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特表2024-5122311つ又は複数のフィブリルを製造する方法、1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法、及びフィブリル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】1つ又は複数のフィブリルを製造する方法、1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法、及びフィブリル
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240312BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240312BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20240312BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/23
G06F119:14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549018
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022056341
(87)【国際公開番号】W WO2022189631
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162253.5
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シッティ,メティン
(72)【発明者】
【氏名】リーマタイネン,ヴィレ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ドンフン
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146BA04
5B146DC04
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA11
(57)【要約】
本発明は、1つ又は複数のフィブリルを製造する方法に関し、方法は、1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を提供するステップと、1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を提供するステップであって、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、1つ又は複数のフィブリルの製造の材料に、且つ、1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、提供されたランダム初期形状に、基づいて1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップと、1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を形成するために1つ又は複数のフィブリルの接着力を変更するように1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を適合させ、具体的には反復的に適合させ、且つ、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の対応する接着力を判定するステップと、1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を選択するステップと、1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する選択された結果的に得られる形状を有する1つ又は複数のフィブリルを製造するステップと、を有する。本発明は、1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法と、フィブリルとに更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のフィブリルを製造する方法であって、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を提供するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を提供するステップであって、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料に、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、前記提供されているランダム初期形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を形成するために前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を変更するように前記1つ又は複数のフィブリルの前記ランダム初期形状を適合させ、具体的には反復的に適合させ、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の前記対応する接着力を判定するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状を選択するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記選択された結果的に得られる形状を有する1つ又は複数のフィブリルを製造するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似ている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がその端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有するように、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルが、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されるように、構成されている請求項1及び2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がT形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似るように構成されている請求項1及び3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、標準的な有限要素法によって実行されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標準的な有限要素法は、コーシーの式に基づいている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、複数回にわたって発生している請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数回は、2~1000000回の反復において選択され、即ち、反復的であり、且つ/又は、前記処理形状を適合させることは、前記結果的に得られる形状の前記算出された接着力が収束した際に停止している請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、1nm~10μmの範囲において選択されたサイズを有する前記フィブリル先端の最小エッジ半径を変更することにより、発生している請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のフィブリルを製造する前記ステップは、付加製造、2光子ポリマー化、3D印刷、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、合焦型イオンビーム機械加工、レーザーマイクロ/ナノ機械加工、機械的又は超音波マイクロ機械加工、マイクロ/ナノ印刷、ロールツーロール複製、インジェクションモールディング、圧縮モールディング、及びポリマーキャスティングの少なくとも1つを利用して発生している請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。この関連において、前記ソフト材料は、好ましくは、PDMS、シリコーンエラストマ、ビニルシロキサン、又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【請求項15】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の間において曲率半径を定義することにより、前記フィブリル先端エッジを設計するステップを更に有する請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
-前記1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を提供するステップと、
-前記境界面の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出する前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項6及び17に記載の方法。
【請求項19】
前記界面応力は、前記コーシーの平衡方程式によって算出されている請求項18に記載の方法。
【請求項20】
増大した接着力を有するフィブリルを製造するために1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法であって、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの初期形状を定義するステップであって、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料に、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、前記定義された初期形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの接着力を前記コンピュータを利用して算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状を判定するために前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を変更するように複数回にわたって前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状又は前記以前の適合ステップにおいて判定された形状又はそれまでの最大接着力を有する予め判定された形状を反復的に適合させ、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の前記対応する接着力を算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記1つ又は複数のフィブリルの前記判定された結果的に得られる形状を選択するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記結果的に得られる形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの前記製造を開始するステップと、
を有する方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状又は予め判定された形状又はそれまでの前記最大接着力を有する前記予め判定された形状を反復的に適合させる前記ステップは、前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の最小エッジ半径を変更することによって実行されており、具体的には、前記最小エッジ半径は、1nm~10μmの範囲のサイズを有する請求項20に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を反復的に適合させる前記ステップは、ベイズ最適化などの確率論的最適化方法に基づいており、前記ランダム初期形状は、具体的には、ランダム3次ベジェ曲線に基づいたサイドプロファイルである請求項20又は21に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項23】
前記確率論的最適化方法は、必要とされている有限要素法FEMシミュレーション評価の数を小さく、即ち、1000回のシミュレーション評価未満に、維持しつつ、目的関数値、即ち、前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着、を最大化させるステップを有する請求項22に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項24】
前記最適化方法は、次式
【数1】
によって定義され、ここで、f(・)は、具体的には、FEMから算出された前記接着であり、xは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組のプロファイル曲線を構成するパラメータであり、且つ、Aは、xの前記パラメータ境界のハイパー矩形を構成する単純な組である請求項22又は23に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項25】
f(x)は、ランダム変数のすべての有限なサブセットの同時分布が次式:
f~GP(μ,k), 具体的には、f=GP(μ,k)
によって定義された多変量ガウスとなるようなランダム変数の集合体であるガウスプロセスGPであり、
ここで、μ(x)及びk(x)は、平均及び共分散関数であり、且つ、
前記GPは、前記FEMにおいてシミュレートされた前記接着のブラックボックス表現を使用した前記パラメータx及びf(x)の間の関係を代理している請求項24に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項26】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている請求項20乃至25のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項27】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似ている請求項20乃至25のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項28】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がその一端において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有するように、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルがベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されるように、構成されている請求項20乃至26のいずれか1項の記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項29】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がT形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似るように、構成されている請求項20乃至25及び27のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項30】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、標準的な有限要素法によって実行されている請求項20乃至29のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項32】
前記標準的な有限要素法は、コーシーの式に基づいている請求項31に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項33】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、複数回にわたって、即ち反復的に発生しており、前記複数回は、2~1000000回の反復において選択されている請求項20乃至32のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項34】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させることは、前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状の前記算出された接着力が収束した際に停止している請求項20乃至33のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項35】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている請求項20乃至34のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。この関連において、前記ソフト材料は、好ましくは、PDMS、シリコーンエラストマ、ビニルシロキサン、又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【請求項36】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有する請求項20乃至35のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項37】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の間において曲率半径を定義することにより、前記フィブリルの先端エッジを定義するステップを更に有する請求項20乃至36のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項38】
-前記1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を提供するステップと、
-前記境界面の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有する請求項20乃至37のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項39】
前記界面応力は、前記コーシーの平衡方程式によって算出されている請求項38に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項40】
請求項1乃至19に記載の前記1つ又は複数のフィブリルを製造する前記方法の1つ又は複数のステップが実行され得る先行する請求項20乃至39のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項41】
請求項1乃至19に記載の前記1つ又は複数のフィブリルを製造する方法によって実現可能である且つ/又は請求項20又は請求項39に記載の前記コンピュータ実装された方法によってシミュレートされるフィブリルであって、任意選択により、0.000001mN~1000mNの範囲において選択された接着力、自由曲線から構成されたプロファイルを有する構成要素の群から選択された形状、及び0.001kPa~10000MPaの範囲において選択された境界表面に対する界面応力、並びに、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択された材料の少なくとも1つを有するフィブリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数のフィブリルを製造する方法に関し、この方法は、フィブリルの製造の材料を提供するステップと、フィブリルのランダム初期形状を提供するステップと、フィブリルの製造の材料に且つフィブリルの初期形状に基づいてフィブリルの接着力を算出するステップと、フィブリルの結果的に得られる形状を形成するためにフィブリルの接着力を極大化するようにフィブリルのランダム初期形状を適合させるステップと、フィブリルの最大接着力を有するフィブリルの結果的に得られる形状を選択するステップと、フィブリルの最大接着力を有する選択された結果的に得られる形状を有する1つ又は複数のフィブリルを製造するステップと、を有する。本発明は、1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法と、フィブリルと、に更に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤモリは、事実上、ほとんどすべての表面を迅速に且つ努力することなしに登ることができる。このような驚くべき登る能力は、彼らの足の上部の毛のような微細構造、即ち、剛毛、に由来している。これらの剛毛は、へら形の先端末端部を有する剛毛の多数の相対的に小さな毛に枝分かれしており、この場合に、これらの先端は、主には最も普遍的な分子間力であるファンデルワース力を活用することにより、表面に直接的に接触し且つ接着している。剛毛の階層構造的且つ分岐したフィブリル構造は、粗い表面に対する接触分裂及び亀裂捕捉並びに接着の活用をも可能にしている。このような魅力的な接着が合成エラストマヤモリパッドに関するひらめきを呼び起こした。合成ヤモリパッドに関する研究は、接触分裂及び亀裂捕捉、接着制御可能性、自己クリーニングプロパティ、階層構造的構造化、マルチ材料複合フィブリル、任意の液体超忌避性を有する接着、皮膚に対する接着、ソフトロボットグリッパ、及びロボット壁クライマなどのドライフィブリル接着剤に関する多くの後続の研究を結果的にもたらした。
【0003】
合成ヤモリフィブリルアレイの接着強度は、通常、滑らかな表面上において研究されており、且つ、これは、フィブリル密度、フィブリルエラストマ材料プロパティ、及びフィブリルアレイバッキング層に加えて、フィブリル先端及びステムのサイズ及び形状の関数である。単一のフィブリルの場合に、接着強度は、特にフィブリル構造の形状の影響を受けやすい。接着改善にとっては、先端形状が極めて重要であり、この場合に、単純なフラットパンチフィブリルのものよりも、生体模倣型のマッシュルーム形状及びT形状のフィブリル先端が、顕著に格段に接着強度を改善することが見出されている。また、複数の最適なマッシュルーム及びT形状の先端形状も提案されている。
【0004】
現時点のテンプレートに基づいた設計方式の特性に起因し、このような既に提案されている先端形状を最適化する際には、制限が生じている。このような方式は、円筒形ステムを有する既定のT形状又はマッシュルーム形状の先端に基づいており、且つ、独創的な最適先端及びステム形状を探求し且つ見出すためのチャンスを抑圧している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを理由として、同一の材料の従来技術のフィブリルよりも大きな接着力を有する改善されたフィブリル設計を結果的にもたらす1つ又は複数のフィブリルを製造する方法を提供することが本発明の目的である。更には、このようなフィブリルの製造及び設計の期間を低減することが本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって充足されている。
【0007】
1つ又は複数のフィブリルを製造する方法であって、方法は、
-1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を提供するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を提供するステップであって、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの製造の材料に、且つ、1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、提供されたランダム初期形状に、基づいて1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を形成するために1つ又は複数のフィブリルの接着力を変更するように1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を適合させ、特に反復的に適合させ、且つ、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状ごとに対応する接着力を判定するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を選択するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する選択された結果的に得られる形状を有する1つ又は複数のフィブリルを製造するステップと、
を有する。
【0008】
この結果、合成エラストマドライマイクロフィブリル接着剤を様々な用途のために生成することが可能であり、この場合に、ファイバ又はファイバのアレイは、残留物が存在せず、反復可能であり、チューニング可能であり、制御可能であり、且つ、サイレント接着型であり、自己クリーニングプロパティを有し、且つ、通気性を有する、という固有のプロパティを有する。
【0009】
このようなドライフィブリル接着剤の設計が既定の生体模倣型のT形状又はウェッジ形状のマッシュルーム先端を使用するテンプレートに基づいた設計方式によって制限されている従来技術とは対照的に、本開示は、フィブリルの材料を変更することを許容しているのみならず、改善された接着特性を有する所与の材料のフィブリルを取得するためにフィブリルの形状及びサイズを変更している。
【0010】
この関連において、フィブリルの初期ランダム形状を適合させるステップは、複数回にわたって発生してもよく、この場合に、それぞれの連続的なステップは、以前のステップに基づき得ることに留意されたい。即ち、様々な適合ステップは、互いに基づいたものであり得る。従って、初期の、且つ、従って更には結果的に得られる、形状の適合も、結果的に得られる形状の判定された対応する接着力が収束する時点まで複数回にわたって発生し得る。
【0011】
1つ又は複数のフィブリルの初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称な形状を有していてもよく、且つ、1つ又は複数のフィブリルのプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている。
【0012】
これは、初期形状が既に定義されている特定の形状を有していない任意に成形されたフィブリルであり得ることを意味している。これは、円筒形形状のフィブリル、T形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、又はこれらに類似したものの1つなどの予め定義された形状を有することができる。好ましくは、まず、既に示されている受け入れ可能な接着力特性を有する形状が選択されている。次いで、フィブリルの所与の材料及びサイズ用の理想的な形状を取得するために、この形状のプロファイルが変更されている。
【0013】
1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生し得る。この結果、フィブリルの設計を大幅に加速させることができる。
【0014】
界面において発生する垂直応力が、1つ又は複数のフィブリルと装着対象である物体の間の分離の臨界点を判定し、且つ、フィブリルのステムの底部における垂直応力の面積分が、シミュレートされた接着となる。接着の計算は、標準的な有限要素法を踏襲しており、且つ、コーシーの等式に基づき得る。
【0015】
従って、本明細書において提案されている方法は、機械学習(ML)に基づいた演算設計方式を教示しており、この場合に、接着フィブリルの3D先端及びステム形状は、広い設計空間内においてサーチされており、且つ、所与のフィブリル直径スケールにおいて且つ所与の材料について自動的に適合されている。
【0016】
MLに基づいた設計最適化は、最適アンテナ設計、複合体設計、機械プロパティ予測、ポリマー誘電体、航空機風圧板設計、機械構造設計、及びエネルギー材料などの様々なエリアにおいて幅広く使用されている。これらの研究の大部分は、シミュレーション評価を加速するために、人工ニューラルネットワーク(ANN)をトレーニングすることによる有限要素法(FEM)に基づいたシミュレーションの近似モデルに依存している。近似されたモデルの改善された評価速度が遺伝的アルゴリズムなどのグローバルな最適化方法を実現可能なものとしている。但し、このような方式の主要な欠点は、ANN用のトレーニングデータセットを生成するための大きな演算時間及び費用と、近似プロセスに起因した相対的に低い精度と、である。
【0017】
本教示においては、データ効率に優れた最適化フレームワーク及び正確なFEMに基づいた接着メカニクスシミュレーションを有するMLに基づいた接着フィブリル設計方法が提案されている。総合的な有限要素法(FEM)に基づいた接着メカニクスシミュレーションと共に、最先端のグローバル最適化法であるベイズ最適化を利用することにより、この方法は、シミュレーション及び実験の両方において以前の接着フィブリル設計を凌駕するフィブリルの最適な形状を生成している。
【0018】
最近提案されている機械学習方式との比較において、本開示は、詳細な応力分析と共に、機械学習法によって設計されたフィブリルの第1実験検証を提供している。これに加えて、提案されている方法は、妥当な持続時間(この研究においてはそれぞれの設計のごとに、約3時間)において準最適な設計を生成するために格段に相対的にデータ効率に優れており、且つ、シミュレーションの変化に対して柔軟であり、この場合に、モデルの任意の事前のトレーニングなしにシミュレーションを制御している物理的過程を容易に変更することが可能であり、これにより、吸引などのその他の接着メカニズムを伴う異なる接着フィブリルの生成を許容している。また、最後に、この方法は、先端形状に加えて、ほとんどすべての以前のテンプレートに基づいた且つ以前の機械学習に基づいたフィブリル最適化方法においては無視されているフィブリルの3Dステム形状及び変形をも最適化している。
【0019】
望ましいフィブリルを選択するための幅広のパラメータ範囲を得るために、1つ又は複数のフィブリルの初期形状を適合させるステップは、複数回にわたって、即ち、反復的に、発生し得る。この関連において、複数回は、2~1000000回の反復、特に5~100000回の反復、において選択され得ることに留意されたい。
【0020】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のフィブリルの初期形状を適合させるステップは、結果的に得られる形状の判定された接触力が収束する時点まで、即ち、判定された接着力がもはや大きくは変化しない時点まで、発生し得る。
【0021】
1つ又は複数のフィブリルの初期形状を適合させるステップは、1nm~10μmの範囲において選択されたサイズを有するフィブリル先端の最小エッジ半径を変更することにより、発生している。また、この結果、提案されている方法は、フィブリルの実際の製造方法をも考慮しており、即ち、好ましくは外側の形状及びサイズを1つ又は複数のフィブリルの製造プロセスによって判定することができる。これは、エッジが、完全な90°の角度を有する、且つ、従って、フィブリルの内部応力の歪をもたらす、と仮定されている従来技術との比較において、あからさまな対比をなしている。
【0022】
また、1つ又は複数のフィブリルの初期形状を適合させるステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生し得る。この結果、フィブリルの設計を大幅に加速させることができる。
【0023】
形状適合は、必要とされている有限要素法(FEM)シミュレーション評価の数を小さく維持しつつ、目的関数値、即ち、1つ又は複数のフィブリルの接着、を極大化させるベイズ最適化などの確率論的最適化方法に基づいたものであり得る。
【0024】
1つ又は複数のフィブリルを製造するステップは、付加製造、2光子ポリマー化、3D印刷、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、合焦型イオンビーム機械加工、レーザーマイクロ/ナノ機械加工、機械又は超音波マイクロ機械加工、マイクロ/ナノ印刷、ロールツーロール複製、インジェクションモールディング、圧縮モールディング、及びポリマーキャスティングの少なくとも1つを利用して発生し得る。
【0025】
この関連において、フィブリルは、1つ又は複数のフィブリルの材料と同一又はこれとは異なる材料から製造されたバッキング基材において直接的に形成され得ることに留意されたい。
【0026】
1つ又は複数のフィブリルの製造の材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又は以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択することができる。この関連において、フィブリルの好ましくはソフトな材料は、好ましくは、PDMS又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【0027】
フィブリル及び/又はバッキング基材は、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、ヒドロゲル、液体材料、相変化材料、複合材、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、マイクロ及びナノ粒子、及び以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択されたフィラー材料を更に有することが好ましい。フィラー材料の使用のための一例は、材料が運動可能となることを可能にする磁気マイクロ粒子又は例えばセンサの一部分として使用され得るように材料がスイッチング可能になる又は伝導性を有するようにし得る金属粒子であり得るであろう。また、1つ又は複数のフィブリルのバッキング基材に、例えば、フィブリルを1つに保持することとは別の更なる機能を付与するために、機能化された材料のタイプを導入することも可能であり得るであろう。
【0028】
従って、例えば、電極がバッキング基材を形成することが可能であり、これが、次いで、ウェアラブル医療装置を生成するためにフィブリルを介して患者の皮膚に接着している。
【0029】
1つ又は複数のフィブリルの製造の材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有していてもよく、この場合に、ヤング率は、引っ張り応力試験を介して計測することができよう。このような比較的ソフトな材料は、ロボット工学、転写印刷、ドア、消費者製品、及び医療装置などにおける様々な接着用途において使用するのに良好に適している。
【0030】
材料のヤング率を計測するために、Instronテンサイルテスタなどの市販のユニバーサル引っ張り試験装置により、引っ張り応力試験を実行することができる。張力試験とも呼称される引っ張り試験は、障害が発生する時点まで、制御された張力が材料サンプルが印加される試験である。引っ張り試験を介して直接計測されるプロパティは、最終的な引っ張り強度、破断強度、最大伸び、及び面積の低減である。その他のものに加えて、これの計測から、ヤング率を判定することができる。
【0031】
試験プロセスは、試験標本を引っ張り試験装置内において配置し、且つ、壊れる時点までこれを低速で延伸させるステップを伴っている。このプロセスにおいては、印加された力に照らして、ゲージセクションの伸びが記録されている。データは、もはや試験サンプルの形状に固有のものとはならないように、操作することができる。伸びの計測は、以下の式を使用することによって工学的歪εを算出するために使用されており、
ε = ΔL / L0 = (L-L0) / L0
ここで、ΔLは、ゲージ長の変化であり、Lは、初期ゲージ長であり、且つ、Lは、最終的な長さである。力の計測は、以下の式を使用することによって工学的応力σを算出するために使用されており、
σ = Fn/ A
ここで、Fは、引っ張り力であり、Aは、標本の公称断面である。
【0032】
次いで、ヤング率を以下の式を介して算出することができる。
E = σ/ε
【0033】
方法は、1つ又は複数のフィブリルの1つ又は複数の表面の間の曲率半径を定義することにより、ファイブリル先端エッジを設計するステップを更に有する。
【0034】
方法は、
-1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を提供するステップと、
-境界面の材料を定義するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルと境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有することができる。
【0035】
この結果、境界面における接着力を事前に算出することが可能であり、この結果、予め定義されている表面に対する1つ又は複数のフィブリルの更に改善された接着特性が得られる。
【0036】
1つ又は複数のフィブリルと境界面の間の界面応力を算出するステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生し得る。
【0037】
界面応力は、シミュレーションにおいてフィブリルが徐々に延伸している際には、コーシーの平衡方程式によって直接的に算出することができる。これは、界面における最大応力がフィブリル材料と物体材料の間の界面強度を超過した際に実験的に計測されている。
【0038】
また、更なる態様によれば、本発明は、増大した接着力を有するフィブリルを製造するために1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法にも関し、この方法は、
-1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を定義するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの初期形状を定義するステップであって、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの製造の材料に且つ1つ又は複数のフィブリルの定義された初期形状に基づいて1つ又は複数のフィブリルの接着力をコンピュータを利用して算出するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を判定するために1つ又は複数のフィブリルの接着力を変更するように複数回にわたって1つ又は複数のフィブリルの初期形状又は以前の適合ステップにおいて判定された形状又はそれまでの最大の接着力を有する予め判定された形状を反復的に適合させ、且つ、1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の対応する接着力を算出するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する1つ又は複数のフィブリルの判定された結果的に得られる形状を選択するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する結果的に得られた形状に基づいて1つ又は複数のフィブリルの製造を開始するステップと、
を有する。
【0039】
この関連において、1つ又は複数のフィブリルの初期形状は、任意に選択されるランダム初期形状であり得る。また、これは、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及びこれらに類似したものなどの予め製造されたフィブリルの形状に似た初期形状であってもよい。
【0040】
従って、格段に幅広の設計空間を活用した接着フィブリルの設計を最適化するための機械学習に基づいた演算方式が得られている。ベイズ最適化と有限要素法の組合せは、接着フィブリルの新規の最適設計を生成し、これは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からの2光子ポリマー化に基づいた3次元(3D)マイクロ印刷及びダブルモールディングに基づいた複製により、製造することができる。
【0041】
このような最適エラストマフィブリル設計は、滑らかな表面上におけるドライ接着性能との関係における実験において、予め提案されている設計を最大で77%だけ凌駕している。更には、有限要素分析は、フィブリルの接着が3Dフィブリルステム形状、引っ張り変形、及びフィブリル微細製造制限の影響を受けやすいことを明らかにしており、これは、フィブリル先端及びステムの変形をほとんど無視している且つフィブリル先端形状にのみ合焦している以前の仮定とは対照的である。
【0042】
この関連において、フィブリルの初期ランダム形状を適合させるステップは、複数回にわたって発生してもよく、この場合に、それぞれの連続的ステップは、以前のステップに基づき得ることに留意されたい。即ち、様々な適合ステップは、互いに基づいたものであり得る。従って、初期の、且つ、従って更には結果的に得られる、形状の適合も、結果的に得られる形状の判定された対応する接着力が収束する時点まで複数回にわたって発生し得る。
【0043】
この関連において、コンピュータシステムに提供される及び/又はこれによって定義及び/又は処理される任意の情報は、通常、例えば、ゼロと1のシーケンスなどのなんらかの種類のデータセットとして入手可能であることが常識であることに更に留意されたい。従って、コンピュータのそれぞれの入力及び/又は出力も、データセットの形態において付与されることが可能であり得る。
【0044】
提案されている演算フィブリル設計方法は、吸引及びマルチ材料に基づいた複合ドライフィブリル接着などのように、その他のフィブリル接着メカニズムと組み合わせられるように、データ効率に優れ、且つ、柔軟性を有しており、これは、人間の直観からの支援をあまり伴うことなしに、特定の用途用の将来の最適なフィブリルの設計を支援し得るであろう。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの初期形状又は予め判定された形状又はそれまでの最大接着力を有する予め判定された形状を反復的に適合させるステップは、1つ又は複数のフィブリルの表面の最小エッジ半径を変更することにより、実行されており、具体的には、前記最小エッジ半径は、1nm~10μmの範囲のサイズを有する。
【0046】
別の実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの初期形状を反復的に適合させるステップは、ベイズ最適化などの確率論的最適化方法に基づいており、ランダム初期形状は、具体的には、ランダム3次ベジェ曲線に基づいたサイドプロファイルである。
【0047】
確率論的最適化方法は、必要とされている有限要素法FEMシミュレーション評価の数を小さく、即ち、1000回のシミュレーション評価未満に、維持しつつ、目的関数値、即ち、1つ又は複数のフィブリルの接着、を極大化させるステップを有することが更に可能であり得る。
【0048】
この関連において、最適化方法は、次式
【数1】
によって定義されてもよく、ここで、f(・)は、具体的には、FEMから算出された接着であり、xは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組のプロファイル曲線を構成するパラメータであり、且つ、Aは、xのパラメータ境界のハイパー矩形を構成する単純な組であることに留意されたい。
【0049】
これに加えて、f(x)は、ランダム変数のすべての有限サブセットの同時分布が、次式
f~GP(μ,k)、具体的には、f=GP(μ,k)
によって定義された多変量ガウスとなるようなランダム変数の集合体であるガウスプロセスGPであることが可能であり、
ここで、μ(x)及びk(x)は、平均及び共分散関数であり、且つ、GPは、FEMにおいてシミュレートされた接着のブラックボックス表現を使用したパラメータxとf(x)の間の関係を代理している。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、1つ又は複数のフィブリルのプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている。
【0051】
更に別の実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの初期形状は、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又は以上のものの組合せなどの予め生成された形状の形状に似ている。
【0052】
1つ又は複数のフィブリルの表面は、1つ又は複数のフィブリルの初期形状がその端部において少なくとも局所的にフラットである先端表面を有する軸対称形状を有するように構成されており、且つ、1つ又は複数のフィブリルのプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されていることが更に可能であり得る。
【0053】
また、1つ又は複数のフィブリルの表面は、1つ又は複数のフィブリルの初期形状がT形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又は以上のものの組合せなどの予め生成された形状の形状に似るように構成することもできる。
【0054】
別の実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップは、標準的な有限要素法によって実行されている。
【0055】
この関連において、標準的な有限要素法は、コーシーの式に基づき得ることに留意されたい。
【0056】
1つ又は複数のフィブリルの初期形状を適合させるステップは、複数回が2~1000000回の反復において選択される状態において、複数回にわたって、即ち、反復的に、発生することが更に可能であり得る。
【0057】
一実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの初期形状の適合は、1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られた形状の算出された接着力が収束した際に停止している。
【0058】
更なる実施形態によれば、1つ又は複数のフィブリルの製造の材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又は以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている。この関連において、ソフト材料は、好ましくは、PDMS、シリコーンエラストマ、ビニルシロキサン、又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【0059】
この関連において、1つ又は複数のフィブリルの製造の材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有し得ることに留意されたい。
【0060】
本発明の更なる実施形態によれば、コンピュータ実装された方法は、1つ又は複数のフィブリルの表面の間において曲率半径を定義することにより、フィブリル先端エッジを設計するステップを更に有する。
【0061】
別の実施形態によれば、コンピュータ実装された方法は、1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を定義するステップと、境界面の材料を定義するステップと、1つ又は複数のフィブリルと境界面の間において界面応力を算出するステップと、を更に有する。
【0062】
この関連において、界面応力は、コーシーの平衡方程式によって算出され得ることに留意されたい。
【0063】
また、更なる一態様によれば、本発明は、1つ又は複数のフィブリルを製造する方法によって取得可能である及び/又はコンピュータ実装された方法によってシミュレートされるフィブリルに関し、フィブリルは、任意選択により、0.000001mN~1000mNの範囲において選択された接着力、自由曲線から構成されたプロファイルを有する構成要素の群から選択された形状、0.001kPa~10000MPaの範囲において選択された境界表面に対する界面応力、並びに、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又は以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択された材料の少なくとも1つを有する。
【0064】
このようなフィブリル設計は、ロボット工学、転写印刷、ドア、消費者製品、及び医療装置、などにおける様々な接着用途のために使用することができる。
【0065】
本発明の更なる実施形態については、以下の図の説明及び/又は本明細書に添付されている従属請求項において記述されている。以下、実施形態を利用し且つ示されている以下の図面を参照し、本発明について詳細に説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1A】滑らかでフラットな表面上における最大接着のためのフィブリルの機械学習に基づいた設計(MLF)の設計及び製造プロセスである。
図1B】滑らかでフラットな表面上における最大接着のためのフィブリルの機械学習に基づいた設計(MLF)の設計及び製造プロセスである。
図1C】滑らかでフラットな表面上における最大接着のためのフィブリルの機械学習に基づいた設計(MLF)の設計及び製造プロセスである。
図1D】滑らかでフラットな表面上における最大接着のためのフィブリルの機械学習に基づいた設計(MLF)の設計及び製造プロセスである。
図2A】シミュレーション及び実験における接着性能結果である。
図2B】シミュレーション及び実験における接着性能結果である。
図2C】シミュレーション及び実験における接着性能結果である。
図3A】70μmの直径のMLFnのFEMシミュレーションにおけるフィブリルの延伸によるストレスプロファイルの変化である。
図3B】70μmの直径のMLFnのFEMシミュレーションにおけるフィブリルの延伸によるストレスプロファイルの変化である。
図3C】70μmの直径のMLFnのFEMシミュレーションにおけるフィブリルの延伸によるストレスプロファイルの変化である。
図4A】FEMシミュレーションにおける製造制約及びステム形状の関数としての接着の感度分析である。
図4B】FEMシミュレーションにおける製造制約及びステム形状の関数としての接着の感度分析である。
図5】フィブリル形状をモデル化するための4次ベジェ曲線を使用した予め提案されているMLに基づいた最適フィブリル設計のフィッティングであり、フィットされたベジェ曲線は、0.9999のR値を示している。
図6】ベジェ曲線のフィッティングの次数の関数としての最適なMLFフィブリルのシミュレートされた最大接着値である。
図7A】基準フィブリル及びMLFのSEM画像である(すべての3つのフィブリルを伴っている)。
図7B】基準フィブリル及びMLFのSEM画像である(ズームされた画像である)。
図8A】8mmの直径を有する滑らかな球状ガラスプローブ上における製造されたPDMSフィブリルの代表的な力-変位曲線である(先端直径が異なっており、A:30μm、B:50μm、C:70μm、D:90μmである)。
図8B】8mmの直径を有する滑らかな球状ガラスプローブ上における製造されたPDMSフィブリルの代表的な力-変位曲線である(先端直径が異なっており、A:30μm、B:50μm、C:70μm、D:90μmである)。
図8C】8mmの直径を有する滑らかな球状ガラスプローブ上における製造されたPDMSフィブリルの代表的な力-変位曲線である(先端直径が異なっており、A:30μm、B:50μm、C:70μm、D:90μmである)。
図8D】8mmの直径を有する滑らかな球状ガラスプローブ上における製造されたPDMSフィブリルの代表的な力-変位曲線である(先端直径が異なっており、A:30μm、B:50μm、C:70μm、D:90μmである)。
図9】最先端技術のフィブリルとの間のシミュレートされた接着比較である。
図10A】フィブリルがわずかな量(A:25%の歪)だけ延伸された際のMLF(70μの直径)の歪による応力プロファイルの変化であり、ピーク応力がエッジにおいて発生している。但し、フィブリルが大きな量(B:100%の歪)だけ延伸された際には、垂直ピーク応力は、MLFのケース(C、図3)と同様に、エッジではなく中心において発生している。
図10B】フィブリルがわずかな量(A:25%の歪)だけ延伸された際のMLF(70μの直径)の歪による応力プロファイルの変化であり、ピーク応力がエッジにおいて発生している。但し、フィブリルが大きな量(B:100%の歪)だけ延伸された際には、垂直ピーク応力は、MLFのケース(C、図3)と同様に、エッジではなく中心において発生している。
図10C】フィブリルがわずかな量(A:25%の歪)だけ延伸された際のMLF(70μの直径)の歪による応力プロファイルの変化であり、ピーク応力がエッジにおいて発生している。但し、フィブリルが大きな量(B:100%の歪)だけ延伸された際には、垂直ピーク応力は、MLFのケース(C、図3)と同様に、エッジではなく中心において発生している。
図11】70μmの直径のMLFの先端サイズに関する接着感度分析である。
図12A】MLFの設計変形のデタッチメントの際の界面応力プロファイルである。
図12B】MLFの設計変形のデタッチメントの際の界面応力プロファイルである。
図13】70μmの直径のMLFの先端曲率に関する接着感度分析である。
図14】70μmの先端直径を有するMLFの代表的な力-時間曲線である。
図15】70μmの直径のMLFのケースにおけるベイズ最適化のプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下においては、同一又は等価な機能を有する部分について同一の参照符号を使用することとする。コンポーネントの方向に関連して実施されている任意の記述は、図面において示されている位置との関係において実施されており、且つ、当然のことながら、用途の実際の位置において変化し得る。
【0068】
本発明は、1つ又は複数のフィブリル10を製造する方法に関する(図1Aを参照されたい)。初期ステップにおいて、1つ又は複数のフィブリル10の製造の望ましい材料が選択されている。例えば、1つ又は複数のフィブリル10の製造の材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又は以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている。この関連において、ソフト材料は、好ましくは、PDMS又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【0069】
フィブリル10及び/又はバッキング基材24(図1Cを参照されたい)は、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、ヒドロゲル、液体材料、相変化材料、複合材、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、マイクロ及びナノ粒子、及び以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択されたフィラー材料を更に有することが好ましい。フィラー材料の使用のための一例は、材料が運動可能となることを可能にする磁気マイクロ粒子又は例えばセンサの一部として使用され得るように材料がスイッチング可能となる又は伝導性を有するようになることを可能にし得る金属粒子であり得るであろう。また、例えば、フィブリルを1つに保持することとは別の更なる機能をバッキング基材に付与するために、機能化された材料のタイプを導入することも可能であり得るであろう。
【0070】
材料の選択に続いて、1つ又は複数のフィブリル10のランダム初期形状が選択されている。この1つ又は複数のフィブリル10の初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、1つ又は複数のフィブリル10のプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている。例として、図1Dに示されているフィブリル10は、先端28、ステム26、及びエッジ30を有するこのようなフィブリル形状を示している。このようなフィブリル形状は、T形状、パンチ形状、ウェッジ形状、マッシュルーム形状、アロー形状、及び混合された形状のフィブリルであってよい。
【0071】
この後に、1つ又は複数のフィブリル10の接着力が算出されている。この接着力は、1つ又は複数のフィブリル10の製造の材料に且つ1つ又は複数のフィブリル10の初期形状に基づいている。1つ又は複数のフィブリル10の接着力の計算は、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している。
【0072】
このコンピュータ実装されたシミュレーションは、界面において発生する且つ1つ又は複数のフィブリル10と装着される対象の物体の間の分離の臨界点を決定する垂直応力に基づいており、且つ、フィブリル10のステムの底部における垂直応力の面積分が、シミュレートされた接着となる。接着の計算は、次式としてのコーシーの平衡方程式に準拠した標準的な有限要素法に基づいており、
【数2】
ここで、σxx、σyy、σzzは、垂直応力であり、且つ、τxy、τyz、τzxは、x、y、及びz方向の垂直表面内の無限小立方体上の剪断応力であり、x、x、xは、座標系であり、且つ、F、F、Fは、無限小立方体上において作用する物体力である。式の計算は、弱形式において重み付けされた残留方法を使用することにより、実行することができよう。
【0073】
接着の計算が、以上の応力計算から更に処理されている。コーシーの平衡方程式から算出される応力は、対象のフィブリルと接着境界の間の界面応力を提供している。フィブリルの界面に沿った又はルート(ベース及び/又はステム)に沿った垂直応力の積分が、フィブリルの延伸の際のフィブリルの接着力となる。界面における垂直応力が界面の界面強度を超過した際に、その瞬間における接着力がフィブリルの接着となる。これらのものの計算は、市販の有限要素分析ツールにおいて定式化することができよう。
【0074】
この適合のステップを確実に実行するために、1つ又は複数のフィブリル10の初期形状が5~1000000回の反復において適合されている。
【0075】
具体的には、1つ又は複数のフィブリル10の初期形状を適合させるステップは、1nm~10μmの範囲において選択されたサイズを有するフィブリル先端の最小エッジ半径を変更することにより、発生している。この形状及びサイズは、1つ又は複数のフィブリル10の製造プロセスによって判定することができる。例えば、フィブリル10がモールド内においてキャスティングされる場合には、その結果、半径は、500~10000nmのレベルであり得る一方で、例えば、ポリマーキャスティングを利用して製造されたフィブリル10は、500nm~10μmの半径を有していてもよく、且つ、例えば、電子ビームリソグラフを利用して製造されたフィブリル10は、1nm~5μmの範囲の半径を有するフィブリルを製造し得る。
【0076】
方法は、1つ又は複数のフィブリルの1つ又は複数の表面の間の曲率半径を定義することにより、フィブリル先端エッジを設計するステップを更に有することができる。
【0077】
この関連において、プロファイルの表現は、パラメータ化されたベクトル表現において実行され得ることに留意されたい。プロファイルのベクトル化された表現に起因して、設計されたプロファイルには、設計システムの分解能が適用されていない。プロファイルのパラメータを変更することにより、プロファイルを更に適合させることが可能であり、この場合に、パラメータの最適なトライアルは、ベイズオプティマイザによって付与されている。
【0078】
その後に、1つ又は複数のフィブリル10の結果的に得られる形状を形成するために1つ又は複数のフィブリル10の接着力を極大化させるように、1つ又は複数のフィブリル10のランダム初期形状の形状及びサイズが適合、即ち、変更、されている。
【0079】
また、この1つ又は複数のフィブリル10の初期形状を適合させるステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している。この適合のステップを確実に実行するために、1つ又は複数のフィブリル10の初期形状は、異なるフィブリル形状において異なる接着力を得るように、5~1000000回の反復において適合されている。
【0080】
形状適合は、必要とされている有限要素法(FEM)シミュレーション評価の数を小さく維持しつつ、目的関数値、即ち、1つ又は複数のフィブリル10の接着力、を極大化させるベイズ最適化などの確率論的最適化方法に基づいている。最適化プロセスは、次式
【数3】
として表される一般的な最適化を解いており、ここで、f(・)は、FEMから算出される接着であり、xは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組のプロファイル曲線を構成するパラメータであり、Aは、xのパラメータ境界のハイパー矩形を構成する単純な組である。
【0081】
f(x)は、ランダム変数のすべての有限なサブセットの同時分布が多変量ガウスとなるようなランダム変数の集合体であるガウスプロセス(GP)によって表されており、
f~GP(μ,k)、具体的には、f=GP(μ,k)
ここで、μ(x)及びk(x)は、平均及び共分散関数である。GPは、FEMにおいてシミュレートされた接着のブラックボックス表現を使用したパラメータxとf(x)の間の関係を代理している。ベイズオプティマイザの異なる種類の獲得関数を選択することにより、フィブリルの形状は、ベイズオプティマイザによって生成されたパラメータに基づいて最適化されている。
【0082】
形状が1つ又は複数のフィブリル10について変更され且つその個々の接着力がシミュレートされたら、1つ又は複数のフィブリル10の最大接着力を有する1つ又は複数のフィブリル10の結果的に得られる形状を選択することに進んでいる。また、このステップは、製造プロセスを加速するように、コンピュータにおいて実装することもできる。これにより、フィブリル10の特定の用途のために望ましい製造の特定の材料について、フィブリル10の望ましい接着力用の最良の形状を選択することができる。例えば、最大接着力がフィブリル10について望ましい場合がある。また、フィブリル10がある種の既定の破壊点として表面から自動的に剥離する予め定義された接着力が望ましくあり得る用途も存在し得る。
【0083】
また、この関連において、同一材料のフィブリル10の異なるサイズの場合に、異なる形状がフィブリル10用の最良の接着をもたらす場合があり、即ち、同一材料の相対的に小さなフィブリル10は、フィブリル10のこのサイズ及び材料用の最適な接着力をもたらすために、同一材料の相対的に大きなフィブリル10の形状とは異なる形状を有し得ることに留意されたい。
【0084】
1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状の選択に後続し、これらは、製造の望ましい材料用の1つ又は複数のフィブリル10の最大接着力を有する選択された結果的に得られる形状により、製造されている。
【0085】
1つ又は複数のフィブリルを製造するステップは、付加製造、2光子ポリマー化、3D印刷、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、合焦型イオンビーム機械加工、レーザーマイクロ/ナノ機械加工、機械又は超音波マイクロ機械加工、マイクロ/ナノ印刷、ロールツーロール複製、インジェクションモールディング、圧縮モールディング、及びポリマーキャスティングの少なくとも1つを利用して発生している。
【0086】
例として1つ又は複数のフィブリルは、以下の方法を使用することによって製造することが可能であり、第1ステップにおいて、剛性マスタ12(例えば、図1Cを参照されたい)が、製造が仮定されている複数のフィブリルのパターン14を有するように、2光子リソグラフィを使用することによって3D印刷されており、即ち、複数のフィブリルのパターン14は、例えば、ダブルリエントラント形状、T形状、パンチ形状、ウェッジ形状、マッシュルーム形状、アロー形状、及び混合された形状のフィブリルなどのように、製造プロセスの末尾における製造されたフィブリル10と同一の外側形状を有する。
【0087】
第2ステップにおいて、そのパターン14を含むマスタ12が、まず、非粘着被覆(図示されてはいない)により、且つ、次いで、第1ソフト材料16により、カバーされている。従って、パターン14は、例えば、製造される対象であるフィブリルのダブルリエントラント形状、T形状、パンチ形状、ウェッジ形状、マッシュルーム形状、アロー形状、及び混合された形状のフィブリルなどのように、パターン14の外側形状に対応する内側形状を有する空洞20を有するネガティブモールド18を製造するために、第1ソフト材料16によって複製されている。第1ソフト材料16は、通常、10kPa~5MPaの範囲のヤング率を有する。また、依然として材料が「ソフト」であるものとして見なされ得る範囲にある限り、相対的に大きな値も可能である。
【0088】
「非粘着被覆」は、第1ソフト材料16(モールド18)からマスタ12をデモールディングする更なるステップを単純化するために、空洞20の表面エネルギーを低減することが仮定されている。ダブルリエントラント形状を剛性材料から製造する一般的に知られた方法においては、非粘着被覆は、必要とはされておらず、その理由は、これらが付加製造プロセスによって製造され得るからである。ここでは、これは、ダブルリエントラント形状がソフト材料から製造されることが仮定されているケースであり、これを理由として、ネガティブモールド18が必要とされている。
【0089】
従って、まず、酸素分子をマスタに提供することにより、マスタの表面が活性化されている。次いで、前記酸素分子がUV放射によって照明されており、このUV放射は、酸素が、例えば、オゾンを生成するために空気中の二酸化炭素と反応するようにしている。これらのオゾン分子は、反応し且つ表面を活性化するように、パターンのすべてのエッジ及びコーナーに到達することができる。更なるステップにおいて、活性化された表面に、シラン、好ましくは、フルオロシラン、或いは、別の化学的処理を提供することにより、パッシベーションが開始されており、これは、「非粘着被覆」の感覚を付与するために、即ち、第1材料からマスタをデモールディングする更なるステップを支援するために、活性化された表面と反応し得る。
【0090】
別の可能性は、フルオロシラン又は別の化学的処理によってパッシベーション化する前に表面を活性化させるために、酸素プラズマをマスタ表面に提供するというものとなろう。
【0091】
本発明の別の実施形態においては、マスタの表面及びパターンは、ポリマー被覆によって単純にカバーされている。この方法を使用する際には、UV放射の提供が必要とされてはいない。
【0092】
更なるステップにおいて、選択される「被覆」方法とは無関係に、マスタ12がデモールディングされる前に、第1ソフト材料16が硬化されており、その理由は、材料16は、通常、マスタ12に適用される際には液相にあるからである。第1ソフト材料16に使用される正確な材料に応じて且つ周辺温度に応じて、前記硬化は、温度が150℃に上昇した際には10分以内において、温度が90℃に上昇した際には一時間以内において、実行することが可能であり、或いは、温度が室温において維持されている際には、場合によっては最大で48時間を所要し得る(標準的な10:1のモノマー対クロスリンカー比率を有するPDMSの例である)。相対的にソフトな配合の場合には、例えば、20:1比率の室温硬化は、更に長時間を所要することになる。
【0093】
破壊することなしに第1材料16からマスタ12をデモールディングするために、これは、従来のピンセットを使用することにより、機械的に剥離することができる。マスタ12の表面は、上述のように、活性化及びパッシベーション化ステップにより、或いは、ポリマー被覆により、調製されていることから、これは、空洞20又はパターン14のデリケートな構造を破壊することなしに、かなり容易に第1材料16から剥離することができる。一般には、化学的溶解のようなその他のデモールディング技法が、使用されている材料に応じて可能であり得るが、それにも拘らず、これらは実行不能であり、その理由は、これらがマスタを破壊することになり且つこれを再使用不能にすることになるからである。
【0094】
モールド18が完全にマスタから分離された後に(これは、以前の「被覆」ステップに起因してのみ可能である)、上述の被覆技法(活性化/パッシベーション化又はポリマー被覆)の1つを使用することにより、まず、モールド18の、且つ、特に空洞20の、表面が被覆されている。
【0095】
次いで、空洞20から空気(図示されていない)を除去するために、真空が空洞20に印加されている。これは、空洞18が第2ソフト材料22によって充填される次のステップを支援することになる。第2ソフト材料22は、第1ソフト材料16と同一の材料であってよい。また、一般には、異なる材料を使用することも可能であるが、第1及び第2材料16、22にはソフト材料が好ましいことが示されており、その理由は、これらがデリケートなフィブリル構造の製造を保証しているからである。図1Aの描かれているケースにおいては、例えば、第1及び第2ソフト材料16及び22は、同一のベース材料(PDMS)を有するが、クロスリンカー材料に対するベース材料の異なる比率を有する(第1材料14の20:1対第2材料20の10:1)。
【0096】
空洞20を完全に充填するには、第2材料22が空洞20内に、特に更には空洞20のアンダーカット部分内において、流れるようにさせるように、ネガティブモールド18を特定の度数に傾斜させることが必要であり得るであろう(例えば、図1Bを参照されたい)。通常は、第2材料22が、空気が除去された空洞20に進入するのに伴って、モールド18がさほど又はまったく傾斜していない場合にも、空洞20が第2材料22によって完全に充填されることを重力及び静水圧が保証することになる。
【0097】
また、1つの可能性は、真空をモールド18に印加する前に、第2材料が当初は空洞20との接触状態になることなしに、モールド18において第2材料22を提供するというものとなろう。次いで、真空が印加された後に、空洞20内においてフィブリルを形成するために、第2材料22が脱気された空洞20に流入し且つこれを完全に充填するように、モールド18が第2材料との関係において運動、特に傾斜、している
【0098】
また、この関連においては、フィブリル10のアレイを1つに保持するものと仮定されているバッキング基材24を製造するために、第2ソフト材料22によってのみ空洞20を充填する又は材料22によってモールド18全体をカバーすることも可能であることに留意されたい。最も一般的な技法は、後者を使用しており、且つ、これに加えて、バッキング基材24を提供している。前記バッキング基材24は、約0.5~1mm又は場合によっては最大で10cmの厚さを有することができる。また、特定の用途の場合には、バッキング基材24を一般にはサイズ及び寸法において制限されていないペイロード(図示されてはいない)に装着することも可能である。
【0099】
次のステップは、最終的にフィブリル10を製造するために第2ソフト材料22を硬化させることを有する。任意選択により、硬化された第2材料22のいくつかは、前記バッキング基材24を提供するために維持することができる。また、いくつかの実施形態においては、フィブリル10を末尾においてのみ維持するために、剃刀の刃又はこれに類似したもの(図示されてはいない)により、硬化したバッキング基材24の一部分を除去することも可能である。また、更には、まず、バッキング基材24を追加し、且つ、次いで、「新しい」バッキング基材として機能し得る第3材料を追加することも可能であり得るであろう。
【0100】
最後に、製造されたフィブリル10(並びに、任意選択により、バッキング基材24)に到達するために、第1ソフト材料16が第2ソフト材料22からデモールディングされている。
【0101】
従って、要すれば、エラストマフィブリル表面の製造の場合には、ガラス基材上においてマスタ12のフィブリルアレイ(パターン14)を3D印刷するために、まず、2光子ポリマー化方法が使用されている。次いで、後続のデモールディングを許容するために、マスタ12がフルオロシラン化され、且つ、次いで、PDMS(第1ソフト材料16)がフィブリルアレイ14上においてキャスティングされ、且つ、硬化されている。ネガティブレプリカ(ネガティブモールド18)が引き剥がされ且つフルオロシラン化され、且つ、後続のモールディング18がオリジナルマスタ12のPDMSレプリカをもたらしている。最終的なレプリカのデモールディングを促進するために、ネガティブレプリカ用の相対的にソフトなPDMS組成(20:1のモノマー対クロスリンカー比率)が利用され、このために、標準的なPDMS(第2ソフト材料22)が使用されている(10:1のモノマー対クロスリンカー比率)。最終的なレプリカは、任意の更なる処理を伴うことなしに調製されることを特徴としている。
【0102】
図2Aには、以上において開示されている方法によって製造され得るフィブリル10の例が示されている。フィブリル10がその端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有することが即座にわかる。それぞれのフィブリル8は、フィブリルボディ26と、フィブリル先端28と、を有する。ダブルリエントラント形状を有するマッシュルーム形状のフィブリル10が望ましい場合には、これは、先端においてアンダーカット(図示されてはいない)を有することになる。
【0103】
先端28の上部表面は、通常、フラット及びスムーズであり得る。更には、先端28は、所与の高さと、先端エッジにおいて製造プロセス分解能によって決定され得る所与の鋭さ及び曲率と、を有する側壁を有することができる。
【0104】
その結果、前記側壁は、ほとんど90度の旋回と、先端表面の下方のアンダーカット空洞と、を有することができる。アンダーカットエリアは、所与の曲率を伴って、フィブリルボディ26の首エリアにおいてフィブリル先端28と組み合わされている。
【0105】
図1A図1Dは、スムーズなフラット表面上における最大接着のためのフィブリルの機械学習に基づいた設計(MLF)の設計及び製造プロセスのステップを示している。図1の右側の図面は、フィブリル先端28及びボディ26を有するフィブリル10を示している。
【0106】
図1Aは、設計最適化目標(例えば、接着の極大化)が、設計制約と共に、ベイズ最適化アルゴリズムに供給されることを示している。ベイズオプティマイザが設計パラメータをシミュレータに提供し、且つ、シミュレータは、有限要素法(FEM)に基づいた接着メカニクスシミュレーションを使用することにより、推定された接着を返している。このプロセスは、最適な設計がフィブリル10について実現される時点まで、反復的に稼働している。
【0107】
図1Bは、アルゴリズムが、ランダム形状によって開始され、且つ、フィブリル10用のFEMシミュレーションからの推定接着力を極大化させるために、Bベジェ曲線制御ポイントを制御することにより、広い設計空間を調査していることを示している。それぞれの反復において、初期装着からデタッチメントまでの総合的なFEMシミュレーションが実行されている。反復数(図1Bの数値)が増大するのに伴って、形状が最良な設計に進化している。
【0108】
図1Cは、望ましい用途用のフィブリル10の形状の適合、即ち、最適化、の後に、2光子ポリマー化及び後続のダブルモールディングに基づいた複製技法を使用することにより、最良の設計が製造されることを示している。
【0109】
図1Dは、例示用の最適なフィブリル設計10(図1Bの反復数110)の製造されたバージョンが走査電子顕微鏡(SEM)画像において示されていることを示している(スケールバーは、50μmを示している)。フィブリルは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマから製造されている。
【0110】
方法は、
-1つ又は複数のフィブリル10が装着可能である境界面を提供するステップと、
-境界面の材料を定義するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルと境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有することができる。
【0111】
1つ又は複数のフィブリルと境界面の間の界面応力を算出するステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している。界面応力は、シミュレーションにおけるフィブリル10が徐々に延伸された際に、上述のコーシーの平衡方程式によって直接的に算出されている。これは、界面における最大応力がフィブリル材料と物体材料の間の界面強度を超過した際に実験的に計測されている。
【0112】
また、本開示は、増大した接着力を有するフィブリル10を製造するために1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法にも関し、この方法は、
-1つ又は複数のフィブリル10の材料を提供するステップと、
-1つ又は複数のフィブリル10の初期形状を提供するステップと、
-1つ又は複数のフィブリル10の製造の材料に、且つ、1つ又は複数のフィブリル10の初期形状に、基づいて1つ又は複数のフィブリル10の接着力をコンピュータを利用して算出するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を形成するために1つ又は複数のフィブリル10の接着力を変更するように複数回にわたって1つ又は複数のフィブリル10の初期形状を反復的に適合させるステップと、
-1つ又は複数のフィブリル10の最大接着力を有する1つ又は複数のフィブリル10の結果的に得られる形状を選択するステップと、
を有する。
【0113】
以上において定義された及び/又は本明細書において記述されている方法に基づいてシミュレートされた方法を使用することによって得られるフィブリル10は、通常、0.000001mN~1000mNの範囲において選択された接着力、自由曲線から構成されたプロファイルを有する構成要素の群から選択された形状、即ち、一般的に軸対称であるベース32、ボディ26、及び先端28を有するフィブリル10、及び0.001kPa~10000MPaの範囲において選択された境界表面に対する界面応力、並びに、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はポリマーの以上のものの組合せから構成された構成要素の群から選択された材料の少なくとも1つを有する。
【0114】
図2は、シミュレーション及び実験における接着性能結果を示している。図2Aに描かれたSEM画像には、70μmの先端直径を有する製造されたMLF及び基準設計の例が示されている(スケールバーは、50μmを示しており、図7には、異なる直径を有するフィブリルが示されている)。
【0115】
図2Bは、MLFnがその他の設計との比較において全体的に優れた接着性能を有することをFEMシミュレーションが予測した方式を示している。逆に、MLFvは、MLFn及びT形状フィブリルよりも小さな接着を有しており、これにより、MLFn用の設計基準がMLFvのものよりも接着改善に対して有効であることを示唆している。
【0116】
図2Cは、実験結果がMLFnの接着性能改善を確認していることを示し、且つ、シミュレーションと実験の間の全体的な一致を示している。70及び90μmの先端直径の差は、フィブリル10の先端のサイズとの比較における計測プローブの曲率の効果を示唆しており、この場合には、フラット-フラット界面接触が損なわれている。エラーバーは、標準偏差(n=5)をしている。
【0117】
図3は、70μmの直径のMLFnのFEMシミュレーションにおけるフィブリル10の延伸による応力プロファイルの変化を示している。図3Aは、フィブリル10がわずかな量だけ延伸した際には(25%の歪)、フィブリル先端表面28上のピーク応力が先端エッジにおいて発生することを示している。
【0118】
対照的に、図3Bは、フィブリル10が大きな量だけ延伸した際には(100%の歪)、垂直ピーク応力が、エッジではなく、中心において発生することを示している。また、フィブリルステム26の全体を通じた応力パターンも変化しており、これにより、応力が先端-表面接触界面に転送される方式をステム変形が変更することを示している。
【0119】
図3Cは、延伸によって中心における応力がエッジにおける応力よりも迅速に増大しているピーク応力の変化を先端-表面界面応力プロファイルの進化が説明していることを示している。図10には、MLFvの匹敵する結果が示されている。
【0120】
図4は、FEMシミュレーションにおける製造制約及びステム形状の関数としての接着の感度分析を示している。図4Aは、製造制約、即ち、先端形状のエッジ曲率re、による最適な設計変化を示している。製造制約がわずかである際には(re=0.25μm)、予測される最適設計は、ウェッジ形状のフィブリル10に類似している。製造誤差がフィブリル10のサイズにとって大きい際には、最適フィブリル形状は、狭い首及びステムを有することにより、変化している。その後に、フィブリルの性能は、reの増大に伴って劣化している。
【0121】
図4Bは、ベジェ曲線の半径方向制御点(rシフト)に基づいたステム形状の変化が、シミュレートされた接着性能に大きな影響を及ぼしていることを示している(ドットを有する青色の破線)。軸方向制御点(zシフト)に基づいたステム形状の変化は、接着性能に対して相対的に小さな影響を及ぼしている(正方形を有する赤色の破線)。
【0122】
図5は、フィブリルの形状をモデル化するために使用される4次ベジェ曲線を使用した予め提案されているMLに基づいた最適フィブリル設計のフィッティングを示しており、フィットされたベジェ曲線は、0.9999のR値を示している。従って、予め提案されているMLに基づいた最適フィブリル設計の固有の自由度(DOF)は、4次ベジェ曲線と同一である。
【0123】
図6は、最適なMLFフィブリル10のシミュレートされた最大接着値をフィッティングするベジェ曲線の次数の関数として示している。接着は、フィッティングする4次ベジェ曲線の周りにおいて既に飽和しており、これは、現時点のフィブリル設計問題の固有のDOFが小さいことを確認している。相対的に高次の曲線は、オーバーフィッティングの振る舞いを示している。
【0124】
図7は、基準フィブリル10及びMLFのSEM画像を示している(図7Aは、すべての3つのフィブリルによってひとまとめで示している一方で、図7Bは、ズーミングされた画像を示している)。スケールバーは、それぞれ、図7A及び図7Bにおいて、先端28の直径及びそれぞれのサイズの先端直径の半分を示している。
【0125】
図8は、8mmの直径を有するスムーズな球状ガラスプローブ上における異なる先端直径、即ち、図8A:30μm、図8B:50μm、図8C:70μm、及び図8D:90μm、における製造されたPDMSフィブリル10の代表的な力-変位曲線を示している。強力な接着を有するフィブリル10は、材料の非線形振る舞いを示す100%超の歪を示している。個々のフィブリル10のデタッチメントは、力-変位曲線に沿った3つのピークとして観察されている。
【0126】
図9は、従来技術のフィブリルとの間におけるシミュレートされた接着の比較を示している。(61)のフィブリルは、鋭いエッジを有するナノスケールの微細製造が可能であると仮定することにより、30μm及び50μmの先端直径において強力な接着を示している。70μm及び90μmの先端直径などの相対的に大きなスケールにおいては、MLFフィブリル10が最強の接着を示している。その他のピラーと同一の製造誤差を従来技術のフィブリル10に対して適用することにより(1μmのフィレット半径を有する丸いエッジ)、これらは、シミュレーションにおいて、すべての先端直径に跨ってT形状及びMLFフィブリルとの比較において劣った接着を示している。
【0127】
図10は、MLF10(70μmの直径)の歪による応力プロファイルの変化を示している。フィブリル10がわずかな量だけ延伸された際には(図10A、25%の歪)、ピーク応力は、エッジにおいて発生している。但し、フィブリル10が大きな量だけ延伸された際には(図10B、100%の歪)、垂直ピーク応力は、MLFのケースと同様に、エッジではなく、中心において発生している(図10C及び図3)。図3に示されているMLF10との比較において、ここでは、剪断応力が低減されており、且つ、このような低減された剪断の効果が、実験において観察され、その結果、相対的に不良な/乏しい接着がもたらされている(図2C)。
【0128】
図11は、70μmの直径のMLF10の先端サイズに関する接着感度分析を示している。先端サイズが小さくなるほど、相対的な製造制限が有意になっている。提案されている設計フレームワークは、製造誤差及び先端サイズに対して適合された様々な最適フィブリル形状を生成し、これにより、異なるフィブリルサイズ(並びに、関連する製造制限)に跨る接着用の単一のユニバーサルな最適フィブリル形状が存在しないことを示している。フィブリル10は、相対的に良好な視覚化を目的として、縮尺が正確ではないことに留意されたい。
【0129】
図12は、MLF10の設計変形のデタッチメントにおける界面応力プロファイルを示している。図12Aは、ベジェ点が最適位置から離れるように移動するのに伴って、応力プロファイルが応力プロファイルの下方の面積を益々失っていることを示すzシフト変形(即ち、z方向におけるベジェ点のシフト)示しており、これにより、変形が最適形状との比較において相対的に乏しい接着を有する理由を説明している。接着は、それぞれの垂直応力プロファイルの下方の面積に直接関係している垂直界面応力の面積分であることに留意されたい。図12Bは、垂直応力プロファイルの下方の積分面積を益々失うことにより、図12Aと類似した傾向を示すrシフト変形(r方向におけるベジェ点のシフト)を示している。
【0130】
図13は、70μmの直径のMLF10の先端曲率に関する接着感度分析を示している。正の曲率は、凸状の先端形状を表し、且つ、負の曲率は、凹状のものを表している。相対的に大きなエッジ特異性を促進していることから、負の曲率において大きな接着減少が存在している。形状は、先端28の凸状形状に対してのみ安定しているが、MLF10は、フラットな表面上のフラットな先端表面のケースにおいて最良の接着性能を示している。
【0131】
図14は、70μmの先端直径を有するMLF10の代表的な力-時間曲線を示している。後退の際に、超弾性に起因して、非線形の材料振る舞いが観察されている。3つのフィブリルがプローブに接着されていることから、デタッチメントの3つのピークが観察されている。
【0132】
図15は、70μmの直径のMLF10のケースにおけるベイズ最適化のプロセスを示している。最大オブジェクティブ(y軸)は、この問題におけるmNを単位としたシミュレートされた接着値を表している。関数評価が増大するのに伴って、接着値が改善されている。初期ランダムトライアルから、プロセスは、約60回の反復において最適値に到達している。
【0133】
提案されている演算単一フィブリル設計フレームワークは、FEMに基づいた接着メカニクスシミュレーションと、ベイズ最適化と、という2つのコンポーネントを有する(図1A)。設計プロセスにおいて、オプティマイザがフィブリル10のシミュレーション用の設計パラメータを生成する一方で、シミュレータは、フィブリル10用のオプティマイザからの設計パラメータに基づいて、推定された接着力を返している。このプロセスは、予め設定されている反復限度の時点まで反復的に稼働し、且つ、オプティマイザは、設計プロセスに沿った観察に基づいて最適設計パラメータを返している。
【0134】
シミュレーションにおいて、フィブリル10の形状は、以下の仮定を有する設計パラメータによって構築されている。第1に、フィブリル10は、軸対称であると仮定されており、且つ、装着された表面は、代表的なT及びマッシュルーム形状のフィブリル10設計におけると同様に、滑らかであり且つ局所的にフラットであるものと仮定されている。これに加えて、フィブリルのアスペクト比は、フィブリル10を同一のアスペクト比を有するその他のフィブリル設計と比較するために、1:1になるように設定されており、これは、接着試験に対する異なるアスペクト比を有することの効果を除去している。次いで、所与の制御点の数によってフィブリル10の上部エッジをフィブリル10のベースに滑らかに接続するベジェ曲線により、フィブリル10のサイドプロファイルが構築されている(図1B)。その先端28及びステム26を含むフィブリルのプロファイルを表すために3次ベジェ曲線が使用されているが、曲線の次数は、相対的に大きな演算費用を有する相対的に微細な定義のために増大させることができよう。
【0135】
ベジェ曲線次数の効果は、接着に基づいてフィブリルプロファイルを表すために使用されている(図5及び図6)。予め提案されている最適フィブリルプロファイルを0.9999のR値を有する4次ベジェ曲線にフィッティングすることにより(図5)、現時点のフィブリル接着のプロファイルを表すために4次ベジェ曲線で十分であることが示されている。
【0136】
これに加えて、相対的に大きな次数のベジェ曲線によってMLF10の最大接着を予測することにより、図6は、様々な次数のベジェ曲線を有するMLF10の間において4次のベジェ曲線が最良のものを示すことを示している。格段に大きな次数のベジェ曲線においては、オーバーフィッティング振る舞いが観察されている。
【0137】
最後に、シミュレーションは、製造制約を考慮しており、この場合に、無限の鋭いエッジは、実際には製造することが可能ではない。従って、先端10のエッジ30は、この研究において使用されている2光子ポリマー化に基づいた直接3D微細印刷技法による実験的製造試験結果から推定された特定のフィレット半径によって丸められている。
【0138】
フィブリル10の形状が所与の反復ステップにおいて判定されたら、このようなフィブリル10の接着がFEMシミュレーション環境においてシミュレートされている。ここで、シミュレーションは、ムーニー-リブリン超弾性モデル及びダグデール-バレンブラット融着帯モデルを使用したフラットパンチプローブからのフィブリル10の現実的なデタッチメントを内蔵することにより、接着試験の際にフィブリルの非線形変形を考慮している(図3A及び図3B)。この方式は、フィブリルの延伸の際の且つフィブリル10のデタッチメントの前の応力プロファイルの変化を反映しており、これは、固定された界面応力プロファイルに基づいた間接的な接着推定ではなく、直接的な接着値の推定を結果的にもたらしている。フィブリルの先端28は、スムーズなフラットパンチプローブに完全に接触するものと仮定することにより、接着が、フィブリル10のベース32の表面上の垂直応力を積分することにより、算出されている(図1Dを参照されたい)。フィブリル10が先端28の接着に起因して延伸した際に、超弾性モデルは、先端28及びステム26の変形を予測している。
【0139】
界面理論強度を超過する垂直応力に起因して亀裂が先端-基材接触界面において形成された場合に、接着は、その最大値に迅速に到達し、且つ、その後に減衰している。ここでは、実現可能なエッジの鋭さを決定する材料プロパティ及び製造制約は、実験的に特徴付けられ、且つ、フィブリル10の設計の前に較正されている。
【0140】
上述のシミュレーションフレームワークは、ベイズ最適化フレームワークに対して直接的にリンクされている。ベイズ最適化は、問題用の最新技術のグローバルな最適化法であり、この場合には、システムの評価の数を小さな状態において維持しつつ、性能基準を最適化することが極めて重要である。この方法は、シミュレーション精度を損なうことなしにFEMに基づいた接着評価の数を極小化するための理想的な候補となる。ここで、最適化の目標は、接着力を極大化させるというものである。オプティマイザは、ベジェ曲線制御点を最適化可能な変数として取得し、且つ、所与の反復数において最適設計に到達している(図1B)。先端28の直径及び製造制約に関係するエッジの鋭さの限度などのその他のパラメータが最適化の前に予め設定されている。
【0141】
従来の研究は、トレーニングされたディープニューラルネットワーク(DNN)を使用しており、これは、界面における接着プロファイルをシミュレートしている。相違点は、シミュレーション精度及びデータ効率に存在している。第1に、DNNに基づいた方式は、シミュレーションから直接的に接着を演算してはおらず、むしろ、これは、無限小のフィブリル延伸により、間接的に接着を推定している。この方式は、フィブリル10が材料の弾性に起因して変形した際には正確なものとはならず、この場合には、応力プロファイルが劇的に変化している。
【0142】
本発明者らの実験的フィブリル10においては、且つ、すべての以前のT及びウェッジ形状のマッシュルームフィブリル研究においては、使用されているポリジメチルシロキサン(PDMS)などのソフトなエラストマは、引っ張りプロセスにおいて大きく延伸しており、その結果、超弾性状態をもたらしている。対照的に、本方法は、フィブリル10の超弾性ボディ変形を考慮することにより、デタッチメントの直前に直接的に接着を推定している。第2に、本方法は、DNNに基づいた方式よりも桁違いにデータ効率に優れている。更に詳しくは、本方法は、150回の関数評価以内において最適な形状を見出すことを許容している一方で、DNNに基づいた方法は、トレーニングデータセットを生成するために200000回超の関数評価を必要としている。更には、DNNに基づいた方式は、柔軟ではなく、その理由は、シミュレーションにおける単一の変化が別のデータの組全体を必要としており、これにより、大きな演算時間を生成し得るからである。
【0143】
最適なフィブリル設計が得られたら、このようなフィブリル10は、2光子ポリマー化(2PP)プロセス及び後続のダブルモールディングに基づいた複製技法を使用することにより、製造されている(図1C)。この製造方法は、様々な形状を生成するように多様であるのみならず、様々なエラストマ材料の使用を許容している。PDMSがフィブリル材料として選択されているが、その理由は、これは、ドライフィブリル接着の分野において一般的に使用されており、多様であり、柔軟であるのみならず、これが、ポリウレタンなどのその他のフィブリルエラストマとの比較において、相対的に乏しい表面エネルギー、相対的に乏しい環境感度、及び相対的に乏しい粘弾性効果を示すからである。
【0144】
第1に、フィブリル10のコンピュータ支援設計(CAD)ファイルは、マスタテンプレートを生成するために2PPを使用する高分解能剛性フォトレジストを使用することにより、3D印刷されており、且つ、次いで、容易な複製を許容するためにフルオロシラン化されている。その後に、PDMSは、ネガティブレプリカを形成するためにマスタテンプレート上においてキャスティングされ、硬化され、引き剥がされ、且つ、次いで、フルオロシラン化されている。最後に、オリジナルマスタ12のPDMSフィブリル10のレプリカを生成するために、フルオロシラン化されたPDMSネガティブモールド18が再度複製されている(図1D)。
【0145】
様々な先端直径(30、50、70、90μm)を有する機械学習に基づいた最適設計のフィブリル(以下においは、MLF)が設計され且つ製造されている(図2A及び図7)。界面において障害を引き起こす垂直応力障害に基づいたMLFn10及びミーゼス応力障害に基づいたMLFv10という界面応力タイプに基づいた2つのタイプのMLF10を生成した。ここで、MFLv10は、これをMLFn10の結果と比較することにより、接着に対する剪断応力の役割を理解するためのものである。本発明者らが製造し得る最も鋭いエッジ半径などの重要なシミュレーションパラメータ、超弾性モデルパラメータ、及び接触界面の理論的接着強度が、実験によって計測され、且つ、設計最適化の前にシミュレーションにおいて更新されている。
【0146】
それぞれの設計ごとに3つのものが生成され、これにより、ソフトバッキング層上における複数のフィブリルの効果を低減するために、フィブリルの数を最小に維持しつつ、スムーズな球状ガラスプローブとの間における正確なアライメントのためのトライポッドを形成した(プローブの直径(8mm)は、フィブリルの直径(30~90μm)よりも格段に大きく、従って、フラット-フラット接触界面を局所的に仮定することができる)(図7及び図8)。また、コントロール/基準としてその接着を比較するために、予め報告されているフィブリル形状も製造されている。フラットパンチフィブリル10、ウェッジ形状のマッシュルームフィブリル10、及び変更されたT形状のフィブリル10は、フィブリルとキャップの間においてフィレット半径を有する。これに加えて、製造制限に起因して、MLに基づいた最適フィブリルは、シミュレーションフレームワークにおいて、その他のコントロール及びMFLフィブリル10との間において比較されている(図9)。
【0147】
MLF10は、以前のフィブリルとの比較において、固有のステム26及び先端28の形状を結果的にもたらしている。MLF10の形状は、大きなウェッジと、狭い首と、フィブリル10のベース32に向かって太くなったボディと、を有する鋭い先端エッジ30を特徴としている(図2A)。最適化プロセスは、鋭い先端エッジを生成することにより、先端エッジ30の特異性をキャプチャするものと考えられる。この結果、先端形状は、その他のフィブリル10にかなり類似したものになっている。但し、大きな相違点が首及びステム形状において見出されている。ここでは、フィブリル10が延伸した際に、狭い首及び太くなったステムが、応力の大部分をフィブリル先端28の中心に転送することにより、先端エッジ30における応力集中の低減を支援している。
【0148】
予め報告されている狭い首の設計との比較において、任意のミスアライメント誤差を極小化するために、これらの新しい設計は、フィブリル10の延伸に沿った界面において応力プロファイルを変更するようにステムの変形を使用している(図3A図3B、及び以下の節において付与されている詳細を参照されたい)。
【0149】
図2B及び図2Cは、シミュレーション及び実験におけるフィブリルの匹敵する接着計測を示している。まず第1に、MLFnにおいては、その他の設計との比較において先端直径の大部分(30μmを除く、50、70、90μm)において接着改善が観察されている。MLFnは、実験において、50μmの先端直径のサイズを有する変更されたT形状のフィブリル10に対して77%の接着改善を示している。MLFn10との比較において、MLFv10は、大きな接着性能を示してはおらず、これにより、界面における剪断応力の極小化は、接着性能に対して肯定的に影響してはいないことを示している。これは、MLFn10とMLFv10の応力プロファイルを比較することにより、説明することが可能であり、この場合に、MLFv10は、延伸に沿って相対的に小さな剪断応力を有している(図3C及び図10C)。小さな(30μmの)先端直径のケースにおいては、MLF10は、その他の設計との比較において相対的に不良な接着を示している。相対的に大きなエッジ半径及び大きなウェッジ(図7)は、アルゴリズムがエッジの特異性の極小化において失敗することを示している。
【0150】
一般に、予測された接着は、実験との一致を示している。大部分のケースにおいて、この傾向がキャプチャされており、この場合に、フラットパンチフィブリル10は、最低のものを示しており、且つ、MLFn10フィブリルは、T形状のフィブリル10によって後続された状態において最大の接着を示している。絶対接着値さえも、実験に近接した状態において予測されている。大きなフィブリル10における接着の増大する差は、フィブリル10の先端のサイズとの比較における計測プローブの相対的に増大する曲率に由来するものと見なされ、この場合には、フラット-フラット界面接触が損なわれている。
【0151】
MLFnフィブリル10は、従来技術において提案されているフィブリルとの比較において全体的に優れた接着を示している(図9)。
【0152】
界面応力及びフィブリル延伸に関するこの更なる有限要素分析(FEA)(図3)は、応力プロファイルがフィブリル10の延伸の際に大きく変化することを明らかにしている。更に重要なことは、ステムの変形に起因して、ピーク応力の場所が先端28のエッジ30から先端28の中心に変化しているという点にある。この事実は、接着フィブリル10の設計は、フィブリルの先端28及びステム26の変形に起因して、先端のデタッチメントの開始時点においてのみならず(これは、従来技術におけるケースである)、すべてのデタッチメントプロセスにおいて、応力プロファイルを考慮する必要あることを示唆している。
【0153】
MLFn(70μmの先端直径)のケースにおいては、フィブリル10がわずかに延伸した際には(MLFnの場合には図3Aにおける且つMLFvの場合には図10Aにおける25%の歪)、ボディの全体を通じた応力パターンは、凸状の勾配パターンを形成している。更に重要な点は、ピーク応力がフィブリル先端28のエッジ30において発生しているという点にある(図3A図3C)。但し、このピーク応力は、この歪の量によってプローブからのフィブリル先端28のデタッチメントを開始するための亀裂を形成するには、十分なものではない。フィブリル10が大きく延伸した際には(MLFnの場合には図3Bにおける且つMLFvの場合には図10Bにおける100%の歪)、変形に起因して、ステム内の応力パターンが変化している。いまや、ステム内の応力勾配は、凹入パターンを形成している(図3B及び図3C並びに図10B及び図10CのMLFv)。最も重要な部分は、ピーク応力の場所の変化であり、これは、開始時点におけるエッジ30との比較において界面の中心において発生しており、これは、開始時点における応力の特異性が、このような大きな変形を経験したフィブリルの場合には、重要ではなくなり得ることを意味している。更には、応力プロファイルは、理論的界面強度及び先端直径から構成されたフル矩形面積に対する垂直応力プロファイルの下方の面積の割合を算出することにより、MLFnが理論的最大値の46%に到達したことを明らかにしている。
【0154】
製造制約は、最適設計及び接着に対して影響を及ぼしている。製造制約は、丸めれたエッジ30によって誘発されるエッジ特異性に起因して、接着性能を悪化させている。提示されている設計方法は、このような製造制約を反映しており、この場合に、これは、エッジ特異性に対処するために最適形状を変更している。製造制約がアルゴリズムによって提案された最適設計を変更する方式を理解するために、設計最適化の組が実行されている。エッジのフィレット半径re(フィブリルの半径ではない)が、制御変数として選択されており、且つ、アルゴリズムは、それぞれのreごとに、設計最適化を実行している。ここで、フィブリルの直径は、代表的なケースとして、70μmとして設定されている。
【0155】
本シミュレーション分析は、製造制約がフィブリル10の最適形状に対して大きな影響を及ぼすことを示唆しており、これにより、このような制約が設計プロセスにおいて考慮されなければならないことを示している。このような制約がフィブリル10のサイズとの比較において無視可能である際には、最適形状は、相対的に太い首及びステムを有する鋭いエッジを示している(図4A)。ボディ26の上部部分は、ウェッジ形状のフィブリルに非常に近接しており、これにより、フィブリル10の形状に関する以前の分析との一致を示している。
【0156】
設計は、製造制約が無視不能になった際に変化している。制約が増大するのに伴って、フィブリルは、相対的に乏しい制約を有する設計との比較において、格段に狭い首を有する傾向を有する。また、ボディ形状も、相対的に狭いボディ26を有することによって変化している。これらは、先端-表面界面における増大する応力ピークのリスクを低減し得る変形の大部分の相対的に低いボディへの転送により、上部ボディにおける変形を極小化するためのものとして解釈され得るであろう。但し、制約が増大するのに伴って、接着は、エッジにおける増大したピーク応力に起因して何倍も劣化している。これに加えて、所与の製造限度に伴うフィブリル先端28のサイズの効果に関する分析も示されており、この場合には、このような製造限度は、上述の分析に類似した方式で最適形状に対して影響を及ぼしている(図11)。提案されている設計フレームワークは、異なる製造限度及び先端サイズについて異なる最適フィブリル形状を生成している。
【0157】
フィブリル接着におけるその役割を理解するために、フィブリルのボディ形状の効果が更に分析されている。接着は、フィブリルのステム形状26に大きく依存している一方で、以前の研究のほとんどは、先端形状にのみ合焦してきたことが見出されている。例えば、MLFv及びMLFnのステム形状の小さな差(図2A及び図2Cの70μmの先端直径)は、実験において、ほとんど80%の接着性能差を結果的にもたらしている。これについて理解するために、70μmのMLFnがベース設計として選択され(図4Bにおいては、*としてマーキングされている)、且つ、プロファイルを形成する2つのベジェ制御点が、シミュレーションにおいて、半径方向及び軸方向の方式で変調されている(図4Aの挿入図のr及びz方向)。曲線の端部におけるその他のベジェ制御点は固定されている。
【0158】
半径方向の制御点の変化は、接着性能における高い感度を示している。半径方向制御点が軸に向かって運動するのに伴って、首形状は、相対的に狭くなり、この結果、下部ボディの曲率の変化をもたらしている一方で、一般的なウェッジ形状は、安定した状態において留まっている。このステム形状の変化は、相対的に細いステムによって相対的に小さな接着を有することにより、接着において直接的に反映されている(図4Bの青色のライン)。この事実は、MLFnとMLFvの間における上述の接着の差を説明している(図2A及び図2Cの70μmのケース)。逆に、軸方向の制御点は、半径方向制御点のシフトよりも乏しく接着に影響を及ぼしており(図4Bの赤色のライン)、これは、ボディの太さを類似したものに維持しつつ、首の高さを変更している。
【0159】
これらの変形の界面応力分析(図12)は、オリジナルのMLFnの最適設計よりも垂直応力プロファイル下における相対的に小さな面積を示しており、これにより、これらの変形の減少した接着を説明している。接着は、垂直界面応力の面積分であり、これは、それぞれの応力プロファイルの下方の面積に直接的に関係していることに留意されたい。ここで、いくつかの方向がその他のものよりも大きな影響を及ぼしている理由は、かなり複雑であり、且つ、不明瞭であるが、ボディ26の形状が、図3において示されているように応力をベース32から先端28に転送することにより、接着に影響を及ぼしていることに留意することが重要である。ここで示されているステム形状の感度は、設計最適化においてステム形状を考慮することが重要であることを示唆しており、これは、以前の研究においては十分に強調されていない。これらに加えて、フィブリル10の上部表面形状も接着に影響を及ぼしている。
【0160】
更なるシミュレーション研究は、上部表面の凹状形状が接着の劇的減少を結果的にもたらしていることを示唆しており、これは、増大したエッジ特異性に起因したドライ接着最適化における最悪のシナリオである(図13)。その一方において、MLFnは、直接的なエッジ特異性をもたらさないことから、凸状先端形状に対して安定している。但し、MLFnは、フラットな先端表面について最適化されており、且つ、すべての以前のフィブリル接着最適化研究に類似したフラットな先端界面に伴う最適性能を示している。
【0161】
研究は、ベイズ最適化及びFEMに基づいた接着メカニクスシミュレーション、その実験的検証、及び新しく設計された最適形状の分析に基づいて、接着フィブリル10の設計フレームワークを提案している。以前の研究のほとんどは、生体模倣型のT及びウェッジ形状の先端及び人間の直観に基づいた設計に合焦している一方で、本開示は、機械学習アルゴリズムに純粋に基づいた別の観点を提供している。この新しい観点は、新規の最適設計を発見し、且つ、実験において接着性能を格段に改善している。以前の最適設計フレームワークとの比較において、提案されているフレームワークは、正確な結果を目的としてフル接着FEMシミュレーションを最適ループにおいて内蔵することを許容している。提案されているフレームワークによって演算された最適設計は、シミュレーション及び実験によって検証されており、且つ、1)大きな軸方向のステム変形がフィブリル先端28の応力プロファイルの変化をもたらし、2)製造制約を設計プロセスにおいて内蔵することが重要であり、且つ、3)フィブリルステム26の形状も接着性能にとっては重要であるということの証拠を提供している。
【0162】
設計方法は、シミュレーションにおいてフィブリル10の超弾性変形を許容することにより、その他の方式と比較されている。シミュレーションを使用して接着を予測又は最適化するための多数の研究が存在している。但し、研究のほとんどは、接着フィブリルが引っ張られた際に形状を変更しない又は線形変更状態において非常にわずかにしか変形しないものと仮定している。但し、PDMSなどのソフトエラストマは、引っ張りプロセスにおいて大きく延伸し(我々の実験においては、デタッチメントの前の100%超の歪であり、図8及び図14を参照されたい)、これにより、超弾性を考慮しなければならないことを示している。応力プロファイル分析は、ピーク応力の場所が、場合によってはフィブリル10の延伸に沿ってエッジから中心に変化することを確認しており、これにより、フィブリル10が実際にデタッチしている際には、応力の開始時点におけるエッジ特異性は、接着に影響を及ぼし得ないことを示している。全体的な延伸の考慮は、直接的且つ正確な接着推定を許容し、これは、オプティマイザが、接着が改善されたフィブリルを生成することを支援している。
【0163】
また、本開示は、垂直接着に対する剪断応力の役割を推定するための洞察を提供している。剪断が極小化されたMLFvを生成することによるトライアルは、実際に、剪断応力が垂直接着に悪影響を及ぼし得ず、むしろ、これらの間には肯定的な相関が存在していることを明らかにしている。シミュレーション及び実験結果を比較することにより(図2B及び図2C図3、及び図10)、剪断が極小化されたフィブリルは、シミュレーションよりも実験において相対的に悪化した状態で動作しており、これにより、剪断応力は、本明細書において記述されているように垂直接着を支援することを示唆している。
【0164】
FEMシミュレーションは、設計パラメータに基づいて接着を推定するように(図1A図2C、及び図4)、且つ、先端応力プロファイルを分析するように(図3)、設計されている。市販の有限要素法ツール(COMSOL Multiphysics 5.4, COMSOL Inc.)を使用することにより、界面応力分布及び最大接着は、材料のムーニー-リブリンの5パラメータ超弾性モデルを実装することによる変更を伴う方式に基づいて推定されている。シミュレーションの際には、フィブリル10のベース32が固定され、且つ、まず、フィブリル10の先端がフラットパンチプローブに装着されている。次いで、延伸をフィブリル10に課すように、プローブの位置が反復的に平行運動されている。シミュレーションは、最大界面垂直応力が理論界面強度に到達した際に終了している。
【0165】
シミュレーションの前には、材料特徴付け実験が実行されている。この理由は、ソフトエラストマ(PDMS)のフィブリル10は、機械的プロパティの観点において、バルクにおけるよりも小さなスケールにおいては異なる方式で振る舞い得るからである。この較正のために、まず、2PP及びダブルモールディングに基づいた複製方法を使用することにより、フィブリル10の異なる形状(30、50、70、90μmの直径におけるフラットパンチ、ウェッジ形状、T形状のもの)が製造されている(図1C)。その後に、ムーニー-リブリンの5つのパラメータ及び理論的界面強度を較正するために、接着及び力-変位曲線が計測されている。これに加えて、フィブリルの走査電子顕微鏡(SEM)画像を取得することにより、製造制約(先端エッジのフィレット半径)が特徴判定されている。
【0166】
フィブリル10の形状は、固定されたパラメータセット及び最適化可能な変数セットというパラメータの2つの組によって判定されている。固定されたパラメータセットは、アスペクト比、先端直径、エッジのフィレット半径、ムーニー-リブリンパラメータ、及び理論的界面強度を含む。最適化可能なパラメータセットは、2つのベジェ制御点及びフィブリルベース32の直径を含む。フィブリルの形状は、軸対称である。形状が判定されたら、フィブリル10は、極めて微細なメッシュが界面応力特異性を処理するようにフィブリルのエッジに向かう状態において、10000個超の三角形要素によってメッシュ化されている。
【0167】
ベイズ最適化:FEMシミュレーションが構築されたら、最適接着フィブリル10を製造するために、最適化可能な変数セットxがベイズオプティマイザによって直接的に処理されている。ここで、xは、r及びz座標の2つのベジェ制御点及びフィブリルベース32の直径を含む5次元ベクトルである。最適化問題は、次式として定式化され、
【数4】
ここで、f(・)は、シミュレーションからの推定接着力であり、xは、最適変数セットであり、pは、固定されたパラメータセットであり、xminは、xの下限であり、且つ、Xmaxは、xの上限である。この最適化問題は、予測改善取得関数を有するプロプライエタリなプログラミング言語(MatLAB R2020a, The MathWorks, Inc.)において事前に構築されたベイズ最適化関数(bayesopt.m )によって解かれている。本開示においては、接着は、150回の反復以内において収束している。オプティマイザとシミュレータの間の通信は、LiveLink(商標)(COMSOL Multiphysics 5.4, COMSOL Inc.)を介して確立されている。最適化及びシミュレーションと組み合わせられた150回の反復のすべては、高性能のデスクトップコンピュータ(20 cores of Intel Xeon CPU E5-2680 v2, 2.80 GHz (40 logical cores), 192 GB RAM, NVIDIA Quadro K5000 graphics card)を使用することにより、フィブリル10の最終設計を生成するのに3時間未満を所要している。図15には、ベイズ最適化及び収束のプロセスが示されている。
【0168】
製造プロセスは、相対的に鋭いエッジ定義のための製造パラメータの変更を伴いつつ、国際特許出願第PCT/EP2020/084461号において提示されている製造方法に類似しており、この特許文献の製造の正確なステップに関する開示内容は、引用により、本明細書に包含される。第1に、フィブリル10は、CADソフトウェア(SolidWorks 2020, Dassault Systemes Co.)を使用することにより、設計されており、且つ、次いで、2PPラスタファイル(DeScribe, Nanoscribe GmbH)に変換され、且つ、2PPの3Dマイクロプリンタ(Photonic Professional GT, Nanoscribe GmbH)を使用して印刷されている。マスタ12は、市販の剛性IP-Sフォトレジスト(Nanoscribe GmbH)を使用してインジウムすず酸化膜(ITO)によって被覆されたガラス上において印刷されている。ITOによって被覆されたガラスと印刷されるフィブリル10の間の接着を改善するために、ITOによって被覆されたガラスは、3D印刷の前に、6時間超にわたってデシケータ内において1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)に曝露されている。その後に、マスタ12は、40分にわたってプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、Sigma-Aldrich Inc)中において現像され、且つ、3分にわたってイソプロピルアルコール(IPA)中においてリンスされている。マスタフィルビルアレイ(4×5)が製造された後に、アレイは、表面活性化のために、80℃において30分にわたってオゾンプラズマ(ozone plasma chamber, Zepto, Diener electronic GmbH)に曝露されており、且つ、その後に、35分にわたってトリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(Sigma-Aldrich Inc.)の0.1mLを収容したガラスバイアルを有する真空デシケータ内において配置されている。最後に、マスタ12は、35分にわたって90℃のオーブン内において配置されている。
【0169】
脱気されたPDMS混合物(20:1モノマー対クロスリンカー比率)は、フルオロシラン化されたマスタアレイの上部においてキャスティングされ、且つ、真空デシケータ内において30分にわたって脱気されている。次いで、マスタ12及びキャストは、35分間にわたって90℃において焼成されている。その後に、ネガティブモールド18が引き剥がされている。ネガティブモールド18をシラン化するために、類似の手順が適用されている。ネガティブモールドは、30分間にわたって80℃においてオゾンプラズマに曝露され、且つ、40分間にわたってトリクロロシランを有する真空デシケータ内において配置されている。その後に、ネガティブモールド18は、3時間にわたって65℃において焼成されている。ネガティブモールド18が引き剥がされた後に、PDMS混合物(10:1モノマー対クロスリンカー比率)は、ネガティブモールド18の上部においてキャスティングされ、30分間にわたって脱気され、且つ、65℃の予め設定されたオーブン内において3時間にわたって硬化されている。ネガティブモールド18からの引き剥がしの後に、ポジティブレプリカが準備完了状態にある。フィブリル表面の表面粗度は、λs=0.25μm及びλc=0.25mmのカットオフ周波数を伴って、0.42μmのRqである。(3時間にわたって65℃で硬化された)PDMSのヤング率は、1.6MPaである。材料がマイクロスケールにおいては異なる方式で振る舞うことから、T形状のフィブリル10の接着試験(図8C)は、その他のフィブリル形状との比較において既知の形状及び相対的な強力な接着に起因した本シミュレーションフレーム用の超弾性モデル(ムーニー-リブリンの5次モデル)をフィットするためのベースライン応力-歪曲線として使用されている。5次ムーニー-リブリンパラメータは、C10=-1.81e+06Pa、C01=3.04e+06Pa、C20=9.82e-09Pa、C02=-1.52e+05Pa、C11=6.83e+05Paである。
【0170】
接着計測。フィブリル10の接着は、カスタマイズされた接着セットアップにおいて試験されている。ロードセル(GSO-25, Transducer Techniques LLC)は、5nmの位置決め分解能を有する垂直方向(フィブリルに対して軸方向)において運動する高精度のモーター駆動型の圧電ステージ(LPS-65 2”, Physik Instrumente GmbH)に装着されている。水平方向位置(xy位置)は、更なるモーター駆動型の圧電ステージを有する手動xyステージによって調節されている。モーター駆動型のステージのモーション制御及びロードセルからの力計測は、1KHzのデータ取得レートを有するLabVIEW環境(National Instruments Co.)において、カスタム構築されたプログラム内において同時に実行されている。未加工データは、ノイズを低減するために、10ポイントのメジアンフィルタによってフィルタリングされている。アライメント及び接着分析のために接触界面を視覚化するように、倒立型光学顕微鏡(Axio Observer A1, Carl Zeiss AG)がセットアップの下方において配置されている。
【0171】
4mmの直径を有する球状ガラスプローブが、ロードセルに直接接続されたプローブとして使用されている。ガラスプローブの表面粗度は、λs=0.25μm及びλc=0.25mmのカットオフ周波数を伴って、1.04μmのRqである。プローブのxy位置は、3つのフィブリル10の中心においてプローブを配置するように慎重に調節されている。接近及び後退速度は、弾粘性効果を極小化するように、フィブリルサイズ/秒(例えば、70μmフィブリルの場合には、7μms-1)の10%である。プローブは、特定の予荷重に到達する時点まで凹入し(すべてのサイズについて150kPaであり、例えば、70μmの先端直径のフィブリル10の場合には、0.577mN)、緩和のために30秒にわたって待機し、且つ、引っ込んでいる(図14)。力-変位曲線を形成するために、接着が変位と共に計測されている(図8)。計測は、フィブリル10のそれぞれの設計ごとに5回にわたって実行されており、且つ、接着は、計測された接着/フィブリル10の平均として推定されている。複数のフィブリル10がデタッチされていることから、接着曲線内においては、複数のスパイクが観察されている(図8及び図14)。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のフィブリルを製造する方法であって、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を提供するステップと、
-1つ又は複数のフィブリルのランダム初期形状を提供するステップであって、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料に、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、前記提供されているランダム初期形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの接着力を算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの結果的に得られる形状を形成するために前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を変更するように前記1つ又は複数のフィブリルの前記ランダム初期形状を適合させ、具体的には反復的に適合させ、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の前記対応する接着力を判定するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの最大接着力を有する前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状を選択するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記選択された結果的に得られる形状を有する1つ又は複数のフィブリルを製造するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのプロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似ている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がその端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有するように、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルが、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されるように、構成されている請求項1及び2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がT形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似るように構成されている請求項1及び3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、標準的な有限要素法によって実行されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標準的な有限要素法は、コーシーの式に基づいている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、複数回にわたって発生している請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数回は、2~1000000回の反復において選択され、即ち、反復的であり、且つ/又は、前記処理形状を適合させることは、前記結果的に得られる形状の前記算出された接着力が収束した際に停止している請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、1nm~10μmの範囲において選択されたサイズを有する前記フィブリル先端の最小エッジ半径を変更することにより、発生している請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のフィブリルを製造する前記ステップは、付加製造、2光子ポリマー化、3D印刷、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、合焦型イオンビーム機械加工、レーザーマイクロ/ナノ機械加工、機械的又は超音波マイクロ機械加工、マイクロ/ナノ印刷、ロールツーロール複製、インジェクションモールディング、圧縮モールディング、及びポリマーキャスティングの少なくとも1つを利用して発生している請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。この関連において、前記ソフト材料は、好ましくは、PDMS、シリコーンエラストマ、ビニルシロキサン、又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【請求項15】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の間において曲率半径を定義することにより、前記フィブリル先端エッジを設計するステップを更に有する請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
-前記1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を提供するステップと、
-前記境界面の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出する前記ステップは、コンピュータ実装されたシミュレーションを利用して発生している請求項6及び17に記載の方法。
【請求項19】
前記界面応力は、前記コーシーの平衡方程式によって算出されている請求項18に記載の方法。
【請求項20】
増大した接着力を有するフィブリルを製造するために1つ又は複数のフィブリルの接着力をシミュレートするコンピュータ実装された方法であって、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの初期形状を定義するステップであって、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれのフィブリルは、いくつかの表面を有する、ステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料に、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの、即ち、そのいくつかの表面の、前記定義された初期形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの接着力を前記コンピュータを利用して算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状を判定するために前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を変更するように複数回にわたって前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状又は前記以前の適合ステップにおいて判定された形状又はそれまでの最大接着力を有する予め判定された形状を反復的に適合させ、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルのそれぞれの結果的に得られる形状の前記対応する接着力を算出するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記1つ又は複数のフィブリルの前記判定された結果的に得られる形状を選択するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルの前記最大接着力を有する前記結果的に得られる形状に基づいて前記1つ又は複数のフィブリルの前記製造を開始するステップと、
を有する方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状又は予め判定された形状又はそれまでの前記最大接着力を有する前記予め判定された形状を反復的に適合させる前記ステップは、前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の最小エッジ半径を変更することによって実行されており、具体的には、前記最小エッジ半径は、1nm~10μmの範囲のサイズを有する請求項20に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を反復的に適合させる前記ステップは、ベイズ最適化などの確率論的最適化方法に基づいており、前記ランダム初期形状は、具体的には、ランダム3次ベジェ曲線に基づいたサイドプロファイルである請求項20又は21に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項23】
前記確率論的最適化方法は、必要とされている有限要素法FEMシミュレーション評価の数を小さく、即ち、1000回のシミュレーション評価未満に、維持しつつ、目的関数値、即ち、前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着、を最大化させるステップを有する請求項22に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項24】
前記最適化方法は、次式
【数1】
によって定義され、ここで、f(・)は、具体的には、FEMから算出された前記接着であり、xは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組のプロファイル曲線を構成するパラメータであり、且つ、Aは、xの前記パラメータ境界のハイパー矩形を構成する単純な組である請求項22又は23に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項25】
f(x)は、ランダム変数のすべての有限なサブセットの同時分布が次式:
f~GP(μ,k), 具体的には、f=GP(μ,k)
によって定義された多変量ガウスとなるようなランダム変数の集合体であるガウスプロセスGPであり、
ここで、μ(x)及びk(x)は、平均及び共分散関数であり、且つ、
前記GPは、前記FEMにおいてシミュレートされた前記接着のブラックボックス表現を使用した前記パラメータx及びf(x)の間の関係を代理している請求項24に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項26】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、その端部において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有し、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルは、ベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されている請求項20乃至25のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項27】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状は、T形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似ている請求項20乃至25のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項28】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がその一端において少なくとも局所的にフラットな先端表面を有する軸対称形状を有するように、且つ、前記1つ又は複数のフィブリルの前記プロファイルがベジェ曲線、スプライン曲線、又は多項式曲線などのパラメータ化可能な曲線の組によって定義されるように、構成されている請求項20乃至26のいずれか1項の記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項29】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面は、前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状がT形状のフィブリル、ウェッジ形状のフィブリル、マッシュルーム形状のフィブリル、及び/又はこれらのものの組合せなどの予め生成された形状の前記形状に似るように、構成されている請求項20乃至25及び27のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項30】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記接着力を算出する前記ステップは、標準的な有限要素法によって実行されている請求項20乃至29のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項31】
前記標準的な有限要素法は、コーシーの式に基づいている請求項30に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項32】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させる前記ステップは、複数回にわたって、即ち反復的に発生しており、前記複数回は、2~1000000回の反復において選択されている請求項20乃至31のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項33】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記初期形状を適合させることは、前記1つ又は複数のフィブリルの前記結果的に得られる形状の前記算出された接着力が収束した際に停止している請求項20乃至32のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項34】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択されている請求項20乃至33のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。この関連において、前記ソフト材料は、好ましくは、PDMS、シリコーンエラストマ、ビニルシロキサン、又はポリウレタンエラストマなどのエラストマであることに留意されたい。
【請求項35】
前記1つ又は複数のフィブリルの製造の前記材料は、0.01~10000MPaの範囲において選択されたヤング率を有する請求項20乃至34のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項36】
前記1つ又は複数のフィブリルの前記表面の間において曲率半径を定義することにより、前記フィブリルの先端エッジを定義するステップを更に有する請求項20乃至35のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項37】
-前記1つ又は複数のフィブリルが装着可能である境界面を提供するステップと、
-前記境界面の材料を定義するステップと、
-前記1つ又は複数のフィブリルと前記境界面の間の界面応力を算出するステップと、
を更に有する請求項20乃至36のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項38】
前記界面応力は、前記コーシーの平衡方程式によって算出されている請求項37に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項39】
請求項1乃至19に記載の前記1つ又は複数のフィブリルを製造する前記方法の1つ又は複数のステップが実行され得る先行する請求項20乃至38のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項40】
請求項1乃至19に記載の前記1つ又は複数のフィブリルを製造する方法によって実現可能である且つ/又は請求項20又は請求項39に記載の前記コンピュータ実装された方法によってシミュレートされるフィブリルであって、任意選択により、0.000001mN~1000mNの範囲において選択された接着力、自由曲線から構成されたプロファイルを有する構成要素の群から選択された形状、及び0.001kPa~10000MPaの範囲において選択された境界表面に対する界面応力、並びに、有機、無機、ポリマー、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、生体材料、生体ポリマー、複合材、エラストマ、液晶エラストマ、熱可塑性エラストマ、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、又はこれらのものの組合せから構成された構成要素の群から選択された材料の少なくとも1つを有するフィブリル。
【国際調査報告】