(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】圧力センサ、ガラスウェハおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20240312BHJP
C03C 3/076 20060101ALI20240312BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20240312BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20240312BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20240312BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C03B17/06
C03C3/076
C03C3/083
C03C3/089
C03C3/091
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555410
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022056246
(87)【国際公開番号】W WO2022189587
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105758.2
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ポイヒャート
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヒンドリクセン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー グラッキ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴィーゲル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ビュレスフェルト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヨッツ
(72)【発明者】
【氏名】モフド サイルル ニザム オマール
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン レオン ルッケス
【テーマコード(参考)】
4G062
4M112
【Fターム(参考)】
4G062AA01
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4M112EA13
(57)【要約】
本発明はガラス物品、並びに圧力センサにおけるその使用に関する。本発明は前記ガラス物品の製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの平行平面の主側面を有するガラス物品であって、前記ガラス物品は厚さ3.0mm未満を有し、前記ガラス物品は各々両方の主側面上で、2×2mm
2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、1.0μm未満の広がりを有する損傷2000個未満であり、前記ガラス物品は、2×2mm
2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が、ガラス物品の厚さ1μmあたり10nm未満であり、前記ODSは2×2mm
2の規定の測定面積内で最高の厚さと最低の厚さとの間の差である、前記ガラス物品。
【請求項2】
2×2mm
2における平均位置・厚さばらつきが10μm未満である、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
2×2mm
2における最大位置・厚さばらつき(ODS
max)が50μm未満である、請求項1または2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス物品が両方の主側面上で、2×2mm
2における最大の表面近傍の損傷レベルONSL
maxが、1.0μm未満の広がりを有する損傷最大4000個である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項5】
厚さ2.0mm未満、1.0mm未満、または0.5mm未満を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項6】
2×2mm
2における2nm未満の粗さR
aを有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項7】
ガス状包含物の数が1mm
3あたり1.0未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項8】
以下のVFTパラメータ: Aは-5.5~<0.0の範囲であり、Bは3500~12000Kの範囲であり、且つ/またはT
0は25℃~300℃の範囲であることを特徴とする粘度・温度プロファイルを有するガラス製である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項9】
2×2mm
2における熱伝導率の最大差が最大0.2W/(m・K)である、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項10】
少なくとも400mm
2の面積を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項11】
面積1~10mm
2、好ましくは3~6mm
2、特に約2×2mm
2を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラス物品、特に請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラス物品を分割することによって製造可能なガラス物品。
【請求項12】
圧力センサにおける、特に圧力センサの構成部品としての、請求項11に記載のガラス物品の使用。
【請求項13】
請求項11に記載のガラス物品を含む圧力センサ。
【請求項14】
ガラス物品の製造方法、特に請求項1~11のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法であって、以下の段階:
・ ガラス溶融物を製造する段階、
・ 前記ガラス溶融物を清澄する段階、
・ 前記ガラス溶融物を、特に引き抜きロールを使用して、3.0mm未満の範囲の目標厚さを有するガラスリボンへと引き抜く段階、
・ 前記ガラスリボンをガラス物品へと分割する段階
を含み、前記ガラスリボンは領域Zを通過し、そこで前記ガラスリボンは目標厚さを既に達成しているが、その粘度はまだ10
10dPas未満であり、
前記ガラスは前記領域Zにおいて少なくとも0.5m/分且つ最大50m/分の引き抜き速度で引き抜かれ、且つ、
前記領域Zを、0.01~500Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように保つために適切な手段が取られる、前記方法。
【請求項15】
前記領域Zを、1~500Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように保つために適切な手段が取られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法がダウンドロー法またはオーバーフローフュージョン法である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ガラス溶融物が槽から出て、次いでガラスリボンへと引き抜かれ、ここで、ガラス溶融物が槽から出てくる点でのガラス溶融物の粘度が10
2.20dPas~10
4.00dPasの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記手段が、
・ 引き抜き設備および/または領域Zの音響ハウジング、
・ 引き抜き設備と成形との切り離し、
・ 引き抜きロールの距離の調整
・ 特に冷却領域における対流を減少するための、1つ以上のパネル
・ 封止、および
・ それらの組み合わせ
から選択される、請求項14から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
以下の段階:
・ 結合砥粒を用いて、特にダイヤモンド研削材を用いてガラス物品を研削する段階、
・ 引き続き任意に研磨する段階、
を含む、請求項14から18までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス物品、並びに圧力センサにおけるその使用に関する。本発明は前記ガラス物品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル化が進む過程で、センサデータに依存する知能的且つネットワーク化されたシステムの使用が増加している。例えば人工知能を使用した改善された分析方法は、大量のデータの評価を可能にし、自動化および制御のために測定値の小さな変化も使用する可能性を拓く。この開発をさらに進めるために、ますます正確なセンサが望ましい。そのようなセンサの例は圧力センサである。
【0003】
圧力センサは多くの分野において、特に機械および産業プラントを制御するために、例えば食品の製造または石油化学産業において使用されている。自動車分野においても、例えばオイルおよびタイヤの空気圧の測定のために、圧力センサが使用されている。
【0004】
微小電気機械(またはMEMS)圧力センサは、圧力によって弾性変形され得るシリコン製の薄膜を含む。このシリコン膜は通常、絶縁体または半導体材料、例えばシリコン製のベース上に取り付けられる。ベースは開口部を含み、その開口部を通じて流体、例えばガスが圧力センサの測定キャビティに入ることができる。ここで、圧力は両側から膜に作用し、一方の側では定義されたかまたは可変の参照圧力が作用し、並びに測定キャビティに面する膜の側では可変の圧力が作用する。参照圧力を用いないで動作するセンサもあり、つまり参照圧力が可変であることができる。膜の両側上の圧力が互いに異なる場合、膜が変形される。測定抵抗器が膜に組み込まれており、それらは変形されると抵抗が変わる(いわゆるピエゾ抵抗式抵抗器)。それらは電気的にはいわゆるホイートストンブリッジ回路の形態で配置されている。膜の変形はブリッジ回路の電圧の変化をもたらす。ブリッジ電圧のこの測定可能な変化は、圧力差にほぼ比例する。
【0005】
ガラス物品は圧力センサ用の構成部品として適している。そのような圧力センサの例示的な構造を
図1に示す。膜は印加される圧力に応じて変形される。変形、ひいては圧力は、膜におけるピエゾ抵抗素子の抵抗の変化を介して測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より良好な測定精度を有する圧力センサが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の説明
1つの態様において、本発明は厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、損傷2000個未満であり、且つ/または2×2mm2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が、厚さ1μmあたり10nm未満であり、前記ODSは規定の測定面積内で最高の厚さと最低の厚さとの間の差である、前記ガラス物品に関する。
【0008】
本発明のガラス物品は圧力センサにおける構成部品として使用するために適している。そのようなガラス構成部品の1つの機能は、測定のために使用される膜をベース材料および環境から熱的に切り離すことである。望ましい測定がより正確になるほど、良好且つ迅速、そして何よりもまず均一な熱的な切り離しがより重要になる。圧力センサも小型化に向かう傾向がある。構成部品はますます小さく且つますます薄くなってきている。ガラスの1つの利点は、それが特に薄い厚さで良好な表面品質を備えて製造され得ることである。しかしながら、圧力センサが全体として小さくなっていくと、小さなずれであっても衝撃が大きくなる。例えばダウンドロー法における成形の間にガラスに及ぼされる特定の振動周波数の影響でさえも、小さい面積での厚さの変動をみちびくことがあり、それは熱伝達における局所的なずれに寄与する。
【0009】
ガラス物品の取り扱いおよび後処理、例えば研磨、研削、ラップ加工において、ガラス中に小さな損傷が導入されることがあり、それは驚くほど深くガラス中に侵入する。圧力センサにおいて使用されるガラス物品の非常に薄い厚さに起因して、数マイクロメートルの深さのクラックで既に、熱伝達を含むガラス物品の特性に著しい影響を及ぼすことがある。
【0010】
厚さの変動、キャビティ、クラックおよび同様の欠陥は、ガラス物品と、圧力センサの他の構成部品との接続を損なうことがある。例えば、構成部品を一緒に貼り付けることがより困難になるか、または凹凸またはクラックを補償するためにより多くの接着剤が必要とされることがある。さらなる接着剤または無機フリットの使用は熱的な切り離しの均一性を損なう。
【0011】
本発明によるガラス物品の提供は、例えばガラスの成形および任意に表面処理において特定の手段が取られる場合に達成され得る。例えば、ドロー工程の間に特定の区域が周波数範囲0.01~500Hz、例えば0.05~400Hz、0.1~300Hz、0.5~250Hz、0.8~200Hz、1~100Hz、4~75Hz、または5~50Hzの振動がないように保たれる場合が有益であることが証明されている。好ましくは、ドロー工程の間、特定の区域は少なくとも0.01Hz、少なくとも0.05Hz、少なくとも0.1Hz、少なくとも0.5Hz、少なくとも0.8Hz、少なくとも1Hz、少なくとも4Hz、または少なくとも5Hzの周波数を有する振動がないように保たれる。好ましくは、ドロー工程の間、特定の区域は最大500Hz、最大400Hz、最大300Hz、最大250Hz、最大200Hz、最大100Hz、最大75Hz、または最大50Hzの周波数を有する振動がないように保たれる。表面処理においては、使用される粒子サイズに関して本願内に記載される特定のパラメータに従うことが合理的であることがある。
【0012】
1つの態様において、本発明は本願内に記載されるガラス物品の、圧力センサにおける構成部品としての使用に関する。例えば、前記ガラス物品を、測定膜の熱的な切り離しのために役立つ構成部品のために使用できる。
【0013】
前記ガラス物品を、より高い測定精度を可能にする圧力センサのために使用できる。圧力センサにおいて使用するために、ガラス物品が穿孔され得る。この解決策は、高い測定精度のために圧力センサのシリコン膜の、測定される媒体からの熱的な切り離しができるだけ均一であるべきという考えに基づく。均一な熱的な切り離しのために、変動し得る位置・厚さばらつき(ODS)および表面近傍の損傷レベル(ONSL)が重要であることが判明した。製造における適切な手段により、そのようなガラス物品を得ることができる。
【0014】
1つの態様において、本発明はガラス物品の製造方法であって、以下の段階:
・ ガラス溶融物を製造する段階、
・ 前記ガラス溶融物を清澄する段階、
・ 前記ガラス溶融物を、特に引き抜きロールを使用して、3.0mm未満の範囲の目標厚さを有するガラスリボンへと引き抜く段階、
・ 前記ガラスリボンをガラス物品へと分割する段階
を含み、前記ガラスリボンは領域Zを通過し、そこで前記ガラスリボンは目標厚さを10%未満上回っているが、その粘度はまだ1010dPas未満であり、
前記ガラスは前記領域Zにおいて少なくとも0.5m/分且つ最大50m/分、例えば2~10m/分、10~25m/分、または25~50m/分の引き抜き速度で引き抜かれ、且つ、
前記領域Zを、0.01~500Hz、例えば0.05~400Hz、0.1~300Hz、0.5~250Hz、0.8~200Hz、1~100Hz、4~75Hz、または5~50Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように保つために適切な手段が取られる、前記方法に関する。
【0015】
前記ガラスは例えば、領域Zにおいて少なくとも0.5m/分、少なくとも2m/分、少なくとも10m/分、または少なくとも25m/分の引き抜き速度で引き抜かれ得る。それは領域Zにおいて例えば、最大50m/分、最大25m/分、または最大10m/分の引き抜き速度で引き抜かれ得る。
【0016】
例えば、少なくとも0.01Hz、少なくとも0.05Hz、少なくとも0.1Hz、少なくとも0.5Hz、少なくとも0.8Hz、少なくとも1Hz、少なくとも4Hz、または少なくとも5Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。例えば、最大500Hz、最大400Hz、最大300Hz、最大250Hz、最大200Hz、最大100Hz、最大75Hz、または最大50Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。
【0017】
特に、1Hz以上の周波数が、関連の位置・厚さばらつきの出現と関連することが判明した。従って、1~500Hz、2~400Hz、3~300Hz、4~250Hz、5~200Hz、10~100Hz、15~75Hz、または20~50Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段を取るべきである。例えば、少なくとも1Hz、少なくとも2Hz、少なくとも3Hz、少なくとも4Hz、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも15Hz、または少なくとも20Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。例えば、最大500Hz、最大400Hz、最大300Hz、最大250Hz、最大200Hz、最大100Hz、最大75Hz、または最大50Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。
【0018】
ガラス溶融物の引き抜きは特に、ダウンドローまたはオーバーフローフュージョンを含み得る。両方の場合において、ガラス溶融物は槽から出てきて、次いでガラスリボンへと引き抜かれる。ガラス溶融物が槽から出てくる点で有する粘度は、位置・厚さばらつきの出現に関連する。とりわけ、ガラス溶融物が適切に引き抜かるためには、粘度が高すぎてはならない。しかしながら、粘度が低すぎると、引き抜きの間に位置・厚さばらつきを発生しやすくする粘度範囲においてガラスリボンが長くなりすぎる。従って、ガラス溶融物が槽から出てくる際の粘度は、102.20dPas以上、102.30dPas以上、102.40dPas以上、102.50dPas以上、102.60dPas以上、102.70dPas以上、102.80dPas以上、102.90dPas以上、103.00dPas以上、103.10dPas以上、103.20dPas以上、または103.30dPas以上であるべきである。ガラス溶融物が槽から出てくる際の粘度は例えば、最大104.00dPas、最大103.90dPas、最大103.80dPas、最大103.70dPas、最大103.60dPas、または最大103.50dPasであってよい。ガラス溶融物が槽から出てくる際の粘度は例えば、102.20dPas~104.00dPas、102.30dPas~104.00dPas、102.40dPas~103.90dPas、102.50dPas~103.90dPas、102.60dPas~103.80dPas、102.70dPas~103.80dPas、102.80dPas~103.70dPas、102.90dPas~103.70dPas、103.00dPas~103.60dPas、103.10dPas~103.60dPas、103.20dPas~103.50dPas、または103.30dPas~103.50dPasの範囲であってよい。
【0019】
ダウンドロー工程において、槽は細長いノズルを有し、そこからガラス溶融物が流れて下向きに出てくる。ガラス溶融物が槽から出てくる点は、ノズルの開口部によって、またはノズルに差し込まれたブレードの端部によって与えられ、前記ブレードのところでガラスが流れ落ちる。オーバーフローフュージョン工程において、この点は槽の底部側によって与えられ、そこでガラスの流れがぶつかって合流し、下向きに流れる。
【0020】
槽から出てきた後に粘度が急激に増加する場合も有利である。粘度増加の急激さは、ガラス組成の選択によって、および/または適した冷却レジームを適用することによって影響され得る。
【0021】
発明の詳細な説明
表面近傍の損傷レベル(ONSL)は、ガラス物品表面の表面的な損傷の程度を記述する。「損傷」は、ガラスで満たされていないが、引っかき傷、溝、脈理、ガス包含物、剥離、貝殻状断口、またその種のものに起因して、開いたかまたは閉じたキャビティとしてガラス物品内に存在する少なくとも1.0μmの広がりを有する体積である。損傷の「広がり」は、その最大直径である。損傷の「広がり」は損傷の「長さ」とも称され得る。損傷の「幅」は、損傷の長さに対して直交する方向における損傷の直径を意味する。この文脈において「表面的な」は、損傷が少なくとも区域的に物品の表面に達すること、またはそれらが少なくとも区域的に表面下1.0μm以下であることを意味する。いかなる損傷も含まない、つまり表面で損傷がなく且つ表面下1.0μmまでの深さにおいて損傷がない場合、ガラス物品の表面の区域は損傷不含である。
【0022】
ONSLは面積カバー率ONSLとして%で特定されることができ、その際、それは考察される表面区域の損傷を含む面積部分である。本開示においてONSLに言及される場合、特段記載されない限り、ONSLは、面積カバー率ではなく、特定の大きさ面積区域に基づく、通常は2×2mm2の面積区域に基づく表面近傍の損傷の数を規定する数値的なONSLが意味される。
【0023】
特定の面積区域における平均ONSLは、特にいくつかの異なる試験領域において表面近傍の損傷の数を特定し、引き続きこれから平均値を計算することによって特定される。検査される領域の面積は、ONSLの基礎として規定される面積区域の面積と同一である必要はない。例えば、ONSLが2×2mm2の面積区域に基づき特定される場合、表面近傍の損傷数は、面積が2×2mm2とは異なる試験領域において特定されることができる。特に、個々の試験領域の面積および/または試験領域の合計面積が2×2mm2よりm小さいことが可能である。本発明の実施態様において、個々の試験領域の面積は例えば少なくとも0.05mm2、少なくとも0.1mm2、または少なくとも0.15mm2である。試験領域の合計面積は、例えば少なくとも0.2mm2、少なくとも0.5mm2、少なくとも0.7mm2、または少なくとも1.0mm2であってよい。本発明の実施態様において、試験領域は均一に分布するように配置される。特に、個々の試験領域は互いから、および/またはガラス物品の端部から等しい間隔であってよい。例えば、4つまたは9つの試験領域が検査される場合、それらは正方形の形状に配置され得る。9つの試験領域の場合、当然、正方形の中央に位置付けられる試験領域は端部に対して同じ距離を有さない。端部に対して同じ距離は特に、外側にある試験領域に該当する。試験領域を長方形または円の形状に配置することもできる。試験領域の配置の形状は、特に2つの主側面の形状に相応し得る。試験領域の実質的に均一な分布は、特に代表的なONSLを特定するために有利である。
【0024】
ONSLを、特に40倍の倍率を有する顕微鏡によって、好ましくは共焦点レーザー走査顕微鏡、特にZeiss LSM 800を用いて特定できる。
【0025】
平均ONSLの計算を、例を用いて説明する。ガラス物品について、面積区域2×2mm2に基づき平均ONSLが特定されるべきと仮定する。このために、いくつかの、通常は2~10(例えば7つ)の試験領域数で、表面近傍の損傷の数が各々特定され得る。個々の試験領域の面積は例えば0.1mm2~0.2mm2であることができる。例えば、各々0.1mm2の面積を有する10の試験領域が検査される場合であり且つ全体的に合計200個の表面近傍の損傷が検出される場合、平均ONSLは1mm2あたり200個の損傷であるか、または換言すれば、2×2mm2の面積区域において800個の損傷である。
【0026】
平均ONSLの代替的または追加的に、表面近傍の損傷の最大レベル(ONSL
max)を規定することも可能である。例えば、上述の例において、10の試験領域の1つにおいて40個の表面近傍の損傷が検出される場合であって、且つこの数が10の全ての試験領域で最も高い場合、ONSL
maxは損傷の数と、ONSL
maxが基づくべき面積区域の面積含分と試験領域の面積含分の商との積として計算され得る。従って、本例においては以下のとおりである:
【数1】
【0027】
ONSLは表面の粗さからは区別されるべきである。表面の粗さは本質的に表面におけるより小さな構造を記述し、それらの広がりは1.0μmを著しく下回る。例示的な粗さは、研磨された/処理されたガラスについて典型的には5nm未満であり、且つ熱成形された表面についてはさらに低い。ガラス物品は、例えば、特に2×2mm2または5×5mm2の面積区域において、特に好ましくはガラス物品の一方または両方の主側面の表面全体において2nm未満の粗さRaを有し得る。
【0028】
特に、2×2mm2の面積区域における平均ONSL2000個未満、例えば最大1500、最大1250、最大1000、最大750、最大500、最大400、最大300、最大200、最大150、最大125、最大100、最大90、最大80、最大70、最大60、または最大50個の損傷が有利である。2×2mm2の面積区域における平均ONSLは例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも20個の損傷であってよい。
【0029】
特に、2×2mm2の面積区域におけるONSLmaxが最大4000個、例えば最大3000、最大2500、最大2000、最大1500、最大1000、最大800、最大600、最大400、最大300、最大250、最大200、最大180、最大160、最大140、最大120、または最大100個の損傷であることが有利である。2×2mm2の面積区域におけるONSLmaxは例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも10、少なくとも20、または少なくとも40個の損傷であってよい。
【0030】
前記ガラス物品は3.0mm未満の薄い厚さを有する。好ましい実施態様において、それはさらにより著しく薄く、ここで特に前記物品は2.0mm未満、1.0mm未満、または500μm未満の厚さを有し得る。特定の実施態様において、前記物品は350μm未満、250μm未満、150μm未満、100μm未満、または50μm未満の厚さすら有する。特に、薄いガラス物品は(小型化への寄与としての厚さの低減以外に)、それらが圧力センサの重量にわずかにしか寄与しないという利点を有する。特に、自動車分野において、または携帯型電子機器において、重量が少ないことは重要である。しかし、非常に薄いガラスは取り扱いに関してはより困難でもある。例えば、非常に薄いガラスの場合、損傷が非常に容易に起きることがあり、非常に薄いガラスを処理するために必要とされる器具に基づく労力が大きい。いくつかの実施態様において、ガラス物品の厚さは5.0μmを上回り、好ましくはさらに10.0を上回り、または20.0μmを上回る。本発明の特に好ましいガラス物品は、250μmを上回る、例えば少なくとも300μm、少なくとも350μm、少なくとも400μm、少なくとも450μm、または少なくとも500μmの厚さを有する。前記の厚さは例えば、>250μm~<3.0mm、300μm~2.75mm、350μm~2.5mm、400μm~2.25mm、450μm~2.0mm、または500μm~1.5mmの範囲であってよい。前記の厚さは例えば、最大2.75mm、最大2.5mm、最大2.25mm、最大2.0mm、最大1.5mm、または最大1.0mmであってよい。
【0031】
従って、ガラス物品は好ましくはプレート、ディスク、ウェハ、シートまたはその種のものの形態における平坦な品物である。前記物品は特に、前記物品の他の側面に比して最も長い広がりを有する2つの主側面を有する。それら2つの側面間の最短距離は、ガラス物品の厚さに相応する。2つの主側面は特に平行平面である。
【0032】
好ましくは、本願に記載されるONSLは少なくともガラス物品の両方の主側面の区域に該当する。本明細書においてガラス物品の面積区域についてONSLが特定される場合、この値は好ましくはガラス物品の反対の主側面上の相応の面積区域にも該当する。
【0033】
携帯型の技術機器はますます小さくなってきており、できるだけ高いパッキング密度または集積密度が必要とされる。同じことが自動車にも該当し、圧力センサモジュールおよびシステムのために利用可能な空間はますます小さくなっている(例: タイヤの空気圧を測定するためのバルブ内圧力センサ)。これらの傾向が、より小さな構成部品へ向かう開発に勢いをつける。これは圧力センサにも該当する。高い測定精度を得るために、特にONSLおよび/またはODSに関して、圧力センサの製造のために十分である面積において、ガラス物品の品質が達成される必要がある。好ましくは、この面積は2×2mm2以上、特に4×4mm2以上、例えば5×5mm2以上である。
【0034】
ガラス物品自体は著しくより大きいことがある。典型的には、ガラス物品は少なくとも100mm2、少なくとも200mm2、少なくとも400mm2、少なくとも600mm2、少なくとも800mm2、少なくとも2000mm2(特に直径2インチ(約50mm))、少なくとも4400mm2(特に直径3インチ(約75mm))、および/または少なくとも74000mm2(特に直径12インチ(約300mm))の大きさを有し得る。そのような大きなガラス物品から、例えばガラス物品から構成部品をのこぎりで切り出す(ダイシングする)ことによって、圧力センサを製造するための多数の構成部品を製造できる。上記で言及されたよりも大きな、または小さなシートまたはウェハも使用され得る。ガラス物品は丸いまたは角のある底面を有し得る。
【0035】
好ましい実施態様において、ガラス物品は少なくとも100mm2、例えば少なくとも200mm2、少なくとも400mm2、少なくとも600mm2、少なくとも800mm2、少なくとも2000mm2(特に直径2インチ(約50mm))、少なくとも4400mm2(特に直径3インチ(約75mm))、および/または少なくとも74000mm2(特に直径12インチ(約300mm))の大きさを有する。ガラス物品の「大きさ」は、特にガラス物品の両方の主側面の1つの面積含分を意味する。特に、ガラス物品の両方の主側面は同じ面積含分を有する。
【0036】
1つの実施態様において、ガラス物品は、本願内で記載される値、特にONSLおよび/またはODSが該当する、2×2mm2の大きさを有する少なくとも30の面積区域、特に少なくとも40、または少なくとも45の面積区域を含み得る。そのようなガラス物品は特に、圧力センサ用の構成部品を経済的に製造するために適している。1つの実施態様において、パラメータONSLおよび/またはODSを満たすガラス物品の面積部分は、ガラス物品の全面積の少なくとも50.0%、少なくとも60.0%、少なくとも70.0%、少なくとも80.0%、少なくとも90.0%、少なくとも95.0%、少なくとも98.0%、少なくとも99.0%、または少なくとも99.9%である。1つの実施態様において、平均ONSLおよび/またはONSLmaxは両方の主側面の各々の全面積、特に両方の主側面の各々の面積の約100%で実質的に満たされる。1つの実施態様において、厚さに対して正規化されたODSavg、ODSmaxおよび/またはODSは、ガラス物品の全面積で、特に前記面積の100%で実質的に満たされる。
【0037】
位置・厚さばらつき(ODS)は、ガラス物品の面積区域内で測定された最高の厚さaと、測定された最低の厚さbとの間の差を記述する。以下が該当する: ODSi=ai
-bi、前記i=1、2、…、n(n=ガラス物品の面積区域の数)。ガラス物品の最大位置・厚さばらつき(ODSmax)は、このガラス物品の最高のODSi値である。ガラス物品の最小位置・厚さばらつき(ODSmin)は、このガラス物品の最低のODSi値である。ガラス物品の平均位置・厚さばらつき(ODSavg)は、このガラス物品のODSi値の平均値である。本開示においては、ODSavgはODSとして略記され且つ称されることが多い。本開示においてODSと称される場合、特段記載されない限り、ODSavgを意味する。
【0038】
測定のために、例えば干渉計、特にPrecitec Sensor Interferometric-K干渉計を使用できる。サンプリングレートは特に4kHzであってよい。走査速度は特に500mm/秒であってよい。測定点の間隔は特に0.125mmであってよい。
【0039】
ODSは厚さに対して正規化されて、従って考察される面積区域の平均厚さ、またはガラス物品の平均厚さ、またはガラス物品の公称厚さに基づいて、特定され得る。ガラス物品の平均厚さとガラス物品の公称厚さとの間のずれは通常は無視できる。従って、公称厚さはガラス物品の平均厚さについての良好な尺度であり、且つ厚さの正規化のために好ましく使用される。
【0040】
特に、ガラス物品の厚さ1μmあたり10nm未満の、厚さに対して正規化されたODSが有利である。ガラス物品の厚さ1μmあたり10nm未満の、厚さに対して正規化されたODSは好ましくは、2×2mm2以上の面積区域、特に4×4mm2以上の面積区域、またはさらには5×5mm2以上の面積区域において達成される。好ましくは、2×2mm2の面積区域における厚さに対して正規化されたODSは5nm/μm未満、または2nm/μm未満である。さらに好ましくは、5×5mm2の面積区域における厚さに対して正規化されたODSは5nm/μm未満、または2nm/μm未満である。製造方法に依存して、厚さに対して正規化された特定のODSは常に回避できるわけではないので、1つの実施態様におけるガラス物品は、特に2×2mm2以上、例えば5×5mm2の面積区域において、0.001nm/μm以上、例えば少なくとも0.01nm/μm、または少なくとも0.05nm/μmの、厚さに対して正規化されたODSを有し得る。例えば、本発明は2×2mm2の面積区域において0.001~10nm/μmの、0.01~5nm/μmの、または0.05~2nm/μmの範囲の、厚さに対して正規化されたODSを有するガラス物品に関する。本発明は5×5mm2の面積区域において0.001~10nm/μmの、0.01~5nm/μmの、または0.05~2nm/μmの範囲の、厚さに対して正規化されたODSを有するガラス物品にも関する。
【0041】
ODSを厚さに対して正規化せずに規定することもできる。この場合、「μm」の単位が使用され、厚さに対して正規化されたODSの場合のような「nm/μm」の単位ではない。厚さに対する正規化に言及されない場合、通常は厚さに対して正規化されていないODSを意味する。
【0042】
1つの実施態様において、ODSは2×2mm2の面積区域において10μm未満、特に5μm未満、または2μm未満である。1つの実施態様において、ODSは5×5mm2の面積区域において10μm未満、特に5μm未満、または2μm未満である。製造方法に依存して、特定のODSは常に回避できるわけではないので、1つの実施態様におけるガラス物品は、特に2×2mm2以上、例えば5×5mm2の面積区域において、0.001μm以上、例えば0.01μm以上、特に少なくとも0.05μmのODSを有し得る。例えば、本発明は2×2mm2の面積区域において0.001~10μmの、0.01~5μmの、または0.05~2μmの範囲のODSを有するガラス物品に関する。本発明は5×5mm2の面積区域において0.001~10μmの、0.01~5μmの、または0.05~2μmの範囲のODSを有するガラス物品にも関する。
【0043】
1つの実施態様において、最大位置・厚さばらつき(ODSmax)は2×2mm2の面積区域において50μm未満、特に25μm未満、または10μm未満である。1つの実施態様において、ODSは5×5mm2の面積区域において50μm未満、特に25μm未満、または10μm未満である。製造方法に依存して、特定のODSは常に回避できるわけではないので、1つの実施態様におけるガラス物品は、特に2×2mm2以上、例えば5×5mm2の面積区域において、0.005μm以上、例えば0.05μm以上、特に少なくとも0.25μmのODSmaxを有し得る。例えば、本発明は2×2mm2の面積区域において0.005~50μmの、0.05~25μmの、または0.25~10μmの範囲のODSmaxを有するガラス物品に関する。本発明は5×5mm2の面積区域において0.005~50μmの、0.05~25μmの、または0.25~10μmの範囲のODSmaxを有するガラス物品にも関する。
【0044】
前記ガラス物品は圧力センサにおいて、半導体と測定されるべき媒体との、良好且つ迅速、そして何よりもまず均一な熱的な切り離しを可能にすべきである。2×2mm
2以上の面積におけるガラス物品が、特に室温で、従って20℃~25℃の範囲の温度で、例えば22℃で、0.2W/(m・K)以下の、特に最大0.15W/(m・K)の、最大0.1W/(m・K)の、最大0.05W/(m・K)の、最大0.02W/(m・K)の、または最大0.01W/(m・K)の熱伝導率のばらつきを示す場合、均一な熱的な切り離しが達成される。好ましくは、この値はガラス物品全体に該当する。これに関し、「ばらつき」は、熱伝導率の最大の差、従って相応の面積における最高の熱伝導率と最低の熱伝導率との間の差を意味する。いくつかの実施態様において、熱伝導率のばらつきは、特に室温、従って20℃~25℃の範囲の温度で、例えば22℃で、例えば少なくとも0.0001W/(m・K)、または少なくとも0.001W/(m・K)であってよい。熱伝導率の測定を例えば、いわゆるレーザーフラッシュ法を用いて実施できる。ここで、前記方法はASTM E1461に準拠し、且つ測定された熱拡散率αから、比熱容量(C
p)並びに密度(ρ)を使用して熱伝導率(λ)を計算する:
【数2】
【0045】
計算によってガラス物品の特定の位置での熱伝導率を特定することも可能である。損傷のない位置では、有効熱伝導率λ
effはガラスの熱伝導率λに相応する。損傷を通じて熱伝導が生じる位置では、有効熱伝導率は以下の式(2)に従って計算できる:
【数3】
【0046】
式(2)において、λガラスはガラスの熱伝導率であり、λ空気は空気の熱伝導率であり、dはガラス物品の厚さであり、且つΔxは熱伝導方向の損傷の広がりである。特に、熱伝導はガラス物品の主側面の一方から、ガラス物品を通じて直交して、ガラス物品の他の主側面へと生じる。伝導率λ空気は、損傷を通じた熱伝導についての適したパラメータであり、なぜなら損傷はガラスで満たされていない体積であるからである。約室温の温度で、λ空気は約0.0262W/(m・K)であり、従って相応の温度で約1.0W/(m・K)である典型的なガラスの熱伝導率とは著しく異なる。式(2)によれば、ガラス物品の厚さdが500μmの場合、熱伝導の方向にΔx=1μmの広がりを有する損傷で既に約7%の熱伝導率の低下がもたらされることになる。
【0047】
温度範囲20℃~300℃で、2.5~11×10-6/K、特に3.0~9.5×10-6/Kの範囲の平均熱膨張係数(CTE)を有するガラス物品が使用される場合に有利であることが示されている。CTEはDIN ISO 7991:1987に準拠して特定される。
【0048】
好ましくは、前記ガラス物品は1mm3あたり1.0未満のいくつかのガス状包含物を含む。
【0049】
粘度・温度プロファイル
本発明は特定の粘度・温度プロファイルを有するガラスのみが本発明のガラス物品のために適していることに限定されない。しかしながら、特定の粘度・温度プロファイルが有利であることが示されている。特に経済的な製造のために、特に、ドロー法、例えばダウンドロー法またはオーバーフローフュージョン法において良好に製造され得るガラスが好ましく、従って特に、液相粘度(それより上で結晶が形成され得る)が103dPas以上、好ましくは103.5dPasを上回る、特に好ましくは104dPasを上回る値を有するようなガラスが形成され得る。
【0050】
オーバーフローフュージョン工程のダウンドローにおいてガラス溶融物が槽から出てくる際の温度で粘度が比較的大きいような粘度・温度プロファイルをガラスが有する場合、位置・厚さばらつきを低減するために特に有利である。さらには、温度の低下に伴う粘度の増加が比較的急激であるような粘度・温度プロファイルをガラスが有する場合、有利である。前記の手段のいずれも、個別に、または組み合わせて、ガラスの実質的な位置・厚さばらつきの発現しやすさを実質的に低減する。
【0051】
通常、ガラスの特定の粘度を達成するために必要な温度を計算するために、Vogel-Fulcher-Tammann式(VFT式)が使用される(DIN ISO 7884-2:1998-2も参照):
【数4】
【0052】
VFT式において、ηは粘度であり、AおよびBは温度に依存しない材料のパラメータであり、Tは温度であり、且つT0はVogel温度である。所与のガラスについてはA、BおよびT0は一定である。
【0053】
好ましくは、前記ガラスはBについて少なくとも3500K、少なくとも4000K、または少なくとも4500Kの値を有する。特に好ましい実施態様において、前記ガラスはBについて少なくとも5000K、少なくとも5500K、または少なくとも6000Kの値を有する。好ましくは、Bは最大12000K、最大11000K、最大10500K、最大10000K、最大9500K、または最大9000Kである。パラメータBは例えば3500~12000K、4000~11000K、4500~10500K、5000~10000K、5500~9500K、または6000~9000Kの範囲であってよい。
【0054】
T0は好ましくは少なくとも25℃、少なくとも50℃、少なくとも75℃、少なくとも100℃、または少なくとも120℃である。好ましくは、T0は最高300℃、最高275℃、または最高250℃、または最高225℃、または最高215℃である。T0は例えば25℃~300℃、50℃~275℃、75℃~250℃、100℃~225℃、または120℃~215℃の範囲であってよい。
【0055】
Aについての値は好ましくは0未満、-0.5未満、-0.75未満、-1.0未満、または-1.5未満である。Aについての値は好ましくは少なくとも-5.5、少なくとも-5.0、または少なくとも-4.5である。Aについての値は例えば-5.5~<0、-5.5~<-0.5、-5.0~<-0.75、-4.5~<-1.0、または-4.5~<-1.5の範囲であってよい。
【0056】
それらのVFT定数を有するガラスは、ドロー法、例えばダウンドロー法またはオーバーフローフュージョン法において特に良好に製造され得る。
【0057】
特に好ましくは、前記ガラスは以下のVFT定数を有する: Aは-5.5~<0.0の範囲であり、Bは3500~12000Kの範囲であり、且つ/またはT0は25℃~300℃の範囲である。さらにより好ましくは、前記ガラスは以下のVFT定数を有する: Aは-5.0~<-0.75の範囲であり、Bは4000~10000Kの範囲であり、且つ/またはT0は75℃~270℃の範囲である。さらにより好ましくは、前記ガラスは以下のVFT定数を有する: Aは-4.5~<-1.5の範囲であり、Bは4500~9000Kの範囲であり、且つ/またはT0は120℃~250℃の範囲である。さらにより好ましくは、前記ガラスは以下のVFT定数を有する: Aは-4.5~-1.5未満の範囲であり、Bは5000~10000Kの範囲であり、且つ/またはT0は100℃~225℃の範囲である。これは、温度の低下に伴う粘度の急激な増加を達成ために特に有利であるので、実質的な位置・厚さばらつきの発現しやすさが低減される。
【0058】
ガラス溶融物が槽を出てくる点でのガラス溶融物の粘度はさらに関連する。この粘度は2つの独立した要因によって、一方ではガラス溶融物が槽から出てくる際の温度によって、且つ他方ではガラス組成によって特定される。第1の要因は当業者が相応に選択し得る工程パラメータである。例えば、関連する点でのガラス溶融物の粘度が低すぎる場合、当業者は低下された温度を選択して粘度を増加させることができる。しかしながら、これは合理的には特定の制限内でのみ行われる。従って、関連する温度での粘度が比較的高いような組成をガラスが有する場合、有利である。特に、ガラスがT=1400℃でVFT式による粘度η102.20dPas以上、102.30dPas以上、102.40dPas以上、102.50dPas以上、102.60dPas以上、102.70dPas以上、102.80dPas以上、102.90dPas以上、103.00dPas以上、103.10dPas以上、103.20dPas以上、または103.30dPas以上を有する場合、有利である。VFT式によるT=1400℃での粘度ηは例えば、最大104.00dPas、最大103.90dPas、最大103.80dPas、最大103.70dPas、最大103.60dPas、または最大103.50dPasであってよい。VFT式によるT=1400℃での粘度ηは例えば、102.20dPas~104.00dPas、102.30dPas~104.00dPas、102.40dPas~103.90dPas、102.50dPas~103.90dPas、102.60dPas~103.80dPas、102.70dPas~103.80dPas、102.80dPas~103.70dPas、102.90dPas~103.70dPas、103.00dPas~103.60dPas、103.10dPas~103.60dPas、103.20dPas~103.50dPas、または103.30dPas~103.50dPasの範囲であってよい。
【0059】
上記で示されたVFT式に鑑み、Aの増加、Bの増加、および/またはT0の増加は、所与の温度Tでの粘度ηの増加と関連していることがわかる。しかしながら、Aおよび/またはBの値の増加は、関連の温度範囲でのあまり急激ではない粘度変化とも関連する。
【0060】
従って、ガラスの成分が、所望の粘度・温度プロファイルが得られるようにバランスを取って選択される場合、有利である。例えば、最適化された粘度・温度プロファイルが得られるように、特定のVFT定数に減少作用を有する成分は、好ましくはそれぞれのVFT定数または他の2つのVFT定数の1つに増加作用を有する成分によってバランスを取られ、その逆もまた然りである。
【0061】
ガラスの構成成分の選択は、屈折率の温度依存性に影響する。例えば、SiO2の添加は、VFT式の値Aを減少し、且つ値BおよびT0を増加させる。以下の表にガラス構成成分がVFT定数に及ぼす影響をまとめ、ここで「+」は増加作用を表し、「++」は上述の定数の値が強く増加されることを意味する。「ー」は減少作用を表し、「--」は、考察される定数の値がガラス構成成分の量の増加によって強く減少されることを意味する。
【0062】
【0063】
好ましいガラス組成
ガラス物品の組成は特定のガラスに限定されない。しかしながら、特に経済的な製造のためには、ドロー法、例えばダウンドロー法またはオーバーフローフュージョン法において良好に製造され得るガラスが好ましい。1つの実施態様において、前記ガラスはケイ酸塩ガラス、特にホウケイ酸ガラスまたはアルミノケイ酸ガラスである。さらに、ガラス組成を特定の限定内に保つことは、ガラスの位置・厚さばらつきの発現しやすさを低減するように粘度・温度プロファイルを最適化するために特に有利であることができる。これは特に、ガラスが槽を離れる点で比較的高い粘度を有し且つ/または温度の低下に伴う粘度の急激な増加を有するガラスに該当する。
【0064】
ガラス組成の助けによって、例えば、熱伝導率(W/(m・K))、ひいては熱貫流率(W/(m2・K))も影響され得る。特定の酸化物、例えばSiO2、Al2O3、B2O3、MgO、CaO、SrO、BaOまたはK2Oは、熱伝導率の増加と関連付けられる。他の酸化物、例えばTiO2、Li2OまたはNa2Oは、熱伝導率の減少と関連付けられる。
【0065】
本開示において、アルカリ金属酸化物の合計、特にLi2O+Na2O+K2Oの合計は「R2O」とも称される。同様に、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの合計は「RO」とも称される。
【0066】
1つの実施態様において、前記ガラスは少なくとも60.0モル%のSiO2を含む。任意に、SiO2の含有率は87.0モル%まで、または85.0モル%までであることができる。二酸化ケイ素はガラスの耐性に実質的に寄与する。しかし、それはガラスの加工温度を上げるので、製造の経済性を低下させる。1つの実施態様において、前記ガラスは少なくとも67.0モル%、または少なくとも75.0モル%、より好ましくは少なくとも77.5モル%、より好ましくは少なくとも80.0%モル%のSiO2を含む。
【0067】
いくつかの実施態様において、ガラス中の任意成分はB2O3である。
【0068】
例えば、前記ガラスは以下の成分をモル%で特定される割合で含有し得る:
【表2】
【0069】
以下の成分を質量%で含むガラスを含むか、または該ガラスから製造されたガラス物品が、実施態様によるガラス物品および/または実施態様による方法において製造できるガラス物品を提供するために特に好ましいことが示された:
組成範囲1:
SiO2 60~65
B2O3 6~10.5
Al2O3 14~25
MgO 0~3
CaO 0~9
BaO 3~8
ZnO 0~2、
ここで以下が該当する: MgOとCaOとBaOとの含有率の合計は8~18質量%の範囲であることを特徴とする。
【0070】
組成範囲2:
SiO2 60~85
B2O3 5~20
Al2O3 2~15
Na2O 3~15
K2O 3~15
ZnO 0~12
TiO2 0.5~10
CaO 0~0.1。
【0071】
組成範囲3:
SiO2 75~85
B2O3 8~15
Al2O3 2~4.5
Na2O 1.5~5.5
K2O 0~2。
【0072】
組成範囲4:
SiO2 20~70、好ましくは50~60、特に好ましくは52~58
B2O3 0.5~14、好ましくは2~12、特に好ましくは2~4
Al2O3 15~41、好ましくは16~24、特に好ましくは18~23
MgO 0.5~15、好ましくは2~12、特に好ましくは3~5
CaO 0~5、好ましくは0~3
BaO 0~7、好ましくは0~6
ZnO 0~20、好ましくは2~12、特に好ましくは8~10
Na2O 0~7、好ましくは1~6、特に好ましくは3~5。
【0073】
組成範囲5:
SiO2 50~81
B2O3 0~5
Al2O3 0~5
R2O 5~28
RO 5~25
TiO2+ZrO2 0~6
P2O5 0~2。
【0074】
組成範囲6:
SiO2 52~66
B2O3 0~8
Al2O3 15~25
R2O 4~30
RO 0~6
TiO2+CeO2 0~2.5
ZrO2 0~2.5。
【0075】
上述の組成範囲の全てにおいて、例えば着色物質および/または清澄剤の形態でのわずかな構成成分および/または微量成分、従って例えばSnO2、CeO2、As2O3、Cl-、F-、硫酸塩がさらに含有され得る。
【0076】
一般に、本願に記載される実施態様に限定されることなく、ガラスが陽極結合可能(または接合可能)であるような形態を有する場合、有利であることがある。このために、ガラスが特定の割合のアルカリおよび/またはアルカリ酸化物、特にナトリウムおよび/またはナトリウム酸化物を含む場合、有利であることができる。そのような実施態様において、Na2Oの含有率は少なくとも0.5質量%であるべきだが、好ましくは6質量%を上回るべきではない。
【0077】
さらに、ガラスを圧力センサに使用するために、平均熱膨張係数が関連する。温度範囲20℃~300℃で、2.5~11×10-6/K、特に3.0~9.5×10-6/Kの範囲の平均熱膨張係数(CTE)を有するガラス物品を使用することが有利であることが示されている。CTEはDIN ISO 7991:1987に準拠して特定される。本発明の特定の実施態様において、これはケイ素の膨張係数に相応する3.1~3.3ppm/Kの範囲である。
【0078】
最良の場合、温度区間20~400℃の全ての温度で、長さΔL/Lにおける相対的な変化はケイ素の推移に類似しており、最良の場合、それは一致する。
【0079】
製造方法
本発明のガラス物品を例えばドロー法によって製造できる。例示的なドロー法は、ダウンドロー、オーバーフローフュージョン、およびリドローである。ダウンドローおよび/またはオーバーフローフュージョンが特に好ましい。
【0080】
表面の品質に応じて、後処理が必要とされることがある。例示的な後処理段階は研磨、研削およびラップ加工である。研削および任意に引き続く研磨が特に有利である。結合砥粒を用いた、特にダイヤモンド研削材を用いた研削が特に好ましい。
【0081】
典型的には、ドロー法を用いて、既に非常に良好な表面近傍の損傷レベルを特徴とするガラス物品が得られる。しかし、さらに目標を絞った手段を取らないと、引き抜かれたガラスは高いODSを有し得る。ドロー法ではなく、キャスティング法においてインゴットとして製造され、引き続きのこぎりで切られ且つ研磨されたガラス物品は、多くの場合、非常に低いODSを有するが高度の表面近傍の損傷を有する。本発明による方法においては、低いODSと低いONSLとの両方を特徴とし、従って圧力センサにおける構成部品として特に良好に適しているガラスを提供するための手段が取られている。以下に記載される方法は、連続的な方式で作業され得るので、経済的な観点からも有利である。
【0082】
1つの態様において、本発明はガラス物品の製造方法であって、以下の段階:
・ ガラス溶融物を製造する段階、
・ 前記ガラス溶融物を清澄する段階、
・ 前記ガラス溶融物を、特に引き抜きロールを使用して、3.0mm未満の範囲の目標厚さを有するガラスリボンへと引き抜く段階、
・ 前記ガラスリボンをガラス物品へと分割する段階
を含み、前記ガラスリボンは領域Zを通過し、そこで前記ガラスリボンは目標厚さを既に達成しているが、その粘度はまだ1010dPas未満であり、
前記ガラスは前記領域Zにおいて少なくとも0.5m/分且つ最大50m/分、例えば2~10m/分、10~25m/分、または25~50m/分の引き抜き速度で引き抜かれ、且つ、
前記領域Zを、0.01~500Hz、例えば0.05~400Hz、0.1~300Hz、0.5~250Hz、0.8~200Hz、1~100Hz、4~75Hz、または5~50Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように保つために適切な手段が取られる、前記方法に関する。
【0083】
特に、1Hz以上の周波数が、関連の位置・厚さばらつきの出現と関連することが判明した。従って、1~500Hz、2~400Hz、3~300Hz、4~250Hz、5~200Hz、10~100Hz、15~75Hz、または20~50Hzの周波数範囲における干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段を取るべきである。例えば、少なくとも1Hz、少なくとも2Hz、少なくとも3Hz、少なくとも4Hz、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも15Hz、または少なくとも20Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。例えば、最大500Hz、最大400Hz、最大300Hz、最大250Hz、最大200Hz、最大100Hz、最大75Hz、または最大50Hzの周波数を有する干渉の影響がないように領域Zを保つために適した手段が取られ得る。
【0084】
上述の周波数範囲における干渉の影響は、例えば引き抜き設備および/または領域Zの音響ハウジングによって達成され得る。任意に、引き抜きロールの(特に引き抜き方向における)距離の調整で既に設備における干渉の影響を最小化できる。
【0085】
このようにしてガラスの固有振動を抑制できる。ガラスの固有振動は特に、ガラスの固有周波数EF並びにその倍数(周波数f=n×EF)で発生する。引き抜きロールまたはローラーを適切に配置することにより、それらの固有振動を抑制できる。例えば、第1の引き抜きロールとHFGゾーン(熱間成形ゾーン)との間に第2の引き抜きロールを、第1の引き抜きロールに対する第2の引き抜きロールの距離がHFGゾーンに対する第1の引き抜きロールの距離の1/n未満であるように選択されるように配置して、n×EFを有する固有振動を抑制できる。
【0086】
関連の固有振動数は例えば、ガラスリボンが紐としてみなされる場合、以下の式に従って評価できる:
【数5】
【0087】
Lは紐の長さであり、Ψは張力であり、且つμは質量カバー率である。ガラスリボンが二次元物体(紐の代わりに膜)としてみなされる場合、さらなる固有周波数が特定され得る。
【0088】
干渉の影響を最小化するために、特に0.01~500Hz、例えば0.05~400Hz、0.1~300Hz、0.5~250Hz、0.8~200Hz、1~100Hz、4~75Hz、または5~50Hzの範囲、または1~500Hz、2~400Hz、3~300Hz、4~250Hz、5~200Hz、10~100Hz、15~75Hz、または20~50Hzの周波数範囲の振動の切り離しを提供することができる。
【0089】
特定の周波数範囲を除外し、且つ/または固有周波数に対する離調を作り出すことが有利である。
【0090】
冷却領域における対流を和らげて、ガラスが振動しないようにすることも有利である。これは例えば、パネル(圧力カスケードの遮蔽)の助けによって達成され得る。封止、特に気密封止を備えてもよい。
【0091】
また、引き抜き設備と成形とが切り離されている場合、振動を回避できる。従って、振動が成形に伝わることを回避できる。
【0092】
ガラス溶融物の引き抜きは特に、ダウンドローまたはオーバーフローフュージョンを含み得る。両方の場合、ガラス溶融物は槽から出てきて、次いでガラスリボンへと引き抜かれる。ガラス溶融物が槽から出てくる点で有する粘度は、位置・厚さばらつきの出現に特に関連する。とりわけ、ガラス溶融物が適切に引き抜かるためには、粘度が104dPa未満でなければならない。しかしながら、粘度が低すぎると、引き抜きの間に位置・厚さばらつきを発生しやすくする粘度範囲においてガラスリボンが長くなりすぎる。従って、ガラス溶融物が槽から出てくる点でのガラス溶融物の粘度は、102.20dPas以上、102.30dPas以上、102.40dPas以上、102.50dPas以上、102.60dPas以上、102.70dPas以上、102.80dPas以上、102.90dPas以上、103.00dPas以上、103.10dPas以上、103.20dPas以上、または103.30dPas以上であるべきである。ガラス溶融物が槽から出てくる点でのガラス溶融物の粘度は例えば、最大104.00dPas、最大103.90dPas、最大103.80dPas、最大103.70dPas、最大103.60dPas、または最大103.50dPasであってよい。ガラス溶融物が槽から出てくる点でのガラス溶融物の粘度は例えば、102.20dPas~104.00dPas、102.30dPas~104.00dPas、102.40dPas~103.90dPas、102.50dPas~103.90dPas、102.60dPas~103.80dPas、102.70dPas~103.80dPas、102.80dPas~103.70dPas、102.90dPas~103.70dPas、103.00dPas~103.60dPas、103.10dPas~103.60dPas、103.20dPas~103.50dPas、または103.30dPas~103.50dPasの範囲であってよい。
【0093】
槽から出てくる点でのガラス溶融物の粘度は主に2つの独立した要因によって、一方ではガラス溶融物が槽から出てくる際の温度によって、且つ他方ではガラス組成によって特定される。第1の要因は当業者が相応に選択し得る工程パラメータである。例えば、関連する点でのガラス溶融物の粘度が低すぎる場合、当業者は低下された温度を選択して粘度を増加させることができる。
【0094】
槽から出てきた後に粘度が急激に増加する場合も有利である。粘度増加の急激さは、ガラス組成の選択によって、および/または適した冷却レジームを適用することによって影響され得る。
【0095】
有利な実施態様
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、少なくとも1.0μmの広がりを有する損傷2000個未満である、前記ガラス物品に関する。
【0096】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が厚さ1μmあたり10nm未満である、前記ガラス物品に関する。
【0097】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、ODSが2×2mm2または5×5mm2の面積区域において10μm未満である、前記ガラス物品に関する。
【0098】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、ONSLmaxが2×2mm2の面積区域において最大4000個である、前記ガラス物品に関する。
【0099】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、最大位置・厚さばらつき(ODSmax)が2×2mm2または5×5mm2の面積区域において50μm未満である、前記ガラス物品に関する。
【0100】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、熱伝導率のばらつきが2×2mm2の面積において0.2W/(m・K)以下である、前記ガラス物品に関する。
【0101】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、以下のVFTパラメータ: Aは-5.5~<0.0の範囲であり、Bは3500~12000Kの範囲であり、且つ/またはT0は25℃~300℃の範囲であることを特徴とする粘度・温度プロファイルを有する、前記ガラス物品に関する。
【0102】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、少なくとも1.0μmの広がりを有する損傷2000個未満であり、且つODSが、2×2mm2の面積区域において10μm未満である、前記ガラス物品に関する。
【0103】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、少なくとも1.0μmの広がりを有する損傷2000個未満であり、且つ最大位置・厚さばらつき(ODSmax)が、2×2mm2の面積区域において50μm未満である、前記ガラス物品に関する。
【0104】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、少なくとも1.0μmの広がりを有する損傷2000個未満であり、且つ熱伝導率のばらつきが、2×2mm2の面積において0.2W/(m・K)以下である、前記ガラス物品に関する。
【0105】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における表面近傍の平均損傷レベル(ONSL)が、少なくとも1.0μmの広がりを有する損傷2000個未満であり、且つ以下のVFTパラメータ: Aは-5.5~<0.0の範囲であり、Bは3500~12000Kの範囲であり、且つ/またはT0は25℃~300℃の範囲であることを特徴とする粘度・温度プロファイルを有する、前記ガラス物品に関する。
【0106】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が、厚さ1μmあたり10nm未満であり、且つONSLmaxが、2×2mm2の面積区域において最大4000個である、前記ガラス物品に関する。
【0107】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が、厚さ1μmあたり10nm未満であり、且つ熱伝導率のばらつきが、2×2mm2の面積において0.2W/(m・K)以下である、前記ガラス物品に関する。
【0108】
1つの態様において、本発明は、厚さ3.0mm未満を有するガラス物品であって、2×2mm2における厚さに対して正規化された平均位置・厚さばらつき(ODS)が、厚さ1μmあたり10nm未満であり、且つ以下のVFTパラメータ: Aは-5.5~<0.0の範囲であり、Bは3500~12000Kの範囲であり、且つ/またはT0は25℃~300℃の範囲であることを特徴とする粘度・温度プロファイルを有する、前記ガラス物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図3】例1による試料の例示的な像を示す図である。
【
図4A】ダウンドロー法において製造されたガラス物品について、面積区域(2×2)mm
2について、公称厚さdに関して正規化されたODS
i分布の箱ひげ図である。
【
図4B】ダウンドロー法において製造されたガラス物品について、面積区域(5×5)mm
2について、公称厚さdに関して正規化されたODS
i分布の箱ひげ図である。
【実施例】
【0110】
本発明をここで、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。
【0111】
1. 例1
ガラス物品を様々な後処理段階に供した。例1Aはラップ加工および研磨によって後処理された。例1Bは研削および研磨によって後処理された。詳細には、後処理のプロトコルは以下のとおりであった。
【0112】
【0113】
例1Aおよび1Bにおいては同じ研磨段階を実施した。両方の例の間の唯一の違いは、例1Aは上述のラップ加工に供された一方で、例1Bは上述の研削に供されたことである。
【0114】
異なる後処理段階が表面近傍の損傷レベル(ONSL)に及ぼす影響を、120Vの65%の照明を備えた倍率40倍の顕微鏡(Zeiss LSM 800)下で観察した。例示的な像を
図3に示す。各々の黒い点が1つの損傷として解釈された。表面上に付着している汚染に起因する計数間違いを回避するために、顕微鏡で評価する前に試料の表面を洗浄した。
【0115】
結果を以下の表にまとめ、ここでONSLとしては、規定の面積における表面近傍の損傷の平均数が各々示される。例1Aおよび1Bの各々について、7つの試料を各々検査した。
【0116】
【0117】
例1Aと1Bとを比較すると、研削ではラップ加工に比べて良好な結果(より低い程度のONSL)が達成されることが示される。
【0118】
相応の後処理後の例1Aおよび1Bの公称厚さは各々約400μm~約450μmの範囲であった。例2に記載される方法では、2×2mm2および5×5mm2の面積区域について、位置・厚さばらつき(ODS)を特定した。例1Aと1Bとの間でODS値の関連の差は見られなかった。
【0119】
2×2mm2の面積区域の場合、例1Aおよび1Bの個々のODSi値の算術平均値として特定された平均位置・厚さばらつき(ODSavg)は各々約0.05μmであった。相応して、2×2mm2の面積区域における公称厚さあたりのODSは0.11~0.13nm/μmの範囲であった。
【0120】
5×5mm2の面積区域の場合、例1Aおよび1Bの個々のODSi値の算術平均値として特定された平均位置・厚さばらつき(ODSavg)は各々約0.13~0.14μmであった。相応して、5×5mm2の面積区域における公称厚さあたりのODSは0.27~0.34nm/μmの範囲であった。
【0121】
2. 例2
公称厚さ700μmまたは250μmを有するガラス物品をダウンドロー法で製造した。前記物品は各々長さ510mmおよび幅430mmを有した。
【0122】
ガラス物品の実際の場所に依存する厚さを、干渉測定を用いて光学的に特定した。このために、光をガラス物品上に集束し、物品の前側と後ろ側での反射の経路の違いから生じる干渉を使用してガラス物品の局所的な厚さを特定する。
【0123】
測定のために、Precitec Sensor Interferometric-K干渉計を使用した。サンプリングレートは4kHzであった。走査速度は500mm/秒であった。測定点の間隔は0.125mmであった。
【0124】
ガラスが引き抜かれた方向に対して直交する方向での測定トラックが測定された。2つの測定トラック間の距離は10mmであった。従って、ガラスが引き抜かれた方向において測定された空間分解能はわずか10mmであった。引き抜き方向における分解能を上げるために、線形補間を実施した。その結果、ガラスが引き抜かれた方向における空間分解能を1mmまで上げることができた。補間によって導入される誤差は<0.05μmであると見積もられた。従って、補間は関連の結果のずれをもたらさない。
【0125】
そのように得られた厚さの値に基づき、2×2mm2および5×5mm2の面積区域について、位置・厚さばらつき(ODS)を特定した。面積区域は、測定点の1つが常に1つの面積区域の中央にあるように選択された。従って、各々の測定点について、1つの面積区域が各々計算され、ODSに関して評価された。位置がガラス物品の端部に近すぎて、2×2mm2および5×5mm2の面積区域の中央として役立たない測定点のみが例外であった。ガラス物品を引き抜く方向および引き抜く方向に直交する方向において各々1mmの位置に関する分解能で、これはガラス物品あたり約200,000の評価される面積区域をもたらす。
【0126】
異なる一連の試験(以下でV1~V6と称する)から、公称厚さ250μmを有する4つのガラス物品(例「V1」)を検査した。さらに、公称厚さd=700μmを有する10のガラス物品(例「V2~V6」)を検査した(試験あたり各々2つのガラス物品)。(2×2)mm2を用いて考察される面積区域の数はガラス物品あたり204,408であり、(5×5)mm2を用いて考察される面積区域の数はガラス物品あたり202,905であった。
【0127】
興味深いことに、公称厚さ700μmの場合、特定されたODS値は試験内では変化しなかったが、試験間(V2~V6)で大きく変化したことが判明した。しかしながら、公称厚さ250μmの場合、異なる試料についてODS値に関して関連のずれは見られなかった。従って、以下において、公称厚さ250μmの場合は1つのODS値のみを規定する一方で、公称厚さ700μmの場合は、その上限および下限がそれぞれ全ての試験の検査された試料の最高および最低のODSavg値に相応する範囲を規定する。
【0128】
示されるODS値は、各々、個々のODSi値の算術平均値として特定された平均位置・厚さばらつき(ODSavg)である。(2×2)mm2の面積区域について、ODSは204,408のODSi値の平均値として計算される。(5×5)mm2の面積区域について、ODSは各々試験あたり202,905のODSi値の平均値である。
【0129】
【0130】
上記のまとめが基づいているデータを、公称厚さdあたりのODS
i値の箱ひげ図の形態で
図4に示す。ここで、
図4Aは面積区域(2×2)mm
2に関し、
図4Bは面積区域(5×5)mm
2に関する。
【0131】
図面の説明
図1は例示的な圧力センサを模式的に、しかし縮尺通りではなく示す。圧力センサは断面図で示され、例えばセラミック材料から製造され得るベース60を含む。ベース60上に、例えばエポキシ樹脂から形成される接着剤層63を用いてガラス部材100が固定される。ガラス部材100は開口部を含む。圧力センサは中央の感知ユニットとして、シリコン製のMEMSチップ61を含む。その中央領域において、それは薄くされた部分(フィラメント)を含む。ピエゾ抵抗機能はこのフィラメントに組み込まれている。MEMSチップ61はガラス部材に陽極接合され、測定キャビティ600を形成する。参照圧力キャビティ601は、局所的に薄くされた部分62によって形成される。この構成部品はシリコンまたはガラスのいずれかから製造されることができ、且つ例えば陽極接合または熱融着によってMEMSチップ61と気密接続される。
【0132】
図2は表面近傍の損傷を側面図で示す。分解能は1000倍である。
【0133】
図3は、表面近傍の損傷レベル(ONSL)の分析のための例1による試料の例示的な像を倍率40倍で示す。
図3Aおよび3Bは各々、例1Aおよび1Bの試料に相応する。例1A(
図3A)におけるONSLが例1B(
図3B)よりも高いことがわかる。
【0134】
図4はダウンドロー法において製造されたガラス物品について、面積区域(2×2)mm
2(
図4A)および(5×5)mm
2(
図4B)について、公称厚さ250μm(V1)および700μm(V2~V6)で、公称厚さdに関して正規化されたODS
i分布の箱ひげ図を示す。箱は各々、下位四分位数および上位四分位数によって限定される。中央値は箱内の水平線として示される。平均値は箱の横方向の限界を超えて伸びる水平線として示される。
【国際調査報告】