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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗TSLP抗体を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/19
A61P1/04
A61P11/06
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/08
C07K16/24
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551220
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2022078718
(87)【国際公開番号】W WO2022184074
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110235660.8
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孔 令 ▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】程 艷 菊
(72)【発明者】
【氏名】郭 曉 ▲ルー▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC20
4C076DD08F
4C076DD26Z
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD46F
4C076DD51Q
4C076DD51Z
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C076GG07
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB17
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
抗TSLP抗体を含む医薬組成物及びその使用を提供する。具体的に、(a)抗TSLP抗体と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、1種又は複数種の(d)安定化剤を含む医薬組成物、及び前記医薬組成物の、TSLP関連疾患を治療及び予防するための医薬品の製造における使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗TSLP抗体と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、1種又は複数種の(d)安定化剤を含む医薬組成物であって、前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域はVH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域を含み、前記軽鎖の可変領域はVL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域を含み、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域、VH-CDR3領域、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域はそれぞれ、SEQ ID NOs:1、2、3、4、5及び6で示されるアミノ酸配列を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域は、(1)それぞれSEQ ID NOs:7及び10で示されるアミノ酸配列、(2)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(3)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(4)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(5)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(6)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(7)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(8)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(9)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(10)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(11)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(12)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(13)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(14)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(15)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(16)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(17)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(18)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、又は(19)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含んでもよい、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗TSLP抗体の濃度が30mg/mL~300mg/mlであり、好ましくは50mg/mL~250mg/mlであり、好ましくは70mg/mL~200mg/mlであり、より好ましくは90mg/mL~150mg/mlであり、最も好ましくは120mg/mL~150mg/mlである、請求項1~2のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はクエン酸塩緩衝剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記リン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤であり、前記酢酸塩緩衝剤は酢酸ナトリウム緩衝剤であり、前記クエン酸塩緩衝剤はクエン酸ナトリウム緩衝剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤の濃度が1mM~100mMであり、好ましくは2mM~80mMであり、より好ましくは5mM~60mMであり、最も好ましくは10mM~40mMである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤の濃度が0.001%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.004%~0.08%(w/v)であり、より好ましくは0.006%~0.06%(w/v)であり、最好ましくは0.008%~0.04%(w/v)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記安定化剤の濃度が100mM~1000mMであり、好ましくは120mM~800mMであり、より好ましくは150mM~700mMであり、最好ましくは150mM~600mMである、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物を凍結乾燥させて得られる、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項13】
再溶解することで請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物を形成できる、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項12~13のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤を収容している容器を含む、物品。
【請求項15】
患者に必要な治療有効量の請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物又は請求項12~13のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤又は請求項14に記載の物品を投与することを含む、TSLP関連疾患を治療及び予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願で引用又は参考にしたすべての文献(文献、特許、特許出願を含むが、これらに限定されない)、本願で引用した文献において引用又は参考にされたすべての文献、及び本願又は引用により本願に組み込まれた任意の文献に言及された任意の製品の任意のメーカーによる説明、記述、製品規格及びカタログはすべて、引用により組み込まれ、また、本発明の実施に利用されることができる。より具体的に、本願で引用したすべての参考文献は、各文献が具体的で個別に引用により本願に組み込まれることが明記されていることと同程度に引用により組み込まれる。そして、任意の国においても、これら出版物は本願に引用されたことによりこの分野の技術常識となることがない。
【技術分野】
【0002】
本開示は医薬製剤の分野に属し、具体的に、本開示は抗TSLP抗体を含む安定した医薬組成物に関する。或いは、本開示は高濃度の抗TSLP抗体を含む安定した医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は上皮細胞から産生されるサイトカインであり、IL-7に緊密関係しており、且つTSLPR(IL-7受容体α鎖とTSLP受容体鎖とのヘテロ二量体)に結合する。TSLPは、免疫反応の誘導段階でDC細胞の分極化を誘導し、ヘルパーT細胞(Th)2の分化及びTh2サイトカインの産生を促進する。また、TSLPは、T細胞の増殖を直接的に促進し、且つTh2サイトカインの分泌を高めることができる。このため、TSLPはTh2駆動型炎症の主な調節剤であり、且つTSLPの上昇は例えばアトピー性皮膚炎や喘息などTh2細胞関連疾患の発症機序に関連していると考えられる(Rui He et al.,(2010)上記同様;Ito T et al.,(2005)The Journal of Experimental Medicine 202(9):1213-1223;He R et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(33):11875-11880)。また、TSLPは腸管と胸腺の両方におけるいくつかの免疫恒常性機能を仲介する。例えば、細菌の刺激のもとで、TSLPは腸管上皮細胞系において歪み依存的に発現が上昇し、形質転換成長因子βと相乗的に作用してTreg細胞の分化を促進する。TSLPはまた、ヒト初代腸上皮細胞から産生されることができ、CD103DC細胞が免疫寛容誘導性表型となるように調整するために用いられる(Katerina Tsilingiri et al.,(2017)Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology 3(2):174-182;Zeuthen LH et al.,(2008)Immunology 123:197-208;Iliev ID et al.,(2009)Gut 58:1481-1489)。
【0004】
TSLPは、免疫系に対する二重作用により、Long型とShort型の2つのサブタイプが発見され、Short型はLong型TSLP末端にある63個のアミノ酸残基からなる。この2つのサブタイプは異なるプロモーターによって制御され、環境、組織及び刺激に依存して発現する (Harada M et al.,(2011)Amrican Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 44:787-793)。高免疫原性微生物株に感染した後、ヒト腸上皮細胞におけるLong型TSLPの発現が上昇し、Short型TSLPの発現が低下したが、共生性大腸菌に感染した後、逆の発現パターンが見られた。いくつかのTSLP関連疾患におけるTSLPサブタイプの発現パターンについても研究した。例えば、喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬においてLong型TSLPの過剰発現が見られたが、セリアック病においてLong型TSLPの発現低下が見られた。クローン病、セリアック病及びアトピー性皮膚炎において、Short型TSLPの発現が低下した(KaterinaTsilingiri et al.,(2017)上記同様;Fornasa G et al.,(2015)J Allergy Clin Immunol 136:413-422)。
【0005】
TSLPは数多くの疾患に関連しており、重要な臨床標的となっている。将来、ますます多くの抗TSLP抗体が開発・利用されるであろう。したがって、この分野では、抗TSLP抗体が製造及び患者への投与に適し、且つ貯蔵及びその後の使用時に生物学的活性及び安定性を維持できるように、抗TSLP抗体を含む医薬組成物を開発することが求められている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、安定した效果を実現でき、被験者への投与に適する抗TSLP抗体を含む医薬組成物を提示する。
【0007】
具体的に、本開示は、抗TSLP抗体を含む医薬組成物であって、例えば、(i)高分子不純物の生成を抑制できる医薬組成物、(ii)電荷変異体の生成を抑制できる医薬組成物、(iii)抗体の生物学的活性を維持できる医薬組成物、及び/又は(iv)抗体の濃度が高い場合に上昇した粘度を低減できる医薬組成物を提供した。
【0008】
本開示で提供される医薬組成物は、(a)抗TSLP抗体と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、1種又は複数種の(d)安定化剤を含む。
【0009】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度が30mg/mL~300mg/mLであり、好ましくは50mg/mL~250mg/mLであり、好ましくは70mg/mL~200mg/mLであり、より好ましくは90mg/mL~150mg/mLである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度が約120mg/mLである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度が約130mg/mLである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度が約140mg/mLである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度が約150mg/mLである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体の濃度として、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約115mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、又は約150mg/mLを含むが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、又はクエン酸塩緩衝剤などを含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤を含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤を含む。好ましくは、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤を含む。
【0011】
いくつかの具体的な実施の形態において、前記リン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤又はリン酸カリウム緩衝剤を含み、前記酢酸塩緩衝剤は酢酸ナトリウム緩衝剤、酢酸カリウム緩衝剤又は酢酸アンモニウム緩衝剤を含み、前記クエン酸塩緩衝剤はクエン酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸カリウム緩衝剤又はクエン酸カルシウム緩衝剤を含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、例えばリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムからなるリン酸ナトリウム緩衝剤などのリン酸ナトリウム緩衝剤を含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、例えば酢酸ナトリウムと酢酸からなる酢酸ナトリウム緩衝剤などの酢酸ナトリウム緩衝剤を含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤は、例えばクエン酸とクエン酸ナトリウムからなるクエン酸ナトリウム緩衝剤などのクエン酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0012】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度が1mM~100mMであり、好ましくは2mM~80mMであり、好ましくは5mM~60mMであり、より好ましくは10mM~40mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度が約10mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度が約18mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度が約20mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度が約22mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤の濃度として、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約30mM、約32mM、約34mM、約36mM、約38mM、又は約40mMを含むが、これらに限定されない。
【0013】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤のpHが約5.6である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤のpHが約5.8である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤のpHが約6である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記緩衝剤的pHとして、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、又は約6.5を含むが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20.ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー181、ポロキサマー188、ポロキサマー407)、ポリエチレングリコール又はポロキサマー(poloxamers)などから選択される。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤はポリソルベート80である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤はポリソルベート20である。
【0015】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤の濃度が0.001%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.004%~0.08%(w/v)であり、好ましくは0.006%~0.06%(w/v)であり、より好ましくは0.008%~0.04%(w/v)である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤の濃度が約0.01%(w/v)である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤の濃度が約0.02%(w/v)である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤の濃度が約0.04%(w/v)である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記界面活性剤の濃度として、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.05%(w/v)、又は約0.06%(w/v)を含むが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤はマンニトールを含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤はアルギニンを含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤はプロリンを含む。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、例えばスクロースとプロリンなど2種の安定化剤を含む。前記アルギニン又はその薬学的に許容される塩は、アルギニン、アルギニン塩酸塩又はアルギニン酢酸塩などを含む。
【0017】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度が100mM~1000mMであり、120mM~800mMであり、好ましくは150mM~700mMであり、より好ましくは150mM~600mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度が約200mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度が約250mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度が約400mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度が約500mMである。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記安定化剤の濃度として、約120mM、約150mM、約200mM、約210mM、約230mM、約250mM、約270mM、約290mM、約300mM、約310mM、約330mM、約350mM、約370mM、約380mM、約390mM、約400mM、約410mM、約420mM、約430mM、約450mM、約470mM、約490mM、約500mM、約510mM、約530mM、約550mM、約570mM、又は約600mMを含むが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物のpHが約5.6である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物のpHが約5.8である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物のpHが約6である。いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物のpHとして、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、又は約6.5を含むが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約30mg/mL~約300mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約1mM~約100mMの緩衝剤と、(c)約0.001%~約0.1%(w/v)の界面活性剤と、1種又は複数種の(d)約100mM~約1000mMの安定化剤を含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
[0021]
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約50mg/mL~約250mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約2mM~約80mMの緩衝剤と、(c)約0.004%~約0.08%(w/v)の界面活性剤と、1種又は複数種の(d)約120mM~約800mMの安定化剤を含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0020】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約70mg/mL~約200mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約5mM~約60mMの緩衝剤と、(c)約0.006%~約0.06%(w/v)の界面活性剤と、1種又は複数種の(d)約150mM~約700mMの安定化剤を含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0021】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約90mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMの緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)の界面活性剤と、1種又は複数種の(d)約150mM~約600mMの安定化剤を含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0022】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMの緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)の界面活性剤と、1種又は複数種の(d)約150mM~約600mMの安定化剤を含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0023】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約30mg/mL~約300mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約1mM~約100mMのリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.001%~約0.1%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80と、(d)約100mM~約1000mMのトレハロース、マンニトール又はスクロース、及び/又は約100mM~約1000mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0024】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約50mg/mL~約250mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約2mM~約80mMのリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.004%~約0.08%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80と、(d)約120mM~約800mMのトレハロース、マンニトール又はスクロース、及び/又は約120mM~約800mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0025】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約70mg/mL~約200mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約5mM~約60mMのリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.006%~約0.06%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80と、(d)約150mM~約700mMのトレハロース、マンニトール又はスクロース、及び/又は約150mM~約700mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0026】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約90mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80と、(d)約150mM~約600mMのトレハロース、マンニトール又はスクロース、及び/又は約150mM~約600mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0027】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80と、(d)約150mM~約600mMのトレハロース、マンニトール又はスクロース、及び/又は約150mM~約600mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0028】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約30mg/mL~約300mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約1mM~約100mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.001%~約0.1%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約100mM~約1000mMのマンニトール、 及び/又は約100mM~約1000mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0029】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約50mg/mL~約250mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約2mM~約80mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.004%~約0.08%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約120mM~約800mMのマンニトール、及び/又は約120mM~約800mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0030】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約70mg/mL~約200mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約5mM~約60mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.006%~約0.06%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約150mM~約700mMのマンニトール、及び/又は約150mM~約700mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0031】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約90mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約150mM~約600mMのマンニトール、及び/又は約150mM~約600mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0032】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.008%~約0.04%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約150mM~約600mMのマンニトール、及び/又は約150mM~約600mMのアルギニン又はその薬学的に許容される塩、又はプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7であり、好ましくは約5.5~約7であり、より好ましくは約5.5~約6.5である。
【0033】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.01%(w/v)~約0.04%(w/v)のポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)約150mM~約600mMのプロリン、マンニトール又はアルギニンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6、例えば、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、又は約6である。
【0034】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約200mMのマンニトールを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0035】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約150mMのアルギニンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0036】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約400mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0037】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約18mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約400mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0038】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約22mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約400mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0039】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約18mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約500mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0040】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約22mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約500mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0041】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約500mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0042】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約18mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約450mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0043】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約22mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約450mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0044】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約450mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0045】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約18mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約350mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0046】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約22mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約350mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0047】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約350mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0048】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約18mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約250mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0049】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約22mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約250mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0050】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約250mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.5~約6.5であり、好ましくは約5.5~約6である。
【0051】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのヒスチジン緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)のポリソルベート80と、(d)約400mMのプロリンを含み、前記医薬組成物のpHが約5.8である。
【0052】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約10mM~約40mMのリン酸塩又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.01%(w/v)~約0.04%(w/v)のポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)約200mM~約600mMのプロリン、アルギニン又はマンニトールを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7、例えば、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.5、又は約7である。
【0053】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのリン酸塩又は酢酸塩緩衝剤と、(c)約0.01%(w/v)~約0.04%(w/v)のポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)約200mMの的マンニトールを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7である。
【0054】
いくつかの実施の形態において、前記医薬組成物は、(a)約120mg/mL~約150mg/mLの抗TSLP抗体と、(b)約20mMのリン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム緩衝剤と、(c)約0.02%(w/v)~約0.04%(w/v)のポリソルベート80又はポリソルベート20と、(d)約200mMの的マンニトールを含み、前記医薬組成物のpHが約5~約7である。
【0055】
所望に応じて、前記医薬組成物に等張化剤又は防腐剤を適宜添加することができる。前記等張化剤又は防腐剤を所望の効果を達成できる量の範囲で適量で適宜使用することができる。中では、等張化剤は塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含み、防腐剤は4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコールなどを含む。
【0056】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域はVH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域を含み、中では、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域はそれぞれ、例えばSEQ ID NOs:1、2及び3で示されるアミノ酸配列を含む。
【0057】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域はSEQ ID NOs:7、8又は9(X1=R、X2=V、X3=R;X1=R、X2=V、X3=V;X1=R、X2=A、X3=R;X1=K、X2=A、X3=R;又はX1=K、X2=A、X3=V)で示されるアミノ酸配列を含む。中では、SEQ ID NO:7で示されるアミノ酸配列は、SEQ ID NOs:17又は18で示されるヌクレオチド配列によってコードされることができ、SEQ ID NO:9(X1=R、X2=V、X3=R)で示されるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:19で示されるヌクレオチド配列によってコードされることができる。
【0058】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は軽鎖の可変領域を含み、前記軽鎖の可変領域はVL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域を含み、中では、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域はそれぞれ、例えばSEQ ID NOs:4、5及び6で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0059】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は軽鎖の可変領域を含み、前記軽鎖の可変領域はSEQ ID NOs:10又は11(X1=S、X2=V;X1=A、X2=I;又はX1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列を含む。中では、SEQ ID NO:10で示されるアミノ酸配列は、SEQ ID NOs:20又は21で示されるヌクレオチド配列によってコードされることができ、SEQ ID NO:11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列は、SEQ ID NO:22で示されるヌクレオチド配列によってコードされることができる。
【0060】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域はVH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域を含み、前記軽鎖の可変領域はVL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域を含む。中では、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域、VH-CDR3領域、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域はそれぞれSEQ ID NOs:1、2、3、4、5及び6で示されるアミノ酸配列を含む。
【0061】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域は、(1)それぞれSEQ ID NOs:7及び10で示されるアミノ酸配列、(2)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(3)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(4)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(5)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(6)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(7)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(8)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(9)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(10)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(11)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(12)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(13)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(14)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(15)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(16)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(17)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(18)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、又は(19)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0062】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は重鎖と軽鎖を含み、前記重鎖は重鎖の可変領域と重鎖の定常領域を含み、前記軽鎖は軽鎖の可変領域と軽鎖の定常領域を含む。前記重鎖の定常領域は、SEQ ID NOs:12又は37で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖の定常領域、又はSEQ ID NO:13で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4重鎖の定常領域、又はこれら重鎖の定常領域の断片を含んでもよい。前記軽鎖の定常領域は、SEQ ID NO:14で示されるアミノ酸配列を有するヒトκ軽鎖の定常領域又はその断片を含んでもよい。前記重鎖の定常領域はSEQ ID NO:15で示されるアミノ酸配列を有するマウスIgG1重鎖の定常領域であってもよく、且つ前記軽鎖の定常領域はSEQ ID NO:16で示されるアミノ酸配列を有するマウスκ軽鎖の定常領域であってもよい。中では、SEQ ID NOs:12-16及び37で示されるアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOs:23-27及び38で示されるヌクレオチド配列によってコードされることができる。
【0063】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は全長抗体、例えばIgG1、IgG2又はIgG4など、アイソタイプの全長抗体であってもよい。ほかの実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体は一本鎖可変領域(scFv)抗体、又は例えばFab又はF(ab’)2断片などの抗体断片であってもよい。
【0064】
任意の実施の形態において、前記医薬組成物における前記抗TSLP抗体はPCT/CN2020/113289に記載の抗TSLP抗体である。
【0065】
本開示はまた、例えば抗TSLP抗体への緩衝剤置換などの、前記抗TSLP抗体を緩衝剤に接触させる工程を含む、前記医薬組成物を製造する方法を提供する。好ましくは、前記緩衝剤がリン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤であり、前記緩衝剤の濃度が1mM~100mMであり、2mM~80mMであり、好ましくは5mM~60mMであり、より好ましくは10mM~40mMであり、前記緩衝剤のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である。前記の前記医薬組成物を製造する方法はさらに、1種又は複数種の安定化剤及び界面活性剤を順不同で加えることを含む。中では、前記安定化剤はトレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンなどを含み、前記界面活性剤はポリソルベート20又はポリソルベート80などを含む。
【0066】
本開示はまた、前記医薬組成物を冷凍乾燥させる工程を含む、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤を製造する方法を提供する。いくつかの実施の形態において、前記凍結乾燥は、この分野公知の方法に従って行われ、予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥を含む工程を含むが、これらに限定されない。技術者であれば、水を本開示の医薬組成物から除去する方法であれば、すべて本開示に適用できると理解される。
【0067】
本開示はまた、前記凍結乾燥製剤を製造する方法により製造される、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0068】
本開示はまた、前記凍結乾燥製剤を再溶解することで前記医薬組成物を形成できる、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0069】
本開示はまた、前記医薬組成物又は前記凍結乾燥製剤が収容されている容器を含む物品を提供する。
【0070】
本開示に係る医薬組成物又は凍結乾燥製剤は、例えば、適切な方法で例えば皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内に一定期間注射又は注入する方法、局所投与、吸入又は持続放出や遅延放出など、既知の方法により投与されることができる。
【0071】
治療する特定の症状に必要であれば、本開示に係る医薬組成物は1つ又は複数のほかの活性化合物を含んでもよく、好ましくは、相互に悪影響を与えず、相補的な活性を有する活性化合物を含む。また任意により、前記医薬組成物は、例えば抗TSLP抗体及びTSLPR、IgE、IL-13又はIL-5など別の疾患特異的なタンパク質を含んでもよく、このような分子は所定の目標に有効な量で医薬組成物に適切に存在する。
【0072】
本開示はまた、本開示に係る医薬組成物、凍結乾燥製剤又は物品の、TSLP関連疾患を治療及び予防するための医薬品の製造における使用を提供する。いくつかの実施の形態において、前記TSLP関連疾患は喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬を含む。
【0073】
本開示はまた、被験者に本開示に係る医薬組成物、凍結乾燥製剤又は物品を投与することを含む、TSLP関連疾患を治療及び予防する方法を提供する。いくつかの実施の形態において、前記TSLP関連疾患は喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬を含む。
【0074】
まとめると、本開示は以下を含む。
【0075】
項目1.(a)抗TSLP抗体と、(b)緩衝剤と、(c)界面活性剤と、1種又は複数種の(d)安定化剤を含む医薬組成物。
【0076】
項目2.前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域はVH-CDR1領域、VH-CDR2領域及びVH-CDR3領域を含み、前記軽鎖の可変領域はVL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域を含み、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域、VH-CDR3領域、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域及びVL-CDR3領域はそれぞれSEQ ID NOs:1、2、3、4、5及び6で示されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
【0077】
項目3.前記抗TSLP抗体は重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域は、(1)それぞれSEQ ID NOs:7及び10で示されるアミノ酸配列、(2)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(3)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(4)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(5)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(6)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(7)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=V)で示されるアミノ酸配列、(8)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(9)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(10)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(11)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(12)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(13)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=A、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(14)それぞれSEQ ID NOs:8及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(15)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(16)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=V、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(17)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=R、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、(18)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=R)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列、又は(19)それぞれSEQ ID NOs:9(X1=K、X2=A、X3=V)及び11(X1=S、X2=I)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含んでもよい、項目1又は2に記載の医薬組成物。
【0078】
項目4.前記抗TSLP抗体の濃度が30mg/mL~300mg/mlであり、好ましくは50mg/mL~250mg/mlであり、好ましくは70mg/mL~200mg/mlであり、より好ましくは90mg/mL~150mg/mlであり、最も好ましくは120mg/mL~150mg/mlである、項目1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0079】
項目5.前記緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、酢酸塩緩衝剤又はクエン酸塩緩衝剤を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0080】
項目6.前記リン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤であり、前記酢酸塩緩衝剤は酢酸ナトリウム緩衝剤であり、前記クエン酸塩緩衝剤はクエン酸ナトリウム緩衝剤である、項目5に記載の医薬組成物。
【0081】
項目7.前記緩衝剤の濃度が1mM~100mMであり、好ましくは2mM~80mMであり、より好ましくは5mM~60mMであり、最好ましくは10mM~40mMである、項目1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0082】
項目8.前記界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0083】
項目9.前記界面活性剤の濃度が0.001%~0.1%(w/v)であり、好ましくは0.004%~0.08%(w/v)であり、より好ましくは0.006%~0.06%(w/v)であり、最好ましくは0.008%~0.04%(w/v)である、項目1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0084】
項目10.前記安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、アルギニン又はその薬学的に許容される塩、グリシン又はプロリンを含む、項目1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0085】
項目11.前記安定化剤の濃度が100mM~1000mMであり、好ましくは120mM~800mMであり、より好ましくは150mM~700mMであり、最好ましくは150mM~600mMである、項目1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0086】
項目12.前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0087】
項目13.前記医薬組成物は、
(a)30mg/mL~300mg/mLの抗TSLP抗体と、
(b)1mM~100mMの緩衝剤と、
(c)0.001%~0.1%(w/v)の界面活性剤と、
1種又は複数種の(d)100mM~1000mMの安定化剤を含み、
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0088】
項目14.前記医薬組成物は、
(a)50mg/mL~250mg/mLの抗TSLP抗体と、
(b)2mM~80mMの緩衝剤と、
(c)0.004%~0.08%(w/v)の界面活性剤と、
1種又は複数種の(d)120mM~800mMの安定化剤を含み、
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0089】
項目15.前記医薬組成物は、
(a)70mg/mL~200mg/mLの抗TSLP抗体と、
(b)5mM~60mMの緩衝剤と、
(c)0.006%~0.06%(w/v)の界面活性剤と、
1種又は複数種の(d)150mM~700mMの安定化剤を含み、
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0090】
項目16.前記医薬組成物は、
(a)90mg/mL~150mg/mLの抗TSLP抗体と、
(b)10mM~40mMの緩衝剤と、
(c)0.008%~0.04%(w/v)の界面活性剤と、
1種又は複数種の(d)150mM~600mMの安定化剤を含み、
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0091】
項目17.前記医薬組成物は、
(a)120mg/mL~150mg/mLの抗TSLP抗体と、
(b)10mM~40mMの緩衝剤と、
(c)0.008%~0.04%(w/v)の界面活性剤と、
1種又は複数種の(d)150mM~600mMの安定化剤を含み、
前記医薬組成物のpHが5~7であり、好ましくは5.5~7であり、より好ましくは5.5~6.5である、項目1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0092】
項目18.項目1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物を凍結乾燥させて得られる、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤。
【0093】
項目19.再溶解することで項目1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物を形成できる、抗TSLP抗体を含む凍結乾燥製剤。
【0094】
項目20.項目1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は項目18~19のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤を収容している容器を含む、物品。
【0095】
項目21.必要な患者に治療有効量の項目1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物又は項目18~19のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤又は項目20に記載の物品を投与することを含む、TSLP関連疾患を治療及び予防する方法。
【0096】
項目22.前記TSLP関連疾患は喘息、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬を含む、項目21に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】捕捉ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14とヒトTSLPの結合能を示す図。
図2】間接ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14とカニクイザルTSLPの結合能を示す図。
図3】競合ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の、ヒトTSLPとTSLPR/IL7Rの結合に対する阻害能力を示す図。
図4】競合ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14が参照品TezepelumabとヒトTSLP結合を阻害する能力を示す図。
図5】細胞ベースのリガンド遮断FACSアッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の、ヒトTSLPとヒトTSLPR及びIL7Rを発現するエンジニアリング化BAF3細胞の結合に対する阻害能力を示す図。
図6A】細胞ベースの機能アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(A)及びhu1C5F12E9-V14(B)のBAF3細胞の生存及び増殖に対する阻害作用を示す図。
図6B】細胞ベースの機能アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(A)及びhu1C5F12E9-V14(B)のBAF3細胞の生存及び増殖に対する阻害作用を示す図。
図7】捕捉ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)とヒトTSLPの結合能を示す図。
図8】競合ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の、ヒトTSLPとTSLPR/IL7Rの結合に対する阻害能力を示す図。
図9】競合ELISAにおけるヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)が参照品とヒトTSLPの結合を阻害する能力を示す図。
図10】細胞ベースのリガンド遮断FACSアッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)の、ヒトTSLPとヒトTSLPR及びIL7Rを発現するエンジニアリング化BAF3細胞の結合に対する阻害能力を示す図。
図11A】細胞ベースの機能アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の、BAF3細胞の生存及び増殖に対する阻害作用を示す図。
図11B】細胞ベースの機能アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の、BAF3細胞の生存及び増殖に対する阻害作用を示す図。
図12A】細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の、ヒトTSLPとエンジニアリング化HEK293T細胞の相互作用に対する阻害能力を示す図。
図12B】細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおいて、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)(A)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)(B)の、ヒトTSLPとエンジニアリング化HEK293T細胞の相互作用に対する阻害能力を示す図。
図13】hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)抗体のタンパク質のサーマルシフトアッセイの結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本開示では、以下の説明は本開示の様々な実施の形態を説明するためのものだけである。
【0099】
本開示をより容易に理解できるように、以下、技術用語及び科学用語を具体的に定義する。本明細書において、特に断りのない限り、本明細書で使用されるすべてのほかの技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の一般的な技術者が通常理解する意味を有する。
【0100】
「リン酸塩緩衝剤」はリン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム緩衝剤、リン酸カリウム緩衝剤等を含み、好ましいリン酸塩緩衝剤はリン酸ナトリウム緩衝剤である。
【0101】
「酢酸塩緩衝剤」は酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の例としては、酢酸カリウム緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤等を含み、好ましい酢酸塩緩衝剤は酢酸ナトリウム緩衝剤である。
【0102】
「クエン酸塩緩衝剤」はクエン酸イオンを含む緩衝剤である。クエン酸塩緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸カリウム緩衝剤、クエン酸カルシウム緩衝剤等を含み、好ましいクエン酸塩緩衝剤はクエン酸ナトリウム緩衝剤である。
【0103】
「ヒスチジン緩衝剤」はヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の実例としては、ヒスチジン-酢酸緩衝剤、ヒスチジン-塩酸緩衝剤、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤を含み、好ましくは、ヒスチジン緩衝剤はヒスチジン(L-Histidine)から製造され、且つ酢酸又は塩酸でpHがさらに調整されたものである。
【0104】
「緩衝剤」とは、薬学的に許容され、医薬組成物のpHを所望のpH範囲に維持できるものを指す。本開示での使用に適している緩衝剤はリン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤又はヒスチジン緩衝剤を含む。好ましい実施の形態において、本開示での使用に適している緩衝剤はヒスチジン(L-Histidine)から製造され、且つ酢酸又は塩酸でpHがさらに調整されたヒスチジン緩衝剤である。
【0105】
「安定化剤」とは、薬学的に許容され、医薬組成物における有効成分の安定性を維持するためのものを指す。本開示では、安定化剤はさらに、粘着防止剤及び/又は等張化剤の機能を有する。
【0106】
「医薬組成物」は、任意により、特定の有効成分(例えば、抗体)を特定の量で含む生成物、及び任意により、特定の有効成分を特定の量で組み合わせて直接又は間接的に産生した任意の生成物を意図するものである。医薬組成物の目的は、抗体を製造及び患者への投与に適し、且つ貯蔵及びその後の使用時に生物学的活性及び/又は安定性を維持することにある。いくつかの形態において、前記医薬組成物は水溶性注射液であり、前記水溶性注射液は、凍結乾燥されていない水溶性製剤又は凍結乾燥粉から再構成された水溶性製剤を含むが、これらに限定されない。別のいくつかの形態において、前記医薬組成物は凍結乾燥製剤である。本開示では、「医薬組成物」と「製剤」は互換性があるものである。
【0107】
「安定した」又は「安定化した」医薬組成物とは、有効成分(例えば、抗体)が保存されている間、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を実質的に維持する医薬組成物を指す。有効成分の安定性を測定するための各種分析技術がこの分野で利用可能であり、例えばPeptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に記載されている。安定性は選択した温度、及びほかの保存条件のもとで選択した時間帯に測定することができる。例えば、有効成分は色及び/又は透明度の目視試験後、又はUV光散乱法、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び示差走査熱量測定(DSC)により測定した結果、顕著な凝集増加、沈殿及び/又は変性を示さない場合、前記有効成分は医薬組成物中で「その物理的安定性を維持する」。好ましくは、本開示に係る医薬組成物を使用する場合、例えばSEC-UPLC又は凝集形成を測定するためのほかのいずれかの適切な方法により、5%以下、4%以下、好ましくは3%以下の有効成分が凝集物(高分子不純物ともいう)を形成する。有効成分(例えば、抗体)が顕著な化学的変化を示さない場合、前記有効成分は医薬組成物中で「その化学的安定性を維持する」。化学的に変化した形態の抗体を検出し定量することにより、化学的安定性を評価することができる。一般的にタンパク質の化学構造を変化させるプロセスは、加水分解又は切断(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEなどの方法により評価)、酸化(例えば、質量分析法又はMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチドマッピングなどの方法により評価)、脱アミド作用(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン測定などの方法により評価)、及び異性化(イソアスパラギン含有量の測定、ペプチドマッピングなどの方法により評価)を含む。有効成分(例えば、抗体)の所定時間内の生物学的活性が、医薬組成物を製造するときに示す生物活性の所定範囲内である場合、有効成分は医薬組成物中で所定時間内で「その生物学的活性を維持する」。例えば、抗原結合アッセイにより決定される。以下の実施例ではまた、例えばHVROC-S粘度計を用いて粘度を測定するなど医薬組成物の安定性を評価するためのほかの方法を記載する。好ましくは、本開示に係る医薬組成物は、約20mpa・s、約19mpa・s、約18mpa・s、約15mpa・s又はそれ以下の粘度を示す場合、低粘度であると考えられる。
【0108】
「高分子不純物」又は「凝集物」とは、目的有効成分(例えば、抗体)よりも分子量が大きい不純物の総称である。
【0109】
「電荷変異体」とは、抗体がグリコシル化、脱アミド化、酸化及び/又は異性化などにより、抗体分子に帯電した電荷の変化を直接又は間接的に引き起こした変異体を指す。これら電荷変異体は、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)や陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)などにより検出されることができる。
【0110】
冠詞「1種」、「1つ」及び「前記」は、ここで、この冠詞の文法対象の1つ/1種又はそれ以上(つまり、少なくとも1つ/1種)。例えば、「1種/1つの医薬組成物」とは、1つ/1種又はそれ以上の医薬組成物を指す。
【0111】
「約」又は「おおよそ」とは、数値がこの分野の一般の技術者により測定された具体的な数値の許容できる誤差範囲内であることを指す。この数値部分はどのように測るか又は測定するか(つまり、測定系の限界)に依存する。例えば、この分野では、「約」又は「おおよそ」は、1以内又は1を超える標準偏差を意味する。或いは、「約」又は「おおよそ」は、上記の数値に15%、10%、5%又は1%を加算又は減算した範囲を示す。また、特に生物学的システム又はプロセスにおいて、この用語は、最大で1桁分又は数値の5倍を意味することができる。本開示では、特に断りのない限り、「約XX」又は「おおよそXX」又は「『XX』を実質的に含む」とは、この具体的な数値「XX」の許容できる誤差範囲内の数値を指す(数値「XX」そのもの、及びこの分野の一般の技術者により測定された当該数値の許容できる誤差範囲内の数値を含む)。
【0112】
本明細書に記載されているように、特に断りのない限り、あらゆる百分率範囲、比率範囲又は整数範囲は、例示されている範囲の任意の整数の値、且つ場合によってその分数(例えば、整数の10の1又は100の1)を含むと理解されるべきである。
【0113】
本開示の全文では、特に断りのない限り、用語「含む(include)」、「含む(contain)」及び「含有(comprise)」は、前記工程又は要素或いは一群の工程又は要素を含むが、別の工程又は要素或いは一群の工程又は要素も除外されないと理解される。「…からなる」とは、「…からなる」に例示されているものを含み、且つそれに限られていることを意味する。このため、「…からなる」とは、例示されている要素が必要又は必須であり、且つほかの要素がないことを意味する。「実質的に…からなる」とは、例示されている任意の要素を含むが、これら要素の例えば本開示で詳細に記載されている活性又は作用に悪影響を与えず、又は寄与するほかの要素を含むことも可能なことを意味する。このため、「実質的に…からなる」とは、例示されている要素が必要又は必須であり、ほかの要素が任意により含んでもよいものであり、具体的に例示されている要素の活性又は作用に影響を与えるかによって存在するか存在しないことを意味する。
【0114】
用語「TSLP」とは、胸腺間質性リンパ球新生因子を指す。用語「TSLP」は変異体、サブタイプ、相同物、オーソログ及びパラログを含む。例えば、一部の場合、ヒトTSLPタンパク質に特異的な抗体は、ヒト以外の種(例えば、サル)のTSLPタンパク質と交差反応することができる。ほかの実施の形態において、ヒトTSLPタンパク質に特異的な抗体は、ヒトTSLPタンパク質に完全に特異的であり、且つほかの種又はほかの種類のタンパク質と交差反応しなくてもよく、或いはほかの種のすべてではなく、ほかの種の一部に由来するTSLPと交差反応してもよい。
【0115】
用語「ヒトTSLP」とは、ヒトアミノ酸配列、例えばGenbank登録番号がNP_149024.1であるヒトTSLPのアミノ酸配列を含むTSLPタンパク質を指す。用語「サル又はアカゲザルTSLP」及び「マウスTSLP」はそれぞれサル及びマウスTSLP配列を指し、例えば、それぞれGenbank登録番号がNP_001100503.1及びNP_067342.1であるアミノ酸配列を有する。
【0116】
「抗体」は、全長抗体及びその任意の抗原結合断片(つまり、抗原結合部分)又は単鎖を含むと理解されるべきである。通常の全長抗体は、2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質であり、重鎖と軽鎖はジスルフィド結合により連結される。各重鎖は、重鎖の可変領域(Vと略称)と重鎖の定常領域からなり、重鎖の定常領域はCH1、CH2及びCH3の3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(Vと略称)と軽鎖の定常領域からなり、軽鎖の定常領域は、1つドメインCからなる。V領域とV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高可変領域と、その間にあるより保存されたフレームワーク領域(FR)とさらに区分されることができる。各VとVは、アミノ基末端からカルボキシル基末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織又は因子との結合を仲介することができ、前記宿主組織或因子は複数種の免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)と古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む。
【0117】
抗体の「抗原結合部分」(或いは、「抗体部分」と略称)は、抗体において抗原(例えば、TSLPタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により果たされ得ることが証明されている。抗体の「抗原結合部分」に含まれる結合断片の例は、(i)V、V、C及びCH1からなる単価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ部位でジスルフィド結合により連結される2つのFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)断片、(iii)V及びCH1からなるFd断片、(iv)抗体の単腕V及びVからなるFv断片、(v)VからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)単一可変ドメインと2つの定常ドメインを含む重鎖の可変領域であるナノ抗体を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるV及びVは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、合成リンカーにより、V及びV領域が対になって単価の分子(一本鎖Fc(scFv)という。例えばBird et al.,(1988)Science 242:423-426;and Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい。)を形成している単一のタンパク質鎖として作製することができる。これら一本鎖抗体も用語抗体の「抗原結合部分」に含まれている。これら抗体断片は、この分野の技術者公知の従来の技術により得、且つ全長抗体と同じ方法により、有用性についてスクリーニングされることができる。
【0118】
「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有するほかの抗体を実質的に含まない抗体(例えば、TSLPタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、TSLPタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を指す。しかし、ヒトTSLPタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、例えばほかの種に由来するTSLPタンパク質などほかの抗原に対する交差反応性を有する可能性がある。さらに、単離された抗体は、ほかの細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない。
【0119】
「マウス抗体」とは、可変領域におけるフレームワーク領域及びCDR領域がいずれもマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する抗体のような抗体を含む。また、抗体に定常領域が含まれている場合、定常領域もマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示に係るマウス抗体は、マウス生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroランダム突然変異又は点突然変異、或いはin vivo体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含んでもよい。しかし、本明細書で使用される用語「マウス抗体」はマウスフレームワーク領域配列にほかの哺乳動物種のCDR配列を挿入した抗体を含まない。
【0120】
「キメラ抗体」とは、ヒト由来でない遺伝物質とヒト由来の遺伝物質を組み合わせて得られた抗体を指す。或いは、より大まかに言えば、キメラ抗体とは、ある種の遺伝物質と別の種の遺伝物質を組み合わせた抗体を指す。
【0121】
「ヒト化抗体」とは、ヒトでない種に由来するが、そのタンパク質配列がヒトから天然に生成される抗体の類似性を高めるために修飾された抗体を指す。
【0122】
「アイソタイプ」とは、重鎖の定常領域遺伝子によりコードされる抗体(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0123】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体/抗原に対して特異性を有する抗体」は、本明細書で用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交互に使用される。
【0124】
「ヒトTSLPに特異的に結合する」抗体は、ヒトTSLPタンパク質(また、1つ又は複数のヒトでない種のTSLPタンパク質でもよい) に結合するが、非TSLPタンパク質に実質的に結合しない抗体を指す。好ましくは、抗体は「高親和性」でヒトTSLPタンパク質に結合し、即ちK値が5.0×10-8M以下であり、好ましくは1.0×10-8M以下であり、より好ましくは7.0×10-9M以下である。
【0125】
タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」とは、タンパク質又は細胞に結合しないか、高親和性で結合しないことを意味する。つまり、タンパク質又は細胞に結合するK値が1.0×10-6M以上であり、好ましくは1.0×10-5M以上であり、より好ましくは1.0×10-4M以上であり、より好ましくは1.0×10-3M以上であり、より好ましくは1.0×10-2M以上である。
【0126】
IgG抗体に関する「高親和性」とは、抗原に対するK値が1.0×10-6M以下であり、好ましくは5.0×10-8M以下であり、より好ましくは1.0×10-8M以下であり、より好ましくは7.0×10-9M以下であり、より好ましくは1.0×10-9M以下である。しかし、ほかの抗体アイソタイプでは、「高親和性」結合は異なり得る。例えば、IgMアイソタイプに関する「高親和性」結合とは、K値が10-6M以下であり、好ましくは10-7M以下であり、より好ましくは10-8M以下であることを意味する。
【0127】
用語「Kassoc」又は「K」とは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指し、用語「Kdis」又は「K」とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。用語「K」とは、KとKの比(即ちK/K)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。抗体のK値は、この分野に熟知されている方法により測定することができ、抗体K値を測定するための好ましい方法として、表面プラズモン共鳴を用い、好ましくは例えばBiacoreTMシステムのようなバイオセンサーシステムを用いて測定する。
【0128】
用語「EC50」は、半数効果濃度とも呼ばれ、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間で応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0129】
用語「IC50」、半数阻害濃度とも呼ばれ、抗体が存在しない場合に対して特異的な生物学的又は生化学的作用を50%阻害する抗体濃度を指す。
【0130】
「被験者」は任意のヒト又はヒト以外の動物を含む。「ヒト以外の動物」は例えば、すべての脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、爬虫類など、哺乳類及び非哺乳類を含むが、好ましくは、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ及びウマなどの哺乳動物である。
【0131】
用語「治療有効量」とは、疾患又は病状(例えばTSLP関連疾患)の症状を予防又は改善し、及び/又は疾患又は病状の重症度を軽減するのに十分な量を指す。治療有効量は、治療される疾患に関係しており、この分野の技術者が実際の有効量を容易に判断できると理解されるべきである。
【0132】
本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体
【0133】
本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体又はその抗原結合部分は構造及び化学特性が以下及び実施例に記載される抗体であってもよい。抗体の重鎖/軽鎖の可変領域のアミノ酸SEQ ID Nosを以下の表1にまとめ、いくつかの抗体は同じVH又はVLを有する。抗体の重鎖の定常領域はSEQ ID NOs:12又は37で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖の定常領域、又はSEQ ID NO:13で示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4重鎖の定常領域であってもよく、また、抗体の軽鎖の定常領域はSEQ ID NO:14で示されるアミノ酸配列を有するヒトκ軽鎖の定常領域であってもよい。これら抗体は、マウスIgG1又はIgG2重鎖の定常領域、及び/又はマウスκ軽鎖の定常領域を含んでもよい。この抗体は、ジスルフィド結合により連結される2本の重鎖と2本の軽鎖から構成されてもよく、重鎖の可変領域のC-末端が重鎖の定常領域のN-末端に連結され、軽鎖の可変領域のC-末端が軽鎖の定常領域のN-末端に連結される。
【0134】
表1に示す重鎖の可変領域CDRs及び軽鎖の可変領域CDRsはKabat付番システムによって定義されている。しかし、この分野に熟知されているように、CDR領域は重鎖/軽鎖の可変領域配列に基づき、例えばChothia、IMGT、AbM又はContact付番システム/方法などほかの付番システムによって決定されることもできる。
【0135】
ヒトTSLPに結合するほかの抗TSLP抗体のVH配列及びVL配列(又はCDR配列)は、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体のVH配列及びVL配列(又はCDR配列)と「混合及びマッチさせ」ることができる。好ましくは、VH鎖及びVL鎖(又はこれら鎖におけるCDR)が混合及びマッチされる場合、特定のVH/VL対に由来するVH配列は類似する構造を有するVH配列で置換される。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対に由来するVH配列は類似する構造を有するVL配列で置換される。
【0136】
したがって、1つの実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体又はその抗原結合部分は、
(a)表1に示すアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域と、
(b)表1に示すアミノ酸配列、又は別のヒトTSLPに特異的に結合する抗TSLP抗体のVLを含む軽鎖の可変領域、
を含む。
【0137】
【表1】
【0138】
別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体又はその抗原結合部分は、
(a)表1に示す重鎖の可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3と、
(b)表1に示す軽鎖の可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3、又は別のヒトTSLPに特異的に結合する抗TSLP抗体のCDRs、
を含む。
【0139】
別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体又はその抗原結合部分は、抗TSLP抗体の重鎖の可変領域CDR2及びほかのヒトTSLPに結合する抗体のCDRs、例えば別の抗TSLP抗体の重鎖の可変領域からのCDR1及び/又はCDR3、及び/又は軽鎖の可変領域のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む。
【0140】
この分野に熟知されているのは、CDR1及び/又はCDR2ドメインに依存せず、CDR3ドメインは単独で相同抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、且つ共通するCDR3配列に基づき、同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測的にい産生することができる。
【0141】
別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体は、抗TSLP抗体の重鎖の可変領域のCDR2及び少なくとも抗TSLP抗体の重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域のCDR3、又は別の抗TSLP抗体の重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域のCDR3を含み、この抗体はヒトTSLPに特異的に結合することができる。これら抗体は好ましくは、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体と(a)競合してTSLPに結合し、(b)機能的特性を維持し、(c)同じエピトープに結合し、及び/又は(d)類似する結合親和性を有する。別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体はさらに、抗TSLP抗体の軽鎖の可変領域CDR2、又は別の抗TSLP抗体の軽鎖の可変領域CDR2を含んでもよく、この抗体はヒトTSLPに特異的に結合する。別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体はさらに、抗TSLP抗体の重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域CDR1、又は別の抗TSLP抗体の重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域CDR1を含んでもよく、この抗体はヒトTSLPに特異的に結合する。
【0142】
保存性修飾
【0143】
別の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体は、1つ又は複数の保存性修飾により、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体と異なる重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。この分野では、いくつかの保存性配列修飾により抗原の結合性は消えることがないと理解されるべきである。例えばBrummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O’Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.,(1998)Int.Immunol.10:341~6and Beers et al.,(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0144】
したがって、1つの実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体は、重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域を含み、前記重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域はそれぞれCDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、
(a)重鎖の可変領域CDR1は、表1に示す配列、及び/又はその保存性修飾を含み、及び/又は
(b)重鎖の可変領域CDR2は、表1に示す配列、及び/又はその保存性修飾を含み、及び/又は
(c)重鎖の可変領域CDR3は、表1に示す配列、及び/又はその保存性修飾を含み、及び/又は
(d)軽鎖の可変領域CDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3は、表1に示す配列、及び/又はその保存性修飾を含み、及び
(e)この抗体はヒトTSLPに特異的に結合する。
【0145】
本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体は、例えばヒトTSLPに対する高親和性など1つ又は複数の機能的特性を有する。
【0146】
複数の実施の形態において、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体は例えば、マウス、ヒト、キメラ又はヒト化の抗体であってもよい。
【0147】
本明細書で使用される用語「保存性配列修飾」とは、抗体の結合特性に顕著な影響を与えず、又はそれを顕著に変化させないアミノ酸修飾を指す。このような保存性修飾はアミノ酸置換、添加及び削除を含む。この分野に既知の標準技術、例えば点突然変異及びPCR媒介突然変異により、修飾を本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体に導入することができる。保存性アミノ酸置換は、アミノ酸残基を類似する側鎖を有するアミノ酸残基を用いる置換である。類似する側鎖を有するアミノ酸残基群はこの分野で知られているものである。したがって、本開示に係る医薬組成物における抗TSLP抗体のCDR領域における1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖を有する群のほかのアミノ酸残基で置換されることができ、且つ得られた抗体は本明細書に記載の機能アッセイによりその機能試験を行うことができる。
【0148】
本開示における抗TSLP抗体の製造、精製方法は出願番号PCT/CN2020/113289の特許文献に記載されており、この出願書類のすべての内容は引用により本開示に組み込まれる。
【実施例
【0149】
明確のため、実施例を用いて本開示を説明するが、本開示の範囲は実施例により限定されるものではない。実施例における抗TSLP抗体1C5F12E9はPCT/CN2020/113289に記載の抗体1C5F12E9であり、マウス抗TSLP抗体1C5F12E9はPCT/CN2020/113289に記載の方法に従って、ハイブリドーマ技術により産生され、in vitro スクリーニングされた後に得られたものである。
【0150】
実施例1 抗TSLPマウスモノクローナル抗体のヒト化
【0151】
マウス抗TSLP抗体1C5F12E9をヒト化した。マウス抗体のヒト化は以下のように確立されたCDR移植方法により行われた。マウス抗体1C5F12E9ヒト化のための受容体骨格を選択するために、抗体軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域の配列をヒト免疫グロブリン遺伝子データベースとBLASTした。マウス抗体と最も相同性の高いヒト生殖系列抗体をヒト化受容体骨格として選択した。マウス抗体重鎖/軽鎖の可変領域CDRsを選択した骨格に挿入し、さらに、より多くの候補の重鎖/軽鎖の可変領域を得るように、骨格における残基を変異させた。合計で18個の例示的なヒト化1C5F12E9抗体、即ちhu1C5F12E9-V1~hu1C5F12E9-V18を得、その重鎖/軽鎖の可変領域配列を表1に示す。
【0152】
ヒト化1C5F12E9重鎖の可変領域及びヒトIgG4重鎖の定常領域(SEQ ID NO:13)をコードするものを含むベクター、及びヒト化1C5F12E9軽鎖の可変領域及びヒトκ軽鎖の定常領域(SEQ ID NO:14)を含むベクターを構築し、軽鎖構築体:重鎖構築体=60%:40%の割合で、1mg/mLのPEIを用いて50mL 293F懸濁細胞に瞬時にトランスフェクションした。フラスコで6日間培養した後、ヒト化抗体を含む細胞の上澄み液を収集し、上澄み液中の細胞を遠心沈殿させ、次に、細胞の上澄み液から上記18種類の抗体を精製した。
【0153】
実施例2 例示的なヒト化抗TSLPモノクローナル抗体の特徴付け
【0154】
Biacore T200システム(GE Healthcare、Pittsburgh、PA、USA)により、精製した例示的なヒト化1C5F12E9抗体とヒトTSLPの結合親和性及び結合動力学を評価した。
【0155】
簡単に言えば、社内合成された組換えヒトTSLP-his(SEQ ID NO:28)又はカニクイザルTSLP-hisタンパク質(SEQ ID NO:29)をCH3COONa緩衝液(由Biocoreから提供)に溶解させ、最終濃度が10μg/mLであり、次に、使用Biacore(GE Healthcare、Pittsburgh,PA,USA)から提供された標準的なアミンカップリングキットを用い、第一級アミン基によりそれをCM5チップ(カルボキシメチルグルカンコーティングチップ、GE Healthcare#BR100530) に共有結合した。エタノールアミンでバイオセンサー表面の未反応部を封止した。次に、それぞれ段階希釈された精製済みヒト化1C5F12E9抗体(100nMを開始濃度としてHBS-EP+緩衝液で2倍段階希釈)と参照品Tezepelumab(TSLP-BMとも呼ばれる。SEQ ID NO:35及び36で示される重鎖と軽鎖を用いて社内調製し、100nMを開始濃度としてHBS-EP+緩衝液で2倍段階希釈)を50μL/minHの流速でチップを流れた。抗原-抗体結合動力学を4分間追跡し、且つ解離動力学を13分間追跡した。BIAcore evaluationソフトウェアにより結合及び解離曲線を1:1 Langmuir結合モデルに当てはめ、且つKD、Ka及びKd値を測定し、結果を以下の表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
Biacoreで測定されたKd値の下限値が1.00E-05であり、また、かかるセンシングマップから1.00E-05未満のKd値を大まかに計算することができる。結果として、すべてのヒト化1C5F12E9抗体とヒトTSLPの結合親和性はTezepelumabよりも高かった。
【0158】
実施例3 ヒト化抗TSLP抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14の特徴付け
【0159】
ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14を選択してさらに特徴付けた。具体的に、実施例2及び下記の方法に従って、Biacore、捕捉ELISA、間接ELISA、競合ELISA、細胞ベースのリガンド遮断FACS及び細胞ベースの機能アッセイにより、それらのヒト及びカニクイザルTSLPに対する結合親和性/能力及びほかの機能を測定し、結果を以下の表3、及び図1~5、6A~6Bに示す。
【0160】
捕捉ELISAでは、PBSに溶解した2μg/mLアフィニティー精製済みヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson Immuno Research、109-005-098)を96ウェルプレートに吸着させ、100μL/ウェルとし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween-20、PBST)でプレートを4回洗浄し、次に、各ウェルに200μLのブロッキン緩衝液(5%w/v脱脂牛乳を含むPBST)を加え、37℃で2hブロッキングした。プレートを再度洗浄し、100μL/ウェルの段階希釈(66.7nMを開始濃度として、2.5%脱脂牛乳を含むPBSTで5倍段階希釈)された本開示に係るヒト化抗TSLP抗体、Tezepelumab又はhIgG(Hualan Biological Engineering Inc.)を加え、37℃で40min共インキュベーションし、次に、プレートを再度4回洗浄した。捕捉抗体の96ウェルプレートに100μL/ウェルビオチン標識ヒトTSLP-hisタンパク質(SEQ ID NO:28、社内調製、2.5%脱脂牛乳を含むPBSTに溶解、最終濃度0.23nM)を加え、37℃で40min共インキュベーションし、プレートを4回洗浄し、次に、各ウェルに100μLのHRP標識ストレプトマイシン(PBSTで1:10000で希釈、Jackson Immuno Research、016-030-084)を加え、37℃で40minインキュベートした。最後の洗浄後、プレートに100μL/ウェルのTMB(Innoreagents)を加えてインキュベートした。15min後に、室温で50μL/ウェルの1M HSOを加え反応を停止し、マイクロプレートリーダーで2波長モードで(TMB検出波長450nm、対照波長630nm)各ウェルの吸光度を読み取った。OD(450-630)値及び対応する抗体濃度をグラフにした。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、且つEC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図1に示す。
【0161】
間接ELISAでは、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)に溶解した2μg/mLカニクイザルTSLP-hisタンパク質(SEQ ID NO:29、社内調製)を96ウェルプレートに吸着させ、100μL/ウェルとして、4℃で一晩インキュベートした。洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween-20.PBST)でプレートを4回洗浄し、次に、各ウェルに200μLのブロッキング緩衝液(5%w/v脱脂牛乳を含むPBST)を加え、37℃で2hブロッキングした。プレートを再度洗浄し、100μL/ウェルの段階希釈(66.7nMを開始濃度として、2.5%脱脂牛乳を含むPBSTで5倍段階希釈)された本開示に係るヒト化抗TSLP抗体、Tezepelumab又はhIgGを加え、37℃で40minインキュベートした。プレートを再度4回洗浄し、100μL/ウェルのペルオキシダーゼ標識のアフィニティー精製F(ab’)2断片化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch、109-036-098)を加え、37℃で40minインキュベートした。最後の洗浄後、100μL/ウェルのTMB(Innoreagents)を加えてインキュベートした。15min後に、室温で50μL/ウェルの1M HSOを加えて反応を停止し、マイクロプレートリーダーで2波長モードで(TMB検出波長450nm、対照波長630nm)各ウェルの吸光度を読み取った。OD(450-630)値及び対応する抗体濃度をグラフにした。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、且つEC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図2に示す。
【0162】
競合ELISA法により、ヒト化抗TSLP抗体がTSLPとTSLPR/IL7Rの結合を阻害する能力を測定した。簡単に言えば、TSLPR-Fcタンパク質(SEQ ID NO:30、社内調製)をPBSに溶解させ、最終濃度が1μg/mLであり、IL7Ra-Fcタンパク質(SEQ ID NO:31、社内調製)をPBSに溶解させ、最終濃度が1μg/mLであり、上記2種の溶液(それぞれ100μL)を96ウェルプレートに吸着させ、4℃で一晩インキュベートした。翌日、洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween-20.PBST)でプレートを洗浄し、5%w/v脱脂牛乳を含むPBSTを加え、37℃で2hブロッキングした。次に、洗浄緩衝液でプレートを洗浄した。ビオチン標識ヒトTSLP-Fc(SEQ ID NO:32、社内調製、2.5%脱脂牛乳を含むPBSTに溶解、最終濃度0.29nM)でヒト化抗TSLP抗体又は対照品を希釈し、66.7nMを開始濃度として、3倍段階希釈し、室温で40minインキュベートした。次に、100μL/ウェルの抗体/TSLP-Fc混合物をTSLPR/IL7Rを吸着させたプレートに加えた。37℃で40minインキュベートした後、洗浄緩衝液でプレートを4回洗浄した。次に、TSLPR/IL7Rに結合したビオチン標識ヒトTSLP-Fcを検出するために、HRP標識ストレプトマイシンを加え、37℃で40minインキュベートした。洗浄緩衝液でプレートを再度洗浄した。最後に、TMBを加え、1M HSOで反応を停止した。マイクロプレートリーダーで2波長モードで(TMB検出波長450nm、対照波長630nm)各ウェルの吸光度を読み取り、次に、OD(450-630)値及び対応する抗体濃度をグラフにした。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、IC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図3に示す。
【0163】
競合ELISA法により、ヒト化抗TSLP抗体が参照品(Tezepelumab)とヒトTSLPの結合を阻害する能力を測定した。簡単に言えば、PBSに溶解した2μg/mLのTezepelumabを100μL/ウェルで96ウェルプレートに吸着させ、4℃で一晩インキュベートした。翌日、洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween-20.PBST)でプレートを洗浄し、5%w/v脱脂牛乳を含むPBSTを加え、37℃で2hブロッキングした。同時に、ビオチン標識ヒトTSLP-Fc(SEQ ID NO:32、2.5%脱脂牛乳を含むPBSTに溶解、最終濃度が0.047nMであり)で抗TSLP抗体又は対照品を希釈し、40nMを開始濃度として4倍段階希釈し、室温で40minインキュベートした。次に、100μL/ウェルの抗体/TSLP-Fc-ビオチン混合物を参照品を吸着させた96ウェルプレートに加えた。37℃で40minインキュベートした後、洗浄緩衝液でプレートを4回洗浄した。次に、参照品に結合したビオチン標識ヒトTSLP-Fcを検出するために、HRP標識ストレプトマイシンを加え、37℃で40minインキュベートした。最後に、洗浄緩衝液でプレートを洗浄した。TMBを加え、1M HSOで反応を停止した。マイクロプレートリーダーで2波長モードで(TMB検出波長450nm、対照波長630nm)各ウェルの吸光度を読み取り、次に、OD(450-630)値及び対応する抗体濃度をグラフにした。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、IC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図4に示す。
【0164】
細胞ベースのリガンド遮断FACSでは、細胞表面にヒトTSLPR(uniprot No.Q9HC73.1の第1~371位アミノ酸残基、SEQ ID NO:33)及びヒトIL7R(uniprot No.P16871.1の第1~459位アミノ酸残基、SEQ ID NO:34)を発現する細胞系BAF3-3E6を用い、フローサイトメトリー(FACS)によりヒト化抗TSLP抗体がTSLP-Fcタンパク質と細胞表面TSLPR/IL7Rの結合を阻害する活性を評価した。lipofectamine 3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明に従って、組換えプラスミドpCMV-T-P(EcoRIとXbalのサイト間にTSLPRのコード配列を挿入)及び組換えプラスミドpCMV3-SP(HindIIIとXbalの間にIL7Rのコード配列を挿入)を用いてBAF3細胞(iCell Bioscience Inc.、MIMCL-021)をトランスフェクションし、BAF3-3E6細胞系を作製した。簡単に言えば、ヒトTSLP-Fc溶液(SEQ ID NO:32、社内調製、FACS緩衝液に溶解、最終濃度0.38nM)で本開示に係る抗TSLP抗体、参照品又は陰性対照hIgG(静脈内注射用ヒト免疫グロブリン(pH4)(Hualan Biological Engineering Inc.)を希釈し、30nMを開始濃度として2倍段階希釈し、室温で40minインキュベートした。細胞培養フラスコからBAF3-3E6細胞を収集し、2回洗浄し、次に、2%v/vウシ胎児血清を含むリン酸塩緩衝液(PBS)に最懸濁した(FACS緩衝液)。1×10個細胞/ウェルを含む96ウェルプレートに100μL/ウェルの抗体/TSLP-Fc-ビオチン混合物を加え、4℃で40minインキュベートした。FACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、次に、100μL/ウェルのR-フィコエリスリン標識ストレプトマイシン(FACS緩衝液で1:1000で希釈、Jackson Immunoresearch、016-110-084)を加え、4℃で遮光して40minインキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に最懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTSにより蛍光値を測定した。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、IC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図5に示す。
【0165】
BAF3細胞の増殖及び生存は通常、IL-3に依存するが、これら細胞をエンジニアリング改造によりヒトTSLPR及びヒトIL7Rを発現し、且つ細胞培地でTSLPを加えた場合、IL-3なしで生存することができる。細胞ベースの機能アッセイの方法では、ヒト化抗TSLP抗体のTSLPR(SEQ ID NO:33)/IL7R(SEQ ID NO:34)を発現するBAF3-3E6細胞増殖に対する阻害活性をさらに検出した。簡単に言えば、8×l0個の対数増殖期のBAF3-3E6細胞を含むRPMI1640培地(Gibco、A10491-01)を100μLで96ウェルプレートに播種し、ここで、RPMI1640培地は10%FBS(Gibco、A10099-141)を含む。次に、50μLのヒトTSLP-hisタンパク質(SEQ ID NO:28、社内調製、RPMI-1640に溶解、最終濃度6.4ng/mL)を50μLヒト化抗TSLP抗体又は対照品(40μg/mLを開始濃度として培地で5倍段階希釈)と混合、且つ混合物を室温で30minインキュベートした。次に、100μL/ウェルの抗体/TSLP-his混合物をBAF3-3E6細胞を含む96ウェルプレートに加え、37℃で、COを含む培養箱で72h培養した。その後、細胞を含む96ウェルプレートとCell Titer-Glo(登録商標)発光細胞活力測定キット(Promeg、G7572、50μL/ウェル)を37℃で10minインキュベートした。Tecan Infinite(登録商標) 200Proにより化学発光値を測定した。Graphpad Prismソフトウェアによりデータを分析し、IC50値を得た。いくつかの抗体の結果を図6A~6Bに示す。
【0166】
データによれば、hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14は親マウス及びキメラ抗体と同等のin vitro活性を示した。
【0167】
表3、図1及び図2に示すように、参照品と比べ、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14は、ヒトTSLPとの結合親和性/活性がより高く、カニクイザルTSLPとの結合親和性/能力が同等であった。
【0168】
図3及び5には、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14はヒトTSLPとヒトTSLPR/IL7Rの結合を阻害できることが示されている。
【0169】
図6A~6Bには、ヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14がTSLPとTSLPR/IL7Rの相互作用を阻害できるため、低抗体濃度でTSLP経路の阻害及びBAF3-3E6細胞の死亡を引き起こしたのに対して、参照品は高い抗体レベルでないと、このような効果を発揮できないことが示されている。
【0170】
【表3】
【0171】
その後、実施例2~3の方法及び下記の方法に従って、Biacore、捕捉ELISA、競合ELISA、細胞ベースのリガンド遮断FACS、細胞ベースの機能アッセイ、細胞ベースのレポーター遺伝子測定及びタンパク質のサーマルシフトアッセイ法により、ヒト及びカニクイザルTSLPに対する結合親和性/能力及びほかの機能について、ヒトIgG1重鎖の定常領域(SEQ ID NO:12)及びヒトκ軽鎖の定常領域(SEQ ID NO:14)を有するヒト化抗体hu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14と、ヒトIgG4重鎖の定常領域(SEQ ID NO:13)及びヒトκ軽鎖の定常領域(SEQ ID NO:14)を有するhu1C5F12E9-V8及びhu1C5F12E9-V14を比較した。結果を図7~10、11A~11B、12A~12B及び13に示す。
【0172】
4つの抗TSLPヒト化抗体の熱的安定性を測定するために、GloMeltTMサーマルシフトタンパク質安定性キット(Biotium、33022-T)を用い、タンパク質のサーマルシフトアッセイ法によりTm(融解温度)を測定した。簡単に言えば、GloMeltTM染料を室温まで解凍した。染料を含むバイアルをボルテックスさせて遠心させた。次に、5μL 200×染料を95μL PBSに加えて10×染料を製造した。反応系に2μL 10×染料及び10μgヒト化抗体を加え、PBSを総反応体積が20μLとなるまで加えた。染料及び抗体を含む遠心管を一時遠心させ、且つリアルタイムPCR熱循環器(Roche、LightCycler 480II)に入れ、この熱循環器のMelt Curveプログラムのパラメータは表4に示すとおりである。
【0173】
【表4】
【0174】
細胞ベースのレポーター遺伝子測定では、細胞表面にヒトTSLPR(SEQ ID NO:33)及びヒトIL7R(SEQ ID NO:34)を発現するレポーター遺伝子細胞系HEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Lucを用いた。lipofectamine 3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明に従い、組換えプラスミドpCMV-T-P(EcoRIとXbalのサイト間にTSLPRのコード配列を挿入)、組換えプラスミドpCMV3-SP(HindIIIとXbalの間にIL7Rのコード配列を挿入)及びpGL4.52[luc2P/STAT5RE/Hygro](Promega)を用い、HEK293T細胞(ATCC(登録商標)CRL-11268)をトランスフェクションし、HEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Luc細胞を社内調製した。簡単に言えば、細胞培養フラスコからHEK293T-TSLPR/IL7R/STAT5-Luc細胞を収集した。次に、100μL 5×l0個細胞を含むDMEM培地(Gibco、10566-016)を96ウェル細胞培養プレート (Corning、30218026)に播種し、ここで、DMEM培地は10%FBS(Gibco、10099-141)を含む。同時に、50μLヒトTSLP-his(SEQ ID NO:28、10%FBSを含むDMEM培地に溶解、最終濃度160ng/mL)をそれぞれ、50μL段階希釈された抗TSLP抗体hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)、hu1C5F12E9-V14(IgG4)及びTezepelumab(200μg/mLを開始濃度として、10%FBSを含むDMEM培地で5倍段階希釈)と混合させ、室温で30minインキュベートした。次に、100μL/ウェルの抗TSLP抗体/TSLP-hisの混合物を96ウェル細胞培養プレートに加え、37℃で、CO2を含む培養箱で16~18h培養した。各ウェルから100μLの上澄み液を棄却し、次に、50μL/ウェルのルシフェラーゼ検出試薬(Promega、E6120)を加えた。10min後、Tecan Infinite 200Proプレートリーダーを用いてプレートを分析した。Graphpad prismソフトウェアにより発光信号のデータを分析し、IC50値を得た。
【0175】
図7、8、10、11A~11B及び12A~12Bに示すように、Tezepelumabと比べ、hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)はin vitroで、同等以上のin vitro活性を有する。特に、図11A~11B及び12A~12Bに示すように、ヒト化抗体は、参照品濃度よりも遥かに低い抗体濃度でTSLPとTSLPR/IL7Rの相互作用を阻害することで、TSLP経路の阻害及びBAF3-3E6細胞の死亡をもたらすことができた。
【0176】
図13に示すように、hu1C5F12E9-V8(IgG1)、hu1C5F12E9-V8(IgG4)、hu1C5F12E9-V14(IgG1)及びhu1C5F12E9-V14(IgG4)は、融解温度(T1、T2)がそれぞれ(69.5℃、80℃)、(66.5℃、76℃)、(69.5℃、80℃)及び(66.5℃、76℃)であった。
【0177】
実施例4 医薬組成物のスクリーニング
【0178】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-UPLC):サンプルにおける抗体の純度を測定するために用いられ、Thermo VanquisHF高速液体クロマトグラフ、Waters ACQUITY UPLC Protein BEH SEC Column(200Å)ゲルろ過クロマトグラフィー、Waters ACQUITY UPLC Protein BEH SEC Guard Column(200Å)をガードカラムとし、50mmol/Lリン酸塩緩衝液-200mmol/L塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を移動相として溶出し、検出波長を280nmとした。面積百分率法により高分子不純物及び免疫グロブリン単体の百分率での含有量を計算した。
【0179】
示差走査熱量測定(DSC):MicroCal VP-Capillary DSC(Malvern)を用いてサンプルの融解温度(Tm)を分析し、サンプルを濃度が1mg/mLとなるまで希釈し、プログラムとして、走査開始温度を20℃とし、走査終了温度を110℃とし、昇温速度を60℃/hとした。
【0180】
Dynaproplate ReaderIII(Wyatt)を用いてサンプルの凝集温度(Tagg)を検出し、サンプルを384ウェルサンプルトレイに加え、プレートシールでプレートを封止し、384ウェルサンプルトレイを遠心させて気泡を除去し、次に、検出し、プログラムとして、35℃から85℃まで昇温させ、走査時間を5秒間とした。
【0181】
HVROC-S粘度計(Rheosense)を用いてサンプルの粘度を分析し、Autoモードを選択し、検出結果を記録した。
【0182】
画像キャピラリー等電点電気泳動(CIEF):サンプルの電荷変異体を測定するために用いられ、Proteinsimple iCE3画像キャピラリー等電点電気泳動装置、Maurice高速全自動タンパク質特性評価システム、ProteinSimpleコーティング石英キャピラリー、紫外線検出器を用いて、紫外線検出波長280nmで検出した。サンプル注入時間を60秒間とし、1500Vで1分間予備フォーカシングし、3000Vで5分間フォーカシングした。面積百分率法により電荷変異体のピーク面積百分率を計算した。
【0183】
CE-SDS還元電気泳動:Beckman Coulter Pa 800Plus生物製剤解析システム、内径50μm、全長31cm、有効長21cmの無コーティング-溶融石英キャピラリー、PDA検出器を用い、検出波長220nmで検出した。面積百分率法により軽鎖、重鎖及び非グリコシル化重鎖の補正後ピーク面積百分率を計算した。CE-SDS非還元電気泳動:Beckman Coulter Pa 800Plus生物製剤解析システム、内径50μm、全長31cm、有効長21cmの無コーティング-溶融石英キャピラリー、PDA検出器を用い、検出波長220nmで検出した。面積百分率法により主ピークの補正後ピーク面積百分率を計算した。
【0184】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA法)により生物学的活性を検出し、2μg/mLのTSLPタンパク質(Sinobiological、16135-H08H)を96ウェルプレートに吸着させ、100μL/ウェルとし、2~8℃で一晩インキュベートした。96ウェルプレートを洗浄した後、各ウェルに250μLのブロッキング液(3%BSAを含むPBS溶液)を加え、25℃で2時間インキュベートした。96ウェルプレートを洗浄した後、それぞれ段階希釈された参照品及び供試品(開始濃度4000ng/mL、4倍段階希釈、合計で7つの希釈段階)を加え、25℃で2時間インキュベートした。ここで、参照品はプロセスを代表できる医薬組成物サンプルであり、供試品は測定される医薬組成物サンプルであり、製造方法は後述する。96ウェルプレートを洗浄した後、100μL/ウェルでHRP標識ヒツジ抗ヒト抗体(PekinElmer、NEF802001EA、取扱説明書に従って希釈)を加え、25℃で1時間インキュベートした。96ウェルプレートを洗浄した後、各ウェルに100μL TMBを加え、25℃で遮光して5分間インキュベートした。最後に、1M HSOを加えて発色を停止し、室温で5分間置いた後、マイクロプレートリーダーを用いて検出し、650nmを対照波長とし、450nm波長で吸光度を測定し、測定結果を記録した。供試品の生物学的活性(%)=(参照品EC50値/供試品EC50値)×100%
【0185】
緩衝剤の調製:リン酸ナトリウム緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(NaHPO・HO)及びリン酸水素二ナトリウム12水和物(NaHPO・12HO)から調製され、例えば、20mMリン酸ナトリウム緩衝剤(pH6.0)は、約2.54g/L NaHPO・HO及び約0.573g/L NaHPO4・12HOから調製される。酢酸ナトリウム緩衝剤は、無水酢酸ナトリウム及び酢酸から調製され、例えば、20mM酢酸ナトリウム緩衝剤(pH6.0)は、約1.58g/L無水酢酸ナトリウム及び約0.116g/L酢酸から調製される。ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン(L-Histidine)から調製され、酢酸で目的pHまで調整され、例えば、20mMヒスチジン緩衝剤(pH6.0)は約3.1g/Lヒスチジンから調製され、酢酸でpHを6まで調整される。
【0186】
限外ろ過遠心により、抗TSLP抗体(hu1C5F12E9-V8(IgG1)’、SEQ ID NO:37で示されるヒトIgG1重鎖の定常領域及びSEQ ID NO:14で示されるヒトκ軽鎖の定常領域を有する)を表5に示すスクリーニングした緩衝剤に置き換え、置換えが完了した後に濃縮させ、表5に示すスクリーニングした医薬組成物に対してそれぞれ賦形剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmろ過膜を通してろ過除菌した。それぞれの医薬組成物のTm値、Tagg値及びSEC-UPLCの検出結果を表5に示す。
【0187】
【表5】
【0188】
例示的に、緩衝剤としてヒスチジン緩衝剤を選択し、さらにスクリーニングし、限外ろ過遠心により、抗TSLP抗体(hu1C5F12E9-V8(IgG1)’、SEQ ID NO:37で示されるヒトIgG1重鎖の定常領域及びSEQ ID NO:14で示されるヒトκ軽鎖の定常領域を有する)を表6に示すスクリーニングしたヒスチジン緩衝剤に置き換え、置換えが完了した後に濃縮させ、按照表6に示すスクリーニングした医薬組成物に対してそれぞれ賦形剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmろ過膜を通してろ過除菌した。それぞれの医薬組成物のTm値、Tagg値、粘度及びSEC-UPLCの検出結果を表6に示す。
【0189】
【表6】
【0190】
例示的に、緩衝剤としてヒスチジン緩衝剤を選択し、さらにスクリーニングし、限外ろ過遠心により、抗TSLP抗体(hu1C5F12E9-V8(IgG1)’、SEQ ID NO:37で示されるヒトIgG1重鎖の定常領域及びSEQ ID NO:14で示されるヒトκ軽鎖の定常領域を有する)を表7に示すスクリーニングしたヒスチジン緩衝剤に置き換え、置換えが完了した後に濃縮させ、表7に示すスクリーニングした医薬組成物に対してそれぞれ賦形剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmろ過膜を通してろ過除菌した。それぞれの医薬組成物の外観、可視可能な異物、生物学的活性、粘度及びSEC-UPLCの検出結果を表7に示し、それぞれの医薬組成物の2~8℃での安定性検討結果を表8に示す。
【0191】
【表7】
【0192】
【表8】
【0193】
例示的に、緩衝剤としてヒスチジン緩衝剤を、及び安定化剤としてプロリンを選択し、さらにスクリーニングし、限外ろ過遠心により、抗TSLP抗体(hu1C5F12E9-V8(IgG1)’、SEQ ID NO:37で示されるヒトIgG1重鎖の定常領域及びSEQ ID NO:14で示されるヒトκ軽鎖の定常領域を有する)を表9に示すスクリーニングしたヒスチジン緩衝剤(酢酸でpHを5.8に調整)に置き換え、置換えが完了した後に濃縮させ、表9に示すスクリーニングした医薬組成物に対してそれぞれ賦形剤を添加した。均一に混合した後、0.22μmろ過膜を通してろ過除菌した。それぞれの医薬組成物の粘度、SEC-UPLC、CIEF及びCE-SDS検出結果を表10に示す。
【0194】
【表9】
【0195】
【表10】
【0196】
例示的に、表9に示す医薬組成物F2を用いて2~8℃での安定性を考察し、医薬組成物F2の2~8℃での安定性検討結果を表11に示す。
【0197】
【表11】
【0198】
この分野の技術者であれば、本発明はその精神及び趣旨を逸脱しない範囲でほかの具体的な形態で実施できることを理解されるべきである。上記の明細書において、本発明は例示的な実施の形態のみ開示しており、ほかの変化も本発明の範囲に含まれると理解されるべきである。したがって、本発明は本明細書に詳細に説明されている具体的な実施の形態に限定されるものではない。逆に、本発明の範囲及び内容については、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【配列表】
2024512267000001.app
【国際調査報告】