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特表2024-512338自動引き戻しトリガのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】自動引き戻しトリガのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B1/00 526
A61B1/00 655
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553645
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022018516
(87)【国際公開番号】W WO2022187358
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,833
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】509128672
【氏名又は名称】ライトラボ・イメージング・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,クリストファー・イー.
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ジョエル・エム.
(72)【発明者】
【氏名】ネトラヴァリ,アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リンファ
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA22
4C161BB08
4C161CC06
4C161JJ11
4C161WW02
4C161WW07
(57)【要約】
本開示の態様は、血管壁の血管内画像を取り込むために、血管から血液が十分にクリアリングされたことを識別することに関する。開示されるシステム及び方法は、複数の画像フレームの走査線内のエッジの識別に基づいて、初期的な血液クリアリング及び最終的な血液クリアリングの識別を可能にする。複数の走査線のエッジを分析して、各画像フレームについての平均エッジオフセットを決定することができ、複数の画像フレームについての平均エッジオフセットを種々の時間窓にわたって平均化して、初期的な血液クリアリングイベント及び最終的な血液クリアリングイベントがいつ発生したかを判断することができる。最終的な血液クリアリングイベントが識別されると、開示されるシステムは、カテーテル引き戻し手順を自動的に開始して、血液が十分に除去された血管の長さにわたって、血管内画像を取り込むことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のプロセッサが、管腔の複数の血管内画像フレームにアクセスするステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、前記複数の血管内画像フレーム内の複数の走査線についての平均エッジオフセットを計算するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、1つ以上の初期条件に従って増加する画像フレームの第1のセットの前記平均エッジオフセットに基づいて第1のクリアリングイベントを識別するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、前記第1のクリアリングイベントの発生に基づいて、かつ1つ以上の最終条件に従って増加していない画像フレームの第2のセットの前記平均エッジオフセットに基づいて、第2のクリアリングイベントを識別するステップと
を含んでなる、管腔内に血液がないことを識別する方法。
【請求項2】
前記第2のクリアリングイベントを識別することに基づいて、かつ前記管腔が十分にクリアリングされた状態にあるという識別に基づいて、カテーテル引き戻し手順を前記1つ以上のプロセッサが自動的に開始するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の初期条件は、
1)短期時間窓平均エッジオフセットが、所定の最大値よりも大きいことと、
2)前記短期時間窓平均エッジオフセットが、少なくとも特定のオフセット量だけベースライン時間窓平均エッジオフセットよりも大きいこと
のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の最大値は、最大カテーテル外径オフセットよりも大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定のオフセット量は、40マイクロメートルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記短期時間窓平均エッジオフセットは、所定数の最近取り込まれた画像フレームを使用して計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースライン時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒を超える期間にわたって取り込まれた画像フレームを使用して計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の最終条件は、
1)中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の増分が、前記第1のクリアリングイベントの後に取り込まれた画像フレームについての前記中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の最大増分よりも小さいことと、
2)前記複数の画像フレームのうちの1つ以上において最大クリアリング面積が観察されてから所定の期間が経過したことと
のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記中間時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒未満の期間にわたって取り込まれた画像フレームに基づくものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記最大クリアリング面積は、1つ以上の画像フレームの平均エッジオフセットに基づいており、前記所定の期間は、少なくとも40秒である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサが、1つ以上の画像フレームの前記走査線の範囲にわたる最小ピクセル強度値及び最大ピクセル強度値の識別に基づいて、エッジ閾値を計算するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の血管内画像フレームは、透明層及びドープ層を備えたシースを有するカテーテルデバイスによって取り込まれ、前記エッジ閾値を計算することは、前記透明層に対応する走査線範囲内の前記最小ピクセル強度値を識別することと、前記ドープ層に対応する走査線範囲内の前記最大ピクセル強度値を識別することとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のプロセッサが、第1のエッジ閾値よりも大きい強度を有する選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づいて、かつ第2のエッジ閾値よりも小さい強度値を有する前記選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づいて、前記複数の血管内画像フレーム内のエッジを識別するステップを更に含み、前記第1のエッジ閾値は、前記第2のエッジ閾値よりも大きいものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
画像フレームデータを記憶するメモリと、
前記メモリと通信する1つ以上のプロセッサと
を備えてなり、
前記1つ以上のプロセッサは、
管腔の複数の血管内画像フレームにアクセスすることと、
前記複数の血管内画像フレーム内の複数の走査線についての平均エッジオフセットを計算することと、
1つ以上の初期条件に従って増加する画像フレームの第1のセットについての前記平均エッジオフセットに基づいて第1のクリアリングイベントを識別することと、
前記第1のクリアリングイベントの発生に基づいて、かつ1つ以上の最終条件に従って増加していない画像フレームの第2のセットの前記平均エッジオフセットに基づいて、第2のクリアリングイベントを識別することと
を行うように動作可能である、管腔内に血液がないことを識別するシステム。
【請求項15】
前記1つ以上のプロセッサは、前記第2のクリアリングイベントの前記識別に基づいて、かつ前記管腔が十分にクリアリングされたという識別に基づいて、カテーテル引き戻し手順を自動的に開始するように更に構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記1つ以上の初期条件は、
1)短期時間窓平均エッジオフセットが、所定の最大値よりも大きいことと、
2)前記短期時間窓平均エッジオフセットが、少なくとも特定のオフセット量だけベースライン時間窓平均エッジオフセットよりも大きいことと
のうちの少なくとも一方を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記所定の最大値は、最大カテーテル外径オフセットよりも大きい、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記特定のオフセット量は、40マイクロメートルである、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記短期時間窓平均エッジオフセットは、所定数の最近取り込まれた画像フレームを使用して計算される、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記ベースライン時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒を超える期間にわたって取り込まれた画像フレームを使用して計算される、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つ以上の最終条件は、
1)中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の増分が、前記第1のクリアリングイベントの後に取り込まれた画像フレームについての前記中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の最大増分よりも小さいことと、
2)前記複数の画像フレームのうちの1つ以上において最大クリアリング面積が観察されてから所定の期間が経過したことと
のうちの少なくとも一方を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
前記中間時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒未満の期間にわたって取り込まれた画像フレームに基づく、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記最大クリアリング面積は、1つ以上の画像フレームの平均エッジオフセットに基づいており、前記所定の期間は、少なくとも40秒である、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記1つ以上のプロセッサは、1つ以上の画像フレームの前記走査線の範囲にわたる最小ピクセル強度値及び最大ピクセル強度値の識別に基づいて、エッジ閾値を計算するように更に構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
前記複数の血管内画像フレームは、透明層及びドープ層を備えたシースを有するカテーテルデバイスによって取り込まれ、前記エッジ閾値を計算することは、前記透明層に対応する走査線範囲内の前記最小ピクセル強度値を識別することと、前記ドープ層に対応する走査線範囲内の前記最大ピクセル強度値を識別することとを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記1つ以上のプロセッサは、第1のエッジ閾値よりも大きい強度を有する選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づいて、かつ第2のエッジ閾値よりも小さい強度値を有する前記選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づいて、前記複数の血管内画像フレーム内のエッジを識別するように更に構成され、前記第1のエッジ閾値は、前記第2のエッジ閾値よりも大きいものである、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、血管系画像化及びデータ収集システム及び方法の分野に関する。特に、本開示は、血管の長さにわたって血管内画像取り込みを開始する前に特定の血管状態の存在を判定するシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年3月3日に出願された「Systems And Methods For An Automatic Pullback Trigger」と題する米国仮特許出願第63/155,833号の出願日の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示は、本明細書に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
冠動脈疾患は、世界中の主要な死因の1つである。冠動脈疾患をより良く診断、監視、及び処置する能力は、救命上で重要であり得る。血管内光コヒーレンス断層撮影(OCT:optical coherence tomography)は、検討するために冠動脈壁を覗き込み、その画像を生成するために光を使用するカテーテルベースの画像化モダリティ(catheter-based imaging modality)である。コヒーレント光、干渉法、及び微小光学部品を利用して、OCTは、病変部血管内のビデオレート生体内断層撮影(video-rate in-vivo tomography)をマイクロメータレベルの分解能で提供することができる。光ファイバプローブを使用して表面下の構造を高分解能で観察することは、内部の組織及び臓器の最小侵襲的画像化のために、OCTを特に有用にする。OCTによって可能になるこのレベルの詳細は、ユーザが冠動脈疾患の進行を監視するだけでなく、診断することを可能にする。
【0004】
患者の身体の部分のOCT画像化は、医者及び他の者のために有用な診断ツールを提供する。例えば、血管内OCTによる冠動脈の画像化は、狭小化又は狭窄の場所を明らかにし得る。この情報は、心臓専門医が、侵襲的冠動脈バイパス手術(invasive coronary bypass surgery)と、血管形成術(angioplasty)又はステントデリバリ等の低侵襲的カテーテルベース処置(less invasive catheter-based procedure)との間で選択を行うことを助ける。
【0005】
OCTは、超音波のいくつかの原理を、顕微鏡の画像化性能と、臨床医が使い慣れた形状因子と呼ばれるフォームファクタ(form factor)とに組み合わせたものである。超音波が後方散乱音「エコー」から画像を生成するのに対して、OCTは、生物学的組織内の内部微細構造から反射する赤外光波を使用する。赤外光の周波数及び帯域幅は、医療用超音波信号よりも桁違いに高く、その結果、画像解像度が大幅に向上し、超音波又はX線ベースのモダリティよりも約8倍~25倍高くなる。OCTは、コヒーレンスゲーティングを使用して、単一散乱光子を検出し、それによって、超音波又はコンピュータ断層撮影(X線)と同様の断層撮影画像化を可能にするが、解像度ははるかに高くなる。音速で移動する超音波エコーを処理するには標準的な電子技術で十分であるが、OCTで使用される光から反射光信号を抽出するには干渉技術が必要である。干渉計によって測定された出力は、コンピュータ処理されて、組織の高解像度のリアルタイムの断面又は3次元画像を生成する。この強力な技術により、標本の切除又は処理を必要とすることなく、組織学的解像度に近い組織の生体内原位置画像(■ situ image)が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
心血管OCTの潜在的な限界は、赤血球の成分が近赤外光を強く散乱させるため、血液が管腔内に存在するときに管腔壁の鮮明な画像を生成することができず、画像再構成が困難になることである。そのため、血液が管腔から除去されたことを容易に検出するシステム及び方法が必要とされている。以下に述べる本発明の態様及び実施形態は、この必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のシステム及び方法は、血管内画像フレームを処理し、血液が血管から十分になくなった(クリアリングまたは除去)ときを実質的にリアルタイムで識別して血管壁の画像化を可能にするものである。開示されるシステム及び方法は、血液が血管からクリアリングされ始めた瞬間に対応する初期の血液クリアリング状態の識別を可能にする。加えて、血管内の可視性がもはや改善していないという判定に基づいて、最終の血液クリアリング状態を識別することができる。血管内の可視性は、連続的に又は所与の期間内に取り込まれた複数の画像フレームの走査線内のエッジの識別に基づいて判定される。血液がクリアリングされるにつれて、各画像フレーム内の識別されたエッジは、平均して血管管腔の中心軸からのオフセットが大きくなる。複数の走査線のエッジを分析して、各画像フレームについての平均エッジオフセットを決定することができ、複数の画像フレームについての平均エッジオフセットを種々の時間窓にわたって平均化して、特定の血液クリアリング状態がいつ発生したかを判定することができる。血管からの血液の除去は、3つの状態に分けることができ、1)「クリアリング前の状態」(pre-clearing state)は、血管内に典型的な量の血液が存在する期間に対応し、2)「クリアリング中の状態」(currently-clearing state)は、血液が血管からクリアリングされる過程の期間に対応し、3)「十分にクリアリングされた状態」(sufficiently-cleared state)は、血液が血管から十分にクリアリングされた期間に対応する。クリアリング前の状態からクリアリング中の状態への移行は、初期クリアリングの瞬間と称されることがあり、クリアリング中の状態から十分にクリアリングされた状態への移行は、最終クリアリングの瞬間と称されることがある。血管はまた、以前の状態に戻る場合があり、例えば、血管は、十分にクリアリングされた状態に到達することなく、クリアリング中の状態からクリアリング前の状態に戻る場合がある。血管が最終クリアリングへの移行に達して十分にクリアリングされた状態に入ったことが識別されると、開示されるシステムは、カテーテル引き戻し手順を自動的に開始して、血液がクリアリングされた血管の長さにわたって血管内画像を取り込むことができる。開示される実施の形態の他の特徴及び利点は、以下の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
【0008】
血管の管腔内の血液のクリアリングを識別する方法及びシステムが、本明細書に開示される。本開示の態様によると、1つ以上のプロセッサは、管腔の複数の血管内画像フレームを取得することと、複数の血管内画像フレーム内の複数の走査線についての平均エッジオフセットを計算することと、1つ以上の初期条件に従って増加する画像フレームの第1のセットについての平均エッジオフセットに基づいて、第1のクリアリングイベントを識別することと、第1のクリアリングイベントの発生に基づいて、かつ1つ以上の最終条件に従って増加していない画像フレームの第2のセットについての平均エッジオフセットに基づいて、第2のクリアリングイベントを識別することと、第2のクリアリングイベントの識別に基づいて、かつ管腔が十分にクリアリングされた状態にあるという識別に基づいて、カテーテル引き戻し手順を自動的に開始することとを行うように構成されている。
【0009】
本開示の他の態様において、1つ以上の初期条件は、1)短期時間窓平均エッジオフセットが、所定の最大値よりも大きいことと、2)短期時間窓平均エッジオフセットが、少なくとも特定のオフセット量だけベースライン時間窓平均エッジオフセットよりも大きいことと、のうちの少なくとも一方を含み得る。また、所定の最大値は、最大カテーテル外径オフセットよりも大きく設定され得る。特定のオフセット量は、例えば、40マイクロメートルであり得る。短期時間窓平均エッジオフセットは、所定数の最近取り込まれた画像フレームを使用して計算され得る。ベースライン時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒を超える期間にわたって取り込まれた画像フレームを使用して計算され得る。
【0010】
本開示の他の態様において、1つ以上の最終条件は、1)中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の増分が、初期クリアリングイベントの後に取り込まれた画像フレームについての中間時間窓平均エッジオフセットのフレーム毎の最大増分よりも小さいことと、2)複数の画像フレームのうちの1つ以上において最大クリアリング面積が観察されてから所定の期間が経過したことと、のうちの少なくとも一方を含み得る。中間時間窓平均エッジオフセットは、0.5秒未満の期間にわたって取り込まれた画像フレームに基づくことができる。最大クリアリング面積は、1つ以上の画像フレームの平均エッジオフセットに基づき得て、所定の期間は、少なくとも40秒である。
【0011】
本開示の更に他の態様において、エッジ閾値は、1つ以上の画像フレームについての走査線の範囲にわたる最小ピクセル強度値及び最大ピクセル強度値の識別に基づいて計算され得る。
【0012】
本開示の更に他の態様において、複数の血管内画像フレームは、透明層及びドープ層を備えたシースを有するカテーテルデバイスによって取り込まれ、エッジ閾値を計算することは、透明層に対応する走査線範囲内の最小ピクセル強度値を識別することと、ドープ層に対応する走査線範囲内の最大ピクセル強度値を識別することとを含む。複数の血管内画像フレーム内のエッジは、第1のエッジ閾値よりも大きい強度を有する選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づき、かつ第2のエッジ閾値よりも小さい強度値を有する選択された走査線の少なくとも1つのピクセル強度値の識別に基づくものとすることができ、第1のエッジ閾値は、第2のエッジ閾値よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の態様による、OCT画像化及びデータ収集システムの概略図である。
図2】本開示の態様による、管腔内の観察された血液除去の視覚的表現の図である。
図3】本開示の態様による、血液除去プロセス中の異なる期間を表す、注釈付きOCT画像フレームの図である。
図4】本開示の態様による、血液除去プロセス中の異なる期間を表す、注釈付きOCT画像フレームの図である。
図5】本開示の態様による、血液除去プロセス中の異なる期間を表す、注釈付きOCT画像フレームの図である。
図6】本開示の態様による、初期クリアリング状態及び最終クリアリング状態を識別するフロー図である。
図7】本開示の態様による、エッジ閾値を計算するフロー図である。
図8】本開示の態様による、血液除去情報を計算するフロー図である。
図9】本開示の態様によるOCT画像フレームの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、OCTシステム10の構成要素を示す概略図である。OCTシステム10は、本明細書において説明される用途及びデータ収集のコヒーレンス及び帯域幅要件を満たす、任意の好適な光源を含み得る。対象の血管20は、血管壁21を含み、該血管壁21は、カテーテル25を用いて画像化される血管管腔を画定する。カテーテル25の一部は、その中に配置された光ファイバベースの画像化プローブ30を有する。カテーテル25は、フラッシュポート32を有するフラッシュサブシステムを含み得る。フラッシュシステムは、生体内OCTデータ収集(in vivo OCT data collection)がプローブ30を使用して進行することができるように、十分な量の血液を押しのける任意の好適なタイプ又は種類であり得る。システム10は、光ファイバを介して画像化プローブ30に接続するOCTシステム又はサブシステム36を含む。OCTシステム又はサブシステム36は、レーザ等の光源、干渉計、種々の光学経路、クロック発生器、フォトダイオード、及び他のOCTシステム構成要素を含み得る。
【0015】
1つ以上のコンピュータ又はプロセッサは、OCTシステム36の一部であってもよく、又はOCTシステム36と通信する別個のサブシステム40として含まれてもよい。コンピュータ又はプロセッサ40は、メモリ、ストレージ、バス、及び、データを処理し、かつ、以下に説明されるような管腔検出及び引き戻しデータ収集のフラッシュプロセス又はソフトウェアトリガ方法を実行するのに好適な他の構成要素を含み得る。1つの実施形態において、コンピュータ又はプロセッサは、メモリ内に記憶され、プロセッサを使用して実行される、本明細書に説明される方法のソフトウェア実施態様又はプログラム41を含む。ディスプレイ42はまた、システム10全体の一部であってもよく、横断面走査データを、長手方向走査として、又は他の適切なフォーマットで示す。
【0016】
心血管OCTの限界は、血球による近赤外光の散乱のために、血液を通して鮮明な管腔画像を取り込むことができないことである。したがって、血管20から血液が除去される前にOCT画像が取り込まれた場合、管腔壁21の適切な画像再構成は不可能である。したがって、管腔壁21のOCT画像を取り込むために、血管20は、一定期間にわたって血液が一時的に除去される。ポート32を通して適用される生理食塩水(saline)等のフラッシュ溶液(flush solution)を介して血液を押しのけることは可能であるが、フラッシュ速度は、冠動脈では毎秒1ml~5mlと比較的高い固有流に打ち勝つのに十分でなければならない。フラッシュベースのアプローチでは、約3秒~5秒の鮮明な画像時間を確立することができる。
【0017】
典型的なボーラス(10ml~20ml)に対して確立することができるクリアリング時間の長さは、局所血流量、動脈サイズ/画像化位置、側枝の出現率等の多くの要因に依存する。しかしながら、典型的には約2秒~約5秒の範囲である。OCT引き戻し記録(OCTデータ収集プロセス)を取得する時間は、約2秒~約4秒の範囲である。したがって、引き戻し中のOCTデータ取得は、十分なクリアリングが確立された瞬間に開始されることが望ましい。
【0018】
実質的にリアルタイム(又は所与の用途に好適な他のOCTシステム規定時間周期)で走査された画像を処理し、十分なクリアリングが検出されたときに引き戻しをトリガするコンピュータベースの方法が望ましい。コンピュータシステム40は、本明細書に記載の方法を実行することができる。1つの実施形態において、本明細書に説明される方法及びシステムは、リアルタイムで少なくとも180フレーム/秒の複雑な画像データを分析し、分析されたOCTフレームを使用して、血管が十分にクリアリングされた状態にあることを識別し、引き戻しを開始することができる。
【0019】
血管から血液が十分にクリアリングされた瞬間をシステムが正確に決定できることが重要であり、医師は、十分にクリアリングされた状態(血液がない状態)を識別するのに400ミリ秒の遅れでさえも望ましくないと考えることがある。画像取得を開始する際の遅延を最小限に抑えることによって、本システムは、体内に注入されたフラッシュ媒体を最大限に利用することができ、引き戻しのクリアリングされた部分を最大化することができ、引き戻しの遠位端で血管に再進入する血液の存在を最小限に抑えることができ、血管の最適な治療に関する情報を提供する記録の有用性を最大化することができる。あるいは、クリアリングされた状態の偽陽性判定は、血管から血液がクリアリングされる前にOCT引き戻し手順を開始させる場合がある。したがって、本明細書に開示されるシステム及び方法は、クリアリングされた状態を正確に識別することを対象としており、それによって、OCT引き戻しが早すぎるか又は遅すぎるかのいずれかで生じることを防止する。自動化されたソフトウェアベースのシステム又は方法を使用して、確実かつリアルタイムでフラッシュクリアリングを検出する好適な方法は、本発明の1つの特徴である。
【0020】
本開示のシステム及び方法はまた、管腔の正確な形状及びサイズが未知である環境を含む、多種多様な環境で機能するように設計されている。加えて、開示されるシステム及び方法は、約2ミリメートルの直径を有するもの等の小さな管腔の血液のクリアリング(除去)の検出を可能にする。他の血液クリアリング検出方法では、管腔がクリアリングされたことを確立するために、検出された管腔壁オフセットの特定の程度の変化を要求するため、そのような小さな管腔のクリアリング状態を識別することができないことが多い。
【0021】
血管管腔フラッシュクリアリングのソフトウェア検出は、以下に概説されるように行われ、例えば、以下に説明される方法の全て又はサブセットが使用される。好適なクリアリング状態が達成されると、ソフトウェアは、OCT血管内引き戻しデータ収集プロセス又は記録の取得を自動的にトリガする。ソフトウェアベースの方法を使用して、動脈のクリアリング状態を検出することができる。このソフトウェアベースの方法は、動脈のOCT画像を実質的にリアルタイムで処理して、各画像についてクリアリング半径メトリック及び品質メトリック値を決定する。クリアリング半径及び他の潜在的な品質メトリック値が予め定義された「完全にクリアリングされた動脈」(fully-clear artery)の基準を満たすと、引き戻し(pullback)及びデータ取得を自動的に開始することができる。引き戻しとは、プローブ30及び/又はカテーテル25が血管20を通して引き戻されて、血管の評価及び治療に使用するデータが収集されることを指す。プローブ30及び/又はカテーテル25が引き戻されると、OCTデータが収集され、OCTシステム36及び/又はコンピュータシステム40に送信される。プローブ30が長手方向に静止しているとき、フラッシュの初期化に続いてクリアリング状態検出方法を実行するために、データがコンピュータシステムに送信される。
【0022】
図1に関して、対象の血管20が冠動脈である場合、冠動脈のOCT画像化は、プローブ30を有するカテーテル25等のOCT光ファイバ画像化カテーテルを使用して実施することができる。OCT画像化カテーテル25は、引き戻し記録が開始される位置で動脈内に配置され、OCTソフトウェアコンピュータベースの方法のフラッシュクリアリング検出が初期化される(有効化される)。そして、OCTシステムのオペレータは、(生理食塩水、造影溶液、デキストラン、又は同等物等の)クリアリング剤(フラッシュ)を動脈の中へと注入し、画像化のために動脈をクリアリングする。そして、コンピュータ40上で実行されるフラッシュクリアリング検出方法は、注入されたフラッシュにより、OCTシステムが良好な画像を取得することを可能にするのに十分な動脈のクリアリングが得られたことを判定する。引き戻しは、そのような判定が行われたときにコンピュータによってトリガされる。十分なクリアリングの判定は、OCTシステム36又はコンピュータシステム40によって取得される各フレームを処理することによって、リアルタイムで行うことができる。
【0023】
図1に示されるシステムは、血管20内の各取り込まれたOCT画像フレームを処理するように構成することができる。各画像フレームを処理する際、画像は、画像内のエッジ又は境界を識別し、管腔の中心からの識別されたエッジのオフセットの量を判断するように分析され得る。血管20内に血液が存在する場合、画像化カテーテル25からの光は、血球によって散乱されており、その結果、任意の識別されたエッジは、径方向軸に沿って中心軸から小さなオフセットを有している。血液が血管20から除去されるにつれて、OCT画像内の識別されたエッジは、カテーテルの中心軸からより大きいオフセットを有する。
【0024】
図2は、血液が血管からクリアリングされているときに、一定期間にわたって血管内の特定の位置で観察されるエッジオフセットを示す図である。図2の破線210は、画像化カテーテルの中心軸を表しており、暗領域の境界220は、OCTカテーテルが一定期間にわたって血管内画像フレームを取り込むときに、OCTカテーテルからの光を分析することによって識別される観察されたエッジを表す。破線210と境界220との間の距離は、所与の瞬間に観察される平均エッジオフセットを表す。図2に見られるように、エッジオフセットは、最初は比較的小さい。これは、管腔内に血液が存在するためである。血液が管腔からなくなっていくにつれて、観察されたエッジの境界220は、血管の中心軸210からより遠くに移動する。本開示によれば、エッジオフセットが広がり始める点が、初期クリアリングの瞬間として識別される。いったん初期クリアリングが観察されると、血管は、クリアリング中の状態となり、そして、開示されるシステムは、血管が十分にクリアリングされた状態に入ったのか、又はクリアリング前の状態に戻ったのかを判定することができる。図2では、血管は、「最終クリアリング」(final clearing)を経て、クリアリング中の状態から十分にクリアリングされた状態に移行している。以下で説明するように、十分にクリアリングされた状態は、平均エッジオフセットが所定の期間にわたって比較的にクリアリングされ安定した状態に達したという判定に基づき得る。血管が最終クリアリングを経て十分にクリアリングされた状態に入ったことを識別すると、図1に関連して上述したシステムは、引き戻し手順を自動的に開始するように構成することができ、カテーテルが血管の所定の長さに沿って引き戻され、OCT画像がその長さにわたって取り込まれる。引き戻し手順中に血管から血液が除去されているので、取り込まれたOCT画像は血管内の血液による不明瞭さが最小限に抑えられる。
【0025】
本開示の態様によると、図1のシステムは、各画像フレームの平均エッジオフセット(「AEO:average edge offset」)を計算するように、取り込まれたOCT画像フレームを処理することができる。図3図5は、図1のカテーテルベースのデータ収集プローブ30によって患者の動脈の血管内の特定の位置で取り込まれ得る3つの注釈付きOCT画像フレームの例である。図3は、血管から血液が除去(クリアリング)されていないOCT画像フレーム300の図である。OCT画像フレーム300を処理する際に、画像の各走査線を分析して、カテーテルの中心302からのエッジオフセットを識別することができる。OCT画像は、各走査線がカテーテルの中心302についてのAラインとして処理されるように、極座標で分析され得る。各注釈点304は、各走査線について観察されたエッジを表す。明確にするために、画像300では、注釈点304のうちの2つのみが参照番号を与えられている。画像300に示されるように、識別された点304は、中心302の周囲に円を形成し、点304はそれぞれ、中心302から同様の距離にある。中心302からの各点304の距離は、「エッジオフセット」(edge offset)として計算及び記憶され得る。この距離は、点304と中心302との間の画像ピクセルの数に基づき得る。画像は、2D走査変換された座標で表されるので、物理的にカテーテル及び血液野のように見える表現を有する。しかしながら、オフセット測定は、典型的には、極座標において径方向に行われ、全ての画像処理は、そのような極座標において行うことができる。各点304のエッジオフセットに基づいて、平均エッジオフセットを計算することができ、該平均エッジオフセットは、画像フレーム内の全ての走査線について識別されたエッジの中心302からの平均距離を表す。中心302の周囲に観察されるリング306は、異なるレベルのピクセル強度を生成する、ドープ層及び透明層を有するカテーテルシース(catheter sheath)の結果である。以下に記載されるように、開示されるシステム及び方法は、カテーテルシースのこれらのドープ層及び透明層を考慮したエッジ検出プロセスを使用することができる。カテーテルシースのドープ層及び透明層は、カテーテルシースの外側エッジを識別するために使用することができ、画像エッジの探索は、カテーテルシースの外側エッジをちょうど越えたところから開始して径方向外向きに進むように構成され得る。カテーテルシースの外側エッジをちょうど越えて開始することによって、システムは、カテーテルのシースに付着したままの血液の任意の薄い層においてエッジが識別されることを回避する。加えて、カテーテルシースのドープ層及び透明層を使用して、画像ピクセル強度をサンプリングし、画像内のエッジ検出の好適な閾値を識別することができる。
【0026】
図4は、OCT画像フレーム400であり、OCT画像フレーム400は、血管から血液を除去(クリアリング)するように、造影剤溶液が血管を洗い流し始める期間に取り込まれている。走査線のいくつかについて観察されたエッジの一部は、図3の画像300において識別されたエッジと同じ中心302からの距離のままである。これらのエッジの一部は、画像400において注釈点304aとして識別されている。しかし、画像400内のいくつかの走査線のエッジは、注釈点304bに見られるように、中心302からのより大きなオフセットを有している。いくつかの走査線について増加したエッジオフセットが与えられると、画像400についての平均エッジオフセットは、画像300の平均エッジオフセットよりも大きくなる。画像300と比較した画像400の平均エッジオフセットのこの増加を用いて、図2に関連して上述したように、血管がクリアリング前の状態からクリアリング中の状態に移行したときに、血管が初期クリアリングを経たと判定することができる。
【0027】
図5は、血管から血液を除去(クリアリング)し続けるように、造影剤溶液が血管を洗い流し続けた期間に取り込まれたOCT画像フレーム500である。図5に見られるように、画像フレーム500は、エッジオフセットが画像フレーム300又は400のいずれかに示されたエッジオフセットよりも大きい多数の走査線を含む。特に、注釈点304cは、観察されたエッジが血管壁に対応する走査線を表す。したがって、これらの走査線のエッジオフセットは、血液が血管から洗い流され続けても、それ以上著しく増加することはない。注釈点304aは、血液又は別の物質が依然として中心302に比較的近い後方散乱を引き起こしている走査線を表す。しかしながら、注釈点304aを含む走査線は、注釈点304cを含む走査線と比較して数が比較的少ない(20%未満)。したがって、画像フレーム500についての平均エッジオフセットは、エッジオフセットのほとんどが画像フレーム毎に大きく変化しなくなるため、比較的安定した値に近づき始める。本開示の態様によれば、血管は、計算された平均エッジオフセットが一連のOCT画像フレームにわたって比較的安定していることに基づいて、クリアリング中の状態から十分にクリアリングされた状態に移行したと判定され得る。
【0028】
図6図8は、図1に示されるシステムが、本開示による血管の初期クリアリング及び最終クリアリングを識別し得る例を提供するフロー図である。図6図8の動作ブロックはそれぞれ特定の順序で提供されるが、開示されるシステムの1つ以上のプロセッサは、方法及びシステムの態様に従って、動作を追加するか、動作を削除するか、又は動作の順序を切り替えるように構成され得る。
【0029】
図6は、OCT画像フレームを使用して血管が初期クリアリング及び最終クリアリングを経たことを識別するフロー図600である。OCT画像は、ライブ画像パイプラインからフレーム毎に処理することができ、画像フレーム及びカテーテルオフセットデータは、ブロック602において入力として提供される。ブロック604において、画像データを平滑化してノイズを低減することができる。この平滑化は、5×5空間移動平均ボックスカーフィルタカーネル等のフィルタカーネルを使用して達成することができる。ブロック606において、エッジ閾値が画像データについて計算され、ブロック608において、エッジオフセット及び関連する血液除去情報が集積され得る。エッジ閾値(ブロック606)及び血液除去情報(ブロック608)を計算するプロセスの例は、それぞれ、図7及び図8に提供されている。前述のように、画像フレームへのエッジ閾値の適用は、各走査線におけるエッジの識別を含んでもよく、血管の中心からの各識別されたエッジのオフセットは、血液除去情報を表すエッジオフセットとして計算される。画像フレームの各走査線のエッジオフセットを使用して、各画像フレームの単一の平均エッジオフセットを計算することができる。この平均エッジオフセットは、エッジオフセットの平均値であり得るか、又は複数のエッジオフセットの別の形態の統計分析の結果であり得る。
【0030】
ブロック610において、多すぎるエッジオフセットがカテーテルの外径オフセットから予め定義された距離内にあるかどうかを判定するために、チェックが実施され得る。例えば、エッジオフセットがカテーテル外径オフセットから120マイクロメートル以内にあるかどうかを判定することができ、エッジオフセットの80%等の或る特定の割合がこの予め定義された距離以内にある場合、システムは、現在の画像フレームをスキップし、ライブパイプライン中の次の画像フレームの処理に進む。画像フレームのエッジオフセットがカテーテルの外径オフセットに近すぎない場合、システムは、ブロック612において提供されるように、時間窓平均エッジオフセット(TWAEO:time-windowed average edge offset)を計算することによって画像フレームを処理することに進むことができる。TWAEOは、特定の期間にわたって又は特定の数の画像フレームにわたって計算された全ての平均エッジオフセットの時間窓平均を表す。特に、システムは、異なる期間を有する、又は異なる数の画像フレームを有する窓に基づいて、複数のTWAEOを計算することができる。例えば、過去1秒間、又はベースラインを確立するのに十分に大きい何らかの他の期間にわたって取り込まれた画像フレームの平均エッジオフセットの時間窓平均をとることによって、ベースライン時間窓平均エッジオフセットTWAEO1を計算することができる。ベースライン時間窓は、典型的には、長期平均エッジオフセットを確立するために、少なくとも0.5秒以上である必要がある。中間時間窓平均TWAEO2は、0.5秒未満の時間窓にわたって取り込まれた画像フレームについて計算された平均エッジオフセットの平均を取ることに基づき得る。例えば、中間時間窓は0.2秒であり得る。加えて、固定数の最近取り込まれたフレームに基づいて、短期時間窓平均TWAEO3を計算することができる。例えば、TWAEO3は、パイプライン中の最後の4つの画像フレームについての平均エッジオフセットの時間窓平均であり得る。
【0031】
TWAEO1は、比較的長い計画対象期間にわたって取り込まれた多数の画像フレームについての平均エッジオフセットに基づくので、TWAEO1を使用してベースライン時間窓を表すことができる。この1秒の時間窓に含まれる画像フレームの数は、OCT画像化デバイスのフレームレートに基づくが、いくつかのOCT画像化デバイスでは、1秒の窓は、約180の画像フレームを含み、これは毎秒180フレームの高速スピンを表す。TWAEO2に関して、この時間窓平均を使用してエッジオフセット増分をチェックし、クリアリング改善傾向を査定し、最終クリアリングが生じたかどうかを判定することができる。TWAEO3の短期窓は、瞬時のエッジオフセット変化が所定の複数の画像フレームにわたって発生した際に、それらを識別するために使用され得る。
【0032】
ブロック612で計算された1つ以上のTWAEOをブロック614で使用して、血管が初期クリアリング状態に入ったかどうかを判定することができる。前述のように、初期クリアリングは、血液が血管から除去され始めたため、血管は、クリアリング前の状態からクリアリング中の状態に移行したと見なされ得る状態である。初期クリアリングは、画像フレーム内で観察される平均エッジオフセットの増加に基づいて識別することができる。初期クリアリングの判定は、計算されたTWAEOのうちの1つ以上に基づくことができ、複数の初期条件のうちの少なくとも1つが満たされたと判定することに基づくことができる。第1の条件は、血管が血液の初期クリアリングを経たことと一致する平均エッジオフセットの絶対量に基づくことができ、第2の条件は、より長い時間窓ベースラインについての平均エッジオフセットの短窓増加(short-window increase)を表すことができる。例えば、ブロック614において、以下の条件、すなわち、1)TWAEO3が、画像フレーム内の全てのAラインについてのカテーテル外径オフセットの最大値を超えて120マイクロメートルよりも大きい、又は2)TWAEO3が、TWAEO1のベースラインオフセットを超えて40マイクロメートルよりも大きく増加した、のいずれかが満たされる場合、血管が初期クリアリングを経たかどうかが判定され得る。第1の条件及び第2の条件のために使用される120マイクロメートル及び40マイクロメートルの値は、単なる例であって、異なる値が、OCTカテーテル及びカテーテルシースの構造に基づいて使用され得る。例えば、第1の条件は、カテーテル外径オフセットよりも大きい任意のTWAEO3値に対して満たされるように修正されることがあり、第2の条件は、増加が平均エッジオフセットの実際の増加を示すのに十分であるという条件で、TWAEO1についてのTWAEO3の任意の増加に基づくように修正されることがある。
【0033】
初期クリアリングがまだ識別されていない場合、血管は、クリアリング前の状態のままであり、システムは、ブロック602に戻ることができ、パイプライン中の次の画像フレームが処理される。初期クリアリングが検出された場合、システムは、ブロック618に進むことができ、クリアリング中の状態から十分にクリアリングされた状態に移行するように、血管が最終クリアリングを経たかどうかの判定が行われる。最終クリアリングイベントの判定は、平均エッジオフセットが所定の期間にわたって安定状態に達したことを示す計算されたTWAEOのうちの1つ以上に基づくことができ、この判定は、1つ以上の最終条件が満たされたことに基づくことができる。平均エッジオフセットの安定状態は、平均エッジオフセットが何らかの所定の値又はレートだけ改善しなくなったと判定されたときに識別することができる。例えば、以下の2つの条件、すなわち、1)フレーム毎のTWAEO2の増分が、以前の画像フレームの処理中に記録された最大増分よりも所定の量だけ小さいこと、又は2)最大クリアリング面積が記録されてから所定の期間を超えていること、のいずれかが満たされることが分かった場合、血管は「改善なし」(no-improvement)と判定され得る。例えば、第1の条件に関連して、フレーム毎のTWAEO2増分が、以前の画像フレームの処理中に記録された最大増分の3分の1未満であるときに、血液除去が安定状態に入ったと判定することができる。血液除去が最終的な安定状態に入ったことを示すように、平均エッジオフセットの増加が十分に遅くなったことを示す比較である限り、時間窓平均エッジオフセットの他の比較を使用することができる。第2の条件については、1つ以上の画像フレームの最大平均エッジオフセットが40ミリ秒以上前に記録された場合に最終クリアリングが識別されるように、所定の期間は、例えば、少なくとも40ミリ秒であり得る。加えて、所定の期間は、最終クリアリングが達成されるとすぐに引き戻し手順を開始し、しかし最終クリアリングの偽陽性の識別を引き起こすことなく、微調整することができる。例えば、所定の期間は、44.44ミリ秒となるように選択され得る。
【0034】
ブロック620において、「改善なし」の条件が満たされていないと判定された場合、システムは、パイプライン中の次の画像フレームの処理に進むことによって、ブロック602に戻ることができる。しかしながら、「改善なし」の条件のうちの少なくとも1つが満たされた場合(ブロック620)、システムは、血管が十分にクリアリングされた状態にあるかどうかを判定することができる(ブロック622)。この判定は、現在処理されている画像フレーム、又は最近取り込まれた画像フレームのセットのクリアリング面積が初期クリアリング面積よりも大きいかどうかに基づき得る。例えば、現在の画像フレームの平均エッジオフセットは、初期クリアリングの発生時又はその直後に観察された平均エッジオフセットと比較され得る。現在のクリアリング面積が初期クリアリング面積よりも十分に大きい場合、血管は、最終クリアリングを経て、十分にクリアリングされた状態であると判定され得る。具体的には、現在のクリアリング面積が、初期クリアリング面積に或る値「K」を乗じたもの以上であるかどうかが判定されることがあり、ここで値Kは、1.0以上である。このK値は、血液が血管に戻ったインスタンスを識別するように、最終クリアリング検出の感度を調整するように調整することができる。K値が大きいほど、最終的なクリアリングに達したと判定するバーが高くなる。そして、システムは、引き戻し手順を自動的に開始するように構成されることがあり、その時点で、カテーテルは、血管壁の画像を取り込みながら、血管の所定の長さを通して引き戻される。引き戻し中に取り込まれた画像は、血管の診断のために保存及び処理することができる。ブロック622において、十分にクリアリングされた状態が存在することが見出されない場合、初期クリアリング状態は、偽にリセットされることがあり、システムは、パイプライン中の次の画像フレームを処理するためにブロック602に戻り得る。
【0035】
図7は、図6のブロック606に関連して実施され得るエッジ閾値計算の例を提供するフロー図700である。ブロック702において、平滑化された画像フレーム及びカテーテルオフセットデータが受信される。エッジ閾値を計算する際に、システムは、カテーテルシースの異なる層を表すOCT画像の検出可能な層に関する情報を使用することができる。特に、カテーテルシースは、OCT画像の中心の周りの領域に対応するドープ層と、ドープ層を取り囲む透明層とを含み得る。
【0036】
図9を参照すると、ドープ層及び透明層がOCT画像900に見られる。特に、カテーテルシースのドープ層は、画像900内に現れるリング902によって識別することができる。リング902の外側に、リング904が見られる。このリング904は、カテーテルシースの透明層に対応する。以下に説明されるように、ドープ層及び透明層は、OCT画像内のエッジを識別する閾値レベルを較正するために使用され得る。
【0037】
ドープ層は、TiO充填散乱層であり得る。画像900は、OCT画像のネガであり、したがって、ドープ層は、暗いリングとして現れるが、標準画像では、ドープ層は、OCT画像内の明るいバンドとして現れる。外径層は、画像化カテーテルの最も外側の境界である。カテーテルシースオフセットは、OPTISカテーテルシース検出アルゴリズムによって計算することができる。エッジ閾値の計算のために、ドープ層のオフセット及びカテーテルシースの外径を使用することができる。
【0038】
図7に戻ると、ブロック704において、システムは、画像フレーム内の別の走査線/Aラインに対して繰り返す。ブロック706において、カテーテル透明層における最小値/谷強度値「Imin」が識別される。ブロック708において、ドープ層の最大値/ピーク値「Imax」が識別され、この最大値の範囲は、ドープ層の内側境界とドープ層の外側境界との間である。例えば、いくつかのカテーテルシースに関して、内側境界位置は、ドープ層外側境界から外径層境界までの範囲で、ドープ層外側境界から約0.0015インチ(0.0381ミリメートル)又は約38マイクロメートル内側として識別することができる。そして、ブロック704~ブロック708の反復プロセスが、OCT画像フレームの全ての走査線を通して繰り返される。
【0039】
ブロック710において、Imin値及びImax値の平均を計算することができ、そして、Imin値及びImax値の平均に基づいて閾値「Ttissue」を推定することができる(ブロック712)。例えば、閾値Ttissueは、以下の式に基づいて推定され得る。
【数1】
上述の加算は、第1の走査線「α=1」から開始して最終走査線「N」まで、画像の走査線の全てにわたって行われる。そして、この閾値は、図6のブロック608において、画像フレーム内のエッジを識別し、クリアリング情報を計算するために使用され得る。
【0040】
図8は、図6のブロック608に関連してクリアリング情報が計算され得る例を提供するフロー図800である。クリアリング情報は、画像フレーム内で観察される血管の管腔及び血液エッジオフセットに基づく。図6のブロック608に関連して、エッジ検出アルゴリズムは、カテーテルシースオフセット入力についての立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出するように、画像の極座標の各走査線に沿って1Dエッジ発見カーネルとして適用することができる。エッジの探索範囲は、カテーテルシースの外径オフセットから各Aラインの端部までの所定の距離であり得る。特に、エッジ探索範囲は、制御可能な変数によって設定されることがあり、この変数は、血液の残りの薄い塊を識別することを回避するのに十分な値に設定され得る。例えば、エッジ探索範囲は、外径オフセットから70マイクロメートル外側から各Aラインの端部までとなるように設定され得る。この70マイクロメートルのオフセットは、カテーテルシースの外径層のエッジで起こり得るブルーミングを回避し、カテーテルシースを詰まらせ得る血液の少量の残留物を回避するために追加され得る。エッジ検出アルゴリズムは、フロー図700に関連して計算された閾値を用いて立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを識別するように構成され得る。特に、Ttissueは、血液エッジ(「BE」)閾値として使用され得て、血管エッジ(「VE」)閾値は、Ttissueの半分等の割合として定義することができる。
【0041】
このクリアリング情報データを計算する例が、図8のフロー図800に示されている。フロー図800のブロック802において、平滑化された画像フレーム及び計算されたエッジ閾値データがアクセスされる。ブロック804において、システムは、分析される画像フレームの次のAラインに対して繰り返す。そして、システムは、外径オフセットから70マイクロメートルである場所から選択されたAラインの端部までピクセル強度を走査し(ブロック806)、そして、選択されたAラインのエッジ検出処理に進むことができる。
【0042】
定義されたVE閾値及びBE閾値に基づいて、走査線を処理して、走査線のエッジオフセットを決定することができる。この決定の一部として、アルゴリズムは、存在する任意の血液についてのオフセット及び血管エッジについてのオフセットを計算しようと試みることができる。両方の計算が成功した場合、計算は、ほぼ同じオフセットに帰着することができるが、血液が存在するが血液の背後が一部クリアリングされている場合、計算は、同じオフセットに帰着しない。これらのオフセットの決定については、以下で更に説明する。血液エッジオフセット及び血管エッジオフセットの両方が求められると、2つのオフセットの間で探索を実施して、クリアリングが存在するかどうかを判定することができ、これは、オフセット間の平均強度がクリアリング閾値未満であることによって示され得る。そのようなクリアリング閾値は、血液エッジ閾値を3.3で除算したものであり得る。この条件が満たされる場合、これは、2つのオフセット間の実質的なクリアリングを示し、オフセットのうちのより遠い方(血管エッジオフセット)が、走査線のエッジオフセットとして選択される。そうでなければ、血液エッジオフセットがエッジオフセットとして選択される。
【0043】
例えば、ブロック808において、カテーテルから外側に探索することによって、選択されたAラインにおけるピクセル強度が血液エッジ閾値よりも大きいかどうかの判定が行われる。ピクセルサンプルがBE閾値よりも大きい強度を有する場合、血液エッジオフセットは、閾値よりも大きい強度を有する第1のピクセルのインデックスにおいて識別され(ブロック810)、Aラインは、検出されたエッジオフセットを有するものとしてフラグを立てられる(ブロック812)。ブロック814において、Aラインの端部から血管の中心に向かって内向きにピクセル強度をチェックすることができ、ピクセル強度がVE閾値よりも大きいかどうかの判定が行われる(ブロック816)。ピクセル強度がVE閾値よりも大きい場合、Aラインの探索は、VE閾値よりも大きいサンプルの後に、その強度がVE閾値よりも小さい第1のピクセルを見つけるために継続され、立ち上がりエッジの存在を示すようにする(ブロック818)。ブロック818で立ち上がりエッジの存在が判定された場合、立ち上がりエッジは、血管エッジオフセットとして設定される(ブロック820)。ブロック816又はブロック818のいずれかの判定が満たされない場合、血管壁エッジオフセットが見つからないと判定される(ブロック822)。
【0044】
ブロック808に戻ると、Aラインに沿ったピクセル強度がBE閾値よりも大きくない場合、探索範囲内にピークが存在するかどうかの判定が行われる(ブロック824)。存在する場合、血液エッジオフセットは、ピークのインデックス位置に関連付けられる(ブロック826)。ブロック824が探索範囲内のピークを識別しない場合、血液エッジオフセットは、ピクセルインデックスの開始と関連付けられる(ブロック828)。ブロック830において、Aラインは、血管壁エッジオフセットが検出されていないとしてフラグを立てられる。
【0045】
結果として得られる各走査線/Aラインのエッジオフセットは、画像フレームの平均エッジオフセットの計算に使用することができる。ブロック832において、エッジオフセット、平均化されたエッジオフセット、Aラインがクリアリングされたかどうかの識別、及び他の全てのエッジ情報を含むクリアリング情報が集積される。そして、システムは、ブロック804に戻って、画像フレームの次のAラインまで繰り返すことができる。画像フレームの全てのAラインが処理されると、ブロック834において、画像フレーム全体のクリアリング情報を集約することができ、ブロック836において、集約されたクリアリング情報をフロー図600で使用して、上述した方法で図6のブロック610において処理することができる。したがって、上述のフロー図は、OCT引き戻し手順が自動的に開始され得る条件を識別するために、血管内の初期クリアリングイベント及び最終クリアリングイベントの検出を可能にする。
【0046】
(開示したシステム及び方法を実装する非限定的なソフトウェア特徴及び実施形態)
上記の説明は、適用可能な環境又は本開示の範囲を限定することを意図されない。同様に、ハードウェア及び他の操作コンポーネントは、上述した装置の一部として適するものとすることができる。本開示は、パーソナルコンピュータ、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースの又はプログラマブルな電子デバイス、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を含む、他のシステム構成を用いて実施することができる。本開示はまた、カテーテル又はカテラボ(cath lab)の異なる部屋内等の、通信ネットワークを通してリンクされる遠隔処理デバイスによってタスクが実施される分散コンピューティング環境において実施することもできる。
【0047】
詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内でのデータビットに対する操作のアルゴリズム及び記号表現によって提示される。これらのアルゴリズム記述及び表現を、コンピュータ及びソフトウェア関連分野の当業者によって使用することができる。1つの実施形態において、アルゴリズムは、本明細書では、一般的に、所望の結果をもたらす操作の自己一貫性シーケンス(self-consistent sequence)であると考えられる。方法ステップとして実施される又は本明細書でその他の方法で述べる操作は、物理量の物理的マニピュレーション(manipulations)を必要とする操作である。必ずしもそうではないが通常、これらの量は、記憶される、転送される、結合される、変換される、比較される、及びその他の方法でマニピュレートされることが可能な、電気信号又は磁気信号の形態を取る。
【0048】
別段の定めがない限り、以下の議論から明らかなように、説明全体を通して、「処理する(processing)」又は「計算する(computing)」又は「探索する(searching)」又は「検出する(detecting)」又は「測定する(measuring)」又は「計算する(calculating)」又は「比較する(comparing)」又は「生成する(generating)」又は「決定(determining)」又は「表示する(displaying)」等の用語又はブール論理又は操作に関連する他のセット等を利用する議論は、コンピュータシステム又は電子デバイスの動作(action)及びプロセスを指し、その動作及びプロセスは、コンピュータシステムの又は電子デバイスのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータをマニピュレートし、電子メモリ若しくはレジスタ又は他のそのような情報記憶デバイス、伝送デバイス、又は表示デバイス内の物理量として同様に表される他のデータに変換することが、認識される。
【0049】
本開示はまた、幾つかの実施形態において、本明細書の操作を実施するための装置に関する。この装置は、要求される目的のために特別に構築することができる、又は、この装置は、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成された汎用コンピュータを含み得る。
【0050】
本開示の実施形態は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又は汎用コンピュータ)とともに使用するためのコンピュータプログラムロジック、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブルロジックデバイス)とともに使用するためのプログラマブルロジック、ディスクリートコンポーネント、集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))、又はその任意の組み合わせを含む任意の他の手段を含むが、それらに全く限定されない多くの異なる形態で具現化することができる。本開示の典型的な実施形態において、OCTプローブ及びプロセッサベースのシステムを使用して収集されるデータの処理の一部又は全ては、コンピュータプログラム命令のセットとして実装され、その命令のセットは、コンピュータ実行可能な形式に変換され、コンピュータ可読媒体にそれ自体記憶され、オペレーティングシステムの制御下でマイクロプロセッサによって実行される。こうして、クエリ応答及び入力データは、画像化データを生成し、血管境界を検出し、ステントストラットを検出し、測定された距離を設定閾値と比較し、画像比較、信号処理、血管検出、及び上述した他の特徴及び実施形態をその他の方法で実施するのに適するプロセッサ理解可能な命令に変換される。
【0051】
本明細書において上述した機能の全部又は一部を実施するコンピュータプログラムロジックは、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、及び種々の中間形式(例えば、アセンブラ、コンパイラ、リンカ、又はロケータによって生成される形式)を含むが、それらに全く限定されない、種々の形式で具現化することができる。ソースコードは、種々のオペレーティングシステム又はオペレーティング環境とともに使用するために、種々のプログラミング言語(例えば、オブジェクトコード、アセンブリ言語、又は、Fortran、C、C++、JAVA、又はHTML等の高水準言語)のいずれかで実装された一連のコンピュータプログラム命令を含み得る。ソースコードは、種々のデータ構造及び通信メッセージを規定し、使用することができる。ソースコードは、(例えば、インタプリタを介して)コンピュータ実行可能な形式とすることができる、又は、ソースコードは(例えば、トランスレータ、アセンブラ、又はコンパイラを介して)コンピュータ実行可能形式に変換することができる。
【0052】
コンピュータプログラムは、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケット又は固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROM)、PCカード(例えば、PCMCIAカード)、又は他のメモリデバイス等の有形の記憶媒体に任意の形式(例えば、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、又は中間形式)で永続的又は一時的に固定することができる。コンピュータプログラムは、様々な通信技術のうちの任意のものを用いてコンピュータに送信可能である信号に任意の形式で固定することができる。これらの通信技術は、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、これらに全く限定されるものではない。コンピュータプログラムは、添付の印刷文書又は電子文書を有するリムーバブル記憶媒体(例えば、市販(shrink wrapped)ソフトウェア)として任意の形式で配布することもできるし、コンピュータシステム(例えば、システムROM又は固定ディスク)にプリロードすることもできるし、サーバ又は電子掲示板から通信システム(例えば、インターネット又はワールドワイドウェブ)を介して配信することもできる。
【0053】
本明細書において上述した機能の全て又は一部分を実施するハードウェアロジック(プログラマブルロジックデバイスとともに用いられるプログラマブルロジックを含む)は、従来の手動の方法を用いて設計することもできるし、コンピュータ支援設計(CAD)、ハードウェア記述言語(例えば、VHDL又はAHDL)、又はPLDプログラミング言語(例えば、PALASM、ABEL、又はCUPL)等の様々なツールを用いて電子的に設計、取り込み、シミュレーション、又は文書化することもできる。
【0054】
プログラマブルロジックは、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケット又は固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROM)、又は他のメモリデバイス等の有形の記憶媒体に永続的又は一時的のいずれかで固定することができる。プログラマブルロジックは、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、これらに全く限定されない様々な通信技術のうちの任意のものを用いてコンピュータに伝送可能な信号に固定することができる。プログラマブルロジックは、添付の印刷文書又は電子文書を有するリムーバブル記憶媒体(例えば、市販ソフトウェア)として配布することもできるし、コンピュータシステム(例えば、システムROM又は固定ディスク)にプリロードすることもできるし、サーバ又は電子掲示板から通信システム(例えば、インターネット又はワールドワイドウェブ)を介して配信することもできる。
【0055】
適切な処理モジュールの種々の例は、以下でより詳細に論じられる。本明細書で使用するとき、モジュールは、特定のデータ処理タスク又はデータ伝送タスクを実施するのに適するソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアを指す。典型的には、好ましい実施形態において、モジュールは、命令、又は、OCTスキャンデータ、IVUSスキャンデータ、干渉計信号データ、目標ステントプロファイル、ステント展開後管腔プロファイル及び画像、完全に拡張したステントを示す補間された管腔プロファイルビュー、完全に拡張した管腔プロファイルに対する拡張したステントベースの管腔プロファイルの幾何学的値の比、ステント拡張レベル印(カラー、ハッチング等)、ピクセル特性の強調表示/強調、側枝の場所、側枝直径、ステント拡張パーセンテージ又は割合、ステント留置前FFR値、ステント留置後FFR値、並びに、他のステント留置前及び後の値、他の関心情報等の、種々のタイプのデータを、受信し、変換し、ルーティングし、処理するのに適する、ソフトウェアルーチン、プログラム、又は他のメモリ常駐アプリケーションを指す。
【0056】
本明細書で述べるコンピュータ及びコンピュータシステムは、データを取得する、処理する、記憶する及び/又は通信するときに使用されるソフトウェアアプリケーションを記憶するためのメモリ等の、動作可能に連結されたコンピュータ可読媒体を含み得る。そのようなメモリは、その動作可能に連結されたコンピュータ又はコンピュータシステムに関して、内部、外部、遠隔、又はローカルにあり得ることを認識することができる。
【0057】
メモリはまた、例えば、限定することなく、ハードディスク、光ディスク、フロッピーディスク、DVD(デジタル多用途ディスク)、CD(コンパクトディスク)、メモリスティック、フラッシュメモリ、ROM(読み出し専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)、PROM(プログラマブルROM)、EEPROM(拡張消去可能PROM)、及び/又は他の同様なコンピュータ可読媒体を含む、ソフトウェア又は他の命令を記憶するための任意の手段を含み得る。
【0058】
概して、本明細書で述べる本開示の実施形態に関連して適用されるコンピュータ可読メモリ媒体は、プログラマブル装置によって実行される命令を記憶することが可能な任意のメモリ媒体を含み得る。適用可能である場合、本明細書で述べる方法ステップは、単数又は複数のコンピュータ可読メモリ媒体上に記憶された命令として具現化又は実行することができる。これらの命令は、C++、C、Java等の種々のプログラミング言語及び/又は本開示の実施形態による命令を作成するために適用され得る種々の他の種類のソフトウェアプログラミング言語で具現化されたソフトウェアとすることができる。
【0059】
記憶媒体は、非一時的であるか、又は、非一時的デバイスを含み得る。したがって、非一時的記憶媒体又は非一時的デバイスは有形であるデバイスを含んでいてもよく、これは、デバイスが、その物理的状態を変更する場合があるが、具体的な物理的形式を有することを意味する。こうして、例えば、非一時的は、この状態の変化があったとしてもデバイスが有形のままであることを指す。
【0060】
本開示の態様、実施形態、特徴、及び例は、全ての点で例示的であると考えられ、本開示を限定することを意図するものではなく、その範囲は特許請求の範囲によってのみ規定される。他の実施形態、修正形態、及び使用法は、特許請求される開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。
【0061】
本出願における見出し及び段落の使用は、本開示を制限することを意味せず、各段落は、本開示の任意の態様、実施形態、又は特徴に適用することができる。
【0062】
本出願全体を通して、構成物が特定のコンポーネントを有する、含む、又は備えるものとして述べられる場合、又は、プロセスが特定のプロセスステップを有する、含む、又は備えるものと述べられる場合、本教示の構成物が、本質的に列挙されるコンポーネントからなる又は列挙されるコンポーネントからなること、及び、本教示のプロセスが、本質的に列挙されるプロセスステップからなる又は列挙されるプロセスステップからなることが企図される。
【0063】
本出願において、要素又はコンポーネントが、列挙された要素又はコンポーネントのリストに含まれる及び/又はそのリストから選択されると言及される場合、その要素又はコンポーネントが、列挙される要素又はコンポーネントのいずれか1つとすることができ、また、列挙される要素又はコンポーネントの2つ以上からなる群から選択することができることが理解されるべきである。さらに、本明細書で述べる構成物、装置、又は方法の要素及び/又は特徴を、本明細書において明示的であろうと暗黙的であろうと、本教示の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の方法で組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0064】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、又は「有している(having)」の使用は、別段の定めがない限り、一般にオープンエンドでかつ非限定的であると理解されるべきである。
【0065】
本明細書での単数形の使用は、別段の定めがない限り、複数を含む(逆の場合も同様である)。さらに、別段に文脈が明確に指示しない限り、単数形「一("a," "an")」及び「その(the)」は、複数形を含む。さらに、用語「約(about)」又は「実質的に(substantially)」の使用が定量値の前である場合に、本教示は、別段の定めがない限り、特定の定量値自体も含む。本明細書で使用される用語「約」又は「実質的に」は、例えば、現実の世界における測定又はハンドリング処置を通して、これらの処置における偶発的な誤差を通して、複合テープ等の材料の製造における差/不具合を通して、欠陥を通して起こり得る数量の変動、並びに、変動であって、そのような変動が従来技術によって実施される既知の値を包含しない限り、当業者によって同等であるものと認識されることになる、変動を指す。典型的には、用語「約」又は「実質的に」は、述べる値の1/10、例えば、±10%だけ、述べた値又は値の範囲より大きい又は小さいことを意味する。
【0066】
ステップの順序又は或る特定の動作を実施するための順序が、本教示が使用可能なままである限り、重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上のステップ又は動作を、同時に行うことができる。
【0067】
本開示の図及び説明が、明確化のために他の要素を削除しながら、本開示の明確な理解のために適切である要素を示すように簡略化されていることが理解される。当業者は、しかしながら、これら及び他の要素が望ましい場合があることを認識するであろう。しかしながら、そのような要素が当技術分野でよく知られているため、また、それらの要素が本開示のより良い理解を促進しないため、そのような要素の説明は、本明細書において提供されない。図が、構造図としてではなく、例示のために提示されていることが理解されるべきである。省略された詳細及び修正形態又は代替的な実施形態は、当業者の知識の範囲内にある。
【0068】
本開示の或る特定の態様において、要素又は構造を提供するため、又は単数若しくは複数の所与の機能を実施するために、単一コンポーネントを複数コンポーネントに置き換えることができ、また、複数コンポーネントを単一コンポーネントに置き換えることができることを、認識することができる。そのような置換が本開示の或る特定の実施形態を実施するために使用可能でない場合を除いて、そのような置換は、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0069】
本明細書に提示される例は、本開示の可能性のあるかつ具体的な実装態様を例示することを意図される。その例が、主に、当業者のために本開示の例示のために意図されることを、認識することができる。本開示の趣旨から逸脱することなく、これらの図又は本明細書で述べる操作に対する変形が存在する場合がある。例えば、或る特定の場合には、方法ステップ又は操作を、異なる順序で実施若しくは実行することができる、又は、操作を、追加、削除、若しくは修正することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】