(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】粗面をフィルタ内径側に向けられたエキスパンドメタルを使用したエアバッグインフレータフィルタ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20240312BHJP
B01D 39/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60R21/264
B01D39/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555479
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 US2022017131
(87)【国際公開番号】W WO2022191981
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519299717
【氏名又は名称】エーシーエス インダストリーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンツマン、スティーブン、ディー.
【テーマコード(参考)】
3D054
4D019
【Fターム(参考)】
3D054DD18
4D019AA01
4D019BA02
4D019BB02
4D019CA04
4D019CB04
4D019CB06
(57)【要約】
【要約】平坦化されたエキスパンドメタルの一片(9)は、前記一片の平坦化された粗面(17)が前記フィルタの内径(ID)の方を向き、前記平坦化された平滑面(15)が外径(OD)の方を向くような向きで、エアバッグインフレータフィルタ(21)に巻き付けられる。この向きにより、前記フィルタ(21)は、前記平滑面が内側に向いている標準的な巻き付け方法で作られたフィルタよりも多くのスラグを捕捉可能である。前記エキスパンドメタルは、例えば、可変エキスパンドメタル(VEM)または標準エキスパンドメタル(SEM)を含む様々なタイプを使用することができる。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグインフレータ用フィルタを製造する方法であって、
(1)平滑面と粗面を有するエキスパンドメタルのシートを提供する工程と、
(2)エキスパンドメタルの前記シートを平坦化する工程であって、前記平坦化する工程により前記シートの厚さを減少させる、平坦化する工程と、
(3)エキスパンドメタルの前記平坦化されたシートから、平坦化されたエキスパンドメタルの一片を形成する工程と、
(4)平坦化されたエキスパンドメタルの前記一片を軸を中心に巻き付ける工程を有する方法によって前記フィルタを形成する工程と
を有し、
(a)前記フィルタは、固体推進剤を受容するための空洞を有し、前記空洞が、組み立てられたエアバッグインフレータ内の前記固体推進剤と接触可能な表面を有し、
(b)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、平坦化された粗面を有し、
(c)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、前記空洞の前記表面の少なくとも一部が前記平坦化された粗面の一部を有するように巻かれている、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、固体推進剤がエキスパンドメタルの粗面との接触により劣化するチーズグレーター効果を低減するように、工程(2)における平坦化量を選択する工程を有する、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、平坦化前の前記エキスパンドメタルシートは、厚さtを有し、工程(2)で選択された前記平坦化量はtを25~45%減少させる、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記平坦化量は、tを30~40%減少させる、方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法において、前記平坦化量は、tを30~35%減少させる、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記平坦化された粗面が、エアバッグインフレータにおける前記フィルタの使用中にスラグを捕捉可能な凹面バリアを有するように、工程(2)における前記平坦化量を選択する工程を有する、方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記平坦化量は、前記凹面バリアの少なくとも一部が三次元の溝を有するように選択される、方法。
【請求項8】
軸を中心にロールアップされて複数のロール層を形成するエキスパンドメタルの一片を有するエアバッグインフレータ用フィルタであって、前記フィルタが、固体推進剤を受容するための空洞を有し、前記空洞は、組み立てられたエアバッグインフレータ内の前記固体推進剤と接触可能な表面を有する、エアバッグインフレータ用フィルタであって、
(a)エキスパンドメタルの前記一片は、平坦化された平滑面と平坦化された粗面とを有し、
(b)エキスパンドメタルの前記一片は、(1)前記平坦化された粗面が前記空洞の内側を向き、(2)前記空洞の前記表面の少なくとも一部が前記平坦化された粗面の一部を有するように、ロールアップされている、
フィルタ。
【請求項9】
請求項8記載のフィルタにおいて、前記平坦化された粗面は、エアバッグインフレータで前記フィルタを使用中にスラグを捕捉可能な前記凹面バリアを有する、フィルタ。
【請求項10】
請求項9記載のフィルタにおいて、前記凹面バリアの少なくとも一部は、三次元の溝を有する、フィルタ。
【請求項11】
請求項8記載のフィルタにおいて、当該フィルタが、同じ構造を有するが前記平坦化された粗面が前記空洞から離れるようにエキスパンドメタルの前記一片をロールアップしたフィルタよりもスラグの放出が少ないものである、フィルタ。
【請求項12】
請求項11記載のフィルタにおいて、当該フィルタから排出されるスラグが少なくとも10%減少するものである、フィルタ。
【請求項13】
請求項11記載のフィルタにおいて、当該フィルタから排出されるスラグが少なくとも20%減少するものである、フィルタ。
【請求項14】
請求項8記載のフィルタにおいて、当該フィルタが、チーズグレーター効果による固体推進剤の劣化を、同じ構造を有するが前記平坦化された粗面が前記空洞から離れるようにエキスパンドメタルの前記一片をロールアップしたフィルタと、実質的に同じか、それよりも減少させるものである、フィルタ。
【請求項15】
車両の乗員を保護するための装置であって、
(1)膨張式車両乗員保護装置と、
(2)前記膨張式車両乗員保護装置を膨張させるための膨張流体を供給するように作動可能なインフレータと
を有し、
前記インフレータは、
(A)粗面との接触により劣化しやすい固体推進剤と、
(B)複数のロール層を形成するように軸を中心にロールアップしたエキスパンドメタルの平坦化された一片を有するフィルタであって、前記フィルタは、内面と外側表面とを有する、フィルタと
を有し、
(1)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、平坦化された平滑面と平坦化された粗面を有し、
(2)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、当該一片の平坦化された平滑面が外側に、その平坦化された粗面が内側になるようにロールアップされ、
(3)前記フィルタの内面の少なくとも一部が、前記平坦化された粗面を有し、
(4)前記固形推進剤の少なくとも一部と前記フィルタの内面が、前記組み立てられたインフレータ内で接触しており、前記接触は前記インフレータの作動前に生じるものである、
装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置において、前記平坦化された粗面は、スラグを捕捉できる凹面バリアを有する、装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、前記凹面バリアの少なくとも一部は、三次元の溝を有する、装置。
【請求項18】
請求項15記載の装置において、前記フィルタが、同じ構造を有するが、前記平坦化された粗面の一部の代わりに前記平坦化された平滑面の一部が、前記フィルタの内面の少なくとも一部を有するように、エキスパンドメタルの前記一片がロールアップされたフィルタよりもスラグの放出が減少するものである、装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、前記フィルタから排出されるスラグが少なくとも10%減少するものである、フィルタ。
【請求項20】
請求項15記載の装置において、前記フィルタが、チーズグレーター効果による固体推進剤の劣化を、同じ構造を有するが、前記平坦化された粗面の一部の代わりに、前記平坦化された平滑面の一部が前記フィルタの内面の少なくとも一部を有するように、エキスパンドメタルの前記一片がロールアップされたフィルタと、実質的に同じか、それよりも減少させるものである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両安全に関し、特に、フィルタが少なくとも部分的にエキスパンドメタルから作られるエアバッグインフレータ用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
A.エキスパンドメタル
エキスパンドメタルは、消火用のマットからエアバッグのインフレータのフィルタに至るまで、さまざまな用途を見出してきた。エキスパンドメタルはさまざまな方法で作ることができる。例えば、エキスパンドメタルは、金属シートを採取し、前記シートに穴を開けて複数のスリットを作り、前記スリットの方向に対してシートを垂直に引っ張って前記スリットを伸ばし、前記シートに開口部を設けることによって作ることができる。エキスパンドメタルのもう一つの一般的な製造方法は、ピアス加工と冷間成形による開口部の形成で、最終的な形状から「ダイヤモンド」と呼ばれることが多い。前記シートの最終的な長さは、それに付随する穴とともに元のものより長くなるため、形成された前記開口部が拡大されるのと同様に、拡大される。
【0003】
このように、詳細は特定のプロセスによって異なるが、エキスパンドメタルシートは通常、穿孔器の歯またはビットの列を使用して前記シートに穿孔を形成することによって製造される。前記シートの前記穿孔器に面する側(平滑面)は、前記穿孔の周囲にくぼみを有し、前記シートの裏面(粗面)は、前記穿孔の周囲に対応する隆起部分、バリを有する。本開示に従って、バリは前記シートの前記平滑面にも形成されることが発見された。これらのバリは、前記粗面に形成されるバリよりも実質的に小さい。特に、前記粗面のバリは、インフレータの固体推進剤と接触した場合に「チーズグレーター」効果を示すのに十分な大きさであるが(後述を参照)、前記平滑面のバリは、商業的に許容できないレベルでこの効果を示すには小さすぎる。前記2種類のバリを区別するために、本明細書では、前記粗面のバリを「粗面エキスパンドメタルバリ」と呼び、前記平滑面のバリを「平滑面エキスパンドメタルバリ」と呼ぶ。
【0004】
本明細書では、エキスパンドメタルシートの粗面エキスパンドメタルバリを含まない側を前記シートの「平滑面」と呼び、粗面エキスパンドメタルバリを含む側を前記シートの「粗面」と呼ぶ。この用語は
図1に示されており、9は前記エキスパンドメタルシート、11は前記エキスパンドメタルシートの穿孔、13aは粗面エキスパンドメタルバリ、13bは平滑面エキスパンドメタルバリ、15は前記エキスパンドメタルシートの平滑面、17は前記エキスパンドメタルシートの粗面である。以下で議論され定量化されるように、特定の実施形態において、本開示の前記フィルタの前記エキスパンドメタルの前記平坦化された粗面は、前記平坦化された平滑面よりも少なくとも幾分粗い。
【0005】
B.エアバックインフレータ用のフィルタ
エアバッグインフレータ用フィルタは、多くの厳しい基準を満たす必要がある。このようなフィルタは、エアバッグの固体推進剤が急速に燃焼する際に発生する広範な破片(スラグ)を捕捉する役割を果たす。前記スラグは前記エアバッグを損傷させ、前記エアバッグから放出されると前記エアバッグが展開した車両の乗員を負傷させる可能性がある。さらに、前記スラグは化学的に人体に有害であることが多い。このような懸念に対処するため、エアバッグインフレータのメーカーは、作動時にエアバッグインフレータから放出されるスラグの量に関する厳しい基準を策定している。米国では、すべてのタイプのエアバッグアセンブリについて、エアバッグアセンブリーの展開によりエアバッグのクッションに到達する全微粒子(全スラグ)の最大値は1,000ミリグラムである。
【0006】
エアバッグのインフレータがこの基準を満たすためには、そのフィルタがフィルタリング機能において非常に効果的である必要がある。しかし同時に、固体推進剤の燃焼によって発生したガスが素早くエアバッグに到達し、膨張するようにしなければならない。つまり、前記フィルタが過剰な背圧を発生させてはならない。さらに、前記フィルタは、前記固体推進剤の急速な燃焼によって発生する大きな力の中で、低い背圧で効果的なフィルタリングを行うという、相反する基準を満たす必要がある。これらの基準の他に、前記フィルタは前記エアバッグに入る前記膨張ガスの流れを均一にするディフューザーとしての役割と、前記エアバッグや前記エアバッグで保護される人に害を与えないようにガスの温度を下げるヒートシンクとしての役割も果たす。
【0007】
これらの考慮事項に加え、大量生産品、特に自動車分野で使用されるものについては、コストが常に問題となる。エキスパンドメタルは、金属を膨張させる過程で各フィルタに含まれる原材料(シートメタル)の量を減らし、したがってフィルタのコストを下げることができるため、この点で他のフィルタ材料と比較して利点がある。また、金属含有量が少なければ、フィルタの重量も軽減されるため、燃費の向上、ひいては自動車の排出ガスの低減という観点からも望ましい。
【0008】
図2に示すように、エアバッグフィルタの一般的な構成は、中心の穴または空洞23を画定する内面22、外面24、および前記内面22と前記外面24との間に延びる実質的に平坦な端部25を有するチューブ21である。組み立てられたインフレータにおいて、前記フィルタの前記穴は、通常、前記インフレータの固体推進剤26の一部、多くの場合、全てを収容する。前記固体推進剤は、火工組成物の圧縮丸薬の形態である。前記丸薬は前記フィルタの穴内に充填され、少なくともある程度は、車両の使用中に前記エアバッグインフレータが受ける力の結果として前記穴内で動く(振動する)ことができる。前記丸薬は非常に強靭であるが、例えば粗い表面との接触によって少なくともいくらかの物理的劣化を受けやすい。この物理的劣化は、ひいては前記エアバッグインフレータの性能変化につながる。
【0009】
エアバッグインフレータは一旦車両に取り付けられると、少なくとも20年の耐用年数を持つ。そのため、前記インフレータとその内容物(固体推進剤を含む)は、長年の振動にさらされる。この振動による前記固体推進剤の大幅な劣化を避けるため、エキスパンドメタルを使用したエアバッグフィルタでは、前記エキスパンドメタルの粗面を外側に向け、平滑面のみを前記固体推進剤に接触させることが絶対的なルールとなっている。前記粗面が「チーズグレーター」の役割を果たし、前記固体推進剤を時間とともに劣化させることを恐れられてきた。実際、前記粗面と前記平滑面の向きに関する間違いが起こらないように、前記エキスパンドメタルの平滑面に着色を施し、完成したフィルタでは、前記平滑面が内側にあって前記フィルタの内面を形成していることを目視で容易に確認できるようにしている。
【発明の概要】
【0010】
以下に詳述するように、従来の常識に反して、エキスパンドメタルの粗面は、前記エキスパンドメタルに十分な量の平坦化を施して粗面を小さくすれば、インフレータの固体推進剤の許容できないレベルの劣化を招くことなく、前記エアバッグフィルタの内面を形成できることが驚くべきことに判明した。さらに驚くべきことに、平坦化された粗面を内側に向けると、前記膨張金属が平坦化され過ぎない限り、前記フィルタは前記固体推進剤の燃焼によって生成される前記スラグを捕捉するのに実質的に有利になることが判明した。以下に十分に説明するように、前記エキスパンドメタルの厚さを25~45%の範囲で減少させることにより、インフレータの耐用年数を損なうことなく、スラグ捕捉の強化というこの望ましい組み合わせを達成できることが発見された。
【0011】
一態様では、エアバッグインフレータ用フィルタを製造する方法が提供され、この方法は、
(1)平滑面と粗面を有するエキスパンドメタルのシートを提供する工程と、
(2)エキスパンドメタルの前記シートを平坦化する工程であって、前記平坦化により前記シートの厚さを減少させる、平坦化する工程と、
(3)平坦化されたエキスパンドメタルのシートから前記平坦化されたエキスパンドメタルの一片を形成する工程と、
(4)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片を軸を中心に巻き付ける工程を有する方法によって前記フィルタを形成する工程と
を有し、
(a)前記フィルタは、固体推進剤を受容するための空洞を有し、前記空洞が、組み立てられたエアバッグインフレータ内の前記固体推進剤と接触可能な表面を有し、
(b)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、平坦化された粗面を有し、
(c)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、前記空洞の前記表面の少なくとも一部が前記平坦化された粗面の一部を有するように巻かれている。
【0012】
一態様では、エアバッグインフレータ用のフィルタが提供され、このフィルタは、軸を中心にロールアップされて複数のロール層を形成するエキスパンドメタルの一片を有し、前記フィルタは、固体推進剤を受容するための空洞を有し、前記空洞は、組み立てられたエアバッグインフレータ内の前記固体推進剤と接触可能な表面を有し、
(a)エキスパンドメタルの前記一片は、平坦化された平滑面と平坦化された粗面とを有し、
(b)エキスパンドメタルの前記一片は、(1)前記平坦化された粗面が前記空洞の内側を向き、(2)前記空洞の前記表面の少なくとも一部が前記平坦化された粗面一部を有するようにロールアップされる。
【0013】
一態様では、車両の乗員を保護するのに役立つ装置が提供されるものであり、
(1)膨張式車両乗員保護装置と、
(2)前記膨張式車両乗員保護装置を膨張させるための膨張流体を供給するように作動可能なインフレータを有し、前記インフレータは、
(A)粗面との接触により劣化しやすい固体推進剤
(B)複数のロール層を形成するように軸を中心にロールアップされたエキスパンドメタルの平坦化された一片を有するフィルタであって、前記フィルタは、内面と外側表面とを有する、フィルタを有し、
(1)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、平坦化された平滑面と平坦化された粗面を有し、
(2)エキスパンドメタルの前記平坦化された一片は、当該一片の平坦化された平滑面が外側に、その平坦化された粗面が内側になるようにロールアップされ、
(3)前記フィルタの内面の少なくとも一部が、前記平坦化された粗面を有し、
(4)前記固形推進剤の少なくとも一部と前記フィルタの内面が、前記組み立てられたインフレータ内で接触しており、前記接触は前記インフレータの作動前に生じる。
【0014】
本明細書に開示された技術の追加の特性および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または本明細書に記載された技術を実施することによって認識されるであろう。添付の図面は、本技術のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。本明細書および図面に開示された技術の様々な態様は、個々に、およびあらゆる組み合わせで使用できることを理解されたい。また、上記の一般的な説明およびそれに続く詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲によって定義される本発明の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、前記シートの平滑面および粗面を示す、平坦化されていないエキスパンドメタルシートの概略図であり、前記粗面は、前記チーズグレーター効果によってインフレータの固体推進剤を劣化させるのに十分な大きさの、膨張プロセスによって形成されたバリの存在によって特徴付けられる。前記平滑面にもバリが存在することが判明しているが、これらは前記粗面バリよりも実質的に小さいため、前記固体推進剤の許容できないレベルの劣化には至らない。
図1Aは前記シートの粗面の断面図、
図1Bは平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態によるエアバッグフィルタの概略図であり、前記フィルタは、中心の穴または空洞を画定する内面、外面、および前記内面と前記外面との間に延在する実質的に平坦な端部を有するチューブの形態である。火工品組成物の丸薬は、前記フィルタの内面に接触することができる前記フィルタの前記穴内に配置される。
【
図3】
図3は、エキスパンドメタルシートと、前記シートから形成された一片からフィルタを製造するための実施形態の概略図である。
【
図4】
図4は、異なる量の平坦化を受けたエキスパンドメタルシートの粗面を示す一連の顕微鏡写真である。
図4Aは、平坦化されていないシートを示し、
図4B、
図4C、
図4Dおよび
図4Eは、厚さがそれぞれ21%、33%、45%および55%減少したシートを示す。縮尺の点では、この図における穿孔11の左右の角の間の距離は33千である。この縮尺は
図5~7にも適用される。
【
図5】
図5は、異なる量の平坦化を受けたエキスパンドメタルシートの平滑面を示す一連の顕微鏡写真である。
図5Aは、平坦化されていないシートを示し、
図5B、5C、5D、5Eは、厚さがそれぞれ21%、33%、45%および55%減少したシートを示す。
【
図6】
図6は、エキスパンドメタルシートの隣り合うバリの組に対する異なる平坦化量の効果を示す一連の顕微鏡写真である。
図6Aは平坦化されていないバリを示し、
図6B、
図6C、
図6Dおよび
図6Eは、バリの一部であるシートの厚さがそれぞれ21%、33%、45%および55%減少したバリを示す。
【
図7】
図7は、
図4~
図6のモンタージュ図である。具体的には、
図4の5枚のパネルが
図7の左側の列として、
図5の5枚のパネルが中央の列として、
図6の5枚のパネルが右側の列として繰り返されている。このモンタージュは、平坦化量の異なるエキスパンドメタルシートの表面構造の違いを強調している。
【0016】
図中の参照番号は以下に対応している。
9 エキスパンドメタルシート
11 エキスパンドメタルシートの穿孔
13a 粗面エキスパンドメタルバリ
13b 平滑面エキスパンドメタルバリ
15 エキスパンドメタルシートの平滑面
17 エキスパンドメタルシートの粗面
21 実質的にシリンダ形のフィルタ
22 フィルタ21の実質的にシリンダ形の内面
23 内面22によって画定されたフィルタ21の空洞
24 フィルタ21の実質的にシリンダ形の外面
25 フィルタ21の実質的に平坦な端部
26 固体推進剤
101 金属薄板ロール
103プレス
105 穿孔器
107 歯またはビット
109 補強材
111 カメラ
113 コンピュータ制御装置
115 モニター
121 ローラー
123 カッター
125 エキスパンドメタル片
127 エキスパンドメタル片
129 溶接機
131 シリンダ
133 溶接機
135 溶接メッシュシリンダ
137 雌型
139 マンドレル
141 穿孔11の壁(平滑面)
143 穿孔11の壁(平滑面)
145 凹面バリア(粗面)
147 凹面バリア(粗面)
149 凹型バリア(粗面)の三次元の溝
151 鋭角(粗面)
153 丸みを帯びた角(粗面)
155 エアバッグアセンブリ
157 インフレータ
159 膨張式車両乗員保護装置
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、一般的に使用されるエアバッグの構成では、前記インフレータのフィルタが前記インフレータの固体ガス発生推進剤丸薬(タブレットとも呼ばれる)と直接接触するため、エアバッグフィルタは歴史的に常に平滑面を内側に向けて巻かれてきた。前記丸薬は振動によって劣化しやすく、ざらざらしたものは前記丸薬の表面を削り、前記インフレータの性能を低下させる、および/または前記インフレータをより危険なものにしてしまうからである。前記フィルタのエキスパンドメタルの前記平滑面が外側を向き、前記粗面が内側を向いている場合、前記エキスパンドメタルは前記固体推進剤に対してまさにチーズグレーターのように作用する可能性がある。そのため、これまですべての火工品エアバッグ製造業者は、前記エキスパンドメタルの前記粗面を内側に向けたエキスパンドメタル製フィルタのラッピングを禁止してきた。
【0018】
エアバッグインフレータの展開中、前記エアバッグを満たすガスは、最も一般的な硝酸グアニジンに基づいた固体ロケット燃料によって生成される。この推進剤には通常、銅やその他の金属が多く含まれており、場合によっては組成全体の60%以上を占めることもある。エアバッグインフレーターの展開中、推進剤中の金属は液化し、前記推進剤の燃焼によって発生するガスに巻き込まれる。この非常に動的なシステムでは、固体から液体への相変化は数十ミリ秒で起こる。
【0019】
エアバッグインフレータの展開中、前記エアバッグを満たす前記ガスは、最も一般的な硝酸グアニジンに基づく固体ロケット燃料によって生成される。この推進剤には通常、銅やその他の金属が多く含まれており、場合によっては組成全体の60%以上を占めることもある。エアバッグインフレーターの展開中、前記推進剤中の前記金属は液化し、前記推進剤の燃焼によって発生する前記ガスに混入される。この非常に動的なシステムでは、固体から液体への相変化は数十ミリ秒で起こる。
【0020】
インフレーターフィルタの働きは、高温の燃焼ガスを熱力学的に拡散・冷却し、前記液体の銅やその他の金属を固相に戻して前記フィルタに捕獲し、冷却されたガスだけを逃がすことである。自動車会社は、前記インフレータから出るスラグの量を非常に気にしている。もしインフレータから残留物や空気中の微粒子(総称してスラグ)が合計1グラム以上出るようであれば、そのインフレータはNHTSAやその他の安全自動車団体が、喘息患者やその他の健康被害を受けやすい乗員を空気中の微粒子への暴露から守るために定めたUSCAR基準を満たしていないとして、自動車会社から拒否されることになる。
【0021】
本開示の一態様に従って、一旦形成されたエキスパンドメタルシートは、前記インフレータの推進剤の丸薬が前記粗面との接触の結果として許容できないほど劣化しないように、前記シートの粗面を平滑にするために、例えばカレンダーローラのセットに前記シートを通すことによって平坦化される。前記平坦化は、チーズグおろし器の観点から、前記エキスパンドメタルシートの前記平坦化された平滑面と前記平坦化された粗面とがほぼ同一になる程度でなければならない。つまり、前記平坦化された粗面は、平坦化されていない平滑面の通常よりも速く前記インフレータの丸薬をすり減らさないようにしなければならない。自動車会社は、インフレータの部品供給会社に対し、実験室での振動環境試験によってインフレータの丸薬がすり減るかどうかを試験するよう求めている。この試験は、自動車内での長期間の振動を再現するように設計されている。一実施形態では、このように試験された場合、前記平坦化された粗面は、前記フィルタの空洞の壁を形成する場合に、前記平滑面が前記空洞の壁を形成するフィルタの通常の場合よりも速く前記インフレータの丸薬を劣化させないように十分に平滑である。一実施形態では、平坦化後、前記平坦化された粗面と前記平坦化された平滑面の両方が滑らかな手触りになる。
【0022】
驚くべきことに、平坦化されているにもかかわらず、前記平坦化された粗面を内側に向けるように、すなわち機体流方向に向けるようにすることで、前記平坦化された平滑面を内側に向ける場合よりも効率的な洗浄が得られる。特定の動作理論に拘束されることは望まないが、前記平坦化された粗面エキスパンドメタルバリは、すべての穿孔においてスラグ捕捉ポケットを形成し、前記燃焼推進剤によって生成された前記スラグを速い速度で捕捉可能であると考えられる。つまり、前記エキスパンドメタルの粗いひれ(バリ)は、平らになっているとはいえ、内部捕捉ポケットの小さな大群のような働きをする。その結果、エキスパンドメタルフィルタの平坦化された平滑面を外側に、平坦化された粗面を内側に向けて巻くことで、より清浄なガス濾過を実現できる。
【0023】
次に
図3を参照すると、本開示のある態様によるエキスパンドメタルシートの製造は、金属シート101のロール(例えば、幅約19インチであり、助手席エアバッグ用フィルタを製造するためには2~6インチに、運転席エアバッグ用フィルタを製造するためには約1.5インチに切断することができるが、装置に応じて任意の幅を使用することができる)から開始する。エアバッグインフレータ用フィルタには、SS304、309、310、409、410、430などのステンレス鋼を使用できる。C1006からC1008の炭素鋼は、様々な用途に好まれることが多い。前記エキスパンドメタルを使用する環境によっては、シート状で入手可能な他の金属組成を使用することもできる。
【0024】
前記シートはまずプレス機103に供給され、そこで多数の歯またはビット107を有する穿孔器105が、前記歯が前記シートを穿孔するよう前記にシートに移動され、その後、スタンピング作業と同様に前記穿孔器が取り除かれる。前記ビットの形状は、互いに同一であることが好ましく、前記シートにスリットが形成されるような形状であることが好ましい。前記ビットの形状によって、前記ビットの穿通深さが形成される前記スリットの長さを決定され、前記穿通が深ければ深いほど、前記スリットは長くなり、したがって、延伸後の最終的な構造はより開放的になる。単一の穿孔器で示されているが、複数の穿孔器を使用して、異なる穿孔間隔、形状、および/または深さを提供することができる。エアバッグ用インフレータフィルタの場合、開口部は、前記シートの開口面積、前記シートの多孔性、または前記フィルタに必要な他のパラメータに関するエアバッグ製造業者の仕様に基づくサイズに作られる。
【0025】
前記シートは、好ましくは、前記シートの長手方向の前進を正確に制御することができるサーボモータ(図示せず)または他の機構によって前進させられる。前記シートの前進は、前記シートが打ち抜かれたときに静止するように、好ましくは離散的な工程である。好ましくはないが、連続的に移動するシートに歯を有するローラを使用することもできる。
【0026】
前記プレス機で製造された前記穿孔シートは、次にストレッチャ109に送られ、このストレッチャ109では、差動ローラが前記穿孔シートを軸方向(つまり、進行方向に沿って)に引き伸ばすので、前記スリットが菱形の穴に開けられる。(もちろん、六角形の開口部を形成するために六角形のビットを使用することもできるし、他の形状のビットを使用することもできるが、菱形に形成されたスリットは一般的な形状である)。
【0027】
切断作業と伸張作業は別々の作業として行うこともできるが、微細なパターンを形成する場合には、切断作業と伸張作業を同じ歯で同じ動作で行うことによって前記エキスパンドメタルシートを製造することが好ましい場合が多い。この作業では、材料は平坦化された下刃の上に垂れ下がり、角度のついた上歯またはビットが前記シートを切断し、前記シートの中に入っていく。前記シートは折り曲げられ、この折り曲げによって形成される角度が前記歯に関連してシートの伸張運動を引き起こす。その結果、前記歯が穿通する深さ分だけ前記シートが伸びる。このようにして達成される伸張の量は、典型的には20~25%の範囲であり、37%にもなり得る。前記切断・伸張の方法と比較すると、1工程の方法では、菱形よりも三角形のような形状の穿孔(開口部)ができる(
図4~5および7参照)。前記切断作業と伸張作業を別々に行う方法と同様に、前記1工程の方法は、(1)金属シートにスリットを形成し、(2)前記スリットを金属の長手軸方向に伸ばすことによって開口部を形成するが、2工程ではなく1工程で行う。
【0028】
少なくとも1台のカメラ111を含むビデオ制御システムは、ソフトウェアを実行するコンピュータ制御装置113、およびオプションのモニタ115と接続され、穴または開口部面積を検査し、(パラメータが前記制御装置に入力された後)前記穿孔が規格内にあるかどうかを知ることができる。前記制御装置のソフトウェアは、前記開口部のサイズおよび/または形(形状)をチェックして、前記個々の開口部、または開口面積(実際、または推定、または計算)が規格内であるかどうかを判断する。第二のカメラ(図示せず)を前記穿孔器と前記補強材との間に設置し、最初の打ち抜きが規格内であるかどうかを判定することができる。前記ビデオ制御システムは前記エキスパンドメタルシート製品の光学検査を行い、前記製品が規格内かどうかを判定する。前記規格内に入る、規格内に戻る、または規格を変更するために前記工程を変更するには、(前記コンピュータ制御装置を介して)サーボモーターを調整して前記穿孔の長手方向の間隔を変更することにより、前記シートの前進を変更することができる。また、前記補強材を調整して、前記穿孔入りシートの伸張量を増減させることもできる。
【0029】
一旦形成されると、前記エキスパンドメタルシートは、例えば、1若しくはペアのローラ121によって平坦化される。所望であれば、前記エキスパンドメタルシートを複数ペアのローラに通して、所望の平坦化の程度を達成することができる。当業者であれば、当技術分野及び本開示の知識に基づいて、本明細書で論じる前記平坦化レベルを達成するのに適したローラ構成を容易に選択することができるであろう。上述したように、本開示に従って、平坦化の量は、前記チーズグレーター効果によるインフレータの固体推進剤の劣化の結果として前記インフレータの耐用年数を損なうことなく、強化されたスラグ捕捉を達成するように選択される。再び
図3を参照すると、ビデオ制御システムのカメラ111は、前記平坦化工程の後に配置され、平坦化の程度が規格の範囲内であるかどうかを判定するために使用され得る。
【0030】
図4Aは、上述の前記1工程伸張加工によって製造されたエキスパンドメタルシートの前記粗面17の顕微鏡写真である。この図は、平坦化前の前記粗面を示している。見てわかるように、前記シートの穿孔11は概ね三角形の形状をしている。この製造工程では、前記粗面エキスパンドメタルバリは、前記三角形の交差する短辺に沿って最も大きくなる。これらの粗面バリは、
図4では13aと表示されている。
図5Aは、やはり平坦化前の前記シートの対応する平滑面15の顕微鏡写真である。この表面にもバリが見られるが、より小さく、前記三角形の長辺に位置している。これらの平滑面のバリは、
図5では13bと表示されている。
【0031】
前記伸張加工は、前記シートの厚みを例えば2倍に増加させるが、その正確な量は、前記加工の特殊性、形成される穿孔パターン、および基材の厚みに依存する。一例として、
図4~7の前記エキスパンドメタルの場合、前記基材の厚さは0.015インチ(1万5千分の1)であり、前記伸張加工によって前記シートの厚さが2倍以上増加した、すなわち、伸張後、
図4Aおよび
図5Aに示すように平坦化する前の前記シートの厚さは0.033インチ(3万3千分の1)であった。
【0032】
上述したように、平坦化前の前記エキスパンドメタルシートの厚さは、前記基材の厚さおよび前記基材が伸張される量に依存する。前記平坦化後の厚さは、前記エキスパンドシートに適用される平坦化の量に依存する。一実施形態では、前記チーズグおろし器効果の結果としてインフレータの耐用年数を損なうことなくスラグ捕捉の強化を達成するために必要な前記平坦化の量は、例えば、前記平坦化の結果として生じる前記エキスパンドメタルシートの前記平坦化前の厚さtの減少率で表すことができる。一実施形態では、前記厚さの減少は、25~45%の範囲とすることができ、これは、3万3千分の1の平坦化前の厚さを有するエキスパンドメタルシートの場合、それぞれ2万5千~1万8千分の1の範囲の平坦化後の厚さに対応する。
【0033】
特定の実施形態において、前記厚さの減少は、30~45%の範囲内、または30~40%の範囲内、または30~35%の範囲内である。本明細書および特許請求の範囲で言及されるパーセンテージ範囲は、前記範囲の端点を含む。下限および上限は、25~40%および25~35%のような他の組み合わせで使用することができる。エキスパンドメタルは、平坦化後にスプリングバック効果を示し、前記シートの前記最終厚さは、平坦化のために使用される前記ローラ間の間隔よりも幾分大きくなる。前記削減率の計算に使用する前記平坦化後の厚さは、スプリングバック後の最終厚さである。
【0034】
平坦化前と平坦化後のシートの厚さは、例えば、ノギスを用いて前記シートの複数の位置で測定し、平均することができる。通常、前記シートの複数の穿孔におよぶノギスを使用する代わりに、マイクロメーターを個々の穿孔に使用し、測定値を前記シート上の複数の位置について再び平均化することができる。この技術によって達成される改善は、シートの厚さの減少率に依存するため、通常、平坦化前と平坦化後の測定に同じ技術が使用される限り、どの測定技術が使用されるかは問題ではない。しかし、競合する場合は、より精度が高いマイクロメーター測定が好まれる。
【0035】
図4B~4Eは、
図4Aの粗面バリ13aに対する異なる平坦化量の効果を示し、
図5B~5Eは、
図5Aの平滑面バリ13bに対する効果を示す。これらの図では、前記平坦化の効果をより見やすくするために網掛けが用いられている。前記平坦化後の板厚は、Bパネルで2万6千分の1、Cパネルで2万2千0分の1、Dパネルで1万8千分の1、Eパネルで1万5千分の1であった。これらの平坦化後の厚さは、前記平坦化前のシートの厚さ(すなわち3万3千分の1)をそれぞれ21%、33%、45%、55%減少させたことに相当する。
【0036】
図6A~Eは、隣り合うバリのペアに対する前記平坦化の効果を示している。この図では、前記シートの粗面はすべてのパネルで左側にある。
図4および
図5と同様に、Aパネルは平坦化されていないバリを示し、B~Eパネルは平坦化量が
図4および
図5のB~Eパネルと同じ、すなわちシートの厚さの減少がそれぞれ21%、33%、45%、55%である平坦化されたバリを示す。
図6の顕微鏡写真は、シートから断面を切り出し、露出したエッジを研磨することによって作成した。
【0037】
本明細書に開示された前記フィルタによるスラグの捕捉の強化は、
図6に示された前記隣接するバリの形状から理解することができる。
図6Aに示すように、この図において右から左へ通過するガス(すなわち、前記エキスパンドメタルが平滑面を内側にして巻かれた前記フィルタを通過する経路)は、前記平滑面から見て前記穿孔に漏斗状の形状を与える穿孔11の壁部141および143によって、比較的平滑な流れに導かれる。一方、前記ガスが前記粗面から前記フィルタを通過する場合、前記ガスは、凹面バリア145および147(すなわち、流入する前記ガスから見て凹面)に係合することになるが、このバリアは、前記平滑面の壁部141および143とは異なり、ガスの流れを案内するための漏斗状の形状を呈さず、その代わりに、スラグが捕捉され得るポケット状の形状を呈する。さらに、前記バリアは、スラグ捕捉能力をさらに高める三次元の溝149を含む。これらの幾何学的効果の結果、前記粗面は前記平滑面よりもスラグ捕捉においてはるかに優れていることが判明している。
【0038】
しかしながら、前記粗面は前記チーズグレーター効果の原因であり、したがって、上述したように、前記インフレータの耐用年数を損なうことなく内側に向けることはできない。具体的には、
図6A(前記平坦化されていない場合)に示されるように、前記粗面は、前記固体推進剤と係合してそれを劣化させ得る角度で前記基材面から突き出る鋭い角151を含む。そして、課題は、強化されたスラグ捕捉をもたらすことが発見された前記粗面の前記幾何学的特徴を保持すると同時に、前記チーズグレーター効果を最小限に抑えることである。本開示に従って、この組み合わせは、前記エキスパンドメタルシートに適用される前記平坦化量を制御することによって達成される。特に、前記平坦化量は、前記平坦化によって生じるシートの厚さの減少が25~45%の範囲、または上述したその範囲のサブ範囲の1つになるように選択される。
【0039】
図6のパネルB~Eは、異なる平坦化量の効果を示している。具体的には、パネルB(21%)およびE(55%)は、25~45%の範囲外の平坦化レベルを示しており、パネルC(33%)およびD(45%)は、その範囲に含まれるレベルを示している。パネルC(厚さの33%減少)から始めて、インフレータの耐用年数の実質的な劣化なしに前記固体推進剤に接触することができる丸みを帯びた角153を有するように十分に平坦化されているが、前記凹面バリア145および147ならびにそれらに関連する三次元の溝149がもはやスラグ捕捉の強化を提供することができない点まで平坦化されていないバリを例示している。パネルE(厚さ55%減)は、過度の平坦化の影響を示している。前記凹面バリアと前記三次元の溝の両方が、スラグ捕捉を強化できないところまで平坦化されている。パネルD(厚さ45%減)は、パネルCとEの中間的なもので、凹面バリアと三次元の溝を十分に残し、既存の技術状態と比較してスラグ捕捉の改善を達成しているが、パネルCほど大きな改善ではない。パネルBは、平坦化不足のもう一方の極端を示しており、前記シートは依然として、前記インフレータの推進剤に接触して劣化させる可能性のある前記シートの前記平面からはみ出した鋭い角を含んでいる。
【0040】
車両用エアバッグインフレータ用フィルタの製造において、1つのフィルタ形状は、多孔質壁を有するシリンダである。このような装置を製造するために、
図3に引き続き、前記平坦化されたエキスパンドメタルシートをカッター123個々の一片125に切断する。より狭い幅を有する一片は、追加のカッター(図示せず)を用いて形成することができる。個々の一片は、十分な長さがあれば、フィルタに巻き込むことが可能であり、または、場合によっては異なる開口部領域を有する複数の一片を、
図3の127に示すように重なり合う関係に配置し、溶接機129を介して(好ましくは電気溶接によって)互いに取り付けることができる。その後、前記個々の一片または接合された複合片をシリンダ131に巻き込み、溶接機133によってメッシュの端部を前記シリンダに固定する。適切な内径および外径を製造するために、シリンダ135を、任意に可動内壁を有する雌型137に入れ、任意に拡張可能なマンドレル139を前記シリンダの中央ボアに挿入することができる。最終フィルタの所望の内径と外径は、任意に拡張する前記マンドレルと任意に収縮する金型の組み合わせにより、前記シリンダを所望の半径方向形状と寸法に冷間成形することで達成できる。
【0041】
一実施形態では、前記フィルタを製造するために複数のエキスパンドメタルの一片が使用される場合、それらの一片は、方向、形状、サイズ、および前記穿孔間の間隔(例えば、穿孔の列間のピッチ)を含む穿孔パターンが互いに異なり得る。好ましい実施形態では、一定でない穿孔パターンを有する可変エキスパンドメタル(VEM)の少なくとも1つの一片が使用される。このような一片は、前記フィルタの全部または実質的に全部を構成することができる。共通譲渡された米国特許第10,717,032号は、可変エキスパンドメタルを採用するフィルタを開示しており、この特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。エキスパンドメタルの層に加えて、前記フィルタは、金属スクリーン、セラミック織物などの他の材料の1若しくはそれ以上の層または部分を含むことができる。
【0042】
典型的な用途では、前記エキスパンドメタル片をそれ自体で圧延し、複数の層、例えば3層から20層を有する構造を製造する。例えば、前記フィルタは10層から15層を有することができる。最初の360度巻き(第1層)はスポット溶接で固定し、残りの層は所望の外径に達するまで互いに連続的に巻き付けることができる。その後、最外層をスポット溶接で固定する。一旦完成すると、前記フィルタは、前記インフレータの固体推進剤の燃焼によって生成されたガスが筐体から出て、前記筐体の外側について固定された前記エアバッグを膨張させることを可能にする複数の開口部を有するインフレータ筐体内に取り付けることができる。
図8は、燃焼するとエアバッグ、より一般的な用語では膨張式車両乗員保護装置159を膨張させる固体推進剤26を収容するフィルタ21を含むインフレータ157からなるエアバッグアセンブリ155の全体構造を示す概略図である。エアバッグアセンブリの前記構造の詳細は、そのようなアセンブリが当該技術分野において周知であるため省略する。
【0043】
以上のことから、本明細書で開示する技術は、エキスパンドメタルシートの平坦化とシートの巻き付けを組み合わせて、前記エキスパンドメタルシートの平坦化された粗面を内側に向けたフィルタを形成することにより、より清浄で安全なエアバッグインフレータフィルタを提供できることがわかる。このフィルターは、冷却性能と弾道性能の両方を含む、長年確立された性能基準を損なうことなく、既存のフィルタ設計を置き換えることができる。このフィルターは、より少ないフィルタ層とより少ないフィルター質量により、より低コストでインフレータのガスを清浄化することができる。また、前記フィルターを使用することで、より清浄な出力ガスを得ることができる。
【0044】
本発明の範囲および精神を逸脱しない様々な修正は、前述の開示から当業者には明らかであろう。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態、ならびにそれらの実施形態の修正、変形、および等価物をカバーすることを意図している。
【国際調査報告】