(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】訓練済みの機械学習モデルを使用して処理されたスペクトルデータにより、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240312BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20240312BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240312BHJP
G06N 3/0464 20230101ALI20240312BHJP
G06N 3/04 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/359
G06N20/00
G06N3/0464
G06N3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549124
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CA2022050208
(87)【国際公開番号】W WO2022170440
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523309392
【氏名又は名称】アイエスビーアールジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア,ダンカン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB13
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF04
2G059FF10
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM04
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM14
(57)【要約】
被験者の分析対象成分を直接参照することなく、被験者に関する検査対象の生理的状態を判定するための方法、システム、および技術。被験者の身体部分に光を当て、光が身体部分の血液および間質液を透過する、またはそれらによって反射するようにする。身体部分への入射光が、近赤外スペクトルおよび可視スペクトルの少なくともいずれかの波長域からなる。身体部分を透過した光、および身体部分によって反射した光のうち1つまたは両方のスペクトル(波長域からなる)を測定する。被験者が検査対象とする生理的状態にあるか否かを判定する上で、測定スペクトルを処理するための訓練済み機械学習モデルが使用される。この機械学習モデルは、検査対象とする生理的状態を表す参照スペクトルで訓練される。
【選択図】
図21C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる方法。
(a) 被験者の身体部分に光を当て、光が身体部分の血液および間質液を透過する、またはそれらによって反射するようにすること(身体部分への入射光が近赤外光および可視光のうち少なくとも1つを含む波長域からなるようにする)、
(b) 身体部分を透過した光、および身体部分によって反射した光のうち1つまたは両方のスペクトル(スペクトルは波長域からなる)を測定すること、および、
(c) 被験者が検査対象とする生理的状態にあるかどうかを、被験者の分析対象成分を直接参照せずに判定すること(判定するために、訓練済みの機械学習モデルを使用して測定スペクトルを処理する。モデルは検査対象となる生理的状態を示す参照スペクトルで訓練する)。
【請求項2】
身体部分への入射光が近赤外スペクトルおよび可視スペクトルの両方の波長域からなることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
身体部分を透過した光のスペクトルを測定することを特徴とする請求項1又は2の方法。
【請求項4】
身体部分を透過した光と身体部分によって反射された光のスペクトルを測定することを特徴とする請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
測定されたスペクトルが、明るい参照試料、暗い参照試料、被験者の明るい試料、および被験者の暗い試料からなり、明るい参照試料、暗い参照試料、被験者の明るい試料、および被験者の暗い試料を使って比較することにより、センサーのバイアス補正ができることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
訓練済みの機械学習モデルを用いて測定スペクトルを処理する前に、測定スペクトルから外れ値を除外し、測定スペクトルに平均センタリングを適用したバージョンを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかの方法。
【請求項7】
訓練済みの機械学習モデルを用いて測定スペクトルを処理する前に行う、
(a) 測定スペクトルの平均センタリングバージョンに複数の変換を適用すること(変換は、以下のグループから選択する:標準正規変量 (SNV)、多発性散乱補正 (MSC)、L1正則化 (L1N)、L2 正則化 (L2N)、Savitzky-Golay 平滑化 (SGS)、畳み込みによる平滑化(CS)、信号の微分 (SD))、
(b) 測定スペクトルの平均センタリングバージョンに適用する複数の各変換のパフォーマンスを評価すること、および、
(c) 評価の結果、変換されたスペクトル(測定スペクトルの平均センタリングバージョンを変換したもの)を選択することを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】
さらに、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである、少なくとも1つの波長域を選び、変換されたスペクトルを処理するために機械学習モデルが使用されることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
さらに、変換されたスペクトルを潜在空間のコンポーネントに分解し、変換されたスペクトルを訓練済み機械学習モデルを使って処理するプロセスに、機械学習モデルの個々のインスタンスを使って潜在空間のコンポーネントを処理することが含まれることを特徴とする請求項8の方法。
【請求項10】
機械学習モデルがニューラル加法モデルからなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つの方法。
【請求項11】
機械学習モデルが人工ディープニューラルネットワークからなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つの方法。
【請求項12】
機械学習モデルが畳み込みニューラルネットワークからなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つの方法。
【請求項13】
さらに、変換されたスペクトルを潜在空間のコンポーネントに分解し、測定されたスペクトルを訓練済み機械学習モデルを使って処理するプロセスに、機械学習モデルの個々のインスタンスを使って潜在空間のコンポーネントを処理することが含まれることを特徴とする請求項1から7と請求項10から12のいずれか1つの方法。
【請求項14】
潜在空間のコンポーネントが部分的最小二乗法または主成分分析を適用することによって生成されることを特徴とする請求項9から13の方法。
【請求項15】
判断の段階で、感度ターゲットおよび特異度ターゲットを受け取り、感度および特異度のターゲットに従って検査対象とする生理的状態を出力することを特徴とする請求項1から13のいずれかの方法。
【請求項16】
検査対象とする生理的状態が、被験者がウイルスに感染しているか否かであることを特徴とする請求項1から15のいずれかの方法。
【請求項17】
検査対象とする生理的状態が、被験者がCOVID-19に罹患しているか否かであることを特徴とする請求項1から16のいずれかの方法。
【請求項18】
検査対象とする生理的状態が、THCによる機能障害であることを特徴とする請求項1から15のいずれかの方法。
【請求項19】
検査対象とする生理的状態が、アルコールによる機能障害であることを特徴とする請求項1から15のいずれかの方法。
【請求項20】
測定がフーリエ近赤外分光器を使用して行われることを特徴とする請求項1から19のいずれかの方法。
【請求項21】
分光器に試料容器を受けるプラットフォームがあり、測定が被験者の指において直接実施できることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項22】
プロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムのコードを保存している非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体であって、コードがプロセッサによって実行されることにより、プロセッサが請求項1から21のいずれかの方法を実行する非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項23】
以下からなる装置。
(a) ランプ、
(b) 少なくとも1つの分光器、
(c) 被験者の身体部分を受ける部分(レシーバー)を持つインターフェイス、および、
(d) 少なくとも1本のソースファイバーおよび少なくとも1本のリターンファイバー(ランプおよび少なくとも1つの分光器をレシーバーに光学的に接続していて、ソースファイバーはランプの光を身体部分に向けるよう配置され、リターンファイバーは身体部分を透過または反射した光を受けて、受けた光を少なくとも1つの分光器に向けるように配置される)。
【請求項24】
身体部分が指の場合であり、レシーバーの第1の表面が指の腹に接触するよう、第2の表面が指の先に接触するよう配置されていて、少なくとも1本のソースファイバーが、ランプからの光が第2の表面を通って指に向かうように配置され、少なくとも1本のリターンファイバーが、身体部分から第1の表面を通って透過された光を受け取るように配置されていることを特徴とする請求項23の装置。
【請求項25】
身体部分が指の場合であり、レシーバーの第1の表面が指の腹に接触するよう、第2の表面が指の先に接触するよう配置されていて、少なくとも1本のソースファイバーが、ランプの光が指に向かうように配置され、少なくとも1本のリターンファイバーが指から反射された光を受け取るように配置されていることを特徴とする請求項23の装置。
【請求項26】
少なくとも1つの分光器が、可視スペクトルに光を出力するように設定された第1の分光器と近赤外スペクトルに光を出力するよう設定された第2の分光器からなることを特徴とする請求項23から25のいずれかの装置。
【請求項27】
第1の分光器さらに近赤外スペクトルの光を出力するように設定されていることを特徴とする請求項26の装置。
【請求項28】
第1の分光器が約350 nm~1,000 nmの波長を持つ光を出力するように設定され、第2の分光器が約900 nm~2,500 nmの波長を持つ光を出力するように設定されることを特徴とする請求項26または27の装置。
【請求項29】
以下からなる請求項23の装置。
(a) 通信ポートと、
(b) 少なくとも1つの分光器と通信ポートに通信的に接続されたコントローラで、そのコントローラは、
(i) ランプから身体部分に、近赤外スペクトルと可視スペクトルのうち少なくとも1つの波長域からなる光を当て、
(ii) 身体部分を透過した光または反射した光、またはその両方の光のスペクトルを少なくとも1つの分光器を用いて測定し、
(iii) 測定スペクトルを通信ポートに出力するように設定されている。
【請求項30】
以下からなるクレーム29の装置。
(a) 通信ポートに通信的に接続されたプロセッサと、
(b) プロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムのコードを保存している非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体であって、コードがプロセッサによって実行されると、プロセッサが、検査対象の生理的状態を示す参照スペクトルで訓練した機械学習モデルを使用して測定スペクトルを処理するというやり方で、被験者の分析対象成分は直接参照せずに、被験者が検査対象とする生理的状態にあるか否かを判定する方法を実施する非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項31】
少なくとも1つの分光器がフーリエ近赤外分光器からなることを特徴とする請求項23から30のいずれかの装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年2月12日に出願された “Non-Invasive Determination of a Physiological State of Interest of a Subject” と題する米国仮特許出願第63/149,199号、および2021年7月5日に出願された “Non-Invasive Determination of a Physiological State of Interest of a Subject” と題する米国仮特許出願第63/218,477号に対する優先権を主張する。どちらも全体を参照することにより本文書内に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は、訓練済みの機械学習モデルを使用して処理されたスペクトルデータにより、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法、システム、および技術に関するものである。
【背景】
【0003】
被験者の生理的状態は、種々の測定ツールを用いて様々な代謝パラメータを測定することによって判定できる。 例えば、Haslacher H., et. al., (2017, PLoS ONE 12(5): e0177174. doi.org/10.1371/journal. pone.0177174) では、血液の12成分を測定することで、高齢の被験者の身体能力を予測する方法が示されている。しかし、分析には血液試料が必要であり、光度、酵素、酵素測光、ELISA、その他の幅広い技術を用いて様々な血液成分を測定することが求められる。
【概要】
【0004】
第1の態様によると、被験者について検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法が示されており、それは以下の過程から成り立っている。(a) ある身体部分をレセプターに接触させること、(b) 電磁放射線 (EMR) の発生源を、一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにすること、(c) 波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定すること、(d) アルゴリズムを用いたスペクトルの数量的数学的分析を実施し、身体部分の血液および間質液内にある2つ以上の分析対象成分の量を測定すること。その2つ以上の分析対象成分は、複数のゴースト成分からなるが、ゴースト成分とは正体が未知で、被験者の機能障害または中毒状態といった検査対象とする状態に対応して変化することが観察されているものである。(e) 2つ以上の分析対象成分の量を2つ以上の分析対象成分の参考値と比較することにより、生化学的プロファイルを導き出すこと、および、(f) 生化学的プロファイルを分析して、被験者に関する検査対象の生理的状態を判定すること。
【0005】
照射の段階では、EMRの発生源はおよそ400~2500 nmの波長域で照射できる。
【0006】
被験者について検査対象の生理的状態は、大麻、アルコール、大麻とアルコールの両方、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取による中毒状態のグループから選択され得る。
【0007】
検査対象の生理的状態は以下の場合があり得る。i) 大麻によって誘発された中毒状態で、2つ以上の分析対象成分が次のグループから選択される。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN), カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。 ii) アルコールによって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分がアルコール、アルデヒド、乳酸のグループから選択される。または、iii) 大麻、アルコール、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取によって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分は以下を含み得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、 総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。
【0008】
分析の段階 (段階 f) では、被験者に関する検査対象の生理的状態は、生化学プロファイルを示し複数の被験者から得られている複数のデータセットの処理、複数のデータセットの交差検証、そして1つ以上のディープニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、畳み込みニューラルネットワーク、一般化加法モデルの訓練によって決定でき、検査対象の生理学的状態に関連する分析対象成分セットの特定に使用される1つ以上のアルゴリズムからなるモデル(被験者の生化学的プロファイルを分析し、被験者に関する検査対象の生理的状態の判定に使用できる)を開発する。
【0009】
モデルは、異なるデータセットを使用して訓練と検証を繰り返すことで、検証済みモデルを作成し得る。検証済みモデルは、検査対象の生理的状態に関連する分析対象成分セットの特定に使用される1つ以上のアルゴリズムからなり得る。そのモデルは被験者の生化学的プロファイルを分析し、被験者について検査対象の生理的状態を判定するのに使用できる。
【0010】
別の態様によると、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法が示されており、それは以下の過程からなる。(a) 被験者について1つ以上の生理的パラメータを決定すること、(b) ある身体部分をレセプターに接触させること、(c) 電磁放射線 (EMR) の発生源を、一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにすること、(d) 波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定すること、(e) アルゴリズムを用いたスペクトルの数量的数学的分析を実施し、身体部分の血液および間質液内にある2つ以上の分析対象成分の量を測定すること。その2つ以上の分析対象成分は、複数のゴースト成分からなるが、ゴースト成分とは正体が未知で、被験者の機能障害または中毒状態といった検査対象とする状態に対応して変化することが観察されているものである。(f) 2つ以上の分析対象成分の量を2つ以上の分析対象成分の参考値と比較することにより、生化学的プロファイルを導き出すこと、および、(g) 生化学的プロファイルを分析して、被験者について検査対象の生理的状態を判定すること。
【0011】
照射の段階では、EMRの発生源はおよそ400~2500 nmの波長域で照射できる。
【0012】
被験者について検査対象の生理的状態は、大麻、アルコール、大麻とアルコールの両方、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、およびニコチンの摂取による中毒状態のグループから選択され得る。
【0013】
検査対象の生理的状態は以下の場合があり得る。i) 大麻によって誘発された中毒状態で、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。生理的パラメータには、次のうち1つ以上のパラメータが含まれ得る。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHC。ii) アルコールによって誘発された中毒状態で、アルコール、アルデヒド、乳酸のグループから2つ以上の分析対象成分を選択し、生理的パラメータは次のグループから選択する。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)。iii) 大麻とアルコールの混合、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取により誘発された中毒状態で、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。生理的パラメータは次の中から1つ以上を含む。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHC。
【0014】
分析の段階 (段階 g)では、被験者に関する検査対象の生理的状態を判定するのに使用される生化学的プロファイルおよび1つ以上の生理的パラメータは、複数の被験者から得られる複数のデータセットの処理(各データセットは生化学的プロファイルおよび1つ以上の生理的パラメータから引き出される)、複数のデータの交差検証、そして、1つ以上のディープニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、畳み込みニューラルネットワーク、および一般化加法モデルの訓練により決定でき、検査対象の生理学的状態に関連する分析対象成分セットの特定に使用される1つ以上のアルゴリズムからなるモデル(被験者の生化学的プロファイルおよび1つ以上の生理的パラメータを分析し、被験者に関する検査対象の生理的状態を調べるのに使用する)を開発する。
【0015】
モデルは、異なるデータセットを使用して訓練と検証を繰り返すことで、検証済みモデルを作成し得る。検証済みモデルは、検査対象の生理的状態に関連する分析対象成分セットの特定に使用される1つ以上のアルゴリズムを含み得る。検証されたモデルは、生化学的プロファイルおよび1つ以上の生理的パラメータを分析し、被験者に関する検査対象の生理的状態を調べるのに使用する。
【0016】
別の態様によると、被験者に関する検査対象とする生理的状態を調べるための装置が提示されており、それは約400 nmから約2500 nmの間の複数の波長を発する電磁放射(EMR)の発生源(動作可能な状態で電源に接続されている)、試料に合わせたサイズのレセプター(1つ以上のポートを有する)、EMRの発生源と連携した1つ以上の入力放射線誘導エレメント、および検出器と連携した1つ以上の出力放射線誘導エレメント(1つ以上の入力放射線誘導エレメントおよび1つ以上の出力放射線誘導エレメントは、1つ以上のポートと光学的に位置が揃えられ、レセプターが試料に接触する時、レセプター内のEMRの経路となる)、試料を透過または反射したEMRを測定する検知器(動作可能な状態で処理システムに接続されている)、試料中の2つ以上の分析対象成分(2つ以上の分析対象成分は複数のゴースト成分で、それは正体が未知で、検査対象の状態に対応して変化することが観察されているもの)の濃度を調べるための1つ以上のアルゴリズムを含む処理システムからなる。本システムは1つ以上のアルゴリズムを使用して試料について検査対象とする生理的状態を導き出す。検査対象の生理的状態は、以下の場合がある。i) 大麻によって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分が以下のグループから選択される。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。ii) アルコールによって誘発された中毒状態で、アルコール、アルデヒド、乳酸からなるグループから2つ以上の分析対象成分が選択される。または、iii) 大麻、アルコール、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取によって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分は以下を含み得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1 および B (アポA1 および アポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。
【0017】
別の態様によると、以下からなる方法が提示されている。被験者の身体部分に光を当て、光が身体部分の血液および間質液を透過する、またはそれらによって反射するようにする(身体部分への入射光が近赤外光および可視光のうち少なくとも1つを含む波長域からなるようにする)。身体部分を透過した光、および身体部分によって反射した光のうち1つまたは両方のスペクトル(スペクトルは波長域からなる)を測定する。測定されたスペクトルを既知の生理的状態を示す参照スペクトルと比較する。被験者が検査対象とする既知の生理的状態にあるかどうかを、被験者の分析対象成分を直接参照せず、測定されたスペクトルと参照スペクトルの類似性から判定する。
【0018】
身体部分への入射光は近赤外スペクトルおよび可視スペクトルの両方の波長域からなり得る。
【0019】
身体部分への入射光は、近赤外スペクトルの波長域からなり得る。
【0020】
身体部分への入射光は、可視スペクトルの波長域からなり得る。
【0021】
スペクトルは身体部分を透過した光において測定され得る。
【0022】
スペクトルは身体部分によって反射した光において測定され得る。
【0023】
スペクトルは身体部分を透過した光および身体部分によって反射した光において測定され得る。
【0024】
スペクトルは、明るい参照試料、暗い参照試料、明るい試料、暗い試料において測定することができ、それらを使って比較することにより、センサーのバイアス補正ができる。
【0025】
比較の段階では、測定スペクトルから外れ値を除去し、測定スペクトルの平均センタリングを行ったバージョンを生成することができる。
【0026】
比較の段階では、測定スペクトルの平均センタリングバージョンに変換を適用し得る。
【0027】
本方法にはさらに以下のプロセスが含まれ得る。測定スペクトルの平均センタリングバージョンに複数の変換を施すこと(変換は、以下のグループから選択する:標準正規変量 (SNV)、多発性散乱補正 (MSC)、L1正則化 (L1N)、L2 正則化 (L2N)、Savitzky-Golay 平滑化 (SGS)、畳み込みによる平滑化(CS)、信号の微分 (SD))、測定スペクトルの平均センタリングバージョンに対する複数の各変換のパフォーマンスを評価すること、評価の結果、変換されたスペクトル(測定スペクトルの平均センタリングバージョンを変換したもの)を選択すること。
【0028】
本方法ではさらに、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである、少なくとも1つの波長域を選ぶことができる。
【0029】
本方法ではさらに、少なくとも1つの波長域に対して部分的最小二乗法 (PLS) 由来のコンポーネントを取得するために、部分的最小二乗法 (PLS) を適用し得る。
【0030】
判定の段階は、適合させるために線形回帰モデルを適用することが含まれ得る。
【0031】
判定の段階は、適合させるためにニューラル加法モデルを適用することが含まれ得る。
【0032】
判定の段階は、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである少なくとも1つの波長域に対して、ニューラル加法モデルを適用することが含まれ得る。
【0033】
判定の段階は、部分的最小二乗法 (PLS) 由来のコンポーネントに人工ディープニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0034】
判定の段階は、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである少なくとも1つの波長域に対して、人工ディープニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0035】
判定の段階で、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである少なくとも1つの波長域に対して、畳み込みニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0036】
本方法はさらに、測定スペクトルに対して部分的最小二乗法 (PLS) 由来のコンポーネントを取得するために、部分的最小二乗法 (PLS) を適用することが含まれ得る。
【0037】
判定の段階は、適合させるために線形回帰モデルを適用することが含まれ得る。
【0038】
判定の段階は、適合させるためにニューラル加法モデルを適用することが含まれ得る。
【0039】
判定の段階では、測定スペクトルにニューラル加法モデルを適用することが含まれ得る。
【0040】
判定の段階は、部分的最小二乗法 (PLS) 由来のコンポーネントに人工ディープニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0041】
判定の段階は、測定スペクトルに人工ディープニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0042】
判定の段階は、測定スペクトルに畳み込みニューラルネットワークを適用することが含まれ得る。
【0043】
判定の段階は、感度ターゲットおよび特異度ターゲットを受け取ることと、感度および特異度のターゲットに従って検査対象とする生理的状態を出力することが含まれ得る。
【0044】
検査対象とする生理的状態には、被験者がCOVID-19に感染しているか否かが含まれる。
【0045】
測定は、フーリエ変換赤外分光器を用いて実施できる。
【0046】
分光器には試料容器を受け取るプラットフォームがあり、測定は被験者の指において直接実施できる。
【0047】
その他の態様によると、以下からなる方法が提示されている。被験者の身体部分に光を当て、光が身体部分の血液および間質液を透過する、またはそれらによって反射するようにすること(身体部分への入射光が近赤外光および可視光のうち少なくとも1つを含む波長域からなるようにする)、身体部分を透過した光、および、身体部分によって反射した光のうち1つまたは両方のスペクトル(スペクトルは波長域からなる)を測定すること、および被験者が検査対象とする生理的状態にあるかどうかを、被験者の分析対象成分を直接参照せずに判定すること(判定するには、訓練済みの機械学習モデルを使用して測定スペクトルを処理する。モデルは検査対象となる生理的状態を示す参照スペクトルで訓練したもの)。
【0048】
身体部分への入射光は近赤外スペクトルおよび可視スペクトルの両方の波長域からなる。
【0049】
スペクトルは身体部分を透過した光において測定する。
【0050】
スペクトルは身体部分を透過した光および身体部分によって反射した光において測定する。
【0051】
スペクトルは、明るい参照試料、暗い参照試料、明るい試料、暗い試料において測定することができ、それらを使って比較することにより、センサーのバイアス補正ができる。
【0052】
本方法にはさらに、訓練済み機械学習モデルを用いて測定スペクトルを処理する前に、測定スペクトルから外れ値を除外し、測定スペクトルに平均センタリングを適用したバージョンを生成することが含まれ得る。
【0053】
本方法にはさらに、訓練済み機械学習モデルを用いて測定スペクトルを処理する前に、以下のプロセスが含まれ得る。測定スペクトルの平均センタリングバージョンに複数の変換を施すこと(変換は、以下のグループから選択する:標準正規変量 (SNV)、多発性散乱補正 (MSC)、L1正則化 (L1N)、L2 正則化 (L2N)、Savitzky-Golay 平滑化 (SGS)、畳み込みによる平滑化(CS)、および信号の微分 (SD))、測定スペクトルの平均センタリングバージョンに対する複数の各変換のパフォーマンスを評価すること、および評価の結果、変換されたスペクトル(測定スペクトルの平均センタリングバージョンを変換したもの)を選択すること。
【0054】
本方法にはさらに、変換されたスペクトルの全波長域のサブセットである、少なくとも1つの波長域を選ぶことが含まれ得る。変換されたスペクトルを処理するために機械学習モデルが使用される。
【0055】
本方法にはさらに、変換されたスペクトルを潜在空間のコンポーネントに分解することが含まれ得る。変換されたスペクトルを訓練された機械学習モデルを使って処理するプロセスには、機械学習モデルの個々のインスタンスを使って潜在空間のコンポーネントを処理することが含まれ得る。
【0056】
機械学習モデルは、例えば、ニューラル加法モデル、人工ディープニューラルネットワーク、および畳み込みニューラルネットワークのうち1つ以上からなる。
【0057】
本方法にはさらに、変換されたスペクトルを潜在空間のコンポーネントに分解することが含まれ得る。測定されたスペクトルを訓練された機械学習モデルを使って処理するプロセスには、機械学習モデルの個々のインスタンスを使って潜在空間のコンポーネントを処理することが含まれ得る。
【0058】
潜在空間のコンポーネントは、部分的最小二乗法または主成分分析を適用して生成され得る。
【0059】
判定の段階は、感度ターゲットおよび特異度ターゲットを受け取ることと、感度および特異度のターゲットに従って検査対象とする生理的状態を出力することが含まれ得る。
【0060】
検査対象とする生理的状態には、被験者がウイルスに感染しているか否かが含まれ得る。
【0061】
検査対象とする生理的状態には、被験者がCOVID-19に感染しているか否かが含まれ得る。
【0062】
検査対象とする生理的状態には、大麻またはTHCによる機能障害が含まれ得る。
【0063】
検査対象とする生理的状態には、アルコールによる機能障害が含まれ得る。
【0064】
測定はフーリエ変換近赤外分光器を用いて行うことができる。
【0065】
分光器には試料容器を受け取るプラットフォームを有してもよく、測定は被験者の指において直接実施できる。
【0066】
別の態様によると、プロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムのコードを保存している非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体が提示されており、プロセッサによって実行されることにより、プロセッサは前述の態様のうちいずれかの方法およびそれらの適切な組み合わせを実行する。
【0067】
別の態様によると、以下からなる装置が提示されている。ランプ、少なくとも1つの分光器、被験者の身体部分に対するレシーバーを持つインターフェイス、少なくとも1本のソースファイバーおよび少なくとも1本のリターンファイバー(ランプおよび少なくとも1つの分光器をレシーバーに光学的に結合していて、ソースファイバーはランプの光を身体部分に向けるよう配置されており、リターンファイバーは身体部分を透過または反射した光を受けて、受けた光を少なくとも1つの分光器に向けるように配置されている)。
【0068】
身体部分が指の場合、レシーバーの第1の表面は指の腹に接触するよう、第2の表面は指の先に接触するように配置されている。その時、少なくとも1本のソースファイバーは、ランプからの光が第2の表面を通って指に向かうように配置され、少なくとも1本のリターンファイバーは、身体部分から第1の表面を通って透過された光を受け取るように配置されている。
【0069】
身体部分が指の場合、レシーバーの第1の表面は指の腹に接触するよう、第2の表面は指の先に接触するように配置されている。その時、少なくとも1本のソースファイバーはランプの光が指に向かうように配置され、少なくとも1本のリターンファイバーは指から反射された光を受け取るように配置されている。
【0070】
少なくとも1つの分光器は、可視スペクトルに光を出力するように設定された第1の分光器と、近赤外スペクトルに光を出力するよう設定された第2の分光器を含み得る。
【0071】
第1の分光器はさらに近赤外スペクトルの光を出力するように設定し得る。
【0072】
第1の分光器は、約350 nm~1,000 nmの波長を持つ光を出力するように設定でき、第2の分光器は約900 nm~2,500 nmの波長を持つ光を出力するように設定できる。
【0073】
装置はさらに、通信ポート、および少なくとも1つの分光器と通信ポートに通信的に結合されたコントローラを含み得る。コントローラは、ランプから身体部分に、近赤外スペクトルと可視スペクトルのうち少なくとも1つの波長域からなる光を当て、身体部分を透過した光または反射した光、またはその両方の光のスペクトルを少なくとも1つの分光器を用いて測定し、測定スペクトルを通信ポートに出力する。
【0074】
装置はさらに、通信ポートに通信的に接続されたプロセッサ、プロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムのコードを保存している非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含み得る。プロセッサによって実行されると、プロセッサは以下のことを行う。1) 測定されたスペクトルを、検査対象とする既知の生理的状態を示す参照スペクトルと比較し、被験者の分析対象成分は直接参照せずに、測定スペクトルと参照スペクトルの類似性から、被験者が検査対象とする既知の生理的状態にあるかどうかを判定する。または、2) 検査対象の生理的状態を示す参照スペクトルで訓練した機械学習モデルを使用して測定スペクトルを処理するというやり方で、被験者の分析対象成分は直接参照せずに、被験者が検査対象とする生理的状態にあるかを判定する方法を実行する。
【0075】
少なくとも1つの分光器には、フーリエ近赤外分光器が使用できる。
【0076】
別の態様によると、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法が示されており、それは以下の過程から成り立っている。ある身体部分をレセプターに接触させる。電磁放射線 (EMR) の発生源を、一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにする。波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定する。測定されたスペクトルを参照スペクトルと比較し、被験者に関する検査対象の生理的状態を判定する。
【0077】
測定は、フーリエ変換近赤外分光器を用いて実施できる。
【0078】
分光器は試料容器を受け取るプラットフォームを有してよく、測定は被験者の指において直接実施できる。
【0079】
別の態様によると、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法が示されており、それは以下の過程から成り立っている。被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを決定する。ある身体部分をレセプターに接触させる。電磁放射線 (EMR) の発生源を、一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにする。波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定する。測定されたスペクトルを参照スペクトルと比較することにより、被験者に関する検査対象の生理的状態を判定する。
【0080】
測定はフーリエ変換近赤外分光器を用いて行うことができる。
【0081】
分光器は試料容器を受け取るプラットフォームを有してもよく、測定は被験者の指において直接実施できる。
【0082】
別の態様によると、被験者に関する検査対象の生理的状態を調べるための装置が提示されており、それは約350 nmから約2500 nmの間の複数の波長を発する電磁放射(EMR)の発生源(動作可能な状態で電源に接続されている)、試料に合わせたサイズのレセプター(1つ以上のポートを有する)、EMRの発生源と連結した1つ以上の入力放射線誘導エレメント、および、検出器と連結した1つ以上の出力放射線誘導エレメント(1つ以上の入力放射線誘導エレメントおよび1つ以上の出力放射線誘導エレメントは、1つ以上のポートと光学的に位置が揃えられ、レセプターが試料に接触する時、レセプター内でのEMRの経路となる)、試料を透過または試料から反射したEMRを測定する検知器(動作可能な状態で処理システムに接続されている)、処理システムからなり得る。処理システムは、透過または反射したEMRの測定スペクトルを参照スペクトルと比較して検査対象とする生理的状態を導き出す。検査対象の生理的状態は、被験者がCOVID-19に感染しているか否かである。
【0083】
検出器にはフーリエ変換近赤外分光器が含まれ得る。
【0084】
この概要は、すべての態様の範囲全体を必ずしも記述するものではない。その他の態様、特徴、および長所は、特定の実施形態に関する以下の記述を見れば、当業者には自明である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
様々な実施形態のこれらおよびその他の特徴は、添付図面を参照とする以下の記述から一層自明となる。
【0086】
【0087】
図2は先行技術 (US 6,657,717) で、グロブリン、グルコース、尿素、クレアチニン、コレステロール、HASの、500 nmから1400 nmの波長域に及ぶ吸光度スペクトルを示す。
【0088】
図3は例示的な実施形態に基づく装置の概略図を示す。
【0089】
図4は例示的な実施形態に基づく装置の概略図を示す。
【0090】
図5は例示的な実施形態に基づく開発パイプラインの概略図を示す。
【0091】
図6は例示的な実施形態に基づく、被験者の検査対象とする状態を判定するためのシステムの概略図を示す。
【0092】
図7は
図6のシステム内の情報のフローを示したブロック図を示す。
【0093】
図8Aおよび8Bはそれぞれ、反射インターフェイスの透視図および8A-8A線に沿った断面図である。
【0094】
図9Aおよび9Bはそれぞれ、透過インターフェイスの透視図および9A-9A線に沿った断面図である。
【0095】
図10は、例示的な実施形態に基づく、
図8Aおよび8Bまたは
図9Aおよび9Bのインターフェイスを用いて取得したスペクトルデータの処理方法を示したフロー図である。
【0096】
図11は、
図10の方法の一部であり、入力データ処理の方法を示したフロー図である。
【0097】
図12は、
図10の方法の一部であり、外れ値検出を行う方法を示したフロー図である。
【0098】
図13は、
図10の方法の一部であり、最適化パイプラインを実施する方法を示したフロー図である。
【0099】
図14は、検査対象の状態を判定する様々なモデルの適用を示すフロー図である。
【0100】
図15は、
図10のパイプラインを前処理する効果を図で示したものである。
【0101】
図16は、
図13の最適化パイプラインの実施方法を示すフロー図である。
【0102】
図17は、
図16に見られるコンフィギュレーションブロックを示すブロック図である。
【0103】
図18は、
図10の最適化パイプライン実施の一環として行う波長削減の一例である。
【0104】
図19A~Cおよび20A~Cは、スペクトルデータを処理して検査対象の状態を得るために適用が可能な例示的モデルである。
【0105】
図21A~Cは、スペクトルデータを処理して検査対象の状態を得るために使用が可能な例示的システムを示すブロック図である。
【0106】
図22は、状態モデルを使って検査対象の状態を得るためにスペクトルデータを処理する、例示的な処理ダイアグラムである。
【0107】
図23は、分光計測値を取得するためのインターフェイスと測定値を処理するための分光器を合わせ持った装置の一例である。
【詳細な説明】
【0108】
本発明は、被験者について検査対象とする生理的状態を判定するための非侵襲的方法および装置に関するものである。本方法は、被験者について検査対象とする生理的状態を示す生化学的プロファイルまたはフィンガープリントを判定するのに用いられる。
【0109】
本文書内で、「~からなる(comprising)」、「~を有する(having)」、「~を含む(including)」、「~を含有する(containing)」およびその文法的変形は、包括的または非限定的なものであり、その他の言及されていない要素や方法、段階を排除するものではない。 「主に~から構成されている(consisting essentially of)」という語が、使用または方法に関連して使われる時は、その他の要素や方法の段階が存在し得ることを示しているが、こうしたその他の事項は、言及される方法や使用の機能のしかたに実質影響しない。「~から構成されている(consisting of)」という語が使用または方法に関連して使われる時は、その他の要素や方法段階の存在を排除する。ある一定の要素や段階からなる (comprising) と本文書内で記述されている使用または方法は、実施形態が特別に言及されているか否かにかかわらず、一定の実施形態においてはこれらの要素や段階から「主に構成されている」(consisting essentially of) が、他の実施形態においてはこれらの要素や段階から「構成されている」 (consisting) という場合がある。さらに、単数の使用には複数が含まれ、「または (or)」は特に断りがない限り「および/または (and/or)」を意味する。本文書内で使用される「複数」の語は、1つより多いことを意味し、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上などである。本文書内で他に定義されていない限り、本文書内で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同一の意味を持つ。「約 (about)」の語は、与えられた値からおよそ+/-10%の差異を指す。そのような差異は、特に言及されているか否かにかかわらず、本文書内で提供されているいかなる値にも含まれていることは理解されるべきである。本文書内で「a」または「an」の語が「~からなる(comprising)」とともに使用されると、それは「1つの」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、「1つまたは1つ以上」という意味にもなる。
【0110】
「身体部分」または「被験者の一部」という表現が本文書内で使用される時、それは、電磁放射 (EMR) を当てる対象の人間の要素または部分を指す。要素または部分は、例えば、耳たぶ、指、腕、脚、胴体、頬、足の指を指し得る。
【0111】
本文書内では、被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法が記述されている。例えば、本方法には、身体部分を装置のレセプターに接触させること、電磁放射線 (EMR) の発生源を、例えば約350から約2500 nmの一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにすること、波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定することが含まれ得る。身体部分の血液および間質液内にある2つ以上の分析対象成分の量を決定するアルゴリズムを用いて、スペクトルの数量的数学的分析を実施する。2つ以上の分析対象成分の量(例えば、濃度またはレベル)が、被験者の生化学的プロファイルまたはフィンガープリントを導き出すのに使用される。
【0112】
2つ以上の分析対象成分の量(生化学的フィンガープリントは生化学的プロファイルとも呼ぶ)は、例えば、健康な人の断面など、参照(コントロール)被験者から得られる2つ以上の分析対象成分の参照値と比較してデータを出し、被験者に関する検査対象の生理的状態を示すのに使用できる。さらに、生化学的フィンガープリント(生化学的プロファイル)は時間をかけてモニターし、同じ被験者から取得した2つ以上の分析対象成分の以前の値と比較してデータを出し、被験者について検査対象とする生理的状態の管理に使用できる。
【0113】
生化学プロファイルは、被験者の検査対象の生理的状態を判定するために、生理学的パラメータと組み合わせることができる。「健康状態」には、例えば中毒状態の結果としての生理的状態が含まれ得る。中毒状態は、例えば(これらに限定されないが)大麻の摂取、アルコールの接種、大麻とアルコールの両方の摂取に誘発される場合、またはその他の毒物の摂取、例えば(これらに限定されないが)アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、およびニコチンの摂取の結果によって誘発される場合が含まれ得る。
【0114】
本文書内で記述される装置は、被験者に関する検査対象の生理的状態が中毒状態を示しているか否かの判定に使用され得る。中毒状態だと判定されたら、是正措置が直接取られ得る、または検査結果が別の関係者に送られ、その関係者によって是正措置が取られ得る。例えば、もし本装置が道路脇での検査に使用され、装置の運用者(生理的検査および行動検査も同時に行っている場合がある)が警察官であれば、運転手の中毒状態を示す結果が出た場合、検査の運用者、例えば警察官は、是正措置を取り、車の押収、運転者の免許の一時停止、告発などを行うことができる。代わりに、検査の運用者、医療従事者、または警察官が、中毒状態(機能障害)を示す陽性の結果を第三者、例えば治安判事に送信し、是正措置が取られ得る。また、例えば、安全性が被験者の雇用条件であった場合、被験者が中毒状態(機能障害)を意味する陽性の結果を示していると判定されたら、結果を被験者の雇用主に送ることができる。 安全性が被験者の雇用条件となり得る場合の例としては、被験者が航空交通管制官、パイロット、商用車の運転手、作業場での機械(大小問わず)の操縦員、原子力発電所の作業員である場合などが含まれる。
【0115】
「摂取」とは、例えば(これらに限定されない)、大麻、アルコール、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンなど中毒症状を引き起こす可能性のある物質が経口的に(例えば食品として)、吸入によって(例えば、喫煙、電子タバコ、フーカー、口腔スプレー、鼻からの吸引、吸引装置)、経皮的送達によって(例えば、パッチ、クリーム、スプレー、オイル)、または静脈内投与によって(例えば、注射または点滴)、被験者の体内に入る、取り込まれる、または投与されることを意味する。
【0116】
検査対象の生理的状態は、2つ以上の代謝産物(分析対象成分とも呼ぶ)に基づいて、そして選択により、1つ以上の生理的パラメータ、1つ以上の行動パラメータに基づいて検出または定義され得る。または、検査対象の生理的状態は、2つ以上の分析対象成分、および1つ以上の生理的パラメータと1つ以上の行動パラメータの両方を用いて定義され得る。健康状態は、複数の代謝産物(分析対象成分)を使用して記述できるが、これらの結果はさらに詳しく健康状態を定義するために、生理的パラメータや行動パラメータと組み合わせることができる。代謝産物は、健康状態において独立した役割を持っている、または、持っていないと判断され得る。 代謝産物、生理的パラメータ、またはその両方は、「変数」と呼ばれ、これらの変数は健康状態を記述するのに使用できる、または、これらの変数は健康状態を示すマーカーとみなすことができる。複数の代謝産物をその他の生理的変数(検査対象とする生理的状態となんらかの相関関係がある)と組み合わせて使用することにより、1つの分析対象成分を使用して生理的状態を判定するのに比べ、検査対象の生理的状態のより正確な判定を得ることができる。
【0117】
本文書内で記述される方法は、検査対象とする生理的状態と相関関係がありその状態に影響を与える可能性がある複数の変数またはマーカーの管理を可能にするため、被験者または患者の生理的状態を特徴づけ、判定するのに使用できる。
【0118】
中毒状態の結果生じる生理的状態を示すフィンガープリントは、複数の代謝産物、1つ以上の生理的パラメータ、または1つ以上の行動パラメータを使用して決定され得る。このような変数(代謝産物、生理的パラメータ、行動パラメータ)は、健康な人から決定され得るベースライン値と比較し、ベースライン値から逸脱している分が、被験者の検査対象とする生理的状態を示している。これらの代謝産物、生理的パラメータ、行動パラメータは、同じ被験者から時間をかけて決定される値と比較することもできる。これらの変数(またはマーカー)の経時的な値から逸脱している分が、被験者に関する検査対象の生理的状態の変化を示している。そのため、測定された生化学的フィンガープリントおよび生理的パラメータまたは行動パラメータは、検査対象とする生理的状態を経時的にモニターし、管理するために使用できる。
【0119】
被験者について検査対象とする生理的状態の非限定的な例には、例えば(これらに限定されないが)、大麻の摂取、アルコールの接種、大麻とアルコール両方の摂取の結果としての中毒状態、または、例えば(これらに限定されないが)アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンなどその他の毒物摂取の結果としての中毒状態が含まれ得る。 対応する生理的状態の生化学的フィンガープリントを取得するために決定され得る代謝産物の非限定的な例には、以下が含まれる(表1も参照のこと)。
i) 中毒状態(大麻により誘発される):2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。
ii) アルコールによって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分には、アルコール、アルデヒド、乳酸が含まれ得る。または、
iii) 一般的な中毒状態、例えば、大麻とアルコール両方に誘発される、または、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取などによって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、 デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0120】
被験者に関する検査対象の生理的状態を非侵襲的に判定する方法の別例には、上記に要約したように、生化学的プロファイル(またはフィンガープリント)と被験者の1つ以上の生理的パラメータを決定することと、生化学プロファイルと1つ以上の生理的パラメータを使用することが含まれ、それにより被験者について検査対象の生理的状態を決定する。この方法では、生化学プロファイルは、ある身体部分をレセプターに接触させることと、電磁放射線 (EMR) の発生源を、例えば約350から約2500 nmなど一定の波長域にわたって、レセプターを通して身体部分に向け、EMRがその身体部分の血液および間質液に到達するようにすることによって決定される。波長域のスペクトルを取得する検出器により、身体部分の血液および間質液によって吸収された、反射された、またはそれを透過したEMRを測定し、アルゴリズムを用いたスペクトルの数量的数学的分析を実施し、身体部分の血液および間質液内にある2つ以上の分析対象成分の量を測定する。2つ以上の分析対象成分の量が、被験者の生化学的プロファイルを導き出すのに使用され、2つ以上の分析対象成分の参照値と比較される。 生化学プロファイルおよび1つ以上の生理的パラメータは、健康状態や、本文書内に記述したように、例えば中毒状態など対象となる生理的状態を判定するのに使用できる。
【0121】
検査対象とする生理的状態の特徴を明らかにするために、生化学プロファイルおよび1つまたは2つ以上の生理的パラメータを決定することに加え、1つ以上の行動パラメータも決定できる。 評価が可能な行動パラメータの非限定的な例には、知的鋭敏さの判定(例えば、名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テストが含まれるがこれらに限定されない)、1つ以上の運動機能テスト(例えば、往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテストが含まれるがこれらに限定されない)、機械を操作したり自動車(または運転シミュレーターを使用)を運転したりするなどの決められた課題を実行する能力、身体の健康状態、標準化した現場飲酒運転検査 (Newmeyer, Swortwood, Taylor, et al., 2017, Clin Chem, 63(3), 647-662. doi:10.1373/clinchem.2016.265371) が含まれる。
【0122】
例えば、運転シミュレーターは、路上運転テストの評価に役立つことが知られており (Micallef et al., 2018, Fundam Clin Pharmacol. doi:10.1111/fcp.12382)、シミュレーターは自動車の運転の代わりとして検査に使用できる。運転シミュレーターを用いた標準的かつ客観的な運転手段の研究によると、大麻の控えめな摂取 (すなわち 8% THC。500~750 mg のタバコは約40~60 mg のTHCを含有) の後、運転能力が低下することがわかっている。 報告されている影響には、蛇行運転の増加、減速、ステアリング制御の低下、反応時間の増大、車両間隔の増大が含まれる (Hartman et al., 2015, Drug Alcohol Depend, 154, 25-37. doi:10.1016/j.drugalcdep.2015.06.015; Lenne et al., 2010, Accid Anal Prev, 42(3), 859-866. doi:10.1016/j.aap.2009.04.021; Micallef et al., 2018, Fundam Clin Pharmacol. doi:10.1111/fcp.12382; Anderson, et al., 2010, J Psychoactive Drugs, 42(1), 19-30. doi:10.1080/02791072.2010.10399782; Ronen et al., 2010, Accid Anal Prev, 42(6), 1855-1865. doi:10.1016/j.aap.2010.05.006; Ronen et al., 2008, Accid Anal Prev, 40(3), 926-934. doi:10.1016/j.aap.2007.10.011)。
【0123】
対象となる生理的状態について調査がある場合、検査対象となる生理的状態の程度(ステータス)の判定をさらに助けるため、生化学プロファイルと生理的パラメータに行動パラメータのデータも組み合わせることができる。例えば、データ(検査値)を組み合わせて、例えば中毒状態など、被験者が検査対象の生理的状態において、そのしきい値、指標、割合、数値のセット、程度を超過したかどうかを判定できる。検査値の比較対象となる指標、割合、数値のセットを決定するのに使うベースライン(基準値)は、標準的な健常者を制御された条件の下で分析して決定されたものである。
【0124】
検査対象となる生理的状態の非限定的な例には、大麻、アルコール、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、アルコール、フェンサイクリジン、鎮静剤、抗不安材、コカインによって生じる中毒状態、カフェイン誘発性障害、およびニコチン誘発性障害が含まれる。例えば:
i) 中毒状態が大麻によって誘発されたものである場合、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。そして、生理的パラメータには、心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHCのうち、1つ以上が含まれ得る。1つ以上の行動パラメータには、知的鋭敏さの判断(名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テスト)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、機械を操作する、自動車を運転するなどの決められた課題を実行する能力、標準化した現場飲酒運転検査が含まれ得る。
ii)アルコールによって誘発される中毒状態の場合、2つ以上の分析対象成分には、アルコール、アルデヒド、乳酸が含まれ得る。生理的パラメータには、心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)が含まれ得る。1つ以上の行動パラメータには、知的鋭敏さの判定(名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テスト)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、機械を操作する、自動車を運転するなどの決められた課題を実行する能力、標準化した現場飲酒運転検査が含まれ得る。または、
iii)中毒状態が例えば大麻とアルコールの両方、または、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取による場合は、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。生理的パラメータには次のうち1つ以上が含まれ得る。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHC。1つ以上の行動パラメータには、知的鋭敏さの判定 (名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テストが含まれるがこれらに限定されない)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、機械を操作する、自動車を運転するなどの決められた課題を実行する能力、標準化した現場飲酒運転検査が含まれ得る。 (Newmeyer, Swortwood, Taylor, et al., 2017, Clin Chem, 63(3), 647-662. doi:10.1373/clinchem.2016.265371)
【0125】
データが、本文書内で記載されるように、装置によって収集された後、結果は保存され、または画面に表示され、または別の中央のCPUでさらなる分析または表示がなされる。 例えば、データは測定された生理的パラメータ、および、必要であれば測定された行動パラメータとともに、測定された代謝産物を分析する中央のコンピュータに送信することができ、被験者(患者)の生理的状態の総合的指標を判定する。 例えば、収集されたデータは、対象とする生理的状態について以前取得した既知のデータセットおよび決定されている「指標値」と比較することができる。指標値は、例えば0(患者は分析対象となっている生理的状態において重い中毒症状を示している)から1(患者は対象となる生理的症状において正常または健康の状態を示している)の範囲を取り得る。
【0126】
図3において、本文書内に記載されている方法に使用される装置または器具 (100) には、その構成部分として、被験者 (200) の皮膚の一部または身体部分と接触できるような形状のレセプター(第1レセプターとも呼ぶ)(10) を含む。電磁放射の発生源 (EMR) (30) はレセプター (10) に向けて照射する (40)。身体部分 (20) 内の2つ以上の成分との相互作用の後、EMRは収集され (50)、分析される。装置 (100) は
図1に示したものであったり、または、当該技術分野で知られている装置に基づいたものであったりすることが可能で、例えば、US 2013/0248695、US 5,361758、US 5,429,128、WO 93/16629、US 6,236,047 US 6,040,578 または US 6,240 306 (これらすべては参照することにより本文書内に組み込まれている)に開示されているものを含むが、これらに限定されない。被験者 (20) の身体部分内の化合物との相互作用後に収集されるEMR (50) は、被験者 (20) の身体部分によって反射されたか、それを透過したか、それによって吸収されたものか、またはそれらの混合であり得るが、それは使用する装置によって変わる。収集されたEMRの信号は分光器 (60) に通し、データは1つ以上のキャリブレーションアルゴリズムを使用して処理し (70)、身体部分 (20) 内のターゲットとする2つ以上の成分の濃度を求めて生化学プロファイルを導き出し、被験者の生理的状態を判定する。 必要ならば、データは無線またはケーブル (80) で、携帯電話または別の場所にあるCPUなど別の装置 (90) に転送することができる。転送先の装置には、データの収集もしくは結果の表示またはその両方を行うプログラムが搭載されている。血液中の数種類の化合物から得られる、そして非侵襲的な方法で測定されるスペクトルの非限定的な例を
図2に示す。
【0127】
図1に示される装置 (100) には、付属のストラップをつけることもできる。ストラップは、検査中に装置の制御の維持を補助することができる。
【0128】
測定中にレセプターに誤った圧力がかかることによる分散の影響を最小限に抑えるため、装置 (100) にはレセプターまたは第1レセプター (10) の周囲、下、またはすぐ近くに圧力センサー (15) をつけることができる。圧力センサーがある場合、それは、レセプターに接触している皮膚の表面とレセプター自体の間にかかる圧力が低過ぎたり、高過ぎたりするのを判定するのに使用される。例えば、レセプター (10) に対する圧力が低過ぎたり高過ぎたりする場合は、圧力センサー (15) からの信号を使って装置の下部分を点灯させ、レセプターに対する身体部分の当て方を修正し再調整する必要を知らせることができる。
【0129】
装置 (100) は1つ以上のレセプターを有することができる。例えば(これは限定的なものであると見なされるべきではないが)、人差し指などの身体部分 (20) を装置 (100) が測定している間、例えば手のひらなど別の身体部分を装置の上にのせることができる。つまり、被験者は第1の身体部分の測定中、第2の身体部分も装置に当てるということである。この例では、
図4に示すように、装置 (100) は第1レセプター (10) と第2レセプター (25) を含むことができ、第2レセプターの位置は第2の身体部分が接する場所である。
【0130】
第2レセプター (25) は第1レセプター (10) と同様の方法で構成が可能で、EMRが被験者の第2の身体部分内にある化合物と相互作用した後に得られるEMR (50’) (身体部分を反射した、透過した、またはそれによって吸収されたもの、またはそれらの組み合わせからなる)は、同一のまたは別の分析対象成分の存在を判定するのに使用される。
図4の例では、EMR (30) の発生源は、第1レセプター (15) と第2レセプター (25) の両方に対して同一であることが示されている。この例では、EMRの発生源の発する波長域が、第1の身体部分および第2の身体部分内にある1つまたは複数の分析対象成分の存在を判定するのに使用できる。例えば、生理的状態が中毒状態である場合、第1の分析対象成分または第1の分析対象成分グループは、前述した通り、大麻によって誘発される中毒状態に関係する成分とし、第2の分析対象成分または第2の分析対象成分グループは、アルコールによって誘発される中毒状態に関係する成分とすることができる。要望があれば、EMR (30) が発する波長のセットは、その他の生理的状態、例えば、オピオイドによって誘発される中毒状態に関連する第3の分析対象成分(単数または複数)の存在を判定するためにも使用できる。第3の分析対象成分(単数または複数)は、第3の波長域セットを用いて分析できる。その波長域は第1や第2の波長域と重なる場合も明確に別個の場合もある。 第3の波長域セットは第1のレセプターか第2のレセプターのいずれかに照射することができるが、第3の波長域セットは装置 (100) 内の第3のレセプターに照射することもできる。その場合、例えば手などの身体部分が装置 (100) の上にのせられた時、第3のレセプターが第3の身体部分に接触できるようにする。
【0131】
代わりに、別のEMR発生源を装置 (100) 内の第1のレセプターと第2のレセプターに向けて照射することもできる。例えば、EMRの1つの発生源(例えばEMRの第1の波長域を発する第1のLED)を光ファイバー (40) 経由で第1レセプター (15) に向けて照射し、EMRの第2の発生源(例えばEMRの第2の波長域を発する第2のLED)を光ファイバー (40’) 経由で第2レセプター (25) に向けて照射することができる。 この構成では、波長の第1セットと第2セットは異なるものであるが、波長域は重なる場合も明確に別個の場合もあり、装置 (100) は第1の身体部分と第2の身体部分それぞれに異なる分析対象成分の存在を特定することがある。例えば、生理的状態が中毒状態である場合、第1の分析対象成分または第1の分析対象成分グループは、前述した通り、大麻によって誘発される中毒状態に関係する成分とし、第2の分析対象成分または第2の分析対象成分グループは、アルコールによって誘発される中毒状態に関係する成分とすることができる。上記と同様な方法で、要望があれば、EMR (30) が発する第3の波長セットは、第3の生理的状態、例えば、オピオイドによって誘発される中毒状態に関連する状態と関わりがある第3の分析成分(単数または複数)の存在を判定するために使用できる。この例では、第3セットの波長は(この波長は、第1セットと第2セットの波長とは重なる場合も明確に別個の場合もある)、第1のレセプターまたは第2のレセプターに向けて照射する、または、第3セットの波長を、第3の身体部分に接触するよう構成されている装置 (100) 内の第3レセプターに向けて照射することもできる。
【0132】
本実施形態の第1レセプター (10) および第2レセプター (25) (そして、もしあれば第3レセプター)は、それぞれ皮膚試料と接触するようになっている片面プローブ(探針)を有することができる。そのようなプローブは同心円状に束ねられた光ファイバーから構成されることが可能で、その場合、各円がEMRの入力または出力を運ぶファイバーからなる。内側の円がEMRの入力を運ぶ場合、外側の円が出力を運ぶようにすることができ、またそれは逆にすることもできる。代わりに、プローブは1本以上の入力光ファイバーとそれに近接して配置されている別個の出力光ファイバーのセットからなる場合もある。この種類のプローブは、反射、吸収、透過を用いて、血液および間質液中にある2つ以上の化合物の濃度を測定するのに使用される。使用中、プローブは指、手、腕、背中、その他(
図1を参照)の皮膚に接触させる。
【0133】
身体部分内の化合物を測定する上で、本文書内で記述されているように、装置は別の構成で用いることも可能である。それは、US 2013/0248695、US 5,361,758、WO 93/16629、US 6,236,047、US 5,429,128、US 6,040,578 または US 6,240,306 (これらすべては参照することにより本文書内に組み込まれている)に記述されている構成を含むがこれらに限定されない。それは、各身体部分内にある2つ以上の関連ある化合物の濃度を測定し、生化学プロファイルを導き出して被験者の生理的状態を判定する上で使えるようにするために、キャリブレーションアルゴリズムに修正を加えたものである。
【0134】
本実施形態は、身体部分内の2つ以上の化合物濃度における差異を説明するアルゴリズムの開発方法を提示する。 例えば、これは限定的と見なされるべきものではないが、化合物(または分析対象成分、または代謝産物)の1つがグルコースである場合、血液および間質液それぞれについてその中のグルコースの濃度を測定できる。これらの値から、グルコースの参照測定値が決定でき、この参照値がアルゴリズム開発に使用できる。身体部分の吸光度の値は波長セットにおいて取得できるが、それは従属変数として設定でき、グルコースの参照測定値は独立変数として使用できる。これらの値はその後、部分的最小二乗法や重回帰分析などを含む(これらに限定されない)適切な統計的処理を用いて処理し、血中グルコースのアルゴリズムを導き出す。この手順は、血液や間質液内の、濃度を知りたい分析対象となるどの化合物または成分に対しても、同様に繰り返すことができる。
【0135】
所定の化合物の濃度は、化合物試料のキャリブレーションセットの濃度値をプロットしたもの(本実施形態の方法を用いて決定される)と、異なる方法によって直接測定されたキャリブレーションセットの濃度値を比較して、例えば最小二乗適合などの(これに限定されない)統計分析から導き出されるキャリブレーション方程式を用いて本実施形態に従って計算できる。しかし、その他の統計的検査、例えば、重回帰 (MLR)、部分的最小二乗法 (PLS) など(これに限定されない)も使用可能であることが当該技術分野で知られていることは理解されるべきである。1つ以上の化合物の濃度を測定するには、当業者が知っているいかなる既知の方法も使用できる。
【0136】
例えばグルコースの場合(これに限定されると見なされるべきではない)、血中グルコース濃度は、当技術分野でin vitro法として知られている方法によって容易に測定できる。間質液のグルコース濃度は、逆イオントフォレシスを使用して測定できる。 THCおよび関連する代謝産物の場合は、例えば(これらに限定されないが)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、 デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH) の濃度は、当該技術分野でよく知られている in vitro 法、例えば液体クロマトグラフィーおよびタンデム質量分析計 (Schwope D., et. al., 2011, Anal.Bioanal Chem.410:1273-1283)、または GC-MS (Marsot, A. et. al.2016, J. Pharm.Pharm Sci 19:411-422) を使用して容易に測定できる。血液中のその他の対象分析成分または化合物、例えば(これらに限定されない)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB(アポA1およびアポB)、総タンパク、トリグリセライド、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸、ヘマグロビン、血液尿素窒素 (BUN)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、トリグリセライド、重炭酸塩、電解質、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、イオン化カルシウム、グリコヘモグロビン(A1C)、高比重リポタンパク (HDL)、総コレステロール、オメガ3脂肪酸の検出は、当該技術分野でよく知られている。これらの既知の検査は、対照処置または管理された条件で一定のTHCの影響を受けた被験者内の化合物または分析対象成分について、その参照測定値を測定するのに使用することができる。これらの値は、血液中の対応する分析対象成分を非侵襲的に測定するためのアルゴリズムを作る上で、独立変数として使用できる。このような化合物専用アルゴリズムは、身体部分の血液内の化合物を非侵襲的方法によって適切に推定するのに使用できる。
【0137】
被験者の生理的状態に関連する化合物または成分のセットを選択し、標準的な測定技術を用いることにより、生理的状態と相関するこれらの化合物の相対的濃度を記述する生化学プロファイルを決定することができる。 例えば、生理的状態(検査対象とする状態)がTHCによって誘発される中毒状態の場合、2つ以上の分析対象成分(以下が含まれるがこれらに限定されない)を測定することができ、これらの成分の相対的な量はTHCによる中毒状態の生理的状態と相関関係にある。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN), カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。 その結果、このような成分は生理的状態の指標である生化学プロファイルを得るのに使用することができる。 本文書内に記述されている方法を用いることにより、THC代謝に直接的または間接的に由来する複数の成分に関わる全血カンナビノイドの薬物動態を、生理的状態の程度を判定する上で検討することができる。
【0138】
生化学プロファイルというのは、検査対象とする生理的状態と相関関係にあるいくつかの成分を測定して得られた数値のセットから導き出される出力を意味する。
【0139】
さらに、ターゲットとする健康状態(例えば、被験者の検査対象とする生理的状態)に関連する生化学プロファイルには、健康状態(または生理的状態)に対応して変化することが観察されている複数のゴースト成分(その正体は知られている場合も知られていない場合もある)が含まれ得る。ゴースト成分は、管理下またはバックグラウンド条件下のある波長域にわたる吸収スペクトル(これは各ゴースト成分のベースラインを求めるために測定する)を、誘発された生理的条件または状態下の試料におけるある波長域にわたる吸収スペクトルと比較し、誘発された生理的条件のもとで、ベースラインのゴースト成分の値と比較した時増加または減少している1つ以上のゴースト成分を選択することによって特徴づけることができる。
例えば、ゴースト成分の特定は、ある波長域にわたる吸収のパターンを分析し、ゴースト成分を特徴づける波長を特定することによってなされる(例、ゴースト成分は、その成分に特有の1つまたはそれ以上の波長において吸光度が増加または減少する)。あるゴースト成分に関連する波長パターンを特徴づけることにより、各ゴースト成分についてベースラインの値を定めることができ、ある生理的状態に対応する各ゴースト成分の値とベースライン値を比較する。ゴースト成分には、使用できる複数の成分および他の既知の成分が含まれることがあり、本文書内に記述されているような生理的状態を定義する上で用いられるフィンガープリントまたは生化学プロファイルを得ることができる。
【0140】
ゴースト成分または既知の成分を特定し特徴づけるこの過程は繰り返して行い、取得したデータセットに適切なソフトウェアおよび機械学習を適用して、生化学プロファイルと生理的状態の決定のために使用する成分セットの予測精度をさらに最適化することができる。機械学習を使用して大きなデータセットに基づく複雑なモデルを分析し、データセット内の許容できる「局所的最小値」を特定し、生理的状態のステータス(程度)に関連する成分のセットを特定するようディープニューラルネットワークの訓練を可能にする。サポートベクターマシン (SVM) や畳み込みニューラルネットワーク (CNN) は交差検証とともに用いることができ、アルゴリズムの持つ学習データの一般化能力に関して理解の手がかりとする。交差検証では、データを任意の数のグループに分割し、1つのグループを検査のために、残りのグループを学習のために繰り返して使用する (Mirowski, P.W., et. al., 2008 IEEE Workshop on Machine Learning for Signal Processing, Cancun, 2008, pp. 244-249.)。ハイパーパラメータチューニングは正確かつロバスト(頑健)な最終予測を開発するのに使用できる。
【0141】
この方法では、被験者の検査対象とする生理的状態を判定する上で、複数の機械学習アルゴリズムが実行できるよう、アダプティブな(適応型の)機械学習プラットフォームが使用できる。 機械学習プラットフォームには、複数の機械学習コンポーネントが含まれ、それぞれのコンポーネントが機械学習アルゴリズムと関連している。例えば、機械学習コンポーネントは、実験データ(例えば、生化学プロファイルデータ、生理的パラメータ、行動パラメータなど1つ以上のデータベースに保存されているデータ)を受け取り、そのデータを生み出した、検査対象の生理的状態を示す内在的なメカニズムの特徴であるパターンや予測を決定する1つ以上の訓練済みの(またはコンフィギュアされた)機械学習アルゴリズムを使用するコンポーネントであり得る。機械学習コンポーネントは、検査対象とする生理的状態に関連した、根底にある未知の確率分布に対応する特徴をとらえるために、観測例(訓練データのセットからなど)を利用することができる。適応型機械学習システムではユーザーが意思決定戦略を更新することができる。さらに、適応型機械学習システムは、中央のCPUと動作可能な状態でリンクされ通信している場合、中央のCPUが意思決定戦略を更新できるよう設定できる。それは、本文書内に記述されているように、携帯端末(実行可能命令で構成されている1つ以上のプロセッサからなる)のユーザーにリアルタイムで伝達される、もしくはデータベースが更新され携帯端末(実行可能命令で構成されている1つ以上のプロセッサからなる)に更新された出力がアップロードされた時に伝達される。
【0142】
例えば(これに限定されないが)THC予測パイプラインなど、機械学習を用いた予測パイプラインの開発手続きには、大まかに3つのステップを含み得る。それはデータ前処理、モデル選択、そしてチューニングである(
図5を参照)。
【0143】
データ前処理:データ前処理は、全体的なデータセットから高品質の訓練データ(学習データ)を選択し、データを整理するのに用いられる。 マイクロプロセッサは本文書内に記述される装置からデータを収集し処理するようソフトウェアから指示される。 収集されたデータは集約され(既存のデータベーステーブルに新しいサンプルを追加するなど)、フォーマットされ(データタイプとコラムヘッダーがデータベースの全テーブルで一致していることを確認する)、クリーニング(フィルタリング、内挿、必要であればデータセット中の欠損値を維持)が行われる。 整理されたデータは正規化され、生成された特徴量が中毒状態を予測するのに使用される。最終的な予測アルゴリズムによって使用される特徴量には、分光器によって測定された全分析対象成分を含む周波数領域、時間領域、空間領域のデータが含まれる。必要に応じ、生成された特徴量は、選択によって、空間領域または周波数領域のフィルタリング法を組み合わせることにより視覚的に抽出することができる。データ前処理に使用できるソフトウェアには、NumPY、SciPy、 Pandas、Matlotlib、Seabornが含まれるが、これらに限定されない。 マイクロプロセッサは、リニアアレイ検出器をスキャンしコンピュータ処理されたスペクトルの2次微分を計算するようソフトウェアから指示される。マイクロプロセッサはその後、選択された複数の波長における吸光度および2次微分の値を用いて、測定対象とする特定成分の濃度を計算することができる。
【0144】
モデル選択:モデルアーキテクチャはデータの構造および次元性に基づくべきもので、同様のデータセットに関する以前の文献にある既知のベースラインをまず評価した上で、さらなる複雑性を導入する。複数のアルゴリズム(サポートベクターマシン、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、2項間相互作用の一般化加法モデルを含むが、これらに限定されない)が、アルゴリズム開発およびモデル選択のステップに使用できる。モデルの複雑性(例、ノード数、レイヤー)が適切に選択されるよう、ボトムアップ法が用いられる。それは、最初のロジスティック回帰モデルをベースラインとし、新規の徐々に複雑性を増す各モデルをそれと比較するというものである。このデータを分析するのに使用される機械学習アルゴリズムには、サポートベクターマシン (SVM)、畳み込みニューラルネットワーク (CNN) が含まれるがこれらに限定されない。問題領域に対して複雑過ぎる機械学習モデルは、内在する分布を学習する代わりに個々のサンプルを記憶することができる。
【0145】
モデル評価:交差検証は、データ数が限定的な時に一連の訓練およびホールドアウト法テスト分割を試すことにより、内在するデータ分布を学習するアルゴリズムの能力についてより優れた見識を提供するデータシャッフル法である。例えば、データは2つのサブセクションに分割することができ(訓練データおよびテストデータ)、テストデータはそのままにして訓練データの一部をふたたび分割し、もとの訓練データのサブセクションからいくつかの訓練データセットおよびテストデータセットが作成されるようにする。このモデルは異なるデータセットにおいて繰り返し訓練し検証する。最終的なモデルは、もとのテストデータのサブセクションと照合して、最終的検証を行う。交差検証は、選択されたモデルの汎化能力の観察をより容易にしつつ、データセットを訓練 (80%) とテスト (20%) に分割した時に限定的になってしまうような小さめのデータセットを拡張する。モデル選択に使用できるソフトウェアには、NumPY、Pandas、Matlotlib、Seaborn、Tensorflow、Keras が含まれるがこれらに限定されない。
【0146】
チューニング: 選択されたモデルはパフォーマンスのために最適化される。例えば、ハイパーパラメータ探索(学習率、バッチサイズ、正則化係数など)が実行できる。ハイパーパラメータチューニングは、ロバストな最終予測を開発するのにも使用できる反復プロセスである。ファインチューニング(微調整)に使用できるソフトウェアには、NumPY、Pandas、Tensorflow、Keras が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
継続的学習:新しいサンプルは、モデルの重みの更新、チャンピオン/チャレンジャーなどの(これらに限定されない)方法を使ってモデルに追加される。モデルの重みの更新は既存のモデルに訓練のさらなる反復を追加し、モデルが内在するデータ分布を決定するかたわら、新しいサンプルが検討されるようにする。チャンピオン/チャレンジャーは、既存のモデルのパフォーマンスを、潜在的に改善された見識や方法をもって新規情報に基づいて設計された新規モデルと比較する。継続的学習戦略はいくつか並行して使用できる。
【0148】
そのため、本文書内にはあるシステムも記述する。そのシステムはコンピュータシステムを含み、それはコンピュータプログラムの指示がプログラムされている1つ以上のプロセッサからなる。プログラムが実行されると、コンピュータシステムはあるサービスプラットフォームを提供するが、そこでは、本文書内に記述するように、例えば生化学プロファイル、生理的パラメータ、行動パラメータからなるデータセットを用いて、デベロッパーが機械学習モデルを訓練するための訓練項目情報を入手できるようになっている。訓練項目情報は入力と予測出力を示す。予測出力は、1つ以上の機械学習モデルが入力を処理して得られるものである。さらに、コンピュータシステムは、サービスプラットフォームを通して、1つ以上の機械学習モデルから導き出される入力/出力情報を得ることができる。入力/出力情報は、少なくとも1つの機械学習モデルに入力として提供される項目を示す。サービスプラットフォームはその後、機械学習モデルから導き出される入力/出力情報を提供することができ、第1の機械学習モデルを更新する。第1の機械学習モデルが入力/出力情報(第1の機械学習モデルに入力として提供される)に基づいて更新されるようにする。更新された出力はその後、装置が中央CPUと使用可能な状態でリンクされ通信を行っている時に、現場で使用する装置の更新に使用できる。この方法では、中央CPU(サービスプラットフォームなど)は意思決定戦略を更新するのに用いられ、それは本文書に記述されている携帯装置のユーザーにリアルタイムで、または、データベースが更新される時に送信され、更新された出力が携帯装置にアップロードされる。
【0149】
生化学プロファイルは、測定された成分とゴースト成分の相対的量の比率として、または、測定された成分とゴースト成分の指標として表すことができる。例えば、指標は、生理的状態と正または負の関連を示す血液中の様々な化合物のうち、不活性成分に対する活性成分の割合として示すことができる。
【0150】
上記の機械学習プロセスは、ゴースト成分、既知の成分、ならびに他の生理的および行動的パラメータ(本文書内での定義に従う)を特徴付け、反復されるデータ入力により、成分セット、生理的パラメータ、行動パラメータの予測精度が時とともに向上する。
【0151】
例えば(これに限定されない)、THCに誘発される中毒状態では、被験者は表1のような成分の組成を示し得る。本文書内に記述される方法を例示するために、この表が単純化されたデータセットを示していることは理解すべきである。既知の成分やゴースト成分を含む他の成分は、成分「A、B… C、A’、B’、…C’、A”、B”…C”」として示されている。これらの他成分は、生理的状態に対応して、またはそれとの相関関係で増加または減少し、本分析に含めることができる。表2に示すように、選択された様々な成分の相対量の比率は、生化学プロファイルを得るのに使用できる。代わりに、指標、例えば、不活性成分(THCによって誘発される状態と正の相関関係はあるが、その状態を作り出すことには寄与しないと知られている成分。既知の成分もゴースト成分も含まれ得る)に対する既知の「活性」成分グループ(THCによって誘発される状態と相関関係があり、その状態を作り出すことに寄与する成分。既知の成分もゴースト成分も含まれ得る)の相対的な割合を、生化学プロファイルを導き出すのに使用することもできる。
【0152】
マリファナの喫煙の場合、吸い込んだ後最初の数分でTHCは急速にピークを迎え、その後素早く(数時間内に)減少する。THCはその後8時間以上約1~2 ng/mlの低い値にとどまる。マリファナを常習的に使用する者においては、検出可能な量の血中THCが何日も続くので、この成分だけではTHCに誘発される中毒症状の生理的状態に関して信頼できる目印にはならない。 マリファナの常習者においては、残留THCが全血中0.5~3.2 ng/mlの量で 24~48時間以上検出された(血清中1.0~6.4 ng/ml; Skopp G., and Putsch, L., 2004, J. Anal Toxicol.28: 35-40)。
【表2】
【0153】
表2の例において、中毒状態では(摂取の1時間後)被験者は活性/非活性指標が(17.7+A)/(B+…+C)を示す一方、中毒状態後または対照の状態ではそれぞれの指標が (1+A’)/(B’+…+C’)、(0.7+A”)/(B”+…+C”) とかなり下回っている。 この例では、指標が規定値より大きければ、結果はTHCに誘発される中毒状態に関して陽性だと見なすことができる。規定値は、対照処置または管理された条件で一定のTHCの影響を受けた被験者において決定された分析対象成分の分析に基づいて決定される。例えば、(2+A)/(C+…+C) という指標値は、THCにより誘発される中毒状態に関して陽性の結果を示している。
【0154】
代わりに、対照処置または管理された条件で一定のTHCの影響を受けた被験者において決定された分析対象成分濃度の比率セットを、検査対象被験者の分析対象成分の同一比率セット(表2に示す)と比較することもできる。これらの比率セットは、THCに誘発された中毒状態にあるか否かのしきい値を超えたかどうかを判定するのに使用できる。
【0155】
しきい値に到達して被験者が対応する生理的状態において陽性であるか否かを判定する上で、測定された分析対象成分濃度を処理して生化学プロファイルを生成する他の方法も使用できる。
【0156】
他の生理的状態についても生化学プロファイルを決定するのに前述のアプローチと同様なアプローチが使える。他の生理的状態には、アルコールによって誘発される中毒状態、大麻とアルコールの両方によって誘発される中毒状態、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、およびニコチンの摂取によって誘発される中毒状態が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
生理的状態の目印として生化学プロファイルを取得することに加え、生理的状態の特徴付けをさらに助ける上で、他の生理学パラメータをさらに追加し使用することができる。さらに、行動パラメータも、取得された生理的パラメータおよび生化学プロファイルと合わせて検討することができる。行動パラメータの例には、知的鋭敏さの判定(例えば、名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テスト)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、決められた課題を実行する能力(例えば、機械を操作する、自動車を運転する)、標準化した現場飲酒運転検査が含まれる。
【0158】
例えば、生理的状態が大麻またはTHCによって誘発される中毒状態である場合は、生理的パラメータには以下が含まれ得るが、これらに限定されない。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC濃度、尿中のTHC濃度。そして、この生理的パラメータは、2つ以上の分析対象成分(以下に例をあげるがこれらに限定されない)を使って得られる生化学プロファイルデータと組み合わせて、生理的状態(THCに誘発される中毒状態)のステータス(程度)を定義する出力を作成できる。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、およびTHCに誘発される中毒状態に関連する1つ以上のゴースト成分。 さらに、行動パラメータ、例えば、知的鋭敏さの判定(名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テストが例として含まれるがこれらに限定されない)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテストが例として含まれるがこれらに限定されない)、決められた課題を実行する能力(例えば、機械を操作する、自動車を運転する)、標準化した現場飲酒運転検査を行うことができ、そのデータを生化学プロファイルおよび生理的パラメータと組み合わせることにより、生理的状態を判定する。
【0159】
これらの方法から得られる結果は統合することができ、生化学プロファイル、生理的パラメータ、行動パラメータ、またはこれらの組み合わせからなる値または指標を生成する。これらの値または指標値は、参照値または参照指標値と比較することにより、しきい値に到達したかそれを超越したか否かが判定でき、被験者が該当する生理的状態について陽性であることを示すのに使用できる。
【0160】
同様に、もし検査対象の生理的状態が、アルコールにより誘発される中毒状態であるなら、生理的パラメータには、心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT) が含まれ得るが、これらに限定されない。 このデータは、アルコール、アルデヒド、乳酸、およびアルコールに誘発される中毒状態と関連がある1つ以上のゴースト成分を含む(しかしこれらに限定されない)2つ以上の分析対象成分を用いて得られる生化学プロファイルデータと統合し、対応する検査対象の生理的状態(アルコールによって誘発される中毒状態)を定義する出力を生成する。 さらに、行動パラメータ、例えば、知的鋭敏さの判定(例えば、名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テストが含まれるがこれらに限定されない)、1つ以上の運動機能テスト(例えば、往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテストを含むがこれらに限定されない)、決められた課題を実行する能力(例えば、機械を操作する、自動車を運転する)、標準化した現場飲酒運転検査を実施し、そのデータは生化学プロファイルおよび生理的パラメータと合わせて生理的状態を判定する。
【0161】
さらに、評価対象の中毒状態が例えば大麻とアルコールの両方、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取によるものなら、生理的パラメータは次のうち1つ以上を含み得る。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHC。このデータは、以下を含む2つ以上の分析対象成分を使って得られる生化学プロファイルと統合される。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1 および B (アポA1 および アポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸、および、アルコールによって誘発される中毒状態に関連する1つ以上のゴースト成分。それにより、対応する検査対象の生理的状態(大麻とアルコールの混合、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取)のステータス(程度)を定義する出力を作成する。 さらに、行動パラメータ、例えば、知的鋭敏さの判定(名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テスト)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、決められた課題を実行する能力(機械を操作する、自動車を運転する)、標準化した現場飲酒運転検査 (Newmeyer, Swortwood, Taylor, et al., 2017, Clin Chem, 63(3), 647-662. doi:10.1373/clinchem.2016.265371)。
【0162】
電磁スペクトルの近赤外領域は、本文書内に記述するように、試料の測定に使用できる。測定は、例えば約350 nmから約2500 nmの波長域で得られる。化学物質(分析対象成分およびゴースト成分)は、このスペクトル間隔内に特徴的な吸収帯を示し、それは各成分を特徴づけるのに使用できる。人間の組織は入射放射線に対して透明なため、近赤外領域は生体内診断の適用にうまく適合している。そのため、放射線の十分な通過が可能で、正確な定量分析ができる。
【0163】
本実施形態におけるEMRの発生源は近赤外線が望ましく、例えば多色光源が良いが、これに限定されない。この種の光源は、近赤外スペクトルの光を含む非常に広い帯域幅で光を発することができる。この場合、光源からの光はコリメーターを通すことができる。コリメーターは光を集中させるレンズの集合で、これによりレセプターに向けて狭い並行ビームを当てることができる。多色光源には石英ハロゲン電球またはタングステンハロゲン電球が使用でき、例えば直流電源装置または電池など安定した電源によって電力供給する。この多色光源はタングステンハロゲンランプ、または約350~2500 nmの波長域か約650~1100 nmの波長域で放射線を発するよう選択されたLEDの集合もしくは他の光源を使うことができる。
【0164】
使用するレセプターは、サンプリングのため、被験者の身体部分、例えば皮膚または指の挟んだ部分を受け入れる形状になっていることが望ましい。代わりに、EMRを向ける身体の一部をレセプター内に入れるのではなく、レセプターに押し当てることができるようなレセプターの形状でも良い。サンプリングを行う身体部分はレセプターと密接に接触していることが望ましい。使用されるレセプターの例は、US 2013/0248695、US 5,361,758、 WO 93/16629、US 6,236,047、US 6,040,578、US 6,240,306に提示されている。
【0165】
EMRは被験者の身体部分に向けられ、それによって分散される。身体部分によって分散された光は、反射した光または透過した光、またはその両方であり、例えば光ファイバーやレンズなどの適切な方法を使って集められる。出力信号は回折装置を通され、出力信号内の波長はコンポーネントに分離される。回折装置の例には、回折格子またはホログラフィック回折格子が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
回収された信号は、被験者の身体部分を透過したEMRもしくは被験者の身体部分によって反射されたEMR、またはその両方からなる。回折装置は赤外領域が検出器に当たるようにEMRをコンポーネントとなる波長に分散し得る。検出器の例には、リニアアレイ検出器(例:256素子フォトダイオードアレイ)または電荷結合素子 (CCD) が含まれるがこれらに限定されない。アレイの場合、検出器は一連のダイオードからなり、望ましくはマイクロプロセッサによって電子的にスキャンされ、各ダイオードに蓄積された電荷量を測定する。電荷量はレセプター内の被験者の身体部分を透過または反射した各波長において、EMRの強度に比例する。検出器はマイクロプロセッサに接続されており、出力スペクトルを生成する。マイクロプロセッサは測定を分析し、決定された各濃度について最終的な結果を出す。結果は保存したり、画面に表示したりできる他、別の中央のCPUに送信してさらなる分析または表示を行うことができる。キーボードを使用して、装置、中央CPU、その両方を制御し、例えば、測定すべき特定の生理的状態(およびそれに対応する分析対象成分)を指定したりすることができる。タイミングと制御はマイクロプロセッサによって起動され、装置の制御、例えば、測定の数やタイミングの決定などをする。
【0167】
透過、反射、またはその両方について測定が得られた後、測定値の逆数のlog、つまり、log l/T および log l/R (TおよびRはそれぞれ透過および反射)を求めることが望ましい。入射光について参照値のセットが測定される。それは被験者のどの身体部分もレセプターに接触していない時に装置から発せられる光の測定である。その後、被験者の身体部分がレセプターに接触している時、参照値に対する測定値の比率として、吸光度が計算される。必要に応じて、測定値の2次微分を求め、光の経路の長さにおける変化(成分濃度の測定が被験者の身体部分の異なる厚みにおいて行われることによる)に起因し得る結果のばらつきを減らすことができる。2次微分の計算は、異なる経路の長さまたは水の吸収帯によるベースラインのシフトを除外するのに使用でき、その上、分析対象の混合成分から異なる成分の重なった吸収ピークを分離しやすくする。マイクロプロセッサは、生成される複数のスペクトルを収集し、平均化した結果の2次微分を計算することができる。
【0168】
得られる結果は被験者の身体部分の温度によって変化することがある。本実施形態の方法で使用される装置は温度センサーを有してよく、スペクトルのサンプリング時に分析部分の温度を即座に測定できる。この温度センサーは小質量の熱電対を含み得る。温度によるスペクトルの偏差は、コンピュータソフトウェアを用いることにより、マイクロプロセッサで補正できる。
【0169】
リニアアレイ検出器はフォトダイオードアレイであることが望ましく、その辺に沿って回折格子からの分散スペクトルを捉えるように設置する。マイクロプロセッサは、ソフトウェアにより、リニアアレイ検出器をスキャンし出力されたスペクトルの2次微分を計算するよう指示されている。マイクロプロセッサは、選択された複数の波長における吸光度と2次微分を用いて、測定対象の特定成分の濃度を計算することができる。 キャリブレーション方程式は各成分に対して使用することが望ましく、それは測定対象の成分によって決定される。
【0170】
測定データは、例えば警察官によって道路脇で、または、臨床現場即時検査 (POCT) において取得され得る。 データが本文書内で記述されているように装置によって取得された後、結果は中央のコンピュータに送信することができ、さらなる分析が行われる。測定データは、測定された生理的パラメータおよび測定された行動パラメータ、そして、被験者について検査対象の生理的状態(例えば中毒状態)の総合的指標と統合することができる。複数の総合的指標(各指標が被験者の検査対象の生理的状態を示す)はまとめて、関係者(医療供給者、警察機関、連邦政府、その他、まとめたデータに関心を寄せるその他サービス)にメタ分析のために転送することができる。
【0171】
本文書には、被験者について検査対象とする生理的状態を調べる装置も提示されている。装置は以下のものからなる。
約350 nmから約2500 nmの間の複数の波長を発する電磁放射(EMR) (30)の発生源(動作可能な状態で電源に接続されている)。
試料 (20) に合うサイズのレセプター (10) (1つ以上のポートを有する)。
EMRの発生源に動作可能な状態で関連付けされた1つ以上の入力放射線誘導エレメント (40)、および検出器 (60) に動作可能な状態で関連付けされた1つ以上の出力放射線誘導エレメント (50)。
光学的に揃えて配置された1つ以上の入力放射線誘導エレメントおよび1つ以上の出力放射線誘導エレメント。1つ以上のポートを有し、レセプターが試料に接触する時におけるレセプター内でのEMRの経路となっている。
試料を透過または試料から反射したEMRを測定する検知器(動作可能な状態で処理システム (70) に接続されている)。
1つ以上のアルゴリズムを含む処理システム。試料中にある2つ以上の分析対象成分の濃度を調べ、1つ以上のアルゴリズムを使用して試料の検査対象とする生理的状態を調べる。検査対象とする生理的状態とは、
i)中毒症状で、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、 デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1 およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。
ii)アルコールによって誘発される中毒症状で、2つ以上の分析対象成分には、アルコール、アルデヒド、乳酸が含まれ得る。または、
iii) 一般的に、大麻、アルコール、アヘン、フェンタニル、アンフェタミン、フェンシクリジン、鎮静剤、抗不安薬、コカイン、カフェイン、ニコチンの摂取などによって誘発される中毒状態で、2つ以上の分析対象成分には以下が含まれ得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)、アルコール、アルデヒド、乳酸。
【0172】
レセプター (10) を有する装置は、例えばコンピュータマウスのような形状のハウジング(ケース)に収納できる。本装置を操作するには、操作する者が、例えば携帯電話 (90) のアプリなどのプログラムを起動させるか、リモートのノート型パソコンのプログラムを起動して装置をオンにする。本装置は外層が半透明色で、装置がオンになると外層が黄色い色合いを帯びるようにしてスタンバイモードであることを示すことができる。検査対象の被験者は、マウスのような形状のレセプター (10) の最上部にある小さな窪みに、身体部分、例えば指 (20) を入れる。被験者の指が窪みに挿入され、穴と身体部分のインターフェイスが暗くなると、装置内の光源 (30)、例えばLEDが起動し、指をスキャンし測定する。窪みが暗くなると、スキャンが開始し、装置の外層が黄色から緑色に変わるようにし、試料の取得中であることを示すことができる。しばらくしてスキャンが完了すると、装置の外層が赤色に変わり検査が完了したことを示すので、指を抜くことができる。 検査から得られたデータは装置内で処理するか、またはbluetoothなどでリモートのCPUに送信してさらなる処理を行うことができる。
【0173】
更新された出力は、装置がリモートまたは中央のCPUと動作可能な状態で接続され通信している場合に、現場の装置を更新するのに使用され得る。この方法で、中央CPUは意思決定戦略を更新するのに用いられ、それは本文書に記述されている携帯装置のユーザーにリアルタイムで、または、データベースが更新される時に送信され、更新された出力が携帯装置にアップロードされる。
【0174】
前記装置を使用すると、生化学プロファイル、または生化学プロファイルと生理的パラメータの組み合わせ、または生化学プロファイルと生理的パラメータと行動パラメータの組み合わせに基づき、被験者について検査対象の生理的状態が中毒状態を示しているかどうかを判定でき、是正措置が必要とされることがある。例えば、装置は(選択により、生理的パラメータおよび行動パラメータとともに)警察官(検査の運用者の非制限的な例)による道路脇での検査に使用され、車の運転者が中毒状態にあると判定されると、警察官は是正措置を講じ、車の押収、運転者の免許の一時停止、告発などを行うことができる。
【0175】
他の状況においては、装置から得られる結果が(選択により、生理的パラメータおよび行動パラメータとともに)第三者に送信され、第三者によって是正措置が取られ得る。 例えば、検査の運用者(医療従事者や警察官などを含むがこれらに限定されない)は、中毒状態(機能障害)を示す陽性の結果を第三者、例えば治安判事に送信し、是正措置が取られ得る。 その他、安全性が被験者の雇用条件であった場合、被験者について中毒状態(機能障害)を示す陽性の結果が出ていると判定された場合に、結果を被験者の雇用主に送ることができる。 安全性が被験者の雇用条件となり得る場合の例としては、被験者が航空交通管制官、パイロット、商用車の運転手、作業場での機械(大小問わず)の操縦員、原子力発電所の作業員である場合などが含まれる。
【0176】
装置の検査またはキャリブレーションを行うには、前もって定義された素材でできた合成試料または「ファントムの指」(US 6,657,717、参照することによって本文書内に組み込まれている)をレセプターに挿入することができる。 代わりに、装置の運用者が自分自身の対応する身体部分または指を使用してもよい。
例:被験者について検査対象の生理的状態を評価する試験
【0177】
参加者: 患者約500人(1日あたり3人、週に5日、1か月に4週間。8ヶ月間実施) 使用量について患者のステータス(程度)を判定し、ヘビーユーザーからミニマル(ごく少量)ユーザーまでの指標付けをする。 患者は精神疾患がないか構造化臨床面接を使ってDSM-IV 第1軸 (SCID-I) のスクリーニングを受ける。精神疾患があり、治療を必要とする被験者はすべて本試験から除外する。女性は、試験期間中、認可された避妊法を用いるものとする。参加者は、検査セッション前72時間は大麻の使用を禁じられている。参加者のTHCのベースライン (検査前)濃度を定めるために、検査前の唾液および尿の試料を収集し、THCの検査をする。さらに、飲酒検知器で、最近のアルコール摂取を検出する検査を行う。
【0178】
対象者:18~70歳、複数の人種、複数の皮膚の色、国籍、性別、様々な体重、夜間の検査および日中の検査、ヘビーユーザー、新規ユーザー。
【0179】
検査:参加者は、各検査セッション前に軽い朝食(マフィンまたはベーグルなど)をとるように求められる。検査は中毒状態のない患者(背景)において行われ、その後、薬剤の摂取を行い、摂取前と4~6時間後に検査する。
【0180】
参加者は自覚効果に関するアンケートに記入し、ベースラインの運転テストを受ける。これらの手続きが完了したら、参加者は大麻を単回経口投与される。血液検査、自覚テスト、認知力テスト、運転テスト、健康状態チェック、視覚的アナログスケール (VAS) を摂取後7時間にわたって定期的な間隔で実施する。
【0181】
中毒状態をもたらす方法には以下が含まれる。 a) 大麻を繰り返し投与(油として投与。0~75 mg) b) 既知量の大麻 (0~75 mg) および既知量のアルコールを繰り返し投与。 参加者は経口のTHCを単回のセッションにおいて摂取する前と後に運転シミュレーターを運転する。機能障害の状態の結果として誘発される分析対象成分のステータス(下を参照)を定めるために、処置前と処置後に血液を採取する。検査中、各参加者はTHCによって誘発された中毒状態に達する。それは、運動機能と知的鋭敏さの機能障害によって測定される。
【表3】
【0182】
物理的測定:1) アルコール検出のための呼気試料 2) 身体所見検査 3) バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数)、身長、体重 4) 生化学的検査および血液学的検査、THC、CBDおよび代謝産物の定量のための血液試料(下記参照) 5) 薬物乱用、薬物中毒スクリーニングのための尿試料(簡易迅速検査 - POCT) 6) 広域スペクトルの尿スクリーニング 7) 妊娠検査のための尿試料(簡易迅速検査 - POCT) 8) 唾液中THC検査のための唾液試料。
【0183】
行動情報:1) 精神鑑定:DSM-IV 第1軸 (SCID-I) のスクリーニングのための構造化臨床面接 2) 適格性評価のための摂取量振り返りカレンダー (TLFB) 3ヶ月間、検査セッションにおいて7日間。摂取量振り返りカレンダー (TLFB) では、参加者は評価の前に毎日薬物使用を報告する。
【0184】
認知力、精神運動性検査:口頭学習および記憶の検査のための口頭自由再生(フリーリコール)課題。
【0185】
大麻の影響についての自覚評価:視覚的アナログスケール (VAS) を使った、大麻の影響の自己報告。
【0186】
検査は参加ごとに反復する。 身体所見検査に加えて、各参加者から以下のデータも取得する:
i) 採血および尿試料は血中THC(大麻の吸入または大麻入り食品の摂取)測定のために時間を計って行われ、以下を含む分析対象成分およびその他の生理的パラメータが決定される。体温、脈拍、血圧、呼吸数、C反応性タンパク、クレアチン (IDMS)、グルコース、 血液尿素窒素 (BUN)、THC、総タンパク、アルブミン、プロアクチン、カリウム、ナトリウム、コルチゾール、ラクテート、トータルT4、カルシウム、イオン化カルシウム、尿酸、トリグリセリド、マグネシウム、クレアチンキナーゼ、γグルタミルトランスフェラーゼ (GGT) 、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、総ビリルビン、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球。
大麻を摂取している患者の場合、以下の分析対象成分の中から2つ以上が決定され得る。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、THCグルクロニド (THCGlu)、11-ノル-9-カルボキシ-THC (THC-COOH)、11-ヒドロキシ-THC (11-OH-THC)、THC-COOH/11-OH-THC比、11-ノル-9-カルボキシ-THC グルクロニド (THC-COOGlu)、カンナビジオール (CBD)、カンナビノール (CBN)、カンナビゲロール (CBG)、デルタ-9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、THCV カルボン酸、11-ノル-9-カルボキシ-デルタ-テトラヒドロカンナビバリン (THCV-COOH)、アルブミン、アポリポタンパク質 A1およびB (アポA1およびアポB)、総タンパク、ビリルビン、プロラクチン、トリグリセライド、クレアチニン、コルチゾール、グルコース、ラクテート、Total T4、尿酸、血液尿素窒素 (BUN)、血糖、カルシウム、イオン化カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン酸塩、GABA(γ-アミノ酪酸)。大麻によって誘発される中毒状態と相関関係にあり得るゴースト成分も検査して、中毒状態を判定するのに使用できる。生理的パラメータは以下から1つ以上を含み得る。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、脂肪酸アミド加水分解酵素 (FAAH)、C反応性タンパク (cRP)、クレアチンキナーゼ (Ck)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)、白血球数 (WBC)、赤血球数 (RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、好中球、リンパ球、好酸球、自発運動の抑制、髪の毛中のTHC、尿中のTHC。
大麻以外にアルコールも摂取する患者には、アルコール、アルデヒド、乳酸などの分析対象成分も検査に追加する。さらに、大麻およびアルコールによって誘発される中毒状態と相関関係にあり得るゴースト成分も検査して、中毒状態を判定するのに使用できる。生理的パラメータは以下の測定を含み得る。心拍数、脈拍、体温、神経ペプチドY、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AAT)、アラニントランスアミナーゼ (ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ (GGT)。
ii)本文書に記述する非侵襲的装置を使用した2回のスキャンは、採血 (ステップ i) と同時に患者の指において行う。
iii)大麻の摂取または大麻とアルコールの摂取ごとに続いて知的鋭敏さおよび運動機能を調べる。各検査グループ(大麻を摂取する患者、または大麻とアルコールの両方を摂取する患者など)に対し、行動パラメータは以下を含み得る。知的鋭敏さの判定(名前当てテスト、火災報知器テスト、遅延再生試行、探し物テスト、買物リストテスト、数字符号テスト)、1つ以上の運動機能テスト(往復歩行テスト、片足立ちテスト、水平注視眼振テスト、分割的注意テスト、ロンベルグテスト)、機械の操作(シミュレーション)または自動車の運転(シミュレーション)などの決められた課題を実行する能力。自動車の運転では、反応時間、衝突、平均速度、注意散漫時の平均速度、横方向制御、注意散漫時の横方向制御を含む運転能力の障害を調べる。
【0187】
運転シミュレーターテスト:シミュレーターは、GMのコンパクトカーにあるような運転席側の計器盤、ハンドル、制御装置、中央のコンソールからなる。ハンドル、ブレーキ、アクセルペダルは、動的なフォースフィードバック (FFB) を提供する。ビジュアルシステムは、50インチの画面3つが前面の180oの視界を提供し、17インチの側面のディスプレイ2つが左方と右方の死角に対して視覚フィードバックを提供する。
【0188】
参加者は検査セッションのはじめに一連のシミュレーション訓練を受け、シミュレーター車の方向転換、アクセル、ブレーキに馴れる。主な影響試験に使用される運転シミュレーションは一連の運転イベントからなり、それらは大麻摂取が運転者の運転性能に影響を与えるメカニズムを評価するために設計されている。運転性能の従属的測定値(横位置の標準偏差、平均速度など)は、全体のシミュレーションを通した総合的性能とイベント別の性能に基づき、シミュレーターソフトウェアを用いて測定される。リスクをとる行動は、シミュレーションを通した平均速度を測定することで評価される。認知負荷を増やして現実世界の状況をよりよくシミュレートするために、分割的注意タスクがいくつかの運転シナリオに含まれている。
【0189】
分析:一般化加法モデル (GAM。非線形問題を解決する能力を持ち、ロジスティック回帰の相互運用性を提供する)の使用によって補足されるディープニューラルネットワーク (DNN) のアーキテクチャが、モデル決定の説明力を向上するために使用される。
【0190】
中毒症状前、中、後の患者の安全性は確保されている。
【0191】
少なくともいくつかの実施形態では、検査対象とする生理的状態は、被験者がCOVID-19に感染しているか否かに対応したものであり得る。この判定に関連する分析対象成分は、少なくともいくつかの例示的実施形態において、以下の通りである。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
分析対象成分を直接参照することなく検査対象の状態を判定する
【0192】
少なくともいくつかの例示的な実施形態では、検査対象とする状態の判定は、被験者の分析対象成分を直接参照することなく、結果的に、被験者の採血を行わずに実施され得る。その代わり、1つ以上の参照スペクトルが被験者の特定の参照状態に対応すると経験的に判定され、1つ以上の測定スペクトルが1つ以上の参照スペクトルと比較される。その比較に基づき、実施形態によっては機械学習を活用し、プロセッサが、被験者について検査対象とする状態が参照状態に対応するかどうかを判定する。例えば、検査対象とする参照状態は、COVID-19などの特定の疾患を示すものであり得る。参照スペクトルと検査対象の状態の関係は、採血やその分析を行わずに確立される。測定スペクトルの波長に対応する特定の成分と、スペクトル中の特定の成分が状態に及ぼす影響との関係は未知であるため、検査対象の状態の判定は、被験者の分析対象成分を直接参照することなく行われる。
【0193】
少なくともいくつかの例示的な実施形態では、被験者について検査対象の状態を判定する方法はまず、被験者の身体部分に光を当て、光が身体部分の血液および間質液を透過する、または身体部分によって反射するようにすることから始まる。身体部分への入射光は近赤外スペクトルおよび可視スペクトルのいずれか、または両方の波長域からなる。身体部分を透過した光と反射した光のいずれか、または両方について、分光器を用いて光のスペクトルを測定する。測定スペクトルは、身体部分への入射光の波長域からなる。プロセッサはその後、測定スペクトルと、検査対象となる既知の生理的状態(例えば、被験者がCOVID-19などの疾患を持っているか)を示す参照スペクトルを比較する。その比較後、プロセッサは、被験者が検査対象とする既知の生理的状態にあるかどうかを、被験者の分析対象成分を直接参照せず、測定されたスペクトルと参照スペクトルの類似性から判定する。
【0194】
図6は、被験者について検査対象となる生理的状態を判定するシステム (600) を示す。システム (600) は、コンピュータ (602)、エンクロージャ(ケース) (604)、およびインターフェイス(606) からなる。コンピュータ (602) とエンクロージャ (604) は電気ケーブル (610) を通して電子的に接続され、コンピュータ (602) とエンクロージャ (604) の間の通信ができるようになっている。エンクロージャ (604) は光ファイバーケーブル (608) を通してインターフェイス (606) と光学的に接続され、エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光器がインターフェイス(608) を通して1つ以上のスペクトルを取得できるようになっている。コンピュータ (602) には、第1のコンピュータ読み取り可能媒体および通信ポートに通信的に接続される第1のプロセッサがあり、エンクロージャ (604) には、1つ以上の分光器に通信的に接続される第2のプロセッサ、ランプ、画面、第2のコンピュータ読み取り可能媒体、電気的通信ポート、光学的通信ポートが含まれる。インターフェイスには、光学的信号を受信し伝達する光学的通信ポートがある。 以下詳細に記述するように、コンピュータ (602) は、測定のシーケンスの開始、エンクロージャ (604) 内にある1つ以上の分光器の設定、1つ以上の分光器による生のスペクトルデータの記録を担う。
【0195】
具体的には、エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光器は、可視領域および近赤外領域 (約350 nm ~ 1,000 nm) のスペクトルを測定するように設定された第1の分光器 (「VIS-NIR分光器」) と、近赤外領域 (約900 nm ~ 2,500 nm) のスペクトルを測定するように設定された第2の分光器 (「NIR分光器」) からなる。単一のランプが、スペクトルの測定に使用される光を発する。エンクロージャ (604) の画面には、ランプの合計使用時間が表示される。
【0196】
光ファイバーケーブル (608) は複数の光ファイバー (806) からなる。
図8A、8B、9A、9Bに関して後述するように、インターフェイス (606) が透過か反射のいずれに依存するかによって、1本以上の光ファイバー (806) がランプからインターフェイス (606) に光を伝達するのに使用され、1本以上の光ファイバー (806) がインターフェイス (606) から分光器に光を返すのに使用される。少なくともいくつかの例示的な実施形態では、ケーブル (608) は8本の光ファイバー (806) からなる。1本のソースファイバー (806a) がランプからインターフェイス (606) に光を伝達し、光が被験者と相互作用した後に、3本のリターンファイバー (806b) がインターフェイス(606) からVIS-NIR分光器に光を返し、4本のリターンファイバー (806b) がインターフェイス(606) からNIR分光器に光を返す。
【0197】
記載された実施形態では、分光器はエンクロージャ (604) の中にあり、インターフェイス (606) はエンクロージャ (604) とは区別されているが、別の実施形態(非記載)では、単一のハウジングにプロセッサ、コンピュータ読み取り可能媒体、画面、分光器、ランプが含まれ、インターフェイス (606) としても機能するようになっている。例えば、少なくともいくつかの例示的実施形態では、エンクロージャ (604) とインターフェイス (606) は結合した装置であることが可能で、フーリエ変換近赤外分光法 (FT-NIR) を適用し透過光や反射光の測定を行う。混合装置の1例は、Bruker Optics Inc. 社のBrukerTM TangoTMFT-NIR 分光器で、無機物など人間標本以外の用途で販売されている。人間に直接分光法を適用するために設計されているものではないが、 BrukerTM TangoTMFT-NIR 分光器、さらに一般的には FT-NIR 分光器は、少なくともいくつかの例示的実施形態において、分光計測値を取得する上で使用することができる。結合された装置はFT-NIR分光法を適用するものとして記述されているが、他の実施形態では、FT-NIR 分光器がエンクロージャ (604) 内の分光器として、前述したインターフェイス (606) とともに使用することができる。
【0198】
図7には、
図6のシステム (600) における情報フローを表すブロック図が示されている。
図7では、ノートパソコン (602)、エンクロージャ (604)、およびインターフェイス (606)が、別々の時刻(t
1 から t
4)において通信する様子を示している。まずコンピュータ (602) がプログラムを開始し、 開始信号を時刻 t
1にエンクロージャ (604) に送信する。開始信号に対応し、 エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光器がスペクトル取得のプロセスを開始する。それは、近赤外線や可視光を時刻t
2に光ファイバーケーブル (608) を通してインターフェイス (606) エンクロージャに送るというプロセスである。具体的には、各分光器は、明るい参照試料、暗い参照試料、明るい試料、暗い試料から4つの測定結果を受け取る。詳しくは後述するように、明るい参照試料と暗い参照試料は、インターフェイス (606) とエンクロージャ (604) 内の分光器を含む様々な装置間におけるセンサーのばらつきを軽減または削減するために測定される。明るい参照試料と明るい試料は、ランプのシャッターを開けた状態で測定するが、暗い参照試料と暗い試料はランプのシャッターを閉めた状態で測定する。明るい試料と暗い試料は、被験者の指など身体部分を使用して測定する。
【0199】
光は分散、反射、透過し、ケーブル (608) を通って、時刻 t3にエンクロージャ (604) 内にある1つ以上の分光器に戻ってくる。エンクロージャ (604) 内にある1つ以上の分光器によって測定されたスペクトルは電気的信号に変換され、時刻 t4 にコンピュータ (602) に戻され保存される。スペクトルデータは8つの個別のファイルとして保存される。VIS-NIR分光器とNIR分光器それぞれについて、明るい参照試料のファイル1つ、明るい試料のファイル1つ、暗い参照試料のファイル1つ、暗い試料のファイル1つである。コンピュータ (602) とエンクロージャ (604) のいずれかまたは両方のプロセッサが、8つのファイルの処理を行い、1つ以上の測定スペクトルを1つ以上の参照スペクトルと比較し、被験者について検査対象とする状態を判定する。コンピュータ (602) の画面は、各分光器が記録している測定スペクトルに加え、被験者について検査対象とする状態の最終的判定も表示する。
【0200】
図8Aと
図8Bでは、反射に依存するインターフェイス (606) (反射インターフェイス)の実施形態の透視図および8A-8A線に沿った断面図を示している。反射インターフェイスで取得した光は、エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光計によって測定される。反射インターフェイス (606) は一般に被験者の指を受け入れる形状になっている。インターフェイスの裏面からは、複数の光ファイバーからなる光ファイバーケーブル (608) が延びている。これらのファイバーのうち少なくとも1本は、エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光器からインターフェイス (606) に光を運ぶソースファイバー (806a) で、少なくとも1本は、被験者の指と相互作用した後の光をエンクロージャ (604) 内の分光器に戻すリターンファイバー (806b) である。
【0201】
反射インターフェイス (606) の上部にある被験者の指のレシーバーには、参照パック (802) が載っている。参照パック (802) の一例は、Labsphere, Inc. 社のSpectralonTM 反射材から作られたものである。反射パックは、被験者の身体部分で検査を行うたびに、前述の暗い参照試料と明るい参照試料を取得する際、被験者の指の代わりに使用される。
【0202】
図8Bでは、光が被験者の指と相互作用する時に光がいかに進むかを表した光の経路 (808) が示されている。具体的には、反射インターフェイス (606) の第1の表面に、参照パック(802) がのっているが、これは指の腹が接触できるように配置されている。ソースファイバーとリターンファイバー (806aとb)は第1の表面の下側から配置され、それぞれ第1の表面を通して光の伝達と受け取りを行う。詳細には、光の経路 (808) によって示されているように、光はソースファイバーを出て指から反射し、リターンファイバー (806b) を通してエンクロージャ (604) 内の分光器に戻る。
【0203】
図9Aと9Bでは、透過に依存するインターフェイス (606) (透過インターフェイス)の実施形態の透視図および9A-9A線に沿った断面図を示している。透過インターフェイスで取得した光は、エンクロージャ (604) 内の1つ以上の分光計によって測定される。透過インターフェイス (606) は一般に被験者の指を受け入れる形状になっている。インターフェイスの前面からは、ソースファイバーとリターンファイバー (806a、b) が延びている。反射インターフェイス (606) の場合と同様、透過インターフェイス (606) の上部には、参照パック (802) がのっていて、暗い参照試料と明るい参照試料を取得するのに使用される。
【0204】
反射インターフェイス (606) に対比して、透過インターフェイス (606) の指レシーバーの第1表面は指の腹が接触できるよう配置され、第2表面は指の先が接触できるよう配置される。ソースファイバー (806a) は、ランプからの光が第2表面を通って指に向かうように配置し、リターンファイバー (806b) は、身体部分から第1表面を通って透過された光を受け取るように配置する。光の経路 (808) は、光がソースファイバー (806a) から指を通ってリターンファイバー (806b) に進む方向を示す。
【0205】
図23は、インターフェイス (606) とエンクロージャ (604) の機能をまとめて実行する結合装置 (2300) の平面図を示す。具体的には、装置 (2300) はエンクロージャ (604) を含み、その中に、
図6に関して前述したように、プロセッサ、コンピュータ読み取り可能媒体、FT-NIR分光器、およびランプが含まれる。画面 (2302) はプロセッサと通信的に接続され、エンクロージャ (604) の上部に設置されている。画面 (2023) の上端が
図23では見えている。ハウジング (604) の上部には装置 (2300) のインターフェイス (606) も設置されている。インターフェイス (606) は、Bruker
TM Tango
TMFT-NIR 分光器のインターフェイス同様、カップ、ペトリ皿、試験管などの容器に入った試料を使用するよう設計されている。具体的には、インターフェイス (606) にはプラットフォーム (2304) があり、その中には開口部 (2306) がある。通常の使用法では、試料を含む容器はプラットフォーム (2304) に置かれ、開口部 (2306) 内の光ファイバー(記載はない) が容器を通して試料に光を伝達し、試料からの光を集める。ハウジング (604) 内のFT-NIR分光器が光学的データを受け取り処理する。この通常の使用法に反し、少なくともいくつかの例示的実施形態では、被験者は指を開口部 (2306) に直接置くことができ、
図8A、8Bや9A、9Bで前述したような被験者の直接的な測定から、FT-NIR計測値を得ることができる。
【0206】
図10は、透過インターフェイスと反射インターフェイス (606) のいずれかまたは両方を用いてスペクトルデータを処理する方法を表したフロー図 (1000) を示している。本実施形態では、本方法は、コンピュータ (602) のプロセッサが実行する。少なくともいくつかの他の例示的実施形態では、本方法は代わりにエンクロージャ (604) のプロセッサによって実行され得るか、もしくは、コンピュータ (602) のプロセッサとエンクロージャ (604) のプロセッサの共同によって実行され得る。具体的には、プロセッサは入力(スペクトル)データの処理をブロック (1002) で行う。入力データがブロック (1002) で処理されたら、プロセッサがブロック (1003) で外れ値検出を行い、ブロック (1004) で前処理パイプラインを実行する。システム最適化において、前処理パイプラインは、ブロック (1010) で、反復最適化パイプラインを実行することからなる。
図15は、ブロック (1004) で実行される前処理パイプラインの効果を概略的に示したもので、約 2.5k x 1k の配列の入力データは前処理によって約100 x 1k に削減される。前処理後、プロセッサはモデル (1006) を適用して、処理したスペクトルデータから検査対象の状態を判定する。ブロック (1002)、(1003)、(1004)、(1006)、(1010) の導入例は、
図11から21Cに関して以下詳細に記述する。
【0207】
図11では、ブロック (1102) のプロセッサが生のスペクトルデータファイルを結合する。下の表3は、VIS-NIRとNIR分光器から受け取るスペクトルデータについて記載する。
【表5】
【0208】
例えば、表3では、VIS-NIR分光器は測定範囲が~300 nm から 1000 nm で、NIR分光器は測定範囲が~900 nm から 2500 nm である。しかし、正確さや精度は、1つまたは両方の分光器において、波長域の終端近くで低減する。結果的に、例えば 400 nm から 2500 nm に及ぶスペクトルに対して、VIS-NIR分光器は 400 nm から 900 nm の測定値を取得するのに使用でき、NIR分光器は 900 nm から 2500 nm の測定値を取得するのに使用できる。
【0209】
スペクトルファイルを結合する作業は、その一環としてブロック (1104) を実行するが、そこでは、プロセッサが明るい参照試料と暗い参照試料の測定から得られる生のスペクトルデータを結合する。これに続き、ブロック (1106) のプロセッサが、明るい試料と暗い試料のスペクトルデータについてダウンサンプリング(低解像度処理)を行う。ブロック (1104) とブロック (1106) に続き、次はブロック (1108) のプロセッサがスペクトルデータを結合しセンサーバイアスの補正をする。具体的には、参照データを使用して、異なる分光器間のセンサーのばらつきを軽減する。各参照試料(明るい参照試料と暗い参照試料の両方)はノイズ効果軽減のため平均化される。具体的には、スペクトルデータを結合しセンサーバイアス補正をする際、プロセッサは以下を適用する。
【数1】
R
L と R
D はそれぞれ明るい参照試料と暗い参照試料、S
L と S
D はそれぞれ明るい試料と暗い試料、IT
S と IT
R はそれぞれ被験者と参照の積分時間である。
【0210】
非参照試料(明るい試料と暗い試料の両方)のスペクトルデータには、少なくともいくつかの例示的実施形態において保持される、一時的なデータが含まれる。例えば、少なくともいくつかの例示的実施形態においては、時間に応じて変化する領域(パルスなど)に対して、プロセッサは最大値、中央値、最小値の一定のパーセンテージ内で試料を平均化する。その結果は、両分光器を通して各波長についての複数のエントリーを含むマトリクスである。
【0211】
図12は、
図10のブロック (1003) での外れ値検出(光散乱の補正を助ける)を実行する方法を示したフロー図である。ブロック (1202) では、プロセッサは入力データ値を標準化し、各被験者に対し、平均0、分散1になるようにする。
【数2】
その後、ブロック (1204) に進むが、そこでは訓練済みディープオートエンコーダーが使用され、良い試料と悪い試料を特定する(「良い」というのは、スペクトルを視覚的に表したものが取得された全試料から予想される形状に合っているという事実に基づいて経験則的に定義される)。プロセッサは、入力データと再構築されたオートエンコーダーの出力の間で平均二乗誤差 [Error(x,y)] を比較する。ブロック (1206) のプロセッサは、平均二乗誤差が母集団の標準偏差の2倍以上である試料を外れ値と決定する。少なくともいくつかの例示的実施形態では、外れ値は平均値からの標準偏差の異なる倍数を示す試料と定義することができる (例 1x)。ディープオートエンコーダーはスペクトルデータに直接適用され、検査対象となる状態の変化には依存しないため、オートエンコーダーは特定のコンフィギューレーションに対して1度だけ訓練されれば良い。外れ値を特定した後、ブロック (1208) のプロセッサは、外れ値を除いた元の入力スペクトルデータの平均センタリングバージョン (X
i - X
i_mean) を戻す。少なくともいくつかの例示的実施形態では、オートエンコーダーは生データに適用されるが、その他のいくつかの実施形態では、パフォーマンスとロバスト性の需要に応じて、オートエンコーダーは平均センタリングバージョンまたはスケーリング済み入力データ(外れ値をまだ除外していないもの)に適用される。
【0212】
図13は、
図10のブロック (1010) における前述の最適化パイプラインを実行する方法を示したフロー図である。最適化パイプラインは分光的な変換の様々な組み合わせを反復的に試し、被験者の検査対象とする状態に例示される、ある特定のターゲットに対して、ある特定の光学的に理想的な変換または変換のシーケンスを得る。
図13は、システム (600) の初期訓練中、繰り返し実行される。ブロック (1302) のプロセッサは、外れ値の除去後、データの平滑化/フィルタを行い、ブロック (1304) では平滑化/フィルタされたデータを変換し、ブロック (1306) では変換されたデータに見られる波長数を削減する。これらの操作は、
図16~18で詳しく後述する。
【0213】
図16は、
図13の最適化パイプラインを実行する特定の方法を示す。
図16では、外れ値検出ブロック (1003) から出力された、平均センタリングを適用した入力データはコンフィギュレーションブロック (1604) に入力される。コンフィギュレーションブロック (1604) の出力は波長削減ブロック (1606) に入力され、波長削減ブロック (1606) からの出力はブロック (1608) に入力され、そこではプロセッサが部分的最小二乗法(PLS)を適用する。部分的最小二乗法の適用は、潜在空間のコンポーネントへの分解の実施例であり、他の実施形態では、主成分分析など潜在空間の異なる分解法が可能である。
【0214】
図17は、
図16のコンフィギュレーションブロック (1604) を示すブロック図である。コンフィギュレーションブロック (1604) は、第1から第5までのコンフィギュレーションサブブロック (1702a~e)、標準化およびスケーリングのサブブロック (1704)、PLSのサブブロック (1402) からなる。コンフィギュレーションサブブロック (1702a~e) は、プロセッサによって異なる変換シーケンスを繰り返し試して、検査対象とする状態を判定する上で好ましい、場合によっては最適な、コンフィギュレーションを決定するために使用される。変換の例としては、標準正規変量 (SNV)、Multiplicative Sscatter Correction (MSC)、L1正規化 (L1N)、L2正規化 (L2N)、Savitzky-Golay 平滑化 (SGS)、畳み込み平滑化 (Cs)、信号微分 (SD) があり、スペクトルと列に特有の変換である。サブブロック (1702a~e) による変換の適用に続き、プロセッサは標準化およびスケーリングのサブブロック (1704) で、標準化とスケーリングを適用する。標準化とスケーリングの後、プロセッサは部分的最小二乗法 (PLS) のサブブロック (1402) を使って、標準化とスケーリング処理がなされたデータに部分的最小二乗法 (PLS) を適用する。サブブロック (1702a~e) によって適用された特定の変換の組み合わせのパフォーマンスを評価する際は、部分的最小二乗法 (PLS) のサブブロック (1402) の出力が使用される。
【0215】
図17には5つのコンフィギュレーションサブブロック (1702a~e) が示されているが、少なくともいくつかの他の実施形態(記載はなし)では、異なる数のサブブロックを使用することができ、その場合、プロセッサは、より多いまたはより少ない数の変換の組み合わせを試すことになる。
【0216】
図18は、
図16の波長削減ブロック (1606) によって実行される波長削減の例である。コンフィギュレーションブロック (1604) の出力は、波長削減ブロック (1606) への入力として使用される。波長削減ブロック (1606) では、プロセッサが遺伝的アルゴリズムを適用し、その後の処理のために、波長数を削減する。
図18に示されるように、この例では、プロセッサはスペクトルデータから連続する波長域を4つ削除した。
【0217】
波長削減の後、プロセッサが再びスペクトルデータに部分的最小二乗法 (PLS) を適用し、削減された波長データに対して理想的に最適なフィットを見つける。プロセッサが最適なフィットに到達したら、部分的最小二乗法 (PLS) 適用の結果として生成されたコンポーネントは抽出され、モデル選択過程に使用される。
【0218】
図14は、検査対象の状態を判定する様々なモデルの適用を示すフロー図である。
図14では、後述するように、プロセッサはブロック (1402) から出力される部分的最小二乗法 (PLS) コンポーネントに基づいて、ブロック (1403) で線形回帰 (LR) を適用して、ターゲット (1408) に到達することができる。または、部分的最小二乗法 (PLS) を適用した後、ブロック (1404) でニューラル加法モデル (NAM) を適用することもできる。または、ブロック (1406) でニューラルネットワーク (NN) を適用してターゲット (1408) に至ることもできる。
【0219】
図19A~Cは、ターゲット (1408) に到達するために、前述した前処理パイプラインを活用する3つの例示的モデルをそれぞれ示している。
図19Aでは、被験者について検査対象とする状態を分類するために、部分的最小二乗法 (PLS) とロジスティック回帰モデルが適用される。
図19Bでは、被験者について検査対象とする状態を分類するために、部分的最小二乗法 (PLS) とニューラル加法モデル (NAM) が適用される。NAMは、1つ、2つ、または3つの入力変数とターゲット (1408) の間の非線形関係を抽出する。
図19Cでは、主な波長の貢献と変換を自動的に決定するために、NAMが適用される。NAMは、PLS由来のコンポーネント、またはそれを使用することとは対照的に、各波長を独立変数として扱うことによって、標準化されたスペクトルに適用できる。
【0220】
図20A~Cでは、ブロック (1006) で使用される3つの例示的モデルをそれぞれ示す。
図20Aでは、PLSと人工ディープニューラルネットワーク (DNN) が標準化されたスペクトルデータに適用され、検査対象の状態に到達する。
図20Bでは、DNNだけが標準化されたスペクトルデータに適用され、検査対象の状態に到達する。そして、
図20Cでは、アプリケーション特有の一時的データを活用するために、畳み込みニューラルネットワーク (CNN) を適用して標準化されたスペクトルデータを処理する。
図19B、19C、20A~Cでは、入力としての「x」は標準化された波長を示し、「c」はPLSから得られたコンポーネントを示す。
【0221】
図21A~Cでは、スペクトルデータを処理して検査対象とする生理的状態に到達するのに使用される例示的システム (2100) のブロック図を示す。
図21Aでは、ブロック (1106) でのダウンサンプリングの例は、「サイズ削減」と注釈の付いた「平均値」ブロックである。入力データ処理ブロック (1002) の出力例は、
図21Bの最下部にある「1x2560」ベクターである。
図21Cにおいて、「PLSコンポーネント」のボックスは、ベクターのサイズを「1x2560」から「1x10」に縮小する。「10」はPLS由来のコンポーネントの数である。
【0222】
具体的には、
図21A~Cにおいてスペクトルデータは、8つの入力ファイル (2102) である。
図21Aにおいて、前述した通り、入力ファイル (2102) は、VIS-NIR分光器からの4つのファイル (2104)(「VISファイル (2104)」)とNIR分光器からの4つのファイル (2106)(「NIRファイル (2106)」)からなる。また前述したように、VISファイル (2104) は暗い参照試料と明るい参照試料 (2108a、b) 、および被験者の暗い試料と明るい試料 (2108c、d) からなり、可視光による測定値を表している。NIRファイル (2106) も同様に、暗い参照試料と明るい参照試料 (2108e、f) 、および被験者の暗い試料と明るい試料 (2108g、h) からなり、近赤外光による測定値を表している。VIRファイル (2014) とNIRファイル (2106) からの暗い参照試料と明るい参照試料 (2108a、b、e、f)の平均値はブロック (2110a) とブロック (2110b) でそれぞれ取得され、ブロック (1106) に関して前述したダウンサンプリングを通してサイズ削減が行われ、ダウンサンプリングの結果はそれぞれ1x2048ファイル2つ、1x512ファイル2つとなる。ダウンサンプリングされたこれらの2つの暗い参照試料 (2108a、b)、2つの暗い試料 (2108c、d)、ダウンサンプリングされた2つの明るい試料 (2108e、f) 、2つの明るい試料 (2108g、h) は、その後、それぞれ畳み込みブロック (2112a~d) において2Dカーネルで畳み込みを実行することによって平滑化される。対になっている各ファイルは、対のもう一方のファイルから差し引かれ、VIS参照ファイル (2115a)、VIS被験者ファイル (2115b)、NIR参照ファイル (2115c)、VIS参照ファイル (2115d) が作成される。
【0223】
図21Aから
図21Bに移ると、VIS参照ファイル (2115a)、VIS被験者ファイル (2115b)、NIR参照ファイル (2115c)、暗いVIS参照ファイル (2115d) は、ブロック (2116a) とブロック (2118a) において(VISファイル 2115a、b用)と、ブロック (2116b) とブロック (2118b) において(NIRファイル 2115c、d用)、方程式 (1) を用いて処理される。その結果、VISファイル (2115a、b) から1500x2048ファイルが生成され、NIRファイル (2115c、d) から1500x512ファイルが生成される。
【0224】
1500X2048のファイルはブロック (2120a) とブロック (2122a) においてダウンサンプリングされ、1500x512のファイルはブロック (2120b) とブロック (2122b) においてダウンサンプリングされ、それぞれ1x2048 VISファイルと1x512 NIRファイルが生成される。このダウンサンプリングでは、ばらつきを軽減するためにブロック (2120a、b) においてデータ内の局地的最大値をいくつか特定し、ブロック (2122a、b) においてそれら最大値の平均を出す。その結果得られる1x2048 VIS ファイルはブロック (2124a) とブロック (2126a) において、1x512 NIR ファイルはブロック (2124b) とブロック (2126b) において、方程式(2) によって処理される。 その結果得られる 1x2048 と 1x512 ファイルは、ブロック (2128) において連結され、その結果、単一の1x2560 ファイル (2129) が生成される。
【0225】
図21Bから
図21Cに移ると、ブロック (2130) において、1x2560 ファイル (2129) のPLSコンポーネントが、ブロック (1402) に関して記述した方法で決定される。10個のコンポーネントが1x10ファイルにおいて特定される。記載された実施形態においては10個のコンポーネントが選択されているが、異なる数のコンポーネントが選択される他の実施形態も可能である。この 1x10 ファイルは、ブロック (2134) において正規化される(0と1の間で)。正規化された 1x10 ファイルの要素は、
図20A~Cに示されるように第1から第10の訓練済みニューラルネットワーク (2136a~j) にそれぞれ入力される。第1から第10の各訓練済みニューラルネットワーク (2136a~j) がNAMから構成されるという特殊例もある。訓練済みニューラルネットワーク (2136a~l) の結果は合計され、結果として1x1 ファイルが生成される。それは、ブロック (2138) においてシグモイド関数などの活性化関数への入力に使用される。活性化関数の出力は、
図22と下のCOVID-19に関する記述のように、検査対象とする生理的状態を判定するのに使用される。
【0226】
図21A~Cは例示的な実施形態であるが、この記載された実施形態のバリエーションも可能である。例えば、
図21A~Cは、様々な次元のベクターとしてデータを保存するファイルを示している。別の実施形態では、これらのベクターの次元は要望により変わることがある。例えば、10個より多いまたは少ない数のPLSコンポーネントを選ぶことができるが、その場合、ブロック (2130) から出力される1x10ファイルのサイズは、それに応じて変わる。これらのコンポーネントをそれぞれ処理するのに使用されるニューラルネットワークの数も同様である。
【0227】
別のバリエーションの1例として、
図21Aは、VIS-NIR分光器とNIR分光器をそれぞれ用いて2つの暗い試料と2つの明るい試料を測定したものに対応する8つの測定値から生成される8つの入力ファイル (2102) を示している。しかし、別の実施形態では、8つより多いまたは少ない数のファイル (2102) の使用、8つより多いまたは少ない数の測定が行われ得る。例えば、複数の測定からなるデータは、単一ファイルとして保存されることがある。他の例では、データは、より多いまたはより少ない測定によって取得される。少なくともいくつかの例示的実施形態では、近赤外光と可視光のいずれか一方だけが使用され、結果的に4つの測定値だけが生成される。そして、Bruker
TM Tango
TMFT-NIR 分光器を例とするFT-NIR分光器のようにそれ自身の前処理を行う分光器は、
図21Bと21Cの1x2560 ファイル (2129) と同様のスペクトルデータを出力する。その結果、このスペクトルデータは、PCAまたはPLSコンポ―ネントの生成に使用されることなく、単一のニューラルネットワークによって即座に処理される場合もある。
【0228】
別のバリエーションの1例としては、単一の訓練済みニューラルネットワークが、1x2560 ファイル (2129) で表される処理済みスペクトルデータを入力値として直接受け取ることができる。これは、ブロック (2130) においてPLSコンポーネントを決定した後これらのコンポーネントを第1から第10のニューラルネットワーク (2134a~j) を用いて処理するのとは異なる代替方法である。この場合、単一の訓練済みニューラルネットワークが、特定のPCSコンポーネントだけを分析するのではなく、処理済みスペクトルデータのすべてを分析する。例えば、CNN活性化を伴うNAM、または
図19A~Cに示されるどのネットワークも、この目的のために使用できる。特定のPCSコンポーネントのみを処理する1つの利点は、どのPCSコンポーネントが検査対象の状態に影響を与えるかを決定できることであるが、PCSコンポーネントの使用を迂回すれば、1つ以上のPCSに遡れないような一層複雑な関係に基づいて検査対象の状態が判定できる。
【0229】
図21A~Cに関し、前述のニューラルネットワークの訓練は、被験者の1つ以上のスペクトル測定値からなる入力ファイル (2102) を、被験者の検査対象となる状態とペアにして、それを訓練データとして使用して行うことができる。例えば、検査対象の状態が、COVID-19のような病気に被験者が罹っているか否かという場合、訓練データの各ペアは、被験者の1つ以上のスペクトル測定値、および、被験者がCOVID-19に罹っているか否かの状態からなる。それはすなわち、本文書内で記述されるスペクトル測定値を入力ファイル (2102) として入力すると、訓練済みニューラルネットワーク (2134a-l) が、被験者のCOVID-19罹患の有無を出力することを意味する。
【0230】
図22では、
図10で記載された方法を実行するように訓練された状態モデル (2202) が、分析対象成分を直接参照したり血液試料を使用したりせず、スペクトルデータを直接処理して検査対象の状態判定に使用されているプロセス図の例が示されている。
図22の例では、検査対象の状態は、被験者がCOVID-19(コロナウイルスによって引き起こされる病気)に罹患しているか否かである。しかし、コロナウイルスが引き起こす症状には程度に幅があり、普通の風邪(軽症)からCIVD-19(潜在的に致死の危険性あり)まである。感染に関わる検査対象の状態に対し、非常に感度が高いと、普通の風邪をCOVID-19であると分類する確率が高くなる可能性がある。一方で、特異度を最適化すると、真に陽性のCOVID-19のケースだけが検出されることになり、偽陰性が高まってしまう可能性がある。状態モデル (2202) は、状況に合わせて感度と特異度の調節が可能である。状況は、変異種や致死性にかかわらずコロナウイルスに感染している者を特定するという要望であったり、COVID-19に感染している者のみを特定するという要望であったりする。
【0231】
例えば、ターゲット (1408) は検査対象の状態を2次元的に表したもの(例:COVID-19が陽性か陰性か)で、0か1で表現することができる。感度と特異度を調整するため、検査対象の状態が0と判定されるか1と判定されるかのしきい値は調整が可能である。例えば、感度の向上は、プロセッサに陽性だと判定されるしきい値を下げるよう(例えば、0.5から0.25に下げる、など) 指示を与えることによりなし得るが、特異度の向上は、プロセッサに陽性だと判定されるしきい値を上げるよう(例えば、0.5から0.75に上げる、など)指示を与えることによりなし得る。
【0232】
すべての引用は参照することにより本文書内に組み込まれている。
【0233】
実施形態は、方法、装置、システム、コンピュータプログラム製品からなるフロー図、シーケンス図、ブロック図を参照して、上に記述した。この点で、記載されたフロー図、シーケンス図、ブロック図は、様々な実施形態実装のアーキテクチャ、機能性、オペレーションを表すものである。例えば、フロー図とブロック図の各ブロック、シーケンス図の各オペレーションは、指定したアクションを実装する上での実行可能な1つ以上の指示からなる、モジュール、セグメント、またはコードの一部を表し得る。他のいくつかの実施形態では、ブロックまたはオペレーションに記されているアクションは、それらの図に記されている順序とは異なる順序で起こる場合がある。例えば、連続する2つのブロックまたはオペレーションは、いくつかの実施形態では、実質的に同時に実行されることがある。または、ブロックやオペレーションは時に、関わる機能性によって、逆の順序で実行されることがある。前述の具体例のいくつかは、上に記載されているが、必ずしもこれらの記載されたものだけが例なのではない。フロー図とブロック図の各ブロックと、シーケンス図の各オペレーション、そして、これらのブロックとオペレーションの組み合わせは、特定の機能や行為を実行する特殊目的のハードウェアベースのシステム、または特殊目的のハードウェアおよびコンピュータの指示の組み合わせによって実行することができる。
【0234】
前記実施形態において使用されるコントローラとプロセッサには、例えば、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体に通信的に接続された処理装置(プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルロジックコントローラなど)が含まれ得る。その媒体には、処理装置、マイクロコントローラ(処理装置と非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体の両方を含む)、フィールドプログラマブルゲートアレイ (FPGA)、システムオンチップ (SoC)、特定用途向け集積回路 (ASIC)、またはAIアクセラレータによって実行されるプログラムコードが保存されている。コンピュータ読み取り可能媒体の例には、非一時的な媒体で、CD-ROMやDVDなどのディスク系媒体、ハードドライブやその他の磁気ディスク記憶装置、フラッシュメディアやランダムアクセスメモリなどの半導体系媒体(DRAMやSRAMを含む)、読み出し専用メモリなどが含まれる。
【0235】
本明細書に記述されるいかなる態様または実施形態のいかなる部分も、本明細書に記述されるいかなる他の態様または実施形態のいかなる部分とも合せて実装する、または組み合わせることができると考えられる。
【0236】
本出願の解釈にあたり、本文書内で記述される実施形態を実装する上で、プロセッサなどのコンピュータ機器の使用は、少なくとも、コンピュータ装置の存在または使用が本出願内で積極的に記載されている場合は、不可欠なことであると理解されるべきである。
【0237】
1つ以上の例示的実施形態は、図によってのみ示されている。このような提示のしかたは、図と記述の目的でなされたものであり、開示された形のみに限定されると意図したものではない。当業者には、特許請求の範囲から外れることなく、数々のバリエーションや変更が可能であることが明白なはずである。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
中毒状態をもたらす方法には以下が含まれる。 a) 大麻を繰り返し投与(油として投与。0~75 mg) b) 既知量の大麻(0~75 mg) および既知量のアルコールを繰り返し投与。 参加者は経口のTHCを単回のセッションにおいて摂取する前と後に運転シミュレーターを運転する。機能障害の状態の結果として誘発される分析対象成分のステータス(下を参照)を定めるために、処置前と処置後に血液を採取する。検査中、各参加者はTHCによって誘発された中毒状態に達する。それは、運動機能と知的鋭敏さの機能障害によって測定される。
【表3】
【国際調査報告】