(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】高周波電流ベクトルを注入する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H02P 21/24 20160101AFI20240311BHJP
【FI】
H02P21/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504348
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022023029
(87)【国際公開番号】W WO2023286497
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】ブエノ・マリアーニ、ギリェルメ
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ペレグリノ、ジャンマリオ
(72)【発明者】
【氏名】バラサラジャン、アナンタラム
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA18
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG04
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ24
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
本発明は、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法及びデバイスに関する。本発明は、モータ電流ベクトルを測定し、測定されたモータ電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流ベクトルの投影値を求め、第1の高周波復調信号を使用して投影値の高周波変動を復調し、復調された高周波変動から少なくとも第1の角度を求め、少なくとも第1の角度と、所定の電圧と、第2の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求める。第2の高周波変調信号は、第1の高周波復調信号と同じ周波数および第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械を流れる測定されたモータ電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法であって、
モータ電流ベクトルを測定するステップと、
測定されたモータ電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流ベクトルの投影値を求めるステップと、
第1の高周波復調信号を使用して前記投影値の高周波変動を復調するステップと、
復調された高周波変動から少なくとも第1の角度を求めるステップと、
少なくとも前記第1の角度と、所定の電圧と、第2の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求めるステップであって、前記第2の高周波変調信号は、前記第1の高周波復調信号と同じ周波数および前記第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する、ステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記注入電圧ベクトルは、前記第1の角度Ψと、前記測定されたモータ電流ベクトルの角度γ
sとから、
【数1】
の変換を実行し、これに高周波信号v
hcos(ω
ht)を乗算することによって求められ、ここで、Jは、行列
【数2】
であり、v
hは、αβフレームワークにおける注入電圧ベクトルを得るための振幅であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記第1の高周波復調信号と同じ周波数および前記第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する第2の高周波復調信号を使用して、前記投影値の高周波変動を復調するステップと、
前記第2の高周波復調信号を使用して復調された前記投影値の高周波変動から第2の角度を求めるステップと、
前記第1の高周波復調信号及び前記第2の高周波復調信号を使用して、前記測定された電流ベクトルに対して前記一定の角度を有する方向に直交する軸上における前記モータ電流ベクトルの値の復調された高周波変動から求められるそれぞれの重みによって前記第1の角度及び前記第2の角度を加重するステップと、
加重された第1の角度と加重された第2の角度とを加算するステップと、
を更に含み、
求められる前記注入電圧ベクトルは、前記加重された第1の角度と前記加重された第2の角度とを加算したものから求められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定された電流ベクトルに対して前記一定の角度を有する方向に直交する軸上における前記モータ電流ベクトルの投影値は、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルと前記αβフレームワークのα軸との間の測定された角度γ
sを使用して、前記αβフレームワークにおける前記測定されたモータ電流ベクトルi
αβをxyフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルi
xyに変換することと、x軸における前記測定された電流のみを維持することとによって求められ、ここで、γ
s=arctan(i
β/i
α)であり、前記xyフレームワークは、前記測定された角度γ
sと前記一定の角度Δとの和からπ/2を引いた角度だけ前記αβフレームワークから回転されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
復調された高周波変動から前記第1の角度を求めることは、k
1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の角度を求めることは、k
1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
機械を流れる測定されたモータ電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入するデバイスであって、
モータ電流ベクトルを測定する手段と、
前記測定されたモータ電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流の投影値を求める手段と、
第1の高周波復調信号を使用して投影値の高周波変動を復調する手段と、
復調された高周波変動から少なくとも第1の角度を求める手段と、
少なくとも前記第1の角度と、所定の電圧と、第2の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求める手段であって、前記第2の高周波変調信号は、前記第1の高周波復調信号と同じ周波数および前記第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する、手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、
前記第1の高周波復調信号と同じ周波数および前記第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する第2の高周波復調信号を使用して、前記投影値の高周波変動を復調する手段と、
前記第2の高周波復調信号を使用して復調された前記投影値の高周波変動から第2の角度を求める手段と、
前記第1の高周波復調信号及び前記第2の高周波復調信号を使用して、前記測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上における前記モータ電流ベクトルの値の復調された高周波変動から求められるそれぞれの重みによって前記第1の角度及び前記第2の角度を加重する手段と、
加重された第1の角度と加重された第2の角度とを加算する手段と、
を更に備え、
求められる前記注入電圧ベクトルは、前記加重された第1の角度と前記加重された第2の角度とを加算したものから求められることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械は、ファクトリーオートメーション又は輸送のいずれの産業においても広く使用されている。永久磁石同期機(PMSM)、同期リラクタンス機(SyncRM)、巻線回転子同期機(WRSM)としての機械の多くの制御技術は、多くの場合に、ロータリーエンコーダを使用して、機械の速度及び位置をフィードバックとして得ている。
【0003】
低コストでロバストなモータドライブの需要により、センサレス制御の開発が増加している。それらのセンサがないことで、機械ドライブは、より安価になり、塵埃の多い過酷な環境に対してよりロバストになっている。
【0004】
多くのコントローラ技術は、高周波信号の注入に依存している。注入される高周波電圧信号は、一般に、機械の制御電圧波形に重畳され、機械内の磁束の高周波変動を引き起こし、最終的には、機械導体を流れる電流の高周波変動を引き起こす。
【0005】
磁束の高周波変動と電流の高周波変動との間の関係には、機械インダクタンスに関する貴重な情報が含まれている。例えば、位置センサがない場合であっても、これらの情報を使用すると、機械の回転子の位置を求めることができる。別の例では、コードインダクタンスと増分インダクタンスとの間の関係は、MTPA(最大トルク/電流(電流当たりの最大トルク))動作点に達するように、電流シュート角の選択を促すことができる。MTPA状態では、最小レベルの電流でトルクを発生させるため、最小レベルの損失を得ることができる。
【0006】
理想的なMTPA動作点は、通常、ルックアップテーブル(LUT)を使用して特定される。MTPA LUTは、手動で求めることもできるし、他のインダクタンスマップ又は磁束マップ上に作成することもできるが、求める場合には、特定の自己試運転セッションも必要となる。LUTレスMTPAは、ルックアップテーブルがない場合にMTPA動作点を特定するものである。
【0007】
正弦波、方形波等の種々の注入技術が知られており、いくつかの技術は、異なる周波数及び軸のフレームワークにわたって組み合わせることができ、円形注入又は楕円形注入など、異なる目的に対処できる可能性がある。
【0008】
dqフレームワークにおける注入は、機械の回転子とともに回転し、回転子の最も突極性の高い方向/最も突極性の低い方向に向かうため、極端な突極性領域において増分インダクタンスを素早く特定するのに使用することができるので普及している。対照的に、αβフレームワークにおける注入は、固定され、固定子に関係付けられているため、回転子の位置に関する知識を必要としない。
【0009】
高周波信号注入は、電圧形式又は電流形式として実施することができる。高周波電圧注入は簡単であるが、電流注入では、測定された電流を所望の高周波電流注入波形にする電圧パターンを生成する電流レギュレータを必要とする。
【0010】
電流レギュレータは、所望の高周波注入信号までの距離を追従できるように、高帯域幅で設計しなければならない。この高帯域幅は、瞬間的な注入方向の推定に対して高レベルの雑音を引き起こす。
【0011】
注入された信号が、その後、回転子位置の推定又はMTPA状態を実現するモータ電流の理想的なシュート角の推定に使用される場合に、いずれの推定もノイズを有するため、機械のセンサレスコントローラの不安定性を引き起こす可能性がある。このため、一般に、発散を回避するために速度コントローラの帯域幅を制限する必要があり、センサレス制御の適用範囲が低帯域幅の用途に制限される。
【0012】
レギュレータ帯域幅は、インバータのスイッチング周波数によって必然的に制限されるので、非常に高い周波数の電流、例えばスイッチング周波数に近い振動周波数の電流を注入することも不可能である。
【0013】
対照的に、いくつかのLUTレスMTPA技術は、測定された電流に対して厳密に垂直な高周波電流注入に依存している。しかしながら、前述の問題により、文献及び産業の双方における実際の用途において、LUTレスMTPAへの高周波電流注入の使用は制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
LUTがない場合における機械のセンサレス制御の安定性及び帯域幅を改善するために、本発明は、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法を提案する。
【0015】
本発明は、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために、本発明は、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入する方法であって、
モータ電流ベクトルを測定するステップと、
測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流ベクトルの投影値を求めるステップと、
第1の高周波復調信号を使用して投影値の高周波変動を復調するステップと、
復調された高周波変動から少なくとも第1の角度を求めるステップと、
少なくとも第1の角度と、所定の電圧と、第2の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求めるステップであって、第2の高周波変調信号は第1の高周波復調信号と同じ周波数および第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する、ステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0017】
本発明はまた、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する高周波電流ベクトルを注入するデバイスであって、
モータ電流ベクトルを測定する手段と、
測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流ベクトルの投影値を求める手段と、
第1の高周波復調信号を使用して投影値の高周波変動を復調する手段と、
復調された高周波変動から少なくとも第1の角度を求める手段と、
少なくとも第1の角度と、所定の電圧と、第2の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求める手段であって、第2の高周波変調信号は第1の高周波復調信号と同じ周波数および第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する、手段と、
を備えることを特徴とする、デバイスに関する。
【0018】
したがって、第1の角度は、所望の方向に直交する高周波電流の投影を最小にするように駆動される。機械は主として誘導性であるので、その結果生じる高周波電流は、必然的に、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を形成する方向に流れる。角度が一定でないことから生じるコントローラ安定性に対する擾乱は大幅に削減され、コントローラの安定性は全体的に向上する。
【0019】
特定の特徴によれば、注入電圧ベクトルは、第1の角度Ψと、測定された電流ベクトルの角度γ
sとから、
【数1】
の変換を実行し、これに高周波信号v
hcos(ω
ht)を乗算することによって求められる。ここで、Jは、行列
【数2】
であり、v
hは、αβフレームワークにおける注入電圧ベクトルを得るための注入電圧の振幅である。
【0020】
したがって、電圧ベクトルは、測定された電流ベクトルと安定した角度Ψを形成する。この角度を制御することで、電流の高周波応答を、測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する所望の方向に駆動する。角度Ψは、測定された電流ベクトルの基本周波数に対する回転に追従する必要がないため、PIフィルタの設計に対する制約は緩和される。高周波電流注入の方向は、測定された電流ベクトルに対して十分に安定化されている。注入周波数は、インバータのスイッチング周波数まで増加させることができる。高速注入に反応するコントローラの能力が高められ、例えば、コントローラは、MTPAと、所望のトルクに達するのに必要とされる電圧レベルとをより高速に推定することができる。コントローラの性能は、機械パラメータのルックアップテーブルがないにもかかわらず、全体的に改善される。
【0021】
特定の特徴によれば、本方法は、
第1の高周波復調信号と同じ周波数および第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する第2の高周波復調信号を使用して、投影値の高周波変動を復調するステップと、
第2の高周波復調信号を使用して復調された投影値の高周波変動から第2の角度を求めるステップと、
第1の高周波復調信号及び第2の高周波復調信号を使用して、測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流の値の復調された高周波変動から求められるそれぞれの重みによって第1の角度及び第2の角度を加重するステップと、
加重された第1の角度と加重された第2の角度とを加算するステップと、
を更に含み、
求められる注入電圧ベクトルは、加重された第1の角度と加重された第2の角度とを加算したものから求められる。
【0022】
したがって、高周波電流応答の直交成分及び同相成分の双方が、所望の注入方向に対して直交して最小化される。高周波電流応答は、機械の複雑な応答に起因して、同相インピーダンス(抵抗性)及び直交インピーダンス(誘導性)の双方を含む2つの成分を保持することができる。本方法は、機械のインピーダンスを推定する必要はなく、どの注入周波数においても同様に動作する。所望の角度における信号対雑音比は改善される。
【0023】
特定の特徴によれば、測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有する方向に直交する軸上におけるモータ電流の投影値は、αβフレームワークにおける測定された電流ベクトルとαβフレームワークのα軸との間の測定された角度γsを使用して、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβをxyフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルixyに変換することによって求められる。ここで、γs=arctan(iβ/iα)であり、xyフレームワークは、αβフレームワークから、測定された角度γsと一定の角度Δとの和からπ/2を引いた角度だけ回転され、x軸における測定された電流のみを維持する。
【0024】
したがって、機械における電流ベクトルの角度は正確に計算される。
【0025】
特定の特徴によれば、復調された高周波変動から第1の角度を求めることは、k1の積分利得とヌル(null)値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して行われる。
【0026】
したがって、本発明によって、モータ電流ベクトルの高周波誘導成分が、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有することを保証する角度を得ることが可能になる。
【0027】
特定の特徴によれば、第2の角度を求めることは、k1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して行われる。
【0028】
したがって、本発明によって、モータ電流ベクトルの高周波誘導成分が、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度を有することを保証する角度を得ることが可能になる。
【0029】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明が実施される最大トルク/電流を使用するモータの直接磁束ベクトル制御の一例を表す図である。
【
図2】直接磁束ベクトル制御モジュールのブロック図の一例を表す図である。
【
図3】磁束推定モジュールのブロック図の一例を表す図である。
【
図4】最大トルク/電流モジュールのブロック図の一例を表す図である。
【
図5a】本発明による注入モジュールのブロック図の第1の例を表す図である。
【
図5b】本発明による注入モジュールのブロック図の第2の例を表す図である。
【
図6】本発明による注入モジュールのブロック図の第3の例を表す図である。
【
図7】本発明によって使用されるモータフレームワークを表す図である。
【
図8a】本発明による、モータを駆動する信号に加えられる注入電圧ベクトルを求めるアルゴリズムの第1の例を表す図である。
【
図8b】本発明による、モータを駆動する信号に加えられる注入電圧ベクトルを求めるアルゴリズムの第2の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明が実施される最大トルク/電流を使用するモータの直接磁束ベクトル制御の第1の例を表している。
【0032】
ここでは、本発明は、MTPAモジュールが使用される一例において開示されることに留意しなければならない。本発明は、例えば、機械の位置を求めること又は制御下にある機械のパラメータを推定することにも適用可能である。
【0033】
図1に示すシステムでは、基準トルクT
*が、MTPA追跡モジュール155によって提供される基準磁束λ
*
MTPA及びモータ135の極対数を3/2倍したものとともに除算器100に供給され、DFVCモジュール110に提供されるτ軸における基準電流i
*
τを得る。
【数3】
【0034】
DFVCモジュール110は、τ軸における基準電流i
*
τと、推定された磁束
【数4】
ノルムと、fτフレームワークにおける測定された電流i
fτと、MTPA追跡モジュール155からの基準磁束λ
*
MTPAとから、fτフレームワークにおける基準電圧v
*
fτを求める。
【0035】
fτフレームワークにおける基準電圧v
*
fτは、フレームワーク変換モジュール115に提供される。フレームワーク変換モジュール115は、推定された負荷角
【数5】
を使用して、fτフレームワークにおける基準電圧v
*
fτをαβフレームワークにおける基準電圧v
*
αβに変換する。
【0036】
αβフレームワークにおける基準電圧v
*
αβは、加算モジュール120に提供される。加算モジュール120は、基準電圧v
*
αβをαβフレームワークにおける高周波注入電圧
【数6】
と加算し、αβフレームワークにおける変更された基準電圧v
**
αβを得る。
【0037】
αβフレームワークにおける変更された基準電圧v**
αβは、モータ135に接続された電圧源インバータVSI130に提供される。三相abcにおいて測定されたモータ電流ベクトルiabcは、フレームワーク変換モジュール140に提供される。
【0038】
フレームワーク変換モジュール140は、三相abcにおいて測定されたモータ電流iabcをαβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβに変換する。
【0039】
αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβは、磁束推定モジュール150、j軸注入モジュール125及びフレームワーク変換モジュール145に提供される。
【0040】
フレームワーク変換モジュール145は、推定された負荷角
【数7】
を使用して、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルi
αβをfτフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルi
fτに変換する。
【0041】
fτフレームワークにおける測定された電流ベクトルifτは、DFVCモジュール110に提供される。
【0042】
注入モジュール125は、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルi
αβ及び高周波信号sin(ω
ht)及びcos(ω
ht)からαβフレームワークにおける注入電圧ベクトル
【数8】
を求める。
【0043】
高周波注入電圧
【数9】
は、測定されたモータ電流ベクトルに対して垂直である、注入された電圧に対するモータの高周波電流応答を提供するために求められる。
【0044】
高周波注入電圧
【数10】
は、100Hzと電圧源インバータVSI130のスイッチング周波数との間の周波数レンジにある。
【0045】
磁束推定モジュール150は、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルi
αβ及び基準電圧v
*
αβから、αβフレームワークにおける推定された磁束
【数11】
及び推定された負荷角
【数12】
を求める。
【0046】
速度推定モジュール152は、推定された負荷角からモータ135の速度を求める。
【0047】
例えば、速度
【数13】
は、位相ロックループと、この位相ロックループの出力のローパスフィルタリングとを使用して推定される。
【0048】
αβフレームワークにおける推定された磁束
【数14】
は、MTPA追跡モジュール155及びDFVCモジュール110に提供される。
【0049】
MTPA追跡モジュール155は、αβフレームワークにおける推定された磁束
【数15】
及び高周波正弦波信号sin(ω
ht)から基準磁束λ
*
MTPAを求める。
【0050】
図2は、直接磁束ベクトル制御モジュールのブロック図の一例を表している。
【0051】
直接磁束ベクトル制御モジュール110は、τ軸における基準電流i*
τからτ軸における測定された電流iτを減算する減算モジュール220を備えている。
【0052】
減算モジュール220の出力は、PIレギュレータ225に提供される。PIレギュレータ225の出力は、乗算モジュール230に提供される。乗算モジュール230は、PIレギュレータ225の出力にデカップリング定数値1/bを乗算する。
【0053】
直接磁束ベクトル制御モジュール110は、推定された磁束ノルム
【数16】
を基準磁束λ
*
MTPAから減算する減算モジュール200を備えている。減算モジュール200の出力は、PIレギュレータ205に提供される。PIレギュレータ205の出力は、乗算モジュール210に提供される。乗算モジュール210は、PIレギュレータ205の出力に、モータに依存するデカップリング定数値-a/bを乗算する。例として、a及びbの値はa=4及びb=13である。
【0054】
乗算モジュール230及び210の出力は、加算モジュール235によって加算される。
【0055】
加算モジュール235の出力は、加算モジュール240に提供される。加算モジュール240は、加算モジュール235によって行われた加算の結果を
【数17】
に加算し、τ軸における基準電圧v
*
τを提供する。ここで、R
sは固定子抵抗であり、
【数18】
は推定されたモータ速度である。
【0056】
固定子抵抗R
sは、例えば自己コミッショニング手順から得られる。モータ速度は、推定された磁束ベクトルの角度
【数19】
の変動から推定される。
【0057】
PIレギュレータ205の出力は、加算モジュール215に提供される。加算モジュール215は、PIレギュレータ205の出力の結果をRsifに加算し、f軸における基準電圧v*
fを提供する。
【0058】
図3は、磁束推定モジュールのブロック図の一例を表している。
【0059】
磁束推定モジュール150は、α軸における電流iαに抵抗Rsを乗算したものをα軸における基準電圧v*
αから減算する減算モジュール300を備えている。
【0060】
減算モジュール300の結果は、減算モジュール305に提供される。
【0061】
減算モジュール305は、乗算モジュール315によって提供される結果を減算モジュール300の結果から減算する。
【0062】
減算モジュール305の出力は、積分器310に提供され、α軸における推定された磁束
【数20】
を提供する。
【0063】
α軸における推定された磁束
【数21】
は、除算器320及び乗算モジュール315に提供される。乗算モジュール315は、α軸における推定された磁束
【数22】
に、観測利得である係数k
obsを乗算する。
【0064】
磁束推定モジュール150は、β軸における電流iβにモータ135の抵抗Rsを乗算したものを、β軸における基準電圧v*
βから減算する減算モジュール330を備えている。
【0065】
減算モジュール330の結果は、減算モジュール335に提供される。
【0066】
減算モジュール335は、乗算モジュール345によって提供される結果を減算モジュール330の結果から減算する。
【0067】
減算モジュール335の出力は、積分器340に提供され、β軸における推定された磁束
【数23】
を提供する。
【0068】
β軸における推定された磁束
【数24】
は、除算器320及び乗算モジュール345に提供される。乗算モジュール345は、β軸における推定された磁束
【数25】
に係数k
obsを乗算する。
【0069】
除算モジュール320は、β軸における推定された磁束
【数26】
をα軸における推定された磁束
【数27】
によって除算する。
【0070】
除算モジュール320の結果は、モジュール350によるアークタンジェントによって変換され、推定された負荷角
【数28】
が提供される。
【0071】
図4は、最大トルク/電流モジュールのブロック図の一例を表している。
【0072】
最大トルク/電流モジュール155は、測定された電流とαβフレームワークのα軸との間の測定された角度γ
sを使用して、αβフレームワークにおける推定された磁束
【数29】
をijフレームワークにおける推定された磁束
【数30】
に変換するフレームワーク変換モジュール400を備えている。
【0073】
j軸における推定された磁束
【数31】
は、乗算器415に提供される。乗算器415は、j軸における推定された磁束
【数32】
に高周波正弦波信号sin(ω
ht)を乗算する。
【0074】
乗算モジュール415の出力は、ローパスフィルタ420によって処理される。
【0075】
モジュール415及び420は、ヘテロダイン復調410を形成する。
【0076】
ヘテロダイン変調410の出力は、kλの積分利得及び比例利得0を有するPIレギュレータ425に提供され、基準磁束λ*
MTPAが提供される。
【0077】
基準磁束λ*
MTPAは、したがって、高周波注入電圧に対する磁束応答がj軸上でヌルであり、したがって、i軸上にのみあることを確保するように制御される。注入された電圧に対する高周波磁束応答は、測定された電流ベクトルと整列される。
【0078】
図5aは、本発明による注入モジュールのブロック図の第1の例を表している。
【0079】
注入モジュール125は、αβフレームワークにおける測定された電流ベクトルの間の測定された角度γsを使用して、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβをxyフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルixyに変換するフレームワーク変換モジュール500を備えている。ここで、γs=arctan(iβ/iα)である。xyフレームワークは、測定された角度と一定の角度Δとの和からπ/2を引いた角度だけαβフレームワークから回転されている。Δは、0とπ/2との間に含まれる。x軸における測定された電流のみが乗算器505に提供される。換言すれば、測定されたモータ電流ベクトルは、x軸に投影される。x軸における測定された電流は、一定の角度Δに直交する方向における測定された電流ベクトルの投影に対応する。乗算器505は、測定されたモータ電流ベクトルのノルムの高周波変動を復調するために、高周波正弦波sin(ωht)をx軸における測定された電流に乗算する。
【0080】
乗算器505の出力は、ローパスフィルタ510に提供される。
【0081】
ローパスフィルタ510の出力は、k1の積分利得と、ヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータ515に提供される。k1の値は、機械定格と、注入周波数及び注入規模と、サンプリング周波数とに応じて0.01と0.5との間にある。比例積分レギュレータ515の出力は、変換モジュール520に提供される角度Ψである。
【0082】
変換モジュール520は
【数33】
の変換を行う。ここで、Jは行列
【数34】
である。
【0083】
変換モジュール520の出力は、乗算器525に提供される。乗算器525は、変換モジュール520の出力に高周波信号v
hcos(ω
ht)を乗算して、αβフレームワークにおける電圧注入信号
【数35】
を得る。ここで、v
hは電圧注入振幅である。
【0084】
図5bは、本発明による注入モジュールのブロック図の第2の例を表している。
【0085】
注入モジュール125は、αβフレームワークにおける測定された電流ベクトルとαβフレームワークのα軸との間の測定された角度γsを使用して、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβをxyフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルixyに変換するフレームワーク変換モジュール550を備えている。ここで、γs=arctan(iβ/iα)である。xyフレームワークは、測定された角度と一定の角度Δとの和からπ/2を引いた角度だけαβフレームワークから回転されている。Δは、0とπ/2との間に含まれる。
【0086】
x軸における測定された電流は、乗算器552に提供される。x軸における測定された電流は、一定の角度Δに直交する方向における測定された電流ベクトルの投影に対応する。乗算器552は、x軸における測定された電流の高周波変動を復調するために、直交高周波正弦波形sin(ωht)をx軸における測定された電流に乗算する。乗算器552の出力は、ローパスフィルタ554に提供される。
【0087】
ローパスフィルタ554は、注入される信号の周波数ωhよりも低いカット周波数を有する。
【0088】
ローパスフィルタ554の出力は、k1の積分利得と、ヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータ556に提供される。k1の値は、機械定格と、注入周波数及び注入規模と、サンプリング周波数とに応じて0.01と0.5との間にある。比例積分レギュレータ556の出力は、乗算器558に提供される第1の角度である。
【0089】
x軸における測定された電流、すなわち、x軸に投影された電流は、乗算器562に提供される。乗算器562は、x軸における測定された電流の高周波変動を復調するために、同相の高周波余弦波形cos(ωht)をx軸における測定された電流に乗算する。乗算器562の出力は、ローパスフィルタ564に提供される。
【0090】
ローパスフィルタ564は、注入される信号の周波数ωhよりも低いカット周波数を有する。
【0091】
ローパスフィルタ564の出力は、k1の積分利得と、ヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータ568に提供される。k1の値は、0.01と0.5との間にある。比例積分レギュレータ568の出力は、乗算器570に提供され、第2の角度である。
【0092】
復調及びフィルタリングされたx軸における測定された電流β
Q及びβ
Iは、重み計算モジュール560に提供される。重み計算モジュール560は、乗算器558に提供する重みα
Qと、乗算器570に提供する重みα
Iとを求める。
【数36】
【0093】
重み計算モジュール560の出力αQは、乗算器558によって、比例積分レギュレータ556によって提供された第1の角度に乗算される。
【0094】
重み計算モジュール560の出力αIは、乗算器570によって、比例積分レギュレータ568によって提供された第2の角度に乗算される。
【0095】
乗算器558及び乗算器570の出力は、加算モジュール572によって加算される。
【0096】
加算モジュール572の出力は、変換モジュール576に提供される角度Ψである。変換モジュール576は
【数37】
の変換を行う。ここで、Jは行列
【数38】
である。
【0097】
変換モジュール576の出力は、乗算器578に提供される。乗算器578は、変換モジュール576の出力に高周波信号v
hcos(ω
ht)を乗算して、αβフレームワークにおける注入信号電圧
【数39】
を得る。ここで、v
hは電圧注入振幅である。
【0098】
図6は、本発明による注入モジュールのブロック図の第3の例を表している。
【0099】
注入モジュール125は、例えば、バス601によって接続された構成要素と、
図8a又は
図8bに開示されているようなプログラムによって制御されるプロセッサ600とに基づくアーキテクチャを有する。
【0100】
バス601は、プロセッサ600を、リードオンリーメモリROM602、ランダムアクセスメモリRAM603、及び入出力インターフェースI/O IF605にリンクさせる。
【0101】
入出力インターフェースI/O IF605は、注入モジュール125が、モータ135を通って流れる電流を表す信号と、所定の信号とを検知することを可能にする。
【0102】
メモリRAM603は、
図8a又は
図8bに開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの変数及び命令を受信するように意図されたレジスタを含む。
【0103】
リードオンリーメモリROM602、又は場合によってフラッシュメモリは、
図8a又は
図8bに開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムの命令を含む。このプログラムは、注入モジュール125に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリRAM603にロードされる。或いは、このプログラムは、ROM602から直接実行することもできる。
【0104】
注入モジュール125によって行われる計算は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによる命令又はプログラムのセットの実行によってソフトウェアにおいて実現することもできるし、マシン、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアにおいて実現することもできる。
【0105】
換言すれば、注入モジュール125は、注入モジュール125に、
図8a又は
図8bに開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムを実行させる回路部、又は回路部を有する装置を備える。
【0106】
図7は、本発明によって使用されるモータフレームワークを表している。
【0107】
図7には、αβ二相固定子フレームワークが表されている。αβフレームワークは、モータの固定子に対して静的である。
【0108】
図7には、dq二相回転子フレームワークが表されている。dqフレームワークは動的であり、回転子位置θに追従する。
【0109】
図7には、ij二相電流フレームワークが表されている。i軸は電流ベクトルに追従し、α軸と角度γ
sを形成する一方、j軸は電流ベクトルに対して垂直である。
【0110】
図7には、fτ二相磁束フレームワークが表されている。f軸は、推定された磁束ベクトルに追従し、α軸と角度δ
sを形成する一方、τ軸は推定された磁束ベクトルに対して垂直である。
【0111】
図7には、xyフレームワークが表されている。y軸は、x軸におけるベクトル電流とともに一定の角度Δに追従する。
【0112】
図7には、高周波電圧注入に対する高周波電流応答i
HFが表されている。高周波電流応答i
HFは、x軸に対して垂直であり、したがって、機械を流れる測定された電流ベクトルに対して一定の角度Δを形成する。
【0113】
高周波注入電圧に対する推定された磁束の高周波応答λHFが存在する。高周波応答λHFは、i軸と整列され、したがって、測定された電流ベクトルと整列されている。
【0114】
図8aは、本発明による、モータを駆動する信号に加えられる注入電圧ベクトルを求めるアルゴリズムの第1の例を表している。
【0115】
本アルゴリズムは、注入モジュール125のプロセッサ600によって実行される一例において開示される。
【0116】
ステップS800において、プロセッサ600は、モータ電流ベクトルの測定値を取得する。
【0117】
ステップS801において、プロセッサ600は、例えば、αβフレームワークにおける測定された電流の間の測定された角度γsを使用して、αβフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルiαβをxyフレームワークにおける測定されたモータ電流ベクトルixyに変換することと、x軸における測定された電流のみを維持することとによって、一定の角度Δに直交する方向におけるモータ電流ベクトルの投影を求める。ここで、γs=arctan(iβ/iα)であり、xyフレームワークは、測定された角度と一定の角度Δとの和からπ/2を引いた角度だけαβフレームワークから回転されている。
【0118】
ステップS802において、プロセッサ600は、第1の高周波復調信号sin(ωht)を使用して、x軸における測定された電流の高周波変動を復調する。
【0119】
ステップS803において、プロセッサ600は、第1の高周波信号を使用して、x軸における測定された電流の復調された高周波変動の第1のローパスフィルタリングを実行する。
【0120】
ステップS804において、プロセッサ600は、例えばk1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して、x軸における測定された電流を復調及び第1の高周波信号によって第1のローパスフィルタリングしたものから少なくとも第1の角度Ψを求める。
【0121】
ステップS805において、プロセッサ600は、少なくとも第1の角度と、所定の電圧と、第1の高周波変調信号とから注入電圧ベクトルを求める。第1の高周波変調信号は、第1の高周波復調信号と同じ周波数および第1の高周波復調信号とπ/2の位相差を有する。
【0122】
例えば、プロセッサ600は、
【数40】
の変換を実行し、これに高周波信号v
hcos(ω
ht)を乗算することによって注入電圧ベクトルを求める。ここで、Jは、行列
【数41】
であり、v
hは、αβフレームワークにおける注入電圧ベクトル
【数42】
を得るための注入電圧の振幅である。
【0123】
図8bは、本発明による、モータを駆動する信号に加えられる注入電圧ベクトルを求めるアルゴリズムの第2の例を表している。
【0124】
本アルゴリズムは、注入モジュール125のプロセッサ600によって実行される一例において開示される。
【0125】
ステップS850において、プロセッサ600は、モータ電流ベクトルの測定値を取得する。
【0126】
ステップS851において、プロセッサ600は、例えば、αβフレームワークにおける測定された電流の間の測定された角度γsを使用して、αβフレームワークにおける測定された電流モータベクトルiαβをxyフレームワークにおける測定された電流モータベクトルixyに変換することと、x軸における測定された電流のみを維持することとによって、一定の角度Δに直交する方向におけるモータ電流ベクトルの投影を求める。ここで、γs=arctan(iβ/iα)であり、xyフレームワークは、測定された角度に対して一定の角度Δとの和からからπ/2を引いた角度だけαβフレームワークから回転されている。
【0127】
ステップS852において、プロセッサ600は、第1の高周波復調信号sin(ωht)を使用して、x軸における測定された電流の高周波変動を復調する。
【0128】
ステップS853において、プロセッサ600は、第1の高周波復調信号を使用して復調された、x軸における測定された電流の高周波変動の第1のローパスフィルタリングを実行する。
【0129】
ステップS854において、プロセッサ600は、例えばk1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して、x軸における測定された電流の高周波変動を第1の高周波復調信号によって復調され及び第1のローパスフィルタリングされたものから、第1の角度を求める。
【0130】
ステップS855において、プロセッサ600は、第2の高周波復調信号cos(ωht)を使用して、x軸における測定された電流の高周波変動を復調する。
【0131】
ステップS856において、プロセッサ600は、第2の高周波復調信号を使用して復調された、x軸における測定された電流の高周波変動の第2のローパスフィルタリングを実行する。
【0132】
ステップS857において、プロセッサ600は、例えばk1の積分利得とヌル値の比例利得とを有する比例積分レギュレータを使用して、x軸における測定された電流の高周波変動を第2の高周波復調信号によって復調され及び第2のローパスフィルタリングされたものから、第2の角度を求める。
【0133】
ステップS858において、プロセッサ600は、ローパスフィルタリングステップS853及びS856によってそれぞれ提供される復調及びフィルタリングされたx軸における測定された電流β
I及びβ
Qを使用して、重みα
I及びα
Qを求める。
【数43】
【0134】
ステップS859において、プロセッサ600は、第1の角度に重みαQを乗算する。
【0135】
ステップS860において、プロセッサ600は、第2の角度に重みαIを乗算する。
【0136】
ステップS861において、プロセッサ600は、ステップS859の出力と、ステップS860の出力とを加算する。
【0137】
加算ステップの出力は、注入角度Ψである。この注入角度は、ステップS862において、プロセッサ600によって
【数44】
変換を使用して変換され、第2の高周波信号v
hcos(ω
ht)によって変調される。ここで、Jは行列
【数45】
であり、v
hはαβフレームワークにおける注入信号電圧
【数46】
を得るための電圧注入振幅である。
【0138】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
【国際調査報告】