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特表2024-512314乳癌の予後及び放射線療法の恩恵を受けにくい対象を識別するための方法及びゲノム分類器
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  • 特表-乳癌の予後及び放射線療法の恩恵を受けにくい対象を識別するための方法及びゲノム分類器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】乳癌の予後及び放射線療法の恩恵を受けにくい対象を識別するための方法及びゲノム分類器
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6841 20180101AFI20240312BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240312BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240312BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20240312BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALN20240312BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
C12Q1/686 Z
C12M1/34 Z
G01N33/53 M
G01N33/574 A
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6837 Z
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553382
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 US2022018313
(87)【国際公開番号】W WO2022187227
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/154,821
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523331658
【氏名又は名称】ピーエフエス ゲノミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チャン,エス.ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ピアス,ロリ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スペアース,コリー
(72)【発明者】
【氏名】フェン,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】マルムストローム,ペール
(72)【発明者】
【氏名】ファーノ,マルテン
(72)【発明者】
【氏名】ホルムバーグ,エーリク
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ペール オー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、乳癌再発(例えば、局所領域再発)の個別化された予後評価を提供するための系及び方法に関する。この系及び方法は、患者試料からの遺伝子発現を測定して、乳癌手術後の放射線療法の恩恵を受けにくい対象を特定する遺伝子発現シグネチャーを作成することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)乳癌(BC)を有するか、または有するリスクのあるヒト患者由来の生体試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定し、前記1つ以上の遺伝子が、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択され、
b)前記1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、前記患者のBC再発の尤度を決定する
ことを含む方法。
【請求項2】
AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現レベルの増加が、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の増加と相関し、
B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現レベルの増加が、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の減少と相関する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者がBC再発のリスクが高いと特徴付けられる場合、補助放射線療法で前記患者を治療することをさらに含むか、または
前記患者がBC再発のリスクが低いと特徴付けられる場合、補助放射線療法による治療で前記患者を治療しないことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記BC再発が、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生体試料が、生検または腫瘍試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発現レベルの測定が、in situハイブリダイゼーション法、PCRベースの方法、アレイベースの方法、免疫染色法、RNAアッセイ法、またはイムノアッセイ法のうちの1つ以上を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記発現レベルの測定が、核酸プローブ、1つ以上の核酸プライマー、及び抗体からなる群から選択される試薬を使用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発現レベルの測定が、RNA転写産物のレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
乳癌を有する患者の予後、及び前記患者を補助放射線療法で治療するかどうかを判定するためのキットであって、前記キットが、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定するための薬剤を含む、前記キット。
【請求項10】
前記キットが、前記1つ以上の遺伝子のすべての発現レベルを測定するための薬剤を含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記薬剤が、in situハイブリダイゼーション法、PCRベースの方法、アレイベースの方法、免疫染色法、RNAアッセイ法、またはイムノアッセイ法を実施するための試薬を含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記薬剤が、マイクロアレイ、核酸プローブ、核酸プライマー、または抗体のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記キットが、前記1つ以上の遺伝子の配列を含む核酸を増幅することができる少なくとも1セットのPCRプライマーを含む、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
前記キットが、前記1つ以上の遺伝子の配列を含む核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブを含む、請求項10に記載のキット。
【請求項15】
乳癌を有する対象の予後、及び補助放射線療法で前記対象を治療するかどうかを判断する方法についての説明書を含む情報を電子または紙の形式でさらに含む、請求項10に記載のキット。
【請求項16】
1つ以上の対照参照試料をさらに含む、請求項10に記載のキット。
【請求項17】
乳癌を有する対象の予後、及び前記対象を補助放射線療法で治療するかどうかを判断するためのプローブセットであって、前記プローブセットが、複数の標的核酸を検出するための複数のプローブを含み、前記複数の標的核酸が、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子配列を含む、前記プローブセット。
【請求項18】
前記プローブセットが、前記1つ以上の遺伝子の遺伝子配列、またはその相補配列を含む複数の標的核酸を検出するための複数のプローブを含む、請求項17に記載のプローブセット。
【請求項19】
少なくとも1つのプローブが検出可能に標識されている、請求項17に記載のプローブセット。
【請求項20】
乳癌を有する対象の予後、及び補助放射線療法、化学療法、または内分泌療法で前記対象を治療するかどうかを判定するためのキットであって、請求項17に記載のプローブセットを含む、前記キット。
【請求項21】
a)請求項17に記載のプローブセット、及び
b)乳癌を有する前記対象に由来する生体試料中の前記複数のプローブにハイブリダイズした前記複数の標的核酸の発現レベルまたは発現特性を分析し、前記発現レベルまたは発現特性に基づいて、前記対象のがん再発リスクが低いかどうかを判定し、前記対象が補助放射線療法から恩恵を受けるかどうかを予測するためのコンピュータモデルまたはアルゴリズム
を含む、システム。
【請求項22】
患者のBC再発リスクを評価するためのリスクスコアの生成方法であって、前記方法が、
前記BC患者から採取した試料中に存在する1つ以上の遺伝子の遺伝子発現レベルを同定するステップであって、前記1つ以上の遺伝子が、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される、前記同定するステップ、
前記発現レベルの値に、表8からの選択された1つ以上の遺伝子に対応する係数値を乗算することによって重み付けされた発現レベルを取得するステップ、ならびに
前記1つ以上の遺伝子の前記重み付けされた発現レベルを加算することによってリスクスコアを生成するステップを含む、前記生成方法。
【請求項23】
前記リスクスコアに基づいて、前記患者のBC再発リスクを評価することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
BCを有するか、または有するリスクのある患者のBC再発の尤度の予測方法であって、
(a)前記患者から採取した試料中で、以下の遺伝子:AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の1つ以上の発現レベルを測定し、そして
(b)前記1つ以上の遺伝子の前記発現レベルに基づいて、前記患者のBC再発の尤度を予測することを含み、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現の増加が、BC再発リスクの増加と相関し、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現の増加が、乳癌再発リスクの低下と相関する、前記予測方法。
【請求項25】
前記患者がBC再発のリスクが高いと特徴付けられる場合、補助放射線療法で前記患者を治療することをさらに含むか、または
前記患者がBC再発のリスクが低いと特徴付けられる場合、補助放射線療法による治療で前記患者を治療しないことをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記BC再発が、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が、生検または腫瘍試料である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記発現レベルの測定が、in situハイブリダイゼーション法、PCRベースの方法、アレイベースの方法、免疫染色法、RNAアッセイ法、またはイムノアッセイ法のうちの1つ以上を実施することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記発現レベルの測定が、核酸プローブ、1つ以上の核酸プライマー、及び抗体からなる群から選択される試薬を使用することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記発現レベルの測定が、RNA転写産物のレベルを測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月1日に出願された米国仮特許出願第63/154,821号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、乳癌再発(例えば、局所領域再発)の個別化された予後評価を提供するための系及び方法に関する。この系及び方法は、患者試料からの遺伝子発現を測定して、乳癌手術後の放射線療法の恩恵を受けにくい対象を特定する遺伝子発現シグネチャーを作成することを含む。
【背景技術】
【0003】
乳癌の治療及び診断の進歩にも関わらず、乳癌再発(例えば、局所領域再発)の予後評価を改善する必要性が依然として存在する。さらに、局所領域再発及び放射線感受性の予後徴候の新規遺伝子シグネチャーが必要である。
【0004】
本発明は、これらの必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、乳癌(BC)再発(例えば、局所領域再発(LRR))の個別化された予後評価を提供するための系及び方法に関する。この系及び方法は、患者試料からの遺伝子発現を測定して、乳癌手術(BCS)後の放射線療法(RT)の恩恵を受けにくい対象を特定する遺伝子発現シグネチャーを作成することを含む。
【0006】
本開示は、対象におけるBCの診断、予後、及び治療のための方法、系、及びキットに関する。本開示はまた、乳癌再発のリスクが低く、補助放射線療法の恩恵を受けにくい対象を特定するためのバイオマーカー及び分類器も提供する。さらに本明細書において、特定の例では、対象における乳癌再発のリスクを判定するためのそのようなバイオマーカーの検出に使用するためのプローブセットを開示する。本開示はさらに、局所領域再発(LRR)のリスクがある対象を特定し、放射線療法への応答を予測するためのバイオマーカー及び分類器を提供する。乳癌再発のリスクを判定するための発現プロファイリング及び/または年齢に基づく乳癌の治療方法も提供する。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は:a)乳癌(BC)に罹患しているか、または罹患するリスクがあるヒト患者由来の生体試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定し、その場合、1つ以上の遺伝子は、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択され、b)選択された1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、患者のBC再発の尤度を判定することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、選択された1つ以上の遺伝子の測定された発現レベルを、BC再発のリスクと一致する所定の遺伝子発現レベルと比較することをさらに含み得るか、または選択された1つ以上の遺伝子の発現レベルを正規化すること、例えば、選択された1つ以上の遺伝子の正規化された発現レベルを生成することを含み得る。さらなる実施形態では、選択された1つ以上の遺伝子の発現レベルの比較に基づいて、BC再発の尤度を判定してもよい。別の実施形態では、選択された1つ以上の遺伝子の正規化された発現レベルに基づいて、BC再発の尤度を判定してもよい。
【0008】
特定の実施形態では、本開示は、(a)患者から採取した試料において、以下の遺伝子:AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1のうちの1つ以上の発現レベルを測定し、(b)1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて患者のBC再発の尤度を予測することを含む、BCに罹患している患者または罹患するリスクがある患者のBC再発の尤度の予測方法を提供し、その場合、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現の増加は、BC再発リスクの増加と相関し、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現の増加は、BC再発リスクの低下と相関する。特定の実施形態では、方法は、選択された1つ以上の遺伝子の発現レベルを正規化して、選択された1つ以上の遺伝子の正規化された発現レベルを取得することをさらに含み得る。さらなる実施形態では、選択された1つ以上の遺伝子の正規化された発現レベルに基づいてBC再発の尤度を予測する。
【0009】
いくつかの実施形態では、BC再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。いくつかの実施形態では、生体試料は、生検または腫瘍試料である。
【0010】
本明細書中で使用する場合、「BC再発のリスク」または「BC再発の尤度」は、長期間(例えば、1か月、1年、5年、10年など)にわたるBC再発の統計的確率(例えば、尤度)を指す。いくつかの実施形態では、BC再発のリスクは、患者が首尾よく介入(例えば、外科的介入)を受け、BC及び/または進行性のがん細胞を有さないことを特徴とするベースラインを伴う。したがって、再発のリスクまたは尤度には、がんが何らかの形で再発する尤度が含まれる。そのようなリスクは、非常に低いリスク、低いリスク、中程度に低いリスク、平均リスク、中程度に高いリスク、高いリスク、及び非常に高いリスクとして特徴付けることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現レベルの増加は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の増加と相関する。
【0012】
いくつかの実施形態では、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現レベルの低下は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の減少と相関する。
【0013】
いくつかの実施形態では、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現レベルの増加は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の減少と相関する。
【0014】
いくつかの実施形態では、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現レベルの低下は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の増加と相関する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者が、BC再発のリスクまたは尤度が増加しているか、または高いと特徴付けられる場合に、補助放射線療法で患者を治療することをさらに含む。特定の実施形態では、患者がBC再発について中程度に高いリスク、高いリスク、または非常に高いリスクにあると特徴付けられる場合、患者を補助放射線療法で治療してもよい。いくつかの実施形態では、本方法は、患者が、BC再発のリスクまたは尤度が低下しているか、または低いと特徴づけられる場合に、補助放射線療法による治療で患者を治療しないことをさらに含む。特定の実施形態では、患者がBC再発について中程度に低いリスク、低リスク、または非常に低いリスクであると特徴付けられる場合に、患者を、補助放射線療法で治療できないか、または補助放射線療法から恩恵を得られない患者として識別してもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、生体試料中で、全遺伝子の発現レベルを測定する。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の個数は、1個の遺伝子、1~2個の遺伝子、1~3個、1~4個、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、2~11、2~12、2~13、2~14、2~15、2~16、3~4、3~5、3~6、3~7、3~8、3~9、3~10、3~11、3~12、3~13、3~14、3~15、3~16、4~5、4~6、4~7、4~8、4~9、4~10、4~11、4~12、4~13、4~14、4~15、4~16、5~6、5~7、5~8、5~9、5~10、5~11、5~12、5~13、5~14、5~15、5~16、6~7、6~8、6~9、6~10、6~11、6~12、6~13、6~14、6~15、6~16、7~8、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、7~16、8~9、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、8~16、9~10、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、9~16、10~11、10~12、10~13、10~14、10~15、10~16、11~12、11~13、11~14、11~15、11~16、12~13、12~14、12~15、12~16、13~14、13~15、13~16、14~15、14~16、15~16、及び16個の遺伝子からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、発現レベルの測定は、in situハイブリダイゼーション法、PCRベースの方法、アレイベースの方法、免疫染色法、RNAアッセイ法、またはイムノアッセイ法のうちの1つ以上を実施することを含む。いくつかの実施形態では、発現レベルの測定は、核酸プローブ、1つ以上の核酸プライマー、及び抗体からなる群から選択される試薬を使用することを含む。いくつかの実施形態では、発現レベルの測定は、RNA転写産物のレベルを測定することを含む。
【0018】
特定の実施形態では、本開示は、BCを有する対象における補助放射線療法からの恩恵を予後及び/または予測する方法を提供し、方法は、a)AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子について、対象由来の試料中の発現レベルを取得するか、または取得しており、b)対象が発現レベルに基づいてがん再発のリスクが低いか高いか、及び/または発現レベルに基づいて補助放射線療法から恩恵を受ける可能性が高いか、もしくは恩恵が得られそうにないかを判定し、それによって対象における補助放射線療法からの恩恵を予後及び/または予測することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、対象が補助放射線療法から恩恵を得る可能性が低いと識別される場合に、補助放射線療法を中止し、及び/または補助放射線療法以外のがん治療を投与することをさらに含む。他の実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の発現レベルは、対照と比較して増加または減少し得る。いくつかの実施形態では、生体試料中で、1つ以上の遺伝子のすべての発現レベルを測定する。いくつかの実施形態では、本方法は、補助放射線療法で対象を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、補助放射線療法以外のがん療法で対象を治療することをさらに含む。さらに他の実施形態では、本方法は、乳房切除術、放射線ブースト、または補助全身療法で対象を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態では、乳房温存手術(BCS)後の対象への放射線療法を差し控える。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の年齢に基づいて対象ががん再発のリスクが低いと判定するか、または対象の年齢に基づいて対象ががん再発のリスクが低くないと判定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。他の実施形態では、対象はがん再発のリスクが高く、放射線療法で治療される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は:a)AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子について、対象由来の試料中の発現レベルを取得するか、または取得しており、b)発現レベルに基づいて、対象ががん再発のリスクが低く、補助放射線療法による治療から恩恵を得る可能性が低いと判定するか、または発現レベルに基づいて、対象ががん再発のリスクが高くなく、補助放射線療法による治療から恩恵を得る可能性が高いと判定することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本方法は、対象が補助放射線療法から恩恵を得る可能性が低いと識別される場合に、補助放射線療法以外のがん療法を投与することをさらに含む。他の実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の発現レベルは、対照と比較して増加または減少し得る。いくつかの実施形態では、表5から選択される遺伝子のすべての発現レベルを生体試料中で測定する。さらに他の実施形態では、本方法は、乳房切除術、放射線ブースト、または補助全身療法で対象を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態では、乳房温存手術(BCS)後の対象への放射線療法を差し控える。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の年齢に基づいて対象ががん再発のリスクが低いと判定するか、または対象の年齢に基づいて対象ががん再発のリスクが低くないと判定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は:a)AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子について、対象由来の試料中の発現レベルを取得するか、または取得しており、b)発現レベルに基づいて、対象ががん再発のリスクが低く、補助放射線療法による治療から恩恵を得る可能性が低いと判定し、c)発現レベルに基づいて、対象が補助放射線療法から恩恵を得る可能性が低いと識別される場合に、補助放射線療法以外のがん治療を投与することを含む、対象における乳癌の治療方法を提供する。他の実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の発現レベルは、対照と比較して増加または減少し得る。いくつかの実施形態では、生体試料中で、全遺伝子の発現レベルを測定する。さらに他の実施形態では、本方法は、乳房切除術、放射線ブースト、または補助全身療法で対象を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態では、乳房温存手術(BCS)後の対象への放射線療法を差し控える。いくつかの実施形態では、方法は、対象の年齢に基づいて対象が癌再発のリスクが低いと判定すること、または対象の年齢に基づいて対象が癌再発のリスクが低くないと判定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示の方法及びゲノム分類器で使用される複数の遺伝子は、前方勾配2、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(AGR2)、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(B4GALT1)、クローディン7(CLDN7)、エズリン(EZR)、Gタンパク質サブユニットγ11(GNG11)、Junがん原遺伝子(JUN)、マトリックスメタロペプチダーゼ11(MMP11)、CAMP依存性プロテインキナーゼ阻害剤β(PKIB)、ホスホリボシルピロリン酸シンテターゼ1(PRPS1)、プロテアソーム26Sサブユニット、非ATPase 10(PSMD10)、SH3ドメイン結合タンパク質5(SH3BP5)、溶質キャリアファミリー16メンバー3(SLC16A3)、溶質キャリアファミリー7メンバー11(SLC7A11)、分泌リンタンパク質1(SPP1)、トロポニンT1、遅骨格型(TNNT1)、及びユビキチン結合酵素E2 E1(UBE2E1)からなる群から選択される。
【0022】
特定の実施形態では、対象は、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)乳癌、ステージI~II乳癌、もしくはリンパ節陰性乳癌を有し、及び/または対象は閉経後である。
【0023】
そのような方法は、特定の試料または生物学的試料の種類に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、試料または生体試料は、組織試料、体液試料、血液試料、器官分泌物試料、CSF試料、唾液試料、血漿試料、血清試料、または尿試料である。いくつかの実施形態では、試料は、乳房組織、または周辺組織、乳房生検、腫瘍試料、または乳房細胞もしくは乳癌細胞を含む組織を含み得る。
【0024】
特定の実施形態では、表5から選択される遺伝子由来の配列を含む核酸、またはその相補体を、分析前に生体試料から単離及び/または精製及び/または増幅する。いくつかの実施形態では、核酸はRNA転写産物を含み得る。
【0025】
他の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルを、in situハイブリダイゼーション法、PCRベースの方法、アレイベースの方法、免疫染色法、RNAアッセイ法、またはイムノアッセイ法によって測定する。他の実施形態では、遺伝子発現のレベルを、1つ以上の試薬を使用して測定する。特定の実施形態では、1つ以上の試薬は、核酸プローブ、核酸プライマー、及び/または抗体である。他の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルの測定は、核酸のレベルを測定することを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNA転写産物である。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが、対照と比較して低下している。他の実施形態では、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが、対照と比較して増加している。
【0027】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を、補助放射線療法による対象の治療前に実施する。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を、乳房切除術、放射線ブースト、または補助全身療法による対象の治療の前に実施する。
【0028】
他の実施形態では、本方法は、対象のリスクスコアを計算し、対象ががん再発のリスクが低く、生体試料中のAGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子のリスクスコア及び発現レベルの両方に基づいて補助放射線療法から恩恵を得る可能性が低いと識別される場合、対象の補助放射線療法を差し控え、補助放射線療法以外のがん療法を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0029】
1つ以上のバイオマーカー遺伝子の発現レベルの有意性を、例えば、T検定、P値、KS(Kolmogorov Smirnov)P値、精度、精度P値、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、感度、特異性、AUC、AUC P値(Auc.pvalue)、Wilcoxon検定P値、中央比(MFD)、カプランマイヤー(KM)曲線、生存AUC(survAUC)、カプランマイヤーP値(KM P値)、単変量解析オッズ比P値(uvaORPval)、多変量解析オッズ比P値(mvaORPval)、単変量解析ハザード比P値(uvaHRPval)及び多変量解析ハザード比P値(mvaHRPval)を使用して評価してもよい。1つ以上の標的の発現レベルの有意性は、AUC、AUC P値(Auc.p値)、Wilcoxon検定P値、中央比(MFD)、カプランマイヤー(KM)曲線、生存AUC(survAUC)、単変量解析オッズ比P値(uvaORPval)、多変量解析オッズ比P値(mvaORPval)、カプランマイヤーP値(KM P値)、単変量解析ハザード比P値(uvaHRPval)または多変量解析ハザード比P値(mvaHRPval)を含む群から選択される2つ以上のメトリクスに基づき得る。
【0030】
別の態様では、本開示は、BCを有する対象の予後、及び対象を放射線療法で治療するかどうかを判断するためのプローブセットを含み、プローブセットは、複数の標的核酸を検出するための複数のプローブを含み、複数の標的核酸は、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子の1つ以上の遺伝子配列、またはその相補配列を含む。プローブは、検出を容易にするために検出可能に標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、予後には、がん再発の予後が含まれる。さらなる実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0031】
別の態様では、本開示は、BCを有する対象の予後、及び対象を放射線療法で治療するかどうかを判断するための系を含み、系は、a)本明細書に記載のプローブセット、及びb)BCを有する対象由来の生体試料中の複数のプローブにハイブリダイズした複数の標的核酸の発現レベルまたは発現特性を分析し、その発現レベルまたは発現特性に基づいて、対象が、がん再発のリスクが低いかどうか、そして放射線療法で治療されるべきかどうかを判定するためのコンピュータモデルまたはアルゴリズムを含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、乳癌を有する対象の予後、及び対象を補助放射線療法で治療するかどうかを判定するためのキットを含み、キットは、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定するための薬剤を含む。他の実施形態では、キットは、複数の遺伝子の発現レベルを測定するための1つ以上の薬剤(例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー、またはマイクロアレイ)、検査するためにヒトから単離された乳癌細胞を含む生体試料を保持するための容器、及び/または薬剤を生体試料または生体試料の一部と反応させて、対象が、乳癌再発のリスクが低く、補助放射線療法による治療から恩恵を受ける可能性が高いかどうかを判断するための印刷された説明書を含み得る。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。他の実施形態では、薬剤を、別個の容器にパッケージングする。さらに他の実施形態では、キットは、1つ以上の対照参照試料または遺伝子発現を測定するための他の試薬(例えば、PCR、RT-PCR、マイクロアレイ分析、ノーザンブロット、イムノアッセイ、または免疫組織化学的検査を行うための試薬)をさらに含む。別の実施形態では、キットは、以下の遺伝子のすべての発現レベルを測定するための薬剤を含む:AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1。特定の実施形態では、キットは、複数の標的核酸を検出するための本明細書に記載のプローブセットを含み、複数の標的核酸は、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1、またはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の1つ以上の遺伝子配列、またはその相補配列を含む。
【0033】
他の実施形態では、キットは系をさらに含み、系は:a)複数の標的核酸を検出するための複数のプローブを含むプローブセットであって、複数の標的核酸が、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される1つ以上の遺伝子の1つ以上の遺伝子配列、またはその相補配列を含む、前記プローブセット、ならびにb)乳癌を有する対象由来の生体試料中の複数のプローブにハイブリダイズした複数の標的核酸の発現レベルまたは発現特性を分析し、その発現レベルまたは発現特性に基づいて、対象が、乳癌再発のリスクが低く、補助放射線療法による治療から恩恵を受ける可能性が低いかどうかを判定するためのコンピュータモデルまたはアルゴリズムを含む。いくつかの実施形態では、がんの再発は、局所再発もしくは局所領域再発または遠隔再発(転移)である。
【0034】
本開示のこれらの、及び他の実施形態は、本明細書の開示を考慮すれば当業者には容易に想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】SweBCG91-RTにおけるトレーニング及び検証コホートの選択に関する図
図2】Princess Margaret検証コホートの選択に関する図。
図3】モデルに含める遺伝子の選択に関する図。
図4A】POLARによって低リスクに分類された患者に対するSweBCG91-RT検証コホートにおける、補助放射線療法(RT)の存在下または非存在下での局所領域再発の累積発生率。ハザード比及びp値は、原因別Cox比例ハザード回帰モデルを使用して計算する。
図4B】POLARによって高リスクに分類された患者に対するSweBCG91-RT検証コホートにおける、補助放射線療法(RT)の存在下または非存在下での局所領域再発の累積発生率。ハザード比及びp値は、原因別Cox比例ハザード回帰モデルを使用して計算する。
図5A】POLARによって低リスクに分類された患者に対する、補助放射線療法(RT)の存在下または非存在下でのPrincess Margaretコホートにおける局所領域再発の累積発生率。ハザード比及びp値は、原因別Cox比例ハザード回帰モデルを使用して計算する。
図5B】POLARによって高リスクに分類された患者に対する、補助放射線療法(RT)の存在下または非存在下でのPrincess Margaretコホートにおける局所領域再発の累積発生率。ハザード比及びp値は、原因別Cox比例ハザード回帰モデルを使用して計算する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
複数の第III相無作為化臨床試験では、乳房温存手術(BCS)後の全乳房放射線療法(RT)が局所再発(LRR)の減少に有益であることが一貫して証明されており、RTは早期浸潤性乳癌の女性に対する標準治療とみなされている(Malmstrom,P.et al. European journal of cancer(Oxford,England:1990)39,1690-1697(2003);Fyles,A.W.et al. The New England journal of medicine 351,963-970(2004);Holli,K.,et al.,Br J Cancer 84,164-169(2001);Forrest,A.P.et al. Lancet 348,708-713(1996);Fisher,B.et al. Journal of clinical oncology:official journal of the American Society of Clinical Oncology 20,4141-4149(2002);Liljegren,G.et al. J Clin Oncol 17,2326-2333(1999);Veronesi,U.et al. Annals of oncology:official journal of the European Society for Medical Oncology/ESMO 12,997-100(2001);Clark,R.M.et al. J Natl Cancer Inst 88,1659-1664(1996))を参照のこと。Oxford Early Breast Cancer Trialists’ Group(EBCTCG)のメタ分析では、RTを受けた患者の10年後の局所再発の相対リスクが30%から10%へ3分の2減少することが示され、これは延命効果に換算すると15年で約5%であった(Clarke,M.et al. Lancet 366,2087-2106(2005);Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative,Lancet 378,1707-1716(2011)を参照のこと)。これらのデータからは、局所領域疾患制御の改善に加えて、補助放射線療法の応答と恩恵が不均一であることも示された。効果の低い全身化学療法と内分泌療法の使用が限定的だった過去の時代でも、最大70%の女性がRTを受けなくても局所再発しなかったが、どの女性が補助放射線療法を控えても安全であり得るかを識別するための臨床ツールは依然として不足している。
【0037】
高齢、小さな腫瘍サイズ、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌などの臨床リスク因子は、LRRのリスクの低さと関連している(Fredriksson,I.et al. The British journal of surgery 90,1093-1102(2003)を参照のこと)。これらの機能を使用して、BCS後に放射線治療を省略してもよい女性を特定する試みは、様々な転帰をもたらした。CALGB9343試験には、小型ER+乳癌に罹患し、断端陰性で切除された70歳以上の女性が登録され、次いで女性たちは無作為化されて、全乳房RT及びタモキシフェンを5年間受けるか、またはタモキシフェンのみを受けた(Hughes,K.S.et al. Journal of clinical oncology:official journal of the American Society of Clinical Oncology 31,2382-2387(2013))。600人を上回る女性を対象としたこの試験では、乳房温存率に影響を与えることなく、RTによって10年後のLRRリスクが10%から2%に低下した。同様に、PRIME II試験には、断端陰性で切除された65歳以上の小型ER+乳がん患者が含まれ、内分泌療法を受け、RTか否かに無作為化された。最近報告された10年間の結果では、RTの追加によってIBTRが9.8%から0.9%に低下することが示された(Kunkler,I.H.et al. The lancet oncology 16,266-273(2015)を参照のこと)。RTで治療されなかった患者の10年後の局所再発率は両方の試験で10%であったため、放射線療法の追加によって10年後のリスクが相対的に80~90%も低下していることは、米国で平均寿命の中央値が80歳を超えている女性において、RTを省略できないほど有意であり得ると主張することができる。これまでのところ、補助乳房放射線照射から恩恵が得られないことを予測するサブタイプまたは臨床病理学的変数は診療に組み込まれておらず、このことから、放射線照射を省略するとの決定を下すことは臨床的に困難である(Killander,F.et al. European journal of cancer(Oxford,England:1990)67,57-65(2016);Sjostrom,M.et al. Journal of Clinical Oncology 35,3222-3229(2017);Liu,F.F.et al. Journal of clinical oncology:official journal of the American Society of Clinical Oncology 33,2035-2040(2015)を参照のこと)。
【0038】
乳癌女性における全身化学療法から恩恵を受ける尤度を判定する際のそのようなアプローチの成功を受けて、ゲノム情報に基づいたリスク層別化の使用に対する関心が近年高まっている。そのような分子情報に基づいた検査により、乳癌女性の転帰が予後され、及び/または以前の臨床試験で化学療法の恩恵が予測されることが示されている(Albain,K.S.et al. The Lancet Oncology 11,55-65,(2010);Cardoso,F.et al. New England Journal of Medicine 375,717-729,(2016);Dowsett,M.et al. Journal of Clinical Oncology 28,1829-1834(2010);Dowsett,M.et al. Journal of Clinical Oncology 31,2783-2790(2013);Paik,S.et al. The New England journal of medicine 351,2817-2826,(2004);Sparano,J.A.et al. New England Journal of Medicine 373,2005-2014(2015)を参照のこと)。局所再発または放射線感受性のシグネチャーを構築する試みがこれまで行われてきたが、初期段階の浸潤性乳癌において放射線治療を省略してもよい患者を選択するために広く使用されているシグネチャーは存在しない(Cui,Y.,Li,B.,Pollom,E.L.,Horst,K.C.& Li,R. Clinical cancer research:an official journal of the American Association for Cancer Research 24,4754-4762(2018);Eschrich,S.A.et al. International journal of radiation oncology,biology,physics 75,489-496(2009);Sjostrom,M.et al. Journal of Clinical Oncology 37,3340-3349,(2019);Speers,C.et al. Clinical cancer research:an official journal of the American Association for Cancer Research 21,3667-3677(2015);Tramm,T.et al. Clinical cancer research:an official journal of the American Association for Cancer Research 20,5272-5280(2014)を参照のこと)。27遺伝子の臨床ゲノムシグネチャーであるARTICは、LRRの予後及びRTからの恩恵の予測として、以前に開発され、検証された。このシグネチャーは、LRRのリスクが高く、放射線療法からの恩恵が少ない患者を特定することができたため、強化された治療が必要な患者を特定するために使用され得る。ARTICによって低リスクと識別された患者は、RTからの恩恵が大きく、RTを省略するのに適切な候補者ではなかった。全身療法後の遠隔再発のリスクを推定するために設計されたシグネチャーを、RTの回避に使用することが提案されており、これらは進行中の臨床試験に関して試験されているところであるが、これらの試験は、数年間は成熟することはない(Speers,C.& Pierce,L.J. Current Breast Cancer Reports 12,255-265(2020)を参照のこと)。
【0039】
本発明の実施形態を開発する過程で行われた実験(実施例Iを参照のこと)では、リンパ節転移陰性ステージI~IIの浸潤性乳癌(BC)を有する女性をBCS後に±RTに無作為化する試験であるSweBCG91-RT、及びT1~T2リンパ節転移陰性BCを有する50歳以上の女性をBCS後に±RTに無作為化するPrincess Margaretコホートの分析を実施した。SweBCG91-RT試験の患者に対しては補助全身療法で治療しなかったが、Princess Margaret試験の患者に対してはタモキシフェンで治療した。腫瘍のトランスクリプトーム全体にわたるプロファイリングを、Affymetrix Human Exon 1.0 STマイクロアレイを使用して実施した。SweBCG91-RTコホートを、患者243人のトレーニングコホートと患者354人の検証コホートに分割し、16遺伝子シグネチャー(AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1;表5及び実施例Iを参照のこと)を、Profile for the Omission of Local Adjuvant Radiation(POLAR)と呼ばれるエラスティックネット回帰を使用して、LRRを予測するようにトレーニングした。POLAR低リスクに分類され、RTで治療しなかった患者の10年LRRは6%であったが、POLAR低リスク患者にはRTによる有意な恩恵はなく、POLAR高リスクに分類された患者では、RTで治療した場合にLRRのリスクが有意に減少したことが示された。これらの結果は、LRR生物学に基づく新規POLARゲノムシグネチャーが、RTを受けていないにもかかわらずLRRのリスクが低い患者、したがってRTを省略してもよい主要な候補を識別することができることを示している。
【0040】
したがって、本開示は、BC再発(例えば、LRR)の個別の予後評価を提供するための系及び方法に関する。この系及び方法は、患者試料からの遺伝子発現を測定して、RTの恩恵を受けにくい対象を特定する遺伝子発現シグネチャーを作成することを含む。
【0041】
特定の実施形態では、本発明は:a)乳癌(BC)に罹患しているか、または罹患するリスクがあるヒト患者由来の生体試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定し、その場合、1つ以上の遺伝子は、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択され、b)1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、患者のBC再発の尤度を判定することを含む方法を提供する。
【0042】
特定の実施形態では、本開示は、(a)患者から採取した試料において、以下の遺伝子:AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1のうちの1つ以上の発現レベルを測定し、(b)1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて患者のBC再発の尤度を予測することを含む、BCに罹患している患者、罹患するリスクがある患者のBC再発の尤度の予測方法を提供し、その場合、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現の増加は、BC再発リスクの増加と相関し、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現の増加は、乳癌再発リスクの低下と相関する。
【0043】
特定の実施形態では、本開示は、1つ以上の遺伝子/遺伝子標的の発現に基づく分析を使用して、対象におけるBCの状態または転帰を診断、予測、及び/またはモニタリングするための系及び方法を開示する。一般に、この方法は、(a)対象由来の試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを取得し、(b)1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて対象のがん再発リスクを判定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法はまた、1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、対象ががん再発のリスクがあると識別される場合にRTを投与するか、または1つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、対象ががん再発のリスクが低いと識別される場合にRTを差し控えることを含み得る。
【0044】
特定の実施形態では、対象が乳癌の再発リスクが低いか高いかを判定するための方法を提供する。一般に、本方法は:(a)対象由来の乳癌細胞を含む試料を提供し、(b)試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルをアッセイし、(c)複数の標的の発現レベルに基づいて、対象が乳癌の再発リスクが低いかどうかを判定することを含む。特定の実施形態では、本方法は、補助放射線療法、化学療法、または内分泌療法で対象を治療するかどうかを判定することをさらに含み得る。例えば、本開示の方法に従って乳癌の再発リスクが低いと識別された対象は、補助放射線療法に応答する可能性が低いか、または応答しない可能性が高い可能性があり、一方、乳癌の再発リスクが高いと識別された対象は、補助放射線療法に応答する可能性がより高い可能性がある。
【0045】
特定の実施形態では、本開示は、BC再発の個別の予後評価、及びRTから恩恵を受ける可能性が低い対象の特定を提供するための系及び方法に関する。本発明のそのような系及び方法は、BC再発のリスクを評価する特定の方法に限定されない。いくつかの実施形態では、BC再発リスクの評価を、患者の腫瘍に関する重要で理解しやすい情報を与える遺伝子発現シグネチャーの形式で提供する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明の系及び方法は、患者試料由来の遺伝子の発現を測定し、分析して、遺伝子発現シグネチャーを作成することを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現シグネチャーを、理解しやすいスコアまたはリスクカテゴリとして提供する。例えば、遺伝子発現シグネチャーを数値のリスクスコアとして提供してもよく、またはリスクスコアを使用して患者をBC再発リスクのカテゴリに割り当ててもよい。例えば、患者を、BC再発リスクが高いか低いかで分類してもよい。他の実施形態では、リスクカテゴリは、非常に低いリスク、低いリスク、中程度に低いリスク、平均もしくは中間のリスク、中程度に高いリスク、高いリスク、または非常に高いBC再発リスクとして特徴付けられ得る。リスクスコアまたはリスクカテゴリにより、検査結果について患者と話すのが容易かつ効率的になり得ると共に、患者の結果を解釈するのに必要な時間を短縮することにより、医師が治療決定をより迅速に行う助けにもなり得る。
【0047】
したがって、本発明の方法は、特定の実施形態において、乳癌の臨床管理に有用なリスクスコアの作成を含む。遺伝子発現シグネチャーにより、例えば、疾患再発のリスクが予測され得、そのため、最適な治療のコースを選択するために遺伝子発現シグネチャーを使用してもよい。例えば、リスクスコアを使用して、再発リスクが高く、したがってRTの適切な候補となる患者を特定してもよい。あるいは、リスクスコアを使用して、再発リスクが低い患者、したがってRTを省略するのに適した患者を特定してもよい。したがって、リスクスコアは、患者を分類し、適切な治療法を選択するのに有用であり得る。
【0048】
例えば、いくつかの実施形態では、選択された遺伝子またはその組み合わせの発現測定値を、線形または非線形モデルまたはアルゴリズムに定式化し、尤度またはリスクスコアに変換してもよい。
【0049】
特定の実施形態では、アッセイする各遺伝子に、BC再発に対する遺伝子の個別の相関に基づいて重みまたは係数を割り当てる線形アルゴリズムを使用して、尤度またはリスクスコアを計算してもよい(表8を参照のこと)。次いで、アッセイした1つ以上の遺伝子の重み付けされた発現レベルを合計して、尤度またはリスクスコアを生成してもよい。一実施形態では、単一遺伝子の発現レベルをアッセイする場合、その遺伝子の重み付けされた発現レベルをリスクスコアとみなし、これを用いて患者のリスクカテゴリを決定してもよい。
【0050】
特定の実施形態では、得られるスコアは数値を含んでいてもよく、-5.0~10.0、または-4.0~9.0、または-3.0~8.0、または-2.0~7.0、または-1.0~6.0、または-0.5~5.0、または-0.5~4.0、または-0.5~3.0、または0~2.5、または0.5~2.0、または1.0~1.5の範囲であってもよい。さらなる実施形態では、スコアは、例えば、-5.0、-4.5、-4.0、-3.5、-3.0、-2.5、-2.0、-1.5、-1.0、-0.95、-0.90、-0.85、-0.80、-0.75、-0.70、-0.65、-0.60、-0.55、-0.50、-0.45、-0.40、-0.35、-0.30、-0.25、-0.20、-0.15、-0.10、-0.05、0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0などの数値を含み得る。
【0051】
他の実施形態では、リスクスコアを所定の閾値と比較して、患者がBC再発について高リスク(すなわち、所定の閾値を上回るスコアを有する)であるか、または低リスク(すなわち、所定の閾値を下回るスコアを有する)であるかを判定してもよく、したがってRTから恩恵を受ける可能性があるかどうかを判定してもよい。特定の実施形態では、所定の閾値は0であってもよく、その結果、正のリスクスコアを有する患者は高リスクとみなされ、負のリスクスコアを有する患者は低リスクとみなされる。別の実施形態では、所定の閾値は、-1.0~5.0の範囲、例えば、-0.5~3.0、0~2.0、0~1.0、0.25~0.75、0.30~0.70、0.40~0.60、0.50~0.60、0.55~0.65、0.55~0.60、及び0.60~0.65の範囲内にあってもよい。さらなる実施形態では、所定の閾値は、-1.0、-0.90、-0.80、-0.70、-0.60、-0.55、-0.50、-0.45、-0.40、-0.35、-0.30、-0.25、-0.20、-0.15、-0.10、-0.05、0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.5、2.0、2.5、または3.0を含み得る。
【0052】
さらなる実施形態では、再発のリスクまたは尤度は、非常に低いリスク、低いリスク、中程度に低いリスク、平均もしくは中間のリスク、中程度に高いリスク、高いリスク、または非常に高いリスクとして特徴付けられ得る。そのような実施形態では、リスクスコアを複数の所定の閾値と比較して、患者が、BC再発の非常に低いリスク、低いリスク、中程度に低いリスク、平均もしくは中間のリスク、中程度に高いリスク、高いリスク、または非常に高いリスク、またはこれらのリスクレベルのサブセットまたは組み合わせにあるかどうかを判定してもよい。例えば、リスクスコアを複数の所定の閾値と比較して、患者が、BC再発の低いリスク、平均もしくは中間のリスク、または高いリスクにあるかどうかを判定してもよい。別の実施形態では、リスクスコアを複数の所定の閾値と比較して、患者が、BC再発の非常に低いリスク、低いリスク、平均もしくは中間のリスク、高いリスク、または非常に高いリスクにあるかどうかを判定してもよい。リスクスコアを複数の所定の閾値と比較するそのような場合、所定の閾値は、-1.0~5.0、例えば-0.5~3.0、0~2.0、0~1.0、0.25~0.75、0.30~0.70、0.40~0.60、0.50~0.60、0.55~0.65、0.55~0.60、0.60~0.65の範囲内にあってもよい。さらなる実施形態では、所定の閾値は、-1.0、-0.90、-0.80、-0.70、-0.60、-0.55、-0.50、-0.45、-0.40、-0.35、-0.30、-0.25、-0.20、-0.15、-0.10、-0.05、0、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.5、2.0、2.5、もしくは3.0またはその組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、複数の所定の閾値または閾値の範囲のそれぞれは、別個であってもよく、別個のリスクレベルに関連付けられていてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リスクまたは尤度スコアを、容易に解釈される尺度にスケーリングまたは調整してもよい。例えば、リスクスコアを、1~100の値にスケーリングまたは調整してもよい。そのような容易に解釈できる尺度により、治療の決定、及び検査結果や治療の選択肢について患者と話し合うことが容易かつ効率的になり得る。
【0054】
特定の実施形態では、リスクレベルを決定するための所定の閾値を、例えば、最終的な尺度を得るために行われた調整と一致または対応するように、同様にスケーリングまたは調整してもよい。例えば、リスクスコアを1~100の値の尺度にスケーリングまたは調整する場合、所定の閾値または複数の所定の閾値を、閾値の値が1~100のスケール内に収まるように、それに応じてスケーリングまたは調整してもよい。
【0055】
本発明の方法はさらに、発現シグネチャーまたはリスクスコアを他の臨床因子と組み合わせて、単一のリスク評価を与えることを含み得る。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「BC再発のリスク」または「BC再発の尤度」は、長期間(例えば、1か月、1年、5年、10年など)にわたるBC再発の統計的確率(例えば、尤度)を指す。いくつかの実施形態では、BC再発のリスクは、患者が首尾よく介入(例えば、外科的介入)を受け、BC及び/または進行性のがん細胞を有さないことを特徴とするベースラインを伴う。したがって、再発のリスクまたは尤度には、がんが何らかの形で再発する尤度が含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現レベルの増加は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の増加と相関する。
【0058】
いくつかの実施形態では、AGR2、CLDN7、EZR、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1の発現レベルの低下は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の減少と相関する。
【0059】
いくつかの実施形態では、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現レベルの増加は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の減少と相関する。
【0060】
いくつかの実施形態では、B4GALT1、GNG11、JUN、及びSH3BP5の発現レベルの低下は、それぞれ、乳癌再発のリスクまたは尤度の増加と相関する。
【0061】
そのような系及び方法は、対象からの特定のタイプまたは種類の試料の使用に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、試料または生体試料は、組織試料、体液試料、血液試料、器官分泌物試料、CSF試料、唾液試料、血漿試料、血清試料、または尿試料である。いくつかの実施形態では、試料は、乳房組織、または周辺組織、乳房生検、腫瘍試料、または乳房細胞もしくは乳癌細胞を含む組織を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、対象はヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は、BCを発症するリスクのあるヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は、BCを発症するリスクのある女性のヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は、BCと診断されたヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は、BCと診断された女性のヒト対象である。対象は、しこりや塊の検出を含む様々な症状により、がんを疑われ得る。いくつかの実施形態では、がんは、初期段階の乳癌、すなわち完全に乳房内に含まれるがんである。
【0063】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現分析または比較を、K平均クラスタリングアルゴリズムなどの教師なしの階層的クラスタリングアルゴリズムを用いて実行してもよい。クラスタリングアルゴリズムは、同じグループ(クラスターと呼ばれる)内のオブジェクトが他のグループ(クラスター)のオブジェクトよりも互いに類似するように、オブジェクトのセットをクラスター化またはグループ化するアルゴリズムである。クラスタリングアルゴリズムは、患者試料由来のRNA発現レベルを、がんの1つ以上のステージで予想されるRNA発現レベルでクラスタリングし得る。BC再発のリスクが低い患者またはBC再発のリスクが高い患者で予想されるRNA発現レベルは、既知の転帰に関連する1つ以上の腫瘍試料に由来し得る。RNA発現レベルを、発現の類似性に基づいてクラスター化してもよい。いくつかの実施形態では、クラスタリングアルゴリズムは、RNA発現レベルを、既知の転帰に関連する別個のグループにクラスタリングする。グループは、予後を示す一連の転帰を反映している場合がある。
【0064】
そのような系及び方法は、遺伝子発現を測定及び/または決定するための特定の方法または技術に限定されない。本明細書で使用される「遺伝子発現」とは、生体試料における遺伝子の相対的な発現レベル及び/または発現パターンを指す。
【0065】
遺伝子発現を測定する技術は当技術分野で公知である。実際、遺伝子発現を測定するための任意の既知の技術が企図され、本明細書に援用される。遺伝子発現は、PCRベースの技術(例えば、リアルタイムPCR)、ゲル電気泳動技術、クロマトグラフィー技術、抗体ベースの技術、遠心分離技術、またはそれらの組み合わせを含む技術を含むがこれらに限定されない任意の適切な技術によって決定することができる。遺伝子発現の測定方法は、組織から単離されたRNAから作られたcDNAの量を測定することを含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子発現測定技術は、遺伝子チップを使用した、または使用しない遺伝子発現アッセイを含む(Onken et al.,J Molec Diag 12(4):461-468(2010);及びKirby et al.,Adv Clin Chem 44:247-292(2007)。いくつかの実施形態では、遺伝子発現測定技術は、affymetrix遺伝子チップ及びRNAチップ、ならびに遺伝子発現アッセイキット(例えば、Applied Biosystems(商標)TaqMan(登録商標)Gene Expression Assays)を含む。
【0066】
生体試料における遺伝子発現レベルを決定するための追加の技術には、例えば、RT-PCR(米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(Barany,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189-93,1991)、自己持続的配列複製法(Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-78,1990)、転写増幅系(Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86:1173-77,1989)、Q-Beta Replicase(Lizardi et al.,Bio/Technology 6:1197,1988)、ローリングサークル複製法(米国特許第5,854,033号)、または任意の他の核酸増幅法による核酸増幅のプロセスと、当業者に周知の技術を使用したその後の増幅分子の検出が含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、定量的アレル特異的リアルタイム標的及びシグナル増幅(QuARTS)アッセイにより、遺伝子発現を測定する。各QuARTSアッセイでは3つの反応が連続して生じ、一次反応には増幅(反応1)及び標的プローブ切断(反応2)が、二次反応にはFRET切断及び蛍光シグナル生成(反応3)が含まれる。標的核酸が特定のプライマーで増幅される場合、フラップ配列を有する特定の検出プローブが、アンプリコンに緩く結合する。標的結合部位に特異的侵入型オリゴヌクレオチドが存在することにより、5’ヌクレアーゼ、例えばFEN-1エンドヌクレアーゼが、検出プローブとフラップ配列との間を切断することによってフラップ配列を放出させる。フラップ配列は、対応するFRETカセットの非ヘアピン部分に相補的である。したがって、フラップ配列は、FRETカセット上で侵入型オリゴヌクレオチドとして機能し、FRETカセットフルオロフォアとクエンチャーとの間に切断をもたらし、蛍光シグナルを生成する。切断反応は、標的ごとに複数のプローブを切断することができ、それによりフラップごとに複数のフルオロフォアを放出して指数関数的なシグナル増幅をもたらす。QuARTSは、異なる色素を有するFRETカセットを使用することにより、単一反応ウェル中で複数の標的を検出することができる。例えば、Zou et al.(2010)“Sensitive quantification of methylated markers with a novel methylation specific technology” Clin Chem 56:A199)、ならびに米国特許第8,361,720号、第8,715,937号;第8,916,344号;及び9,212,392号を参照のこと(これらのそれぞれは、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される)。
【0068】
特定の実施形態では、試料間の誤差または変動を最小限に抑えるために、遺伝子発現レベルを正規化してもよい。したがって、正規化は、試料間の遺伝子発現の正確な比較に有用であり、これは、試料ごとの遺伝子発現が、試料の回収及び処理中に発生する非生物学的変数の影響を受ける可能性があり、真のシグナルにノイズが加わる可能性があるためである。アッセイでは、関連する条件下で発現レベルに有意差がない特定の正規化遺伝子の発現を組み込むことによって正規化することができる。本明細書に開示される例示的な正規化遺伝子には、ハウスキーピング遺伝子が含まれる。(E.Eisenberg,et al.,Trends in Genetics 19(7):362-365(2003)を参照のこと)。正規化は、アッセイした遺伝子またはその大サブセットのすべての平均または中央値シグナル(CtまたはCp)に基づき得る(包括的正規化アプローチ)。一般に、参照遺伝子とも呼ばれる正規化遺伝子は、非がん性乳房組織と比較してBCで有意に異なる発現を示さないことが知られており、様々な試料及びプロセス条件によって有意な影響を受けず、したがって正規化により外来の影響を取り除く遺伝子であるべきである。例えば、本明細書に開示される方法において有用な参照遺伝子には、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβ-アクチン、または当技術分野で公知の任意の他の参照遺伝子を含むが、これらに限定されない遺伝子発現パターンを正規化するために当技術分野で頻繁に使用される遺伝子が含まれ得る。当業者であれば、多くの方法で正規化を達成してもよく、上記の技術は例示のみを目的としており、網羅的なものではないことを認識するであろう。
【0069】
いくつかの実施形態では、試料中の1つ以上の遺伝子標的の発現レベルをアッセイすることは、試料をマイクロアレイに適用することを含み得る。
【0070】
特定の実施形態では、マイクロアレイによってアッセイした遺伝子発現を、単一チャネルアレイ正規化(SCAN)法を使用して正規化してもよい。SCAN法は、マイクロアレイ試料をグループとして処理するのではなく、単一試料技術を利用するため、グループ処理によって生じ得るバイアスが回避される。本方法では、蛍光強度に対するプローブヌクレオチド組成の影響をモデル化し、プローブ及びアレイ特異的なバックグラウンドノイズを除去することにより、各試料を個別に正規化する。(Piccolo SR,Sun Y,Campbell JD,Lenburg ME,Bild AH,Johnson WE(2012). “A single-sample microarray normalization method to facilitate personalized-medicine workflows.” Genomics,100(6),337-344)。
【0071】
いくつかの場合では、1つ以上の遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、アルゴリズムの使用を含む。このアルゴリズムを使用して、ゲノム分類器を生成してもよい。あるいは、分類器はプローブ選択領域を含み得る。いくつかの場合では、複数の標的の発現レベルをアッセイすることは、1つ以上の遺伝子を検出及び/または定量することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子標的の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子標的の発現レベルをアッセイすることは、標的を定量化することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的に対して多重反応を行うことを含む。
【0072】
いくつかの例では、複数の遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的分析物を検出及び/または定量化することを含む。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的核酸を配列決定することを含む。いくつかの実施形態では、複数のバイオマーカー遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的核酸を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、複数のバイオマーカー遺伝子の発現レベルをアッセイすることは、複数の標的分析物に対して多重反応を行うことを含む。
【0073】
本明細書に開示される方法は、多くの場合、複数の標的の発現レベルをアッセイすることを含む。複数の標的は、タンパク質コード遺伝子または非タンパク質コード遺伝子のコード標的及び/または非コード標的を含み得る。タンパク質をコードする遺伝子構造は、エキソンとイントロンを含み得る。エキソンは、コード配列(CDS)及び非翻訳領域(UTR)をさらに含み得る。タンパク質をコードする遺伝子は、転写されてmRNA前駆体を生成し得、mRNA前駆体はプロセシングされて成熟mRNAを生成し得る。成熟mRNAは、翻訳されてタンパク質を生成し得る。
【0074】
非タンパク質コード遺伝子構造は、エキソンとイントロンを含み得る。通常、非タンパク質コード遺伝子のエキソン領域には主にUTRが含まれている。非タンパク質コード遺伝子は、転写されてmRNA前駆体を生成し得、mRNA前駆体はプロセシングされて非コードRNA(ncRNA)を生成し得る。
【0075】
コード標的は、エキソンのコード配列を含み得る。非コード標的は、エキソンのUTR配列、イントロン配列、遺伝子間配列、プロモーター配列、非コード転写産物、CDSアンチセンス、イントロンアンチセンス、UTRアンチセンス、または非コード転写産物アンチセンスを含み得る。非コード転写産物は、非コードRNA(ncRNA)を含み得る。
【0076】
そのような系及び方法は、特定の遺伝子の分析に限定されない。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子は、AGR2、B4GALT1、CLDN7、EZR、GNG11、JUN、MMP11、PKIB、PRPS1、PSMD10、SH3BP5、SLC16A3、SLC7A11、SPP1、TNNT1、及びUBE2E1から選択される。このようなシステム及び実施形態は、1つ以上の遺伝子の特定の数または組み合わせ(例えば、1個のみの遺伝子、1~2個の遺伝子、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、1~16、2~3、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、2~11、2~12、2~13、2~14、2~15、2~16、3~4、3~5、3~6、3~7、3~8、3~9、3~10、3~11、3~12、3~13、3~14、3~15、3~16、4~5、4~6、4~7、4~8、4~9、4~10、4~11、4~12、4~13、4~14、4~15、4~16、5~6、5~7、5~8、5~9、5~10、5~11、5~12、5~13、5~14、5~15、5~16、6~7、6~8、6~9、6~10、6~11、6~12、6~13、6~14、6~15、6~16、7~8、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、7~16、8~9、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、8~16、9~10、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、9~16、10~11、10~12、10~13、10~14、10~15、10~16、11~12、11~13、11~14、11~15、11~16、12~13、12~14、12~15、12~16、13~14、13~15、13~16、14~15、14~16、15~16、または16個の遺伝子の組み合わせ)の使用に限定されない。いくつかの実施形態では、方法は、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下の遺伝子の組み合わせを含む。他の実施形態では、方法は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、または15以上の遺伝子を含み得る。別の実施形態では、開示される方法の1つ以上の遺伝子は、16個の遺伝子からなる。
【0077】
いくつかの例では、1つ以上の遺伝子標的は、コード標的、非コード標的、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、コード標的は、エキソン配列を含む。他の例では、非コード標的は、非エキソン配列またはエキソン配列を含む。あるいは、非コード標的は、UTR配列、イントロン配列、アンチセンス、または非コードRNA転写産物を含む。いくつかの例では、非コード標的は、UTR配列またはイントロン配列と部分的に重複する配列を含む。非コード標的には、非エキソン転写産物及び/またはエキソン転写産物も含まれる。エキソン配列は、エキソン、UTR、またはその一部など、タンパク質コード遺伝子上の領域を含み得る。非エキソン配列は、タンパク質コード遺伝子、非タンパク質コード遺伝子、またはその一部上の領域を含み得る。例えば、非エキソン配列は、イントロン領域、プロモーター領域、遺伝子間領域、非コード転写産物、エキソンアンチセンス領域、イントロンアンチセンス領域、UTRアンチセンス領域、非コード転写産物アンチセンス領域、またはその一部を含み得る。他の例では、複数の標的が、非コードRNA転写産物を含む。
【0078】
遺伝子標的は、本明細書に開示される分類器から選択される1つ以上の標的を含み得る。1つ以上のモデルまたはアルゴリズムから分類器を生成してもよい。1つ以上のモデルまたはアルゴリズムは、単純ベイズ(NB)、再帰分割(Rpart)、ランダムフォレスト(RF)、サポートベクターマシン(SVM)、k最近傍(KNN)、高次元判別分析(HDDA)、線形モデル、またはそれらの組み合わせであってもよい。分類器は、0.60以上のAUCを有し得る。分類器は、0.61以上のAUCを有し得る。分類器は、0.62以上のAUCを有し得る。分類器は、0.63以上のAUCを有し得る。分類器は、0.64以上のAUCを有し得る。分類器は、0.65以上のAUCを有し得る。分類器は、0.66以上のAUCを有し得る。分類器は、0.67以上のAUCを有し得る。分類器は、0.68以上のAUCを有し得る。分類器は、0.69以上のAUCを有し得る。分類器は、0.70以上のAUCを有し得る。分類器は、0.75以上のAUCを有し得る。分類器は、0.77以上のAUCを有し得る。分類器は、0.78以上のAUCを有し得る。分類器は、0.79以上のAUCを有し得る。分類器は、0.80以上のAUCを有し得る。AUCは、その95%信頼区間(CI)に基づいて臨床的に有意であり得る。分類器の精度は、少なくとも約70%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約73%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約75%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約77%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約80%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約83%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約84%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約86%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約88%であり得る。分類器の精度は、少なくとも約90%であり得る。分類器のp値は、0.05以下であり得る。分類器のp値は、0.04以下であり得る。分類器のp値は、0.03以下であり得る。分類器のp値は、0.02以下であり得る。分類器のp値は、0.01以下であり得る。分類器のp値は、0.008以下であり得る。分類器のp値は、0.006以下であり得る。分類器のp値は、0.004以下であり得る。分類器のp値は、0.002以下であり得る。分類器のp値は、0.001以下であり得る。
【0079】
1つ以上の遺伝子標的が、線形モデル分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、線形モデル分類器から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、線形モデル分類器から選択される3つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、線形モデル分類器から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、27個、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。線形モデル分類器は、LM2、LM3、またはLM4分類器であってもよい。線形モデル分類器は、LM16分類器(例えば、16個の標的を有する線形モデル分類器)であってもよい。例えば、本開示の線形モデル分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0080】
1つ以上の遺伝子標的が、SVM分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、SVM分類器から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、SVM分類器から選択される12、13、14、15、17、20、22、25、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。SVM分類器はSVM2分類器であってもよい。本開示のSVM分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0081】
1つ以上の遺伝子標的が、KNN分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、KNN分類器から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、KNN分類器から選択される12、13、14、15、17、20、22、25、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。例えば、本開示のKNN分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0082】
1つ以上の遺伝子標的が、単純ベイズ(NB)分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、NB分類器から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、NB分類器から選択される12、13、14、15、17、20、22、25、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。例えば、本開示のNB分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0083】
1つ以上の遺伝子標的が、再帰分割(Rpart)分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、Rpart分類器から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、Rpart分類器から選択される12、13、14、15、17、20、22、25、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。例えば、本開示のRpart分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0084】
1つ以上の遺伝子標的が、高次元判別分析(HDDA)分類器から選択される1つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、高次元判別分析(HDDA)分類器から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、高次元判別分析(HDDA)分類器から選択される3つ以上の標的を含んでいてもよい。複数の標的が、高次元判別分析(HDDA)分類器から選択される5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、22、25、またはそれ以上の標的を含んでいてもよい。例えば、本開示のRpart分類器は、表5から選択される2つ以上の標的を含んでいてもよい。
【0085】
本開示は、複数のプローブを含む、対象における乳癌の状態もしくは転帰を診断、モニタリング及び/または予測するためのプローブセットを提供し、(i)セット中のプローブは、少なくとも1つの標的の発現レベルを検出することができ、(ii)発現レベルにより、少なくとも約40%の特異性で対象のがんの状態(例えば、再発のリスク)が決定される。
【0086】
プローブセットは、1つ以上のポリヌクレオチドプローブを含み得る。個々のポリヌクレオチドプローブは、標的配列のヌクレオチド配列またはその相補配列に由来するヌクレオチド配列を含む。ポリヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列は、標的配列に対応するか、または相補的であるように設計される。ポリヌクレオチドプローブは、ストリンジェントまたはより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、標的配列の領域、その相補配列、またはそれに由来する核酸配列(cDNAなど)に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0087】
ポリヌクレオチドプローブ配列の選択及びそれらのユニーク性の決定を、例えば、ヒトゲノム配列、UniGene、dbEST、またはNCBIの非冗長データベースなどの遺伝子配列データベースに対して投げかけられるポリヌクレオチド配列のBLASTN検索に基づいて、当技術分野で公知の技術を使用してin silicoで実行してもよい。本開示の一実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、プローブセット内の標的配列に由来する標的mRNAの領域に相補的である。コンピュータプログラムを使用して、クロスハイブリダイズしない、すなわち非特異的にハイブリダイズしないプローブ配列を選択することもできる。
【0088】
いくつかの例では、乳癌組織試料から抽出し、増幅したRNAのマイクロアレイハイブリダイゼーションにより、データセットが得られる場合があり、これをfRMA技術によって要約し、正規化する。クロスハイブリダイズしているPSR、及び4つ未満のプローブしか含んでいないPSRを除去(またはフィルタリング)した後、残りのPSRをさらなる分析に使用することができる。fRMA及びフィルタリングの後、データを主成分に分解し、分散分析モデルを使用して、最初の10個の主成分にバッチ効果がどの程度存在するかを判定する。
【0089】
次いでこれらの残りのPSRを、CR(臨床再発)試料と非CR試料間のT検定により、フィルタリングに供することができる。0.01のp値カットオフを使用すると、残りの特徴(PSRなど)をさらに絞り込むことができる。特徴の選択は、elastic-netペナルティを使用した正則化ロジスティック回帰によって実行することができる。正則化回帰は、すべてのトレーニングデータを使用して1000回以上ブートストラップされ得る。ブートストラップの反復ごとに、3分割交差検証後にゼロ以外の係数を有する特徴を表にまとめることができる。いくつかの例では、全実行の少なくとも25%で選択された特徴をモデル構築に使用した。
【0090】
本開示のポリヌクレオチドプローブは、コード標的または非コード標的の約15ヌクレオチド~全長の範囲の長さであってよい。本開示の一実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、少なくとも約15ヌクレオチド長である。別の実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、少なくとも約20ヌクレオチド長である。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、少なくとも約25ヌクレオチド長である。別の実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、約15ヌクレオチド長~約500ヌクレオチド長である。他の実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、約15ヌクレオチド長~約450ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約400ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約350ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約300ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約250ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プローブは、少なくとも15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プローブは、少なくとも15ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プローブは、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長、少なくとも50ヌクレオチド長、少なくとも75ヌクレオチド長、少なくとも100ヌクレオチド長、少なくとも125ヌクレオチド長、少なくとも150ヌクレオチド長、少なくとも200ヌクレオチド長、少なくとも225ヌクレオチド長、少なくとも250ヌクレオチド長、少なくとも275ヌクレオチド長、少なくとも300ヌクレオチド長、少なくとも325ヌクレオチド長、少なくとも350ヌクレオチド長、少なくとも375ヌクレオチド長である。
【0091】
プローブセットのポリヌクレオチドプローブは、RNA、DNA、RNAもしくはDNA模倣物、またはそれらの組み合わせを含むことができ、一本鎖または二本鎖とすることができる。したがって、ポリヌクレオチドプローブは、天然の核酸塩基、糖及びヌクレオシド間(骨格)共有結合、ならびに同様に機能する非天然部分を有するポリヌクレオチドプローブからなり得る。そのような修飾または置換ポリヌクレオチドプローブは、例えば、標的遺伝子に対する親和性の向上及び安定性の向上などの望ましい特性を提供し得る。プローブセットは、コード標的及び/または非コード標的を含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、プローブセットは、少なくとも約5個のコード標的及び/または非コード標的にハイブリダイズする複数の標的配列を含む。あるいは、プローブセットは、少なくとも約10個のコード標的及び/または非コード標的にハイブリダイズする複数の標的配列を含む。いくつかの実施形態では、プローブセットは、少なくとも約15個のコード標的及び/または非コード標的にハイブリダイズする複数の標的配列を含む。いくつかの実施形態では、プローブセットは、少なくとも約20個のコード標的及び/または非コード標的にハイブリダイズする複数の標的配列を含む。いくつかの実施形態では、プローブセットは、少なくとも約30個のコード標的及び/または非コード標的にハイブリダイズする複数の標的配列を含む。
【0093】
本開示の系はさらに、プローブセットによって規定される標的配列、またはその断片もしくは部分配列もしくは相補配列を増幅することができるプライマー及びプライマー対を提供する。このプローブセットのヌクレオチド配列を、in silico用途のために、及びプローブセットの1つ以上の標的配列を増幅するための適切なプライマーの設計の基礎として、コンピュータ読み取り可能な媒体で提供してもよい。
【0094】
標的配列のヌクレオチド配列に基づいたプライマーを、標的配列の増幅に使用するために設計することができる。PCRなどの増幅反応で使用するために、一対のプライマーを使用することができる。プライマー配列の正確な組成は本開示にとって重要ではないが、当技術分野で公知のように、ほとんどの用途では、プライマーはストリンジェントな条件下、特に高ストリンジェンシー条件下でプローブセットの特定の配列にハイブリダイズし得る。プライマー対は、通常、少なくとも約50ヌクレオチド、より多くの場合には少なくとも約100ヌクレオチドの増幅産物を生成するように選択される。プライマー配列を選択するためのアルゴリズムは一般的に知られており、市販のソフトウェアパッケージで入手することができる。これらのプライマーを標準的な定量的または定性的なPCRベースのアッセイに使用して、プローブセットによって規定されるRNAの転写発現レベルを評価してもよい。あるいは、これらのプライマーを、リアルタイムPCRを使用した増幅において分子ビーコンなどのプローブと組み合わせて使用してもよい。
【0095】
一実施形態では、プライマーまたはプライマー対は、増幅反応に使用される場合、標的の核酸配列(または本明細書に記載のその部分群)、そのRNA形態、またはそのいずれかに対する相補配列の少なくとも一部を特異的に増幅する。
【0096】
プローブまたはプライマーポリヌクレオチドに標識を任意選択で結合させるかまたは組み込んで、目的の標的配列を表す標的ポリヌクレオチドを検出し、及び/または定量化することができる。標的ポリヌクレオチドは、使用するアッセイで特異的に検出可能である限り、発現させた標的配列RNA自体、そのcDNAコピー、またはそれらに由来する増幅産物であってもよく、プラス鎖またはマイナス鎖であってもよい。同様に、抗体を標識してもよい。
【0097】
特定の多重フォーマットでは、異なる標的の検出に使用する標識は区別され得る。標識は、直接(例えば、共有結合を介して)、または間接的に、例えば、架橋分子もしくは一連の分子を介して(例えば、アッセイ成分に結合することができる分子もしくは複合体、またはアッセイ成分に組み込むことができる結合ペアのメンバー、例えば、ビオチン-アビジンもしくはストレプトアビジンを介して)結合することができる。多くの標識は、そのようなコンジュゲーション(例えば、アミンアシル化を介した)に容易に使用することができる活性化形態で市販されており、または標識を、その多くが当技術分野で公知の既知または決定可能なコンジュゲーションスキームによって結合させてもよい。
【0098】
本明細書に記載の開示において有用な標識は、対象の生体分子に結合または組み込まれた場合に検出可能な任意の物質を含む。光学的、分光学的、電気的、圧電的、磁気的、ラマン散乱、表面プラズモン共鳴、比色分析、熱量測定などを含む、任意の効果的な検出方法を使用することができる。標識は、通常、発色団、発光団、蛍光団、消光系の1つのメンバー、色素原、ハプテン、抗原、磁性粒子、非線形光学を示す材料、半導体ナノ結晶、金属ナノ粒子、酵素、抗体または結合部分もしくはその等価体、アプタマー、及び結合対の1つのメンバー、ならびにそれらの組み合わせから選択される。消光スキームを使用してもよく、消光ペアのメンバーとしての消光剤及び蛍光団をプローブ上で使用してもよく、それにより、標的への結合時に光学パラメータの変化が生じ、蛍光団からのシグナルが導入または消光される。そのような系の一例は分子ビーコンである。適切な消光剤/蛍光団の系は当技術分野で公知である。標識を、様々な中間結合を介して結合させてもよい。例えば、ポリヌクレオチドにビオチン結合種を含ませてもよく、光学的に検出可能な標識をビオチンにコンジュゲートし、次いで標識ポリヌクレオチドに結合させてもよい。同様に、ポリヌクレオチドセンサーに、抗体または断片などの免疫学的種を含ませてもよく、光学的に検出可能な標識を含む二次抗体を添加してもよい。
【0099】
本明細書に記載の方法において有用な発色団には、エネルギーを吸収し、光を発することができる任意の物質が含まれる。多重化アッセイの場合、検出可能な異なる発光スペクトルを有する複数の異なるシグナル伝達発色団を使用することができる。発色団は、発光団または蛍光団であり得る。一般的な蛍光団として、蛍光色素、半導体ナノ結晶、ランタニドキレート、ポリヌクレオチド特異的色素、及び緑色蛍光タンパク質が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、標的の核酸配列またはその相補配列の少なくとも20連続塩基を含む。ポリヌクレオチドは、標的の核酸配列の少なくとも21、22、23、24、25、27、30、32、35、40、45、50、またはそれ以上の連続塩基を含んでいてもよい。
【0101】
ポリヌクレオチドは、固体、溶液、またはアレイなどの様々な形式で提供され得る。ポリヌクレオチドは、任意選択で、化学的及び/または酵素的にポリヌクレオチドに組み込まれ得る1つ以上の標識を含んでいてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つ以上のポリヌクレオチドを基板上に提供することができる。基板は、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはこれらの組み合わせのいずれかの広範囲の材料を含み得る。例えば、基板は、重合ラングミュア・ブロジェット膜、機能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、変性シリコン、または多種多様なゲルもしくはポリマーのいずれか1つ、例えば、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)二フッ化ビニリデン、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリシロキサン、ポリマーシリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ、ポリカーボネート、またはそれらの組み合わせなどであり得る。導電性ポリマー及び光導電性材料を使用することができる。
【0103】
基板は、アレイ、フォトダイオード、光電子半導体チップもしくは光電子薄膜半導体などの光電子センサー、またはバイオチップの形態をとることができる。基板上のプローブ(複数可)の位置(複数可)はアドレス指定可能であり、この指定は高密度フォーマットで実行することができ、位置(複数可)は、マイクロアドレス指定可能またはナノアドレス指定可能である。
【0104】
特定の実施形態では、がんの治療を必要とする対象から乳癌細胞を含む試料(例えば、生体試料)を採取して、発現レベルまたは発現特性、補助放射線療法の恩恵を受ける尤度に基づいて、対象ががん再発のリスクが低いか高いかを評価する。本開示の系及び方法で使用するための診断試料は、RNA発現情報を提供するのに適した核酸を含む。原則として、発現したRNAを採取し、標的遺伝子発現について分析する生物学的試料は、がん性乳房組織または細胞を含むと疑われる任意の物質であり得る。診断試料は、本開示の方法で直接使用する生体試料であり得る。あるいは、診断試料は、生体試料から調製した試料であり得る。
【0105】
一実施形態では、がん性組織もしくは細胞を含むか、または含むと疑われる試料または試料の一部は、細胞、組織、または体液などの液体を含む任意の生体物質の供給源であり得る。試料の供給源の非限定的な例としては、吸引液、針生検、細胞診ペレット、例えば手術もしくは解剖によって得られるバルク組織標本またはその切片、リンパ液、血液、血漿、血清、腫瘍、及び臓器が挙げられる。いくつかの実施形態では、試料は乳腺腫瘍生検由来である。
【0106】
試料は、既知の文書化された医学的転帰を有するアーカイブ試料であってもよく、または最終的な医学的転帰がまだ知られていない現在の対象由来の試料であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、分子解析の前に試料を解剖してもよい。試料を、バルク腫瘍標本もしくはその一部の巨視的解剖によって調製してもよく、または顕微解剖によって、例えばレーザー捕捉顕微解剖(LCM)によって処理してもよい。
【0108】
試料を、最初は新鮮な組織、新鮮な凍結組織、細針吸引物などの様々な状態で提供し、固定しても固定しなくてもよい。多くの場合、医学研究所では日常的に医学的試料が固定状態で調製され、これによって組織の保管が容易になる。様々な固定剤を使用して、組織を固定して細胞の形態を安定させることができ、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。固定剤の例としては、架橋剤、アルコール、アセトン、Bouin固定液、Zenker液、Hely液、オスミウム酸液、及びカルノア液が挙げられる。
【0109】
架橋固定剤は、2つ以上の共有結合を形成するのに適した任意の薬剤、例えばアルデヒドを含み得る。固定に通常使用されるアルデヒド源としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、またはホルマリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、架橋剤はホルムアルデヒドを含み、ホルムアルデヒドは、その天然の形態で、またはパラホルムアルデヒドもしくはホルマリンの形態で含まれ得る。当業者であれば、架橋固定剤を使用した試料については、例えば加熱ステップ及びプロテイナーゼK消化を含む特別な調製ステップが必要となり得ることを理解するであろう(方法を参照のこと)。
【0110】
1つ以上のアルコールを単独で、または他の固定剤と組み合わせて使用して、組織を固定してもよい。固定に使用する例示的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが挙げられる。
【0111】
ホルマリン固定は、医学研究所で頻繁に使用される。ホルマリンは、アルコール(通常はメタノール)とホルムアルデヒドの両方を含み、どちらも生体試料を固定するように作用することができる。
【0112】
固定または非固定に関わらず、生体試料を任意選択で包埋媒体に包埋してもよい。組織学で使用する包埋媒体の例としては、パラフィン、Tissue-Tek(登録商標)V.I.P、Paramat、Paramat Extra、Paraplast、Paraplast X-tra、Paraplast Plus、Peel Away Paraffin Embedding Wax、Polyester Wax、Carbowax Polyethylene Glycol、Polyfin、Tissue Freezing Medium TFMFM、Cryo-Gef、及びOCT Compound(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)が挙げられる。分子解析の前に、当技術分野で公知の任意の適切な技術によって包埋物質を除去してもよい。例えば、試料がワックスに包埋されている場合、包埋物質を有機溶媒(複数可)、例えばキシレンで抽出することによって除去してもよい。組織から包埋媒体を除去するためのキットが市販されている。試料またはその切片を、必要に応じてさらなる処理ステップ、例えば連続的な水和ステップまたは脱水ステップに供してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、試料は、固定され、ワックスに包埋された生体試料である。多くの場合、医学研究所からの試料は固定されたワックス包埋試料、最も一般的にはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織として提供される。
【0114】
生体試料の供給源が何であれ、最終的にアッセイする標的ポリヌクレオチドは合成的に調製することができるが(対照配列の場合)、通常は生体供給源から精製され、1つ以上の調製ステップに供される。RNAを精製して、生体試料から1つ以上の望ましくない成分を除去または減少させるか、またはそれを濃縮してもよい。逆に、特定のアッセイに対してRNAが濃すぎる場合は、RNAを希釈してもよい。
【0115】
RNAは、任意の適切な技術を使用して生体試料から抽出し、精製することができる。多くの技術が当技術分野で公知であり、いくつかは市販されている(例えば、FormaPure核酸抽出キット、Agencourt Biosciences,Beverly MA,High Pure FFPE RNA Micro Kit,Roche Applied Science,Indianapolis,IN)。TRIzol(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して凍結組織切片からRNAを抽出し、RNeasy Protectキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して精製することができる。DNAseI処理(Ambion,Austin,TX)を使用してRNAをさらに精製し、混入DNAを除去することができる。Nanodrop ND-1000分光光度計(Nanodrop Technologies,Rockland,DE)を使用してRNA濃度を測定することができる。冷酢酸ナトリウム沈殿により、RNAをさらに精製して、cDNA合成を妨げる夾雑物を除去することができる。RNAの完全性は、エレクトロフェログラムを実行することにより評価することができ、RNA integrity number(RIN、mRNAのインタクト性を示す相関尺度)は、Bioanalyzer2100用のRNA6000 PicoAssay(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を使用して決定することができる。
【0116】
所望の方法(複数可)を実施するためのキットも提供し、キットは、キットの成分を保持するための容器またはハウジング、1つ以上の核酸(複数可)を含有する1つ以上の容器、及び任意選択で1つ以上の試薬を含有する1つ以上の容器を含む。試薬には、上記の物質の組成の節に記載されている試薬、及び記載された方法を実行するのに有用な増幅試薬などの試薬が含まれ、1つ以上のプローブ、プライマーまたはプライマー対、酵素(ポリメラーゼ及びリガーゼを含む)、インターカレート色素、標識プローブ、ならびに増幅産物に組み込まれ得る標識が含まれ得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の標的配列のサブセット及び組み合わせに対して特異的なプライマーまたはプライマー対を含む。プライマーまたはプライマー対は、標的配列を選択的に増幅するのに適している。キットは、1つ以上の標的を選択的に増幅するのに適した少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのプライマーまたはプライマー対を含み得る。キットは、1つ以上の標的を選択的に増幅するのに適した少なくとも5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、またはそれ以上のプライマーもしくはプライマー対を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、キットのプライマーまたはプライマー対は、増幅反応に使用する場合、本明細書に記載の非コード標的、コード標的、エキソン、もしくは非エキソン標的、表5から選択される標的に対応する核酸配列、そのRNA形態、またはそれらのいずれかの相補配列を特異的に増幅する。キットは、本明細書に記載の非コード標的、コード標的、エキソン、もしくは非エキソン転写産物、表5から選択される標的に対応する核酸配列、そのRNA形態、またはそれらに対する相補配列を特異的に増幅することができる、複数のそのようなプライマーまたはプライマー対を含み得る。1つ以上の標的を選択的に増幅するのに適した少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのプライマーまたはプライマー対をキットの形態で提供することができる。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の標的を増幅するのに適した5~50のプライマーまたはプライマー対を含む。
【0119】
試薬は、独立して液体または固体の形態であってよい。試薬を、混合物として提供してもよい。対照試料及び/または核酸を、任意選択でキットに提供してもよい。対照試料には、疾患のエビデンスを示さない対象由来の腫瘍試料から採取した組織及び/または核酸またはその標本、ならびに全身性のがんを発症した対象由来の腫瘍試料から採取した組織及び/または核酸またはその標本が含まれ得る。
【0120】
核酸をアレイ形式で提供してもよく、したがってアレイまたはマイクロアレイをキットに含めてもよい。キットは任意選択で、がん対象の疾患転帰の予後及び/または治療様式の指定における使用について政府当局によって承認され得る。
【0121】
本開示の1つ以上の方法を実施するためのキットの使用説明書を容器に提供することができ、また、任意の固定培地で提供することができる。説明書は、容器またはハウジングの内側または外側に配置してもよく、及び/またはその任意の表面の内側または外側に印刷してもよい。キットは、発現した標的遺伝子を表す1つ以上の異なる標的ポリヌクレオチドを同時に検出及び/または定量するための多重形態であってもよい。
【0122】
試料回収及び核酸抽出に続いて、目的の標的ポリヌクレオチド(複数可)であるか、またはそれを調製するために使用することができるRNAを含む試料の核酸部分を、1つ以上の調製反応に供することができる。これらの調製反応には、in vitro転写(IVT)、標識、断片化、増幅、及び他の反応が含まれる。mRNAは、検出、定量、及び/または増幅の前に、まず逆転写酵素とプライマーで処理してcDNAを作成し、これを、精製mRNAを用いてin vitroで、またはin situで、例えばスライドに貼り付けた細胞もしくは組織中で行うこともできる。
【0123】
「増幅」とは、発現したRNAなどの核酸の少なくとも1つのコピーを生成する任意のプロセスを意味し、多くの場合、複数のコピーが生成される。増幅産物はRNAまたはDNAであり得、発現した標的配列に対する相補鎖を含み得る。最初に逆翻訳によって、次いで任意選択でさらなる増幅反応によって、DNA増幅産物を生成することができる。増幅産物は、標的配列の全部または一部を含み得、任意選択で標識されていてもよい。ポリメラーゼベースの方法やライゲーションベースの方法など、様々な増幅方法が使用に適している。例示的な増幅技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リパーゼ連鎖反応(LCR)、リボザイムベースの方法、自家持続配列複製法(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、Qβレプリカーゼの使用、逆転写、ニックトランスレーションなどが挙げられる。
【0124】
不斉増幅反応を使用して、標的ポリヌクレオチドとしての検出に使用される標的配列を表す一方の鎖を優先的に増幅してもよい。いくつかの場合では、増幅産物自体の存在及び/または量を使用して、所与の標的配列の発現レベルを決定してもよい。他の例では、増幅産物を使用して、標的配列の発現を検出及び/または定量するために使用するセンサーポリヌクレオチドを含むアレイまたは他の基板にハイブリダイズさせてもよい。
【0125】
ポリメラーゼベースの方法における増幅の最初のサイクルでは、通常、鋳型鎖に相補的なプライマー伸長産物が形成される。テンプレートが一本鎖RNAである場合、最初の増幅では逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを使用してRNAをDNAに逆転写し、追加の増幅サイクルを実行してプライマー伸長産物をコピーすることができる。当然のことながら、増幅可能なセグメントを生成することができる対応するテンプレート内の領域にハイブリダイズするように、PCR用のプライマーを設計する必要があり、したがって、PCRにおいて、各プライマーは、その3’ヌクレオチドが、相補テンプレート鎖を複製するために使用されるプライマーの3’ヌクレオチドよりも3’側に位置する、相補テンプレート鎖のヌクレオチドと対形成するようにハイブリダイズする必要がある。
【0126】
標的ポリヌクレオチドの1つ以上の鎖を、プライマー、及びそのプライマーを伸長し、標的ポリヌクレオチドをコピーして完全長の相補的ポリヌクレオチドまたはそのより小さい部分を生成するのに適切な活性を有するポリメラーゼと接触させることによって、標的ポリヌクレオチドを増幅することができる。DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、複数種類のポリメラーゼまたは酵素活性を有する酵素を含む、標的ポリヌクレオチドをコピーすることができるポリメラーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。酵素は、熱不安定性または熱安定性であり得る。酵素の混合物も使用することができる。例示的な酵素としては、DNAポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼI(「Pol I」)、Pol IのKlenow断片、T4、T7、Sequenase(登録商標)T7、Sequenase(登録商標)バージョン2.0 T7、Tub、Taq、Tth、Pfic、Pfu、Tsp、Tfl、Tli、及びPyrococcus種GB-D DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、例えば、E.coli、SP6、T3、及びT7 RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、例えば、AMV、M-MuLV、MMLV、RNAse H MMLV(SuperScript(登録商標))、SuperScript(登録商標)II、ThermoScript(登録商標)、HIV-1、及びRAV2逆転写酵素が挙げられる。これらの酵素はすべて市販されている。複数の特異性を有する例示的なポリメラーゼとしては、RAV2及びTli(エキソ)ポリメラーゼが挙げられる。例示的な熱安定性ポリメラーゼとしては、Tub、Taq、Tth、Pfic、Pfu、Tsp、Tf1、Tli、及びPyrococcus種GB-D DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0127】
pH、緩衝液、イオン強度、1つ以上の塩の存在及び濃度、反応物と補因子、例えば、ヌクレオチドとマグネシウム及び/または他の金属イオン(例えば、マンガン)の存在及び濃度、任意選択の共溶媒、温度、ポリメラーゼ連鎖反応を含む増幅スキームの熱サイクル特性などの適切な反応条件は、標的ポリヌクレオチドが増幅できるように選択され、使用するポリメラーゼ及び試料の性質に部分的に依存し得る。共溶媒には、ホルムアミド(通常、約2~約10%)、グリセロール(通常、約5~約10%)、及びDMSO(通常、約0.9~約10%)が含まれる。増幅中に生じる偽陽性またはアーティファクトの生成を最小限に抑えるために、増幅スキームに技術を使用してもよい。これらには、「タッチダウン」PCR、ホットスタート技術、ネステッドプライマーの使用、またはプライマーダイマー形成の際にステムループ構造を形成させて増幅しないようにPCRプライマーを設計することが含まれる。PCRを加速する技術、例えば試料中でより大きな対流を可能にする遠心PCR、ならびに試料を急速に加熱及び冷却するための赤外線加熱ステップを含む技術を使用することができる。1サイクル以上の増幅を実行することができる。過剰量の一方のプライマーを使用して、PCR中に過剰量の一方のプライマー伸長産物を生成することができる。いくつかの実施形態では、過剰に生成されるプライマー伸長産物は、検出しようとする増幅産物である。複数の異なるプライマーを使用して、試料中の異なる標的ポリヌクレオチドまたは特定の標的ポリヌクレオチドの異なる領域を増幅してもよい。
【0128】
任意選択で標識されたセンサーポリヌクレオチドが増幅サイクルの少なくとも一部の間に増幅産物にハイブリダイズすることを可能にする条件下で、増幅反応を実施することができる。この方法でアッセイを行う場合、当技術分野で公知のように、増幅中の発光または蛍光をモニタリングすることによって、このハイブリダイゼーション事象のリアルタイム検出を行うことができる。
【0129】
増幅産物をアレイまたはマイクロアレイへのハイブリダイゼーションに使用する場合、多数の適切な市販の増幅産物が利用可能である。これらには、単独で、または組み合わせで、WT-Ovation(商標)System、WT-Ovation(商標)System v2、WT-Ovation(商標)Pico System、WT-Ovation(商標)FFPE Exon Module、WT-Ovation(商標)FFPE Exon Module RiboAmp及びRiboAmpPlus RNA Amplification Kit(MDS Analytical Technologies(旧名Arcturus)(Mountain View,CA)を含む、NuGEN,Inc.(San Carlos,CA)から入手可能な増幅キット、RampUp Plus及びSenseAmp RNA Amplification kitを含むGenisphere,Inc.(Hatfield,PA)から入手可能な増幅キットが含まれる。増幅された核酸を、増幅及び標識後に、例えば磁気ビーズ(例えば、RNAC1ean磁気ビーズ、Agencourt Biosciences)を使用して、1つ以上の精製反応に供してもよい。
【0130】
複数のRNAバイオマーカーを、リアルタイム定量マルチプレックスRT-PCRプラットフォーム、及び他の多重化技術、例えば、GenomeLab GeXP Genetic Analysis System(Beckman Coulter,Foster City,CA)、SmartCycle(登録商標)9600またはGeneXpert(登録商標)Systems(Cepheid,Sunnyvale,CA)、ABI 7900 HT Fast Real Time PCR system(Applied Biosystems,Foster City,CA),LightCycler(登録商標)480 System(Roche Molecular Systems,Pleasanton,CA),xMAP 100 System(Luminex,Austin,TX)Solexa Genome Analysis System(Illumina,Hayward,CA),OpenArray Real Time qPCR(BioTrove,Woburn,MA)及びBeadXpress System(Illumina,Hayward,CA)を使用して分析することができる。
【0131】
原則として、コードされた標的遺伝子の発現を検出及び/または定量する任意の方法を本開示で使用することができる。発現した標的遺伝子は、直接検出及び/または定量することができ、あるいはコピー及び/または増幅して、発現した標的遺伝子の増幅されたコピーを検出できるようにしてもよい。
【0132】
標的遺伝子を検出及び/または定量するための方法としては、ノーザンブロッティング、配列決定、特定の構造の酵素切断によるアレイまたはマイクロアレイハイブリダイゼーション(例えば、Clariom Sアッセイ、ThermoFisher Scientific、Invader(登録商標)アッセイ、Third Wave Technologies、例えば、米国特許第5,846,717号、第6,090,543号、第6,001,567号、第5,985,557号、及び第5,994,069号に記載されているように)ならびに増幅方法、例えば、TaqMan(登録商標)アッセイを含むRT-PCR(PE Biosystems,Foster City,Calif.、例えば、米国特許第5,962,233号及び第5,538,848号に記載されているように)を挙げることができ、これらの方法は定量的または半定量的であってもよく、利用可能な生体試料の起源、量及び状態に応じて様々に異なり得る。これらの方法を組み合わせて使用してもよい。例えば、核酸を増幅し、標識し、マイクロアレイ分析に供してもよい。標的遺伝子を検出及び/または定量するための方法には、マイクロアレイハイブリダイゼーション(例えば、GeneChip Human Exon 1.0 STアッセイまたはClariom Sアッセイ、ThermoFisher Scientific)を使用したアノテーション付き遺伝子の遺伝子レベル発現分析が含まれ得る。
【0133】
いくつかの例では、標的遺伝子を配列決定によって検出してもよい。配列決定には、全ゲノム配列決定またはエキソーム配列決定が含まれ得る。Maxim-Gilbert法、伸長停止法、またはハイスループット系などの配列決定法を使用してもよい。追加の適切な配列決定技術としては、標識ターミネーターまたはプライマーを使用する古典的なジデオキシ配列決定反応(サンガー法)、及びスラブまたはキャピラリーでのゲル分離、可逆的に終結する標識ヌクレオチドを使用した合成による配列決定、パイロシーケンシング、454配列決定、標識オリゴヌクレオチドプローブのライブラリーへの対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、標識クローンのライブラリーへの対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションとその後のライゲーションを使用した合成による配列決定、重合ステップ中の標識ヌクレオチドの取り込みのリアルタイムモニタリング、及びSOLiD配列決定が挙げられる。
【0134】
標的遺伝子を検出及び/または定量するための追加の方法としては、単一分子配列決定(例えば、Helicos、PacBio)、合成による配列決定(例えば、Illumina、Ion Torrent)、ライゲーションによる配列決定(例えば、ABI SOLID)、ハイブリダイゼーションによる配列決定(例えば、Complete Genomics)、in situハイブリダイゼーション、ビーズアレイ技術(例えば、Luminex xMAP、Illumina BeadChips)、分岐DNA技術(例えば、Panomics、Genisphere)が挙げられる。配列決定法は、ヌクレオチドを検出する蛍光法(例えば、Illumina)または電子法(例えば、Ion Torrent、Oxford Nanopore)を使用してもよい。
【0135】
逆転写は、当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、逆転写を、RT-PCR用のOmniscriptキット(Qiagen,Valencia,CA)、Superscript IIIキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して実施してもよい。標的遺伝子の検出感度を高め、標的特異的cDNAを生成するために、標的特異的プライミングを実行することができる。
【0136】
Applied Biosystems Prism(ABI)7900HT機器を使用し、1ngの全RNAに相当する標的遺伝子特異的cDNAを用いて、5 1.11容量でTaqMan(登録商標)RT-PCRを実行することができる。
【0137】
TaqMan分析用のプライマー及びプローブ濃縮物を添加して、例えば、95℃10分間を1サイクル、95℃20秒間、及び60℃45秒間を40サイクルのPCRサイクル条件を使用して、蛍光アンプリコンを増幅する。参照試料をアッセイして、試薬とプロセスの安定性を確認することができる。外来性核酸の混入をモニタリングするには、陰性対照(例えば、テンプレートなし)をアッセイすべきである。
【0138】
本開示は、プローブセットまたはそれに由来するプローブがアレイ形式で提供され得ることを企図する。本開示に関して、「アレイ」とは、空間的または論理的に組織化されたポリヌクレオチドプローブの集合である。コード標的、非コード標的、またはそれらの組み合わせに特異的なプローブを含むアレイを使用してもよい。あるいは、標的の転写産物、またはそれに由来する産物の2つ以上に特異的なプローブを含むアレイを使用することができる。望ましくは、アレイは、標的遺伝子の5、10、15、20、25、30またはそれ以上の転写産物に特異的であり得る。これらの遺伝子の発現は、単独で、または他の転写産物と組み合わせて検出してもよい。いくつかの実施形態では、適切な制御配列と共に、乳房特異的発現産物用の広範囲のセンサープローブを含むアレイを使用する。いくつかの例では、アレイは、Human Exon 1.0 ST Array(HuEx1.0ST、Thermo Fisher Scientific,Santa Clara,CA.)を含み得る。
【0139】
通常、ポリヌクレオチドプローブを固体基板に結合させ、それぞれの位置(基板上の)と同一性が分かるように順序付ける。アレイの使用に必要な試薬及び条件に耐え得る様々な固体基板の1つに、ポリヌクレオチドプローブを結合させることができる。例としては、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)二フッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びポリスチレンなどのポリマー、セラミック、シリコン、二酸化ケイ素、変性シリコン、(溶融)シリカ、石英、またはガラス、機能化ガラス、濾紙などの紙、ジアゾ化セルロース、ニトロセルロースフィルター、ナイロン膜、ならびにポリアクリルアミドゲルパッドが挙げられるが、これらに限定されない。透光性の基板は、光学的検出を伴うアッセイで使用され得るアレイに有用である。
【0140】
アレイ形式の例としては、メンブレンまたはフィルターアレイ(例えば、ニトロセルロース、ナイロンアレイなど)、プレートアレイ(例えば、24、96、256、384、864、または1536ウェルなどのマルチウェル、マイクロタイタープレートアレイ)、ピンアレイ、及びビーズアレイ(例えば、液体「スラリー」中)が挙げられる。ガラススライドまたはセラミックスライドなどの基板上のアレイは、多くの場合、チップアレイまたは「チップ」と呼ばれる。そのようなアレイは当技術分野で周知である。本開示の一実施形態では、がん予後診断アレイはチップである。
【0141】
いくつかの実施形態では、1つ以上のパターン認識方法を、標的遺伝子の発現レベルの分析に使用することができる。パターン認識方法は、発現レベルの線形結合、または発現レベルの非線形結合を含み得る。いくつかの実施形態では、RNA転写産物またはRNA転写産物レベルの組み合わせの発現測定値は、線形または非線形モデルまたはアルゴリズム(例えば、「発現シグネチャー」)に定式化され、尤度スコアに変換される。この尤度スコアは、生体試料が、疾患のエビデンスを示さない可能性がある対象、全身性がんを示す可能性がある対象、または生化学的再発もしくは局所領域再発を示す可能性がある対象由来である確率を示す。この尤度スコアを使用して、これらの疾患の状態を区別することができる。モデル及び/またはアルゴリズムは、機械可読形式で提供することができ、発現レベルまたは発現プロファイルを疾患状態と相関させるため、及び/または対象または対象クラスの治療様式を指定するために使用することができる。
【0142】
複数の標的遺伝子の発現レベルのアッセイは、アルゴリズムまたは分類器の使用を含み得る。当技術分野で公知の技術を使用して、アレイデータを管理、分類、及び分析することができる。複数の遺伝子標的の発現レベルのアッセイは、プローブセットのモデリング及びデータの前処理を含み得る。プローブセットモデリング及びデータ前処理は、Robust Multi-Array(RMA)アルゴリズムまたはバリアントGC-RMA、fRMA、Probe Logarithmic Intensity Error(PLIER)アルゴリズムまたはバリアントiterPLIERを使用して導き出すことができる。RMAアルゴリズムを使用して、例えば、それぞれ正規化されたデータ範囲の標準偏差が10未満または平均強度が100強度単位未満の標的遺伝子を除去することによって、前処理データに分散フィルターまたは強度フィルターを適用することができる。
【0143】
あるいは、複数の遺伝子標的の発現レベルのアッセイは、機械学習アルゴリズムの使用を含み得る。機械学習アルゴリズムは、教師あり学習アルゴリズムを含み得る。教師あり学習アルゴリズムの例としては、Average One-Dependence Estimators(AODE)、人工ニューラルネットワーク(例えば、バックプロパゲーション)、ベイジアン統計(例えば、単純ベイズ分類器、ベイジアンネットワーク、ベイジアン知識ベース)、事例ベース推論、決定木、帰納的論理プログラミング、ガウス過程回帰、Group method of data handling(GMDH)、学習オートマトン、学習ベクトル量子化、最小メッセージ長(決定木、決定図など)、遅延学習、インスタンスベースの学習最近傍アルゴリズム、アナロジカルモデリング、確率的で近似的に正しい学習(PAC)学習、リップルダウンルール、知識獲得方法論、シンボリック機械学習アルゴリズム、サブシンボリック機械学習アルゴリズム、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、分類器アンサンブル、ブートストラップ・アグリゲーティング(バギング)、及びブースティングが挙げられる。教師あり学習には、回帰分析や情報ファジーネットワーク(IFN)などの順序分類が含まれ得る。あるいは、教師あり学習方法には、AODE、線形分類器(フィッシャーの線形判別式、ロジスティック回帰、単純ベイズ分類器、パーセプトロン、サポートベクターマシン、Lasso及びElastic-Net正則化一般線形モデル)、二次分類器、k最近傍法、ブースティング、決定木(例えば、C4.5、ランダムフォレスト)、ベイジアンネットワーク、及び隠れマルコフモデルが含まれ得る。
【0144】
機械学習アルゴリズムはまた、教師なし学習アルゴリズムを含み得る。教師なし学習アルゴリズムの例としては、人工ニューラルネットワーク、データクラスタリング、期待値最大化アルゴリズム、自己組織化マップ、動径基底関数ネットワーク、ベクトル量子化、生成位相マップ、情報ボトルネック法、及びIBSEADが挙げられる。教師なし学習はまた、Aprioriアルゴリズム、Eclatアルゴリズム、及びFP成長アルゴリズムなどの相関ルール学習アルゴリズムも含み得る。単連結法及び概念クラスタリングなどの階層的クラスタリングも使用してよい。あるいは、教師なし学習は、K平均アルゴリズム及びファジークラスタリングなどの分割クラスタリングを含み得る。
【0145】
いくつかの例では、機械学習アルゴリズムは、強化学習アルゴリズムを含む。強化学習アルゴリズムの例としては、時間的差分学習、Q学習、及び学習オートマトンが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、機械学習アルゴリズムは、データ前処理を含み得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、機械学習アルゴリズムは、Average One-Dependence Estimators(AODE)、フィッシャーの線形判別式、ロジスティック回帰、パーセプトロン、多層パーセプトロン、人工ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、二次分類器、ブースティング、決定木、C4.5、ベイジアンネットワーク、隠れマルコフモデル、高次元判別分析、及び混合ガウスモデルを含み得るが、これらに限定されない。機械学習アルゴリズムは、サポートベクターマシン、単純ベイズ分類器、k最近傍法、高次元判別分析、または混合ガウスモデルを含み得る。いくつかの例では、機械学習アルゴリズムは、ランダムフォレストを含む。
【0147】
分子サブタイピングは、乳癌を遺伝的に異なる複数のカテゴリまたはサブタイプの1つに分類する方法である。各サブタイプは、異なる種類の治療に対して異なる反応を示し、特定のサブタイプの存在は、例えば、放射線耐性または化学療法耐性、再発リスクの高低、個体の予後の良好または不良を予測する。表5に列挙された複数の遺伝子標的の示差的発現分析により、例えば補助放射線療法からの恩恵が最も少ない可能性がある、がん再発のリスクが低い対象を同定することができる。いくつかの例では、乳癌を分析するために、本開示の分子サブタイピング方法を、腫瘍グレード及びホルモンレベルなどの他のバイオマーカーと組み合わせて使用する。例えば、エストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)乳癌、リンパ節陰性乳癌を有する閉経後の対象は、再発(例えば、局所領域再発)のリスクが低い可能性がある。
【0148】
がんの再発とは、体内にがん細胞が検出されなくなった期間の後に再度がんが発生することである。手術可能な乳癌の手術後、局所的、領域的、及び/または遠隔転移部位で疾患が再発し得る。局所再発とは、同側胸壁におけるがんの再発である。対照的に、領域再発(regional recurrence)は、局所リンパ節、通常は同側の腋窩または鎖骨上リンパ節、及び頻度は低いが鎖骨下及び/または内胸リンパ節に関与する腫瘍を示す。一部の乳癌患者は、最初に乳癌と診断されてから10年以内に乳房温存手術及び放射線療法後に局所再発または局所領域再発を示す。最初の治療の過程で乳房を切除した場合、これらの女性は10年以内に脇の下や胸壁に局所再発を示す。いくつかの実施形態では、本開示の方法で治療される対象は、リンパ節転移陰性乳癌を有する。
【0149】
がんの状態または転帰の診断、予測、またはモニタリングは、がんを治療すること、またはがんの進行を予防することを含み得る。さらに、がんの状態または転帰の診断、予測、またはモニタリングは、対象の再発(例えば、局所領域再発)リスクが低いまたは高いことを識別または予測することを含み得る。いくつかの例では、診断、予測、またはモニタリングは、治療計画を決定することを含み得る。治療計画の決定は、抗がん療法を施すことを含み得る。あるいは、治療計画の決定は、抗がん計画を修正し、推奨し、継続し、または中止することを含み得る。例えば、本明細書に記載されるように、発現特性に基づいて乳癌再発のリスクが低いと判定された対象は、補助放射線療法を受けなくてもよい。いくつかの例では、本明細書に記載されるように、発現特性に基づいて乳癌再発リスクが高いと判定された対象を、乳房切除術、放射線ブースト、または補助全身療法で治療してもよい。いくつかの例では、試料の発現パターンが既知の疾患または疾患転帰の発現パターンと一致する場合、その発現パターンを、1つ以上の治療様式(例えば、治療レジメン、抗がんレジメン)を指定するために使用することができる。抗がんレジメンは、1つ以上の抗がん療法を含み得る。抗がん療法の例としては、ホルモン/内分泌療法、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法/生物学的療法、及び光線力学療法が挙げられる。
【0150】
ホルモン療法または内分泌療法には、ホルモン応答性がん細胞の増殖を阻止するか、またはアポトーシスを誘導するために、特定のホルモンのレベルを調節するステロイドホルモンまたはホルモンアンタゴニストなどのホルモンを投与することが含まれ得る。例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、及びトレミフェンなどであるがこれらに限定されない、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)を用いて乳癌を治療してもよい。代替的または追加的に、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、及びアミノグルテチミドを含むがこれらに限定されないアロマターゼ阻害剤などのホルモン合成阻害剤を用いて乳癌を治療してもよい。いくつかの例では、ホルモン応答性の進行性乳癌の治療に、酢酸メゲストロールや酢酸メドロキシプロゲステロンなどであるがこれらに限定されないプロゲスチンによるホルモン補充を使用してもよい。特に、ER+乳癌は、エストロゲン受容体アンタゴニスト(例えば、タモキシフェン)、またはエストロゲンの産生を遮断する薬物、例えば、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾールまたはレトロゾール)のいずれかで治療することができる。ホルモン療法には、内分泌器官の外科的除去(例えば、精巣摘出術または卵巣摘出術)も含まれ得る。
【0151】
腫瘍外科では、外科的手法を使用してがんを診断、病期分類、治療し、がんに関連する特定の症状を軽減する。手術を用いて、腫瘍を除去(例えば、切除、摘出、減量手術)し、体の一部の再建(例えば、修復手術)し、及び/または痛みなどの症状を軽減(例えば、緩和手術)してもよい。手術には、凍結手術も含まれ得る。凍結手術(凍結療法とも呼ばれる)は、液体窒素(またはアルゴンガス)によって生成される極度の低温を使用して、異常組織を破壊し得る。凍結手術を使用して、皮膚上の腫瘍などの外部腫瘍を治療することができる。外部腫瘍の場合、綿棒または噴霧装置を使用して液体窒素をがん細胞に直接塗布することができる。凍結手術はまた、体内の腫瘍(内部腫瘍及び骨内の腫瘍)の治療に使用してもよい。内部腫瘍の場合、腫瘍に接触させて配置する凍結プローブと呼ばれる中空の器具を通して、液体窒素またはアルゴンガスを循環させてもよい。超音波またはMRIを使用して凍結プローブを誘導し、細胞の凍結をモニタリングし、近傍の健康な組織への損傷を制限してもよい。プローブの周囲に氷結晶の球を形成させ、近傍の細胞を凍結させてもよい。場合により、複数のプローブを使用して、液体窒素を腫瘍の様々な部分に送達する。プローブを、手術中に腫瘍に挿入するか、または皮膚を通して(経皮的に)挿入してもよい。凍結手術後、凍結組織を解凍し、体内に自然に吸収させるか(内部腫瘍の場合)、または溶解してかさぶたを形成させてもよい(外部腫瘍の場合)。
【0152】
化学療法剤もまた、がんの治療に使用してよい。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、植物アルカロイド及びテルペノイド、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、及び細胞傷害性抗生物質が挙げられる。シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンは、アルキル化剤の例である。他のアルキル化剤としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロランブシル、イホスファミドが挙げられる。アルキル化剤は、生物学的に重要な分子のアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、及びリン酸基と共有結合を形成することにより、細胞機能を損なわせる場合がある。あるいは、アルキル化剤は、細胞のDNAを化学的に修飾する場合がある。
【0153】
代謝拮抗薬は、化学療法剤の別の例である。代謝拮抗薬は、プリンやピリミジンを装って、「S」期(細胞周期の)にプリンやピリミジンがDNAに取り込まれるのを妨げ、それによって正常な発生や分裂を停止させ得る。代謝拮抗薬は、RNA合成にも影響を及ぼし得る。代謝産物の例としては、アザチオプリン及びメルカプトプリンが挙げられる。
【0154】
アルカロイドは、植物に由来し、細胞分裂を遮断する場合があり、これもまたがんの治療に使用され得る。アルキロイドは、微小管の機能を妨げ得る。アルカロイドの例は、ビンカアルカロイド及びタキサンである。ビンカアルカロイドは、チューブリンの特定の部位に結合し、チューブリンの微小管への集合(細胞周期のM期)を阻害し得る。ビンカアルカロイドは、マダガスカル産ツルニチニチソウ、Catharanthus roseus(以前はVinca roseaとして知られていた)由来であってもよい。ビンカアルカロイドの例としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、またはビンデシンが挙げられるが、これらに限定されない。タキサンは、Taxus属(イチイ)の植物によって生成されるジテルペンである。タキサンは、天然源に由来するか、または人工的に合成されてもよい。タキサンには、パクリタキセル(タキソール)及びドセタキセル(タキソテール)が含まれる。タキサンは、微小管の機能を妨害し得る。微小管は、細胞分裂に不可欠であり、タキサンは、微小管内のGDP結合チューブリンを安定化し、それによって細胞分裂のプロセスを阻害し得る。したがって、本質的にタキサンは有糸分裂阻害剤であり得る。タキサンはまた、放射線増感性であり得、多くの場合、多数のキラル中心を含む。
【0155】
代替の化学療法剤としてポドフィロトキシンが挙げられる。ポドフィロトキシンは、消化を助ける可能性のある植物由来の化合物であり、エトポシドやテニポシドなどの細胞増殖抑制薬の製造に使用され得る。ポドフィロトキシンは、細胞がG1期(DNA複製の開始)及びDNA複製(S期)に入るのを妨げ得る。
【0156】
トポイソメラーゼは、DNAのトポロジーの維持に不可欠な酵素である。I型またはII型トポイソメラーゼを阻害することにより、適切なDNAスーパーコイル形成が乱されることにより、DNAの転写と複製の両方が妨害され得る。一部の化学療法剤は、トポイソメラーゼを阻害し得る。例えば、一部のI型トポイソメラーゼ阻害剤には、カンプトテシン、イリノテカン及びトポテカンが含まれる。II型阻害剤の例には、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、及びテニポシドが含まれる。キナーゼ阻害剤を使用して、乳癌を治療してもよい。
【0157】
化学療法剤の別の例は細胞傷害性抗生物質である。細胞傷害性抗生物質は、DNA複製及び/またはタンパク質合成を妨害する可能性があるため、がんの治療に使用される抗生物質の群である。細胞傷害性抗生物質としては、アクチノマイシン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
いくつかの例では、抗がん治療は、放射線療法を含み得る。放射線は、体外の機械から照射されるか(体外照射療法)、または体内のがん細胞の近傍に配置された放射性物質から照射される(体内照射療法、より一般的に密封小線源療法と呼ばれる)。全身放射線療法では放射性物質を使用し、これを口から、または静脈へ投与し、血液に乗せて全身の組織に送り込む。
【0159】
体外照射療法は、光子線(X線またはγ線)の形式で照射され得る。光子は、光及び他の形態の電磁放射の基本単位である。体外照射療法の一例は、3次元原体照射法(3D-CRT)と呼ばれる。3D-CRTは、コンピュータソフトウェア及び高度な治療機械を使用して、非常に正確に成形された標的領域に放射線を照射する。体外照射療法の他の多くの方法が現在試験されており、がん治療に使用されている。これらの方法には、強度変調放射線療法(IMRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、定位放射線手術(SRS)、定位体放射線療法(SBRT)、及び陽子線治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
強度変調放射線療法(IMRT)は、体外照射放射線の一例であり、コリメータと呼ばれる数百の小さな放射線ビーム整形装置を使用して、単一線量の放射線が照射され得る。コリメータは固定することができ、治療中に移動させることもでき、治療セッション中に放射線ビームの強度を変化させることができる。この種の線量調節により、腫瘍または近傍の組織の異なる領域に異なる線量の放射線を与えることが可能になる。IMRTは、逆方向に計画される(逆方向治療計画と呼ばれる)。逆方向治療計画では、腫瘍及び周囲組織の様々な領域への放射線量を事前に計画し、次いで高性能コンピュータプログラムが放射線治療に必要なビーム数及び角度を計算する。対照的に、従来の(順方向)治療計画では、放射線ビームの数及び角度を事前に選択し、計画された各ビームからどれだけの線量を照射するかをコンピュータが計算する。IMRTの目標は、必要な領域への放射線量を増やし、周囲の正常組織の特定の高感受性の領域への放射線被曝を減らすことである。
【0161】
対外照射の別の例は、画像誘導放射線療法(IGRT)である。IGRTでは、治療中に画像スキャン(CT、MRI、またはPET)が繰り返し実行され得る。これらの画像スキャン結果をコンピュータ処理して、治療による腫瘍のサイズと位置の変化を特定し、必要に応じて治療中に対象の位置や計画放射線量を調整できるようにしてもよい。繰り返し画像化することにより、放射線治療の精度を向上させることができ、治療する予定の組織量を減らすことができ、それによって正常組織への総放射線量が減少する可能性がある。
【0162】
トモセラピーは、画像誘導IMRTの一種である。トモセラピー装置は、CTイメージングスキャナと体外照射療法装置を組み合わせたものである。イメージングと治療の両方のために放射線を照射するトモセラピー装置のパーツは、通常のCTスキャナと同じ方法で対象の周りを完全に回転することができる。トモセラピー装置は、治療セッションの直前に対象の腫瘍のCT画像をキャプチャすることができるため、非常に正確に腫瘍を標的化し、正常組織を温存することができる。
【0163】
定位放射線手術(SRS)では、小さな腫瘍に1回以上の高線量の放射線を照射することができる。SRSでは、非常に正確な画像誘導による腫瘍標的化及び対象の位置決めが使用される。したがって、正常組織に過剰な損傷を与えることなく、高線量の放射線を照射することができる。SRSは、境界が明確な小さな腫瘍の治療に使用することができる。SRSは、脳または脊椎腫瘍、及び他の種類のがんからの脳転移の治療に最も一般的に使用される。一部の脳転移の治療では、対象はSRSに加えて脳全体への放射線療法(全脳放射線療法と呼ばれる)を受ける場合がある。SRSでは、高線量の放射線が正確に照射されるように、治療中に対象を固定するヘッドフレームまたは他の装置の使用が必要である。
【0164】
定位体放射線療法(SBRT)は、ほとんどの場合、3D-CRTよりも小さな照射野及び高い線量を使用して、より少ないセッションで放射線療法を実行する。SBRTは、脳及び脊髄の外側にある腫瘍を治療し得る。これらの腫瘍は体の通常の動きに合わせて動く可能性が高いため、脳や脊椎内の腫瘍ほど正確に標的を絞ることができないことから、通常、SBRTを複数回に分けて投与する。SBRTは、肺癌や肝臓癌などの小さな孤立した腫瘍の治療に使用することができる。SBRT系は、CyberKnife(登録商標)などのブランド名で知られている場合がある。
【0165】
陽子線治療では、体外照射療法を陽子によって行ってもよい。陽子は荷電粒子の一種である。陽子線は、主に生体組織にエネルギーを蓄積する方法が光子線と異なる。光子は組織を通過する経路全体に沿ってエネルギーを小さなパケットに蓄積するが、陽子はエネルギーの多くをその経路の終点(ブラッグピークと呼ばれる)に蓄積し、途中で蓄積するエネルギーは少なくなる。陽子の使用により、正常組織の放射線被曝が軽減され、腫瘍へのより高線量の放射線の照射が可能になり得る。
【0166】
電子ビームなどの他の荷電粒子ビームは、皮膚癌や体表面近くの腫瘍などの表在性腫瘍を照射するために使用される場合があるが、組織を通って遠くまで到達することはできない。
【0167】
内部放射線療法(密封小線源療法)は、身体の内部または表面に配置された放射線源(放射性物質)から照射される放射線である。いくつかの密封小線源療法技術が、がん治療に使用される。間質性近接照射療法では、腫瘍組織内、例えば、乳房腫瘍内に配置された放射線源を使用する場合がある。腔内近接照射療法では、腫瘍近くの手術腔内または胸腔などの体腔内に配置された線源を使用する場合がある。眼内の黒色腫の治療に使用される強膜上照射療法では、眼に取り付けられた線源を使用する場合がある。密封小線源療法では、放射性同位体を小さなペレットまたは「シード」に封入することができる。これらのシードを、針、カテーテル、または他の種類のキャリアなどの送達装置を使用して対象に配置する。同位体は、自然に崩壊する際に放射線を放出し、近くのがん細胞に損傷を与え得る。密封小線源療法は、正常組織への損傷を軽減する一方で、外部照射療法よりも高線量の放射線を一部のがんに照射できる可能性がある。
【0168】
密封小線源療法は、低線量率の治療または高線量率の治療として行うことができる。低線量率治療では、がん細胞は線源から数日間にわたって連続的に低線量の放射線を受ける。高線量率治療では、体内に配置された送達チューブに取り付けられたロボット機械が1つ以上の放射線源を腫瘍内または腫瘍付近に誘導し、次いで各治療セッションの終了時に放射線源を除去する。高線量率治療は、1回以上の治療セッションで行うことができる。高線量率治療の一例は、MammoSite(登録商標)システムである。密封小線源療法は、乳房温存手術を受けた乳癌患者の治療に使用される場合がある。
【0169】
密封小線源療法の線源の配置は、一時的または永続的であり得る。永続的な密封小線源療法の場合、線源は外科的に体内に密閉され、すべての放射線が放出された後でもそこに残される場合がある。いくつかの例では、残存物質(放射性同位体が封入されている)は、対象に不快感や害を与えない。永続的な密封小線源療法は、低線量率の密封小線源治療の一種である。一時的な密封小線源療法では、チューブ(カテーテル)または他のキャリアを使用して放射線源を送達し、キャリアと放射線源の両方を治療後に除去する。一時的な密封小線源治療は、低線量率の治療または高線量率の治療のいずれであり得る。密封小線源療法を単独で、または体外照射療法に加えて使用して、周囲の正常組織を温存する一方で、腫瘍に放射線の「増強」を提供してもよい。
【0170】
全身放射線療法では、対象は、放射性物質、例えば、放射性ヨウ素またはモノクローナル抗体に結合した放射性物質を飲用するか、または注射を受ける場合がある。放射性ヨウ素(131I)は、甲状腺癌などのがんの治療に一般的に使用される全身放射線療法の一種である。甲状腺細胞は、放射性ヨウ素を自然に取り込む。他の種類のがんに対する全身放射線療法の場合、モノクローナル抗体は、放射性物質を適切な場所に標的化するのに役立ち得る。放射性物質に結合した抗体は、血液中を移動し、腫瘍細胞を見つけて死滅させる。例えば、薬剤イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))は、特定の種類のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療に使用される場合がある。この薬物の抗体部分は、Bリンパ球の表面に認められるタンパク質を認識して結合する。トシツモマブとヨウ素I131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))の併用療法は、NHLなどの特定の種類のがんの治療に使用される場合がある。このレジメンでは、まず非放射性トシツモマブ抗体を対象に投与し、その後、131Iが結合したトシツモマブ抗体で治療する。トシツモマブは、イブリツモマブと同じBリンパ球上のタンパク質を認識して結合し得る。非放射性型の抗体は、正常なBリンパ球を131Iからの放射線による損傷から保護するのに役立ち得る。
【0171】
一部の全身放射線療法薬は、骨に広がったがん(骨転移)による痛みを軽減する。これは、緩和放射線療法の一種である。放射性薬物のサマリウム-153-レキシドロナム(Quadramet(登録商標))及び塩化ストロンチウム-89(Metastron(登録商標))は、骨転移による痛みの治療に使用し得る放射性医薬品の例である。
【0172】
生物学的療法(免疫療法、生物療法、生物学的療法、または生物学的反応修飾物質(BRM)療法と呼ばれることもある)は、体の免疫系を直接的または間接的に使用して、がんに対抗し、または一部のがん治療によって引き起こされ得る副作用を軽減する。生物学的治療には、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、モノクローナル抗体、ワクチン、遺伝子治療、及び非特異的免疫調節剤が含まれる。
【0173】
インターフェロン(IFN)は、体内で自然に発生するサイトカインの一種である。インターフェロンα、インターフェロンβ、及びインターフェロンγは、がん治療に使用され得るインターフェロンの例である。
【0174】
インターフェロンと同様、インターロイキン(IL)は体内で自然に発生するサイトカインであり、研究室で生成することができる。多くのインターロイキンが、がんの治療用に同定されている。例えば、インターロイキン2(IL-2またはアルデスロイキン)、インターロイキン7、及びインターロイキン12は、抗がん治療として使用され得る。IL-2は、がん細胞を破壊することができるリンパ球などの多くの免疫細胞の増殖と活性を刺激し得る。インターロイキンは、白血病、リンパ腫、脳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、腎臓癌、及び前立腺癌などの多くのがんの治療に使用され得る。
【0175】
コロニー刺激因子(CSF)(造血成長因子と呼ばれることもある)も、がんの治療に使用される場合がある。CSFのいくつかの例としては、G-CSF(フィルグラスチム)及びGM-CSF(サルグラモスチム)が挙げられるが、これらに限定されない。CSFは、骨髄幹細胞の分裂と、白血球、血小板、及び赤血球への発生を促進し得る。骨髄はすべての血球の供給源であるため、体の免疫系にとって非常に重要である。抗がん剤は、白血球、赤血球、及び血小板を生成する体の能力に損傷を与え得るため、CSFによる免疫系の刺激は他の抗がん治療を受けている対象に恩恵をもたらす可能性があり、したがってCSFを、化学療法など他の抗がん療法と併用してもよい。CSFは、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、黒色腫、ならびに脳癌、肺癌、食道癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、結腸癌、及び直腸癌を含む、多種多様ながんの治療に使用され得る。
【0176】
別の種類の生物学的療法として、モノクローナル抗体(MOABまたはMoAB)が挙げられる。これらの抗体は、単一種類の細胞によって産生される場合があり、特定の抗原に特異的であり得る。MOABを作成するために、ヒトのがん細胞をマウスに注射する。これに応答して、マウスの免疫系はこれらのがん細胞に対する抗体を作成することができる。抗体を産生するマウスの形質細胞を単離し、実験室で培養した細胞と融合させて、ハイブリドーマと呼ばれる「ハイブリッド」細胞を作成してもよい。ハイブリドーマは、これらの純粋な抗体、すなわちMOABを無制限に大量に産生することができる。MOABは、様々な方法でがん治療に使用され得る。例えば、特定の種類のがんと反応するMOABは、がんに対する対象の免疫応答を増強し得る。MOABを、細胞増殖因子に対して作用するようにプログラムし、がん細胞の増殖を妨げることができる。
【0177】
MOABを、化学療法、放射性同位元素(放射性物質)、他の生物学的療法、または他の毒素などの他の抗がん療法と関連付けてもよい。抗体ががん細胞に吸着すると、これらの抗がん治療薬が腫瘍に直接送達され、腫瘍の破壊を助ける。放射性同位元素を保有するMOABは、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び乳癌などの特定のがんの診断にも有用であることが判明している。
【0178】
Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)及びHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)は、生物学的療法として使用され得るMOABの例である。Rituxanは、非ホジキンリンパ腫の治療に使用される場合がある。Herceptinは、HER2と呼ばれるタンパク質を過剰に産生する腫瘍を有する対象の転移性乳癌の治療に使用することができる。あるいは、MOABを、リンパ腫、白血病、黒色腫、及び脳癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び他の領域のがんの治療に使用してもよい。
【0179】
がんワクチンは、生物学的療法の別の形式である。がんワクチンは、対象の免疫系ががん細胞を認識するのを促すように設計され得る。がんワクチンは、既存のがんを治療するように(治療ワクチン)、またはがんの発症を予防するように(予防ワクチン)設計され得る。治療用ワクチンは、がんと診断された後に人に注射され得る。これらのワクチンは、既存の腫瘍の成長を停止させ、がんの再発を予防し、または以前の治療で死滅しなかったがん細胞を除去し得る。腫瘍が小さい時点でがんワクチンを投与すると、がんを根絶できる可能性がある。一方、予防ワクチンは、がんが発症する前に健康な人に投与される。これらのワクチンは、免疫系を刺激して、がんを引き起こし得るウイルスを攻撃するように設計されている。これらの発がん性ウイルスを標的とすることで、特定のがんの発症が予防され得る。例えば、cervarix及びgardasilは、ヒトパピローマウイルスを治療するワクチンであり、子宮頸癌を予防し得る。治療用ワクチンは、黒色腫、リンパ腫、白血病、及び脳癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、及び直腸癌の治療に使用され得る。がんワクチンは、他の抗がん療法と組み合わせて使用することができる。
【0180】
遺伝子治療は、生物学的療法の別の例である。遺伝子治療は、疾患に対抗するために、人の細胞に遺伝物質を導入することを含み得る。遺伝子治療法は、がんに対する対象の免疫応答を向上させ得る。例えば、免疫細胞に遺伝子を挿入して、がん細胞を認識して攻撃する免疫細胞の能力を高めてもよい。別のアプローチでは、がん細胞にサイトカインを産生させ、免疫系を刺激する遺伝子をがん細胞に注射してもよい。
【0181】
いくつかの例では、生物学的療法には、非特異的免疫調節剤が含まれる。非特異的免疫調節剤は、免疫系を刺激するか、または間接的に増強する物質である。多くの場合、これらの薬剤は、主要な免疫系細胞を標的とし、サイトカインや免疫グロブリンの産生増加などの二次反応を引き起こし得る。がん治療に使用される2つの非特異的免疫調節剤は、bacillus Calmette-Guerin(BCG)とレバミゾールである。BCGは、手術後の表在性膀胱癌の治療に使用される場合がある。BCGは、炎症反応、場合によっては免疫反応を刺激することによって作用し得る。BCGの溶液を膀胱に点滴注入してもよい。レバミゾールは、手術後のステージIII(デュークスC)結腸癌の治療において、フルオロウラシル(5-FU)化学療法と併用されることがある。レバミゾールは、低下した免疫機能を回復させるように作用し得る。
【0182】
光線力学療法(PDT)は、光感受性物質または光増感剤と呼ばれる薬剤と特定の種類の光線を使用する抗がん治療である。光感受性物質が特定の波長の光線にさらされると、近くの細胞を殺傷する一種の酸素を生成し得る。光感受性物質は、特定の波長の光線によって活性化され得る。この波長によって、光が体内にどれくらいの距離まで到達できるかが決定される。したがって、光感受性物質と光の波長を使用して、身体の様々な領域をPDTで治療し得る。
【0183】
がん治療のためのPDTの最初のステップでは、光増感剤を血流に注入してもよい。この薬剤は全身の細胞に吸収され得るが、正常細胞よりもがん細胞内に長く留まる可能性がある。注射のおよそ24~72時間後、薬剤の大部分が正常細胞から離れているが、がん細胞には残存している時点で、腫瘍を光に曝露することができる。腫瘍内の光感受性物質は、光を吸収し、近くのがん細胞を破壊する活性型の酸素を生成することができる。がん細胞を直接殺傷することに加えて、PDTは他の2つの方法で腫瘍を縮小または破壊し得る。光感受性物質は、腫瘍内の血管に損傷を与える可能性があり、それによってがんが必要な栄養素を受け取ることを阻止することができる。PDTはまた、免疫系を活性化して腫瘍細胞を攻撃し得る。
【0184】
PDTに使用される光線は、レーザーまたは他の光源由来であり得る。レーザー光線は、光ファイバーケーブル(光を伝送する細いファイバー)を通して方向付けられ、体内の領域に光を送達する。例えば、光ファイバーケーブルを内視鏡(体内の組織を観察するために使用される細い照光式チューブ)を通して肺や食道に挿入し、これらの臓器のがんを治療することができる。他の光源には、皮膚癌などの表面腫瘍に使用され得る発光ダイオード(LED)が含まれる。PDTは通常、対象外(outsubject)の手順として実施される。PDTは繰り返してもよく、手術、放射線、または化学療法などの他の療法と共に使用してもよい。
【0185】
体外循環式光化学療法(ECP)はPDTの一種であり、機械を使用して対象の血球を回収する。体外で対象の血球を光増感剤で処理し、光に曝露し、次いで対象に戻され得る。ECPは、他の治療法が効かなかった皮膚T細胞リンパ腫の皮膚症状の重症度を軽減するために使用され得る。ECPは、他の血液癌の治療に使用される場合があり、移植後の拒絶反応の軽減にも役立ち得る。
【0186】
さらに、ポルフィマーナトリウムやPhotofrin(登録商標)などの光増感剤をPDTに使用して、食道癌や非小細胞肺癌の症状を治療または緩和する場合がある。ポルフィマーナトリウムは、がんが食道を閉塞している場合、またはレーザー治療だけではがんを十分に治療できない場合に、食道癌の症状を軽減し得る。ポルフィマーナトリウムは、通常の治療が適切でない対象の非小細胞肺癌の治療や、気道を閉塞している非小細胞肺癌の対象の症状を軽減するために使用してもよい。ポルフィマーナトリウムは、食道癌を引き起こし得る病態であるバレット食道を患っている対象における前がん病変の治療にも使用され得る。
【0187】
レーザー治療では、がんや他の疾患を治療するために高強度の光線を使用してもよい。レーザーを使用して、腫瘍や前がん性増殖を縮小または破壊することができる。レーザーは、基底細胞皮膚癌などの表在癌(体の表面や内臓の内層にあるがん)、ならびに子宮頸癌、陰茎癌、膣癌、外陰癌、及び非小細胞肺癌などのごく初期段階の一部のがんの治療に最も一般的に使用される。
【0188】
レーザーはまた、出血や閉塞などのがんの特定の症状を軽減するためにも使用され得る。例えば、レーザーを、対象の気管(気道)や食道を塞いでいる腫瘍を縮小または破壊するために使用することができる。レーザーはまた、結腸や胃を塞いでいる結腸ポリープや腫瘍を除去するためにも使用することができる。
【0189】
レーザー治療は、多くの場合、可撓性内視鏡(体内の組織を観察するために使用される照明付きの細いチューブ)を通して行われる。内視鏡には光ファイバー(光を伝送する細いファイバー)が取り付けられている。内視鏡を、口、鼻、肛門、または膣などの体の開口部から挿入する。次いで、腫瘍を切断または破壊することを目的として、レーザー光を正確に照射する。
【0190】
レーザー誘導間質温熱療法(LITT)または間質レーザー光凝固も、レーザーを使用して一部のがんを治療する。LITTは温熱療法と呼ばれるがん治療に類似しており、熱を利用してがん細胞に損傷を与えるか死滅させることによって腫瘍を縮小させる。LITTの実施中、光ファイバーを腫瘍に挿入する。ファイバー先端のレーザー光は腫瘍細胞の温度を上昇させ、腫瘍細胞に損傷を与えるかまたは破壊する。LITTは、肝臓の腫瘍を縮小するために使用されることがある。
【0191】
レーザー治療は単独で使用することもできるが、ほとんどの場合、手術、化学療法、放射線療法などの他の治療法と併用される。さらに、レーザーは、神経終末を密閉して手術後の痛みを軽減し、リンパ管を密閉して腫れを軽減し、腫瘍細胞の拡散を制限することができる。
【0192】
がんの治療に使用されるレーザーとしては、二酸化炭素(CO)レーザー、アルゴンレーザー、及びネオジム:イットリウム-アルミニウム-ガーネット(Nd:YAG)レーザーが挙げられる。これらのそれぞれは、腫瘍を縮小または破壊することができ、内視鏡と共に使用することができる。COレーザー及びアルゴンレーザーは、より深い層に到達することなく皮膚の表面を切断することができる。したがって、それらを使用して、皮膚癌などの表在癌を除去することができる。対照的に、Nd:YAGレーザーは、子宮、食道、及び結腸などの内臓を治療するために内視鏡を介して適用されることが一般的である。Nd:YAGレーザー光はまた、LITT中に光ファイバーを通って身体の特定の領域に到達し得る。アルゴンレーザーは、多くの場合、PDTで使用する薬剤を活性化するために使用される。
【0193】
全身疾患を有する対象に対しては、補助化学療法(例えば、ドセタキセル、ミトキサントロン、及びプレドニゾン)ならびに全身放射線療法(例えば、サマリウムまたはストロンチウム)などの追加の治療法を指定することができる。そのような対象は、臨床的には検出できないが、標的遺伝子発現シグネチャーによって明らかにされ得る、推定される微小転移性疾患を除去するために、直ちに放射線療法で治療される可能性が高い。そのような対象はまた、疾患の進行の徴候について、より綿密にモニタリングされ得る。
【0194】
全身性疾患を有さない対象に対しては、限局性の補助放射線療法(例えば、乳房組織に限局された)または内分泌療法もしくは化学療法を施してもよい。疾患のエビデンスがない対象(NED)については、本明細書に記載の発現特性及び/またはリスクスコアの計算を使用して、乳癌の再発リスクを判定することができる。乳癌の再発リスクが低いと識別され、本明細書に記載の方法を用いた放射線療法の有益性が高いと識別された対象に対しては、補助放射線療法が推奨されるであろう。
【0195】
標的遺伝子をグループ化して、グループ内の一連の標的遺伝子について得られた情報を使用して、診断、予後、もしくは治療の選択などの臨床的に関連する判断を下すか、またはその判断を支援することができる。
【0196】
対象由来の生体試料中の測定した複数の標的遺伝子の発現レベルの表示を含む対象の報告書も提供し、その表示は、標的遺伝子のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、8つ、10個、20個、30個、もしくはそれ以上、本明細書に記載のサブセット、またはそれらの組み合わせに対応する標的遺伝子の発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、測定した発現レベル(複数可)の表示は、対象の標的遺伝子の発現レベルの線形または非線形の組み合わせの形式をとり得る。主題の報告書は、機械(例えば、コンピュータ)可読形式及び/またはハード(紙)コピーで提供してもよい。報告書はまた、既知の疾患状態及び/または転帰を有する一組以上の対象由来の前記複数の標的遺伝子の発現レベルの標準測定値を含み得る。この報告書を使用して、対象及び/または治療する医師に、発現した標的遺伝子の発現レベル、可能性の高い医学的診断及び/または示唆を知らせることができ、また、任意選択で対象に治療法を推奨してもよい。
【0197】
また、疾患の治療、診断、予後、及び他の評価に有用な遺伝子発現特性の表示も提供する。いくつかの実施形態では、これらの特性の表示を、コンピュータ可読媒体(磁気媒体、光学媒体など)などの機械によって自動的に読み取り可能な媒体に縮小化する。製品には、遺伝子発現特性を評価するための、そのような媒体内の説明書も含まれ得る。例えば、製品は、上述の遺伝子ポートフォリオの遺伝子発現特性を比較するためのコンピュータ命令を有する読み取り可能な記憶形式を含んでいてもよい。製品はまた、対象試料由来の遺伝子発現データと比較され得るように、デジタル的に記録された遺伝子発現特性を有していてもよい。あるいは、特性を異なる表現形式で記録することができる。グラフィック記録は、そのような形式の1つである。クラスタリングアルゴリズムは、そのようなデータの視覚化に役立ち得る。
【実施例
【0198】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態及び態様を示し、さらに例示するために提供されるのであって、その範囲を限定すると捉えられるべきではない。「我々」、「我々の」、「私」などの代名詞の使用は、発明の実体を指す。
【0199】
実施例1:乳癌の局所再発の予後及び放射線療法への応答の予測のためのゲノム分類器の開発及び検証。
方法
SweBCG91-RTコホート
SweBCG91-RTは、スウェーデンで実施された無作為化試験であり、以前に記載されている(Malmstrom,P.et al. European journal of cancer(Oxford,England:1990)39,1690-1697,doi:10.1016/s0959-8049(03)00324-1(2003);Killander,F.et al. European journal of cancer(Oxford,England:1990)67,57-65,(2016);Sjostrom,M.et al. Journal of Clinical Oncology 37,3340-3349(2019)を参照のこと)。簡潔に述べると、この試験では、リンパ節転移陰性のステージI~IIAの乳癌患者1,178人を、BCS後、補助全乳房RTまたは非RTに無作為に割り付けた。すべての患者は、切除断端陰性であった。内分泌療法及び化学療法を、この時点での地域ガイドラインに従って提供し、最初の試験では患者の8%にのみ投与した。ER、PgR、HER2、及びKI67の免疫組織化学的染色によるサブタイプ分類を、以前に記載されているように実施した(Sjostrom,M.et al. Journal of Clinical Oncology 35,3222-3229(2017)を参照のこと)。ER+、HER2- 腫瘍患者由来の597個の試料が、利用可能な遺伝子発現データ及び完全なLRR情報を有していた。この患者サブセットを、トレーニングコホート(N=243)と検証コホート(N=354)にさらに分割した(以下の追加情報及び図1)。
【0200】
Princess Margaretコホート
Princess Margaretコホートは、カナダで実施された無作為化試験であり、以前に報告されている(Fyles,A.W.et al. The New England journal of medicine 351,963-970(2004);Liu,F.F.et al. Journal of clinical oncology:official journal of the American Society of Clinical Oncology 33,2035-2040(2015)を参照のこと)。簡潔に述べると、この試験では、T1またはT2リンパ節陰性乳癌に罹患した50歳以上の女性769人を、BCS後の補助全乳房RTまたは非RTに無作為に割り付けた。Princess Margaret試験の全患者を、タモキシフェンで治療した。ER、PgR、HER2、及びKi67の免疫組織化学的染色によるサブタイプ分類を、以前に記載されているように実施した(Liu,FF et al. Journal of Clinical Oncology:official Journal of the American Society of Clinical Oncology 33,2035-2040(2015)を参照のこと)。ER+、HER2-腫瘍を有する患者の132試料から遺伝子発現データ及び完全なLRR情報を入手することができた(図2)。
【0201】
遺伝子発現データ
遺伝子発現データ(Gene Expression Omnibus,GSE119295)は、SweBCG91-RT試験に参加した764人の患者の原発腫瘍から取得した(Sjostrom,M.et al. Journal of Clinical Oncology 37,3340-3349(2019)を参照のこと)。SweBCG91-RTコホートと同様に、Princess Margaretコホートの遺伝子発現データは、CLIA/CAP認定研究所(Decipher Biosciences,San Diego,CA)において、GeneChip Human Exon 1.0 ST Array(Thermo Fisher Scientific,South San Francisco)から生成された。
【0202】
トレーニング及び検証セットの開発
この分析では、ER+,HER2-腫瘍を有する患者のみが含まれた。これは、得られたシグネチャーによって、RT省略の候補となる臨床的に低リスクの患者間のリスクを確実に区別できるようにするためであった。さらに、全身療法はLRRに影響を与える可能性があり、全身的に治療されたのはSweBCG91-RT患者のごく一部であったことから、化学療法及び/または内分泌療法で治療した患者をSweBCG91-RTコホートの解析から除外して、結果の解釈を向上させた。これらの検討を経て、SweBCG91-RT試験の患者597人をこの試験に含めた。
【0203】
SweBCG91-RTデータで構成されるトレーニングコホートでLRR事象を識別するためのシグナル対雑音比を向上させるために、10年より前に最初の事象として局所領域事象が記録された患者、または10年超のフォローアップ期間に事象が記録されていない患者のみを含めた。これらの患者の60%をトレーニングコホートに保持し、残りの全患者を検証に使用した(図1)。SweBCG91-RTトレーニングコホート及び検証コホートの非RT群とRT群の間の臨床病理学的変数の分布には有意差がなかったが(表1及び2)、ただし、トレーニングコホートにおける年齢では、非RT群に比べてRT群において40~59歳の女性の割合が増加していた。同側乳房腫瘍の再発率が非RT群に比べてRT群で低いことは、トレーニングコホートと検証コホートの両方で維持されていた(表3)。ER+,HER2-腫瘍患者由来の利用可能なゲノム及びLRRデータを含むPrincess Margaretコホート全体を検証用に確保し、トレーニング目的にはまったく使用しなかった。
【0204】
遺伝子セット濃縮分析
LRRに関連する遺伝子セットを同定するために、RTで治療しなかったトレーニングコホートの131人の患者内で遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を実施した(Subramanian,A.et al. Proc Natl Acad Sci USA 102,15545-15550,(2005);Mootha,V.K.et al. Nat Genet 34,267-273(2003)を参照のこと)。まず、アノテーション付きの各遺伝子転写産物について、LRRに対するCoxモデルを計算した。次いで、事前にランク付けした遺伝子リストをGSEAに入力し、各遺伝子について次式によって統計を作成した:-log(p値)*(HR>1の場合は1、そうでない場合は-1)、式中、p値及びハザード比(HR)は、LRRに対するCoxモデルから求める(各遺伝子の決定された統計量/係数値については、表8を参照のこと)。したがって、患者のより高いLRR率に対する予後率が高い個々の遺伝子は大きな正の値を有し、患者のより低いLRR率に対する予後率が高い個々の遺伝子は大きな負の値を有する。ランク付けされたリストをGSEA(バージョン4.0.3)に入力し、ホールマーク(H)、C2、及びC5コレクションを指定した(分子シグネチャーデータベースMSigDBのバージョン7.2)(Liberzon,A.et al. Cell Systems 1,417-425(2015)を参照のこと)。遺伝子セットコレクション間の固有の違いのため、H、C2、及びC5リストを個別に分析して、コレクション間の傾向を調べた。分析した遺伝子について、各遺伝子について決定した係数値に基づいて合計濃縮スコアを累積させた(表8を参照のこと)。正の濃縮スコアを有する遺伝子セットはより悪い予後(LRRの増加)に関連すると解釈され、負の濃縮スコアを有する遺伝子セットは良好な予後(LRRの減少)に関連すると解釈された。
【0205】
モデル開発
偽発見率q値<0.05を有し、H、C2、及びC5コレクションの陽性遺伝子リストと陰性遺伝子リストの上位10に入っているGSEA遺伝子リストから、モデルの潜在的候補として遺伝子を同定した(表4)。これらの候補遺伝子を、ER、PgR、HER2、及びKi67をコードする遺伝子と共に、以下の要件を満たす遺伝子と交差させた:標準偏差値の上位4分の1に標準偏差がある遺伝子、及びトレーニングセットにおいてRTで治療しなかった患者のLRRエンドポイントに対するCoxモデルで評価した場合に、p値<0.05を有する遺伝子(図3)。得られた82個の遺伝子を、エンドポイントとしてLRRを使用し、RTで治療しなかった患者を対象としたトレーニングコホートでのトレーニングについて、エラスティックネット回帰モデル(R glmnet、α=0.5)に入力した。エラスティックネット回帰モデリングにより、このモデル用の16個の遺伝子の最終セットが得られた。SweBCG91-RTトレーニングデータセットのスコアの25パーセンタイル値を使用して、事前に指定されたカットオフを適用することにより、スコアを高対低に二分化した。次いで、この閾値を、SweBCG91-RT及びPrincess Margaret検証セットに適用した。
【0206】
統計的手法
統計解析は、Rバージョン4.0.2(https://cran.r-project.org/bin/windows/base/old/4.0.2/)を使用して実施した。主要評価項目は、最初の事象としてLRRまでの時間を使用したLRRの累積発生率であった。競合リスクアプローチ(R cmprskパッケージ)を使用して累積発生率を計算し、原因別Cox比例ハザード回帰を使用して、HR及び二分化されたリスク群間の有意差についての検定を計算した。前述したように、グラフで、及びSchoenfeld検定でチェックした場合、SweBCG91RTコホートのいくつかの変数のハザードは経時的に比例しておらず、HRは、全期間にわたる平均として解釈すべきである(Liberzon,A.et al. Cell Systems 1,417-425(2015)を参照のこと)。遠隔転移及び再発を伴わない死亡は、競合する事象とみなした。転移と同時または3か月以内に登録されたLRRとして定義される、遠隔転移とLRRを同期的に有する患者については、LRRを有するものとみなした。ハザード比及び点推定を、括弧内の95%信頼区間(CI)で報告する。0.05未満のp値を、統計学的に有意であるとみなした。個体群統計の表については、2×2表に対するYatesの連続性補正を備えたカイ二乗検定を使用して、治療群と未治療群間の群分布の差異を検定した。単変量及び多変量Cox解析、ならびに相互作用の検定を、連続シグネチャースコアを使用して、したがって閾値に対しては非依存的に実行した。スコアとRTの間の相互作用の検定には、SweBCG91-RT及びPrincess Margaret検証コホートの全患者を含め、コホートごとに階層化した。
【0207】
結果
局所領域再発に関連する生物学的概念
SweBCG91-RTトレーニングコホートにおいてRTで治療しなかった患者において、GSEAを使用して乳癌におけるLRRに関連する生物学的概念を特定した。Molecular SignaturesデータベースHallmark、C2、及びC5コレクション全体で、陽性に濃縮された上位の遺伝子リストには、細胞周期と増殖に関連するリストが含まれていたが(表4)、一方、陰性に濃縮された上位の遺伝子リストには、免疫系に関連するリストが含まれていた。
【0208】
上位の遺伝子リストは、RTを受けなかったトレーニングセットの患者において、最も有用で個別のLRR予後遺伝子と交差していた。エラスティックネット正則化を備えた一般化線形モデルを、LRRエンドポイントを使用してトレーニングしたが、結果として得られた16個の遺伝子シグネチャーには、GSEAリストから広く示されている概念が組み込まれた遺伝子が含まれている(表5)。本発明者らは、このシグネチャーをProfile for the Omission of Local Adjuvant Radiation(POLAR)と名付けた。表8は、患者のLRRの予後を評価するための濃縮スコアを生成する際に利用した各遺伝子について決定された統計値/係数値を示す。
【0209】
線形アルゴリズムを使用してリスクスコアを生成し、POLARを使用して患者を低リスクまたは高リスクに分類した。具体的には、シグネチャー内の16遺伝子のそれぞれの発現レベル(表5)を決定し、それぞれの係数値(表8)を乗じて、アッセイした各遺伝子の加重発現値を生成した。次いで、重み付けされた発現値を加算して、最終的なリスクスコアを生成した。次いで、生成されたリスクスコアに、事前に決定した閾値0.5622を適用し、患者を高リスクまたは低リスクのカテゴリに割り当てた。例えば、リスクスコアが0.5622より高い患者を高リスクとして分類し、リスクスコアが0.5622より低い患者を低リスクとして分類した。
POLARはSweBCG91-RT検証コホートにおいてRTで治療しなかった患者のLRRの予後徴候である。
【0210】
SweBCG91-RT検証コホートでは、POLARは、LRRをエンドポイントとした単変量Coxモデルにおいて、放射線療法で治療しなかった患者のLRRの予後徴候であった(HR=1.7[1.3,2.2]、p<0.001)。このシグネチャーは、年齢、悪性度、腫瘍サイズ、及び管腔A対管腔Bを含む多変量モデルにおいて、予後徴候を維持していた(HR=1.7[1.2,2.3]、p<0.001)(表6)。
【0211】
SweBCG91-RT及びPrincess Margaret検証コホートにおけるPOLARリスクが低い患者と高い患者に対するRTの示差的効果
POLARによる検証コホートで低リスクに分類されたSweBCG91-RT患者のLRRの累積発生率は、放射線療法を受けたかどうかに関係なく、10年時点で10%未満であり、RTによるベネフィットを示すことはできなかった(10年LRR累積発生率 非RT:6%[2%~16%]、RT:5%[1%~13%]、HR=1.1[0.39~3.4]、p=0.81、図4A)。しかしながら、これらの結果は、患者が少数(N=108)であることを考慮して慎重に解釈しなければならない。シグネチャーにより高リスクに分類されたSweBCG91-RT患者では、RTを受けなかった患者と比較して、RTによってLRRのリスクが有意に低下していた(10年間の局所領域累積発生率 非RT:19%[13%~27%]、RT:8%[4%~14%]、HR=0.43[0.24~0.78]、p=0.0055、図4B)。
次いで、Princess Margaret試験の患者132人を対象にPOLARを評価した(図5)。このコホートの個体群統計及び説明的詳細を表7に示す。BCS後にタモキシフェンのみで治療した女性の場合、POLARによって低リスクと分類された患者の10年間累積LRR発生率は、非RTで7%[0%~27%]、RTでは13%[2%~34%]であった。これらの低リスク女性ではRTによるベネフィットは示されなかったが(HR=1.5[0.14~16]、p=0.74)、患者が少数(N=34)であるため、最終的な結論を下すことはできない(図5A)。POLARによって高リスクと分類された女性の10年間でのLRRの累積発生率は、非RTで22%[10%~36%]、RTで8%[2%~20%]であり、RTの有意なベネフィットがあった(HR=0.25[0.07~0.92]、p=0.038)。SweBCG91-RT及びPrincess Margaretの評価可能なサンプルの合計N=486人の患者において、RTと連続POLARスコアの交互作用を検定することによって探索的分析を実施した。交互作用のp値は0.066であった。
【0212】
これらの結果は、本開示の方法及び分類器が、局所領域再発の予後を予測し、補助放射線療法(放射線治療)からベネフィットを得られない乳癌患者を識別することを示した。この結果は、本開示の方法及び分類器が局所領域再発のリスクが低い乳癌患者を識別することができることも示した。これらの結果は、本発明の方法及び分類器が乳癌の治療に有用であることをさらに示した。
【0213】
本開示のゲノム分類器は、乳房温存手術後の補助放射線療法を受けなくてもLRRのリスクが低い患者を識別し、したがってこれらの患者を乳房温存手術後の放射線療法を省略する候補として識別した。さらに、LRRのリスクが最も低い乳癌患者ではRTから有意なベネフィットを受けられないことが、本開示のゲノム分類器によって示された。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【表5】

【表6】

【表7】

【表8】
【0214】
均等物
本発明は、趣旨またはその本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するのではなく、あらゆる点で例示と見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等性の範囲内に入るすべての変更は、その中に包含されることが意図される。
【0215】
参照による援用
本明細書において参照される特許文献及び科学論文の各々の全開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】