(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】部分性脂肪萎縮症を診断および処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240312BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240312BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61B6/00 533
C07K14/705 ZNA
A61B10/00 H
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550240
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022017222
(87)【国際公開番号】W WO2022178382
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ムッサー ブレット
【テーマコード(参考)】
4C093
4H045
【Fターム(参考)】
4C093AA18
4C093CA50
4C093EA07
4C093EC15
4C093EC33
4C093FA54
4C093FF19
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、家族性部分性脂肪萎縮症)を診断するための高度に特異的で選択的な方法を提供する。部分性脂肪萎縮症を処置するための方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約36%よりも大きく、かつ
(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.35よりも大きいか、
または
(2)(i)総体脂肪パーセンテージが約36%以下であり、かつ
(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0311×総体脂肪パーセンテージ)≧約0.232か
を決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
前記方法。
【請求項2】
対象が女性である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約25.7%よりも大きく、かつ
(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.5よりも大きいか、
または
(2)(i)総体脂肪パーセンテージが約25.7%以下であり、かつ
(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.4か
を決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
前記方法。
【請求項4】
対象が男性である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約27.5%よりも大きく、かつ
(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.5よりも大きいか、
または
(2)(i)総体脂肪パーセンテージが、約27.5%以下であり、かつ
(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.321か
を決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
前記方法。
【請求項6】
対象が男性である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
以下を決定する工程を含む、朝鮮民族の対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法:
体幹/脚の脂肪パーセント比が1.54よりも大きいかどうか、ここで対象は女性である;および/または
体幹/脚の脂肪パーセント比が1.90よりも大きいかどうか、ここで対象は男性である。
【請求項8】
ある集団に属する個体群の体幹/脚の脂肪パーセント比および総体脂肪パーセンテージが公知である該集団内のある個体が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いことを示す体幹/脚の脂肪パーセント比を特定するための方法であって、
各々の総体脂肪パーセンテージを有する該集団内の個体群の99%の体幹/脚の脂肪パーセント比を超える体幹/脚の脂肪パーセント比を決定する工程を含み、
該集団内の個体が、同じ総体脂肪パーセンテージを有する該集団内の個体群の99%を超える体幹/脚の脂肪パーセント比を有するならば、該個体は、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定される、
前記方法。
【請求項9】
以下のとおりに
図6の決定木を評価する工程を含む、女性対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法:
(a)各々の決定ノードで脚の脂肪パーセンテージ、腕の脂肪パーセンテージおよび体幹の脂肪パーセンテージを評価することであって、決定ノードで肯定的な決定がされた場合に左側パスがたどられ、決定ノードで否定的な決定がされた場合に右側パスがたどられること;ならびに
(b)エンドポイントノードでポジティブな決定に達したならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するもしくは有する可能性が高い、または、エンドポイントノードで否定的な決定に達したならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有しないかもしくは有する可能性が高くない。
【請求項10】
脚、腕および/または体幹の脂肪パーセンテージを評価する工程を含む、女性対象が部分性脂肪萎縮症(PLD)を有する確率を決定するための方法であって、対象は、
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるならば、PLDを有する約89%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%よりも大きいならば、PLDを有する約100%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるならば、PLDを有する約8%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であるならば、PLDを有する約68%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹脂肪が約35%未満であるならば、PLDを有する約0%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約35%以上であるならば、PLDを有する約100%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約37%以上であるならば、PLDを有する約0%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であるならば、PLDを有する約28%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であるならば、PLDを有する約75%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%未満であるならば、PLDを有する約6%の見込みを有すると決定され;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約51%以上であるならば、PLDを有する約100%の見込みを有すると決定され;および/または
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約51%未満であるならば、PLDを有する約33%の見込みを有すると決定される、
前記方法。
【請求項11】
脚、腕および/または体幹の脂肪パーセンテージを評価する工程を含む、女性対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが、約25%よりも大きい;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが、約25%以上である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約35%以上である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上である;もしくは
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約51%以上である
ならば、対象は、部分性脂肪萎縮症を有するもしくは有する可能性が高いと決定され;
かつ/または
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹脂肪が約35%未満である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約37%以上である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが、37%未満である;
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%未満である;もしくは
- 脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約51%未満である
ならば、女性対象は、部分性脂肪萎縮症を有しないかもしくは有する可能性が高くないと決定される、
前記方法。
【請求項12】
対象が、
- PLDを有する対象を一般集団よりも多数含む集団;
- 約0.7%以上もしくは142人に約1人以上の検査前確率を有する集団;
- PLDを有する対象の第一度および第二度近親者の集団;
- 非肥満糖尿病の集団;
- >約400mg/dLのトリグリセリドを有する個体の集団;および/または
- 臨床医が脂肪分布の変化を認めた個体の集団
内にある、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項記載の方法によって、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定する工程と、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは脂肪萎縮症を有する可能性が高いならば、対象にLEPRアゴニストの有効量を投与する工程とを含む、対象における部分性脂肪萎縮症を処置するための方法。
【請求項14】
その必要がある対象における部分性脂肪萎縮症を処置する方法であって、対象にLEPRアゴニストの治療有効量を投与する工程を含み、請求項1~12のいずれか一項記載の方法によって、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定されている、前記方法。
【請求項15】
部分性脂肪萎縮症が家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
部分性脂肪萎縮症が、FPLD1、FPLD2、FPLD3、FPLD4、FPLD5、FPLD6またはFPLD7である家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪パーセンテージが、3コンパートメントモデルを使用して二重エネルギーX線吸収法によって決定される、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
LEPRアゴニストが、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片である、請求項13~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
対象が、
- 黒色表皮腫;
- アテローム硬化症;
- 動脈硬化性冠動脈性心疾患;
- 不整脈;
- 心筋症;
- うっ血性心不全;
- 冠動脈疾患;
- 糖尿病;
- 脂質異常症;
- 発疹性黄色腫;
- 耐糖能障害;
- 脂肪肝;
- 肝腫大;
- 男性型多毛症;
- 高アンドロゲン血症;
- 高血糖;
- 高血圧;
- 高トリグリセリド血症;
- インスリン抵抗性;
- 肝硬変;
- 筋ジストロフィー;
- ミオパチー;
- 非アルコール性脂肪性肝炎;
- 希発月経;
- 膵炎;
- 多嚢胞性卵巣症候群;
- タンパク尿性腎疾患;
- 重症インスリン抵抗性;および
- 低妊孕率
からなる群より選択される1つまたは複数を患っている、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
対象が、LMNA、PPARG、PLIN1、AKT2、LIPE、CIDEC、ZMPSTE24、PIK3R1、ANDRA2A、CAV1、PCYT1A、PSMB8、WRN、POLD1、および/またはBLM遺伝子にホモ接合体変異またはヘテロ接合体変異を有する、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
LEPRアゴニストが、
(i)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(ii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(iii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(iv)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(v)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:42に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(vi)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:50に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(vii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:58に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(viii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(ix)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:74に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(x)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:82に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
(xi)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:98に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;
または
(xii)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびに
SEQ ID NO:106に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域
を含む、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片;
あるいは
(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と同じエピトープに結合し、かつ/またはLEPRとの結合を(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と競合する、抗体または抗原結合断片
である、請求項13~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
LEPRアゴニストが、
(i)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(ii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(iii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(iv)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(v)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:42に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(vi)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:50に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(vii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:58に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(viii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(ix)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:74に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(x)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:82に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(xi)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:98に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
または
(xii)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および
SEQ ID NO:106に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片である;
あるいは
(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と同じエピトープに結合し、かつ/またはLEPRとの結合を(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と競合する抗体または抗原結合断片である、
あるいは
ミババデマブ(mibavademab)である、
請求項13~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
対象に、LEPRアゴニストと併せてさらなる治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項13~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
さらなる治療剤が、組み換えヒトレプチン;メトレレプチン;PCSK9阻害剤;抗PCSK9抗体もしくはその抗原結合断片;アリロクマブ;エボロクマブ;ボコシズマブ;ロデルシズマブ(lodelcizumab);ラルパンシズマブ(ralpancizumab);HMG CoAレダクターゼ阻害剤;アトルバスタチン;ロスバスタチン;セリバスタチン;ピタバスタチン;フルバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;プラバスタチン;エゼチミブ;インスリン;インスリンバリアント;インスリン分泌促進剤;メトホルミン;スルホニル尿素;ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤;ダパグリフロジン(dapaglifozin);カナグリフロジン(canaglifozin);エンパグリフロジン;GLP-1アゴニストもしくは類似体;エキセナチド;リラグルチド;リキシセナチド;アルビグルチド;デュラグルチド;グルカゴン(GCG)阻害剤;抗GCG抗体;グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤;抗GCGR抗体;低分子GCGRアンタゴニスト;GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗GCGRアプタマー;GCGRスピーゲルマー(spiegelmer);アンギオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤;抗ANGPTL3抗体;抗ANGPTL4抗体;抗ANGPTL8抗体;フェンテルミン;オルリスタット;トピラマート;ブプロピオン;トピラマート&フェンテルミン;ブプロピオン&ナルトレキソン;ブプロピオン&ゾニサミド;プラムリンチド&メトレレプチン;ロルカセリン;セチリスタット;テソフェンシン;ベルネペリト;魚油;ピオグリタゾン;セトメラノチド;フィブラート;フェノフィブラート;プレドニゾン;ナイアシン;抗痙攣薬;ジゴキシン;クマジン;ビタミンD;チロキシン;甲状腺サプリメント;ビタミンサプリメント;カルシウムサプリメント;カルニチン;コエンザイムQ10;抗便秘薬;抗アレルギー薬;ガバペンチン;麻酔薬;ケタミン;リドカイン;および/またはベンラファキシン塩酸塩である、請求項23記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条e項に基づき、2021年2月22日に出願された「部分性脂肪萎縮症を診断および処置するための方法(METHOD FOR DIAGNOSING AND TREATING PARTIAL LIPODYSTROPHY)」という名称の米国仮特許出願第63/152,100号の優先権を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一部には、部分性脂肪萎縮症を診断するための方法およびその処置方法に関する。
【0003】
配列表
本出願の配列表は、ファイル名10850WO01_Sequence_Listing_ST25、作成日2022年2月22日、および約49,152バイトのサイズを有するASCII形式の配列表として電子的に提出される。この配列表は、本明細書の一部として提出され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
脂肪萎縮症などの稀少疾患は、複合的で、慢性で、しばしば健康への消耗性の影響を有するよく知られていない状態であり得る。このような状態は、一般開業医および同様の医療専門家によってあまり理解されていない。それは、一部には、それらの低い有病率および高頻度の表現型不均一性のせいである。知識の欠如は、しばしば診断の大きな遅延および時に誤診につながり、これは、患者に非常に有害な可能性がある。
【0005】
脂肪萎縮症症候群は、栄養欠乏または異化状態の証拠のない、脂肪組織の欠損によって特徴付けられる場合がある、稀少で不均一な障害の集合である。一見したところでは、ある種の部分性脂肪萎縮症(PLD)は、医師が脂肪萎縮症を疑い、正常者よりも細く見える四肢の外観などのある特徴を慎重にチェックしないかぎり、表現型に基づいて他の一般的な代謝疾患(例えば、体幹肥満を有するコントロール不良の糖尿病)とはっきりと識別することができない。また、脂肪消失は徐々に発症し、遺伝型および後天型の両方で診断を遅らせる場合がある(Akinci et al., Lipodystrophy Syndromes: Presentation and Treatment. [Updated 2018 Apr 24]. In: Feingold KR, Anawalt B, Boyce A, et al., editors. Endotext [Internet]. South Dartmouth (MA): MDText.com, Inc.; 2000-. www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK513130/から入手可能; Brown, et al., The Diagnosis and Management of Lipodystrophy Syndromes: A Multi-Society Practice Guideline. The Journal of clinical endocrinology and metabolism 2016;101:4500-4511;およびHandelsman et al., The clinical approach to the detection of lipodystrophy - an AACE consensus statement. Endocr Pract 2013;19:107-116)。
【0006】
一般集団の15%は、PLDと連鎖したある遺伝子にミスセンス変異を有すると推定されており、したがって、これらの変異の多くは比較的よくあるものになっている(本研究)。例えば、報告された病原性LMNAバリアントを有するGeisinger Healthcare Systemの患者37人のうち、糖尿病の有病率およびトリグリセリドレベルに基づき脂肪萎縮症の証拠を有した患者はいなかった。したがって、PLDを研究している医師または研究者は、PLDが疑われる患者から変異を特定し、原因がこの変異にあると想定する場合がある。これは、実効的なアプローチではない。
【0007】
加えて、ClinVarによって「病原性」と分類された、PLDに連鎖された公表済みの変異のパーセントは低い。ClinVarは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)がホストとなり、National Institutes of Health(NIH)の組織内資金によって資金供与された、ヒト多様性と表現型との関係の報告のアクセスフリーの公的アーカイブである。これは、家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)の遺伝的構造が、それぞれ少数の患者を有する多数のバリアントがあるような構造であるからである。したがって、少数の患者からの証拠は、ClinVarによって記載される証拠の閾値に達しない場合がある。これは、FPLDの正確な診断をさらに混乱させる。これらの変異を有する対象の総数のうち全体的な代謝疾患負荷がどれだけであるかは分からない。Gonzaga-Jaureguiらは、病原性家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)変異を有する患者の75%が、糖尿病および高トリグリセリド血症などの、疾患を定義する共存症を有するにもかかわらず、彼らの医師によって脂肪萎縮症を有すると診断されなかった(ICD9/ICD10からの適切な診断コードの非存在として定義)ことを実証した。
【0008】
PLDおよびそのサブタイプを診断するための現行の手段は、十分な特異度または感度を欠いている。脂肪萎縮症サブタイプの鑑別診断のための基本アルゴリズムが提唱されているが、これらのアルゴリズムは、PLD患者に見られる脂肪減少のパターンおよびその程度を考慮せずに非常に一般化されたものである(Araujo-Vilar&Santini, Diagnosis and treatment of lipodystrophy: a step-by-step approach, Journal of Endocrinological Investigation (2019) 42: 61-73)。FPLDを診断するために二重エネルギーX線吸収法(DXA)基準を使用する試みもまた、定数よりも大きな「体幹/脚の脂肪パーセント比」などの静的尺度を使用している(Ajluni et al., Spectrum of disease associated with partial lipodystrophy: lessons from a trial cohort. Clin Endocrinol (Oxf) 2017; 86:698-707)。他の試みは、対照集団の大きなデータセットと比較して年齢について<1パーセンタイルの脚の脂肪%などの規準化された尺度を使用している(Vasandani et al., Diagnostic Value of Anthropometric Measurements for Familial Partial Lipodystrophy, Dunnigan Variety. J Clin Endocrinol Metab 2020; 105(7): 2132-2141)。これらの著者は、脚の脂肪の1パーセンタイルが、腕の脂肪、体幹の脂肪、体幹/脚の脂肪パーセント比、およびノギスで評価された三頭筋皮膚厚などの、彼らが検査した他の尺度よりも成績良好であったと述べた。しかし、後者のアプローチは、FPLD2を有する患者のみから検査されたものである。さらに、脚の脂肪の1パーセンタイルを使用することは、肥満対象において成績不良の場合がある。最終的に、何人かが、DXAによって生成された、脂肪組織を視覚化する画像の調査に基づきPLDを診断することを実証した(Meral, 2018)。しかし、この方法を使用する診断に関して脂肪萎縮症専門家による一致が不完全であることを考えると、画像を審査するために数人の脂肪萎縮症専門家が必要であるので、これはより大きな規模では実際的でない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、対象が部分性脂肪萎縮症(例えば、家族性部分性脂肪萎縮症)を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約36%よりも大きく、かつ(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.35(例えば、約1.3もしくは1.353)よりも大きいか、または(2)(i)総体脂肪パーセンテージが約36%以下であり、かつ(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0311×総体脂肪パーセンテージ)≧約0.232(例えば、0.2もしくは0.23)(好ましくは、ここで対象は女性である)か、
あるいは
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約25.7%よりも大きく、かつ(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.5よりも大きいか、または(2)(i)総体脂肪パーセンテージが約25.7%以下であり、かつ(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.4(好ましくは、ここで対象は男性である)か、
あるいは
(1)(i)総体脂肪パーセンテージが約27.5%よりも大きく、かつ、(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が、約1.5よりも大きいか、または(2)(i)総体脂肪パーセンテージが約27.5%以下であり、かつ、(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.321(例えば、0.3もしくは0.32)(好ましくは、ここで対象は男性である)か
を決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
方法を提供する。
【0010】
朝鮮民族の対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法も同様に提供される。このような方法は、体幹/脚の脂肪パーセント比が、例えば、約1.54よりも大きいかどうか(ここで対象は女性である)、および/または、体幹/脚の脂肪パーセント比が、例えば、約1.90よりも大きいかどうか(ここで対象は男性である)を決定する工程を含み;基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない。
【0011】
本発明はまた、ある集団に属する個体群の体幹/脚の脂肪パーセント比および総体脂肪パーセンテージが(例えば、NHANESまたはKNHANESデータベースから)公知である該集団内のある個体が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いことを示す体幹/脚の脂肪パーセンテージ比を特定するための方法を提供し、該方法は、同じ総体脂肪パーセンテージを有する該集団内の個体群の約99%の体幹/脚の脂肪パーセント比を超える体幹/脚の脂肪パーセント比を決定する工程を含み、該集団内の個体が、同じ総体脂肪パーセンテージを有する該集団内の個体群の99%を超える体幹/脚の脂肪パーセント比を有するならば、該個体は、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定される。
【0012】
本発明はまた、女性対象が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法を提供し、該方法は、以下のとおりに
図6の決定木を評価する工程を含む:(a)各々の決定ノードで脚の脂肪パーセンテージ、腕の脂肪パーセンテージおよび体幹の脂肪パーセンテージを評価することであって、決定ノードで肯定的な決定がされた場合に左側パスがたどられ、決定ノードで否定的な決定がされた場合に右側パスがたどられること;ならびに(b)エンドポイントノードでポジティブな決定に達したならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するもしくは有する可能性が高い、または、エンドポイントノードで否定的な決定に達したならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有しないかもしくは有する可能性が高くない。
【0013】
本発明は、さらに、脚、腕および/または体幹の脂肪パーセンテージを評価する工程を含む、女性対象が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法を提供し、脚の脂肪パーセンテージが約31%未満である;脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが、約25%よりも大きい;脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが、約25%以上である;脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約35%以上である;脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上である;もしくは脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、かつ、体幹の脂肪パーセンテージが約51%以上であるならば、対象は、部分性脂肪萎縮症を有するもしくは有する可能性が高い;
および/または脚の脂肪パーセンテージが約31%以上である;脚の脂肪パーセンテージが約31%未満であるが約25%以上であり、かつ、体幹脂肪が約35%未満である;脚の脂肪パーセンテージが約37%以上である;脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが、37%未満である;脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、かつ、腕の脂肪パーセンテージが約38%未満である;もしくは脚の脂肪パーセンテージが約31%以上であるが37%未満であり、腕の脂肪パーセンテージが約38%以上であり、体幹の脂肪パーセンテージが約51%未満であるならば、女性対象は、部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない。
【0014】
本発明の態様では、本明細書に述べられるとおりの、対象がPLDを有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法は、対象がPLDを有するまたは有する可能性が高いならば、対象にLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ(mibavademab)、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量を投与する工程をさらに含む。
【0015】
本発明の態様では、本明細書に示されるように決定するための方法のいずれかは、対象にDXA分析を行って、適切な総体脂肪パーセンテージ値を決定し、次いで、本明細書において方法に示されるようにこれらの値を採用する工程を含む。本発明の態様では、対象の脂肪分布はまた、医師または臨床医によって調査され、例えば、PLDを示す脂肪分布の変化を有すると決定される。本発明の態様では、対象の臨床歴および血中レベル(例えば、血清レプチン、脂質、および/または糖レベル)が調査され、例えば、PLDを示すと決定される。本発明の態様では、対象の遺伝子型が例えば分析され、例えば、PLD(例えば、FPLD)を示す、CIDEC、LIPE、PCYT1A、LMNA、PPARG、AKT2、PLIN1、CAV1、ADRA2A、PIK3R1、ZMPSTE24、PSMB8、WRN、POLD1および/またはBLMのアレルを有すると決定される。
【0016】
本発明は、対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置するための方法であって、本発明の方法によって、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定する工程と、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは部分性脂肪萎縮症を有する可能性が高いならば、対象にLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量を投与する工程とを含む方法を提供する。
【0017】
本発明は、追加的に、その必要がある対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置する方法であって、対象にLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の治療有効量を投与する工程を含む方法を提供し、対象は、本発明の方法によって、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定されている。
【0018】
本発明は、対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置するための方法に使用するためのLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)を提供し、該方法は、本明細書に記載される方法によって、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定する工程と、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは部分性脂肪萎縮症を有する可能性が高いならば、対象にLEPRアゴニストの有効量を投与する工程とを含む。
【0019】
本発明は、追加的に、その必要がある対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置する方法に使用するためのLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)を提供し、該方法は、LEPRアゴニストの治療有効量を対象に投与する工程を含み、対象は、本明細書に開示される方法によって、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定されている。
【0020】
本発明は、本明細書に記載される方法によって、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定する工程と、対象が部分性脂肪萎縮症を有するまたは部分性脂肪萎縮症を有する可能性が高いならば、対象にLEPRアゴニストの有効量を投与する工程を含む、対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)の処置のための医薬の製造におけるLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の使用を提供する。
【0021】
本発明は、追加的に、LEPRアゴニストの治療有効量を対象に投与する工程を含む、その必要がある対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置する方法におけるLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の使用を提供し、対象は、本明細書に記載される方法によって、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定されている。
【0022】
本発明の態様では、家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)は、FPLD1、FPLD2、FPLD3、FPLD4、FPLD5、FPLD6またはFPLD7である。本発明の態様では、脂肪パーセンテージは、二重エネルギーX線吸収法によって、例えば3コンパートメントモデルを使用して、決定される。
【0023】
本発明の態様では、対象は、黒色表皮腫;アテローム硬化症;動脈硬化性冠動脈性心疾患;不整脈;心筋症;うっ血性心不全;冠動脈疾患;糖尿病;脂質異常症;発疹性黄色腫;耐糖能障害;脂肪肝;肝腫大;男性型多毛症;高アンドロゲン血症;高血糖;高血圧;高トリグリセリド血症;インスリン抵抗性;肝硬変;筋ジストロフィー;ミオパチー;非アルコール性脂肪性肝炎;希発月経(oligomenorrhoea);膵炎;多嚢胞性卵巣症候群;タンパク尿性腎疾患;重症インスリン抵抗性;および低妊孕率からなる群より選択される1つまたは複数を患っている。本発明の態様では、対象は、LMNA、PPARG、PLIN1、AKT2、LIPE、CIDEC、ZMPSTE24、PIK3R1、ANDRA2A、CAV1、PCYT1A、PSMB8、WRN、POLD1、および/またはBLM遺伝子にホモ接合体変異またはヘテロ接合体変異を有する。
【0024】
本発明の態様では、LEPRアゴニストは、例えば、(i)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(ii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(iii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(iv)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(v)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:42に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(vi)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:50に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(vii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:58に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(viii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(ix)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:74に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(x)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:82に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;(xi)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:98に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域;または(xii)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖可変領域;ならびにSEQ ID NO:106に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖可変領域を含む、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片;あるいは(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と同じエピトープに結合し、かつ/またはLEPRとの結合を(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と競合する、抗体または抗原結合断片であって;例えば、(i)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(ii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(iii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(iv)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(v)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:42に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(vi)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:50に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(vii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:58に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(viii)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(ix)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:74に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(x)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:82に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(xi)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:98に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;または(xii)SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;およびSEQ ID NO:106に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体または抗原結合断片;あるいは(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と同じエピトープに結合し、かつ/またはLEPRとの結合を(i)~(xii)の任意の1つもしくは複数と競合する抗体または抗原結合断片である。
【0025】
本発明の態様では、LEPRアゴニストは、さらなる治療剤と併せて投与され、さらなる治療剤は、例えば、組み換えヒトレプチン;メトレレプチン;PCSK9阻害剤;抗PCSK9抗体もしくはその抗原結合断片;アリロクマブ;エボロクマブ;ボコシズマブ;ロデルシズマブ(lodelcizumab);ラルパンシズマブ(ralpancizumab);HMG CoAレダクターゼ阻害剤;アトルバスタチン;ロスバスタチン;セリバスタチン;ピタバスタチン;フルバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;プラバスタチン;エゼチミブ;インスリン;インスリンバリアント;インスリン分泌促進剤;メトホルミン;スルホニル尿素;ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤;ダパグリフロジン(dapaglifozin);カナグリフロジン(canaglifozin);エンパグリフロジン;GLP-1アゴニストもしくは類似体;エキセナチド;リラグルチド;リキシセナチド;アルビグルチド;デュラグルチド;グルカゴン(GCG)阻害剤;抗GCG抗体;グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤;抗GCGR抗体;低分子GCGRアンタゴニスト;GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗GCGRアプタマー;GCGRスピーゲルマー(spiegelmer);アンギオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤;抗ANGPTL3抗体;抗ANGPTL4抗体;抗ANGPTL8抗体;フェンテルミン;オルリスタット;トピラマート;ブプロピオン;トピラマート&フェンテルミン;ブプロピオン&ナルトレキソン;ブプロピオン&ゾニサミド;プラムリンチド&メトレレプチン;ロルカセリン;セチリスタット;テソフェンシン;ベルネペリト;魚油;ピオグリタゾン;セトメラノチド;フィブラート;フェノフィブラート;プレドニゾン;ナイアシン;抗痙攣薬;ジゴキシン;クマジン;ビタミンD;チロキシン;甲状腺サプリメント;ビタミンサプリメント;カルシウムサプリメント;カルニチン;コエンザイムQ10;抗便秘薬;抗アレルギー薬;ガバペンチン;麻酔薬;ケタミン;リドカイン;および/またはベンラファキシン塩酸塩である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】UK Biobankにおける女性の大きな対照データセット中の総脂肪パーセンテージに対する体幹対脚の脂肪比を示す図である。
【
図2】FPLD(FPLD2、PPARG変異を有する、POLD変異を有するまたはFPLDXとして分類された)を有する対象における総脂肪パーセンテージに対する体幹対脚の脂肪比(Meral 2018)を示す図である。
【
図3】対照をFPLD患者から分離するために最良適合線が描かれた
図1および2におけるグラフのオーバーレイを示す図である。
【
図4】アルゴリズムの感度分析を示す図である。PLD患者の独立盲検データにおける総脂肪に対する体幹対脚の脂肪比。アルゴリズムによって正しく特定されなかった3人の患者(A~C)を表示する。
【
図5】
図5A. ドットで表示された本発明のアルゴリズムと共に、特異度に対する感度の受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。(A)全体的な曲線。
図5B. ドットで表示された本発明のアルゴリズムと共に、特異度に対する感度の受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。(B)より詳細に示すために関心対象の領域を拡大した曲線。
【
図6】PLD診断の決定木を示す図である。木の基部のノードがエンドポイントノードであり、その他のノードが決定ノードである;決定ノードで「該当する」ならば左の矢印をたどり、決定ノードで「該当しない」ならば右の矢印をたどり、エンドポイントノードでの「真」は、PLDの陽性診断を示し、エンドポイントノードでの「偽」は、PLDの陰性診断を示す。
【
図7】NIHおよびNHANESの複合データセット(女性における)についての受信者動作曲線(ROC)を示す図である。
【
図8】FPLDを対照から分離する識別線と並んだ1、3、10、25、50、75、90、97および99パーセンタイルについての値と共に、NHANES中の女性における総脂肪に対する体幹-脚比の分布を示す図である。
【
図9】パーセンタイルを使用する、FPLDを有する男性についての識別関数(感度100%および特異度98.1%)を示す図である。
【
図10】パーセンタイルを使用する、FPLDを有する男性についての識別関数(感度85.7%および特異度99.3%)を示す図である。
【
図11】受信者動作曲線(ROC) - 体幹-脚比単独(男性における)を使用して比較された2つの識別器の性能を示す図である。
【
図12】拡大されたROC曲線(男性における)を示す図である。
【
図13】NHANESにおけるメキシコ系アメリカ人、その他ヒスパニック、白人、黒人およびその他/バイレイシャル群(女性)の体幹-脚比と総体脂肪パーセントとの関係を示す図である。
【
図14】朝鮮人女性(NHANES)とアメリカ人女性(NHANES)との間で比較された体幹/脚比の比および総脂肪パーセントを示す図である。
【
図15】総脂肪過多についての体幹-脚比の1パーセンタイルに基づく朝鮮人における識別関数を決定するための技術の実証を示す図である。
【
図16】99.3%の特異度の経験的アプローチまたは99%の特異度を有する99パーセンタイルアプローチを使用した場合の検査前確率(試験集団における有病率に関係)とFPLDについての陽性適中率との間の関係の実証を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
部分性脂肪萎縮症(PLD)は、診断が困難な疾患であり、現在のところ診断を行うための客観的基準はない。上述のように、PLDを診断するための方法を開発する従来の試みは、最適ではなかった。本明細書に記載されるアルゴリズムは、一部には、総脂肪と体幹-脚の脂肪比との関係を明らかにすること、および体幹-脚の比を総体脂肪パーセントに対して規準化することが一部有利である。このアプローチは、95%の感度および99%よりも大きな特異度を有する優れた性能特性を有する。女性FPLD患者および対照としての女性NHANES対象を使用して、適切な対照集団と比較された総脂肪過多についての体幹/脚比の99パーセンタイルによって関数が近似されると分かることができる。FPLD対象および対照を使用して、またはFPLD患者のデータの非存在下であっても対照における総脂肪過多についての体幹/脚比の99パーセンタイルを使用して対照データ単独を使用して、このアプローチを人種および民族などの他の人口統計に一般化することができる。本発明のアルゴリズムはまた、異なる民族の人々の間の体幹-脚脂肪比における差を考慮するので、有利である。ツリーベースのアルゴリズムは、腕、脚、および体幹からの包括的なDXA情報を使用する。女性白人FPLD患者および対照としての女性NHANES対象を使用して、ツリーベースアルゴリズムは、84%の感度および98%の特異度の良好な性能を示す。
【0028】
診断学
本発明は、例えば、体幹および付属器についての脂肪分布ならびにそれらの比に基づき、対象における部分性脂肪萎縮症(PLD)(例えば、家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD))を診断するための高感度で選択的な方法を提供する。任意で、任意のこのような診断方法は、さらに、LEPRアゴニストの治療有効量を投与することによって、診断された個体におけるPLDを処置する工程を含む。任意で、任意のこのような診断方法は、診断基準が満たされないならば、対象を、PLD(例えば、FPLD)を有しないまたは有しない可能性が高いと診断する工程を含む。
【0029】
「感度」は、正しく特定された陽性の比率を測定する。「特異度」は、正しく特定された陰性の比率を測定する。
【0030】
本発明は、対象(女性)が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有する(または有する可能性が高い)かどうかを決定するための方法であって、
(i)総体脂肪パーセンテージが約36%よりも大きく、かつ
(ii)体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.3よりも大きい(例えば、約1.35もしくは1.353)、
または
(a)総体脂肪パーセンテージが約36%以下であり、かつ
(b)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0311×総体脂肪パーセンテージ)≧約0.232(例えば、約0.2もしくは0.23)
かどうかを決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
方法を提供する。
【0031】
体幹/脚の脂肪パーセント比は、体幹脚の脂肪パーセントと脚の脂肪パーセントとの比である。本発明の態様には、体幹/脚の脂肪パーセント比が、脂肪パーセント以外の単位で表現された体幹と脚脂肪との比に置換される、本明細書に述べるとおりの方法が含まれる。
【0032】
本発明は、対象(男性)が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有する(または有する可能性が高い)かどうかを決定するための方法であって、
(i)総体脂肪パーセンテージが約25.7よりも大きく、かつ
(ii)体幹-脚脂肪比が約1.5よりも大きい、
または
(a)総体脂肪パーセンテージが約25.7以下であり、かつ
(b)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.4
かどうかを決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
方法を提供する。
【0033】
本発明は、対象(例えば女性または男性、好ましくは男性)が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有する(または有する可能性が高い)かどうかを決定するための方法であって、
(i)総体脂肪パーセンテージが約27.5よりも大きく、かつ
(ii)体幹/脚脂肪比が1.5以上である、
または
(a)総体脂肪パーセンテージが27.5以下であり、かつ
(b)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.321(または>0.3もしくは0.32)
かどうかを決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、朝鮮民族の対象が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有する(または有する可能性が高い)かどうかを決定するための方法であって、
体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.54よりも大きいかどうか(ここで対象は朝鮮人女性である);および/または
体幹/脚の脂肪パーセント比が約1.90よりも大きいかどうか(ここで対象は朝鮮人男性である)
を決定する工程を含み、
基準が満たされるならば、対象は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高く、任意で、基準が満たされないならば、患者は部分性脂肪萎縮症を有しないかまたは有する可能性が高くない、
方法を提供する。
【0035】
本発明の態様では、朝鮮民族の対象の属性は、KNHANESデータベース中にある。本発明の態様では、対象は、朝鮮民族に一般的な遺伝形質(例えば、ハプロタイプ)を有すると対象を特徴付けることができるならば、対象は朝鮮民族であると特徴付けられる。Kim et al., The Origin and Composition of Korean Ethnicity Analyzed by Ancient and Present-Day Genome Sequences, Genome Biol. Evol. 12(5):553-565 (2020);The 1000 Genome Project (1KGP);1000 Genomes Project Consortium, et al. 2015. A global reference for human genetic variation. Nature 526:68;またはJeon et al., Korean Genome Project: 1094 Korean personal genomes with clinical information, Science Advances, Vol. 6, no. 22 (2020)。
【0036】
個体の所与の集団についてPLD(例えば、FPLD)の診断基準を特定するための方法もまた提供される。例えば、本発明は、ある集団に属する個体群の体幹/脚の脂肪パーセント比および総体脂肪パーセンテージが公知である該集団内のある個体が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いことを示す体幹/脚の脂肪パーセント比を特定するための方法を提供し、該方法は、各々の総体脂肪パーセンテージを有する集団内の個体群の99%の体幹/脚の脂肪パーセント比パーセンテージを超える体幹/脚の脂肪パーセント比パーセンテージを決定する工程を含み、集団内の個体が、同じ総体脂肪パーセンテージを有する集団内の個体群の99%を超える体幹/脚の脂肪パーセント比を有するならば、該個体は部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと決定される。例えば、本発明の態様では、総体脂肪パーセンテージ(X軸)に対する体幹/脚の脂肪パーセント比(Y軸)のプロットがプロットされる。次いで、99-パーセンタイル曲線が生成され、プロットされた任意の所与の範囲内の総体脂肪パーセンテージを有する個体群の99%が曲線よりも下にある。所与の総体脂肪パーセンテージで曲線よりも上にある体幹-脚脂肪比は、PLD(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いと決定される。このアルゴリズムの陽性適中率は、検査前確率の関数であることに注目すべきである。このせいで、稀少疾患についてスクリーニングすることが困難であると知れわたっている。アルゴリズムは、一般集団において使用された場合に最大の有用性ではない場合がある。例えば、NHANES対照およびFPLD患者に由来する診断アプローチを使用して、特異性は99.3%であった。1:6,000の公表されたFPLD有病率を使用し、6,000人のスクリーニングされた対象のうち発見される真陽性毎に42人の偽陽性があり(FP=1-特異度)、これは2.3%(TP/[TP+FP]または1/[1+42])のPPVをもたらす。要求される検査の陽性適中率は、陽性検査結果の意味に依存する。例えば、十分に確立された新生児健診プログラムは、約1%のPPVを有することができる(Kwon & Farrell, The Magnitude and Challenge of False-Positive Newborn Screening Test Results. Arch Pediatr Adolesc Med. 2000;154(7):714-718)。FPLDの診断にとって、このような低いPPVは許容されない。PPVを50%にするために、検査前確率は1:142である必要がある。したがって、アルゴリズムは、検査前確率が一般集団で見られるものよりも高い場合、より高い陽性適中率を有する。発生率とPPVとの関係を
図16に示す。50%のPPVを達成するために、検査前確率は、0.7%または142人に1人よりも大きい必要がある。言い換えると、FPLDを有する確率が0.7%以上であるカテゴリーに対象を入れるリスク因子を有する対象をスクリーニングしなければならない。これを別様に述べると、有病率を1:6000から1:142に増加させるように一般集団を42倍濃縮する必要があるということである。データは、使用できる正確な基準を欠くものの、適切なスクリーニング集団は、
1)FPLDを有する対象の第一度および第二度近親者
2)非肥満糖尿病
3)>400mg/dLのトリグリセリドを有する個体
4)臨床医が脂肪分布の変化を認めた個体
を含む。
【0037】
PLDを有する対象の近親者は、関係の強度に応じて、彼ら自身がFPLDを有するリスクがある。共有されるDNAの予想および共有されるDNAの観察された範囲(入手可能な場合)が示された、FPLD患者の以下の近親者は、1%よりも大きなリスクを有し、スクリーニングする価値がある(ウェブサイト:customercare.23andme.com/hc/en-us/articles/212170668-Average-Percent-DNA-Shared-Between-Relatives):親または子(50%);全血兄弟姉妹(50%、38~61%);祖父母、孫、おば、おじ、姪、甥、半血兄弟姉妹(25%、17~34%);いとこ、曾祖父母、曾孫、大おじ、大おば、甥姪の息子、甥姪の娘(12.5%、4~23%);いとこの子(first-cousin once removed)、半いとこ(6.25%、2~11.5%);またいとこ(3.1%、2~6%)。診断済みの糖尿病をすべてスクリーニングすることは有用ではない。それは、米国人集団の8%が診断済みの糖尿病に冒されており、それで、約20%のPPVがもたらされるからである。しかし、肥満は糖尿病についての強いリスク因子であるので、糖尿病を有するFPLD対象は、FPLDを有しない糖尿病よりも低いBMIを有し、より低いパーセントが肥満(BMI>30)である。糖尿病の約28%は肥満でなく(Centers for Disease Control, National Diabetes Statistics Report 2020: Estimate of Diabetes and Its Burden in the United States、ウェブサイト:www.cdc.gov/diabetes/pdfs/data/statistics/national-diabetes-statistics-report.pdf)、その結果、非肥満糖尿病の集団は2.2%である。したがって、FPLDは、非肥満糖尿病の約0.8%に存在すると予想され、この集団をスクリーニングする価値のあるものにしている。FPLDで観察された高率のトリグリセリド上昇からして、高いトリグリセリドを有する対象の集団をスクリーニングするならば、FPLDを有する検査前確率が増加するであろう。具体的には、トリグリセリドの上位2.3%中の集団をスクリーニングするならば、検査前確率は50%になるであろう。これは、>400mg/dLのトリグリセリドを有する個体に対応する。
【0038】
したがって、本発明は、PLDを有する対象を一般集団(例えば、所与の国または地域内(例えば、米国、欧州、朝鮮もしくはアジア)または全世界の一般集団)よりも多数含む集団内の1または複数の対象にPLD(例えば、FPLD)の診断がなされる態様を含む。例えば、このような方法は、0.7%または142人に1人以上の検査前確率を有する集団内の対象においてPLDを診断するために行われ得る。本発明の態様では、対象は、PLD(例えば、FPLD)を有する対象の第一度および第二度近親者;非肥満糖尿病;>400mg/dLのトリグリセリドを有する個体;または臨床医が脂肪分布の変化を認めた個体、またはそれらの1、2、3もしくは4つの任意の組み合わせの集団内にある。
【0039】
PLDを「有する可能性が高い」という用語は、一般的に、50%よりも大きな、PLDを有する確率を指す。
【0040】
本発明は、対象が部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
以下の3つの基準(PLD診断基準):
(1)25未満である脚の脂肪パーセンテージ;
(2)25以上であるが31未満である脚の脂肪パーセンテージ;および35以上である体幹の脂肪パーセンテージ;
ならびに/または
(3)31以上であるが37未満である脚の脂肪パーセンテージ;および38以上である腕の脂肪パーセンテージ;および51以上である体幹脂肪
のいずれかが満たされるかを決定する工程と、
3つの基準が満たされるならば、患者を、脂肪萎縮症を有するまたは部分性脂肪萎縮症を有する可能性が高いと診断する工程と、
任意で、3つの基準のいずれも満たされないならば、例えば、以下の陰性診断基準:
(a)31未満であるが25以上である脚の脂肪パーセンテージ;および35未満である体幹の脂肪パーセンテージ;
(b)37以上である脚の脂肪パーセンテージ;
(c)31以上であるが37未満である脚の脂肪パーセンテージ;および38未満である腕の脂肪パーセンテージ;または
(d)31以上であるが37未満である脚の脂肪パーセンテージ;38以上である腕の脂肪パーセンテージ;および51未満である体幹の脂肪パーセンテージ
のいずれかが満たされるならば、患者を、部分性脂肪萎縮症を有しないまたは有しない可能性が高いと診断する工程と
を含む、方法を提供する。
【0041】
本発明の態様では、このような診断方法は、本明細書の
図6に示される決定木に具体化されるとおりである。したがって、本発明は、女性対象がPLD(例えば、FPLD)を有するまたは有する可能性が高いかを決定するための方法であって、
以下:
(1)第1の決定ノードでの脚の脂肪パーセンテージ;次いで
(2)第2の決定ノードでの脚の脂肪パーセンテージ;次いで
(3)第3の決定ノードでの腕の脂肪パーセンテージまたは体幹の脂肪パーセンテージ;次いで
(4)第4の決定ノードでの体幹の脂肪パーセンテージ
を、必要に応じて評価する工程と、
到達したエンドノードにしたがって、対象がPLDを有するまたは有する可能性が高いかどうかに関して最終決定を下す工程と
を含み、
決定ノードでの肯定的な決定の後、評価される次のノードは、決定木の左下方向であり;かつ
決定ノードでの否定的な決定の後、評価される次のノードは、決定木の右下方向である、
方法を提供する
【0042】
例えば、患者がPLDを有するかどうかを決定するためのこのような方法のいずれかにおいて、患者は、最初に、体、付属器(例えば、腕および/もしくは脚)ならびに/または体幹の体脂肪パーセンテージを決定するためのボディースキャンに供され得、例えば、スキャンはDXAである。したがって、本発明は、対象におけるPLDを診断するための方法であって、対象をDXAスキャンに供する工程と、このような脂肪パーセンテージを決定する工程と、次いで、本明細書に述べるとおりのPLD診断基準が満たされるならば対象をPLDと診断する工程とを含む方法を提供する。
【0043】
本発明の態様では、上述のように、PLD(例えば、FPLD)と陽性診断された対象は、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461)の治療有効量で処置される。したがって、本発明は、本明細書に述べられる方法を使用して対象がPLDを有するかを決定する工程と、そうならば、対象をPLDと陽性診断する工程と、次いで、対象に、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461)の治療有効量を投与する工程とを含む、対象におけるPLDを処置するための方法を提供する。
【0044】
二重エネルギーX線吸収法(DXAまたはDEXA)および体脂肪の決定
DXAの基本原理は、身体を高および低エネルギーで通過するX線の透過の測定である(Ward et al., Tools for measuring bone in children and adolescents (2007) In: Sawyer et al, (eds). Bone densitometry in growing patients -Guidelines for clinical practice. Humana Press: Totowa, New Jersey: 2007. pp 15-40)。X線源は、電磁エネルギーを経由して運ばれる光子粒子からなるX線ビームを生成する。光子は対象の組織を横切るので、ビーム強度を減衰させる物理的相互作用が起こる。これらの2つのエネルギーでのX線ビームの減衰差は、スキャンされた領域の体組成を計算するために使用される。対象がPLDを有するかどうかを決定するための本明細書に述べられる方法は、一部、体脂肪の測定に基づく。したがって、このような方法は、対象を、適切な体脂肪含量(例えば、本明細書に示されるもの)のDXA決定に供する工程を含み得る。このような方法は、対象の臨床医または処置している医師によって命じられたように適切な技師によって行われ得る。次いで、本明細書に述べられるような方法の成績についてDXA測定の結果が臨床医または医師に送られる場合がある。
【0045】
体組成のモデルは、ヒトの体が2つ(2-C)、3つ(3-C)、または4つ(4-C)のコンパートメントからなるという仮定に基づく。体組成を測定するためのDXAの使用、ならびに2-、3-および4コンパートメントモデルは、当技術分野において公知である。(例えば、Meral et al., ‘Fat Shadows’ from DXA for the Qualitative Assessment of Lipodystrophy: When a Picture Is Worth a Thousand Numbers, Diabetes Care 41:2255-2258 (2018);Hind et al., in vivo precision of the GE Lunar iDXA densitometer for the measurement of total body composition and fat distribution in adults. Eur J Clin Nutr 2011;65:140-142;Chen et al., Precision of total body BMD and body composition using the GE Lunar Prodigy densitometer [Abstract], The American Society for Bone and Mineral Research (ASBMR) 2005:P SU132.48;Kiebzak et al., Measurement precision of body composition variables using the lunar DPX-L densitometer, J Clin Densitom 2000;3:35-41;Cordero-MacIntyre et al., Reproducibility of DXA in obese women. J Clin Densitom. 2002;5:35-44;Genton et al., Comparison of body weight and composition measured by two different dual energy X-ray absorptiometry devices and three acquisition modes in obese women. Clin Nutr 2006;25:428-437;Johnson et al., Precision and stability of dual-energy X-ray absorptiometry measurements. Calcif Tissue Int 1991;49: 174-178;Rezzi et al., Body composition precision with the Lunar iDXA [abstract]. J Clin Densitom 2009;12: 402, P176;およびTothill et al., Comparisons between Hologic, Lunar and Norland dual-energy X-ray absorptiometers and other techniques used for whole-body soft tissue measurements. Eur J Clin Nutr 1994;48: 781-794を参照されたい)。水中体重測定などの2-Cモデルは、体を脂肪量および無脂肪量の2つのコンパートメントに分ける。3-Cモデルは、脂肪量および2つの無脂肪量成分を含む。DXAは、脂肪量、除脂肪量、および骨塩の3つの体コンパートメントを評価する3-Cモデルの例である。4-Cモデルは除脂肪量を水およびタンパク質に分け、したがって、脂肪量、タンパク質、水、および骨塩の4つの体コンパートメントの状況を提供する。体内の脂肪および無脂肪軟組織の量を決定するために、DXAは、いかなる骨(典型的には骨に隣接する純粋な軟組織)も含有しない解剖学的部位での2光子エネルギーの減衰比を測定する。骨が存在しない場合、2光子エネルギーの減衰比は、軟組織中の脂肪の比率と直線関係にある。軟組織および骨を有する領域のみならず、軟組織のみを有する領域でX線ビームの減衰を分析した後、脂肪量、除脂肪量、および骨塩量を識別することができる。
【0046】
DXAシステムは市販されており、例えば、Hologic QDR 1000W(Hologic Inc.;Marlborough, MA);Lunar DPX(GE Healthcare;Chicago, IL);Norland XR 26 Mark II HS(Swissray International, Inc.;Edison, NJ);Lunar Prodigy(GE Healthcare;Chicago, IL);およびLunar iDXA(GE Healthcare;Chicago, IL)である。
【0047】
典型的には、DXAスキャナは、患者を支持するためのテーブルを含み、テーブルにX線源(典型的には、X線発生装置、X線管、X線フィルタおよびX線コリメータから構成される)が配置されており、X線源は、患者下のテーブルに対して可動性である。いくつかのDXAシステム/スキャナでは、検出器は、検出器および線源が患者の対向する位置に位置するように、検出器と向かい合うアーム内に位置付けられる。検出器は、主に、一次元であるが、二次元または他の適切な次元配置であることができ、X線源によって放出され患者の体を通過するX線光子を捕捉するために移動することができる。アームは、検出器を移動させ、アーム上の検出器と同期して移動するX線源に関連している。アームは、DXAテーブルの長手方向に検出器およびX線源の両方を移動させる。ラスタースキャン実装DXAスキャナ(ペンシルビームまたはファンビーム)では、テーブル/体をその幅に沿ってスキャンするために検出器およびX線源の両方をDXAテーブルの長辺に対して垂直方向に移動させることができる。本発明の態様では、テーブルは、テーブルの上部に間隔を置いて配置されたアーム内に配されたX線検出器を含み、アームはテーブルに対して可動性である。検出器およびX線源に加えて、テーブルおよびアームは、X線源および/またはアームの動作を制御することができるコンピュータシステムに機能的に接続されており、コンピュータシステムは、X線源から患者を通過し、検出器に当たるX線に起因する、検出器からのイメージングデータを受信することができる。本発明は、これらの成分のいずれかを有するDXAシステムを使用して対象の体または身体部分の組成が決定される、本明細書に記載のとおりの方法を含む。
【0048】
様々な種類のDXA方法がある。例えば、ペンシルビームシステムは、単一の検出器でX線の高度にコリメートされたペンシルビームを使用し;ファンビームシステムは、ファンビームX線源および検出器のセットを使用し、X線アームの単回掃引で全身測定を行うことができ;ナローファンビームシステムは、ペンシルビームよりも広いがファンビームよりもまだ狭いファンビームを用いて直線的にスキャンし、体を通過するナローファンビームの各々のパスは先行のパスと重複し、重複する画像がマッチされて再構築され、骨の深さのより正確な推定および拡大効果の低減をもたらす。Toombs et al., The Impact of Recent Technological Advances on the Trueness and Precision of DXA to Assess Body Composition, Obesity 20: 30-39 (2012)を参照されたい。本発明は、これらのDXA方法のいずれかを使用して対象の体または身体部分の組成が決定される、本明細書に述べるとおりの方法を含む。
【0049】
抗原結合タンパク質
本発明は、患者にLEPRアゴニストの有効用量を投与することによって、状態を有すると診断された患者における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を処置(例えば、診断および処置)するための方法を提供する。
【0050】
LEPRアゴニストは、LEPRと結合し、LEPRシグナル伝達を活性化する。「LEPRシグナル伝達の活性化」などは、LEPRを発現する細胞におけるレプチンとLEPRとの相互作用に通常起因する細胞内効果の刺激、例えば、STAT3活性を直接的または間接的に測定または特定することができる任意の方法を使用して、例えば、レポーター細胞株において発現されたSTAT3の標識バージョンを使用して検出することができるSTAT3の転写活性化を意味する。本発明の態様では、LEPRアゴニストは、抗体またはその抗原結合断片である。
【0051】
本明細書に使用される場合の「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)を含む免疫グロブリン分子(例えば、IgG)を指す。本発明の態様では、各々の抗体重鎖(HC)は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)(例えば、SEQ ID NO:2、18、26、34、42、50、58、66、74、82、98もしくは106またはそのバリアント)および重鎖定常領域を含み;各々の抗体軽鎖(LC)は、軽鎖可変領域(「LCVRまたは「VL」)(例えば、SEQ ID NO:10もしくは90またはそのバリアント)および軽鎖定常領域(CL)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より大きく保存された領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各々のVHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRを含む。
【0052】
本発明の態様では、各々のフレームワークまたはCDRドメインへのアミノ酸の割り当ては、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Kabat, et al.;National Institutes of Health, Bethesda, Md.;5th ed.;NIH Publ. No. 91-3242 (1991);Kabat (1978) Adv. Prot. Chem. 32:1-75;Kabat, et al., (1977) J. Biol. Chem. 252:6609-6616;Chothia, et al., (1987) J Mol. Biol. 196:901-917またはChothia, et al., (1989) Nature 342:878-883の定義に従う。したがって、本発明は、VHのCDRおよびVLのCDRを含む抗体および抗原結合断片を使用する方法を含み、そのVHおよびVLは、本明細書に示されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含み、CDRは、Kabatおよび/またはChothiaにより定義されるとおりである。
【0053】
本発明の態様では、抗LEPR抗原結合タンパク質、例えば、抗体または抗原結合断片は、例えば、IgA(例えば、IgA1もしくはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4(例えば、S228Pおよび/もしくはS108P変異を含む))またはIgM型の、重鎖定常ドメインを含む。本発明の態様では、抗原結合タンパク質、例えば、抗体または抗原結合断片は、例えば、カッパまたはラムダ型の、軽鎖定常ドメインを含む。本発明は、例えば、上述のように重鎖および/または軽鎖定常ドメインに連結された、本明細書に示される可変ドメインを含む抗原結合タンパク質(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2;H4H16679P2;H4H17319P2;H4H17321P2;H4H18417P2;H4H18438P2;H4H18445P2;H4H18446P2;H4H18449P2;H4H18482P2;H4H18487P2;および/またはH4H18492P2)を使用する方法を含む。WHO Drug Information Vol 34, No. 4, 2020;Proposed INN: List 124, @ "mibavademab"を参照されたい。
【0054】
「単離された」抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターは、細胞または細胞が産生された細胞培養物からの他の生体分子を少なくとも一部含まない。このような生体分子には、核酸、タンパク質、他の抗体もしくは抗原結合断片、脂質、糖質、または細胞片および増殖培地などの他の物質が含まれる。単離された抗原結合タンパク質は、さらに、宿主細胞からの、またはその増殖培地の、生体分子などの発現系成分を少なくとも一部含まない場合がある。一般的に、「単離された」という用語は、このような生体分子の完全な非存在(例えば、少量もしくは取るに足らない量の不純物が残留し得る)、または水、緩衝液、もしくは塩の非存在、または抗原結合タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原結合断片)を含む医薬製剤の構成成分を指すことが意図されない。
【0055】
本発明に関連して使用され得るLEPRアゴニストの例示的な免疫グロブリン鎖は、下の表A-1およびA-2に示される。
【0056】
(表A-1)抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列
【0057】
(表A-2)抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片のアミノ酸配列
国際特許出願番号PCT/US2016/056465;国際公開公報第2017/066204号を参照されたい。
【0058】
例示的な抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域を下に示す。
【0059】
REGN4461(ミババデマブ)重鎖についてのアミノ酸配列は、以下である。
【0060】
REGN4461(ミババデマブ)軽鎖についてのアミノ酸配列は、以下である。
【0061】
「H4H16650P2」、「H4H16679P2」、「H4H17319P2」、「H4H17321P2」、「H4H18417P2」、「H4H18438P2」、「H4H18445P2」、「H4H18446P2」、「H4H18449P2」、「H4H18482P2」、「H4H18487P2」、「H4H18492P2」および「ミババデマブ」は、上記表Aに記載のSEQ ID NO:2、18、26、34、42、50、58、66、74、82、98もしくは106の免疫グロブリン重鎖もしくはその可変領域(VH)(もしくはそのバリアント);および10もしくは90の免疫グロブリン軽鎖もしくはその可変領域(VL)(もしくはそのバリアント)を含む;またはそのCDR(CDR-H1(もしくはそのバリアント)、CDR-H2(もしくはそのバリアント)およびCDR-H3(もしくはそのバリアント))を含む重鎖もしくはVHおよび/またはそのCDR(CDR-L1(もしくはそのバリアント)、CDR-L2(もしくはそのバリアント)およびCDR-L3(もしくはそのバリアント))を含む軽鎖もしくはVLを含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片(多重特異性抗原結合タンパク質を含む)を指し、例えば、免疫グロブリン鎖、可変領域および/またはCDRは、下記の特定のアミノ酸配列を含む。本発明の態様では、VHは、IgG定常重鎖ドメイン(例えば、IgG1もしくはIgG4またはそのバリアント)に連結され、かつ/またはVLは、ラムダもしくはカッパ定常軽鎖ドメイン(もしくはそのバリアント)に連結されている。
【0062】
免疫グロブリン鎖などのポリペプチド(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2およびH4H18492P2のVH、VL、HCまたはLCのもの)の「バリアント」は、本明細書に示される参照されたアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98または106のいずれか)と少なくとも約70~99.9%(例えば、70、72、74、75、76、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%)同一であるまたは類似するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、この比較は、それぞれの参照配列の全長にわたりそれぞれの配列間で最大のマッチを与えるようにアルゴリズムのパラメータが選択されるBLASTアルゴリズムによってなされる(例えば、予想閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲内の最大マッチ:0;BLOSUM 62マトリックス;ギャップコスト:存在11、伸長1;条件付き組成スコア行列調整(conditional compositional score matrix adjustment))。バリアントは、本明細書に示される参照されたアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98または106のいずれか)と同一のまたは類似しているポリペプチドであって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多い変異を有するポリペプチドを含み得る。変異は、保存的または非保存的アミノ酸の置換、挿入または欠失である点変異を含むことができる。
【0063】
以下の参考文献は、配列分析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する: BLAST ALGORITHMS: Altschul et al. (2005) FEBS J. 272(20): 5101-5109;Altschul, S. F., et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410;Gish, W., et al., (1993) Nature Genet. 3:266-272;Madden, T. L., et al., (1996) Meth. Enzymol. 266:131-141;Altschul, S. F., et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402;Zhang, J., et al., (1997) Genome Res. 7:649-656;Wootton, J. C., et al., (1993) Comput. Chem. 17:149-163;Hancock, J. M. et al., (1994) Comput. Appl. Biosci. 10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS: Dayhoff, M. O., et al., "A model of evolutionary change in proteins." in Atlas of Protein Sequence and Structure, (1978) vol. 5, suppl. 3. M. O. Dayhoff (ed.), pp. 345-352, Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.;Schwartz, R. M., et al., "Matrices for detecting distant relationships." in Atlas of Protein Sequence and Structure, (1978) vol. 5, suppl. 3.'' M. O. Dayhoff (ed.), pp. 353-358, Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.;Altschul, S. F., (1991) J. Mol. Biol. 219:555-565;States, D. J., et al., (1991) Methods 3:66-70;Henikoff, S., et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919;Altschul, S. F., et al., (1993) J. Mol. Evol. 36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS: Karlin, S., et al., (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268;Karlin, S., et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877;Dembo, A., et al., (1994) Ann. Prob. 22:2022-2039;およびAltschul, S. F. "Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments." in Theoretical and Computational Methods in Genome Research (S. Suhai, ed.), (1997) pp. 1-14, Plenum, N.Y。
【0064】
本発明の方法に使用される例示的な抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片は、本明細書における表Aに列挙される。表Aは、例示的な抗LEPRアゴニスト抗体および抗原結合断片の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を示す。
【0065】
本発明は、表Aに列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれかより選択されるアミノ酸配列;またはそのバリアントを含むHCVRを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0066】
本発明はまた、表Aに列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかより選択されるアミノ酸配列;またはそのバリアントを含むLCVRを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0067】
本発明はまた、表Aに列挙されたHCVRアミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントが、表Aに列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントと対形成したものを含むHCVRおよびLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。ある特定の態様により、本発明は、表Aに列挙された例示的な抗体および断片のいずれかに含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対;またはそのバリアントを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を提供する。ある特定の態様では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、SEQ ID NO:2/10;18/10;26/10;34/10;42/10;50/10;58/10;66/10;74/10;82/90;98/90;および106/90からなる群より選択される。
【0068】
本発明はまた、表Aに列挙されたHCDR1アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0069】
本発明はまた、表Aに列挙されたHCDR2アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0070】
本発明はまた、表Aに列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0071】
本発明はまた、表Aに列挙されたLCDR1アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0072】
本発明はまた、表Aに列挙されたLCDR2アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0073】
本発明はまた、表Aに列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントより選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0074】
本発明はまた、表Aに列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントが、表Aに列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれか;またはそのバリアントと対形成したものを含む、HCDR3およびLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0075】
本発明はまた、表Aに列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれか内に含有される6つのCDRのセット(すなわち、HCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにLCVRのLCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片;またはそのバリアントを使用する方法を提供する。ある特定の態様では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3アミノ酸配列セットは、SEQ ID NO:4/6/8/12/14/16;20/22/24/12/14/16;28/30/32/12/14/16;36/38/40/12/14/16;44/46/48/12/14/16;52/54/56/12/14/16;60/62/64/12/14/16;68/70/72/12/14/16;76/78/80/12/14/16;84/86/88/92/94/96;100/102/104/92/94/96;および108/110/112/92/94/96からなる群より選択される。
【0076】
関連する態様では、本発明は、表Aに列挙された例示的な抗体および断片のいずれかによって定義される場合のHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のセットを含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片;またはそのバリアントを使用する方法を提供する。例えば、本発明は、SEQ ID NO:2/10;18/10;26/10;34/10;42/10;50/10;58/10;66/10;74/10;82/90;98/90;および106/90からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3アミノ酸配列セットを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するための方法および技術は、当技術分野において周知であり、本明細書に開示される特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な慣例には、例えば、Kabatの定義、Chothiaの定義、およびAbMの定義(本明細書に述べる)が含まれる。
【0077】
本発明は、本明細書に具体的に示される抗体または断片(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片を使用する方法を含む。国際公開公報第2017/66204号を参照されたい。
【0078】
本発明はまた、本明細書に具体的に示される抗体または抗原結合断片(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)とLEPRとの結合を競合する抗体および抗原結合断片を使用する方法を含む。本明細書に使用される「競合する」という用語は、抗原(例えば、LEPR)に結合し、かつ、この抗原への別の抗体または抗原結合断片の結合を阻害または遮断する抗体または抗原結合断片を指す。この用語はまた、2つの抗体または抗原結合断片の間の、両配向での競合を含む。例えば、第2の抗体に結合してその結合を遮断する第1の抗体およびその逆である。ある特定の態様では、第1の抗体または断片と第2の抗体または断片とは、同じエピトープに結合する場合がある。あるいは、第1および第2の抗体または断片は、異なるが例えば重複するエピトープに結合する場合があり、一方の結合が、例えば立体障害を介して、第2の抗体または断片の結合を阻害または遮断する。抗体または断片間の競合は、当技術分野において公知の方法によって、例えば、リアルタイムラベルフリーバイオレイヤー干渉法アッセイによって測定され得る。また、抗LEPR抗体または断片の間の結合競合は、Octet RED384バイオセンサ(Pall ForteBio Corp.)を用いたリアルタイムラベルフリーバイオレイヤー干渉アッセイを使用して決定することができる。国際公開公報第2017/66204号を参照されたい。
【0079】
部分性脂肪萎縮症
脂肪萎縮症は、脂肪組織の選択的部分性または全身性消失によって特徴付けられる障害の不均一な群である。それらは、起源が先天性または後天性のいずれかであることができ、脂肪組織消失の分布に応じて、脂肪萎縮症は、限局性、部分性、または全身性に分類される。家族性部分性脂肪萎縮症(FPLD)は、一般的に優性遺伝し、上肢および下肢のみならず、体幹領域からの皮下脂肪組織の消失(通常は、小児期後期または思春期の間)によって特徴付けられる。体幹のみならず四肢からの皮下脂肪組織の消失にかかわらず、PLDにおいて体幹-脚脂肪比は、より高い。これは、体幹が、皮下脂肪組織のみならず、四肢に見られない深部(内臓)脂肪組織の両方を含有するからである。脂肪萎縮症を有する患者の一般的な臨床特徴を本明細書に述べる。脂肪組織が脂質を貯蔵する能力が限られていることおよび食後の脂質フラックスを緩衝できないことは、脂肪萎縮症に関連する代謝障害の病態形成に基本的な役割を有する。
【0080】
脂肪萎縮症の診断は、しばしば骨が折れ、部分性形態は、一般的な中心性肥満およびメタボリックシンドロームと容易に混同される場合がある。脂肪萎縮症の診断は、典型的には、臨床歴、理学的検査、および体組成の評価に基づき、いくつかの場合では検査所見が有用である。脂肪萎縮症のための確固とした診断基準は、皮下脂肪測定または二重エネルギーX線吸収法および磁気共鳴画像法などのイメージング手順に基づき確立されていない一方で、これらの評価の全ては、診断を支援することができる。脂肪萎縮症を有する患者における血清レプチンレベルは低い傾向にあり(絶対レベルで、またはボディマス指数に対して)、脂肪萎縮症の診断を除外するために規定の血清レプチンレベルの閾値を使用することができない。Handelsman et al., The Clinical Approach to the Detection of Lipodystrophy - An AACE Consensus Statement, Endocr Pract. 19(1): 107-116 (2013);Araujo-Vilar & Santini, Diagnosis and treatment of lipodystrophy: a step-by-step approach, Journal of Endocrinological Investigation 42: 61-73 (2019)。
【0081】
家族性部分性脂肪萎縮症(FPLDまたはFPL)は、しばしば、四肢および体幹からの皮下(sc)脂肪の可変性消失、インスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝および早発性アテローム硬化症などの代謝性合併症の素因によって特徴付けられる一遺伝子性(常染色体優性および常染色体劣性の両方)障害の群である。例えば、Hussain & Garg, Lipodystrophy Syndromes, Endocrinology and Metabolism Clinics of North America Volume 45, Issue 4, December 2016, Pages 783-797;およびJeru et al., Clinical Utility Gene Card for: Familial partial lipodystrophy, European Journal of Human Genetics (2016) 25: e1-e5を参照されたい。常染色体優性FPLDの中で、Dunnigan型(FPLD2)は、最も一般的なサブタイプであり、染色体1q21に位置するラミンA/C(LMNA)遺伝子におけるヘテロ接合体ミスセンス疾患起炎バリアントによって引き起こされる(3~6)。常染色体優性FPLDを特徴付ける他の公知の遺伝子には、PPARG(FPLD3)、PLIN1(FPLD4)およびCAV1(FPLD7)が含まれる。加えて、いくつかの遺伝子における変異がFPLDに関連しているが、数字の付いたFPLD呼称を有しない。これらには、ADRA2A、PIK3R1、AKT2、ZMPSTE24、PSMB8、WRN、POLD1およびBLMが含まれる。
【0082】
常染色体劣性FPLDを特徴付ける遺伝子には、CIDEC(FPLD5)、LIPE(FPLD6)およびPCYT1Aが含まれる。加えて、公知の遺伝子における疾患起炎バリアントを有しない、FPLDの臨床症状を有する多くの患者があり、それらの一部は、FPLD1またはKobberling症候群と名付けられた多因子遺伝を有すると見なされる。FPLDを有する一部の個体は、公知の変異を有せず、これは、追加的であるが、まだ特定されていない遺伝子が障害を引き起こす可能性があることを示唆している。
【0083】
FPLDタイプ1、Kobberlings型(FPL1)を有する患者は、FPL2、Dunnigan型で見られる症状に類似する症状を有する。しかし、脂肪消失は、一般的に腕および脚に限定される。脂肪消失は、通常、腕および脚の下側(遠位)部分でより顕著である。罹患した個体は、顔、頸部、および体幹に通常のまたはわずかに増加した脂肪分布を有する。加えて、罹患した個体の一部は、過剰な腹部脂肪を発生する場合がある(中心性肥満)。インスリン抵抗性、高い血圧(高血圧)、および重症高トリグリセリド血症を含む代謝異常もまた、報告されている。FPL、Kobberlings型の遺伝形式は未知である。
【0084】
FPLタイプ2、Dunnigan型(FPL2)は、FPLのもっとも一般的な形態である。LMNAにおける変異は、FPLD2と連鎖している。罹患した個体は、通常、幼児期に正常な脂肪分布を有する。しかし、思春期頃に、腕および脚および体幹の皮下脂肪が徐々に失われる。女性では、脂肪の消失は、臀部および腰部でもっとも顕著でありうる。この時に、二重顎を引き起こす顔、および頸部および背の丸みを引き起こす肩甲骨の間の上背部を含む、体の他の領域に脂肪が蓄積する場合がある。罹患した個体は、Cushing症候群を有する個体に類似した丸顔を有し得る。この脂肪の特徴的な分布および全体的な筋肉の出現は、男性よりも女性でより容易にこの障害を認識可能にしている。
【0085】
インスリン抵抗性は、FPLD2で一般的であり、着色の異常な増加(色素過剰症)および皮膚、特に皮下脂肪領域、例えば頸部および鼠径部および脇の下(腋窩)の「ビロード様」肥厚(角化症)によって特徴付けられる皮膚状態である黒色表皮腫と呼ばれる状態に関連し得る。肥大肝(肝腫大)もまた一般的である。肝腫大は、肝臓への脂肪の蓄積によって引き起こされる(脂肪肝または脂肪過多)。肝臓への脂肪の進行性蓄積は、肝臓への瘢痕および損傷(肝硬変)および最終的に肝機能障害を引き起こす可能性がある。
【0086】
耐糖能障害、高トリグリセリド血症、および糖尿病を含む、インスリン抵抗性の他の合併症が起こる場合がある。これらの異常は、しばしば管理が困難であり、糖尿病は、しばしば重症である。罹患した女性は、罹患した男性よりも糖尿病を発生するリスクが大きく、しばしば、より重症の代謝合併症を経験する(Vigouroux, 2000)。一部の個体は、極度の高トリグリセリド血症を経験し、膵臓の急性炎症(膵炎)のエピソードをもたらす場合がある。潜在的に命にかかわる疾患である膵炎は、腹痛、悪寒、黄疸、脱力、発汗、嘔吐および体重減少に関連する可能性がある。
【0087】
思春期の後、FPLD、例えば、FPL2を有する女性の一部は、あらゆる場合に常に存在するわけではない複合症状である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を発生し得る。罹患した女性は男性ホルモンのアンドロゲンを体内に過剰に有し得るので、PCOSは、しばしば、性ホルモンの不均衡によって特徴付けられる。PCOSは、不規則な月経周期または無月経、ざ瘡の傾向がある脂性肌、卵巣嚢胞、卵巣の排卵不全、および軽度の男性型多毛症(男性パターンの発毛)をもたらす可能性がある。上唇、おとがいおよび体の他の部分に発毛する場合がある。
【0088】
FPL、Dunnigan型を有する個体は、冠動脈疾患および他の種類のアテローム硬化性血管病になりやすい。
【0089】
FPLDタイプ3(FPLD3)もまた、少数の個体で報告されている。脂肪消失は、上腕および大腿よりもふくらはぎおよび前腕で顕著である。糖尿病、高トリグリセリド血症、高血圧、脂肪肝、膵炎、および男性型多毛症もまた報告されている。代謝異常は、この形態の障害の脂肪萎縮症よりも顕著である。FPLD3は、PPARG遺伝子における変異によって引き起こされる。
【0090】
FPLD4脂肪萎縮症は、下肢および臀部でもっとも顕著である。筋肥大は、ふくらはぎで顕著な場合がある。インスリン抵抗性、重症高トリグリセリド血症、および糖尿病もまた報告された。FPLD4は、PLIN1遺伝子における変異によって引き起こされる。
【0091】
FPLD5は、重症インスリン抵抗性および糖尿病を有した家系で報告された(George et al., Science 304(5675):1325-1328 (2004))。インスリン抵抗性は、およそ20~30歳で出現する可能性がある。脂肪萎縮症は、腕および脚をもっとも顕著に冒す。FPLD5は、CIDEC遺伝子における変異と連鎖している。
【0092】
FPLD6は、顔、頸部、肩、腋窩、背中、腹部、および恥骨部における脂肪の可変性の過剰蓄積、ならびに下肢の皮下脂肪低減を伴う異常な皮下脂肪分布によって特徴付けられる。進行性成人発症ミオパチーが一部の患者に見られ、糖尿病、高トリグリセリド血症、低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、および脂肪肝と様々に関連する(Zolotov et al., A. Homozygous LIPE mutation in siblings with multiple symmetric lipomatosis, partial lipodystrophy, and myopathy, Am. J. Med. Genet. 173A: 190-194, 2017)。FPLD6は、LIPE遺伝子における変異によって引き起こされる。
【0093】
FPLD7は、早期発症白内障および後発性下肢痙縮によって特徴付けられる常染色体優性障害である。FPLD7は、CAV1遺伝子における変異と連鎖している。Berger et al., Familial lipodystrophy associated with neurodegeneration and congenital cataracts. Neurology 58: 43-47, 2002;Cao et al., Heterozygous CAV1 frameshift mutations (MIM 601047) in patients with atypical partial lipodystrophy and hypertriglyceridemia. Lipids Health Dis. 7: 3, 2008 [Electronic Article];Garg et al., Whole exome sequencing identifies de novo heterozygous CAV1 mutations associated with a novel neonatal onset lipodystrophy syndrome. Am. J. Med. Genet. 167A: 1796-1806, 2015;およびRazani et al., Caveolin-1-deficient mice are lean, resistant to diet-induced obesity, and show hypertriglyceridemia with adipocyte abnormalities. J. Biol. Chem. 277: 8635-8647, 2002を参照されたい。
【0094】
LIPEは、エステルを遊離脂肪酸に加水分解することを担う、脂肪組織中に高発現される酵素であるホルモン感受性リパーゼをコードする。
【0095】
LMNA遺伝子は、染色体1の長腕(q)(1q21-q22)に位置する。LMNA遺伝子は、タンパク質、ラミンAおよびラミンCをコードする。これらのタンパク質は、核ラミナにおいて活性である。この遺伝子の変異は、ラミンAおよびCの正常な機能の破壊につながり、これは、FPLD2、Dunnigan型を有する個体において脂肪細胞(アディポサイト)の早発性細胞死をもたらし得る。LMNA遺伝子の変異はまた、下顎骨肢端異形成の形態、Emery-Dreifuss筋ジストロフィーのカップル形態、肢帯型筋ジストロフィーの形態、遺伝性痙性対麻痺の形態、Charcot-Marie-Tooth病の形態、拡張型心筋症の形態、Malouf症候群、およびHutchinson-Gilford早老症候群を含む様々な他の障害(アレル障害)を引き起こすことが示されている。
【0096】
PPARG遺伝子は、染色体3の短腕(3p25)に位置し、転写因子、PPARガンマをコードする。PPARガンマは、適当なアディポサイト細胞分化に不可欠である。PPARG変異によるFPLDは、不適当なアディポサイト細胞分化および維持に起因する。
【0097】
PLIN1遺伝子は、染色体15の長腕(15q26)に位置し、ペリリピンとして知られるタンパク質をコードする。ペリリピンは、アディポサイト内で脂肪が貯蔵される脂質滴の表面を覆うもっとも豊富なタンパク質である。ペリリピンは、トリグリセリドの貯蔵および脂質滴からの脂肪酸の放出に不可欠であり得る。脂質滴の一機能は、脂質の貯蔵である。
【0098】
AKT2遺伝子は、染色体19の長腕(19q13.2)に位置し、プロテインキナーゼBベータをコードする。タンパク質は、アディポサイトの形成および機能に重要な経路である受容体後インスリンシグナル伝達に役割を果たし得る。
【0099】
CAV1遺伝子は、細胞膜内のカベオラの形成に役立つタンパク質であるカベオリン-1をコードする。アディポサイトの細胞膜上の脂肪酸と結合し、それらを脂質滴内に移動することによって、カベオリン-1は、脂質滴形成およびアディポサイト分化に役割を果たすように見える。
【0100】
PCYT1Aは、細胞膜の主成分であるホスファチジルコリンの合成に関与する。プロテアソームサブユニットベータタイプ8(PSMB8)は、細胞ホメオスタシスを担うタンパク質をコードし、その欠乏は、インターフェロンの分泌過多、細胞ストレスおよび炎症につながる。WRNは、DNA構造の修復および維持に重要な役割を果たすヘリカーゼをコードする。POLD1は、DNAの修復および安定性を担う酵素であるDNAポリメラーゼデルタの触媒サブユニットをコードする。BLM遺伝子は、DNAヘリックスの巻き戻しに関与するタンパク質であるRecQヘリカーゼの産生を担う。ADRA2Aは、ノルエピネフリン放出を調節する主なシナプス前抑制性フィードバックGタンパク質共役受容体である。ADRA2Aの活性化は、cAMPの産生を阻害し、アディポサイトにおける脂肪分解を低減する。
【0101】
CIDEC遺伝子は、染色体3の短腕(3p25.3)に位置し、CIDECタンパク質をコードする。CIDECは、脂質滴中に発現され、これらの構造内での脂肪の貯蔵に役割を果たす。CIDEC遺伝子の変異は、低レベルの機能的CIDECタンパク質をもたらし、脂質滴が脂肪を貯蔵する能力の欠如をもたらし得る。
【0102】
後天性部分性脂肪萎縮症(APL)、またはBarraquer-Simons症候群では、患者は、典型的には、小児期または青年期に皮下脂肪の消失を発生するが、40歳代または50歳代のような遅い発症も報告されている。APLは、数ヶ月~数年にわたる、顔、頸部、腕、胸郭、および上腹部からの皮下脂肪の進行性の消失によって特徴付けられる。この脂肪消失は、典型的には、下肢を回避して頭尾的に進行するが、脂肪消失の正確なパターンは様々であることができる。一部の患者は、下腹部、殿部、および脚への過剰な脂肪蓄積を有し得る。代謝合併症は、他の脂肪萎縮症サブタイプよりもAPLの方が一般的でない。罹患率の主原因は、慢性腎疾患(特に、膜性増殖性糸球体腎炎)であるように見える。APLはまた、皮膚筋炎および全身性エリテマトーデスを含むいくつかの自己免疫疾患に関連している。APLを有する大部分の患者は、検出可能なレベルの循環自己抗体、C3腎炎因子を伴う低レベルの血清補体3(C3)を有する。APLはまた、男性よりも女性で一般的である(4:1の比と推定される)。
【0103】
処置および投与
本発明は、部分性脂肪萎縮症を有するまたは有する可能性が高いと診断されている対象における部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を、LEPRアゴニストの治療有効用量を対象に投与することによって処置するための方法を含む。
【0104】
「処置する」または「処置すること」は、PLDの1つもしくは複数の徴候および/もしくは症状および/もしくは臨床指標が後退もしくは除去され、かつ/またはその進行が阻害される(例えば、対象における疾患が安定化、低減もしくは除去される)ように、PLDを有する対象にLEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2およびH4H18492P2)を投与することを意味する。したがって、本発明は、PLDを有するまたは有する可能性が高いと決定されている対象をLEPRアゴニストで処置する工程を含む方法を含み、PLDの1つまたは複数の徴候および/もしくは症状および/もしくは臨床指標は後退もしくは除去され、かつ/またはその進行が阻害される。
【0105】
PLDを治療または予防するためのLEPRアゴニストの有効用量または治療有効用量は、処置された対象におけるPLDの1つまたは複数の徴候および/または症状を、このような徴候および/もしくは症状の後退もしくは除去を誘導することによって、またはこのような徴候および/もしくは症状の進行を阻害することによって緩和するために十分なLEPRアゴニストの量を指す。本発明の態様では、LEPRアゴニストの有効用量または治療有効用量は、5mg/kgの初回静脈内負荷用量に続く、毎週250~300mgの皮下用量である。
【0106】
対象または患者は、哺乳動物、例えばヒト(例えば、男性または女性)である。本発明の態様では、対象は、白人、黒人、メキシコ人、ヒスパニック、アジア人、東南アジア人または朝鮮人である。本発明の態様では、対象は、本明細書に示される方法によって、部分性脂肪萎縮症(例えば、FPLD)を有するもしくは有する可能性が高いと診断されており、かつ/またはPLD(例えば、FPLD)を有するもしくは有する可能性が高いことを示す診断基準をもつ。例えば、本発明の態様では、対象は、(i)約36%よりも大きな総体脂肪パーセンテージ、および(ii)約1.35よりも大きな体幹/脚の脂肪パーセント比;もしくは約36%以下の総体脂肪パーセンテージ;および(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0311×総体脂肪パーセンテージ)≧約0.232;または(i)約25.7%よりも大きな総体脂肪パーセンテージ、および(ii)約1.5よりも大きな体幹/脚の脂肪パーセント比;または(i)約25.7%以下の総体脂肪パーセンテージ、および(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.4;または(i)約27.5%よりも大きな総体脂肪パーセンテージ、および(ii)約1.5よりも大きな体幹/脚の脂肪パーセント比;または(i)約27.5%以下の総体脂肪パーセンテージ、および(ii)(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(0.0429×総体脂肪パーセンテージ)>約0.321;または1.54(朝鮮人またはアジア人女性)もしくは1.90(朝鮮人またはアジア人男性)よりも大きな体幹/脚の脂肪パーセント比を有する。本発明の態様では、対象は、
図6のフローチャートによりPLDを有するまたはPLDを有する可能性が高いことを示す脂肪パーセンテージを有する。
【0107】
本発明の態様では、対象はまた、部分性脂肪萎縮症以外のレプチン欠乏またはレプチン抵抗性に関連するまたはそれによって引き起こされる疾患または状態、例えば、肥満、メタボリックシンドローム、食事誘発性食物渇望、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン受容体の変異による重症インスリン抵抗性、アルツハイマー病、レプチン欠乏、レプチン抵抗性、Leprechaunism/Donohue症候群、およびRabson-Mendenhall症候群などを患っている、および/またはそれと診断される。
【0108】
薬学的組成物および組み合わせ
本発明は、LEPRアゴニスト(例えば、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片)(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2およびH4H18492P2)および1つまたは複数の成分を含む組成物を使用するための方法を提供する。
【0109】
LEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2およびH4H18492P2)の薬学的組成物を調製するために、LEPRアゴニストは、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1984);Hardman, et al. (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N.Y.;Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, N.Y.;Avis, et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY;Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY;Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY;Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y.を参照されたい。本発明の態様では、薬学的組成物は無菌である。本明細書に述べられる場合のこのような組成物の使用は、本発明の一部である。本明細書に述べられる場合のこのような組成物の使用は、本発明の一部である。
【0110】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤および/または安定化剤、例えば、水、緩衝化剤、安定化剤、保存剤、等張化剤(isotonifier)、非イオン性洗剤、抗酸化剤および/または他のいろいろな添加剤を含む。
【0111】
本発明の範囲は、LEPRアゴニスト(例えば、ミババデマブ、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2もしくはH4H18492P2)を含む乾燥された、例えば凍結乾燥された組成物、または薬学的に許容される担体を含むが、水を実質的に欠くその薬学的組成物を使用する方法を含む。このような方法は、対象に投与する前に、乾燥された組成物を水性組成物で再構成する工程を含み得る。
【0112】
本発明のさらなる態様では、LEPRアゴニストは、本発明の方法においてさらなる治療剤と併せて投与される。本発明の態様では、さらなる治療剤は、組み換えヒトレプチン;メトレレプチン;PCSK9阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブ);HMG CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン);エゼチミブ;インスリン;インスリンバリアント;インスリン分泌促進剤;メトホルミン;スルホニル尿素;ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン);GLP-1アゴニストもしくは類似体(例えば、エクステンジン-4(extendin-4)、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド);グルカゴン(GCG)阻害剤(例えば、抗GCG抗体);グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤(例えば、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗GCGRアプタマー(例えば、スピーゲルマー));アンギオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤(例えば、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体);フェンテルミン;オルリスタット;トピラマート;ブプロピオン;トピラマート&フェンテルミン;ブプロピオン&ナルトレキソン;ブプロピオン&ゾニサミド;プラムリンチド&メトレレプチン;ロルカセリン;セチリスタット;テソフェンシン;ベルネペリト;魚油;ピオグリタゾン;セトメラノチド;フィブラート(例えば、フェノフィブラート);プレドニゾン;ナイアシン;抗痙攣薬;ジゴキシン;クマジン;ビタミンD;チロキシン;甲状腺サプリメント;ビタミンサプリメント;カルシウムサプリメント;カルニチン;コエンザイムQ10;抗便秘薬;抗アレルギー薬;ガバペンチン;麻酔薬;ケタミン;リドカイン;および/またはベンラファキシン塩酸塩である。本発明の態様では、本発明の抗LEPR抗体は、食欲低下剤と一緒に製剤化または投与されない。
【0113】
LEPRアゴニストの投与様式は、様々であることができる。投与経路には、経口、直腸、経粘膜、腸管、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、くも膜下腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹入、局所、皮膚、経皮または動脈内が含まれる。
【0114】
「と併せて」という用語は、構成成分であるLEPRアゴニストとメトレレプチンなどの別の作用物質とが、例えば、同時送達のために単一の組成物に製剤化されるか、または別々に2つ以上の組成物(例えば、各々の構成成分を含むキット)に製剤化されうることを示す。各々の構成成分は、他方の構成成分が投与されるときと異なる時間に対象に投与することができ;例えば、各々の投与は、同時でなく(例えば、別々にまたは順次に)間隔を置いて所与の期間にわたり与えられる場合がある。そのうえ、別々の構成成分は、同じまたは異なる経路によって対象に投与され得る。
【実施例】
【0115】
これらの実施例は、本発明がそれに限定されないことを例示する。実施例に示される方法は、本発明の一部を形成する。
【0116】
実施例1:DXAスキャンを使用して部分性脂肪萎縮症を診断するためのアルゴリズム
本実施例において、体幹-脚比のみを使用することよりも優れた検査特性を有する総脂肪過多について補正された体幹-脚脂肪比を使用するアルゴリズムの開発が記載される。アルゴリズムは、対照において、体幹-脚比は総脂肪過多の関数であり、脂肪過多が大きいほど、体幹-脚比が高いという洞察を利用する。これは、脚脂肪組織と比較した体幹脂肪過多のより大きな拡大性のせいである。次いで、関心対象の人口統計に対照対象の大きなデータセットがあるかぎり、非常に小さなFPLD患者レベルのデータが入手可能であった場合の適用にこのアプローチが一般化された。このアルゴリズムを使用して、有病率が0.7%よりも大きい場合に50%よりも大きな陽性適中率で、または一般集団からの約40倍の濃縮で、FPLDを診断することができる(前記考察を参照されたい)。
【0117】
FPLDを診断するためにDXA基準を使用する試みは、定数よりも大きな「体幹/脚の脂肪パーセント」などの静的尺度を使用しており(Ajluni N, Meral R, Neidert AH, Brady GF, Buras E, McKenna B, DiPaola F, Chenevert TL, Horowitz JF, Buggs-Saxton C, Rupani AR, Thomas PE, Tayeh MK, Innis JW, Omary MB, Conjeevaram H, Oral EA. Spectrum of disease associated with partial lipodystrophy: lessons from a trial cohort. Clin Endocrinol (Oxf) 2017;86:698-707)、他の試みは、あまり静的でない尺度を使用している(Vasandani C, Li X, Sekizkardes H, Adams-Huet B, Brown RJ, Garg A. Diagnostic Value of Anthropometric Measurements for Familial Partial Lipodystrophy, Dunnigan Variety. J Clin Endocrinol Metab 2020;105)。他の者が、DXAによって生成された脂肪組織を視覚化する画像の調査に基づきPLDを診断することを実証した(Meral R, Ryan BJ, Malandrino N, Jalal A, Neidert AH, Muniyappa R, Akinci B, Horowitz JF, Brown RJ, Oral EA. "Fat Shadows" From DXA for the Qualitative Assessment of Lipodystrophy: When a Picture Is Worth a Thousand Numbers. Diabetes Care 2018;41:2255-2258)。
【0118】
体幹/脚の脂肪パーセント比は静的尺度としてでなく脂肪過多の関数としてアプローチされるべきであることが認識された。これは、UK Biobankなどの大きなデータセットについて脂肪過多と体幹/脚の脂肪パーセント比との関係をプロットすることから明白であった。この方法は、女性のために最初に使用された。女性の脂肪過多が増加するにつれ、体幹/脚の脂肪パーセント比が増加することが
図1から明らかである。女性における脂肪過多が増加したときに(集団にわたり横断的に)、女性は、脚の脂肪とは対照的に体幹の脂肪を優先的に加える。体幹の脂肪は、脚の脂肪よりも獲得または消失が容易である。脂肪拡大性仮説を参照のこと(Ghaben AL, Scherer PE. Adipogenesis and metabolic health. Nat Rev Mol Cell Biol 2019;20:242-258)。対照女性は、FPLD女性よりも容易に体幹脂肪を拡大できる一方で、FPLD女性は、脚の脂肪過多を拡大するのがずっと困難である。
【0119】
FPLDについての診断アルゴリズムを作成するために、以下の工程を行った。FPLDを有する個体からのDXAを示す最近の論文(Meral (2018)(本明細書に引用))を調査した。FPLDを有する患者からの個別のDXAデータを、Supplementary Materials Table 2 pdfからエクセル(Microsoft Corp; Redmond, WA)にコピーした。FPLDデータ点をGraphPad Prism(GraphPad Software; San Diego, CA)にプロットした(
図2)。
【0120】
脂肪シャドウ(Fat Shadows)研究におけるいくつかのコホートからのデータを表1-1に示す。Michiganコホートは、そのうち43人がFPLDを有する、脂肪萎縮症を有する48人の患者(41人の女性および7人の男性、年齢13~65歳)および70人の対照対象(42人の女性および28人の男性、年齢19~65歳)を含んでいた。NIHコホートは、GL(全身性脂肪萎縮症)を有する13人の患者(9人の女性、4人の男性、年齢14~40歳)、FPLDを有する14人の患者(12人の女性、2人の男性、年齢18~65歳)および56人の対照対象(48人の女性、8人の男性、年齢18~65歳)を含んでいた。
【0121】
(表1-1)MichiganおよびNIHコホートのすべてのサブタイプ、人口統計特性、および平均体組成特性
P、行および列=対象の脂肪シャドウ画像を表示しているMeralらのページ、行および列
群=対象が分類された実験群または対照群;AGL=後天性全身性脂肪萎縮症;APL=後天性部分性脂肪萎縮症;CGL=先天性全身性脂肪萎縮症;CGL1=先天性全身性脂肪萎縮症タイプ1(AGPAT2);CGL2=先天性全身性脂肪萎縮症タイプ2(BSCL2);FPLD=家族性部分性脂肪萎縮症症候群;FPLD1=家族性部分性脂肪萎縮症タイプ1、Kobberling型;FPLD2=家族性部分性脂肪萎縮症タイプ2、Dunnigan型(LMNA);FPLD3=家族性部分性脂肪萎縮症タイプ3(PPARG);およびFPLDX=FPLD2以外のすべてのFPLD。
NM=Noemi MalandrinoのFPLD予測(NIH);RB=Rebecca J. BrownのFPLD予測(NIH);RM=Rasimcan MeralのFPLD予測(UM);EO=Elif A. OralのFPLD予測(UM);およびBA=Baris AkinciのFPLD予測(独立、Dokuz Eylul大学)
BM=ボディマス指数
FFMI=除脂肪体重指数(Kg/m
2)
【0122】
DXAデータがMeral (2018)に発表された合計で55人の女性FPLD患者がいた。Meral (2018)における患者のFPLD診断は、理学的検査、病歴および臨床検査値に基づくFPLDの臨床専門家の意見に基づいた。FPLDの異なるサブタイプに異なる色が与えられた。それは、異なる遺伝的病因をサブタイプが有し、互いに臨床的に幾分異なったからである。FPLDX(n=33)は、著者らによってFPLD2を有しなかった患者と称された(n=22)。FPLDXは、公知の遺伝的病因を有するFPLDX(n=7)および未知の遺伝的病因を有するFPLDX(n=26)に細分することができる。遺伝的病因が知られているFPLDXは、PPARGバリアント(FPLD3)を有する5人の女性患者およびPOLDバリアントを有する2人の患者からなった。POLDバリアントは、FPLDに関連していたが、OMIMのFPLD呼称を有しない。残りのFPLDX患者は、FPLD1(Kobberlings)または他の形態のFPLDのいずれかを有した可能性があり、その遺伝的基盤は、現在未知であるか、または可能性があることには非定型APLD(後天性部分性脂肪萎縮症)でさえある。
【0123】
FPLDデータポイントをUKBデータセット(対照)に並べてプロットした。
図3を参照されたい。これにより、体幹-脚比が総体脂肪(TF)パーセンテージと正の相関関係にあり、その結果、より高い総体脂肪パーセンテージを有する患者でより高い体幹-脚の脂肪比(TLR)が見られたと決定された。しかし、この関係は、総体脂肪パーセンテージと共に変化する。具体的には、TF%が増加するにつれて、TF%における変化あたりのTLRにおける変化は減少する。FPLD対象は、曲線関数で対照対象と分離することができたが、これを簡略化するために2本の線を引いた。線(線1)を、1.353の体幹/脚値および>36%の脂肪過多で対照をFPLD対象と識別するために、より高い脂肪過多を有する個体についてPrismにおいて肉眼で最良適合として作成した。総体脂肪パーセンテージ≦36%を有する患者におけるFPLDおよび対照データポイントを分離するために、第2の線(線2)をPrismで引いた。
【0124】
Prismグラフをウェブプロットデジタイザ(apps.automeris.io/wpd/)にペーストし、線2の傾きおよび線2からのy切片についての値を決定した。FPLDをこれら2本の線の上部の領域として採用した。データポイントがどちらかの線の上部であったならば、これをFPLDと見なした。2本の線は36%の脂肪過多で交わる。
線は、
体幹/脚の脂肪パーセント比=(.0311×総体脂肪%)+0.232
として定義され(y=mx+b、式中、mは傾きであり、bはy切片である)、
これを移項して、
体幹/脚の脂肪パーセント比-(.0311×総体脂肪%)=0.232を得る。
それで、この線の上の領域はFPLDを有する患者を表し、これは、
(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(.0311×総体脂肪%)≧0.232
として与えられる。
これにより、以下のようなFPLDの診断基準がもたらされる:
脂肪過多(総体脂肪パーセンテージ)が>36%であるか?
該当するならば、体幹/脚の脂肪パーセント比が>1.353であるか?
該当するならば、FPLDである
該当しないならば、FPLDでない
該当しないならば
(体幹/脚の脂肪パーセント比)-(.0311×総体脂肪%)が≧0.232であるか
該当するならば、FPLDである
該当しないならば、FPLDでない
【0125】
アルゴリズムをUKBセットで訓練したので、次いで、これを2347人の女性のNHANES(National Health and Nutrition Examination Survey)(www.cdc.gov/nchs/nhanes/index.htm)データセットで検査した。NHANES中に15人の偽陽性があり、99.3%の特異度を与えた。この偽陽性率は上限であり、女性のNHANES対象はFPLDを有しなかったという仮定を行った。これは、NHANESの女性のDXAデータセットが2347人の女性に対応することを考えれば合理的な仮定であり、FPLDの有病率についての高い推定値は1:6,000であった。注目すべきは、これらの15の偽陽性のうち、4つが>36%の総体脂肪を有する対象(n=1249)の枝に由来し、>1.353の体幹/脚の脂肪パーセント比および11の偽陽性は、総体脂肪20~36%(n=1095)および(体幹/脚-0.0311×総脂肪パーセント)>0.232の値を有する対象の分枝に由来した。これは、総脂肪>36%を有する対象について99.7%の特異度および総脂肪≦36%を有する対象について99.0%の特異度を表した。
【0126】
99.3%の特異度で、アルゴリズムの感度を調査した。Meral (2018)に含有されるデータセットでアルゴリズムを訓練したので、アルゴリズムを検査するための第2のデータセットを捜した。脂肪萎縮症クリニックにおける患者からの盲検化および匿名化されたDXA結果を調査した。37人のPLD対象のデータを分析した。これらの対象におけるFPLDの診断は、患者の病歴、理学的検査、および臨床検査値を考慮した脂肪萎縮症専門家の臨床意見に基づいた。
図4に示されるように、34人がこのアルゴリズムで正しく特定された。
【0127】
アルゴリズムによって検出されなかった3人の患者(四角A、BおよびC)(偽陰性)を以下のように説明した:
(A)彼女の履歴は、9歳で始まった可能性のある自己免疫による脂肪消失を記載しているが、類似の脂肪分布の家族歴も陽性であった。理学的検査は、「四肢および腹部の皮下脂肪の欠乏、ならびにおとがいおよび頸部における皮下脂肪の増加を述べている。BMIは、21.5にとどまり、重症インスリン抵抗性であった。Kobberlingに類似していなかった。彼女は、LMNAにおける変異が陰性であった。HbA1cは10.6であり、TGは253である。
(B)理学的検査は、脂肪消失パターンを描写せず、ただ単に彼女が顕著に筋肉が発達したふくらはぎを有したと記述した。彼女は、LMNAにおける変異が陰性であった。実際にはPLを有しないことがあり得る。HbA1cは7.1であり、TGは216である。
(C)患者は、DunniganおよびEmery-Dreifuss筋ジストロフィーの両方の診断を有すると記述されているので、おそらくLMNA変異を有する。HbA1cは5.9であり、TGは165である。患者は、肢に筋肉の脂肪による置き換えを有した可能性があるか、または診断が不正確である。
*HbA1cはヘモグロビンA1cである
*TGはトリグリセリドレベル(mg/dl)である
【0128】
患者(A)における自己免疫の存在は、APLDの診断の可能性を提起した;患者(B)におけるFPLDの診断に関して確実性はなかった;患者(C)は、FPLD2の臨床的特徴を有したが、顕著な代謝異常を有しなかった。この情報および決定的な「ゴールドスタンダード」の欠如を考えれば、患者(A)、(B)、(C)の0~3人が分析から除去されたかに応じてアルゴリズムの感度についての範囲は92~100%である。患者(A)および/または(B)を除いた真の感度は95~97%である可能性がもっとも高い。99.3%の特異度および95~97%の感度で、このアプローチは、約136の陽性尤度比および0.03~0.05の陰性尤度比を有した。
【0129】
次に、FPLD女性(公表された論文から92:55であり、NIHから37例)と女性対照(NHANES)との間で、アルゴリズムを、単一項識別器として体幹/脚の脂肪パーセント比を使用するROC(受信者動作特性)曲線と比較した。以下のグラフでは、ドットは現在のアルゴリズムを示す。第1のグラフ(
図5(A))は、特異度および感度の全範囲を示し、一方で、第2のグラフ(
図5(B))は、より詳細に示すための関心対象の領域の拡大である。これらのデータは、本発明者らのアルゴリズムが体幹/脚比のみの使用よりも感度および特異度の両方で優れていたことを実証した。具体的には、何人かが、PLDの診断のために1.5の体幹/脚カットオフを推奨している(Ajluni et al., Spectrum of disease associated with partial lipodystrophy: lessons from a trial cohort. Clin Endocrinol (Oxf). 2017 May;86(5):698-707)。このカットオフを本発明者らが分析した92人のFPLD対象に適用する場合、これは、99.9%の特異度をもたらしたが、感度はわずか57.6%であった。これは、特に、より低い総脂肪パーセンテージで<1.5の体幹/脚比を有する多くのPLD患者があったからであり、この事実は、本発明者らのアルゴリズムでのみ考慮される。99.3%の特異度(1.3の体幹/脚比で)を達成するために、体幹/脚比は、84.8%の感度を達成するにすぎない。逆に、95%の感度を達成するために(0.943の体幹/脚比で)、体幹/脚比のみを使用することによって77%の特異度が達成されるにすぎない。
【0130】
アルゴリズムの修正は、許容される総脂肪パーセントの上界を与えることである。非常に高い体脂肪を有する患者は、脂肪組織萎縮症による代謝疾患よりも、ある特定の領域における過剰な脂肪により大きく関係する代謝疾患を有する可能性が高いので、これは合理的である。上記データセットでは、FPLD患者における最高総脂肪パーセントは48.7%であり、それで、本発明者らは、50%の総脂肪パーセントの上限を使用する場合がある。この修正は、本発明者らのアルゴリズムの感度または特異度を変更することはない。しかし、このアルゴリズムの特異度がNHANESデータベースで検査されたことに留意すべきである。50%の上限の使用は、より高い肥満度を有する他の集団で有用であることができる。
【0131】
総脂肪過多と体幹-脚の脂肪比との関係は、異なる民族群の間で異なり得る。したがって、異なる民族組成を有する他の国々におけるヨーロッパ祖先の白人から主として構成されるUKBおよびNHANESに由来するFPLD診断DXAアルゴリズムを使用することが不適切な場合がある。本発明者らは、それらを別々に評価することによってNHANESで定義された全部で5つの民族についてこのアルゴリズムを検証した。体幹/脚の脂肪パーセント比と総体脂肪パーセントとの関係は、NHANESにおけ5つの異なる民族の間で類似している(
図13)。しかし、朝鮮からのデータの分析は、NHANESベースのアルゴリズムがこの集団に当てはまらないことを示す。したがって、本発明は、総体脂肪に対して規準化された体幹-脚比についての99パーセンタイルを使用して、信頼性をもって99パーセンタイルを確立するために十分な対照データがある任意の集団のための診断基準を決定することを具体化する。東南アジア民族の人々は、ヨーロッパ祖先の人々と比較して所与のボディマス指数でより大きな代謝異常を患う。上述のように、適切な大型対照データセットを使用して異なる民族について異なるDXA基準を導出することが理想的であろう。上記プロセスを新規にやり遂げることは対照的に、パーセンタイル曲線を使用する代替アプローチが、より適用可能であることができる。本発明者らは、NHANESにおける女性の間の体幹-脚比の分布を調査し、アルゴリズムによりFPLDを対照と分離する識別線に沿って1、3、10、25、50、75、90、97および99パーセンタイルについての値をプロットした。最小から最大へと総脂肪過多により対象を選別することによってパーセンタイル曲線を生成した。本発明者らは、300人の対象(対象1~対象300)に最初に注目し、平均総脂肪過多(x値について)を計算し、次いで、x値に対応する対象1~対象300についての対応するパーセンタイルを決定した。300人の患者の1パーセンタイルについての値は、300人の対象の間の最低から3番目の体幹-脚比に対応する値である。300人の患者の次のセット(対象2~対象301)に移り、最後の300人の対象(最高の体幹-脚比を有する)に達するまでこのプロセスを繰り返し、このように、パーセンタイル曲線を生成した(
図8)。より極端なパーセンタイル(すなわち、1および99パーセンタイル)は、より中央のパーセンタイル(すなわち、50パーセンタイル)ほど滑らかでない。NHANESパーセンタイルは、総脂肪過多および体幹-脚比についての個別の対象値の散布図で見られた正の関係をより良好に例示した。300人の対象のウインドウが150から左側に、および150から右側に注目したので、最初または最後の150人の対象についてパーセンタイル曲線を計算することが不可能であった。この理由から、それらの値を個別に点として示す。300のウインドウを任意に選んで、総脂肪過多の全範囲にわたる曲線についてできるだけ大きなカバー度を得て、パーセンタイル曲線の滑らかさを最大化した。異なるパーセンタイル曲線の傾きは相互に異なり、一方で、それらは識別関数の傾きを密接に近似する。加えて、識別関数は、総脂肪パーセントについて体幹-脚比の99パーセンタイルについての曲線近くにある。
【0132】
人口統計群内の対象からの対照の大きなデータセットがあるかぎり、パーセンタイルアプローチを使用して、FPLD対象がほとんどいないかまたは全くいない人口統計群について診断アルゴリズムを作成することができる。例として、男性を考慮する。男性は、FPLD対象の約10%だけを構成し、FPLD患者について入手可能なDXAデータが不足しているが、対照対象(NHANESも)の大きなデータセットがある。本発明者らは、
図9に示されるパーセンタイルを使用して男性についての識別関数を作成することができる。わずか7つのFPLDの男性DXAデータ点を用いた場合、感度についての「特定量(quanta)」間隔は14%である。アルゴリズムは、7/7の患者または6/7の患者などを正しく予測することができたが、1/7のこの最小差は、14.3%の感度変化と等価である。この理由から、本発明者らは、100%の感度(7/7)を有する1つおよび86%の感度(6/7)を有する1つという2つの識別関数を導く。100%の感度について、識別関数は、以下である:
>27.5%の総体脂肪パーセンテージについて
体幹/脚の脂肪パーセント比が>1.5ならば、患者はFPLDを有する
≦27.5%の総体脂肪パーセンテージについて
体幹/脚の脂肪パーセント比が>0.0429*総体脂肪%+0.321ならば、患者はFPLDを有し、これを移項して以下となる:
体幹/脚の脂肪パーセント比-(0.0429*総体脂肪%)が>0.321ならば、患者はFPLDを有する。
【0133】
100%の感度で、98.1%の特異度に対応する49の偽陽性がある。本発明者らが86%のより低い感度(6/7)を受け入れるならば、偽陽性の数は、特異度の99.3%への増加に対応して3倍低減されて15になる。感度を86%に設定した場合の識別関数は、異なるy切片で100%に設定された感度を有する識別関数と同じ傾きを有する。
図10を参照されたい。
86%の感度を有する識別関数は、以下である:
総体脂肪パーセンテージ>25.7%について
体幹/脚の脂肪パーセント比が>1.5ならば、患者はFPLDを有する
総体脂肪%≦25.7%について
体幹/脚の脂肪パーセント比が>.0429*総体脂肪%+0.4ならば、患者はFPLDを有し、これを移項して以下となる:
体幹/脚の脂肪パーセント比-.0429*総体脂肪%が>0.4ならば、患者はFPLDを有する。
【0134】
次いで、本発明者らは、受診者動作曲線に体幹-脚比のみを使用することと比較して、これら2つの識別器の性能を調査した。
図11を参照されたい。2つの識別関数は、ROC曲線が拡大された場合にもっともうまく見ることができる。
図12を参照されたい。
【0135】
本発明者らは、次に、NHANESが民族データを有するという事実を利用した。具体的には、以下の民族カテゴリーを使用する:白人、黒人、メキシコ系アメリカ人、その他ヒスパニック(メキシコ系でない)、およびその他/バイレイシャル。女性データセットについて、本発明者らは、5つの異なる群が、体幹-脚比と総体脂肪パーセントとの間に類似の関係を有することを分かることができる。(
図13を参照されたい)。2347人のNHANES女性のうち、659人(28%)がメキシコ系アメリカ人であり、81人(4%)がその他ヒスパニックとして記載され、871人(37%)が白人であり、612人(26%)が黒人であり、124人(5%)がその他-バイレイシャルとして記載された。55人のFPLD女性のうち、48人(87%)が白人であり、1人(2%)が黒人であり、1人(2%)がその他として記載され、5人(9%)は人種情報が提供されていなかった。FPLDおよびNHANESデータセットの人種組成は異なるが、一方、NHANESにおいて人種間に有意な差がなかったという事実は、これらの2つの対象群を比較することによりエラーが導入されないことを示唆している。
【0136】
第一に、女性について、体幹-脚比の関係は、これらの異なる群の間で非常に類似している。しかし、アジア人はNHANESに表されていない。アジア人が他の民族群で観察されたものと類似した、体幹-脚比と脂肪過多との関係を有するかを決定するために、本発明者らは、朝鮮人NHANES(KNHANES)における1524人の女性を表す2011の試料からのデータを調査した。NHANESにおける女性は、KNHANESにおける女性と比較してわずかに高い総脂肪パーセントを有した(それぞれ中央値[IQR]は、36.6[30.8、41.8]および34.3[30.1、38.5]であった。増加した総脂肪パーセントと共に体幹-脚脂肪比が増加することを考えると、NHANESがKNHANESよりも高い体幹-脚脂肪比を有すると予想され得るが、逆が真である。KNHANESにおける女性は、NHANESにおける女性と比較して有意に高い体幹-脚脂肪比を有した(0.97±0.22 vs 0.82±0.16、p<0.001)。これは、朝鮮人女性がアメリカまたはイギリス人女性よりも高い体幹-脚比を有したことを示した(アジア人は集団の小パーセンテージであった)。アメリカおよびUK集団におけるFPLDと非FPLDとを識別するために使用されたアルゴリズムを朝鮮人集団に適用する場合、特異度はずっと低くなる。具体的に、1524人の朝鮮人女性のうち、588人が≧36%の総脂肪パーセントを有し、その中でFPLDを有すると誤って特定されたのは28人であった(特異度=95.2%)。1524人の朝鮮人女性のうち、936人が≦36の総体脂肪パーセントを有し、そのうち127人がFPLDを有すると誤って特定されたであろう(特異度=86.4%)。KNHANESにおける1524人の女性の総試料の複合特異度は89.8%であろう。FPLDを有する朝鮮系女性の公表された報告が存在しないにもかかわらず、本発明者らは、総体脂肪パーセントについて規準化された体幹-脚比の99パーセンタイルを使用することによって対照とFPLD対象とを識別する基準を決定することができる。朝鮮人女性における総パーセント体脂肪と体幹-脚比との間に正の関係がある一方で、線の傾きはより高いパーセンタイルで減少し、その結果、1.54の単一の体幹-脚比をこの集団において使用することができる。朝鮮系女性における増加した体幹-脚脂肪比は、主として、体幹脂肪における増加とは対照的に脚脂肪における減少が原因であった。
図14を参照されたい。
【0137】
本発明者らは、朝鮮人女性における総体脂肪についての体幹-脚脂肪比のパーセンタイル曲線を調査し、特に、より高いパーセンタイル曲線に注目した場合に、これらの変数間の正の関係が鈍ったことを観察した。したがって、朝鮮人女性におけるFPLDと対照とを識別するための基準を決定するために、集団全体についての99パーセンタイルと等価の体幹-脚の脂肪パーセント比の単一項基準(>1.54)は、適切である可能性がもっとも高い。TLR>1.54を有する朝鮮人女性は、FPLDの可能性が高い。同じ原理が朝鮮人男性について当てはまり、その結果、TLR>1.90を有する朝鮮人男性でFPLDの可能性が高い。
【0138】
実施例2:PLDを診断するための決定木アルゴリズム
実施例1に述べたように、FPLDを診断するためにDXA基準を使用する試みは、定数よりも大きな「体幹/脚の脂肪パーセント」などの静的尺度を使用した。他の試みは、対照集団の大きなデータセットと比較した年齢についての脚脂肪%<1パーセンタイルなどの、より静的でない尺度を使用した。しかし、このアプローチは、FPLDの一種、FPLD2だけに有効である。
【0139】
本明細書に記載される方法は、体幹および肢における脂肪パーセンテージからの情報をより多く使用する。FLPDを分類する中核的な質問は、決定変数に依存する。ここで、決定変数は、カテゴリカル、FPLD、または非FPLDである。分類決定木は、このような質問に回答するためにうまく適合する。決定木は、再帰分割と呼ばれる発見法を使用して構築される(Breiman et al., Classification and Regression Trees. CRC Press;1984.)。それがデータをサブセットに分割し、サブセットが次いでいっそう小さなサブセットに繰り返し分割されるなどし、サブセット内のデータが十分に均質であるとアルゴリズムが決定した場合、または別の停止基準に合致した場合にプロセスが停止するまで続くので、このアプローチはまた、分割統治として一般に知られている。
【0140】
決定木モデルのための訓練データセット
これらの観察を実行してFPLDのための診断アルゴリズムを作成するために、以下の工程を行った。本発明者らは、FPLDを有する個体からDXAを示す最近の論文を調査した(Meral et al., "Fat Shadows" From DXA for the Qualitative Assessment of Lipodystrophy: When a Picture Is Worth a Thousand Numbers. Diabetes Care 2018;41:2255-2258)。FPLDを有する患者からの個々のDXAデータを、Supplementary Materials Table 2 pdfからスプレッドシートにコピーした(MSエクセル)。ソフトウェアR 4.0.2をすべてのモデル化および実現のために使用した。
【0141】
以下の計算を行った:
χ:x
1,x
2,…,x
iを入力ベクターとして;χのサブセットのCクラスへの繰り返し分割によって決定木分類器を構築する。分割ノードAについて、本発明者らは、不純度関数I(A)がこのようなノードにおける分割の不確実性を表すと定義した。
【0142】
iがクラスiを示す場合;Cは、クラス数であり;pは、ノードAがクラスiに入る確率である。
【0143】
関数fについて2つの一般的な候補がある;情報指数f(p)=-plog(p)およびジニ指数f(p)=p(1-p)である。選択されたf(p)を考えると、ノードAにおける分割は、不純度低減ΔIを最大化することによって決定される。
【0144】
Lの下付文字は、ノードが左に分割されることを意味し、Rの下付文字については逆である。不純度関数は、分割を決定するために繰り返し計算される。決定木分類器のためのモデル化は、R 4.0.2でのRPARTパッケージを使用して実施された(Therneau&Atkinson (2019). rpart: Recursive Partitioning and Regression Trees. R package version 4.1-15. https://CRAN.R-project.org/package=rpart)。
【0145】
決定木モデルを、55人のFPLD患者および90人の対照患者を使用して作成した。脚、体幹、および腕におけるDXA脂肪組織パーセンテージを使用して、決定木は、患者をPLDおよび非PLDとして分類する。この方法では、訓練セットをだんだん小さなサブセットに分解し、一方で、同時に関連する決定木が徐々に発生する。交差検証法を使用して、ツリーの最良深度を選択した。決定木分類器をフィッティングするために以下のコード例を実施した。
【0146】
【0147】
表2-1から;5および6を有する終端ノード数(nsplit)が、最小の交差検証誤差(xerror)を有する。5に等しいノード数を有するより単純なツリーを最終ツリーとして選択した(
図6)。
【0148】
最終ツリーは、以下のアルゴリズムで言葉で解釈することもできる。
1. 脚における脂肪割合は30.85以上であるか?
1.1. 該当するならば、脚における脂肪割合は37.25以上であるか?
1.1.1. 該当するならば、対象は非PLDと分類される
1.1.2. 該当しないならば、腕における脂肪割合は37.85未満であるか?
1.1.2.1. 該当するならば、対象は非PLDと分類される。
1.1.2.2. 該当しないならば、体幹における脂肪割合は51未満であるか?
1.1.2.2.1. 該当するならば、対象は非PLDとして分類される。
1.1.2.2.2. 該当しないならば、対象はPLDとして分類される。
1.2. 該当しないならば、脚における脂肪割合は24.5以上であるか?
1.2.1. 該当するならば、体幹における脂肪割合は34.55未満であるか?
1.2.1.1.該当するならば、対象は非PLDとして分類される。
1.2.1.2.該当しないならば、対象はPLDとして分類される。
1.2.2. 該当しないならば、対象はPLDとして分類される。
【0149】
NIHおよびNHANESからの複合データセットを使用してフィッティングされたツリーモデルの有用性を検査した。NHANESデータセットにおいて、2347人の女性がいた。NHANESデータセット中のすべての女性が非FPLD対象であったと仮定した。NIHデータセットにおいて、38人のPLD患者および19人の非PLD患者がいた。フィッティングされたモデルを使用する複合データセットについての混同行列を下に示す。
【0150】
(表2-2)混同行列
感度:0.84
特異度:0.98
【0151】
複合データセットにおいて、2347人の非PLD対象のうち53人がFPLDとして誤分類され;38人のPLD対象のうち6人が非PLDとして誤分類された。提唱された決定木分類器は、FPLD患者の検出に大きなパワーを有し、一方で、偽陰性率を低レベルに保った。決定木分類器からの感度および特異度は、それぞれ0.84および0.98であった。
【0152】
NIHおよびNHANESの複合データセットについてのROC曲線は、最終のツリー分類器の性能が良好であったことを示した。ROC曲線は、(0,1)点に非常に近かった。ROC曲線についてのAUCは0.94であった。
図7を参照されたい。
【0153】
決定木分類器が対象をどのように異なるカテゴリーに分類したかの例を下に挙げる。
例えば、1:34%の脚の脂肪パーセンテージ、34%の腕の脂肪パーセンテージ、および38.6%の体幹の脂肪パーセンテージを有する女性対象は、非PLDとして分類される。決定プロセスは、以下の通りである:
1. 脚における脂肪割合は30.85以上であるか?
1.1. 該当するならば、脚における脂肪割合は37.25以上であるか?
1.1.1. 該当しないならば、腕における脂肪割合は37.85未満であるか?
1.1.1.1. 該当しないならば、体幹における脂肪割合は51未満であるか?
1.1.1.1.1. 該当するならば、対象は非PLDと分類される。
【0154】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許が、参照により組み入れられると具体的および個別に示された場合と同程度に、参照により組み入れられる。参照による組み入れのこの陳述は、個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許のいずれにも関係することが出願人によって意図されており、これらは各々、たとえこのような引用が参照による組み入れの専用の陳述に直接隣接していないとしても、それが明らかに識別される。もしあれば、本明細書内の参照による組み入れの専用の陳述の包含は、参照による組み入れのこの一般的な陳述を、いかなる形であれ弱めない。本明細書における参考文献の引用は、参考文献が、関連する先行技術であるという承認として意図されないし、これらの刊行物または文書の内容または日付に関して、いかなる承認も構成しない。
【配列表】
【国際調査報告】