(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ダイヤモンドコーティング並びにそれを製造する方法及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/08 20060101AFI20240312BHJP
C08G 77/42 20060101ALI20240312BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240312BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240312BHJP
C01B 32/28 20170101ALI20240312BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D183/08
C08G77/42
C09D5/16
C09D183/04
C01B32/28
G02B1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547292
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022014917
(87)【国際公開番号】W WO2022169853
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521309732
【氏名又は名称】グリステン・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ムンヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ネイサン・ホーマン
【テーマコード(参考)】
2K009
4G146
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
2K009AA00
2K009CC42
2K009DD01
2K009DD04
2K009DD08
2K009EE05
4G146AA05
4G146AB05
4G146AC30B
4G146CB13
4G146CB22
4G146CB23
4G146CB35
4G146DA16
4J038DL071
4J038JC31
4J038NA05
4J038PA18
4J038PA20
4J038PB02
4J246AA11
4J246AA19
4J246AB20
4J246BA120
4J246BA12X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA460
4J246CA469
4J246CA46X
4J246FA151
4J246FA321
4J246GB27
4J246GC09
4J246GD08
4J246HA26
(57)【要約】
本明細書において、検知、光学、及び装飾的な用途のための、自己清浄、防ほこり、及び抗接触汚れ技術のために適応された化学的に構造化可能なダイヤモンドが開示される。本文書は、化学的に構造化可能なダイヤモンドを生成するための発明を説明する。用途としては、宝石又は他の装飾品、光学、量子コンピューティングのための、センサー又は電子デバイスのための、ダイヤモンド又はその中の欠陥との化学的相互作用に依存する化学的官能化のための、ダイヤモンドの抗接触汚れ、自己清浄、色修正、及び防くず性が挙げられる。ダイヤモンド表面は、化学的に不活性であり、したがって、二次的コーティングを付着させるために化学的な改変を必要とする。二次的コーティングは、用途の需要に応じて多様でありうる。化学反応を採用して、ダイヤモンドの表面濡れ性を改変する。ダイヤモンドの濡れ性は、コーティングの性質に応じて、ダイヤモンドに親水性、疎水性、疎油性、又は親油性効果を与えるか、又は明白な化学的官能性を組み入れることができ、望ましい用途に適応させることができる。コーティングされたダイヤモンドは、ダイヤモンド上に官能性ベース層を作製し、それに続いて、望ましい化学的単分子層又は多分子層をそのベースに付着させることによって構築される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗汚れ表面コーティングを有する宝石グレードのダイヤモンドの宝石用原石を含む、防汚ダイヤモンドであって、
前記抗汚れ表面コーティングは、単分子層を含み、
前記防汚ダイヤモンドの表面及び単分子層は、表面(I):
【化1】
[式中、
nは、0、1、2、3、又は4から選択される整数であり、
mは、1~15の範囲の整数である]
によって表され、
前記防汚ダイヤモンドは、
未加工ダイヤモンドの表面をプラズマ処理して、前駆体ダイヤモンド表面を有する前駆体ダイヤモンドを提供する工程であり、前記前駆体ダイヤモンド表面が、前記未加工ダイヤモンドの表面とは化学的に異なる、工程と、
前記前駆体ダイヤモンドをアニールして、反応性ダイヤモンド表面を有する反応性ダイヤモンドを提供する工程であり、前記反応性ダイヤモンド表面が前記前駆体ダイヤモンド表面とは異なる、工程と、
S-単位を有するシラン処理剤に前記反応性ダイヤモンド表面を曝露させる工程であり、各「S-単位」が、Si(CH
2)
n(CF
2)
mCF
3からなるシラン単位である、工程と
によって調製される、防汚ダイヤモンド。
【請求項2】
前記未加工ダイヤモンドの表面が、表面(I-r):
【化2】
において、それぞれA
1、A
2、A
3、A
4、A
5、及びA
6基によって表される、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エポキシド基、C-H基、及びC-C基を有する、請求項1に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項3】
前記未加工ダイヤモンドの表面上の水の接触角が、50°~80°の範囲である、請求項1又は2に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項4】
前記前駆体ダイヤモンド表面が、前記未加工ダイヤモンド表面に関するA
1~A
6表面基の総数に対するA
1及びA
6基の比より大きい、A
1~A
6表面基の総数に対するA
1及びA
6基の比を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項5】
前記前駆体ダイヤモンド表面上の水の接触角が、40°~80°の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項6】
前記反応性ダイヤモンド表面が、前記前駆体ダイヤモンド表面に関するA
1~A
6表面基の総数に対するA
1基の比より大きい、A
1~A
6表面基の総数に対するA
1基の比を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項7】
前記反応性ダイヤモンド表面上の水の接触角が、10°~40°の範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項8】
nが2である、請求項1から6のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項9】
nが2である、請求項1から6のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項10】
mが6~12の間である、請求項1から9のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項11】
mが8である、請求項1から9のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項12】
前記防汚ダイヤモンドの表面が、nm
2毎に、2個又は少なくとも2個のS-単位を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項13】
前記表面(I)が、表面(I-i)
【化3】
によって更に表される、請求項1から12のいずれか一項に記載の防汚ダイヤモンド。
【請求項14】
抗汚れ表面コーティングを有するレンズを含む防汚レンズであって、
前記抗汚れ表面コーティングは、単分子層を含み、
前記防汚レンズの表面及び単分子層は、表面(I):
【化4】
[式中、
nは、0、1、2、3、又は4から選択される整数であり、
mは、1~15の範囲の整数である]
によって表され、
前記防汚レンズは、
処理されていないレンズの表面をプラズマ処理して、前駆体レンズ表面を有する前駆体レンズを提供する工程であり、前記前駆体レンズ表面が、前記処理されていないレンズの表面とは化学的に異なる、工程と、
前記前駆体レンズをアニールして、反応性レンズ表面を有する反応性レンズを提供する工程であり、前記反応性レンズ表面が前記前駆体レンズ表面とは異なる、工程と、
S-単位を有するシラン処理剤に前記反応性レンズ表面を曝露させる工程であって、
各「S-単位」が、Si(CH
2)
n(CF
2)
mCF
3からなるシラン単位である、工程
によって調製される、防汚レンズ。
【請求項15】
分子コーティングされた表面であって、式I:
【化5】
[式中、
Sは宝石用原石の表面を表し、-A(-T)
pは前記分子コーティングを表し、
Aは、Sに共有結合されたシラン又はシロキサンであり、
Tは、Aに結合されたペンダント尾部部分であり、
pは1~5の間の整数である]
を有し、
前記分子コーティングされた表面が、コーティング前の表面とは異なる物理的特性及び/又は化学的特性を有する、
表面。
【請求項16】
TがC
1~C
10アルキル又はC
1~C
10ペルフルオロアルキルである、請求項15に記載の表面。
【請求項17】
Tが、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル、ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロヘキシル、トリフルオロメチル、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15又は16に記載の表面。
【請求項18】
前記表面が、ダイヤモンドの表面である、請求項15から17のいずれか一項に記載の表面。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか一項に記載の表面を調製する方法であって、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリクロロシラン、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(ノナフルオロヘキシルジメチルシロキシ)メチル-シリルエチルジメチルクロロシラン、トリデカフルオロ-2-(トリデカフルオロヘキシル)デシルトリクロロシラン、ヘンエイコシル-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、又はそれらの組み合わせから選択される試薬に前記表面を曝露する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記試薬への曝露の前に、プラズマ処理に前記表面を曝露する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項15から18のいずれか一項に記載の表面を含むダイヤモンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年2月4日に出願された米国特許仮出願第63/145,821号に対する優先権の利益を主張する。前述の出願の開示は、その全体が参照により本明細書によって引用される。外国又は国内の優先権の主張がPCT願書において本出願とともに出願されると認識される全ての出願は、参照により本明細書によって引用される。
【0002】
本開示は一般に、宝石(例えば、ダイヤモンド)、レンズ(例えば、眼鏡、サングラス、拡大レンズ等のためのレンズ)、又は他の品物等の種々の物品のためのコーティング、並びにそれを製造する方法及び使用するための方法に関する。コーティングは、油、ほこり、及びあかに抗する。
【背景技術】
【0003】
従来技術の詳細
時間が経つにつれて、宝石用原石の表面(例えば、ダイヤモンド又は他の宝石用原石の表面)は、ほこり及びあかを引き寄せる場合がある。ほこり及びあかにより、宝石用原石の外観がくすむおそれがある。
【0004】
ダイヤモンドの非常に非反応性で疎水性である炭化水素表面は、油及びあかを引き寄せる。したがって、ダイヤモンド表面は、清浄後すぐに汚れる。この汚れによって、ダイヤモンドはその輝き、光沢、及びきらめきを失い、身に着ける人にとってあまり魅力的ではなくなる。ダイヤモンドの輝きは、ダイヤモンドの白色の光輝を生み出す。それにより、ダイヤモンドから光が流れ出るように見える。ダイヤモンドのきらめきは、一部のダイヤモンドが有しうる虹色の光輝を生じる。ダイヤモンドの内側の白色の光の反射は、ダイヤモンドの輝きである。ダイヤモンドのきらめきは、白色の光の色の虹への回折である。それは、暴風雨後に虹が形成される仕方と同様である。汚れによって、これら及びダイヤモンドの他の有益な特性が失われる。
【0005】
ダイヤモンドの非反応性表面も、それらを官能化する(functionalize)ことを特に困難にする。例えば、シランの化学的性質が、宝石のダイヤモンドの表面に抗汚れ特性を導入するための潜在的な手段である一方で、ダイヤモンド表面は、シランに十分に共有結合して効果的なコーティングを可能にするのに十分に反応性ではない。シランを使用して、ガラス及びプラスチック等、表面上に単分子層を調製することができる一方で、表面へのシランの共有結合は、表面が規則的且つ求核性であることを必要とする。表面上の求核基は、シラン原子上の脱離基と置き換わり、シランを表面に結合させる。このプロセスが、求核剤が既に存在する表面を官能化するために実用的である一方で、求核基を欠く(又は求核基の十分な密度又は量を欠く)表面上では、はっきり認められるほどの、効果的な、且つ/又は使用可能な程度に、シラン処理を遂行することはできない。ダイヤモンド等の宝石用原石の場合、表面は、規則的且つ密なシラン処理(及びコーティング形成)を提供するのに十分な反応性を欠く。更に問題であるのは、宝石グレードのダイヤモンドと関連付けられる費用である。宝石グレードのダイヤモンドは高価であるため、科学者らは、ダイヤモンドを加工及び/又は官能化条件に供することに気が進まずにいる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、基材表面(例えば、宝石用原石表面、特にダイヤモンド表面等)をシランとの共有結合でコーティングする方法が開示される。本明細書において開示されるいくらかの実施形態は、上述の問題、及び/又は共有結合された抗汚れ層を表面上に調製することに関連付けられた他の課題(例えば、シランで表面を官能化すること)を解決する。いくつかの実施形態において、マルチステップの表面調製が実行されて十分な反応性を有する表面が実現され、シランの化学的性質を使用して効果的なコーティングを可能にする。いくらかの実施形態は、高い光学品質が望まれる表面を有する基材に関する(例えば、ダイヤモンド、宝石用原石、レンズ等)。いくらかの実施形態は、抗汚れ置換基(例えば、尾部)を有するシランを含む表面を有する原石(例えば、ダイヤモンド)等の基材に関する。いくつかの実施形態において、シランは、1又は複数の抗汚れ置換基(例えば、尾部)を有する。いくつかの実施形態において、原石は、分子コーティングされた表面を有する。いくつかの実施形態において、シランの尾部(又は尾部)は、原石に抗汚れ特性を与える。
【0007】
いくつかの実施形態において、ダイヤモンド表面(又は他の表面)は、シラン処理の前に調製される。いくつかの実施形態において、表面はプラズマ処理される。いくつかの実施形態において、驚くべきことに、ダイヤモンド表面のプラズマ処理及びコーティングは、ダイヤモンドの光学特性にあまり影響しないことが見出された。光学特性の著しい損失なしにダイヤモンド(又は他の物品)がプラズマ処理され、コーティングされうることは、プラズマ処理が、ダイヤモンド(又は他の物品)の表面を実際に化学的に変化させる非常に苛酷な条件を利用することを考慮すると、特に驚くべき特色である。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、酸素プラズマを使用して実行される。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、水素プラズマを使用して実行される。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、複数のプラズマ処理ステップを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、プラズマ処理プロセスは、第1のタイプのプラズマ(例えば、酸素プラズマ)への曝露、続いて第2のタイプのプラズマ(例えば、水素プラズマ)への曝露を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理された表面は、水蒸気を使用してアニールされる。いくつかの実施形態において、驚くべきことに、アニールプロセスも、ダイヤモンドの光学特性にあまり影響しないことが見出された。いくつかの実施形態において、アニール後、ダイヤモンドは、シラン処理基との反応によってシラン層でコーティング(シラン処理)される。いくつかの実施形態において、シラン処理基(例えば、シラン単位を有する基)は、少なくとも1つの尾部基を有するアルコキシシラン又はハロシランである。いくつかの実施形態において、シラン単位は、任意選択で、尾部として置換されたアルキル基(例えば、ハロアルキル)を有する。いくつかの実施形態において、驚くべきことに、シラン処理プロセスも、ダイヤモンドの光学特性にあまり影響しないことが見出された。
【0009】
本明細書において開示されるいくつかの実施形態は、防汚表面(例えば、宝石用原石表面)を提供する。いくつかの実施形態において、表面は、宝石用原石の表面である。いくつかの実施形態において、宝石用原石はダイヤモンドである。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、抗汚れ表面コーティングを有する、宝石グレードのダイヤモンドの宝石用原石を含む。いくつかの実施形態において、抗汚れ表面コーティングは、ダイヤモンドに共有結合されている。いくつかの実施形態において、抗汚れ表面コーティングは、単分子層を含む単分子層からなるか又は本質的に単分子層からなる。いくつかの実施形態において、ダイヤモンド表面及び単分子層は、表面(I)
【0010】
【0011】
によって表される。いくつかの実施形態において、nは、0、1、2、3、又は4から選択される整数である。いくつかの実施形態において、mは、1~15の範囲の整数である。
【0012】
いくつかの実施形態は、本方法によって調製される防汚宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)に関する。いくつかの実施形態は、本方法によって調製される、表面(I)によって表される防汚表面に関する。いくつかの実施形態は、防汚宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)を調製する方法に関する。いくつかの実施形態において、防汚ダイヤモンドは、未加工ダイヤモンドの表面をプラズマ処理して、前駆体ダイヤモンド表面を有する前駆体ダイヤモンドを提供することによって調製される。いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面は、未加工ダイヤモンドの表面とは化学的に異なる。いくつかの実施形態において、方法は、前駆体ダイヤモンドをアニールして、反応性ダイヤモンド表面を有する反応性ダイヤモンドを提供する工程を含む。いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面は、前駆体ダイヤモンド表面とは異なる。いくつかの実施形態において、方法は、S-単位を有するシラン処理剤に反応性ダイヤモンド表面を曝露させる工程を含む。いくつかの実施形態において、各「S-単位」は、Si(CH2)n(CF2)mCF3からなるシラン単位である。
【0013】
いくつかの実施形態において、未加工ダイヤモンドの表面は、表面(I-r):
【0014】
【0015】
において、それぞれA1、A2、A3、A4、A5、及びA6基によって表される、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エポキシド基、C-H基、及びC-C基を含む。いくつかの実施形態において、未加工ダイヤモンドの表面上の水の接触角は、35°~60°の範囲である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面は、A1~A6表面基の総数に対するA1及びA5基の比を有する。いくつかの実施形態において、この比は、(A1+A5)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)として、定量的に算出される。いくつかの実施形態において、この比は、定性的に算出される(例えば、FT-IR、FTIR ATR分光法、又は他の分光技法を使用して)。いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面についてのA1~A6表面基の総数に対するA1及びA5基の比は、未加工ダイヤモンド表面に関する、A1~A6表面基の総数についてのA1及びA5基の比より大きい。例えば、前駆体ダイヤモンドの表面上の(A1+A5)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)の比が、比前駆体(1,5)と等しく、且つ未加工ダイヤモンドの表面上の比(A1+A5)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)が、比未加工(1,5)と等しい場合、いくつかの実施形態において、比前駆体(1,5)>比未加工(1,5)である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面上の水の接触角は、30°~55°の範囲である。
【0018】
いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面は、A1~A6表面基の総数に対するA1基の比を有する。いくつかの実施形態において、比は、(A1)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)として、定量的に算出される。いくつかの実施形態において、この比は、定性的に算出される(例えば、FT-IR、FTIR ATR分光法、又は他の分光技法を使用して)。いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基の比は、前駆体ダイヤモンド表面についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基の比より大きい。例えば、反応性ダイヤモンドの表面上の(A1)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)の比が、比反応性(1)と等しく、且つ前駆体ダイヤモンドの表面上の比(A1)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)が、比前駆体(1)と等しい場合、いくつかの実施形態において、比反応性(1)>比前駆体(1)である。
【0019】
いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面上の水の接触角は、10°~40°の範囲である。いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面上の水の接触角は、10°~20°の範囲である。いくつかの実施形態において、反応性ダイヤモンド表面上の水の接触角は、5°~20°の範囲である。
【0020】
いくつかの実施形態において、nは2である。いくつかの実施形態において、nは2である。いくつかの実施形態において、mは、6~12の間である。いくつかの実施形態において、mは8である。
【0021】
いくつかの実施形態において、防汚ダイヤモンドの表面は、nm2毎に、2個又は少なくとも2個のS-単位を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、表面(I)は、表面(I-i)
【0023】
【0024】
によって更に表される。
【0025】
いくつかの実施形態において、分子コーティングされた表面は、式I:
【0026】
【0027】
[式中、Sは、宝石用原石(又は別の基材)の表面を表し、-A(-T)pは、分子コーティングを表し;AはSに共有結合されたシラン又はシロキサンであり;Tは、Aに結合されたペンダント部分(例えば、尾部)であり;pは1~5の間の整数である]
を有し、コーティングされた表面は、コーティング前の表面とは異なる物理的特性及び/又は化学的特性を有する。いくつかの実施形態において、Tは1又は2である。いくつかの実施形態において、Sはプラズマ処理された表面である。いくつかの実施形態において、Aは、Si(例えば、-Si(O)x-(式中、xは1、2、3、又は4である))を含む。いくつかの実施形態において、A-Tは、T-Si(O)x-を含み、式中、xは、1、2、又は3であり、各Oは、表面の炭素に、又は隣接するSi(例えば、隣接するT-Si(O)x-単位のSi)に更に結合される。いくつかの実施形態において、Tはアルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、任意選択で置換されていてもよいアルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、任意選択で置換されていてもよいハロアルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、任意選択で置換されていてもよいペルフルオロアルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、任意選択で置換されていてもよいアルキル部、及び任意選択で置換されていてもよいハロアルキル部を含む。いくつかの実施形態において、Tは、C1~10アルキル(任意選択で置換されていてよい)又はC1~10ペルフルオロアルキル(任意選択で置換されていてよい)である。いくつかの実施形態において、Tは、n-オクチル、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル、ノナフルオロヘキシル、トリデカフルオロヘキシル、トリフルオロメチル、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、表面は、ダイヤモンドの表面である。
【0028】
いくらかの実施形態は、表面を調製する方法であって、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリクロロシラン、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(ノナフルオロヘキシルジメチルシロキシ)メチル-シリルエチルジメチルクロロシラン、トリデカフルオロ-2-(トリデカフルオロヘキシル)デシルトリクロロシラン、ヘンエイコシル-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、n-オクチルトリクロロシラン、又はそれらの組み合わせから選択される試薬に表面を曝露する工程を含む、方法に関係する。いくつかの実施形態において、方法は、試薬への曝露の前に、プラズマ処理に表面を曝露する工程を含む。
【0029】
いくつかの実施形態は、上述で開示した方法によって製造されるダイヤモンド及び/又は上述で開示したとおりの表面を有するダイヤモンドに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】様々な官能基を有する未加工ダイヤモンド表面を表す図である。
【
図1B-E】
図1B-Eは、清浄なダイヤモンドの、写真及び角スペクトル評価ツール(ASET)画像、及びSEM画像である。
図1Bは、清浄なダイヤモンドの写真を示す。
図1Cは、汚れたダイヤモンドの写真を示す。
図1Dは、清浄なダイヤモンドの角スペクトル評価ツール(ASET)画像を示す。
図1Eは、汚れたダイヤモンドの角スペクトル評価ツール(ASET)画像を示す。
【
図1F】集積したほこり粒子及びあか(矢印を参照されたい)を有する汚損されたダイヤモンドの代表的なSEM画像を示す。スケールバーは、2mm及び200μmを示す。
【
図2A】基材表面を官能化するための実施形態を提供するスキームを示す図である。
図2Aにおいて示されるように、基材表面をステップAにおいてプラズマ処理に供して、基材上に前駆体表面を得ることができる。
図2Aにおいて示されるように、基材表面をステップBにおいて水でアニールする工程に供して、反応性表面を得ることができる。
図2Aにおいて示されるように、基材の表面をステップCにおいてシラン処理して、コーティングされた基材を得てもよい。置換基Rは、基材の望ましい表面特性を提供する。天然の、実験室で成長させた、及び他のダイヤモンド結晶は、入り交じった化学状態を有する。炉処理と併用して、水素及び酸素プラズマによって処理し、表面水素を酸素含有種に転換することにより、基材はコーティングに対し受容的になる。
【
図2B】ダイヤモンド表面を官能化するための実施形態を提供するスキームを示す図である。
図2Bにおいて示されるように、ダイヤモンド表面をステップAにおいてプラズマ処理に供して、ダイヤモンド上に前駆体表面を得ることができる。
図2Bにおいて示されるように、ダイヤモンド表面をステップBにおいて水でアニールする工程に供して、反応性表面を得ることができる。
図2Bにおいて示されるように、ダイヤモンドの表面をステップCにおいてシラン処理して、コーティングされたダイヤモンド表面を得てもよい。置換基Rは、ダイヤモンドの望ましい表面特性を提供する。天然の、実験室で成長させた、及び他のダイヤモンド結晶は、入り交じった化学状態を有する。炉処理と併用して、水素及び酸素プラズマによって処理し、表面水素を酸素含有種に転換することにより、基材はコーティングに対し受容的になる。
【
図3】アニール設備及びプロセスを示す概略図である。示されるように、窒素ガスは、窒素及び水蒸気を生成するための、超純水を通される泡でありうる。窒素及び水蒸気は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)を有する前駆体物品を含む物品が配置される炉(例えば、電気炉)へと通される。炉により蒸気及び前駆体物品は加熱され、それにより反応性酸素種が基材表面に堆積される。
【
図4】左枠に未加工ダイヤモンドを、右枠にコーティングされたダイヤモンドを示す図である。コーティングされたダイヤモンドを調製するために、表面化学部位の反応性酸素種への転換によって、未加工ダイヤモンドは改変されて親水性になる。右枠において、ダイヤモンドは、ペルフルオロアルキル尾部を含むシランで官能化されている。反応性酸素種は、後に続くコーティングに対して受容的である。
【
図5】防汚シラン表面を有するダイヤモンドを調製するための2ステッププロセスを示す別のスキームを提供する。いくつかの実施形態において、Rは、任意選択で置換されていてよいアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、ペルフルオロ化部分を含むアルキルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで開示されるいくつかの実施形態は、宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)のための分子コーティング、宝石用原石をコーティングする方法、及び宝石用原石コーティングを使用して宝石用原石をくすみにくくする方法に関係する。いくつかの実施形態において、宝石用原石はダイヤモンドである。いくつかの実施形態において、分子コーティングは、望ましい特性を有する置換基(例えば、尾部)を有するシラン又はシロキサン分子を含む。いくつかの実施形態において、置換基は、宝石用原石の物理的特性を変える。例えば、いくらかの実施形態において、疎水性の原石の表面は、親水性ホスト分子を使用して、親水性表面に転換することができる。その反対に、いくらかの実施形態において、親水性の原石の表面は、疎水性ホスト分子を使用して、疎水性表面に転換することができる。代替的に、親水性、疎水性、又は両親媒性表面は、両疎媒性表面に転換することができる。いくつかの実施形態において、表面(親水性、両親媒性、又は疎水性表面)の混合は、多様な置換基の選択によって、実現することができる。以下の説明は、文脈及び例を提供するが、本明細書において後述される、又は本明細書への優先権を主張する任意の他の出願における特許請求の範囲によって包含される、本発明の範囲を限定するように、解釈されるべきではない。いかなる単一構成要素又は構成要素の集合も、不可欠でも必須でもない。
【0032】
基が「任意選択で置換されていてもよい」と説明される場合は必ず、その基は、無置換であっても、示される置換基のうちの1又は複数で置換されていてもよい。同様に、基が、「無置換である又は置換された」(又は「置換された又は無置換である」)と説明される場合に、置換されている場合、置換基は、1又は複数の示される置換基から選択されていてもよい。置換基が示されない場合、示される「任意選択で置換されていてもよい」又は「置換された」基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリール(アルキル)、シクロアルキル(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、ヘテロシクリル(アルキル)、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、モノ置換アミン基、ジ置換アミン基、モノ置換アミン(アルキル)、ジ置換アミン(アルキル)、ジアミノ-基、ポリアミノ、ジエーテル-基、及びポリエーテル-から、個別に且つ独立して選択される1又は複数の基で置換されていてもよいことを意味する。任意選択で置換されていてもよい基は、ペルハロゲン化(例えば、ペルフルオロ化)されていてもよい。例えば、任意選択で置換されていてもよいメチルは、-CF3を含んでもよい。更に、置換基は、任意選択で置換されていてもよい化合物上で表される場合、ハロゲン化(例えば、フッ素化)されていてもよく、及び/又はペルハロゲン化(例えば、ペルフルオロ化)されていてもよい。例えば、任意選択で置換されていてもよいエチルは、その任意選択の置換基として、ペルフルオロ化シクロアルキルを有するエチルを含んでもよい。更なる例証のために、任意選択で置換されていてもよいエチルは、その任意選択の置換基として、ペルフルオロ化シクロアルキルを有するペルフルオロ化エチルを含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用されるように、「a」及び「b」が整数である「Ca~Cb」は、基における炭素原子の数を指す。示される基は、「a」~「b」(両端値を含む)個の炭素原子を含有することができる。したがって、例えば、「C1~C4アルキル」基は、1~4個の炭素を含有するアルキル基、即ち、CH3-、CH3CH2-、CH3CH2CH2-、(CH3)2CH-、CH3CH2CH2CH2-、CH3CH2CH(CH3)-、及び(CH3)3C-を有するアルキル基すべてを指す。「a」及び「b」が指定されていない場合、これらの定義において説明される最も広い範囲が想定されるべきである。同様に、C1~4アルキルは、C1~C4アルキルと同じ意味を有する。
【0034】
2個の「R」基が、「一緒になる」と説明される場合、R基及びそれが付着される原子は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロ環を形成することができる。例えば、限定することなく、NRaRb基のRa及びRbが、「一緒になる」と示される場合、それらは互いに共有結合されて環
【0035】
【0036】
を形成することを意味する。
【0037】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、完全飽和の脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、分枝鎖であっても直鎖であってもよい。分枝アルキル基の例としては、イソ-プロピル、sec-ブチル、及びt-ブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-へキシル、及びn-ヘプチル等が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、1~30個の炭素原子を有してもよい(本明細書において現れる場合は必ず、「1~30」等の数値範囲は、所与の範囲にある各整数を指す。例えば、「1~30個の炭素原子」は、アルキル基が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の炭素原子からなってもよいことを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の出現を包含する)。「アルキル」基はまた、1~12個の炭素原子を有する中級のアルキルであってもよい。「アルキル」基はまた、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルでありうる。ほんの一例として、「C1~C5アルキル」は、アルキル鎖中に1~5個の炭素原子が存在することを示し、即ち、アルキル鎖は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル(分枝鎖状及び直鎖状)等から選択される。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、及びへキシルが、限定されない仕方で挙げられる。
【0038】
本明細書において開示される任意の「アルキル」基は、置換されていても、無置換であってもよい。例えば、本明細書において開示されるアルキルは、「置換された」又は「任意選択で置換されていてもよい」と示されているか否かに関わらず、置換されていてもよい。アルキル基の任意選択の置換は、本明細書の他の箇所で説明されるものを含んでもよい。例えば、任意選択で置換される場合、アルキルは、ハロゲン原子で置換されてもよい。例証のために、任意選択で置換されていてもよいアルキルは、ハロゲン化されていてもよい(-XHによって置き換えられた1又は複数の-H原子を有する、式中、XHはハロゲンである)。追加の例証として、任意選択で置換されていてもよいアルキルは、ペルハロゲン化(例えば、各-H原子が-Fで置き換えられるペルフルオロ化)されていても、部分的にハロゲン化されていてもよい。
【0039】
本明細書で使用されるように、「アルキレン」という用語は、二価の完全飽和の直鎖脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、及びオクチレンが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレン基は、炭素原子の数が後に続き、「*」が後に続く
【0040】
【0041】
によって表されてもよい。例えば、エチレンを表すための
【0042】
【0043】
。アルキレン基は、1~30個の炭素原子を有してもよい(本明細書において現れる場合は必ず、「1~30」等の数値範囲は、所与の範囲にある各整数を指す。例えば、「1~30個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、最大30個までの、及び30個を含む炭素原子からなってもよいことを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない「アルキレン」という用語の出現を包含する)。「アルキレン」基はまた、1~12個の炭素原子を有する中級のアルキルであってもよい。「アルキレン」基はまた、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルでありうる。アルキレン基は、置換されていても、無置換であってもよい。例えば、低級アルキレン基は、低アルキレン基の1又は複数の水素を置き換えることによって、且つ/又はC3~6単環式シクロアルキル基(例えば、
【0044】
【0045】
)で同じ炭素上の両方の水素を置換することによって、置換することができる。本明細書の他の箇所で開示されるように、付着点を必要とする場合、アルキルは、アルキレニルであってもよい。
【0046】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、炭素二重結合を含有する2~20個の炭素原子の一価の直鎖又は分枝鎖ラジカルを指し、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、及び2-ブテニル等を含むが、これらに限定されない。アルケニル基は、無置換であっても、置換されていてもよい。
【0047】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、炭素三重結合を含有する2~20個の炭素原子の一価の直鎖又は分枝鎖ラジカルを指し、1-プロピニル、1-ブチニル、及び2-ブチニル等を含むが、これらに限定されない。アルキニル基は、無置換であっても、置換されていてもよい。
【0048】
本明細書で使用されるように、「シクロアルキル」は、完全飽和(二重又は三重結合がない)の単環式又は多環式(二環式等)炭化水素環系を指す。2個以上の環から構成される場合、環は、縮環されていても、架橋されていても、又はスピロ形式で合わせて接続されていてもよい。本明細書で使用されるように、「縮環された」という用語は、2個の原子及び1個の結合を共通して有する2個の環を指す。本明細書で使用されるように、「架橋されたシクロアルキル」という用語は、シクロアルキルが、隣接しない原子を接続する1又は複数の原子の連結を含有する、化合物を指す。本明細書で使用されるように、「スピロ」という用語は、1個の原子を共通して有する2個の環を指し、2個の環は架橋によって連結されていない。シクロアルキル基は、環内に3~30個の原子、環内に3~20個の原子、環内に3~10個の原子、環内に3~8個の原子、又は環内に3~6個の原子を有することができる。シクロアルキル基は、無置換であっても、置換されていてもよい。モノシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに決して限定されない。縮環されたシクロアルキル基の例は、デカヒドロナフタレニル、ドデカヒドロ-1H-フェナレニル、及びテトラデカヒドロアントラセニルであり;架橋されたシクロアルキル基の例は、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、アダマンタニル、及びノルボルナニルであり;並びにスピロシクロアルキル基の例としては、スピロ[3.3]ヘプタン及びスピロ[4.5]デカンが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用されるように、「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の環内に1又は複数の二重結合を含有する、単環式又は多環式(二環式等)炭化水素環系を指す;しかし、1個より多く存在する場合、二重結合は、すべての環にわたっては、完全に非局在化されたパイ電子系を形成することができない(そうでない場合は、本明細書において定義されるように基は「アリール」となる)。シクロアルケニル基は、環内に3~10個の原子、環内に3~8個の原子、又は環内に3~6個の原子を含有することができる。2個以上の環から構成される場合、環は、縮環された、架橋された、又はスピロ形式で、合わせて接続されてもよい。シクロアルケニル基は、無置換であっても置換されていてもよい。
【0050】
本明細書で使用されるように、「アリール」は、すべての環にわたって完全に非局在化されたパイ電子系を有する、炭素環式(すべて炭素)の単環式又は多環式(二環式等)芳香環系(2個の炭素環式の環が化学結合を共有する縮環された環系を含む)を指す。アリール基中の炭素原子の数は、多様でありうる。例えば、アリール基は、C6~C14アリール基、C6~C10アリール基、又はC6アリール基でありうる。アリール基の例としては、ベンゼン、ナフタレン、及びアズレンが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、置換されていても、無置換であってもよい。本明細書で使用されるように、「ヘテロアリール」は、1又は複数のヘテロ原子(例えば、1、2、又は3個のヘテロ原子)、即ち、窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素を含有する、単環式又は多環式(二環式等)芳香環系(完全に非局在化されたパイ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環内の原子の数は、多様でありうる。例えば、ヘテロアリール基は、9個の炭素原子及び1個のヘテロ原子; 8個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;7個の炭素原子及び3個のヘテロ原子;8個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;7個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;6個の炭素原子及び3個のヘテロ原子;5個の炭素原子及び4個のヘテロ原子;5個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;4個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;3個の炭素原子及び3個のヘテロ原子;4個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;3個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;又は2個の炭素原子及び3個のヘテロ原子等の、環内に4~14個の原子、環内に5~10個の原子、又は環内に5~6個の原子を含有することができる。更に、「ヘテロアリール」という用語には、少なくとも1個のアリール環及び少なくとも1個のヘテロアリール環、又は少なくとも2個のヘテロアリール環等の2個の環が、少なくとも1個の化学結合を共有する、縮環された環系が含まれる。ヘテロアリール環の例としては、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、及びトリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されていても、無置換であってもよい。
【0051】
本明細書で使用されるように、「ヘテロシクリル」又は「ヘテロアリシクリル」は、3、4、5、6、7、8、9、10、最大18員単環式、二環式、及び三環式環系を指し、ここで、炭素原子は1~5個のヘテロ原子と一緒に前記環系を構成する。しかしながら、ヘテロ環は、完全に非局在化されたパイ電子系がすべての環にわたっては生じないように位置を定められた1又は複数の不飽和結合を、任意選択で含有してもよい。ヘテロ原子は、酸素、硫黄、及び窒素を含むがこれらに限定されない、炭素以外の元素である。ヘテロ環は、定義が、ラクタム、ラクトン、環式イミド、環式チオイミド、及び環式カルバマート等のオキソ-系及びチオ-系を含むように、1又は複数のカルボニル又はチオカルボニル官能性を更に含有してもよい。2個以上の環から構成される場合、環は、縮環されていても、架橋されていても、又はスピロ形式で合わせて接続されていてもよい。本明細書で使用されるように、「縮環された」という用語は、2個の原子及び1個の結合を共通して有する2個の環を指す。本明細書で使用されるように、「架橋されたヘテロシクリル」又は「架橋されたヘテロアリシクリル」という用語は、ヘテロシクリル又はヘテロアリシクリルが、隣接しない原子を接続する1又は複数の原子を連結する基を含有する化合物を指す。本明細書で使用されるように、「スピロ」という用語は、1個の原子を共通して有する2個の環を指し、2個の環は架橋によって連結されていない。ヘテロシクリル及びヘテロアリシクリル基は、環内に3~30個の原子、環内に3~20個の原子、環内に3~10個の原子、環内に3~8個の原子、又は環内に3~6個の原子を含有することができる。例えば、5個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;4個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;3個の炭素原子及び3個のヘテロ原子;4個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;3個の炭素原子及び2個のヘテロ原子;2個の炭素原子及び3個のヘテロ原子;1個の炭素原子及び4個のヘテロ原子;3個の炭素原子及び1個のヘテロ原子;又は2個の炭素原子及び1個のヘテロ原子を含有する。更に、ヘテロ脂環式内の任意の窒素は、四級化されていてもよい。ヘテロシクリル又はヘテロ脂環式基は、無置換であっても、置換されていてもよい。そのような「ヘテロシクリル」又は「ヘテロアリシクリル」基の例としては、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,3-オキサチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリン、オキシラン、ピペリジンN-オキシド、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、アゼパン、ピロリドン、ピロリジオン、4-ピペリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、2-オキソピロリジン、テトラヒドロピラン、4H-ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリン、チアモルホリンスルホキシド、チアモルホリンスルホン、及びそれらのベンゾ縮環類似体(例えば、ベンゾイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、及び/又は3,4-メチレンジオキシフェニル)が挙げられるが、これらに限定されない。スピロヘテロシクリル基の例としては、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン、2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン、2-オキサスピロ[3.4]オクタン、及び2-アザスピロ[3.4]オクタンが挙げられる。
【0052】
本明細書で使用されるように、「アラルキル」及び「アリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して、置換基として接続されたアリール基を指す。アラルキルの低級アルキレン及びアリール基は、置換されていても、無置換であってもよい。例としては、ベンジル、2-フェニルアルキル、3-フェニルアルキル、及びナフチルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用されるように、「シクロアルキル(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して、置換基として接続されたシクロアルキル基を指す。シクロアルキル(アルキル)の低級アルキレン及びシクロアルキル基は、置換されていても、無置換であってもよい。
【0054】
本明細書で使用されるように、「ヘテロアラルキル」及び「ヘテロアリール(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して、置換基として接続されたヘテロアリール基を指す。ヘテロアラルキルの低級アルキレン及びヘテロアリール基は、置換されていても、無置換であってもよい。例としては、2-チエニルアルキル、3-チエニルアルキル、フリルアルキル、チエニルアルキル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル、及びイミダゾリルアルキル、及びそれらのベンゾ縮環類似体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「ヘテロアリシクリル(アルキル)」及び「ヘテロシクリル(アルキル)」は、低級アルキレン基を介して、置換基として接続されたヘテロ環式又はヘテロ脂環式基を指す。(ヘテロアリシクリル)アルキルの低級アルキレン及びヘテロシクリルは、置換されていても、無置換であってもよい。例としては、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル(メチル)、ピペリジン-4-イル(エチル)、ピペリジン-4-イル(プロピル)、テトラヒドロ-2H-チオピラン-4-イル(メチル)、及び1,3-チアジナン-4-イル(メチル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0057】
本明細書で使用されるように、「アルコキシ」は、式-ORを指し、式中、Rは、本明細書において定義されるとおりの、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)である。アルコキシの非限定的なリストは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ、及びベンゾキシである。アルコキシは、置換されていても、無置換であってもよい。
【0058】
本明細書で使用される「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」(例えば、-XH)という用語は、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)、及びヨウ素(-I)等の、元素周期律表の第7列の放射性安定(radio-stable)原子のうちのいずれか1つを意味する。
【0059】
本明細書で使用されるように、「ハロアルキル」は、水素原子のうちの1又は複数(又はすべて)が、ハロゲンによって置き換えられた、アルキル基(例えば、モノ-ハロアルキル、ジ-ハロアルキル、トリ-ハロアルキル、ポリハロアルキル、及びペルハロアルキル基)を指す。ハロアルキル部分は、分枝鎖であっても直鎖であってもよい。そのような基としては、クロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1-クロロ-2-フルオロメチル、2-フルオロイソブチル、及びペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。ハロアルキル基の例としては、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CH2CF3、-CH2CHF2、-CH2CH2F、-CH2CH2Cl、-CH2CF2CF3、-CF2CF2CF3;-CF2-CF2-CF2-CF3;並びに、当技術分野で通常の技術及び本明細書において提供される教示の観点から、前述の例のうちのいずれか1つと同等であると考えられるであろう他の基(フルオロアルキルを含む基)が挙げられるが、これらに限定されない。ハロアルキルは、中級又は低級ハロアルキルであってもよい。ハロアルキルは、-(C(XH)2)m-XHによって表されてもよく、式中、「m」は1~20の間の任意の整数である。ハロアルキルは、置換されていても、無置換であってもよい。
【0060】
本明細書で使用されるように、「フルオロアルキル」は、水素原子のうちの1又は複数が、フッ素によって置き換えられた、ハロアルキル基(又はアルキル基)(例えば、モノ-フルオロアルキル、ジ-フルオロアルキル、トリ-フルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、及びペルフルオロアルキル)を指す。そのような基としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-フルオロイソブチル、及びペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。ハロアルキル基の例としては、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CH2CF3、-CH2CHF2、-CH2CH2F、-CH2CH2Cl、-CH2CF2CF3、-CF2CF2CF3;-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF3;並びに、当技術分野で通常の技術及び本明細書において提供される教示の観点から、前述の例のうちのいずれか1つと同等であると考えられるであろう他の基が挙げられるが、これらに限定されない。フルオロアルキルは、中級又は低級フルオロアルキルであってもよい。フルオロアルキルは、-(C(XH)2)m-XHによって表されてもよく、式中、XHは-Fであり、「m」は1~20の間の任意の整数である。フルオロアルキルは、C4~C10フルオロアルキル、C6~C12フルオロアルキル、C8~C14フルオロアルキル、C1~C15フルオロアルキル、又はC6~C20フルオロアルキル等であってもよい。
【0061】
本明細書で使用されるように、「ハロアルコキシ」は、水素原子のうちの1又は複数が、ハロゲンによって置き換えられた、アルコキシ基(例えば、モノ-ハロアルコキシ、ジ-ハロアルコキシ、及びトリ-ハロアルコキシ基)を指す。そのような基としては、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1-クロロ-2-フルオロメトキシ、及び2-フルオロイソブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。ハロアルコキシは、中級又は低級ハロアルコキシであってもよい。ハロアルコキシは、-O-(C(XH)2)n-XHによって表されてもよく、式中、「n」は1~20の間の任意の整数である。ハロアルコキシは、置換されていても、無置換であってもよい。
【0062】
本明細書で使用される「アミノ」及び「無置換のアミノ」という用語は、-NH2基を指す。
【0063】
「モノ-置換アミン」基は、「-NHRA」基を指し、式中、RAは、本明細書において定義されるとおりの、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)でありうる。RAは、置換されていても、無置換であってもよい。モノ-置換アミン基は、例えば、モノ-アルキルアミン基、モノ-C1~C6アルキルアミン基、モノ-アリールアミン基、及びモノ-C6~C10アリールアミン基等を含むことができる。モノ-置換アミン基の例としては、-NH(メチル)及び-NH(フェニル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「ジ-置換アミン」基は、「-NRARB」基を指し、式中、RA及びRBは独立して、本明細書において定義されるとおりの、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)でありうる。RA及びRBは独立して、無置換であっても置換されていてもよい。ジ-置換アミン基は、例えば、ジ-アルキルアミン基、ジ-C1~C6アルキルアミン基、ジ-アリールアミン基、及びジ-C6~C10アリールアミン基等を含むことができる。ジ-置換アミン基の例としては、-N(メチル)2、-N(フェニル)(メチル)、及び-N(エチル)(メチル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用されるように、「モノ-置換アミン(アルキル)」基は、低級アルキレン基を介して置換基として接続された、本明細書で提供されるとおりのモノ-置換アミンを指す。モノ-置換アミン(アルキル)は、置換されていても、無置換であってもよい。モノ-置換アミン(アルキル)基は、例えば、モノ-アルキルアミン(アルキル)基、モノ-C1~C6アルキルアミン(C1~C6アルキル)基、モノ-アリールアミン(アルキル基)、及びモノ-C6~C10アリールアミン(C1~C6アルキル)基等を含むことができる。モノ-置換アミン(アルキル)基の例としては、-CH2NH(メチル)、-CH2NH(フェニル)、-CH2CH2NH(メチル)、及び-CH2CH2NH(フェニル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用されるように、「ジ-置換アミン(アルキル)」基は、低級アルキレン基を介して置換基として接続された、本明細書で提供されるとおりのジ-置換アミンを指す。ジ-置換アミン(アルキル)は、置換されていても、無置換であってもよい。ジ-置換アミン(アルキル)基は、例えば、ジアルキルアミン(アルキル)基、ジ-C1~C6アルキルアミン(C1~C6アルキル)基、ジ-アリールアミン(アルキル)基、及びジ-C6~C10アリールアミン(C1~C6アルキル)基等を含むことができる。ジ-置換アミン(アルキル)基の例としては、-CH2N(メチル)2、-CH2N(フェニル)(メチル)、-CH2N(エチル)(メチル)、-CH2CH2N(メチル)2、-CH2CH2N(フェニル)(メチル)、及び-NCH2CH2(エチル)(メチル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用されるように、「ジアミノ-」という用語は、「-N(RA)RB-N(RC)(RD)」基を表し、式中、RA、RC、及びRDは独立して、本明細書において定義されるとおりの、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)であり得、式中、RBは、2個の「N」基を連結し、(RA、RC、及びRDから独立して)置換されたか又は無置換であるアルキレン基でありうる。RA、RB、RC、及びRDは独立して、更に置換されていても、無置換であってもよい。
【0068】
本明細書で使用されるように、「ポリアミノ」という用語は、「-(N(RA)RB-)n-N(RC)(RD)」を表す。例証のために、ポリアミノという用語は、-N(RA)アルキル-N(RA)アルキル-N(RA)アルキル-N(RA)アルキル-Hを含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリアミノのアルキルは、本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。この例が繰り返し単位を4個のみ有する一方で、「ポリアミノ」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の繰り返し単位からなってもよい。RA、RC、及びRDは独立して、本明細書において定義されるとおりの、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)であり得、RBは、2個の「N」基を連結し、(RA、RC、及びRDから独立して)置換された、又は無置換であるアルキレン基でありうる。RA、RC、及びRDは独立して、更に置換されうる、又は無置換でありうる。ここで留意されるように、ポリアミノは、介在するアルキル基(ここで、アルキルは本明細書の他の箇所で定義されるとおりである)を有するアミン基を含む。
【0069】
本明細書で使用されるように、「ジエーテル-」という用語は、「-ORBO-RA」基を表し、式中、RAは、本明細書において定義されるとおりの、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)であり得、式中、RBは、2個の「O」基を連結し、置換されていても、無置換であってもよいアルキレン基であり得る。RAは独立して、更に置換されていても、又は無置換であってもよい。
【0070】
本明細書で使用されるように、「ポリエーテル」という用語は、繰り返しの-(ORB-)nORA基を表す。例証のために、ポリエーテルという用語は、-Oアルキル-Oアルキル-Oアルキル-Oアルキル-ORAを含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリエーテルのアルキルは、本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。この例が繰り返し単位を4個のみ有する一方で、「ポリエーテル」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の繰り返し単位からなってもよい。RAは、本明細書において定義されるとおりの、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル(アルキル)、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、又はヘテロシクリル(アルキル)でありうる。RBは、置換されていてもよく、無置換であってもよいアルキレン基でありうる。RAは独立して、更に置換されていても、無置換であってもよい。ここで留意されるように、ポリエーテルは、介在するアルキル基(ここで、アルキルは、本明細書の他の箇所で定義されるとおりであり、任意選択で置換されていてもよい)を有するエーテル基を含む。
【0071】
置換基の数が特定されていない場合(例えば、ハロアルキル)、1又は複数の置換基(例えば、1、2、3、4、5、6、7個、又はより多くの)が存在してもよい。例えば、「ハロアルキル」は、同じ又は異なるハロゲンのうちの1又は複数を含んでもよい。別の例として、「C1~C3アルコキシフェニル」は、1、2、又は3個の原子を含有する、同じ又は異なるアルコキシ基のうちの1又は複数を含んでもよい。
【0072】
別段の指示がない限り、置換基が、ジ-ラジカルとして描かれる(即ち、残りの分子への付着の点を2つ有する)場合は必ず、置換基は任意の方向配置で付着されうることが理解されるべきである。したがって、例えば、-AE-又は
【0073】
【0074】
として描かれる置換基は、「A」が、分子の最も右側の付着点で付着される場合だけでなく、「A」が、分子の最も左側の付着点で付着されるように、方向づけられている置換基を含む。
【0075】
アルキレンの定義において述べたとおり、ある特定のラジカル命名規則は、文脈に応じて、モノ-ラジカル又はジ-ラジカルのいずれかを含みうることが理解されるべきである。例えば、置換基が、残りの分子への付着点を2つ必要とする場合、置換基はジ-ラジカルであることが理解される。例えば、付着点を2つ必要とするアルキルであると識別される置換基は、例えば、-CH2-、-CH2CH2-、及び-CH2CH(CH3)CH2-等のジ-ラジカルを含む。置換基が付着点を2つ必要としうる他の例としては、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル等が挙げられる。
【0076】
本明細書で使用されるように、ラジカルは、ラジカルを含有する種が別の種に共有結合されうるような、単一の、対になっていない電子を有する種を示す。したがって、この文脈において、ラジカルは必ずしも遊離基であるわけではない。どちらかと言えば、ラジカルは、より大きい分子の特定の一部を示す。「ラジカル」という用語は、「基」という用語と交換可能に使用することができる。
【0077】
数量又は量に言及する場合、「又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲」(及びそれの変形例)という用語は、上述の値を含む又は上述の値にわたる任意の範囲を含むことが意図される。例えば、接触角が「80°、90°、100°、110°、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲」と表される場合、これは、提供される特定の接触角(例えば、80°、90°、100°、又は110°のうちのいずれか1つに等しい接触角)、又は上述の値にわたる接触角の範囲(例えば、80°~110°、80°~100°、80°~90°、90°~110°、90°~100°、及び100°~110°)を含む。
【0078】
本明細書で使用されるように、「天然ダイヤモンド」は、化学的に改変されていないダイヤモンドを指す。天然ダイヤモンドは、カットされ、成形されたダイヤモンドを含んでもよい。
【0079】
本明細書で使用されるように、「未加工ダイヤモンド」は、プラズマ処理及び/又はシラン処理前の天然ダイヤモンドである。
【0080】
この出願において使用される用語及び語句、並びに特に添付の特許請求の範囲における、それらの変形例は、別段に明白に言明されない限り、限定的であるのとは対照的に制限されないものとして解釈されるべきである。前述の例として、「含む(including)」という用語は、「限定することなく、含む」又は「含むが、これらに限定されない」等を意味すると読み取られるべきである;本明細書において使用される「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する」、又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的である又は制限されないものであり、追加の、記載されない要素又は方法工程を除外しない;「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきである;「含む(includes)」という用語は、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである;「例(example)」という用語は、考察中の項目の、それらの網羅的又は限定的な列挙ではなく、例示的な事例を提供するために使用される;並びに、「好ましくは(preferably)」、「好ましい(preferred)」、「望ましい(desired)」、又は「望ましい(desirable)」等の用語の使用、及び類似の意味の単語は、ある特定の特徴が、本発明の構造又は機能にとって極めて重要、不可欠、又は重要でさえあることを含意すると理解されるべきではなく、しかしその代わりに、本発明の特定の実施形態において利用されてもされなくてもよい代替的又は追加の特徴を単に強調することを意図するものと理解されるべきである。加えて、「含む(comprising)」という用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも含む(including at least)」という語句と同義であると解釈されるべきである。プロセスの文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、プロセスが、少なくとも記載される工程を含むが、追加の工程を含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、又は装置の文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、化合物、組成物、又は装置が、少なくとも記載される特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含んでもよいことを意味する。同様に、接続詞「及び」で連結される項目のグループは、グループ分けにおいてそれらの項目の1つ1つの存在が必要であると読み取られるべきではなく、むしろ、別段に明記されない限り、「及び/又は」と読み取られるべきである。同様に、接続詞「又は」で連結される項目のグループは、そのグループの中で相互排他性が必要であると読み取られるべきではなく、むしろ、別段に明記されない限り、「及び/又は」と読み取られるべきである。
【0081】
更に、「本質的に、からなる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に記載される要素、及び特許請求される技術の基本の特性及び新規の特性に実質的に影響を与えない追加の要素を含むことが理解されるであろう。「からなる(consisting of)」という語句は、特定されない任意の要素を除外する。
【0082】
本明細書における、実質的にいかなる複数形の及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形且つ/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、明確さのために、本明細書において明白に述べられてもよい。不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一の処理装置又は他の設備一式は、特許請求の範囲において記載されるいくつかの項目の機能を満たしてもよい。ある特定の方策が相互に異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0083】
本明細書で使用される項の見出しは、構成のみを目的としており、説明される主題を限定するものと解釈されるべきではない。1つの見出し下に開示される特徴(抗汚損表面等)は、異なる見出し下で開示される特徴(抗汚損表面を使用する方法)と組み合わせて使用することができる。別段に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本開示のある特定の特徴又は態様を説明する場合の特定の術語の使用は、術語が本明細書において再定義されて、術語が関連する本開示の特徴又は態様の任意の具体的な特性を含むことに制限されることを含意すると解釈されるべきではないことに留意されるべきである。
緒言
【0084】
ダイヤモンドは、炭素原子が規則的格子で配置された炭素結晶である。ダイヤモンドにおいて、炭素原子は四面体に配置されている。各炭素原子は、1.544×10
-10メートル(1.544オングストローム(Å))離れて、4個の他の炭素原子に付着されている。3個の隣接する炭素は、109.5°の結合角を作る。ダイヤモンド格子は、大きい原子のネットワークをもたらす、強い、剛性の3次元構造である。ダイヤモンドの内部が実質的に純粋な炭素である一方で、表面では、天然カットダイヤモンドは、C-H結合、エポキシド基、カルボニル基、カルボン酸基、及びヒドロキシル基を含む。未加工ダイヤモンド表面の表示が
図1Aに示される。表面炭素原子の10%未満が、酸性及び/又はカルボニル基に連結されている。わずかな割合のダイヤモンド表面の表面積がヒドロキシル基を含む。したがって、ダイヤモンドの表面は疎水性である。
【0085】
天然ダイヤモンドの疎水性を考慮すると、宝石ダイヤモンドが装着される又は保存されるに従い、ダイヤモンドの疎水性炭素格子は、油脂及びあかを引き付け始める。時間が経つにつれて、油脂及びあかは蓄積し、ダイヤモンドの輝き及びきらめきをくすませる。ダイヤモンドに関して、この蓄積は
図1B~
図1Fに示される。
図1B及び
図1Dはそれぞれ、清浄なダイヤモンドの写真及びASET画像を示す。
図1C及び
図1Eはそれぞれ、汚れたダイヤモンドの写真及びASET画像を示す。留意されうるように、
図1C及び
図1Eは、
図1B及び
図1Dの清浄なダイヤモンドよりつや及び輝きが少ない。
図1Fは、集積したほこり粒子及びあかを示す(矢印を参照されたい)汚損されたダイヤモンドの代表的なSEM画像を示す。スケールバーは、2mm及び200μmを示す。このほこり及びあかの蓄積及び/又は汚損は、使用者が自分の宝石を楽しむことを著しく低減するおそれがある。
【0086】
本明細書の他の箇所で開示されるように、この蓄積は、少なくとも部分的には、ダイヤモンドの表面が元来疎水性であることに起因して生じる。疎水性の表面として、接触汚れ(指紋からの)、油、油脂、及びあか等の疎水性残渣を引き付ける。ダイヤモンドは生来、油脂を引き付ける(親油性)が、水ははじく(疎水性)。これが、ダイヤモンド宝石に消費者を引き付けるきらめき及び輝きが、ショールームを出た後、急速に失われる理由である。人間の指が触るだけで、油類及びローションは清浄な結晶表面に移されうる。これらの化学物質によってひとたび結晶が汚損されると、ほこり、タンパク質、又は他のくずが、非特異的に、より容易に結晶に結合し、それによりその光り輝く魅力を低下させうる。この蓄積は、目視検査及びASET分析によって明白であり、
図1B~
図1Fに示されるようにSEMにおいて観察することができる。
【0087】
ダイヤモンドの油脂及びあかの蓄積を清浄にするための2つの従来的な対処法がある。第1のものは、専門的且つ/又は商用である。宝石職人は、超音波清浄器及び/又は非極性溶媒を含有する清浄液を使用して、汚れた石を清浄にすることができる。清浄後、ダイヤモンドの輝き及びつやは回復される(例えば、それらはショールームでの新しさである)。しかしながら、ダイヤモンドは疎水性であるため、油脂及びあかは、使用者がショールームを出るとすぐに集積し始めることになる。第2の対処法は、家庭用清浄製品からなる。多くの家庭用清浄剤が存在し、多様な成功の度合いで作用する。ほとんどが、ショールームでの新しさの石の輝きを回復するのに十分にダイヤモンドを清浄にすることはない。更に、現行の解決法は回復させるだけである、つまり、輝きのいかなる向上もすぐに弱まり始める。
【0088】
日常的な使用のために、宝石の初期状態の光学特性を維持することは、主要な課題である。清浄には、化学溶液及び専用器具を用いる反復的で退屈な仕事が必要とされる。仕上がった宝石品(宝石、宝石用原石を含む)は、多くの場合、多くの種々のサイズの石、及び石と台枠との間の狭い空間を有して、物理的に複雑である。家庭では、柔らかい歯ブラシ等の機械的研磨作用と組み合わせて化学浸漬(>2×/週)し、ほとんどの汚染が集積する傾向があるダイヤモンドの後ろ側などの特に届きにくい場所の残りのほこりを除去することによって、継続的な手入れを行うことができる。代替的に、超音波清浄器は、専門的に使用され、家庭での使用者に向けて販売されている。そのような清浄器は、ダイヤモンド上に集積したほこり及びあかを、より効果的に除去することができる一方で、それらは物理的にあまりに破壊的であり、石をその台枠から外してしまうおそれがある。台枠につけた石を繰り返し超音波清浄すると、互いに隣り合ってはめ込まれたダイヤモンドのガードルが欠けて、最終製品に不可逆の損傷をもたらすおそれがある。多くの最終消費者は、単に実用的で実行可能な代替法がないという理由で、手入れに関心を失い、慢性的に汚れた宝石を容認する。説明される現行の清浄方法はともに、受動的処理又は後処理のいずれかであり、それらは、不快感を与える物質が存在した後にそれを除去するため、結果として、どちらも石の即時の再汚染を防止しない。
【0089】
本明細書において開示されるいくつかの実施形態は、防汚コーティング、並びにそのような防汚コーティングを製造する方法及び使用する方法を提供することによって、これら又は他の問題を解決する。いくつかの実施形態において、防汚コーティングは、基材に接着する油、あか、又は他の物質の発生を防止する、遅延する、低下させる、且つ/又は油、あか、又は他の物質の量を減少させる(コーティングされた基材をコーティングされていない基材と比較して)。いくつかの実施形態において、コーティングは、単分子層を含む、単分子層からなる、又は本質的に単分子層からなる。いくつかの実施形態において、単分子層は、基材(例えば、ダイヤモンド表面)上に直接形成される。このようにすると、中間反応層(例えば、結合するための反応性「ハンドル」を単分子層前駆体分子に提供する層)は、必要とされない、且つ/又は完全に不在である。中間層は、基材を覆うシロキサン層であってもよい(例えば、基材を被覆するSiO2の層)。いくつかの実施形態において、コーティングされた基材は、単分子層と基材との間の中間層を欠く。例えば、いくつかの実施形態において、単分子層前駆体分子は、基材の反応性基と直接且つ共有結合的に反応される。したがって、単分子層前駆体分子の反応性基(例えば、シラン処理基)は、単分子層の一部を形成する基材の反応性基に結合する。
【0090】
有利には、特定の仕方で基材を前処理することは、基材コーティングの品質を向上すること(シラン処理剤との反応のためにその下準備をすること)が見出されている。いくつかの実施形態において、基材上での単分子層形成の前に、基材は前処理され、且つ/又は下準備されて、単分子層前駆体分子を受け取る、且つ/又は単分子層前駆体分子と結合する。いくつかの実施形態において、前処理は、基材上の単分子層の、より密な且つ/又はより規則的な充填を可能にすることが見出されている。このより密な充填により、防汚特性が向上される。いくつかの実施形態において、基材の前処理により、防汚コーティングの性能及び耐久性が(例えば、防汚性の持続期間及び/又は初めから汚れにくくする能力に関して)向上される。
【0091】
いくつかの実施形態において、前処理ステップは、基材をプラズマ処理するステップを含む。プラズマは、中性原子、原子イオン、電子、分子イオン、並びに励起状態及び基底状態において存在する分子の混合物である。プラズマは、電流にガスを供することによって生成されうる。いくつかの実施形態において、前処理ステップは、酸素プラズマ又は水素プラズマ(又は両方)を使用して実行される。酸素プラズマは、プラズマチャンバーにおいて酸素が使用されてプラズマを発生させる任意のプラズマプロセスを指す。水素プラズマは、プラズマチャンバーにおいて水素が使用されてプラズマを発生する任意のプラズマプロセスを指す。酸素処理及び/又は水素処理は、より密に充填された単分子層(例えば、単位面積当たり、単分子層分子単位がより多い)、及び/又はより規則的な単分子層(例えば、単位面積当たり、防汚性の規則性がより高い)を受け入れることが可能な、プラズマで清浄された反応性基材を提供することが見出されている。いくつかの実施形態において、酸素ガス及び/又は水素ガスは、アルゴンガスと混合されてプラズマを提供してもよい。いくつかの実施形態において、アルゴンは必要とされない且つ/又は使用されない。いくつかの実施形態において、前処理のために使用されるプラズマガスは、酸素を含む、酸素からなる、又は本質的に酸素からなる。いくつかの実施形態において、前処理のために使用されるプラズマガスは、水素を含む、水素からなる、又は本質的に水素からなる。いくつかの実施形態において、前処理のために使用されるプラズマガスは、酸素及びアルゴンを含む、酸素及びアルゴンからなる、又は本質的に酸素及びアルゴンからなる。いくつかの実施形態において、前処理のために使用されるプラズマガスは、水素及びアルゴンを含む、水素及びアルゴンからなる、又は本質的に水素及びアルゴンからなる。
【0092】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、単一のステップ(例えば、酸素プラズマ又は水素プラズマでの処理)を含む。他の実施形態において、プラズマ処理は、マルチステップのプラズマ曝露レジメンを含む。例えば、レジメンは、第1に、酸素プラズマでの処理、続いて水素プラズマでの処理(第2の処理ステップとして)を含んでもよい。代替的に、レジメンは、第1に、水素プラズマでの処理、続いて酸素プラズマでの処理(第2の処理ステップとして)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、酸素プラズマ、続いて水素プラズマを使用する(2つの異なるステップでの)プラズマ処理により、アニール後の反応性酸素種の特に密な充填が可能になる。
【0093】
いくつかの実施形態において、基材の前処理(例えば、単分子層前駆体分子への反応のための基材表面を調製するステップ)は、プラズマ処理後の追加のステップを包含する。例えば、基材のプラズマ処理は、前駆体基材をもたらし得る。いくつかの実施形態において、そのプラズマ処理された基材(例えば、前駆体基材)は、アニールされる。いくつかの実施形態において、アニールプロセスは、基材上の追加の表面官能基を反応性基に転換する。いくつかの実施形態において、プラズマ処理された基材は、水でアニールされる。いくつかの実施形態において、水でアニールすることにより、基材上のヒドロキシル基及び/又はカルボン酸基の相対比が増大する。いくつかの実施形態において、アニールするステップは、基材(例えば、ダイヤモンド)において、望ましいレベルの抗汚れを実現するために有益である。いくらかの実施形態において、アニールするステップは省略されてもよい。
【0094】
ダイヤモンドの高い対称性の結晶面(例えば、(111)、(110)、及び(100))は、表面の任意のコーティング又はヒドロキシル化に強い影響を与える異なる原子構造を有することが現在見出されている。本明細書において提供される開示の前には、これらの問題点は、ダイヤモンドをコーティングしようとする場合に容易には認識されなかった。これらの界面は通常、ダイヤモンドの合成堆積又は調製から与えられる。C-H軸又はC-O軸の配向及び相対的なしわは異なり、大きい接触角及び耐摩耗性の両方を与えるには、酸素プラズマ単独では十分でない可能性がある。更に事を複雑にすることに、この問題点は宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)に関して特に問題となる。例えば、宝石用原石は、これらの面に関係なくカットされる。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される手法は、ヒドロキシル種の数を最大化することによって、信頼性の高い被覆及び耐摩耗性を提供する。いくつかの実施形態において、2ステッププロセスが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、第1に、ダイヤモンドは、清浄のため、且つC-Ox種及び/又はC-H種の数を増大させるために、酸素プラズマ又は水素プラズマで処理される。いくつかの実施形態において、第2に、水蒸気アニールプロセスが実行されて、すべてのC-H結合がC-OHに転換される。いくつかの実施形態において、3ステッププロセスが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、第1に、ダイヤモンドは、清浄のため、且つC-Ox種の数を増大させるために、酸素プラズマで処理される。いくつかの実施形態において、第2に、ダイヤモンドは、長時間水素プラズマで処理されてエポキシドを切断し、C-H結合の数を最大化する。いくつかの実施形態において、第3に、水蒸気アニールプロセスが実行されて、すべてのC-H結合がC-OHに転換される。いくつかの実施形態において、追加の処理ステップが使用されてもよい。
【0095】
本明細書の他の箇所で開示されるように、いくつかの実施形態において、基材は宝石用原石であってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるプロセス及び単分子層は、ダイヤモンド表面にとって特に有用である(本明細書の他の箇所で開示される問題への解決法を考慮すると)。したがって、ダイヤモンド表面が、例示的な実施形態(例えば、例示的な基材)として本開示全体にわたって使用される。それにもかかわらず、いくつかの例が参照基材としてダイヤモンドを使用して論じられる一方で、本明細書において説明される技法及び化学作用を、他の宝石用原石(例えば、アレキサンドライト、アメジスト、アクアマリン、シトリン、ダイヤモンド、エメラルド、ガーネット、ヒスイ、ラピスラズリ、ムーンストーン、モルガナイト、オニキス、オパール、パライバ、真珠、ペリドット、ルベライト、ルビー、サファイア、スピネル、タンザナイト、トパーズ、トルマリン、ターコイズ、及びジルコン)、他の結晶性物質(例えば、SiC、合成ダイヤモンド、CVDダイヤモンドウエハー等)、他の炭素質物質(例えば、カーバイド誘導炭素、炭素質エアロゲル、ナノ結晶性ダイヤモンド、黒鉛炭素含有マトリックス、ポリマー基材等)、ガラス化非晶質表面(vitrified amorphous surface)(例えば、結晶ガラスを含む、各種多様のガラス)、ポリマー(例えば、ポリカーボネートガラスレンズ及びサングラスレンズ)、及び結晶ガラス等に適合させることができる。
【0096】
本明細書において開示される技法及び単分子層前駆体分子は、光学特性が不可欠であり、初期状態で維持される必要がある(使用の間及び/又はコーティングプロセスを通して)基材にとって特に有用である。本明細書において開示されるコーティングは、それを使用することで改変される基材の光学品質を維持する又は向上さえするのに特に適している。本明細書において開示される技法及びコーティングを使用して、ダイヤモンド宝石、眼鏡レンズ、サングラスレンズ、腕時計の文字盤の表面、小型望遠鏡、銃の照準器、及び潜望鏡等を防汚性(及び/又は防曇性)にしてもよい。いくつかの実施形態において、基材は、レンズ(例えば、通して見るためのレンズ)としての使用のために構成される。いくつかの実施形態において、基材はポリマー又はガラスである。いくつかの実施形態において、基材は、拡大鏡(例えば、望遠鏡、双眼鏡、照準器等の)である。いくつかの実施形態において、ポリマーはポリカーボネート(例えば、ポリカーボネートサングラスレンズ又は眼鏡レンズ)である。いくつかの実施形態において、基材はガラス(例えば、ガラスサングラスレンズ又は眼鏡レンズ)である。いくつかの実施形態において、基材は結晶ガラスである。
【0097】
表面-官能化基材及びそれらの製造及び使用の方法
本明細書の他の箇所で開示されるように、いくつかの実施形態は、基材上の防汚コーティングに関係する。いくつかの実施形態において、コーティング(例えば、単分子層コーティング)は、コーティングが結合される基材表面(例えば、ダイヤモンド表面)の自然の表面化学、及び/又は基材表面(例えば、ダイヤモンド表面)の物理的特性を変化させる。本明細書の他の箇所で開示されるように、ダイヤモンド(及び/又はいくつかの他の宝石用原石又は基材)は、おおむね化学的に非活性であり、それらをコーティングして汚れを防止することを困難にする。現在まで、ダイヤモンド表面に物理的コーティングを直接付着させる技法は、おおむね効果的でなかった。例えば、ダイヤモンドのおおむね不活性の表面は、反応性単分子層前駆体分子と相互作用しにくい場合がある。本明細書の他の箇所で留意されるように、ダイヤモンド表面は、コーティング物質(例えば、シラン処理基)に反応性ではない多数の基を有する。したがって、コーティング中、むき出しの場所及び/又は不規則な表面が残る場合があり、ダイヤモンドをコーティングする目的を初めから無効にする。ダイヤモンドコーティング(及び他の基材のためのコーティング)と関連付けられるこの問題又は他のものが、本明細書において取り扱われる。
【0098】
更に、この十分な且つ/又は適当な反応性が欠けていることはまた、プラズマ処理されているダイヤモンドにとって問題点である。プラズマ処理することにより、ダイヤモンド(及びいくつかの他の基材)上のコーティング効率が向上される一方で、プラズマ処理することそれ自体では、コーティング内のむき出しの場所及び/又は不規則性を十分な程度に回避することはできない。したがって、ダイヤモンドは依然としてほこり及びあかを容易に引き付けるおそれがある。本明細書において開示されるいくらかの実施形態において、ダイヤモンド(又は他の宝石用原石又は基材)の表面を、2つ以上のステップのプロセスに供して、表面を調製且つ/又は変化させ、それにより表面に反応性を与える。例えば、ダイヤモンド(又は他の基材)を、プラズマ処理して、ダイヤモンドの(又は他の基材)表面上の反応性及び/又は求核基の量を増大させてもよい。その後、基材表面をアニールして、表面上の反応性種(例えば、反応性酸素種)の量を更に増大させる。
【0099】
本明細書の他の箇所で開示されるように、プラズマ処理プロセスは、酸素、水素、又は(異なる処理ステップにおいて)両方を使用して実行してもよい。アルゴンも、酸素又は水素のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。水素ガスの分子速度が低いため(その低質量に起因して)、いくつかの実施形態において、アルゴンガスは水素と同時に使用される。代替的に、アルゴンを使用してプラズマチャンバーをパージし、チャンバー内で物品(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)をプラズマ処理した後に水素ガスがチャンバーからポンプで排出されることを保証してもよい。いくつかの実施形態において、プラズマガスの異なるサイクルがプラズマ処理中に使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、酸素プラズマ、続いて水素プラズマへの物品の曝露を含んでもよい。他の実施形態において、プラズマ処理は、水素プラズマ、続いて酸素プラズマへの物品の曝露を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、高圧酸素プラズマ、続いて低圧酸素プラズマ、続いて低圧水素プラズマへの物品の曝露を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、酸素プラズマ、続いて水素プラズマへの物品の曝露を含んでもよい。他の組み合わせが可能である。いくつかの実施形態において、プラズマ処理は、複数の水素プラズマ処理、続いて複数の酸素プラズマ処理、又は複数の水素及び酸素プラズマ処理への物品の曝露(連続的に実行される曝露)を含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理中、処理されることになる物品は、プラズマ処理チャンバーに載置される。いくつかの実施形態において、プラズマガス(例えば、酸素、水素、上述のものとアルゴンとの組み合わせ等)がプラズマチャンバーに供給される。いくつかの実施形態において、プラズマ発生器は、約50W、100W、150W、200W以上、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の電源にプラズマガスを曝露させることによってプラズマを発生させる。いくつかの実施形態において、異なるプラズマ処理ステップ(例えば、酸素及び水素をそれぞれ使用する第1及び第2のプラズマ処理ステップ)が実行される場合、異なる電源レベルが使用されてもよい。例えば、第1のプラズマ処理はある電源で、第2のものは第2のより高い電源で、実行されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の処理のための電源は、約50W、100W、150W以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、第2の処理のための電源は、約100W、150W、200W以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。
【0101】
いくつかの実施形態において、プラズマガスの流速は制御されてもよい。いくつかの実施形態において、ガスの流速は、約1標準立方センチメートル毎分(sccm)、5sccm、10sccm、15sccm、20sccm、25sccm、30sccm、50sccm、75sccm、100sccm以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、異なるプラズマ処理ステップ(例えば、酸素及び水素をそれぞれ使用する第1及び第2のプラズマ処理ステップ)が実行される場合、異なる流速が使用されてもよい。例えば、第1のプラズマ処理はある流速で、第2のものは第2の流速で、実行されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の流速は、第2のものより遅い。他の実施形態において、第1の流速は、第2のものより速い。いくつかの実施形態において、ガスの第1の流速は、約1標準立方センチメートル毎分、5sccm、10sccm、15sccm、20sccm、25sccm、30sccm、50sccm、75sccm、100sccm以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、ガスの第2の流速は、約1標準立方センチメートル毎分(sccm)、5sccm、10sccm、15sccm、20sccm、25sccm、30sccm、50sccm、75sccm、100sccm以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。
【0102】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理中に使用されるガス圧は、望ましい結果に応じて、より高く又はより低くしうる。いくつかの実施形態において、より速いプラズマ処理時間が望まれる場合、より高いガス圧が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、プラズマ処理中のガス圧は、約100mtorr、200mtorr、300mtorr、320mtorr、350mtorr、400mtorr、600mtorr以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、異なるプラズマ処理ステップ(例えば、酸素及び水素をそれぞれ使用する第1及び第2のプラズマ処理ステップ)が実行される場合、異なる圧力レベルが使用されてもよい。例えば、第1のプラズマ処理はある圧力で、第2のものは第2の圧力で、実行されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理の継続時間は、処理されている物品に応じて調整することができる。いくつかの実施形態において、プラズマ処理の継続時間は、約2分、10分、20分、30分、45分、1時間以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、異なるプラズマ処理ステップ(例えば、酸素及び水素をそれぞれ使用する第1及び第2のプラズマ処理ステップ)が実行される場合、異なる曝露時間が使用されてもよい。例えば、第1のプラズマ処理はある時間期間、第2のものは第2の時間期間、実行されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の時間期間は、第2のものより短い。他の実施形態において、第1の時間期間は、第2のものより長い。いくつかの実施形態において、第1の時間期間のプラズマ処理の継続時間は、約2分、10分、20分、30分以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、第2の時間期間のプラズマ処理の継続時間は、約20分、30分、45分、1時間以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。
【0104】
いくつかの実施形態において、
図2A、
図2B、及び
図5に示されるように、未加工基材又は未加工ダイヤモンドの表面は、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エポキシド基、C-H基、及びC-C基を含む。これらのヒドロキシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エポキシド基、C-H基、及びC-C基は、それぞれA
1、A
2、A
3、A
4、A
5、及びA
6基を使用して、ダイヤモンドの表面(I-r):
【0105】
【0106】
を使用して表される。
【0107】
いくつかの実施形態において、前駆体基材表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)は、未加工基材表面(例えば、未加工ダイヤモンド表面)と比べて、追加の反応性酸素種を有する。例えば、反応性酸素種A1及び/又はA3(それぞれ、ヒドロキシル基及び/又はカルボン酸基)の比は、プラズマ処理後、A1~A6表面基の総数に対して増大してもよい。いくつかの実施形態において、反応性酸素種の比は、(A1)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)として、(A3)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)として、又は(A1+A3)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)として、定量的に算出される。(A1)/(A1+A2+A3+A4+A5+A6)は、以下の用語、比前駆体(1)(示されている基材表面及び比が、「比」上の上付き文字として提供される)を使用して略記されてもよい。同様に、前駆体表面上のすべての基に対するA3基の比は、比前駆体(3)と表されてもよい。同様に、前駆体表面上のすべての基に対するA1及びA3基の比は、比前駆体(1,3)と表されてもよい。この同じ命名規則は、上付き文字における「前駆体」という用語を「未加工」という用語と置き換えることによって、未加工基材のために使用されてもよい(例えば、比未加工(1)、比未加工(1)、比未加工(1))。いくつかの実施形態において、この比は、定量的に決定される(例えば、XPS(X線光電子分光法)等の分光法を使用して)。いくつかの実施形態において、この比は、定性的に算出される(例えば、FT-IR(フーリエ変換赤外線)、FTIR ATR(減衰全内反射法)分光法、又は他の分光技法を使用して)。例えば、代表的なピークの高さ及び/又は面積が比較されてもよい(例えば、指示的なC-OHピーク、C=Oピーク、C-O-Cピーク、C-Hピーク等)。
【0108】
いくつかの実施形態において、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比は、未加工基材表面(例えば、未加工ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比より大きい。例えば、以下、比前駆体(1)>比未加工(1)、比前駆体(3)>比未加工(3)、比前駆体(1,3)>比未加工(1,3)のうちの任意の1又は複数は、真であってもよい。いくつかの実施形態において、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)への転換後、表面の反応性酸素種(例えば、A1基、A3基、及び/又は両方)の量は、約10%、25%、50%、100%、150%、200%、300%に等しいか若しくは少なくとも同等の%、より増大し、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より増大する。
【0109】
いくつかの実施形態において、反応性基の比の増大は、未加工表面と比べて、前駆体表面の親水性を増大させる。いくつかの実施形態において、未加工表面上の水の接触角は、約30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°、100°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、前駆体表面上の水の接触角は、約25°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、前駆体表面への転換後、基材表面の水接触角は、約2.5%、5%、10%、15%、20%、50%、75%に等しいか若しくは少なくとも同等の%、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、(未加工表面と比べて)より小さくなる。
【0110】
いくつかの実施形態において、反応性基の比の増大は、未加工ダイヤモンド表面と比べて、前駆体ダイヤモンド表面の親水性を増大させる。いくつかの実施形態において、未加工ダイヤモンド表面上の水の接触角は、約40°、50°、60°、70°、80°、90°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面上の水の接触角は、約25°、30°、40°、50°、60°、70°、80°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド表面への転換後、ダイヤモンド表面(例えば、未加工ダイヤモンド表面)の水接触角は、約2.5%、5%、10%、15%、20%、50%、75%に等しいか若しくは少なくとも同等の%、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より小さくなる。
【0111】
いくつかの実施形態において、プラズマ処理された物品(例えば、ダイヤモンド又はなんらかの他の物品)は、その後、アニールされて、表面上に追加の反応性基が提供される。いくつかの実施形態において、
図2A及び
図2Bに示されるように、基材のプラズマ処理は、基材(
図2A)及びダイヤモンド(
図2B)(
図5も参照されたい)上に追加の反応性種を生成する。
図2A及び
図2Bに示されるように、ステップAにおけるプラズマ処理はそれぞれ、前駆体表面及び前駆体ダイヤモンド表面を提供する。いくつかの実施形態において、前駆体表面及び前駆体ダイヤモンド表面の反応性基は、基材又はダイヤモンドの表面(又は他の基材)において、-OH基及びカルボン酸基(例えば、反応性酸素種)を含む。いくつかの実施形態において、これらの反応性酸素基は求核性である。アニールによって、基材表面上に追加の、より規則的に分布される反応性酸素種が提供される(ステップBにおいて生成される反応性表面及び反応性ダイヤモンド表面として、
図2A及び
図2Bに示されるように)。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるプラズマ処理プロセスを含む、本明細書において開示される手順は、基材の表面上の-OH種(A1基)の相対比を増大させる。いくつかの実施形態において、これは、-C(=O)OHの比がより高い表面よりも強い結合を有するより規則的な結合表面を、シラン処理剤に与える(カルボン酸基(例えば、A3基)は依然としてシラン処理剤に対していくらか反応性であるが)。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル種の比を増大させることによって、より長く続く、より耐久性のある、且つ/又はより防汚である表面が提供される。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、アニールプロセスは、水(例えば、水蒸気)を使用して実行される。いくつかの実施形態において、更にアニールすることにより、基材の表面上の-OH種(A1基)の相対比が増大する。いくつかの実施形態において、水を、キャリアガス(例えば、窒素、アルゴン等)に提供して、基材の表面(例えば、ダイヤモンド表面)をアニールする。
【0114】
いくつかの実施形態において、アニールプロセスは、熱を使用して実行される。いくつかの実施形態において、
図3に示されるように、アニールプロセスは、不活性ガス(例えば、窒素)を水に通して流し、ガス中に水蒸気を与えることを含んでもよい。いくつかの実施形態において、アニールプロセスは、基材を、水蒸気に曝露させながら、加熱器(例えば、炉)中に載置することによって、熱を使用して実行される。いくつかの実施形態において、アニールプロセスは、約300℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃に等しいか若しくは少なくとも同等の温度、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の温度で実行される。
【0115】
いくつかの実施形態において、反応性基材表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)は、前駆体表面及び/又は未加工基材表面(例えば、前駆体又は未加工ダイヤモンド表面)と比べて、追加の反応性酸素種を含む。例えば、反応性酸素種A1及び/又はA3の比は、アニール後、A1~A6表面基の総数に対して増大してもよい。上述のように、反応性酸素種の比は、比反応性(1)、比反応性(3)、及び/又は比反応性(1,3)と表されてもよい。いくつかの実施形態において、この比は、定性的に算出される(例えば、FT-IR、FTIR ATR分光法、又は他の分光技法を使用して)。例えば、代表的なピークの高さ及び/又は面積は、比較されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比は、未加工基材表面(例えば、未加工ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比より大きい。例えば、以下、比反応性(1)>比未加工(1)、比反応性(3)>比未加工(3)、比反応性(1,3)>比未加工(1,3)のうちの任意の1又は複数は、真であってもよい。いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)への転換後、表面の反応性酸素種(例えば、A1基、A3基、及び/又は両方)の量は、未加工表面(例えば、未加工ダイヤモンド表面)のそれと比べて、約10%、25%、50%、100%、150%、200%、300%、400%に等しいか若しくは少なくとも同等の値の%、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より増大する。
【0117】
いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比は、前駆体基材表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)についてのA1~A6表面基の総数に対するA1基及び/又はA3基の比より大きい。例えば、以下、比反応性(1)>比前駆体(1)、比反応性(3)>比前駆体(3)、比反応性(1,3)>比前駆体(1,3)のうちの任意の1又は複数は、真であってもよい。いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)への転換後、表面の反応性酸素種(例えば、A1及び/又はA3基)の量は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)のそれと比べて、約10%、25%、50%、100%、150%、200%、300%に等しいか若しくは少なくとも同等の値の%、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より増大する。
【0118】
いくつかの実施形態において、反応性基の比の増大は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)と比べて、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)の親水性を増大させる。いくつかの実施形態において、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)上の水の接触角は、約25°、30°、40°、50°、60°、70°、80°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)上の水の接触角は、約5°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)への転換後、基材表面の水接触角は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)と比べて、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%に等しいか若しくは少なくとも同等の値の%、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より小さくなる。
【0119】
いくつかの実施形態において、前処理後、基材(例えば、ダイヤモンド)の表面上の求核基は、官能化されうる。いくつかの実施形態において、基材の反応性表面上の求核基は、シラン処理基を使用して官能化される。シラン処理基は、単分子層前駆体分子である。いくつかの実施形態において、シラン処理基は、ハロ-シラン(例えば、Si(X
H)
3-R、Si(X
H)
2-R
2、Si(X
H)-R
3等、式中、Rは尾部である)、ヒドリド-シラン(例えば、SiH
3-R、SiH
2-R
2、SiH-R
3等、式中、Rは尾部である)、又はアルコキシシラン(例えば、Si(-O-アルキル)
3-R、Si(-O-アルキル)
2-R
2、Si(-O-アルキル)-R
3等、式中、Rは尾部である)を有していてもよい。そのような官能化は、
図2A及び
図2BのステップCにおいて示される。官能化は
図5においても示される。
【0120】
いくつかの実施形態において、シラン処理基を使用して基材の求核基を官能化することによって、基材(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)は、シラン単位で官能化される。このようにして、抗汚損及び/又は防汚コーティングを有する基材(例えば、ダイヤモンド、宝石用原石、レンズ等)を調製することができる。いくつかの実施形態において、シラン単位でコーティングされた基材(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)は、油脂及びあかを寄せ付けないように適応される。いくつかの実施形態において、この改変により、より長い期間、ほこり及び油を寄せ付けず、基材表面(例えば、ダイヤモンド、宝石用原石、ガラス、レンズ、又はポリカーボネート表面)の汚れが防止され且つ/又は遅延される、官能化された基材(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)が得られる。いくつかの実施形態において、官能化された基材(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)は、疎水性である(水を含む水性液体を寄せ付けない)。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドのコーティングされた表面は、両疎媒性である(油及び水の両方を寄せ付けない)。いくつかの実施形態において、コーティングされた表面(例えば、コーティングされたダイヤモンド表面)上のキャノーラ油又はオリーブ油の接触角は、約45°、50°、60°、70°、80°、90°、100°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲である。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、抗汚れ及び/又は防汚表面コーティングは、基材(例えば、ダイヤモンド)に共有結合されている。いくつかの実施形態において、抗汚れ表面コーティングは、単分子層を含む、単分子層からなる、又は本質的に単分子層からなる。いくつかの実施形態において、基材表面及び単分子層は、表面(I)
【0122】
【0123】
によって表される。いくつかの実施形態において、nは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態において、nは、0~10、0~8、0~6、又は0~4の範囲の整数である。更に例証するために、いくつかの実施形態において、nは、0、1、2、3、又は4から選択される整数である。いくつかの実施形態において、mは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態において、mは、1~15、1~20、6~8、6~10、又は6~12の範囲の整数である。いくつかの実施形態において、mは、約6、7、8、9、10、11、又は12以上である。いくつかの実施形態において、nは2である。いくつかの実施形態において、mは、6~12の間である。いくつかの実施形態において、mは8である。いくつかの実施形態において、「S-単位」はシラン単位である。いくつかの実施形態において、S-単位の集合により、単分子層が設けられる。いくつかの実施形態において、表面は基材表面である。いくつかの実施形態において、表面はダイヤモンド表面である。他の実施形態において、表面は、別の宝石用原石のそれであってもよい。いくつかの実施形態において、表面は、ガラス、ポリマー表面等である。いくつかの実施形態において、表面は、腕時計の文字盤の表面である、眼鏡レンズ、サングラスレンズ、又は拡大鏡である。
【0124】
表面(I)は、各Si原子が隣接するSi原子及び基材に結合して、表面にわたって単分子層を提供しうることを示す代表的な例を提供することが認識されるであろう。2個の隣接するSi原子に共有結合される代わりに、ある特定のSi原子は、基材表面への追加の結合を有してもよい(例えば、ヒドロキシル基を介して)。そのような実施形態は、下記に(及び本明細書の他の箇所で、表面(IV)において)示される。いくつかの実施形態において、単分子層中のSi原子は、基材それ自体に対して1、2、又は3個の結合を有することができる(例えば、ヒドロキシル基を介して)。したがって、以下の(Si-付着)配置のうちの任意のものが、本明細書において提供される表面の表示のいずれに関しても可能である。以下の構造式における「
【0125】
【0126】
」部は、-O-を介した隣接するSi原子への結合を示す。例えば、Si-付着の「A」は、表面(I)において示されるとおりである。しかしながら、表面(I)〔又は表面(I-i)、(II)、(III)、(IV)、(IV-i)を含む、本明細書において開示される任意の他の表面〕のS-単位は、Si-付着のB、C、D、又はEによって置き換えることができる。
【0127】
【0128】
本明細書の他の箇所で開示されるように、いくつかの実施形態において、各「S-単位」はシラン単位を表す。いくつかの実施形態において、シラン単位はSi(CH2)n(CF2)mCF3を含む。いくつかの実施形態において、各S-単位は尾部(例えば、防汚尾部)を含む。いくつかの実施形態において、S-単位の尾部(例えば、防汚尾部)は、表面上に防汚特性を与える(他のS-単位と組み合わされる場合)。いくつかの実施形態において、防汚表面(例えば、防汚ダイヤモンドの表面)は、nm2毎に、約1個のS-単位、2個のS-単位、3個のS-単位に等しいか若しくは少なくとも同等の個数、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の個数のS-単位を有する。いくつかの実施形態において、防汚表面(例えば、防汚ダイヤモンドの表面)は、nm2毎に、約1個の尾部、2個の尾部、3個の尾部に等しいか若しくは少なくとも同等の個数、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の個数を有する。
【0129】
いくつかの実施形態において、表面(I)は、表面(I-i)
【0130】
【0131】
によって更に表され、式中、nは2であり、mは7である。いくつかの実施形態において、異なる式における同様の変数(式(I)及び式(II)のためのn等)のための定義を使用して、変数が生じる任意の他の式のためのその同様の変数を定義し得る。したがって、式(I)のための変数のいずれの定義も、式(I-i)、(II)、(III)、及び(IV)のうちの任意の1又は複数のためのその同じ変数を使用して定義され得る(又は逆の場合も同様)。
【0132】
いくつかの実施形態において、基材表面及び単分子層は、表面(II)
【0133】
【0134】
によって表され、式中、変数は本明細書の他の箇所で開示されるとおりであり、Xは-O-、-NH-、又は-CF2-である。いくつかの実施形態において、nは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。いくつかの実施形態において、mは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、21以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。いくつかの実施形態において、表面(II)は、Xが-CF2-である場合の表面(I)によって表される。
【0135】
いくつかの実施形態において、基材表面及び単分子層は、表面(III)
【0136】
【0137】
によって表される。いくつかの実施形態において、アルキルは、本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C8アルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C6アルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C4アルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、又はC10アルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは分枝である。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは-(CH2)n-である。いくつかの実施形態において、ハロアルキルは、本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C20ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C12ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC6~C12ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは、任意選択で置換されていてもよいC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは分枝である。いくつかの実施形態において、式(III)中のハロアルキルは-(CF2)m-CF3である。いくつかの実施形態において、ハロアルキルはフルオロアルキルである。いくつかの実施形態において、ハロアルキルはペルフルオロアルキルである。いくつかの実施形態において、Xは-O-、-NH-、又は-CF2-である。いくつかの実施形態において、nは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。いくつかの実施形態において、mは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、21以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の整数である。いくつかの実施形態において、表面(III)は、表面(I)、(I-i)、又は(II)によって表されてもよい。代替的に、基材表面へのSi結合は、によって表されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、基材表面及び単分子層は、表面(IV)
【0139】
【0140】
によって表される。いくつかの実施形態において、表面(IV)は、表面(I)、(II)、又は(III)のうちのいずれか1つによって表されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、-アルキル-X-ハロアルキルによって表される。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、任意選択で置換されていてもよいアルキルである。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、任意選択で置換されていてもよいハロアルキルである。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、-アルキル-X-ハロアルキルによって表される。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、-(CH2)n-X-(CF2)m-CF3によって表される。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、-(CH2)n-(CF2)m-CF3によって表される(又はそれを含む)。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」は、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル-、ビス(ノナフルオロへキシルジメチルシロキシ)メチル-シリルエチル-、トリデカフルオロ-2-(トリデカフルオロへキシル)デシル-、ヘンエイコシル-1,1,2,2-テトラヒドロデシル-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)メチル-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-、及び上述のうちの任意のものの組み合わせからなる群から選択される置換基である。
【0141】
いくつかの実施形態において、基材表面及び単分子層は、表面(IV-i)
【0142】
【化18】
によって表される。いくつかの実施形態において、pは、1、2、又は3から選択される整数である。いくつかの実施形態において、表面(IV-i)は、(I)、(II)、又は(III)(式中、pは1である)のうちのいずれか1つ表面によって表されてもよい。表面(IV-i)は、Si原子が、1又は複数(例えば、1、2、又は3個)の尾部を含む構成を表す。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」の各例は独立して、-アルキル-X-ハロアルキルによって表される。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」の各例は独立して、-(CH
2)
n-X-(CF
2)
m-CF
3によって表される。いくつかの実施形態において、「防汚尾部」の各例は独立して、-(CH
2)
n-(CF
2)
m-CF
3によって表される。
【0143】
いくつかの実施形態は、本明細書の他の箇所で開示されるとおりの方法によって調製される防汚基材(例えば、ダイヤモンド、レンズ等)に関する。いくつかの実施形態は、防汚基材(例えば、防汚ダイヤモンド、レンズ等)を調製する方法に関係する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示され、且つ
図2A、
図2B、及び
図5に示されるように、防汚基材(例えば、ダイヤモンド又は他の基材)は、未加工基材の表面(例えば、ダイヤモンド表面)をプラズマ処理することによって調製され、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)を有する前駆体表面(基材、例えば、ダイヤモンド等の)を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)は、未加工基材(例えば、未加工ダイヤモンド)の表面とは化学的に異なる。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)は、未加工基材(例えば、未加工ダイヤモンド)の表面とは異なる物理的特性を有する。
【0144】
いくつかの実施形態において、本方法は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)をアニールして、反応性基材表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)を提供することを含む。いくつかの実施形態において、反応性表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)は、前駆体表面(例えば、前駆体ダイヤモンド表面)とは化学的に異なる。いくつかの実施形態において、反応性基材表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)は、前駆体表面とは物理的に異なる。いくつかの実施形態において、反応性基材表面は、実質的に欠陥を含まない防汚層及び/又はコーティングを提供するのに十分な反応性基の密度を有する。いくつかの実施形態において、反応性基材表面は、nm2毎に約1個の反応性基、nm2毎に2個の反応性基、nm2毎に3個の反応性基、nm2毎に4個の反応性基に等しいか若しくは少なくとも同等の密度、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の反応性基(例えば、反応性酸素種)の密度を有する。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、コーティングされた表面を調製するために、反応性基材表面(例えば、反応性ダイヤモンド表面)は、S-単位を含むシラン処理剤(例えば、シラン処理基)に曝露される。いくつかの実施形態において、シラン処理剤(例えば、シラン処理基)は、以下の構造:(LG)3Si-(防汚尾部)を含み、ここで、防汚尾部は本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。いくつかの実施形態において、LGの各例は、アルキル、アルコキシ、及びハロゲンから独立して選択される脱離基である。いくつかの実施形態において、シラン処理剤は、以下の構造:(LG)3Si-アルキル-X-ハロアルキルを含み、ここで、X、アルキル、及びハロアルキルは本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。いくつかの実施形態において、シラン処理剤は、以下の構造:(LG)3Si(CH2)n-X-(CF2)mCF3を含む。いくつかの実施形態において、「X」、「n」、及び「m」のそれぞれは、本明細書の他の箇所で開示されるとおりである。いくつかの実施形態において、シラン処理剤は、以下の構造:(LG)3Si(CH2)n(CF2)mCF3を有する。
【0146】
いくつかの実施形態において、シラン処理基(例えば、シラン処理剤)は、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリクロロシラン、ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(ノナフルオロヘキシルジメチルシロキシ)メチル-シリルエチルジメチルクロロシラン、トリデカフルオロ-2-(トリデカフルオロヘキシル)デシルトリクロロシラン、ヘンエイコシル-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)ジメチルクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、及び上述のうちの任意のものの組み合わせからなる群から選択される。
【0147】
いくつかの実施形態において、抗汚れコーティングは耐久性である。いくつかの実施形態において、抗汚れコーティングの接触角は、約50摩耗サイクル、100摩耗サイクル、200摩耗サイクルに等しいか若しくは少なくとも同等のサイクル、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲のサイクルの後、その元の値の10%内にとどまる。いくつかの実施形態において、抗汚れコーティングの接触角は、約50摩耗サイクル、100摩耗サイクル、200摩耗サイクルに等しいか若しくは少なくとも同等のサイクル、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲のサイクルの後、その元の値の5%、10%、15%、又は20%(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)内にとどまる。摩耗サイクルは、順方向及び逆方向に、各方向において10基材長さの距離(例えば、1cmの基材に関して10cm)で、綿布に基材をこすることによって実行される(実施例において開示されるとおり)。いくつかの実施形態において、摩耗サイクルは、わずかな指圧(布が基材又は指から滑り落ちることなしに、布に対する基材の動きを可能にするのに十分な)を使用して実行される。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示される処理された宝石用原石(例えば、分子で官能化されたダイヤモンド)は、処理されていない宝石用原石より長い時間期間(例えば、数日、数週より長い、及び数か月より長い間)、その輝き、きらめき、光沢、及びまたたきを保持する。それに加えて、現行の機械的又は化学的清浄方法がすべての汚染物質を完全には除去しないのに対して、本明細書において開示されるとおりの分子層は、油脂の集積から宝石用原石表面を保護し、光学品質を与える。
【0149】
驚くべきことに、いくつかの実施形態において、輝き、きらめき、光沢、及び/又はまたたきは、シラン単位を有するシラン処理によってあまり影響を受けないことが見出された。いくつかの実施形態において、輝き、きらめき、光沢、及び/又はまたたきのいかなる低下も、裸眼又は単眼ルーペを使用する熟練した宝石職人に知覚されえない。いくつかの実施形態において、輝き、きらめき、光沢、及び/又はまたたきのいずれの低下も分光的に(光強度測定、吸収、透過率等を使用して)測定することができる。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるとおりのシラン単位での官能化後、官能化された(例えば、シラン処理された)ダイヤモンドの輝きは、未加工ダイヤモンドと比べて、約15%、10%、5%、2.5%、1.0%、0%以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%以下、より低下する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるとおりのシラン単位での官能化後、官能化された(例えば、シラン処理された)ダイヤモンドのきらめきは、未加工ダイヤモンドと比べて、約15%、10%、5%、2.5%、1.0%、0%以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%、より低下する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるとおりのシラン単位での官能化後、官能化された(例えば、シラン処理された)ダイヤモンドの光沢は、未加工ダイヤモンドと比べて、約15%、10%、5%、2.5%、1.0%、0%以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%以下、より低下する。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるとおりのシラン単位での官能化後、官能化された(例えば、シラン処理された)ダイヤモンドのまたたきは、未加工ダイヤモンドと比べて、約15%、10%、5%、2.5%、1.0%、0%以下、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%以下、より低下する。
【0150】
驚くべきことに、ある特定の実装において、輝き、きらめき、光沢、及び/又はまたたきは、シラン単位でのシラン処理後、向上されることが見出されている。
【0151】
いくつかの実施形態において、処理された宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)は、通常の着用条件下で、少なくとも約1週、2週、1か月、3か月、6か月、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の期間の間、ショールーム品質のつやを保持する。この驚くべき予期しない向上は、処理されていないダイヤモンドが、清浄の実質的に直後にその外観を曇らせる物質を集積し始めることを考慮すると、重大なことである。
【0152】
いくつかの実施形態において、処理された基材(例えば、ダイヤモンド等のコーティングされた基材)は、通常の着用条件下で所与の時間期間の間、その輝きの約70%、80%、90%、95%、99%、又は100%に等しいか若しくは少なくとも同等の値(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%を保持する。いくつかの実施形態において、天然の宝石用原石(例えば、天然ダイヤモンド)と比べて、処理された宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)の輝きは、同等の通常の着用条件下で所与の時間期間の間、1.0%、2.5%、5.0%、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の%)向上される。例えば、処理されたダイヤモンド及び処理されていないダイヤモンドが実質的に同等の着用条件に置かれる場合、1か月の所与の期間着用後、通常のダイヤモンドの輝きが低下し、処理されたダイヤモンドの輝きがより小さい度合いで低下した場合、これは、処理されたダイヤモンドの輝きの向上として定量化されることになる。処理されていないダイヤモンドの輝きが35%低下したが、処理されたダイヤモンドの輝きが5%のみ低下した場合、これは、所与の時間期間(1か月)の間に輝きが30%向上したとして定量化されることになる。いくつかの実施形態において、その後に輝きが測定される時間期間は、約1週、2週、1か月、2か月、3か月に等しいか若しくは少なくとも同等の期間、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の期間である。
【0153】
いくつかの実施形態において、処理された宝石用原石(例えば、コーティングされた宝石用原石又はダイヤモンド)は、通常の着用条件下で所与の時間期間の間、そのきらめきの約70%、80%、90%、95%、99%、又は100%に等しいか若しくは少なくとも同等の値(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%を保持する。いくつかの実施形態において、天然の宝石用原石(例えば、天然ダイヤモンド)と比べて、処理された宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)のきらめきは、同等の通常の着用条件下で所与の時間期間の間、2.5%、5.0%、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%より向上される。例えば、処理されたダイヤモンド及び処理されていないダイヤモンドが実質的に同等の着用条件に置かれる場合、1か月の所与の期間着用後、通常のダイヤモンドのきらめきが低下し、処理されたダイヤモンドのきらめきがより小さい度合いで低下した場合、これは、処理されたダイヤモンドのきらめきの向上として定量化されることになる。処理されていないダイヤモンドのきらめきが35%低下したが、処理されたダイヤモンドのきらめきが5%のみ低下した場合、これは、所与の時間期間(1か月)の間にきらめきが30%向上したとして定量化されることになる。いくつかの実施形態において、その後にきらめきが測定される時間期間は、約1週、2週、1か月、2か月、3か月に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の期間である。
【0154】
いくつかの実施形態において、処理された基材(例えば、コーティングされた基材、コーティングされたダイヤモンド等)は、通常の着用条件下で所与の時間期間の間、その透明度の約70%、80%、90%、95%、99%、又は100%に等しいか若しくは少なくとも同等の値(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%を保持する。いくつかの実施形態において、天然の宝石用原石(例えば、天然ダイヤモンド)と比べて、処理された宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)の透明度は、同等の通常の着用条件下で所与の時間期間の間、2.5%、5.0%、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%より向上される。例えば、処理されたダイヤモンド及び処理されていないダイヤモンドが実質的に同等の着用条件に置かれる場合、1か月の所与の期間着用後、通常のダイヤモンドの透明度が低下し、処理されたダイヤモンドの透明度がより小さい度合いで低下した場合、これは、処理されたダイヤモンドの透明度の向上として定量化されることになる。処理されていないダイヤモンドの透明度が35%低下したが、処理されたダイヤモンドの透明度が5%のみ低下した場合、これは、所与の時間期間(1か月)の間に透明度が30%向上したとして定量化されることになる。いくつかの実施形態において、その後に透明度が測定される時間期間は、約1週、2週、1か月、2か月、3か月に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の期間である。
【0155】
いくつかの実施形態において、基材が透明である、又は透過性である場合(例えば、眼鏡レンズ、ダイヤモンド等)、処理された基材(例えば、コーティングされた基材)は、通常の着用条件下で所与の時間期間の間、その透過率の約70%、80%、90%、95%、99%、又は100%に等しいか若しくは少なくとも同等の値(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%を保持する。いくつかの実施形態において、処理されていない基材と比べて、処理された基材の透過率は、同等の通常の着用条件下で所与の時間期間の間、2.5%、5.0%、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%より向上される。例えば、処理された基材が処理されていない基材と実質的に同等の着用条件(例えば、一組の双眼鏡において並んで配置される)である場合、通常の使用の所与の期間後、処理されていない基材の透過率が20%低下し、処理されたダイヤモンドの透過率が低下しなかった場合、これは、処理された基材の透過率が20%向上したとして定量化されることになる。いくつかの実施形態において、その後に透過率が測定される時間期間は、約1週、2週、1か月、2か月、3か月に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の期間である。
【0156】
いくつかの実施形態において、有利には、本明細書において開示されるコーティングは、熱を使用して基材から除去されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、コーティング後、使用者は、ダイヤモンドをその実質的に元の形態に回復させることができる。いくつかの実施形態において、元のコーティングが部分的にすり減れば、使用者は新鮮なコーティングを再適用してもよい。いくつかの実施形態において、コーティング除去プロセスは、約450℃、500℃、550℃、600℃に等しいか若しくは少なくとも同等の温度、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の温度で実行される。いくつかの実施形態において、コーティング除去プロセスは、約30分、60分、1.5時間、2.0時間、4時間、5時間、6時間以下の、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の時間期間の間、実行される。いくつかの実施形態において、除去後、コーティングは、本明細書の他の箇所で開示される方法(プラズマ処理、アニール、シラン処理等)を使用して新しくすることができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、任意の質量、色、透明度、又はカットの研磨された炭素結晶である。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドはスライスである。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは研究室で成長される。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは天然である。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、砥石車、シリコンウエハー、又は他の平坦な若しくはテクスチャーをつけた表面に適用される粉末コーティングである。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは複合材料の成分である。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドはナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、窒素空孔中心、ケイ素空孔中心、ホウ素ドーピング、又は他の化学的若しくは物理的介在物を含む欠陥部位を含有する。ここから、ダイヤモンドのこれらの変形物は集合的に「ダイヤモンド」と呼ばれる。
【0158】
本明細書の他の箇所で開示されるように、いくらかの実施形態において、宝石用原石はダイヤモンドである。いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるとおりのS-単位を使用することにより、ダイヤモンド(又は他の宝石用原石又は他の基材)の元の外見を維持する。いくつかの実施形態において、分子コーティングが適用された後、ダイヤモンドの透明度及び/又は色は、実質的に不変である。例えば、いくらかの実施形態において、Dの色グレードを有するダイヤモンドは、コーティング後、Dの色グレードのままである。いくつかの実施形態において、VVS2の透明度を有するダイヤモンドは、コーティング後、VVS2の透明度のままである。
【0159】
いくつかの実施形態において、コーティングを、ダイヤモンドに適用する。いくつかの実施形態において、コーティングは単分子層である。いくつかの実施形態において、ダイヤモンド表面上に単分子層を加える前にサブ単分子層又はプレコーティングを形成するために、化学薬品は使用されない。
【0160】
いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で開示されるように、処理されていないダイヤモンドにコーティングを適用すると、接着は不良となり、結果として、ダイヤモンドは、汚れがこびりつかない、自己清浄性の、又は疎油性の用途のために好適な耐久性を実現するために、改変されなければならない。いくつかの実施形態において、ダイヤモンド結晶界面の操作された改変なしには、化学コーティングは、ダイヤモンドの表面に化学的に又は物理的に付着しない。そのような操作された改変のいくらかの実施形態が、本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、操作された改変は、有機成分でダイヤモンド表面を官能化することを含む。いくつかの実施形態において、ダイヤモンド表面組成は、有機成分の化学作用を反映するように変更される。いくつかの実施形態において、それらの化学的官能性は、(ダイヤモンド表面と通常反応することはない)他の化学物質への化学結合を形成する分子を含む。いくつかの実施形態において、加えられた化学的官能性は、特定の表面への化学結合を形成する又は任意の表面に化学的に連結されると一般化される分子を含む。そのような表面/分子カップリング反応には、適切な連結が調製される任意のものであってよい。いくつかの実施形態において、これらは、「クリックケミストリー」分子カップリング(例えば、アジド/アルキンの対)、酸素含有化学官能基と反応するシラン分子(例えば、R-Si(LG)3)、炭素-水素官能性と反応するカルベン、又は表面結合アダマンチル又はカルボラン基と、シクロデキストリン分子又は改変シクロデキストリン分子との等の超分子相互作用が含まれる。有機成分(例えば、R)の性質は、脂肪族、芳香族炭素鎖、又は他の分子を含む任意の化学的官能性でありえ、又はそれら自体が、後に続く改変のための官能基を含む。
【0161】
ダイヤモンドは不均一に化学官能性であり、水素、酸素(ヒドロキシル、カルボキシル)、又は様々な炭素含有種の特徴付けされていない混合物からなる表面状態の混合物を有する。これらの種のうちの1又は複数は、化学的官能化を受けることができない。化学的界面が制御されていないと、良好に制御され、耐久性があり、安定性であり、且つ官能性の化学的表面コーティングの堆積は阻止される。本明細書において開示される1又は複数の実施形態は、これら又は他の問題を解決する。
【0162】
いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、化学的及び物理的改変で前処理され、ある表面化学的同一性が別のものに変換される。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは処理されて、表面のより大きい画分が水素終端に転換される。いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは前処理されて、表面のより大きい画分が酸素含有種(例えば、ヒドロキシル、カルボキシル)に転換される。
【0163】
いくつかの実施形態において、水素表面終端比は、真空中で水素プラズマを適用することによって増大される。いくつかの実施形態において、水素表面終端比は、炭化水素潤滑剤の存在下、研磨することによって増大される。いくつかの実施形態において、水素終端は、ジアゾメタン基の脱離によってインサイツで生成されるカルベンを使用して官能化される。
【0164】
いくつかの実施形態において、酸素種(例えば、反応性酸素種)表面比は、化学的処理の適用によって増大される。いくつかの実施形態において、この化学的処理は、硫酸及び過酸化水素の混合物である。いくつかの実施形態において、酸及び過酸化物のこの混合物は、ダイヤモンド結晶の前処理として外来種を清浄除去し、最も外側の薄いダイヤモンド層を除去することができる。いくつかの実施形態において、酸及び過酸化物のこの混合物は、ダイヤモンド表面における酸素含有種の比を増大させる。いくつかの実施形態において、この比は、ダイヤモンド表面上にある水滴の水接触角によって測定される。いくつかの実施形態において、酸素種の割合がより高いと、水接触角はより小さくなる(例えば、<40°)。水素又は炭素終端の割合がより高いと、水接触角はより大きくなる(例えば、>40°、<80°)。
【0165】
いくつかの実施形態において、ダイヤモンドは、水素プラズマで処理される(例えば、前処理される)。いくつかの実施形態において、プラズマ処理により、表面は水素種が豊富となる。いくつかの実施形態において、表面は、一時的に非常に親水性となるが、数日間でおよそ60°のWCAに戻ることになる。いくつかの実施形態において、水素は、およそ10psiで湿潤窒素流下、>500℃の炉中で、ダイヤモンド表面を処理することによって、水酸化物で置き換えることができる。いくつかの実施形態において、水素豊富な表面は、ヒドロキシル豊富な、又は他の同様の関連する種に転換されることになる。
【0166】
いくつかの実施形態において、シラン又はシロキサン官能基を含有する分子を使用して、ダイヤモンド表面を改変する(例えば、本明細書の他の箇所で開示されるとおりのシラン処理剤)。いくつかの実施形態において、分子は、トリクロロシラン官能基、又はそのメトキシ/エトキシ誘導体を有する。いくつかの実施形態において、分子の有機部(例えば、「R」)は、任意選択で置換されていてもよいアルキルである。いくらかの実施形態において、分子の有機部は、長さが可変の直鎖アルキルである。いくらかの実施形態において、分子の有機部は、長さが可変の分枝鎖アルキルである。いくらかの実施形態において、分子の有機部は、直鎖フッ化炭素である。いくらかの実施形態において、分子の有機部は、分枝鎖フッ化炭素である。いくらかの実施形態において、分子は、複数のシラン官能基を有する二脚型である。いくらかの実施形態において、化学反応により、トリクロロシラン基はシラノールに、次いでアルキルオキシ基に転換される。いくらかの実施形態において、分子はアルキル官能性を含有する。いくつかの実施形態において、化学物質(例えば、シラン)が、処理されていないダイヤモンドに付着される。いくつかの実施形態において、化学物質は処理されたダイヤモンド(例えば、本明細書の他の箇所で開示されるように、プラズマで前処理された)に付着される。いくつかの実施形態において、化学物質は、接着層を有するダイヤモンドに付着される。いくつかの実施形態において、化学物質は、適用された又は彫り付けられたテクスチャーに付着される。いくつかの実施形態において、原子層堆積は、ヒドロキシルに対して実行される、又は表面ヒドロキシル基と反応することが可能な任意の種によって直接官能化される。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル豊富な表面を使用して、二次的な付着層を付着させる。
【0167】
いくつかの実施形態において、ダイヤモンド表面は化学薬品で処理されて、ダイヤモンド表面は官能化される。いくつかの実施形態において、接着促進剤が豊富な接着層は、原子層堆積(ALD)、トリメチルアルミニウム(TMA)及び水を使用して堆積される酸化アルミニウム(Al2O3)、によって、0.1~50nmの厚さで酸素豊富ダイヤモンドに適用される。いくつかの実施形態において、ALDを使用して、二酸化ケイ素、ハフニア、金属層(例えば、銅、金)、又は他のALD適合物質をダイヤモンド表面に堆積する。
【0168】
いくつかの実施形態において、ALDプロセスを使用して、色又はテクスチャーをダイヤモンド表面に付与することができる。いくつかの実施形態において、最終コーティングとして接着層コーティングを使用することができる。いくつかの実施形態において、テクスチャーは、化学的又は物理的手段を使用して、彫り付ける、又はエッチングすることができる。いくつかの実施形態において、接着層コーティングは、更に化学官能化することができる。いくつかの実施形態において、接着コーティングは、単分子層コーティングに適用することができる。いくつかの実施形態において、すべてのコーティングは、順序どおりに適用されて、多層スタックが形成されうる。
【0169】
いくつかの実施形態において、ペルフルオロ化尾部を有するシランを使用して化学的に改変された後の宝石用原石(例えば、ダイヤモンド)の表面は、疎水性である。いくつかの実施形態において、シラン処理された宝石用原石(例えば、ペルフルオロ化尾部を有するシランを有する、シラン処理されたダイヤモンド)の表面上の水の接触角は、約80°、85°、90°、95°、100°、105°、110°、115°、120°、125°、130°以上、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度である。いくつかの実施形態において、処理された(例えば、プラズマ処理され、シラン処理された)宝石用原石上の水の接触角は、処理前の宝石用原石上の水の接触角より約50%、75%、90%、95%、99%に等しいか若しくは少なくとも同等の値(又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲)の%より大きい。いくつかの実施形態において、処理された宝石用原石上の水の接触角は、処理されていない宝石用原石上の水の接触角と比べて、約30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、85°、90°、95°、100°、105°、110°、115°、120°、125°、130°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度で変更される。
【0170】
いくつかの実施形態において、未加工ダイヤモンド(例えば、処理されていない、化学的に改変されていないカットダイヤモンド)上の水の接触角は、約40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、90°、95°、100°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度である。
【0171】
いくつかの実施形態において、前駆体ダイヤモンド(例えば、プラズマ処理に供されたが、アニールには供されていないダイヤモンド)上の水の接触角は、約60°、65°、70°、75°、80°、85°、90°、95°、100°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度である。
【0172】
いくつかの実施形態において、反応性宝石用原石(例えば、プラズマ処理され、水アニールされている)上の水の接触角は、約10°、20°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度である。いくつかの実施形態において、プラズマ処理され、水アニールされた宝石用原石上の水の接触角は、約10°、20°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°に等しいか若しくは少なくとも同等の値、又は前述の値を含み且つ/又は前述の値にわたる範囲の角度である。
【0173】
いくつかの実施形態において、フッ素化炭素鎖によって化学的に改変された表面は超疎水性であり、水接触角は>120°である。超疎水性により、清浄することを高めながら、汚染除去及び抗接触汚れ特性を向上させる。いくつかの実施形態において、超疎水性は、ダイヤモンド上の化学的単分子層、多層、又は網目によって生じる。いくつかの実施形態において、超疎水性は、ダイヤモンド上のテクスチャー付けによって生じる。いくつかの実施形態において、超疎水性は、ダイヤモンド上の化学的単分子層、多層、網目、及びテクスチャー付けの組み合わせによって生じる。
【0174】
いくらかの実施形態において、フッ素化炭素鎖を非フッ素化炭化水素で置き換えることにより、フッ素系廃棄物を排除する。いくつかの実施形態において、非フッ素化炭素鎖で化学的に改変された表面は疎水性であり、水接触角は>100°である。疎水性により、清浄することを高めながら、汚染除去及び抗接触汚れ特性を向上させる。いくらかの実施形態において、フッ素化鎖は環境的に望ましくない。いくらかの実施形態において、フッ素化鎖は、アルキル系炭化水素鎖又はアリール系環系で置き換えられる。いくらかの実施形態において、フッ素化鎖は、ペルクロロ化炭素鎖で置き換えられる。
【実施例】
【0175】
商業的供給源から追加の精製をせずに、試薬及び溶媒を得た。Gelest社から(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリクロロシランを得た。Shape Master社から、スロット付き2インチウエハーディッパーを得た。Jean Dousset社のダイヤモンドからダイヤモンドを得、3mmの石にテーブルダイヤモンドカットした。One Attension-Theta Goniometerを使用して、水接触角の測定を実行した。Tergeo卓上型プラズマ発生器を使用して、プラズマ処理を実行した。電気炉をインハウスで構築した。
【0176】
(実施例1)
プラズマ処理及び水蒸気アニールの手順
受領するとすぐ、新しい加工されていないダイヤモンド(例えば、未加工ダイヤモンド)の梱包をといた。ゴニオメーター中の組み立てられた、アルミニウムダイヤモンド台座内に、未加工ダイヤモンドを載置した。Biolin Scientific社からのOne Attension-Theta Goniometerを使用して、水接触角を測定した。接触角測定のために使用された液滴サイズは0.75μLであったが、より小さい液滴(0.5μL)も使用することができる。ダイヤモンドの水の接触角はおおよそ35°~50°であった。ダイヤモンド台座中にダイヤモンドを位置付けてすぐに、ダイヤモンド上に水滴を載せた。ダイヤモンド上の液滴の写真を撮った。
【0177】
その際、未加工ダイヤモンドをプラズマ処理して、前駆体ダイヤモンド表面を生成した。プラズマ発生装置の石英プラズマチャンバー中に未加工ダイヤモンドを載置した。プラズマチャンバーを排気した。酸素及び/又は水素のガス流を使用して反応性表面を生成した。望ましいガスのために、ガス流速を99標準立方センチメートル毎分(sccm)に設定した。チャンバー中の圧力を約320mtorrに調整し、ガス流速を0sccmに調整した。次いで、プラズマ発生装置を動作させて清浄なダイヤモンド表面を生成した。サンプル条件は、高圧O
2プラズマ、直接、150W、20sccm、2min;O
2プラズマ、遠隔、100W、10sccm、15min;H
2プラズマ、遠隔、150W、20sccm、30minを含む。
図5は、例示的なプラズマ処理プログラムを提供する(
図2A及び
図2Bのスキーム1のステップAがそうするように)。前駆体ダイヤモンド表面の接触角を測定した。
【0178】
次いで、プラズマ清浄したダイヤモンド表面を、水を使用してアニールした。OH終端化ダイヤモンド表面を形成するために、CH終端化ダイヤモンドのサンプルを水蒸気(ウェット)アニールに供した。上に言及されるように、
図2Bは、ステップAにおいて、未加工ダイヤモンドのプラズマ処理を示す。前駆体ダイヤモンド表面をプラズマ処理によって生成した後、ダイヤモンド表面を、水を使用してアニールする。電気炉における石英管中の超純水を通してバブリングした窒素雰囲気下、アニール処理(
図2BのステップB)を実行した(
図3に示されるとおり)。アニールプロセスは、
図5(並びに
図2A及び
図2BのステップB)にも示されている。昇温状態(例えば、300~700℃、1h~2h間)で、炉に水飽和窒素を通す。窒素ガスの流れは400sccmであった。アニール後、反応性ダイヤモンド表面が結果として生じる。
【0179】
Biolin Scientific社からのOne Attension-Theta Goniometerを使用して、反応性ダイヤモンド表面の水接触角を測定した。接触角測定のために使用した液滴サイズは0.75μLであった。ダイヤモンド台座中に反応性ダイヤモンドを位置付けてすぐに、反応性ダイヤモンド上に水滴を載せた。ダイヤモンド上の液滴の写真を撮った。
図4の左枠は、反応性ダイヤモンド表面上の一滴の水の写真を示す。示されるように、水滴の接触角は45°未満であり、親水性表面であることを示す。
【0180】
(実施例2)
抗汚れ特性を有するシラン処理された表面の低温調製
官能化されたダイヤモンド表面を調製するために、以下の手順を実行した。イソオクタン及び四塩化炭素の溶液を調製した。硫酸マグネシウムを加えて、溶液の水をすべて乾燥させた。乾燥溶液を硫酸マグネシウムからデカントして除いた。乾燥溶液を被覆し、凍結器中に載置して、冷却された溶液を得た。その際、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリクロロシラン(FDTS)を溶液に加えた。凍結器中で10分間、FDTSを有機溶液に混合させた。その際、Teflonディッパーを使用して、反応性ダイヤモンドを溶液中に浸漬させた。反応性ダイヤモンドを浸水させ、反応溶液を凍結器に戻して、少なくとも30分間載置した。30分後、ダイヤモンドサンプルを凍結器から取り出した。ダイヤモンドを溶液から取り出し、エタノールですすいだ。他のコーティングされた基材は、これらの手順を考慮して、異なる基材又は異なるシラン処理剤を使用して、調製することができる。
【0181】
Biolin Scientific社からのOne Attension-Theta Goniometerを使用して、官能化されたダイヤモンド表面の水接触角を測定した。接触角測定のために使用した液滴サイズは0.75μLであった。ダイヤモンド台座中に官能化されたダイヤモンドを位置付けてすぐに、官能化されたダイヤモンド上に水滴を載せた。ダイヤモンド上の液滴の写真を撮った。
図4の右枠は、官能化されたダイヤモンド表面上の一滴の水の写真を示す。示されるように、水滴の接触角は105°超であり、疎水性表面であることを示す。
【0182】
(実施例3)
抗汚れ特性を有するシラン処理された表面の脱離
有利には、ダイヤモンドのシラン処理された単分子層コーティングは、(未加工ダイヤモンドを与えるために)除去し且つ/又は再生することができる。例えば、ある時間期間後、単分子層表面が劣化した場合、それを完全に除去し、再生させることができる。単分子層を除去するために、ダイヤモンドを、550℃で0.5hr間又は500℃で2hr間、炉中に載置する。次いで、実施例1及び2の手順を使用して、再処理を実行することができる。
【0183】
(実施例4)
摩耗試験(コーティング耐久性)
共有結合コーティングの耐久性を試験するために、ダイヤモンドのテーブル表面(直径3mm)を、綿の布地に当てて布の3cmの長さに沿ってこすった。1回の摩耗サイクルは、綿布の直線上にダイヤモンドを指でこする往復1回(合計で6cm)に等しい。ダイヤモンドを100回の摩耗サイクルに、次いで、追加の100回の摩耗サイクル(合計で200回の摩耗サイクル)に供した。各摩耗サイクルでは、指先によって与えられる定圧を使用した。第1の100回の研磨サイクル後、後の水接触角を測定した。合計200回のサイクル後にも、後の水接触角を測定した。1回の摩耗サイクルは合計6cmの距離を被覆するため、これは、ダイヤモンドのテーブル(例えば、上面)にわたる20回の個々の摩擦と同等である。したがって、20回の摩耗サイクルは、20回の往復、又はダイヤモンドのテーブルの表面全体を400回こすることと同等である。200回の摩耗サイクルは、10×20回の往復、又はダイヤモンドのテーブル表面全体を4000回こすることと同等である。消費者が1日に平均10回摩擦曝露させることを仮定すると、コーティングが10×20回の摩耗サイクルに耐える場合、コーティングは1年より長い400日持続することが推定される。コーティング後の水の接触角は、およそ100°~115°の、コーティング後の接触角であった。100回の摩耗サイクル後の水の接触角は、およそ90°~105°であった。100回の摩耗サイクル後の水の接触角は、およそ85°~100°であった。
【国際調査報告】