(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】摩擦ライニングパッドによって形成された溝パターンを有する摩擦プレート
(51)【国際特許分類】
F16D 69/00 20060101AFI20240311BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F16D69/00 G
F16D13/62 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559838
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 DE2022100250
(87)【国際公開番号】W WO2022233358
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111316.4
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021117620.4
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ベアヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボネット
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュタインメッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン デンダ
【テーマコード(参考)】
3J056
3J058
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BB12
3J056CA07
3J058AA59
3J058BA16
3J058BA35
3J058CA43
3J058CB20
3J058GA92
3J058GA93
3J058GA94
(57)【要約】
本発明は、担体プレート(18)と、第1のパッド形状を有する複数の第1の摩擦ライニングパッド(41~43)と、第2のパッド形状を有する複数の第2の摩擦ライニングパッド(51~53)と、を備える摩擦プレート(19)に関し、環状溝パターン(10)が、中心まで半径方向外側に配置された第1の摩擦ライニングパッド(41~43)と、半径方向内側に配置された第2の摩擦ライニングパッド(51~53)との配列によって製造されており、当該配列は、円周方向に繰り返され、分割溝(31~37)によって離隔しており、第1の摩擦ライニングパッド(41~43)と第2の摩擦ライニングパッド(51~53)とは、分割溝(33、34)によって互いに離隔している。第1の摩擦ライニングパッド(41~43)の第1のパッド形状は、半径方向外側に配置された三角形の形状と、半径方向中央に配置された菱形の形状との組み合わせとして設計され、好ましくは、三角形の形状と菱形の形状との間にエンボス溝(40)が配置され、また第2の摩擦ライニングパッド(51~53)の第2のパッド形状は、三角形の形状とすぐ隣接する長方形の形状との組み合わせとして設計された、五角形の形状として設計される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦プレート用の溝パターン(10)であって、前記溝パターン(10)が、
第1のパッド形状を有する第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)と、
第2のパッド形状を有する第2の摩擦ライニングパッド(51~53)と、によって形成されており、
前記溝パターン(10)が、中心まで半径方向外側に配置された第1のパッド形状の配列と、半径方向内側に配置された第2のパッド形状の配列とが、円周方向に繰り返され、かつ分割溝(31~37)によって互いに離隔している配列を通じて環状であり、
前記第1のパッド形状及び前記第2のパッド形状が、分割溝(33、34)によって互いに離隔している溝パターンであって、
前記第1のパッド形状が、半径方向外側に配置された三角形の形状(44)と、半径方向中央に配置された菱形の形状(45)との組み合わせとして設計され、
前記第2のパッド形状が、三角形の形状(56)と、すぐ隣接する長方形の形状(57)との組み合わせとして具現化される、五角形の形状(55)として具現化されることを特徴とする、溝パターン。
【請求項2】
前記第1のパッド形状が、エンボス溝(40)を有することを特徴とする、請求項1に記載の溝パターン。
【請求項3】
前記エンボス溝(40)が、前記三角形の、半径方向外側に配置された形状(44)と、前記菱形の、半径方向中央に配置された形状(45)との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の溝パターン。
【請求項4】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)が、パッドの角部において、5~125度のパッド角度(1)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項5】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)が、各第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)について1.5未満の幅(3)と高さ(4)との比を有する幅(3)及び高さ(4)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項6】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)及び前記第2の摩擦ライニングパッド(51~52)が、内径(75)及び外径(76)を有する摩擦面(70)を表し、前記分割溝(32、34)と前記エンボス溝(40)との全ての交点(71、72)と、前記分割溝(32、34)と分割溝(34、35)との全ての交点(73、74)との両方が、前記摩擦面(70)内に配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項7】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)の前記エンボス溝(40)が、それぞれの前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~61)の前記三角形の形状によって境界された分割溝(31、32)と、75~90度の角度で交差することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項8】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)間の分割溝(36、37)が、前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)間の分割溝(31、32)よりも大きな溝幅(9)を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項9】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)が、パッドの角部において、60~150度の角度のパッド角度(1)を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項10】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)が、各第2の摩擦ライニングパッド(51~53)について1未満の幅(3)と高さ(4)との比を有する幅(3)及び高さ(4)を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の溝パターン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する摩擦プレート用の溝パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
本文献での文脈ではパッド形状とも称される溝又は溝パターンは、移動要素が閉鎖しているときでも、油流によってプレートを冷却するために使用される。これらは油膜を突き破り、それにより、摩擦係数を安定させる。これにより、移動するときに所望の摩擦挙動が作成される。アイドリング挙動が改善され、ドラッグトルクが低減される。
【0003】
本発明の適用範囲は、
湿式マルチプレートクラッチ及びブレーキが、従来のパワーシフト可能なトランスミッションにおいて、高負荷ドライブトレインにおける新規ハイブリッドモジュールにおいて、又はシフト可能なe-axleにおいて広く使用されており、それらは、高性能の高負荷構成要素を表している。自動車用途におけるドライブトレインのCO2排出量の削減及び効率の改善に対する要求は、非常に重要である。移動要素における負荷非依存の損失を低減することに加えて、熱負荷及び好適な冷却が考慮されなければならない。摩擦プレートの溝パターンは、摩擦特性、熱管理、及び効率の間のトレードオフにおいて中心的な役割を果たす。(
図1を参照)
【0004】
欧州特許出願公開第3354921号明細書は、摩擦ライニングの内周と外周とを接続する溝を有する環状の湿式走行摩擦ライニングを開示している。
【0005】
独国特許出願公開第102018003829号明細書は、摩擦ライニングの内周と外周とを接続する溝を備えた環状の湿式走行摩擦ライニングを開示しており、摩擦ライニングの外周は、円形コースから逸脱したコースを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、好適な溝パターンによって、摩擦プレートの場合のドラッグ損失を最小限に抑え(
図2を参照)、冷却能力を向上させるという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1に記載の特徴を有する溝パターンによって達成される。
【0008】
したがって、本発明による摩擦プレート用の溝パターンは、溝パターンが、第1のパッド形状を有する第1の摩擦ライニングパッドと、第2のパッド形状を有する第2の摩擦ライニングパッドとによって形成されており、溝パターンが、中心まで半径方向外側になるように配置された第1のパッド形状の配列と、半径方向内側になるように配置された第2のパッド形状の配列とが、円周方向に繰り返され、かつ分割溝によって離隔しているリング状の配列をもたらすことを提供し、第1のパッド形状及び第2のパッド形状が、分割溝によって互いに離隔している溝パターンであって、
第1のパッド形状が、三角形の、半径方向外側に配置された形状と、菱形の、半径方向中央に配置されたパッド形状との組み合わせとして設計され、第2のパッド形状が、三角形の形状と、すぐ隣接する長方形の形状との組み合わせとして設計された、五角形の形状として設計されることを特徴とする。
【0009】
好ましい実施形態では、第1のパッド形状は、エンボス溝である。
【0010】
特に好ましい実施形態では、エンボス溝は、半径方向外側になるように配置された三角形の形状と、半径方向中央になるように配置された菱形の形状との間に配置されている。
【0011】
このようにして、ドラッグトルクが更に低減される。
【0012】
溝パターンの更に好ましい例示的な実施形態では、パッドの角部における第1の摩擦ライニングパッドが、5~125度のパッド角度を有することを特徴とする。各パッドの角部には、パッドの内角が含まれている。
【0013】
溝パターンの更に好ましい例示的な実施形態は、パッド外縁が、第1の摩擦ライニングパッド及び第2の摩擦ライニングパッドの全てのパッドの角部において、その周囲輪郭に沿って丸みを帯びていることを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの周りの流量に関して有利であることが証明されている。
【0014】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、パッドの角部における丸い半径が1ミリ以上であることを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの周りの流量に関して十分であることが証明されている。
【0015】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第1の摩擦ライニングパッドが、各第1の摩擦ライニングパッドについて1.5未満の幅と高さとの比を有する幅及び高さを有することを特徴とする。第1の摩擦ライニングパッドの幅と高さとの比は、特に有利には1.1未満である。この幅と高さとの比は、摩擦プレートが回転可能である両方の回転方向に対して有利である。
【0016】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第1の摩擦ライニングパッド及び第2の摩擦ライニングパッドが、全て同じ厚さを有することを特徴とする。第1の摩擦ライニングパッドの厚さは、エンボス溝の領域においてのみ低減される。
【0017】
溝パターンの更に好ましい例示的な実施形態は、エンボス溝が、分割溝よりも小さい幅を有し、エンボス溝のエンボス深さは、摩擦ライニングパッドの厚さの最大50パーセントに相当することを特徴とする。その結果、分割溝及びエンボス溝を通る流量に非常に効果的な影響を与えることができる。
【0018】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第1の摩擦ライニングパッド及び第2の摩擦ライニングパッドが全て、内径及び外径を有する摩擦面を表し、分割溝とエンボス溝との全ての交点と、分割溝と分割溝との全ての交点との両方は、摩擦面内に配置されていることを特徴とする。摩擦面は、基本的に、内径及び外径を有する円環領域の形状を有する。摩擦面は、摩擦ライニングパッドで区切られ、公差を条件として、内直径と外直径との両方にサイズ偏差を有することができる。溝と溝との交点は、有利には摩擦面内にある。
【0019】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第1の摩擦ライニングパッドのエンボス溝が、それぞれの第1の摩擦ライニングパッドの三角形の形状によって画定された分割溝と、75~90度の角度で交差することを特徴とする。特に好ましい度数の測定値は、76.1度である。指定された角度範囲は、特許請求された溝パターンにおける油流の所望の影響に関して非常に効果的であることが証明されている。
【0020】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第2の摩擦ライニングパッド間の分割溝が、第1の摩擦ライニングパッド間の分割溝よりも大きな溝幅を有することを特徴とする。これは、摩擦プレートが動作しているときの冷却及び/又は潤滑機能に関して有利である。
【0021】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第2の摩擦ライニングパッド間の分割溝が、第1の摩擦ライニングパッド間の分割溝よりも大きな溝容積を有することを特徴とする。これは、摩擦プレートの動作中の冷却及び/又は潤滑機能に関しても有利である。
【0022】
溝パターンの更に好ましい例示的な実施形態は、第2の摩擦ライニングパッドが、パッドの角部において60~150度のパッド角を有することを特徴とする。このようにして、溝を通る流量を簡単な手段で具体的に調整することができる。
【0023】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、第2の摩擦ライニングパッドが、各第2の摩擦ライニングパッドについて1未満の幅と高さとの比を有する幅及び高さを有することを特徴とする。第2の摩擦ライニングパッドの、特に好ましい幅と高さとの比は、0.93である。
【0024】
溝パターンの別の好ましい例示的な実施形態は、全ての摩擦ライニングパッドが、同じ形状及びサイズを有することを特徴とする。これは、摩擦ライニングパッドの製造及び組み立てに関して有利であることが証明されている。同じ形状及びサイズという用語は、製造公差を含んでいる。
【0025】
本発明はまた、上述のような溝パターン用の第1の摩擦ライニングパッド及び/又は第2の摩擦ライニングパッドに関する。摩擦ライニングパッドは別売りで購入することができる。
【0026】
本発明の更なる利点及び有利な構成は、以下の図面及びそれらの記載の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図6】本発明による溝設計のパッド1とパッド2の寸法を示す
【
図10】本発明による溝設計のパッド2の寸法を示す
【発明を実施するための形態】
【0028】
パッド1(
図3~
図7、
図11、
図12)
・パッド角度(
図4(1))は、5~125度(詳細は
図11を参照)。
・パッド外縁は、円周に沿って丸みを帯びており、好ましくは≧1mmである(
図5(2))。
・パッド1の設計:エンボス溝(
図6(6))の中央エンボス加工により、半径方向外側には三角形のパッド面、半径方向中央には四角形(菱形)のパッド面が形成され、それらの各々にエンボス加工は施されていない。
・パッド幅(3)と高さ(4)との比は、1.5未満(好ましくは1.1)である(
図5)。
・エンボス溝の幅(
図6(6))<分割溝の幅(
図6(5)、
図11)、すなわち、すぐ隣接するパッド1間又はパッド1とパッド2との間のパッド間隔である。
・最大エンボス深さは、ライニング厚さの半分、すなわち、エンボス加工されていないパッド領域の最大半分である。
・エンボス溝(
図6(6))と分割溝(
図6(5))との間の角度(
図6(7))は、75度~90度であり、好ましくは76.1度である。
・エンボス溝(
図6(6))と分割溝(
図6(5))との交点(
図7(8)の上部)は、外径(
図7、上方の一点鎖線)以内にある(よりも小さい)。パッド1の菱形と、直接隣接するパッド2との間の分割溝と分割溝との交点(
図7(下方の8))は、内径が大きくなっている(
図7、下方の一点鎖線)。
・入口溝の溝容積(
図6(9))>出口溝の溝容積(
図6(5))である
【0029】
パッド2(
図3、
図6、
図8~
図11、
図12)
・パッド角度(
図9(1))は、60~150度(詳細は
図11を参照)である
・パッド外縁は、円周に沿って丸みを帯びており、好ましくは≧1mmである(
図10(2))
・パッド2の基本的な形状は、五角形の形状として実装されており、これは、三角形の形状とすぐ隣接する長方形の形状との組み合わせとして実装されている(
図3、
図6、
図8~
図11)。
・パッド幅(3)と高さ(4)との比は、1未満(好ましくは0.93)である(
図10)
【0030】
パッド形状の最適化を通じて生産品質が最適化される。
【0031】
摩擦システムの開放状態において、繊維性及びエッジ品質が向上し、したがってドラッグトルクが低減される(特に、カットエッジの代わりにエンボス溝の使用を通じて)
【0032】
パッドエッジ及びパッドの角部の耐用期間にわたる摩耗挙動は堅牢である。エッジ形状(低丸み(1))の維持は、堅牢で一貫した流体力学的挙動(潤滑ウェッジ)、したがって安定した摩擦特性につながる。制御の適用努力が低減される。
【0033】
半径方向の冷却能力分布の最適化:溝容積は、外側に向かって減少し(溝の内側(9)及び溝の外側(5)又はエンボス加工(6)を参照)、溝の充填度(内側から外側へ)が増加し、したがってスチールプレートから油への熱伝達が改善される。
【0034】
図12は、本発明による更なる溝設計を示す。以前の表示と比較すると、これは、例えば、放射状の線での鏡映の結果である。
【0035】
図1では、3つの直交座標図が上下に表示されている。摩擦部品15を備えた湿式走行マルチプレートクラッチ1の動作中の回転速度が、x軸20上に好適な単位でプロットされている。好適な単位での体積流量が、y軸21にプロットされている。好適な単位でのギャップ充填レベルが、y軸22上にプロットされている。ドラッグトルクが、y軸23上に好適な単位でプロットされている。
【0036】
図1は、供給体積流量25を超えた場合に、搬送体積流量24によって吸気26がどのように影響を受けるかを示す。この制限から、ギャップ充填レベル26は減少し、プレート間の潤滑ギャップは空気を含むようになる。この制限を超えると、供給体積流量25には空気が含まれることになる。
図2の一番下は、吸気26が最大ドラッグトルク27で発生することを示す。
【0037】
図2は、ドラッグトルク曲線30における低回転速度への空気の吸引28の変位が、特許請求の範囲に記載された摩擦部品15でどのように達成されるかを示す。冷却媒体及び/又は潤滑媒体の搬送行動は、
図3に示す溝パターンによって改善することができる。
【0038】
溝設計とも称される溝パターン10を
図3~
図12に示す。
図1~
図11では、溝パターン10は、第1の摩擦ライニングパッド41、42、43と、第2の摩擦ライニングパッド51、52、53と、を備える。
【0039】
図12に示す溝パターン10は、
図3と同じ第1の摩擦ライニングパッド51、52、53を備える。しかしながら、
図12の溝パターン10は、
図3の第1の摩擦ライニングパッド41~43と比較して鏡面反転して配置された第1の摩擦ライニングパッド61、62、63を備える。それ以外の点では、摩擦ライニングパッド61~63は、摩擦ライニングパッド41~43に対応している。
【0040】
図4では、摩擦ライニングパッド42を拡大して示す。他の第1の摩擦ライニングパッド41及び43と同様に、摩擦ライニングパッド42は、三角形の形状44と菱形の形状45とで構成されている第1のパッド形状を有する。第1の摩擦ライニングパッド42には、三角形の形状44と菱形の形状45との間にエンボス溝40が形成されている。
【0041】
図9では、第2の摩擦ライニングパッド52を拡大して示す。他の第2の摩擦ライニングパッド51、53と同様に、第2の摩擦ライニングパッド52は、第2のパッド形状、すなわち、三角形の形状56と長方形の形状57とで構成されている五角形の形状55を有する。三角形の形状56の頂点は、半径方向外側に向けられる。
【0042】
図3では、第1の摩擦ライニングパッド41~43及び第2の摩擦ライニングパッド51~53が、担体プレート18に接着されて、摩擦プレート19を表していることがわかる。第1の摩擦ライニングパッド41~43及び第2の摩擦ライニングパッド51~53は、分割溝31~37が形成されるように配置され、かつ互いに離隔しており、その深さは、担体プレート18によって制限される。
【0043】
分割溝31~37とは対照的に、エンボス溝40は、深さがより小さい。エンボス溝40の深さは、摩擦ライニングパッド42の厚さの最大限でも50パーセントである。分割溝31~37の深さは、摩擦ライニングパッド41~43、51~53、61~63の厚さに対応している。
【0044】
スチールプレートを用いたいくつかのプレート19が、プレートクラッチのプレートパックに配置されている。通常、マルチプレートクラッチが動作しているとき、割り当てられたスチールプレートがそれぞれの摩擦プレートよりも速く回転する。
【0045】
摩擦ライニングパッド42及び52のパッド内角1を
図4及び
図9に示す。
図11では、パッド内角1に個々の参照番号81~88が付されている。
【0046】
パッド内角81は、51.2度である。パッド内角82は、121.3度である。パッド内角83は、110.8度である。パッド内角84は、69.2度である。パッド角度85は、7.5度である。パッド内角86は、61.7度である。パッド内角87は、145.4度である。パッド内角88は、93.8度である。
【0047】
摩擦ライニングパッド42及び52の例を使用すると、
図5及び
図10は、全ての第1の摩擦ライニングパッドと全ての第2の摩擦ライニングパッドとが丸い半径2を有することを示す。丸い半径2は、好ましくは1ミリ以上である。
【0048】
加えて、摩擦ライニングパッド42及び52の幅3及び高さ4は、
図5及び
図10において両方向の矢印で示されている。対応する幅3と高さ4との比は、第1の摩擦ライニングパッド41~43では、好ましくは1.1であり、第2の摩擦ライニングパッド51~53では、好ましくは0.93である。
【0049】
図6では、両方向の矢印5、6、及び9は、分割溝31、エンボス溝40、及び分割溝37の幅を示す。第2の摩擦ライニングパッド52と53との間の分割溝37は、半径方向内側に開口しており、したがって、マルチプレートクラッチの動作中に油が通って入る入口溝とも称される。同様に、半径方向外側に開口した溝31及び40は、出口溝と称することもできる。入口溝37の溝幅9は、出口溝31、40の溝幅5、6よりも大きい。
【0050】
加えて、
図6では、分割溝31とエンボス溝40との間に両方向の矢印で分岐角度7が示されている。エンボス角度7とも称される分岐角度7は、好ましくは76.1度である。
【0051】
図7では、基準線75及び76は、担体プレート18上の摩擦ライニングパッドの溝パターン10によって表される摩擦面70の内径及び外径を示す。溝の全ての交点8、71~74が摩擦面70内にあることが重要である。
【0052】
エンボス溝40は、交点71において分割溝32と交差している。交点72において、エンボス溝40は、分割溝34と交差している。分割溝32及び35は、交点73で交差している。分割溝34及び35は、交点74で交差している。
【0053】
交点71は、外径76の近傍において半径方向外側に位置しているが、依然として摩擦面70内にある。同様に、交点74は、内径75の近くに位置しているが、やはり依然として摩擦面70内にある。
【0054】
図8では、破線の円弧11、12、13によって3列が示されており、第1の摩擦ライニングパッド41~43及び第2の摩擦ライニングパッド51~53の2つのパッド形状が示されている。第2の摩擦ライニングパッド51~53は、3列の溝パターン10の1列目を表している。第1の摩擦ライニングパッド41~43の菱形の形状は、3列の溝パターン10の2列目又は中央列を表している。第1の摩擦ライニングパッド41~43の三角形の形状は、3列の溝パターン10の3列目を表している。
【符号の説明】
【0055】
1 パッド内角
2 曲線半径
3 幅
4 高さ
5 溝幅
6 溝幅
7 分岐角度
8 交点
9 溝幅
10 溝パターン
11 1列目
12 2列目
13 3列目
18 担体プレート
19 摩擦プレート
20 x軸
21 y軸
22 y軸
23 y軸
24 搬送体積流量
25 供給体積流量
26 吸気
27 ドラッグトルク
28 吸気
30 ドラッグトルク曲線
31 分割溝
32 分割溝
33 分割溝
34 分割溝
35 分割溝
36 分割溝
37 分割溝
40 エンボス溝
41 第1の摩擦ライニングパッド
42 第1の摩擦ライニングパッド
43 第1の摩擦ライニングパッド
44 三角形の形状
51 第2の摩擦ライニングパッド
52 第2の摩擦ライニングパッド
53 第2の摩擦ライニングパッド
55 五角形の形状
56 三角形の形状
57 長方形の形状
61 第1の摩擦ライニングパッド
62 第1の摩擦ライニングパッド
63 第1の摩擦ライニングパッド
70 摩擦面
71 第1の交点
72 第2の交点
73 第3の交点
74 第4の交点
75 内直径
76 外直径
81 角度
82 角度
83 角度
84 角度
85 角度
86 角度
87 角度
88 角度
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦プレート用の溝パターン(10)であって、前記溝パターン(10)が、
第1のパッド形状を有する第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)と、
第2のパッド形状を有する第2の摩擦ライニングパッド(51~53)と、によって形成されており、
前記溝パターン(10)が、中心まで半径方向外側に配置された第1のパッド形状の配列と、半径方向内側に配置された第2のパッド形状の配列とが、円周方向に繰り返され、かつ分割溝(31~37)によって互いに離隔している配列を通じて環状であり、
前記第1のパッド形状及び前記第2のパッド形状が、分割溝(33、34)によって互いに離隔している溝パターンであって、
前記第1のパッド形状が、半径方向外側に配置された三角形の形状(44)と、半径方向中央に配置された菱形の形状(45)との組み合わせとして設計され、
前記第2のパッド形状が、三角形の形状(56)と、すぐ隣接する長方形の形状(57)との組み合わせとして具現化される、五角形の形状(55)として具現化されることを特徴とする、溝パターン。
【請求項2】
前記第1のパッド形状が、エンボス溝(40)を有することを特徴とする、請求項1に記載の溝パターン。
【請求項3】
前記エンボス溝(40)が、前記三角形の、半径方向外側に配置された形状(44)と、前記菱形の、半径方向中央に配置された形状(45)との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の溝パターン。
【請求項4】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)が、パッドの角部において、5~125度のパッド角度(1)を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の溝パターン。
【請求項5】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)が、各第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)について1.5未満の幅(3)と高さ(4)との比を有する幅(3)及び高さ(4)を有することを特徴とする、請求項
1に記載の溝パターン。
【請求項6】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)及び前記第2の摩擦ライニングパッド(51~52)が、内径(75)及び外径(76)を有する摩擦面(70)を表し、前記分割溝(32、34)と前記エンボス溝(40)との全ての交点(71、72)と、前記分割溝(32、34)と分割溝(34、35)との全ての交点(73、74)との両方が、前記摩擦面(70)内に配置されていることを特徴とする、請求項
2に記載の溝パターン。
【請求項7】
前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)の前記エンボス溝(40)が、それぞれの前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~61)の前記三角形の形状によって境界された分割溝(31、32)と、75~90度の角度で交差することを特徴とする、請求項
2に記載の溝パターン。
【請求項8】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)間の分割溝(36、37)が、前記第1の摩擦ライニングパッド(41~43、61~63)間の分割溝(31、32)よりも大きな溝幅(9)を有することを特徴とする、請求項
1に記載の溝パターン。
【請求項9】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)が、パッドの角部において、60~150度の角度のパッド角度(1)を有することを特徴とする、請求項
1に記載の溝パターン。
【請求項10】
前記第2の摩擦ライニングパッド(51~53)が、各第2の摩擦ライニングパッド(51~53)について1未満の幅(3)と高さ(4)との比を有する幅(3)及び高さ(4)を有することを特徴とする、請求項
1に記載の溝パターン。
【国際調査報告】