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特表2024-512273画素応答を光エネルギー減衰と比較する検出器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】画素応答を光エネルギー減衰と比較する検出器システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/70 20230101AFI20240312BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04N25/70
G01S7/497
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551764
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022017405
(87)【国際公開番号】W WO2022191990
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】17/197,328
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ウィリアム・ピー
(72)【発明者】
【氏名】カドゥガン,ブライアン
【テーマコード(参考)】
5C024
5J084
【Fターム(参考)】
5C024CY17
5C024CY44
5C024EX13
5C024GX03
5C024HX29
5C024JX09
5C024JX46
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA67
(57)【要約】
検出器システムに含まれる画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源を制御し、画素アレイ内の画素の応答を分析し、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートを発生させるための方法および装置。例示的な刺激源には、導電性トレース、PN接合、および電流源が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素アレイ内に画素を有する検出器システムで戻りレーザパルスを受信するステップと、
距離およびターゲット反射率にわたる前記レーザパルスの光エネルギーの減衰に対応する少なくとも1つの閾値と応答を比較することを含む、前記画素アレイ内の前記画素の前記応答を分析するステップと、
前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に基づいてアラート信号を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
読出し集積回路が、前記戻りレーザパルスを発生させるレーザを制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの閾値が、第1の反射率に対応する第1の閾値と、第2の反射率に対応する第2の閾値とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記応答を分析するステップが、前記レーザパルスに関する実際の戻りが、前記第1の閾値と前記第2の閾値との間にある前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記応答を分析するステップが、ノイズが、前記第2の閾値を下回る前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記応答を分析するステップが、ノイズが、前記第1の閾値を上回る前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの閾値が、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する低いトリガに対応する第1の閾値と、前記第1のタイプのレーザによって発生する前記パルスに関する高いトリガに対応する第2の閾値とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記戻りレーザパルスが前記第1の閾値を超えてから、前記戻りレーザパルスが前記第2の閾値を超えるまでの第1の時間を決定することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の時間に基づいて、前記戻りレーザパルスが、前記第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したと判定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記戻りレーザパルスのパルス幅に基づいて、前記戻りレーザパルスが、前記第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したと判定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の時間が、ファイバレーザを含むレーザタイプに対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の時間が、DPSSレーザを含むレーザタイプに対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
戻りレーザパルスを受信するための検出器であって、画素アレイ内に画素を備える検出器と、
距離およびターゲット反射率にわたる前記レーザパルスの光エネルギーの減衰に対応する少なくとも1つの閾値と応答を比較することを含む、前記画素アレイ内の前記画素の前記応答を分析するように構成された第1のモジュールと、
前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に基づいてアラートを発生させるように構成されたアラート信号と
を備える、検出器システム。
【請求項14】
読出し集積回路が、前記戻りレーザパルスを発生させるレーザを制御するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの閾値が、第1の反射率に対応する第1の閾値と、第2の反射率に対応する第2の閾値とを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記応答を分析するステップが、前記レーザパルスに関する実際の戻りが、前記第1の閾値と前記第2の閾値との間にある前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記応答を分析するステップが、ノイズが、前記第2の閾値を下回る前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記応答を分析するステップが、ノイズが、前記第1の閾値を上回る前記画素アレイ内の前記画素の前記応答に対応すると判定することを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの閾値が、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する低いトリガに対応する第1の閾値と、前記第1のタイプのレーザによって発生する前記パルスに関する高いトリガに対応する第2の閾値とを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記戻りレーザパルスが前記第1の閾値を超えてから、前記戻りレーザパルスが前記第2の閾値を超えるまでの第1の時間を決定するようにさらに構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の時間に基づいて、前記戻りレーザパルスが、前記第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したと判定するようにさらに構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記戻りレーザパルスのパルス幅に基づいて、前記戻りレーザパルスが、前記第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したと判定するようにさらに構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の時間が、ファイバレーザを含むレーザタイプに対応する、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の時間が、DPSSレーザを含むレーザタイプに対応する、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
画素アレイを有する検出器システムの一部を形成する光検出器からの信号を増幅するための増幅器を用いるステップと、
AC変調信号を前記増幅器に印加するステップであって、前記増幅器の出力信号が、検出器システムに含まれる画素アレイ内の画素によって生成されたパルス信号、および前記AC変調信号を含む、印加するステップと、
前記増幅器からの出力信号を分析して、前記光検出器の動作の障害を検出するステップと、
前記増幅器の前記出力信号から前記AC変調信号をフィルタリングするステップと
を含む、方法。
【請求項26】
前記光検出器の動作を評価することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記光検出器の前記評価に基づいてアラートを発生させることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
当該技術分野で知られているように、いくつかの既知の測距システムは、シーン内の物体までの距離を測定するために、レーザレーダ(laser radar,ladar:レイダー)、光検出測距器(light-detection and ranging,lidar:ライダー)、および距離測定システムを含むことができる。レーザ測距画像化システムは、特定の位置に向けてパルスを放出し、戻りエコーを測定して距離を推定する。
【0002】
従来のレーザ測距システムは一般に、レーザパルスを出射し、レーザパルスがターゲットに到達し、反射して、受光器に戻るまでにかかる時間を記録することによって機能する。レーザ測距機器は、出射パルスの時刻を記録し、レーザパルスが戻ってきた時刻を記録する。これら2つの時刻の差が、ターゲットに到達して戻る飛行時間である。光の速度を用いて、パルスの往復時間を使用して、ターゲットまでの距離を計算する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の例示的な実施形態は、自動車安全度水準(Automotive Safety Integrity Level,ASIL)関連の機能などの安全機能を備える、読出し集積回路(readout integrated circuit,ROIC)など光集積回路用の方法および装置を提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の機能がROICに組み込まれて、自動車用途など様々な用途で使用するための受光器のASIL準拠を実現可能にする。
【0004】
光システムは、光システムの感度レベルで光エネルギーを生成するための薄い導電性トレースを備える検出器画素を含むことができる。いくつかの実施形態では、電気信号に応答して光子を生成するために、LEDが検出器画素の近くに位置される。このLEDを、パッケージ内に配置させることもでき、さらには、光ROICをその一部である受光器システムの外部に配置させることもできる。次いで、ROICは、LED出力を直接制御する。光子を直接的に生成することによって、受光器の信号経路全体を検証することができる。別の実施形態では、既知の電圧を課すためにトレースに電圧が印加される。画素の代わりに電流源を使用することもできる。
【0005】
いくつかの実施形態では、ROICは、データを返さないという公称の応答に対して、特定の時間窓内に戻りパルスが検出されない場合にアラートを発生させる。一実施形態では、ROICは、既知の信号を画素または画素アレイに印加し、ROIC内の画素および回路からの応答があるまで待機する。一実施形態では、ROICはパルスの検証を含むことができる。例えば、時間に対する戻りパルスの振幅が想定範囲内にない場合、アラートを発生させることができる。いくつかの実施形態では、パルスの形状を評価することができる。例えば、パルスの形状が想定される形状と一致することを確認して、環境全体からの生じ得る偽のパルスを排除することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、ROICは、バックエンドを介してトランスインピーダンス増幅器(transimpedance amplifier,TIA)による機能を検証するために、電流発生による直接的な電気刺激を含むことができる。時間とともに動的な光検出器電圧バイアス変調をROICによってローサイドで評価して、電流応答が適切に機能する光検出器と一致していることを検証することができる。いくつかの実施形態では、ROICは、パッケージの複数ピンまたは分離ピンでのASIL信号出力を含むことができる。
【0007】
一態様では、方法は、検出器システムに含まれる画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源を制御するステップと、画素アレイ内の画素の応答を分析するステップと、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートを発生させるステップとを含む。
【0008】
方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。刺激源が金属物体を含み、刺激源を制御するステップが、金属物体を加熱することを含む;刺激源が電流源を含む;刺激源が、発光ダイオード(LED)を与えるPN接合を備える;画素アレイ内の画素の応答を分析するステップが、所定の距離に対応する所定の期間で応答が生成されなかったことを判定することを含む;画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートを発生させるステップが、所定の距離に対応する所定の期間で応答が生成されなかったとの判定に対応する;画素アレイ内の画素の応答を分析するステップが、画素を刺激して応答を生成するために画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源が制御された後に、所定の距離に対応する所定の期間で応答が生成されなかったことを判定することを含む;検出器システムが、比較器に出力を与える増幅器に結合されたフォトダイオードを備える;比較器がデジタル回路を備える;検出器システムが、比較器の入力に結合された第1の電圧閾値をさらに備え、比較器の出力が、画素アレイ内の画素の応答を分析するために使用される;検出器アレイが、画素の出力およびテスト信号を多重化するためのマルチプレクサをさらに備え、マルチプレクサの出力が増幅器に結合される;読出し集積回路が、刺激源の制御を実行する;読出し集積回路が、検出器アレイの外部にある;読出し集積回路が、選択された時間に画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源を制御する;および/または、アラートが、ASILの障害指標を含む。
【0009】
別の態様では、検出器システムが、検出器システムに含まれる画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源と、画素アレイ内の画素の応答を分析するための第1のモジュールと、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートを発生させるための第2のモジュールとを備える。
【0010】
システムは、以下の機能の1つまたは複数をさらに含むことができる。刺激源が、加熱することができる金属物体を含む;刺激源が電流源を含む;刺激源が、発光ダイオード(LED)を与えるPN接合を備える;第1のモジュールが、所定の距離に対応する所定の期間に応答が生成されなかったことを判定することによって、画素アレイ内の画素の応答を分析するように構成される;所定の距離に対応する所定の期間で応答が生成されなかったことを判定することによって、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートが発生させられる;第1のモジュールが、画素を刺激して応答を生成するために画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源が制御された後に、所定の距離に対応する所定の期間で応答が生成されなかったことを判定することによって、画素アレイ内の画素の応答を分析するように構成される;検出器システムが、比較器に出力を与える増幅器に結合されたフォトダイオードを備える;比較器がデジタル回路を備える;検出器システムが、比較器の入力に結合された第1の電圧閾値をさらに備え、比較器の出力が、画素アレイ内の画素の応答を分析するために使用される;検出器アレイが、画素の出力およびテスト信号を多重化するためのマルチプレクサをさらに備え、マルチプレクサの出力が増幅器に結合される;読出し集積回路が、刺激源を制御するように構成される;読出し集積回路が、検出器アレイの外部にある;読出し集積回路が、選択された時間に画素アレイ内の画素に向けて光子を送出するための刺激源を制御する;および/または、アラートが、ASILの障害指標を含む。
【0011】
さらなる態様では、方法は、画素アレイ内に画素を有する検出器システムで戻りレーザパルスを受信するステップと、距離およびターゲット反射率にわたるレーザパルスの光エネルギーの減衰に対応する少なくとも1つの閾値と応答を比較することを含む、画素アレイ内の画素の応答を分析するステップと、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラート信号を生成するステップとを含む。
【0012】
方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。読出し集積回路が、戻りレーザパルスを発生させるレーザを制御する;少なくとも1つの閾値が、第1の反射率に対応する第1の閾値と、第2の反射率に対応する第2の閾値とを含む;応答を分析するステップが、レーザパルスに関する実際の戻りが、第1の閾値と第2の閾値との間にある画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;応答を分析するステップが、ノイズが、第2の閾値を下回る画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;応答を分析するステップが、ノイズが、第1の閾値を上回る画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;少なくとも1つの閾値が、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する低いトリガに対応する第1の閾値と、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する高いトリガに対応する第2の閾値とを含む;戻りレーザパルスが第1の閾値を超えてから、戻りレーザパルスが第2の閾値を超えるまでの第1の時間を決定する;第1の時間に基づいて、戻りレーザパルスが、第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したことを判定する;戻りレーザパルスのパルス幅に基づいて、戻りレーザパルスが、第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したことを判定する;第1の時間が、ファイバレーザを含むレーザタイプに対応する;および/または、第1の時間が、DPSSレーザを含むレーザタイプに対応する。
【0013】
さらなる態様では、検出器システムは、戻りレーザパルスを受信するための検出器であって、画素アレイ内に画素を備える検出器と、距離およびターゲット反射率にわたるレーザパルスの光エネルギーの減衰に対応する少なくとも1つの閾値と応答を比較することを含む、画素アレイ内の画素の応答を分析するように構成された第1のモジュールと、画素アレイ内の画素の応答に基づいてアラートを発生させるように構成されたアラート信号とを備える。
【0014】
システムは、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。読出し集積回路が、戻りレーザパルスを発生させるレーザを制御するように構成される;少なくとも1つの閾値が、第1の反射率に対応する第1の閾値と、第2の反射率に対応する第2の閾値とを含む;応答を分析するステップが、レーザパルスに関する実際の戻りが、第1の閾値と第2の閾値との間にある画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;応答を分析するステップが、ノイズが、第2の閾値を下回る画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;応答を分析するステップが、ノイズが、第1の閾値を上回る画素アレイ内の画素の応答に対応するとの判定を含む;少なくとも1つの閾値が、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する低いトリガに対応する第1の閾値と、第1のタイプのレーザによって発生するパルスに関する高いトリガに対応する第2の閾値とを含む;システムが、戻りレーザパルスが第1の閾値を超えてから、戻りレーザパルスが第2の閾値を超えるまでの第1の時間を決定するようにさらに構成される;システムが、第1の時間に基づいて、戻りレーザパルスが、第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したことを判定するようにさらに構成される;システムが、戻りレーザパルスのパルス幅に基づいて、戻りレーザパルスが、第1のタイプのレーザとは異なる第2のタイプのレーザによって発生したことを判定するようにさらに構成される;第1の時間が、ファイバレーザを含むレーザタイプに対応する;および/または、第1の時間が、DPSSレーザを含むレーザタイプに対応する。
【0015】
別の態様では、方法は、画素アレイを有する検出器システムの一部を形成する光検出器からの信号を増幅するための増幅器を用いるステップと、AC変調信号を増幅器に印加するステップであって、増幅器の出力信号が、検出器システムに含まれる画素アレイ内の画素によって生成されたパルス信号、およびAC変調信号を含む、ステップと、増幅器からの出力信号を分析して、光検出器の動作の障害を検出するステップと、増幅器の出力信号からAC変調信号をフィルタリングするステップとを含む。方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。光検出器の動作を評価するステップ;および/または光検出器の評価に基づいてアラートを発生させるステップ。
【0016】
本開示の前述の特徴、および本開示自体は、以下の図面の説明からより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】安全機能を有する例示的な検出システムの高レベルブロック図である。
図2】画素刺激を伴う画素アレイ内の画素の一部分の概略図である。
図3】画素応答および信号タイムアウトの例示的な回路および動作の概略図である。
図3A】電流源刺激を伴う画素応答および信号タイムアウトに関する例示的な回路図である。
図3B図3Aの回路に関する例示的なブロック図である。
図4】光エネルギーの戻り波形と反射率値に関する電圧閾値の図である。
図4A図4の反射率値を使用して実際の信号の戻りを区別するための例示的な回路実装形態を示す図である。
図4B図4の電圧閾値を生成するための例示的な回路実装形態を示す図である。
図5】信号を検証するために使用することができる、様々なレーザタイプに関するレーザパルス特性を示す波形図である。
図6図6は、動的な光検出器バイアス変調の例示的な回路実装形態を示す図である。
図6A】変調信号の一例を示す図である。
図6B】光信号の一例を示す図である。
図7】本明細書で述べる処理の少なくとも一部を実行することができる例示的なコンピュータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の例示的な実施形態を述べる前に、いくつかの情報を提供する。レーザ測距システムは、レーザレーダ(laser radar,ladar:レイダー)、光検出測距器(light-detection and ranging,lidar:ライダー)、ならびに距離測定システムを含むことができ、これらは、光を使用してシーン内の物体までの距離を測定する同クラスの機器に関する総称的な用語である。この概念はレーダと同様であるが、無線波ではなく光信号が使用される点が異なる。レーダと同様に、レーザ測距画像化システムは、光信号、例えばパルスまたは連続光信号を特定の位置に向けて放出し、戻りエコーを測定して距離を推定する。
【0019】
レーザ測距システムは、一般に、レーザパルスを放出し、レーザパルスがターゲットまで進み、反射し、受光器に戻るまでにかかる時間を記録することによって機能する。レーザ測距機器は、トリガにより、または出射レーザ光からの散乱の測定を使用する計算により、出射パルスの時刻を記録し、次いでレーザパルスが戻った時刻を記録する。これら2つの時刻の差が、ターゲットに達して戻る飛行時間である。光の速度を用いて、パルスの往復時間を使用して、ターゲットまでの距離を計算する。
【0020】
ライダーシステムは、ターゲットエリアにわたってビームを走査して、視野にわたる複数の点までの距離を測定し、周囲の完全な3次元距離プロファイルを生成する。例えば、より高度なフラッシュライダーカメラは、検出器素子のアレイを含み、各検出器素子が、それらの視野内の物体までの飛行時間を記録することが可能である。
【0021】
光パルスを使用して画像を作成するとき、放出されたパルスは、そのパルスが3D体積の空間を横切るときに、様々な向きで複数の物体を捕捉することがある。エコーされたレーザパルス波形は、シーンの時間的および振幅インプリントを含む。光エコーをサンプリングすることによって、放出されたパルスとシーン内の捕捉された物体との相互作用の記録が抽出され、正確な多次元画像が作成される。信号処理を単純化し、データストレージを低減するために、レーザ測距と画像化は、個別の戻り光用システムのために割り当てることができ、これらのシステムは、角度-角度-距離画像を取得するために第1のまたはいくつかの個々のターゲット戻り光の飛行時間(time of flight,TOF)のみを記録する。個別の戻り光用システムでは、記録された各戻り光は、基本的には個々のレーザ反射(すなわち、1つの特定の反射面、例えば車両、人、木、ポール、または建物からのエコー)に対応する。個別の戻り光用システムは、ごく少数の個別の距離を記録することにより、信号処理を単純化し、データストレージを低減するが、ターゲットおよびシーン反射率データの損失という犠牲を払ってそれを行う。レーザパルスエネルギーはかなりの関連コストを伴い、システムのサイズおよび重量を増加させるので、角度-角度-距離-強度画像を取得するために送信パルスごとに複数のレーザパルス戻り光のTOFおよびパルス振幅を記録することは、パルスエネルギーの単位あたりの取得情報量を増加させる。他の条件をすべて同じとすると、完全なパルス戻り波形の取得は大きな利点を提供するので、平均レーザ出力で投入したものから最大データが抽出される。全波形システムでは、システムによって受信された各後方散乱レーザパルスが、高いサンプリングレート(例えば500MHz~1.5GHz)でデジタル化される。このプロセスは、より忠実度の高い3D画像を実現するために処理することができるデジタル化された波形(時間に対する振幅)を生成する。
【0022】
利用可能な様々なレーザ測距機器のうち、単一素子受光器を備えるものは、一般に、固定された指向角度で、単一の距離ベクトルに沿った距離データを取得する。このタイプの(例えばゴルファーや狩猟者によってよく使用される)機器は、単一の指向角度に沿って1つまたは複数のターゲットまでの距離(R)を取得し、または単一の指向角度に沿って1つまたは複数の物体の距離および反射パルス強度(I)を取得し、その結果、パルス距離-強度データ(R,I)の集合が得られる。ここで、iは、各出射レーザパルスに関して捕捉されたパルス戻り光の数を示す。
【0023】
より全般的には、レーザ測距機器は、2つの角座標(例えば方位角および仰角)によって定められる球体の立体角の一部にわたって測距データを収集することができ、このデータは、3次元(3D)直交座標のグリッドに較正することができる。これらのシステムは、一般に、3Dライダーおよびレイダー機器と呼ばれる。「ライダー」および「レイダー」という用語は同義で使用されることが多く、本論述の目的では、一般性を失うことなくこれらのシステムに言及するために「3Dライダー」、「走査ライダー」、または「ライダー」という用語を使用する。
【0024】
3Dライダー機器は、3次元(例えば、角度,角度,距離)データセットを取得する。概念上、これは、レンジファインダを使用してシーンにわたって走査し、シーン内の物体の距離を得て多次元画像を作成することと等価である。戻りレーザパルスから距離のみが得られるとき、これらの機器は、3Dデータセット(例えば、角度、角度、距離)を取得する。ここで、添字nは、第1の反射だけでなく、距離分解された一連のレーザパルス戻り光を収集することができることを反映するために使用される。
【0025】
いくつかの3Dライダー機器はまた、シーン内の分解された(角度、角度、範囲)の物体に位置される物体によって生成される反射パルス戻り光の強度を収集することも可能である。距離と強度との両方が記録されるとき、多次元データセット[例えば、角度、角度、(距離-強度)]が取得される。これはビデオカメラに類似しており、ビデオカメラでは、各瞬時の視野(field of view,FOV)に関して、各有効カメラ画素が、レンズを通して観察されるシーンの色と強度との両方を取得する。しかし、3Dライダーシステムは、代わりに、物体までの距離と反射パルス強度とを取得する。
【0026】
ライダーシステムは、様々なタイプのレーザを含むことができ、例えば複数の異なる波長で動作するレーザを含み、不可視のレーザ(例えば840nmまたは905nmの波長で動作するレーザ)と、近赤外線でのレーザ(例えば1064nmまたは1550nmで動作するレーザ)と、目の損傷が生じにくい「アイセーフ」スペクトル領域として知られている波長で動作するもの(すなわち一般に約1400nmを超える波長で動作するもの)を含む熱赤外レーザとを含む。ライダー送信機は、一般に人間の目には見えない。しかし、レーザの波長が人間の目の感度範囲(約350nm~730nm)に近いとき、人間の目が感じない波長でレーザが動作するようにレーザパルスのエネルギーおよび/またはレーザの平均出力を下げなければならない。したがって、例えば1550nmで動作するレーザは、目の損傷を引き起こすことなく、一般に、840nmまたは905nmで動作するレーザの200倍~100万倍のレーザパルスエネルギーを有することができる。
【0027】
ライダーシステムに関する1つの課題は、長距離にある低反射率の物体を検出することであり、これは、遠いターゲットから反射された戻り信号が検出に十分な大きさとなるように十分なエネルギーでレーザパルスを送信することを必要とする。必要最小限のレーザ送信出力を決定するために、いくつかの因子を考慮しなければならない。例えば、シーン内の拡散物体から散乱するパルス戻り光の大きさは物体の距離に比例し、戻りパルスの強度は、概して、小さい物体に関しては1/Rに従った距離に対応し、より大きい物体に関しては1/Rに従った距離に対応する。しかし、高い鏡面反射性の物体(すなわち拡散散乱物体ではない物体)に関しては、コリメートされたレーザビームが、ほぼ減衰されずに直接反射され得る。これは、レーザパルスが送信され、次いで1メートル離れたターゲットから反射される場合には、レーザパルスからの全エネルギー(J)が受光器に反射される可能性があるが、レーザパルスが送信され、次いで333メートル離れたターゲットから反射される場合には、戻り光は、送信されたエネルギーの約1012弱いエネルギーのパルスを有する可能性があることを意味する。
【0028】
ライダーシステムの多くの場合において、システム感度を高めるために高感度の受光器が使用されて、必要とされる最長距離で低反射率のターゲットに到達するために必要とされるレーザパルスエネルギーの量を低減し、アイセーフ動作を維持する。これらの検出器のいくつかの変形形態には、アバランシェフォトダイオード(APD)や単一光子アバランシェ検出器(SPAD)など、フォトダイオードを組み込んだものおよび/または利得を与えるものが含まれる。これらの変形形態は、単一素子検出器、セグメント化された検出器、線形検出器アレイ、またはエリア検出器アレイとして構成することができる。APDやSPADなどの高感度検出器の使用は、低反射率のターゲットまでの長距離測距に必要とされるレーザパルスエネルギーの量を低減する。これらの光検出器の技術的な課題は、信号振幅の非常に大きいダイナミックレンジにも対処できなければならないことである。
【0029】
光学系の特性によって定められるように、レーザの戻りの焦点は距離に応じて変化する。その結果、近くの物体の焦点が合わなくなることがよくある。さらに、やはり光学系の特性によって定められるように、「ぼやけ」の位置およびサイズ、すなわち光信号の空間的広がりは、標準的なカメラの場合と同様に、距離に応じて変化する。これらの課題は、大型の検出器、セグメント化された検出器、または複数素子検出器を使用して、物体の全距離範囲にわたる光のすべてまたは光の一部のみを捕捉することによって一般に対処される。一般に、近くの物体からの反射がぼやける、したがって光エネルギーの一部分が検出器に到達しない、または複数の検出器間で拡散されるように光学系を設計することが賢明である。この設計戦略は、検出器のダイナミックレンジ要件を低減し、検出器の損傷を防止する。
【0030】
ライダー画像の取得には、例えば車のフロント部分に埋め込まれた3Dライダーシステムを関与させることができ、3Dライダーシステムは、任意の必要な光学系を備えたレーザ送信機、任意の必要な専用または共有光学系を備えた単一素子受光器、およびシーンにわたってレーザで走査(「ペイント」)するために使用される光学スキャナを含む。ここでは視野が20度×60度であり、角度分解能が0.1度(1度あたり10サンプル)であるフルフレーム型3Dライダー距離画像の生成は、120000パルス[(20×10×60×10)=120000)]の放出を必要とする。例えば自動車用ライダーに必要とされる毎秒30フレームの更新レートが必要とされるとき、毎秒約360万パルスを生成して、それらの戻り光を取得しなければならない。
【0031】
ライダーシステムの要素を組み合わせて構成するための多くの方法があり、レーザパルスエネルギー、ビーム発散、検出器アレイサイズおよびアレイ形式(単一素子、線形、2Dアレイ)、ならびに3D画像を取得するためのスキャナに関する考慮事項が含まれる。より高出力のレーザが使用される場合、画素化された検出器アレイを使用することができ、その場合、レーザの拡がり(ダイバージェンス)は、検出器アレイの視野よりも広い視野にマッピングされ、それに比例して大きい視野に適合するようにレーザパルスエネルギーを増加する必要がある。例えば、上記の3Dライダーと比較して、同じ分解能の3Dライダー画像を毎秒30回取得するためには、120000素子(例えば200×600素子)の検出器アレイを、120000倍のパルスエネルギーを有するレーザと共に使用することができる。この「フラッシュライダー」システムの利点は、光学スキャナを必要としないことである。一方、欠点は、より大きなレーザが、より多くのパワーを消費するより大型でより重いシステムをもたらすこと、およびレーザの所要のより高いパルスエネルギーが目の損傷を引き起こし得る可能性があることである。最大平均レーザ出力および最大パルスエネルギーは、システムがアイセーフであるという要件によって制限される。
【0032】
上記のように、多くのライダーシステムは、レーザ飛行時間のみを記録し、そのデータを使用して第1のターゲット戻りの(最近接)ターゲットまでの距離を取得することによって動作するが、いくつかのライダーシステムは、各レーザパルスから生成される1つまたは複数のターゲット戻り光の距離と強度の両方を得ることが可能である。例えば、複数のレーザパルス戻り光を記録することが可能なライダーシステムの場合、システムは、単一の送信パルスからの複数の戻り光の距離および強度を検出して記録することができる。そのようなマルチパルスライダーシステムでは、近くの物体からの戻りパルスの距離および強度、ならびにそのパルスのその後の反射光(近くの物体を通り過ぎた後、より遠くの物体で反射したもの)の距離および強度を記録することができる。同様に、空気中のダストから反射した太陽の輝きまたは別のレーザパルスが検出されて誤って記録された場合にも、マルチパルスライダーシステムは、視野内の実際のターゲットからの戻り光を依然として取得することができる。
【0033】
パルス戻り光の振幅は、ターゲットの鏡面拡散反射率、ターゲットのサイズ、ならびにターゲットの向きに主に依存する。近くの高反射性の物体からのレーザ戻り光は、遠くのターゲットからの戻り光の強度よりも何桁も大きい強度となる。多くのライダーシステムは、高感度の光検出器、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)を必要とし、光検出器は、それらのCMOS増幅回路と併せて、受光器コンポーネントが高い変換利得のために最適化されていると仮定して低反射率のターゲットを検出できるようにする。これらの検出器は、主にそれらの高い感度により、非常に強いレーザパルス戻り光によって損傷を受けることがある。
【0034】
しかし、レーザ測距に関連したより大きなダイナミックレンジに亘るパルス強度を取得することは、直接的に取得するには信号が大きすぎるので、困難となり得る。1つまたは複数の電圧閾値レベルから得られるシリアルビット符号化を使用して得られるビット変調出力の記録を使用することによって、強度を推測することができる。この技術は、多くの場合、タイムオーバー閾値(TOT)記録、または複数の閾値が使用されるときにはマルチタイムオーバー閾値(MTOT)記録と呼ばれる。
【0035】
図1は、安全機能を備える例示的な検出器システム100を示す。画素アレイを有する焦点面アレイ(FPA)105を備えることができる検出器アレイ102は、読出し集積回路(ROIC)などの読出しモジュール104に結合される。FPA105は、別の実施形態ではROICおよび検出器アレイとして示されているが、それらは、1つの材料要素、例えばシリコンFPAから構成されることもある。さらに、読出しモジュール106は、シリコン回路を備えることがあり、検出器モジュール102は、限定されないが、GaAs、InGaAs、InGaAsP、および/または他の検出器材料などの異なる材料を含むことがある。
【0036】
いくつかの実施形態では、検出器アレイ102は、単一の画素、あるいは、1次元(1D)、2次元(2D)および/または3次元(3D)のアレイ画素を備えることができる。インターフェースモジュール106は、読出しモジュール104からの情報を出力することができる。安全モジュール108は、検出器システム100の動作を分析し、1つまたは複数の障害を検出するとアラートを発生させることができる。いくつかの実施形態では、安全モジュール108は、以下でより詳細に述べるように、自動車安全度水準(ASIL)関連の機能を提供することができる。検出器システム100は、システムに関する1つまたは複数の調整された電圧を与えるために調整器110を含むことができる。
【0037】
図2は、直接光子注入機構に近接した一連の画素202を有する検出器アレイ200の一部分を示す。直接光子注入とは、検出器アレイ200からの光応答を促すために、1つまたは複数の画素202の近傍で光エネルギーを生成することをいう。既知の応答を促すことによって、検出器システムの全信号経路を検証することができる。
【0038】
一実施形態では、導電性トレース204は、光子を放出する温度まで加熱することができる。導電性トレース204は、検出器アレイ上のトレース、またはパッケージ内の検出器アレイに近接して配置されたワイヤでよい。導電性トレースは、導電体、例えば、限定されないがアルミニウム、銅、タングステンを含む金属、または酸化インジウムスズなどの材料でよい。例えば、導電性トレース204またはワイヤへの既知の電流印加と、検出器アレイから所期の応答をもたらす特定の方法で光子を放出する時間といった制御手法で導電性トレース204を加熱することができる。所期の応答が検出されない場合、障害を検出することができる。
【0039】
図示される実施形態では画素202の中心と位置合わせされて示されているが、導電性トレース204は、特定の用途の必要性を満たすために、少なくとも1つの画素に関して任意の実用的な位置に配置することができる。さらに、厚さ、長さ、高さ、形状など、導電性トレース204の幾何形状を変えることができる。いくつかの実施形態では、導電性トレース204の断面は、ワイヤのように円筒形でよく、または半導体メタライゼーションプロセス(半導体配線形成プロセス)においてなされるように長方形もしくは台形でもよい。
【0040】
別の実施形態では、PN接合206を画素202の近くに形成して、光子を放出する発光ダイオード(LED)208を与えることができる。PN接合206は、検出器アレイからの所期の応答をもたらす特定の方法で光子を放出するように刺激されうる。所期の応答が検出されない場合、障害が生じている可能性がある。
【0041】
PN接合206は、シリコンおよび非シリコン材料などの任意の適切な材料から形成することができる。一実施形態では、PN接合は、GaAs、InGaAs、またはInGaAsPを含む。
【0042】
刺激源は、検出器アレイおよびROIC(焦点面アレイ)の外部にあってもよく、ROICは、タイミングを同期するための制御を与えて光刺激の量も制御する。この刺激は、焦点面アレイ(focal plane array,FPA)の一例であるROICおよびAPDが存在するパッケージ内に含まれることがある。一実施形態では、パッケージの配置および追加の設計が、画素202を刺激するための所望のレベルの光エネルギーをもたらす限り、刺激は、任意のサイズまたは形状の外部LEDダイオードを備えることができる。一実施形態では、ROICは、所定の時刻で既知の信号をパルス化または印加するために、ライダーシステム内のライダーシステムレーザに信号を供給することができる。
【0043】
この刺激は、所望の光信号と干渉することがあり、したがって、この刺激は、以下の方法のうちの1つでタイミングをとることができるが、これら手法に限定されるものではない。1)外部刺激に応じてトリガされる方法であって、実行すべき所望のセルフチェックを示すもの。2)デバイスの起動時にトリガされる方法であって、電源投入するたびに適切に機能することを保証するもの。または3)実際の光の戻りを受信した後、ある時間の後、またはタイムアウトが起きた後にトリガされる方法であって、各パルス後のテストを可能にするもの(連続テストモード)。
【0044】
他の実施形態では、応答をシミュレートするために画素応答の代わりに電流源210を用いることができ、または多重化212することができる。このようにして、信号経路を刺激して検証することができる。いくつかの実施形態では、ライブ画素を置き換える、または画素のカソードもしくはアノードの間で多重化することによって、発光画素202が電流源の代わりに使用されることがある。別の実施形態では、発光画素は、読出し回路上にあり、刺激されたときに光を焦点面アレイ内の検出器アレイに向けて送出することができる。いくつかの場合には、これには、検出器アレイを薄くする必要があり得る。別の発光ダイが、検出器アレイまたは読出し回路ダイとは別に配置されてもよい。この3つのダイのソリューションは図示されていない。
【0045】
図3は、図1のシステムなどの検出器システム300の一部分を示し、これは、ROICの一部を形成し得る、またはROICに結合し得るものである。検出器システム300が単一の画素を備えることができることを理解されたい。フォトダイオード302は、バイアス電圧304、例えば60Vに結合される。図示される実施形態では、トランスインピーダンス増幅器(TIA)306がフォトダイオード302のカソードに結合され、比較器310の入力部に与えられる出力308を生成する。閾値電圧Vthは、比較器310への第2の入力を与え、比較器310は、閾値出力信号312を生成する。TIAは、フォトダイオード302からの電流を増幅することができる電流-電圧変換器を示すことを理解されたい。アラートモジュール314は、1つまたは複数の障害状態を示すためのアラートを発生させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、検出器システムは、特定の測距範囲内で応答が受信されなかったことを示すために、指定された最大距離でアラートを与えることができる。いくつかの実施形態では、通常動作は、パルスが受信および検出されるときにはアラートを発生させない。したがって、これは、非応答状況の「アクティブ」な指標である。これは、ファイバ遅延ループを介してシミュレートされたか、あるいは、現実に存在する既知の障害物がある状況において使用可能であり、当該時間区間内での無応答は、システムに問題があることを示す。
【0047】
図示される実施形態では、増幅器308の出力は、光子検出に応答したフォトダイオード304からの電流によって生成されるパルス320を生成するものである。パルス320は、比較器310の入力での電圧閾値Vthを超える振幅を有する。最大距離に対応するある最大時間窓322内で、比較器の出力312は状態を変えるべきである。比較器出力312が遷移しない場合、アラートモジュール314によってアラートを発生させることができる。トリガは、設定された時間324または窓内に応答がなかったことに対応することがある。
【0048】
検出動作を検証するために、画素を操作することができ、または、加熱素子、LED、電流源などによって生成される光刺激があり、障害が生じたときに画素回路がアラートを発生させるか否かを判定するためのものである。図示される実施形態では、回路の動作およびアラート発生をテストするためにテストパルス326を生成することができる。例えば、特定の距離よりも前に「ヒット」が生じるはずであるという想定がある場合、タイムアウト信号、例えば比較器出力312の遷移がないことが、動作不良を示す。いくつかの実施形態では、特定の用途の要件を満たすために、任意の実用的なタイムアウトを設定することができる。
【0049】
図3Aは、図3の回路300と同様の例示的な回路実装形態を示し、フォトダイオード302からの第1の入力と電流源342からの第2の入力とをもつマルチプレクサ340を追加したものである。マルチプレクサ340で選択された入力は、増幅器306に与えられ得る。上述したように、回路動作およびアラート発生を評価するために、電流源342によって刺激を生成することができる。
【0050】
図3Bは、電流源を含み得る刺激モジュール352から入力を受け付けて閾値検出器モジュール354への出力を生成する光検出回路350を有する例示的なブロック図を示す。例えば、刺激モジュール352は、図3でのテストパルス326を生成することができる。閾値検出器モジュール354は、選択された刺激に応答して回路の動作を検証することができる。例えば、上述したように、閾値検出器モジュール354は、1つまたは複数の閾値に対して信号を評価することができる。ROICは、アラートを与えることができる外部出力信号356を含むことができる。いくつかの実施形態では、出力信号356は、エンジン制御ユニット(ECU)、障害物検出コントローラ、車両制御ユニット、車両制御システム、または車両コンピュータなどの遠隔システムと結合し得る1つまたは複数のASIL信号を含むことができる。
【0051】
図4は、誤検出を低減するための機能を含む検出システムを示す。第1の曲線400は、所定のターゲットについて90%反射率に関する経時的な振幅を示し、第2の曲線402は、10%反射率に関する経時的な振幅を示す。第1の曲線400は、第1の電圧閾値Vth1に対応し、第2の曲線402は、第2の電圧閾値Vth2に対応する。
【0052】
例示的な実施形態では、第1の電圧閾値Vth1と第2の電圧閾値Vth2との間の電圧パルス410、412は、実際のものである可能性が高い戻り光によって生成される。第2の電圧閾値Vth2を下回る電圧パルス414は、ノイズである可能性が高い。第1の電圧閾値Vth1を上回る電圧パルス416は、ノイズである可能性が高い。
【0053】
見て分かるとおり、戻ってきた光エネルギーの減衰と距離との関係は、反射率により変えられる。反射率の範囲は、送信パルスの特性、想定されるターゲット特性、想定される距離などに基づいて選択可能である。検出器は、実際の光源を使用して較正されることができ、応答エネルギーは、時間にわたって妥当な応答範囲をモデル化されることができる。これは、誤ったパルスの排除を強化することによって、安全性を向上させる。さらに、実際のパルスをより良く区別することができる。
【0054】
図4Aは、第1および第2の比較器456、458の入力部に結合される出力を生成する増幅器454に入力を与えるフォトダイオード452を含む例示的な回路実装形態450を示す。図示される実施形態では、60Vのバイアス電圧459が、フォトダイオード452に印加される。任意の実用的なバイアス電圧レベルを使用することができることを理解されたい。第1の電圧閾値Vth1は、第1の比較器456の第2の入力に結合され、第2の電圧閾値Vth2は、第2の比較器458の第2の入力に結合される。第1および第2の比較器456、458の出力は、ANDゲート460への入力として与えられ、これは、増幅器454の出力が例えば図4の第1および第2の曲線400、402に従って第1および第2の電圧閾値Vth1、Vth2の間にあるときに状態を変える。
【0055】
図4Bは、例示的な実施形態を示す図であり、第1の電圧閾値Vth1が、高速デジタル-アナログ変換器(digital-to-analog converter,DAC)、または減衰RC回路を設定するDACによって生成される。
【0056】
図5は、ファイバレーザなど第1のタイプのレーザによって生成される第1のレーザパルス500と、ダイオード励起固体(diode pumped solid state,DPSS)レーザなど第2のタイプのレーザによって生成される第2のレーザパルス550との例示的なプロットを示す。レーザパルス500、550はそれぞれ、エネルギーが放出される異なるパターンを有する。第1のパルス500は、設定された時刻でのより短く、より鋭いパルスであり、第2のパルス550は、より浅い立ち上がりおよびより急峻な立ち下がりを有する、より長い/より広いパルスである。送信されたレーザパルス500、550の特性は、より低いエネルギーのパルスの検出を向上するために使用することができ、また、パルス特性に適合しないパルスの誤った検出を低減することもできる。
【0057】
第1のレーザパルス500を、低トリガ閾値502および高トリガ閾値504と比較して、パルスの持続時間、例えば、閾値502、504を上昇して横断する(立ち上がる)時刻から下降して横断する(立ち下がる)時刻までを計時することができる。複数のパルスであって、(距離およびパルス反射率に関するマージン内で)一致せず、および/または持続時間間で特定の比特性を満たさないパルスは、排除できる。比較的低いエネルギーのパルスを検出することができる。いくつかの実施形態では、図4の閾値Vth1、Vth2と同様の閾値を、図5に示される高トリガおよび低トリガに関して使用することができ、図4Aに示されるものと同様の回路構成を、受信されたパルスを処理するために使用することができる。
【0058】
見て分かるように、DPSSレーザパルス550は、レーザが発射される前に漏洩期間を有し、漏洩期間は、高トリガおよび低トリガに関する持続時間に対してタイミングをとることができ、互いに比較することもできる。
【0059】
例えば、検出器が第1のタイプのパルス500の受信を想定している場合、第2のタイプのパルス502を選別、例えばノイズとして排除することができる。いくつかの実施形態では、検出器は、想定されたタイプではないパルスを排除することができる。例えば、自動車用途では、様々なタイプのパルスを送信する多数のデバイスが存在し得る。パルス形状によってパルスを他のタイプのレーザから選別することによって、誤検出を低減することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、パルス特性は、例えば、製造特性が理解される設計によって評価されることができ、またはオフライン特性評価を使用してユニットごとに特性評価することができ、またはファイバ遅延ループもしくは既知の距離にある既知の反射率を有するターゲットを使用することによって評価されることができる。
【0061】
図6は、回路の動作不良を検出するためのバイアス変調を備える光検出器の一部の例示的な回路実装形態を示す。光検出器は、例えば、より高い外部電圧にある(他のカソードに結合された)共通カソード、および、TIAなどの電流測定回路下のより低い電圧にある内部の点という2つの端子にバイアスを受けることができる。下側バイアス点は、既知の周波数で既知の信号を生成するために変調される。当該応答のいくつかの特性は、「暗電流」などのバイアスに基づくものであるが、利得および他の特性に基づくものでもある。既知の注入周波数の信号に結合して測定することによって、既知の周波数の当該応答を所期の応答と比較することにより、フォトダイオードの調子および機能を監視することができる。当該応答からの偏差は、光検出器が適切に動作していないと考えられる安全性状態をトリガするために使用可能である。
【0062】
例示的な実施形態では、フォトダイオード600は、バイアス電圧源602に結合されたカソードと、TIAなどの増幅器604の入力に結合されたアノードとを有する。AC変調器606は増幅器604に結合され、したがって、増幅器の出力が、変調器からの信号によって変調される。ハイパスフィルタ614は、変調信号をフィルタリングすることができる。
【0063】
図6Aで見ることができるように、増幅器604の出力部からの変調信号は、フォトダイオード600からのパルス610と、変調器606からのAC変調信号によって生成される所期の出力と一致する変調信号振幅612とを含む。増幅器604の出力部における変調信号は、回路の適切な動作を示す。図6Bに示されるように、(変調周波数を上回るように設定された)ハイパスフィルタ614が増幅器出力をフィルタリングして変調信号を除去した後に、光出力が生成され得る。この構成により、フォトダイオード600の機能をチェックすることができる。信号比較/評価モジュール613は、所期の信号を実際の信号と比較して、障害を検出したり、および/またはアラートを発生させたりすることができる。
【0064】
他の実施形態では、バイアス電圧源602からの信号は、フォトダイオード600によって変調され得る。増幅器604の出力部での変調信号のパルス/振幅を検出することによって、フォトダイオード600の動作をチェックすることができる。
【0065】
図7は、本明細書で述べられる処理の少なくとも一部を行うことができる例示的なコンピュータ700またはコントローラを示す。例えば、コンピュータ700は、図2の選択モジュール214などのマスクコントローラ、および図5でのステップを実装するための処理を実行することができる。コンピュータ700は、プロセッサ702、揮発性メモリ704、不揮発性メモリ706(例えば、ハードディスク、または、フラッシュ、EEPROM、もしくはRAMなどの他のメモリ)、出力デバイス707および音声制御ユニット、および/または、(例えば、マウス、キーボード、ディスプレイなどの)グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)708を含む。不揮発性メモリ706は、コンピュータ命令712、オペレーティングシステム716、およびデータ718を記憶する。一例では、コンピュータ命令712は、揮発性メモリ704から出てプロセッサ702で実行される。一実施形態では、物品720は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な命令を備える。
【0066】
処理は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれら2つの組合せで実装されることがある。処理は、プロセッサ、記憶媒体、またはプロセッサによって読み取り可能な他の製造物品(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、および1つまたは複数の出力デバイスをそれぞれ含むプログラム可能なコンピュータ/マシン上で実行されるコンピュータプログラムで実装されることがある。入力デバイスを使用して入力されたデータにプログラムコードを適用して、処理を実行し、出力情報を生成することができる。
【0067】
システムは、データ処理装置(例えばプログラム可能なプロセッサ、1つのコンピュータ、または複数のコンピュータ)による実行のため、またはその動作を制御するために、少なくとも一部、(例えば機械読み取り可能な記憶デバイス内の)コンピュータプログラム製品による処理を実行することができる。そのような各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベルの手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で実装されることがある。しかし、プログラムは、アセンブリ言語または機械語で実装されてもよい。言語は、コンパイル型言語またはインタプリタ型言語でよく、例えばスタンドアロンプログラムとして、またはコンピューティング環境での使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくは他のユニットとして、任意の形式で展開されることがある。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように、もしくは1つのサイトにある複数のコンピュータ上で実行されるように、または複数のサイトにわたって分散されて通信ネットワークによって相互接続されるように展開されることがある。コンピュータプログラムは、汎用または専用のプログラム可能なコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体またはデバイス(例えば、フラッシュメモリを含むRAM/ROM、またはEEPROM、CD-ROM、ハードディスク、または磁気ディスケット)に記憶されることがあり、記憶媒体またはデバイスがコンピュータによって読み取られるときにコンピュータを構成および操作する。
【0068】
処理は、コンピュータプログラムを含んで構成された機械読み取り可能な記憶媒体として実装することもでき、実行時、コンピュータプログラムの命令がコンピュータを動作させる。
【0069】
処理は、システムの機能を実施するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行することができる。システムの全部または一部が、専用論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、汎用グラフィックプロセッシングユニット(GPGPU)、および/またはASIC(特定用途向け集積回路))として実装されることがある。
【0070】
本開示の例示的な実施形態を述べてきたが、それらの概念を組み込んだ他の実施形態も使用することができることが当業者にはここで明らかであろう。本明細書に含まれる実施形態は、開示される実施形態に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されるべきである。本明細書で引用されるすべての刊行物および参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0071】
本明細書で述べる様々な実施形態の要素を組み合わせて、特に上述していない他の実施形態を形成することもできる。単一の実施形態の文脈で述べる様々な要素が、個別に、または任意の適切な部分的な組合せで提供されてもよい。本明細書に特に述べられていない他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図5
図6
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】