(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】柔粘性イオン結晶、これを含む組成物、これを製造する方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07F 9/06 20060101AFI20240312BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240312BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240312BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240312BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240312BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240312BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240312BHJP
C07F 9/572 20060101ALI20240312BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240312BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240312BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240312BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20240312BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240312BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240312BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07F9/06
H01M4/62 Z
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0562
H01B1/06 A
C07F9/572 Z
C07F7/18 T
C07F7/18 M
C07D487/04 138
C07D487/04 150
C07D519/00 311
H01G11/56
H01G11/84
C08L71/02
C08K5/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546268
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CA2022050159
(87)【国際公開番号】W WO2022165598
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】バレー, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ジェルフィ, アブデルバスト
(72)【発明者】
【氏名】フルート, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ガリット, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】クラチコフスキー, セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】コ, キ ソク
【テーマコード(参考)】
4C050
4C072
4H049
4H050
4J002
5E078
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB05
4C050BB08
4C050CC04
4C050CC10
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH01
4C072MM01
4C072UU05
4C072UU08
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ59
4H049VQ77
4H049VR23
4H049VR41
4H049VU24
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB78
4J002CH021
4J002ER026
4J002GQ02
5E078AB01
5E078DA12
5E078DA14
5E078DA18
5E078DA19
5G301CD01
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AM07
5H029AM11
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
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5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050DA10
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA22
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本技術は、電気化学用途、特に電池などの電気化学蓄電池、エレクトロクロミックデバイス、およびスーパーキャパシタに使用するための、少なくとも1つの有機グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも1つの非局在化アニオンを含む柔粘性イオン結晶に関する。本技術はまた、柔粘性イオン結晶組成物、柔粘性イオン結晶系固体電解質組成物、柔粘性イオン結晶系固体電解質、柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物を含む電極材料に関する。電気化学セルおよび電気化学蓄電池におけるそれらの使用、ならびにそれらの製造方法およびNHO安定化中間イオン-中性錯体も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも1つの非局在化アニオンを含む柔粘性イオン結晶。
【請求項2】
前記柔粘性イオン結晶が、少なくとも2つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも2つの非局在化アニオンを含むマルチカチオン性柔粘性イオン結晶である、請求項1に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項3】
前記非局在化アニオンが、トリフルオロメタンスルホネート(またはトリフレート)[TfO]
-、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[TFSI]
-、ビス(フルオロスルホニル)イミド[FSI]
-、2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート[TDI]
-、ヘキサフルオロホスフェート[PF
6]
-、およびテトラフルオロボレート[BF
4]
-アニオンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項4】
前記非局在化アニオンが[TFSI]
-である、請求項3に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項5】
前記非局在化アニオンが[FSI]
-である、請求項3に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項6】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、およびtert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P
1-t-Bu)からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項7】
前記カチオンが、式2~8のグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオン:
【化28】
(式中、
前記柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
前記柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの少なくとも2つを分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレン、およびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項8】
R
1が水素原子であり、前記柔粘性イオン結晶がプロトン性柔粘性イオン結晶である、請求項7に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項9】
R
1が、C
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖または分枝置換基であり、前記柔粘性イオン結晶が架橋柔粘性イオン結晶である、請求項7に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項10】
前記柔粘性イオン結晶が、式10~16の柔粘性イオン結晶:
【化29】
【化30】
(式中、
X
-は、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-、および[BF
4]
-からなる群から選択される非局在化アニオンであり;
前記柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
前記柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの少なくとも2つを分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレン、およびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
から選択される、請求項7から9のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項11】
前記非局在化アニオンが、[TFSI]
-および[FSI]
-アニオンからなる群から選択される、請求項10に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項12】
前記非局在化アニオンが[FSI]
-である、請求項11に記載の柔粘性イオン結晶。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶と、少なくとも1つの追加の成分および/または少なくとも1つのポリマーとを含む柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項14】
前記追加の成分が、溶媒、イオン伝導体、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子、可塑剤、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項15】
前記無機粒子が、ガーネット、NASICON型、LISICON型、チオ-LISICON型、LIPON型、ペロブスカイト型、アンチペロブスカイト型、またはアルジロダイト型構造を有する化合物を含むか、あるいは結晶相、非晶相および/もしくはガラス-セラミック相のM-P-S型、M-P-S-O型、M-P-S-X型、M-P-S-O-X型(式中、Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属であり、XはF、Cl、Br、Iもしくはこれらの少なくとも2つの組み合わせである)の化合物、またはこれらの少なくとも2つの混合物を含む、請求項14に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項16】
前記無機粒子が、結晶相、非晶相、ガラス-セラミック相、またはこれらの組み合わせの以下の化合物:
-MLZO(例えば、M
7La
3Zr
2O
12、M
(7-a)La
3Zr
2Al
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
2Ga
bO
12、M
(7-a)La
3Zr
(2-b)Ta
bO
12およびM
(7-a)La
3Zr
(2-b)Nb
bO
12);
-MLTaO(例えば、M
7La
3Ta
2O
12、M
5La
3Ta
2O
12およびM
6La
3Ta
1.5Y
0.5O
12);
-MLSnO(例えば、M
7La
3Sn
2O
12);
-MAGP(例えば、M
1+aAl
aGe
2-a(PO
4)
3);
-MATP(例えば、M
1+aAl
aTi
2-a(PO
4)
3);
-MLTiO(例えば、M
3aLa
(2/3-a)TiO
3);
-MZP(例えば、M
aZr
b(PO
4)
c);
-MCZP(例えば、M
aCa
bZr
c(PO
4)
d);
-MGPS(例えば、M
10GeP
2S
12などのM
aGe
bP
cS
d);
-MGPSO(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
e);
-MSiPS(例えば、M
10SiP
2S
12などのM
aSi
bP
cS
d);
-MSiPSO(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
e);
-MSnPS(例えば、M
10SnP
2S
12などのM
aSn
bP
cS
d);
-MSnPSO(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
e);
-MPS(例えば、M
7P
3S
11などのM
aP
bS
c);
-MPSO(例えば、M
aP
bS
cO
d);
-MZPS(例えば、M
aZn
bP
cS
d);
-MZPSO(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
e);
-xM
2S-yP
2S
5;
-xM
2S-yP
2S
5-zMX;
-xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5;
-xM
2S-yP
2S
5-zP
2O
5-wMX;
-xM
2S-yM
2O-zP
2S
5;
-xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wMX;
-xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5;
-xM
2S-yM
2O-zP
2S
5-wP
2O
5-vMX;
-xM
2S-ySiS
2;
-MPSX(例えば、M
7P
3S
11X、M
7P
2S
8XおよびM
6PS
5XなどのM
aP
bS
cX
d);
-MPSOX(例えば、M
aP
bS
cO
dX
e);
-MGPSX(例えば、M
aGe
bP
cS
dX
e);
-MGPSOX(例えば、M
aGe
bP
cS
dO
eX
f);
-MSiPSX(例えば、M
aSi
bP
cS
dX
e);
-MSiPSOX(例えば、M
aSi
bP
cS
dO
eX
f);
-MSnPSX(例えば、M
aSn
bP
cS
dX
e);
-MSnPSOX(例えば、M
aSn
bP
cS
dO
eX
f);
-MZPSX(例えば、M
aZn
bP
cS
dX
e);
-MZPSOX(例えば、M
aZn
bP
cS
dO
eX
f);
-M
3OX;
-M
2HOX;
-M
3PO
4;
-M
3PS
4;および
-M
aPO
bN
c(a=2b+3c-5)
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはこれらの組み合わせであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、Iまたはこれらの組み合わせから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは0以外の数であり、各式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは0以外の数であり、各式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項17】
前記無機粒子がセラミックまたはガラス-セラミックである、請求項16に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項18】
前記セラミックまたはガラス-セラミックが、酸化物系セラミック、硫化物系セラミック、オキシ硫化物系セラミック、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせである、請求項17に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項19】
前記硫化物系セラミックが、Li
10GeP
2S
12、Li
6PS
5Cl、Li
2S-P
2S
5、Li
7P
3S
11、Li
9.54Si
1.74P
1.44S
11.7Cl
0.3、Li
9.6P
3S
12、およびLi
3.25P
0.95S
4から選択される、請求項18に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項20】
前記硫化物系セラミックがLi
6PS
5Clである、請求項19に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項21】
前記セラミックまたはガラス-セラミックが、前記柔粘性イオン結晶組成物中に少なくとも50重量%の濃度で存在する、請求項17から20のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項22】
前記セラミックまたはガラス-セラミックが、前記柔粘性イオン結晶組成物中に約50重量%~約95重量%、または約55重量%~約95重量%、または約60重量%~約95重量%、または約65重量%~約95重量%、または約70重量%~約95重量%、または約75重量%~約95重量%、または約80重量%~約95重量%、または約85重量%~約95重量%、または約90重量%~約95重量%の範囲(上限および下限を含む)の濃度で存在する、請求項21に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項23】
前記セラミックまたはガラス-セラミックが、前記柔粘性イオン結晶組成物中に約90重量%の濃度で存在する、請求項22に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項24】
前記柔粘性結晶が、前記柔粘性イオン結晶組成物中に約10重量%の濃度で存在する、請求項23に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項25】
前記無機粒子が、二酸化チタン(TiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)および二酸化ケイ素(SiO
2)粒子またはナノ粒子からなる群から選択される充填剤添加剤である、請求項14に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項26】
前記ポリマーが直鎖または分枝状である、請求項13から25のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項27】
前記ポリマーが架橋されている、請求項13から26のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項28】
前記ポリマーが、前記柔粘性イオン結晶組成物中に少なくとも10重量%の濃度で存在する、請求項13から27のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項29】
前記ポリマーが、前記柔粘性イオン結晶組成物中に約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約45重量%、または約15重量%~約45重量%、または約20重量%~約45重量%、または約25重量%~約45重量%、または約30重量%~約45重量%、または約35重量%~約45重量%、または約40重量%~約45重量%の範囲(上限および下限を含む)の濃度で存在する、請求項13から27のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項30】
前記ポリマーがポリエーテル型ポリマーである、請求項13から29のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項31】
前記ポリエーテル型ポリマーがポリエチレンオキシド(PEO)系ポリマーである、請求項30に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項32】
前記ポリマーが、少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび必要に応じて少なくとも1つの架橋性セグメントで構成されるブロックコポリマーであり、前記リチウムイオン溶媒和セグメントが、式32の反復単位:
【化31】
(式中、
R
3は、水素原子、C
1~C
10アルキル基または-(CH
2-O-R
4R
5)基から選択され;
R
4は(CH
2-CH
2-O)
mであり;
R
5は水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され;
yは10~200,000の範囲から選択される整数であり;
mは0~10の範囲から選択される整数である)
を有するホモポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項13から31のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項33】
前記コポリマーの前記架橋性セグメントが、照射または熱処理によって多次元的に架橋性である少なくとも1つの官能基を含むポリマーセグメントである、請求項32に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項34】
前記柔粘性イオン結晶組成物が、柔粘性イオン結晶系電解質組成物である、請求項13から33のいずれか1項に記載の柔粘性イオン結晶組成物。
【請求項35】
請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むバインダー。
【請求項36】
請求項13から34のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を含む電気化学セル。
【請求項37】
請求項13から34のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むスーパーキャパシタ。
【請求項38】
前記スーパーキャパシタが炭素-炭素スーパーキャパシタである、請求項37に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項39】
請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むエレクトロクロミック材料。
【請求項40】
請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶または請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物と、少なくとも1つの塩または少なくとも1つの追加の成分とを含む固体電解質組成物。
【請求項41】
前記塩がイオン性塩である請求項40に記載の固体電解質組成物。
【請求項42】
前記イオン性塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩から選択される、請求項41に記載の固体電解質組成物。
【請求項43】
前記イオン性塩がリチウム塩である、請求項42に記載の固体電解質組成物。
【請求項44】
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(Li(FSI)(TFSI))、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO
3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO
3CF
3)(LiOTf)、フルオロアルキルリン酸リチウム Li[PF
3(CF
2CF
3)
3](LiFAP)、リチウムテトラキス(トリフルオロアセトキシ)ボレート Li[B(OCOCF
3)
4](LiTFAB)、リチウムビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ボレート Li[B(C
6O
2)
2](LiBBB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiBF
2(C
2O
4))(LiFOB)、式LiBF
2O
4R
x(式中、R
x=C
2~4アルキル)の塩、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の固体電解質組成物。
【請求項45】
前記追加の成分が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子、可塑剤、他の同様の成分、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項40から44のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
【請求項46】
前記セラミック粒子がナノセラミックである、請求項45に記載の固体電解質組成物。
【請求項47】
前記追加の成分が、結晶および/または非晶質形態のNASICON型、LISICON型、チオ-LiSICON型化合物、ガーネット、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される、請求項45または46に記載の固体電解質組成物。
【請求項48】
請求項40から47のいずれか1項に定義される固体電解質組成物を含む固体電解質であって、前記固体電解質が必要に応じて架橋されている、固体電解質。
【請求項49】
請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶を含む固体電解質であって、前記固体電解質が必要に応じて架橋されている、固体電解質。
【請求項50】
電気化学的活物質と、請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物とを含む電極材料であって、前記柔粘性イオン結晶組成物が必要に応じて架橋されている、電極材料。
【請求項51】
電気化学的活物質と、請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶とを含む電極材料であって、前記柔粘性イオン結晶が必要に応じて架橋されている、電極材料。
【請求項52】
前記柔粘性イオン結晶組成物がバインダーである、請求項50に記載の電極材料。
【請求項53】
前記柔粘性イオン結晶がバインダーである、請求項51に記載の電極材料。
【請求項54】
前記電気化学的活物質が粒子の形態である、請求項50から53のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項55】
前記電気化学的活物質が、金属酸化物、リチウム金属酸化物、金属リン酸塩、リチウム金属リン酸塩、チタン酸塩、チタン酸リチウム、金属フルオロリン酸塩、リチウム金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、リチウム金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、リチウム金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、リチウム金属ハロゲン化物(例えば、リチウム金属フッ化物)、硫黄、セレン、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項50から54のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項56】
前記電気化学的活物質の前記金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項55に記載の電極材料。
【請求項57】
前記電極材料が、少なくとも1つの導電性材料をさらに含む、請求項50から56のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項58】
前記導電性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される、請求項57に記載の電極材料。
【請求項59】
前記導電性材料がアセチレンブラックである、請求項58に記載の電極材料。
【請求項60】
前記電極材料が、約6未満、または約5未満、または約4未満、または約3未満、好ましくは約4未満の電気化学的活物質:柔粘性イオン結晶比を有する、請求項50から59のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項61】
前記電極材料が、約8%未満、または約7%未満、または約6%未満、または約5%未満、または約4%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満、好ましくは約5%未満の空隙率を有する、請求項50から60のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項62】
集電装置上に請求項50から61のいずれか1項に定義される電極材料を含む電極。
【請求項63】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記負極、前記正極、および前記電解質の少なくとも1つが少なくとも1つの請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶を含み、前記柔粘性イオン結晶が必要に応じて架橋されている、電気化学セル。
【請求項64】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記負極、前記正極、および前記電解質の少なくとも1つが請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を含み、前記柔粘性イオン結晶組成物が必要に応じて架橋されている、電気化学セル。
【請求項65】
負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、前記負極および前記正極の少なくとも1つが請求項62に定義される通りである、電気化学セル。
【請求項66】
負極、正極、および請求項48または49に定義される固体電解質を含む電気化学セル。
【請求項67】
少なくとも1つの請求項63から66のいずれか1項に定義される電気化学セルを含む電気化学蓄電池。
【請求項68】
前記電気化学蓄電池が、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池およびマグネシウムイオン電池から選択される電池である、請求項67に記載の電気化学蓄電池。
【請求項69】
前記電池がリチウム電池またはリチウムイオン電池である、請求項68に記載の電気化学蓄電池。
【請求項70】
請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶または請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(i)少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を少なくとも1つのプロトン源と反応させて、プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む少なくとも1つの錯体を形成する工程;および
(ii)プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む前記錯体を少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法。
【請求項71】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP
1-t-Buからなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がBEMPである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がDBUである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記イオン性塩が、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-、および[BF
4]
-アニオンからなる群から選択される非局在化アニオンを含む、請求項70から73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記非局在化アニオンが[TFSI]
-である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記非局在化アニオンが[FSI]
-である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記イオン性塩がアルカリまたはアルカリ土類金属塩である、請求項70から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属塩がリチウム塩である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
工程(i)および(ii)が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われる、請求項70から79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
工程(i)および(ii)が順次に行われ、前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を前記プロトン源と反応させる工程が、プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む前記錯体を前記イオン性塩とを反応させる工程の前に行われる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基、前記プロトン源および前記イオン性塩が一緒に混合されて、反応するように放置される、請求項70から81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
工程(i)および(ii)が溶媒の存在下で行われる、請求項70から82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記溶媒が、ジクロロメタン、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、エタノール、およびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記溶媒がアセトニトリルである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記溶媒が工程(i)の前記プロトン源である、請求項83から85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
工程(i)の前記プロトン源が第1のプロトン源であり、工程(i)および(ii)が第2のプロトン源の存在下で行われる、請求項70から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記第2のプロトン源が、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、およびトリフルオロ酢酸)、p-トルエンスルホン酸、硫酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硝酸、およびフッ化水素酸からなる群から選択される酸である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
工程(i)および(ii)が活性化剤および/または安定剤の存在下で行われ、前記方法が、安定化中間イオン-中性錯体を形成する工程をさらに含む、請求項70から88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記活性化剤および/または安定剤が、式17のビス-シリル化化合物:
【化32】
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基であり;
R
2は、独立して、各出現において、アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択される)
である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記方法が、前記式17のビス-シリル化化合物を調製する工程をさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記式17のビス-シリル化化合物を調製する工程が、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物とシリル化試薬とのシリル化反応によって行われる、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物が、グリセロール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、エトヘキサジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記式17のビス-シリル化化合物がビス-シリル化ジエチレングリコールである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記式17のビス-シリル化化合物がビス-シリル化グリセロールである、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記シリル化反応が、塩基触媒シリル化反応によって行われ、ヒドロキシル基上の酸性水素または活性水素の(R
2)
3Si-基による置換を伴う、請求項92から95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記シリル化反応が塩基の存在下で行われる、請求項92から96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記塩基が4-ジメチルアミノピリジンである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記塩基がイミダゾールである、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記シリル化反応が非プロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項92から99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記非プロトン性溶媒がジクロロメタンである、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記非プロトン性溶媒がテトラヒドロフランである、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記シリル化試薬が、トリアルキルシリルクロリド、トリメチルシリルクロリド(TMS-Cl)、トリエチルシリルクロリド(TES-Cl)、イソプロピルジメチルシリルクロリド(IPDMS-Cl)、ジエチルイソプロピルシリルクロリド(DEIPS-Cl)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-ClまたはTBS-Cl)、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド(TBDPS-ClまたはTPS-Cl)、およびトリイソプロピルシリルクロリド(TIPS-Cl)、窒素含有シリルエーテル、N,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アセトアミド(BSA)、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MSTFA)、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDEA)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIまたはTSIM)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)、およびN-メチル-N-(トリメチルシリル)アセトアミド(MSA)からなる群から選択される、請求項92から102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記シリル化試薬がトリメチルシリルクロリド(TMS-Cl)である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記シリル化試薬がtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-ClまたはTBS-Cl)である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記シリル化試薬が、約1:0.9の「誘導体化される-OH基:シリル基」モル比で添加される、請求項92から105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記シリル化試薬が、約1:1の「誘導体化される-OH基:シリル基」モル比で添加される、請求項92から105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記シリル化試薬が、前記少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物上のヒドロキシル基の数に対して過剰に添加される、請求項92から105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記シリル化試薬の量が、1当量の前記少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約5当量の範囲(上限および下限を含む)である、請求項92から105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記シリル化試薬の量が、1当量の前記少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約4.5当量、または約2当量~約4当量、または約2当量~約3.75当量、または約2当量~約3.5当量の範囲(上限および下限を含む)である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記シリル化反応が室温で行われる、請求項92から110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
工程(i)および(ii)が、約20℃~約200℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われる、請求項70から111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
工程(i)および(ii)が、約40℃~約80℃、または約45℃~約75℃、または約50℃~約70℃、または約55℃~約65℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われる、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
工程(i)および(ii)が少なくとも4日間行われる、請求項70から113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記方法が、精製工程をさらに含む、請求項70から114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記精製工程が、抽出、蒸留、または蒸発によって行われる、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記方法が、官能化工程をさらに含む、請求項70から116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記官能化工程が、前記プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンの-NH官能基と架橋性官能基の少なくとも1つの前駆体との間の反応によって行われる、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記架橋性官能基が、C
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート基からなる群から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記方法が、前記柔粘性イオン結晶組成物または前記柔粘性イオン結晶を含む懸濁液を基板上にコーティングする工程をさらに含む、請求項70から119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記組成物または懸濁液を乾燥させる工程をさらに含む、請求項120から122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記乾燥工程およびコーティング工程が同時に行われる、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
架橋工程をさらに含む、請求項70から124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記架橋工程が、UV照射によって、熱処理によって、マイクロ波照射によって、電子線下で、ガンマ線照射によって、またはX線照射によって行われる、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記架橋工程が、UV照射によって、熱処理によって、または電子線下で行われる、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記架橋工程が、架橋剤、熱開始剤、光開始剤、触媒、可塑剤、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせの存在下で行われる、請求項125から127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記光開始剤が2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651)である、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと少なくとも1つの式17のビス-シリル化化合物:
【化33】
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基であり;
R
2は、独立して、各出現において、アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択される)
を反応させることによって得られる安定化中間イオン-中性錯体。
【請求項131】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、プロトン化1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン[H-DBU]
+、プロトン化1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン[H-DBN]
+、プロトン化7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン[H-MTBD]
+、プロトン化2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン[H-BEMP]
+、プロトン化tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン[H-BTPP]
+、およびプロトン化tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン[P
1-t-Bu]
+からなる群から選択される、請求項130に記載の安定化中間イオン-中性錯体。
【請求項132】
式25~31:
【化34】
【化35】
(式中、
ZおよびR
2は請求項130に定義される通りであり;
X
-は、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-および[BF
4]
-からなる群から選択される非局在化アニオンである)
のものである、請求項130または131に記載の安定化中間イオン-中性錯体。
【請求項133】
請求項1から12のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶または請求項13から33のいずれか1項に定義される柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させて、必要に応じて置換された有機架橋基によって分離され、対イオンと対になった少なくとも2つの有機超強塩基系カチオン性部分を含むマルチカチオン性錯体を形成する工程;および
(ii)前記マルチカチオン性錯体を少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法。
【請求項134】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP
1-t-Buからなる群から選択される、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がBEMPである、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がDBUである、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
前記有機架橋化合物が、必要に応じて置換された有機架橋基および少なくとも2つのアニオン性脱離基を含む、請求項133から136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記アニオン性脱離基がハライドである、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記ハライドが、F
-、Cl
-、Br
-およびI
-から選択される、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記ハライドがBr
-である、請求項138に記載の方法。
【請求項141】
前記必要に応じて置換された有機架橋基が、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレン、およびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンからなる群から選択される、請求項133から140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
前記有機架橋基が1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンである、請求項133から141のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
前記イオン性塩が、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-、および[BF
4]
-からなる群から選択される非局在化アニオンを含む、請求項133から142のいずれか1項に記載の方法。
【請求項144】
前記非局在化アニオンが[TFSI]
-である、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記非局在化アニオンが[FSI]
-である、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
前記イオン性塩がアルカリまたはアルカリ土類金属塩である、請求項133から145のいずれか1項に記載の方法。
【請求項147】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属塩がリチウム塩である、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
工程(i)および(ii)が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われる、請求項133から148のいずれか1項に記載の方法。
【請求項150】
工程(i)および(ii)が順次に行われ、前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を前記有機架橋化合物と反応させる工程が、前記マルチカチオン性錯体を前記イオン性塩と反応させる工程の前に行われる、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基、前記有機架橋化合物および前記イオン性塩が一緒に混合されて、反応するように放置される、請求項133から150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
工程(i)および(ii)が溶媒の存在下で行われる、請求項133から151のいずれか1項に記載の方法。
【請求項153】
前記溶媒が、ジクロロメタン、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、エタノール、およびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記溶媒がジクロロメタンである、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を前記有機架橋化合物と反応させる工程が塩基の存在下で行われる、請求項133から154のいずれか1項に記載の方法。
【請求項156】
前記塩基がトリエチルアミン(Et
3N)である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
工程(i)および(ii)が室温で行われる、請求項133から156のいずれか1項に記載の方法。
【請求項158】
前記グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を前記有機架橋化合物と反応させる工程が約4日間行われる、請求項133から157のいずれか1項に記載の方法。
【請求項159】
前記マルチカチオン性錯体を前記イオン性塩と反応させる工程が約3日間行われる、請求項133から158のいずれか1項に記載の方法。
【請求項160】
精製工程をさらに含む、請求項133から159のいずれか1項に記載の方法。
【請求項161】
前記精製工程が、抽出、蒸留、または蒸発によって行われる、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記柔粘性イオン結晶組成物または前記柔粘性イオン結晶を含む懸濁液を基板上にコーティングする工程をさらに含む、請求項133から161のいずれか1項に記載の方法。
【請求項163】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記方法が、前記組成物または懸濁液を乾燥させる工程をさらに含む、請求項162から164のいずれか1項に記載の方法。
【請求項166】
前記乾燥工程およびコーティング工程が同時に行われる、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
請求項50から61のいずれか1項に定義される電極材料を生産するための方法であって、前記方法が、以下の工程:
(ii)炭素およびバインダースラリーを調製する工程;
(ii)柔粘性イオン結晶系カソード液を調製する工程;および
(iii)柔粘性イオン結晶、炭素およびバインダースラリーを調製する工程
を含む方法。
【請求項168】
前記炭素およびバインダースラリーを調製する工程が、前記炭素をバインダー組成物に分散させることを含む、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
前記方法が、前記バインダー組成物を調製する工程をさらに含む、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
前記炭素がカーボンブラックを含む、請求項168または169に記載の方法。
【請求項171】
前記炭素が気相成長炭素繊維を含む、請求項168から170のいずれか1項に記載の方法。
【請求項172】
前記バインダー組成物が、バインダーと、必要に応じて溶媒および/または炭素分散剤とを含む、請求項168から171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項173】
前記バインダーがフッ素含有ポリマーを含む、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記フッ素含有ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、またはポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)である、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記フッ素含有ポリマーがポリフッ化ビニリデンである、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
前記溶媒がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項172から175のいずれか1項に記載の方法。
【請求項177】
前記炭素分散剤がポリビニルピロリドンである、請求項172から176のいずれか1項に記載の方法。
【請求項178】
前記バインダー組成物を調製する工程が、前記バインダーを前記溶媒および/または前記炭素分散剤と混合することによって行われる、請求項169から177のいずれか1項に記載の方法。
【請求項179】
前記混合工程がロールミリング法によって行われる、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
前記柔粘性イオン結晶カソード液を調製する工程が、前記柔粘性イオン結晶およびイオン性塩を溶媒に希釈することを含む、請求項167から179のいずれか1項に記載の方法。
【請求項181】
前記溶媒がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記柔粘性イオン結晶、炭素およびバインダースラリーを調製する工程が、前記柔粘性イオン結晶カソード液を前記炭素およびバインダースラリーの段階的な添加を含む、請求項167から181のいずれか1項に記載の方法。
【請求項183】
前記方法が、電気化学的活物質を前記柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーに添加する工程をさらに含む、請求項167から182のいずれか1項に記載の方法。
【請求項184】
前記電気化学的活物質がリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)である、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記方法が、前記柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーを集電装置上にコーティングして、集電装置上に柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダー電極膜を得る工程をさらに含む、請求項167から184のいずれか1項に記載の方法。
【請求項186】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法によって行われる、請求項186に記載の方法。
【請求項188】
前記方法が、前記柔粘性イオン結晶、バインダー、および炭素電極膜を乾燥させる工程をさらに含む、請求項184から187のいずれか1項に記載の方法。
【請求項189】
前記方法が、前記柔粘性イオン結晶、バインダー、および炭素電極膜をカレンダー加工する工程をさらに含む、請求項184から188のいずれか1項に記載の方法。
【請求項190】
前記カレンダー加工工程がロールプレス法によって行われる、請求項189に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2021年2月5日に出願された米国仮特許出願第63/146,356号、および2021年8月30日に出願された米国仮特許出願第63/260,710号に基づく、準拠法の下での優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本出願は、柔粘性イオン結晶および電気化学用途におけるそれらの使用の分野に関する。より詳細には、本出願は、柔粘性イオン結晶、これらを含む組成物、それらの製造方法、および電気化学セル、エレクトロクロミックデバイス、スーパーキャパシタ、電気化学蓄電池、特に全固体電池における固体電解質としてのそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
柔粘性イオン結晶は、固体電解質のための有望な材料と考えられている。この技術はまだ初期段階にあるが、柔粘性結晶系イオン伝導体は、高い可撓性および可塑性、非燃焼性、並外れたイオン伝導率、ならびに良好な熱的および電気化学的特性を含む、従来の固体電解質材料を超える大きな利点を示す。
【0004】
それらの大きな利点にもかかわらず、伝導機序ならびにカチオンまたはアニオン間の関係およびこれらの材料の物理的特性は十分に理解されていない。よって、カチオンとアニオンの組み合わせが特定の温度でイオン性溶融物もしくは液体を形成する、または柔粘性結晶を形成する可能性があるかを予測することは自明ではない。
【0005】
したがって、従来の固体電解質の欠点の1またはそれを超える数を排除する、またはそれらに対する1またはそれを超える利点を提供する、柔粘性イオン結晶に基づく新たな固体電解質の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
第1の態様によると、本技術は、少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも1つの非局在化アニオンを含む柔粘性イオン結晶に関する。
【0007】
一実施形態によると、柔粘性イオン結晶が、少なくとも2つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも2つの非局在化アニオンを含むマルチカチオン性柔粘性イオン結晶である。
【0008】
別の実施形態によると、非局在化アニオンが、トリフルオロメタンスルホネート(またはトリフレート)[TfO]-、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[TFSI]-、ビス(フルオロスルホニル)イミド[FSI]-、2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート[TDI]-、ヘキサフルオロホスフェート[PF6]-およびテトラフルオロボレート[BF4]-アニオンからなる群から選択される。一例によると、非局在化アニオンが[TFSI]-である。別の例によると、非局在化アニオンが[FSI]-である。
【0009】
別の実施形態によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)およびtert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)からなる群から選択される。
【0010】
別の実施形態によると、カチオンが、式2~8のグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオン:
【化1】
(式中、
柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレートおよびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの少なくとも2つを分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレンおよびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、R1が水素原子であり、柔粘性イオン結晶がプロトン性柔粘性イオン結晶である。
【0012】
いくつかの他の実施形態では、R1が、C1~C10アルキル-アクリレート、C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C1~C10アルキル-メタクリレートおよびカルボニルアミノ-C1~C10アルキル-アクリレートから選択される直鎖または分枝置換基であり、柔粘性イオン結晶が架橋柔粘性イオン結晶である。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態によると、柔粘性イオン結晶が、式10~16の柔粘性イオン結晶:
【化2】
【化3】
(式中、
X
-は、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-および[BF
4]
-からなる群から選択される非局在化アニオンであり;
柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレートおよびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの少なくとも2つを分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレンおよびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
から選択される。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態によると、非局在化アニオンが、[TFSI]-および[FSI]-アニオン、好ましくは[FSI]-からなる群から選択される。
【0015】
別の態様によると、本技術は、少なくとも1つの本明細書で定義される柔粘性イオン結晶と、少なくとも1つの追加の成分および/または少なくとも1つのポリマーとを含む柔粘性イオン結晶組成物に関する。
【0016】
一実施形態によると、追加の成分が、溶媒、イオン伝導体、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子、可塑剤、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、無機粒子が、ガーネット、NASICON型、LISICON型、チオ-LISICON型、LIPON型、ペロブスカイト型、アンチペロブスカイト型、またはアルジロダイト型構造を有する化合物を含むか、あるいは結晶相、非晶相および/もしくはガラス-セラミック相のM-P-S型、M-P-S-O型、M-P-S-X型、M-P-S-O-X型(式中、Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属であり、XはF、Cl、Br、Iもしくはこれらの少なくとも2つの組み合わせである)の化合物、またはこれらの少なくとも2つの混合物を含む。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、無機粒子が、結晶相、非晶相、ガラス-セラミック相、またはこれらの組み合わせの以下の化合物:MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(a=2b+3c-5)
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはこれらの組み合わせであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、Iまたはこれらの組み合わせから選択され;
a、b、c、d、eおよびfは0以外の数であり、各式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、yおよびzは0以外の数であり、各式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の少なくとも1つを含む。
【0019】
いくつかの他の実施形態では、無機粒子がセラミックまたはガラス-セラミックである。一例によると、セラミックまたはガラス-セラミックが、酸化物系セラミック、硫化物系セラミック、オキシ硫化物系セラミックまたはこれらの少なくとも2つの組み合わせである。例えば、硫化物系セラミックは、Li10GeP2S12、Li6PS5Cl、Li2S-P2S5、Li7P3S11、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li9.6P3S12およびLi3.25P0.95S4から選択される。目的の変形例によると、硫化物系セラミックがLi6PS5Clである。
【0020】
いくつかの他の実施形態では、セラミックまたはガラス-セラミックが、柔粘性イオン結晶組成物中に少なくとも50重量%の濃度で存在する。例えば、セラミックまたはガラス-セラミックは、柔粘性イオン結晶組成物中に約50重量%~約95重量%、または約55重量%~約95重量%、または約60重量%~約95重量%、または約65重量%~約95重量%、または約70重量%~約95重量%、または約75重量%~約95重量%、または約80重量%~約95重量%、または約85重量%~約95重量%、または約90重量%~約95重量%の範囲(上限および下限を含む)の濃度で存在する。目的の変形例によると、セラミックまたはガラス-セラミックが、柔粘性イオン結晶組成物中に約90重量%の濃度で存在する。目的の別の変形例によると、柔粘性結晶が、柔粘性イオン結晶組成物中に約10重量%の濃度で存在する。
【0021】
いくつかの他の好ましい実施形態では、無機粒子が、二酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al2O3)および二酸化ケイ素(SiO2)粒子またはナノ粒子からなる群から選択される充填剤添加剤である。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリマーが直鎖または分枝状である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリマーが架橋されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポリマーが、柔粘性イオン結晶組成物中に少なくとも10重量%の濃度で存在する。例えば、ポリマーは、柔粘性イオン結晶組成物中に約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約45重量%、または約15重量%~約45重量%、または約20重量%~約45重量%、または約25重量%~約45重量%、または約30重量%~約45重量%、または約35重量%~約45重量%、または約40重量%~約45重量%の範囲(上限および下限を含む)の濃度で存在する。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態では、ポリマーがポリエーテル型ポリマーである。例えば、ポリエーテル型ポリマーはポリエチレンオキシド(PEO)系ポリマーである。
【0026】
いくつかの他の好ましい実施形態では、ポリマーが、少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび必要に応じて少なくとも1つの架橋性セグメントで構成されるブロックコポリマーであり、リチウムイオン溶媒和セグメントが、式32の反復単位:
【化4】
(式中、
R
3は、水素原子、C
1~C
10アルキル基または-(CH
2-O-R
4R
5)基から選択され;
R
4は(CH
2-CH
2-O)
mであり;
R
5は水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され;
yは10~200,000の範囲から選択される整数であり;
mは0~10の範囲から選択される整数である)
を有するホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態では、コポリマーの架橋性セグメントが、照射または熱処理によって多次元的に架橋性である少なくとも1つの官能基を含むポリマーセグメントである。
【0028】
別の実施形態によると、柔粘性イオン結晶組成物が柔粘性イオン結晶系電解質組成物である。
【0029】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むバインダーに関する。
【0030】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含む電気化学セルに関する。
【0031】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むスーパーキャパシタに関する。
【0032】
一実施形態によると、スーパーキャパシタが炭素-炭素スーパーキャパシタである。
【0033】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含むエレクトロクロミック材料に関する。
【0034】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物と、少なくとも1つの塩または少なくとも1つの追加の成分とを含む固体電解質組成物に関する。
【0035】
いくつかの実施形態では、塩がイオン性塩である。例えば、イオン性塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩から選択され、好ましくは、イオン性塩はリチウム塩である。目的の変形例によると、リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(Li(FSI)(TFSI))、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiOTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、リチウムテトラキス(トリフルオロアセトキシ)ボレートLi[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、リチウムビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ボレートLi[B(C6O2)2](LiBBB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiBF2(C2O4))(LiFOB)、式LiBF2O4Rx(式中、Rx=C2~4アルキル)の塩、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、追加の成分が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子、可塑剤、他の同様の成分およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。例えば、セラミック粒子はナノセラミックである。目的の変形例によると、追加の成分が、結晶および/または非晶質形態のNASICON型、LISICON型、チオ-LiSICON型化合物、ガーネット、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される。
【0037】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される固体電解質組成物を含む固体電解質であって、必要に応じて架橋されている固体電解質に関する。
【0038】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶を含む固体電解質であって、必要に応じて架橋されている固体電解質に関する。
【0039】
別の態様によると、本技術は、電気化学的活物質と、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物とを含む電極材料であって、柔粘性イオン結晶組成物が必要に応じて架橋されている、電極材料に関する。
【0040】
別の態様によると、本技術は、電気化学的活物質と、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶とを含む電極材料であって、柔粘性イオン結晶が必要に応じて架橋されている、電極材料に関する。
【0041】
一実施形態によると、柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物がバインダーである。
【0042】
いくつかの実施形態では、電気化学的活物質が粒子の形態である。
【0043】
いくつかの実施形態では、電気化学的活物質が、金属酸化物、リチウム金属酸化物、金属リン酸塩、リチウム金属リン酸塩、チタン酸塩、チタン酸リチウム、金属フルオロリン酸塩、リチウム金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、リチウム金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、リチウム金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、リチウム金属ハロゲン化物(例えば、リチウム金属フッ化物)、硫黄、セレンおよびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。例えば、電気化学的活物質の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、電極材料が少なくとも1つの導電性材料をさらに含む。例えば、導電性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブおよびこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される。目的の変形例によると、導電性材料がアセチレンブラックである。
【0045】
いくつかの実施形態では、電極材料が、約6未満、または約5未満、または約4未満、または約3未満、好ましくは約4未満の電気化学的活物質:柔粘性イオン結晶比を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、電極材料が、約8%未満、または約7%未満、または約6%未満、または約5%未満、または約4%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満、好ましくは約5%未満の空隙率を有する。
【0047】
別の態様によると、本技術は、集電装置上に本明細書で定義される電極材料を含む電極に関する。
【0048】
別の態様によると、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、負極、正極および電解質の少なくとも1つが少なくとも1つの本明細書で定義される柔粘性イオン結晶を含み、柔粘性イオン結晶が必要に応じて架橋されている、電気化学セルに関する。
【0049】
別の態様によると、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、負極、正極、および電解質の少なくとも1つが本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含み、柔粘性イオン結晶組成物が必要に応じて架橋されている、電気化学セルに関する。
【0050】
別の態様によると、本技術は、負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、負極および正極の少なくとも1つが本明細書で定義される通りである、電気化学セルに関する。
【0051】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される負極、正極および固体電解質を含む電気化学セルに関する。
【0052】
別の態様によると、本技術は、少なくとも1つの本明細書で定義される電気化学セルを含む電気化学蓄電池に関する。
【0053】
一実施形態によると、電気化学蓄電池が、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、およびマグネシウムイオン電池から選択される電池である。目的の変形例によると、電池がリチウム電池またはリチウムイオン電池である。
【0054】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を少なくとも1つのプロトン源と反応させて、プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む少なくとも1つの錯体を形成する工程;および
(ii)プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む錯体を少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法に関する。
【0055】
一実施形態によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPPおよびP1-t-Buからなる群から選択される。目的の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がBEMPである。目的の別の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がDBUである。
【0056】
別の実施形態によると、イオン性塩が、[TfO]-、[TFSI]-、[FSI]-、[TDI]-、[PF6]-および[BF4]-アニオンからなる群から選択される非局在化アニオンを含む。目的の変形例によると、非局在化アニオンが[TFSI]-である。目的の別の変形例によると、非局在化アニオンが[FSI]-である。
【0057】
別の実施形態によると、イオン性塩がアルカリまたはアルカリ土類金属塩である。例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩、好ましくはリチウム塩である。
【0058】
別の実施形態によると、工程(i)および(ii)が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われる。例えば、工程(i)および(ii)が順次に行われ、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基をプロトン源と反応させる工程が、プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンおよび対イオンを含む錯体をイオン性塩とを反応させる工程の前に行われる。
【0059】
別の実施形態では、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基、プロトン源およびイオン性塩が一緒に混合されて、反応するように放置される。
【0060】
別の実施形態によると、工程(i)および(ii)が溶媒の存在下で行われる。例えば、溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、エタノールおよびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される。目的の別の変形例によると、溶媒がアセトニトリルである。
【0061】
いくつかの実施形態では、溶媒が工程(i)のプロトン源である。
【0062】
別の実施形態によると、工程(i)のプロトン源が第1のプロトン源であり、工程(i)および(ii)が第2のプロトン源の存在下で行われる。例えば、第2のプロトン源は、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸およびトリフルオロ酢酸)、p-トルエンスルホン酸、硫酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硝酸およびフッ化水素酸からなる群から選択される酸である。
【0063】
別の実施形態によると、工程(i)および(ii)が活性化剤および/または安定剤の存在下で行われ、本方法が、安定化中間イオン-中性錯体を形成する工程をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、活性化剤および/または安定剤が、式17のビス-シリル化化合物:
【化5】
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基であり;
R
2は、独立して、各出現において、アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択される)
である。
【0065】
別の実施形態によると、本方法が、式17のビス-シリル化化合物を調製する工程をさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、式17のビス-シリル化化合物を調製する工程が、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物とシリル化試薬とのシリル化反応によって行われる。例えば、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物は、グリセロール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、エトヘキサジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオールおよびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。目的の変形例によると、式17のビス-シリル化化合物がビス-シリル化ジエチレングリコールである。目的の別の変形例によると、式17のビス-シリル化化合物がビス-シリル化グリセロールである。
【0067】
いくつかの実施形態では、シリル化反応が、塩基触媒シリル化反応によって行われ、ヒドロキシル基上の酸性水素または活性水素の(R2)3Si-基による置換を伴う。
【0068】
いくつかの実施形態では、シリル化反応が塩基の存在下で行われる。目的の変形例によると、塩基が4-ジメチルアミノピリジンである。目的の別の変形例によると、塩基がイミダゾールである。
【0069】
いくつかの実施形態では、シリル化反応が非プロトン性溶媒の存在下で行われる。目的の変形例によると、非プロトン性溶媒がジクロロメタンである。目的の別の変形例によると、非プロトン性溶媒がテトラヒドロフランである。
【0070】
いくつかの実施形態では、シリル化試薬が、トリアルキルシリルクロリド、トリメチルシリルクロリド(TMS-Cl)、トリエチルシリルクロリド(TES-Cl)、イソプロピルジメチルシリルクロリド(IPDMS-Cl)、ジエチルイソプロピルシリルクロリド(DEIPS-Cl)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-ClまたはTBS-Cl)、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド(TBDPS-ClまたはTPS-Cl)、およびトリイソプロピルシリルクロリド(TIPS-Cl)、窒素含有シリルエーテル、N,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アセトアミド(BSA)、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MSTFA)、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDEA)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIまたはTSIM)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)、およびN-メチル-N-(トリメチルシリル)アセトアミド(MSA)からなる群から選択される。目的の変形例によると、シリル化試薬がトリメチルシリルクロリド(TMS-Cl)である。目的の別の変形例によると、シリル化試薬がtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-ClまたはTBS-Cl)である。
【0071】
いくつかの実施形態では、シリル化試薬が、約1:0.9の「誘導体化される-OH基:シリル基」モル比で添加される。
【0072】
いくつかの他の実施形態では、シリル化試薬が、約1:1の「誘導体化される-OH基:シリル基」モル比で添加される。
【0073】
いくつかの他の実施形態では、シリル化試薬が、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物上のヒドロキシル基の数に対して過剰に添加される。一例によると、シリル化試薬の量が、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約5当量の範囲(上限および下限を含む)である。例えば、シリル化試薬の量は、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約4.5当量、または約2当量~約4当量、または約2当量~約3.75当量、または約2当量~約3.5当量の範囲(上限および下限を含む)である。
【0074】
いくつかの実施形態では、シリル化反応が室温で行われる。
【0075】
いくつかの実施形態では、工程(i)および(ii)が、約20℃~約200℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われる。例えば、工程(i)および(ii)は、約40℃~約80℃、または約45℃~約75℃、または約50℃~約70℃、または約55℃~約65℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われる。
【0076】
いくつかの実施形態では、工程(i)および(ii)が少なくとも4日間行われる。
【0077】
別の実施形態によると、本方法が精製工程をさらに含む。例えば、精製工程は、抽出、蒸留または蒸発によって行われる。
【0078】
別の実施形態によると、本方法が官能化工程をさらに含む。一例によると、官能化工程が、プロトン化グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンの-NH官能基と架橋性官能基の少なくとも1つの前駆体との間の反応によって行われる。例えば、架橋性官能基は、C1~C10アルキル-アクリレート、C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-アクリレート、カルボニルアミノ-C1~C10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルアミノ-C1~C10アルキル-アクリレート基からなる群から選択される。
【0079】
別の実施形態によると、本方法が、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を含む懸濁液を基板上にコーティングする工程をさらに含む。例えば、コーティング工程は、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる。目的の変形例によると、コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる。
【0080】
別の実施形態によると、本方法が組成物または懸濁液を乾燥させる工程をさらに含む。一例によると、乾燥工程およびコーティング工程が同時に行われる。
【0081】
別の実施形態によると、本方法が架橋工程をさらに含む。一例によると、架橋工程が、UV照射によって、熱処理によって、マイクロ波照射によって、電子線下で、ガンマ線照射によって、またはX線照射によって行われる。目的の変形例によると、架橋工程が、UV照射、熱処理によって、または電子線下で行われる。いくつかの実施形態では、架橋工程が、架橋剤、熱開始剤、光開始剤、触媒、可塑剤、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせの存在下で行われる。目的の変形例によると、光開始剤が2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651)である。
【0082】
別の態様によると、本技術は、少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと少なくとも1つの式17のビス-シリル化化合物:
【化6】
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基であり;
R
2は、独立して、各出現において、アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択される)
を反応させることによって得られる安定化中間イオン-中性錯体に関する。
【0083】
一実施形態によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、プロトン化1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン[H-DBU]
+、プロトン化1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン[H-DBN]
+、プロトン化7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン[H-MTBD]
+、プロトン化2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン[H-BEMP]
+、プロトン化tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン[H-BTPP]
+、およびプロトン化tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン[P
1-t-Bu]
+からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、安定化中間イオン-中性錯体が、式25~31:
【化7】
(式中、
ZおよびR
2は本明細書で定義される通りであり;
X
-は、[TfO]
-、[TFSI]
-、[FSI]
-、[TDI]
-、[PF
6]
-および[BF
4]
-からなる群から選択される非局在化アニオンである)
のものである。
【0084】
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させて、必要に応じて置換された有機架橋基によって分離され、対イオンと対になった少なくとも2つの有機超強塩基系カチオン性部分を含むマルチカチオン性錯体を形成する工程;および
(ii)マルチカチオン性錯体を少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法に関する。
【0085】
一実施形態によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP1-t-Buからなる群から選択される。目的の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がBEMPである。目的の別の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基がDBUである。
【0086】
別の実施形態によると、有機架橋化合物が、必要に応じて置換された有機架橋基および少なくとも2つのアニオン性脱離基を含む。例えば、アニオン性脱離基はハライドである。目的の変形例によると、ハライドが、F-、Cl-、Br-およびI-から選択される。目的の別の変形例によると、ハライドがBr-である。
【0087】
別の実施形態によると、必要に応じて置換された有機架橋基が、直鎖または分枝C1~C10アルキレン、直鎖または分枝C1~C10アルキレンオキシC1~C10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C1~C10アルキレンオキシ)C1~C10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C6~C12アリーレン、C5~C12ヘテロアリーレン、C3~C12シクロアルキレン、およびC3~C12ヘテロシクロアルキレンからなる群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、有機架橋基が1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンである。
【0089】
別の実施形態によると、イオン性塩が、[TfO]-、[TFSI]-、[FSI]-、[TDI]-、[PF6]-および[BF4]-からなる群から選択される非局在化アニオンを含む。目的の変形例によると、非局在化アニオンが[TFSI]-である。目的の別の変形例によると、非局在化アニオンが[FSI]-である。
【0090】
別の実施形態によると、イオン性塩がアルカリまたはアルカリ土類金属塩である。例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、またはマグネシウム塩である。好ましくは、アルカリまたはアルカリ土類金属塩がリチウム塩である。
【0091】
別の実施形態によると、工程(i)および(ii)が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われる。一例によると、工程(i)および(ii)が順次に行われ、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が、マルチカチオン性錯体をイオン性塩と反応させる工程の前に行われる。
【0092】
別の実施形態では、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基、有機架橋化合物、およびイオン性塩が一緒に混合されて、反応するように放置される。
【0093】
別の実施形態によると、工程(i)および(ii)が溶媒の存在下で行われる。例えば、溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、エタノール、およびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される。目的の変形例によると、溶媒がジクロロメタンである。
【0094】
別の実施形態によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が塩基の存在下で行われる。目的の変形例によると、塩基がトリエチルアミン(Et3N)である。
【0095】
いくつかの実施形態では、工程(i)および(ii)が室温で行われる。
【0096】
いくつかの実施形態では、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が約4日間行われる。
【0097】
いくつかの実施形態では、マルチカチオン性錯体をイオン性塩と反応させる工程が約3日間行われる。
【0098】
別の実施形態によると、本方法が精製工程をさらに含む。例えば、精製工程は、抽出、蒸留または蒸発によって行われる。
【0099】
別の実施形態によると、本方法が、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を含む懸濁液を基板上にコーティングする工程をさらに含む。例えば、コーティング工程は、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる。目的の変形例によると、コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる。
【0100】
別の実施形態によると、本方法が組成物または懸濁液を乾燥させる工程をさらに含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、乾燥工程およびコーティング工程が同時に行われる。
別の態様によると、本技術は、本明細書で定義される電極材料を製造する方法であって、以下の工程:
(i)炭素およびバインダースラリーを調製する工程;
(ii)柔粘性イオン結晶系カソード液を調製する工程;および
(iii)柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーを調製する工程
を含む方法に関する。
【0102】
一実施形態によると、炭素およびバインダースラリーを調製する工程が、炭素をバインダー組成物に分散させることを含む。
【0103】
別の実施形態によると、本方法が、バインダー組成物を調製する工程をさらに含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、炭素がカーボンブラックを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、炭素が気相成長炭素繊維を含む。
【0106】
別の実施形態によると、バインダー組成物が、バインダーと、必要に応じて溶媒および/または炭素分散剤とを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、バインダーがフッ素含有ポリマーを含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、またはポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)である。目的の変形例によると、フッ素含有ポリマーがポリフッ化ビニリデンである。
【0108】
いくつかの実施形態では、溶媒がN-メチル-2-ピロリドンである。
【0109】
いくつかの実施形態では、炭素分散剤がポリビニルピロリドンである。
【0110】
別の実施形態によると、バインダー組成物を調製する工程が、バインダーを溶媒および/または炭素分散剤と混合することによって行われる。例えば、混合工程は、ロールミリング法によって行われる。
【0111】
別の実施形態によると、柔粘性イオン結晶カソード液を調製する工程が、柔粘性イオン結晶およびイオン性塩を溶媒に希釈することを含む。例えば、溶媒がN-メチル-2-ピロリドンである。
【0112】
別の実施形態によると、柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーを調製する工程が、柔粘性イオン結晶系カソード液を炭素およびバインダースラリーの段階的な添加を含む。
【0113】
別の実施形態によると、本方法が、電気化学的活物質を柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーに添加する工程をさらに含む。例えば、電気化学的活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)である。
【0114】
別の実施形態によると、本方法が、柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダースラリーを集電装置上にコーティングして、集電装置上に柔粘性イオン結晶、炭素、およびバインダー電極膜を得る工程をさらに含む。例えば、コーティング工程は、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われる。目的の変形例によると、コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法によって行われる。
【0115】
別の実施形態によると、本方法が、柔粘性イオン結晶、バインダー、および炭素電極膜を乾燥させる工程をさらに含む。
【0116】
別の実施形態によると、本方法が、柔粘性イオン結晶、バインダー、および炭素電極膜をカレンダー加工する工程をさらに含む。例えば、カレンダー加工工程はロールプレス法によって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】
図1は、一実施形態による電極材料を製造する方法のフロー図である。
【0118】
【
図2】
図2は、一実施形態による電極材料を製造する方法のフロー図である。
【0119】
【
図3】
図3は、実施例1(b)に記載される、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)について得られたプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルである。
【0120】
【
図4】
図4は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶1について得られた炭素-13核磁気共鳴(
13C NMR)スペクトルである。
【0121】
【
図5】
図5は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶1について得られたフッ素-19核磁気共鳴(
19F NMR)スペクトルである。
【0122】
【
図6】
図6は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶1について得られたリチウム-7核磁気共鳴(
7Li NMR)スペクトルである。
【0123】
【
図7】
図7は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶1についてそれぞれ(A)ネガティブモード(ESI
-)および(B)ポジティブモード(ESI
+)でエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を用いて高速液体クロマトグラフィー飛行時間型質量分析(HPLC TOF-MS)によって得られた質量スペクトルを示す。
【0124】
【
図8】
図8は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶1について得られた示差走査熱量測定分析の結果を示す。
【0125】
【
図9】
図9は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶11についてそれぞれ(A)ポジティブモード(ESI
+)および(B)ネガティブモード(ESI
-)でESIイオン化源を用いてHPLC TOF-MSによって得られた質量スペクトルを示す。
【0126】
【
図10】
図10は、実施例1(b)に記載される、柔粘性結晶11について得られた示差走査熱量測定分析の結果を示す。
【0127】
【
図11】
図11は、実施例1(d)に記載される、後官能化後の柔粘性結晶15について得られた
1H NMRスペクトルである。
【0128】
【
図12】
図12は、実施例1(d)に記載される、後官能化後の柔粘性結晶15について得られた示差走査熱量測定分析の結果を示す。
【0129】
【
図13】
図13は、実施例1(d)に記載される、後官能化後の柔粘性結晶15について得られた熱重量分析の結果を示す。
【0130】
【
図14】
図14は、実施例1(d)に記載される、後官能化後の柔粘性結晶16について得られた示差走査熱量測定分析の結果を示す。
【0131】
【
図15】
図15は、実施例1(e)に記載される、セルについての温度(1000/T、K
-1)の関数としてのイオン伝導率結果(S.cm
-1)を示すグラフである。
【0132】
【
図16】
図16は、実施例1(e)に記載される、セルについての温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0133】
【
図17】
図17は、実施例2に記載される、セル1(●)、2(■)、3(▼)、4(★)、および5(▲)についての温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0134】
【
図18】
図18は、実施例2に記載される、セル6(●)、7(▲)、8(×)、9(■)、10(◆、実線)、および11(◆、点線)についての温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0135】
【
図19】
図19は、(A)において、プロトン化DBUおよび実施例1(a)で調製したジエチレングリコールのビス-シリル化誘導体についての原子のナンバリングを示し、(B)および(C)においては、それぞれ、実施例5に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られた
1H NMRおよび
13C NMRスペクトルである。
【0136】
【
図20】
図20は、(A)および(B)において、それぞれ、実施例5に記載される、3週間にわたって安定化中間イオン-中性錯体について得られた
1H NMRスペクトルおよび
13C NMRスペクトルを示す。結果を、実験開始時(青色)、2日後(赤色)、3日後(緑色)、9日後(紫色)および21日後(黄色)に得た。
【0137】
【
図21】
図21は、実施例5に記載される、3週間にわたって安定化中間イオン-中性錯体について得られ、(A)では3.99ppm~4.30ppmの間、(B)では6ppm~10.4ppmの間で記録した
1H NMRスペクトルを示す。結果を、実験開始時(青色)、2日後(赤色)、3日後(緑色)、9日後(紫色)および21日後(黄色)に得た。
【0138】
【
図22】
図22は、実施例6(b)に記載される、柔粘性結晶30についてそれぞれ(A)ポジティブモード(ESI
+)および(B)ネガティブモード(ESI
-)でESIイオン化源を用いてHPLC TOF-MSによって得られた質量スペクトルを示す。
【0139】
【
図23】
図23は、実施例6(b)に記載される、柔粘性結晶30について得られた示差走査熱量測定分析の結果を示す。
【0140】
【
図24】
図24は、実施例7(b)に記載される、テトラカチオン性柔粘性イオン結晶について得られた
1H NMRスペクトルである。
【0141】
【
図25】
図25は、実施例7(b)に記載される、テトラカチオン性柔粘性イオン結晶について得られた
19F NMRスペクトルである。
【0142】
【
図26】
図26は、実施例7(b)に記載される、テトラカチオン性柔粘性イオン結晶について得られた温度の関数としての緩和時間のグラフである。
【0143】
【
図27】
図27は、実施例8(a)に記載される、電極1について得られた走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0144】
【
図28】
図28は、(A)では従来の混合方法によって得られた柔粘性結晶系正極の表面および(B)では実施例8(b)に記載される電極5の表面の写真を示す。
【0145】
【
図29】
図29は、実施例8(c)に記載される、セル12についてのサイクル数の関数としての放電容量(mAh/g)のグラフである。
【0146】
【
図30】
図30は、実施例9に記載される、セル13についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。
【0147】
【
図31】
図31は、実施例9に記載される、セル14についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。
【0148】
【
図32】
図32は、実施例9に記載される、セル15および16についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。
【0149】
【
図33】
図33は、実施例10に記載される、CH
2(▲)、NH(×)、FSI(◆)、TFSI(●)、LATP(Δ)、およびLi
+(■)の拡散速度の温度依存性を示す、拡散係数(D)の対数対1/k
BTのアレニウスプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0150】
詳細な説明
以下の詳細な説明および実施例は、例示のみを目的としており、本発明の範囲をさらに限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、それらは、本明細書によって定義されるものとして、含まれ得る全ての代替、修正および等価物を網羅することを意図している。本柔粘性イオン結晶、柔粘性イオン結晶系固体電解質組成物、柔粘性イオン結晶系固体電解質および前記柔粘性イオン結晶を含む電極材料の目的、利点および他の特徴、それらの調製方法および使用は、以下の非限定的な説明および添付の図面に関してなされた言及を読めばより明らかになり、よりよく理解されるであろう。
【0151】
適用可能な場合、プロセスフロー図を使用して実施形態を説明することができるが、本発明はそれらの図または対応する説明に限定されない。さらに、簡潔さおよび明確さのために、特に工程、反応物および/または生成物で図に過度に負担をかけないようにするために、全ての図が全ての工程、反応物および/または生成物を含むわけではない。いくつかの工程、反応物および/または生成物は単一の図に見出すことができ、他の図に示される本開示の工程、反応物および/または生成物をそこから容易に推測することができる。
【0152】
本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語および表現は、本技術に関連する場合、当業者によって一般的に理解される定義と同じ定義を有する。それにもかかわらず、本明細書で使用されるいくつかの用語および表現の定義を以下に提供する。
【0153】
「約」という用語が本明細書で使用される場合、これはおおよそ、その領域にある、またはその周囲を意味する。例えば、「約」という用語が数値に関して使用される場合、それはその公称値から10%の変動分だけ上下に数値を修飾する。この用語はまた、例えば、測定装置の実験誤差または丸めを考慮に入れることができる。
【0154】
値の範囲が本出願で言及される場合、範囲の下限および上限は、特に指示しない限り、定義に常に含まれる。値の範囲が本出願で言及される場合、全ての中間範囲および部分範囲、ならびに値の範囲に含まれる個々の値が定義に含まれる。
【0155】
「a」という冠詞が本出願において要素を導入するために使用される場合、それは「1のみ」の意味を有するのではなく、「1またはそれを超える」の意味を有する。当然、説明が、特定の工程、成分、要素または特徴が含まれ「得る」または「てもよい」と述べている場合、その特定の工程、成分、要素または特徴が各実施形態に含まれる必要はない。
【0156】
本明細書に記載される化学構造は、当分野の慣例に従って描かれる。また、描かれる炭素原子などの原子が不完全な原子価を含むように見える場合、その原子価は、明示的に描かれていなくても1またはそれを超える水素原子によって満たされると仮定される。
【0157】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖または分枝アルキル基を含む、1個~10個の間の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなどが挙げられ得る。アルキル基が2つの官能基の間に位置する場合、アルキルという用語は、メチレン、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基も含む。「Cm~Cnアルキル」および「Cm~Cnアルキレン」という用語は、それぞれ、示される数「m」個~示される数「n」個の炭素原子を有するアルキルまたはアルキレン基を指す。
【0158】
本明細書で使用される「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」という用語は、スピロ(原子を共有する)または縮合(少なくとも1つの結合を共有する)炭素環を含む、単環式または多環式系の3~12員を含む1またはそれを超える飽和または部分不飽和(非芳香族)炭素環式環を含む基を指し、必要に応じて置換されていてもよい。シクロアルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテン-1-イル、シクロペンテン-2-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロヘキシル、シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセン-2-イル、シクロヘキセン-3-イル、シクロヘプチルなどが挙げられる。シクロアルキル基が2つの官能基の間に位置する場合、シクロアルキレンという用語も使用され得る。「Cm~Cnシクロアルキル」および「Cm~Cnシクロアルキレン」という用語は、それぞれ、環構造中に示される数「m」個~示される数「n」個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルキレン基を指す。
【0159】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、スピロ(1個の原子を共有する)または縮合(少なくとも1つの結合を共有する)炭素環を含む、単環式または多環式系の3~12員を含む飽和または部分不飽和(非芳香族)炭素環式環を含む基を指し、必要に応じて置換されていてもよく、環構造中の1またはそれを超える原子は、置換もしくは非置換ヘテロ原子(例えば、N、O、SもしくはP)またはこのようなヘテロ原子を含有する基(例えば、NH、NRx(Rxは、アルキル、アシル、アリール、ヘテロアリールもしくはシクロアルキル基である)、PO2、SO、SO2、および他の同様の基)である。ヘテロシクロアルキル基は、炭素原子または可能であればヘテロ原子に(例えば、窒素原子を介して)連結していてもよい。ヘテロシクロアルキルという用語は、非置換ヘテロシクロアルキル基と置換ヘテロシクロアルキル基の両方を含む。ヘテロシクロアルキル基が2つの官能基の間に位置する場合、ヘテロシクロアルキレンという用語も使用され得る。「Cm~Cnヘテロシクロアルキル」および「Cm~Cnヘテロシクロアルキレン」という用語は、それぞれ、環構造中に示される数「m」個~示される数「n」個の炭素原子およびヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキレン基を指す。
【0160】
本明細書で使用される場合、「アリール」または「芳香族」という用語は、単環式または共役多環式環系(縮合または非縮合)の、4n+2個のπ(パイ)電子(nは1~3の整数である)を有し、合計6~12個の環員を有する芳香族基を指す。多環式系は、少なくとも1つの芳香環を含む。この基は、C1~C3アルキル基を介して直接連結または結合していてもよい。「アリール」または「芳香族」という用語はまた、置換基および非置換基を含む。アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ベンジル、フェネチル、1-フェニルエチル、トリル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、アズレニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、ペリレニルなどが挙げられる。アリール基が2つの官能基の間に位置する場合、アリーレンという用語も使用され得る。「Cm~Cnアリール」または「Cm~Cn芳香族」および「Cm~Cnアリーレン」という用語は、それぞれ、環構造中に示される数「m」個~示される数「n」個の炭素原子を有するアリールまたは芳香族およびアリーレン基を指す。
【0161】
「ヘテロアリール」、「ヘテロアリーレン」、または「複素芳香族」という用語は、単環式または共役多環式環系(縮合または非縮合)の、4n+2個のπ(パイ)電子(nは1~3の整数である)を有し、1~6個の置換もしくは非置換ヘテロ原子(例えば、N、OもしくはS)またはこのようなヘテロ原子を含む基(例えば、NH、NRx(Rxは、アルキル、アシル、アリール、ヘテロアリールもしくはシクロアルキル基である)、SO、および他の同様の基)を含む、5~12個の環員を有する芳香族基を指す。多環式系は、少なくとも1つの複素芳香環を含む。ヘテロアリールは、C1~C3アルキル基を介して直接連結または結合していてもよい(ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアラルキルとも呼ばれる)。ヘテロアリール基は、炭素原子または可能であればヘテロ原子に(例えば、窒素原子を介して)連結していてもよい。「Cm~Cnヘテロアリール」という用語は、環構造中に示される数「m」個~示される数「n」個の炭素原子およびヘテロ原子を有するヘテロアリール基を指す。
【0162】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、指定された基上の1またはそれを超える水素原子が適切な置換基によって置き換えられていることを意味する。置換基の例としては、ハロゲン原子(すなわち、F、Cl、BrまたはI)およびシアノ、アミド、ニトロ、トリフルオロメチル、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、低級アルコキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ベンジル、アルコキシカルボニル、スルホニル、スルホネート、シラン、シロキサン、ホスホナト、ホスフィナトおよび他の同様の基が挙げられる。これらの置換基も、可能であれば、例えば、基がアルキル基、アルコキシ基、アリール基等を含有する場合に、置換されていてもよい。
【0163】
本技術は、少なくとも1つのグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった少なくとも1つの非局在化アニオンを含む柔粘性イオン結晶に関する。例えば、柔粘性イオン結晶はモノカチオン性またはマルチカチオン性であり得る。
【0164】
目的の変形例によると、柔粘性イオン結晶が、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと対になった非局在化アニオンを含むモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり得る。グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンは、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来プロトン性カチオンであり得、柔粘性イオン結晶はプロトン性モノカチオン性柔粘性イオン結晶であり得る。
【0165】
目的の別の変形例によると、柔粘性イオン結晶が、それぞれグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンのカチオン性部分と対になった、少なくとも2つの非局在化アニオンを含むマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり得る。例えば、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶は、ジカチオン性、トリカチオン性、テトラカチオン性、ペンタカチオン性またはヘキサカチオン性柔粘性イオン結晶であり得る。カチオン性部分が、前記カチオン性部分を分離する有機架橋基によって一緒に連結されることが理解されるべきである。
【0166】
一例によると、非局在化アニオンが、トリフルオロメタンスルホネート(またはトリフレート)[TfO]-、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[TFSI]-、ビス(フルオロスルホニル)イミド[FSI]-、2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート[TDI]-、ヘキサフルオロホスフェート[PF6]-およびテトラフルオロボレート[BF4]-からなる群から選択され得る。一例によると、非局在化アニオンが、[TFSI]-および[FSI]-からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、非局在化アニオンが[FSI]-である。
【0167】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、有機溶媒中の水素イオンに対する親和性およびプロトン化カチオン形態の電荷を非局在化する能力のために選択され得る。例えば、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基は、水素カチオンを窒素孤立電子対に結合させ得る。
【0168】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、非環式、単環式、または多環式構造を有し得る。
【0169】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、およびtert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、有機超強塩基がDBUまたはBEMPであり得る。
【0170】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンがプロトン性カチオンであり得る。
【0171】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基カチオンが少なくとも1つの架橋性官能基を含み得る。例えば、架橋性官能基は、シアネート基、アクリレート基、およびメタクリレート基からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、架橋性官能基が、C1~C10アルキル-アクリレート、C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-アクリレート、カルボニルアミノ-C1~C10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルアミノ-C1~C10アルキル-アクリレート基からなる群から選択され得る。当然、これらの架橋性基の少なくとも部分的に架橋されたバージョンも、この定義に含まれることが意図されている。
【0172】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、式1のアミジン有機超強塩基由来カチオン:
【化8】
(式中、
Aは、結合しているC-N基と共に、4~8員を含む必要に応じて置換された飽和、不飽和または芳香環を形成し;
Bは、結合しているアミジノ基と共に、4~8個の元素を含む必要に応じて置換された不飽和非芳香環を形成する)
(式中、
柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの2つまたはそれを超える数を分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレン、およびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
であり得る。
【0173】
別の例によると、Aがヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含み得る。Aは、C6~C12アリーレン、C5~C12ヘテロアリーレン、C3~C12シクロアルキレン、またはC3~C12ヘテロシクロアルキレンにさらに縮合していてもよい。
【0174】
別の例によると、Bがモノ不飽和であってもポリ不飽和であってもよく、C6~C12アリーレン、C5~C12ヘテロアリーレン、C3~C12シクロアルキレン、またはC3~C12ヘテロシクロアルキレンにさらに縮合していてもよい。
【0175】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、式2~8のカチオン:
【化9】
【化10】
(式中、
柔粘性イオン結晶はモノカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、水素原子、またはC
1~C
10アルキル-アクリレート、C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、カルボニルアミノ-C
1~C
10アルキル-アクリレート、カルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルオキシ-C
1~C
10アルキル-アクリレートから選択される直鎖もしくは分枝置換基である;あるいは
柔粘性イオン結晶はマルチカチオン性柔粘性イオン結晶であり、R
1は、カチオンの少なくとも2つを分離する必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C
6~C
12アリーレン、C
5~C
12ヘテロアリーレン、C
3~C
12シクロアルキレン、およびC
3~C
12ヘテロシクロアルキレンから選択される)
の1つであり得る。
【0176】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、[R1-DBU]+、[R1-DBN]+、[R1-MTBD]+、[R1-BEMP]+、[R1-BTPP]+および[R1-P1-t-Bu]+からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが[R1-DBU]+または[R1-BEMP]+である。
【0177】
別の例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが、[H-DBU]+、[H-DBN]+、[H-MTBD]+、[H-BEMP]+、[H-BTPP]+および[H-P1-t-Bu]+からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンが[H-DBU]+または[H-BEMP]+である。
【0178】
別の例によると、柔粘性イオン結晶が、式9:
【化11】
(式中、
A、BおよびR
1は本明細書で定義される通りであり;
X
-は本明細書で定義される非局在化アニオンである)
のものであり得る。
【0179】
別の例によると、柔粘性イオン結晶が、式10~16の柔粘性イオン結晶:
【化12】
【化13】
(式中、
R
1は本明細書で定義される通りであり;
X
-は本明細書で定義される非局在化アニオンである)
の1つであり得る。
【0180】
別の例によると、柔粘性イオン結晶が、[R1-DBU][OTf]、[R1-DBU][TFSI]、[R1-DBU][FSI]、[R1-DBU][TDI]、[R1-DBU][PF6]、[R1-DBU][BF4]、[R1-DBN][OTf]、[R1-DBN][TFSI]、[R1-DBN][FSI]、[R1-DBN][TDI]、[R1-DBN][PF6]、[R1-DBN][BF4]、[R1-MTBD][OTf]、[R1-MTBD][TFSI]、[R1-MTBD][FSI]、[R1-MTBD][TDI]、[R1-MTBD][PF6]、[R1-MTBD][BF4]、[R1-BEMP][OTf]、[R1-BEMP][TFSI]、[R1-BEMP][FSI]、[R1-BEMP][TDI]、[R1-BEMP][PF6]、[R1-BEMP][BF4]、[R1-P1-t-Bu][OTf]、[R1-P1-t-Bu][TFSI]、[R1-P1-t-Bu][FSI]、[R1-P1-t-Bu][TDI]、[R1-P1-t-Bu][PF6]、[R1-P1-t-Bu][BF4]、[R1-BTPP][OTf]、[R1-BTPP][TFSI]、[R1-BTPP][FSI]、[R1-BTPP][TDI]、[R1-BTPP][PF6]、および[R1-BTPP][BF4]からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、柔粘性イオン結晶が[R1-DBU][FSI]または[R1-BEMP][FSI]である。
【0181】
別の例によると、柔粘性イオン結晶が、[H-DBU][OTf]、[H-DBU][TFSI]、[H-DBU][FSI]、[H-DBU][TDI]、[H-DBU][PF6]、[H-DBU][BF4]、[H-DBN][OTf]、[H-DBN][TFSI]、[H-DBN][FSI]、[H-DBN][TDI]、[H-DBN][PF6]、[H-DBN][BF4]、[H-MTBD][OTf]、[H-MTBD][TFSI]、[H-MTBD][FSI]、[H-MTBD][TDI]、[H-MTBD][PF6]、[H-MTBD][BF4]、[H-BEMP][OTf]、[H-BEMP][TFSI]、[H-BEMP][FSI]、[H-BEMP][TDI]、[H-BEMP][PF6]、[H-BEMP][BF4]、[H-P1-t-Bu][OTf]、[H-P1-t-Bu][TFSI]、[H-P1-t-Bu][FSI]、[H-P1-t-Bu][TDI]、[H-P1-t-Bu][PF6]、[H-P1-t-Bu][BF4]、[H-BTPP][OTf]、[H-BTPP][TFSI]、[H-BTPP][FSI]、[H-BTPP][TDI]、[H-BTPP][PF6]、および[H-BTPP][BF4]からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、柔粘性イオン結晶が[H-DBU][FSI]または[H-BEMP][FSI]である。
【0182】
本技術はまた、式17のビス-シリル化化合物:
【化14】
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基であり;
R
2は、独立して、各出現において、アルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択される)
の存在下、本明細書に記載されるグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオン、プロトン源および本明細書に記載される非局在化アニオンの反応によって得られる安定化中間イオン-中性錯体に関する。
【0183】
一例によると、式17のビス-シリル化化合物は、グリセロール(グリセリン)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-プロパンジオール(またはプロピレングリコール(PG))、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール(またはジメチレングリコール)、1,3-ブタンジオール(またはブチレングリコール)、1,2-ペンタンジオール、エトヘキサジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ポリカプロラクトンジオール、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、ジエチレングリコール(またはエチレンジグリコール)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジオール、ならびに他の同様のグリコールおよびジオール、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物のビス-シリル化誘導体である。目的の変形例によると、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物がジエチレングリコールまたはグリセロールである。
【0184】
別の例によると、安定化中間イオン-中性錯体が、式18~24の錯体:
【化15】
(式中、
Z、X
-およびR
2は本明細書で定義される通りである)
の1つであり得る。
【0185】
一例によると、式17のビス-シリル化化合物のシラン基が開裂され得、グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンのN-Hプロトンが水素結合に関与して、NHO安定化中間イオン-中性錯体を形成し得る。例えば、式17のビス-シリル化化合物の約1%のみが開裂シラン基で終わる。例えば、NHO安定化中間イオン-中性錯体は反応の副生成物である。
【0186】
別の例によると、NHO安定化中間イオン-中性錯体が、式25~31の錯体:
【化16】
【化17】
(式中、
ZおよびR
2は本明細書で定義される通りである)
の1つであり得る。
【0187】
本技術はまた、少なくとも1つの本明細書で定義される柔粘性イオン結晶と、少なくとも1つの追加の成分および/または少なくとも1つのポリマーとを含む柔粘性イオン結晶組成物に関する。
【0188】
一例によると、追加の成分が、溶媒、イオン伝導体、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子(例えば、ナノセラミック)、可塑剤、および他の同様の成分、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、追加の成分は充填剤添加剤であり得、金属酸化物粒子またはナノ粒子を含み得る。例えば、充填剤添加剤は、二酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al2O3)および/または二酸化ケイ素(SiO2)の粒子またはナノ粒子を含み得る。
【0189】
別の例によると、ポリマーが、固体高分子電解質(SPE)に一般的に使用されるポリマーなどのポリマーであり得る。固体高分子電解質は、一般に、1またはそれを超える必要に応じて架橋された固体極性ポリマー、および塩(例えば、上に定義される)を含み得る。ポリ(エチレンオキシド)(PEO)に基づくポリマーなどのポリエーテル型ポリマーが使用され得るが、いくつかの他の適合性ポリマーも固体高分子電解質の調製について知られており、同様に企図される。ポリマーは架橋されていてもよい。このようなポリマーの例としては、分枝ポリマー、例えば、米国特許第7,897,674 B2号(Zaghibら)(US’674)に記載されるポリマーなどのスターポリマーまたはコームポリマーが挙げられる。
【0190】
いくつかの例によると、ポリマーが、少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび必要に応じて少なくとも1つの架橋性セグメントで構成されるブロックコポリマーであり得る。例えば、リチウムイオン溶媒和セグメントは、式32の反復単位:
【化18】
(式中、
R
3は、水素原子、C
1~C
10アルキル基または-(CH
2-O-R
4R
5)基から選択され;
R
4は(CH
2-CH
2-O)
mであり;
R
5は水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され;
yは10~200,000の範囲から選択される整数であり;
mは0~10の範囲から選択される整数である)
を有するホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0191】
別の例によると、コポリマーの架橋性セグメントが、照射または熱処理によって多次元的に架橋性である少なくとも1つの官能基を含むポリマーセグメントである。
【0192】
別の例によると、柔粘性イオン結晶組成物中のポリマーの濃度が少なくとも10重量%であり得る。例えば、柔粘性イオン結晶組成物中のポリマーの濃度は、約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約45重量%、または約15重量%~約45重量%、または約20重量%~約45重量%、または約25重量%~約45重量%、または約30重量%~約45重量%、または約35重量%~約45重量%、または約40重量%~約45重量%の範囲(上限および下限を含む)であり得る。目的の変形例によると、柔粘性イオン結晶組成物が、約40重量%のポリマーおよび60重量%の本明細書に記載される柔粘性イオン結晶を含む。柔粘性イオン結晶組成物中のポリマーの最適濃度は使用されるポリマーに依存することが理解されるべきである。
【0193】
別の例によると、追加の成分が、ガーネット、NASICON型、LISICON型、チオ-LISICON型、LIPON型、ペロブスカイト型、アンチペロブスカイト型、またはアルジロダイト型構造を有する化合物を含むか、あるいは結晶相、非晶相および/もしくはガラス-セラミック相のM-P-S型、M-P-S-O型、M-P-S-X型、M-P-S-O-X型(式中、Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属であり、XはF、Cl、Br、Iもしくはこれらの少なくとも2つの組み合わせである)の化合物、またはこれらの少なくとも2つの混合物を含む無機粒子であり得る。
【0194】
別の例によると、追加の成分が、式MLZO(例えば、M7La3Zr2O12、M(7-a)La3Zr2AlbO12、M(7-a)La3Zr2GabO12、M(7-a)La3Zr(2-b)TabO12およびM(7-a)La3Zr(2-b)NbbO12);MLTaO(例えば、M7La3Ta2O12、M5La3Ta2O12およびM6La3Ta1.5Y0.5O12);MLSnO(例えば、M7La3Sn2O12);MAGP(例えば、M1+aAlaGe2-a(PO4)3);MATP(例えば、M1+aAlaTi2-a(PO4)3);MLTiO(例えば、M3aLa(2/3-a)TiO3);MZP(例えば、MaZrb(PO4)c);MCZP(例えば、MaCabZrc(PO4)d);MGPS(例えば、M10GeP2S12などのMaGebPcSd);MGPSO(例えば、MaGebPcSdOe);MSiPS(例えば、M10SiP2S12などのMaSibPcSd);MSiPSO(例えば、MaSibPcSdOe);MSnPS(例えば、M10SnP2S12などのMaSnbPcSd);MSnPSO(例えば、MaSnbPcSdOe);MPS(例えば、M7P3S11などのMaPbSc);MPSO(例えば、MaPbScOd);MZPS(例えば、MaZnbPcSd);MZPSO(例えば、MaZnbPcSdOe);xM2S-yP2S5;xM2S-yP2S5-zMX;xM2S-yP2S5-zP2O5;xM2S-yP2S5-zP2O5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5;xM2S-yM2O-zP2S5-wMX;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5;xM2S-yM2O-zP2S5-wP2O5-vMX;xM2S-ySiS2;MPSX(例えば、M7P3S11X、M7P2S8XおよびM6PS5XなどのMaPbScXd);MPSOX(例えば、MaPbScOdXe);MGPSX(例えば、MaGebPcSdXe);MGPSOX(例えば、MaGebPcSdOeXf);MSiPSX(例えば、MaSibPcSdXe);MSiPSOX(例えば、MaSibPcSdOeXf);MSnPSX(例えば、MaSnbPcSdXe);MSnPSOX(例えば、MaSnbPcSdOeXf);MZPSX(例えば、MaZnbPcSdXe);MZPSOX(例えば、MaZnbPcSdOeXf);M3OX;M2HOX;M3PO4;M3PS4;およびMaPObNc(a=2b+3c-5)
(式中、
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはこれらの組み合わせであり、Mがアルカリ土類金属イオンを含む場合、Mの数は電気的中性を達成するように調整され;
Xは、F、Cl、Br、Iまたはこれらの組み合わせから選択され;
a、b、c、d、e、およびfは0以外の数であり、各式において独立して、電気的中性を達成するように選択され;
v、w、x、y、およびzは0以外の数であり、各式において独立して、安定な化合物を得るように選択される)
の無機化合物の少なくとも1つを含む、結晶相、非晶相、および/もしくはガラス-セラミック相、またはこれらの少なくとも2つの混合物の無機粒子であり得る。
【0195】
別の例によると、追加の成分がセラミックまたはガラスセラミックであり得る。例えば、追加の成分は、Li10GeP2S12、Li6PS5Cl、Li2S-P2S5、Li7P3S11、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li9.6P3S12、Li3.25P0.95S4ならびに他の同様のセラミックおよびガラス-セラミックなどの硫化物系セラミックまたはガラス-セラミックであり得る。目的の変形例によると、硫化物系セラミックまたはガラス-セラミックがLi6PS5Clである。柔粘性イオン結晶組成物中のセラミックまたはガラス-セラミックの濃度は少なくとも50重量%であり得る。例えば、柔粘性イオン結晶組成物中のセラミックまたはガラス-セラミックの濃度は、約50重量%~約95重量%、または約55重量%~約95重量%、または約60重量%~約95重量%、または約65重量%~約95重量%、または約70重量%~約95重量%、または約75重量%~約95重量%、または約80重量%~約95重量%、または約85重量%~約95重量%、または約90重量%~約95重量%の範囲(上限および下限を含む)であり得る。目的の変形例によると、柔粘性イオン結晶組成物が、約90重量%のLi6PS5Clおよび10重量%の本明細書に記載される柔粘性イオン結晶を含む。柔粘性イオン結晶組成物中の追加の成分の最適濃度は、使用される追加の成分に依存する(例えば、粒径、それらの比表面積等に依存する)ことが理解されるべきである。
【0196】
一例によると、柔粘性イオン結晶が任意の適合性合成方法によって調製され得る。例えば、柔粘性イオン結晶の合成は、プロトン交換反応、対イオン交換反応および任意の他の適切な反応の少なくとも1つを含み得る。
【0197】
別の例によると、プロトン性柔粘性イオン結晶を合成する方法が少なくとも2つの合成工程を含み得る。第1の工程は、アミジン、グアニジンまたはホスファゼン型の中性有機超強塩基を少なくとも1つのプロトン源と反応させて、プロトン化カチオンを含む錯体、付加物またはイオン対を形成することを伴い得る。例えば、有機超強塩基は、プロトンを除去する能力(またはプロトンに対する親和性)のために選択され得る。例えば、有機超強塩基は、非求核性有機超強塩基または弱求核性有機超強塩基であり得る。目的の変形例によると、有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP1-t-Buまたはその誘導体からなる群から選択され得る。例えば、有機超強塩基はDBUまたはBEMPであり得る。例えば、第2の工程は、第1の工程で形成されたプロトン化カチオンを含む錯体、付加物またはイオン対と上記の非局在化アニオンに基づくイオン性塩との間の対イオン交換反応を伴い得る。例えば、イオン性塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩などのアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。例えば、イオン性塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiOTf)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)からなる群から選択されるリチウム塩であり得る。目的の変形例によると、リチウム塩がLiFSIである。
【0198】
別の例によると、柔粘性イオン結晶が、ブレンステッド酸からブレンステッド塩基へのプロトン移動によって形成されるプロトン性柔粘性イオン結晶であり得る。例えば、ブレンステッド塩基は、アミジン、グアニジンまたはホスファゼン型の中性有機超強塩基であり得、プロトンを除去する能力(またはプロトンに対する親和性)のために選択され得る。目的の変形例によると、有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP1-t-Bu、またはその誘導体からなる群から選択され得る。例えば、有機超強塩基はDBNまたはBEMPであり得る。目的の別の変形例によると、ブレンステッド酸が、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸(HTFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸(HFSI)、2-(トリフルオロメチル)-1H-イミダゾール-4,5-ジカルボニトリル(HTDI)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)、およびテトラフルオロホウ酸(HBF4)からなる群から選択され得る。目的の変形例によると、ブレンステッド酸がHFSIである。
【0199】
よって、本技術はまた、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの上記の有機超強塩基を本明細書で定義される非局在化アニオンに基づくブレンステッド酸と反応させて、柔粘性イオン結晶を形成する工程
を含む方法に関する。
【0200】
したがって、本技術はまた、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの上記の有機超強塩基をプロトン源と反応させて、プロトン化カチオンおよび対イオンを含む少なくとも1つの錯体を形成する工程;および
(ii)前記プロトン化カチオンおよび対イオンを含む錯体を、上記の非局在化アニオンに基づく少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法に関する。
【0201】
一例によると、有機超強塩基が、アミジン、グアニジンまたはホスファゼン型の中性有機超強塩基である。目的の変形例によると、有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPP、およびP1-t-Bu、またはその誘導体からなる群から選択される。例えば、有機超強塩基はDBUまたはBEMPであり得る。
【0202】
別の例によると、本方法が、工程(i)の前に行われる有機超強塩基を調製する工程をさらに含む。いくつかの例では、有機超強塩基が、芳香族ジアルデヒドと1,2-ジアミンの縮合によって調製される中性多環式アミジン有機超強塩基であり得る。例えば、中性多環式アミジン有機超強塩基は、Braddockら(Braddock,D.C.ら「The reaction of aromatic dialdehydes with enantiopure 1,2-diamines:an expeditious route to enantiopure tricyclic amidines.」Tetrahedron:Asymmetry 21.24(2010):2911-2919)によって記載される方法によって調製され得る。
【0203】
別の例によると、本明細書で定義される非局在化アニオンに基づくイオン性塩が、本明細書で定義される非局在化アニオンに基づくリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩などのアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。例えば、イオン性塩は、式Mn+[(FSI)n]n-(式中、Mn+は、Na+、K+、Li+、Ca2+およびMg2+イオンからなる群から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンである)のものであり得る。目的の変形例によると、Mn+がLi+である。
【0204】
別の例によると、2つの反応工程が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われ得る。目的の変形例によると、2つの反応工程が順次に行われ、少なくとも1つの有機超強塩基をプロトン源と反応させる工程が、プロトン化カチオンおよび対イオンを含む錯体を非局在化アニオンに基づくイオン性塩と反応させる工程の前に行われる。目的の別の変形例によると、全ての反応物が一緒に混合されて、適切な反応条件下で反応するように放置されてもよい。
【0205】
別の例によると、合成が溶媒の存在下で行われ得る。例えば、溶媒はプロトンの源として作用し得、プロトンを容易に供与する能力、または塩基および/もしくは溶媒コンジュゲート酸カチオンを安定化する能力のために選択され得る。例えば、塩基および/または溶媒コンジュゲート酸カチオンの安定化は、溶媒和、非共有結合相互作用(例えば、水素結合および双極子-双極子相互作用)、またはファンデルワールス相互作用を通して達成され得る。理論によって束縛されることを望むものではないが、効率的に可溶化する能力、したがって、有機超強塩基のプロトン化形態の溶媒和安定性を改善する能力は、反応収率を有意に改善し得る。例えば、溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルカーボネート(DMC)、アセトニトリル(ACN)、エタノール(EtOH)、およびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される極性溶媒であり得る。目的の変形例によると、溶媒がACNであり得る。
【0206】
目的の一例によると、柔粘性イオン結晶の合成が、スキーム1(反応の副生成物は図示せず)に示される方法によって行われ得る:
【化19】
スキーム1
(式中、
M
n+は、Na
+、K
+、Li
+、Ca
2+およびMg
2+イオンからなる群から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンである)。
【0207】
目的の変形例によると、Mn+がLi+である。
【0208】
別の例によると、合成が適切な酸などの第2のプロトン源の存在下で行われ得る。第2のプロトン源は、例えば、プロトンを容易に供与する能力、または塩基および/もしくは溶媒コンジュゲート酸カチオンを安定化する能力のために選択され得る。例えば、第2のプロトン源は、柔粘性イオン結晶を得るための活性化剤および/または触媒としても作用し得、反応収率を実質的に改善し得る。第2のプロトン源の例としては、限定されないが、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸およびトリフルオロ酢酸)、p-トルエンスルホン酸(またはトシル酸)、硫酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、および他の同様の酸が挙げられる。目的の変形例によると、酸がギ酸である。
【0209】
目的の一例によると、柔粘性イオン結晶の合成が、スキーム2(反応の副生成物は図示せず)に示される方法によって行われ得る:
【化20】
スキーム2
(式中、
M
n+は、Na
+、K
+、Li
+、Ca
2+およびMg
2+イオンからなる群から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンである)。
【0210】
別の例によると、合成が、安定剤および/またはプロトン源としても作用し得る活性化剤の存在下で行われ得る。活性化剤は、有機超強塩基と反応して、安定な中間非共有結合錯体を形成し得る。例えば、活性化剤は、求電子求核活性化による前記安定な中間非共有結合錯体の形成を通して柔粘性イオン結晶の形成を実質的に促進し得る。例えば、安定な中間非共有結合錯体はNHO安定化中間イオン-中性錯体であり得る。例えば、活性化剤は上記のビス-シリル化化合物であり得る。
【0211】
目的の一例によると、柔粘性イオン結晶の合成が、スキーム3(反応の副生成物は図示せず)に示される方法によって行われ得る:
【化21】
スキーム3
(式中、
M
n+は、Na
+、K
+、Li
+、Ca
2+およびMg
2+イオンからなる群から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンであり;
R
2は本明細書で定義される通りである)。
【0212】
別の例によると、本方法は、ビス-シリル化化合物を調製する工程をさらに含む。ビス-シリル化化合物の調製は、シリル化試薬によって誘導体化され得る少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物のシリル化によって行われ得、例えば、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物は上記の通りであり得る。例えば、シリル化反応は、塩基触媒シリル化反応によって行われ得、酸性水素(または活性水素)のシリル基(例えば、アルキルシリル基)、例えばトリアルキルシリル基による置換を伴い得る。例えば、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物を塩基で脱プロトン化し、次いで、少なくとも1つのシリル化試薬で処理することができる。塩基触媒シリル化反応は、任意の既知の適合性塩基の存在下で行われ得る。例えば、塩基は、イミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、他の同様の求核性ルイス塩基およびこれらの組み合わせなどの求核性ルイス塩基であり得る。目的の変形例によると、塩基がイミダゾールである。例えば、シリル化反応は、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせなどの極性非プロトン性溶媒中で行われ得る。目的の変形例によると、非プロトン性溶媒が、THF、DCM、またはDCMが有意に優勢であるDCMとDMFの組み合わせである。
【0213】
例えば、シリル化試薬は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物に対するその反応性および選択性、シリル化誘導体および反応副生成物の安定性のために選択され得る。例えば、万能シリル化試薬を使用して、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物のヒドロキシル基を誘導体化することができる。シリル化試薬の非限定的な例としては、トリアルキルシリルクロリド、トリメチルシリルクロリド(TMS-Cl)、トリエチルシリルクロリド(TES-Cl)、イソプロピルジメチルシリルクロリド(IPDMS-Cl)、ジエチルイソプロピルシリルクロリド(DEIPS-Cl)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-ClまたはTBS-Cl)、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド(TBDPS-ClまたはTPS-Cl)、トリイソプロピルシリルクロリド(TIPS-Cl)、窒素含有シリルエーテル、N,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アセトアミド(BSA)、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MSTFA)、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDEA)、N-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIまたはTSIM)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)およびN-メチル-N-(トリメチルシリル)アセトアミド(MSA)が挙げられる。目的の変形例によると、シリル化試薬が、TMS-ClまたはTBDMS-Clなどのトリアルキルシリルクロリドを含む。
【0214】
例えば、TBDMS-Clを使用してヒドロキシル基上の活性水素を置き換えることができ、ビス-シリル化化合物の合成は、スキーム4(a)または4(b)に示されるシリル化反応によって行われ得る:
【化22】
スキーム4(a)
【化23】
スキーム4(b)
(式中、
Zは、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝C
1~C
10アルキレンオキシC
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C
1~C
10アルキレンオキシ)C
1~C
10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリカーボネート、直鎖または分枝ポリチオカーボネート、直鎖または分枝ポリアミド、直鎖または分枝ポリイミド、直鎖または分枝ポリウレタン、直鎖または分枝ポリシロキサン、直鎖または分枝チオエーテル、直鎖または分枝ポリホスファゼン、直鎖または分枝ポリエステル、および直鎖または分枝ポリチオエステルから選択される置換または非置換有機基である)。
【0215】
シリル化試薬としてTBDMS-Clを使用し、ケイ素に対する求核攻撃を伴う、シリル化反応の一般的な例をスキーム4(a)に示す。例えば、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物は、2当量のTBDMS-Clと反応して、ビス-シリル化化合物および反応副生成物としての塩酸(HCl)を形成し得る。反応は、誘導体化されるヒドロキシル基当たり1つのシリル基を伴うことが理解されるべきである。
【0216】
シリル化反応の別の例は、Sharplessら(Sharpless,K.B.ら「SuFEx‐Based Synthesis of Polysulfates」Angewandte Chemie International Edition 53.36(2014):9466-9470(補足資料))によって記載される。このシリル化反応の一例をスキーム4(b)に示す。例えば、シリル化試薬は、約1:1または約1:0.9の(誘導体化される-OH基):(シリル基)モル比で添加され得る。あるいは、シリル化試薬は過剰に添加され得る。例えば、シリル化試薬の量は、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約5当量の範囲(上限および下限を含む)であり得る。例えば、シリル化試薬の量は、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2当量~約4.5当量、または約2当量~約4当量、または約2当量~約3.75当量、または約2当量~約3.5当量の範囲(上限および下限を含む)であり得る。目的の変形例によると、シリル化試薬の量が、化合物がそれぞれ2つおよび3つのヒドロキシル基を含む場合、1当量の少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物当たり約2.2当量~約3.3当量の範囲であり得る。
【0217】
別の例によると、シリル化反応が、室温で実質的に完全な反応を可能にするのに十分な期間にわたって行われ得る。例えば、シリル化反応は、スキーム4(a)に示される反応によって行われる場合、少なくとも15時間行われ得る。例えば、シリル化反応は、約15時間~約24時間の範囲(上限および下限を含む)の期間にわたって行われ得る。あるいは、シリル化反応は、スキーム4(b)に示される反応によって行われる場合、約3時間行われ得る。
【0218】
溶媒としてのDCMの使用は反応速度に対する有意な効果を有することが理解されるべきである。よって、DCMは、THFまたはDMFなどの他の溶媒と比較して、ビス-シリル化化合物のより大規模な合成に使用され得る。
【0219】
よって、別の例によると、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物の調製が、プロトン化反応およびアニオン交換反応を伴い得る。
【0220】
この機序の一般的な例はスキーム3に示されており、スキーム4(a)または4(b)で得られたビス-シリル化化合物の存在下でDBUを金属ビス(フルオロスルホニル)イミドと反応させて、柔粘性イオン結晶および副生成物(スキーム3では図示せず)を得ることを伴う。
【0221】
別の例によると、活性化剤(すなわち、ビス-シリル化化合物)は、ほぼ等モル量の有機超強塩基と反応し得る。あるいは、有機超強塩基は過剰に添加され得、例えば、過剰は約0.01mol%~約10mol%の範囲(上限および下限を含む)であり得る。目的の変形例によると、活性化剤がほぼ等モル量の有機超強塩基と反応し得る。
【0222】
別の例によると、両反応工程が、実質的に完全な反応を可能にするのに十分に高い温度で、十分な期間にわたって行われ得る。例えば、両反応工程は、約20℃~約200℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われ得る。例えば、2つの反応工程は、約40℃~約80℃、または約45℃~約75℃、または約50℃~約70℃、または約55℃~約65℃の範囲(上限および下限を含む)の温度で行われ得る。例えば、両反応工程は少なくとも4日間行われ得る。
【0223】
別の例によると、本方法が、任意の方法工程中に生成された少なくとも1つの副生成物を除去するための工程をさらに含む。例えば、除去工程は蒸留または蒸発によって行われ得る。例えば、副生成物は、除去される副生成物の沸点に応じて、周囲大気圧でまたは真空下で除去され得る。副生成物は、副生成物を溶解するが柔粘性イオン結晶を溶解しない任意の適切な溶媒で洗浄することによって除去され得る。例えば、副生成物はまた、必要に応じて、1つより多くの方法によって除去され得る。目的の変形例によると、副生成物は、抽出によって、例えば、副生成物をDCMに溶解し、水およびブラインで抽出することによって除去され得る。
【0224】
別の例によると、本方法は、官能化工程、例えば、その架橋を考慮した柔粘性イオン結晶の官能化をさらに含む。例えば、柔粘性イオン結晶の官能化は、柔粘性イオン結晶を官能化するために、例えば、少なくとも1つの上に定義される官能基、例えば架橋性官能基を導入することによって、必要に応じて行われ得る。架橋性官能基は、柔粘性イオン結晶のカチオン上またはカチオン骨格の側鎖上に存在し得る。
【0225】
別の例によると、反応工程および官能化工程が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われ得る。目的の変形例によると、反応工程および官能化工程が順次に実施され、反応工程が官能化工程の前に実施される。例えば、官能化工程は後官能化工程である。
【0226】
別の例によると、官能化工程が、プロトン化カチオンと少なくとも1つの架橋性官能基との間の反応によって行われ得る。例えば、官能化工程は、プロトン化カチオンとC1~C10アルキル-アクリレート、C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-メタクリレート、カルボニルオキシ-C1~C10アルキル-アクリレート、カルボニルアミノ-C1~C10アルキル-メタクリレート、およびカルボニルアミノ-C1~C10アルキル-アクリレート基からなる群から選択される少なくとも1つの架橋性官能基との間の反応によって行われ得る。
【0227】
別の例によると、後官能化工程がスキーム5(反応副生成物は図示せず)に示される反応によって行われ得る:
【化24】
スキーム5
【0228】
別の例によると、本方法が、上記の柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を含む懸濁液をコーティングする工程をさらに含む。例えば、前記コーティング工程は、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われ得る。目的の変形例によると、前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法またはスロットダイコーティング法によって行われる。一例によると、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を含む懸濁液が、基板または支持膜(例えば、シリコン、ポリプロピレンまたはシリコン処理されたポリプロピレンで作られた基板)上にコーティングされ得る。例えば、その後、前記基板または支持膜は除去され得る。別の例によると、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を含む懸濁液が電極上に直接コーティングされ得る。
【0229】
別の例によると、本方法が、上に定義される柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を乾燥させる工程をさらに含む。一例によると、乾燥工程が、残留溶媒を除去するために行われ得る。別の例によると、乾燥工程およびコーティング工程が同時におよび/または別々に行われ得る。
【0230】
別の例によると、本方法が、上に定義される柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶を架橋する工程をさらに含む。例えば、カチオンは、前記柔粘性イオン結晶の架橋を可能にする少なくとも1つの官能基を含む。別の例によると、架橋工程が、UV照射によって、熱処理によって、マイクロ波照射によって、電子線下で、ガンマ線照射によって、またはX線照射によって行われ得る。目的の変形例によると、架橋工程がUV照射によって行われる。目的の別の変形例によると、架橋工程が熱処理によって行われる。目的の別の変形例によると、架橋工程が電子線下で行われる。別の例によると、架橋工程が、架橋剤、熱開始剤、光開始剤、触媒、可塑剤、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせの存在下で行われ得る。例えば、光開始剤は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651)である。例えば、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶は、架橋後に凝固し得る。
【0231】
本技術はまた、本出願で定義されるマルチカチオン性柔粘性イオン結晶またはマルチカチオン性柔粘性イオン結晶組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)上記の有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させて、上記の有機架橋基によって分離(または連結)され、対イオンと対になった少なくとも2つの有機超強塩基系カチオン性部分を含むマルチカチオン性錯体を形成する工程;および
(ii)前記マルチカチオン性錯体を、本明細書で定義される非局在化アニオンに基づく少なくとも1つのイオン性塩と反応させる工程
を含む方法に関する。
【0232】
一例によると、有機超強塩基が、中性アミジン、グアニジンまたはホスファゼン型有機超強塩基である。目的の変形例によると、有機超強塩基が、DBU、DBN、MTBD、BEMP、BTPPおよびP1-t-Bu、またはその誘導体からなる群から選択される。例えば、有機超強塩基はDBUまたはBEMPであり得る。
【0233】
別の例によると、有機架橋化合物が、上記の有機架橋基および少なくとも2つのアニオン性脱離基を含む。有機架橋化合物のアニオン性脱離基は、それらの脱離基能力のために選択され得る。任意の適合性アニオン性脱離基が企図される。アニオン性脱離基の非限定的な例としては、F-、Cl-、Br-およびI-などのハライドが挙げられる。目的の変形例によると、アニオン性脱離基がBr-である。
【0234】
別の例によると、有機架橋基が必要に応じて置換された有機架橋基であり、直鎖または分枝C1~C10アルキレン、直鎖または分枝C1~C10アルキレンオキシC1~C10アルキレン、直鎖または分枝ポリ(C1~C10アルキレンオキシ)C1~C10アルキレン、直鎖または分枝ポリエーテル、直鎖または分枝ポリエステル、C6~C12アリーレン、C5~C12ヘテロアリーレン、C3~C12シクロアルキレン、およびC3~C12ヘテロシクロアルキレンからなる群から選択される。目的の変形例によると、有機架橋基がC6~C12アリーレンである。いくつかの例では、有機架橋基が1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンである。
【0235】
別の例によると、2つの反応工程が、互いに時間的に順次に、同時にまたは部分的に重複して行われ得る。目的の変形例によると、2つの反応工程が順次に行われ、有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が、マルチカチオン性錯体をイオン性塩と反応させる工程の前に行われる。目的の別の変形例によると、全ての反応物が一緒に混合されて、適切な反応条件下で反応するように放置されてもよい。
【0236】
別の例によると、有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が溶媒の存在下で行われ得る。例えば、溶媒は、DCM、DMC、ACN、EtOH、およびこれらの少なくとも2つの混和性組み合わせからなる群から選択される極性溶媒であり得る。目的の変形例によると、溶媒がDCMであり得る。
【0237】
別の例によると、有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が、トリエチルアミン(Et3N)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(iPr2NEt)、ピリジン、およびピリジン誘導体などの塩基の存在下で行われ得る。目的の変形例によると、塩基がEt3Nである。
【0238】
目的の一例によると、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶の合成が、スキーム6(反応の副生成物は図示せず)に示される方法によって行われ得る:
【化25】
スキーム6
(式中、
M
n+は、Na
+、K
+、Li
+、Ca
2+およびMg
2+イオンからなる群から選択されるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンである)。
【0239】
別の例によると、有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程が、マルチカチオン性錯体を回収することをさらに含み得る。例えば、マルチカチオン性錯体を回収する工程は遠心分離によって行われ得る。遠心分離は、マルチカチオン性錯体を回収するのに十分な毎分回転数でおよび期間にわたって行われ得る。例えば、遠心分離は約5000rpmで約10分間行われ得る。
【0240】
別の例によると、2つの反応工程が、実質的に完全な反応を可能にするのに十分に高い温度で、十分な期間にわたって行われ得る。例えば、有機超強塩基を有機架橋化合物と反応させる工程は室温で約4日間行われ得る。例えば、マルチカチオン性錯体をイオン性塩と反応させる工程は室温で約3日間行われ得る。
【0241】
別の例によると、本方法が、例えば遠心分離によって、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶を回収する工程をさらに含む。遠心分離は、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶を回収するのに十分な毎分回転数でおよび期間にわたって行われ得る。
【0242】
別の例によると、本方法が、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶を乾燥させる工程をさらに含む。乾燥工程は、マルチカチオン性柔粘性イオン結晶を実質的に乾燥させるのに十分に高い温度で、十分な期間にわたって行われ得る。例えば、乾燥工程は、真空下、約45℃の温度で約48時間行われ得る。
【0243】
別の例によると、本方法が、任意の方法工程中に生成された少なくとも1つの副生成物を除去する工程をさらに含む。例えば、除去工程は蒸留または蒸発によって行われ得る。例えば、副生成物は、除去される副生成物の沸点に応じて、周囲大気圧でまたは真空下で除去され得る。副生成物は、副生成物を溶解するがマルチカチオン性柔粘性イオン結晶を溶解しない任意の適切な溶媒で洗浄することによって除去され得る。例えば、副生成物はまた、必要に応じて、1つより多くの方法によって除去され得る。目的の変形例によると、副生成物は、抽出によって、例えば、生成物をDCMに溶解することによって除去され得る。
【0244】
本技術はまた、電気化学用途における上に定義される柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶の使用に関する。
【0245】
一例によると、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶が、電気化学セル、電池、スーパーキャパシタ(例えば、炭素-炭素スーパーキャパシタ、ハイブリッドスーパーキャパシタ等)に使用され得る。別の例によると、柔粘性イオン結晶組成物または柔粘性イオン結晶が、エレクトロクロミック材料、エレクトロクロミックセル、エレクトロクロミックデバイス(ECD)、およびエレクトロクロミックセンサ、例えば米国特許第5,356,553号、米国特許第8,482,839号、および米国特許第9,249,353号に記載されるものに使用され得る。
【0246】
別の例によると、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物が柔粘性イオン結晶系固体電解質組成物であり得る。別の例によると、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物が、電極材料の成分として、例えば電極材料中のバインダーとして使用され得る。
【0247】
よって、本技術はまた、上に定義される柔粘性イオン結晶または上に定義される柔粘性イオン結晶組成物(すなわち、上に定義される柔粘性イオン結晶を含む)を含む柔粘性イオン結晶系固体電解質であって、架橋性官能基がその中に存在する場合、柔粘性イオン結晶が必要に応じて架橋されていてもよい、固体電解質に関する。
【0248】
一例によると、上に定義される柔粘性イオン結晶固体電解質組成物または柔粘性イオン結晶固体電解質が少なくとも1つの塩をさらに含み得る。例えば、塩は、柔粘性イオン結晶固体電解質組成物または柔粘性イオン結晶固体電解質に溶解し得る。
【0249】
別の例によると、塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などのイオン性塩であり得る。目的の変形例によると、イオン性塩がリチウム塩である。リチウム塩の非限定的な例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(Li(FSI)(TFSI))、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiOTf)、フルオロアルキルリン酸リチウム Li[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、リチウムテトラキス(トリフルオロアセトキシ)ボレート Li[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、リチウムビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ボレート [B(C6O2)2](LiBBB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiBF2(C2O4))(LiFOB)、式LiBF2O4Rx(式中、Rx=C2~4アルキル)の塩、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせが挙げられる。目的の変形例によると、リチウム塩がLiPF6であり得る。目的の別の変形例によると、リチウム塩がLiFSIであり得る。目的の別の変形例によると、リチウム塩がLiTFSIであり得る。ナトリウム塩の非限定的な例としては、リチウムイオンがナトリウムイオンによって置き換えられている上記の塩が挙げられる。カリウム塩の非限定的な例としては、リチウムイオンがカリウムイオンによって置き換えられている上記の塩が挙げられる。カルシウム塩の非限定的な例としては、リチウムイオンがカルシウムイオンによって置き換えられており、塩中に存在するアニオンの数がカルシウムイオンの電荷に調整されている上記の塩が挙げられる。マグネシウム塩の非限定的な例としては、リチウムイオンがマグネシウムイオンによって置き換えられており、塩中に存在するアニオンの数がマグネシウムイオンの電荷に調整されている上記の塩が挙げられる。
【0250】
別の例によると、上に定義される柔粘性イオン結晶系固体電解質組成物または柔粘性イオン結晶系固体電解質が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラス粒子、セラミック粒子(例えば、ナノセラミック)、可塑剤、および他の同様の成分、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせなどの追加の成分をさらに含み得る。例えば、追加の成分は、その機械的、物理的および/または化学的特性のために選択され得る。例えば、追加の成分は、その高いイオン伝導率のために選択され得、特に、リチウムイオンの伝導を改善するために添加され得る。目的の変形例によると、追加の成分が、結晶および/または非晶質形態のNASICON型、LISICON型、チオ-LiSICON型化合物、ガーネット、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択され得る。
【0251】
別の例によると、柔粘性イオン結晶系固体電解質が薄膜の形態であり得る。例えば、膜は、柔粘性イオン結晶系固体電解質を含む少なくとも1つの電解質層を含み得る。例えば、追加の成分は、電解質層または別々にイオン伝導層に、含まれ得る、および/または実質的に分散され得る、例えば電解質層上に堆積され得る。
【0252】
本技術はまた、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物をバインダーと共に含むバインダー組成物に関する。
【0253】
別の例によると、バインダーがポリマーバインダーであり得、例えば、本明細書で定義される柔粘性結晶を可溶化し得る溶媒に可溶化され、これと有効に混合される能力のために選択され得る。例えば、溶媒は有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))であり得る。溶媒はまた、例えば、ポリマーを可溶化するための極性プロトン性溶媒(例えば、イソプロパノール)を含み得る。
【0254】
ポリマーバインダーの非限定的な例としては、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリフッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP))、合成または天然ゴム(例えば、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM))、ならびに少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメント、例えばポリエーテル、および必要に応じて少なくとも1つの架橋性セグメント(例えば、メチルメタクリレート反復単位を含むPEO系ポリマー)で構成されるコポリマーなどのイオン伝導性ポリマーバインダーが挙げられる。目的の変形例によると、ポリマーバインダーがフッ素含有ポリマーバインダーである。例えば、フッ素含有ポリマーバインダーはPTFEである。あるいは、フッ素含有ポリマーバインダーは、PVDFまたはPVDF-HFP、好ましくはPVDFである。目的の別の変形例によると、ポリマーバインダーがフッ素を含まないポリマーバインダーである。例えば、ポリマーバインダーはEPDMである。
【0255】
別の例によると、バインダーがポリマーバインダーであり得、例えば、固体高分子電解質(SPE)に関して上に記載されるポリマーであり得る。
【0256】
本技術はまた、電極材料における、本明細書で定義されるバインダー組成物の使用に関する。
【0257】
本技術はまた、少なくとも1つの電気化学的活物質と、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物とを含む電極材料に関する。一例によると、柔粘性イオン結晶または柔粘性イオン結晶組成物が電極材料中のバインダーである。一例では、電極材料が正極材料である。別の例では、電極材料が負極材料である。
【0258】
一例によると、電気化学的活物質が粒子の形態であり得る。電気化学的活物質の非限定的な例としては、金属酸化物、リチウム金属酸化物、金属リン酸塩、リチウム金属リン酸塩、チタン酸塩、チタン酸リチウム、金属フルオロリン酸塩、リチウム金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、リチウム金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、リチウム金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(金属フッ化物など)、リチウム金属ハロゲン化物(リチウム金属フッ化物など)、硫黄、セレン、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせが挙げられる。目的の変形例によると、電気化学的活物質が、金属酸化物、リチウム金属酸化物、金属リン酸塩、リチウム金属リン酸塩、チタン酸塩、チタン酸リチウム、リチウム金属フッ化物、リチウム金属フルオロリン酸塩、リチウム金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、硫黄、セレン、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0259】
例えば、電気化学的活物質の金属は、適合する場合、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アンチモン(Sb)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され得る。目的の例によると、電気化学的活物質の金属が、適合する場合、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され得る。目的の別の例によると、電気化学的活物質の金属が、適合する場合、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0260】
電気化学的活物質の非限定的な例としては、適合する場合、チタン酸塩およびチタン酸リチウム(例えば、TiO2、Li2TiO3、Li4Ti5O12、H2Ti5O11、H2Ti4O9、またはこれらの組み合わせ)、金属リン酸塩およびリチウム金属リン酸塩(例えば、LiM’PO4およびM’PO4(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Mg、Co、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせであり得る))、バナジウム酸化物およびバナジウム金属酸化物(例えば、LiV3O8、V2O5、LiV2O5、および他の同様の酸化物)、ならびに式LiMn2O4、LiM’’O2(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、およびこれらの組み合わせから選択される)、またはLi(NiM’’’)O2(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、別の同様の金属、およびこれらの組み合わせから選択される)の他のリチウム金属酸化物、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせも挙げられる。
【0261】
別の例によると、電気化学的活物質が、例えばその電気化学的特性を調節または最適化するために、必要に応じて少量含まれる他の元素をドープされ得る。例えば、電気化学的活物質は、金属を他のイオンで部分的に置換することによってドープされ得る。例えば、電気化学的活物質は、遷移金属(例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、もしくはY)および/または遷移金属以外の元素(例えば、Mg、Al、もしくはSb)をドープされ得る。
【0262】
別の例によると、電気化学的活物質が、新たに形成され得るかまたは商業的に供給され得る粒子(例えば、微粒子および/またはナノ粒子)の形態であり得る。例えば、電気化学的活物質は、コーティング材料の層でコーティングされた粒子の形態であり得る。コーティング材料は、導電性材料、例えば導電性カーボンコーティングであり得る。
【0263】
別の例によると、電極材料が、例えば、電気化学的活物質として炭素被覆チタン酸リチウム(C-LTO)を含む負極材料である。
【0264】
別の例によると、本明細書で定義される電極材料が添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、ナノセラミックを含むセラミック(Al2O3、TiO2、SiO2および他の同様の化合物など)、塩(例えば、リチウム塩)および他の同様の添加剤またはこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択され得る。例えば、添加剤は、結晶および/または非晶質形態の、NASICON型、LISICON型、チオ-LISICON型化合物、ガーネット、硫化物、硫黄ハロゲン化物、リン酸塩、チオ-リン酸塩、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される無機イオン伝導体であり得る。
【0265】
別の例によると、本明細書で定義される電極材料が導電性材料をさらに含む。導電性材料の非限定的な例としては、カーボンブラック(例えば、Ketjen(商標)カーボンおよびSuper P(商標)カーボン)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganカーボンおよびDenka(商標)カーボンブラック)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(CNT)、およびこれらの少なくとも2つの組み合わせなどの炭素源が挙げられる。
【0266】
別の例によると、本明細書で定義される電極材料が、約6未満、または約5未満、または約4未満、または約3未満、好ましくは約4未満の電気化学的活物質:柔粘性イオン結晶比を有し得る。
【0267】
別の例によると、本明細書で定義される電極材料が、約8%未満、または約7%未満、または約6%未満、または約5%未満、または約4%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満、好ましくは約5%未満の空隙率を有し得る。例えば、柔粘性結晶系電極の細孔はリチウムイオン輸送に対する抵抗として作用する可能性があるため、電極性能は過剰な空隙率によって制限されるおそれがある。
【0268】
別の例によると、電気化学的活物質の柔粘性イオン結晶に対する比が、電極材料の空隙率に実質的に影響を及ぼし得る。いくつかの例では、実質的に高い電気化学的性能を得るために、約4未満の電気化学的活物質:柔粘性イオン結晶比を使用して、約5%未満の空隙率を有する電極を得た。
【0269】
本技術はまた、本明細書で定義され、集電装置(例えば、アルミニウムまたは銅箔)上に適用される電極材料を含む電極に関する。あるいは、電極は自己支持電極であり得る。目的の変形例によると、本明細書で定義される電極が正極である。目的の別の変形例によると、本明細書で定義される電極が負極である。
【0270】
よって、本技術はまた、本明細書で定義される電極材料および本明細書で定義される電極を生産する方法に関する。説明のより詳細な理解のために、ここで、可能な実施形態による、本明細書で定義される電極材料を製造する方法のフロー図を示す
図1を参照する。
【0271】
図1に示されるように、本方法は、炭素バインダースラリー(CBS)を調製する工程を含み得る。CBS調製工程は、上記の導電性材料をバインダー組成物に分散させることを含む。例えば、バインダー組成物は、バインダー(例えば、上記のバインダー)、上記の溶媒および/または炭素分散剤を含み得る。例として、導電性材料はカーボンブラックとVGCFの組み合わせであり得、バインダー組成物は、バインダーとしてPVDFとポリビニルピロリドン(PVP)の組み合わせ、および溶媒としてNMPを含み得る。PVPが炭素分散剤としても使用され得ることに留意すべきである。導電性材料をバインダー組成物に分散させる工程は、任意の適合する方法によって行われ得る。例えば、導電性材料をバインダー組成物に分散させる工程は、ボールミリング法などのミリング法によって行われ得る。導電性材料をバインダー組成物に分散させる工程は、実質的に均質なCBSを得るのに十分な期間にわたって行われ得る。
【0272】
一例によると、CBSを調製する工程は、例えば、バインダー、溶媒および/または炭素分散剤を混合することによって、バインダー組成物を調製する工程も含み得る。バインダー組成物を調製する工程は、任意の適合する方法によって行われ得る。例えば、バインダー組成物を調製する工程は、ロールミリング法などのミリング法によって行われ得る。バインダー組成物を調製する工程は、バインダーおよび/または炭素分散剤を溶媒に実質的に溶解するのに十分な期間にわたって行われ得る。例えば、バインダー組成物を調製する工程は10時間超行われ得る。
【0273】
図1をさらに参照すると、本方法は、柔粘性イオン結晶(PCr)系カソード液を調製する工程をさらに含み得る。例えば、PCrカソード液は希PCrカソード液であり得る。実例として、希釈PCrカソード液を調製する工程は、追加の溶媒を溶液に添加することによって、本明細書に記載されるPCrおよび上記のイオン性塩(例えば、LiFSIなどのリチウム塩)を希釈することを含み得る。例として、追加の溶媒はNMPであり得る。
【0274】
図1をさらに参照すると、本方法は、PCr-CBSスラリーを調製する工程をさらに含み得る。例えば、PCr-CBSスラリーを調製する工程は、希釈PCrカソード液をCBSに添加することによって実施され得る。例えば、希釈PCrカソード液をCBSに徐々に添加して、スラリーの極性があまりにも突然に増加するのを防ぐことができる。
【0275】
図1をさらに参照すると、本方法は、上記の電気化学的活物質をPCr-CBSスラリーに添加することをさらに含み得る。例えば、電気化学的活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)であり得る。
【0276】
図2は、可能な実施形態による、本明細書で定義される電極を製造する方法のフロー図を示す。
【0277】
図2に示されるように、本方法は、集電装置または基板もしくは支持膜(例えば、シリコン、ポリプロピレン、またはシリコン処理されたポリプロピレンで作られた基板)上に上記のPCr-CBSスラリーをコーティングして、集電装置または支持体上にPCr系正極膜を得る工程をさらに含み得る。例えば、その後、前記基板または支持膜は除去され得る。目的の変形例によると、PCr-CBSスラリーが集電装置上にコーティングされる。例えば、前記コーティング工程は、任意の適合するコーティング方法によって行われ得る。例えば、前記コーティング工程は、ドクターブレードコーティング法、コンマコーティング法、リバースコンマコーティング法、グラビアコーティングなどの印刷法、またはスロットダイコーティング法の少なくとも1つによって行われ得る。目的の変形例によると、前記コーティング工程が、ドクターブレードコーティング法によって行われる。
【0278】
別の例によると、本方法がPCr系正極膜を乾燥させる工程をさらに含み得る。例えば、乾燥工程は、残留溶媒を実質的に除去するのに十分な温度および期間で行われ得る。例えば、乾燥工程は、残留溶媒を実質的に除去するために、約120℃の温度の真空オーブンで10時間超行われ得る。
【0279】
図2をさらに参照すると、本方法は、正極膜をカレンダー加工またはプレスしてその厚さを実質的に減少させる工程をさらに含み得る。例えば、カレンダー加工またはプレス工程は、任意の適合するカレンダー加工またはプレス方法によって行われ得る。例えば、カレンダー加工またはプレス工程は、ロール(またはロール間)プレス法によって行われ得る。
【0280】
別の例によると、本明細書で定義される方法によって得られる電極材料が、従来の混合方法によって得られる電極材料と比較して、炭素凝集体を実質的にまたは完全に免除され得る。実際、従来の混合方法によって得られる電極材料は、一般に、炭素凝集体を含む。これは、炭素がその疎水性表面特性のために高極性溶媒中で容易に凝集するという事実に起因し得る。
【0281】
本技術はまた、負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、負極、正極、および電解質の少なくとも1つが本明細書で定義される柔粘性イオン結晶または本明細書で定義される柔粘性イオン結晶組成物を含む、電気化学セルに関する。
【0282】
本技術はまた、負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、負極、正極、および電解質の少なくとも1つが本明細書で定義される通りである、電気化学セルに関する。目的の変形例によると、電解質が、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶固体電解質である。目的の別の変形例によると、負極が本明細書で定義される通りである。目的の別の変形例によると、正極が本明細書で定義される通りである。目的の別の変形例によると、電解質が、本明細書で定義される柔粘性イオン結晶系固体電解質であり、正極が本明細書で定義される通りである。
【0283】
場合によっては、負極(対電極)が、任意の既知の電気化学的活物質であり得、本明細書で定義される電気化学セルの様々な要素との電気化学的適合性のために選択され得る電気化学的活物質を含む。例えば、負極の電気化学的活物質は、本明細書で定義される正極の材料との電気化学的適合性のために選択される。電気化学的活性負極材料の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ金属合金、グラファイト、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、およびプレリチウム化(prelithiated)電気化学的活物質が挙げられる。いくつかの例では、負極の電気化学的活物質が、チタン酸リチウム、炭素被覆チタン酸リチウム、アルカリ金属、またはアルカリ金属合金を含む。目的の一変形例では、負極の電気化学的活物質が金属リチウムである。
【0284】
本技術はまた、少なくとも1つの本明細書で定義される電気化学セルを含む電池に関する。例えば、前記電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、およびマグネシウムイオン電池から選択され得る。目的の変形例によると、前記電池がリチウム電池またはリチウムイオン電池である。例えば、電池は全固体電池(例えば、全固体リチウム電池)であり得る。
【実施例】
【0285】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、企図される本発明の範囲をさらに限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0286】
特に指示しない限り、本明細書で使用される成分の量、調製条件、濃度、特性等を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数に照らして、一般的な丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。したがって、特に指示しない限り、本文書に示される数値パラメータは、所望の特性に応じて変化し得る近似値である。実施形態の範囲を定義する数値範囲およびパラメータは近似値であるという事実にもかかわらず、以下の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、実験、試験測定、統計分析等の変動から生じる一定の誤差を本質的に含む。
【0287】
実施例1-モノカチオン性柔粘性イオン結晶の合成および特性評価
実質的に純粋なプロトン性柔粘性イオン結晶(純度約99%)を製造する2つの方法を開発した。プロトン性柔粘性イオン結晶は、約-70℃~約-60℃の間のガラス転移温度(Tg)および約10℃~約45℃の間の融点を有する。融点がメタクリレート官能基の挿入により低下することに留意すべきである。反応収率は、ギ酸、ジエチレングリコールのシリル化誘導体(SiDEG)および/またはグリセロールのシリル化誘導体(SiGLY)の存在下で増加する。
【0288】
(a)ジエチレングリコールおよびグリセロールのシリル化誘導体の合成
ジエチレングリコールまたはグリセロールを、溶媒としてのDCMならびに塩基および触媒としてのイミダゾール中でtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl)でシリル化することによって、ジエチレングリコールのシリル化誘導体(SiDEG)およびグリセロールのシリル化誘導体(SiGLY)の合成を行った。
【0289】
シリル化反応を、グローブボックス内で、全ての試薬をマグネチックスターラーを取り付けた、事前に洗浄および乾燥した丸底フラスコに添加することによって行った。丸底フラスコを120℃の温度で少なくとも3時間乾燥させて、試薬の添加前に残留水を除去した。
【0290】
全ての試薬も事前に乾燥させ、次いで、秤量した。ジエチレングリコールおよびグリセロールをトルエンとの共沸蒸留によって乾燥させ、最後に、すなわち、全ての他の試薬の後に添加した。
【0291】
次いで、丸底フラスコにストッパーを取り付け、室温で少なくとも15~24時間、1,000rpmで撹拌した。次いで、このようにして得られた混合物を濾過し、濾液をさらに50mlのDCMに溶解し、10%(v/v)塩酸水溶液で3回、飽和炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液で3回、水で3回、最後にブラインで3回洗浄した。有機相を、攪拌しながら、乾燥剤として使用される硫酸マグネシウム(MgSO4)上で12時間乾燥させた。次いで、このようにして得られた溶液を濾過した。濾液を蒸発乾固し、真空下で12時間乾燥させた。不純な溶液が得られた場合、溶液を真空下130℃の温度で30分間蒸留し、揮発性汚染物質を除去した。
【0292】
ジエチレングリコールおよびグリセロールの小規模シリル化に使用した試薬の量、モル数および当量をそれぞれ表1および表2に示す。
【0293】
【0294】
【0295】
本実施例で調製したジエチレングリコールのシリル化誘導体(SiDEG)およびグリセロールのシリル化誘導体(SiGLY)を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびプロトン核磁気共鳴(1H NMR)によって特性評価した。
【0296】
(b)柔粘性イオン結晶の調製
グローブボックス内で、全ての試薬を、マグネチックスターラーを取り付けた、事前に洗浄および乾燥した丸底フラスコに添加することによって合成を行った。また、全ての試薬を予め真空下、60℃未満の温度で約48時間乾燥させ、次いで、秤量した。丸底フラスコを120℃の温度で少なくとも3時間乾燥させて、試薬の添加前に残留水を除去した。
【0297】
丸底フラスコに還流冷却器を取り付け、予め選択した温度に加熱し、不活性窒素雰囲気下、500rpmで少なくとも4日間撹拌した。その後、このようにして得られた混合物を冷却し、pHを測定して、混合物がアルカリ性(塩基性)条件下にあることを確実にした。次いで、混合物を真空下、50℃未満の温度で蒸発乾固した。次いで、残渣を45mlのDCMに溶解し、水で4回、次いで、ブラインで2回洗浄した。次いで、このようにして得られた溶液を濾過し、濾液を蒸発乾固した。このようにして形成された2つの相を、分液漏斗を使用して分離した。下相(黄色がかった相)を回収し、濃縮した。次いで、粘性固体を真空下、160℃の温度で約12時間蒸留して、揮発性汚染物質を除去した。粘性固体は室温で固体になる。
【0298】
柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶1~14)を本実施例の方法によって得た。各試薬の当量数および合成条件を表3に示し、各柔粘性イオン結晶の反応収率および融点を表4に示す。
【0299】
【0300】
【0301】
BEMPはBEMPのヘキサン中1M溶液として使用した。表3の溶媒は、無水アセトニトリル(ACN)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルカーボネート(DMC)、およびエタノール(EtOH)である。
【0302】
本実施例の方法を使用して柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶15および16)を得て、合成に使用した試薬の量、モル数、および当量数をそれぞれ表5および表6に示す。
【0303】
【0304】
【0305】
図3は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d
6)中の市販のDBUについて得られたプロトンNMRスペクトルを示す。比較目的のためにプロトンNMRスペクトルを得た。
【0306】
図4、
図5および
図6はそれぞれ、重水素化クロロホルム(CDCl
3)中の柔粘性結晶1について得られた炭素-13、フッ素-19、およびリチウム-7核磁気共鳴(
13C NMR、
19F NMRおよび
7Li NMR)スペクトルを示す。
図6に示されるように、21ppm~-19ppmの領域では
7Li NMRピークを観察することができなかった。
【0307】
図7は、柔粘性結晶1についてエレクトロスプレーイオン化源を備えた飛行時間型質量分析計に連結した高速液体クロマトグラフィー(HPLC TOF ESI-MS)によって得られた質量スペクトルを示す。結果をネガティブ(ESI
-)モードとポジティブ(ESI
+)モードの両方について示す。
【0308】
図8は、柔粘性結晶1について得られた示差走査熱量測定(DSC)分析の結果を示す。等温(150.00℃および-90.00℃)および非等温(3.00℃/分勾配)測定を行った。繰り返しのDSC加熱-冷却サイクル測定を、熱的手順に従って行った:-90.00℃から150.00℃まで3.00℃/分勾配(1)、150.00℃で3分間の等温、150.00℃から-90.00℃まで3.00℃/分勾配(2)、-90.00℃で3分間の等温、および-90.00℃から150.00℃まで3.00℃/分勾配(3)。
【0309】
図9は、柔粘性結晶11についてHPLC TOF ESI-MSによって得られた質量スペクトルを示す。結果をESI
-およびESI
+について示す。
【0310】
図10は、柔粘性結晶11について得られたDSC結果を示す。等温(150.00℃および-90.00℃)および非等温(3.00℃/分勾配)測定を行った。繰り返しのDSC加熱-冷却サイクル測定を、以下の熱的手順を使用して行った:-90.00℃から150.00℃まで3.00℃/分勾配(1)、150.00℃で3分間の等温、150.00℃から-90.00℃まで3.00℃/分勾配(2)、-90.00℃で3分間の等温、および-90.00℃から150.00℃まで3.00℃/分勾配(3)。
【0311】
(c)柔粘性イオン結晶の調製
柔粘性イオン結晶を以下の方法によっても合成した。グローブボックス内で、マグネチックスターラーを取り付けた、事前に洗浄および乾燥した丸底フラスコ中で合成を行った。また、全ての試薬を予め真空下、60℃未満の温度で約48時間乾燥させ、次いで、秤量した。丸底フラスコを120℃の温度で少なくとも3時間乾燥させて、試薬を添加する前に残留水を除去した。
【0312】
本実施例の方法を使用して柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶17および18)を得て、合成に使用した試薬の量、モル数、および当量数をそれぞれ表7および表8に示す。
【0313】
【0314】
【0315】
溶媒およびDBUを丸底フラスコに添加した。次いで、丸底フラスコにセプタムを取り付け、グローブボックスから取り出し、約4℃の温度に冷却した。次いで、ギ酸を攪拌しながら丸底フラスコに滴加した。次いで、混合物を約21℃の温度に加熱し、不活性アルゴン雰囲気下で約1時間撹拌した。丸底フラスコに還流冷却器を取り付け、不活性窒素雰囲気下、21℃の温度において500rpmで少なくとも4日間撹拌した。次いで、このようにして得られた混合物を冷却し、pHを測定して、混合物がアルカリ性(塩基性)条件下にあることを確実にした。次いで、混合物を濾過し、濾液を真空下、50℃未満の温度で蒸発乾固した。残渣を45mlのDCMに溶解し、水で4回およびブラインで2回洗浄した。このようにして形成された2つの相を、分液漏斗を使用して分離した。下相(黄色がかった相)を回収し、濃縮した。次いで、粘性固体を真空下、160℃の温度で約12時間蒸留して、揮発性汚染物質を除去した。粘性固体は室温で固体になる。
【0316】
(d)実施例1(b)および1(c)で調製した柔粘性イオン結晶の後官能化
実施例1(b)および1(c)で調製した柔粘性イオン結晶の後官能化を行って、架橋性官能基を導入した。
【0317】
1.50gの実施例1(b)および1(c)で調製した柔粘性イオン結晶を25mlの無水THFに溶解した。0.70mlの2-イソシアナトエチルメタクリレートを溶液に添加した。このようにして得られた混合物を、不活性窒素雰囲気下、約60℃の温度で約5時間撹拌した。5mlのメタノールを反応の最後に添加し、混合物を冷却した。次いで、このようにして得られた固体を蒸発乾固し、真空下、約60℃の温度で乾燥させた。
【0318】
図11は、本実施例に記載される後官能化後の柔粘性結晶15について得られたプロトンNMRスペクトルを示す。
1H NMR測定をDMSO-d
6中で実施した。
【0319】
図12は、本実施例に記載される後官能化後の柔粘性結晶15について得られたDSC結果を示す。等温(150.00℃および-90.00℃)および非等温(10.00℃/分勾配)測定を行った。繰り返しのDSC加熱-冷却サイクル測定を、以下の熱的手順を使用して行った:-90.00℃から150.00℃まで10.00℃/分勾配(破線、1)、150.00℃で3分間の等温(二点鎖線、2)、150.00℃から-90.00℃まで10.00℃/分勾配(実線、3)、-90.00℃で3分間の等温(一点鎖線、4)、および-90.00℃から150.00℃まで10.00℃/分勾配(点線、5)。
【0320】
図13は、本実施例に記載される後官能化後の柔粘性結晶15について得られた熱重量分析(TGA)の結果を示す。柔粘性イオン結晶の熱劣化は、室温~800℃のプログラムされた温度範囲で生じた。柔粘性イオン結晶を、酸化環境(空気)下、10℃/分の加熱勾配速度で室温から800℃までオーブン中で加熱した。
【0321】
図14は、本実施例に記載される後官能化後の柔粘性結晶16について得られたDSC結果を示す。等温(150.00℃および-20.00℃)および非等温(2.00℃/分勾配)測定を行った。繰り返しのDSC加熱-冷却サイクル測定を、以下の熱的手順を使用して行った:-20.00℃から150.00℃まで2.00℃/分勾配(破線、1)、150.00℃で3分間の等温(実線、2)、150.00℃から-20.00℃まで2.00℃/分勾配(二点鎖線、3)、-20.00℃で3分間の等温(実線、4)、および-20.00℃から150.00℃まで2.00℃/分勾配(点線、5)。
【0322】
(e)実施例1(d)に示される柔粘性イオン結晶のイオン伝導率
VPM3マルチチャネルポテンショスタットを用いて記録した交流電気化学インピーダンス分光法によってイオン伝導率測定を行った。電気化学インピーダンス分光法を、20℃~80℃(増減、各10℃)の温度範囲にわたって200 mHz~1 MHzの間で実施した。
【0323】
各電気化学インピーダンス測定値を、温度(T)でオーブン温度を安定化させた後に得た。
【0324】
柔粘性イオン結晶膜を、2.01cm2の活性表面積を有する2つのステンレス鋼ブロッキング電極の間に配置した。
【0325】
リチウムイオンのイオン伝導率を、式1を使用して電気化学インピーダンス分光法測定値から計算した:
【数1】
(式中、
σはイオン伝導率(S.cm
-1)であり、lは2つのブロッキング電極間の柔粘性イオン結晶膜の厚さであり、Aは柔粘性イオン結晶膜と2つのブロッキング電極との間の接触表面積であり、R
tは電気化学インピーダンス分光法によって測定された全抵抗である)。
【0326】
図15は、本実施例で組み立てられた対称セルについての温度(K
-1)の関数として測定されたイオン伝導率(S.cm
-1)結果を示す。
図15は、実施例1(d)に記載される後官能化後の柔粘性結晶15について50℃の温度で1.52×10
-5S.cm
-1のイオン伝導率値が得られたことを示す。
【0327】
図16は、実施例1(d)に記載される後官能化後の柔粘性結晶16で組み立てられた対称セルについての温度(K
-1)の関数として測定されたイオン伝導率(S.cm
-1)結果を示す。
【0328】
実施例2-柔粘性イオン結晶複合膜の調製
90重量%のLi6PS5Clおよび10重量%の柔粘性結晶1または13を含むセラミック-柔粘性イオン結晶複合膜についてイオン導電率結果を得た。
【0329】
90重量%のLi6PS5Clならびに10重量%のUS’674特許に記載されるポリマー(以下、US’674ポリマー)および実施例1(b)~1(d)で調製した柔粘性イオン結晶を含む柔粘性イオン結晶混合物を含むセラミック-柔粘性イオン結晶複合膜についてもイオン伝導率結果を得た。
【0330】
最後に、90重量%のLi6PS5Clおよび10重量%のUS’674ポリマーを含むセラミック-ポリマー複合膜について、ならびに比較目的のためのLi6PS5Cl膜についてもイオン伝導率結果を得た。
【0331】
適切な粘度を得るために、必要に応じてDCMまたはACNを混合物に添加した。次いで、混合物を予め脱脂したアルミニウム箔上にキャスティングした。直径10mmのペレットを金型に入れ、プレス機を使用して2.8トンの圧力で圧縮し、次いで、5MPaの圧力で導電率セルに移した。温度を約1時間安定化した。20℃の温度で、セラミック-柔粘性イオン結晶複合膜についての導電率結果は、約3.0~約7.0×10-4S/cmの範囲であり、これは、ポリマーも柔粘性イオン結晶もなしで、およびアルミニウム支持体なしで圧縮したが、同じ条件下で測定したこのセラミック(Li6PS5Cl)について得られた導電率結果と同様である。セラミック-柔粘性イオン結晶複合膜についての導電率結果はまた、セラミック-ポリマー複合膜の導電率結果よりも有意に優れていた。各温度で、各測定の間は15分間で、2回のインピーダンス測定値を記録した。表9に示される構成に従って導電率セルを組み立てた。
【0332】
【0333】
表9中、「乾燥させず」という表現は、膜を、ACNのみを除去するために、真空下25℃で12時間乾燥させたことを意味する。表9中、「乾燥させ」という表現は、膜を、十分な乾燥を確保するために真空下80℃で12時間乾燥させたことを意味する。よって、柔粘性結晶は溶融し、ポリマー中にわずかに拡散し得る。
【0334】
図17は、本実施例で組み立てられた導電率セルについての温度(K
-1)の関数として測定されたイオン伝導率(S.cm
-1)の結果を示す。結果を、本実施例に記載されるセル1(●)、セル2(■)、セル3(▼)、セル4(★)、およびセル5(▲)について示す。
【0335】
図18は、本実施例で組み立てられた導電率セルについての温度(K
-1)の関数として測定されたイオン伝導率(S.cm
-1)の結果を示す。結果を、本実施例に記載されるセル6(●)、セル7(▲)、セル8(×)、セル9(■)、セル10(◆、実線)、およびセル11(◆、点線)について示す。
【0336】
実施例4-アニオン対およびカチオン対
反応収率に対するイオン対形成の影響も決定した。グアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと非局在化アニオンとの異なる組み合わせを含む柔粘性イオン結晶(柔粘性イオン結晶19~28)を、実施例1(b)に記載される方法によって得た。反応を約21℃の温度で約4日間行った。
【0337】
合成に使用した試薬の量を表10に示す。反応収率ならびに得られた各柔粘性イオン結晶の質量を表11に示す。
【0338】
【0339】
【0340】
全ての結果が提供されているわけではないが、非局在化アニオンとグアニジン、アミジンおよびホスファゼン有機超強塩基由来の全ての組み合わせが柔粘性イオン結晶をもたらした。しかしながら、アニオンとカチオンの対形成は、反応によって得られる生成物の質量、したがって、反応の収率に大きな影響を及ぼすことを理解すべきである。
【0341】
実施例5-安定化中間イオン-中性錯体の特性評価
上記のように、反応の収率は、本明細書に記載されるグアニジン、アミジンまたはホスファゼン有機超強塩基由来カチオンと式17のビス-シリル化化合物の反応によって得られる安定化中間イオン-中性錯体の形成によって改善され得る。
【0342】
実施例1(a)で調製したジエチレングリコールのビス-シリル化誘導体(SiDEG)とプロトン化DBUの反応によって形成された安定化中間イオン-中性錯体を特性評価した。
【0343】
安定化中間イオン-中性錯体を約3週間にわたって1H NMRおよび13C NMRによって特性評価して、プロトン化塩基を安定化するその能力を評価した。
【0344】
図19(A)は、プロトン化DBUと実施例1(a)で調製したジエチレングリコールのビス-シリル化誘導体(SiDEG)の両方における原子のナンバリングを示す。
【0345】
図19(B)は、本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られたプロトンNMRスペクトルを示す。
1H NMR測定をアセトニトリル-d
3(CD
3CN)中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0346】
図19(C)は、本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られた
13C NMRスペクトルを示す。
13C NMR測定もCD
3CN中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0347】
図20(A)は、3週間にわたって本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られたプロトンNMRスペクトルを示す。実験開始時(青色
1H NMRスペクトル)、2日後(赤色
1H NMRスペクトル)、3日後(緑色
1H NMRスペクトル)、9日後(紫色
1H NMRスペクトル)、および21日後(黄色
1H NMRスペクトル)の結果を示す。
1H NMR測定をCD
3CN中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0348】
図20(B)は、3週間にわたって本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られた
13C NMRスペクトルを示す。実験開始時(青色
13C NMRスペクトル)、2日後(赤色
13C NMRスペクトル)、3日後(緑色
13C NMRスペクトル)、9日後(紫色
13C NMRスペクトル)、および21日後(黄色
13C NMRスペクトル)の結果を示す。
13C NMR測定をCD
3CN中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0349】
図20(A)および
図20(B)に見られるように、3週間後のスペクトルに有意な変化は検出されず、この期間中に構造変化を伴う有意な生成物変換はないことを意味する。
【0350】
図21(A)は、3週間にわたって本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られたプロトンNMRスペクトルを示す。実験開始時(青色
1H NMRスペクトル)、2日後(赤色
1H NMRスペクトル)、3日後(緑色
1H NMRスペクトル)、9日後(紫色
1H NMRスペクトル)、および21日後(黄色
1H NMRスペクトル)の結果を3.99ppm~4.30ppmの間で記録した。
1H NMR測定をCD
3CN中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0351】
図21(B)は、3週間にわたって本実施例に記載される安定化中間イオン-中性錯体について得られたプロトンNMRスペクトルを示す。結果を6ppm~10.4ppmの間で記録し、実験開始時(青色
1H NMRスペクトル)、2日後(赤色
1H NMRスペクトル)、3日後(緑色
1H NMRスペクトル)、9日後(紫色
1H NMRスペクトル)、および21日後(黄色
1H NMRスペクトル)に得た。
1H NMR測定をCD
3CN中で行い、ピーク割り当てをスペクトルで示す。
【0352】
追加のマイナーピークの出現(21日間の反応後に主化合物の約1%)は、
図21(A)の4.16ppmで観察され得る。このピークの位置およびその多重度は、これが末端にシラン基を有さないジエチレングリコールのCH
2プロトンに対応することを潜在的に示し得る。
【0353】
図21(B)に見られるように、N-Hに対応するピークは有意に狭くなり、より高い周波数にシフトし、これは水素結合の形成に関連する一般的な挙動である。
【0354】
実施例6-多環式柔粘性イオン結晶の合成および特性評価
(a)四環式柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶30)の合成
多環式アミジンの合成を、Braddockら(Braddock,D.C.ら「The reaction of aromatic dialdehydes with enantiopure 1,2-diamines:an expeditious route to enantiopure tricyclic amidines.」Tetrahedron:Asymmetry 21.24(2010):2911-2919)によって記載される方法と同様の方法によって行った。
【0355】
四環式柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶30)を、スキーム7に示される方法によって調製した:
【化26】
スキーム7
【0356】
0.8947gの2,3-ナフタレンジアルデヒドおよび60.0mlのDCMを、マグネチックスターラーを取り付けた、事前に洗浄および乾燥した丸底フラスコに添加した。次いで、溶液を溶解するまで撹拌した。次いで、3.30mlのエチレンジアミンを添加し、溶液を約22℃の温度で約4時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発乾固した。
【0357】
グローブボックス内で、全ての試薬を、マグネチックスターラーを取り付けた、事前に洗浄および乾燥した丸底フラスコに添加することによって合成を行った。フラスコを120℃の温度で少なくとも3時間乾燥させて、試薬を添加する前に残留水を除去した。
【0358】
不活性窒素雰囲気下で還流冷却器を取り付けた丸底フラスコを予め選択した温度に加熱し、500rpmで少なくとも4日間撹拌した。次いで、得られた混合物を冷却し、pHを測定して、混合物がアルカリ性(塩基性)条件下にあることを確実にした。次いで、混合物を真空下、50℃未満の温度で蒸発乾固した。次いで、残渣を45mlのDCM に溶解し、水で4回、次いで、ブラインで2回洗浄した。次いで、このようにして得られた溶液を濾過し、濾液を蒸発乾固した。このようにして形成された2つの相を、分液漏斗を使用して分離した。下相(黄色がかった相)を回収し、濃縮した。次いで、粘性固体を真空下、160℃の温度で約12時間蒸留して、揮発性汚染物質を除去した。粘性固体は室温で固体になる。
【0359】
本実施例の方法を使用して、四環式柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶30)を得た。各試薬の当量数および合成条件を表12に示す。
【0360】
【0361】
(b)四環式柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶30)の特性評価
図22は、実施例6(a)に記載される柔粘性結晶30についてのHPLC TOF ESI-MSによって得られた質量スペクトルを示す。結果をESI
-とESI
+の両方について示す。HPLC TOF ESI-MSの溶離液は(95%メタノール、4.9%水および0.1%ギ酸)であり、流量は0.1ml/分であった。
【0362】
図23は、実施例6(a)に記載される柔粘性結晶30について得られたDSC結果を示す。等温(100.00℃および-20.00℃)および非等温(2.00℃/分勾配)測定を行った。
【0363】
繰り返しのDSC加熱-冷却サイクル測定を、以下の熱的手順を使用して行った:-20.00℃から100.00℃まで2.00℃/分勾配(1)、100.00℃で3分間の等温、100.00℃から-20.00℃まで2.00℃/分勾配(2)、-20.00℃で3分間の等温、-20.00℃から100.00℃まで2.00℃/分勾配(3)、100.00℃で3分間の等温、および100.00℃から-20.00℃まで2.00℃/分勾配(4)。DSC結果を表13に示す。
【0364】
【0365】
実施例7-マルチカチオン性柔粘性イオン結晶の合成および特性評価
(a)マルチカチオン性柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶31)の合成
テトラカチオン性柔粘性イオン結晶を、スキーム8に示される方法によって調製した:
【化27】
スキーム8
【0366】
20.0mlの無水DCMおよび1.35mlのDBUを、グローブボックス内で、マグネチックスターラーを備えた、事前に洗浄および乾燥した50ml丸底フラスコに添加することによって、テトラカチオン性柔粘性イオン結晶の合成を行った。次いで、混合物をグローブボックスの外側で約4℃の温度に冷却した。次いで、混合物を撹拌し、1.0gの1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンを添加した。
【0367】
次いで、混合物を不活性雰囲気下、室温で少なくとも4日間置いた。次いで、このようにして得られた白色沈殿を遠心分離(5000rpmで約10分間)によって除去し、15mlのDCMで3回洗浄した。次いで、白色固体を真空下、約45℃の温度で3時間乾燥させた。反応収量は1.624gであった。
【0368】
1.624gのこのようにして得られた固体、1.71gのLiFSIおよび100mlの無水エタノールを、グローブボックス内で、マグネチックスターラーを備えた、事前に洗浄および乾燥した250ml丸底フラスコに添加した。
【0369】
次いで、混合物を不活性雰囲気下、室温で約3日間撹拌した。次いで、混合物を遠心分離し、固体を分離し、回収した。固体を80mlビーカーに移し、50mlのメタノールを添加した。懸濁液を室温で15分間撹拌した。固体を分離し、遠心分離によって回収した。次いで、固体を真空下、約45℃の温度で約48時間乾燥させた。反応収量は1.62gであり、純度は96%であった。
【0370】
(b)テトラカチオン性柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶31)の特性評価
1Hおよび19F核の縦緩和時間(T1)の反転回復測定を柔粘性結晶31について得た。
【0371】
マジック角67kHzで最大回転速度を有する1.3mm MAS X/
1H/
19F NMRプローブを備えた500MHz WB Bruker AVANCE NEO(商標)分光計を使用してNMR実験を行った。MAS=60kHzで-10℃~60℃の温度範囲にわたってT
1測定を行った。回復時間遅延は、
19Fについては50マイクロ秒から20秒まで、
1Hについては最大50秒まで、12段階で変化した。
図24および
図25は、それぞれ、実施例7(a)で調製したテトラカチオン性柔粘性イオン結晶について得られた
1H NMRおよび
19F NMRスペクトルを示す。
図26は、実施例7(a)で調製したテトラカチオン性柔粘性イオン結晶についての温度の関数としての緩和時間(T
1)を示すグラフである。
19Fおよび
1H核のスピン格子緩和率は、全温度範囲にわたって単一指数関数的減衰で完全に記載され、これは試料が実質的に均一であることを意味する。
1Hおよび
19FのT
1値を表13に示す。
【0372】
【0373】
1Hおよび19FのT1値は、温度に関して反対の傾向を示し、これはカチオンが「固体」型の不動フレームワークを形成するが、FSIアニオンが「液体」型の様式で移動することができることを意味する。本実施例のテトラカチオン性柔粘性イオン結晶を柔粘性結晶1および30と比較した。柔粘性結晶1のアニオンについては17℃の温度で、カチオンについては40℃の温度で、「固」相から「液」相への転移が観察された。柔粘性結晶30のカチオンおよびアニオンは、20℃~60℃の温度範囲で非常に制限された動きで緊密に充填された。最後に、本実施例のテトラカチオン性柔粘性イオン結晶(柔粘性結晶31)について得られた結果は、-10℃~60℃の温度範囲で、カチオンが「固体」型の不動フレームワークを形成するが、FSIアニオンが「液体」型の様式で移動することができることを示した。
【0374】
実施例8-柔粘性結晶系正極
(a)柔粘性結晶系正極膜(電極1~4)の調製および特性評価
異なる配合および処理条件を有する柔粘性結晶系正極を調製し、特性評価した。電気化学的活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)であった。異なる正極組成を表14に示す。
【0375】
【0376】
TESCAN LYRA3集束イオンビーム電界放射型走査型電子顕微鏡(FIB-FESEM)を使用して、電極1の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を得た。
図27は、電極の空隙率および細孔径分布を示す、電極1について得られたSEM画像を示す。右画像のシアン色は、電極の細孔を表し、左画像の暗い領域の大部分に対応する。
【0377】
柔粘性結晶系正極の細孔は、リチウムイオン輸送に対する抵抗として作用し得るので、正極性能は、したがって、空隙率によって制限され得ることに留意すべきである。正極の空隙率が5%またはそれ未満であり、よって、実質的に高い正極性能を得ることを確実にするために、活物質の柔粘性結晶系カソード液に対する比が重要であるにちがいないことにも留意すべきである。
【0378】
異なる正極膜組成を表15に示す。
【0379】
【0380】
(b)柔粘性結晶系正極膜(電極5)の調製および特性評価
柔粘性結晶系正極を、上記の方法によって、より詳細には
図1または
図2に示されるように得た。
【0381】
0.252gのPVDF、0.010gのPVP、および5.836gのNMPを容器に添加することによって、CBSを調製した。容器およびその内容物を、溶解するまで10時間にわたってローラーミルに入れた。次いで、10gの3mm粉砕ボール、1.260gのDenka(商標)カーボンブラック、および0.42gのVGCFを容器に添加した。次いで、混合物をSPEX(商標)ミキサーミルで5分間、4回粉砕して、CBSを得た。
【0382】
1.934gの柔粘性結晶24、0.120gのLiFSIを1.908gのNMPに添加することによって、希釈PCrカソード液を調製した。次いで、ボルテックスミキサーを使用して溶液を混合した。
【0383】
希釈PCrカソード液の4分の1をCBSに添加し、次いで、混合物をSPEX(商標)ミキサーミルで5分間粉砕することによって、PCr-CBS溶液を調製した。この工程をさらに3回行った(すなわち、希釈PCrカソード液を全て添加し、CBSと混合するまで)。
【0384】
7.685gのPCr-CBS溶液および5.130gのNCM 811を溶液に添加することによって、PCr系正極スラリーを得た。次いで、混合物をボルテックスミキサーで5分間、2回、次いで、速度レベル1で2分間操作したホモジナイザー(IKA(商標)T-10 Basic)で3回撹拌した。
【0385】
次いで、このようにして得られたPCr系正極スラリーを、固定ギャップサイズ150μmでドクターブレードコーティングシステムを使用して、炭素被覆アルミニウム集電装置に適用した。
【0386】
次いで、PCr系正極膜を120℃の温度の真空オーブン内で10時間にわたって乾燥させて、残留溶媒を除去した。
【0387】
次いで、乾燥させたPCr系正極膜を、約17%の厚み減少目標でロールプレスした。ロール表面温度が柔粘性結晶24の融点未満となるように、ロールプレスの温度設定を調整した。
【0388】
PCr-CBS溶液およびPCr系正極の組成をそれぞれ表16および表17に示す。
【0389】
【0390】
【0391】
図28は、(A)において、従来の混合方法によって得られた柔粘性結晶系正極の表面の写真、および(B)において、本実施例の方法によって得られた柔粘性結晶系正極(電極5)の表面の写真を示す。これらの画像は、膜の表面に反映された直接の環境を示し、この環境は電極膜の一部ではないことに留意すべきである。
図28(A)に見られるように、従来の混合方法によって得られた柔粘性結晶系正極の表面は、炭素凝集体を含み、その一例が丸で囲まれている。これは、炭素がその疎水性表面特性のために高極性溶媒中で容易に凝集するという事実に起因し得る。
図28(B)に見られるように、本実施例の方法によって得られた柔粘性結晶系正極の表面は、実質的に清澄で滑らかに見え、炭素凝集体を実質的にまたは完全に含まない。
【0392】
(c)柔粘性結晶系正極(電極6)および電気化学セル(セル12)の調製および特性評価
実施例8(b)に記載される混合方法を使用して、表18に示される組成を有する柔粘性結晶系正極膜を調製した。
【0393】
【0394】
次いで、柔粘性結晶系正極膜(電極6)をセラミック-ポリマー複合層でコーティングした。セラミック-ポリマー複合層を柔粘性結晶系正極膜(電極6)上に65μmの固定ギャップでドクターブレードコーティングシステムを使用して適用した。セラミック-ポリマー複合層の組成ならびにその調製方法を表19に示す。
【0395】
【0396】
表20に示される構成に従って、電気化学セル(セル12)を組み立てた。
【0397】
【0398】
図29は、40回の充放電サイクルに関してセル12について得られたサイクル数の関数としての放電容量のグラフである。放電容量を、最初の25サイクルについては35℃の温度で、26~39サイクルについては50℃の温度で、40番目のサイクルについては25℃の温度で記録した。
【0399】
実施例9-周期的充放電(CCD)測定
CCD測定を得て、表21に示される柔粘性結晶組成についての性能およびサイクル寿命を試験した。
【0400】
【0401】
図30は、本実施例に記載されるセル13についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。セル7を3.5V~5.0Vの間で、0.1V刻みで、50℃の温度でサイクルした。
【0402】
図31は、本実施例に記載されるセル14についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。セル14を-0.10V~0.10Vの間で、1C、3mA/cm
2の電流密度、および25℃の温度でサイクルした。電流密度を点線で表す。
【0403】
図32は、本実施例に記載されるセル15および16についての時間の関数としての電流密度および電位のグラフである。セル15および16を-0.15V~0.15Vの間で、1C、3mA/cm
2の電流密度、および35℃の温度でサイクルした。電流密度を点線で表す。
【0404】
実施例10-高分子電解質のNMR拡散試験
表22に示される柔粘性結晶組成について、高分子電解質寿命のNMR拡散試験を行った。
【0405】
【0406】
パルス磁場勾配NMR拡散測定実験を1H、7Li、および19F核について行った。
【0407】
Diff50高出力NMR拡散プローブならびに7Li-19Fおよび1H-19F二重共鳴高周波(RF)モジュールを備えた500MHz WB Bruker AVANCE NEO(商標)NMR分光計を使用してNMR実験を行った。
【0408】
拡散測定を50℃の温度で行った。勾配パルスは0.6ms~2.0msの範囲内であり、拡散時間は核に応じて40ms~400msの範囲内であった。勾配強度を100G/cmから2500G/cmまで16刻みで変化させた。
【0409】
拡散測定は、0.06ms~0.6msの間のエコー遅延を有するCarr-Purcell-Meiboom-Gill(CPMG)パルスシーケンスを使用したT2緩和実験を伴った。1実験当たり最大64個のエコーを記録した。
【0410】
NMR実験におけるシグナル強度は、励起パルス後に指数関数的に減衰する:
【数2】
(式中、
I
0は励起直後のシグナル強度であり、T
2は隣接核間の相互作用を表す特性時間である)。長いT
2値は、核間相互作用を平均した場合の可動核に対応する。対照的に、短いT
2値は静止核に対応する。
【0411】
緩和時間は、観察された核の局所環境に関する情報を表すので、それらの化学シフトが重複している場合であっても、NMRシグナルの割り当ておよびデコンボリューションのためのツールとして機能することができる。例えば、LATPの7Li NMRシグナルの横および縦緩和時間は、Arbi,K.ら(Arbi,K.らChemistry of materials 16.2(2004):255-262)によって報告されている。それらは、本実施例でLATPについて観察された時間に対応し、ポリマー中のリチウムからのLATP中のリチウム(およびその拡散係数)の分離を可能にする。
【0412】
柔粘性結晶32および33の結果をそれぞれ表23および表24に示す。
【0413】
【0414】
留意され得るように、柔粘性結晶32中の最も速いプロトンをNHに割り当てた。他のプロトンは、2:8の相対比で2つの相(すなわち、「移動相」および「不動相」)に分離することができた。
【0415】
LATPにおけるリチウム拡散係数の得られた値は、Hayamizu,K.ら(Hayamizu,K.らPhysical Chemistry Chemical Physics 19.34(2017):23483-23491)によって以前に報告されたLAGPにおけるリチウム拡散係数と同様の範囲にある。
【0416】
【0417】
7Li、19Fおよび1Hの拡散係数を表23および表24に示す。各核について、異なる拡散率を有する2つの粒子型を特定した:LATP中のLiおよび柔粘性結晶-LiTFSI混合物に関連するLi+;FSIアニオンおよびTFSIアニオン;柔粘性結晶の主要部分(CH2)および水素結合に関与し得る可動性プロトン(NH)。
【0418】
図33は、CH
2(▲)、NH(×)、FSI(◆)、TFSI(●)、LATP(Δ)、およびLi
+(■)の拡散速度の温度依存性を示す、拡散係数(D)の対数対1/k
BTのアレニウスプロットを示す。
【0419】
図33に見られるように、LATP中のLiに対応するアレニウスプロットは、0.26±0.02eVの拡散活性化エネルギーで全温度範囲にわたって線形である。
【0420】
対照的に、柔粘性結晶-LiTFSI混合物に関連するイオンのアレニウスプロットは、約25℃を超える温度で線形である。Li+、TFSI-、FSI-、およびNHの活性化エネルギーは、約0.34eV~約0.41eVの範囲にあり、柔粘性結晶-LiTFSI混合物の活性化エネルギーは約0.50eVである。25℃未満の温度では、全ての拡散率が急速に低下し、これは柔粘性結晶の相変態に起因する可能性がある。
【0421】
企図される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態のいずれかに多数の修正を行うことができるだろう。本明細書で言及される参考文献、特許、または科学文献は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】