(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】休眠打破のためのコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A01G 7/06 20060101AFI20240311BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240311BHJP
A01N 37/04 20060101ALI20240311BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20240311BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240311BHJP
A01G 17/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A01G7/06 A
A01P21/00
A01N37/04
A01N43/56 C
A01P3/00
A01G17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560525
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022242
(87)【国際公開番号】W WO2022212301
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509319074
【氏名又は名称】バレント・バイオサイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Valent BioSciences LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,フランクリン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ジュニア,デイル オー
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB20
2B022EA10
2B022EB06
4H011AA01
4H011AB03
4H011BB06
4H011BB09
(57)【要約】
本発明は、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の芽吹きを促進する方法に関する。本発明はさらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の芽吹きを同調させる方法に関する。本発明は、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の成長を促進する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)またはその塩を植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを促進する方法。
【請求項2】
前記1つ以上のSDHIが、マロン酸、インピルフルキサム、ペンチオピラド、およびピジフルメトフェンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効量が、約1~約10,000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量が、約300~約10,000ppmである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記木本多年生植物が、ブドウの木、キウイフルーツのつる、核果の木、リンゴの木、ナシの木、ブルーベリーの低木およびイバラからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記木本多年生植物が、ブドウの木である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)またはその塩を植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを同調させる方法。
【請求項8】
前記1つ以上のSDHIが、マロン酸、インピルフルキサム、ペンチオピラド、およびピジフルメトフェンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有効量が、約1~約10,000ppmである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量が、約300~約10,000ppmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記木本多年生植物が、ブドウの木、キウイフルーツのつる、核果の木、リンゴの木、ナシの木、ブルーベリーの低木およびイバラからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記木本多年生植物が、ブドウの木である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)またはその塩を植物に適用することを含む、木本多年生植物における植物の成長を増進する方法。
【請求項14】
前記1つ以上のSDHIが、マロン酸、インピルフルキサム、ペンチオピラド、およびピジフルメトフェンからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量が、約1~約10,000ppmである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量が、約300~約10,000ppmである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記木本多年生植物が、ブドウの木、キウイフルーツのつる、核果の木、リンゴの木、ナシの木、ブルーベリーの低木およびイバラからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記木本多年生植物が、ブドウの木である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記植物のシュート重量が増加する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の芽吹きを促進する方法に関する。本発明はさらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の芽吹きを同調させる方法に関する。本発明はさらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を適用することによって木本多年生植物の成長を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
落葉果樹およびブドウの木(つる)などの木本多年生植物は、許容可能な果実収量を適切に実らせるために、成長期の間に低温の温度を必要とする。具体的には、植物は、成長期の終わりに休眠芽を発達させ、成長期の間で生き残る可能性を高くする。この芽の段階は休眠(dormancy)として知られている。休眠を打破し、木本多年生植物の成長を再開するには、ある一定程度の低温が必要である。効果的な低温は、低温の期間と低温期間の温度の両方に基づく。通常、これに続いて温度が上昇し、休眠を打破し、同調した開花と果実の発達をもたらす。木本多年生植物におけるこの休眠打破は、芽吹き(萌芽)(bud break)として知られている。
【0003】
商業的に最も成功した芽の休眠を打破する化学物質は、水素化シアナミド(hydrogen cyanamide)(「HC」)である。HCは、Dormex(登録商標)の有効成分である(Dormexは、ドイツのAlzChem AGの登録商標であり、そこから入手可能である)。低温の不足を補うことに加えて、HCは、果実均一性と果実収量の増加をもたらす早期のより同期した芽吹きを開始するために使用されている。しかしながら、HCは、毒性が高く、皮膚および/または粘膜との接触によりヒトの健康に悪影響を与えることがわかっている。Schep et al., The adverse effects of hydrogen cyanamide on human health: an evaluation of inquiries to the New Zealand National Poisons Centre. Clin Toxicol (Phila). 2009 47(1):58-60 and Update: hydrogen cyanamide-related illnesses-Italy, 2002-2004, MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 2005 Apr 29, 54(16), 405-408を参照されたい。さらに、高い割合のHCは、シーズン内の植物毒性に関連しており、繰り返し使用すると、ブドウの健康と収量を長期的に低下させる可能性がある。
【0004】
したがって、本技術分野において、植物または動物の健康に悪影響を引き起こすことなく、水素化シアナミドと同等またはそれ以上に芽の休眠を打破することができる組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを促進する方法、に関する。
【0006】
本発明はさらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを同調させる方法、に関する。
【0007】
本発明はさらに、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を植物に適用することを含む、木本多年生植物における植物の成長を促進する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
出願人は、予想外にも、コハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(「SDHI」)が、木本多年生植物の芽吹きを促進および同調させ、木本多年生植物のシュートの成長を促進することを発見した。SDHIは、とりわけダラースポットやフェアリーリングなどの芝草の病気を防除することが知られている抗真菌化合物の一種ではあるが、SDHIによる木本多年生植物の芽吹きの促進と同調および木本多年生植物におけるシュート成長は予想外のことである。抗真菌活性以外に、SDHIは、線虫を防除することもわかっている。
【0009】
一実施形態において、本発明は、有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を、植物、好ましくは休眠した植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを促進する方法に関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明はさらに、有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を植物に適用することを含む、木本多年生植物の芽吹きを同調させる方法に関する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、有効量の1つ以上のコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤を植物に適用することを含む、木本多年生植物における植物の成長を促進する方法に関する。好ましい実施形態において、植物の成長はシュート重量の増加である。
【0012】
本発明での使用に適したSDHIとしては、これに限定されるものではないが、ベノダニル(benodanil)、ベンゾビンジフルピル(benzovindiflupyr)、ビキサフェン(bixafen)、ボスカリド(boscalid)、カルボキシン(carboxin)、フェンフラム(fenfuram)、フルオピラム(fluopyram)、フルトラニル(flutolanil)、フルキサピロキサド(fluxapyroxad)、フラメトピル(furametpyr)、インピルフルキサム(inpyrfluxam)、イソフェタミド(isofetamid)、イソピラザム(isopyrazam)、マロン酸(malonic acid)、メプロニル(mepronil)、メチルマロン酸(methyl malonic acid)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、ペンフルフェン(penflufen)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、ピジフルメトフェン(pydiflumetofen)、ピラジフルミド(pyraziflumid)、セダキサン(sedaxane)、チフルザミド(thifluzamide)、およびそれらの混合物およびそれらの塩、が挙げられる。好ましい実施形態において、SDHIは、マロン酸、インピルフルキサム、ペンチオピラド、ピジフルメトフェン、およびそれらの混合物およびそれらの塩からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、SDHIは、マロン酸、インピルフルキサム、ペンチオピラド、ピジフルメトフェン、およびそれらの混合物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0013】
本発明において使用することができる塩としては、これに限定されるものではないが、塩酸塩、塩酸塩二水和物、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、カリウム、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、タンニン酸塩、硫酸塩、トシル酸塩、エシル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、および、パモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))の塩、が挙げられる。
【0014】
好ましい実施形態において、1つ以上のSDHIの有効量は、約1~約10,000ppm(パーツ・パー・ミリオン:「ppm」)であり、好ましくは約300~約10,000ppmであり、より好ましくは約400~約2,000ppmであり、最も好ましくは約97.2、194.4、397.2、486、968、1,428、1,486、3,000、または10,000ppmである。
【0015】
木本多年生植物は、それらが成長した地面に枯死しない茎を有する植物を表し、これに限定されるものではないが、ブドウの木、キウイフルーツのつる(vine)、モモの木、ネクタリンの木、アプリコット(杏)の木、およびチェリー(桜)の木を含むがこれらに限定されない核果の木、リンゴの木、ナシの木、ブルーベリーの低木(茂み、bush)、ラズベリーやブラックベリーなどのイバラ(低木、bramble)が含まれる。好ましい実施形態において、木本多年生植物は、ブドウの木(grape vine)である。
【0016】
別の実施形態において、木本多年生植物は、ブドウの木を含まない。
【0017】
本明細書において、「芽の休眠を打破する」または「芽吹き」との語句は、休眠期間の後に芽から成長が開始されることを意味する。
【0018】
本明細書において、「促進する」との用語は、より早期に開始または増強することを意味する。
【0019】
本明細書において、量、比率、重量パーセントなどに関するすべての数値は、各特定の値に、「約」または「およそ」として、プラス・マイナス10%として定義される。例えば、「少なくとも5.0重量%」という語句は、「少なくとも4.5重量%から5.5重量%まで」と理解されるべきである。したがって、特許請求される値の10%以内の量が特許請求の範囲に包含される。
【0020】
冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、単数形だけでなく複数形も含むことが意図される。例えば、本発明の方法は、木本多年生植物の芽吹きを促進することに関するものであるが、これには、複数の木本多年生植物(例えば、複数のブドウの木または複数種の木本多年生植物)における芽吹きの促進が含まれ得る。
【0021】
本明細書において、「有効量」とは、芽吹きを改善し、および/または芽吹きの同調性を増加させる、1つまたは複数のSDHIまたはその塩の量を意味する。「有効量」は、種々の要因の中でも、SDHIまたはその塩の濃度、処理される植物の種(species)または品種(variety)、目的とする結果、および植物のライフステージ、に応じて変化するものである。したがって、正確な「有効量」を特定することが常に可能であるとは限らない。
【0022】
これらの代表的な実施形態は、決して限定的なものではなく、本発明のいくつかの態様を例示するためにのみ記載されている。
【0023】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、限定を目的とするものではない。
【実施例】
【0024】
Dormex(登録商標)を水素化シアナミドの供給源として使用した。Dormexは、Alzchem Trostberg Gmbhの登録商標であり、そこから入手可能である。
【0025】
CAN17は、17-0-0肥料である。CAN17は、4.6%のアンモニウム窒素、11.6%の硝酸塩窒素、および1.3%の尿素窒素として、17%の総窒素、および8.8%のカルシウムを含んでおり、これらは硝酸アンモニウムおよび硝酸カルシウムを由来としている。CAN17は、J.R.Simplot Company(Boise,ID,USA)から入手可能である。
【0026】
Excalia(登録商標)をインピルフルキサムの供給源として使用した。Excaliaは、Sumitomo Chemical Company Limitedの登録商標であり、そこから入手可能である。
【0027】
Fontelis(登録商標)をペンチオピラドの供給源として使用した。Fontelisは、E.I.du Pont de Nemours and Companyの登録商標であり、そこから入手可能である。
【0028】
Miravis(登録商標)をピジフルメトフェンの供給源として使用した。Miravisは、Syngenta Participations AGの登録商標であり、そこから入手可能である。
【0029】
実施例1:ブドウにおける、芽吹きの促進と同調およびシュート重量の増加
方法
SDHIによる、芽吹きを促進および同調させ、シュート重量を増加させる能力を評価するために、温室で生育して1年の鉢植えのコンコードブドウ(Concord grape)の木(vine)のシュート(shoot)にSDHIを適用し、芽吹き(成長の開始)について調べた。水素化シアナミド、マロン酸塩(マロン酸)、インピルフルキサム、ペンチオピラド、およびピジフルメトフェンを、それぞれ、5節(node)に剪定された5つの鉢植えのコンコードブドウ根茎(rootstock)のシュートに個々に適用した。処理後5日目から定期的に植物の芽吹きを評価した。処理後41日目に植物のシュート重量を評価した。下記の表1に、これらの評価の結果を示す。
結果
【表1】
【0030】
表1に示すように、試験した各SDHIは、効果のなかった業界標準の水素化シアナミドと比較して、50%の芽吹きまでの日数を減少させた。具体的には、コンコードブドウ植物にマロン酸塩またはペンチオピラドを施用すると、50%の芽吹きまでの時間が7日に短縮され、対照よりも約40%早くなった。さらに、インピルフルキサムまたはピジフルメトフェンの施用により、50%の芽吹きまでの時間が9日に短縮され、対照よりも約25%早くなった。50%の芽吹きまでの時間は、芽吹きの速度を示し、50%の芽吹きまでの時間が短いほど、芽吹きの速度は速い。
【0031】
さらに、表1に示すように、SDHIの大部分は、100%の芽吹きまでの日数を減少させた。具体的には、マロン酸塩を、3,000ppmで施用すると、100%芽吹きまでの日数が19日(対照より10%早い)に短縮され、10,000ppmでは17日(対照より19%早い)に短縮された。インピルフルキサムの施用により、100%芽吹きまでの日数が17日に短縮され、ペンチオピラドでは13日に短縮された(対照より38%早い)。100%の芽吹きは、芽吹きの同調性を示し、100%の芽吹きまでの時間が短いほど、芽吹きはより同調的である。
【0032】
最後に、表1に示すように、SDHIの大部分はシュート重量を増加させた。具体的には、マロン酸塩を、3,000ppmで施用するとシュート重量が41.75g(対照より28%増加)に増加し、10,000ppmでは51.4g(対照より58%増加)に増加した。インピルフルキサムの施用により、シュート重量は47gに増加した(対照より44%増加)。
【0033】
したがって、SDHIは、芽吹きを促進および同調させ、ブドウのシュート重量を増加させることが可能である。
【0034】
実施例2:ブドウの芽吹きの促進と同調
方法
SDHIによる、芽吹きを促進および同調させ、シュート重量を増加させる能力を評価するために、温室で生育して1年の鉢植えのコンコードブドウの木のシュートにSDHIを適用し、芽吹き(成長の開始)について調べた。水素化シアナミド、マロン酸塩(マロン酸)、インピルフルキサム、およびマロン酸塩とインピルフルキサムの混合物を、それぞれ、5節に剪定された5つの鉢植えのコンコードブドウ根茎のシュートに適用した。処理後5日目から定期的に植物の芽吹きを評価した。処理後41日目に植物のシュート重量を評価した。下記の表2に、これらの評価の結果を示す。
【0035】
混合物が予想外の結果をもたらしたかどうかを判断するために、観測された複合効能(「OCE」)を予想される複合効能(「ECE」)で割って、OCE/ECE比を求めた。ここで、予想されるECEは、以下に示すアボット(Abbott)法によって計算される。
ECE = A + B - (AB/100)
上式中、ECEは予想される複合効能であり、AとBは単一の有効成分によってもたらされる効能である。混合物のOCEと混合物のECEの比が1より大きい場合、予想よりも大きな相互作用が混合物において存在する。(Gisi, The American Phytopathological Society, 86:11, 1273-1279,1996)。
【0036】
結果
【表2】
表2に示すように、特定の濃度で試験した各SDHIは、対照と比較して、50%の芽吹きまでの日数を減少させた。具体的には、マロン酸塩を、1,000ppm、3,000ppm、および10,000ppmでコンコードブドウ根茎に施用すると、50%芽吹きまでの時間が24日に短縮され、対照よりも約4%早くなった。さらに、インピルフルキサムを486ppmで施用すると、50%芽吹きが22日に短縮され、対照より約12%早くなった。
【0037】
300ppmのマロン酸塩と97.2ppmのインピルフルキサムを個別に施用した場合、50%芽吹きまでの時間は短縮されないか、または、50%の芽吹きまでの時間が増加した(300ppmのマロン酸塩では50%芽吹きまで25日、97.2ppmのインピルフルキサムでは50%芽吹きまで27日)。しかしながら、300ppmマロン酸塩と97.2ppmインピルフルキサムの混合物では、50%芽吹きまでの時間が22日に短縮された。この減少(短縮)により、OCE/ECE比は1.7となり、予想外の結果が示された。
【0038】
さらに、表2に示すように、特定の濃度のSDHIのそれぞれは、対照と比較して、100%芽吹きまでの日数を減少させた。具体的には、コンコードブドウのシュートに10,000ppmのマロン酸塩を施用すると、100%芽吹きまでの時間が12日に短縮された(対照より25%早い)。486ppmおよび972ppmのインピルフルキサムを施用すると、100%芽吹きまでの日数がそれぞれ13日および10日に短縮された(それぞれ、対照より19%および38%早い)。
【0039】
1000ppmのマロン酸塩と486ppmのインピルフルキサムを個別に施用した場合、100%芽吹きまでの時間は増加しなかった(100%芽吹きまで26日)か、100%芽吹きまでの時間が短縮された(100%芽吹きまで13日)。しかしながら、1000ppmマロン酸塩と486ppmインピルフルキサムの混合物では、100%芽吹きまでの時間が9日に短縮された。この減少(短縮)により、OCE/ECE比は5.1となり、予想外の結果が示された。したがって、SDHIは芽吹きを促進および同調させることが可能である。
【0040】
実施例3:ブドウにおける、芽吹きの促進およびシュート重量の増加
方法
トンプソン種無しブドウ(Thompson seedless grapes)は、2021年の生育期に南アフリカの北ケープ州カノネイランド(Kanoneiland)の畑で栽培された。水素化シアナミド、マロン酸塩(マロン酸)、およびインピルフルキサムを、それぞれ、自然の芽吹きの2週間または4週間前にブドウ植物のシュートに施用した。最初の芽吹きから7日後と21日後に、植物の芽吹きについて評価した。下記の表3に、これらの評価の結果を示す。
【表3】
【表4】
【0041】
結果
表3に示すように、自然の芽吹きの2週間前にマロン酸塩またはインピルフルキサムを施用すると、最初の芽吹きから21日後の芽吹きの割合が対照よりも統計的に有意に増加した。さらに、自然の芽吹きの4週間前にインピルフルキサムを施用すると、最初の芽吹きから21日後の芽吹きの割合が対照よりも統計的に有意に増加した。したがって、自然の芽吹きの2週間前と4週間前のそれぞれにSDHIを施用すると、業界標準のDormex(登録商標)よりも芽吹きの増大と芽吹きの同調性がもたらされる。
【0042】
表4に示すように、自然の芽吹きの2週間前にマロン酸塩またはインピルフルキサムを施用すると、対照およびDormex(登録商標)よりもシュートの成長が増加した。具体的には、自然の芽吹きの2週間前にマロン酸塩またはインピルフルキサムを施用すると、対照に対してそれぞれ44%および50%増加し、Dormex(登録商標)に対してそれぞれ11%および15%増加した。さらに、自然の芽吹きの4週間前にマロン酸塩またはインピルフルキサムを施用すると、対照よりもシュートの成長が増加した。具体的には、自然の芽吹きの4週間前にマロン酸塩またはインピルフルキサムを施用すると、対照に対してそれぞれ20%および27%増加した。
【国際調査報告】