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特表2024-512380免疫療法のための高効力のT細胞受容体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】免疫療法のための高効力のT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240312BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K19/00
A61K35/17
A61K35/12
A61K35/76
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554926
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 US2022018975
(87)【国際公開番号】W WO2022192087
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,131
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ケナン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,シャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
操作されたT細胞受容体(TCR)配列、そのような配列を発現する細胞、及びその使用方法が提供される。操作された受容体は、インビトロで変異誘発され、オフターゲット交差反応性を低減するために十分に低いpMHC親和性の選択と組み合わせて、標的活性化効力のために選択される。いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、腫瘍関連抗原(TAA)、ヒトMAGE-A3を認識する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトMAGE-A3に特異的な操作されたαβT細胞受容体(TCR)であって、
D28、A30、I51、Q52、S53、及びS54から選択される1つ以上の残基において、標的活性化効力を増強するための少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、配列番号1のアルファ鎖又はその成熟バージョンを含み、
番号付けが成熟ポリペプチド配列に対して行われる、
操作されたαβT細胞受容体。
【請求項2】
MAGE-A3及びHLA-A1についての3D log K(μM)が、約0.5~約100μMである、請求項1に記載の操作されたαβTCR。
【請求項3】
TCRベータ鎖が、配列番号16の配列又はその成熟バージョンを含む、請求項1又は2に記載の操作されたαβTCR。
【請求項4】
前記アミノ酸修飾が、D28H、D28N、D28、D28K、D28S、A30H、A30S、A30E、A30N、A30G、I51V、Q52R、Q52H、S53P、S54Y、S54N、S54R、S54E、S54D、S54Hのうちの1つ以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作されたαβTCR。
【請求項5】
TCRαが、配列番号2~配列番号15から選択される配列、又はそれに由来するバリアントを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作されたαβTCR。
【請求項6】
TCRαが、配列番号2~配列番号15から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の操作されたαβTCR。
【請求項7】
ヒトHLA-B35及びHIVペプチドに特異的な操作されたαβT細胞受容体(TCR)であって、
配列番号17のアルファ鎖及び配列番号18のベータ鎖を含み、配列番号17 A98D、A98E、A98F、A98Q、A98Y、A98H及び配列番号18 A50D、A50E、A50F、A50H、A50N、A50Q、A50S、A50T、A50Yから選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む、
操作されたαβT細胞受容体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のTCRアルファ鎖又はTCRベータ鎖をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項10】
TCR配列が、プロモーターに作動可能に連結される、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
宿主細胞ゲノムに組み込まれる、請求項9又は10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項8に記載のポリヌクレオチド又は請求項9~11に記載のベクターを含む、操作された細胞。
【請求項13】
請求項8に記載のポリヌクレオチド又は請求項9~11に記載のベクターを含む、治療有効用量の操作された細胞集団。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドが、細胞のゲノムに組み込まれる、請求項12又は13に記載の操作された細胞又は細胞集団。
【請求項15】
細胞がT細胞である、請求項12~14のいずれか一項に記載の操作された細胞又は細胞集団。
【請求項16】
細胞が、ナイーブCD8T細胞、細胞傷害性CD8T細胞、ナイーブCD4T細胞、ヘルパーT細胞、例えば、T1、T2、T9、T11、T22、TFH、調節性T細胞、例えば、T1、天然TReg、誘導性TReg、メモリT細胞、例えば、セントラルメモリT細胞、エフェクターメモリT細胞、NKT細胞、γδT細胞から選択される、請求項12~14のいずれか一項に記載の操作された細胞又は細胞集団。
【請求項17】
MAGE-A3発現がんについて個体を治療する方法であって、
請求項12~16のいずれか一項に記載の有効量の操作された細胞集団を前記個体に投与することを含み、
操作された細胞によるがん細胞の殺傷が増加する、方法。
【請求項18】
治療が、追加のがん療法と組み合わせられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、メラノーマである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、メラノーマ、小細胞肺がん、血液悪性腫瘍、乳房、皮膚、神経膠腫、神経芽細胞腫、腸、結腸直腸、卵巣、及び腎臓の新生物から選択される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
低減したオフターゲット交差反応性と組み合わせて、標的活性化効力についてTCRのバリアントを選択する方法であって、
最適化のためにTCR配列のCDRループ上の所定のアミノ酸残基にアミノ酸変動を含むポリヌクレオチド配列のライブラリを生成することと、
発現のために前記ライブラリを哺乳類T細胞に導入することと、
同族抗原の標識されたpMHC多量体を前記T細胞に結合することと、
約0.1~約100mMの3D log K(μM)に対応する低レベルの結合を選択することと、
T細胞を活性化するために十分な期間の間、選択された細胞のプールを同族抗原源とともにインキュベートすることと、
高レベルの活性化を有するT細胞を選択することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
適応免疫応答は、主要組織適合性分子によって提示されるペプチド(pMHC)のT細胞受容体(TCR)認識によって開始される。アゴニストpMHCとのTCRの関与は、CD3免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化をもたらし、T細胞活性化をもたらす下流シグナル伝達のカスケードを開始する。TCR-pMHC相互作用の低い3D親和性(K1-100μM)にもかかわらず、T細胞応答の効力は、一般に、特定の相互作用の強度又は持続時間を反映することが示されている。
【0002】
TCRシグナル伝達は、pMHCに対するTCRの親和性以外のパラメータによって影響を受ける。例えば、力依存性相互作用は、アゴニストpMHCリガンドの特徴である。TCRは、アゴニストリガンドとのキャッチボンド(catch bond)を形成し、その間、相互作用の結合寿命は力の下で延長される。キャッチボンドは、力の下での分子相互作用の正味の利得を表し、TCR認識及びその後の活性化を関連付けるプルーフリーディング機構として組み込まれた動的多様性の更なるレベルを明らかにする。これは、TCRライゲーション及び活性化がTCRリガンド識別を調節するために結合又は分離することができるトリガー機構を提供する。
【0003】
腫瘍抗原に対する操作された特異性を有するTリンパ球の養子移入は、かかる治療を受ける患者において強力な抗腫瘍活性を有する、がんを標的とするための有望なアプローチである。しかしながら、ほとんどの腫瘍抗原は自己タンパク質に由来するため、天然の高親和性腫瘍特異的T細胞を単離することは困難であり、受容体配列は、エクスビボ操作によって増強されなければならない。
【0004】
しかしながら、重要なことに、TCR抗原親和性のかなりの増加が、ピコモル範囲まで下がっても報告されているが、この親和性レベルは、治療誘発毒性のリスクを増加させ得る。場合によっては、毒性は、「オンターゲット」の反応性と関連しており、標的抗原が、正常細胞、例えば、メラノーマ抗原を発現するメラノサイトにおいて発現される。
【0005】
親和性成熟は、また、TCRが、がん細胞の外部の組織上の他のペプチド-MHC分子に交差反応する可能性を増加させ、オフターゲット毒性及び場合により患者の有害事象又は死亡をもたらす。これは、ヒト腫瘍抗原MAGE-A3を標的とする親和性成熟TCRで実証されており、これらのTCR-T細胞は、タイチンと呼ばれる心臓ペプチドと交差反応し、患者に致命的な結果をもたらしている。
【0006】
この問題は、TCRは通常、低い親和性を有し、腫瘍上に発現されるもののような自己抗原を発現する細胞を殺傷しないため、全てのTCR-T療法の自然な制限である。本開示は、この問題に対処するスクリーニング方法及び有用なTCR配列を提供する。
【発明の概要】
【0007】
操作されたT細胞受容体(TCR)配列、かかる配列を発現する細胞、及びその使用方法が提供される。操作された受容体は、インビトロで変異誘発され、オフターゲット交差反応性を低減するために十分に低いpMHC親和性の選択と組み合わせて、標的活性化効力のために選択される。pMHC親和性は、適切なウィンドウ内に含まれ、この閾値レベルを超えると、有効性及び特異性が損なわれる。いくつかの実施形態では、操作されたTCRを発現する細胞は、がんを治療するための養子T細胞療法に使用される。いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、腫瘍関連抗原(TAA)、ヒトMAGE-A3を認識する。いくつかの実施形態では、TAAは、ヒトHLA-A1の文脈で認識される。
【0008】
いくつかの実施形態では、MAGE-A3に特異的な操作されたTCRは、シグナル配列を欠く配列番号1のアルファ鎖(TCRα)又はその成熟バージョンを含み、標的活性化効力を増強するための少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、修飾は、D28、A30、I51、Q52、S53及びS54(成熟タンパク質配列に対する番号付け)から選択される1つ以上の残基で行われる。いくつかの実施形態では、アミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、D28H/N/G/K/S、A30H/S/E/N/G、I51V、Q52R/H、S53P、S54Y/N/R/E/D/Hから選択される。いくつかの実施形態では、TCRαは、配列番号2~配列番号15から選択される配列、又はそれに由来するバリアントを有する。バリアントは、配列番号2~15の参照配列に対する少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性を含み得る。かかる実施形態のうちのいずれかでは、ベータ鎖(TCRβ)は、シグナル配列を欠く、配列番号16に示される配列又はその成熟バージョンを有し得る。MAGE-A3操作されたTCRは、ヒトタイチン配列に対して顕著な親和性を有しない。
【0009】
操作されたTCR、例えば、MAGE-A3に特異的なTCRは、約0.5~約100mMの3D log K(μM)を有し得、約1~約100μM、約1~約50μMであり得る。操作されたTCRは、抗原に応答するT細胞増殖、抗原に応答するIL-2の放出、抗原に応答するT細胞上のCD69の上方調節などを含むが、これらに限定されない、任意の好都合なアッセイによって測定される標的活性化効力のために望ましく選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、TCR55アルファ鎖(配列番号17)及びTCR55ベータ鎖(配列番号18)のアミノ酸修飾に基づいて、HLA-B35によって提示されるHIVペプチドに特異的である。アミノ酸修飾としては、B35-HIVによってTCR55を活性化させるための配列番号17 A98D、A98E、A98F、A98Q、A98Y、A98Hが挙げられるが、これらに限定されない。TCR55ベータ鎖(配列番号18)におけるアミノ酸修飾としては、B35-HIVによってTCR55を活性化させるためのA50D、A50E、A50F、A50H、A50N、A50Q、A50S、A50T、A50Yが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
いくつかの実施形態では、通常、TCRα及びTCRβ配列の両方の導入によって修飾される、操作されたTCRコード配列の導入によって細胞が修飾された、操作された細胞が提供される。いかなる細胞も、この目的のために使用できる。いくつかの実施形態では、細胞は、ナイーブCD8T細胞、細胞傷害性CD8T細胞、ナイーブCD4T細胞、ヘルパーT細胞、例えば、T1、T2、T9、T11、T22、TFH、調節性T細胞、例えばT1、天然TReg、誘導性TReg、メモリT細胞、例えば、セントラルメモリT細胞、エフェクターメモリT細胞、NKT細胞、γδT細胞及びCAR-T細胞を含むかかるT細胞の操作されたバリアントなどを含むが、これらに限定されないT細胞である。他の実施形態では、操作された細胞は、幹細胞、例えば、造血幹細胞、リンパ球前駆細胞などである。いくつかの実施形態では、細胞は、対象に導入する前にエクスビボ手順において遺伝子修飾される。操作された細胞は、療法のための単位用量で提供され得、意図されたレシピエントに関して同種異系、自家などであり得る。コード配列の導入は、任意の適切なベクター、例えば、ウイルスベクター、組み込みベクターなどを使用して、インビボ又はインビトロで行うことができる。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9を含むが、これに限定されない遺伝子編集システムを使用して、配列を操作された細胞のゲノムに組み込む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作されたTCR配列をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターが提供され、コード配列は、所望の細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的又は誘導性であり得る。例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、ミニサークルベクターなどの様々なベクターが、当該技術分野において既知であり、この目的のために使用することができ、これらのベクターは、標的細胞ゲノムに組み込むことができるか、又はエピソームにより維持することができる。ベクターは、キットで提供され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、治療方法が提供され、方法は、それを必要とするレシピエントに有効量の操作された細胞集団を導入することを含み、細胞集団は、本明細書に開示される操作されたTCRをコードする配列の導入によって修飾されている。細胞集団は、エクスビボで操作され得、通常、レシピエントに関して自家又は同種異系である。レシピエントは、操作された細胞集団の投与によってがんの治療を受けることができる。レシピエントは、当技術分野で既知の免疫療法、化学療法、放射線療法、手術などを含む追加の治療組成物又はモダリティと組み合わせて、操作された細胞集団で治療され得る。導入されたT細胞は、同族抗原を発現する標的化細胞の殺傷を増加させ得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、オフターゲット交差反応性を低減するために十分に低いpMHC親和性の選択と組み合わせて、標的活性化効力のためにTCRのバリアント、例えば、TCRα又はTCRβなどを選択する方法が提供され、このアプローチは、「キャッチボンドフィッシング」と称され得る。スクリーニングは、活性化効力が結合親和性から分離され得るという知見に基づいている。この方法によって、pMHC親和性は、オフターゲット毒性を低減するために適切なウィンドウ内に含まれるように選択される。
【0015】
最適化のための開始TCRは、既知の標的に対する既知の配列を含むが、これらに限定されない、目的の標的に特異的なTCRであり得る。目的の抗原としては、限定されないが、例えば、患者に関連するMHCの状況、例えば、ヒトHLA抗原において提示される、HER2、PSA、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソセリン(MSLN)、CEA、MUC1、MAGE、EGFRなどを含む腫瘍関連抗原が挙げられる。また、病原体抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原なども目的のものである。
【0016】
かかるスクリーニング方法では、最適化のために、TCR配列上の所定のアミノ酸残基におけるアミノ酸変動を含むライブラリを生成する。変異誘発のために選択される残基は、通常、TCRのCDR領域のうちの1つ以上内にある。TCRα配列は、変異誘発され、非変異誘発TCRβと対合され得るか、又はTCRβ配列は、変異誘発され、非変異誘発TCRαと対合され得る。ライブラリは、発現のために哺乳類細胞(哺乳類T細胞株を含む)に導入される。細胞は、最初に、同族pMHCへの低親和性結合、例えば、標識pMHC四量体、多量体などへの結合、及びフローサイトメトリーなどによる選別によって、例えば、約0.1~約100μMの3D log K(μM)での低親和性結合のために選択される。
【0017】
低親和性TCR配列を、抗原に応答してT細胞を活性化する能力についてスクリーニングする。最初のスクリーニングがT細胞において行われた場合、T細胞は、直接スクリーニングされてもよく、代替的に、低親和性結合TCRの配列が、活性化スクリーニングのためにT細胞に導入される。低抗原親和性を有するTCRを発現するT細胞の集団は、抗原源、例えば、同族抗原を発現する標的細胞、pMHC基質、抗原性ペプチドでパルスされた抗原提示細胞などとともに、T細胞を活性化するために十分な期間インキュベートされる。T細胞は、例えば、増殖、IL-2放出、CD69上方調節などにより、高レベルの活性化のために選択される。好都合に、CD69の上方調節は、抗体染色及びフローサイトメトリーによって選択される。かかる選択は、上位20%、上位10%、上位5%、上位1%の細胞が選択される相対値に基づいてもよい。得られた操作されたTCRは、低オフターゲット交差反応性及び高オンターゲット活性化について検証され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、スクリーニングのためのキットが提供され、これは、例えば、スクリーニングに好適な細胞株、変異誘発TCRの発現のためのベクター、細胞を標識するためのpMHC四量体、細胞を標識するための抗CD69抗体などを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むと最もよく理解される。一般的な実施によれば、図面の様々な特徴は、縮尺どおりでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。図面には、以下の図が含まれる。
【0020】
図1】TCRのキャッチボンドエ操作の作業フローを示す。TCRライブラリを、ランダム化残基を有するdsDNAとして合成した。ライブラリを、ギブソンアセンブリによってレンチウイルスベクターにクローニングした。組換えレンチウイルスベクターのライブラリを使用して、SKW-3 T細胞株に感染するレンチウイルスのライブラリを産生した。SKW-3 T細胞上のTCRライブラリの表示を、抗TCR(クローンIP26)染色によって検出した。T細胞ライブラリを、10μMの抗原ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを、更なるラウンドの選別又は分析のために選別した。
図2】TCRキャッチボンド操作の選別戦略を示す。ラウンド0において、T細胞ライブラリ又はWT TCRトランスフェクタントを、抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。WT TCRトランスフェクタントと比較して類似のレベルの抗CD69及び四量体染色を有するT細胞ライブラリクローンを選別して、任意の高親和性又は自己応答性クローンを除去した。その後、T細胞ライブラリを、10μMの抗原ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ラウンド2と同じ選別手順を更に2~3ラウンド繰り返して、ある特定の変異体を更に富化した。
図3A】TCR55ライブラリの設計を示す。B35-HIV-TCR55(PDB ID:6BJ3)の構造に基づいて、TCR55アルファ鎖上の残基(Ser28、Lys69、Ala98)を選択し、55aライブラリとしてVRWコドンにランダム化した。
図3B】TCR55ライブラリの設計を示す。TCR55bベータ鎖上の残基CDR1及びCDR2(Asn28、Ser31、Ala50及びSer51)を選択し、55b12ライブラリとしてVRWコドンにランダム化した。
図3C】TCR55ライブラリの設計を示す。TCR55bベータ鎖上の残基CDR3(Lys71、Thr95及びLeu100)を選択し、55b3ライブラリとしてVRWコドンにランダム化した。
図4-1】TCR55ライブラリの5ラウンドの選択を示す。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-B35-HIV四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、TCR55 WTトランスフェクタントの抗CD69及びB35-HIV四量体染色に基づいている。
図4-2】TCR55ライブラリの5ラウンドの選択を示す。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-B35-HIV四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、TCR55 WTトランスフェクタントの抗CD69及びB35-HIV四量体染色に基づいている。
図4-3】TCR55ライブラリの5ラウンドの選択を示す。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-B35-HIV四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、TCR55 WTトランスフェクタントの抗CD69及びB35-HIV四量体染色に基づいている。
図5】TCR55a-A98Hは、B35-HIVによって活性化され得るキャッチボンド操作されたTCRである。A.TCR55 WT、TCR55a-A98H、TCR55a-S28G又はTCR55a-S28G A98H T細胞トランスフェクタントを、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、抗CD69で染色した。実験を、フローサイトメトリーによって分析した。B~C.固定化されたB35-HIVと流動したTCR55a-A98Hタンパク質との間の3D結合親和性を測定するための表面プラズモン共鳴(SPR)実験を示す。D.B35-HIVタンパク質とTCR55 WT又はTCR55a-A98H T細胞トランスフェクタントとの間の結合寿命を測定するための生体膜力プローブ(BFP)実験を示す。
図6A】TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。D、E、F、Q、Y及びHへのTCR55a-A98変異をT細胞トランスフェクタントとして作製し、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞により14時間刺激し、抗CD69で染色した。実験を、フローサイトメトリーによって分析した。
図6B】TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。C、K、N、R、S、T及びWへのTCR55a-A98変異をT細胞トランスフェクタントとして作製し、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞により刺激した。分析はAと同じであった。
図6C】TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。刺激性TCR55a-A98変異体のEmaxと3D結合親和性(K)との間の相関関係を示す。
図6D】TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。刺激性TCR55a-A98変異体のEC50と3D Kとの間の相関関係を示す。
図6E】TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。B35-HIVタンパク質と相互作用するTCR55a-A98H、TCR55a-A98E及びTCR55a-A98Q T細胞トランスフェクタントの結合寿命のBFP測定を示す。
図7A】MAGEライブラリの設計を示す。HLA-A1-MAGEA3-MAG-IC3(PDB ID:5BRZ)の構造に基づいて、TCRアルファ鎖上の残基(Asp28、Ala30、Ser54及びGln52)を選択し、ライブラリとしてVRWコドンにランダム化した。
図7B】MAGEライブラリの設計を示す。HLA-A1-MAGEA3-MAG-IC3(PDB ID:5BRZ)の構造に基づいて、TCRベータ鎖上の残基(Thr54、Met98及びAsp100)を選択し、ライブラリとしてVRWコドンにランダム化した。
図8】MAGEライブラリの3ラウンドの選択を示す。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのMAGEA3ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-A1-MAGEA3四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、MAGEA3 WT TCRトランスフェクタントの抗CD69及びHLA-A1-MAGEA3四量体染色に基づいている。
図9】複数のTCR変異体が、MAGEA3腫瘍抗原によって活性化されることが同定された。A.8つの高効力変異体T細胞を、滴定したMAGEA3ペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。B.5つの中効力変異体T細胞を、滴定したMAGEA3ペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。C.8つの高効力変異体T細胞を、滴定したタイチンペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。
図10】A3A TCRと比較して高い効力であるがより低い親和性を有するいくつかのMAGE TCR変異体の同定を示す。A.WT TCR、A3A TCR、8つの高効力変異体及び5つの中効力変異体のEmaxとHLA-A1-MAGEA3四量体染色陽性パーセンテージとの間の相関関係を示す。B.WT、A3A、又は6つの他の選択されたTCR変異体に結合する固定化されたHLA-A1-MAGEA3のEmaxと3D親和性(3D K)との間の相関関係を示す。C.WT、A3A、又は6つの他の選択されたTCR変異体に結合する固定化されたHLA-A1-MAGEA3のEC50と3D Kとの間の相関関係を示す。
図11】毒性スクリーニング。反復1:ヒト初代T細胞細胞傷害性アッセイを示す。抗原提示細胞:腫瘍細胞株(A375、HCT-116)-HLA-A1-MAGEA3、27a-5:1つのMAGE TCR変異体である。
図12】全てのMAGE TCR変異体のアミノ酸置換を示す。全ての変異体は、Asp28、Ala30、Ile51、Gln52、Ser53及びSer54のTCRアルファ鎖残基にのみ変異を有する。各変異体の特定の変異残基をここに列挙する。
図13-1】操作されたMAGE TCR配列の選択された部分のアラインメントを示す。
図13-2】操作されたMAGE TCR配列の選択された部分のアラインメントを示す。
図14A】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるA375メラノーマ細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14B】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるA375メラノーマ細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14C】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。A375メラノーマ細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14D】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。A375メラノーマ細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14E】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。A375メラノーマ細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14F】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるHCT-116結腸がん細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14G】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるHCT-116結腸がん細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14H】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14I】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14J】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14K】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。MAGE-3ペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1+293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14L】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。MAGE-3ペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1+293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14M】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。MAGE-3ペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1+293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14N】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。タイチンペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14O】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。タイチンペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図14P】キャッチボンド操作されたMAGE-A3特異的TCRの細胞傷害性及び特異性を示す。タイチンペプチドの滴定でパルスしたHLA-A1293T細胞によって誘導された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図15A】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。一本鎖HLA-A*01酵母表示ペプチドライブラリの設計。DNAペプチドライブラリ設計は、HLA-A*01によって表示されたペプチドを最大にするために、アンカー位置P3(GAK)及びP9(TAY)を除く全ての位置のNNKコドンライブラリを示す。一本鎖三量体構築物は、酵母上での発現のためにAga2に融合したMycタグに対してN末端である。
図15B】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。選択のラウンドにわたって酵母上のmycタグ発現を増加させることは、ペプチドHLA-A*01の富化及びライブラリの正の選択を表す。
図15C】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。ペプチドごとに検出されたリードの数を占めるアミノ酸によるペプチド位置を示す、ラウンド4の選択されたペプチドのヒートマップ。枠で囲まれたアミノ酸は、MAGE-A3ペプチド(配列番号19)EVDPIGHLYを表す。暗色は、その位置でのより富化されたアミノ酸を表す。
図15D-1】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。MAGE-A3、タイチン、DMSO(黒いドット)及び60の予測されたペプチド(MAGE-A6;FAT2)を使用して、293T-HLA-A1細胞をパルスし、異なるTCRを発現するSKW3 T細胞を14時間刺激した。ペプチドは、MAGE-A3(配列番号19)EVDPIGHLY、タイチン(配列番号20)ESDPIVAQY、MAGE-A6(配列番号21)EVDPIGHVY、FAT2(配列番号22)ETDPVNHMVであった。
図15D-2】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。MAGE-A3、タイチン、DMSO(黒いドット)及び60の予測されたペプチド(MAGE-A6;FAT2)を使用して、293T-HLA-A1細胞をパルスし、異なるTCRを発現するSKW3 T細胞を14時間刺激した。ペプチドは、MAGE-A3(配列番号19)EVDPIGHLY、タイチン(配列番号20)ESDPIVAQY、MAGE-A6(配列番号21)EVDPIGHVY、FAT2(配列番号22)ETDPVNHMVであった。
図15E-1】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。抗CD69-APC染色を行い、フローサイトメトリーで分析した。293-HLA-A1細胞を、滴定したMAGE-A3(配列番号19)、タイチン(配列番号20)、MAGE-A6(配列番号21)又はFAT2(配列番号22)ペプチドでパルスして、MAGE-A3 TCRバリアントを発現するSKW3 T細胞を14時間刺激した。抗CD69-APC染色を行い、フローサイトメトリーで分析した。
図15E-2】酵母表示pMHCライブラリによるMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性スクリーニングを示す。抗CD69-APC染色を行い、フローサイトメトリーで分析した。293-HLA-A1細胞を、滴定したMAGE-A3(配列番号19)、タイチン(配列番号20)、MAGE-A6(配列番号21)又はFAT2(配列番号22)ペプチドでパルスして、MAGE-A3 TCRバリアントを発現するSKW3 T細胞を14時間刺激した。抗CD69-APC染色を行い、フローサイトメトリーで分析した。
図16A】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。ライブラリの選択の各ラウンドにおける、MAGE-A3 WT TCR SKW3トランスフェクタントのA1-MAGE-A3四量体染色及び抗CD69染色を示す。
図16B】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。SKW3細胞における異なるMAGE-A3特異的TCR変異体のEmaxとHLA-A1-MAGE-A3四量体染色-高集団のパーセンテージとの間の相関関係を示す。
図16C】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。HLA-A1-MAGE-A3に結合する選択されたMAGE-A3特異的TCR変異体のlog10EC50と3D結合親和性Kとの間の相関関係を示す。
図16D】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるA375メラノーマ細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16E】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるA375メラノーマ細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16F】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。A375メラノーマ細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16G】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。A375メラノーマ細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16H】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。A375メラノーマ細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16I】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるHCT-116結腸がん細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16J】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるHCT-116結腸がん細胞株の殺傷を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16K】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16L】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16M】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。HCT-116結腸がん細胞株によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞によるIFN-ψ、TNF及び細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)を示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16N】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したMAGE-A3ペプチドでパルスしたHLA-A1+293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16O】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したMAGE-A3ペプチドでパルスしたHLA-A1+293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16P】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したMAGE-A3ペプチドでパルスしたHLA-A1+293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16Q】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したタイチンペプチドでパルスしたHLA-A1293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16R】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したタイチンペプチドでパルスしたHLA-A1293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図16S】他のMAGE-A3特異的TCR変異体によって媒介される殺傷、サイトカイン応答及び顆粒放出を示す。滴定したタイチンペプチドでパルスしたHLA-A1293T細胞によって刺激された、異なるMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代T細胞による細胞傷害性顆粒放出(CD107a染色)、TNF及びIFN-ψを示す。データは、3つの独立した実験を表す。データは、技術的反復の平均値±標準偏差として示される。ns:有意ではない;*:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001である。
図17A】HLA-A1-MAGE-A3に結合するMAGE-A3特異的TCR変異体のSPR実験を示す。HLA-A1-MAGE-A3に結合するMAGE-A3特異的TCR変異体タンパク質のSPR実験を示す。ビオチン化HLA-A1-MAGE-A3単量体をストレプトアビジンチップ上に固定化し、MAGE-A3特異的TCR変異体タンパク質をチップを通して流した。SPRによるMAGE-A3特異的TCR変異体とHLA-A1-MAGE-A3との間の3D親和性の決定を示す。
図17B】HLA-A1-MAGE-A3に結合するMAGE-A3特異的TCR変異体のSPR実験を示す。25℃でHLA-A1-MAGE-A3 pMHCに結合するMAGE-A3特異的TCR変異体の平衡曲線を示す。示されるデータを平衡(黒いドット)で測定した。黒い線は、1:1結合曲線への適合を示す。
図18A】HLA-A1-タイチンに結合するMAGE-A3特異的TCR変異体のSPR実験を示す。HLA-A1-タイチンに結合するMAGE-A3特異的TCR変異体タンパク質のSPR実験を示す。ビオチン化HLA-A1-タイチン単量体をストレプトアビジンチップ上に固定化し、MAGE-A3特異的TCR変異体タンパク質をチップを通して流した。
図18B】HLA-A1-タイチンに結合するMAGE-A3特異的TCR変異体のSPR実験を示す。SPRによるMAGE-A3特異的TCR変異体とHLA-A1-タイチンとの間の3D親和性の決定を示す。25℃でHLA-A1-タイチンpMHCに結合するMAGE-A3特異的TCR変異体の平衡曲線を示す。示されるデータを平衡(黒いドット)で測定した。黒い線は、1:1結合曲線への適合を示す。
図19A】A1-タイチンに結合する94a-14TCR又は20a-18TCR結合の結合寿命力曲線を測定するための生体膜力プローブ実験を示す。データは、力曲線当たり500+の個々の結合寿命の平均値±SEMとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法及び組成物を説明する前に、本発明は記載された特定の方法又は組成物に限定されるものではなく、それ自体が勿論、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語が単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、制限することが意図されないことも理解されたい。なぜなら、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるからである。
【0022】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の各々の介在する値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。任意の記載値又は記載された範囲内の間に介在する値と、任意の他の記載値又はその記載された範囲内の間に介在する値との間の、各々のより小さい範囲が、本発明に包含される。これらの小さい範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれていても、除外されていてもよく、いずれか、どちらでもない、又は両方の限定が小さい範囲に含まれている各範囲も、記載されている範囲の中で任意の具体的に除外されている限定に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限定の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、ここでは、いくつかの潜在的かつ好ましい方法及び材料を説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a cell(細胞)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「the peptide(ペプチド)」への言及は、当業者に既知の1つ以上のペプチド及びその等価物、例えばポリペプチドなどへの言及を含む。
【0025】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のために単に提供されている。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0026】
操作されたTCR、かかるTCRをコードする配列、及び操作された抗原受容体を発現するように操作された細胞(例えば、免疫エフェクター細胞の集団などの細胞の集団)が提供される。いくつかの実施形態では、本発明の免疫エフェクター細胞は、T細胞又はNK細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、又はそれらの組み合わせである。一態様では、本発明の細胞は、ヒト細胞である。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、腫瘍抗原の発現に関連する疾患、例えば、増殖性疾患、前がん状態、がん、及び腫瘍抗原の発現に関連する非がん関連適応症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、メラノーマ、小細胞肺がん、血液悪性腫瘍、乳房、皮膚、神経膠腫、神経芽細胞腫、腸、結腸直腸、卵巣、及び腎臓の新生物を含むがこれらに限定されない、MAGE-A3発現がんを有する。本発明は、がんの治療のための本明細書に記載の組成物の使用及び/又は方法を提供する。
【0028】
本発明は、操作されたTCRをコードする核酸を、該核酸が細胞のゲノムに組み込まれるように、細胞に導入することを含む、TCR発現細胞の製造方法を更に提供する。
【0029】
T細胞受容体操作されたT細胞養子療法。T細胞受容体(TCR)操作されたT細胞は、がん及び他の状態の治療のために使用される養子細胞療法の選択肢である。例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、例えば、エクスビボで拡大した自家TILを使用する養子細胞療法は、ある特定のがんを治療するための有効なアプローチとして使用されている。しかしながら、治療上有用な用量の抗原特異的TILを得ることは困難であり得る。T細胞受容体(TCR)操作技術を使用して、適切な治療TCRを発現させるようにT細胞を操作することができる。したがって、腫瘍抗原特異的TCR遺伝子操作されたT細胞は、がん患者のための潜在的な「既製の」治療とみなされる。
【0030】
例えば、T細胞は、患者の血液又は腫瘍組織から単離され得る。本明細書に開示される方法によって操作されたTCRα鎖及びβ鎖は、好適なベクター、例えば、レンチウイルス、レトロウイルスなど、又は遺伝子編集システムで提供され、患者から単離したT細胞を修飾して所望のTCRαβ配列をコードするために使用される。次いで、これらの修飾されたT細胞をインビトロで拡大して、治療のための十分な数を得て、患者に再注入する。代替的に、同種異系T細胞は、この目的のために使用することができる。TCR操作されたT細胞は、適切な抗原を発現するがん細胞を標的とし、殺傷することができる。
【0031】
上述の方法において使用するための細胞は、対象又はドナーから収集することができるか、所望の細胞を富化する技法によって細胞の混合物から分離され得るか、又は分離することなく操作され、培養され得る。適切な溶液が、分散又は懸濁に使用され得る。かかる溶液は、概して、低濃度、概して5~25mMの許容可能な緩衝液と併せて、好都合に、ウシ胎仔血清又は他の天然に存在する因子を補充された、平衡塩溶液、例えば、標準の生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩溶液などである。好都合な緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが挙げられる。
【0032】
親和性分離のための技法としては、抗体コーティングされた磁気ビーズを使用した磁気分離、親和性クロマトグラフィ、モノクローナル抗体に結合した、又はモノクローナル抗体と併せて使用される細胞傷害性薬剤、例えば、補体及び細胞傷害性細胞、並びに固体マトリックス、例えばプレートに結合した抗体を用いた「パニング」、又は他の好都合な技法が挙げられ得る。正確な分離を提供する技法としては、蛍光活性化セルソーターが挙げられ、これは、複数のカラーチャネル、低角度及び鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどの様々な程度の洗練度(sophistication)を有することができる。細胞は、死細胞と会合する染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)を用いることによって、死細胞に対して選択され得る。選択された細胞の生存率に過度に損害を与えない任意の技法が用いられ得る。親和性試薬は、上述の細胞表面分子に対する特異的受容体又は配位子であってもよい。抗体試薬に加えて、ペプチド-MHC抗原及びT細胞受容体対、ペプチド配位子及び受容体、エフェクター分子及び受容体分子などが使用されてもよい。
【0033】
分離された細胞は、通常、収集管の底部に血清クッションを有する、細胞の生存率を維持する任意の適切な培地に収集され得る。頻繁にウシ胎児血清(FCS)を補充したdMEM、HBSS、dPBS、RPMI、Iscove培地などの様々な培地が市販されており、細胞の性質に応じて使用され得る。
【0034】
収集され、任意選択的に富化された細胞集団は、遺伝子修飾のために直ちに使用されてもよく、又は液体窒素温度で凍結され、保管されてもよく、解凍されて再利用可能である。細胞は、通常、10%のDMSO、50%のFCS、40%のRPMI1640培地中に保存される。
【0035】
操作された細胞は、任意の生理学的に許容される培地において、通常は血管内の任意の便利な投与経路によって対象に注入され得るが、それらは、また、他の経路によって導入され得、細胞は、成長のための適切な部位を見つけ得る。通常、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×1010個の細胞/kg、又はそれ以上が投与され、通常、収集中に得られるT細胞の数によって制限される。
【0036】
多くの腫瘍特異的抗原が同定されている。これらの抗原は、免疫応答を誘導することができ、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A3、MAGE-A4、ニューヨーク食道扁平上皮細胞がん(NY-ESO)-1、MART-1、gp100、がん胎児性抗原(CEA)、p53、新抗原などの、ワクチン接種又はT細胞療法で使用するための有望な候補標的である。
【0037】
「自家」という用語は、後で個体に再導入されることになる同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0038】
「同種異系」という用語は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の材料を指す。1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2つ以上の個体は互いに同種異系であると言われる。いくつかの態様では、同じ種の個体からの同種異系材料は、抗原的に相互作用するように遺伝的に十分に異なっていてもよい。
【0039】
「刺激」という用語は、刺激性分子(例えば、TCR/CD3複合体)の、その同族のリガンド(又はTCRの場合は腫瘍抗原)との結合によって誘導され、それによって、限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達又はCARの適切なNK受容体若しくはシグナル伝達ドメインを介したシグナル伝達などのシグナル伝達事象を媒介する、一次応答を指す。刺激は、ある特定の分子の発現の変化を媒介することができる。
【0040】
「刺激性分子」という用語は、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様について刺激的な方法で免疫細胞の活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列を提供する免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞)によって発現される分子を指す。一態様では、シグナルは、例えば、ペプチドが装填されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって開始され、増殖、活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答の媒介をもたらす一次シグナルである。刺激的な様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0041】
「共刺激性分子」という用語は、共刺激性リガンドと特異的に結合し、それにより、これに限定されないが、増殖などのT細胞による共刺激性応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーを指す。共刺激性分子は、効率的な免疫応答に寄与する、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激性分子には、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体、並びにOX40、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)及び4-1BB(CD137)が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
「抗原提示細胞」又は「APC」という用語は、その表面上に主要組織適合性複合体(MHC)と複合体を形成した外来抗原を表示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは抗原を処理し、それらをT細胞に提示する。
【0043】
「免疫エフェクター細胞」は、その用語が本明細書で使用される場合、免疫応答、例えば、免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例としては、T細胞、例えば、アルファ/ベータT細胞及びガンマ/デルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、肥満細胞、並びにマクロファージが挙げられる。
【0044】
「免疫エフェクター機能又は免疫エフェクター応答」は、その用語が本明細書で使用される場合、例えば、標的細胞の免疫攻撃を増強又は促進する免疫エフェクター細胞の機能又は応答を指す。例えば、免疫エフェクター機能又は応答は、標的細胞の殺傷又は成長若しくは増殖の阻害を促進するT細胞又はNK細胞の特性を指す。
【0045】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書では互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な本明細書に記載される化合物、製剤、材料又は組成物の量を指す。
【0046】
「がん関連抗原」又は「腫瘍抗原」という用語は、互換的に、完全に又は断片(例えば、MHC/ペプチド)としてのいずれかで、がん細胞の表面上に発現され、がん細胞に対する薬理学的薬剤の優先的標的化に有用な分子(典型的には、タンパク質、炭水化物又は脂質)を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、正常細胞及びがん細胞の両方によって発現されるマーカー、例えば、系統マーカー、例えば、B細胞上のCD19である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、正常細胞と比較して、がん細胞において過剰発現される、例えば、正常細胞と比較して、1倍の過剰発現、2倍の過剰発現、3倍以上の過剰発現である、細胞表面分子である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、がん細胞において不適切に合成される細胞表面分子、例えば、正常細胞上で発現される分子と比較して、欠失、付加又は変異を含む分子である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、がん細胞の細胞表面上にのみ、完全に又は断片(例えば、MHC/ペプチド)として発現され、正常細胞の表面上で合成又は発現されない。
【0047】
「実質的に精製された」細胞という用語は、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞は、また、天然に存在する状態で通常会合している他の細胞型から分離された細胞も指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の均質な集団を指す。他の例では、この用語は、単に、それらが天然状態で天然に会合する細胞から分離された細胞を指す。いくつかの態様では、細胞はインビトロで培養される。他の態様では、細胞は、インビトロで培養されない。
【0048】
MAGE-A3は、腫瘍特異的タンパク質であり、メラノーマ、小細胞肺がん、血液悪性腫瘍、乳房、皮膚、神経膠腫、神経芽細胞腫、腸、結腸直腸、卵巣、及び腎臓の新生物などを含む多くの腫瘍で同定されており、睾丸及び胎盤を除く全ての正常なヒト組織でサイレントである。ヒトタンパク質refseqは、NP_005353でアクセスすることができる。例えば、Saiag et al.Prospective assessment of a gene signature potentially predictive of clinical benefit in metastatic melanoma patients following MAGE-A3 immunotherapeutic(PREDICT).Ann Oncol.2016;27:1947-1953、Pujol et al.Safety and Immunogenicity of MAGE-A3 cancer immunotherapeutic with or without adjuvant chemotherapy in patients with resected stage IB to III MAGE-A3-positive non-small-cell lung cancer. J Thorac Oncol. 2015;10:1458-1467を参照されたい。
【0049】
MHCの状況。MHC分子の機能は、形質転換細胞に由来する病原体又は異常タンパク質に由来するペプチド断片に結合し、適切なT細胞による認識のためにそれらを細胞表面に表示することである。したがって、T細胞受容体認識は、抗原を提示しているMHCタンパク質によって影響を受け得る。MHC状況という用語は、特定のMHCタンパク質によって提示されるとき、所与のペプチドのTCRによる認識を指す。
【0050】
ペプチドリガンドは、Tリンパ球抗原特異的応答を伴う免疫応答が生成され得るペプチド抗原である。そのような抗原としては、自己免疫疾患、感染症、がん新抗原、グルテンなどの食品、アレルギー又は組織移植拒絶に関連する抗原が挙げられる。抗原には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、寄生虫及び腫瘍細胞に由来する抗原を含むが、これに限定されない、例えば、感染症、ワクチン接種などに見られる様々な微生物抗原も含まれる。腫瘍抗原としては、腫瘍特異的抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプ及びT細胞抗原受容体;がん遺伝子、例えば、p21/ras、p53、p210/bcr-abl融合産物など;発達抗原、例えば、MART-1/メランA;MAGE-1、MAGE-3;GAGEファミリー;テロメラーゼなど;ウイルス抗原、例えば、ヒトパピローマウイルス、エプスタインバールウイルスなど;組織特異的自己抗原、例えば、チロシナーゼ;gp100;前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺特異的抗原、前立腺特異的膜抗原;チログロブリン、α-フェトプロテインなど;及び自己抗原、例えば、her-2/neu;がん胎児性抗原、muc-1などが挙げられる。
【0051】
MHCタンパク質は、哺乳類MHCタンパク質のいずれかを含む。ヒトHLAタンパク質、特にHLAクラスIタンパク質、例えば、ヒトHLA-A、HLA-B、HLA-Cが目的のものである。当業者によって理解されるように、HLA遺伝子座は、高度に多型であり、HLA-A*01、HLA-A*02、最大HLA-A*80までの対立遺伝子のいずれか及びそれらの血清型、並びにHLA-B*07、HLA-B*08、最大HLA-B*83まで、及びそれらの血清型を含むが、これらに限定されない多数の配列バリアントが既知であり、当該技術分野において記載されている。いくつかの実施形態では、HLAクラスIIタンパク質、例えば、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA及びHLA-DRB1が、目的のものである。スクリーニング目的で使用されるMHC配列は、典型的には、ペプチド結合領域、例えば、アルファ1及びアルファ2ドメイン、又はペプチド結合複合体、ペプチド抗原との複合体を形成するために必要なこれらのドメインの部分を含む。
【0052】
キャッチボンドは、その寿命が、結合に適用される引張力とともに増加する受容体-リガンド結合である(その寿命が、結合に作用する引張力によって短縮される、より一般的なスリップボンドとは対照的に)。例えば、リガンド結合ドメインは、結合ポケットに対して遠位の隣接する調節ドメインと密接に接触し得る。リガンド-受容体複合体への引張力の適用は、結合ポケットと結合ポケットを活性化する調節ドメインとの間の界面の構造的緩みをもたらす。したがって、受容体-リガンド複合体の少なくとも2つの構造状態、すなわち、短命状態及び長命状態を共存させることができ、これらの各々は、異なるリガンドオンレート及びオフレートを有する。ドメイン-ドメイン界面における機械的摂動は、結合ポケットに急速に伝播して、それを長命状態に切り替えることができる。
【0053】
短命状態及び長命状態は、他の手段によって、例えば、熱活性化によっても克服することができるエネルギー障壁によって分離されるため、機械的力は、キャッチボンドの活性化を加速するだけであることがしばしば示されている。したがって、力の役割は、エネルギー障壁を越えて短命状態から長命状態に移行するプロセスを加速することだけである。
【0054】
「がん」、「新生物」、「腫瘍」、及び「がん腫」という用語は、細胞増殖の制御の著しい喪失を特徴とする異常な成長表現型を示すように、比較的自律的な成長を示す細胞を指すように本明細書において互換的に使用される。一般に、本出願における検出又は治療のための目的の細胞には、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び非転移性細胞が含まれる。がん細胞の検出は、特に目的のものである。「正常細胞」の文脈で使用される「正常」という用語は、形質転換されていない表現型の細胞、又は検査される組織型の形質転換されていない細胞の形態を示すことを意味する。「がん性表現型」は、概して、がん細胞の特徴である様々な生物学的現象のいずれかを指し、その現象は、がんの種類によって変化し得る。がん性表現型は、概して、例えば、細胞の成長又は増殖(例えば、制御されていない成長又は増殖)、細胞周期の調節、細胞移動性、細胞-細胞相互作用、又は転移などの異常によって同定される。
【0055】
本発明の主題方法を使用して治療することができるがんの種類としては、副腎皮質がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆道がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、脳がん、中枢神経系(CNS)がん、末梢神経系(PNS)がん、乳がん、子宮頸がん、小児非ホジキンリンパ腫、結腸及び直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ユーイング腫瘍(例えば、ユーイング肉腫)、眼がん、胆嚢がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、妊娠トロホブラスト疾患、有毛細胞白血病、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん及び下咽頭がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、男性乳がん、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔及び中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、メラノーマ皮膚がん、非メラノーマ皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮がん(例えば、子宮肉腫)、移行細胞がん、膣がん、外陰部がん、中皮腫、扁平上皮細胞又は類表皮がん、気管支腺腫、絨毛がん、頭頸部がん、奇形腫、又はヴァルデンストロームマクログロブリン血症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「抗がん効果」という用語は、例えば、腫瘍体積の減少、がん細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の増加、がん細胞増殖の減少、がん細胞生存の減少、又はがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善を含むが、これらに限定されない、様々な手段によって明らかにすることができる生物学的効果を指す。「抗がん効果」は、そもそもがんの発生の予防における操作された細胞の能力によっても明らかにすることができる。「抗腫瘍効果」という用語は、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、又は腫瘍細胞生存の減少を含むが、これらに限定されない、様々な手段によって明らかにすることができる生物学的効果を指す。
【0057】
「本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連する疾患」という語句には、本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連する疾患、又は本明細書に記載される腫瘍抗原を発現する細胞に関連する状態が含まれ、例えば、がん若しくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、又は骨髄異形成、骨髄異形成症候群若しくは前白血病などの前がん性状態、又は本明細書に記載される腫瘍抗原を発現する細胞に関連する非がん関連適応症が含まれるが、これらに限定されない。一態様では、本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連するがんは、血液がんである。一態様では、本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連するがんは、固形がんである。本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連する更なる疾患としては、例えば、非定型及び/若しくは非古典的がん、悪性腫瘍、前がん性状態、又は本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連する増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される腫瘍抗原の発現に関連する非がん関連適応症としては、例えば、自己免疫疾患(例えば、ループス)、炎症性障害(アレルギー及び喘息)、並びに移植が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原発現細胞は、腫瘍抗原をコードするmRNAを発現するか、又は任意の時点で発現する。一実施形態では、腫瘍抗原発現細胞は、腫瘍抗原タンパク質(例えば、野生型又は変異体)を産生し、腫瘍抗原タンパク質は、正常レベル又は低減レベルで存在し得る。一実施形態では、腫瘍抗原発現細胞は、ある時点で検出可能なレベルの腫瘍抗原タンパク質を産生し、その後、実質的に検出可能な腫瘍抗原タンパク質を産生しなかった。
【0058】
本明細書で使用される場合、「治療的」という用語は、治療を意味する。治療効果は、疾患状態の低減、抑制、寛解、又は根絶によって得られる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、疾患又は疾患状態の防止又は保護的治療を意味する。
【0060】
発現構築物。ード配列は、発現ベクター上で操作される細胞内に導入され得る。例えば、CRISPR技術を使用して、コード配列を標的細胞に導入することができる。Cas9及びsgRNAをコードするプラスミドでトランスフェクションすることによって、CRISPR/Cas9系をヒト細胞に直接適用することができる。CRISPR構成要素のウイルス送達は、レンチウイルス及びレトロウイルスベクターを使用して広範囲に実証されている。アデノウイルス及びアデノウイルス関連ウイルス(AAV)などの非組み込みウイルスによってコードされるCRISPRによる遺伝子編集もまた報告されている。より小さなCasタンパク質の最近の発見は、AAVベクターなどの安全性プロファイル及び効率にますます成功を収めたベクターとのこの技術の組み合わせを可能にし、強化した。操作されたTCR配列は、内因性TCR配列を置き換え得るか、又は内因性配列は、そうでなければ不活性化され得る。
【0061】
TCR配列をコードする核酸を、発現及び/又は組み込みのためにベクターに挿入する。多くのそのようなベクトルが利用可能である。ベクター構成要素は、一般に、以下の複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。ベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミドベクター、組み込みベクターなど、例えば、レンチウイルスベクター、アデノウイルス及びAAVベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。
【0062】
発現ベクターは、選択マーカーとも称される選択遺伝子を含有し得る。この遺伝子は、選択的培養培地中で成長した形質転換宿主細胞の生存若しくは成長に必要なタンパク質、又は抗体ベースの検出を可能にする表面マーカーをコードする切断遺伝子をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培地中では生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、若しくはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、(b)栄養要求性欠陥を補完する、又は(c)複合培地から入手できない重要な栄養素を供給する、又は(d)蛍光活性化細胞選別(FACS)若しくは磁気分離を介した単離のための表面抗体ベースの検出を可能にする、タンパク質、例えば、NGFR、EGFR、CD19の切断型をコードする。
【0063】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、シグナル配列のDNAは、ポリペプチドの分泌をシグナル伝達する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合、連続しており、読み取り段階であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続している必要はない。
【0064】
特に指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は、また、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでイントロンを含み得る範囲内でイントロンを含み得る。
【0065】
発現ベクターは、宿主生物によって認識され、構築物コード配列に作動可能に連結されるプロモーターを含む。プロモーターは、それらが作動可能に連結される特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置する非翻訳配列である(一般に、約100~1000bp以内)。そのようなプロモーターは、典型的には、誘導性及び構成性の2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件のいくらかの変化、例えば、栄養素の有無又は温度の変化に応答して、それらの制御下のDNAから増加したレベルの転写を開始するプロモーターである。様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターは、周知である。
【0066】
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鳥痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、鳥肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルスLTR(マウス幹細胞ウイルスなど)、B型肝炎ウイルス、及びサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーターによって、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)若しくは免疫グロブリンプロモーターによって、又は熱ショックプロモーターによって制御され得るが、かかるプロモーターは宿主細胞系と互換性があることを条件とする。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。
【0067】
高等真核生物による転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加し得る。エンハンサーは、長さが通常約10~300bpのDNAのシス作用要素であり、プロモーターに作用して、その転写を増加させる。エンハンサーは、イントロン内、並びにコード配列自体内で、転写単位に対して5’及び3’であることが見出されているため、相対的に配向及び位置に依存しない。現在、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)からの多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら、典型的には、真核生物ウイルスからのエンハンサーを使用する。例えば、複製起点の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、コード配列の5’又は3’の位置で発現ベクターにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0068】
真核生物宿主細胞で使用するための発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。かかる配列は、真核生物又はウイルスDNA若しくはcDNAの5’及び場合によっては3’の非翻訳領域から一般的に入手可能である。上記の構成要素のうちの1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、標準的な技法を用いる。
【0069】
構築物のクローニングに好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は他の真核生物細胞である。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、マウスL細胞(L-M[K-]、ATCC番号CRL-2648)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児性腎臓株(浮遊培養における成長のためにサブクローニングされた293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4)、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞、MRC 5細胞、FS4細胞、及びヒト肝細胞腫(Hep G2)である。
【0070】
T細胞、幹細胞などを含む宿主細胞を、構築物発現のために上述の発現ベクターでトランスフェクトすることができる。細胞は、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された従来の栄養培地中で培養されてもよい。哺乳類宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI 1640(Sigma)、及びダルベッコの修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に好適である。これらの培地のうちのいずれかに、必要に応じて、ホルモン及び/若しくは他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びホスファートなど)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質、微量元素、並びにグルコース又は同等のエネルギー源を補充してもよい。任意の他の必要な補充物も、また、当業者に既知の適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともに以前に使用されているものであり、当業者には明らかである。
【0071】
「相同」又は「同一性」という用語は、2つの高分子間、例えば、2つのDNA分子若しくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子間、又は2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が、同じ単量体サブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置が、アデニンによって占められている場合、それらは、その位置で相同であるか、又は同一である。2つの配列間の相同性は、一致又は相同位置の数の直接関数であり、例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、高分子10サブユニットの長さにおける5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10のうちの9つ)が一致又は相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0072】
「作動可能に連結された」又は「転写制御」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関連性にあるとき、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は、互いに隣接することができ、例えば、必要な場合、2つのタンパク質コード領域を結合するために、同じリーディングフレーム内にある。
【0073】
「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体又は抗体断片の結合特徴に顕著な影響を及ぼさないか、又は変化させないアミノ酸修飾を指す。かかる保存的修飾としては、アミノ酸置換、付加、及び欠失が挙げられる。修飾は、部位指向性変異誘発及びPCR媒介性変異誘発などの当技術分野で既知の標準技法によって、本発明の抗体又は抗体断片に導入され得る。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐状側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本発明のTCR内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変化したTCRは、本明細書に記載の機能的アッセイを使用して試験することができる。
【0074】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。これらの用語は、また、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0075】
「配列同一性」という用語は、ポリペプチド又はDNA配列に関して本明細書で使用される場合、2つの分子間のサブユニット配列同一性を指す。両方の分子におけるサブユニット位置が、同じ単量体サブユニット(例えば、同じアミノ酸残基又はヌクレオチド)によって占められている場合、分子は、その位置で同一である。2つのアミノ酸又は2つのヌクレオチド配列間の類似性は、同一の位置の数の一次関数である。一般に、配列は、最高次の一致が得られるように整列される。必要な場合、同一性は、公開された技法、及びGCSプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Res.12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J.Molecular Biol.215:403,1990)などの広く利用可能なコンピュータプログラムを使用して計算することができる。
【0076】
「由来する」は、その用語が本明細書で使用される場合、第1の分子と第2の分子との間の関係を示す。これは、一般に、第1の分子と第2の分子との間の構造的類似性を指し、第1の分子に対するプロセス又は供給源の制限を暗示する又は含むものではない。
【0077】
本明細書で「タンパク質バリアント」又は「バリアントタンパク質」又は「バリアントポリペプチド」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって野生型タンパク質とは異なるタンパク質を意味する。親ポリペプチドは、天然に存在する又は野生型(WT)のポリペプチドであり得るか、又はWTポリペプチドの修飾バージョンであり得る。バリアントポリペプチドは、ポリペプチド自体、ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。好ましくは、バリアントポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して、少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して、約1~約10個のアミノ酸修飾、好ましくは、約1~約5つのアミノ酸修飾を有する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、又は「前駆体タンパク質」とは、バリアントを生成するようにその後修飾される非修飾ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、野生型(又は天然)ポリペプチド、又は野生型ポリペプチドのバリアント若しくは操作されたバージョンであり得る。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。
【0079】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する及び合成のアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタマート、及びO-ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然に存在するアミノ酸、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合するα-炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムと同じ基本化学構造を有する化合物を指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する化学化合物を指す。
【0080】
本明細書に開示されるアミノ酸修飾には、アミノ酸置換、欠失、及び挿入、特にアミノ酸置換が含まれ得る。バリアントタンパク質は、また、サイトカイン及び/又は受容体の他の位置(例えば、親和性操作に関与する位置以外の位置)での保存的修飾及び置換を含み得る。かかる保存的置換には、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(1978)のDayhoff、及びEMBO J.,8:779-785(1989)のArgosに記載されているものが含まれる。例えば、以下のグループ、グループI:Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr、グループII:Cys、Ser、Tyr、Thr、グループIII:Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe、グループIV:Lys、Arg、His;グループV:Phe、Tyr、Trp、His、及びグループVI:Asp、Gluのうちの1つに属するアミノ酸は、保存的変化を表す。更に、指定されたアミノ酸によるアミノ酸置換は、保存的変化で置き換えられ得る。
【0081】
「単離された」という用語は、その天然環境を実質的に含まない分子を指す。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞又は組織源からの細胞材料又は他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離されたタンパク質が、治療用組成物として投与されるために十分に純粋であるか、又は少なくとも70%~80%(w/w)純粋、より好ましくは少なくとも80%~90%(w/w)純粋、更により好ましくは90~95%純粋、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(w/w)純粋である調製物を指す。「分離された」化合物は、化合物が得られた試料の少なくとも1つの構成要素の少なくとも90%から取り出された化合物を指す。本明細書に記載の任意の化合物は、単離された又は分離された化合物として提供され得る。
【0082】
ライブラリ。本発明のいくつかの実施形態では、通常、CDRループの1つ以上の残基で修飾された異なるTCRのライブラリである、ポリペプチド又はかかるポリペプチドをコードする核酸のライブラリが提供される。コード配列を組み立てる従来の方法を使用することができる。配列の多様性を生成するために、当該技術分野で既知のランダム化、エラープローンPCR、変異原性プライマーなどを使用して、一組のポリヌクレオチドを生成する。ポリヌクレオチドのライブラリは、典型的には、目的の宿主細胞に好適なベクターにライゲーションされる。様々な実施形態では、ライブラリは、ポリペプチドをコードする精製されたポリヌクレオチド組成物として提供され、細胞集団は、哺乳類T細胞であり得るが、これに限定されず、細胞はポリペプチドライブラリを発現するように誘導される。
【0083】
「好適な状態」は、この用語が使用される文脈に依存する意味を有するものとする。すなわち、pMHC複合体へのT細胞受容体の結合と関連して使用される場合、用語は、TCRが同族ペプチドリガンドに結合することを可能にする状態を意味するものとする。この用語が核酸ハイブリダイゼーションに関連して使用される場合、用語は、少なくとも15ヌクレオチド長の核酸が、それに相補的な配列を有する核酸にハイブリダイズすることを可能にする状態を意味するものとする。細胞への薬剤の接触に関連して使用される場合、この用語は、そうすることができる薬剤が細胞に侵入し、意図した機能を実施することを可能にする状態を意味するものとする。一実施形態では、本明細書で使用される場合、「好適な状態」という用語は、生理学的状態を意味する。
【0084】
「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、治療のために評価される及び/又は治療される哺乳動物を指すために本明細書で互換的に使用される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、限定されないが、疾患を有する個体を包含する。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特に、ヒト疾患のための実験室モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラットなども含む。
【0085】
患者に関連しての「試料」という用語は、生体起源の血液及び他の液体試料、生検標本若しくは組織培養物又はそれらに由来する細胞などの固体組織試料、並びにその子孫を包含する。この用語は、また、試薬での処理、洗浄、又は異常細胞などのある特定の細胞集団の富化など、それらの調達後に任意の方法で操作された試料も包含する。定義は、特定の種類の分子、例えば、核酸、ポリペプチドなどについて富化された試料も含む。「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織試料、臓器、骨髄、血液、血漿、血清なども含む。「生体試料」は、患者の異常細胞から得られた試料、例えば、患者の異常細胞から得られるポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞溶解物又は他の細胞抽出物)、並びに患者からの異常細胞を含む試料を含む。患者からの異常細胞を含む生体試料は、非異常細胞を含むこともできる。
【0086】
「診断」という用語は、本明細書では、対象、個体、又は患者における分子又は病理学的状態、疾患若しくは状態の同定を指すために使用される。
【0087】
「予後」という用語は、本明細書では、対象、個体、又は患者における、再発、広がり、及び薬剤耐性を含む、死亡又は疾患進行の可能性の予測を指すために使用される。「予測」という用語は、本明細書では、観察、経験、又は科学的推論に基づいて、対象、個体、又は患者が特定の事象又は臨床転帰を経験する可能性を予測又は推定する行為を指すために使用される。一例では、医師は、患者が生存する可能性を予測しようとし得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」などの用語は、対象、個体、又は患者に対する、又は患者における効果を得る目的で、薬剤を投与すること、又は手順を実施することを指す。この効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に防止するという点で予防的であり得、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患の症状に対する部分的若しくは完全な治癒をもたらすという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおけるがんの治療を含み、(a)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、及び(b)疾患又はその症状を緩和すること、すなわち、疾患又はその症状の後退を引き起こすことを含む。
【0089】
治療するとは、疾患の治療若しくは改善若しくは予防の成功のいかなる兆候をも指し得、これには、症状の軽減、寛解、縮小、あるいは患者に対して疾患状態をより許容可能にすること、変性若しくは減少の速度の遅延、又は変性の最終点を衰弱しにくくすることなどの任意の客観的若しくは主観的パラメータが含まれる。症状の治療又は改善は、医師による検査の結果を含む、客観的又は主観的パラメータに基づき得る。したがって、「治療する」という用語は、疾患又は他の疾患に関連する症状又は状態の発症を予防若しくは遅延させるか、緩和するか、又は阻止若しくは阻害するために、操作された細胞を投与することを含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、又は疾患の副作用の低減、排除、又は予防を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、疾患又は障害を治療又は管理するために十分な治療剤のその量を指す。治療有効量とは、疾患の発症を遅延又は最小限にするために十分な、例えば、がんの成長及び拡散を遅延又は最小限にするために十分な治療剤の量を指すことができる。治療有効量は、また、疾患の治療又は管理において治療的利益を提供する治療剤の量を指す場合がある。更に、本発明の治療剤に関しての治療有効量は、疾患の治療若しくは管理において治療的利益を提供する治療剤単独の、又は他の療法と組み合わせた量を意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「投与レジメン」という用語は、対象に個別に、典型的には、期間で区切られて投与される一連の単位用量(典型的には、2つ以上)を指す。いくつかの実施形態では、所与の治療剤は、1つ以上の用量を含み得る、推奨される投与レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、複数の用量を含み、各用量は、同じ長さの期間によって互いに分離され、いくつかの実施形態では、投与レジメンは、複数の用量を含み、少なくとも2つの異なる期間が個々の用量を分離する。いくつかの実施形態では、投与レジメン内の全ての用量は、同じ単位用量の量である。いくつかの実施形態では、投与レジメン内の異なる用量は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、第1の投薬量の第1の用量、続いて、第1の投薬量とは異なる第2の投薬量の1つ以上の追加の用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、第1の投薬量の第1の用量、続いて、第1の投薬量と同じ第2の投薬量の1つ以上の追加の用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、関連集団にわたって投与されるときに、所望の又は有益な転帰と相関する(すなわち、治療的投与レジメンである)。
【0092】
「との組み合わせ」、「併用療法」、及び「併用生成物」は、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の操作されたタンパク質及び細胞を、追加の療法、例えば、手術、放射線、化学療法などと組み合わせて患者に同時投与することを指す。組み合わせて投与する場合、各構成要素は、同時に、又は異なる時点で任意の順序で順次投与することができる。したがって、各構成要素は、所望の治療効果を提供するために、別々に、しかし時間内に十分に近い間隔で投与することができる。
【0093】
「併用投与」とは、組み合わせが治療効果を有するような時間で、操作されたタンパク質及び細胞、既知の治療剤などの1つ以上の構成要素の投与を意味する。かかる併用投与は、構成要素の同時投与(すなわち、同時に)、事前投与、又は後続投与を伴い得る。当業者であれば、投与の適切なタイミング、順番、及び投与量を決定することに困難はない。
【0094】
「組み合わせて」という用語の使用は、障害を有する対象に予防剤及び/又は治療剤を投与する順序を限定するものではない。第1の予防剤又は治療剤は、障害を有する対象への第2の予防剤又は治療剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)に、それと同時に、又はその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与され得る。
【0095】
化学療法には、Abitrexate(メトトレキサート注射)、Abraxane(パクリタキセル注射)、Adcetris(ブレンツキシマブベドチン注射)、Adriamycin(ドキソルビシン)、Adrucil注射(5-FU(フルオロウラシル))、Afinitor(エベロリムス)、Afinitor Disperz(エベロリムス)、Alimta(PEMET EXED)、Alkeran注射(メルファラン注射)、Alkeran錠(メルファラン)、Aredia(パミドロネート)、Arimidex(アナストロゾール)、Aromasin(エクセメスタン)、Arranon(ネララビン)、Arzerra(オファツムマブ注射)、Avastin(ベバシズマブ)、Bexxar(トシツモマブ)、BiCNU(カルムスチン)、Blenoxane(ブレオマイシン)、Bosulif(ボスチニブ)、Busulfex注射(ブスルファン注射)、Campath(アレムツズマブ)、Camptosar(イリノテカン)、Caprelsa(バンデタニブ)、Casodex(ビカルタミド)、CeeNU(ロムスチン)、CeeNU用量包装(ロムスチン)、Cerubidine(ダウノルビシン)、Clolar(クロファラビン注射)、Cometriq(カボザンチニブ)、Cosmegen(ダクチノマイシン)、CytosarU(シタラビン)、Cytoxan(シトキサン)、Cytoxan注射(シクロホスファミド注射)、Dacogen(デシタビン)、DaunoXome(ダウノルビシン脂質複合体注射)、Decadron(デキサメタゾン)、DepoCyt(シタラビン脂質複合体注射)、Dexamethasone Intensol(デキサメタゾン)、Dexpak Taperpak(デキサメタゾン)、Docefrez(ドセタキセル)、Doxil(ドキソルビシン脂質複合体注射)、Droxia(ヒドロキシ尿素)、DTIC(ダカルバジン)、Eligard(リュープロリド)、Ellence(Ellence(エピルビシン))、Eloxatin(Eloxatin(オキサリプラチン))、Elspar(アスパラギナーゼ)、Emcyt(エストラムスティン)、Erbitux(セツキシマブ)、Erivedge(ビスモデギブ)、Erwinaze(アスパラギナーゼErwinia chrysanthemi)、Ethyol(アミフォスチン)、Etopophos(エトポシド注射)、Eulexin(フルタミド)、Fareston(トレミフェン)、Faslodex(フルベストラント)、Femara(レトロゾール)、Firmagon(デガレリックス注射)、Fludara(フルダラビン)、Folex(メトトレキサート注射)、Folotyn(プララトレキサート注射)、FUDR(FUDR(フロクスウリジン))、Gemzar(ゲムシタビン)、Gilotrif(アファチニブ)、Gleevec(メシル酸イマチニブ)、Gliadel Wafer(カルムスチンウェハー)、Halaven(エリブリン注射)、Herceptin(トラスツズマブ)、Hexalen(アルトレタミン)、Hycamtin(トポテカン)、Hycamtin(トポテカン)、Hydrea(ヒドロキシ尿素)、lclusig(ポナチニブ)、Idamycin PFS(イダルビシン)、Ifex(イホスファミド)、Inlyta(アキシチニブ)、Intron A alfab(インターフェロンアルファ-2a)、Iressa(ゲフィチニブ)、Istodax(ロミデプシン注射)、Ixempra(イキサベピロン注射)、Jakafi(ルクソリチニブ)、Jevtana(カバジタキセル注射)、Kadcyla(アドトラスツズマブエムタンシン)、Kyprolis(カルフィルゾミブ)、Leukeran(クロラムブシル)、Leukine(サルグラモスチム)、Leustatin(クラドリビン)、Lupron(リュープロリド)、Lupron Depot(リュープロリド)、Lupron DepotPED(リュープロリド)、Lysodren(ミトタン)、Marqibo Kit(ビンクリスチン Lipid Complex注射)、Matulane(プロカルバジン)、Megace(メゲストロール)、Mekinist(トラメチニブ)、Mesnex(メスナ)、Mesnex(メスナ注射)、Metastron(ストロンチウム-89クロリド)、Mexate(メトトレキサート注射)、Mustargen(メクロレタミン)、Mutamycin(マイトマイシン)、Myleran(ブスルファン)、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Navelbine(ビノレルビン)、Neosar注射(シクロホスファミド注射)、Neulasta(フィルグラスチム)、Neulasta(ペグフィルグラスチム)、Neupogen(フィルグラスチム)、Nexavar(ソラフェニブ)、Nilandron(Nilandron(ニルタミド))、Nipent(ペントスタチン)、Nolvadex(タモキシフェン)、Novantrone(ミトキサントロン)、Oncaspar(ペグアスパラガーゼ)、Oncovin(ビンクリスチン)、Ontak(デニロイキンジフチトクス)、Onxol(パクリタキセル注射)、Panretin(アリトレチノイン)、Paraplatin(カルボプラチン)、Perjeta(ペルツズマブ注射)、Platinol(シスプラチン)、Platinol(シスプラチン注射)、PlatinolAQ(シスプラチン)、PlatinolAQ(シスプラチン注射)、Pomalyst(ポマリドミド)、Prednisone Intensol(プレドニゾン)、Proleukin(アルデスロイキン)、Purinethol(メルカプトプリン)、Reclast(ゾレドロン酸)、Revlimid(レナリドマイド)、Rheumatrex(メトトレキサート)、Rituxan(リツキシマブ)、RoferonA alfaa(インターフェロンアルファ-2a)、Rubex(ドキソルビシン)、Sandostatin(オクトレオチド)、Sandostatin LAR Depot(オクトレオチド)、Soltamox(タモキシフェン)、Sprycel(ダサチニブ)、Sterapred(プレドニゾン)、Sterapred DS(プレドニゾン)、Stivarga(レゴラフェニブ)、Supprelin LA(ヒストレリンインプラント)、Sutent(スニチニブ)、Sylatron(ペグインターフェロンアルファ-2b注射(Sylatron))、Synribo(オマセタキシン注射)、Tabloid(チオグアニン)、Taflinar(ダブラフェニブ)、Tarceva(エルロチニブ)、Targretin Capsules(ベキサロテン)、Tasigna(ダカルバジン)、Taxol(パクリタキセル注射)、Taxotere(ドセタキセル)、Temodar(テモゾロミド)、Temodar(テモゾロミド注射)、Tepadina(チオテパ)、Thalomid(サリドマイド)、TheraCys BCG(BCG)、Thioplex(チオテパ)、TICE BCG(BCG)、Toposar(エトポシド注射)、Torisel(テムシロリムス)、Treanda(塩酸ベンダムスチン)、Trelstar(トリプトレリン注射)、Trexall(メトトレキサート)、Trisenox(三酸化ヒ素)、Tykerb(ラパチニブ)、Valstar(バルルビシン膀胱内)、Vantas(ヒストレリンインプラント)、Vectibix(パニツムマブ)、Velban(ビンブラスチン)、Velcade(ボルテゾミブ)、Vepesid(エトポシド)、Vepesid(エトポシド注射)、Vesanoid(トレチノイン)、Vidaza(アザシチジン)、Vincasar PFS(ビンクリスチン)、Vincrex(ビンクリスチン)、Votrient(パゾパニブ)、Vumon(テニポシド)、Wellcovorin IV(ロイコボリン注射)、Xalkori(クリゾチニブ)、Xeloda(カペシタビン)、Xtandi(エンザルタミド)、Yervoy(イピリムマブ注射)、Zaltrap(Ziv-アフリベルセプト注射)、Zanosar(ストレプトゾシン)、Zelboraf(ベムラフェニブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Zoladex(ゴセレリン)、Zolinza(ボリノスタット)、Zometa(ゾレドロン酸)、Zortress(エベロリムス)、Zytiga(アビラテロン)、ニモツズマブ、並びにPD-1を標的とするニボルマブ、ペンブロリズマブ/MK-3475、ピジリズマブ及びAMP-224などの免疫チェックポイント阻害剤、並びにPD-L1を標的とするBMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A及びMSB0010718C、並びにイピリムマブなどのCTLA-4を標的とするものが含まれ得る。
【0096】
放射線療法とは、病気を治療するために放射線、通常はX線の使用を意味する。X線は、1895年に発見され、それ以来放射線は、診断及び調査(X線)及び治療(放射線療法)のための医学において使用されてきた。放射線療法は、X線、コバルト照射、電子、及びより稀に陽子などの他の粒子を使用して、体外から外部放射線療法として行われ得る。放射性金属又は液体(同位体)を使用して、がんを治療する内部放射線療法として、体内からも使用することができる。
【0097】
操作されたT細胞受容体及び細胞組成物
操作されたTCR配列を含むポリペプチド構築物及び組成物が提供される。いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、MAGE-A3に特異的であり、配列番号1のアルファ鎖(TCRα)又はその成熟タンパク質、すなわち、残基1~18のシグナル配列を欠いており、D28、A30、I51、Q52、S53、及びS54(成熟タンパク質配列に対する番号付け)から選択される1つ以上の残基で標的活性化効力を増強するための少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、D28H/N/G/K/S、A30H/S/E/N/G、I51V、Q52R/H、S53P、S54Y/N/R/E/D/Hから選択される。いくつかの実施形態では、TCRαは、配列番号2~配列番号15から選択される配列、又はそれに由来するバリアントを有する。バリアントは、配列番号2~15の参照配列に対する少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性を含み得る。かかる実施形態のいずれかでは、ベータ鎖(TCRβ)は、配列番号16に示される配列を有し得る。MAGE-A3操作されたTCRは、ヒトタイチン配列に対して顕著な親和性を有しない。
【0098】
いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、TCR55アルファ鎖(配列番号17)及びTCR55ベータ鎖(配列番号18)のアミノ酸修飾に基づいて、HLA-B35によって提示されるHIVペプチドに特異的である。アミノ酸修飾としては、B35-HIVによってTCR55を活性化させるための配列番号17 A98D、A98E、A98F、A98Q、A98Y、A98Hが挙げられるが、これらに限定されない。TCR55ベータ鎖(配列番号18)におけるアミノ酸修飾としては、B35-HIVによってTCR55を活性化させるためのA50D、A50E、A50F、A50H、A50N、A50Q、A50S、A50T、A50Yが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
操作されたTCR、例えば、MAGE-A3に特異的なTCRは、約0.5~約100μMの3D log K(μM)を有し得、約1~約100μM、約1~約50μMであり得る。「親和性」は、結合の強さを指し、結合親和性の増加は、より低いKと相関する。一実施形態では、親和性は、例えば、Biacoreシステムによって使用される表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。1つの分子の別の分子に対する親和性は、相互作用の結合速度、例えば、25℃で測定することによって決定される。操作されたTCRは、抗原に応答するT細胞増殖、抗原に応答するIL-2の放出、抗原に応答するT細胞上のCD69の上方調節などを含むが、これらに限定されない、任意の好都合なアッセイによって測定される標的活性化効力のために望ましく選択される。
【0100】
また、操作されたTCR配列及びその構築物をコードする単離された核酸、核酸を含むベクター及び宿主細胞、並びにポリペプチド構築物の産生のための組換え技法も提供される。目的の核酸は、提供されるポリペプチド配列と少なくとも約80%同一、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%同一であるポリペプチドをコードする。ポリヌクレオチド配列は、提供される配列のいずれか又は全てをコードし得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、操作されたTCR配列又は操作されたTCR構築物をコードするコード配列を含むベクターが提供され、コード配列は、所望の細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結されているか、又は例えば、CRISPRによるゲノム挿入に好適なベクターにおいて提供される。様々なベクター、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、ミニサークルベクターが、当該技術分野において既知であり、この目的のために使用することができ、これらのベクターは、標的細胞ゲノムに組み込むことができるか、又はエピソームにより維持することができる。
【0102】
本発明の別の実施形態では、単離されたポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む製造物品が提供される。製造物品は、容器及びラベルを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、例えば、がんを治療するための治療組成物であり得るポリペプチド又はポリヌクレオチド組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器上の、又は容器に関連するラベルは、組成物が選択された状態を治療するために使用されることを示す。更なる容器は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液又はデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を保持し得る製造物品とともに提供され得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用説明書を伴うパッケージインサートを含む、商業的及び使用者の立場から望ましい他の材料を更に含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、細胞組成物が提供される。細胞は、療法のための単位用量で提供され得、意図されたレシピエントに関して同種異系、自己などであり得る。方法は、生体試料から単離され得るか、又はインビトロで前駆細胞源に由来し得る、所望の細胞、例えば、T細胞、造血幹細胞などを得るステップを含み得る。細胞は、操作されたTCRをコードする配列を含むベクターによって形質導入又はトランスフェクトされ、このステップは、任意の好適な培養培地において実施され得る。例えば、細胞は、患者から収集され、エクスビボで修飾され、対象に再導入され得る。対象から収集された細胞は、例えば、末梢血(例えば、対象の末梢血)、生検(例えば、対象からの生検)などを含む任意の便利で適切な供給源から収集され得る。
【0104】
自家細胞の使用が望ましくない場合、例えば、患者が修飾のためのT細胞を十分に有しない場合、自家細胞を拡大する時間が不十分である場合などに、同種異系細胞、例えば、健常なドナーからのT細胞又は幹細胞が使用され得る。かかる同種異系細胞は、GVHDを低減するために、宿主対移植片応答を低減するなどのために、遺伝子修飾することができる。
【0105】
操作された細胞は、治療的使用、例えばヒト治療に好適な薬学的組成物中に提供され得る。かかる細胞を含む治療製剤は、水溶液の形態で、凍結されるか、又は生理学的に許容される担体、賦形剤若しくは安定剤(Remington ’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))とともに投与するために調製され得る。細胞は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化、投薬、及び投与される。この文脈で考慮される因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医師に既知の他の因子が含まれる。
【0106】
エフェクターT細胞は、目的の抗原を発現する標的細胞に対して細胞溶解活性を有する自家又は同種異系の免疫細胞を含む。エフェクター細胞は、T細胞抗原受容体による認識を通して細胞溶解活性を有する。「T細胞」という用語は、CD3及び/又はT細胞抗原受容体の発現によって特徴付けられ得る哺乳類免疫エフェクター細胞を指す。
【0107】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、治療を必要とする個体から単離された免疫細胞、例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の複雑な混合物を含む。例えば、Yang and Rosenberg(2016)Adv Immunol.130:279-94,“Adoptive T Cell Therapy for Cancer;Feldman et al(2015)Semin Oncol.42(4):626-39 “Adoptive Cell Therapy-Tumor-Infiltrating Lymphocytes,T-Cell Receptors,and Chimeric Antigen Receptors”、Clinical Trial NCT01174121,“Immunotherapy Using Tumor Infiltrating Lymphocytes for Patients With Metastatic Cancer”、Tran et al.(2014)Science 344(6184)641-645,“Cancer immunotherapy based on mutation-specific CD4+T cells in a patient with epithelial cancer”を参照されたい。
【0108】
他の実施形態では、操作されたT細胞は、治療される個体に関して同種異系である。レビューについては、Graham et al.(2018)Cells.7(10)E155を参照されたい。いくつかの実施形態では、同種遺伝子操作T細胞は、完全にマッチングされたHLAである。しかしながら、全ての患者が完全に一致するドナーを有するわけではなく、HLAタイプとは独立した全ての患者に好適な細胞製品が代替手段を提供する。普遍的な「既製の」T細胞産物は、採取及び製造の均一性に利点を提供する。
【0109】
T細胞は、遺伝子修飾され得る。例えば、内因性TCRαβ受容体は、異なる遺伝子編集技法によってノックアウトすることができる。TCRαβはヘテロ二量体であり、アルファ鎖及びベータ鎖の両方が発現するために存在する必要がある。アルファ鎖のための単一の遺伝子コード(TRAC)が存在する一方で、ベータ鎖のための遺伝子コードは2つ存在するため、TRAC遺伝子座KOは、この目的のために欠失されている。この欠失を達成するために、例えば、CRISPR/Cas9、メガヌクレアーゼ、操作されたI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼなどのいくつかの異なるアプローチが使用されている。
【0110】
同種異系T細胞は、リンパ枯渇の強化と組み合わせて投与されて、例えば、アレムツズマブ(モノクローナル抗CD52)、プリン類似体などの投与によって、操作されたT細胞が、宿主免疫回復前に拡大し、悪性細胞を除去することを可能にしてもよい。同種異系T細胞は、アレムツズマブに対する耐性のために修飾され得、現在臨床試験中である。遺伝子編集は、また、例えば、β2-ミクログロブリンの欠失によって、CAR-T細胞上のHLAクラスI分子の発現を防止するためにも使用されている(NCT03166878を参照されたい)。
【0111】
対象又はドナーから収集した上述の操作のためのT細胞は、所望の細胞を富化する技法によって細胞の混合物から分離され得るか、又は分離することなく操作され、培養され得る。適切な溶液が、分散又は懸濁に使用され得る。かかる溶液は、概して、低濃度、概して5~25mMの許容可能な緩衝液と併せて、好都合に、ウシ胎仔血清又は他の天然に存在する因子を補充された、平衡塩溶液、例えば、標準の生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩溶液などである。好都合な緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが挙げられる。
【0112】
細胞は、任意の好適な手段、通常は非経口的手段によって投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内(ボーラス又はゆっくりとした点滴)、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、又は皮下投与が挙げられる。
【0113】
操作された細胞は、治療的使用、例えばヒト治療に好適な薬学的組成物中に提供され得る。かかる細胞を含む治療製剤は、水溶液の形態で、凍結されるか、又は生理学的に許容される担体、賦形剤若しくは安定剤(Remington ’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))とともに投与するために調製され得る。細胞は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化、投薬、及び投与される。この文脈で考慮される因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医師に既知の他の因子が含まれる。
【0114】
治療方法
操作されたT細胞は、任意の生理学的に許容される培地、通常は血管内で対象に注入され得るが、それらは、また、細胞が成長のための適切な部位を見出すことができる任意の他の好都合な部位に導入され得る。通常、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×10個の細胞/kg、少なくとも1×1010個の細胞/kg以上が投与され、通常、収集中に得られるT細胞の数によって制限される。
【0115】
例えば、本発明の実施における使用のための細胞の投与の典型的な範囲は、治療の経過ごとに、対象の体重1kg当たり約1×10~5×10個の生存細胞の範囲である。したがって、体重に関して調整すると、ヒト対象における生存細胞の投与の典型的な範囲は、治療経過ごとに、およそ1×10~およそ1×1013個の生存細胞、代替的に、およそ5×10~およそ5×1012個の生存細胞、代替的に、およそ1×10~およそ1×1012個の生存細胞、代替的に、およそ5×10~およそ1×1012個の生存細胞、代替的に、およそ1×10~およそ1×1012個の生存細胞、代替的に、およそ5×10~およそ1×1012個の生存細胞、代替的に、およそ1×10~およそ1×1012個の生存細胞の範囲である。一実施形態では、細胞の用量は、治療経過ごとに2.5~5×10個の生存細胞の範囲内である。
【0116】
治療の経過は、単回投与又は一定期間にわたる複数回投与であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、28、30、60、90、120、又は180日間にわたって投与される2つ以上の分割用量で投与される。このような分割投薬プロトコルで投与される操作された細胞の量は、各投与において同じであっても、異なるレベルで提供されてもよい。時間周期にわたる複数日間の投与プロトコルは、上記で考察した治療の副作用及びそれらの調節を含む治療に対する対象の応答を考慮して、細胞の投与を監視する当業者(例えば、医師)によって提供され得る。
【0117】
一実施形態では、本発明は、養子T細胞療法(例えば、がん)による治療に修正可能な疾患、障害、又は状態に罹患している対象を、有効量の本明細書に開示される操作された細胞の投与によって治療する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、異常な細胞集団(例えば、腫瘍)の存在に関連する疾患、障害に罹患している哺乳類対象の治療方法を提供し、該細胞集団は、1つ以上の表面抗原(例えば、腫瘍抗原)の発現を特徴とし、方法は、(a)個体からT細胞を含む生体試料を得るステップと、(b)T細胞の存在のために生体試料を富化するステップと、(c)T細胞を、操作されたTCRをコードする核酸配列を含む1つ以上の発現ベクターでトランスフェクトするステップと、(d)TCR発現T細胞の集団をエクスビボで拡大するステップと、(e)薬学的に有効な量のTCR発現T細胞を哺乳動物に投与するステップとを含む。一実施形態では、前述した方法は、T細胞療法過程の開始前の哺乳動物のリンパ枯渇又は免疫抑制と関連付けられる。別の実施形態では、前述した方法は、哺乳類のリンパ枯渇及び/又は免疫抑制の不在下で実施される。
【0118】
治療的使用のための好ましい製剤は、意図される投与様式及び治療的用途に依存する。組成物は、また、所望の製剤に応じて、薬学的に許容される非毒性担体又は希釈剤を含み得、これらは、動物又はヒトの投与のための薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。加えて、薬学的組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。
【0119】
更にいくつかの他の実施形態では、薬学的組成物は、また、タンパク質などの大きな、ゆっくりと代謝された巨大分子、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(ラテックス官能化Sepharose(商標)、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び脂質凝集体(油滴又はリポソームなど)を含むことができる。
【0120】
許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、ホスファート、シトラート及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(例えば、オクタデシイジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸、単糖、二糖、及びグルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0121】
インビボ投与に使用される製剤は、典型的には滅菌である。本発明の組成物の滅菌は、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成され得る。
【0122】
典型的には、組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注射剤として調製され得るが、注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態も調製され得る。調製物は、また、上記で考察したように、増強されたアジュバント効果のために、ポリラクチド、ポリグリコリド若しくはコポリマーなどのリポソーム又は微粒子中に乳化又は封入することができる。Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本発明の薬剤は、活性成分の持続的又は脈動的放出を可能にするような様式で製剤化することができるデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することができる。薬学的組成物は、一般に、滅菌で、実質的に等張であり、U.S.Food and Drug Administrationの全てのGood Manufacturing Practice(GMP)規則に完全に準拠しているように製剤化される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物、方法、及びキットは、T細胞媒介性免疫応答を増強するために使用される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、標的細胞、例えば、がん細胞、感染細胞、自己免疫疾患に関与する免疫細胞などを枯渇又は調節することが望ましい状態に向けられる。いくつかの実施形態では、状態は、がんである。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、細胞の異常な、制御されていない成長によって引き起こされる様々な状態を指す。「がん細胞」と称されるがんを引き起こすことができる細胞は、制御不能な増殖、不死性、転移能、速い成長及び増殖速度、並びに/又はある特定の典型的な形態学的特徴などの特徴のある特性を有する。がんは、限定されないが、腫瘍の存在を検出すること(例えば、臨床又は放射線手段により)、腫瘍内又は別の生体試料から(例えば、組織生検から)の細胞を調べること、がんを示す血液マーカーを測定すること、及びがんを示す遺伝子型を検出することを含む、いくつかの方法のうちのいずれかで検出され得る。しかしながら、上記の検出方法のうちの1つ以上における陰性結果は、必ずしもがんの不在を示すわけではなく、例えば、がん治療に対して完全な応答を示した患者は、その後の再発によって証明されるように、依然としてがんを有し得る。
【0124】
スクリーニングの方法
高いシグナル伝達活性化及び低いオフターゲット交差反応性のためのTCR配列を変異誘発し選択するための組成物及び方法が提供される。かかるスクリーニング方法では、最適化のために、TCR配列上の所定のアミノ酸残基におけるアミノ酸変動を含むライブラリを生成する。変異誘発のために選択される残基は、通常、TCRのCDR領域のうちの1つ以上内にある。TCRα配列は、変異誘発され、非変異誘発TCRβと対合され得るか、又はTCRα配列は、変異誘発され、非変異誘発TCRβと対合され得る。ライブラリは、発現のために哺乳類細胞(哺乳類T細胞株を含む)に導入される。細胞は、最初に、同族pMHCへの低親和性結合、例えば、標識pMHC四量体、多量体などへの結合、及びフローサイトメトリーなどによる選別によって、例えば、約0.1~約100μMの3D log K(μM)での低親和性結合のために選択される。
【0125】
例えば、MHCは、例えば、フローサイトメトリー、質量サイトメトリーなどのために、検出可能な標識を有する試薬に多量体化され得る。例えば、FACS選別を使用して、TCRに結合するペプチドリガンドを有する細胞の濃度を増加させることができる。技法としては、蛍光活性化セルソーターが挙げられ、これは、複数のカラーチャネル、低角度及び鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなどの様々な程度の洗練度(sophistication)を有することができる。
【0126】
低親和性TCR配列を、抗原に応答してT細胞を活性化する能力についてスクリーニングする。最初のスクリーニングがT細胞において行われた場合、T細胞は、直接スクリーニングされてもよく、代替的に、低親和性結合TCRの配列が、活性化スクリーニングのためにT細胞に導入される。低抗原親和性を有するTCRを発現するT細胞の集団は、抗原源、例えば、同族抗原を発現する標的細胞、pMHC基質、抗原性ペプチドでパルスされた抗原提示細胞などとともに、T細胞を活性化するために十分な期間インキュベートされる。T細胞は、例えば、増殖、IL-2放出、CD69上方調節などにより、高レベルの活性化のために選択される。好都合に、CD69の上方調節は、抗体染色及びフローサイトメトリーによって選択される。かかる選択は、上位20%、上位10%、上位5%、上位1%の細胞が選択される相対値に基づいてもよい。選択された集団が所望のレベルの親和性及び活性化を有するまで、選択ラウンドが実施される。通常は、少なくとも3ラウンド、より通常は少なくとも4ラウンドの選択が実施される。得られた操作されたTCRは、低オフターゲット交差反応性及び高オンターゲット活性化について検証され得る。
【0127】
最後の選択ラウンドの後、ポリヌクレオチドは選択された宿主細胞から単離され、選択されたTCRの配列は、通常、ハイスループット配列決定によって決定される。所望の親和性は、約10-6M~約10-9MのKにあり得る。
【0128】
ペプチド配列結果及びデータベース検索結果は、それらの使用を容易にするために、様々な媒体で提供され得る。「媒体」は、本発明の発現レパートリー情報を含む製造物を指す。本発明のデータベースは、コンピュータ可読媒体、例えば、コンピュータによって直接読み取り、アクセスすることができる任意の媒体に記録され得る。かかる媒体としては、限定されないが、磁気ディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、CD-ROMなどの光学記憶媒体、RAM及びROMなどの電気記憶媒体、並びに磁気/光学記憶媒体などのこれらのカテゴリのハイブリッドが挙げられる。当業者は、現在知られているコンピュータ可読媒体のいずれかを使用して、本データベース情報の記録を含む製造物を作成する方法を容易に理解することができる。「記録された」とは、当該技術分野で既知である任意のかかる方法を使用して、コンピュータ可読媒体に情報を記憶するためのプロセスを指す。記憶された情報にアクセスするために使用される手段に基づいて、任意の好都合なデータ記憶構造が選択され得る。様々なデータプロセッサプログラム及びフォーマット、例えば、ワードプロセッシングテキストファイル、データベースフォーマットなどを、記憶に使用することができる。
【0129】
本明細書で使用される場合、「コンピュータベースのシステム」は、本発明の情報を分析するために使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ記憶手段を指す。本発明のコンピュータベースのシステムの最小ハードウェアは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶手段を備える。当業者は、現在利用可能なコンピュータベースのシステムのいずれか1つが本発明での使用に好適であることを容易に理解することができる。データ記憶手段は、上述の現在の情報の記録を含む任意の製造物を含み得るか、又はかかる製造物にアクセスすることができるメモリアクセス手段を含み得る。
【0130】
入力及び出力手段のための様々な構造フォーマットを使用して、本発明のコンピュータベースのシステムにおいて情報を入力及び出力することができる。かかる提示は、当業者に類似性のランク付けを提供し、試験発現レパートリーに含まれる類似性の程度を同定する。
【0131】
実験
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0132】
実施例1
TCRライブラリを、ランダム化残基を有するdsDNAとして合成した。ライブラリを、ギブソンアセンブリによってレンチウイルスベクターにクローニングした。組換えレンチウイルスベクターのライブラリを使用して、SKW-3 T細胞株に感染するレンチウイルスのライブラリを産生した。SKW-3 T細胞上のTCRライブラリの表示を、抗TCR(クローンIP26)染色によって検出した。T細胞ライブラリを、10μMの抗原ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを、図1に示される概略図である、更なるラウンドの選別又は分析のために選別した。
【0133】
ラウンド0において、T細胞ライブラリ又はWT TCRトランスフェクタントを、抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。WT TCRトランスフェクタントと比較して類似のレベルの抗CD69及び四量体染色を有するT細胞ライブラリクローンを選別して、任意の高親和性又は自己応答性クローンを除去した。その後、T細胞ライブラリを、10μMの抗原ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを抗CD69-APC及び特異的pMHC四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ラウンド2と同じ選別手順を更に2~3ラウンド繰り返して、ある特定の変異体を更に富化した。
【0134】
TCR55ライブラリの設計。B35-HIV-TCR55(PDB ID:6BJ3)の構造に基づいて、TCR55アルファ鎖上の残基(Ser28、Lys69、Ala98)を選択し、55aライブラリ(A)としてVRWコドンにランダム化した。TCR55bベータ鎖上の残基CDR1及びCDR2(Asn28、Ser31、Ala50及びSer51)を選択し、55b12ライブラリ(B)としてVRWコドンにランダム化した。TCR55bベータ鎖上の残基CDR3(Lys71、Thr95及びLeu100)を選択し、55b3ライブラリとしてVRWコドンにランダム化した(C)。
【0135】
TCR55ライブラリを、5ラウンドの選択のために選別した。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-B35-HIV四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、TCR55 WTトランスフェクタントの抗CD69及びB35-HIV四量体染色に基づいている。
【0136】
TCR55a-A98Hは、B35-HIVによって活性化され得るキャッチボンド操作されたTCRである。図5に示すように、TCR55 WT、TCR55a-A98H、TCR55a-S28G、又はTCR55a-S28G A98H T細胞トランスフェクタントを、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞と14時間共培養し、抗CD69で染色した。実験を、フローサイトメトリーによって分析した。固定化されたB35-HIVと流動したTCR55a-A98Hタンパク質との間の3D結合親和性を測定するための表面プラズモン共鳴(SPR)実験。B35-HIVタンパク質とTCR55 WT又はTCR55a-A98H T細胞トランスフェクタントとの間の結合寿命を測定するための生体膜力プローブ(BFP)実験。
【0137】
図6に示すように、TCR55a-Ala98は、キャッチボンド操作のホットスポットである。D、E、F、Q、Y、及びHへのTCR55a-A98変異をT細胞トランスフェクタントとして作製し、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞により14時間刺激し、抗CD69で染色した。実験を、フローサイトメトリーによって分析した。B.C、K、N、R、S、T及びWへのTCR55a-A98変異をT細胞トランスフェクタントとして作製し、滴定したHIVペプチドでパルスしたKG-1細胞により刺激した。分析はAと同じであった。C.刺激性TCR55a-A98変異体のEmaxと3D結合親和性(K)との間の相関関係。D.刺激性TCR55a-A98変異体のEC50と3D Kとの間の相関関係。E.B35-HIVタンパク質と相互作用するTCR55a-A98H、TCR55a-A98E及びTCR55a-A98Q T細胞トランスフェクタントの結合寿命のBFP測定。
【0138】
図7は、TCR55アルファ鎖(配列番号17)及びTCR55ベータ鎖(配列番号18)のタンパク質配列を示す。A.TCR55アルファ鎖におけるハイライト及び下線付きAは、D、E、F、Q、Y、及びHに変異させて、B35-HIVによってTCR55を活性化させることができるAla98ホットスポットである。B.TCR55ベータ鎖におけるハイライト及び下線付きAは、D、E、F、H、N、Q、S、T、及びYに変異させて、B35-HIVによってTCR55を活性化させることができるAla50ホットスポットである。
【0139】
HLA-A1-MAGEA3-MAG-IC3(PDB ID:5BRZ)の構造に基づいて、図8に示される、TCRアルファ鎖上の残基(Asp28、Ala30、Ser54、及びGln52)を選択し、aライブラリ(A)としてVRWコドンにランダム化し、TCRベータ鎖上の残基(Thr54、Met98、及びAsp100)を選択し、bライブラリ(B)としてVRWコドンにランダム化した。
【0140】
MAGEライブラリを選択した。各ラウンドにおいて、T細胞ライブラリを、10μMのMAGEA3ペプチドでパルスした抗原提示細胞と14時間共培養し、T細胞ライブラリを、抗CD69-APC及びHLA-A1-MAGEA3四量体で染色した。高レベルの抗CD69染色及び低レベルの四量体染色を有する任意のクローンを選別した。ゲーティングは、MAGEA3 WT TCRトランスフェクタントの抗CD69及びHLA-A1-MAGEA3四量体染色に基づく。
【0141】
複数のTCR変異体が、MAGEA3腫瘍抗原によって活性化されることが同定された。8つの高効力変異体T細胞を、滴定したMAGEA3ペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。図10に示される、T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。5つの中効力変異体T細胞を、滴定したMAGEA3ペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。8つの高効力変異体T細胞を、滴定したタイチンペプチドでパルスした293T-HLA-A1細胞と14時間共培養した。T細胞を、抗CD69で染色し、フローサイトメトリーで分析した。
【0142】
図11は、A3A TCRと比較して高い効力であるがより低い親和性を有するいくつかのMAGE TCR変異体の同定を示す。A.WT TCR、A3A TCR、8つの高効力変異体及び5つの中効力変異体のEmaxとHLA-A1-MAGEA3四量体染色陽性パーセンテージとの間の相関関係。B.WT、A3A、又は6つの他の選択されたTCR変異体に結合する固定化されたHLA-A1-MAGEA3のEmaxと3D親和性(3D K)との間の相関関係。C.WT、A3A、又は6つの他の選択されたTCR変異体に結合する固定化されたHLA-A1-MAGEA3のEC50と3D Kとの間の相関関係。
【0143】
図13。MAGEA3 WT TCRアルファ鎖(配列番号1)及びベータ鎖(配列番号16)のタンパク質配列。全ての変異体は、TCRアルファ鎖にのみ変異体を有する。A.MAGEA3 WT TCRアルファ鎖タンパク質配列。TCRアルファ鎖におけるハイライト及び下線付きの残基は、Asp28、Ala30、Ile51、Gln52、Ser53、及びSer54である。MAGEA3 WT TCRベータ鎖タンパク質配列。
【0144】
図14には、全てのMAGE TCR変異体、配列番号1~16の配列が示される。全ての変異体は、Asp28、Ala30、Ile51、Gln52、Ser53及びSer54のTCRアルファ鎖残基にのみ変異を有する。各変異体の特定の変異残基をここに列挙する。
【0145】
材料及び方法
細胞株。別段の定めがない限り、細胞株を、5%のCOで37℃の加湿インキュベーターに保持した。初代ヒトT細胞を、RPMI(ThermoFisher)、10%の熱不活性化FCS、2%の熱不活性化ヒトAB血清、100U/mlのペニシリンG、100ug/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン中で培養した。IL-2(Peprotech)を添加して、100U/mlの最終濃度にした。血液試料で行われた作業は、スタンフォード機関審査委員会の規則及び規制に従って実施された。
【0146】
T細胞株を、5mMのHEPES pH8.0(ThermoFisher)及び50U/mlのペニシリン及びストレプトマイシン(ThermoFisher)を補充した10%のFBSを補充したRPMI+グルタマックス(glutamax)(Invitrogen)中で培養した。KG-1細胞は、急性骨髄性白血病を有する雄由来のHLA-B35*01発現細胞である。KG-1細胞を抗原提示細胞として使用し、IMDM(ThermoFisher)+10%のFBS及び50U/mlのペニシリン及びストレプトマイシン(ThermoFisher)中で培養した。
【0147】
四量体富化及びT細胞クローニング。四量体富化細胞は、BD Ariaセルソーターを用いて、100μlの培地(RPMI、10%の熱不活性化FCS、2%の熱不活性化ヒトAB血清、100U/mlのペニシリンG、100ug/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン)を含有する丸底96ウェルプレートに選別した。セシウム137照射器中で4000ラドで照射した2~3つのランダムなHLAバフィーコートからのPBMCからフィーダー細胞を調製した。JY細胞(Sigma-Aldrich)に12000ラドを照射した。75,000個のPBMC、7,500個のJY細胞、及び160,000個の抗CD3/抗CD28ビーズ(Dynal /Invitrogen)を含有する100μlを、選別後に各ウェルに添加した。IL-2(Peprotech)を添加して、100U/mlの最終濃度にした。細胞を、5%のCOで37℃の加湿インキュベーターに保持した。必要に応じて、IL-2及び培地を交換した。
【0148】
TCRのレンチウイルス形質導入。TCRα鎖及びβ鎖を別々にレンチウイルスベクターにクローニングした。プラスミドDNA配列の完全性を、自動蛍光ジデオキシ(Sanger)配列決定(Sequetech)により検証した。1×10個のPhoenix(293)細胞を、6ウェルプレート中の3.5mlのDMEM完全培地(10%のFBS、10mMのHEPES、Pen-strep、L-グルタメート)にプレーティングした。低温バイアル(Fisher)中で182μLの未補充DMEM(Thermo Fisher)を、18μLのFuGENE(Promega)と混合し、室温で5分間インキュベートした。TCRα、TCRβ、又はCD3ベクターのいずれかからの5.5mgのDNAを、1.1mgのpCL-10A(Novus Biolgicals)と混合し、DMEM-FuGENE混合物に添加し、室温で30分間インキュベートした。TCRα、TCRβ、又はCD3コードプラスミドのトランスフェクション混合物を、Phoenix細胞の別個のウェルに添加し、37℃で一晩放置した。培地を翌日に交換し、32℃のインキュベーターに移した。翌朝、上清を採取し、収集し、新鮮な完全DMEMと交換した。上清を4℃で保持した。翌日、上清を採取し、収集し、合わせた(TCRα、TCRβ、及びCD3)。ウイルスを含有する上清を0.45μmフィルタを通して濾過し、総体積が0.5~1mlに達するまで100kDaスピンフィルタ(Amicon)を使用して濃縮した。濃縮したウイルスを、100kDAフィルタを使用して完全RPMI中に緩衝液交換し、再び0.5~1mlに濃縮した。濃縮したウイルスを12のウェルプレート中の2×10個のいずれかの細胞に添加した。細胞及びウイルスを含有するプレートを2500rpmで32℃で2時間回転させた。遠心分離後、プレートを37℃のインキュベーターに戻した。5日後、フローサイトメトリーにより、抗体及び四量体染色によりTCR発現を確認した。TCRCD3集団を、更なる使用のために選別した。
【0149】
CD69の上方調節。T細胞を一晩、又は新鮮な完全RPMI中で2~3時間静置させた。KG-1抗原提示細胞を、所望の濃度のペプチドで2~3時間パルスし、37℃でインキュベートした。KG-1細胞を洗浄して、過剰なペプチドを除去し、静置させたSKW3 T細胞で再懸濁した。細胞を14時間共培養した。細胞を、抗CD3(UCHT-1、BD Biosciences)(1:100)及び抗hCD69(1:100)(Biolegend)で、PBSA(PBS+0.5%のBSA)中で、氷上で1時間染色した。細胞を1回洗浄し、Accuri(BD Biosciences)又はCytoflex(Beckman Coulter)上でフローサイトメトリーを介して分析した。アッセイは、生物学的及び技術的な3連で実施した。EC50は、Prismで決定した。
【0150】
実施例2
キャッチボンド動員による生理学的親和性を有する高感度T細胞受容体の操作
操作されたT細胞受容体(TCR)を使用する養子細胞療法は、がん抗原を標的とするための有望なアプローチであるが、腫瘍反応性TCRは、しばしば、それらの標的リガンド(pMHC)に対して弱い応答性のみである。親和性成熟TCRは、TCR-T療法の有効性を増強することができるが、標的抗原交差反応性及びレシピエント臓器の免疫病理も示し得る。我々は、剪断力下で結合寿命を延長するキャッチボンドの獲得を通じて、逆説的に低親和性pMHC結合と結合した高い活性化シグナルを示したTCR変異体をスクリーニングすることによって、代替戦略を開発した。このアプローチを使用して、我々は、以前に心臓抗原との致死的交差反応性を示した高親和性TCRと比較して、オフターゲット反応性を獲得することなく、生理学的親和性を維持しながらも同等以上の標的殺傷効力を示した臨床的に試験された腫瘍抗原MAGE-A3特異的TCRの類似体を操作した。キャッチボンド動員は、有害な交差反応性の可能性を低減した、操作されたT細胞療法のための強力なTCRを生成するための生物物理学に基づく戦略である。
【0151】
ここでは、多くの接着性細胞表面タンパク質-タンパク質相互作用を媒介する生物物理学的パラメータを利用する「キャッチボンドフィッシング」と呼ばれる代替のTCR操作戦略を報告する。原理の証明実験として、我々は、非応答性の親TCRクローンに対して同等の3D結合親和性を有するが、全ての場合においてキャッチボンドの獲得と並行していた機能的シグナル伝達に対する高い感度を有するTCRを産生したキャッチボンドフィッシングTCR表示ライブラリをスクリーニングすることによって、非刺激性TCRを強力に活性化したTCRに変換した。次いで、非常に弱い活性化及び殺傷能力を有するメラノーマ抗原MAGE-A3特異的TCRにキャッチボンド操作戦略を適用した。我々は、オフターゲット交差反応性及び毒性を示したA3A TCRの臨床親和性成熟バージョンのものと同等以上の標的殺傷効力を有するいくつかのTCR変異体を同定した。応答感受性のこの獲得にもかかわらず、我々のキャッチボンド操作されたTCRは、生理学的親和性を維持し、親和性成熟臨床TCRと比較して既知のオフターゲット抗原又はヒトプロテオームからのHLA関連ペプチドの広範なアレイのいずれとも交差反応しなかった。総合すると、これらの知見は、有効なTCR-リガンド相互作用におけるキャッチボンドの重要な役割についての更なる強力なエビデンスを提供し、キャッチボンド動員が、TCR-T療法の主要な制限を克服するための一般的なアプローチとして利用され得ることを示唆する。
【0152】
結果
「キャッチボンドフィッシング」ライブラリの設計。我々の以前の研究は、TCR55が、生理学的親和性を有するHLA-B35 MHC分子によって提示されるHIVペプチド(Pol448-456)に結合するが、このTCR-pMHC相互作用は、測定可能なT細胞活性化をもたらさないか、又は結合事象中にキャッチボンドを形成しないことを示した。しかしながら、pep20などのHLA-B35酵母pMHCライブラリから単離されたHIVペプチド変異体は、非刺激性親pMHCと同等の親和性を維持しながら、TCR55及びこの受容体を有する強力に活性化されたT細胞とのキャッチボンドを形成する能力を獲得した。ここでは、機能的スクリーニングが、相互的に、キャッチボンド能力の獲得と併せて「非刺激性」HIVペプチドによって誘発される機能的T細胞応答を可能にするTCR55の変異体を単離することができるか否かを問うた。
【0153】
力依存性トリガーにおけるキャッチボンド源は、TCRの複数の構造要素に起因すると考えられているが、我々のライブラリ設計はTCR-pMHC界面に焦点を当てた。我々のTCRライブラリ設計は、脱離に先立つTCR/pMHC剪断ステップ中に遭遇する水素結合及び/又は塩橋の一過性形成によって媒介されるキャッチボンドの生物物理学的特徴によって導かれた。これは、結合を解除する前に一過性の抵抗力として現れる延長された結合寿命をもたらす。したがって、我々の戦略は、TCR55の相補性決定領域(CDR)残基を軽く変異させて、分離中にpMHC結合表面上のH結合及び/又は塩橋残基(prey)をプローブするための釣り針(ベイト)として機能する極性又は荷電アミノ酸をコードすることであった。重要なことに、親和性成熟TCRを単純に選択することを最小限に抑えるために、pMHCから遠すぎて結合状態で直接接触を形成しないライブラリのTCR CDR残基位置を選択した。
【0154】
TCR55-HIV-B35複合体の構造に基づいて、ライブラリ位置について、TCR55α鎖上の3つの残基及びTCR55β鎖上の4つの残基を選択した(図1C)。このライブラリの理論的根拠は、pMHC表面に近接しているが、pMHCと直接接触していないTCR55のCDRループ内の残基を選択することであった。我々は、直接TCR/pMHC接触をランダム化することによって、相互作用を「親和性成熟」させることを回避したかった。我々の選択されたコドン使用、VWRは、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、セリン、及びヒスチジンを含む、主に荷電及び極性残基として翻訳される12の異なるコドンをコードし、新しい極性相互作用を形成する可能性を高める。哺乳類細胞ライブラリの実用的な多様性はおよそ10~10であるため、TCR55α鎖上の3つのランダム化残基を、1,728の多様性を有する1つのライブラリとして組み合わせ(Vαライブラリ)、TCR55β鎖上の4つのランダム化残基を、20,736の多様性を有する1つのライブラリとして組み合わせた(Vbライブラリ)。完全長TCR55ライブラリを合成し、レンチウイルス骨格ベクターにクローニングした。レンチウイルスライブラリを構築し、低い感染多重度でSKW3 T細胞株を感染させるために使用し、TCRライブラリをT細胞の表面上で発現させた。形質導入SKW3細胞において、Vαライブラリを野生型TCR55β鎖と対合し、Vβライブラリを野生型TCR55α鎖と対合した。
【0155】
我々は、機能選択を実行して、TCRトリガーがpMHC結合強度から分離される、キャッチボンド動員を示す可能性がある「高効力/低親和性」TCRクローンを直接スクリーニングした。ライブラリを10μMのHIVペプチドで刺激し、活性化抗原CD69高(抗CD69 MFIに基づく上位5%の集団)集団の共染色とともに、pMHC四量体染色低(WT TCR55のpMHC四量体染色よりも高くない)について選別して、「低親和性/高効力」TCR変異体を富化した。
【0156】
TCR55における単一のアミノ酸置換は、キャッチボンド形成を介して活性化を誘発する。我々は、TCR55αCDRライブラリ(多様性:1,728)に対して3ラウンドのFACS選別の選択を実施し、四量体-低CD69-高染色表現型を有する集団を富化した。およそ100個の単一細胞クローンを回収し、HIV(Pol)ペプチドによる活性化について個々に試験した。このpMHCリガンドに対する最も強力な応答を示した2つのクローン(クローン8及びクローン17)(図S3C)は、TCR55α鎖上で同一のTCR変異、S28G及びA98Hをコードした。同定された変異が増大した効力を付与したか否かを直接調べるために、SKW3 T細胞に、TCR55α-S28G A98H及びWT TCR55β鎖を形質導入し、B35関連HIVペプチドにより刺激した。どの変異が活性化に関与したかを逆畳み込みするために、変異を個々に試験し(図S3D~S3E)、TCR55αCDR3におけるアラニンからヒスチジンへの単一変異が、B35-HIV pMHCへの曝露時に活性化のためのシグナルである能力を非応答性TCR55に付与するために十分であることを見出した。
【0157】
B35-HIV pMHCに結合するTCR55α-A98Hの3D親和性を、K=5.9μMとして表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。これは、B35-HIVに結合するWT TCR55よりもおよそ3倍低い(K=17μM)が、依然としてTCR/pMHC相互作用の生理学的親和性範囲内であり、TCR589のB35-HIVへの結合(K=4μM)、アゴニストの質を有する受容体-リガンド対の結合に関して測定されたものよりも高い。TCR55α-A98HがB35-HIVと相互作用するときにキャッチボンドを形成するか否かを決定するために、生体分子力プローブ(BFP)実験を実施した。非応答性WT TCR55は、スリップボンド形成と一致して、力の増加とともに漸進的に短い結合寿命を示した。対照的に、力の適用は、TCR55α-A98HとB35-HIVとの間の結合寿命を増加させ、キャッチボンド形成を示す。以前に公開されたB35-HIVに結合したTCR55の構造の分析は、B35 MHC重鎖分子上の残基Q65及びT69が、TCR55α上のH98と新しい結合を形成し得ることを示唆する。Q65又はT69は、アラニンに変異し、Q65A変異のみが、TCR55α-A98Hの活性化を顕著に抑制し、キャッチボンドの誘発が、B35-Q65とTCR55α-A98Hとの間の相互作用を伴い得ることを示唆した。BFPは、B35-Q65A-HIVがTCR55α-A98Hとキャッチボンドを形成したが、B35-HIV/TCR55α-A98H相互作用のピーク結合寿命が短かったことを示した。しかしながら、キャッチボンドの形成は動的プロセスであり、かかる近接性にない代替的な残基もまた伴い得る。
【0158】
結合寿命によるTCR55シグナル伝達強度の較正。TCR55の単一点変異体によるキャッチボンド形成と一致するB35-HIV(Pol)によるT細胞活性化の獲得は、アミノ酸置換と活性化強度との間の構造-機能関係を調査する機会を提供した。我々は、この位置での残基同一性がTCRシグナル伝達の強さにどのように影響を及ぼすかを調査するために、TCR55α-A98を12個の異なるアミノ酸に変異させた。我々は、ヒスチジンに加えて、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グルタミン、及びチロシンへの変異が、異なる程度にもかかわらず、リンパ球活性化のためのB35-HIV(Pol)関与を介したTCR55シグナル伝達を可能にすることもできることを見出した。対照的に、システイン、リジン、アスパラギン、アルギニン、セリン、スレオニン、及びトリプトファンへの変異は、TCR55を活性化しなかった。したがって、残基TCR55α-A98を置き換える選択された極性の芳香族の荷電アミノ酸のみが、変異体にB35-HIVに応答して効果的にシグナル伝達する能力を付与した。シグナル伝達能力と結合強度との間に相関があったか否かを調査するために、我々は、B35-HIV pMHCに結合する異なるTCR55α-A98変異体の各々について、SPRを介して3D親和性を測定した。ほとんどの変異体は、K=3μM~K=20μMの狭い範囲の親和性を有する。驚くべきことに、刺激性変異体の最大CD69 MFI(R=0.1893)もEC50(R=0.02855)も、刺激性変異体のSPR親和性に相関しておらず、3D親和性は、刺激性変異体によって示される機能の獲得を説明することができないことを示唆する。実際、WT-TCR55(K=19μM)よりも高い親和性を示したバリアントであるTCR55α-A98W(K=6.5μM)は、B35-HIV(Pol)に応答してTCR依存性活性化を可能にしなかった。更に、TCR変異体の中で最もリガンド感受性のTCR55α-A98H(K=5.9μM)は、最も高い親和性を有せず、応答性TCR55α-A98Q変異体(K=8.0μM)は、非応答性TCR55α-A98W変異体(K=6.5μM)よりも低い親和性を有した。シグナル伝達能力がキャッチボンドの強度と相関するか否かを調査するために、BFP測定を、2つのB35-HIV応答性変異体:TCR55α-A98E及びTCR55α-A98Qについて行った。我々は、Emaxが親和性よりもむしろピーク結合寿命(R=0.996)と相関したことを見出した。したがって、キャッチボンドの強度は、アゴニストTCR-pMHC相互作用と非アゴニストTCR-pMHC相互作用との間の区別のための重要なパラメータである。
【0159】
TCR55b CDRライブラリ(多様性:20,736)について同じワークフローを使用して並行スクリーニングを実施し、B35-HIV(Pol)によるT細胞活性化の高レベルを示したTCR55バリアント、クローン36を同定した。クローン36は、CDR1変異TCR55β-N28Q及びCDR2変異TCR55β-A50Dの2つの変異を含んだ。我々は、単離されたTCR55β-A50D変異が、必要に応じてかつB35-HIVによるT細胞活性化を可能にするために十分であることを同定した。TCR55β-A50の位置を代替アミノ酸に置き換えることにより、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、及びチロシンが、B35-HIVに対するTCR55変異体応答を異なる程度に支持したが、システイン、リシン、アルギニン、及びトリプトファンは、有効なシグナル伝達を支持しなかったことが示された。TCR55β-A50変異体のSPR親和性を測定し、TCR55α変異体と同様に、K=2~20μMの範囲を示し、TCR親和性の自然な生理学的範囲内に入る。TCR55β-A50変異体中の最大CD69 MFIと3D結合親和性K(R=0.7558)との間には、TCR55α-A98変異体よりも良好な相関があった。しかしながら、EC50は、3D親和性(R=0.3543)と相関しておらず、再び、親和性単独では、これらの変異体TCRによる機能の獲得を説明するために十分ではないことを示唆した。したがって、我々は再び、TCR55β-A50E、TCR55β-A50D、TCR55β-A50H、及びTCR55β-A50T変異体を用いてBFP実験を実施した。TCR55α変異体については、ピーク結合寿命は、B35-HIV pMHCリガンドによって刺激されたTCR55β-A50変異体のEmaxと相関した(R=0.8644)。TCR55-HIV-B35複合体の結晶構造の分析は、B35-HIV pMHC上の残基T69及びQ72が、TCR55β-A50Eとの新しい水素結合の形成を潜在的に媒介することを示す。この仮説を試験するために、B35-T69Aを形質導入されたK562細胞は、TCR55β-A50Eを有するT細胞の活性化を防止したが、B35-Q72A変異は効果を有しなかった。BFP測定は、B35-T69A-HIVがTCR55β-A50Eとのスリップボンドのみを形成したことを示し、これもまた、B35-T69A-HIVによるTCR55β-A50Eの活性化がないことを示唆する。したがって、この単一のペアワイズ相互作用は、キャッチボンドの形成及びTCR誘発を支持するために必要である。
【0160】
キャッチボンド操作されたTCRのシグナル伝達ランドスケープ。キャッチボンド操作されたTCR55変異体が、B35-HIV pMHCリガンドに応答してT細胞における細胞内シグナル伝達にどのように影響を及ぼすかを評価するために、我々は、ERK、p38、及びNFAT2シグナル伝達経路の活性化動態を測定するために、生細胞イメージングレポーターシステムを用いた。これらの細胞において、これらの細胞内シグナル伝達分子の蛍光バージョンの転座は、リアルタイムで可視化され、単一の細胞ベースで定量化され得る。これらのレポーターの3つ全てが、CD28共刺激とは独立して、TCR刺激に応答して転座することが示されている。HIVペプチドパルスされたB35発現抗原提示細胞との関与時に、示されるキャッチボンド操作されたTCRバリアントを発現するレポーターJurkat T細胞は、刺激性TCR589を陽性対照として使用して、無応答の親TCR55と比較した場合、経路活性化が増強されたことを示した。TCR55α-A98H及びTCR55β-A50E変異体の両方が、集団レベルで同様の期間、ERK及びp38シグナル伝達経路を活性化することができたが、NFAT2活性化動態における実質的な差異が観察された。これらの結果は、単一細胞AUC(曲線下面積)分析によって定量化し、これは、全ての試験されたTCRバリアントについてのERK及びNFAT2シグナル伝達応答の両方において顕著な差異を示した。p38-KTRレポーターの実質的に低いシグナル対ノイズ比により、ERK又はNFAT2活性化と比較して、平均AUC分布の同じ階層に従うより微妙なp38シグナル伝達の差異を観察した。我々は、平均ERK(R=0.9370)又はNFAT2(R=0.9415)AUC分布とピーク結合寿命との間に強い相関を見出し、再び、キャッチボンド強度が、機能的な細胞内シグナル伝達をもたらすTCR-リガンド関与において重要な役割を果たすことを示唆する。
【0161】
生理学的pMHC密度でのTCRの適用された力活性化。極めて低いが、生理学的に関連するレベルのpMHC(HIV/HLA-B35)でのキャッチボンド操作されたTCR55の誘発を調査するために、我々は、最近開発されたBATTLES技法(大規模な外因性pMHCスクリーニングのための生体力学的に支援されたT細胞誘発)を使用した。BATTLES技法は、生理学的密度(3~4.5pMHC/細胞)で表示されたpMHCタンパク質でコーティングされた温度感受性ポリマービーズを使用して、ビーズ表面と相互作用するT細胞に傾斜力(推定最大マグニチュード=20~27.5pN/秒)を適用する。力の活性化時に、我々は、HIVペプチドと相互作用するTCR55α-A98H、TCR55α-A98E、TCR55α-A98Q、TCR55β-A50E、TCR55β-A50H、TCR55β-A50D、又はTCR55β-A50T置換のいずれかを含有する操作されたTCR55sを形質導入された>1,000SKW3 T細胞についてCa2+シグナル伝達(これは、初期T細胞誘発と相関する)を監視した。いくつかのT細胞は、細胞Ca2+フラックスの持続的な増加を示したが、ほとんどの細胞は、蛍光強度の減少を示し、負の蓄積シグナルをもたらし、誘発を示さない。これは、最適な力であっても、T細胞のごく一部のみが低いpMHC密度で活性化されることを示す以前の文献と一致する。
【0162】
次いで、我々は、時間の経過とともにゼロよりも高い統合された細胞当たりの蛍光を有する事象について、全ての操作されたTCR55sを調べた。TCR55β-A50Tを除く全ての試験された置換は、WTと比較して、より高い統合された細胞当たりのCa2+シグナルをもたらし、統合されたシグナルのマグニチュードは、測定されたピーク結合寿命と強い相関を示した。これらの結果は、単一T細胞の力誘導活性化を使用して、操作されたTCRがインビボで遭遇した低密度pMHC条件下で効率的な活性化を駆動することができるという証拠を提供する。
【0163】
TCR-T細胞療法へのTCRキャッチボンド操作の適用。TCR55モデルシステムを用いた実験は、キャッチボンド操作が、生理学的親和性レジームに残っている間、TCRシグナル伝達を増強することができることを示す。これは、多くの野生型腫瘍反応性TCRが、腫瘍pMHCに低い親和性結合を有し、関連する腫瘍関連抗原に応答してシグナル伝達に低い感受性を有し、効率的な腫瘍殺傷をもたらさないため、TCR-T細胞との作用に影響を及ぼす。メラノーマ抗原MAGE-A3特異的TCR(WT)を、キャッチボンド操作のために選択した。抗原は、WT TCRに対してK=500μMの報告された3D SPR結合親和性でHLA-A1制限されている。このTCRは、腫瘍抗原MAGE-A3に応答して非常に低いT細胞活性化を示し、一方、WT MAGE-A3 TCRの親和性成熟変異体であるA3A TCRは、同じリガンドによるT細胞活性化を大幅に増強する。しかしながら、メラノーマの臨床試験では、A3A TCRが提示されたタイチンペプチドと交差反応することが見出され、これは主に心血管組織で発現され、高レベルの心臓毒性をもたらす。そうでなければ非刺激性TCR55-リガンド対に新しいキャッチボンドを導入することによるT細胞活性化の促進の成功に基づいて、我々は、このアプローチを使用して、低応答性の野生型TCRのMAGE-A3リガンドに対する感受性を改善する一方で、低親和性を維持して、タイチンとの交差反応性を回避することができるか否かを問うた。
【0164】
HLA-A1-MAGE-A3との低親和性WT TCR複合体の結晶構造を有していなかったが、HLA-A1-MAGE-A3複合体とのTCRの親和性成熟バージョンの構造が利用可能であった。したがって、我々は、HLA-A1-MAGE-A3へのWT TCR結合をモデル化し、TCR α鎖上にライブラリを設計した。TCR55の設計戦略に従って、ライブラリのために選択された残基(CDR1αの28位、30位;CDR2αの52位、54位)は、CDRループ内にあり、pMHCに比較的近いが、pMHCに直接接触しない。SKW3 T細胞株に低MOIでライブラリを形質導入し、CD69-hi/四量体-loクローンを前述のように選択した。3ラウンドの選択の後、富化された集団からおよそ100個の単一細胞クローンを選択し、TCR依存性活性化について試験した。我々は、親WT TCRを発現するT細胞を誘発することができない濃度でMAGE-A3ペプチドに対する増強された応答性を示した13個の異なる変異体形質導入SKW3クローンを単離した。TCR変異体のEmaxを比較することにより、A3A TCRと比較して、8つのクローンを「高効力」変異体として定義し、5つのクローンを「中効力」変異体として定義した。我々は、HLA-A1-MAGE-A3に結合する6つの高効力変異体及び2つの中効力変異体についてのSPR 3D Kを測定した。親和性は、K=10~50μMの範囲であり、K=1.24μMであるA3Aの親和性よりも顕著に低い親和性であった。我々は、Emaxと3D親和性との間の相関を観察しなかった(R=0.3718)が、EC50と親和性との間の弱い相関を観察した(R=0.5998)。8つの高効力変異体が、タイチンペプチドに対する交差反応性機能応答を示したか否かを試験した。A3A形質導入SKW3細胞は、タイチンpMHCリガンドによって強く活性化された。4つの変異体(20a-18、20a-新規12、94a-14、及び94a-30)は、タイチンペプチドとの交差反応性を示さなかったが、残りの4つは高いペプチド濃度でのみタイチンによる非常に弱い活性化を示した。
【0165】
我々は、また、全てのキャッチボンド操作されたTCR変異体のHLA-A1-タイチンへの結合親和性を測定し、それらは、非常に低い又は測定不可能な3D結合親和性(K>100μM)を有したが、タイチンに対するA3A親和性は、K=7.7μMであった。BFP実験を、WT TCR、A3A TCR、TCR変異体94a-14及び20a-18について実施し、全てが、HLA-A1-MAGE-A3とキャッチボンドを形成し、変異体94a-14は、A3A及びWT TCRよりも高いピーク結合寿命を有する。WT、A3A、94a-14、及び20a-18 TCRのピーク結合寿命は、測定された最大CD69 MFIとよく相関した(R=0.9781)。今日まで、CD8:TCR:アゴニストに対する約10pNの力が、最適なエフェクターシグナル伝達を促進することが実証されている。約10pNの力で、94a-14 TCRは、WT及びA3A TCRの両方よりも顕著に高いピーク結合寿命を有する。HLA-A1-タイチンによる94a-14又は20a-18 TCRのBFP実験は、94a-14及び20a-18 TCRによるタイチン交差反応性の損失と一致して、両方のTCRについてスリップボンドの形成のみが観察されたことを示す。
【0166】
MAGE-A3 TCR変異体がHLA-A1-MAGE-A3+腫瘍細胞を効率的に殺傷することができるか否かを試験するために、ヒト初代T細胞にWT、A3A、及びTCR変異体を形質導入し、HLA-A1-MAGE-A3+メラノーマ細胞株A375又はHLA-A1-MAGE-A3+結腸がん細胞株HCT-116と共培養した。A375細胞に応答して、操作されたTCR 94a-14及び20a-18は、WT TCRよりも標的殺傷において均一に優れており、少なくとも同等であり、場合によっては、分析された測定基準(IFN-ψ、TNF、脱顆粒)に応じて、標的刺激エフェクター活性においてA3Aよりも優れていた。低レベルのMAGE-A3抗原を発現するHCT-116細胞に応答して、同様の傾向が見られた。変異体20a-5及び27a-5は、ヒト初代T細胞においても試験され、A375メラノーマ細胞及びHCT-116結腸がん細胞に対する高レベルの細胞傷害性を示した。
【0167】
TCRクローン94a-14及び20a-18がタイチンに対して交差反応性を示したか否かを調べるために、それぞれのTCRを形質導入された初代ヒトT細胞を、MAGE-A3又はタイチンペプチドパルスされた抗原提示細胞と共培養した。20a-18又は94a-14は、MAGE-A3パルスされた細胞との共培養後に、増強された細胞傷害性、脱顆粒、及びサイトカイン分泌を示したが、これらのTCRクローンはいずれも、提示されたタイチンペプチドに応答しなかった。同様に、20a-5及び27a-5クローンは、MAGE-A3に対する強力な細胞傷害性応答を媒介したが、高濃度のペプチドでは、タイチンに対しては最小限の交差反応性しか媒介しなかった。
【0168】
操作されたMAGE-A3 TCRの交差反応性のプロファイリング。操作されたTCRは、タイチンペプチドとの実質的な反応性を欠いていたが、操作されたTCRが、キャッチボンド動員の結果として、新たな望ましくないペプチド反応性を獲得したか否かを問うた。我々は、元々TCRの交差反応性を特徴付け、腫瘍に存在するT細胞に由来するTCRの新規特異性を明らかにするために使用された、以前に記載された酵母表示pMHCライブラリシステムに着目する。我々は、まず、野生型、親和性成熟A3A、及び3つのキャッチボンド操作されたMAGE-A3 TCRバリアントの交差反応性ランドスケープを調査するために、HLA-A*01 9-merペプチドライブラリを生成した。ライブラリは、HLA-A*01に結合することが知られているペプチド配列に基づいて設計され、P3位のアンカー残基をアスパラギン酸及びグルタミン酸に固定し、P9をチロシンに固定して、HLA溝内のペプチドの適切な提示を確実にした。残りの全ての位置は、1.8×10のライブラリ多様性のために、20個全てのアミノ酸への柔軟性を可能にした。
【0169】
我々は、野生型MAGE-A3(WT)TCR、A3A、94a-14、20a-18、又は94a-30の可溶性の組換え形態を用いて、確立された方法に従って選択を行った。WT TCRは、おそらくMAGE-A3に対する非常に低い3D結合親和性(K>500μM)により、任意の酵母クローンを富化することができなかったが、高親和性A3A及び操作された変異体は、酵母クローンの集団を強く富化した。その後、選択されたライブラリプールを配列決定して、個々の配列を単離した。我々は、選択されたペプチドが、A3Aについて前述したように、C末端特異性の欠如を伴って、全てのTCRバリアントについてN末端で強力な収束を示したことを観察した。固定アンカー残基とは別に、P1 GLU、P4 PRO、及びP5 ISOは、強力な保存性を示し、特に、MAGE-A3及びタイチンペプチドの両方に存在する。3つのキャッチボンド操作されたTCRバリアントは、非常に類似した配列嗜好性を示し、TCRの特異性が、キャッチボンド操作によって最小限に変更されたことを示した。
【0170】
ディープシーケンシングデータを使用して、以前に開発された統計的方法を使用してオフターゲット予測を行った。A3A TCRについては、タイチン及びMAGE-A3の両方が上位ランクの予測であり、それぞれ1及び7にランク付けされた。しかしながら、3つのキャッチボンド操作されたTCRについては、タイチンは、上位35個のペプチドにおいて予測されなかったが、MAGE-A3ペプチドは、3つのキャッチボンド操作されたTCRの全てに結合することが予測された。
【0171】
我々は、T細胞活性化アッセイを用いて、A3A TCR及びキャッチボンド操作されたTCRの上位20の推定オフターゲット予測を試験した。各TCRについて予測される上位20個のペプチドを合成し、各TCR反復ペプチドを除去した後に合計60個のペプチドをスクリーニングするために使用した。A3A TCRに関して、我々は、MAGE-A3及びタイチンに加えて、それは、また、以前に発見された2つのエピトープMAGE-A6及びFAT2によっても活性化されたことを見出した。3つのキャッチボンド操作されたTCR(94a-14、20a-18、及び94a-30)については、MAGE-A3ペプチドのみがベースラインを超えてT細胞を顕著に活性化した。WT TCRについては、ペプチドのいずれも、DMSO対照と比較して、T細胞を顕著に刺激しなかった。これらの交差反応性プロファイリング実験の集合的な結果は、スクリーニングが、高親和性A3A TCRの既知のオンターゲット特異性及びオフターゲット特異性の両方を同定することができ、キャッチボンド操作が、ヒトプロテオームの既知の配列に対応する有害な特異性を導入しなかったことを示す。酵母提示pMHCスクリーニングは、予期しないヒト抗原交差反応性の不在を示す一方で、A3A TCRで見られる心臓毒性の原因を明確に同定する、厳格な試験を表す。
【0172】
細胞-細胞相互作用が剪断応力に曝される環境では、機械的力が様々な受容体-リガンド系によるシグナル伝達に重要な役割を果たすことが明らかになった。実際、キャッチボンドは、カドヘリン、セレクチン、及びノッチ、並びにより最近ではTCRを伴うものなどの様々な低親和性細胞表面接着系において、天然のシグナル増強機構として観察されている。抗原提示細胞上のアゴニストpMHCリガンドとの関与時の有効なTCRシグナル伝達は、引く力の適用時に受容体-リガンド相互作用の寿命を延長するキャッチボンドの形成を伴う。実際、ペプチド抗原におけるキャッチボンド残基の有無は、TCR誘発をpMHC結合強度の従来の測定値から分離することができる。しかしながら、pMHCによる有効なTCR刺激におけるキャッチボンド関与の普遍性は不明であり、この新しい洞察の臨床的価値の可能性は調査されていない。ここで、適度な溶液親和性であるが、リガンド誘導シグナル伝達に対する高い感受性の組み合わせを有する変異体TCRをスクリーニングするための新しいアッセイを使用して、単離された有効な変異体TCRの中で、増加したキャッチボンド形成を伴うTCRが優勢であること、及びこれらの新たに獲得されたキャッチボンドが、TCRをヒト抗原交差反応性の増加の素因にはなってないことを示す。これは、遅いオフフレート自体がpMHC結合時に効果的なTCRシグナル伝達を可能にすることができるが、キャッチボンドが抗原応答性TCRについて決定論的な役割を果たすことができることを示唆する。
【0173】
この生物物理学的機構は、TCRシグナル伝達有効性からのTCR結合強度の分離を可能にする際に明確な実用的価値を有する。実際、スクリーニングにおいてかかるTCRを同定することが容易であることを考えると、我々の知見は、キャッチボンドが、全体的な動作TCRレパートリーにおいて実質的な役割を果たす可能性があり、特定のpMHCに対する測定された溶液結合親和性と、T細胞活性化の観点からアゴニスト特性を示すそれらのpMHCの能力との間の文献における既存の矛盾を説明するために役立つことを示唆する。この概念は、抗原提示細胞又は標的細胞上のリガンドをスキャンするときのTリンパ球の運動性を考えると理にかなっている。このバルク運動は、細胞フィリポディア(cellular filipodia)の活性とともに、引張力又は剪断力によって破壊され得る固有の遅いオフレート結合と比較して、効果的なホスファターゼ排除を可能にするために、キャッチボンド形成によるTCR-リガンド相互作用の延長を好むそのような力を提供する。この知見は、TCRの本質的に弱い「自己」腫瘍反応性が臨床活性に制限を提示する、TCR-T療法の新たな分野に直接的な意味を有する。
【0174】
我々の選択戦略は、いくつかの理由から、リガンド感受性であるが低親和性のクローンの単離を成功させるために重要であった。第一に、我々のライブラリを、TCR/pMHCの離脱中に不定の極性相互作用に関与する変異体置換の可能性を最大にすることができる極性及び荷電残基に焦点を当てた。第二に、選択が高親和性(特に遅いオフレート)TCRを単純に分離しないように、pMHCと直接接触していない残基に焦点を当てるようにライブラリを設計した。我々は、TCR CDR残基の「第2のシェル」内にあった残基、すなわち、pMHC表面に近接しているが、基底状態複合体において直接相互作用を形成するには遠すぎる残基を選択した。これらの残留物は、TCR/pMHC界面の剪断中に「フック」として機能するように理想的に配置される。第三に、我々の機能選択戦略は、シグナル伝達活性(CD69-hi)だが、低親和性(四量体低)のクローンを直接単離した。単離されたクローンの3D結合親和性Kは、WT TCRよりもわずかに親和性が高い傾向にあるが、親和性は生理学的レジームにしっかり残っており、3D結合親和性Kは活性と相関しておらず、スクリーニング原理を検証している。
【0175】
これらの結果は、キャッチボンド操作されたTCRが、ホットスポット位置で異なるアミノ酸置換を走査することによって感度について「調整」され得ることを示す。かかる調整可能性は、活性化対親和性の所望のバランスを有するクローンの慎重なキュレーションを可能にする。TCRシグナル伝達は、TCR親和性成熟又はキャッチボンド操作の両方によって影響を受ける可能性があり、それらは互いに排他的である必要はないことを強調する。実際、TCR変異体の感受性と親和性との間には弱い正の相関があった。しかしながら、キャッチボンド操作は、生理学的親和性を維持しながら効力増強を可能にし、親和性成熟TCRと比較して、オフターゲット交差反応性に向かう素因を減少させる。
【0176】
操作されたT細胞療法の安全性は、最終的には、健康な組織に対する標的腫瘍抗原の優先的な発現の程度に依存するが、生理学的親和性を維持し、更に強力なアゴニストシグナル伝達応答を維持するためのキャッチボンド操作の戦略は、臨床的に指向されたTCRについての他のpMHCとの望ましくない交差反応性の可能性を低減することができる。臨床TCRの有効性を向上させることは、概して、親和性成熟を伴う。しかしながら、いくつかの親和性成熟TCRは、オフターゲット毒性を示した。キャッチボンド操作されたTCRの極端なペプチド選択性は、健康な組織対がん性組織における腫瘍抗原の相対的な発現レベルに基づいて治療指標を増強することによって、オンターゲット/腫瘍外(off-tumor)反応性を軽減するためにも役立ち得る。かかる変異体を単離することが相対的に容易であり、スクリーニングが単純であることを考えると、これ自体がTCR-T臨床開発パイプラインにおける一般的なアプローチに十分に役立つと感じる。TCR55の場合、キャッチボンドライブラリは、解決された結晶構造の事前知識に基づいて設計されたが、MAGE-A3 TCRの場合、我々は、同一ではないが関連するTCR構造に基づいて構造をモデル化した。したがって、我々は、キャッチボンド操作は、関連した結晶学的データからのガイダンスを必要としないと考えている。強力な新しいWebベースの人工知能構造予測ツール、及び解決されたTCR/pMHC複合体構造の大規模なデータベースは、特殊な構造的洞察なしでキャッチボンド操作のためのライブラリ設計を行うことを可能にするはずである。
【0177】
材料及び方法
細胞株。SKW3 T細胞(DSMZ)を、10%のウシ胎仔血清(FBS、Sigma-Aldrich)、10mMのHEPES、及び50U/mLのPen-Strep(Thermo Fisher Scientific)で補完したRPMI-1640+GluMax(Thermo Fisher Scientific)中で、37℃及び5%のCOで培養した。LentiX細胞及び293T細胞を、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、及び50U/mLのPen-Strep(Thermo Fisher Scientific)を補充したDMEM(Thermo Fisher Scientific)中で、37℃及び5%のCOで培養した。KG-1細胞(ATCC)を、10%のFBS及び50U/mLのPen-Strep(Thermo Fisher Scientific)を補充したIMDM(Thermo Fisher Scientific)中で、37℃及び5%のCOで培養した。SF9細胞を、10%のFBS及び10mg/mLのゲンタマイシンスルファート(Thermo Fisher)を補充したSF900-III培地(Thermo Fisher)中で、27℃及び大気COで培養した。Hi5細胞を、10mg/mLのゲンタマイシンスルファート(Thermo Fisher)を補充した昆虫細胞培地(発現系)において、27℃及び大気COで成長させた。Jurkat細胞株を、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、及び50μMのβ-メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640中で、37℃及び5%のCOで培養した。HEK293T細胞株を、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、及び18mMのHEPESを補充したDMEM中で、37℃及び5%のCOで培養した。
【0178】
レンチウイルスのパッケージング。HEK293T由来のLentiX細胞を、3×10細胞/mL(合計2mL)の密度で6ウェルプレートに播種した。翌日、細胞の各ウェルについて、750ngの目的のプラスミド、500ngのpsPAX、260ngのpMD2.Gを、100μLのOpti-MEM中の4.5μLのFugeneトランスフェクション試薬(Promega)と混合し、20分間静置した。新鮮なcRPMI培地を各ウェルに添加した。次いで、DNA/Fugene混合物を各ウェルに添加した。任意選択的に、トランスフェクションの12時間後、各ウェルの上清を2mLの新鮮なcRPMIと交換した。トランスフェクションの48時間後、上清は、10個の細胞に感染させる準備ができていた。
【0179】
TCRライブラリのクローニング。TCRライブラリのdsDNAを、GeneArt技術(Thermo Fisher Scientific)によって商業的に合成し、HiFiアセンブリ(New England Biolabs)によりpHRレンチウイルスベクターにクローニングした。具体的には、TCRライブラリの20ngのdsDNA、100ngの線形化pHRベクター、及び10μLのHiFiアセンブリマスターミックスを混合し、50℃で1時間インキュベートした(8回反復を行う)。10μLのアセンブリ産物をアガロースゲル上で分析して、アセンブリの成功を確認した。残りのアセンブリ産物を、PCR産物クリーンアップキット(Qiagen)により精製し、30μLの水中で溶出した。エレクトロコンピテント細胞のMegaX DH10B(商標)T1R Electrocomp(商標)細胞(Thermo Fisher Scientific)を氷上で30分間解凍した。次いで、50μLのMegaX細胞を5μL(>100ng)のHiFiアセンブリ産物と混合した。チューブを3回軽くたたき、氷上で30分間インキュベートした。次いで、細菌/DNAミックスを冷却したエレクトロポレーションキュベットに移した。エレクトロポレーションを、2.0kV、200Ω、25μFで実施した。細胞を、直ちに1000μLのSOC培地中で回収した。次いで、コンピテント細胞培養物を、37℃、225rpmで1時間回収した。回収後、10μL及び1000μLの細胞培養物を四角いバイオアッセイ皿(Corning)上にプレーティングし、37℃で一晩培養した。コロニー形成単位(cfu)を計算するために、10μLの培養物をプレーティングした四角いバイオアッセイ皿を使用した。全てのコロニーを四角いバイオアッセイ皿から削り取り、プラスミドをマキシプレプ(maxiprep)(Qiagen)により抽出した。
【0180】
T細胞によるTCRライブラリ表示。TCRライブラリのレンチウイルスを、上記の方法によりパッケージングした。TCR55Vαライブラリのレンチウイルスを、滴定して野生型TCR55βレンチウイルスとSKW3 T細胞に共感染させた。TCR55Vβライブラリのレンチウイルスを、滴定して野生型TCR55αレンチウイルスとSKW3 T細胞に共感染させた。MAGEライブラリのレンチウイルスを、滴定して野生型MAGE-A3TCRβレンチウイルスとSKW3 T細胞に共感染させた。感染の48時間後、TCR陽性集団のパーセンテージを、抗CD3(クローンOKT3、BioLegend)染色により決定し、フローサイトメトリーにより分析した。20%の感染効率をもたらしたレンチウイルスの滴定を使用して、低MOIを有するように1億~2億個のSKW3 T細胞に感染させた。TCR陽性細胞を選別し(Sony SH800S)、更なる選別選択に使用した。
【0181】
TCRライブラリ選択。1000万個のKG-1細胞を、製造業者のプロトコル(Thermo Fisher Scientific)に従ってCFSEで標識した。次いで、KG-1細胞を、37℃、5%のCOで3時間、10μMのHIVペプチドでパルスした。KG-1細胞を5×10細胞/mLで再懸濁し、ウェル当たり200μLで96ウェルプレートに等分した。KG-1細胞を1回洗浄して、過剰なペプチドを除去した。1000万個のT細胞のライブラリを5×10個の細胞/mLで再懸濁し、ウェル当たり200μLでKG-1細胞を有する96ウェルプレートに等分した。14時間の活性化後、細胞を、抗CD69-APC(クローンFN50、BioLegend)及びB35-HIV-PE四量体(pMHC四量体の作製方法は以下に記載される)で、氷上で30分間染色した。細胞を選別して、四量体染色-低(TCR55 WT細胞の四量体染色に相当する)、抗CD69染色-高(抗CD69 MFIに関して上位5%)の集団を選択した。細胞をFBSに選別して、細胞の健康を維持した。選別した細胞を、cRPMI中で培養した。次の選択ラウンドを続けるために十分な細胞を成長させることに2週間かかった。3~5ラウンドの選択の後、細胞を2.5細胞/mLに希釈し、200μLの細胞希釈液を96ウェルU底プレート(Corning)の各ウェルに等分することによって、単一細胞クローンを得た。単一細胞クローンから十分な数の細胞を成長させることに2~4週間かかった。各単一細胞クローンを、以下に記載のTCR55シグナル伝達アッセイにより試験した。
【0182】
TCR変異体の配列決定。予測される表現型を有するSKW3 T細胞の単一細胞クローンを使用して、製造業者のプロトコルに従ってゲノムDNAを抽出した。TCR変異体DNA断片をPCRによりクローニングし、pHRベクターにライゲーションした。ライゲーションの産物を使用してコンピテントE.coli細胞を形質転換し、TCR変異体を配列決定するために30個の単一コロニーを採取した。各単一細胞クローン中に2つ以上のTCR配列が見出され得(各T細胞は依然として、開始時に2つ以上のレンチウイルス粒子を形質導入され得る)、各TCR配列は、更なるTCR活性化シグナル伝達アッセイのためにSKW3 T細胞を形質導入することによって個々に試験されるべきである。
【0183】
TCR55シグナル伝達アッセイ。ペプチドをDMSOに溶解し、滴定した。KG-1細胞をCFSEで標識し、次いで5×10細胞/mLで再懸濁した。200μLのKG-1細胞を、96ウェルU底プレートの各ウェルに等分した。KG-1細胞を、37℃、5%のCOで3時間、滴定したペプチドでパルスした。その後、KG-1細胞を1回洗浄して、過剰なペプチドを除去した。SKW3 T細胞トランスフェクタントを5×10細胞/mLで再懸濁し、200μLのT細胞をペプチドパルスされたKG-1細胞を含む各ウェルに添加した。刺激を、37℃、5%のCOで14時間実施した。刺激後、細胞を、抗CD69-APC及び抗αbTCR-BV421(クローンIP26、BioLegend)で、氷上で30分間染色し、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman)により分析した。蛍光体-ERK染色のために、刺激を37℃、5%のCOで15分間だけ実施した。刺激後、細胞を直ちに4%のPFAで固定し、15分間振盪した。次いで、細胞をPBS(0.5%のBSA)で洗浄し、氷上で30分間、氷冷メタノール中で透過処理した。次いで、細胞をPBS(0.5%のBSA)で2回洗浄し、抗pERK1/2(クローン197G2、Cell Signaling Technology )の1:50希釈液で、振盪しながら室温で1時間染色した。細胞を1回洗浄し、CytoFLEXにより分析した。
【0184】
MAGE-A3特異的TCRシグナル伝達アッセイ。MAGE-A3(EVDPIGHLY、配列番号19)又はタイチン(ESDPIVAQY、配列番号20)ペプチド(80%の純度、Elimペプチド)をDMSO中に溶解し、滴定した。HLA-A1-P2A-EGFPレンチウイルスベクターを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、GFP陽性細胞を選別して抗原提示細胞(293T-A1)として使用した。293T-A1細胞を5×10細胞/mLで再懸濁し、37℃、5%のCOで3時間、滴定したペプチドでパルスした。200μLのKG-1細胞を、96ウェルU底プレートの各ウェルに等分した。パルス後、293T-A1細胞を1回洗浄して、過剰なペプチドを除去した。MAGE-A3特異的TCR変異体を形質導入したSKW3細胞を5×10細胞/mLで再懸濁し、200μLのT細胞を、ペプチドパルスした293T-A1細胞を含む各ウェルに添加した。刺激を、37℃、5%のCOで14時間実施した。刺激後、細胞を、抗CD69-APC及び抗Vb5.1-BV421(クローンLC4、ThermoFisher Scientific)で、氷上で30分間染色し、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman)により分析した。
【0185】
TCRによるヒト初代T細胞の形質導入。健常な匿名のボランティアドナーからのヒト全血は、APB-2749-KG1018の承認されたプロトコルに従ってStanford Blook Bankから購入した。6ウェルプレートを、2mLの2.5μg/mLの抗CD3(OKT3クローン)で一晩コーティングした。翌日、ヒトPBMCを、5μg/mLの抗CD28を含むプレートに添加し、37℃、5%のCOで3日間培養した。400万個のLentiX細胞を10cmの皿に播種し、MAGE-A3特異的TCR α鎖又はβ鎖のレンチウイルスベクターでトランスフェクトした。上述のようにレンチウイルスを作製した。合計40mLのTCRウイルスを、100kDaカットオフフィルタを使用して500μLに濃縮した。500万個の事前活性化ヒトPBMCを500μLの培地に再懸濁し、500μLの濃縮TCRウイルス及び5μg/mLのポリブレン並びに100U/mLのヒトIL-2と混合した。ウイルス/細胞混合物を、2800rpm、32℃で2時間スピン感染で処理した。
【0186】
腫瘍細胞の殺傷アッセイ。20,000個のA375又はHCT-116細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。60,000個のMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代細胞を腫瘍細胞とともに各ウェルに添加し、24時間共培養した。プレートをEDTA不含緩衝液で洗浄し、7-AAD(ThermoFisher Scientific)及びアネキシンV-APC(BioLegend )で10分間染色した。プレートをCytoFLEXにより分析した。
【0187】
細胞傷害性サイトカイン及び顆粒放出アッセイ。200,000個の腫瘍細胞又はペプチドパルスされた293T-A1細胞を96ウェルプレートの各ウェルに一晩播種した。翌日、200,000個のMAGE-A3特異的TCR形質導入ヒト初代細胞を、1:100の抗CD107a-PE(クローンH4A3、BioLegend)及び1:1000のブレフェルジンAと混合し、次いで、各ウェルに添加した。共培養を37℃、5%のCOで6時間行った。6時間後、プレートを、抗CD8-BV421(クローンRPA-T8、BD Biosciences)、抗Vb5.1-APCで染色した。次いで、プレートをIC固定で固定し、透過処理緩衝液によって透過処理した。プレートを、抗IFN-ψ-BV605(クローンB27、BioLegend)及び抗TNF-PE-Cy7(クローンMAb11、BioLegend)で、30分間氷上で更に染色した。次いで、プレートを洗浄し、CytoFLEXにより分析した。
【0188】
MHC及びb-2-ミクログロブリン包含体の産生。B35 MHC重鎖及びヒトβ-2-ミクログロブリンのタンパク質を、包含体としてE.coliにおいて作製した。具体的には、B35 MHC重鎖又はヒトβ-2-ミクログロブリンをpET28aベクターにクローニングし、BL21(DE3)E.coli株に形質転換した。単一コロニーを採取し、50μg/mLのカナマイシンを含有する10mLのLB培地に再懸濁し、250rpm、37℃で12~16時間振盪した。次いで、10mLの培養物を、50μg/mLのカナマイシンを含有する1LのLB培地に添加し、OD=0.5~0.6になるまで、250rpm、37℃で約3時間振盪した。IPTGを、1mMの最終濃度で培養物に添加し、更に3時間振盪し続けた。細菌培養物を6000rpmで20分間沈降させた。細菌ペレットを50mLの緩衝液1(50mMのTris-HCl、pH8.0、100mMのNaCl、1mMのDTT、5%のTriton X-100、1mMのEDTA、0.2mMのPMSF)に再懸濁した。次いで、細菌を、2分間の超音波処理+2分間の静置のプログラム下で超音波処理した。超音波処理プログラムを4回連続して繰り返した。その後、細菌を15分間7500rpmで回転させた。それを更に2回繰り返して、緩衝液1に細菌ペレットを再懸濁し、超音波処理を行った。次いで、細菌ペレットを50mLの緩衝液2(50mMのTris-HCl、pH8.0、100mMのNaCl、1mMのEDTA)に再懸濁した。次いで、細菌を、2分間の超音波処理+2分間の静置のプログラム下で超音波処理した。超音波処理プログラムを4回連続して繰り返した。その後、細菌を15分間7500rpmで回転させた。それを更に1回繰り返して、緩衝液2に細菌ペレットを再懸濁し、超音波処理を行った。包含体をペレット化し、25mLの緩衝液(8Mの尿素、50mMのTris-HCl pH8.0、10mMのEDTA、10mMのDTT)中に可溶化した。
【0189】
pMHCの再折り畳み。再折り畳み緩衝液を、100mMのTris-HCl(pH8)、400mMのアルギニン、5Mの尿素、0.5mMの酸化グルタチオン、5mMの還元グルタチオン、2mMのEDTAとして調製した。30mgのペプチドをDMSOに溶解し、各リットルの再折り畳み緩衝液に添加した。各リットルの再折り畳み緩衝液について、30mgのMHC重鎖包含体及び30mgのヒトβ-2-ミクログロブリン包含体をシリンジに混合し、再折り畳み緩衝液の各リットルに1滴ずつ添加した。次いで、再折り畳み緩衝液/タンパク質を透析チューブ(Spectrum Labs)に注ぎ、10Lの10mMのTris pH8.0に透析した。10Lの10mMのTris pH8.0緩衝液を12時間毎に交換し、合計4回繰り返した。次いで、弱陰イオン交換樹脂(DEAEセルロース、Santa Cruz Biotechnologies)を使用して、タンパク質を精製した。具体的には、DEAE-セルロースを、カラム中の10mMのTris-HCl、pH8.0で平衡化した。次いで、透析された再び折り畳まれたタンパク質溶液は、一滴ずつセルロースカラムを通って流れ、流すことをもう一度繰り返した。再び折り畳まれたタンパク質を、30mLの10mMのTris-HCl、pH8.0+0.5MのNaClにおいて溶出した。タンパク質を10mMのTris-HCl、pH8.0中に緩衝液交換し、500μLに濃縮し、一晩ビオチン化した。ビオチン化された再び折り畳まれたタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィ(Superdex 200、GE Healthcare)及びイオン交換(MonoQ、GE Healthcare)により、AKTAPurifier(GE Healthcare)で分析した。
【0190】
pMHC四量体。各1000万個の細胞を染色するために、20μgのビオチン化pMHCタンパク質及び30μgのストレプトアビジン-PE(Thermo Fisher Scientific)を等分した。ストレプトアビジン-PEの総量の20%を、毎回1時間の間隔時間でビオチン化pMHCに添加し、5回繰り返した。間隔時間中、四量体を氷上でインキュベートした。使用する前に、pMHC四量体を4℃で一晩保存した。
【0191】
Expi293によるTCRタンパク質の産生。SPRに使用されるTCRタンパク質をExpi293細胞(Thermo Fisher Scientific)において産生した。具体的には、TCRα鎖を塩基性ジッパーを用いてpD649ベクターにクローニングし、TCRβ鎖を酸性ジッパーを用いてpD649ベクターにクローニングした。15μgのTCRα鎖構築物及び15μgのTCRβ鎖構築物を、製造業者のプロトコルに従って、7500万個のExpi293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの4日後、細胞培養物を400gで5分間沈降させ、上清を保存した。1倍体積のPBSを上清に添加し、20mMのTris-HCl pH8.0緩衝液の最終濃度を添加した。2mLのニッケル-NTAを上清に添加し、溶液を4℃で一晩回転させた。次いで、溶液をカラムに流して、Ni-NTA及び結合したタンパク質を収集した。10mMのイミダゾールを含有する1倍のHBS pH7.2を使用して、Ni-NTA及びタンパク質を1回洗浄し、タンパク質を300mMのイミダゾールを含有する1倍のHBS pH7.2により溶出した。タンパク質を30kDaフィルタ(Millipore)に濃縮し、1×HBS pH7.2中で緩衝液交換した。タンパク質を、AKTAPurifier(GE Healthcare)のSuperdex200カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィにより精製した。精製されたタンパク質を、サイズに基づいて一致する画分から収集し、SDS-PAGEで実行して、サイズ及び1:1化学量論を確認した。
【0192】
昆虫細胞によるTCRタンパク質の産生。TCRα鎖を塩基性ジッパーを用いてpAcGP67aベクターにクローニングし、TCRβ鎖を酸性ジッパーを用いてpAcGP67aベクターにクローニングした。2μLのバキュロウイルス直鎖DNA及び2μgのTCR構築物を100μLのOpti-MEM(Thermo Fisher Scientific)及び6.6μLのFugene(Promega)と混合し、15分間静置させた。混合物を200万個のSF9細胞に添加し、6~7日間待機した。細胞培養物を2000rpmで8分間沈降させた。上清をP0ウイルスとして保存した。P1ウイルスは、25μLのP0ウイルスを200万個の細胞/mLで25mLのSF9細胞に添加することにより作製した。25mLの培地を24時間後に培養物に添加した。6~7日後、P1ウイルスを、2000rpmで8分間細胞培養物を沈降させ、上清を保存することにより収集した。TCRα鎖及びTCRβ鎖のP1ウイルスを使用し、滴定して、200万個のHi5細胞を共感染させ、最高量の1:1の発現を得るために使用されるP1ウイルスの最適量を決定した。通常、各鎖について1~4mLのP1ウイルスを1LのHi5細胞(200万個の細胞/mL)に使用した。TCRα鎖及びTCRβ鎖のP1ウイルスの最適量をHi5細胞に添加した。共感染の72時間後、細胞培養物を1500rpmで15分間沈降させた。上清を収集し、各リットルの上清について、100mLの1MのTris pH8.0、1mLの1MのNiCl2、及び1mLの5MのCaClを添加し、30分間撹拌した。その後、溶液を6000rpmで15分間沈降させた。上清を収集し、3mLのNi-NTAを各リットルの溶液に添加した。溶液を5時間又は一晩撹拌した。次いで、溶液をブフナー漏斗を通して濾過し、Ni-NTAをフィルタカラムに移した。タンパク質結合型Ni-NTAを、20mMのイミダゾールを含有する500mLの1×HBS pH7.2で洗浄した。次いで、タンパク質を、300mMのイミダゾールを含有する15mLの1×HBS pH7.2で溶出した。タンパク質を30kDaのフィルタに濃縮し、1×HBS pH7.2で1回洗浄した。タンパク質を、AKTAPurifier(GE Healthcare)のSuperdex200カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィにより精製した。精製されたタンパク質を、サイズに基づいて一致する画分から収集し、SDS-PAGEで実行して、サイズ及び1:1化学量論を確認した。
【0193】
表面プラズモン共鳴。特異的pMHCへのTCR結合の親和性を、Biacore T100(GE Healthcare)での表面プラズモン共鳴により測定した。再び折り畳まれたpMHCタンパク質をビオチン化し、ストレプトアビジンチップ(GE Healthcare)上に固定化した。TCRタンパク質を3Cプロテアーゼで処理して、塩基性/酸性ジッパーを除去した。pMHCタンパク質を、100~200RUの増加まで固定化し、滴定したTCRタンパク質を、25℃でフローセルを通して流した。定常状態の親和性は、Biacoreソフトウェアにより決定した。解離後、試料が完全にベースラインに戻ったため、表面再生は必要なかった。
【0194】
BFPアッセイ。BFP力クランプアッセイは、以前に詳細に説明されている。要約すると、目的のT細胞を、Labview(National Instrument)プログラムによって制御されるピエゾ駆動マイクロピペット上に吸引した。EZ-link NHS-PEG-Biotin(Thermo Fisher Scientific)でビオチン化された吸引されたRBCとして対向するマイクロピペットを使用した。このRBCの頂点には、目的のpMHC(HLA B35-HIV(Pol448-456)、B35-Pep20、A1-MAGE-A3、又はA1-タイチン)でコーティングされたストレプトアビジン-マレイミド(Sigma-Aldrich)結合ガラスビーズがあった。このRBC:ビーズ複合体は、力プローブセンサーとして機能した。各T細胞を繰り返し接触させ、保持し、次いで、ピエゾアクチュエータによって制御される距離まで後退させた。後退及び保持相は、T細胞が後退した距離に基づいて、TCR:MHC結合上に力を生成し、これは変更され得る。ビーズの縁の位置は、3nm未満の変位精度で高解像度カメラ(1,600フレーム/秒)によって追跡された。次いで、カメラは、T細胞がガラスビーズを離脱することにかかった時間を記録し、これは、RBCが後退し、ビーズがその開始位置に戻ることによって視覚的に見ることができる。複数の反復サイクル(力-クランプサイクルとして知られる)は、TCRとペプチド:MHC複合体との間の平均結合寿命を生成するために、単一の力で運ばれ得る。力のレベルを変化させ、平均結合寿命及び結合形成の種類の決定を可能にする寿命を記録する。
【0195】
TCRシグナル伝達レポータープラスミドの分子クローニング。LCAG-HBG及びLEG11-NFAT2レンチウイルス発現プラスミドを、前述のスプリット-GFPシステムに基づいて、Gibson Assemblyクローニングによって作製した。EF1α-ERK- KTR-mScarlet又はEF1α-p38-KTR-mScarletレンチウイルス発現ベクターを、Markus Covert lab(Addgene #59150又は#59155)からのERK-KTR-Clover又はp38-KTR-mCerulean3プラスミドに基づくGibson Assemblyクローニングにより生成した。
【0196】
Jurkat ERK及びp38-NFAT2レポーター細胞株。GFP1-10発現を有する生細胞核マーカーを作製するために、Jurkat細胞株に、LCAG-HBGレンチウイルス発現ベクターを形質導入した。安定したH2B-tBFP+Jurkat細胞をFACS選別によって単離し、LE-EKSレンチウイルス発現ベクターを形質導入した。次いで、安定したERK-KTR-mScarlet+Jurkat細胞をFACS選別により単離して、ERKレポーター細胞株を作製した。p38-NFAT2レポーター細胞株を作製するために、H2B-tBFP+Jurkat細胞に、LE-38KS及びLEG11-NFAT2レンチウイルス発現ベクターを形質導入した。安定したp38-KTR-mScarlet+及びGFP1-11-NFAT2+Jurkat細胞を、FACS選別により単離した。
【0197】
生細胞共焦点顕微鏡法。生細胞蛍光タイムラプスイメージングデータを、63倍のNA 1.4油対物レンズ(Biological Imaging Section,Research Technologies Branch,NIAID)を備えたLeica SP8顕微鏡を使用して収集した。ガラス底8ウェルイメージングチャンバを、4℃で一晩ポリD-リジンでコーティングし、PBSで2回洗浄した。細胞を、5%のCOで加熱した37℃の環境で撮像した。イメージングデータは、Imaris Cellモジュール、カスタマイズされたバッチ分析及びTranslocQパイプラインにより処理された。
【0198】
BATTLES。熱応答性「スマートビーズ」(直径約47μm)を産生するために、N-イソプロピルアクリルアミド(NIAPM、9.2%w/v)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA、MW=700、2.8437%v/v)、ランタニドナノ蛍光体、アクリル酸ナトリウム(1M、5.5%v/v)、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネートリチウム(LAP、39.2mg/mL、2.5%v/v)の混合物を生成した。次いで、この混合物と、2%のイオン性Krytox 157 FSH界面活性剤及び0.05%v/vアクリル酸を含むフッ素化HFE7500油懸濁液とをマイクロ流体液滴生成器に注入して、後に100%の振幅(ランプから7”離れた、電力=約50~60mW/cm2)の投光UV照明(IntelliRay、UV0338)下で2分間固体ビーズに重合させた、油中水型液滴を産生した(48)。重合後、カルボキシル化された「スマートビーズ」を、2mLのジメチルホルムアミドで20秒間、2mLのジクロロメタンで10秒間、及び2mLのメタノールで20秒間洗浄した後、1mLのPBST緩衝液に再懸濁した。ストレプトアビジンで「スマートビーズ」をコーティングするために、エンドオーバーエンド回転子(10rpm)上で、室温で3.5時間、0.01%(v/v)のTween-20を補充した400μLの0.1MのMES緩衝液(pH=4.5)中1%w/vのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)で約200,000個のビーズを事前に活性化した。ビーズを沈降させ、0.01%(v/v)のTween-20を補充した1mLの0.1Mのホウ酸緩衝液(pH=8.5)で洗浄し、その後、400μLの同じ緩衝液に再懸濁した。次いで、16μLのストレプトアビジン溶液(1mg/mLで1倍のPBSに溶解)を混合物に添加し、混合物を4℃で一晩回転させた。翌日、混合物に0.1Mのホウ酸緩衝液(pH=8.5)中0.25Mのエタノールアミン10μLを添加し、4℃で30分間回転させることによって、コンジュゲーション反応をクエンチした。最終産物をPBST緩衝液で3回洗浄し、200μLの同じ緩衝液に再懸濁し、更なる使用のために4℃で保管した。pMHC官能化「スマートビーズ」を、50μLのPBST緩衝液中の約20,000のストレプトアビジン「スマート」ビーズと10nMのビオチン-pMHCの0.5μLとを混合することによって生成した。次いで、PDMSマイクロウェルアレイ(1440ウェル)を使用して、pMHCコーティングされたビーズ及びカルシウム色素(Cal-250、2μM)染色されたT細胞を共局在化した。ビーズ関連T細胞に機械的負荷を加えるために、チップを加熱し、37℃で1分間維持し、次いで冷却し、34℃で2分間保持した。冷却直後、4秒間隔で合計150枚のCa2+蛍光画像を取得した。単一のT細胞の統合されたCa2+シグナルを、ImageJ及び特注のMATLAB(登録商標)コードにより分析した。
【0199】
酵母表示HLA-A1-ペプチドライブラリ。酵母表示HLA-A1ペプチドライブラリを、前述のプロトコルと同様に生成した。HLA-A1-ペプチドを発現するために、リンカーによって接続されたペプチドライブラリ、b-2-ミクログロブリン(b2M)及びA1重鎖の一本鎖フォーマットを、N末端でAga2に融合させた。A1重鎖は、MHC溝の末端で開口部を可能にするY84A変異を含み、リンカーは、ペプチドをb2Mと接続することができる。ペプチドライブラリについて、P3及びP9を、限られた多様性:アスパラギン酸又はグルタマートとしてのP3、チロシンのみとしてのP9を有するアンカー残基として設定した。ペプチドライブラリの他の位置について、NNKコドンを使用して、20個全てのアミノ酸を可能にした。ペプチドライブラリを、PCRを介して増幅してpMHC-Aga2インサートの一本鎖を生成した短いヌクレオチドプライマーとして合成した。酵母表示HLA-A1-ペプチドライブラリを生成するために、コンピテントなEBY-100酵母細胞を、pMHC-Aga2ライブラリインサート及び線形pYALベクターでエレクトロポレーションした。pMHC-Aga2ライブラリインサートを、相同組換えを介して、酵母細胞内のpYALベクターにライゲーションした。最初の酵母ライブラリを1:10,000、1:1,000、1:100、及び1:10でプレーティングすることによって、ライブラリサイズを、1.8×10の機能的多様性を有するように計算した。酵母ライブラリを、SDCAA pH4.5培地中で成長させた。次いで、酵母ライブラリを、SGCAA pH4.5培地中で成長させることによって、pMHCライブラリタンパク質を発現させるように誘導した。
【0200】
酵母表示HLA-A1-ペプチドライブラリの選択。酵母表示HLA-A1-ペプチドライブラリを、ビオチン化TCRタンパク質でコーティングされたストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズで選択した。各ラウンドの選択に使用される酵母細胞の数は、最後の選択ステップの多様性より10倍高くするべきである(ラウンド1は、ナイーブライブラリ多様性の10倍の酵母細胞数を使用すべきである)。酵母ライブラリを、最初に10mLのPBE緩衝液(PBS+0.5%のFBS+1mMのEDTA)中の250μLのストレプトアビジン磁気ビーズとともにインキュベートし、4℃で1時間回転させて、負の選択を行い、ストレプトアビジン磁気ビーズへの非特異的結合を除去した。インキュベーション後、酵母-ビーズ混合物をLSカラム(Miltenyi)に通し、PBE緩衝液で3回洗浄し、全てのフロースルーを収集した。TCRタンパク質でコーティングされたストレプトアビジン磁気ビーズを、4℃で15分間、4.7mLのPBE緩衝液中で400nMのビオチン化TCR単量体と250μLのストレプトアビジンビーズとを混合することによって調製した。フロースルーをTCRビーズとともに、回転子上で4℃で3時間インキュベートした。酵母細胞を洗浄し、5000gで1分間ペレット化した。酵母細胞を5mLのPBE緩衝液に再懸濁し、LSカラムに通し、PBE緩衝液で3回洗浄した。フロースルーを廃棄した。カラム中の細胞を5mLのPBE緩衝液によって溶出させ、ペレット化した。ペレットをSDCAA培地で1回洗浄し、3mLのSDCAA培地に再び再懸濁して、一晩成長させた。ODが2を超える場合、次の選択ラウンドの前の2~3日間、SGCAA中で酵母細胞を誘導した。酵母ライブラリを、選択の各ラウンドの後、特異的TCR四量体及び抗Myc抗体で染色した。TCR単量体及びストレプトアビジン-A647を5:1の比で混合することによって、最終濃度400nMでTCR四量体を調製した。100,000個の酵母細胞を、TCR四量体及び2μLの抗c-Myc-488抗体(9402S、細胞シグナル伝達)で200μLの緩衝液中で染色した。FACSプロットを、SGCAAによって誘導された酵母細胞に基づいてゲーティングし、ストレプトアビジン-A647で染色した。500μLのPBE中のTCRの有無にかかわらず、50μLのストレプトアビジンコーティングされたビーズのみを使用して、負及び正の選択に対して行われた修飾のみを有する、10×10の酵母で更なる選択のラウンドを繰り返した。
【0201】
ディープシーケンシング。5000万個の酵母細胞から各ラウンドの選択のために、酵母DNAを、Zymoprep IIキット(Zymo Research)によって抽出した。各DNA試料について最初にバーコード化PCRを行った。PCR産物をゲル抽出によって精製した。Illumina PCR産物をnanodropによって定量化した。40μLの8nMの溶液を得るために必要な各Illumina PCR産物及び水の量を計算し、等分し、一緒に混合した。低多様性ライブラリのために、Illumina V2 2x300サイクルキットを製造業者のプロトコルに従って使用した。
【0202】
ディープシーケンシングデータの分析及び酵母選択からの野生型ペプチドの予測。配列決定結果を最初にPANDASEQにより対合した。次いで、対合した配列をGeneiousソフトウェアにインポートして、各ラウンドの選択のバーコードを解析した。独自のペプチドを配列からトリミングし、アミノ酸の頻度を以前に使用した特注Perlスクリプトによって計数した。各TCRの野生型ペプチドを予測するために、ラウンド3の選択からのペプチドに基づいて位置頻度マトリックスを決定した。ヒトプロテオームデータにおける9-merペプチドをスコア化するために、10超計数された独自のペプチドを使用して、位置重みマトリックス(PWM)を生成した。次いで、個々のTCR選択からの各PWMを使用して、ヒトプロテオームからの野生型ペプチドを予測した。使用されたHomo sapiensプロテオームは、UniProtKB(Proteome ID UP000005640;2020年6月更新)からのものであった。Pythonは、重み付けされた位置頻度マトリックスのアルゴリズム及び参照プロテオームのランク付けに使用された。
【0203】
予測される野生型ペプチドのスクリーニング。TCR A3A、94a-14、20a-18、94a-30について上位20個の予測される野生型ペプチドを合成し、反復ペプチドを除去した後、59個の異なるペプチドが一緒に存在した。MAGE-A12は、以前の研究で交差反応性であることが示されたため、HLA-A1制限MAGE-A12ペプチドも合成し、試験した。合計60個の異なる野生型ペプチドを使用して、異なるTCRの活性をスクリーニングした。簡潔に述べると、96ウェルプレートの各ウェルにおいて、37℃、5%のCOで3時間、100,000個の293-A1細胞を異なる野生型ペプチドでパルスした。次いで、293-A1細胞を完全なRPMIで洗浄して、過剰なペプチドを除去した。異なるTCRを発現する100,000個のSKW3細胞を各ウェルに添加し、37℃、5%のCOで14時間共培養した。細胞の抗CD69-APC及び抗TCR-BV421染色を氷上で行い、フローサイトメーターで分析した。MAGE-A3、タイチン、MAGE-A6、及びFAT2ペプチドの用量応答を行うために、96ウェルプレートの各ウェルにおいて、37℃、5%のCOで3時間、100,000個のHLA-A1細胞を滴定したペプチドでパルスした。次いで、293-A1細胞を完全なRPMIで1回洗浄して、過剰なペプチドを除去した。異なるTCRを発現する100,000個のSKW3細胞を各ウェルに添加し、37℃、5%のCOで14時間共培養した。細胞の抗CD69-APC及び抗TCR-BV421染色を氷上で行い、フローサイトメーターで分析した。
【0204】
全てのデータは、図の凡例、結果、及び方法の詳細に記載されている、平均値±標準偏差(SD)(技術的反復の場合)又は平均値±標準誤差(SEM)(生物学的反復の場合)として表される。nの正確な値及びnが表すもの(例えば、細胞数、単一分子リガンド結合事象、又は実験的反復)は、図の凡例及び結果に記載される。滞留時間測定値(方法の詳細及び以下)を除く全てのデータをプロットし、Prismで分析した。
【0205】
前述した内容は、本発明の原理を単に例示しているに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本発明の原理を具現化し、その精神及び範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解される。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、かかる具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図している。加えて、かかる同等物は、現在知られている同等物及び将来開発される同等物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示及び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
【0206】
配列
WT(配列番号1、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTDSAIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIQSSQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0207】
A3A(配列番号2、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTDSAIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLVRPYQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0208】
20a-18(配列番号3、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTHSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSNQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0209】
20a-5(配列番号4、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTGSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSNQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0210】
20a-新規12(配列番号5、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTHSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSRQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0211】
27a-5(配列番号6、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTGSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSEQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0212】
29a-7(配列番号7、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTGSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSDQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0213】
68a-2(配列番号8、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTNSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSDQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0214】
94a-14(配列番号9、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTGSSIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSSQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0215】
94a-30(配列番号10、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTKSEIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSSQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0216】
68a-38(配列番号11、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTKSNIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSDQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0217】
68a-新規9(配列番号12、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTNSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIQSHQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0218】
(配列番号13、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTHSHIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIHSHQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS 94a-1(配列番号:13)
【0219】
94-10(配列番号14、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTSSGIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSDQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0220】
20a-5(配列番号15、シグナル配列を含む)
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTNSGIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIRSSQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPGGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0221】
配列番号16、シグナル配列を含む
MGSRLLCWVLLCLLGAGPVKAGVTQTPRYLIKTRGQQVTLSCSPISGHRSVSWYQQTPGQGLQFLFEYFSETQRNKGNFPGRFSGRQFSNSRSEMNVSTLELGDSALYLCASSPNMADEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSR
【0222】
TCR55アルファ鎖。Ala98ホットスポットを、D、E、F、Q、Y、及びHに変異させて、B35-HIVによってTCR55を活性化させることができる。配列番号17
MLFSSLLCVFVAFSYSGSSVAQKVTQAQSSVSMPVRKAVTLNCLYETSWWSYYIFWYKQLPSKEMIFLIRQGSDEQNAKSGRYSVNFKKAAKSVALTISALQLEDSAKYFCALGEGGAQKLVFGQGTRLTINPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
【0223】
TCR55ベータ鎖。Ala50ホットスポットをD、E、F、H、N、Q、S、T及びYに変異させて、B35-HIVによってTCR55を活性化させることができる。配列番号18
MSIGLLCCVAFSLLWASPVNAGVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHNSMYWYRQDPGMGLRLIYYSASEGTTDKGEVPNGYNVSRLNKREFSLRLESAAPSQTSVYFCASRTRGGTLIEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSR
【0224】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月8日に出願された米国仮特許出願第63/158,131号の利益及び優先権を主張し、その全開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0225】
テキストファイルとして提供される配列表の参照による組み込み
配列表は、2022年3月1日に作成され、56,000バイトのサイズを有するテキストファイル(STAN-1832WO_SEQ_LIST_ST25.txt)で本明細書とともに提供される。テキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0226】
連邦政府による資金提供の記載
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された契約5R01AI103867下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図14J
図14K
図14L
図14M
図14N
図14O
図14P
図15A
図15B
図15C
図15D-1】
図15D-2】
図15E-1】
図15E-2】
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図16I
図16J
図16K
図16L
図16M
図16N
図16O
図16P
図16Q
図16R
図16S
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
【図
【配列表】
2024512380000001.app
【国際調査報告】