(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】グルタメート-尿素-リジン由来(GUL由来)前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的化コンジュゲートの固相合成並びに治療剤及び/又は診断剤のための前駆体としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07C 275/16 20060101AFI20240312BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240312BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240312BHJP
A61K 33/245 20190101ALI20240312BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/18 20060101ALI20240312BHJP
A61K 33/241 20190101ALI20240312BHJP
A61K 33/244 20190101ALI20240312BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240312BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07C275/16
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61P13/08
A61P35/00
A61K33/24
A61K33/245
A61K33/34
A61K33/18
A61K33/241
A61K33/244
A61K47/54
C07D401/12 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552249
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 AU2022050154
(87)【国際公開番号】W WO2022178592
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522003486
【氏名又は名称】テリックス ファーマシューティカルズ (イノベーションズ) ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピント、アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ボンタン、アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】ルメール、リュカ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C084
4C085
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC47
4C063DD12
4C063EE05
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD54
4C076EE59
4C084AA12
4C084MA65
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB09
4C085KB10
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB18
4C085KB49
4C085LL18
4C086AA01
4C086HA01
4C086HA03
4C086HA04
4C086HA05
4C086HA06
4C086HA07
4C086HA09
4C086MA01
4C086MA65
4C086NA13
4C086ZA81
4C086ZB26
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC57
(57)【要約】
本開示は、グルタメート-尿素-リジン由来(GUL由来)前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的化コンジュゲートの固相合成のための方法を提供する。本開示はまた、このプロセスの重要な中間体、及びそれらの調製方法、例えば、式(V)の化合物を調製する方法に関する。前立腺癌の治療及び診断を含む、治療剤及び/又は診断剤のための前駆体としてのコンジュゲートの使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)の化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化1】
式中、
【化2】
が、固体支持体を示し、
PG
2及びPG
3が、独立して、カルボキシル保護基であり、
前記方法が、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させ、続いて、PG
1の選択的な脱保護を行うこと、を含み、
【化3】
式中、
【化4】
が、固体支持体を示し、
PG
1がアミン保護基であり、
【化5】
式中、
Xがカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3が、式(V)について定義される通りである、方法。
【請求項2】
式(IV)の化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化6】
式中、
【化7】
が、固体支持体を示し、
PG
1がアミン保護基であり、
PG
2及びPG
3が、独立して、カルボキシル保護基であり、
前記方法が、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させること、を含み、
【化8】
式中、
【化9】
が、固体支持体を示し、
PG
1がアミン保護基であり、
【化10】
式中、
Xがカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3が、式(IV)について定義される通りである、方法。
【請求項3】
式(I)の化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化11】
式中、
Lが、共有結合又は二官能性リンカーであり、
Aが、診断剤及び/又は治療剤のためのリガンドであり、
前記方法が、
請求項1に定義される式(V)の化合物又はその塩を式(VI)、式(VII)又は式(VIII)の化合物と反応させ、続いて、脱保護、及び前記固体支持体からの切断を行って、式(I)の前記化合物を提供すること、を含み、
【化12】
式中、
Lが、式(I)について定義される通りであるが、ただし、式(VI)では、Lが二官能性リンカーであり、
Aが、式(I)について定義される通りであり、
Xが、式(V)の前記化合物との反応で切断可能な基であり、
X’が、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基である、方法。
【請求項4】
式(X)の化合物
【化13】
(式中、
【化14】
は、固体支持体を示し、
Lは、共有結合、又は二官能性リンカー若しくはその保護された形態であり、
Aは、診断剤及び/若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
を前記固体支持体から切断すること、及び
任意に、前記化合物を脱保護すること、を含む、請求項3に定義される式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項5】
式(IX)の化合物
【化15】
(式中、
Lは二官能性リンカーであり、
X’は、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
をLG
L-Aと反応させて、
(式中、
LG
Lは、H、又は部分Lから部分Aへの結合を形成するように切断可能な基であり、
Aは、治療剤若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態である)
式(X)の化合物を提供すること、
【化16】
(式中、
【化17】
は、固体支持体を示し、
Lは二官能性リンカーであり、
Aは、診断剤及び/若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
前記固体支持体から式(X)の前記化合物を切断すること、及び
任意に、前記化合物を脱保護すること、
を含む、請求項3に定義される式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項6】
PG
2とPG
3とが同じである、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PG
2及びPG
3がそれぞれtert-ブチルである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
PG
1がallocである、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固体支持体が2-クロロトリチル樹脂である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Lが多官能性リンカーである、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記多官能性リンカーが、ブロモアセチル、チオール、スクシンイミドエステル、テトラフルオロフェニル(TFP)エステル、マレイミド、アミノ酸(天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含む)、ニコチンアミド及びニコチンアミド誘導体から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多官能性リンカーが、以下から選択される、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【化18】
【請求項13】
Aが、
TMT(6,6”-ビス[N,N”,N”’-テトラ(カルボキシメチル)アミノメチル-4’-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-2,2’:6’,2”-ターピリジン)、
DOTA(テトラキセタンとしても知られる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸)、
TCMC(DOTAのテトラ第一級アミド)、
DO3A(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス(酢酸)-10-(2-チオエチル)アセトアミド)、
CB-DO2A(4,10-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン)、
NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-三酢酸)ジアムサル(3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン)、
DTPA(ペンテト酸又はジエチレントリアミン五酢酸)、
CHX-A”-DTPA([(R)-2-アミノ-3-(4-イソチオシアナトフェニル)プロピル]-トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸)、
TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)、
Te2A(4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン)、
HBED(N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸)、
DFO(デスフェリオキサミン)及びその類似体若しくは誘導体(例えば、DFO*及びDFOsq(DFO-スクアラミド))、
HYNIC(6-ヒドラジノニコチンアミド)、及び
HOPO(3,4,3-(LI-1,2-HOPO)、又はこれらの誘導体
からなる群から選択されるリガンドである、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
Aが、DOTA、TETA、HBED、HYNIC及び
【化19】
から選択される、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
LG
L-Aが、式(XI)の化合物及び式(XII)の化合物から選択される、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【化20】
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の方法によって調製された化合物又はその塩。
【請求項17】
式(II)~(X)のいずれか1つから選択される化合物又はその塩:
【化21】
式中、
【化22】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
【化23】
式中、
Xは、-OH、又はカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
【化24】
式中、
【化25】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
【化26】
式中、
【化27】
は、固体支持体を示し、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
【化28】
式中、
【化29】
は、固体支持体を示し、
【化30】
式中、
Lは、二官能性リンカー、又は保護された形態の二官能性リンカーであり、
Aは、治療剤及び/若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
LG
Vは、式(V)の化合物との反応で切断可能な基であり、
LG
Aは、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基であり、
【化31】
式中、L及びLG
Aは、式(VI)で定義される通りであり、PG
2及びPG
3は、式(V)について定義される通りであり、
【化32】
式中、
【化33】
は、固体支持体を示し、
Lは、共有結合、又は二官能性リンカー若しくはその保護された形態であり、
Aは、診断剤及び/若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である。
【請求項18】
式(XII)の化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化34】
前記方法が、式(XIII)の化合物のPG
4を選択的に脱保護すること、を含み、
【化35】
式中、
PG
4が、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基である、方法。
【請求項19】
式(XIII)の前記化合物が、式(XIV)の化合物を
【化36】
(式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基である)
式(XV)の化合物と反応させることによって調製される、請求項18に記載の方法。
【化37】
【請求項20】
式(XIV)の前記化合物が、式(XVI)の化合物のBoc保護基を切断することによって調製され、
【化38】
式中、
PG
4が、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PG
4がベンジル保護基である、請求項18~請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項18~請求項21のいずれか一項に記載の方法によって調製された化合物又はその塩。
【請求項23】
式(XIII)、(XIV)及び(XVI)のいずれか1つから選択される化合物又はその塩:
【化39】
(式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基である)。
【請求項24】
式(XII)の前記化合物が、請求項18~請求項21のいずれか一項に記載の方法によって調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~請求項24のいずれか一項に定義される式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させること、を含む、請求項1~請求項24のいずれか一項に定義される式(IV)の化合物又はその塩を調製する方法。
【請求項26】
式(V)の化合物を提供するための、請求項1~請求項24のいずれか一項に定義される式(IV)の化合物中のPG
1の選択的な脱保護を含む、請求項1~請求項24のいずれか一項に定義される式(V)の化合物又はその塩を調製する方法。
【請求項27】
請求項1~請求項24のいずれか一項に定義される式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させること、及び部分PG
1を選択的に切断すること、を含む、請求項1~請求項15のいずれか一項に定義される式(V)の化合物又はその塩を調製する方法。
【請求項28】
放射性同位体との複合体を形成するのに使用するための、請求項16に記載の化合物又はその塩。
【請求項29】
放射性同位体と複合体化していてもよい、請求項16に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項30】
前記放射性同位体が、アクチニウム-225(
225Ac)、アスタチン-211(
211At)、ビスマス-212及びビスマス-213(
212Bi、
213Bi)、銅-64及び銅-67(
64Cu、
67Cu)、ガリウム-67及びガリウム-68(
67Ga及び
68Ga)、インジウム-111(
111In)、ヨウ素-123、-124、-125又は-131(
123I、
124I、
125I、
131I)(
123I)、鉛-212(
212Pb)、ルテチウム-177(
177Lu)、ラジウム-223(
223Ra)、サマリウム-153(
153Sm)、スカンジウム-44及びスカンジウム-47(
44Sc、
47Sc)、ストロンチウム-90(
90Sr)、テクネチウム-99(
99mTc)、イットリウム-86及びイットリウム-90(
86Y、
90Y)、ジルコニウム-89(
89Zr)から選択される、請求項28に記載の使用、又は請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前立腺癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療用放射性同位体と請求項16若しくは請求項28に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は請求項28に記載の医薬組成物を投与すること、を含む方法。
【請求項32】
前立腺癌を治療するための医薬品の製造における、請求項16若しくは請求項28に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項33】
前立腺癌腫瘍を撮像する方法であって、それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と請求項16若しくは請求項28に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は請求項29に記載の医薬組成物を投与すること、及び前記前立腺癌腫瘍を撮像すること、を含む方法。
【請求項34】
前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定する方法であって、
(a)それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と請求項16若しくは請求項28に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩との複合体の有効量を投与すること、
(b)PSMAが見られる、前記対象の部位に、前記複合体を濃縮させること、及び
(c)前記複合体の前記放射性同位体を検出し、
それによって、前記放射性同位体の検出により、前記癌(存在する場合)の画像を作成して、それによって、前記前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定することが可能になること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、オーストラリア仮出願第2021903428号(2021年10月26日出願)、及びオーストラリア仮出願第2021900532号(2021年2月26日出願)の優先権を主張する。AU2021903428及びAU2021900532の各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)結合部分の固相合成に関する。
【背景技術】
【0003】
グルタメート-尿素-リジン(GUL;化合物1)は、PSMAのための結合部分として役立ち得る。
【化1】
【0004】
化合物1の構造及び溶液相合成は、米国特許第9,309,193号、米国特許第9,878,980号、米国特許第10,640,461号及びJ.Med.Chem.44:298;2001に記載されている。
【0005】
PSMAは、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を含む様々な形態の前立腺癌の治療では、関心対象の標的である。前立腺癌治療では、PSMAを標的とするための1つの手法には、例えば、PSMA結合部分に連結された放射性核種担持リガンドによる治療による標的化放射性核種治療がある。
【0006】
PSMA標的化部分を造影剤と連結することは、放射性核種濃度に感受性の様々な技術(例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)など)に使用して前立腺癌腫瘍の画像を得ることができるため、PSMAを標的とすることは、前立腺癌の診断/予後にも有用であり得る。この標的化撮像はまた、腫瘍サイズを経時的に追跡することによって前立腺癌治療の効果をモニタリングするのに有用であり得る。
【0007】
したがって、GULの代替的な合成を提供する継続的な必要性が存在する。
【0008】
本明細書におけるいずれかの先行技術への言及は、この先行技術がいずれかの管轄権における共通の一般知識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連性があると見なされ、及び/若しくは他の先行技術部分と組み合わされると合理的に予測され得ることを承認又は示唆するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、GULの固相合成を提供する。固相合成は、溶液相合成に関連する多くの分離工程の必要性を回避する。本発明の固相合成はまた、所望の放射性核種リガンドとGULのコンジュゲートを形成するためのプラットフォームを提供する、様々な放射性核種リガンドをGULと連結させることができる柔軟な手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、式(V)の化合物又はその塩を調製する方法が提供され、
【化2】
式中、
【化3】
は、固体支持体を示し、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
方法は、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させ、続いて、PG
1の選択的な脱保護を行うことを含み、
【化4】
式中、
【化5】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
【化6】
式中、
Xはカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3は、式(V)について定義される通りである。
【0011】
別の態様では、式(IV)の化合物又はその塩を調製する方法が提供され、
【化7】
式中、
【化8】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
方法は、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させることを含み、
【化9】
式中、
【化10】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
【化11】
式中、
Xはカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3は、式(IV)について定義される通りである。
【0012】
別の態様では、式(I)の化合物又はその塩を調製する方法が提供され:
【化12】
式中、
Lは、共有結合又は二官能性リンカーであり、
Aは、診断剤又は治療剤のためのリガンドであり、
方法は、
・本明細書で定義される式(V)の化合物を式(VI)、式(VII)又は式(VIII)の化合物と反応させ、続いて、脱保護(PG
2及びPG
3を同時に又は別個の工程で切断することを典型的に含む)、固体支持体からの切断を行って、式(I)の化合物を提供することを含み、
【化13】
式中、
Lは、式(I)について定義される通りであるが、ただし、式(VI)では、Lは二官能性リンカーであり、
Aは、式(I)について定義される通りであり、
Xは、式(V)の化合物との反応で切断可能な基であり、
X’は、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基である。
【0013】
別の態様では、式(X)の化合物
【化14】
(式中、
【化15】
は、固体支持体を示し、
Lは、共有結合、又は二官能性リンカー若しくはその保護された形態であり、
Aは、診断剤及び/若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
を固体支持体から切断すること、及び
任意に、化合物を脱保護すること(切断工程中に、又は切断工程の前若しくは後に1若しくは複数の別個の工程でPG
2及びPG
3を同時に切断することを典型的に含む)、を含む、式(I)の化合物を調製する方法も提供される。
【0014】
別の態様では、
式(IX)の化合物
【化16】
(式中、
Lは二官能性リンカーであり、
X’は、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
をLG
L-Aと反応させて、
(式中、
LG
Lは、H、又は部分Lから部分Aへの結合を形成するように切断可能な基であり、
Aは、治療剤若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態である)
式(X)の化合物を提供すること、
【化17】
(式中、
【化18】
は、固体支持体を示し、
Lは二官能性リンカーであり、
Aは、診断剤及び/若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
固体支持体から式(X)の化合物を切断すること、及び
任意に、化合物を脱保護すること(切断工程中に、又は切断工程の前若しくは後に1若しくは複数の別個の工程でPG
2及びPG
3を同時に切断することを典型的に含む)、を含む、式(I)の化合物を調製する方法が提供される。
【0015】
別の態様では、式(XII)の化合物又はその塩を調製する方法が提供され、
【化19】
方法は、式(XIII)の化合物のPG
4を脱保護することを含み、
【化20】
式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交(orthogonal)するカルボキシル保護基である。
【0016】
別の態様では、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させ、続いて、任意に脱保護を行うことを含む、式(V)の化合物を調製する方法が提供される。式(V)、(II)及び(III)の化合物は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態で定義される通りであり得る。
【0017】
別の態様では、式(V)の化合物を提供するために、式(IV)の化合物中のPG1の選択的な脱保護を含む、式(V)の化合物又はその塩を調製する方法が提供される。式(V)及び(IV)の化合物は、本明細書に記載のいずれかの態様又は実施形態で定義される通りであり得る。
【0018】
別の態様では、式(IV)の化合物が提供され、方法は、式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させることを含む。
【0019】
別の態様では、本発明の方法によって調製されるか、又は本発明の方法から得ることができる化合物が提供される。いくつかの実施形態では、化合物は、本発明の方法によって調製された式(I)の化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、本発明の方法によって調製された式(XII)の化合物(あるいは中間体化合物)である。
【0020】
別の態様では、式(II)~(X)のいずれか1つの化合物(式(II)、(III)、(IV)、(V)、(V’)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)及び(X)の化合物を含む)又はその塩が提供される。
【0021】
別の態様では、式(XIII)、(XIV)及び(XVI)のいずれか1つの化合物(あるいは中間体化合物)又はその塩が提供される。
【0022】
さらなる態様では、放射性同位体などの治療剤及び/又は診断剤と複合体化していてもよい本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
さらに別の態様では、前立腺癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は複合体を含む組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0024】
別の態様では、前立腺癌を治療するための医薬品の調製における本発明の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0025】
別の態様では、前立腺癌腫瘍を撮像する方法であって、それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は複合体を含む組成物を投与すること、及び前立腺癌腫瘍を撮像することを含む方法が提供される。
【0026】
さらなる態様では、前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定する方法であって、
(a)それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は複合体を含む組成物を投与すること、
(b)PSMAが見られる、対象の部位に、複合体を濃縮させること、及び
(c)複合体の放射性同位体を検出し、
それによって、放射性同位体の検出により、癌(存在する場合)の画像を作成して、それによって、前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定することが可能になること、を含む方法が提供される。
【0027】
選択された定義
用語「アルキル」は、飽和直鎖及び分岐鎖炭化水素基を含むことが意図されている。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、5~21個、9~21個、又は11~21個の炭素原子、例えば、11、13、15、17又は19個の炭素原子を有する。直鎖アルキル基の例には、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル及びn-オクチルが挙げられる。分岐アルキル基の例には、限定するものではないが、イソプロピル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、及び2,2-ジメチルプロピルが挙げられる。
【0028】
用語「エステル」は、ヒドロキシル基の水素が飽和直鎖(すなわち、線形)又は分岐炭化水素基によって置換されているカルボン酸基を指す。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、及び2,2-ジメチルブチルがある。アルキル基は、C1~C6アルキル基であってよい。本明細書で使用される場合、例えば、「1~5」などの長さの範囲の限界を定義する表現は、1~5、すなわち、1、2、3、4及び5のいずれかの整数を意味する。言い換えれば、明示的に言及された2つの整数によって定義されるいずれかの範囲は、上記限界を定義するいずれかの整数と、上記範囲に含まれるいずれかの整数とを含み、開示することを意味する。アルキル基は、分岐アルキル基であってよい。
【0029】
本明細書で使用される用語「カルボキシル保護基」は、カルボキシル基のOH基を提供するために容易に除去され得、合成手順中の望ましくない反応からカルボキシル基を保護する基を意味することが意図されている。そのような保護基は、T.W.Greeneらによる編集のProtective Groups in Organic Synthesis(John Wiley&Sons、1999年)、及びFernando Albericio(Albert Isidro-Llobet及びMercedes Alvarezとともに)による「Amino Acid-Protecting Groups」Chemical Reviews 2009(109)2455-2504に記載されている。例には、限定するものではないが、アルキル基及びシリル基、例えば、メチル、エチル、tert-ブチル、メトキシメチル、2,2,2-トリクロロエチル、ベンジル、ジフェニルメチル、トリメチルシリル、及びtert-ブチルジメチルシリルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される用語「アミン保護基」は、アミン基のNH2基を提供するために容易に除去され得、合成手順中の望ましくない反応からアミン基を保護する基を意味することが意図されている。そのような保護基は、T.W.Greeneらによる編集のProtective Groups in Organic Synthesis(John Wiley&Sons、1999年)、及びFernando Albericio(Albert Isidro-Llobet及びMercedes Alvarezとともに)による「Amino Acid-Protecting Groups」Chemical Reviews 2009(109)2455-2504に記載されている。例には、限定するものではないが、アシル基及びアシルオキシ基、例えば、アセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、o-ニトロフェニルアセチル、o-ニトロフェノキシ-アセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4-クロロブチリル、イソブチリル、ピコリノイル、アミノカプロイル、ベンゾイル、メトキシ-カルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル(fmoc)、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル、2-トリメチルシリルエトキシ-カルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(alloc)、ベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロ-ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。さらなる例には、Cbz(カルボキシベンジル)、Nosyl(o-又はp-ニトロフェニルスルホニル)、Bpoc(2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル)、及びDde(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソヘキシリデン)エチル)が挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される用語「カルボキサミド保護基」は、カルボキサミド基のNH2基を提供するために容易に除去され得、合成手順中の望ましくない反応からカルボキサミド基を保護する基を意味することが意図されている。そのような保護基は、T.W.Greeneらによる編集のProtective Groups in Organic Synthesis(John Wiley&Sons、1999年)、及びFernando Albericio(Albert Isidro-Llobet及びMercedes Alvarezとともに)による「Amino Acid-Protecting Groups」Chemical Reviews 2009(109)2455-2504に記載されている。例には、限定するものではないが、9-キサンテニル(Xan)、トリチル(Trt)、メチルトリチル(Mtt)、シクロプロピルジメチルカルビニル(Cpd)、及びジメチルシクロプロピルメチル(Dmcp)が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「セラノスティック」は、診断及び治療に使用される化合物/材料の能力を指す。用語「セラノスティックな試薬」は、患者の疾患又は病態の検出、診断及び/又は治療の両方に適したいずれかの試薬に関する。セラノスティックな化合物/材料の目的は、異なる診断剤と治療剤との間に存在し得る、生体内分布及び選択性の望ましくない差を克服することである。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、「及び」若しくは「又は」、又はその両方を意味する。
【0034】
名詞に続く用語「(s)」は、単数形及び複数形、又はその両方を意図する。
【0035】
本明細書で使用される場合、文脈がそうでないことを要求する場合を除いて、用語「含む(comprise)」、並びに該用語の変形例、例えば、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、さらなる添加剤、成分、整数又は工程を排除することを意図されていない。
【0036】
また、本明細書に開示される数の範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)への言及、及びその範囲内のいずれかの範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への言及も組み込んでおり、したがって、本明細書に明示的に開示されるすべての範囲のすべての部分範囲が本明細書に明示的に開示されることが意図されている。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せは、本出願において同様の方法で明示的に述べられていると見なされるべきである。
【0037】
本発明の様々な特徴は、特定の値、又は値の範囲を参照して説明される。これらの値は、様々な適切な測定技術の結果に関連することが意図されており、したがって、いずれかの特定の測定技術に固有の誤差のマージンを含むと解釈されるべきである。この変動性を少なくとも部分的に説明するために、本明細書で言及される値のいくつかは、用語「約」によって表される。用語「約」は、値を説明するために使用される場合、その値の±10%、±5%、±1%又は±0.1%以内の量を意味し得る。
【0038】
本発明のさらなる態様、及び前の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として与えられ、かつ添付の図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、式(I)の化合物又はその塩を調製する方法に関し、
【化21】
式中、
Lは、共有結合又は二官能性リンカーであり、
Aは、診断剤又は治療剤のためのリガンドである。
【0040】
式(I)の化合物は、GUL由来PSMA標的化部分を診断剤又は治療剤のためのリガンド(部分A)と連結させる。したがって、式(I)の化合物は、PSMA標的化診断剤及び/又は治療剤の前駆体と呼ばれ得る。
【0041】
有利には、本発明の方法は、式(I)の化合物の容易な固相合成を可能にする。これらの方法は、類似の化合物の溶液相合成に関連する1又は複数の精製/分離工程の必要性を回避し得る。これらの方法はまた、様々なPSMA標的化前駆体治療剤又は診断剤を調製するためのプラットフォームとして役立つ有用な合成中間体を提供する。
【0042】
式(I)の化合物又はその塩を調製する方法は、
・式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(IV)の化合物を提供する工程、
【化22】
(式中、
【化23】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
【化24】
式中、
Xはカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基であり、
【化25】
式中、PG
1、PG
2及びPG
3は、式(II)及び(III)について定義される通りである)
・式(IV)の化合物を選択的に脱保護して(例えば、PG
1を切断することを含む)、式(V)の化合物を提供する工程、
【化26】
(式中、PG
2及びPG
3は、式(III)について定義される通りである)
・式(V)の化合物を式(VI)、式(VII)又は式(VIII)の化合物と反応させ、続いて、脱保護(PG
2及びPG
3を同時に又は別個の工程で切断することを典型的に含む)、固体支持体からの切断を行って、式(I)の化合物を提供する工程、を含む
【化27】
(式中、
Lは、二官能性リンカー、又は保護された形態の二官能性リンカーであり、
Aは、治療剤及び/若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
LG
Vは、式(V)の化合物との反応で切断可能な基であり、
LG
Aは、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基である)。
【0043】
式(I)の化合物
本明細書に記載の方法によって調製された式(I)の化合物が本明細書で提供される。
【0044】
L
いくつかの実施形態では、Lは共有結合である。これらの実施形態では、リジン残基側鎖の窒素原子は、部分Aに直接結合している。
【0045】
いくつかの実施形態では、Lは二官能性リンカーである。二官能性リンカーは、PUGのPSMA標的化機能、又はリガンドの放射性核種複合体形成を妨害することなく、PUG部分とリガンドとを一緒に共有結合的に連結することができるいずれかのジラジカル種であり得る。
【0046】
好適な二官能性リンカーには、ブロモアセチル、チオール、スクシンイミドエステル、テトラフルオロフェニル(TFP)エステル、マレイミド、アミノ酸(天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を含む)、ニコチンアミド、ニコチンアミド誘導体、又は当技術分野で公知のいずれかのアミン修飾化学若しくはチオール修飾化学を使用することが含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーは、1又は複数のアミノ酸、ニコチンアミド及びニコチンアミド誘導体から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーが1又は複数のアミノ酸から選択される場合、二官能性リンカーは、単一のアミノ酸、又はペプチド鎖に連結された2つ以上のアミノ酸であり得る。ペプチド鎖は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又はそれ以上のアミノ酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖は、これらの値のいずれか2つの間のいくつかのアミノ酸残基、例えば、2~10残基又は2~6残基を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーは、以下から選択される:
【化28】
【0050】
いくつかの実施形態では、二官能性リンカーは、キレート化部分を含み得る。これらの実施形態では、リンカーのキレート化部分は、異なる放射性核種をリガンドに結合し得る。いくつかの実施形態では、キレート化部分は、さらなるリガンド、例えば、DOTAに任意に結合していてもよい6-ヒドラジニルニコチンアミド部分であってよい。6-ヒドラジニルニコチンアミド部分は、テクネチウム-99(
99mTc)に典型的に結合し、DOTAは、ガリウム放射性同位体又はルテチウム放射性同位体に典型的に結合する。6-ヒドラジニルニコチンアミドキレート化部分を含むリンカーの一例は以下である。
【化29】
【0051】
A
本明細書に記載される化合物では、Aは、治療剤及び/又は診断剤のためのリガンドを表す。好ましくは、治療剤及び/又は診断剤は放射性核種である。
【0052】
典型的には、リガンドは、治療剤及び/又は診断剤のためのキレーターである。キレーターは、二座、三座、四座、五座、六座、七座又は八座であってよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リガンドは、TMT(6,6”-ビス[N,N”,N”’-テトラ(カルボキシメチル)アミノメチル-4’-(3-アミノ-4-メトキシフェニル)-2,2’:6’,2”-ターピリジン)、DOTA(テトラキセタンとしても知られる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸)、TCMC(DOTAのテトラ第一級アミド(tetra-primary amide))、DO3A(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス(酢酸)-10-(2-チオエチル)アセトアミド)、CB-DO2A(4,10-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-三酢酸)ジアムサル(Diamsar)(3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン)、DTPA(ペンテト酸又はジエチレントリアミン五酢酸)、CHX-A”-DTPA([(R)-2-アミノ-3-(4-イソチオシアナトフェニル)プロピル]-トランス-(S,S)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-五酢酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)、Te2A(4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン)、HBED(N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸)、DFO(デスフェリオキサミン)、並びにDFO*及びDFOsq(DFO-スクアラミド)、HYNIC(6-ヒドラジノニコチンアミド)及びHOPO(3,4,3-(LI-1,2-HOPO)などのその類似体若しくは誘導体、若しくは本明細書に記載の他のリガンド、又はその誘導体からなる群から選択される。好適な誘導体は、分子の残部への共有結合を可能にするための修飾を含み、カルボキシル基の代わりにアミドの存在などの官能基相互変換を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、診断剤又は治療剤は放射性同位体(又は放射性核種)である。好適な同位体の例には、アクチニウム-225(225Ac)、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212及びビスマス-213(212Bi、213Bi)、銅-64及び銅-67(64Cu、67Cu)、ガリウム-67及びガリウム-68(67Ga及び68Ga)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-123、-124、-125又は-131(123I、124I、125I、131I)(123I)、鉛-212(212Pb)、ルテチウム-177(177Lu)、ラジウム-223(223Ra)、サマリウム-153(153Sm)、スカンジウム-44及びスカンジウム-47(44Sc、47Sc)、ストロンチウム-90(90Sr)、テクネチウム-99(99mTc)、イットリウム-86及びイットリウム-90(86Y、90Y)、ジルコニウム-89(89Zr)が挙げられる。
【0055】
当業者であれば、これらの放射性核種の治療的又は診断的な可能性を認識しているであろう。本明細書で使用される場合、用語「診断用放射性核種」又は「診断用放射性同位体」は、診断方法に有用な、撮像技術のための造影剤として典型的に使用され得る放射性核種を指す。本明細書で使用される場合、用語「治療用放射性核種」は、治療に有用な、投与後に細胞傷害活性を典型的に有する放射性核種を指す。
【0056】
本明細書に記載されるいくつかのリガンドでは、本明細書に記載される放射性同位体のうちの1又は複数に対する親和性が増大していることが理解される。当業者であれば、特定の放射性核種を複合体化するためにどのリガンドを選択すべきかを容易に決定することができ、また、特定のリガンドを考慮すると、どの放射性核種を複合体形成のために選択すべきかを容易に決定することができる。また、当業者であれば、どの放射性核種を治療に使用してもよく、どの放射性核種を診断に使用してもよいかを決定することができる。例えば、ルテチウム-177(177Lu)の複合体は典型的には治療剤であるが、テクネチウム-99(99mTc)、ガリウム-67及びガリウム-68(67Ga及び68Ga)の複合体は典型的には診断剤である。
【0057】
いくつかの実施形態では、Aは、DOTA、TETA、HBED、HYNIC及び以下から選択される。
【化30】
【0058】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される:
【表1-1】
【表1-2】
又はその塩。
【0059】
方法工程
いくつかの実施形態では、本発明の式(I)の化合物を調製する方法は、
a.式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(IV)の化合物を提供する工程、
b.式(IV)の化合物を選択的に脱保護して、式(V)の化合物を提供する工程、
c.式(V)の化合物を式(VI)、式(VII)又は式(VIII)の化合物と反応させ、続いて、脱保護、及び固体支持体からの切断を行って、式(I)の化合物を提供する工程、を含む。
【0060】
標準的な固相合成と同様に、本発明の方法は、一連のカップリング(例えば、反応工程a及びc)、続いて脱保護工程を含み、固体支持体からの切断で終了する。
【0061】
反応工程
この方法の反応工程は、標準的な固相合成方法を使用して行われてもよい。いくつかの実施形態では、標準的なFmoc適合条件が使用される。好適なFmoc適合条件は、参照により全体が組み込まれるChen,W.C.及びWhite,P.D.「Fmoc Solid Phase Peptide Sythesis:A Practical Approach」2000(Oxford University Press;Hames,B.D.(Ed.))ISBN 0199637245に記載されている。
【0062】
好適な条件は、アミン反応物を、適切に置換されたカルボン酸(典型的には、酸塩化物、混合無水物などの活性化形態である)として提示されるカルボキシル反応物と、又はジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ヒドロキシベンゾチアゾール(Oxyma Pureとして入手可能なHOBt)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)などの1若しくは複数のカップリング試薬の存在下で、任意に4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの触媒とともに接触させて、アミド結合を形成することを典型的に含む。反応はまた、加熱(例えば、約30~60℃の温度まで)によって、又はマイクロ波照射によって達成される高温で行われてもよい。いくつかの実施形態では、同様の条件を使用して、式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させてもよく、式(V)の化合物を式(VI)~(VIII)の化合物と反応させてもよい。
【0063】
標準的な固相ペプチドカップリング条件の使用を容易にするために、固体支持体は、いずれかの好適な固相樹脂であってよい。いくつかの実施形態では、固相は、2-クロロ-トリチル樹脂(CT樹脂)である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、2-クロロトリチル部分を介して固体支持体に連結される。式(II)~(V)は、固体支持体に結合した単一の分子を示すが、各固体支持体には、複数のそのような化合物が典型的に充填されている。任意に、本明細書に記載の固相合成方法は、各反応工程の後に、保護されていない部位をキャッピングし、所望の生成物から分離するのが困難であり得る、単一部分を潜在的に欠く化合物の合成を防止するためのキャッピング工程(例えば、無水酢酸又は他の活性化キャッピング剤を用いる)を含み得る。
【0064】
脱保護
脱保護工程を行う条件は、選択された保護基に依存する。典型的には、脱保護は、保護された化合物を酸又は塩基を用いて処理することを含む。通常、保護基を切断するために複数の条件が可能であり、当業者であれば、選択された固体支持体、除去される保護基、及び化合物中の残りの官能基に応じて適切な条件を決定することができる。
【0065】
選択的脱保護工程は、1又は複数のさらなる保護基の存在下で保護基を切断することができる条件、例えば、PG2及びPG3の存在下でのPG1の脱保護の選択を必要とする。したがって、いくつかの実施形態では、PG1は、PG2又はPG3と同じではない。PG2及びPG3は、同じであっても異なっていてもよいが、好ましくはPG1とは異なる同じ保護基である。いくつかの実施形態では、選択的脱保護工程は、周囲よりも低い温度、例えば、0℃以下で行われる。
【0066】
いくつかの実施形態では、PG1はalloc(アリルオキシカルボニル)保護基である。
【0067】
いくつかの実施形態では、PG2はtert-ブチル保護基である。
【0068】
いくつかの実施形態では、PG3はtert-ブチル保護基である。
【0069】
いくつかの実施形態では、PG1はallocであり、PG2及びPG3はそれぞれtert-ブチルである。
【0070】
切断
成長する化合物を固体支持体から切断するのに必要な条件は、選択された固体支持体に依存する。典型的には、切断条件は、任意に高温で樹脂を酸(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA))又は塩基に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、固体支持体から化合物を切断するための条件は、化合物内のいずれかの残りの保護基の全体的な脱保護も可能である。
【0071】
本明細書に記載される固体支持体に共有結合した化合物を伴う反応工程のいずれかでは、試薬は、結合した種に対してモル過剰で、典型的には、少なくとも約1.1モル当量、少なくとも約5モル当量、少なくとも約10モル当量、少なくとも約25モル当量、少なくとも約50モル当量、少なくとも約100モル当量、少なくとも約1000モル当量又はそれ以上のモル過剰で使用され得る。モル過剰は、これらの値のいずれかの間、例えば、約1.1~約1000モル当量、又は約5~約100モル当量であり得る。
【0072】
中間体
本発明はまた、この方法の重要な合成中間体、及び中間体、例えば、式(II)~(X)の化合物を調製する方法に関する。
【0073】
式(II)~(X)の化合物中の各変数は、式(I)の対応する変数について定義される通りであり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、式(II)の化合物又はその塩が提供され、
【化31】
式中、
【化32】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基である。
【0075】
いくつかの実施形態では、固体支持体は固体支持体樹脂である。
【0076】
いくつかの実施形態では、固体支持体は2-クロロトリチル樹脂である。
【0077】
いくつかの実施形態では、PG1はallocである。
【0078】
いくつかの実施形態では、式(III)の化合物又はその塩が提供され、
【化33】
式中、
Xは、-OH、又はカルボニル活性化基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基である。
【0079】
いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン化物(Cl、Brなど)、活性化エステル(例えば、ペンタフルオロフェニルエステル、N-ヒドロキシスクシンアミドエステルなど)、混合無水物(例えば、アセチルなど)などから選択されるカルボニル活性化基である。好適な活性化カルボキシル基を調製する技術は、当技術分野で公知である。式(III)の化合物の活性化カルボキシルのカップリングは、本明細書に記載される標準的なカップリング条件(例えば、カップリング剤及び任意に触媒の存在下で)によって媒介され得るが、カルボキシル基が活性化されることから、カップリング剤は不要である場合がある。
【0080】
いくつかの実施形態では、Xは-OHである。これらの実施形態では、式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、活性化形態のカルボキシル基をインサイチュで典型的に提供するカップリング試薬によって媒介される。
【0081】
いくつかの実施形態では、PG2とPG3とは同じ保護基である。典型的には、PG2及びPG3は、式(II)の化合物のPG1とは異なるように選択されて、直交する保護基戦略を提供し、それらの選択的な脱保護を可能にする。いくつかの実施形態では、PG2及びPG3は、それぞれtert-ブチル基である。
【0082】
一態様では、本発明は、式(IV)の化合物又はその塩を提供し、
【化34】
式中、
【化35】
は、固体支持体を示し、
PG
1はアミン保護基であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基である。
【0083】
固体支持体、PG1、PG2及びPG3は、本明細書で定義される通りであり得る。
【0084】
一態様では、本発明は、式(V)の化合物又はその塩を提供し、
【化36】
式中、
【化37】
は、固体支持体を示し、
PG
2及びPG
3は、独立して、カルボキシル保護基である。
【0085】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、式(I)又は(II)で定義されるいずれかの固体支持体を含む、本明細書に記載のいずれかの好適な固体支持体であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、PG2及びPG3は、式(III)について定義される通りである。いくつかの実施形態では、PG2及びPG3は、それぞれtert-ブチルである。
【0087】
一態様では、本発明は、式(V’)の化合物又はその塩を提供し、
【化38】
式中、
【化39】
は、固体支持体を示す;
【0088】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、式(I)又は(II)で定義されるいずれかの固体支持体を含む、本明細書に記載のいずれかの好適な固体支持体であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、式(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物又はその塩が提供され、
【化40】
式中、
Lは、二官能性リンカー、又は保護された形態の二官能性リンカーであり、
Aは、治療剤若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
LG
Vは、式(V)の化合物との反応で切断可能な基であり、
LG
Aは、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基である。
【0090】
いくつかの実施形態では、LGV及びLGAは、アミン保護基、カルボキシル保護基及びカルボキサミド保護基から独立して選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、LGAはFmocである。
【0092】
いくつかの実施形態では、LGVは、-OH、又はカルボキシル活性化基である。LGvは、本明細書に記載のいずれかのカルボキシル活性化基であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、Lは、本明細書に記載のいずれかの二官能性リンカー又はその保護された形態である。当業者であれば、所望のリガンドに存在する反応性官能基に応じて適切な保護基を選択することができるであろう。例えば、リガンド内のカルボン酸部分は、tert-ブチルエステルとして保護され得る。
【0094】
式(VI)~(VIII)の化合物は、直接的(式(VII)及び(VIII))又は間接的(式(VI))に、式(V)の化合物の脱保護されたリジン側鎖アミンとの反応によって式(I)の化合物の-L-A部分を導入するためのシントンである。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、式(V)の化合物を、式(I)の化合物の-L-A部分を導入するためのいずれかの好適な化合物、例えば、式(VI)~(VIII)の化合物と反応させることを含み得る。
【0095】
式(VII)及び(VIII)の化合物は、それぞれ、式(I)について定義される-L-A部分の直接導入のためのシントンを表す。
【0096】
式(VI)の化合物は、-L-A部分を段階的に導入するシントンを表す。したがって、式(V)の化合物を式(VI)の化合物と反応させた後、方法は、脱保護、及び固体支持体からの切断の前に、式(IX)の化合物をLG
L-Aと反応させることをさらに含み得、式中、LG
Lは、H、又は部分Lから部分Aへの結合を形成するために切断可能な基であり、Aは、治療剤若しくは診断剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
【化41】
式中、L及びLG
Aは、式(VI)で定義される通りであり、PG
2及びPG
3は、式(V)について定義される通りである。
【0097】
いくつかの実施形態では、LG
L-Aは、式(XI)の化合物及び式(XII)の化合物から選択される。
【化42】
【0098】
式(XI)及び(XII)の化合物は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野におけるいずれかの好適な方法によって調製され得る。
【0099】
別の態様では、式(X)の化合物を、
【化43】
(式中、
【化44】
は、固体支持体を示し、
Lは、共有結合、又は二官能性リンカー若しくはその保護された形態であり、
Aは、診断剤若しくは治療剤のためのリガンド、又はその保護された形態であり、
PG
2及びPG
3は、独立して、H又はカルボキシル保護基である)
固体支持体からの切断をもたらし、任意に化合物を脱保護するのに適した条件に、1又は複数の工程で供することを含む、請求項1に定義される式(I)の化合物を調製する方法も提供される。
【0100】
本発明の方法は、式(V)の化合物中に結合したGUL由来PSMA標的化部分樹脂に対する様々なコンジュゲートの容易な固相合成を可能にする。
【0101】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させる(又はカップリングする)ことを含む、式(IV)の化合物又はその塩を調製する方法も提供される。有利には、式(IV)の化合物は、樹脂上での貯蔵に好ましい場合があり、必要に応じて式(V)の化合物を提供するために選択的に脱保護されてもよい。
【0102】
式(V)の化合物を提供するための、式(IV)の化合物中のPG1の選択的な脱保護を含む、式(V)の化合物又はその塩を調製する方法も提供される。
【0103】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させる(又はカップリングさせる)こと、及び部分PG1を選択的に切断することを含む、式(V)の化合物又はその塩を調製する方法も提供される。
【0104】
式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させる(又はカップリングさせる)こと、及び部分PG1、PG2及びPG3を選択的に切断することを含む、式(V’)の化合物又はその塩を調製する方法も提供される。これらの方法では、PG1、PG2及びPG3の切断は、化合物を固体支持体に接続する共有結合を切断するのに適していない条件下で行われる。部分PG1、PG2及びPG3の切断は、本明細書に記載のいずれかの好適な条件下で単一の脱保護工程で行われてもよい。いくつかの実施形態では、PG1は、PG2及びPG3とは別個の工程で脱保護される。当業者であれば、PG1で、並びにPG2及びPG3で好適なアミノ保護基を選択することができ、それらの除去のための好適な条件を理解するであろう。
【0105】
式(I)の化合物又はその塩を調製する方法も提供され:
【化45】
式中、
Lは、共有結合又は二官能性リンカーであり、
Aは、診断剤又は治療剤のためのリガンドであり、
方法は、
・本明細書で定義される式(V’)の化合物を式(VI)、式(VII)又は式(VIII)の化合物と反応させ、続いて、及び固体支持体からの切断を行って、式(I)の化合物を提供することを含み、
【化46】
式中、
Lは、式(I)について定義される通りであるが、ただし、式(VI)では、Lは二官能性リンカーであり、
Aは、式(I)について定義される通りであり、
Xは、式(V’)の化合物との反応で切断可能な基であり、
X’は、H、又は部分Lを部分Aのシントンと反応させる後続の工程で切断可能な基である。式(V’)の化合物の反応を伴う、式(I)の化合物を調製するこれらの方法の実施形態のいくつかは、脱保護工程のタイミングに関して式(V)の化合物の反応を伴う、式(I)の化合物を調製するための本明細書に記載されるものとは異なり(例えば、式(V’)の化合物を伴う反応では、PG
2及びPG
3の切断は、式(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物との反応の前に行われてもよい)、したがって、これらの方法では、工程のための適切な条件/試薬は、式(I)の化合物を調製するいずれかの方法について本明細書に記載される通りであり得ることが理解される。
【0106】
式(XII)の化合物を調製する方法
式(XII)の化合物又はその塩を調製する方法も本明細書で提供され、
【化47】
方法は、式(XIII)の化合物のPG
4を選択的に脱保護することを含み、
【化48】
式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基である。
【0107】
いくつかの実施形態では、PG4はベンジル保護基である。これに関連して、用語「ベンジル保護基」は、保護基が、ベンジル環が1又は複数の置換基によって任意に置換されている(すなわち、ベンジル環が非置換であっても置換されていてもよい)ベンジル基であることを意味すると理解される。ベンジル基のフェニル部分の所望により存在する置換基には、ヒドロキシ、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨード)が含まれ、ベンジルのメチレン部分の所望により存在する置換基には、それぞれ同じであっても異なっていてもよい、さらに任意に置換されたフェニル置換基が含まれる。好ましくは、フェニル部分の所望により存在する置換基は、ベンジル基のメチレン部分に対してパラ位にあってもよい。好ましい実施形態では、PG4は非置換ベンジルである。
【0108】
PG4を脱保護するための条件は、本明細書に記載されるものを含む、選択された保護基を切断するための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件であり得るが、条件は、tert-ブチルエステル保護基と直交する。典型的には、脱保護は、式(XIII)の化合物を塩基を用いて処理すること、又は式(XIII)の化合物を水素化分解に供することを含む。通常、保護基を切断するために複数の条件が可能であり、当業者であれば、除去される保護基、及び化合物中の残りの官能基に応じて適切な条件を決定することができる。
【0109】
PG4がベンジル保護基である実施形態を含むいくつかの実施形態では、脱保護工程は、PG4の水素化分解を含む。水素化分解のための条件は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知のいずれかの好適な条件であり得る。好適な条件の例には、ニッケル触媒、パラジウム触媒又は白金触媒などの好適な触媒の存在下での水素化が挙げられる。水素化は、大気条件(1気圧H2)下又は高圧下で(例えば、Parr水素化器又はフロー反応器などの加圧容器を使用することによって)行われてもよい。
【0110】
式(XIII)の化合物は、式(XIV)の化合物を
【化49】
(式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基であり、好ましくはPG
4はベンジル保護基であり、さらに好ましくはPG
4はベンジル保護基である)
式(XV)の化合物と反応させることによって調製され得る
【化50】
【0111】
反応工程のための条件は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知のいずれかの好適な条件であり得る。
【0112】
式(XIV)の化合物は、式(XVI)の化合物のBoc保護基を切断することによって調製され得、
【化51】
式中、
PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基であり、好ましくはPG
4はベンジル保護基であり、さらに好ましくはPG
4はベンジルである。
【0113】
Boc基を切断するための条件は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知のいずれかの好適な条件であり得る。いくつかの実施形態では、切断工程は、式(XVI)の化合物を塩酸などの酸に接触させることを含む。
【0114】
式(XVI)の化合物は、式(XVII)の化合物のカルボン酸基を
【化52】
PG
4のシントンと反応させることによって調製され得る。
【0115】
PG4を導入するための試薬及び条件は、本明細書に記載されるものを含む、選択された保護基を導入するための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件であり得る。通常、保護基を導入するために複数の条件が可能であり、当業者であれば、導入される保護基、及び化合物中の残りの官能基に応じて適切な条件を決定することができる。
【0116】
PG
4がベンジルである実施形態では、式(XVI)の化合物は、式(XVII)の化合物を式(XVIII)の化合物と反応させることによって調製され得、
【化53】
式中、Zは、OH又はハロゲン化物、好ましくは塩化物又は臭化物などの好適な脱離基である。
【0117】
したがって、いくつかの実施形態では、式(XII)の化合物を調製する方法は、
・式(XVII)の化合物をPG
4のシントン(例えば、式(XVIII)の化合物)と反応させて、式(XVI)の化合物を提供する工程、
【化54】
・式(XVI)の化合物のBoc保護基を切断して、式(XIV)の化合物を提供する工程、
【化55】
・式(XIV)の化合物を式(XV)の化合物と反応させて、式(XIII)の化合物を提供する工程、
【化56】
・式(XIII)の化合物のPG
4を(例えば、水素化分解によって)選択的に脱保護して、式(XII)の化合物を提供する工程、
のうちの1又は複数を含み、
【化57】
式中、PG
4は、tert-ブチルエステル保護基と直交するカルボキシル保護基であり、好ましくは、PG
4はベンジル保護基であり、さらに好ましくは、PG
4はベンジルである。
【0118】
本発明はまた、この方法の重要な合成中間体、並びに中間体、例えば、式(XIII)、(XIV)及び(XVI)の化合物を調製する方法に関する。
【0119】
この方法によって調製された式(XII)の化合物は、本明細書に記載される式(I)の化合物を調製する方法に使用され得る。したがって、式(XII)の化合物、及び式(XII)の化合物の調製に使用される合成中間体は、代替的に中間体化合物と呼ばれ得る。
【0120】
本明細書で開示及び定義される本発明は、言及されるか又は文章若しくは図面から明らかな個々の特徴のうちの2つ以上のあらゆる代替的な組合せに及ぶことが理解される。これらの異なる組合せはいずれも、本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0121】
化合物の代替的な形態
本明細書に記載の化合物の塩(本明細書で総称して式(I)~(X)の化合物と呼ばれる、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(V’)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)のいずれかの化合物を含む)は、好ましくは薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であり得るため、本開示の範囲内に含まれることが理解される。
【0122】
用語「薬学的に許容される」は、対象への投与時に式(I)の化合物又はその活性代謝産物若しくは残基を(直接的又は間接的に)提供することができるいずれかの塩、溶媒和物、互変異性体、N-オキシド、立体異性体及び/若しくはプロドラッグ又はいずれかの他の化合物を記載するために使用され得る。
【0123】
好適な薬学的に許容される塩には、限定するものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸及び臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸及び吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれる。
【0124】
塩基塩には、限定するものではないが、薬学的に許容されるカチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム、アルキルアンモニウム、例えば、トリエチルアミンから形成された塩、アルコキシアンモニウム、例えば、エタノールアミンから形成されたもの、及びエチレンジアミン、コリン又はアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン若しくはヒスチジンから形成された塩によって形成されたものが含まれる。薬学的に許容される塩の種類、及びそれらの形成に関する一般情報は、当業者に公知であり、「Handbook of Pharmaceutical salts」P.H.Stahl、C.G.Wermuth、初版、2002、Wiley-VCHなどの一般的なテキストに記載されている通りである。
【0125】
固体である化合物の場合、本発明の化合物、薬剤及び塩は、様々な結晶形態又は多形形態で存在してもよく、それらはいずれも、本発明の範囲内及び特定の式の範囲内にあることが意図されていることが当業者によって理解されるであろう。
【0126】
本明細書に記載される式は、適用可能な場合、溶媒和形態及び非溶媒和形態の化合物を包含することが意図されている。したがって、例えば、式(I)は、水和形態又は溶媒和形態、並びに非水和形態及び非溶媒和形態を含む、示された構造を有する化合物を含む。
【0127】
式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、多形若しくはプロドラッグは、溶媒和物の形態で提供され得る。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量の溶媒を含有し、水、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸などの薬学的に許容される溶媒を用いて結晶化のプロセス中に形成され得、溶媒和物は、非共有結合によって、又は結晶格子に孔を占有することによって結晶格子の一部を形成する。溶媒が水である場合、水和物が形成され、溶媒がアルコールである場合、アルコレートが形成される。本発明の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載のプロセス中に都合よく調製又は形成され得る。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供される化合物及び方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0128】
塩基性窒素含有基は、C1~6ハロゲン化アルキルなどの作用物質、例えば、塩化メチル、臭化メチル及びヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル及びヨウ化エチル、塩化プロピル、臭化プロピル及びヨウ化プロピル、並びに塩化ブチル、臭化ブチル及びヨウ化ブチル;硫酸ジメチル及び硫酸ジエチルのような硫酸ジアルキルなどを用いて四級化され得る。
【0129】
窒素含有基はまた、酸化されてN-オキシドを形成してもよい。
【0130】
結晶性固体を形成する式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/若しくはプロドラッグは、多形性を示し得る。化合物、塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/又はプロドラッグのあらゆる多形形態は、本発明の範囲内にあり、本発明の方法で使用され得る。
【0131】
式(I)~(X)の化合物は、互変異性を示し得る。互変異性体は、平衡状態で典型的に存在する、分子の2つの交換可能な形態である。化合物のいずれかの互変異性体は、本発明の範囲内にあると理解されるべきであり、本発明の方法で使用され得る。
【0132】
式(I)~(X)の化合物は、1又は複数の立体中心を含有し得る。これらの化合物のあらゆる立体異性体は、本発明の範囲内にある。立体異性体には、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体(Eオレフィン形態及びZオレフィン形態、並びにシス置換パターン及びトランス置換パターン)及びアトロプ異性体が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、いずれかの立体中心における式(I)の化合物の立体異性富化形態である。化合物では、ある立体異性体が別の立体異性体よりも約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%又は約99%富化されていてもよい。
【0133】
式(I)~(X)の化合物又はその塩、互変異性体、溶媒和物、N-オキシド、多形及び/若しくは立体異性体は、化合物中に存在する原子の同位体のうちの1又は複数によって同位体富化されていてもよい。例えば、化合物は、以下の微量同位体、すなわち、2H、3H、13C、14C、15N及び/又は17Oのうちの1又は複数によって富化され得る。同位体は、その存在量がその天然の存在量よりも大きい場合に富化されていると考えられ得る。
【0134】
「プロドラッグ」は、本明細書で提供される化合物の構造要件を完全には満たさない可能性があるが、対象又は患者への投与後にインビボで修飾されて、本明細書で提供される式(I)の化合物を生成する化合物である。例えば、プロドラッグは、本明細書で提供される化合物のアシル化誘導体であり得る。プロドラッグには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミン基又はスルフヒドリル基が、哺乳動物対象に投与された場合に切断して遊離ヒドロキシ基、遊離カルボキシ基、遊離アミノ基又は遊離スルフヒドリル基をそれぞれ形成するいずれかの基に結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、限定するものではないが、本明細書で提供される化合物内のアルコール官能基及びアミン官能基のアセテート誘導体、ホルメート誘導体、ホスフェート誘導体及びベンゾエート誘導体が挙げられる。本明細書で提供される化合物のプロドラッグは、修飾がインビボで切断されて親化合物を生成するように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製され得る。
【0135】
プロドラッグには、式(I)の化合物の遊離アミノ基及びアミド基に共有結合したアミノ酸残基、又は2つ以上(例えば、2、3又は4つ)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖化合物が含まれる。アミノ酸残基は、3文字記号によって一般に指定される20個の天然アミノ酸を含み、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デモシン(demosine)、イソデモシン(isodemosine)、3-メチルヒスチジン、ノルブリン(norvlin)、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン及びメチオニンスルホンも含む。プロドラッグにはまた、カルボニル炭素プロドラッグ側鎖を介して式(I)の上記置換基に共有結合したカーボネート、カルバメート、アミド及びアルキルエステル化合物が含まれる。
【0136】
治療剤、診断剤及びセラノスティック剤
本発明の方法によって調製された式(I)の化合物は、治療剤及び/又は診断剤のための前駆体である。治療剤及び/又は診断剤への式(I)の化合物の変換は、式(I)の化合物を治療剤及び/又は診断剤(放射性核種など)に曝露して複合体を形成することを典型的に含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって調製された式(I)の化合物は、治療用放射性同位体と複合体を形成し、ひいては治療剤を形成する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって調製された式(I)の化合物は、撮像に使用するための放射性同位体と複合体を形成し、ひいては診断剤を形成する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって調製された式(I)の化合物は、治療及び撮像に使用するための1又は複数の放射性同位体と複合体を形成し、ひいてはセラノスティック剤を形成する。
【0140】
式(I)の化合物は、例えば、経口、直腸、経鼻、経膣、局所(経皮、頬側、眼及び舌下を含む)、非経口(皮注射下、腹腔内注射、皮内注射、血管内(例えば、静脈内)注射、筋肉内注射、脊髄注射、頭蓋内注射、髄腔内注射、眼内注射、眼周囲注射、眼窩内注射、滑液嚢内注射及び腹腔内注射、嚢内注射、並びにいずれかの他の同様の注射技術又は注入技術を含む)、吸入技術、送気技術、注入技術又は埋込み技術(例えば、滅菌注射用水溶液若しくは滅菌注射用非水溶液又は滅菌注射用懸濁液として)を含むいずれかの適切な投与経路のための医薬組成物として製剤化され得る。
【0141】
医薬組成物は、1又は複数の薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、希釈剤及び/又は担体)とともに製剤化され得る。成分の例は、Martindale-The Extra Pharmacopoeia(Pharmaceutical Press,London 1993)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott Williams&Wilkinsに記載されている。いずれの方法も、活性成分、例えば、式(I)によって定義される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、1又は複数の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。治療剤又は診断剤が放射性核種である場合、方法は、医薬組成物を放射性核種と組み合わせて、対象への投与に適した製剤中に複合体を形成することをさらに含み得る。一般に、医薬組成物は、対象化合物、例えば、式(I)によって定義される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを液体担体若しくは細かく分割された固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物では、対象化合物は、所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。
【0142】
治療方法
前立腺癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療用放射性同位体と本発明の方法によって調製された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩との複合体の有効量を投与することを含む方法も記載される。
【0143】
前立腺癌を治療するための医薬品の調製における本発明の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用も記載される。
【0144】
前立腺癌は、PSMAを発現するいずれかの形態の前立腺癌であり得る。前立腺癌は、前立腺癌腫瘍として発現し得る。いくつかの実施形態では、前立腺癌は去勢抵抗性前立腺癌である。
【0145】
本明細書の文脈では、用語「投与する(administering)」、並びに「投与する(administer)」及び「投与(administration)」を含むその用語の変形例は、いずれかの適切な手段によって本発明の化合物又は組成物を生物又は表面に接触させること、適用すること、送達すること、又は提供することを含む。
【0146】
前立腺癌の治療では、本発明による生物学的に活性な複合体の用量は、広い範囲内で変動し得、個々の要件に合わせて調整され得る。本発明による活性化合物は、治療有効量で一般に投与される。1日用量は、単回用量として、又は複数の用量で投与され得る。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、治療される対象、及び特定の投与様式に応じて変化する。
【0147】
ただし、いずれかの特定の対象に対する特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び排泄速度、薬物の組合せ(すなわち、対象を治療するために使用されている他の薬物)、並びに治療を受けている特定の障害の重症度を含む様々な因子に依存することが理解される。そのような治療は、必要に応じて頻繁に、治療する医師によって必要と判断される期間にわたって投与され得る。当業者であれば、投与される式(I)の化合物の投与レジメン又は治療有効量が各個体に対して最適化される必要があり得ることを理解するであろう。
【0148】
様々な障害を治療するために様々な投与量が必要とされ得ることも理解される。いくつかの実施形態では、作用物質の有効量は、腫瘍サイズの統計学的に有意な減少を引き起こす量である。
【0149】
用語「治療する(treating)」、「治療(treatment)」及び「療法(therapy)」は、本明細書では、治癒的療法、予防的療法及び予防的療法を指すために使用される。したがって、本開示の文脈では、用語「治療する(treating)」は、前立腺癌及び/若しくは関連疾患又はそれらの症状を治癒させる、前立腺癌及び/若しくは関連疾患又はそれらの症状の重症度を改善する、又は調整することを包含する。
【0150】
「予防する(preventing)」又は「予防(prevention)」は、本発明の化合物又は医薬組成物の投与後に発現する場合、前立腺癌の発生を予防すること、又は前立腺癌の重症度を調整することを意味する。いくつかの実施形態では、前立腺癌を予防することは、診断用放射性同位体又はセラノスティック放射性同位体と本発明の式(I)の化合物との複合体の投与を含む、ある期間にわたって前立腺癌の進行をモニタリングすることを含み得る。
【0151】
「対象」は、いずれかのヒト又は非ヒト動物を含む。したがって、ヒトの治療に有用であることに加えて、本発明の化合物はまた、限定するものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ及びブタなどの伴侶動物及び家畜を含む哺乳動物の獣医学的治療にも有用であり得る。
【0152】
本発明の化合物は、上記の医薬担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに投与され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、さらなる活性医薬成分(API)と組み合わせて投与され得る。APIは、前立腺癌又はその症状を治療するのに適したいずれかのものであり得る。本発明の化合物は、本明細書に記載される医薬組成物のいずれかでは、さらなるAPIと共製剤化されてもよいか、又は本発明の化合物は、同時、逐次若しくは別個の様式で投与されてもよい。同時投与は、共製剤化されているか、又は同じ若しくは異なる経路を介して投与される別個の剤形であるかにかかわらず、本発明の化合物を他のAPIと同時に投与することを含む。逐次投与は、同じ又は異なる経路によって、本発明の化合物と他のAPIとを、分割された投与レジメンに従って、例えば、他方の約0.5、約1、約2、約3、約4、約5又は約6時間以内に投与することを含む。逐次投与する場合、本発明の化合物は、他のAPIの投与の前又は後に投与されてもよい。別個の投与は、互いに独立したレジメンに従って、及び同じであっても異なっていてもよい、活性物質に適したいずれかの経路によって、本発明の化合物と他のAPIとを投与することを含む。
【0154】
方法は、式(I)の化合物をいずれかの薬学的に許容される形態で投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、N-オキシド、多形、互変異性体若しくはプロドラッグ、又はいずれかの比のこれらの形態の組合せの形態で提供される。
【0155】
方法はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、N-オキシド、多形、互変異性体若しくはプロドラッグを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。医薬組成物は、本明細書に記載のいずれかの薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含み得る。
【0156】
本明細書で定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、いずれかの好適な手段によって、例えば、経口的に、直腸的に、経鼻的に、経膣的に、局所的に(頬側及び舌下を含む)、非経口的に、例えば、皮下注射技術、皮下吸入技術、皮下送気技術、皮下注入技術若しくは皮下埋込み技術、腹腔内注射技術、腹腔内吸入技術、腹腔内送気技術、腹腔内注入技術若しくは腹腔内埋込み技術、静脈内注射技術、静脈内吸入技術、静脈内送気技術、静脈内注入技術若しくは静脈内埋込み技術、筋肉内注射技術、筋肉内吸入技術、筋肉内送気技術、筋肉内注入技術若しくは筋肉内埋込み技術、又は嚢内注射技術、嚢内吸入技術、嚢内送気技術、嚢内注入技術若しくは嚢内埋込み技術(例えば、滅菌注射用水溶液若しくは滅菌注射用非水溶液又は滅菌注射用懸濁液として)によって投与され得る。
【0157】
本発明の化合物は、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(頬側及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)のためのものを含む医薬組成物として、又は吸入若しくは送気による投与に適した形態で提供され得る。したがって、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、従来のアジュバント、担体又は希釈剤と一緒に、医薬組成物の形態、及びその単位投与量に配置され得、そのような形態では、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体として、又は溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル若しくはそれらを充填したカプセルとしての液体として、いずれも経口使用のために、又は非経口(皮下を含む)使用のための滅菌注射用溶液の形態で使用され得る。
【0158】
撮像、診断、予後及びモニタリングの方法
前立腺癌腫瘍を撮像する方法であって、それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は複合体を含む組成物を投与すること、及び前立腺癌腫瘍を撮像することを含む方法も記載される。
【0159】
前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定する方法であって、
(a)それを必要とする対象に、診断用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩との複合体の有効量、又は複合体を含む組成物を投与すること、
(b)PSMAが見られる、対象の部位に、複合体を濃縮することを可能にすること、及び
(c)複合体の放射性同位体を検出し、
それによって、放射性同位体の検出により、癌(存在する場合)の画像を作成して、それによって、前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定することが可能になること、を含む方法も記載される。
【0160】
前立腺癌を診断、モニタリング又は予後判定するこれらの方法では、検出工程は、対象を撮像技術に供することを含み得る。撮像技術により、前立腺の撮像によって放射性同位体の存在、又は濃度の変化を決定することが可能になり得る。
【0161】
当業者であれば、本明細書に記載の病態を診断するための放射性撮像に使用するための放射性同位体を含む、本発明の複合体/化合物とともに使用するための好適な診断剤を選択する方法に精通しているであろう。さらに、当業者であれば、本明細書に記載の診断試薬と組み合わせて使用するための撮像技術に精通しているであろう。
【0162】
いくつかの実施形態では、診断方法(撮像方法を含む)は、対象を陽電子放射断層撮影法(PET)撮像、好ましくは免疫PET撮像に供することを含む。PET撮像は、核医学において適用される機能的撮像技術であり、体内(例えば、機能プロセス)の3次元画像を生成する。該システムは、医薬化合物の形態で体内に導入される陽電子放出放射性核種によって間接的に放出されるガンマ線の対を検出する。
【0163】
いくつかの実施形態では、診断方法は、対象を磁気共鳴画像法(MRI)に供することを含み、好ましくは診断能を有する核種はGdである。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明の診断方法は、磁気共鳴画像法(MRI)、ラジオグラフィ、超音波、エラストグラフィ、光音響イメージング、断層撮影(コンピュータ断層撮影を含む)及び心エコー検査;好ましくは、磁気共鳴画像法(MRI)及び断層撮影(コンピュータ断層撮影法を含む)などの別の診断方法と組み合わせて使用され得る。
【0165】
本明細書で使用される場合、セラノスティックな方法とは、腫瘍細胞及び/又は転移のインビトロ及び/又はインビボでの可視化、同定及び/又は検出のための方法、並びに前立腺癌の治療方法である。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下を含むセラノスティックな方法を含む:
(1)診断用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物との複合体の診断有効量を患者又は対象に投与すること、及び
(2)治療用放射性同位体と本発明の式(I)の化合物との複合体の治療有効量を、それを必要とする患者又は対象に投与すること。
【0167】
好ましくは、工程1及び工程2は連続的に行われ、工程1及び工程2の化合物は同じである。
【0168】
本明細書に記載される方法、化合物及び中間体は、以下の例示的かつ非限定的な例によって説明される。
【0169】
実施例
一般
【0170】
本明細書に記載されるいくつかの例は、固相-ペプチド合成に基づく。これらの合成については、以下が適用される。合成スキームのいくつかの工程は、カップリング工程(「c」とする)及び脱保護工程(「d」とする)の両方を伴い得る。モル当量(eq)はいずれも、樹脂の充填量(mmol/g樹脂で表される)に基づいて計算した。体積(V)はいずれも、官能化樹脂の重量に基づいて計算した。体積は、官能化樹脂1グラム当たりの倍数として表す。例として、樹脂1グラム当たり5体積当量は、5Vとして表す。反応はいずれも、室温(典型的には約20±5℃)で行った。樹脂上にグラフト化された生成物(中間生成物を含む)を分析するために、樹脂上の生成物の試料を、保護基(存在する場合)を分解することなく、HFIPを使用して切断し、精製することなく分析した。切断された生成物に対して行った分析は、樹脂上の生成物を反映する。分析は、以下の手順を使用して行った:(1)官能化樹脂の試料を10mLのDCM/HFIP溶液と混合する(8:2);(2)室温で2時間にわたって、オービタル撹拌(200rpm)を使用して混合物を撹拌する;(3)混合物を濾過する(空隙率3);(4)混合物を濃縮乾固する;及び(5)試料を分析する。
【0171】
用語
2-CT 2-クロロトリチル
ACN アセトニトリル
aq 水溶液
Cupral ジエチルカルバモジチオ酸、ナトリウム塩
CV カラム容積
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DIPO ジイソプロピルオキシド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HFIP 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー-質量分析
LCUV 液体クロマトグラフィー-紫外線
NMR 核磁気共鳴
Pdテトラキス テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
PFA パラホルムアルデヒド
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TIPS トリイソプロピルシラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0172】
実施例1-HYNIC-iPSMAの合成
【0173】
スキーム1に従って、本明細書に記載の方法によってHYNIC-iPSMAを調製した。スキーム1の具体的な反応条件を以下に提供するが、工程1~5の関連する変換のための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件を使用してもよい。
【0174】
スキーム1-HYNIC-iPSMAの合成
【化58】
【0175】
工程1-2-クロロトリチル樹脂上へのFmoc-Lys(Alloc)-OHの充填
【0176】
工程1は、DIPEA及びDCMを使用した2-クロロトリチル(2-CT)樹脂上へのFmoc-Lys(Alloc)-OHの固定化を伴った。酸性条件下での樹脂分解を回避するために、DIPEAを過剰に使用した。未反応の出発材料及びDIPEAをDCM洗浄を用いて除去した。
【0177】
手順:2-CT樹脂をDCM(13~16V)と混合し、室温でN2バブリングを使用して撹拌した。Fmoc-Lys(Alloc)-OH(0.95~0.97当量)及びDIPEA(4.2当量)のDCM(3V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で少なくとも3時間撹拌した。混合物を濾過した。樹脂をDCM(4×3V)を用いて10分間にわたって4回洗浄し、DCM/MeOH/DIPEA(17:2:1)混合物(4×7V)を用いて10分間にわたって4回洗浄し、次いで、DCM(4×3V)を用いて10分間にわたって4回洗浄した。次いで、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。生成物をHPLCによって分析した。
【0178】
収率(2-CT樹脂上へのFmoc-Lys(Alloc)-OHの充填)に対する反応時間の影響を調査した。1gの樹脂及び0.619g(1.37mmol)のFmoc-Lys(Alloc)-OHという小規模では、3、6及び16時間の反応時間は、少なくとも99%の充填を達成した。45gの樹脂及び27.84g(62.93mmol)のFmoc-Lys(Alloc)-OHという大規模では、3時間の反応時間は、72%の充填を達成した。
【0179】
工程2-Fmoc脱保護及びH-Glu(O-tert-ブチル)-O-tert-ブチルカップリング
【0180】
工程2は、DMF及びピペリジンを使用したFmocの脱保護(工程2d)、続いて、DIPEA及びDMFを使用した活性化H-Glu(O-tert-ブチル)-O-tert-ブチル(Act=1H-イミダゾール)とのカップリング(工程2c)を伴った。
【0181】
手順-工程2d:樹脂をDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。樹脂をN2バブリングを使用して室温でDMF/ピペリジン混合物(1:1、10V)と15分~1時間混合し、次いで、濾過した。この工程を5~6回繰り返した。次いで、樹脂をDMF(4×5V)を用いて4回、及びDCM(4×5V)を用いて4回洗浄した。続いて、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のLCMS分析により、生成物の形成が確認された。分析では、出発材料は検出されなかった。
【0182】
手順-工程2c:樹脂をDMF(10V)を用いて1回洗浄した。樹脂をDMF(5V)と混合し、室温でN2バブリングを使用して撹拌した。活性化H-Glu(O-tert-ブチル)-O-tert-ブチル(3.2当量)及びDIPEA(1.3当量)のDMF(12V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で少なくとも3時間、典型的には少なくとも16時間撹拌した。混合物を濾過した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のLCMS及びHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0183】
工程3-Alloc脱保護及びFmoc-2-Nal-OHカップリング
【0184】
工程3は、Pdテトラキス、モルホリン及びDCMを使用したAllocの脱保護(工程3d)、続いて、HBTU及びDIPEAのDMF溶液を使用したFmoc-2-Nal-OHとのカップリング(工程3c)を伴う。
【0185】
手順-工程3d:樹脂をDCM(18V)と混合し、室温でN2バブリングを使用して撹拌した。モルホリン(60当量)を加え、次いで、Pdテトラキス(0.1~1.0当量、典型的には0.3当量)を続いて加えた。混合物を室温でN2バブリングを使用して少なくとも2時間撹拌し、反応容器を遮光した。次いで、混合物を濾過した。樹脂をDCM(4×5V)を用いて4回、DMF(4×5V)を用いて4回、DIPEA(1%)のDMF溶液(10×5V)を用いて10回、Cupralの溶液(DMF中15mg/mL)(10×5V)を用いて10回、DMF(4×5V)を用いて4回、DCM(4×5V)を用いて4回洗浄した。続いて、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0186】
手順-工程3c:樹脂をDMF(10V)を用いて1回洗浄した。樹脂を室温でN2バブリングを使用してDMF(5V)と混合した。Fmoc-2-Nal-OH(4.0当量)、HBTU(3.96当量)及びDIPEA(4.0当量)のDMF(10V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で少なくとも6時間撹拌した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0187】
工程4-Fmoc脱保護及びBoc保護HYNICカップリング
【0188】
工程4は、DMF及びピペリジンを使用したFmocの脱保護(工程4d)、続いて、HBTU及びDIPEAのDMF溶液を使用したBoc保護HYNICとのカップリング(工程4c)を伴う。
【0189】
手順-工程4d:N2バブリングを少なくとも10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。樹脂をN2バブリングを使用して室温でDMF/ピペリジン混合物(1:1、10V)と少なくとも15分間混合し、次いで、濾過した。この工程を4回繰り返した。次いで、N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0190】
手順-工程4c:樹脂を室温でN2バブリングを使用してDMF(5V)と混合した。Boc-HYNIC(4.0当量)、HBTU(3.96当量)及びDIPEA(4.0当量)のDMF(10V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で少なくとも6時間撹拌した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、樹脂を室温で少なくとも12時間乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0191】
工程5-樹脂の切断及び脱保護
【0192】
樹脂をフラスコ内でTFA/TIPS/H2O溶液(17:22.5:0.5、17V)中、室温で2~3時間混合した。混合物を濾過し、固体をアセトニトリル(2×5V)を用いて2回洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残留TFAをアセトニトリル(2×5V)と2回共蒸発させた。次いで、残渣を水(10V)及びアセトニトリル(2.5V)に可溶化し、凍結乾燥させて固体を得た。
【0193】
以下の条件を使用するC18クロマトグラフィーによって、固体を精製した:
コンディショニング:ローディング<2.5%、典型的には1.2~2.4%
H2O/ACN(0.1%TFA)(90:10):10CV
H2O/ACN(0.1%TFA)(90:10→70:30):30CV
H2O/ACN(0.1%TFA)(70:30→0:100):5CV
H2O/ACN(0.1%TFA)(0:100):5CV
固体の可溶化:6.5VのH2O/ACN(8:2)
【0194】
生成物を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させて固体を得た。固体を水(18.6V)及びアセトニトリル(1.4V)に可溶化し、次いで、凍結乾燥させて、HYNIC-iPSMAを得た。精製された生成物をHPLC及びNMRによって分析した。
【0195】
実施例2-HYNIC-iPSMAの合成
【0196】
HYNIC-iPSMAはまた、スキーム2に従って、本明細書に記載の方法によって調製され得る。スキーム2では、工程1~6dの関連する変換のための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件を使用してもよい。
スキーム2-HYNIC-iPSMAの合成
【化59】
【0197】
実施例3-DOTA-HYNIC-iPSMAの合成
【0198】
スキーム3に従って、本明細書に記載の方法によってDOTA-HYNIC-iPSMAを調製した。スキーム3の具体的な反応条件を以下に提供するが、工程1~7の関連する変換のための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件を使用してもよい。
【0199】
スキーム3-DOTA-HYNIC-iPSMAの合成
【化60】
【0200】
スキーム3の工程1~3を実施例1の手順に従って行った。
【0201】
工程6-Fmoc脱保護及びDOTA-HYNICカップリング
【0202】
工程6は、DMF及びピペリジンを使用したFmocの脱保護(工程6d)、続いて、HBTU及びDIPEAのDMF溶液を使用したDOTA-HYNICとのカップリング(工程6c)を伴う。DOTA-HYNICの合成を実施例6に提供する。
【0203】
手順-工程6d:N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。樹脂をN2バブリングを使用して室温でDMF/ピペリジン混合物(1:1、10V)と少なくとも15分間混合し、次いで、濾過した。この工程を少なくとも5回繰り返した。次いで、N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0204】
手順-工程6c:樹脂をDMF(10V)を用いて1回洗浄した。樹脂を室温でN2バブリングを使用してDMF(5V)と混合した。DOTA-HYNIC(2.0~3.0当量)、HBTU(HBTUの当量/DOTA-HYNICの当量の比0.90~0.98)及びDIPEA(DIPEAの当量=DOTA-HYNICの当量+1)のDMF(10V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で少なくとも6時間撹拌した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0205】
工程7-樹脂の切断及び脱保護
【0206】
樹脂をフラスコ内でTFA/TIPS/H2O溶液(19:2.5:2.5、10V)中、室温で5~7時間混合した。混合物を濾過し、固体をアセトニトリル(2×5V)を用いて2回洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残留TFAをアセトニトリル(2×5V)と2回共蒸発させた。次いで、残渣を水(9V)及びアセトニトリル(1V)に可溶化し、凍結乾燥させて固体を得た。
【0207】
以下の条件を使用するC18クロマトグラフィーによって、固体を精製した:
カラムサイズ:粗充填物300~600mgに対して25g;粗充填物17.3gに対して800g
コンディショニング:ローディング1.2~2.4w/w%
固体の可溶化:H2O/ACN(0.1%TFA)
溶出流量:25gカラムでは32mL/分;800gカラムでは160mL/分
【0208】
生成物を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させて固体を得た。固体を水(18V)及びアセトニトリル(2V)に可溶化し、次いで、凍結乾燥させて、DOTA-HYNIC-PSMAを得た。あるいは、固体を水(20V)に2回可溶化し、次いで、凍結乾燥させて、DOTA-HYNIC-PSMAを得た。1H NMR及び13C NMRによって、DOTA-HYNIC-PSMAの形成を確認した。
【0209】
実施例4-DOTA-HYNIC-iPSMAの合成
【0210】
DOTA-HYNIC-iPSMAはまた、スキーム4に従って、本明細書に記載の方法によって調製され得る。スキーム4では、工程1~7の関連する変換のための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件を使用してもよい。
スキーム4-DOTA-HYNIC-iPSMAの合成
【化61】
【0211】
実施例5-PSMA-11の合成
【0212】
スキーム5に従って、本明細書に記載の方法によってPSMA-11を調製する。スキーム5の具体的な反応条件を以下に提供するが、工程1~10の関連する変換のための当技術分野で公知のいずれかの好適な条件を使用してもよい。
スキーム5-PSMA-11の合成
【化62】
【0213】
スキーム5の工程1及び2を実施例1の手順に従って行った。
【0214】
工程8-Alloc脱保護及びFmoc-6-AHA-OHカップリング
【0215】
工程8は、Pdテトラキス、モルホリン及びDCMを使用したAllocの脱保護(工程8d)、続いて、HBTU及びDIPEAのDMF溶液を使用したFmoc-6-AHA-OHとのカップリング(工程8c)を伴った。
【0216】
手順-工程8d:樹脂を室温でN2バブリングを使用してDCM(18V)と混合した。モルホリン(60当量)を加え、次いで、Pdテトラキス(0.3当量)を続いて加えた。混合物を室温でN2バブリングを使用して少なくとも2時間撹拌し、反応容器を遮光した。次いで、混合物を濾過した。樹脂をDCM(4×5V)を用いて4回4回、DMF(4×5V)を用いて4回、DIPEA(1%)のDMF溶液(10×5V)を用いて10回、Cupralの溶液(DMF中15mg/mL)(10×5V)を用いて10回、DMF(4×5V)を用いて4回、DCM(4×5V)を用いて4回洗浄した。続いて、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のHPLC分析により、生成物の形成が確認された。
【0217】
手順-工程8c:樹脂をDMF(10V)を用いて1回洗浄した。樹脂を室温でN2バブリングを使用してDMF(5V)と混合した。Fmoc-6-AHA-OH(4.0当量)、HBTU(3.96当量)及びDIPEA(4.0当量)のDMF(10V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で6時間撹拌した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、樹脂をフィルター上で室温で一晩乾燥させた。切断された樹脂のLCUV分析により、生成物の形成が確認された。1H及び13C NMRによって、切断された生成物も分析した。
【0218】
工程9-Fmoc脱保護及びHBED-06カップリング
【0219】
工程9は、DMF及びピペリジンを使用したFmocの脱保護(工程9d)、続いて、HBTU及びDIPEAのDMF溶液を使用したHBED-06とのカップリング(工程9c)を伴う。HBED-06の合成を実施例7に提供する。あるいは、HBED-06は、例えば、この相互参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMakaremら(Synlett 2018,29,1239-1243)に記載されているように、当技術分野で公知の方法によって調製されてもよい。
【0220】
手順-工程9d:N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。樹脂をN2バブリングを使用して室温でDMF/ピペリジン混合物(1:1、10V)と15分間混合し、次いで、濾過した。この工程を5回繰り返した。次いで、N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDMF(4×5V)を用いて4回洗浄した。切断された樹脂の分析により、生成物の形成が確認された。
【0221】
カップリング工程(工程9c)が脱保護工程の2~3日後よりも後に行われる場合、中間貯蔵中の劣化を回避するために、以下の工程がさらに行われる。N2バブリングを10分間使用して、樹脂を室温でDCM(4×5V)を用いて4回洗浄する。次いで、質量変化がなくなるまで樹脂を減圧下で乾燥させる。カップリング工程の開始時に、残留DCMを除去するために、N2バブリングを使用して室温でDMF(10V)による補助洗浄を行うべきである。
【0222】
手順-工程9c:樹脂をDMF(5V)と混合し、室温でN2バブリングを使用して撹拌した。HBED-06(4.0当量)、HBTU(3.96当量)及びDIPEA(4.0当量)のDMF(10V)溶液を加えた。N2バブリングを使用して、混合物を室温で6時間撹拌した。樹脂をDMF(4×10V)を用いて4回、次いで、DCM(4×10V)を用いて4回洗浄した。次いで、質量変化がなくなるまで樹脂を真空下で乾燥させた。切断された樹脂の分析により、生成物の形成が確認された。
【0223】
工程10-樹脂の切断及びBoc脱保護
【0224】
樹脂をフラスコ内でTFA/TIPS/H2O溶液(17:0.5:0.5、18V)中、室温で2時間混合した。混合物を濾過し、固体をアセトニトリル(10V)を用いて2回洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残留TFAをアセトニトリル(2×5V)と2回共蒸発させた。次いで、残渣を水に可溶化し、凍結乾燥させて淡黄色固体を得た。
【0225】
以下の条件を使用するC18クロマトグラフィーによって、固体を精製した:
カラム:AIT C18 40~60μm
コンディショニング:ローディング0.7%
H2O/ACN(70:30):2CV
H2O/ACN(0.1%TFA)(70:30→90:10):3CV
H2O/ACN(0.1%TFA)(90:10):3CV
固体の可溶化:6VのH2O/ACN(5:1)(0.1%TFA)
溶出:H2O/ACN(0.1%TFA)(90:10→80:20):23CV
【0226】
生成物を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させてPSMA-11を得た。
【0227】
実施例6-DOTA-HYNIC中間体の合成
【0228】
スキーム6による方法によって、DOTA-HYNICを調製した。
スキーム6-DOTA-HYNICの合成
【化63】
【0229】
工程1-ベンジル保護
【0230】
Boc-HYNICとK2CO3(1.1当量)とを窒素雰囲気下、DMF(10V)中で混合し、臭化ベンジル(BnBr;1.1当量)を室温で滴下した。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、酢酸エチル(30V)を加え、得られた混合物を水(3×15V)を用いて3回洗浄した。再び合わせた水層を酢酸エチル(15V)を用いて抽出した。次いで、再び合わせた有機層を水(2×15V)を用いて2回、次いで、ブライン(7.5V)を用いて再び洗浄した後、減圧下で濃縮した。
【0231】
粗生成物をシリカクロマトグラフィーを使用して精製した:
コンディショニング:ローディング6.1%
DCM/EtOAc(100:0):2CV
DCM/EtOAc(95:5):2CV
DCM/EtOAc(90:10):8CV
DCM/EtOAc(80:20):4CV
DCM/EtOAc(75:25):4CV
DCM/EtOAc(70:30):8CV
【0232】
得られた固体の1H NMR分析により、完全に保護された生成物の形成が確認された。
【0233】
工程2-Boc脱保護
【0234】
ベンジルエステル保護中間体を窒素雰囲気下でジオキサン(10V)に可溶化し、HCl 4Nのジオキサン溶液(1.1当量のHCl)を室温で少しずつ加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、混合物を氷浴を使用して0℃で冷却し、20℃の温度を超えることなくNaOH 6Nを使用して中和した。得られた溶液を水(7V)で希釈し、酢酸エチル(3×7V)を用いて3回抽出した。再び合わせた有機層をブライン(7V)を用いて洗浄し、減圧下で濃縮した。
【0235】
粗生成物をシリカクロマトグラフィーを使用して精製した:
コンディショニング:ローディング8.3%
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(90:10):1CV
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(80:20):1CV
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(70:30):4CV
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(50:50):4CV
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(30:70):4CV
DCM/ACN(MeOH中+1%のNH3(7N))(10:90):4CV
【0236】
得られた固体の1H NMR分析により、遊離ヒドラジン生成物の形成が確認された。
【0237】
工程3-DOTAカップリング
【0238】
ヒドラジン出発生成物(3.0当量)及びトリス-tBu-DOTAを窒素雰囲気下でDMF(10V)に可溶化し、トリメチルアミン(2.0当量)、次いで、HBTU(1.2当量)を続いて室温で混合物に加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌し、次いで、酢酸エチル(50V)で希釈した。有機層をNaHCO3の飽和溶液(2×15V)を用いて2回、水(2×15V)を用いて2回、次いで、ブライン(15V)を用いて洗浄した後、減圧下で濃縮した。
【0239】
粗生成物をシリカクロマトグラフィーを使用して精製した:
コンディショニング:ローディング5.3%
DCM/ACN(100:0):1CV
DCM/ACN(98:2):2CV
DCM/ACN(95:5):4CV
DCM/ACN(90:10):4CV
DCM/ACN(85:15):6CV
DCM/ACN(80:20):4CV
【0240】
得られた固体の1H NMR分析により、DOTA官能化生成物の形成が確認された。
【0241】
工程4-ベンジルエステル脱保護
【0242】
DOTA官能化生成物を窒素雰囲気下でMeOH(10V)に可溶化し、湿潤パラジウム炭素を混合物に加えた後、該雰囲気を水素を用いてパージした。反応混合物を水素雰囲気下、室温で3時間撹拌し、次いで、セライトパッドを用いて濾過した。ケークをMeOH(4×15V)を用いて洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた固体の1H NMR分析により、DOTA-HYNICの形成が確認された。
【0243】
実施例7-HBED-06中間体の合成
【0244】
スキーム7による方法によって、HBED-06を調製した。合成(LiOHによる鹸化)の最終工程の具体的な反応条件を以下に提供する。
スキーム7-HBED-06の合成
【化64】
【0245】
工程1-メチルエステル形成
【0246】
4-ヒドロキシヒドロケイ皮酸をMeOH(5V)に溶解した。次いで、濃H2SO4(0.01当量)を加え、反応混合物を18時間にわたり、又は出発材料が消費されるまで加熱還流した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc(2V)に溶解し、飽和NaHCO3(2V)、ブライン(2V)を用いて洗浄し、真空下で濃縮し、メチルエステルを得た。生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。得られた固体の1H NMR分析により、所望のメチルエステル生成物の形成が確認された。
【0247】
工程2-芳香族求核付加
【0248】
ACN(4V)中のメチル3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートの混合物に、乾燥パラホルムアルデヒド(8.0当量)、無水二塩化マグネシウム(2.0当量)、最後に乾燥トリエチルアミン(4.0当量)を連続的に加えた。反応混合物を還流条件下で2時間撹拌し(TLCによってモニタリング)、次いで、室温に冷却した。反応混合物を水(10V)で希釈し、続いて、pH=3になるまでHCl 37%を使用して酸性化した。混合物を濾過し、ACNを蒸発させた。水層をDCM(8V)を用いて抽出した。有機層をブライン(10V)を用いて洗浄し、次いで、溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を得た。生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。得られた固体の1H NMR分析により、所望の生成物の形成が確認された。
【0249】
工程3-還元的アミノ化
【0250】
メチル3-(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートのMeOH(10V)溶液に、tert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(1.2当量)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。次いで、溶液を氷浴中で冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(2.2当量)を少しずつ加え、次いで、反応混合物を室温に加温し、次いで、飽和NaHCO3(20V)を用いてクエンチした。反応混合物を濃縮し、DCM(20V)で希釈した。水層をDCM(2×10V)を用いて抽出した。有機層をブライン(10V)を用いて洗浄し、次いで、溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を得た。生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。得られた固体の1H NMR分析により、所望の生成物の形成が確認された。
【0251】
工程4-Boc脱保護
【0252】
tertブチルカルバメート出発材料をMeOHに溶解し、HCl 37%(5.5当量)を0℃で滴下した。室温で15分間撹拌した後(TLCによってモニタリング)、白色沈殿物を濾過し、Et2O(5V)を用いて洗浄し、真空下で乾燥させて、生成物を塩酸塩として得た。生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。得られた固体の1H NMR分析により、遊離アミン生成物の形成が確認された。
【0253】
工程5-tert-ブチルエステル形成
【0254】
0℃のTHF(10V)とtert-ブタノール(9.3V)との混合物中の4-ヒドロキシヒドロケイ皮酸の溶液に、2-tert-ブチル-1,3-ジイソプロピルイソ尿素(3当量)を加えた。混合物を室温で20時間撹拌した(HPLCによりモニタリング)。次いで、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。DCM(6V)を加え、有機層を飽和NaHCO3(3×2.4V)を用いて洗浄し、真空下で濃縮した。
【0255】
固体をクロマトグラフィーによって精製した:
コンディショニング:ローディング10%
Hept/EtOAc(100:0):0.5CV
Hept/EtOAc(90:10):4.5CV
Hept/EtOAc(80:20):1.0CV
【0256】
得られた固体の1H NMR分析により、tert-ブチルエステル生成物の形成が確認された。
【0257】
工程6-芳香族求核付加
【0258】
ACN(4V)中のtert-ブチル3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートとパラホルムアルデヒド(8.0当量)と無水二塩化マグネシウム(2.0当量)との混合物に、乾燥トリエチルアミン(4.0当量)を加えた。反応混合物を還流条件下で4時間撹拌し、次いで、室温に冷却した。反応混合物を水(10V)で希釈し、続いて、pH=3になるまでHCl 3Nを使用して酸性化した。混合物を濾過し、ACNを蒸発させた。水層をDCM(8V)を用いて抽出した。有機層をブライン(10V)を用いて洗浄し、次いで、溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を得た。生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。得られた固体の1H NMR分析により、所望の生成物の形成が確認された。
【0259】
工程7-還元的アミノ化によるカップリング工程
【0260】
遊離アミンのMeOH(8.5V)溶液に、DIPEA(2当量)及びアルデヒド(0.9当量)のMeOH(1.5V)溶液を加えた。混合物を室温で5時間撹拌し、次いで、形成されたイミン生成物を0℃でNaBH4(1.5当量)を用いて処理した。懸濁液を室温で16時間撹拌した。反応混合物をNaHCO3の飽和溶液(20V)を用いてクエンチし、次いで、DCMを加えた(20V)。沈殿物を濾過した後、水層をDCM(2×10V)を用いて抽出した。合わせた有機層をブライン(10V)を用いて洗浄し、真空下で濃縮した。
【0261】
固体をクロマトグラフィーによって精製した:
コンディショニング:ローディング10%
Hept/EtOAc(70:30):10CV
Hept/EtOAc(30:70):7.5CV
Hept/EtOAc(00:100):15CV
【0262】
得られた固体の1H NMR分析により、所望の生成物の形成が確認された。
【0263】
工程8-窒素アルキル化
【0264】
ジアミンカップリング生成物及びDIPEA(2.8当量)のTHF(10V)溶液に、tert-ブチルブロモアセテート(4.2当量)を0℃で加えた。混合物を室温で20時間撹拌した。沈殿物を濾過し、濾液を真空下で濃縮した。
【0265】
粗生成物をクロマトグラフィーによって精製した:
コンディショニング:ローディング10%
Hept/EtOAc(90:10):25CV
Hept/EtOAc(85:15):10CV
【0266】
得られた固体の1H NMR分析により、HBED-06メチルエステルの形成が確認された。
【0267】
工程9-メチルエステル鹸化
【0268】
HBED-06メチルエステルを丸底フラスコ内、N2雰囲気下で1:1 THF/H2O混合物(7~12V、典型的には10V)に溶解した。LiOH(3当量)を加え、混合物を室温で約15時間にわたり、又は出発材料が消費されるまで撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。次いで、混合物をジエチルエーテル、DIPO又は他の好適な有機溶媒(20V)を用いて洗浄した。6~8のpHに達するまで飽和塩化ナトリウムを加えた。次いで、水相を酢酸エチル(3×8V)を用いて抽出し、有機溶媒を真空下で濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルカラム(C18微細(60M)シリカ:10±1重量部;勾配18CV:1CV 100%ヘプタン、8CV 80:20ヘプタン/EtOAc、3CV 50:50ヘプタン/EtOAc、6CV 40:60ヘプタン/EtOAc)を用いて精製して、HBED-06を非晶質の淡黄色から無色の固体として得た。1H NMR、MS及びHPLCによってHBED-06の形成を確認した。ESI-MS:701。
【国際調査報告】