(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/12 20060101AFI20240311BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240311BHJP
A61L 27/42 20060101ALI20240311BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20240311BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61L27/12
A61L27/22
A61L27/42
A61L27/44
A61L27/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561046
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2022079918
(87)【国際公開番号】W WO2022242272
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110553568.6
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523375102
【氏名又は名称】湖北賽羅生物材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI SAILUO BIOLOGICAL MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】F4, Building B12, High-tech Medical Devices Park, No. 818 Gaoxin Avenue, East Lake High-Tech Development Zone Wuhan, Hubei 430000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】常 春雨
(72)【発明者】
【氏名】呉 琳
(72)【発明者】
【氏名】潘 宇
(72)【発明者】
【氏名】林 杰涵
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081BA16
4C081BC01
4C081CD111
4C081CF03
4C081DA01
4C081DC11
4C081EA01
4C081EA11
(57)【要約】
本発明は、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料、その製造方法及び使用に関する。まず、水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を50~60℃で少なくとも1時間保温し、シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を取得し、次に、シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を長筒状金型内に入れ、ここで、長筒状金型の両端はそれぞれA端とB端であり、さらに、室温下でA端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日浸漬し、金型を上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置し、その後、金型を取り外し、通風乾燥することで、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を得る。本発明で製造されたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、強度が均一で、機械的特性に優れ、骨誘導性が顕著である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を50~60℃で少なくとも3時間保温し、粘稠なシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を得るステップ(1)と、
シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を、両端がそれぞれA端とB端である長筒状金型に入れるステップ(2)と、
室温下で、A端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置し、金型を上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置するステップ(3)と、
(4)金型を取り外し、通風乾燥することでシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を得るステップ(4)と、
を含むことを特徴とする、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記均一混合物は、
(i)水酸燐灰石ナノ粒子と、シルクフィブロインとを均一混合し、ヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、50~60℃で少なくとも0.5時間保温するステップと、
(ii)ステップ(i)と等割合の水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一混合した後、50~60℃で少なくとも0.5時間保温するという操作を少なくとも1回行うステップと、
を含む方法により製造されることを特徴とする、請求項1に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項3】
水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子と、シルクフィブロインとの総量に対して25wt%~35wt%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項4】
水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子と、シルクフィブロインとの総量に対して31wt%であることを特徴とする、請求項3に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ナノスケール水酸燐灰石の粒径は、60~80nmであり、前記シルクフィブロインの粒径は、0.1~1.5mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)の保温温度は、55℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項7】
100mLヘキサフルオロイソプロパノールあたりに添加される水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量は、30~40gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法によって製造されることを特徴とする、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料。
【請求項9】
骨修復部品の製造における請求項8に記載のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の使用。
【請求項10】
前記シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、長さが4~150mmのネジの生産に使用されることを特徴とする、請求項9に記載の骨修復部品の製造におけるシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料科学、臨床医学の技術分野に属し、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料、その製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折とは、骨又は軟骨組織が激しい作用を受けたときに、骨又は軟骨組織の完全性又は連続性が部分的又は完全に中断又は喪失することを指し、変形、機能不全及び異常な活動がこの疾患の典型的な症状である。重度の骨折患者は、ショックなどの合併症を発症する可能性があり、生命を脅かす場合もある。治療は通常、骨折固定材料を外科的に移植することによって行われる。理想的な骨修復材料は次の特性を備えている必要がある。(1)生体適合性:表面の骨細胞の正常活性を妨げたり、周囲の骨細胞の自然な再生活性を妨げたりすることなく、骨と直接結合することができる。(2)機械的抵抗:ヒトの皮質骨材料の圧縮弾性率は少なくとも45MPa以上である必要がある。(3)生分解性:人体内で一定期間が経過すると自動的に分解され、宿主の体内で代謝され、二次手術して取り出す必要がない。(4)誘導再生:材料自体又は骨誘導因子の添加を通じて骨の成長を刺激又は誘導する。
【0003】
現在、骨折内固定材には、主に金属型、セラミック型、分解性高分子型がある。金属型骨折内固定材は、優れた機械的特性を有するが、金属型骨折内固定材の応力遮蔽効果により、骨折部位に骨粗鬆症の発生を誘発しやすく、骨折の治癒が遅くなる場合がある。セラミック型骨折内固定材は、生体内で徐々に天然成分に変換されるという利点を有するが、脆性が高く、応力が集中し、過負荷に敏感であるという欠点があるため、使用が制限されている。現在市販されている分解性高分子型骨折内固定材は、主にポリ乳酸である。しかし、ポリ乳酸の分解によって生成される多量の乳酸は骨組織を腐食させるため、ポリ乳酸は修復部位で局所的な炎症反応を引き起こしやすい。現在、この分野では、臨床上のニーズを満たすために、優れた機械的特性、良好な生体適合性、及び安全で環境に優しい合成過程を備えた骨折内固定材料の開発が依然として必要とされている。
【0004】
シルクプロテインは、シルクから抽出された天然高分子繊維タンパク質であり、シルクの約70~80重量%を占め、18種類のアミノ酸を含む。シルクタンパク質自体は、優れた機械的性質、物理化学的性質を有し、人体との生体適合性に優れており、シルクタンパク質素材が人体内で分解しても、人体に無毒なアミノ酸とペプチドを生成する。シルクフィブロインを原料とする製品がほとんど生体適合性に優れているため、シルクタンパク質は、生物医学研究の分野で広く使用されている。しかし、シルクフィブロイン溶液は、水への溶解性が低く、有機溶媒に多量に溶解するとゲル化や構造変化が起こりやすいため、シルクフィブロイン素材の製造では、製造プロセスに対する要求が高い。
【0005】
水酸燐灰石(HAP)は、脊椎動物の骨と歯の主な無機成分であり、ヒトの骨の約69wt%を占める。実験により、HAP粒子は、骨質との生体適合性が良好で、親和性が高く、その石灰化液体は、再石灰化沈着を効果的に形成し、カルシウムイオンの損失を防止できることが証明されている。骨修復製品に水酸燐灰石ナノ粒子(nHA)を添加することにより、製品の機械的特性が向上するだけでなく、製品の生体適合性も向上する。中国特許文献CN108159501Aには、ナノスケール材料水酸燐灰石と複合したシルクフィブロイン材料の製造方法、及びその骨折部位の修復における使用が開示されている。この方法では、ナノスケールの水酸燐灰石を所定の割合でシルクフィブロインに均一に分散し、ヘキサフルオロイソプロパノールでそれを溶解し、混合溶液を円柱状金型に入れ、メタノールで浸漬することでシルクフィブロイン分子鎖が自己組織化して機械的強度に優れた複合材料を生成し、最後に複合材料を機械加工して医療用骨釘にする。しかし、中国特許文献CN108159501Aに記載のナノスケール材料水酸燐灰石と複合したシルクフィブロイン材料は、大サイズの骨釘に加工するのは困難である。
【発明の概要】
【0006】
従来のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を大サイズの骨釘に加工できないとの問題に対して、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、大サイズのシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料における水酸燐灰石の分散が均一ではないため、力学的特性が不足であり、大サイズの骨釘に可能することができない。
【0007】
本発明が提供する技術的手段は、以下の通りである。
【0008】
第1態様では、
水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を50~60℃で少なくとも3時間保温し、粘稠なシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を得るステップ(1)と、
シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を、両端がそれぞれA端とB端である長筒状金型に入れるステップ(2)と、
室温下で、A端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置し、金型を上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置するステップ(3)と、
(4)金型を取り外し、通風乾燥することでシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を得るステップ(4)と、
を含むシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法が提供される。
【0009】
上記の技術的手段をもとに、均一混合物は、下記の方法により製造される。
(i)水酸燐灰石ナノ粒子と、シルクフィブロインとを均一混合し、ヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、50~60℃で少なくとも0.5時間保温し、
(ii)ステップ(i)と等割合の水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一混合した後、50~60℃で少なくとも0.5時間保温するという操作を少なくとも1回行う。
【0010】
好ましくは、水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して25wt%~35wt%である。
【0011】
好ましくは、水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して31wt%である。
【0012】
好ましくは、ナノスケールの水酸燐灰石の粒径は、60~80nmであり、シルクフィブロインの粒径は、0.1~1.5mmである。
【0013】
好ましくは、ステップ(1)の保温温度は55℃である。
【0014】
好ましくは、100mLヘキサフルオロイソプロパノールあたりの水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量は30~40gである。
【0015】
第2態様では、上記のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の製造方法により製造されたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料が提供される。この材料は、生体内で無毒な物質に自己分解でき、生体適合性と骨誘導性を有する。その均一性と形態により、このシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、長さ200mmの棒材を形成する。この棒材は、機械的特性に優れているため、骨折修復部品に加工することができる。
【0016】
第3態様では、骨折修復部品の製造における前記シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の使用が提供される。上記の技術的手段をもとに、前記シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を機械加工し、長さ4~150mmのネジを生産する。
【0017】
本発明の原理は、具体的には、以下の通りである。
水酸燐灰石ナノ粒子がヘキサフルオロイソプロパノール中で極めて凝集しやすいことで、水酸燐灰石は、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料においてミクロンスケールで分散する。本発明では、注型前に水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を50~60℃で少なくとも1時間保温することによって、水酸燐灰石が注型前に十分に溶解して凝集や沈殿が発生しないことが補償されるとともに、温度が低すぎることでシルクフィブロインがゲル化することが回避され、これによって、水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロインが均一に分散し、溶解が十分であるシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液が得られる。
【0018】
成形過程において、重力の作用により、水酸燐灰石は、沈下現象が発生するため、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料における分布が均一ではないことで、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の強度が均一ではなく、機械的特性が悪いことから、大サイズの骨修復部品に加工することができない。本発明では、材料成形過程において金型を上下反転させることによって、水酸燐灰石が重力の作用により棒材の一端に沈着することで棒材における水酸燐灰石の分散が均一ではなく、棒材の力学的特性に影響を与えることが回避される。
【0019】
従来技術では、水酸燐灰石の成分がヒトの骨に類似し、骨細胞の成長を誘導し、患者の骨欠損の回復を促進できると考えられているが、骨誘導に対する材料の内部孔隙の役割が考慮されていない。本発明では、長円筒状の金型を用い、金型に沿って上から下へ材料内のヘキサフルオロイソプロパノールをメタノールで置換することで規則的な内部孔隙を取得し、棒材を成形した後、金型を上下反転させることでメタノールは他端から金型に入り、上から下へ材料内のヘキサフルオロイソプロパノールを置換することによって、規則的な内部孔隙が得られ、骨細胞はこの内部孔隙内で成長することができ、骨誘導性が顕著である。
【0020】
従来技術と比較して、本発明は、以下の利点及び有益な効果を有する。
(1)本発明で製造された水酸燐灰石/シルクフィブロイン複合材料(nHA/SF)は、長さが150mmにも達する骨釘を製造することができ、その三点曲げ最大ひずみ応力は、171.73Nに達することができ、引張破断強度は、112.2MPaに達することができ、曲げ強度及び引張破断強度は、どちらも同仕様のPLA骨釘を大きく上回っており、従来の水酸燐灰石/シルクフィブロイン複合材料が4mmよりも長い骨釘を製造できないとの問題を解決した。
(2)本発明で製造された水酸燐灰石/シルクフィブロイン複合材料(nHA/SF)には、直径が2~10μmで、形状が規則的な孔隙が存在し、骨細胞がこれらの孔隙内で成長することができ、材料の分解及び骨細胞の成長に伴って、この孔隙はさらに大きくなり、より多くの骨細胞がそこで成長することができ、骨誘導性が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例における技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面の簡単に紹介する。明らかなように、以下の図面は、本発明のいくつかの実施例だけであり、当業者が創造的努力なしでこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】nHA含有量が0wt%~40wt%範囲内で変化するときのシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の最大耐曲げ力の変化傾向を示す。
【
図2】nHA含有量が25wt%~35wt%範囲内で変化するときのシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の最大耐曲げ力の変化傾向を示す。
【
図3】本発明の実施例1で製造された棒材及び骨釘の写真である。
図3(A)は棒材であり、
図3(B)は骨釘である。
【
図4】本発明の実施例1で得られたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の断面の200倍のSEM図である。
【
図5】本発明の実施例1で得られたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の断面の2000倍のSEM図である。
【
図6】本発明の比較例2で得られたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の断面の200倍のSEM図である。
【
図7】本発明の比較例2で得られたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の断面の2000倍のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例により本発明の技術的手段を明確で完全に説明する。明らかなように、以下の実施例は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的努力なしで得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0023】
本発明の実施例で提供される技術的手段は、以下の通りである。
(1)少量のシルクフィブロイン粉末を取り、水酸燐灰石ナノ粒子をシルクフィブロイン粉末に均一に混合する。ここで、水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して25wt%~35wt%である。水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロインをヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、50~60℃のオーブン中で静置し、0.5~5h保温し、水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロインを完全に溶解する。
(2)溶液を取り出し、そこに等割合の水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン粉末及びヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一混合した後、引き続き50~60℃のオーブンで静置し、0.5~5h保温し、上記のステップを2~5回繰り返し、十分量の水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン粉末、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一物を得る。
(3)水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン粉末、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一物を撹拌した後、引き続き50~60℃のオーブンに置いて3~24h焼成する。これによって、気泡がさらに完全に除去され、均一に混合され、粘稠なシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液が得られることが保証される。
(4)成形:50~60℃下で、シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を特製の長筒状金型に入れる。この長筒状金型の両端は、それぞれA端及びB端であり、両端はいずれも開くことができる。室温下でA端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、2~10日静置し、ヘキサフルオロイソプロパノールは上端の開口からメタノールに徐々に移動する。金型を上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、少なくとも2日静置し、ヘキサフルオロイソプロパノールは、上端の開口からメタノールに徐々に移動する。
(5)成形した円柱状固体材料を通風乾燥して得られたシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料棒材を機械加工する。
【0024】
本発明では、小量、バッチで複数回定量的に添加する方法により、水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロインを複数回添加し、混合器で複数回均一混合することにより、水酸燐灰石ナノ粒子は溶解前にシルクフィブロイン粉末に均一に分散し、また、溶解後の注型などの関連操作において温度を55℃に維持することにより、注型前に固体が十分に溶解することを保証する。この一連の操作によって、低温によるシルクフィブロインのゲル化、水酸燐灰石の凝集、沈殿、及び水酸燐灰石の不均一な分散による棒材の機械的特性の低下が効果的に回避される。シルクフィブロインのゲル化及び水酸燐灰石の凝集、沈殿が発生しないとともに、十分な機械的特性を有して初めて、旋削装置は、棒材を長さが40mmを超えるネジに旋削することに成功できる。これによって、従来のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、それ自体の材料の不均一によりネジを大サイズに加工できないとの問題が解決される。
【0025】
本発明では、棒材成形過程において特別に製造された長筒状金型を使用する。この金型の両端は、いずれも開閉することができる。金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに置くことにより、メタノールは、上から下へ棒材中のヘキサフルオロイソプロパノールを垂直に置換することが保証される。2~10日静置した後、棒材の一端はほとんど成形される。金型を180°上下反転させ、メタノールは、前の底部にある端から金型に入り、引き続き上から下へ棒材中のヘキサフルオロイソプロパノールを垂直に置換する。このプロセスによって、成形した棒材は完全に鉛直で硬い棒材であるとともに、両端での成形により、成形後の棒材は、上下両端の密度が均一であり、棒材の長さが長くなる。この方法により製造された棒材の長さは、最大150mmにも達することができ、より長い骨釘の生産に適用でき、臨床上の様々な需要を満たすことができる。
【0026】
特別な説明がない限り、本発明の実施例及び比較例は、いずれも粒径が60nm~80nmの水酸燐灰石ナノ粒子を使用する。使用されるシルクフィブロインは、いずれも下記の方法により製造されたものである。蚕の繭を潰して粉砕し、炭酸ナトリウム水溶液で蒸煮して0.5h脱ガム処理し、乾燥後のシルクを9.3mol/L臭化リチウム溶液に溶解し、溶液を蒸留水で3日透析した後、凍結乾燥して白色の泡沫状シルクフィブロインサンプルを取得し、シルクフィブロインサンプルを粉砕機で粒子の粒度が0.25mm以下のシルクフィブロイン粉末に粉砕する。
【0027】
実施例1
(1)5gシルクフィブロイン粉末を取り、水酸燐灰石ナノ粒子を加え、ボルテックスミキサ及び超音波振動機を用いて十分に均一混合した。ここで、水酸燐灰石ナノ粒子は、水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して0wt%~40wt%であった。
【0028】
(2)100mLヘキサフルオロイソプロパノールあたり、35g水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインの均一混合物を加えるように、水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロイン粉末の均一混合物をヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、55℃のオーブン中で静置し、0.5h保温し、水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロイン粉末を完全に溶解し、気泡を除去して水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を得た。
【0029】
(3)均一混合物をオーブンから取り出し、そこに5gシルクフィブロイン粉末及びステップ(1)と等量の水酸燐灰石ナノ粒子を加え、均一混合した後、ステップ(2)と等量のヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一混合し、55℃のオーブン中で静置し、0.5h保温し、水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を得た。このステップを3回繰り返して完全に溶解した十分量の均一混合物を得た。
【0030】
(4)均一混合物を55℃のオーブン中で静置し、引き続き2.5h保温し、均一混合した後の溶液が完全に均一混合され、気泡が除去されることが保証され、粘稠で均一なシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を得た。
【0031】
(5)成形:55℃に維持した環境において、シルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を特別に製造された長筒状金型中(ポリプロピレンで製造される。金型の両端には、それぞれ密閉蓋がある。説明の便宜上、金型の両端をそれぞれA端及びB端と呼ぶ)に入れた。室温下で、A端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、5日静置した後、金型を180°上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、5日静置した。
【0032】
(6)金型を取り外し、成形したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を通風乾燥し、最後に仕様が45mmの半ネジに機械加工した。
【0033】
nHA含有量が0wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、比較的柔らかく、ネジ製品に成功に加工することができない。
図1は、nHA含有量が20wt%~40wt%範囲内で変化するときのシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の最大耐曲げ力の変化傾向を示す。
図1に示すように、nHA含有量が20wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-20%)の最大耐曲げ力は、75.38Nに達し、nHA含有量が25wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-25%)の最大耐曲げ力は、171.73Nであり、nHA含有量が30wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-30%)の最大耐曲げ力は、190.21Nである。つまり、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の機械的特性は、nHA含有量の増大につれて向上する。しかし、nHA含有量が35wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-35%)は、SF/HA-30%と比較して力学的特性が低下し、最大耐曲げ力が180.5Nであり、nHA含有量が35wt%を超えた場合、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の力学的特性は、急激に低下し、nHA含有量が40wt%であるシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-40%)の最大耐曲げ力は、わずか82.3Nである。分析した結果、過剰なnHAはSFマトリックス内で凝集し、力学的特性が大幅に低下すると考えられている。
【0034】
上記のことをもとに、本発明者らは、nHA含有量をさらに検討した結果、nHA含有量が31wt%である場合、通風乾燥したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料(SF/HA-31%)の最大耐曲げ力が最適な192.46Nに達することを見出した。
図2は、nHA含有量が25wt%~35wt%範囲内で変化するときのシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の最大耐曲げ力の変化傾向を示す。
【0035】
次に、異なる割合のnHAで製造された通風乾燥後のシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料棒材を用いて旋削操作を行った結果、nHA含有量が20wt%未満又は40wt%よりも高い場合、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料は、機械的特性が十分ではなく、長さが45mmを超える大サイズのネジを製造できず、水酸燐灰石ナノ粒子が水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して25wt%~35wt%である棒材のみは、長さが40mmを超える骨釘を成功に製造できることを見出した。
【0036】
図3(A)に示すように、実施例1で製造された棒材(SF/HA-31%)は、形状が規則的で、真っ直ぐで円柱状であり、加工されやすく、必要に応じて小型ネジ及び長尺の全ネジ/半ネジに製造することができる。実施例1で製造された棒材(SF/HA-31%)を加工して製造された2つの仕様の骨釘をSF/HA-31%ネジと略称する(
図3(B))。表1は、実施例1で製造されたSF/HA-31%ネジと、市販されているPLAネジとの力学的特性の比較パラメータを示す。
【0037】
【0038】
表1から分かるように、仕様が45mmのnHA/SF-31%ネジは、同仕様のPLAネジと比較して力学的特性により優れている。
【0039】
実施例2
実施例1で製造された棒材(nHA/SF-31%;水酸燐灰石ナノ粒子が水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインとの総量に対して31wt%である)を取り、粉末状に粉砕し、フーリエ変換赤外分光検出を行い、シルクフィブロインをメタノール処理した後の性能が増強するメカニズムを調査した。1658cm-1、l545cm-1及び1242cm-1での吸収ピークは、それぞれシルクフィブロイン分子(Silk)のアミドI、アミドII及びアミドIIIの特徴的な吸収ピークに属し、その二次構造がランダムコイルであることを示している。メタノールで再生した後、3つの特徴的なピークはそれぞれ1634cm-1、1520cm-1及び1230cm-1にシフトしたため、シルクフィブロインがランダムコイルからβシートに変化することを示しており、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の強度の増加に有利である。さらに、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の赤外スペクトルにおいて、603cm-1及び565cm-1での特徴的な吸収は、リン酸基のO-P-O屈曲振動に対応し、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料に水酸燐灰石が存在することを証明している。
【0040】
実施例3
実施例1で製造されたnHA/SF-31%ネジを取り、ウサギの足首骨で培養し、nHA/SF-31%ネジの分解状況を追跡した結果、ウサギの足首骨で2ヶ月培養した後、nHA/SF-31%ネジと宿主の骨組織との間に隙間が顕著に減少し、かつnHA/SF-31%ネジの分解過程においても炎症細胞が観察されなかったため、シルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料の分解産物が人体に吸収できることを示している。分析したところ、本発明で提供される水酸燐灰石/シルクフィブロイン複合材料は、人体内での分解産物が非毒性・非刺激性の産物であることを見出した。具体的には、シルクフィブロインの分解産物は人体に吸収可能なアミノ酸及び水である。一方、水酸燐灰石は、ヒト骨の主要成分であり、分解産物がリン酸イオン及びカルシウムイオンであり、いずれも非毒性であり、代謝で体外へ排出可能である。そのため、水酸燐灰石/シルクフィブロイン複合材料で製造されたネジは、使用時にPLAネジが局所的な炎症を引き起こしやすいとのリスクを完全に回避することができる。
【0041】
比較例1
本比較例では、水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロインをヘキサフルオロイソプロパノールに一括で分散し、水酸燐灰石及びシルクフィブロインのヘキサフルオロイソプロパノール分散液を加熱処理しない以外、実施例1と同様であった。
【0042】
(1)5gシルクフィブロイン粉末を取り、2.25g水酸燐灰石ナノ粒子を加え、ボルテックスミキサ及び超音波振動機を用いて十分に均一混合した。
【0043】
(2)水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロイン粉末の均一混合物を20mLヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、ボルテックスミキサ及び超音波振動機を用いて十分に均一混合し、水酸燐灰石とシルクフィブロインのヘキサフルオロイソプロパノール分散液を得た。
【0044】
(3)成形:室温下で、水酸燐灰石とシルクフィブロインのヘキサフルオロイソプロパノール分散液を実施例1で使用された金型に入れ、A端を開口し、B端を密閉し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、5日静置した後、金型を180°上下反転させ、A端を密閉し、B端を開口し、金型を開口が上向きとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、5日浸漬した。
【0045】
(4)金型を取り外し、成形したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を通風乾燥し、最後に仕様が45mmの半ネジに機会加工した。
【0046】
実験により、水酸燐灰石ナノ粒子が水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインの総量に対して31wt%である場合、実施例1で製造された棒材は真っ直ぐで細長く、比較例1で製造された棒材は成形過程において曲がりが生じ、またその機械的特性が比較的低いため、棒材は通風乾燥時に中部で折れたことを見出した。分析したところ、実施例1では、複数回の混合及び55℃での保温により水酸燐灰石ナノ粒子は十分に均一混合して溶解することができ、水酸燐灰石ナノ粒子がミクロンスケールに凝集することが回避されることによって、水酸燐灰石/シルクフィブロイン混合液の不均一の問題が回避される一方、55℃での保温により、シルクフィブロインが低温でゲル化することで水酸燐灰石の分散が不均一であるとの問題が回避される。
【0047】
比較例2
本比較例では、一端のみが開口できかつ直径が比較的大きい従来の金型を使用する以外、実施例1と同様であった。
【0048】
(1)5gシルクフィブロイン粉末を取り、2.25g水酸燐灰石ナノ粒子を加え、ボルテックスミキサ及び超音波振動機を用いて十分に均一混合した。
【0049】
(2)ステップ(1)で得られた7.25g水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロイン粉末の均一混合物を20mLヘキサフルオロイソプロパノールに均一に分散し、55℃のオーブンで静置して0.5h保温し、水酸燐灰石ナノ粒子及びシルクフィブロイン粉末を完全に溶解し、気泡を除去し、水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を得た。
【0050】
(3)水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物をオーブンから取り出し、そこに5gシルクフィブロイン粉末及び2.25g水酸燐灰石ナノ粒子を加え、均一混合した後、20mLのヘキサフルオロイソプロパノールを加え、均一混合し、55℃のオーブン中で静置して0.5h保温し、水酸燐灰石ナノ粒子、シルクフィブロイン、ヘキサフルオロイソプロパノールの均一混合物を得た。このステップを3回繰り返し、完全に溶解した十分量の均一混合物を得た。
【0051】
(4)均一混合物を55℃のオーブン中で静置し、引き続き2.5h保温し、均一混合後の溶液が完全に均一混合し、かつ気泡が除去されることを保証し、粘稠で均一なシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を得た。
【0052】
(5)成形:55℃でシルクフィブロイン/水酸燐灰石溶液を従来の金型に入れた。室温下で従来の金型を開口が上向きにとなるように縦置きでメタノールに浸漬し、10日静置した。
【0053】
(6)金型を取り外し、成形したシルクフィブロイン/水酸燐灰石複合材料を通風乾燥して棒材を取得し、最後に半ネジに機会加工した。
【0054】
実施例1で製造された、水酸燐灰石ナノ粒子が水酸燐灰石ナノ粒子とシルクフィブロインの総量に対して31wt%である棒材及び比較例2で製造された棒材を取り、2mmの箇所で切片を作成し、それぞれ200倍及び2000倍の走査型電子顕微鏡を用いて2群の切片を撮影した。
図4は、実施例1で製造された棒材の200倍断面のSEM図を示し、棒材に多くの縦孔隙が均一に分布することが観察された。
図5は、実施例1で製造された棒材の2000倍断面のSEM図を示す。
図5から分かるように、棒材の縦孔隙の直径は2~10μmであり、孔隙のない部分は平坦であった。この孔隙のサイズは、ヒト細胞に近く、骨細胞がそこで成長するのに有利であり、骨細胞の成長を促進することができる。材料の分解及び骨細胞の成長に伴って、この孔隙はさらに大きくなり、より多くの骨細胞がそこで成長することができるため、この棒材は、骨誘導性を有する。
図6は、比較例2で製造された棒材の横断面(ネジ頭が鉛直で下向きである)を撮影した200倍のSEM画像を示す。同図から分かるように、比較例2で製造された棒材は、横断面での孔隙分布が規則的ではなく不均一であり、多くの部分には孔隙が観察できなかった。
図7は、比較例2で製造された棒材の横断面(ネジ頭が鉛直で下向きである)を撮影した2000倍のSEM画像を示す。
図7から分かるように、この棒材の孔隙が極めて少なく、かつ不均一であるため、この構造では骨細胞の成長を誘導することが困難である。よって、この棒材は、骨誘導性を有しない。分析したところ、実施例1では、棒材が成形する際に、メタノールは金型のA端から材料に入り、上から下へ材料中のヘキサフルオロイソプロパノールを置換することで内部孔隙が比較的規則的であり、棒材がほとんど成形した後、それを上下反転させることで、メタノールは、金型のB端から材料に入り、上から下へ棒材中のヘキサフルオロイソプロパノールを置換するため、棒材の構造は、全体として規則的で均一である。一方、比較例2では、棒材が成形する際に、メタノールは金型の上端開口のみから材料内に浸透でき、長尺金型の底端まで浸透して材料中のヘキサフルオロイソプロパノールを置換することができないため、比較的長い棒材を製造する際に、棒材の上下両端の成形は均一ではなく、成形した棒材はネジに成功することが困難であり、材料の膨大な浪費をもたらす。また、従来の金型は、大口径であるため、成形が完全に上から下へ行われるわけではなく、メタノールが材料に入った後に水平方向へランダムに拡散してヘキサフルオロイソプロパノールを置換することで、成形した棒材の内部孔隙は規則的ではなく、骨細胞の成長に適していない。以上のことから、本発明では、両端が開くことができる長円筒状金型及び上下反転の成形プロセスにより、棒材は、より規則的な内部孔隙を有し、細胞がこの内部孔隙内で成長できることによって、その生体適合性が向上し、骨誘導性が生み出される。
【0055】
以上の説明は、当業者が本発明を理解又は実現できるための本発明の具体的な実施形態に過ぎない。これらの実施例に対する種々の修正は、当業者にとって自明なものである。本明細書で定義されている一般的な原理は、本発明の思想又は範囲から逸脱することなく他の実施例で実現することができる。したがって、本発明は、本明細書で示されるこれらの実施例に限定され、本明細書で主張される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に対応すべきである。
【国際調査報告】