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特表2024-512075三次元印刷のための衝撃改質剤を含む光硬化性樹脂組成物およびこれから作製された硬化歯科用製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】三次元印刷のための衝撃改質剤を含む光硬化性樹脂組成物およびこれから作製された硬化歯科用製品
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240311BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240311BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240311BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/314
B33Y70/00
C08F2/44 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558902
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 US2022071395
(87)【国際公開番号】W WO2022204734
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】17/214,603
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515288292
【氏名又は名称】デンカ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ シュアン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンギュ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA42
4F213AA44
4F213AB04
4F213AB12
4F213AB24
4F213AR15
4F213AR17
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL96
4J011PA78
4J011PB25
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J127AA03
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD431
4J127BE331
4J127BE33Y
4J127BF631
4J127BF63Y
4J127BG271
4J127CB151
4J127CB282
4J127CC021
4J127CC031
4J127CC132
4J127DA48
4J127DA66
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】
光硬化性組成物は、約45から約55重量%の、2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーと、約20から約30重量%の、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約8から約18重量%の、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約5から約15重量%の、コア-シェル構造を有する衝撃改質剤と、約0.2から約5.0重量%の、少なくとも1種類の紫外/可視(UV/Vis)光-光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約45から約55重量%の、2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーと、
約20から約30重量%の、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
約8から約18重量%の、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
約5から約15重量%の、コア-シェル構造を有する衝撃改質剤と、
約0.2から約5.0重量%の、少なくとも1種類の紫外/可視(UV/Vis)光-光重合開始剤と、
少なくとも1つの着色剤と、
を含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーは下記式(1)により表される化合物であり、
【化1】
式(1)
式中、芳香環上の2つの置換基はオルト、メタまたはパラ位のいずれかにあり、Rは2から8の炭素原子を有する二価鎖炭化水素基であり、置換基を有さず、および、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーは下記式(2)により表され、
【化2】
式(2)
式中、Rは6から20の炭素原子を有し、芳香族構造または脂環構造を有する一価官能基であり、
前記芳香族構造は様々な置換基を有するベンジル基を含み、
前記脂環構造は様々な置換基を有するシクロアルキル基を含み、および、
は独立して、水素原子またはメチル基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレートモノマーは、中間ブロックとして少なくとも1つのエトキシ基および両端に(メタ)アクリレート基を有し、下記式(3)により表され、
【化3】
式(3)
式中、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表し、
nはエトキシ基の繰り返しであり、および、
nは1から6の整数の1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コア-シェル構造を有する衝撃改質剤は、65から85部のジオレフィン、8から14部の、ビニル芳香族モノマーを含む中間層、および、8から20部の、アルキルメタクリレートモノマーを含む外殻を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が硬化された後、前記組成物は、37℃で50から100MPaの曲げ強度、および、25℃で500~1100J/mの総破砕仕事を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の粘度は25℃で1,000~5,000cpsである、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は液体タイプの光硬化性樹脂組成物および三次元印刷プロセスにより、衝撃改質剤を含む組成物を使用して歯科用製品を生成するための方法に関する。特に、本開示は歯科用製品のための十分な硬度および靱性を有する歯科用組成物に関する。そのような組成物は三次元印刷において使用され、特有の義歯床を有する義歯が製造される。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元印刷技術は多数の品物を短期間に生成するために使用されている。光硬化性材料を使用して三次元物品を構築するいくつかの方法が存在する。
【0003】
三次元印刷のための最も効率的な方法の1つは、ステレオリソグラフィー(SLA)法である。ステレオリソグラフィー法では、液体形態である光硬化性材料はバット上で層状にされ、または、シート上で広げられ、層状材料のあらかじめ決められた領域が、デジタルマイクロミラー装置により制御される、または、液晶パネルにより制御される紫外(UV)/可視(Vis)光に曝露される。ステレオリソグラフィー法では、所望の三次元物品が形成されるまで、追加の層が繰り返して、または、連続して置かれ、各層が硬化される。
【0004】
ステレオリソグラフィー法は2つのカテゴリにさらに細分される。1つは、UV/Vis光のラインレーザーを使用して、光硬化性材料上で化学反応を引き起こし、硬化材料を固化させるものである。他の方法は、UV/Vis光の二次元曝露を使用し、材料を硬化させるものである。一般に、第1の方法はステレオリソグラフィー(SLA)として知られ、第2の方法はデジタルライトプロセッシング(DLP)として知られている。
【0005】
三次元印刷のための別の技術はインクジェット印刷法であり、その中で、光硬化性材料および支持材料は同時に噴射され、または、光硬化性材料のみが、単一ノズルまたは一連の小さなノズルを通して、構築プレート上に噴射され、次いで、適用された材料が紫外/可視(UV/Vis)光により硬化される。この方法は、多層噴射法とも呼ばれる。
【0006】
現在のところ、DLPまたはSLA型のいずれかの印刷方法が、その比較的簡単な機械のために、かつ、より低いプリンター価格、および、様々な材料に開かれたシステムのために、インクジェット型印刷システムより一般的である。
【0007】
歯科分野では、歯科用製品、例えばクラウン、ブリッジ、スプリント、マウスガード、ナイトガード、および義歯の大部分が各個人に適するようにカスタマイズされ、よって、大量生産法によりそれらを生成することは困難である。カスタマイズされた歯科用製品を作製するための従来のプロセスは労働集約的で、時間がかかる。しかしながら、3Dプリンティング技術を使用すると、数ミクロンの正確さを有するカスタマイズされた歯科用装置が効果的に生成できる。
【0008】
一般に、従来の歯科用組成物または混合物は徐々に反応し、高い粘度を有する。例えば、(メタ)アクリレート材料、例えばメチルメタクリレート、および高分子量ポリメチルメタクリレートが、人工歯および義歯床樹脂を製造するための材料として使用されてきた。というのも、それらは安価で、良好な透明性、優れた成形性、および良好な物理的特性を有するからである。メチルメタクリレートモノマーは特徴的な匂いを有し、比較的揮発性であるが、一方、高分子量ポリメチルメタクリレートは高い粘度および粘着性を有する。そのため、従来の歯科用組成物は3Dプリンティングに好適でない。
【0009】
しかしながら、三次元印刷技術を使用して歯科用製品を生成する試みがあった。例えば、米国特許第5,496,682号および7,927,538号は、歯科用セラミックのステレオリソグラフィー調製のための光硬化性スリップを開示する。これらの特許文書によれば、易焼結性無機粒子、光硬化性モノマー、光開始剤および分散剤を含む流動性混合物が基材上に広げられ、選択的パターンで硬化される。混合物のその後の層が基材上に適用され、硬化され、三次元物体が構築される。これらの特許文書において開示されるシステムにおいて使用される光硬化性材料は、バインダとしてのみの役割を果たし、印刷された形状が焼結プロセスにより固化されるまで、ある一定の形態を保持する。
【0010】
それにもかかわらず、混合物の主成分は易焼結性無機粒子であるので、焼結プロセスは有機バインダを除去することを要求される。加えて、これらの特許文書において開示される方法はセラミック人工歯のみを提供し、これは衝撃により容易に破壊され得る。
【0011】
さらに、米国特許第7,476,347号および米国特許出願公開第2011/0049738号は、インクジェット型三次元印刷により、一体となった歯と義歯床を有する義歯を作製するためのプロセスを開示する。これらの特許文書では、型内の硬化標本は優れた機械的特性を示した。
【0012】
しかしながら、これらの特許文書では、ワックス様の重合可能な材料がプリンターにおいて使用され、フィラーを有さないワックス様の重合可能な材料は容易に入手できないので、カスタム合成する必要があり、追加の時間およびコストが発生する。その上、これらの特許文書において開示されるいくつかの実施形態によれば、70%超のフィラーと混合された材料は、それらの遅い反応速度および高い粘度のために、型内で硬化するのに10分を必要とした。さらに、異なる粒子サイズを有するフィラーと混合した組成物を三次元印刷において噴射させるために使用するには困難があった。
【0013】
米国特許第10,519,319 B2号は、三次元印刷により歯科用製品を作製するための方法および材料を開示する。この特許文書では、材料は、20-80wt%のエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートと、0から75wt%のジウレタンジメタクリレートと、0から10wt%のトリエチレングリコールジメタクリレートと、0.01から10wt%の光開始剤とから構成される。
【0014】
ある一定の歯科用製品、例えばスプリント、ナイトガード、および義歯は、適切な強度および靱性を有することが要求される。従来の歯科用製品におけるこれらの強度および靱性特性は、熱可塑性ポリマーのポリメチルメタクリレート(PMMA)およびメチルメタクリレートモノマーの混合物を最適化することにより達成することができる。しかしながら、適切な強度および靱性を得るための原料が限られるため、歯科用製品のための3Dプリンティング法を使用する光硬化性材料の入手可能性が制限される。
【0015】
歯科用製品の材料強度値、例えば、曲げ強度および曲げ弾性率として表される曲げ強さは材料使用の良好な指標となる。例えば、マウスガードは歯へのダメージを低減させるため、および、ブラキシングまたは歯ぎしりに関連する雑音を防止するために使用される。歯科用製品において使用される材料の強度および剛性が高すぎる場合、使用者がそれを装着した時に不快感を与え、および、それは容易に破壊され得る。しかしながら、歯科用製品において使用される材料が柔らかく、かつ、強靱である場合、快適性が増加し、破壊される傾向が小さくなり、というのも、材料は、低下した強度および剛性のために力により容易に変形されるからである。そのため、歯科用製品において使用される材料において強度および靱性の両方を維持することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,496,682号明細書
【特許文献2】米国特許第7,927,538号明細書
【特許文献3】米国特許第7,476,347号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0049738号明細書
【特許文献5】米国特許第10,519,319号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
歯科用製品のために使用される光硬化性液体組成物、および、組成物および三次元印刷技術を使用して義歯を作製するための方法が提供される。歯科補綴物を製造するための発明の組成物は三次元印刷に好適な粘度および硬化速度を有し、義歯床に望まれる適切な屈曲性能および靱性特性が提供される。発明の組成物はまた、歯科補綴物を製造するのに有効な動作時間を与える。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの例示的な実施形態によれば、組成物は、約45から約55重量%の、2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマー(I)と、約20から約30重量%の、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマー(II)と、約8から約18重量%の、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレート((meth)acylate)モノマー(III)と、約5から約15重量%の、コア-シェル構造を有する衝撃改質剤(IV)と、約0.2から約5.0重量%の、少なくとも1種類の紫外/可視(UV/Vis)光-光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含む。
【0019】
2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーは下記式(1)により表される化合物であり、
【化1】
式(1)
式中、Rは、独立して置換基を有し得る、二価直鎖または分枝アルカン基であり、および、Rは独立したメチル基または水素原子である。式(1)の1つの態様では、Rは2から8の炭素原子を有する二価鎖炭化水素基であり、置換基を有さず、および、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表す。式(1)では、芳香環上の2つの置換基はオルト、メタまたはパラ位のいずれかとすることができる。
【0020】
アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも1つの、下記式(2)により表される化合物を含み、
【化2】
式(2)
式中、Rは6から20の炭素原子を有し、芳香族構造または脂環構造を有する一価官能基である。芳香族構造は様々な置換基を有するベンジル基であってもよく、脂環構造は様々な置換基を有するシクロアルキル基であってもよい。式(2)では、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表す。
【0021】
エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレート((meth)acylate)モノマーは中間ブロックとして少なくとも1つのエトキシ基を、両端に(メタ)アクリレート基を有し、下記式(3)により表され、
【化3】
式(3)
式中、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表し、nはエトキシ基の繰り返しであり、nは1から6の整数の1つである。
【0022】
1つの態様では、衝撃改質剤は、ゴム状コア、例えばジオレフィンを含むコポリマー、主に硬質ポリマー、例えばビニル芳香族モノマーを含むポリマーから構成される内部グラフトステージ、主にアルキルアクリレートモノマーから構成される中間シーラーステージ、および、主にアルキルメタクリレートモノマーから構成される外殻を有するコア-シェルポリマーであり、コア-シェルポリマーのマトリクスとの適合性が提供される。
【0023】
アクリレート樹脂配合物中のコア-シェル型衝撃改質剤は、液体状態混合物中、および硬化後に優れた分散性を提供し、組成物の硬度に影響せずに靱性を改善する優れた効果を提供する。
【0024】
本明細書で開示される実施形態は、歯科補綴物、口腔内使用のための医療装置のステレオリソグラフィーによる生成のために使用され、後硬化に供した後、十分な靱性および優れた曲げ強度および弾性率を有する、光硬化性組成物を提供する。
【0025】
衝撃改質剤を含む光硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化製品は、500-1100J/m2の総破砕仕事(total fracture work)および50-100MPaの曲げ強度を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、三次元印刷システムを使用して強靱化歯科補綴物を生成するために使用される光硬化性組成物に関する。本開示による光硬化性組成物は、約45から約55重量%の、2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマー(I)と、約20から約30重量%の、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマー(II)と、約8から約18重量%の、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレート((meth)acylate)モノマー(III)と、約5から約15重量%の、コア-シェル構造を有する衝撃改質剤(IV)と、約0.2から約5.0重量%の、少なくとも1種類の紫外/可視(UV/Vis)光-光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含む。
【0027】
以上で同定された成分(I)から(IV)の組み合わせにより、好適な粘度を有し、SLAまたはDLP技術に基づく3Dプリンティングのための高速レーザー硬化を可能にする光硬化性組成物が得られることが見出されている。本明細書で開示される組成物は、後硬化後に優れた破壊靱性および十分な曲げ強さおよび弾性率を有する三次元物品を提供し、よって、歯科補綴物の製造のための材料として好適である。
【0028】
本明細書で開示される組成物は、後硬化により得られる光硬化性製品において、50-100MPaの範囲の曲げ強度、および、1500-2500MPaの範囲の曲げ弾性率、および500-1100J/mの総破砕仕事を有する。後硬化後の光硬化性組成物の大部分は、曲げ特性と破壊靱性の間の両価傾向特性のために曲げ強度および曲げ弾性率または破壊靱性のいずれかを満たす。
【0029】
一般に、曲げ強度および曲げ弾性率は通常、材料の硬度を表し、破壊靱性は可撓性および軟特性と関連する。よって、組成物の曲げ強度および曲げ弾性率が高い値を示す場合、破壊靱性値は低い可能性がある。光硬化性組成物、特定的には3D印刷可能な樹脂組成物について十分な曲げ特性および破壊靱性を維持することが研究されている。
【0030】
歯科用用途では、光硬化性組成物の硬化製品についてヒト体温での最小50Mpaの曲げ強度および1500Mpaの曲げ弾性率が必要とされ、というのも、それは、その目的のための十分な硬度を提供するからである。光硬化性組成物の硬化製品について最大100MPaの曲げ強度および2500MPaの曲げ弾性率は、口腔内で使用される時に疼痛を引き起こさずに十分な硬度を提供する。
【0031】
本明細書で開示される光硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化製品の曲げ強度は好ましくは、50MPaから100MPa、特に好ましくは65MPaから90MPaである。例えば、好適な曲げ強度の範囲は65MPaから90Mpaである。さらに、本明細書で開示される光硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化製品の総破砕仕事は好ましくは500J/m以上である。この範囲内では、より良好な有用性および強度が得られ得る。硬化製品の全破砕仕事は好ましくは少なくとも500J/m、より好ましくは少なくとも600J/mである。総破砕仕事の上限は特定される必要はないが、好ましくは、例えば、1200J/m未満である。
【0032】
上記範囲を設定することにより、口腔内で使用される医療装置、例えば、義歯に形成される場合、疼痛を引き起こさずに良好な使用感を得ることができ、装着後容易に除去することができる。さらに、曲げ強度は100MPa以下であり、総破砕仕事は500J/m以上であるので、口腔内の医療装置として使用される場合、取り付けおよび取り外しが容易であり、耐久性と関連する、取付けおよび取り外しが繰り返される。
【0033】
ISO 20795-2によれば、歯科矯正目的で使用されるには、37℃で、曲げ強度は50MPa以上を必要とし、曲げ弾性率は1500MPa以上を必要とする。そのため、本明細書で開示される光硬化性組成物の硬化製品は、好適な使用感、強度および耐久性が達成できれば、口腔内の歯科矯正装置として使用することができる。
【0034】
曲げ強度を抑制しながら総破砕仕事を高く維持することにより、優れた有用性および強度を有する歯科矯正装置を作製することが可能である。さらに、曲げ強度および総破砕仕事を上記範囲内で設定することにより、口腔内で歯科矯正装置として使用される時の取り付けおよび取り外しが容易になり、繰り返して取付けおよび取り外しされる場合に優れた耐久性を有する歯科矯正装置を得ることができる。
【0035】
本明細書で開示される光硬化性組成物は、ステレオリソグラフィーを使用して歯科用製品をプリントアウトするのに好適である。ステレオリソグラフィーは、光硬化性混合物のある一定の部分を紫外線レーザー光に曝露することによる三次元印刷法の1つである。本明細書で開示される光硬化性組成物は、SLAまたはDLP型ステレオリソグラフィーに特に好適である。
【0036】
近年、多数の三次元印刷技術が導入され、三次元物体を生成するために使用可能である。例えば、三次元印刷技術としては、下記が挙げられる:選択的レーザー焼結(SLS)、熱溶解造形(FDM)、積層物体製造(LOM)、三次元インクジェット印刷、およびステレオリソグラフィー。これらの三次元印刷技術は様々な分野、例えば、宝飾、履物、建築術、工学および建設、自動車、航空宇宙、歯科および医療産業、教育、地図情報システム、土木工学、他多数において使用を見出している。
【0037】
これらの技術の中で、ステレオリソグラフィー技術を使用する三次元印刷法が、速度、低コスト、高解像度、および使い心地について最も効果的に最適化され、それにより、それらは工学的設計の概念段階および早い段階の機能性試験中での可視化に好適なものとされる。ステレオリソグラフィー技術を使用する3Dプリンターは、光硬化性組成物にスポット形状(SLA型)または二次元(DLP)紫外線レーザー光を照射することにより三次元構造を得るために使用される。
【0038】
本明細書で開示される光硬化性組成物は容器内で保存され、スポット形状または二次元形状レーザー光が光硬化性混合物に容器の透明な底を介して照射され、構築プレート上で所望の厚さを有するある一定形状の層が形成される。所望の厚さが構築プレートと容器の間の予め設定されたギャップにより維持される。層がUV/Vis光により硬化されるとすぐに、構築プレートはプリンター設定パラメータに従い、容器から離れ、あらたな材料が容器と構築プレートの間のギャップを満たす。あらたな材料で満たした後、構築プレートは容器を下って予め設定されたギャップだけ移動し、あらたな材料が、スポット形状または二次元形状レーザー光に再び曝露され、ある一定形状の層が作製される。
【0039】
このプロセスが、全ての層が形成されるまで繰り返される。この印刷方法によれば、たった1つの材料が容器に投入され、その容器はある一定度、例えば30℃まで、いくつかのSLAまたはDLP型プリンター内で加熱することができるので、光硬化性組成物の粘度は、インクジェット型3Dプリンターと比べて制限があまりない。インクジェット型3Dプリンターでは、材料は極細ノズルを通過しなければならず、よって、材料の粘度は強く制限される。
【0040】
本明細書で開示される3D印刷可能な光硬化性組成物は25℃で500mPa.sから6000mPa.sの粘度を有し、ステレオリソグラフィー技術により歯科用製品を生成するのに好適である。組成物の粘度は、ISO 2555:2018にしたがい、単一円筒形回転粘度計法を使用して、25℃で100rpmを用い決定される。粘度の下限は好ましくは500mPa.s、より好ましくは1000mPa.sである。粘度の上限は好ましくは6000mPa.s、より好ましくは5000mPa.sである。組成物が粘性すぎる場合、ステレオリソグラフィー技術による3Dプリンティングは印刷不良を引き起こし、その印刷時間は低粘性組成物よりも長くかかるであろう。
【0041】
3Dプリンターを使用して歯科補綴物を製造するための発明の組成物は、好適な粘度および硬化速度を有し、義歯床に望まれる適切な屈曲性能および靱性特性が提供される。発明の組成物はまた、歯科補綴物を製造するのに有効な動作時間を与える。
【0042】
1つの例示的な実施形態によれば、組成物は、約45から約55重量%の、2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマー(I)と、約20から約30重量%の、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマー(II)と、約8から約18重量%の、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレートモノマー(III)と、約5から約15重量%の、コア-シェル構造を有する衝撃改質剤(IV)と、約0.2から約5.0重量%の、少なくとも1種類の紫外/可視(UV/Vis)光-光重合開始剤と、少なくとも1つの着色剤とを含む。
【0043】
2つのウレタン結合および2つのアクリロイルオキシ基を有する芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーは下記式(1)により表される化合物であり、
【化4】
式(1)
式中、Rは、独立して置換基を有し得る、二価直鎖または分枝アルカン基であり、および、Rは独立したメチル基または水素原子である。式(1)では、Rは2から8の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、置換基を有さず、および、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表す。芳香環上の2つの置換基は下記式により示されるようにオルト、メタまたはパラ位のいずれかとすることができる。
【化5】
【0044】
式(1)では、Rは独立して置換基を有し得る二価直鎖または分枝アルカン基である。直鎖(liner)または分枝アルカン基は好ましくは2から10の炭素原子、より好ましくは2から6の炭素原子を有する。置換基は下記を有してもよい:水素原子、1から4の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、など、1から4の炭素原子を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ(propyoxy)基、ブトキシ基、など、3から6の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、など、および、アルコキシフェニル基、例えばメトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、など。
【0045】
式(1)では、以下で示されるウレタン結合が、ヒドロキシル基とイソシアネート基の間の反応により形成される。
【化6】
【0046】
ウレタンジ(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシルアクリレートモノマーおよびイソシアネートモノマーから公知の方法で調製され得る。それは、モノヒドロキシル末端アクリレートモノマーおよびジイソシアネート末端モノマーの2つの分子を必要とする。ウレタン結合を合成するのに好適な、好ましいモノヒドロキシル末端アクリレートモノマーは下記の通り提示される。
【化7】
【化8】
【0047】
ウレタン結合を合成するのに好ましいジイソシアネートモノマーは下記の通り提示される。
【化9】
【0048】
1つの実施形態例では、アクリロイル基を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、組成物中、成分(II)として使用することができ、下記一般式(2)により表され、
【化10】
式(2)
式中、Rは6から20の炭素原子を有する、または、脂環またはベンジル構造を有する一価官能基である。6から20の炭素原子を有する一価官能基の例としては、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基、アリーレンアルキレン(alkyene)アリーレン基、シクロアルキル基、およびベンジル基が挙げられる。式(2)では、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表す。
【0049】
好ましくは、6から20の炭素原子を有するRを有する式(2)は下記構造により表される構造を有してもよい。
【化11】
【0050】
さらに、式(2)では、脂環またはベンジル構造を有するRは下記構造により表すことができる。
【化12】
【0051】
1つの実施形態例では、エトキシ基を有する二官能性(メタ)アクリレートモノマーは中間ブロックとして少なくとも1つのエトキシ基、両端に(メタ)アクリレート基を有し、下記式(3)により表される。
【化13】
式(3)
【0052】
式(3)では、Rは独立して、水素原子またはメチル基を表し、nはエトキシ基の繰り返しであり、nは1から6の整数のいずれか一つであってもよい。
【0053】
好ましくは、式(3)におけるエトキシ基の数は1、2、または3である。その構造は下記構造により表される。
【化14】
【化15】
【0054】
衝撃改質剤は様々な熱可塑性樹脂または硬化性混合物に、最終樹脂の靱性を強化するための添加物として混入されていた。様々な型の衝撃改質剤、例えば反応性液状ゴムまたはニトリルゴムが硬化性混合物中に存在するが、反応性液状ゴムは硬化時に相分離を受け、硬化製品の物理的特性が硬化製品の形態の変化により劣化する。
【0055】
そのような問題を防止するために、コア-シェル型の衝撃改質剤が、硬化性樹脂配合物において使用され得る。コア-シェル型の衝撃改質剤は多層-構造ポリマー粒子である。改質剤は通常、低いガラス転移を有するゴムコア、例えばジオレフィンまたはアクリル酸ブチルおよびメチルメタクリレートシェルを有する。いくつかの衝撃改質剤はポリスチレンでできた中間層を有し得る。低いガラス転移を有するコアは、低温で耐衝撃性および靱性を提供し、シェルはマトリクス樹脂との適合性およびカップリングを提供し、硬化製品を強靱化するのに有効である。
【0056】
好ましくは、コア-シェル型の衝撃改質剤は、65-85部の、-80℃より低いガラス転移温度を有するジオレフィンコア、8から14部の、シーリング効果を提供するための、ビニル芳香族モノマーでできた中間層、および8から20部の、アルキルメタクリレートモノマーから構成されるシェルから構成される。さらに、3層からなるコアシェル型の衝撃改質剤の粒子サイズは200μm未満である。
【0057】
フリーラジカル光開始剤の例示的な例としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:アセトフェノン、アニソイン、アントラキノン(antraquinone)、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル(either)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、ジベンゾスベレノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、4’-エトキシアセトフェノン、2-エチルアントラキノン、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、ベンゾイルぎ酸メチル、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオ-フェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、チオキサンテン-9-オン、トリアクリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩。
【0058】
前に同定したフリーラジカル光開始剤の中で、アシルホスフィンオキシド化合物はUV/Vis光において優れた重合性を提供し、近年、歯科分野で使用されている。アシルホスフィンオキシド化合物から構成される可視光光開始剤を使用する組成物は、薄層表面の優れた硬化性を示したが、それは、三次元印刷にとって重要な特性である。そのため、人工歯および義歯床のために使用される可視光光開始剤は(ビス)アシルホスフィンオキシド、または、好ましくはカンファーキノンであってもよい。
【0059】
光開始剤として使用される(ビス)アシルホスフィンオキシドの中で、アシルホスフィンオキシドの例としては、下記が挙げられる:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメチオキシ(dimethyoxy)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、およびベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート。ビスアシルホスフィンオキシドの例としては、下記が挙げられる:ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロフィル(prophyl)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、および(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド。
【0060】
カチオン性光開始剤はオニウム塩であってもよい。光開始剤のカチオン種は、例えば、ヨードニウム、スルホニウム、オキソイソチオクロマニウム(oxoisothiochromanium)、または同様の化合物であってもよい。これらの化合物は公知であり、市販されている。
【0061】
1つの実施形態例では、混合物は任意で、所望の色を提供するために顔料または顔料の組み合わせを含む顔料組成物を含んでもよい。顔料および染料の様々な組み合わせが使用され得る。別の実施形態例では、顔料の組み合わせの量は、組成物の総重量に基づき、約0.5重量%未満、好ましくは約0.3重量%未満であってもよい。
【0062】
顔料は組成物の有効期間の間、組成物から分離し、沈降せずに、配合物中に分散されなければならない。顔料を有する組成物の粘度は顔料のサイズにより影響される可能性がある。顔料の好ましいサイズは約0.1から約600nm、より好ましくは約10から約200nmである。
【0063】
顔料の色は、特定の色に制限されない。顔料の可能な色としては、例えば、白色、黄色、橙色、黒色、緑色、赤色、紫色、などが挙げられる。
【0064】
1つの実施形態例では、組成物は任意で、配合物に、表面エネルギーを低下させることによるより低い表面張力、より良好な濡れ性、および小さな滴サイズを提供する表面張力低下剤を含むことができ、噴射または印刷プロセス中のサテライト滴の尾が最小に抑えられる。表面張力低下剤の例としては、Byk Chemieにより商標名Bykで市販される、または、Dow Corningにより商標名Dow Corningシリーズで市販される、シリコーン表面添加物が挙げられる。
【0065】
1つの実施形態例では、組成物はまた、任意で1つ以上の安定剤を含み得る。好適な安定剤としては、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシ(hyrdorxy)トルエン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)、フェノチアジン、ビストリデシルチオジプロピオネート、およびヒンダーアミン(hinder amine)が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例
【0066】
<実施例1>
まず第一に、53.7部の、式(1)構造を有する芳香族ウレタンジアクリレートを18.8部の、式(2)を有する単官能性アクリレートモノマーで希釈した。というのも、芳香族ウレタンジアクリレートが反応器中で粘性すぎるからである。混合物を、スタティックミキサを用いて希釈した時に、追加の6.2部の単官能性アクリレートモノマーおよび13.9部の二官能性アクリレートモノマーを混合物中に添加した。3つの成分全てが完全に混合された時に、1.8部の粉末型光開始剤を混合物に添加し、撹拌した。光開始剤を混合物に完全に溶解させるとすぐに、液体混合物は透明になった。この状態で、5.6部の、メチルメタクリレートブタジエンスチレンコポリマーから構成されるコア-シェル型の衝撃改質剤を混合物中に添加し、2-3日間室温で撹拌し、均質混合物を達成した。
【0067】
<実施例2から7>
組成比が実施例間で異なることを除き、実施例1と同じ手順を実施した。このようにして、デジタルライトプロセッシング法により三次元物品を製造するための光重合性樹脂混合物の各々を、表1に示される関連成分を混合して、均質系を得ることにより調製した。
【0068】
【表1】
【0069】
<比較例8>
同じ成分を使用して、衝撃改質剤なしで同様の組成物を調製した。曲げ強度および曲げ弾性率試験のための比較例8の試験片をISO 20795-1:2013に従い印刷し、後硬化プロセスを実施した。後硬化をUV/Vis硬化装置下で40分間実施した。
【0070】
<比較例9>
アクリル衝撃改質剤を、マトリクスとの適合性を提供するコア-シェル型の衝撃改質剤の代わりに使用したことを除き、実施例7と同じ比を有する同じサンプル組成物を調製した。その組成物が表2で提示される。3つの成分全てを一緒に2時間混合し、次いで、光開始剤を混合物に添加した。光開始剤を混合物に完全に溶解させるとすぐに、アクリル衝撃改質剤を添加し、2日間撹拌し、均質混合物を生成させた。同じツールおよび方法を使用して同じ物理的特性を測定し、表4に提示する。
【0071】
<比較例10>
同じ衝撃改質剤を使用するが、異なるウレタンアクリレート、単官能性アクリレート、および二官能性アクリレートを使用して、ある比を有する同様の組成物を調製した。脂肪族ウレタンアクリレート混合物(高ウレタン含量を有するウレタンアクリレート(商標名N3D-F230、Sartomer製)およびウレタンジメタクリレート(商標名CN1964、Sartomer製))を使用した。高Tgを有する単官能性アクリレートモノマー(商標名N3D-M285、Sartomer製)材料を、希釈剤として添加した。二官能性アクリレートモノマーとしてのエポキシアクリレートモノマーを実施例10において使用した。配合物の反応は遅く、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドを有効な光開始剤として、配合物中で使用した。その組成が表2に提示される。同じツールおよび方法を使用して同じ物理的特性を測定し、表4に提示する。
【0072】
【表2】
【0073】
[性能評価法]
曲げ強度および曲げ弾性率、最大強度係数、および総破砕仕事試験のための実施例1-10の試験片を、ISO 20795-1:2013に従い、3Dプリンター(Kulzer USAにより提供されるcara 3Dプリンター)を使用して印刷した。印刷後、試験片に対する後硬化プロセスをUV/Vis硬化装置下で40分間実施した。
【0074】
特定的には、曲げ強度および曲げ弾性率の試験のための試料を、試験光硬化性組成物を64mm×10mm×3.3mmのサイズまで印刷する(Kulzer USAにより提供されるcara 3Dプリンター)ことにより得た。印刷物体に10J/mの条件下で紫外光を照射した。硬化物体を一定温度水タンク内、37±1℃で50±2時間保存した。調整後、屈曲および曲げ弾性率をISO 20795-1:2013にしたがい測定した。
【0075】
加えて、総破砕仕事(J/m)を、破壊靱性試験により、3点曲げ試験セットアップを用いて得た。実施例1-10の光硬化性組成物を、3Dプリンター(Kulzer USAにより提供されるcara 3Dプリンター)により印刷し、39mm×8mm×4mmのサイズの物体を形成させ、印刷物体に紫外光を40分間照射することにより印刷物体を光硬化させた。ISO 20795-1:2013にしたがい、得られた試料にノッチを入れ、一定温度水浴中37±1℃で7日±2時間保存した。3点曲げ試験による破壊靱性試験を1.0±0.2mm/分の条件下で実施し、総破砕仕事(J/m)を測定した。
【0076】
曲げ強度および曲げ弾性率および靱性測定を、万能試験機(Testresources-モデル140)を使用して実施した。
【0077】
実施例1-10の粘度を、ISO 2555:2018にしたがい、単一円筒形回転粘度計(Brookfield粘度計-モデルDV1)を使用し、100rpmを用いて25℃で決定した。
【0078】
実施例1-7についての物理的特性測定の結果を表3に提示する。
【0079】
【表3】
【0080】
比較例8-10の物理的特性測定の結果を表4に提示する。
【0081】
【表4】
【0082】
様々な改変および変更が本発明の実施形態例において、発明の精神または範囲から逸脱せずに可能であることは当業者には明らかであろう。よって、本発明は、本明細書で開示される実施形態例の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあるという条件で、包含することが意図される。
【国際調査報告】