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特表2024-512278造影画像を補正する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】造影画像を補正する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/50 20240101AFI20240312BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240312BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240312BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240312BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20240312BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240312BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240312BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   G06T 5/50 20060101ALI20240312BHJP
   G06T 5/40 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B6/50 500B
A61B6/50 511E
A61B6/03 560D
A61B6/03 560J
A61B6/00 550D
A61B5/055 380
A61B8/14
G06T7/00 616
G06T7/70 A
G06T1/00 290
G06T5/50
G06T5/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551988
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2022055350
(87)【国際公開番号】W WO2022189240
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,220
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21167840.4
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー フランク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒター ステール イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ペータース ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】エワルド アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーセン アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】レンガ マシアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィセッル トビアス
(72)【発明者】
【氏名】プラター デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C601
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA24
4C093DA02
4C093FF16
4C093FF28
4C096AA11
4C096DC19
4C096DC28
4C601DE06
5B057AA07
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE11
5B057DA07
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC23
5B057DC32
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA04
5L096EA03
5L096FA01
5L096FA32
5L096FA37
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096HA11
(57)【要約】
造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための方法及びシステムである。基準画像フレームは、造影画像フレームのシーケンスで定義され、基準画像フレームに対してセグメント化が実行されて、基準画像フレーム内の関心領域の位置が決定される。関心領域は、造影剤を有する基準画像フレームの領域である。造影画像のシーケンス内の他の画像フレームは、基準画像フレーム内の関心領域に対する関心領域内の造影剤濃度/画像強度の差に基づいて補正される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、
前記造影画像フレームのシーケンスから基準画像フレームを選択するステップと、
前記基準画像フレームに対してセグメンテーションを実行するステップと、
前記セグメンテーションに基づいて前記基準画像フレームにおける関心領域を識別するステップであって、前記関心領域は、前記造影剤を含む前記基準画像フレームの領域である、ステップと、
前記一つ又はそれより多くの造影画像フレームの各々と前記基準画像フレームとの間の前記関心領域における画像強度の変化に基づいて、前記画像フレームのシーケンスにおける一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける前記造影剤密度の差を補正するステップであって、前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットは、前記基準画像フレームと異なる少なくとも1つの画像フレームを含む、ステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記造影画像フレームのシーケンスは、心室不透明化画像フレームのシーケンスである、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記基準画像フレームは、
前記造影画像フレームのシーケンスにおける最初のM個のフレームを有する画像フレームのサブセットに対して初期セグメンテーションを実行するステップであって、Mは所定の数である、ステップと、
前記初期セグメンテーションに基づいて前記画像フレームのサブセットのどの画像フレームが最初の拡張末期フレームに対応するかを決定するステップと、
前記決定される画像フレームを前記基準画像フレームとして選択するステップと
によって選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関心領域は、前記基準画像フレームにおける血液プールの推定位置を有する、請求項2又は3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記関心領域を識別するステップはさらに、
前記造影画像フレームのシーケンスにおいて収縮末期フレームを識別するステップと、
前記識別される収縮末期フレームにおける血液プールの位置を推定するステップと、
前記基準画像フレームにおける血液プールの推定される位置と前記収縮末期フレームにおける推定される位置とを有する領域として前記関心領域を定義するステップと
を有する、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記基準画像フレームは、
前記造影画像フレームのシーケンスにおける最初のNフレームのどの画像フレームが最大の平均強度を有するかを決定するステップであって、Nは所定の数である、ステップと、
前記決定される画像フレームを前記基準画像フレームとして選択するステップと
によって選択される、請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記基準画像フレームは、前記造影剤密度が前記造影画像フレームのシーケンスにおいて最高になる画像フレームである、請求項1乃至6の何れか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記画像フレームのシーケンスにおける一つ又はそれより多くの画像フレームのセットを補正するステップは、
前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける各画像フレームについて、前記画像フレームにおける関心領域の平均未補正画像強度が前記基準画像フレームにおける関心領域の平均画像強度にマッピングされるように、強度値の非線形伝達関数を定義するステップと、
前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける各画像フレームについて、前記画像フレームについて定義される非線形伝達関数を前記画像フレームの少なくとも部分に適用するステップと
を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記画像フレームのシーケンスにおける一つ又はそれより多くの画像フレームのセットを補正するステップは、
前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける各画像フレームについて、前記画像フレームの少なくとも部分のグレー値統計量が前記基準画像フレームにおける関心領域のグレー値統計量にアラインされるように、ヒストグラムマッチングに基づく関数を定義するステップと、
前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける各画像フレームについて、前記画像フレームについて定義される関数を前記画像フレームの少なくとも部分に適用するステップと
を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記造影剤濃度の差は、前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットの各画像フレームの全体において補正される、請求項1乃至9の何れか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記造影剤濃度の差は、前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットの各画像フレームの部分において補正され、前記部分は前記関心領域を含む、請求項1乃至9の何れか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
処理システムを有する計算装置上で実行されるとき、前記処理システムに、請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法のステップの全てを実行させるコード手段を有する、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項13】
造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための処理システムであって、前記処理システムは、
前記造影画像フレームのシーケンスから基準画像フレームを選択し、
前記基準画像フレームに対してセグメンテーションを実行し、
前記セグメンテーションに基づいて、前記基準画像フレームにおける関心領域を識別し、前記関心領域は、前記造影剤を含む基準画像フレームの領域であり、
前記一つ又はそれより多くの造影画像フレームの各々と前記基準画像フレームとの間の関心領域内の画像強度の変化に基づいて、前記画像フレームのシーケンスにおける一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける造影剤密度の差を補正し、前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットは前記基準画像フレームと異なる少なくとも1つの画像フレームを含む
ように構成される、処理システム。
【請求項14】
前記基準画像フレームは、前記造影剤濃度が前記造影画像フレームのシーケンスにおいて最高になる画像フレームである、請求項13に記載の処理システム。
【請求項15】
被検体の医用画像を取得するための撮像装置と、
前記撮像装置から前記造影画像フレームのシーケンスを受信するようにさらに構成される、請求項13又は14に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は造影画像を補正する分野に関し、特に、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像に基づく診断用途では、臨床医がしばしば、差分時間フレームで取得される画像を比較する。造影撮像の場合、造影剤の劣化及び希釈が収集内の異なるタイムフレームに対応する同じ解剖学的特徴の画像が一般に、異なる不透明度を示すことを意味する。これは、臨床医が画像を比較することを困難にする。
【0003】
さらに、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤密度の時間変動は、例えばモデルベースのセグメンテーションなどのセグメンテーションアルゴリズムがシーケンスに適用されるときに誤差を引き起こす可能性がある。例えば、造影剤の時変分布は、生理学的構造に対応しない異なる薬剤密度の領域間の境界の検出につながり得る。このことは、造影画像フレームの連続からは自動的な決定が確実に得られないことを意味する。
【0004】
これらは、造影剤の時間変動が心周期などの生理学的プロセスによってさらに複雑化される造影画像アプリケーションにおける特に問題である。例えば、左脳室混濁化(LVO)における造影剤の時間変動は未破壊造影剤を含有する新しい血液が左心房に流入し、次いで左脳室に流入するとき、送信される超音波との相互作用による造影剤の経時的な部分的破壊と、心周期にわたる造影剤密度の変化との両方によって引き起こされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤の劣化及び/又は希釈の影響を低減する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、請求項によって規定される。
【0007】
本発明の一態様による実施例によれば、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するためのコンピュータ実装方法が提供される。
【0008】
コンピュータ実装方法は、前記造影画像フレームのシーケンスからの基準画像フレームを選択するステップと、前記基準画像フレームに対してセグメンテーションを実行するステップと、前記セグメンテーションに基づいて前記基準画像フレーム内の関心領域を識別するステップであって、前記関心領域は、前記造影剤を含む前記基準画像フレームの領域である、ステップと、前記一つ又はそれより多くの造影画像フレームの各々と前記基準画像フレームとの間の前記関心領域内の画像強度の変化に基づいて、前記画像フレームのシーケンス内の一つ又はそれより多くの画像フレームのセットにおける前記造影剤密度の差を補正するステップであって、前記一つ又はそれより多くの画像フレームのセットは、前記基準画像フレームと異なる少なくとも1つの画像フレームを含む、ステップとを有する。
【0009】
この方法は、造影心臓超音波のような造影剤密度の複雑な時間依存性を有する場合でも、造影画像フレームのシーケンスにおける画像フレーム間の造影剤密度の差(すなわち変化)を補正することを可能にする。言い換えれば、実施形態は、基準画像の関心領域を使用して、造影剤密度のフレーム間の差を補正することを提案する。造影剤濃度の差を補正することは、造影剤の経時変化から生じる効果と生理学的に関連する処理によって生じる効果とを臨床医が区別する必要性を低減するので、画像フレームをより容易に比較することができ、画像フレーム内の特徴を解釈する信頼性を向上させることを意味する。
【0010】
造影画像フレームのシーケンスは、1次元(1D)画像、2次元(2D)画像、又は3次元(3D)画像に基づくことができる。
【0011】
基準画像フレームは高い平均造影剤密度を有する画像フレームであるように選択されてもよく、これにより、より低い平均造影剤密度を有する画像フレームよりもセグメンテーションに適したものとなる。一旦、補正が適用されると、セグメンテーションは、セグメンテーションのために低すぎる造影剤密度を有していたフレームに対して確実に実行され得る。この基準画像フレームのセグメント化を使用して関心領域を識別することにより、関心領域に適した領域を正確に識別する信頼性が向上する。
【0012】
基準画像フレーム内の関心領域は、画像フレームのシーケンスにわたって造影剤密度を追跡するのに適した領域として定義され得る。関心領域は、大部分の造影剤を含む1つ以上の解剖学的構造を含んでもよく、領域がシーケンス内の各画像フレーム内に同じ1つ以上の解剖学的構造を含むことが期待されるように定義されてもよい。
【0013】
本発明者らは完全な画像フレームの強度値ではなく、一連の画像にわたる関心領域における画像強度の変化に基づいて補正を行うことにより、より正確な補正が得られることを認識した。関心領域は造影剤を含む領域として選択されるので、関心領域における画像強度は関心領域における造影剤密度の代用として作用する。
【0014】
補正は造影画像フレームのシーケンス内のすべての画像フレームに、又は造影画像フレームのシーケンスのサブセット(すなわち、すべてではない)に適用され得る。例えば、補正は、基準画像フレームの後のシーケンス内の全ての画像フレームを含むシーケンスのサブセットに適用されてもよい。
【0015】
特定の例では、造影画像のシーケンス内の1つ又は複数の画像フレームのセットが複数の画像フレームを含む。いくつかの例では、1つ又は複数の画像フレームのセットが(シーケンス内の他の画像フレームを補正するための参照情報を提供するので)基準画像を含まない。
【0016】
画像フレームのシーケンスにおける1つ又は複数の画像フレームのセットにおける造影剤濃度の差を補正することは、1つ又は複数の造影画像フレームの各々と基準画像フレームとの間の関心領域内の画像強度の変化(すなわち、差)に基づく。言い換えると、最初の画像フレームと基準画像フレームとの間の画像強度の差は、最初の画像フレームにおける画像強度を補正するために使用される。
【0017】
随意に、造影画像フレームのシーケンスは心室混濁画像フレームのシーケンス、例えば、左心室混濁画像フレーム又は右心室混濁画像フレームである。
【0018】
本方法は、左心室内の造影剤の密度が時間著しくかつ複雑に変化するので、左心室混濁(LVO)画像、例えばLVO超音波画像を補正する際に使用するのに特に適している。この時間変動は血流に起因し、1つ又は複数の超音波トランスデューサによって撮像されるとき、そのような時間変動はまた、超音波による造影剤の破壊に起因する。
【0019】
基準画像フレームは造影画像フレームのシーケンス内の最初のMフレームを含む画像フレームのサブセットに対して初期セグメント化を実行すること(Mは所定の数)、初期セグメント化に基づいて、画像フレームのサブセットのうちのどの画像フレームが最初の拡張末期フレームに対応するかを決定すること、及び決定される画像フレームを基準画像フレームとして選択することによって選択され得る。
【0020】
LVO画像のシーケンスにおける最初の拡張末期フレームは一般に、最高又はほぼ最高の造影剤密度を有し、したがって、適切な基準画像フレームを作成する。
【0021】
関心領域は、基準画像フレーム内の血液プールの推定位置を含むことができる。血液プールは左脳室混濁化における造影剤の大部分を含み、典型的には、造影剤密度の変化に反応する左脳室における最初の解剖学的構造であり、したがって、関心領域に適した場所である。さらに、血液プールの単純な形状は、血液プール内の画像強度が例えば、心筋などの薄い構造よりも容易に識別され、追跡されることを可能にする。
【0022】
関心領域を識別するステップは、造影画像フレームのシーケンス内の収縮末期フレームを識別するステップと、識別される収縮末期フレーム内の血液プールの位置を推定するステップと、基準画像フレーム内の血液プールの推定位置と収縮末期フレーム内の推定位置とを含む領域として関心領域を定義するステップとをさらに含むことができる。
【0023】
このようにして、関心領域は、関心領域がシーケンス内のすべての画像フレームにおいて血液プール内にあると予想され得るように定義され得る。これにより、血液プール中の造影剤密度をシーケンスにわたって追跡することができる。
【0024】
基準画像フレームは、造影画像フレームのシーケンスにおける最初のNフレームのうちのどの画像フレームが最大の平均強度を有するかを決定し(Nは所定の数)、決定される画像フレームを基準画像フレームとして選択することによって選択されてもよい。
【0025】
造影剤密度は時間と共に全体的に減少し、したがって、シーケンス内の最も初期の画像フレームは、適切に高い造影剤密度を有する画像フレームを含むことが予想される。これらのフレームの中で最大の平均強度を有する画像フレームは、最高造影剤密度を有する画像フレームに対応する。Nは、好ましくは10未満、例えば好ましくは5未満である所定の数であってもよい。
【0026】
基準画像フレームは、造影剤濃度が造影画像フレームのシーケンスにおいて最高画像フレームであってもよい。最高造影剤密度を有する画像フレームは、セグメンテーションを実行するのに最も適したフレームである。
【0027】
画像フレームのシーケンス中の1つ又は複数の画像フレームのセットを補正するステップは1つ又は複数の画像フレームのセット中の各画像フレームについて、画像フレーム中の関心領域の平均未補正画像強度が基準画像フレーム中の関心領域の平均画像強度にマッピングされるように、強度値の非線形伝達関数を定義するステップと、1つ又は複数の画像フレームのセット中の各画像フレームについて、画像フレームについて定義される非線形伝達関数を画像フレームの少なくとも一部に適用するステップとを備え得る。
【0028】
非線形伝達関数は造影剤の密度が経時的に変化せず、造影画像フレームのシーケンスにわたってより均一な外観を生成する仮想シナリオに類似するように、画像を修正するように設計される。
【0029】
非線形伝達関数における強度の連続写像は、修正処理におけるスプリアス強度エッジの導入が回避されることを意味する。
【0030】
画像フレームのシーケンス内の1つ又は複数の画像フレームのセットを補正するステップは、1つ又は複数の画像フレームのセット内の各画像フレームについて、画像フレームの少なくとも部分グレー値統計量が基準画像フレーム内の関心領域のグレー値統計量に位置合わせされるようにヒストグラムマッチングに基づく関数を定義するステップと、1つ又は複数の画像フレームのセット内の各画像フレームについて、画像フレームについて定義される関数を画像フレームの少なくとも一部に適用するステップとを含むことができる。
【0031】
この方法は、補正される画像フレームと基準フレームとの間のグレー値分布のより高い変位値をアラインさせる。
【0032】
1つ又は複数の画像フレームのセット中の各画像フレームについて、非線形伝達関数は画像フレームの全体に、又は画像フレームの一部(のみ)に適用され得、好ましくは、その一部は関心領域を含む。造影剤の時間変動性は造影剤を含む解剖学的構造における画像強度にほとんど影響を及ぼし、これらの領域は一般に、関心領域の近くに見出される。本出願の文脈において、「部分」は、画像の全体を含まない。
【0033】
基準画像フレームに対して実行されるセグメンテーションは、モデルベースのセグメンテーションであってもよい。代替的に、任意の他の適切なセグメンテーション方法、例えば、ディープラーニングベースのボクセルセグメンテーション方法が使用されてもよい。
【0034】
また、処理システムを有する計算装置上で実行されると、処理システムに、本明細書に記載の任意のステップの全てを実行させる、コード手段を含むコンピュータプログラムプロダクトが提案される。
【0035】
造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための処理システムも提案され、処理システムは造影画像フレームのシーケンスから基準画像フレームを選択し、基準画像フレームに対してセグメンテーションを実行し、セグメンテーションに基づいて基準画像フレームにおける関心領域を識別し、関心領域は造影剤を含む基準画像フレームの領域であり、1つ以上の造影画像フレームの各々と基準画像フレームとの間の関心領域内の画像強度の変化に基づいて、画像フレームのシーケンスにおける1つ以上の画像フレームのセットにおける造影剤濃度の差を補正し、1つ以上の画像フレームのセットは、基準画像とは異なる少なくとも1つの画像フレームを含むように構成される。
【0036】
基準画像フレームは、造影剤濃度が造影画像フレームのシーケンスにおいて最高画像フレームであってもよい。
【0037】
被検体の医用画像を取得するための撮像装置と、撮像装置から造影画像フレームのシーケンスを受信するようにさらに構成される前述の処理システムとを備えるシステムも提案される。前記撮像装置は例えば、超音波撮像装置、磁気共鳴(MR)撮像装置、コンピュータトモグラフィ(CT)撮像装置、x線撮像装置、又は造影撮像に適した任意の撮像装置であってもよい。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0039】
本発明の実施例は、添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態による、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための方法を示す。
図2】左心室混濁化画像フレームのシーケンスにおける最初の拡張末期フレームと最初の収縮末期フレームとの間の異なるレベルの混濁化の例を示す。
図3】本発明の実施形態による、左心室混濁化画像のシーケンスにおける基準画像フレームのセグメント化と、基準画像フレームにおける関心領域の識別とを示す。
図4】造影画像フレームの例示的なシーケンスの時間に対する造影剤密度のグラフを示す。
図5】左心室混濁化画像フレームのシーケンスに対する画像フレームインデックスに対する関心領域の例における平均画像強度のグラフを示す。
図6】本発明の実施形態による、造影画像フレームの造影剤濃度の差を補正するために使用される例示的な非線形伝達関数を示す。
図7】非線形伝達関数を使用した左心室不透明化画像フレームのシーケンスの補正の例示的な結果を示す。
図8】本発明の実施形態による、撮像装置及び処理システムを備える、造影画像フレームのシーケンスを取得及び補正するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0042】
詳細な説明及び特定の例は装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解される。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるのであろう。図は単に概略的なものであり、縮尺通りに描かれていないことを理解される。また、同じ又は同様の部分を示すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用されることを理解される。
【0043】
本発明の概念によれば、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための方法及びシステムが提案される。基準画像フレームは、造影画像フレームのシーケンスで定義され、基準画像フレーム上でセグメント化が実行されて、基準画像フレーム内の関心領域の位置が決定される。関心領域は、造影剤を含む基準画像フレームの領域である。造影画像のシーケンス内の他の画像フレームは、基準画像フレーム内の関心領域に対する関心領域内の造影剤濃度/画像強度の差に基づいて補正される。
【0044】
実施形態は画像フレームの適切な領域における強度値の変化又は差異に基づいて造影剤濃度の差異を補正することはフル画像フレームの強度値に基づく補正よりも正確な補正を提供し、補正に基づく適切な領域はセグメンテーションに適した基準画像フレームを最初に識別し、基準画像フレームに対してセグメンテーションを実行して造影剤を含む解剖学的構造を識別することによって識別され得るという認識に少なくとも部分的に基づく。
【0045】
例示的な実施形態は例えば、造影心臓超音波システムなどの造影医用イメージングシステムにおいて使用されてもよい。
【0046】
図1は、造影画像フレームのシーケンスにおける造影剤濃度の差を補正するための方法100を示す。造影画像フレームのシーケンスは、医用画像取得において取得される造影画像フレームの何れかのシーケンスであってもよい。例えば、シーケンスは心室不透明化画像フレームのシーケンス、例えば、左心室不透明化画像フレーム又は右心室不透明化画像フレームのような、造影超音波画像フレームのシーケンスであってもよい。
【0047】
この方法はステップ110から始まり、ここでは、基準画像フレームが造影画像フレームのシーケンスから選択される。基準画像フレームは高い造影剤濃度を有する画像フレームであり、例えば、基準画像フレームは、造影画像フレームのシーケンスにおいて造影剤濃度が最高画像フレームであってもよい。
【0048】
造影画像のシーケンスにおいて適切な基準フレームを選択するための様々な方法が想定される。いくつかの例では、基準フレームが最大平均強度を有するシーケンス内の画像フレームを識別することによって、造影画像フレームのシーケンスに対応する画像データから直接決定され得る。大きい平均強度は、高い造影剤密度を示す。
【0049】
最高造影剤密度を有する画像フレームは、造影剤密度が一般に経時的に低下するので、造影画像フレームのシーケンスの初期に見出されることが予想され得る。したがって、いくつかの例ではシーケンスの最初の数個の画像フレームのみが、基準画像フレームを選択するために使用され得る。例えば、シーケンス内の最初のN個の画像フレームのうちのどれが最大の平均強度を有するかが決定され得、ここで、Nは所定の数であり、このフレームは基準画像フレームとして選択され得る。Nは例えば、10未満の数、例えば、5未満の数であってもよい。一例では、N = 3である。
【0050】
他の例では、適切な基準画像フレームを選択するときに、生理学的プロセスが造影剤密度にどのように影響するかの知識を使用することができる。例えば、左/右心室混濁化の場合、造影剤を含む新しい血液が左/右心室に流入することにつれて、造影剤密度は拡張期中に増加し、次いで、造影画像フレームを得るために使用される超音波が造影剤と相互作用することにつれて、再び減少する。
【0051】
(典型的には静脈注射を使用して導入される)造影剤は、血液が肺を通る/通過するときに希釈される傾向があるので、提案されるアプローチは、造影剤の密度に対する肺の影響により、左心室混濁化に特に有用である。しかしながら、本発明の利点は、左心室及び右心室の両方の不透明化技術において使用される場合に達成されることが理解されるのであろう。
【0052】
図2は、左心室混濁化画像フレームのシーケンスにおける最初の拡張末期(ED)フレーム200と最初の収縮末期(ES)フレーム250との間の異なるレベルの混濁化の例を示す。当業者は、右心室不透明化画像フレームのシーケンスが機能的に同一の方法で処理され得ることを理解するのであろう。
【0053】
図2に示すように、造影剤密度は、最初のESフレームよりも最初のEDフレームにおいて有意に高い。最初のEDフレームは時間造影剤の劣化及び希釈のために、後続のEDフレームよりも高い造影剤密度を有することが期待される。最初のEDフレームは、典型的には左心室混濁画像フレームのシーケンスにおいて、最高造影剤密度、又は最高造影剤密度に近い造影剤密度を有する。
【0054】
したがって、左心室不透明化画像フレームのシーケンスにおける最初のEDフレームは、基準画像フレームに適した選択肢である。したがって、基準画像フレームは最初のEDフレームを識別し、このフレームを基準画像フレームとして選択することによって、左心室不透明化画像フレームのシーケンスから選択され得る。例えば、モデルベースのセグメンテーションなどの初期セグメンテーションは、シーケンス内のどの画像フレームが最初のEDフレームに対応するかを決定するために実行され得る。
【0055】
最初のEDフレームがシーケンスの開始に向かって発見されるので、最初のセグメント化は、最初の数個の画像フレームに対してのみ実行され得る。例えば、初期モデルベースのセグメント化は、左心室混濁化画像フレームのシーケンス内の最初のM個のフレームを含む画像フレームのサブセットに対して実行されてもよく、ここで、Mは所定の数である。サブセット中のどの画像フレームが最初のEDフレームに対応するかは、次いで、初期モデルベースのセグメント化に基づいて決定され得、最初のEDフレームに対応すると決定される画像フレームが基準画像フレームとして選択され得る。
【0056】
図1に戻ると、ステップ120において、選択される基準画像フレームに対してセグメント化が実行される。セグメンテーションは例えば、モデルベースのセグメンテーションであってもよいが、AIベースのセグメンテーション方法(すなわち、ニューラルネットワークなどの機械学習方法)などの代替セグメンテーション方法も想定される。
【0057】
基準画像フレームは、高い造影剤濃度を有するように選択されるので、基準画像フレームは一般に、画像補正を必要とすることなく、セグメント化によく適している。
【0058】
ステップ130において、セグメント化に基づいて、基準画像フレームにおいて関心領域(ROI)が識別される。ROIは、造影剤を含む基準画像フレームの領域、一部、又は部分である。例えば、ROIは、セグメンテーションにおいて識別される、例えば既知のパラメータ、文献に基づいて、造影剤の大部分を典型的に含む1つ以上の解剖学的構造に対応し得る。ROIの識別情報は例えば、特定の使用ケースシナリオに基づいて予め決定されてもよい。
【0059】
ROIは好ましくは全体の基準画像フレームの一部のみを形成し、すなわち、全体の基準画像フレームのすべてを形成するわけではない。関心領域(基準画像フレーム内で識別されるとき)は、造影画像フレームのシーケンスの他の画像フレーム内の同一の位置/領域にマッピングされ得ることが明らかであろう。したがって、基準画像フレーム内で識別される関心領域は、シーケンスの他の画像フレーム内の(同じサイズ及び位置の)関心領域に対応する。
【0060】
例えば、左心室混濁化の場合、ROIは、基準画像フレーム内の血液プールの推定位置を含むことができる。血液プールの位置の推定は、セグメンテーション結果に基づく。したがって、ROIは、(このシナリオでは)血液プールを表す画像の一部に対応し得る。画像のこの部分の位置は、セグメンテーション結果を使用して識別可能である。
【0061】
別の例として、ROIは、病変又は腫瘍の位置であってもよい。例えば、脳内の腫瘍又は病変は血液脳関門の漏出又は破壊を引き起こすことがあり、これは、血液中に存在する造影剤が腫瘍/病変を取り囲む脳の領域に漏出することを意味する。これにより、画像フレーム内の腫瘍/病変の外観が強調表示される。
【0062】
造影剤の大部分を含有する関心領域の他の好適な例は当業者には明らかであり、使用ケースシナリオ(すなわち、実施の詳細)に依存する。
【0063】
造影画像フレームのいくつかのシーケンスでは、解剖学的構造のサイズ及び位置が画像フレームのシーケンスにわたって変化し得る。例えば、一連の左心室混濁画像において、心臓の解剖学的構造は、心周期にわたってサイズ及び位置が変化する。別の例として、脳の一連の画像において、血流又は患者の位置の変化は、脳内の動きをもたらし得る。
【0064】
いくつかの例では、この変化がROIのサイズ及び位置の決定において考慮される。例えば、左心室混濁化画像フレームのシーケンスの場合、ROIを定義するとき、基準画像フレーム内の血液プールの推定位置に加えて、収縮終期における血液プールの推定サイズ及び位置を使用することができる。このようにして、ROIは、シーケンス内の画像フレームがほぼアラインしていると仮定して、シーケンス内のすべての(少なくともほぼ)画像フレームにおいて血液プール内にあるように定義することができる。
【0065】
基準画像フレーム内の血液プールの推定位置、ならびに血液プールの推定収縮末期(ES)サイズ及び位置に基づいて、適切な関心領域を識別するための様々な方法が想定される。一例では、ESフレームが例えば、最初のEDフレームを識別するために使用される初期セグメンテーションに基づいて、左心室混濁化画像のシーケンスにおいて識別される。次いで、血液プールの位置及びサイズは、いくつかのデータセットにわたって平均化される平均メッシュのEDフレームとESフレームとの間の差分モードを使用することによって、識別されるESフレームにおいて推定され得る。ROIは、ESフレーム内の血液プールの推定される位置及びサイズを有するものとして定義され得る。あるいは、基準画像におけるROIのサイズ及び位置が推定ES血液プールを、その重心に対して、f<1(例えば、f = 0. 8)である係数fによってスケーリングすることによって得られてもよい。ROIを定義するために推定ES血液プールを縮小することは、最初のEDフレームのセグメンテーション及び差分モードを使用するESフレームへのマッピングの両方における不確実性に起因して、血液プールのサイズ及び位置の推定にいくらかの不確実性があるので、関心のあるROIがすべてのフレームにおいて血液プール内に完全に留まる尤度を増加させる。別の例では、ROIを定義するために、適切な形態的動作(たとえば、侵食)が使用され得る。
【0066】
したがって、関心領域は造影剤を含む基準フレームの領域を識別することによって定義することができ、そのために、フレームのシーケンスの他のフレームは、造影剤を含む対応する関心領域(同じ位置及びサイズで)を有することが予測される。上述の説明は、このプロセスの一例を提供する。
【0067】
図3は上述のように、左心室混濁化画像のシーケンスにおける基準画像フレームのセグメント化及びROIの識別を示す。画像300は、血液プール305の位置を推定するために使用される基準画像フレームのセグメント化を示す。画像350は、ROI 355の識別を示す。ROI 355は上述のように、左心室画像のシーケンス内のすべてのフレームにおいて血液プールと定義されているように、基準画像フレーム内の血液プール305よりも小さい。
【0068】
図1に戻ると、ステップ140において、造影剤濃度の差が、造影画像のシーケンスにおける1つ以上の画像フレームのセットにおいて補正される。1つ又は複数の画像フレームのセットは、基準画像とは異なる少なくとも1つの画像フレームを含む。特定の例では、造影画像のシーケンス内の1つ又は複数の画像フレームのセットが複数の画像フレームを含む。いくつかの例では、1つ又は複数の画像フレームのセットが(シーケンス内の他の画像フレームを補正するための参照情報を提供するので)基準画像を含まない。
【0069】
補正の目的は1つ以上の画像を、造影剤濃度が基準画像フレームと同じであった場合にどのように見えるかを類似させるか、又はシミュレートするように修正することである(例えば、可能な限り近くに)。これにより、造影剤濃度のフレーム間の差を補正することができる。この考えを図4に示す。
【0070】
図4は、造影画像フレームの例示的なシーケンスの時間に対する造影剤密度の概略グラフ400を示す。補正されていない画像フレーム410の密度は、経時的に変化する。基準画像フレームは、最高造影剤密度を有するフレームであるように選択されている。補正画像フレーム420は、基準画像フレームと同じ造影剤濃度を有する。
【0071】
各画像フレームに適用される補正は、画像フレームと基準画像フレームとの間のROI内の画像強度の変化に基づく。完全な画像の強度ではなく、ROIのみの画像強度の使用は、補正の精度を改善する。
【0072】
したがって、基準画像フレームのROIにおける画像強度と、変更されるべき画像フレームの(同じ位置及びサイズにおける)ROIとの間の差が、変更されるべき画像フレームを補正するために使用される。
【0073】
図5は、ROI内の平均画像強度が造影剤密度の代用としてどのように使用され得るかを示す。図5は、左心室混濁化画像フレームのシーケンスに対する画像フレームインデックスに対する例示的なROIにおける平均画像強度のグラフ500を示す。グラフ500が示すように、ROIにおける平均画像強度は、心周期にわたる造影剤密度の予想される変動を示す。
【0074】
いくつかの例では、造影剤密度の差が未補正画像フレーム内のROIの平均画像強度が基準画像フレーム内のROIの平均画像強度にマッピングされるように設計される、1つ又は複数の画像フレームの各々の強度値の非線形伝達関数を定義することによって補正される。
【0075】
図6は、造影画像フレームの造影剤濃度の差を補正するために使用され得る例示的な非線形伝達関数を示す。補正される画像フレームにおける平均ROI強度に等しい強度は、基準画像フレームにおける平均ROI強度に等しい補正強度に調整される。この関数における強度の連続的なマッピングは、スプリアス強度エッジを導入することなく画像フレームを補正することを可能にする。また、最小及び最大強度値(ここではそれぞれ0及び255)の両方は伝達関数によって不変のままであり、これは、強度値の全体的なシフトが画像に適用されないことを保証することに留意される。
【0076】
他の例ではヒストグラムマッチング方法を使用して、1つ又は複数の画像フレームを補正することができ、その場合、補正されている画像フレーム(又は以下に説明するように、その領域)のグレー値統計量は参照フレーム内のROIのものにアラインされる。言い換えれば、ヒストグラムマッチング関数は、補正されている画像フレームの少なくとも部分グレー値統計量が基準画像フレーム内の関心領域のグレー値統計量に位置合わせされるように定義され得る。上述の平均強度値のみに基づくアプローチと比較して、そのような方法は、補正される画像と基準フレームの1つとの間のグレー値分布のより高い変位値もアラインさせる。画像フレームと基準画像フレームとの間のROI内の画像強度の変化に基づいて造影剤濃度の差を補正するためのさらなる方法は、当業者には明らかであろう。
【0077】
補正される1つ又は複数の画像フレームは、基準画像フレームを除くシーケンス内のすべての画像フレームを備えることができる。あるいは、補正が造影画像のシーケンスのサブセットのみに適用されてもよい。例えば、補正される1つ以上の画像フレームは基準画像フレームに続くシーケンス内の全ての画像フレームを含んでもよく、又は補正される1つ以上の画像フレームは臨床医による比較のために選択される画像フレームのみを含んでもよい。
【0078】
1つ以上の画像フレームの各々の補正は画像フレーム全体に適用されてもよく、又は補正の適用は画像フレームの一部に制限されてもよい。例えば、補正は、ROIに近い領域がROIからより遠い領域よりも造影剤を含有する可能性が一般に高く、したがって、造影剤の時間変動によって一般により影響を受けるので、ROIに近い及び/又はROIを含む画像の領域/部分のみに適用されてもよい。例えば、補正はROI内で完全に適用され、ROIのはるか外側の識別関数(すなわち、補正なし)に円滑に移行することができ、各ボクセルの遷移パラメータは、ROIに最も近い距離である。
【0079】
図7は、図6を参照して説明した非線形伝達関数を用いた、左心室混濁化画像フレーム700のシーケンスの補正のための例示的な結果750を示す。この例では、各画像に対する補正が各画像の全体に適用されている。
【0080】
図7に示されるように、未補正シーケンス700では、基準フレーム710が最高造影剤密度を有し、造影剤密度は時間(シーケンスが左から右に進むにつれて)減少する。補正されるシーケンス750では、造影剤密度がシーケンスにわたってほぼ一定である。
【0081】
図8は、本発明の一実施形態による、撮像装置810及び処理システム820を備える、造影画像フレームのシーケンスを取得及び補正するためのシステム800を示す。処理システム820自体は、本発明の一実施形態である。
【0082】
撮像装置810は、被検体830の造影画像フレーム815のシーケンスを取得するように構成される医用撮像装置である。図8では撮像装置が左心室混濁画像を取得するための超音波プローブであるが、造影画像フレームを取得するのに適した任意の撮像装置、例えば、MRIシステム、CTシステムなどを使用することができる。
【0083】
処理システム820は撮像装置810から造影画像フレーム815のシーケンスを受信し、シーケンス内の造影剤密度の差を補正するように構成される1つ又は複数のプロセッサを備える。
【0084】
処理システム820はシーケンス815から基準画像フレームを選択し、基準画像フレームに対してセグメンテーション(例えば、モデルベースのセグメンテーション)を実行し、セグメンテーションに基づいて基準画像フレーム内の関心領域を識別し、図1を参照して上述したように、1つ以上の画像フレームの各々と基準画像フレームとの間の関心領域内の画像濃度の変化に基づいて、シーケンス内の1つ以上の画像フレームを補正することによって、造影剤濃度の差を補正する。
【0085】
いくつかの実施形態では、処理システム820が基準画像フレームとして最高造影剤濃度を有するシーケンス815内の画像フレームを選択することができる。処理システムは、シーケンス内の最初の数フレームのうちのどの画像フレームが最大の平均強度を有するかを決定することによって、基準画像フレームを選択することができる。左心室不透明化画像フレームのシーケンスの場合、処理システムは例えば、シーケンス内の最初の数フレームに対して初期セグメンテーションを実行することによって、最初の拡張末期フレームを識別することによって基準画像フレームを選択することができる。
【0086】
シーケンス815が左心室混濁画像のシーケンスであるいくつかの実施形態では、処理システム820が血液プールを関心領域として識別することができる。処理システムは、セグメンテーションの結果に基づいて、基準画像フレーム内の血液プールの位置を推定することができる。処理システムはシーケンス815において収縮末期フレームを識別し、収縮末期フレームにおける血液プールの位置を推定し、基準画像フレーム及び収縮末期フレームの両方における血液プールの推定位置を含むように関心領域を定義することによって、関心領域をさらに定義することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、処理システム820が各画像フレームについて強度値の非線形伝達関数を定義し、画像フレームについて定義される非線形伝達関数を画像フレームの少なくとも一部に適用することによって、シーケンス815内の1つ又は複数の画像を補正することができる。非線形伝達関数は、画像フレーム内の関心領域の平均未補正画像強度が基準画像フレーム内の関心領域の平均画像強度にマッピングされるように、各画像フレームに対して定義される。いくつかの例では、処理システムが非線形伝達関数を画像フレーム全体に適用することができる。他の例では、処理システムが画像フレームを含む画像の一部のみに非線形伝達関数を適用し得る。
【0088】
この詳細な説明で説明される実施形態は文脈理解を改善するために、一連の左心室混濁画像に焦点を当ててきた。しかしながら、当業者であれば、提案される機構は任意の適切な画像フレームのシーケンス、例えば、右心室不透明化画像フレームのシーケンスと共に使用するように構成され得ることを理解するのであろう。
【0089】
開示される方法は、コンピュータで実施される方法であることが理解されるのであろう。従って、処理システム上でプログラムが実行されるときに、任意の記述される方法を実行するためのコード手段を含むコンピュータプログラムの概念も提案されている。
【0090】
本発明によるコンピュータ実施方法の任意の利点は、本明細書に開示されるシステム及びコンピュータプログラムに同様に適用される。
【0091】
本発明の上述のオプション、実装、及び/又は態様のうちの2つ以上が、有用であると考えられる任意の方法で組み合わされ得ることが、当業者によって理解されるのであろう。
【0092】
本発明の態様は、コンピュータによって実行され得るコンピュータ可読記憶デバイス上に記憶されるコンピュータプログラム命令の集合であり得る、コンピュータプログラム製品において実装され得る。本発明の命令はスクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)又はJavaクラスを含むがこれらに限定されない、任意の解釈可能又は実行可能なコード機構であってもよい。命令は完全な実行可能プログラム、部分的な実行可能プログラム、既存のプログラムに対する修正(例えば、更新)、又は既存のプログラムに対する拡張(例えば、プラグイン)として提供され得る。さらに、本発明の処理の一部は、複数のコンピュータ又はプロセッサに分散されてもよい。
【0093】
上述のように、処理ユニット、例えばコントローラは、制御方法を実施する。コントローラは必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装することができる。プロセッサは必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサを使用するコントローラの一例である。しかしながら、コントローラはプロセッサを使用して、又は使用せずに実装され得、また、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組合せとして実装され得る。
【0094】
上述のように、システムは、データ処理を実行するためにプロセッサを利用する。プロセッサは必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装され得る。プロセッサは典型的には必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサを使用する。プロセッサは、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1つ又は複数のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路との組合せとして実装され得る。
【0095】
本開示の様々な実施形態において使用され得る回路の例は従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むが、これらに限定されない。
【0096】
様々な実装形態では、プロセッサがRAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられ得る。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ又は複数のプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体はその上に記憶される1つ又は複数のプログラムがプロセッサにロードされ得るように、プロセッサ又はコントローラ内に固定され得るか、又は可搬型であり得る。
【0097】
開示される実施形態に対する他の変形は図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。請求項において、単語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】