(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】遠心ロータを備える遠心機または超遠心機、サンプル抜取り針、原位置での遠心チューブからのサンプル抜取り方法
(51)【国際特許分類】
B04B 7/08 20060101AFI20240312BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20240312BHJP
B04B 11/00 20060101ALI20240312BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B04B7/08
B04B5/02 Z
B04B5/02 D
B04B5/02 A
B04B11/00 Z
G01N1/10 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547891
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022054175
(87)【国際公開番号】W WO2022175506
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521262714
【氏名又は名称】ザルトリウス ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルジャン、セバスチヤン
(72)【発明者】
【氏名】ストランカー、アレス
(72)【発明者】
【氏名】シュトクルフ、マーヤ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴク、ボジョ
(72)【発明者】
【氏名】エラーシク フィリピク、クリスティナ
【テーマコード(参考)】
2G052
4D057
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AD06
2G052AD46
2G052CA04
2G052CA11
2G052CA18
2G052CA19
2G052ED17
2G052GA11
2G052GA27
4D057AA03
4D057AB01
4D057AC01
4D057AC05
4D057AD01
4D057AE11
4D057AE13
4D057AF03
4D057BA11
4D057BA15
4D057BA25
4D057BC11
(57)【要約】
回転中心軸の周りを遠心回転するように適合されたロータセンブリを含む遠心ロータであって、各々が縦軸を備える複数の遠心チューブベッドを備え、各々の遠心チューブベッドはキャビティ側壁とキャビティ底部により規定される管状キャビティを備え、キャビティ側壁とキャビティ底部は遠心チューブが前記遠心チューブベッド内に受け入れられたときに遠心チューブの外面に対する支持表面として一緒に作用し、複数のキャビティ底部のうちの少なくとも1つは、前記管状キャビティを前記ロータセンブリの外部に接続する少なくとも1つの抽出開口を備え、好ましくは少なくとも1つの閉鎖装置が前記ロータセンブリに取り外し可能に固定されて、前記少なくとも1つの抽出開口を気密にシールする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸(14)の周りに遠心回転するように適合されたロータアセンブリ(10)は、
複数の遠心チューブベッド(16)を備え、前記複数の遠心チューブベッド(16)のそれぞれが縦軸(160)を持ち、
複数の前記遠心チューブベッド(16)はそれぞれがキャビティ側壁(162a)及びキャビティ底部(162b)によって画定される管状キャビティ(162)を含み、
複数の前記キャビティ底部(162b)の少なくとも1つは、前記管状キャビティ(162)を前記ロータアセンブリ(10)の外部に接続する少なくとも1つの抽出開口(18)を含み、
好ましくは、少なくとも1つの閉鎖装置(2)は前記ロータアセンブリ(10)に取り外し可能に固定されて、少なくとも1つの抽出開口(18)を気密の態様で密閉し、
前記キャビティ側壁(162a)と前記キャビティ底部(162b)が共に、遠心チューブ(4)が前記遠心チューブベッド(16)内に受け入れられたときに、遠心チューブ(4)の外面の支持面となる、遠心ロータ(1)。
【請求項2】
前記ロータアセンブリ(10)は、ロータ本体(12)により形成される固定角ロータであり、前記複数の遠心チューブベッド(16)は、前記ロータ本体(12)内に管状キャビティ(162)として形成され、前記少なくとも一つの抽出開口(18)は、前記ロータ本体(12)を貫通して延在する、請求項1に記載の遠心ロータ(1)。
【請求項3】
前記ロータアセンブリ(10)は、回転ステム(11)に旋回可能に接続された複数のロータバケット(13)を含むスイングバケットロータであり、前記複数のロータバケット(13)は、前記遠心チューブベッド(16)を形成する少なくとも1つの管状キャビティ(162)を含み、前記少なくとも1つの抽出開口(18)は、前記複数のロータバケット(13)の少なくとも1つの本体を貫通して延在する、請求項1に記載の遠心ロータ(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの閉鎖装置(2)は、第1端(221)から第2端(222)までシャフト軸(22a)に沿って延びるシャフト(22)を備え、前記シャフト(22)は、前記抽出開口(18)の形状に適合し、前記第1端(221)は、前記閉鎖装置(2)が前記ロータアセンブリ(10)に締結されるときに、前記キャビティ底部(162b)の部分的領域を形成し、前記第1端(221)の形状は、前記キャビティ底部(162b)の形状に適合して、前記第1端(221)の表面および前記キャビティ底部(162b)の周囲表面の円滑な移行部を形成する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の、遠心ロータ(1)。
【請求項5】
複数の閉鎖装置(2)のそれぞれは、前記閉鎖装置(2)の軸(22a)方向の移動を制限するために、前記第2端(222)にリミットストップ(24)を備え、前記閉鎖装置(2)が前記ロータアセンブリ(10)に固定されたときに、前記第1端(221)が前記キャビティ底部(162b)の周囲表面と正しく整列することを保証する、請求項4に記載の遠心ロータ(1)。
【請求項6】
複数の閉鎖装置(2)のそれぞれは、少なくとも一つの弾性シール(28)を備え、前記弾性シール(28)は、前記閉鎖装置(2)の溝(26)に受け入れられ、前記閉鎖装置(2)がロータアセンブリ(10)に締結されると変形して、ロータアセンブリ(10)と共に気密シールを形成する、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の、遠心ロータ。
【請求項7】
シャフトの少なくとも一部の領域が雄ねじ(27)を備え、前記抽出開口(18)が前記雄ねじ(27)の形状および位置に適合した雌ねじ(27)を備え、前記閉鎖装置(2)が前記適合した雄ねじ及び雌ねじ(27)によって前記ロータアセンブリ(10)に締結される、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の遠心ロータ。
【請求項8】
シャフト(22)の第2端(222)が、前記シャフト(22)の半径方向に少なくとも部分的に突出する少なくとも1つの連動要素(29)を備え、前記ロータアセンブリ(10)が、前記少なくとも1つの連動要素(29)を受け入れるように構成された少なくとも1つの切欠き(19a)および/または少なくとも1つのポケット(19b)を備え、前記閉鎖装置(2)が前記ロータアセンブリ(10)に締結されたときに連動構造を形成する、請求項4から7のいずれか1項に記載の遠心ロータ。
【請求項9】
シャフトの直径(22d)が0.5mmから8.0mmまでの範囲内にあり、0.5mmから2.0mmまでの好ましい範囲内にある、請求項4から7のいずれか1項に記載の遠心ロータ。
【請求項10】
前記キャビティ底部(162b)は、前記ロータアセンブリ(10)の下端に向かう方向の狭窄面によって形成され、前記少なくとも1つの抽出開口(18)は、前記回転中心軸(14)に対して前記遠心チューブベッド(16)の最下点に位置している、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の遠心ロータ。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の遠心ロータ(10)を備える遠心機または超遠心機(1)。
【請求項12】
遠心ロータ(1)の遠心チューブベッド(16)に収納された遠心チューブ(4)からの、原位置におけるサンプル抜取りの方法であって、前記遠心ロータ(1)は、請求項1~10のいずれか1項に記載の特徴を有することが好ましく、前記方法は:
A) 前記遠心ロータ(1)に収容された前記遠心チューブ(4)に含まれるサンプルを遠心分離し;
B) 前記遠心ロータ(1)をロータスタンドに移送し、前記遠心ロータ(1)を分解し;
C) 内容物を抽出すべき第1遠心チューブ(4)を前記遠心ロータ(1)に収容される複数の遠心チューブ(4)から選択し;
D) 選択された前記第1遠心チューブ(4)の上部の領域に少なくとも1つの通気孔を形成し;
E)閉鎖装置(2)を取り外すことによって、前記第1遠心チューブ(4)が配置される遠心チューブベッド(16)の抽出開口(18)を開き;
F) 前記抽出開口(18)を通って前記遠心チューブ(4)の外壁に向かってサンプル抜取り針(3)を導入し、前記遠心チューブ(4)の壁を穿孔し、サンプル抜取り針(3)を前記第1遠心チューブ(4)に挿入して、前記遠心チューブ(4)の内容積への流体接続を生成し;
G) サンプル抜取り針(3)を通して前記遠心チューブ(4)の内容物を抽出し;
H) 好ましくは、前記遠心ロータ(1)に収容される別の遠心チューブ(4)に工程C)~G)を繰り返す;
方法。
【請求項13】
前記遠心チューブ(4)からの前記サンプル抜取りは、圧力下の前記サンプルを圧縮ガスで置換することにより、または適切なポンプを使用することにより前記遠心チューブ(4)からのサンプル吸引により生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
低密度、好ましくは非水混和性の液体を、遠心チューブの通気孔を通して均等に投与することによって、サンプルが遠心チューブ(4)から変位させられる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
遠心チューブ(4)からのサンプル変位を可能にする、高性能液体クロマトグラフィ、HPLCタイプのポンプ、蠕動ポンプ、またはシリンジポンプを使用する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サンプル抜取り針(3)によって抽出された内容物が、UV-VIS検出システム、蛍光検出システム、光散乱検出システム、高性能液体クロマトグラフィーおよび/または自動画分コレクターのグループから選択された装置の少なくとも1つに供給される、請求項12~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程D)の前に、第1遠心チューブ(4)を遠心チューブスタンドに置く請求項12から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載の遠心ロータの使用、または、好ましくは、請求項11に記載の遠心機または超遠心機の使用、および、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法を実施するためのサンプル抜取り針の使用。
【請求項19】
原位置におけるサンプル抽出のための自動化されたシステムであって:
請求項11記載の遠心機または超遠心機、および
少なくとも抽出針;を備え
前記システムは好ましくは、請求項12~17のいずれか一項に記載の原位置におけるサンプルの抜取り方法を行うように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心機または超遠心機に関し、より具体的には、細胞臓器、ウィルス、ウィルス様粒子、バクテリオフェージ、エキソソームおよびナノ粒子の液状物質を、前記遠心機または超遠心機を用いて分離するための方法に用いられる遠心ロータまたは超遠心ロータに関する。さらに、本発明は、サンプル抜取り針、遠心ロータまたは超遠心ロータの遠心チューブベッドに収容されたサンプルの原位置での抜取り方法、原位置でサンプルを抜取る方法を実施するための遠心ロータおよびサンプル抜取り針の使用、を記載する。
【0002】
本発明は、遠心チューブロータアセンブリまたは遠心チューブバケットから遠心チューブを取り外すことなく、超遠心プロセスおよび遠心プロセスで原位置からの液体サンプル捕集および液体サンプル分画を可能にする超遠心ロータまたは遠心ロータを記載する。さらに、遠心分離ロータのロータセンブリ内にまだ収容されている遠心チューブからの自動サンプル抜取りを可能にするために、サンプル抜取り針の自己密封設計について説明する。
【背景技術】
【0003】
遠心および超遠心は、細胞器官(US 2006/266715 A1)、ウィルス(US 10066213 B2)、ウィルス様粒子(US 6,077,662 A)、バクテリオフェージ(AU 680279 B2)、エキソソーム(WO 2015/048844 A1)、およびナノ粒子(WO 2006/069985 A2)などの微粒子分別物を分離するための基本的な技術の1つである。遠心および超遠心技術には、粒子分別物が管の底部にペレットを形成することによって懸濁液から徐々に除去されるペレット化が含まれる。管が溶液中の高密度物質の濃度の増加で上から下に充填されるグラジエントセパレーションも、粒子画分密度と粒子画分沈降係数に基づいて粒子画分を分離するためにしばしば使用される。サンプルは、分離を達成するために十分な時間、高速でスピンされる。遠心分離または超遠心分離の後、ロータは、滑らかな停止状態にされ、勾配は、異なるアプローチを使用することによって分離された構成要素を隔離するために、各チューブから緩やかに引き出される。
【0004】
遠心機および超遠心機は、広範囲の実験に適した多種多様なロータを備えている。最近、遠心機の開発は主に自動サンプル充填(US 2008/318755 A1)および遠心分離装置の自動操作(US 8,795,144 B2)に焦点を当てている。
【0005】
遠心分離および超遠心分離チューブは、異なるサンプル量、およびチューブ内の液体サンプルを維持するための異なる遠心分離および超遠心分離技術に対応するために、異なるサイズおよびフォーマットで利用可能である。
【0006】
チューブにおける密度勾配調製および遠心分離または超遠心分離後のチューブからのサンプルの抜取り/抽出は、これらのプロセスの特定のボトルネックを表す。遠心試験チューブからサンプルを抜き取るための1つの選択肢は、皮下針(CN 208147961 U)でチューブに穴をあけることによるものであり、このアプローチにはいくつかの欠点がある。遠心チューブの製造用プラスチック材料が強靭であったり、チューブの壁がある程度の厚さになっている場合、チューブを穿刺する過程で皮下注射針が容易に曲がることがある。さらに、針を強制的に遠心管に挿入すると、この手順では激しいシェーキングが発生し、それがアップセットし、生成された勾配成分と分離成分の層を部分的に混合する。また、遠心チューブからサンプルの針抜取りを行う際にも、液体の漏れがしばしば発生する。漏出はしばしば、穿刺現場であらかじめVaselineの薄層をスミアリングすることによって防止されるが、抽出サンプルの汚染のリスクを引き起こす。対象となる領域または密度勾配層は、多くの場合、サンプル回収中に付加的なエラーを導入するものを視覚的に位置させる。
【0007】
チューブの壁を穿刺する際、チューブの軟質プラスチック材料が抽出針の針チューブを詰まらせる可能性があり、そのため、材料収集の前に針の交換がしばしば要求される。また、ベント穴は、遠心チューブの上部にあるベベル鋼の皮下針で手動で穿刺する。サンプル収集は、このアプローチを使用することによって自動化することができず、したがって、操作時間および操作コストを低減することはできない。関心領域の個人的な視覚的識別だけでなく、針の手動挿入は非常に不正確であり、結果として非生産的な結果となる。さらに、材料の分別は制御されない。分別物は容量別に収集され、特性評価には補助的な分析手順が必要である。分画中により大きなサイズの分別物が得られる場合は、分別物の希釈のリスクまたは隣接する成分との混入のリスクが増加する。
【0008】
場合によっては、サイフォン効果を使用するか、または専用のサンプルポンプを使用して遠心チューブからサンプルを吸引することによって、サンプルの抜取りが行われる。チューブは、遠心チューブの底部に押し込まれるか(CN 101875921 A)、またはサイフォンチューブを既に含む特別に設計された遠心チューブがこの目的のために使用される(US 5,866,071 A)。サイフォンまたは吸引による遠心チューブからのサンプルの抜取りは、さらに不利な点がある。チューブを遠心チューブの底部に挿入すると、サンプルは実質的に乱される可能性がある。サイフォンチューブの直径が大きすぎる場合、液体密度の差によって、サイフォンチューブ内で異なる密度の液体の混合が生じる。すなわち、最初に最も濃い液体がサイフォンチューブ内を上方に強制的に移動する。より密度の低い液体が管に入ると、より密度の高い液体が管の底部に向かって自発的に低下し始め、混合溶液が生じる。
【0009】
あるいは、サンプルは、ペルフルオロデカリンのような低粘度で高密度の非水混和性液体を使用して、上向きに変位させることによって遠心管から抜き取ることができる。サイフォニングと同様に、チューブを遠心チューブの底部に挿入する必要があり、分離した層の擾乱を誘発する。変位液の導入もまた、材料汚染のリスクがある。デカンチング装置は、層状サンプル抜取り(US 3,682,305 A)のために実装することもできる。
【0010】
複数の密閉式チャンバーを備えた遠心チューブを使用して、遠心分離手順後の成分混合を防止する場合もある(US 4,511,349 A)。このアプローチでは、密度勾配内の対象分子の位置を事前に決定する必要がある。特定の用途の分離特性に適合する遠心チューブが必要であり、遠心チューブの汎用設計ができない。
【0011】
密度勾配または密度勾配内の分離した成分の層が摂動するリスクが高いため、チューブを遠心チューブバケットまたはロータに入れたり、そこから取り出したりするには、慎重な手作業による取扱いが必要である。密度勾配の摂動は、チューブを振ったり、チューブを反転させたり、チューブを不適切な向きに配置したりする(テーブル上に平らに横たえる)ことにより発生することがある。遠心管からのサンプル回収のための遠心管保護システムが提案されている。遠心管を保護ブラケットに封入し、遠心管の底部に皮下注射針を刺し、遠心管の内容物を溶出させ、分画する。多数の遠心チューブは、制御された環境で同時に処理することができるが(CN 210207236 U)、そのアプローチには、遠心機のロータまたはバケットの位置から保護ブラケットにチューブを移す必要があるため、サンプルが攪乱される可能性がある。
【0012】
無菌性は、装置間の無菌接続が検証できないため、チューブからの手動による材料抜き取りで確立し維持することが困難である。先端面取加工された鋼製皮下針は、鋭い先端が容易に作業者の保護衣を貫通できるため、作業者にとって安全のリスクがある。先端面取加工された鋼製皮下張による傷害は、汚染の2方向のリスクをもたらす。すなわち、作業者が潜在的に有害な物質に曝露したり、あるいは、作業者の組織や体液で製品が汚染される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の不都合な点から出発して、遠心機、超遠心機およびサンプル抽出装置および方法に関する公知の先行技術のうち、本発明のタスクは、より信頼性が高くかつ堅牢な抜取り方法およびそれぞれの装置がこのような改良された方法を支持することを可能にする改良された遠心機または超遠心機を提供することであり、これは、再現性のある抜取り結果を可能にし、さらに、使用者の手動の介入を必要とせずに自動化されたプロセスを使用することを可能にする。したがって、方法および装置の安全性および効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、独立請求項1に記載の遠心ロータ、独立請求項11に記載の遠心機または超遠心機、独立請求項12に記載のサンプル抜取り針、独立請求項18に記載の原位置でのサンプル抜取り方法、ならびに、請求項22に記載の遠心ロータの使用によって解決される。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、遠心ロータまたは超遠心ロータが提供され、このロータは、それぞれ縦軸を有する複数の遠心チューブベッドを備え、回転中心軸の周りで遠心回転するように適合されたロータアセンブリを備える。前述の遠心チューブベッドの各々は、キャビティ側壁およびキャビティ底部によって画定される管状キャビティを備え、キャビティ側壁およびキャビティ底部は共に、遠心チューブが前記遠心チューブベッド内に受け入れられたとき、遠心チューブの外面のための支持表面として作用する。複数のキャビティ底部のうちの少なくとも1つは、管状キャビティをロータアセンブリの外部に接続する少なくとも1つの抽出開口を備える。遠心チューブベッドの管状キャビティによって形成される内部容積は、キャビティ底部に少なくとも1つの抽出開口を設けることによって、ロータセンブリを取り囲む外部雰囲気に接続され得る。更に、少なくとも1つの抽出開口を気密にシールするために、ロータアセンブリに取り外し可能に固定される少なくとも1つの閉鎖装置が考えられる。
【0016】
遠心ロータは、超遠心分離に適合させることができる。
【0017】
管状キャビティをロータアセンブリの外部に接続する少なくとも1つの抽出開口は、遠心ロータの遠心チューブベッドに収容され支持される遠心チューブを、遠心チューブの底部の領域において抽出装置を到達させることができ、またアクセスさせることができる利点を提供する。本発明による構成は、少なくとも1つの抽出開口を通してサンプル抜取りのような抽出装置を挿入し、ロータアセンブリにまだ収容されているときに、該装置によって、収容された遠心チューブを突き抜いて、該遠心チューブに収容されたサンプルを抽出することを可能にする。遠心ロータセンブリは、遠心ロータ中の遠心チューブベッドから遠心チューブを除去する必要なしに、超遠心分離および遠心分離プロセスからのサンプル捕集およびサンプル分画をその場で可能にする、遠心チューブの底部に位置する少なくとも一つのアクセスウェル/抽出開口を含む。超遠心機および遠心機ロータの設計は、種々のサイズ、材料、および密封手段を有する遠心チューブを収容するために様々であり得る。
【0018】
遠心チューブは、サンプル抽出装置が材料を破壊することなく遠心チューブを穿孔することを可能にする材料から作製される。好ましい態様において、遠心チューブは、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ポリスルホン、NalgeneまたはHDPEを含む材料からなる。
【0019】
ロータッセンブリ内に複数の遠心チューブベッドが設けられる場合、少なくとも一つの抽出開口が、遠心チューブベッドの数の各々に対してそれぞれ設けられ、それによって、前記複数の遠心チューブベッドの各々からの抽出を可能にすることが好ましい。それにもかかわらず、複数の遠心チューブベッドの一定の数だけが、そのキャビティ底部に前述の少なくとも1つの抽出開口を備えていることも可能である。
【0020】
少なくとも1つの閉鎖装置は、少なくとも1つの抽出開口を密閉することを可能にし、それによって、少なくとも1つの閉鎖装置は、好ましくは独立して、ロータアセンブリから固定または解放することができる単一で独立した装置として形成することができる。それにより、複数の遠心チューブベッドの所定の遠心チューブベッドへのアクセスが可能になり、選択された特定の遠心チューブベッドからの抽出が可能になる。
【0021】
それにもかかわらず、本発明の代替実施形態では、少なくとも1つの閉鎖装置が、複数の抽出開口の各々を同時にシールまたは非シール化することを可能にし、それによって、例えば、複数の抽出開口によって複数の遠心チューブベッドの全てにアクセスすることを可能にする単一の装置として形成されることもできる。
【0022】
遠心チューブベッドの各々のキャビティ底部は、典型的には、遠心ロータの底部に向かって狭まる形状を有しており、一例として、キャビティ底部は、キャビティ側壁の下端から遠心チューブベッドの縦軸の方向に延びる半球、円錐、円筒円錐、または円錐台として形成され得る。少なくとも1つの閉鎖装置は、複数の抽出開口の各々を液密かつそれによって気密にシールすることを可能にする。
【0023】
好ましくは、ロータアセンブリは、ロータ本体により形成される固定角ロータとして形成され、前記複数の遠心チューブベッドは、ロータ本体内に管状キャビティとして形成され、前記少なくとも1つの抽出開口は、前記ロータ本体を貫通して延在する。
【0024】
抽出開口は、回転軸に関して遠心チューブベッドの最下点に位置し、それによって抽出開口は、遠心チューブベッドの最下点を形成するキャビティ底部の領域に位置する。遠心チューブベッドの各々の縦軸は、遠心ロータの回転中心軸に対して傾いており、遠心チューブベッドの最下点は、水平方向において、キャビティ側壁の領域における遠心チューブベッドの上部よりも、該回転中心軸に対して、より大きな距離を有する。本発明では、近垂直ロータも固定角ロータとみなされ、本発明の保護の範囲に該当する。
【0025】
別の実施例において、ロータアセンブリは、回転ステムに旋回可能に接続された複数のロータバケットを備えるスイングバケットロータとして形成される。複数のロータバケットは、遠心チューブベッドを形成する少なくとも1つの管状キャビティを備え、少なくとも1つの抽出開口は、それぞれのロータバケットの本体を通って延びている。遠心チューブバケットの寸法は、種々のサイズ、材料、および密封手段を有する遠心チューブに適合するように変化させることができる。
【0026】
複数のロータバケットの各々は、遠心ロータが回転中心軸を中心として回転するときに、前記回転ステムに対してスイングアウトするように回転ステムに旋回可能に連結されている。遠心チューブベッドは、ロータバケット内のキャビティとして形成され、遠心チューブベッドの縦軸は非回転および非揺動状態で、回転中心軸に平行に延在する。スイングバケットロータを回転させるとき、ロータバケットは、回転ステム及び回転中心軸に対して揺動し、それによって、遠心チューブベッドの各々の縦軸が、前記回転中心軸に対して傾斜している。抽出開口は、非回転状態にあるとき、回転中心軸に関して遠心チューブベッドの最下点に位置し、それによって抽出開口は、遠心チューブベッドの最下点を形成するキャビティ底部の領域に位置する。遠心チューブベッドの各々の縦軸は、非回転状態のとき、回転中心軸に対して平行に延びている。遠心ロータの回転中のロータバケットのスイングアウト位置において、各々の遠心チューブベッドの縦軸は、遠心ロータの回転中心軸に対して傾いており、遠心チューブベッドの最下点は、キャビティ側壁の領域において、遠心チューブベッドの上部よりも水平方向において、前記回転中心軸に対してより大きな距離を有する。
【0027】
好ましくは、閉鎖装置は、軸線に沿って第1端部から第2端部まで延在するシャフトを備え、シャフトは、抽出開口の幾何学的形状に適合され、閉鎖装置がロータアセンブリに固定されてそれぞれの抽出開口を密閉するときに、第1端部は、キャビティ底部の部分領域を形成し、第1端部の形状は、キャビティ底部の表面とキャビティ底部の周囲表面との滑らかな移行部を形成するように、キャビティ底部の形状に適合される。
【0028】
複数の抽出開口が遠心ロータ上に形成される場合には、当然、複数の閉鎖装置が設けられる。各抽出開口は、それぞれの閉鎖装置によって、流体密封方式で閉鎖されるか、または密閉され得る。
【0029】
好ましくは、閉鎖装置は、閉鎖装置が締結/密閉位置にあるときに第1端部とキャビティ底部の周囲表面との正しい整合を確実にするために、閉鎖装置がロータアセンブリに締結されたときに軸線方向への前記閉鎖装置の動きを制限するために第2端部にリミットストップを備える。
【0030】
更に好適には、複数の閉鎖装置の各々は、閉鎖装置の溝に受け入れられ、閉鎖装置がロータアセンブリに締結されてロータアセンブリと閉鎖装置との間に気密シールを形成するときに変形する少なくとも1つの弾性シールを備えている。弾性シールは、ロータセンブリ内の遠心チューブベッドのシールを、遠心ロータの周囲に対して改善する。
【0031】
閉鎖装置のシャフトの少なくとも部分的な領域が雄ねじを備え、抽出開口が雄ねじの形状および位置に適合された雌ねじを備え、閉鎖装置が適合されたスレッディングによってロータアセンブリに締結されることができる。閉鎖装置と抽出開口とのスレッディングは、まず、遠心ロータへの閉鎖装置の固定手段を確立するが、さらに、気密シールを確立することを可能にする。スレッディングは、遠心ロータの回転の間、閉鎖装置の非ねじ化を避けるために、遠心ロータの逆回転方向に延びることが予測され得る。
【0032】
シャフトの第2端は、シャフトの半径方向に少なくとも部分的に突出する少なくとも1つの連動要素を含むことができ、ロータアセンブリは、少なくとも1つの切り欠き及び/又はポケットを含み、これらの切り欠き及び/又はポケットは、少なくとも1つの連動要素を受け入れて、閉鎖装置と連動構造を形成して、閉鎖装置をロータアセンブリに締結するようになっている。連動構造により、閉鎖装置のロータアセンブリへの確実な締結を実現することができる。
【0033】
シャフトは、0.5mm~8mmの範囲内にあり、0.5~2.0mmのさらに好ましい範囲内にある直径を有することができる。
【0034】
さらに好ましくは、キャビティ底部が、ロータアセンブリの下端に向かう方向に狭まる表面によって形成され、少なくとも1つの抽出開口が、回転中心軸に対して遠心チューブベッドの最下点に位置することであることが分かる。スイングバケットロータが設けられる場合には、キャビティ底部の狭窄面がロータバケットの各々に見られる。ここで、抽出開口は、スイングバケットロータの回転ステムに対して、ロータバケットの静的な非回転かつ非揺動の場合において、遠心チューブベッドの最下点に位置している。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る遠心ロータまたは超遠心ロータを備える遠心分離機または超遠心分離機が提供される。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、サンプル抜取り針が提供され、サンプル抜取り針は、遠位端から近位端まで軸方向軸に沿って延在するカニューレを備え、前記近位端は、鋭利閉鎖先端によって形成されて、サンプル抜取り針の近位端と、カニューレの横方向側壁に配置された少なくとも1つの排液穴とをシールする。サンプル抜取り針の鋭利閉鎖先端は、遠心チューブの壁を通して針を突き刺すことで、遠心チューブを貫通させることを可能にする。抜取り針の排液穴は、針カニューレの側面/側面側壁で、近位端の針先端のすぐ下に配置される。このような排液穴の位置決めは、遠心チューブの穿刺中に発生する小さな粒子による針詰まりを防止する。さらに、排液穴を遠心チューブの最下点に対して所望の高さ位置に配置して、遠心チューブから特定の遠心分画を直ちに抽出できるようにすると、抜取り針による抜取り中の流体の流れが改善される。あるいは、非コアリング針先端(鉛筆先端、偏向先端)の他の設計が、遠心チューブからのサンプル抜取りのために好ましく使用される。
【0037】
好ましくは、サンプル抜取り針は、軸方向軸に沿って円錐形状を有する針カニューレを備え、カニューレの外径は、鋭利閉鎖先端に向かう方向に減少する。抽出針は、遠心チューブ及び/又はロータセンブリと抽出針との間の密封接続を確実にする円錐形状を有する。鋭利閉鎖先端の方向に減少する十字形状を有する円錐形状は、抽出開口内への抽出針の容易な挿入を可能にし、抽出開口および遠心チューブに対する挿入の際の針の自己位置合わせを実現する。
【0038】
密閉された遠心チューブからサンプルを取り除くために、遠心チューブの上部に通気孔が必要である。遠心チューブの上部にある通気孔は、遠心チューブからサンプルを抜き取るために遠心チューブの下部に排出孔を作るために使用するのと同じサンプル抜取り針で作ることができる。遠心チューブの上部の通気孔は、遠心チューブの底部の抽出孔の前に作ることが好ましい。ベントおよび抽出針は、手動操作のレバーまたはロボットアームを使用して遠心チューブに正確に挿入する。
【0039】
好ましくは、鋭利閉鎖先端は円錐、好ましくは円形の円錐によって形成され、近位端の前面は円錐の先端によって形成され、円錐の研削面はカニューレ端の形状に適合される。
【0040】
カニューレは、中空のステンレス鋼チューブによって形成することができる。好ましくは、中空ステンレス鋼チューブの断面は、円形又は楕円形により形成され得る。
【0041】
カニューレは、0.7~1.5mmの範囲の遠位端の領域の外径を有することができる。
【0042】
カニューレの遠位端が針基部に接続されていることが好ましく、ここで、針基部は、本発明の第2の態様による遠心ロータの抽出開口の開口よりも大きな直径を有し、遠心チューブベッド内のサンプル抜取り針の最大挿入深さを制限する制限装置として作用することができる。
【0043】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様に係る遠心ロータの遠心チューブベッドに収容された遠心チューブからの、原位置でのサンプル抜取りのための方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
A) 遠心チューブに含まれ、遠心ロータに収容されたサンプルの遠心分離の実施;
B) ロータスタンドへの遠心ロータの移送、遠心ロータの分解;
C) 内容物が抜き取られるべき第1の遠心チューブを、遠心ロータに収容された複数の遠心チューブから選択;
D) 選択された第1の遠心チューブの頂部の領域に通気孔を形成すること;
E) それぞれの閉鎖装置を取り外すことによって第1の遠心チューブが配置されている遠心チューブベッドのそれぞれの抽出開口を開くこと;
F) 好ましくは本発明の第三の態様による抜取り針を、抽出開口を通して遠心チューブの外壁に向かって導入し、遠心チューブの壁を突き刺し、抜取り針を第一の遠心チューブに挿入して、遠心チューブの内容積への流体接続を生成する;
G) 遠心分離機のチューブの内容物を抜取り針を介して抜き取る;
H) 好ましくは、工程C)から工程G)を少なくとも遠心ロータに収容された、さらなる遠心チューブ上で繰り返す。
【0044】
具体的には、ステップD)およびE)の順序を変更して、例えば、ステップE)がステップD)の前に実行されるようにすることができる。
【0045】
好ましくは、遠心チューブからのサンプル抜取りは、遠心チューブの内容物を圧縮ガスで加圧下に置換することによって生じる。あるいは、低密度、好ましくは遠心チューブの通気孔を通して非水混和性の液体を供給することによって、サンプルを遠心チューブから置換することができる。好ましくは、良好な流れ制御を可能にするHPLC型ポンプまたは蠕動ポンプまたはシリンジポンプが、遠心チューブからのサンプル変位のために使用される。あるいは、遠心チューブからのサンプル抜取りは、適切なポンプを使用することによるサンプル吸引によって行われる。
【0046】
好ましい方法によれば、抜取り針によって抽出された内容物は、紫外線-可視検出システム、蛍光検出システム、光散乱検出システム、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を行うための装置および/または自動フラクションコレクターのグループで示された装置の少なくとも1つに供給される。
【0047】
第一の遠心チューブは、工程D)および工程D)以下の工程の前に遠心チューブスタンドに置かれることができる。
【0048】
第5の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による遠心ロータ、または本発明の第2の態様による遠心ロータの使用を提供し、好ましくは本発明の第3の態様によるサンプル引き込み針により、本発明の第4の態様による方法を提供する。
【0049】
本発明の第6の態様によれば、原位置でのサンプル抽出のための自動化されたシステムが提供され、システムは:
本発明の第2の態様による遠心ロータと、
本発明の第3の態様による抜取り針を少なくとも備え;
システムは、好ましくは、本発明の第4の態様により原位置でのサンプル抜取りのための方法を実施するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下では、添付の図面に関して、本発明による装置の例示的実施形態を説明する。
【0051】
【
図1】固定角ロータの構成における遠心分離ロータの断面を示し、閉鎖装置によって閉鎖される抽出開口を有する例示的な遠心チューブベッドを通るカットが示される。
【
図2】スイングバケットロータの構成における遠心機ロータの断面を示し、スイングバケットの遠心管床を通る部分切断を示し、閉鎖装置によって密閉された遠心管床内の底部に見られる抽出開口部を有する。
【
図3A】閉鎖装置の第1の例示的な実施形態を示す。
【
図3B】閉鎖装置の第2の例示的な実施形態を示う。
【
図3C】遠心分離ロータのロータッセンブリへの設置プロセス中の、
図3Bの閉鎖装置を示す。
【
図4】サンプル引き戻し針の例示的実施形態を示す図である。
【
図5】前記遠心分離チューブからサンプルを抽出するために、遠心分離ロータ内に収容された遠心分離チューブに挿入されるサンプル引き戻し針の略図を示す。
【
図6】高性能液体クロマトグラフィーポンプにより低密度液体を遠心チューブの通気口から均等に分注し、変位したサンプルを紫外-可視検出システム、蛍光検出システム、光散乱検出システム、および導電率検出システムに供給した結果を示す。
【
図7】高性能液体クロマトグラフィーポンプを用い、遠心チューブの抽出口からサンプルを吸引し、変位されたサンプルを紫外-可視検出システム、蛍光検出システム、光散乱検出システム、および導電率検出システムに供給した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1を参照すると、固定角ロータの構成における遠心ロータ1の例示的な実施例が示されている。遠心分離ロータは、ロータ本体12により形成されるロータアセンブリ10を備える。固定角ロータ本体12の形態のロータアセンブリ10は、
図1に一点鎖線で示す回転中心軸14の周りを遠心回転するようになっている。当業者に理解されるように、ロータ体12は、回転中心軸14に対して回転対称である。
図1において、複数の遠心チューブベッド16の1つの断面が、遠心チューブベッド16の縦軸160とともに示されている。遠心チューブベッド16は、遠心分離プロセス中に遠心チューブ4を受容し、支持するように適合された管状キャビティ162によって画定される。管状キャビティ162は、ロータ体12の材料内に形成され、キャビティ側壁162aとキャビティ底部162bとによって区切られている。キャビティ側壁162aとキャビティ底部162bは共に、遠心チューブベッド16の管状キャビティ162に収容できる遠心チューブ4の外面のための支承面として作用する。
図1から分かるように、キャビティ底部162bは、
図1の例では、閉鎖装置2によって
図1において閉鎖される単一の抽出開口18を含む。
図1にかかる例示的な実施形態において、キャビティ底部162bは、遠心ロータアセンブリ10の底部10bに向かって狭まる形状を有するように形成されている。ロータアセンブリ10の上部には、参照符号10tが付されている。
【0053】
キャビティ底部162bは、
図1の例では半球体によって形成されている。
【0054】
遠心ロータ1の遠心チューブベッド16の管状キャビティ162は、固定角ロータのロータ本体12内に形成され、少なくとも1つの抽出開口18は、管状キャビティ162をロータアセンブリ10の周囲と流体的に接続するために、ロータ本体12を通って延びる穴として形成される。
【0055】
図2は、遠心ロータ1の代替構成を示しており、ロータアセンブリ10はスイングバケットロータによって形成され、回転ステム11に旋回可能に接続された複数のロータバケット13を備え、複数のロータバケット13は少なくとも1つの管状キャビティ162を備えて少なくとも1つの遠心チューブベッド16を形成し、少なくとも1つの抽出開口18はそれぞれのロータバケット13の本体を通って延びている。管状キャビティ162は、ロータバケット13の材料にも形成される。
図2では、ロータバケット13の1つの断面図のみが示されており、ここには単一の例示的な遠心チューブ4が受け入れられている。
図2に示すようなスイングバケットロータは、中心回転軸14を中心として回転するように構成されており、複数のスイングバケット13の各々は、スイングアウト軸15を介して回転ステム11に旋回可能に連結されている。
図2の遠心チューブベッド16の長手方向軸線160は、非揺動状態または静的状態で軸線160が回転ステム11の回転中心軸線14にほぼ平行に延びている。
【0056】
スイングバケット13を規定するハウジング又は材料内に形成された抽出開口18は、閉鎖装置2によって閉じられ、密閉される。
【0057】
図3Aは、第1端部221から第2端部222までシャフト軸22aに沿って延在するシャフト22を備えるキャッピングねじとして形成される閉鎖装置2の第1の例示的な実施形態を示し、第1端部221は、
図1及び
図2に示す例から導かれるように、閉鎖装置2がロータアセンブリ10に締結される場合の状況において、キャビティ底部162bの部分領域を形成する。
図2から分かるように、第1端部221は、キャビティ底部162bの形状に適合し、第1端部221の表面およびキャビティ底部162bの周囲表面の平滑な転移を形成する。
図3Aの構成に示すような閉鎖装置2は、第1端部221とキャビティ底部162bの周囲表面との正しい位置合わせを確実にするために、閉鎖装置2がロータアセンブリ10に締結されたときに、閉鎖装置2の動きをシャフト軸22aに沿った方向への制限するために、第2端部222にリミットストップ24を更に備える。
図3Aに示す閉鎖装置2は、Oリングとして構成された1つの弾性シール28を受容する溝26を備える。弾性シール28は、閉鎖装置の前記溝26内に受け入れられ、閉鎖装置2がロータアセンブリ10に締結されると変形する。閉鎖装置2がロータアセンブリ10に固定されると、
図3Aの閉鎖装置2は、少なくともリミットストップ24の領域においてロータ本体12の外面又はロータバケット13の本体と嵌合し、弾性シール28を弾性変形させて気密シールを画定する。また、閉鎖装置2の例示的実施形態からみることができるように、シャフト22の部分的な領域は、外ねじ27を備え、この外ねじ27は、外ねじ27の形状および位置に適合された内ねじを備え、それにより閉鎖装置は適合された内・外ねじ27によってロータアセンブリ10に固定することができる。
【0058】
図3Bは、閉鎖装置2の第2の例示的実施形態を示し、ここで、閉鎖装置2は、固定を実現するためにロータアセンブリ10との連動構造を形成するように構成される。
図3Bに示すような閉鎖装置2は、
図3Aに示すような装置とは異なり、閉鎖装置2のロータアセンブリ10への固定を実現するためにシャフト22の領域に外ねじ27が設けられていない。
図3Bによる閉鎖装置2は、閉鎖装置2をロータアセンブリ10に固定することを可能にする2つのインターロック要素29を備えている。インターロック要素29は、
図3Aに関して説明したように、外部ねじ27に加えて又は代替的に設けることができる。
図3Bにかかる閉鎖装置2は、2つの弾性シール28を備え、シール28の一方は、シャフト22の領域の溝26に受け入れられるように配置され、さらなる弾性シール28は、リミットストップ24のロータアセンブリ10との接合面で第2端部222の領域に位置する溝26に配置される。閉鎖装置2の第2端部222は、リミットストップ24の領域内で、ロータハウジングから離れる方を向いている面上に凹部222aを備え、それによって、閉鎖装置2をシャフト軸22aの周りに回転させて、閉鎖装置2をロータハウジング10に留めたり外したりすることが可能になる。
【0059】
図3Cに示されているように、ロータアセンブリ10への固定プロセスの間の閉鎖装置2を詳述している。
図3Cは、閉鎖装置2の第2の端部222上の上面図を示す。閉鎖装置2の締結の間、閉鎖装置2は、抽出開口18の領域に配置され、ここで、連動要素29は、ロータアセンブリ10のそれぞれの切り欠き19aに配置される。閉鎖装置2をロータアセンブリ10に固定するために、閉鎖装置は、軸22aの周りに回転されて、インターロック要素29をロータアセンブリ10の適合されたポケット19b内に移動させる。インターロック要素29及びポケット19a並びにポケット19bは、互いに連動する構造を形成し、これにより閉鎖装置2のロータアセンブリへの確実な締結を実現するように適合されている。
【0060】
図4は、サンプル抜取り針3の例示的な実施形態を示し、ここで、サンプル抜取り針3は、軸方向軸300に沿って遠位端30dから近位端30pまで延在するカニューレ30を含み、近位端30pは、サンプル抜取り針3のカニューレ30の近位端30pを密閉するために、鋭利先端閉鎖チップ31によって形成される。
図4に示される実施形態では、サンプル抜取り針3は、カニューレ30の横方向側壁33の領域に配置される4つの排液孔32を備える。
図4の概略図では、カニューレ30の周方向に、軸300の周りの横方向の側壁33において、4つの排液孔32のうちの3つのみが均等に分散されて示されている。
【0061】
図4からも分かるように、針カニューレ30は、カニューレ30の外径が鋭利閉鎖先端31に向かう方向に減少する、軸線300に沿った円錐形状を有する。鋭利閉鎖先端部31は、円形の円錐体によって形成され、ここで近位端30pの前面は、円錐体の先端によって形成される。円錐の研削面はカニューレ端の形状に適応している。
【0062】
抜取り針3のカニューレ30は、中空のステンレス鋼管によって形成することができ、カニューレ30は、遠位端30dの領域に0.7~1.5mmの範囲の外径を有することができる。カニューレ3の遠位端30dは、針基部34に接続されており、ここで針基部34は、本発明による遠心ロータ1の抽出開口18の開口よりも大きくなるように寸法決めされた直径34dを有する。それによって、針基部34は、遠心チューブベッド16におけるサンプル抜取り針3の最大挿入深度Iを制限する制限装置として作用するように構成される。
【0063】
図5は、固定角ロータのロータアセンブリ10の例示的実施例に収容された遠心チューブ4に、ロータ本体12の抽出開口18を介して挿入され、遠心チューブ4に挿入され、遠心分離プロセスの後に遠心チューブ4に含まれるサンプルおよび/または分画を抽出する際の、本発明によるサンプル抜取り針3の概略図を示す。
図5は、厚さSを有する制限装置9の使用を示しており、この場合、制限装置9は、挿入針3が、抽出開口18を通って誘導され、遠心チューブベッド16に挿入され、遠心チューブ4に挿入されることができる貫通孔を有している。制限装置9の使用により、先に見られた排液穴32が遠心チューブベッド16の最下点より上の所望の高さHに置かれるように、抜取り針3は遠心チューブ4内に所望のかつ先に定義された挿入深さIまで挿入され得る。前述の構成により、抜取り針3を所望の挿入深さIまで挿入することができ、それによって、遠心チューブ4の底部の上方の所望の高さに排液穴を配置することができる。
【0064】
図6は、高性能液体クロマトグラフィーポンプにより低密度液体を遠心チューブの通気孔を通して均等に投与することによる、遠心チューブからのサンプル変位の例を示している。
【0065】
密度勾配分画は、Sorvall(登録商標)WX 90+超遠心分離機(Thermo Scientific)上で、11.5mLポリエチレンUltraCrimp(登録商標)遠心管(Thermo Scientific)を用いて、T890固定角ロータで行った。Adeno Associated Virus (AAV)のサンプルを濃縮塩化セシウムと混合し、3Mの塩化セシウム中でAAVサンプルを得た。遠心は室温で53,500 RPM×24 h行った。次に、チューブをスタンドに固定し、皮下針(23ゲージ、70mm、B Braun)で通気孔を上部近くに穿孔した。別の皮下針を使用して、遠心チューブの底部にある抽出開口を穿孔した。PATfix(登録商標)LPG HPLCシステム(BIA分離)のHPLCポンプを用いて、遠心チューブの上部にある通気孔を通して、1mL/分の一定流量で水をポンピングすることによって、チューブ内容物を遠心チューブから置換した。遠心チューブの底部の抽出開口を、PATfix(登録商標)LPG HPLCシステムのモニターアレイに直接接続した。これは、密度が減少する順に管を排気した。UV吸光度を260nm (固体トレース)でモニターした。蛍光検出器(島津製作所製ダッシュトレース)にて、励起波長280nm、発光波長348nmにて真性蛍光をモニタリングした。光散乱は、DAWN(登録商標)HELEOS IIマルチアングル光散乱検出器(Wyatt Technology、ダッシュドット黒色トレース)で90°の角度でモニターした。塩化セシウムの密度は、導電率プロファイル(点線のトレース)で表される。導電率が高いほど塩化セシウムの密度は高くなった。
【0066】
図7は、高性能液体クロマトグラフィーポンプを備えた遠心チューブから、遠心チューブ内の抽出開口を通るサンプル吸引の例を示している。
【0067】
密度勾配分画は、Sorvall(登録商標)WX 90+超遠心分離機(Thermo Scientific)上で、11.5mLポリエチレンUltraCrimp(登録商標)遠心管(Thermo Scientific)を用いて、T890固定角ロータで行った。Adeno Associated Virus (AAV)のサンプルを濃縮塩化セシウムと混合し、3Mの塩化セシウム中でAAVサンプルを得た。遠心は室温で53,500 RPM×24 h行った。次に、チューブをスタンドに固定し、皮下針(23ゲージ、70mm、B Braun)で上部近くに通気口を穿孔し、通常の気圧になるように開いたままにした。別の皮下針を使用して、遠心チューブの底部にある抽出開口を穿孔した。PATfix(登録商標)LPG HPLCシステム(BIA分離)のHPLCポンプを用いて、遠心チューブの底部にある抽出開口を通して、1mL/分の一定流量で遠心チューブからチューブ内容物を抜き取った。HPLCポンプは、遠心チューブの内容物をPATfix(登録商標)LPG HPLCシステムのモニターアレイに導いた。これは、密度が減少する順に管を排気した。UV吸光度を260nm(固体トレース)でモニターした。蛍光検出器(島津製作所製ダッシュトレース)にて、励起波長280nm、発光波長348nmにて真性蛍光をモニタリングした。光散乱は、DAWN(登録商標)HELEOS IIマルチアングル光散乱検出器(Wyatt Technology、ダッシュドットトレース)で90°の角度でモニターした。塩化セシウムの密度は、導電率プロファイル(点線のトレース)で表される。導電率が高いほど塩化セシウムの密度は高くなった。
【国際調査報告】