことなく、軟化植物材料の内部特徴または外部特徴のいずれかに適用されてもよいことが企図される。いくつかの実施形態では、内部修飾は、軟化植物材料の表面上に非天然粒子を形成すること、堆積させること、または別様に提供することを含むことができる。そのような表面は、少なくとも内面、例えば管腔を裏打ちする細胞壁を含むことができるが、軟化植物材料の外面も含むことができる。軟化された植物材料の表面上に組み込まれた非天然粒子は、他の特性の中でも特に、疎水性、耐候性、耐食性(例えば、耐塩性)、および/または耐炎性などの特定の有利な特性を有する最終構造を実現することができる。例えば、いくつかの実施形態において、疎水性ナノ粒子(例えば、SiO
2ナノ粒子)は、軟化植物材料の表面上に形成され得る。
【0056】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、内部修飾は、軟化した植物材料の表面化学を修飾する更なる化学処理を行うことを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、更なる化学処理は、銅酸塩(CDDC)、アンモニア性銅第四級(ACQ)、クロム酸ヒ酸銅(CCA)、アンモニア性亜鉛ヒ酸塩(ACZA)、ナフテン酸銅、酸クロム酸銅、クエン酸銅、アゾール銅、8-ヒドロキシキノリン酸銅、ペンタクロロフェノール、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、クレオソート、二酸化チタン、プロピコナゾール、テブコナゾール、シプロコナゾール、ホウ酸、ホウ砂、有機ヨウ化物(IPBC)、およびNa2B8O13・4H2Oのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0057】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、処理工程412の内部修飾は、軟化植物材料に1つまたは複数のポリマー(またはポリマー前駆体)を浸透させることを含むことができる。例えば、軟化した植物材料を真空下でポリマー溶液に浸漬して、ハイブリッド材料を形成することができる。ポリマーは、軟化した植物材料の細孔に浸透することができる任意のタイプのポリマー、例えば、合成ポリマー、天然ポリマー、熱硬化性ポリマー、または熱可塑性ポリマーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカプロラクタム(PA6)、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)(PMIA)、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリウレタン(PU)、
ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンアジペート)(PBSA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTh)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、 ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)、ポリキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ乳酸(PLA)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、ポリ八面体シルセスキオキサン(POSS)、パラメチルスチレン(PMS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレンナフタレート(PEN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-メチルメタクリレート(ABSM)、ドデシルトリメトキシシラン(DTMS)、ロジン、キチン、キトサン、プロテイン、植物油、リグニン、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、デンプン、寒天、または上記の任意の組合せ、であり得る。
【0058】
方法410は、処理工程414に進むことができ、ここで、軟化された植物材料は、その長手方向と交差する方向にプレスされる。いくつかの実施形態では、プレスは、長手方向に実質的に垂直な方向であり得るが、他の実施形態では、プレスは、長手方向に垂直な力成分を有し得る。いずれの場合も、プレスは、軟化した植物材料の厚さを減少させ、それによってその密度を増加させ、ならびに軟化した植物材料の断面内の天然の管腔(例えば、導管、各繊維の管腔、実質細胞など)、空隙、および/または間隙を(少なくとも部分的に)崩壊させるのに有効であり得る。いくつかの実施形態では、プレスは、例えば、軟化した植物材料の厚さを減少させるために(例えば、プレス前の軟化した植物材料と比較して、少なくとも5:2の寸法の減少)、単一の方向(例えば、半径方向Rに沿って)に沿って行うことができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、軟化植物材料は、2つの方向(例えば、半径方向Rおよび半径方向Rおよび長手方向Lの両方に垂直な第2の方向に沿って)に同時にプレスされて、例えば、軟化植物材料の断面積を低減することができる(例えば、高密度化された長方形バーを生成するために)。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、軟化した植物材料は、異なる方向(例えば、最初に半径方向Rに沿って、次いで、半径方向Rおよび長手方向Lに垂直な第2の方向に沿って)に連続的にプレスすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、プレスは、軟化植物材料の事前乾燥なしで、または軟化植物材料がその中に少なくともいくらかの水または他の流体を保持している状態で、実施されてもよい。したがって、プレスは、その寸法が減少し、密度が増加すると同時に、軟化した植物材料から少なくともいくらかの水または他の流体を除去するのに効果的であり得る。いくつかの実施形態では、別個の乾燥プロセスをプレスプロセスと組み合わせることができる。例えば、軟化した植物材料を最初に圧縮して、高密度化を引き起こし、そこから少なくともいくらかの水または流体を除去し、その後、乾燥プロセス(例えば、空気乾燥)を行って、残りの水または流体を除去することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、軟化した植物材料を最初に乾燥させて、少なくともいくらかの水または流体をそこから除去することができ(例えば、湿度チャンバ内での最初の乾燥と、それに続く室温での空気乾燥、その結果、植物材料の含水量は、15重量%、例えば、10重量%を超えるままである)、続いて、プレスして高密度化する(および、潜在的に、水または他の流体の更なる除去、例えば、10重量%未満、例えば、3~8重量%の含水量)。
【0060】
いくつかの実施形態では、プレスは、軟化植物材料の細胞壁のセルロース系繊維間の水素結合形成を促進し、それによって高密度化植物材料の機械的特性を改善することができる。更に、軟化した植物材料の表面上または軟化した植物材料内に(例えば、処理工程414の内部修飾を介して)形成された任意の粒子または材料は、圧縮後に保持することができ、内部表面上の粒子/材料は、崩壊した管腔および絡み合った細胞壁内に埋め込まれる。
【0061】
プレスの圧力およびタイミングは、プレス前の軟化した植物材料のサイズ、プレス後の植物材料の所望のサイズ、軟化した植物材料(もしあれば)内の水または流体含有量、プレスが行われる温度、相対湿度、内部修飾(もしあれば)からの材料(例えば、浸透したポリマー)の特性、および/または他の要因の要因であり得る。例えば、軟化した植物材料は、少なくとも1分~数時間(例えば、1~180分を含む)の時間中、加圧下に保持することができる。いくつかの実施形態では、軟化した植物材料は、3~72時間(両端を含む)加圧下に保持することができる。いくつかの実施形態では、プレスは、0.5MPa~20MPa(両端を含む)、例えば、5MPaの圧力で実施することができる。いくつかの実施形態では、プレスは、加熱せずに(例えば、冷間プレス)行われてもよく、一方、他の実施形態では、プレスは、加熱(例えば、熱間プレス)を用いて行われてもよい。例えば、プレスは、20℃から160℃の間の温度、例えば、100℃以上で行われてもよい。
【0062】
方法410は、任意の処理工程416に進むことができ、ここで、高密度化された植物材料は、外部修飾を受けることができる。「外部」という用語は、処理工程416の修飾を指すために使用されるが、いくつかの実施形態では、修飾は、高密度化された植物材料の内部特徴および外部特徴に適用されてもよく、一方、他の実施形態では、修飾が他の特徴に影響を及ぼすことなく、高密度化された植物材料の内部特徴または外部特徴のいずれかに適用されてもよいことが企図される。いくつかの実施形態では、外部修飾は、高密度化植物材料の1つまたは複数の外部表面上にコーティングを形成すること、堆積させること、またはそうでなければ提供することを含むことができる。コーティングは、疎水性、耐候性、耐腐食性(例えば、耐塩性)、および/または耐炎性などであるが、これらに限定されない特定の有利な特性を高密度化植物材料に付与することができる。例えば、コーティングは、油性塗料、疎水性塗料、ポリマーコーティング、および/または耐火性コーティングを含むことができる。いくつかの実施形態では、耐火性コーティングは、ナノ粒子(例えば、窒化ホウ素ナノ粒子)を含むことができる。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、竹用のコーティングは、窒化ホウ素(BN)、モンモリロナイトクレー、ヒドロタルサイト、二酸化ケイ素(SiO2)、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化アルミニウム(A1(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、ホウ砂、トリフェニルホスフェート(TPP)、メラミン、ポリウレタン、ポリリン酸アンモニウム、ホスフェート、ホスファイトエステル、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホスホネート、リン酸二アンモニウム(DAP)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム(MAP)、リン酸グアニル尿素(GUP)、グアニジン二水素ホスフェート、五酸化アンチモン、またはそれらの組合せ、を含むことができる。
【0063】
方法410は、処理工程418に進むことができ、ここで、高密度化された植物材料は、最終的な使用に備えて、機械加工、切断、および/または他の方法で物理的に操作(例えば、曲げ)することができる。機械加工プロセスは、切断(例えば、ソーイング)、ドリリング、木材旋削、タッピング、ボーリング、カービング、ルーティング、サンディング、研削、および研磨タンブリングを含むことができるが、これらに限定されない。操作プロセスは、曲げ、成形、および他の整形技術を含むことができるが、これらに限定されない。
【0064】
方法410は、処理工程420に進むことができ、ここで、高密度化された植物材料を特定の用途で使用することができる。例えば、高密度化植物材料は、構造材料(例えば、耐荷重構成要素または非耐荷重構成要素)としての使用に適合させることができる。例えば、高密度化植物材料は、少なくとも500MPaの機械的強度(例えば、引張強度)を有することができる。高密度化された植物材料については、具体的に列挙された以外の他の用途も可能である。実際、当業者は、本明細書に開示される高密度化された植物材料が本開示の教示に基づいて他の用途に適合され得ることを容易に理解するであろう。
方法410の工程412~420は、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法410の工程412~420が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程が一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。更に、
図4Bは、工程412~420の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態はそれに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に行われてもよい。例えば、処理工程418の整形は、処理工程416の外部修飾の前に行うことができる。
【0065】
図4Cを参照すると、軟化した繊維性植物材料を成形するための方法430が示されている。例えば、軟化した繊維性植物材料は、
図4Aの方法400に従って調製することができる。方法430は、決定工程432に進むことができ、そこで、流体ショック技術が実行されるかどうかが決定される。流体ショック処理が実行されないことが決定される場合、方法430は、決定工程432から処理工程434に進むことができ、ここで、軟化した繊維性植物材料を部分的に乾燥させることができる。例えば、処理工程434の部分乾燥は、軟化した繊維性植物材料が少なくとも35重量%(例えば、≧50重量%)の含水量を有するようなものであり得る。そうではなく、流体ショック処理が実行されることが決定される場合、方法430は、決定工程432から処理工程436に進むことができ、ここで、軟化した繊維性植物材料が完全に乾燥される。例えば、処理工程436の完全乾燥は、軟化した繊維性植物材料が15重量%以下(例えば、~8~12重量%未満、例えば3~8重量%を含む)の含水量を有するようなものであり得る。
【0066】
処理工程434または処理工程436のいずれかの乾燥は、空気乾燥プロセス、真空支援乾燥プロセス、オーブン乾燥プロセス、凍結乾燥プロセス、臨界点乾燥プロセス、マイクロ波乾燥プロセス、または上記の任意の組合せ、を含むが、これらに限定されない、導電性、対流性、および/または放射性加熱プロセスのいずれかを含むことができる。例えば、空気乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料を静止空気または、移動空気中で自然に乾燥させることを含むことができ、この空気は、室温(例えば、23℃)または高温(例えば、23℃を超える)などの任意の温度であってもよい。例えば、真空支援乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料を、例えば真空チャンバまたは真空オーブン内で、例えば1バール未満の減圧に供することを含むことができる。例えば、オーブン乾燥プロセスは、オーブン、ホットプレート、または他の伝導性、対流性、もしくは放射性加熱装置を使用して、軟化した繊維性植物材料を高温(例えば、23℃超)、例えば、70℃以上で加熱することを含むことができる。例えば、凍結乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料の温度を、その中の流体の凝固点未満(例えば、0℃未満)まで低下させ、次いで、その中の凍結流体を昇華させるために圧力を低下させること(例えば、数ミリバール未満)を含むことができる。例えば、臨界点乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料を流体(例えば、液体二酸化炭素)に浸漬すること、軟化した繊維性植物材料の温度および圧力を流体の臨界点(例えば、二酸化炭素については7.39MPa、31.1℃)を越えて上昇させること、次いで、圧力を徐々に解放して、今度は、ガス状の流体を除去することを含むことができる。例えば、マイクロ波乾燥プロセスは、マイクロ波領域(例えば、300MHz~300GHz)の周波数、例えば、~915MHzまたは~2.45GHzの周波数を有する電磁放射にそれを曝露することによって、軟化した繊維性植物材料内で誘電加熱を誘導するために、マイクロ波オーブンまたは他のマイクロ波発生装置を使用することを含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、処理工程436の完全乾燥は、軟化した繊維性植物材料の収縮を引き起こし、これは次に、細胞壁の著しい座屈を引き起こす。いくつかの実施形態では、長手方向細胞によって形成される管腔が潰れてもよい(例えば、チャネル壁の対向面が接触するように、または少なくとも有意に狭くなるように、完全に潰れてもよい)。処理工程436の乾燥後、方法430は、処理工程438に進むことができ、ここで、乾燥した軟化繊維性植物材料は、流体ショック技術を使用して再水和される。例えば、乾燥軟化繊維性植物材料は、再水和材料が少なくとも35重量%(例えば、約50重量%)の含水量を有するように、短時間(例えば、3分以下、例えば、約数秒)、流体(例えば、水、アルコール、またはそれらの任意の組合せ)中に部分的または完全に浸漬され得る。1つ以上の実施形態によれば、流体への浸漬以外の再水和方法も可能である。例えば、再水和は、加湿環境への曝露によって達成することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、再水和が細胞壁を再膨張させ、より大きな管腔(例えば、導管)が再開することを可能にし、一方、より小さな管腔(例えば、繊維細胞)は、実質的に崩壊したままである。流体ショックによって導入された膨潤は、細胞壁構造にしわを作り出すことができ、これは、軟化した繊維性植物材料が損傷することなく、激しい張力および圧縮に適応することを可能にすることができる。
【0069】
処理工程434または処理工程438のいずれかの後に少なくとも35重量%の含水量を有する軟化繊維性植物材料では、方法430は、決定工程440に進むことができ、そこで、事前成形修正が所望されるかどうかが決定される。そのような修正が望まれる場合、方法430は、処理工程442に進むことができ、そこでは、(たとえば、修正を形成するために実質的な量の材料を除去することなく)非機械加工技術が孔、開口部、凹部、または他の表面修正を形成するために使用される。軟化した繊維性植物材料の含水量は、少なくとも35重量%であり、したがって、実質的に可撓性/成形可能な状態にある間に、修飾を行うことができる。その結果、セルロース繊維は、孔、開口部、または凹部の形成の周囲で破断することなく曲がるように、十分な運動性を保持することができる。
【0070】
処理工程442の修正の後、または決定工程440において修正が望まれなかった場合、方法430は、処理工程444に進むことができ、ここで、軟化繊維性植物材料は、3-D構成などの所望の構成を有するように成形され得る。処理工程444の成形は、曲げること、折り曲げること、押すこと、プレスすること、成形すること(例えば、金型を使用すること)、またはそうでなければ、所望の構成を有するように軟化した繊維性植物材料を非破壊的に形成すること(例えば、材料を除去しないこと)を含むことができる。成形中、軟化した繊維性植物材料の含水量は、少なくとも35重量%であり、したがって、実質的に可撓性/成形可能な状態である。結果として、軟化した繊維性植物材料は、成形形態を容易に採用し、損傷なく元の未成形形態に戻ることができる。
【0071】
方法400は、決定工程446に進むことができ、ここで、軟化した繊維性植物材料を整形形態に設定すべきかどうか、またはその代わりに軟化した繊維性植物材料を可撓性/成形可能な状態に維持すべきかどうかが決定される。軟化した繊維性植物材料を成形可能な材料として維持することが望まれる場合、方法430は、処理工程448に進むことができ、そこで、その含水量は、35重量%以上に維持される。そうではなく、軟化した繊維性植物材料を成形形態に設定することが望まれる場合、方法430は、処理工程450に進むことができ、軟化した繊維性植物材料は、その含水量が15重量%以下(例えば、3~8重量%の範囲)に低減されるように、整形形態を維持しながら完全に乾燥することができる。処理工程450の乾燥は、処理工程436に関して上述したのと同様の方法で実行することができる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、乾燥は、例えば、熱プレスを使用して、軟化した繊維性植物材料を同時に成形および乾燥させることによる、成形の副産物であり得る。このような実施形態では、整形は、完全に乾燥する前に軟化した繊維性植物材料を更に高密度化するのに有効であり得、この高密度化は、成形材料の機械的特性を更に改善し得る。一度完全に乾燥されると、繊維性植物材料は、剛性であり、塑性変形なしに更なる整形操作ができず、それによって成形構造を形成することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法430は、処理工程448または処理工程450から任意選択の処理工程452に進むことができ、ここで、外部修飾が適用され得る。例えば、繊維性植物材料は、水分の進入または水分の退出を防ぎ、それによって材料の所望の成形可能な(例えば、可撓性の)または成形された(例えば、剛性の)状態を維持するために密封することができる。いくつかの実施形態では、密封は、繊維性植物材料を密閉されたまたは制御された環境に置くことにより得られる。代替的にまたは追加的に、密封は、繊維性植物材料の露出表面上に設けられた保護層またはコーティングによって達成することができる。例えば、保護層またはコーティングは、ポリウレタンコーティング、塗料、シラン疎水性コーティング、または繊維性植物材料へのまたは繊維性植物材料からの水分の移動を防止するか、または少なくとも制限するのに有効な任意の他のコーティングであり得る。代替的にまたは追加的に、外部修飾は、破壊的修飾、例えば、後の使用のためにリグニン修飾繊維性植物材料を調製するための機械加工または切断を含むことができる。
【0073】
方法430は、処理工程454に進むことができ、ここで、成形可能な状態または成形された状態のいずれかのリグニン修飾繊維性植物材料を、特定の用途で使用することができ、または特定の用途で使用するために適合させることができる。いくつかの実施形態では、成形されたリグニン修飾繊維性植物材料は、構造材料として使用することができ、例えば、非植物材料(例えば、金属、金属合金、プラスチック、セラミック、複合材料など)と一緒に組み立てられて、異種複合構造を形成する。あるいは、いくつかの実施形態では、成形可能なリグニン修飾繊維性植物材料は、可撓性基材または構造として、例えば、ロボット作動のための足場として、または電子機器のための基材として使用することができる。
【0074】
方法430の工程432~454のうちのいくつかは、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法430の工程432~454が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程は、一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。例えば、上述のように、処理工程450の乾燥および処理工程444の成形は、同時に行われてもよい。更に、
図4Cは、工程432~454の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に行われてもよい。例えば、処理工程442の修正は、処理工程444の成形後に行うことができ、一方、軟化した繊維性植物材料は、成形可能なままである。
【0075】
図4Dを参照すると、可撓性構造または異方性弾性構造を形成するための乾燥方法460が示されている。例えば、軟化した繊維性植物材料は、
図4Aの方法400に従って調製、準備することができる。方法460は、処理工程462に進むことができ、ここで、軟化した繊維性植物材料は、例えば、その中の含水量が15重量%未満(例えば、4~12重量%)となるように、乾燥に供することができる。いくつかの実施形態では、乾燥は、軟化した繊維性植物材料の微細構造中の長手方向に延在する管腔の構造は、例えば、表面張力によって誘発される水の蒸発による崩壊または圧潰を回避することによって、(例えば、天然の繊維性植物材料中のものと実質的に同じ断面形状で)保持されるようなものであり得る。例えば、乾燥は、凍結乾燥プロセス、臨界点乾燥プロセス、溶媒交換プロセス、または上記の任意の組合せ、を含むことができる。例えば、凍結乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料の温度を、その中の流体の凝固点未満(例えば、0℃未満)まで低下させること、次いで、その中の凍結流体を昇華させるために圧力を低下させること(例えば、数ミリバール未満)を含むことができる。例えば、臨界点乾燥プロセスは、軟化した繊維性植物材料を流体(例えば、液体二酸化炭素)に浸漬すること、軟化した繊維性植物材料の温度および圧力を流体の臨界点(例えば、二酸化炭素については7.39MPa、31.1℃)を越えて上昇させること、次いで、圧力を徐々に解放して、今度は、ガス状の流体を除去することを含むことができる。例えば、溶媒交換プロセスは、軟化した繊維性植物材料内の水を、有機溶媒またはアルコール(例えば、アセトン、エタノールなど)で置き換えることを含むことができ、これは、長手方向に延在する管腔を崩壊させることなく、より容易に蒸発させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、乾燥後、リグニン修飾繊維性植物材料は例えば、少なくとも部分的に放射組織細胞の除去に起因して、少なくともその接線方向に沿って弾性であり得る。いくつかの実施形態では、リグニン修飾繊維性植物材料は、例えば、少なくとも部分的には、長手方向の細胞の保持のために、その半径方向および長手方向に沿って非弾性のままであり得る。そのような実施形態では、乾燥リグニン修飾繊維性植物材料は、非対称弾性または異方性弾性(例えば、接線方向Tに沿って実質的に弾性であり、半径方向Rおよび長手方向Lに沿って実質的に非弾性である)を示すことができる。あるいは、いくつかの実施形態では、乾燥後、リグニン修飾繊維性植物材料は、可撓性(例えば、等方性または異方性)であり得る。
【0077】
方法460は、任意選択の処理工程464に進むことができ、ここで、リグニン修飾繊維性植物材料は、任意選択で、1つ以上の修飾を受けることができる。いくつかの実施形態では、任意の修飾は、例えば、水分の侵入または水分の流出を防止するために、乾燥したリグニン修飾繊維性植物材料を密封することを含むことができる。例えば、密封は、リグニン修飾繊維性植物材料を、密閉されたまたは制御された環境に置くことによって行うことができる。代替的にまたは追加的に、密封は、リグニン修飾繊維性植物材料の露出表面上に提供される保護層またはコーティングによって達成することができる。例えば、保護層またはコーティングは、ポリウレタンコーティング、塗料、シラン疎水性コーティング、またはリグニン修飾繊維性植物材料の中へのまたは外への水分の移動を防止するか、または少なくとも制限するのに有効な任意の他のコーティングであり得る。代替的にまたは追加的に、任意の修飾は、破壊的修飾、例えば、その後の使用のためにリグニン修飾繊維性植物材料を調製するための機械加工または切断を含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、任意の修飾は、リグニン修飾繊維性植物材料の外面および/または内面にコーティングを適用すること、ならびに/またはリグニン修飾繊維性植物材料の外面および/または内面に粒子を結合することを含むことができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、10μm以下、例えば、10nm~10μmの範囲内の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、リグニン修飾繊維性植物材料の多孔度が少なくとも50%のままであるようなものであってもよい。いくつかの実施形態では、コーティングまたは結合粒子は、導電性材料、半導電性材料、または絶縁材料を含むことができる。例えば、コーティングまたは結合粒子は、ナノ粒子、ナノワイヤ、グラフェン、グラファイト、セラミック酸化物、単層カーボンナノチューブ(CNT)、二層CNT、多層CNT、ポリアニリン、カーボンブラック、グラファイト、ハードカーボン(例えば、チャイ(char)または非グラファイト化炭素)、還元グラフェン酸化物、グラフェン、プラズモン金属ナノ粒子、触媒ナノ粒子、電気活性ナノ粒子、金属合金ナノ粒子、半導体ナノ粒子、硫化物、リン化物、ホウ化物、酸化物、またはそれらの任意の組合せ、を含むことができる。プラズモン金属ナノ粒子の材料の例としては、Au、Pt、Ag、Pd、およびRuが挙げられるが、これらに限定されない。金属ナノ粒子および金属合金ナノ粒子は、Pt、Pd、Au、Ag、Ni、Co、Ru、Feを含むことができるが、これらに限定されない。半導体ナノ粒子の材料としては、例えば、CuFeSe2などの他の半導体が挙げられる。硫化物の材料の例としては、M0S2、CoSx、およびFeS2が挙げられるが、これらに限定されず、xは整数である。リン化物の材料の例としては、CoP、NiP2、およびMoPx(xは整数)が挙げられるが、これらに限定されない。ホウ化物の材料の例としては、CoB、MoB、およびNiBが挙げられるが、これらに限定されない。酸化物の材料の例としては、MnO2、Fe2O3、CoO、およびNiOが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、コーティングは、疎水性材料、耐水性材料、耐候性材料、またはそれらの任意の組合せ、を含むことができる。例えば、コーティングは、酸化マンガンポリスチレン(MnO3/PS)ナノ複合体、酸化亜鉛ポリスチレン(ZnO/PS)ナノ複合体、沈降炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ構造、シリカナノコーティング、フッ素化シラン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、またはそれらの任意の組合せ、を含むことができる。代替的にまたは追加的に、コーティングは、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、カルシウム、ケイ素、リン、銀、酸化チタン、またはこれらの任意の組合せ、を含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、任意の修飾は、リグニン修飾繊維性植物材料に、ポリマー(またはポリマー前駆体)またはタンパク質などの別の弾性または可撓性材料を浸透させて、弾性複合体を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、材料は、リグニン修飾繊維性植物材料の微細構造の開放管腔を実質的にまたは少なくともほとんど充填することができる。いくつかの実施形態では、浸透は、リグニン修飾繊維性植物材料の多孔度が10%以下に低減されるようなものであってもよい。例えば、弾性および可撓性材料は、天然または合成のポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム(例えば、Baypren(登録商標))、ポリクロロプレン、ネオプレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(例えば、スチレンとブタジエンとのコポリマー)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ニトリルゴム(例えば、ブタジエンとアクリロニトリルのコポリマー)、ハロゲン化ニトリルゴム(例えば、Therban(登録商標)、Zetpol(登録商標)など)、エチレンプロピレンゴム(例えば、エテンとプロペンとのコポリマー)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマー(例えば、Viton(商標)、Tecnoflon(登録商標)、Fluorel(商標)、AFLAS(登録商標)、DAI-EL(商標))、パーフルオロエラストマー(例えば、Tecnoflon(登録商標)PFR、Kalrez(登録商標)、Chemraz(登録商標)、Perlast(登録商標))、ポリエーテルブロックアミド、コールスルホン化ポリエチレン(例えば、Hypalon(登録商標))、エチレン-酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、レシリン、エラスチン、多硫化ゴム、エラストオレフィン、ポリ(ジクロロホスファゼン))、ヘキサクロロホスファゼ重合からの無機ゴム、またはこれらの任意の組合せ、であり得る。
【0081】
方法460は、処理工程466に進むことができ、ここで、リグニン修飾繊維性植物材料(または複合材料)は、特定の用途で使用することができ、または特定の用途で使用するために適合させることができる。いくつかの実施形態では、リグニン修飾繊維性植物材料(または複合材料)は、その接線方向に沿って圧縮力を受けた後にその元の形状を完全に回復することができる(一方、直交する半径方向および長手方向に沿って実質的に非弾性のままである)異方性弾性構造として使用することができる。いくつかの実施形態では、リグニン修飾繊維性植物材料(または複合材料)は、吸音材料または強制吸収材料として使用することができる。いくつかの実施形態では、リグニン修飾繊維性植物材料は、その非弾性面(例えば、半径方向および長手方向に沿って)で配向されて、それに加えられる力を支持する(例えば、構造部材として機能する)ことができ、一方、その弾性方向(例えば、接線方向に沿って)は、それに加えられる力を吸収する(例えば、吸音部材として作用する)。
【0082】
リグニン修飾繊維性植物材料(または複合材料)は、弾性および/またはスポンジ状材料が有用であり得る任意の用途において使用することができ、例えば、限定されないが、建物(建築)または構造材料(例えば、断熱材、床材など)、吸音材、履物の一部(例えば、インサートまたはインソール、アウトソール、ミッドソール、アッパー、タングなど)、緩衝材(例えば、パッキング材料、マットレス、枕、クッションなど)、シール(例えば、ガスケット、Oリングなど)、隔離デバイス(例えば、制振パッド、防振マウントなど)、減衰要素(例えば、ショックアブソーバ)、エネルギー貯蔵または収穫デバイス、弾性基材(例えば、可撓性導体、可撓性電子デバイス、ウェアラブルデバイスなど)、形状記憶構造、およびタイヤなどである。いくつかの実施形態では、リグニン修飾繊維性植物材料(または複合材料)が構造材料として使用することができ、例えば、非植物材料(例えば、金属、金属合金、プラスチック、セラミック、複合材料など)と一緒に組み立てられて、異種複合構造を形成する。
【0083】
図4Dの工程462~466は、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しは、、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、
図4Dの工程462~466が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程は、一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。更に、
図4Dは、工程462~466の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に行われてもよい。
【0084】
図4Eを参照すると、乾燥して高密度化構造を形成するための方法470が示されている。例えば、軟化した繊維性植物材料は、
図4Aの方法400に従って調製することができる。方法470は、処理工程472に進むことができ、ここで、軟化した繊維性植物材料は例えば、その中の含水量が15重量%未満(例えば、3~10重量%)となるように、乾燥に供することができる。いくつかの実施形態では、乾燥は、軟化した繊維性植物材料の微細構造中の長手方向に延在する管腔の構造が例えば、表面張力によって誘発される水の蒸発による崩壊または圧潰に起因して、少なくとも部分的に崩壊するようなものであり得る。例えば、乾燥は、空気乾燥プロセス(例えば、空気中で数時間、例えば少なくとも24時間の乾燥)を含むことができる。その結果、繊維性植物材料は例えば、少なくとも300MPaの機械的強度を有するように自己高密度化することができる。
【0085】
方法470は、任意選択的な処理工程474に進むことができ、ここで、自己高密度化繊維性植物材料は、任意選択で、1つまたは複数の修飾を受けることができる。いくつかの実施形態では、任意の修飾は、例えば、水分の侵入または水分の流出を防止するために、高密度化繊維性植物材料を密封することを含むことができる。例えば、密封は、密封されたまたは制御された環境に高密度化された繊維性植物材料を配置することによって行うことができる。代替的にまたは追加的に、密封は、高密度化された繊維性植物材料の露出表面上に提供される保護層またはコーティングによって達成することができる。例えば、保護層またはコーティングは、ポリウレタンコーティング、塗料、シラン疎水性コーティング、または高密度化繊維性植物材料の中へのまたは外への水分の移動を防止するか、または少なくとも制限するのに有効な任意の他のコーティングであり得る。代替的にまたは追加的に、任意選択的な修飾は、破壊的修飾、例えば、機械加工または切断を含み、その後の使用のために高密度化された繊維性植物材料を調製することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、任意選択的な修飾は、高密度化繊維性植物材料の外面および/または内面にコーティングを適用すること、および/または高密度化繊維性植物材料の外面および/または内面に粒子を結合することを含むことができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、10μm以下、例えば、10nm~10μmの範囲内の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、コーティングまたは結合粒子は、導電性材料、半導電性材料、または絶縁材料を含むことができる。例えば、コーティングまたは結合粒子は、ナノ粒子、ナノワイヤ、グラフェン、グラファイト、セラミック酸化物、単層カーボンナノチューブ(CNT)、二層CNT、多層CNT、ポリアニリン、カーボンブラック、グラファイト、硬質カーボン(例えば、チャー(char)または非黒鉛化炭素)、還元グラフェン酸化物、グラフェン、プラズモン金属ナノ粒子、触媒ナノ粒子、電気活性ナノ粒子、金属合金ナノ粒子、半導体ナノ粒子、硫化物、リン化物、ホウ化物、酸化物、またはこれらの任意の組合せ、を含むことができる。プラズモン金属ナノ粒子の材料の例としては、Au、Pt、Ag、Pd、およびRuが挙げられるが、これらに限定されない。金属ナノ粒子および金属合金ナノ粒子は、Pt、Pd、Au、Ag、Ni、Co、RuおよびFeを含むことができるが、これらに限定されない。半導体ナノ粒子のための材料の例としては、CuFeSe2または任意の他の半導体が挙げられる。硫化物の材料の例としては、MoS2、CoSx、およびFeS2が挙げられるが、これらに限定されず、xは整数である。リン化物のための材料の例としては、CoP、NiP2、およびMoPx(式中、xは整数である)が挙げられるが、これらに限定されない。ホウ化物の材料の例としては、CoB、MoB、およびNiBが挙げられるが、これらに限定されない。酸化物の材料の例としては、MnO2、Fe2O3、CoO、およびNiCが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、コーティングは、疎水性材料、耐水性材料、耐候性材料、またはそれらの任意の組合せ、を含むことができる。例えば、コーティングは、酸化マンガンポリスチレン(MnO3/PS)ナノ複合体、酸化亜鉛ポリスチレン(ZnO/PS)ナノ複合体、沈降炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ構造、シリカナノコーティング、フッ素化シラン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、またはそれらの任意の組合せ、を含むことができる。代替的にまたは追加的に、コーティングは、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、カルシウム、ケイ素、リン、銀、酸化チタン、またはこれらの任意の組合せ、を含むことができる。
【0088】
方法470は、処理工程476に進むことができ、ここで、高密度化された植物材料を特定の用途で使用することができる。例えば、高密度化植物材料は、構造材料(例えば、荷重支持要素または非荷重支持要素)としての使用に適合させることができる。例えば、高密度化植物材料は、少なくとも300MPaの機械的強度(例えば、引張強度)を有することができる。高密度化された植物材料については、具体的に列挙された以外の他の用途も可能である。実際、当業者は、本明細書に開示される高密度化された植物材料が本開示の教示に基づいて他の用途に適合され得ることを容易に理解するであろう。
【0089】
方法470の工程472~476は、1回実行されるものとして説明されたが、いくつかの実施形態では、特定の処理工程の複数の繰り返しが、次の決定工程または処理工程に進む前に使用され得る。加えて、方法470の工程472~476が別々に図示され、説明されているが、いくつかの実施形態では、処理工程が一緒に(同時に、または連続して)組み合わされ、実行され得る。更に、
図4Eは、工程472~476の特定の順序を示しているが、開示される主題の実施形態は、それに限定されない。実際、特定の実施形態では、工程は、図示されたものとは異なる順序で、または他の工程と同時に行われてもよい。
【0090】
化学的活性化のための加熱システム
いくつかの実施形態では、化学的に浸透させた繊維性植物材料は、いかなる追加の化学溶液も添加することなく、浸透させた化学物質を繊維性植物材料の微細構造中の天然リグニンおよび/またはヘミセルロースと反応させるために、蒸気で加熱することによって高温(例えば、80~180℃、例えば、120~160℃)に供することができる。いくつかの実施形態では、加熱は、繊維性植物材料のサイズに応じて、少なくとも1時間、例えば1~5時間であり得、より厚い断片は、より長い加熱時間を必要とする。いくつかの実施形態では、蒸気加熱は、
図5Aの反応器500などの圧力反応器内で実施することができる。
図5Aの図示の例では、反応器500は、水域506上に延在する棚508(例えば、多孔質またはワイヤ棚)を有する内部容積を画定する壁502を備えることができる。棚508は、加熱要素504(反応器500の内部、反応器500の外部、および/または反応器500の壁502と一体化され得る)による水506の加熱によって生成される蒸気512を受け取るように、化学的に浸透した繊維性植物材料510を水506の上に支持することができる。例えば、反応器500は、2Lの内部容積を有することができ、水の本体は、50mLの水の容積を有することができる。
【0091】
あるいは、いくつかの実施形態では、蒸気加熱は、
図5Bの反応器520などのフロースルー反応器を使用して実施することができる。
図5Bの図示の例では、反応器520は、支持面528を有するフロースルー容積を画定する壁526を有することができる。支持表面528は、別の蒸気源522(例えば、過熱蒸気発生器)によって生成された蒸気524を受け取るように、化学的に浸透した繊維性植物材料510をフロースルー容積内で支持することができる。
【0092】
あるいは、いくつかの実施形態では、加熱は、蒸気を使用せずに、例えば、伝導性および/または放射性加熱を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、加熱は、化学的に浸透した繊維性植物材料からの水の損失が最小限に抑えられるように、または例えば、
図5Cの反応器530などの密閉された圧力反応器内で加熱を行うことによって少なくとも低減されるようにすることができる。
図5Cの図示された例では、反応器530は、密閉内部容積を画定する壁532を有することができ、その中で、化学的に浸透した繊維性植物材料は、加熱器534(反応器530の内部、反応器530の外部、および/または反応器530の壁532と一体化されてもよい)と熱接触するか、または近位に配置され得る。
【0093】
作製例と実験結果
軟化木材は、1片のバスウッド(20cm×8cm×2.5cm)に3% NaOHを浸透させることによって調製した。特に、バスウッドを容器中の3% NaOH中に浸漬し、次いでこれを真空ボックス中に置き、真空を与えた。したがって、木材中の空気が引き出され、微細構造内に負圧を形成する。負圧は、NaOHを木材微細構造の天然チャネルに吸い込む。チャネルがNaOH溶液で満たされるように、このプロセスを室温で3回繰り返し、このプロセスは、完了するのに約2時間かかった。このプロセスの後、含水量は、
図6Bに示されるように、~10.2%から70%近くまで増加することができる。次いで、NaOHを浸透させたバスウッドを、圧力反応器(例えば、
図5Aの反応器500)中で、~160℃の温度で3時間、蒸気を使用して加熱した。加熱後、反応器の圧力逃がし弁を開き、木材中の水分を蒸気の形で容器から放出した。容器の圧力が90psiから0psiに低下した後、容器を開き、その時には、軟化した木材(修飾リグニンおよびヘミセルロースがその中に保持されている)を除去した。
図6Bに示すように、得られた軟化木材の含水量は、~46%であった。
【0094】
天然木と軟化木材の化学組成を測定するために、2つの木材試料(2.5cm×2.5cm×2.5cm)を105℃で一晩オーブン乾燥した。次いで、得られたブロックを、4メッシュの出口スクリーン(~5mm)を用いて粉砕した。これに続いて、20メッシュ(~1mm)スクリーンを用いて2回目のパスを行った。得られた材料を、最初に硫酸を用いて2段階で加水分解した。加水分解条件は、それぞれの段階について、30℃で72%(v/v)、120℃で3.6%(v/v)の酸濃度であった。加水分解時間は、両方の段階で1時間であった。次いで、加水分解物を、パルスアンペロメトリック検出(HPAEC-PAD)を使用する改良された高性能陰イオン交換クロマトグラフィー法において炭水化物について分析した。クラソン(Klason)リグニン含量は、酸加水分解から固体残渣を洗浄し、乾燥させた後、重量測定で測定した。含量測定の結果を
図6Aに示し、これは、加工前(例えば、その天然形態)および加工後(例えば、その修飾形態であるが、木材内に固定化されている)の各木材成分の重量%含水量が実質的に同じままであることを確認するものである。
【0095】
高密度化木材を得るために、軟化したバスウッドを引き続き~5MPaの圧力および~120℃の温度で約~20分間圧縮して、改善された機械的特性を有する高密度化木材を得た。例えば、
図6Cの機械的試験結果に示されるように(長手方向の成長方向に平行な方向に沿って引張値が測定される)、高密度化木材は、~560MPaの機械的強度を有することができ、これは、天然木材の機械的強度よりもはるかに大きい(例えば、~10x)。
【0096】
加えて、高密度化木材は、天然木材のリグニンおよびヘミセルロースならびに化学反応からの中和塩を保持するので、高密度化木材は、従来の部分脱リグニン技術(例えば、100℃で3%NaOH中に浸漬し、続いてすすぎ、および高密度化)を使用して得られる高密度化木材と比較して、測定可能な物理的差異を有することができる。例えば、in situリグニン修飾を有する高密度化木材の色は、部分的に脱リグニン化された高密度化木材の色より視覚的に暗くすることができる。両木材試料の反射率を、ASTM E903-20「一体化球体を用いた材料の太陽吸収、反射率、および透過率の標準試験方法」に従い測定し、2020年10月21日に公開されたが、その内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
図7Aに示されるように、in situリグニン修飾を有する高密度化木材の反射率は、部分的に脱リグニン化された高密度化木材と比較して、全波長範囲にわたって低い。特に、in situリグニン修飾を有する高密度化木材は、500~2500nmの第1の波長範囲において35%以下の最大反射率を有する。in situリグニン修飾を有する高密度化木材はまた、0~20%の範囲である500~1000nmの第2の波長範囲にわたる反射率を有する。
【0097】
部分的に脱リグニンされ、高密度化された木材と比較して、in situリグニン修飾を有する高密度化された木材内の固定化された内容物を評価するために、灰分(例えば、高密度化された木材の無機含有量を示す)および熱水抽出物(例えば、高密度化された木材内に保持された成分を示す)を測定した。灰分(高密度化木材の元の重量に対するパーセンテージとしての灰分の重量)は、ASTM D2584-18(表題「硬化した強化樹脂の発火損失の標準試験方法」)に従って測定され、2018年10月8日に、ASTM D5630-13(表題「プラスチック中の灰分の標準試験方法」)により、および2014年4月1日に、ISO 3451-1:2019(表題「プラスチック-灰分の測定-第1部:一般的方法」)により公表され、また2019年2月に公表され、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
図7Bに示されるように、in situリグニン修飾を有する高密度化木材は、浸透した化学物質から生じる塩含有量(例えば、ナトリウム塩)の増加および/または化学処理後および高密度化前のすすぎ工程の欠如のために、部分的に脱リグニン化した高密度化木材よりも実質的に高い灰含有量(例えば、11.8%対1.6%)を示す。
【0098】
熱水抽出物(高密度化木材の元の重量の百分率としての水の蒸発後の残渣の重量)は、「木材の水溶性の標準試験法」と題するASTM D1 10-84(2007)に従って測定され、2013年9月10日に公表され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
図7Cに示すように、in situリグニン修飾を有する高密度化木材は、部分的に脱リグニン化された高密度化木材よりも実質的に高い熱水抽出物(例えば、30.1%対11.2%)を示す。高密度化の前にすすぎがないので、リグニン、ヘミセルロース、およびセルロースの分解生成物は、in situリグニン修飾によって高密度化木材の細孔内に保持することができ、この分解生成物(およびそれによって形成される塩)は、その後、熱水抽出物を介して測定することができる。対照的に、分解生成物および/または塩は、高密度化の前にすすぎによって部分的に脱リグニンされた木材から除去される。
【0099】
in situリグニン修飾プロセスにおいて、アルカリ性化学物質(例えば、NaOH)は、木材中のリグニン、ヘミセルロース、およびセルロースと主に反応する。したがって、修飾プロセスの主な生成物は、有機塩である。これらの塩の化学組成を評価するために、部分的に脱リグニンされ、高密度化された木材および高密度化された木材からの熱水抽出物溶液(例えば、
図7Cについて得られたもの)を、in situリグニン修飾を用いて、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESLMS)による分析に供した。特に、各試料の熱水抽出液は、粉末状の各木材3gを200mLの水凝縮物還流に4時間浸漬し(例えば、粉砕により)、その後、溶液を質量分析計に導入して調製した。
図7Dは、in situリグニン修飾試料を用いて高密度化木材について得られた質量スペクトルを示し、
図7Eは、部分的に脱リグニン化され高密度化木材試料について得られた質量スペクトルを示す。
図7Dに示されるように、in situリグニン修飾試料は、
図7Eの部分的に脱リグニン化された試料よりも、保持された有機塩(各図において同定されたグルコン酸塩のナトリウム塩のピークを有する)に対応する実質的により高いピークを示す。
【0100】
高密度化プロセス中における廃水(例えば、乾燥中に蒸発する実質的に清浄な流体蒸気とは対照的に、リグニン修飾からの分解生成物および/または化学物質を含有する流体)の生成を回避するために、in situリグニン修飾後の軟化木材中の水分の一部を、高密度化の前に除去することができる。別の製造例では、バスウッド(10cm×5cm×0.5cm)片に、上記と同様の方法で3% NaOHを浸透させた。得られた化学浸透木材は、75重量%の含水量を有していた。次いで、化学的に浸透させた木材を、上記と同様の方法で蒸気処理を用いて加熱し、軟化した木材を得た。特に、蒸気加熱が完了した後、反応器内の圧力を排気し、それによって試料中の水分の~50%を除去し、軟化した木材が34.5重量%の含水量を有するようにした。木材試料のサイズが小さいほど、
図6Bの木材試料の処理と比較して、化学浸透ステップ中により多くの水分が導入され、蒸気加熱ステップ中により多くの水分が除去されることが可能になることに留意されたい。高密度化の前に追加の水分を除去するために、軟化した木材を、~15重量%の含水量を有するまで周囲空気中で予備乾燥した。次いで、予備乾燥させた木材を、プレスによって高密度化に供した。in situリグニン修飾を有する最終高密度化木材は、~5.7重量%の含水量を有した。高密度化中および高密度化後に、木材試料から液体水は生成されなかった。
【0101】
軟化した竹は、竹片に4% NaOHを浸透させることによって調製した。次いで、圧力反応器(例えば、
図5Aの反応器500)内で、~160℃の温度で1時間、水蒸気を用いてNaOH浸透竹を加熱した。加熱後、反応器の圧力逃がし弁を開き、竹の水分を蒸気の形で容器から放出した。高密度化された竹を得るために、軟化された竹は、その後、2段階で圧縮された。第1段階の間、軟化した竹を、~1MPaの圧力および~66℃の温度で~5分間、最初にプレスした。第2段階の間、軟化した竹を~5MPaの圧力および~120℃の温度で~20分間更にプレスして、改善された機械的特性を有する高密度の竹を得た。例えば、
図7の機械的試験結果に示されるように(長手方向の成長方向に平行な方向に沿って引張値が測定される)、高密度化された竹は、510MPa(例えば、511.4+13.5MPa)の機械的強度を有することができ、これは、天然竹よりもはるかに大きい。高密度化した竹の厚さは、元の竹片の厚さの約50%であった。自己高密度化木材は、1片のバスウッドに3% NaOHを浸透させることによって調製した。次いで、NaOHを浸透させたバスウッドを、圧力反応器(例えば、
図5Aの反応器500)中で、~160℃の温度で1時間、蒸気を使用して加熱した。加熱後、反応器の圧力逃がし弁を開き、水槽内の水分を蒸気の形で容器から放出した。自己高密度化されたバスウッドを得るために、軟化したバスウッドを室温で24時間空気中において乾燥させ、改善された機械的特性を有する部分的に崩壊した微細構造を得た。特に、乾燥後、自己高密度化されたバスウッドは、~1.05g/cm
3の密度を有し、一方、元の天然バスウッドは、~0.4g/cm
3の密度を有した。
図8の機械的試験結果に示されるように(長手方向の成長方向に平行な方向に沿って引張値が測定される)、自己高密度化されたバスウッドは、~300MPa(例えば、303.7±10.1MPa)の機械的強度を有することができ、これは、依然として、天然のバスウッドの機械的強度よりもはるかに大きい。
【0102】
開示された技術の更なる例
開示された主題の上述の実装を考慮して、本出願は、以下に列挙される付記における追加の例を開示する。単独での付記の1つの特徴、または組み合わされた2つ以上の付記の特徴、および任意選択で、1つ以上の更なる付記の1つ以上の特徴と組み合わせた更なる付記も、本出願の開示の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0103】
付記1.
(a)1つまたは複数の化学溶液を天然繊維性植物材料片に浸透させることと、
(b)(a)の後、1つ以上の化学溶液をその中に有する天然繊維性植物材料片を、その中に第1の時間の間少なくとも80℃の第1の温度に供して、繊維性植物材料片中の軟化したリグニン片を生成することと、を含み、
(b)の後の軟化した繊維性植物材料片中の修飾リグニンの含有量が(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり、
(b)の後、軟化した天然繊維性植物材料片中に保持される修飾リグニンは、(a)の前の転園繊維性植物材料中の天然リグニンのそれよりも短い高分子鎖を有する、方法。
【0104】
付記2.
(b)の後の軟化片中の修飾ヘミセルロースの含有量が、(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1の方法。
【0105】
付記3.
(b)の後の繊維性植物材料の軟化片は、1種以上の化学溶液の塩を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1条のいずれか1項の方法。
【0106】
付記4.
塩は、繊維性植物材料の軟化片内に固定化された実質的にpH中性の塩である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記3に記載の方法。
【0107】
付記5.
塩は、1つ以上の化学溶液と、(b)の間に1つ以上の化学溶液によって生成された天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの酸性分解生成物との反応によって形成される、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記3または4の方法。
【0108】
付記6.
1つ以上の化学溶液は、アルカリ性溶液を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~5のいずれか1項の方法。
【0109】
付記7.
1つ以上の化学溶液は、p-トルエンスルホン酸、NaOH、NaOH + Na2SO4、NaOH + Na2SO4、NaOH + Na2S、NaHSO3 + SO2 + H2O、NaHSO3 + Na2SO3、NaOH + Na2SO3、NaOH/NaH2O3 + AQ、NaOH/Na2S + AQ、NaOH + Na2SO3 + AQ、Na2SO3 + NaOH + CH3OH + AQ、NaHSO3 + SO2 + AQ、NaOH + Na2Sxを含み、ここで、AQは、アントラキノンであり、上記のいずれかは、LiOHまたはKOHによって置き換えられたNaOH、または上記のいずれかの組合せ、を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~6のいずれか1項の方法。
【0110】
付記8.
第1の温度は、80~180℃の範囲内である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~7のいずれか1項の方法。
【0111】
付記9.
第1の温度は、120~160℃の範囲内である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~8のいずれか1項の方法。
【0112】
付記10.
(b)の間において、天然繊維材料片に浸透した1つ以上の化学溶液が消費される、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~9のいずれか1項の方法。
【0113】
付記11.
(b)の間において、天然繊維材料片に浸透した1種以上の化学溶液の少なくとも90%が消費される、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~10のいずれか1項の方法。
【0114】
付記12.
(b)の後の繊維性植物材料の軟化片は、実質的に中性のpHを有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~11のいずれか1項の方法。
【0115】
付記13.
第1の時間は、少なくとも1時間である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~12のいずれか1項の方法。
【0116】
付記14.
第1の時間は、1~5時間(両端を含む)の範囲である、本明細書のいずれかの項または例、特に付記1~13のいずれか1項の方法。
【0117】
付記15.
(a)の前の天然繊維性植物材料片の第1の含水量は、(a)の後の1つ以上の化学溶液を含む天然繊維性植物材料片の第2の含水量より少なく、
(b)の後の軟化した繊維性植物材料片の第3の含水量は、第1の含水量と第2の含水量との間である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~14のいずれか1項の方法。
【0118】
付記16.
第1の含水量は20重量%未満であり、
第2の含水量は50重量%超であり、
第3の含水量は50重量%未満であり、
または、上記の任意の組合せ、である、本明細書の任意の項または例、特に、付記15の方法。
【0119】
付記17.
(b)の第1の温度に供することは、蒸気を使用して、天然繊維性植物材料片をその中の1つ以上の化学溶液で加熱することを含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~16のいずれか1項の方法。
【0120】
付記18.
蒸気を使用する加熱は、天然繊維性植物材料片を用いて、その中の1つ以上の化学溶液と共に、加圧反応器中で、またはフロースルー蒸気反応器中で実施される、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記17の方法。
【0121】
付記19.
(b)の後に、
(c)繊維性植物材料の軟化片を圧縮して、繊維性植物材料の高密度化片を生成すること、
(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも大きい第1の密度を有すること、
を更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0122】
付記20.
(b)は、繊維性植物材料の高密度化片を生成するために、第1の温度に同時に供しながら繊維性植物材料の軟化片を圧縮することを含み、(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも高い第1の密度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0123】
付記21.
第1の密度は、少なくとも1.15g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~20のいずれか1項に記載の方法。
【0124】
付記22.第1の密度は、少なくとも1.2g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~21のいずれか1項に記載の方法。
【0125】
付記23.
第1の密度は、少なくとも1.3g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~22のいずれか1項に記載の方法。
【0126】
付記24
第2の密度は、1.0g/cm3未満である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~23のいずれか1項の方法。
【0127】
付記25.
圧縮は、繊維性植物材料の軟化片の長手方向の成長方向と交差する方向で行われる、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~24のいずれか1項に記載の方法。
【0128】
付記26.
(c)の前の繊維性植物材料の軟化片は、繊維性植物材料の高密度化片の長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に沿った第2の厚さの少なくとも2倍で、長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に沿った第1の厚さを有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~25のいずれか1項に記載の方法。
【0129】
付記27.
第1の厚さは、第2の厚さの3~5倍である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記26の方法。
【0130】
付記28.
(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、500nm~2500nm(両端を含む)の第1の波長範囲において35%以下の最大反射率を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~27のいずれか1項の方法。
【0131】
付記29.
(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片の、500nm~1000nm(両端を含む)の第2の波長範囲にわたる反射率は、0~20%(両端を含む)の範囲内である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~28のいずれか1項に記載の方法。
【0132】
付記30.
(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも500MPaの強度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~29のいずれか1項の方法。
【0133】
付記31.
圧縮することは、繊維性植物材料の軟化片を少なくとも5MPaの圧力でプレスすることを含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~30のいずれか1項に記載の方法。
【0134】
付記32.
圧縮することは、繊維性植物材料の軟化片を、5~20MPa(両端を含む)の範囲の圧力でプレスすることを含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~31のいずれか1項に記載の方法。
【0135】
付記33
圧縮することは、少なくとも80℃の第2の温度に供されながら、繊維性植物材料の軟化片をプレスすることを含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~32のいずれか1項に記載の方法。
【0136】
付記34.
第2の温度は、両端値を含めて80~180℃の範囲である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記33に記載の方法。
【0137】
付記35.
第2の温度は、100~160℃(両端値を含む)の範囲である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記33~34のいずれか1項に記載の方法。
【0138】
付記36.
圧縮することは、繊維性植物材料の軟化した片を第1の圧力で第2の時間プレスし、その後、第2の圧力で第3の時間更にプレスすることを含み、
ここで、(i)第2の圧力は、第1の圧力よりも高く、(ii)第3の時間は、第2の時間よりも長く、または(i)および(ii)の両方である、
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~35のいずれか1項の方法。
【0139】
付記37.
第1の圧力での第2の時間のプレスは、軟化された片を第1のプレス温度に供する間に行われ、および/または第2の圧力での第3の時間のプレスは、軟化された片を第1のプレス温度よりも高い第2のプレス温度に供する間に行われる、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記36の方法。
【0140】
付記38.
第1の圧力は、約1MPa以下であり
第2の圧力は、約5MPa以上であり、
第1の時間は、約5分以下であり、
第2の時間は、約20分以上であり、
第1のプレス温度は、約65℃以下であり、
第2のプレス温度は、約120℃以上であり、
または、上記の任意の組合せ、である、
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記37の方法。
【0141】
付記39.
(a)の前の天然繊維性植物材料片の第1の含水量は、(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片の第4の含水量よりも大きい、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~38のいずれか1項の方法。
【0142】
付記40.
第1の含水量は、10~20重量%(両端を含む)の範囲であり、
第4の含水量は、10重量%未満であり、
または、上記の両方である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記39の方法。
【0143】
付記41.
(c)の後の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり、
(c)の後の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、(a)の前の天然繊維性植物材料の片中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%であり、
または、上記の両方である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~40のいずれか1項の方法。
【0144】
付記42.
(c)の後、繊維性植物材料の高密度化片は、1つ以上の化学溶液の塩を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~41のいずれか1項の方法。
【0145】
付記43.
(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、実質的に中性のpHを有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~42のいずれか1項の方法。
【0146】
付記44.
繊維性植物材料の高密度化片は、(c)の前に1つまたは複数の化学溶液を除去するために、いかなるすすぎも行わずに形成される、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~43のいずれか1項に記載の方法。
【0147】
付記45.
(b)の後に、
繊維性植物材料の軟化片を乾燥させて、天然繊維性植物材料の天然微細構造中の管腔が崩壊して、繊維性植物材料の自己高密度化片を形成すること、を更に含み、
繊維性植物材料の自己高密度化片は、(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも高い第3の密度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0148】
付記46.
乾燥は、空気中および/または室温での乾燥を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記45に記載の方法。
【0149】
付記47.
第3の密度は、1.0g/cm3より大きく、および/または第2の密度は、0.5g/cm3より小さい、本明細書のいずれかの項または例の方法、特に、付記45~46のいずれか1項の方法。
【0150】
付記48.
繊維性植物材料の自己高密度化片は、300MPaよりも大きい強度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記45~47のいずれか1項の方法。
【0151】
付記49.
(b)の後に、繊維性植物材料の軟化片を乾燥させて、天然繊維性植物材料の天然微細構造の開放腔を保持する乾燥片を形成することを更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0152】
付記50.
乾燥は、凍結乾燥、臨界点乾燥、溶媒交換、またはそれらの任意の組合せ、を含む、本明細書の任意の項または例、特に、付記49に記載の方法。
【0153】
付記51.
乾燥片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に垂直な方向に実質的に弾性であり、長手方向の成長方向に平行な方向に実質的に非弾性である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記49~50のいずれか1項の方法。
【0154】
付記52.
(b)の後に、
(d)繊維性植物材料の軟化した断片を乾燥させて、繊維性植物材料のセルロース系長手方向細胞の少なくともいくつかの管腔が崩壊し、乾燥した断片が15重量%以下の含水量を有するように、そこから水分を除去すること;
(e)乾燥片に流体ショック処理を行って、繊維性植物材料の再水和片を得、流体ショック処理は、乾燥片を水分に曝露すること、を含み、再水和片は、少なくとも35重量%の含水量を有すること;
(f)繊維性植物材料の再水和片を、実質的に平坦な平面構成から非平面の三次元構成に成形すること、
を更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0155】
付記53.
(b)の後に、
繊維性植物材料の軟化片を部分的に乾燥させて、そこからいくらかの水分を除去することと、
少なくとも35%の含水量を有する繊維性植物材料の部分的に乾燥させることと、
繊維性植物材料の部分的に乾燥させた片を、実質的に平坦な平面構成から非平面の三次元構成に成形することと、
を更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~18のいずれか1項の方法。
【0156】
付記54.
(f)の間における再水和片の含水量は、少なくとも50重量%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記52~53のいずれか1項の方法。
【0157】
付記55.
(f)の後に、
(g)成形された繊維性植物材料片を乾燥させて、前記繊維性植物材料片から水分を除去し、前記繊維性植物材料片の形状を設定し、かつ、非平面三次元構成の繊維性植物材料の剛性モノリシック片を形成し、
ここで、前記剛性モノリシック片は、15重量%以下の含水量を有すること、
を更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記52~54のいずれか1項の方法。
【0158】
付記56.
(g)の乾燥は、空気またはガス流に曝露すること、空気またはガスの停滞体積に曝露すること、真空に曝露すること、室温に曝露する、室温を超える温度に加熱すること、またはそれらの任意の組合せ、を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記52~55のいずれか1項の方法。
【0159】
付記57.
(a)の前の天然繊維性植物材料片は、セルロース系細胞壁によって形成された開放管腔の天然の微細構造を有し、(b)によって生成された軟化片は、セルロース系細胞壁によって形成された開放管腔を保持する、
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~56のいずれか1項の方法。
【0160】
付記58.
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~57のいずれか1項の方法。
【0161】
付記59.
(a)および(b)は、黒液または他の廃液を生成することなく行われる、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~58のいずれか1項の方法。
【0162】
付記60.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~59のいずれか1項の方法によって形成された、繊維性植物材料の軟化片。
【0163】
付記61.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記1~59のいずれか1項の方法によって形成された繊維性植物材料の高密度化片。
【0164】
付記62.
本明細書のいずれかの項または例、特に、付記49~59のいずれか1項の方法によって形成された、繊維性植物材料の乾燥または成形片。
【0165】
付記63.
少なくとも1.0g/cm3の密度を有する繊維性植物材料の高密度化片と、その中の修飾リグニンとを含み、
前記修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有する、構造。
【0166】
付記64.
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63の構造。
【0167】
付記65.
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、少なくとも20重量%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~64のいずれか1項の構造。
【0168】
付記66.
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~65のいずれか1項の構造。
【0169】
付記67.
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、少なくとも15重量%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~66のいずれか1項の構造。
【0170】
付記68.
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.15g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~67のいずれか1項の構造。
【0171】
付記69.
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.2g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~68のいずれか1項の構造。
【0172】
付記70.
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.3g/cm3である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~69のいずれか1項の構造。
【0173】
付記71.
天然繊維性植物材料の密度は、1.0g/cm3未満である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~70のいずれか1項の構造。
【0174】
付記72.
繊維性植物材料の高密度化片は、微細構造繊維性植物材料内に固定化されたアルカリ性化学物質の塩を含むか、またはその塩を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~71のいずれか1項の構造。
【0175】
付記73.
塩は、実質的にpH中性である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記72の構造。
【0176】
付記74.
繊維性植物材料の高密度化片は、10重量%未満の含水量を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~73のいずれか1項の構造。
【0177】
付記75.
繊維性植物材料の高密度化片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に圧縮され、繊維性植物材料の微細構造中のセルロース系細胞壁によって形成される管腔が実質的に崩壊している、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~74のいずれか1項の構造。
【0178】
付記76.
繊維性植物材料の高密度化片は、500~2500nm(両端を含む)の付記1の波長範囲における、35%以下の最大反射率を有し、
繊維性植物材料の高密度化片は、500~1000nm(両端を含む)の第2の波長範囲にわたる、0~20%(両端を含む)の反射率を有し、
または、上記の両方である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~75のいずれか1項の構造。
【0179】
付記77.
繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも500MPaの強度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~76のいずれか1項の構造。
【0180】
付記78.
繊維性植物材料の高密度化片は、空気乾燥によって誘導される自己高密度化によって形成され、少なくとも300MPaの強度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~67および71~74のいずれか1項の構造。
【0181】
付記79.
繊維性植物材料の高密度化片は、1.0g/cm3を超える密度を有し、天然繊維性植物材料は、0.5g/cm3未満の密度を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記78の構造。
【0182】
付記80.
高密度化片は、非平面三次元構成を有する、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~79のいずれか1項の構造。
【0183】
付記81.
修飾されたリグニンをその中に有し、天然繊維性植物材料の天然微細構造の開放管腔を保持する繊維性植物材料の乾燥片を含み、
修飾されたリグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンのものよりも短い高分子鎖を有する、構造。
【0184】
付記82.
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾リグニンの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記81の構造。
【0185】
付記83.
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾リグニンの含有量は、少なくとも20重量%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記81~82のいずれか1項の構造。
【0186】
付記84.
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記81~83のいずれか1項の構造。
【0187】
付記85.
繊維性植物材料の乾燥片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、少なくとも15重量%である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記81~84のいずれか1項の構造。
【0188】
付記86.
繊維性植物材料の乾燥片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に垂直な方向に実質的に弾性であり、長手方向の成長方向に平行な方向に実質的に非弾性である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記81~85のいずれか1項の構造。
【0189】
付記87.
高密度化された片または乾燥された片は、本質的に繊維性植物材料からなる、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~86のいずれか1項の構造。
【0190】
付記88.
高密度化片または乾燥片は、その内面、その外面、またはその両方に堆積または形成された非天然粒子を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~87のいずれか1項の構造。
【0191】
付記89.
非天然粒子は、疎水性ナノ粒子を含む、本明細書の任意の項または例、特に、付記88の構造。
付記90.
高密度化片または乾燥片の1つまたは複数の外面上に、疎水性塗料、ポリマーコーティング、および/または耐火性コーティングを更に含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記63~89のいずれか1項の構造。
【0192】
付記91.
第1の耐性コーティングは、窒化ホウ素、モンモリロナイトクレー、ヒドロタルサイト、二酸化ケイ素(SiO2)、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、ホウ砂、トリフェニルホスフェート(TPP)、メラミン、ポリウレタン、ポリリン酸アンモニウム、ホスフェート、ホスファイトエステル、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホスホネート、リン酸二アンモニウム(DAP)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム(MAP)、グアニル尿素ホスフェート(GUP)、リン酸二水素、グアニジン、五酸化アンチモン、またはこれらの任意の組合せ、を含む、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記90の構造。
【0193】
付記92.
高密度化片または乾燥片は、疎水性化学処理、耐候性もしくは耐塩水性のための化学処理、またはその両方に供されている、本明細書のいずれかの項または例、特に、63~91項のいずれか1項の構造。
【0194】
付記93.
(1)疎水性化学処理は、エポキシ樹脂、シリコーンオイル、ポリウレタン、パラフィンエマルジョン、無水酢酸、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、1H、1H、2H、2H-ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、フッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メタクリルオキシメチルトリメチルシラン(MSi)、かご型シルセスキオキサン(POSS)、メチルシリコン酸カリウム(PMS)、ドデシルトリメトキシシラン(DTMS)、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ポリメチルメタクリレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MPS)、疎水性ステアリン酸、両親媒性フッ素化トリブロックアジドコポリマー、ポリフッ化ビニリデンおよびフッ素化シラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの任意の組合せ、を含み;
および(2)耐候性または耐塩性のための化学処理は、銅酸塩(CDDC)、アンモニア性銅第四級(ACQ)、クロム酸銅(CCA)、アンモニア性銅亜鉛を含むヒ酸塩(ACZA)、ナフテン酸銅、酸クロム酸銅、クエン酸銅、アゾール銅、8-ヒドロキシキノリン酸銅、ペンタクロロフェノール、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、クレオソート、二酸化チタン、プロピコナゾール、テブコナゾール、シプロコナゾール、ホウ酸、ホウ砂、有機ヨウ化物(IPBC)、Na2B8O13・4H2O、またはこれらの任意の組合せ、を含む、本明細書の任意の項または例の構造、特に、付記92の構造。
【0195】
付記94.
繊維性植物材料の高密度化片は、少なくとも5%の灰分含有量、少なくとも10%の灰分含有量、少なくとも15%の熱水抽出物、少なくとも20%の熱水抽出物、少なくとも25%の熱水抽出物、少なくとも30%の熱水抽出物、またはそれらの任意の組合せ、を有する、本明細書における任意の項または例、特に、付記61~80および87~93のいずれか1項に記載の構造。
【0196】
付記95.
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、本明細書における任意の項または例、特に、付記63~94のいずれか1項の構造。
【0197】
付記96.
(b)の後、(c)の前に、軟化した繊維性植物材料片を、予備乾燥プロセスにかけることを更に含み、軟化した繊維性植物材料片の含水量が8~30重量%の範囲、または8~20重量%の範囲、または10~20重量%の範囲、またはこれらの任意の組合せ、になるようする、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記19~44のいずれか1項の方法。
【0198】
付記97.
(i)予備乾燥プロセスが繊維性植物材料の含水量を30重量%超から減少させ、(ii)予備乾燥プロセスが繊維性植物材料の含水量を約15重量%まで減少させ、または(i)および(ii)の両方である、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記96の方法。
【0199】
付記98.
予備乾燥の後、(c)の圧縮により、繊維性植物材料から実質的に水が生成されない、本明細書のいずれかの項または例、特に、付記96~97のいずれか1項の方法。
【0200】
結論
例えば、
図1~10および付記1~98に関して、本明細書に図示または説明される特徴のいずれかを、例えば、
図1~10および付記1~98に関して、本明細書に図示または説明される任意の他の特徴と組み合わせて、本明細書に他に図示または具体的に説明されない材料、システム、デバイス、構造、方法、および実施形態を提供することができる。本明細書に記載される全ての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能な場合を除いて、本明細書に記載される任意の他の特徴と組み合わせて使用することができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図示された実施形態は、例にすぎず、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内に入る全てを権利主張する。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つまたは複数の化学溶液を天然繊維性植物材料片に浸透させることと、
(b)前記(a)の後に、1つ以上の化学溶液をその中に有する天然繊維性植物材料片を、繊維性植物材料の軟化片を生成するように第1の時間の間少なくとも80℃の第1の温度に供することと、を含み、
前記(b)の後の軟化片中の修飾リグニンの含有量は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であり、
前記(b)の後の軟化片中に保持された修飾リグニンは、前記(a)の前の天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量よりも短い高分子鎖を有
し、
前記(b)の後、天然繊維性植物材料の軟化片は、前記1つ以上の化学溶液の塩を含む、方法。
【請求項2】
前記(b)の後の軟化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩は、繊維性植物材料の軟化片内に固定化された実質的にpH中性の塩である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩は、前記1つ以上の化学溶液と、前記(b)の間に前記1つ以上の化学溶液によって生成された天然繊維性植物材料片中の天然ヘミセルロースの酸性分解生成物との反応によって形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の温度は、80~180℃の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記(b)の間に、前記天然繊維材料片に浸透した前記1つ以上の化学溶液の少なくとも90%が消費される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記(b)の後の繊維性植物材料の軟化片は、実質的に中性のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記(b)の前記第1の温度に供することは、蒸気を使用して、前記天然繊維性植物材料片を、その中の前記1つ以上の化学溶液と共に加熱することを含
み、
蒸気を用いた前記加熱は、前記天然繊維性植物材料片を用いて、前記1つ以上の化学溶液と共に、圧力反応器中で、またはフロースルー蒸気反応器中で実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記(b)の後に、
(c)繊維性植物材料の軟化片を圧縮して、繊維性植物材料の高密度化片を生成することを更に含み、
前記(c)の後の繊維性植物材料の高密度化片は、前記(a)の前の天然繊維性植物材料の第2の密度よりも大きい第1の密度を有
し、
前記第1の密度は、少なくとも1.15g/cm
3
であり、
前記第2の密度は、1.0g/cm
3
未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮することは、軟化した繊維性植物材料片を第1の圧力で2回目としてプレスし、続いて第2の圧力で3回目に更にプレスし、
ここで、(i)前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも高く、(ii)第3の時間は、第2の時間よりも高く、または(i)および(ii)の両方を含
み、
前記軟化片を第1のプレス温度に供する間に、前記第1の圧力で前記第2の時間の前記プレスを行い、
前記軟化片を前記第1のプレス温度よりも高い第2のプレス温度に供する間に、前記第2の圧力で前記第3の時間の前記プレスを行う、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記(b)の後に、繊維性植物材料の軟化片を乾燥させ、天然の繊維性植物材料の天然の微細構造の開いた管腔を保持する乾燥片を形成することを更に含
み、
前記乾燥は、凍結乾燥、臨界点乾燥、溶媒交換、またはそれらの任意の組合せ、を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記(a)の前の天然繊維性植物材料片は、セルロース系細胞壁によって形成された開放管腔の天然微細構造を有し、前記(b)によって生成された前記軟化片は、前記セルロース系細胞壁によって形成された前記開放管腔を保持する、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記(a)および前記(b)は、黒液または他の廃液を生成することなく行われる、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1.0g/cm
3の密度を有する繊維性植物材料の高密度化片と、その中の修飾リグニンと、を含み、
修飾リグニンは、天然繊維性植物材料中の天然リグニンよりも短い高分子鎖を有
し、
繊維性植物材料の高密度化片は、微細構造の繊維性植物材料内に固定化されたアルカリ性化学物質の塩を含む、構造。
【請求項16】
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾リグニンの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然リグニンの含有量の少なくとも90%であ
り、
繊維性植物材料の高密度化片中の修飾ヘミセルロースの含有量は、天然繊維性植物材料中の天然ヘミセルロースの含有量の少なくとも90%である、請求項
15に記載の構造。
【請求項17】
前記塩は、実質的にpH中性である、請求項
15に記載の構造。
【請求項18】
繊維性植物材料の高密度化片は、繊維性植物材料の長手方向の成長方向に実質的に垂直な方向に圧縮されており、その結果、繊維性植物材料の微細構造中のセルロース系細胞壁によって形成される管腔が実質的に崩壊している、請求項
15に記載の構造。
【請求項19】
繊維性植物材料の高密度化片の密度は、少なくとも1.15g/cm
3であ
り、
天然繊維性植物材料の密度は、1.0g/cm
3
未満である、請求項
15に記載の構造。
【請求項20】
天然繊維性植物材料は、木材、竹、アシ、または草である、請求項
15に記載の構造。
【国際調査報告】