(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】直線回転プロファイルを形成する3つの径方向に延在する切れ刃を有する先端部分を有する回転可能な切削ヘッド
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B23B51/00 T
B23B51/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553592
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 IL2022050249
(87)【国際公開番号】W WO2022208494
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】シットリット,シモン
(72)【発明者】
【氏名】カブラン,ヒサム
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037BB01
3C037BB04
3C037BB08
3C037BB11
3C037CC09
3C037DD01
(57)【要約】
中心軸線(A1)回りに回転可能な切削ヘッド(20)であって、切削ヘッド(20)は先端部分(22)と中間部分(24)とを備えている。先端部分(22)は、中心軸線(A1)内に包含される軸線方向最前方の先端点(NT)と、先端点(NT)から遠ざかるように軸線方向後方に延在する3つのチゼルエッジ(28)を形成する3つの軸線方向前方を向いた前面(26)と、を有し、各前面(26)は、チゼルエッジ(28)のうちの1つから径方向外側に延在する第2切れ刃部分(32)と、そこから径方向外側に延在する第1切れ刃部分(34)と、を備える径方向に延在する切れ刃を有している。各第1切れ刃部分(34)は、その少なくとも径方向内側端点及び径方向外側端点にまたがる環状リング幅を有する仮想環状リング面内に包含される。切削ヘッドの前端視において、各第1切れ刃部分(34)は凹状であり、ラジアル平面は仮想環状面に交差して、各々が環状リング幅に等しい長さを有する仮想直線を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向(RD)の中心軸線(A1)回りに回転可能な切削ヘッド(20)であって、前記中心軸線(A1)は前方軸線方向(DF)及び後方軸線方向(DR)を規定し、かつ、前記切削ヘッド(20)は、
前記中心軸線(A1)内に包含された軸線方向最前方の先端点(NT)と、前記先端点(NT)から軸線方向後方に遠ざかるように延在する3つのチゼルエッジ(28)を形成する3つの軸線方向前方を向いた前面(26)と、を有する先端部分(22)であって、
各前面(26)は、前記チゼルエッジ(28)のうちの1つから径方向外側に延在する第2切れ刃部分(32)と、前記第2切れ刃部分(32)から直接的に又は移行切れ刃部分(36)を介してのいずれかで、径方向外側に延在する第1切れ刃部分(34)と、を備える径方向に延在する切れ刃(30)を有し、
各前面(26)は、そのそれぞれの第1切れ刃部分(34)に隣接する第1逃げ面(38)をさらに含む、先端部分(22)と、
3つの切り屑排出通路(44)と周方向に交互に配置された3つのヘッドランド(42)を有する中間部分(24)であって、各ヘッドランド(42)は、前記先端部分(22)から軸線方向後方に延在する前縁(46)を有し、各切り屑排出通路(44)は、前記先端部分(22)から軸線方向後方に延在し、かつ、前記前縁(46)のうちの1つに交差するヘッド溝(48)を有する、中間部分(24)と、を備え、
各第1切れ刃部分(34)は、径方向内側第1端点(NIP)と、径方向外側第1端点(NOP)と、前記径方向内側第1端点(NIP)と前記径方向外側第1端点(NOP)との間の第1中点(NMP)と、を有し、3つの前記径方向外側第1端点(NOP)が、第1直径(D1)を有する第1仮想円(C1)を規定し、3つの前記第1中点(NMP)が、第2直径(D2)を有する第2仮想円(C2)を規定し、3つの前記径方向内側第1端点(NIP)が、第3直径(D3)を有する第3仮想円(C3)を規定し、
前記第1切れ刃部分(34)のうちの1つの前記径方向外側第1端点(NOP)、前記第1中点(NMP)及び前記径方向内側第1端点(NIP)がそれぞれ、第1仮想ラジアル平面(PR1)、第2仮想ラジアル平面(PR2)及び第3仮想ラジアル平面(PR3)内に包含され、前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)の各々は前記中心軸線(A1)を包含し、
各第1切れ刃部分(34)は、少なくとも前記径方向内側第1端点(NIP)及び前記径方向外側第1端点(NOP)にまたがる第1環状リング幅(WA1)を有する第1仮想環状リング面(SA1)内に包含され、
前記切削ヘッド(20)の前端視において、各第1切れ刃部分(34)は凹状であり、
前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)は、前記第1仮想環状リング面(SA1)に交差して、各々が前記第1環状リング幅(WA1)に等しい長さを有する第1仮想直線(LR1)、第2仮想直線(LR2)及び第3仮想直線(LR3)をそれぞれ形成する、切削ヘッド(20)。
【請求項2】
前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)で取られた断面において、前記第1仮想直線(LR1)、第2仮想直線(LR2)及び第3仮想直線(LR3)は各々、前記中心軸線(A1)に対して鋭角又は直角の内部切削角(Φ)を形成し、
前記切削角(Φ)は88度より大きい、請求項1に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項3】
前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)で取られた断面において、前記第1仮想直線(LR1)、第2仮想直線(LR2)及び第3仮想直線(LR3)は各々、前記中心軸線(A1)に対して同じ鋭角又は直角の内部切削角(Φ)を形成する、請求項2に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項4】
前記第2仮想ラジアル平面(PR2)は、前記第1仮想ラジアル平面(PR1)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)の回転方向後方に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項5】
前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)は、少なくとも10度の鋭角のフック角(θ)を形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項6】
前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)に垂直で、かつ、関連の前記第1切れ刃部分(34)の前記径方向外側第1端点(NOP)、前記第1中点(NMP)及び前記径方向内側第1端点(NIP)をそれぞれ包含する第1横断面(PT1)、第2横断面(PT2)及び第3横断面(PT3)で取られた断面において、隣接する前記第1逃げ面(38)は、前記中心軸線(A1)に対して垂直な第1仮想水平基準線(HL1)、第2仮想水平基準線(HL2)及び第3仮想水平基準線(HL3)のそれぞれに対して、第1鋭角逃げ角(α1)、第2鋭角逃げ角(α2)及び第3鋭角逃げ角(α3)を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項7】
前記第2仮想直線(LR2)を包含する仮想傾斜面(PI)が、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)に対して傾斜角(π)を形成し、かつ、それぞれの前記前面(26)の前記第1逃げ面(38)に交差し、
前記傾斜角(π)は前記第2鋭角逃げ角(α2)に等しく、
前記仮想傾斜面(PI)に垂直な視点において、関連の前記第1切れ刃部分(34)の前記径方向外側第1端点(NOP)及び前記径方向内側第1端点(NIP)は前記第2仮想直線(LR2)から離間される、請求項6に記載の切削ヘッド(20)
【請求項8】
前記仮想傾斜面(PI)に垂直な視点において、前記径方向内側第1端点(NIP)は、補正高さ(HC)だけ前記第2仮想直線(LR2)から離間されており、
前記補正高さ(HC)は、前記第2直径(D2)と前記第3直径(D3)との間の差の1パーセントより大きい、請求項7に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項9】
(PI2)に垂直な視点において、関連の前記第1切れ刃部分(34)の前記径方向外側第1端点(NOP)及び前記径方向内側第1端点(NIP)は、前記第2仮想直線(LR2)の同じ側に配置される、請求項7又は8に記載の切削ヘッド(20)
【請求項10】
前記仮想傾斜面(PI)で取られた断面において、前記第1逃げ面(38)は凸状である、請求項7~9のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項11】
前記第1逃げ角(α1)、前記第2逃げ角(α2)及び前記第3逃げ角(α3)が各々、5度の最小公称値及び12度の最大公称値を有する、請求項6~10のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項12】
前記第1逃げ角(α1)、前記第2逃げ角(α2)及び前記第3逃げ角(α3)が等しい、請求項6~11のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項13】
各第1切れ刃部分(34)が、前記ヘッド溝(48)のうちの1つと前記第1逃げ面(38)のうちの1つとの交線に形成され、
第1すくい面(58)が、関連の前記第1切れ刃部分(34)に隣接する各ヘッド溝(48)に配置され、
前記第1横断面(PT1)、前記第2横断面(PT2)及び前記第3横断面(PT3)で取られた断面において、前記第1すくい面(58)は、前記第1仮想ラジアル平面(PR1)、前記第2仮想ラジアル平面(PR2)及び前記第3仮想ラジアル平面(PR3)に対して、それぞれ、第1アキシャルすくい角(β1)、第2アキシャルすくい角(β2)及び第3アキシャルすくい角(β3)で傾斜し、
前記第1アキシャルすくい角(β1)、前記第2アキシャルすくい角(β2)及び前記第3アキシャルすくい角(β3)の各々は正である、請求項6~12のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項14】
各第2切れ刃部分(32)が、その長さに沿った途中に配置された第2中点(NMS)を有し、3つの前記第2中点(NMS)が、第4直径(D4)を有する第4仮想円(C4)を規定し、
前記第1切れ刃部分(34)のうちの1つの前記第2中点(NMS)は、第4仮想ラジアル平面(PR4)内に包含され、前記第4仮想ラジアル平面(PR4)は前記中心軸線A1を包含し、
前記径方向外側第1端点(NOP)から前記第2中点(NMS)まで延在する各切れ刃(30)の複合切れ刃部分(54)は、前記第1仮想環状リング面(SA1)内に包含され、
前記第4仮想ラジアル平面(PR4)は、前記第1仮想環状リング面(SA1)に交差して、前記第1環状リング幅(WA1)に等しい長さを有する第4仮想直線(LR4)を形成する、請求項12又は13に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項15】
各前面(26)は、そのそれぞれの第2切れ刃部分(32)に隣接する第2逃げ面(40)を有し、
前記第4仮想ラジアル平面(PR4)に垂直で、かつ、関連の前記第2切れ刃部分(32)の前記第2中点(NMS)を包含する第4横断面(PT4)で得られた断面において、隣接する前記第2逃げ面(40)は、前記中心軸線(A1)に垂直な第4仮想水平基準線(HL4)に対して第4逃げ角(α4)を形成し、
前記第4鋭角逃げ角(α4)は、前記第1鋭角逃げ角(α1)、前記第2鋭角逃げ角(α2)及び前記第3鋭角逃げ角(α3)に等しい、請求項14に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項16】
各切り屑排出通路(44)が、前記先端部分(22)から軸線方向後方に延在し、かつ、前記ヘッド溝(48)のうちの1つに交差するギャッシュ(60)を有し、
各第2切れ刃部分(32)は、前記ギャッシュ(60)のうちの1つと前記第2逃げ面(40)のうちの1つとの交線に形成され、
第2すくい面(62)が、関連の前記第2切れ刃部分(32)に隣接して各ギャッシュ(60)に配置され
前記第4横断面(PT4)で取られた断面において、前記第2すくい面(62)は、前記第4仮想ラジアル平面(PR4)に対して第4アキシャルすくい角(β4)で傾斜し、
前記第4アキシャルすくい角(β4)は負である、請求項15に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項17】
負の前記第4アキシャルすくい角(β4)は4°より大きい、請求項16に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項18】
3つの前記前縁(46)が切削直径(DC)を規定し、
前記第1直径(D1)と前記第3直径(D3)との間の差が、前記切削直径(DC)の35パーセントより大きい、請求項14~17のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項19】
前記第1直径(D1)と前記第4直径(D4)との間の差が、前記切断直径(DC)の50パーセントよりも大きい、請求項18に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項20】
各第2切れ刃部分(32)が、その第2中点(NMS)から径方向内側に延在するにつれて軸線方向前方に延在する、請求項14~19のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項21】
各第2切れ刃部分(32)が、その第2中間点(NMS)の径方向内側に配置された尖端切れ刃サブ部分(56)を含み、
前記尖端切れ刃サブ部分(56)は、前記中心軸線(A1)に対して垂直な第2水平面(PH2)に対して鋭角の進入角(λ)を形成し、
前記進入角(λ)は少なくとも15度及び最大30度である、請求項14~20のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項22】
前記切削ヘッド(20)の前端視において、各第2切れ刃部分(32)が直線状である、請求項1~21のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項23】
各第2切れ刃部分(32)は、径方向外側に延在するにつれて回転方向後方に延在する、請求項22に記載の切削ヘッド(20)。
【請求項24】
前記切削ヘッド(20)の前端視において、各移行切れ刃部分(36)が凸状である、請求項1~23のいずれか1項に記載の切削ヘッド(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して金属切削プロセスに使用するための、及び特に穿孔作業のための、3つの径方向に延在する切れ刃を有する先端部分を有する回転可能な切削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
穿孔作業に使用される切削工具の分野内では、径方向に延在する切れ刃を有し、その切れ刃部分がほぼ直線的な回転プロファイルを形成する、回転可能な切削ヘッドの例が数多くある。
【0003】
米国特許第7,832,966号明細書は、ほぼ平坦な底の孔を機械加工することができる螺旋状ドリル構成を開示している。本体部材の切削端には、ドリルの回転軸線の両側に対称的に配向された2つの切れ刃がある。一実施形態では、第1切れ刃部分及び第2切れ刃部分が、強度及び工具安定性を提供する連続面を形成する。切れ刃の各々の第2部分の高さは、ほぼ平坦な底の孔を形成するために水平方向に沿って比較的一定のままである。この実施形態では、2つの傾斜した尖端面によって中心点が規定される。中央の真っ直ぐなチゼルエッジは、2つの傾斜した尖端面の交線によって形成される。第1切れ刃セクションは、チゼルエッジから第2切れ刃セクションまで延在している。両方の切れ刃のための第1切れ刃セクションは、2つの尖端面を対称的に薄くすることによって形成されている。螺旋状の切削工具の中央部分における応力は、チゼルエッジと、バランスのとれた幾何学的形状を有する中央部分付近の切れ刃の第1セクションと、によって制限される。また、螺旋状のドリルのバランスのとれた幾何学的形状により、ドリルがぐらつくこと、及び、形成中の孔にずれが生じることも防止する。チゼルエッジは、第1曲線状切れ刃に融合してもよく、また、第1曲線状切れ刃は、切削を促進するために正のすくい角を有し得る。
【0004】
米国特許出願公開第2019/262910号明細書は、切れ刃まで延在する複数のランドを含むドリルを開示しており、隣接するランドは、ドリル本体の中心軸線に沿ったほぼ螺旋状構成に配置されたベース輪郭を備える溝によって分離されている。ドリルはまた、ドリル本体の外径に向かって延在する直線部分と、直線部分からドリル本体のチゼルに向かって延在する円弧部分と、を各々有する複数の輪郭を有するドリル先端を含む。ドリルは、複数の溝内に位置決めされた複数のギャッシュ輪郭をさらに含む。ギャッシュ輪郭はドリル本体のチゼルから延在し、ギャッシュ輪郭は溝のベース輪郭に対して斜めになっている。
【0005】
本発明の目的は、3つの径方向に延在する切れ刃を有し、その切れ刃部分が正確に直線回転プロファイルを形成するように構成された、改良された回転可能な切削ヘッドを提供することである。
【0006】
本発明の目的はまた、切り屑排出通路の容積を最大にするように構成されたヘッド溝を有する、周方向に離間した3つの切り屑排出通路を有する改良された回転可能な切削ヘッドを提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、異なる直径を有する2つの同軸貫通孔の間の実質的に平坦な肩面を機械加工することができる改良された回転可能な切削ヘッドを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、回転方向の中心軸線回りに回転可能な切削ヘッドが提供され、前記中心軸線は前方軸線方向及び後方軸線方向を規定し、前記切削ヘッドは、
前記中心軸線内に包含された軸線方向最前方の先端点と、前記先端点から軸線方向後方に遠ざかるように延在する3つのチゼルエッジを形成する3つの軸線方向前方を向いた前面と、を有する先端部分であって、
各前面は、前記チゼルエッジのうちの1つから径方向外側に延在する第2切れ刃部分と、前記第2切れ刃部分から直接的に又は移行切れ刃部分を介して径方向外側に延在する第1切れ刃部分と、を備える径方向に延在する切れ刃を有し、
各前面は、そのそれぞれの第1切れ刃部分に隣接する第1逃げ面をさらに含む、先端部分と、
3つの切り屑排出通路と周方向に交互に配置された3つのヘッドランドを有する中間部分であって、各ヘッドランドは、前記先端部分から軸線方向後方に延在する前縁を有し、各切り屑排出通路は、前記先端部分から軸線方向後方に延在し、かつ、前記前縁のうちの1つに交差するヘッド溝を有する、中間部分と、を備え、
各第1切れ刃部分は、径方向内側第1端点と、径方向外側第1端点と、前記径方向内側第1端点と前記径方向外側第1端点との間の第1中点と、を有し、3つの前記径方向外側第1端点は、第1直径を有する第1仮想円を規定し、3つの前記第1中点は、第2直径を有する第2仮想円を規定し、3つの前記径方向内側第1端点は、第3直径を有する第3仮想円を規定し、
前記第1切れ刃部分のうちの1つの前記径方向外側第1端点、前記第1中点及び前記径方向内側第1端点はそれぞれ、第1仮想ラジアル平面、第2仮想ラジアル平面及び第3仮想ラジアル平面のそれぞれ内に包含され、前記第1仮想ラジアル平面、前記第2仮想ラジアル平面及び前記第3仮想ラジアル平面の各々は前記中心軸線を包含し、
各第1切れ刃部分は、少なくとも前記径方向内側第1端点及び前記径方向外側第1端点にまたがる第1環状リング幅を有する第1仮想環状リング面内に包含され、
前記切削ヘッドの前端視において、各第1切れ刃部分は凹状であり、
前記第1仮想ラジアル平面、前記第2仮想ラジアル平面及び前記第3仮想ラジアル平面は、前記第1仮想環状リング面に交差して、各々が前記第1環状リング幅に等しい長さを有する第1仮想直線、第2仮想直線及び第3仮想直線をそれぞれ形成する。
【0009】
より良好な理解のため、添付図面を参照して、例としてのみ本発明をここで説明し、図面中、一点鎖線は部材の部分図の切断境界を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】
図2のIV-IV線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図6】
図2のVI-VI線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図7】
図2のVII-VII線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図8】
図2のVIII-VIII線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図9】
図2のIX-IX線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図10】
図1に示す切削ヘッドの仮想傾斜面に沿った平面図である。
【
図13】
図10のXIII-XIII線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図15】
図2のXV-XV線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図16】
図2のXVI-XVI線に沿った切削ヘッドの断面図である。
【
図17】本発明に係る回転切削工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず
図1~
図3に着目すると、中心軸線A1回りに回転方向RDに回転可能な切削ヘッド20が示されており、切削ヘッド20は先端部分22及び中間部分24を備えている。
【0012】
中心軸線A1は、前方軸線方向DF及び後方軸線方向DRを規定する。
【0013】
本発明のある実施形態では、切削ヘッド20は、炭化タングステンなどの超硬合金を成形プレス及び焼結することによって製造されてもよく、かつ、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよい。
【0014】
図1~
図3に示すように、先端部分22は、中心軸線A1内に包含される軸線方向最前方の先端点NTと、先端点NTから遠ざかるように軸線方向後方に延在する3つのチゼルエッジ28を形成する3つの軸線方向前方を向いた前面26と、を有している。
【0015】
図2に示すように、各前面26は、チゼルエッジ28のうちの1つから軸線方向後方かつ径方向外側に延在する第2切れ刃部分32と、前記第2切れ刃部分32から直接的に又は移行切れ刃部分36を介してのいずれかで径方向外側に延在する第1切れ刃部分34と、を備える径方向に延在する切れ刃30を有している。
【0016】
例えば、2つの径方向に延在する切れ刃と比較して、3つの径方向に延在する切れ刃30を切削ヘッド20に設けることにより、切削ヘッド20がより高い送り速度で穿孔作業を実行することを可能にすることを理解されたい。
【0017】
本発明のある実施形態では、切削ヘッド20は、中心軸線A1周りに3回回転対称を示してもよい。
【0018】
各前面26は、そのそれぞれの第1切れ刃部分34に隣接する第1逃げ面38と、そのそれぞれの第2切れ刃部分32に隣接する第2逃げ面40と、を含む。
【0019】
図1~
図3に示すように、中間部分24は、3つの切り屑排出通路44と周方向に交互に配置された3つのヘッドランド42を有し、各ヘッドランド42は、先端部分22から軸線方向後方に延在する前縁46を有し、各切り屑排出通路44は、先端部分22から軸線方向後方に延在し、かつ、前縁46のうちの1つに交差するヘッド溝48を有している。
【0020】
本発明のある実施形態では、各第1切れ刃部分34は、ヘッド溝48のうちの1つと第1逃げ面38のうちの1つとの交線に形成されてもよい。
【0021】
図2に示すように、3つの前縁46は切削直径DCを規定してもよい。
【0022】
本発明のある実施形態では、各前縁46は、先端部分22から軸線方向後方に延在するにつれて、回転方向RDと反対に延在してもよい。
【0023】
また、本発明のある実施形態では、各前縁46は中心軸線A1に沿って螺旋状に延在してもよい。
【0024】
図1~
図3に示すように、各ヘッドランド42は、その前縁46に交差する径方向外側に向いたマージン表面50を含んでもよい。
【0025】
本発明のある実施形態では、各マージン表面50は、中心軸線A1に沿って螺旋状に延在してもよい。
【0026】
また、本発明のある実施形態では、各マージン表面50は、マージン面取り52によって前面26のうちの1つから離間されてもよい。
【0027】
さらに、本発明のある実施形態では、切削直径DCは、3つのマージン面取り52の軸線方向のすぐ後方で測定されてもよい。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、3つの前縁46は、切削直径DCが3つの前縁46の長さに沿って最大0.01mm減少するように、後方軸線方向DRに微小な軸線方向テーパを付けられてもよいことを理解されたい。
【0029】
図1~
図3に示すように、各第1切れ刃部分34は、径方向内側第1端点NIPと径方向外側第1端点NOPとを有している。
【0030】
また、
図1~
図3に示すように、各第1切れ刃部分34は、その径方向内側第1端点NIPと径方向外側第1端点NOPとの間に配置された第1中点NMPを有している。
【0031】
図2に示すように、3つの径方向外側第1端点NOPは、第1直径D1を有する第1仮想円C1を規定し、3つの第1中点NMPは、第2直径D2を有する第2仮想円C2を規定し、3つの径方向内側第1端点NMPは、第3直径D3を有する第3仮想円C3を規定する。
【0032】
本発明のある実施形態では、第1直径D1と第3直径D3との間の差は、切削直径DCの35パーセントより大きくてもよく、すなわち、D1-D3>0.35×DCであってもよい。
【0033】
本発明のある実施形態では、第1直径D1は、切削直径DCの90パーセントよりも大きくてもよく、すなわち、D1>0.90×DCであってもよい。
【0034】
また、本発明のある実施形態では、第1直径D1は切削直径DCより小さくてもよい。
【0035】
図2に示すように、切削ヘッド20の前端視において、各第1切れ刃部分34は凹状であり、すなわち、各第1切れ刃部分34は凹形状を有している。
【0036】
本発明のある実施形態では、各第1中点NMPは、そのそれぞれの径方向内側第1端点NIP及び径方向外側第1端点NOPの回転方向後方に配置されてもよい。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、同じ切れ刃30に沿った別の点の「回転方向後方」又は「回転方向前方」の点の位置は、回転方向RDに関して、かつ、前記切れ刃30の回転範囲内で考慮されることを理解されたい。
【0038】
図2に示すように、第1切れ刃部分34のうちの1つの径方向外側第1端点NOP、第1中点NMP及び径方向内側第1端点NIPは、それぞれ、第1仮想仮想ラジアル平面PR1、第2仮想仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想仮想ラジアル平面PR3内に包含され、第1仮想ラジアル平面PR1、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3の各々が中心軸線A1を包含する。
【0039】
本発明のある実施形態では、第2仮想ラジアル平面PR2は、第1仮想ラジアル平面PR1及び第3仮想ラジアル平面PR3の回転方向後方に配置されてもよい。
【0040】
また、本発明のある実施形態では、第3仮想ラジアル平面PR3は、第1仮想ラジアル平面PR1よりも回転方向前方に配置されてもよい。
【0041】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、同じ切れ刃30に関連付けられた別の仮想ラジアル平面の「回転方向後方」又は「回転方向前方」にある仮想ラジアル平面の位置は、回転方向RDに関して、かつ、前記切れ刃30の回転範囲内で考慮されることを理解されたい。
【0042】
本発明のある実施形態では、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR2は、少なくとも10度、すなわち、θ≧10°の鋭角のフック角θを形成してもよい。
【0043】
各第1切れ刃部分34が切削ヘッド20の前端視で凹状であり、かつ、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3が少なくとも10°の鋭角のフック角θを形成する本発明の実施形態の場合、各ヘッド溝48は、その関連の切り屑排出通路44の容積を最大化し、かつ、滑らかで効率的な切り屑排出のための十分なスペースを提供するように有利に構成されているが、これらは、3以上の周方向に離間した切り屑排出通路44を有する切削ヘッド20に起因して制限される可能性があることを理解されたい。
【0044】
図2に示すように、切削ヘッド20の前端視において、各第2切れ刃部分32は直線状であってもよい。
【0045】
本発明のある実施形態では、各第2切れ刃部分32は、径方向外側に延在するにつれて回転方向後方に延在してもよい。
【0046】
また、本発明のある実施形態では、各第2切れ刃部分32は、その全長に沿って、径方向外側に延在するにつれて回転方向後方に連続的に延在してもよい。
【0047】
各切れ刃30の第2切れ刃部分32及び第1切れ刃部分34が移行切れ刃部分36によって離間されている本発明の実施形態の場合、
図2に示すように、切削ヘッド20の前端視において、各移行切れ刃部分36は凸状であってもよく、すなわち、各移行切れ刃部分36は凸形状を有してもよい。
【0048】
図1~
図3に示すように、各第1切れ刃部分34は、少なくとも径方向内側第1端点NIP及び径方向外側第1端点NOPにまたがる第1環状リング幅WA1を有する第1仮想環状リング面SA1内に包含される。
【0049】
本発明によれば、
図4~
図6に示すように、第1仮想ラジアル平面PR1、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3は、第1仮想環状リング面SA1に交差して、各々が第1環状リング幅WA1に等しい長さを有する第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3をそれぞれ形成する。
【0050】
中心軸線A1を包含する任意の仮想ラジアル平面が、第1仮想環状リング面SA1に交差して、第1環状リング幅WA1に等しい長さを有する仮想直線を形成してもよいことを理解されたい。
【0051】
第1仮想環状リング面SA1は、中心軸線A1を中心に円対称を示し、すなわち、第1仮想環状リング面SA1は無限次数の回転対称を有することも理解されたい。
【0052】
第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3の各々が高い真直度を有すること、及び、3つの第1切れ刃部分34が真に直線的な回転プロファイルを形成するように構成されていることをさらに理解されたい。
【0053】
図7~
図9に示すように、第1仮想ラジアル平面PR1、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3に垂直であり、かつ、関連の第1切れ刃部分34の径方向外側第1端点NOP、第1中点NMP及び径方向内側第1端点NIPをそれぞれ包含する、第1横断面PT1、第2横断面PT2及び第3横断面PT3で取った断面において、隣接する第1逃げ面38は、それぞれ、中心軸線A1に垂直な、第1仮想水平基準線HL1、第2仮想水平基準線HL2及び第3仮想水平基準線HL3に対して、第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3を形成する。
【0054】
本発明のある実施形態において、第1横断面PT1、第2横断面PT2及び第3横断面PT3は、それぞれ、第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3に対して垂直であってもよい。
【0055】
第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3が中心軸線A1(図示せず)に垂直である特定の構成では、第1横断面PT1、第2横断面PT2及び第3横断面PT3は中心軸線A1に対して平行であるだけでよいが、
図2は、便宜上、中心軸線A1に平行な第1横断面PT1、第2横断面PT2及び第3横断面PT3を示していることを理解されたい。
【0056】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、第1切れ刃部分34のうちの1つに交差する横断面で取られた任意の断面において、隣接する第1逃げ面38は、第1切れ刃部分34から遠ざかるにつれて軸線方向後方に延在することを理解されたい。
【0057】
本発明のある実施形態では、第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3は等しくてもよく、すなわち、α1=α2=α3であってもよい。
【0058】
第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3は、公称値より1度大きい又は小さい精度を有してもよいことを理解されたい。
【0059】
第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3を等しく構成すると、第1切れ刃部分34に沿った摩耗の均一な分布が有利に改善され得ることも理解されたい。
【0060】
本発明のある実施形態では、第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3は各々、5度の最小公称値及び12度の最大公称値を有してもよく、すなわち、5°≦α1、α2、α3≦12°であってもよい。
【0061】
本発明のこの例では、第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3は8°の公称値を有している。
【0062】
図8に示すように、第2仮想直線LR2を包含する仮想傾斜面PIは、第2仮想ラジアル平面PR2に対して傾斜角πを形成し、かつ、それぞれの前面26の第1逃げ面38に交差する。
【0063】
本発明のある実施形態では、傾斜角πは第2鋭角逃げ角α2に等しくてもよい。
【0064】
傾斜角πが第2鋭角逃げ角α2に等しい本発明の実施形態の場合、
図8に示すように、仮想傾斜面PIは、第1中点NMPに隣接する第1逃げ面38に対して直角を形成することを理解されたい。
【0065】
本発明のある実施形態では、仮想傾斜面PIは、それぞれの前面26の第2逃げ面40に交差してもよい。
【0066】
図10は、仮想傾斜面PIに沿って見た切削ヘッド20の平面図を示している。
【0067】
図11及び
図12に示すように、仮想傾斜面PIに垂直な視点において、関連の第1切れ刃部分34の径方向外側第1端点NOP及び径方向内側第1端点NIPは第2仮想直線LR2から離間されている。
【0068】
図11及び
図12に示すように、関連の第1切れ刃部分34の第1中点NMPが第2仮想直線LR2上にあることを理解されたい。
【0069】
本発明のある実施形態では、
図11及び
図12に示すように、関連の第1切れ刃部分34の径方向外側第1端点NOP及び径方向内側第1端点NIPは第2仮想直線LR2の同じ側に配置されてもよい。
【0070】
また、本発明のある実施形態では、
図11及び
図12に示すように、仮想傾斜面PIに垂直な視点において、径方向内側第1端点NIPは、第2仮想直線LR2から補正高さHCだけ離間されていてもよく、補正高さHCは、第2直径D2と第3直径D3との間の差の1パーセントより大きくてもよく、すなわち、HC>0.01×(D2-D3)であってもよい。
【0071】
フック角θ及び/又は第2逃げ角α2が増加する本発明の実施形態の場合、補正高さHCが増加する可能性があることを理解されたい。
【0072】
図13及び
図14に示すように、仮想傾斜面PIで取られた断面において、第1逃げ面38は凸状であってもよく、すなわち、第1逃げ面38は凸形状を有していてもよい。
【0073】
仮想傾斜面PIで取られた断面において各第1逃げ面38が凸状であり、かつ、第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3が各々、高い真直度を有する本発明の実施形態の場合、各第1逃げ面38は、非常に精密な製造方法によって製造され、かつ、複雑な径方向範囲を有してもよいことを理解されたい。
【0074】
本発明のある実施形態では、各第1逃げ面38は研削プロセスによって製造されてもよい。
【0075】
図4~
図6に示すように、第1仮想ラジアル平面PR1、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3で取られた断面において、第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3は各々、中心軸線A1に対して鋭角又は直角の内部切削角Φを形成してもよい。
【0076】
第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3は各々、中心軸線A1に対して同じ鋭角又は直角の内部切削角Φを形成してもよいことを理解されたい。切削角Φが鋭角である本発明の実施形態の場合、第1仮想環状リング面SA1は、3次元の円錐台形状を規定してもよいこと、かつ、切削角Φが直角である本発明の実施形態の場合、第1仮想環状リング面SA1は2次元の環状ディスク形状を規定してもよいことを理解されたい。
【0077】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「内部切削角」という用語の使用は、第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2及び第3仮想直線LR3と、切削ヘッドの中間部分24を通って延在する中心軸線A1の部分との間に形成された角度を指すことも理解されたい。
【0078】
中心軸線A1に垂直で先端部分22に交差する第1水平面PHIに対して少なくとも最小の傾斜を各第1切れ刃部分34が有するように、切削角Φが鋭角である本発明の実施形態の場合、穿孔作業中にワークピースと最初に接触する際に少なくとも3つの第1切れ刃部分34に作用する軸線方向の切削力は、前記少なくとも3つの第1切れ刃部分34に沿って徐々に分散されることを理解されたい。
【0079】
本発明のある実施形態では、
図4~
図6に示すように、切削角Φは88度より大きくてもよく、すなわち、88°<Φ≦90°であってもよい。
【0080】
切削角Φは公称値より0.5度大きい又は小さい精度を有してもよいことを理解されたい。
【0081】
本発明のこの例では、切削角Φは89.5°の公称値を有する。
【0082】
切削角Φが88度より大きい本発明の実施形態の場合、少なくとも3つの第1切れ刃部分34が、実質的に平坦な回転切削プロファイルを形成するように構成されてもよく、かつ、切削ヘッド20が、異なる直径を有する2つの同軸貫通孔の間に実質的に平坦な肩面(図示せず)を機械加工するための穿孔作業に有利に使用され得ることを理解されたい。
【0083】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、切削角Φはちょうど90度、すなわち、Φ=90°であってもよい。
【0084】
切削角Φがちょうど90度である本発明の実施形態の場合、少なくとも3つの第1切れ刃部分34が真に平坦な回転切削プロファイルを形成するように構成されてもよいことを理解されたい。
【0085】
図1~
図3に示すように、各第2切れ刃部分32は、その長さに沿った途中に配置された第2中点NMSを有している。
【0086】
図2に示すように、3つの第2中点NMSは、第4直径D4を有する第4仮想円C4を規定する。
【0087】
本発明のある実施形態では、第1直径D1と第4直径D4との間の差は切削直径DCの50パーセントよりも大きくてもよく、すなわち、D1-D4>0.50×DCであってもよい。
【0088】
図2に示すように、第1切れ刃部分34のうちの1つの第2中点NMSは第4仮想ラジアル平面PR4内に包含され、第4仮想ラジアル平面PR4は中心軸線A1を包含する。
【0089】
図1~
図3に示すように、前記径方向外側第1端点NOPから第2中点NMSまで延在する各切れ刃30の複合切れ刃部分54は第1仮想環状リング面SA1内に包含されてもよい。
【0090】
各複合切れ刃部分54が第1仮想環状リング面SA1内に包含され、かつ、第1直径D1と第4直径D4との間の差が切削直径DCの50パーセントより大きい本発明の実施形態の場合、第1環状リング幅WA1は、切削直径DCの半分の50パーセントよりも大きくてもよいこと、すなわち、WA1>0.50×DC/2であってもよいことを理解されたい。
【0091】
図15に示すように、第4仮想ラジアル平面PR4は、第1仮想環状リング面SA1に交差して、第1環状リング幅WA1に等しい長さを有する第4仮想直線LR4を形成する。
【0092】
図15に示すように、第4仮想ラジアル平面PR4で取られた断面において、第4仮想直線LR4は、中心軸線A1に対して鋭角又は直角の内部切削角Φを形成してもよい。
【0093】
本発明のある実施形態では、第1仮想直線LR1、第2仮想直線LR2、第3仮想直線LR3、第4仮想直線LR4は各々、中心軸線A1に対して同じ鋭角又は直角の内部切削角Φを形成してもよいことを理解されたい。
【0094】
本発明のある実施形態では、第2中点NMSは、その関連の第1切れ刃部分34の径方向内側第1端点NIPよりも回転方向前方に配置されてもよい。
【0095】
図2に示すように、各第2切れ刃部分32は、その第2中点NMSから径方向内向きに延在するにつれて軸線方向前方に延在してもよい。
【0096】
本発明のある実施形態では、
図1~
図3に示すように、各第2切れ刃部分32は、その第2中点NMSの径方向内側に配置された尖端切れ刃サブ部分56を含んでもよく、かつ、尖端切れ刃サブ部分56は、中心軸線A1に垂直で先端部分22に交差する第2水平面PH2に対して鋭角の進入角λを形成してもよい。
【0097】
また、本発明のある実施形態では、
図3に示すように、進入角λは少なくとも15度、最大30度、すなわち、15°≦λ≦30°であってもよい。
【0098】
さらに、本発明のある実施形態では、第1水平面PH1及び第2水平面PH2は同一平面上にあってもよい。
【0099】
3つの尖端切れ刃サブ部分56は、第1仮想環状リング面SA1とは対照的に、ラジアル平面と交差する場合に仮想直線を形成しない第2仮想環状リング面(図示せず)内に包含されてもよいことを理解されたい。
【0100】
関連の尖端切れ刃サブ部分56に隣接する各第2逃げ面40の部分は、複雑な径方向範囲を有していなくてもよいことも理解されたい。
【0101】
図1~
図3に示すように、第1すくい面58は、関連の第1切れ刃部分34に隣接して各ヘッド溝48上に配置されてもよい。
【0102】
本発明のある実施形態では、複数の第1すくい面58は回転方向RDに面してもよい。
【0103】
図7~
図9に示すように、第1横断面PT1、第2横断面PT2及び第3横断面PT3で取られた断面において、第1すくい面58は、それぞれ、第1仮想ラジアル平面PR1、第2仮想ラジアル平面PR2及び第3仮想ラジアル平面PR3に対して第1アキシャルすくい角β1、第2アキシャルすくい角β2及び第3アキシャルすくい角β3で傾斜している。
【0104】
本発明のある実施形態では、第1アキシャルすくい角β1、第2アキシャルすくい角β2及び第3アキシャルすくい角β3の各々は正であってもよい。
【0105】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、第1アキシャルすくい角β1、第2アキシャルすくい角β2及び第3アキシャルすくい角β3は、第1すくい面58のそれぞれの部分が、関連の第1切れ刃部分34から遠ざかるにつれて回転方向後方に延在する構成において正であることを理解されたい。
【0106】
第1切れ刃部分34は、それらの比較的高い切削速度に起因して、第2切れ刃部分32よりも大きな摩耗を受けやすいこと、及び、第1アキシャルすくい角β1、第2アキシャルすくい角β2及び第3アキシャルすくい角β3を正に構成すると、第1切れ刃部分34の摩耗が減少し、したがって、その動作寿命を長くする。
【0107】
図16に示すように、第4仮想ラジアル平面PR4に垂直で、かつ、関連の副切れ刃部32の第2中点NMSを包含する第4仮想横断面PT4で取られた断面において、隣接する第2逃げ面40は、中心軸線A1に垂直な第4仮想水平基準線HL4に対して第4鋭角逃げ角α4を形成する。
【0108】
本発明のある実施形態では、第4仮想横断面PT4は、第4仮想直線LR4に対して垂直であってもよいが、
図2は、便宜上、中心軸線A1に平行な第4仮想横断面PT4を示している。
【0109】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、中心軸線A1に平行で第2切れ刃部分32のうちの1つに交差する横断面で取られた任意の断面では、第2逃げ面40は、第1切れ刃部分34から遠ざかるにつれて軸線方向後方に延在することを理解されたい。
【0110】
本発明のある実施形態では、第4鋭角逃げ角α4は、第1鋭角逃げ角α1、第2鋭角逃げ角α2及び第3鋭角逃げ角α3に等しくてもよい。
【0111】
図1~
図3に示すように、各切り屑排出通路44は、先端部分22から軸線方向後方に延在し、かつ、ヘッド溝48のうちの1つに交差するギャッシュ60を有してもよい。
【0112】
本発明のある実施形態では、各第2切れ刃部分32は、ギャッシュ60のうちの1つと第2逃げ面のうちの1つとの交線に形成されてもよい。
【0113】
図1~
図3に示すように、第2すくい面62は、関連の第2切れ刃部分32に隣接して各ギャッシュ60上に配置されてもよい。
【0114】
本発明のある実施形態では、複数の第2すくい面62は回転方向RDに面していてもよい。
【0115】
図16に示すように、第4仮想横断面PT4で取られた断面において、第2すくい面62は、第4仮想ラジアル平面PR4に対して第4アキシャルすくい角β4で傾斜している。
【0116】
本発明のある実施形態では、第4アキシャルすくい角β4は負であってもよい。
【0117】
また、本発明のある実施形態では、負の第4アキシャルすくい角β4は、4度を超える大きさを有してもよい。
【0118】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、第2すくい面62のそれぞれの部分が、第2切れ刃部分32から遠ざかるにつれて回転方向前方に延在する構成では、第4アキシャルすくい角β4が負であることを理解されたい。
【0119】
第2切れ刃部分32は、特に高送り速度においてそれらの比較的低い切削速度に起因して、第1切れ刃部分34よりも大きな衝撃力を受けやすいこと、及び、第4アキシャルすくい角β4を負に構成すると、第2切れ刃部分32の安定性及び堅牢性が向上し、したがって、その動作寿命を長くすることを理解されたい。
【0120】
第1直径D1が切削直径DCより小さい本発明の実施形態の場合、各切れ刃30は、その第1切れ刃部分34の径方向外側第1端点NOPから径方向外側に延在する第3切れ刃部分64を含んでもよい。
【0121】
図2に示すように、切削ヘッド20の前端視において、各第3切れ刃部分64は凸状であってもよく、すなわち、各第3切れ刃部分64は凸形状を有してもよい。
【0122】
本発明のある実施形態では、各第3切れ刃部分64は第1仮想環状リング面SA1内に包含されてもよい。
【0123】
図1~
図3に示すように、各第3切れ刃部分64は、径方向内側第3端点NITと径方向外側第3端点NOTとを有している。
【0124】
本発明のある実施形態では、各第3切れ刃部分64の径方向内側第3端点NITは、関連の第1切れ刃部分34の径方向外側第1端点NOPに一致してもよい。
【0125】
図2に示すように、切削ヘッド20の前端視において、その径方向外側第3端点NOTに隣接する第3切れ刃部分64のうちの1つに接する第1仮想直線L1は、径方向外側第3端点NOTを包含して中心軸線A1に交差する第2仮想直線L2に対して負の径方向すくい角δを形成してもよい。
【0126】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、第1仮想直線L1が、第3切れ刃部分64から径方向外側に延在するにつれて回転方向後方に延在する構成では、径方向すくい角δが負であることを理解されたい。
【0127】
ここで、
図17及び
図18を参照すると、本発明に係る回転切削工具66が示されており、回転切削工具66は、切削ヘッド20と、長手方向軸線ALを有するシャンク68と、を備えている。
【0128】
シャンク68は、3つのシャンクランド72と周方向に交互に配置された3つのシャンク溝70を有し、各シャンク溝70は、長手方向軸線ALに沿って螺旋状に延在してもよい。
【0129】
図17及び
図18に示すように、切削ヘッド20は、軸線方向後方に面する底面74を有してもよく、シャンク68は、長手方向軸線ALを横切る支持面76を有してもよく、かつ、切削ヘッド20は、支持面76に接触している底面74を有するシャンク68に取り外し可能に装着されてもよい。
【0130】
シャンク68に切削ヘッド20を取り外し可能に装着するように構成すると、炭化タングステンなどの適切な硬さの材料から切削ヘッド20を製造することを可能にし、かつ、高速度鋼などのそれほど硬くない安価な材料からシャンク68を製造することを可能にする。シャンク68は、磨耗又は損傷した切削ヘッド20を廃棄した後に再利用可能であってもよい。
【0131】
本発明のある実施形態では、各ヘッド溝48は、底面74に交差し、かつ、シャンク溝70のうちの1つと協働してもよい。
【0132】
また、本発明のある実施形態では、底面74は中心軸線A1に対して垂直であってもよく、支持面76は長手方向軸線ALに対して垂直であってもよく、かつ、中心軸線A1は長手方向軸線ALと同軸であってもよい。
【0133】
図17及び
図18に示すように、切削ヘッド20の中間部分24は、回転方向RDと反対に面した3つのトルク伝達面78を含んでもよく、シャンク68は3つの駆動突起80を含んでもよく、各駆動突起80は、回転方向RDに面した駆動面82を有し、かつ、各トルク伝達面78は駆動面82のうちの1つに接触してもよい。
【0134】
本発明のある実施形態では、各トルク伝達面78は、前面26のうちの1つに交差してもよい。
【0135】
図17及び
図18に示すように、切削ヘッド20は、底面74から軸線方向後方に延在する装着突起84を含んでもよい。
【0136】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、切削ヘッド20及びシャンク68は、例えば、中実ドリルなどの単一の一体構造の一体部分であってもよく、各ヘッド溝48は、シャンク溝70のうちに1つと融合してもよい。
【0137】
本発明をある程度詳細に説明したが、以下に特許請求される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな変更及び修正を行うことができることを理解されたい。
【国際調査報告】