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特表2024-512306活性物質を含む顆粒、その調製方法、及びヒト摂取用又は動物飼料用の食料におけるその使用
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  • 特表-活性物質を含む顆粒、その調製方法、及びヒト摂取用又は動物飼料用の食料におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】活性物質を含む顆粒、その調製方法、及びヒト摂取用又は動物飼料用の食料におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240312BHJP
   A23K 40/30 20160101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/44
A61K31/19
A23K40/30 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553244
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022055609
(87)【国際公開番号】W WO2022184911
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2102169
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523330411
【氏名又は名称】イドゥキャプス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェニョー カリン
(72)【発明者】
【氏名】ユエット ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォンデヴィル ジョン-ウード
【テーマコード(参考)】
2B150
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AB20
2B150AE22
2B150AE29
2B150BC04
2B150BE04
2B150CE07
2B150CE15
2B150CE23
2B150CJ08
2B150DA36
2B150DA55
2B150DC09
2B150DC17
2B150DD45
2B150DH04
2B150DH05
2B150DH09
2B150DH35
2B150DJ03
2B150DJ14
2B150DJ26
2B150DJ28
4C076AA31
4C076AA94
4C076BB01
4C076DD24
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD41
4C076EE53
4C076GG10
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206NA12
(57)【要約】
本発明は、酪酸ナトリウム粒子と、前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスとを含む顆粒に関し、前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後にその形態を保っており、前記顆粒は、胃内で前記酪酸ナトリウム粒子に保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管内で前記酪酸ナトリウム粒子を徐放することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒であって、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含み、
前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後にその形態を保っており、
前記顆粒は、胃内で前記酪酸ナトリウム粒子に保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管内で前記酪酸ナトリウム粒子を徐放することを特徴とし、
酪酸ナトリウムの胃保護率TRC1は、50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、前記胃保護率TRC1は、Boisenの方法に従って適合された胃環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、胃の消化から保護された酪酸ナトリウムの相対量であり、
及び/又は、
- 小腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC2は、25%以上であり、前記腸溶性放出率TRC2は、Boisenの方法に従って適合された、小腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量であり、
- 大腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC3は、それぞれ50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、前記腸溶性放出率TRC3は、Boisenの方法に従って適合された、大腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量である、顆粒。
【請求項2】
酪酸レベルが、酪酸ナトリウムの総量の5%未満、特に2%未満、特に1%未満、特に0.5%未満、好ましくは0.1%未満である、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記脂肪物質は、12個を超える炭素原子、特に12~22個の炭素原子、を含む長鎖脂肪酸、特に16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を含み、前記C16脂肪酸及び前記C18脂肪酸は、特に、含有量が前記脂肪物質の総重量の70%以上であり、前記脂肪酸のC16:C18重量比は、特に、0.7~1.7である、請求項1又は2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記形態は球状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒において、
前記マトリックスは、1種のミネラル又は複数種のミネラルを、特に、前記顆粒の総重量の2~10%の割合で含み、
好ましくは、前記ミネラルは、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、炭酸コバルト、炭酸亜鉛及びそれらの混合物、特に、リン酸三カルシウム及び硫酸カルシウム、から選択される、顆粒。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の顆粒において、前記顆粒は、
- 40~80重量%、好ましくは50~70重量%、の脂肪物質と、
- 20~60重量%、好ましくは30~50重量%、の酪酸ナトリウムと
を含み、
前記脂肪物質は、特に水添パーム油、水添ヒマワリ油、水添ナタネ油、蜜ろう、キャンデリラろう、カルナウバろう、パームステアリン、ステアリン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される、顆粒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の顆粒を含む、顆粒の集合体であって、
・ 前記顆粒の粒径は、200μm~1.5mm、好ましくは400~1,000μm、好ましくは600~800μmであり、特に前記酪酸ナトリウム粒子の粒径は、50~1,200μm、特に200~300μmであり、
・ 又は、前記顆粒のSPAN値は1以下であり、特に0.8以下、好ましくは0.5以下であり、前記SPAN値は以下の式に従って計算され、
【数5】
式中、D(90%)、D(50%)及びD(10%)は、それぞれ、前記顆粒の集合体の90%、50%及び10%がこの値よりも小さい直径を有する、直径を表し、
・ 又は、粉末を形成する前記顆粒の集合体は、流動指数が4~7[FlodexTM指数]、特に4若しくは5、であり、
・ 又は、吸湿値が3~10%、特に5~10%である、顆粒。
【請求項8】
請求項1~3、5及び6のいずれか1項に記載の顆粒を含む、顆粒の集合体であって、前記顆粒の少なくとも90重量%は、球状形態を有する、顆粒の集合体。
【請求項9】
顆粒の集合体を調製するための方法であって、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含み、
前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後に、その形態を保っており、
前記顆粒は、胃内で前記酪酸ナトリウム粒子の保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管内で酪酸ナトリウム粒子を徐放することを特徴とし、
前記方法は、
- 溶融状態の前記脂肪物質の液体中で、固体状態の酪酸ナトリウム粒子の混合物を調製し、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液から、顆粒を形成し、次いで結晶化された脂肪物質中の粒子の分散形態で固化させ得る、ステップと
を含み、
前記顆粒を形成する前記ステップの前において、前記脂肪物質の溶融液中で前記酪酸ナトリウム粒子の前記混合物から構成された前記懸濁液の粘度は、8,000mPa・s未満、好ましくは5,000mPa・s未満、より好ましくは2,500mPa・s未満、特に10~8,000mPa・sである、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製して、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液から液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を冷却して顆粒にし、前記酪酸ナトリウム粒子を封入するマトリックスを形成する、前記脂肪物質の固化を可能にするステップと
を含み、又は、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製するステップであって、前記粉末を、液状の溶融状態にある前記脂肪物質中に、適切な手段により、特にミキサーを用いて、導入することにより、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の噴霧により、液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含み、又は、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の前記脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の前記液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含み、又は、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の前記脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液を冷却することにより、前記結晶化された脂肪物質中での粒子の分散物を得るステップと、
- 前記分散物から顆粒を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記脂肪物質は、16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を、特に前記脂肪物質の総重量の70%以上の含有量で含み、好ましくは前記脂肪酸のC16:C18重量比が0.7~1.7である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪物質マトリックスは、前記顆粒の総重量の2~10%の量の、少なくとも1種のミネラルを含み、前記ミネラルは、特にリン酸三カルシウム又は硫酸カルシウムである、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる顆粒の集合体。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の顆粒又は請求項7、8及び13のいずれか1項に記載の顆粒の集合体を含む、動物及びヒトの食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質を含む顆粒、その調製方法、及びヒト又は動物の食用の使用に関する。特に、本発明は酪酸ナトリウムを含む顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的課題
酪酸から誘導される化合物は、腸壁の成長及び腸内細菌叢の微生物の発達を刺激することによって、多くの有利な生物学的効果、特に消化器系に対する効果を有する。特に、それらは、消化器系の微生物のいくつかの株に対する抗菌効果を選択的に特徴付ける。例えば、それらは、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、大腸菌、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びクレモリス(cremoris)及びサルモネラ菌株の細菌の発達を制限し、その一方で、乳酸菌(Lactobacillus)及びストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)菌株はそれらの影響を受けにくい。
【0003】
しかしながら、酪酸と同様、それらの誘導化合物には、その製造及び貯蔵を困難にする、傷んだバターの悪臭がある。
【0004】
酪酸から誘導されるこれらの化合物の中で、酪酸ナトリウムは、250℃を超える温度まで、固体状態であり安定であるという利点を有する。しかしながら、酪酸ナトリウムは胃内に見られるような酸性環境の影響を受けやすく、そこで加水分解して酪酸を形成し、これは揮発性であり又は胃内で吸収されやすい液体の状態にある。したがって、酪酸ナトリウム粒子の直接経口吸収は、主に胃での溶解及び吸収をもたらし、このことが、酪酸ナトリウムが腸管に取り込まれるのを制限する。
【0005】
腸管は、小腸及び結腸で終わる大腸によって構成される。これらの各部分において、その環境は、特にpH及び酵素の存在によって、進化し、異なる。酪酸ナトリウム粒子の保護は、小腸のレベルでの生体利用能だけでなく、腸管に沿った溶解を可能にすべきである。特に、大腸、特に結腸における、酪酸ナトリウム粒子の腸溶性放出を可能にするような保護が必要とされている。
【0006】
特許文献EP2352386には、脂肪物質マトリックス中に酪酸ナトリウム粒子を含む顆粒の調製方法が記載されており、この方法で、硫酸カルシウムは、顆粒の胃抵抗性を促進するためにマトリックス中に組み込まれている。
【0007】
特許文献EP2727472は、押出しによって脂肪物質中の酪酸塩粒子の顆粒を調製する方法を教示しており、この方法は、胃保護層でコーティングすることを含む。
【0008】
PCT出願WO2018/033935には、反芻動物の胃の関門を通過する酪酸ナトリウム、脂肪酸及びミネラルの多層顆粒を得るための、連続噴霧によるプロセスが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腸管に沿った酪酸ナトリウム粒子の生体利用効率を維持する一方で、酪酸ナトリウム粒子が胃の関門を通過するように、酪酸ナトリウム粒子を胃の酸性環境から保護する必要がある。
【0010】
また、本発明の目的の1つは、脂肪物質マトリックス中で保護された酪酸ナトリウム粒子を含む顆粒を提供することであり、胃中での保護を与える胃抵抗性、及び腸管中での徐放を与えることを特徴とする。
【0011】
本発明の別の目的は、酪酸ナトリウム粒子を含む顆粒の集合体を、容易に取り扱われ、かつ前記顆粒が意図される用途に適合された、安定な粉末の形態で、提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、胃抵抗性及び適切な腸溶性放出特性を有する酪酸ナトリウム粒子を含む顆粒の調製方法を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、そのような顆粒を含む動物又はヒトの食用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明
本発明は、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含む顆粒に関し、
前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後にその形態を保っており、
前記顆粒は、胃内で前記酪酸ナトリウム粒子に保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管内で前記酪酸ナトリウム粒子を徐放することを特徴とする。
【0015】
本願発明者らは、驚くべきことに、そして予想外に、脂肪酸を含む脂肪物質マトリックス中に封入され、特定の調製条件下で得られた、酪酸ナトリウム粒子を含む顆粒が、胃及び腸消化媒体中でその形態を保つことを実証した。これは胃、小腸及び大腸の環境をモデル化するインビトロ試験における消化後に、マトリックスの構造的抵抗性をもたらし、この構造的抵抗性は、胃における酪酸ナトリウム粒子の胃抵抗性及び腸管に沿った酪酸ナトリウム粒子の徐放を可能にする。
【0016】
胃抵抗性及び徐放は、従来技術の顆粒と比較して改善される。したがって、市販の生成物Adimix(登録商標)precisionに対応するERP80という番号でAdisseoによって市販されている製品は、胃の模擬実験ステップのみで85%の酪酸ナトリウムを放出することを特徴とし、NovationによってButirex C4の商品名で市販されている、別の封入酪酸塩顆粒は、胃で酪酸塩が完全に放出されることを特徴とする。
【0017】
「胃の消化」とは、胃酸度及び胃酸による、摂取された生成物の胃での分解であると理解されるべきである。
【0018】
胃の消化は、胃液に近い組成を有する溶液によってインビトロでモデル化され得る。
【0019】
胃によって分泌される胃液(又は胃酸)は、塩酸などの薬剤、及びタンパク質を溶解するペプシンなどのいくつかの酵素を含む。
【0020】
一般に、胃の状態は、酸pHが1~4に維持された水と、例えばペプシンタイプのタンパク質分解酵素とを含む溶液であって、前記酵素がその溶液の総重量に対して0.025~2.5重量%の含有量で存在する溶液によってモデル化され得る。
【0021】
ペプシンは、アミノ酸ペプチド結合を加水分解することによって食塊タンパク質を分解する。
【0022】
用いられた、胃消化のインビトロ試験での模擬実験は、Boisenの方法(Boisenら、Animal Feed Science Technology 68(1997), 277-286)に適合される。この試験は、ある量の顆粒、例えば1gを、例えば25mgのペプシンの存在下、pH=2の溶液中で、胃環境をモデル化した39℃で2時間、インキュベートすることにより行われる。
【0023】
「腸の消化」とは、小腸及び大腸における腸消化であると理解されるべきである。
【0024】
「小腸における腸消化」とは、小腸環境での、摂取された生成物の分解であると理解されるべきである。
【0025】
一般に、小腸における腸消化は、小腸に存在する、特にパンクレアチンを含む、液体に近い組成を有する溶液によって、インビトロでモデル化される。
【0026】
パンクレアチンは、膵液由来の酵素である。
【0027】
小腸における腸消化をモデル化するのに用いられたインビトロ試験は、Boisenの方法に適合される。この試験は、ある量の顆粒、例えば1gを、例えば100mgのパンクレアチンの存在下、pH=6.8の溶液中で、小腸の腸環境をモデル化した39℃で4時間、インキュベートすることにより行われる。
【0028】
「大腸における腸消化」とは、大腸の腸環境での、摂取された生成物の分解であると理解されるべきである。
【0029】
大腸における腸消化は、特にリパーゼを含む、大腸に存在する液体に近い組成を有する溶液によって、インビトロでモデル化される。リパーゼは膵臓によって分泌される消化酵素である。
【0030】
大腸における腸消化をモデル化するのに用いられたインビトロ試験は、Boisenの方法に従って適合される。この試験は、ある量の顆粒、例えば1gを、例えば100mgのリパーゼの存在下、pH=7の溶液中で、大腸の腸環境をモデル化した39℃で18時間、インキュベートすることにより行われる。
【0031】
「顆粒の形態」とは、顆粒の外形であると理解されるべきである。
【0032】
本願発明者らは、驚くべきことに、Boisenの方法に従って適合された消化試験の後、本発明に係る顆粒は、それらの形態を保つことを観察した。
【0033】
顆粒形態の維持は、顆粒の脂肪物質マトリックスの構造が、胃及び腸の消化をモデル化する3つの試験について保たれていることを示す。
【0034】
「胃抵抗性」とは、胃環境における顆粒の分解に対する抵抗性であると理解されるべきである。この「胃抵抗性」は一般に、例えば、胃液媒体中で2時間、胃通過の模擬実験後の、顆粒における酪酸ナトリウム残留量によって決定される。
【0035】
「徐放」とは、一般に、消化酵素、胆汁酸塩又は微生物による、封入脂肪物質マトリックスの消化又は可溶化により、消化管に沿ってその封入脂肪物質マトリックスから酪酸ナトリウムが徐々に放出されることであると理解されるべきである。
【0036】
この「徐放」は、一般に、例えば、小腸をモデル化する液体中で4時間、及び大腸をモデル化する液体中で18時間の、腸管通過の模擬実験後の、顆粒による酪酸ナトリウムの放出量によって決定される。
【0037】
顆粒の形態学的分析は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡、好ましくは走査型電子顕微鏡を用いた、観察によって行われ得る。
【0038】
有利な実施形態によれば、本発明は、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと、
を含む顆粒であって、
前記顆粒は、インビトロ試験での胃及び腸の消化模擬実験後に、その形態を保っており、
前記顆粒は胃における酪酸ナトリウム粒子に保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管における酪酸ナトリウム粒子の徐放を特徴とし、
酪酸レベルは、酪酸ナトリウムの総量の5%未満、特に2%未満、特に1%未満、特に0.5%未満、好ましくは0.1%未満である、顆粒に関する。
【0039】
顆粒中に存在し得る酪酸は、酪酸ナトリウムの加水分解に由来する。
【0040】
有利な実施形態によれば、本発明は、酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)が50%以上である、前記の顆粒に関する。
【0041】
有利な実施形態によれば、本発明は、酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)が65%以上である、前記の顆粒に関する。
【0042】
有利な実施形態によれば、本発明は、酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)が70%以上である、前記の顆粒に関する。
【0043】
「50%以上」とは、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%及び95~100%の範囲でもあると、理解されるべきである。
【0044】
「65%以上」とは、60~65%、65~70%、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%及び95~100%の範囲でもあると、理解されるべきである。
【0045】
「70%以上」とは、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%及び95~100%の範囲でもあると、理解されるべきである。
【0046】
「胃保護率TRC1」とは、Boisenの方法に従って適合された、適切な胃環境でインキュベーションされた前記のインビトロ試験後の、胃の消化から保護された酪酸ナトリウムの相対量であると理解されるべきである。それは、胃の消化の間、保護され、腸管での放出のために利用可能な、酪酸ナトリウムの割合に対応する。
【0047】
酪酸ナトリウムの胃保護率TRC1は、以下の式に従って、胃環境におけるインキュベーションの前記インビトロ試験の後に計算される。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、Qtは酪酸ナトリウムの初期総量を表し、Qdは、胃で消化される間の酪酸ナトリウムの溶解量を表す。胃保護率TRC1は、顆粒中に保持される酪酸ナトリウムの量と顆粒中の酪酸ナトリウムの初期総量との間の比によって定義される。
【0050】
保持される酪酸塩の量は、酪酸ナトリウムの初期総量Qtから、胃環境におけるインキュベーションの前記インビトロ試験(le test in vitro d’incubation)後の、溶液中に溶解した酪酸ナトリウムの量Qdを差し引くことによって決定される。
【0051】
溶液中の酪酸ナトリウムの溶解量は、当業者に公知の定量分析技術、GC-MS又は比色分析により、例えばクリスタルバイオレットを用いて、得られる。
【0052】
比較として、市販されているAdimix(登録商標)precisionなどの従来技術の生成物は、測定胃保護率15%をもたらす。EP2352386に開示されている生成物は、胃の保護率61%を報告している。
【0053】
有利な実施形態によれば、本発明は、腸管の全長にわたって酪酸ナトリウム粒子が徐放されることを特徴とする、
小腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC2は25%以上であり、
大腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC3は50%以上である、前記の顆粒に関する。
【0054】
「25%以上」とは、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%及び95~100%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0055】
前記腸溶性放出率TRC2及びTRC3は、前記の腸環境をモデル化するBoisenの方法に従って適合された腸消化のインビトロ試験後に分析される。
【0056】
「放出率TRC2」とは、Boisenの方法に従って適合された、小腸の腸管環境におけるインキュベーションの前記のインビトロ試験後に放出され、溶液中に溶解された酪酸ナトリウムの相対量であると理解されるべきである。この放出率TRC2は、小腸における腸消化の間に、放出された利用可能な量の酪酸ナトリウムを特徴付ける。
【0057】
酪酸ナトリウムの放出率TRC2は、以下の式に従って、小腸の腸環境におけるインキュベーションの前記のインビトロ試験後に計算される。
【0058】
【数2】
【0059】
ここで、Qtは酪酸ナトリウムの初期総量を表し、Qdは、小腸で腸消化される間の酪酸ナトリウムの溶解量を表す。
【0060】
これは、顆粒の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの量と、顆粒の酪酸ナトリウムの初期総量との間の比によって定義される。
【0061】
比較すると、従来技術の生成物Adimix(登録商標)precisionでは、腸溶性放出率TRC2が87%となり得る。
【0062】
「放出率TRC3」とは、Boisenの方法に従って適合された、大腸の腸環境におけるインキュベーションの前記のインビトロ試験後に放出され、溶液中に溶解された酪酸ナトリウムの相対量であると理解されるべきである。このTRC3レベルは、大腸での腸消化の間に放出された利用可能な量の酪酸ナトリウムを特徴付ける。
【0063】
酪酸ナトリウムの放出率TRC3は、大腸の腸環境におけるインキュベーションの前記のインビトロ試験の後に計算される。これは、顆粒の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの量と、顆粒の酪酸ナトリウムの初期総量との間の比によって定義される。
【0064】
溶液中に溶解した酪酸ナトリウムの量は、GC-MS又は比色分析などの当業者に公知の定量分析技術によって得られる。
【0065】
徐放は、腸溶性放出率TRC2及びTRC3を決定することによって特徴付けられ得る。
【0066】
放出率TRC2及びTRC3は、酪酸ナトリウム粒子の放出能率を、従来技術の生成物と比較することを可能にする。
【0067】
25%よりも高い放出率TRC2は、顆粒から小腸の腸環境への、酪酸ナトリウムの初期総量の25%が放出されたことを示す。
【0068】
50%よりも高い放出率TRC3は、顆粒から大腸の腸環境への、酪酸ナトリウムの初期総量の50%が放出されたことを示す。
【0069】
有利な実施形態によれば、本発明は、大腸における酪酸ナトリウムの放出率TRC3が、60%以上である、前記の顆粒に関する。
【0070】
有利な実施形態によれば、本発明は、大腸における酪酸ナトリウムの放出率TRC3が70%以上である、前記の顆粒に関する。
【0071】
比較すると、従来技術の生成物Adimix(登録商標)precisionの腸溶性放出率TRC3は、79%になり得る。
【0072】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒に関し、酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)が50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、
及び/又は、腸管の全長にわたって酪酸ナトリウム粒子の徐放を特徴とし、
小腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC2が25%以上であり、
大腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC3が、それぞれ50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上である。
【0073】
有利な実施形態によると、本発明は、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含む顆粒に関し、
前記顆粒は、インビトロ試験での胃及び腸の消化模擬実験後にその形態を保っており、
前記顆粒は、胃における酪酸ナトリウム粒子に対する保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管における酪酸ナトリウム粒子の徐放を特徴とし、
酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)は50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、胃保護率TRC1は、Boisenの方法に従って適合された胃環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、胃消化から保護された酪酸ナトリウムの相対量であり、
及び/又は、
腸管の全長にわたって酪酸ナトリウム粒子が徐放されることを特徴とし、
- 小腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC2は25%以上であり、この放出率TRC2は、Boisenの方法に従って適合された、小腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量であり、
- 大腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC3はそれぞれ50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、「放出率TRC3」は、Boisenの方法に従って適合された大腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量である。
【0074】
有利な実施形態によると、本発明は、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含む顆粒に関し、
前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後にその形態を保っており、
前記顆粒は、胃における酪酸ナトリウム粒子に対する保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管における酪酸ナトリウム粒子の徐放を特徴とし、
酪酸ナトリウムの胃保護率(TRC1)は50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、胃保護率TRC1は、Boisenの方法に従って適合された胃環境でのインキュベーションのインビトロ試験後の、胃消化から保護された酪酸ナトリウムの相対量であり、及び/又は、
腸管の全長にわたって酪酸ナトリウム粒子が徐放されることを特徴とし、
- 小腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC2は25%以上であり、この放出率TRC2はBoisenの方法に従って適合された、小腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量であり、
- 大腸における酪酸ナトリウムの腸溶性放出率TRC3は、それぞれ50%以上、特に65%以上、好ましくは70%以上であり、この「放出率TRC3」はBoisenの方法に従って適合された大腸の腸環境におけるインキュベーションのインビトロ試験後の、溶液中に放出され溶解された酪酸ナトリウムの相対量であり、
酪酸レベルは、酪酸ナトリウムの総量の5%未満、特に2%未満、特に1%未満、特に0.5%未満、好ましくは0.1%未満である。
【0075】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪物質が、12個を超える炭素原子、特に12~22個の炭素原子、好ましくは12、14、16、18、20及び22個の炭素原子、更により好ましくは16及び18個の炭素原子、を含む、長鎖脂肪酸を含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0076】
「C16」とは、16個の炭素原子の鎖を含む脂肪酸であると理解されるべきである。
【0077】
同様に、「C18」とは、18個の炭素原子の鎖を含む脂肪酸であると理解されるべきである。
【0078】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪物質が16個及び18個の炭素原子を、特に脂肪物質の総重量の70%以上の含有量で含む、長鎖脂肪酸を含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0079】
「70%以上」とは、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%及び95~100%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0080】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪酸のC16/C18重量比が0.7~1.7である、前記で定義された顆粒に関する。
【0081】
「0.7~1.7」とは、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7の範囲でもあるとも理解されるべきである。
【0082】
有利な実施形態によれば、本発明は顆粒に関し、前記脂肪物質は、
- 40~65%のC16脂肪酸と、
- 30~60%のC18脂肪酸と
を含み、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0083】
「40~65%」とは、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%及び60~65%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0084】
「30%~60%」とは、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%及び55~60%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0085】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪酸のC16:C18重量比が1.0~1.7、特に1.1又は1.6又は1.7である、顆粒に関する。
【0086】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒に関し、前記脂肪物質は、
- 50~60%のC16脂肪酸と、
- 30~45%のC18脂肪酸と
を含み、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0087】
好ましくは、顆粒の脂肪物質は、57%のC16脂肪酸及び36%のC18脂肪酸を含む。
【0088】
好ましくは、顆粒の脂肪物質は、59%のC16脂肪酸及び35%のC18脂肪酸を含む。
【0089】
好ましくは、顆粒の脂肪物質は、55%のC16脂肪酸及び41%のC18脂肪酸を含む。
【0090】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪酸のC16:C18重量比が0.7~1.0、特に0.8又は0.9である、本発明の顆粒に関する。
【0091】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒に関し、前記脂肪物質は、
- 40~50%のC16脂肪酸と、
- 50~60%のC18脂肪酸と
を含み、ここで、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0092】
好ましくは、顆粒の脂肪物質は、44%のC16脂肪酸及び54%のC18脂肪酸を含む。
【0093】
好ましくは、顆粒の脂肪物質は、46%のC16脂肪酸及び52%のC18脂肪酸を含む。
【0094】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪物質が12個を超える炭素原子、特に12~22個の炭素原子、を含む長鎖脂肪酸、特に16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を含み、前記C16脂肪酸及びC18脂肪酸の含有量は、特に脂肪物質の総重量の70%以上であり、脂肪酸のC16:C18重量比は、特に0.7~1.7である、前記で定義された顆粒に関する。
【0095】
有利な実施形態によれば、本発明は、球状の形態である、前記で定義された顆粒に関する。
【0096】
「球状の形態」とは、本発明の文脈では、アスペクト比が1に近い規則的な形態であると理解されるべきである。
【0097】
「アスペクト比」とは、本発明の文脈では、顆粒の、最大寸法の軸、いわゆる主軸、の寸法と、最小寸法の軸、いわゆる二次軸、の寸法との比であると理解されるべきである。粒子は、主軸と二次軸との比が1.1未満であると、球状であると考えられる。
【0098】
分析は、形状認識型ツールによって、画像解析によって、例えばMicrovision Instruments、バージョン6.0.2からのELLIXソフトウェアを用いて実行することができる。それは、粒径、円形度及び配向の測定を可能にし、球形度を特徴付けるために使用され得る。この動作ソフトウェアは、画像捕捉のためのカメラに結合される。
【0099】
顆粒の球形度は、顆粒に、より容易な貯蔵及び輸送を可能にする、粉末圧縮特性を与える。
【0100】
顆粒の球形度はまた、顆粒の外部との交換の表面を最小限にして、分解を制限し得る。
【0101】
特に、有利には、本発明の顆粒の球状形態により、同じ体積の細長い又は卵形の形態を有する顆粒よりも、交換の表面が小さくなる。したがって、本発明に係る球状顆粒は、交換表面を制限することによって、胃及び腸の胃液又は腸液による分解を最小限に抑え、腸管に沿った徐放を可能にするその構造的完全性を保つことを可能にする。
【0102】
有利な実施形態によれば、本発明は、マトリックスがあらゆるミネラルを含まない、前記で定義された顆粒に関する。マトリックス中にミネラルが存在しないことは、コストの観点から有利である。
【0103】
有利な実施形態によれば、本発明は、マトリックスが1つのミネラル又はいくつかのミネラルを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0104】
「ミネラル」とは、無機物質であると理解されるべきである。
【0105】
ミネラルは、いくつかの機能を有し得る。それらは、緩衝剤として、プロセスにおいて用いられ得る。それらはまた、顆粒の特性を生み又は改善するために組み込まれてもよい。
【0106】
有利な実施形態によれば、本発明は、マトリックスが顆粒の総重量の2~10%の割合でミネラルを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0107】
「2~10%」とは、2~3%、3~4%、4~5%、5~6%、6~7%、7~8%、8~9%、9~10%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0108】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム(TCP)、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、炭酸コバルト、炭酸亜鉛及びこれらの混合物から選択される、前記で定義された顆粒に関する。
【0109】
特許文献EP2352386とは対照的に、硫酸カルシウムを含む本発明で得られる粒子は、驚くべきことに、胃保護率(TRC1)が71%及び73%であるという特徴を有し、これと比較して製品Adimix(登録商標)precisionでは保護率15%である。
【0110】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが特に顆粒の総重量の2~10%の含有量の、リン酸三カルシウム(TCP)である、前記で定義された顆粒に関する。
【0111】
有利な実施形態によれば、本発明は、硫酸カルシウムを含む、又は含まない、前記で定義された顆粒であって、特に硫酸カルシウムを含む前記顆粒に関する。
【0112】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが、特に顆粒の総重量の2~10%の含有量の、硫酸カルシウムである、前記で定義された顆粒に関する。
【0113】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒であって、マトリックスが1つのミネラル又はいくつかのミネラルを、特に顆粒の総重量の2~10%の割合のミネラルを、含み、好ましくは、前記ミネラルが炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、炭酸コバルト、炭酸亜鉛及びそれらの混合物、特に、リン酸三カルシウム及び硫酸カルシウム、から選択される、前顆粒に関する。
【0114】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒であって、
- 40~80重量%の脂肪物質と、
- 20~60重量%の酪酸ナトリウムと
を含む、前記顆粒に関する。
【0115】
「40~80%」とは、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%の範囲であるとも理解されるべきである。
【0116】
「20~60%」とは、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0117】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒であって、
- 50~70重量%の脂肪物質と、
- 30~50重量%の酪酸ナトリウムと
を含む、前記顆粒に関する。
【0118】
「30~70%」とは、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0119】
「30~50%」とは、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%の範囲でもあると理解されるべきである。
【0120】
有利な実施形態によれば、本発明は、80重量%の脂肪物質及び20重量%の酪酸ナトリウムを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0121】
有利な実施形態によれば、本発明は、70重量%の脂肪物質と、10重量%のミネラルと、20重量%の酪酸ナトリウムとを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0122】
有利な実施形態によれば、本発明は、70重量%の脂肪物質と、30重量%の酪酸ナトリウムとを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0123】
有利な実施形態によれば、本発明は、60重量%の脂肪物質と、10重量%のミネラルと、30重量%の酪酸ナトリウムとを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0124】
有利な実施形態によれば、本発明は、50重量%の脂肪物質と、50重量%の酪酸ナトリウムとを含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0125】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質が水添パーム油、水添ヒマワリ油、水添ナタネ油、蜜ろう、キャンデリラろう、カルナウバろう、パームステアリン、ステアリン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される、前記で定義された顆粒に関する。
【0126】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質が水添パーム油である、前記で定義された顆粒に関する。
【0127】
水添パーム油は、市販されているものでもよく、例えば、Mosselman s.a.(ベルギー)又はADM-SIO(フランス)により提供される。
【0128】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒であって、
- 40~80重量%、好ましくは50~70重量%、の脂肪物質と、
- 20~60重量%、好ましくは30~50重量%、の酪酸ナトリウムと
を含み、
脂肪物質は、特に、水添パーム油、水添ヒマワリ油、水添ナタネ油、蜜ろう、キャンデリラろう、カルナウバ、パームステアリン、ステアリン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される、前記で定義された顆粒に関する。
【0129】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記マトリックスは、顆粒内部に気泡を含む、前記で定義された顆粒に関する。
【0130】
有利な実施形態によれば、本発明は、乳化剤を含まない、前記で定義された顆粒に関する。
【0131】
「乳化剤」とは、安定で均一なエマルジョンの生成を可能にする添加剤であると理解されるべきである。避けるべき乳化剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート(Tween 20又は80)、ヒマワリ、大豆又は菜種レシチン、脂肪酸のモノ及びジグリセリドである。
【0132】
有利な実施形態によれば、本発明は不快な臭気のない、前記で定義された顆粒に関する。
【0133】
「不快な臭気」とは、悪臭分子の空気中への放出であると理解されるべきである。
【0134】
「不快な臭気のない」とは、顆粒の製造、取扱い又は貯蔵において、ユーザに不都合を与えない、特に酪酸の、低レベルでの放出であると理解されるべきである。
【0135】
有利な実施形態によれば、本発明は、追加の外側保護コーティング層を含まない、前記で定義された顆粒に関する。本発明に係る顆粒は、胃保護層又は空気によるその分解に対する保護層を組み込む必要がないという利点を有する。実際に、その取り扱い及び貯蔵を複雑にする傷んだバターの強い悪臭をもたらす酪酸は、本発明に係る顆粒によっては、その構造を前提とすると、放出されない。顆粒の安定性はまた、安全性の点で利点を有する。実際、REACH規則(EC No.1907/2006)は、作業員のばく露限界値を36.8mg/mと推奨している。製品の貯蔵に関して、酪酸は2体積%、すなわち2,000ppmの爆発下限を有することに留意すべきである。有利な実施形態によれば、本発明は、遊離酪酸のレベルが5%未満、特に2%未満、特に1%未満、特に0.5%未満、好ましくは0.1%未満である、前記で定義された顆粒に関する。
【0136】
有利な実施形態によれば、本発明は、遊離酪酸のレベルがゼロである、前記で定義された顆粒に関する。
【0137】
「遊離酪酸のレベル」とは、顆粒中に存在する遊離形態の酪酸レベルであると理解されるべきである。この率は、酪酸が可溶であり酪酸ナトリウムが不溶な、ヘキサンなどの有機溶媒中での粉砕後に、顆粒を抽出することによって決定することができる。有機溶媒中に抽出される酪酸の量は、ガスクロマトグラフィーなどの分析技術によって決定することができる。遊離酪酸のレベルは、酪酸から抽出されたこのモル量と、顆粒からの酪酸ナトリウム及び酪酸の初期総モル量との比によって定義される。
【0138】
「5%未満」とは、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の範囲であると理解されるべきである。
【0139】
「0.5%未満」とは、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満の範囲であると理解されるべきである。
【0140】
「0.1%未満」とは、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.001%未満の範囲であると理解されるべきである。
【0141】
「レベルがゼロ」とは、ガスクロマトグラフィーによる分析では検出できないレベルであると理解されるべきである。
【0142】
有利な実施形態によれば、本発明は、エステル化率が15%未満、好ましくは10%未満、特に1.0%未満である、前記で定義された顆粒に関する。
【0143】
「エステル化率」とは、脂肪酸又は脂肪酸トリグリセリドに結合した酪酸のレベルであると理解されるべきである。この率は、結合した酪酸のモル量と酪酸塩の総初期モル量との間の比として定義される。
【0144】
この率は、顆粒を粉砕し、水を抽出した後、イオンクロマトグラフィーによる逆滴定によって決定することができる。実際、イオンクロマトグラフィーは、水相中での抽出によるものである酸形態及び塩基形態の区別なしに、酪酸ナトリウム及び酪酸の総量を決定することを可能にする。脂肪酸又は脂肪酸トリグリセリドの存在下で、酪酸ナトリウムは、エステル化によって酪酸エステルを形成し得る。これらのエステルは、イオンクロマトグラフィーにおいて、酪酸ナトリウム及び酪酸と同じスペクトルを有さない。
【0145】
「15%未満」とは、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の範囲であると理解されるべきである。
【0146】
「1.0%未満」とは、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満の範囲であると理解されるべきである。
【0147】
Admix(登録商標)precisionの生成物の分析により、16%より高いエステル化率の存在が示される。Admix(登録商標)precision中の酪酸エステルの存在は、脂肪酸に結合した酪酸エステルがけん化され放出されることを可能にする塩基性媒体中での相変化分析によって確認される。
【0148】
酪酸の形態、すなわち遊離酪酸の形態、酪酸ナトリウムの形態又は脂肪酸もしくは脂肪酸トリグリセリドに結合したエステルの形態は、腸管におけるその生体利用効率を決定する1つの因子である。
【0149】
本発明はまた、顆粒が前記で定義されたものである、顆粒の集合体に関する。
【0150】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒の粒径が200μm~1.5mm、好ましくは400~1,000μm、好ましくは600~800μmである、前記で定義された顆粒の集合体に関する。有利な実施形態によれば、本発明は、平均粒径Dv(0.5)が600~800μm、特に630μmである、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0151】
Adimix(登録商標)precisionの生成物の平均粒径Dv(0.5)の測定値は約990μmである。
【0152】
平均粒径Dv(0.5)とは、前記集団の顆粒の50%がその平均粒径よりも大きい直径を有し、前記組成物の粒子の50%がその平均粒径よりも小さい直径を有する、平均粒径であると理解されるべきである。
【0153】
卵形粒子に関して、平均直径は、粒子の幅及び長さを考慮する。
【0154】
平均粒径は、レーザー回折又はふるい分けによって測定することができる。
【0155】
有利な実施形態によれば、本発明は、酪酸ナトリウム粒子の平均サイズが50~1,200μm、特に100~800μm、好ましくは200~300μmである、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0156】
有利な実施形態によれば、本発明は、酪酸ナトリウム粒子が圧縮粒子の形態である、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0157】
「圧縮粒子」とは、圧縮造粒型装置、例えばAlexanderwerk WP120を用いて、酪酸ナトリウムの微粉末を圧縮することによって形成される粒子であると理解されるべきである。
【0158】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒のSPAN値が1.0以下、特に0.8以下、好ましくは0.5以下であり、前記SPAN値が下記式に従って計算される、前記で定義された顆粒の集合体に関する:
【0159】
【数3】
【0160】
ここで、D(90%)、D(50%)及びD(10%)は、顆粒の集合体のそれぞれ90%、50%及び10%が、この値よりも小さな直径を有する直径を表す。
【0161】
顆粒の集合体のSPAN値は、集団中の顆粒のサイズの分散指数である。
【0162】
SPAN値が0.5未満の場合、前記集団は単分散とみなされる。
【0163】
有利な実施形態によれば、本発明は、粉末を形成する顆粒の集合体が4~7[FlodexTM指数]、特に4又は5である、流動指数を有する、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0164】
Flodex(登録商標)法(Dow-Lepetit)は、粉末の流動性(又は流動能力)を測定する。試料を、底部に異なるサイズ(4~34の範囲)の円形開口部を有する滑らかなシリンダに入れる。開口部は、充填中には密封される。粉末の全量が投入されると、開口部が開かれる。流動性が良好な粉末は面積の小さな開口部を通って流れる一方、流動性が良くない粉末はシリンダから出るために面積な大きな開口部を必要とする。FlodexTM流動指数は、粉末が連続して3回落下した最小開口部の直径(ミリメートル)に等しい。
【0165】
4~7の流動指数は、優れた流動性を示すものとみなされる。
【0166】
8~12の流動指数は、良好な流動性を示すものとみなされる。
【0167】
14~18の流動指数は、平均的な流動性を示すものとみなされる。
【0168】
20~28の流動指数は、ほどほどの流動性を示すものとみなされる。
【0169】
28~34の流動指数は、良くない流動性を示すものとみなされる。
【0170】
好ましい実施形態によれば、本発明は、見掛け密度が0.45~0.65g/cmである、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0171】
好ましい実施形態によれば、本発明は、充填密度が0.50~0.71g/cmである、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0172】
見掛け密度及び充填密度の測定は、AFNOR NF V 04-344基準に従って実施される。
【0173】
有利な実施形態によれば、本発明は、吸湿値が24時間後に3~10%、特に5~10%である、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0174】
吸湿値は、飽和NaCl溶液により75%の相対湿度が維持されかつ25℃に維持された、密閉デシケーター中で測定される。2gの粉末が、予め較正されたカップ中で秤量される。
【0175】
そのカップは、この湿度制御雰囲気中で24時間保持される。吸湿値は、5時間毎時測定され、次いで24時間後に測定される。
【0176】
吸湿値は、初期湿度に対する相対的な吸湿値%で測定される。
【0177】
吸湿値は、粉末の吸湿性、又は粉末が水を捕捉し、その後溶解する性質を反映する。拡張すると、この方法は、粉末の化合物の可溶化率を間接的に示す。
【0178】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された顆粒の集合体であって、
・ 顆粒の粒径が200μm~1.5mm、好ましくは400~1,000μm、好ましくは600~800μmであり、特に酪酸ナトリウム粒子の粒径が50~1,200μm、特に200~300μmであり、又は
・ 顆粒のSPAN値が1以下、特に0.8以下、好ましくは0.5以下であり、当該SPAN値は、以下の式:
【0179】
【数4】
【0180】
に従って計算され、式中、D(90%)、D(50%)及びD(10%)は、それぞれ、顆粒の集合体の90%、50%及び10%がこの値よりも小さい直径を有する、直径を表し、
・ 又は、粉末を形成する顆粒の集合体は、流動指数が4~7[FlodexTM指数]、特に4又は5、であり、
・ 又は、吸湿値が3~10%、特に5~10%である、
顆粒の集合体に関する。
【0181】
有利な実施形態によれば、本発明は、少なくとも90重量%の顆粒が球状形態を有する、前記の顆粒の集合体に関する。
【0182】
有利な実施形態によれば、本発明は、無臭である、前記で定義された顆粒の集合体に関する。
【0183】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記顆粒が追加の外側保護コーティング層を含まない、前記で定義された顆粒の集合体に関する。本発明に係る顆粒の集合体は、保護層を用いることなく、空気中での分解に関して安定性があるという利点を有し、それによって、臭気による不都合のない、取扱い及び貯蔵を可能にする。
【0184】
本発明は、また、顆粒の集合体を調製するための方法であって、
- 酪酸ナトリウム粒子と、
- 前記酪酸ナトリウム粒子を封入する脂肪酸を含む脂肪物質マトリックスと
を含み、
前記顆粒は、インビトロ試験における胃及び腸の消化模擬実験後に、その形態を保っており、
前記顆粒は、胃内で前記酪酸ナトリウム粒子の保護を与える胃抵抗性を特徴とし、かつ腸管内で酪酸ナトリウム粒子を徐放することを特徴とし、
前記方法は、
- 溶融状態の前記脂肪物質の液体中で、固体状態の酪酸ナトリウム粒子の混合物を調製し、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液から、顆粒を形成し、次いで結晶化された脂肪物質中の粒子の分散形態で固化させ得る、ステップと
を含み、
前記顆粒を形成する前記ステップの前において、前記脂肪物質の溶融液中で前記酪酸ナトリウム粒子の前記混合物から構成された前記懸濁液の粘度は、8,000mPa・s未満、好ましくは5,000mPa・s未満、より好ましくは2,500mPa・s未満、特に10~8,000mPa・sである、
方法に関する。
【0185】
粘度は、BrookfieldデジタルDV-E粘度計を用いて、以下のように測定される:粘度は、分析されるべき生成物10mlの量をBrookfieldデジタルDV-E粘度計のサーモスタット制御測定チャンバに投入することによって分析される。粘度計は、サーモスタット制御測定チャンバ内に、参照番号S31の回転スピンドルを使用し、同軸シリンダで構成される。粘度測定温度は85℃であり、サーモスタット制御された水浴によって維持される。粘度は、10rpmのスピンドルの回転速度で、決定される。
【0186】
本発明者らは、本方法の懸濁液を調製するステップにおいて、酪酸ナトリウム粒子を液体脂肪物質に入れる間、液体脂肪物質の粘度の増加を観察した。8,000mPa・s未満の粘度で、本発明の説明について前記した、胃保護及び腸での徐放の特性を有する本発明に係る顆粒を得ることが可能である。
【0187】
「10~8,000mPa・s」とは、10~100mPa.s、10~200mPa・s、10~300mPa・s、10~500mPa・s、10~1,000mPa・s、10~1,500mPa・s、10~2,000mPa・s、10~2,500mPa・s、10~3,000mPa・s、10~4,000mPa・s、10~5,000mPa・s、10~6,000mPa・s、10~7,000mPa・s、10~8,000mPa・sの範囲でもあると理解されるべきである。
【0188】
顆粒を形成する前記ステップの前における、脂肪物質の溶融液中での酪酸ナトリウム粒子の混合物によって構成される懸濁液の粘度は、8,000mPa.s未満、7,000mPa・s未満、6,000mPa・s未満、5,000mPa・s未満、4,000mPa・s未満、3,000mPa・s未満、2,500mPa・s未満、2,000mPa・s未満、1,500mPa・s未満、1,000mPa・s未満、900mPa・s未満、800mPa・s未満、700mPa・s未満、600mPa・s未満、500mPa・s未満、400mPa・s未満、300mPa・s未満、250mPa・s未満、200mPa・s未満であってもよい。
【0189】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、混合物は、15分以下の時間、特に2秒~10分の時間、前記の懸濁液の形態で維持される。
【0190】
有利な実施形態によれば、本発明は、液体形態の溶融状態の脂肪物質の温度が、脂肪物質の融点よりも5~30℃高い温度である方法に関する。
【0191】
「5~30℃」とは、5~10℃、10~15℃、15~20℃、20~25℃、25~30℃の範囲でもあると理解されるべきである。
【0192】
有利な実施形態によれば、本発明は、液体形態の溶融状態の脂肪物質の温度が50~120℃、特に65~110℃、好ましくは65~95℃の温度である方法に関する。
【0193】
「50~120℃」とは、50~60℃、60~70℃、70~80℃、80~90℃、90~100℃、100~110℃、110~120℃の範囲でもあると理解されるべきである。
【0194】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製して、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液から液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を冷却して顆粒にし、前記酪酸ナトリウム粒子を封入するマトリックスを形成する、前記脂肪物質の固化を可能にするステップと
を含む。
【0195】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製するステップであって、前記粉末を、液状の溶融状態にある前記脂肪物質中に、適切な手段により、特にミキサーを用いて、導入することにより、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の噴霧により、液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含む。
【0196】
「-20~30℃」とは、-20~-10℃、-10~0℃、0~10℃、10~20℃及び20~30℃の範囲でもあると理解されるべきである。
【0197】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、スタティック又はダイナミックミキサー、特にミキサー、押出機、内部部品を含まない超音波ミキサーなどのミキサー等の装置中で実施される。
【0198】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、スタティックミキサー中で実施される。
【0199】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、ダイナミックミキサー中で実施される。
【0200】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、押出機中で実施される。
【0201】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の前記脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の前記液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含む。
【0202】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、押出機中で実施される。
【0203】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、0.5~5リットルの容量を有する小さいサイズの、サーモスタット制御された槽の中で実施される。
【0204】
有利な実施形態によれば、混合物を調製する前記ステップは、液状で予め溶融された脂肪物質のための反応器に通じる注入口と、酪酸粉末の添加のための注入口とを含むダイナミックミキサー中で実施される。
【0205】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液を冷却することにより、前記結晶化された脂肪物質中での粒子の分散物を得るステップと、
- 前記分散物から顆粒を形成するステップと、
- 前記顆粒を冷却するステップと
を含む。
【0206】
有利な実施形態によれば、粉末から混合物を調製する前記ステップは、押出機中で実施される。
【0207】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、
・この方法は、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製して、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液から液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を冷却して顆粒にし、前記酪酸ナトリウム粒子を封入するマトリックスを形成する、前記脂肪物質の固化を可能にするステップと
を含み、
・又は、
- 液状の溶融状態にある脂肪物質中の、酪酸ナトリウム粒子の粉末の混合物を調製するステップであって、前記粉末を、液状の溶融状態にある前記脂肪物質中に、適切な手段により、特にミキサーを用いて、導入することにより、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の噴霧により、液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含み、
・又は、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液の前記液滴を形成するステップと、
- 前記液滴を、-20~30℃の温度で、特に気流下で、冷却チャンバ内で冷却するステップと
を含み、
・又は、
- 酪酸ナトリウム粒子の粉末と、粉末状の脂肪物質との混合物を調製し、続いて前記混合物の温度を上昇させることにより、前記酪酸ナトリウム粒子を含む前記脂肪物質を溶融させ、懸濁液を得るステップと、
- 前記懸濁液を冷却することにより、前記結晶化された脂肪物質中での粒子の分散物を得るステップと、
- 前記分散物から顆粒を形成するステップと
を含む。
【0208】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪物質が、12個を超える炭素原子、特に12~22個の炭素原子、を含む長鎖脂肪酸を含む、前記の方法に関する。
【0209】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、前記脂肪物質は、16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を、特に前記脂肪物質の総重量の70%以上の含有量で含む。
【0210】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪酸のC16:C18重量比が0.7~1.7である、前記で定義された方法に関する。
【0211】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、前記脂肪物質は、16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を、特に前記脂肪物質の総重量の70%以上の含有量で、含み、好ましくは、前記脂肪酸のC16:C18重量比が0.7~1.7である。
【0212】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義した方法に関し、脂肪物質は、
- 40~65%のC16脂肪酸と、
- 30~60%のC18脂肪酸と
を含み、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0213】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪酸のC16:C18重量比が1.0~1.7、特に1.1又は1.6又は1.7である、前記で定義した方法に関する。
【0214】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、脂肪物質は、
- 50~60%のC16脂肪酸と、
- 30~45%のC18脂肪酸と
を含み、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0215】
好ましくは、前記で定義された方法の脂肪物質は、57%のC16脂肪酸と、36%のC18脂肪酸とを含む。
【0216】
好ましくは、前記で定義された方法の脂肪物質は、59%のC16脂肪酸と、35%のC18脂肪酸とを含む。
【0217】
好ましくは、前記で定義された方法の脂肪物質は、55%のC16脂肪酸と、41%のC18脂肪酸とを含む。
【0218】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪酸のC16:C18重量比が0.7~1.0、特に0.8又は0.9である、前記で定義された方法に関する。
【0219】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、脂肪物質は、
- 40~50%のC16脂肪酸と、
- 50~60%のC18脂肪酸と
を含み、C16脂肪酸及びC18脂肪酸の割合の合計は1未満である。
【0220】
好ましくは、前記で定義された方法の脂肪物質は、44%のC16脂肪酸と、54%のC18脂肪酸とを含む。
【0221】
好ましくは、前記で定義された方法の脂肪物質は、46%のC16脂肪酸と、52%のC18脂肪酸とを含む。
【0222】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記で定義された方法に関し、前記脂肪物質は、16個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸及び18個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸を、特に脂肪物質の総重量の70%以上の含有量で含み、好ましくは脂肪酸のC16:C18重量比は0.7~1.7である。
【0223】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質マトリックスがあらゆるミネラルを含まない、前記で定義された方法に関する。
【0224】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質マトリックスがあらゆるミネラルを含まず、懸濁液の粘度が5,000mPa・s未満、特に10~5,000mPa・sである、前記で定義された方法に関する。
【0225】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質マトリックスが少なくとも1種のミネラルを含む、前記で定義された方法に関する。
【0226】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質マトリックスがミネラルを含み、形成された懸濁液の粘度が8,000mPa・s未満、特に10~8,000mPa・sである、前記で定義された方法に関する。
【0227】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記脂肪物質マトリックスが、前記顆粒の総重量の2~10%の量の、少なくとも1種のミネラルを含む、前記で定義された方法に関する。
【0228】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが、特に顆粒の総重量の2~10%、好ましくは5%又は10%、の含有量の炭酸カルシウムである、前記で定義された方法に関する。
【0229】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが、特に顆粒の総重量の2~10%の含有量の、リン酸三カルシウムである、前記で定義された方法に関する。
【0230】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが、リン酸三カルシウムであり含有量が5%である、前記で定義された方法に関する。
【0231】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記ミネラルが、特に顆粒の総重量の2~10%の含有量の、硫酸カルシウムである、前記で定義された方法に関する。
【0232】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒の総重量に対する硫酸カルシウムの含有量が2~10%であり、脂肪酸のC16:C18重量比が1.0~1.7、特に1.1又は1.6又は1.7である、前記で定義された方法に関する。
【0233】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒の総重量に対して、硫酸カルシウムの含有量が2%であり、炭酸カルシウムの含有量が5%であり、脂肪物質マトリックスが57%のC16脂肪酸と36%のC18脂肪酸とを含む、前記で定義された方法に関する。
【0234】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質マトリックスが、顆粒の総重量の2~10%の量の、少なくとも1種のミネラルを含み、前記ミネラルが特にリン酸三カルシウム又は硫酸カルシウムである、前記で定義された方法に関する。
【0235】
有利な実施形態によれば、本発明は、粘度が既知の方法によって、特に無機又は有機添加剤を添加することによって調整される、前記で定義された方法に関する。
【0236】
有利な実施形態によれば、本発明は、前記方法が乳化剤の非存在下で実施される、前記で定義された方法に関する。
【0237】
「乳化剤」とは、安定で均一なエマルジョンの生成を可能にする添加剤であると理解されるべきである。避けるべき乳化剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート(Tween 20又は80)、ヒマワリ、大豆又は菜種レシチン、モノ又はジグリセリドである。
【0238】
有利な実施形態によれば、本発明は、顆粒をコーティングする追加のステップを含まない、前記で定義された方法に関する。
【0239】
本発明はまた、8,000mPa・s未満の粘度を有する酪酸ナトリウム粒子を含む液体脂肪物質の懸濁液に関する。
【0240】
有利な実施形態によれば、本発明は、脂肪物質が水添パーム油である、前記の懸濁液に関する。
【0241】
本発明はまた、前記で定義された方法によって得ることができる顆粒の集合体に関する。
【0242】
本発明の別の目的は、前記で定義された顆粒又は顆粒の集合体を含む、動物用又はヒト用の食品組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0243】
図1図1は、本発明により得られたPR1G1F顆粒の光学顕微鏡画像である。
図2図2は、従来技術であるAdimix(登録商標)precisionの生成物(第1行)と、第2及び第3行に示された本発明に従って調製された2つの生成物PR1G1F及びPCaG1R1の、走査電子顕微鏡SEM画像の組である。
図3図3は、画像解析ソフトウェアEllixによる形態学的解析のために使用された光学顕微鏡画像を表す。
図4図4は、顆粒を形成するステップ前における、懸濁液の測定粘度と比較した、光学顕微鏡画像を用いた顆粒の形態を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0244】
図1は、本発明により得られたPR1G1F顆粒の光学顕微鏡画像である。
【0245】
図2は、従来技術であるAdimix(登録商標)precisionの生成物(第1行)と、第2及び第3行に示された本発明に従って調製された2つの生成物PR1G1F及びPCaG1R1の、走査電子顕微鏡SEM画像の組である。
【0246】
図2の第1行の図a)、b)及びc)は、組成として30%の酪酸ナトリウム、63%の脂肪物質、5%の炭酸カルシウム及び2%の硫酸カルシウムを含む、従来技術の顆粒Adimix(登録商標)precisionの画像である。
【0247】
図2の第2行の図d)、e)及びf)は、本発明に従って調製された、ミネラルを添加させない30%の酪酸ナトリウム及び70%の脂肪物質(水添パーム油)を含む、生成物PR1G1fの顆粒の図である。
【0248】
図2の第3行の図g)、h)及びi)は、30%の酪酸ナトリウム及び60%の脂肪物質(水添パーム油)を含み、10%の炭酸カルシウムを含む、本発明に従って調製された生成物PCaG1R1の顆粒の画像である。
【0249】
図2の第1列の図a)、d)及びg)は、インビトロでの胃又は腸の消化試験前における、顆粒の初期形態を示す。
【0250】
図2の第2列の図b)、e)及びh)は、ペプシンの存在下でのpH2における、39℃で、2時間のインビトロでの胃の消化試験後の顆粒の形態を示す。
【0251】
図2の第3列の図c)、f)及びi)は、pH7において、リパーゼ存在下、39℃で、18時間のインビトロでの腸の消化試験後の顆粒の形態を示す。
【0252】
走査電子顕微鏡画像の右下のスケールバーは、画像a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)及びh)において400μmを表し、画像i)において600μmを表す。
【0253】
解析された3つの生成物に関して、形態は、インビトロでの胃の消化試験後に保たれる。
【0254】
本発明に従って調製された顆粒に関して、生成物PR1G1F及びPCaG1R1では、顆粒に亀裂が観察されるが、リパーゼによる腸の消化試験後、初期の球状形態が保たれる。Adimix(登録商標)precision生成物の場合、コーティングマトリックスは腸のインキュベーション後に分解し、顆粒の初期形態の損失をもたらす。
【0255】
したがって、本発明に従って調製されるPR1G1F及びPCaG1R1顆粒は、胃及び腸環境の両方において、コーティングマトリックスの構造を保つ。
【0256】
図3は、画像解析ソフトウェアEllixによる形態学的解析のために使用された光学顕微鏡画像を表す。図3a)は、ミネラルが添加されずに、30%の酪酸ナトリウム及び70%の脂肪物質(水添パーム油)を含む、本発明に従って調製された生成物PR1G1Fの解析に使用された顆粒の概観であり、図3b)は30%の酪酸ナトリウム及び65%の脂肪物質を含み、含有量5%のリン酸三カルシウムを含む、本発明に従って調製された生成物PCaR1G1Fの解析に用いられた顆粒の概観であり、図3c)は、Adimix(登録商標)precision生成物の解析に用いられた顆粒の概観を示す。
【0257】
図4は、顆粒を形成するステップ前における、懸濁液の測定粘度と比較した、光学顕微鏡画像を用いた顆粒の形態を示す表である。
【0258】

例1:
まず、室温(20~25℃)で、容器内に、1.2kgの微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法により測定した200μm未満)と2.8kgの固体粒子の形態の水添パーム油(供給業者MOSSELMAN)とを秤量する。この容器の内容物をタンブラーミキサーに注ぎ、混合物を5分間撹拌する。室温(20~25℃)で、2種の粉末の均一な混合物が得られる。
【0259】
この混合物を充填ホッパーに投入し、粉末供給機を介して、サーモスタット制御壁を備える温度調節された押出機に、7kg/hの速度で供給する。押出機の加熱設定値を90℃に設定する。
【0260】
圧力及び熱量の影響下で、水添パーム油は液体になり、これにより酪酸ナトリウムが液体脂肪物質の懸濁液中に配される。
【0261】
押出機の構成は15cmのスクリュー長からなり、その回転は毎分35回転(rpm)であり、最終的に生成物の流速は7kg/hである。
【0262】
得られた懸濁液は、出口開口部全体を通過して、液体の状態で押出機から出てくる。
【0263】
懸濁液は、重力により、霧化塔の頂部に位置する70℃の温度調節されたタービンに送られ、球状粒子の形態の懸濁液の固化を可能にする15~20℃に温度調節された冷気の向流をともなう霧化チャンバ内で、700μm(+/-200μm)の液滴の形成を可能にする。
【0264】
そして、粒子は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物に相当する。得られた粒子は、600μm~1mmサイズの球状を有する。
【0265】
例2:
温度調節された押出機を使用することにより、20~100℃の温度範囲で、単一の装置において顆粒を混合し、ブレンドし、及び成形するステップを実施することが可能になる。
【0266】
5kgの水添パーム油(供給業者MOSSELMAN)を、脂肪物質が溶融状態で得られるまで、槽中で、70℃の温度にて調製する。
【0267】
押出機の第1セクションの充填ホッパーに、微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法により測定して200μm未満)を入れる。粉末供給機は、1.2kg/hの流速で、酪酸ナトリウムを押出機に供給する。
【0268】
液体の水添パーム油は、酪酸ナトリウムが投入される充填ホッパーから10cmの位置にあるインジェクターを介して、2.8kg/hの流速で、押出機の第2セクションに注入される。
【0269】
押出機の構成は15cmのスクリュー長からなり、回転は毎分35回転であり、最終的に生成物の流速は4kg/hである。
【0270】
70~85℃の温度で押出スクリューを通過させることにより、押出ダイを通過する前に、液状脂肪物質中の均一な酪酸塩の懸濁液を得ることができる。
【0271】
生成物は、押出機の出口で25℃に冷却され、固体生成物のシリンダ形態で、ダイから出てくる。
【0272】
ダイから3mmの位置にあるブレードを有する回転ディスクが、生成物の細長い部分を切断し、規則的な粒子が出てくる。その粒子は、750μm+/-200μmの長さ及び700μmの直径を有する。
【0273】
その後、これらの粒子は、50℃に調整された装置の一部にて、500rpmで回転させて球状にされる。
【0274】
そして、その粒子は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物に相当する。
【0275】
例3:
10kgの水添パーム油(供給業者MOSSELMAN)を、加熱設定点が90℃の二重ジャケットを備えた溶融装置に、脂肪物質の完全な溶融、すなわち液体状態が得られるまで、入れた。
【0276】
融解された脂肪物質は、7kg/hの流量に設定された、サーモスタット制御された加熱コードを備えたWatson Marlowタイプ蠕動ポンプを使用して、タンクの底部から排出される。
【0277】
ポンプは、2.5~3kgの容量の懸濁液を、90℃に維持されたダブルジャケットを有し、IKA RW20タイプのブレード付きプロペラ撹拌を備えた、5リットルの容量の、サーモスタット制御された混合タンクに供給する。
【0278】
この同じサーモスタット制御された混合タンクに、3kg/hの流速で、粉末ディスペンサにより、微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法によって測定される200μm未満)を供給する。混合タンクは、20秒未満で液体脂肪物質中に酪酸ナトリウムを均一に分散させることを可能にする。そして、液体懸濁液が得られる。
【0279】
液体懸濁液は、10kg/hの流量で、ポンプを使用して、サーモスタット制御されたタンクの出口で排出され、噴霧ノズルに移される。
【0280】
脂肪物質/酪酸塩懸濁液の噴霧は、室温(20~25℃)での筐体の中で、内部混合(噴霧システム)をともなう二流体タイプのノズルによって実施される。
【0281】
酪酸塩粒子が脂肪物質マトリックス内にあるマトリックス生成物が得られる。
【0282】
得られた生成物は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物を構成する球状顆粒により構成された粉末である。
【0283】
そして、最終混合物の組成は、水添パーム油70%及び酪酸ナトリウム30%である。
【0284】
例4:
4,200gの水添パーム油(供給業者MOSSELMAN)を、加熱設定点が90℃の二重ジャケットを備えた溶融装置に、脂肪物質の完全な溶融、すなわち液体状態が得られるまで、入れた。
【0285】
融解された脂肪物質は、700g/hの流量に設定された、サーモスタット制御された加熱コードを備えたWatson Marlowタイプ蠕動ポンプを使用して、タンクの底部から排出され、そのポンプにより、サーモスタット制御された反応器に供給される。この同じサーモスタット制御された反応器に、300g/hの流速で、粉末供給機により、微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法によって測定される200μm未満)を供給する。液体脂肪物質中の酪酸ナトリウムの均一な懸濁液が、30秒未満で得られる。
【0286】
この懸濁液は、サーモスタット制御された反応器の出口で、サーモスタット制御されたパイプを介して、当業者に公知の噴霧装置(タービン、回転ディスク、二流体噴霧ノズル)に移される。
【0287】
脂肪物質/酪酸塩懸濁液の噴霧は、懸濁液の液滴の凍結を可能にする室温(20~25℃)の筐体の中で実施される。
【0288】
得られた生成物は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物を構成する400μmの平均粒径を有する球状顆粒からなる粉末である。
【0289】
例5:
この例は、例4と同様に進められる。
【0290】
4,200gの水添パーム油(供給業者MOSSELMAN)を、加熱設定点が90℃の二重ジャケットを備えた溶融装置に、脂肪物質の完全な溶融、すなわち液体状態が得られるまで、入れた。
【0291】
600gの微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法によって測定される200μm未満)を100gのリン酸三カルシウムと混合し、85.7%の酪酸ナトリウムと14.3%のリン酸三カルシウムとを含む均一な粉末混合物を得る。この混合物を粉末ディスペンサに入れる。
【0292】
融解された脂肪物質は、650g/hの流量に設定された、サーモスタット制御された加熱コードを備えたWatson Marlowタイプ蠕動ポンプを使用して、タンクの底部から排出され、そのポンプにより、サーモスタット制御された反応器に供給される。
【0293】
この同じサーモスタット制御された反応器に、350g/hの流速で、粉末ディスペンサにより、酪酸塩粉末とリン酸三カルシウムとの混合物を供給する。
【0294】
液体脂肪物質中の酪酸ナトリウム及びミネラル粉末の均一な液体懸濁液が、30秒未満で得られる。
【0295】
この懸濁液は、サーモスタット制御された反応器の出口で、サーモスタット制御されたパイプを介して、回転ディスクに移される。
【0296】
脂肪物質/酪酸塩及びミネラル懸濁液の噴霧は、懸濁液の液滴の凍結を可能にする室温(20~25℃)の筐体の中で実施される。
【0297】
得られた生成物は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物を構成する球状顆粒からなる粉末である。
【0298】
そして、最終混合物の組成は、水添パーム油65%、リン酸三カルシウム5%及び酪酸ナトリウム30%である。
【0299】
例6:
例5と同じ操作を、全配合物に対して10%の炭酸カルシウム、60%の水添パーム油及び30%の酪酸ナトリウムで実施する。
【0300】
炭酸カルシウムは、酪酸ナトリウム粉末と適切な割合で混合される。
【0301】
融解された脂肪物質は、650g/hの流速に設定された、サーモスタット制御された加熱コードを備えたWatson Marlowタイプ蠕動ポンプを使用して、タンクの底部から排出され、そのポンプにより、サーモスタット制御された反応器に供給される。
【0302】
この同じサーモスタット制御された反応器に、粉末ディスペンサによって350g/hの流速で、酪酸塩粉末とリン酸三カルシウムとの混合物が供給される。
【0303】
液体脂肪物質中の酪酸ナトリウム及びミネラル粉末の均一な液体懸濁液が、30秒未満で得られる。
【0304】
この懸濁液は、サーモスタット制御された反応器の出口で、サーモスタット制御されたパイプを介して回転ディスクに移される。
【0305】
脂肪物質/酪酸塩懸濁液の噴霧は、懸濁液の液滴の凍結を可能にする室温(20~25℃)の筐体の中で実施される。
【0306】
得られた生成物は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの分散物を構成する球状顆粒からなる粉末である。
【0307】
そして、最終混合物の組成は、水添パーム油60%、炭酸カルシウム10%及びの酪酸ナトリウム30%である。
【0308】
例7:
最後に、炭酸カルシウム5%、硫酸カルシウム2%、酪酸ナトリウム30%及び水添パーム油63%で、例5と同じ実施を行う。
【0309】
カルシウム塩は、酪酸ナトリウム粉末と、適切な割合で混合される。
【0310】
融解された脂肪物質は、650g/hの流速に設定された、サーモスタット制御された加熱コードを備えたWatson Marlowタイプ蠕動ポンプを使用して、タンクの底部から排出され、そのポンプにより、サーモスタット制御された反応器に供給される。
【0311】
この同じサーモスタット制御された反応器に、粉末ディスペンサによって350g/hの流速で酪酸塩粉末とリン酸三カルシウムとの混合物が、供給される。
【0312】
液体脂肪物質中の酪酸ナトリウム及びミネラル粉末の均一な懸濁液は、30秒未満で得られる。
【0313】
この懸濁液は、サーモスタット制御された反応器の出口で、サーモスタット制御されたパイプを介して、回転ディスクに移される。
【0314】
脂肪物質/酪酸塩懸濁液の噴霧は、懸濁液の液滴の凍結を可能にする室温(20~25℃)の筐体の中で実施される。
【0315】
得られた生成物は、脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの分散物を構成する球状顆粒からなる粉末である。
【0316】
そして、最終混合物の組成は、水添パーム油63%、炭酸カルシウム5%、硫酸カルシウム2%及び酪酸ナトリウム30%である。
【0317】
例8:
15,000kgの水添パーム油(供給業者SIO)を、加熱温度70℃の二重ジャケットを備えた溶融装置に、脂肪物質の完全な溶融、すなわち液体状態が得られるまで、入れる。
【0318】
500gの微粉状酪酸ナトリウム(90%以上が、ふるい分け法によって測定される200μm未満)を、粉末供給機に移す。
【0319】
融解された脂肪物質は、タンクの底部から排出され、390kg/hの流速で、容積ポンプを用いて80℃に温度調節された二重ジャケットラインを介して移される。容積ポンプにより、サーモスタット制御された反応器に供給される。
【0320】
この同じサーモスタット制御された反応器に、酪酸ナトリウム粉末が、167kg/hの速度で、粉末供給機によって供給される。
【0321】
液体脂肪物質中の酪酸ナトリウム粉末の均一な液体懸濁液が、30秒未満で得られる。
【0322】
この懸濁液が、75℃に温度調節されたパイプを介して温度調節された反応器の出口で、噴霧システムタイプの内部混合をともなう二流体噴霧ノズルに移す。Dv(0.50)が1mmである顆粒が得られる。
【0323】
脂肪物質/酪酸塩の懸濁液は、ノズルを介して、557kg/hの流速で、温度が15~20℃に調節された低温空気の向流をともなう噴霧チャンバ内に噴霧され、球状粒子の形態の懸濁液の固化を可能にする。そして、得られた固化粒子は、固体脂肪物質マトリックス中の酪酸ナトリウムの分散物に相当する。
【0324】
噴霧は中断することなく45分間継続した。
【0325】
得られた粉末は、球状粒子により構成され、レーザー粒度分布測定によって測定されたその粒径が、658μmのメジアンDv(0.50)であるという特徴がある。
【0326】
例9:保護率及び放出率の分析
保護率TRC1並びに放出率TRC2及びTRC3の評価は、前記の方法に従って実施した。胃及び腸の消化は、以下のように実施される。
【0327】
TRC1の評価のためのインビトロでの胃の消化
25mlのリン酸緩衝液(pH6、0.1M)及び10mlのHCl(0.2M)が入った三角フラスコに、1g+/-0.1mgの顆粒を入れることにより、胃の消化をモデル化する。その溶液を、1MのHCl又はNaOH溶液を用いて、pH=2にする。次いで、ブタの胃粘膜(SIGMA 番号P-7000、250U/mg固体)に由来するペプシンから調製した1mlのペプシン溶液(25mg/ml)を添加する。その溶液を、39℃で2時間、インキュベートする。その後、溶液をプリーツフィルタに通して濾過して、E. Confortoらによる“An optimized methodology to analyze biopolymer capsules by environmental scanning electron microscopy”, Materials Science and Engineering: C, Volume 47, February 1st, 2015, Pages 357-366に記載されている方法に従って、環境モードでの走査電子顕微鏡下で観察することができる顆粒を回収する。
【0328】
濾液を、10mlの2-メチルヘキサン酸が入った100mlの目盛り付きフラスコ中に回収し、酪酸を、ガスクロマトグラフィーによる揮発性脂肪酸の標準分析法に従って分析する。
【0329】
TRC2の評価のための小腸におけるインビトロでの腸の消化
25mlのリン酸緩衝液(pH6、0.1M)及び10mLのHCl(0.2M)が入った三角フラスコに、1g+/-0.1mgの顆粒を入れることによって、腸の消化をモデル化する。その溶液を、1MのHCl又はNaOH溶液を用いて、pH=6.8にする。次いで、その混合物に、ブタの膵臓(SIGMA 番号P-7545)に由来するパンクレアチンから調製したパンクレアチン溶液(100mg/mL)1mLを入れる。溶液を39℃で4時間インキュベートする。その後、溶液を濾過し、E. Confortoらによる“An optimized methodology to analyze biopolymer capsules by environmental scanning electron microscopy”, Materials Science and Engineering: C, Volume 47, February 1st, 2015, Pages 357-366に記載されている方法に従って、環境モードでの走査型電子顕微鏡下で観察することができる顆粒を回収した。
【0330】
濾液を、10mlの2-メチルヘキサン酸が入った100mlの目盛り付きフラスコ中に回収し、酪酸を、ガスクロマトグラフィーによる揮発性脂肪酸の標準評価法に従って評価する。
【0331】
TRC3の評価のための大腸におけるインビトロでの腸の消化
25mlのリン酸緩衝液(pH 6、0.1M)及び10mLのHCl(0.2M)を含む溶液に、1g+/-0.1mgの顆粒を入れることによって、腸の消化をモデル化する。この溶液を、1MでのHCl又はNaOHの溶液を用いて、pH=7にする。次いで、その混合物に、ブタの膵臓リパーゼ(SIGMA 番号L3126)に由来する100mgのリパーゼを入れる。その溶液を、39℃で18時間インキュベートする。その後、溶液を濾過して、E. Confortoらによる“An optimized methodology to analyze biopolymer capsules by environmental scanning electron microscopy”, Materials Science and Engineering: C, Volume 47, February 1st, 2015, Pages 357-366に記載されている方法に従って、環境モードで走査型電子顕微鏡下で観察することができる顆粒を回収した。
【0332】
濾液を、10mlの2-メチルヘキサン酸が入った100mlの目盛り付きのフラスコ中に回収し、酪酸を、ガスクロマトグラフィーによる揮発性脂肪酸の標準評価法に従って評価する。
【0333】
後記の表1は、酪酸ナトリウム(30%)の含有量(Buty)は同じであるが、ミネラルの含有量(0~10%)は異なる、本発明に従って調製された顆粒と、従来技術のAdimix(登録商標)precision由来の参照生成物とについて、胃保護率TRC1並びに腸溶性放出率TRC2及びTRC3の値を示す。分析された生成物の全てにおいて、マトリックスの脂肪物質(MG)は、水添パーム油である。
【0334】
ミネラルを含まないPR1G1Fという生成物は、例4に従って調製された。5%のリン酸三カルシウムを含むPCaR1G1Fという生成物は、例5に従って調製された。5%の炭酸カルシウム及び2%の硫酸カルシウムを含む、PCaR1G2Fという生成物は、例7に従って調製された。10%の炭酸カルシウムを含む、PCaR1G1という生成物は、例6に従って調製された。
【0335】
【表1】
【0336】
本発明に係る生成物(PR1G1F、PCaR1G1F、PCaR1G2F及びPCaR1G1)は全て、胃保護率TRC1が、65%より高く、すなわち、従来技術の生成物であるAdimix(登録商標)precisionよりも3~4倍高い。
【0337】
本発明に係る生成物の放出率TRC2は、25~40%であり、従来技術のAdimix(登録商標)precisionのものよりも低い。
【0338】
本発明に係る生成物の放出率TRC3は、80%よりも高く、従来技術のAdimix(登録商標)precisionのものよりも高い。
【0339】
TRC2及びTRC3の値は、従来技術のAdimix(登録商標)precisionとは異なる放出の速度論的な違いを示す。特に、本発明に係る生成物は、後に腸管において、特に主に大腸の腸環境において放出される。
【0340】
ミネラルを含まない本発明に係る生成物(PR1G1F)は、79%の最も高い胃保護率TRC1を有することに留意すべきである。
【0341】
PCaR1G2Fは、Adimix(登録商標)precisionと組成が同じであるが、保護率及び放出率の値は異なることも分かる。
【0342】
例10:粒度分析及び形態学的分析
a.顆粒の形態
ミネラルを添加せずに30%の酪酸ナトリウム及び70%の脂肪物質(水添パーム油)を含む、本発明に従って調製されたPR1G1F顆粒の形態を、光学顕微鏡を用いて観察する。図1は、個々の球状粒子を示す。粉末のサイズの単分散性は、630μmの平均粒径値Dv(0.5)及び0.638のSPAN値を明らかにするレーザー粒径分析によって確認される。
【0343】
比較して、Adimix(登録商標)precisionの顆粒は、平均顆粒サイズDv(0.5)が990μmであり、SPAN値が1.450である。
【0344】
b.消化前後の形態
PR1G1F及びPCaR1G1顆粒の最初の形態並びにインビトロでの胃及び腸の消化後の形態は、E. Confortoらによる“An optimized methodology to analyze biopolymer capsules by environmental scanning electron microscopy”, Materials Science and Engineering: C, Volume 47, February 1st, 2015, Pages 357-366に記載されている方法に従って、環境モードで走査電子顕微鏡により観察される。
【0345】
インビトロでの胃の消化
25mlのリン酸緩衝液(pH6、0.1M)及び10mlのHCl(0.2M)の入った三角フラスコに、1g+/-0.1mgの顆粒を入れることにより、胃の消化をモデル化する。この溶液を、HCl又はNaOH溶液を1Mで用いて、pH=2にする。次いで、ブタの胃粘膜(SIGMA 番号P-7000、250U/mg固体)由来のペプシンから調製したペプシン溶液(25mg/ml)1mlを添加する。この溶液を、39℃で2時間インキュベートする。その後、この溶液をプリーツフィルタを通して濾過し、環境モードでの走査電子顕微鏡下で観察することができる顆粒を回収する。
【0346】
インビトロでのリパーゼによる腸の消化
25mlのリン酸緩衝液(pH6、0.1M)及び10mlのHCl(0.2M)を含む溶液に、1g+/-0.1mgの顆粒を入れることによって、腸の消化をモデル化する。この溶液を、1MのHCl又はNaOH溶液を用いて、pH=7にする。次いで、この混合物に、ブタの膵臓リパーゼ(SIGMA 番号L3126)に由来する100mgのリパーゼを導入する。その溶液を、39℃で18時間インキュベートする。その後、溶液を濾過して、環境モードでの走査電子顕微鏡下で観察することができる顆粒を回収する。
【0347】
図2は、従来技術のAdimix(登録商標)precisionの生成物(第1行)と、第2行及び第3行における、本発明に従って調製された2つの生成物PR1G1F及びPCaR1G1の、顆粒の形態を示す。
【0348】
本発明に係る生成物PR1G1F及びPCaR1G1は、胃の消化後及び胃の消化後にそれらの形態を保つ。
【0349】
c.球形度解析
PR1G1F、PCaR1G1F及びAdimix(登録商標)precisionの顆粒の球形度の解析は、Microvision Instruments、バージョン6.0.2のELLIXソフトウェアを用いた画像解析による形状認識型ツールによって実施される。
【0350】
このソフトウェアにより、顆粒が囲まれ、そしてそのサイズ、円形度及び配向が解析され、粒子の軸の比により球形度の指標が得られる。図3は、ELLIXソフトウェアによる形態学的解析に使用される画像を示す。
【0351】
表2は、図3a)、生成物PR1G1Fの顆粒の画像並びに長さ及び幅の間の比であるアスペクト比インデックスを参照し、ソフトウェアによって与えられるデータを示す。
【0352】
【表2】
【0353】
表3は、図3b)、生成物PCaR1G1Fの顆粒の画像並びに長さ及び幅の間の比であるアスペクト比インデックスを参照して、ソフトウェアによって提供されるデータを示す。
【0354】
【表3】
【0355】
表4は、図3c)、Adimix(登録商標)precisionの顆粒の画像並びに長さ及び幅の比であるアスペクト比インデックスを参照して、ソフトウェアによって提供されるデータを示す。
【0356】
【表4】
【0357】
本発明に係る顆粒PR1G1F及びPCaR1G1Fの場合、ソフトウェアによって計算された長さ及び幅の値の比は1.1以下である。これにより、本発明に係る顆粒が球状であることが確認できる。
【0358】
Adimix(登録商標)precision由来の顆粒の場合、ソフトウェアによって計算された長さ及び幅の値の比は、図3c)の画像の中央にある球状顆粒に対応する1つの顆粒を除いて、1.1よりも大きい。Adimix(登録商標)precisionの解析された顆粒のアスペクト比により、ほとんどの顆粒が球状形態を特徴としないことを示す、観察された視覚的評価が確認できる。
【0359】
例11:吸湿度分析
この方法は、粉末が時間経過にともない取り込む水分量を決定するために用いられる。この水分量は、この粉末の安定性に関する情報を提供するために重要である。
【0360】
吸湿度は、飽和NaCl溶液により75%の相対湿度に維持され、25℃に維持された、密閉式デシケーターで測定する。
【0361】
2~4gの顆粒粉末を、予め較正されたカップ中で秤量する。
【0362】
そのカップを、この湿度制御された雰囲気中に24時間保持する。吸湿度は、5時間、毎時測定し、次いで24時間後に測定される。
【0363】
吸湿度は、初期水分に対する相対的な吸湿度%として測定される。
【0364】
以下の表5は、脂肪物質マトリックスの組成物中にミネラルを含まない生成物であるPR1G1Fについての時間経過にともなう吸湿値を示す。
【0365】
【表5】
【0366】
以下の表6は、5%のリン酸三カルシウム(TCP)を含む、本発明に係る生成物であるPCaR1G1Fについての時間経過にともなう吸湿値を示す。
【0367】
【表6】
【0368】
以下の表7は、従来技術である生成物Adimix(登録商標)precisionについての時間経過にともなう吸湿値を示す。
【0369】
【表7】
【0370】
試料に対して実施された試験は、本発明に係る生成物がAdimix(登録商標)precisionの粉末よりも吸湿度が2倍小さいことを示す。実際、Adimix(登録商標)precisionの生成物は、2倍速く溶解する。これにより、Adimix(登録商標)precisionの生成物は、本発明から得られる生成物とは異なり、胃において速く放出されることが、部分的に説明され得る。
【0371】
例12:プロセス粘度と形態との関係
本発明に係る顆粒を得ることを可能にする、本発明に係るプロセスの液体脂肪物質中の酪酸ナトリウムの懸濁液の調製条件で、懸濁液の粘度が評価される。これを、得られた顆粒の形態及び図4の顆粒の組成と比較する。
【0372】
粘度は、ブルックフィールドデジタルDV-E粘度計の恒温室に、10mlの量を入れて、分析される。粘度計は、番号S31のスピンドルを用いて、チャンバ内に同軸シリンダを備えて構成される。粘度測定温度は85℃である。粘度は、スピンドルの回転速度10rpmに対して決定される。
【0373】
本プロセスの懸濁液の、2,500mPa・s又は3,000mPa・s未満の粘度値にて、球状形態を有する顆粒が得られることが分かった。
【0374】
例13:有機相中での抽出による遊離酪酸のレベル
マトリックス中にミネラルを含まないように調製された、本発明に係る生成物PR1G1Fの顆粒を、市販の製品Adimix(登録商標)precisionの顆粒と比較する。顆粒を破砕し、ヘキサンの有機相中で抽出した。酪酸ナトリウムはヘキサンに溶けないので固体のままである一方、酪酸はヘキサンとの混和性がある。その後、抽出された溶液は有機相中の酪酸の量を決定するために、CPG、相クロマトグラフィーによって分析された。有機相中の脂肪酸溶解は、目視で観察されなかったことに留意すべきである。
【0375】
以下の表8は、PR1G1F及びAdimix(登録商標)precisionについての放出率を示す。
【0376】
【表8】
【0377】
これらの結果はAdimix(登録商標)precisionの生成物において0.6%の範囲の自由酪酸の存在を示し、一方、本発明に係る生成物PR1G1Fにおいて酪酸の含有量は検出されなかった。
【0378】
例14:水相中での抽出によるエステル化率
本発明に係る生成物PR1G1F及びPCaR1G1Fの顆粒を、市販の生成物Adimix(登録商標)precisionと比較する。顆粒は、粉砕され、水中で抽出された。次いで、その溶液を、イオンクロマトグラフィーによって分析した。この方法により、酪酸塩が顆粒中の酸(酪酸)又は塩基(酪酸塩)形態であるかは、特定されない。
【0379】
表9は、抽出された水溶液中に存在する酪酸又は酪酸塩の含有量を示す。
【0380】
【表9】
【0381】
PR1G1F及びPCaR1G1Fの生成物は、Adimix(登録商標)precisionの生成物とは異なり、酪酸ナトリウムの滴定量が、最初の公称値30%に近い。
【0382】
Adimix(登録商標)precisionの生成物の滴定量22.4%は、最初に導入された酪酸塩の一部が酪酸又は酪酸塩の形態で利用できないことを示す。脂肪酸又はトリグリセリドとのエステル化反応から生じ得る、他の分子に結合した酪酸エステルの存在が考えられる。この仮定は、以下の例15で示される分析によって裏付けられるようである。
【0383】
例15:塩基性媒体中の相変化分析によるエステルの存在の特定
Adimix(登録商標)precisionの生成物に関する例13由来のヘキサン中の有機相の一部と、水酸化ナトリウム0.2M等量とを、撹拌しながら、採取する。撹拌及び遠心分離の後、2つの有機相及び水相を分析する。塩基性媒体中でのこの相変化のステップは、酪酸ナトリウムを塩基性水相中に溶解させ、酪酸を酪酸塩の形態で、有機相から水相に通過させることを可能にするはずである。特に、水酸化ナトリウムはまた、存在すると、酪酸がトリグリセリド又は脂肪酸に結合している場合、酪酸のけん化を可能にする。
【0384】
以下の表10は、塩基性媒体中での相変化におけるAdimix(登録商標)precisionの抽出結果を、水中での抽出によって得られた結果と比較して示す。
【0385】
【表10】
【0386】
これらの結果は、水酸化ナトリウムによる相変化が結合形態の酪酸エステルをけん化し及び放出することを可能にすることを実証している。Adimix(登録商標)precisionの場合、酪酸塩の含有量は、水抽出(22.4%)よりも相変化(27.6%)の方が多い。これは、総重量で少なくとも5.2%のエステルの存在、すなわち、約17%のレベルの酪酸塩がトリグリセリド又は脂肪酸に結合した形態であることを裏付けているようである。
【0387】
逆に、PR1G1Fの場合、例13のヘキサン相に水を添加することによる相変化抽出は、溶液の分析後、酪酸塩含有量が29%であることを示し、水抽出の場合の含有量(29.8%)と同等である。表11の結果は、本発明に係る生成物PR1GF1には、結合形態の酪酸エステルが少量しか含まれていないことを示している。
【0388】
【表11】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】