(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ワクシニアキャッピング酵素の生産
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240311BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240311BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240311BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/72 20060101ALI20240311BHJP
C07K 14/07 20060101ALN20240311BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N15/33 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 Z
C12N15/63 100Z
C12N15/72 Z
C07K14/07
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560176
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2022022303
(87)【国際公開番号】W WO2022212342
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516286741
【氏名又は名称】ギンゴー バイオワークス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ボーバー,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブーチャー,ジェフリー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ガーディン,ジャスティン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キング,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】マー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,クリシュナベン エス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルドマン,エイブラハム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG32
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA20
4B065AA01X
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4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA89
4H045EA60
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の態様は、宿主細胞におけるワクシニアキャッピング酵素(VCE)の生産に関する。例えば、宿主細胞は、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、ワクシニアキャッピング酵素(VCE)またはVCEサブユニットをコードする核酸、およびターミネーターを含んでよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含むプロモーター;ならびに
(b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸、および/または配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸
を含み、
(a)と(b)は作動可能に連結されており、リボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸。
【請求項2】
プロモーターが、ラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である、請求項1に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項3】
天然には存在しない核酸がターミネーターをさらに含む、請求項1または2に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項4】
a)RBSが、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含みおよび/または
b)ターミネーターが、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項5】
a)配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸が、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である核酸配列を含み;および/または
b)配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸が、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である核酸配列を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項6】
プロモーター、RBS、およびターミネーターが、請求項1(b)に記載の核酸に作動可能に連結されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項7】
請求項1(b)に記載の核酸が、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項8】
請求項1(b)に記載の核酸が、配列番号7または31のアミノ酸配列をコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項9】
請求項1(b)に記載の核酸が、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードし、配列番号7または31のアミノ酸配列もコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項10】
a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第1のプロモーター;
b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第1の核酸;
c)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第2のプロモーター;および
d)配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第2の核酸
を含み、
(a)と(b)は作動可能に連結されており、(c)と(d)は作動可能に連結されており、少なくとも1つのリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸。
【請求項11】
第1のプロモーターおよび/または第2のプロモーターが、ラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である、請求項10に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項12】
少なくとも1つのターミネーターをさらに含む、請求項10または11に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項13】
a)RBSが、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含み、および/または
b)ターミネーターが、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む、
請求項10~12のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項14】
a)第1の核酸が、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である核酸配列を含み;および/または
b)第2の核酸が、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である配列を含む、
請求項10~13のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項15】
配列番号21~28、または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項16】
配列番号21~28、または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む、天然には存在しない核酸。
【請求項17】
天然には存在しない核酸が、融合タンパク質をコードしない、請求項1~16のいずれか一項に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の天然に存在しない核酸を含む宿主細胞。
【請求項19】
天然には存在しない核酸が、宿主細胞のゲノム中に全体的にまたは部分的に組み込まれている、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
配列番号8もしくは9に少なくとも90%同一である配列を含むプロモーター;ならびに
配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸、および/または配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸
を含む1つまたは複数の天然に存在しない核酸を含み、天然に存在しない核酸の1つまたは複数がリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む、宿主細胞。
【請求項21】
プロモーターが、ラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
RBSが、配列番号10~17、37、38、または45のうちの1つに少なくとも90%同一である配列を含む、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数がターミネーターをさらに含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項24】
天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数が、宿主細胞のゲノム中に組み込まれている、請求項19~23のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項25】
天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数がプラスミド上で発現される、請求項19~23のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が細菌細胞である、請求項19~25のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項27】
細菌細胞が大腸菌(E.coli)細胞である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
核酸配列のうちの1つまたは複数が、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードする、請求項19~27のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項29】
核酸配列のうちの1つまたは複数が、配列番号7または31のアミノ酸配列をコードする、請求項19~27のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項30】
核酸配列のうちの1つまたは複数が、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードし、配列番号7または31のアミノ酸配列もコードする、請求項19~27のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項31】
a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第1のプロモーター;
b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第1の核酸;
c)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第2のプロモーター;および
d)配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第2の核酸
を含む1つまたは複数の天然には存在しない核酸を含み、
(a)と(b)は作動可能に連結されており、(c)と(d)は作動可能に連結されており、天然には存在しない核酸の1つまたは複数が少なくとも1つのリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む、宿主細胞。
【請求項32】
プロモーターが、ラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である、請求項31に記載の宿主細胞。
【請求項33】
天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数が、少なくとも1つのターミネーターをさらに含む、請求項31または32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
a)RBSが、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含み、および/または
b)ターミネーターが、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む、
請求項32または33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
a)第1の核酸が、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である配列を含み;および/または
b)第2の核酸が、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である配列を含む、
請求項31~34のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項36】
天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数が、配列番号21~28、または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む、
請求項31~35のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項37】
宿主細胞が、対照宿主細胞と比べた場合、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍または5倍のワクシニアキャッピング酵素を産生することができ、対照宿主細胞が野生型大腸菌である、請求項18~36のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項38】
宿主細胞が、少なくとも50mg/L、100mg/L、150mg/L、200mg/L、250mg/L、300mg/L、350mg/L、400mg/L、または450mg/Lのワクシニアキャッピング酵素を産生することができる、請求項18~37のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項39】
天然には存在しない核酸が、融合タンパク質をコードしない、請求項18~38のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項40】
請求項18~39のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することを含むワクシニアキャッピング酵素を産生する方法。
【請求項41】
方法が、ワクシニアキャッピング酵素の精製をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(a)Ptacプロモーターもしくはその機能的断片、またはP(T5)2xlacOプロモーターもしくはその機能的断片であるプロモーター;および
(b)VCEのD1サブユニットおよび/またはワクシニアキャッピング酵素のD12サブユニットをコードする核酸
を含み、
(a)と(b)は作動可能に連結されており、リボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸。
【請求項43】
プロモーターが、ラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である、請求項42に記載の天然には存在しない核酸。
【請求項44】
融合タンパク質をコードしない、請求項42または43に記載の天然には存在しない核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月29日提出の「ワクシニアキャッピング酵素の生産」と題する米国特許仮出願第63/167,249号および2021年5月14日提出の「ワクシニアキャッピング酵素の生産」と題する米国特許仮出願第63/188,977号の35 U.S.C.§119(e)の下での利益を主張するものであり、前記特許文献のそれぞれの全開示は参照によりその全体をここに組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを経てテキストファイルとして提出される配列表への言及
本出願は、EFS-WEBを経てASCIIフォーマットで提出され、参照によりその全体をここに組み込まれる配列表を含む。2022年3月29日に作成されたASCIIファイルはG091970072WO00-SEQ-OMJ.txtと命名され、サイズは138,941バイトである。
【0003】
本開示は、ワクシニアキャッピング酵素の生産に有用である核酸、細胞、および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
7-メチルグアニレートキャップ構造(m7Gキャップ0)は、タンパク質合成のキャップ依存性開始で不可欠な役割を果たし、真核生物メッセンジャーRNA(mRNA)の安定化、輸送、および翻訳に関与している。ワクシニアウイルス由来の酵素であるワクシニアキャッピング酵素(VCE)は、m7Gキャップ0をRNAの5’末端に付加し、それによってRNA安定性および翻訳能力を改善するのに効率的である。VCEはmRNAの産生に有用である可能性がある。しかし、VCEを大規模に発現し生産するのは困難であることは以前報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VCEの生産が増加すれば、この酵素に対する増加する需要を満たすのに役立つと考えられる。VCEの生産が増加すれば、mRNAワクチンの生産に特に有用である可能性がある。本開示の態様は、VCEの生産に有用である天然には存在しない核酸、細胞、および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、(a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含むプロモーター;ならびに(b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸、および/または配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含み、(a)と(b)は作動可能に連結されており、リボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸に関する。
【0007】
一部の実施形態では、プロモーターはラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導可能である。
【0008】
一部の実施形態では、天然には存在しない核酸はターミネーターをさらに含む。一部の実施形態では、RBSは、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含みおよび/またはターミネーターは、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である核酸配列を含み;および/または配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である核酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、プロモーター、RBS、およびターミネーターは、配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸、および/または配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号7または31のアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸および/または配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードし、配列番号7または31のアミノ酸配列もコードする。
【0011】
本開示のさらなる態様は、(a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第1のプロモーター;(b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第1の核酸;(c)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第2のプロモーター;および(d)配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第2の核酸を含み、(a)と(b)は作動可能に連結されており、(c)と(d)は作動可能に連結されており、少なくとも1つのリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸に関する。
【0012】
一部の実施形態では、第1のプロモーターおよび/または第2のプロモーターはラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である。
【0013】
一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は少なくとも1つのターミネーターをさらに含む。一部の実施形態では、RBSは、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含むおよび/またはターミネーターは、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む。一部の実施形態では、第1の核酸は、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である配列を含み;および/または第2の核酸は、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である配列を含む。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は、配列番号21~28、または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む。
【0014】
本開示のさらなる態様は、配列番号21~28または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む天然には存在しない核酸に関する。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は融合タンパク質をコードしない。
【0015】
本開示のさらなる態様は、本開示に関連する天然に存在しない核酸のいずれかを含む宿主細胞に関する。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は、宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は、プラスミド上で発現される。
【0016】
本開示のさらなる態様は、配列番号8もしくは9に少なくとも90%同一である配列を含むプロモーター;ならびに配列番号6もしくは29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸、および/または配列番号7もしくは31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含む1つまたは複数の天然には存在しない核酸を含み、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数はリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む、宿主細胞に関する。
【0017】
一部の実施形態では、プロモーターはラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である。
【0018】
一部の実施形態では、RBSは、配列番号10~17、37、38、または45のうちの1つに少なくとも90%同一である配列を含む。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数はターミネーターをさらに含む。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数は、宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数はプラスミド上で発現される。
【0019】
一部の実施形態では、宿主細胞は細菌細胞である。一部の実施形態では、細菌細胞は大腸菌(E.coli)細胞である。一部の実施形態では、核酸配列のうちの1つまたは複数は、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、核酸配列のうちの1つまたは複数は、配列番号7または31のアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、核酸配列のうちの1つまたは複数は、配列番号6または29のアミノ酸配列をコードし、配列番号7または31のアミノ酸配列もコードする。
【0020】
本開示の態様は、(a)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第1のプロモーター;(b)配列番号6または29に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第1の核酸;(c)配列番号8または9に少なくとも90%同一である配列を含む第2のプロモーター;および(d)配列番号7または31に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする第2の核酸を含む1つまたは複数の天然には存在しない核酸を含み、(a)と(b)は作動可能に連結されており、(c)と(d)は作動可能に連結されており、天然には存在しない核酸の1つまたは複数が少なくとも1つのリボソーム結合部位(RBS)をさらに含む、宿主細胞に関する。
【0021】
一部の実施形態では、プロモーターはラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数は少なくとも1つのターミネーターをさらに含む。一部の実施形態では、RBSは、配列番号10、11、12、13、14、15、16、17、37、38、もしくは45に少なくとも90%同一である配列を含み、および/またはターミネーターは、配列番号18、19、もしくは20に少なくとも90%同一である配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、第1の核酸は、配列番号2、3、33、もしくは34に少なくとも90%同一である配列を含み;および/または第2の核酸は、配列番号4、5、35、もしくは36に少なくとも90%同一である配列を含む。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸のうちの1つまたは複数は、配列番号21~28、または49~54のいずれか1つに少なくとも90%同一である配列を含む。
【0023】
一部の実施形態では、宿主細胞は、対照宿主細胞と比べた場合、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍または5倍のワクシニアキャッピング酵素を産生することができ、対照宿主細胞は野生型大腸菌である。一部の実施形態では、宿主細胞は、少なくとも50mg/L、100mg/L、150mg/L、200mg/L、250mg/L、300mg/L、350mg/L、400mg/L、または450mg/Lのワクシニアキャッピング酵素を産生することができる。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は融合タンパク質をコードしない。
【0024】
本開示のさらなる態様は、本開示の宿主細胞のいずれかを培養することを含むワクシニアキャッピング酵素を産生する方法に関する。一部の実施形態では、方法はワクシニアキャッピング酵素の精製をさらに含む。
【0025】
本開示のさらなる態様は、(a)Ptacプロモーターもしくはその機能的断片、またはP(T5)2xlacOプロモーターもしくはその機能的断片であるプロモーター;および(b)VCEのD1サブユニットおよび/またはワクシニアキャッピング酵素のD12サブユニットをコードする核酸を含み、(a)と(b)は作動可能に連結されており、リボソーム結合部位(RBS)をさらに含む天然には存在しない核酸に関する。
【0026】
一部の実施形態では、プロモーターはラクトースおよび/またはガラクトースにより誘導性である。一部の実施形態では、天然には存在しない核酸は融合タンパク質をコードしない。
【0027】
一部の実施形態では、宿主細胞は、野生型細胞と比べてftsZの増加した発現を有する。一部の実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数のプラスミド上でftsZの1つまたは複数のコピーを発現する。一部の実施形態では、ftsZの1つまたは複数のコピーは、宿主細胞のゲノム中に全体的にまたは部分的に組み込まれている。
【0028】
一部の実施形態では、宿主細胞は、野生型細胞と比べてmetKの増加した発現を有する。一部の実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数のプラスミド上でmetKの1つまたは複数のコピーを発現する。一部の実施形態では、metKの1つまたは複数のコピーは、宿主細胞のゲノム中に全体的にまたは部分的に組み込まれている。
【0029】
一部の実施形態では、宿主細胞は、野生型細胞と比べてmreBの増加した発現を有する。一部の実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数のプラスミド上でmreBの1つまたは複数のコピーを発現する。一部の実施形態では、mreBの1つまたは複数のコピーは、宿主細胞のゲノム中に全体的にまたは部分的に組み込まれている。
【0030】
一部の実施形態では、宿主細胞は、SAM-およびGTP-関連代謝物の存在下で培養される。
【0031】
本発明の限定のそれぞれは、本発明の様々な実施形態を包含することができる。したがって、いずれか1つの要素または要素の組合せに関連する本発明の限定のそれぞれは、本発明のそれぞれの態様に含むことができることが見込まれる。本開示は、その適用において、以下の記載に示されるまたは図に説明される構築の詳細および成分の配置に限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であり様々なやり方で実践するまたは実行することができる。その上、本出願で使用される用語および専門用語は説明を目的としており、限定するものと見なされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」およびその変形は、その後に記載される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することが意図されている。用語「1つ(a)」または「1つ(an)」とは、実体の1つまたは複数のことである。
【0032】
添付の図は縮尺に合わせて描かれることを意図されていない。明快さのために、すべての図においてすべての構成成分が標識されていないこともある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1A~1Bは、VCEによるmRNAキャップ0構造の生成を示す模式図を提供する。
図1Aは、プラスミドDNAからのRNAの生成、続いてVCEキャッピングを描いている。
図1Bは、mRNA m7GpppG(キャップ0)を生成するためのVCEにより触媒されるキャッピング反応を描いている。
【
図2】
図2は、上位23の大腸菌候補VCE産生株の流加発酵由来の最大可溶性酵素力価を示すグラフを描いている。正の対照株t778543はFuchs et al. (2016) RNA 22:1454-1466の発現系に由来していた。
【
図3】
図3は、上位8つの大腸菌候補VCE産生株(816008、816072、816070、816056、807172、807173、815995、および815917)の50時間流加発酵由来の可溶性酵素力価を示すグラフを描いている。経時的データは、3つのバイオリアクターレプリカのプロッティングを示しており、エラーバーは4つの溶解バイオレプリカによる分析的分散を示している。
【
図4】
図4は、誘導因子なしの6つの大腸菌候補VCE産生株(807175、807176、815930、815934、816019、および816020)、ならびにIPTG、ラクトース、ガラクトース、および誘導因子なしにより誘導された1つの大腸菌候補VCE産生株(870868)の50時間流加発酵由来の可溶性酵素力価を示すグラフを描いている。経時的データは、2つのバイオリアクター複製のプロッティングを示しており、エラーバーは2つの溶解バイオレプリカによる分析的分散を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、一部の態様では、VCEの生産に向けて操作されている宿主細胞を提供する。これらの操作された宿主細胞は、合成プロモーターの制御下でVCEサブユニットD1および/またはD12をコードする再コード化された核酸を発現する。VCEを大規模に発現し生産する難しさは以前報告されている。驚くべきことに、合成プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、再コード化された核酸配列、およびターミネーターなどの遺伝子要素の最適化された組合せを含む宿主細胞は、対照宿主細胞と比べて増加したレベルのVCEを産生したことが本開示の実施例において実証されている。本出願に記載される宿主細胞を使用すれば、過去のアプローチと比べて増加した力価でVCEを産生しうる。
【0035】
ワクシニアキャッピング酵素
ワクシニアキャッピング酵素(VCE)は、ワクシニアウイルスによりコードされ、大きいサブユニットD1と小さいサブユニットD12という2つのサブユニットからなるヘテロ二量体RNAキャッピング酵素である。大きいサブユニットD1は3つの酵素活性:1)RNAトリホスファターゼ;2)グアニリルトランスフェラーゼ;および3)グアニンメチルトランスフェラーゼを含み、そのすべてが、5’三リン酸RNAへの完全なキャップ0構造m7Gppp5’Nの酵素的付加に欠かせない(
図1B)。大きいサブユニットD1のグアニンメチルトランスフェラーゼ活性は、効率的に機能するためには小さいサブユニットD12との会合を必要とする。mRNAキャッピングの態様は、Ramanathan et al. (2016). Nucleic Acids Res. (16): 7511-7526に記載されており、前記文献から参照により組み込まれる。本出願の実施例のセクションに記載されているように、合成プロモーター、RBS、およびターミネーターの様々な組合せの制御下でD1および/またはD12をコードする再コード化された核酸の過剰発現は、VCE産生株の生産性および収量を驚くほど改善した。いかなる理論にも縛られたくはないが、本開示で提供されるD1および/またはD12をコードし、本開示に記載される合成プロモーター、RBS、および/またはターミネーターの特定の組合せの制御下で発現される再コード化された核酸は、D12の十分な発現を含む、D1:D12同時発現の改善されたバランスを提供することがあり、これによりD1サブユニットの安定化が改善され、VCEの収量が増加する可能性がある。
【0036】
VCE D1サブユニットのアミノ酸配列は、UniProt受託番号P04298に一致し、配列番号29により提供される。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D1サブユニットの配列は、配列番号29またはその保存的置換バージョンを含む。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D1サブユニットの配列はタグを含有する。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D1サブユニットの配列は、配列番号6またはその保存的置換バージョンを含む。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D1サブユニットは、配列番号29もしくは6、またはその保存的置換バージョン、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCE D1サブユニット配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0037】
VCE D1サブユニットは遺伝子VACWR106(配列番号30)によりコードされている。一部の実施形態では、D1をコードする核酸は配列番号30を含む。他の実施形態では、D1をコードする核酸は再コード化されている。一部の実施形態では、D1をコードする核酸は、配列番号2、3、30、33または34を含む。一部の実施形態では、D1をコードする核酸は、配列番号2、3、30、33もしくは34;表3内のD1再コード化配列;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のD1をコードする配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0038】
VCE D12サブユニットのアミノ酸配列は、UniProt受託番号P04318に一致し、配列番号31により提供される。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D12サブユニットの配列は、配列番号31またはその保存的置換バージョンを含む。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D12サブユニットの配列はタグを含有する。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D12サブユニットの配列は、配列番号7またはその保存的置換バージョンを含む。一部の実施形態では、本開示に関連するVCE D12サブユニットは、配列番号31もしくは7またはその保存的置換バージョン、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCE D12サブユニット配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0039】
VCE D12サブユニットは遺伝子VACWR117(配列番号32)によりコードされている。一部の実施形態では、D12をコードする核酸は配列番号32を含む。他の実施形態では、D12をコードする核酸は再コード化されている。一部の実施形態では、D12をコードする核酸は、配列番号4、5、32、35または36を含む。一部の実施形態では、D12をコードする核酸は、配列番号4、5、32、35または36;表3内のD12再コード化配列;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のD12をコードする配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0040】
本出願に記載される宿主細胞は、VCEもしくはVCEサブユニットおよび/またはそのような酵素もしくは酵素サブユニットをコードする核酸を含むことができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、配列番号6もしくは29のアミノ酸配列を含むVCEをコードする核酸および/または配列番号7もしくは31のアミノ酸配列を含むVCE;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCEをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、配列番号6もしくは29の配列を含むVCE D1サブユニット;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCE D1サブユニットをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、配列番号7もしくは31の配列を含むVCE D12サブユニット;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCE D12サブユニットをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、配列番号2、3、4、5、30、32、33、34、35または36のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である核酸;表3においてVCEもしくはVCEサブユニットをコードする核酸;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のVCEもしくはVCEサブユニットをコードする核酸を含む。
【0041】
一部の実施形態では、VCEの大きなおよび小さなサブユニット(D1およびD12)は別々のmRNA上で転写される。mRNAは、宿主細胞における、または宿主細胞のゲノム中に組み込まれた1つもしくは複数のプラスミド上で発現させることができる。一部の実施形態では、核酸は1つのサブユニットだけをコードする(例えば、D1だけをまたはD12だけをコードする)。一部の実施形態では、D1またはD12をコードする核酸はプラスミド上で発現される。一部の実施形態では、D1またはD12をコードする核酸は、細胞の染色体中に組み込まれている。
【0042】
一部の実施形態では、VCEの大きなおよび小さなサブユニット(D1およびD12)は、単一のポリシストロン性mRNAとして一緒に転写され、そこでは同じ制御配列(例えば、プロモーター)が両方のVCEサブユニット(D1およびD12)の発現を制御する。両方のサブユニットをコードするmRNAは、宿主細胞における、または宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプラスミド上で発現させることができる。一部の実施形態では、D1およびD12をコードする核酸はプラスミド上で発現される。一部の実施形態では、D1およびD12をコードする核酸は、細胞の染色体中に組み込まれている。
【0043】
一部の実施形態では、VCEの大きなおよび小さなサブユニット(D1およびD12)は、2つのモノシストロン性単位内で同じmRNAから転写され、それによってそれぞれのサブユニット(D1およびD12)の発現はそれ独自の制御配列(例えば、それ自体のプロモーター)の制御下にある。両方のモノシストロン性単位をコードするmRNAは、宿主細胞における、または宿主細胞のゲノム中に組み込まれたプラスミド上で発現させることができる。一部の実施形態では、核酸はプラスミド上で発現される。一部の実施形態では、核酸は、細胞の染色体中に組み込まれている。
【0044】
一部の実施形態では、宿主細胞は、VCEまたは1つもしくは複数のVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする核酸の2つまたはそれよりも多いコピーを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、VCEまたは1つもしくは複数のVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする核酸の3つもしくはそれよりも多い、4つもしくはそれよりも多い、5つもしくはそれよりも多い、6つもしくはそれよりも多い、7つもしくはそれよりも多い、8つもしくはそれよりも多い、9つもしくはそれよりも多い、または10もしくはそれよりも多いコピーを含む。
【0045】
核酸がD1とD12の両方をコードする一部の実施形態では、D1をコードする配列を含む核酸の一部は、配列番号2、3、30、33もしくは34;表3内のD1再コード化配列、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のD1をコードする配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である。
【0046】
核酸がD1とD12の両方をコードする一部の実施形態では、D12をコードする配列を含む核酸の一部は、配列番号4、5、32、35もしくは36;表3内のD12再コード化配列、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のD12をコードする配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である。
【0047】
一部の実施形態では、本開示の核酸は、D1およびD12サブユニットを含む融合タンパク質をコードしていない。
【0048】
他の実施形態では、本開示の核酸はD1およびD12サブユニットを含む融合タンパク質をコードしていてよい。D1およびD12サブユニットを含む融合タンパク質は、D1とD12サブユニットの間の切断部位を含むことができる。核酸がD1とD12の両方をコードする一部の実施形態では、核酸は、D1をコードする配列とD12をコードする配列の間の切断部位を含むアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、切断部位はTEV切断部位である。
【0049】
本開示の態様は、VCEまたはVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする異種核酸を発現する宿主細胞に関する。VCEまたはVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする核酸の発現を増加させるいかなる機序または機序の組合せも本開示により想定されていることは認識するべきである。例えば、宿主細胞は、VCEもしくはVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする増加したコピー数の核酸を有してよく、および/または1つもしくは複数のコピーの核酸は、その天然のプロモーターと比べて核酸の発現を増加させる強いプロモーターにより調節されてよい。一部の実施形態では、VCEまたはVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする増加したコピー数の核酸は、1つまたは複数のプラスミド上で1つまたは複数のコピーを発現することにより達成される。他の実施形態では、VCEまたはVCEサブユニット(D1および/またはD12)をコードする増加したコピー数の核酸は、1つまたは複数のコピーの核酸を染色体中に組み込むことにより達成される。
【0050】
本開示に関連する遺伝子の発現の調節
本開示は、宿主細胞において核酸の異種発現を含む方法を包含する。遺伝子を含む核酸、またはプロモーターもしくはリボソーム結合部位などの調節領域を含む核酸などの核酸に関して用語「異種の」は、用語「外来性の」および用語「組換え型の」と互換的に使用され、生物系に人工的に与えられている核酸;生物系内で改変されている核酸;またはその発現もしくは調節が生物系内で操作されている核酸のことである。宿主細胞内に導入されるまたはそこで発現される異種核酸は、宿主細胞とは異なる生物もしくは種由来の核酸でもよく、または合成核酸でもよく、または宿主細胞と同じ生物もしくは種でも内因的に発現される核酸でもよい。例えば、宿主細胞で内因的に発現される核酸は、その核酸が宿主細胞において非天然に位置している;宿主細胞において、安定的であれ一過性であれ、組換え的に発現される;宿主細胞内で改変される;宿主細胞内で選択的に編集される;宿主細胞内で非天然的なコピー数で発現される;または核酸の発現を制御する調節領域を操作することによりなどの、宿主細胞内で非天然的に発現される場合、異種性と見なしてよい。一部の実施形態では、異種核酸は、宿主細胞において内因的に発現されるが、その発現が、その核酸の発現を天然には調節していないプロモーターにより駆動される核酸である。他の実施形態では、異種核酸は、宿主細胞において内因的に発現され、その発現がその核酸の発現を実際天然に調節しているプロモーターにより駆動されるが、プロモーターまたは別の調節領域が改変されている核酸である。一部の実施形態では、プロモーターは組換え的に活性化されるまたは抑制される。例えば、遺伝子編集ベースの技法を使用して、内因性核酸を含む核酸の発現を、内因性プロモーターを含むプロモーターから調節してもよい。例えば、Chavez et al., Nat Methods. 2016 Jul; 13(7): 563-567を参照のこと。異種核酸は、参照核酸配列と比べた場合、野生型配列または突然変異型配列を含んでいてよい。
【0051】
一部の実施形態では、本出願に記載されるタンパク質のいずれかをコードする核酸は、1つまたは複数の調節配列の制御下にある。調節配列とは、本開示で使用される場合、コード配列(例えば、遺伝子)の発現に影響を及ぼすまたは制御する(例えば、増加させるまたは減少させる)ことができる核酸配列のことである。一部の実施形態では、調節配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、サイレンサーおよび/またはターミネーターのうちの1つまたは複数を含んでいてよい。
【0052】
一部の実施形態では、核酸はプロモーターの制御下で発現される。一部の実施形態では、プロモーターは異種性である。プロモーターは、遺伝子の発現の正常な調節を提供する天然のプロモーター、例えば、その内因的文脈での遺伝子のプロモーター、が可能である。代わりに、プロモーターは、遺伝子の天然のプロモーターとは異なっているプロモーターが可能である、例えば、プロモーターはその内因的文脈において遺伝子のプロモーターとは異なっている。一部の実施形態では、異なるプロモーターは、天然のプロモーターと比べて増加した強さを有する、例えば、より強いプロモーターは、その天然のプロモーターによる遺伝子の調節と比べて、遺伝子の増加した発現をもたらす。当業者であれば、当技術分野で公知の方法に基づいてプロモーター強度を評価する方法を理解すると考えられる。本開示の態様は、合成プロモーターの制御下でのVCEの1つまたは両方のサブユニットをコードする核酸の発現に関する。
【0053】
一部の実施形態では、プロモーターは合成プロモーターである。本出願で使用される場合、「合成プロモーター」とは、天然に存在することが知られていないプロモーターのことである。実施例において示されるように、合成プロモーターの制御下でのD1および/またはD12 VCEサブユニットをコードする核酸の発現は、VCEの生産を増やすのに効果的であった。
【0054】
一部の実施形態では、D1および/またはD12 VCEサブユニットをコードする核酸の発現を駆動するプロモーターは、配列番号8(Ptac)に、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号8と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。一部の実施形態では、D1および/またはD12 VCEサブユニットをコードする核酸の発現を駆動するプロモーターは、配列番号9(P(T5)2×lacO)に、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号9と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。
【0055】
一部の実施形態では、プロモーターは、Ptacもしくはその機能的断片、またはP(T5)2×lacOもしくはその機能的断片である。核酸の断片とは、完全長核酸分子までの部分のことであり、完全長核酸分子は含まない。本開示の核酸の機能的断片とは、核酸の生物学的に活性な部分のことである。プロモーターなどの遺伝子調節エレメントの生物学的に活性な部分は、完全長遺伝子調節エレメントの部分または断片を含み、完全長遺伝子調節エレメントと同じタイプの活性を有してもよいが、遺伝子調節エレメントの生物学的に活性な部分の活性のレベルは、完全長遺伝子調節エレメントの活性のレベルと比べて変動してもよい。
【0056】
合成プロモーターの他の非限定的例は、P(Bba_j23104);P(galP);P(apFAB322);P(apFAB29);P(apFAB76);P(apFAB339);P(apFAB346);P(apFAB101);P(gcvTp);CP38、CP44、osmY、apFAB38、xthA、poxB、lacUV5、pLlacO1、pLTetO1、apFAB56、Trc、apFAB45、apFAB70、apFAB71、apFAB92、T7A1、bad、およびrhaを含む。
【0057】
一部の実施形態では、天然に存在するワクシニアウイルスにおいてVCE D1および/またはD12サブユニットをコードする遺伝子の発現を駆動するプロモーターを使用して、VCE D1および/またはD12サブユニットをコードする1つまたは複数の異種核酸の発現を駆動する。
【0058】
一部の実施形態では、プロモーターは真核生物プロモーターである。真核生物プロモーターの非限定的例は、当業者には知られていると考えられるように、TDH3、PGK1、PKC1、PDC1、TEF1、TEF2、RPL18B、SSA1、TDH2、PYK1、TPI1 GAL1、GAL10、GAL7、GAL3、GAL2、MET3、MET25、HXT3、HXT7、ACT1、ADH1、ADH2、CUP1-1、ENO2、およびSOD1を含む(例えば、Addgene website:blog.addgene.org/plasmids-101-the-promoter-region)。一部の実施形態では、プロモーターは原核生物プロモーター(例えば、バクテリオファージまたは細菌プロモーター)である。バクテリオファージプロモーターの非限定的例は、Pls1con、T3、T7、SP6、およびPLを含む。細菌プロモーターの非限定的例は、Pbad、PmgrB、Ptrc2、Plac/ara、CP6、CP25、CP38、CP44、CP43、CP31、CP24、CP18、CP27、CP37、CP17、CP2、CP4、CP45、CP1、CP22、CP19、CP34、CP20、CP11、CP26、CP3、CP14、CP13、CP40、CP8、CP28、CP10、CP32、CP30、CP9、CP46、CP23、CP39、CP35、CP33、CP15、CP29、CP12、CP41、CP16、CP42、CP7、Pm、PH207、PD/E20、PN25、PG25、PJ5、PA1、PA2、PL、Plac、PlacUV5、PtacI、およびPconを含む。原核生物プロモーターは、Jensen et al. (1998) Appl Environ Microbiol. 64:82-7, Kosuri et al. (2013) Proc Natl Acad Sci U S A. 110:14024-9, and Deuschle et al. (1986) EMBO J. 5:2987-94にさらに記載されており、前記文献から参照により組み込まれる。
【0059】
一部の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。本出願で使用される場合、「誘導性プロモーター」は、分子の存在または非存在により制御されるプロモーターのことである。例えば、酵素の発現を制御可能に誘導するためにこれを使用しうる。誘導性プロモーターの非限定的例は、化学的に調節されるプロモーターおよび物理的に調節されるプロモーターを含む。化学的に調節されるプロモーターでは、転写活性は、アルコール、テトラサイクリン、ラクトース、ガラクトース、ステロイド、金属、または他の化合物などの1つまたは複数の化合物により調節することができる。物理的に調節されるプロモーターでは、転写活性は、光または温度などの現象により調節することができる。テトラサイクリン調節プロモーターの非限定的例は、無水テトラサイクリン(aTc)-応答性プロモーターおよび他のテトラサイクリン-応答性プロモーター系(例えば、テトラサイクリンリプレッサータンパク質(tetR)、テトラサイクリンオペレーター配列(tetO)およびテトラサイクリントランスアクチベーター融合タンパク質(tTA))を含む。ステロイド調節プロモーターの非限定的例は、ラットグルココルチコイド受容体、ヒトエストリゲン受容体、ガエクジソン受容体に基づくプロモーター、およびステロイド/レチノイド/甲状腺受容体スーパーファミリー由来のプロモーターを含む。金属調節プロモーターの非限定的例は、メタロチオネイン(金属イオンに結合しこれを隔離するタンパク質)遺伝子由来のプロモーターを含む。病原調節プロモーターの非限定的例は、サリチル酸、エチレンまたはベンゾチアジアゾール(BTH)により誘導されるプロモーターを含む。温度/熱誘導性プロモーターの非限定的例は、熱ショックプロモーターを含む。光調節プロモーターの非限定的例は、植物細胞由来の光応答性プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、誘導性プロモーターはラクトース誘導性プロモーターである。ある特定の実施形態では、誘導性プロモーターはガラクトース誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、誘導性プロモーターは、1つまたは複数の生理的条件(例えば、pH、温度、放射線、浸透圧、塩勾配、細胞表面結合、または1つもしくは複数の外因性もしくは内因性誘導剤の濃度)により誘導される。外因性誘導物質または誘導剤の非限定的例は、アミノ酸およびアミノ酸類似物、糖類および多糖類、核酸、タンパク質転写アクチベーターおよびリプレッサー、サイトカイン、毒素、石油系化合物、金属含有化合物、塩、イオン、酵素基質類似物、ホルモンまたは任意の組合せを含む。
【0060】
一部の実施形態では、誘導物質はイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)である。一部の実施形態では、誘導物質はバニリン酸である。一部の実施形態では、誘導物質はクミン酸である。一部の実施形態では、誘導物質は無水テトラサイクリンである。
【0061】
一部の実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。本出願で使用される場合、「構成的プロモーター」とは、遺伝子の連続転写を可能にする未制御プロモーターのことである。構成的プロモーターの非限定的例は、TDH3、PGK1、PKC1、PDC1、TEF1、TEF2、RPL18B、SSA1、TDH2、PYK1、TPI1、HXT3、HXT7、ACT1、ADH1、ADH2、ENO2、およびSOD1を含む。
【0062】
当業者に知られている可能性がある、合成プロモーターを含む、他の誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターも想定されている。一部の実施形態では、本開示により包含される合成プロモーターは、天然のプロモーターと比べて増加した強度を有する。
【0063】
VCEおよび/またはVCEサブユニットの翻訳は、少なくとも一部分は、RBSの存在により増強することができる。本出願で使用される場合、「RBS」または「リボソーム結合部位」とは、mRNA中の開始コドンの上流にありリボソームの動員に関与している制御配列のことである。一部の実施形態では、RBSは異種性である。宿主細胞は、遺伝子またはオペロンの発現の正常な調節を提供する天然のRBS、例えば、その内因的文脈でのRBSを発現することができる。代わりに、RBSは、遺伝子に関連する天然のRBSとは異なるRBSでもよく、例えば、RBSは、その内因的文脈での遺伝子のRBSとは異なっている。RBSは合成が可能である。本出願で使用される場合、「合成RBS」とは、天然に存在することが知られていないRBSのことである。合成RBSは、Salis et al. (2009) Nat. Biotechnol. 27, 946-950 (2009)にさらに記載されており、前記文献から参照により組み込まれる。
【0064】
一部の実施形態では、RBSは、配列番号10~17、37、38、および45に、その中間のすべての値を含む、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、RBSは、配列番号10~17、37、38、および45と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。
【0065】
一部の実施形態では、RBSは、apFAB873、apFAB826、DeadRBS、apFAB871、BBa_J61133、BBa_J61139、apFAB843、BBa_J61124、apFAB864、apFAB964、BBa_J61101、BBa_J61131、salis-3-11、BBa_J61125、BBa_J61118、apFAB922、BBa_J61130、BBa_J61134、BBa_J61128、BBa_J61107、apFAB869、apFAB890、BBa_J61120、BBa_J61109、BBa_J61103、apFAB868、apFAB914、BBa_J61119、BBa_J61126、B0032_RBS、apFAB895、BBa_J61136、apFAB866、GSGV_RBS、apFAB918、BBa_J61129、apFAB867、apFAB903、apFAB872、BBa_J61137、BBa_J61111、apFAB821、apFAB844、BBa_J61110、BBa_J61112、BBa_J61104、BBa_J61122、apFAB854、BBa_J61127、BBa_J61113、GSG_RBS、apFAB892、BBa_J61115、apFAB927、BBa_J61108、Anderson_RBS、apFAB883、apFAB894、BBa_J61132、apFAB860、BBa_J61100、apFAB856、apFAB862、apFAB865、BBa_J61106、apFAB845、apFAB820、apFAB954、apFAB910、salis-4-10、apFAB901、salis-4-4、apFAB832、apFAB909、salis-4-7、apFAB861、apFAB876、apFAB827、salis-2-4、Alon_RBS、apFAB831、apFAB857、apFAB863、apFAB912、apFAB889、apFAB851、apFAB884、apFAB833、apFAB848、apFAB839、salis-1-21、apFAB923、Plotkin_RBS、apFAB842、salis-2-3、apFAB837、apFAB916、apFAB834、apFAB904、apFAB917、salis-1-10、Invitrogen_RBS、salis-1-1、salis-1-3、salis-3-3、salis-4-2、JBEI_RBS、salis-1-5、B0034_RBS、B0030_RBS、またはBujard_RBSであり、これらのRBSはKosuri et al. (2013) Proc Natl Acad Sci U S A. 110:14024-9にさらに記載されており、前記文献から参照により組み込まれる。ある特定の実施形態では、RBSはapFAB873またはapFAB826である。
【0066】
本開示に関連する核酸はターミネーター(例えば、VCEまたはそのサブユニットをコードする核酸の一部の下流または3’側に位置する転写ターミネーター)を含んでよい。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号18に、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号18と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号19に、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号19と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号20に、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、ターミネーターは、配列番号20と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40以下のヌクレオチド置換、挿入、付加、または欠失を含む。
【0067】
VCEおよび/またはVCEサブユニットの発現も、少なくとも一部分は、エンハンサーの存在により増加させることができる。
【0068】
コード配列および制御配列は、コード配列と制御配列が共有結合しているおよび/またはコード配列の発現もしくは転写が制御配列の影響もしくは制御下にある場合は、「作動可能に結合している」または「作動可能に連結している」と言われる。一部の実施形態では、Ptacもしくはその機能的断片、またはP(T5)2×lacOもしくはその機能的断片などのプロモーターは、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸に作動可能に連結している。一部の実施形態では、Ptacもしくはその機能的断片、またはP(T5)2×lacOもしくはその機能的断片などのプロモーター、および1つまたは複数のRBSは、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸に作動可能に連結している。一部の実施形態では、Ptacもしくはその機能的断片、またはP(T5)2×lacOもしくはその機能的断片などのプロモーター、および1つまたは複数のRBSは、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸に作動可能に連結している。一部の実施形態では、配列番号8もしくは9またはその機能的断片などのプロモーターは、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸に作動可能に連結している。
【0069】
本出願に記載される核酸は、当技術分野で公知のいかなる方法によってもいかなる適切なベクター中にでも組み込んでよい。例えば、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクター)、一過性発現に適した任意のベクター、構成的発現に適した任意のベクター、または誘導性発現に適した任意のベクター(例えば、ラクトースおよび/もしくはガラクトース誘導性またはドキシサイクリン誘導性ベクター)を含むがこれらに限定されない発現ベクターでもよい。本出願に記載される核酸は、当技術分野で公知のいかなる方法でも使用して適切な宿主細胞中に組み込みうる。
【0070】
一部の実施形態では、ベクターは細胞中で自律的に複製する。一部の実施形態では、自律的に複製するベクターは、DNAの複製起点を含み;複製起点が必要とする場合には、レプリカーゼおよび/または他のトランス作用性因子をコードする遺伝子をベクター上でおよび/または宿主細胞染色体上で提供できる。一部の実施形態では、自律的に複製するベクターは、ベクターが細胞中で安定的に維持されるのに必要なシス作用性領域を含むことができ;ベクターの安定的維持に必要な場合には、トランス作用性因子(複数可)をコードする遺伝子(複数可)をベクター上でおよび/または宿主細胞染色体上で提供できる。一部の実施形態では、ベクターは、細胞内の染色体中に統合する(例えば、自滅ベクター)。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼにより切断して、本出願に記載される遺伝子を含有する核酸を挿入させてライゲートし、細胞中で複製できる組換えベクターを作製することができる1つまたは複数のエンドヌクレアーゼ制限部位を含有することができる。ベクターはDNAまたはRNAで構成されることが可能である。クローニングベクターは、プラスミド、フォスミド、ファージミド、ウイルスゲノムおよび人工染色体を含むがこれらに限定されない。本出願で使用される場合、用語「発現ベクター」または「発現コンストラクト」とは、宿主細胞での特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて組換え的にまたは合成的に生み出される核酸コンストラクトのことである。一部の実施形態では、本出願に記載される遺伝子の核酸配列は、制御配列に作動可能に結合され、一部の実施形態では、RNA転写物として発現されるように、クローニングベクター中に挿入される。一部の実施形態では、ベクターは、組換えベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた細胞を特定するための本出願に記載される選択可能マーカーなどの1つまたは複数のマーカーを含有する。
【0071】
一部の実施形態では、本出願に記載される遺伝子の核酸配列は再コード化されている。本開示で使用される場合、「再コード化された」核酸配列とは、1つまたは複数のコドンを同義コドンと交換することにより参照核酸配列に関して改変されている核酸配列のことである。一部の実施形態では、1つまたは複数のコドンと同義コドンとの交換は、核酸が異種性に発現される生物または宿主細胞により優先的に使用されるコドンの選択に基づいている。再コード化は、再コード化されていない参照配列と比べて、その中間のすべての値を含む、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%遺伝子産物の産生を増やしうる。宿主細胞において1つまたは複数の遺伝子の発現を誘導するのに適した1つまたは複数の適切なベクターの選択および設計は当業者の能力の範囲内である。発現に必要なエレメントを含有する発現ベクターは、市販されており当業者には公知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012参照のこと)。
【0072】
VCEの生産
本出願に記載される核酸、タンパク質、宿主細胞、および方法のいずれもVCEの生産に使用しうる。一般には、用語「生産」は、例えば、特定の核酸から1つまたは複数の産物(例えば、目的のVCEサブユニットD1および/もしくはD12ならびに/またはVCE)の生成を指すのに使用される。VCEの生産の量は、当業者にはよく知られている測定基準を使用して、最終産物または中間産物などの経路のいずれか1つまたは複数の工程で評価しうる。生産は、例えば、容積測定生産性、酵素反応速度論/反応速度、比生産性、バイオマス比生産性、力価、収量、および1つまたは複数の産物の総力価(例えば、目的の産物および/または副産物/オフ産物)を評価することにより当技術分野で公知のいかなる測定基準により評価してもよい。
【0073】
一部の実施形態では、生産を測定するのに使用される測定基準は、連続プロセスがモニターされているかどうかまたは特定の最終産物が測定されているかどうかによることがある。例えば、一部の実施形態では、連続プロセスによる生産をモニターするのに使用される測定基準は、容積測定生産性、酵素反応速度論および反応速度を含んでよい。一部の実施形態では、特定の産物生産をモニターするのに使用される測定基準は、比生産性、バイオマス比生産性、力価、収量、および1つまたは複数の産物の総力価(例えば、目的の産物および/または副産物/オフ産物)を含んでよい。用語「容積測定生産性」または「生産速度」とは、時間単位当たりの培地の容積当たりに形成される産物の量のことである。容積測定生産性は時間当たりのリットル当たりのグラム(g/L/h)で報告することができる。
【0074】
産物の用語「比生産性」とは、単位容積または質量またはバイオマスにより正規化される産物の形成速度のことであり、単位質量または容積当たりの単位時間当たりの物質の量の物理的寸法[M・T-1・M-1またはM・T-1・L-3、Mは質量またはモルであり、Tは時間であり、Lは長さである]を有する。
【0075】
用語「バイオマス比生産性」とは、時間当たりの細胞乾燥重量(CDW)1グラム当たりのグラム産物(g/g CDW/h)でのまたは時間当たりの細胞乾燥重量(CDW)1グラム当たりの産物のmmol(mmol/g CDW/h)での比生産性のことである。所与の微生物についてのOD600へのCDWの関係を使用すれば、比生産性は、時間当たりの600nmでの培養液の光学密度(OD)当たりの培養液1リットル当たりのグラム産物(g/L/h/OD)としても表すことができる。その上、バイオマスの元素組成が分かっている場合、バイオマス比生産性は、時間当たりのバイオマスのC-モル(炭素モル)当たりの産物のmmol(mmol/C-mol/h)で表すことができる。
【0076】
用語「収量」とは、ある特定の基質の単位重量当たりで得られる産物の量のことであり、基質1g当たりのg産物(g/g)または基質の1モル当たりの産物のモル(mol/mol)として表しうる。収量は、理論的収量のパーセンテージとして表してもよい。「理論的収量」は、産物を作るのに使用される代謝経路の化学量論により規定される基質の所与の量当たりで生成される産物の最大量として定義され、基質1g当たりのg産物(g/g)または基質の1モル当たりの産物のモル(mol/mol)として表しうる。
【0077】
用語「力価」とは、溶液の濃度または溶液中の基質の濃度のことである。例えば、発酵ブロス中の目的の産物(例えば、小分子、ペプチド、合成化合物、燃料、アルコール、等)の力価は、発酵ブロスもしくは無細胞ブロス1リットル当たりの溶液中の目的の産物のg(g/L)とまたは発酵ブロスもしくは無細胞ブロス1Kg当たりの溶液中の目的の産物のg(g/Kg)と見なされる。
【0078】
用語「総力価」とは、プロセスの開始容量またはプロセスの作業容量に対する、溶液中の目的の産物、該当する場合、気相中の目的の産物、ならびにプロセスから取り除かれ回収される目的の任意の産物を含むがこれらに限定されない、プロセスで生産される目的のすべての産物の合計のことである。例えば、発酵ブロス中の目的の産物(例えば、小分子、ペプチド、合成化合物、燃料、アルコール、等)の総力価は、発酵ブロスもしくは無細胞ブロス1リットル当たりの溶液中の目的の産物のg(g/L)とまたは発酵ブロスもしくは無細胞ブロス1Kg当たりの溶液中の目的の産物のg(g/Kg)と見なされる。
【0079】
一部の実施形態では、本出願に記載される宿主細胞は、少なくとも10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、または1600mg/LのVCEの力価を生産できる。一部の実施形態では、本出願に記載される宿主細胞は、VCEの生産について少なくとも1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5mg/L/hの生産速度を示す。一部の実施形態では、力価はおおよそ550mg/Lである。一部の実施形態では、生産速度はおおよそ10mg/L/hである。一部の実施形態では、宿主細胞は、対照宿主細胞と比べて少なくとも1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、または10倍のVCEを生産することができる。一部の実施形態では、対照宿主細胞は、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸を異種性に発現しない細胞である。一部の実施形態では、対照宿主細胞は、野生型大腸菌細胞などの野生型細胞である。一部の実施形態では、対照宿主細胞は、被検細胞とVCEサブユニットD1および/またはD12をコードする同じ核酸を含むが、VCEサブユニットD1および/またはD12をコードする1つまたは複数の核酸の発現を制御する異なる制御配列を含む。
【0080】
追加の細胞改変
宿主細胞でのVCEの生産は、一部の実施形態では、粘性率の増加および/または発酵の緩慢化をもたらすことがある。いかなる理論にも縛られたくはないが、これらの効果は細胞伸長により引き起こされることがある。一部の実施形態では、VCEの生産の影響を相殺するために1つまたは複数の遺伝子の発現が宿主細胞において増加される。
【0081】
一部の実施形態では、VCEの生産の影響を相殺するためにFtsZタンパク質をコードする遺伝子の発現が宿主細胞において増加される。大腸菌FtsZタンパク質は細胞サイズの重要な制御因子である。FtsZタンパク質は、細胞内でS-アデノシルメチオニン(SAM)およびグアノシル三リン酸(GTP)のレベルにより影響を受ける。SAMとGTPの両方はVCEの既知の基質である。いかなる理論にも縛られたくはないが、VCE過剰発現は天然のftsZの恒常性を妨害し、その結果、細胞が伸長し粘性率が増すことがある。
【0082】
大腸菌FtsZタンパク質のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P0A9A6に一致し、配列番号39により提供される。一部の実施形態では、本開示に関連するFtsZタンパク質は、配列番号39、またはその保存的に置換されたバージョン;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のFtsZ配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0083】
大腸菌FtsZタンパク質は、GenBank受託番号CP001509.3で入手可能である核酸配列によりコードされ、この配列は大腸菌BL21(DE3)ゲノム配列に対応する。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする核酸は、配列番号42の配列を含む。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする核酸は再コード化されている。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする核酸は、配列番号42、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のFtsZ配列に、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0084】
一部の実施形態では、宿主細胞は、その天然プロモーターの制御下でftsZ遺伝子の内因性コピーを発現する。一部の実施形態では、その天然プロモーターの制御下でftsZ遺伝子の内因性コピーを発現する宿主細胞は、FtsZタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーも発現する。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、プラスミド上で発現されるまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、1つまたは複数の合成プロモーターの制御下で発現される。FtsZタンパク質の翻訳は、天然または合成プロモーターの制御下では、RBSの存在により、少なくとも一部分増強することができる。本開示の態様は、FtsZタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞に関する。FtsZタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させるためのいかなる機序も本開示により想定されていることは認識されるべきである。例えば、宿主細胞は、FtsZタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数を有してもよくおよび/または遺伝子の1つもしくは複数のコピーはその天然のプロモーターと比べて遺伝子の発現を増加させる強いプロモーターにより調節されてもよい。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、1つまたは複数のプラスミド上で1つまたは複数のコピーを発現することにより達成される。他の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、遺伝子の1つまたは複数のコピーを染色体中に組み込むことにより達成される。
【0085】
一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞は、FtsZタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。一部の実施形態では、FtsZタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現するVCE産生株は、FtsZタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。
【0086】
一部の実施形態では、VCEの生産の影響を相殺するために、SAMシンテターゼをコードするmetK遺伝子の発現は宿主細胞において増加される。大腸菌MetKタンパク質のアミノ酸配列はUniProt受託番号P0A817と一致しており、配列番号40により提供される。一部の実施形態では、本開示に関連するMetKタンパク質は、配列番号40、その保存的に置換されたバージョン;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のMetK配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0087】
大腸菌MetKタンパク質は、GenBank受託番号CP001509.3で入手可能である核酸配列によりコードされ、この配列は大腸菌BL21(DE3)ゲノム配列に対応する。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする核酸は、配列番号43の配列を含む。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする核酸は再コード化されている。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする核酸は、配列番号43、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のMetK配列に、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0088】
一部の実施形態では、宿主細胞は、その天然プロモーターの制御下でmetK遺伝子の内因性コピーを発現する。一部の実施形態では、その天然プロモーターの制御下でmetK遺伝子の内因性コピーを発現する宿主細胞は、MetKタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーも発現する。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、プラスミド上で発現されるまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、1つまたは複数の合成プロモーターの制御下で発現される。MetKタンパク質の翻訳は、天然または合成プロモーターの制御下では、RBSの存在により、少なくとも一部分増強することができる。
【0089】
本開示の態様は、MetKタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞に関する。MetKタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させるためのいかなる機序も本開示により想定されていることは認識されるべきである。例えば、宿主細胞は、MetKタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数を有してもよくおよび/または遺伝子の1つもしくは複数のコピーはその天然のプロモーターと比べて遺伝子の発現を増加させる強いプロモーターにより調節されてもよい。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、1つまたは複数のプラスミド上で1つまたは複数のコピーを発現することにより達成される。他の実施形態では、MetKタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、遺伝子の1つまたは複数のコピーを染色体中に組み込むことにより達成される。
【0090】
一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞は、MetKタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。一部の実施形態では、MetKタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現するVCE産生株は、MetKタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。
【0091】
一部の実施形態では、VCEの生産の影響を相殺するために、mreB遺伝子の発現は宿主細胞において増加される。大腸菌MreBタンパク質のアミノ酸配列はUniProt受託番号P0A9X4と一致しており、配列番号41により提供される。一部の実施形態では、本開示に関連するMreBタンパク質は、配列番号41、その保存的に置換されたバージョン;または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のMreB配列のいずれかに、その中間のすべての値を含む、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0092】
大腸菌MreBタンパク質は、GenBank受託番号CP001509.3で入手可能である核酸配列によりコードされ、この配列は大腸菌BL21(DE3)ゲノム配列に対応する。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする核酸は、配列番号44の配列を含む。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする核酸は再コード化されている。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする核酸は、配列番号44、または本出願で他に記載されるもしくは当技術分野で公知のMreB配列に、その中間のすべての値を含む、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、または100%同一である配列を含む。
【0093】
一部の実施形態では、宿主細胞は、その天然プロモーターの制御下でmreB遺伝子の内因性コピーを発現する。一部の実施形態では、その天然プロモーターの制御下でmreB遺伝子の内因性コピーを発現する宿主細胞は、MreBタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーも発現する。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、プラスミド上で発現されるまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれている。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする追加の核酸の1つまたは複数のコピーは、1つまたは複数の合成プロモーターの制御下で発現される。MreBタンパク質の翻訳は、天然または合成プロモーターの制御下では、RBSの存在により、少なくとも一部分増強することができる。
【0094】
本開示の態様は、MreBタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞に関する。MreBタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させるためのいかなる機序も本開示により想定されていることは認識されるべきである。例えば、宿主細胞は、MreBタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数を有してもよくおよび/または遺伝子の1つもしくは複数のコピーはその天然のプロモーターと比べて遺伝子の発現を増加させる強いプロモーターにより調節されてもよい。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、1つまたは複数のプラスミド上で1つまたは複数のコピーを発現することにより達成される。他の実施形態では、MreBタンパク質をコードする遺伝子の増加したコピー数は、遺伝子の1つまたは複数のコピーを染色体中に組み込むことにより達成される。
【0095】
一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現する宿主細胞は、MreBタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。一部の実施形態では、MreBタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現するVCE産生株は、MreBタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現しない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。
【0096】
本出願に記載される宿主細胞は、発酵ブロスにS-アデノシルメチオニン(SAM)および/またはグアノシル三リン酸(GTP)関連代謝物を添加して補充された条件で培養してよい。SAM-およびGTP-関連代謝物(例えば、SAM、システイン、メチオニン、セリン、アデニン、グアニン、アデノシン、およびグアノシン)は当技術分野では公知であり、本明細書で想定されている。一部の実施形態では、発酵ブロスにS-アデノシルメチオニン(SAM)および/またはグアノシル三リン酸(GTP)関連代謝物を添加して補充された条件で培養された宿主細胞は、発酵ブロスにS-アデノシルメチオニン(SAM)および/またはグアノシル三リン酸(GTP)関連代謝物を添加して補充された条件で培養されない宿主細胞と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。一部の実施形態では、発酵ブロスにS-アデノシルメチオニン(SAM)および/またはグアノシル三リン酸(GTP)関連代謝物を添加して補充された条件で培養されるVCE産生株は、発酵ブロスにS-アデノシルメチオニン(SAM)および/またはグアノシル三リン酸(GTP)関連代謝物を添加して補充された条件で培養されないVCE産生株と比べて減少した細胞伸長および/または減少した粘性率を示す。
【0097】
本出願に記載される宿主細胞は、FtsZ、MetK、および/もしくはMreBならびに/またはそのようなタンパク質をコードする核酸のうちの1つまたは複数を含むことができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、配列番号39、40および/もしくは41のアミノ酸配列を含むFtsZ、MetK、および/もしくはMreBタンパク質をコードする核酸ならびに/またはFtsZ、MetK、および/もしくはMreBをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、対照と比べてFtsZ、MetK、および/またはMreBを過剰発現する。一部の実施形態では、FtsZ、MetK、および/またはMreBを過剰発現する宿主細胞は、対照宿主細胞と比べて、減少した細胞伸長、減少した粘性率、および/または減少した毒性を有する。
【0098】
変異体
本開示の態様は、ポリペプチドをコードする核酸を含む、核酸に関する。本出願に記載される核酸およびポリペプチドの変異体も本開示に包含される。変異体は、参照配列との、その中間のすべての値を含む、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を共有してよい。
【0099】
別段言及されなければ、用語「配列同一性」は、当技術分野では公知であるように、本開示では用語「パーセント同一性」と互換的に使用されるが、配列比較(アライメント)により決定される場合、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列間の関係のことである。一部の実施形態では、配列同一性は配列の全長にわたって決定される。一部の実施形態では、配列同一性は配列の領域(例えば、アミノ酸または核酸の一続き、例えば、活性部位にまたがる配列)にわたって決定される。例えば、一部の実施形態では、配列同一性は、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%超に対応する領域にわたって決定される。
【0100】
同一性は、ギャップアライメント(もしあれば)を特定の数学モデル、アルゴリズム、またはコンピュータプログラムにより処理して2つまたはそれよりも多い配列のうちのより小さい配列間の同一のマッチのパーセントを測定する。関連するポリペプチドまたは核酸配列の同一性は、当業者に公知の方法のいずれかにより容易に計算することができる。2つの配列(例えば、核酸またはアミノ酸配列)の「パーセント同一性」は、例えば、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムをKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993でのように修正して使用して決定してよい。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLAST(登録商標)およびXBLAST(登録商標)プログラム(2.0版)に組み込まれる。BLAST(登録商標)タンパク質検索は、例えば、本出願に記載されるタンパク質に相同なアミノ酸配列を得るためにはXBLASTプログラム、スコアー=50、ワード長=3を用いて実施することができる。2つの配列間にギャップが存在するところでは、例えば、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載されるように、ギャップBLAST(登録商標)を利用することができる。BLAST(登録商標)およびギャップBLAST(登録商標)プログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST(登録商標)およびNBLAST(登録商標))のデフォルトパラメータを使用することができる、またはパラメータは、当業者により理解されると考えられるように適切に調整することができる。
【0101】
使用しうるもう1つの局所アライメント技法は、例えば、Smith-Watermanアルゴリズム(Smith, T.F. & Waterman, M.S. (1981) "Identification of common molecular subsequences." J. Mol. Biol. 147:195-197)に基づいている。使用しうる一般的包括的アライメント技法は、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman, S.B. & Wunsch, C.D. (1970) "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins." J. Mol. Biol. 48:443-453)であり、この技法は動的計画法に基づいている。
【0102】
つい最近では、称されるところによれば、Needleman-Wunschアルゴリズムを含む他の最適包括的アライメント方法よりも速く核酸およびアミノ酸配列の包括的アライメントを作成する急速最適包括的配列アライメントアルゴリズム(FOGSAA)が開発された。一部の実施形態では、2つのポリペプチドのパーセント同一性は、2つのアミノ酸配列を整列させ、同一のアミノ酸の数を計算し、アミノ酸配列のうちの1つの長さで割ることにより決定される。一部の実施形態では、2つの核酸のパーセント同一性は、2つのヌクレオチド配列を整列させ、同一のヌクレオチドの数を計算し、核酸のうちの1つの長さで割ることにより決定される。
【0103】
好ましい実施形態では、配列同一性がKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムをKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993でのように修正して使用して決定される場合(例えば、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用して、BLAST(登録商標)、NBLAST(登録商標)、XBLAST(登録商標)またはギャップBLAST(登録商標)プログラム)、核酸またはアミノ酸配列を含む、配列は、本出願で開示されるおよび/または特許請求の範囲に列挙される配列などの参照配列に対して特定のパーセント同一性を有することが見出される。
【0104】
一部の実施形態では、配列同一性が、デフォルトパラメータを使用し、Smith-Watermanアルゴリズム(Smith, T.F. & Waterman, M.S. (1981) "Identification of common molecular subsequences." J. Mol. Biol. 147:195-197)またはNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman, S.B. & Wunsch, C.D. (1970) "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins." J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定される場合、核酸またはアミノ酸配列を含む、配列は、本出願で開示されるおよび/または特許請求の範囲に列挙される配列などの参照配列に対して特定のパーセント同一性を有することが見出される。
【0105】
一部の実施形態では、配列同一性が、デフォルトパラメータを使用する急速最適包括的配列アライメントアルゴリズム(FOGSAA)を使用して決定される場合、核酸またはアミノ酸配列を含む、配列は、本出願で開示されるおよび/または特許請求の範囲に列挙される配列などの参照配列に対して特定のパーセント同一性を有することが見出される。
【0106】
一部の実施形態では、配列同一性が、デフォルトパラメータを使用するClustal Omega(Sievers et al., Mol Syst Biol. 2011 Oct 11;7:539)を使用して決定される場合、核酸またはアミノ酸配列を含む、配列は、本出願で開示されるおよび/または特許請求の範囲に列挙される配列などの参照配列に対して特定のパーセント同一性を有することが見出される。
【0107】
本出願で使用される場合、配列「X」中の残基(核酸残基またはアミノ酸残基などの)は、配列Xおよび異なる配列Yが当技術分野で公知のアミノ酸配列アライメントツールを使用して整列される場合、配列「X」中の残基が配列「Y」中の「n」の対応位置にあると、配列「Y」中の位置または残基(核酸残基またはアミノ酸残基などの)「n」に一致していると言われる。
【0108】
変異配列は相同配列でよい。本出願で使用される場合、相同配列は、ある特定のパーセント同一性(例えば、その中間のすべての値を含む、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のパーセント同一性)を共有する配列であり、パラロガス配列、オルソロガス配列、または収束進化から生じる配列を含むがこれらに限定されない。パラロガス配列は種のゲノム内の遺伝子の重複から生じ、オルソロガス配列は種分化事象後に分岐する。2つの異なる種は独立して進化した可能性があるが、それぞれが収束進化の結果としてその他の種由来の配列とある特定のパーセント同一性を共有する配列を含みうる。
【0109】
一部の実施形態では、ポリペプチド変異体は、参照ポリペプチドと二次構造(例えば、アルファヘリックス、ベータシート)を共有するドメインを含む。一部の実施形態では、ポリペプチド変異体は、参照ポリペプチドと三次構造を共有する。非限定的例として、ポリペプチド変異体は、参照ペプチドと比べて低い一次配列同一性(80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満の配列同一性)を有してよいが、1つまたは複数の二次構造(例えば、ループ、アルファヘリックス、またはベータシートを含むがこれらに限定されない)を共有する、または参照ポリペプチドと同じ三次構造を有する。例えば、ループは、ベータシートとアルファヘリックスの間、2つのアルファヘリックスの間、または2つのベータシートの間に位置していてよい。ホモロジーモデリングを使用して2つまたは複数の三次構造を比較してよい。
【0110】
酵素の機能的変異体は本開示に包含される。例えば、機能的変異体は、同じ基質の1つもしくは複数に結合するまたは同じ産物の1つもしくは複数を生産してもよい。機能的変異体は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して同定しうる。例えば、上記のKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを使用して、既知の機能を有する相同タンパク質を同定してもよい。
【0111】
推定機能的変異体は、機能的な注釈付きのドメインを有するポリペプチドを検索することにより同定しうる。Pfamを含むデータベース(Sonnhammer et al., Proteins. 1997 Jul;28(3):405-20)を使用して特定のドメインを有するポリペプチドを同定してもよい。
【0112】
ホモロジーモデリングを使用して、機能に影響を及ぼすことなく突然変異を受け入れることができるアミノ酸残基を同定してもよい。そのような方法の非限定的例は、位置特異的重み行列(PSSM)およびエネルギー最小化プロトコルの使用を含んでよい。位置特異的重み行列(PSSM)は位置重み行列を使用してコンセンサス配列(例えば、モチーフ)を同定する。PSSMは、核酸またはアミノ酸配列上で実行することができる。配列が整列され、方法は、特定の位置での特定の残基(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)の観察される頻度および分析された配列の数を考慮に入れる。例えば、Stormo et al., Nucleic Acids Res. 1982 May 11;10(9):2997-3011を参照のこと。所与の位置で特定の残基を観察する可能性は計算可能である。特定の理論に縛られずに、高可変性を有する配列中の位置は、機能的相同体を作製するために突然変異を受け入れることができる可能性がある(例えば、PSSMスコアー≧0)。
【0113】
PSSMはロゼッタエネルギー関数と対にしてよく、これにより野生型と単一点突然変異の間の違いが決定される。ロゼッタエネルギー関数は、この違いを(ΔΔGcalc)として計算する。ロゼッタ関数を用いて、突然変異残基と周囲の原子の間の結合相互作用を使用して、突然変異がタンパク質安定性を増やすのか減らすのかを判定する。例えば、PSSMスコアー(例えば、PSSMスコアー≧0)により有利であると呼ばれる突然変異は、次にロゼッタエネルギー関数を使用して分析して、タンパク質安定性に対する突然変異の潜在効果を判定することができる。特定の理論に縛られることなく、潜在的に安定化する突然変異はタンパク質操作(例えば、機能的相同体の産生)に望ましい。一部の実施形態では、潜在的に安定化する突然変異は、-0.1未満(例えば、-0.2未満、-0.3未満、-0.35未満、-0.4未満、-0.45未満、-0.5未満、-0.55未満、-0.6未満、-0.65未満、-0.7未満、-0.75未満、-0.8未満、-0.85未満、-0.9未満、-0.95未満、または-1.0未満)ロゼッタエネルギー単位(R.e.u.)のΔΔGcalc値を有する。例えば、Goldenzweig et al., Mol Cell. 2016 Jul 21;63(2):337-346. Doi: 10.1016/j.molcel.2016.06.012参照のこと。
【0114】
一部の実施形態では、コード配列は、参照コード配列と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100または100を超える位置に突然変異を含む。一部の実施形態では、コード配列は、参照コード配列と比べて、コード配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはそれよりも多いコドンに位置に突然変異を含む。当業者であれば理解するように、コドン内の突然変異は、遺伝コードの縮重のせいでコドンによりコードされるアミノ酸を変化させることも変化させないこともある。一部の実施形態では、コード配列中の1つまたは複数の突然変異は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と比べてコード配列のアミノ酸を変更しない。
【0115】
一部の実施形態では、コード配列中の1つまたは複数の突然変異は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と比べて対応するポリペプチドのアミノ酸を本当に変更する。一部の実施形態では、1つまたは複数の突然変異は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と比べてポリペプチドのアミノ酸を変更し、参照ポリペプチドと比べてポリペプチドの活性を変更する(増強するまたは減少する)。
【0116】
本出願に記載されるポリペプチド(例えば、VCE)のいずれかの活性(例えば、特定の活性)は、ルーチンな方法を使用して測定しうる。非限定的例として、ポリペプチドの活性は、その基質特異性、生産される産物(複数可)、生産される産物(複数可)の濃度、またはその任意の組合せを測定することにより決定しうる。本出願で使用される場合、組換えポリペプチドの「特定の活性」とは、単位時間当たりの組換えポリペプチドの所与の量(例えば、濃度)について生産された特定の産物の量(例えば、濃度)のことである。
【0117】
当業者であれば、ポリペプチドコード配列中の突然変異が保存的アミノ酸置換をもたらして前述のポリペプチドの機能的に等価な変異体、例えば、ポリペプチドの活性を保持する変異体を提供する場合があることも理解する。保存的置換は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的電荷またはサイズ特徴または機能的活性を変更しない場合がある。
【0118】
一部の例では、アミノ酸はそのR基(例えば、表1参照)を特徴とする。例えば、アミノ酸が非極性脂肪族R基、正電荷R基、負電荷R基、非極性芳香族R基、または極性非電荷R基を含んでいることがある。非極性脂肪族R基を含むアミノ酸の非限定的例は、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニン、およびイソロイシンを含む。正電荷R基を含むアミノ酸の非限定的例は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンを含む。負電荷R基を含むアミノ酸の非限定的例は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。非極性芳香族R基を含むアミノ酸の非限定的例は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含む。極性非電荷R基を含むアミノ酸の非限定的例は、セリン、スレオニン、システイン、プロリン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。
【0119】
ポリペプチドの機能的に等価な変異体の非限定的例は、本出願に開示されるタンパク質のアミノ酸配列中の保存的アミノ酸置換を含んでよい。本出願で使用される場合、「保存的置換」は「保存的アミノ酸置換」と互換的に使用され、表1に提供されるアミノ酸置換のいずれか1つのことである。
【0120】
一部の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または20よりも多い残基を、変異ポリペプチドを調製する場合は変えることができる。一部の実施形態では、アミノ酸は保存的アミノ酸置換によって交換される。
【0121】
【0122】
所望の特性および/または活性を有するポリペプチド変異体を生産するためのポリペプチドのアミノ酸配列中のアミノ酸置換は、ポリペプチドのコード配列を変更することにより行うことができる。同様に、ポリペプチドの機能的に等価な変異体を生産するためのポリペプチドのアミノ酸配列中の保存的アミノ酸置換は、典型的には、組換えポリペプチドのコード配列を変更することにより行われる。
【0123】
突然変異は、当業者に公知の様々な方法によりヌクレオチド配列中に作ることができる。例えば、突然変異は、PCRによる突然変異、Kunkel (Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 82: 488-492, 1985)の方法に従った部位特異的変異誘導により、ポリペプチドをコードする遺伝子の化学的合成により、遺伝子編集アプローチにより、またはタグ(例えば、HISタグまたはGFPタグ)の挿入などの挿入により作ることができる。本開示で使用される場合、「タグ」とは、目的の核酸またはタンパク質配列に付加される配列のことである。タグは、目的の核酸またはタンパク質の検出、精製、および/または位置特定を目的になどの様々な目的で付加することができる。一部の実施形態では、リンカー配列を、目的の核酸またはタンパク質の配列とタグの配列の間に挿入させる。一部の実施形態では、切断部位を、目的の核酸またはタンパク質の配列とタグの配列の間に挿入させる。一部の実施形態では、切断部位はTEV切断部位である。
【0124】
突然変異は、例えば、当技術分野で公知のいかなる方法によっても生み出される置換、欠失、挿入、付加、選択的編集、短縮化、および転位置を含むことができる。非限定的例として、遺伝子置換を通じて(例えば、選択マーカーを含むマーカーを用いて)欠失させうる。遺伝子は、トランスポゾン系の使用を通じて切り詰めてもよい(例えば、Poussu et al., Nucleic Acids Res. 2005; 33(12): e104参照)。遺伝子は、CRISPRベースの技術などの当技術分野で公知の遺伝子編集技術の使用を通じて編集してもよい。突然変異を作り出すための方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2012, or Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York, 2010などの参考文献に見出しうる。
【0125】
一部の実施形態では、変異体を作り出すための方法は循環置換を含む(Yu and Lutz, Trends Biotechnol. 2011 Jan;29(1):18-25)。循環置換では、ポリペプチドの直鎖状一次配列を環状化することができ(例えば、配列のN末端とC末端を結合することにより)、ポリペプチドは異なる位置で切断する(「壊す」)ことができる。したがって、新しいポリペプチドの直鎖状一次配列は、直鎖状配列アライメント法(例えば、Clustal OmegaまたはBLAST)により決定した場合、低い配列同一性(例えば、その中間のすべての値を含む、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)を有することがある。しかし、2つのタンパク質のトポロジー解析により、2つのポリペプチドの三次構造が類似しているまたは似ていないことが明らかにされうる。特定の理論に縛られずに、参照ポリペプチドの循環置換を通じて創造され、参照ポリペプチドと類似する三次構造を有する変異型ポリペプチドは、類似する機能的特徴(例えば、酵素活性、酵素動力学、基質特異性または産物特異性)を共有することができる。一部の実施形態では、循環置換は二次構造、三次構造または四次構造を変更して異なる機能的特徴(例えば、増加したもしくは減少した酵素活性、異なる基質特異性、または異なる産物特性)を生み出しうる。例えば、Yu and Lutz, Trends Biotechnol. 2011 Jan;29(1):18-25を参照のこと。
【0126】
循環置換を受けたタンパク質では、タンパク質の直鎖状アミノ酸配列は循環置換を受けていない参照タンパク質とは異なることは認識されるべきである。しかし、当業者であれば、例えば、配列を整列させ保存されたモチーフを検出することにより、および/またはタンパク質の構造もしくは予想される構造を、例えば、ホモロジーモデリングにより比較することにより、循環置換を受けたタンパク質中のどの残基が循環置換を受けていない参照タンパク質中の残基と対応するのかを容易に決めることができると考えられる。
【0127】
一部の実施形態では、目的の配列と本出願に記載される参照配列の間のパーセント同一性を決定するアルゴリズムは配列間の循環置換の存在を説明する。循環置換の存在は、例えば、RASPODOM(Weiner et al., Bioinformatics. 2005 Apr 1;21(7):932-7)を含む当技術分野で公知の任意の方法を使用して検出しうる。一部の実施形態では、循環置換の存在は、目的の配列と本出願に記載される配列の間のパーセント同一性の計算に先立って補正される(例えば、少なくとも1つの配列中のドメインが再配列される)。本出願の請求は、参照配列に対するパーセント同一性が、配列の潜在的循環置換を考慮に入れた後で計算される配列を包含することは理解されるべきである。
【0128】
宿主細胞
開示される方法および宿主細胞は大腸菌を用いて例証されるが、当業者であれば理解されるように、他の宿主細胞にも適用可能である。
【0129】
適切な宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、藻類細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む動物細胞を含むがこれらに限定されない。
【0130】
一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。適切な原核細胞は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、およびグラム不定細菌細胞を含む。一部の非限定的実施形態では、宿主細胞は、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、アナベナ属(Anabaena)、アナシスティス属(Anacystis)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アシドサーマス属(Acidothermus)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、アゾバクター属(Azobacter)、バシラス属(Bacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、ブクネラ属(Buchnera)、カンペストリス属(Campestris)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クロマチウム属(Chromatium)、コプロコッカス属(Coprococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)、フランシセラ属(Francisella)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、イリオバクター属(Ilyobacter)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、マイクロバクテリウム属(Microbacterium)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、パンテア属(Pantoea)、シュードモナス属(Pseudomonas)、プロクロロコッカス属(Prochlorococcus)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ロドソイドモナス属(Rhodopseudomonas)、ロドソイドモナス属(Rhodopseudomonas)、ロゼブリア属(Roseburia)、ロドスピリルム属(Rhodospirillum)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、セネデスムス属(Scenedesmus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、シネココッカス属(Synecoccus)、サッカロモノスポラ属(Saccharomonospora)、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、セラチア属(Serratia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、サーモアナエロバクテリウム属(Thermoanaerobacterium)、トロフェリマ属(Tropheryma)、ツラレンシス属(Tularensis)、テメキュラ(Temecula)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus)、サーモコッカス属(Thermococcus)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、ザントモナス属(Xanthomonas)、キシレラ属(Xylella)、エルシニア属(Yersinia)、およびザイモモナス属(Zymomonas)の種である。一部の実施形態では、宿主細胞はコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞はセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0131】
一部の実施形態では、細菌宿主株は工業菌株である。数多くの細菌工業株が知られており、本出願に記載される方法および組成物に適している。
【0132】
一部の実施形態では、細菌宿主細胞は、アグロバクテリウム種(例えば、A・ラジオバクタ(A.radiobacter),A・リゾゲネス(A.rhizogenes)、A・ルビ(A.rubi))、アルスロバクター種(例えば、A・アウレッセンス(A.aurescens)、A・シトレウス(A.citreus)、A・グロビフォルミス(A.globformis)、A・ヒドロカルボグルタミクス(A.hydrocarboglutamicus)、A・マイソレンス(A.mysorens)、A・ニコチアナエ(A.nicotianae)、A・パラフィネウス(A.paraffineus)、A・プロトフォルミアエ(A.protophonniae)A・ロセオパラフィナス(A.roseoparaffinus)、A・スルフレウス(A.sulfureus)、A・ウレアファシエンス(A.ureafaciens)、またはバシラス種(例えば、B・チューリンゲンシス(B.thuringiensis)、B・アンシラシス(B.anthracis)、B・メガテリウム(B.megaterium)、B・サブティリス(B.subtilis)、B・レンタス(B.lentus)、B・サーキュラス(B.circulars)、B・プミルス(B.pumilus)、B・ロータス(B.lautus)、B・コアグランス(B.coagulans)、B・ブレビス(B.brevis)、B・ファーマス(B.firmus)、B・アルカオフィラス(B.alkaophius)、B・リケニフォルミス(B.licheniformis)、B・クラウジアイ(B.clausii)、B・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B・ハロデュランス(B.halodurans)およびB・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens))の細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞は、B・サブティリス、B・プミルス、B・リケニフォルミス、B・メガテリウム、B・クラウジアイ、B・ステアロサーモフィルスおよびB・アミロリケファシエンスを含むがこれらに限定されない工業バシラス株である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業クロストリジウム種(例えば、C・アセトブチリカム(C.acetobutylicum)、C・テタニE88(C.tetani E88)、C・リツセブレンセ(C.lituseburense)、C・サッカロブチリカム(C.saccharobutylicum)、C・パーフリンジェンス(C.perfringens)、C・ベイジェリンキ(C.beijerinckii))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業コリネバクテリウム種(例えば、C・グルタミクム(C.glutamicum)、C・アセトアシドフィラム(C.acetoacidophilum))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業エシェリキア種(例えば、大腸菌))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業エルウィニア種(例えば、E・ウレドボラ(E.uredovora)、E・カロトボーラ(E.carotovora)、E・アナナス(E.ananas)、E・ヘルビコーラ(E.herbicola)、E・パンクタータ(E.punctata)、E・テレウス(E.terreus))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業パンテア種(例えば、P・シトレア(P.citrea)、P・アグロメランス(P.agglomerans))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業シュードモナス種(例えば、P・プチダ(P.putida)、P・エルギノーザ(P.aeruginosa)、P・メバロニイ(P.mevalonii))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業ストレプトコッカス種(例えば、S・エキシミリス(S.equisimiles)、S・ピオゲネス(S.pyogenes)、S・ウベリス(S.uberis))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業ストレプトマイセス種(例えば、S・アンボファシエンス(S.ambofaciens)、S・アクロモゲネス(S.achromogenes)、S・アベルミティリス(S.avermitilis)、S・セリカラー(S.coelicolor)、S・オーレオファシエンス(S.aureofaciens)、S・アウレウス(S.aureus)、S・フンジシディカス(S.fungicidicus)、S・グリセウス(S.griseus)、S・リビダンス(S.lividans))である。一部の実施形態では、宿主細胞は、工業ザイモモナス種(例えば、Z・モビリス(Z.mobilis)、Z・リポリティカ(Z.lipolytica))である。
【0133】
適切な酵母宿主細胞は、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)、クリュイベロミセス属(Kluyveromyces)、およびヤロウィア属(Yarrowia)を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、酵母細胞は、エシェリキア・コリ、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccaromyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・クライベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コダマ(Pichia kodamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・オプンティエ(Pichia opuntiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・プソイドパストリス(Pichia pseudopastoris)、ピキア・メンブラニファシエンス(Pichia membranifaciens)、コマガタエラ・プソイドパストリス(Komagataella pseudopastoris)、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・カーツマニ(Komagataella kurtzmanii)、コマガタエラ・モンダビオラム(Komagataella mondaviorum)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・クエルクウム(Pichia quercuum)、ピキア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stipitis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、コマガタエラ・ファッフィイ(Komagataella phaffii)、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ボイディニ(Candida boidinii)またはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。
【0134】
一部の実施形態では、酵母株は工業倍数体酵母株である。真菌細胞の他の非限定的例は、アスペルギルス(Aspergillus)菌種、ペニシリウム(Penicillium)菌種、フザリウム(Fusarium)菌種、リゾプス(Rhizopus)菌種、アクレモニウム(Acremonium)菌種、ニューロスポーラ(Neurospora)菌種、ソルダリア(Sordaria)菌種、マグナポルテ(Magnaporthe)菌種、カワリミズカビ(Allomyces)菌種、ウスチラゴ(Ustilago)菌種、ボトリチス(Botrytis)菌種、およびトリコデルマ(Trichoderma)菌種から得られる細胞を含む。一部の実施形態では、宿主細胞はアシュビア・ゴシピ(Ashbya gossypii)細胞である。
【0135】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、クラミドモナス属(Chlamydomonas)(例えば、C・ラインハルティ(C.Reinhardtii)およびフォルミディウム(Phormidium)(P.菌種 ATCC29409))などの藻類細胞である。
【0136】
本開示は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト(293、HeLa、WI38、PER.C6およびボーズメラノーマ細胞を含む)、マウス(3T3、NS0、NS1、Sp2/0を含む)、ハムスター(CHO、BHK)、サル(COS、FRhL、Vero)、ウシ(KOP-R、BTおよびMDBKを含む)、ウマ(EKを含む)、昆虫細胞、例えば、ツマジロクサヨトウ(Sf9およびSf21を含む)、カイコ(BmNを含む)、イラクサギンウワバ(BTI-Tn-5B1-4を含む)およびミバエ(Schneider 2を含む)、ならびにハイブリドーマ細胞株を含む種々の動物細胞型を用いて使用するのにも適切である。
【0137】
種々の実施形態では、原核生物株と真核生物株の両方を含む、本開示を実行するのに使用しうる株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、およびAgricultural Research Service Patent Culture Collection、Northern Regional Research Center(NRRL)などのいくつかの微生物株保存機関から容易に公衆の閲覧に供されている。
【0138】
用語「細胞」とは、本出願で使用される場合、単細胞または同じ株細胞もしくは細胞株に属する細胞の集団などの細胞の集団を指してよい。単数語「細胞」の使用は、細胞の集団よりは単細胞のほうにはっきり言及すると解釈されるべきではない。宿主細胞は、野生型対応物と比べて遺伝子改変を含んでよい。
【0139】
宿主細胞の培養
本出願で開示される細胞のいずれも、核酸との接触および/または核酸の組み込みに先立って、その間、および/またはその後にいかなるタイプの培地(豊富または最小)およびいかなる組成でも培養することができる。培養または培養プロセスの条件は、当業者であれば理解すると考えられるように、ルーチンな実験を通じて最適化することができる。一部の実施形態では、選択された培地は種々の成分を補充される。一部の実施形態では、補充成分の濃度および量は最適化される。一部の実施形態では、培地および成長条件(例えば、pH、温度、等)の他の態様は、ルーチンな実験を通じて最適化される。一部の実施形態では、培地が1つまたは複数の補充成分を補充される頻度、および細胞が培養される時間量は最適化される。
【0140】
本出願に記載される細胞の培養は、当技術分野で公知であり使用されている培養容器で実施することができる。一部の実施形態では、曝気反応容器(例えば、攪拌槽反応器)を使用して細胞を培養する。一部の実施形態では、バイオリアクターまたは発酵槽を使用して細胞を培養する。このように、一部の実施形態では、細胞は発酵で使用される。本出願で使用される場合、用語「バイオリアクター」および「発酵槽」は互換的に使用され、生存生物、生存生物の一部、および/または単離されたもしくは生成された酵素を含む生物学的、生化学的および/または化学反応が起こる容器、または部分的容器のことである。「大規模バイオリアクター」または「工業規模のバイオリアクター」は、商業規模または準商業規模で産物を生み出すのに使用されるバイオリアクターである。大規模バイオリアクターは、典型的にはリットル、数百リットル、数千リットル、またはそれよりも多い範囲での容積を有する。
【0141】
バイオリアクターの非限定的例は、攪拌槽発酵槽、回転混合装置により攪拌されるバイオリアクター、ケモスタット、振動装置により攪拌されるバイオリアクター、エアリフト型発酵槽、充填床反応器、固定床反応器、流動床バイオリアクター、波誘起攪拌を用いるバイオリアクター、遠心分離バイオリアクター、ロラーボトル、回転細胞培養システム、および中空糸バイオリアクター、ローラー装置(例えば、ベンチトップ、カート搭載、および/またはオートメ化型)、垂直積層型プレート、スピナーフラスコ、攪拌または揺動フラスコ、振動マルチウェルプレート、MDボトル、T-フラスコ、ルウボトル、多重表面組織培養プロパゲータ、修正発酵槽、ならびに被覆ビーズ(例えば、細胞付着を防ぐために血清タンパク質、ニトロセルロース、またはカルボキシメチルセルロースで被覆されたビーズ)を含む。
【0142】
一部の実施形態では、バイオリアクターは、宿主細胞が流動液および/またはガス気泡と接触している細胞培養システムを含む。一部の実施形態では、細胞または細胞培養は懸濁液で成長させる。他の実施形態では、細胞または細胞培養は固相担体に付着している。担体系の非限定的例は、マイクロキャリア(例えば、ポリマー球、マイクロビーズ、および多孔性または無孔性が可能であるマイクロディスク)、特定の化学基(例えば、第三級アミン基)をチャージされた架橋ビーズ(例えば、デキストラン)、無孔ポリマーファイバーに閉じ込められた細胞を含む2Dマイクロキャリア、3D担体(例えば、キャリアファイバー、中空ファイバー、マルチカートリッジリアクター、および多孔性ファーバーを含むことができる半透性膜)、減少したイオン交換容量を有するマイクロキャリア、封入細胞、毛細管、および凝集体を含む。一部の実施形態では、担体は、デキストラン、ゼラチン、ガラス、またはセルロースなどの材料から作られる。
【0143】
一部の実施形態では、工業規模プロセスは、連続、半連続または非連続モードで操作される。操作モードの非限定的例は、バッチ、フェドバッチ、拡張バッチ、繰返しバッチ、ドロー/フィル、回転壁、回転フラスコ、および/または灌流操作モードである。一部の実施形態では、バイオリアクターは、基質ストック、例えば、炭水化物源の連続または半連続補充および/またはバイオリアクターからの産物の連続または半連続分離を可能にする。
【0144】
一部の実施形態では、バイオリアクターまたは発酵槽は、反応パラメータを測定するおよび/または調整するセンサーおよび/または制御システムを含む。反応パラメータの非限定的例は、生物学的パラメータ(例えば、成長速度、細胞サイズ、細胞数、細胞密度、細胞型、または細胞状態、等)、化学的パラメータ(例えば、pH、酸化還元電位、反応基質および/または生成物の濃度、酸素濃度およびCO2濃度などの溶存気体の濃度、栄養塩濃度、代謝物濃度、オリゴペプチドの濃度、アミノ酸の濃度、ビタミンの濃度、ホルモンの濃度、添加物の濃度、血清濃度、イオン強度、イオンの濃度、相対湿度、モル濃度、モル浸透圧濃度、他の化学物質、例えば、緩衝剤、アジュバンド、または反応生成物の濃度)、物理的/機械的パラメータ(例えば、密度、伝導度、攪拌度、圧力、および流速、剪断応力、剪断速度、粘度、色、濁度、光吸収、混合速度、転化速度、ならびに温度、光強度/光質、等などの熱力学パラメータ)を含む。本出願に記載されるパラメータを測定するためのセンサーは、関連する機械および電子分野の当業者には周知である。本出願に記載されるセンサーからの入力に基づいてバイオリアクターにおいてパラメータを調整するための制御システムは、バイオリアクター工学の当業者には周知である。
【0145】
一部の実施形態では、方法はバッチ発酵(例えば、振盪フラスコ発酵)を含む。バッチ発酵(例えば、振盪フラスコ発酵)について一般的に考慮すべき点は酸素およびグルコースのレベルを含む。例えば、バッチ発酵(例えば、振盪フラスコ発酵)は酸素およびグルコース制限されていてよく、したがって、一部の実施形態では、よく設計されたフェドバッチで発酵を実施する株の能力は過小評価される。
【0146】
一部の実施形態では、本開示の細胞は、VCEまたはVCEサブユニットをインビボで生産するように適応されている。
【0147】
精製およびさらなる加工
一部の実施形態では、本出願に記載される方法のいずれも生産された(例えば、バイオリアクターで生産された)VCEの単離および/または精製を含んでよい。例えば、単離および/または精製は、細胞溶解、遠心分離、抽出、カラムクロマトグラフィー、蒸留、結晶化、および凍結乾燥のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0148】
本出願に開示される組換え細胞のいずれか、または本出願に記載されるインビトロ方法のいずれかにより生産されるVCEは、当技術分野で公知のいずれかの方法を使用して同定し、抽出しうる。質量分析(例えば、LC-MS、GC-MS)は精製方法の非限定的例であり、目的の化合物を抽出するのに使用しうる。
【0149】
本発明は以下の実施例によりさらに説明されるが、この実施例は限定的なものと解釈されるべきではない。本出願を通して引用される参考文献(文献参照、交付済み特許、公開された特許出願、および同時係属特許出願を含む)のすべての全内容は、これによって参照により明白に組み込まれる。本出願に組み込まれる参考文献が、その定義が本開示において定義される同じ用語の定義と矛盾するまたは適合しない用語を含む場合、本開示においてその用語に帰する意味が優先されるものとする。本出願で引用されるいかなる参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願の言及も、確かな先行技術を構成するまたは当業者の技術常識の一部を形成することを認めたものまたは示唆するものではなく、そう解釈するべきではない。
【実施例】
【0150】
本出願に記載される発明がもっと完全に理解されるように、以下の実施例が示される。本出願に記載される実施例は、本出願で提供されるシステムおよび方法を例証するために提供されるものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
[実施例1]
【0151】
大腸菌VCE産生株を同定するためにスクリーニング
宿主細胞においてVCEの生産を増やすことが可能かどうかを調べるため、大腸菌BL21(DE3)株をVCEコードプラスミドで形質転換して約300候補VCE産生ライブラリー株を作り出した。ライブラリー株は染色体外プラスミドからVCEを発現するように設計された。13の異なるプロモーター、21の異なるRBS、および3つの異なるターミネーターをVCE D1およびD12サブユニット(それぞれアミノ酸配列配列番号6および7に対応する)をコードする遺伝子の発現を駆動するその能力について様々な異なる組合せで試験した。
【0152】
プレートベースの発酵スクリーニングを開発して、候補VCE産生ライブラリー株のそれぞれからのVCE産生を定量化した。株はLB培地において37℃で培養し、続いて約1の光学密度で500μMのIPTGを用いて誘導した。誘導に続いて、株は30℃で5時間発酵させ、続いてVCEを定量化し、総VCEタンパク質濃度(μg/L)として測定した。
【0153】
プレートベースのスクリーニングにより、VCEを産生した複数の候補VCE産生ライブラリー株を同定した。プレートベースのスクリーニングに基づいて、23の候補VCE産生ライブラリー株を実施例2に記載される二次スクリーニングまで上昇させた。
[実施例2]
【0154】
候補VCE産生ライブラリー株の確認
実施例1において同定された23の候補VCE産生ライブラリー株を、Ambr 250s発酵を使用して再スクリーニングし、総VCE濃度(mg/L)を決定した。
【0155】
株は、バッフルフラスコにおいて250rpmで振盪しながら富栄養無動物培地において37℃で一晩成長させた。静置培養を使用して、250mLの容積を有するミニチュアバイオリアクターに播種した。リアクターは、酵母エキス、グリセロール、塩およびミネラルで構成された無動物半定義済み生産媒体が充填されており、次にリアクターは、所望の酸素負荷が達成されるまで流入空気で平衡させた。培養物はバッチカーボン上で成長させ、所望のバイオマス負荷への窒素供給、次にラクトースを連続して添加してVCEの産生を誘導した。培養物は、容認できる酸素取込み速度を維持するために適応制御ループ上でカーボン供給速度を維持しつつ、連続して給餌された。45~50時間で、培養発酵は終了させた。実験中ずっとおよび発酵終了時に採取したバイオマス試料は溶解し、細胞内VCE力価および活性についてアッセイした。
【0156】
それぞれの株により生産される平均VCEタンパク質濃度(mg/L)は表2および
図2に示されている。
図2は、Fuchs et al. (2016) RNA 22:1454-1466の発現系に由来する正の対照株t778543と比べた上位23の大腸菌候補VCE産生ライブラリー株の流加発酵からの最大可溶性酵素力価を描いている。表2では、それぞれの株について、上段はVCEサブユニットD1に対応し、下段はVCEサブユニットD12に対応する。
【0157】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0158】
Ambr 250s発酵では、時間経過の終了時ころに一部のバイオリアクターにおいてタンパク質低下が観察された。これは、細胞溶解および光学密度の減少、タンパク質分解、高濃度に到達した場合のタンパク質不溶性、および/または発酵期間にわたる選択の不良によるプラスミド維持のうちの1つまたは複数に起因した可能性がある。
【0159】
2つの発酵モデル(プレートベース発酵およびAmbr 250s発酵)間のVCEタンパク質産生は相関していることは見出されず、したがって、濃縮スコアリング(全ライブラリーでの%対上位ヒットでの%の間の比較)追加の計量を使用して、実施例1に記載されるプレートベース発酵アッセイに基づいて候補VCE産生ライブラリー株を評価した。遺伝子部分(プロモーター、RBS、再コード化VCE配列、およびターミネーター)のどの組合せが他の組合せよりもVCE産生にとってより効果的かを決定するために、ライブラリー株はVCE発現プラスミドの構築に使用された遺伝子部分の濃縮スコアリングを受けさせた。表3は、ある特定のプロモーターの濃縮を示したVCE産生ライブラリー株の総数を示す。表4は、VCE D1サブユニットの転写および翻訳のためのある特定のRBSの濃縮を示したVCE産生ライブラリー株の総数を示す。
【0160】
【0161】
【0162】
プレートベース発酵モデル(表3および表4)で試験された約300のライブラリー株間の遺伝子部分の濃縮およびAmbr 250s発酵モデル(
図2)で試験された23の株のVCEタンパク質生産能力に基づいて、株ID816008、816072、816070、816056、807172、807173、815995、815917に対応する8つの候補VCE産生ライブラリー株を選択し、上記のAmbr 250s発酵方法を使用してVCE産生について再スクリーニングした。Ptacプロモーターが表3では負の濃縮を示しているけれども、株807173は、Ptacプロモーターを含むが、選択された株の1つであった。なぜならば、この株はAmbr 250s発酵アッセイにおいて、他の株と比べて匹敵するVCE力価を生み出すが、蓄積されたバイオマスが少ない(すなわち、細胞ペレット1グラム当たりより高い特定のVCE力価)ことが分かったからであった。
【0163】
それぞれの株についてのVCEの可溶性酵素力価(mg/L)は、次の時点:15時間、20時間、26時間、32時間、38時間、44時間、および46時間での50時間流加発酵から測定された。時間経過データは3通りのバイオリアクターレプリカから取った。エラーバーは、4つの溶解レプリカにわたる分析的分散を示す(
図3)。
【0164】
このように、試験した約300のライブラリー株のうち、VCE産生に効果的である遺伝子成分の特定の組合せが同定された。いかなる理論にも縛られたくはないが、本開示で提供されるD1および/またはD12をコードし、本開示に記載される合成プロモーター、RBS、および/またはターミネーターの特定の組合せの制御下で発現される再コード化核酸は、D12の十分な発現を含むD1対D12同時発現のバランスを改善することがあり、これによりD1サブユニットの安定化が改善され、VCEの収量が増加しうる。
[実施例3]
【0165】
大腸菌VCE産生株におけるVCE力価に対する誘導因子の効果
6つの候補VCE産生ライブラリー株(株807175、807176、815930、815934、816019、および816020)は、構成的VCE発現プラスミドを宿しているが、Ambr 250s発酵方法を使用してVCE産生について誘導性VCE発現プラスミドを宿すVCE産生ライブラリー株(株870868)と比べて評価された。株870868について種々の誘導因子(IPTG、ラクトース、ガラクトース、および誘導因子なし)を試験した。構成的VCE発現株では、誘導因子を添加しなかった。それぞれの株についてのVCEの可溶性酵素力価(mg/L)は、次の時点:10時間、18時間、26時間、35時間、41時間、および46時間での50時間流加発酵から測定された。時間経過データは2つのバイオリアクターレプリカから取った(
図4)。ラクトースとガラクトースはIPTGよりもVCE生産の効果的な誘導因子であることが観察された。
【0166】
【0167】
細胞伸長を減らすftsZの過剰発現
細胞中でのVCE産生の増加は粘度の増加および発酵の緩慢化をもたらすことがある。いかなる理論にも縛られたくはないが、粘度の増加はVCEの過剰発現により引き起こされる細胞伸長に起因しうる。VCE産生宿主細胞中での細胞伸長に起因する粘度増加のリスクを減らすために、ftsZ遺伝子の発現を実施例2由来の候補VCE産生ライブラリー株で増加させてよい。例えば、ftsZ遺伝子の1つまたは複数コピーを発現する1つまたは複数のプラスミドをVCE産生ライブラリー株で発現させてもよくおよび/またはftsZ遺伝子の1つまたは複数コピーをVCE生産ライブラリー株のゲノム中に組み込んでもよい。
【0168】
ftsZ遺伝子の発現が増加しているVCE産生ライブラリー株は、実施例2に記載されるAmbr 250s発酵アッセイを使用してスクリーニングされ、総VCE濃度(mg/L)が決定される。細胞伸長および粘度も測定され(例えば、それぞれ顕微鏡可視化によりおよび粘度計により)、ftsZ遺伝子の発現が増加していない対応するVCE産生ライブラリー株と比較される。
[実施例5]
【0169】
細胞伸長を減少させるためのSAM-およびGTP関連代謝物の補充
VCE産生宿主細胞での細胞伸長に起因する粘度増加のリスクを減少させるため、実施例2由来の候補VCE産生ライブラリー株を、SAM-およびGTP関連代謝物を補充している発酵ブロスにおいて成長させる。SAM-およびGTP関連代謝物の存在下で培養されるVCE産生ライブラリー株は、実施例2に記載されるAmbr 250s発酵アッセイを使用してスクリーニングされ、総VCE濃度(mg/L)が決定される。培養物は、天然のFtsZの活性を増やすために、SAM-およびGTP関連代謝物を一回注入で補充されるまたは連続して補充される。細胞伸長および粘度も測定され(例えば、それぞれ顕微鏡可視化によりおよび粘度計により)、SAM-およびGTP関連代謝物の存在下で培養されるVCE生産ライブラリー株とSAM-およびGTP関連代謝物の存在下で培養されない対応するVCE産生ライブラリー株との間で比較される。
[実施例6]
【0170】
細胞サイズおよび/または形態を調節するためのmetKおよび/またはmreBの過剰発現
VCE過剰発現は、SAMシンセターゼをコードするmetK、ならびに細胞成長および/または形態に対する影響をもたらすことがあるmreBなどの遺伝子の発現に影響を及ぼすことがある。細胞成長および/または形態に対するいかなる影響も緩和するため、metKおよび/またはmreB遺伝子の発現を実施例2由来の候補VCE産生ライブラリー株において増加させてもよい。例えば、metKおよび/もしくはmreB遺伝子の1つもしくは複数コピーを発現する1つもしくは複数のプラスミドをVCE産生ライブラリー株で発現させてもよくならびに/またはmetKおよび/もしくはmreB遺伝子の1つもしくは複数コピーをVCE産生ライブラリー株のゲノム中に組み込んでもよい。
【0171】
metKおよび/またはmreB遺伝子の発現が増加しているVCE産生ライブラリー株は、実施例2に記載されるAmbr 250s発酵アッセイを使用してスクリーニングされ、総VCE濃度(mg/L)が決定される。細胞伸長および粘度も測定され(例えば、それぞれ顕微鏡可視化によりおよび粘度計により)、metKおよび/またはmreB遺伝子の発現が増加していない対応するVCE産生ライブラリー株と比較される。
【0172】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【表6-12】
【表6-13】
【表6-14】
【表6-15】
【表6-16】
【表6-17】
【表6-18】
【0173】
均等物
当業者であれば、ここに記載される本発明の特定の実施形態の均等物を認識する、またはルーチンな実験だけを使用して確かめることができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【0174】
特許文書を含むすべての参考文献は、参照によりその全体を組み込まれる。
【0175】
本出願で開示される配列は、分泌シグナルを含むまたは含まないこともあることは認識されるべきである。本出願で開示される配列は、分泌シグナルのあるバージョンとないバージョンを包含する。本出願で開示されるタンパク質配列は開始コドン(M)ありでまたはなしで描かれることがあることも理解されるべきである。本出願で開示される配列は、開始コドンのあるバージョンとないバージョンを包含する。したがって、一部の例では、アミノ酸番号付けは、開始コドンを含むタンパク質配列に対応することがあり、他の例では、アミノ酸番号付けは、開始コドンを含まないタンパク質配列に対応することがある。本出願で開示される配列は、終止コドンありでまたはなしで描かれることがあることも理解されるべきである。本出願で開示される配列は、終止コドンのあるバージョンとないバージョンを包含する。本開示の態様は、本出願に記載される配列およびその断片のいずれかを含む宿主細胞を包含する。
【配列表】
【国際調査報告】