(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20240312BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240312BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240312BHJP
C22C 30/00 20060101ALI20240312BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20240312BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240312BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240312BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240312BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240312BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240312BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F1/057 130
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
C22C30/00
C22C28/00 A
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F9/04 E
C22C33/02 J
B22F1/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544207
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2022072243
(87)【国際公開番号】W WO2022188549
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202110262716.9
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】福建省金龍稀土股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】湯志輝
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】韋興
(72)【発明者】
【氏名】李志剛
(72)【発明者】
【氏名】許徳欽
(72)【発明者】
【氏名】陳大崑
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB08
4K017BB09
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB18
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA03
4K017EA09
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018BC12
4K018BD01
4K018CA02
4K018CA11
4K018EA11
4K018FA08
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB03
5E040HB06
5E040HB07
5E040HB11
5E040HB15
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN18
5E062CD04
5E062CE04
5E062CG02
5E062CG05
(57)【要約】
【課題】本発明は、ネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法を開示する。
【解決手段】当該ネオジム鉄ホウ素磁石は、主相結晶粒及びその殻層と、前記主相結晶粒に隣接するNdリッチ相とを含み、前記主相結晶粒は、Nd
2Fe
14Bを含み、又は、前記主相結晶粒は、Nd
2Fe
14B及びPr
2Fe
14Bを含み、前記殻層は、(Nd/Dy)
2Fe
14B及び/又は(Nd/Tb)
2Fe
14Bを含み、前記殻層の厚さは、0.1~6μmであり、前記Ndリッチ相は、R
6Fe
13B相を含み、前記Rは、Nd、Pr、Dy及びTbのうちの1つまたは複数である。本発明の方法は、主相への重希土類元素の拡散量を効果的に低減し、より薄い重希土類殻層を形成し、磁石の高温特性をさらに良化かつ向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主相結晶粒及びその殻層と、前記主相結晶粒に隣接するNdリッチ相とを含み、
前記主相結晶粒は、Nd
2Fe
14Bを含み、又は、前記主相結晶粒は、Nd
2Fe
14B及びPr
2Fe
14Bを含み、
前記殻層は、(Nd/Dy)
2Fe
14B及び/又は(Nd/Tb)
2Fe
14Bを含み、
前記殻層の厚さは、0.1~6μmであり、
前記Ndリッチ相は、R
6Fe
13B相を含み、前記Rは、Nd、Pr、Dy及びTbのうちの1つまたは複数である、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項2】
前記殻層の厚さは、0.1~5μmであり、好ましくは、0.1~5μmであり、より好ましくは、0.1~4μmであり、
及び/又は、前記殻層が前記ネオジム鉄ホウ素磁石に占める体積百分率は、30%~60%であり、好ましくは、45~56%であり、例えば、45.7%、50.3%、50.78%又は52.7%であり、
及び/又は、前記Ndリッチ相は、ZrB
2及び/又はTiB
2をさらに含み、
及び/又は、前記Ndリッチ相は、Fe、T及びBを含む第1の粒界相をさらに含み、ここで、Tは、Zr及び/又はTiであり、
及び/又は、前記Ndリッチ相は、Nd、Ga、Al、Fe及びDyを含む第2の粒界相をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法であって、
主合金片及び補助合金片をそれぞれ製造して得るステップS1であって、
ここで、前記主合金片の原料は、LH
1、RH
1、X
1、Y
1、Fe及びBを含み、前記LH
1は、Nd又はPrNd合金であり、前記RH
1は、Tb、Dy、Ho及びGdのうちの1つまたは複数であり、前記X
1は、Ti、Zr及びNbのうちの1つまたは複数であり、前記Y
1は、Al、Cu、Ga及びCoのうちの1つまたは複数であり、
前記主合金片の原料において、前記LH
1が前記主合金片に占める質量百分率は、25~27.5%であり、前記RH
1が前記主合金片に占める質量百分率は、0~10%であり、前記X
1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.6%であり、前記Y
1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~3.5%であり、前記主合金片における各元素の質量百分率の和は、100%であり、
前記補助合金片の原料は、RH
2、X
2及びFeを含み、前記RH
2は、Tb及び/又はDyであり、前記X
2は、Ti、Zr及びNbのうちの1つまたは複数であり、
前記補助合金片の原料において、前記RH
2が前記補助合金片に占める質量百分率は、10~85%であり、前記X
2が前記補助合金片に占める質量百分率は、0~8%であり、前記補助合金片における各元素の質量百分率の和は、100%である、ステップS1と、
前記主合金片及び前記補助合金片を水素破砕又は微粉砕した混合物を配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得るステップS2と、を含み、
前記主合金片の質量が前記主合金片と前記補助合金片の質量の総量に占める質量百分率は、82%以上であり、且つ100%は除外する、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項4】
ステップS1において、前記主合金片の原料において、Prが前記PrNd合金に占める質量百分率は、0~34%であり、且つ0は除外し、好ましくは、0~7%であり、且つ0は除外し、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、前記LH
1が前記主合金片に占める質量百分率は、25~27%であり、例えば、25.2%又は26.58%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、前記RH
1が前記主合金片に占める質量百分率は、0~5%であり、且つ0は除外し、好ましくは、3~5%であり、例えば、4%、4.2%又は4.4%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、前記RH
1は、Dy及び/又はGdであり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にDyが含まれる場合、Dyが前記主合金片に占める質量百分率は、4~5%であり、例えば、4%又は4.2%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にGdが含まれる場合、Gdが前記主合金片に占める質量百分率は、0~1%であり、例えば、0.4%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、前記X
1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.3%であり、例えば、0.2%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にZrが含まれる場合、Zrが前記主合金片に占める質量百分率は、0~0.5%であり、且つ0は除外し、例えば、0.1%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にTiが含まれる場合、Tiが前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.3%であり、例えば、0.2%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、前記Y
1が前記主合金片に占める質量百分率は、1.5~3.5%であり、例えば、1.96%、2.09%又は3.1%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にCoが含まれる場合、Coが前記主合金片に占める質量百分率は、1~3%であり、好ましくは、1~2.5%であり、例えば、1.19%又は2.2%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にCuが含まれる場合、Cuが前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.5%であり、好ましくは、0.2~0.3%であり、例えば、0.21%又は0.3%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にAlが含まれる場合、Alが前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.7%であり、好ましくは、0.2~0.45%であり、例えば、0.2%、0.3%又は0.43%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にGaが含まれる場合、Gaが前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.4%であり、好ましくは、0.25~0.4%であり、例えば、0.26%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にCu及びTiが含まれる場合、CuとTiの質量比は、(1~1.5):1であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料にTi、Cu及びAlが含まれる場合、Ti、Cu及びAlの総量が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~2%であり、好ましくは、0.3~1.25%であり、より好ましくは、0.7~0.9%であり、例えば、0.71%又は0.84%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記主合金片の原料において、Bが前記主合金片に占める質量百分率は、0.88~1.05%であり、好ましくは、0.95~1%であり、例えば、0.98%である、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項5】
前記主合金片において、Ndの含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.3%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、66.26%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味し、
又は、前記主合金片において、Ndの含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Gdの含有量は、0.4%であり、Coの含有量は、2.2%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.43%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、64.72%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味し、
又は、前記主合金片において、Ndの含有量は、25.2%であり、Dyの含有量は、4.2%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.3%であり、Alの含有量は、0.2%であり、Gaの含有量は、0.4%であり、Zrの含有量は、0.1%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、0.98%であり、Feの含有量は、67.23%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味し、
又は、前記主合金片において、PrNd合金の含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.3%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、66.26%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味し、PrNd合金におけるPrとNdの質量比は、25:75である、
ことを特徴とする請求項4に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項6】
ステップS1において、前記補助合金片の原料のうち、前記RH
2が前記補助合金片に占める質量百分率は、35~85%であり、好ましくは、40~60%であり、例えば、55%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記補助合金片の原料にDyが含まれる場合、Dyが前記補助合金片に占める質量百分率は、40~75%であり、例えば、55%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記補助合金片の原料にZrが含まれる場合、Zrが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~8%であり、例えば、7.3%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記補助合金片の原料にNdがさらに含まれ、Ndが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~15%であり、
及び/又は、ステップS1において、前記補助合金片の原料にBがさらに含まれ、Bが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~1.5%であり、好ましくは、0~0.9%であり、例えば、0.4%である、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項7】
前記補助合金片において、Dyの含有量は、55%であり、Zrの含有量は、7.3%であり、Feの含有量は、37.7%であり、百分率は、前記補助合金の原料における成分の質量百分率を意味し、
又は、前記補助合金片において、Ndの含有量は、15%であり、Dyの含有量は、40%であり、Bの含有量は、0.4%であり、Feの含有量は、44.6%であり、百分率は、前記補助合金の原料における成分の質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項8】
ステップS1において、前記主合金片は、前記主合金片の原料を溶解製錬し、鋳造することにより製造され、又は、前記補助合金片は、前記補助合金片の原料を溶解製錬し、鋳造することにより製造され、
及び/又は、前記主合金片の製造方法において、前記主合金片の原料の溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、
及び/又は、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の鋳込みの温度は、1400~1450℃であり、
及び/又は、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの回転速度は、35~55rmp/minであり、
及び/又は、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの入水温度は、30℃以下であり、
及び/又は、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの出水温度は、55℃以下であり、
及び/又は、前記補助合金片の製造方法において、前記補助合金片の原料の溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、
及び/又は、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の鋳込みの温度は、1500~1550℃であり、
及び/又は、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの回転速度は、35~55rmp/minであり、
及び/又は、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの入水温度は、30℃以下であり、
及び/又は、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの出水温度は、55℃以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項9】
前記主合金片の質量が前記主合金片と前記補助合金片の質量の総量に占める質量百分率は、90%以上であり、且つ100%は除外し、好ましくは、94~95%であり、
及び/又は、ステップS2において、前記主合金片と前記補助合金片の混合物を水素破砕、微粉砕、配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得、又は、前記主合金片と前記補助合金片に対してそれぞれ水素破砕と微粉砕を行い、前記主合金片と前記補助合金片とを微粉砕した微粉を混合し、その後に混合後の微粉を配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得る、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項10】
前記水素破砕の脱水素温度は、540~560℃であり、
及び/又は、前記水素破砕の過程は、圧力降下<0.04MPaが10min以上になるときまで終了し、
及び/又は、前記微粉砕は、ジェットミルであり、好ましくは、前記ジェットミルの酸素補充量は、0~70ppmであり、
及び/又は、前記微粉砕により得られた微粉の粒径は、3.5~4.5μmの間に分布され、
及び/又は、前記配向プレスの着磁電流は、950A~970Aに制御され、例えば、960Aであり、
及び/又は、前記配向プレスにより得られた圧粉体の圧粉体密度は、3.7~4.3g/cm
3であり、例えば、4.1g/cm
3であり、
及び/又は、前記焼結処理の温度は、1025~1150℃であり、例えば、1070~1080℃であり、
及び/又は、前記焼結処理の時間は、4~10hであり、例えば、8hであり、
及び/又は、前記焼結処理後に時効処理を行い、好ましくは、前記時効処理は、1段目時効及び/又は2段目時効であり、前記1段目時効の温度は、好ましくは、850~940℃であり、前記1段目時効の時間は、好ましくは、2~5hであり、前記2段目時効の温度は、好ましくは、420~640℃であり、前記2段目時効の時間は、好ましくは、2~5hである、
ことを特徴とする請求項9に記載のネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、オジム鉄ホウ素業界では粒界を最適化する方法が多く、例えば、成分設計に単一の低融点元素を添加して流動性を増加させたり、重希土類元素を増加させたりして磁晶異方性場を増加させる。二元合金法のように、当該方法は、Dy又はTbを高い割合で添加して補助合金(副合金)を製造し、主合金と別々に溶解製錬し、次に水素破砕段階又はジェットミル粉砕段階で製品の特性に応じて配合する。製造されたネオジム鉄ホウ素磁石は、磁学特性方面では、単合金工程に比べて磁学特性は向上されたが、焼結と時効工程によって、Dy\Tbの大部分が主相に入り、重希土類の利用率が大幅に低下し、一定のコストと資源の無駄を招く。
【0003】
特許文献CN111636035Aには、重希土類合金、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、原料及び製造方法を開示し、Ti及び/又はZrの含有量及び重希土類元素総量等を制御することにより、Ti及び/又はZrをBと結合させ、それにより、重希土類金属とBとの過剰の結合を回避し、同時に、その高融点化合物が非強磁性相であるため、粒界でピンニング(pinning)と磁気シールド結合を増加する役割を果たし、磁化反転ドメインの形成を阻害し、主相への重希土類金属の拡散量を減少させ、磁石特性を向上させることができるが、この解決策は、さらに最適化される空間が存在し、重希土類におけるDy、Tb等の主相への拡散量は依然として大きく、さらに、これらの重希土類元素が主相の外縁に形成される殻層の厚さが深い。
【0004】
したがって、Dy、Tb等の高価な重希土類元素を主相の周囲に薄い殻層を形成することにより、主相への重希土類元素の拡散程度を低減することができる、二元合金法のさらなる改善を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術における二元合金法の重希土類元素が主相へ大量に拡散して進入する問題を解決するために、ネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法を提供する。本発明の方法は、主相への重希土類元素の拡散量を効果的に低減し、より薄い重希土類殻層を形成し、磁石の高温特性をさらに良化かつ向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0007】
本発明には、主相結晶粒及びその殻層と、前記主相結晶粒に隣接するNdリッチ相とを含む、ネオジム鉄ホウ素磁石が提供され、
前記主相結晶粒は、Nd2Fe14Bを含み、又は、前記主相結晶粒は、Nd2Fe14B及びPr2Fe14Bを含み、
前記殻層は、(Nd/Dy)2Fe14B及び/又は(Nd/Tb)2Fe14Bを含み、
前記殻層の厚さは、0.1~6μmであり、
前記Ndリッチ相は、R6Fe13B相を含み、前記Rは、Nd、Pr、Dy及びTbのうちの1つまたは複数である。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記殻層の厚さは、0.1~5μmであり、より好ましくは、0.1~5μmであり、さらにより好ましくは、0.1~4μmである。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記殻層が前記ネオジム鉄ホウ素磁石に占める体積百分率は、30%~60%であり、より好ましくは、45~56%であり、例えば、45.7%、50.3%、50.78%又は52.7%である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記Ndリッチ相は、ZrB2及び/又はTiB2をさらに含む。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記Ndリッチ相は、Fe、T及びBを含む第1の粒界相をさらに含み、ここで、Tは、Zr及び/又はTiである。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記Ndリッチ相は、Nd、Ga、Al、Fe及びDyを含む第2の粒界相をさらに含む。
【0013】
本発明には、上述したネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法がさらに提供され、前記方法は、
主合金片及び補助合金片をそれぞれ製造して得るステップS1であって、
ここで、前記主合金片の原料は、LH1、RH1、X1、Y1、Fe及びBを含み、前記LH1は、Nd又はPrNd合金であり、前記RH1は、Tb、Dy、Ho及びGdのうちの1つまたは複数であり、前記X1は、Ti、Zr及びNbのうちの1つまたは複数であり、前記Y1は、Al、Cu、Ga及びCoのうちの1つまたは複数であり、
前記主合金片の原料において、前記LH1が前記主合金片に占める質量百分率は、25~27.5%であり、前記RH1が前記主合金片に占める質量百分率は、0~10%であり、前記X1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.6%であり、前記Y1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~3.5%であり、前記主合金片における各元素の質量百分率の和は、100%であり、
前記補助合金片の原料は、RH2、X2及びFeを含み、前記RH2は、Tb及び/又はDyであり、前記X2は、Ti、Zr及びNbのうちの1つまたは複数であり、
前記補助合金片の原料において、前記RH2が前記補助合金片に占める質量百分率は、10~85%であり、前記X2が前記補助合金片に占める質量百分率は、0~8%であり、前記補助合金片における各元素の質量百分率の和は、100%である、ステップS1と、
前記主合金片及び前記補助合金片を水素破砕又は微粉砕した混合物を配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得るステップS2と、を含み、
前記主合金片の質量が前記主合金片と前記補助合金片の質量の総量に占める質量百分率は、82%以上であり、且つ100%は除外する。
【0014】
ステップS1において、当業者であれば分かるように、前記主合金片の原料において、前記PrNd合金とは、Pr及びNdの合金を意味し、好ましくは、Prが前記PrNd合金に占める質量百分率は、0~34%であり、且つ0は除外し、より好ましくは、0~7%であり、且つ0は除外する。
【0015】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、前記LH1が前記主合金片に占める質量百分率は、25~27%であり、例えば、25.2%又は26.58%である。
【0016】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、前記RH1が前記主合金片に占める質量百分率は、0~5%であり、且つ0は除外し、好ましくは、3~5%であり、例えば、4%、4.2%又は4.4%である。
【0017】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、前記RH1は、Dy及び/又はGdである。
【0018】
ここで、好ましくは、前記主合金片の原料にDyが含まれる場合、Dyが前記主合金片に占める質量百分率は、4~5%であり、例えば、4%又は4.2%である。
【0019】
ここで、好ましくは、前記主合金片の原料にGdが含まれる場合、Gdが前記主合金片に占める質量百分率は、0~1%であり、例えば、0.4%である。
【0020】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、前記X1が前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.3%であり、例えば、0.2%である。
【0021】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にZrが含まれる場合、Zrが前記主合金片に占める質量百分率は、0~0.5%であり、且つ0は除外し、例えば、0.1%である。
【0022】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にTiが含まれる場合、Tiが前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.3%であり、例えば、0.2%である。
【0023】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、前記Y1が前記主合金片に占める質量百分率は、1.5~3.5%であり、例えば、1.96%、2.09%又は3.1%である。
【0024】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にCoが含まれる場合、Coが前記主合金片に占める質量百分率は、1~3%であり、好ましくは、1~2.5%であり、例えば、1.19%又は2.2%である。
【0025】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にCuが含まれる場合、Cuが前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.5%であり、好ましくは、0.2~0.3%であり、例えば、0.21%又は0.3%である。
【0026】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にAlが含まれる場合、Alが前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~0.7%であり、好ましくは、0.2~0.45%であり、例えば、0.2%、0.3%又は0.43%である。
【0027】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にGaが含まれる場合、Gaが前記主合金片に占める質量百分率は、0.1~0.4%であり、好ましくは、0.25~0.4%であり、例えば、0.26%である。
【0028】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にCu及びTiが含まれる場合、CuとTiの質量比は、(1~1.5):1である。
【0029】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料にTi、Cu及びAlが含まれる場合、Ti、Cu及びAlの総量が前記主合金片に占める質量百分率は、0.05~2%であり、より好ましくは、0.3~1.25%であり、さらにより好ましくは、0.7~0.9%であり、例えば、0.71%又は0.84%である。
【0030】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片の原料において、Bが前記主合金片に占める質量百分率は、0.88~1.05%であり、より好ましくは、0.95~1%であり、例えば、0.98%である。
【0031】
ステップS1の一つの好ましい態様において、Ndの含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.3%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、66.26%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味する。
【0032】
ステップS1の一つの好ましい態様において、Ndの含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Gdの含有量は、0.4%であり、Coの含有量は、2.2%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.43%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、64.72%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味する。
【0033】
ステップS1の一つの好ましい態様において、Ndの含有量は、25.2%であり、Dyの含有量は、4.2%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.3%であり、Alの含有量は、0.2%であり、Gaの含有量は、0.4%であり、Zrの含有量は、0.1%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、0.98%であり、Feの含有量は、67.23%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味する。
【0034】
ステップS1の一つの好ましい態様において、PrNd合金の含有量は、26.58%であり、Dyの含有量は、4%であり、Coの含有量は、1.19%であり、Cuの含有量は、0.21%であり、Alの含有量は、0.3%であり、Gaの含有量は、0.26%であり、Tiの含有量は、0.2%であり、Bの含有量は、1%であり、Feの含有量は、66.26%であり、百分率は、前記主合金片の原料における成分の質量百分率を意味し、PrNd合金におけるPrとNdの質量比は、25:75である。
【0035】
ステップS1において、好ましくは、前記主合金片は、前記主合金片の原料を溶解製錬し、鋳造することにより製造され、溶解製錬及び鋳造の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0036】
ここで、好ましくは、前記主合金片の製造方法において、前記主合金片の原料の溶解製錬の温度は、1500~1550℃である。
【0037】
ここで、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の鋳込みの温度は、好ましくは、1400~1450℃である。
【0038】
ここで、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの回転速度は、好ましくは、35~55rmp/minである。
【0039】
ここで、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの入水温度は、好ましくは、30℃以下である。
【0040】
ここで、前記主合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの出水温度は、好ましくは、55℃以下である。
【0041】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片の原料のうち、前記RH2が前記補助合金片に占める質量百分率は、35~85%であり、より好ましくは、40~60%であり、例えば、55%である。
【0042】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片の原料にDyが含まれる場合、Dyが前記補助合金片に占める質量百分率は、40~75%であり、例えば、55%である。
【0043】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片の原料にZrが含まれる場合、Zrが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~8%であり、例えば、7.3%である。
【0044】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片の原料にNdがさらに含まれ、Ndが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~15%である。
【0045】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片の原料にBがさらに含まれ、Bが前記補助合金片に占める質量百分率は、0~1.5%であり、好ましくは、0~0.9%であり、例えば、0.4%である。
【0046】
ステップS1の一つの好ましい態様において、前記補助合金片において、Dyの含有量は、55%であり、Zrの含有量は、7.3%であり、Feの含有量は、37.7%であり、百分率は、前記補助合金の原料における成分の質量百分率を意味する。
【0047】
ステップS1の一つの好ましい態様において、前記補助合金片において、Ndの含有量は、15%であり、Dyの含有量は、40%であり、Bの含有量は、0.4%であり、Feの含有量は、44.6%であり、百分率は、前記補助合金の原料における成分の質量百分率を意味する。
【0048】
ステップS1において、好ましくは、前記補助合金片は、前記補助合金片の原料を溶解製錬し、鋳造することにより製造され、溶解製錬及び鋳造の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0049】
ここで、好ましくは、前記補助合金片の製造方法において、前記補助合金片の原料の溶解製錬の温度は、1500~1550℃である。
【0050】
ここで、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の鋳込みの温度は、好ましくは、1500~1550℃である。
【0051】
ここで、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの回転速度は、好ましくは、35~55rmp/minである。
【0052】
ここで、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの入水温度は、好ましくは、30℃以下である。
【0053】
ここで、前記補助合金片の製造方法において、前記鋳造の銅ロールの出水温度は、好ましくは、55℃以下である。
【0054】
ステップS2において、好ましくは、前記主合金片の質量が前記主合金片と前記補助合金片の質量の総量に占める質量百分率は、90%以上であり、且つ100%は除外し、より好ましくは、94~95%である。
【0055】
ステップS2において、好ましくは、前記主合金片と前記補助合金片の混合物を水素破砕、微粉砕、配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得、
又は、前記主合金片と前記補助合金片に対してそれぞれ水素破砕と微粉砕を行い、前記主合金片と前記補助合金片とを微粉砕した微粉を混合し、その後に混合後の微粉を配向プレス、静水圧圧縮成形及び焼結処理することにより、前記ネオジム鉄ホウ素材料を得る。
【0056】
ステップS2において、前記水素破砕、前記微粉砕、前記配向プレス、前記静水圧圧縮成形及び前記焼結処理の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0057】
ここで、前記水素破砕の脱水素温度は、好ましくは、540~560℃である。
【0058】
ここで、好ましくは、前記水素破砕の過程は、圧力降下<0.04MPaが10min以上になるときまで終了する。
【0059】
ここで、好ましくは、前記微粉砕は、ジェットミルである。
【0060】
好ましくは、前記ジェットミルの酸素補充量は、0~70ppmである。
【0061】
ここで、好ましくは、前記微粉砕により得られた微粉の粒径は、3.5~4.5μmの間に分布される。
【0062】
ここで、好ましくは、前記配向プレスの着磁電流は、950A~970Aに制御され、例えば、960Aである。
【0063】
ここで、好ましくは、前記配向プレスにより得られた圧粉体(green compact)の圧粉体密度は、3.7~4.3g/cm3であり、例えば、4.1g/cm3である。
【0064】
ここで、好ましくは、前記焼結処理の温度は、1025~1150℃であり、例えば、1070~1080℃である。
【0065】
ここで、好ましくは、前記焼結処理の時間は、4~10hであり、例えば、8hである。
【0066】
ここで、好ましくは、前記焼結処理後に時効処理を行う。
【0067】
好ましくは、前記時効処理は、1段目時効及び/又は2段目時効である。前記1段目時効の温度は、好ましくは、850~940℃であり、前記1段目時効の時間は、好ましくは、2~5hである。前記2段目時効の温度は、好ましくは、420~640℃であり、前記2段目時効の時間は、好ましくは、2~5hである。
【0068】
本分野の周知常識に準拠した上で、上記の各々好適な条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々好適な実施例を得ることができる。
【0069】
本発明で使用される試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0070】
本発明の積極的な進歩的効果は、次の通りである。
【0071】
本発明において、主合金片、補助合金片の原料の改良により、各工程条件に合わせて、主相への重希土類元素の拡散量を効果的に低減し、より薄い重希土類殻層を形成し、磁石の高温特性をさらに良化かつ向上させることができる。従来の二元合金法では、重希土類元素が主相と粒界に分散して分布することに起因して重希土類が過剰に浪費することを回避する。
【0072】
本発明の1つの好適な態様において、焼結後の試料に対して直接に2段目時効処理を行うことができ、その高温特性は焼結後の試料よりも優れるだけでなく、焼結後に直接1段目時効処理を行う試料よりも優れており、さらに、焼結後に1段目時効と2段目時効を行う試料よりも優れている。工程上のハイライトは、後続に1段目時効又は2段目時効工程を直接にキャンセルすることができ、工程を節約し、工程コストを大幅に削減することにある。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】
図1は、実施例3における試料が異なる2段目時効温度処理を経た後に180℃でのHcj特性変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明を上記の実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法および条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
実施例1
【0075】
(1)表1に示す成分に応じて、主合金片と補助合金片の原料を溶解製錬、鋳造した後、主合金片と補助合金片をそれぞれ製造し、
ここで、主合金片の溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、鋳造の鋳込みの温度は、1400~1450℃であり、鋳造の銅ロールの回転速度は、35~55rmp/minであり、鋳造の銅ロールの入水温度≦30℃であり、鋳造の銅ロールの出水温度≦55℃であり、主合金片を得た。
【0076】
補助合金片の溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、鋳造の鋳込み温度は、1500~1550℃であり、鋳造の銅ロールの回転速度は、35~55rmp/minであり、鋳造の銅ロールの入水温度≦30℃であり、鋳造の銅ロールの出水温度≦55℃であり、補助合金片を得た。
【0077】
(2)水素破砕過程:ステップ(1)における主合金片と補助合金片の混合物を550℃で3時間水素破砕処理し、粗粉砕粉末を得た。
【0078】
(3)微粉砕処理:ジェットミルで、ステップ(2)における粗粉砕の粉末に対して酸素補充量が0~70ppmである雰囲気下で微粉砕を行って、平均粒径D50=3.5~4.5μmである微粉砕粉末を得た。
【0079】
(4)配向プレス過程:着磁電流を960Aに制御し、プレス密度は、4.1g/cm3である。
【0080】
(5)静水圧圧縮成形過程。
【0081】
(6)焼結過程:ステップ(5)で得られた試料を焼結し、焼結温度は、1070~1080℃であり、8時間保温させた。
【0082】
(表1)実施例1~7の原料成分
ここで、「/」は、当該成分を含まないことを意味し、PrNdは、質量比が25:75であるPrNd合金である。
実施例2
【0083】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。ステップ(6)で得られた試料に対して1段目時効を行い、1段目時効の条件は900℃で3時間熱処理することである。
実施例3
【0084】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。ステップ(6)で得られた試料に対して2段目時効を行い、2段目時効の条件は600℃で3時間熱処理することである。
【0085】
なお、
図1に示すように、異なる2段目時効温度について検証実験を行ったところ、2段目温度が540℃~640℃で変化する過程で、試料の180℃でのHcjが依然として安定した特性状態にあり、試料の2段目時効の温度感受性が低く、安定的なバッチ生産に有利であり、その特性に対する温度の干渉を避けることができることを意味する。
実施例4
【0086】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。ステップ(6)で得られた試料に対して1段目時効と2段目時効を行う。1段目時効の条件は、900℃で3時間熱処理することであり、2段目時効の条件は、600℃で3時間熱処理することである。
実施例5
【0087】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。
実施例6
【0088】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。
実施例7
【0089】
表1に示す成分に従い、ステップ(1)~(6)は、実施例1と同様である。
比較例1
【0090】
(1)表2に示す成分に従い、主合金片の原料を溶解製錬、鋳造した後に主合金片を製造し、
ここで、主合金片の溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、鋳造の鋳込み温度は、1400~1450℃であり、鋳造の銅ロールの回転速度は、50rmp/minであり、鋳造の銅ロールの入水温度≦30℃であり、鋳造の銅ロールの出水温度≦55℃であり、主合金片を得た。
【0091】
(2)水素破砕過程:室温で、ステップ(1)における主合金片を550℃で3時間水素破砕処理し、粗粉砕粉末を得た。
【0092】
(3)微粉砕処理:ジェットミル粉砕において、ステップ(2)における粗粉砕の粉末に対して、酸素補充量が0~70ppmである雰囲気下で微粉砕を行って、平均粒径D50=3.5~4.5μmである微粉砕粉末を得た。
【0093】
(4)配向プレス過程:着磁電流を960Aに制御し、プレス密度は、4.1g/cm3である。
【0094】
(5)静水圧圧縮成形過程。
【0095】
(6)焼結過程:ステップ(5)で得られた試料を不活性ガス雰囲気で焼結し、焼結温度は、1025~1150℃であり、8時間保温する。
【0096】
(7)ステップ(6)で得られた試料に対して1段目時効と2段目時効を行う。1段目時効の条件は、900℃で3時間熱処理することであり、2段目時効の条件は、600℃で3時間熱処理することである。
比較例2
【0097】
表2に示す成分に従い、補助合金片の溶解製錬の温度は、1380~1420℃であり、鋳造の鋳込み温度は、1340~1360℃であり、銅ロール回転速度は、26.8~27.2rmp/minであり、鋳造の銅ロールの入水温度≦30℃であり、鋳造の銅ロールの出水温度≦55℃である。
【0098】
焼結過程の焼結温度は、1060~1070℃である。1段目時効の条件は、895~905℃で3時間熱処理することであり、2段目時効の条件は、485~495℃で3時間熱処理することである。
【0099】
残りの工程パラメータは、いずれも比較例1と同じである。
比較例3
【0100】
表2に示す成分に従い、ステップ(1)~(7)は、比較例2と同様である。
【0101】
(表2)比較例1~3の原料成分
ここで、「/」は、当該成分を含まないことを意味し、PrNdは、質量比が25:75であるPrNd合金である。
効果実施例
【0102】
磁気特性試験:ネオジム鉄ホウ素磁石については、中国計量院のPFM14.CN成形型超高保磁力永久磁石測定器を使用して磁気特性を検出した。各実施例と比較例で測定した結果は、表3~5に示す通りである。
【0103】
(表3)実施例3、5~7及び比較例1~3のミクロ構造パラメータと磁気特性の比較
【0104】
表3から明らかなように、本発明は、主相への重希土類元素の拡散量を効果的に低減し、重希土類元素が主相の周囲に薄い殻層を形成し、得られたネオジム鉄ホウ素磁石は高温特性に優れる。
【0105】
実施例7において、Pr元素の添加により、常温下で保磁力の向上に寄与することができるが、高温環境では、軽希土類元素にNd元素のみを添加した試料に比べて熱安定性が劣る。
【0106】
(表4)20℃での比較例1~3及び実施例1~4の磁学特性の比較
【0107】
(表5)180℃での比較例1~3及び実施例1~4の磁学特性比較
【0108】
表4~5のデータ比較により、本発明は、従来の工程(例えば、比較例3~5)に比べて、質量百分率が0.9~1.5%である重希土類元素を節約した場合、そのまま2段目時効工程を行うことができ、その常温特性が近似し、高温180℃でのHcjとβ(Hcj)が従来の工程より著しく優れており、優れた高温特性を有することが分かった。
【0109】
図2及び表6に、実施例3のEPMA図と重希土類殻層の厚さの結果を示す。
【0110】
【0111】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、当業者は、これらが例示的なものであり、本発明の保護範囲が添付の特許請求の範囲によって限定されていることを理解すべきである。当業者は、これらの実施形態について、本発明の原理及び実質を逸脱することなく、種々の変更又は修正を加えることができるが、これらの変更及び修正は、いずれも本発明の保護範囲に含まれている。
【国際調査報告】