IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンクスト エス・イーの特許一覧

特表2024-512408燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法
<>
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図1
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図2
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図3
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図4
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図5
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図6
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図7
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図8
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図9
  • 特表-燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240312BHJP
【FI】
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555470
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022055903
(87)【国際公開番号】W WO2022189437
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105669.1
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523344474
【氏名又は名称】ヘンクスト エス・イー
【氏名又は名称原語表記】HENGST SE
【住所又は居所原語表記】NIENKAMP 55-85, 48147 MUENSTER, GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】レルファー,マルティン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC09
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127EE23
(57)【要約】
本発明は、燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置および方法に関する。前記装置は、流体タンクと当該流体タンクと流体的に接続されている水分離手段とを含んでなり、放出弁が前記流体タンクの上部領域および/または上面の上方において配置されている。前記放出弁を介して用途に応じた作動時にガスおよび液体、特に水、を流出する。これらのガスおよび液体は、通常、中央の流出管へ流出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(1)のアノードガスを調整するためのガス管理装置であって、
用途に応じた設置位置において、上面(2.1)および下面(2.2)、ならびに内部空間(3)を有する流体タンク(2)と、
前記流体タンク(2)と流体的に接続および/または前記流体タンクの前記内部空間(3)に配置されている水分離手段(4)と、
前記水分離手段(4)へのガス供給管(5)および前記水分離手段(4)からのガス流出管(6)と、
前記流体タンク(3)からの水のための立管(7)とを含んでなり、
前記立管(7)は、自身の下端(7.1)において、前記流体タンク(3)の内部空間(3.1)の下部領域と接続および/または前記下部領域内に突入しており、上端(7.2)において放出弁(8)、特に前記内部空間(3)の外側に配置された放出弁(8)、と接続されており、
前記放出弁(8)は、前記流体タンクの上部領域(3.2)および/または前記上面(2.1)の上方に配置されており、前記放出弁(8)は、出口側において中央の流出管(9)と接続可能であり、同一の前記放出弁(8)を介して用途に応じた作動時にガスおよび/または液体、特に水、を流出することが可能であり、特に前記中央の流出管(9)に導入可能である、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記立管(7)は、少なくともバイパス管(12)を介して前記流体タンクの前記内部空間(3)と流体的に接続されており、前記バイパス管は、特に前記流体タンク(2)の前記上部領域に配置されており、前記バイパス管(12)は、特に前記立管における穴および/または開口部である、ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記立管(7)内において前記内部空間(3)の前記上部領域において非常弁(14)が配置されており、前記非常弁を介して前記流体タンク(2)の前記内部空間(3)から前記立管(7)への流通が可能であり、前記非常弁(14)は、好ましくは逃し弁、特に予め負荷された受動逃し弁、であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記バイパス管(12)は、前記内部空間内において前記非常弁(14)の上方に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バイパス管(12)には弁、特に受動逆弁および/または受動逃し弁、が設けられており、前記弁は、持続して開放されており、前記立管(7)における体積流量および/または内圧の限界値を超えると前記バイパス管(12)を閉止することを特徴とする、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも一つの別の通気管(13)が設けられており、前記通気管を介して前記内部空間(3)が前記放出弁(8)と流体的に接続可能であり、前記別の通気管(13)は、前記立管(7)に対する直接の流体的な接続は有さず、前記放出弁(13)は、複数ポート弁であることを特徴とする、前項のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記放出弁(8)は、前記流体タンク(2)の前記内部空間(3)と、前記立管(7)との間の流体接続を確立することが可能である弁位置において、内側の管経路を有することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記放出弁(8)は、前記立管(7)(当該立管の内部空間)が閉止されると同時に、前記流体タンク(2)の前記内部空間(3)と前記中央の流出管(9)との間の管接続を確立することが可能である弁位置において内側の管経路を有することを特徴とする、請求項5または6に記載の装置。
【請求項9】
ガスおよび/または水の流出のためにそれぞれ関連する管を有する、少なくとも二つの別個の弁(10、11)が設けられていないことを特徴とする、前項のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
燃料電池を作動してアノードガス回路からガスおよび/または液体を排出する方法であって、前記ガスおよび/または液体をガス供給管(5)を介して燃料電池(1)の下流方向に水分離手段(4)へ供給して分離された液体、特に水(H2O)、を液体タンク(2)に流出する方法において、
-前記流体タンク(2)を放出弁(8)を介して少なくとも部分的に空にするステップ、
-少なくとも部分的に前記アノードガス回路から前記ガスを排出して清浄ガス(H2)を前記アノードガス回路に導入するステップ、を含み、
前記アノードガス回路からの前記ガスの排出および/または前記流体タンクからの液体の排出が同一の前記放出弁(8)を介して実施され、前記放出弁(8)は、前記流体タンク(2)の上部領域(3.1)および/または上面(2.2)の上方において配置されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
第一のステップにおいて、前記ガスは、空にするステップにおいて存在する液体を前記放出弁を通して前方に押し出し、第二のステップにおいて、流出すべきガスの部分を前記放出弁を通して案内することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の装置を使用することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
過度な圧力上昇および/または前記内部空間(3)の下部領域(3.1)における凍結が生じた場合に、前記内部空間(3)の前記上部領域における非常弁(14)を開放して、存在する液体を前記内部空間(3)から前記立管および前記放出弁(8)を介して流出する、特に中央の流出管内に導入する、非常放出プロセスが設けられていることを特徴とする、請求項10~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バイパス管(12)は、前記立管における内圧または体積流量の少なくとも一つの限界値を超えた場合に閉止されること、特に受動逆止弁および/または受動逃し弁によって閉止されること、を特徴とする、請求項10~13のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置に関し、さらには請求項9の上位概念による関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の燃料電池における化学反応では、水素リッチな(H2リッチな)プロセスガスまたはプロセス流体が、大気酸素を供給することによって、化学的に、特に水(H2O)に、変換される。H2に乏しい排気ガスは、少なくとも部分的に循環されて、燃料電池へ再導入される前に、必要とされる濃度になるまでH2ガスが濃縮される。さらに、燃料電池の排気ガスからは、副生成物や不純物、特に水(H2O)および窒素(N2)、を流出または排出する必要がある。
【0003】
アノードガスを効率的に処理するために、特に水の分離とガスの排出(パージ)を実現するために、先行技術から様々な装置および方法が公知である。例えば、独国特許出願公開第102012020280号明細書は、水分離ユニットを開示しており、当該水分離ユニットにおいては水の流出とパージの両方を可能にする吐出弁が収集タンクの下方に設けられており、ガスが収集タンクのガス空間内に下方から突入する立管を介して供給されることで、ガスは上方のガス空間から下方に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012020280号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水分離手段の収集タンクにおいて氷が形成されると、吐出口が閉鎖され、放出弁の凍結につながり、排水とガス排出(パージ)を実施する必要があり、これは現在までに十分に解消されていない問題であることが判明した。このような氷の形成は、ほぼ燃料電池が停止しているときのみに発生するため、エンジンを始動する前に必要なパージが困難または不可能になる。
【0006】
よって、本発明は、水分離手段において氷が形成された場合であってもアノードガスを処理することが可能である装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、この課題は、請求項1の特徴部分の各特徴を有するガス管理装置によって解決される。さらに請求項9の特徴部分による方法がこの課題を解決する。本発明による装置および方法の有利である実施形態および発展態様は、それぞれの従属請求項により得られる。
【0008】
本発明による燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置は、流体タンクと水分離手段を含んでなり、前記水分離手段は、前記流体タンクと流体的に接続および/または前記流体タンクの内部空間内に配置されている。さらに、燃料電池から排ガスが導入されるガス供給管が前記水分離手段内につながっており、ガス流出管が前記水分離手段から再び外へとつながっている。さらに立管が設けられており、当該立管は自身の下端において前記内部空間の下部領域、すなわち排気ガスから分離された水が最初に集まる場所と接続されている、および/または、前記立管は、前記内部空間内に突入している。前記立管は、上端において放出弁と接続されている。理想的には、前記放出弁が前記流体タンクの前記内部空間の外側に配置されている。
【0009】
ここで本発明の本質は、前記放出弁が前記流体タンクの上部領域および/または上面の上方に配置されており、さらに同じ放出弁を介して用途に応じた作動中に、ガスおよび液体、ここでは水、が流出可能であることにある。通常、流出は中央の流出管へと実施されるものの、これに限定されると理解されるものではなく、その後に続く、少なくとも一つのプロセスステップにおいて流体、ここでは特に水、を完全あるいは部分的に利用することは本発明に含まれる。
【0010】
前記放出弁を前記流体タンクの前記上部領域および/または上面の上方に配置することによって、前記放出弁の凍結が確実に防止される。さらにガスと流体の放出弁が一つだけであるため、経済性の向上に加えて、構造スペースが縮小され、軽量化が図れるという大きな利点が得られる。
【0011】
本明細書において、立ち上がり管と立管の各用語は、同義語として使用される。前記立管は、容器壁が前記立管の壁面の一部を形成し、それ以外の管壁の少なくとも一部が前記内部空間内に突入するか、前記流体タンクの外側に位置されることによって前記容器壁の一体化された要素として形成され得る。前記立管の下部開口部は、前記流体タンクの内底に隣接して、あるいは、わずかな距離をおいて配置されている。さらに前記立管は、自由懸垂された管として形成され得、当該管の自由な下端が前記流体タンクの前記内底の上方にわずかな距離をおいて位置づけられている。この際、自由懸垂とは、必要に応じて少なくとも一つの容器壁を有する、一つ以上の支柱が設けられることを含むものである。
【0012】
改良された変形態様において、前記立管内に少なくとも一つのバイパス管が設けられており、前記バイパス管によって前記流体タンクの前記内部空間が前記立管と流体的に接続されているため、恒常的な圧力均等化が実施される。この際、堆積物を回避するためには前記バイパス管が前記流体タンクの前記上部領域に配置されていることが有利であり、前記上部領域には通常、用途に応じた作動時において、ガスが充填されている。極めて有利で経済的に有利である解決方法として、前記バイパス管を内部空間と立管との間における小さな穴または開口部として製造することが可能である。
【0013】
改良された変形態様においては、前記バイパス管に弁が設けられている、すなわち前記バイパス管の管経路内あるいは管経路に隣接して弁が設けられる。前記弁は、特に受動逆止弁または受動逃し弁であり得る。前記弁は、持続して開放しているか、または、通常状態において開放している。前記立管における限界値、または、例えば体積流量および/または内圧など、立管と前記流体タンクの内部空間との間における限界値の差を超えると、前記限界値または前記限界値の差を再び下回るまで前記弁が閉止する。
【0014】
別の改良された実施形態においては、前記内部空間の前記上部領域において、前記立管内または前記立管に向かって非常弁が配置されている。前記非常弁を介して、特に前記内部空間において重大な圧力上昇が生じた場合に、前記流体タンクの前記内部空間の前記立管内への付加的な流体接続を確立させて、当該流体接続を介してガスおよび液体が迅速に流出することが可能である。これは、例えば前記内部空間の下部が凍結したことによって前記立管の下端が閉止される場合に必要である。有利である変形態様において前記非常弁は、例えば予め負荷された、受動逃し弁として形成される逃し弁である。
【0015】
前記バイパス管と前記非常弁の位置に関しては、前記バイパス管が前記流体タンクの前記内部空間において前記非常弁の上方に配置されていることが特に有利である。さらに前記非常弁を前記流体タンクの前記内部空間においてできるだけ高い位置に配置することが全体として有利である。
【0016】
好ましい実施形態において、前記非常弁および/または前記バイパス管を前記水分離手段の領域または前記水分離手段の上方に配置することで、ガスが充填された容積内においてできるだけ高い位置を確保する。本実施形態は、前記水分離手段と前記流体タンクとが完結した構造ユニットを形成する場合に特に適している。
【0017】
別の変形態様において少なくとも一つの別の通気管が設けられ、前記通気管を介して前記内部空間が前記放出弁と流体的に接続され得る。前記別の通気管は、前記立管に対して直接的に流体的に接続されていない。この場合、前記放出弁は、複数ポート弁として形成されている。
【0018】
前述の変形態様の改良においては、複数ポート弁として形成されている前記放出弁は、前記流体タンクの前記内部空間と前記立管との間が流通可能である弁位置において、内部管経路を有する。当該位置によって前記放出弁を介した立管と内部空間との間の圧力均等化が可能である。
【0019】
一実施形態において前記放出弁が、前記立管が閉じられると同時に前記流体タンクの内部空間と前記中央の流出管との間の管接続が確立され得る弁位置において、このような内側の管経路を有する。当該弁位置は、場合によっては前記立管にまだ流出されるべきでない液体が充填されている場合、あるいは当該液体が凍結している場合であっても前記内部空間の直接且つ迅速なパージを可能にする。本実施形態においては有利なことに、前記流体タンクの前記内部空間における前記バイパス管を省略することが可能である。前記流体タンクの大部分にまだ氷と水が満たされている間に純粋なガス排出(純粋なパージ)を実施すれば、氷が溶けるまでの作動開始には十分であるため、さらに前記非常弁をも省略することが可能である。
【0020】
よって、前述のすべての実施形態および変形態様において、前記アノードガス回路からガスおよび/または水を流出または排出するために、それぞれ関連する管を有する二つの別個の弁が設けられないため、全体として経済的に有利である。
【0021】
燃料電池を作動してアノードガス回路からガスおよび/または液体を排出するための本発明による方法は、ガスおよび/または液体がガス供給管を介して前記燃料電池の下流方向に水分離手段へと供給され、分離された液体、特に水(H2O)、が液体タンクに流出されることを含んでなる。この操作には、次のステップが含まれる:
-前記流体タンクを放出弁を介して少なくとも部分的に空にすること、
-少なくとも部分的に前記アノードガス回路から前記ガスを排出して清浄ガス(H2)を前記アノードガス回路に導入すること。
【0022】
この際、本発明の方法の本質は、前記アノードガス回路からのガスの排出および/または前記流体タンクからの液体の排出が同一の放出弁を介して実施されることにある。この際、前記放出弁は、前記流体タンクの上部領域および/または上面の上方に配置されている。このことは、前記液体タンクからの流出のために流体(水またはガス)が前記放出弁も配置されている上方に案内され得ることを意味する。
【0023】
大きな利点は、用途に応じた作動時において、液体が前記弁に直接並ぶことがなく、プロセス停止時には氷の形成が前記放出弁の凍結につながらないことにある。さらに放出弁が一つしかないことによってプロセス制御が簡素化される。
【0024】
改良された方法の変形態様では、第一の(一つ目の)部分ステップにおいて、前記ガスは、空にするステップにおいて存在する液体を前記放出弁を通して前方に押し出す。次の第二の(二つ目の)部分ステップにおいて、流出すべきガスの部分を前記放出弁を通して案内する。
【0025】
本発明による方法において、前述の燃料電池のアノードガスを調整するためのガス管理装置の一実施態様、あるいは、各実施態様の組み合わせを使用することが有利である。
【0026】
本方法の改良された実施態様において、非常放出プロセスが設けられており、当該プロセスでは過度な圧力上昇および/または前記内部空間の下部領域における凍結が生じた場合に、前記内部空間の前記上部領域における非常弁を開放して、前記内部空間に存在する液体を前記立管および前記放出弁を介して流出する。通常時において流出は、前記放出弁の上流に配置された流出管へと実施される。
【0027】
本発明のさらなる改良は、前記立管における、例えば内圧および/または体積流量などの少なくとも一つの限界値を超えた場合に、前記バイパス管が閉止されることにある。当該閉止のために受動逆止弁および/または受動逃し弁が使用されることが有利である。これにより水の排出またはパージの際に、前記流体タンクの前記内部空間内への過度な逆流の発生が防止され、当該各ステップ(水を空にすること、および、ガスの放出)の各時間が短縮される。
【0028】
本明細書において流体とは、特に断りのない限り、ガスまたは液体であると理解されたい。さらに各プロセス段階および各プロセスの場所によって、「ガス」が異なる組成および濃度のガス含有量と水分含有量とを有することは当業者にとって直ちに理解される。これらの関係性は、先行技術において公知である。よって、簡素化のために「ガス(Gas)」または「各ガス(Gase)」という用語のみを使用するものの、明白に別段異なることを述べない限り、常に、場所に応じておよびプロセスステップに応じて、それぞれのガスまたはガス混合物であると理解される。
【0029】
以下における図の説明において、異なる図面の各図における同一部分には常に同じ参照符号を付しているため、それぞれの図面の図について全ての参照符号を改めて説明する必要がない。
【0030】
本出願において空間位置に対する配置が重要であるため、「上」、「上方」、「上部」、「下」、「下方」または「下部」の表示は、重力に従った一般的な水平または垂直を指すものである。さらに、本発明の装置の向きの各表示は、明白に別段異なることを述べない限り、常に用途に応じた作動時および/または用途に応じた設置状況に生じる位置と向きであると理解されたい。
【0031】
以下に各概略図を用いて本発明による装置と方法とを例示的に説明する。各図は極めて簡素化されており、特に見やすさのために、例えば制御/調節ユニット、送電線およびデータ線、センサ(圧力、充填レベル、温度など)、その他の弁、空気圧要素などの必要且つ通常ある要素は図示されておらず、各要素は、必須または必要に応じて設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】先行技術としての極めて簡素化されたプロセスフロー図
図2】本発明によるガス管理装置の断面図
図3】第一の弁位置における、第一のプロセスの状態における図1のガス管理装置
図4】第二の弁位置における、第二のプロセスの状態における図1のガス管理装置
図5図4による弁位置における、別のプロセスの状態における図1のガス管理装置
図6】複数ポート弁として形成されている放出弁を有するガス管理装置
図7】第一の弁位置における、別の複数ポート弁として形成されている放出弁を有するガス管理装置
図8】別の弁位置における、図7のガス管理装置
図9】第三の弁位置における、図7および図8のガス管理装置
図10】別法による配置のバイパス管と非常弁とを有するガス管理装置
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には極めて簡素化されて燃料電池のプロセスフローが図示されている。この際、図の左側にあるカソードプロセス部20は、これ以上考慮すべきものではない。必要な酸素(O2)は、空気プロセス部30を介してカソード側の燃料電池1へと供給されるが、以下の説明は、全体的にアノード側のガスプロセスに関するものである。
【0034】
プロセスガスは、貯蔵タンク16から、管17および、例えばジェットミキサーとして形成され得る、ミキサー18を介して、管19を介して燃料電池1に供給される。H2が減少されたガスは管20を介して燃料電池1を出て、ガス供給管5を介して水分離手段4へと供給される。除湿されたガスは、ガス排出管6を介して水分離手段4から排出される。
【0035】
下流に設けられた分岐において、弁11を介して部分流が除去(パージ)されて管経路21を介して排出される。ミキサー18において必要なH2ガス濃度を調整するためにH2リッチガスを新たに供給する。その後、プロセスガスを前述のように管19を介して再び燃料電池1へと導入する。この類のプロセスは、多くの実施形態において公知であり、特にH2が直接ガスとして導入されるのではなく、適切なH2リッチ流体として導入されるプロセスも公知である。
【0036】
図2における断面図において、本発明によるガス管理装置1の基本構造が図示されている。流体タンク2の上に水分離手段4が配置されている。水分離手段4は、サイクロン、衝撃分離手段あるいはその他の公知である形において構成され得る。ガスは、ガス供給管5を介して水分離手段4へと供給されて、除湿された状態でガス排出管6を介して水分離手段から再び離れる。分離された水は、流体タンク2の内部空間3に滴下または流入して下部領域3.1に集まる。図2に図示されるように、流体タンク2には水が約三分の一充填されており、そのことが下部領域3.1における斜線面として示されている。内部空間3内には垂直流路として形成されている立管7が延びている。立管7の下端7.1は、流体タンク2の内底に対して開口している。立管7の上端7.2は、上流に向かって流出管9へと開口する放出弁8と接続されている。図示される例において、放出弁8は、単純な停止弁として形成されている。
【0037】
図示される例において、改良として流体タンク2の上面2.1の下方に小さなバイパス管12が小さい穴として設けられており、当該穴を介して内部空間3と立ち上がり管7との間における恒常的な圧力均等化が実施される。任意である非常弁14について、図5との関連において詳しく説明する。全体として図1は、燃料電池1が作動して分離された水が集められている作動状況を図示している。この際、放出弁8が閉止位置にあるため、パージ(H2に乏しいガスの放出)も液状の水の流出も実施されない。
【0038】
図3において後続の排出ステップ、すなわち流体の排出の第一の部分ステップとしての排水が図示されている。放出弁8は、通過に設定されているため、一方では流体タンク2の内圧、他方では流出管9との間における圧力勾配によって、立管7内の水(斜線部分)が押し込まれて放出弁8を通って案内される。流体タンク2の内部において必要な過圧は、公知の方法でH2リッチ流体を、例えばミキサー18(図1)に供給することによって得られる。この際、分離プロセスは、内部空間3における水滴によって示されるように必ずしも中断されない。
【0039】
図4において、排出の第二の部分ステップ、すなわち排水の後に続くガスの排出(パージ)が図示されている。この際、分離された水は、放出弁8と流出管9とを介して完全に排出されているため、その後に所望するパージ率(H2濃度)に到達するまで、ガス、とりわけH2に乏しいガス、の部分を排出する。この際、立管7と内部空間3との間における恒常的な開口部としてのバイパス管12には問題がなく、特にバイパス管12の断面が主流路の断面よりも著しく小さい場合には、不利を構成しない。
【0040】
図5において図示されるプロセスの状態は、破線で塗りつぶした面によって示される内部空間3の下部領域3.1に氷が形成されているため、立ち上がり管7の下端7.1における床に近い入口も閉止されているという、珍しくはないケースを図示している。圧力を上昇させて放出弁8を開くことによって、水とガスを内部空間3から排出することはもはや不可能である。この場合、バネによって予め負荷された非常弁14が圧力下降方向に開放する。非常弁14は、公知である逃し弁として形成されており、立管7の上部領域につながる。よって各矢印によって示されたように全ての流体を別のバイパスを介して内部空間3から立管7内に、さらに放出弁8を介して流出することが可能である。凍結は、特に停止時に生じるため、燃料電池1が作動すると凍結がその後短時間で溶解する。
【0041】
図6において、前述の各実施形態の別法、あるいは、補完的な実施形態が図示されている。この際、内部空間3にアクセス可能な流体タンク2の上面2.1に別の通気管13が設けられており、放出弁8は複数ポート弁として構成されている。第一の弁位置において内側の管経路を介して立管7との圧力均等化が実施され、その際に流出管9への経路は遮断されている。図6においては切り替えられていないものの、放出弁8の第二の弁位置において別の通気管13が閉じられて流出管9への経路が開放されることになる。当該実施形態において、通気管13が弁8の内側の管経路とともに前述のバイパス管12に類似したバイパス管を形成する。
【0042】
図7、8および9に図示される、3/3複数ポート弁としての放出弁8の実施形態において、その他の弁位置が可能である。図7において図示される第一の弁位置は、図6に図示される位置に相当する。この際、流体を排出することなく、内部空間3と立ち上がり管7との間における圧力均等化が実施される。
【0043】
第一の弁位置の左側である、図8において図示される第二の弁位置の場合、立管7が閉止されており、別の通気管13を介した内部空間3から流出管9への接続が開放されている。これにより極めて迅速且つ正確に分配可能なガス排出(パージ)が可能となる。
【0044】
第一の弁位置の右側である第三の弁位置において、別の通気管13が閉止されて、立管7から流出管9への接続が開放されている。これは図9において図示されている。これにより迅速且つ正確に分配可能な流体タンク2の排水が可能となる。
【0045】
最後に、図10において、水分離手段4の領域または当該水分離手段の高さにおける非常弁14とバイパス管12との特別な設置位置が図示されている。図示されていない別の実施形態において、非常弁14および/またはバイパス管12が水分離手段4の上方に配置されている。
【0046】
当業者が前述の各実施形態を補完的あるいは組み合わせて使用できることは直ちに明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 ガス管理装置
2 流体タンク
2.1 上面
2.2 下面
3 内部空間
3.1 下部領域
3.2 上部領域
4 水分離手段
5 ガス供給管
6 ガス流出管
7 立管
7.1 下端
7.2 上端
8 放出弁
9 流出管(中央)
10 弁(水吐出弁)
11 弁(パージ弁)
12 バイパス管
13 通気管
14 非常弁
15 プロセスガスタンク
16 貯蔵タンク
17 管
18 ミキサー
19 管
20 カソードプロセス部
30 空気プロセス部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】