(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】グリーン水素を用いるアンモニア合成のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20240311BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240311BHJP
C01B 3/50 20060101ALI20240311BHJP
C01B 3/32 20060101ALI20240311BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240311BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240311BHJP
【FI】
C01C1/04 D
C01B3/02 H
C01B3/50
C01B3/32
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560128
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022057299
(87)【国際公開番号】W WO2022207386
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515106066
【氏名又は名称】カサーレ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンツァ、セルジオ
【テーマコード(参考)】
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA07
4G140FA02
4G140FE01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC03
(57)【要約】
アンモニアの合成のためのプロセスであって、再生可能エネルギー源から製造されたグリーン水素(26)が部分的に供給される高圧合成ループ(101)内で行われ、および、ループのパージ流(21)から回収された水素が再生可能エネルギー源が完全には利用できない場合にグリーン水素の一時的な不足を補償するために水素ストレージ(103)にストレージされるプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアの合成のためのプロセスであって、
a)水素および窒素を含むアンモニア補給ガスが、アンモニア合成圧力で、アンモニアコンバーター(15)中で反応され、アンモニア含有流出物(19)を得る工程;
b)前記アンモニア含有流出物が、冷却および分離工程(16)に付され、液体アンモニア(20)と、水素および不純物を含むサイドストリーム(21)とを得る工程;
c)前記サイドストリーム(21)の少なくとも一部が、水素回収プロセスに付され、回収水素(22)を得る工程;
d)前記アンモニア補給ガス中に含まれる水素の第1の部分が、改質プロセスにおいて炭化水素源を改質することによって生成される工程;
e)前記アンモニア補給ガス中に含まれる水素の第2の部分が、再生可能エネルギー源を使用することにより、前記改質プロセスとは別に製造される工程;
f)前記工程c)で得られた前記回収水素の少なくとも一部(24)が、水素ストレージ(103)に送られる工程;
g)前記ストレージ(103)からの水素(27)が、前記再生可能エネルギー源が完全にまたは部分的に利用できない場合に、前記工程e)の水素の前記第2の部分を完全にまたは部分的に置き換えるために使用される工程
を含むプロセス。
【請求項2】
前記工程e)の水素の前記第2の部分が、水の電気分解によって製造される請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記水の電気分解が太陽エネルギーによって行われる請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
前記水素ストレージが、少なくとも50バール、好ましくは50バール~200バールの圧力で行われる請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程c)で得られる前記回収水素が、少なくとも50バール、好ましくは50~100バールの圧力を有する請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記工程c)で得られる前記回収水素が、前記水素の回収圧力がストレージに十分である場合には圧縮されずに水素ストレージに送られ、または、ストレージ圧力が回収圧力よりも高い場合には圧縮される請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
再生可能エネルギーを用いて製造される水素の前記第2の部分が、前記補給ガス中の水素の50%まで、好ましくは20%~50%を占める請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
水素の前記第2の部分が、改質および精製から得られる精製補給ガスと同じ圧力または実質的に同じ圧力で製造される請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アンモニアコンバーター(15)が、アンモニア合成ループ(101)の一部であり、および、再生可能エネルギーから別途製造された水素、または水素ストレージから取り出された水素が、前記ループ中に導入される請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1~9いずれか1項に記載のプロセスであって、
前記改質工程が、炭化水素源の改質とそのようにして得られた改質ガスの精製とを含み、精製された改質ガス(8)を得る工程;
前記精製された改質ガスを、場合により窒素の添加を伴って、メイン合成ガス圧縮機(11)を介して前記アンモニアコンバーター(15)に供給する工程;
前記再生可能エネルギーから別途製造された水素(26)もまた、前記メイン合成ガス圧縮機(11)を介して前記アンモニアコンバーターに供給される工程
を含むプロセス。
【請求項11】
前記再生可能エネルギーから別途製造された水素(26)が、前記精製された改質ガス(8)と共に前記メイン合成ガス圧縮機(11)の吸引側に供給される請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
コンバーター流出物から分離された前記サイドストリームの第1の部分が、水素回収に送られ、および、前記サイドストリームの第2の部分が、前記アンモニアコンバーターに再導入される請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
アンモニア合成のためのプラントであって、
炭化水素源を改質することによるアンモニア補給ガスの生成のための改質フロントエンド(100);
アンモニア合成コンバーター(15)を備えるアンモニア合成ループ(101);
前記フロントエンドに接続されたインプットラインと前記合成ループに接続された送出ラインとを備えるメイン合成ガス圧縮機(11)であって、フロントエンドにおいて生成された補給ガス(8)で合成ループに供給するように配置されているメイン合成ガス圧縮機;
再生可能エネルギー源を動力源とする水電気分解装置などのグリーン水素製造装置(102)、および、前記グリーン水素製造装置から前記メイン合成ガス圧縮機に水素を供給するように配置されるライン(26);
前記メイン合成ガス圧縮機のインプットに接続されたライン(27)を備える水素ストレージ(103);
前記アンモニアコンバーターの流出物から分離されたパージ流(21)から未変換の水素を回収するように配置される水素回収ユニット(17)
を含み、
前記プラントが、前記回収ユニットから前記水素ストレージに回収水素を供給するように配置されるライン(24)をさらに含むプラント。
【請求項14】
前記再生可能エネルギー源が完全に利用可能でない場合に、グリーン水素製造装置からの関連する水素の足を補うために、前記水素ストレージ(103)から前記メイン合成ガス圧縮機(11)に水素を供給するように構成される制御システムを備える請求項13記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンモニアの合成の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、水素と窒素とを適切なモル比で含む補給ガスを反応させることによって工業的に製造される。補給ガスは従来、例えば天然ガスなどの炭化水素源を改質することによって製造される。
【0003】
補給ガスの製造には通常、改質プロセスおよび改質されたガスの精製が含まれる。精製には通常、COのCO2への転換、CO2の除去、およびメタネーションが含まれる。こうして得られた精製ガスは、メイン合成ガス圧縮機を介して高圧アンモニア合成ループに供給される。
【0004】
アンモニア合成ループでは、補給ガスは適切なアンモニアコンバーター中でアンモニアを形成するために反応される。コンバーターの高温のアンモニア含有流出物は、冷却および分離工程に付され、液体アンモニアと、未反応の水素および不純物を含むサイドストリームとが得られる。典型的には、該サイドストリームの一部が、水素回収プロセスに付され、および、そのようにして得られた回収水素が、該メイン合成ガス圧縮機の吸引口に送られる。該サイドストリームの別の一部は、典型的にはサーキュレーターを用いてアンモニアコンバーターに再導入され、これにより上述のアンモニア合成ループが形成される。
【0005】
アンモニアの合成は高圧で行われるが、通常、補給ガスははるかに低い圧力で製造される。例えば、アンモニア合成は約140バールで行われ得るのに対し、補給ガスは約40バール以下で製造され得る。このため、メイン合成ガス圧縮機が必要である。ほとんどの実施形態では、メイン合成ガスコンプレッサーの吸引側の圧力は15~35バールである。
【0006】
アンモニア合成に必要な窒素は、改質プロセス中に導入されてもよく、典型的には、空気焚き二次改質で導入され得る。いくつかの場合において、例えば空気分離装置が利用可能な場合などに窒素が別途添加され得る。
【0007】
要約すると、アンモニアの工業生産は、必要な水素を製造するための炭化水素の改質に依存している。改質は通常、顕著なCO2の排出を伴う燃料焚きプロセスである。
【0008】
アンモニア製造の二酸化炭素排出量を削減することへの関心が急速に高まっている。適用され得る基準や規則は、例えば製造されるアンモニアのトン数当たりのCO2の量を考慮することなどによって、CO2排出量に関連した追加課税を導入し得る。燃焼ガスに含まれるCO2は回収され得るが、関連技術は高価である。この目標を達成するための有望な方法は、再生可能エネルギー源を用いた水素の製造である。
【0009】
再生可能エネルギーを用いて製造された水素は、従来の燃料焚き改質による製造と異なり、CO2の排出を引き起こさないことから「グリーン(green)」水素と呼ばれる。化石燃料の燃焼から製造される水素は、しばしば「グレー(grey)」水素と呼ばれる。グリーン水素を使用する利点は、CO2が形成されないこと、およびそのため高価な回収および固定化の必要がないことである。
【0010】
グリーン水素の製造のための実用面で興味深いプロセスの例として、水の電気分解が挙げられる。水の電気分解は電力を必要とするが、この電力は再生可能な供給源、例えば太陽エネルギーなどを用いて生産され得、大気中へのCO2の放出なしでのグリーン水素の製造を導く。
【0011】
このようにして製造された水素は、「グレー」水素に加えて、典型的には合成ガス圧縮機の吸引口から、または合成ループに直接的に、既存のプラントに注入され得、プラントの生産量を増加させ、プラントの特定のエネルギー消費量を削減し、および関連するCO2フットプリントを削減する。
【0012】
しかしながら、再生可能エネルギー源からの水素製造は、通常、変動に付される。例えば、太陽光発電による水素製造は、明らかに太陽光の利用可能性に左右される。このような変動を補うために、グリーン水素のストレージが必要である。アンモニア製造へのグリーン水素の顕著な寄与を維持するために、エネルギー源の全部または一部が利用できないとき、ストレージがグリーン水素の製造の全部または一部を代替することができる。
【0013】
水素のストレージは、経済的に許容可能であるために高圧で行われなければならない。例えば、費用対効果の高い水素ストレージは、少なくとも50バール、および典型的には50~300バールの圧力で行われるべきと考えられる。残念なことに、グリーン水素を製造するための商業的に利用可能な技術は、ストレージには不十分な低圧または中圧で水素を供給する。例えば、水の電気分解のために利用可能な技術は、典型的には約20~30バールで水素を製造し得る。
【0014】
つまり、ストレージを目的とするグリーン水素は圧縮を必要とする。必要な水素コンプレッサーは高価なアイテムであり、および、消費電力も大きく、これは、グリーン水素への移行を経済的な観点からより魅力的ではないものとしている。さらにもう一つの問題は、市販されている水素用コンプレッサーは、典型的には容積式コンプレッサーであり、遠心式コンプレッサーのようなターボ機械に比べて本質的に信頼性が低いことである。システムの許容可能な信頼性を確保するためには、予備ユニットが設置されなければならず、これはコストをさらに上昇させる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、先行技術の上記の欠点を克服することを目的とする。特に、本発明は、いわゆるグリーン水素、すなわち再生可能エネルギーから製造された水素の使用が、現在の従来技術と比較してより魅力的になる、アンモニアの合成のためのプロセスおよびプラントを提供することを目的とする。
【0016】
この目的は、請求項1に記載のプロセスによって達成される。本発明において、アンモニアは、改質プロセスを用いて従来のように製造された水素を、再生可能エネルギー源から製造された水素(グリーン水素)と共に使用して製造される。水素のストレージが提供され、および、前記ストレージからの水素が、前記再生可能エネルギー源の一部または全部の利用不能分を補うために使用される。
【0017】
前記水素ストレージには、コンバーター流出物の冷却および分離プロセスの後に分離されたサイドストリームから回収される水素の一部が供給される。
【0018】
本発明は、前記回収水素が、従来の水素およびグリーン水素が供給されるアンモニア合成ループから回収される、グリーン水素と部分的にみなすことができるという知見から生まれた。したがって、関連するエネルギー源が利用できない場合の、グリーン水素を置き換えるためのその使用が、製造されるアンモニアに関する所定の容量に関してCO2の総計の排出量を削減するという優位な効果を維持する。
【0019】
一方、上記のサイドストリーム(ループパージとも称される)から回収される水素は、通常、グリーン水素の製造圧力よりも顕著に高い高圧で利用可能である。回収される水素の圧力は、圧縮なしの直接的なストレージと相容れるものであり得る。水素ストレージのためのコンプレッサーが不要になることで、コストおよび消費量が削減され、および、故障の原因となる可能性が排除される。200バールのような非常に高い圧力でストレージが行われる場合など、いくつかの実施形態では、回収された水素は依然として圧縮される必要があるかもしれないが、いずれにせよ、ストレージされる水素の圧縮にかかるコストは、本発明のおかげで大幅に削減されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
グリーン水素の製造のための特に好ましいプロセスは、水の電気分解である。水の電気分解は、一または複数の再生可能エネルギー源から、例えば太陽エネルギーから製造される電気エネルギーを動力源とすることができる。
【0022】
他の実施形態において、グリーン水素はバイオマスから製造され得る。バイオマスは、そのエネルギーが太陽に由来し、および短期間で成長できるため、エネルギーの再生可能な形態として広く考えられている。バイオマスは、熱化学プロセスまたは発酵などの生物学的プロセスを用いて水素に変換され得る。好ましい熱化学プロセスとしては、ガス化、部分酸化、および水蒸気改質などが挙げられる。バイオマス源としては、好ましくはリグノセルロース系バイオマスである。好ましい実施形態において、バイオマスから水素へのプロセスは、そのようなリグノセルロース系バイオマスのガス化を含む。
【0023】
水素ストレージは、好ましくは少なくとも50バール、より好ましくは50バール~200バールの圧力で行われる。水素は、一または複数の適切なストレージ容器中に加圧下でストレージされ得る。
【0024】
回収された水素は、少なくとも50バール、好ましくは50~100バール、および特に好ましくは50~90バールの圧力を有する。したがって、該回収された水素は、水素が回収される圧力がストレージの圧力と等しいか、またはそれより高いときはいつでも、圧縮することなくストレージに送られ得る。
【0025】
ストレージ圧力がより高い実施形態において、圧縮は依然として必要とされる。しかしながら、本発明は、水素が得られる圧力が比較的高いため、すなわち従来技術と比較してストレージのための圧縮比が低減されるため、依然として有利である。
【0026】
本発明において、アンモニアは、部分的に従来の改質から製造された水素を用いて、および、部分的にグリーン水素を用いて製造される。グリーン水素は、二酸化炭素排出量を減らすだけでなく、容量を増やすためにも使用され得る。このプロセスは、水素のハイブリッド製造により、ハイブリッドプロセスとみなされ得る。典型的な実施形態において、再生可能エネルギーから製造された水素は、補給ガス中の総計の水素の50%まで、好ましくは20%~50%を占め得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、グリーン水素は総計の水素のより多くの部分(50%より多い)を占め得る。
【0027】
グリーン水素、場合によりストレージからの水素によって置き換えられるグリーン水素は、メイン合成ガス圧縮機の吸引側に導かれ得る。好ましい実施形態において、グリーン水素は、改質および精製から得られる精製補給ガスと同じ圧力または実質的に同じ圧力で製造され得る。
【0028】
メイン合成ガス圧縮機は、改質プロセスが行われる改質フロントエンドに接続され、およびさらに例えば水電気分解装置などのグリーン水素の製造装置に接続され、およびさらに水素ストレージ装置に接続された吸引ラインを備え得る。
【0029】
改質プロセスは、当該技術分野において公知の様々な技術にしたがって行われ得る。改質プロセスは、焼成炉中での一次改質に続いて、適切な酸化剤を用いた二次改質を含んでいてもよい。酸化剤は通常空気であるが、入手可能である場合、酸素の割合の多い空気(enriched air)または純粋な酸素であってもよい。改質ガスの精製としては、COシフト、二酸化炭素除去、およびメタネーションなどが挙げられる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態は以下:アンモニア補給ガスを製造するためにフロントエンドにおいて炭化水素源を改質すること;該アンモニア補給ガスを、メイン合成ガス圧縮機を介して、アンモニア合成コンバーターを含むアンモニア合成ループに供給すること;該アンモニアループから水素含有パージ流を除去すること;その中に含まれる水素を分離するため、および回収水素を得るために、該パージ流の一部を処理すること;再生可能エネルギー源から、好ましくは水の電気分解によって、別途得られるさらなる水素フィードを提供すること;該さらなる水素を該メイン合成ガス圧縮機のインプットに供給すること;該再生可能エネルギー源が完全には利用できない場合に該さらなる水素フィードを一部または完全に置き換えるように配置された水素ストレージを提供すること;該回収された水素の少なくとも一部を該水素ストレージに供給すること、を含む。
【0031】
好ましくは、回収された水素の一部は、該ストレージに供給され、および、残りの部分はアンモニア合成ループ中への再導入のために該メイン合成ガス圧縮機のインプットに供給される。
【0032】
典型的な実施形態において、アンモニアコンバーターは、アンモニア合成ループの一部である。アンモニア合成ループは、アンモニアコンバーター、補給ガスプレヒーター、冷却および分離ステージ、ならびにサーキュレーターを備え得る。再生可能エネルギーから別途製造された水素、または水素ストレージから取り出された水素は、適切な位置で、好ましくはメイン合成ガス圧縮機を介して、該ループ中に導入され得る。
【0033】
本発明の別の態様は、特許請求の範囲の記載に基づくプラントである。
【0034】
図1は、本発明の好ましい実施形態の簡略図であり、ここで、以下の主要なアイテムが示されている。
100 改質ベースのフロントエンド
101 アンモニア合成ループ
102 水素の製造のための太陽電池式水電気分解装置
103 水素ストレージ
1 天然ガスなどの炭化水素源
2 脱硫
3 焼成炉などの一次改質器
4 二次改質器
5 シフトコンバーター。例えば、高温シフトコンバーターに続く低温シフトコンバーターなど、一または複数のシフトコンバーターが設けられ得る
6 例えば、アミンまたは炭酸塩溶液洗浄、または圧力変動吸着(PSA)、または気体からCO
2を除去するための別の技術などによる二酸化炭素の除去
7 メタネーション
8 精製補給ガス
9 二次改質器への給気
10 空気圧縮機
11 メイン合成ガス圧縮機
12 合成ガスドライヤー
13 サーキュレーター
14 熱交換器、フレッシュガスプレヒーターおよび反応流出物冷却器
15 アンモニア合成コンバーター
16 冷却分離ステージ
17 メンブレンシステム、またはPSA、または別の適切な技術に基づく水素回収ユニット(HRU)
18 一次改質器3への燃料
SP 太陽エネルギー、すなわち電気分解装置102の電源
【0035】
【0036】
脱硫後の天然ガス1が、一次改質器3中で水蒸気改質され、および、そのようにして得られた部分的に改質されたガスが、二次改質器4中でさらに処理される。該二次改質器の流出物は、補給ガス8を得るために精製される。
【0037】
必要な量の窒素が、二次改質器4を点火する給気9と共に導入され得る。
【0038】
補給ガス8が、メイン合成ガス圧縮機11によってアンモニアループ101に供給される。交換器14中での予熱の後、予熱された補給ガス28がアンモニアコンバーター15中で反応される。
【0039】
コンバーターの流出物19は、交換器14中で新鮮な補給ガスを予熱し、および、冷却分離ステージ16に送られる。ここからアンモニア20とパージガス21とが分離される。
【0040】
パージガス21は、第1の部分29と第2の部分30とに分けられる。第1の部分29は、HRU17に送られ、そこで水素が非凝縮性ガスなどの他の不純物から分離される。第2の部分30は、サーキュレーター13を介してアンモニアループ101中に再導入される。サーキュレーターは、ループ101内の循環を維持し、圧力降下を補償する。
【0041】
水素回収ユニット17は、極低温システム、メンブレンベースのシステム、またはPSAを使用し得る。ガス混合物から水素を除去するための技術は当業者にとって周知であり、および説明は必要でない。
【0042】
回収水素を含むストリーム22は、ライン23を介してメイン圧縮機11の入口に、および/または、ライン24を介してH2ストレージ103に、送られ得る。ライン24中には、ストレージ圧力がストリーム22の圧力よりも高い場合、すなわちHRU17の吐出圧力よりも高い場合、圧縮機が設けられ得る。
【0043】
HRU17において分離された残りのガスは可燃性であり得、ライン25を用いて一次改質器3に燃料としてリサイクルされ得る。
【0044】
圧縮機11の入口ラインは、グリーン水素供給ライン26を介して、電気分解装置102に接続されている。H2ストレージ103は、該グリーン水素供給ライン26に接続された出口ライン27を備える。
【0045】
操作中、メイン合成ガス圧縮機11は、ライン26のグリーン水素およびライン23からの回収水素と共に、フロントエンド100中で従来のように製造された補給ガス8を受容する。例えば、電気分解装置102からの水素は、圧縮機11に供給される水素の約30%であり得る。
【0046】
通常の操作中、ライン24の回収された水素は、その後の使用のためにストレージされ、および、ライン27は、例えば適切なバルブなどによって、閉じられてもよい。回収された水素22は、状況に応じて、部分的にまたは全体的に圧縮機11のインレットに、またはストレージ103に送られ得る。例えば、ストレージ103が最大容量に達した場合、水素22は、必要に応じていつでも、ライン23を介してループ中に完全に再導入され得る。
【0047】
電気分解装置102の電源の利用可能性に基づいて、ストレージ103からの水素は、該電気分解装置102での生産を一部的または完全に置き換えるために使用され得る。例えば、電気分解装置102が太陽エネルギーSPを使用するとした場合、太陽エネルギーが低下する夜の時間および/または曇天時に、(ストレージ103から取り出された)ストレージ水素が使用され得る。
【0048】
回収された水素22およびストレージ103にストレージされた水素は、それが一部的にグリーン水素が供給されるループから回収されるため、「部分的にグリーン(partially green)」な水素とみなされ得る。したがって、ストレージの使用は、二酸化炭素排出の点で有益である。
【0049】
除去ユニット6から分離された二酸化炭素31は、ストレージされてもよく、また、別のプロセス、例えば、連通された尿素プラントにおける尿素の合成などのために使用されてもよい。分離された二酸化炭素の、その排出の代わりの使用は、明らかに、環境への負荷を低減させるためのもう一つの利点である。
【0050】
典型的な実施形態において、補給ガス8は、約20~25バールの圧力である。アンモニアコンバーターは、約140バールで作動し得る。回収された水素22は、50~90バールまたはそれ以上の圧力であり得る。ストレージは、ストリーム22の圧力で行われてもよく、また、圧縮機を使用してより高い圧力で行われてもよい。
【国際調査報告】