(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ヒト多能性幹細胞からのストロマフリーNK細胞分化法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240312BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240312BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240312BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
C12N15/09 110
A61K35/17
A61K35/545
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61P37/04
A61K31/5575
A61P43/00 121
A61K31/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553542
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022018991
(87)【国際公開番号】W WO2022187682
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ジン ラン
(72)【発明者】
【氏名】デーリー ジョージ キュー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB32
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB57
4C087BB64
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB09
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書に記載される技術は、NK細胞分化のストロマフリー法を対象とする。また、ストロマフリー法を使用して分化させた細胞、およびそのような細胞を含む組成物が本明細書に記載される。いくつかの態様では、前記細胞は、遺伝子改変することができる。いくつかの態様では、前記細胞または前記細胞を含む組成物は、がんを処置するために、または病態を処置するための細胞補充治療として、患者に投与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)CD34
+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および
b)前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および
c)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項3】
a)CD34
+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および
b)前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項4】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および
c)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項5】
a)CD34
+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに
b)前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項6】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに
c)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項7】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法。
【請求項8】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;および
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項9】
前記Notchリガンドが、固体基材に付着されている、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記Notchリガンドが、細胞培養ディッシュに付着されている、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記Notchリガンドが、ストロマ細胞に由来しない、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることが、Notchリガンドを発現するストロマ細胞との共培養を含まない、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることが、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞との共培養を含まない、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記Notchリガンドが、デルタ様-1(DLL1)、デルタ様-4(DLL4)、固定化デルタ1
ext-IgG、および固定化デルタ4
ext-IgGからなる群より選択される、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
固定化デルタ1
ext-IgGが、ヒトIgG1のFcドメインに融合されたヒトデルタ様-1の細胞外ドメインからなる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記Notchリガンドが、DLL4である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記Notchリガンドが、多くても5μg/mlの濃度で提供される、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間が、少なくとも4週間である、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞分化培地が、無血清である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記NK細胞分化培地が、SCF、FLT3、およびIL7を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記NK細胞分化培地が、30ng/ml~100ng/mL SCF;15ng/ml~100ng/mL FLT3;および5ng/ml~20ng/ml IL7を含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記NK細胞分化培地が、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含む、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記NK細胞分化培地が、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含む、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記NK細胞分化培地が、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含む、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞分化培地が、30ng/ml SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含む、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記NK細胞分化培地が、トロンボポエチン(TPO)をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記NK細胞分化培地が、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記NK細胞分化培地が、インターロイキン-15(IL-15)をさらに含む、請求項1~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間後に始まる、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記NK細胞分化培地が、インターロイキン-3(IL-3)をさらに含む、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記NK細胞分化培地が、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含む、請求項1~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
CD56
+ NK細胞濃縮の工程をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記多能性幹細胞の集団が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ESC)を含む、請求項2、4、6、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記人工多能性幹細胞が、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択される少なくとも1つのリプログラミング因子、またはそれらの任意の組み合わせを成熟細胞に導入することによって産生される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記人工多能性幹細胞が、リプログラミング因子のOCT4、SOX2、KLF4、ならびに任意で、c-MYC、またはnanogおよびLIN28、のみを成熟細胞に導入することによって産生される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記人工多能性幹細胞が、前記リプログラミング因子を前記成熟細胞に2回またはそれ以上導入することによって産生される、請求項33~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記多能性幹細胞の集団が、胚様体または2D接着培養物を用いてCD34
+造血内皮細胞の集団に分化される、請求項2、4、6、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間が、少なくとも8日である、請求項2、4、6、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記凝集培地が、BMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPOを含む、請求項2、4、6、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記凝集培地が、
a)少なくとも0および2日目にBMP4;
b)少なくとも2日目にSB-431542;
c)少なくとも2日目にCHIR99021;
d)少なくとも1、2、3、および6日目にbFGF;
e)少なくとも3および6日目にVEGF;
f)少なくとも6日目にIL-6;
g)少なくとも6日目にIL-11;
h)少なくとも6日目にIGF-1;
i)少なくとも6日目にSCF;ならびに/または
j)少なくとも6日目にEPO
を含む、請求項2、4、6、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
前記凝集培地が、10ng/ml BMP4、6mM SB-431542、3mM CHIR99021、5ng/ml bFGF、15ng/ml VEGF、10ng/ml IL-6、5ng/mL IL-11、25ng/mL IGF-1、50ng/mL SCF、および2U/ml EPOを含む、請求項2、4、6、9、または40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
BMP4が、前記凝集培地中、約10ng/mlの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
SB-431542が、前記凝集培地中、約6mMの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
CHIR99021が、前記凝集培地中、約3mMの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
bFGFが、前記凝集培地中、約5ng/mlの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
VEGFが、前記凝集培地中、約15ng/mlの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
IL-6が、前記凝集培地中、約10ng/mlの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
IL-11が、前記凝集培地中、約5ng/mLの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
IGF-1が、前記凝集培地中、約25ng/mLの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
SCFが、前記凝集培地中、約50ng/mLの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
EPOが、前記凝集培地中、約2U/mlの濃度である、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、前記CD34
+造血内皮細胞の集団における表面マーカーの発現を用いて選択または単離する工程をさらに含む、請求項1~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記CD34
+造血内皮細胞の集団が、CD45陰性/低発現である、請求項1~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
前記CD34
+造血内皮細胞の集団が、CD38陰性/低発現である、請求項1~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記多能性幹細胞、結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団、または結果として生じた前記CD56
+ NK細胞の集団を遺伝子改変する工程をさらに含む、請求項1~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記遺伝子改変が、内因性NK細胞受容体を除去すること、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記遺伝子改変が、前記細胞における免疫原性を低減させる、請求項56記載の方法。
【請求項58】
免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、内因性HLAを編集することである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、HLAクラスIまたはHLAクラスIIを除去または編集することを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、HLA-G、HLA-E、CD47、およびPD-L1からなる群より選択される少なくとも1つの寛容促進性免疫調節分子を発現させることを含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、CCL21、PD-L1、FasL、SERPINB9、H2-M3、CD47、CD200、およびMFGE8からなる群より選択される少なくとも1つの免疫調節分子を発現させることを含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼが、ヒストン3リシン残基9(H3K9)へのおよび/またはヒストン3リシン残基27(H3K27)へのメチル基の付加を触媒する、請求項1または2記載の方法。
【請求項63】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27が、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質が、ヘテロ有機化合物または有機金属化合物である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質が、BIX-01294、UNC0638、E72、BRD4770、A-366、ケトシン、UNC0224、UNC0631、UNC0646、EPZ005687、EPZ-6438(E7438)、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EI1、GSK343、GSK126、およびUNC1999からなる群より選択される、請求項63または64記載の方法。
【請求項66】
前記核酸阻害物質が、ヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を標的とする核酸である、請求項63記載の方法。
【請求項67】
前記核酸阻害物質が、RNA干渉阻害物質またはRNA干渉物質である、請求項63記載の方法。
【請求項68】
前記核酸阻害物質が、EZH1特異的核酸阻害物質である、請求項63記載の方法。
【請求項69】
前記核酸阻害物質が、EZH1に結合するアプタマーである、請求項63記載の方法。
【請求項70】
前記核酸阻害物質が、EZH1特異的RNA干渉物質、またはEZH1特異的RNA干渉物質をコードするベクターであり、前記RNA干渉物質が、SEQ ID NO:11~19から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、請求項63記載の方法。
【請求項71】
前記核酸阻害物質が、Cas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRガイドRNAとCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRガイドRNAが、SEQ ID NO:20~41から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、請求項63記載の方法。
【請求項72】
前記核酸阻害物質が、dCas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRiガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRiガイドRNAとdCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRiガイドRNAが、SEQ ID NO:51~53から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、請求項63記載の方法。
【請求項73】
前記エピジェネティック制御因子が、DNA-メチルトランスフェラーゼ(DNMT);メチル-CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質;DNAデメチラーゼ;ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT);メチル-ヒストン結合タンパク質;ヒストンデメチラーゼ;ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT);アセチル結合タンパク質;またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)である、請求項3または4記載の方法。
【請求項74】
前記エピジェネティック制御因子が、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される、請求項3または4記載の方法。
【請求項75】
前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、UNC0224;MC1568;およびCAY10591からなる群より選択される、請求項74記載の方法。
【請求項76】
前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、UNC0224である、請求項74記載の方法。
【請求項77】
前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、MC1568である、請求項74記載の方法。
【請求項78】
前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、CAY10591である、請求項74記載の方法。
【請求項79】
前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、少なくとも500nMの濃度で提供される、請求項74~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
G9aおよび/またはGLPが、低分子阻害物質によって阻害される、請求項5または6記載の方法。
【請求項81】
G9aおよび/またはGLPが、核酸阻害物質によって阻害される、請求項5または6記載の方法。
【請求項82】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;E72;BIX-01338;BRD9539;ケトシン;およびDCG066からなる群より選択される、請求項80記載の方法。
【請求項83】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0224である、請求項80記載の方法。
【請求項84】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0638である、請求項80記載の方法。
【請求項85】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、A366である、請求項80記載の方法。
【請求項86】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BRD4770である、請求項80記載の方法。
【請求項87】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BIX01294である、請求項80記載の方法。
【請求項88】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0642である、請求項80記載の方法。
【請求項89】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0631である、請求項80記載の方法。
【請求項90】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0646である、請求項80記載の方法。
【請求項91】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0321である、請求項80記載の方法。
【請求項92】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、E72である、請求項80記載の方法。
【請求項93】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BIX-01338である、請求項80記載の方法。
【請求項94】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BRD9539である、請求項80記載の方法。
【請求項95】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、ケトシンである、請求項80記載の方法。
【請求項96】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、DCG066である、請求項80記載の方法。
【請求項97】
前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、300nM~5μMの濃度で提供される、請求項80~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記G9a阻害物質が、
SEQ ID NO:50、または
少なくとも95%同一であり、かつ同じ機能を維持する、核酸配列
を含む、請求項81記載の方法。
【請求項99】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項100】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項101】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
【請求項102】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
【請求項103】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
【請求項104】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
【請求項105】
a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34
+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
【請求項106】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
【請求項107】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
【請求項108】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
【請求項109】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
【請求項110】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
【請求項111】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
【請求項112】
CD34
+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56
+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
【請求項113】
前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程をさらに含む、請求項99~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてEZH1を阻害する工程をさらに含む、請求項99~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項115】
前記CD34
+造血内皮細胞の集団においてEZH1およびG9aを阻害する工程をさらに含む、請求項99~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項116】
前記CD56
+ NK細胞の集団が、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の数よりも少なくとも2倍多い数のCD56+ NK細胞を含む、請求項1~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項117】
前記CD56
+ NK細胞の集団が、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の割合よりも少なくとも2倍高い割合のCD56+ NK細胞を含む、請求項1~116のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
請求項1~117のいずれか一項記載の方法によって産生される、細胞。
【請求項119】
請求項118記載の細胞またはその集団を含む、組成物。
【請求項120】
請求項118記載の細胞またはその集団と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項121】
対象での細胞補充治療において使用するための、請求項120記載の薬学的組成物。
【請求項122】
請求項118記載の細胞もしくはその集団、または請求項119記載の組成物、または請求項120記載の薬学的組成物を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、細胞補充治療の方法。
【請求項123】
前記レシピエント対象が、化学療法および/または放射線照射を受けたことがある、請求項122記載の細胞補充治療の方法。
【請求項124】
前記レシピエント対象が、がんを有する、請求項122記載の細胞補充治療の方法。
【請求項125】
前記レシピエント対象が、免疫機能および/または免疫細胞再構成における欠損を有する、請求項122記載の細胞補充治療の方法。
【請求項126】
移植前に、前記細胞またはその集団が、レシピエント対象におけるその後の生着を促進するために、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処理される、請求項122~125のいずれか一項記載の細胞補充治療の方法。
【請求項127】
前記細胞またはその集団が、前記レシピエント対象に対して自己由来である、請求項122~126のいずれか一項記載の細胞補充治療の方法。
【請求項128】
前記細胞またはその集団が、前記レシピエント対象とHLA型がマッチする、請求項122~127のいずれか一項記載の細胞補充治療の方法。
【請求項129】
前記細胞またはその集団が、低免疫原性である、請求項122~128のいずれか一項記載の細胞補充治療の方法。
【請求項130】
請求項118記載の細胞もしくはその集団または請求項119記載の組成物または請求項120記載の薬学的組成物の有効量を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、がんを処置する方法。
【請求項131】
前記細胞が、CD56+ NK細胞である、請求項130記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)項の下、2021年3月5日に出願された米国特許仮出願第63/157,112号の恩典を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府の支援
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金番号U01HL134812の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、この配列表は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2022年3月4日に作成された前記ASCIIコピーは、701039-097920WOPT_SL.txtと命名され、109,545バイトサイズである。
【0004】
技術分野
本明細書に記載される技術は、免疫細胞分化法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
インビボ細胞補充治療のため、疾患、障害、および病態のホストの治療のため、ならびに疾患モデル化、薬物スクリーニング、および血液疾患のインビトロ研究のための機能的免疫細胞の供給は、不足している。ナチュラルキラー(NK)細胞は、ヒト免疫系の重要な構成成分であり、大きな治療可能性を有する。ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)は、細胞療法に向けた既製品のスケーラブルな製造のための理想的な供給源である。しかしながら、iPSCからの成熟した機能的なNK細胞の生成は、困難であることが証明されている。加えて、iPSCの分化は、マウスストロマ細胞との共培養を必要とし、このことが、iPSC由来NK細胞のトランスレーショナルポテンシャルを制限している。したがって、高収率で臨床的に適用可能なNK細胞分化法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書に記載される技術は、細胞を分化させる方法を対象とする。いくつかの態様では、分化細胞は、免疫細胞である。いくつかの態様では、方法は、NK細胞分化を対象とする。一局面では、本明細書に記載される方法は、ストロマフリーNK細胞分化法、すなわち、ストロマ細胞または任意の他の種類の支持細胞との共培養を含まない方法である。マウスストロマ細胞などのストロマ細胞との共培養は、iPSC由来NK細胞のトランスレーショナルポテンシャルを制限し;例えば、ストロマ細胞の存在による移植拒絶反応への懸念があり得る。加えて、本明細書に記載されるように、ストロマフリーNK細胞分化法は、ストロマ共培養を含む分化法と比較して、CD56+ NK細胞の数または割合の増加およびCD3+ T細胞の数または割合の減少を、結果としてもたらす。ヒストンメチルトランスフェラーゼ(例えば、EZH1)の阻害は、本明細書に記載されるストロマフリー分化法を用いたCD56+ NK細胞の収率をさらに増加させる。したがって、本明細書に記載されるストロマフリー分化法で分化させたNK細胞は、ストロマ共培養法と比較して、以下の予想外の有益性のうちの少なくとも1つを示す:(1)ヒトにおける移植の可能性の増加;(2)総CD56+ NK細胞の数もしくは割合の増加;(3)総CD3+ T細胞の数もしくは割合の減少;(4)NK細胞受容体の発現の増加;または(5)リンパ球系分化/機能を担う遺伝子の発現の増加(例えば、実施例1、
図2、
図3A~3B、実施例3、
図4、
図5A~5C、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0007】
一局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0008】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0009】
一局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0010】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0011】
一局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0012】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0013】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0014】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;および(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0015】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、固体基材に付着されている。
【0016】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、細胞培養ディッシュに付着されている。
【0017】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、ストロマ細胞に由来しない。
【0018】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることは、Notchリガンドを発現するストロマ細胞との共培養を含まない。
【0019】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることは、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞との共培養を含まない。
【0020】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、デルタ様-1(DLL1)、デルタ様-4(DLL4)、固定化デルタ1ext-IgG、および固定化デルタ4ext-IgGからなる群より選択される。
【0021】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、固定化デルタ1ext-IgGは、ヒトIgG1のFcドメインに融合されたヒトデルタ様-1の細胞外ドメインからなる。
【0022】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、DLL4である。
【0023】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、Notchリガンドは、多くても5μg/mlの濃度で提供される。
【0024】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、少なくとも4週間である。
【0025】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、無血清である。
【0026】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、SCF、FLT3、およびIL7を含む。
【0027】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、30ng/ml~100ng/mL SCF;15ng/ml~100ng/mL FLT3;および5ng/ml~20ng/ml IL7を含む。
【0028】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含む。
【0029】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含む。
【0030】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含む。
【0031】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、表7または8に記載されるような組成を含む。
【0032】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、30ng/ml SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含む。
【0033】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、トロンボポエチン(TPO)をさらに含む。
【0034】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含む。
【0035】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、インターロイキン-15(IL-15)をさらに含む。
【0036】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間後に始まる。
【0037】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、インターロイキン-3(IL-3)をさらに含む。
【0038】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含む。
【0039】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、CD56+ NK細胞濃縮の工程をさらに含む。
【0040】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、多能性幹細胞の集団は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ESC)を含む。
【0041】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択される少なくとも1つのリプログラミング因子、またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、表9を参照のこと)を成熟細胞に導入することによって産生される。
【0042】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、本明細書の表9に記載されるような少なくとも2つのリプログラミング因子の組み合わせを成熟細胞に導入することによって産生される。
【0043】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、リプログラミング因子のOCT4、SOX2、KLF4、ならびに任意で、c-MYC、またはnanogおよびLIN28、のみを成熟細胞に導入することによって産生される。
【0044】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、リプログラミング因子を成熟細胞に2回またはそれ以上導入することによって産生される。
【0045】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、多能性幹細胞の集団は、胚様体または2D接着培養物を用いてCD34+造血内皮細胞の集団に分化される。
【0046】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、少なくとも8日である。
【0047】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、凝集培地は、BMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPOを含む。
【0048】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、凝集培地は、(a)少なくとも0および2日目にBMP4;(b)少なくとも2日目にSB-431542;(c)少なくとも2日目にCHIR99021;(d)少なくとも1、2、3、および6日目にbFGF;(e)少なくとも3および6日目にVEGF;(f)少なくとも6日目にIL-6;(g)少なくとも6日目にIL-11;(h)少なくとも6日目にIGF-1;(i)少なくとも6日目にSCF;ならびに/または(j)少なくとも6日目にEPOを含む。
【0049】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、凝集培地は、10ng/ml BMP4、6mM SB-431542、3mM CHIR99021、5ng/ml bFGF、15ng/ml VEGF、10ng/ml IL-6、5ng/mL IL-11、25ng/mL IGF-1、50ng/mL SCF、および2U/ml EPOを含む。
【0050】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、BMP4は、凝集培地中、約10ng/mlの濃度である。
【0051】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、SB-431542は、凝集培地中、約6mMの濃度である。
【0052】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CHIR99021は、凝集培地中、約3mMの濃度である。
【0053】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、bFGFは、凝集培地中、約5ng/mlの濃度である。
【0054】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、VEGFは、凝集培地中、約15ng/mlの濃度である。
【0055】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、IL-6は、凝集培地中、約10ng/mlの濃度である。
【0056】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、IL-11は、凝集培地中、約5ng/mLの濃度である。
【0057】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、IGF-1は、凝集培地中、約25ng/mLの濃度である。
【0058】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、SCFは、凝集培地中、約50ng/mLの濃度である。
【0059】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、EPOは、凝集培地中、約2U/mlの濃度である。
【0060】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、CD34+造血内皮細胞の集団における表面マーカーの発現を用いて選択または単離する工程をさらに含む。
【0061】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD45陰性/低発現である。
【0062】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD38陰性/低発現である。
【0063】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、PSC(例えば、iPSC)、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団、または結果として生じたCD56+ NK細胞の集団を遺伝子改変する工程をさらに含む。
【0064】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、遺伝子改変は、内因性NK細胞受容体を除去すること、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることである。
【0065】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、遺伝子改変は、細胞における免疫原性を低減させる。
【0066】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、免疫原性を低減させる遺伝子改変は、内因性HLAを編集することである。
【0067】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、免疫原性を低減させる遺伝子改変は、HLAクラスIまたはHLAクラスIIを除去または編集することを含む。
【0068】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、免疫原性を低減させる遺伝子改変は、HLA-G、HLA-E、CD47、およびPD-L1からなる群より選択される少なくとも1つの寛容促進性免疫調節分子を発現させることを含む。
【0069】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、免疫原性を低減させる遺伝子改変は、CCL21、PD-L1、FasL、SERPINB9、H2-M3、CD47、CD200、およびMFGE8からなる群より選択される少なくとも1つの免疫調節分子を発現させることを含む。
【0070】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼは、ヒストン3リシン残基9(H3K9)へのおよび/またはヒストン3リシン残基27(H3K27)へのメチル基の付加を触媒する。
【0071】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27は、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される。
【0072】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質は、ヘテロ有機化合物または有機金属化合物である。
【0073】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質は、BIX-01294、UNC0638、E72、BRD4770、A-366、ケトシン、UNC0224、UNC0631、UNC0646、EPZ005687、EPZ-6438(E7438)、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EI1、GSK343、GSK126、およびUNC1999からなる群より選択される。
【0074】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を標的とする核酸である。
【0075】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、RNA干渉阻害物質またはRNA干渉物質である。
【0076】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、EZH1特異的核酸阻害物質である。
【0077】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、EZH1に結合するアプタマーである。
【0078】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、EZH1特異的RNA干渉物質、またはEZH1特異的RNA干渉物質をコードするベクターであり、前記RNA干渉物質は、SEQ ID NO:11~19から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0079】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、Cas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRガイドRNAとCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRガイドRNAは、SEQ ID NO:20~41から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0080】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、核酸阻害物質は、dCas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRiガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRiガイドRNAとdCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRiガイドRNAは、SEQ ID NO:51~53から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む。
【0081】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子は、DNA-メチルトランスフェラーゼ(DNMT);メチル-CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質;DNAデメチラーゼ;ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT);メチル-ヒストン結合タンパク質;ヒストンデメチラーゼ;ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT);アセチル結合タンパク質;またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)である。
【0082】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子は、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される。
【0083】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、UNC0224;MC1568;およびCAY10591からなる群より選択される。
【0084】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、UNC0224である。
【0085】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、MC1568である。
【0086】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、CAY10591である。
【0087】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、少なくとも500nMの濃度で提供される。
【0088】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLPは、低分子阻害物質によって阻害される。
【0089】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLPは、核酸阻害物質によって阻害される。
【0090】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;E72;BIX-01338;BRD9539;ケトシン;およびDCG066からなる群より選択される。
【0091】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0224である。
【0092】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0638である。
【0093】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、A366である。
【0094】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、BRD4770である。
【0095】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、BIX01294である。
【0096】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0642である。
【0097】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0631である。
【0098】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0646である。
【0099】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、UNC0321である。
【0100】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、E72である。
【0101】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、BIX-01338である。
【0102】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、BRD9539である。
【0103】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、ケトシンである。
【0104】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、DCG066である。
【0105】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLP阻害物質は、300nM~5μMの濃度で提供される。
【0106】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9a阻害物質は、SEQ ID NO:50、または、少なくとも95%同一であり、かつ同じ機能を維持する、核酸配列、を含む。
【0107】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0108】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0109】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0110】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0111】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0112】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0113】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0114】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0115】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0116】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0117】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0118】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0119】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0120】
一局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0121】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程をさらに含む。
【0122】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1を阻害する工程をさらに含む。
【0123】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1およびG9aを阻害する工程をさらに含む。
【0124】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団は、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の数よりも少なくとも2倍多い数のCD56+ NK細胞を含む。
【0125】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団は、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の割合よりも少なくとも2倍高い割合のCD56+ NK細胞を含む。
【0126】
一局面では、本明細書に記載されるような方法によって産生される細胞が、本明細書に記載される。
【0127】
一局面では、本明細書に記載されるような細胞またはその集団を含む組成物が、本明細書に記載される。
【0128】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0129】
一局面では、本明細書に記載されるような細胞またはその集団と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が、本明細書に記載される。
【0130】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、薬学的組成物は、対象での細胞補充治療において使用するためである。
【0131】
一局面では、本明細書に記載されるような細胞もしくはその集団、または本明細書に記載されるような組成物、または本明細書に記載されるような薬学的組成物を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、細胞補充治療の方法が、本明細書に記載される。
【0132】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、レシピエント対象は、化学療法および/または放射線照射を受けたことがある。
【0133】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、レシピエント対象は、がんを有する。
【0134】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、レシピエント対象は、免疫機能および/または免疫細胞再構成における欠損を有する。
【0135】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、移植前に、細胞またはその集団は、レシピエント対象におけるその後の生着を促進するために、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処理される。
【0136】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、細胞またはその集団は、レシピエント対象に対して自己由来である。
【0137】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、細胞またはその集団は、レシピエント対象とHLA型がマッチする。
【0138】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、細胞またはその集団は、低免疫原性である。ある特定の態様では、細胞の低免疫原性は、操作(例えば、ある特定の遺伝子をノックインまたはノックアウトすること)によって達成される。
【0139】
一局面では、本明細書に記載されるような細胞もしくはその集団または本明細書に記載されるような組成物または本明細書に記載されるような薬学的組成物の有効量を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、がんを処置する方法が、本明細書に記載される。
【0140】
諸局面のいずれかのいくつかの態様では、細胞は、CD56+ NK細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【
図1】従来の分化プロトコールから産生された細胞を示す、フローサイトメトリープロットである。OP9-DLL1細胞との共培養により、NK細胞(CD56+)およびT細胞(CD3+)の両方が低効率で生じる。NK細胞およびT細胞の培養条件には、以下が含まれた:(1)EB由来のCD34+ iPSC由来造血内皮細胞(HE)とOP9-DLL1ストロマ細胞との5週間の共培養;および(2)IL-7(5ng/ml)、SCF(30ng/ml)、およびFlt3(5ng/ml)を補給した培地。
【
図2】5週間後にT細胞またはNK細胞をより特異的に生成させるために用いることができる、ストロマフリー分化プロトコールから産生された細胞を示す、一連のフローサイトメトリープロットである。T細胞の培養条件には、以下が含まれた:(i)DLL4被覆(10μg/ml)上のEB由来CD34+造血内皮細胞(HE)、ならびに(ii)IL-7(50ng/ml)、SCF(100ng/ml)、Flt3(100ng/ml)、およびTPO(50ng/ml、最初の2週間)。ストロマフリーT細胞分化プロトコールに関するさらなる詳細については、例えば、国際PCT公報WO 2021/150919を参照されたく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。NK細胞の培養条件には、以下が含まれた:DLL4被覆(5μg/ml)上のEB由来CD34+造血内皮細胞(HE)、IL7(10ng/ml)、SCF(50ng/ml)、およびFlt3(50ng/ml)。
【
図3A】
図3A~3Bは、ストロマフリーNK細胞分化を示す、一連のグラフである。ヒトiPSCを、DOX誘導性EZH1ノックダウン(kd)のためにCRISPRiシステムで操作した。これらのiPSCを、EB形成を介してCD34+ HE細胞に分化させた(例えば、実施例2を参照のこと)。次いで、CD34+ HE細胞を、本明細書に記載されるようなストロマフリーNK分化法を用いてNK細胞へ分化するように誘導した。
図3Aは、分化の28日目に検出されたNK細胞マーカーCD56およびT細胞マーカーCD3の発現を示す、一連のフローサイトメトリープロットである。EZH1 kd群において、細胞を、14日間、1μg/ml DOXで処理して、CRISPRi媒介EZH1ノックダウンを誘導した。
図3Bは、結果の棒グラフであり、CD56+細胞の増加によって見られるような、EZH1ノックダウン後のNK細胞分化効率の有意な増加を示す。実験は、3つの個々のCRISPRi gRNA(例えば、SEQ ID NO:51~53を参照のこと)を形質導入した1157個のiPSC細胞株の3つの分化について行った。
【
図4】本明細書に記載される分化法に従って産生されたNK細胞が、別の方法によって産生されたNK細胞と比較して、より高いレベルの活性化/抑制性NK細胞受容体を発現したことを示す、一連のフローサイトメトリープロットである。フローサイトメトリーの結果は、以前に公開されたプロトコール(例えば、Li et al, 2018, Cell Stem Cell 3(2):181-192を参照されたく;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、または本明細書に記載されるストロマフリー分化プロトコール(EZH1またはG9aノックダウンを伴わない)を用いた、iPSCに由来するNK細胞上の活性化(NCR1、CD16)および抑制性(NKG2A)受容体の発現を示す。ストロマフリーNK細胞は、Kaufmanプロトコールにおける14.0% NCR1+NKG2A+ NK細胞と比較して33.3% NCR1+NKG2A+ NK細胞(137.9%の増加)を示し、かつストロマフリーNK細胞は、以前に公開されたプロトコールにおける9.41% CD16+ NK細胞と比較して37.1% CD16+ NK細胞(294.3%の増加)を示したことに注目されたい。
【
図5A】
図5A~5Cは、G9a(本明細書においてEHMT2とも称される)の抑制がNK細胞分化を促進したことを示す、一連の概略図およびグラフである。
図5Aは、実験設計を示す概略図である。
図5Bは、対照iPSCまたは14日間のドキシサイクリン(Dox)誘導CRISPRi(例えば、SEQ ID NO:50を参照のこと)によるEHMT2(G9a)ノックダウンを伴うiPSCからのCD5-CD56+ NK細胞の産生を示す、代表的なフローサイトメトリー結果である。これらの代表的なフローサイトメトリープロットにおいて、G9aノックダウンは、対照における25.2% CD5-CD56+ NK細胞と比較して、64.7% CD5-CD56+ NK細胞を結果としてもたらしたことに注目されたい。
図5Cは、対照iPSCまたはEHMT2(G9a)ノックダウンを伴うiPSCに由来するCD5-CD56+ NK細胞の頻度を示す、ドットポットである(n=3、
* P≦0.05)。
【
図6A】
図6A~6Cは、G9aがリンパ球系遺伝子のクロマチンアクセシビリティを調節することを示す、一連の概略図およびグラフである。
図6Aは、実験設計を示す概略図である。
図6Bは、5日間のCD34+CD45- HEからCD34+CD45+ HSPCへの変換中に、対照媒体(「DMSO」)、500nMのUNC0224(「UNC低」)、または1μMのUNC0224(「UNC高」)で処理されたiPSC由来CD34+CD45+ HSPCにおいて濃縮された、配列決定によるトランスポザーゼ到達クロマチン領域解析(assay for transposase-accessible chromatin using sequencing)(ATAC-seq)のピークを示すヒートマップであり;K1~K5と標識された5つのピークが示される。
図6Cは、UNC0224で処理されたiPSC-HSPCにおいて有意にアップレギュレーションされたピーク(K5ピーク)に関連する濃縮されたパスウェイのGOタームを示す、棒グラフである。
【
図7】例示的なNK細胞分化プロトコールを示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0142】
詳細な説明
本明細書に記載される技術の態様は、細胞を分化させる方法を含む。いくつかの態様では、細胞は、免疫細胞である。いくつかの態様では、細胞は、NK細胞である。大顆粒リンパ球(LGL)としても知られているNK細胞は、自然免疫系にとって重要な細胞傷害性リンパ球の種類である。NK細胞(自然リンパ系細胞のグループに属する)は、リンパ球系共通前駆体から分化した3種類の細胞のうちの1つであり、他の2つは、Bリンパ球およびTリンパ球である。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、および胸腺において分化して成熟し、次いでそこで、循環に入ることが知られている。
【0143】
NK細胞の役割は、脊椎動物の適応免疫応答における細胞傷害性T細胞の役割に似ている。NK細胞は、ウイルス感染細胞に対して迅速な応答を提供し、感染後約3日で作用し、および腫瘍形成に応答する。免疫細胞は、典型的には、感染細胞表面上に提示された主要組織適合性複合体(MHC)を検出して、サイトカイン放出をトリガーし、溶解またはアポトーシスによる感染細胞の死を引き起こす。NK細胞はまた、抗体およびMHCの非存在下でストレスを受けた細胞を認識して殺傷する能力を有し、これは、より速い免疫反応を可能にする。MHC Iマーカーを失っている有害な細胞(例えば、がん細胞;ウイルス感染細胞)は、Tリンパ球細胞などの他の免疫細胞が検出および破壊できないため、この役割は特に重要である。ナチュラルキラー細胞が自然免疫のエフェクターであることに加えて、活性化NK細胞受容体および抑制性NK細胞受容体は両方とも、自己寛容およびNK細胞活性の維持を含む、重要な機能的役割を果たす。NK細胞はまた、適応免疫応答において役割を果たし;多数の実験により、すぐ隣の環境に容易に順応して、同じ抗原での二次感染に応答するための基礎となる、抗原特異的な免疫学的記憶を構築するその能力が、実証されている。
【0144】
NK細胞は、CD56の存在およびCD3の不在(CD56+、CD3-)によって特定することができる。NK細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)または汎TマーカーCD3または表面免疫グロブリン(Ig)B細胞受容体を発現しないが、通常、ヒトにおいては表面マーカーCD16(FcγRIII)およびCD57を、またはC57BL/6マウスにおいてはNK1.1もしくはNK1.2を発現する。NKp46細胞表面マーカーは、現時点で、ヒト、いくつかの系統のマウス(BALB/cマウスを含む)の両方において、および3つの一般的なサルの種において発現している、別の好ましいNK細胞マーカーを構成する。NK細胞成熟マーカーの非限定的な例としては、CD3-;CD56+;FcγRIII/CD16+;CD57+;NK1.1+;NK1.2+;CD94+、CD122/IL-2β+;CD217/IL-7Rα-;KIRファミリー受容体+;NKG2A+;NKG2D+;NKp30+(NCR3+とも称される);NKp44+(NCR2+とも称される);NKp46+(NCR1+とも称される);またはNKp80+が挙げられる。NK細胞マーカーの非限定的な例としては、TRAIL、IFNg、TNFa、グランザイムB、またはパーフォリンが挙げられる。そのようなマーカーは、上記マーカーのうちの少なくとも1つに対する抗体を用いる、磁気活性化細胞分取(MACS)または蛍光活性化細胞分取(FACS)などの方法を用いて、NK細胞を検出するために用いることができる。
【0145】
NK細胞分化法は、典型的には、ストロマ細胞と接触させることを含む。しかしながら、マウスストロマ細胞などのストロマ細胞との共培養は、iPSC由来NK細胞のトランスレーショナルポテンシャルを制限し;例えば、ストロマ細胞の存在による移植拒絶反応への懸念があり得る。一局面では、本明細書に記載される方法は、ストロマフリーNK細胞分化法、すなわち、ストロマ細胞または任意の他の種類の支持細胞との共培養を含まない方法である。ストロマフリー法はまた、T細胞分化について記載されており;例えば、実施例1および国際PCT公報WO 2021/150919を参照されたく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0146】
加えて、本明細書に記載されるように、ストロマフリーNK細胞分化法は、ストロマ共培養を含む分化法と比較して、CD56+ NK細胞の数または割合の増加およびCD3+ T細胞の数または割合の減少を、結果としてもたらす。ヒストンメチルトランスフェラーゼ(例えば、EZH1)の阻害は、本明細書に記載されるストロマフリー分化法を用いたCD56+ NK細胞の収率をさらに増加させる。したがって、本明細書に記載されるストロマフリー分化法で分化させたNK細胞は、ストロマ共培養法と比較して、以下の予想外の有益性のうちの少なくとも1つを示す:(1)ヒトにおける移植の可能性の増加;(2)総CD56+ NK細胞の数もしくは割合の増加;(3)総CD3+ T細胞の数もしくは割合の減少;(4)NK細胞受容体の発現の増加;または(5)リンパ球系分化/機能を担う遺伝子の発現の増加(例えば、実施例1、
図2、
図3A~3B、実施例3、
図4、
図5A~5C、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0147】
分化法
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;および(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0148】
いくつかの態様では、方法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程をさらに含む。そのような阻害は、NK細胞への分化の効率を増加させることができる。したがって、一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0149】
いくつかの局面では、NK細胞分化法は、CD34+造血内皮細胞から始まる。したがって、一局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0150】
いくつかの局面では、NK細胞分化法は、CD34+CD45+ HSCを使用するか、またはそれから始まる。したがって、一局面では、CD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0151】
一局面では、(a)CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(b)CD34+CD45+ HSCの集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0152】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0153】
一局面では、(a)CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(b)CD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0154】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0155】
一局面では、(a)CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(b)CD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0156】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(c)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0157】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+CD45+造血幹細胞(HSC)の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;および(b)結果として生じたCD34+CD45+ HSCの集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0158】
一態様では、CD34+造血内皮細胞集団は、100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間培養される。
【0159】
一態様では、CD34+造血内皮細胞集団は、50ng/ml SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間培養される。
【0160】
一態様では、CD34+造血内皮細胞集団は、30ng/ml SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間培養される。
【0161】
一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0162】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0163】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、G9a阻害物質をさらに含む、方法が、本明細書に記載される。
【0164】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、G9a/GLP阻害物質をさらに含む、方法が、本明細書に記載される。
【0165】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0166】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0167】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0168】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0169】
別の局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0170】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0171】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0172】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0173】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0174】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0175】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0176】
別の局面では、CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、方法が、本明細書に記載される。
【0177】
いくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1を阻害する工程をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1およびG9aを阻害する工程をさらに含む。
【0178】
多能性幹細胞
いくつかの態様では、ストロマフリーNK細胞分化法は、多能性幹細胞の集団を分化させる工程を含む。多能性幹細胞(PSC)は、すべての体細胞組織を生み出す可能性を有する。本明細書に記載される任意の方法、細胞、または組成物の一態様では、多能性幹細胞の集団は、人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である。iPSCおよびESCは、当技術分野において公知の任意の方法によって産生することができる。いくつかの態様では、多能性幹細胞の集団は、胚性幹細胞(ESC)を含む。胚性幹細胞(ESC)は、ヒト胚の未分化内部塊細胞に由来する幹細胞である。他の態様では、多能性幹細胞の集団は、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む。
【0179】
PSCの定方向分化は、胚発生を繰り返して、3つの胚葉を特異化することによって患者にマッチした組織を生成させることを目的とする。すべての胚葉にわたる定方向分化における共通テーマは、PSCが胚性および胎児様細胞型を生み出す傾向であり、これは、成体レシピエントにおける組み込みおよび機能について問題を引き起こす。この特徴は、造血系において特に著しく、個体発生中に時間的および空間的に別々の波状になって出現する。最初期の「原始」前駆体は、8.5dpcに卵黄嚢に出現し、限られたレパートリーのマクロファージ、巨核球、および有核赤血球を生み出す。これらの初期胚様前駆体は、一般に骨髄球ベースであり、成体レシピエントの骨髄を機能的に再び満たすことはできない。対照的に、造血幹細胞(HSC)の可能性を有する「確定的」細胞が、その後、大動脈-性腺-中腎(AGM)内の動脈内皮および他の解剖学的部位に出現する。PSCの定方向分化は、初期胚の卵黄嚢に見いだされるものに類似した造血前駆体を生み出す。これらは、機能的再構成の可能性を欠如し、骨髄球系列に偏り、胚性グロビンを発現する。したがって、原始系列または確定的系列のいずれかの発生を促進する主要な運命決定メカニズムを理解することは、HSC、およびPSCからの他の成体様細胞型(例えば、赤血球)を特異化するために重要である。
【0180】
いくつかの態様では、多能性幹細胞(PSC)の集団は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を含む。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択される少なくとも1つのリプログラミング因子を成熟細胞に導入することによって産生される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択されるリプログラミング因子の組み合わせを成熟細胞に導入することによって産生される。リプログラミング因子の例示的な組み合わせが、本明細書の表9に記載される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、リプログラミング因子のOCT4、SOX2、KLF4、ならびに任意で、c-MYC、またはnanogおよびLIN28、のみを成熟細胞に導入することによって産生される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、リプログラミング因子を成熟細胞に2回またはそれ以上導入することによって産生される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、少なくとも1つのリプログラミング因子をコードするDNA(例えば、ベクター、センダイウイルス(SeV)などのウイルスベクター)を成熟細胞に導入することによって産生される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、少なくとも1つのリプログラミング因子をコードするRNAを成熟細胞に導入することによって産生される。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、少なくとも1つのリプログラミング因子をコードする環状RNAを成熟細胞に導入することによって産生される。
【0181】
(表9)リプログラミング因子の例示的な組み合わせ。本明細書の表9において、各横列は、特定の組み合わせを示す。「x」は、所与のリプログラミング因子が組み合わせに含まれることを示す。
【0182】
いくつかの態様では、本明細書に記載される多能性幹細胞(PSC)は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。iPSCを使用する利点は、この細胞が、最終的な細胞が再導入されるものと同じ対象から誘導することができることである。すなわち、体細胞を対象から得て、人工多能性幹細胞へとリプログラムし、次いで、対象に投与しようとする改変された細胞(例えば、自己由来細胞)にトランスフェクトおよび分化させることができる。前駆体は、本質的には自己供給源に由来するので、生着拒絶反応またはアレルギー反応のリスクは、別の対象また対象群からの細胞の使用と比較して低減される。いくつかの態様では、iPSCを作製するための細胞は、非自己供給源に由来する。加えて、iPSCの使用は、胚性供給源から得られる細胞の必要性を打ち消す。したがって、一態様では、開示の方法において使用されるPSCは、胚性幹細胞ではない。
【0183】
分化は、生理学的状況で一般的に不可逆的であるものの、体細胞を人工多能性幹細胞にリプログラムするために、いくつかの方法が最近開発されている。例示的な方法は、当業者に公知であり、本明細書下記に簡潔に説明される。
【0184】
本明細書に使用される場合、用語「リプログラミング」は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変化または逆戻りさせるプロセスのことを指す。別の言い方をすると、リプログラミングは、細胞の分化を、細胞のより未分化またはより原始的な型に駆動し戻すプロセスのことを指す。多くの初代細胞を培養状態に置くことで、完全分化の特徴をいくらかの喪失に導けることに留意すべきである。このように、分化細胞という用語に含まれるそのような細胞を単に培養することで、これらの細胞が非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞になるわけではない。分化細胞から多能性への移行は、培養において分化特徴の部分的喪失を導く刺激を超えたリプログラミング刺激を必要とする。リプログラミングされた細胞は、一般に、培養中に限られた回数の分裂能のみを有する親の初代細胞と比較して、成長能を失わずに長期継代できるという特徴も有する。
【0185】
リプログラミングしようとする細胞は、リプログラミング前に部分分化または最終分化のいずれかの状態であることができる。いくつかの態様では、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)から多能性状態または多分化能状態への分化状態の完全な逆戻りを包含する。いくつかの態様では、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の未分化細胞(例えば、胚様細胞)への分化状態の完全または部分的逆戻りを包含する。リプログラミングは、その発現がリプログラミングにさらに寄与する細胞による特定の遺伝子の発現をもたらすことができる。本明細書に記載されるある特定の態様では、分化細胞(例えば、体細胞)のリプログラミングは、分化細胞が未分化状態を装うようにする(例えば、未分化細胞である)。結果として生じた細胞は、「リプログラミングされた細胞」または「人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」と称される。
【0186】
リプログラミングは、細胞分化の間に起こる、核酸修飾(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、エピジェネティック変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝性パターンのうちの少なくともいくつかの変質、例えば逆戻りを含むことができる。リプログラミングは、すでに多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持すること、またはすでに多分化能細胞である細胞(例えば、骨髄球系共通幹細胞)の既存の完全未満の分化状態を維持することとは別個である。リプログラミングはまた、すでに多能性または多分化能である細胞の自己複製または増殖を促進することとは別個であるが、本明細書に記載される組成物および方法は、いくつかの態様ではそのような目的のためにも有用であることができる。
【0187】
体細胞から多能性幹細胞を作製(広く「リプログラミング」と称される)するために使用される具体的なアプローチまたは方法は、記載されている方法に必ずしも重要ではない。したがって、体細胞を多能性表現型にリプログラムする任意の方法が、本明細書に記載される方法における使用のために適切であろう。
【0188】
所定の転写因子の組み合わせを使用して多能性細胞を作製するためのリプログラミング方法論が、体細胞から多能性幹細胞を誘導すると記載されている。山中および高橋は、Oct4、Sox2、Klf4および任意でc-Mycの直接形質導入により、マウス体細胞を、発生能が増大したES細胞様細胞に変換した。山中および高橋の米国特許第8058065号および第9045738号を参照されたい。iPSCは、多能性関連転写回路系およびエピジェネティックランドスケープの多くを回復しているので、ES細胞に似ている。加えて、マウスiPSCは、多能性:具体的には、3つの胚葉の細胞型へのインビトロ分化、奇形腫形成、キメラへの寄与、生殖細胞系列伝達、および四倍体相補性についての標準的アッセイをすべて満足する。
【0189】
その後の研究は、類似の形質導入法を使用してヒトiPS細胞を得ることができることを示しており、三つの転写因子:OCT4、SOX2、およびNANOGが、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている。iPS細胞の産生は、ウイルスベクターを使用して、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を成体体細胞に導入することによって達成することができる。
【0190】
OCT4、SOX2、KLF4、およびc-MYCは、マウス線維芽細胞をiPSCにリプログラムすると同定された本来の4つの転写因子である。これらの同じ4つの因子はまた、ヒトiPSCを作製するためにも十分であった。OCT3/4およびSOX2は、多能性関連遺伝子の発現を調節することによって多能性ネットワークのコア転写因子として機能する。クルッペル様因子4(KLF4)は、マウスES細胞におけるLIF-STAT3シグナル伝達の下流の標的であり、自己複製を調節する。ヒトiPSCは、4つの代替的な因子を使用して作製することもでき;OCT4およびSOX2が必要であるが、KLF4およびc-MYCは、ES細胞および初期胚の両方における多能性の維持に重要なホメオボックスタンパク質であるNANOG、ならびにRNA結合タンパク質であるLIN28により置き換えることもできる。OCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28リプログラミング因子の組み合わせは、ヒトiPSCを作製するためにも十分であると報告されている。
【0191】
本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、例えば、わずか3つのリプログラミング因子OCT4、SOX2、およびKLF4の外因性コピーを成熟細胞または体細胞に導入することによって産生される。本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、c-MYC、またはnanogおよび/もしくはLIN28が、OCT4、SOX2、およびKLF4の外因性遺伝子コーディングコピーを有するiPSCにさらに導入され、成熟細胞または体細胞に分化させる。本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、リプログラミング因子OCT4、SOX2、およびKLF4の外因性コピーを、任意でc-MYCまたはnanogおよび/もしくはLIN28と共に導入し、成熟細胞または体細胞に分化させることによって産生される。
【0192】
本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、成熟細胞を少なくとも1つのベクターと接触させることによって産生され、少なくとも1つのベクターは、成熟細胞または体細胞に分化させるために、リプログラミング因子OCT4、SOX2、およびKLF4の外因性遺伝子コーディングコピーを、任意でc-MYCまたはnanogおよび/もしくはLIN28と共に担持し、リプログラミング因子は、接触後の成熟細胞または体細胞においてインビボ発現される。接触は、インビトロまたはエクスビボである。分化に必要なリプログラミング因子はすべて、1つのベクター(例えば、OCT4、SOX2、KLF4、およびc-MYCの外因性遺伝子コーディングコピーを担持するベクター)によって発現させることができる。あるいは、リプログラミング因子は、iPSCと接触させるために各々使用される1を超えるベクターにおいて発現させることができる。例えば、iPSCは、OCT4、SOX2の外因性遺伝子コーディングコピーを担持する第1のベクターと、外因性遺伝子コーディングコピーKLF4およびc-MYCを担持する第2のベクターにより接触させることができる。
【0193】
任意の開示される方法の一態様では、iPS細胞は、遺伝子Oct4(Pou5f1)、Sox2、cMyc、Klf4、Nanog、Lin 28、およびGlis1からなる群より選択されるリプログラミング因子をコードする核酸配列の少なくとも1つの外因性コピーを含む。いくつかの態様では、リプログラミング因子の組み合わせが使用される。例えば、Oct4、Sox2、cMyc、およびKlf4からなる4つのリプログラミング因子の組み合わせ、またはOct4、Sox2、Nanog、およびLin 28からなる4つのリプログラミング因子の組み合わせ。
【0194】
本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、開示されるリプログラミング因子またはリプログラミング因子の任意の組み合わせを、成熟細胞または体細胞に2回またはそれ以上導入することによって産生される。本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、開示されるリプログラミング因子またはリプログラミング因子の任意の組み合わせを、成熟細胞または体細胞に1回超導入することによって産生される。一態様では、リプログラミング因子の組み合わせは、組み合わせがiPSCに1回超導入される場合には異なり、例えば、最初にOct4(Pou5f1)、Sox2、cMyc、Klf4、Nanogの組み合わせがiPSCに導入され、その後Oct4(Pou5f1)、Sox2、cMycの組み合わせがiPSCに導入される。本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPSCは、成熟細胞を、開示されるベクター因子と2回またはそれ以上接触させて成熟/体細胞内に入れることによって産生される。いくつかの態様では、リプログラミング因子は、1つのベクター中に(例えば、ポリシストロニック的に)、またはそれぞれ別々のベクター中にコードされる。
【0195】
いくつかの態様では、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団は、Notchリガンドの存在下で分化されない。いくつかの態様では、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団からCD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために使用される凝集培地は、Notchリガンドを含まない。いくつかの態様では、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団からCD34+造血内皮細胞の集団への分化の間に使用される細胞培養容器は、Notchリガンドを含まない。
【0196】
iPS細胞は、最終分化した体細胞から、ならびに成体幹細胞、または体性幹細胞から作製または誘導することができる。すなわち、非多能性前駆細胞をリプログラミングにより多能性または多分化能にすることができる。そのような場合、最終分化した細胞をリプログラムするために必要である同じ数のリプログラミング因子を含む必要がない場合がある。さらに、リプログラミングは、リプログラミング因子の非ウイルス性導入によって、例えば、タンパク質自体を導入すること、またはリプログラミング因子をコードする核酸を導入すること、または翻訳されるとリプログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAを導入することによって、誘導することができる(例えば、Warren et al., Cell Stem Cell, 2010 Nov 5;7(5):618-30を参照されたく、この参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。リプログラミングは、例えばOct-4(Oct-3/4またはPouf51としても知られている)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox 15、Sox 18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、l-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することによって達成することができる。一態様では、本明細書に記載される方法および組成物を使用したリプログラミングは、Oct-3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、およびMycファミリーのメンバーのうち1つまたは複数を体細胞に導入することをさらに含むことができる。一態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、Oct 4、Sox2、Nanog、c-MYC、およびKlf4のそれぞれの1つまたは複数をリプログラミングのために導入することをさらに含む。上述したように、リプログラミングに使用される正確な方法は、本明細書に記載される方法および組成物に必ずしも重要ではない。しかしながら、リプログラミングされた細胞から分化させた細胞を、例えば、ヒトの治療において使用しようとする場合、一態様では、リプログラミングは、ゲノムを変化させる方法によって影響を受けない。したがって、そのような態様では、リプログラミングは、例えば、ウイルスまたはプラスミドベクターを使用せずに達成される。
【0197】
出発細胞の集団から誘導されるリプログラミングの効率(すなわち、リプログラミングされた細胞の数)は、Shi, Y., et al (2008) Cell-Stem Cell 2:525-528、Huangfu, D., et al (2008) Nature Biotechnology 26(7):795-797、および Marson, A., et al (2008) Cell-Stem Cell 3:132-135(それらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)によって示されるように様々な低分子の添加によって増強することができる。したがって、人工多能性幹細胞産生の効率または速度を高める作用物質または作用物質の組み合わせを、患者特異的または疾患特異的iPSCの産生に使用することができる。リプログラミング効率を高める作用物質のいくつかの非限定的な例としては、とりわけ、可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害物質)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害物質、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害物質、バルプロ酸、5'-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)が挙げられる。
【0198】
リプログラミング増強物質の他の非限定的な例としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML-210、デプデシン(例えば、(-)-デプデシン)、HC毒素、ヌルスクリプト(Nullscript)(4-(1,3-ジオキソ-1H,3H-ベンゾ[デ]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタンアミド)、フェニル酪酸塩(例えば、フェニル酪酸ナトリウム)およびバルプロ酸((VPA)および他の短鎖脂肪酸)、スクリプタイド、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(Pivanex、AN-9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られている)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)およびMS-27-275)、MGCD0103、NVP-LAQ-824、CBHA(m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカン酸)、CHAP31およびCHAP 50が挙げられる。他のリプログラミング増強物質には、例えば、HDACの優性ネガティブ型(例えば、触媒不活性型)、HDACのsiRNA阻害物質、およびHDACに特異的に結合する抗体が含まれる。そのような阻害物質は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Aton Pharma、Titan Pharmaceuticals、Schering AG、Pharmion、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手可能である。
【0199】
本明細書に記載される方法と共に使用するための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離されたクローンを、幹細胞マーカーの発現について試験することができる。体細胞から派生した細胞におけるこのような発現で、その細胞が人工多能性幹細胞と特定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbx15、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、およびNat1を含む非限定的な群から選択することができる。一態様では、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性と特定される。そのようなマーカーの発現を検出するための方法は、例えば、RT-PCR、およびコードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法、例えばウエスタンブロットまたはフローサイトメトリー分析を含むことができる。いくつかの態様では、検出は、RT-PCRだけ伴うのでなく、タンパク質マーカーの検出も含む。細胞内マーカーは、RT-PCRを介して最良に特定され得るのに対し、細胞表面マーカーは、例えば免疫細胞化学的検査によって容易に特定される。
【0200】
単離された細胞の多能性幹細胞の特徴は、iPSCが3つの胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する試験によって確認することができる。一例として、ヌードマウスにおける奇形腫形成を、単離されたクローンの多能性特徴を評価するために使用することができる。細胞を、ヌードマウスに導入し、細胞から生じた腫瘍に対して組織学的検査および/または免疫組織化学的検査を行う。3つの胚葉のすべてからの細胞を含む腫瘍の成長は、例えば、その細胞が多能性幹細胞であることをさらに示す。
【0201】
多くの米国特許および特許出願公開が、iPSCを作製する方法および関連する主題を教示および説明している。例えば、米国特許第8058065号、第9347044号、第9347042号、第9347045号、第9340775号、第9341625号、第9340772号、第9250230号、第9132152号、第9045738号、第9005975号、第9005976号、第8927277号、第8993329号、第8900871号、第8852941号、第8802438号、第8691574号、第8735150号、第8765470号、第8058065号、第8048675号、ならびに米国特許公開第20090227032号、第20100210014号、第20110250692号、第20110201110号、第20110200568号、第20110223669号、第20110306516号、第20100021437号、第20110256626号、第20110044961号、第20120276070号、第20120214243号、第20120263689号、第20120128655号、第20120100568号、第20130295064号、第20130029866号、第20130059386号、第20130183759号、第20130189786号、第20130295579号、第20130130387号、第20130157365号、第20140234973号、第20140227736号、第20140093486号、第20140301988号、第20140170746号、第20140178989号、第20140349401号、第20140065227号、および第20150140662号、これらのすべては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0202】
いくつかの態様では、iPSCは、体細胞から誘導することができる。体細胞は、この用語が本明細書に使用される場合、生殖系列細胞を除いた、生物の身体を形成する任意の細胞のことを指す。精子および卵子、それらが作られる元となる細胞(生殖母細胞)ならびに未分化幹細胞を除けば、哺乳動物の身体におけるあらゆる細胞型が、分化体細胞である。例えば、内臓、皮膚、骨、血液および結合組織はすべて、分化体細胞でできている。本明細書に記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、iPS細胞が作られる元となる成熟細胞には、NK細胞、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、ならびに線維芽細胞および角化細胞などの任意の体細胞が含まれる。
【0203】
本明細書に記載される組成物および方法と共に使用するための追加の体細胞型には、線維芽細胞(例えば、初代線維芽細胞)、筋肉細胞(例えば、筋細胞)、卵丘細胞、神経細胞、乳腺細胞、肝細胞および膵島細胞が含まれる。いくつかの態様では、体細胞は、初代細胞株であるか、または初代もしくは二次細胞株の子孫である。いくつかの態様では、体細胞は、ヒト試料、例えば、毛包、血液試料、生検(例えば、皮膚生検または脂肪生検)、スワブ試料(例えば、口腔スワブ試料)から得られ、このため、ヒト体細胞である。
【0204】
分化体細胞のいくつかの非限定的な例としては、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、心細胞、骨格筋細胞、皮膚細胞、免疫細胞、肝細胞、脾細胞、肺細胞、末梢循環血液細胞、消化管細胞、腎細胞、骨髄細胞、および膵細胞が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、体細胞は、脳、肝臓、消化管、胃、腸管、脂肪、筋肉、子宮、皮膚、脾臓、内分泌器官、骨などを非限定的に含む、任意の体細胞組織から単離された初代細胞であることができる。さらに、体細胞は、任意の哺乳動物種由来であることができ、その非限定的な例としては、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヒト細胞が挙げられる。いくつかの態様では、体細胞は、ヒト体細胞である。
【0205】
リプログラミングされた細胞を、疾患の治療的処置に使用しようとする前駆細胞の作製に使用する場合、処置される患者から単離された体細胞を使用することが望ましいが、必ずしもその必要はない。例えば、疾患に関与する体細胞および疾患の治療的処置に関係する体細胞などを使用することができる。いくつかの態様では、リプログラミングされた細胞とそれらが誘導または作製される元となった体細胞を含む不均一な集団からリプログラミングされた細胞を選択するための方法は、任意の公知の手段によって行うことができる。例えば、選択マーカー遺伝子のような薬物耐性遺伝子などを使用して、指標として選択マーカーを使用してリプログラミングされた細胞を単離することができる。
【0206】
本明細書に開示されるようなリプログラミングされた体細胞は、アルカリホスファターゼ(AP);ABCG2;ステージ特異的胚抗原-1(SSEA-1);SSEA-3;SSEA-4;TRA-1-60;TRA-1-81;Tra-2-49/6E;ERas/ECAT5、E-カドヘリン;ベータ-III-チューブリン;アルファ-平滑筋アクチン(α-SMA);線維芽細胞成長因子4(Fgf4)、Cripto、Dax1;ジンクフィンガータンパク質296(Zfp296);N-アセチルトランスフェラーゼ-1(Nat1);(ES細胞関連転写物1(ECAT1);ESG1/DPPA5/ECAT2;ECAT3;ECAT6;ECAT7;ECAT8;ECAT9;ECAT10;ECAT15-1;ECAT15-2;Fthl17;Sal14;未分化胚細胞転写因子(Utf1);Rex1;p53;G3PDH;TERTを含むテロメラーゼ;サイレントX染色体遺伝子;Dnmt3a;Dnmt3b;TRIM28;Fボックス含有タンパク質15(Fbx15);Nanog/ECAT4;Oct3/4;Sox2;Klf4;c-Myc;Esrrb;TDGF1;GABRB3;Zfp42、FoxD3;GDF3;CYP25A1;発生多能性関連2(DPPA2);T細胞リンパ腫切断点1(Tcl1);DPPA3/Stella;DPPA4;多能性に関する他の一般的マーカーなどを含む、いくつもの多能性細胞マーカーを発現することができる。他のマーカーは、Dnmt3L;Sox15;Stat3;Grb2;β-カテニン、およびBmi1を含むことができる。そのような細胞はまた、人工多能性幹細胞が誘導される元となる体細胞に特徴的なマーカーのダウンレギュレーションによって特徴付けることもできる。一態様では、iPSCは、成熟の分化した体細胞から誘導される。
【0207】
いくつかの態様では、本明細書に記載される分化法において使用される多能性幹細胞の集団は、患者試料から精製されたCD34+ HSPCまたは多分化能リンパ系前駆体(MLP)を含まない。いくつかの態様では、多能性幹細胞の集団は、臍帯血または骨髄試料から精製または単離された幹細胞を含まない。いくつかの態様では、多能性幹細胞の集団は、患者試料(例えば、臍帯血または骨髄)から単離された幹細胞に由来しない。好ましい態様では、多能性幹細胞の集団は、iPSC、例えば、患者からの体細胞試料に由来するものを含む。例えば、Tabatabaei-Zavareh et al., J Immunol May 1, 2017, 198 (1 Supplement) 202.9を参照のこと。
【0208】
造血内皮細胞
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団を、造血分化能を有する細胞の集団へと分化させることを含む。いくつかの態様では、造血分化能を有する細胞の集団は、造血内皮細胞および/または造血幹細胞(HSC)を含む。造血分化能を有する細胞(例えば、造血内皮細胞、HSC)は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して産生することができる。
【0209】
hPSCからHSCを作製するための例示的な一アプローチは、HSCをその個体発生前駆体から特異化することである。今や、HSCは、大動脈-性腺-中腎(AGM)内の造血内皮細胞(HE)および他の解剖学的部位における動脈内皮を起源とすると広く受け入れられている。hPSCからのHEの定方向分化に関する最近の研究は、原始または確定的集団の出現を制御するシグナル伝達経路のいくつかへの貴重な洞察を提供した;しかしながら、内皮から造血への移行(例えば、HEからHSCへ)は、ヒトの造血発生においてまだ十分に解明されていない。
【0210】
本明細書に使用される場合、用語「造血内皮細胞」は、造血細胞に分化することができる、血管内に散在している固有の内皮細胞サブセットのことを指す。マウスの発生において、HSCは、胎生期10.5日から、大動脈-性腺-中腎領域内に位置する造血分化能を有する小さな内皮細胞集団(造血内皮細胞)から生じる。内皮から造血への移行(EHT)として知られているプロセスでは、大動脈床中の内皮細胞が集まり、血管外空間で出芽し、続いて、下層静脈を介して循環に再侵入する。いくつかの態様では、造血内皮細胞の属性を含む細胞の集団は、インビトロで多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団から分化する。前記「造血内皮細胞の属性を含む細胞」はまた、本明細書において造血内皮細胞と称することができる。
【0211】
多能性幹細胞(PSC)からHSCを誘導する取り組みは、胚性造血が、原始造血と確定的造血の2つのプログラムからなるが、確定的造血だけが、HSC、ひいてはリンパ球系列を生成するという事実によって複雑になっている。T-リンパ球系分化能によって測定されるような確定的造血は、原始造血プログラムの確立後に出現し、造血内皮細胞の特徴を示す前駆体集団から発生する。
【0212】
いくつかの態様では、ストロマフリーNK細胞分化法は、多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む。いくつかの態様では、結果として生じたCD34+造血内皮細胞は、確定的造血を受けることができ、かつ/または、リンパ球系の可能性を示す。いくつかの態様では、造血内皮細胞は、造血幹細胞(HSC)に分化するか、または分化される。いくつかの態様では、HEは、内皮から造血への移行(EHT)を介してCD34+CD43+CD45+ HSCを生み出すことができるCD34+CD43-CD45-細胞である。CD34+CD43+CD45+細胞は、前駆細胞を含むことができ、造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)とも称され得る。いくつかの態様では、CD34+CD43-CD45- HEまたはCD34+CD43+CD45+ HSCは、CD7+リンパ球系共通前駆体(CLP)に分化することができ、これはさらに、CD56+ NK細胞に分化する(例えば、
図7を参照のこと)。
【0213】
いくつかの態様では、凝集培地は、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、HAM'S F-12を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)とHAM'S F-12との組み合わせを含む。いくつかの態様では、凝集培地(例えば、IMDMおよび/またはHAM's F12)は、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen/Strep);N2(例えば、LIFETECH 17502-048);B27(例えば、LIFETECH 17504-044);BSA;L-グルタミン;アスコルビン酸;および/またはホロ-トランスフェリンを含む(例えば、表10を参照のこと)。
【0214】
いくつかの態様では、凝集培地は、STEMPRO-34培地を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、少なくとも1つのサプリメントを伴うSTEMPRO-34培地を含む。いくつかの態様では、凝集培地(例えば、STEMPRO-34)は、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen/Strep);L-グルタミン;アスコルビン酸;および/またはホロ-トランスフェリンを含む(例えば、表11を参照のこと)。
【0215】
いくつかの態様では、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団は、胚様体(EB)を用いて、CD34+造血内皮細胞またはCD34+CD45+ HSCの集団に分化される。いくつかの態様では、多能性幹細胞(例えば、iPSC)の集団は、2D接着培養物または多能性幹細胞凝集物を用いて、CD34+造血内皮細胞またはCD34+CD45+ HSCの集団に分化される;例えば、Pineda et al., Differentiation patterns of embryonic stem cells in two versus three dimensional culture, Cells Tissues Organs. 2013; 197(5): 399-410を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み入れられる。EBは、血清の存在下で、インビトロで産生および培養される多能性幹細胞の三次元凝集物である。EBは、原始造血前駆細胞型と確定的造血前駆細胞型との混合物を生成し得る。原始前駆体は、胚発生の最初期段階に自然にインビボで生じる細胞と同等と見なされ、一方で、胚性集団は、成熟のその後の段階で、成体造血に典型的な細胞と同様に挙動する確定的前駆細胞を生み出す。
【0216】
いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、少なくとも8日(例えば、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、またはそれ以上)である。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、多くても8日、多くても9日、多くても10日、またはそれ以上である。
【0217】
いくつかの態様では、凝集培地は、BMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPO、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、凝集培地は、10ng/ml BMP4、6mM SB-431542、3mM CHIR99021、5ng/ml bFGF、15ng/ml VEGF、10ng/ml IL-6、5ng/ml IL-11、25ng/ml IGF-1、50ng/ml SCF、および2U/ml EPOを含む;例えば、本明細書に提示される実施例2および表1を参照のこと。
【0218】
いくつかの態様では、凝集培地の構成成分は、多能性幹細胞から造血内皮細胞への分化中に変動する。非限定的な例として、胚様体を、BMP4の存在下で分化させ、続いて、bFGF、VEGF、および造血性サイトカイン(例えば、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPO)のステージ特異的添加を行う。2日目と3日目の間で、アクチビン-ノーダルシグナル伝達を操作することができる(例えば、SB-431542およびCHIR99021を用いて)。例えば、本明細書における以下の実施例2;およびSturgeon et al., Wnt signaling controls the specification of definitive and primitive hematopoiesis from human pluripotent stem cells, Nat Biotechnol. 2014 Jun; 32(6): 554-561を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0219】
いくつかの態様では、凝集培地は、分化の0、1、および/または2日目中にBMP(例えば、10ug/mL BMP)を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、分化の3、4、5、6、7、または8日目中にBMPを含まない。
【0220】
いくつかの態様では、凝集培地は、分化の2日目中にSB-431542(例えば、6mM SB-431542)および/またはCHIR99021(例えば、3mM CHIR99021)を含む。SB-431542は、アクチビン-ノーダルシグナル伝達の低分子アンタゴニストである。CHIR99021は、GSK-3阻害物質およびWntアゴニストである。アクチビン-ノーダルシグナル伝達の阻害およびWntシグナル伝達の活性化は、リンパ球系の可能性を有する確定的前駆体(KDR+CD235a-)へのPSC分化を駆動することが示されている(例えば、前出のSturgeon 2014を参照されたく、これは、参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの態様では、凝集培地は、分化の0、1、3、4、5、6、7、および/または8日目中にSB-431542および/またはCHIR99021を含まない。
【0221】
いくつかの態様では、凝集培地は、分化の1、2、3、4、5、6、7、および/または8日目中にbFGF(例えば、5ng/ml bFGF)を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、分化の0日目中にbFGFを含まない。
【0222】
いくつかの態様では、凝集培地は、分化の3、4、5、6、7、および/または8日目中にVEGF(例えば、15ng/ml VEGF)を含む。いくつかの態様では、凝集培地は、分化の0、1、または2日目中にVEGFを含まない。
【0223】
いくつかの態様では、凝集培地は、分化の6、7、および/または8日目中に造血性サイトカインを含む。いくつかの態様では、凝集培地は、分化の0、1、2、3、4、または5日目中に造血性サイトカインを含まない。いくつかの態様では、造血性サイトカインは、IL-6(例えば、10ng/ml IL-6)、IL-11(例えば、5ng/ml IL-11)、IGF-1(例えば、25ng/ml IGF-1)、SCF(例えば、50ng/ml SCF)、およびEPO(例えば、2U/ml EPO)からなる群より選択される。
【0224】
いくつかの態様では、分化法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、CD34+造血内皮細胞の集団における表面マーカーの発現を用いて選択または単離することをさらに含む。造血内皮細胞を選択または単離するための方法の非限定的な例としては、磁気活性化細胞分取(MACS)および蛍光活性化細胞分取(FACS)が挙げられる。いくつかの態様では、造血内皮細胞の表面マーカーは、CD34(例えば、高CD34表面発現)である。
【0225】
いくつかの態様では、造血内皮細胞の追加の陽性マーカーまたは陰性マーカーは、CD45、CD38、KDR、CD235、およびCD43を含むことができるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD45陰性/低発現である。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD38陰性/低発現である。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、KDR+である。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD235陰性/低発現である。いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞の集団は、CD43陰性/低発現である。
【0226】
いくつかの態様では、造血内皮細胞および/またはHSCは、当技術分野において公知の任意の方法を用いて産生される。非限定的な例として、PSCを造血内皮細胞に分化させる方法は、ERG、HOXA5、HOXA9、HOXA10、LCOR、RUNX1、および/またはSPI1などの転写因子の導入を含むことができる;例えば、国際出願第WO 2018/048828号、米国特許出願第2019/0225940号、Doulatov et al., Cell Stem Cell. 2013 October 3, 13(4);Vo et al., Nature 2018, 553(7689): 506-510を参照されたく;その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0227】
いくつかの態様では、造血内皮細胞は、PSCに由来しないが、むしろ内皮細胞に直接由来する。例えば、内皮細胞(例えば、肺、脳、および他の組織由来)を、転写因子(例えば、Fosb、Gfi1、Runx1、およびSpi1)による形質導入および不死化内皮細胞株との共培養によって、造血内皮細胞に直接リプログラミングすることができ;内皮細胞を、細胞外因子(例えば、血清、SB-431542、および/または内皮分裂促進因子)にさらに曝露させることができる。例えば、Lis et al., Nature. 2017 May 25, 545(7655):439-445;Blaser and Zon, Blood. 2018 Sep 27; 132(13): 1372-1378を参照されたく、これらは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0228】
エピジェネティック制御因子の阻害
いくつかの局面では、少なくとも1つのエピジェネティック制御因子を阻害する工程を含むNK細胞分化法が、本明細書に記載される。本明細書に使用される場合、用語「エピジェネティック制御因子」は、DNAメチル化および/またはヒストン修飾(例えば、ヒストンアセチル化、ヒストンメチル化)に影響する、したがって、ゲノムのヌクレオチド配列に変化(例えば、置換または欠失)を起こすことなく遺伝子の転写レベルに影響を及ぼす、因子、例えば、ポリペプチド、例えば、酵素のことを指す。エピジェネティック制御因子の非限定的な例としては、DNA-メチルトランスフェラーゼ(DNMT;例えば、DNMT1;DNMT3a;DNMT3b);メチル-CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質(例えば、MeCP2;MBD1;MBD2;MCD4;KAISO;ZBTB4;ZBTB38;UHRHRF2);DNAデメチラーゼ(例えば、5'-メチルサイトカインヒドロキシラーゼ;TET1;TET2;TET3);ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT;例えば、SUV39s;SET1s;EZH1;EZH2;Set2s;PRDMs;SMYDs;DOT1L;PRMTs;G9a;GLP);メチル-ヒストン結合タンパク質(例えば、HP1;Chd1;BPTF;L3MBTL1;ING2;BHC80;JMJD2A);ヒストンデメチラーゼ(例えば、KDMs;例えば、LSDs;JHDMs;JMJDs;JARID;Uts;PHFs);ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT;例えば、HAT1;GCN5;PCAF;MYSTs;p300;CBP;SRC/p160);アセチル結合タンパク質(例えば、BROMO-ドメイン、DPF-ドメイン、またはYEATS-ドメイン含有タンパク質);ヒストンデアセチラーゼ(HDAC;例えば、HDAC1;HDAC2;HDAC3;HDAC4;HDAC5;HDAC6;HDAC7;HDAC8;HDAC9;HDAC10;HDAC11;Sirt1;Sirt2;Sirt3;Sirt4;Sirt5;Sirt6;Sirt7)が挙げられる。例えば、Cheng et al., Signal Transduction and Targeted Therapy volume 4, Article number: 62 (2019)を参照されたく;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0229】
いくつかの態様では、方法は、多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程の後に、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程の前に、CD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程を含む。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子を阻害する工程は、CD34+造血内皮細胞のCD34+CD45+造血幹細胞(HSC)および/またはCD7+ CLPへの分化を促進することができる。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子を阻害する工程は、内皮から造血への移行(EHT)および/またはリンパ球系特異化を促進することができる。
【0230】
したがって、一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。別の局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0231】
いくつかの態様では、CD34+造血内皮細胞は、エピジェネティック制御因子の阻害物質で処理される。エピジェネティック制御因子の例示的な阻害物質には、以下のうちの少なくとも1つの阻害物質が含まれる:DNMT;MBD;DNAデメチラーゼ;HMT;メチル-ヒストン結合タンパク質;ヒストンデメチラーゼ;HAT;アセチル結合タンパク質;またはHDAC。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子は、H3K9メチルトランスフェラーゼである。ヒトにおけるH3K9のメチル化は、主にSuv39ファミリーのメンバー、すなわちEHMT1/GLP、EHMT2/G9a、SUV39H1、SUV39H2、SETDB1およびSETDB2、ならびに次いで非Suv39酵素PRDM2およびASH1Lに依拠する。
【0232】
DNMT阻害物質の非限定的な例としては、アザシチジン;デシタビン;グアデシタビン;ヒドララジンが挙げられる。HMT阻害物質の非限定的な例としては、ピノメトスタット;タゼメトスタット;GSK2816126;CPI-1205;TCP;ORY-2001;GSK2879552;4SC-202が挙げられる。HDAC阻害物質の非限定的な例としては、バルプロ酸、フェニル酪酸塩;ボリノスタット;トリコスタチンA;ベリノスタット;エンチノスタット;パノビノスタット;モセチノスタット;CI-994;ロミデプシン;ニコチンアミド;スラミン;PRI-724;GSK525762;CPI-0610;RO6870810;MK-8628が挙げられる。
【0233】
いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、表3から選択される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、SB939(プラシノスタット);4-ヨード-SAHA;スクリプタイド;オキサフラチン(Oxaflatin)(すなわち、オキサムフラチン);s-HDAC-42;UNC0224;ピロキサミド;MC1568;CAY10398;CAY10591;SAHA(ボリノスタット)(SIH-359);SGI-1027;およびルカパリブ(Rubraca(商標))からなる群より選択される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、SB939(プラシノスタット);4-ヨード-SAHA;スクリプタイド;オキサフラチン(すなわち、オキサムフラチン);s-HDAC-42;UNC0224;ピロキサミド;MC1568;CAY10398;CAY10591;およびSAHA(ボリノスタット)(SIH-359)からなる群より選択される;例えば、表3を参照のこと。
【0234】
(表3)(例えば、500nMで)NK細胞分化を促進することができる低分子阻害物質。表3に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0235】
いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、UNC0224;MC1568;5-メチル-2'-デオキシシチジン;およびCAY10591からなる群より選択される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、UNC0224である。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、MC1568である。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、CAY10591である。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、5-メチル-2'-デオキシシチジンである。
【0236】
いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、少なくとも500nMの濃度で提供される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、少なくとも1.0μMの濃度で提供される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも3nM、少なくとも4nM、少なくとも5nM、少なくとも6nM、少なくとも7nM、少なくとも8nM、少なくとも9nM、少なくとも10nM、少なくとも20nM、少なくとも30nM、少なくとも40nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、少なくとも1.0μM、少なくとも1.25μM、少なくとも1.5μM、少なくとも1.75μM、少なくとも2.0μM、少なくとも2.5μM、少なくとも3μM、少なくとも4μM、少なくとも5μM、少なくとも6μM、少なくとも7μM、少なくとも8μM、少なくとも9μM、または少なくとも10μMの濃度で提供される。いくつかの態様では、エピジェネティック制御因子の阻害物質は、1nM~10nM、10nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM、1μM~5μM、または5μM~10μMの濃度で提供される。
【0237】
いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、CD56+ NK細胞の発生まで、エピジェネティック制御因子の阻害物質に曝露させて培養される。いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、エピジェネティック制御因子の阻害物質に約14日間曝露させて培養される。いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、エピジェネティック制御因子の阻害物質に少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、少なくとも30日、少なくとも31日、少なくとも32日、少なくとも33日、少なくとも34日、少なくとも35日、少なくとも36日、少なくとも37日、少なくとも38日、少なくとも39日、少なくとも40日、少なくとも41日、少なくとも42日、少なくとも43日、少なくとも44日、少なくとも45日、少なくとも46日、少なくとも47日、少なくとも48日、少なくとも49日、少なくとも50日、またはそれ以上曝露させて培養される。
【0238】
G9aおよび/またはGLPの阻害
いくつかの局面では、G9aおよび/またはGLPを阻害する工程を含むNK細胞分化法が本明細書に記載される。いくつかの局面では、G9aを阻害する工程を含むNK細胞分化法が本明細書に記載される。G9aはまた、真性染色質ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼ2(EHMT2);ヒストンH3-K9メチルトランスフェラーゼ3;KMT1C;リシンN-メチルトランスフェラーゼ 1C;BAT8;またはNG36と言い換えることもできる。G9aは、ヒストンH3のリシン残基をメチル化するメチルトランスフェラーゼである(例えば、NCBI Gene ID:10919;例えば、SEQ ID NO:45~46のうちの1つ、または少なくとも95%同一でありかつ同じ機能を維持する配列、またはその機能的断片を参照のこと)。いくつかの局面では、G9a様タンパク質(GLP)を阻害する工程を含むNK細胞分化法が本明細書に記載される。GLPはまた、真性染色質ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼ1(EHMT1);KMT1D;Eu-HMTase1;またはヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ、H3リシン-9特異的5とも言い換えられる(例えば、NCBI Gene ID:79813;例えば、SEQ ID NO:47~48のうちの1つ、または少なくとも95%同一でありかつ同じ機能を維持する配列、またはその機能的断片を参照のこと)。
【0239】
G9aおよびGLPは、主にG9a-GLPヘテロマー複合体として存在する。G9aおよびGLPは、真正染色質におけるヒストンH3のLys 9でのモノおよびジメチル化(H3K9me1およびH3K9me2)の主要酵素である。H3K9meは、メチル化されたヒストンにHP1タンパク質を動員することによるエピジェネティックな転写抑制のための特異的タグである。G9a/GLPはまた、ヒストンH3の「Lys-27」を弱くメチル化する(H3K27me)。G9a/GLPはまた、DNAメチル化にも必要とされる;G9a/GLPのヒストンメチルトランスフェラーゼ活性は、DNAメチル化に必要とされないが、このことは、これらの2つの活性が独立に機能することを示唆している。G9a/GLPは、おそらく、異なるDNA-結合タンパク質、例えば、E2F6、MGA、MAXおよび/またはDP1によってヒストンH3に標的化される。ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性に加えて、G9a/GLPはまた、非ヒストンタンパク質をメチル化する(例えば、p53/TP53の「Lys-373」のジメチル化)。
【0240】
G9aはまた、G1期においてヒストンH3の「Lys-56」のモノメチル化(H3K56me1)を媒介し、それにより、ヒストンH3とPCNAとの間の相互作用を促進し、DNA複製を調節する。G9aはまた、ヒストンH1をメチル化すると考えられる。G9aはまた、CDYL、WIZ、ACIN1、DNMT1、HDAC1、ERCC6、KLF12、およびそれ自体をメチル化する。G0期の間、GLPは、MYCおよびE2F応答遺伝子のサイレンシングに寄与し得るが、このことは、細胞周期のG0/G1移行において役割を果たしていることを示唆している。ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性に加えて、GLPはまた、非ヒストンタンパク質をメチル化する:p53/TP53の「Lys-373」のジメチル化を媒介する。
【0241】
SEQ ID NO:45、ホモサピエンス(Homo sapiens)真性染色質ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼ2(EHMT2)、転写物バリアント1、mRNA、NCBI参照配列:NM_001289413.1(領域5~3706)、3702bp
【0242】
SEQ ID NO:46、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼEHMT2アイソフォームc(ホモサピエンス)、NCBI参照配列:NP_001276342.1、1233aa
【0243】
SEQ ID NO:47、ホモサピエンス真性染色質ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼ 1(EHMT1)、転写物バリアント2、mRNA、NCBI参照配列:NM_001145527.2(領域25~2451)、2427bp
【0244】
SEQ ID NO:48、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼEHMT1アイソフォーム2(ホモサピエンス)、NCBI参照配列:NP_001138999.1、808aa
【0245】
いくつかの態様では、方法は、多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程の後、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程の前に、CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程を含む。諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLPを阻害する工程は、CD34+造血内皮細胞のCD34+CD45+造血幹細胞(HSC)および/またはCD7+ CLPへの分化を促進することができる。諸局面のいずれかのいくつかの態様では、G9aおよび/またはGLPを阻害する工程は、内皮から造血への移行(EHT)および/またはリンパ球系特異化を促進する。
【0246】
したがって、一局面では、(a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;(b)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(c)結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。別の局面では、(a)CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに(b)CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法が、本明細書に記載される。
【0247】
一態様では、阻害物質は、G9a/GLP阻害物質である。一態様では、G9a/GLP阻害物質は、G9a/GLPの低分子阻害物質である。一態様では、G9a/GLP阻害物質は、G9a/GLPの核酸阻害物質である。いくつかの態様では、方法は、例えば、G9a特異的核酸阻害物質(例えば、SEQ ID NO:50を参照のこと)またはG9a特異的低分子阻害物質(例えば、表4を参照のこと)を用いて、G9aを阻害する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、例えば、GLP特異的核酸阻害物質またはGLP特異的低分子阻害物質を用いて、GLPを阻害する工程を含む。いくつかの態様では、方法は、G9aおよびGLPを阻害する工程を含む。
【0248】
一態様では、G9a/GLP阻害物質は、表4に列記される低分子、またはその誘導体もしくは類似体から選択される。一態様では、G9a/GLP阻害物質は、UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;E72;BIX-01338;BRD9539;ケトシン;およびDCG066からなる群より選択される。一態様では、G9a/GLP阻害物質は、UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;およびUNC0642からなる群より選択される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、UNC0224;UNC0638;BRD4770;BIX01294;およびUNC0642からなる群より選択される。
【0249】
いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、UNC0224;UNC0638;A366;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;およびE72からなる群より選択されるI型G9a/GLP阻害物質(例えば、BIX-01294誘導体)である。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、BRD4770;BIX-01338;およびBRD9539からなる群より選択されるII型G9a/GLP阻害物質(例えば、BIX-01338誘導体)である。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、ケトシンなどのIII型G9a/GLP阻害物質である。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、DCG066からなる群より選択されるIV型G9a/GLP阻害物質である。
【0250】
(表4)NK細胞分化を促進することができるG9a/GLP阻害物質。表4に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0251】
いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、少なくとも500nMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、少なくとも1nM、少なくとも2nM、少なくとも3nM、少なくとも4nM、少なくとも5nM、少なくとも6nM、少なくとも7nM、少なくとも8nM、少なくとも9nM、少なくとも10nM、少なくとも20nM、少なくとも30nM、少なくとも40nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、少なくとも1.0μM、少なくとも1.25μM、少なくとも1.5μM、少なくとも1.75μM、少なくとも2.0μM、少なくとも2.5μM、少なくとも3μM、少なくとも4μM、少なくとも5μM、少なくとも6μM、少なくとも7μM、少なくとも8μM、少なくとも9μM、または少なくとも10μMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、1nM~10nM、10nM~50nM、50nM~100nM、100nM~500nM、500nM~1μM、1μM~5μM、または5μM~10μMの濃度で提供される。
【0252】
いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質(例えば、UNC0224)は、少なくとも312nM、少なくとも625nM、少なくとも1.25μM、少なくとも2.5μM、または少なくとも5μMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質(例えば、UNC0638)は、少なくとも8nMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質(例えば、BRD4770)は、少なくとも200nMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質(例えば、BIX01294)は、少なくとも200nMの濃度で提供される。いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質(例えば、UNC0642)は、少なくとも40nMの濃度で提供される。
【0253】
いくつかの態様では、G9a/GLP阻害物質は、核酸阻害物質である。いくつかの態様では、G9a/GLP核酸阻害物質は、CRISPRiガイドRNA(gRNA)である。CRISPRiは、触媒的に死んだ(d)Cas9が転写エフェクター(例えば、阻害物質)と融合して標的遺伝子発現を調節する、CRISPRのバリアントである。CRISPRiにおいて、ガイドRNAが、エフェクターアームと共にゲノム遺伝子座(例えば、関心対象の遺伝子に関連するプロモーター領域;例えば、G9aプロモーター、またはGLPプロモーター)に移動すると、これは、下流遺伝子発現を活性化する代わりに、それを抑制する。いくつかの態様では、核酸阻害物質は、誘導性(例えば、Dox誘導性)である。いくつかの態様では、G9a核酸阻害物質は、SEQ ID NO:50、またはSEQ ID NO:50の配列と少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であり、かつ、SEQ ID NO:50と同じ機能(G9aのノックダウン)を維持する、核酸配列を含む。
【0254】
SEQ ID NO:50、G9a CRISPRi gRNA:
【0255】
いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、CD56+ NK細胞の発生まで、G9a/GLP阻害物質に曝露させて培養される。いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、G9a/GLP阻害物質に約14日間曝露させて培養される。いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)は、G9a/GLP阻害物質に少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、少なくとも30日、少なくとも31日、少なくとも32日、少なくとも33日、少なくとも34日、少なくとも35日、少なくとも36日、少なくとも37日、少なくとも38日、少なくとも39日、少なくとも40日、少なくとも41日、少なくとも42日、少なくとも43日、少なくとも44日、少なくとも45日、少なくとも46日、少なくとも47日、少なくとも48日、少なくとも49日、少なくとも50日、またはそれ以上の間、曝露させて培養される。
【0256】
いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)をG9a/GLP阻害物質(例えば、低分子G9a/GLP阻害物質または核酸G9a/GLP阻害物質)の存在下で培養することは、結果として生じるCD56+ NK細胞の数を、G9a/GLP阻害物質の存在下で培養しない細胞と比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上大きく増加させる。
【0257】
いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)をG9a/GLP阻害物質(例えば、低分子G9a/GLP阻害物質または核酸G9a/GLP阻害物質)の存在下で培養することは、赤血球系または骨髄球系列細胞(例えば、赤血球系細胞;マクロファージ;顆粒球;巨核球)の数を、G9a/GLP阻害物質の存在下で培養しない細胞と比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上大きく減少させる。
【0258】
いくつかの態様では、細胞(例えば、CD34+造血内皮細胞)をG9a/GLP阻害物質(例えば、低分子G9a/GLP阻害物質または核酸G9a/GLP阻害物質)の存在下で培養することは、分化した細胞の総数の中での結果として生じるCD56+ NK細胞の割合を、G9a/GLP阻害物質の存在下で培養しない細胞と比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上大きく増加させる。
【0259】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなNK細胞を分化させるための方法(例えば、G9a/GLP阻害およびストロマフリーNK細胞分化)は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%のCD56+ NK細胞を含む集団を産生する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなNK細胞を分化させるための方法(例えば、G9a/GLP阻害およびストロマフリーNK細胞分化)は、少なくとも40%のCD56+ NK細胞を含む集団を産生する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなNK細胞を分化させるための方法(例えば、G9a/GLP阻害およびストロマフリーNK細胞分化)は、少なくとも60%のCD56+ NK細胞を含む集団を産生する(例えば、
図5B~5Cを参照のこと)。
【0260】
G9a/GLP阻害物質を含むがそれらに限定されない、NK細胞分化を促進することができる低分子阻害物質に関するさらなる詳細については、例えば、Greiner et al. Nature Chemical Biology 1(3), 143-145 (2005);Liu et al. Journal of Medicinal Chemistry 54(17), 6139-6150 (2011);Liu et al. J Med Chem. 2010 Aug 12; 53(15): 5844-5857;Liu et al., J Med Chem. 2009 Dec 24; 52(24): 7950-7953;Kondengaden et al., Eur J Med Chem. 2016 Oct 21, 122:382-393;Yuan et al. ACS Chem Biol. 2012 Jul 20; 7(7): 1152-1157;Chang et al. J Mol Biol. 2010 Jul 2; 400(1): 1-7;Christman et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 92(16), 7347-7351 (1995);Cheng et al., Signal Transduction and Targeted Therapy volume 4, Article number: 62 (2019)を参照されたく;その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0261】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなエピジェネティック制御因子(例えば、G9および/またはGLP)の阻害を用いて誘導させた細胞(例えば、CD45+CD34+ HSPC;例えば、CD56+ NK細胞)の集団は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、またはそれ以上の、リンパ球系分化および/または機能に関連するかまたはそれを担う遺伝子または遺伝子パスウェイを発現する(例えば、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0262】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなエピジェネティック制御因子(例えば、G9および/またはGLP)の阻害を用いて誘導させた細胞(例えば、CD45+CD34+ HSPC;例えば、CD56+ NK細胞)の集団は、エピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させた細胞(例えば、CD45+CD34+ HSPC;例えば、CD56+ NK細胞)の集団と比較して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、またはそれ以上の、リンパ球系分化および/または機能に関連するかまたはそれを担う遺伝子または遺伝子パスウェイの発現の増加を示す(例えば、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0263】
いくつかの態様では、G9a阻害によってアップレギュレーションされる、リンパ球系分化および/または機能に関連するかまたはそれを担うことができる遺伝子パスウェイとしては、免疫系プロセス;骨髄性白血球活性化;免疫応答;細胞活性化;白血球活性化;小胞媒介輸送;免疫エフェクタープロセス;免疫応答に関与する骨髄系細胞活性化;免疫応答に関与する白血球細胞活性化;免疫応答に関与する細胞活性化;好中球活性化;顆粒球活性化;好中球媒介免疫;骨髄性白血球媒介免疫;好中球脱顆粒;白血球脱顆粒;免疫応答における好中球活性化;エキソサイトーシスの調節;エキソサイトーシス;または白血球媒介免疫が挙げられるが、それらに限定されない(例えば、
図6Cを参照のこと)。
【0264】
いくつかの態様では、リンパ球系分化および/または機能に関連するかまたはそれを担う遺伝子としては、Runt関連転写因子3(RUNX3)、CD1A、腫瘍壊死因子(TNF)、グランザイムA(GZMA)、グラニュライシン(GNLY)、および/またはIKAROSファミリージンクフィンガー5(IKZF5;Pegasusとも称される)が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、G9a阻害は、RUNX3、CD1A、TNF、GZMA、GNLY、および/またはIKZF5のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはすべての発現の増加を結果としてもたらす。
【0265】
いくつかの態様では、G9a阻害によってアップレギュレーションされる、リンパ球系分化および/または機能に関連するかまたはそれを担うことができる遺伝子パスウェイとしては、抗原プロセシングおよび提示(GO:0019882);白血球細胞間接着の正の調節(GO:1903039);T細胞活性化の正の調節(GO:0050870);細胞間接着の正の調節(GO:0022409);T細胞分化(GO:0030217);細胞接着の正の調節(GO:0045785);白血球細胞間接着の調節(GO:1903037);T細胞活性化の調節(GO:0050863);白血球細胞間接着(GO:0007159);細胞間接着の調節(GO:0022407);T細胞活性化(GO:0042110);細胞接着の調節(GO:0030155);免疫グロブリンスーパーファミリードメインから構築された免疫受容体の体細胞組換えに基づく適応免疫応答(GO:0002460);リンパ球媒介免疫(GO:0002449);免疫応答の分子メディエーターの産生(GO:0002440);B細胞媒介免疫(GO:0019724);免疫グロブリン媒介免疫応答(GO:0016064);白血球媒介免疫(GO:0002443);適応免疫応答(GO:0002250);免疫エフェクタープロセス(GO:0002252);リンパ球活性化の正の調節(GO:0051251);リンパ球活性化(GO:0046649);白血球活性化の正の調節(GO:0002696);細胞活性化の正の調節(GO:0050867);白血球活性化(GO:0045321);リンパ球活性化の調節(GO:0051249);細胞活性化(GO:0001775);白血球活性化の調節(GO:0002694);免疫系プロセスの正の調節(GO:0002684);細胞活性化の調節(GO:0050865);細胞間接着(GO:0098609);細胞タンパク質含有複合体アセンブリ(GO:0034622);免疫系プロセスの調節(GO:0002682);タンパク質含有複合体アセンブリ(GO:0065003);タンパク質含有複合体サブユニット組織化(GO:0043933);免疫応答(GO:0006955);免疫系プロセス(GO:0002376);細胞成分生合成(GO:0044085);細胞成分アセンブリ(GO:0022607);細胞プロセスの正の調節(GO:0048522);生物学的プロセスの正の調節(GO:0048518);細胞成分の組織化または生合成(GO:0071840);または、遺伝子発現(GO:0010467)が挙げられるが、それらに限定されない(例えば、表6を参照のこと)。「GO」は、RNA-seqデータに対する遺伝子オントロジー(Gene Ontology)解析のことを指す。
【0266】
ヒストンメチルトランスフェラーゼの阻害
いくつかの態様では、前記分化法は、ヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害することを含むことができる。ヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程(例えば、EZH1ノックダウン)は、分化効率(例えば、NK細胞の)を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、前記分化法は、ヒストンメチルトランスフェラーゼを、例えば、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団において阻害することを含む。ヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する方法は、当技術分野において公知である;例えば、国際出願第WO 2018/048828号、米国出願第2019/0225940号、Doulatov et al., Cell Stem Cell. 2013 October 3, 13(4);Vo et al., Nature 2018, 553(7689): 506-510を参照のこと;その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0267】
しかしながら、ヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程(例えば、EZH1ノックダウン)は必要とされない。したがって、いくつかの態様では、前記分化法は、ヒストンメチルトランスフェラーゼを、例えば、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団において阻害することを含まない。
【0268】
これらの実験の過程で、本発明者らは、H3K9およびH3K27を標的とする特定のヒストン修飾酵素の阻害が、多能性幹細胞に由来する造血前駆体のリンパ球系分化能を促進することを発見した。ヒストン修飾酵素は、ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼである。ヒストンタンパク質の翻訳後修飾は、クロマチンコンパクションを調節し、転写のエピジェネティック調節を媒介し、健康および疾患状態における細胞分化を制御する。ヒストン尾部のメチル化は、エピジェネティックシグナル伝達の基本事象の1つである。ヒストンH3のリシン9(H3K9)のトリメチル化は、HP1のクロマチン動員、ヘテロクロマチン凝縮および遺伝子サイレンシングを媒介する。同様に、H3K27およびH4K20のメチル化は、抑制状態のクロマチンと関連し、それに対し、発現された遺伝子は、H3K4、H3K36およびH3K79でメチル化される。ヒトでのH3K9のメチル化は、主にSuv39ファミリーのメンバー、すなわちEHMT1/GLP、EHMT2/G9a、SUV39H1、SUV39H2、SETDB1およびSETDB2、ならびに次に非Suv39酵素PRDM2およびASH1Lに依存する(例えば、Hong Wu et al., Structural Biology of Human H3K9 Methyltransferases, 2010, PLoS ONE, 5(2): e8570を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。対照的に、H3K27のメチル化は、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)によって行われる。
【0269】
H3K9のジ/トリメチル化は、保存されたSUV39H1/2ヒストンメチルトランスフェラーゼによって主に触媒され、一方で、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)は、H3K27のジ/トリメチル化を確実にする(例えば、Rea S, 2000. Nature 406:593-599;Margueron R, and Reinberg D. 2011. Nature 469:343-349を参照のこと)。PRC2は、EZH1/2触媒サブユニット、SUZ12、EEDおよびRBBP7/4を含む(例えば、Margueron R, and Reinberg D, 2011を参照のこと)。
【0270】
H3K9およびH3K27を標的とするヒストンリシンメチルトランスフェラーゼを阻害することは、ヒストンH3のメチル化に起因する転写抑制を軽減し、それにより、細胞分化、具体的にはNK細胞特異化を容易にする遺伝子発現を促進することが、本明細書において具体的に想定される。
【0271】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼは、ヒストンH3リシン残基9(H3K9)へのおよび/またはヒストンH3リシン残基27(H3K27)へのメチル基の付加を触媒する。
【0272】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質は、G9a/GLPヘテロマー複合体を阻害する。
【0273】
G9a(EC 2.1.1.43)(UniProtKB:Q96KQ7)は、EHMT2(真性染色質ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ2)、G9Aヒストンメチルトランスフェラーゼおよびタンパク質G9aとしても知られている。
【0274】
GLP(EC 2.1.1.43)(UniProtKB:Q9H9B1)は、EHMT1(真性染色質ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ1)、G9a様タンパク質1およびGLP1としても知られている。
【0275】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質は、EZH1(Zeste 1ポリコーム抑制複合体2サブユニットのエンハンサー)を阻害する。
【0276】
一態様では、H3K27ヒストンメチルトランスフェラーゼは、EZH1(EC:2.1.1.43)(UniproKB Q92800-1)である。
【0277】
一態様では、H3K27ヒストンメチルトランスフェラーゼは、EZH2(EC:2.1.1.43)(Unipro Q15910-1)ではない。
【0278】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼの阻害物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの遺伝子発現またはタンパク質触媒活性を阻害する。
【0279】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27は、低分子または核酸またはCRISPR媒介標的遺伝子干渉によって阻害される。
【0280】
いくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27は、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される。記載される任意の方法、細胞または組成物の一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ低分子阻害物質は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を非限定的に含む、化学物質である。いくつかの態様では、低分子は、ヘテロ有機化合物または有機金属化合物である。
【0281】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ低分子阻害物質には、AMI-1、A-366、BIX-01294、BIX01338、BRD4770、ケトシン、E72、UNC0224、UNC0631、UNC0638、UNC0642、UNC0646、EPZ5676、EPZ005687、GSK343、EPZ-6438(E7438)、3-デアザネプラノシンA(DZNeP)HCl、UNC1999、MM-102、SGC 0946、エンタカポン、EPZ015666、UNC0379、EI1、MI-2(メニン-MLL阻害物質)、MI-3(メニン-MLL阻害物質)、PFI-2、GSK126、またはEPZ004777が含まれるが、それらに限定されない。
【0282】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ低分子阻害物質は、UNC0631、BRD4770、UNC1999、CPI-360、およびBIX 01294からなる群より選択される。
【0283】
一態様では、核酸阻害物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を標的とする核酸である。例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、EZH1のmRNAまたは一次転写物を標的とし、それにより、酵素のタンパク質発現を阻害するものである。ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ、Zeste 1ポリコーム抑制複合体2サブユニットのakaエンハンサー(EZH1)またはEC 2.1.1.43は、ヒストンH3(MIM 602812を参照のこと)lys27(H3K27)のメチル化を媒介し、胚性幹細胞の多能性および可塑性の維持において機能する、非古典的ポリコーム抑制複合体-2(PRC2)の一成分である。ヒトEZH1遺伝子についての外部識別は、以下の通りである:HGNC:3526;Entrez Gene:2145;Ensembl:ENSG00000108799;OMIM:601674;UniProtKB:Q92800;EMBL:AB002386 mRNAおよび対応するmRNA翻訳:BAA20842.2;GENBANK:BT009782 mRNAおよび対応するmRNA翻訳:AAP88784.1。
【0284】
一態様では、核酸阻害物質は、ヒトEZH1 mRNAを標的とする。
【0285】
一態様では、核酸阻害物質は、RNA干渉阻害物質またはCRISPR媒介遺伝子干渉阻害物質である。RNA干渉阻害物質は、Whitehead Institute、MIT、siRNAウェブサイトに見られる予測RNAiソフトウェア、Invitrogen/ThermoFisherのBLOCK-iT(商標)RNAi Designer、およびRNAi Webの他のオンラインsiRNA設計ツールを使用して、標的としてEZH1のmRNAを使用して設計することができる。
【0286】
同様に、CrisperガイドRNAを、Broad Institute(MIT)CRISPRソフトウェア(ワールドワイドウェブ、例えば、portals.broadinstitute.org/gpp/public/analysis-tools/sgrna-designで利用可能である)、dna20、Clontech、AddGene、e-crisp、およびInnovative Genomicを使用して、標的としてEZH1のmRNAまたはゲノム遺伝子を使用して設計することができる。
【0287】
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)Cas9媒介遺伝子破壊は、哺乳動物を含む多様な生物で機能喪失型変異を作製する際に広く使用されている(Cong et al., 2013, Science, 339(6121): 819-23;Hsu et al., 2014, Cell, 157(6):1262-78)に総説)。Cas9ベースのノックアウトスクリーニングが、様々な細胞株で不可欠な遺伝子および薬物耐性に関与する遺伝子を特定する際に適用されている。本発明の実施にすべて有用な、量および処方に関してなどのCRISPR-Casシステム、その構成成分、およびそのような構成成分の送達に関する全般情報について、方法、材料、送達媒体、ベクター、粒子、AAV、ならびにその製造および使用を含めて、米国特許第8,999,641号、第8,993,233号、第8,945,839号、第8,932,814号、第8,906,616号、第8,895,308号、第8,889,418号、第8,889,356号、第8,871,445号、第8,865,406号、第8,795,965号、第8,771,945号および第8,697,359号;米国特許出願公開第US 2014-0310830号、第US 2014-0287938号、第US 2014-0273234号、第US 2014-0273232号、第US 2014-0273231号、第US 2014-0256046号、第US 2014-0248702号、第US 2014-0242700号、第US 2014-0242699号、第US 2014-0242664号、第US 2014-0234972号、第US 2014-0227787号、第US 2014-0189896号、第US 2014-0186958号、第US 2014-0186919号、第US 2014-0186843号、第US 2014-0179770号および第US 2014-0179006号、第US 2014-0170753号;欧州特許EP 2 784 162 B1およびEP 2 771 468 B1;欧州特許出願EP 2 771 468(EP13818570.7)、EP 2 764 103(EP13824232.6)、およびEP 2 784 162(EP14170383.5);ならびに国際出願第WO 2014/093661号を参照されたく、それらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0288】
本発明に関連する使用に想定されるCRISPR/Casシステムは、任意の適切なCRISPR酵素を利用することができる。いくつかの態様では、CRISPR酵素は、II型CRISPRシステム酵素である。いくつかの態様では、CRISPR酵素は、Cas9酵素である。いくつかの態様では、Cas9酵素は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)、またはS.サーモフィルス(S. thermophilus)のCas9であり、これらの生物に由来する変異型Cas9を含み得る。酵素は、Cas9ホモログまたはオーソログであり得る。いくつかの態様では、CRISPR酵素は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0289】
本明細書に記載されるように、CRISPR/Casシステムは、関心対象の連続ゲノム領域内の多数の配列を特異的に標的化するために使用される。標的化は、典型的には、細胞集団の各細胞に、少なくとも1つのCasタンパク質および本明細書に記載されるガイドRNAライブラリーの1つまたは複数のガイドRNAを含む操作された天然に存在しないCRISPR-Casシステムを含む1つまたは複数のベクターのベクターシステムを導入することを含む。
【0290】
これらの方法において、Casタンパク質および1つまたは複数のガイドRNAは、システムの同じまたは異なるベクター上にあり得、各細胞に組み込まれ、それによって、各ガイド配列は、細胞集団中の各細胞における連続ゲノム領域内の配列を標的化する。Casタンパク質は、前記細胞における発現を確実にするために調節エレメントに、より特定すると細胞集団の細胞における発現に適したプロモーターに、機能的に連結される。特定の態様では、プロモーターは、ドキシサイクリン誘導性プロモーターなどの誘導性プロモーターである。細胞集団の細胞内で転写されるとき、ガイド配列を含むガイドRNAが、連続ゲノム領域中の標的配列へのCRISPR-Casシステムの配列特異的結合を指示する。典型的には、CRISPR-Casシステムの結合は、Casタンパク質による連続ゲノム領域の切断を誘導する。
【0291】
低分子干渉性RNA(siRNA)またはマイクロRNA(miRNA)によって媒介されるRNA干渉(RNAi)は、遺伝子発現の転写後調節のための強力な方法である。RNAiは、哺乳動物細胞における生物学的プロセスの研究に広く使用されており、遺伝子発現の選択的モジュレーションが望ましいヒト疾患への治療アプローチを構成することもできる。miRNAと標的mRNA配列との間の相補性の程度に応じて、同族mRNAの分解を誘導することまたは翻訳減衰によって遺伝子発現の喪失が起こる。内因性miRNAは、一次転写物として転写され、続いてRNAse III酵素ドローシャ(Drosha)によってプロセシングされて、ステムループ構造を生成する。核外移行およびダイサー(Dicer)による切断は、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖に分けられる成熟短二本鎖分子(siRNA)を生成する。ガイド鎖は、標的mRNAの切断を媒介するエフェクター複合体であるRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷され、機能的ガイド鎖はRISCタンパク質に結合し、一方でパッセンジャー鎖は分解する。RISCへのパッセンジャー鎖と比べたガイド鎖の負荷は、siRNAの5'端の安定性に大きく依存し、より不安定な鎖が優先的にRISCに組み込まれるが、哺乳動物細胞における正確な調節は、十分に解明されていない。ガイド鎖の5'端は、標的特定に重要な「シード領域」を含有する。ドローシャおよびダイサーによる的確な切断が、適切な標的mRNAとの効率的な結合を媒介する所定のシード領域を有するガイドRNAを生成させるために重要である。不正確なプロセシングは、オフターゲット分子との結合をもたらすが、切断部位の移動も二重鎖端のヌクレオチド組成を変化させ、そのことは、RISCへの鎖負荷に顕著な影響を有し得る。
【0292】
選択された標的ポリペプチドの発現を阻害することは、RNA干渉物質の使用を経由する。RNA干渉(RNAi)は、選択的分解のために標的ポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAを標的とする低分子干渉性RNA(siRNA)二重鎖を使用する。遺伝子発現のsiRNA依存性転写後サイレンシングは、siRNAによってガイドされた部位で標的メッセンジャーRNA分子を切断することを伴う。RNAiは、標的遺伝子と同一または高度に類似の配列のRNAの発現または導入が、その標的とされた遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の配列特異的分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)をもたらし(例えば、Coburn, G. and Cullen, B. (2002) J. Virology 76(18):9225を参照のこと)、それにより、標的遺伝子の発現を阻害する、進化上保存されたプロセスである。一態様では、RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)である。このプロセスは、植物、脊椎動物および哺乳動物の細胞において記載されている。RNAiは、自然界において、長鎖dsRNAからsiRNAと称される二本鎖断片への前進的切断を促進するdsRNA特異的エンドヌクレアーゼ、ダイサーによって開始される。siRNAは、標的mRNAを認識して切断するタンパク質複合体(「RNA誘導サイレンシング複合体」または「RISC」と称される)に組み込まれる。RNAiは、核酸分子、例えば合成siRNAまたはRNA干渉物質を導入することによっても開始され、標的遺伝子の発現を阻害またはサイレンシングすることができる。本明細書に使用される場合、「標的遺伝子発現の阻害」は、RNA干渉が誘導されない状況と比較して、標的遺伝子または標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現またはタンパク質活性またはレベルの任意の減少を含む。減少は、RNA干渉物質によって標的化されなかった標的遺伝子の発現または標的遺伝子によってコードされるタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上である。
【0293】
用語「RNA干渉物質」および「RNA干渉」は、これらが本明細書に使用される場合、RNA干渉物質が、siRNA、miRNA、shRNAまたは他の二本鎖RNA分子を含むかどうかにかかわらず、二本鎖RNAによって媒介される形態の遺伝子サイレンシングを包含することが意図される。siRNAは、標的遺伝子の発現を例えばRNAiにより阻害するように機能するRNA作用物質として定義される。siRNAは、化学合成される場合があり、インビトロ転写によって産生される場合があり、またはホスト細胞内で産生される場合がある。一態様では、siRNAは、約15~約40ヌクレオチド長、好ましくは約15~約28ヌクレオチド、より好ましくは約19~約25ヌクレオチド長、より好ましくは約19、20、21、22、または23ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、約0、1、2、3、4、または5ヌクレオチドの長さを有する3'および/または5'オーバーハングを各鎖上に含有し得る。オーバーハングの長さは、2つの鎖の間で独立しており、すなわち、1つの鎖上のオーバーハングの長さは、2番目の鎖上のオーバーハングの長さに依存しない。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を通じてRNA干渉を促進可能である。
【0294】
siRNAはまた、低分子ヘアピン型(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)も含む。一態様では、これらのshRNAは、短い(例えば、約19~約25ヌクレオチド)アンチセンス鎖に続く、約5~約9ヌクレオチドのヌクレオチドループ、および類似のセンス鎖から構成される。あるいは、センス鎖が、ヌクレオチドループ構造に先行する場合があり、アンチセンス鎖が後続する場合がある。これらのshRNAは、プラスミド、レトロウイルス、およびレンチウイルス中に含有され、例えばpol III U6プロモーター、または別のプロモーターから発現される場合がある(例えば、Stewart, et al. (2003) RNA April; 9(4):493-501を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。RNA干渉物質の標的遺伝子または配列は、細胞遺伝子またはゲノム配列、例えば、G9a/GLPまたはEZH1配列であり得る。siRNAは、標的遺伝子もしくはゲノム配列、またはその断片と実質的に相同であり得る。これに関連して使用される場合、用語「相同である」は、標的のRNA干渉を引き起こすために、標的mRNAまたはその断片と実質的に同一、十分に相補的、または類似であるものと定義される。天然のRNA分子に加えて、標的配列の発現を阻害または干渉するために適したRNAは、RNA誘導体および類似体を含む。好ましくは、siRNAは、その標的と同一である。siRNAは、好ましくは1つの配列のみを標的とする。siRNAなどのRNA干渉物質の各々は、潜在的オフターゲット効果について、例えば発現プロファイリングによってスクリーニングすることができる。そのような方法は、当業者に公知であり、例えば、Jackson et al. Nature Biotechnology 6:635-637, 2003に記載されている。発現プロファイリングに加えて、配列データベースにおいて類似配列について潜在的標的配列をスクリーニングして、オフターゲット効果を有し得る潜在配列を特定してもよい。例えば、配列が同一な15個、またはおそらくわずか11個の連続ヌクレオチドが、非標的転写物のサイレンシングを指示するために十分である。したがって、潜在的オフターゲットサイレンシングを回避するために、最初に、BLASTなどの任意の公知の配列比較法による配列同一性分析を使用して、提案されたsiRNAをスクリーニングしてもよい。siRNA配列は、RISCへのsiRNAのアンチセンス(ガイド)鎖の取り込みを最大化し、それにより、RISCがG9a/GLPまたはEZH1 mRNAを分解のために標的とする能力を最大化するように選択される。これは、アンチセンス鎖の5'末端で最低の結合自由エネルギーを有する配列についてスキャンすることによって達成することができる。より低い自由エネルギーは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖の5'端の巻き戻しの増強をもたらし、それにより、アンチセンス鎖がRISCによって取り込まれ、ヒトG9a/GLPまたはEZH1 mRNAの配列特異的切断を指示することを確実にする。siRNA分子は、RNAのみを含有する分子に必ずしも限られず、例えば、化学修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含し、リボース糖分子が、別の糖分子または類似の機能を果たす分子に置換された分子も含む。そのうえ、ヌクレオチド残基間にホスホロチオエート結合などの非天然結合を使用することができる。RNA鎖は、フルオロフォアなどのレポーター基の反応性官能基で誘導体化することができる。特に有用な誘導体は、RNA鎖の1つまたは複数の末端で、典型的にはセンス鎖の3'末端で修飾されている。例えば、3'末端の2'-ヒドロキシルを、種々の基で容易にかつ選択的に誘導体化することができる。他の有用なRNA誘導体は、2' O-アルキル化残基または2'-O-メチルリボシル誘導体および2'-O-フルオロリボシル誘導体などの修飾糖質部分を有するヌクレオチドを組み込んでいる。RNA塩基も修飾される場合がある。標的配列の発現を阻害または干渉するために有用な任意の修飾塩基が、使用され得る。例えば、5-ブロモウラシルおよび5-ヨードウラシルなどのハロゲン化塩基を組み込むことができる。塩基がアルキル化される場合もあり、例えば、7-メチルグアノシンをグアノシン残基の代わりに組み込むことができる。成功した阻害をもたらす非天然塩基も組み込むことができる。好ましいsiRNA修飾は、2'-デオキシ-2'-フルオロウリジンまたはロックド核酸(LAN)ヌクレオチド、およびホスホジエステルまたは様々な数のホスホロチオエート結合のいずれかを含有するRNA二重鎖を含む。そのような修飾は、当業者に公知であり、例えば、Braasch et al., Biochemistry, 42: 7967-7975, 2003に記載されている。アンチセンスオリゴヌクレオチド技法のために確立された化学反応を使用して、siRNA分子に有用な修飾の大部分を導入することができる。好ましくは、修飾は、最低限の2'-O-メチル修飾を含み、好ましくは修飾から2'-O-メチル修飾を除外する。好ましくは修飾からsiRNAの遊離5'-ヒドロキシル基の修飾も除外する。本明細書における実施例は、mRNAを効果的に標的とするshRNA分子などのRNA干渉物質の具体例を提供する。
【0295】
一態様では、核酸は、G9a/GLPもしくはEZH1特異的RNA干渉物質またはRNA干渉物質をコードするベクターである。一態様では、EZH1特異的RNA干渉物質は、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列の1つまたは複数を含む。
【0296】
いくつかの態様では、核酸阻害物質は、EZH1に結合するアプタマー、EZH1特異的RNA干渉物質およびEZH1特異的RNA干渉物質をコードするベクターからなる群より選択される、EZH1特異的核酸であり、RNA干渉物質は、SEQ ID NO:11~19から選択されるヌクレオチド配列の1つまたは複数を含む。
【0297】
一態様では、多系列造血前駆細胞を、SEQ ID NO:11~19からなる群より選択される核酸配列を含む核酸分子を担持するウイルスベクターまたはベクターと接触させる。
【0298】
一態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質との接触は、1回より多く行う。例えば、多系列造血前駆細胞を、最初に1回目、SEQ ID NO:11~19からなる群より選択される核酸配列を含む核酸分子を担持するウイルスまたはベクターと接触させた後、または本明細書に記載される低分子阻害物質と接触させた後、接触させた細胞を、そのウイルスまたはベクターを除去するために洗浄し、次に、洗浄された細胞を、最初の接触で使用された同じウイルスまたはベクターと2回目に接触させる。
【0299】
本明細書において、ゲノム編集のCas9/CRISPRシステムが、本明細書に記載される方法、細胞および組成物と共に用いられることが想定される。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムは、RNAプログラム可能なゲノム編集に有用である(例えば、Jinek, M. et al. Science (2012) 337(6096):816-821を参照のこと)。
【0300】
トランス活性化crRNA(tracrRNA)は、低分子のトランスコード(trans-encoded)RNAである。これは、ヒト病原体である化膿連鎖球菌から最初に発見された(Deltcheva E, et al. (2011). Nature 471 (7340): 602-7を参照のこと)。細菌および古細菌では、CRISPR/Cas(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質)は、ウイルスおよびプラスミドから防御するRNA媒介防御システムを構成する。この防御経路は、3段階を有する。最初に、侵入核酸のコピーがCRISPR遺伝子座に組み込まれる。次に、このCRISPR遺伝子座からCRISPR RNA(crRNA)が転写される。次に、crRNAがエフェクター複合体に組み込まれ、そこで、crRNAは、複合体を侵入核酸に導き、Casタンパク質がこの核酸を分解する(例えば、Terns MP and Terns RM (2011). Curr Opin Microbiol 14 (3): 321-7を参照のこと)。CRISPR活性化のいくつかの経路があり、その1つは、crRNAの成熟に役割を果たすtracrRNAを必要とする。TracrRNAは、プレcrRNAと相補的であり、それと塩基対合してRNA二重鎖を形成する。これは、RNA特異的リボヌクレアーゼであるRNase IIIによって切断されて、crRNA/tracrRNAハイブリッドを形成する。このハイブリッドは、侵入核酸を切断するエンドヌクレアーゼCas9のためのガイドとして働く(例えば、Deltcheva E, et al. 前出;Jinek M, et al. (2012), Science 337 (6096): 816-21;およびBrouns SJ (2012), Science 337 (6096): 808-9を参照のこと)。
【0301】
いくつかの態様では、Cas9/CRISPRシステムのガイドRNAは、公知のEZH1のすべての転写物に存在するEZH1遺伝子のエクソン3を標的とするように設計される。エクソン3の配列は、
である。
【0302】
EZH1のエクソン3を標的とする非限定的な例示的gRNAは、
である。
【0303】
他の態様では、Cas9/CRISPRシステムのガイドRNAは、公知のEZH1のすべての転写物にも存在するEZH1遺伝子のエクソン4を標的とするように設計される。EZH1のエクソン4の配列は、
である。
【0304】
EZH1のエクソン4を標的とする非限定的な例示的gRNAは、
である。
【0305】
いくつかの態様では、EZH1核酸阻害物質は、CRISPR干渉(CRISPRi)ガイドRNA(gRNA)である。いくつかの態様では、核酸阻害物質は、誘導性(例えば、Dox誘導性)である。いくつかの態様では、EZH1核酸阻害物質は、SEQ ID NO:51~53のうちの1つ、またはSEQ ID NO:51~53のうちの1つの配列と少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であり、かつ、SEQ ID NO:51~53のうちの1つと同じ機能(EZH1のノックダウン)を維持する、核酸配列を含む。
【0306】
(表5)例示的なEZH1 CRISPRi gRNA
【0307】
一態様では、ベクターは、本明細書に記載されるヒストンメチルトランスフェラーゼの核酸阻害物質のいずれかを、本明細書に記載されるような細胞集団から選択される標的細胞(例えば、ESC;PSC;iPSC;造血内皮細胞;HSC)に導入するための輸送媒体として使用される。一態様では、ベクターは、記載されるヒストンメチルトランスフェラーゼの核酸阻害物質を含む本明細書に記載される核酸のいずれかを、本明細書に記載されるような細胞集団から選択される標的細胞(例えば、ESC;PSC;iPSC;造血内皮細胞;HSC)に導入するための輸送媒体として使用される。核酸阻害物質のインビボ発現は、それぞれのヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を低減および阻害するために、G9a/GLPまたはEZH1などの標的とされたヒストンメチルトランスフェラーゼのmRNAを分解するためのものであり、トランスフェクトされた細胞におけるヒストンH3のメチル化を低減させ、それにおける遺伝子発現の抑制を緩和することを目標とする。
【0308】
一態様では、ホスト細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞、免疫細胞、例えばNK細胞、T細胞、もしくはB細胞、赤血球、線維芽細胞、角化細胞、または骨髄球系前駆細胞である。一態様では、ホスト細胞は、対象から単離される。一態様では、ホスト細胞は、血液疾患と診断されている対象から単離される。
【0309】
一態様では、ベクターは、脾フォーカス形成ウイルスプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター、ドキシサイクリン(Dox)誘導性、またはβ-グロビン遺伝子座制御領域、およびβ-グロビンプロモーターをさらに含む。一態様では、プロモーターは、その中の核酸分子の標的化された発現を提供する。プロモーターの他の例としては、様々な導入遺伝子についてのCMVプロモーターおよびEF1-アルファプロモーター、ならびにEZH1を標的とするshRNAについてのU6プロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。
【0310】
一態様では、ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクターである。細胞における遺伝子送達および発現のためのウイルスベクターの非限定的な例は、レトロウイルス、アデノウイルス(2および5型)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルスベクター(HdAd)、ハイブリッドアデノウイルスベクター、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、およびレンチウイルスである。本明細書に記載される発明において有用な例示的なベクターとしては、エピソーム性ベクター、組み込み型ベクター、非組み込み型ベクター、および切除可能ベクターが挙げられる。
【0311】
ストロマフリーNK細胞分化
いくつかの態様では、分化法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む。本明細書に記載される方法は、ストロマフリーNK細胞分化法である。Notchリガンドを発現するストロマ細胞を伴う分化と比較して、ストロマフリー分化は、予想外なことに、分化したNK細胞の数の増加を結果としてもたらす(例えば、実施例1、
図2、
図3A~3Bを参照のこと)。予想外なことに、本発明者らは、本明細書に記載されるストロマフリープロトコールが、iPSCまたはHE由来前駆体(例えば、リンパ球系前駆体)ではなく、造血内皮細胞(HE)からの開始を必要とすることを見いだした。
【0312】
実際に、骨髄中の造血幹細胞(HSC)は、骨髄球系共通前駆体(CMP)およびリンパ球系共通前駆体(CLP)に分化する前に、多分化能前駆体(MPP)を生み出す。CLPは、骨髄から胸腺に遊走し、そこで、デルタ様リガンド4(DLL4)を発現する胸腺上皮細胞が、初期NK細胞前駆体において古典的Notch 1シグナル伝達をトリガーする。このNotch 1シグナルは、NK細胞分化に不可欠である。Notchシグナル伝達は、Notch 2受容体によって媒介される。Notchシグナル伝達経路は、脊椎動物種および無脊椎動物種の両方で高度に保存されており、これは、多くの異なる細胞運命の決定を調節する。これは、神経発生、血管新生、または筋形成などの発生中のパターン形成に重要であり、免疫細胞発生および幹細胞維持を調節する。Notchシグナル伝達はまた、成人期を通して細胞プロセスに関与する。Notchを介したシグナル伝達は、隣接細胞の間で起こり、受容体およびそのリガンドの両方は、膜貫通タンパク質である。例えば、Schmitt T.M., Zuniga-Pflucker J.C. (2002) Induction of T cell development from hematopoietic progenitor cells by delta-like-1 in vitro. Immunity 17:749-756;Mohtashami M. (2010) Direct Comparison of Dll1- and Dll4-Mediated Notch Activation Levels Shows Differential Lymphomyeloid Lineage Commitment Outcomes. J Immunol. 185(2):867-76;Ohishi K et al,(参照により本明細書に組み入れられる)Delta-1 enhances marrow and thymus repopulating ability of human CD34(+) CD38(-) cord blood cells. J Clin Invest. 2002 Oct;110(8):1165-74;およびDallas MH et al. Density of The Notch ligand Delta1 determines generation of B and T cell precursors from hematopoietic stem cells J Exp Med. 2005 May 2; 201(9): 1361-1366を参照されたく、これらは、参照により本明細書に組み入れられる。NK細胞発生の後期のNOTCHシグナル伝達は、成熟および細胞傷害活性を促進する。Notch活性化は、培養におけるNK細胞分化を容易にする。例えば、Felices et al., J Immunol. 2014 Oct 1; 193(7): 3344-3354;Haraguchi et al., J Immunol May 15, 2009, 182 (10) 6168-6178を参照されたく;その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0313】
したがって、リンパ球系列およびNK細胞系列の決定において分化を開始するために、造血内皮細胞を、Notchリガンドに曝露させて、その中のNotchシグナル伝達経路を活性化する。予想外なことに、本発明者らは、Notchリガンドに対する曝露を含む、本明細書に記載されるストロマフリープロトコールが、iPSCまたはHE由来前駆体(例えば、リンパ球系前駆体)ではなく、造血内皮細胞(HE)からの開始を必要とすることを見いだした。したがって、いくつかの態様では、iPSCまたはHE由来前駆体は、Notchリガンドの存在下でNK細胞に分化される初期集団ではない。
【0314】
Notchリガンドは、DSL(デルタ、セレート(Serrate)、LAG-2)ドメインおよび様々な数のEGF様リピートを有する1回貫通型膜貫通タンパク質である。2つのクラスの古典的Notchリガンド、デルタ/デルタ様およびセレート/Jaggedクラスがある。後者は、膜貫通ドメイン近くにシステインリッチリピートの追加的なドメインを有する。哺乳動物には5つの古典的Notchリガンド:Jagged-1、Jagged-2、DLL1、DLL3、およびDLL4がある。これらは、4つのNotch受容体、Notch 1~4に結合することができる。Notchデルタリガンド、デルタ様1としても知られているDLL1は、NOTCH2受容体と相互作用するタンパク質である。例えば、Shimizu K, et al., 2001, J. Biol. Chem. 276 (28): 25753-8;Blaumueller CM, et al., 1997, Cell 90 (2): 281-91;Shimizu K, et al., 2000, Mol. Cell. Biol. 20 (18): 6913-22を参照のこと。DLL1は、ヒトにおいてDLL1遺伝子によってコードされるタンパク質である。DLL1は、Notchデルタリガンドのヒトホモログである。いくつかの態様では、Notchリガンドは、DLL4である。
【0315】
いくつかの態様では、Notchリガンドは、デルタ様-1(DLL1、DL1とも称される)、デルタ様-4(DLL4、DL4とも称される)、固定化デルタ1ext-IgG、および固定化デルタ4ext-IgGからなる群より選択される。いくつかの態様では、固定化デルタ1ext-IgGは、ヒトIgG1のFcドメインに融合されたヒトデルタ様-1の細胞外ドメインからなる。「固定化デルタ1ext-IgG」は、デルタ様1の細胞外ドメインをヒトIgG1のFcドメインに融合することによって作られる組換えNotchリガンドのことを指す(例えば、SEQ ID NO:42を参照のこと)。これは、設定可能な用量(titratable dose)のNOTCHリガンドを提供する合成方法である。例えば、Varnum-Finney et al., J Cell Sci. 2000 Dec;113 Pt 23:4313-8を参照されたく、これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。組換えNotchリガンドおよびFc融合物は、AdipoGen(商標)で市販されている。「固定化デルタ4ext-IgG」は、デルタ様4の細胞外ドメインをヒトIgG1のFcドメインに融合することによって作られる組換えNotchリガンドのことを指す(例えば、SEQ ID NO:43を参照のこと)。
【0316】
いくつかの態様では、デルタ1ext-IgGまたはデルタ4ext-IgGのIgGドメインは、当技術分野における任意の公知のIgGドメインを含むことができる。いくつかの態様では、デルタ1ext-IgGまたはデルタ4ext-IgGは、抗ヒトIgG抗体、プロテインG、またはプロテインAを非限定的に含むIgG Fcに結合する組成物を固体基材に被覆することによって、固体基材(例えば、組織培養プレート)に固定化することができる。いくつかの態様では、固定化Notchリガンド(例えば、DLL1またはDLL4)は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcドメインに連結される。いくつかの態様では、固定化Notchリガンド(例えば、DLL1またはDLL4)は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcドメインに連結される。
【0317】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、DLL1)の核酸配列は、SEQ ID NO:1~3のうちの1つ、またはSEQ ID NO:1~3のうちの1つと同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持するSEQ ID NO:1~3のうちの1つの配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一である配列を含む。
【0318】
SEQ ID NO:1、DLL1デルタ様古典的Notchリガンド1[ホモサピエンス(ヒト)]、Gene ID:28514、NCBI参照配列:NG_027940.1、8873bp
【0319】
SEQ ID NO:2 ホモサピエンスデルタ様古典的Notchリガンド1(DLL1)、mRNA、NCBI参照配列:NM_005618.4、3779bp
【0320】
SEQ ID NO:3 ホモサピエンスデルタ様古典的Notchリガンド1(DLL1)、CDS mRNA、NCBI参照配列:NM_005618.4、2172bp
【0321】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、DLL1)のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4、または、SEQ ID NO:4の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列およびSEQ ID NO:4と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持するアミノ酸配列を含む。
【0322】
SEQ ID NO:4 デルタ様タンパク質1前駆体[ホモサピエンス]、NCBI参照配列:NP_005609.3、723aa
【0323】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、デルタ1ext-IgG)は、ヒトDLL1の細胞外ドメインを含み、これは、DLL1のおよそアミノ酸1~536、またはアミノ酸22~544、またはアミノ酸22~537に相当する(例えば、DLL1の完全長配列についてはSEQ ID NO:4を参照のこと)。いくつかの態様では、ヒトDLL1の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5、または、SEQ ID NO:5の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:5と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0324】
SEQ ID NO:5、ヒトDLL1細胞外ドメイン、536アミノ酸
【0325】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、DLL4)の核酸配列は、SEQ ID NO:6~9のうちの1つ、または、SEQ ID NO:6~9のうちの1つの配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一である配列、およびSEQ ID NO:6~9のうちの1つと同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する配列を含む。
【0326】
SEQ ID NO:6、DLL4デルタ様古典的Notchリガンド4[ホモサピエンス(ヒト)]、Gene ID:54567、NCBI参照配列:NG_046974.1、9734bp
【0327】
SEQ ID NO:7、ホモサピエンスデルタ様古典的Notchリガンド4(DLL4)、mRNA、NCBI参照配列:NM_019074.4、3426bp
【0328】
SEQ ID NO:8、ホモサピエンスデルタ様古典的Notchリガンド4(DLL4)、CDS mRNA、NCBI参照配列:NM_019074.4、2058 bp
【0329】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、DLL4)のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9、またはSEQ ID NO:9の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:9と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0330】
SEQ ID NO:9、デルタ様タンパク質4前駆体[ホモサピエンス]、NCBI参照配列:NP_061947.1、685アミノ酸
【0331】
いくつかの態様では、Notchリガンドは、ヒトDLL4の細胞外ドメインを含み、これは、DLL4のアミノ酸1~526、またはDLL4のアミノ酸1~524、またはDLL4のアミノ酸27~524に相当する(例えば、DLL4の完全長配列についてはSEQ ID NO:9を参照のこと)。いくつかの態様では、ヒトDLL4の細胞外ドメインは、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:5の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:10と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0332】
SEQ ID NO:10、ヒトDLL4細胞外ドメイン、526アミノ酸
【0333】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、デルタ1ext-IgG)は、SEQ ID NO:42、またはSEQ ID NO:42の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:42と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0334】
SEQ ID NO:42、組換えヒトDLL1 Fcキメラタンパク質、R&D SYSTEMS 10184-DL:ヒトDLL1(Ser22-Glu537) Accession # O00548+IEGRMDP(SEQ ID NO:9)+ヒトIgG1 Fc(Pro100-Lys330)
【0335】
いくつかの態様では、Notchリガンド(例えば、デルタ4ext-IgG)は、SEQ ID NO:43、またはSEQ ID NO:43の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:43と同じ機能(例えば、Notch受容体への結合および/または活性化)を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0336】
SEQ ID NO:43、ヒトDLL4タンパク質Fc Tag、ACRO BIOSYSTEMS DLL4-H5259:ヒトDLL4(Ser27-Pro524)+ヒトIgG1 Fc(Pro100-Lys330)
【0337】
いくつかの態様では、Notchリガンドは、ヒトIgG1のFcドメインに(例えば、任意のリンカー配列を通じて)連結された本明細書に記載されるようなNotchリガンドの細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、ヒトIgG1 Fcドメインは、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:44の配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%同一であり、かつSEQ ID NO:44と同じ機能を維持する、アミノ酸配列を含む。
【0338】
SEQ ID NO:44、P01857のPro100-Lys330(IGHG1_HUMAN)
【0339】
例えば、精製組換え型のNotchリガンドまたはNotch受容体結合断片を提供することによって、Notchリガンドを提供する方法がいくつかあり、その受容体結合断片は、細胞上で細胞外Notch受容体と接触および結合すると細胞シグナル伝達事象をインビボで誘起するのに十分である。いくつかの態様では、Notchリガンドは、固体基材に、例えば共有または非共有結合または連結を使用して付着されている。いくつかの態様では、Notchリガンドは、細胞培養ディッシュに付着されている。
【0340】
いくつかの態様では、Notchリガンドは、Notchリガンドを固体基材に固定するためのドメインをさらに含む。非限定的な例として、Notchリガンドは、親和性ペアの第1のメンバーを含み、固体基材は、親和性ペアの第2のメンバーを含む。いくつかの態様では、親和性ペアの第1および第2のメンバーは、ハプテンまたは抗原性化合物と対応する抗体またはその結合部分もしくは断片との組み合わせ(例えば、FLAGと抗FLAGモノクローナル抗体、その配列は当技術分野において公知である);ジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン;マウス免疫グロブリンとヤギ抗マウス免疫グロブリン;非免疫学的結合ペア;ビオチンとアビジン;ビオチンとストレプトアビジン;ホルモンとホルモン結合タンパク質;チロキシンとコルチゾールホルモン結合タンパク質;受容体と受容体アゴニスト;受容体と受容体アンタゴニスト;アセチルコリン受容体とアセチルコリンまたはその類似体;IgGとプロテインA;レクチンと炭水化物;酵素と酵素補因子;酵素と酵素阻害物質;核酸二重鎖を形成可能な相補的オリゴヌクレオチドペア;および負に荷電された第1の分子と正に荷電された第2の分子からなる群より選択される。
【0341】
いくつかの態様では、造血内皮細胞の集団は、非組織培養処理培養容器中で培養することによってCD56+ NK細胞の集団へと分化される;別の言い方をすると、前記培養容器は、疎水性のプラスチック表面をそれがより親水性になるよう改質するためにプラズマガスに曝露されることはない。本明細書に使用される場合、用語「培養容器」は、ディッシュ、フラスコ、プレート、マルチウェルプレートなどを含む。いくつかの態様では、培養容器に、組換えヒトDLL1-Fcタンパク質(例えば、R&D SYSTEMSから商品番号10184-DLで市販されている)、組換えヒトDLL4-Fcタンパク質(例えば、ACRO BIOSYSTEMSから商品番号DL4-H5259で市販されている)、または両Notchリガンドの混合物、または本明細書に記載されるような任意のNotchリガンドが被覆される。いくつかの態様では、培養容器に、Notchリガンドが、少なくとも0.5時間、少なくとも1.0時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2.0時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3.0時間、少なくとも3.5時間、少なくとも4.0時間、少なくとも4.5時間、または少なくとも5.0時間被覆される。いくつかの態様では、培養容器に、Notchリガンドが室温で被覆される。
【0342】
いくつかの態様では、非ストロマ由来Notchリガンド(例えば、組織培養プレート上に固定化されたNotchリガンド)は、1μg/mL~100μg/mLの濃度または5μg/mL~15μg/mLの濃度で提供される。いくつかの態様では、非ストロマ由来Notchリガンドは、少なくとも1μg/mL、少なくとも2μg/mL、少なくとも3μg/mL、少なくとも4μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも6μg/mL、少なくとも7μg/mL、少なくとも8μg/mL、少なくとも9μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも11μg/mL、少なくとも12μg/mL、少なくとも13μg/mL、少なくとも14μg/mL、少なくとも15μg/mL、少なくとも16μg/mL、少なくとも17μg/mL、少なくとも18μg/mL、少なくとも19μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも25μg/mL、少なくとも30μg/mL、少なくとも35μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも45μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも55μg/mL、少なくとも60μg/mL、少なくとも65μg/mL、少なくとも70μg/mL、少なくとも75μg/mL、少なくとも80μg/mL、少なくとも85μg/mL、少なくとも90μg/mL、少なくとも95μg/mL、または少なくとも100μg/mLの濃度で提供される。好ましい態様では、非ストロマ由来Notchリガンドは、多くても5μg/mLの濃度で提供される。好ましい態様では、非ストロマ由来Notchリガンドは、10μg/mLの濃度で提供されない。
【0343】
いくつかの態様では、細胞は、非ストロマ由来Notchリガンド(例えば、組織培養プレート上に固定化されたNotchリガンド)に、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、少なくとも30日、少なくとも31日、少なくとも32日、少なくとも33日、少なくとも34日、少なくとも35日、少なくとも36日、少なくとも37日、少なくとも38日、少なくとも39日、少なくとも40日、少なくとも41日、少なくとも42日、少なくとも43日、少なくとも44日、少なくとも45日、少なくとも46日、少なくとも47日、少なくとも48日、少なくとも49日、少なくとも50日、またはそれ以上曝露させて培養される。いくつかの態様では、細胞は、非ストロマ由来Notchリガンドに少なくとも4週間曝露させて培養される。
【0344】
ストロマフリー分化
本明細書に記載される方法は、ストロマフリーNK細胞分化法、すなわち、ストロマ細胞または任意の他の種類の支持細胞との共培養を含まない方法である。マウスストロマ細胞などのストロマ細胞との共培養は、iPSC由来NK細胞のトランスレーショナルポテンシャルを制限し;例えば、ストロマ細胞の存在による移植拒絶反応への懸念があり得る。加えて、本明細書に記載されるように、ストロマフリーNK細胞分化法は、ストロマ共培養を含む分化法と比較して、CD56+ NK細胞の数または割合の増加、およびCD3+ T細胞の数または割合の減少を結果としてもたらす。
【0345】
したがって、ストロマフリー法を用いて分化させたNK細胞は、一態様では、エピジェネティック制御因子(例えば、HMT;例えば、EZH1、G9a/GLP)の阻害との組み合わせで、ストロマ共培養法と比較して、以下の予想外の有益性のうちの少なくとも1つを示す:(1)ヒトにおける移植の可能性の増加;(2)結果として生じるCD56+ NK細胞の数および/もしくは割合の増加;(3)総CD3+ T細胞の数もしくは割合の減少;(4)NK細胞受容体の発現の増加;または(5)リンパ球系分化/機能を担う遺伝子の発現の増加(例えば、実施例1、
図2、
図3A~3B、実施例3、
図4、
図5A~5C、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0346】
本明細書に使用される場合、用語「支持細胞またはストロマ細胞」は、細胞分化との関連で使用されるとき、多分化能造血前駆細胞またはNK細胞の成長、増殖、分化、または増大のための微小環境をもたらすか、促進するか、または支援することが可能である、任意の細胞のことを指す。本明細書に記載される分化法に含まれない支持細胞の非限定的な例としては、ストロマ細胞および線維芽細胞が挙げられるが、それらに限定されない。
【0347】
細胞分化を目的とした共培養物において過去に使用された支持細胞は、典型的には、ストロマ細胞である。しかしながら、本明細書に記載される方法は、ストロマ細胞を含む共培養物を含まない。本明細書に記載される分化法に含まれないストロマ細胞株の例としては、マウスMS5ストロマ細胞株;マウス骨髄由来ストロマ細胞株、例えばS10、S17、OP9(例えば、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞)およびBMS2細胞株;ヒト骨髄ストロマ細胞株、例えば米国特許第5,879,940号(これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているもの;またはNotchリガンドを発現して、細胞外に提示もしくは分泌する任意の他の類似の細胞が挙げられるが、それらに限定されない。OP9-DLL1細胞は、Notchリガンド、デルタ様1(DLL1)を異所的に発現する骨髄由来ストロマ細胞株である。OP9-Notchリガンド発現細胞を用いて多能性幹細胞をNK細胞に分化させる方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第7575925号、第8772028号、第8871510号、および第9206394号、ならびに米国特許公開第20090217403号、第20110123502号、第20110052554号、第20110027881号、第20110236363号、第20120149100号、第20130281304号、第20140322808号、第20140248248号、および第20140037599号;Beck et al. The Notch ligands Jagged2, Delta1, and Delta4 induce differentiation and expansion of functional human NK cells from CD34+ cord blood hematopoietic progenitor cells, Biol Blood Marrow Transplant. 2009 Sep; 15(9): 1026-1037を参照のこと。これらの参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0348】
多能性幹細胞からNK細胞を分化させる方法であって、細胞を支持細胞またはストロマ細胞と共培養する工程を含まない、方法が、本明細書に記載される。いくつかの態様では、本明細書において使用されるNotchリガンドは、ストロマ細胞に由来しない。いくつかの態様では、造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることは、Notchリガンドを発現するストロマ細胞との共培養を含まない。いくつかの態様では、造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることは、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞との共培養を含まない。
【0349】
NK細胞分化培地
いくつかの態様では、分化法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む。いくつかの態様では、分化法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、単一の種類のNK細胞分化培地中で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む。いくつかの態様では、分化法は、結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団を、例えば、時間と共に培地の構成成分を変化させることによって、複数の種類のNK細胞分化培地中で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む(例えば、表1を参照のこと)。
【0350】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、無血清増大培地II(Serum-Free Expansion Medium II)(SFEM II)を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地(例えば、SFEM II)は、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM);ウシ血清アルブミン;組換えヒトインスリン;ヒトトランスフェリン(鉄飽和);および/または2-メルカプトエタノールを含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、アルファ最小必須培地(MEM)を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地(例えば、アルファMEM)は、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、リポ酸、ビタミンB12、ビオチン、アスコルビン酸、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、フェノールレッド、および/またはL-グルタミンを含む。いくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、少なくとも3週間、少なくとも3.5週間、少なくとも4週間、少なくとも4.5週間、少なくとも5週間、少なくとも5.5週間、少なくとも6週間、またはそれ以上である。いくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、多くても6週間である。いくつかの態様では、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間は、多くても4週間である。
【0351】
いくつかの態様では、支持細胞またはストロマ細胞によって発現され得るポリペプチド(例えば、成長因子または分化因子)を、細胞培養培地中に提供することができる。細胞培養培地に含めることができる、NK細胞の分化を支援するポリペプチドの非限定的な例としては、IL-7、SCF、Flt3、TPO、IL-15、およびIL-3が挙げられる。インターロイキン-7(IL-7またはIL7)は、骨髄および胸腺においてストロマ細胞によって分泌される造血成長因子であり、NK細胞、B細胞、およびT細胞の発生に関与する。幹細胞因子(SCF、KIT-リガンド、KL、またはスチール因子(steel factor)としても知られている)は、c-KIT受容体(CD117)に結合し、NK細胞およびT細胞の分化に関与するサイトカインである。FLT3(Flit3またはFms様チロシンキナーゼ3とも称される)は、造血を調節するクラスIII受容体チロシンキナーゼである。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、主に巨核球産生を担うが、造血幹細胞(HSC)の維持にも役割を果たすサイトカインである、トロンボポエチン(TPOまたはTHPO)をさらに含むことができる。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、TPOを含まない。例えば、Wang et al., Distinct roles of IL-7 and stem cell factor in the OP9-DLL1 T cell differentiation culture system. Exp Hematol. 2006 Dec;34(12):1730-40を参照のこと。インターロイキン-15(IL-15またはIL15)は、NK細胞およびT細胞の活性化および増殖を誘導する。IL-15は、IL-2/IL-15受容体β鎖(CD122)および共通γ鎖(CD132)から構成される複合体に結合し、それを通してシグナルを送る。インターロイキン-3(IL-3またはIL3)はまた、コロニー刺激因子、マルチ-CSF、肥満細胞増殖因子、MULTI-CSF、MCGF;MGC79398、またはMGC79399とも称される。IL-3サイトカインの主要な機能は、様々な血液細胞型の濃度を調節することである。IL-3は、初期多能性幹細胞およびコミットした前駆体の両方において増殖および分化を誘導する。
【0352】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、無血清である。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、SCF、FLT3、および/またはIL7のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、SCF、FLT3、およびIL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、50ng/ml SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、30ng/ml SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、30ng/ml SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、SCF、FLT3、およびIL7の濃度は、表7または表8から選択される。
【0353】
(表7)NK細胞分化培地における例示的なSCF、FLT3、およびIL7の濃度;各横列は、例示的な組み合わせを示す。
【0354】
(表8)NK細胞分化培地における例示的なSCF、FLT3、およびIL7の濃度範囲;各横列は、例示的な組み合わせを示し;各範囲は、示された最小値および最大値を含む。
【0355】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、FLT3およびIL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、50ng/ml FLT3および10ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、100ng/ml FLT3および5ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、15ng/ml FLT3および20ng/ml IL7を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、20ng/ml FLT3および25ng/ml IL7を含む。
【0356】
造血内皮細胞からCD56+ NK細胞の集団への分化を促進するようなSCF、FLT3、および/またはIL7の濃度が、使用されるべきである。SCFの濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲であることができる。いくつかの態様では、SCFの濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、30ng/mlである。いくつかの態様では、SCFの濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、50ng/mLである。いくつかの態様では、SCFの濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、100ng/mlである。いくつかの態様では、SCFの濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、30ng/ml~100ng/mlの範囲である。
【0357】
FLT3の濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲であることができる。いくつかの態様では、FLT3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、15ng/mlである。いくつかの態様では、FLT3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、20ng/mlである。いくつかの態様では、FLT3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、50ng/mlである。いくつかの態様では、FLT3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、100ng/mlである。いくつかの態様では、FLT3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、15ng/ml~100ng/mlの範囲である。
【0358】
IL7の濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲であることができる。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、5ng/mlである。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、10ng/mlである。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、20ng/mlである。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、5ng/ml~20ng/mlの範囲である。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、25ng/mlである。いくつかの態様では、IL7の濃度(例えば、NK細胞分化培地中)は、5ng/ml~25ng/mlの範囲である。
【0359】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、例えば、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間、トロンボポエチン(TPO)をさらに含む。非限定的な例として、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日の間、トロンボポエチン(TPO)をさらに含む。
【0360】
いくつかの態様では、造血内皮細胞からCD56+ NK細胞の集団への分化を促進するようなTPOの濃度が、使用されるべきである。いくつかの態様では、TPOの濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲であることができる。いくつかの態様では、TPOの濃度(例えば、NK細胞分化培地中、少なくとも最初の2週間)は、5ng/mLである。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、TPOを含まないか、または実質的にTPOフリーである。
【0361】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地(例えば、IL-7および/またはFLT3を含む)は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間、SCFをさらに含む。非限定的な例として、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日の間、SCFをさらに含む。
【0362】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、IL-15をさらに含み、例えば、それが、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間後に始まる。非限定的な例として、NK細胞分化培地は、IL-15をさらに含み、それが、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日後に始まる。いくつかの態様では、NK細胞分化培地(例えば、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間後に始まる)は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日の間、IL-15を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の2週目~4週目にわたって、IL-15を含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の2週目~5週目にわたって、IL-15を含む。
【0363】
いくつかの態様では、造血内皮細胞からCD56+ NK細胞の集団への分化を促進するようなIL-15の濃度が、使用されるべきである。いくつかの態様では、IL-15の濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲である。いくつかの態様では、IL-15の濃度(例えば、NK細胞分化培地中、少なくとも最初の2週間後に始まる)は、10ng/mLである。
【0364】
いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、例えば、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1週間、IL-3をさらに含む。非限定的な例として、NK細胞分化培地は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日の間、IL-3をさらに含む。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、NK細胞分化培地中での分化の1週目~2週目、または1週目~3週目、または1週目~4週目にわたって、IL-3を含む。いくつかの態様では、造血内皮細胞からCD56+ NK細胞の集団への分化を促進するようなIL-3の濃度が、使用されるべきである。いくつかの態様では、IL-3の濃度は、1ng/mL~200ng/mLの範囲である。いくつかの態様では、IL-3の濃度(例えば、NK細胞分化培地中、少なくとも最初の1)は、5ng/mLである。
【0365】
いくつかの態様では、SCF、FLT3、IL7、TPO、IL-15、および/またはIL-3は、NK細胞分化培地中に、少なくとも1ng/mL、少なくとも2ng/mL、少なくとも3ng/mL、少なくとも4ng/mL、少なくとも5ng/mL、少なくとも6ng/mL、少なくとも7ng/mL、少なくとも8ng/mL、少なくとも9ng/mL、少なくとも10ng/mL、少なくとも11ng/mL、少なくとも12ng/mL、少なくとも13ng/mL、少なくとも14ng/mL、少なくとも15ng/mL、少なくとも16ng/mL、少なくとも17ng/mL、少なくとも18ng/mL、少なくとも19ng/mL、少なくとも20ng/mL、少なくとも25ng/mL、少なくとも30ng/mL、少なくとも35ng/mL、少なくとも40ng/mL、少なくとも45ng/mL、少なくとも50ng/mL、少なくとも55ng/mL、少なくとも60ng/mL、少なくとも65ng/mL、少なくとも70ng/mL、少なくとも75ng/mL、少なくとも80ng/mL、少なくとも85ng/mL、少なくとも90ng/mL、少なくとも95ng/mL、少なくとも100ng/mL、少なくとも105ng/mL、少なくとも110ng/mL、少なくとも115ng/mL、少なくとも120ng/mL、少なくとも125ng/mL、少なくとも130ng/mL、少なくとも135ng/mL、少なくとも140ng/mL、少なくとも145ng/mL、少なくとも150ng/mL、少なくとも155ng/mL、少なくとも160ng/mL、少なくとも165ng/mL、少なくとも170ng/mL、少なくとも175ng/mL、少なくとも180ng/mL、少なくとも185ng/mL、少なくとも190ng/mL、少なくとも195ng/mL、または少なくとも200ng/mLの濃度で提供される。SCF、FLT3、IL7、TPO、IL-15、および/またはIL-3の濃度は、同じまた異なることができる。
【0366】
いくつかの態様では、CD56+ NK細胞は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも5.0週間後に検出することができる。いくつかの態様では、CD56+ NK細胞は、NK細胞分化培地中での分化の少なくとも1.5週間、2週間、2.5週間、3.0週間、3.5週間、4.0週間、4.5週間、または5.0週間後に検出することができる。
【0367】
いくつかの態様では、方法は、少なくとも1週間後に(例えば、NK細胞分化培地中)、CD56+ NK細胞濃縮の工程をさらに含む。いくつかの態様では、CD56+ NK細胞濃縮の工程は、NK細胞分化培地中で培養する工程の少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも1.5週間、少なくとも2週間、少なくとも2.5週間、少なくとも3週間、少なくとも3.5週間、少なくとも4週間、少なくとも4.5週間、または少なくとも5週間目に行うことができる。
【0368】
CD56+ NK細胞を濃縮する方法は、当技術分野において公知である。非限定的な例として、CD56+ NK細胞は、抗CD56抗体での磁気活性化細胞分取(MACS)および蛍光活性化細胞分取(FACS)を用いて、濃縮することができる。NK(例えば、ヒト)細胞を検出または濃縮するために用いることができるNKマーカーの追加の非限定的な例としては、CD3-;CD94+、FcγRIII/CD16+;CD57;NK1.1+;NK1.2+;CD122/IL-2β+;CD217/IL-7Rα-;KIRファミリー受容体+;NKG2A+;NKG2D+;NKp30+;NKp44+;NKp46+;またはNKp80+が挙げられる。
【0369】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるNK細胞分化プロトコール全体が、ストロマフリー環境で行われ、例えば、細胞は、非ストロマ由来Notchリガンド(例えば、組織培養プレート上に固定化されたNotchリガンド)に曝露させて培養される。いくつかの態様では、NK細胞分化プロトコールの少なくとも一部(例えば、NK細胞分化培地中で培養する工程を含む)が、ストロマフリー環境で行われ、例えば、細胞は、非ストロマ由来Notchリガンド(例えば、組織培養プレート上に固定化されたNotchリガンド)に曝露させて培養される。
【0370】
誘導させたNK細胞集団
本明細書に記載されるように、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を用いて誘導させたNK細胞の集団は、一態様では、エピジェネティック制御因子(例えば、HMT;例えば、EZH1、G9a/GLP)の阻害との組み合わせで、ストロマ共培養法と比較して、以下の予想外の有益性のうちの少なくとも1つを示す:(1)ヒトにおける移植の可能性の増加;(2)結果として生じるNK細胞の数および/もしくは割合の増加;(3)総CD3+ T細胞の数もしくは割合の減少;(4)NK細胞受容体の発現の増加;または(5)リンパ球系分化/機能を担う遺伝子の発現の増加(例えば、実施例1、
図2、
図3A~3B、実施例3、
図4、
図5A~5C、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0371】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子(例えば、HMT;例えば、EZH1、G9a/GLP)の阻害を用いて誘導させたNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)の集団は、ストロマ法を用いて誘導させたNK細胞の集団よりも少なくとも10%高い移植または生着率を示す。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させたNK細胞の集団は、ストロマ法を用いてまたはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させたNK細胞の集団よりも少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、もしくは少なくとも500%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上高い移植または生着率を示す。
【0372】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させたNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)の集団は、ストロマ法を用いてまたはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させたNK細胞の集団よりも少なくとも10%多いNK細胞を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させたNK細胞の集団は、ストロマ法を用いてまたはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させたNK細胞の集団よりも少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、もしくは少なくとも500%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上多いNK細胞を含む。
【0373】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、ストロマ法を用いてまたはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させた細胞の集団よりも少なくとも10%少ないT細胞(例えば、CD3+ T細胞)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、ストロマ法を用いてまたはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させた細胞の集団よりも少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、もしくは少なくとも500%、もしくはそれ以上、または少なくとも10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、500×、1,000×、もしくはそれ以上少ないT細胞(例えば、CD3+ T細胞)を含む。
【0374】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、少なくとも40%のNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上のNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)を含む。
【0375】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、多くても0.2%のT細胞(例えば、CD3+ T細胞)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、多くても0.1%、多くても0.2%、多くても0.3%、多くても0.4%、多くても0.5%、多くても0.6%、多くても0.7%、多くても0.8%、多くても0.9%、多くても1%、多くても2%、多くても3%、多くても4%、多くても5%、多くても6%、多くても7%、多くても8%、多くても9%、多くても10%、多くても15%、多くても20%、多くても25%、多くても30%、多くても35%、多くても40%、多くても45%、多くても50%、多くても55%、または多くても60%のT細胞(例えば、CD3+ T細胞)を含む。
【0376】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、少なくとも30%の、NK細胞受容体(例えば、NCR1、CD16、NKG2A;例えば、
図4を参照のこと)を発現するNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、またはそれ以上の、NK細胞受容体を発現するNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)を含む。
【0377】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、ストロマフリー法またはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させたNK細胞上のNK細胞受容体発現と比較して、NK細胞受容体(例えば、NCR1、CD16、NKG2A;例えば、
図4を参照のこと)を発現するNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)の少なくとも135%の増加を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなストロマフリー法および/またはエピジェネティック制御因子の阻害を用いて誘導させた細胞の集団は、ストロマフリー法またはエピジェネティック制御因子の阻害を伴わずに誘導させたNK細胞上のNK細胞受容体発現と比較して、NK細胞受容体(例えば、NCR1、CD16、NKG2A;例えば、
図4を参照のこと)を発現するNK細胞(例えば、CD56+ NK細胞)の少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも220%、少なくとも230%、少なくとも240%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、100%~200%、200%~300%、またはそれ以上の増加を含む。
【0378】
NK細胞の遺伝子改変
いくつかの態様では、本明細書に記載されるような結果として生じたCD34+造血内皮細胞の集団または別の集団(例えば、ESC;iPSC;HSC;CD56+ NK細胞)は、遺伝子改変される。いくつかの態様では、天然のNK細胞受容体遺伝子座を、標的化された特異性を高めるために除去および/または置換することができる。NK細胞受容体の非限定的な例としては、NKp46、CD16、hNKp30、hNKp44、hNKp80、mNKR-P1C、NKG2D、mNKG2D-S、hKIR-S、mAct Ly49、CD94/NKG2C、CRACC、Ly9、CD84、NTBA、2B4、hKIR-L、hLILRB1、CD94/NKG2A、mNKR-P1B、mNKR-P1D、KLRG-1、TIGIT、CEACAM-1、またはLAIR-1が挙げられる;例えば、Vivier et al. Science 331(6013):44-9(2011)を参照されたく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れる。いくつかの態様では、天然の抑制性NK細胞受容体遺伝子座を、NK細胞活性を高めるために除去または阻害(例えば、核酸阻害物質を用いてノックダウン)することができる。抑制性NK細胞受容体の非限定的な例としては、hKIR-L、hLILRB1、CD94/NKG2A、mNKR-P1B、mNKR-P1D、KLRG-1、TIGIT、CEACAM-1、またはLAIR-1が挙げられる。
【0379】
いくつかの態様では、細胞は、結果として生じたNK細胞の集団において免疫原性を低減させるように操作される。本明細書に使用される場合、用語「免疫原性」は、免疫応答を誘発する細胞の能力のことを指す。いくつかの態様では、結果として生じたNK細胞は、低免疫原性である。本明細書に使用される場合、「万能」とも称される用語「低免疫原性」は、細胞が移植後にホストの免疫系を逃れることができるように、操作されていない細胞または正常細胞と比較して免疫原性が低減した細胞を説明する。いくつかの態様では、免疫原性を低減させるために、内因性HLA(例えば、クラスIおよび/またはクラスII主要組織適合性複合体)を編集または除去することができる。HLAクラスIaおよびクラスIIのミスマッチは、それぞれ、細胞傷害性CD8+ T細胞およびCD4+ Tヘルパー細胞の応答を結果としてもたらし;したがって、クラスIおよび/またはクラスII MHCを編集または除去することにより、移植細胞に対するT細胞応答を低減させることができる。いくつかの態様では、免疫原性を低減させるための遺伝子改変は、HLA-G、HLA-E、CD47、および/またはPD-L1を非限定的に含む、寛容を促進する免疫調節分子の導入および発現を含むことができる。いくつかの態様では、遺伝子改変は、NK細胞媒介溶解を防ぐための非古典的HLA-GおよびHLA-Eの導入および発現を含むことができ(例えば、Riolobos L et al. 2013を参照のこと)、これは、免疫療法、例えば、がん免疫療法のための万能NK細胞の供給源を提供することができる。CD47およびPD-L1は、寛容の維持を助けることができる抑制性免疫経路である、免疫チェックポイントである。いくつかの態様では、免疫原性を低減させるための遺伝子改変は、CCL21、PD-L1、FasL、SERPINB9、H2-M3、CD47、CD200、およびMFGE8からなる群より選択される少なくとも1つの免疫調節分子の導入および発現を含むことができる。低免疫原性細胞を生成させることに関するさらなる詳細については、例えば、Malik et al., Engineering strategies for generating hypoimmunogenic cells with high clinical and commercial value, Regenerative Medicine vol. 14, no. 11 (2019)を参照のこと。
【0380】
いくつかの態様では、遺伝子改変は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現させることを含む。キメラ抗原受容体(CAR;キメラ免疫受容体、キメラNK細胞受容体、または人工NK細胞受容体としても知られている)は、NK細胞に特定のタンパク質を標的とする新たな能力を与えるように操作された受容体タンパク質である。受容体は、抗原結合機能およびNK細胞活性化機能の両方を単一の受容体に組み合わせるため、キメラである。キメラ抗原受容体細胞(例えば、CAR NK細胞)を操作する方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許US7446190、US8399645、US8822647、US9212229、US9273283、US9447194、US9587020、US9932405、US10125193、US10221245、US10273300、US10287354、US10640570;米国特許公開US20160152723、US20190336533;PCT公報WO2009091826、WO2012079000、WO2014165707、WO2015164740、WO2016168595A1、WO2017040945、WO2017100428、WO2017117112、WO2017149515、WO2018067992、WO2018102787、WO2018102786、WO2018165228、WO2019084288を参照されたく;その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0381】
いくつかの態様では、CARを発現するように細胞を遺伝子改変する方法は、CARをコードするベクターの細胞へのトランスフェクションもしくはエレクトロポレーション;CARをコードするウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス)による形質導入;ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ-TALEN、もしくはCRISPR-Casを用いた遺伝子編集;またはCARを発現するように細胞を遺伝子改変する当技術分野において公知の任意の他の方法を含むことができるが、それらに限定されない。
【0382】
好ましくは、分化の初期段階の細胞(例えば、ESC;PSC;iPSC;造血内皮細胞;HSC)の集団は、CARで遺伝子改変される。いくつかの態様では、CARの抗原結合領域は、がん、自己免疫疾患、または心疾患(例えば、心線維症)などであるがそれらに限定されない、疾患または障害に関与する抗原に対して指向される。
【0383】
がん
がんの処置の方法が、本明細書に記載される。一局面では、がんを処置する方法は、本明細書に記載されるようなストロマフリー分化法および/またはエピジェネティック制御因子(例えば、HMT;例えば、EZH1、G9a/GLP)の阻害を用いて誘導させた細胞もしくはその集団、または前記細胞もしくは集団を含む組成物、または前記細胞もしくは集団を含む薬学的組成物、の有効量を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD56+ NK細胞である。
【0384】
本明細書に使用される場合、用語「がん」は、一般に、異常な細胞が制御されることなく分裂し、組織の近傍に浸潤することができる、疾患または病態のクラスに関する。がん細胞はまた、血液およびリンパ系を通じて身体の他の部位に伝播することもできる。がんにはいくつかの主要なタイプがある。がん腫は、皮膚からまたは内部器官に沿うもしくは覆う組織から発生するがんである。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織から発生するがんである。白血病は、骨髄などの造血組織から発生し、大量の異常な血液細胞を産生させて血液に浸入するがんである。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞から発生するがんである。中枢神経系がんは、脳および脊髄の組織から発生するがんである。
【0385】
いくつかの態様では、がんは、原発がんである。いくつかの態様では、がんは、悪性がんである。本明細書に使用される場合、用語「悪性」は、腫瘍細胞の一群が未制御の成長(すなわち、正常範囲を超える分裂)、浸潤(すなわち、隣接組織への侵入および破壊)、および転移(すなわち、リンパまたは血液を介した身体の他の場所への伝播)の1つまたは複数を呈するがんのことを指す。本明細書に使用される場合、用語「転移する」は、がんが身体の他の部位から別の部位に伝播することを指す。伝播した細胞によって形成された腫瘍は、「転移性腫瘍」または「転移」と呼ばれる。転移性腫瘍は、元の(原発性)腫瘍中のものと似た細胞を含有する。本明細書に使用される場合、用語「良性」または「非悪性」は、より大きく成長し得るが身体の他の部位へ伝播しない腫瘍のことを指す。良性腫瘍は、自己限定的であり、典型的には浸潤も転移もしない。
【0386】
「がん細胞」または「腫瘍細胞」は、がん性の成長物または組織の個々の細胞のことを指す。腫瘍は、一般に、異常な細胞成長によって形成された腫れ物または病変のことを指し、これには良性、前悪性または悪性があり得る。ほとんどのがん細胞が腫瘍を形成するが、一部、例えば、白血病は、必ずしも腫瘍を形成するとは限らない。腫瘍を形成するがん細胞について、がん(細胞)および腫瘍(細胞)という用語は、互換的に使用される。
【0387】
本明細書に使用される場合、用語「新生物」は、任意の新しく異常な組織の成長、例えば、異常な組織の塊であって、その成長が、正常組織の成長よりも過剰であり、協調しないもののことを指す。したがって、新生物は、良性新生物、前悪性新生物または悪性新生物であることができる。
【0388】
がんまたは腫瘍を有する対象は、対象の体内に存在する客観的に測定可能ながん細胞を有する対象である。この定義には、悪性の活発に増殖しているがんも、潜在的に休眠中の腫瘍または微小転移も含まれる。元の場所から移動して他の重要な器官に播種するがんは、最終的には罹患器官の機能低下を通じて対象の死を招き得る。
【0389】
がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、基底細胞がん腫、胆道がん;膀胱がん;骨がん;脳およびCNSのがん;乳がん;腹膜のがん;子宮頸部がん;絨毛がん;結腸直腸がん;結合組織がん;消化器系のがん;子宮内膜がん;食道がん;眼がん;頭頸部のがん;胃腸がん(消化管がんを含む);膠芽腫(GBM);肝細胞がん腫;肝細胞がん;上皮内新生物.;腎臓または腎がん;喉頭がん;白血病;肝臓がん;肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がん);ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽腫;口腔がん(例えば、唇、舌、口および咽頭);卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;網膜芽腫;横紋筋肉腫;直腸がん;呼吸器系のがん;唾液腺がん腫;肉腫;皮膚がん;扁平上皮がん;胃がん;精巣がん;甲状腺がん;子宮または子宮内膜がん;泌尿器系のがん;外陰部がん;ならびに他のがん腫および肉腫;ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤性病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、およびメイグス症候群が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、例えばCAR NK療法の場合、がんは、白血病またはリンパ腫などの血液がんである。
【0390】
キメラ抗原受容体(CAR)NK細胞を用いた免疫療法は、がんを有する患者の治癒率を向上させかつ罹患率を減少させる有望な方法を提供する。この関連で、CD19特異的CAR NK細胞療法は、CD19陽性白血病またはリンパ腫を有する患者の高い割合に対して劇的な客観的奏効を達成した。したがって、いくつかの態様では、CARの抗原結合領域は、CD19に対して指向される;例えば、米国特許US10221245、US10357514;米国特許公開US20160152723;PCT公報WO2016033570;Liu et al., N Engl J Med. 2020 Feb 6, 382(6): 545-553を参照のこと;それらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0391】
腫瘍抗原は、免疫応答を惹起する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合ドメインの選択は、処置しようとするがんの特定の種類に依存する。腫瘍抗原は、当技術分野において周知であり、例えば、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、EGFRvIII、IL-11Ra、IL-13Ra、EGFR、B7H3、Kit、CA-IX、CS-1、MUC1、BCMA、bcr-abl、HER2、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトタンパク質(AFP)、ALK、CD19、CD123、サイクリンB1、レクチン反応性AFP、Fos関連抗原1、ADRB3、サイログロブリン、EphA2、RAGE-1、RU1、RU2、SSX2、AKAP-4、LCK、OY-TES1、PAX5、SART3、CLL-1、フコシルGM1、GloboH、MN-CA IX、EPCAM、EVT6-AML、TGS5、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、プリシアル酸(plysialic acid)、PLAC1、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ、ルイスY、sLe、LY6K、mut hsp70-2、M-CSF、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、プロスターゼ(prostase)、前立腺特異的抗原(PSA)、PAX3、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、LMP2、NCAM、p53、p53変異体、Ras変異体、gp100、プロステイン、OR51E2、PANX3、PSMA、PSCA、Her2/neu、hTERT、HMWMAA、HAVCR1、VEGFR2、PDGFR-ベータ、レグマイン、HPV E6、E7、サバイビンおよびテロメラーゼ、精子タンパク質17、SSEA-4、チロシナーゼ、TARP、WT1、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ML-IAP、MAGE、MAGE-A1、MAD-CT-1、MAD-CT-2、メランA/MART1、XAGE1、ELF2M、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、好中球エラスターゼ、肉腫転座切断点、NY-BR-1、エフリンB2、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD97、CD171、CD179a、アンドロゲン受容体、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、GD2、o-アセチル-GD2、GD3、GM3、GPRC5D、GPR20、CXORF61、葉酸受容体(FRa)、葉酸受容体ベータ、ROR1、Flt3、TAG72、TN Ag、Tie 2、TEM1、TEM7R、CLDN6、TSHR、UPK2、ならびにメソテリンが挙げられる。好ましい態様では、腫瘍抗原は、葉酸受容体(FRa)、メソテリン、EGFRvIII、IL-13Ra、CD123、CD19、CD33、BCMA、GD2、CLL-1、CA-IX、MUC1、HER2、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される;例えば、米国特許出願公開第20170209492号および第20180022795号を参照されたく、その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0392】
細胞補充治療
一態様では、本明細書に記載される方法によって産生される操作された細胞の集団が、本明細書に提供され、前記細胞集団は、本明細書に記載されるようなストロマフリー分化法を用いて産生される。いくつかの態様では、細胞集団は、免疫細胞を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の集団は、造血内皮細胞;HSC;またはCD56+ NK細胞を非限定的に含む、本明細書に記載される方法を用いて分化させた細胞を含む。
【0393】
一態様では、細胞の集団は、薬学的に許容される担体をさらに含む。これらの操作された細胞は、使用のために、増大させて細胞の数を増加させることができる。
【0394】
本明細書に記載される操作された細胞は、生物学研究のために実験室において有用である。例えば、これらの細胞は、遺伝子疾患または欠陥を有する個体に由来することができ、疾患または欠陥の生物学的側面を研究するために、ならびにその疾患または欠陥に対する潜在的な救済策についてスクリーニングおよび試験するために、実験室において使用することができる。
【0395】
あるいは、本明細書に記載される操作された細胞は、必要性を有する対象における細胞補充治療および他の医学的処置において有用である。例えば、化学療法もしくは放射線照射もしくはその両方を受けたことがある患者、免疫機能および/もしくはリンパ球再構成において欠損を現す患者、またはがん免疫療法中の患者。
【0396】
様々な局面および態様では、本明細書に記載される操作された細胞は、細胞補充治療を必要とする対象に投与される(すなわち、植え込まれるかまたは移植される)。
【0397】
一局面では、対象における、細胞補充治療の方法、またはがん、自己免疫障害、血液疾患、もしくは他の遺伝子疾患および障害の処置のための方法であって、(a)ドナー対象から体細胞を提供する工程、(b)本明細書に記載されるように、体細胞に由来する多能性幹細胞から造血内皮細胞を生成させる工程;(c)任意で、本明細書に記載されるように、結果として生じた造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;(d)本明細書に記載されるように、結果として生じた造血内皮細胞の集団を、notchリガンドの存在下で、リンパ球系列(例えば、NK細胞)への分化を促進するために分化させる工程、および(e)結果として生じた分化したリンパ系細胞(例えば、NK細胞)を、レシピエント対象に植え込むかまたは投与する工程を含む、方法が、本明細書に提供される。
【0398】
別の局面では、対象における、細胞補充治療の方法、またはがん、自己免疫障害、血液疾患、もしくは他の遺伝子疾患および障害の処置のための方法であって、(a)多能性幹細胞から造血内皮細胞を生成させる工程;(b)任意で、本明細書に記載されるように、結果として生じた造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;(c)本明細書に記載されるように、結果として生じた造血内皮細胞の集団を、notchリガンドの存在下で、リンパ球系列(例えば、NK細胞)への分化を促進するために分化させる工程、および(d)結果として生じた分化したリンパ系細胞(例えば、NK細胞)を、レシピエント対象に植え込むかまたは投与する工程を含む、方法が、本明細書に提供される。
【0399】
別の局面では、対象における、細胞補充治療の方法、またはがん、自己免疫障害、血液疾患、もしくは他の遺伝子疾患および障害の処置のための方法であって、(a)任意で、造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;(b)本明細書に記載されるように、結果として生じた造血内皮細胞の集団を、notchリガンドの存在下で、リンパ球系列(例えば、NK細胞)への分化を促進するために分化させる工程、および(c)結果として生じた分化したリンパ系細胞(例えば、NK細胞)を、レシピエント対象に植え込むかまたは投与する工程を含む、方法が、本明細書に提供される。
【0400】
一態様では、ホスト対象およびレシピエント対象は、同じ個体である。あるいは、ホスト対象およびレシピエント対象は、同じ個体ではないが、少なくともHLA適合性である。いくつかの態様では、PSC(例えば、iPSC)、造血内皮細胞、HSPC、および/または分化したリンパ系細胞(例えば、NK細胞)は、低免疫原性である。他の態様では、PSC(例えば、iPSC)、造血内皮細胞、HSPC、および/または分化したリンパ系細胞(例えば、NK細胞)の低免疫原性は、遺伝子発現を改変すること(例えば、ある特定の遺伝子をノックインまたはノックアウトすること)によって達成される。
【0401】
血液疾患は、主に血液に影響を及ぼす障害である。非限定的なそのような疾患または障害としては、異常ヘモグロビン症(ヘモグロビン分子またはヘモグロビン合成速度の先天性異常)、例えば、鎌状赤血球症、サラセミア、およびメトヘモグロビン血症などの骨髄球系由来の障害;貧血(赤血球またはヘモグロビンの欠如)、悪性貧血;細胞数の減少を招く障害、例えば、骨髄異形成症候群、好中球減少症(好中球の数の減少)、および血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、血小板増加症、リンパ腫、骨髄腫および白血病などの血液悪性腫瘍が挙げられる。ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、および血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫(AILT)などのリンパ腫;多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、形質細胞腫などの骨髄腫;急性リンパ球白血病(ALL)、慢性リンパ球白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性特発性骨髄線維症(MF)、慢性骨髄性白血病(CML)、T細胞前リンパ球白血病(T-PLL)、B細胞前リンパ球白血病(B-PLL)、慢性好中球性白血病(CNL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、T細胞大型顆粒リンパ球白血病(T-LGL)、および侵攻性NK細胞白血病などの欠陥WBCを増加させる白血病。
【0402】
本明細書に記載されるような細胞もしくはその集団または組成物または薬学的組成物の有効量を、その必要がある患者に投与することを含む、自己免疫疾患を処置する方法が本明細書に提供される。「自己免疫疾患」は、対象自体の抗体がホスト組織と反応する、または免疫エフェクターT細胞が内因性自己ペプチドに対して自己反応性であり、組織の破壊を引き起こす、疾患のクラスのことを指す。したがって、免疫応答は、自己抗原と称される対象自体の抗原に対して開始される。「自己抗原」は、本明細書に使用される場合、正常なホスト組織の抗原のことを指す。正常なホスト組織は、新生物細胞を含まない。
【0403】
処置することができる自己免疫疾患の非限定的な例としては、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡または腫瘍随伴性天疱瘡)、クローン病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、重症筋無力症(MG)、および慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)が挙げられる。追加の非限定的な自己免疫疾患としては、自己免疫性血小板減少症、免疫性好中球減少症、抗血友病FVIII阻害因子(antihemophilic FVIII inhibitor)、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、ANCA関連疾患、多発性筋炎、水疱性類天疱瘡、多発性硬化症(MS)、ギラン・バレー症候群、慢性多発性神経炎、潰瘍性大腸炎、糖尿病、自己免疫性甲状線炎、グレーブス眼症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、橋本甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合性結合組織病、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫関連不妊症、糸球体腎炎(例えば、急速進行性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、インスリン抵抗性、および自己免疫性糖尿病(1型糖尿病;インスリン依存性糖尿病)が挙げられる。自己免疫疾患は、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病も包含すると認識されている。別の態様では、自己免疫疾患としては、肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、aγグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経節障害、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性蕁麻疹様ニューロパチー(autoimmune urticarial neuropathy)、自己免疫性軸索型ニューロパチー、Balo病、ベーチェット病、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、コックスサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型クリオグロブリン血症、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、拡張型心筋症、円板状エリテマトーデス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性血管中心性線維症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、橋本脳炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、特発性低補体血症性尿細管間質性腎炎(Idiopathic hypocomplementemic tubulointerstitial nephritis)、多発性骨髄腫、多巣性運動ニューロパチー、NMDA受容体抗体脳炎、IgG4関連疾患、IgG4関連硬化性疾患、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、キュットナー腫瘍、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA病(LAD)、ライム病、慢性縦隔線維症、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミクリッツ症候群、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性線維硬化症、ナルコレプシー、視神経炎、オーモンド病(後腹膜線維症)、回帰性リウマチ、PANDAS(レンサ球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、異常タンパク性多発ニューロパチー、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、大動脈周囲炎、動脈周囲炎、末梢性ニューロパチー、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I、II、& III型多腺性自己免疫症候群、リウマチ性多発筋痛症、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、レイノー現象、反射交感神経ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグス症候群、リウマチ熱、リーデル甲状腺炎、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、未分化結合組織病(UCTD)、水疱性皮膚病、尋常性白斑、ラスムッセン脳炎、ワルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。
【0404】
本明細書に使用される場合、用語「投与すること」、「導入すること」および「移植すること」は、所望の効果が生じるように、損傷または修復部位などの所望の部位での導入された細胞の少なくとも部分的な局在をもたらす方法または経路による、対象への記載された細胞、例えば造血前駆細胞の配置という状況において互換的に使用される。細胞、例えば造血前駆細胞、またはそれらの分化した子孫(例えば、NK細胞)は、植え込まれた細胞または細胞の成分の少なくとも一部が生存可能なまま留まる対象の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0405】
様々な態様では、本明細書に記載される操作された細胞は、任意で、対象への投与前にエクスビボで増大される。他の態様では、操作された細胞は、任意で、ある期間凍結保存され、次に対象への投与前に解凍される。
【0406】
細胞補充治療に使用される操作された細胞は、細胞のレシピエントに対して自己由来/自源性(「自己」)または非自己由来(「非自己」、例えば、同種、同系または異種)であることができる。「自己由来」は、本明細書に使用される場合、同じ対象由来の細胞のことを指す。「同種」は、本明細書に使用される場合、比較されている細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞のことを指す。「同系」は、本明細書に使用される場合、比較される細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞のことを指す。「異種」は、本明細書に使用される場合、比較される細胞と異なる種の細胞のことを指す。好ましい態様では、本発明の細胞は、同種である。
【0407】
様々な態様では、その必要がある対象に植え込もうとする本明細書に記載される操作された細胞は、対象に対して自己由来または同種である。
【0408】
様々な態様では、本明細書に記載される操作された細胞は、1つもしくは複数のドナー由来であることができるか、または自己由来供給源から得ることができる。いくつかの態様では、操作された細胞は、その必要がある対象に投与する前に培養して増大される。
【0409】
様々な態様では、植え込み前に、レシピエント対象は、化学療法および/または放射線照射で処置される。
【0410】
一態様では、化学療法および/または放射線照射は、内因性幹細胞を減少させて、植え込み後の細胞の生着を促すためのものである。
【0411】
様々な態様では、植え込み前に、操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させた多系列造血前駆細胞またはNK細胞は、レシピエント対象におけるその後の生着を促進するために、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処理される。
【0412】
様々な態様では、レシピエント対象は、ヒトである。
【0413】
様々な態様では、対象は、HIVもしくは他のウイルス疾患、血液疾患と過去に診断されているか、またはがんの処置を受けている。
【0414】
一態様では、対象は、iPSCおよび本明細書に記載される操作された細胞を産生するために使用される体細胞を供与するように選択される。一態様では、選択された対象は、遺伝子疾患または欠陥を有する。
【0415】
様々な態様では、ドナー対象は、ヒト、非ヒト動物、げっ歯動物または非げっ歯動物である。例えば、対象は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、他の霊長類、ブタ、マウスもしくはラットなどのげっ歯動物、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジもしくはヤギ、またはトリなどの非哺乳動物であることができる。
【0416】
様々な態様では、ドナーは、HIV、血液疾患またはがんと過去に診断されている。
【0417】
一態様では、生物学的試料、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞の集団は、ドナー対象から得られる。
【0418】
様々な態様では、生物学的試料、本明細書に記載される胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞の集団は、1つもしくは複数のドナーに由来することができるか、または自己供給源から得ることができる。
【0419】
一態様では、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞は、ドナー対象から単離され、トランスフェクトされ、培養され(任意で)、同じ対象に移植し戻され、すなわち自己由来細胞移植片である。ここで、ドナーおよびレシピエント対象は、同じ個体である。別の態様では、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞は、対象(レシピエント)とHLA型がマッチするドナーから単離される。ドナー-レシピエント抗原型のマッチングは、当技術分野において周知である。HLA型は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-Dを含む。これらは、移植のために必要な最小数の細胞表面抗原マッチングに相当する。すなわち、トランスフェクトされた細胞は、異なる対象に移植される、すなわち、レシピエントホスト対象に対して同種である。ドナーまたは対象の胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞に、本明細書に記載される核酸分子を含むベクターまたは核酸をトランスフェクトすることができ、トランスフェクトされた細胞は、開示されるように培養し、阻害し、分化させ、任意で増大させ、次にレシピエント対象に移植される。一態様では、移植後の操作された細胞は、レシピエント対象に生着する。一態様では、移植後の操作された細胞は、レシピエント対象における免疫系を再構成する。トランスフェクトされた細胞はまた、トランスフェクト後に凍結保存して貯蔵するか、または細胞増大後に凍結保存して貯蔵することができる。
【0420】
操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させた多系列造血前駆細胞またはNK細胞は、骨髄除去療法を受けたかまたは受けていない個体における骨髄または臍帯血移植片の部分として投与される場合がある。一態様では、本明細書において想定される遺伝子改変された細胞は、化学除去(chemoablative)または放射線除去(radioablative)骨髄療法を受けた個体に骨髄移植片中にて投与される。
【0421】
一態様では、ある用量の細胞が、対象に静脈内送達される。一態様では、細胞は、対象に静脈内投与される。
【0422】
特定の態様では、患者は、ある用量の本明細書に記載される改変された細胞、例えば、操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させた多系列造血前駆細胞またはNK細胞を、約1×105個の細胞/kg、約5×105個の細胞/kg、約1×106個の細胞/kg、約2×106個の細胞/kg、約3×106個の細胞/kg、約4×106個の細胞/kg、約5×106個の細胞/kg、約6×106個の細胞/kg、約7×106個の細胞/kg、約8×106個の細胞/kg、約9×106個の細胞/kg、約1×107個の細胞/kg、約5×107個の細胞/kg、約1×108個の細胞/kg、またはより大きい単回静脈内用量で受ける。
【0423】
ある特定の態様では、患者は、ある用量の本明細書に記載される改変された細胞、例えば、操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させた多系列造血前駆細胞またはNK細胞を、少なくとも1×105個の細胞/kg、少なくとも5×105個の細胞/kg、少なくとも1×106個の細胞/kg、少なくとも2×106個の細胞/kg、少なくとも3×106個の細胞/kg、少なくとも4×106個の細胞/kg、少なくとも5×106個の細胞/kg、少なくとも6×106個の細胞/kg、少なくとも7×106個の細胞/kg、少なくとも8×106個の細胞/kg、少なくとも9×106個の細胞/kg、少なくとも1×107個の細胞/kg、少なくとも5×107個の細胞/kg、少なくとも1×108個の細胞/kg、またはより大きい単回静脈内用量で受ける。
【0424】
追加的な態様では、患者は、ある用量の本明細書に記載される改変された細胞、例えば、操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させた多系列造血前駆細胞またはNK細胞を、約1×105個の細胞/kg~約1×108個の細胞/kg、約1×106個の細胞/kg~約1×108個の細胞/kg、約1×106個の細胞/kg~約9×106個の細胞/kg、約2×106個の細胞/kg~約8×106個の細胞/kg、約2×106個の細胞/kg~約8×106個の細胞/kg、約2×106個の細胞/kg~約5×106個の細胞/kg、約3×106個の細胞/kg~約5×106個の細胞/kg、約3×106個の細胞/kg~約4×108個の細胞/kg、または任意の介在する細胞/kgの用量で受ける。
【0425】
一般に、操作された細胞またはヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載される多系列造血前駆細胞または本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させたNK細胞は、薬学的に許容される担体との懸濁物として、例えば、治療用組成物として投与される。治療用組成物は、生理学的に耐容性の担体を、細胞組成物および任意で活性成分としてその中に溶解または分散された本明細書に記載されるような少なくとも1種の追加の生物活性剤と一緒に含有する。好ましい態様では、治療用組成物は、そう望まれない限り、治療目的で哺乳動物またはヒト患者に投与されたときに、実質的に免疫原性でない。当業者は、細胞組成物中に使用されるべき薬学的に許容される担体が、緩衝剤、化合物、凍結保存剤、保存剤、または他の作用物質を、対象に送達されるべき細胞の生存度を実質的に妨害する量で含まないことを認識するであろう。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の完全性を維持させる浸透圧緩衝剤、および任意で細胞生存度を維持するかまたは投与時の生着を高めるための栄養素を含むことができる。そのような製剤および懸濁物は、当業者に公知であり、かつ/または日常的な実験を使用して本明細書に記載されるような細胞との使用のために適応させることができる。
【0426】
本明細書に使用される用語「薬学的に許容される」、「生理学的に耐容性の」およびその文法的変形は、組成物、担体、希釈剤および試薬のことを指す場合、互換的に使用され、悪心、めまい、胃もたれなどの望まれない生理作用を生じずにこれらの物質を哺乳動物に投与できることを表す。薬学的に許容される担体は、そう望まれない限り、混和される作用物質に対する免疫応答の発生を促進しない。その中に溶解または分散された活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されており、製剤に基づき限定される必要はない。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして注射用に調製されるが、使用前に液体中に溶解または懸濁するために適した固体剤形も調製することができる。調製物を乳化させるかまたはリポソーム組成物として提示することもできる。薬学的に許容され、活性成分と適合性で、本明細書に記載される治療方法における使用に適した量の賦形剤と、活性成分を混合することができる。適切な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。加えて、所望であれば、組成物は、活性成分の有効性を高める湿潤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含有することができる。本発明の治療用組成物は、その中の成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩も同様に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することができる。生理学的に耐容性の担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に材料を含有しないか、または生理的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝剤、生理食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水のような両方を含有する無菌水溶液である。なおさらに、水性担体は、1つよりも多い緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質も含有することができる。液体組成物はまた、水に加えておよび水を除く液相を含有することができる。そのような追加的な液相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、および水-油エマルションである。特定の障害または病態の処置において有効である本明細書に記載される方法で使用される活性物質の量は、障害または病態の性質に依存すると考えられ、標準的な臨床技法によって判定することができる。適切な薬学的担体は、本技術分野の標準的な参考教科書であるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osolに記載されている。例えば、注射による投与に適した非経口組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液中に1.5重量%の活性成分を溶解することによって調製される。
【0427】
一態様では、「薬学的に許容される」担体は、インビトロ細胞培養培地を含まない。
【0428】
いくつかの態様では、記載される操作された細胞の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0429】
様々な態様では、少なくとも2回目またはその後の用量の細胞がレシピエント対象に投与される。例えば、2回目の投与は、以前の投与から約1日~30週間の間に与えることができる。例えば、熟練臨床医によって必要と判断されれば、後続の2回、3回、4回またはより多い合計投与を個体に送達することができる。
【0430】
細胞組成物は、対象において有効な細胞補充処置をもたらす任意の適切な経路により投与することができる、すなわち、投与は、組成物の少なくとも一部が送達される、対象における所望の位置への送達をもたらす、すなわち、少なくとも1×104個の細胞が、ある期間にわたり所望の部位に送達される。投与様式としては、注射、注入または点滴注入が挙げられ、「注射」としては、非限定的に、静脈内、動脈内、脳室内、心臓内注射および注入が挙げられる。細胞の送達のために、注射または注入による投与が、一般に好ましい。
【0431】
効力の試験は、本明細書に記載される方法を使用した処置の経過途中で行うことができる。処置の開始前に、および次に処置開始後のその後の特定の期間に、特定の病気に関連するいくつかの症状の重症度の測定値が記録される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるような免疫細胞またはその集団を含む薬学的組成物を、対象における細胞補充治療に使用することができる。
【0432】
したがって、また、本開示の目的は、インビボ細胞補充治療、がん免疫療法などの医薬療法において、ならびに疾患モデル化、薬物スクリーニングおよび血液疾患インビトロ研究のために使用するための、改変された(操作されたとも称される)細胞の組成物を提供することである。
【0433】
開示されるプロトコールの利点は、本方法が、すべて患者の身体から容易に収集することができる多様な種類の細胞供給源から、幹細胞、造血前駆細胞、ならびに成熟および分化体細胞から、所望の細胞または他の種類の造血細胞(例えば、多分化能HSCから分化させた細胞)の半永久的大量産生を可能にすることである。
【0434】
産生後の操作された細胞または操作されたヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させたCD34+/CD 38lo/-造血内皮細胞またはNK細胞を、免疫系再構成療法(例えば、骨髄アブレーション後)または免疫療法(例えば、がん療法または自己免疫疾患における)などの様々な医学的処置のために患者に移植することができる。追加的な一利点は、供給源細胞のドナーおよび操作された細胞のレシピエントが同一人物ならば、産生された操作細胞が、レシピエントと同一のHLAを有し、このことが移植後のホスト-移植片免疫拒絶を回避することである。供給源細胞のドナー人物とHLAが同種であるレシピエント患者にとって、ホスト-移植片免疫拒絶が大きく減少する。
【0435】
産生後の操作された細胞または操作されたヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害された、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させたCD34+/CD38lo /-造血内皮細胞またはNK細胞は、将来必要になるまで凍結保存することもできる。
【0436】
現在のところ、骨髄移植は、種々の血液障害のための最も定評のある細胞補充治療である。骨髄移植の機能単位は、複雑な細胞階層の頂点にあり、生涯にわたり血液発生を補充する造血幹細胞(HSC)である。HLAがマッチするHSCの不足は、移植、疾患モデル化および薬物スクリーニングを実施する能力を大きく制限する。このように、多くの研究が、代替的な供給源からHSCを生成させることを目的とした。人工多能性幹細胞(iPSC)へのリプログラミングにおける利点は、疾患モデル化、薬物スクリーニングおよび細胞療法のための有望な供給源である多彩な患者特異的多能性細胞へのアクセスを提供した。しかし、ヒト多能性幹細胞(hPSC)から、生着可能な造血幹細胞・前駆細胞が誘導不可能なことは、インビトロアッセイへの血液疾患の特徴付けを限定した。定方向分化によるHSCの生成は、分かりにくいままであり、この問題に対する新規なアプローチの必要がある。
【0437】
したがって、一局面では、細胞補充治療の方法であって、本明細書に記載されるような細胞(例えば、CD56+ NK細胞)もしくはその集団、または前記細胞もしくはその集団を含む組成物、または前記細胞もしくはその集団含む薬学的組成物を、その必要があるレシピエント対象に投与することを含む、方法が本明細書に記載される。
【0438】
いくつかの態様では、レシピエント対象は、化学療法および/または放射線照射を受けたことがある。いくつかの態様では、レシピエント対象は、免疫機能および/またはリンパ球再構成における欠損を有する。いくつかの態様では、移植前、細胞またはその集団は、レシピエント対象におけるその後の生着を促進するために、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処理される。
【0439】
キット
本明細書に記載される技術の別の局面は、とりわけ、本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用してNK細胞を分化させるためのキットに関する。本明細書に記載されるキットの1つまたは複数に含めることができるキット構成成分が、本明細書に記載される。
【0440】
いくつかの態様では、キットは、NK細胞分化因子(例えば、IL-7、SCF、FLT3、TPO、IL-15、および/もしくはIL-3)の有効量;またはiPSCリプログラミング因子(例えば、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、および/もしくはLIN28)の有効量;または造血内皮細胞分化因子(例えば、BMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPO)の有効量;またはエピジェネティック制御因子の阻害物質(例えば、MC1568;CAY10591;UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;E72;BIX-01338;BRD9539;ケトシン;もしくはDCG066;例えば、EZH1 RNA干渉物質)の有効量を含む。当業者に認識されているように、そのような細胞分化因子は、培養細胞と共に使用する前に希釈できる凍結乾燥形態または濃縮形態で供給することができる。好ましい製剤としては、細胞に対して非毒性である製剤および/または成長率もしくは生存性などに影響を及ぼさない製剤が挙げられる。NK細胞分化因子は、アリコートでまたは単位用量で供給することができる。
【0441】
いくつかの態様では、キットは、固定化されたNotchリガンドを含む細胞培養容器を含む。いくつかの態様では、キットは、細胞培養容器と、その中に提供される試薬および/または説明書を使用して細胞培養容器に固定化できるNotchリガンドとを含む。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載されるようにストロマ細胞を含まない。
【0442】
いくつかの態様では、キットは、CARをコードする核酸を含むベクターをさらに含む。
【0443】
いくつかの態様では、本明細書に記載される構成成分は、キットとして、単独でまたは任意の組み合わせで提供することができる。キットは、本明細書に記載される構成成分、例えば、ストロマ細胞を含まないNotchリガンドを含む組成物、分化因子を含む組成物、例えば本明細書を通して記載しているCARを含むベクターを含む組成物を含む。そのようなキットは、任意で、NK細胞成熟のマーカー(例えば、CD3-; CD56+; FcガンマRIII/CD16+; CD57+; NK1.1+; NK1.2+; CD94+, CD122/IL-2ベータ+; CD217/IL-7Rアルファ-; KIRファミリー受容体+; NKG2A+; NKG2D+; NKp30+; NKp44+; NKp46+;またはNKp80+など)またはそれらのセットの検出を可能にする1つまたは複数の作用物質を含むことができる。そのようなキットは、任意で、NK細胞活性化のマーカー(例えば、TRAIL、IFNg、TNFa、グランザイム、パーフォリンなど)またはそれらのセットの検出を可能にする1つまたは複数の作用物質を含むことができる。そのようなキットは、任意で、造血内皮細胞のマーカー(例えば、CD34、CD38、CD45、KDR、CD235、CD43など)の検出を可能にする1つまたは複数の作用物質を含むことができる。加えて、キットは、任意で、情報資料を含む。キットはまた、ラミニン、フィブロネクチン、ポリ-L-リシンまたはメチルセルロースなどの細胞ディッシュをコーティングするための基質を含有することもできる。
【0444】
いくつかの態様では、キット内の組成物は、いくつかの態様ではキットの他の構成成分を実質的に含まない、水密または気密容器中に提供することができる。例えば、細胞分化試薬は、1を超える容器内に供給することができ、例えば、試薬は、所定の分化アッセイ数、例えば、1回、2回、3回、またはそれ以上のために十分な試薬を有する容器内に供給することができる。本明細書に記載されるような1つまたは複数の構成成分は、任意の形態、例えば、液体、乾燥形態または凍結乾燥形態で提供することができる。本明細書に記載される構成成分は、実質的に純粋および/または無菌であることが好ましい。本明細書に記載される構成成分が液体溶液で提供される場合、液体溶液は、好ましくは、水溶液であり、無菌の水溶液が好ましい。
【0445】
情報資料は、本明細書に記載される方法に関する説明資料、指導資料、販売資料または他の資料であることができる。キットの情報資料は、その形態に関して限定はない。一態様では、情報資料は、固定化されたNotchリガンドを含む細胞培養容器の作製;または本明細書に記載されるようなストロマフリー法を使用して分化させたNK細胞の産生に関する情報;または細胞分化因子などの本明細書において使用される試薬の濃度、有効期間、バッチもしくは製造場所の情報などを含むことができる。一態様では、情報資料は、キットの構成成分の使用または投与の方法に関する。
【0446】
キットは、細胞分化のマーカーの検出のための構成成分を含むことができる。加えて、キットは、細胞マーカーに結合する1つまたは複数の抗体、またはRT-PCRもしくはPCR反応、例えば、半定量もしくは定量RT-PCRもしくはPCR反応のためのプライマーを含むことができる。そのような構成成分は、細胞成熟マーカーの活性化または未分化もしくは未熟細胞マーカーの喪失を評価するために使用することができる。検出試薬が抗体である場合、検出試薬は、乾燥調製物、例えば、凍結乾燥で、または溶液で供給することができる。抗体または他の検出試薬は、検出において使用するために、標識、例えば、放射性標識、蛍光標識(例えば、GFP)または比色標識に連結させることができる。検出試薬がプライマーである場合、検出試薬は、乾燥調製物、例えば、凍結乾燥で、または溶液で供給することができる。
【0447】
キットは、典型的には、1つのパッケージ(例えば、ファイバーベースの、例えばボール紙、またはポリマー系の、例えば発泡スチロール箱)に含まれるその様々な要素と共に提供されるであろう。封包物は、内部と外部の温度差を維持するように構成することができ、例えば、それは、予め選択された温度で予め選択された時間にわたって試薬を維持するための絶縁特性を提供することができる。
【0448】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語および語句の意味を以下に提供する。別途明記されない限り、または文脈から暗示されない限り、以下の用語および語句は、以下に提供される意味を含む。定義は、特定の態様の説明を補助するために提供されるものであり、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、特許請求する発明を限定することを意図していない。別途定義がなされない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。当技術分野における用語の用法と本明細書に提供されるその定義との間に明らかな相違がある場合、本明細書内に提供される定義が優先されるものとする。
【0449】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲においてその中で用いられる特定の用語をここにまとめる。
【0450】
本明細書に使用される場合、用語「細胞」は、単一の細胞のことも細胞(すなわち、1を超える)の集団のことも指す。集団は、多能性幹細胞の集団または分化したNK細胞の集団などの、1つの細胞型を含む純粋な集団であり得る。本明細書に使用される場合、用語「集団」は、1つの細胞型の純粋な集団またはその大部分(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%)を含む集団のことを指す。あるいは、集団は、1を超える細胞型、例えば、混合細胞集団を含み得る。集団中の細胞の数を限定することを意味していない;例えば、細胞の混合集団は、少なくとも1つの分化した細胞を含み得る。本発明では、混合細胞集団が含み得る細胞型の数に関して限定はない。
【0451】
本明細書に使用される場合、用語「免疫細胞」(用語「白血球(white blood cell)」または「白血球(leukocyte)」と互換的に使用することができる)は、免疫系の一部であり、感染症および他の疾患と闘う、単一の細胞、および(すなわち、1つよりも多い)細胞の集団のことを指す。免疫細胞は、骨髄中の幹細胞から分化する。免疫細胞の非限定的な例としては、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、および好酸球が挙げられる。
【0452】
本明細書に使用される場合、一態様では、用語「造血幹細胞」または「HSC」は、自己複製能を有し、3つの造血系列である赤血球系、リンパ球系、および骨髄球系の血液細胞型すべても生み出す、幹細胞のことを指す。これらの細胞型には、リンパ球系列(T細胞、B細胞、NK細胞)、および樹状細胞系列、顆粒球-単球系列(例えば、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球)を含む骨髄球系列、および巨核球-赤血球系列(例えば、赤血球、巨核球/血小板)が含まれる。ヒトHSCは、以下のマーカー:CD34+、CD59+、CD90/Thy1+、CD38low/-、c-kit/CD117-/low、および/またはLin-の組み合わせを発現することができる。マウスHSCは、CD34low/-、SCA-1+、CD90/Thy1+/low、CD38+、c-Kit/CD117+、およびLin-と見なされる。これらのマーカーパネルの発現を検出することにより、蛍光活性化細胞分取(FACS)のような技法を介した特定の細胞集団の分離が可能になる。一態様では、用語「造血幹細胞」または「HSC」は、自己複製能を有し、以下の細胞表面マーカー:CD34+、CD59+、Thy1/CD90+、CD38lo/-、CD133+、c-Kit/CD117-/lo、およびLin-を有する幹細胞のことを指す。一態様では、用語「造血幹細胞」または「HSC」は、少なくともCD34+である幹細胞のことを指す。一態様では、用語「造血幹細胞」または「HSC」は、自己複製能を有し、少なくともCD34+およびc-kit/CD117lo/-である幹細胞のことを指す。一態様では、用語「造血幹細胞」または「HSC」は、自己複製能を有し、少なくともCD38low/-、c-kit/CD117-/lowである幹細胞のことを指す。HSCという用語は、用語「造血幹細胞・前駆細胞」(HSPC)または「造血前駆細胞」(HPC)と互換的に使用することができる。
【0453】
本明細書に使用される場合、用語「iPS細胞」、「iPSC」、および「人工多能性幹細胞」は、互換的に使用され、無期限に自己複製し、3つの胚細胞層すべてに特徴的な細胞型に分化することができる人工多能性細胞のことを指す。いくつかの態様では、人工多能性幹細胞は、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択される少なくとも1つのリプログラミング因子、またはそれらの任意の組み合わせを成熟細胞に導入することによって産生される(例えば、表9を参照のこと)。そのようなリプログラミング因子は、リプログラミング因子をコードするDNAまたはRNAによるトランスフェクションを用いて、成熟細胞に導入することができる。いくつかの態様では、iPSCは、以下のリプログラミング因子:OCT4、SOX2、KLF4、ならびに任意で、c-MYC、またはnanogおよびLIN28の、分化細胞、例えば、体細胞への導入によって、人工的に誘導させることができる。用語「hPSC」は、ヒト多能性幹細胞のことを指す。
【0454】
本明細書に使用される場合、幹細胞および前駆細胞の分化および発生との関連で使用されるときの用語「系列」は、細胞が完全に分化した細胞になるためにとることができる細胞分化および発生経路のことを指す。例えば、HSCは、3つの造血系列である赤血球系、リンパ球系、および骨髄球系を有し;HSCは、すべてのこれらの3つの系列で知られている最終分化細胞型に分化および発生する可能性、すなわち能力を有する。用語「多系列」が使用されるとき、本用語は、細胞が将来的に、1つよりも多い系列で知られている最終分化細胞型に分化および発生できることを意味する。例えば、HSCは、多系列の可能性を有し、多系列造血幹細胞(MHSC)または多系列造血前駆細胞(MHPC)とも称され得る。用語「限られた系列」が使用されるとき、本用語は、細胞が1つの系列で知られている最終分化細胞型に分化および発生できることを意味する。例えば、骨髄球系共通前駆細胞(CMP)または巨核球-赤血球系前駆体(MEP)は、細胞が、リンパ球系列ではなく骨髄球系列の最終分化細胞型にのみ分化および発生できるため、限られた系列を有する。骨髄球系列の最終分化細胞には、赤血球、単球、マクロファージ、巨核球、骨髄芽球、樹状細胞、および顆粒球(好塩基球、好中球、好酸球、および肥満細胞)が含まれ;リンパ球系列の最終分化細胞には、Tリンパ球/T細胞、Bリンパ球/B細胞、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞が含まれる。
【0455】
本明細書に使用される場合、用語「前駆細胞」は、後で特定の細胞型(完全分化細胞または最終分化細胞)、例えば、血液細胞、皮膚細胞、骨細胞、または毛細胞に成熟(分化)する可能性を有する、未熟細胞または未分化細胞のことを指す。前駆細胞は、それが分化によって生み出すことができる細胞と比べて、より原始的な(例えば、完全分化細胞よりも発生経路または進行に沿って早い段階にある)細胞表現型を有する。多くの場合に、前駆細胞はまた、有意なまたは非常に高い増殖の可能性も有する。前駆細胞は、発生経路ならびに細胞が発生および分化する環境に応じて、複数の別個の分化細胞型、または単一の分化細胞型を生み出すことができる。前駆細胞はまた、増殖して、同様に未熟または未分化である、より多くの前駆細胞を作ることもできる。
【0456】
本明細書に使用される場合、用語「凝集培地」は、多能性幹細胞の集団、または胚様体などのその派生的細胞集団を、CD34+造血内皮細胞の集団に分化させるために使用される、一連の細胞培養培地のことを指す。いくつかの態様では、凝集培地は、少なくともBMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPOを含み、その各々は、指定された時点および濃度で凝集培地に添加することができる(例えば、実施例2を参照のこと;例えば、表2を参照のこと)。
【0457】
本明細書に使用される場合、用語「ナチュラルキラー細胞分化培地」または「NK細胞分化培地」は、CD34+造血内皮細胞の集団を、CD56+ NK細胞の集団に分化させるために使用される、一連の細胞培養培地のことを指す。いくつかの態様では、「NK細胞分化培地」は、CD34+造血内皮細胞の集団を、CD56+ NK細胞の集団に分化させるために使用される、単一の種類の細胞培養培地のことを指す。いくつかの態様では、NK細胞分化培地は、少なくともSCF、FLT3、およびIL7、ならびに任意で、TPO、IL-15、および/またはIL-3を含み、その各々は、指定された時点および濃度でNK細胞分化培地に添加することができる(例えば、実施例1を参照のこと;例えば、表1を参照のこと)。
【0458】
用語「分化細胞」は、その天然形態で、本明細書において定義される用語としての多能性ではない、任意の初代細胞を意味する。用語「分化細胞」はまた、多分化能細胞(例えば、成体体性幹細胞)などの部分的に分化した細胞も包含する。いくつかの態様では、用語「分化細胞」はまた、あまり特殊化されていない細胞型の細胞(例えば、未分化細胞またはリプログラミングされた細胞)由来の、より特殊化された細胞型の細胞であって、細胞分化プロセスを受けた細胞のことも指す。
【0459】
細胞個体発生との関連で、用語「分化する」または「分化している」は、「分化細胞」が、その前駆細胞よりも発生経路をさらに下に進行した細胞であることを意味する、相対的な用語である。したがって、いくつかの態様では、本明細書において定義される本用語としてのリプログラミングされた細胞は、系列拘束された前駆細胞(中胚葉幹細胞または内胚葉幹細胞など)に分化することができ、この前駆細胞は、今度は経路をさらに下に進んで他の種類の前駆細胞(組織特異的前駆細胞、例えば、心筋前駆細胞、または膵臓前駆細胞など)に、次いで、ある特定の組織型に特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持する場合または保持しない場合がある、末期分化細胞に分化することができる。
【0460】
「多分化能細胞」に関連して使用される場合の用語「多分化能」は、3つの胚葉すべてに由来する細胞のすべてではなく一部に分化することができる、細胞のことを指す。したがって、多分化能細胞は、部分的に分化した細胞である。多分化能細胞は、当技術分野において周知であり、多分化能細胞の例としては、例えば、造血幹細胞および神経幹細胞、毛包幹細胞、肝臓幹細胞などのような成体体性幹細胞が挙げられる。多分化能は、幹細胞が、他の系列の細胞ではなく、所与の系列における多くの細胞型を形成し得ることを意味する。例えば、多分化能血液幹細胞は、多くの異なる血液細胞型(赤血球、白血球、血小板など)を形成することができるが、ニューロンを形成することはできず;心血管前駆細胞(MICP)は、特定の成熟心臓、ペースメーカー、平滑筋、および内皮細胞型に分化し;膵臓由来多分化能前駆体(PMP)コロニーは、膵臓系列の細胞型(インスリン、グルカゴン、アミラーゼ、またはソマトスタチンを産生する細胞)および神経系列の細胞型(形態的にニューロン様、アストロサイト様、またはオリゴデンドロサイト様である細胞)を産生する。
【0461】
用語「リプログラミング遺伝子」は、本明細書に使用される場合、その発現が、分化細胞、例えば体細胞の未分化細胞(例えば、多能性状態または部分的多能性状態、多分化能状態の細胞)へのリプログラミングに寄与する遺伝子のことを指す。リプログラミング遺伝子は、例えば、マスター転写因子Sox2、Oct3/4、Klf4、Nanog、Lin-28、c-mycなどをコードする遺伝子であることができる。用語「リプログラミング因子」は、リプログラミング遺伝子によってコードされるタンパク質のことを指す。
【0462】
用語「外因性」は、その天然供給源以外の細胞に存在する物質のことを指す。用語「外因性」は、本明細書に使用される場合、核酸またはタンパク質が通常は見いだされないかまたはより低い量で見いだされる細胞または生物などの生体システムに、ヒトの手を伴うプロセスによって導入された、核酸(例えば、リプログラミング転写因子、例えば、Sox2、Oct3/4、Klf4、Nanog、Lin-28、c-mycなどをコードする核酸)またはタンパク質(例えば、転写因子ポリペプチド)のことを指す。物質(例えば、sox2転写因子をコードする核酸、またはタンパク質、例えば、SOX2ポリペプチド)は、それが細胞または物質を受け継ぐ細胞の祖先に導入されたならば、外因性と見なされる。
【0463】
用語「単離された」は、本明細書に使用される場合、細胞がその自然環境以外の状態に置かれることを示す。用語「単離された」は、その後これらの細胞を他の細胞と組み合わせてまたは混合して後に使用することを排除しない。
【0464】
本明細書に使用される場合、用語「増大させること」は、細胞分裂(有糸分裂)を通して同様の細胞の数を増加させることを指す。用語「増殖させること」および「増大させること」は、互換的に使用される。
【0465】
本明細書に使用される場合、「細胞表面マーカー」は、細胞の表面に発現される任意の分子のことを指す。細胞表面発現は、通常、分子が膜貫通ドメインを保有することを要求する。通常は細胞表面に見いだされないいくつかの分子を、細胞の表面に発現されるように組み換え技法によって操作することができる。多くの天然に存在する細胞表面マーカーは、「CD」または「分化クラスター」分子と名付けられている。細胞表面マーカーは、多くの場合、抗体が結合することができる抗原決定基を提供する。本明細書に記載される方法に特に関連する細胞表面マーカーは、CD34である。本開示による有用な造血前駆細胞(例えば、造血内皮細胞)は、好ましくはCD34を発現し、または言い換えると、それらは、CD34陽性である。
【0466】
細胞は、任意の細胞表面マーカーについて「陽性」または「陰性」と称することができ、そのような呼称は両方とも、本明細書に記載される方法の実施のために有用である。細胞をマーカーに特異的に結合する抗体と接触させ、続いてそのような接触させた細胞のフローサイトメトリー解析を行って、抗体が細胞に結合しているかどうかを判定することなどの、当業者に公知の方法を用いて検出されるのに十分な量で、細胞がその細胞表面にマーカーを発現している場合には、その細胞は、細胞表面マーカーについて「陽性」と見なされる。細胞が細胞表面マーカーについてのメッセンジャーRNAを発現する場合があるとはいえ、本明細書に記載される方法について陽性と見なされるために、細胞は、それをその表面に発現しなければならないことを理解されたい。同様に、細胞をマーカーに特異的に結合する抗体と接触させ、続いてそのような接触させた細胞のフローサイトメトリー解析を行って、抗体が細胞に結合しているかどうかを判定することなどの、当業者に公知の方法を用いて検出されるのに十分な量で、細胞がその細胞表面にマーカーを発現していない場合には、その細胞は、細胞表面マーカーについて「陰性」または「陰性/低発現」(「-/lo」または「lo/-」と略される)と見なされる。細胞表面系列マーカーに特異的な作用物質が使用されるいくつかの態様では、この作用物質は、すべて、蛍光タグなどの同じ標識またはタグを含むことができ、したがって、その標識またはタグについて陽性のすべての細胞を排除または除去して、本明細書に記載される方法における使用のために、未接触の造血幹細胞または前駆細胞を残すことができる。
【0467】
本明細書に使用される場合、用語「ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質」は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(例えば、G9a、GLP、EZH1)の発現を阻害する、または基質ヒストンタンパク質上のリシン残基をメチル化する酵素の触媒活性を阻害する、任意の分子である。例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質は、阻害された細胞におけるG9a、GLP、もしくはEZH1の発現を阻害するsiRNAもしくはdsRNA、または阻害された細胞におけるG9a、GLP、もしくはEZH1のmRNAの分解を促進するかもしくはそのmRNAの転写を減少させる、例えばCasまたは死んだCas9(dCas)を一緒に伴うgRNAであることができる。いくつかの態様では、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害物質は、酵素活性と拮抗する低分子である。例としては、本明細書に記載されるような低分子AMI-1、A-366、BIX-01294、BIX01338、BRD4770、ケトシン、UNC0224、UNC0631、UNC0638、UNC0642、UNC0646、EPZ5676、EPZ005687、GSK343、EPZ-6438、3-デアザネプラノシンA(DZNeP)HCl、UNC1999、MM-102、SGC 0946、エンタカポン、EPZ015666、UNC0379、EI1、MI-2(メニン-MLL阻害物質)、MI-3(メニン-MLL阻害物質)、PFI-2、GSK126、EPZ004777、BRD4770、およびEPZ-6438が挙げられるが、それらに限定されない。
【0468】
本明細書に使用される場合、用語「低分子」は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を非限定的に含む、化学物質のことを指す。いくつかの態様では、低分子は、ヘテロ有機化合物または有機金属化合物である。
【0469】
用語「核酸阻害物質」は、標的核酸のレベルまたは活性の減少を媒介する標的核酸(例えば、標的mRNA)に相補的である配列を含有する、核酸分子を含むことが意味される。核酸阻害物質の非限定的な例としては、干渉性RNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、アンタゴミル、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはCas酵素と組み合わせたgRNAが挙げられる。核酸阻害物質を作る方法は、本明細書に記載される。核酸阻害物質を作る追加の方法は、当技術分野において公知である。一態様では、G9a/GLPまたはEZH1核酸阻害物質は、G9a/GLPもしくはEZH1 mRNAの活性の減少、またはG9a/GLPもしくはEZH1 mRNAの転写の減少を引き起こす。
【0470】
本明細書に使用される場合、「干渉性RNA」は、直接的または間接的(すなわち、変換されて)のいずれかでRNA干渉を媒介することによって遺伝子発現を阻害またはダウンレギュレーションすることができる、任意の二本鎖または一本鎖RNA配列のことを指す。干渉性RNAとしては、低分子干渉性RNA(「siRNA」)および低分子ヘアピン型RNA(「shRNA」)が挙げられるが、それらに限定されない。「RNA干渉」は、配列適合性メッセンジャーRNA転写物の選択的分解のことを指す。
【0471】
本明細書に使用される場合、「shRNA」(低分子ヘアピン型RNA)は、アンチセンス領域、ループ部分およびセンス領域を含む、RNA分子であって、センス領域が、アンチセンス領域と塩基対合して二重鎖ステムを形成する相補的ヌクレオチドを有する、RNA分子のことを指す。転写後プロセシングに続いて、低分子ヘアピン型RNAは、RNase IIIファミリーのメンバーである酵素ダイサーによって媒介される切断事象によって、低分子干渉性RNAに変換される。本明細書に使用される場合、語句「転写後プロセシング」は、転写後に起こり、例えば酵素ダイサーおよび/またはドローシャによって媒介される、mRNAプロセシングのことを指す。
【0472】
「低分子干渉性RNA」または「siRNA」は、本明細書に使用される場合、RNA干渉を配列特異的に媒介することによって遺伝子発現を阻害またはダウンレギュレーションすることができる、任意の小型RNA分子のことを指す。小型RNAは、例えば、約18~21ヌクレオチド長であることができる。各siRNA二重鎖は、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖によって形成される。エンドヌクレアーゼ、アルゴノート2(Ago 2)は、siRNA二重鎖の巻き戻しを触媒する。巻き戻された後、ガイド鎖は、RNA干渉特異性複合体(RISC)に組み込まれ、一方でパッセンジャー鎖は放出される。RISCは、ガイド鎖を用いて相補的配列を有するmRNAを見つけ、標的mRNAのヌクレオチド鎖内分解性切断(endonucleolytic cleavage)をもたらす。
【0473】
レトロウイルスは、その複製サイクルの途中に逆転写酵素を利用するRNAウイルスである。用語「レトロウイルス」は、任意の公知のレトロウイルス(例えば、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳がんウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルスなどのc型レトロウイルスのことを指す。
【0474】
レトロウイルスゲノムRNAは、逆転写酵素によって二本鎖DNAに変換される。ウイルスのこの二本鎖DNA形態は、感染細胞の染色体に組み込まれることが可能であり;組み込まれた後、これは、「プロウイルス」と呼ばれる。プロウイルスは、RNAポリメラーゼIIに対する鋳型として役立ち、新しいウイルス粒子を産生するために必要な構造タンパク質および酵素をコードするRNA分子の発現を指示する。
【0475】
「末端反復配列」または「LTR」と呼ばれる構造が、プロウイルスの各末端にある。用語「末端反復配列(LTR)」は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインのことを指し、このドメインは、その天然配列状況で、ダイレクトリピートであり、U3、R、およびU5領域を含有する。LTRは、一般に、レトロウイルス遺伝子の発現およびウイルス複製の基礎となる機能(例えば、遺伝子転写物の促進、開始およびポリアデニル化)を提供する。LTRは、転写制御エレメント、ポリアデニル化シグナルならびにウイルスゲノムの複製および組み込みに必要な配列を含む、多数の調節シグナルを含有する。ウイルスLTRは、U3、RおよびU5と呼ばれる3つの領域に分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーターエレメントを含有する。U5領域は、プライマー結合部位とR領域との間の配列であり、ポリアデニル化配列を含有する。R(反復)領域は、U3領域およびU5領域に隣接する。U3、R、およびU5領域から構成されるLTRは、ウイルスゲノムの5'末端と3'末端の両方に出現する。本発明の一態様では、5'LTRを含むLTR内のプロモーターは、異種プロモーターと置換される。使用することができる異種プロモーターの例としては、例えば、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、テトラサイクリン誘導性(TET)プロモーター、β-グロビン遺伝子座制御領域およびβ-グロビンプロモーター(LCR)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが挙げられる。
【0476】
用語「レンチウイルス」は、緩徐型疾患を引き起こすレトロウイルス群(または属)のことを指す。この群に含まれるウイルスには、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型、およびHIV2型を含む);ヒツジに脳炎(ビスナ)または肺炎(マエディ)を引き起こすビスナ-マエディ、ヤギに免疫不全、関節炎、および脳症を引き起こすヤギ関節炎脳炎ウイルス;ウマに自己免疫性溶血性貧血および脳症を引き起こすウマ伝染性貧血ウイルス;ネコに免疫不全を引き起こすネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシにリンパ節症、リンパ球増加症、および可能性があることには中枢神経系感染を引き起こすウシ免疫不全ウイルス(BIV);ならびに類人霊長類に免疫不全および脳症を引き起こすサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。これらのウイルスによって引き起こされる疾患は、長い潜伏期および遅延性の経過を特徴とする。通常、ウイルスは、単球およびマクロファージに潜伏感染し、これらからウイルスが他の細胞に伝播する。
【0477】
用語「R領域」は、キャッピング群の開始部(すなわち、転写開始部)に始まり、ポリA区域(tract)の開始部直前に終わるレトロウイルスLTR内の領域のことを指す。R領域は、U3領域およびU5領域に隣接するとも定義される。R領域は、逆転写の間にゲノムの一端から他端への新生DNAの移動を可能にすることに重要な役割を果たす。
【0478】
用語「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含有するDNAセグメントのことを指す。例えば、レトロウイルスの末端反復配列は、プロモーターおよびエンハンサー機能の両方を含有する。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」、「外因性」または「異種」であり得る。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム中の所与の遺伝子と天然に連結されているものである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)により遺伝子の近位に配置され、それにより、その遺伝子の転写が連結されているエンハンサー/プロモーターによって指示されるものである。
【0479】
本明細書に使用される場合、用語「核酸」または「核酸配列」は、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはその類似体のユニットが組み込まれた任意の分子、好ましくはポリマー分子のことを指す。核酸は、任意の形状、例えば線状または環状を呈することができる。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであることができる。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの一方の核酸鎖であることができる。あるいは、それは、いかなる二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であることができる。一局面では、核酸は、DNAであることができる。別の局面では、核酸は、RNAであることができる。適切なDNAは、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAを含むことができる。適切なRNAは、例えば、mRNA、iRNA、miRNA、siRNAなどを含むことができる。
【0480】
核酸は、例えば、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えばペプチド-核酸(PNA)、偽性相補PNA(pc-PNA)、およびロックド核酸(LNA)を含む群より選択することができる。そのような核酸配列としては、例えば、タンパク質をコードする核酸配列、例えば、転写抑制因子、アンチセンス分子、リボザイム、低分子抑制性核酸配列、例えば非限定的に、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(miRNA)、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドとして作用する核酸配列が挙げられるが、それらに限定されない。
【0481】
本明細書に使用される場合、用語「生着」は、レシピエントホストに関して、新しい血液形成細胞が成長し始めるときであって、植え込まれた細胞由来であり、植え込みから最低10日後にレシピエントの血中に現れる健康な血液幹細胞を作るものである。生着は、早くも移植の10日後に起こることができるが、約14~20日がより一般的である。
【0482】
本明細書に使用される場合、レシピエントホストにおける免疫系または血液系に関連する用語「再構成」は、レシピエントホストの体内の生来のリザーバーもしくは動作システム、またはその部分を自然状態または機能的状態に再建することを指す。例えば、化学療法後の骨髄などは、骨髄幹細胞が消失していた。
【0483】
用語「減少する」、「低減された」、「低減」または「阻害する」はすべて、本明細書において、統計的に有意な量の減少のことを意味するために使用される。いくつかの態様では、「低減する」、「低減」または「減少する」または「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置または作用物質の非存在下)と比較して少なくとも10%の減少のことを意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含むことができる。本明細書に使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害または低減を包含しない。「完全な阻害」は、参照レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害のない個体に関して、正常の範囲内として受け入れられるレベルまでの減少であることができる。
【0484】
用語「増加した」、「増加させる」、「増強する」または「活性化する」はすべて、本明細書において、統計的に有意な量の増加のことを意味するために使用される。いくつかの態様では、用語「増加した」、「増加させる」、「増強する」または「活性化する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の増加、または100%を含む最大100%までの増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは、参照レベルと比較して少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍の間の任意の増加、またはそれ以上の増加のことを意味することができる。マーカーまたは症状との関連で、「増加させる」は、そのようなレベルの統計的に有意な増加である。
【0485】
本明細書に使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物のことを意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯動物、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。げっ歯動物には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、猫種、例えば、イエネコ、犬種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えば、マス、ナマズおよびサーモンが含まれる。いくつかの態様では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。用語「個体」、「患者」および「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0486】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであることができるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、細胞補充治療の動物モデルに相当する対象として有利に使用することができる。対象は、雄性または雌性であることができる。
【0487】
対象は、処置を必要とする病態(例えば、血液疾患、がんなど)またはそのような病態に関連する1つもしくは複数の合併症と過去に診断されているか、そのような病態を患っているまたは有すると特定されており、任意で、血液疾患または血液疾患に関連する1つもしくは複数の合併症の処置を既に受けているものであることができる。あるいは、対象はまた、血液疾患または血液疾患に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると過去に診断されていないものであることもできる。例えば、対象は、血液疾患または血液疾患に関連する1つもしくは複数の合併症の1つまたは複数のリスク因子を示すもの、またはリスク因子を示さない対象であることができる。
【0488】
特定の病態の処置を「必要とする対象」は、その病態を有する対象、その病態を有すると診断された対象、またはその病態を発症するリスクのある対象であることができる。
【0489】
バリアントアミノ酸またはDNA配列は、天然または参照配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上同一であることができる。天然配列と変異体配列の間の相同性の程度(パーセント同一性)は、例えば、この目的で一般的に用いられるワールドワイドウェブ上で自由に利用可能なコンピュータプログラム(例えば、デフォルト設定のBLASTpまたはBLASTn)を使用して2つの配列を比較することによって決定することができる。
【0490】
天然アミノ酸配列の変更は、当業者に公知の多数の技術のいずれかによって達成することができる。変異は、例えば、天然配列の断片への連結を可能にする制限部位に隣接して変異体配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することによって、特定の座に導入することができる。連結後、結果として生じた再構築された配列は、所望のアミノ酸挿入、置換または欠失を有する類似体をコードする。あるいは、必要とされる置換、欠失または挿入により変更された特定のコドンを有する変更されたヌクレオチド配列を提供するために、オリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発手順を用いることができる。そのような変更を行う技術は、十分に確立されており、例えば、Walder et al. (Gene 42:133, 1986);Bauer et al. (Gene 37:73, 1985);Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19);Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されるものを含む。また、そのポリペプチドの適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基を、一般にセリンで置換して、その分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐことができる。反対に、システイン結合をそのポリペプチドに付加して、その安定性を改善するまたはオリゴマー化を促進することができる。
【0491】
用語「発現」は、RNAおよびタンパク質の産生、ならびに必要に応じて、タンパク質の分泌に関与する細胞プロセスのことを指し、該当する場合は、例えば、転写、転写物プロセシング、翻訳ならびにタンパク質のフォールディング、修飾およびプロセシングを含むがそれらに限定されない。発現は、本発明の核酸断片(1つもしくは複数)に由来するセンス(mRNA)もしくはアンチセンスRNAの転写および安定的蓄積ならびに/またはmRNAからポリペプチドへの翻訳のことを指すことができる。
【0492】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、組織特異的である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、大域的(global)である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全身性である。
【0493】
「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。用語「遺伝子」は、適切な調節配列に機能的に連結されているときにインビトロまたはインビボでRNAへと転写される核酸配列(DNA)のことを意味する。遺伝子は、コード領域の前および後の領域、例えば、5'非翻訳(5'UTR)または「リーダー」配列および3'UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0494】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなポリペプチド、核酸、または細胞は、操作することができる。本明細書に使用される場合、「操作された」は、人の手によって操作されたという局面のことを指す。例えば、ポリペプチドは、そのポリペプチドの少なくとも1つの局面、例えばその配列が、それが自然界で存在するときの局面と異なるよう人の手によって操作された場合、「操作された」と見なされる。当然のこととして、また当業者によって理解されるように、操作された細胞の子孫は、典型的には、実際の操作が以前の実体に対して行われていたとしてもなお「操作された」と称される。
【0495】
いくつかの態様では、本明細書に記載される分化および/または操作されたNK細胞は、外因性である。いくつかの態様では、本明細書に記載される分化および/または操作されたNK細胞は、異所性である。いくつかの態様では、本明細書に記載される分化および/または操作されたNK細胞は、内因性ではない。
【0496】
用語「外因性」は、その天然源以外の細胞中に存在する物質のことを指す。「外因性」という用語は、本明細書において使用されるとき、人の手が関わるプロセスによって、生物学的システム、例えばそれが通常見いだされずかつ核酸またはポリペプチドを導入することが望まれる細胞または生物に導入された、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチドのことを指すことができる。あるいは、「外因性」は、例えば異所性発現またはレベルが確立されるよう、人の手が関わるプロセスによって、生物学的システム、例えばそれが比較的少量で見いだされかつ核酸またはポリペプチドの量を増加させることが望まれる細胞または生物に導入された、核酸またはポリペプチドのことを指すことができる。対照的に、用語「内因性」は、その生物学的システムまたは細胞にとって生来的である物質のことを指す。本明細書に使用される場合、「異所性」は、通常でない場所および/または量で見いだされる物質のことを指す。異所性物質は、所与の細胞において通常見いだされるが、はるかに少ない量でおよび/または異なる時点で見いだされるものであることができる。異所性はまた、所与の細胞においてその自然環境で天然に見いだされないまたは発現されないポリペプチドまたは核酸などの物質も含む。
【0497】
本明細書に記載されるようなポリペプチド(例えば、CARポリペプチド)をコードする核酸は、ベクターに含まれ得る。用語「ベクター」は、本明細書に使用される場合、ホスト細胞への送達または異なるホスト細胞間の移動のために設計された核酸構築物のことを指す。本明細書に使用される場合、ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスであることができる。用語「ベクター」は、適切な制御エレメントに結合されているときに複製することが可能でありかつ遺伝子配列を細胞に移入することができる、任意の遺伝子エレメントを包含する。ベクターは、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを含むことができるが、それらに限定されない。
【0498】
ベクターは、組換えであることができ、例えば、それは、少なくとも2つの異なる供給源から生じる配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも2つの異なる種から生じる配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、少なくとも2つの異なる遺伝子から生じる配列を含み、例えば、それは、融合タンパク質または少なくとも1つの非天然(例えば、異種)遺伝子制御エレメント(例えば、プロモーター、抑制因子、活性化因子、エンハンサー、応答エレメントなど)に機能的に連結されている発現産物をコードする核酸を含む。
【0499】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターまたは核酸は、コドン最適化され、例えば、核酸配列の天然または野生型配列は、代替コドンを含むように変更または操作され、その結果、変更または操作された核酸は、天然/野生型配列と同じポリペプチド発現産物をコードするが、所望の発現系において改善された効率で転写および/または翻訳されるであろう。いくつかの態様では、発現系は、天然/野生型配列の供給源以外の生物(またはそのような生物から得られる細胞)である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターおよび/または核酸配列は、哺乳動物または哺乳動物細胞、例えば、マウス、ネズミ細胞またはヒト細胞での発現のためにコドン最適化される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターおよび/または核酸配列は、ヒト細胞での発現のためにコドン最適化される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターおよび/または核酸配列は、酵母または酵母細胞での発現のためにコドン最適化される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターおよび/または核酸配列は、細菌細胞での発現のためにコドン最適化される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるベクターおよび/または核酸配列は、大腸菌(E. coli)細胞での発現のためにコドン最適化される。
【0500】
本明細書に使用される場合、用語「発現ベクター」は、ベクター上の転写調節配列に連結されている配列からのRNAまたはポリペプチドの発現を指令するベクターのことを指す。発現される配列は、必ずそうであるとは限らないが、多くの場合、その細胞にとって異種のものであろう。発現ベクターは、追加のエレメントを含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、したがって、発現ベクターは、2つの生物において、例えば、発現のためにヒト細胞においてならびにクローニングおよび増幅のために原核生物ホストにおいて維持されることが可能となる。
【0501】
本明細書に使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス起源の少なくとも1つのエレメントを含みかつウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する、核酸ベクター構築物のことを指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに本明細書に記載されるようなポリペプチドをコードする核酸を含有することができる。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで任意の核酸を細胞に移入する目的で利用され得る。多くの形態のウイルスベクターが、当技術分野において公知である。本発明のウイルスベクターの非限定的な例としては、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびキメラウイルスベクターが挙げられる。
【0502】
本明細書に記載されるベクターは、いくつかの態様では、他の適切な組成物および療法と組み合わせることができると理解されるべきである。例えば、適切なエピソーム性ベクターの使用は、対象において関心対象のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAとして維持する手段を提供し、それによって、染色体組み込みの潜在的影響が排除される。
【0503】
本明細書に使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「改善」は、疾患または障害、例えば、血液疾患またはがんに関連する状態の進行または重症度を好転させる、緩和する、改善する、阻害する、遅らせるまたは停止することが目的である治療的処置のことを指す。用語「処置すること」は、血液疾患またはがんに関連する状態、疾患または障害の少なくとも1つの悪影響または症状を低減するまたは緩和することを含む。処置は、一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減されたならば「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低減または停止されたならば「有効」である。すなわち、「処置」は、処置の非存在下で予想されるものと比較した、症状またはマーカーの改善だけでなく、症状の進行または悪化の停止または少なくとも鈍化も含む。有益または望ましい臨床結果は、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の規模の縮小、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延もしくは鈍化、疾患状態の改善もしくは軽減、寛解(部分的か完全かによらず)、および/または死亡率の低下を含むが、それらに限定されない。疾患の「処置」という用語はまた、その疾患の症状または副作用からの解放(軽減処置を含む)を提供することも含む。
【0504】
本明細書に使用される場合、用語「投与すること」は、所望の部位への作用物質の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路による、対象への本明細書に開示されるような化合物の配置のことを指す。本明細書に開示される化合物を含む薬学的組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。いくつかの態様では、投与は、ヒトの身体活動、例えば、注射、摂取行為、適用行為および/または送達デバイスもしくは機器の操作を含む。そのような活動は、例えば、医師および/または処置される対象によってなされ得る。
【0505】
本明細書に使用される場合、「接触させること」は、少なくとも1つの細胞に作用物質を送達するまたは曝露させる任意の適切な手段のことを指す。例示的な送達方法としては、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者に周知の他の送達方法が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、接触させることは、ヒトの身体活動、例えば、注射;分配、混合および/もしくは注入行為;ならびに/または送達デバイスもしくは機器の操作を含む。
【0506】
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性のことを指し、一般に、2標準偏差(2SD)またはそれ以上の差を意味する。
【0507】
実施例以外または別途指示がある場合を除き、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表す数値はすべて、あらゆる場合に、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。用語「約」は、百分率に関連して使用される場合、±1%を意味することができる。
【0508】
本明細書に使用される場合、用語「含む」は、定義された要素が存在することに加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包括を示す。
【0509】
用語「からなる」は、その態様の説明の中で列記されていないあらゆる要素を除く、本明細書に記載されるような組成物、方法およびその各成分のことを指す。
【0510】
本明細書に使用される場合、用語「から本質的になる」は、所与の態様に必要とされる要素のことを指す。この用語は、本発明の態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的に影響しない追加の要素の存在を許容する。
【0511】
本明細書に使用される場合、用語「に対応する」は、第1のポリペプチドまたは核酸における示されている位置のアミノ酸またはヌクレオチド、あるいは第2のポリペプチドまたは核酸における示されているアミノ酸またはヌクレオチドと同等のアミノ酸またはヌクレオチドのことを指す。同等の示されているアミノ酸またはヌクレオチドは、当技術分野において公知の相同性検索プログラム、例えばBLASTを使用した、候補配列のアラインメントによって決定することができる。
【0512】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明確に別途指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または、もしくは」という単語は、文脈が明確に別途指示しない限り、「および、ならびに」を含むことが意図される。本開示を実施または試験する際には本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、以下に適切な方法および材料が記載される。「例えば(e.g.)」という略語は、Latin exempli gratiaに由来し、本明細書において非限定的な例を示すために使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
【0513】
本明細書に開示される発明の代替要素または態様のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別にまたはグループの他のメンバーもしくは本明細書で見いだされる他の要素との任意の組み合わせで、言及かつ特許請求することができる。グループの1つまたは複数のメンバーは、便宜上および/または特許性の理由から、グループに包含されても、グループから排除されてもよい。いかなるそのような包含または排除が行われたとしても、本明細書は、変更されたものとしてグループを含むと見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの書面上の説明を全うするものと見なされる。
【0514】
本明細書において別途定義がなされない限り、本出願と関連して使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する技術分野における通常の技能を有する者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬などに限定されず、したがって、それらは変更され得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される学術用語は、特定の態様を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は、もっぱら特許請求の範囲によって定義されるものである。免疫学および分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 20th Edition, published by Merck Sharp & Dohme Corp., 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, published by Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908);および Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier, 2006; Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053);Lewin's Genes XI, published by Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;および Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737) に見いだすことができ、これらの内容はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0515】
いくつかの態様では、本明細書に記載される開示は、ヒトをクローニングするためのプロセス、ヒトの生殖系列の遺伝的同一性を改変するためのプロセス、産業もしくは商業目的でのヒト胚の使用、またはヒトもしくは動物への任意の実質的な医学的利益なしにそれらを苦しめる可能性がある動物の遺伝的同一性を改変するためのプロセスに、さらにはそのようなプロセスから生じる動物に関するものではない。
【0516】
他の用語は、本明細書において、本発明の様々な局面の説明の中で定義される。
【0517】
本出願を通して引用されている、参考文献、発行された特許、公開された特許出願および同時係属中の特許出願を含む、すべての特許および他の刊行物は、例えば本明細書に記載される技術と関連して使用され得るそのような刊行物に記載される方法論を、説明および開示する目的で、明示的に参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、それらの開示が本願の出願日より以前に行われたために提供されるにすぎない。これに関するいかなる事情も、本発明者らが、先行発明であるためまたは任意の他の理由によりそのような開示よりも先の日付を主張する資格を有さないことの承認と見なされるべきではない。これらの書類の日付に関する声明または内容に関する表示はすべて、出願人が入手し得た情報に基づいており、これらの書類の日付または内容の正確性に関する承認をなすものではない。
【0518】
本開示の態様の説明は、排他的であることまたは本開示を開示された正確な形態に限定することを意図していない。本開示の具体的な態様および実施例は、例示目的で本明細書に記載されるにすぎず、関連技術分野の当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の変更が可能である。例えば、方法の工程または機能は、所与の順で提示されているが、代替の態様は異なる順で機能を果たしてもよく、機能は実質的に同時に果たされてもよい。本明細書に提供される開示の教示は、必要に応じて、他の手順または方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な態様は、さらなる態様を提供するよう組み合わせることができる。本開示の局面は、必要であれば、本開示のなおさらなる態様を提供するために、上記参考文献および出願の組成、機能および技術思想を利用するよう変更することができる。これらおよび他の変更は、詳細な説明に照らして本開示に対して行うことができる。すべてのそのような変更は、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【0519】
前述の態様のいずれかの具体的な要素は、他の態様における要素と組み合わせるまたは置き換えることができる。さらに、本開示のある特定の態様に関連する利点がこれらの態様の状況において記載されてきたが、他の態様もそのような利点を示す場合があり、本開示の範囲内に含まれるためにすべて態様が必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0520】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、以下の付番された項目のいずれかに従って定義することができる。
1. a)CD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および
b)前記CD34+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
2. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団においてヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害する工程;および
c)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、ナチュラルキラー(NK)細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
3. a)CD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および
b)前記CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
4. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団においてエピジェネティック制御因子を阻害する工程;および
c)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
5. a)CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに
b)前記CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
6. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程;ならびに
c)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
7. CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程を含む、方法。
8. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;および
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、NK細胞分化培地中、Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程
を含む、方法。
9. 前記Notchリガンドが、固体基材に付着されている、項目1~8のいずれか1つの方法。
10. 前記Notchリガンドが、細胞培養ディッシュに付着されている、項目1~9のいずれか1つの方法。
11. 前記Notchリガンドが、ストロマ細胞に由来しない、項目1~10のいずれか1つの方法。
12. 前記造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることが、Notchリガンドを発現するストロマ細胞との共培養を含まない、項目1~11のいずれか1つの方法。
13. 前記造血内皮細胞をNotchリガンドの存在下で分化させることが、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞との共培養を含まない、項目1~12のいずれか1つの方法。
14. 前記Notchリガンドが、デルタ様-1(DLL1)、デルタ様-4(DLL4)、固定化デルタ1ext-IgG、および固定化デルタ4ext-IgGからなる群より選択される、項目1~13のいずれか1つの方法。
15. 固定化デルタ1ext-IgGが、ヒトIgG1のFcドメインに融合されたヒトデルタ様-1の細胞外ドメインからなる、項目14の方法。
16. 前記Notchリガンドが、DLL4である、項目1~15のいずれか1つの方法。
17. 前記Notchリガンドが、多くても5μg/mlの濃度で提供される、項目1~16のいずれか1つの方法。
18. CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために十分な時間が、少なくとも4週間である、項目1~17のいずれか1つの方法。
19. 前記NK細胞分化培地が、無血清である、項目1~18のいずれか1つの方法。
20. 前記NK細胞分化培地が、SCF、FLT3、およびIL7を含む、項目1~19のいずれか1つの方法。
21. 前記NK細胞分化培地が、30ng/ml~100ng/mL SCF;15ng/ml~100ng/mL FLT3;および5ng/ml~20ng/ml IL7を含む、項目1~20のいずれか1つの方法。
22. 前記NK細胞分化培地が、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含む、項目1~21のいずれか1つの方法。
23. 前記NK細胞分化培地が、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含む、項目1~22のいずれか1つの方法。
24. 前記NK細胞分化培地が、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含む、項目1~23のいずれか1つの方法。
25. 前記NK細胞分化培地が、30ng/ml SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含む、項目1~24のいずれか1つの方法。
26. 前記NK細胞分化培地が、トロンボポエチン(TPO)をさらに含む、項目1~25のいずれか1つの方法。
27. 前記NK細胞分化培地が、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含む、項目1~26のいずれか1つの方法。
28. 前記NK細胞分化培地が、インターロイキン-15(IL-15)をさらに含む、項目1~27のいずれか1つの方法。
29. 前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の2週間後に始まる、項目1~28のいずれか1つの方法。
30. 前記NK細胞分化培地が、インターロイキン-3(IL-3)をさらに含む、項目1~29のいずれか1つの方法。
31. 前記NK細胞分化培地が、前記NK細胞分化培地中での分化の少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含む、項目1~30のいずれか1つの方法。
32. CD56+ NK細胞濃縮の工程をさらに含む、項目1~31のいずれか1つの方法。
33. 前記多能性幹細胞の集団が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ESC)を含む、項目2、4、6、または8のいずれか1つの方法。
34. 前記人工多能性幹細胞が、OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、nanog、およびLIN28からなる群より選択される少なくとも1つのリプログラミング因子、またはそれらの任意の組み合わせを成熟細胞に導入することによって産生される、項目33の方法。
35. 前記人工多能性幹細胞が、リプログラミング因子のOCT4、SOX2、KLF4、ならびに任意で、c-MYC、またはnanogおよびLIN28、のみを成熟細胞に導入することによって産生される、項目34の方法。
36. 前記人工多能性幹細胞が、前記リプログラミング因子を前記成熟細胞に2回またはそれ以上導入することによって産生される、項目33~35のいずれか1つの方法。
37. 前記多能性幹細胞の集団が、胚様体または2D接着培養物を用いてCD34+造血内皮細胞の集団に分化される、項目2、4、6、または8のいずれか1つの方法。
38. CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間が、少なくとも8日である、項目2、4、6、または8のいずれか1つの方法。
39. 前記凝集培地が、BMP4、SB-431542、CHIR99021、bFGF、VEGF、IL-6、IL-11、IGF-1、SCF、およびEPOを含む、項目2、4、6、または8のいずれか1つの方法。
40. 前記凝集培地が、
a)少なくとも0および2日目にBMP4;
b)少なくとも2日目にSB-431542;
c)少なくとも2日目にCHIR99021;
d)少なくとも1、2、3、および6日目にbFGF;
e)少なくとも3および6日目にVEGF;
f)少なくとも6日目にIL-6;
g)少なくとも6日目にIL-11;
h)少なくとも6日目にIGF-1;
i)少なくとも6日目にSCF;ならびに/または
j)少なくとも6日目にEPO
を含む、項目2、4、6、または8のいずれか1つの方法。
41. 前記凝集培地が、10ng/ml BMP4、6mM SB-431542、3mM CHIR99021、5ng/ml bFGF、15ng/ml VEGF、10ng/ml IL-6、5ng/mL IL-11、25ng/mL IGF-1、50ng/mL SCF、および2U/ml EPOを含む、項目2、4、6、9、または40のいずれか1つの方法。
42. BMP4が、前記凝集培地中、約10ng/mlの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
43. SB-431542が、前記凝集培地中、約6mMの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
44. CHIR99021が、前記凝集培地中、約3mMの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
45. bFGFが、前記凝集培地中、約5ng/mlの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
46. VEGFが、前記凝集培地中、約15ng/mlの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
47. IL-6が、前記凝集培地中、約10ng/mlの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
48. IL-11が、前記凝集培地中、約5ng/mLの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
49. IGF-1が、前記凝集培地中、約25ng/mLの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
50. SCFが、前記凝集培地中、約50ng/mLの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
51. EPOが、前記凝集培地中、約2U/mlの濃度である、項目39~41のいずれか1つの方法。
52. 結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、前記CD34+造血内皮細胞の集団における表面マーカーの発現を用いて選択または単離する工程をさらに含む、項目1~51のいずれか1つの方法。
53. 前記CD34+造血内皮細胞の集団が、CD45陰性/低発現である、項目1~52のいずれか1つの方法。
54. 前記CD34+造血内皮細胞の集団が、CD38陰性/低発現である、項目1~53のいずれか1つの方法。
55. 前記多能性幹細胞、結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団、または結果として生じた前記CD56+ NK細胞の集団を遺伝子改変する工程をさらに含む、項目1~54のいずれか1つの方法。
56. 前記遺伝子改変が、内因性NK細胞受容体を除去すること、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることである、項目55の方法。
57. 前記遺伝子改変が、前記細胞における免疫原性を低減させる、項目56の方法。
58. 免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、内因性HLAを編集することである、項目57の方法。
59. 免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、HLAクラスIまたはHLAクラスIIを除去または編集することを含む、項目58の方法。
60. 免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、HLA-G、HLA-E、CD47、およびPD-L1からなる群より選択される少なくとも1つの寛容促進性免疫調節分子を発現させることを含む、項目59の方法。
61. 免疫原性を低減させる前記遺伝子改変が、CCL21、PD-L1、FasL、SERPINB9、H2-M3、CD47、CD200、およびMFGE8からなる群より選択される少なくとも1つの免疫調節分子を発現させることを含む、項目60の方法。
62. 前記ヒストンメチルトランスフェラーゼが、ヒストン3リシン残基9(H3K9)へのおよび/またはヒストン3リシン残基27(H3K27)へのメチル基の付加を触媒する、項目1または2の方法。
63. 前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27が、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される、項目62の方法。
64. 前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質が、ヘテロ有機化合物または有機金属化合物である、項目63の方法。
65. 前記ヒストンメチルトランスフェラーゼH3K9および/またはH3K27低分子阻害物質が、BIX-01294、UNC0638、E72、BRD4770、A-366、ケトシン、UNC0224、UNC0631、UNC0646、EPZ005687、EPZ-6438(E7438)、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、EI1、GSK343、GSK126、およびUNC1999からなる群より選択される、項目63または64の方法。
66. 前記核酸阻害物質が、ヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を標的とする核酸である、項目63の方法。
67. 前記核酸阻害物質が、RNA干渉阻害物質またはRNA干渉物質である、項目63の方法。
68. 前記核酸阻害物質が、EZH1特異的核酸阻害物質である、項目63の方法。
69. 前記核酸阻害物質が、EZH1に結合するアプタマーである、項目63の方法。
70. 前記核酸阻害物質が、EZH1特異的RNA干渉物質、またはEZH1特異的RNA干渉物質をコードするベクターであり、前記RNA干渉物質が、SEQ ID NO:11~19から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、項目63の方法。
71. 前記核酸阻害物質が、Cas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRガイドRNAとCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRガイドRNAが、SEQ ID NO:20~41から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、項目63の方法。
72. 前記核酸阻害物質が、dCas酵素と組み合わせたEZH1特異的CRISPRiガイドRNA、またはEZH1特異的CRISPRiガイドRNAとdCas酵素とをコードするベクターであり、前記CRISPRiガイドRNAが、SEQ ID NO:51~53から選択されるヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む、項目63の方法。
73. 前記エピジェネティック制御因子が、DNA-メチルトランスフェラーゼ(DNMT);メチル-CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質;DNAデメチラーゼ;ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT);メチル-ヒストン結合タンパク質;ヒストンデメチラーゼ;ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT);アセチル結合タンパク質;またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)である、項目3または4の方法。
74. 前記エピジェネティック制御因子が、低分子阻害物質または核酸阻害物質によって阻害される、項目3または4の方法。
75. 前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、UNC0224;MC1568;およびCAY10591からなる群より選択される、項目74の方法。
76. 前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、UNC0224である、項目74の方法。
77. 前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、MC1568である、項目74の方法。
78. 前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、CAY10591である、項目74の方法。
79. 前記エピジェネティック制御因子の阻害物質が、少なくとも500nMの濃度で提供される、項目74~78のいずれか1つの方法。
80. G9aおよび/またはGLPが、低分子阻害物質によって阻害される、項目5または6の方法。
81. G9aおよび/またはGLPが、核酸阻害物質によって阻害される、項目5または6の方法。
82. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0224;UNC0638;A366;BRD4770;BIX01294;UNC0642;UNC0631;UNC0646;UNC0321;E72;BIX-01338;BRD9539;ケトシン;およびDCG066からなる群より選択される、項目80の方法。
83. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0224である、項目80の方法。
84. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0638である、項目80の方法。
85. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、A366である、項目80の方法。
86. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BRD4770である、項目80の方法。
87. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BIX01294である、項目80の方法。
88. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0642である、項目80の方法。
89. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0631である、項目80の方法。
90. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0646である、項目80の方法。
91. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、UNC0321である、項目80の方法。
92. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、E72である、項目80の方法。
93. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BIX-01338である、項目80の方法。
94. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、BRD9539である、項目80の方法。
95. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、ケトシンである、項目80の方法。
96. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、DCG066である、項目80の方法。
97. 前記G9aおよび/またはGLP阻害物質が、300nM~5μMの濃度で提供される、項目80~96のいずれか1つの方法。
98. 前記G9a阻害物質が、
SEQ ID NO:50、または
少なくとも95%同一であり、かつ同じ機能を維持する、核酸配列
を含む、項目81の方法。
99. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
100. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
101. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法。
102. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
103. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
104. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
105. a)多能性幹細胞の集団を、凝集培地中で、CD34+造血内皮細胞の集団への分化を促進するために十分な時間、分化させる工程;ならびに
b)結果として生じた前記CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程
を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ
前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、
前記方法。
106. CD34+造血内皮細胞の集団を、50ng/mL SCF、50ng/ml FLT3、および10ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
107. CD34+造血内皮細胞の集団を、100ng/mL SCF、100ng/ml FLT3、および5ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
108. CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法。
109. CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、15ng/ml FLT3、および20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
110. CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~20ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
111. CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/mL SCF、20ng/ml FLT3、および25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
112. CD34+造血内皮細胞の集団を、30ng/ml~100ng/ml SCF、15ng/ml~100ng/ml FLT3、および5ng/ml~25ng/ml IL7を含むNK細胞分化培地中、5μg/mL Notchリガンドの存在下で、CD56+ NK細胞の集団への分化を促進するために少なくとも4週間、分化させる工程を含む、方法であって、
前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の1週間、5ng/mLインターロイキン-3(IL-3)をさらに含み;前記NK細胞分化培地が、少なくとも最初の2週間、5ng/mLトロンボポエチン(TPO)をさらに含み;かつ前記NK細胞分化培地が10ng/mLインターロイキン-15(IL-15)をさらに含み、それが、少なくとも最初の2週間後に始まる、前記方法。
113. 前記CD34+造血内皮細胞の集団においてG9aおよび/またはGLPを阻害する工程をさらに含む、項目99~112のいずれか1つの方法。
114. 前記CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1を阻害する工程をさらに含む、項目99~112のいずれか1つの方法。
115. 前記CD34+造血内皮細胞の集団においてEZH1およびG9aを阻害する工程をさらに含む、項目99~112のいずれか1つの方法。
116. 前記CD56+ NK細胞の集団が、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の数よりも少なくとも2倍多い数のCD56+ NK細胞を含む、項目1~115のいずれか1つの方法。
117. 前記CD56+ NK細胞の集団が、ストロマ細胞を含むNK分化法によって産生されるCD56+ NK細胞の割合よりも少なくとも2倍高い割合のCD56+ NK細胞を含む、項目1~116のいずれか1つの方法。
118. 項目1~117のいずれか1つの方法によって産生される、細胞。
119. 項目118の細胞またはその集団を含む、組成物。
120. 項目118の細胞またはその集団と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
121. 対象での細胞補充治療において使用するための、項目120の薬学的組成物。
122. 項目118の細胞もしくはその集団、または項目119の組成物、または項目120の薬学的組成物を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、細胞補充治療の方法。
123. 前記レシピエント対象が、化学療法および/または放射線照射を受けたことがある、項目122の細胞補充治療の方法。
124. 前記レシピエント対象が、がんを有する、項目122の細胞補充治療の方法。
125. 前記レシピエント対象が、免疫機能および/または免疫細胞再構成における欠損を有する、項目122の細胞補充治療の方法。
126. 移植前に、前記細胞またはその集団が、レシピエント対象におけるその後の生着を促進するために、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処理される、項目122~125のいずれか1つの細胞補充治療の方法。
127. 前記細胞またはその集団が、前記レシピエント対象に対して自己由来である、項目122~126のいずれか1つの細胞補充治療の方法。
128. 前記細胞またはその集団が、前記レシピエント対象とHLA型がマッチする、項目122~127のいずれか1つの細胞補充治療の方法。
129. 前記細胞またはその集団が、低免疫原性である、項目122~128のいずれか1つの細胞補充治療の方法。
130. 項目118の細胞もしくはその集団または項目119の組成物または項目120の薬学的組成物の有効量を、その必要があるレシピエント対象に投与する工程を含む、がんを処置する方法。
131. 前記細胞が、CD56+ NK細胞である、項目130の方法。
【0521】
本明細書に記載される技術を、さらに限定的であると決して解釈されるべきではない以下の実施例によって、さらに説明する。
【実施例】
【0522】
実施例1:ヒト多能性幹細胞からのストロマフリーNK細胞分化
NK細胞は、がん免疫療法について大きな治療可能性を示している。iPSC由来NK細胞は、NK細胞ベースの免疫療法のための供給源を提供する。しかしながら、iPSCからのNK細胞の生成のための現在のプロトコールは、マウスストロマ細胞に依拠し、これは、iPSC由来NK細胞のトランスレーショナルポテンシャルを制限する。NK細胞分化のための無血清、ストロマフリー分化プロトコールが、本明細書に記載される。そのようなシステムは、インビトロでNK細胞を生成させることができる。
【0523】
造血CD34
+内皮細胞を、最初にiPSから誘導させた(実施例2)。iPS由来CD34+造血内皮細胞を、Notchリガンド(例えば、DLL4;例えば、PBS中5μg/mlまたは10μg/ml、室温で3時間)で被覆した組織培養プレート上で、増殖因子(例えば、Flt3、SCF、IL7)のカクテルを含有する培地を用いて培養した。より高い濃度のDLL4(例えば、10μg/ml)は、T細胞分化を促進し、一方で、より低い濃度(例えば、5μg/ml)のDLL4は、CD56+ NK細胞の生成を容易にする。従来のストロマ依存性分化プロトコールは、NK細胞(CD56+)およびT細胞(CD3+)の両方を低い効率で生じた(
図1)が、本明細書に記載されるストロマフリーNK細胞分化法は、より高い割合のNK細胞を特異的に生成させた(
図2の2番目のパネル)。EZH-1のノックダウンは、分化したCD56+ NK細胞の量を、およそ3~6倍増加させた(
図3A~3B)。異なる分化プロトコールの要約については、例えば、表1を参照のこと。ストロマフリーT細胞分化プロトコールに関するより詳細については、例えば、国際PCT公報WO 2021/150919を参照されたく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。サイトカインの濃度は、基礎培地によっては影響されないが、ストロマ細胞(例えば、OP9-DLL1細胞またはOP9-DLL4細胞)の存在によって影響され;いくつかの態様では、サイトカインの濃度は、OP9細胞の存在下ではより低く、ストロマフリー分化法においてはより高い。
【0524】
(表1)従来の分化プロトコールと、ストロマフリーT細胞およびNK細胞分化プロトコールとの比較;
*アルファ最小必須培地(MEM)を基礎細胞培養培地として用い;
**StemSpan(商標) SFEM II培地を基礎細胞培養培地として用いた。
【0525】
実施例2:造血内皮細胞を産生するための方法
人工多能性幹(iPS)細胞から造血(CD34+)内皮細胞を産生するための8日プロトコールが、本明細書に記載される;例えば、Sturgeon et al., Wnt Signaling Controls the Specification of Definitive and Primitive Hematopoiesis From Human Pluripotent Stem Cells, Nat Biotechnol. 2014 Jun; 32(6): 554-561を参照されたく、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0526】
0日目:MEF上でのiPSCからのEBの形成
一般に、マウス胚性線維芽細胞(MEF)上での3日~1週間の培養後に、iPS細胞は、胚様体(EB)を作る準備ができる。D0について、以下のプロトコールに従う。
1. MEF上で成長させたiPS細胞を、5mLのDMEM/F12培地で洗浄する。
2. 各ディッシュから培地を吸引する。0.22μMで濾過したDMEM/F12において希釈した、5mLの1×コラゲナーゼIVで置き換える。
3. 37℃で5~10分間インキュベートし、iPSコロニーが剥離していることを顕微鏡で定期的にチェックする。
4. コラゲナーゼIVを吸引し、5mLの濾過したDMEM/F12で置き換える。
5. 滅菌セルスクレーパーを用いて、最初にディッシュの縁の周り、次いで左から右へ、次いで上から下へ、コロニーを剥がす。
6. 10mLセロロジカルピペットを用いて、細胞を穏やかにかつゆっくりとコニカルチューブに移す。残留コロニーがある場合には、追加の5mLでプレートを洗浄し、同じチューブに加える。
7. 1100rpmで1分間、スピンダウンする。
8. 細胞をスピンしている間に、9mLのBMP4を含む凝集培地(例えば、表2を参照のこと)を、Corning超低接着(Ultra Low Adherent)10cmディッシュに加える。
9. ペレットのiPSコロニーから培地を吸引し、1mLのBMP4を含む凝集培地に再懸濁する。
10. 1mLの細胞を、凝集培地を含有する各超低接着10cmに穏やかに移す。同じピペットを用いて、いかなる細胞も含まないプレートの領域から1mLをピペットで吸い上げ、コニカルを洗浄する。その1mLをコニカルに戻す;3~4枚の開始プレートのiPS細胞を目下含有する各プレートの最終体積は、10mLである。
11. 37℃の低酸素インキュベーター(5% O2)に移す。4~5枚のプレートを、互いの上に積み重ねることができ、積み重ねの底の1枚のプレートをPBSで満たして、蒸発を防ぐ。これが、EB培養の0日目である。
【0527】
1日目:bFGFの添加
1日目に、以下のプロトコールに従う:1. bFGFを、EBの各10cmディッシュに5ng/mLの最終濃度で直接添加する。プレートを振盪して、培地中に分散させる。
【0528】
2日目:D2培地への完全培地交換
2日目に、D2培地を導入する。D2について、以下のプロトコールに従う。
1. D2凝集培地は、以下を含む(例えば、表2を参照のこと):BMP4、bFGF、CHIR99021(StemCell Technologies Inc. # 72054)、およびSB431542(StemCell Technologies Inc. # 72234)。SBおよびCHIRを一旦融解したら、再凍結することは推奨できない。
2. 10mLセロロジカルピペットを用いてEBを収集し、コニカルチューブに入れる。
3. EBを、約15分間沈降させる。
4. 培地を吸引して、D2培地(10mL/10cmディッシュ)に再懸濁し、次いで、超低接着ディッシュに穏やかに戻す。
【0529】
3日目:D3培地での完全培地交換
3日目に、D3培地を導入する。D3について、以下のプロトコールに従う。
1. D3凝集培地は、以下を含む(例えば、表2を参照のこと):VEGFおよびbFGF。
2. 10mLセロロジカルピペットを用いてEBを収集し、コニカルチューブに入れる。
3. EBを、約15分間沈降させる。
4. 培地を吸引して、D2培地(10mL/10cmディッシュ)に再懸濁し、次いで、超低接着ディッシュに穏やかに戻す。
【0530】
4~5日目:培地交換なし
4~5日目に、培地交換は行わない。
【0531】
6日目:D6培地での完全培地交換
6日目に、D6培地を導入する。D6について、以下のプロトコールに従う。
1. D6凝集培地は、以下を含む(例えば、表2を参照のこと):VEGF組換えヒトVEGF165(VEGF-A)(R & D Systems (R&D) # 293-VE-500)、bFGF、SCF、EPO、IL-6組換えヒトIL-6(20ug)(Peprotech # 200-06)、IL-11、およびIGF-1。
2. 10mLセロロジカルピペットを用いてEBを収集し、コニカルチューブに入れる。
3. EBを、約15分間沈降させる。
4. 培地を吸引して、D6培地(10mL/10cmディッシュ)に再懸濁し、次いで、超低接着ディッシュに穏やかに戻す。
【0532】
7日目:培地交換なし
7日目に、培地交換は行わない。
【0533】
8日目:CD34+細胞についてのMAC分取による造血内皮細胞の単離
8日目に、CD34+細胞についての磁気活性化細胞分取(MACS)を用いて、造血内皮細胞を単離する。次いで、CD34+造血内皮細胞の集団を用いて、本明細書に記載されるようなストロマフリーNK細胞分化法を用いてNK細胞を分化させることができる(例えば、実施例1を参照のこと)。
【0534】
【0535】
凝集培地のための基礎培地は、EB形成中のD0~D2とD3~D8とで異なる(例えば、表10~11を参照のこと)。
【0536】
【0537】
【0538】
実施例3
図4は、ストロマフリー分化プロトコールが、より高いレベルのNK細胞受容体(例えば、NCR1、CD16、NKG2A)を発現するNK細胞を生成させたことを示し、これは、本明細書に記載される方法によって産生されるiPSC由来NK細胞の発生的成熟および機能性の増加を示す。
【0539】
図5A~5Cは、NK細胞分化に対するG9a(EHMT2)ノックダウンの効果を実証する。iPSC株を、Dox誘導性G9a(EHMT2)クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート干渉(clustered regularly interspaced short palindromic repeats interference)(CRISPRi)機構で操作した;CRISPRiは、CRISPRに類似しているが、遺伝子をノックアウトする代わりに、CRISPRiは、エンドヌクレアーゼ活性を欠く触媒的に死んだCas9(通常、dCas9と表示される)タンパク質を用いて、遺伝子発現を転写で抑制し、遺伝子ノックダウンを達成する。次いで、iPSCを、CD34+ HE細胞に分化させ、Doxで処理してG9aノックダウンを誘導した。次いで、対照またはDox処理細胞を、本明細書に記載されるストロマフリー法を用いて、CD7+リンパ球系前駆体、および最終的にはCD5-CD56+ NK細胞に分化させた(例えば、表1を参照のこと)。結果は、CD34+ HE細胞におけるG9aの抑制が、iPSCからのNK細胞分化を促進したことを示す。
【0540】
図6A~6Cは、G9a(EHMT2)が、iPSC由来HSPC(iPSC-HSPC)においてリンパ球系運命決定を調節するメカニズムを示す。最初に、iPSCをCD34+ HEに分化させ、次いで、細胞を、EHT段階中にDMSOまたはG9a阻害物質UNC0224で処理し、これが、HEをCD34+CD45+ HSPCに特異化することを可能にした。次いで、これらのiPSC-HSPCに対してATAC-seq解析を行って、(より高いATAC-seqスコアによって示されるような)アクセシブルクロマチン領域を示すATACピークを検出した。UNC0224処理細胞においてアップレギュレーションされたピークは、リンパ球系分化/機能を担う遺伝子に関連しており、これは、G9aの抑制が、リンパ球系運命を決定する遺伝子発現プログラムをアンロックすることを示した。これらのデータは、G9a(EHMT2)の抑制が、iPSCからのNK細胞分化をいかに促進するかを実証する。
【0541】
図6Cは、ATAC-seq実験からの結果を示し、G9a阻害物質がクロマチンアクセシビリティにいかに影響を及ぼすかについての情報を提供する。RNA-seq解析を、
図6Aにおけるものと同じ試料に対して行った。対照EHT細胞と比較して、G9a阻害物質(UNC0224)処理細胞は、リンパ球系発生および機能に関連する遺伝子のアップレギュレーションを示した。RNA-seq解析によって特定された例示的なリンパ球系関連遺伝子としては、RUNX3、CD1A、TNF、GZMA、GNLY、およびIKZF5が挙げられるが、それらに限定されない。以下の表6は、RNA-seq解析によって特定された、G9a阻害物質(UNC0224)処理細胞において濃縮された生物学的プロセスを示す。
【0542】
(表6)G9a阻害によってアップレギュレーションされたパスウェイのRNA-seqデータ;解析タイプ:PANTHER過剰出現テスト(overrepresentation test);アノテーションバージョン:PANTHERバージョン17.0;解析したリスト:クライアントテキストボックスインプット(ホモサピエンス);参照リスト:ホモサピエンス(データベース中のすべての遺伝子);テストタイプ:FISHER;補正:FDR。
【配列表】
【国際調査報告】