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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】モジュール式電気化学システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/027 20210101AFI20240312BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240312BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240312BHJP
   C25B 9/73 20210101ALI20240312BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240312BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20240312BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/1018 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240312BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240312BHJP
【FI】
C25B15/027
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/73
C25B15/08 302
H01M8/2475
H01M8/249
H01M8/2484
H01M8/18
H01M8/00 Z
H01M8/10 101
H01M8/1018
H01M8/04 Z
H01M8/04746
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553291
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022057014
(87)【国際公開番号】W WO2022195021
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2103709.8
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321003751
【氏名又は名称】エナプター エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンロール ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヤンユストゥス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ピュット エラ マライケ
(72)【発明者】
【氏名】ラウドン カイ
(72)【発明者】
【氏名】ピント ヴィート
(72)【発明者】
【氏名】パーシケッティ アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA01
4K021CA10
4K021DB04
5H126AA05
5H126AA22
5H126AA23
5H126AA26
5H126AA28
5H126BB06
5H126BB10
5H126EE13
5H126FF10
5H127AA06
5H127AA10
5H127AB11
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA03
5H127BA04
5H127BA57
5H127BB02
5H127DC02
5H127DC22
5H127EE02
5H127EE03
(57)【要約】
【解決手段】
コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムは、筐体と、取り外し可能に前記筐体内に取り付けられた複数の電気化学スタックであって、各スタックは、1つ以上の電気化学セルと、供給原料を受け入れる1つ以上の流体入口と、1つ以上の生成物出口と、を備える、複数の電気化学スタックと、を備えて、スタックは、少なくとも1列で配置されて、各列は、2つ以上のスタックを備えて、各列におけるスタックは、電気的に直列で接続可能であり、各列は、電源に接続可能であり、各スタックまたは各列は、独立して作動するように構成されて、各列は、スタックの入口間で供給原料を分配するために、列のスタックの入口に流体接続された少なくとも1つの供給原料入口マニホールドと、列のスタックの出口に流体接続された少なくとも1つの生成物出口マニホールドと、入口および/または出口を通る流体フローを調節するように構成されるフロー調節手段と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムであって、
・筐体と、
・取り外し可能に前記筐体内に取り付けられた複数の電気化学スタックと、
を有してなり、
前記電気化学スタックのそれぞれは、
1つ以上の電気化学セルと、
供給原料を受け入れる1つ以上の流体入口と、
1つ以上の生成物出口と、
を備えて、
前記電気化学スタックは、少なくとも1列で配置されて、
前記列のそれぞれは、
2つ以上の前記電気化学スタック、
を備えて、
前記列のそれぞれにおける前記電気化学スタックは、電気的に直列で接続可能であり、
前記列のそれぞれは、電源に接続可能であり、
前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記列のそれぞれは、独立して作動するように構成されて、
前記列のそれぞれは、
前記電気化学スタックの前記入口間で供給原料を分配するために、前記列の前記電気化学スタックの前記入口に流体接続された少なくとも1つの供給原料入口マニホールドと、
前記列の前記電気化学スタックの前記出口に流体接続された少なくとも1つの生成物出口マニホールドと、
前記入口および/または前記出口を通る流体フローを調節するように構成されるフロー調節手段と、
を備える、
ことを特徴とするコンテナ型モジュール式電気化学セルシステム。
【請求項2】
利用可能なエネルギーおよび/または電力変動に応じて、多量の供給原料を前記入口に送達するように構成される供給原料送達手段、
を有してなる、
請求項1記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項3】
前記供給原料送達手段は、ポンプ、ファン、または解放調節を伴う加圧貯蔵部のうちのいずれか1つ以上である、
請求項2記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項4】
再使用のために、使用済みの電解質を循環させる手段、
を有してなる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項5】
前記列を構成する前記電気化学スタックは、
電解装置と、コンプレッサと、浄化装置と、乾燥器と、燃料電池と、のうちのいずれか1つ以上、
を備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項6】
前記供給原料は、電解質、水素を備える気体流れと酸素を備える気体流れ、メタノール、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、またはDI水のうちのいずれか1つ以上である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項7】
前記電気化学スタックは、
少なくとも、高分子イオン交換膜により分離されたアノードハーフセルとカソードハーフセルと
を備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項8】
高分子膜は、AEMである、
請求項7記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項9】
前記列のそれぞれは、電力の供給を受けるか、または電力を供給して、
前記電力は、前記列における前記電気化学スタックのそれぞれに直列で供給されるか、または前記列における前記電気化学スタックのそれぞれにより、直列で提供される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項10】
前記筐体は、標準的な輸送コンテナである、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項11】
前記列のそれぞれは、
2個と20個との間の数のスタック、
を備える、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項12】
前記電気化学スタックのそれぞれは、
前記システム全体の1/50と1/1000との間の電力消費を、
備える、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項13】
手段は、前記電気化学スタックのホットスワップを可能にするために、前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記電気化学スタックの前記列のそれぞれを電気的にかつ流体的に隔離するように提供される、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項14】
手段は、手動の手段およびまたは演算手段により、前記電気化学スタックまたは前記列を隔離するように提供される、
請求項13記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項15】
手段は、熱制御用に提供される、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項16】
換気手段は、前記筐体に提供されて、
前記換気手段は、潜在的なリークが検出されると作動する、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項17】
前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記列のそれぞれは、利用可能なエネルギーおよび/または電力変動に応じて、独立して作動するように構成される、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項18】
前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記列のそれぞれを独立して作動させる手段、
を有してなる、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項19】
前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記列のそれぞれを独立して作動させる前記手段は、電気化学セルの各列に供給される電力を独立して制御するコンピュータ実装電源制御手段である、
請求項18記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項20】
前記コンピュータ実装電源制御手段は、リーク検出器と、圧力センサと、温度センサと、湿度センサと、流量センサと、レベルセンサと、pHセンサと、導電率センサと、酸素センサと、水素センサと、電解質センサと、気体センサと、のうちのいずれか1つ以上を含む、前記筐体内の1つ以上のセンサに動作可能に接続される、
請求項19記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項21】
前記システムは、
AC、DC、または反転パルスの電力の供給を可能にするように入力電力を変換するための1つ以上の整流器、
を備える、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項22】
in-situ(その場)診断用の手段は、前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記電気化学スタックの前記列のそれぞれにおいて提供される、
請求項1乃至21のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項23】
前記in-situ診断は、
・スタックまたはスタックの列の累積駆動時間と、
・スタックまたはスタックの列の累積停止時間と、
・駆動中に駆動されたスタックまたはスタックの列の動作容量と、
・スタックまたはスタックの列の温度と、
・スタックまたはスタックの列と、スタックまたはスタックの列の関連の入口およびまたは出口と、における圧力と、
・スタックまたはスタックの列の電圧/電位と、
・バランスオブプラントに属するデータ、例えば、以下に限定されないが、
○供給原料フロー、
○供給原料利用可能性、
○供給原料温度、
○供給原料の導電率または同等のパラメータ、
○ポンプ性能と、
のうちのいずれか1つ以上を測定するように適合される、
請求項22記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項24】
前記in-situ診断は、前記演算手段に接続されて、前記電気化学スタックもしくは前記電気化学スタックの前記列への、もしくは前記電気化学スタックもしくは前記電気化学スタックの前記列からの電力供給、または前記電気化学スタックのそれぞれもしくは前記電気化学スタックの前記列のそれぞれの供給原料利用可能性を決定するために使用される、
請求項22または23記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項25】
前記システムは、水素およびまたは酸素を生成することと、水素およびまたは酸素を圧縮することと、水素およびまたは酸素を純化することと、水素およびまたは酸素を圧縮することと、のうちのいずれか1つ以上を行うように適合される、
請求項1乃至24のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項26】
前記フロー調節手段は、前記入口および/もしくは前記出口を選択的に開閉すること、前記入口マニホールドもしくは前記出口マニホールドにおけるバルブを選択的に開閉すること、または前記入口および/もしくは前記出口を通る流体フロー経路、ならびに/もしくは前記入口マニホールドもしくは前記出口マニホールドを通る流体フロー経路を制限することにより、前記入口および/または前記出口を通る流体フローを調節するように構成される、
請求項1乃至25のいずれか一項に記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項27】
水からの水素の電解製造用のコンテナ型モジュール式電気化学システムであって、前記システムは、
・筐体と、
・取り外し可能に前記筐体内にある複数の電気化学スタックであって、前記電気化学スタックのそれぞれは、直列の列に配置された1つ以上の電解装置を備えて、前記列のそれぞれは、少なくとも1つの前記電気化学スタックを備えて、前記電気化学スタックのそれぞれは、電解質用の少なくとも1つの入口と、少なくとも、生成された水素と、生成された酸素と、使用済みの電解質と、用の前記電気化学スタックのそれぞれまたは前記電気化学スタックの前記列における複数の出口と、を備える、複数の前記電気化学スタックと、
・前記電気化学スタックの前記入口および/または前記出口のうちの少なくとも1つにおいて提供されるフロー調節手段と、
・各電解スタックまたは前記電解スタックのそれぞれの列に動作可能に接続される電源と、
・1つ以上の列の動作条件に応じて、電力を1つ以上の列に向けるように構成される、前記電源を制御するコンピュータ実装制御手段と、
・再使用のために、使用済みの電解質を循環させる手段と、
を有してなる、
ことを特徴とするコンテナ型モジュール式電気化学システム。
【請求項28】
コンテナ型モジュール式電気化学システム内の複数の電気化学デバイスを制御する方法であって、前記方法は、
・筐体を提供する工程と、
・取り外し可能に前記筐体内に複数の電気化学スタックを取り付ける工程であって、前記電気化学スタックは、直列の列に配置されて、前記列のそれぞれは、少なくとも1つの前記電気化学スタックを備えて、前記電気化学スタックのそれぞれは、供給原料を受け入れる流体入力と生成物出力とを備えて、前記列のそれぞれは、前記列のそれぞれの前記電気化学スタックの前記入力に流体的に接続される供給原料入口と、前記列のそれぞれの前記電気化学スタックの前記出力の各々に流体的に接続される少なくとも1つの生成物出口と、を備える、前記取り付ける工程と、
・動作可能に電源を前記列のそれぞれに接続する工程と、
・前記供給原料入口間で供給原料を循環させる工程と、
・前記電気化学スタックの前記入口および/または前記出口のうちの少なくとも1つにおいてフロー調節手段を提供する工程と、
・電気化学セルの各列に供給される電力を独立して制御するようにコンピュータ実装電源制御手段を構成する工程と、
を有してなり、
前記列のそれぞれの前記電気化学スタックは、電気的に直列で接続されて、
前記フロー調節手段は、それぞれの前記入口および/または前記出口を選択的に開閉するように構成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
各電気化学スタックは、電解装置である、
請求項25記載のコンテナ型モジュール式電気化学システム内の複数の電気化学デバイスを制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、モジュール式電気化学デバイスのアレイを収容したコンテナ型システムに関して、必ずしもこれに限定されないが、水素の電解製造用の電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、エネルギー貯蔵から肥料の製造までにおよぶ多数の用途を有する。水素は、多くの供給源に由来し得る。これらの供給源の一部、例えば、化石燃料は、明白な生態的理由と環境的理由とにより、望ましくない。したがって、信頼性が高く、かつ持続可能な方法で水素を製造できることが必要である。
【0003】
電解装置は、本質的に水分子を分解することにより、水と酸素とを生成するために使用されるデバイスである。余剰エネルギーの利用を含む再生可能エネルギーを用いて、このようなデバイスに電力供給することが可能であり、その結果、水素は、例えば、バッテリに対する補完的なエネルギー貯蔵の手段として使用され得る。電解装置は、一般的に、現在利用可能な3つの主要技術、すなわち、アニオン交換膜(AEM:anion exchange membrane)と、プロトン交換膜(PEM:proton exchange membrane)と、液体アルカリシステムと、のうちの1つに属する。液体アルカリシステムは、最も確立された技術であり、PEMは、液体アルカリシステムほどではないが、ある程度確立された技術である。対照的に、AEM電解装置は、比較的新しい技術に由来する。固体酸化物電解などの他の技術は、利用可能であるが、本明細書においてこれ以上は述べられない。
【0004】
AEM電解装置とPEM電解装置とは、水素を生成するために、一方のハーフセルから他方のハーフセルへのイオンの移動に依拠する。AEMシステムは、水酸化物イオンOHの移動に依拠する一方、PEMシステムは、膜を通る水素イオンHの移動に依拠する。
【0005】
他の電気化学デバイスは、燃料電池、電気化学コンプレッサ、または電気化学浄化デバイスを含む。これらの各々は、単独で使用され得るが、単一の水素ソリューションの一部を形成することが見出され得る。
【0006】
現在、必要とされる目的に対して、単一の電気化学スタックをサイズ変更することが通例である。しかしながら、このような行為に対する一般的な欠点は、各スタック、特に、このようなサイズについて必要とされる活性化エネルギーが、利用可能な電力が少ない場合にスタックが動作しないことを意味するということである。その結果、利用可能なエネルギーは十分に利用されず、電力変動に対応する能力は低減される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の目的は、利用可能な電力と同じくらい多くの電力を利用可能なモジュール式電気化学デバイスの筐体と動作とについての改善された手段と方法とを提供することである。
【0008】
本明細書に開示される一態様によれば、コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムが提供されて、コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムは、筐体と、取り外し可能に前記筐体内に取り付けられた複数の電気化学スタックであって、各スタックは、1つ以上の電気化学セルと、供給原料を受け入れる1つ以上の流体入口と、1つ以上の生成物出口と、を備える、複数の電気化学スタックと、を備えて、スタックは、少なくとも1列で配置されて、各列は、2つ以上のスタックを備えて、各列におけるスタックは、電気的に直列で接続可能であり、各列は、電源に接続可能であり、各スタックまたは各列は、独立して作動するように構成されて、各列は、スタックの入口間で供給原料を分配するために、列のスタックの入口に流体接続された少なくとも1つの供給原料入口マニホールドと、列のスタックの出口に流体接続された少なくとも1つの生成物出口マニホールドと、入口および/または出口を通る流体フローを調節するように構成されるフロー調節手段と、を備える。
【0009】
本明細書に開示される別の態様によれば、コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムが提供されて、コンテナ型モジュール式電気化学セルシステムは、
・筐体と、
・取り外し可能に前記筐体内に取り付けられた複数の電気化学スタックであって、各スタックは、1つ以上の電気化学セルを備えて、1つ以上の電気化学セルは、前記スタックを形成するように横に並んで関連付けられて配置されて、各スタックは、供給原料を受け入れる1つ以上の流体入力と1つ以上の生成物出力とを備える、複数の電気化学スタックと、を備えて、
○2つ以上のスタックは、列を形成して、筐体は、内部にスタックの1つ以上の列を有して、
○電源は、各列に動作可能に接続されて、各列のスタックは、電気的に直列で接続されて、
各列は、各列のスタックの入力に流体接続された少なくとも1つの供給原料入口と、各列のスタックの出力の各々に流体接続された少なくとも1つの生成物出口と、を備えて、
システムは、
・供給原料入口間で供給原料を分配する手段と、
各スタックの前記供給原料入口および/または前記出口に配置されたフロー調節手段であって、それぞれの入口および/または出口を選択的に開閉するように構成される、フロー調節手段と、
・電気化学セルの各列に供給される電力を独立して制御するコンピュータ実装電源制御手段と、をさらに備える。
【0010】
本明細書で使用される「流体」という用語は、好ましくは、液体(例えば、液体の水または電解質の流れ)と気体(例えば、水素または酸素の気体流れ)との両方を含む。
【0011】
任意の電気化学デバイスが使用され得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、電気化学デバイスは、電解装置であり得る。しかしながら、必要とされる入口と出口とは、電気化学デバイスの性質に応じて変わることが当業者により理解されるであろう。
【0012】
例示的な実施形態において、制御手段は、供給原料送達手段に通信可能に接続されて提供されてもよく、前記供給原料送達手段に対して、利用可能なエネルギーおよび/電力変動に応じて、多量の供給原料を入口に送達させるように構成され得る。例示的な実施形態において、手段は、再使用のために、使用済みの電解質を循環させるために提供される。
【0013】
本明細書で使用される「電解スタック」と、「電気化学スタック」と、「電解装置」とは、コンプレッサ、浄化装置、燃料電池、またはセンサなどであるが、必ずしもこれらに限定されない、モジュール式電解装置と、電解装置スタックと、他のモジュール式電気化学デバイスと、に対する参照を含むように意図される。
【0014】
本明細書で使用されるモジュール式デバイスは、一般的に、スタック自体よりも補助的な構成要素を含む。スタックが利用される本発明の実施形態において、より多くのバランスオブプラント(BoP:balance of plant)は、デバイス間で共有されることが意図される。
【0015】
本明細書で使用される供給原料は、一般的に、電気化学セルに対する任意の入力を指す。電解装置を使用する実施形態において、これは、一般的に、AEM電解装置に対するKOHなどの電解質であるか、またはPEMに対する脱イオン水である。燃料電池を有する実施形態において、これは、大部分が水素ベースの供給材料と、相当な量の酸素を有する供給材料と、であり得る。電気化学の酸素または水素コンプレッサには、一般的に、実質的な量のいずれかの気体を含む流れが供給される。本発明は、必ずしも、このようなパラメータにより限定されるように意図されるわけではない。
【0016】
筐体は、コンテナであり得ることが想定されるが、本明細書で使用される筐体は、モジュールが配置される底板を含む任意の機構、または一般的な配置を包含するように意図される。前記底板または同等物は、外壁および/または屋根を含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0017】
供給原料を循環させる手段は、ポンプ、ファン、または加圧貯蔵部と、解放調節用の関連のバルブと、を含み得ることが想定されるが、必ずしもこれらに限定されない。循環と分配とは、交換可能に使用されて、循環は、電解装置を有する実施形態において使用される電解質または同等物に対する閉ループが存在する実施形態を含む。
【0018】
各列は、電源を共有することが想定されるが、好ましい実施形態において、各列内に対する電源は、直列である。代替的に、電力は、列内の各スタックに並列で供給され得る。列自体は、別個の電力供給により供給されるか、並列で供給されるか、または直列に複数で供給される。電力供給が直列または並列であるかに関わらず、各スタックは、前方の端または末端と、後方の端または末端と、を有するように想定されて、前方の端は、正または負の電力供給を受け入れるように適合されて、後方の端は、負または正の供給を有する。燃料電池を使用する実施形態において、電力が生成される場合、各列は電力を供給して、電力は前記列における各スタックにより、直列で提供されることが想定される。
【0019】
本発明における流体接続は、入口と出口との両方において存在する。流体接続は、共有のマニホールドから供給されてもよく、直列または並列であることも想定される。好ましい実施形態において、流体の供給と除去とのための並列の手段は、必須の圧力が維持されることを保証するために提供される。
【0020】
様々な筐体が使用され得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、輸送コンテナが使用される。
【0021】
好ましい実施形態において、フロー調節手段は、出口において提供されるが、さらに、または代替的に、入口または各入口において提供され得る。任意のフロー調節手段が使用され得ることが想定されるが、通常のチェックバルブまたは制御バルブが利用される。
【0022】
好ましい実施形態において、電気化学スタックは、少なくとも、好ましくは高分子イオン交換膜、より好ましくはアニオン交換膜により分離されたアノードハーフセルとカソードハーフセルとを備える。入口は、燃料、酸化剤、水、または同等物の導入用であることが想定される。このような流体は、水素、酸素、メタノール、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、または脱イオン(DI:deionised)水のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0023】
各スタックには、1つの電気化学デバイスの列を形成する各スタック自体の電源が提供され得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、列は、2つよりも多い数の電気化学デバイスを備える。好ましくは、列は、2個から20個までの数の電気化学デバイス、より好ましくは2個と10個との間の数のデバイス、さらにより好ましくは4個と6個との間の数の電気化学デバイスを有する。
【0024】
供給原料は、使用後に捨てられ得るが、一部の実施形態において、例えば、電解装置、電解質、またはDI水の供給原料を使用したものは、好ましくは再循環されて、このための手段が提供される。
【0025】
本発明は、任意のサイズの電気化学デバイスで使用されることが可能であるが、好ましくは、電力消費は、1kWから200kWまで、より好ましくは1kWと100kWとの間、さらにより好ましくは1kWと20kWとの間、より好ましくは1kWと10kWとの間、より好ましくは1.5kWと5kWとの間、さらにより好ましくは2kWと3kWとの間の範囲である。範囲において小さい側のデバイスは、利用可能な電力のより十分な利用と、電力変動に対する対応と、を可能にする。電力変動に対して十分に対応するための能力は、特に、デバイスが再生可能エネルギー供給源への接続を意図される場合に望ましい。
【0026】
システムは、0.5MWと200MWとの間、より好ましくは実質的に1MW、または50MWと150MWとの間の総電力消費を有し得ることが想定される。より多くのMWが使用される本発明の実施形態において、より大きいスタック、例えば、列内で10kWから100kWまで、または50kWから500kWまで、50kWから250kWまで、または100kWから200kWまでのものを使用することがより実用的であり得る。
【0027】
代替的に、各スタックは、システム容量全体の分数、例えば、1/100と1/1000との間、1/50と1/500との間、または1/50と1/1000との間である電力消費を有することが想定される。好ましくは、各スタックは、1/200と1/600との間、または1/50と1/100との間である。通常、分数は、BOPの電力要求を除外している。
【0028】
好ましい実施形態において、システムは、電気化学構成要素のホットスワップを可能にするように適合される。列の電気的な隔離と流体的な隔離とを可能にする手段、例えば、バルブと、電源を制御するスイッチとは、各列に提供される。隔離されると、隔離された列内の1つ以上のスタックは、交換され得る。これは、停止時間(down time)の必要性を低減して、さらに、システムの電力利用を改善する。出力値などの予想される性能特性を満たさないスタックまたは列は、演算手段により、隔離されるように適合されてもよく、メンテナンスが必要とされていることを示すプロンプトが送信されることがさらに想定される。
【0029】
任意のタイプの電気化学デバイスは、本発明で使用され得るが、好ましい実施形態において、本発明は、好ましくは、PEMとは対照的なAEM技術に関連する。より好ましくは、電気化学デバイスが電解装置である場合、AEM電解装置は、実質的に乾式のハーフセル、より好ましくは乾式のカソードを有する。乾式のカソードまたはアノードは、電解質または同等物がカソードまたはアノードのハーフセルに導入されていないデバイスを意味する。
【0030】
必要とされる電解質の性質に起因して、AEMデバイスは、PGM触媒に依拠せず、PEMデバイスにより必要とされる、腐食条件に耐性のある材料も必要としない。
【0031】
電源に対する共有の接続は、各列に提供され得るか、または代替的に、前記列内の各デバイスは、デバイス自体のデバイス電源接続を有し得る。より多くのBOPが共有される好ましい実施形態において、電力供給は直列であり、供給原料は入口マニホールドを介して並列である。プロセスの生成物は、出口マニホールドにより、並列で流体接続され得る。
【0032】
温度制御用の手段は、デバイスの列に提供されてもよく、同手段は、熱交換器、空気冷却、または液体冷却を含むが、必ずしもこれらに限定されないことが想定される。好ましい実施形態において、廃熱利用は、電解質または他の供給原料、例えば、必ずしもこれに限定されないが、水を予熱するために、デバイスから放出される熱を使用して採用される。代替的に、廃熱は、近くの筐体、水、または他の産業プロセスに熱を提供することにより、利用され得る。
【0033】
電気化学セルは、様々な温度で動作し得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、供給原料の温度は、100℃を超えることは意図されない。より好ましくは40℃から80℃までの範囲内であり、さらにより好ましくは実質的に60℃である。廃熱を利用する予熱と熱交換器とは、エネルギーの無駄を最小限にするために採用され得る。
【0034】
モジュールを使用した一部の実施形態において、換気または空気冷却用の手段は、モジュールまたは各モジュールに提供されることが想定される。しかしながら、これは、スタックを使用した変形体において存在しない。いずれの場合も、モジュールが換気用の手段を有する変形体であっても、換気は、好ましくは、筐体全体に対して提供される。換気は、水素と酸素との比が潜在的に危険なレベルを超えないことを保証するために提供される。
【0035】
代替的に、好ましい実施形態において、換気手段は、筐体内でシステム全体に対して提供されて、前記換気は、好ましくは、演算手段により制御されて、前記演算手段は、筐体内に位置する1つ以上の水素センサを有する。デフォルトで、換気手段は、休止して、有益に、いかなる潜在的なリークも希釈せず、水素センサがより迅速かつ正確にリークを検出するのを可能にする。場所は、複数のセンサを使用することにより、決定され得る。水素が検出された場合、演算手段は、換気手段を作動させるように適合される。これは、廃熱を劇的に低減して、筐体内の温度を維持するという追加の利点を有する。したがって、好ましい実施形態において、換気用の手段は、10倍から1000倍まで、より好ましくは25倍と200倍との間、より好ましくは50倍と150倍との間、さらにより好ましくは実質的に100倍の生成水素を処理するように適合されることが望まれる。
【0036】
電解スタックとして燃料電池またはコンプレッサを使用した他の実施形態において、換気手段は、前述の範囲の水素または他の供給原料の入力に従って、サイズ変更され得る。
【0037】
モジュールが使用される実施形態において、前記モジュールは、筐体を備えて、筐体は、断熱材としてさらに機能してもよく、コンテナ全体がスタックの温度に達するのを防いで、換気を必要とすることなく、システムをより容易に使えるようにする。
【0038】
換気手段は、さらに、代替的なセンサからの自動の読取により、制御されてもよく、例えば、コンピュータ手段は、予期されない圧力低下が流体パイプラインにおいて測定された場合に、換気をトリガする。
【0039】
安全性測定用のさらなる手段として、好ましい実施形態は、水素用および/または安全性の懸念をもたらし得る他の気体用の少なくとも1つのセンサを備える。1つのセンサで十分であり得るが、筐体のサイズは、複数のセンサがスタックまたは筐体の全体に配置されるのが望まれるほど十分大きくてもよい。前記センサは、パッシブ、例えば、視覚的に色が変わるテープであり得るが、好ましい実施形態において、センサは、警告をトリガするように適合されて、好ましくは、リスクを最小限にするために、潜在的に危険なレベルに達する前に換気流量を増加させる。モバイルセンサなどの他の手段は、単独で、または各スタックもしくは各列に配置されたセンサからの圧力の読取と組み合わされて、リークを検出するために使用されてもよく、圧力の低下は、リークを示す。
【0040】
本発明の一実施形態において、電気化学水素センサは、積層セルの各縦列、または各列において採用され得る。気体水素の性質に起因して、センサは、好ましくは、実質的に筐体の上部、少なくとも上半分に配置される。これは、下半分におけるセンサを除外することを意図したものではない。
【0041】
演算手段は、各デバイスまたは各デバイスの列に対する電力供給に制御可能に接続されることが意図される。本発明の好ましい実施形態において、演算手段はまた、各デバイスまたは各デバイスの列について任意の1つ以上のセンサに動作可能に接続されて、センサは、リーク検出器と、圧力センサと、温度センサと、湿度センサと、流量センサと、レベルセンサと、pHセンサと、導電率センサと、酸素センサと、水素センサと、電解質センサと、他の供給原料用、例えば、これに限定されないが、一酸化炭素用の気体センサと、を含むが、これらに限定されない。
【0042】
動作可能な接続は、有線、またはWiFiもしくはBluetooth(登録商標)などによる無線であり得る。センサからの読取は、別の演算デバイスによりユーザに対して利用可能とされてもよく、アクセスは、既知の手段により、セキュアにされることが想定される。
【0043】
様々な電源は、全国電力網などから利用され得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、エネルギーは、再生可能供給源、より好ましくは余剰再生可能供給源から利用される。再生可能供給源は、太陽光、陸上もしくは沖合の風、潮、水力、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。AEM電解装置は、他の相対的に確立された電気化学プロセスと比較して、繰り返しに対して特に十分に適していることが分かった。
【0044】
手段は、システムにおける再使用のために、使用済みの電解質または供給原料の処理用に提供され得ることが想定される。
【0045】
1つ以上の整流器は、入力電力を変換するために使用されてもよく、その結果、同入力電力は、AC、DC、または反転パルスとして供給され得ることが想定される。同じことは、燃料電池を利用した本発明の実施形態における電力出力にも当てはまる。本発明のモジュールの性質は、可能な限り多くの電力を利用するための任意の既知の技術または採用技術に対して、本発明をより十分に適した状態にする。これを可能にするために、可変長の列は、演算手段による、より調整された制御を可能にするように単一の筐体に提供され得る。より少ないデバイスの列は、負荷の変動に対処するのにより十分に適している。振幅整合はより十分であるが、周波数整合は低下することに起因して、より多くのユニットを有する列は、より長い応答時間を有するが、エネルギー供給のより大きい変動に対するバッファとして、より効率的に機能し得る。周波数整合はより十分であり、振幅整合能力はより低いことに起因して、より短い列は、より高速の応答時間を可能にするが、バッファ容量は低下する。
【0046】
電解スタックが燃料電池である本発明の実施形態において、列は、システムで引かれる負荷から必要とされるエネルギー需要に対して、より高い応答性であり得る。同じことは、コンプレッサにも同様に当てはまり得る。
【0047】
本発明によれば、様々な電気化学デバイスは、水素バッテリを形成するために、一緒に収容され得ることが想定される。このような変形体における電気化学デバイスは、少なくとも電解装置と燃料電池とを含む。電気化学コンプレッサ、またはより多くの従来の機械的コンプレッサも、提供され得る。より好ましくは、AEM電気化学コンプレッサは、生成水素の同時の圧縮、乾燥、および/または純化を可能にするために使用される。電力供給や演算手段などのBOPは、各タイプの電解デバイス間で共有され得る。水素バッテリとして機能するために、好ましくは、貯蔵手段は、筐体内に提供される。
【0048】
電気化学コンプレッサを利用する実施形態において、水素または酸素のいずれかを圧縮することが可能である。前記圧縮は、任意選択的な純化と共に生じ得る。水素は、好ましくは、水電解などのグリーンな供給源に由来するが、供給原料は、水蒸気改質、または水素の他の非再生可能供給源からのものであり得て、同時の浄化は、間違いなく好ましい。酸素が圧縮される場合、酸素は、1つ以上の電解装置の出口に由来するもの、コンテナもしくは同等物内に収容されているもの、または大気から取り去られるものであり得る。同時の浄化は、医療での使用または産業での使用を可能にし得る。しかしながら、乾燥の手段も、貯蔵の前に必要とされ得る。
【0049】
燃料電池の代わりに、このような水素バッテリは、燃料補給ステーション、または必要とされる燃料原料のin-situ(その場)生成のための産業プロセスに接続され得る。
【0050】
筐体のレイアウトは、縦列と横列とに配置されたデバイスを有することが想定される。複数のタイプの電気化学デバイスを利用する実施形態において、各グループは、好ましくは、類似のタイプのデバイスに近接して位置する。アクセスを容易にするために、デバイスは、3つの歩行通路を考慮して位置して、中央の歩行通路は、デバイスの2つの壁の間にあり、前記壁は、複数のスタックを備えることが想定される。追加の歩行通路は、図示されるように各壁の後方にあることが想定される。代替的に、スペースを節約するために、中央の歩行通路のみが提供されて、スタックモジュールの後方にアクセスする手段は、スタックの背後にアクセスドア/取り外し可能な壁を含むか、またはガイドレールなどにより、スタックのアレイを移動可能にする。
【0051】
好ましい実施形態において、歩行通路は、何らかのBOPが配置され得る隙間と、収集される任意の凝縮物または他の液体の任意選択的な排水と、任意選択的な空気入口と、を考慮するために、筐体の床と、スタックが取り付けられる歩行通路プラットフォームと、の間に1cmと20cmとの間、またはより好ましくは3cmと15cmとの間の隙間を考慮して高くされたプラットフォームを含む。このような実施形態において、排水手段も、提供され得る。
【0052】
追加的に、歩行通路は、材料選択、コーティング、または他の好適な手段により、筐体から電気的に絶縁され得ることが想定される。歩行通路は、各スタック、各モジュール、または各デバイスのシャーシと同じまたは異なる材料であり得る。
【0053】
各モジュールまたは各スタックには、必要とされるBOPのすべてが提供され得ることが想定されるが、好ましい実施形態において、BOPは、可能な限り多く共有される。これは、電力供給と、水純化/供給原料処理と、供給原料の循環/分配と、前述のセンサと、圧力調節手段と、HVAC/換気手段と、安全システムと、生成物処理と、を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0054】
大規模電力供給の処理を可能にするために、少なくとも10個のモジュールが使用されるが、好ましくは20個を超えることが想定される。より大規模なスケールについて、単一のコンテナは、100個と1000個との間の数のモジュール式デバイス、より好ましくは200個と500個との間の数のモジュール式デバイス、より好ましくは300個と450個との間の数のモジュール式デバイスを収容し得ることが想定される。
【0055】
デバイスまたは各デバイスからの出口における圧力調節手段は、所定の閾値を維持するように適合されることが想定される。これは、デバイスに応じて変わり得るが、電気化学デバイスが電解装置である好ましい実施形態において、好ましい圧力定格は、1バールと50バールとの間、より好ましくは20バールと40バールとの間、より好ましくは30バールと40バールとの間である。最も好ましい実施形態において、同圧力定格は、実質的に35バールである。これは、特定の管轄ではより低い圧力、例えば、日本では8バールに制限され得る。燃料電池は、著しく低い調節手段を必要とし得る一方、電気化学コンプレッサは、必然的に、通常は段階的に、より高い手段を有する。電気化学コンプレッサは、最終的に、目標の気体を2000バールまで圧縮し得て、または30バールから2000バールまで、100バールから1500バールまで、もしくは500バールから1000バールまでの範囲内のいずれかの所まで圧縮し得る。車両の使用目的に沿って、350バールまたは750バールが望まれ得る。
【0056】
電気化学コンプレッサを使用する実施形態において、各列は、単一の段階を形成してもよく、第1段階は、P1からP2に第2段階を供給するなどして、最終的な第n段階のPnまで供給する。
【0057】
本発明は、他のスタック、スタックの列、およびもしくは各スタックの任意選択的なシャーシから各スタックを電気的に絶縁するか、または任意選択的に、流体的に隔離する手段を含み得ることが想定される。隔離は、電気的な絶縁材料を含む任意の妥当な手段により提供され得るか、または隔離は、回路ブレーカ、スイッチ、および/もしくはリレーを追加することにより、断続的に行われ得る。断続的な隔離の手段は、筐体内の演算手段に動作可能に接続されてもよく、または手動で制御/停止されてもよく、これは、各スタックの供給原料入口および/または出口に配置されたフロー調節手段を含み、前記フロー調節手段は、それぞれの入口および/または出口、ならびに電気接続を選択的に開閉するように構成されることが想定される。
【0058】
各スタックまたは各スタックの列は、シャーシ内で保持されてもよく、前記シャーシは、何らかのBoP、例えば、必ずしもこれらに限定されないが、センサ(圧力、温度など)、電子機器区画、チェックバルブなど、を備える。追加的に、ポートは、入口と出口とに提供され得る。さらに、シャーシにはまた、補強支持ブラケットと圧縮手段とが提供されてもよく、前記圧縮手段は、スタックの寿命においてスタック内で封止が一定のままであることを保証するための、ばねまたは同等のサスペンションである。代替的に、シャーシは、2つ以上の複数のスタック、スタックの列、さらには、複数の列を収容し得ることが想定される。
【0059】
in-situ(その場)診断の手段も提供されてもよく、前記in-situ診断は、単一のデバイス、同デバイスの列、または列のブロックにおいて提供されることも想定される。列のブロックは、2つ以上の列である。同診断は、ユーザに対して、必要とされるメンテナンスを警告するか、プリエンプティブに警告をするか、または他の方法で警告するために使用され得る。好ましくは、in-situ診断は、より優れた健全性(SoH:state of health)を有するスタックを優先するように電力供給の負荷分散を制御するために、演算手段により使用され得る。SoHは、デバイスの理論的な出力と駆動時間とに対して比較される実際の出力を使用して決定され得る。
【0060】
好ましい実施形態において、in-situ診断は、演算手段に接続されて、スタックまたはスタックの列に対する電力供給と、どのくらい多くの供給原料がスタックまたはスタックの列に対して利用可能とされるべきかと、のうちの一方または両方を決定するために使用される。
【0061】
in-situ診断を決定する手段は、以下のもの、すなわち、
・スタックまたはスタックの列の累積駆動時間と、
・スタックまたはスタックの列の累積停止時間と、
・駆動中に駆動されたスタックまたはスタックの列の動作容量と、
・スタックまたはスタックの列の温度と、
・スタックまたはスタックの列と、スタックまたはスタックの列の関連の入口およびまたは出口と、における圧力と、
・スタックまたはスタックの列の電圧/電位と、
・バランスオブプラントに属するデータ、例えば、以下に限定されないが、
○供給原料フロー、
○供給原料利用可能性、
○供給原料温度、
○供給原料の導電率または同等のパラメータ、
○ポンプ性能と、
のうちのいずれか1つ以上を測定するための能力を含み得ることが想定される。
【0062】
前述のリストは、必ずしも網羅的ではなく、追加的にまたは代替的に、構成要素の状態が決定または推測され得る任意の妥当な性能または動作条件が使用され得る。
【0063】
前述の監視される動作条件と、入力と、出力と、に基づいて、手段は、前の動作条件から外挿される出力を予測するように提供されることが想定される。これは、システム全体が所望の容量または要求で動作することを可能にする。必要に応じて、このような測定は、in-situ診断手段により、所定の間隔で行われてもよく、同間隔は、ユーザにより、任意選択的に変更され得る。追加的に、トリガは、診断をもたらすために与えられ得る。このようなトリガは、電力供給の変更、条件の予想変更、または任意の他の考えられるトリガであり得る。
【0064】
前述の情報は、各デバイスまたは各デバイスの列について「重み付け駆動時間」(WRT:weighted run time)を決定するために、本発明の態様に従って、制御システムまたは演算手段により使用されてもよく、WRTは、因子、例えば、これらに限定されないが、駆動時間、駆動中に供給される電力、予想される性能対実際に測定される性能、停止時間などを考慮することが想定される。
【0065】
WRTがシステム全体の動作を制御するために使用され得る様々な方法が存在する。優先度は、最も低いWRTを有するデバイスまたは列に対して与えられるが、in-situ診断が、他のデバイスよりも低いWRTを有するデバイスに伴う問題を示すかまたは表示する場合、in-situ診断により決定され得る健全性(SoH)に応じて、別のデバイスまたは列を優先することが好ましい場合がある。これは、分極曲線測定または他の診断技術により補完され得る。デバイスは、メンテナンスが必要な場合、または電位の問題が検出された場合、より低いWRTであっても、低減された優先度を有し得る。
【0066】
WRTに対して補足的にまたは代替的に、スタックのSoHを決定する他の方法は、一般的に、スタックを等価回路モデルにフィッティングすることを含む。最も単純な場合、前記モデルは、抵抗器成分とコンデンサ成分とを含むが、一般的に、物質移動寄与も同様に含むように適合される。一例は、物質移動効果を表すためにワールブルグ要素を含むランドルズ回路である。追加的に、定位相要素、すなわち、より一般的な種類のコンデンサ要素は、多孔質電極を反映させるように含まれ得る。
【0067】
インピーダンススペクトルの等価回路フィッティングは、電気化学スタックに対して可能であるが、より有用なデータを取得するために、同スタックの等価回路へのフィッティングは、電気化学インピーダンス分光法(EIS:electrochemical impedance spectroscopy)、またはスタックがパッシブに充電/放電し得る別の回路を必要とすることが想定される。パッシブな充電/放電回路は、スタックのパッシブな充電と放電とを可能にするために必須のスイッチと抵抗器とを有する。充電時と放電時とにおいて、結果として生じる過渡電圧は、スタックを等価回路にフィッティングするために、所定の十分なサンプリングレートで使用され得る。疑義を避けるために、測定される過渡電圧は、所定の等価回路パラメータをフィッティングするために前記過渡電圧を使用する手段と組み合わされ得る。スタック過渡電圧の特性は、識別される必要がある性能パラメータ(すなわち、オーム抵抗、速度論的活性特性、さらには、物質移動/低周波数挙動)と直接的に相互に関連付けられ得る。ほぼ間違いなく、これは、ハードウェアの複雑性を増加させるが、個々のセル構成要素に関連付けられるパラメータの特定の決定を可能にする。EISは、一般的に、高価なポテンショスタットを必要とするが、1つの同ポテンショスタットは、複数の電解装置または電解装置の複数の列に対して使用され得る。DCバイアスは、AC外乱の周波数がkHzからmHzまでスイープされるように、AC成分(DCバイアスの+/-1%)と共にスタックに印加されて、インピーダンスは、各周波数で測定されて、このデータは、スタックを等価回路モデルにフィッティングするために使用され得る。ポテンショスタットが使用される場合、同ポテンショスタットは、本明細書に記載されていない既知の手段により、電気化学セル、スタック、または列に接続される。
【0068】
依然、有用な情報を取得しつつ、ハードウェア要件を簡略化する理想的な場合において、単に分極曲線データの変化を見ることが含まれて、ここで、以下の式は、3つの支配的な損失源、すなわち、速度論的損失と、オーム損失と、物質移動損失と、を分離する。
【0069】
この式において、
‐Vは、測定されるスタック過渡電圧であり、
‐Eは、開回路電圧(すなわち、起電力)であり、
‐blog(i/i)は、速度論的損失を表すターフェル式であって、ここで、
○iは、印加される電流密度であり、
○iは、交換電流密度であり、
○bは、フィッティング係数、すなわち、「ターフェル勾配」であり、
‐iR’は、オーム損失を表して、ここで、
○iは、印加される電流密度であり、
○R’は、DC抵抗であり、
‐alog(1-i/ilim)は、移動損失を表して、ここで、
○aは、フィッティング係数であり、
○iは、印加される電流密度であり、
○ilimは、限界電流密度である。
【0070】
さらに別の診断方法は、ΔV、すなわち、分極曲線診断の変化を測定することを含む。分極曲線、すなわち、電圧対印加電流のグラフは、電解装置セル/スタックにおける様々な種類の効率損失、すなわち、速度論的損失と、オーム損失と、物質移動損失と、に関する情報を示す。形式的に、電解装置は、速度論的損失とオーム損失とにより支配されて、速度論的損失は、対数のV対Iの関係であり、オーム損失は、VとIとの間で直線的である。物質移動損失は、最悪の場合に存在するが、一般的に、生の分極曲線データと、速度論+オームのフィッティングデータと、の差とみなされ得る。速度論的部分は、2つのフィッティング係数を有して、これらは、ターフェル勾配と交換電流密度とであり、セルの電気化学反応に依存して、各電極の触媒層の健全性を反映する。オーム部分は、1つのフィッティング係数のみを有して、これはDC抵抗であり、これに影響を与える因子は、膜健全性を含んで、腐食に起因して接触抵抗を増加させる。最後に、物質移動は、一般的に、2つのフィッティング係数、すなわち、対数前因子と限界電流密度とを有して、対数前因子と限界電流密度との両方は、触媒層に達する水および/または電極を出ていく気体の「抵抗」の程度に関する概念を我々に示して、物質移動損失は、主に、ガス拡散層(GDL:gas diffusion layer)、触媒層、および/または膜から生じる。
【0071】
5つの自由パラメータを用いた非線形のカーブフィッティングは、実際には、本記載の発明においてかなり困難であり、定期的に行いすぎる場合には時間の制約があるが、改善された処理能力は、関連のコストを伴って、これを軽減するのに何らかの役に立ち得ることを考慮されたい。ここで、物質移動フィッティングを無視して、速度論的損失とオーム損失とに焦点を当てることにより、簡略化が可能になる。フィッティング手順について、精度と安定性とを改善するために、オーム部分が測定されて固定されてもよく、その結果、非線形のカーブフィッティングは、唯一の第1対数項における2つの速度論的パラメータについてのみ修正している。フィッティングパラメータのうちの1つ、例えば、ターフェル勾配が安定している実施形態において、これは、制御ソフトウェア/方法において固定点に設定されて、変数を低減し得る。しかしながら、DC抵抗または他の好適なパラメータのように迅速に測定可能なものを固定することが好ましい。測定値に対する、オーム+速度論の寄与のみのフィッティング分極曲線からのずれは、最大容量値を適切に定めるためにも使用され得る物質移動の制限開始に起因し得る。
【0072】
前述のオーム部分を測定する一部の方法は、固定の高周波数(例えば、1kHz)におけるインピーダンスを読み取るために、ポテンショスタットまたはインピーダンスメータを必要とするEISまたは電流遮断を含む。前述のとおり、単一のポテンショスタットは、複数のスタックまたは複数のスタックの列に対して集約されて使用され得る。曲線の対数部分と直線部分との区別は、十分なデータが存在しない場合に容易に行われず、これは、通常、特に、容量性の寄与を除去するのに長時間を要する非常に低い電流密度で、より明白であることに留意されたい。手段は、十分なデータを保証するために、最大動作容量の半分以下のより低い電流密度で、より多くの測定を行うように適合され得ることが想定される。直接的な方法(例えば、EIS、電流遮断、インピーダンスメータ)による抵抗の測定は、数値問題を除去して、分極曲線の高速記録を可能にして、直線または対数の傾向に関わらず、正確な数値フィッティングに対して必要とする点をより少なくする。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において、in-situ診断を行う前述の手段と方法とは、利用可能な電力および/または供給原料の配分と分割とを決定するために、制御手段により使用される。
【0074】
利用可能な電力を決定する手段と、加えて、既知の条件に基づいて、利用可能な電力を予想する手段と、が提供されることが想定される。
【0075】
好ましい実施形態において、フロー調節手段はまた、入口、すなわち、スタックまたはスタックの流れの上流に提供され得る。これはまた、供給原料の出口を備える実施形態、例えば、電解質の出口を有する電解装置の実施形態を含み、供給原料の入口と出口とは、供給原料の入口と出口とを備えるループを形成する。ポンプまたは同等物は、溶存気体の存在を最小限にするために、スタックまたはスタックの列の上流に配置される。
【0076】
電解装置の列の好ましい実施形態において、フロー調節手段、または他の場合において、チェックバルブなどの圧力調節手段は、少なくとも水素出口に配置される。
【0077】
本発明の第2態様によれば、コンテナ型モジュール式電気化学システム内の複数の電気化学デバイスを制御する方法が提供されて、前記方法は、
・筐体であるコンテナを提供することと、
・前記筐体内に複数の電気化学スタックを提供することであって、前記電気化学スタックは、直列の列に配置されて、各列は、少なくとも1つの電気化学スタックを備えて、
○各電気化学スタックは、各スタックにおいて、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えて、
・フロー調節手段は、スタックの入口および/または出口のうちの少なくとも1つにおいて提供されることと、
電源を各電解スタックまたは各電解スタックの列に接続することと、
・演算手段を提供することであって、
○前記電源は、前記演算手段により制御されて、
○前記演算手段は、供給される電力を決定するために提供される手段を用いて、電力を1つ以上の列に向けるように適合されて、
‐列または各列に供給される電力は異なり得る、演算手段を提供することと、
・供給原料を循環させる手段を提供することと、を含む。
【0078】
好ましい実施形態において、電気化学システムは、主に、電解装置スタックを備える。したがって、本発明の第2態様によれば、コンテナ型モジュール式電解装置システム内の複数の電気化学デバイスを制御する方法が提供されて、前記方法は、
・筐体であるコンテナを提供することと、
・前記筐体内に複数の電解装置を提供することであって、前記電解装置は、直列の列に配置されて、各列は、少なくとも1つの電解装置を備えて、
○各電解装置は、電解質の少なくとも1つの入口を備えて、
○各電解装置の列の各電解装置は、少なくとも、生成された水素と、生成された酸素と、使用済みの電解質と用の少なくとも1つの出口を備えて、
○フロー調節手段は、入口および/または出口のうちの少なくとも1つにおいて提供される、前記筐体内に複数の電解装置を提供することと、
・電源を各電解装置または各電解装置の列に接続することと、
・演算手段を提供することであって、
○前記電源は、前記演算手段により制御されて、
○前記演算手段は、供給される電力を決定するために提供される手段を用いて、電力を1つ以上の列に向けるように適合されて、
‐列または各列に供給される電力は異なり得る、演算手段を提供することと、
・供給原料を循環させる手段を提供することと、を含む。
【0079】
前述のとおりシステムを動作させる方法は、in-situ診断の利用と他の特徴とを含む、前述のとおりの任意の開示される装置の変形体を含むように適合され得る。
【0080】
方法は、1つ以上の出口マニホールドからの出口圧力を制御する手段を提供するステップをさらに含み得る。任意選択的に、手段は、前記出口マニホールドの含有物の純化のために提供され得る。
【0081】
歩行通路は、各デバイスへのアクセスのために、筐体に提供され得ることも想定される。前記歩行通路は、中央に提供され得るが、好ましくは、各スタックへの後方のアクセスも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
ここで、本発明の理解を助けるために、本発明の特定の実施形態は、添付図面を参照して例示として記載される。
図1図1は、コンテナ型電気化学ソリューションの例示的なレイアウトである。
図2図2は、例示的な電解スタックの概略図である。
図3A図3Aは、図2に描写されたスタックにおけるセル機構の例を概略的に示す。
図3B図3Bは、図2に描写されたスタックにおけるセル機構の例を概略的に示す。
図4図4は、単一のスタックについての負荷曲線である。
図5図5は、電気的に直列で接続されたスタックの列を描写する。
図6図6は、電気的に直列で接続されて、流体的に並列で接続されたスタックの列を描写する。
図7図7は、2方位からのシャーシ内のスタックを示す。
図8図8は、5つの電解装置の列についての定常動作と負荷ジャンプとを(グラフ8a,8bに)描写する。
図9図9は、電解装置の列の拡大された負荷ジャンプを(グラフ9a~9cに)描写する。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1を参照すると、コンテナ型モジュール式電気化学システム1を見ることができる。筐体2は、中間の歩行通路3と後方の歩行通路4とを有する標準的な輸送コンテナであり、歩行通路3,4は、BoP(バランスオブプラント)用の隙間5を提供して、必要な場合には排水を提供する。好ましい本実施形態において、モジュール10は、歩行通路上にあり、モジュールは、電解装置である。電解装置10は、縦列100に配置されて、前記縦列は、電力供給を共有する列である。
【0084】
前述のとおり、デバイスの壁20a,20bは、同じタイプの電気化学デバイスである必要はない。
【0085】
コンテナ2は、水タンク、ポンプ、水素貯蔵部などのBoP用のエリア30を有して、これらは、すべて図示されていない。換気用の手段、センサなどの構成要素も、図示されていない。
【0086】
図面のうち図2を参照すると、in-situ診断に適合されたシステム1において使用され得る電解スタック50が概略的に示されている。見て分かるように、スタックは、エンドプレート51a,51bにより、境界付けられる。複数のセル60は、前記エンドプレート間にあり、各々の構成は、図6A図6Bとにおいて見ることができて、以下でより詳細に記載され得る。各セル60の境界は、バイポーラプレート52である。前述のとおりin-situ診断を行うために、ピン53は、バイポーラプレート52に接続される。ピンは、診断を行うためにスタックボード(不図示)に接続されて、同診断の結果は、制御/ゲートウェイに通信されて、各スタック50に対する負荷分散を決定するために使用される。
【0087】
図3A図3Bとは、スタック50において使用され得るセル60の2つの例を概略的に示す。セル60の各タイプは、バイポーラプレート61a,61bにより境界付けられる。第1バイポーラプレート61aから、アノード62と、膜64と、カソード63と、次のバイポーラプレート61bと、が存在する。これらの図において、ピンは、明確化のために図示されていない。図6Bのセル機構は、バイポーラプレート61aとアノード62との間にガス拡散層(GDL)65aが存在する点で、図6Aのものと異なっている。追加的に、カソード63と第2バイポーラプレート61bとの間に別のGDL65bが存在する。
【0088】
図4は、前述の図に示された機構において描写された電解スタックの負荷曲線を描写したグラフである。負荷は、60%から100%までの範囲にわたるが、ここで実際には、関係は、直線的で、ほぼ間違いなく最も効率的であることが分かる。100%を超える負荷は、スタックを保護するために、行われていない。
【0089】
図5は、電気的に直列で接続されたスタック10a~10eの列100を描写する。電力は、第1接続11aを介して、第1スタック10aに供給される。電力は、第1スタック10aの第2接続12aを第2スタック10bの第1接続11bに接続するワイヤを介して、第1スタック10aから第2スタック10bに供給される。これは、列100内の各スタック10に対して繰り返される。例えば、電力は、第2スタックの第2接続12bを第3スタック10cに接続するワイヤを介して、第2スタック10bから第3スタック10cに供給されることなどである。
【0090】
図6は、並列に流体接続された図5の列を示す。これは、列100内の各スタック10に供給原料を搬送する入口マニホールド70を含む。入口マニホールド70は、入口71a,71bなどを介した各スタックへの入口を有する。本実施形態において、入口は、各電解スタック10のカソードハーフセルに存在する。アノードの出口マニホールド40は、出口41a,41bなどを介して、各アノードハーフセルから生成された酸素を伝える。第2マニホールド出口30は、出口31a,31bなどを介して、出ていく水素を伝えるために各カソードハーフセルに接続される。
【0091】
水素用センサ32と酸素用センサ42とは、それぞれ列に接続されて図示されている。出口の安全性を保証して、気体が爆発下限界(LEL:lower explosive limit)を超えて混合しないことを保証するために、酸素用センサ32は、水素出口マニホールド30上に配置されて、水素センサ42は、酸素出口マニホールド40上に配置され得る。
【0092】
図7は、2方位(前方と後方と)からのシャーシ13内のスタック10を図示している。コネクタピン12を見ることができる。また、センサ、例えば、フローメータ14と、温度センサ15と、電子機器区画16と、圧力センサ17とは、スタック10の後方とシャーシ13の後方22との間に図示されている。これらは、制御手段に有線または無線で動作可能に接続され得る。チェックバルブ18は、出口に位置している。フレーム21の前方は、メンテナンスが必要な場合にスタックの交換を可能にするためのハンドルを有する。前述の圧縮手段は、本実施形態において、支持ブラケットとして描写されている。
【0093】
図8は、他の図で見られる5つの電解装置の列についての定常動作と負荷ジャンプとを描写する。グラフ8aは、x軸に時間を示して、Y軸にアンペアを示す。初期増加の後に、定常で安定した動作は、10:50と、およそ12:05と、の間に示される。負荷ジャンプは、12:05と12:30との間に示される。
【0094】
グラフ8bは、同じ構成についての読取値を示して、電圧は、Y軸上にある。5つのスタックを有する構成に起因して、値に5を掛ける必要があるため、およそ210Vのピークが存在する。驚くべきことに、本構成は、システム内の弾性をより大きくすることを可能にして、電圧スイングを減衰させており、これは、本質的に変動再生可能エネルギー供給源に接続されるシステムに対する優れた利点である。
【0095】
図9は、図8で見られるグラフの拡大バージョンである3つのグラフ9a,9b,9cを示す。9bと9cとにおける時間は、分ではなく秒スケールである。9aは、強調表示されているセクションを示す。ステップ変化は、オーバーシュートまたは振動することなく、アンペア読取値と電圧読取値との両方において見られる。これは、システムの効力を改善する変動エネルギー利用可能性の高速追跡を可能にする。
【0096】
本図において、すべてのBoPが図示されておらず、本発明は、必ずしも、このようなBoPにより制限されることを意図したものではない。
【0097】
本発明は、前述の実施形態の詳細に制限されることを意図したものではない。例えば、単一のシステムは、電解装置と、コンプレッサと、燃料電池と、などの様々な電気化学スタックを収容し得る。追加的に、特許請求されていないBoPも、本発明の範囲から逸脱することなく変わり得る。供給原料または電解質も、本発明の範囲から逸脱することなく異なり得る。以上の説明から、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正が記載された実施形態に対して行われ得ることは、当業者に明らかである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】