(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】汎発型膿疱性乾癬における抗IL-36R抗体による処置に関連したバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240312BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240312BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240312BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240312BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240312BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/50 P
G01N33/53 D
C12Q1/06
C12Q1/6869 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555168
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022019742
(87)【国際公開番号】W WO2022192531
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ファラグ,アハメド・カリム
(72)【発明者】
【氏名】バウム,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスヴァナサン,スダー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
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(57)【要約】
本発明は一般的に、汎発型膿疱性乾癬(GPP)における、抗IL-36R抗体による処置に関連したバイオマーカーに関する。本発明はまた、開示されているバイオマーカーの使用法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)患者から生物学的試料を得る工程;
b)該試料中で、1つ以上のバイオマーカーのレベル、又は1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;
c)該レベルを、バイオマーカーのレベルの対照値と比較する工程;及び
d)試料のレベルと対照のレベルの差が、患者における有益な応答を反映するか否かを決定する工程
を含む、抗インターロイキン-36受容体抗体(抗IL-36R抗体)の投与後の患者における有益な応答の有無を検出するための方法であって、ここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発プロセス(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発生(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含む。
【請求項2】
前記の1つ以上のバイオマーカーの遺伝子又はタンパク質のレベルが測定される、請求項1の方法。
【請求項3】
患者が、汎発型膿疱性乾癬(GPP)に罹患している、請求項1~2のいずれか一項の方法。
【請求項4】
対照値が、GPPを患っていない被検者に由来する試料を使用して計算される、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
対照値が、既知のGPP患者に由来する試料を使用して決定される、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項6】
対照値が、患者から採取された少なくとも1つの以前の試料を使用して決定される、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項7】
生物学的学試料が、皮膚生検材料、血液、血漿、又は血清の試料である、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項8】
抗IL-36R抗体がスペソリマブである、請求項1~8のいずれか一項の方法。
【請求項9】
バイオマーカーのレベルが、RNAシークエンス又はELISA及び免疫組織化学的検査によって決定される、請求項1~9のいずれか一項の方法。
【請求項10】
試料のレベルと対照のレベルの差が、患者における有益な応答を反映する場合、患者へのIL-36Rアンタゴニストの投与を継続する工程をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
a)治療剤候補で処置する前にGPP患者から第一の生物学的試料を得る工程;
b)GPP患者を、治療剤候補で処置する工程;
c)治療剤候補で処置した後にGPP患者から第二の生物学的試料を得る工程;
d)前記の第一及び第二の試料中で、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;及び
e)第二の試料中のバイオマーカーのレベルを、第一の試料中のレベルと比較する工程
を含む、治療剤候補が、GPPの処置において有効であるかどうかを決定する方法であって、ここで第一試料中と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの(例えばより低い又はより高い)変化は、治療剤候補が有効であり、さらにここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発プロセス(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発生(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子を含む。
【請求項12】
第一の試料中と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの(例えばより低い又はより高い)変化は、臨床有効性尺度の改善に相関する、請求項12記載の方法。
【請求項13】
第二の試料中のバイオマーカーレベルが、第一の試料と比較して変化する(例えばより高い又はより低い)場合に、患者の処置を継続する工程をさらに含む、請求項12又は13記載の方法。
【請求項14】
a)請求項1~13のいずれかの方法に基づいて、被検者の処置を開始するかどうか、処置の用量を改変するかどうか、投薬間隔を改変するかどうか、又は処置を中止するかどうかを決定する工程;及び
c)決定に基づいて処置レジメンを改変する工程
を含む、被検者におけるGPPを処置する方法。
【請求項15】
a)患者から第一の生物学的試料を得る工程;
b)前記の第一の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーレベルを測定する工程(ここでの、1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発プロセス(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発生(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含む);
c)患者に処置化合物を投与する工程;
d)患者から第二の生物学的試料を得る工程;
e)前記の第二の生物学的試料中の前記の1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程;及び
f)第一及び第二の生物学的試料から得られた1つ以上のバイオマーカーのレベルを比較する工程
を含む、GPP処置に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、ここで第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーレベルの変化(例えば高い、低い)は、有効な応答を示す、該方法。
【請求項16】
a)前記患者から生物学的試料を得る工程;
b)1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程(ここでの、1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発プロセス(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発生(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含む);及び
c)患者の試料中のレベルが、対照の未処置の試料中のレベルと比較して変化しているかどうかを決定する工程
を含む、患者によるGPPの薬物処置プロトコールの遵守をモニタリングするための方法であって、ここでの減少したレベルは、患者による該薬物処置プロトコールの遵守を示す、該方法。
【請求項17】
第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルが、第一の生物学的試料中のレベルと比較して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%、又はそれ以上減少する、請求項15~17のいずれか一項の方法。
【請求項18】
前記生物学的試料が、皮膚生検材料、血液、血漿、又は血清の試料である、請求項15~17のいずれか一項の方法。
【請求項19】
抗IL-36R抗体がスペソリマブである、請求項15~17のいずれか一項の方法。
【請求項20】
バイオマーカーのレベルが、RNAシークエンス又はELISA及び免疫組織化学検査によって決定される、請求項15~17のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は配列表を含み、これはASCII形式で電子的に提出され、これはその全体が参照によりここに組み込まれる。2022年3月1日に作成された前記ASCIIのコピーは、09-0718-WO-1-2022-3-10-SL.txtと命名され、146,122バイトのサイズである。
【0002】
発明の技術分野
本発明は一般的に、汎発型膿疱性乾癬(GPP)における抗IL-36R抗体による処置に関連したバイオマーカーに関する。より具体的には、本発明は、GPPにおけるスペソリマブによる処置に関連したバイオマーカーに関する。本発明はまた、本明細書に開示されたバイオマーカーの使用法にも関する。
【0003】
発明の背景
膿疱性乾癬は、再発性又は持続性の痛みを伴う好中球性の無菌の膿疱の噴出を伴う、一連の重度の慢性又は再発性の炎症性皮膚容態を含む。膿疱性乾癬患者は、異なる臨床表現型を呈し得、認識されている優勢なサブタイプは汎発型膿疱性乾癬(GPP)である。GPPは、肉眼で見える膿疱の広範な噴出の発症によって特徴付けられる希少な疾患であり、全身的炎症を伴い得る。それは有意な罹患率を伴い、適切な処置を受けなければ生命を脅かし得る。
【0004】
GPPにおけるいくつかの研究は、皮膚病変におけるインターロイキン-36(IL-36)の過剰発現、及びIL-36受容体(IL-36R)アンタゴニストをコードしている遺伝子の機能欠失型突然変異(IL36RN)、並びに、IL-36経路と機能的に関連した他の遺伝子、とりわけ、すなわちCARD14、APS1S3、及びSERPINA3の突然変異を報告している。IL36RNの突然変異は、IL-36受容体アンタゴニストの正常な機能を改変させ、これにより、IL-36α、IL-36β及びIL-36γに対する不均衡な競合的結合に起因する、IL-36R経路の阻害の低減に至る。これは次いで、下流の炎症カスケードの誘導、並びに、他の自然免疫細胞及び適応免疫細胞に加えて、好中球の動員をもたらす。IL36RNの突然変異は、GPP患者の10~82%に報告され、異常なIL36RNの突然変異を有するGPP患者においてより早期の年齢における発症が記載されている。さらに、IL-36Raタンパク質の発現及び調節機能に対する様々なIL36RNの突然変異の影響を調べる研究は、ヌル突然変異がGPPに優先的に関連している傾向があり、一方、低形質の突然変異がGPPに見られたことを示した。
【0005】
GPPにおけるIL-36系の重要な役割はさらに、GPP病変の発病におけるIL-17A、IL-23、腫瘍壊死因子(TNF)、IL-1、IL-36及び1型インターフェロンの有意な寄与を実証している研究によって支持される。未調節の遺伝子の中で、IL-1及びIL-36に関連した転写物の優勢が報告された。さらに、好中球性膿疱に近い角化細胞におけるIL-36α及びIL-36γの強力な発現も、GPP病変において検出されている。
【0006】
全体的に、IL-36Rシグナル伝達の遮断が、GPP患者にとって好ましい標的化治療アプローチであることを示唆する十分なエビデンスが存在する。以前、概念実証第I相多施設単群オープンラベル試験(ClinicalTrials.gov 識別番号:NCT02978690)における、新規なヒト化抗IL-36Rモノクローナル抗体であるスペソリマブの10mg/kgの1回の静脈内用量を用いたIL-36Rシグナル伝達の遮断は、急性GPPのフレアを呈する患者における、迅速な皮膚の透明化及び膿疱の消失を示した。しかしながら、GPPの発病を駆り立てる炎症回路及び細胞性相互作用はまだ完全に解明されておらず、これらがIL-36Rの遮断によって妨害される機序は不明である。
【0007】
それ故、GPPに対する処置の選択肢の有効性を追跡し、GPPにおいてこれらの処置から最も恩恵を受けるであろう患者を同定し、必要とされ得るような患者の治療の用量を決定及び調整するための、改善された手段が必要である。
【0008】
発明の要約
本発明は、上記の必要性に対処し、汎発型膿疱性乾癬(GPP)における抗IL-36R抗体による処置に関連したバイオマーカーを提供する。
【0009】
1つの実施態様では、本発明は、a)患者から生物学的試料を得る工程;b)該試料中で、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;c)該レベルを、バイオマーカーのレベルの対照値と比較する工程;及びd)試料のレベルと対照のレベルの差が、患者における有益な応答を反映するか否かを決定する工程を含む、抗インターロイキン-36受容体抗体(抗IL-36R抗体)(例えばスペソリマブ)の投与後の患者における有益な応答の有無を検出するための方法を提供し、ここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)における遺伝子/タンパク質を含む。関連した実施態様では、1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。
【0010】
1つの実施態様では、患者における有益な応答の有無は、抗IL-36R抗体又はスペソリマブの投与前後に検出される。
【0011】
1つの実施態様では、対照値は、プラセボで処置された患者の数値である。1つの実施態様では、対照値は、プラセボで処置された患者の数値であり、差は、抗IL-36R抗体すなわちスペソリマブ及びプラセボで処置された患者に由来する試料間の差である。
【0012】
1つの実施態様では、前記の1つ以上のバイオマーカーの遺伝子又はタンパク質のレベルが測定される。1つの実施態様では、患者はGPPを患っている。
【0013】
1つの実施態様では、対照値は、GPPを患っていない被検者に由来する試料を使用して計算される。1つの実施態様では、対照値、例えばプラセボ値は、既知のGPP患者、例えばプラセボで処置されたGPP患者に由来する試料を使用して決定される。1つの実施態様では、対照値は、患者から採取された少なくとも1つの以前の試料を使用して決定される。
【0014】
1つの実施態様では、前記方法はさらに、試料のレベルと対照のレベルの差が、患者における有益な応答を反映する場合、患者に抗IL-36R抗体の投与を継続する工程を含む。1つの実施態様では、該方法はさらに、抗体で処置された患者のレベルとプラセボで処置された患者のレベルの差が、患者における有益な応答を反映する場合、患者に抗IL-36R抗体の投与を継続する工程を含む。
【0015】
さらなる実施態様では、本発明は、a)治療剤候補で処置する前に、GPP患者から第一の生物学的試料を得る工程;b)GPP患者を、治療剤候補で処置する工程;c)治療剤候補で処置した後に、GPP患者から第二の生物学的試料を得る工程;d)前記の第一及び第二の試料中で、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;及びe)第二の試料中のバイオマーカーのレベルを、第一の試料中のレベルと比較する工程を含む、治療剤候補が、GPPの処置において有効であるかどうかを決定する方法を提供し、ここで、第一試料中と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの変化は、治療剤候補が有効であることを示し、さらにここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)における遺伝子を含む。関連した実施態様では、1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。
【0016】
1つの実施態様では、前記の工程e)は、第二の試料中のバイオマーカーレベルを、第一の試料中のレベルと比較する工程を含み、ここでの第一の試料と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの変化、及び、臨床有効性尺度、例えばGPP症例ではGPPASI(汎発型膿疱性乾癬の乾癬面積及び重症度指数)スコアの改善との相関は、治療剤候補が有効であることを示す。
【0017】
1つの実施態様では、前記方法はさらに、第一の試料と比較して第二の試料中のバイオマーカーレベルが変化した(例えばより高い又はより低い)場合、患者の処置を継続する工程を含む。
【0018】
さらなる実施態様では、本発明は、前の請求項のいずれかの方法に基づいて、被検者の処置を開始するかどうか、処置の用量を改変するかどうか、投薬間隔を改変するかどうか、又は処置を中止するかどうかを決定する工程を含む、被検者におけるGPPを処置する方法を提供する。
【0019】
さらなる実施態様では、本発明は、
a)患者から第一の生物学的試料を得る工程;
b)前記の第一の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーレベルを測定する工程(ここでの、1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)における遺伝子/タンパク質を含むか、あるいは、ここでの前記の1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む);
c)患者に処置化合物を投与する工程;
d)患者から第二の生物学的試料を得る工程;
e)前記の第二の生物学的試料中の前記の1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程;
f)第一及び第二の生物学的試料から得られた1つ以上のバイオマーカーのレベルを比較する工程
を含む、GPP処置に対する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、ここでの第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの変化は、有効な応答を示す。1つの態様では、第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの変化、及び、臨床有効性尺度、例えばGPP症例におけるGPPASIスコアの改善との相関は、有効な応答を示す。
【0020】
さらなる実施態様では、本発明は、
a)前記患者から生物学的試料を得る工程;
b)1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程(ここでの、1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角質細胞の活性化、分化、及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)における遺伝子/タンパク質を含むか、あるいは、ここでの前記の1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む);及び
c)対照の未処置の試料のレベルと比較した、患者の試料中のレベルが変化しているかどうかを決定する工程
を含む、患者によるGPPのための薬物処置プロトコールの遵守をモニタリングするための方法を提供し、ここでのレベルの変化は、患者による該薬物処置プロトコールの遵守を示す。
【0021】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、第一の生物学的試料中のレベルと比較して、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%以上変化している。
【0022】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、生物学的試料は、皮膚生検材料、血液、血漿、又は血清の試料である。1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、抗IL-36R抗体はスペソリマブである。1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、バイオマーカーのレベルは、RNAシークエンス又はELISA又は別のタンパク質アッセイによって決定される。1つの実施態様では、該バイオマーカーは、皮膚において発現差のある遺伝子である。
【0023】
1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本明細書に開示された方法を使用して、患者を選択する方法を提供する。1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本発明の方法を使用して、抗IL-36R抗体を用いての処置後に、有益な応答を示すと期待される患者について、患者集団を強化する方法を提供する。1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本発明の方法を使用して、抗IL-36R抗体を用いての処置前又は処置後早期に、有益な応答を示すと期待される患者について、患者集団を強化する方法を提供する。
【0024】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、以下に開示されている通りである。
【0025】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号35、102、103、104、105、106、又は140のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110、又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域を含む。
【0026】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
I.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号102のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
II.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号103のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
III.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号104のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
IV.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号105のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
V.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号106のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
VI.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号140のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域
を含む。
【0027】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(ii)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(iii)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(iv)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(v)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(vi)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(vii)配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(viii)配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(ix)配列番号86のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(x)配列番号86のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む。
【0028】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
i.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
ii.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
iii.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
iv.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
v.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
vi.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
vii.配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
viii.配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号139のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
ix.配列番号124のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む。
【0029】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体はスペソリマブ、抗体B1、抗体B2、抗体B3、抗体B4、抗体B5、抗体B6、抗体C1、抗体C2、又は抗体C3である。
【0030】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体は、国際公開公報第2013/074569号、国際公開公報第2016/168542号、又は国際公開公報第2020/018503号に開示されているような抗体であり、その各々の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0031】
別の実施態様では、本発明は、GPP患者に由来する生物学的試料を含む組成物に関し、1つ以上のバイオマーカーの有無又はレベルを検出するための薬剤は、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。関連した実施態様では、該薬剤は、例えば、表1及び2に列挙されたバイオマーカーのいずれかに対する抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】
図1は、スペソリマブを用いての処置後の、GPP皮膚病変において発現差を有する遺伝子(DEG)を示す。パネル(A)は、ベースラインの有病変皮膚と比較した、スペソリマブを用いての処置から1週間後の、有病変皮膚間の71個のDEGのヒートマップを示す(変化倍率は2以上、調整済みP値は0.05以下)。パネル(B)は、スペソリマブによる処置が、処置から1週間後に、過剰活性化された経路を反転することを示す。ベースラインにおける有病変皮膚vs無病変皮膚における、及びベースラインと比較した処置から1週間後の有病変皮膚における、DEGのIngenuityパスウェイ解析。パネル(C)は、経路/プロセスの代表的なマーカー遺伝子の改善率を示す(
*Pは0.05以下)。BL、ベースライン;DEG、発現差を有する遺伝子;FCH、変化倍率;GPP、汎発型膿疱性乾癬;L、有病変;NL、無病変。
【
図1AA】
図1は、スペソリマブを用いての処置後の、GPP皮膚病変において発現差を有する遺伝子(DEG)を示す。パネル(A)は、ベースラインの有病変皮膚と比較した、スペソリマブを用いての処置から1週間後の、有病変皮膚間の71個のDEGのヒートマップを示す(変化倍率は2以上、調整済みP値は0.05以下)。パネル(B)は、スペソリマブによる処置が、処置から1週間後に、過剰活性化された経路を反転することを示す。ベースラインにおける有病変皮膚vs無病変皮膚における、及びベースラインと比較した処置から1週間後の有病変皮膚における、DEGのIngenuityパスウェイ解析。パネル(C)は、経路/プロセスの代表的なマーカー遺伝子の改善率を示す(
*Pは0.05以下)。BL、ベースライン;DEG、発現差を有する遺伝子;FCH、変化倍率;GPP、汎発型膿疱性乾癬;L、有病変;NL、無病変。
【
図1AB】
図1は、スペソリマブを用いての処置後の、GPP皮膚病変において発現差を有する遺伝子(DEG)を示す。パネル(A)は、ベースラインの有病変皮膚と比較した、スペソリマブを用いての処置から1週間後の、有病変皮膚間の71個のDEGのヒートマップを示す(変化倍率は2以上、調整済みP値は0.05以下)。パネル(B)は、スペソリマブによる処置が、処置から1週間後に、過剰活性化された経路を反転することを示す。ベースラインにおける有病変皮膚vs無病変皮膚における、及びベースラインと比較した処置から1週間後の有病変皮膚における、DEGのIngenuityパスウェイ解析。パネル(C)は、経路/プロセスの代表的なマーカー遺伝子の改善率を示す(
*Pは0.05以下)。BL、ベースライン;DEG、発現差を有する遺伝子;FCH、変化倍率;GPP、汎発型膿疱性乾癬;L、有病変;NL、無病変。
【
図1B】
図1は、スペソリマブを用いての処置後の、GPP皮膚病変において発現差を有する遺伝子(DEG)を示す。パネル(A)は、ベースラインの有病変皮膚と比較した、スペソリマブを用いての処置から1週間後の、有病変皮膚間の71個のDEGのヒートマップを示す(変化倍率は2以上、調整済みP値は0.05以下)。パネル(B)は、スペソリマブによる処置が、処置から1週間後に、過剰活性化された経路を反転することを示す。ベースラインにおける有病変皮膚vs無病変皮膚における、及びベースラインと比較した処置から1週間後の有病変皮膚における、DEGのIngenuityパスウェイ解析。パネル(C)は、経路/プロセスの代表的なマーカー遺伝子の改善率を示す(
*Pは0.05以下)。BL、ベースライン;DEG、発現差を有する遺伝子;FCH、変化倍率;GPP、汎発型膿疱性乾癬;L、有病変;NL、無病変。
【
図1C】
図1は、スペソリマブを用いての処置後の、GPP皮膚病変において発現差を有する遺伝子(DEG)を示す。パネル(A)は、ベースラインの有病変皮膚と比較した、スペソリマブを用いての処置から1週間後の、有病変皮膚間の71個のDEGのヒートマップを示す(変化倍率は2以上、調整済みP値は0.05以下)。パネル(B)は、スペソリマブによる処置が、処置から1週間後に、過剰活性化された経路を反転することを示す。ベースラインにおける有病変皮膚vs無病変皮膚における、及びベースラインと比較した処置から1週間後の有病変皮膚における、DEGのIngenuityパスウェイ解析。パネル(C)は、経路/プロセスの代表的なマーカー遺伝子の改善率を示す(
*Pは0.05以下)。BL、ベースライン;DEG、発現差を有する遺伝子;FCH、変化倍率;GPP、汎発型膿疱性乾癬;L、有病変;NL、無病変。
【
図2A】
図2は、GPP皮膚病変におけるスペソリマブを用いての処置後の、免疫組織化学的バイオマーカースコアの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブでの処置後の各患者において、ベースラインから1週目までの、臨床スコア及び免疫組織化学的バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示し;灰色のセルは、欠損値を示す。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置前(ベースライン)及び処置後(1週目及び4週目)の、GPP病変において発現された好中球エラスターゼ、IL-36γ、CD3、CD11c及びリポカリン-2の発現の変化を示す。代表的な組織病理が示されている。BL、ベースライン;D、真皮;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図2B】
図2は、GPP皮膚病変におけるスペソリマブを用いての処置後の、免疫組織化学的バイオマーカースコアの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブでの処置後の各患者において、ベースラインから1週目までの、臨床スコア及び免疫組織化学的バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示し;灰色のセルは、欠損値を示す。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置前(ベースライン)及び処置後(1週目及び4週目)の、GPP病変において発現された好中球エラスターゼ、IL-36γ、CD3、CD11c及びリポカリン-2の発現の変化を示す。代表的な組織病理が示されている。BL、ベースライン;D、真皮;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図3A】
図3は、GPP患者における、スペソリマブを用いての処置後の、血中及び血漿中の末梢バイオマーカーの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブによる処置後1週目(2回目から9回目の来診)、2週目(10回目の来診)、及び4週目(12回目の来診)の間中の、GPP患者(n=7)の血液中の選択された遺伝子の変化を示す(調整済みP値は0.05以下、変化倍率は2倍以上)。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置後の、ベースライン並びに1週目、2週目及び4週目における、血液中のDEGのIngenuityパスウェイ解析を示す。パネル(C)は、スペソリマブによる処置後の、各患者における経時的なベースラインからの臨床スコア及び血清中バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示す。12週目及び20週目において、1人の患者(患者5)はメトトレキサートの投与を受け、レスキュー処置を受けたとして分類された。BL、ベースライン;CPM、100万個あたりの計数;DEG、発現差を有する遺伝子;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図3AA】
図3は、GPP患者における、スペソリマブを用いての処置後の、血中及び血漿中の末梢バイオマーカーの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブによる処置後1週目(2回目から9回目の来診)、2週目(10回目の来診)、及び4週目(12回目の来診)の間中の、GPP患者(n=7)の血液中の選択された遺伝子の変化を示す(調整済みP値は0.05以下、変化倍率は2倍以上)。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置後の、ベースライン並びに1週目、2週目及び4週目における、血液中のDEGのIngenuityパスウェイ解析を示す。パネル(C)は、スペソリマブによる処置後の、各患者における経時的なベースラインからの臨床スコア及び血清中バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示す。12週目及び20週目において、1人の患者(患者5)はメトトレキサートの投与を受け、レスキュー処置を受けたとして分類された。BL、ベースライン;CPM、100万個あたりの計数;DEG、発現差を有する遺伝子;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図3AB】
図3は、GPP患者における、スペソリマブを用いての処置後の、血中及び血漿中の末梢バイオマーカーの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブによる処置後1週目(2回目から9回目の来診)、2週目(10回目の来診)、及び4週目(12回目の来診)の間中の、GPP患者(n=7)の血液中の選択された遺伝子の変化を示す(調整済みP値は0.05以下、変化倍率は2倍以上)。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置後の、ベースライン並びに1週目、2週目及び4週目における、血液中のDEGのIngenuityパスウェイ解析を示す。パネル(C)は、スペソリマブによる処置後の、各患者における経時的なベースラインからの臨床スコア及び血清中バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示す。12週目及び20週目において、1人の患者(患者5)はメトトレキサートの投与を受け、レスキュー処置を受けたとして分類された。BL、ベースライン;CPM、100万個あたりの計数;DEG、発現差を有する遺伝子;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図3B】
図3は、GPP患者における、スペソリマブを用いての処置後の、血中及び血漿中の末梢バイオマーカーの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブによる処置後1週目(2回目から9回目の来診)、2週目(10回目の来診)、及び4週目(12回目の来診)の間中の、GPP患者(n=7)の血液中の選択された遺伝子の変化を示す(調整済みP値は0.05以下、変化倍率は2倍以上)。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置後の、ベースライン並びに1週目、2週目及び4週目における、血液中のDEGのIngenuityパスウェイ解析を示す。パネル(C)は、スペソリマブによる処置後の、各患者における経時的なベースラインからの臨床スコア及び血清中バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示す。12週目及び20週目において、1人の患者(患者5)はメトトレキサートの投与を受け、レスキュー処置を受けたとして分類された。BL、ベースライン;CPM、100万個あたりの計数;DEG、発現差を有する遺伝子;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【
図3C】
図3は、GPP患者における、スペソリマブを用いての処置後の、血中及び血漿中の末梢バイオマーカーの変化を示す。パネル(A)は、スペソリマブによる処置後1週目(2回目から9回目の来診)、2週目(10回目の来診)、及び4週目(12回目の来診)の間中の、GPP患者(n=7)の血液中の選択された遺伝子の変化を示す(調整済みP値は0.05以下、変化倍率は2倍以上)。パネル(B)は、スペソリマブを用いての処置後の、ベースライン並びに1週目、2週目及び4週目における、血液中のDEGのIngenuityパスウェイ解析を示す。パネル(C)は、スペソリマブによる処置後の、各患者における経時的なベースラインからの臨床スコア及び血清中バイオマーカーの変化のヒートマップを示す。赤色のセルは、ベースラインからの100以上の変化率%を示す。12週目及び20週目において、1人の患者(患者5)はメトトレキサートの投与を受け、レスキュー処置を受けたとして分類された。BL、ベースライン;CPM、100万個あたりの計数;DEG、発現差を有する遺伝子;GPP、汎発型膿疱性乾癬;GPPASI、汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数。
【0033】
詳細な説明
様々な重症度のGPP症状が大半の患者において起こり、そして特発性であり得るか、あるいは感染、副腎皮質ステロイドの使用若しくは退薬、ストレス、又は妊娠などの外的刺激によってトリガーされ得る。中等度から重度のGPPは、圧痛、痛みを伴う皮膚病変、極度の疲労、高熱、末梢血好中球増加症、及び急性期の応答、及び敗血症に起因する、有意な罹患率及び死亡率を引き起こす。急性期は、10日間の平均入院期間を伴う(3~44日間の範囲)。マレーシアのジョホールの老人病専門病院で見られた102のGPP症例を用いた遡及的な試験において報告された7%と観察された死亡率は、全てのGPP患者が試験に含まれていたわけではなかったので、過小評価されている可能性がある。死亡率はまた、GPPと死因を同定していないことに起因して過小評価されている可能性があり、これは主に、感染合併症及び皮膚外の臓器の徴候、例えば腎不全、肝不全、呼吸器不全、及び心不全によってもたらされる。処置応答後又は自然にフレアが止まった後、患者の最大50%までが、関節症状も含み得る、持続的な紅斑及び鱗屑によって特徴付けられる慢性的なGPPを患っている可能性があると推定されている。これらの限界に基づいて、現在の治療選択肢は、長期の処置に適しておらず、大半の患者において持続した応答を提供しない。von Zumbuschによって記載のようなGPPのフレアの古典的症状は、IL-36Rのシグナル伝達経路の多形に強く相関している。内因性IL36RアンタゴニストをコードしているIL36RN遺伝子の機能欠失型突然変異(IL-36RN)を有する個体は、劇的により高いGPPの発症率を有し、このことは、IL36RN拮抗作用の異常に起因するIL36のシグナル伝達の未制御のアップレギュレーションが、GPPに観察される炎症の発症をもたらすことを示す。遺伝子ヒト研究は、未制御のIL36Rシグナル伝達をもたらす、IL36RNの機能欠失型突然変異を有する家族におけるGPPクラスターの発生を実証した。CARD14などのIL36経路に連関した他の遺伝子の突然変異も、GPPをもたらす。さらに、近年のメタ解析は、233個の公開されているGPP症例を調べた。彼らは、233中49(21.0%)の症例が、劣性IL36RN対立遺伝子を有していたことを発見した。そうした49個の劣性IL36RN対立遺伝子は、全身的炎症の早期発症及び高いリスクによって特徴付けられる、GPP表現型を規定した。
【0034】
前記されているように、IL-36Rシグナル伝達の遮断が、GPP患者にとって好ましい標的化治療アプローチであることを示唆する十分なエビデンスが存在する。以前、概念実証第I相多施設単群オープンラベル試験(ClinicalTrials.gov 識別番号:NCT02978690)における、新規なヒト化抗IL-36Rモノクローナル抗体であるスペソリマブの10mg/kgの1回の静脈内用量を用いたIL-36Rシグナル伝達の遮断が、急性GPPのフレアを呈する患者において迅速な皮膚の透明化及び膿疱の消失を示した。しかしながら、GPPの発病を駆り立てる炎症回路及び細胞性相互作用はまだ完全に解明されておらず、これらがIL-36Rの遮断によって妨害される機序は不明である。これを調べるために、GPP患者の皮膚生検材料に由来する分子プロファイルを調べ、健康な試験志願者のそれと比較した。さらに、前記の臨床試験に参加しているGPP患者におけるスペソリマブによる処置後の血液及び皮膚における組織病理学的及びタンパク質発現プロファイルを調べ、本明細書において報告している。
【0035】
それ故、本発明は、GPPにおける抗IL-36R抗体(例えばスペソリマブ)による処置に関連したバイオマーカーを提供する。
【0036】
1つの実施態様では、本発明は、a)患者から生物学的試料を得る工程;b)該試料中で、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;c)該レベルを、バイオマーカーのレベルの対照値と比較する工程;及びd)試料のレベルと対照のレベルの差が、患者における有益な応答を反映するか否かを決定する工程を含む、抗インターロイキン-36受容体抗体(抗IL-36R抗体)の投与後の患者における有益な応答の有無を検出するための方法を提供し、ここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含む。関連した実施態様では、1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。
【0037】
1つの実施態様では、患者における有益な応答の有無は、抗IL-36R抗体又はスペソリマブの投与前及び投与後に検出される。
【0038】
1つの実施態様では、対照値は、プラセボで処置された患者の数値である。1つの実施態様では、対照値は、プラセボで処置された患者の数値であり、差は、抗IL-36R抗体又はスペソリマブ及びプラセボで処置された患者の試料間の差である。
【0039】
1つの実施態様では、前記の1つ以上のバイオマーカーの遺伝子又はタンパク質のレベルが測定される。1つの実施態様では、患者はGPPを患っている。
【0040】
1つの実施態様では、対照値は、GPPを患っていない被検者に由来する試料を使用して計算される。1つの実施態様では、対照値、例えばプラセボ値は既知のGPP患者、例えばプラセボで処置されたGPP患者に由来する試料を使用して決定される。1つの実施態様では、対照値は、患者から採取された少なくとも1つの以前の試料を使用して決定される。
【0041】
1つの実施態様では、前記方法はさらに、試料のレベルと対照のレベルの差が患者における有益な応答を反映している場合、患者への抗IL-36R抗体の投与を継続する工程を含む。1つの実施態様では、該方法はさらに、抗体vsプラセボで処置された患者のレベルの差が、患者における有益な応答を反映する場合、患者への抗IL-36R抗体の投与を継続する工程を含む。
【0042】
さらなる実施態様では、本発明は、a)治療剤候補で処置される前に、GPP患者から第一の生物学的試料を得る工程;b)治療剤候補でGPP患者を処置する工程;c)治療剤候補で処置された後に、GPP患者から第二の生物学的試料を得る工程;d)前記の第一及び第二の試料中で、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを測定する工程;及びe)第二の試料中のバイオマーカーレベルを、第一の試料中のレベルと比較する工程を含む、治療剤候補がGPPの処置に有効であるかどうかを決定する方法を提供し、ここでの第一の試料と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの変化(例えばより低い又はより高い)は、治療剤候補が有効であることを示し、さらにここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子を含む。関連した実施態様では、1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。1つの実施態様では、前記の工程e)は、第二の試料中のバイオマーカーレベルを、第一の試料中のレベルとを比較する工程を含み、ここでの第一の試料と比べた第二の試料中のバイオマーカーレベルの変化(例えばより低い又はより高い)及び臨床有効性尺度、例えばGPP症例ではGPPASIスコアの改善との相関は、治療剤候補が有効であることを示す。1つの実施態様では、前記方法はさらに、第一の試料と比較して、第二の試料中のバイオマーカーレベルが変化する(例えばより高い又はより低い)場合、患者の処置を継続する工程を含む。
【0043】
さらなる実施態様では、本発明は、a)被検者の処置を開始するかどうか、処置の用量を改変するかどうか、投薬間隔を改変するかどうか、又は処置を中止するかどうかを、以前の請求項のいずれかの方法に基づいて決定する工程;及びb)決定に基づいた処置のレジメンを改変する工程を含む、被検者におけるGPPを処置する方法を提供する。
【0044】
さらなる実施態様では、本発明は、
a)患者から第一の生物学的試料を得る工程;
b)前記の第一の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程(ここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含み;あるいは、前記の1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む);
c)患者に処置化合物を投与する工程;
d)患者から第二の生物学的試料を得る工程;
e)前記の第二の生物学的試料中の前記の1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程;及び
f)第一及び第二の生物学的試料から得られた1つ以上のバイオマーカーのレベルを比較する工程
を含む、GPP処置に対する患者の応答をモニタリングする方法を提供し、ここでの第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの変化(例えば高い、低い)は有効な応答を示す。1つの態様では、第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの変化(例えば高い、低い)、及び臨床有効性尺度、例えばGPP症例ではGPPASIスコアの改善との相関は、有効な応答を示す。
【0045】
さらなる実施態様では、本発明は、
a)前記患者から生物学的試料を得る工程;
b)1つ以上のバイオマーカーのレベルを測定する工程(ここでの1つ以上のバイオマーカーは、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物に(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)、CSF3、IL24、IL19、IL20、IL6、IL17C、IL12B、RN7SL471P、PTX3、MRGPRX3、LBP、CAMP、IL23A、RND1、ADAMTS4、SPOCD1、MRPL12、CXCL1、G0S2、SPATA20P1、SH2D5、SOCS3、PHLDA2、MGAM、SLC26A4、MMP9、PADI4、FOSL1、PDCD1、MT2A、SPRR2C、P2RY6、C2CD4A、OSM、IL1B、CYP27B1、PRSS22、FCGBP、LILRA5、SERPINA3、SNAI1、TGM2、CNGB1、MAMDC4、MT1G、JUNB、SOCS1又はCASP5の遺伝子/タンパク質を含み;あるいは、前記の1つ以上のバイオマーカーは、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む);及び
c)対照の未処置の試料のレベルと比較して、患者の試料中のレベルが変化しているかどうかを決定する工程
を含む、患者によるGPPのための薬物処置プロトコールの遵守をモニタリングするための方法を提供し、ここで低下したレベルは、患者による前記の薬物処置プロトコールの遵守を示す。
【0046】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、第二の生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルは、第一の生物学的試料中のレベルと比較して、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%以上減少している。
【0047】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、生物学的試料は皮膚生検材料、血液、血漿、又は血清の試料である。1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、抗IL-36R抗体はスペソリマブである。1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、バイオマーカーのレベルは、RNAシークエンス又はELISA又は別のタンパク質アッセイによって決定される。1つの実施態様では、バイオマーカーは、皮膚において発現差を有する遺伝子である。
【0048】
1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本明細書に開示された方法を使用して、患者を選択する方法を提供する。1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本発明の方法を使用して、抗IL-36R抗体での処置後、有益な応答を示すことが期待される患者について、患者集団を強化する方法を提供する。1つの実施態様では、本発明はさらに、例えば本発明の方法を使用して、抗IL-36R抗体での処置前又は処置後早期に、有益な応答を示すことが期待される患者について、患者集団を強化する方法を提供する。
【0049】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は以下に開示されている通りである。
【0050】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号35、102、103、104、105、106、又は140のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110、111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域を含む。
【0051】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
I.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号102のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
II.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号103のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
III.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号104のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
IV.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号105のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
V.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号106のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域、
VI.a)配列番号26のアミノ酸配列(L-CDR1);配列番号140のアミノ酸配列(L-CDR2);配列番号44のアミノ酸配列(L-CDR3)を含む軽鎖可変領域;及びb)配列番号53のアミノ酸配列(H-CDR1);配列番号62、108、109、110又は111のアミノ酸配列(H-CDR2);配列番号72のアミノ酸配列(H-CDR3)を含む重鎖可変領域
を含む。
【0052】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(ii)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(iii)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(iv)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(v)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(vi)配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(vii)配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(viii)配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(ix)配列番号86のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;又は
(x)配列番号86のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む。
【0053】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、
i.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
ii.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
iii.配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
iv.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
v.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
vi.配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
vii.配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
viii.配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号139のアミノ酸配列を含む重鎖;又は
ix.配列番号124のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む。
【0054】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体はスペソリマブ、抗体B1、抗体B2、抗体B3、抗体B4、抗体B5、抗体B6、抗体C1、抗体C2、又は抗体C3である。
【0055】
1つの実施態様では、抗IL-36R抗体は、国際公開公報第2013/074569号、国際公開公報第2016/168542号、又は国際公開公報第2020/018503号に開示されているような抗体であり、その各々の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0056】
1つの実施態様では、ELISA又は他のタンパク質アッセイキットはさらに、処置前にキットを使用するための、又はGPPをモニタリングするための説明書を含む。
【0057】
別の実施態様では、本発明は、GPP患者に由来する生物学的試料を含む組成物に関し、1つ以上のバイオマーカーの有無又はレベルを検出するための薬剤は、表1及び2に列挙された遺伝子又はタンパク質を含む。関連した実施態様では、該薬剤は、例えば、表1及び2に列挙されたバイオマーカーのいずれかに対する抗体である。
【0058】
1つの実施態様では、上記のいずれか1つの方法において、抗IL-36R抗体又はその抗原結合断片は、以下に開示されている通りである。
【0059】
1つの態様では、抗IL-36R抗体はヒト化抗体である。1つの態様では、抗IL-36R抗体はモノクローナル抗体である。1つの態様では、抗IL-36R抗体は、完全長の抗体である。1つの態様では、抗IL-36R抗体は、ヒト化モノクローナル抗体、例えば完全長のヒト化モノクローナル抗体である。1つの態様では、抗IL-36R抗体はスペソリマブである。代表的な抗IL-36R抗体は、国際公開公報第2013/074569号、国際公開公報第2016/168542号又は国際公開公報第2020/018503号に開示され、その各々の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
IL-36Rまた、IL-1RL2及びIL-1Rrp2としても知られている。アゴニスト作用性のIL-36リガンド(α、β又はγ)は、IL-36受容体に結合し、これはその後IL-1受容体補助タンパク質(IL-1RAcP)とヘテロ二量体を形成することによって、シグナル伝達カスケードを開始すると報告されている。IL-36アンタゴニスト作用性リガンド(IL-36RA/IL1F5、IL-38/ILF10)は、シグナル伝達カスケードを阻害する。
【0061】
代表的な抗IL-36R抗体の可変領域及びCDR(相補性決定領域)が、以下に開示されている:
【0062】
抗IL-36Rマウス抗体配列
本発明の代表的なマウスリード抗体(マウスリード)の可変領域及びCDRが以下に示されている。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
抗IL-36Rヒト化抗体配列
ヒトフレームワーク配列が、フレームワークの相同性、CDRの構造、保存された古典的残基、保存された界面充填残基、及びヒト化可変領域を産生するための他のパラメーターに基づいて、マウスリードのために選択された(実施例5参照)。
【0073】
抗体81B4及び73C5に由来する代表的なヒト化可変領域が以下に示されている。
【0074】
【0075】
【0076】
抗体81B4及び73C5に由来するヒト化可変領域に由来するCDR配列が以下に示されている。
【表12】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
本発明の代表的な軽鎖及び重鎖の配列が以下に示されている(定常領域に連結された抗体81B4及び73C5に由来するヒト化可変領域)
【0084】
【0085】
【0086】
上記に列挙されたCDRは、Chothia番号付け体系(Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948)を使用して定義される。
【0087】
1つの態様では、本発明の抗体は、例えば上記に示されているような、3つの軽鎖CDRと3つの重鎖CDRを含む。
【0088】
1つの態様では、本発明の抗体は、上記に示されているような軽鎖及び重鎖の可変領域を含む。1つの態様では、本発明の軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域、例えばカッパ又はラムダ定常領域に融合している。1つの態様では、本発明の重鎖可変領域は、重鎖定常領域に融合している、例えばIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM、特にIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4。
【0089】
本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B1)を提供する。
【0090】
本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B2)を提供する。
【0091】
本発明は、配列番号115のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B3)を提供する。
【0092】
本発明は、配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号125のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B4)を提供する。
【0093】
本発明は、配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B5)を提供する。
【0094】
本発明は、配列番号118のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体B6)を提供する。
【0095】
本発明は、配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体C3)を提供する。
【0096】
本発明は、配列番号123のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号139のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体C2)を提供する。
【0097】
本発明は、配列番号124のアミノ酸配列を含む軽鎖と配列番号138のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、抗IL-36R抗体(抗体C1)を提供する。
【0098】
本発明の代表的な抗体が以下に示されている。
【0099】
【0100】
【0101】
本発明は以下の実施例においてさらに記載され、この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0102】
実施例
実施例1:膿疱性乾癬:汎発型膿疱性乾癬における、スペソリマブの分子経路及び効果
概要
背景:IL-36経路は、汎発型膿疱性乾癬(GPP)の発病において重要な役割を果たしている。概念実証臨床試験において、抗IL-36受容体抗体であるスペソリマブを用いての処置は、急性GPPのフレアを呈する患者において迅速な皮膚の透明化及び膿疱の消失をもたらした。
【0103】
目的:GPP患者に由来する有病変皮膚及び無病変皮膚の分子プロファイルを、健康な試験志願者に由来する皮膚と比較すること、及び、急性GPPのフレアを示す患者の皮膚及び血液中のスペソリマブによる処置後の、分子的変化を調べること
。
【0104】
方法:処置前及び処置後の皮膚及び血液の試料を、単群第I相試験に参加したGPP患者(n=7)から収集した。バイオマーカーは、RNAシークエンス、組織病理学的検査、及び免疫組織化学的検査によって評価された。
【0105】
結果:GPP病変では、1287個の転写物が、共通してアップレギュレート又はダウンレギュレートされていた。IL-36シグナル伝達経路から選択された転写物は、未処置GPP病変においてはアップレギュレートされていた。GPP患者では、IL-36経路に関連したサイン、ヘルパーT(Th)1/Th17及び自然炎症シグナル伝達、好中球性メディエーター、及び角化細胞により誘発される炎症経路は、早くも1週目にスペソリマブによってダウンレギュレートされた。スペソリマブはまた、CD3陽性T細胞、CD11c陽性細胞、IL-36γ陽性細胞、及びリポカリン-2発現細胞を含む、GPP患者に由来する皮膚病変における関連した血清バイオマーカー及び細胞集団を減少させた。
【0106】
結論:GPP患者では、スペソリマブは、GPPにおいて共通して脱調節された分子経路の迅速な調節を示し、これは、改善された臨床アウトカムと関連し得る。1回の静脈内用量のスペソリマブは、重要な炎症性プロセスに連関したバイオマーカーの強力かつ迅速なダウンレギュレーションをもたらし、GPP患者にとっての抗IL-36受容体標的化療法の妥当性を強調する。
【0107】
概要
これは抗IL-36受容体モノクローナル抗体であるスペソリマブが、GPPのフレアを有する患者において、IL-36経路のサインを含む、GPP病変において発現差を有する遺伝子を調節することができることを示した最初の研究である。
【0108】
略称
DEG:発現差を有する遺伝子
IHC:免疫組織化学的検査
GPP:汎発型膿疱性乾癬
PPP:掌蹠膿疱症
RNA-seq:RNAシークエンス
【0109】
方法及び分析
試験試料及び試験
3~4mmの鉗子皮膚生検材料は膿疱近くから採取され、そして血液試料は、GPP成人患者(四肢/胴体、n=7)及び健康な試験志願者(四肢[手/足]、n=10;掌/足裏、n=6)から収集した(23、25)。第I相多施設単群オープンラベル概念実証試験では、GPP患者は、1回の静脈内用量の10mg/kgのスペソリマブの投与を受け、20週間追跡された(NCT02978690、
図E1)。患者は、膿疱の存在を含む紅斑を伴う体表面積の10%以上に発症するGPPのフレア、及び、3以上の汎発型膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価(GPPGA)スコア(中等度から重度の疾患)を有していた。インフォームドコンセントは、全参加者から得られた。
【0110】
GPP患者における、組織及び血液の試料採取及びバイオマーカーの分析
有病変皮膚及び無病変皮膚の生検標本及び全血のグローバルトランスクリプトームワイドRNAシークエンス(RNA-seq;イルミナHi-Seq4000、イルミナ社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して、スペソリマブに対する細胞性応答及び分子性応答を特徴付けた。皮膚生検材料は、ベースライン(有病変皮膚及び無病変皮膚)及び1週目(有病変皮膚)で実施され、最適な生検は2週目に実施された(有病変皮膚)。有病変皮膚生検材料は、最も深部の赤色の紅斑である、最も炎症の強い病変部位において収集された。皮膚試料からのRNA抽出は、RNeasy Fibrous組織ミニキット(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて実施された。全血及び血清が、複数の時点で収集された。RNA-seqは、無病変皮膚型及び有病変皮膚型の両方についてベースラインにおいて、有病変皮膚について1週目及び2週目において、全血試料ではベースライン並びに1週目、2週目及び4週目において実施された。血液試料からのRNA抽出は、PAXgene(登録商標)血液mRNAキット(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて実施された。皮膚生検材料が、特異的抗体を使用した、組織病理学的検査及び免疫組織化学的検査(IHC)で評価され、以前に公表されている半定量スコア化法を用いて評価され;この方法を用いて、各生検試料は、組織病理学的なグローバルスコアを付与された。好中球エラスターゼ、リポカリン-2、IL-36γ、CD11c、及びCD3を含む、GPP疾患に関連したバイオマーカーが、皮膚生検材料において、免疫組織化学的検査によって、ベースライン、1週目、及び2週目(任意選択)において評価された。血清試料を、ランドックスのバイオチップアレイプラットフォームを使用して複数のバイオマーカーについて、ベースライン、並びに、2、4、及び12週目においてアッセイした。評価されたバイオマーカーは、β-ディフェンシン4A、CCL20、CXCL1、IL-17A、IL-19、IL-1RN、IL-6、IL-8及びC反応性タンパク質であった。古典的経路のIngenuity経路解析(IPA)ライブラリーを使用して、データセットに最も有意であった経路を同定した。
【0111】
統計分析
小さなサンプルサイズのために、連続的な免疫組織化学的検査用バイオマーカー及び血清バイオマーカー用の主に記述的分析を実施した。GPP患者についての、特にベースラインで上昇したバイオマーカー値を有する患者についての、主な焦点は経時的な変化にあった。
【0112】
臨床的評価項目への連関は主に、個々の患者レベルでのグラフによる可視化を介して評価された(ヒートマップ)。様々な臨床的評価項目及びバイオマーカーは、異なる尺度であるので、これらの数字は、意味ある比較を可能とする、ベースラインからの変化率を介して、相対的尺度で提示される。
【0113】
経時的な遺伝子発現レベルの経時的な変化の探索的分析を実施して、発現差を有する遺伝子(DEG)を同定した。この分析は、limmaパッケージを使用して実施された。簡潔に言えば、少なくとも1つの亜群における、少なくとも半分の試料における、100万個あたりの計数が1以上である遺伝子のみが分析に含められた。データは、Robinson及びOshlackによって記載されたTMM法を使用して正規化され、voom変換された。被験者間の相関を説明するために、複製の相関関数を、遮断係数として被検者と共に使用し、線形モデルをImFit関数を使用して当てはめ、最後に、調整t統計量をコンピューター計算し、変化倍率の対数及び対応するベンジャミーニ・ホッホベルクの偽発見率(FDR)調整済P値を導いた。
【0114】
結果
GPP患者及び健康試験志願者に由来する皮膚における、ベースラインにおける分子プロファイルの比較
有病変皮膚の生検材料における遺伝子発現を、GPP患者の無病変皮膚(四肢/胴体)と比較し、これらを、健康な試験志願者の試料(四肢又は掌/足裏)とも比較した。DEGの明確に別個なバターンが、GPPを伴う薄い皮膚(四肢/胴体)と厚い皮膚(掌/足裏)との間に観察された。
【0115】
2以上の絶対変化倍率及び0.01以下の調整済P値を使用して、GPP患者に由来する生検材料は7614個のDEGを有していた。健康なドナーと比較してGPP有病変皮膚において5倍超で増加した疾患関連遺伝子としては、S-100(A7A、A7、A8、A9、A12)、DEFB4A、VNN3、CCL18、IL19、IL20、IL22、IL17A、IL36G、IL36A、CXCL8、CXCL10、MMP12、及びLCN2が挙げられた。GPP有病変皮膚における大半のDEGは(5倍の対数を超える)、無病変皮膚よりも有病変皮膚においてより高度に発現されていた。S100A8/9及びIL36AのアップレギュレーションがGPPにおいて測定された。GPP有病変皮膚の至る場所での分子経路の増加した発現は、Th1、Th2及び樹状細胞のシグナル伝達並びに角化細胞により誘発される炎症に加えて、急性期応答シグナル伝達、IL-6、IL-8、及びIL-23のシグナル伝達を含んでいた。角化細胞及び乾癬経路における、IL-17/TNFにより誘発される転写物を含む、複数の共通の疾患関連経路が、GPPの至る場所において調節されている。
【0116】
スペソリマブを用いての処置後の、GPP患者における遺伝子及びタンパク質の調節
ベースラインにおいて、グローバルトランスクリプトーム分析は、有病変皮膚と無病変皮膚との間に3276個のDEG、1885個のアップレギュレートされた転写物、及び1391個のダウンレギュレートされた転写物を同定した(調整済P値は0.05以下、変化倍率は2以上;
図1A)。それらの中で、全てのIL-36リガンドが、強力にアップレギュレートされた(IL36A:90倍;IL36B:2.6倍;IL36G:13倍)。
【0117】
有病変皮膚における987個の遺伝子の発現が、スペソリマブを用いた1回の注入後に、1週目までに無病変レベルの近くまで達した(調整済P値は0.05以下、変化倍率は2以上)(
図1、A)。DEGは、自然炎症(例えばIL6、TNFα)及びTh1/Th17により媒介される炎症(例えばIL1B、IL12B、IL23A)並びに炎症誘発性角化細胞活性化プロセス(例えばIL17C、IL24)に関連していた。Ingenuity経路解析(IPA)による古典的経路について得られた活性化zスコアは、ベースラインにおける有病変皮膚におけるより高い活性が1週目までにスペソリマブによってダウンレギュレートされたことを示した(
図1、B)。炎症誘発性メディエーター(TNF、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球により発現される転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)、又は角化細胞の活性化、分化及び媒介される炎症転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)の有意な減少が、スペソリマブを用いての処置の1週間後に有病変皮膚において見られた(
図1、C)。ヘルパーT(Th)1/Th2経路及びTh細胞におけるCD28シグナル伝達を含む、T細胞活性の強力な阻害が、スペソリマブによる処置後に観察され(
図1、B)、これは、上昇したIL17Cのダウンレギュレーションに関連していた(
図1、C)。
【0118】
さらに、早くも1週目に、スペソリマブによる処置は、CD11c陽性樹状細胞、CD3陽性T細胞、好中球のエラスターゼ発現細胞、リポカリン-2発現細胞及びIL-36γ発現細胞を含む、免疫組織化学検査用バイオマーカーの発現を選択的に減少させた(
図2、A及びB)。これらの減少は、臨床上の重症度の低減を伴った(
図2、A)。
【0119】
全血で実施されたRNA-seqは、ベースラインと比較して、1、2及び4週目におけるDEGを検出し(それぞれ364個、476個及び568個の遺伝子;調整済P値は0.05以下、変化倍率は2以上)、2週目から4週目までに319個の共通したDEGが存在した。IL10、CD177、S100A8/9、S100A12、及びMMP9を含む、好中球の活性化に関与する炎症誘発性メディエーターは、処置後の様々な時点において、最も強力にダウンレギュレートされていると同定された遺伝子の中にあった(
図3、A)。スペソリマブによる処置後の1、2及び4週目に対する、ベースラインにおける活性の比較は、IPAを使用して同定されたような、免疫応答経路の持続したダウンレギュレーションを示した(
図3、B)。
【0120】
血清バイオマーカーのβ-ディフェンシン4A、CCL20、CXCL1、IL-17A、IL-1RN、IL-6及びIL-8のベースラインレベルは、7人の患者間で変動性であった(中央値[第1四分位数、第3四分位数]、ng/L:β-ディフェンシン4A、28,804.8[22,424.28,804.8];CCL20、38.2[12.1、111.8];CXCL1、341.5[187.4、525.2];IL-17A、2.5[0.7、2.9];IL-1RN、560.6[163.2、993.0];IL-6、41.2[14.2、188.7];IL-8、50.5[18.5、134.6])。スペソリマブを用いての処置は、選択された患者において早くも2週目に、炎症経路(例えばC反応性タンパク質、β-ディフェンシン4A)、好中球性経路(例えばCXCL1、IL-8)、自然経路(例えばIL-1RN、IL-6)、及びTh17経路(例えばIL-17A、CCL20)に連関した選択された血清バイオマーカーの顕著なダウンレギュレーションをもたらした;これらの減少は、臨床疾患重症度の減少を伴っていた(
図3、C)。表1も参照されたい。
【0121】
【0122】
例えば、炎症誘発メディエーター(腫瘍壊死因子、IL1B、IL6)、好中球動員メディエーター(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCR1、CXCR2)、好中球の発現する転写物(NCF1、NCF2、NCF4、ELANE)に関連した、又は角化細胞の活性化、分化、及び媒介された炎症性転写物(IL36A、IL36G、IL17C、IL19、IL20、IL22、IL24)における、発現差を有する遺伝子/タンパク質は、スペソリマブによる処置から1週間後に有病変皮膚において見られた(
図1、C)。ヘルパーT(Th)1/Th2経路、及びTh細胞におけるCD28シグナル伝達を含む、T細胞活性の強力な阻害が、スペソリマブによる処置後に観察され(
図1、A及びB)、これは、上昇したIL17Cのダウンレギュレーションを伴った(
図1、C)。
【0123】
考察
我々が知る限りでは、これは、GPPにおける、グローバルトランスクリプトームプロファイル及び遺伝子セット分析を評価するために実施された最初の研究である。ここで、本発明者らは、健康な試料と比較してGPP皮膚病変は、Th1及びTh17、並びに自然炎症シグナル伝達、好中球の活性化及び動員のメディエーター、IL-36、並びに角化細胞により誘発される炎症経路に連関した遺伝子を調節した。興味深いことには、GPPトランスクリプトームにおけるDEGの大半は、この疾患に特有であった(83.1%)。
【0124】
これらの結果は、GPPにおいて以前に報告された遺伝子突然変異及び調節解除された遺伝子発現と一致する。GPP患者における遺伝子の研究は、IL-36経路に機能的に関連したIL36RN及び他の遺伝子における機能欠失型突然変異を(例えばAP1S3)、及びCARD14における機能獲得型突然変異を同定した。さらに、GPP病変のトランスクリプトーム分析は、IL-1β、IL-36α及びIL-36γをコードしている遺伝子の発現増加、並びにCXCL1、CXCL2、CXCL8などの強化された好中球及び単球の転写物を含む、Th1/Th17関連転写物を上回る、自然免疫炎症応答の増加を示した。
【0125】
以前に、GPPの免疫病態におけるIL-36の中心的な役割はさらに、GPP患者におけるスペソリマブの有効性及び安全性を評価する概念実証試験からの結果によって支持された。この研究では、1回の10mg/kgの静脈内用量のスペソリマブは、GPPの臨床兆候及び症状における迅速(7日間以内)かつ持続した改善(20週目まで)をもたらしたそうした患者に由来する無病変皮膚及び有病変皮膚又は血液中の細胞性及び分子性発現パターンのさらなる比較により、スペソリマブによる処置が、DEGのレベルの迅速な正常化又は強力なダウンレギュレーションをもたらしたことが判明した。これは、炎症誘発性メディエーター、好中球動員メディエーター、好中球により発現される転写物の発現の減少、及び角化細胞の活性化の減少によって特徴付けられ;差のある転写物が、スペソリマブによる処置の1週間後に有病変皮膚において見られた。
【0126】
さらに、スペソリマブは、好中球、CD3陽性T細胞、CD11c陽性細胞、リポカリン-2発現細胞を含む、様々な高度に浸潤した細胞集団の迅速な減少を誘発し、そして有病変皮膚におけるIL-36γの発現を減少させた。T細胞サブセットに対するスペソリマブの効果は、上昇したIL17Cのダウンレギュレーションに一致し、フィードフォワード炎症応答の阻害を引き起こし、T細胞活性化に強力に影響を及ぼした(
図1、C)。関連性のあることには、これらは、臨床疾患重症度及び膿疱の消失の平行的な改善に関連した、遺伝子及びタンパク質の発現プロファイルを減少させた(汎発型膿疱性乾癬の面積及び重症度指数、並びに膿疱重症度スコア);この挙動は、概念実証試験におけるスペソリマブを用いた処置後に膿疱の消失を達成した(GPPGA膿疱サブスコアは0)患者におけるベースラインレベルと比較した、C反応性タンパク質数値の強力かつ迅速な減少と一致していた。これは、GPP患者の皮膚及び血液におけるIL-36経路の阻害の重要性を強調する。
【0127】
急性GPPのフレアを呈する患者から収集された試料におけるこれらのバイオマーカーの結果に基づいて、本発明者らは、GPPが、IL-36、Th17、好中球性炎症、及び角化細胞により誘発される炎症に関連した、重要な調節解除された経路に関与していたことを同定した。さらに、スペソリマブを用いてIL-36Rを遮断することによる介入は、GPP患者におけるそうした遺伝子の迅速な正常化/ダウンレギュレーションをもたらし、これは臨床上の改善と一致した。
【0128】
実施例2:スペソリマブを用いて処置された汎発型膿疱性乾癬患者の有病変皮膚及び血液の分子プロファイルの変化は、臨床応答と関連している。
汎発型膿疱性乾癬(GPP)は、播種性の膿疱の噴出の急性発症によって特徴付けられる、希少で慢性的な炎症性の皮膚及び全身性の疾患である。GPPは、かなりの罹患率を伴い、GPPのフレアは、処置されない場合には生命を脅かし得る。GPPの発病は、調節解除されたインターロイキン(IL)-36のシグナル伝達を含む。IL-36受容体に標的化するモノクローナル抗体であるスペソリマブは、GPPのフレアを経験している患者において有効であった。Effisayil(商標)1試験では、スペソリマブは、GPPのフレアを経験している患者において、プラセボに対して1週間以内に迅速な膿疱の消失及び皮膚の透明化をもたらした。本発明者らは、ベースラインにおいて無病変皮膚生検材料に対して、有病変皮膚生検材料において発現差があった(調整済p値は0.05以下、変化倍率の対数は1以上)5208個の遺伝子転写物(2861個が減少、2347個が上昇)を同定した。これらは、IL-36ファミリー(IL36A、IL36B、IL36G)、好中球動員(CXCL1、CXCL6、CXCL8)、炎症誘発性サイトカイン(IL6、IL19、IL20)、及び皮膚炎症(DEFB4a、S100A7、S100A8、S100A9)に関連した遺伝子を含んでいた。有病変皮膚における有意な数の遺伝子が、1用量のスペソリマブ(900mgを静脈内に)の投与から1週間後(324個が減少、622個が増加;調整済p値は0.05以下、変化倍率の対数は1以上)及び7~8週間後(1115個が減少、1425個が増加;調整済p値は0.05以下、変化倍率の対数は1以上)に調節された。一次評価項目(1週目までにGPPに対する医師による全般的評価の膿疱サブスコアが0)を達成した患者は、有病変皮膚において、発現差を有する遺伝子のベースラインからの有意な変化を実証した。選択されたバイオマーカー(NE、K16、βディフェンシン2、IL-17C)の組織病理学的変化が、処置前vs8週目の処置後に、有病変皮膚vs無病変皮膚において観察された。また、IL-17C、IL-20、TGF-α、IL-24、CCL4、CCL19、IL1-RN、及びCCL20を含む、血清バイオマーカーレベルも減少し、これは12週目まで持続し、これは一次評価項目の達成と相関していた。要約すると、Effisayil(商標)1試験におけるGPPフレアを有する患者におけるスペソリマブの臨床上の有効性は、皮膚及び血液における重要な発病経路の調節に関連していた。表2を参照されたい。
【0129】
【0130】
本発明の特定の態様及び実施態様が記載されているが、これらは例としてのみ提示され、本発明の範囲を制限するものではない。実際に、本明細書に記載の新規な方法及びシステムが、その精神から逸脱することなく、多種多様な他の形態で具現され得る。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本発明の範囲及び精神に該当するであろうような、このような形態又は改変を網羅することを意図する。
【0131】
本開示に列挙された雑誌記事を含む、全ての特許及び/又は刊行物は、参照により本明細書に明白に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】