(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】統合型熱管理システム、車両及び熱管理制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240311BHJP
B60L 15/02 20060101ALI20240311BHJP
B60L 9/22 20060101ALI20240311BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240311BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240311BHJP
H02P 27/04 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L15/02
B60L9/22
B60L9/18 A
B60L3/00 S
H02P27/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560230
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2021124712
(87)【国際公開番号】W WO2022237069
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110511353.8
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】リエン、ユイポー
(72)【発明者】
【氏名】リン、ホーピン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、イーリン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンコー
【テーマコード(参考)】
5H125
5H505
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC11
5H125BB09
5H125CD08
5H125DD01
5H125DD02
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE51
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA10
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL28
5H505LL43
(57)【要約】
統合型熱管理システム、車両及び熱管理制御方法であって、車両技術の分野に関する。統合型熱管理システムは、ヒートポンプサブシステム、電池検出モジュール、インタラクティブモジュール、高圧システム冷却サブシステム及び車両全体熱管理コントローラを備え、ヒートポンプサブシステムは、ヒートポンプサブシステムの状態情報を検出するためのヒートポンプサブシステム検出モジュールを備え、高圧システム冷却サブシステムはヒートポンプサブシステム及び車両の高圧システムと熱交換することに用いられる。電池検出モジュールは車両の電池の状態情報を検出することに用いられる。インタラクティブモジュールは乗員室の熱需要の設定情報を受信することに用いられる。車両全体熱管理コントローラは、車両の電池の状態情報に基づいて、車両の電池の熱管理需要を決定し、且つ設定情報に基づいて、乗員室の熱管理需要を決定し、且つ車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、熱補充需要を決定することに用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプサブシステムの状態情報を検出するためのヒートポンプサブシステム検出モジュールを含む前記ヒートポンプサブシステムと、
前記ヒートポンプサブシステム及び車両の高圧システムと熱交換するための高圧システム冷却サブシステムと、
車両の電池の状態情報を検出するための電池検出モジュールと、
乗員室の熱需要の設定情報を受信するためのインタラクティブモジュールと、
前記車両の電池の状態情報に基づいて、前記車両の電池の熱管理需要を決定し、前記設定情報に基づいて、前記乗員室の熱管理需要を決定し、且つ前記車両の電池の熱管理需要、前記乗員室の熱管理需要、及び前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、熱補充需要を決定するためのコントローラと、を含む、ことを特徴とする統合型熱管理システム。
【請求項2】
前記高圧システムは、電気駆動システムを含み、前記電気駆動システムはモータを含み、
前記コントローラは、さらに、前記熱補充需要に応答して、前記車両の運転状態に基づいて、熱補充モードを決定し、前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、必要な熱補充電力を取得し、前記必要な熱補充電力及び前記熱補充モードに基づいて、前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、前記高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことに用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の統合型熱管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の統合型熱管理システムを含む、ことを特徴とする車両。
【請求項4】
車両の電池の状態情報を取得し、且つ乗員室の熱需要の設定情報を取得することと、
前記車両の電池の状態情報に基づいて、前記車両の電池の熱管理需要を決定し、且つ、前記設定情報に基づいて、前記乗員室の熱管理需要を決定し、且つ前記乗員室の熱管理需要及び前記車両の電池の熱管理需要に基づいて、ヒートポンプサブシステムの動作モードを制御することと、
前記ヒートポンプサブシステムの状態情報を取得することと、
前記車両の電池の熱管理需要、前記乗員室の熱管理需要、及び前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを決定することと、を含む、ことを特徴とする熱管理制御方法。
【請求項5】
高圧システムは電気駆動システムを含み、前記電気駆動システムはモータを含み、前記熱管理制御方法は、さらに、
前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定すると、前記車両の運転状態に基づいて熱補充モードを決定することと、
前記車両の電池の熱管理需要、前記乗員室の熱管理需要及び前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて必要な熱補充電力を計算することと、
前記熱補充モード及び前記必要な熱補充電力に基づいて前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことと、を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の熱管理制御方法。
【請求項6】
前記車両の運転状態に基づいて熱補充モードを決定することは、
前記車両が走行状態にある場合、モータ駆動熱補充モードを使用し、前記モータ駆動熱補充モードでは、モータ駆動の無効電力による熱を使用して熱補充を行うことと、
前記車両が駐車状態にある場合、モータストール発熱熱補充モードを使用し、前記モータストール発熱熱補充モードでは、モータストール無効動作による熱を使用して熱補充を行うことと、
前記車両がモータブースト充電状態にある場合、モータブースト相乗発熱熱補充モードを使用し、前記モータブースト相乗発熱熱補充モードでは、前記モータが所定の充電電流で動作するように制御し、且つ前記モータの三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳することにより、モータに熱が発生することを実現し、前記所定の充電電流が三相コイルの動作電流の和であり、且つ不平衡電流を重畳した後、前記三相コイルの動作電流の和が前記所定の充電電流に等しいように保持することと、を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の熱管理制御方法。
【請求項7】
前記熱管理制御方法は、さらに、
ユーザで確認された、性能形態及び経済的形態を含む熱補充設定形態を受信することと、
前記熱補充モード、前記熱補充設定形態及び前記必要な熱補充電力に基づいて前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、前記高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことと、を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の熱管理制御方法。
【請求項8】
前記熱補充モード、前記熱補充設定形態及び前記必要な熱補充電力に基づいて前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、前記高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことは、
前記車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が前記性能形態である場合、前記モータの有効電力を保持することによりトルク出力を維持し、且つ無効電力が前記必要な熱補充電力よりも大きいまで、前記モータの前記無効電力を増大すること、
又は、前記車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が前記経済的形態である場合、前記モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも大きいと、前記モータの元の駆動電力を保持する、又は、前記モータの無効電力が前記必要な熱補充電力よりも小さいと、前記モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、且つ前記モータの無効電力を前記必要な熱補充電力に等しいまで増大すること、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の熱管理制御方法。
【請求項9】
前記熱補充モード、前記熱補充設定形態及び前記必要な熱補充電力に基づいて前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、前記高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことは、
前記車両が駐車状態にあり且つ熱補充設定形態が前記性能形態である場合、ストール電流で前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力よりも大きいまで、前記モータの前記ストール電流を増大すること、
又は、前記車両が駐車状態にあり且つ熱補充設定形態が前記経済的形態である場合、ストール電流で前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力に等しいまで、前記モータの前記ストール電流を増大すること、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の熱管理制御方法。
【請求項10】
前記熱補充モード、前記熱補充設定形態及び前記必要な熱補充電力に基づいて前記高圧システムにおける前記モータの動作電流を制御することにより、前記高圧システム冷却サブシステムによって前記ヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことは、
前記車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が前記性能形態である場合、前記モータが所定の充電電流で動作するように制御し、且つ前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力よりも大きいまで、前記三相コイルの動作電流の不平衡電流の重畳値を増大すること、
又は、前記車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が前記経済的形態である場合、
前記モータの三相コイルの動作電流で前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力よりも大きいと、前記モータの所定の充電電流に対応する三相コイルの動作電流を保持し、
前記モータの三相コイルの動作電流で前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力よりも小さいと、前記モータの発熱電力が前記必要な熱補充電力に等しいまで、前記三相コイルの動作電流の不平衡電流の重畳値を増大すること、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の熱管理制御方法。
【請求項11】
前記ヒートポンプサブシステムの状態情報が冷媒温度、冷媒圧力及び環境温度を含み、前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを判断することは、
前記環境温度が環境温度しきい値よりも低いとき、前記冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低いこと及び前記冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低いことのうちのいずれかを満たすと、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定し、前記冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低くなく且つ前記冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低くないと、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定すること、
又は、前記環境温度が環境温度しきい値よりも高いとき、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定すること、を含む、ことを特徴とする請求項4~10のいずれか一項に記載の熱管理制御方法。
【請求項12】
前記熱管理制御方法は、さらに、
前記高圧システム及び前記高圧システム冷却サブシステムの温度情報を取得することと、
前記温度情報に基づいて、前記高圧システム冷却サブシステムの熱管理需要を決定することと、
前記高圧システムの熱管理需要に基づいて、前記高圧システム冷却サブシステムの動作モードを制御することと、を含むことを特徴とする請求項5~10のいずれか一項に記載の熱管理制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両技術の分野に関し、特に統合型熱管理システム、及び該統合型熱管理システムを使用する車両及び熱管理制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術において、車両の熱管理システム、水PTC加熱回路は低温での熱損失が多く、加熱効率は高くなく、また、電池加熱とエアコン補助暖房はいずれも該回路を使用し、エネルギー消費量が高く、航続時間に影響を与える。電池を冷却するとき、冷媒、冷却液及び電池の間に2回の熱交換が存在し、熱交換効率が低い。エアコンの暖房を補助する補助ヒータ回路を追加することで、システムが複雑になり、コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エネルギー消費を削減して、車両全体のエネルギー使用効率を改善し、コストを削減させる統合型熱管理システム、車両及び熱管理制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本開示は統合型熱管理システムを提供し、前記統合型熱管理システムは、ヒートポンプサブシステムの状態情報を検出するためのヒートポンプサブシステム検出モジュールを含む前記ヒートポンプサブシステムと、前記ヒートポンプサブシステム及び車両の高圧システムと熱交換するための高圧システム冷却サブシステムと、車両の電池の状態情報を検出するための電池検出モジュールと、乗員室の熱需要の設定情報を受信するためのインタラクティブモジュールと、前記車両の電池の状態情報に基づいて、前記車両の電池の熱管理需要を決定し、前記設定情報に基づいて、前記乗員室の熱管理需要を決定し、且つ前記車両の電池の熱管理需要、前記乗員室の熱管理需要、及び前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、熱補充需要を決定するコントローラと、を含む。
【0005】
本開示の実施例の統合型熱管理システムによれば、ヒートポンプサブシステムと高圧システム冷却サブシステムとを組み合わせて、コントローラは車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、熱補充需要を決定する。これにより、車両の電池及び/又は乗員室に加熱需要があるがヒートポンプサブシステムがそれを満たすことができない場合、高圧システムで発生した廃熱を使用して、高圧システム冷却サブシステムでヒートポンプシステムの熱補充をサポートすることができる。そして、本開示の実施例の統合型熱管理システムは、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現することができ、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させ、コストが低い。
【0006】
第2の態様において、本開示は車両を提供し、前記車両は統合型熱管理システムを含む。
【0007】
本開示の実施例の車両によれば、上記実施例の統合型熱管理システムを使用することにより、車両の電池及び/又は乗員室に加熱需要があるがヒートポンプサブシステムがそれを満たすことができない場合、高圧システム冷却サブシステムを使用してヒートポンプサブシステムに対して熱補充をサポートすることができ、そして、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現することができ、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させる。
【0008】
第3の態様において、本開示は熱管理制御方法を提供し、前記熱管理制御方法は、車両の電池の状態情報を取得し、且つ乗員室の熱需要の設定情報を取得することと、前記車両の電池の状態情報に基づいて、前記車両の電池の熱管理需要を決定し、且つ前記設定情報に基づいて、前記乗員室の熱管理需要を決定し、且つ前記乗員室の熱管理需要及び前記車両の電池の熱管理需要に基づいて、前記ヒートポンプサブシステムの動作モードを制御することと、ヒートポンプサブシステムの状態情報を取得することと、前記車両の電池の熱管理需要、前記乗員室の熱管理需要,及び前記ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、前記ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを決定することと、を含む。
【0009】
本開示の実施例の熱管理制御方法によれば、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを決定し、高圧システム冷却サブシステムのヒートポンプサブシステムに対する熱補充に基礎を提供することができ、且つ車両全体の熱源をより深く連携作動させ、車両全体のエネルギー使用率を向上させる。
【0010】
本開示の付加的な態様および利点は、以下の説明から部分的に示され、部分的に以下の説明から明らかになり、または本開示の実践を通じて了解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の上記および/または追加の態様および利点は、以下の添付図面と併せて実施例の説明から明らかになり、容易に理解されるであろう。
【
図1】本開示の1つの実施例に係る統合型熱管理システムのブロック図である。
【
図2】本開示の1つの実施例に係る統合型熱管理システムの模式図である。
【
図3】本開示の1つの実施例に係る高電圧電気駆動制御回路の模式図である。
【
図4】本開示の1つの実施例に係る熱管理制御方法のフローチャートである。
【
図5】本開示の1つの実施例に係る熱管理制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施例は以下に詳細に説明され、添付図面を参照して説明される実施例は例示である。以下、
図1~
図5を参照して本開示的実施例を詳しく説明する。
【0013】
以下、
図1~
図3を参照して本開示第1の態様の実施例に係る統合型熱管理システムを詳細に説明する。
【0014】
図1は本開示の1つの実施例に係る統合型熱管理システム100のブロック図である。
図1に示すように、本開示の実施例の統合型熱管理システム100は、ヒートポンプサブシステム101、電池検出モジュール102、インタラクティブモジュール103、高圧システム冷却サブシステム105及びコントローラ104を含む。
【0015】
ヒートポンプサブシステム101はヒートポンプサブシステム検出モジュールを含み、ヒートポンプサブシステム検出モジュールは、ヒートポンプサブシステム101の状態情報、例えば車内外の環境温度、ヒートポンプサブシステム101における冷媒圧力及び冷媒温度などを検出することに用いられる。高圧システム冷却サブシステム105が高圧システムの冷却回路であり、本願の実施例において、高圧システム冷却サブシステム105はヒートポンプサブシステム101及び車両の高圧システムとそれぞれ熱交換を行うことができる。
【0016】
高圧システム冷却サブシステム105は、高圧システムの熱を奪うように、高圧システムを冷却することに用いられる。高圧システムの熱はヒートポンプサブシステム101に熱を提供してもよい。具体的には、高圧システムの熱は高圧システム冷却サブシステム105における冷却液を加熱し、且つヒートポンプサブシステム101と熱交換して、ヒートポンプサブシステム101に対する熱補充を実現する。
【0017】
電池検出モジュール102は、車両の電池の状態情報、例えば、電池温度、電池残量、電圧などを検出することに用いられる。インタラクティブモジュール103は乗員室の熱需要の設定情報を受信することに用いられ、ユーザは、インタラクティブモジュール103によって乗員室の熱需要、例えばエアコン冷房のオン/オフ、エアコン加熱のオン/オフ、加熱除湿を必要とするかどうか又は電池を加熱する必要があるかどうか、及び加熱する必要がある温度などの情報を設定する。
【0018】
コントローラ104は、車両の電池の状態情報に基づいて、車両の電池の熱管理需要を決定し、且つ設定情報に基づいて、乗員室の熱管理需要を決定し、且つ車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステム101の状態情報に基づいて、熱補充需要を決定することに用いられる。
【0019】
本開示の1つの実施例において、
図2は本開示の1つの実施例に係る統合型熱管理システム100の模式図である。
図2に示すように、ヒートポンプサブシステム101は、コンプレッサ1、第1の熱交換器3、第1の電子膨張弁5、第1の電磁弁6、第2の熱交換器7、第1の逆止弁13、プレート式熱交換器15、第2の電磁弁16、第2の逆止弁17、第2の電子膨張弁19、第3の逆止弁18、電池パック直冷板21、直径調節可能なスロットルバルブ23、第3の電磁弁24、第4の電磁弁25、第4の逆止弁26、気液分離器27、第5の逆止弁29、第5の電磁弁30、第3の熱交換器31及び第3の電子膨張弁32を備える。
【0020】
コンプレッサ1の出力端が第1の熱交換器3の第1のインターフェースに接続され、第1の熱交換器3の第2のインターフェースが第2の熱交換器7の第1のインターフェースに接続され、第1の熱交換器3の第2のインターフェースと第2の熱交換器7の第1のインターフェースとの間の管路に第1の電子膨張弁5及び第1の電磁弁6が設定され、第2の熱交換器7の第2のインターフェースが第1の逆止弁13の第1のインターフェースに接続され、第1の逆止弁13の第2のインターフェースがそれぞれプレート式熱交換器15の第2のインターフェース、第3の逆止弁18の第2のインターフェース、第3の熱交換器31の第2のインターフェースに接続され、第1の逆止弁13の第2のインターフェースと第3の熱交換器31の第2のインターフェースとの間の管路に第3の電子膨張弁32が設定され、第3の熱交換器31の第1のインターフェースが第5の逆止弁29の第2のインターフェースに接続され、第5の逆止弁29の第1のインターフェースが第4の逆止弁26の第2のインターフェースに接続され、第5の逆止弁29の第1のインターフェースと第1の逆止弁13の第2のインターフェースとの間の管路に第5の電磁弁30が設定され、第4の逆止弁26の第1のインターフェースが気液分離器27の第1の端に接続され、気液分離器27の第2の端がコンプレッサ1の入力端に接続され、プレート式熱交換器15の第1のインターフェースが第2の逆止弁17の第2のインターフェースに接続され、プレート式熱交換器15の第1のインターフェースと第2の逆止弁17の第2のインターフェースとの間の管路に第2の電磁弁16が設定され、第2の電磁弁16と第2の逆止弁17の第2のインターフェースとの間に第1のノードを有し、第1のノードが第1の電子膨張弁5と第1の電磁弁6との間に接続され、第2の逆止弁17の第1のインターフェースと第3の逆止弁18の第1のインターフェースがいずれも電池パック直冷板21の第2の端に接続され、電池パック直冷板21の第2の端に第2の電子膨張弁19が設置され、電池パック直冷板21の第1の端がスロットルバルブ23を介してそれぞれコンプレッサ1の出力端、第4の逆止弁26の第2のインターフェースに接続され、スロットルバルブ23とコンプレッサ1の出力端との間の管路に第3の電磁弁24が設定され、スロットルバルブ23と第4の逆止弁26の第2のインターフェースとの間の管路に第4の電磁弁25が設定される。
【0021】
上記ヒートポンプサブシステム101に基づいて、電池の熱管理回路を乗員室の熱管理回路に接続し、電池パック直冷板21を使用して電池直冷直熱で電池に対する加熱又は冷却を実現する。電池パックを冷却する必要がある場合、コンプレッサ1が冷媒を駆動して電池パック直冷板21に入って蒸発吸熱により電池を冷却する。電池パックを加熱する必要がある場合、コンプレッサ1は冷媒を駆動して電池パック直冷板21に入って凝縮放熱により電池を加熱し、プロセスは潜熱熱交換であり、媒体は相変化して熱交換し、温度は電池パック内で狭い範囲に保たれる。これにより、電池の熱管理回路における冷却液回路、ポンプ12及びプレート式熱交換器15を節約し、システムのコストを低減させる。電池直冷直熱の手段を使用して電池を加熱又は冷却し、システムにおける熱交換は2回の熱交換を1回の熱交換に変換して且つ電池パック直冷板21とセルとの間の接触が良く、従来の冷却プレートより熱交換効率が高く、消費電力を低減できる。本願において、電池の冷却または加熱手段は直冷直熱であり、即ち冷媒相変化により熱交換し、熱交換係数がより高く、電池の速冷速熱を実現することができ、電池の高低温不適正動作温度帯区間の占有率を減らし、電池寿命を延ばすことができる。相変化により熱交換するプロセスにおける冷媒の温度変化が小さく、電池の均熱性がよく、電池の一貫性管理及び寿命に有利である。
【0022】
且つ、ヒートポンプサブシステム101の回路での電池パック直冷板21の第1の端に直径可変なスロットルバルブ23が設置され、電池とエアコンに同時に冷却需要又は加熱需要がある場合、表を検索して必要なスロットルバルブ23の直径を得、直径を能動的に調節し、さらにシステムの圧力及び温度を調整し、乗員室及び電池熱管理モジュールの通流媒体の温度制御(直冷直熱冷媒温度が電池温度に直接影響する)を実現することができる。
【0023】
具体的な例示において、コントローラ104は異なる弁の組み合わせを切り替えることによりヒートポンプサブシステム101を制御して異なる動作モードを実現させ、乗員室及び/又は電池パックの加熱需要及び冷却需要を満たす。
【0024】
本開示の1つの実施例において、高圧システムは電気駆動システムを含んでも良い。電気駆動システムはモータを含む。具体的な実施形態において、電気駆動システムはモータコントローラ、変速機などを更に含んでも良い。同様に、高圧システムは充電配電システムであってもよく、充電配電システムはDC-DC、OBC(On board charger、オンボード充電器)、配電ボックスなどを含む。高圧システム冷却サブシステム105は高圧システムに対応して設置され、高圧システム冷却サブシステム105における冷却液管路はモータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスに接触して設置され、冷却液はモータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスを流れる場合、モータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスの熱を奪うことができる。同様に、モータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスの発熱量を調整してここを流れる冷却液を加熱することに用いられる。
【0025】
図3は本願の1つの実施例に係る高電圧電気駆動制御回路の模式図である。具体的には、電気駆動システムは電池、モータコントローラ、モータ(三相交流モータ)、インダクタ及びスイッチを含む。電池は正および負の直流バスを介してモータコントローラに接続され、モータコントローラは三相線でモータに接続され、モータの三相コイルは相互接続されて中性点を形成し、中性点からN線を導出してインダクタスイッチK1を介してインダクタに接続され、インダクタがエネルギー貯蔵コンデンサC2に接続され、エネルギー貯蔵コンデンサC2はバス負極スイッチK2を介してモータコントローラに接続されている。システムが充電に用いられるとき、外部給電機器(充電スタンド)の正負極はエネルギー貯蔵コンデンサC2の両端にそれぞれ接続されている。
【0026】
図2に示すように、高圧システム冷却サブシステム105はポンプ12、モータラジエータ8、ファン9、及び三方弁10を備え、高圧システム冷却サブシステム105の熱交換媒体パイプラインが高圧システムの発熱デバイスに接触して設置され、高圧システムの動作による熱は熱交換媒体パイプラインにおける熱交換媒体を加熱することに用いられる。
【0027】
高圧システム冷却サブシステム105はヒートポンプサブシステム101のプレート式熱交換器15を介してヒートポンプサブシステム101との熱交換を実現する。具体的には、ポンプ12の第1のインターフェースがヒートポンプサブシステム101のプレート式熱交換器15の第3のインターフェースに接続され、ポンプ12の第2のインターフェースが高圧システムの第1の冷却インターフェースに接続され、三方弁10のポートCがヒートポンプサブシステム101のプレート式熱交換器15の第4のインターフェースに接続され、三方弁10のポートBが高圧システムの第2の冷却インターフェースに接続され、三方弁10のポートAがモータラジエータ8の第1のインターフェースに接続され、モータラジエータ8の第2のインターフェースが高圧システムの第2の冷却インターフェースに接続され、ファン9がモータラジエータ8に対応して設置される。
【0028】
幾つかの実施例において、ヒートポンプサブシステム101はヒートポンプサブシステム検出モジュールを更に備え、ヒートポンプサブシステム検出モジュールは、ヒートポンプサブシステム101の状態情報、例えば車内外の環境温度、冷媒圧力及び温度などを検出することに用いられる。コントローラ104は、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステム101の状態情報に基づいて、熱補充需要及び必要な熱補充電力を決定する。
【0029】
実施例において、コントローラ104は、さらに、熱補充需要に応答して車両の運転状態に基づいて熱補充モードを決定し、ヒートポンプサブシステム101の状態情報に基づいて、必要な熱補充電力を取得し、必要な熱補充電力及び熱補充モードに基づいて、高圧システムにおけるモータの動作電流を制御して、高圧システム冷却サブシステム105によってヒートポンプサブシステム101に対して熱補充を行うことに用いられる。
【0030】
必要な熱補充電力に基づいて、熱補充に必要なモータ電流を取得することができ、熱補充モード及び熱補充に必要なモータ電流に基づいて高圧システムを制御し、高圧システムを流れる電流を調整することにより、高圧システムの部材に熱が発生し、高圧システムに発生する熱は高圧システム冷却サブシステム105における冷却液を加熱して、高圧システム冷却サブシステム105は更にヒートポンプサブシステム101と熱交換して、これによりヒートポンプサブシステム101に対する熱補充を実現する。
【0031】
具体的には、高圧システムが電気駆動システムであることを例として、
図3に示すように、電気駆動制御回路は制御スイッチK1及びスイッチK2の開閉によって、モータコントローラを制御することにより、システムは走行駆動及び駐車充電の機能を実現する。車両の駆動状態で、スイッチK1及びスイッチK2が遮断されるように制御し、電池、モータコントローラ及び交流モータからモータ駆動回路を構成し、システムは走行駆動機能を実現する。充電スタンドが高電圧電気駆動制御回路に接続されて、車両が駐車充電状態にあり、システムはスイッチK1及びスイッチK2を制御して閉合させ、電池、モータコントローラ、交流モータ、インダクタ、エネルギー貯蔵モジュール及び充電スタンドはモータブースト充電回路を構成し、システムはブースト充電機能を実現する。
【0032】
高圧システムの部材が動作するとき、導体のジュール効果に基づいて熱が発生し、高圧システムを流れる電流を調整することにより、高圧システムの部材による熱を調整することができ、例えば、高圧システムのスイッチデバイス及びモータコイルを流れる電流を増大することができ、これにより高圧システムのスイッチデバイス及びモータコイルの発熱量を向上させる。高圧システムによる熱は高圧システム冷却サブシステム105における冷却液を加熱して、高圧システム冷却サブシステム105はプレート式熱交換器15を介してヒートポンプサブシステム101と熱交換することができ、これにより高圧システムは高圧システム冷却サブシステム105を介してヒートポンプサブシステム101に対する熱補充を実現する。車両が異なる運転状態ではその電気駆動システムの動作方式が異なり、対応する熱補充モードも異なり、車両の運転状態に基づいて熱補充モードを決定し、ヒートポンプサブシステム101の状態情報に基づいて必要な熱補充電力を取得し、必要な熱補充電力及び熱補充モードに基づいて、高圧システムにおけるモータの動作電流を制御して高圧システム冷却サブシステム105によってヒートポンプサブシステム101を熱補充し、高圧システムによる熱を十分に使用してヒートポンプサブシステム101に対して熱補充を行うことができ、車全体のエネルギーを合理的に使用して、高いエネルギー使用率を実現して、且つエネルギーが電池、高圧システム及び乗員室の間で流動して、高い集積度のエネルギー管理を実現する。
【0033】
高圧システムを使用してヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことは、モータコントローラにおけるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の上下ブリッジのオン/オフ周波数を改変することにより、モータ駆動廃熱補充、モータ無効熱補充、モータストール加熱、モータブースト相乗加熱熱補充などの4つの方式を実現することを含み、以下に詳しく説明する。
【0034】
本開示の実施例の統合型熱管理システム100において、ヒートポンプサブシステム101は高圧システム冷却サブシステム105に統合して接続され、ヒートポンプサブシステム101に熱補充需要がある場合、モータによる熱を十分に使用して、車両の異なる運転状態に基づいてモータによる熱を能動的に制御し、且つモータ熱管路には1つの回路を設計することにより、高圧システムを通過する冷却液は直接三方弁10のポートBを介してプレート式熱交換器15へ流れ、プレート式熱交換器15によって熱をヒートポンプサブシステム101に補充して、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現し、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させ、且つ、モータによる熱を使用して、モータ部品を再使用して加熱機能を実現し、性能及び複数の機能を実現するうえで、システムのコストを低減させる。且つ該非エンタルピー増加型ヒートポンプサブシステム101の適切な動作温度は-25℃程度に達し、且つ電池を加熱するとき、ヒートポンプサブシステム101からの熱を使用することができ、エネルギー効率比が1より大きく、エネルギー消費量が大幅に削減される。
【0035】
上記実施例の統合型熱管理システム100に基づいて、本開示の第2の態様の実施例は車両を提供し、車両は上記実施例の統合型熱管理システム100を含み、勿論、車両は他の部品及びシステムをさらに含み、ここでは1つずつ列挙しない。
【0036】
本開示の実施例の車両によれば、上記実施例の統合型熱管理システム100を使用することにより、ヒートポンプサブシステム101と高圧システム冷却サブシステム105とを組み合わせて、コントローラ104は、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステム101の状態情報に基づいて、熱補充需要及び必要な熱補充電力を決定する。これにより、車両の電池及び/又は乗員室に加熱需要があるがヒートポンプサブシステム101がこれを満たすことができない場合、高圧システム冷却サブシステム105によってヒートポンプサブシステム101の熱補充をサポートすることができ、さらに車両の電池及び/又は乗員室の需要を満たすことができる。且つ、本開示の実施例の統合型熱管理システム100は、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現することができ、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させ、コストが低い。
【0037】
上記実施例の統合型熱管理システム100に基づいて、本開示の第3の態様の実施例は熱管理制御方法を提供し、以下、
図4~
図5を参照して本開示の実施例に係る熱管理制御方法を説明する。
【0038】
図4は本開示の1つの実施例に係る熱管理制御方法のフローチャートであり、
図4に示すように、該熱管理制御方法は、S1~S4を含む。
S1において、車両の電池の状態情報を取得し、且つ乗員室の熱需要の設定情報を取得する。
S2において、状態情報に基づいて、車両の電池の熱管理需要を決定し、且つ設定情報に基づいて、乗員室の熱管理需要を決定し、且つ乗員室の熱管理需要及び車両の電池の熱管理需要に基づいて、ヒートポンプサブシステムの動作モードを制御する。
S3において、ヒートポンプサブシステムの状態情報を取得する。
S4において、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを決定する。
【0039】
電池の状態情報は電池の温度、電気量、電圧など、電池の内部状態を反映するパラメータであり、電池を加熱する必要があるかどうか、及び必要な加熱温度を決定することに用いられる。乗員室の熱需要の設定情報は、ユーザが設定する乗員室の熱需要、例えばエアコン冷房のオン、エアコン加熱のオン、加熱除湿を必要とするかどうか又は電池を加熱する必要があるかどうか、及び加熱する必要がある温度などの情報を含み、乗員室の熱管理需要及び必要な加熱温度を決定することに用いられる。ヒートポンプサブシステムの状態情報は例えば車内外温度、冷媒圧力及び温度などを含み、ヒートポンプサブシステムのエネルギー状態を反映する。
【0040】
具体的には、電池の状態情報及び乗員室の熱需要の設定情報に基づいて、車両の電池及び/又は乗員室に加熱需要があると決定するとき、乗員室の熱管理需要及び車両の電池の熱管理需要に基づいて、ヒートポンプサブシステムの動作モードを制御する。ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、車両の電池及び/又は乗員室の加熱需要を満たすことができるかどうかを決定し、ヒートポンプサブシステムが車両の電池及び/又は乗員室の加熱需要を満たすことができないと、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がある。ヒートポンプサブシステムが車両の電池及び/又は乗員室の加熱需要を満たすことができると、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がない。
【0041】
1つの実施形態において、高圧システムは電気駆動システムを含んでも良い。電気駆動システムはモータを含む。
図5に示すように、本願の熱管理制御方法はS11~S13をさらに含む。
【0042】
S11において、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する場合、車両の運転状態に基づいて熱補充モードを決定する。
【0043】
具体的には、車両の異なる運転状態では、高圧システムは異なる機能を実現することができる。車両の駆動状態では、高圧システムを制御して走行駆動機能を実現することができる。車両が高圧システムを介して充電スタンドに接続されて、車両が駐車充電状態にあり、高圧システムを制御してブースト充電機能を実現することができる。車両が駐車状態にあるとき、高圧システムを制御して発熱させることもできる。車両が異なる運転状態ではその電気駆動システムの動作方式が異なり、対応する熱補充モードも異なり、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する場合、車両の現在の運転状態に基づいてこのときの熱補充モードを決定する。
【0044】
S12において、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて必要な熱補充電力を計算する。
【0045】
具体的には、車両の電池の熱管理需要及び乗員室の熱管理需要に基づいて、車両の電池及び乗員室を加熱する必要がある温度情報を得、ヒートポンプサブシステムの状態情報はヒートポンプサブシステムの現在の発熱能力を反映し、車両の電池及び乗員室を加熱する必要がある温度情報及びヒートポンプサブシステムの現在の発熱能力に基づいて、ヒートポンプサブシステムの必要な熱補充電力を計算することができる。
【0046】
S13において、熱補充モード及び必要な熱補充電力に基づいて、高圧システムにおけるモータの動作電流を制御することにより、高圧システム冷却サブシステムによってヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行う。
【0047】
具体的には、高圧システム冷却サブシステムにおける冷却液管路がモータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスに接触して設置され、モータのコイル、モータコントローラのIGBTなどの発熱デバイスの発熱量を調整することによりここを流れる冷却液を加熱することに用いられることができる。必要な熱補充電力に基づいて、熱補充に必要なモータ電流を取得し、熱補充モード及び熱補充に必要なモータ電流に基づいて、高圧システムを制御し、高圧システムを流れる電流を調整することにより、高圧システムの部材に熱が発生し、高圧システムによる熱は高圧システム冷却サブシステムにおける冷却液を加熱し、高圧システム冷却サブシステムはさらにヒートポンプサブシステムと熱交換して、これによりヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことを実現する。
【0048】
本開示の実施例の熱管理制御方法によれば、車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要、及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを決定し、高圧システム冷却サブシステムのヒートポンプサブシステムに対する熱補充に基礎を提供することができ、さらに車両の電池及び/又は乗員室の加熱需要を満たすことができる。
【0049】
本開示の1つの実施例において、車両の運転状態は走行状態、駐車状態及びモータブースト充電状態を含む。
【0050】
車両が走行状態である場合、モータ駆動熱補充モードを使用し、モータ駆動熱補充モードで、モータを制御して所定の駆動電力で動作させ、これによりモータ駆動の無効電力による熱を使用して熱補充を行い、駆動電力がモータの出力電力であり、有効電力及び無効電力を含み、有効電力は走行の駆動に用いられ、無効電力は廃熱を生成することに用いられる。車両が駐車状態にあると、モータストール発熱熱補充モードを使用して、モータストール発熱熱補充モードでは、モータを制御して所定のストール電流で動作させ、これによりモータストール無効動作による熱を使用して熱補充する。車両がモータブースト充電状態にあると、モータブースト相乗発熱熱補充モードにより、モータブースト相乗発熱熱補充モードでは、モータが所定の充電電流で動作するように制御し、且つモータの三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳することにより、モータの熱補充を実現する。所定の充電電流が三相コイルの動作電流の和であり、且つ不平衡電流を重畳した後、三相コイルの動作電流の和が所定の充電電流と等しいと保持する。所定の充電電流は電池を充電することに用いられ、三相コイルの動作電流は廃熱を生成することに用いられることが理解できる。
【0051】
具体的には、車両が走行状態である場合、電気駆動システムが運行して駆動力を提供し、モータ駆動で出力された駆動電力は2つの部分に分けられる。1つの部分は駆動モータが回転してトルクを生成して車両の運転を駆動するための有効電力であり、他の部分は、モータとモータコントローラが運行過程に発生した熱であり、無効電力に属し、つまり、モータ駆動電力が有効電力と無効電力との和に等しい。無効電力により高圧デバイスが発熱し、ヒートポンプサブシステムが熱補充を必要とするとき、モータ駆動を使用できる無効電力による熱を使用して熱補充することによりエネルギー使用率を高め、エネルギーの無駄を減らすことができる。
【0052】
車両が駐車状態である場合、電気駆動システムが動作しない。モータの動作電流を制御することにより、モータストールになり熱が発生し、モータがストール状態でその電力がいずれも発熱に用いられ、モータの駆動電力における有効電力部分が零であると理解することができ、モータの駆動電力はすべて無効電力として発熱に用いられ、発熱効率が高い。モータストールによる発熱を制御してヒートポンプサブシステムに熱補充を行い、余分な部品を追加する必要がなく、車両自身のデバイスの再使用を最大限に活用し、余分なハードウェア構造を追加する必要がなく、低コストである。
【0053】
モータブースト充電状態では、車両が外部給電機器に接続されて、モータを使用してブースト充電を実現し、モータコントローラを制御して所定の充電電流でモータを充電させることにより、モータブースト充電の過程におけるモータが発熱する。
【0054】
具体的には、所定の充電電流は充電スタンドから電池へ出力された充電電流であり、充電スタンドの出力能力に基づいて調整してもよいし、電池の電圧に基づいて調整してもよく、予め設定された電池を充電する電流である。モータの三相コイルの動作電流はモータの三相コイルが動作するとき三相コイルを流れる電流であり、
図3に示すように、モータの三相コイルの動作電流がia、ib、icを含み、所定の充電電流が三相コイルの動作電流のベクトル和である。所定の充電電流により電池の充電電力を决定し、モータの三相コイルの動作電流ia、ib、icによりモータコイルの発熱電力を决定する。電気駆動システムは、電池に対してブースト充電を行うとき、電気駆動システムのモータコントローラの三相ブリッジアーム及び三相コイルにはそれぞれコイル動作電流ia、ib、icが流れ、三相コイルの動作電流が所定の充電電流を満たすうえで、モータの三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳して、且つ不平衡電流を重畳した後、三相コイルの動作電流の和が所定の充電電流に等しいと保持し、つまり所定の充電電流が変わらないと保持し、例えば、それぞれ三相コイルの動作電流ia、ib、icに不平衡電流を重畳し、新たな三相コイルの動作電流ia+15、ib-10、ic-5を得る。新たな三相コイルの動作電流ia+15、ib-10、ic-5の和が依然として所定の充電電流に等しく、三相コイルの動作電流の間の不平衡電流の差が増大し、これによりモータの発熱電力をより大きくする。且つ、このとき、車両が外部充電機器に接続されて、外部給電機器によりエネルギーを提供することにより、電池自身のエネルギー消費を減少し、車両全体のエネルギーを十分に統合して、車両のエネルギー消費量を低減することができる。
【0055】
本願による熱管理制御方法は、車両の走行状態に基づいて、対応する熱補充モードを使用して、高圧システムのエネルギーをより合理的に使用することができ、高圧システムが異なる動作状態で発生する熱はヒートポンプサブシステムの熱補充に用いられ、高圧システムの廃熱を柔軟に使用し、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現し、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させ、コストが低い。
【0056】
幾つかの実施例において、さらにインタラクティブモジュールによりユーザとインタラクティブすることによって、ユーザが自身の需要に基づいて熱補充形態を調整する需要を満たす。幾つかの実施例において、インタラクティブモジュールによってユーザが選択した熱補充設定形態、例えば経済的形態又は性能形態を入力し、具体的には、熱補充需要に応答して熱補充設定形態確認命令を送信し、インタラクティブモジュールを制御して熱補充モード確認命令を表示させ、インタラクティブモジュールはユーザで確認された熱補充設定形態を受信し、コントローラは、熱補充形態、熱補充設定形態及び必要な熱補充電力に基づいて高圧システムにおけるモータの動作電流を制御することにより、高圧システム冷却サブシステムによってヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行う。
【0057】
具体的には、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する場合、本開示の実施例の熱管理制御方法は、さらに、ユーザで確認された熱補充設定形態を受信することを含んでもよい。熱補充設定形態は、性能形態及び経済的形態を含む。経済的形態とは、エネルギー消費を前提とした、ゆっくりとした加熱と昇温のことである。性能形態とは最大能力で急速に加熱及び昇温することである。例えば、車両全体コントローラは熱補充需要に応答して熱補充設定形態指令をインタラクティブモジュールに送信し、車両全体熱管理コントローラはインタラクティブモジュールを制御して熱補充設定形態の選択情報を表示させ、ユーザは操作インタラクティブモジュールによって必要な熱補充設定形態、例えば経済的形態又は性能形態を選択することができ、車両全体熱管理コントローラは熱補充モード、熱補充設定形態及び必要な熱補充電力に基づいて、高圧システムにおけるモータの動作電流を制御して、これにより高圧システム冷却サブシステムによりヒートポンプサブシステムを熱補充し、車両の加熱需要及びユーザの需要を満たす。性能及び経済的熱補充設定形態を設定することにより、ユーザは自身の需要に合わせて熱補充形態を調整することができ、低速加熱又は急速加熱の異なる需要を満たし、より人間化され、方式がより柔軟化になっている。
【0058】
実施例において、モータ駆動熱補充モードは、無効発熱熱補充モード及びモータ廃熱熱補充モードを含んでもよい。車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態である場合、無効発熱熱補充モードを使用して、無効発熱熱補充モードで、モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、且つ無効電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータの無効電力を増大する。
【0059】
具体的には、車両が走行状態である場合、モータ出力の電力がまず車両の走行駆動需要を確保する必要があり、ヒートポンプサブシステムの熱補充設定形態は性能形態であり、モータが耐えられる電力範囲内で急速な発熱を実現する必要があると、モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、同時にモータの無効電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータの無効電力を増大し、つまり、モータの無効電力による熱が車両の電池の熱管理需要、乗員室の熱管理需要及びヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて計算された必要な熱補充電力よりも大きく、モータが急速に発熱することができる。
【0060】
又は、車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、モータ廃熱熱補充モードを使用し、モータ廃熱熱補充モードでは、モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも大きい場合、モータの元の駆動電力を保持する。モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも小さい場合、モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、且つモータの無効電力を必要な熱補充電力に等しいまで増加する。
【0061】
具体的には、車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、高圧システムのヒートポンプサブシステムに対する熱補充はエネルギー消費を前提とし、ヒートポンプサブシステムの必要な熱補充電力を満たせばよい。且つモータ出力の電力がまず車両の走行駆動需要を確保する必要がある。モータの現在の駆動電力で無効電力が必要な熱補充電力を満たすかどうかを判断し、モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも大きい場合、つまり、モータの現在の駆動電力における有効電力は車両の走行駆動需要を確保することを維持することができ、且つその無効電力はヒートポンプサブシステムの必要な熱補充電力を維持することができると、モータの元の駆動電力を保持する。モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも小さい場合、モータの現在の駆動電力における有効電力を保持してトルク出力を維持し、車両の走行駆動需要を確保し、且つモータの無効電力を必要な熱補充電力に等しいまで増加し、これによりモータが必要な熱補充電力を満たして発熱させる。
【0062】
実施例において、モータストール発熱熱補充モードは、第1のストール発熱熱補充モード及び第2のストール発熱熱補充モードを含む。車両が駐車状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態である場合、第1のストール発熱熱補充モードを使用して、モータが耐えられる電力範囲内で急速な発熱を実現する。車両が駐車状態にあり、モータに電流が流れているがトルクが発生しておらず、第1のストール発熱熱補充モードでは、その電気駆動システムの電力がいずれも発熱に用いられる。モータ駆動電力における有効電力部分が零であり、モータ駆動電力がすべて無効電力として発熱に用いられ、発熱効率が高いことを理解することができる。モータのストール電流を増大することにより、ストール電流でモータの発熱電力が熱補充需要電力よりも大きいまでモータの無効電力を向上させ、これにより熱補充需要を満たし、ストール電流でモータの発熱電力がモータの無効電力であることを理解することができる。
【0063】
又は、車両が駐車状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、第2のストール発熱熱補充モードを使用して、モータがヒートポンプサブシステムの必要な熱補充電力に等しい無効電力で発熱し、ヒートポンプサブシステムの熱補充需要を確保する。第2のストール発熱熱補充モードでは、モータのストール電流を増大することにより、ストール電流でモータの発熱電力が必要な熱補充電力に等しいまでモータの無効電力を向上させ、ヒートポンプサブシステムの熱補充需要を確保する。
【0064】
実施例において、モータブースト相乗発熱熱補充モードは、第1のブースト相乗発熱熱補充モード及び第2のブースト相乗発熱熱補充モードを含む。車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態である場合、第1のブースト相乗発熱熱補充モードを使用し、該モードでは、モータを制御して所定の充電電流で動作させ、これにより電池の充電電力を確保し、且つモータの発熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータの三相コイルの不平衡電流を増大する。つまり、三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳することにより、三相コイルの動作電流の絶対値の差が増大する。モータの三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳することは、三相コイルの動作電流が異なって、不平衡の電流差が発生することを理解することができる。例示的に、モータの三相コイルの動作電流がia、ib、icであり、モータの電池に対するブースト充電電流は三相コイルの動作電流ia、ib、icの和であり、モータの電池に対するブースト充電電流は所定の充電電流であり、所定の充電電流が変わらないと、ia、ib、icの和が変わらない。モータの三相コイルの動作電流にそれぞれ不平衡電流を重畳することは、ia、ib、icにそれぞれ1つの平衡値を重畳することにより、ia、ib、icの和が変わらないとともにia、ib、icのうち2つの間の絶対値の差値が大きくなり、これによりモータの三相コイルに形成された不平衡電流の差がより大きくなり、これによりモータの発熱電力がより大きくなり、モータの発熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで行うことを理解することができる。
【0065】
又は、車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、第2のブースト相乗発熱熱補充モードを使用し、モータの三相コイルの動作電流でモータの発熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいと、モータの所定の充電電流に対応する三相コイルの動作電流を保持し、つまりモータの三相コイルの動作電流の不平衡電流の重畳値が零である。モータの三相コイルの動作電流でモータの発熱電力が必要な熱補充電力より小さいと、発熱電力が必要な熱補充電力に等しいまで、三相コイルの動作電流の不平衡電流の重畳値を増大する。
【0066】
以上のように、車両状態及び熱補充設定形態に基づいて、適合な熱補充モードを使用して、車両全体のエネルギーを十分に統合することができ、付加的ハードウェア構造を追加する必要がなくて、コストが低い。
【0067】
幾つかの実施例において、ヒートポンプサブシステムの状態情報は冷媒温度、冷媒圧力及び環境温度を含み、ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるかどうかを判断することは、
環境温度が環境温度しきい値よりも低い場合、冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低いこと及び冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低いことのうちの少なくとも1つを満たすと、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する、又は、冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低くない又は冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低くないと、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定する。又は、環境温度が環境温度しきい値よりも高いとき、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定することを含む。
【0068】
例えば、車両の電池及び/又は乗員室に加熱需要があるとき、環境温度が環境温度しきい値よりも低い場合、冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低い及び/又は冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低く、つまり冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低いこと及び冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低いことのうちのいずれかを満たすと、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する、又は、冷媒温度が冷媒温度しきい値よりも低くなく且つ冷媒圧力が冷媒圧力しきい値よりも低くないと、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定する。又は、環境温度が環境温度しきい値よりも高く、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないと決定する。ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があると決定する場合、ヒートポンプサブシステムの状態情報に基づいて、必要な熱補充電力を取得し、さらにコントローラは熱補充需要及び必要な熱補充電力を車両全体に送信することにより、高圧システムにおけるモータの動作電流を制御して、高圧システム冷却サブシステムによりヒートポンプサブシステムと熱交換して、ヒートポンプサブシステムに対する熱補充を実現し、車両の電池及び/又は乗員室の需要を満たす。
【0069】
幾つかの実施例において、熱管理制御方法は、高圧システム及び高圧システム冷却サブシステムの温度情報を取得することと、該温度情報に基づいて、高圧システム冷却サブシステムの熱管理需要を決定することと、高圧システム冷却サブシステムの熱管理需要に基づいて、高圧システム冷却サブシステムの動作モードを制御することと、をさらに含む。
【0070】
具体的には、実施例において、乗員室の降温、暖房、暖房除湿需要がユーザの設定からのものであり、電池の冷却加熱需要が電池状態(温度、電圧、荷電状態など)に対する動的検出値と所定の動作に適した電池状態(温度、電圧、荷電状態など)との比較からのものであり、高圧システムの冷却需要が高圧システム部材コンポーネント及び冷却回路温度の動的検出値と所定の動作に適した高圧システム状態(コンポーネント温度及び冷却回路温度など)との比較からのものであり、各需要はそれぞれ定義された信号値でヒートポンプサブシステムコントローラ、車両全体コントローラ及び車両全体熱管理コントローラに送信され、電池及び乗員室が実行する必要があるシステムはいずれもヒートポンプサブシステムであり、高圧システムが実行する必要があるシステムは個別の検出モジュール及び実行部材である。
【0071】
これにより、該制御方法により車全体のエネルギーを合理的に使用して、高いエネルギー使用率を実現して、且つ、該システムのインテリジェントな制御を実現し、車の運転体験を向上させ、且つ、制御方法によりエネルギーが電池、環境、高圧システム及び乗員室の間での流動を実現し、高い集積度のエネルギー管理を実現する。
【0072】
具体的には、ヒートポンプサブシステムコントローラと車両全体コントローラは関連する需要信号を受信するとき、まず、システムが正常であるかどうかをセルフチェックし、ヒートポンプサブシステムは、システム冷媒圧力及び温度が正常範囲内にあるかどうか、各センサのサンプリングが正常であるかどうかをセルフチェックする必要があり、高圧システム冷却システムは、電子ポンプをセルフチェックする必要があり、電子ファンが正常であるかどうか及び各温度、水温センサのサンプリングが正常であるかどうかをセルフチェックし、異常がある場合、異常故障信号を各コントローラに送信して且つ車両全体熱管理コントローラに送信して、重大度に基づいてアラート信号をユーザーゲージにバウンスする。いずれも正常であると、ヒートポンプサブシステムは乗員室需要及び電池需要に基づいて総合的に判断して異なる動作モードで動作し、高圧冷却サブシステムはヒートポンプサブシステムが熱補充を必要とするかどうかに基づいて判断して異なる動作モードで動作する。
【0073】
幾つかの実施例において、ヒートポンプサブシステム性能が良くないとき、高圧システムを制御して高圧システム冷却サブシステムによってヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行い、モータコントローラ制御モータはモータ駆動熱補充モード、モータストール発熱熱補充モード、モータブースト相乗発熱熱補充モードなどの数種の動作モードで動作することができ、異なる熱を生成してヒートポンプサブシステムの冷媒回路に補充し、熱補充を実現する。これにより、モータによる熱を十分に使用することができ、走行及び充電過程においてモータによる熱を能動的に制御し、車両全体の熱管理システムの各モジュールの緊密な統合及び協調制御を実現し、車両全体エネルギーの効率的な管理を実現し、エネルギー総合使用率を向上させる。モータによる熱を使用して、モータ部品を再使用して加熱機能を実現し、性能及び複数の機能を実現するうえで、システムのコストを低減させる。これにより該非エンタルピー増加型ヒートポンプサブシステムの適切な動作温度は-25℃程度に達し、エネルギー消費量を削減させる。
【0074】
以上のように、本開示の実施例の熱管理制御方法は、ヒートポンプサブシステム及び高圧システム冷却サブシステムを組み合わせて、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要がないとき、車両の電池の熱管理需要及び乗員室の熱管理需要に基づいて、ヒートポンプサブシステムの動作モードを制御することができ、又は、ヒートポンプサブシステムに熱補充需要があるとき、高圧システムを制御して高圧システム冷却サブシステムによってヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うことができ、且つ、高圧システムの状態情報に基づいて、高圧システム冷却サブシステムの動作モードを制御することができ、これにより、車両全体のエネルギーを合理的に使用して、乗員室と電池との間の熱流動を実現することができ、エネルギー管理を実現し、ユーザの需要を満たし、運転体験を向上させる。
【0075】
以下、
図1及び
図5を例として、異なる熱管理需要に基づいてヒートポンプサブシステム101及び高圧システム冷却サブシステムを制御する動作モードを説明する。
【0076】
幾つかの実施例において、乗員室に冷房需要があり且つ車両の電池に冷却需要があると決定すると、ヒートポンプサブシステム101が第1のヒートポンプ動作モードを運行するように制御し、
図2に示すように、第1のヒートポンプ動作モードである場合、第2の電磁弁16、第3の電磁弁24及び第5の電磁弁30がいずれも閉じるように制御し、且つ第1の電磁弁6及び第4の電磁弁25がいずれも開けるように制御し、且つシステム圧力及び圧力需要に基づいて、ヒートポンプサブシステム101におけるスロットルバルブ23の目標直径を取得してスロットルバルブ23を調整する。
図2に示すように、第1のヒートポンプ動作モードでは、冷媒流通回路は、順次にコンプレッサ1→第1の熱交換器3(車内凝縮器)3→電磁電子膨張弁5→電磁弁6→車外凝縮器7→逆止弁13→(逆止弁18→双方向電子膨張弁19→電池パック直冷板21→スロットルバルブ23→電磁弁25)/(電子膨張弁32→蒸発器31→逆止弁29)→逆止弁26→気液分離器27→コンプレッサ1である。これにより、第1の熱交換器3(車内凝縮器)3の熱交換によって乗員室に対する冷房を実現し、且つ電池パック直冷板21によって電池に対する冷却を実現する。
【0077】
1つの実施例において、高圧システムに冷却需要があると決定し、高圧システム冷却サブシステム105が第1の高圧冷却動作モードを運行するように制御し、
図2に示すように、第1の高圧冷却動作モードである場合、高圧システム冷却サブシステム105における三方弁10のポートA及びポートBが閉じて且つポートB及びポートCが閉じるように制御し、且つ三方弁10のポートAがポートCに連通するように制御する。冷却液流通回路は、順次にポンプ12→プレート式熱交換器15→三方弁10AC→モータラジエータ8→高圧システム11→ポンプ12である。これにより高圧システム11に対する放熱及び冷却を実現する。
【0078】
幾つかの実施例において、ヒートポンプサブシステム101に熱補充需要がないと決定すると、乗員室の熱管理需要及び電池の熱管理需要に基づいて、ヒートポンプサブシステム101の動作モードを制御し、具体的な冷媒流通回路は
図2を参照して実際の状況に基づいて設定することができ、ここでは説明を省略する。
【0079】
幾つかの実施例において、ヒートポンプサブシステム101は、需要値に基づいて、従来のシステムセンサが収集した数値と比較し、表を検索してコンプレッサ1の回転速度、電子ファン9の回転速度、ブロワ・レンジ、電子膨張弁、ダンパ開度などの目標値を得、各実行部材に送信して動作させ、特に第1のヒートポンプ動作モード及び第3のヒートポンプ動作モードにおいて、現在のシステム圧力及び需要に基づいて、直径調整可能なスロットルバルブ23の直径について表を検索して、さらにシステムの電池パック直冷板及び蒸発器での冷媒圧力及び温度が需要を満たすように調整し、検索された表は、システム及び部品レベルで計算して校正され、且つ車両全体の表現に基づいて、補正して得られる。
【0080】
実施例において、熱補充モード、熱補充設定形態及び必要な熱補充電力に応じて、高圧システムは、高圧システム冷却サブシステムによってヒートポンプサブシステムに対して熱補充を行うように制御され、次の数種の状況を含む。
【0081】
電池の加熱需要があり、且つヒートポンプサブシステムが高圧システムに接続して熱補充を行う必要があると判断する場合、車両全体コントローラがヒートポンプサブシステムの熱補充需要を受信して熱補充電力を要求するとき、第1のステップは、まず、車両全体の車速、ギア及び充電ガン信号を検出してモータ動作状態が駆動状態であるか、駐車状態であるか、充電状態であるかを確認し、例えば、充電ガンが接続せず、車両全体が放電を許可され且つギアが駐車ギアであると、駐車状態であり、例えば、充電ガンが接続せず、車両全体が放電を許可され且つギアが走行ギアであると、駆動状態であり、例えば充電ガンが接続し、車両全体が充電を許可されると、駐車充電状態である。
【0082】
車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態である場合、無効発熱熱補充モードを使用して、無効発熱熱補充モードでは、モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、且つ無効電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータの無効電力を増大し、デフォルトでは、高圧システムにおける第1のスイッチ及び第2のスイッチの両方が遮断である。
【0083】
又は、車両が走行状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、モータ廃熱熱補充モードを使用して、モータ廃熱熱補充モードでは、モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも大きいとき、モータの元の駆動電力を保持する、又は、モータの無効電力が必要な熱補充電力よりも小さいとき、モータの有効電力を保持してトルク出力を維持し、且つモータの無効電力を必要な熱補充電力に等しいまで増大し、デフォルトでは、高圧システムにおける第1のスイッチ及び第2のスイッチがいずれも遮断である。
【0084】
又は、車両が駐車状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態又は経済的形態である場合、モータストール発熱熱補充モードを使用して、第1のストール発熱熱補充モードでは、ストール電流でモータの発熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータのストール電流を増大する。第2のストール発熱熱補充モードでは、ストール電流でモータの発熱電力が必要な熱補充電力に等しいまで、モータのストール電流を増大し、デフォルトでは、高圧システムにおける第1のスイッチ及び第2のスイッチがいずれも遮断である。
【0085】
又は、車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が性能形態である場合、第1のブースト相乗発熱熱補充モードを使用して、モータが所定の充電電流で動作するように制御し、且つ発熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいまで、モータの三相コイルの不平衡電流を増大する、又は、車両がモータブースト充電状態にあり且つ熱補充設定形態が経済的形態である場合、モータの三相コイルの動作電流でモータの発熱加熱電力が必要な熱補充電力よりも大きいと、モータの所定の充電電流に対応する三相コイルの動作電流を保持する。モータの三相コイルの動作電流でモータの発熱加熱電力が必要な熱補充電力よりも小さいと、発熱電力が必要な熱補充電力に等しいまで、三相コイルの動作電流の不平衡電流の重畳値を増大し、モータブースト相乗発熱熱補充モードでは、デフォルトでは高圧システムにおける第1のスイッチと第2のスイッチの両方が閉合である。
【0086】
本願の実施形態において、現在の電圧に基づいて熱補充電力を満たすモータ電流を換算し、さらに、熱補充設定形態確認命令を高圧システムコントローラに送信して、且つ車両全体熱管理コントローラに送信しゲージにバウンスして、ユーザによって選択し、ユーザ選択命令に基づいて生成したフィードバック命令を車両全体コントローラに伝達した後、現在のモータ電流と熱補充需要モータ電流の大きさを比較して選択可能な熱補充方式を組み合わせて、モータ動作状態命令及び動作電流をモータコントローラに送り、ヒートポンプシステムに対して熱補充を行い、車両全体過程においてモータ、モータコントローラ及びインダクタでの温度をリアルタイムで検出・保護し、デバイスを焼損させずに、高圧システムを制御してヒートポンプシステムに対して熱補充を行うことを確保する。
【0087】
図3に示すように、ストール発熱熱補充の場合、K1及びK2が遮断され、モータコントローラは動作電流に基づいて、モータを制御して一定の同じ電流値で動作し発熱させ、モータ駆動熱補充モードでは、K1及びK2が遮断され、モータコントローラは現在の駆動に必要な電流に基づいて、モータが該電流値で動作するように制御する。無効発熱熱補充モードでは、K1及びK2が遮断され、モータコントローラはモータを制御してエネルギー消費優先トルク回転速度マップテーブルから加熱優先トルク回転速度マップテーブルに転送し、且つ動作電流に応じて対応するトルク電流と励起電流で動作するようにモータをチェックおよび制御する。
【0088】
モータブースト相乗発熱熱補充モードでは、K1及びK2が閉合され、低温環境で充電することを例として説明し、つまり、電池を加熱する必要があり且つヒートポンプシステムが熱補充を行う必要があり、低温環境で充電するとき、通常、3つの段階がある。
【0089】
まず、加熱を主とする充電段階であり、該段階では、電池温度が低く、充電能力が弱く、充電電流が小さく、すなわち加熱需要が大きいため、できるだけ早く電池温度を上げる必要があり、対応するヒートポンプシステムの熱補充需要電流が大きく、つまり、電池の小電流充電条件での大電力発熱熱補充ヒートポンプシステムを実現する必要があり、該段階において発熱熱補充を主とし、充電スタンドは電流をバスのコンデンサに出力した後、発熱熱補充制御によりコンデンサでの電気量を消耗し、両者を相殺した後の電池の充電電流は小さい。このため、インダクタでの電流が小さいが、モータ及びモータコントローラに流れる電流が大きいため、リアルタイムの温度検出と保護を行う必要があり、デバイスを焼損させずに、熱補充動作電流を制御することを確保する。
【0090】
そして、電池温度の昇温に伴い、電池の充電能力が不断に増大し、充電電流が不断に増大し、同時に大きな熱補充電力も保障されて、電池の温度も不断に昇温し、且つ大きな充電電流であるので、電池の内部にも一定の発熱量があり、電池の加熱需要は以前より少し下がり、対応するヒートポンプシステムの熱補充需要電力も少し下がり、充電スタンドからバスのコンデンサに出力した電流が大きく、発熱熱補充制御により消耗したコンデンサでの電流が小さく、両者を相殺した後電池の充電電流が大きい。このため、インダクタでは、モータ及びモータコントローラに流れる電流がいずれも大きく、リアルタイムの温度検出と保護を行う必要があり、デバイスを焼損させずに、電池の充電電流及び熱補充動作電流との相乗効果が最適であるように制御することを確保する。
【0091】
最後、電池温度が高いと、大電力の直流充電が可能になり、電池内部が大きく発熱し、電池温度の保持に有利になるため、加熱電力に対する需要が低下し、対応するヒートポンプシステムの熱補充需要も低下し、該段階で主に充電が行われる。充電スタンドからバスのコンデンサに出力した電流が大きく、発熱熱補充制御により消耗したコンデンサでの電流が小さく、両者を相殺した後充電電流が大きい。このため、インダクタに流れる電流が大きく、リアルタイムの温度検出と保護を行う必要があり、デバイスを焼損させずに、電池の充電電力が最も大きいように制御することを確保する。
【0092】
なお、本開示の実施例の統合型熱管理システムのアーキテクチャに基づいて、補給ガスエンタルピー増強回路及びエンタルピー増加圧縮機、例えば再熱器、サブクーラー、フラッシャーなどを追加する方式は、ヒートポンプシステムに対して熱補充を行う手段である。原理および構造は基本的に同じであり、これは本願の技術的方法の変形とみなすことができる。且つ、本開示の実施例の統合型熱管理システムにおいて、複数の三方弁、電磁弁、電磁電子膨張弁などがあり、弁体の種類や仕様を変える熱管理システム、例えば、統合型弁体(物理的に統合化され且つ機能的に統合化された弁体)や四方弁など、様々な異形の弁体は、同じ原理、同じ制御を実現する回路制御及び切り替えアセンブリであり、本開示の実施例のシステムアーキテクチャの保護範囲内でもある。且つ、駆動するとき廃熱熱補充及び無効電力熱補充を行い、駐車するときモータのストール及び制御による三相電流の不平衡により発熱し、つまりモータの充放電中に主受動的に発熱するように制御する制御方法も本特許の変形である。
【0093】
要約すると、本開示の実施例に係る統合型熱管理システム、車両および熱管理制御方法は、車を使用する際および車を予約する際の制御がよりスマートになり、車全体の総合的なエネルギー使用率がより高くなる。
【0094】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「模式的実施例」、「例示」、「具体例」、又は「いくつかの例」という参照用語などの説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特点が本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれる。本明細書において、上記の用語の例示的な叙述は必ずしも同じ実施例又は例を指す必要がない。
【0095】
本開示の実施例を示し記述したが、当業者が、本開示の原理と趣旨から逸脱することなく、これらの実施例について様々な変化、修正、置き換え及びび変形を行うことができ、本開示の範囲は請求項及びびその等価物によって限定されることを理解できる。
【関連出願の相互参照】
【0096】
本開示は、2021年05月11日に提案された、出願番号が202110511353.8で、名称が「統合型熱管理システム、車両及び熱管理制御方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全部内容は援用により本開示に組み込まれる。
【国際調査報告】