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特表2024-512147内部ネットワークおよび修復方法を含む整形外科用インプラントシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】内部ネットワークおよび修復方法を含む整形外科用インプラントシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20240311BHJP
   A61B 17/68 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61F2/30
A61B17/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560691
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022020681
(87)【国際公開番号】W WO2022212071
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】17/221,049
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニック・メトカーフ
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・シュミーディング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モアランド
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ジム・デレオン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・クノッフ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ウィリアム・ドゥーディ
(72)【発明者】
【氏名】シッダーント・タークル
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC05
4C160LL21
4C160LL44
(57)【要約】
本開示は、整形外科用インプラントシステム、および骨欠損を修復し、また関節の機能を回復させるための方法に関する。本明細書に開示されるインプラントシステムおよび方法は、それぞれのベースプレート(24)から延在する拡張部(26)を含んでもよい。拡張部は、それぞれのインプラント内の材料を伝達するための内部ネットワーク(44)を有してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートおよび拡張部を含むインプラントを備え、
前記ベースプレートが、前面と後面との間に延在するプレート本体を含み、かつ前記前面が、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成され、
前記拡張部が、前記プレート本体の前記後面から延在する拡張体を含み、かつ前記拡張体が、前記拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートへと分岐する内部通路のネットワークを含む、整形外科用インプラントシステム。
【請求項2】
前記ネットワークが、前記プレート本体の前記後面から前記拡張体の対向する側壁へと外向きに分岐するように寸法設定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記内部通路が、それぞれのポートと、インプラントの外部表面に沿って画定された共通のインターフェース開口とを相互接続する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記内部通路の各々が、それぞれの接合部において分岐経路へと分割され、かつ前記接合部のうちの少なくとも二つが、前記共通のインターフェース開口と前記それぞれのポートの各々との間に確立される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ネットワークが、フィボナッチ数列に従って配設され、これにより内部通路の断面積が、それぞれのポートに向かう方向においてそれぞれの接合部の各々において漸進的に減少する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記共通のインターフェース開口へと固定可能なポンプをさらに備え、
前記ポンプが、前記ポートから少なくとも部分的に前記内部通路の中へと生物材料を引き出すように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記共通のインターフェース開口が、プレート本体に沿って画定され、
前記ネットワークが、前記共通のインターフェース開口から外向きに延在する主幹部を含み、かつ前記内部通路が、前記主幹部から前記それぞれのポートへと連結された分岐経路へと分割される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
凹状関節接合面を含むパッドをさらに備え、
前記パッドが、前記前面に隣接する前記ベースプレートへと固定可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
凸状関節接合面を含む関節接合ヘッドをさらに備え、
前記関節接合ヘッドが、前記前面に隣接する前記ベースプレートへと固定可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記関節接合ヘッドが、前記プレート本体を少なくとも部分的に受容するように寸法設定された陥凹部を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記インプラントが、前記プレート本体および拡張体を通して少なくとも部分的に延在する少なくとも一つの固定開口を含み、
前記少なくとも一つの固定開口が、前記インプラントを骨へと固定するために、それぞれの締結具を受容するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ネットワークを画定する前記拡張体の表面の少なくとも大部分を確立する、一つ以上の生物活性層をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
ベースプレートおよび前記ベースプレートから延在する拡張部を含むインプラントであって、前記ベースプレートの前面が、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成され、前記拡張部が、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含む、拡張体を含む、インプラントと、生物材料を少なくとも部分的に前記ネットワークの中へと伝達するように構成されたポンプと、を備える、整形外科用インプラントシステム。
【請求項14】
前記インプラントが、前記インプラントの外部表面に沿って画定されたインターフェース開口を含み、かつ前記内部通路が、前記それぞれのポートと、前記インターフェース開口とを相互接続し、かつ、
前記ポンプが、前記インターフェース開口において前記インプラントに固定可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記対向する関節面と協働して関節界面を確立するように構成された、関節接合面を含む、関節接合部材をさらに備え、
前記関節接合部材が、前記ベースプレートへと固定可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
複数の締結具をさらに備え、かつ、
前記インプラントが複数の固定開口を含み、かつ前記固定開口の各々が、前記インプラントを骨へと固定するために、前記締結具のうちのそれぞれ一つを受容するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
外科手術部位に沿ってインプラントを位置付けるステップを含み、かつ、
前記インプラントが、ベースプレートおよび拡張部を含み、前記ベースプレートが、前面と後面との間に延在するプレート本体を含み、前記拡張部が、前記プレート本体から延在する拡張体を含み、かつ前記拡張体が、前記拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含み、かつ、前記位置付けるステップが、前記ベースプレートの前記前面が、隣接する骨と関連付けられた対向する関節面に向かって面するように生じる、整形外科用インプラントを設置する方法。
【請求項18】
ポンプを前記ネットワークに連結するステップと、
前記ポンプを作動させて、生物材料を前記内部通路の中へと少なくとも部分的に伝達させるステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポンプを第一のモードで作動させて、前記生物材料の少なくとも一部分を外科手術部位から、前記ポートを通し、かつ次いで少なくとも部分的に前記内部通路の中へと引き出させるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第二のモードで前記ポンプを作動させるステップであって、前記ネットワーク内の前記生物材料の少なくとも一部分を前記ポートに向かう方向で外向きに移動させる、ステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ネットワークが、前記プレート本体の前記後面から前記ポートへと外向きに分岐する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記外科手術部位に沿って骨内に空洞を形成するステップをさらに含み、かつ、
前記インプラントを位置付けるステップが、前記空洞の中へと前記拡張部を少なくとも部分的に移動させるステップを含み、これにより前記拡張体の前記外部表面が、前記ポートに隣接する前記空洞の壁に当接する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記インプラントが、固定開口を含み、
少なくとも部分的に前記固定開口を通し、かつ骨の中へと締結具を位置付けるステップであって、前記インプラントを前記外科手術部位に固定する、ステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記前面に隣接する前記プレート本体へと関節接合部材を固定するステップをさらに含み、
前記関節接合部材が、前記対向する関節面と協働して関節界面を確立する関節接合面を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記外科手術部位が、関節窩に沿って確立される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年4月2日に出願された米国特許出願第17,221,049号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、整形外科処置に関し、より具体的には、整形外科用インプラントシステムおよび骨欠損を修復し、かつ関節の機能を回復させるための方法に関する。
【0003】
ヒト筋骨格系の多くの骨は、関節面を含む。関節面は、他の骨に対して関節接続して、異なるタイプおよび程度の関節の動きを容易にする。関節面は、使用または摩耗が繰り返されることに起因して、経時的に損なわれる、または骨損失を経験する、または外傷性衝撃の結果として骨折する可能性がある。これらのタイプの骨欠損は、関節の不安定および疼痛を引き起こす可能性がある。
【0004】
骨欠損は、関節面に沿って生じる場合がある。一部の技法は、関節面に隣接した欠陥を修復するために、骨移植および/またはインプラントを利用する。インプラントは、一つ以上の締結具を利用して、骨に固定されてもよい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、整形外科用インプラントシステムおよび方法に関する。インプラントシステム、骨欠損を修復するための方法の間に使用されてもよい。本明細書に記述されるインプラントシステムは、関節に対する機能性を回復させるために利用されてもよく、またそれぞれのインプラント内の様々な材料を伝達するための内部ネットワークを有するインプラントを含んでもよい。
【0006】
本開示の整形外科用インプラントシステムは、ベースプレートおよび拡張部を含むインプラントを含んでもよい。ベースプレートは、前面と後面との間に延在するプレート本体を含んでもよい。前面は、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成されてもよい。拡張部は、プレート本体の後面から延在する拡張体を含んでもよい。拡張体は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに対して分岐する内部通路のネットワークを含んでもよい。
【0007】
本開示の整形外科用インプラントシステムは、ベースプレートと、ベースプレートから延在する拡張部と、を含むインプラントを含んでもよい。ベースプレートの前面は、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成されてもよい。拡張部は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含む拡張体を含んでもよい。ポンプは、生物材料を少なくとも部分的にネットワークの中へと伝達するように構成されてもよい。
【0008】
本開示の整形外科用インプラントを設置する方法は、インプラントを外科手術部位に沿って位置付けることを含んでもよい。インプラントは、ベースプレートおよび拡張部を含んでもよい。ベースプレートは、前面と後面との間に延在するプレート本体を含んでもよい。拡張部は、プレート本体から延在する拡張体を含んでもよい。拡張体は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含んでもよい。位置決め工程は、ベースプレートの前面が、隣接する骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように発生する場合がある。
【0009】
本開示の様々な特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態から当業者には明らかになるであろう。発明を実施するための形態に付随する図面を、下記のように簡潔に記述することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ベースプレートおよび拡張部を含むインプラントシステムの、例示的な整形外科用インプラントシステムの斜視図である。
図2A図1の線2A-2Aに沿って取られたインプラントの断面図である。
図2B図1の線2B-2Bに沿って取られたインプラントの断面図である。
図3】内部通路の例示的なネットワークを示す図である。
図3A】内部通路の例示的なネットワークを示す図である。
図4】例示的な関節接合部材に連結された図1のインプラントの断面図である。
図5】例示的な関節接合部材に連結された図1の別のインプラントの断面図である。
図6】別の例示的なインプラントシステムの断面図である。
図7】整形外科用インプラントを設置する例示的な方法の図である。
図8】外科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
図9】外科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
図10】外科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
図11】外科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
図12】外科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
図13】科手術部位に対して様々なモード、位置、および状態における例示的なインプラントシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な図面内の同様の参照番号および名称は、同様の要素を表示する。
【0012】
本開示は、整形外科用インプラントシステムおよび骨欠損を修復するための方法に関する。本明細書に記述されるインプラントシステムは、関節形成術の処置中に利用されてもよく、また進行性の軟骨疾患を有する肩部および他の関節に対する機能性を回復させるための人工関節の中に組み込まれたインプラントを含んでもよい。インプラントは、それぞれのベースプレートから延在する拡張部を含んでもよい。インプラントは、関節窩面などの外科手術部位に沿って位置していて、骨空隙を少なくとも部分的に充填してもよい。拡張部は、それぞれのインプラント内に生物材料および/または他の材料を伝達するための内部ネットワークを含んでもよく、これは患者の固定および治癒を改善する場合がある。
【0013】
本開示の例示的な態様による整形外科用インプラントシステムは、ベースプレートおよび拡張部を含むインプラントを含んでもよい。ベースプレートは、前面と後面との間に延在するプレート本体を含んでもよい。前面は、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成されてもよい。拡張部は、プレート本体の後面から延在する拡張体を含んでもよい。拡張体は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに対して分岐する内部通路のネットワークを含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態では、ネットワークは、プレート本体の後面から拡張体の対向する側壁へと外向きに分岐するように寸法設定されてもよい。
【0015】
一部の実施形態では、内部通路は、それぞれのポートと、インプラントの外部表面に沿って画定された共通のインターフェース開口とを相互接続してもよい。
【0016】
一部の実施形態では、内部通路の各々は、それぞれの接合部で分岐した経路へと分割されてもよい。接合部のうちの少なくとも二つは、共通のインターフェース開口とそれぞれのポートの各々との間に確立されてもよい。
【0017】
一部の実施形態では、ネットワークは、フィボナッチ数列に従って配設されてもよく、これにより内部通路の断面積は、それぞれのポートに向かう方向においてそれぞれの接合部の各々で漸進的に減少してもよい。
【0018】
一部の実施形態では、インプラントシステムは、共通のインターフェース開口へと固定可能なポンプを含んでもよい。ポンプは、少なくとも部分的にポートから内部通路の中へと生物材料を引き出すように構成されてもよい。
【0019】
一部の実施形態では、共通のインターフェース開口は、プレート本体に沿って画定されてもよい。ネットワークは、共通のインターフェース開口から外向きに延在する主幹部を含んでもよい。内部通路は、主幹部から、それぞれのポートに連結された分岐経路へと分割されてもよい。
【0020】
一部の実施形態では、インプラントシステムは、凹状関節接合面を含むパッドを含んでもよい。パッドは、前面に隣接したベースプレートに対して固定可能であってもよい。
【0021】
一部の実施形態では、インプラントシステムは、凸状関節接合面を含む関節接合ヘッドを含んでもよい。関節接合ヘッドは、前面に隣接したベースプレートに対して固定可能であってもよい。
【0022】
一部の実施形態では、関節接合ヘッドは、プレート本体を少なくとも部分的に受容するように寸法設定された陥凹部を含んでもよい。
【0023】
一部の実施形態では、インプラントは、プレート本体および拡張体を通して少なくとも部分的に延在する少なくとも一つの固定開口を含んでもよい。少なくとも一つの固定開口は、インプラントを骨へと固定するために、それぞれの締結具を受容するように構成されてもよい。
【0024】
一部の実施形態では、インプラントは、ネットワークを画定する拡張体の表面の少なくとも大部分を確立する、一つ以上の生物活性層を含んでもよい。
【0025】
本開示の例示的な態様による整形外科用インプラントシステムは、ベースプレートおよびベースプレートから延在する拡張部を含むインプラントを含んでもよい。ベースプレートの前面は、骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように構成されてもよい。拡張部は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含む拡張体を含んでもよい。ポンプは、生物材料を少なくとも部分的にネットワークの中へと伝達するように構成されてもよい。
【0026】
一部の実施形態では、インプラントは、インプラントの外部表面に沿って画定されるインターフェース開口を含んでもよい。内部通路は、それぞれのポートとインターフェース開口とを相互接続してもよい。ポンプは、インターフェース開口においてインプラントに対して固定可能であってもよい。
【0027】
一部の実施形態では、インプラントシステムは、対向する関節面と連携して関節界面を確立するように構成されてもよい関節接合面を含む関節接合部材を含んでもよい。関節接合部材は、ベースプレートに対して固定可能であってもよい。
【0028】
一部の実施形態では、インプラントシステムは、複数の締結具を含んでもよい。インプラントは、複数の固定開口を含んでもよい。固定開口の各々は、インプラントを骨へと固定するために、締結具のうちの一つをそれぞれ受容するように構成されてもよい。
【0029】
本開示の例示的な態様による整形外科用インプラントを設置する方法は、インプラントを外科手術部位に沿って位置付けることを含んでもよい。インプラントは、ベースプレートおよび拡張部を含んでもよい。ベースプレートは、前面と後面との間に延在するプレート本体を含んでもよい。拡張部は、プレート本体から延在する拡張体を含んでもよい。拡張体は、拡張体の外部表面に沿ってそれぞれのポートに連結された内部通路のネットワークを含んでもよい。位置決め工程は、ベースプレートの前面が、隣接する骨と関連付けられた対向する関節面の方を向くように発生する場合がある。
【0030】
一部の実施形態では、方法は、ポンプをネットワークへと連結することと、ポンプを作動させて、生物材料を少なくとも部分的に内部通路の中へと伝達させることと、を含んでもよい。
【0031】
一部の実施形態では、方法は、ポンプを第一のモードで作動させて、生物材料の少なくとも一部分を外科手術部位から、ポートを通し、次いで少なくとも部分的に内部通路の中へと引き出すことを含んでもよい。
【0032】
一部の実施形態では、方法は、第二のモードでポンプを作動させて、ネットワーク内の生物材料の少なくとも一部分をポートに向かう方向で外向きに移動させることを含んでもよい。
【0033】
一部の実施形態では、ネットワークは、プレート本体の後面からポートへと外向きに分岐してもよい。
【0034】
一部の実施形態では、方法は、外科手術部位に沿って骨内に空洞を形成することを含んでもよい。インプラントを位置付ける工程は、拡張体の外部表面がポートに隣接する空洞の壁に当接するように、空洞の中へと少なくとも部分的に拡張部を移動させることを含んでもよい。
【0035】
一部の実施形態では、インプラントは、固定開口を含んでもよい。方法は、少なくとも部分的に固定開口を通して、かつ骨の中へと締結具を位置付けて、インプラントを外科手術部位へと固定することを含んでもよい。
【0036】
一部の実施形態では、方法は、前面に隣接するプレート本体へと関節接合部材を固定することを含んでもよい。関節接合部材は、対向する関節面と協働して関節界面を確立する関節接合面を含んでもよい。
【0037】
一部の実施形態では、外科手術部位は、関節窩に沿って確立されてもよい。
【0038】
図1は、外科手術部位へと固定可能なインプラント22を含む例示的な整形外科用インプラントシステム20を図示する。システム20は、関節を修復するための関節形成術などの様々な外科処置のために利用されてもよい。例えば、インプラント22は、人工肩関節の中へと組み込まれてもよい。本明細書に開示されるインプラントは、主に、解剖学的またはリバース型人工肩関節手技などの肩再建中の関節窩内の欠損の修復を指すが、当然のことながら開示されたインプラントは、患者の体の他の場所で、また上腕骨および手首関節、手関節、股関節、膝関節、足関節、または脊椎の関節などの他の関節の修復、ならびに骨折の修復を含む他の外科処置で利用されてもよい。
【0039】
インプラント22は、ベースプレート24および拡張部26を含んでもよい。ベースプレート24は、前面30と、前面30と概して対向する後面32との間で中心軸Aに沿って延在するプレート本体28を含んでもよい。前面30は、図4に図示するように、隣接する骨B2と関連付けられた対向する関節接合面ASの方を向くように構成されてもよい。関節接合面ASは、骨B2の一部分、または骨B2へと固定された隣接するインプラント構成要素であってもよい。
【0040】
ベースプレート24は、様々な幾何学的形状を有してもよい。ベースプレート24の周囲は、概して長方形状、楕円状、長円状、長楕円状、または複雑な幾何学的形状を有してもよい。例えば、プレート本体28の周囲28Pは、図1に図示するように、実質的に円形状または楕円形状の断面幾何学的形状を有してもよい。本開示の目的のためには、「実質的に」および「およそ」という用語は、別段の記載のない限り、記載された関係または値の±5%を意味する。実質的に円形状の幾何学的形状は、インプラント22を受け入れるために、外科手術部位を準備するリーマ加工幅および複雑さを低減する場合がある。
【0041】
拡張部26は、前面36と、前面36と概して対向する後面38との間に延在する拡張体34を含んでもよい。拡張体34は、中心軸Aに沿ってプレート本体28の後面32上に配置され、かつプレート本体28の後面32から延在してもよい。例えば、外科手術部位内に移植された時、ベースプレート24および拡張部26の後面32、38は、概して、患者の内側に対応してもよく、またベースプレート24および拡張部26の前面30、36は、概して、患者の外側に対応してもよい。
【0042】
インプラント22は、一つ以上の固定開口40を含んでもよい。各固定開口40は、図2Bに図示するように、プレート本体28および/または拡張体34を少なくとも部分的に延在してもよく、または完全に通して延在してもよい。各固定開口40は、図2Bに図示されるように、インプラント22を骨B1などの組織に固定するために、それぞれの締結具Fを受容するように構成されてもよい(図示の目的でB1およびFは破線で示される)。システム20は、図1に図示するように、それぞれの固定開口40内に受容された複数の締結具Fを含んでもよい。例示的な締結具としては、ピン、釘、ボルト、および圧縮ねじが挙げられてもよい。
【0043】
インプラント22は、インプラント22の外部表面に沿って画定される少なくとも一つのインターフェース開口42を含んでもよい。インターフェース開口42は、図2A図2Bに図示するように、プレート本体28の前面30と後面32との間で中心軸Aに沿って延在してもよい。固定開口40は、図1に例示されるように、配列を成してインターフェース開口42および/または中心軸Aを中心として分布されてもよい。インターフェース開口42もまた、固定開口として役割を果たしてもよい。インターフェース開口42は、インプラント22の別の部分に沿って確立されてもよい。例えば、インターフェース開口は、図6のインターフェース開口242によって図示されるように、拡張体の外部表面に沿って確立されてもよい。インターフェース開口242は、拡張体234の前面236と後面238との間の位置で、拡張体234の側壁239に沿って確立されてもよい。本開示では、同様の参照番号は、適切な場合、同様の要素を指定し、また100またはその倍数を追加した参照番号は、対応する元の要素の同じ特徴および利点を組み込むと理解される修正された要素を指定する。
【0044】
図1を引き続き参照しながら、図2Aを参照すると、拡張部26は、外科手術部位Sに沿って遭遇する場合がある様々な欠陥のある幾何学的形状および表面輪郭に近似するように寸法設定されてもよい。一部の実装では、拡張部26の幾何学的形状は、患者の解剖学的構造の一つ以上の測定値に基づいて、患者特異的であってもよい。拡張部26の後面38は、外科手術部位Sに沿って骨B1などの組織に接触するように寸法設定されてもよい。後面38は、図2A図2Bに図示するように、骨B1に沿って表面輪郭SCに重ね合わせるように寸法設定されてもよい。他の実装形態では、図4に図示するように、拡張部26は、骨B1にはめ込まれて、骨B1内の空洞Cの容積を少なくとも部分的にまたは完全に充填してもよく、またベースプレート24は、空洞C内に少なくとも部分的に受容されてもよい。
【0045】
拡張体34は、インプラント22の骨内統合および患者の治癒を促進するために、血液、栄養素、骨髄、および他の生物材料を搬送するための内部ネットワーク44を含んでもよい。生物材料は、患者によって、または別の供与源から提供されてもよい。内部ネットワーク44は、非生物材料を含むインプラント22内の他の材料と連通するために利用されてもよい。例示の非生物材料としては、固定を改善するためのセメント材料、および例えば、外科手術部位Sに沿った骨‐インプラント界面における感染のリスクを低減するためのゲンタマイシンなどの抗生剤が挙げられてもよい。
【0046】
内部ネットワーク44は、前面36と後面38との間の拡張体34の厚さ内に少なくとも部分的にまたは完全に画定されてもよい。内部ネットワーク44は、拡張体34の外部表面に沿ってそれぞれのポート48に連結された内部通路46のネットワークを確立するように寸法設定された所定の幾何学的形状を有してもよい。本開示の目的のためには「所定の」という用語は、メッシュおよび多孔性材料などの無作為な配設を除外する工学的な構築物を意味する。
【0047】
内部通路46は、インターフェース開口42とそれぞれのポート48のうちの一つ以上との間にそれぞれの流路を確立するように寸法設定されてもよい。内部通路46は、拡張部26の外部表面に沿ってインターフェース開口42およびそれぞれのポート48を相互接続するように寸法設定されてもよい。内部通路46のうちの一つ以上は、それぞれのポート48へと分岐してもよい。
【0048】
インターフェース開口42は、図2A図2Bに図示するように、内部通路46およびポート48の各々に対して共通であってもよい。他の実施例では、インプラント22は、各々がそれぞれの内部通路46の組に連結された、二つ以上のインターフェース開口42を含んでもよい。ネットワーク44は、図2A図2Bに示すように、プレート本体28の後面32および/または拡張体34の前面36から、拡張体34の対向する側壁39および/または後面38に沿ってポート48へと外向きに分岐するように寸法設定されてもよい。側壁39は、空洞C内の拡張部26の位置付けを容易にするように、実質的に滑らかで、かつ連続的な輪郭を有してもよい(図4)。
【0049】
インターフェース開口42は、プレート本体28に沿って画定されてもよい。ネットワーク44は、インターフェース開口42から外向きに延在する主幹部52を含んでもよい。ネットワーク44は、内部通路46のうちの一つ以上(またはその各々)が、主幹部52からそれぞれのポート48に連結された分岐経路54へと分割されるように寸法設定されるように確立されてもよい。内部通路46は、それぞれの接合部50において分岐経路54へと分割してもよい。少なくとも二つの接合部50は、内部通路46の少なくともいくつかが別の内部通路46から分割された分岐経路54であるように、インターフェース開口42とそれぞれのポート48の各々との間に確立されてもよい。内部通路46の配設は、拡張部26内の局所的な応力集中を低減する場合がある。
【0050】
図3の図示的な実施例では、ネットワーク44’は、インターフェース開口42’とポート48’のうちのそれぞれの一つとの間に確立された少なくとも三つの接合部50’を含む。内部通路46’は、図3Aで図示するように、それぞれの接合部50’において少なくとも二つの分岐経路54’へと分割してもよい。ネットワーク44’内の各内部通路46’の断面積は、それぞれの接合部50’で内部通路46’から分割された分岐経路54’の組み合わせられた断面積以上であってもよい。例えば、図3Aの内部通路46’は、およそ8mmの断面積を有してもよく、また二つの分岐経路54’はそれぞれ、接合部50’においておよそ4mmの断面積を有してもよく、およそ8mmの総断面積を得てもよい。主幹部52’の断面積は、ネットワーク44’内の下流接合部50’のすべての断面積の総和以上であってもよい。接合部50’の断面積は、主幹部52’からD1の方向に連続的に減少してもよい。例えば、ネットワーク44’は、インターフェース開口42’からそれぞれのポート48’に向かう方向D1にある一連のそれぞれの接合部50’において、各内部通路46’の断面積が漸進的に減少するように、フィボナッチ数列に従って予め定義されてもよいが、反対向きの配設が利用されてもよい。
【0051】
分岐経路54を含む内部通路46は、インターフェース開口42とポート48との間を含む内部ネットワーク44全体を通して材料を伝達するために、様々な向きで確立されてもよい。実装では、内部ネットワーク44は、木の根系などの性質を概して模倣するように寸法設定されてもよい。内部通路46の部分は、内部通路46の部分がインプラント22の長軸方向軸Aに対して相互から半径方向にずれるように、インターフェース開口42から外向きに分岐してもよい。内部通路46の部分は、それぞれの内部通路46の分岐経路54によって図示されるように、内部通路46の隣接する部分の対向する側面上に確立されてもよい。分岐経路54の突出部は、図2Aによって図示されるように、共通の平面上で相互に交差してもよいが、図1の線2B-2Bに沿って取られた図2Bによって図示されるように、拡張体34の厚さによって相互に半径方向にずらされてもよい。分岐経路54は、長軸方向軸Aに対して異なる円周位置でそれぞれのポート48に対して連結されてもよい(例えば、図1を参照のこと)。
【0052】
図4を参照すると、インプラントシステム20は、前面30に隣接するベースプレート24へと固定可能な関節接合部材56を含んでもよい。関節接合部材56は、関節接合面58を有してもよい。関節接合面58は、対向する関節接合面ASと連携して、関節界面JIを確立するように構成されてもよい。
【0053】
関節接合部材56は、関節接合面ASを補完する様々な幾何学的形状を有してもよい。例えば、関節接合部材56は、図4に図示するように、概して凸状の関節接合面58を有する関節接合ヘッド60であってもよい。関節接合ヘッド60は、例えば、リバース型人工肩関節修復処置において関節窩に固定されたグレノスフィアであってもよい。
【0054】
関節接合部材は、他の幾何学的形状を有してもよい。図5のインプラント122によって図示されるように、関節接合部材156は、関節接合面158を有するパッド164を含む。関節接合面158は、概して凹状の幾何学的形状を有してもよい。関節接合部材156は、例えば、解剖学的肩修復処置で利用されてもよい。パッド164は、前面130に隣接したベースプレート124に対して固定可能であってもよい。少なくとも一つのペグ166は、パッド164の本体から外向きに延在してもよい。ペグ166は、外科手術部位Sに沿って固定を提供するために、骨B1内の穴H1内に固定されるように寸法設定されてもよい。パッド164は、インターフェース開口142と嵌合して、ベースプレート124とパッド164との間の相対的な移動を制限するように寸法設定される少なくとも一つの突出部167を含んでもよい。
【0055】
関節接合部材56、156をそれぞれのベースプレート22、122に固定するために、様々な技法が利用されてもよい。関節接合部材56、156は、それぞれのベースプレート24、124へと機械的に取り付けられてもよく、または取り外し可能に固定されてもよい。図4および図5を参照すると、関節接合部材56、156は、それぞれのプレート本体28、128を少なくとも部分的に受容するように寸法設定されたそれぞれの陥凹部62、162を含んでもよい。しかしながら、反対の構成を利用することができる。陥凹部62/162の周囲62P/162Pは、前面30/130に隣接するプレート本体28/128の周囲28P/128Pを取り囲むように寸法設定されてもよい。プレート本体28/128の周囲28P/128Pは、陥凹部62/162の周囲62P/162Pと協働して、関節接合部材56/156をベースプレート24/124へと固定するためのモールステーパ接続を確立するように寸法設定されてもよい。関節接合部材56/156は、ベースプレート24/124上に衝撃を与えられ、もしくは押されて、締り嵌めを確立するか、または別の方法で関節接合部材56/156を着座させてもよい。関節接合ヘッド60は、それぞれの締結具FFを受容するように寸法設定された開口61を含んでもよい。締結具FFは、インターフェース開口42内に少なくとも部分的に受容されてもよく、またねじと協働して、関節接合ヘッド60をベースプレート24へと機械的に取り付け、そして関節接合ヘッド60の整列を支援してもよい。
【0056】
関節接合部材56、156は、キットの状態で外科医に一緒に提供されてもよい。キットは、患者の解剖学的構造に基づく外科医による選択のために異なる形状および/またはサイズを有する関節接合部材56、156を含んでもよい。
【0057】
図2Aに戻って参照すると、インプラントシステム20は、インプラント22に選択的に連結されたポンプ68を含んでもよい(例示の目的で破線で示される、図6のインプラント222も参照のこと)。ポンプ68は、例えば、ねじ接続を介してインターフェース開口42へと固定可能であってもよい。ポンプ68は、動作中の内部ネットワーク44の少なくとも一部分を通して材料を搬送するように構成されてもよい(例えば、図12のポンプ368を参照)。ポンプ68は、少なくとも部分的に内部ネットワーク44の中へと患者から外科手術部位Sに隣接して血液、骨髄、および他の組織、栄養素、他の生物材料、ならびに/または他の材料を引き出し、または別の方法で伝達して、本明細書に開示される材料のいずれかを含む、インプラント22の骨内統合および患者の治癒を促進するように構成されてもよい。実装では、ポンプ68は、外部供給源からネットワーク44へと、インプラント22の定置前に患者またはドナーから集められた生物材料などの生物材料を搬送または送達するように構成されてもよい。
【0058】
インプラント22を形成するために、様々な技法が利用されてもよい。インプラント22は、ベースプレート24および拡張部26が一体型で形成されてもよいモノリシック配設であってもよく、またはインプラント22は、互いに機械的に取り付けられる、または別の方法で相互に固定される別個の構成要素を含んでもよいモジュール式配設であってもよい。拡張部26は、三次元足場を確立するために、所定の幾何学的形状に従ってベースプレート24上に印刷されてもよく、または別の方法で形成されてもよい。足場は、拡張部26の容積を少なくとも部分的に通って延在する内部ネットワーク44を確立する。
【0059】
本明細書に開示されたインプラントシステムの構成要素を形成するために、様々な材料を利用してもよい。開示されたベースプレート、拡張部、および関節接合部材は、外科手術グレードの金属材料で作製されてもよい。金属材料の例としては、Ti6Al4Vなどのチタン合金、およびコバルトクロム(CoCr)などのコバルト系材料が挙げられる。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの非金属材料が利用されてもよい。パッド164(図5)は、本明細書に開示される非金属材料のうちのいずれかを含む、非金属材料で作製されてもよい。拡張部などのインプラントの部分は、生物材料および他の生体材料、こうしたヒドロキシアパタイトおよび同種移植骨または他の組織から構築されてもよい。
【0060】
ベースプレートのプレート本体は、第一の材料を含んでもよく、また拡張部の拡張体は、第二の材料を含んでもよい。第一の材料と第二の材料とは、同じであってもよく、または組成および/または構造において異なることができる。例えば、第一の材料のおよび第二の材料の密度は、同一とすることができ、または異なることができる。プレート本体は、実質的に固体であってもよい。
【0061】
一つ以上のコーティングまたは層は、ベースプレートおよび/または拡張部を含んで、インプラントの表面に沿って堆積されてもよい。例えば、少なくとも一つの層55’は、図3Aに図示するように、拡張体34’の表面に沿って配置されてもよく、または別の方法で、拡張体34’の表面を確立してもよい。インプラント22’は、ネットワーク44’を画定する拡張体34’の少なくとも大部分または実質的にすべての表面を確立する、一つ以上の層55’を含んでもよい。層55’は、外科手術部位においてインプラント22’の骨内統合を促進する非生物材料または生物活性材料もしくは生物製剤を含む、本明細書に開示される材料のうちのいずれかを含んでもよい。例示の層は、骨成長を促進するためにリン酸カルシウム(CaP)およびヒドロキシアパタイトを含んでもよい。層55’は、インプラント22’の形成と同時に、または形成の後に、インプラント22’の表面上に配置されてもよい。例えば、層55’は、インプラント22’の隣接部分を印刷しながら、内部ネットワーク44’の表面を確立するように印刷されてもよい。他の実装では、層55’は、ネットワーク44’の表面を確立するように、拡張体34の表面上に堆積されてもよい。例えば、層55’は、インプラント22’の形成の後に、スラリーとしてネットワーク44’の中へと注入されてもよい。
【0062】
図7は、整形外科用インプラントを外科手術部位に設置する例示的な方法を、フローチャート380で図示する。方法は、例えば、関節窩に沿った骨欠損の修復などの、進行性の軟骨疾患を有する肩およびその他の関節の機能性を回復させるための関節形成術を実施するために利用されてもよい。方法380は、主に、肩再建中の関節窩における欠損の修復のためのインプラントを参照するが、当然のことながら方法および開示されたインプラントは、上腕骨または本明細書に開示される任意の他の場所などの、患者の他の場所および他の外科処置で利用されてもよい。方法380は、本明細書に開示される整形外科用インプラントシステムのうちのいずれかで利用することができる。より少ない工程または追加的な工程が下記に列挙され、本開示の範囲内で実施することが可能であり、また列挙される工程の順序は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0063】
関節形成術のためのキットは、工程380Aにおいて提供されてもよい。キットは、本明細書に開示されるインプラントシステムの構成要素のいずれかを含んでもよい。キットは、様々なサイズおよび幾何学的形状のインプラントの組を含んでもよい。工程380Bにおいて、外科医は、キットから一つ以上の構成要素を選択してもよい。例えば、工程380Bは、図8に図示するように、計画された外科手術技法および/または外科手術部位Sに沿って骨B1に関連付けられた表面輪郭SCを含む患者の解剖学的構造に基づいて、インプラントの組からインプラントを選択することを含んでもよい。外科手術部位Sは、例えば、関節窩Gに沿って確立されてもよい。キットは、インプラントを外科手術部位Sに固定するために、インプラント内のそれぞれの開口内に受容されてもよい異なるサイズの締結具を含んでもよい。キットは、選択されたインプラントに固定するための様々なサイズおよび幾何学的形状の関節接合部材を含んでもよい。外科医は、計画された外科手術技法および/または患者の解剖学的構造に基づいて、キットから関節接合部材を選択してもよい。
【0064】
図7を引き続き参照しながら図8を参照すると、外科手術部位Sは、工程380Cにおいてインプラント322を収容するために調製することができる。インプラント322は、本明細書に開示されるインプラントのうちのいずれかに対応してもよい。インプラント322は、ベースプレート324および拡張部326を含むことができる。外科手術部位Sの特定の幾何学的形状を確立するための一回以上のリーマ加工、フライス加工および/またはドリル加工動作などの一つ以上の動作が、外科手術部位Sを準備するために実施されてもよい。工程380Cは、それぞれの締結具を受容するように寸法設定された外科手術部位内に一つ以上の穴を形成することを含んでもよい(例えば、図2Bを参照のこと)。
【0065】
工程380Cは、工程380Dにおいて、関節窩Gの関節接合面などの、外科手術部位Sに沿って空洞Cを形成することを含んでもよい。空洞Cは、図10および図11に示すように、外科手術部位Sにおいて骨B1または他の組織の一部分を除去することによって形成されてもよい。組織は、外科手術部位Sに沿って軟骨、海綿骨、および/または皮質骨を含んでもよい。
【0066】
空洞Cは、ベースプレート324および/または拡張部326を少なくとも部分的にまたは完全に受容するように寸法設定されてもよい。空洞Cは、骨B1内の欠陥から組織を除去するように形成されてもよく、また欠陥の輪郭に近似するように寸法設定されてもよい。関節窩内の欠損部は、Walch分類によって特徴付けることができる。外科医は、外科手術部位の撮像、こうしたX線写真またはコンピュータ断層撮影技法を利用して、骨損失を測定してもよく、または骨表面に対して定置された一つ以上の寸法測定器および/または測定装置を利用して、欠損の輪郭を近似してもよい。
【0067】
選択されたインプラント322は、工程380Eにおいて外科手術部位Sに沿って位置付けられてもよい。工程380Eは、図13に図示するように、ベースプレート324の前面330が、隣接する骨B2と関連付けられた対向する関節面ASの方を向くように生じてもよい。
【0068】
図7を引き続き参照しながら、図8および図9を参照すると、工程380Eは、インプラント322を方向D2(図8)で移動させることを含んでもよく、これにより後面338は、図9に示すように、骨B1の表面輪郭SCに対して当接し、かつ骨B1の表面輪郭SCに重ね合わせられる。一部の実装では、インプラント322は、少なくとも拡張部326が表面に当接し、かつ/または外科手術部位Sに沿って空洞Cを充填するように位置付けられる。例えば、工程380Eは、図10に図示するように、拡張部326を空洞C内に部分的に位置付けること、または図11に図示するように、拡張部326を空洞C内に完全に位置付けることを含んでもよい。工程380Eは、図4のベースプレート24によって図示されるように、ベースプレートの少なくとも一部分を空洞内に位置付けることを含んでもよい。
【0069】
工程380Eは、図10図11に図示するように、拡張体334の外部表面がポート348に隣接する空洞Cの壁に当接するように、拡張部326を少なくとも部分的に空洞Cの中へと移動させることを含んでもよい。拡張体334の外部壁は、側壁339を含む、実質的に滑らかまたは連続的な輪郭を有してもよい。一つ以上のポート348は、インプラント322の定置および外科処置の完了に続いて、生物材料Mの伝達を促進するために側壁339内に画定されてもよい。
【0070】
一部の実装では、拡張体334は、図9Aに図示するように、後面338または拡張体334の別の部分から外向きに延在する一つ以上の突出部370を含んでもよい。突出部370は、後面338から外向きに延在する一つ以上の根と似るように寸法設定されてもよい。各突出部370は、内部通路346およびポート348のうちの少なくとも一つを画定してもよい。工程380Eは、突出部370が骨B1内に少なくとも部分的に埋め込まれるように、インプラント322を骨B1の表面との当接へと移動させることを含んでもよく、これは、外科手術部位Sに沿ったインプラント322の固定を改善する場合がある。
【0071】
工程380Fにおいて、一つ以上の締結具は、図2Bの締結具Fによって図示されるように、選択されたインプラントを外科手術部位へと固定するために、それぞれの締結具開口内に、かつ少なくとも部分的にそれを通して位置付けられ、次いで骨の中へと位置付けられてもよい。締結具Fは、ベースプレート24と骨との間に圧縮を加え、かつ圧縮を維持することができるように機能することができる圧縮ねじであってもよく、これは、そうでなければ、インプラントと骨との接触表面間の間隔に起因して生じる場合がある、相対的な移動および組織形成を低減する場合がある。
【0072】
隣接する骨B1に対する拡張部326の当接は、吸い出しまたは毛細管作用を確立する場合がある。吸い出し作用は、外科手術部位Sからの生物材料Mを、インプラント322の骨成長および固定を促進することができる内部ネットワーク344の容積に、少なくとも部分的にまたは完全に充填させる場合がある。
【0073】
図7を引き続き参照しながら図12を参照すると、一部の実装では、ポンプ368は、工程380Gにおいて、インプラント322の内部ネットワーク344に連結されてもよい。ポンプ368は、一つ以上のモードを含んでもよい。例えば、ポンプ368は、第一のモード中に第三の方向D3に移動可能であり、また第二のモード中に第四の方向D4に移動可能であるシリンジなどの双方向ポンプであってもよい。第四の方向D4は、第三の方向D3に対して概して反対向きであってもよい。ポンプ368は、第一のモードでは、生物材料を内部ネットワーク344の中へと吸い込むように、かつ/または生物材料Mをインターフェース開口342に向かって移動させるように機能してもよい。ポンプ368は、第二のモードでは、生物材料Mをインターフェース開口342から離れるように、かつ内部ネットワーク344を通して移動させるように機能してもよい。
【0074】
工程380Hにおいて、ポンプ368を作動させて、生物材料および/または他の材料Mを少なくとも部分的に内部ネットワーク344の内部通路346の中へと伝達させることができる。工程380Hは、第一のモードおよび/または第二のモードなどの一つ以上のモードでは、ポンプ368を作動させることを含んでもよい。工程380Hにおいて、ポンプ368は、第一のモードで作動されて、生物材料Mの少なくとも一部分を外科手術部位Sからポート348を介して、そしてその後、少なくとも部分的に内部通路346の中へと引き出してもよく、これにより内部ネットワーク344の容積は、少なくとも部分的にまたは実質的に生物材料Mで充填される。工程380Iにおいて、ポンプ368を、第二のモードで作動させて、ネットワーク344内の生物材料Mの少なくとも一部分を、ポート348に向かう方向に押してもよく、または別の方法で外向きに移動させてもよい。一部の実装では、工程380Jは、非生物材料および/または生物材料Mをポンプ368から内部ネットワーク344へと搬送することを含んでもよく、これは患者によって、または別の供給源から提供されてもよい。ポンプ368は、第一のモードと第二のモードとの間の一つ以上のサイクルで作動されて、内部ネットワーク344の容積を非生物材料および/または生物材料Mで少なくとも部分的にまたは実質的に充填してもよい。ポンプ368は、工程380Jにおいてインプラント322のインターフェース開口342から連結を外されてもよい。
【0075】
インターフェース開口342は、内部ネットワーク344内に含有される生物材料Mの量の視覚的な表示を得るために利用されてもよい。外科医は、内部ネットワーク344の決定された部分が生物材料Mで充填されるまで、380G、380H、380I、および/または380Jを繰り返してもよい。
【0076】
図7を引き続き参照しながら図13を参照すると、プラグ372は、工程380Kにおいて内部ネットワーク344を少なくとも部分的に密封するためにインターフェース開口342内に位置付けられてもよい(図示の目的で破線で示す)。プラグ372は、本明細書に開示される材料のうちのいずれかで作製されてもよい。他の実装では、プラグ372は省略される。一部の実施では、図4の締結具FFが、プラグ72として機能してもよい。
【0077】
関節接合部材356は、工程380Lにおいてベースプレート324に固定されてもよい。関節接合部材356は、本明細書に開示される関節接合部材のうちのいずれかを含むことができる。関節接合部材356は、方向D5に移動され、そしてベースプレート324と当接の状態にされてもよい。関節接合部材356は、前面330に隣接するプレート本体328へと固定されてもよい。関節接合部材356の関節接合面358は、対向する関節面ASと嵌合するように配設されてもよい。関節接合面ASは、隣接する骨B2によって、または隣接する骨B2に沿って位置する別のインプラントによって確立されてもよい。隣接する骨B2は、例えば、関節窩Gに対向する上腕骨であってもよい。
【0078】
一つ以上の後に続く、そして/または仕上げ作業は、工程380Mにおいて実施されてもよい。例示の仕上げ作業は、外科手術部位Sに隣接した切開を閉鎖することを含んでもよい。
【0079】
本開示の新規のインプラントおよび方法は、患者の改善された固定および治癒を提供することができる。開示されたインプラントは、生物材料を受容する拡張部の内部ネットワークを含んでもよく、これは、内部ネットワークの中への骨成長の促進を通して、インプラントの骨内統合および固定を改善することができる。相互接続された分岐およびノードを含む開示された内部ネットワークは、天然骨の構造的、接合的、および/または生理的特性を模倣し、かつ隣接する骨の構造的適合を促進するための力分布を改善し、これはインプラントの固定を改善する場合がある。
【0080】
異なる非限定的な実施形態が、特定の構成要素またはステップを有するものとして例示されているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されない。非限定的な実施形態のいずれかからの構成要素または特徴のいくつかを、他の非限定的な実施形態のいずれかからの特徴または構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0081】
前述の説明は、例示的であり、いかなる限定的な意味でも解釈されないものとする。当業者は、特定の修正が、本開示の範囲内であり得ると理解するだろう。これらの理由により、以下の特許請求の範囲が、本開示の真の範囲および内容を決定するために研究されるべきである。
【符号の説明】
【0082】
20 インプラントシステム
22 ベースプレート
22 インプラント
24 ベースプレート
26 拡張部
28 プレート本体
30 前面
32 後面
34 拡張体
36 前面
38 後面
39 側壁
40 固定開口
42 インターフェース開口
44 内部ネットワーク
46 内部通路
48 ポート
50 接合部
52 主幹部
54 分岐経路
56 関節接合部材
58 関節接合面
60 関節接合ヘッド
61 開口
62 陥凹部
68 ポンプ
72 プラグ
図1
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】