(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】低吸着グリブリド製剤および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/64 20060101AFI20240312BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240312BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240312BHJP
C07C 311/58 20060101ALI20240312BHJP
C07C 311/59 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/64
A61P9/00
A61P9/10
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
C07C311/58 CSP
C07C311/59
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553299
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022018821
(87)【国際公開番号】W WO2022187567
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517234262
【氏名又は名称】バイオジェン チェサピーク エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トラン, ケニー ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ロー, ディアドラ
(72)【発明者】
【氏名】サワント, ルパ リシケシュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハイホン
(72)【発明者】
【氏名】リン, イーチン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB13
4C076CC11
4C076DD30
4C076DD38
4C076DD50
4C076DD51
4C076DD60
4C076FF15
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZA36
4H006AA01
4H006AB20
(57)【要約】
送達管類、フィルター、バッグ、ならびに他の容器および物質の表面へのグリブリドの吸着を最小限にするかまたは回避し、それによって、より安定な製品を貯蔵および送達し、グリブリドの予測可能かつ正確な用量を送達すると同時に、不純物を最小限にし、薬物損耗を回避し、コストを低減し、患者へと注入されなければならない投与溶液の量を有意に低減するための方法および製剤。1つの局面において、本開示は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを含む製剤であって、ここで上記製剤は、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有するものを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.緩衝化剤;
c.塩基;および
d.糖アルコール、
を含む製剤であって、ここで前記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有する製剤。
【請求項2】
前記薬学的に受容可能なその塩は、ナトリウム付加塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩は、前記製剤の約2~3.5%、2.5~3.3%、2.7~3.1%、2.8~2.98%、2.9~2.97%、または2.94~2.96%(w/w)である、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
約70~93%、75~92%、80~91%、84~90%、86~89%、または87~89%(w/w)の糖アルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項5】
前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記糖アルコールおよび前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩を、25~50:1、26~45:1、27~40:1、28~35:1、29~33:1、30:1、31:1、または32:1の重量比において含む、請求項4または請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記糖アルコールおよび前記緩衝化剤を、5~15:1、6~14:1、7~13:1、8~12:1、9~11:1、9.5:1、10:1、または10.5:1の重量比において含む、請求項4~6のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項8】
20~40mg/ml、24~36mg/ml、26~34mg/ml、38~32mg/ml、29mg/ml、30mg/ml、または31mg/mlの前記糖アルコールを含む、請求項4~7のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項9】
25℃/60%相対湿度(RH)において12ヶ月間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項10】
40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項11】
70℃/75%RHにおいて4週間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項12】
前記緩衝化剤は、7.7~9.2のpKaを有する、請求項1~11のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項13】
9.0より大きいpHを有する再構成された溶液の形態にある、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
9.3~11のpHを有する再構成された溶液の形態にある、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
前記塩基は、0.1~1.5のpKbを有する、請求項1~14のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項16】
前記塩基および前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩は、5.0~6.7:1、5.1~6.6:1、5.2~6.5:1、5.3~6.4:1、5.4~6.3:1、5.5~6.2:1、5.6~6.1:1、5.7~6.0:1、または5.2:1、5.3:1、5.4:1、5.5:1、または5.6:1のモル比を有する、請求項1~15のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項17】
前記塩基は、NaOH、CaOH、KOH、またはこれらの組み合わせである、請求項1~16のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項18】
前記緩衝化剤は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、またはこれらの組み合わせである、請求項1~17のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項19】
前記緩衝化剤は、Tris-HClおよびTris-塩基の組み合わせである、請求項1~18のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項20】
Tris-HClとTris-塩基との間の重量比7:4を有する、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
Tris-HClとTris-塩基との間の重量比6.2:5.0を有する、請求項19に記載の製剤。
【請求項22】
約5~15%、6~14%、7~13%、8~12%、9~13%、または10~12%(w/w)の前記緩衝化剤を含む、請求項1~21のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項23】
20mLの注射用水(WFI)中で再構成され、4~60mM、5~50mM、6~40mM、7~30mM、8~25mM、9~23mM、10~21mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、または20mMの前記緩衝化剤を含む、請求項1、請求項13または請求項14に記載の製剤。
【請求項24】
20mLの注射用水(WFI)で再構成され、1~5mg/ml、1.2~4mg/ml、1.5~3.5mg/ml、または2~3mg/mlの前記緩衝化剤を含む、請求項1、請求項13、または請求項14に記載の製剤。
【請求項25】
前記緩衝化剤は、7.8~9、7.9~8.9、8~8.8、8.1~8.7、8.2~8.6、8.3~8.5、8.4~8.6、または8.5のpHを有する緩衝液である、請求項1、13、14、23、および24のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項26】
前記製剤が、WFIで再構成された場合に、9.8~11.2、9.9~11.1、10.0~11.0、10.1~10.9、10.2~10.8、10.3~10.7、または10.4~10.6のpHを有するような比において前記塩基および前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩を含む、請求項1、13、14、および25のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項27】
約250~350ミリオスモル/リットル(mOsm)、約280~320mOsm、または約290~310mOsmの容量オスモル濃度を有する、請求項1~26のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項28】
塩類注入溶液中で少なくとも15μg/mlの溶解度を有する、請求項1~27のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項29】
塩類注入溶液中で7.8~9、 7.9、 8.0、 8.1、 8.2、 8.3、 8.4、 8.5、 8.6、 8.7、 8.8、または8.9のpHを有する、請求項1~28のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項30】
塩類注入溶液中で約0.1~0.5mM、約0.15~0.4mM、約0.2~0.3mM、または約0.2mMの緩衝液濃度を有する、請求項1~29のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項31】
20mL WFI中で10~11のpHおよび500mL 塩類注入溶液中で7.8~9のpHを有する、請求項1~30のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項32】
注入期間の過程にわたるポリマー製容器への吸着に起因して、グリブリド濃度(w/v)の1重量%未満の喪失を有する、請求項1~31のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項33】
前記ポリマー製容器は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PUR)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエン(ABS)、ポリブタジエン、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、これらの混合物、組み合わせ、またはコポリマーから作製される、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記注入期間は、少なくとも6時間、12時間、24時間、48時間、72時間または96時間である、請求項32または33に記載の製剤。
【請求項35】
25℃/60%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.2%未満の分解生成物を有するように、貯蔵安定性特性を有する、請求項1~34のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項36】
40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.4%未満の分解生成物を有するように貯蔵安定性特性を有する、請求項1~35のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項37】
70℃/75%RHにおいて7日間の貯蔵の際に、1.0%未満の分解生成物を有するように貯蔵安定性特性を有する、請求項1~34のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項38】
前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩は、d50が20μm未満である粒径を有する、請求項1~37のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか1項または組み合わせに記載の製剤および500mLの塩類注入溶液を含む、注入溶液。
【請求項40】
500ml 塩類溶液、3~5mg グリブリド、20~40mg マンニトール、10~12mg Tris、およびpH8~9を含む、注入溶液。
【請求項41】
10~30ml WFI、3~5mg グリブリド、20~40mg マンニトール、10~12mg Tris、およびpH10~11を含む溶液。
【請求項42】
注入期間の過程にわたるポリマー製容器への吸着に起因して、グリブリド濃度(w/v)の1重量%未満の喪失を有するグリブリド製剤を作製する方法であって、前記方法は、グリブリドと、7.7~9.2のpKaを有する緩衝化剤、糖アルコール、および0.1~1.5のpKbを有する塩基とを、前記塩基と前記グリブリドとの間のモル比5.0~6.7:1において組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項43】
前記塩基は、NaOH、CaOH、KOH、またはこれらの組み合わせである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記緩衝化剤は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、またはこれらの組み合わせである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記緩衝化剤は、Tris-HClおよびTris-塩基の組み合わせである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
Tris-HClとTris-塩基との間の重量比7:4を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
Tris-HClとTris-塩基との間の重量比6.2:5.0を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組み合わせである、請求項42~47のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項49】
前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩は、前記製剤の約2~約3.5%、約2.5~約3.3%、約2.7~約3.1%、2.8~2.98%、2.9~2.97%、または2.94~2.96%(w/w)である、請求項42~48のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項50】
約70~93%、75~92%、80~91%、84~90%、86~89%、または87~89%(w/w)の糖アルコールを含む、請求項42~49のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項51】
前記糖アルコールおよび前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩を、25~50:1、26~45:1、27~40:1、28~35:1、29~33:1、30:1、31:1、または32:1の重量比において含む、請求項42~50のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項52】
前記糖アルコールおよび前記緩衝化剤を、5~15:1、6~14:1、7~13:1、8~12:1、9~11:1、9.5:1、10:1、または10.5:1の重量比において含む、請求項42~51のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項53】
20~40mg/ml、24~36mg/ml、26~34mg/ml、38~32mg/ml、29mg/ml、30mg/ml、または31mg/mlの前記糖アルコールを含む、請求項42~52のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項54】
25℃/60%相対湿度(RH)において12ヶ月間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項42~53のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項55】
40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項42~53のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項56】
70℃/75%RHにおいて4週間の貯蔵の際に、貯蔵前の前記製剤の約0.2pH単位以内のpHを有する、請求項42~53のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項57】
前記グリブリド製剤は、WFIで再構成された場合に、9.8~11.2、 9.9~11.1、 10.0~11.0、 10.1~10.9、 10.2~10.8、 10.3~10.7、または10.4~10.6のpHを有する固体粉末である。請求項42~56のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項58】
前記緩衝化剤は、7.7~9.2のpKaを有する、請求項42~57のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項59】
前記製剤は、9.0より大きいpHを有する再構成された溶液の形態にある、請求項42~58のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項60】
前記製剤は、9.3~11のpHを有する再構成された溶液の形態にある、請求項42~58のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項61】
前記製剤は、約5~15%、6~14%、7~13%、8~12%、9~13%、または10~12%(w/w)の前記緩衝化剤を含む、請求項42~60のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項62】
20mLの注射用水(WFI)中で前記製剤を再構成する工程、および
4~60mM、5~50mM、6~40mM、7~30mM、8~25mM、9~23mM、10~21mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、または20mMの前記緩衝化剤を含む再構成された製剤を作製する工程をさらに含む、請求項42~61のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項63】
前記再構成された製剤は、1~5mg/ml、1.2~4mg/ml、1.5~3.5mg/ml、または2~3mg/mlの前記緩衝化剤を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記製剤を塩類溶液中で希釈する工程であって、ここで前記製剤は、7.8~9のpHを有する、工程をさらに含む、請求項42~63のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項65】
前記製剤を塩類溶液中で希釈する工程であって、ここで前記製剤は、少なくとも24時間の注入期間の間に0.2pH単位より大きく変動しないpHを有する、工程をさらに含む、請求項42~64のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項66】
前記製剤は、塩類注入溶液中で約0.1~0.5mM、約0.15~0.4mM、約0.2~0.3mM、または約0.2mMの緩衝液濃度を有する、請求項64~65のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項67】
前記ポリマー製容器は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PUR)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエン(ABS)、ポリブタジエン、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、これらの混合物、組み合わせ、またはコポリマーから作製される、請求項42~66のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項68】
前記注入期間は、少なくとも6時間、12時間、24時間、48時間、72時間または96時間である、請求項42に記載の方法。
【請求項69】
前記製剤は、25℃/60%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.2%未満の分解生成物を有するように貯蔵安定性特性を有する、請求項42~68のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項70】
前記製剤は、40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.4%未満の分解生成物を有するように貯蔵安定性特性を有する、請求項42~68のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項71】
前記製剤は、70℃/75%RHにおいて7日間の貯蔵の際に、1.0%未満の分解生成物を有するように貯蔵安定性特性を有する、請求項42~68のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項72】
塩類注入溶液中でのグリブリド製剤の溶解度を増大させる方法であって、前記方法は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、
a.緩衝化剤;
b.塩基;および
c.糖アルコール、
とを合わせる工程であって、ここで前記製剤は、前記塩類注入溶液中で15μg/mlのグリブリド溶解度を有する可溶化したグリブリド製剤を形成するために、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、前記塩類注入溶液中の前記グリブリド製剤は、7.8~9のpHを有する、工程、
を含む、方法。
【請求項73】
24時間にわたってグリブリド製剤をヒトへと注入するために必要な塩類注入溶液の容積を最小化する方法であって、前記方法は、3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、
a.緩衝化剤;
b.塩基;および
c.糖アルコール、
とを合わせる工程であって、ここで前記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで前記塩類注入溶液中の前記グリブリド製剤は、7.8~9のpHを有し、ここで3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩を前記ヒトへと注入するために使用される前記塩類注入溶液の容積は、約500mlである、工程、
を含む、方法。
【請求項74】
グリブリド製剤の貯蔵安定性を増大させる方法であって、前記方法は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、
a.緩衝化剤;
b.塩基;および
c.糖アルコール、
とを合わせる工程であって、ここで前記製剤は、安定化したグリベンクラミド製剤を形成するために、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで前記安定化したグリベンクラミド製剤は、25℃/60%RHにおいて少なくとも6ヶ月間の貯蔵の後に、25℃/60%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.2%未満の分解生成物を有する、工程、
を含む、方法。
【請求項75】
前記製剤は、40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.4%未満の分解生成物を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記製剤は、70℃/75%RHにおいて7日間の貯蔵の際に、1.0%未満の分解生成物を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
以下の構造:
【化11】
有する化合物、またはその塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、もしくは光学的に活性な形態。
【請求項78】
請求項77に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む製剤。
【請求項79】
a.グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.塩基;
c.糖アルコール;および
d.緩衝化剤、
を含む凍結乾燥された製剤を含む第1の容器、ならびに
投与する前に、前記第1の容器と第2の容器との間で前記凍結乾燥された製剤を再構成および移動するように構成された混合デバイス、
を含むキット。
【請求項80】
前記凍結乾燥された製剤は、
0.2~10.8重量%の前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
4.4~8.8重量%の前記緩衝化剤;および
80.1~94重量%の前記糖アルコール、
を含む、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
脳卒中、出血、ニューロン細胞腫脹、外傷性脳傷害、脊髄損傷、器官虚血、急性冠症候群、心筋梗塞、敗血症、脳挫傷、ショック、虚血、または心室不整脈を患う患者を処置する方法であって、前記方法は、いずれかの前述の請求項に記載の製剤またはキットを投与する工程を含む、方法。
【請求項82】
WFIならびに
a.グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.緩衝化剤;
c.塩基;および
d.糖アルコール、
を含む凍結乾燥された製剤を含む再構成された製剤であって、
ここで前記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで前記再構成された製剤は、前記凍結乾燥された製剤中のグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩の量の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%を含む、再構成された製剤。
【請求項83】
塩類注入溶液ならびに
a.グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.緩衝化剤;
c.塩基;および
d.糖アルコール、
を含む製剤を含む注入製剤であって、
ここで前記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで希釈製剤は、前記凍結乾燥された製剤中のグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩の量の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%を含む、注入製剤。
【請求項84】
24時間の注入の過程にわたって塩類注入溶液中で希釈されたグリブリド溶液のpHを8~9のpH範囲において制御するための方法であって、前記方法は、
a.グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.緩衝化剤;
c.塩基;および
d.糖アルコール、
を合わせる工程であって、ここで前記製剤は、安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を形成するために、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有する、工程、
前記安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を前記塩類注入溶液中で希釈する工程、ならびに
前記希釈された製剤を患者へと注入する工程であって、ここで前記希釈された製剤のpHは、pH7.8~9の間であり、前記希釈された製剤のpHは、前記24時間の注入の過程にわたって0.2pH単位を超えて変化しない、工程
を含む、方法。
【請求項85】
調合方法であって、順次、
a.グリブリドをマンニトールに添加して、第1の混合物を形成し、次いで、Tris-塩基を前記第1の混合物に添加して、第2の混合物を形成する工程、
b.次いで、Tris-HClを前記第2の混合物に添加して、第3の混合物を形成する工程、
c.次いで、第1の量のNaOHを前記第3の混合物に添加して、1mg/mlでかつ10.0未満のpHで溶解および可溶化されたグリブリドを含む第4の混合物を形成する工程、ならびに
d.次いで、第2の量のNaOHを前記第4の混合物に添加して、1mg/mlにおいて溶解および可溶化され、10.4±0.4のpHを有するグリブリドを含む最終製剤を形成する工程、
を含む、調合方法。
【請求項86】
24時間の注入の過程にわたって塩類注入溶液中で希釈されたグリブリド溶液の注入速度を低減するための方法であって、前記方法は、
a.3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b.緩衝化剤;
c.塩基;および
d.糖アルコール、
を合わせる工程であって、
ここで前記製剤は、安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を形成するために前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有する、工程、
前記安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を前記塩類注入溶液中で希釈する工程、ならびに
前記希釈された製剤を、16ml/時間未満の速度において24時間にわたって患者へと注入する工程
を含む、方法。
【請求項87】
以下の構造:
【化12】
を有する化合物、またはその塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態。
【請求項88】
請求項87に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む製剤。
【請求項89】
以下の構造:
【化13】
を有する化合物、またはその塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態。
【請求項90】
請求項89に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む製剤。
【請求項91】
以下の構造:
【化14】
を有する化合物、またはその塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態。
【請求項92】
請求項91に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む製剤。
【請求項93】
以下の構造
【化15】
を有する化合物、またはその塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態。
【請求項94】
請求項93に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む製剤。
【請求項95】
0.2~10.8重量% グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
4.4~8.8重量%の緩衝化剤;
80.1~94重量%の糖アルコール;および
塩基
を含む、凍結乾燥された粉末。
【請求項96】
凍結乾燥する前に、前記塩基は、9.5~11.5の間の凍結乾燥前製剤pHを達成するために十分な量において添加されている、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項97】
凍結乾燥する前に、前記塩基は、10.2~10.6の間の凍結乾燥前製剤pHを達成するために十分な量において添加されている、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項98】
0.9重量%~1.7重量%の前記塩基を含む、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項99】
前記緩衝化剤は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、ホスフェート、リン酸緩衝化食塩水(PBS)またはこれらの組み合わせを含む、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項100】
前記緩衝化剤は、Tris-塩基およびTris-HClを含む、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項101】
前記緩衝化剤は、1.9~3.8重量% Tris-塩基および2.5~5.0重量% Tris-HClを含む、請求項95に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項102】
前記粉末は、2~7重量%の前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩、5~8重量%の前記緩衝化剤、および82~92重量%の前記糖アルコールを含む、請求項95~101のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項103】
前記粉末は、3~6重量%の前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩、6~7.5重量%の前記緩衝化剤、および85~90重量%の前記糖アルコールを含む、請求項95~101のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項104】
前記緩衝化剤は、2.1~3重量% Tris-塩基および3~4重量% Tris-HClを含む、請求項95~103のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項105】
前記凍結乾燥された粉末は、1.1重量%~1.5重量%の前記塩基を含む、請求項95~104のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項106】
a)グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;
b)緩衝化剤;
c)糖アルコール;および
d)塩基、
を0.00038~0.02186(a): 0.032~0.063(b): 0.440~0.516(c): 0.021~0.042(d)のモル比において含む凍結乾燥された粉末。
【請求項107】
前記緩衝液は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、ホスフェート、リン酸緩衝化食塩水(PBS)またはこれらの組み合わせを含む、請求項106に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項108】
前記緩衝液は、Tris-塩基およびTris-HClを含む、請求項106に記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項109】
前記緩衝液は、Tris-塩基およびTris-HClを、4.4~8.8重量%の重量パーセント範囲において含む、請求項106~108のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項110】
前記モル比は、0.001~0.015(a): 0.04~0.055(b): 0.46~0.5(c): 0.025~0.035(d)である、請求項106~109のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項111】
前記モル比は、0.005~0.01(a): 0.043~0.05(b): 0.47~0.5(c): 0.027~0.032(d)である、請求項106~109のいずれか1項または組み合わせに記載の凍結乾燥された粉末。
【請求項112】
凍結乾燥混合物を作製する方法であって、前記方法は、
(a)グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、(b)緩衝化剤および(c)糖アルコールとを、0.2~10.8重量%(a): 4.4~8.8重量%(b): 80.1~94.0重量%(c)の重量比において薬学的に受容可能なキャリア中で合わせて混合物を生成する工程、ならびに
塩基を前記混合物に、前記混合物が9.5~11.5のpHを有するまで添加して、前記凍結乾燥混合物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項113】
前記緩衝液は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール (ジメチルアミノエタノール)、ホスフェート、リン酸緩衝化食塩水(PBS)またはこれらの組み合わせを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記緩衝液は、Tris-塩基およびTris-HClを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記緩衝液は、Tris-塩基およびTris-HClを、4.4~8.8重量%の重量パーセント範囲において含む、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
前記凍結乾燥混合物は、3~6重量%の前記グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩、6~7.5重量%の前記緩衝化剤、および85~90重量%の前記糖アルコールを含む、請求項112~115のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項117】
前記緩衝化剤は、2.1~3重量% Tris-塩基および3~4重量% Tris-HClを含む、請求項112~116のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項118】
前記凍結乾燥混合物は、1.1重量%~1.5重量%の前記塩基を含む、請求項112~117のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項119】
凍結乾燥された粉末を作製する方法であって、前記方法は、
(a)グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、(b)緩衝化剤および(c)糖アルコールとを、薬学的に受容可能なキャリア中で合わせて、混合物を生成する工程、ならびに
塩基(d)を前記混合物に、前記混合物が9.5~11.5のpHを有するまで添加して、凍結乾燥混合物を形成する工程、
前記凍結乾燥混合物を凍結乾燥して、前記凍結乾燥された粉末を形成する工程であって、ここで前記凍結乾燥された粉末は、0.00038~0.02186(a): 0.032~0.063(b): 0.440~0.516(c): 0.021~0.042(d)のモル比を有する、工程
を含む、方法。
【請求項120】
前記凍結乾燥された粉末、凍結乾燥混合物、前記凍結乾燥された粉末を含む水性組成物、前記凍結乾燥された粉末を含む容器、前記凍結乾燥混合物を含む容器、または前記水性組成物を含む容器をγ線照射する工程をさらに含む、請求項42~76、84、86、および112~119のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項121】
前記凍結乾燥された粉末、凍結乾燥混合物、前記凍結乾燥された粉末を含む水性組成物、または前記容器は、以下:
【化16】
またはそれらの両方
をさらに含む、請求項42~76、84、86、および112~120のいずれか1項または組み合わせに記載の方法。
【請求項122】
以下:
【化17】
またはそれらの両方
をさらに含む、前述のいずれかの請求項または請求項の組み合わせに記載の製剤、注入溶液、キット、再構成された製剤、注入製剤、凍結乾燥された粉末。
【請求項123】
以下:
【化18】
またはこれらの組み合わせをさらに含む、前述のいずれかの請求項または請求項の組み合わせに記載の製剤、注入溶液、キット、再構成された製剤、注入製剤、凍結乾燥された粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、医療的処置方法(被験体への薬物の静脈内投与方法を含む)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
グリブリド (例えば、グリベンクラミドとしても公知)は、糖尿病を処置するにあたって使用されるスルホニルウレア薬物である。グリブリドの系統名は、5-クロロ-N-(4-[N-(シクロヘキシルカルバモイル)スルファモイル]フェネチル)-2-メトキシベンズアミドである。グリブリドは、スルホニルウレアレセプター1(SUR1)に優先的に結合しかつ影響を及ぼすが、より高濃度では、スルホニルウレアレセプター2(SUR2)にも結合しかつ影響を及ぼす。
【0003】
グリブリドは、CNS浮腫を防止し、死亡率を低減し、神経機能を保存するために、種々の障害(大半球梗塞(Large Hemispherical Infarction)(LHI)、急性脳卒中(虚血性および出血性)、外傷性脳傷害(TBI)、脊髄損傷(SCI)、心筋梗塞(MI)、脳挫傷(BC)、浮腫、外傷性脳傷害、くも膜下出血、脊髄損傷、ショック(出血性ショックを含む)、器官虚血、心室不整脈が挙げられるが、これらに限定されない)のための治療として示唆されている。
【0004】
種々の溶液中でのグリベンクラミド溶解度が報告されており、代表的には、緩衝化水性溶液中では可溶性に非常に乏しいと報告されている。例えば、緩衝化水性溶液中でのグリベンクラミドの溶解度は、Glommeらによって報告されている(Glomme A, Marz J, Dressman J B. Comparison of a miniaturized shake-flask solubility method with automated potentiometric acid/base titrations and calculated solubilities. J Pharm Sci. 2005 January; 94(1):1-16)。その緩衝化水性溶液は、リン酸カリウム(29mM)で緩衝化し、pH5、6、もしくは7へと水酸化ナトリウムでpH調節した塩化カリウム(220mM)溶液を形成するために蒸留水で作製した。これらの溶液は、約280~310ミリ浸透圧の間の容量オスモル濃度および約10±2ミリ当量/L/pHの緩衝能を有した。Glommeらは、グリベンクラミドが、このような溶液中でのみかろうじて可溶性であり、pH2、3、5、6、および7では溶解度が極めて低く、pH8、9および11.8では溶解度が比較的高い(しかしそれでもなお非常に低い)ことを報告する。これらの溶解度は、表1に示される:
表1: 37℃でのグリベンクラミドの溶解度(水性)
【表1】
【0005】
同様に、水性溶液中での低いグリベンクラミド溶解度は、Kaiserら(Kaiser D G, Forist, A A. A review of Glibenclamide Metabolism in Man and Laboratory Animals. Physical and Analytical Chemistry Research, The Upjohn Company; 1975)によって報告され、pH4~pH 9の全ての測定されたpH値において1mg/ml未満の溶解度であった。グリベンクラミドは、Britton-Robinson緩衝液中で溶解した(Britton-Robinson緩衝液は、水酸化ナトリウムでpH調節したリン酸、酢酸およびホウ酸を含む水性緩衝液である)。これらの溶解度は、表2に報告される。
表2: 27℃でのグリベンクラミドの溶解度(水性)
【表2】
【0006】
出願人は、グリブリドの濃度が、種々のタイプの薬学的容器中に配置されたグリブリド溶液において、グリブリドの不安定性、分解、およびこのような容器への吸着を含む種々のプロセスに起因して低減されることを発見した。グリブリドは、薬学的に受容可能な注入溶液の代表的なpH範囲(pH 5~9)内では、事実上不溶性であり、これは、時間をわたって患者に投与され得る安定なグリブリド製剤を得るには困難を示す。その貯蔵されたグリブリド製剤および注射用のその希釈された投与溶液(例えば、その貯蔵されたグリブリド製剤の約100倍希釈後)の安定性を制御することはまた、必要かつ極めて重要である。
【0007】
さらなる困難は、グリブリドの希釈溶液が、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリウレタン(PUR)のようなプラスチック(塩類溶液IVバッグおよび投与セットのような注入構成要素において一般に使用される物質)に容易に結合することである。米国でのフェーズ1~3の臨床試験において、特化した注入セット(低吸着性、ポリエチレン裏打ち済み)は、薬物-物質適合性問題に対処するために使用されているが、この一時しのぎのストラテジーは、特化した注入セットを供給することが困難であること、グリブリドが救急医療環境における使用に関して、および患者が最後に正常であったことが知られている時から投与までの時間を最小限にすることが、有効性のために極めて重要である(すなわち、「脳卒中は時間との闘いである(time is brain)」)適応症に関して意図されていることを含む多数の理由から現実的でない。ヒト虚血性脳卒中における神経回路喪失の速度は、脳卒中および脳傷害を患う患者のケアが一刻を争うことを強調する。例えば、代表的な患者は、脳卒中が処置されないでいると、1分間で190万のニューロンを失う。従って、静脈内グリブリドの取り扱いおよび投与に複雑さが加わると(すなわち、特化した注入構成要素が要求されると)、患者への投与が遅れ、患者転帰に悪影響を及ぼす。さらに、一般に使用される物質を使用すると、吸着に起因して、かなりの量の活性薬学的成分の消失が生じ、結果として未知の、そしておそらく治療用量未満のグリブリドの投与が生じ、繰り返しになるが、患者転帰に悪影響を及ぼす。さらに、不正確な量のグリブリドを投与することは安全ではない。なぜならグリブリドは、低血糖を生じることが公知だからである。脳卒中(LHI)または脳挫傷の処置のために治療濃度で静脈内グリブリド製剤を投与するにあたって、本発明者らは、グリブリドのうちの約40~50%が、例えば、不安定性、吸着、およびプロセスの問題に起因して損耗されることを見出した。
従って、グリブリドの濃度が、送達管類、フィルター、バッグ、カテーテル、シリンジ、注入セット、拡張セット(extension set)、ならびにグリブリドと接触状態になる他の容器および物質の表面へのグリブリドの吸着に起因して低減されることを防止するグリブリド製剤を生成することは、当該分野でニーズがある。より低いpHにおいてより高い安定性を有するグリブリド製剤を生成することは、当該分野でニーズがある。分解生成物の生成が低減されたグリブリド製剤を生成することは、当該分野でニーズがある。治療用量を静脈内に投与するために有意に少ない塩類注入液を必要とするグリブリド製剤を生成することは、当該分野でニーズがある。貯蔵安定性が改善されたグリブリド製剤を生成することは、当該分野でニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Glomme A, Marz J, Dressman J B. Comparison of a miniaturized shake-flask solubility method with automated potentiometric acid/base titrations and calculated solubilities. J Pharm Sci. 2005 January; 94(1):1-16
【非特許文献2】Kaiser D G, Forist, A A. A review of Glibenclamide Metabolism in Man and Laboratory Animals. Physical and Analytical Chemistry Research, The Upjohn Company; 1975
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本開示は、送達管類、フィルター、バッグ、ならびに他の容器および物質の表面へのグリブリドの吸着を最小限にするかまたは回避して、それによって、より安定な生成物、グリブリドの予測可能かつ正確な用量を貯蔵および送達すると同時に、不純物を最小限にし、薬物損耗を回避し、コストを低減し、患者に注入されなければならない投与溶液(代表的には、塩類溶液またはリンゲル液)の量を有意に低減するための製剤、キットおよび方法を含む。
【0010】
1つの局面において、本開示は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを含む製剤であって、ここで上記製剤は、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有するものを含む。
【0011】
1つの局面において、本開示は、500ml 塩類溶液、3~5mg グリブリド、100~140mg マンニトール、10~12mg Tris、およびpH 7.8~9を含む注入溶液を含む。
【0012】
1つの局面において、本開示は、10~30ml WFI、3~5mg グリブリド、100~140mg マンニトール、10~12mg Tris、およびpH 9~11(例えば、9.4~10)を含む溶液を含む。
【0013】
1つの局面において、本開示は、注入期間の過程にわたるポリマー製容器への吸着に起因して、グリブリド濃度(w/v)の1重量%未満の喪失を有するグリブリド製剤を作製する方法であって、上記方法は、グリブリドと、7.7~9.2のpKaを有する緩衝化剤、糖アルコール、および0.1~1.5のpKbを有する塩基とを、上記塩基と上記グリブリドとの間のモル比5.0~6.7:1において合わせる工程を含む方法を含む。
【0014】
いくつかの局面において、本開示は、適切な希釈剤、例えば、塩類溶液または注射用水(WFI)中での本開示の製剤の再構成を含み、その結果、上記再構成された製剤は、上記緩衝化剤の4~60mM、5~50mM、6~40mM、7~30mM、8~25mM、9~23mM、10~21mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、または20mMの濃度を有する。
【0015】
いくつかの局面において、本開示は、塩類溶液中で本開示の製剤を希釈する工程を含み、ここで上記製剤は、7.8~9のpHを有する。
【0016】
いくつかの局面において、本開示は、塩類溶液中で上記製剤を希釈する工程であって、ここで上記製剤は、少なくとも24時間の注入期間の間に0.2pH単位を超えて変化しないpHを有する、工程を含む。
【0017】
いくつかの局面において、本開示は、高い貯蔵安定性を、例えば、25℃/60%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.2%未満の分解生成物を有する、40℃/75%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.4%未満の分解生成物を有する、および/または70℃/75%RHにおいて7日間の貯蔵の際に、1.0%未満の分解生成物を有するように、貯蔵安定性特性を有する製剤および方法を含む。
【0018】
いくつかの局面において、本開示は、塩類注入溶液中でのグリブリド製剤の溶解度を増大させる方法であって、上記方法は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、緩衝化剤;塩基;および糖アルコールとを合わせる工程であって、ここで上記製剤は、上記塩類注入溶液中で15μg/mlのグリブリド溶解度を有する可溶化したグリブリド製剤を形成するために、4℃、20℃、または25℃において上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで上記塩類注入溶液中のグリブリド製剤は、7.8~9のpHを有する、工程を含む方法を包含する。
【0019】
いくつかの局面において、本開示は、24時間にわたるヒトへのグリブリド製剤の注入に必要な塩類注入溶液の容積を最小限にする方法であって、上記方法は、3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、緩衝化剤;塩基;および糖アルコールとを合わせる工程であって、ここで上記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで上記塩類注入溶液中のグリブリド製剤は、7.8~9のpHを有し、ここで上記ヒトへと3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩を注入するために使用される上記塩類注入溶液の容積は、約500mlである工程を含む方法を包含する。
【0020】
いくつかの局面において、本開示は、グリブリド製剤の貯蔵安定性を増大させるための方法であって、上記方法は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩と、緩衝化剤;塩基;および糖アルコールとを合わせる工程であって、ここで上記製剤は、安定化されたグリベンクラミド製剤を形成するために、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで上記安定化されたグリベンクラミド製剤は、25℃/60%RHにおいて少なくとも6ヶ月間の貯蔵の後に、25℃/60%RHにおいて6ヶ月間の貯蔵の際に、0.2%未満の分解生成物を有する、工程を含む方法を包含する。
【0021】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化1】
を有する化合物、およびその任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む上記化合物を含む製剤を包含する。
【0022】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化2】
を有する化合物(その任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む)をさらに含む本開示の組成物を包含する。
【0023】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化3】
を有する化合物、ならびにその任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む上記化合物を含む製剤を包含する。
【0024】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化4】
を有する化合物(その任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む)をさらに含む本開示の組成物を包含する。
【0025】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化5】
を有する化合物、およびその任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む上記化合物を含む製剤を包含する。
【0026】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造
【化6】
を有する化合物、およびその任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む上記化合物を含む製剤を包含する。
【0027】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化7】
を有する化合物、およびその任意の活性な代謝産物、塩、エステル、水和物、溶媒和物、結晶形態、共結晶形態、非晶質形態、プロドラッグ(エステルプロドラッグを含む)形態、ラセミ化合物、多形体、キレート、互変異性体、立体異性体、または光学的に活性な形態を含む上記化合物を含む製剤を包含する。
【0028】
いくつかの局面において、本開示は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;塩基;糖アルコール;および緩衝化剤を含む凍結乾燥された製剤を含む第1の容器、ならびに投与する前に、上記第1の容器と第2の容器との間で上記凍結乾燥された製剤を再構成および移動するように構成された混合デバイスを含むキットであって、ここで上記凍結乾燥された製剤は、上記第2の容器中で再構成された場合に、上記水性緩衝液の緩衝能の範囲外のpHを有するキットを包含する。
【0029】
いくつかの局面において、本開示は、脳卒中、出血、ニューロン細胞腫脹、外傷性脳傷害、脊髄損傷、器官虚血、急性冠症候群、心筋梗塞、敗血症、脳挫傷、ショック、虚血、または心室不整脈を患う患者を処置する方法を包含する。
【0030】
いくつかの局面において、本開示は、WFIならびにグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを含む凍結乾燥された製剤を含む再構成された製剤であって、ここで上記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで上記再構成された製剤は、凍結乾燥された製剤中のグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩の量の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%を含む製剤を包含する。
【0031】
いくつかの局面において、本開示は、塩類注入溶液、ならびにグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを含む水性または凍結乾燥された製剤を含む注入製剤であって、ここで上記製剤は、前記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、ここで上記注入溶液は、上記凍結乾燥された製剤中のグリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩の量の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%を含む注入製剤を包含する。
【0032】
いくつかの局面において、本開示は、24時間の注入の過程にわたって塩類注入溶液中で希釈されたグリブリド溶液のpHを、8~9のpH範囲において制御するための方法であって、上記方法は、グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを合わせる工程であって、ここで上記製剤は、安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を形成するために、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有する、工程、上記安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を上記塩類注入溶液中で希釈する工程、ならびに上記希釈された製剤を患者へと注入する工程であって、ここで上記希釈された製剤のpHは、7.8~9であり、上記希釈された製剤のpHは、上記24時間の注入の過程にわたって0.2pH単位を超えて変化しない工程を含む方法を包含する。
【0033】
いくつかの局面において、本開示は、上記24時間の注入の過程にわたって塩類注入溶液中で希釈されたグリブリド溶液の注入速度を低減するための方法であって、上記方法は、3~5mg グリブリドまたは薬学的に受容可能なその塩;緩衝化剤;塩基;および糖アルコールを合わせる工程であって、ここで上記製剤は、安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を形成するために、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有する、工程、上記安定化されかつ可溶性のグリブリド製剤を上記塩類注入溶液中で希釈する工程、ならびに上記希釈された製剤を、24時間にわたって16ml/時間未満の速度で患者に注入する工程を含む方法を包含する。
【0034】
いくつかの局面において、本開示は、調合方法(compounding process)であって、順次、グリブリドをマンニトールに添加して、第1の混合物を形成し、次いで、Tris-塩基を上記第1の混合物に添加して、第2の混合物を形成する工程、次いで、Tris-HClを上記第2の混合物に添加して、第3の混合物を形成する工程、次いで、第1の量のNaOHを上記第3の混合物に添加して、1mg/mlでかつ10.0未満のpHで溶解および可溶化されたグリブリドを含む第4の混合物を形成する工程、ならびに次いで、第2の量のNaOHを上記第4の混合物に添加して、1mg/mlにおいて溶解および可溶化され、10.4±0.4のpHを有するグリブリドを含む最終製剤を形成する工程を含む、調合方法を包含する。
【0035】
本開示の主題の他の特徴および特性、ならびに操作方法、構造およびパーツの組み合わせの関連する要素の機能、ならびに製造の経済性は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲(これらは全て、本明細書の一部を形成する)を考慮すればより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、医療用物質への先行技術のグリブリド静脈内製剤の吸着を示す。
【0037】
【
図2】
図2は、PVC投与セットへの先行技術のグリブリド静脈内製剤の吸着に対する種々の塩基:グリブリド比の効果を示す。
【0038】
【
図3】
図3は、PVC投与セットへの吸着に関して本開示の製剤における最終投与製剤のpHの効果を示す。
【0039】
【
図4】
図4は、薬物製品再構成後の緩衝液系を模倣する10mM Tris/0.9% マンニトール溶液中の本開示の製剤のグリブリド溶解度を示す。
【0040】
【
図5】
図5は、本開示の製剤の再構成後のバイアルpHと、初期塩類溶液pHと、最終投与溶液のpHとの間の関係(等値線(contour line))を示す。
【0041】
【
図6】
図6は、PVC投与セットへの吸着を排除するために、先行技術のグリブリド製剤における使用に必要なNaOH:GLYモル比を示す。(左)初期塩類溶液pH 4.5に伴って、NaOH:GLYモル比 13.8は、最終投与溶液においてpH 8.8を達成するために、臨床用製剤において必要とされる。(右)NaOH:GLYモル比 13.8を有する薬物製品が、pH 7を有する塩類溶液へと再構成される場合、その最終投与溶液において得られるpHは、9.9であり、これは、代表的な注入溶液のpH範囲外である(注入の間の非緩衝化系中でのpH低下を考慮したとしても)。
【0042】
【
図7】
図7は、薬物製品におけるNaOH:GLYモル比と、Tris緩衝液pH(10mM)と、本開示の製剤における再構成(20ml)後のバイアルpHとの間の相関関係を示す。
【0043】
【
図8】
図8は、非線形的なニューラルネットワークモデル(トレーニングデータセット: R
2=0.96; 検証データセット: R
2=0.98)に基づいて調合pHに対する製剤におけるTris濃度と、Tris pHと、NaOH含有量との間の相関関係を示す(DOE #1-3)。
【0044】
【
図9】
図9は、7日間(左)および14日間(右)における加速条件(70℃/75RH)での薬物製品安定性に対する調合pHの効果を示す。種々の調合pHを有する製剤を試験した。製剤をバイアルに満たし(6ml/バイアル)、凍結乾燥した。DPの安定性を、3種の主な不純物: (上)不純物A、(中央)不純物X、および(下)不純物RRT 1.25に関して評価した。
【0045】
【
図10-1】
図10Aおよび10Bは、線形回帰モデルに基づく最終投与溶液のpHに対する調合pH、初期塩類溶液pH、およびバイアル充填の効果(予測されたプロットによる実際: R
2=0.91)を示す。
図10A(上および下)は、6mlのバイアル充填に基づく最終投与溶液の最小pHおよび最大pHを示す。
図10B(上および下)は、4mlのバイアル充填に基づく最終投与溶液の最小pHおよび最大pHを示す。
【0046】
【
図11】
図11は、本開示の製剤およびPVC/PUR投与セットでのモック注入実験を示す。(左)グリブリドの濃度を、示されるように2つの異なる投与セットでモニターした。(右)投与セットの遠位端からの投与溶液のpHを、示された時点で測定した。
【0047】
【
図12】
図12は、調合pHに対するTRIS緩衝液およびNaOHの重み付け分散(weighing variance)の効果を示す。これらの構成要素の重み付けにおける分散が増大するにつれて、調合pHにおける分散も増大する。2重量%もしくはこれ未満の重み付け分散は、10~10.8の目標仕様範囲内になおある調合pHの範囲を生じる。しかし、重み付け分散が2重量%を上回って増大するにつれて、調合pHがこれらの構成要素の重み付けの分散の両端においてその目標範囲から逸脱する。
【0048】
【
図13】
図13は、再構成pHと、非線形的なニューラルネットワークモデルに基づく調合pH、バイアル充填、および再構成容積との相関関係を示す(トレーニングデータ: R
2=0.98; 検証データ: R
2=0.97)。(右)再構成後のバイアルpHは、目的の目標充填容積および再構成容積内での調合pHと主に相関する。再構成pHの分散のうちの大部分は、調合pHに由来すると予測される(左)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
本開示の主題の局面は、種々の形態において具現化され得るが、以下の詳細な説明は、本開示によって包含される主題の具体例としてこれらの形態のうちのいくつかを開示することが意図されるに過ぎない。よって、本開示の主題は、そのように記載される形態または実施形態に限定されることは意図されない。
【0050】
単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」は、文脈が別段明らかに規定しなければ、複数形への言及を含む。
【0051】
用語「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」とは。本明細書で使用されるように、および当該分野で十分に理解されるように、有益なまたは所望の結果(臨床結果を含む)を得るためのアプローチを意味する。有益なまたは所望の臨床結果としては、検出可能であろうが検出不能であろうが、1もしくはこれより多くの症状もしくは状態の軽減もしくは改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、増悪しない)、疾患進行の遅延もしくは緩徐化、疾患状態の改善もしくは緩和、疾患の再発の減少、および寛解(部分的であろうが全体的であろうが)が挙げられ得るが、これらに限定されない。「処置すること」および「処置」はまた、処置を受容しない場合に予測される生存と比較して、生存を延長することを意味し得る。処置の方法として有用であることに加えて、本明細書で記載される方法は、疾患の防止または予防に有用であり得る。
【0052】
濃度、量、および他の数値データは、範囲形式において本明細書で表され得るかまたは提示され得る。このような範囲形式が、便宜および簡便さのために使用されるに過ぎないことは理解されるべきであり、従って、その範囲の境界として明示的に記載した数値範囲を含むのみならず、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲の全てをも含むように、各数値および部分範囲が明示的に記載されているかのように柔軟に解釈されるべきである。例証として、「約0.01~2.0」という数値範囲は、約0.01~約2.0の明示的に記載される値を含むのみならず、その示された範囲内の個々の値および部分範囲をも含むと解釈されるべきである。従って、0.5、0.7、および1.5のような個々の値、ならびに0.5~1.7、0.7~1.5、および1.0~1.5などのような部分範囲が、この数値範囲に包含される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅または記載される特性にかかわらずあてはまるはずである。さらに、全てのパーセンテージは、別段特定されなければ重量単位であることが注記される。
【0053】
本開示の範囲を理解するにあたって、用語「含む、包含する、挙げられる(including)」または「含む、包含する(comprising)およびそれらの派生語は、本明細書で使用される場合、述べられる特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の存在を特定する制限のない用語であることが意図されるが、他の述べられていない特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の存在を排除しない。前述はまた、用語「含む、包含する、挙げられる」、「有する(having)」およびそれらの派生語のような類似の意味を有する文言にも該当する。用語「からなる(consisting)」およびその派生語は、本明細書で使用される場合、述べられる特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の存在を特定する閉じた用語であることが意図されるが、他の述べられていない特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の存在を排除する。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本明細書で使用される場合、述べられる特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の存在、ならびに特徴、要素、構成要素、群、整数、および/もしくは工程の基本的かつ新規な特性に本質的に影響を及ぼさないものを特定することが意図される。これらの転換語(すなわち、「含む、包含する」、「からなる」または「から本質的になる」)のうちのいずれか1つへの言及は、具体的に使用されない他の転換後のうちのいずれへの置き換えの直接的裏付けを提供することが理解される。例えば、用語「を含む、包含する」から「から本質的になる」への補正は、この定義に起因して直接的裏付けが見出される。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「約(about)」は、所定の値が、その端点を「少し上回る(a little above~)」または「少し下回る(a little below)」可能性があることを提供することによって、数値範囲端点に対する柔軟性を提供するために使用される。この用語の柔軟性の程度は、特定の変数によって規定され得、経験および本明細書中の関連する説明に基づいて決定する当業者の常識の範囲内である。例えば、1つの局面において、柔軟性の程度は、数値の約±10%以内であり得る。別の局面において、柔軟性の程度は、数値の約±5%以内であり得る。さらなる局面において、柔軟性の程度は、数値の約±2%、±1%、または±0.05%以内であり得る。示される数量は、概算値であり、用語「ほぼ(around)」、「約」または「およそ(approximately)」が、明示的に述べられなければ推論され得ることを意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な(pharmaceutically acceptable)」とは、溶媒、共溶媒、界面活性剤、キャリア、希釈剤、賦形剤、緩衝液、塩、および/または他の構成要素であって、これらが製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害でないものに言及する。いくつかの局面において、本開示のグリブリド製剤は、1またはこれより多くの糖アルコール(アリトール、アラビトール、デキストロース、ズルシトール、エリスリトール、ガラクチトール、グリコール、グリセロール、イジトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトール、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「凍結乾燥された(lyophilized)」およびその文法上の変形は、固体もしくは溶解した物質を含む液体からの、フリーズドライ(freeze-drying)(溶解もしくは懸濁した物質を含む液体を凍結し、昇華によって凍結されている間に乾燥させること)させて、固体形態において、その溶解されたまたは懸濁された物質を含む乾燥固体を提供することによって乾燥させた物質(例えば、粉末)に言及する。代表的には、水性溶液が凍結乾燥において使用されるが、混合された水性/溶媒溶液、および他の液体溶液が使用され得る。例えば、生物学的物質は、保護剤と混合されている溶液または懸濁物から凍結乾燥され得る。次いで、このような溶液または懸濁物は凍結され得、その後、昇華によって脱水され得る。昇華に続いて、必要に応じて、さらなる乾燥工程が行われ得る。代表的には、凍結乾燥方法は、液体溶液または懸濁物をフリーズドライして、高濃度のその溶解したまたは懸濁した化合物を含む乾燥残渣を提供する工程を含む。いくらかの場合には、凍結乾燥によって提供される固体は、塩であり得るかまたは塩を含み得る。凍結乾燥プロセスは、固体(例えば、粉末、乾燥フィルム、またはケーク)を提供する。所望される場合には、このような粉末、フィルムまたはケークから、粉砕またはフレーキングのような手順によって、小さな粒子が得られ得る。
【0057】
本明細書で提供される方法および製剤は、先行技術の薬学的製剤のグリブリドと関連する吸着、分解、不安定性、および低溶解度の問題を解決する薬学的に受容可能なグリブリド製剤(濃縮溶液、希釈された溶液、および凍結乾燥された製剤を含む)を提供する。
【0058】
適切な薬学的に受容可能な希釈剤(例えば、WFI(注射用水)および等張性塩類溶液を含む溶液の例は、当該分野で公知である。薬学的に受容可能な水性溶液としては、リンゲル液、ハルトマン液、0.9% 塩類溶液、0.45% N塩類溶液、WFI(注射用水)、D5W (水中5% デキストロース)、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、およびデキストロース/塩類溶液(D2.5W(すなわち、水中2.5% デキストロース)および0.45% N塩類溶液)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「リンゲル液」とは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウム塩を有する薬学的に受容可能な緩衝化塩類溶液に言及する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ハルトマン液」とは、乳酸加リンゲル液に言及する。代表的なハルトマン液は、131mM ナトリウム、5mM カリウム、2mM カルシウム、11mM 塩化物、および29mM ラクテート(塩化ナトリウム 0.6%、乳酸ナトリウム 0.25%、塩化カリウム 0.04%、塩化カルシウム 0.027%)を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、薬学的に受容可能な塩類溶液は、水および塩化ナトリウムを含む、患者への投与に適した溶液であり、必要に応じて、緩衝液、保存剤、または他の構成要素(代表的には少量で)を含み得る。例えば、薬学的に受容可能な塩類溶液としては、0.9% 塩類溶液(100mlの蒸留した濾過水中9g NaCl(150mM ナトリウムおよび150mM 塩化物を含む))および154mM ナトリウムおよび154mM 塩化物を有する塩類溶液が挙げられる。
【0062】
概して本明細書では、用語「または」は、「および/または」を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、複数の化合物、要素、または工程は、便宜のために共有するリストの中で提示される。しかし、これらのリストは、そのリストの各メンバーが別個のおよび特有のメンバーとして個々に特定されるかのように解釈されるべきである。従って、このようなリストの個々のメンバーが、逆に示すことなしに、単に共通する群におけるそれらの提示に基づいて、同じリストの任意の他のメンバーと事実上等しいと解釈されるべきではない。
【0064】
さらに、ある特定の組成物、要素、賦形剤、成分、障害、状態、特性、工程などは、1つの具体的実施形態もしくは局面の文脈において、または本開示の別個の段落もしくは節において考察され得る。これは単に、便宜および簡潔さのために過ぎず、任意のこのような開示が、等しく適用可能であり、本開示および特許請求の範囲(これらは全て出願日の本出願および特許請求された発明を形成する)のいずれかの箇所で見出される任意の他の実施形態もしくは局面と組み合わされることが意図されることは、理解される。例えば、ある特定の被験体を処置する製剤または方法に関して記載される方法の工程、活性薬剤、キット、または組成物のリストは、それらの方法の工程、活性薬剤、キット、または組成物が、その実施形態または局面の文脈または節において再掲されないとしても、本開示の任意の他の箇所において記載される組成物、製剤、および方法に関連する実施形態の直接的サポートを見出すことが意図され、かつ実際に見出す。
【0065】
本発明者は、従来の静脈内グリブリド製剤中のグリブリドが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリウレタン(PUR)注入セットを含むポリマー製容器に容易にかつ広範囲に結合することを見出した。
図1を参照のこと。低吸着ポリエチレン裏打ち済みの注入セットを使用すると、吸着が最小限になるが、このような特化した注入セットは、このような特化した注入セットを供給することが困難であることを含め、多数の理由から現実的ではなく、静脈内グリブリドは救急医療環境における使用に関して、および患者が最後に正常であったことが知られている時から投与までの時間を最小限にすることが、有効性のために極めて重要である(すなわち、「脳卒中は時間との闘いである)適応症に関して意図される。従って、静脈内グリブリドの取り扱いおよび投与におけるさらなる複雑性を提示すること、すなわち、救急環境における特化した注入構成要素の使用を要求することは、患者への投与が遅れ、患者転帰に悪影響を及ぼす。さらに、先行技術の静脈内グリブリド製剤とともに一般に使用される物質を使用すると、吸着に起因してかなりの量の活性薬学的成分の喪失が生じ、結果として未知の、そしておそらく治療用量未満のグリブリドの投与が生じる。さらに、先行技術の静脈内グリブリド製剤とともに一般に使用される物質を使用すると、不安定性および分解が生じ、許容不能な質の薬物製品をもたらす。さらに、未知の量のグリブリドを投与するか、または投与するべき薬物の容積を増大させようと試みることは安全ではない。なぜならより高用量での(例えば、0.25mg/時間(6mg/日)の平均速度より高い速度での)グリブリドの投与は、低血糖を生じ得るからである。
図1に示されるように、注入期間の過程にわたって、一般に使用される注入セットに結合する先行技術の静脈内グリブリド製剤では、グリブリドの量の変化は、かなりのものであり、予測できない。さらに、複雑で、時間を浪費する、不正確な、損耗が多くかつ汚染のリスクがあり得る洗い流し手順を行うことは望ましくない。さらに、本発明者らは、先行技術の静脈内グリブリド製剤中のグリブリドが、全てのフィルター構成要素に容易にかつ広範囲に結合することを見出した(データは示さず)。従って、一般に使用される注入セットおよびフィルター物質への結合を回避し、医療提供者が、合併症を回避し、損耗される薬物を回避し、患者に投与される注入液の量を低減しながら、一般に使用される医療供給品を使用して適切な投与ウインドウ内で(脳卒中、梗塞、傷害などの直後に近い場合に)正確な用量で患者を処置することを可能にする、新たな静脈内グリブリド製剤を提供することが必要である。
【0066】
第1の局面において、本開示は、ポリマー製容器(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PUR)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエン(ABS)、ポリブタジエン、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ならびにこれらの混合物、組み合わせ、およびコポリマーを含む)への吸着に起因して、グリブリド濃度(w/v)の8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.01%未満の喪失を有する安定な治療用量のグリブリドを含む製剤を提供する。
【0067】
第2の局面において、本開示は、インラインフィルター物質への吸着に起因して、グリブリド濃度(w/v)の8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.01%未満の喪失を有するグリブリドの安定な治療用量を含む製剤を提供する。
【0068】
第3の局面において、本開示は、注入液の希釈の前および後の両方でグリブリド溶液のpHを所望される狭い範囲で制御するための方法および製剤を提供する。
【0069】
第4の局面において、本開示は、分解生成物が、貯蔵されたグリブリド溶液中で形成されることを最小限にするかまたは回避するための方法および製剤を提供する。
【0070】
第5の局面において、本開示は、注入速度を低減し、薬物の損耗を低減し、静脈内グリブリドで処置されている被験体への塩類溶液取り込みを低減するための方法および製剤を提供する。
【0071】
第6の局面において、本開示は、治療用量(例えば、3~5mg/日 グリブリド)を達成するために、適切なサイズの容器への充填を可能にし得る、製剤調合の間に溶液中でのグリブリドの十分に高い濃度を維持するための方法および製剤を提供する。
【0072】
第7の局面において、本開示は、薬物調製の間に望ましい高濃度を達成するために、再構成の際に十分な溶解度、安定性、および所望のpHを提供するための方法および製剤を提供する。
【0073】
第8の局面において、本開示は、3時間、4時間、6時間、12時間、24時間、30時間、36時間、48時間、72時間、96時間、または120時間の期間にわたる投与のために、注入液への(例えば、6~10μg/mlの濃度において塩類溶液バッグ中での)再構成されたグリブリド製剤のさらなる希釈の際に、十分な溶解度、安定性、および所望のpHを提供するための方法および製剤を提供する。
【0074】
1つの局面において、本開示の方法および製剤は、本明細書で記載されるように、グリブリド、緩衝化剤、および塩基を含むグリブリド製剤を調合することを含む。1つの局面において、上記緩衝化剤は、特定された範囲において7.7~9.2、7.8~9.1、7.9~9.0、8.0~8.9、8.05~8.8、8.1~8.7のpKa、または任意の特定のpKaを有する。例えば、および前述の開示を限定せずに、上記緩衝化剤は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、ホスフェート、リン酸緩衝化食塩水(PBS)またはこれらの組み合わせであり得る。1つの局面において、本開示の緩衝化剤は、7~9のpH範囲において緩衝能を有する。1つの直面において、上記Trisは、Tris-HClおよびTris-塩基の組み合わせであり得る。1つの局面において、上記リジンは、リジン-HClである。1つの局面において、上記アルギニンは、アルギニン-HClである。
【0075】
1つの局面において、本開示は、グリブリド、緩衝化剤、塩基、および糖アルコールを含む方法および製剤を含み、ここで上記製剤は、上記緩衝化剤の緩衝能の範囲外のpHを有し、上記製剤は、24時間またはこれより長い期間にわたるヒトへの注入に適している(安全、持続した治療上有効な量での、および耐容できるを含む)。1つの局面において、上記製剤(再構成された製剤)は、9.0より高い、9.5より高い、10.0より高い、または10.5より高い、例えば、9.3~11のpHを有するのに対して、上記緩衝化剤は、7~9のpH範囲において緩衝能を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記製剤は、安定なpHを維持し得る。例えば、上記製剤は、25℃/60%相対湿度(RH)、40℃/75%RH、もしくは70℃/75%RHにおいてまたはそれらの湿度付近において1週間、2週間、もしくは4週間、または3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月での貯蔵後に、約0.1もしくは約0.2 pH単位以内であるpHを有する。いくつかの実施形態において、上記グリブリドは、緩衝化剤を欠いているか、または上記製剤のpHと重なり合う緩衝能を有する緩衝化剤を有するかのいずれかの同じ製剤と比較して、増大した安定性を有する。いくつかの局面において、上記安定性は、分解生成物の生成を測定することによって決定され得る。例えば、上記分解生成物は、HPLCによって測定され得る。いくつかの局面において、上記分解生成物は、HPLCでの相対的保持時間(RRT)に基づいて定量される。
【0077】
いくつかの局面において、上記緩衝化剤は、Tris-HClおよびTris-塩基の組み合わせである。いくつかの局面において、Tris-HClとTris-塩基との間の重量比は、7:4、6.7:4.5、6.5:4.7、6.4:4.8、6.3:4.9、6.2:5.0、または6.1:5.1である。
【0078】
いくつかの局面において、凍結乾燥されたグリブリド製剤は、約5~15%、6~14%、7~13%、8~12%、9~13%、または10~12%(w/w)の上記緩衝化剤を含む。いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、約5~15%、6~14%、7~13%、8~12%、9~13%、または10~12%(w/w)の上記緩衝化剤を含む。いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、約1~100mM、2~80mM、3~70mM、4~60mM、5~50mM、6~40mM、7~30mM、8~25mM、9~23mM、10~21mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、または20mMの上記緩衝化剤を含む。いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、約1~5mg/ml、1.2~4mg/ml、1.5~3.5mg/ml、または2~3mg/mlの上記緩衝化剤を含む。
【0079】
いくつかの局面において、上記緩衝化剤は、7.8~9、8.1~8.9、8.2~8.8、8.3~8.7、8.4~8.6、または8.5のpHを有する緩衝液である。
【0080】
いくつかの局面において、本開示は、投与する前にバイアルとIVバッグとの間での凍結乾燥された製剤の再構成および移動を可能にする混合デバイスの使用を含む。上記混合デバイスは、針なしデバイスであり得る。上記混合デバイスは、USP<797>の要件を満たし得る。上記混合デバイスは、IVバッグの内外に専用の流体経路を提供するデュアルチャネル設計を有し得る。1つの局面において、本開示は、米国特許第8,551,067号(Zinger)(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載されるとおりの混合デバイスの使用を含む。1つの局面において、本開示は、米国特許第10,688,295号(Lev)(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載されるとおりの混合デバイスの使用を含む。いくつかの局面において、本開示は、VIAL2BAG(R)、VIAL2BAG ADVANCEDTM、および/またはMIX2VIAL(R)混合デバイスを使用して、投与する前にバイアルとIVバッグとの間で凍結乾燥された製剤を再構成および移動する方法を含む。
【0081】
第2の局面において、上記塩基は、0.1~1.5のpKbを有する強塩基である。任意の薬学的に受容可能な強塩基が使用され得る。例えば、および前述の開示を限定せずに、上記塩基は、NaOH、CaOH、またはKOHであり得る。
【0082】
第3の局面において、本開示の製剤は、上記製剤において9.8~11.2、9.9~11.1、10.0~11.0、10.1~10.9、10.2~10.8、10.3~10.7、または10.4~10.6の範囲のpH目標を達成するために、上記グリブリドと上記塩基との間の特定の重量比を含む。
【0083】
いくつかの局面において、本開示の製剤は、上記塩基と上記グリブリドとの間の特定のモル比を含み、それは、上記製剤において5.0~6.7:1、5.1~6.6:1、5.2~6.5:1、5.3~6.4:1、5.4~6.3:1、5.5~6.2:1、5.6~6.1:1、5.7~6.0:1、または5.2:1、5.3:1、5.4:1、5.5:1、もしくは5.6:1である。本開示に従って使用されるモル比は、予測外なことには、先行技術のグリブリド製剤において使用されるものより約2倍高い。
【0084】
いくつかの局面において、上記凍結乾燥されたグリブリド製剤は、約2~3.5%、2.5~3.3%、2.7~3.1%、2.8~2.98%、2.9~2.97%、または2.94~2.96%(w/w)の上記グリブリドを含む。
【0085】
いくつかの局面において、上記凍結乾燥されたグリブリド製剤は、約70~93%、75~92%、80~91%、84~90%、86~89%、または87~89%(w/w)の本開示の糖アルコールを含む。いくつかの局面において、上記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、またはこれらの組み合わせである。いくつかの局面において、上記糖アルコールは、マンニトールである。
【0086】
いくつかの局面において、本開示の製剤は、上記製剤において、上記糖アルコールと上記グリブリドとの間の特定の重量比を含む。
【0087】
いくつかの局面において、本開示の製剤は、上記糖アルコールと上記緩衝化剤との間の特定の重量比を含み、それは、上記製剤において、5~15:1、6~14:1、7~13:1、8~12:1、9~11:1、9.5:1、10:1、または10.5:1である。
【0088】
いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、約20~40mg/ml、24~36mg/ml、26~34mg/ml、38~32mg/ml、29mg/ml、30mg/ml、または31mg/mlの上記糖アルコールを含む。
【0089】
いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、約9.3~11、9.4~10.9、9.5~10.8、9.6~10.7、9.7~10.6、9.6~10.5、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、または10.4のpHを有する。いくつかの局面において、再構成されたグリブリド製剤は、9.5~10.0のpHを有する。
【0090】
いくつかの局面において、上記グリブリドは、遊離酸または薬学的に受容可能なその塩である。いくつかの局面において、上記グリブリド製剤は、グリブリドのナトリウム付加塩を含む。本開示全体を通じて使用される場合、「グリブリド」の記載はまた、その塩、エステル、水和物、溶媒和物、ラセミ化合物、互変異性体、立体異性体、および/または光学的に活性な形態を記載し得る。
【0091】
いくつかの局面において、本開示は、本開示の緩衝液中に、本明細書で記載される濃度においてグリブリドの水性溶液を調製すること、本開示の塩基を、本明細書で記載されるグリブリドに対する上記重量比において添加すること、および上記溶液をフリーズドライして、凍結乾燥された固体組成物を提供することを含む。いくつかの局面において、上記水性溶液は、本明細書で記載される濃度において本開示の糖アルコールをさらに含み得る。
【0092】
いくつかの局面において、本開示の製剤は、シクロデキストリン、メグルミン、糖(例えば、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロースおよびリボースなどのような)、および同様にオリゴヌクレオチド(例えば、ジサッカリド(マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロースなど)およびトリサッカリド(例えば、ラフィノース、マルトトリオースなど))、塩、アルコール(例えば、エタノールのような)、ジエタノールアミン、Britton-Robinson緩衝液、ラクテート、アセテート、グルタメート、グリシン、シトレート、スクシネート、界面活性剤、ポリソルベート、可溶化ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、無機酸もしくは有機酸(例えば、メタンスルホン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸など)、コリン、n-メチルグルカミン、ジエチルアミン、プロカインなどのうちの1またはこれより多くのものを含まない。
【0093】
いくつかの局面において、本開示の再構成された製剤は、約250ミリオスモル/リットル(mOsm)~約350mOsmの間;または約280mOsm~約320mOsmの間;または約290mOsm~約310mOsmの間の容量オスモル濃度を有する。
【0094】
本開示は、投与溶液中の有意により高いグリブリド溶解度を有するグリブリド製剤(すなわち、先行技術の静脈内グリブリド投与溶液より約3倍高い(すなわち、先行技術の静脈内グリブリド投与溶液中の5.7μg/ml未満とは対照的に15μg/mlより大きい))の提供を可能にする方法および製剤を提供する。さらに、これらの3倍高い濃度においてすら、沈殿または吸着に起因するグリブリドの検出可能な喪失が存在しない。
【0095】
いくつかの局面において、本開示に従う希釈された(または本明細書で「最終投与」製剤といわれる)グリブリド製剤は、7.2(±0.2)μg/mLのグリブリド濃度および約8.3(±0.1)の注入pHを有する。
【0096】
いくつかの局面において、最終投与グリブリド製剤は、7.8~9.0、7.9~9.0、8.0~9.0のpHを有する。いくつかの局面において、最終投与グリブリド製剤は、7.8~9、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、または8.9のpHを有する。
【0097】
いくつかの局面において、最終投与グリブリド製剤は、約0.1~0.5mM、約0.15~0.4mM、約0.2~0.3mM、または約0.2mMの緩衝液濃度を有する。
【0098】
いくつかの局面において、本開示の希釈されたグリブリド製剤は、500ml IV注入バッグへと希釈され、それによって、上記被験体と投与される注入液体の量を低減する。増大された溶解度、安定性、および医療用容器への最小化された吸着に鑑みて、本開示の製剤は、より濃縮された投与製剤を使用して、それによって、有意に少ない注入液を使用すると同時に、注入期間にわたって一貫した治療用量を送達することを可能にする。
【0099】
いくつかの局面において、本開示は、被験体へと投与される注入液体の容積を、注入期間にわたって約25~30%減少させる、例えば、4日間の注入期間にわたって約2Lから1.5Lへと、または3日間の注入期間にわたって約1.5Lから1.1Lへと減少させるための方法を提供する。
【0100】
いくつかの局面において、本発明の利点に起因して、希釈されたグリブリド製剤は、先行技術の静脈内グリブリド製剤より遅い速度で投与され得る。例えば、注入速度は、先行技術の静脈内グリブリド製剤を注入するために使用される注入速度の約80%へと減少され得る、例えば、先行技術の静脈内グリブリド製剤と比較して、最初の6時間にわたって29ml/時間およびその後20ml/時間に対して、最初の6時間にわたって23ml/時間、およびその後15.9ml/時間へと減少され得る。
【0101】
いくつかの局面において、本開示は、本開示の製剤を滅菌することを含む。いくつかの局面において、上記製剤は、濾過滅菌され得る。いくつかの局面において、上記製剤は、ゼロバイオバーデンを有するように滅菌され得る。いくつかの局面において、本開示の製品は、最終的に滅菌され得る。いくつかの局面において、上記製品は、γ線照射で滅菌される。いくつかの局面において、上記製品は、電子ビーム、X線、過酸化水素、またはエチレンオキシドによって滅菌される。いくつかの局面において、上記製品は、粉末、溶液、バイアル、キット、プレフィルドシリンジ、注射デバイス、カートリッジ、オンボディーインジェクター(on body injector)、オートインジェクター、注入バッグ、または本開示の製品の貯蔵、注入、および/もしくは注射に適した任意の他の容器もしくは容器セットであり得る。いくつかの局面において、上記製品は、10-3、10-4、または10-6の「無菌性保証水準(sterility assurance level)」または「SAL」を満たす。
【0102】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化8】
を有する化合物を提供する。
【0103】
いくつかの局面において、本開示は、グリブリドおよび以下の構造:
【化9】
を有する化合物を含む製剤を提供する。
【0104】
いくつかの局面において、本開示は、以下の構造:
【化10】
を有する化合物を含む凍結乾燥された製剤を提供する。いくつかの局面において、製剤は、1重量%未満、0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、例えば、0.001~0.04重量%、0.01~0.03重量%、0.01重量%、0.02重量%、または0.03重量%の上記化合物を含み得る。
【0105】
本発明の特徴を有するキットは、グリブリドの液体溶液、および/または1もしくはこれより多くの化合物と一緒のグリブリドの液体溶液を含み得、このような液体溶液の使用に関する指示を含み得る。例えば、このような液体溶液の使用に関する指示は、目的の化合物の凍結乾燥された製剤を得るために、このような液体をフリーズドライするための指示を含み得る。代わりに、またはさらに、本発明の特徴を有するキットは、グリブリドの凍結乾燥された製剤、および/または1もしくはこれより多くの化合物と一緒のグリブリドの凍結乾燥された製剤、および/または再構成のための1もしくはこれより多くの液体と一緒のグリブリドの凍結乾燥された製剤を含み得、このような凍結乾燥された製剤の使用に関する指示を含み得る。例えば、このような凍結乾燥された製剤の使用に関する指示は、このような凍結乾燥された製剤を再構成して、薬学的適用における使用に適した溶液(好ましくは、滅菌溶液)を提供することに関する指示を含み得る。いくつかの局面において、上記バイアルは、6~40mM、7~30mM、8~25mM、9~20mM、または10~15mMの濃度において本開示の緩衝液を含む。
【0106】
よって、本明細書で開示される製剤およびキットは、改善された医薬および処置を提供し、本明細書で開示される方法は、医薬を作製するためのおよび患者を処置するための改善された方法を提供する。本開示は、脳卒中、ニューロン細胞腫脹、外傷性脳傷害、脊髄損傷、器官虚血、急性冠症候群、心筋梗塞、敗血症、および糖尿病からなる群より選択される障害を患う患者を処置する方法であって、上記方法は、その必要性のある患者に、有効量の本明細書で記載される水性薬学的組成物を静脈内投与する工程を含む方法を包含する。ある特定の場合には、上記障害は、脳卒中である。ある特定の場合には、上記患者はヒトである。ある特定の他の場合には、上記障害は、脳卒中、虚血、低酸素/虚血、脊髄損傷、脳外傷、または他の脳傷害である。処置の必要性のある患者は、例えば、糖尿病、または出血、または他の障害もしくは状態を患う患者であり得る。処置の必要性のある患者は、例えば、任意の器官、または器官、もしくは系の虚血を患う患者であり得る。このような系は、例えば、神経系(神経系の一部を含む)、または心血管系、もしくは心血管系の一部であり得る。このような器官は、例えば、脳、心臓、筋肉、または他の器官であり得る。処置の必要性のある患者は、上記製剤、組成物、および/または本明細書で開示されるキットの内容物の投与から利益を受け得る任意の患者であり得る。処置の必要性のある患者のさらなる例としては、脳卒中、出血、ニューロン細胞腫脹、外傷性脳傷害、脊髄損傷、器官虚血、急性冠症候群、心筋梗塞、および敗血症からなる群より選択される障害を患う患者が挙げられる。
【0107】
いくつかの局面において、本開示の製剤、方法、およびキットは、長期間(例えば、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間またはこれより長い)にわたる患者への耐容できる、安全で有効な、かつ予測可能な注入投与を提供する。
【0108】
本開示は、液体製剤を含み、これは、希釈されていない液体製剤およびボーラス投与のための最終投与溶液を含む。
【0109】
本明細書で開示される液体製剤は、脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、脳への血流の中断をもたらす心停止、または罹患者が脳腫脹もしくはニューロン細胞腫脹のリスクにある他の状態を患う患者の、血管系、脳脊髄液、または他の投与目的地への注入(例えば、長期間にわたる注入)のために使用され得る。なおさらなる例では、本明細書で開示される液体製剤は、脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、脳への血流の中断をもたらす心停止、または罹患者が脳腫脹もしくはニューロン細胞腫脹のリスクにある他の状態を患う患者への脳室内または髄腔内投与のために使用され得る。液体製剤を介するおよび特に、動脈内または静脈内投与を介するグリブリドの投与は、循環グリブリド濃度における迅速かつ容易な制御された増大を提供し、循環グリブリド濃度の迅速な調節および容易な維持を可能にする処置の迅速な開始を提供する。
【0110】
本発明者らは、静脈内グリブリド製剤を開発するにあたって、特に、救急医療環境における使用に関する多くの交絡した難題に遭遇した。グリブリドは、生理学的pHにおいて水中で実質的に不溶性であり、それが沈殿を生じ、プラスチック製医療用容器、管類、およびフィルターへと、特に、低pHおよび生理学的pHにおいて吸着するという点において安定性が低い。さらに、本発明者らは、形成された分解生成物を発見した。特に、塩基 対 グリブリドの比率が比較的低いと、形成される分解生成物のパーセンテージが増大する。グリブリドを可溶化するためにより高いpHが使用されるが、このような高いpHを有する製剤を静脈内投与することは可能でない。さらに、低溶解度および医療用プラスチック物質への予測不能な吸着に起因して、本発明者らは、1)治療用量を迅速にかつ予測可能に投与することができない;2)患者へ注入されるよりむしろ上記物質へ吸着されてしまう薬物製品の損耗;および3)患者への多量の塩類注入溶液の投与が必要であることが挙げられるが、これらに限定されない問題に遭遇した。
【0111】
図1に示されるように、先行技術のグリブリド製剤を使用する種々の投与物質でのモック注入試験において、注入開始時直ぐに顕著な吸着があり、濃度が変化するが、注入期間の全体にわたって回復しない。さらに、グリブリド濃度の変化は、投与セットの物質に依存して異なる。従って、薬物製品のどのくらいの程度が、種々の要因に依存して任意の所定の時間で所定の患者に投与されるかは、ほとんど予測不能であった。
【0112】
さらに、
図2に示されるように、本発明者らは、先行技術の構成要素を含むグリブリド製剤を試験したが、NaOH 対 グリブリドの比率を変動させて、吸着に対するその比の効果を決定した。本発明者らは、注入の開始直後にかなりの吸着が存在し、注入期間の過程にわたるグリブリド濃度の回復率が、塩基 対 グリブリドの種々の比を有する製剤間で顕著に変動することを見出した。グリブリド濃度における少なくとも10%の初期低下が存在し、その低下は、NaOH:GLY比が3:1である場合に、約40%程度の高さであった。具体的には、種々のNaOH:GLYモル比を有するグリブリドの先行技術の製剤を、1L塩類溶液バッグへと再構成および希釈した。モックIV注入を、PVC投与セットを使用して設定し、示された時点での注入物のグリブリド濃度を測定した(およびIVバッグ中のグリブリドの初期濃度のパーセンテージとして表した)。NaOH:GLY比が低いほど、薬物濃度が回復するために必要とされる期間は長い。しかし、吸着問題を回避するために、先行技術のグリブリド製剤においてより高い塩基 対 グリブリド比を使用することは不可能であった。なぜなら十分に高い塩基 対 グリブリド比を使用すると、ヒト患者に注入するには高すぎるpHを有する(すなわち、約10のpHを有する)再構成された製剤が生じたのに対して、業界によってヒト注入に許容可能と考えられる最大pHは、2016 Infusion Therapy Standards of Practiceによれば、pH9だからである。
【0113】
よって、本開示は、医療用容器への吸着、極めて低い溶解度、低安定性、多くの損耗、薬物を送達するために多量の塩類溶液を注入する必要があることを含む、前述の交絡する問題を解決する、凍結乾燥された、再構成された、および希釈された(最終投与)製剤を含む製剤を提供する。
【0114】
医療用容器への吸着、分解生成物の形成、および治療用量を送達するために大容積の塩類注入溶液を投与する必要があることを回避しながら、十分な溶解度、安定性、治療効果、ヒトへの注入に関する安全性を提供し得る製剤を作製するにあたって、本開示の特定の緩衝化剤、塩基、グリブリド、および糖アルコールの、特定の量範囲での、および互いに対する特定の比での特定の組み合わせを使用することが必要であることを、実験を通じて見出した。予測外なことに、グリブリド製剤のpHの範囲外の緩衝能を有する緩衝化剤を使用する必要があることが、見出された。
【0115】
投与セットへの吸着によって引き起こされるグリブリド濃度の初期低下(initial dip)を回避するために、本開示に従う製剤を使用するpH上昇実験を行った。
図3に示されるように、本開示に従う希釈された(最終投与)製剤のpHが7.8未満である場合、グリブリド濃度において少なくとも10%の低下(dip)があることが見出された。従って、少なくとも7.8のpHを一貫して維持する、および注入溶液(例えば、塩類溶液)へと希釈される場合に、9.0またはこれより低いpHを有する本開示のグリブリド製剤を生成することによって、PVC投与セットへの吸着を排除することは可能であることが認識された。
図6(左)に示されるように、初期塩類溶液pH 4.5にともなって、NaOH:GLYモル比 13.8が、最終投与溶液において8.8のpHを達成するために先行技術のグリブリド製剤において必要とされる。(右)NaOH:GLYモル比13.8を有する薬物製品が、pH 7を有する塩類溶液へと再構成される場合、その最終投与溶液における得られたpHは、9.9であり、これは、受容可能な注入溶液のpH範囲外である。
【0116】
さらなる重要な要件は、再構成後に、上記再構成された製剤が、十分に安定でありかつ可溶性のままでなければならないことであった。例として、10mM Trisおよび0.9% マンニトールを使用する実験において、
図4に示されるとおり、6mg グリブリドおよび20mlの再構成容積を含む薬物製品バイアルに関して、その得られる濃度は、0.3mg/ml グリブリドであることは決定された。濃度(0.360mg/ml)において20% 緩衝液を想定すると、9.14の最小バイアルpHが、再構成後の溶液安定性を確実にするために必要とされた。10mMより低いTris濃度を使用すると、不安定性、吸着、および低溶解度から保護するためにも十分であった。例えば、20mlの5mM 溶液での6mg/バイアル薬物製品の再構成、1L 塩類溶液バッグへのさらなる希釈;最終投与溶液における緩衝液濃度 約0.1mM Trisは,十分であった。これらのデータに基づくと、初期塩類注入溶液pHに対する最小の再構成されたグリブリド製剤pH に関する必要なパラメーターを、
図5に示されるように決定した。
【0117】
本発明者らは,予測外にも、7.7~9.2のpKaを有する緩衝化剤が、より可溶性であり、より安定である、医療用プラスチックへの吸着を回避し、ヒトへの注入によって投与可能であるように注入溶液で希釈される場合に適切なpHを有するように、多くの要因が釣り合った製剤を作製するための極めて重要な特性を提供することを見出した。このような緩衝液は、このような薬剤によって緩衝化されたpH範囲内では、グリブリドが事実上不溶性であることから、特許請求される製剤において機能することは、予測外であった。
【0118】
さらに、十分に安定し、可溶性のままであり、医療用プラスチック物質への吸着を回避するために、塩基 対 グリブリドのモル比を決定することが必要であった。
図6に示されるように、先行技術のグリブリド製剤を使用する場合、13.8のNaOH:GLYモル比を使用して、十分な安定性、溶解度を維持し、吸着を回避することは、必要であった(その比は、ヒトへの注入には安全でない(pH 約10)希釈された(最終投与)製剤を生じたことから、使用するには高すぎた)が、本開示の製剤は、十分な安定性、溶解度を提供し、吸着を回避し、注入溶液へと希釈される場合に(7.8~9.0の間の最終投与pH)ヒトへの注入に安全であることを提供するために、塩基 対 グリブリドの遙かに低い比率を必要とすることが見出された。
図7に示されるように、薬物製品バイアル(例えば、6mg グリブリド/バイアル)中の塩基含有量および再構成のために使用される(本開示の)緩衝液のpHは、本発明者らの知見に基づいて、十分な安定性、溶解度を有し、吸着を欠く製剤を生成するために相関され得る。例えば、バイアルpH(9.1~10.2)の目標設計空間内において、バイアルおよび緩衝液pHにおける極めて重要なNaOH:GLYモル比領域を決定した。例えば、
図7において、塩基としてのNaOHおよびpH8.5の緩衝液を使用する場合、NaOH:GLYモル比 5.3が、使用されるべきである(星によって示されるとおり)ことが決定される。
【0119】
本開示の発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。以下の実施例は、本発明のある特定の局面および実施形態の例証の目的で含められるに過ぎず、本開示の発明の範囲を限定することは意図されない。
【0120】
実施例1
グリブリドの溶解度および安定性を、Tris緩衝液の緩衝能の範囲外のpHを有する製剤において試験した。TrisのpKa値は、25℃において8.08であり、それは、7.0~9.0のpH範囲において緩衝能を有する。調合実験において、9.1の最小調合pHが、室温(RT)で少なくとも24時間にわたって1mg/mlにおいてバルク溶液安定性を維持するために必要とされることが見出された。調合pH<8.9を有する製剤に関しては、グリブリドの沈殿を示す濁った溶液が観察された。調合pH>9の製剤に関しては、調合pHは、緩衝液および塩基 対 グリブリドモル比に応じて迅速に変化する。例えば、
図8に示されるように、Tris pHおよびNaOH:GLYモル比に依存する化合物pHの迅速な変化が、これら両方の構成要素の急な傾きによって図示されるように観察された。これは、Trisが、pH 7~9の範囲において有効に緩衝化する(すなわち、8.1のpKaから±1 pH単位)ことが理由である。このpH範囲の範囲外では、上記バルク溶液は、Trisを添加してももはや緩衝化されない。バルク溶液の安定性を維持するために、Trisの緩衝化範囲の範囲外である9を上回って調合pHを増大させることが必要である。
【0121】
実施例2
ある範囲のpHを有する溶液を、バイアルへと充填し(6ml/バイアル)、凍結乾燥した。7日間および14日間において加速条件(70℃/75RH)での安定性試験を使用して、不純物の形成に対する製剤パラメーターの効果を評価した。調合pHに対する不純物形成の明らかな依存性(dependence)は、
図9に示されるように、不純物Aおよび不純物Xに関して観察された。両方の不純物の生成は、調合pHの増大とともに減少した。不純物Aに関しては、9.8の調合pHを上回ると、レベルは、7日間では≦0.5%であり、14日間では≦1.0%であった。不純物Xに関しては、9.8の調合pHを上回ると、レベルは、7日間および14日間で≦0.5%であった。10.3の調合pHを上回ると、不純物Xレベルは、本質的に0%であった。RRT 1.25を有する不純物に関しては、全体のレベルは、7日間および14日間の両方で低かった(<0.2%)。調合pHが増大するにつれて、RRT 1.25を有する不純物は、弱い正の相関を示した。加速安定性試験に基づくと、9.8の最小調合pHは、不純物AおよびXの形成を制限する。RRT 1.25を有する不純物の全体のレベルは、全ての試験したpHにおいて低かった。
【0122】
9.2の最大最終投与pH(注入後に、約9へとpHのわずかな低下があり、これは、患者へと安全に注入され得る溶液の最大pHである)を、調合pHに対する上限の制約として使用した。薬物再構成および希釈実験を行った。実験を、グリブリドとバイアル充填容積 6ml(すなわち、6mgのグリブリド)を使用して行った。バイアルを、20ml 注射用水(WFI)で再構成し、4.5または7のいずれかの初期pH(HClまたはNaOHで調節)を有する500ml塩類溶液バッグ(本開示の製剤が、先行技術のグリブリド製剤で使用されるより少ない塩類溶液で安全に投与され得ることを確実にするために、代表的な1L 塩類溶液バッグの代わり)へと移した。調合pHと、初期塩類溶液pHと、上記最終投与溶液のpHでのバイアル充填との間の相関関係を、
図10に示す。10.0(不純物形成を制限するための加速安定性試験に基づく)の低い調合pH仕様および初期開始塩類溶液pH 4.5に関して、最終投与溶液の予測されるpHは、約8.7である(6mlバイアル充填に基づいて)。10.8の最大調合pHは、最終投与溶液に関しては、患者へと安全に注入され得る溶液の最高pHを表す9.2のpHを生じる(6mlバイアル充填に基づいて)。このような製剤は、以下で明らかに示されるように、PVC投与構成要素へのかなりの量のグリブリドの吸着を回避する。
【0123】
最終投与溶液のpHはまた、薬物製品バイアル充填に依存する(
図10、右)。(1mg/ml溶液の)4mlの低減されたバイアル充填を有する製剤は、以下の表に示されるとおりの投与の各日の後のグリブリド損耗を低減するように生成される。
【表3-1】
【表3-2】
【0124】
実施例3
4ml 充填を用いる薬物製品でのさらなる再構成および希釈試験を行って、最終投与溶液のpHに対する調合pHの効果を評価した。10~10.8の目標調合pH範囲内で、および可能なpH範囲または4.5~7を通じて塩類溶液を使用して、最終投与のpHは、8.1~8.7の範囲に及んだ。可溶性で、安定しており、PVC/PUR投与構成要素への吸着を回避し、ヒトへの注入に適したpHにある最終投与製剤を作製することは可能であった。
【0125】
実験全体を通じて、緩衝化剤は、7.7~9.2、7.8~9.1、7.9~9.0、8.0~8.9、8.05~8.8、8.1~8.7のpKa、または特定された範囲中の任意の特異的なpKaを有するべきであることが見出された。例えば、そして前述の開示を限定せず、上記緩衝化剤は、Tris、リジン、アルギニン、エチレンジアミン、イミダゾール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエタノールアミン、グルカミン、デアノール(ジメチルアミノエタノール)、ホスフェート、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、またはこれらの組み合わせであり得る。緩衝化剤(例えば、ホスフェート(pKa 7.21)およびグリシン(pKa 9.8))で行った試験では、これらの緩衝化剤が、グリブリドを効果的に安定化せず、医療用物質への吸着を防止しないことが見出された。具体的には、種々の量のNaOHを含む凍結乾燥されたグリブリドサンプルを、20mlのリン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH 8.0)中で再構成し、そのpHを測定し、次いで、その再構成された製剤を塩類注入溶液中で希釈した。
【0126】
よって、これらの試験に基づいて、本開示は、以下の製剤を含む:
【0127】
製剤A(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.4の製剤pHまでの1N NaOH、1.20mg/ml Tris-塩基、1.59mg/ml Tris-HCl(合計20mM Tris)、および水。
【0128】
製剤B(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.6の製剤pHまでの1N NaOH、2.5~5mg/ml アルギニン、および水。
【0129】
製剤C(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.6の製剤pHまでの1N NaOH、2.5~5mg/ml リジン、および水。
【0130】
製剤D(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.6の製剤pHまでの1N KOHまたはCaOH、1.20mg/ml Tris-塩基、1.59mg/ml Tris-HCl、および水。
【0131】
製剤E(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.6の製剤pHまでの1N KOHまたはCaOH、2.5~5mg/ml アルギニン、および水。
【0132】
製剤F(再構成、未希釈): 1mg/ml グリブリド、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、または40mg/ml マンニトール、10.4±0.6の製剤pHまでの1N KOHまたはCaOH、2.5~5mg/ml リジン、および水。
【0133】
製剤G(再構成、希釈): 7.2μg/ml グリブリド、0.216mg/ml マンニトール、8.3±0.1の希釈された製剤pH、0.2mM Tris、水、および500ml 注射用塩類溶液。
【0134】
実施例4
安定性試験を、以下の表に示されるように、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで6ヶ月間までにわたって、pH 9.8、10.3、および10.8において30mg/ml マンニトールを有する製剤Aに対して行った:
【表4】
【0135】
不純物Aレベルは、0.5または1%のいずれかの提唱された放出仕様を下回り; 不純物Xおよび不純物RRT 1.25は、0.5%の特定閾値を下回ることが見出された。
【0136】
上記調合手順を、15~25℃の温度範囲にわたって行った。調合は、その温度範囲にわたって成功裡に行われ得ることが見出された。15℃では、NaOH:GLYモル比 5.78~6.4が適していることが見出された。21.4℃では、NaOH:GLYモル比 5.9~6.6が適していることが見出された。25℃では、NaOH:GLYモル比 6.11~6.63が適していることが見出された。
【0137】
実施例5
投与セットへの吸着の排除を確認するために、本開示のグリブリド製剤(目標調合pH 9.8)を使用してモック注入を行った。IVバッグへの再構成および希釈後、注入を、PVC投与セットとインライン0.2μmフィルターおよびPUR投与セットを用いて4時間にわたって行った(
図11)。
図11に示されるように、(左のグラフ)グリブリドの濃度を、示されるとおりの2種の異なる投与セットでモニターし、(右のグラフ)上記投与セットの遠位端からの投与溶液のpHを、示される時点において測定した。吸着は、上記注入期間にわたって観察されなかった。上記投与溶液のpHをまた、投与セットの遠位端において追跡した。PUR投与セットに関しては、そのpHは、試験の全体にわたって8.6で維持された。PVC投与セットに関しては、そのpHは、約8.6から8.3へと低下した。このことは、最終投与溶液中の本開示の緩衝液の組み込みが、投与構成要素へのグリブリドの吸着を効果的に排除することを確認する。
【0138】
実施例6
さらなる実験から、調合pHが、TRIS濃度、緩衝液pH、および製剤中の塩基含有量に強く依存することが明らかになった(
図8)。緩衝液および塩基の重み付けにおける変動は、潜在的に、予測される調合pHへの変化を引き起こし得、バッチ間のプロセス変動をもたらす。重み付け入力の効果に関する分析、および従って、調合pHにおける変動を得た(
図12)。TRIS緩衝液およびNaOHの2%の重み付け分散は、10~10.8の目標仕様内になお存在する調合pH分布を生じる(調合pH変動の0.5%は、目標範囲外にある)。2.5%における重み付け分散は、目標仕様範囲外の調合pHをもたらし得、バッチ間のプロセス変動をもたらし得る。あるいは極めて高い調合pH(すなわち、>10.8)の場合には、バッチは廃棄される。なぜなら調合プロセスにおいてpHを低減するための機序が存在しないからである。従って、調合pHに影響を及ぼす極めて重要な製剤構成要素(TRIS-塩基、TRIS-HCl、1N NaOH)の2%もしくはこれ未満の重み付け制御を確立することによって、調合pHを、10~10.8の特定される範囲内で制御した。
【0139】
調合pHのさらなるプロセス制御は、10.4(±0.4)の目標pH仕様を達成するために、調合プロセスにおけるpH調節工程の実行を介するものである。調合プロセス全体を通じてバルク溶液安定性を維持するために調合pHを制御する製剤構成要素の添加順は、Tris-塩基、Tris-HCl、および次いで、1N NaOHであることが見出された。重要なことには、1N NaOHを2回に分けて添加する。最初の部分は、Tris-HClの添加後にpHの低下を軽減することに加えて、グリブリド溶解度および溶解を可能にすることである。Tris-HCl添加後に得られるpHは、グリブリド溶解度を(1mg/mlにおいて)維持し、10.4の目標調合pHを下回るように設計される。1N NaOHの第2の部分は、目標調合pHを達成するためにpH調節工程において使用される。いくつかの局面において、調合プロセス全体を通じてバルク溶液安定性を維持するために調合pHを制御する製剤構成要素の添加順は、水、マンニトール、1N NaOHの第1の部分、グリブリド、Tris-塩基、Tris-HCl、1N NaOHの第2の部分である。まとめると、極めて重要な製剤構成要素および調合プロセス工程の重み付け制御の組み合わせ(添加順およびpH調節工程の実施)は、薬物製品の極めて重要な品質属性に影響するプロセス制御パラメーターにとって有用である。
【0140】
実施例7
調合pHは、薬物製品の極めて重要な品質属性(貯蔵の間の不純物の形成、投与構成要素への吸着、および注入の間の安定性を含む)に影響する。頑健なプロセス制御ストラテジーは、調合パラメーターの制御を可能にするために、商業的調合プロセスのために開発された。薬物製品リリース試験の一部として、再構成(10ml)後のバイアルpHは、適切な調合pHが製造の間に達成されたことを確実にするために使用され得る。調合pHと再構成後のバイアルpHとの間の関係性、ならびに予測される変動を、
図13に示す。開発試験から、調合pHは再構成pHと十分に相関することが見出された。バイアル充填容積はまた、再構成pHに影響を及ぼすが、目標充填容積内(4ml±4%)では、本質的に依存性は存在しない。従って、再構成pHにおける予測される変動の大部分は、調合pHの変動に由来すると予測される。目標再構成pHは、9.5~10.0の範囲で9.8である。いくつかの局面において、再構成後の濃度は、0.4mg/ml(4mg/10ml)である。適切な安定性を確実にするために、濃度において20%過剰で添加(すなわち、0.4mg/ml×1.2=0.48mg/ml)すると、少なくとも9.3のバイアル再構成pHが必要とされることが見出された(
図5)。
【0141】
本開示は、低い溶解度、低い安定性、投与物質への吸着、分解、薬物損耗、および注入のために多量の塩類溶液が必要であることを含む、静脈内グリブリド製剤に伴う交絡する困難に対処するための方法および製剤を提供する。特定の塩基、特定の緩衝液、塩基 対 グリブリドの特定の比、および糖アルコール、ならびに本開示に従う調合の記載される組み合わせを使用すると、最終投与溶液の溶解度要件が満たされ、注入期間全体を通じての溶液安定性を確実にし得ることが見出された。さらに、PVCまたはPURで作製された投与構成要素への薬物吸着は、排除され、任意の一般に使用される医療用投与構成要素の拡大された使用を可能にする。最終投与溶液の正確な制御を達成するために、本開示の製剤は、上記で記載される特定の量において本開示の特定の緩衝化剤を含む。上記緩衝化剤は、塩基 対 グリブリドの適切なモル比との組み合わせにおいて、薬物製品安定性ならびにその溶解度および吸着に影響するプロセス制御パラメーターの中で極めて重要である。10.4(±0.4)の調合pH目標は、薬物製品の極めて重要な品質属性を達成するために必要であることが見出された。まとめると、本開示の製剤およびプロセス要素は、既存の製剤および方法に伴う困難を排除する頑健で、安定な、かつ可溶性の薬物製品を提供し、減少された薬物損耗および増大された溶解度に起因して、患者への有意により少ない塩類溶液を投与する方法も提供する。
【0142】
上記のプロトコールまたはその類似のバリアントのうちのいずれかは、薬学的製品と関連する種々の文書に記載され得る。この文書としては、プロトコール、統計分析プラン、治験薬概要書、臨床ガイドライン、医薬品ガイド、リスク評価および薬物療法プログラム(risk evaluation and mediation programs)、医薬品添付文書(prescribing information)および薬学的製品と関連付けられ得る他の文書が挙げられ得るが、これらに限定されない。このような文書は、有益であり得るかまたは規制当局によって示されるので、キットとして本開示に従う薬学的製品とともに物理的にパッケージングされ得ることは、具体的に企図される。
【0143】
本開示の主題は、ある特定の例証的な実施形態(特徴の種々の組み合わせおよび部分組み合わせを含む)を参照しながらかなり詳細に記載されかつ示されてきたが、当業者は、本開示の範囲内に包含されるとして他の実施形態ならびにそのバリエーションおよび改変を容易に認識する。さらに、このような実施形態、組み合わせ、および部分組み合わせの説明は、特許請求された主題が、特許請求の範囲に明示的に記載されるもの以外の特徴または特徴の組み合わせを要求することを伝えることは意図されない。よって、本開示の範囲は、以下の添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に包含される全ての改変およびバリエーションを包含することが意図される。
【国際調査報告】