(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】膜通気式バイオフィルムリアクターにおける空気流制御
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240312BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20240312BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240312BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20240312BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20240312BHJP
【FI】
C02F3/12 J
B01D69/08
B01D63/02
C02F3/06
C02F3/34 101C
C02F3/34 101D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552571
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022055405
(87)【国際公開番号】W WO2022184829
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519302017
【氏名又は名称】オクシメム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXYMEM LIMITED
【住所又は居所原語表記】Blyry Business & Commercial Park,Athlone,Co. Westmeath,N37 CK06, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヘファーナン、バリー
(72)【発明者】
【氏名】ネーメト、アンドラーシュ
【テーマコード(参考)】
4D003
4D006
4D028
4D040
【Fターム(参考)】
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4D040BB07
4D040BB42
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(57)【要約】
本発明は、膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)の混合装置への気体供給を管理し、処理済流出液中のNH4及びNO3目標を維持しながら、1つ以上のプロセスの結果を得るために、特にMABRからの排ガス中のN2O排出を低減又は最小限に抑えるために、MABRの膜への気体流量を制御するための方法及び装置を提供し、この方法は、廃水及び排ガスの1つ以上のパラメータを監視し、排ガスの組成を制御するために1つ以上のパラメータに基づいて膜への供給ガスの供給を調節することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜通気式バイオフィルムリアクターからの排ガスの組成を制御する方法であって、前記リアクターを廃水の貯留槽に配置すること;前記廃水中に少なくとも部分的に浸漬された膜によって少なくとも部分的に画定された気体流路に沿って供給ガスを置換すること;気体の少なくとも成分を前記膜の液体側に担持されたバイオフィルムに前記膜を通して拡散させること;前記膜の下流の前記気体流路から排ガスを抜き出すこと;前記廃水及び/又は前記排ガス及び/又は前記供給ガスの1つ以上のパラメータを監視すること;並びに前記排ガスの前記組成を制御するために前記1つ以上のパラメータに基づいて前記膜への前記供給ガスの供給を調節すること;を含む方法。
【請求項2】
前記排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃水中の汚染物質の組成を制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記廃水中のアンモニウム及び/又は硝酸塩のレベルを制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のパラメータが、前記排水の溶存酸素及び/又は酸化還元電位及び/又はpH及び/又は温度及び/又は化学的酸素要求量及び/又は全有機炭素及び/又はアンモニア濃度及び/又は二酸化窒素濃度及び/又は硝酸塩濃度及び/又は全窒素濃度、バイオフィルム厚さ、並びに前記排ガス中の酸素移動速度及び/又は酸素移動効率及び/又は酸素濃度及び/又は亜酸化窒素濃度である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記膜上の前記バイオフィルムに養分を連続的に供給するために前記廃水を混合するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記排ガスの前記組成を制御するために、1つ以上の監視パラメータに基づいて前記混合を調節することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記排ガスを亜酸化窒素スクラバーに供給するステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合がエアリフト混合によって行われる、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記供給ガス及び前記エアリフト混合のために単一の気体供給装置を利用することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記排ガスを前記供給ガスに再利用することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記膜への前記供給ガスの供給を調節するために、アルゴリズムを利用して前記1つ以上のパラメータを処理することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルゴリズムが、前記膜への前記供給ガスの供給の前記調節のフィードバック及びフィードフォワード制御を行うように調整される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルゴリズムが、前記膜への前記供給ガスの供給の前記調節を制御する際に前記監視パラメータの1つ以上の目標値を利用する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルゴリズムによって制御される気体流量弁を用いて前記膜への前記供給ガスの供給を調節することを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記気体流路に沿って前記供給ガスとして空気又は酸素を置換すること;前記バイオフィルムに前記膜を通して前記供給ガスから酸素を拡散させること;前記廃水中の化学的酸素要求量の質量及びアンモニアのレベルを監視すること;及び前記排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御し、前記バイオフィルム内での硝化と脱窒を同時に確実に発生させるために、前記廃水の前記化学的酸素要求量の質量及び前記アンモニアのレベルに基づいて前記膜への酸素の供給を調節すること;を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
廃水を処理するための膜通気式バイオフィルムリアクターであって:流路を画定する1つ以上の膜であって、前記膜を通って拡散するために前記流路に沿って供給ガスが前記膜に供給され、排ガスが前記膜の下流で前記流路から抜き出され得る前記膜と;前記廃水及び/又は排ガス及び/又は供給ガスの1つ以上のパラメータを監視するように動作可能な1つ以上のセンサーと;前記監視されたパラメータを受信し、前記排ガスの組成を制御するために前記膜への前記供給ガスの供給を調節するように配置されたコントローラと;を備えるリアクター。
【請求項18】
前記コントローラが、前記排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節するように動作可能である、請求項16に記載のリアクター。
【請求項19】
前記コントローラが、前記廃水中の汚染物質の組成を制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節するように動作可能である、請求項16又は17に記載のリアクター。
【請求項20】
前記コントローラが、前記廃水中のアンモニウム及び/又は硝酸塩のレベルを制御するために、前記バイオフィルムへの前記供給ガスの供給を調節するように動作可能である、請求項18に記載のリアクター。
【請求項21】
前記1つ以上のセンサーが、前記排水の溶存酸素及び/又は酸化還元電位及び/又はpH及び/又は温度及び/又は化学的酸素要求量及び/又は全有機炭素及び/又はアンモニア濃度及び/又は二酸化窒素濃度及び/又は硝酸塩濃度及び/又は全窒素濃度、バイオフィルム厚さ、並びに前記排ガス中の酸素移動速度及び/又は酸素移動効率及び/又は酸素濃度及び/又は亜酸化窒素濃度を監視するように動作可能である、請求項16~19のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項22】
整列した中空繊維を含み、その外表面が集合して前記膜を画定する、請求項16~20のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項23】
各中空繊維が、前記供給ガスが膜を通って拡散するためにそれに沿って前記膜に供給され得る流路を集合的に画定する内腔を含む、請求項21に記載のリアクター。
【請求項24】
前記流路上に気体流量制御弁を備えており、これが前記膜への前記供給ガスの供給を調節するために前記コントローラによって操作可能である、請求項16~22のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項25】
前記コントローラが、前記膜への前記供給ガスの供給を調節するために前記1つ以上のパラメータを処理するアルゴリズムを用いてプログラムされる、請求項16~23のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項26】
前記排ガスが供給される亜酸化窒素スクラバーを備える、請求項16~24のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項27】
エアリフトミキサーを備える、請求項16~25のいずれか一項に記載のリアクター。
【請求項28】
前記供給ガス及び前記エアリフトミキサーのための単一の気体供給装置を備える、請求項26に記載のリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)の混合装置への気体供給を管理し、処理済流出液中のNH4及びNO3目標を維持しながら、1つ以上のプロセスの結果を得るために、特にMABRからの排ガス中のN2O排出を低減又は最小限に抑えるために、MABRの膜への気体流量を制御するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)、膜通気式バイオフィルム(MAB)、及び膜バイオフィルムリアクター(MBfR)は、いずれも、固定化された微生物群集(バイオフィルム)が基材としての透過性膜によって支持されるプロセス及びシステムに関する。バイオフィルムは一方の相と直接接触し、他方の相とは膜を介して間接的に接触する。
【0003】
代謝プロセスのための養分は2つの相から同時に供給される。これにより、非透水性基材上に形成される共拡散性バイオフィルムとは対照的に、逆拡散性バイオフィルムが形成される。2つの相は、液体-気体又は液体-液体である。MABRでは、気相は膜を介してバイオフィルムと接触する。気相には、空気、又は様々な濃度の酸素(最大100%)を含む気体混合物が含まれる。
【0004】
MABRは廃水の生物学的処理に利用することができる。稼働中のMABR内に存在するバイオフィルムは、廃水との直接接触を介して汚染物質に接近し、一方で好気性プロセスを行うことができるように酸素が膜を介して気相から供給される。好気性プロセスには、炭素質汚染物質の分解及び鉱物化、並びにアンモニウムの亜硝酸塩及び硝酸塩への酸化が含まれる。バイオフィルムと接触するバルク液体は、バイオフィルムを補うための追加の懸濁バイオマスを含んでいても含んでいなくてもよい。バイオフィルムの反応拡散システムは、バイオフィルム及び膜に対して垂直な表面に対応する軸に沿って、消費された基質と生成物の濃度勾配を形成する(理想化された滑らかな膜及びバイオフィルム表面を想定)。濃度勾配は、バイオフィルムの酸化還元と集団の層化を引き起こす可能性がある。これは、バイオフィルム-液体界面と膜-バイオフィルム界面との間の位置に応じて、生物学的プロセスの性質と速度に影響を与える。層化は、バイオフィルムの厚さ、バイオフィルム内の基質の有効拡散率、バルク液体中の基質濃度、気相中の酸素濃度、膜の酸素移動特性、微生物固有の反応速度などの様々なパラメータの影響を受ける。バイオフィルムの層化が生じる条件は、MABRの設計及び運転パラメータの影響を受ける可能性がある。
【0005】
酸化還元層化バイオフィルムは、独立栄養性の硝化微生物と従属栄養性の脱窒微生物の生息場所を同時に提供することができる。硝化微生物は、膜から酸素への接近がしやすく且つ有機炭素が不足しているバイオフィルムの底部で増殖する。従属栄養性の脱窒菌は、液体から炭素基質に接近することができ且つ酸素が不足している外側のバイオフィルム層に存在する。アンモニウムはバイオフィルムを通って硝化微生物に拡散し、そこで亜硝酸塩及び硝酸塩へと酸化される。亜硝酸塩と硝酸塩は外側に拡散し、無酸素バイオフィルム層における脱窒中に電子受容体として機能する。
【0006】
亜酸化窒素は、生物学的窒素循環における複数のプロセスの副生成物である。これは、特定の一連の条件下では硝化と脱窒の両方の際に生成されることが示されている。MABRでは、これらの条件は、プロセスパラメータとバイオフィルム内の位置に応じて生じる可能性がある。正味の亜酸化窒素生成量は、バイオマスにおける亜酸化窒素の生成活動と消費活動のバランスに依存する。環境への亜酸化窒素の排出は、溶存亜酸化窒素の形態で液相を介して、又はプロセス空気によるストリッピングを介して生じ得る。亜酸化窒素は強力な温室効果ガスであり、好ましくはその排出は最小限に抑えられる。
【0007】
MABRの1つの形態は、気体が通って流れることができる束又はマットを形成している両端がポッティングされた複数の中空繊維膜に基づく。束/マットはヘッダーにポッティングされ、モジュールを形成する。モジュールは、さらに大きなユニットの中に配置することもできる。プロセス空気は、一連のマニホールドによってモジュールに分配することができ、またモジュールから回収することができる。膜アセンブリは部分的に又は完全に液体に浸漬される。
【0008】
MABRを取り囲むバルク液体の混合は、養分を含む液体の新鮮な供給を提供し、且つバイオフィルムと液体との間の物質移動抵抗を最小限に抑えるために必要である。混合は、排プロセスガス又は個別の気体供給装置を使用して行うことができる。気体は、膜の下に配置される連続気泡曝気、膜の下に配置される断続的な大型気泡発生装置、又はエアリフトポンプで使用することにより、混合に利用することができる。
【0009】
出願人の先に公開された欧州特許出願公開第3582883A1号明細書には、膜曝気モジュールのための筐体の例示的な設計が開示されており、この筐体には、モジュール内の繊維膜を通って繊維膜の間で垂直の水流を促進するための、可逆的な低圧エアリフトポンプが組み込まれている。これらの密閉型膜モジュールは、膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)における使用に適している。欧州特許出願公開第3582883A1号明細書には、膜を形成する整列した繊維束又は繊維束のモジュールの構成及び操作、特に、生分解性の有機及び無機廃水汚染物質の酸化を効果的に行うために、酸素を繊維に供給して膜を通して拡散させ、常在バイオフィルムによって消費させることについての包括的な開示も含まれている。
【0010】
廃水汚染物質の酸化により、上述した亜酸化窒素の生成が起こるが、これは処理プロセスの問題となる副生成物であり、環境に重大な悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、廃水の効率的な処理を維持しながらも、1つ以上の処理の結果を得るために、特に環境へのN2O排出を低減するか又は最小減に抑えるために、膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)の膜への気体流量を制御する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、膜通気式バイオフィルムリアクターからの排ガスの組成を制御するための方法が提供され、この方法は、リアクターを廃水の貯留槽に配置すること;廃水中に少なくとも部分的に浸漬された膜によって少なくとも部分的に画定された気体流路に沿って供給ガスを置換すること;気体の少なくとも成分を膜の液体側に担持されたバイオフィルムに膜を通して拡散させること;膜の下流の気体流路から排ガスを抜き出すこと;廃水及び/又は排ガス及び/又は供給ガスの1つ以上のパラメータを監視すること;並びに排ガスの組成を制御するために1つ以上のパラメータに基づいて膜への供給ガスの供給を調節すること;を含む。
【0013】
好ましくは、この方法は、排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節することを含む。
【0014】
好ましくは、この方法は、廃水中の汚染物質の組成を制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節することを含む。
【0015】
好ましくは、この方法は、廃水中のアンモニウム及び/又は硝酸塩のレベルを制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節することを含む。
【0016】
好ましくは、1つ以上のパラメータは、排水の溶存酸素及び/又は酸化還元電位及び/又はpH及び/又は温度及び/又は化学的酸素要求量及び/又は全有機炭素及び/又はアンモニア濃度及び/又は二酸化窒素濃度及び/又は硝酸塩濃度及び/又は全窒素濃度、バイオフィルム厚さ、並びに排ガス中の酸素移動速度及び/又は酸素移動効率及び/又は酸素濃度及び/又は亜酸化窒素濃度である。
【0017】
好ましくは、この方法は、膜上のバイオフィルムに養分を連続的に供給するために廃水を混合するステップを含む。
【0018】
好ましくは、この方法は、排ガスの組成を制御するために、1つ以上の監視パラメータに基づいて混合を調節することを含む。
【0019】
好ましくは、この方法は、排ガスを亜酸化窒素スクラバーに供給することを含む。
【0020】
好ましくは、混合はエアリフト混合によって行われる。
【0021】
好ましくは、この方法は、供給ガス及びエアリフト混合のために単一の気体供給装置を利用することを含む。
【0022】
好ましくは、この方法は、排ガスを供給ガスに再利用することを含む。
【0023】
好ましくは、この方法は、膜への供給ガスの供給を調節するために、アルゴリズムを利用して1つ以上のパラメータを処理することを含む。
【0024】
好ましくは、アルゴリズムは、膜への供給ガスの供給の調節のフィードバック及びフィードフォワード制御を行うように調整される。
【0025】
好ましくは、アルゴリズムは、膜への供給ガスの供給の調節を制御する際に監視パラメータの1つ以上の目標値を利用する。
【0026】
好ましくは、この方法は、アルゴリズムによって制御される気体流量弁を用いて膜への供給ガスの供給を調節することを含む。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、バイオフィルム内での硝化と脱窒を同時に確実に発生させながら、膜通気式バイオフィルムリアクターからの排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御する方法が提供され、この方法は、リアクターを廃水の貯留槽に配置すること;廃水中に少なくとも部分的に浸漬された膜によって少なくとも部分的に画定された気体流路に沿って供給ガスとして空気又は酸素を置換すること;膜の液体側に担持されたバイオフィルムに膜を通して供給ガスから酸素を拡散させること;膜の下流の気体流路から排ガスを抜き出すこと;廃水中の化学的酸素要求量の質量及びアンモニアのレベルを監視すること;及び排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御するために、廃水中の化学的酸素要求量の質量及びアンモニアのレベルに基づいて膜への酸素の供給を調節すること;を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、廃水を処理するための膜通気式バイオフィルムリアクターが提供され、このリアクターは、流路を画定する1つ以上の膜であって、膜を通って拡散するために流路に沿って供給ガスが膜に供給され、排ガスが膜の下流で流路から抜き出され得る膜と;廃水及び/又は排ガス及び/又は供給ガスの1つ以上のパラメータを監視するように動作可能な1つ以上のセンサーと;監視されたパラメータを受信し、排ガスの組成を制御するために膜への供給ガスの供給を調節するように配置されたコントローラと;を備える。
【0029】
好ましくは、コントローラは、排ガス中の亜酸化窒素のレベルを制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節するように動作可能である。
【0030】
好ましくは、コントローラは、廃水中の汚染物質の組成を制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節するように動作可能である。
【0031】
好ましくは、コントローラは、廃水中のアンモニウム及び/又は硝酸塩のレベルを制御するために、バイオフィルムへの供給ガスの供給を調節するように動作可能である。
【0032】
好ましくは、1つ以上のセンサーは、排水の溶存酸素及び/又は酸化還元電位及び/又はpH及び/又は温度及び/又は化学的酸素要求量及び/又は全有機炭素及び/又はアンモニア濃度及び/又は二酸化窒素濃度及び/又は硝酸塩濃度及び/又は全窒素濃度、バイオフィルム厚さ、並びに排ガス中の酸素移動速度及び/又は酸素移動効率及び/又は酸素濃度及び/又は亜酸化窒素濃度を監視するように動作可能である。
【0033】
好ましくは、リアクターは整列した中空繊維を含み、その外表面が集合して膜を画定する。
【0034】
好ましくは、各中空繊維は、供給ガスが膜を通って拡散するためにそれに沿って膜に供給され得る流路を集合的に画定する内腔を含む。
【0035】
好ましくは、リアクターは、流路上に気体流量制御弁を備えており、これは膜への供給ガスの供給を調節するためにコントローラによって操作可能である。
【0036】
好ましくは、コントローラは、膜への供給ガスの供給を調節するために1つ以上のパラメータを処理するアルゴリズムを用いてプログラムされる。
【0037】
好ましくは、リアクターは、排ガスが供給される亜酸化窒素スクラバーを含む。
【0038】
好ましくは、リアクターはエアリフトミキサーを含む。
【0039】
好ましくは、リアクターは、供給ガス及びエアリフトミキサーのための単一の気体供給装置を含む。
【0040】
本明細書において使用される「膜」という用語は、廃水の生物学的処理のためにバイオフィルムを担持し得る基材を意味することが意図されており、膜は対向する面に気体側と液体側を画定しており、それによって供給ガスが気体側から液体側へ拡散可能であり、膜は、好ましくは、供給ガスが供給され、そこから排ガスが抜き出される流路を画定する内腔を有する多数の整列した中空繊維の組み合わされた表面によって画定され、供給ガスは、中空繊維の表面の内部の気体側から外部の液体側へ部分的に拡散可能である。
【0041】
本明細書で使用される「廃水」という用語は、除去されるか又は濃度が減らされるべき汚染物質を含むあらゆる水の供給物を意味することが意図されており、活性汚泥と組み合わされた廃水を含む場合がある。
【0042】
本明細書で使用される「排ガス」という用語は、膜に担持されたバイオフィルムに供給するために、供給ガスからの酸素又は他の気体が膜を通って気体側から液体側に拡散した後に膜又は整列した膜から抜き出される気体を意味することが意図されており、この排ガスは、液体側から気体側へ拡散した成分を含み得る。
【0043】
本明細書において使用される「汚染物質」という用語は、排水などの流体中に溶解した又は他の形で含まれる有機物(例えばCOD、BOD、TOCなど)及び/又は養分(例えばNH4、NO3、NO2、Pなど)を意味することが意図されている。
【0044】
以降で添付の図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態による膜通気式バイオフィルムリアクターの概略図である。
【
図2】ベンチスケール実験を通じて形成された、空気供給量と亜酸化窒素排出量との間の関係を示すグラフである。
【
図3】排ガスの酸素濃度が特定のパーセント割合を下回ったときに、最大硝化効率がどのように制限されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで添付図面の
図1を参照すると、例えば都市廃水処理施設(図示せず)などにおいて廃水などの生物学的処理を行う際に使用するための、一般的に10で示される膜通気式バイオフィルムリアクター(MABR)の概略図が示されている。
【0047】
図示の例示的な実施形態では、リアクター10は、処理される廃水Wを含む貯留槽R内に配置され得る又は取り付けられ得るモジュールの形態であるが、リアクター10は、最初から廃水処理施設に一体化又は設計され得ることが当業者には理解されるはずである。また、モジュール形式にすることにより、単一の貯留槽又は処理施設内で2つ以上のリアクター10を並列で又は直列で利用可能であることも理解されるはずである。貯留槽Rは、未処理の廃水Wを貯留槽Rに導入することができる入口Iと、処理済み廃水Wを抜き出すことができる出口Oとを備える。貯留槽Rは、大量の廃水Wを必要な処理時間(水理学的滞留時間)の間中に保持できる大きい容積を画定し、これは必要な処理結果を提供するために手動又は自動のいずれかで監視及び最適化することができる。
【0048】
リアクター10は、任意選択的には、整列した膜カセット(図示せず)が内部に配置されるハウジング又は筐体12を備えており、各膜カセットは、束状に配置されており且つ上部気体マニホールド(図示せず)と下部気体マニホールド(図示せず)との間に捕捉された、多数の、好ましくは直線状の、より好ましくは垂直に延びる中空繊維(図示せず)を含んでおり、各繊維の内腔は連通している。この形式では、気体、例えば空気又は酸素を、各繊維の一端から他端へ、例えば上から下へ、内腔を通してポンプで送り出す或いは置換することができる。中空繊維の側壁は膜を画定し、この膜を通って気体、例えば酸素が膜の空気側、すなわち内腔を画定する内表面から膜の液体側、すなわち使用中は少なくとも部分的に、好ましくは完全に廃水W中に浸漬している繊維の外表面まで拡散することができる。使用中、バイオフィルムが繊維の外表面にコロニーを形成する。バイオフィルムは、廃水Wとの直接接触を介して汚染物質に接近し、一方で公知の形式で廃水の生物学的プロセスを行うために好気性プロセスを行うことができるように酸素などの気体が各繊維の内腔(図示せず)膜を介して気相から供給される。好気性プロセスには、炭素質汚染物質の分解及び鉱物化、並びにアンモニウムの亜硝酸塩及び硝酸塩への酸化が含まれる。
【0049】
廃水Wからバイオフィルムへの養分の十分な供給を確保するために、リアクター10は、
図1に概略的に示されているミキサー14を備えるか、又はミキサー14と連動しており、ミキサー14は、バイオフィルムの上方で流体を循環させて、必要な養分の供給を行うように動作可能である。ミキサー14は、従来のバブルミキサーを表すために筐体12の下方に示されているが、エアリフトタイプのミキサー、又は任意の他の適切な機能的に同等な物も採用できることが理解されるであろう。そのようなリアクターの構成及び動作の詳細な説明は、本出願人の先に公開された欧州特許出願公開第3582883A1号明細書に示されており、本発明のリアクター10は、繊維の可能な配置、バイオフィルムによって使用されるために外側に拡散するための繊維の内腔を通る気体の供給、及び任意選択的な、概略的に表されたバブルミキサー14の代わりのエアリフトミキサーの配置に関して、本質的に同じ構成であることが理解されるべきである。
【0050】
リアクター10は、気体供給装置16、例えば空気を置換するためのポンプを備えるか、又はそれと接続可能であり、そこから膜に空気(又は他の供給ガス)を供給するように配置された供給ライン18が、最も好ましくは欧州特許出願公開第3582883A1号明細書に詳細に記載されている形式で延びている。上述したように、膜は、筐体12内に含まれる整列した繊維によって集合的に画定され、その繊維(及びその内腔を通る空気の下向きの流れ)は、
図1の矢印20によって概略的に表されている。供給ライン18上には、膜に供給される空気量のリアルタイム監視を行いやすくするための気体流量計22が設けられている。ミキサー14に空気を供給するためにミキサー供給ライン24も気体供給装置16から延びている。図示された例示的な実施形態は、膜とミキサー14の両方に供給するための共通の空気源として気体供給装置16が利用されているが、当然、それぞれに別個の気体供給装置を使用できることは理解されるであろう。空気流量制御弁26は、供給ライン18とミキサー供給ライン24との間に設けられ、以下で詳細に説明するように、膜及び/又はミキサー14に供給される空気の量を自動的に調節して、望みのプロセスの結果、特に膜からの排ガス中の亜酸化窒素を制御し、処理済廃水W中のNH
4及びNO
3の目標レベルを維持できるように動作可能である。追加の又は代替のプロセスの結果は、バイオフィルム内で硝化と脱窒を確実に同時に生じさせることである。
【0051】
制御弁26の位置は、例えば、膜に供給される空気のみを制御するように供給ライン18上にのみ配置されるように、変更することができる。或いは、繊維20及びミキサー12への空気流を独立して制御しやすくするために、供給ライン18及びミキサー供給ライン24のそれぞれに1つずつ配置された一対の制御弁(図示せず)を採用することもできる。
【0052】
繊維の下端から戻る排気ライン28は、膜から排ガスを抜き出し、図示の例示的実施形態では、制御弁26の下流で排ガスをミキサー供給ライン24に再循環又は再利用する。しかしながら、排気ライン28は、単に大気に開放することができ、或いは亜酸化窒素を捕捉及び除去するための外部装置、例えば任意選択的な亜酸化窒素スクラバー40に通すことができることが理解されるべきである。ただし、排ガスを制御弁26の下流、言い換えると膜への空気/酸素供給ライン18の下流のミキサー供給ライン24に再循環させることにより、混合を管理するために必要な空気流量を維持しながら、流出液の品質やN2O排出などのプロセスの結果にも影響を与えるという複合的な利点が得られる。
【0053】
当該技術分野で知られているように、供給ガス、特に空気/酸素は膜を通って拡散し、廃水の処理においてバイオフィルムによって利用される。生物学的プロセスは、副生成物の1つとしての亜酸化窒素を生成し、これは膜を通って気体側内腔に拡散して戻り、その後排気ライン28を介して抜き出される。排気ライン28上には、亜酸化窒素センサー30、気体流量計32、及び酸素センサー34が配置されている。これらのセンサーの相対位置は変更することができる。これらのセンサーのそれぞれは、膜から排気ライン28を介して抜き出される排ガス中の亜酸化窒素を最小限にする一方で、硝化の阻害を防止するようにバイオフィルムへの酸素の十分な供給も確保するために、供給ライン18上の気体流量計22と共に、制御弁26を介した膜への空気の流れを制御するための1つ以上のセンサーからのデータを利用するアルゴリズムを用いてプログラムされているコントローラ36とデータ通信可能に配置されており、その結果、処理済廃水W中の特定の目標濃度、特にNH4及びNO3の目標濃度が維持される。
【0054】
廃水Wを監視するために、リアクター10は、廃水Wの1つ以上のパラメータを監視するように配置された水質センサー又はセンサー群38をさらに備えており、廃水Wは、流入廃水、流出廃水、又は筐体12が浸漬されているバルク液体廃水であってよい。監視されるパラメータは、廃水の溶存酸素、酸化還元電位、pH、温度、化学的酸素要求量、有機炭素、アンモニア濃度、二酸化窒素濃度、硝酸塩濃度、及び全窒素濃度のうちの1つ以上であってよく、さらに、排ガスの酸素移動速度及び/又は酸素移動効率などの気体側のパラメータであってもよい。また、コントローラ36上で実行されるアルゴリズムを介してフィードバック及び/又はフィードフォワード制御を提供するために任意の他の適切なパラメータが監視され使用され得ることも理解されるであろう。制御アルゴリズムは、膜空気流要件を決定するために、水質及び/又は排ガス濃度の目標値(NH4及びNO3目標値など)と組み合わされた排ガス濃度(例えば亜酸化窒素センサー30及び酸素センサー34によって監視されるO2;N2O)と共に、上記水質パラメータのリアルタイム値を考慮し、コントローラ36は、望みのプロセス結果を達成及び/又は維持するために、膜及び/又はミキサー14への空気流を調節するために必要な信号を送信する。例示的な実施形態では、空気流は、ミキサー14に最小限の空気流を供給して十分な混合を提供するために、及び膜に最小限の空気流を供給して流出液のNH4及びNO3の目標を満たすように十分な酸素を供給するために、2.5~13.8L/m2hの流量及び1.0~4.5m3/m3hの体積比空気流量に調節される。
【0055】
リアクター10の逆拡散性バイオフィルムでは、溶存酸素、アンモニウム、亜硝酸塩の局所濃度、並びに膜上のバイオフィルムの集団の層化及び密度に応じて、硝化と脱窒が同時に起こり得る。亜酸化窒素は、現在知られている硝化剤による脱窒、不完全なヒドロキシルアミン酸化、非生物的亜酸化窒素形成、及び従属栄養性脱窒による一酸化窒素(NO)の還元の経路を介して生成され得る。従属栄養性脱窒は亜酸化窒素の吸収源でもあり、亜酸化窒素をさらに分子窒素へと還元する。それぞれの生成経路は、バイオフィルム内の濃度勾配を変えることによって影響を受ける可能性がある。濃度勾配は、生物活性の変化、バルク液体濃度の変化、膜内腔内の分圧の変化によって変化する。
【0056】
各繊維の膜内腔内の気体の分圧は、気体の流量に依存する。例えば、流量が大きくなると、出口酸素濃度(気相から液相に移動する気体)が高くなり、或いはCO2及びN2Oの濃度(液相から気相に移動する気体)が低くなる。
【0057】
本発明は、リアクター10の1つ以上のプロセスパラメータと、バイオフィルムによる廃水Wの生物学的処理の副生成物としての亜酸化窒素の生成との間の特定の関係又は相関関係を認識することにあり、この相関関係は、望みのプロセス結果を達成するために制御弁26を操作するためのアルゴリズム内で利用することができる。特に、リアクター10は、膜への空気/酸素の流量とバイオフィルムからの亜酸化窒素排出量との間の相関関係に基づいて作動し、この亜酸化窒素は膜を通って気体側に拡散して戻り、排気ライン28を通って抜き出される排ガスの構成成分を形成し、したがって、これは亜酸化窒素センサー30を介してコントローラ26によって監視することができる。亜酸化窒素生成に関する生物学的プロセス及び逆拡散性バイオフィルムの拡散反応システムについての理論的考察に基づく、気体流量と亜酸化窒素排出量との間の正の相関関係は、実験的に確立されており、
図2に示されている。
【0058】
証明されたように、膜への空気/酸素流量を変化させることは、バイオフィルム内の亜酸化窒素の生成に影響する。以下の関係も、膜への空気/酸素供給の制御を行うためのアルゴリズムが利用できるコントローラ26への入力として使用可能な潜在的なプロセスパラメータである:
・空気流量は酸素分圧に影響を与える
・酸素分圧はバイオフィルム内の溶存酸素濃度プロファイルに影響を与える
・溶存酸素濃度プロファイルは、バイオフィルム内での亜酸化窒素の生成と消費に関与する様々な代謝経路の速度に影響を与える
・空気流量は気相中の亜酸化窒素分圧に影響を与える
・N2O分圧は膜を通るN2Oの気体側への移動に影響を与える
・膜を通る気体側へのN2Oの移動は、バイオフィルム内のN2Oの濃度勾配と物質移動に影響を与える
・より少ないN2Oがバイオフィルムの外側の無酸素層に拡散し、そこで脱窒において消費される可能性がある。
【0059】
上記結果として、気体供給装置16及び制御弁26によって生成及び/又は制御される膜への空気流量が増加すると、バイオフィルムからの、ひいては排ガス中の亜酸化窒素の排出量が増加する。その結果、膜への空気流量を減らすことによって亜酸化窒素の排出を軽減できることが証明された。ただし、好気性プロセス(例えば硝化)をバイオフィルム内で望みの速度で行えるようにするためには、膜に必要な量の酸素を供給する必要がある。したがって、膜/バイオフィルムへの空気流量を制御する目的は、N2Oの排出を最小限に抑えるために過剰供給を避けながら、必要な量の酸素をバイオフィルムに供給することである。
【0060】
リアクター10はエネルギー効率が高いため、エネルギーの観点から曝気を最適化するための重要な要件は存在しない。しかしながら、酸素の過剰供給のため、リアクター10への負荷が低い場合には、曝気の低減で硝化と脱窒が同時に促進されない可能性がある。リアクター10は、プロセスパラメータ、例えば流入液中のCOD及びアンモニアの質量を測定し、膜に供給される空気又は酸素の量を制御し、残りをバブルミキサー14又は概略的に示されているバブルミキサー14の代わりに利用され得る任意の代替のエアリフトミキサーに送ることによってこの問題を解決する。排ガスを膜からミキサー14に再循環させることによって、混合空気流と膜空気流を同時に管理することができる。これにより、膜への流量を制御しながら、ミキサー14への流量を適切なレベルで維持することができる。
【0061】
しかしながら、代替のプロセスパラメータ又はその組み合わせが上記目的のために監視され得ること、例えばCODと共にN2O、NO3が監視され得ることも理解されるであろう。十分な可溶性生分解性CODが存在することを保証する一方で、リアクター10への空気又は酸素の過剰供給を避けることも必要である。そうでない場合には、バイオフィルム内の細菌は最終電子受容体として硝酸塩ではなく酸素を使用することになる。
【0062】
必要な量の酸素の供給を確保することは、様々な手段によって実現することができ、その例示的な列挙は以下の通りである:
・空気流量は理論酸素要求量とバルク廃水Wの酸素移動効率から計算することができる。
・理論酸素要求量は、流入負荷から計算することができる(例えば入口水流量と入口アンモニウム又はTN濃度に基づいて)。
・理論酸素要求量は、リアクター10内の基質濃度と、リアクター10の反応速度論(例えばアンモニウム濃度とアンモニウム酸化速度との関係)に基づく関連する生物活性とから計算することができる。
・必要な酸素移動速度を達成するために、目標酸素移動効率を使用することができる。
・空気流量は、目標とする排ガス酸素濃度に基づいて制御することができる。
・排ガス中の酸素濃度は、膜繊維内腔内の平均酸素分圧を示す。
・繊維内腔で十分な酸素分圧が維持されている限り、酸素の移動を促進するために必要な駆動力が確保される。
・上記駆動力が存在すると、好気性プロセスは妨げられないと考えることができる(従来の曝気での溶存酸素濃度に基づく曝気制御と同様)(エラー!参照元が見つかりません。)。
【0063】
制御アルゴリズムは、上で詳述した1つ以上のプロセスパラメータからのデータを使用して、アルゴリズムプログラムがどの方向に流れるかを分析及び決定するために、1つ以上の制御構造を利用することができ、例えば:
・制御されるパラメータは、膜への空気流量である。目標値は、入口負荷(COD、TN、NH4-N)又は水質パラメータの排水/バルク液体濃度(COD、TOC、NH4-N、NO2-N、NO3-N)に基づいて決定することができる。フィードフォワード制御は、入口負荷に基づいて行うことができ、フィードバック制御は、排水/バルク液濃度に基づいて行うことができる。フィードフォワード制御とフィードバック制御は組み合わせることができる。
・制御パラメータは溶存酸素(DO)濃度である。
・制御パラメータは酸化還元電位(ORP)である。
・制御パラメータは排水品質(COD、TOC、NH4-N、NO2-N、NO3-N、TN)である。
・制御パラメータは気体側の酸素物質収支(オフガスO2%、OTR、OTE)に基づく。
・上の組み合わせが可能である(例えば入口NH4-N負荷に基づくフィードフォワード制御と、流出NH4-N及びオフガスO2%に基づくフィードバック制御)。
【0064】
上記方法でリアクター10を制御することによって、多くの潜在的な成果及び/又は利点が存在する。すなわち:
・エネルギーの節約-特に膜空気供給が混合空気と独立して提供又は調節される場合、又は混合空気流が一定ではない場合。
・硝化-アンモニウムの酸化に十分な酸素を供給する。
・亜硝酸化-アンモニウムの酸化に十分な酸素を供給するが、亜硝酸塩の酸化を抑制する。
・脱窒-過剰な酸素の移動を防いで脱窒が起こり得るバイオフィルム内の無酸素ゾーンの形成を可能にする。
・N2O排出-プロセスガスによるストリッピングを最小限に抑え、脱窒によってより多くのN2Oを消費できるようにすることで、N2O排出を軽減する。
【0065】
したがって、リアクター10、特に膜及び/又はミキサー14への空気流を調節することによってリアクター10を制御する方法は、有害な亜酸化窒素の生成を大幅に低減する、好ましくは最小限に抑えることを可能にすると同時に、望まれる処理目標、特に処理済み廃水中のNH4及びNO3の目標の達成を可能にすることが理解されるであろう。
【国際調査報告】