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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】積層複合フィルム構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20240312BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20240312BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J175/06
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554867
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022014942
(87)【国際公開番号】W WO2022191935
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202141010437
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ナゴトカル、シャイレンドラ アショク
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF001
4J040EF111
4J040JA13
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB13
4J040MB15
4J040NA12
4J040PA00
(57)【要約】
多層積層複合フィルム構造体を生産するための方法であって、(a)無溶媒ポリウレタン接着剤組成物を少なくとも第1のフィルム基材に塗布する工程であって、接着剤組成物が、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に塗布されて、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に接着剤組成物を配置させる工程;(b)工程(a)の第1のフィルム基材に少なくとも第2のフィルム基材を接触させる工程であって、接着剤組成物を含む第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面が、第2のフィルム基材の少なくとも1つの側面と連通し、こうして、ポリウレタン接着剤組成物が、第1のフィルム基材と第2のフィルム基材との間に配置される、工程;及び(c)接着剤組成物を硬化させて、第1の基材及び第2の基材を一緒に接合させて、多層積層複合フィルム構造体を形成する工程を含む方法、並びに上記方法によって生産される多層積層複合フィルム構造体物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層積層複合フィルム構造体を生産するための方法であって、
(a)無溶媒ポリウレタン接着剤組成物を少なくとも第1のフィルム基材に塗布する工程であって、前記接着剤組成物が、前記第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に塗布されて、前記第1のフィルム基材の前記少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に前記接着剤組成物を配置させる工程と、
(b)工程(a)の前記第1のフィルム基材に少なくとも第2のフィルム基材を接触させる工程であって、前記接着剤組成物を含む前記第1のフィルム基材の前記少なくとも1つの側面が、前記第2のフィルム基材の少なくとも1つの側面に接触し、こうして、前記ポリウレタン接着剤組成物が、前記第2のフィルム基材の前記少なくとも1つの側面と連通し、前記接着剤組成物が、前記第1のフィルム基材と前記第2のフィルム基材との間に配置される、工程と、
(c)前記接着剤組成物を硬化させて、前記第1の基材及び第2の基材を一緒に接合させて、多層積層複合フィルム構造体を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリウレタン接着剤組成物が、(1)25ミリメートル当たり1.5キログラム以上の初期接合強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリウレタン接着剤組成物を最大で24時間の耐水性浸漬試験、1日8時間で、30日間、80℃の温度での耐熱性試験、及び1日8時間で、30日間、太陽光曝露でのUV耐性試験に曝露した後に、前記ポリウレタン接着剤組成物が、25ミリメートル当たり1.5キログラム以上の接合強度の維持を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリウレタン接着剤組成物を有する前記多層積層複合フィルム構造体を最大で24時間の耐水性浸漬試験、1日8時間で、30日間、80℃の温度での耐熱性試験、及び1日8時間で、30日間、太陽光曝露でのUV耐性試験に曝露した後に、前記ポリウレタン接着剤組成物が、前記多層積層複合フィルム構造体の層間剥離又はブリスター形成の目視観察を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリウレタン接着剤組成物が、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールを含むアジピン酸に基づくポリエステルポリオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のフィルム基材がポリ塩化ビニル膜基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のフィルム基材がポリ塩化ビニルフィルム面合板基材である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触工程(a)、前記接触工程(b)及び前記硬化工程(c)が、23℃~27℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により作製される、多層積層複合フィルム構造体。
【請求項10】
前記多層積層複合フィルム構造体が、屋根用途に使用するための積層パネル物品である、請求項9に記載の多層積層複合フィルム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層複合フィルム構造体に関し、より詳細には、本発明は、特性の強化された二成分の溶媒不含ポリウレタン接着剤組成物を使用して、さまざまな基材を一緒に接合することにより製造される積層複合フィルム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、さまざまな二成分(2K)タイプのポリウレタン(PU)接着剤組成物が、さまざまな用途で使用するために製造されてきた。当技術分野で公知のとおり、2K PU組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応混合物に基づいており、接着剤として長い間使用されてきた。2つの成分を混合すると、ポリイソシアネートとポリオールとが反応して、硬化ポリウレタン接着剤を形成し、この反応により、多数のタイプの基材を一緒に接着する、強力な接着結合を形成することができる。例えば、以下の参照文献は、良好な接着を有する2K接着剤を開示している:米国特許第8,716,427(B2)号;中国特許第104228210(A)号;同第107614648(A)号;米国特許出願公開第20140242333(A1)号;同第20150380695(A1)号;同第20160204395(A1)号;及び国際公開第2015/168670号。
【0003】
2K PU接着剤組成物は、さまざまな用途に使用されるが、すべての公知の接着剤が、特定の最終用途に対して、同じように働く訳ではないか、又はまったく働かないことさえある。接着剤は、特定の最終用途に使用される接着剤の場合、接合強度及び耐熱性などの強化された特性の適切な組み合わせを示さなければならない。例えば、2種以上の基材を一緒に接合して、接合された積層複合フィルム構造体を形成するために使用される適切な積層用接着剤組成物は、接合された積層複合フィルム構造体の最終用途において適切に機能するよう、慎重に選択されなければならない。屋根業界では、例えば、屋根材として使用するためのパネル構造体を形成するために、さまざまな公知の異なるフィルム基材を一緒に接合することにより製造される積層複合フィルム構造体が試行されてきたが、成功は限定的なものに過ぎない。波板及びセメントシートは、依然として、世界中の低所得から中低所得地域及び農村地域において、最も広く使用されている屋根材であり続けている。しかし、これらの材料は、不快感及び危険を有する。例えば、これらの材料は、雨季の間には漏れやすく、夏の間には極度に熱くなりやすく、人身傷害の誘発を回避するために時間のかかる修理及び適時の修理が必要となる破損が起こりやすい。したがって、屋根材として使用するために、波板及びセメントシートを置きかえることが望ましい。
【0004】
しかし、これまで、公知の波板及びセメントシート屋根材の代替品として好適な積層パネルを作成することは難題であった。現在、公知の屋根材によって示される上記の問題を回避する積層パネルを作製するには、屋根用物品として良好に機能する積層パネル構造体を形成するために、異なるフィルム基材材料の適切な組み合わせ、及びいくつかの異なるフィルム基材材料を一緒に接合するための適切な接着剤を選択しなければならない。特に、接着剤は、積層基材を一緒に維持し、積層パネル構造体内での層間剥離及び/又はブリスターの形成を予防するため、高い接合強度、耐水性及び耐熱性などの適切な特性を有する必要がある。とりわけ、積層パネル構造体が、気象のさまざまな自然の力に曝露される屋根材として使用される場合である。
【0005】
例えば、PVC膜と組み合わされたポリ塩化ビニル(PVC)フィルム面合板材料は、雨水、熱、太陽からの紫外(UV)線などの外部気象条件に対して耐性を有することができるので、このような材料は、屋根用途に使用することができる材料である。しかし、これらのタイプの材料を接合するために使用される公知の接着剤は、通常、積層体を一緒に維持するために必要な接合強度、耐水性及び耐熱性を有しておらず、公知の接着剤では、パネルが長期間、自然の力にさらされた場合、積層体は、層間剥離及び/又は積層パネル内でのブリスター形成は防止されない。通常、公知のパネル構造体は、1.5Kg/25mmという適切な初期接合強度を示す水系アクリル接着剤を使用することによって調製されるが、この接着剤は長期間にわたる水、熱及びUV太陽光に対する耐性という必要な性能を達成することができない。
【0006】
他の積層構造体及びこのような構造体を調製する方法は、例えば、米国特許第5,637,171(A)号;同第5,449,559(A)号及び同第5,872,203(A)号;中国特許第107856380(A)号;独国特許第4343468(A1)号;並びに同第102004051074(A1)号に開示されている。しかし、上記参考文献のいずれも、耐水性、耐熱性及び耐UV特性が向上した積層構造体を開示しておらず、上記参考文献のいずれも、層間剥離及び/又はブリスター形成などの目視で観察可能な積層体の変形を有さない積層体を開示してはいない。
【0007】
例えば、米国特許第5,449,559(A)号は、PVCを可動性の家庭用家具及びパネルに接合するために使用される積層用接着剤組成物を開示している。接合に使用される接着剤は、PVOH安定化酢酸ビニル/エチレンコポリマーエマルション(例えば、50重量%~95重量%)、水性ポリウレタン-アクリル分散液(例えば、5重量%~50重量%)及びポリイソシアネート材料(例えば、3重量%~15重量%)の組み合わせ物である。上記特許に開示されている接着剤系は、混合物を形成すると水系になる。上記特許の目的は、(1)1.3Kg/25mm~3.1Kg/25mmの接合強度、(2)71℃~93℃において、1.8Kgの重りを用いた場合にビニルのクリープを引き起こさないラップせん断、及び(3)93℃において0.0254mmという最大移動を有するクロスハッチ収縮を有する接着剤を実現することである。上記特許には、積層構造体に耐水性、耐熱性及びUV耐性の改善をもたらす接着剤が開示されていない。更に、上記の特許は、作製後に積層体が層間剥離及び/又はブリスター形成などの積層体の変形を発生するかどうかを判断するために、積層体を観察することについては言及していない。また、上記の特許は、層間剥離及び/又はブリスター形成などの変形が生じた場合、積層体のこのような変形に対する解決策を提示していない。
【0008】
したがって、公知の積層構造体によって示される上記の問題を回避する、複合多層積層パネル構造体を製造することが望ましいと思われる。特に、パネル構造体が屋根材に使用することができるよう、適切な有利な特性を示す接着剤を用いてさまざまな公知の異なるフィルム基材を一緒に接合して、パネル構造体を形成させることによって、積層構造体を製造することが望ましいと思われる。例えば、PVC膜を有するPVCフィルム面合板などの複合積層パネル構造体を製造することが望ましいと思われる。及び、(1)耐水性;(2)耐熱性;(3)太陽光からのUV光に対する耐性;(4)初期接合強度;(5)水、熱及びUV光への曝露後の接合強度維持;並びに(6)層間剥離及びブリスター形成などの欠陥に対する耐性などの、適切かつ有利な特性を示す溶媒不含接着剤を使用して、PVCフィルム面合板とPVC膜との組み合わせ物を備える積層パネル構造体を製造することが望ましいと思われる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は、(a)無溶媒ポリウレタン接着剤組成物を少なくとも第1のフィルム基材に塗布する工程であって、接着剤組成物が、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に塗布されて、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に接着剤組成物を配置させる工程と、(b)工程(a)の第1のフィルム基材に少なくとも第2のフィルム基材を接触させる工程であって、接着剤組成物を含む第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面が、第2のフィルム基材の少なくとも1つの側面と接着連通しており、こうして、ポリウレタン接着剤組成物が、第1のフィルム基材と第2のフィルム基材との間に配置される、工程と、(c)接着剤組成物を硬化させて、第1の基材及び第2の基材を一緒に接合させて、多層積層複合フィルム構造体を形成する工程とを含む、多層積層複合フィルム構造体を生産する方法を対象とする。
【0010】
本発明の別の実施形態は、上記の方法によって作製される多層積層複合フィルム構造体物品を対象とする。
【0011】
更に別の実施形態では、本発明は、異なる基材を一緒に接合して、積層パネル構造体などの多層積層複合フィルム構造体を形成させるための、溶媒不含(又は無溶媒)及び水不含の2K PU積層用接着剤組成物の使用を対象とする。本発明の2K PU積層用接着剤組成物は、(1)イソシアネート末端ウレタン部分(NCO成分)の混合物、及び(2)ヒドロキシル末端ポリオール混合物部分(OH成分)を含む、二成分系である。本発明に有用な溶媒不含PU接着剤組成物は、ジエチレングリコール(DEG)及びネオペンチルグリコール(NPG)を含むアジピン酸をベースとするポリエステルポリオールであって、約2,000の分子量(Mw)を有しており、かつ架橋化された、ポリエステルポリオールに基づく。
【0012】
更に別の実施形態では、本発明は、優れた接合強度、並びに水、熱及び太陽光に由来するUV光に対する耐性に関して欠陥のない性能を示す、溶媒不含の2K PU接着剤組成物の使用を含む。例えば、一部の実施形態では、2K PU接着剤組成物は、本発明のパネル構造体を形成するために使用される第1のフィルム基材及び第2のフィルム基材と組み合わされて、例えば、以下の性能特性又は属性をもたらす:(1)最大で24時間の浸漬試験による耐水性、(2)以下の条件下での耐熱性:8時間/日で、30日間、80℃に曝露、(3)以下の条件下のUV耐性:8時間/日で、30日間、太陽光に曝露、(4)≧1.5Kg/25mmという初期接合強度、(5)水、熱及びUV耐性試験への曝露後に、初期接合強度以上の維持、並びに(6)目視観察によって判定される、水、熱及びUV耐性試験への曝露後に、層間剥離又はブリスター形成がない。
【0013】
一部の好ましい実施形態では、本発明は、PVC膜を有するPVCフィルム面合板を接合して、PVC膜を有するPVCフィルム面合板の接合された積層パネル構造体を形成するための、2K PU接着剤組成物の使用を含む。
【0014】
他の好ましい実施形態では、PVC膜を有するPVCフィルム面合板の接合された積層パネル構造体は、家、学校、病院及び他の構造物のモジュラー式屋根システムとして使用され、したがって、本発明の接合されたパネルは、言い換えると、当該パネルが、雨水、熱、及び太陽光からのUV光などの外部気象条件に曝露された場合に、自然の力に耐性を発揮することが可能である。
【0015】
更に他の好ましい実施形態では、積層パネル(すなわち、合板、PVCフィルム及びPVC膜)を作製する際に使用される材料は、再利用された包装用材料及び農業廃棄物から製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書における温度は、摂氏温度(℃)である。
【0017】
本明細書における「室温(Room temperature、RT)」及び「周囲温度」は、特に指定しないかぎり、23℃~27℃の温度を意味する。
【0018】
本明細書における用語「接合強度」は、接合強度試験が施される試験片の2つの「脚部」を剥離する/分離するために必要な力の平均値を意味する。
【0019】
本明細書における用語「層間剥離」は、複合/積層材料が破壊する、又は層に分離するという不具合の様式を意味する。
【0020】
本明細書における用語「ブリスター形成」は、積層複合体内部のガス及び蒸気圧の結果として、気泡が、通常、形成される間の、積層体中のある点における、水分の蓄積に起因する圧力の上昇の結果を意味する。
【0021】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、工程又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除するように意図するものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がないかぎり、ポリマーであるか又はその他であるかによらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、工程、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しないかぎり、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0022】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までのすべての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1又は2又は3~5又は6又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0023】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下に示される略称は、文脈が特に明確に指示しないかぎり、以下の意味を有する:「=」は、「等しい(equal)」又は「と等しい(equal to)」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、「~」は、「およそ」を意味し、「MT」=メートルトンであり、g=グラムであり、mg=ミリグラムであり、Kg=キログラムであり、Kg/25mm=25ミリメートル当たりのキログラムであり、g/L=1リットル当たりのグラムであり、「g/cm」又は「g/cc」=1立方センチメートル当たりのグラムであり、「kg/m」=1立方メートル当たりのキログラムであり、ppm=重量百万分率であり、pbw=重量部であり、min=分であり、rpm=1分間当たりの回転数であり、m=メートルであり、mm=ミリメートル、cm=センチメートルであり、μm=マイクロメートルであり、min=分であり、s=秒であり、ms=ミリ秒であり、hr=時であり、Pa=パスカルであり、MPa=メガパスカルであり、kPa=キロパスカルであり、Pa・s=パスカル秒であり、mPa-s=ミリパスカル秒であり、g/mol=1モル当たりのグラムであり、g/eq=1当量当たりのグラムであり、Mn=数平均分子量であり、Mw=重量平均分子量であり、pts=重量部であり、1/s又はsec-1=秒の逆数[s-1]であり、℃=摂氏温度であり、psi=1平方インチ当たりのポンドであり、g/m又はgsm=1平方メートル当たりのグラムであり、%=パーセントであり、vol%=体積パーセントであり、mol%=モルパーセントであり、wt%=重量パーセントである。
【0024】
別途明記されないかぎり、すべてのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載したすべてのパーセンテージは、別途指示されないかぎり、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0025】
本発明の具体的な実施形態が本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0026】
本発明の目的の1つは、優れた接合強度、耐水性及び耐熱性を有する溶媒不含の2K PU積層用接着剤組成物であって、溶媒不含の2K PU積層用接着剤組成物を使用した場合に、層間剥離又はブリスター形成などの観察可能な積層体の変形が発生しない2K PU積層用接着剤組成物を使用する、接合された多層複合積層パネル構造体を生産することである。例えば、一実施形態では、本発明のPU接着剤は、PVC膜を有するPVCフィルム面合板の多層積層パネル構造体を製造するために使用することができる。
【0027】
一般的な一実施形態では、本発明に有用な第1の基材は、例えば、PVCのフィルム又は膜を含むポリマーフィルムのいずれか、ポリエステル、アルミニウム、及び2種以上の第1の基材の組み合わせ物とすることができる。
【0028】
別の一般的な実施形態では、本発明に有用な第2の基材は、例えば、PVCフィルム面合板、平合板及びそれらの組み合わせを含めた、第1の基材とは異なる任意のポリマーフィルムとすることができる。
【0029】
更に別の一般的な実施形態では、本発明は、無溶媒2K PU積層用接着剤組成物の使用を含む。本発明に使用される接着剤組成物は、接着剤分野の熟練者に公知の、任意の従来の無溶媒2K PU積層用接着剤組成物とすることができる。一般に、2K PU接着剤は、(A)少なくとも1種のイソシアネート基含有成分;及び(B)少なくとも1種のポリオール成分(又は、ヒドロキシル基含有成分)からなる反応混合物を含む。
【0030】
一実施形態では、本発明に有用な2K PU積層用接着剤は、イソシアネート基含有成分である成分(A);及びポリオール成分である成分(B);及び所望の場合、任意の他の任意選択の成分である成分(C)を混合する、混ぜ合わせる、又はブレンドすることによって配合することができる。
【0031】
別の実施形態では、本発明の接着剤を作製するために有用なイソシアネート基含有成分である成分(A)は、例えば、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート(例えば、二量体、トリマー(trimmer)など)、イソシアネートプレポリマー及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択することができる。接着剤配合物中のイソシアネート化合物(A)の量は、一般に、配合物中の成分の総重量に対して、一実施形態では、60重量%~80重量%;別の実施形態では、65重量%~75重量%;更に別の実施形態では、68重量%~70重量%、更に別の実施形態では、66重量%~68重量%;及び更に別の実施形態では、70重量%~72重量%の範囲とすることができる。
【0032】
本発明の接着剤を作製するのに有用なポリオール成分である成分(B)は、例えば、少なくとも1種のポリエステルポリオール化合物(例えば、>8,000の分子量を有するポリエステルポリオール);少なくとも1種のリン酸エステルポリオール化合物;少なくとも1種のプレポリマー-ポリオール-鎖延長剤化合物構造体(接着剤のイソシアネート成分中の、500g/mol~1,600g/molに等しい分子量を有する、酸化エチレン(EO)及び/若しくはプロピレンオキシド(PO)ベースのジオール又はトリオールをベースとするメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)で末端がキャップされたプレポリマーなど);及びエタンジオール;及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。接着剤配合物中のポリオール化合物(B)の量は、一般に、配合物中の成分の総重量に対して、一実施形態では、20重量%~40重量%;別の実施形態では、25重量%~35重量%;更に別の実施形態では、30重量%~32重量%、更に別の実施形態では、29重量%~31重量%;及び更に別の実施形態では、31重量%~33重量%の範囲とすることができる。
【0033】
本発明の1つの例示として、成分(A)が、成分(B)と混合されると、好ましい一実施形態では、(A):(B)の比、すなわちOH/NCO乾燥重量指数は、63~100;別の実施形態では、65~100;及び更に別の実施形態では、67~100とすることができる。
【0034】
本発明に有用な接着剤は、上述のとおり、二成分接着剤系であるが、本接着剤配合物は、本発明の接着剤製品の優れた利益/特性を維持すると同時に、特定の機能の性能発揮を可能にする、幅広い任意選択的な添加物と共に配合されてもよい。ポリウレタン接着剤の任意選択の成分である成分(C)は、第1のイソシアネート基含有成分(A)に添加されてもよく、又はポリウレタン接着剤の任意選択的な成分は、第2のポリオール成分(B)に添加されてもよく、又はポリウレタン接着剤の任意選択的な成分は、第1の成分(A)及び第2の成分(B)の両方に添加されてもよい。例えば、一実施形態では、配合物中で有用な任意選択的な添加物である成分(C)は、シラン、エポキシ及びフェノール樹脂などの接着促進剤;グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールなどの鎖延長剤;並びにアミン及びカルボキシレートなどの触媒;並びにそれらの混合物を含むことができる。
【0035】
接着剤配合物を作製するために有用な、任意選択的な添加物である成分(C)の量は、使用される場合、一般に、配合物中の成分の総重量に対して、一実施形態では、0重量%~≦1重量%;別の実施形態では、0.1重量%~1重量%;更に別の実施形態では、0.1重量%~0.5重量%、更に別の実施形態では、0.1重量%~0.3重量%とすることができる。
【0036】
他の実施形態では、本発明に有用な無溶媒2K PU積層用接着剤は、市販の接着剤製品から選択することができる。例えば、無溶媒2K PU積層用接着剤は、MOR-FREE(商標)899A/C-99、PACACEL(商標)968/C-108及びMOR-FREE(商標)698AG/C-411とすることができ、すべてが、溶媒不含のポリウレタン接着剤(Dow Chemical Companyから入手可能)である。
【0037】
本発明に使用される接着剤配合物は、第1の基材及び第2の基材を一緒に組み合わせて一緒に接合する場合、いくつかの有利な特性及び利益を有する。例えば、本接着剤配合物によって示される特性の一部は、(1)十分な耐水性、(2)十分な耐熱性、(3)十分なUV耐性、(4)ポリウレタン接着剤組成物に耐水性浸漬試験、耐熱性試験及びUV耐性試験を施した後の、初期接合強度の向上(すなわち、接着剤の初期接合強度からの接着剤の接合強度の向上)、(5)ポリウレタン接着剤組成物を、耐水性浸漬試験、耐熱性試験及びUV耐性試験に曝露した後の、接合強度の維持(すなわち、接合剤の初期接合強度にできるかぎり近づくような接着剤の接合強度の維持)、及び/又は(6)ポリウレタン接着剤組成物を有する多層積層複合フィルム構造体を、耐水性試験、耐熱性試験及びUV耐性試験に曝露させた後の、多層積層複合フィルム構造体の層間剥離又はブリスター形成が目視で観察されないことを含むことができる。
【0038】
例えば、一般的な一実施形態では、ポリウレタン接着剤組成物の初期接合強度は、一般に、≧1.5Kg/25mmである。1.5Kg/25mmよりも低い初期接合強度は、層間剥離及び/又はブリスター形成などの積層複合フィルム構造体に欠陥を引き起こすおそれがある。初期接合強度が高いほど、積層複合フィルム構造体の層の接着が良好となるので、接着剤の初期接合強度値に上限値はない。有利には、本発明の複合フィルム構造体における接着剤の1.5Kg/25mmの以上の接合強度の維持は、ポリウレタン接着剤組成物/コンポジット積層体が、最大で24時間の耐水性浸漬試験、8時間/日で30日間、80℃の耐熱性試験、及び8時間/日で30日間、太陽光に曝露するUV耐性試験に曝露された後でも続く。接着剤の接合強度値の低下は、層間剥離及び/又はブリスター形成などの複合フィルム構造体に欠陥を引き起こすおそれがある。
【0039】
他の実施形態では、本発明の多層積層複合フィルム構造体は、ポリウレタン接着剤組成物を有する多層積層複合フィルム構造体が、耐水性試験、耐熱性試験及びUV耐性試験に曝露させた後に、層間剥離、ブリスター形成、又はそれらの両方など積層体への損傷を受けにくい。例えば、本発明の多層積層複合フィルム構造体は、ポリウレタン接着剤組成物を有する多層積層複合フィルム構造体を、耐水性浸漬試験、耐熱性試験及びUV耐性試験に曝露させた後に、裸眼による目視観察によって判定すると、層間剥離しない、及び/又はブリスターを形成しない。
【0040】
一般的な実施形態では、多層積層複合フィルム構造体を生産する本発明の方法は、以下:
(a)無溶媒ポリウレタン接着剤組成物を少なくとも第1のフィルム基材に塗布する工程であって、接着剤組成物が、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に塗布されて、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に接着剤組成物を配置させる工程、
(b)工程(a)の第1のフィルム基材に少なくとも第2のフィルム基材を接触させる工程であって、接着剤組成物を含む第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面が、第2のフィルム基材の少なくとも1つの側面に接触し、こうして、ポリウレタン接着剤組成物が、第2のフィルム基材の少なくとも1つの側面と接着連通し、接着剤組成物が、第1のフィルム基材と第2のフィルム基材との間に配置される、工程、及び
(c)接着剤組成物を硬化させて、第1の基材及び第2の基材を一緒に接合させて、多層積層複合フィルム構造体を形成する工程
を含む。
【0041】
上記の方法の塗布工程(a)において、無溶媒ポリウレタン接着剤組成物が、例えば、23℃~27℃の温度で第1のフィルム基材に塗布され、こうして、接着剤組成物が、第1のフィルム基材の少なくとも1つの側面の少なくとも一部分に配置される。
【0042】
無溶媒ポリウレタン接着剤組成物が、工程(a)において第1のフィルム基材に塗布された後に、本方法の接触工程(b)において、第1のフィルム基材の接着剤側を、例えば、23℃~27℃の温度で第2のフィルム基材と接触させて、接着剤組成物が、2つ(第1及び第2)の基材の間にはさみ込まれるよう、ポリウレタン接着剤組成物を第1のフィルム基材と第2のフィルム基材との間に配置させる。2つの基材の間にはさみ込まれた接着剤層は、多層複合フィルム構造体を形成する。
【0043】
工程(b)の後に生じた接着剤層を有する複合フィルム構造体は、次に、本方法の硬化工程(c)において、例えば23℃~27℃の温度で硬化させる。次に、接着剤組成物の硬化により、第1の基材及び第2の基材を一緒に接合させて、多層積層複合フィルム構造体を形成させる。
【0044】
本方法の塗布/接触工程(a)は、例えば、K-バーコーター/ブラシを含む、当業者に公知の慣用的な手順及び装置によって行うことができる。一般的な一実施形態では、例えば、10gsm~70gsm、別の実施形態では、20gsm~60gsm、及び更に別の実施形態では、30gsm~50gsmのコーティング重量を有する、接着剤コーティング層を形成する接着剤の量が、第1の基材に塗布される。
【0045】
本方法の接触/塗布工程(b)では、基材は、接着剤でコーティングされているPVCフィルムを、接着剤コーティング面で、第2の基材の表面に接触させて、すなわちフィルム面合板を覆うよう押し付けることによって接合させる。例えば、2Kgの重量のローラを、複合積層体の上に転がして、この積層体に一様な圧を印加し、第1の基材と第2の基材との間に配置された接着剤により、接合強度を発生させる。
【0046】
本方法の接触工程(b)を行った後に、接合して積層体を形成する基材を、室温(25℃±2℃)で硬化させる。接着剤の硬化は、通常、72時間後に完了する。接着剤が72時間で硬化し、基材が一緒に接合されると、得られた多層積層複合フィルム構造体の接合強度を試験することができる。得られた多層積層複合フィルム構造体の耐水性、耐熱性及びUV耐性を試験するため、接着剤を7日間、硬化させ、接着剤の硬化が7日後に完了すると、フィルム構造体に、耐水、耐熱及びUV耐性試験を施す。
【0047】
本発明の方法によって製造される多層積層複合フィルム構造体は、2K PU接着剤組成物を用いて一緒に接合されてPVC膜を有するPVCフィルム面合板の接合された積層パネル構造体を形成する、PVCフィルム面合板及びPVC膜などの、接合された積層パネル構造体を含み、このような接合された積層パネル構造体は、さまざまな用途に使用することができる。一部の実施形態では、PVC膜を有するPVCフィルム面合板の接合された積層パネル構造体は、例えば、家、学校、病院及び他の建築物又は他の構造体用のモジュラー式屋根システムとして使用され得る。パネルが、屋根用途に使用される場合、接合されたパネルは、雨水、熱及び太陽光からのUV光などの外部気象条件に曝露されると、パネルは、十分な初期接合強度、耐水性;耐熱性;UV耐性及び接合強度の維持を有利なことに示す。更に、屋根材として使用される多層積層複合フィルム構造体は、ポリウレタン接着剤組成物を用いた多層積層複合フィルム構造体が、雨水、熱及び太陽光からのUV光などの外部気象条件に曝露された後に、層間剥離又はブリスター形成の目視による徴候を有利なことに示さない。他の実施形態では、本発明の方法によって製造される多層積層複合フィルム構造体は、強力な接合を有する構造体を必要とする他の用途において使用することができる。
【0048】
更に他の実施形態では、本発明の方法によって製造される多層積層複合フィルム構造体は、再利用された包装材及び農業廃棄物を含む材料(すなわち、合板、PVCフィルム及びPVC膜)を使用して製造することができる。したがって、本発明の多層積層複合フィルム構造体を作製するために再利用された材料を使用することによって、環境廃棄物を削減することができる。
【実施例
【0049】
以下の本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較実施例(Comp.Ex.)(まとめて、「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に例示するために本明細書において提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも暗示的にも解釈されることを意図するものではない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較実施例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。他に指示がないかぎり、すべての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0050】
基材を調製する一般手順
PVC膜を備える第1の基材は、表Iに記載されている接着剤(Adh.1~Adh.7)を使用して、PVCフィルム面合板基材を備える第2の基材に接合されており、この場合、接着剤を1種ずつが、第1の基材と第2の基材との間に配置される。第1の基材を第2の基材に適用する前に、第1の基材であるPVC膜との良好な接着のため、エメリー研磨紙を用いて、第2の基材であるPVCフィルム面合板にわずかに傷を付けて(第2の基材のPVCフィルム表面上)、傷を付けた面に接触する接着剤に対して第2の基材の表面を一層受容しやすくする。これ以降、接着剤の各々(表I中に記載)をPVC膜に最初に塗布し、次に、接着剤のコーティングを含むPVC膜を、第1の基材の接着剤コーティング面(表面)に第2の基材の傷を付けた面に接触させることによって、第2の基材の傷を付けた面に適用する。
【0051】
【表1】
【0052】
第1の基材をコーティングする一般手順
実験室スケールのK-バーコーターを使用し、表IIに記載されているコーティング工程パラメータを使用して、PVC膜の一方の側面の表面に、表Iに記載されている接着剤(Adh.1~Adh.7)をコーティングする。
【0053】
【表2】

表IIに関する注記:「N.A.」=該当せず。
【0054】
比較実施例A~E及び本発明の実施例1及び2
積層パネルを調製する一般手順
上記のとおり調製した接着剤をコーティングしたPVC膜の各々を、フィルム面合板基材の上部表面に押し付けて、コーティングされたフィルム面合板/PVC膜を備えるパネルを形成する。このコーティングパネルは、互いに上部で積層されており、追加の重し(5Kgの重量の物体)をパネルの積層部の上部に置いて、最大で24時間、コーティングパネルに十分な圧力を維持する。次に、このコーティングパネルを室温で24時間、硬化させる。
【0055】
コーティングパネルを、上記のとおり室温で24時間、硬化させた後に、硬化済みコーティングパネルに、以下の試験方法を施す。
【0056】
試験方法
以下の試験を行い、接合されたパネルの性能を確認した。準拠した試験方法の各々に使用した接合されたパネルの試料の寸法は、200mm長×150mm幅、12.7mm厚さとした。接合されたパネルに関する12.7mmの厚さとは、12mmの厚さのフィルム面合板の厚さと、0.7mmの厚さのPVC膜の厚さを合わせたものである。水、熱及びUV耐性試験の各々に関して、接合されたパネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後の、層間剥離及び/又はブリスター形成などの表面欠陥の発生に関して、接合されたパネルの性能を等級付けする評点システムを使用した。
【0057】
この評点システムは、接合されたパネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後の、接合されたパネルの層間剥離/ブリスター形成の存在/程度に関して裸眼による目視観察に基づいており、使用した評点システムは、以下のとおりである:評点「1」は、パネルには、表面欠陥が「ない」ことを示すこと(すなわち、層間剥離がなく、ブリスター形成がない)を意味し、評点「2」は、パネルが「わずかな」表面欠陥を示すこと(すなわち、いくらかの層間剥離及び/又はいくらかのブリスター形成があり、パネルは、その完全な程度まで有用ではない)を意味し、評点「3」は、パネルが「大きな」表面欠陥を示すこと(すなわち、過度な量の層間剥離及びブリスター形成が観察され、したがって、接合されたパネルは不合格で、有用ではない)を意味する。
【0058】
接合強度試験
Instron材料試験器をパネルの接合強度試験に使用する。この機器及びそのソフトウェアのアイコンであるMERLIN(接合強度試験のデータ保管)の電源をオンにする。機器のグリップネジを、各グリッパーのすぐ隣にあるスイッチを手動で押すか、又はフットパドルを押し込むことによって解放する。カッターを使用して、パネル表面(PVC膜側の表面)に線状の切込みで印を付ける。切込みの長さは、200mmであり、切込みの幅は、25mmである。接合されたパネルを50mmの長さまで剥離させて、次に、2つのグリップの間で機器にパネルを装着し、フィルム面合板をグリップの下側に固定し、PVC膜をグリップの上側に固定する。これにより、180°の角度を作る。機器にかかる拡張及び負荷を「ゼロ」に設定する。次に、機器をスタートし、50mm/分の速度に設定する。機器からの読取り値を記録し、Kg/25mmで報告する。
【0059】
上記の接合試験法からの所望の結果は、必要な最小初期接合強度≧1.5Kg/25mmを実現する接着剤を生成すること、及び本開示において本明細書の以下に記載されている、水、熱及びUV耐性試験への曝露後に良好な接合強度を維持していることである。
【0060】
耐水性試験
プラスチック製バケツに、このバケツの3/4の分量の水を加える。浸漬試験を使用し、接合されたパネルが、連続して24時間、パネルの両側から水によって囲まれるよう、このパネルを水に浸漬する。24時間後、層間剥離及びブリスター形成などの欠陥の発生のなんらかの徴候について、このパネルを裸眼で目視により観察する。試験温度は、25℃である。
【0061】
上記の耐水性試験方法からの望ましい結果は、本開示に記載されている耐水性試験に曝露させた後に、良好な接合強度の維持を実現する接着剤を生産することであり、パネルを耐水性試験に曝露させた後に、接合されたパネルに層間剥離及びブリスター形成のどちらも目視で観察されるべきではない。
【0062】
耐熱性試験
熱風オーブンを80℃に設定し、接合されたパネルをオーブンの内側に置き、このオーブン中に30日間、維持する。8時間/日で80℃の熱に30日間、曝露させた後に、上記の熱曝露後に発生したいずれの欠陥に関しても、裸眼で目視によりパネルを観察する。パネル中に見られる欠陥には、例えば、層間剥離及び/又はブリスター形成が含まれる。
【0063】
上記の耐熱性試験方法からの望ましい結果は、本開示に記載されている耐熱性試験に曝露させた後に、良好な接合強度の維持を実現し、耐熱性試験への曝露後に、層間剥離及びブリスター形成のどちらもない、接着剤を生産することである。
【0064】
UV耐性試験
接合されたパネルを外部環境において室外に維持し、太陽光からのUV光に曝露させる。8時間/日で太陽光への30日間の曝露後に、上記のUV曝露後に発生したいずれの欠陥に関しても、裸眼で目視によりパネルを観察する。パネル中に見られる欠陥には、例えば、層間剥離及び/又はブリスター形成が含まれる。
【0065】
上記のUV耐性試験方法からの望ましい結果は、本開示に記載されているUV耐性試験に曝露させた後に、良好な接合強度の維持を実現し、UV耐性試験への曝露後に、層間剥離及びブリスター形成のどちらもない、接着剤を生産することである。
【0066】
試験結果
接合されたパネルの性能結果は、接着剤の個々のコーティング重量で接合されたパネルに上記の試験を行うことによって得た。初期接合強度に関する試験結果を表IIIに記載しており、パネルに対して行った試験に関する全結果を表IVに記載する。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4-1】
【0069】
【表4-2】

表IVに関する注記:評点は、積層フィルム構造体(すなわち、接合されたパネル)に、耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後の、積層フィルム構造体の層間剥離/ブリスター形成の存在/程度に関する目視観察に基づく:「1」=良好、「2」=満足、及び「3」=不良。
【0070】
結果の考察
初期接合強度
表III及びIVに示されているとおり、接着剤/パネルのすべての初期接合強度(比較実施例Aの接着剤/パネルを除く)は、約30gsm~40gsmの接着剤コーティング重量において、1.5Kg/25mmという最小限の必要な初期接合強度を達成しない。したがって、比較実施例C~E、並びに本発明の実施例1及び2の接着剤/パネルについて、接着剤コーティング重量を増加し、初期接合強度になんらかの変化が起こったかどうかを確認するため、これらの接着剤/パネルを再試験する。本発明の実施例1(PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108、Adh.6)において調製した接着剤/パネル、及び本発明の実施例2(MOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411、Adh.7)において調製した接着剤/パネルは、1.5Kg/25mmの最小限の必要なレベルを達成した。
【0071】
耐水性
表III及びIVに示されているとおり、接着剤/パネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後に、比較実施例A(Adh.1)の既存の公知の水系接着剤/パネル、及び比較実施例B(ROBOND(商標)PS-90、Adh.2)の水系接着剤/パネルは、不良な耐水性を示す一方、比較実施例D(LOCTITE LIOFOL LA 7728/LOCTITE LIOFOL LA 6028、Adh.4)の水系接着剤/パネル、及び比較実施例E(MOR-FREE(商標)899A/MOR-FREE(商標)C-99、Adh.5)の水系接着剤/パネルは、いくらか中程度の/満足な耐水性を示すが、比較実施例C(ADCOTE(商標)548-81R/Coreactant-F、Adh.3)の水系接着剤/パネルは、良好な耐水性を示し、パネルに自己層間剥離/ブリスター形成はない。本発明の実施例1(PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108、Adh.6)の水系接着剤/パネル及び本発明の実施例2(MOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411、Adh.7)の水系接着剤/パネルは、良好な耐水性をやはり示し、パネルに、自己層間剥離/ブリスター形成がない。
【0072】
耐熱性
表III及びIVに示されているとおり、接着剤/パネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後、既存の公知の比較実施例A(Adh.1)及び比較実施例B(ROBOND(商標)PS-90、Adh.2)の水系接着剤/パネルは、ある程度の中度の/満足な耐熱性を示す一方、比較実施例C(ADCOTE(商標)548-81R/Coreagent-F、Adh.3)、比較実施例D(LOCTITE LIOFOL LA 7728/LOCTITE LIOFOL LA 6028、Adh.4)及び比較実施例E(MOR-FREE(商標)899A/MOR-FREE(商標)C-99、Adh.5)の水系接着剤/パネルは、良好な耐熱性を示し、パネルに自己層間剥離/ブリスター形成がない。本発明の実施例1(PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108、Adh.6)の水系接着剤/パネル及び本発明の実施例2(MOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411、Adh.7)の水系接着剤/パネルは、良好な耐熱性をやはり示し、パネルに、自己層間剥離/ブリスター形成はない。
【0073】
UV耐性
表III及びIVに示されているとおり、接着剤/パネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後に、比較実施例A~E及び本発明の実施例1及び2において調製した接着剤/パネルのすべてが、良好なUV耐性を示し、パネルに、自己層間剥離/ブリスター形成はない。
【0074】
水/熱/UV耐性試験後の接合強度維持
表III及びIVに示されているとおり、接着剤/パネルに耐水性、耐熱性及びUV耐性試験を施した後に、実施例のすべての接着剤/パネルのすべての接合強度維持を測定する。本発明の実施例1(PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108、Adh.6)において調製した接着剤/パネル及び本発明の実施例2(MOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411、Adh.7)に調製した接着剤/パネルは、比較実施例A~Eの他の接着剤/パネルのすべてに比べて、優れた接合強度維持特性を示す。
【0075】
全性能
パネルを調製するための、PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108(本発明の実施例1)及びMOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411(本発明の実施例2)などの溶媒不含(すなわち、水系)接着剤の使用により、初期接合強度に関して、優れた性能を示す接着剤/パネル構造体が実現する。及び、耐水性、耐熱性及びUV耐性試験への曝露後に、本発明の実施例1及び2のパネルにおいて、観察可能な層間剥離/ブリスター形成はない。接合強度維持試験からの結果により、本発明の実施例1及び2の接着剤/パネルの接合強度は良好であり、本発明の実施例1及び2の接着剤/パネルを耐水性、耐熱性及びUV耐性試験に曝露させた後、初期接合強度近くに維持されることが示される。表III及びIVに記載されている結果により、本発明の実施例1(PACACEL(商標)968/PACACEL(商標)C-108、Adh.6)及び本発明の実施例2(MOR-FREE(商標)698AG/MOR-FREE(商標)C-411、Adh.7)の接着剤を用いて構築されたパネルは、3種の耐性試験(水、熱、UV)のすべてにおいて、「1」の評点を有する一方、比較実施例A~Eは、3種の耐性試験の少なくとも1つにおいて、「2」及び/又は「3」の評点を有することが示される。表III及びIVに記載されている結果に基づくと、本発明の実施例1及び本発明の実施例2の接着剤を用いて構築されたパネルは、比較実施例A~Eの他の接着剤/パネル製品のすべてとは驚くほど違いがある。
【国際調査報告】