(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20240312BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240312BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240312BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240312BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240312BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240312BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240312BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F1/057 130
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F1/00 Y
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F9/04 E
C22C1/04 H
B22F1/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544205
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022072244
(87)【国際公開番号】W WO2022188550
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202110261268.0
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】福建省金龍稀土股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】韋興
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】湯志輝
(72)【発明者】
【氏名】黄清芳
(72)【発明者】
【氏名】ショウ シ ホウ
(72)【発明者】
【氏名】許徳欽
(72)【発明者】
【氏名】陳大崑
(72)【発明者】
【氏名】付剛
【テーマコード(参考)】
4K017
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5E062
【Fターム(参考)】
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5E062CG03
(57)【要約】
【課題】本発明は、主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物及びその製造方法を開示する。
【解決手段】当該主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が1.0~15.0mas%である。当該原料組成物を使用して製造された主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、高い残留磁束密度を確保しながら、保磁力を向上させており、且つその製造方法がエンジニアリング応用を実現している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物であって、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、
前記主合金原料は、下記の成分を含み、
LR:10.0~33.0mas%、前記LRは、軽希土類元素であり、前記LRは、Y、La、Ce、Pr、Ndのうちの1種又は複数種であり、
HR:0~20.0mas%、前記HRは、重希土類元素であり、前記HRは、Gd、Dy、Tb、Hoのうちの1種又は複数種であり、
M:0.1~5.0mas%、前記Mは、Co、Cu、Al、Gaのうちの1種又は複数種であり、
X:0.05~0.7mas%、前記Xは、Zr、Ti、Nbのうちの1種又は複数種であり、
B:0.94~1.1mas%、
残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
前記副合金原料は、下記の成分を含み、
LR:0~30.0mas%、前記LRは、軽希土類元素であり、前記LRは、Nd及び/又はPrであり、
HR:1~80mas%、前記HRは、重希土類元素であり、前記HRは、Dy及び/又はTbであり、
M:5.0~20.0mas%、前記Mは、Co、Cu、Al、Gaのうちの1種又は複数種であり、
X:3.0~12.0mas%、前記Xは、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Taのうちの1種又は複数種であり、
B:0~0.6mas%、
残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が1.0~15.0mas%である、
ことを特徴とする主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項2】
前記主合金原料中の全希土類含有量TREが26.0~40.0mas%であり、好ましくは、29.0~32.0mas%、例えば、29.5mas%、30.5mas%又は31.5mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記LRの含有量が25.0~30.0mas%、例えば25.2mas%、29.5mas%又は30mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記LRがNdを含んだ場合、前記Ndの含有量は18.9~22.5mas%、例えば22.125mas%であり、前記主合金原料中の前記LRがPrを含んだ場合、前記Prの含有量は6.0~7.5mas%、例えば6.3mas%又は7.375mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記LRがNdと、Prとを含み、より好ましくは、前記Ndの含有量が22.125mas%、前記Prの含有量が7.375mas%であり、又は、前記Ndの含有量が22.5mas%、前記Prの含有量が7.5mas%であり、又は、前記Ndの含有量が18.9mas%、前記Prの含有量が6.3mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記HRの含有量は1.0~10.0mas%、例えば1.5mas%又は5.3mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記HRがDyを含んだ場合、前記Dyの含有量は、1.0~5.0mas%、例えば1.5mas%又は4.3mas%であり、好ましくは、前記主合金原料中の前記HRがDyであり、前記Dyの含有量は1.5mas%であることが好ましく、前記主合金原料中の前記HRがHoを含んだ場合、前記Hoの含有量は0.5~2.0mas%、例えば1.0mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記HRがDyと、Hoとを含み、ここで、前記Dyの含有量は4.3mas%であることが好ましく、前記Hoの含有量は1.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記Mの含有量は0.5~2.0mas%、例えば0.88mas%、1.5mas%又は1.65mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記MがGaを含んだ場合、前記Gaの含有量は0.2~0.4mas%、例えば0.25mas%であり、前記主合金原料中の前記MがAlを含んだ場合、前記Alの含有量は0.01~0.1mas%、例えば0.03mas%であり、前記主合金原料中の前記MがCuを含んだ場合、前記Cuの含有量は0.1~0.25mas%、例えば0.15mas%であり、前記主合金原料中の前記MがCoを含んだ場合、前記Coの含有量は0.5~1.0mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記Mは、Ga、Al、Cu又はCoを含み、ここで、前記Gaの含有量は0.25mas%であることが好ましく、前記Alの含有量は0.03mas%であることが好ましく、前記Cuの含有量は0.1mas%であることが好ましく、前記Coの含有量は0.5mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金原料中の前記Xの含有量は0.1~0.35mas%、例えば0.11mas%又は0.15mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
前記主合金原料中の前記XがZr又はTiであり、
及び/又は、前記主合金原料中の前記Bの含有量は0.97~0.99mas%、例えば0.98mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項3】
前記主合金原料は、以下の成分を含み、22.125mas%のNd、7.375mas%のPr、0.25mas%のGa、0.03mas%のAl、0.1mas%のCu、0.5mas%のCo、0.11mas%のZr、0.98mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
又は、前記主合金原料は、以下の成分を含み、22.5mas%のNd、7.5mas%のPr、1.5mas%のDy、0.4mas%のGa、0.25mas%のCu、1.0mas%のCo、0.35mas%のZr、0.97mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
又は、前記主合金原料は、以下の成分を含み、18.9mas%のNd、6.3mas%のPr、4.3mas%のDy、1.0mas%のHo、0.25mas%のGa、0.1mas%のAl、0.15mas%のCu、1.0mas%のCo、0.15mas%のTi、0.97mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項4】
前記副合金原料中の全希土類含有量TREは、35.0~50.0mas%であり、40.0~45.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記LRの含有量は20.0~30.0mas%、例えば25.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記LRがNdを含んだ場合、前記Ndの含有量は、10.0~20.0mas%、例えば15.0mas%であり、前記副合金原料中の前記LRがPrを含んだ場合、前記Prの含有量は、15.0~25.0mas%、例えば20.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記LRは、NdとPrであり、前記Ndの含有量が15.0mas%であり、前記Prの含有量が15.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記HRの含有量は、15.0~20.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記HRは、Tbであり、前記Tbの含有量が15.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記HRは、Dyであり、前記Dyの含有量が20.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記MがGaを含んだ場合、前記Gaの含有量は、2.0~10.0mas%、例えば5.0mas%であり、前記副合金原料中の前記MがCoを含んだ場合、前記Coの含有量は、10.0~20.0mas%、例えば15.0mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記Mは、GaとCoであり、ここで、前記Gaの含有量は、5.0mas%であることが好ましく、前記Coの含有量は、15.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記副合金原料中の前記Xの含有量は、4.0~10.0mas%、例えば4.5mas%又は5.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、好ましくは、前記副合金原料中の前記XはZrであり、
及び/又は、前記副合金原料中の前記Bの含有量は、0.3~0.6mas%、例えば0.4mas%又は0.5mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率は、2.0~5.0mas%、例えば4.0mas%であることが好ましい
ことを特徴とする請求項1に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項5】
前記副合金原料は、以下の成分を含み、15.0mas%のNd、15.0mas%のPr、15.0mas%のTb、10.0mas%のZr、0.5mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
又は、前記副合金原料は、以下の成分を含み、25.0mas%のPr、20.0mas%のDy、4.5mas%のZr、0.5mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
又は、前記副合金原料は、以下の成分を含み、20.0mas%のPr、20.0mas%のDy、5.0mas%のGa、15.0mas%のCo、5.0mas%のZr、0.4mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項6】
前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、22.125mas%のNd、7.375mas%のPr、0.25mas%のGa、0.03mas%のAl、0.1mas%のCu、0.5mas%のCo、0.11mas%のZr、0.98mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、15.0mas%のNd、15.0mas%のPr、15.0mas%のTb、10.0mas%のZr、0.5mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が4.0mas%であり、
又は、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、22.5mas%のNd、7.5mas%のPr、1.5mas%のDy、0.4mas%のGa、0.25mas%のCu、1.0mas%のCo、0.35mas%のZr、0.97mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、25.0mas%のPr、20.0mas%のDy、4.5mas%のZr、0.5mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が5.0mas%であり、
又は、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、18.9mas%のNd、6.3mas%のPr、4.3mas%のDy、1.0mas%のHo、0.25mas%のGa、0.1mas%のAl、0.15mas%のCu、1.0mas%のCo、0.2mas%のZr、0.97mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、20.0mas%のPr、20.0mas%のDy、5.0mas%のGa、15.0mas%のCo、5.0mas%のZr、0.4mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が4.0mas%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物。
【請求項7】
主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法であって、以下のステップを含み、
S1:請求項1~6のいずれか1項に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記主合金原料と前記副合金原料をそれぞれ溶融した後に鋳造し、それぞれ主合金と副合金を取得し、
S2:前記主合金と前記副合金に対して、それぞれ水素破砕と微粉砕を行った後に、混合を行い、そして、成形と焼結処理を行うことによって、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料を取得する、
ことを特徴とする主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法。
【請求項8】
前記溶融は、溶解炉で溶解製錬し、前記溶解炉の真空度は、ほぼ5×10
-2Paであり、前記溶解製錬の温度は、1300~1600℃であり、好ましくは1500℃~1550℃であり、
及び/又は、前記鋳造の工程は、薄帯連続鋳造法、インゴット法、遠心鋳造法又は急冷法であり、
及び/又は、前記水素破砕の脱水素温度は、400℃~650℃、例えば、500~620℃であり、
及び/又は、前記微粉砕は、ジェットミル中で行われ、
及び/又は、前記微粉砕は、酸素含有雰囲気下で行われ、前記酸素含有雰囲気における酸素の含有量が80ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、
及び/又は、前記微粉砕後の粉末粒径は、1~20μmであり、
及び/又は、前記成形の条件は、プレス機でプレスして生の圧粉体を形成し、前記プレス機の磁場強度は、好ましくは0.5T~3.0Tであり、例えば1.0T~2.0Tであり、前記プレスの圧力は、好ましくは200~300MPaであり、例えば、260MPaであり、前記プレスの時間は、好ましくは3~30sであり、例えば15sであり、
及び/又は、前記焼結の温度は、1000~1150℃であり、好ましくは1060~1090℃であり、
及び/又は、前記焼結の時間は、4~20時間であり、
及び/又は、前記焼結の雰囲気は、真空またはアルゴンガス雰囲気である、
ことを特徴とする請求項7に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は9に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法によって製造された主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項10】
前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、主相と粒界相を含み、ここで、前記主相がコアシェル構造であり、前記コアがLR
2T
14Bであり、前記シェルがHR
2T
14Bであり、前記粒界相がネオジムリッチ相、XB
2相、及びR
6T
13M相を含み、ここで、Rは、LR及び/又はHRであり、LRは、Y、La、Ce、Pr又はNdのうちの1種又は複数種であり、HRは、Gd、Dy、Tb又はHoのうちの1種又は複数種であり、Mは、Cu、Al又はGaのうちの1種又は複数種であり、Xは、Ti、Zr、Hf、Nb、W又はTaの1種又は複数種であり、Tは、Fe及び/又はCoであり、
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはTb、MはCu、AlとGa、XはZr、TはFeとCoでり、
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはDy、MはCuとGa、XはZr、TはFeとCoであり、
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはDyとHo、MはCu、AlとGa、XはTi、TはFeとCoである、
ことを特徴とする請求項9に記載の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ホウ素は、現在常温磁気エネルギー積の最も大きい永久磁石として注目されており、トラクションモータ、サーボモータ、新エネルギー車の主駆動モータ、磁性素子、風力発電機などの分野で広く用いられている。ただし、商用磁石の減磁耐力は、理論値(約71KOe)の1/4に過ぎない。ネオジム鉄ホウ素の減磁耐力は、一般に保磁力で示されるが、保磁力の大きさは、ネオジム鉄ホウ素のミクロ構造に大きく影響されるとともに、核生成領域とピンニング領域という2つのメカニズムによって制御され、核生成領域を中心とし、核生成領域のHcJ向上ルートは、逆位相領域核生成ポイントをなくすことである。ミクロ視点から見ると、保磁力向上には一般的に3つのルートがある。
【0003】
1)主相間の粒界相の減磁結合能力を高め、具体的には、主相にNd6Fe13Xを含ませることで粒界中のFeを吸収し、粒界相を非磁性相又は反強磁性相に変換させるとともに、粒界を広げる。又は、全希土類量を高めて、粒界相の体積を高める。Cu、Ga、Co、Alなどの粒界元素の添加によって、ネオジムリッチ相の流動性を改善し、主相粒子境界を最適化することで、主相欠陥を修復し、逆位相領域の形成を減少させ、HcJを高める。このような方法ではHcJの向上は限られ、HcJを25kOe以上に高めることは困難である。
【0004】
2)結晶粒を微細化することによって主相粒子の逆位相領域核生成ポイントを減少させ、単相領域寸法に近づくほど、逆位相領域が形成されにくくなる。又は、Nd6Fe13Xなどの粒界相の形成によって、主相粒子の鋭角をなくし、主相粒界を平滑化し、逆位相領域核生成ポイントを減少させる。このような方法は、HcJの向上効果が強く、薄膜法で製造された磁石のHcJが29kOeに達することができるが、エンジニアリング応用が難しい。
【0005】
3)重希土類の添加によって、主相の異方性領域を高める。ただし、重希土類資源の埋蔵量が少なく、価格が高く、ネオジム鉄ホウ素ネオジム鉄ホウ素磁石の各業界への応用が深刻に制約されている。通常、ダブル合金又は拡散方式を採用して重希土類を主相のエピタキシャル層に分布させ、重希土類の利用率を高める。ただし、拡散方式は、厚みが15mmより大きい磁石に適用できず、既存のダブル合金法では、HcJを約1~1.5kOe高めることができるだけで、その向上効果が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のダブル合金法で製造されるネオジム鉄ホウ素ネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力が低いという欠点を解決するため、主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料又はその製造方法を提供する。本発明の主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、高い残留磁束密度を確保しながら、保磁力を向上させており、且つその製造方法がエンジニアリング応用を実現している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるため、本発明は、下記の技術考案を採用している。
【0008】
本発明は、主合金原料と副合金原料とを含んだ主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物を提供され、ここで、
前記主合金原料は、下記の成分を含み、
LR:10.0~33.0mas%、前記LRは、軽希土類元素であり、前記LRは、Y、La、Ce、Pr、Ndのうちの1種又は複数種であり、
HR:0~20.0mas%、前記HRは、重希土類元素であり、前記HRは、Gd、Dy、Tb、Hoのうちの1種又は複数種であり、
M:0.1~5.0mas%、前記Mは、Co、Cu、Al、Gaのうちの1種又は複数種であり、
X:0.05~0.7mas%、前記Xは、Zr、Ti、Nbのうちの1種又は複数種であり、
B:0.94~1.1mas%、
残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、
前記副合金原料は、下記の成分を含み、
LR:0~30.0mas%、前記LRは、軽希土類元素であり、前記LRは、Nd及び/又はPrであり、
HR:1~80mas%、前記HRは、重希土類元素であり、前記HRは、Dy及び/又はTbであり、
M:5.0~20.0mas%、前記Mは、Co、Cu、Al、Gaのうちの1種又は複数種であり、
X:3.0~12.0mas%、前記Xは、Ti、Zr、Hf、Nb、W、Taのうちの1種又は複数種であり、
B:0~0.6mas%、
残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、
前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が1.0~15.0mas%である。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記主合金原料中の全希土類含有量TREが26.0~40.0mas%であり、より好ましくは、29.0~32.0mas%、例えば、29.5mas%、30.5mas%又は31.5mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記主合金原料中の前記LRの含有量が25.0~30.0mas%、例えば25.2mas%、29.5mas%又は30mas%であり、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0011】
本発明において、前記主合金原料中の前記LRがNdを含んだ場合、前記Ndの含有量は18.9~22.5mas%、例えば22.125mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0012】
本発明において、前記主合金原料中の前記LRがPrを含んだ場合、前記Prの含有量は6.0~7.5mas%、例えば6.3mas%又は7.375mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0013】
好ましくは、前記主合金原料中の前記LRがNdと、Prとを含む。より好ましくは、前記Ndの含有量が22.125mas%、前記Prの含有量が7.375mas%であり、又は、前記Ndの含有量が22.5mas%、前記Prの含有量が7.5mas%であり、又は、前記Ndの含有量が18.9mas%、前記Prの含有量が6.3mas%であり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0014】
本発明において、前記主合金原料中の前記HRの含有量は1.0~10.0mas%、例えば1.5mas%又は5.3mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0015】
本発明において、前記主合金原料中の前記HRがDyを含んだ場合、前記Dyの含有量は、1.0~5.0mas%、例えば1.5mas%又は4.3mas%であることが好ましい。好ましくは、前記主合金原料中の前記HRがDyであり、前記Dyの含有量は1.5mas%であることが好ましく、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0016】
本発明において、前記主合金原料中の前記HRがHoを含んだ場合、前記Hoの含有量は0.5~2.0mas%、例えば1.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0017】
好ましくは、前記主合金原料中の前記HRがDyと、Hoとを含み、ここで、前記Dyの含有量は4.3mas%であることが好ましく、前記Hoの含有量は1.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0018】
本発明において、前記主合金原料中の前記Mの含有量は0.5~2.0mas%、例えば0.88mas%、1.5mas%又は1.65mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0019】
本発明において、前記主合金原料中の前記MがGaを含んだ場合、前記Gaの含有量は0.2~0.4mas%、例えば0.25mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0020】
本発明において、前記主合金原料中の前記MがAlを含んだ場合、前記Alの含有量は0.01~0.1mas%、例えば0.03mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0021】
本発明において、前記主合金原料中の前記MがCuを含んだ場合、前記Cuの含有量は0.1~0.25mas%、例えば0.15mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0022】
本発明において、前記主合金原料中の前記MがCoを含んだ場合、前記Coの含有量は0.5~1.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0023】
好ましくは、前記主合金原料中の前記Mは、Ga、Al、Cu又はCoを含み、ここで、前記Gaの含有量は0.25mas%であることが好ましく、前記Alの含有量は0.03mas%であることが好ましく、前記Cuの含有量は0.1mas%であることが好ましく、前記Coの含有量は0.5mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0024】
本発明において、前記主合金原料中の前記Xの含有量は0.1~0.35mas%、例えば0.11mas%又は0.15mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。好ましくは、前記主合金原料中の前記XがZr又はTiである。
【0025】
本発明において、前記主合金原料中の前記Bの含有量は0.97~0.99mas%、例えば0.98mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0026】
一つの好ましい実施態様において、前記主合金原料は、以下の成分を含み、22.125mas%のNd、7.375mas%のPr、0.25mas%のGa、0.03mas%のAl、0.1mas%のCu、0.5mas%のCo、0.11mas%のZr、0.98mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0027】
一つの好ましい実施態様において、前記主合金原料は、以下の成分を含み、22.5mas%のNd、7.5mas%のPr、1.5mas%のDy、0.4mas%のGa、0.25mas%のCu、1.0mas%のCo、0.35mas%のZr、0.97mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0028】
一つの好ましい実施態様において、前記主合金原料は、以下の成分を含み、18.9mas%のNd、6.3mas%のPr、4.3mas%のDy、1.0mas%のHo、0.25mas%のGa、0.1mas%のAl、0.15mas%のCu、1.0mas%のCo、0.15mas%のTi、0.97mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味する。
【0029】
本発明において、前記副合金原料中の全希土類含有量TREは、35.0~50.0mas%であることが好ましく、40.0~45.0mas%であることがより好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0030】
本発明において、前記副合金原料中の前記LRの含有量は20.0~30.0mas%、例えば25.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0031】
本発明において、前記副合金原料中の前記LRがNdを含んだ場合、前記Ndの含有量は、10.0~20.0mas%、例えば15.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0032】
本発明において、前記副合金原料中の前記LRがPrを含んだ場合、前記Prの含有量は、15.0~25.0mas%、例えば20.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0033】
好ましくは、前記副合金原料中の前記LRは、NdとPrであり、前記Ndの含有量が15.0mas%であり、前記Prの含有量が15.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0034】
本発明において、前記副合金原料中の前記HRの含有量は、15.0~20.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0035】
好ましくは、前記副合金原料中の前記HRは、Tbであり、前記Tbの含有量が15.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0036】
好ましくは、前記副合金原料中の前記HRは、Dyであり、前記Dyの含有量が20.0mas%であり、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0037】
本発明において、前記副合金原料中の前記MがGaを含んだ場合、前記Gaの含有量は、2.0~10.0mas%、例えば5.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0038】
本発明において、前記副合金原料中の前記MがCoを含んだ場合、前記Coの含有量は、10.0~20.0mas%、例えば15.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0039】
好ましくは、前記副合金原料中の前記Mは、GaとCoであり、ここで、前記Gaの含有量は、5.0mas%であることが好ましく、前記Coの含有量は、15.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0040】
本発明において、前記副合金原料中の前記Xの含有量は、4.0~10.0mas%、例えば4.5mas%又は5.0mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。好ましくは、前記副合金原料中の前記XはZrである。
【0041】
本発明において、前記副合金原料中の前記Bの含有量は、0.3~0.6mas%、例えば0.4mas%又は0.5mas%であることが好ましく、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0042】
一つの好ましい実施態様において、前記副合金原料は、以下の成分を含み、15.0mas%のNd、15.0mas%のPr、15.0mas%のTb、10.0mas%のZr、0.5mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0043】
一つの好ましい実施態様において、前記副合金原料は、以下の成分を含み、25.0mas%のPr、20.0mas%のDy、4.5mas%のZr、0.5mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0044】
一つの好ましい実施態様において、前記副合金原料は、以下の成分を含み、20.0mas%のPr、20.0mas%のDy、5.0mas%のGa、15.0mas%のCo、5.0mas%のZr、0.4mas%のB、残部はFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味する。
【0045】
本発明において、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率は、2.0~5.0mas%、例えば4.0mas%であることが好ましい。
【0046】
1つのより好ましい実施態様において、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、22.125mas%のNd、7.375mas%のPr、0.25mas%のGa、0.03mas%のAl、0.1mas%のCu、0.5mas%のCo、0.11mas%のZr、0.98mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、15.0mas%のNd、15.0mas%のPr、15.0mas%のTb、10.0mas%のZr、0.5mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が4.0mas%である。
【0047】
1つのより好ましい実施態様において、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、22.5mas%のNd、7.5mas%のPr、1.5mas%のDy、0.4mas%のGa、0.25mas%のCu、1.0mas%のCo、0.35mas%のZr、0.97mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、25.0mas%のPr、20.0mas%のDy、4.5mas%のZr、0.5mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が5.0mas%である。
【0048】
1つのより好ましい実施態様において、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物は、主合金原料と副合金原料とを含み、ここで、前記主合金原料は、下記の成分を含み、18.9mas%のNd、6.3mas%のPr、4.3mas%のDy、1.0mas%のHo、0.25mas%のGa、0.1mas%のAl、0.15mas%のCu、1.0mas%のCo、0.2mas%のZr、0.97mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記主合金原料における質量百分率を意味し、前記副合金原料は、下記の成分を含み、20.0mas%のPr、20.0mas%のDy、5.0mas%のGa、15.0mas%のCo、5.0mas%のZr、0.4mas%のB、残部がFeであり、ここで、mas%とは、成分の前記副合金原料における質量百分率を意味し、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記副合金原料の質量百分率が4.0mas%である。
【0049】
本発明には、主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法がさらに提供され、以下のステップを含み、
【0050】
S1:前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における前記主合金原料と前記副合金原料をそれぞれ溶融した後に鋳造し、それぞれ主合金と副合金を取得し、
【0051】
S2:前記主合金と前記副合金に対して、それぞれ水素破砕と微粉砕を行った後に、混合を行い、そして、成形と焼結処理を行うことによって、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料を取得する。
【0052】
本発明において、前記溶融、前記鋳造、前記水素破砕、前記微粉砕、前記成形、及び前記焼結は、すべて本分野における通常の操作及び条件である。
【0053】
本発明において、前記溶融を本分野における通常の方法で溶融することができ、例えば、溶解炉で溶解製錬すればよい。前記溶解炉の真空度は、ほぼ5×10-2Paである。前記溶解製錬の温度は、1300~1600℃とすることができ、好ましくは1500℃~1550℃である。
【0054】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、薄帯連続鋳造法、インゴット法、遠心鋳造法又は急冷法である。
【0055】
本発明において、前記水素破砕の工程は、本分野における通常の工程であることができる。前記水素破砕の脱水素温度は、400℃~650℃、例えば、500~620℃であってもよい。
【0056】
本発明において、前記微粉砕の工程は、本分野における通常の微粉砕の工程であることができる。前記微粉砕は、ジェットミル中で行うことが好ましい。前記微粉砕は、酸素含有雰囲気下で行うことが好ましく、前記酸素含有雰囲気における前記酸素の含有量が80ppm以下であり、好ましくは50ppm以下である。前記微粉砕後の粉末粒径は、1~20μmである。
【0057】
本発明において、前記成形の条件を本分野の通常のものとすることができ、例えば、プレス機でプレスして生の圧粉体とする。前記プレス機の磁場強度は、好ましくは0.5T~3.0Tであり、例えば1.0T~2.0Tである。前記プレスの圧力は、200~300MPaであってもよく、例えば、260MPaである。前記プレスの時間は、本分野における通常のものとすることができ、3~30sであってもよく、例えば15sである。
【0058】
本発明において、前記焼結の条件は、本分野の通常のものとすることができる。前記焼結の温度は、1000~1150℃とすることができ、好ましくは1060~1090℃である。前記焼結の時間は、4~20時間とすることができる。前記焼結の雰囲気は、好ましくは真空またはアルゴンガス雰囲気である。
【0059】
本発明は、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法によって製造された主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料をさらに提供する。
【0060】
本発明において、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、主相と粒界相を含み、ここで、前記主相がコアシェル構造であり、前記コアがLR2T14Bであり、前記シェルがHR2T14Bであり、前記粒界相がネオジムリッチ相、XB2相、及びR6T13M相を含み、
ここで、Rは、LR及び/又はHRであり、
LRは、Y、La、Ce、Pr又はNdのうちの1種又は複数種であり、
HRは、Gd、Dy、Tb又はHoのうちの1種又は複数種であり、
Mは、Cu、Al又はGaのうちの1種又は複数種であり、
Xは、Ti、Zr、Hf、Nb、W又はTaの1種又は複数種であり、
Tは、Fe及び/又はCoである。
【0061】
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはTb、MはCu、AlとGa、XはZr、TはFeとCoである。
【0062】
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはDy、MはCuとGa、XはZr、TはFeとCoである。
【0063】
好ましくは、前記主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料において、LRはPrとNd、HRはDyとHo、MはCu、AlとGa、XはTi、TはFeとCoである。
【0064】
本発明において、前記主合金は、LR2Fe14B主相又は一定のネオジムリッチ相を提供し、前記副合金は、HRを拡散源として提供し、焼結過程で前記副合金中のHRは、溶融したネオジムリッチ相を介して主相粒子のLRを代替して主相粒子表層に拡散し、主相表層に重希土類シェル層HR2Fe14Bを形成する。前記副合金中の低含有量のBは固溶体として存在し、HR2T14Bの存在を減少させ、混合過程でHRが主相粒子のエピタキシャル層にシェル層を形成しやすくなり、HRの利用効率を高めると同時に、低含有量のBによって副合金片がより粉砕しやすくなり、溶融設備の安定運行に役立ち、次のステップの水素破砕を容易にする。前記主合金と前記副合金を混合した後に熱処理を行い、高温でネオジムリッチ相中のX元素がBと結合して沈殿物XB2を形成し、元のR-Fe-X及びFe-X中のFeが放出されることで、ネオジムリッチ相の流動性を高め、M元素などによるR6T13M相(四方相、非磁性相又は反強磁性相)の形成を促進し、高残留磁束密度(Br)を確保するとともに、磁石の固有保磁力(HcJ)を高めている。
【0065】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各好適な条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各好適な実例が得られる。
【0066】
本発明で使用される試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0067】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にあり、即ち、本発明は、主合金と副合金の組み合わせを構築することによって、特定の原料配合比を結合し、ネオジム鉄ホウ素主相粒子に重希土類のシェル層を形成すると同時に、ネオジムリッチ相の流動性を向上させ、高残留磁束密度を確保しながら磁石の固有保磁力を高めている。本発明の製造方法は、簡単で実行しやすく、エンジニアリング応用を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、本発明の実施例3における主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料のTEM図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1における主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の元素分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は上記の実施例の範囲に制限されるものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法および条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
実施例1~3
【0070】
(1) 鋳造過程:下記の表1における実施例1~3に示す配合比によって、主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物における主合金原料と副合金原料をそれぞれ真空溶融炉に入れ、約5×10-2Paの真空中で1500~1550℃の温度でそれぞれ真空溶解を行い、それから、薄帯連続鋳造法で溶融して得られた溶融液をそれぞれ鋳造し、主合金片と副合金片を製造する。
【0071】
(2) 水素破砕過程:室温で、ステップ(1)における主合金片と副合金片をそれぞれ水素を吸引し、それから、500~620℃で真空脱水素処理を行い、粗粉砕粉末を得る。
【0072】
(3) 微粉粋処理:ジェットミルにおいてステップ(2)における粗粉砕された粉末を50ppm以下の酸素の含有量の雰囲気下で微粉砕し、平均粒径D50が1~20μmの微粉砕粉末を得る。
【0073】
(4) 成形工程:磁場強度が1.0~2.0Tであるプレス機でプレスして生の圧粉体を形成し、その後、圧力260MPaの条件で15秒間維持し、即ち成形体を得る。
【0074】
(5) 焼結工程:成形体を1060~1090℃の温度で焼結し、焼結雰囲気を真空またはアルゴンガス雰囲気にして、即ちネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0075】
表1 主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の原料組成物の成分と含有量(mas%)
ここで、「/」は、当該成分を含まないことを表す。
効果実施例
【0076】
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)試験
実施例3で得られた主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料を取って、TEMを用いて磁石材料の相構造を観察し、その結果を
図1に示す。
図1は、粒界相中のTiリッチ領域の元素分布を示しており、TiがB元素と密接に関連していることが分かり、相図と熱力学計算を組み合わせると、この相はTiB
2であるが、Zr、Ti、Hfなどは同族元素であり、ネオジム鉄ホウ素の生産においていずれもこの相を生産することができることが分かる。TiB
2は高温セラミックス相であり、広い温度領域で安定を保ち、粒界のBを浄化し、ネオジムリッチ相の流動性がより良いようにし、正方晶Nd
6Fe
13Gaなどの相の生成に有利な条件を提供する。
【0077】
(2)磁気特性試験
実施例1~3で得られた主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料を取って、中国計量院のPFM14.CN型超高保磁力永久磁石測定器で磁気特性検査を行う。
【0078】
表2 主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料の磁気特性
【0079】
「Br」とは、残留磁束密度を意味し、永久磁石材料が飽和磁化された後、外磁場を撤去して保持できる磁性を残留磁束密度と呼ぶ。磁極化強度保磁力がHcJ(固有保磁力)である。
【0080】
(3)FE-EPMA試験
実施例1で得られた主合金と副合金系ネオジム鉄ホウ素磁石材料を取って、
図2に示すようにFE-EPMA面スキャンによって元素分析図(Tb、Al、Ga、Co、B、CP、Nd、Cu、Zrなど)を形成する。
図2からわかるように、Tbなどの重希土類元素は、主相のエピタキシャル層でリッチシェル層を形成しており、Zrなどの高温元素が粒界相に均一に分布し、ネオジムリッチ相のBが浄化され、四方相Nd
6Fe
13Gaなどの反強磁性相が生成しやすくなり、両者が共に磁石の保磁力を高めている。
【国際調査報告】