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特表2024-512196光電素子を備えるバイオセンサー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光電素子を備えるバイオセンサー装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240312BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 31/10 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61B10/00 E
H01L27/146
G01N21/27 A
H01L31/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547106
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2022000611
(87)【国際公開番号】W WO2022169128
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0015959
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヒョン タク
(72)【発明者】
【氏名】クマール、モーヒト
【テーマコード(参考)】
2G059
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB12
2G059EE01
2G059GG08
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059KK01
4M118AA09
4M118AB10
4M118CA03
5F149AA03
5F149AB01
5F149AB02
5F149BA28
5F149BA30
5F149BB08
5F149CB05
5F149CB07
5F149FA02
5F149FA03
5F149FA05
5F149LA01
5F149XB21
5F149XB40
(57)【要約】
光電素子を備えるバイオセンサー装置が開示される。光電素子を備えるバイオセンサー装置は、対象体に赤外線パルス光を照射する赤外線パルス生成器、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して光電流を生成する光電素子、および前記光電流の中で前記赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流または後縁に対応する第2ピーク電流の一つの大きさを測定して、前記対象体を分析する感知素子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体に赤外線パルス光を照射する赤外線パルス生成器と、
対象体を透過した赤外線パルス光を受信して光電流を生成する光電素子と、
前記光電流の中で前記赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流または後縁に対応する第2ピーク電流の一つの大きさを測定して、前記対象体を分析する感知素子と、
を含む、ことを特徴とする光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項2】
前記赤外線パルス光のパルス周期は、1ms~0.1sで、前記パルス周期に対するパルス幅の比率は、1~10 %である、ことを特徴とする請求項1に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項3】
前記光電素子は、
p型半導体層と、
前記p型半導体層上に形成されて、前記p型半導体層とPN接合を形成し、前記赤外線パルス光が入射されるn型半導体層と、
前記n型半導体層の表面に形成された透明集電体と、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項4】
前記光電素子は、前記PN接合によって生成されるセルフバイアス(Self-bias)によって前記光電流を生成する、ことを特徴とする請求項3に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項5】
前記p型半導体層は、p型シリコン(p-Si)を含み、
前記n型半導体層は、二酸化チタン(TiO)を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項6】
前記透明集電体は、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、InおよびSnOから選択される一つ以上を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項7】
前記感知素子は、p型半導体層とn型半導体層との間に電気的に連結形成された、ことを特徴とする請求項3に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項8】
前記感知素子で測定されたピーク電流の大きさ変化に基づいた前記対象体に対するマッピングイメージを生成するイメージ生成部をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の光電素子を備えるバイオセンサー装置。
【請求項9】
p型半導体層が形成された基板上にスパッタリング工程によってチタン薄膜を蒸着させるステップと、
前記チタン薄膜を酸化させて、二酸化チタン(TiO)薄膜を形成するステップと、
前記二酸化チタン(TiO)薄膜の表面に透明集電体を形成するステップと、
を含む、ことを特徴とする光電素子製造方法。
【請求項10】
前記二酸化チタン(TiO)薄膜は、10~100nmの厚さに形成される、ことを特徴とする請求項9に記載の光電素子製造方法。
【請求項11】
前記p型半導体層は、p型シリコン(p-Si)を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の光電素子製造方法。
【請求項12】
前記透明集電体は、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、InおよびSnOから選択される一つ以上を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の光電素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して、光電流を生成する光電素子を備えるバイオセンサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感知可能な電気信号を生成するための光子の効果的な活用は、人体の損傷をモニタリングすることができる潜在力によって、数世紀にわたって最も魅力的な分野の一つとして認識されて来た。特に、近赤外線(NIR)を利用した人体の損傷感知およびイメージングは、光損傷が少なく、組職が深くて、医療応用分野で活発に研究されて来た。
【0003】
しかしながら、身体損傷を感知するために光電子工学を適用する場合、たくさんの要求事項を克服する必要がある。例えば、間違いのないデータを収集するためには、高性能のエネルギーの効率的な光電素子の開発が必須である。
【0004】
一般に、インジウム、ガリウム、砒素、鉛、ガリウム、砒素などのような狭帯域ギャップ物質が近赤外線波長を検出するための活性層物質として広く用いられてきた。
【0005】
しかしながら、このような活性層物質は、ドーピング、エッチングおよびエピタキシーを含む非常に複雑で精密な工程が要求されて、商業的規模で生産しにくいという問題点がある。
【0006】
また、従来の光電素子は、近赤外線(NIR)範囲でその性能が極度に低下されるという問題点が発生した。よって、適切なセルフバイアスの生成、十分な光子吸収誘導キャリア生成、キャリア分離、およびキャリア収集が可能な装置の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して、光電流を生成する光電素子を備えて、対象体の変形、損傷有無などを分析することができるバイオセンサー装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記光電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による光電素子を備えるバイオセンサー装置は、対象体に赤外線パルス光を照射する赤外線パルス生成器、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して光電流を生成する光電素子、および前記光電流の中で前記赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流または後縁に対応する第2ピーク電流の一つの大きさを測定して、前記対象体を分析する感知素子を含む。
【0010】
一実施形態において、前記赤外線パルス光のパルス周期は、1ms~0.1sで、前記パルス周期に対するパルス幅の比率は、1~10%であることが好ましい。
【0011】
一実施形態において、前記光電素子は、p型半導体層、前記p型半導体層上に形成されて、前記p型半導体層とPN接合を形成し、前記赤外線パルス光が入射されるn型半導体層、および前記n型半導体層の表面に形成された透明集電体を含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、前記光電素子は、前記PN接合によって生成されるセルフバイアス(Self-bias)によって前記光電流を生成してもよい。
【0013】
一実施形態において、前記p型半導体層は、p型シリコン(p-Si)を含み、前記n型半導体層は、二酸化チタン(TiO)を含むことが好ましい。
【0014】
一実施形態において、前記透明集電体は、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、InおよびSnOから選択される一つ以上を含むことが好ましい。
【0015】
一実施形態において、前記感知素子は、p型半導体層とn型半導体層との間に電気的に連結形成されてもよい。
【0016】
一実施形態において、前記感知素子で測定されたピーク電流の大きさ変化に基づいた前記対象体に対するマッピングイメージを生成するイメージ生成部をさらに含んでもよい。
【0017】
一方、本発明の他の実施形態による光電素子製造方法は、p型半導体層が形成された基板上にスパッタリング工程によってチタン薄膜を蒸着させるステップ、前記チタン薄膜を酸化させて、二酸化チタン(TiO)薄膜を形成するステップ、および前記二酸化チタン(TiO)薄膜の表面に透明集電体を形成するステップを含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、前記二酸化チタン(TiO)薄膜は、10~100nmの厚さで形成されることが好ましい。
【0019】
一実施形態において、前記p型半導体層は、p型シリコン(p-Si)を含んでもよく、前記透明集電体は、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、InおよびSnOから選択される一つ以上を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバイオセンサー装置は、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して、光電流を生成する光電素子を備え、生成された光電流のピーク電流大きさを測定する感知素子を備えることにより、ピーク電流の大きさを分析して、対象体の損傷、変形などを簡便で、且つ精密に感知することができる。
【0021】
また、本発明のバイオセンサー装置は、前記感知素子で測定されたピーク電流の大きさの変化に基づいて、対象体に対するマッピングイメージを生成することにより、対象体の損傷有無などを視覚的に感知することができ、これに基づいて対象体の分析を実行することができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による光電素子を備えるバイオセンサー装置を示す。
図2】本発明の実施形態による光電素子および感知素子を示す。
図3】本発明の光電素子のパルス光によるピーク電流の生成グラフを示す。
図4】本発明の実施形態による光電素子製造方法を示した概路図である。
図5】(a)はアニーリング前後のTi/FTOフィルムの波長による光透過率を測定した結果を示し、(b)および(c)はX線光電子分光法(XPS)によってTi/FTOフィルムの化学的組成を測定した結果を示す。
図6】(a)~(c)は本発明の実施形態による光電素子のSEMイメージを示し、(d)~(g)は本発明の実施形態による光電素子のEDS分析イメージを示す。
図7】(a)、(b)は本発明の実施形態による光電素子の光反応特性を測定した結果を示し、(c)はパルス光(λ=395nm、P=1mW cm-2、frequency、f=14Hz)で外部バイアスのない光電素子の過渡光(transient-photoresponse)(I-t)反応結果を示す。
図8】本発明の実施形態による光電素子の広帯域光感応(photoresponse)特性を測定した結果を示す。
図9】(a)および(b)は近赤外線パルス光を指に通過させた後、外部変形を適用または未適用した状態でセルフバイアス条件で出力された光電流を測定した結果を示し、(c)は適用された外部変形率による光電流(Iac)の変化を示したグラフである。
図10】本発明の実施形態によるバイオセンサー装置を利用して得た外部変形によるマッピングイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができ、特定の実施形態を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことに理解されるべきである。各図面を説明する際において、類似する構成要素に類似する参照符号を用いた。添付図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために、実際より拡大して示す。
【0024】
第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに用いられることができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで用いられる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素に命名され得、同様に、第2構成要素も第1構成要素に命名され得る。
【0025】
本出願で用いる用語は、ただ特定の実施形態を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたのが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはその以上の他の特徴やステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないことに理解すべきである。
【0026】
異なりに定義されない限り、技術的または科学的用語を含んで、ここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。通常用いられる辞書に定義されているような用語は、連関された技術の脈絡において有する意味と一貫された意味を有することに解釈すべきであり、本文に明示的に定義されない限り、理想的またはあまりにも形式的な意味に解釈されてはならない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態による光電素子を備えるバイオセンサー装置を示し、図2は、本発明の実施形態による光電素子および感知素子を示す。
【0028】
図1および図2を参照すると、本発明のバイオセンサー装置は、赤外線パルス生成器100、光電素子200、および感知素子300を含むことができる。
【0029】
赤外線パルス生成器100は、赤外線パルス光を生成し、対象体に赤外線パルス光を照射するもので、対象体の密度、損傷有無などによって透過する赤外線パルス光の大きさは異なる。ここで、対象体は、生体物質、人体を意味してもよい。
【0030】
対象体に照射する赤外線パルス光は、図3に示したように、周期、パルス幅、上昇縁(前縁)および下降縁(後縁)で構成され、本発明の赤外線パルス光のパルス周期は1ms~0.1sであり、前記パルス周期に対するパルス幅の比率は1~10%であることが好ましいが、これに制限されるものではなく、装置が最大kHz周波数まで作動することができるので、他の作動周波数も選択可能である。
【0031】
光電素子200は、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して光電流を生成し、前記感知素子300と電気的に連結されている。
【0032】
一実施形態において、前記光電素子200は、図3に示したように、対象体を透過した赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流を生成し、後縁に対応する第2ピーク電流を生成することができる。この時、図1に示したように、対象体の密度、損傷有無によって第1ピーク電流または第2ピーク電流の大きさは変化するようになる。よって、前記第1ピーク電流または第2ピーク電流の一つの大きさを感知素子300が測定することによって前記対象体を分析することができる。
【0033】
具体的には、光電素子200は、p型半導体層、n型半導体層、および透明集電体を含むことができる(図4参照)。
【0034】
p型半導体層は、n型半導体層とPN接合を形成し、p型ドーパントがドーピングされた半導体物質からなってもよい。好ましくは、p型ドーパントがドーピングされたp型シリコン(p-Si)を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
n型半導体層は、p型半導体層上に形成されて、前記p型半導体層とPN接合を形成し、前記赤外線パルス光が入射される。一実施形態において、n型半導体層は、二酸化チタン(TiO)を含むことが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0036】
透明集電体は、前記n型半導体層の表面に形成され、光電流の生成時に効果的な電荷収集のための経路を提供する役割を果たす。このような透明集電体は、銀ナノワイヤ、透明金属酸化物伝導体などを含んでもよく、例えば、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、In、SnOから選択される一つ以上を含んでもよい。最も好ましくは、透明集電体として銀ナノワイヤを用いてもよい。
【0037】
一実施形態において、本発明の光電素子200は、赤外線パルス光がn型半導体層に入射されると、前記PN接合によってセルフバイアス(Self-bias)が生成されるようになり、このようなセルフバイアス(Self-bias)によって光電流を生成することができる。
【0038】
感知素子300は、前記光電流の中で前記赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流または後縁に対応する第2ピーク電流の一つの大きさを測定して、前記対象体を分析することができる。
【0039】
一実施形態において、前記感知素子300は、光電素子200のp型半導体層とn型半導体層との間に電気的に連結形成されることができ、p型半導体層とn型半導体層とのPN接合によって生成されたセルフバイアス(Self-bias)によって生成された光電流の大きさ(前記第1ピーク電流または第2ピーク電流の一つの大きさ)を測定して、対象体を分析することができる。
【0040】
好ましくは、前記光電流の中で前記赤外線パルス光の前縁に対応する第1ピーク電流の大きさを測定して対象体を分析することができるが、これは第1ピーク電流の大きさ変化が第2ピーク電流の大きさ変化に比べて大きいからである。
【0041】
一方、本発明のバイオセンサー装置は、上述した構成要素にイメージ生成部(図示せず)を追加的にさらに含んでもよい。
【0042】
イメージ生成部は、前記感知素子300で測定されたピーク電流の大きさ変化に基づいた前記対象体に対するマッピングイメージを生成して、対象体の損傷有無などを視覚的に感知することができるようにし、これに基づいて対象体の分析を行うことができる。
【0043】
上述したように、本発明のバイオセンサー装置は、対象体を透過した赤外線パルス光を受信して、光電流を生成する光電素子を備え、生成された光電流のピーク電流の大きさを測定する感知素子を備えることにより、ピーク電流の大きさを分析して、対象体の損傷、変形などを簡便で、且つ精密に感知することができる。
【0044】
また、本発明のバイオセンサー装置は、前記感知素子で測定されたピーク電流の大きさの変化に基づいて、対象体に対するマッピングイメージを生成することにより、対象体の損傷有無などを視覚的に感知することができ、これを基づいて、対象体の分析を行うことができるという長所がある。
【0045】
図4は、本発明の実施形態による光電素子製造方法を示した概路図である。
【0046】
図4を参照すると、本発明の他の実施形態による光電素子製造方法は、p型半導体層が形成された基板上にスパッタリング工程によってチタン薄膜を蒸着させるステップ(S110)、前記チタン薄膜を酸化させて、二酸化チタン(TiO)薄膜を形成するステップ(S120)、および前記二酸化チタン(TiO)薄膜の表面に透明集電体を形成するステップ(S130)を含むことができる。
【0047】
まず、p型半導体層が形成された基板上にスパッタリング工程によってチタン薄膜を蒸着させるステップ(S110)を実行する。
【0048】
一実施形態において、前記スパッタリング工程は、25~35sccmのアルゴンガスの流れで、10~40℃の温度で、80~120WのRF電力を印加して実行することが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0049】
また、前記p型半導体層は、p型ドーパントがドーピングされた半導体物質からなってもよい。好ましくは、p型ドーパントがドーピングされたp型シリコン(p-Si)を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0050】
次に、前記チタン薄膜を酸化させて、二酸化チタン(TiO)薄膜を形成するステップ(S120)を実行する。
【0051】
一実施形態において、チタン薄膜の酸化は、500℃~700℃の温度で化学気相蒸着工程(CVD)によって実行することができるが、これに制限されるものではない。
【0052】
また、前記二酸化チタン(TiO)薄膜は、10~100nmの厚さに形成されることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0053】
最後に、前記二酸化チタン(TiO)薄膜の表面に透明集電体を形成するステップ(S130)を実行することができる。
【0054】
一実施形態において、前記透明集電体は、銀ナノワイヤ、IGZO(Indium Galium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SIZO(Silicon Indium Zinc Oxide)、HIZO(Hafnium Indium Zinc Oxide)、ZTO(ZincTin Oxide)、ZnO、Ga、InおよびSnOから選択される一つ以上を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明は、チタン薄膜を酸化させて二酸化チタン薄膜を形成することによって、p型半導体層と二酸化チタン薄膜との間に滑らかな界面を形成することができ、これにより、光電素子の性能を向上させることができる。
【0056】
以下では、具体的な実施例とともに本発明の内容についてさらに説明する。
【0057】
<光電素子製造>
【0058】
大面積スパッタリング技術を利用して、超音波で洗浄されたp型シリコン(p-Si)(天然酸化物コーティング)およびFTO(Fluorine dopedTin Oxide)がコーティングされた硝子基板に多様な厚さ(4-80nm)のチタン薄膜を蒸着させた。この時、スパッタリングは、室温(300K)で30sccmのAr流れおよび100Wの無線周波数(RF)電力で行われた。基板とチタンターゲットとの距離は、7.5cmに固定した。
【0059】
次に、50sccmの制御された酸素の流れで、600℃の温度で、化学気相蒸着(CVD)装置を利用して、Ti/SiおよびTi/FTOサンプルをアニーリングして、金属酸化物を形成した(図4(a)~(c)参照)。
【0060】
<光電素子特性>
【0061】
1.光電素子の金属酸化物の形成を確認するために、アニーリング前後のTi/FTOフィルムの波長による光透過率を測定し、その結果を図5(a)に示した。
【0062】
図5(a)によれば、アニーリング後、フィルムは非常に透明になり(>80%)、チタン薄膜の酸化後可視光範囲(λ=400-700nm)で目立つ吸収を示さないことから、品質の高いフィルムが形成され、イン・ギャップ(in-gap)活性状態がないことを確認することができる。
【0063】
また、図5(a)に挿入されたTi/FTOおよびTiO/FTOサンプルの原本写真を見ると、暗い黒色から透明色への明確な色変化を確認することができる。
【0064】
図5(b)および(c)は、X線光電子分光法(XPS)によってTi/FTOフィルムの化学的組成を測定した結果を示す。
【0065】
図5(b)に示したように、Ti 2pのXPSスペクトルは458.46および464.17eVの結合エネルギーを中心とする2つのピークを含み、458.46eVでの高強度ピーク(Ti、2p3/2)はTiOのTi4+に対応し(458.6-459.2eV)、二番目のピーク(Ti、2p1/2)は、スピン-軌道結合(spin-orbit coupling)に対応する。
【0066】
このようなスペクトルによれば、Ti/FTOフィルムのピークは、金属Ti(453.7-454.2eV)またはTi2+(454.9-455.2eV)のピークとかなり異なる位置にあるので、金属酸化物の形成を確認することができる。また、このピークの面積比(2.2:1)は、2pラインの分岐比(branching ratio)(2:1)と類似する。
【0067】
一方、図5(c)によれば、測定された0 1sピークは、~529.80および532.39eVを中心とする2つのガウシアン成分(component)に対応する。一番目のピーク(529.8eV)は格子地点に酸素が存在するからであり、二番目のピークは、表面に吸着された-OHグループと関連がある。このようなX線光電子分光法の結果によって二酸化チタン(TiO)の形成を確認した。
【0068】
2.走査電子顕微鏡(SEM)を用いて金属酸化物が形成された薄膜の形態学的分析を行った。
【0069】
図6の(a)は、薄膜の断面SEMイメージで、TiO薄膜が~50nm厚さに形成されたことを観察することができ、巨視的な亀裂や不適合がないことを確認することができる。
【0070】
また、Si層とTiO層との間の滑らかな界面形成を観察することができるが、これは効率的な電荷輸送のために好ましく、結果的に、光電素子の性能を向上させる。
【0071】
一方、効果的な電荷収集のための経路を提供するために、銀ナノワイヤ(AgNW)をTiO層の表面に形成し、表面に銀ナノワイヤ(AgNWs)が形成されたTiO層の平面-ビュSEMイメージを図6の(b)に示した。
【0072】
図6の(b)および(c)を参照すると、フィルムが円で表示されたように、30~60nmの側面大きさを有する均一に分布されたナノ構造で構成されていることが分かる。
【0073】
また、エネルギー分散型X線分光法(EDS)でチタン(d)、酸素(e)、銀(f)およびシリコン(g)の元素分布を確認し、その結果を図6の(d)~(g)にそれぞれ示した。
【0074】
図6の(d)~(g)によれば、TiとOの元素比はそれぞれ66.2%および33.8%であり、これはTi/O元素比(1.95)がTiO層の理想的な化学量論的組成比と類似することを示す。
【0075】
3.暗条件(dark)および多様な波長(λ=365~940nm)で、所定照度(p=4mW cm-2)で電流-電圧(I-V)測定を行い、TiO/Siヘテロ構造を有する光電素子の定常状態光反応特性(steady-state photoresponse property)を測定した。
【0076】
電流-電圧(I-V)曲線を示した図7の(a)によれば、暗条件でI-0.8/I+0.8=18の電流比(すなわち、±0.8Vでの電流比)を有するI-V曲線の非対称性を確認することができるが、これはTiO/Siインターフェースでバンド配列に起因する。
【0077】
また、暗条件で得たI-V曲線と比較した時、多様な波長の光の照射時に得たI-V曲線の電流値が上方へ移動することを観察することができ、これにより、光誘導電子-正孔対(e-h)対の生成を確認することができる。
【0078】
一方、電圧が印加されていない状態で光電流の波長依存的模様(すなわち、セルフバイアス(Self-bias)、0V)は、広帯域(紫外線(UV)-近赤外線(NIR))光学活動を保障するだけでなく、光電素子のPN接合内蔵電位(E)の作用で光励起された電子-正孔(e-h)対を分離することができる。このような機能は、開放回路電圧(Voc)(電圧スケールの暗いラインから遠くなる光電流ライン)の移動によって追加的に立証される。
【0079】
図7の(b)は、開放回路電圧(Voc)および光電流(Iph)対暗電流(Idark)比(Iph/Idark)を示す。
【0080】
電流は暗条件(dark condition)で、~15pAで、0Vバイアスで、λ=365nm(P=4mW cm-2)光照射下で0.42μAまで顕著に増加する。これはIph/Idark比が4.2×10ほど高いことを意味し、これは本発明の光電素子が高性能UVセンサーに適用可能であることを示す。
【0081】
4.一方、本発明の光電素子は、セルフバイアス条件(self-biased condition)で、可視光(λ=400-700nm)で近赤外線(λ=700-940nm)光に敏感である。
【0082】
図7の(c)は、パルス光(λ=395nm、P=1mW cm-2、frequency、f=14Hz)で外部バイアスのない光電素子の過渡光(transient-photoresponse)(I-t)反応結果を示す。
【0083】
既存の直流(DC)光電流(Idc)と違って、光の照射、消光時に2つのピークが示され、これは交流(AC)光電流(Iac)が生成されたことを示す。
【0084】
パルス光の前縁に対応する光電流(Iac)ピークの大きさ(-8.8μA)は同じ照度でパルス光の後縁に対応する光電流(Idc)ピークの大きさ(-0.48μA)よりもかなり大きく現われた。比較のために、電流増加の大きさは、比(|Idc+ac|-|Idc|)/|Idc|で計算され、~1733%に測定された。
【0085】
光の照射および消光時に生成される電流ピークの模様は、周期的な光照射下でヘテロ構造を有する光電素子の擬フェルミレベル(quasi-Fermi levels)の相対的移動および再整列に相応することができる。
【0086】
<光電素子の広帯域光応答(photoresponse)特性>
【0087】
図8の(a)は、同じパルス条件(P=1mW cm-2、0V、f=14Hz)で、互いに異なる波長(λ=365-940nm)に対する光電素子の電流-時間(I-t)応答スペクトルを示す。
【0088】
図8の(a)によれば、すべての波長に対して光電流(Iac)ピークが観察されたが、光電流(IdcおよびIac)ピークの大きさは多様に現われるので、PN接合構造を有する光電素子が広帯域で光電流を生成することができることを確認することができる。
【0089】
光電素子で、繰り返し性(Repeatability)と安定性(stability)は、実際光電素子の応用時に重要な要素として作用する。
【0090】
図8の(b)は、光電素子が多数のサイクルを実行した後の素子の性能を示した図で、素子の製作後3ヶ月の間にどんなパッシベーションまたはキャッピング構造がなくても再現可能な応答を示し、目に立つ性能の低下または偏差がなく、優れた耐久性および安定性を示した。
【0091】
図8の(c)は、光電流上昇時間(τ、光電流がピークの10%から90%に増加するのに必要な時間)および下降時間(τ、光電流がピークの90%から10%に減少するのに必要な時間)は、光電素子を高速で作動して測定した結果を示す。測定した結果、それぞれ80および120usに測定された。
【0092】
また、3dBでの遮断周波数(f3dB)は、次の方程式を利用して4.3kHzに推定した:f3dB=0.35/τ。このような応答時間のおかげで光電素子は高いデータ速度で作動することができる。
【0093】
図8の(d)および(e)は、多様な照度(0.4-4mW cm-2)に対する光電流(IdcおよびIac)の包括的なマップで光電素子の広帯域応答を示す。
【0094】
図8の(d)および(e)によれば、最大Iacは、λ=620nm(P=4mW cm-2)で~32μAに到逹した一方、最大Idcは同じ照度で~0.1μAに過ぎなかった。
【0095】
すなわち、同様の測定条件で、λ=620nmで、IacはIdcに比べて31,900倍の顕著な光電流大きさを示し、強力な光電流(Iac)の生成を示す。
【0096】
一方、光電素子の性能を決めるための他の重要なパラメータは感知度(detectivity)Dおよび応答性(responsivity)Rである。
【0097】
暗電流によるショットノイズが全体ノイズの主要原因であると仮定すれば、下記式を利用して、感知度Dを計算することができる。
【0098】
【数1】
【0099】
ここで、Rおよびqは、それぞれ応答性および電子電荷をそれぞれ示す。
【0100】
一方、セルフバイアス条件(self-biased condition)(0V)で測定されたRacおよびDac値は、それぞれλ=620nmで、8mA W-1および3.4×1011Jonesを達成する。しかしながら、Rdcは、0.91mA W-1だけ低いことがある。
【0101】
図8の(f)は、RacおよびDacの波長依存的挙動を示す。この優れた感知度は、より高い信号レベルを可能にして、より正確な結果を導き出すことができる。
【0102】
<光電素子を備えるバイオセンサー装置の特性>
【0103】
1.近赤外線パルス光(λ=940nm、1kHz、diameter=6 mm)を指に通過させた後、外部変形を適用または未適用した状態で、セルフバイアス条件で出力された光電流を測定し、その結果を図9の(a)~(b)に示した。
【0104】
図9の(a)~(b)によれば、変形を適用する前のバイオセンサー装置は、-3.0μAの相対的に高い第1ピーク電流(Iac)大きさを感知し、これは「損傷なし」条件に対応する。
【0105】
しかしながら、外部変形を加えると、第1ピーク電流(Iac)大きさは、測定条件(P=3mW cm-2、0V、f=1kHz)の変更なしに、-3.0μAから-0.6μAに変化した。このような変化は、生体物質の密度の変化に起因し、このような密度の差は、指を貫通する近赤外線の強度を減少させた。これによって、損傷された生体物質を検出することができる。
【0106】
また、図9の(b)によれば、バイオセンサー装置の応答時間は~7ms未満であるので、迅速な感知応答を見せる。
【0107】
図9の(c)は、適用された外部変形率による光電流(Iac)の変化を示したグラフである。(適用された外部変形率は、生体物質の長さIの変化に基づいて次の式を通じて計算した:式(△I/I)×100%。ここで、△Iは、適用された変形による長さの変化である。)図9の(c)に示したように、変形率による光電流の変化は線形的に現われた。このグラフの線形傾斜は、~0.054であり、これはバイオセンサー装置の感度(sensitivity)(すなわち、電流変化/適用された変形率)を示す。
【0108】
2.本発明は、上記のように高い感度(sensitivity)を有するので、生体密度の小さな変化を感知することができ、よって身体-歪みマッピングに用いられることができる。
【0109】
赤外線パルス生成器、光電素子および感知素子を移動(1mm/s)させて外部変形を加えた指をスキャニングした後、感知部で測定したピーク電流の大きさ変化値(△Iac)を連続的にマッピングして、一対一マッピングイメージを得た(図10参照)。
【0110】
図10の(a)および(b)によれば、原本イメージ(左側)と測定されたマッピングイメージ(右側)で見られるように、外部変形率が適用/未適用されたマッピングイメージは明確に異なり、互いに区別可能に現われた。
【0111】
具体的には、変形されていない指によって生成された△Iacは約~2μAであったが、変形された場合、~3μAに増加した結果を確認した。上記のように、本発明のバイオセンサー装置は、感知部で測定されたピーク電流の大きさ変化に基づいた生体物質に対するマッピングイメージを生成して、生体物質の密度の変化を視覚化することができる。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練された当業者は、特許請求範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0113】
100 赤外線パルス生成器
200 光電素子
300 感知素子
図1
図2
図3
図4
【図
図5
【図
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】