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特表2024-512129照明パターンを制御する方法および自動車用照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】照明パターンを制御する方法および自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20240311BHJP
   B60Q 1/12 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/12 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560194
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022058178
(87)【国際公開番号】W WO2022207578
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2103225
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アリ、カンジ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンタン、プラット
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、ドルゼー
(72)【発明者】
【氏名】ハフィド、エル、イドリッシ
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA05
3K339GB01
3K339HA03
3K339HA04
3K339KA07
3K339KA09
3K339KA29
3K339LA03
3K339LA06
3K339LA17
3K339LA34
3K339MA01
3K339MB05
3K339MC23
(57)【要約】
本発明は、自動車両(100)の自動車用照明装置(10)によって提供される照明パターン(1)を制御する方法を提供する。方法は、道路形状を提供する工程と、道路形状から道路特性を抽出する工程と、マトリックス配置を行グループに分割する工程と、各行グループに異なるシフト値を割り当てる工程であって、各シフト値が道路特性によって決まる、割り当てる工程と、各行グループを少なくとも第1の部分(11)と第2の部分(12)に分割する工程とを含む。各部分(11、12)は、少なくとも境界画素(6、8)を含み、隣接部分の境界画素と接している。最後に、本方法は、対応するシフト値に従って各行グループの境界画素(6、8)の位置をシフトし、第1および第2の部分(11、12)に属する画素の光度値を補間することによって、第1の部分(11)の幅および第2の部分(12)の幅を変更する工程であって、シフト前に隣接していた境界画素(6、8)が、シフト後に隣接したままで保持される、変更する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(100)の自動車用照明装置(10)によって提供される照明パターン(1)を制御する方法であって、前記照明パターン(1)が、光画素(2)のマトリックス配置によって提供され、
- 道路形状を提供する工程と、
- 前記道路形状から道路特性を抽出する工程と、
- 前記マトリックス配置を行グループに分割する工程と、
- 各行グループに異なるシフト値を割り当てる工程であって、各シフト値が前記道路特性によって決まる、割り当てる工程と、
- 各行グループを少なくとも第1の部分(11)と第2の部分(12)とに分割する工程であって、各部分(11、12)が、少なくとも境界画素(6、8)を含み、隣接部分の前記境界画素と接している、分割する工程と、
- 対応する前記シフト値に従って各行グループの前記境界画素(6、8)の位置をシフトし、前記第1および第2の部分(11、12)に属する前記画素の光度値を補間することによって、前記第1の部分(11)の幅および前記第2の部分(12)の幅を変更する工程であって、前記シフト前に隣接していた前記境界画素(6、8)が、前記シフト後に隣接したままで保持される、変更する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
- 前記第1および前記第2の部分の各々は、対応する前記境界画素と反対にある、前記シフトする工程の間にシフトされることのない末端画素を含み、
- 前記光度値を補間する工程は、対応する前記末端画素と対応する前記境界画素との間の元の幅の光度値を考慮し、且つ各部分の新しい幅に新しい値を補間することによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各行グループが、前記光画素のマトリックス配置の1つの行のみに対応する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シフトされた光画素(2)の一部を減光または消灯することを含む、グレアを回避するように構成された最終マスクを適用する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記道路特性が道路点であり、各道路点は前記照明装置からの距離および前記照明装置からの角度によって特徴付けられ、前記シフト値が、前記道路点の前記距離および角度を用いて算出される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各シフト値が、少なくとも1つの道路点の前記距離および角度を用いて算出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変更された照明パターンの前記光画素の一部の光度を補償し、これによって補償された前記照明パターンの光束が前記元の照明パターンの光束と等しくなるように補償された照明パターンを得る工程を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光度を補償する工程が、前記変更された照明パターンの前記光画素の少なくとも一部の光度に補償係数を乗じることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記補償係数が、前記変更された照明パターンの前記画素の全てに適用される全体的な補償係数であり、前記元の照明パターンの全光束と前記変更された照明パターンの全光束より、式
- g=1+(f1-f0)/f0に従って計算され、
- 式中、gは全体的な補償係数であり、f1は前記変更された照明パターンの全光束であり、f0は前記元の照明パターンの全光束である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記元の照明パターンが、キンク領域を含むロービームパターンであり、前記補償係数が前記キンク領域の前記光画素に適用されない、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記元の照明パターンが、最大光度の画素を含むハイビームパターンであり、前記補償係数が前記最大光度の画素に適用されない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
道路形状を提供する前記工程が、カメラの画像および/または全地球測位システムを使用することによって実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記画像パターンの前記光画素がグレースケール画素であり、より詳細には、前記各画素の光度が0~255のスケールによるものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
- 照明パターン(1)を提供することを目的とした、ソリッドステート光源(2)のマトリックス配置と、
- 道路形状取得手段(4)と、
- 請求項1~13のいずれか一項に記載の方法の工程を実行するための制御ユニット(3)と、
を含む、自動車用照明装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明装置の分野に関し、より詳細には、ダイナミックベンディングライト(DBL)機能を用いるときの照明パターンを管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックベンディングライトは、近年、自動車用照明装置に提示されることが徐々に増えつつあり、標準的なヘッドライトにアップグレードされており、夜間の運転をより容易且つ安全にするために設計されている。
【0003】
このような照明機能を実装するために、車両がカーブに進入するときに車両の移動方向に照明パターンを提供することを目的とした多くの解決策が存在する。
【0004】
機械ベースの解決策では、ステアリングホイールの回転を直接利用して光源の回転を生じさせる角運動変換器により、ステアリングホイールが回転すると光源が回転する。照明はホイールが回転するどのような方向にも回転することになり、この可動域によって、急カーブまたは急旋回の場合であっても、照明によって道路を照らすことが可能となる。
【0005】
この解決策は、光源の回転をより効果的にするために、また異なる運転状況を考慮に入れるために、膨大な数の改良が加えられてきた。
【0006】
この問題に対する代替解決策が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、自動車両の自動車用照明装置によって提供される照明パターンを制御する方法であって、照明パターンが、光画素のマトリックス配置によって提供され、
- 道路形状を提供する工程と、
- 道路形状から道路特性を抽出する工程と、
- マトリックス配置を行グループに分割する工程と、
- 各行グループに異なるシフト値を割り当てる工程であって、各シフト値が道路特性によって決まる、割り当てる工程と、
- 各行グループを少なくとも第1の部分と第2の部分とに分割する工程であって、各部分が、少なくとも境界画素を含み、隣接部分の境界画素と接している、分割する工程と、
- 対応するシフト値に従って各行グループの境界画素の位置をシフトし、第1および第2の部分に属する前記画素の光度値を補間することによって、第1の部分の幅および第2の部分の幅を変更する工程であって、シフト前に隣接していた境界画素が、シフト後に隣接したままで保持される、変更する工程とを含む方法によって、この問題に対する代替解決策を提供する。
【0008】
本方法は、例えばロービーム機能を、可動部品を含むことなく提供し、運転速度または対向方向に車が存在するような他の運転状況に適応させることが可能な、同一の照明装置によって提供されるダイナミックベンディングライト機能を含む制御された照明パターンを提供する。
【0009】
主な利点は、この照明が、ステアリングホイールの位置に依存する他の一般的な手法と比べて、道路により焦点を当てているということである。この場合、道路形状が他の手段によって提供されるため、本方法によって動作予測を達成することができ、従って、対処するのに十分な時間で道路の視認性を向上させることができる。
【0010】
いくつかの特定の実施形態では、
- 第1および第2の部分の各々は、対応する境界画素と反対にあり、シフトする工程の間にシフトされることのない末端画素を含み、
- 光度値を補間する工程は、対応する末端画素と対応する境界画素との間の元の幅の光度値を考慮し、且つ各部分の新しい幅に新しい値を補間することによって実施される。
【0011】
これらの特定の実施形態は、このような補間の特定の例を含むものであり、より複雑な例によって明確にすることができる。ここで、値0-10-25-40-80-80-70-60-50-40-20-0を含む照明の行が提供され、2つの部分0-10-25-40-80および80-70-60-50-40-20-0に分割される場合、第1の部分は80の境界値(境界画素の値)と0の末端値(境界画素と反対の末端画素の値)とを有し、第2の部分は80の境界値(境界画素の値)と0の末端値(境界画素と反対の末端画素の値)とを有する。
【0012】
シフトする工程が、例えば、右に2画素を含む場合、第1の部分の結果は、0-x-x-x-x-80(末端値と境界値はその光度値を保持するが、ここではこの部分が2つ多い画素を含むため)となり、第2の部分の結果は、80-x-x-x-0(末端値と境界値はその光度値を保持するが、ここではこの部分が2つ少ない画素を含むため)となる。
【0013】
いくつかの特定の実施形態では、新しい値の補間はバイリニア法または最近傍法によって行われる。
【0014】
バイリニア法は、第1の幅および最後の幅を含む第1の値の集合を、この値の集合がどこに変換されるべきかを考慮するものである。第1の幅は第1の画素数(N1)によって定義され、最後の幅は最後の画素数(N2)によって定義されるが、この最後の画素数は最初の画素数よりも大きくても小さくてもよい。仮想横軸セグメント[0,1]は、第1の画素数に従ってN1-1の区間に分割される。横軸の値に対する縦軸の値は、第1の値の集合の値である。これらは離散的な値であるため、頂点間の線形補間がもたらされる。次いで、同一の仮想間隔をN2-1区間に分割し、これによって異なる横軸の値がもたらされるが、それらも全て0と1の間に含まれる。第1の値の集合は(頂点間の線形補間により)連続関数を定義するものであるため、最後の横軸の値により、連続関数において対応する値が見出される。これらの値が最後のデータの集合の値となる。例えば、第1の値の集合は(1 3 4 8 10)であるなら、第1の幅は5であり、故に5つの値が存在する。最後の幅は9である。仮想セグメント[0,1]は、値が0、0.25、0.5、0.75、1のN1-1=4区間に分割される。関数は、以下の横軸-縦軸のペアによって定義された以下の頂点によって定義される:(0,1)、(0.25,3)、(0.5,4)、(0.75,8)、(1,10)。頂点間で線形補間が成立する。ここで、最後の値の集合では、区間は、値が0、0.125、0.25、0.375、0.5、0.625、0.75、0.875、1のN2-1=8区間に分割される。これらの横軸の値の関数値が特定され、(1 1.5 3 3.5 4 6 8 9 10)となり、そうしてこれらが最後のデータの集合の値となる。
【0015】
最近傍法は、第1の幅と最後の幅を考慮し、これによって第1の幅と最後の幅の比率を見出すものである。次いで、この計算された比率で最後の幅の数を除算することによって、正規化された値の集合を得る。最終的に、正規化された値の集合のそれぞれの正規化された値に対して、ある値以上の最小の整数(例えば、ceil関数)が計算され、これによって指標値の集合を得る。これらは、補間をもたらす第1のベクトルの指標値である。例えば、第1のベクトルが[10 2 9]であり、幅6のベクトルに補間されなければならない場合、比率は6/3=2である。正規化された値の集合は(1/2,2/2,3/2,4/2,5/2,6/2=0.5,1,1.5,2,2.5,3)となる。ceil関数を実行すると、値の指標集合であるceil[(0.5,1,1.5,2,2.5,3)]=1,1,2,2,3,3が得られる。次いで、補間されたベクトルは、[first_vector(1) first_vector(1) first_vector(2) first_vector(2) first_vector(3) first_vector(3)]で表され、[10 10 2 2 9 9]となる。
【0016】
いくつかの特定の実施形態では、照明パターンは2つの部分に分割され、照明の列のそのような半分が第1の部分に属し、他方の半分が第2の部分に属するように分割が行われる。
【0017】
これは、2つの部分が境界列に対して対称となる場合の、対称な照明パターンにおいて特に有利である。
【0018】
いくつかの特定の実施形態では、光画素はソリッドステート光源(固体光源)によって提供される。
【0019】
「ソリッドステート(固体)」という用語は、半導体を用いて電気を光に変換するソリッドステート(固体)エレクトロルミネセンスによって放出される光を指す。白熱照明と比較して、ソリッドステート(固体)照明は、発熱が低減され、エネルギー散逸の小さい可視光を生成する。典型的に、固体電子照明装置は質量が小さいことにより、脆いガラス管/電球および細長いフィラメントワイヤーと比較して衝撃および振動に対してより優れた耐性が提供される。また、フィラメントの蒸発がなく、照明装置の寿命を増大させる可能性がある。これらのタイプの照明のいくつかの例には、電気フィラメント、プラズマまたはガスの代わりの照明源として、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、またはポリマー発光ダイオード(PLED)が含まれる。
【0020】
いくつかの特定の実施形態では、各行グループは、光画素のマトリックス配置の1つの行のみに対応する。
【0021】
最終的な照明パターンの微調整は、行グループの数が大きい場合に達成され、すなわち各行グループが最小可能数の行を含む場合に達成される。
【0022】
いくつかの特定の実施形態では、方法は、グレアを回避するように構成された最終マスクを適用する工程を更に含み、シフトされた光画素の一部を減光または消灯することを含む。
【0023】
これらの実施形態では、補正は、全光束の補償や、または最終的なビームに対する均一性の向上を目的としたものではなく、他の車両のグレアを回避するためのものである。行がシフトされたとき、最終的な照明パターンが対向車線に一部の照明を投射する可能性がある。対向車線に光を投射するそのような画素を減光または消灯するための最終マスクは、グレアを回避するのに有利である。
【0024】
いくつかの特定の実施形態では、道路特性は道路点であり、各道路点は照明装置からの距離および照明装置からの角度によって特徴付けられ、シフト値は、この道路点の距離および角度を用いて算出される。
【0025】
本発明を実施する簡単な方法は、道路の形状が照明パターンのパターンをシフトするのに直接的な影響を及ぼすように、複数の道路点を取り込み、次いでこれらの点の位置を用いて各シフト値を計算することである。
【0026】
いくつかの特定の実施形態では、各シフト値は、少なくとも1つの道路点の距離および角度を用いて算出される。
【0027】
この変換を達成する最適な方法は、各行グループに1つの道路点を割り当てることである。各行グループは、照明装置と、この行グループによって投射される光との間の距離によって特徴付けられるため、この距離に対応する道路点から角度値が提供される。この角度値を、この行グループのシフト位置の数に直接変換してもよい。
【0028】
ソリッドステート光源のマトリックスは、異なる多くの角分解能を有し得る。これらの光源の数および配置に応じて、分解能は光源当たり0.01°から光源当たり最大0.5°まで変化し得る。従って、道路点の角度値は、アレイ配置内のこれらの光源の密度に応じて、異なる列数の光アレイに変換され得る。
【0029】
いくつかの特定の実施形態では、方法は、変更された照明パターンの光画素の一部の光度を補償し、これによって補償された照明パターンの光束が元の照明パターンの光束と等しくなるように補償された照明パターンを得る工程を更に含む。
【0030】
一部の照明パターンにおいて、ビームの均一性がマトリックス配置によって提供される光の変化を補償するのに十分でない場合、光源の一部の強度を補正することが必要となる場合がある。
【0031】
いくつかの特定の実施形態では、光度を補償する工程は、変更された照明パターンの光画素の少なくとも一部の光度に補償係数を乗じることを含む。
【0032】
この補償係数は、光源のエネルギー消費および温度を制御下に維持するように、変更された照明パターンの全光束を補償することを目的とするものである。例えば、いくつかの特定の実施形態では、補償係数は、変更された照明パターンの画素の全てに適用される全体的な補償係数であり、元の照明パターンの全光束と変更された照明パターンの全光束より、式
- g=1+(f1-f0)/f0に従って計算され、
- 式中、gは全体的な補償係数であり、f1は変更された照明パターンの全光束であり、f0は元の照明パターンの全光束である。
【0033】
いくつかの特定の実施形態では、元の照明パターンは、キンク領域を含むロービームパターンであり、補償係数はキンク領域の光画素に適用されない。他の実施形態では、元の照明パターンは、最大光度の画素を含むハイビームパターンであり、補償係数は最大光度の画素に適用されない。
【0034】
カットオフまたはキンクは斜めの線のロービームパターンであり、その形状は自動車規則において重要なものである。このキンクが中央部分に属するという事実は、カーブが近づくと、このキンクがシフトされることを意味する。このことは、シフトされるパターンもまた規則に適合しなければならないため有利である。
【0035】
これらの2つのケースは、補償する必要のない領域の関連する例である。補償は残りの光画素で実行され得るため、これらの特異な領域が補償されずに保持されることにより、自動車規則を満たすことができる。
【0036】
いくつかの特定の実施形態では、道路形状を提供する工程は、カメラの画像を使用することによって実施される。いくつかの特定の実施形態では、道路形状を提供する工程は、全地球測位システムを使用することによって実施される。
【0037】
カメラは道路形状を提供するのに有用であり、全地球測位システムもまた、カメラにより提供される情報を完結させるのに役立つ。
【0038】
いくつかの特定の実施形態では、画像パターンの光画素はグレースケール画素であり、より詳細には、各画素の光度は0~255のスケールによるものである。
【0039】
照明モジュールは通常、照明パターンを光度が0~255にグレード分類されるグレースケールで定義される。これは、照明パターンを光のデータに変換し、次いで車両の制御ユニットによって伝送および管理することができるように定量化する方法である。
【0040】
更なる本発明の態様では、本発明は、
- 照明パターンを提供することを目的とした、ソリッドステート光源のマトリックス配置と、
- 道路形状取得手段と、
- 第1の本発明の態様による方法の工程を実行するための制御ユニットとを含む自動車用照明装置を提供する。
【0041】
本自動車用照明装置は、可動部品を含むことなく、既に利用可能な要素を使用するが、ダイナミックベンディングライト機能を新たな構成で提供するように構成されている。
【0042】
いくつかの特定の実施形態では、マトリックス配置は、少なくとも2000個のソリッドステート光源を含む。
【0043】
本発明は、数千個に過ぎない光源を有する最も単純なものから、数十万個の光源を有するより高度なものまでの、多くのタイプの照明マトリックス/アレイに基づく技術に有用であり得る。
【0044】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当該技術分野における慣例であるものと解釈されるべきである。一般的な用法における用語もまた、関連分野において慣例であるものと解釈されるべきであり、そのように本明細書で明確に定義しない限り、理想的な意味でまたは過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことが更に理解されるであろう。
【0045】
本文において、「含む(comprises)」という用語およびその派生語(例えば「含んでいる(comprising)」など)は、排除的な意味で理解されるべきではなく、すなわち、これらの用語は、記載および定義されるものが更なる要素、工程などを含む可能性を排除するものと解釈されるべきでない。
【0046】
本明細書を完結させるため、且つ本発明のより良い理解を提供するために、一連の図面を提供する。前記図面は、本明細書の不可欠な部分を形成し、本発明の実施形態を図示するものであり、本発明の範囲を制限するものとしてではなく、本発明がどのように実施され得るかの単なる例として解釈されるべきである。図面には以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明による自動車用照明装置の一般的な斜視図を示す。
図2】本発明による方法の一部の工程を示す。
図3図2の照明パターンと同様の照明パターンと数値的な対応関係となっている画素マトリックスの一部を示す。
図4】本発明による方法の更なる工程を示す。
図5図5および図6は本発明による方法の一部の工程に従った、いくつかのシフト値によって補正された図3のマトリックスを示す。
図6図6は、各行の境界画素の間を線形補間した、図5の照明パターンの完成版を示す。
図7】より現実的な照明パターンにおける、本シフトの効果を示す。
図8図7の照明パターンの第1の変形例を示す。
図9図7の照明パターンの第2の変形例を示す。
【0048】
例示的な実施形態の要素は、必要に応じて、図面および詳細な説明の全体を通して、一貫して同一の参照番号で表される。
【符号の説明】
【0049】
1 照明パターン
2 LED
3 コントロールセンター
4 カメラ
5 照明パターンの行
10 照明装置
100 自動車両
【発明を実施するための形態】
【0050】
例示的な実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステムおよびプロセスを具現化し、実施することができるように十分詳細に説明される。実施形態は多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定されるものと解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0051】
従って、実施形態は様々な方法で変更することができ、様々な代替形態をとることができるが、これらの特定の実施形態は、例として図面に示され、下記で詳細に説明される。開示される特定の形態に限定することを意図するものではない。これに対して、添付の特許請求の範囲内にある全ての変更例、等価物および代替物が包含されるものとする。
【0052】
図1は、本発明による自動車用照明装置10の一般的な斜視図を示す。
【0053】
本照明装置10は、LED2のマトリックス配置と、これらのLED群の動作を制御するように構成されたコントロールセンター3とを含む。
【0054】
本照明装置10は、前方の道路からの画像を取得するように構成されたカメラ4を含む。これらの画像と車両の全地球測位システムから取得された情報とを使用することにより、コントロールセンター3が道路形状を取得することが可能となる。
【0055】
コントロールセンター3は、道路形状にカーブが検出されたときにLED2の構成を変更するように構成されている。
【0056】
本マトリックス構成は高分解能モジュールであり、1000画素を超える解像度を有する。しかしながら、投射モジュールを製造するために使用される技術は制限されるものではない。
【0057】
本マトリックス構成の第1の例は、モノリシック源を含む。このモノリシック源は、いくつかの列といくつかの行で配列されたモノリシックエレクトロルミネセント素子のマトリックスを含む。モノリシックマトリックスでは、エレクトロルミネセント素子が共通の基板から成長し、エレクトロルミネセント素子が個々にまたはそのサブセットで選択的に作動することができるように電気的に接続されている。基板は、主に半導体材料から作製され得る。基板は、1つ以上の他の材料、例えば非半導体(金属および絶縁体)を含み得る。これにより、各エレクトロルミネセント素子/群は光画素を形成することができ、故に、その/それらの材料に電気が供給されたときに発光することが可能となる。このようなモノリシックマトリックスの構成により、プリント回路基板にはんだ付けされることを意図した従来の発光ダイオードと比較して、選択的に作動可能な画素を互いに極めて近接して配置することが可能となる。モノリシックマトリックスは、高さの主要寸法が、共通の基板に対して垂直に測定して実質的に1マイクロメートルと等しいエレクトロルミネセント素子を含み得る。
【0058】
モノリシックマトリックスは、マトリックス配置によって画素化された光ビームの生成および/または投射を制御するように、コントロールセンターに結合される。コントロールセンターは、これにより、マトリックス配置の各画素の発光を個別に制御することができる。
【0059】
マトリックス配置6は、上記に提示されたものの代わりに、ミラーのマトリックスに結合された主光源を含んでもよい。従って、画素化された光源は、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードにより形成された少なくとも1つの主光源と、主光源からの光線を反射することによって投射光学素子に誘導するオプトエレクトロニクス素子のアレイ、例えば「デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro-mirror Device)」の頭字語であるDMDで知られるマイクロミラーのマトリックスのアセンブリによって形成される。必要に応じて、補助的な光学素子により、少なくとも1つの光源の光線を集め、それらをマイクロミラーアレイの表面に集束させて誘導することができる。
【0060】
各マイクロミラーは、光線が投射光学素子に向かって反射される第1の位置と、光線が投射光学素子と異なる方向に反射される第2の位置という、2つの固定位置の間で旋回することができる。この2つの固定位置は、全てのマイクロミラーで同じように配向されており、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して、その規格で規定されたマイクロミラーのマトリックスの特性角を形成する。このような角度は、一般に20°未満であり、通常は約12°であり得る。従って、マイクロミラーのマトリックスに入射した光ビームの一部を反射する各マイクロミラーによって、画素化された光源の素子エミッタが形成される。この素子エミッタを選択的に作動させて素子光ビームを発光するか否かでミラーの位置を変更する作動および制御は、コントロールセンターにより制御される。
【0061】
異なる実施形態では、マトリックス配置は、レーザー光源がレーザービームによって波長変換器の表面を探索するように構成された走査素子に対してレーザービームを放出する、走査レーザーシステムを含み得る。この表面の画像は、投射光学素子によって取り込まれる。
【0062】
走査素子の探索は、投射画像における任意の変位が人間の目に知覚されないような、十分に速い速度で行われ得る。
【0063】
レーザー光源の点火とビームの走査動作との同期制御により、波長変換素子の表面で選択的に動作させることが可能な素子エミッタのマトリックスを生成することが可能になる。走査手段は、レーザービームの反射によって波長変換素子の表面を走査するために移動可能なマイクロミラーであってもよい。走査手段として言及されるマイクロミラーは、例えば、MEMS(「微小電気機械システム(Micro-Electro-Mechanical Systems)」)タイプのものである。しかしながら、本発明は、このような走査手段に限定されるものではなく、回転素子上に配置された一連のミラーなどの他の種類の走査手段を使用することができ、この素子が回転することにより、レーザービームによる伝播表面の走査が生じる。
【0064】
別の変形例では、光源は複合体であってもよく、発光ダイオードなどの光素子の少なくとも1つの部分とモノリシック光源の表面部分との両方が含まれる。
【0065】
この図は、初期段階のロービーム照明パターン1を示している。このロービームは行グループ5に分割され、各行グループには1行の画素が含まれている。
【0066】
この画像パターン1の各光画素3は、0から255までのスケールに従った数字によって特徴付けられ、0は光がないことに対応し、255は最大光度に対応する。
【0067】
図3は、このようなパターンの光度値の非典型例を示す。元々のパターンは数千の画素を有するため、その全てを表すことは有益なことではなく、しかしながら、明確にする目的のために小規模な表示のみが選択されている。
【0068】
更に、標準的な使用では、標準的なグレースケールに従って0から255までの光度値となるが、この例では、可能な限り例を簡単なものとするために、0から9までの数値のみを使用する。
【0069】
本照明パターンは、第1の部分11と第2の部分12という2つの部分に分割される。第1の部分は、第2の部分12の最初の境界列8に隣接する境界列6と、その反対にある末端列7を有する。第2の部分12は、今度は、第1の部分11の境界列6に隣接する境界列8と、その反対にある末端列9を有する。
【0070】
故に、各行は、第1の部分(第1の部分11に属するこの行の画素)および第2の部分(第2の部分12に属するこの行の画素)を有する。各行の第1の部分は、境界画素(境界列6に属する画素)および末端画素(末端列7に属する画素)を有する。各行の第2の部分は、境界画素(境界列8に属する画素)および末端画素(末端列9に属する画素)を有する。
【0071】
このマトリックス配置により、距離および角度を考慮した解像度が提供される。例えば、100メートルで光を投射して120°の角度をカバーすることができる100行および240列のマトリックス配置では、各行は、モジュールの高さに比例し、且つ対応する行によりカバーされる垂直角の正接に比例する距離をカバーし、各列は、直前の列から更に0.5°の角度をカバーする。
【0072】
この例では、このような大量の画素をカバーすることができないため、明確にする目的で、図3のマトリックスには5行および16列が含まれている。これは完全に現実的なものではないが、各行は一定の距離10mをカバーすると見なされ、各列は一定の角度5°をカバーすると見なされる。強度値は、0~10のみを含んでいる。
【0073】
図4は、本方法の更なる工程を示す。
【0074】
この図では、カメラおよび/またはGPSシステムから取得された道路が示されている。いくつかの道路点RP1、RP2、RP3、RP4、RP5が、異なる距離における車線の中心点で算出される。この距離は、マトリックス配置の行グループによって決められている。図3の例を続けると、道路点は10m、20m、30m、40m、50mで選択されている。
【0075】
各道路点は、照明装置の主方向に対する偏差角を規定する。これらの角度は、照明装置までの2次元距離から容易に計算することができる。故に、各道路点は距離および角度によって特徴付けられる。
【0076】
例えば、10mの距離に対応する道路点1であるRP1は5°の角度を有し、20mの距離に対応する道路点2であるRP2は10°の角度を有し、30mの距離に対応する道路点3であるRP3は20°の角度を有し、40mの距離に対応する道路点4であるRP4は20°の角度を有し、50mの距離に対応する道路点5であるRP5は25°の角度を有する。
【0077】
これらの値では、行1のシフト値は1画素となり、行2のシフト値は2画素となり、行3のシフト値は4画素となり、行4のシフト値は4画素となり、行5のシフト値は5画素となる。
【0078】
図5および図6は、これらのシフト値によって補正された図3のマトリックスを示す。各行は、変更された照明パターンが得られるように、対応するシフト値に従って左にシフトされる。
【0079】
図5は、第1の部分工程を示すものであり、各行では、境界画素が対応するシフト値に従って左にシフトされている。第1および第2の部分では、境界列と末端列のみがそれらの値を保持している。
【0080】
図6は、第1および第2の部分の残りの値の補間を示す。この補間は行ごとに行われ、強度パターンを線形補間に従って「拡大」または「圧縮」することにより、値を元の値に適応させる。
【0081】
例えば4番目の行を選択すると、元のパターンでは、この行の値は1-3-5-7-8-8-8-8-8-8-8-7-5-3-1-0であった。この行は、分割によって第1の部分1-3-5-7-8-8-8-8と、第2の部分8-8-8-7-5-3-1-0とを有することになる。
【0082】
シフト値は、この4番目の行において左に2列を含むため、図5に示すように、第1の部分は以下のパターン:1-x-x-x-x-8を有し、第2の部分は8-x-x-x-x-x-x-x-x-0となる。
【0083】
第1の部分の値xは、元の第1の部分により提供されるデータに対して計算される:0%では値が1、14%では値が3、28%では値が5、42%では値が7、57%では値が8、71%では値が8、85%では値が8、100%では値が8である。
【0084】
これによってカーブが提供され、第1の部分の新しい幅に対して0%、20%、40%、60%、80%および100%の値が計算される。それにより、この圧縮された第1の部分は、元の第1の部分の8画素に対して6画素のみを含む。故に、この区間の新しい値は1-4-7-8-8-8となる。
【0085】
第2の部分で同じことが行われ、元の第2の部分において、0%では値が8、14%では値が8、28%では値が8、42%では値が7、57%では値が5、71%では値が3、85%では値が1、100%では値が0である。新しい第2の部分に対して、0%、11%、22%、33%、44%、55%、66%、77%、88%および100%における値が計算される。故に、この区間の新しい値は8-8-8-8-7-5-4-2-1-0となる。
【0086】
図7は、より現実的な照明パターンにおける、本シフトの効果を示す。各行は、異なる値に従ってシフトされるため、最終的な照明パターンは、現行の方法で提供される照明パターンよりも良好に道路に適応している。
【0087】
しかしながら、この画像で確認することができるように、照明パターンの上部は対向車線に一部の照明を投射している可能性がある。この問題の解決策を提供するために、本発明では異なる選択肢が提供される。
【0088】
図8に示される最初の選択肢は、グレアを回避するため、車両に対して投射される部分上にダークマスクを適用するように、本発明とアダプティブドライビングビーム機能とを組み合わせることを含む。より単純な実施形態では、このマスクは、単に対向車線に照明が投射するのを回避するように構成される。
【0089】
図9は、照明パターンの上部が考慮され、従ってこれを単一の行としてシフトする第2の選択肢を図示している。
【0090】
この選択肢では、キンク形状が保持されるため、対向車線が本方法の他の実施形態で得られた変形形状によって妨害されることはない。
【0091】
上記の例で説明したように、画像の下部は行に分割されるが、ロービームパターンのキンクを含む上部が単一の行と見なされることになるため、この全体的な行内で構成される全ての行のシフト値は同一となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】