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特表2024-512241ボルテックスチャンバー内で熱に敏感な材料を加工するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ボルテックスチャンバー内で熱に敏感な材料を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/06 20060101AFI20240312BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240312BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240312BHJP
【FI】
C05F3/06 E
B09B3/35 ZAB
B09B3/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549877
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 RU2022000136
(87)【国際公開番号】W WO2022186726
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2021105433
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520182431
【氏名又は名称】シア“エンピリオ”
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ストロゼフ,フェドア・ニコラヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルチェク,セルゲイ・イウレヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4D004
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA12
4D004BA04
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA42
4D004CB01
4D004CB08
4D004CB42
4H061AA02
4H061AA03
4H061CC35
4H061CC41
4H061GG14
4H061GG16
4H061GG19
4H061GG67
4H061GG69
(57)【要約】
本発明は、材料を加工する分野に関し、より詳細には、ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な材料を加工するための方法に関し、草、わら、薬草材料、野菜および他の材料などの熱に敏感な材料、または異なる植物材料の混合物を、乾燥、粉砕、熱処理すると同時に画分に分別するために使用され得、また、農業廃棄物、特に家禽の糞、馬糞または牛糞を、例えば肥料などの安全な有機材料に加工するためにも使用され得る。ボルテックスチャンバーは、材料を粉砕するためのローターを含み、容積調整可能に設計されており、側壁は直円柱状に構成され、前記側壁の外面および/または前記チャンバーの前記下端壁に、被加工材料を取り出すための追加孔が設けられている。本発明は、材料から異なる消費者特性(微粉度、湿度、密度等)を有する複数の最終製品を得ることを目的とし、前記製品は同時に得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な材料を加工するための方法であって、
湿潤材料を前記ボルテックスチャンバー内に垂直に供給することを含み、
前記ボルテックスチャンバーの壁が、垂直軸がローターの回転軸と一致する回転体の形状に、作製されており、
このローターが、流入材料を、機械的に粉砕し、入口接線方向流路を通って前記チャンバー内に流入する乾燥ガス、の渦流に巻き込み、ここで、前記渦流が、まず前記材料を乾燥させ、次いでガス排気システムを通してガス懸濁物の形態で前記チャンバーから前記材料を取り出す、方法において、
前記ボルテックスチャンバーが、その容積を変化させるように構成され、
前記チャンバーの上端壁と下端壁が、回転体の形状に作製され、
それらの端壁を接続する側壁が、直円柱の側面の形状を有し、
被加工材料を取り出すために、前記側壁の外面および/または前記チャンバーの前記下端壁に、追加孔が設けられている、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ボルテックスチャンバーの容積を変化させることが、前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁のみまたは前記下端壁のみを、上昇または下降させることにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボルテックスチャンバーの容積を変化させることが、前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁を上昇させると同時に前記下端壁を下降させることにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ボルテックスチャンバーの容積を変化させることが、前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁を下降させると同時に前記下端壁を上昇させることにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁および前記下端壁の移動が、前記ボルテックスチャンバーの容積を一定に維持しながら一方向で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁および前記下端壁の移動が、前記ボルテックスチャンバーの容積を変化させながら一方向で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ボルテックスチャンバーの前記側壁の異なる高さに設けられた追加孔により、被加工材料の異なる画分を、その孔から抜き出すことができることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記チャンバーの前記下端壁に設けられた追加孔により、被加工材料の最も重い粒子、および異物、例えば石または金属粒子を、その孔から取り出すことができることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料加工の分野に関し、特に、ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な(heat-sensitive)材料を加工するための方法に関し、牧草、干し草、薬用植物材料、野菜および他の材料などの熱に敏感な材料、または様々な植物材料の混合物を、乾燥、粉砕、熱処理および同時分別するために、使用され得る。本発明はまた、農業廃棄物、特に鳥糞、馬や牛の糞尿を、肥料などの安全な有機材料に加工するために、使用され得る。
【背景技術】
【0002】
現代の養鶏場は、家禽の肉や卵といった主要生産物の生産に加えて、自然環境に流入する大量の有毒廃棄物の発生源となっていることが知られており、その主な有毒廃棄物は鳥糞であり、有害有機物に分類され、強制処分の対象となっている。腐敗した残物(litter)は、硫化水素、アンモニア、メタンなどの有毒ガスを生じ、硝酸塩、抗生物質、人体に害のある農薬、蠕虫の卵、大腸菌、サルモネラ菌、有害植物の胞子などを含む。さらに、このような残物は腐敗臭の発生源となり、ハエの群れを引き寄せる。舗装されていない場所に残物が長期間放置されると、土壌、地面、および地表水が汚染される。
【0003】
養鶏場の前述の問題を根本的に解決するためには、新鮮な鳥糞を圃場に蓄積させずに常時加工する技術が必要である。糞尿処理の有望な方法のひとつは、糞尿を熱加工して様々な安全な物質(有機肥料、粉末化またはペレット化したエネルギーキャリア)にすることである。
【0004】
しかし、新しい鳥糞を安全な有機製品に熱加工するこの技術は、多くの厳しい要件を満たさなければならない。
【0005】
第一に、含水率約75%の新しい天然の(残物を含まない)糞尿は、加工せずに保管すると深刻な環境問題を引き起こすため、鶏舎から取り出してできるだけ早く加工する必要がある。
【0006】
第二に、この技術は、直接その実施プロセスにおいても、また将来、熱加工された材料から得られた製品を使用する際にも、環境や人に対する環境問題を引き起こすべきではなく、それ自体が安全であるだけでなく、保管する際にも安全であるべきであり、さらに使用する際にも人に危険を及ぼすべきではない。
【0007】
第三に、この技術が実施された場合、多大な材料費や人的コストを必要とせず、逆に最小限のコストで、環境に優しい新しい製品を求める大規模な消費者市場を、製造業者に提供できるはずである。
【0008】
第四に、新しい鳥糞を加工する技術は、異なる消費者品質を有する製品の全ラインを生産するために提供されるべきであり、そのためには、材料を加工する技術的態様をわずかに変えるだけで十分である。
【0009】
第五に、新鮮な鳥糞を加工する技術は、周辺地域を汚染する可能性のある、部分的損失を伴う被加工材料の輸送のための追加コストを生み出さないように、鶏舎のすぐ近くで実施するようにするべきである。また、鶏舎に対する廃棄物、特に寒い季節に鶏舎を暖めることができる乾燥排ガスを使用することもある。
【0010】
家禽糞尿を気体状熱媒体中で乾燥させることにより家禽排泄物を加工するための方法が知られているが、病原菌を死滅させ、乾燥への暴露を減らすために、気体状熱媒体で加工する前に糞尿を加圧および粉砕によりあらかじめ脱水し、同じ粒度組成の団粒を得て、糞尿との相互作用後の熱媒体は脱臭に供される(SU535446、クラスF26B 3/02、F26B 5/14、1977年を参照)。
【0011】
既知の方法の主な欠点は、実施における技術的複雑さと環境安全性の低さである。これは、公知方法の実施には、多数の異なるタイプの機械化装置(投入ホッパー、コンベア、磁気選別機、絞りプレス、粉砕機、乾燥ドラム、サイクロン、粉砕機、分配オーガー、および脱臭器)だけでなく、大量の消耗資源(水、電気、機械の予備部品、潤滑油、脱臭器用の吸着剤)、そして最も重要なことは、相当数のサービス要員も必要である。後者については、多数の機械化された装置が存在するため、多数のサービス要員(オペレーターや技術者)が常に必要であることにより説明される。被加工材料(鳥糞)は、製品の金属部分に対してかなり侵食的な(aggressive)材料であることが知られている。そのため、使用されるすべての装置は常に腐食にさらされ、毎日の洗浄作業、定期的な防錆処理と可動部の潤滑化、そして最も重要なこととして週1回の定期メンテナンスが必要となる。毎日の洗浄作業の結果、大量の水が使用され、その水は残留物で汚染され、さらなる有毒廃棄物となるため、追加の洗浄作業が必要となる。同時に、粉砕された糞を乾燥ドラム内で乾燥させる熱媒体もクリーンにする必要があり、そのためにサイクロンの出口で、有害なガスや蒸気を取り除くために、吸着剤を備えた脱臭器に通される。前記吸着剤も定期的に廃棄する必要がある。
【0012】
特許請求された技術的解決策に最も近いものは、プロトタイプとして、湿らせた排泄物を水平ボルテックスチャンバーに垂直に供給することを含む、ボルテックスチャンバー内で家禽排泄物を処理する方法であり、この方法には、湿らせた排泄物を水平ボルテックスチャンバーに垂直に供給すること、ボルテックスチャンバーの端壁が回転体の形状で作製されていること、ボルテックスチャンバーの中心で回転する水平ローター上で機械的に粉砕すること、入口接線方向(tangential)水平流路を通って前記チャンバーに入る熱風の渦流によって前記チャンバーの作業スペースに射出することが含まれる、一方、熱風は、まず材料を乾燥させ、次にガス排気システムを通してガス懸濁物(suspension)の形態で前記チャンバーから取り出す(RU2397416、クラスF26B 17/10、F26B 3/12、2010年参照)。
【0013】
公知の方法は、その実施方法の単純さ、ボルテックスチャンバーのコンパクトな設計、およびその連続作動の可能性により、家禽排泄物をその受取場所で直接加工することができ、ボルテックスチャンバーにおける排泄物加工の利点は以下の通りである:
-ボルテックスチャンバーの作動は、糞尿加工プロセスに伴う、擦れ合う(rubbing)構成要素を有する機構(コンベヤー、歯車機構など)が内部に存在しないため、高い信頼性が保証される。唯一の利用可能な機械部品(回転ローター)は、モーター軸上に設置され、それ自体が前記チャンバーの外側に位置し、ボルテックスチャンバー内の熱交換のプロセスにおいて温度の影響を受けない;
-ボルテックスチャンバー内には、定期的な洗浄や所定のメンテナンスが必要な、ふるい、格子、その他目詰まりしやすい部品がないため、長期間の連続モードでの作業が可能である;
-ボルテックスチャンバー内では、最終製品である微粉末への糞尿加工の全サイクルが同時に実行され、この微粉末はガス懸濁物の形態で前記ボルテックスチャンバーから取り出される;
- ボルテックスチャンバーにおいて加工方法を実施するのには、エネルギー源が1つあれば十分である。電気ネットワークがあれば、電気ヒーターを使用して高温の乾燥ガスを得ることができ、モーターシャフト上のローターを動かし、電動ポンプにより廃液をチャンバーに供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ソビエト特許第535446号明細書
【特許文献2】露国特許第2397416号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
家禽排泄物を加工する既知の方法の欠点には、第一に、主に熱発生装置での燃焼を目的とした微細な(粉末状の)乾燥塊しか得られないということがある。
【0016】
第二に、公知の方法では、材料の加工中に、材料のより小さく軽い「揮発性」画分をより大きくて重い画分から分離するために、チャンバー内で画分分離を生じさせることができず、この画分は、例えば、長時間作用する有機肥料のベースとして使用され得る。このような肥料は通常、数年に一度、多年生植物(樹木や低木)の下で利用される。
【0017】
第三に、既知の方法では、流入材料の水分に適応させるために、材料加工中にボルテックスチャンバーの運転パラメータを変更することができない。従って、原料の水分含有量に応じて原料の供給を調整する必要がある。
【0018】
当該提案される解決策の技術的成果は、ボルテックスチャンバー内で湿潤材料を処理する主な利点を維持しながら、これらの欠点をなくすことである。すなわち、ボルテックスチャンバー内で湿潤材料を加工する技術を、粉塵の多いガス懸濁物の形態だけでなく、そこから一度に複数の完成品や、異なる消費者品質(サイズ、水分、密度など)を有する製品を得る段階まで向上させ、これらの製品を同時に得ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
具体的な技術的成果は、
ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な材料を加工するための方法であって、
湿潤材料を前記ボルテックスチャンバー内に垂直に供給することを含み、
前記ボルテックスチャンバーの壁は、垂直軸がローターの回転軸と一致する回転体の形状に作製されており、
このローターは、流入材料を機械的に粉砕し、入口接線方向流路を通ってチャンバー内に流入する乾燥ガス、の渦流に巻き込み、ここで、前記渦流は、まず前記材料を乾燥させ、次いでガス排気システムを通してガス懸濁物の形態で前記チャンバーから前記材料を取り出す、方法であり、このことは、前記ボルテックスチャンバーがその容積を変化させるように構成され、前記チャンバーの上端壁と下端壁が回転体の形状に作製され、それらを接続する側壁が直円柱の側面の形状を有し、一方、異なる特性を有する被加工材料を取り出すために、前記側壁の外面および/または前記ボルテックスチャンバーの前記下端壁に、追加孔が設けられ得るということによって、達成される。
【0020】
容積を変えることができるボルテックスチャンバーを有する本発明方法では、プロトタイプと異なり、異なる消費者品質(サイズ、水分、密度等)を有するリサイクル材料を得ることが可能であり、前記チャンバーの前記側壁と下端壁にある被加工材料抜き出し用の追加孔を用いることにより、同時に所定の被加工材料を得ることができる。
【0021】
前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁と前記下端壁の位置を変えることにより、前記ボルテックスチャンバーの容積、および乾燥ガスの渦流とボルテックスチャンバーに入る被加工材料との相互作用のプロセスを、変えることが可能であり、この材料はローターにより粉砕された後、側壁に飛ばされ、乾燥ガスの渦循環流と相互作用する粒子の円筒形層の形態において、分布する。この相互作用の結果、被加工材料の粒子は層状化し、より小さく乾燥した粒子は円筒層の上部に、より大きく重い粒子はその下部に位置する。
【0022】
湿潤材料を処理するための提案された方法の利点には、次のような特徴がある。
【0023】
第一に、加工される材料が含水率や成分構造において不均一である場合、ボルテックスチャンバーの作動容積を変更することにより、要求される含水率、密度および微粉度の材料に加工技術を迅速に調整することができ、それにより、ボルテックスチャンバーの側壁近傍の粒子の円筒状層の高さまで被加工材料を偏析させる条件をボルテックスチャンバー内に作り出すことができる。
【0024】
第二に、提案される方法は、熱に敏感な材料の熱処理モードを(ボルテックスチャンバーの容積を変えることによって)経時的に調整することを可能にし、このモードを、ボルテックスチャンバーの容積が小さい場合に達成される熱衝撃モード(被加工材料と乾燥ガスとの短い相互作用、材料低温殺菌モードに近い)から、ボルテックスチャンバーの容積が大きい場合に達成される、水分だけでなく密度および微粉度についても要求される特性がもたらされるような、徐々に加熱し、長時間暴露し、その後抜き出すモードに変える。
【0025】
第三に、提案される方法は、乾燥ガスを供給するための入口接線方向流路の平面に対する前記ボルテックスチャンバーの前記上端壁と前記下端壁の位置を調整できるため、乾燥ガスの渦流内に位置する分散加工材料の円筒層内の温度分布を制御することにより、ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な材料を加工するための様々な方法を実施することが可能となり、大きな技術的利点を有する。
【0026】
第四に、提案される方法では、様々な追加孔を使用することで、様々な消費者品質(サイズ、水分、密度など)を有する被加工材料を、互いに別々に、または組み合わせて、前記ボルテックスチャンバーから同時に抜き出すことが可能になる。
【0027】
従って、熱に敏感な材料を処理する特許請求された方法は、ボルテックスチャンバーの容積を変更できることにより、乾燥ガスの円形渦流と原材料(含水率および成分構造が不均一)との相互作用の技術的プロセスを大幅に再構築することができ、それにより、側部円筒壁近傍で生じ、異なる含水率、密度および分散を有する被加工材料のゾーンに被加工材料を形成する、粉砕された材料の回転円筒形分散層に、効果的に影響を及ぼし、すなわち、前記ボルテックスチャンバーでの加工中に被加工材料を直接分類することが可能になり、異なる消費者品質(サイズ、水分、密度など)を有する特定の加工材料を、追加孔を通して異なる密閉容器に同時に取り出すことができる。したがって、この提案される方法は、湿潤材料加工の生産性を著しく向上させるだけでなく、被加工材料のその後の分離のために更なる装置を使用する必要がなくなり、このことは、ボルテックスチャンバー内で、熱に敏感な材料を加工するための公知の方法の中で先行技術がなく、したがって、「進歩性」の基準を満たす。
【0028】
提案された技術的解決策の本質は、図1~4に示す図によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】当該提案される方法を実施するためのボルテックスチャンバーの垂直断面図を示す。図中、直円柱の側面の形状を有するボルテックスチャンバーの側壁1;回転体の形状に作製され、シールリング4aおよびシールリング4σによって気密性を維持しながらボルテックスチャンバーの容積を変化させるためにボルテックスチャンバーの軸に沿って移動可能なように設けられた、前記ボルテックスチャンバーの上端壁2および下端壁3;前記ボルテックスチャンバーに入る湿潤材料を機械的に粉砕するためのラジアルブレード6を有する回転ローター5;乾燥ガス流がそこを通ってボルテックスチャンバーに流入する、入口接線方向流路7(図2はその断面A-Aを示す);ガス懸濁物を取り出し、乾燥ガスと蒸気を冷却するためのガス排気システム8;ボルテックスチャンバーの容積を変更する際に、ボルテックスチャンバーの気密性を維持するための波形カップリング9;湿潤材料をボルテックスチャンバーに供給するための垂直投入流路10;乾燥材料の最も密度の高い粒子や、石、金属粒子、その他被加工材料に誤って混入した類似の物体などの異物をボルテックスチャンバーから抜き出すための、ボルテックスチャンバーの下壁にある追加孔11;前記追加孔11からの材料出口を閉じるゲートバルブ12;乾燥材料の最も密度の高い粒子と異物を密閉容器14へ移動させるための流路13;様々な密度の乾燥材料の粒子を密閉容器へ取り出すためのボルテックスチャンバーの側壁にある追加孔15a、追加孔15;追加出口15a、追加出口15を閉じるゲートバルブ16a、ゲートバルブ16;リサイクルされた材料の粒子を密閉容器へ移動させるための流路17a、流路17(容器自体は図示されていない)が示される。
図2】湿潤材料をボルテックスチャンバーに供給するための典型的な通路(sluice)ディスペンサー18(図1には示されていない)を備えた垂直投入流路の装置を説明する図である。
図3】ガイド接線方向プレート19を備えた入口接線方向流路7を説明する、断面A-Aの図面である。
図4】乾燥ガスからガス懸濁物を分離するための典型的なサイクロン(図示せず)に接続されたガス排気システム8を説明する、断面Б-Бの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1に示すようなボルテックスチャンバーを用いた提案方法をより詳細に説明する。作業開始前に、前記ボルテックスチャンバーの表面に設けられた追加孔11および追加孔15a~15は、ゲートバルブ12およびゲートバルブ16a~16によって予め閉じられている。さらに、駆動装置(図1では、ローター5の駆動装置は図示されていない)の補助により、ローター5が定格(nominal)の50%を超えない回転速度で回転するように設定され、150~200℃の温度の乾燥ガスが入口接線方向流路7を通ってボルテックスチャンバー内に供給され始め、ボルテックスチャンバー内に激しい渦ガス流が生成される。この渦ガス流は前記ボルテックスチャンバーの壁を加熱し始める。冷却された乾燥ガスは、ガス排気システム8を介して排出される。ボルテックスチャンバーの壁の温度が乾燥ガスの温度とほぼ等しくなると、湿潤材料(例えば含水率約75%の鳥糞)の連続流(30%から定格値まで調整可能)は、垂直投入流路10を通って、ボルテックスチャンバーに供給され、ラジアルブレード6を有する回転ローター5上に落下し、斜め上方に向けられた底壁3の縁部に、遠心力によって飛ばされ、次いで、加熱された側壁1に沿って上方に跳ね返され、そこで高温乾燥ガスの円筒状渦ガス流によって捕捉される。
【0031】
このように、前記ボルテックスチャンバー内では、前記ローター5の前記ブレード6によって粉砕された鳥糞と、乾燥ガスの円筒状渦ガス流との相互作用が達成される。その結果、前記側壁付近に安定した渦分散層が形成され、この渦分散層は、ローター5の回転により生じる遠心力により、および鳥糞粒子が乾燥ガスの回転渦ガス流にさらされることにより、ボルテックスチャンバー内に保持される。鳥糞は、連続モードにおいて少量ずつ投入流路10を通って流れるので、鳥糞がボルテックスチャンバーに供給されるにつれて、渦分散層の厚さは増加し、同時に、十分に小さく乾燥した粒子と、湿っていて大きく密度の高い、投入されたばかりの粒子との両方が層内に存在するために、その層化(偏析)が始まる。加工された材料の最も軽い塵状粒子を含むガス懸濁物が、冷却された乾燥ガスおよび蒸気と共にガス排気システム8を通って流れ始めた後、ボルテックスチャンバーは定常作動モードに入る。この時点までに、ローター速度および湿潤材料供給量は、定格値の100%に達する。前記ボルテックスチャンバーが定常運転モードに入った後、異なる消費者品質(サイズ、水分、密度など)を有する被加工材料を選び出すことが可能になり、そのために1つ以上のゲートバルブ12およびゲートバルブ16a~16がわずかに開かれる。この結果、円筒形渦シェルの高さに沿って層状になり、異なる消費者品質を有する被加工材料を、可撓性ホースを用いて流路17a~17に接続される密閉容器12および他の密閉容器(図1には示されていない)中に抜き出すことができるようになる。
【0032】
次に、特許請求の範囲に記載される方法によって実施される湿潤材料の加工の様々な例を、以下に説明する。
【0033】
実施例1
所定の実施例では、含水率約75%の天然の鳥糞などの大量の農業廃棄物を、加工される材料として使用する。この廃棄物は、様々な病原性微生物叢を大量に含むためかなり有毒であり、肥料として直接使用することはできない。また、田畑に放流することも、その毒性の高さから容認されていない。同時に、養鶏場では毎日数百トンが生じるため、毎日の廃棄が必要となる。提案される方法は、この問題を解決するのに適している。
【0034】
作業開始前に、ボルテックスチャンバーの表面に設けられた被加工材料抜き出し用の追加孔11および追加孔15a~15を、弾性ホース(図示せず)とスライドゲート16a~16を用いて、密閉容器と接続する。同時に、追加抜き出し流路は、例えば、実験的に決定されるスライドゲートをわずかに開くことによって、最小限の産出量になるように調整される。
【0035】
下端壁3を、接線方向ガス供給流路7に可能な限り近づくように高くし、上端壁2を、ボルテックスチャンバーの設計上許容される範囲でできるだけ高くする。
【0036】
次いで、乾燥室のローター5を、定格回転速度の40~50%の範囲の回転速度で回転させる。
【0037】
次いで、150~200℃の温度の乾燥ガスを、入口接線方向ガス供給路7からボルテックスチャンバー内に供給し、ボルテックスチャンバー内に激しい渦ガス流を形成させる。乾燥ガスの温度に近い温度まで前記チャンバーを加熱した後、含水率約75%の湿った天然の鳥糞を、湿潤材料供給用垂直投入流路10を通してボルテックスチャンバー内に供給する。同時に、スライドゲートバルブ16a~16が同期して開き始め、鳥糞の供給とボルテックスチャンバーからの抜き出しが確実に同期するようにする。抜き出しの同期性は、例えば重量法によって制御される。これを行うには、ボルテックスチャンバー内の被加工材料の重量を一定に保つために、ボルテックスチャンバーの重量を継続的に測定する。前記チャンバーに接続されるエアダクト、パイプ、その他の装置は、計量に支障がないように前記チャンバーに接続される。
【0038】
ローターの回転速度を、定格値に調整する。次いで、ボルテックスチャンバーの側壁1にある様々な追加孔15a~15から、抜き出される完成品の重量を、順次制御する。前記ボルテックスチャンバーが定常作動モードに切り替わった場合、チャンバーから抜き出される材料(蒸気を含む)の重量は、投入流路10を通して投入される湿潤材料の重量に対応するように、制御される。その後、様々な追加孔15a~15からの被加工材料の流出速度を、分析する。追加孔15を通る被加工材料の流速が孔15σを通る流速に比べて著しく低い(例えば、5倍以上)場合、前記上端壁2を孔15よりも下方に下げて、スライドゲートバルブ16を予備的に閉じる。同様に、追加孔15σおよび15aからの被加工材料の流速がモニターされる。孔15σおよび孔15aを通る材料の流速がほぼ一致する場合、上端壁2が下方へ移動するのが、停止される。次に、追加孔15σおよび追加孔15a、ならびに下端壁3の孔11から材料のサンプルを採取して、材料の水分パラメータを分析する。水分パラメータが適切であれば、定常状態でさらなる処理が行われる。適切な水分パラメータは、例えば以下の通りであり得る:
-下端壁3の下側追加孔11から、含水率約60%の鳥糞を取り出し、さらなる処理、例えば堆肥化のために送出する;
-側壁1の中間の高さの追加孔15σから、含水率15~20%の鳥糞を採取し、これを、(サイクロンで乾燥洗浄した後)ガス排気システム8を通過したガス懸濁物から分離された乾燥鳥糞と、混合し、ペレット化のために送出し、得られたペレットを燃料ペレットとして使用し、その燃焼熱を、例えば、(冬季における)堆肥化室の暖房、給湯などに利用し、また、焼却灰を、鉱物リン・カリ肥料として利用する;
-側壁1の最下部の追加孔15aから、含水率約40%の鳥糞を採取し、粒状化して粒状肥料として使用する。
【0039】
このように、提案される方法は、天然の鳥糞の廃棄問題を解決し、鳥糞から広範囲の有用な製品を得ることができる。製品の個々のセットは、ユーザーによる独自の判断で選択される。
【0040】
実施例2
例えば養鶏場では、糞尿を、ペレット化するために細かい燃料に加工する必要がある。他の製品は必要ない。このために、実施例1で説明したのと同様の技術プロセスが使用されるが、上端壁2および下端壁3の位置は次のように設定される:
-下端壁3を、入口接線方向ガス供給路7から下方に可能な最大移動量の約半分だけ移動させる;
-上端壁2を、上端位置のままとする;
-装置を、実施例1で説明したのと同じ方法で始動する;
-装置を、定常状態の動作に到達させた後、側壁1の追加孔15a~15(実際には、図1に示すよりもはるかに多くの孔があり得る)から、サンプルを上から下に順番に採取する;
-サンプルを分析する際、必要な水分特性を満たさない(例えば、含水率15%超)パラメータを有する材料が出る孔(例えば、それが孔15aであると判明している)を選択する。この開口部15aを閉じる;
-孔15σは開いたままである。開いている孔15σ(図1ではこの孔が孔15)の上に位置する残りの孔も閉じる。したがって、側壁1における開口部15σ1つのみが、開いたままである;
-上端壁2を、開いている孔15σと、その上にある最も近い閉じている孔15との間のほぼ中央まで下降させてそのままにする;
-材料の選び出しは、開いたままの孔15σから、およびサイクロンの下から行われ、そこでは、乾燥ガスは、前記ガス排気システム8を通って出て行くガス懸濁物から、クリーンにされる;
-(孔15σおよびサイクロンの下から)選び出された材料は混合され、ペレット化のために送出される。
【0041】
実施例3
例えば養鶏場では、糞尿を、ダストバーナーで燃焼させるための細かい燃料に加工する必要がある。他の製品は必要ではない。
【0042】
加工は、実施例2と同様に行われるが、定常状態の動作に達した後、側壁1における全ての追加孔15は閉じられ、材料はガス懸濁物の形態においてガス排気システム8を通してのみ取り出される。
【0043】
実施例2との違いは、乾燥機の設計で許容される可能なストローク内で、上端壁2を下端壁3と同期して同じ量だけ上下に動かすことによって、サンプリングされた材料の特性がさらに調節されることである。
【0044】
上端壁2と下端壁3を同期して同じ距離だけ上方に移動させると、下端壁3は入口接線方向ガス供給路7に近づく。その結果、被加工材料はローター5付近で急速に乾燥し、粉砕されにくくなる。なぜなら、比較的大きな粒子であっても十分に乾燥していれば、ローター5付近の粉砕ゾーンからすぐに離れるからである。
【0045】
前記上端壁2および前記下端壁3を同期して同じ距離だけ下降させると、逆のプロセスが観察される。上端壁2と下端壁3を同期して同じ距離だけ下方に移動させると、下端壁3は入口接線方向ガス供給流路7からさらに遠ざかる。その結果、被加工材料はローター5の領域でよりゆっくりと乾燥する。このため、被処理材料は、その材料中に多量の水が存在するために重くなり、ローター5の領域に長く留まり、そのブレード6によってさらに粉砕される。その結果、粒子はますます小さくなる。十分に大きな粉砕度に達した粒子は、たとえ比較的湿っていても、前記ガス排気システム8を通ってガス懸濁物の形態において乾燥ガス流によって運び出される。
【0046】
この場合、巻き込まれた粒子の水分が許容できないほど高い場合には、前記下端壁3に関係なく、前記上端壁2をさらに上方に移動させることによって、粒子をさらに乾燥させることが可能である。この場合、既に上述したボルテックスチャンバー内の粒子の偏析現象により、より乾燥した粒子は、ガス排気システム8を通る乾燥ガスの流れに乗って運び出される。したがって、この場合、前記上端壁2および前記下端壁3を一方向に異なる値だけ同期して移動させることにより、被加工粒子の必要なサイズと必要な含水率の両方を満たすことが可能になる。
【0047】
実施例4
例えば、養鶏用飼料を含む配合飼料を製造する企業は、例えば刈りたての牧草などの植物性材料をビタミン粉に加工し、配合飼料の成分の一つとして使用する必要がある。この場合の主な課題は、得られる製品中のビタミンなどの有用物質を最大限に保持しながら、原料を素早く粉砕し、必要な含水率まで乾燥させることである。この目的は、原料の迅速な粉砕だけでなく、迅速な熱処理も行われるような技術プロセスを組織化することによって達成される。このプロセスは、乳製品やメランジェ(melange)の生産で行われる低温殺菌プロセスと比較され得る。「熱パルス」とも呼ばれるこのような熱処理プロセスの本質は、原料を必要な温度まで素早く加熱し、加熱ゾーンから素早く取り出し、その後急速に冷却することである。このプロセスの主な特徴は、上端壁2と下端壁3とが可能な限り互いに接近して移動し、ボルテックスチャンバーの容積を最小限に抑えることである(この場合、上端壁2が入口接線方向ガス供給流路7の上方に留まり、下端壁3がこの流路の下方に留まることは明らかである)。同時に、ボルテックスチャンバーの容積を最小にすることで、高温乾燥ガスと被加工材料との接触時間を最小にすることができる。
【0048】
このプロセスを、次のように、より詳細に説明する:
-上端壁2を入口接線方向ガス供給流路7に可能な限り近づけるが、入口接線ガス供給流路7と上端壁2との間には、側壁1に1つの追加孔15aを残す(上に配置されたすべての追加孔15σおよび15を閉じる);
-下端壁3を、入口接線方向ガス供給路7に可能な限り近くまで(装置の設計が許す限り)上昇させる;
-実施例1で説明したように、装置を作動し、定常作動状態にする。
-サンプルを側壁1の孔15aから採取し(実施例1に記載)、乾燥ガスの温度とボルテックスチャンバーを通過する材料の速度を、材料を加工する技術的スケジュールに対応するように、経験的に選択する;
-実施例3に記載されているように、上端壁2および下端壁3を移動させることにより、被加工材料の、要求されるパラメータ(サイズおよび含水率)が達成される;
-被加工材料の分析結果によると、より低い含水率が要求される場合、すなわち被加工材料がより乾燥している必要がある場合、上端壁2を(下端壁3の位置に関係なく)さらに上昇させ、側壁1の上端壁2に最も近い追加孔15σを開き、孔15aを閉じることによって材料の選び出しを開始する;
-側壁1の追加孔15σから取り出された被加工材料、およびガス懸濁物の形態で運び出された材料は、急速冷却のために送り出される。
【0049】
実施例5
養鶏用飼料を含む配合飼料を生産する企業は、植物性材料(掘り取りによって収穫されているため、根系が部分的に土壌に汚染されている薬草)を養鶏用飼料のための薬用添加物に加工する必要がある。
【0050】
このような材料の加工は、実施例4と同様に行うべきであるが、同時に、このタイプの原料の以下の特徴を考慮する必要がある:
-薬用原料は非常に高価であるため、加工時の損失を最小限に抑える必要がある;
-根系に残る砂は家禽の飼料には好ましくないので、加工時にできるだけ除去する必要がある。
【0051】
前述の要求事項を考慮すると、加工の技術的プロセスは、(実施例4と比較して)次のように変更され得る:
-下端壁3が入口接線方向ガス供給流路7の下方に設置され(壁3の正確な位置は実験的に選択される)、下端壁3は上端壁2とは独立して移動する;
-ゲートバルブ12を定期的に開き(開く頻度は実験的に選択される)、下端壁3の追加孔11からの材料の出口を閉じ、根系から蓄積された砂を除去する。
【0052】
湿っていて熱に敏感な材料の提案された加工方法を試験するために、ボルテックスチャンバーのモデルが作成され、その垂直断面図を図1に示す。前記チャンバーの仕様は以下の通りである:
-ボルテックスチャンバーの最小容積-0.3立方メートル;
-最大容積:0.86立方メートル;
-ボルテックスチャンバーの直径-0.8m;
-チャンバーの全高さは1.8メートル;
-チャンバー内に恒久的にある材料の重量-5~12kg;
-乾燥ガス温度-120~400℃;
-ローターの定格回転数-1500rpm。
【0053】
ボルテックスチャンバーの特定のモデルでは、天然の鳥糞や植物薬用原料の加工を含む、熱に敏感な材料の加工に対して提案された方法(実施例1~実施例5に限定されない)の幅広い可能性が、実験的に確認された。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】