(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】COVID-19侵入阻害剤によるCOVID-19複製の抑制
(51)【国際特許分類】
C07D 275/06 20060101AFI20240312BHJP
C07D 281/18 20060101ALI20240312BHJP
C07D 498/04 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/33 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/428 20060101ALI20240312BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240312BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07D275/06
C07D281/18 CSP
C07D498/04
A61K31/33
A61K31/553
A61K31/428
A61P31/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/7056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553675
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 US2022018749
(87)【国際公開番号】W WO2022187521
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595034112
【氏名又は名称】ザ・キュレイターズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・ミズーリ
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
(71)【出願人】
【識別番号】508221224
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】カムレンドラ シン
(72)【発明者】
【氏名】シッダッパ ビラレディ
(72)【発明者】
【氏名】アルパン アチャリャ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC01
4C072CC11
4C072CC16
4C072EE09
4C072FF03
4C072FF11
4C072FF16
4C072FF19
4C072GG07
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC80
4C086BC93
4C086CB22
4C086CB31
4C086DA38
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染を治療するための化合物、組成物、及び方法に関する。特に、SARS-CoV-1感染及びSARS-CoV-2感染を含む、コロナウイルス感染の治療のための侵入阻害剤化合物が開示される。化合物は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体の界面に結合する。侵入阻害剤化合物は、抗ウイルス活性、望ましい動態を示し、SARS-CoV-2感染の侵入時に一時的に作用する。実施形態では、化合物は、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2の複製を含む、ウイルス複製の阻害のための、SARS-CoV-1感染及びSARS-CoV-2感染を含む、ウイルス感染の治療又は予防のための、並びに/あるいはSARS-CoV-1感染及びSARS-CoV-2感染に起因する疾病の治療又は予防のための、医薬として使用される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染の医学的療法又は予防的治療に使用するための、下式:
【化1】
【化2】
【化3】
のうちの1つを有する化合物、又は
その薬学的に許容される塩であって、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8及びR
9の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
R
5が、独立して、水素、ハロゲン、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Yが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Zが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Y
1が、O、S、S(=O)、S(=O)
2、ニトロ(-NO
2)、脂肪族ニトリル、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
X
1が、S、O、NH、又はCR
a1であり、X
2が、N又はCR
a2であり、X
3が、N又はCR
a3であり、X
4が、(C
1~C
4)アルキルであり、R
a1、R
a2、及びR
a3の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Lが、存在しないか、又はCR
a4であり、R
a4が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Mが、存在しないか、NH、又はNであり、MがNであるとき、M及びX
4が結合して、環状基を形成する、化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8及びR
9の各々が、独立して、水素、ニトロ(-NO
2)、O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
R
5が、独立して、水素、ハロゲン、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、NH
2、O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Yが、O、S、S(=O)、又はS(=O)
2であり、
Zが、O、S、S(=O)、又はS(=O)
2であり、
Y
1が、O、S、S(=O)、S(=O)
2、ニトロ(-NO
2)、又は脂肪族ニトリルであり、
X
1が、S、O、又はCR
a1であり、X
2が、N又はCR
a2であり、X
3が、N又はCR
a3であり、X
4が、(C
1~C
4)アルキルであり、R
a1、R
a2、及びR
a3の各々が、独立して、水素、ハロゲン、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Lが、存在しないか、又はCR
a4であり、R
a4が、水素、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Mが、存在しないか、NH、又はNであり、MがNであるとき、M及びX
4が結合して、環状基を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
【化4】
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
前記式(II)の化合物が、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
前記式(III)の化合物が、
【化10】
【化11】
【化12】
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的組成物であって、
請求項1又は2に記載の化合物と、
薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項8】
ウイルス感染の予防及び/又は治療を必要とする哺乳動物においてそれを行うための方法であって、
有効量の請求項8に記載の薬学的組成物を哺乳動物に投与することを含み、前記薬学的化合物又はその薬学的に許容される塩が、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体の界面に結合する、方法。
【請求項9】
前記ウイルス感染が、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、MERS-CoV、NL63-CoV、229E-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV、WIV1-CoV、MHV、HKU9-CoV、PEDV-CoV、及び/又はSDCVによる感染を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物又は薬学的組成物が、経口投与、腹腔内投与、又は静脈内投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物又は薬学的組成物が、非経口経路によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
治療有効量が、SARS-CoV-1ウイルス又はSARS-CoV-2ウイルスの複製をブロックする量である、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
治療有効量が、SARS-CoV-1ウイルス又はSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質によって媒介される前記SARS-CoV-1ウイルス又はSARS-CoV-2ウイルスの前記哺乳動物の細胞への侵入を防止する量である、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
前記式(II)の化合物が投与され、前記SARS-CoV-1ウイルス又はSARS-CoV-2ウイルスの侵入阻害剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
追加の抗ウイルス剤が、前記式I、II、又はIIIの化合物と組み合わせて投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記追加の抗ウイルス剤が、ヌクレオシド類似体である、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
前記ヌクレオシド類似体が、レムデシビル又はリバビリンである、請求項18に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物又は薬学的組成物が、ウイルス複製を阻害し、かつ/又は前記SARS-CoV-1ウイルス若しくはSARS-CoV-2ウイルスの前記スパイクタンパク質によって媒介される前記SARS-CoV-1ウイルス若しくはSARS-CoV-2ウイルスの前記細胞へのナノモル範囲での侵入を防止する、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
SARS-CoV-2ウイルスを治療する方法であって、対象に化合物を投与することを含み、前記化合物が、SARS-CoV-2 S-RBD/ACE2複合体に結合するが、S-RBD単独又はACE-2単独には結合せず、前記化合物が、式(IIa)、又はその薬学的に許容される塩を含む、方法。
【請求項21】
前記式(II)の化合物が、
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2021年3月3日に出願された米国仮出願第63/200,366号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、HHS/NIH/NIAID(Al129745)、HHS/NIH/NIAID(Al113883)、及びHHS/NIH/NIAID(AI076119)の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において、特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、SARS-CoV感染の治療のための抗ウイルス化合物に関し、より具体的には、Wuhan-Hu-1及び懸念されるバリアントの侵入、複製及び伝染をブロックするSARS-CoV-2の小分子侵入阻害剤に関する。
【背景技術】
【0004】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、Coronavirus Disease 19(COVID-19)の病因物質であり、中国の武漢市で2019年12月初旬に出現した。その出現以来、SARS-CoV-2は、200万人を超える命を奪い、世界的に前例のない社会経済的損失を引き起こした。スパイク糖タンパク質(S-タンパク質)、膜タンパク質(M)、及びエンベロープタンパク質(E)は、SARS-CoV-2の球状エンベロープを作製する。S-タンパク質は、S1及びS2サブユニットからなる。S1サブユニットは、CTD1(C末端ドメイン1)及びCTD2(C末端ドメイン2)に加えて、N末端ドメイン(NTD)及び受容体結合ドメイン(S-RBD)といった2つの主要なドメインを含有する。対照的に、S2サブユニットは、融合ペプチド(FP)と、ヘプタッドリピート1(HR1)と、中央ヘリックス(CH)と、ヘプタッドリピート2(HR2)と、コネクタードメイン(CD)と、膜貫通ドメイン(TM)と、細胞質テール部(CT)と、を含む。S1サブユニット内のS-RBDは、宿主細胞受容体アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合し、ウイルスの宿主細胞への侵入を容易にする一方で、S2サブユニットは、膜融合を媒介する。S-RBD及びACE2の結合は、細胞侵入の十分に実証された決定因子であるが、細胞型に応じて、ビリオンは、クラスリン媒介性エンドソーム経路又はクラスリン非依存性非エンドソーム経路を介して、細胞に侵入し得る。
【0005】
SARS-CoV-2ゲノムは、約30キロ塩基のプラス(+)センス一本鎖RNA(ssRNA)である。それは、2002~2003年に出現した密接に関連するSARS-CoVに類似したβ-CoV系統に属する。複数のオープンリーディングフレーム(ORF)は、ポリタンパク質(pp)1a及びpp1abをコードする。ポリタンパク質pp1a及びpp1abは、ウイルスプロテアーゼMpro及び3CLproによって、16個の非構造タンパク質(nsp)へと処理される。これらのnspの多くが組み立てられ、二重膜小胞(DMV)内に複製-転写複合体(RTC)を形成し、マイナス(-)センスRNAを生成する。(-)センスRNAは、その後、共通の5’リーダー配列及び3’末端ポリA配列を有する(+)センスRNAゲノム及びセグメント化ゲノムRNA(sgRNA)のセットの合成のためのテンプレートとして使用される。sgRNAは、いくつかの構造タンパク質に翻訳される。膜(M)、ヌクレオカプシド(N)、エンベロープ(E)、及びスパイクタンパク質(Sタンパク質)といった4つの主要な構造タンパク質は、宿主細胞膜とともに、感染性成熟ウイルス粒子を形成する。
【0006】
SARS-CoV-2ゲノムMERS-CoV及びSARS-CoV-1を比較する研究は、いくつかの主要な残基におけるアミノ酸変異にもかかわらず、SARS-CoV-2が、SARS-CoV-1(2002~2003年に出現した)のRBD構造と同様のRBD構造を有することを示した。SARS-CoV-2と、SARS-CoV-1及びコウモリSARS様コロナウイルスとのゲノム比較は、スパイクタンパク質のS1サブユニットが、約75%の配列同一性を有することを明らかにしている。侵入時のSタンパク質の機能、及びウイルスの熟成のために、ほとんど全てのワクチン接種戦略は、S-タンパク質RBDを標的とする。民間セクターによって開始され、政府資源によって支援された臨時的な措置は、有望な有効性を有するワクチン候補の開発につながった。しかしながら、SARS-CoV-2の急速かつ継続的な進化は、費用対効果が高く、スケール変更可能であり、遺伝的浮動に対する脆弱性が低い、小分子侵入阻害剤の開発を引き続き促進するものである。
【発明の概要】
【0007】
SARS-CoV-2及び関連するバリアントのウイルス複製をブロックする、小分子侵入阻害剤化合物が本明細書に開示される。本化合物は、Coronavirus Disease 2019(COVID-19)に罹患している対象を含む、疾患及び他の状態の治療を必要とする対象においてそれを行うために使用され得る。
【0008】
より具体的には、本発明は、SARSスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体の界面に結合する特定の小さな低分子量の化合物に関する。コンピュータ支援薬物設計(CADD)アプローチを利用して、S-RBD及びACE-2の相互作用の阻害剤として、化合物を特定し、検証した。
【0009】
S-RBD及びACE2によるこれらの化合物のドッキングスコア及び目視検査に基づいて、いくつかの化合物を最適化のために選択した。具体的には、式IIa及びIIIaの足場を使用して、請求項5、6、及び22に示される式の小さな低分子量の化合物を開発した。以下に開示されるように、これらの化合物には、式(IIb)、式(IIc)、式(IId)、式(IIe)、式(IIIb)、及び式(IIIc)が含まれるが、これらに限定されない。更なる開示される化合物としては、式(Ia)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、及び式(X)が挙げられるが、これらに限定されない。上述の化合物は、S-RBD及びACE-2の相互作用を様々な程度まで阻害するように適合される。
【0010】
いくつかの実施形態では、3つの化合物(式(Ia)、式(IIa)、及び式(IIb))が、マイクロモル濃度未満のIC50でウイルス複製を阻害することが示された。他の式(IIa)誘導体(式(IIc)、式(IId)、及び式(IIe)を含む)もまた、マイクロモル濃度未満のIC50でウイルス複製をブロックし得る。他の実施形態では、式(IIa)は、レムデシビル(RDV)と相乗的に作用し、効果的な併用療法を提供する。
【0011】
したがって、実施形態では、本発明の侵入阻害剤化合物のいくつかは、SARS-CoV-2による感染を治療又は予防するための対象への投与に有用であろう。更に、化合物は、南アフリカ型、スコットランド型、及びデルタ型バリアントを含む、SARS-CoV-2のバリアントに対して有効である。
【0012】
複数の実施形態が開示されるが、更に他の実施形態は、例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から、当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示するものであり、限定するものではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1-1】実施形態では、
図1Aは、SARS-CoV-2侵入阻害剤を特定するために使用されるインシリコスクリーニングプロセスを示すフローチャートである。
【
図1-2】
図1Bは、S-RBD及びACE2の界面における残基のズームアウト図を示す。
図1Cは、化合物ドッキングのために選択されたポケットのズームイン図を示す。点線は、タンパク質の不連続骨格(S-RBD、シアン色、及びACE2、緑色)を示す。
【
図1-3】
図1D~
図1Iは、式(Ia)(
図1D)、式(IIa)(
図1E)、式(V)(
図1F)、式(VI)(
図1G)、式(VI)(
図1H)、及び式(VII)(
図1I)を含む、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性のインビトロスクリーニングのためのそれらのglideスコアに基づいて選択される5つの化合物の分子ドッキングを示す。
図1Gは、式(VI)の第1の結合配向を示す。
図1Hは、式(VI)の第2の結合配向を示す。黄色の点線は、化合物と、最も近いタンパク質残基とによって形成された極性相互作用を表す。棒状物として表されるACE2残基は、緑色の炭素であるが、S-RBD残基は、シアン色の棒状物として着色されている。タンパク質骨格は、リボン状物(緑色=ACE2及びシアン色=S-RBD)として表される。侵入阻害剤化合物は、マゼンタ色の炭素を用いた球と棒状物の表示で示される。他の全ての原子は、原子の種類によって着色されている(赤色=酸素、青色=窒素、オレンジ色=硫黄、ターコイズ色=フッ素、及び薄緑色=塩素)。
【
図1-4】
図1D~
図1Iは、式(Ia)(
図1D)、式(IIa)(
図1E)、式(V)(
図1F)、式(VI)(
図1G)、式(VI)(
図1H)、及び式(VII)(
図1I)を含む、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性のインビトロスクリーニングのためのそれらのglideスコアに基づいて選択される5つの化合物の分子ドッキングを示す。
図1Gは、式(VI)の第1の結合配向を示す。
図1Hは、式(VI)の第2の結合配向を示す。黄色の点線は、化合物と、最も近いタンパク質残基とによって形成された極性相互作用を表す。棒状物として表されるACE2残基は、緑色の炭素であるが、S-RBD残基は、シアン色の棒状物として着色されている。タンパク質骨格は、リボン状物(緑色=ACE2及びシアン色=S-RBD)として表される。侵入阻害剤化合物は、マゼンタ色の炭素を用いた球と棒状物の表示で示される。他の全ての原子は、原子の種類によって着色されている(赤色=酸素、青色=窒素、オレンジ色=硫黄、ターコイズ色=フッ素、及び薄緑色=塩素)。
【
図2-1】本明細書に開示される様々なSARS-CoV侵入阻害剤化合物及び/又は誘導体を示す。式(Ia)(
図2A)、式(IIa)(
図2B)、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、式(IIe)(
図2F)、式(IIIa)(
図2G)、式(IIIb)(
図2H)、式(IIIc)(
図2I)、式(IV)(
図2J)、式(V)(
図2K)、式(VI)(
図2L)、式(VII)(
図2M)、式(VIII)(
図2N)、式(IX)(
図2O)、及び式(X)(
図2P)を示す図が提供される。上に開示された化合物のまとめについては、表2を参照されたい。
【
図2-2】本明細書に開示される様々なSARS-CoV侵入阻害剤化合物及び/又は誘導体を示す。式(Ia)(
図2A)、式(IIa)(
図2B)、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、式(IIe)(
図2F)、式(IIIa)(
図2G)、式(IIIb)(
図2H)、式(IIIc)(
図2I)、式(IV)(
図2J)、式(V)(
図2K)、式(VI)(
図2L)、式(VII)(
図2M)、式(VIII)(
図2N)、式(IX)(
図2O)、及び式(X)(
図2P)を示す図が提供される。上に開示された化合物のまとめについては、表2を参照されたい。
【
図2-3】本明細書に開示される様々なSARS-CoV侵入阻害剤化合物及び/又は誘導体を示す。式(Ia)(
図2A)、式(IIa)(
図2B)、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、式(IIe)(
図2F)、式(IIIa)(
図2G)、式(IIIb)(
図2H)、式(IIIc)(
図2I)、式(IV)(
図2J)、式(V)(
図2K)、式(VI)(
図2L)、式(VII)(
図2M)、式(VIII)(
図2N)、式(IX)(
図2O)、及び式(X)(
図2P)を示す図が提供される。上に開示された化合物のまとめについては、表2を参照されたい。
【
図3】ACE2:SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン(RBD)に結合する能力について、コンピュータ支援薬物設計(CADD)を介して選択された潜在的な薬物様化合物を含む化合物のスクリーニングを示す。実施形態では、式(Ia)、式(IIa)、式(V)、式(VI)、及び式(VII)を、0.25~5μMで開始する異なる濃度で、三重で試験する。上述の試験を使用して、上述の化合物が、ELISAを使用して、固定化されたヒトACE2へのSARS-CoV-2スパイクRBDの結合を阻害する能力を評価する。IC
50値を、Graph Pad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。
【
図4-1】5つの薬物様化合物に適用されるような、本発明の細胞傷害性を決定する方法を示す。具体的には、
図4A~
図4Kは、示される濃度の化合物の存在下でHEK293T-hACE2細胞の生存率を評価するMTTアッセイを示す。
図4F及び
図4Gは、示される濃度の化合物の存在下で、それぞれ、Vero-STAT1 KO細胞における式(Ia)及び式(IIa)の化合物の細胞傷害性の測定を示す。
図4H及び
図4Iは、示される濃度の化合物の存在下で、それぞれ、UNCN1T細胞における式(Ia)及び式(IIa)の細胞傷害性の測定を示す。
図4J及び
図4Kは、示される濃度の化合物の存在下で、Calu-3細胞におけるそれぞれの式(Ia)及び式(IIa)の細胞傷害性の測定を示す。HEK293T-hACE2細胞では、式I(
図4A)、式(IIa)(
図4B)、式V(
図4C)、式VI(
図4D)、及び式VII(
図4E)を含む、5つ全ての化合物は、100μMより大きなCC
50値を有する。
【
図4-2】5つの薬物様化合物に適用されるような、本発明の細胞傷害性を決定する方法を示す。具体的には、
図4A~
図4Kは、示される濃度の化合物の存在下でHEK293T-hACE2細胞の生存率を評価するMTTアッセイを示す。
図4F及び
図4Gは、示される濃度の化合物の存在下で、それぞれ、Vero-STAT1 KO細胞における式(Ia)及び式(IIa)の化合物の細胞傷害性の測定を示す。
図4H及び
図4Iは、示される濃度の化合物の存在下で、それぞれ、UNCN1T細胞における式(Ia)及び式(IIa)の細胞傷害性の測定を示す。
図4J及び
図4Kは、示される濃度の化合物の存在下で、Calu-3細胞におけるそれぞれの式(Ia)及び式(IIa)の細胞傷害性の測定を示す。HEK293T-hACE2細胞では、式I(
図4A)、式(IIa)(
図4B)、式V(
図4C)、式VI(
図4D)、及び式VII(
図4E)を含む、5つ全ての化合物は、100μMより大きなCC
50値を有する。
【
図5-1】本発明の偽ウイルスアッセイを使用した、5つの薬剤様化合物の侵入阻害能のスクリーニングを示す。具体的には、
図5A~
図5Eは、HEK-293T-hACE2細胞を、示された濃度の化合物で前処置し、次いで、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する擬似型レンチウイルス粒子を接種したことを示す。化合物は、式I(
図5A)、式(II)(
図5B)、式V(
図5C)、式VI(
図5D)、及び式(VII)(
図5E)を含む。形質導入後48時間で、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を決定することによって、未処置細胞に対する正規化後の擬似型侵入を分析した。
図5Fは、示される濃度の化合物で、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する擬似型レンチウイルス粒子の侵入の阻害パーセンテージを、式(IIa)について測定したことを示す。特に、DMSOを受けた細胞は、ビヒクル対照とみなされた。IC
50値を、Graph Pad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。
【
図5-2】本発明の偽ウイルスアッセイを使用した、5つの薬剤様化合物の侵入阻害能のスクリーニングを示す。具体的には、
図5A~
図5Eは、HEK-293T-hACE2細胞を、示された濃度の化合物で前処置し、次いで、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する擬似型レンチウイルス粒子を接種したことを示す。化合物は、式I(
図5A)、式(II)(
図5B)、式V(
図5C)、式VI(
図5D)、及び式(VII)(
図5E)を含む。形質導入後48時間で、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を決定することによって、未処置細胞に対する正規化後の擬似型侵入を分析した。
図5Fは、示される濃度の化合物で、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する擬似型レンチウイルス粒子の侵入の阻害パーセンテージを、式(IIa)について測定したことを示す。特に、DMSOを受けた細胞は、ビヒクル対照とみなされた。IC
50値を、Graph Pad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。
【
図6】本発明の方法による、式(Ia)及び式(IIa)で処置され、SARS-CoV-2に感染したUNCN1T及びVero-STAT1ノックアウト細胞のSARS-CoV-2用量応答曲線を示す。
図6A~
図6Bは、示される薬物濃度で、UNCN1T細胞における24hpi(
図6A)及び48hpi(
図6B)のSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(Ia)(青色)及び式(IIa)(緑色)の用量応答曲線を示す。
図6C~
図6Dは、示される薬物濃度で、Vero-STAT1ノックアウト細胞における、24hpi(
図6C)及び48hpi(
図6D)のSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(Ia)(青色)及び式(IIa)(緑色)の用量応答曲線を示す。実施形態では、式(II)(例えば、式(IIa))は、その増強された薬物動態プロファイルと一致して、全ての時点で
図6B~
図6Dのより低いIC
50値を示す。
【
図7】感染したCalu-3細胞における、式(Ia)及び式(IIa)で処置されたSARS-CoV-2の懸念されるバリアントについてのSARS-CoV-2用量応答曲線を示す。
図7Aは、示された薬物濃度で、南アフリカ型バリアント(系統:B.1.351)で感染したCalu-3細胞における24hpiのSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(Ia)の用量応答曲線を示す。
図7Bは、示された薬物濃度で、スコットランド型バリアント(系統:B.1.222)で感染したCalu-3細胞における24hpiのSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(Ia)の用量応答曲線を示す。
図7Cは、示された薬物濃度で、南アフリカ型バリアント(系統:B.1.351)で感染したCalu-3細胞における24hpiのSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(IIa)の用量応答曲線を示す。
図7Dは、示された薬物濃度で、スコットランド型バリアント(系統:B.1.222)で感染したCalu-3細胞における24hpiのSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージによる式(IIa)の用量応答曲線を示す。
【
図8A】本発明の方法による、Vero-STAT1ノックアウト細胞におけるSARS-CoV-2の複製に対する化合物の添加時間の影響を示す。
図8Aは、細胞に式(Ia)及び式(IIa)を添加した時間、SARS-CoV-2感染、及び実験の終了時におけるウイルス複製動態の測定を記載する実験概要である。
【
図8B】本発明の方法による、Vero-STAT1ノックアウト細胞におけるSARS-CoV-2の複製に対する化合物の添加時間の影響を示す。
図8Bは、Vero-STAT1ノックアウト細胞において、-2hpi、+0hpi、及び+4hpiのビヒクル対照(DMSO)、式(Ia)(5μM)、及び式(IIa)(5μM)の存在下でのSARS-CoV-2複製のパーセンテージをそれぞれ示す。上述の観察は、これらの化合物が、SARS-CoV-2に対する有効な予防薬として機能し得ることを示す。
【
図9-1】感染後24時間におけるSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞に対するレムデシビル(RDV)及び式(Ia)による処置の併用効果を示す。
図9Aは、異なる固定濃度の式(Ia)の存在下で、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるレムデシビルの用量応答曲線である。
図9Bは、異なる固定濃度のレムデシビルの存在下で、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞における式(Ia)の用量応答曲線を示す。
【
図9-2】感染後24時間におけるSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞に対するレムデシビル(RDV)及び式(Ia)による処置の併用効果を示す。
図9Cは、式(Ia)の濃度(マイクロモル濃度)に対してRDVの濃度(マイクロモル濃度)をプロットする、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるレムデシビル及び式(Ia)の単独処置及び併用処置の用量応答阻害パーセントマトリックスを示す。
図9Dは、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるSynergyFinder v.2を使用したLoewe付加モデルに基づいて計算された、レムデシビルと式(IIa)との間の3-D相互作用ランドスケープを示す(Loeweシナジースコアは-30.69、最相乗領域スコアは-21.34)。グラフは、SynerFinder v.2を使用して、3-D相互作用ランドスケープにおける式(Ia)の濃度(マイクロモル濃度)に対してRDVの濃度(マイクロモル濃度)をプロットする。
【
図10-1】感染後24時間におけるSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞に対するレムデシビル及び式(IIa)による処置の併用効果を示す。
図10Aは、異なる固定濃度の式(IIa)の存在下で、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるレムデシビルの用量応答曲線である。
図10Bは、異なる固定濃度のレムデシビルの存在下で、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞における式(IIa)の用量応答曲線である。
【
図10-2】感染後24時間におけるSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞に対するレムデシビル及び式(IIa)による処置の併用効果を示す。
図10Cは、式(IIa)の濃度(マイクロモル濃度)に対してRDVの濃度(マイクロモル濃度)をプロットする、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるレムデシビル及び式(IIa)の単独処置及び併用処置の用量応答阻害パーセントマトリックスを示す。
図10Dは、24hpiでのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞におけるSynergyFinder v.2を使用したLoewe付加モデルに基づいて計算された、レムデシビルと式(IIa)との間の相互作用ランドスケープを示す(Loeweシナジースコアは26.63、最相乗領域スコアは37.25)。グラフは、SynerFinder v.2を使用して、3-D相互作用ランドスケープにおける式(IIa)の濃度(マイクロモル濃度)に対してRDVの濃度(マイクロモル濃度)をプロットする。
【
図11】マイクロスケール熱泳動(MST)の結合親和性を示し、式(IIa)が、S-RBD単独に結合せず、ACE2単独にも結合しないことを示している。むしろ、式(IIa)は、S-RBD/ACE2複合体に結合する。マイクロスケール熱泳動アッセイはまた、式(IIa)/Hu-1 S-RBDのみ(
図11A)及び式(IIa)/ACE2のみ(
図11B)の結合動態を導出するために使用された。式(IIa)/ACE2のみの結合曲線(
図11B)は、3.7マイクロモル濃度のK
dを示す。
【
図12】式(IIa)及び式(IIb)の化合物と、WT(「Hu-1」)及びデルタS-RBD/ACE2複合体との結合を分析するマイクロスケール熱泳動(MST)アッセイを示す。式(IIa)及びHu-1(
図12A)を用いたMSTアッセイは、299nMのK
dを提供する。式(IIa)及びデルタ(
図12B)を用いたMSTアッセイは、200nMのK
dを提供する。式(IIb)及びHu-1(
図12C)を用いたMSTアッセイは、31nMのK
dを提供する。式(IIb)及びデルタ(
図12D)を用いたMSTアッセイは、90nMのK
dを提供する。したがって、式(IIa)は、その誘導体の式(IIb)と比較して、Hu-1S-RBD/ACE複合体との結合親和性が約10倍低下し、デルタS-RBD/ACE複合体との結合親和性が約10倍低下することを示す。
【
図13-1】SARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体(「ACE2:スパイクRBD」)の界面への式(Ia)及び式(IIa)の化合物の結合時の側鎖コンフォメーションの変化を示す。コンフォメーションの変化は、式(Ia)及び式(IIa)の化合物の誘導適合ドッキングによって決定した。示される全ての側鎖は、式(Ia)及び式(IIa)の誘導適合ドッキング(IFD)時に有意な変化を示す。
図13Aは、ACE2:スパイクRBDの界面への式(Ia)の化合物のドッキング時のコンフォメーション変化を示す。黄色の炭素は、IFD前のS-RBD側鎖のコンフォメーションを表し、一方、シアン色の炭素は、IFD後のS-RBDの側鎖コンフォメーションに対応する。
図13Bは、ACE2:スパイクRBDにドッキングするIFD前(ティール色の炭素)及びIFD後(マゼンタ色の炭素)に結合する、式(Ia)のモードを示す。
【
図13-2】SARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体(「ACE2:スパイクRBD」)の界面への式(Ia)及び式(IIa)の化合物の結合時の側鎖コンフォメーションの変化を示す。コンフォメーションの変化は、式(Ia)及び式(IIa)の化合物の誘導適合ドッキングによって決定した。示される全ての側鎖は、式(Ia)及び式(IIa)の誘導適合ドッキング(IFD)時に有意な変化を示す。
図13Cは、式(IIa)のドッキング時のコンフォメーション変化を示す。
図13Dは、IFD前(ティール色の炭素)及びIFD後(マゼンタ色の炭素)に結合する、式(II)の結合モードを示す。
【0014】
本発明の様々な実施形態は、図面を参照して詳細に説明され、同様の参照番号は、いくつかの図を通して同様の部品を表す。様々な実施形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に示される図は、本発明による様々な実施形態に限定されるものではなく、本発明の例示的な例示のために提示される。当業者は、本発明の理解を容易にするために、個別の図の中で、以下の詳細な説明に記載される特徴のほぼ無限の数の異なる順列を見る必要はない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示をより容易に理解し得るために、まず、特定の用語を定義する。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様、修正された、又は同等の多くの方法及び材料が、過度の実験なしに、本発明の実施形態の実施に使用され得る。好ましい材料及び方法が、本明細書に記載される。本発明の実施形態を記載し、特許請求することにおいて、以下の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。
【0016】
I.定義及び解釈
別途本明細書で定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって別段の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションと関連して利用される専門用語及びそれらの技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されている。本開示の方法及び技術は、概して、当該技術分野で周知の従来方法に従って実施され、別途示されない限り、本明細書全体を通じて引用され及び考察される様々な一般的及びより具体的な参照文献に記載されるように実施される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、及び医薬及び薬学化学と関連して使用される専門用語及びこれらの実験室の手順及び技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用される。
【0017】
本説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、互換的に使用され、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の形態も同様に含み、各々の意味に含まれることが意図される。また、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙された項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての可能な組み合わせ、並びに代替(「又は」)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルキル」又は「アルキル基」という用語は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(又は「シクロアルキル」若しくは「脂環式」若しくは「炭素環式」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分枝鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、並びにアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基)を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。
【0019】
特に明記しない限り、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含む。本明細書で使用される場合、「置換アルキル」という用語は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の1個以上の水素を置き換える置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環式、アルキルアリール、又は芳香族(ヘテロ芳香族を含む)基が含まれ得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、置換アルキルは、ヘテロ環式基を含み得る。本明細書で使用される場合、「ヘテロ環式基」という用語は、環内の炭素原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、又は酸素である、炭素環式基に類似する閉環構造を含む。ヘテロ環式基は、飽和又は不飽和であり得る。例示的なヘテロ環式基には、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエテ、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン、及びフランが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
範囲を含む全ての数値表記、例えば、pH、温度、時間、濃度、及び分子量は、0.1の増分で(+)又は(-)に変化する近似値である。必ずしも明示的に述べられているわけではないが、全ての数値表記が、「約」という用語に先行されていることを理解されたい。「約」という用語は、「X+0.1」又は「X-0.1」などの「X」の小さな増分に加えて、正確な値「X」も含む。また、必ずしも明示的に記載されているわけではないが、本明細書に記載される試薬は単なる例示であり、そのような等価物は当該技術分野で知られていることを理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化する。使用される文脈を考慮して当業者には明らかではない用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する。
【0023】
数値の「少なくとも」、「より大きい」、又は「より小さい」の範囲を含む、本明細書内に列挙される数値範囲は、範囲を定義する数値を含み、定義された範囲内の各整数を含む。範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表されるとき、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用によって、近似として表されるとき、特定の値は別の態様を形成することが理解されるであろう。更に、範囲の各終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。
【0024】
活性薬剤を「投与すること」という用語は、治療上有用な形態及び治療有効量で、その個体の体内に導入することができる形態で、治療を必要とする対象に活性薬剤を提供することを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「投与すること」は、選択された経路によって、開示された侵入阻害剤などの薬剤を対象に導入することを更に指す。投与は、局所的又は全身であり得る。例えば、選択された経路が経鼻である場合、薬剤(例えば、事前融合コンフォメーションで安定化した組換えコロナウイルスSエクトドメイン三量体を含む免疫原)は、組成物を対象の鼻腔に導入することによって投与される。例示的な投与経路には、経口、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、及び静脈内)、舌下、直腸、経皮(例えば、局所)、経鼻、膣、及び吸入経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、抗原性を増強するために使用されるビヒクルを指す。いくつかの実施形態では、アジュバントは、抗原が吸着される鉱物(ミョウバン、水酸化アルミニウム、又はホスフェート)の懸濁液、又は例えば、抗原溶液が鉱物油(フロイント不完全アジュバント)中で乳化される油中水エマルジョンを含んでもよく、場合によっては、抗原性を更に増強する(抗原の分解を阻害する、及び/又はマクロファージの流入を引き起こす)ために、死滅したマイコバクテリア(フロイント完全アジュバント)を含む。いくつかの実施形態では、開示された薬学的組成物で使用されるアジュバントは、レシチン及びカルボマーホモポリマーの組み合わせである(例えば、Advanced BioAdjuvants,LLCから入手可能なADJUPLEX(商標)アジュバント、Wegmann,Clin Vaccine Immunol,22(9):1004-1012,2015も参照されたい)。開示された免疫原性組成物で使用するための追加のアジュバントとしては、QS21精製植物抽出物、Matrix M、ASO1、MF59、及びALFQアジュバントが挙げられる。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むものなど)もアジュバントとして使用することができる。アジュバントとしては、共刺激分子などの生体分子(「生体アジュバント」)が挙げられる。例示的なアジュバントとしては、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、4-1BBL、及びtoll様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、TLR-9アゴニストが挙げられる。アジュバントの追加の説明は、例えば、Singh(編集)Vaccine Adjuvants and Delivery Systems.Wiley-Interscience,2007)に見出され得る。アジュバントは、開示された免疫原と組み合わせて使用され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルス剤」は、ウイルス感染の治療又は制御のために食品医薬品局(FDA)によって承認された薬物を含み得る。Covid-19の文脈では、抗ウイルス薬は、本明細書に開示される小分子薬学的組成物(例えば、小分子侵入阻害剤)、レムデシビル、ラゲブリオ(モルヌピラビル)、パクスロビド(リトナビル)、及びこれらのような化合物を含み得る。機構的には、抗ウイルス剤は、主にウイルス生活環の段階を標的とする。ウイルス生活環における例示的な標的段階としては、宿主細胞へのウイルス付着、脱殻、ウイルスmRNAの合成、mRNAの翻訳、ウイルスRNA及びDNAの複製、新しいウイルスタンパク質の成熟、出芽、並びに新たに合成されたウイルスの放出が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸置換」は、ポリペプチドにおける1つのアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「~から本質的になる」とは、組成物又は方法に対する任意の本質的な重要性を有する他の要素を除外することを意味するものとする。「~からなる」は、請求される組成物のための他の成分及び実質的な方法ステップの微量を超える要素を除外することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。したがって、方法及び組成物は、追加のステップ及び構成要素(を含む)、又は代替的に、重要性のないステップ及び組成物を含む(から本質的になる)、又は代替的に、記載された方法ステップ又は組成物のみを意図する(からなる)ものを含み得ることが意図されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、「Coronaviridae」という用語は、エンベロープされたプラスセンスの一本鎖RNAウイルスのファミリーを指す。コロナウイルスファミリーからヒトに感染することが現時点で知られているウイルスは、アルファコロナウイルス属及びベータコロナウイルス属からのものである。更に、ガンマコロナウイルス属及びデルタコロナウイルス属は、将来的にヒトに感染する可能性があると考えられている。「コロナウイルス」という用語は、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-1とも呼ばれる)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63、New Havenコロナウイルス)、ヒトコロナウイルスHKU1、武官肺炎又はコロナウイルス病2019(COVID-19)として知られる疾患の原因物質である新型コロナウイルス(2019-nCoV)(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)としても知られる)、並びにコロナウイルスのいずれかの関連株を含むが、これらに限定されない、Coronaviridaeファミリー中の任意のウイルスを指す。「SARS-CoV-2」という用語は、本開示全体で「武漢コロナウイルス」及びその変形という用語と互換的に使用され得る。コロナウイルス及びその変形という用語は、本開示全体で同義に使用される。他のCoronaviridaeウイルスは、MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスを含むが、これらに限定されない、現在開示されている化合物が測定される例、標的、及び基準として使用される。デルタコロナウイルスの非限定的な例は、ブタデルタコロナウイルス(SDCV)である。ウイルスゲノムは、キャップされ、ポリアデニル化され、ヌクレオカプシドタンパク質で覆われている。コロナウイルスビリオンは、スパイク(S)タンパク質と呼ばれるI型融合糖タンパク質を含有するウイルスエンベロープを含む。ほとんどのコロナウイルスは、ゲノムの5’部分に含まれるレプリカーゼ遺伝子、及びゲノムの3’部分に含まれる構造遺伝子を有する共通のゲノム組織を有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「コロナウイルススパイク(S)タンパク質」という用語は、前駆タンパク質として最初に合成されたI型融合糖タンパク質を指す。個々の前駆体Sポリペプチドは、ホモ三量体を形成し、ゴルジ装置内でグリコシル化、並びにシグナルペプチドを除去する処理を受け、細胞プロテアーゼによって切断され、別個の51及びS2ポリペプチド鎖を生成し、これらはホモ三量体内でS1/S2プロトマーとして会合したままであり、したがってヘテロ二量体の三量体である。51サブユニットは、ウイルス膜の遠位にあり、宿主受容体へのウイルス付着を媒介する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。S2サブユニットは、融合ペプチド、2つのヘプタッド反復配列(HR1及びHR2)、及び融合糖タンパク質に典型的な中央ヘリックス、膜貫通ドメイン、細胞質テール部ドメインなどの融合タンパク質機構を含有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「状態」又は「健康状態」は、対象又は生物のエクスビボ、インビボ、又はインセルロ(in cellulo)での状態を指す。健康状態は、例えば、所与の場所における健康関連ウイルスの存在に関連し得る。本文脈では、特許請求の範囲は、ウイルスの複製を阻害するために、小分子阻害剤との細胞表面相互作用の調節を企図する。ある健康状態に罹患し得る対象動物種の範囲はまた、ヒト、家畜、農場動物、水生無脊椎動物などを含め、非常に広い。
【0032】
試験試料と対照との間の差は、増加、又は逆に低下であり得る。差は、定性的な差又は定量的な差、例えば、統計的に有意な差であり得る。いくつかの例では、差は、対照と比較して、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、又は500%より大きな増加又は低下である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「疾患」は、正常な機能を損ない、典型的には、徴候及び症状を区別することによって現れる、生きている動物若しくは植物の身体の状態、又はその部分の1つの状態を指す。疾患は、細菌感染、ウイルス感染、耐性ウイルス及び細菌感染、遺伝的障害、がん、銅恒常性構成要素を伴う任意の状態、並びに当該技術分野において既知である他の有害な健康状態を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「侵入阻害剤」(「融合阻害剤」とも呼ばれる)は、例えば、細胞表面受容体をブロックすることによって、ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ抗ウイルス薬の一種である。侵入阻害剤は、小分子(例えば、本発明の小分子阻害剤)、抗体などを含み得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「例示的な」という用語は、例、場合、又は説明を指し、特に明記されない限り、最も好ましい実施形態を示すものではない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「阻害」は、1つの化学物質が結合(binding)又は結合(bonding)のためにそれと競合することによって別の化学物質の効果を阻害することによる化学経路の中断(例えば、「競合阻害」)を指す。本明細書で使用される場合、「疾患を阻害又は治療すること」は、例えば、CoV感染などの疾患のリスクがある対象における疾患又は状態の完全な発症を阻害することを指す。これは、小分子侵入阻害剤によるウイルスの複製を阻害することによって達成され得る。「治療」とは、疾患又は病理学的状態の徴候又は症状が発症し始めた後に改善する治療的介入を指す。「改善すること」という用語は、疾患又は病理学的状態に関して、治療の任意の観察可能な有益な効果を指す。
【0037】
疾患を阻害することは、ウイルス感染のリスクを予防又は低減するなど、疾患のリスクを予防又は低減することを含み得る。有益な効果は、例えば、罹患しやすい対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、いくつか又は全ての疾患の臨床症状の重症度の低減、疾患の進行の遅延、ウイルス負荷の低減、対象の全体的な健康又は福祉の改善によって、又は特定の疾患に特異的な他のパラメータによって実証され得る。「予防的」治療は、病状を発症するリスクを低下させる目的で、疾患の徴候を示さない、又は初期徴候のみを示す対象に施される治療である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、従来の使用の薬学的に許容される担体を指す。これらの組成物(例えば、化合物I、II、又はIII)に使用されてもよい薬学的に許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。一般に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的及び生理学的に許容される流体を含む、注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、又はカプセル形態)のために、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物(例えば、小分子侵入阻害剤)は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含有し得る。特定の実施形態では、担体を対象に投与するのに好適なものは、無菌であってもよく、及び/又は所望の免疫応答を誘導するのに好適な組成物の1回以上の測定された用量を含有する単位剤形に懸濁していてもよく、又はその他の方法で含まれていてもよい。それはまた、治療目的で使用するための医薬を伴ってもよい。単位剤形は、例えば、滅菌内容物を含む密封バイアル又は対象への注射のためのシリンジであってもよく、又はその後の可溶化及び投与のために凍結乾燥されてもよく、又は固体又は制御放出投薬量であってもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらず、任意のアミノ酸鎖を指す。「ポリペプチド」は、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーを含むアミノ酸ポリマー、並びに1つ以上のアミノ酸残基が天然でないアミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーに適用される。「残基」は、アミド結合又はアミド結合模倣物によってポリペプチドに組み込まれるアミノ酸又はアミノ酸模倣物を指す。ポリペプチドは、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)の末端を有する。「ポリペプチド」は、ペプチド又はタンパク質と互換的に使用され、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すために使用される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、薬学的有効量を含み、SARS-CoV-1ウイルス、SARS-CoV-2ウイルスなどの感染から生じる感染、疾患、障害、又は他の状態の症状を低減、排除、治療、予防、又は制御するのに有効な化合物の濃度及び/又は体積を指す。SARS-CoV-1感染及びSARS-CoV-2感染の文脈において、薬学的有効量は、抗ウイルス抗体の存在、培養可能なウイルスの存在、及び患者血清中のウイルス抗原の存在、又は医療専門家によって特定可能な症状によって、感染が証明される期間を通して循環ウイルスを抑制又は阻害する量を維持するように投与される量を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「変異」は、ウイルスのゲノム(遺伝コード)における単一の変化を指す。変異は、頻繁に起こるが、ウイルスの特徴を変えるのは一部だけである。場合によっては、それらは、感染(例えば、SARS-CoV-2、HIV、D型肝炎など)の治療のための併用療法で使用される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド類似体」は、核酸類似体、糖、及び1~3個のホスフェートを有するホスフェート基を含むヌクレオシドを指す。抗ウイルスとして、それらは、感染した細胞におけるウイルス複製を防止するために一般的に使用される。レムデシビル又はリバビリンは、SARS-CoV治療の文脈において適用可能なヌクレオシド類似体の例である。ヌクレオチド及びヌクレオシド類似体も天然に見出すことができる。例としては、ヒト抗ウイルスタンパク質ビペリンによって産生されるddhCTP(3’-デオキシ-3’,4’ジデヒドロ-CTP)、及びいくつかのStreptomycesによって産生されるシネフンギン(S-アデノシルメチオニン類似体)が挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「バリアント」は、1つ以上の突然変異を含有し得るウイルスゲノムを指す。場合によっては、系統又は系統群などの同様の遺伝的変化を有するバリアント群は、公衆衛生上の措置を必要とする可能性のある共通の属性及び特性に起因して、懸念されるバリアント(VOC)又は目的のバリアント(VOI)として公衆衛生機関によって指定され得る。本明細書で使用される場合、「バリアント」は、VOC、VOI、及び監視中のバリアント(VBM)を含む。SARS-CoVの場合、VOCは、伝染性の増加、より重篤な疾患(例えば、入院又は死亡の増加)、以前の感染又はワクチン接種中に生成された抗体による中和の有意な低下、治療又はワクチンの有効性の低下、又は診断検出失敗の証拠があるバリアントである。VOIは、受容体結合の変化、以前の感染又はワクチン接種に対して生成された抗体による中和の低下、治療の有効性の低下、潜在的な診断的影響、又は伝染性若しくは疾患の予測される増加に関連している特定の遺伝子マーカーを有するバリアントである。VBMには、そのデータが、承認又は認可された医学的対策に潜在的又は明確な影響があることを示すもの、又はより重篤な疾患又は伝染の増加に関連しているが、米国で検出されなくなった、又は非常に低いレベルで循環しているものが含まれる。これらのバリアントは、米国における公衆衛生に重大かつ差し迫ったリスクを引き起こさない。
【0044】
ポリペプチド(例えばコロナウイルスRBD)のホモログ及びバリアントは、典型的には、目的のアミノ酸配列との全長アラインメントにわたってカウントされる少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有することを特徴とする。参照配列と更に大きな類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価される場合、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性などの同一性パーセンテージの増加を示す。全配列未満を配列同一性について比較する場合、ホモログ及びバリアントは、典型的には、10~20個のアミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列との同一性に依存して少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は95%の配列同一性を有し得る。そのような短いウィンドウにわたる配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用可能である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「対象」は、生きている多細胞脊椎動物生物、非ヒト霊長類、ブタ、ラクダ、コウモリ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類などのヒト及び非ヒト哺乳動物を含むカテゴリを指す。一例では、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、水生哺乳動物、野生動物など)である。対象は、家畜(イヌ又はネコなど)又は農場動物(ウシ又はブタなど)であり得る。追加の例では、SARS-CoV若しくはMERS-CoV感染などのコロナウイルス感染を阻害するか、又はコロナウイルスの複製を阻害することを必要とする対象が選択される。例えば、対象は感染しておらず、コロナウイルス感染のリスクがあるか、又は感染しており、治療を必要としている。
【0046】
本明細書で使用される場合、「バリアント」は、南アフリカ型バリアント、スコットランド型バリアント、並びに目的のバリアント(VOI)、監視中のバリアント(VBM)、及び懸念されるバリアント(VOC)を含む他のバリアントを指す。VOCは、伝染性の増加、より重篤な疾患、以前の感染又はワクチン接種中に生成された抗体による中和の有意な低下、治療又はワクチンの有効性の低下、又は診断検出失敗の証拠があるバリアントである。VOIは、受容体結合の変化、以前の感染又はワクチン接種に対して生成された抗体による中和の低下、治療の有効性の低下、潜在的な診断的影響、又は伝染性若しくは疾患の予測される増加に関連している特定の遺伝子マーカーを有するバリアントである。VBMには、そのデータが、承認又は認可された医学的対策に潜在的又は明確な影響があることを示す場合、又はより重篤な疾患又は伝染の増加に関連しているが、米国で検出されなくなった、又は非常に低いレベルで循環している場合が含まれる。これらのバリアントは、米国における公衆衛生に重大かつ差し迫ったリスクを引き起こさない。
【0047】
例示的なSARS-CoV-2バリアント系統としては、アルファ(B.1.1.7及びQ系統)、ベータ(B.1.351及び派生した系統)、ガンマ(P.1及び派生した系統)、エプシロン(B.1.427及びB.1.429)、イータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、バリアント1.617.3、ミュー(B.1.621、B.1.621.1)、ゼータ(P.2)などが挙げられる。実施形態では、SARS-CoV-2の文脈において、VOCとしては、B.1.1.7及びQ系統(2020年12月29日)、B.1.351及び派生した系統(2020年12月29日)、P.1及び派生した系統(2020年12月29日)、並びにB.1.427/B.1.429(2021年3月19日)が挙げられる。VOIの例としては、及びB.1.427及びB.1.429(2021年2月26日、2021年6月29日)、B.1.525(2021年2月26日)、B.1.526(2021年2月26日)、B.1.617.1(2021年5月7日)、B.1.617.3(2021年5月7日)、及びP.2(2021年2月26日)が挙げられる。VBMの例としては、B.1.1.7及びQ系統(2021年9月21日)、B.1.351及び派生した系統(2021年9月21日)、P.1及び派生した系統(2021年9月21日)、B.1.427及びB.1.429(2021年9月21日)、B.1.427/B.1.429(2021年9月21日)、B.1.525(2021年9月21日)、B.1.526(2021年9月21日)、B.1.617.1(2021年9月21日)、B.1.617.3(2021年9月21日)、及びP.2(2021年9月21日)が挙げられる。
【0048】
II.化合物
本明細書で使用される「化合物」又は「候補化合物」という用語は、スクリーニングアッセイなどのアッセイで、又は具体的には、SARS-CoV-2及び/又はSARS-CoV-1に結合し、その複製及び/又は感染を予防することができる化合物を特定するための方法で試験され得る、天然に存在するか、又は合成されるかのいずれかの任意の分子を説明するものである。このように、これらの化合物は、有機化合物及び無機化合物を含む。化合物は、好ましい実施形態では、小分子又は化学物質であり得る。他の実施形態では、化合物は、ペプチド、抗体、又はISVD、又は活性抗体断片を含み得る。
【0049】
本発明の化合物には、本発明のスクリーニング方法を使用して設計又は特定された化合物と、SARS-CoV-2及び/又はSARS-CoV-1に結合し、中和することが可能な化合物の両方が含まれる。例えば、SARS-CoV-2に結合し、中和することができる化合物は、本明細書に提示されるような、S-RBD/スパイク複合体及び/又はACE2に結合したS-RBD/スパイク複合体(本明細書では「ACE2:スパイクRBD」とも呼ばれる)の3D構造に対応する原子座標の使用に基づくスクリーニング方法に加えて、CADDベースのアプローチを使用して製造されてもよい。本発明の方法を使用して特定又は設計された候補化合物及び/又は化合物は、合成又は天然に存在する任意の好適な化合物であってもよく、好ましくは合成のものであり得る。一実施形態では、本発明の方法によって選択又は設計される合成化合物は、好ましくは、約5000、4000、3000、2000、1000以下、より好ましくは約500ダルトン未満の分子量を有する。本発明の化合物は、好ましくは、生理学的条件下で可溶性である。そのような化合物は、タンパク質、特に水素結合との構造的相互作用に必要な官能基を含んでいてもよく、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、又はカルボキシル基、好ましくは官能性化学基のうちの少なくとも2つを含む。化合物は、上の官能基のうちの1つ以上で置換された環状炭素若しくはヘテロ環式構造、及び/又は芳香族若しくは多芳香族構造を含み得る。化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、又はそれらの組み合わせを含む生体分子を含み得る。
【0050】
A.CADDアプローチを使用した化合物のスクリーニング
図1Aは、侵入阻害剤化合物をスクリーニングためのコンピュータ支援プロセスを示す。本プロセスは、コンピュータ支援薬物設計(CADD)アプローチを使用した、少なくとも800万個の化合物のスクリーニングを含む。いくつかの実施形態では、500万個~1500万個の化合物が、CADDアプローチを使用してスクリーニングされる。実施形態では、S-RBD及びACE2の界面に見出される残基を、表1にまとめて記載している。S-RBD及びACE2の界面における残基も
図1Bに示される。更に、
図1Cは、結合ポケットのズームイン図を示す。
【表1】
【0051】
実施形態では、侵入阻害剤をスクリーニングするための方法が提供され、第1のステップでは、候補化合物のドッキングスコア及び結合幾何形状が分析される。第2のステップでは、上述の化合物は、細胞ベースのアッセイにおいて、抗ウイルス活性について試験される。最後に、上述の化合物は、薬物動態を改善するために誘導体化され得る。この方法は、S-RBD/スパイク複合体及び宿主ACE2(本明細書で「ACE2:スパイクRBD」とも称される)によって形成される結合ポケット中のドッキングスコア、及び結合幾何形状の目視検査に基づいて、化合物を選択するための標準的なアプローチを提供する。選択される例示的な化合物は、
図1D~
図1Iに示され、式(Ia)(
図1D)、式(IIa)(
図1E)、式(V)(
図1F)、式(VI)(
図1G及び
図1H)、並びに式(VII)(
図1I)を含む。抗ウイルス活性について化合物を試験した後、式(Ia)及び式(IIa)を、薬物様化合物として特定した。その後、式(IIa)を誘導体化して、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、及び式(IIe)(
図2F)を生成した。上述のように、活性アッセイは、式(IIb)が、Hu-1及びデルタの両方を有する式(IIa)と比較して、改善された結合動態を有することを示す。抗ウイルス活性について試験した、及び/又は将来の誘導体化のために考慮される更なる化合物としては、式(IIIa)(
図2G)、式(IIIb)(
図2H)、式(IIIc)(
図2I)、式(IV)(
図2J)、式(V)(
図2K)、式(VI)(
図2L)、式(VII)(
図2M)、式(VIII)(
図2N)、式(IX)(
図2O)、及び式(X)(
図2P)が挙げられる。化合物ID、IUPAC名、及び構造を含む、上述の化合物のうちのいくつかの特性を、以下の表2にまとめている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0052】
実施形態では、式(V)、式(VI)、及び式(VII)のドッキングスコアは、それぞれ、-7.6、-7.2、及び-6.4である。式(Ia)の最良のポーズ(ドッキングスコアに基づく)は、S-RBDの残基R403、E406、Q409、K417、Y505、及びACE2の残基N33、H34、E37、R393、F390、P389、Q388、A387によって形成されるポケットにドッキングされる(
図1D)。他の実施形態では、式(IIa)は、同じポケットにドッキングする。更に他の実施形態では、式(IIa)は、Y505、R403、Y453(S-RBDから)、並びにN33、H34、E37、P389、F390、Q388、及びA387によって形成されるポケットにドッキングする(
図1E)。
図1D及び
図1Eに示される2つの化合物のドッキングポーズからわかるであろうが、実施形態では、式(Ia)は、
図1Eに示されるようなポケット残基とのたった4個の極性相互作用のみを有する式(IIa)よりも、ポケット残基とのより有意な数の極性相互作用を有する(
図1Dで点線の黄色の線として示される)。実施形態では、上述の限定された極性相互作用は、式(Ia)と比較して、式(IIa)の改善されたドッキングスコアをもたらし得る。式1F~1Iは、式(V)(
図1F)、式(VI)(
図1G及び
図1F)、並びに式(VII)(
図1I)の化合物が、式(Ia)(
図1D)と同じポケットにドッキングするように適合されることを示す。したがって、実施形態では、最良のポーズの研究は、少なくとも式(Ia)、式(IIa)、及び式(III)の化合物が、S-RBD(S-RBDは、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインである)及び宿主細胞ACE-2受容体の界面に結合するように適合されることを示す。
【0053】
B.ACE2:SARS-CoV-2のスパイクRBDの結合に対する化合物の影響
図3は、コンピュータ支援薬物設計アプローチによって選択された化合物のスクリーニングを示す。本開示は、ACE2:SARS-CoV-2スパイクRBD(「ACE2:スパイクRBD」)を阻害する化合物を特定するために、化合物のライブラリをスクリーニングするための方法を提供する。上述のスパイク/ACE2阻害剤スクリーニングアッセイは、以下の実施例のセクションに記載されるように実施された。実施形態では、式(Ia)、式(IIa)、式(V)、式(VI)、及び式(VII)を、0.25~5μMで開始する異なる濃度で、三重で試験する。5つの化合物は、ACE2及びスパイクRBDの結合を異なる程度まで阻害/ブロックすることが示された。特に、実施形態では、5つの化合物全ては、用量依存的な方法でACE2とスパイクRBDとの間の結合を逆転させるように適合される。
【0054】
いくつかの実施形態では、式(Ia)は、少なくとも0.25μMのIC50を有する。対照的に、式(IIa)、式(V)、式(VI)、及び式(VII)は、それぞれ、0.45、1.91、5.0より大きい、及び5.0μMより大きいIC50を有する。
【0055】
C.マイクロスケール熱泳動アッセイを使用して結合親和性を評価する
他の実施形態では、マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイを使用して、式(IIa)及び式(IIb)がS-RBD単独(
図11A)及び/又はACE2単独(
図11B)に結合するかどうかを決定する方法が提供される。加えて、上述のMSTアッセイは、化合物がS-RBD/ACE2複合体に結合するかどうかを評価する。一実施形態では、式(IIa)は、S-RBDに結合せず(K
dが測定されない)、ACE2単独にも結合しない(K
d=3.7μM)が、S-RBD/ACE2複合体に結合する(K
d=299nM)。
【0056】
本方法は更に、式(IIa)/Hu-1 S-RBDのみ(
図11A)及び式(IIa)/ACE2のみ(
図11B)の結合動態を導出するためのマイクロスケール熱泳動の使用を提供する。実施形態では、「式(IIa)/ACE2のみ」の結合曲線(
図11B)を使用して、3.7マイクロモル濃度のK
dを導出する。実施形態では、式(IIa)誘導体としては、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、及び式(IIe)(
図2F)が挙げられる。いくつかの実施形態では、上述の式(IIa)誘導体は、S-RBD及びACE2単独には結合しないが、S-RBD/ACE2複合体に結合する。上に加えて更に、本開示は、一般的に、SARS-CoV-2ウイルスを治療する方法であって、SARS-CoV-2ウイルスにより感染した対象に化合物を投与することを含み、化合物が、SARS-CoV-2 S-RBD/ACE2複合体に結合するが、S-RBD単独又はACE-2単独には結合せず、化合物が、式(II)(例えば、式(IIa)、式(IIb)、式(IIc)、式(IId)、若しくは式(IIe)、又はその薬学的に許容される塩を含む、方法を提供する。
【0057】
図12A~
図12Dに示されるように、実施形態では、上述のMST法は、バリアントタンパク質複合体との使用に適応可能である。例えば、マイクロスケール熱泳動(MST)を使用して、式(IIa)及び式(IIb)の化合物と、WT(「Hu-1」)及びデルタS-RBD/ACE2タンパク質複合体との結合を分析し得る。別の例では、式(IIa)及びHu-1(
図12A)を用いたMSTアッセイは、299nMのK
dを提供する。式(IIa)及びデルタ(
図12B)を用いたMSTアッセイは、200nMのK
dを提供する。式(IIb)及びHu-1(
図12C)を用いたMSTアッセイは、31nMのK
dを提供する。式(IIb)及びデルタ(
図12D)を用いたMSTアッセイは、90nMのK
dを提供する。したがって、実施形態では、化合物式(IIb)及び/又は式(IIb)を含む薬学的組成物の、Hu-1 S-RBD/ACE複合体との結合親和性は、デルタS-RBD/ACE複合体と比較して、約10倍改善される。
【0058】
D.化合物の細胞傷害性を測定する
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞傷害性の正確な尺度を提供する。上述の方法は、候補侵入阻害剤化合物(例えば、式(Ia)、式(IIa)、式(V)、式(VI)、及び式(VII)の化合物など)に適用される。アッセイは、HEK293T-hACE2細胞で実施した(
図4A~
図4Kを参照されたい)。第一に、細胞傷害性は、細胞増殖及び生存率を測定する比色MTTアッセイを使用して、式(Ia)(
図4A、
図4F、
図4H、
図4Jを参照されたい)及び式(IIa)(
図4B、
図4G、
図4I、
図4Kを参照されたい)について、Vero-STAT1ノックアウト、UNCN1T、及びCalu-3細胞において計算された。次に、化合物の濃度の増加に対して、細胞の生存率のパーセントがプロットされ、各化合物の50パーセント細胞傷害性濃度(CC
50)が、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算される。実施形態では、HEK293T-hACE2細胞では、5つの化合物全てが、100μMより大きなCC
50値を示した(
図4A~
図4E)。Vero-STAT1ノックアウト細胞では、それぞれ、式(Ia)は、6.21μMのCC
50を示し(
図4F)、式(IIa)は、7.13μMのCC50を提供した(
図4G)。他の実施形態では、UNCN1T及びCalu-3細胞では、式(Ia)及び式(IIa)は、100μMより大きなCC50値を示した(
図4H~
図4K)。
【0059】
E.侵入阻害の潜在能力のスクリーニング
本開示は、コロナウイルス宿主細胞侵入を模倣する方法であって、コロナウイルススパイク糖タンパク質を発現する欠損レンチウイルス粒子を第1のステップで複製する、方法を提供する。上述の第1のステップでは、レンチウイルス粒子は、表面発現したSARS-CoV-2スパイクタンパク質を組み込むように適合される。次に、レンチウイルス粒子を使用して、ヒトACE2を発現するHEK-293T細胞を使用して、侵入阻害化合物が存在しない状態で、ウイルス侵入の相対的な効率を決定する。次に、HEK-293T-hACE2細胞を、化合物の濃度を増加させつつ(0.25~5μM)処理し、その後、擬似型レンチウイルス粒子で形質導入する。次いで、擬似型ウイルス侵入を計算し、48時間後にビヒクル対照(DMSO)に対して測定する。実施形態では、式(Ia)の化合物は、より高い濃度でわずかな増加を伴う低レベルのウイルス侵入阻害を示す(
図5A)。他の実施形態では、式(IIa)による治療は、広い濃度範囲にわたって有意かつ堅牢なウイルス侵入阻害をもたらし得る(
図5B)。他の実施形態では、
図5A及び
図5Bに対して測定されるように、式(V)(
図5C)、式(VI)(
図5D)、及び式(VII)(
図5E)は、このインビトロ実験の条件下で偽ウイルス侵入を防止しない場合がある。式(IIa)のIC
50値は、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルに基づいて0.84μMである(
図5F)。いくつかの実施形態では、式(IIa)は、0.8~0.85μM又は0.9~1μMを含む範囲のIC
50値を示す。他の実施形態では、式(IIb)は、0.1~0.2μM、0.22~0.3μM、0.32~0.6μM、又は0.6~8μMの範囲の、式(IIa)よりも更に低いIC
50値を示す。
【0060】
実施形態では、ウイルス侵入/複製は、様々な手段によって侵入阻害剤によってブロックされ得る。例えば、一実施形態では、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2の複製は、宿主ACE2とS-RBDとの会合を防止する結合した小分子化合物の立体障害によって阻害される。別の例では、ウイルスの侵入/複製は、侵入阻害剤と、RBD及び/又はスパイクタンパク質の残基との静電反発によって阻害される。他の実施形態では、本明細書に開示される侵入阻害剤の治療有効量は、RBD/スパイク複合体及び/又は側鎖との共有結合化学的相互作用を含む代替的な手段によって、ウイルスの侵入/複製をブロックし得る。実施形態では、侵入阻害剤は、プロトンを抽出し、電子を供与し、ファン・デル・ワールス相互作用に参加し、量子トンネリングに参加するなどであってもよい。そのような相互作用は、スパイク/RBD複合体へのACE2結合を破壊し得るため、ウイルスの侵入及び複製を防止する。
【0061】
F.生存SARS-CoV-2アイソレート及びバリアントに対する抗ウイルス有効性
実施形態では、式(Ia)、式(IIa)、及び式(IIb)の化合物、並びにそれらの薬学的組成物は、SARS-CoV-2に対する強力な抗ウイルス活性を提供することが示されている。本発明の方法は、UNCN1T及びVero-STAT1ノックアウト細胞における生存SARS-CoV-2煮対する式(Ia)及び式(IIa)の抗ウイルス有効性の測定を可能にする。UNCN1Tは、ヒト気管支上皮細胞株であり、SARS-CoV-2の標的組織である肺上皮の疾患に関連するコンテクストとして機能する。Vero-STAT1ノックアウト細胞は、細胞抗ウイルスインターフェロン媒介応答に関与する転写因子であるSTAT1が存在しないことに起因して、ウイルス感染に対して非常に感受性である。したがって、実施形態では、これらの細胞は、堅牢なウイルス感染の陽性対照として機能する。いくつかの実施形態では、上述の細胞モデルを使用した後、SARS-CoV-2複製動態を、様々な時点(例えば、24及び48hpi)で測定する。上述の測定値は、侵入阻害剤化合物(例えば、式(Ia)、式(IIa)、式(IIb)、又は式(IIc)、式(IId)、及び式(IIe)などの上述の他の侵入阻害剤化合物のうちのいずれかの濃度を増加させた条件下で決定される。
【0062】
本発明の上述の方法を適用すると、一例では、式(Ia)及び式(IIa)は、24hpiで、それぞれ0.67及び1.72μMのIC
50値を有する抗ウイルス活性を提供した(
図6A)。別の態様では、式(Ia)及び式(IIa)は、それぞれ、48hpiで1.16及び0.89μMのIC
50値を有する(
図6B)。Vero-STAT1ノックアウト細胞では、24hpiの式(Ia)及び24hpiの式(IIa)は、それぞれ、5.35及び1.63μMのIC
50値を有する(
図6C)。他の実施形態では、48hpiでは、式(Ia)及び式(IIa)の化合物は、それぞれ、2.94及び0.54μMのIC
50値を有する(
図6D)。実施形態では、式(II)(例えば、式(IIa))は、その増強された薬物動態プロファイルと一致して、全ての時点で
図6B~
図6Dのより低いIC
50値を示す。
【0063】
実施形態では、式(Ia)及び式(IIa)の抗ウイルス有効性は、SARS-CoV-2のバリアントに対して更に評価されてもよい。概念の証明として、かつBEI資源からのそれらの利用可能性に基づいて、南アフリカ(系統:B.1.351)及びスコットランド(系統:B.1.222)からの2つの変異体バリアントを選択した。Calu-3細胞の培養上清中のSARS-CoV-2ウイルス負荷に基づいて、式(Ia)及び式(IIa)は、野生型ウイルスと比較して、新たに出現したバリアント株に対して同等の抗ウイルス活性を示した。実施形態では、式(Ia)は、南アフリカ型(系統:B.1.351)バリアント(
図7A)及びスコットランド型(系統:B.1.222)バリアント(
図7B)について、24hpiで9.27μM及び2.64μMのIC
50値を有する一方で、式(IIa)は、24hpiでそれぞれ、南アフリカ(系統:B.1.351)バリアントについて3.00μM(
図7C)、スコットランド(系統:B.1.222)バリアントについて1.39μMのIC
50値を有する(
図7D)。式(IIb)の化合物は、スコットランド及び南アフリカ型バリアントについて更に低いIC
50値を示す。例えば、実施形態では、式(IIb)は、0.5~0.19μM、0.2~0.31μM、0.32~0.6μM、又は0.6~0.8μMを含む低い範囲のIC
50値を提供する。
【0064】
上述のものに加えて、上述の侵入阻害剤の方法及び組成物は、様々なSARS-CoV-2バリアントとともに使用するために十分に適合されている。実施形態では、上述のバリアントは、B.1.427及びB.1.429(2021年2月26日、2021年6月29日)、B.1.525(2021年2月26日)、B.1.526(2021年2月26日)、B.1.617.1(2021年5月7日)、B.1.617.3(2021年5月7日)、及びP.2(2021年2月26日)を含む目的のバリアント(VOI)を含み得る。更に他の実施形態では、SARS-CoVに対する抗ウイルス効果を測定するための上述の系は、B.1.1.7及びQ系統(2021年9月21日)、B.1.351及び派生した系統(2021年9月21日)、P.1及び派生した系統(2021年9月21日)、B.1.427及びB.1.429(2021年9月21日)、B.1.427/B.1.429(2021年9月21日)、B.1.525(2021年9月21日)、B.1.526(2021年9月21日)、B.1.617.1(2021年9月21日)、B.1.617.3(2021年9月21日)、及びP.2(2021年9月21日)を含む、監視中のバリアント(VBM)とともに使用するために適合され得る。他の実施形態では、上述の組成物及び方法は、MERS-CoV、SARS-CoV、NL63-CoV、229E-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV、WIV1-CoV、MHV、HKU9-CoV、PEDV-CoV、又はSDCVを含む様々な異なるコロナウイルスとともに使用するために適合される。
【0065】
G.SARS-CoV-2感染した細胞への様々な時間の添加後の式(Ia)及び式(II)の抗ウイルス有効性
ウイルスの生活環のどの段階で、式(Ia)及び式(IIa)の化合物がそれらの抗ウイルス効果を付与するかを決定するために、本方法は、添加時間アッセイを含む。アッセイの実験スキームは、
図8Aに記載されている。実施形態では、両方の化合物を-2hpiに添加した場合、ビヒクル対照と比較して、SARS-CoV-2感染性が80%よりも多く減少したことが観察された。いくつかの実施形態では、化合物を感染時に添加すると、SARS-CoV-2感染性の約40%の減少が観察される。他の実施形態では、化合物が+4hpiに添加される場合、ビヒクル対照と比較して、SARS-CoV-2感染に有意差はない(
図8B)。まとめると、実施形態では、式(Ia)及び式(IIa)は、ACE2及びSARS-CoV-2スパイクRBD結合界面と相互作用し、それによってタンパク質複合体の会合を防止する。実施形態では、感染前に適用される場合、上述の化合物は、ACE2及びS-RBD/スパイク複合体を打ち負かすために、それらの標的に移行することがより容易に可能である。実際に、本開示は、式(IIb)の化合物を-2hpiに添加すると、ビヒクル対照と比較して、SARS-CoV-2感染性が85%、90%、又は95%より多く減少することを示す。したがって、実施形態では、式(Ia)及び式(IIa)は、SARS-CoV-2による感染の予防及び治療の両方を行うために対象に適用され得る薬学的組成物を含む。
【0066】
H.ACE2:スパイクRBDにおける化合物結合は、ACE2における側鎖のコンフォメーション変化を誘導する。
実施形態では、ACE2:スパイクRBD複合体への化合物結合の影響を評価する方法が開示される。具体的には、誘導適合ドッキング(IFD)を使用して、化合物の結合によって誘導される、推定コンフォメーション変化を評価する。実施形態では、ACE2:スパイクRBDに結合すると、式(Ia)及び式(II)の化合物は、有意な側鎖コンフォメーション変化を誘導する。一実施形態では、S-RBD/ACE2複合体への式(Ia)の結合(可撓性ドッキングによって測定される)時に、残基Y505及びR403が空間内で転置される(
図13Aを参照されたい)。別の実施形態では、ACE2残基N33、H34及びR393の側鎖コンフォメーション変化は、IFD時に変化する(N33の適度な回転、及びY505の有意な距離を参照されたい)。更なる実施形態では、S-RBD/ACE2複合体への式(Ia)の化合物の結合は、結合ポケットへの式(Ia)の結合のモードを有意に変化させる(
図13B)。特に、他の実施形態では、結合ポケット内のいくつかの残基の側鎖コンフォメーションは変化しないままであった。実施形態では、これらの残基は、S-RBDのE406及びD405、並びにACE2のD30、E37、A386、E387、Q388、及びP389を含む。
【0067】
実施形態では、有意な側鎖コンフォメーション変化は、式(IIa)のIFD時に観察される(
図13C)。いくつかの実施形態では、これらの残基は、R403、Y453、Y495、及びY505(S-RBD)、並びにN33、H34、E37、D38、及びK353(ACE2)を含む。他の実施形態では、S-RBD残基D405及びE406、並びにACE2残基R393の側鎖コンフォメーションは、式(IIa)のIFD時に変化しなかった。式(Ia)の化合物で見られるように、式(IIa)自体の結合コンフォメーションも、ACE2:スパイクRBDに結合すると変化した(
図13D)。本発明は、ACE2:スパイクRBDへの式(IIa)誘導体の結合時の側鎖コンフォメーション変化の誘導を企図する。上述の誘導体は、式(IIb)(
図2C)、式(IIc)(
図2D)、式(IId)(
図2E)、及び式(IIe)(
図2F)を含む。他の実施形態では、本発明は、式(IIIa)(
図2G)、式(IIIb)(
図2H)、式(IIIc)(
図2I)、式(IV)(
図2J)、式(V)(
図2K)、式(VI)(
図2L)、式(VII)(
図2M)、式(VIII)(
図2N)、式(IX)(
図2O)、及び式(X)(
図2P)を含む、本明細書に開示される他の化合物のACE2:スパイクRBDへの結合時の側鎖コンフォメーション変化の誘導を企図する。
【0068】
I.式(IIa)の化学的特性
実施形態では、式(IIa)の様々な生物物理学的特性が、RDVとのその相乗効果を定量化することに加えて、計算される。まず、SwissADMEウェブポータルを使用して、全ての化合物の様々な生物物理学的特性を計算する。次に、RDVとの相乗効果を示すか、又は反証するために、上述の化合物の動態を分析する。実施形態では、式(II)(例えば、式(IIa))の上述の分析から、少なくとも2.27のLog Po/w値が得られ、これは、高い透過性及び中程度の溶解性を示唆している。更に、式(IIa)は、高い消化管吸着を有するが、CYP2C9、CYP2D6、及びCYP3A4を阻害することは予想されず、化合物の低い毒性を示唆している。加えて、実施形態では、式(IIa)は、リピンスキーのルールオブファイブの全てを満たし、痛みを伴わずに高い薬物可能性を示すことが予測される(汎アッセイ干渉化合物)。
【0069】
併用療法及び再利用された薬物の使用も開示される。上述の療法は、ウイルス生活環の異なる段階を標的にするように適合され、単剤療法と比較して優れたウイルス学的応答及び生理学的応答をもたらす。このアプローチは、治療の全体的な有効性を高め、個々の薬物の投薬量要件を減少させ、毒性プロファイルを改善し、薬物耐性を発症する可能性を低下させる。他の実施形態では、インビトロ単分子タンパク質折り畳み実験を使用して、S-RBDなどの代替的な折り畳みコンフォメーション状態を標的とする薬物を設計する。
【0070】
J.RDV/式(Ia)及びRDV/式(IIa)の併用抗ウイルス効果
上述のように、SARS-CoV-2の細胞侵入をブロックする式(Ia)及び式(IIa)の有効性を実証した。加えて、本開示は、式(Ia)/式(IIa)とRDVとの併用抗ウイルス効果を評価する方法を提供する。上述したように、RDVの用量応答曲線は、SARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞を使用して、式(Ia)及び式(IIa)の異なる固定用量の組み合わせで決定した(
図9A及び
図10Aを参照されたい)。いくつかの実施形態では、式(Ia)及び式(IIa)の用量応答曲線を、感染したUNCN1T細胞におけるSARS-CoV-2を使用して、RDVの異なる固定用量の組み合わせで決定した(
図9B及び
図10B)。RDV/式(Ia)及びRDV/式(IIa)の単独処置及び併用処置の用量応答阻害パーセントマトリックスを、それぞれ
図9C及び
図10Cに示す。最後に、24hpiのSARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞において、SynergyFinder v.2を使用したLoewe付加モデルに基づいて、併用治療の3-D相互作用ランドスケープを計算した。シナジーマップは、それぞれ赤色及び緑色の相乗的用量領域及び拮抗的用量領域を強調する。負のLoeweシナジースコアは、拮抗的な薬物の組み合わせを示し、0~10のスコアは、薬物の組み合わせの相加効果を示し、10を超えるスコアは、相乗的な薬物の組み合わせを示す。
【0071】
実施形態では、RDV/式(Ia)の組み合わせは、-30.69のLoeweシナジースコアを有し、これは、拮抗効果を示している(
図9D)。しかしながら、他の実施形態では、RDV/式(IIa)は、26.64のLoeweシナジースコアを有し、これは、相乗効果を示している(
図10D)。実施形態では、RDV(RdRp阻害剤)と式(Ia)及び/又は式(IIa)との間の相乗的相互作用は、それぞれ、式(IIa)及びRDVの投薬量の少なくとも28.3倍及び2.3倍の減少を含む。実施形態では、これらの知見は、単剤療法に対する2つの化合物(RDV及び式(IIa))の併用を裏付ける。実施形態では、ウイルス生活環の2つの重要な段階、すなわち、細胞侵入(式(IIa))及び複製(RDV)を標的とする併用療法は、全体的な治療有効性を高め、1つの薬物に関連する耐性の可能性を低減する。特に、RDVと式(Ia)を使用した研究では、Loeweシナジースコアに関連するデータにいくつかの中程度の異常が生じた。特に、RDV用量の減少は、臨床環境におけるその使用を実質的に制限する有害な副作用を減少させることが期待される。したがって、抗ウイルス治療薬の分野では、他の潜在的に相乗的な化合物(例えば、他のヌクレオシド類似体、リバビリンなど)との併用療法の使用を利用することができる。
【0072】
上述のように、S-RBD/スパイク複合体阻害の機構の動態研究は、式(Ia)及び式(IIa)が、S-RBD/スパイク複合体の阻害剤(例えば、非競合阻害剤)として作用することを明らかにした。実施形態では、上述のように、式(IIa)が、Hu-1S-RBDのみ及びACE2のみに個別に結合しないことが示される(
図11A及び
図11Bを参照されたい)。これらの結果は、本発明の侵入阻害剤が、新規かつ驚くべき機構を介して、S-RBD/スパイク複合体を特異的にブロックすることを示す。更に、S-RBD/スパイク複合体に対する侵入阻害剤の特異性を考慮して、宿主哺乳動物の細胞酵素及び他の内因性プロセスの機能は、拮抗していない。他の実施形態では、対象への式I又は式(II)の投与は、ほとんど又はまったく体液性炎症性免疫応答をもたない(例えば、侵入阻害剤の投与後にIFN-γ濃度が低いか、又はまったく増加しない)。実施形態では、上述の侵入阻害剤は、通常、S-RBD/スパイク及び/又はACE2で観察される細胞外コンフォメーション変化の破壊によって、S-RBD/スパイク複合体の侵入及び複製をブロックする。他の実施形態では、侵入阻害剤は、診断に有用であり、及び/又はSARS-CoV生活環におけるS-RBD/スパイク複合体の研究のモデルとして機能する。
【0073】
実施形態では、誘導体は、侵入阻害剤(例えば、式(Ia)、式(IIa)、式(V)、式(VI)、式(VII)など)の化学基又はその前駆体を交換することによって生成又は合成されてもよい。誘導体は、複製細胞ベースのアッセイ(例えば、レンチウイルスベースの偽ウイルスアッセイ、IC50を測定する抗ウイルスアッセイ、誘導体の作用段階を特定する薬物添加アッセイなど)における複製阻害の生物学的活性を決定するために、様々なアッセイに供され得る。加えて、侵入阻害剤への改変を行って、増加したバイオアベイラビリティ、膜障壁を横断する能力、溶解性、活性、又は例えば安定性を有する誘導体を得ることができる。また、誘導体は、例えば、所定の培地中で有機化合物を産生することができる微生物を培養し、培養物から得られた有機化合物を、その侵入阻害剤又は前駆体、及び追加の試薬と反応させることによって合成されてもよい。誘導体はまた、任意の有機化学方法によって合成されてもよい。侵入阻害剤の誘導体又はその前駆体を含有する化学化合物の化合物ライブラリを構築することができる。そのようなライブラリは、改善された特徴、例えば、バイオアベイラビリティ、活性、安定性などを有する誘導体のランダムハイスループットスクリーニングを可能にする。
【0074】
特定の実施形態では、SARS-CoV及び他のコロナウイルスの治療のための様々な誘導体が使用される。
【0075】
特定の実施形態では、侵入阻害剤化合物は、以下に示される式I、II、及び/又はIII
【化1】
【化2】
【化3】
のうちの1つを有する化合物の誘導体、又は
その塩であり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8及びR
9の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
R
5が、独立して、水素、ハロゲン、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Yが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Zが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Y
1が、O、S、S(=O)、S(=O)
2、ニトロ(-NO
2)、脂肪族ニトリル、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
X
1が、S、O、NH、又はCR
a1であり、X
2が、N又はCR
a2であり、X
3が、N又はCR
a3であり、X
4が、(C
1~C
4)アルキルであり、R
a1、R
a2、及びR
a3の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Lが、存在しないか、又はCR
a4であり、R
a4が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Mが、存在しないか、NH、又はNであり、MがNであるとき、M及びX
4が結合して、環状基を形成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、I、II、又はIIIの式はまた、その誘導体又は薬学的に許容される塩であり得る。
【0077】
任意のR基又は化学置換基を含む式の任意の説明は、単独で、又は任意の組み合わせで、本明細書に記載の任意の化学式で使用されてもよく、式は、ジアステレオマー、エピマー、及び鏡像異性体を含む、全てのコンフォメーション及び立体異性体を含む。本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有し得る。したがって、非対称的に置換された原子を含有する式は、光学的に活性な形態又はラセミ形態で単離され得る。特定の立体化学又は異性形態が具体的に示されない限り、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形態及び全ての幾何異性体形態が意図される。更に、本明細書に開示された組成物の任意の特徴は、本明細書に開示された組成物の任意の他の特徴と組み合わせて使用されてもよい。
【0078】
他の実施形態では、侵入阻害剤化合物は、以下に示される式I、II、及び/又はIII
【化4】
【化5】
【化6】
の誘導体、又は
その塩であり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8及びR
9の各々が、独立して、水素、ニトロ(-NO
2)、
O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
R
5が、独立して、水素、ハロゲン、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、NH
2、O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Yが、O、S、S(=O)、又はS(=O)
2であり、
Zが、O、S、S(=O)、又はS(=O)
2であり、
Y
1が、O、S、S(=O)、S(=O)
2、ニトロ(-NO
2)、又は脂肪族ニトリルであり、
X
1が、S、O、又はCR
a1であり、X
2が、N又はCR
a2であり、X
3が、N又はCR
a3であり、X
4が、(C
1~C
4)アルキルであり、R
a1、R
a2、及びR
a3の各々が、独立して、水素、ハロゲン、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Lが、存在しないか、又はCR
a4であり、R
a4が、水素、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Mが、存在しないか、NH、又はNであり、MがNであるとき、M及びX
4が結合して、環状基を形成する。
【0079】
化合物又はその塩(薬学的に許容される塩を含む)は、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び宿主細胞ACE-2受容体の界面に結合する。
【0080】
実施形態では、化合物は、下式
【化7】
を有する。
【0081】
実施形態では、化合物は、下式
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
のうちの1つを有する。
【0082】
実施形態では、化合物又はその塩は、下式
【化13】
【化14】
【化15】
のうちの1つを有する。
【0083】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ウイルス複製を阻害するか、又は本発明の化合物により阻害することができる侵入のためのACE2を使用するウイルスによるウイルス感染を治療若しくは予防するのに好適である。他の実施形態では、本発明の化合物は、当該技術分野で既知の任意の他のACE2関連適応症についての哺乳動物(例えば、マウス、ヒト、水生哺乳動物など)ACE2の活性を調節するのに適している。例えば、本発明の化合物は、心血管系及び腎系の調節(例えば、血圧調節)に関与するレニンアンジオテンシン系(RAS)におけるACE2の調節機能を破壊し得るか、又はそれ以外の方法で調節し得る。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、ウイルスの複製を阻害する方法であって、コア式I、II、又はIII
【化16】
【化17】
【化18】
を有する化合物、又は
その塩を投与することを含み、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8及びR
9の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
R
5が、独立して、水素、ハロゲン、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ(-NO
2)、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、アミン、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、-O(C
1~C
4)ハロアルキル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Yが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Zが、O、S、S(=O)、S(=O)
2、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
Y
1が、O、S、S(=O)、S(=O)
2、ニトロ(-NO
2)、脂肪族ニトリル、カルボニル、カルボキシル、(C
1~C
6)アルキル、又は1つ以上のハロゲンで置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
X
1が、S、O、NH、又はCR
a1であり、X
2が、N又はCR
a2であり、X
3が、N又はCR
a3であり、X
4が、(C
1~C
4)アルキルであり、R
a1、R
a2、及びR
a3の各々が、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Lが、存在しないか、又はCR
a4であり、R
a4が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、-O(C
1~C
4)アルキル、又は-O(C
1~C
4)ハロアルキルであり、
Mが、存在しないか、NH、又はNであり、MがNであるとき、M及びX
4が結合して、環状基を形成する、方法が本明細書に開示される。
【0085】
任意のR基又は化学置換基を含む式の任意の説明は、単独で、又は任意の組み合わせで、本明細書に記載の任意の化学式で使用されてもよく、式は、ジアステレオマー、エピマー、及び鏡像異性体を含む、全てのコンフォメーション及び立体異性体を含む。本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有し得る。したがって、非対称的に置換された原子を含有する式は、光学的に活性な形態又はラセミ形態で単離され得る。特定の立体化学又は異性形態が具体的に示されない限り、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形態及び全ての幾何異性体形態が意図される。更に、本明細書に開示された組成物の任意の特徴は、本明細書に開示された組成物の任意の他の特徴と組み合わせて使用されてもよい。実施形態では、式(Ia)は、式(Ia)を含む、侵入阻害剤カテゴリI(IC50=0.25μM未満):6-メチル-2-ニトロジベンゾ[d,g][1,6,2]ジチアゾシン-7(6H)-オン5,5,12-トリオキシドを含む。
【0086】
特定の実施形態では、化合物及び方法は、Nidoviralesウイルス、例えば、Coronaviridaeウイルス、SARSウイルスなどの侵入阻害剤として使用するために設計されている。他の実施形態では、侵入阻害剤は、エボラ、インフルエンザ、MERS-CoV及びベネズエラウマ脳炎ウイルスを含む他のRNAウイルスに対して作用する。
【0087】
特定の実施形態では、本発明はまた、本明細書に開示される侵入阻害剤(表2を参照されたい)又はその薬学的に許容される塩、及び/又は薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を含む。
【0088】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩が、これらの組成物で利用される場合、それらの塩は、無機酸又は有機の酸及び塩基に由来し得る。そのような酸塩の中で特に(例示的なリストとして)、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニル-プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩である。塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミンなどの有機塩基を有する塩、並びにアルギニン、リジンなどのアミノ酸を有する塩が挙げられる。
【0089】
特定の実施形態では、本発明の組成物及び方法で利用される化合物は、選択的生物学的特性を増強するために適切な官能基を付加することによっても修飾され得る。そのような修飾は、当該技術分野で既知であり、所与の生体系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を高め、経口利用可能性を高め、注射による投与を可能にする溶解度を高め、代謝を変え、排泄速度を変えるものが含まれる。本明細書に提供される抗ウイルス組成物は、任意選択的に、担体、安定剤、免疫系刺激物質、消毒剤、化学的若しくは他の方法で不活性化されたウイルス物質、又は追加のウイルス阻害化合物などの1つ以上の追加の成分を含み得る。特定の実施形態では、これらの組成物に使用されてもよい薬学的に許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
また、任意の特定の患者に対する特定の投薬量及び治療レジメンは、薬学的組成物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事制限、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、並びに治療する医師の判断、及び治療される特定の疾患の重症度を含む、様々な要因に依存するであろうことも理解されたい。活性成分の量はまた、組成物中に存在する場合、特定の化合物及び/又は抗ウイルス剤に依存する。
【0091】
対象への侵入阻害剤又はその誘導体の投与のための投薬量範囲は、感染の症状が改善される、所望の効果をもたらす投薬量範囲である。具体的には、本発明の化合物は、S-RBDドメインを含み、感染の生活環中にS-RBD/ACE2複合体を形成するSARS-CoV-2などのNidoviralesウイルスに対して有効である。例えば、本明細書で使用される場合、SARS-CoV-1感染及びSARS-CoV-2感染の薬学的有効量は、抗ウイルス抗体の存在、培養可能なウイルスの存在、及び/又は患者血清中のウイルス抗原の存在、又は医療専門家によって特定可能な症状によって、感染が証明される期間を通して循環ウイルスを抑制又は阻害する量を維持するように投与される量を指す。例えば、抗ウイルス抗体の存在は、標準的なELISA又はウエスタンブロットアッセイの使用によって決定され得る。
【0092】
投薬量は、一般に、年齢、感染の程度、体重、免疫寛容、及び反適応症(ある場合)によって変化する。投薬量は、化合物に随伴し得る任意の有害な副作用の存在によっても決定されるであろう。可能な限り、有害な副作用を最小限に抑えることが望ましい。当業者は、個々の患者で所望の有効濃度を達成するために、使用される組成物の製剤のための適切な投薬量、スケジュール、及び投与方法を容易に決定することができる。しかしながら、投薬量は、例えば、約0.001mg/kg/日~約150mg/kg/日の間、又は任意選択的に、約1~約50mg/kg/日の間で変化し得る。
【0093】
一実施形態では、ACE2:SARS-CoV-2スパイクRBD侵入阻害剤化合物、組成物、又は薬学的組成物(「侵入阻害剤」)、又は上述の侵入阻害剤の組み合わせは、対象に、0.1mg/mlから、約0.5、1、5、10、15 20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200mg/ml(+/-10%の誤差)のいずれか1つまでの濃度で投与される。
【0094】
別の実施形態では、侵入阻害剤化合物又はその薬学的に許容される塩は、レシピエント対象の体重当たり約0.01~100.0又は200.0mg/kgの用量で対象に投与される。特定の実施形態では、SARS-CoV-S関連疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続注入によるかを問わず、約1μg/kg~50mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)の化合物が、患者に投与するための初期候補投薬量である。別の実施形態では、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の化合物は、患者に投与するための初期候補投薬量である。典型的な1日投薬量は、例えば、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医師に既知の他の因子などのいくつかの因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であってもよい。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。
【0095】
本発明の抗ウイルス組成物は、腸管、非経口、局所、経粘膜、筋肉内、静脈内、及び吸入送達方法を含む任意の医学的に有効な方法で受容対象に投与され得る。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、哺乳動物、又はヒトなどの生物への薬学的投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、家畜(livestock)、家畜(domesticated animal)、野生動物(例えば、コウモリ、センザンコウなどのベクター動物)、及び/又は水生哺乳動物への薬学的投与のために製剤化される。本発明のかかる薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、鼻腔的に、口腔的に、膣的に、又は移植されたリザーバを介して投与され得る。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病変内、及び頭蓋内への注射又は注入技術を含む。
【0097】
特定の実施形態では、組成物は、経口投与、腹腔内投与、又は静脈内投与される。本化合物又は薬学的組成物はまた、非経口経路(例えば、眼科、吸入及び経皮)によって投与され得る。本発明の組成物の滅菌注射用形態は、水性又は油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、当該技術分野で既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射可能調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液又は懸濁液であってもよい。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激の不揮発性油が用いられ得る。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル化型において、オリーブ油又はヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油溶液又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えば、Pharmacopeia Helveticaに記載されるもの、又は同様のアルコールを含み得る。
【0098】
本発明の薬学的組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液、又は水溶液を含むがこれらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、乳糖及び乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁剤と組み合わされる。所望される場合、ある特定の甘味剤、香味剤、又は着色剤もまた添加され得る。特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは、薬剤を好適な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができ、この賦形剤は、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出する。このような材料としては、ココアバター、蜜蝋、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0099】
実施形態では、非経口的に投与され、薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とともに、単位投薬量の注射可能な形態(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化されてもよい。このような賦形剤は、典型的には、非毒性であり、非治療的である。かかる賦形剤の例は、水、生理食塩水などの水性ビヒクル、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液、並びに固定油(例えば、トウモロコシ、綿実油、ピーナッツ及びゴマ)、オレイン酸エチル、及びミリスチン酸イソプロピルなどの非水性ビヒクルである。滅菌生理食塩水が、好ましい賦形剤である。賦形剤は、溶解性、等張性、及び化学安定性を向上させる物質、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、及び防腐剤などの少量の添加物を含有し得る。経口(又は直腸)で投与される場合、化合物は、通常、テーブル(table)、カプセル、坐剤、又はカシェ剤などの単位剤形に製剤化される。そのような製剤は、典型的には、固体、半固体、又は液体担体若しくは希釈剤を含む。例示的な希釈剤及び賦形剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、鉱物油、ココアバター、テオブロマ油、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、メチルセルロース、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノラウレート、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、及びステアリン酸マグネシウムである。
【0100】
一部の実施形態では、本発明による薬学的組成物は、静脈内に投与される。特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物はまた、特に、治療の標的が、局所適用によって容易にアクセス可能な領域又は器官を含む場合(眼、皮膚、又は下部腸管の疾患が含まれる)、局所投与されてもよい。好適な局所製剤は、これらの領域又は器官の各々のために容易に調製される。特定の実施形態では、下部腸管への局所適用は、直腸座薬製剤又は好適な浣腸製剤で行うことができる。局所的な経皮パッチもまた使用され得る。
【0101】
局所適用のために、薬学的組成物は、1つ以上の担体中に懸濁又は溶解した活性構成要素を含有する好適な軟膏に製剤化され得る。本開示の化合物を局所投与するための担体としては、鉱物油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体中に懸濁されるか又は溶解される活性成分を含有する好適なローション又はクリームに製剤化することができる。好適な担体としては、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。眼科的使用のために、薬学的組成物は、等張性の、pH調整滅菌生理食塩水中の微粒子化懸濁液として、又は好ましくは等張性の、pH調整滅菌生理食塩水中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を含むか含まないかのいずれかで製剤化され得る。あるいは、眼科的使用のために、薬学的組成物は、ワセリンなどの軟膏に製剤化され得る。
実施形態では、本発明の薬学的組成物はまた、鼻エアロゾル又は吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的製剤の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製され得る。実施形態では、上述の組成物中に存在する侵入阻害剤化合物の量は、対象における疾患状態の検出可能な減少及び/又はウイルス複製の測定可能な減少を引き起こすのに十分なものであるべきである。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、SARS-CoV-1感染及び/又はSARS-CoV-2感染を有する疑いのある生物を治療する方法を提供する。特定の態様では、そのような方法は、SARS-CoV-1感染及び/又はSARS-CoV-2感染を有する疑いのある生物を特定するためのステップを含み得る。このような特定は、特定のウイルス感染に特定的な診断手順によって行うことができる。これは、ウイルス感染の症状を検出することと、生体試料中のウイルス特異的抗原、抗体、又は核酸を検出することと、を含み得る。本明細書で使用される「生物学的試料」という用語には、細胞培養物若しくはその抽出物、哺乳動物から得られた生検物質若しくはその抽出物、及び血液、唾液、尿、糞便、涙、又は他の体液若しくはその抽出物が含まれ得る。「生物学的試料」という用語は、生きている生物も含む。
【0103】
特定の実施形態では、本発明は、SARS-CoV-1及び/又はSARS-CoV-2に曝露されたことが疑われるか、又は曝露され得る生物に本発明の薬学的組成物を投与するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明の構成要素又は薬学的組成物は、投与時にほぼ直ちに予防的及び/又は治療的効果を提供する。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。
【0105】
実施例1-コンピュータ支援薬物設計を使用した潜在的な阻害剤の特定。
実施形態では、約800万個の薬物様化合物を、インシリコドッキングプログラムを介して実行し、潜在的なSARS-CoV-2侵入阻害剤を特定した(
図1Aを参照されたい)。ライブラリは、MayBridge Hitfinder化合物からの化合物、Zincデータベース(zinc.docking.org)、ChEMBL、Bingo、JChemforExcel、ChemDiff、及びBindingMOAD(https://www.click2drug.org/index.php#Databases)からの小分子からなり、全ての化合物は、Schrodinger Suite(Schrodinger LLC,NY)の「LigPrep」プログラムを使用した、ドッキング対応コンフォメーションで調製された。S-RBD/ACE2複合体[Protein Databank Entry 6M0J、Lan et al.2020]を、インシリコスクリーニングに使用した。ドッキング対応構造は、水素原子、欠損側鎖を付加し、水素原子の配向の最適化とともにヒスチジン、グルタミン、及びアスパラギン残基にプロトン化状態を割り当てるSchrodinger Suite(Schrodinger LLC、NY)の「タンパク質調製ウィザード(Protein Preparation Wizard)」によって生成された。得られた構造は、立体競合を除去するために10,000回の反復のためにOPLS_2005力場を使用してエネルギーを最小化した。潜在的な化合物結合部位を、SiteMap(Schrodinger Suite)及びSiteID(SybylX-2.1、Certera,Princeton,NJ)によって特定した。S-RBD/ACE2の界面に存在する結合ポケットを、ライブラリ化合物のドッキングのために選択した(界面残基及びポケットの詳細は、「結果」セクションに示される。SP(Simple Precision)を伴うSchrodinger SuiteのGlideプログラムを、20×20×20Å
3サイズのグリッドボックスでの初期ドッキングで使用した。ドッキングスコアに基づく上位500化合物を、GlideのXP(Extra Precision)オプションを使用して再ドッキングした。次いで、これらの結果を、化合物とタンパク質(S-RBDとACE2)との間の相互作用について手動で視覚化した。5つの化合物(式(I)、(II)、(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc))を、細胞ベースのアッセイにおけるそれらのインビトロ阻害活性を試験するために最終的に選択した(表2)。これらの化合物の結合モードを理解し、結合部位残基の柔軟性にアクセスするために、Schrodinger SuiteのIFDプログラムを使用した柔軟なドッキングが行われる。
【0106】
ACE2との複合体におけるB.1.351バリアントのS-RBDの分子モデリングに関して、P.1バリアントのS-RBD/ACE2複合体結晶構造(PDB侵入7NXC)を利用した。P.1バリアントにおける変異K417TをK471Nに変更して、Schrodingerスイートのプライムモデリングプログラムを使用してB.1.351 S-RBDバリアントの構造を生成した。次いで、この構造を、式(Ia)及び式(IIa)の「誘導適合ドッキング」で使用した。
【0107】
実施例2-試薬及び細胞株。
RDV(GS-5734)は、Selleck Chemicals LLC(Houston,TX)から入手した。SARS-CoV-2侵入阻害剤は、MolPort(Riga,Latvia)から入手した。Calu-3(ATCC HTB-55)、Vero E6(CRL-1586)、及びVero-STAT1ノックアウト細胞(CCL-81-VHG)は、ATCCから入手した。Vero E6及びVero-STAT1ノックアウト細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS)、2mMのl-グルタミン、100単位/mlのペニシリン、100単位/mlのストレプトマイシン、及び10mMのHEPES(pH7.4)を含有するDMEM中で培養した。Calu-3細胞を、10%のFBSを含有するイーグルの最少必須培地(ATCC30-2003)中で培養した。UNCN1T細胞(ヒト気管支上皮細胞株、Kerafastカタログ番号ENC011)を、FNC(Athena Enzyme Systemsカタログ番号0407)でコーティングされた96ウェルプレート中、BEGM培地(気管支上皮細胞成長培地、Lonzaカタログ番号CC-3170)中で培養した。研究で使用される他の全ての試薬(分子生物学グレードのファインケミカル)は、別段の記載がない限り、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0108】
実施例3-ACE2:SARS-CoV-2スパイクRBD阻害剤スクリーニングアッセイ。
6つの化合物((式(I)、(II)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、及び(IV))を、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤スクリーニングアッセイキット(BPS Bioscienceカタログ番号79936)を使用して、製造業者の指示に従って、0.25~5.00μMの範囲の濃度で、三重で試験した。簡潔に述べると、ACE2タンパク質を氷上で解凍し、1×PBSを使用して1μg/mlに希釈し、50μl/ウェルで、キットに提供される96ウェルのニッケルコーティングプレートに適用し、穏やかに振り混ぜつつ、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを1X免疫緩衝液1で3回洗浄し、100μlの1Xブロッキング緩衝液2をウェルに添加し、室温でゆっくり振り混ぜつつ10分間インキュベートした。次に、10μlの化合物を三重で添加し、室温でゆっくり振り混ぜつつ1時間インキュベートした。10μlの5%DMSOをビヒクル対照として使用した。その後、5nMのSARS-CoV-2スパイク(RBD)-Fc(20μl)をウェルに添加し、室温でゆっくり振り混ぜつつ10分間インキュベートした。プレートを1X免疫緩衝液1で3回再洗浄し、100μlの1Xブロッキング緩衝液2をウェルに添加し、室温でゆっくり振り混ぜつつ10分間インキュベートした。次に、1:1000希釈した抗マウスFc-HRPをプレートのウェルに添加し、室温でゆっくり振り混ぜつつ1時間インキュベートした。最後に、上述のようにプレートを再洗浄し、HRP基質を添加して、化学発光を生じさせ、これを、SpectraMax i3xマルチモードプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose,CA)を使用して測定した。
【0109】
実施例4-MTT細胞生存率アッセイ
好ましい実施形態のMTT細胞生存率アッセイは、各細胞型に特異的な100μlの完全培地を含有する96ウェルプレートに、20,000細胞/ウェルの密度で播種されたHEK-293T-hACE2、UNCN1T、Vero-STAT1ノックアウト、及びCalu-3細胞を利用した。細胞を、接着のために、加湿された5%CO2インキュベーター内で、37℃で12時間インキュベートした。12時間のインキュベーション後、培地を新鮮な培地と置き換え、HEK-293T-hACE2細胞を、0.001~100μMの範囲の濃度の5つの化合物で処置した。Calu-3、UNCN1T、及びVero STAT1ノックアウト細胞を式(Ia)及び式(IIa)で処置した。未処置細胞は陰性対照とみなされ、DMSO処置細胞はビヒクル対照とみなされた。処置後、細胞を、加湿された5%CO2インキュベーター内で、37℃でインキュベートした。72時間の後処置、20μlのMTT基質(5mg/ml)を各ウェルに添加し、暗所にて37℃で更に4時間インキュベートした。次いで、培地を慎重に除去し、青いホルマザン結晶を200μlのDMSOに溶解させ、620nmの参照フィルターを用い、595nmで紫色を読み取った。
【0110】
代替的な実施形態では、Vero細胞及びHepG2細胞を、10%FBS(Gibco、USA)及び1%Penstrep(Gibco、USA)を補充した100μLの完全DMEM(Gibco、USA)を含有する96ウェルプレートに、15,000~25,000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、接着のために、加湿された5%CO2インキュベーター内で、37℃で12時間インキュベートした。12時間のインキュベーション後、培地を新鮮な培地と置き換え、細胞を(XX~YY)の範囲の化合物濃度で処置した。未処置細胞は陰性対照とみなされ、DMSO処置細胞はビヒクルとみなされた。処置後、細胞を、CO2インキュベーター内で、37℃で再びインキュベートした。48時間の後処置、20μLのMTT基質(5mg/mL)を各ウェルに添加し、暗所にて37℃で4時間インキュベートした。インキュベーションから4時間後、培地を慎重に除去し、青いホルマザン結晶を200μLのDMSOに溶解し、紫色を595nmで読み取った。
【0111】
実施例5-SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質を発現するレンチウイルスベースの偽ウイルスの産生及び滴定
擬似型決定のために(
図5A~
図5F)、Crawford et al.(Jour.of Virol.,Vol.95,No.24)によって記載されるように、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現するレンチウイルス粒子を生成した。簡潔に述べると、3×106個のHEK-293T細胞を、製造業者の指示に従って、jetPRIMEトランスフェクション試薬(Polyplus-transfection、NY)を使用して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を発現するプラスミドとともに、ルシフェラーゼを発現するレンチウイルス骨格とZsGreen(BEIカタログ番号NR-52516)を含有するプラスミド、HIV Gag-Pol(BEIカタログ番号NR-52517)を発現するレンチウイルスヘルパープラスミド、HIV Tatを発現するレンチウイルスヘルパープラスミド(BEIカタログ番号NR-52518)、及びHIV Revを発現するレンチウイルスヘルパープラスミド(BEIカタログ番号NR-52519)とともに、共トランスフェクションした。偽ウイルス粒子を含有する培養上清を、トランスフェクションの48時間後に、1200rpmで10分間の遠心分離及び0.45μMのフィルターを通した濾過によって採取して、細胞破片を除去し、次いで、下流の適用のために-80℃の冷凍庫で、アリコートで保存した。ウイルス力価を、ヒトACE2受容体を発現する操作されたHEK-293T細胞を使用して決定した。この目的のために、ウェル当たり12,500個のHEK293T-hACE2細胞を、ポリ-l-リジンコーティングした96ウェルプレートに播種した。播種後24時間、レンチウイルス粒子をポリブレン(5mg/ml)を補充した完全DMEMで連続希釈し、各希釈液50μlを4重のウェルに加えた。添加後48時間、偽ウイルス形質導入効率は、bright-gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、Madison,WI、カタログ番号E2610)を使用して、細胞溶解物中のホタルルシフェラーゼ活性を測定することによって決定した。発光を、SpectraMax i3xマルチモードプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose,CA)を使用して測定し、相対発光単位(RLU)をウイルス希釈に対してプロットした。
【0112】
実施例6-SARS-CoV-2侵入阻害剤スクリーニングアッセイ
SARS-CoV-2侵入阻害剤をスクリーニングするために、アッセイを開始する24時間前に、ポリ-l-リジンコーティングされた96ウェルプレートにウェル当たり20,000個のHEK-293T-hACE2細胞を播種した。アッセイの設定の日に、異なる濃度の化合物をSARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現するレンチウイルス粒子(1.00×105RLU/ウェル)と混合し、37℃で30分間インキュベートし、続いてポリブレン(5mg/ml)を補充した細胞内に50μlのレンチウイルス粒子-化合物複合体を添加した。48時間後、上述のようにホタルルシフェラーゼの活性を測定して、HEK-293T-hACE2細胞における形質導入偽ウイルス粒子の侵入をブロックする化合物の能力を計算した。
【0113】
実施例7-SARS-CoV-2株の産生及び滴定
SARS-CoV-2アイソレートUSA-WI1/2020(BEIカタログ番号NR-52384)、hCoV-19/南アフリカ/KRISP-EC-K005321/2020(BEIカタログ番号NR-54008)、及びhCoV-19/スコットランド/CVR2224/2020(BEIカタログ番号NR-53945)を、Vero-STAT-1ノックアウト細胞に継代した。ウイルス力価は、プラークアッセイを使用して決定した。簡潔に述べると、Vero E6細胞を6ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を、滅菌した1×PBSで洗浄した。ウイルスストックを連続的に希釈し、新鮮な培地を用いて細胞に二重に添加し、15分ごとに時折振とうしつつ、プレートを37℃で1時間インキュベートした。次に、5%FBS及び抗生物質を含有する最小必須培地(MEM)中の0.5%アガロース2mlを、ウェル当たり添加した。プレートを、37℃で72時間インキュベートした。次いで、細胞を4%のパラホルムアルデヒドで一晩固定し、続いてオーバーレイを除去し、0.2%のクリスタルバイオレットで染色してPFUを視覚化した。全てのアッセイを、BSL-3実験室設定で行った。全ての抗ウイルスアッセイに使用されるウイルスストックは、BEIから得られた初期ストックの1~2回の継代で生成された。
【0114】
実施例8-選択された化合物の抗ウイルス活性の評価
侵入阻害剤化合物を、様々な手段によって、抗ウイルス活性についてスクリーニングした。好ましい実施形態では、UNCN1T又はVero-STAT1ノックアウト細胞を、感染の24時間前に20,000細胞/ウェルで、又はCalu-3細胞の感染の48時間前に、以前と同じ播種密度で、96ウェルプレートに播種した。感染の2時間前に、0.001μM~10μMの範囲の異なる化合物(
図2A~
図2Mを参照されたい)を細胞に添加した。Opti-MEM I低減血清培地(Thermo Fisherカタログ番号31985062)を使用して、細胞を0.1MOIのSARS-CoV-2で感染させ、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。ビヒクル対照について、細胞を同じ濃度のDMSOで処置した。Mock感染細胞は、Opti-MEM I低減血清培地のみを受けた。ウイルスのインキュベーション終了時に、接種物を除去し、細胞を1×PBSで3回洗浄し、同じ濃度の化合物を補充した新鮮な培地を添加した。培養上清を24hpi(感染後の時間)及び48hpiで回収した。製造業者の指示に従って、PrimeDirect Probe RT-qPCR Mix(TaKaRa Bio USA,Inc)及びApplied Biosystems QuantStudio3リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems,Waltham,MA,USA)を使用して、SARS-CoV-2のE遺伝子を標的とするプライマープローブを用いたRT-QPCRを使用して、培養上清中のSARS-CoV-2ウイルス負荷を定量した。SARS-CoV-2 RNA定量に使用したプライマー及びプローブは、以下の通りであった。E_Sarbeco_F1:5’-ACAGGTACGTTAATAGTTAATAGCGT-3’(400nM)、E_Sarbeco_R2:5’-ATATTGCAGCAGTACGCACACA-3’(400nM)及びE_Sarbeco_P1:WHOによって推奨される5’-FAM-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-BHQ1-3’(200nM)。SARS-CoV-2ゲノム当量コピーは、熱不活性化SARS-CoV-2、アイソレートUSA-WA1/2020(BEIカタログ番号NR-52347)からの定量PCR(qPCR)対照RNAを用いて計算した。式(Ia)及び式(IIa)で処置した細胞におけるSARS-CoV-2複製の阻害パーセンテージを、DMSO(0%阻害とみなされる)及び陰性対照ウェル(未感染細胞)を受けたビヒクル対照ウェル中のウイルス負荷に関して計算した。IC50値を、Graph Pad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。
【0115】
実施例8-化合物添加アッセイの時間
Vero-STAT1ノックアウト細胞を24ウェルプレートに播種し、一夜インキュベートした。翌日、感染の-2時間前、感染の間(0時間)、及び+4hpiにおいて、式(Ia)(5μM)及び式(IIa)(5μM)を細胞に添加した。次いで、細胞を、0.1MOIのSARS-CoV-2で感染させた。培養上清を24hpiで回収し、RT-qPCRを使用して異なる曝露条件下でウイルス複製の阻害パーセントを計算した。
【0116】
実施例9-式(Ia)/式(IIa)及びRDVの組み合わせの抗ウイルス能の測定
SARS-CoV-2複製に対する式(Ia)/RDV及び式(IIa)/RDVの可能な相乗的抗ウイルス効果を決定するために、本願発明者らは、SARS-CoV-2感染したUNCN1T細胞における式(Ia)/RDV及び式(IIa)/RDVの組み合わせ用量を試験した。これらのアッセイについて、感染の24時間前に、細胞を96ウェルプレート(20,000細胞/ウェル)に播種し、次いで、感染の2時間前に、化合物のそれぞれの組み合わせで処置した。細胞を、上述のように、0.1MOIのSARS-CoV-2アイソレートUSA-WI1/2020で感染させた。各用量組み合わせについてのウイルス複製の阻害パーセンテージを、上述のようにRT-qPCRによって決定した。化合物の1:1の固定用量の組み合わせに対するウイルス複製の阻害パーセントを使用して、用量応答プロットを生成した。CIは、CompuSynアルゴリズム(https://www.combosyn.com)を使用してChou及びTalalayによって開発された複数の薬物効果方程式を使用して計算された。1未満のCIは、相乗作用を示し、1より大きいCI値は、拮抗作用を示し、1に等しい値は、相加効果を示す(30、31)。24hpiのSARS-CoV-2感染したUNCN1T Vero-STAT1ノックアウト細胞及び3-D相互作用ランドスケープにおけるRDV/式(Ia)及びRDV/式(IIa)の単独処置及び併用処置の用量応答阻害パーセントマトリックスを、SynergyFinder v.2(32)を使用して、Loewe付加モデルに基づいて計算した。
【0117】
実施例10-マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイ
1対1の比率のS-RBDとACE2を、マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイで使用して、化合物とS-RBD/ACE2複合体との結合親和性を決定した。同じMST法を使用して、S-RBD単独(
図11A)及びACE2単独(
図11B)との化合物の結合親和性を決定した。このアッセイのためのS-RBDを調製するために、6×His-N末端タグを含有する先祖のWuhan-Hu-1を表すスパイクタンパク質(S-RBD)の受容体結合ドメインをクローニングし、発現させ、ほぼ均質になるように精製した。必要な場合、6×Hisタグを、S-RBDと6×Hisタグとの間に挿入された部位で、TEVプロテアーゼによって切断した。ACE2を商業的ベンダー(Abcam及び/又はAcrobiosystems)から購入した。1対1の比率のS-RBDとACE2を、マイクロスケール熱泳動(MST)アッセイで使用して、化合物とS-RBD/ACE2複合体との結合親和性を決定した。温度変化による蛍光変化を監視するために(MSTアッセイ)、S-RBD又はACE2のいずれかをMonolith NT(商標)His-Tag標識キットRED-tris-NTA MO-L008(NanoTemper)で標識した。データを二次方程式に適合させて、K
d(結合親和性)を得た。この同じアプローチを使用して、299nMのK
dを提供するHu-1との式(IIa)の結合(
図12A)、200nMのK
dを提供するデルタとの式(IIa)の結合(
図12B)、31nMのK
dを提供するHu-1との式(IIb)の結合(
図12C)、及び90nMのK
dを提供するデルタとの式(IIb)の結合(
図12D)の結合親和性を測定した。
【0118】
実施例11-統計分析
CC50値及びIC50値を、GraphPad Prism(バージョン8.0)を使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。CIは、CompuSynアルゴリズム(https://www.combosyn.com)を使用して、Chou及びTalalayの複数の薬物効果方程式を使用して計算された。RDVと式(IIa)との間の3-D相互作用ランドスケープを、SynergyFinder v.2に組み込まれたLoewe付加モデルに基づいて計算した。
【0119】
実施例12-選択された化合物の阻害活性の評価
別のアプローチでは、Vero-STAT1ノックアウト細胞(ATCC(登録商標)CCL-81-VHG(商標))を、10%のウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、(100単位/ml)ペニシリン、及び(100単位/ml)ストレプトマイシンを含有するDMEMを補充した10mMのHEPES緩衝液中で培養した。UNCN1T細胞(ヒト気管支上皮細胞株、Kerafast、カタログ番号ENC011)を、FNC(Athena Enzyme Systems、カタログ番号0407)コーティングプレート中のBEGM(気管支上皮細胞成長)培地(Lonza、カタログ番号CC-3170)中で培養した。細胞を37℃、5%CO2でインキュベートした。感染の20~30時間前に、10,000~30,000細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種した。異なる濃度の式(IIa)及び式(Ia)又は式(IIb)(10μM、5μM、1μM、0.5μM、0.1μM、0.01μM、及び0.001μM)を、感染の2時間前に細胞に添加した。細胞を、Opti-MEM(登録商標)I低減血清培地(Thermo Fisher、カタログ番号31985062)を使用して0.1MOIでSARS-CoV-2(アイソレートUSA-WI1/2020、BEIカタログ番号NR-52384)に感染させ、続いて5%CO2中で37℃で1時間インキュベートした。陽性対照について、細胞を、添加された薬物と等価な同量のDMSOで処置した。Mock感染細胞は、Opti-MEM(登録商標)I低減血清培地のみを受けた。ウイルスのインキュベーション終了時に、接種物を除去し、細胞を1×PBSで3回洗浄し、同じ濃度の薬物を補充した新鮮な培地を添加した。感染及びSARS-CoV-2の24時間後及び48時間後に培養上清を回収し、前述のように、SARS-CoV-2のE遺伝子を標的とするプライマープローブを用いて、RT-QPCRを用いてウイルス負荷を定量した(1)。SARS-CoV-2ゲノム当量コピーは、同じ熱不活性化SARS-CoV-2アイソレートからの定量PCR(qPCR)対照RNAを用いて計算した。式(IIa)、式(Ia)、又は式(IIb)の化合物によるSARS-CoV-2複製の阻害パーセントを、DMSOのみ(0%阻害とみなされる)及び陰性対照ウェル(未感染細胞)のみで処置した陽性対照ウェル中のウイルス濃度に対して計算した。細胞のIC50値を、Graph Pad Prism 8.0ソフトウェアを使用して、4パラメータ可変勾配シグモイド用量応答モデルを使用して計算した。
【0120】
実施例13-細胞変性効果の評価
一部の実施形態では、CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイ(Promega、Madison,WI、カタログ番号G9243)を使用して、製造業者の指示に従って、細胞変性効果(CPE)を決定した(このアッセイでは、培養物中の生存細胞の数を、代謝的に活性な細胞の存在を示すATPを定量化することによって決定した。発光読み出しは、培養中の生存細胞の数に直接比例する)。RLU値を、細胞を有しないブランクウェルからのRLU値で正規化した後、log薬物濃度に対してプロットした。抗ウイルス活性は、ウイルス複製の阻害の程度によって決定した。全ての実験は、三重で行われ、2人の異なる研究者によって2回繰り返された。
【0121】
本発明は、その詳細な説明と併せて記載されているが、上述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではないことを理解すべきである。他の実施形態、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲内にある。本明細書の一部を形成する添付の図面への参照は、例示としてのみ示される。開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的な変更を行うことができることを理解されたい。本明細書で論じられる及び/又は参照される全ての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0122】
それらの特定の形態で、又は開示された機能を実行するための手段の観点から表現された、前述の説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴、あるいは開示された結果を達成するための方法又はプロセスは、必要に応じて、別個に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で本発明を実現するために利用され得る。
【国際調査報告】