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特表2024-512414神経変性疾患の予防または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】神経変性疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 38/51 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240312BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240312BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61K38/18
A61K38/51
A61P25/28
A61K48/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
C07K14/54
C07K14/47
C12N9/88
C12N15/12
C12N15/60
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
C12N15/88 Z
A23L33/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555521
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2022003444
(87)【国際公開番号】W WO2022191658
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0032759
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517249886
【氏名又は名称】コーロン ライフ サイエンス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KOLON LIFE SCIENCE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】パク, チャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ジェイル
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スンオ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ギョンラン
(72)【発明者】
【氏名】ジ, ヘリン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヨムン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ハウン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヘジン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MC01
4B018MD20
4B018ME02
4B018ME14
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA12
4C084DB52
4C084DC26
4C084MA02
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA021
4C084ZA151
4C084ZA161
4C084ZA361
4C084ZA451
4C084ZB211
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA22
4C087MA24
4C087MA41
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA36
4C087ZA45
4C087ZB21
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA15
4H045DA89
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、退行性脳疾患の予防または治療用組成物に関する。本発明の薬学的組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む。本発明の薬学的組成物は、有効成分を併用投与することによって、単独投与する場合より優れた退行性脳疾患の改善および予防効果を示すので、低濃度の有効成分だけでも同一またはさらに優れた効果を示すことができる。したがって、本発明の薬学的組成物は、退行性脳疾患の予防または治療に有用に用いられ得る。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬学的組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子および神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遺伝子は、ベクターに含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウイルス性ベクターは、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記インターロイキン-10タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記インターロイキン-10タンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記神経膠細胞由来栄養因子タンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記神経膠細胞由来栄養因子タンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ67であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質は、配列番号7または配列番号9で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号8または配列番号10で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬学的組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬学的組成物は、注射剤であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物は、神経細胞死滅による運動障害の改善効果を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記神経細胞は、運動神経細胞(motor neuron)、感覚神経細胞(sensory neuron)または介在神経細胞(inter neuron)であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬学的組成物は、認知能力および記憶力の改善効果を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品。
【請求項22】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、退行性脳疾患の予防または治療方法。
【請求項23】
退行性脳疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退行性脳疾患の予防または治療用組成物およびこれを利用した退行性脳疾患の予防または治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
退行性脳疾患は、現在高齢者人口の増加に伴い、最も社会的に問題となっている疾患の1つであり、その予防および治療への関心は、日々高まっているが、未だに治療剤が開発されていないため、その深刻性がより一層大きく浮び上がっている疾患である。退行性脳神経系疾患は、神経系の一部分あるいは様々な部分で徐々に絶えず進める神経細胞の死滅による病気を総称し、退行性脳疾患は、老化による脳神経細胞の構造的退化、循環器障害などのような成人病に起因した二次的症状、または交通事故、産業災害、一酸化炭素中毒など物理的、機械的要因により脳が損傷を受けた場合、または脳に供給される血流量が減少したり遮断されて脳組織が回復できない損傷を受けた場合にも起こることがあるが、現在まで正確な原因が知られていない。退行性脳疾患が発病した場合、発病部位および機序などによって進行性認知機能障害、進行性運動失調、筋力低下および筋萎縮などが起こることがある。
【0003】
様々な遺伝子それぞれが神経細胞の死滅抑制に効果があることが知られている。しかしながら、単独遺伝子では神経細胞の死滅を抑制することに限界を示し、単独遺伝子治療は、高濃度の遺伝子治療剤を使用するしかないので、毒性などの副作用の問題から自由でなかった。したがって、副作用なしで効果的に退行性脳疾患を予防または治療できるだけでなく、遺伝子治療剤の併用投与によって退行性脳疾患の予防または治療効果に対する相乗効果を生み出すことができる治療剤の発掘が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような背景下に、本発明者らは、退行性脳疾患の予防または治療効果を有する治療剤を開発するために研究努力した結果、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を利用する場合、単独利用に比べて、顕著に優れた退行性脳疾患の予防または治療効果を示すという事実を確認することによって、本発明を完成した。
【0005】
これより、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品を提供することを他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、退行性脳疾患の予防または治療方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0008】
また、本発明は、退行性脳疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用を提供することをさらに他の目的とする。
【0009】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
本発明の一具現例において、前記薬学的組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子および神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含むものであってもよい。
【0012】
本発明の他の具現例において、前記薬学的組成物は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子をさらに含むものであってもよい。
【0013】
本発明のさらに他の具現例において、前記遺伝子は、ベクターに含まれるものであってもよい。
【0014】
本発明のさらに他の具現例において、前記ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターであってもよい。
【0015】
本発明のさらに他の具現例において、前記ウイルス性ベクターは、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0016】
本発明のさらに他の具現例において、前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、インターロイキン-10タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0018】
本発明のさらに他の具現例において、インターロイキン-10をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であってもよい。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、神経膠細胞由来栄養因子タンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経膠細胞由来栄養因子をコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であってもよい。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、グルタミン酸デカルボキシラーゼは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ67であってもよい。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質は、配列番号7または配列番号9で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、グルタミン酸デカルボキシラーゼをコード化する遺伝子は、配列番号8または配列番号10で表される塩基配列であってもよい。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記退行性脳疾患は、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むものであってもよい。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、注射剤であってもよい。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、神経細胞の死滅による運動障害の改善効果を有するものであってもよい。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経細胞は、運動神経細胞(motor neuron)、介在神経細胞(inter neuron)または感覚神経細胞(sensory neuron)であってもよい。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、認知能力および記憶力の改善効果を有するものであってもよい。
【0030】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0031】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、退行性脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、退行性脳疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む。したがって、前記薬学的組成物は、有効成分を併用投与することによって、単独投与する場合より優れた退行性脳疾患の改善および予防効果を示すので、低濃度の有効成分だけでも同一またはさらに優れた効果を示すことができる。これより、本発明の薬学的組成物は、退行性脳疾患の緩和、予防または治療に有用に用いられ得る。
【0034】
ただし、本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】hIL-10およびhGDNF併用投与による退行性脳疾患の改善効果を確認した図であり、図1aおよび図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した図であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した図であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した図である。
図1b】hIL-10およびhGDNF併用投与による退行性脳疾患の改善効果を確認した図であり、図1aおよび図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した図であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した図であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した図である。
図1c】hIL-10およびhGDNF併用投与による退行性脳疾患の改善効果を確認した図であり、図1aおよび図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した図であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した図であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された退行性脳疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した図である。
図2】rAAV5-hIL-10/hGDNFの持続的退行性脳疾患の改善効果を確認するために、6-OHDAを投与してパーキンソン病動物モデルを製作した後、rAAV5-hIL-10/hGDNFを投与し、長期間退行性脳疾患の運動機能改善効果をrotation testを通じて確認した図である。
図3a】本発明の遺伝子治療剤の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)をマウスに前処理した後、6-OHDAを処理して退行性脳疾患動物モデルを製作し、本発明の遺伝子治療剤のドーパミン作動性神経細胞に対する神経細胞保護効果を確認した図である。具体的には、図3aは、Striatumで確認した結果であり、図3bは、SNpc(Substantia nigra pars compacta)で確認した結果である。
図3b】本発明の遺伝子治療剤の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)をマウスに前処理した後、6-OHDAを処理して退行性脳疾患動物モデルを製作し、本発明の遺伝子治療剤のドーパミン作動性神経細胞に対する神経細胞保護効果を確認した図である。具体的には、図3aは、Striatumで確認した結果であり、図3bは、SNpc(Substantia nigra pars compacta)で確認した結果である。
図4a】本発明の遺伝子治療剤の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)をマウスに前処理した後、6-OHDAを処理して退行性脳疾患動物モデルを製作し、本発明の遺伝子治療剤の運動低下予防効果を確認したものであり、具体的には、図4aは、マウスモデル製作4週後にrotation testの結果を確認したものであり、図4bは、マウスモデル製作後に10週間連続して観察したrotation test結果値であり、図4cは、マウスモデル製作後に2週が経過したときにRota-rodの結果を確認した結果である。
図4b】本発明の遺伝子治療剤の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)をマウスに前処理した後、6-OHDAを処理して退行性脳疾患動物モデルを製作し、本発明の遺伝子治療剤の運動低下予防効果を確認したものであり、具体的には、図4aは、マウスモデル製作4週後にrotation testの結果を確認したものであり、図4bは、マウスモデル製作後に10週間連続して観察したrotation test結果値であり、図4cは、マウスモデル製作後に2週が経過したときにRota-rodの結果を確認した結果である。
図4c】本発明の遺伝子治療剤の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)をマウスに前処理した後、6-OHDAを処理して退行性脳疾患動物モデルを製作し、本発明の遺伝子治療剤の運動低下予防効果を確認したものであり、具体的には、図4aは、マウスモデル製作4週後にrotation testの結果を確認したものであり、図4bは、マウスモデル製作後に10週間連続して観察したrotation test結果値であり、図4cは、マウスモデル製作後に2週が経過したときにRota-rodの結果を確認した結果である。
図5a】プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物の同時投与時に酸化ストレスによる神経細胞の死滅抑制効果を確認した図であり、具体的には、図5aは、Hによる神経細胞死滅の場合、図5bは、6-OHDAによる神経細胞死滅の場合、プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10,hGDNFおよびhGAD65タンパク質培養物の同時投与時に神経細胞の死滅抑制効果が現れることを確認した図である。
図5b】プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物の同時投与時に酸化ストレスによる神経細胞の死滅抑制効果を確認した図であり、具体的には、図5aは、Hによる神経細胞死滅の場合、図5bは、6-OHDAによる神経細胞死滅の場合、プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10,hGDNFおよびhGAD65タンパク質培養物の同時投与時に神経細胞の死滅抑制効果が現れることを確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、優れた退行性脳疾患の予防または治療効果を有する治療剤を開発するために研究努力した結果、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を利用する場合、単独利用に比べて、優れた退行性脳疾患の予防または治療効果を有するという事実を確認したところ、これにより本発明を完成することになった。
【0037】
これより、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明において用語「予防」は、退行性脳疾患の発病が予想される個体に本発明において提供する薬学的組成物を投与し、前記疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0039】
本発明において用語「治療」は、治療しようとする個人または細胞の天然過程を変更させるために臨床的に介入するすべての行為を意味するが、臨床病理状態が進行される間にまたはこれを予防するために行うことができる。目的とする治療効果には、病気の発生または再発の予防、症状の緩和、病気によるすべての直接または間接の病理学的結果の低下、転移の予防、病気進行速度の減少、病気状態の軽減または一時的緩和、病気状態の快方または予後を改善させることを含む。本発明の目的上、前記治療は、退行性脳疾患が発病した患者に本発明の薬学的組成物を投与し、前記退行性脳疾患の症状を好転させるすべての行為を含むものと解されるが、特にこれに限らない。
【0040】
前記2種以上の組み合わせは、インターロイキン-10(IL-10)および神経膠細胞由来栄養因子(GDNF);インターロイキン-10(IL-10)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);神経膠細胞由来栄養因子(GDNF)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);インターロイキン-10(IL-10)、神経膠細胞由来栄養因子(GDNF)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であってもよく、前記IL-10、GDNFおよびGADは、それぞれ個別的にタンパク質またはこれをコード化する遺伝子であってもよい。
【0041】
また、前記遺伝子は、DNAまたはRNA(具体的には、mRNA)であってもよく、作動可能にベクターに含まれた形態であってもよい。具体的には、前記遺伝子は、作動可能にウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0042】
前記IL-10をコード化する遺伝子は、作動可能に第1ベクターに含まれてもよく、前記GDNFをコード化する遺伝子は、作動可能に第2ベクターに含まれてもよく、前記GADをコード化する遺伝子は、作動可能に第3ベクターに含まれたものであってもよく、1つのベクターに2個以上の遺伝子が含まれたものであってもよい。
【0043】
前記IL-10をコード化する遺伝子、GDNFをコード化する遺伝子およびGADをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の遺伝子は、伝達体に含まれた形態であってもよい。この際、前記伝達体は、ウイルス性ベクター、またはプラスミドやリポソームなどの非ウイルス性ベクターであってもよい。また、前記遺伝子の一部は、ウイルス性ベクターに含まれ、残りの遺伝子は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0044】
一具体例において、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。さらには、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFおよびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10およびGDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、GADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10およびGADは、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFおよびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFおよびGADは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10およびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10、GDNFおよびGADは、いずれも、ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。IL-10、GDNFおよびGADは、いずれも、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0045】
前記ウイルス性ベクターは、これらに制限されるものではないが、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)などからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。好ましくは、前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルスであってもよい。
【0046】
また、前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0047】
本発明において、用語「プラスミド」は、細菌の染色体とは別個に存在する環状DNAの断片を意味する。プラスミドは、細菌の生存に必須の遺伝子はないが、特定の抗生物質に対する耐性、細菌間の遺伝子交換に必須の遺伝子を含む。また、プラスミドは、染色体と独立して増殖することができ、選択マーカー(selectable marker)を含むことができる。
【0048】
本発明において、用語「リポソーム」は、リン脂質のように1分子中に疎水性(hydrophobic)を示す部分と親水性(hydrophilic)を示す部分を同時に有する分子を水溶液に懸濁すると、親水性部分と疎水性部分によって二重層を成して形成される小胞体を意味する。リポソームは、脂質二重層から構成された膜により外膜から隔離されており、DNA、mRNAなどを内包したリポソームを遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0049】
本発明において使用する「カチオン性高分子」という用語は、カチオン性脂質または高分子化合物であり、アニオン性のDNAとイオン結合により複合体を形成し、細胞内に伝達する物質を意味する。
【0050】
本発明において使用する「ミセル」という用語は、界面活性剤と脂質分子のように極性基と無極性疎水基からなる分子が溶液中でファンデルワールス(van der Waals)力などにより会合して作られた熱力学的に安定したコロイド性会合体を意味する。また、DNA、mRNAなどを内包したミセルを遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0051】
本発明において使用する「エマルジョン」という用語は、相が異なる2つの溶液を混合するとき、一方の液体が微細な粒子を形成して他の液体中に分散していることを意味する。前記エマルジョン粒子の中心部にDNA、mRNAなどを内包させて遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0052】
本発明において使用する「固体脂質ナノ粒子」という用語は、液体脂質の代わりに、固体脂質からなるナノサイズの微粒子中に薬物を内包する形態の製剤を意味する。
【0053】
本発明によるIL-10、GDNFおよびGADからなる群から選ばれるいずれか1つの遺伝子を含む伝達体1(例えば、第1ベクター)および前記伝達体1に含まれていない残りの遺伝子群から選ばれる1種以上の遺伝子を含む伝達体2(例えば、第2ベクター)は、混合比が1:1~100または1~100:1であってもよい。具体的には、これに制限されるものではないが、前記伝達体1および伝達体2のVG基準で混合比が1:1~100または1~100:1であってもよい。
【0054】
本発明によるIL-10のコード化遺伝子を含む伝達体1(例えば、第1ベクター)、GDNFのコード化遺伝子を含む伝達体2(例えば、第2ベクター)およびGADのコード化遺伝子を含む伝達体3(例えば、第3ベクター)は、様々な割合で混合してもよく、例えば、混合比が1:1:1~1:1:100;1:1:1~1:100:1;1:1:1~100:1:1;1:1:1~1:100:100;1:1:1~100:100:1;または1:1:1~100:1:100であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0055】
本発明において、用語「作動可能に」は、導入遺伝子が宿主細胞で発現され得るようにする方式で調節配列に連結されていることを意味する。前記調節配列は、遺伝子の発現を調節するDNA塩基配列であり、プロモーターおよびエンハンサーやポリアデニル化のような他の調節要素を含んでもよい。また、前記調節配列は、導入遺伝子の発現を調節する転写因子が結合するサイトを提供し、転写因子との複合体構造に影響を与えて、転写因子の機能を決定することができる。
【0056】
本発明において用語「IL-10」は、クラスIIサイトカインに属する抗炎症性サイトカインを意味する(Renauld,Nat Rev Immunol、2003)。前記IL-10は、178個のアミノ酸長さのサブユニット(subunit)2つからなるホモダイマー(homodimer)形態であり、ヒトのサイトカイン合成阻害因子(Cytokine synthesis inhibitory factor;CSIF)とも知られている。IL-10は、免疫反応でNK(Natural killer)細胞の活性を抑制する機能を行い、IL-10受容体と複合体を形成し、信号伝達に関与する。前記IL-10は、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来タンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記IL-10は、NCBI accession no.NP_000563.1の配列番号1のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であってもよい。
【0057】
前記IL-10コード化遺伝子は、IL-10の活性を維持するIL-10変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記IL-10変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたIL-10アミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0058】
また、IL-10変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたIL-10塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0059】
前記「配列相同性の%」は、2つの配列を最適に配列した状態で比較領域を比較することによって確認し、比較領域における塩基配列の一部は、2つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0060】
本発明において用語「GDNF」は、GDNFリガンドファミリーを構成する1つの神経成長因子であり、GDNFリガンドファミリーは、GDNF、ニュールツリン(neurturin;NRTN)、アルテミン(artemin;ARTN)、およびペルセフィン(persephin;PSPN)から構成されている。また、前記GDNFは、多くの種類の神経細胞の生存を促進させるタンパク質であり、GFRα1(GDNF receptor alpha-1)、GFRα2(GDNF receptor alpha-2)およびGFRα3(GDNF receptor alpha-3)を介して信号を伝達する。前記GDNFは、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来タンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GDNFは、NCBI accession no.NCBI NP_954701.1の配列番号4のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であってもよい。
【0061】
前記GDNFコード化遺伝子は、GDNFの活性を維持するGDNF変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記GDNF変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGDNFアミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0062】
また、GDNF変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGDNF塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0063】
本発明において用語「GAD」は、グルタミン酸を脱カルボキシル化させてGABA(gamma-aminobutyric acid)を生成する酵素を意味する。前記GADは、GAD65またはGAD67であってもよい。具体的には、前記GAD65は、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来のタンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD65は、NCBI accession no.NP_000809.1の配列番号7のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号8で表される塩基配列であってもよい。前記GAD67は、これらに制限されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来のタンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD67は、NCBI accession no.NP_000808.2の配列番号9のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号10で表される塩基配列であってもよい。
【0064】
また、前記GADコード化遺伝子は、GADの活性を維持してGABAを生産することができるようにするGAD変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD変異体は、GABAを生産するGADの特性が維持されるすべての配列を含み、いずれか1つに特定されるものではないが、好ましくは、前記GAD変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGADアミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0065】
また、GAD変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGAD塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、遺伝子またはこれを含む伝達体で退行性脳疾患の予防効果を示すことができる。本発明の組成物は、互いに異なるメカニズムを有する物質を併用投与することによって、単独投与時と比較して、さらに優れた退行性脳疾患の予防または治療効果を達成することができる。
【0067】
特に、本発明によれば、IL-10、GDNFおよびGAD65をコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の遺伝子を併用投与したとき、相乗的な退行性脳疾患の予防または治療効果を現す。したがって、本発明の薬学的組成物は、退行性脳疾患の予防または治療に有用に用いられ得、具体的には、神経細胞の死滅により誘発された退行性脳疾患の運動障害を改善することができ、退行性脳疾患の主な症状である認知能力および記憶力の低下を改善することができる。
【0068】
本発明において前記IL-10、GDNFおよびGAD65を含むそれぞれのベクターは、単独でまたは2種以上が共に投与されてもよく、1つのベクターに2つ以上の遺伝子を含む形態でも投与されてもよい。当該投与部位としては、これに制限されるものではないが、IL-10は、線条体(Striatum;ST)に投与されてもよく、GDNFは、Striatum(ST)に投与されてもよく、GAD65は、Subthalamic nucleus(SN)に投与されてもよい。前記例中の1つであるrAAV5-hGDNF/hIL-10の投与部位は、これに制限されるものではないが、Striatum(ST)であってもよい。
【0069】
本発明において、前記神経細胞は、刺激を脳や脊髄に伝達し、筋肉細胞、分泌泉のような効果器に伝達する運動神経細胞(motor neuron)、中枢神経系に分布し、刺激を感覚神経細胞から運動神経細胞に伝達する介在神経細胞(interneuron)または刺激を脳や脊髄に伝達し、筋肉細胞、分泌泉のような効果器に伝達する感覚神経細胞(sensory neuron)であってもよい。
【0070】
本発明において、前記退行性脳疾患は、これらに制限されるものではないが、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、好ましくは、パーキンソン病、認知症またはアルツハイマー病であってもよい。
【0071】
本発明者らは、具体的な実施例に基づいて、本発明の薬学的組成物が退行性脳疾患の予防または治療用に有用に用いられ得ることを確認した。
【0072】
本発明の一実施例において、rAAV5-hIL-10/hGDNFを退行性脳疾患を誘導させたマウスモデルに投与したとき、退行性脳疾患により誘発された症状である運動機能低下が有効なレベルに改善されることを確認した(実施例1参照)。
【0073】
本発明の他の実施例において、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した後、マウスモデルに6-OHDAを注入して退行性脳疾患を誘導したとき、退行性脳疾患により誘発された症状であるドーパミン作動性神経細胞死滅および運動機能低下が本発明の薬学的組成物を投与する場合に改善されることを確認した(実施例2参照)。
【0074】
本発明のさらに他の実施例において、プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物を前処理した場合、Hまたは6-OHDAにより誘発される神経細胞の死滅が抑制されることを確認した(実施例3参照)。
【0075】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の薬学的組成物を投与する場合、退行性脳疾患を予防または治療することができるという事実を確認することができた。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれてもよく、このような固形製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。
【0077】
また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤をも使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤が含まれ得る。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0078】
また、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および坐剤からなる群から選ばれるいずれか1つの剤形を有していてもよい。
【0079】
なお、本発明の他の様態として、本発明は、薬学的組成物を個体に投与する段階を含む退行性脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【0080】
本発明において用語「個体」は、前記退行性脳疾患が発病する可能性があるか、または発病したヒトを含むすべての動物を意味する。本発明の組成物を個体に投与することによって、退行性脳疾患により誘発された症状を緩和または治療することができる。
【0081】
本発明において用語「緩和」は、本発明による組成物の投与により退行性脳疾患の症状が好転したり有益になるすべての行為をいう。
【0082】
前記本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。
【0083】
本発明において用語「投与」は、いずれの適切な方法で対象に本発明の薬学的組成物を導入することを言い、投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口または非経口の様々な経路を介して投与することができる。
【0084】
本発明の薬学的組成物は、目的または必要に応じて当業界において使用される通常の方法、投与経路、投与量によって適切に個体に投与することができる。投与経路の例としては、経口、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内で投与することができ、非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。
【0085】
また、当業界における公知の方法により適切な投与量および投与回数を選択することができ、実際に投与される本発明の薬学的組成物の量および投与回数は、治療しようとする症状の種類、投与経路、性別、健康状態、食事、個体の年齢および体重、および疾患の重症度のような様々な因子によって適切に決定することができる。
【0086】
前記投与回数は、ウイルス性ベクターである場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合には、1日~1ヶ月、1ヶ月~1年間隔で投与することができる。また、前記薬学的組成物が非ウイルス性ベクターである場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合には、12~24時間、1日~14日間隔で投与することができる。また、前記薬学的組成物がタンパク質である場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合、1日~1ヶ月、1ヶ月内~1年間隔で投与することができる。
【0087】
本発明における用語「薬学的に有効な量」は、医学的用途に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で退行性脳疾患を抑制または緩和するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0088】
本発明の組成物は、個別治療剤で投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができる。また、単一または多重投与することができる。前記要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定することができる。
【0089】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む退行性脳疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0090】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「退行性脳疾患」、「予防」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0091】
用語「改善」は、治療される状態と関連したパラメーター、例えば、症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。この際、前記健康機能食品は、退行性脳疾患の予防または改善のために当該病気の発病段階前または発病後に、治療のための薬剤と同時にまたは別々に使用することができる。
【0092】
前記健康機能食品において、有効成分は、食品にそのまま添加したり他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって好適に決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時に、前記健康機能食品は、原料に対して、具体的には、約15重量%以下、より具体的には、約10重量%以下の量で添加することができる。しかしながら、健康および衛生を目的としたりまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよい。
【0093】
前記健康機能食品は、担体、希釈剤、賦形剤および添加剤のうち1つ以上をさらに含んで錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、粉末、カプセル剤および液剤の剤形からなる群から選ばれた1つで剤形化することができる。一様相による化合物を添加できる食品としては、各種食品類、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ剤、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0094】
前記担体、賦形剤、希釈剤および添加剤の具体的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、水、砂糖シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0095】
前記健康機能食品は、前記有効成分を含有することに加えて、特別な制限なしに他の成分を必須成分として含有することができる。例えば、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などをさらなる成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定することができる。
【0096】
上記の他にも、一様相による健康機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができ、このような添加剤の割合も、当業者により適切に選択することができる。
【0097】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、退行性脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【0098】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「退行性脳疾患」、「予防」、「治療」、「個体」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0099】
また、本発明は、退行性脳疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の用途を提供する。
【0100】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「退行性脳疾患」、「予防」、「治療」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0101】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0102】
[実施例]
実施例1.hIL-10およびhGDNF併用投与による退行性脳疾患の改善に対する相乗効果の確認
本発明の遺伝子治療剤の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFを投与した場合に、退行性脳疾患に対して及ぼす効果を確認するために、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFをパーキンソン病動物モデルに投与し、退行性脳疾患の改善効果をドーパミン作動性神経細胞死滅抑制および運動機能改善効果を通じて確認した。
【0103】
1-1.動物モデルの準備
退行性脳疾患が発病した動物またはヒトの脳は、正常の動物またはヒトの脳と比較して、ドーパミン作動性神経細胞の信号伝達物質などに変化が発生し、運動能力の低下が発生することが知られている。本発明の遺伝子治療剤の退行性脳疾患改善効果を確認するための動物モデルは、マウス(C57BL/6 mouse)を活用して製造した。退行性脳疾患マウスモデルを製作するために、従来ドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅およびSubthalamic nucleus(SN)において異常な興奮性神経伝達を誘導することが知られた6-hydroxydopamine(6-OHDA)をマウスの左側Striatum(ST)に投与した。具体的な退行性脳疾患マウスモデルの製造方法は、下記の通りである。
【0104】
前記マウスは、alfaxan-sedator複合剤を腹腔内に投与して麻酔させ、麻酔した動物の頭をstereotaxic instrument(RWD life science)の鼻輪と耳飾りを利用して固定させた後、マウスのBregmaとlambdaの高さを測定し、頭が水平になりうるように位置を調節した。Bregmaを基準として所望の脳位置の座標を確認した後、micromotor drill(Seashin)を活用して確認した位置の脳骨に穴をあけた。Hamilton syringe(Hamilton)(10μLのsyringeを使用したが、これに制限されない)に投与しようとする物質(Saline、0.1%ascorbic acid、6-hydroxydopamine(OHDA)、rAAV5-GFPであってもよく、実験ごとに変わる)を入れ、脳座標位置にstereotaxic injection pump(DONGBANG HITECH商社)を利用して0.5μL/minの速度で約2μLの物質を投与した。物質を投与されたマウスは、black silkを用いて頭皮を縫合した後、ポビドンで消毒し、ケージに戻した後、麻酔が完全に切れるまで体温が維持され得るように赤外線温熱に晒された。
【0105】
1-2.hIL-10およびhGDNF併用投与による動物モデルのドーパミン作動性神経細胞保護効果の確認
具体的には、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFのドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅抑制効果を確認するために、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理し、2週後に6-OHDAを投与し、パーキンソン動物モデルを製作した。SNpc(Substantia nigra pars compacta)とSNpc細胞の軸索突起が伸びているST(Striatum)のドーパミン作動性神経細胞の保護効果を確認するために、DAB染色法(3,3’-diaminobenzidine staining)を行った。実験は、前記Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFを投与した後、6週経過(6-OHDA投与後4週)した後、マウスを犠牲にさせて脳組織を収得し、非特異的発色を防止するために、切片組織に1%のHを15分間処理した後、代表的なドーパミン作動性神経細胞マーカーと知られたTyrosine hydroxylase(TH)を検出するための、Anti-TH抗体を切片組織に処理し、4℃の温度で8時間以上放置した。Biotinylatedされた抗体を組織に処理し、anti-TH抗体と接着させ、ABC KITを利用してavidin-biotin酵素結合体をbiotinylated抗体に結合させた後、DAB KITを利用して結合したbiotinを茶色で発色させた後、白色光の下で顕微鏡で観察した。
【0106】
その結果、図1aに示されたように、Striatumのドーパミン作動性神経細胞死滅レベルの場合、rAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理した群が、Saline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFのみを前処理した群に比べて、有意に低いレベルを示すことを確認でき、また、SNpcにおいてドーパミン作動性神経細胞死滅レベルは、rAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理した場合にも、そうでない場合(Saline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFのみを前処理)に比べて、有意に低いレベルを示した(図1b)。
【0107】
1-3.rAAV5-hIL-10/hGDNFの退行性脳疾患動物モデルの運動低下症状の改善効果の確認
また、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFの運動機能改善効果を確認するために、Rotation testを行った。Rotation testは、0.4mg/mLのApomorphineを生理食塩水に溶かした後、それぞれの退行性脳疾患マウスモデルに4mg/kgで皮下投与し、5分が経過した後、動物が動く方向および動く程度を20分間カメラを利用して録画撮影した後、撮影した動画を利用して動物が時計方向にどれぐらい回転するかを分析した。
【0108】
その結果、本発明の遺伝子治療剤(rAAV5-hIL-10/hGDNF)を投与したマウスとSaline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFを投与したマウスとを比較するとき、運動機能低下の改善効果が現れることを確認することができた(図1c)。
【0109】
1-4.rAAV5-hIL-10/hGDNFの持続的退行性脳疾患治療効果の確認
本発明の遺伝子治療剤の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFを投与した場合に、退行性脳疾患治療効果が持続するかを確認するために、6-OHDAを投与し、マウスモデルを製作して1週が経過した後、rAAV5-hIL-10/hGDNFを投与し、退行性脳疾患の改善効果を確認した。具体的な実験方法は、下記表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記実施例1-3と同様の方法でrotation testを行い、rAAV5-hGDNF/hIL-10を後処理した場合、退行性脳疾患の行動機能低下の改善効果を確認した結果、図2に示されたように、rAAV5-hIL-10/hGDNFのみを投与した場合にも、6-OHDAにより誘導された行動機能低下が改善されることを確認でき、前記rAAV5-hIL-10/hGDNF投与後5週が経過した後にも、このような効果が長期間維持され得ることを確認することができた。
【0112】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の遺伝子治療剤(rAAV5-hIL-10/hGDNF)を投与する場合、退行性脳疾患の運動低下症状を予防するだけでなく、治療することができ、このような予防および治療効果が長期間維持されるという事実を確認することができた。
【0113】
実施例2.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の同時投与時における退行性脳疾患予防効果の確認
2-1.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の動物モデルのドーパミン作動性神経細胞保護効果の確認
本発明の遺伝子治療剤の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65(同時投与)のドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅抑制効果を確認するために、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理し、2週後に6-OHDAを投与し、パーキンソン動物モデルを製作した。SNpc(Substantia nigra pars compacta)とSNpc細胞の軸索突起が伸びているStriatumのドーパミン作動性神経細胞の保護効果を確認するために、前記実施例2-2と同一に行った。
【0114】
その結果、図3aに示されたように、Striatumにおいてドーパミン作動性神経細胞死滅レベルは、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した場合が、そうでない場合に比べて、有意に低いレベルを示し、SNpcのドーパミン作動性神経細胞死滅レベルも、図3bに示されたように、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した群が、6-OHDAのみを処理した群に比べて、有意に低いレベルを示すことを確認することができた。
【0115】
2-2.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の退行性脳疾患動物モデルの運動低下症状の改善効果の確認
前記実施例2-1の方法でマウスモデルを製作する2週間前にあらかじめrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理し、上記のような方法を通じて製作された退行性脳疾患マウスモデルにRotation test(Apomorphine induced rotation)およびRota-rod testを行った。具体的な実験方法は、下記表2に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
(1)Rotation testの結果
Rotation testは、実施例1-3と同一に行い、その結果、モデル製作4週目に本発明の遺伝子治療剤を投与したマウスと6-OHDAのみを投与した対照群マウスとを比較するとき、有効なレベルの運動機能低下の改善効果が現れることを確認でき(図4a)、このような改善効果は、図4bに示されたように、6-OHDAを投与して退行性脳疾患マウスモデルを製作した後、約10週の時間が経過したにもかかわらず、対照群に比べて有効なレベルの運動低下の改善効果を示すことを確認することができた(図4b)。
【0118】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の遺伝子治療剤(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の同時投与)を投与する場合、退行性脳疾患の運動低下症状を予防することができ、このような予防効果が長期間維持されるという事実を確認することができた。
【0119】
(2)Rota-rod試験の結果
Rota-rod試験は、前記マウスをRota-rod行動実験機器の円筒上に位置させた後、2分間5RPMの速度で円盤を時計方向に回して、機器に適応する時間を与えた。様々なRPMで筒を回転させながら、マウスが円筒上で歩く時間を測定し、実験は、1個体当たり3回反復して行い、3個の測定値の平均を個体の代表値で示した。
【0120】
その結果、図4cに示されたように、6-OHDAを投与して2週が経過したとき、有意に減少すると確認された運動機能低下が、本発明のrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した場合には、単純に0.1%のascorbic acidを投与した同一処置対照群(Sham control)と同様のレベルで現れることを観察することができた。
【0121】
実施例3.プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物の同時投与時における酸化ストレスによる神経細胞の死滅抑制効果の確認
hIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物の同時投与時に酸化ストレスによる神経細胞の死滅抑制効果を確認するために、hIL-10、hGDNFおよびhGAD65をtransfection後に生成されたhIL-10およびhGDNFタンパク質またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質が含まれた培地を前処理し、Mockとcontrolにはp-Vex培地を処理した後、神経細胞死滅を誘発するHまたは6-OHDAを処理し、細胞生存率(cell viability)を確認した。
【0122】
その結果、図5aおよび図5bから分かるように、hIL-10およびhGDNFタンパク質培養物の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65のタンパク質培養物の同時投与の両方とも、神経細胞死滅が抑制されることを確認した。
【0123】
このような結果を通じて、hIL-10およびhGDNFの遺伝子だけでなく、それぞれのタンパク質も、退行性脳疾患の予防または治療効能を有することが分かり、神経細胞死滅理由と関係なく、神経細胞保護効果を有するところ、パーキンソン病を含む様々な退行性脳疾患に効果があることが分かった。
【0124】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
【配列表】
2024512414000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬学的組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子および神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遺伝子は、ベクターに含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウイルス性ベクターは、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記インターロイキン-10タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記インターロイキン-10タンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記神経膠細胞由来栄養因子タンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記神経膠細胞由来栄養因子タンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ67であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質は、配列番号7または配列番号9で表されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質をコード化する遺伝子は、配列番号8または配列番号10で表される塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬学的組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬学的組成物は、注射剤であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物は、神経細胞死滅による運動障害の改善効果を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記神経細胞は、運動神経細胞(motor neuron)、感覚神経細胞(sensory neuron)または介在神経細胞(inter neuron)であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬学的組成物は、認知能力および記憶力の改善効果を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または改善用健康機能食品。
【請求項22】
インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経変性疾患の予防または治療方法。
【請求項23】
神経変性疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の予防または治療用組成物およびこれを利用した神経変性疾患の予防または治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、現在高齢者人口の増加に伴い、最も社会的に問題となっている疾患の1つである。しかしながら、この疾患を治療する有効な治療剤(=薬)がないため、神経変性疾患の予防および治療の開発に注目が集まっている神経変性疾患は、神経系の一部分あるいは様々な部分で徐々に絶えず進める神経細胞の死滅による病気を総称し、神経変性疾患は、老化による脳神経細胞の構造的退化、循環器障害などのような成人病に起因した二次的症状、または交通事故、産業災害、一酸化炭素中毒など物理的、機械的要因により脳が損傷を受けた場合、または脳に供給される血流量が減少したり遮断されて脳組織が回復できない損傷を受けた場合にも起こることがあるが、現在まで正確な原因が知られていない。神経変性疾患が発病した場合、発病部位および機序などによって進行性認知機能障害、進行性運動失調、筋力低下および筋萎縮などが起こることがある。
【0003】
様々な遺伝子それぞれが神経細胞の死滅抑制に効果があることが知られている。しかしながら、単独遺伝子治療は神経細胞の死滅を十分に抑制することができないという点で限界を示し、単独遺伝子治療では、治療効果を得るのに用量を注入するので、毒性などの副作用の問題から自由でなかった。したがって、副作用なしで効果的に神経変性疾患を予防または治療できるだけでなく、遺伝子治療剤の併用投与によって神経変性疾患の予防または治療効果に対する相乗効果を生み出すことができる治療剤の発掘が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような背景下に、本発明者らは、神経変性疾患の予防または治療効果を有する治療剤を開発するために研究努力した結果、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を利用する場合、単独利用に比べて、顕著に優れた神経変性疾患の予防または治療効果を示すという事実を確認することによって、本発明を完成した。
【0005】
これより、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供することを他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経変性疾患の予防または治療方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0008】
また、本発明は、神経変性疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用を提供することをさらに他の目的とする。
【0009】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
本発明の一具現例において、前記薬学的組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子および神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含むものであってもよい。
【0012】
本発明の他の具現例において、前記薬学的組成物は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子をさらに含むものであってもよい。
【0013】
本発明のさらに他の具現例において、前記遺伝子は、ベクターに含まれるものであってもよい。
【0014】
本発明のさらに他の具現例において、前記ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターであってもよい。
【0015】
本発明のさらに他の具現例において、前記ウイルス性ベクターは、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0016】
本発明のさらに他の具現例において、前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、インターロイキン-10タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0018】
本発明のさらに他の具現例において、インターロイキン-10をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であってもよい。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、神経膠細胞由来栄養因子タンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経膠細胞由来栄養因子をコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であってもよい。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、グルタミン酸デカルボキシラーゼは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ67であってもよい。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記グルタミン酸デカルボキシラーゼタンパク質は、配列番号7または配列番号9で表されるアミノ酸配列であってもよい。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、グルタミン酸デカルボキシラーゼをコード化する遺伝子は、配列番号8または配列番号10で表される塩基配列であってもよい。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むものであってもよい。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、注射剤であってもよい。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、神経細胞の死滅による運動障害の改善効果を有するものであってもよい。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記神経細胞は、運動神経細胞(motor neuron)、介在神経細胞(inter neuron)または感覚神経細胞(sensory neuron)であってもよい。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、認知能力および記憶力の改善効果を有するものであってもよい。
【0030】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0031】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経変性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、神経変性疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の使用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の組成物は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む。したがって、前記薬学的組成物は、有効成分を併用投与することによって、単独投与する場合より優れた神経変性疾患の改善および予防効果を示すので、低濃度の有効成分だけでも同一またはさらに優れた効果を示すことができる。これより、本発明の薬学的組成物は、神経変性疾患の緩和、予防または治療に有用に用いられ得る。
【0034】
ただし、本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】hIL-10およびhGDNF併用投与による神経変性疾患の改善効果を確認した結果であり、図1aは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経線維保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した結果であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した結果であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した結果である。
図1b】hIL-10およびhGDNF併用投与による神経変性疾患の改善効果を確認した結果であり、図1aは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経線維保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した結果であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した結果であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した結果である。
図1c】hIL-10およびhGDNF併用投与による神経変性疾患の改善効果を確認した結果であり、図1aは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経線維保護効果に優れていることを脳のstriatum領域で確認した結果であり、図1bは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNFの単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にドーパミン作動性神経細胞保護効果に優れていることを脳のSNpc(Substantia nigra pars compacta)領域で確認した結果であり、図1cは、試験物質を前処理し、6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患動物モデルにおいてrAAV5-hIL-10とrAAV5-hGDNF単独投与よりrAAV5-hIL-10/hGDNF投与(併用投与)時にrotation testを通じて運動低下症状の改善効果に優れていることを確認した結果である。
図2神経変性疾患動物モデルにおいて運動機能の長期改善効果を確認した結果である。6-OHDAを投与して誘導された神経変性疾患モデルにrAAV5-hIL-10/hGDNFを注入し、その運動機能改善効果をrotation testを通じて確認した。
図3a発明の遺伝子治療のドーパミン作動性神経細胞および線維に対する神経細胞保護効果を確認した結果である。本発明の遺伝子治療の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)を前処理した後、6-OHDAを処理して神経変性疾患動物モデルを誘導して、ドーパミン作動性神経細胞保護効果を確認した。具体的には、図3aは、Striatumで確認した結果であり、図3bは、SNpc(Substantia nigra pars compacta)で確認した結果である。
図3b発明の遺伝子治療のドーパミン作動性神経細胞および線維に対する神経細胞保護効果を確認した結果である。本発明の遺伝子治療の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)を前処理した後、6-OHDAを処理して神経変性疾患動物モデルを誘導して、ドーパミン作動性神経細胞保護効果を確認した。具体的には、図3aは、Striatumで確認した結果であり、図3bは、SNpc(Substantia nigra pars compacta)で確認した結果である。
図4a】本発明の遺伝子治療の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)を前処理して、6-OHDAを処理して誘導された神経変性疾患マウスモデルにおける本発明の遺伝子治療の運動低下予防効果を確認したものである。具体的には、図4および図4は、それぞれ動物疾患モデル誘導後および10目のrotation testの結果である。図4cは、動物疾患モデル誘導後2週目のRota-rod試験の結果を確認した結果である。
図4b】本発明の遺伝子治療の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)を前処理して、6-OHDAを処理して誘導された神経変性疾患マウスモデルにおける本発明の遺伝子治療の運動低下予防効果を確認したものである。具体的には、図4および図4は、それぞれ動物疾患モデル誘導後および10目のrotation testの結果である。図4cは、動物疾患モデル誘導後2週目のRota-rod試験の結果を確認した結果である。
図4c】本発明の遺伝子治療の1つ(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65)を前処理して、6-OHDAを処理して誘導された神経変性疾患マウスモデルにおける本発明の遺伝子治療の運動低下予防効果を確認したものである。具体的には、図4および図4は、それぞれ動物疾患モデル誘導後および10目のrotation testの結果である。図4cは、動物疾患モデル誘導後2週目のRota-rod試験の結果を確認した結果である。
図5aIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与時に酸化ストレスに対する抗アポトーシス効果を確認した結果である。併用上清は、各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成した。具体的には、図5aは、Hによる神経細胞死滅の場合、図5bは、6-OHDAによる神経細胞死滅の場合、hIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与時に神経細胞の死滅抑制効果が現れることを確認した。
図5bIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与時に酸化ストレスに対する抗アポトーシス効果を確認した結果である。併用上清は、各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成した。具体的には、図5aは、Hによる神経細胞死滅の場合、図5bは、6-OHDAによる神経細胞死滅の場合、hIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与時に神経細胞の死滅抑制効果が現れることを確認した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、優れた神経変性疾患の予防または治療効果を有する治療剤を開発するために研究努力した結果、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を利用する場合、単独利用に比べて、優れた神経変性疾患の予防または治療効果を有するという事実を確認したところ、これにより本発明を完成することになった。
【0037】
これより、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明において用語「予防」は、神経変性疾患の発病が予想される個体に本発明において提供する薬学的組成物を投与し、前記疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0039】
本発明において用語「治療」は、治療しようとする個人または細胞の天然過程を変更させるために臨床的に介入するすべての行為を意味するが、臨床病理状態が進行される間にまたはこれを予防するために行うことができる。目的とする治療効果には、病気の発生または再発の予防、症状の緩和、病気によるすべての直接または間接の病理学的結果の低下、転移の予防、病気進行速度の減少、病気状態の軽減または一時的緩和、病気状態の快方または予後を改善させることを含む。本発明の目的上、前記治療は、神経変性疾患が発病した患者に本発明の薬学的組成物を投与し、前記神経変性疾患の症状を好転させるすべての行為を含むものと解されるが、特にこれに限らない。
【0040】
前記2種以上の組み合わせは、インターロイキン-10(IL-10)および神経膠細胞由来栄養因子(GDNF);インターロイキン-10(IL-10)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);神経膠細胞由来栄養因子(GDNF)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);インターロイキン-10(IL-10)、神経膠細胞由来栄養因子(GDNF)およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であってもよく、前記IL-10、GDNFおよびGADは、それぞれ個別的にタンパク質またはこれをコード化する遺伝子であってもよい。
【0041】
また、前記遺伝子は、DNAまたはRNA(具体的には、mRNA)であってもよく、作動可能にベクターに含まれた形態であってもよい。具体的には、前記遺伝子は、作動可能にウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0042】
前記IL-10をコード化する遺伝子は、作動可能に第1ベクターに含まれてもよく、前記GDNFをコード化する遺伝子は、作動可能に第2ベクターに含まれてもよく、前記GADをコード化する遺伝子は、作動可能に第3ベクターに含まれたものであってもよく、1つのベクターに2個以上の遺伝子が含まれたものであってもよい。
【0043】
前記IL-10をコード化する遺伝子、GDNFをコード化する遺伝子およびGADをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の遺伝子は、ベクターに含まれた形態であってもよい。この際、前記ベクターは、ウイルス性ベクター、またはプラスミドやリポソームなどの非ウイルス性ベクターであってもよい。また、前記遺伝子の一部は、ウイルス性ベクターに含まれ、残りの遺伝子は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0044】
一具体例において、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。さらには、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFおよびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10およびGDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、GADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10およびGADは、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10は、ウイルス性ベクターに含まれ、GDNFおよびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFおよびGADは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10は、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、GDNFは、ウイルス性ベクターに含まれ、IL-10およびGADは、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。また、IL-10、GDNFおよびGADは、いずれも、ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。IL-10、GDNFおよびGADは、いずれも、非ウイルス性ベクターに含まれた形態であってもよい。
【0045】
前記ウイルス性ベクターは、これらに制限されるものではないが、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus;AAV)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)、レンチウイルス(Lentivirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、バキュロウイルス(Baculovirus)およびポックスウイルス(Poxvirus)などからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。好ましくは、前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルスであってもよい。
【0046】
また、前記非ウイルス性ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性高分子、ミセル(micelle)、エマルジョンおよび固体脂質ナノ粒子(solid lipid nanoparticles)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0047】
本発明において、用語「プラスミド」は、細菌の染色体とは別個に存在する環状DNAの断片を意味する。プラスミドは、細菌の生存に必須の遺伝子はないが、特定の抗生物質に対する耐性、細菌間の遺伝子交換に必須の遺伝子を含む。また、プラスミドは、染色体と独立して増殖することができ、選択マーカー(selectable marker)を含むことができる。
【0048】
本発明において、用語「リポソーム」は、リン脂質のように1分子中に疎水性(hydrophobic)を示す部分と親水性(hydrophilic)を示す部分を同時に有する分子を水溶液に懸濁すると、親水性部分と疎水性部分によって二重層を成して形成される小胞体を意味する。リポソームは、脂質二重層から構成された膜により外膜から隔離されており、DNA、mRNAなどを内包したリポソームを遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0049】
本発明において使用する「カチオン性高分子」という用語は、カチオン性脂質または高分子化合物であり、アニオン性のDNAとイオン結合により複合体を形成し、細胞内に伝達する物質を意味する。
【0050】
本発明において使用する「ミセル」という用語は、界面活性剤と脂質分子のように極性基と無極性疎水基からなる分子が溶液中でファンデルワールス(van der Waals)力などにより会合して作られた熱力学的に安定したコロイド性会合体を意味する。また、DNA、mRNAなどを内包したミセルを遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0051】
本発明において使用する「エマルジョン」という用語は、相が異なる2つの溶液を混合するとき、一方の液体が微細な粒子を形成して他の液体中に分散していることを意味する。前記エマルジョン粒子の中心部にDNA、mRNAなどを内包させて遺伝情報の媒介体として使用することができる。
【0052】
本発明において使用する「固体脂質ナノ粒子」という用語は、液体脂質の代わりに、固体脂質からなるナノサイズの微粒子中に薬物を内包する形態の製剤を意味する。
【0053】
本発明によるIL-10、GDNFおよびGADからなる群から選ばれるいずれか1つの遺伝子を含むベクター1(例えば、第1ベクター)および前記ベクター1に含まれていない残りの遺伝子群から選ばれる1種以上の遺伝子を含むベクター2(例えば、第2ベクター)は、混合比が1:1~100または1~100:1であってもよい。具体的には、これに制限されるものではないが、前記ベクター1およびベクター2のVG基準で混合比が1:1~100または1~100:1であってもよい。
【0054】
本発明によるIL-10のコード化遺伝子を含むベクター1(例えば、第1ベクター)、GDNFのコード化遺伝子を含むベクター2(例えば、第2ベクター)およびGADのコード化遺伝子を含むベクター3(例えば、第3ベクター)は、様々な割合で混合してもよく、例えば、混合比が1:1:1~1:1:100;1:1:1~1:100:1;1:1:1~100:1:1;1:1:1~1:100:100;1:1:1~100:100:1;または1:1:1~100:1:100であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0055】
本発明において、用語「作動可能に」は、導入遺伝子が宿主細胞で発現され得るようにする方式で調節配列に連結されていることを意味する。前記調節配列は、遺伝子の発現を調節するDNA塩基配列であり、プロモーターおよびエンハンサーやポリアデニル化のような他の調節要素を含んでもよい。また、前記調節配列は、導入遺伝子の発現を調節する転写因子が結合するサイトを提供し、転写因子との複合体構造に影響を与えて、転写因子の機能を決定することができる。
【0056】
本発明において用語「IL-10」は、クラスIIサイトカインに属する抗炎症性サイトカインを意味する(Renauld,Nat Rev Immunol、2003)。前記IL-10は、178個のアミノ酸長さのサブユニット(subunit)2つからなるホモダイマー(homodimer)形態であり、ヒトのサイトカイン合成阻害因子(Cytokine synthesis inhibitory factor;CSIF)とも知られている。IL-10は、免疫反応でNK(Natural killer)細胞の活性を抑制する機能を行い、IL-10受容体と複合体を形成し、信号伝達に関与する。前記IL-10は、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来タンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記IL-10は、NCBI accession no.NP_000563.1の配列番号1のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3で表される塩基配列であってもよい。
【0057】
前記IL-10コード化遺伝子は、IL-10の活性を維持するIL-10変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記IL-10変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたIL-10アミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0058】
また、IL-10変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたIL-10塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0059】
前記「配列相同性の%」は、2つの配列を最適に配列した状態で比較領域を比較することによって確認し、比較領域における塩基配列の一部は、2つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0060】
本発明において用語「GDNF」は、GDNFリガンドファミリーを構成する1つの神経成長因子であり、GDNFリガンドファミリーは、GDNF、ニュールツリン(neurturin;NRTN)、アルテミン(artemin;ARTN)、およびペルセフィン(persephin;PSPN)から構成されている。また、前記GDNFは、多くの種類の神経細胞の生存を促進させるタンパク質であり、GFRα1(GDNF receptor alpha-1)、GFRα2(GDNF receptor alpha-2)およびGFRα3(GDNF receptor alpha-3)を介して信号を伝達する。前記GDNFは、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来タンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GDNFは、NCBI accession no.NCBI NP_954701.1の配列番号4のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号5または配列番号6で表される塩基配列であってもよい。
【0061】
前記GDNFコード化遺伝子は、GDNFの活性を維持するGDNF変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記GDNF変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGDNFアミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0062】
また、GDNF変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGDNF塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0063】
本発明において用語「GAD」は、グルタミン酸を脱カルボキシル化させてGABA(gamma-aminobutyric acid)を生成する酵素を意味する。前記GADは、GAD65またはGAD67であってもよい。具体的には、前記GAD65は、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来のタンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD65は、NCBI accession no.NP_000809.1の配列番号7のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号8で表される塩基配列であってもよい。前記GAD67は、これらに制限されるものではないが、ヒト、マウス(mice)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ由来のタンパク質またはこれをコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD67は、NCBI accession no.NP_000808.2の配列番号9のアミノ酸配列からなってもよく、これをコード化する遺伝子は、配列番号10で表される塩基配列であってもよい。
【0064】
また、前記GADコード化遺伝子は、GADの活性を維持してGABAを生産することができるようにするGAD変異体をコード化する塩基配列であってもよい。前記GAD変異体は、GABAを生産するGADの特性が維持されるすべての配列を含み、それらに特定されるものではないが、好ましくは、前記GAD変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGADアミノ酸配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列をコード化する塩基配列であってもよい。
【0065】
また、GAD変異体をコード化する塩基配列は、前記表示されたGAD塩基配列と少なくとも60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよく、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、治療遺伝子またはこれを含むベクター神経変性疾患の予防効果を示すことができる。本発明の組成物は、互いに異なるメカニズムを有する治療剤を併用投与することによって、単独投与時と比較して、さらに優れた神経変性疾患の予防または治療効果を達成することができる。
【0067】
特に、本発明によれば、IL-10、GDNFおよびGAD65をコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の遺伝子を併用投与したとき、相乗的な神経変性疾患の予防または治療効果を現す。したがって、本発明の薬学的組成物は、神経変性疾患の予防または治療に有用に用いられ得、具体的には、神経細胞の死滅により誘発された神経変性疾患の運動障害を改善することができ、神経変性疾患の主な症状である認知能力および記憶力の低下を改善することができる。
【0068】
本発明において前記IL-10、GDNFおよびGAD65を含むそれぞれのベクターは、単独でまたは2種以上が共に投与されてもよく、1つのベクターに2つ以上の遺伝子を含む形態でも投与されてもよい。当該投与部位としては、これに制限されるものではないが、IL-10は、線条体(Striatum;ST)に投与されてもよく、GDNFは、Striatum(ST)に投与されてもよく、GAD65は、Subthalamic nucleus(SN)に投与されてもよい。前記例中の1つであるrAAV5-hGDNF/hIL-10の投与部位は、これに制限されるものではないが、Striatum(ST)であってもよい。
【0069】
本発明において、前記神経細胞は、信号を脳や脊髄に伝達し、筋肉細胞、分泌泉のような効果器に伝達する運動神経細胞(motor neuron)、中枢神経系に分布し、信号を感覚神経細胞から運動神経細胞に伝達する介在神経細胞(interneuron)または信号を脳や脊髄に伝達し、筋肉細胞、分泌泉のような効果器に伝達する感覚神経細胞(sensory neuron)であってもよい。
【0070】
本発明において、前記神経変性疾患は、これらに制限されるものではないが、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上まひ、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、脳梗塞、頭部外傷、脊髄損傷、脳動脈硬化症、ルーゲリック病および多発性硬化症からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、好ましくは、パーキンソン病、認知症またはアルツハイマー病であってもよい。
【0071】
本発明者らは、具体的な実施例に基づいて、本発明の薬学的組成物が神経変性疾患の予防または治療用に有用に用いられ得ることを確認した。
【0072】
本発明の一実施例において、rAAV5-hIL-10/hGDNFを神経変性疾患を誘導させたマウスモデルに投与したとき、神経変性疾患により誘発された症状である運動機能低下が統計的に有意に改善されることを確認した(実施例1参照)。
【0073】
本発明の他の実施例において、6-OHDAで誘導された神経変性疾患モデルに対してrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理することで神経変性疾患の症状であるドーパミン作動性神経細胞死滅および運動機能低下が改善されることを確認した。この神経変性症状の改善は、本発明の薬学的組成物を投与することにより誘導される(実施例2参照)。
【0074】
本発明のさらに他の実施例において、各遺伝子プラスミドにより生成されたhIL-10およびhGDNFの上清または各遺伝子プラスミドにより生成されたhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清を前処理した場合、Hまたは6-OHDAにより誘発される神経細胞の死滅が抑制されることを確認した(実施例3参照)。
【0075】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の薬学的組成物によって神経変性疾患を予防または治療することができるという事実を確認することができた。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。薬学的に許容可能な担体の組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれてもよく、このような固形製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。
【0077】
また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤をも使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤が含まれ得る。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0078】
また、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および坐剤からなる群から選ばれるいずれか1つの剤形を有していてもよい。
【0079】
なお、本発明の他の様態として、本発明は、薬学的組成物を個体に投与する段階を含む神経変性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0080】
本発明において用語「個体」は、前記神経変性疾患が発病する可能性があるか、または発病したヒトを含むすべての動物を意味する。本発明の組成物を個体に投与することによって、神経変性疾患により誘発された症状を緩和または治療することができる。
【0081】
本発明において用語「緩和」は、本発明による組成物の投与により神経変性疾患の症状が好転したり有益になるすべての行為をいう。
【0082】
前記本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。
【0083】
本発明において用語「投与」は、いずれの適切な方法で個体に本発明の薬学的組成物を導入することを言い、本発明の薬学的組成物は、目的組織に到達できる経口または非経口の様々な経路を介して投与することができる。
【0084】
本発明の薬学的組成物は、目的または必要に応じて当業界において使用される通常の方法、投与経路、投与量によって適切に個体に投与することができる。投与経路の例としては、経口、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内で投与することができ、非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。
【0085】
また、当業界における公知の方法により適切な投与量および投与回数を選択することができ、実際に投与される本発明の薬学的組成物の量および投与回数は、治療しようとする症状の種類、投与経路、性別、健康状態、食事、個体の年齢および体重、および疾患の重症度のような様々な因子によって適切に決定することができる。
【0086】
前記投与回数は、ウイルス性ベクターである場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合には、1日~1ヶ月、1ヶ月~1年間隔で投与することができる。また、前記薬学的組成物が非ウイルス性ベクターである場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合には、12~24時間、1日~14日間隔で投与することができる。また、前記薬学的組成物がタンパク質である場合、年間1回以上投与することができ、これを反復投与する場合、1日~1ヶ月、1ヶ月内~1年間隔で投与することができる。
【0087】
本発明における用語「薬学的に有効な量」は、医学的用途に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で神経変性疾患を抑制または緩和するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0088】
本発明の組成物は、個別治療剤で投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができる。また、単一または多重投与することができる。前記要素を全部考慮して副作用なしで最小限の有効量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定することができる。
【0089】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上を含む神経変性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0090】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「神経変性疾患」、「予防」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0091】
用語「改善」は、治療される状態と関連したパラメーター、例えば、症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。この際、前記健康機能食品は、神経変性疾患の予防または改善のために当該病気の発病段階前または発病後に、治療のための薬剤と同時にまたは別々に使用することができる。
【0092】
前記健康機能食品において、有効成分は、食品にそのまま添加したり他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって好適に決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時に、前記健康機能食品は、原料に対して、具体的には、約15重量%以下、より具体的には、約10重量%以下の量で添加することができる。しかしながら、健康および衛生を目的としたりまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよい。
【0093】
前記健康機能食品は、担体、希釈剤、賦形剤および添加剤のうち1つ以上をさらに含んで錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、粉末、カプセル剤および液剤の剤形からなる群から選ばれた1つで剤形化することができる。一様相による化合物を添加できる食品としては、各種食品類、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ剤、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0094】
前記担体、賦形剤、希釈剤および添加剤の具体的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、水、砂糖シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0095】
前記健康機能食品は、前記有効成分を含有することに加えて、特別な制限なしに他の成分を必須成分として含有することができる。例えば、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などをさらなる成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定することができる。
【0096】
上記の他にも、一様相による健康機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができ、このような添加剤の割合も、当業者により適切に選択することができる。
【0097】
また、本発明は、インターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、神経変性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0098】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「神経変性疾患」、「予防」、「治療」、「個体」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0099】
また、本発明は、神経変性疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのインターロイキン-10(interleukin 10,IL-10)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子、神経膠細胞由来栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor,GDNF)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase,GAD)タンパク質またはこれをコード化する遺伝子からなる群から選ばれる2種以上の調製を提供する。
【0100】
前記「インターロイキン-10」、「神経膠細胞由来栄養因子」、「グルタミン酸デカルボキシラーゼ」、「タンパク質」、「遺伝子」、「神経変性疾患」、「予防」、「治療」などは、前述した範囲内であってもよい。
【0101】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0102】
[実施例]
実施例1.hIL-10およびhGDNF併用投与による神経変性疾患の改善に対する相乗効果の確認
本発明の治療剤の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFが神経変性疾患に対して及ぼす効果を確認するために、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFを神経変性疾患動物モデルに投与し、ドーパミン作動性神経細胞死滅抑制および運動機能改善を確認した。
【0103】
1-1.動物モデルの準備
神経変性疾患が発病した動物およびヒトのいずれにおいても、で神経伝達物質に変化が発生し、運動能力の低下が発生することが知られている。本発明の遺伝子治療剤の神経変性疾患改善効果を確認するための動物モデルは、C57BL/6マウスで誘導した。神経変性疾患マウスモデルを製作するために、従来ドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅およびSubthalamic nucleus(SN)において異常な興奮性神経伝達を誘導することが知られた6-hydroxydopamine(6-OHDA)をマウスの左側Striatum(ST)に注入した。具体的な神経変性疾患マウスモデルの誘導方法は、下記の通りである。
【0104】
前記マウスは、alfaxan-sedator混合物を腹腔内に投与して麻酔させ、麻酔した動物の頭をstereotaxic instrument(RWD life science)の鼻輪と耳飾りを利用して固定させた後、マウスのBregmaとlambdaの高さを測定し、頭が水平になりうるように位置を調節した。Bregmaを基準として所望の脳目的部位の座標を確認した後、micromotor drill(Seashin)を活用して確認した位置の頭蓋骨に穴をあけた。Hamilton syringe(Hamilton)(10μLのsyringeを使用したが、これに制限されない)を用い、約2μLの被験物質(Saline、0.1%ascorbic acid、6-hydroxydopamine(OHDA)、rAAV5-GFPであってもよく、実験ごとに変わる)を、stereotaxic injection pump(DONGBANG HITECH商社)を利用して0.5μL/minの速度で投与した。注入後、black silkを用いて脳皮質を縫合した後、ポビドンで消毒し、ホームケージに戻した後、麻酔から目覚めるまで赤外線ヒーターを使用して体温を安定させた。
【0105】
1-2.hIL-10およびhGDNF併用投与による動物モデルのドーパミン作動性神経細胞保護効果の確認
具体的には、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFのドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅抑制効果を確認するために、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理し、2週後に6-OHDAを注入し、神経変性疾患動物モデルを誘導した。SNpc(Substantia nigra pars compacta)とSNpc神経胞体の軸索突起が伸びているST(Striatum)のドーパミン作動性神経細胞の保護効果を確認するために、DAB染色法(3,3’-diaminobenzidine staining)を行った。実験は、前記Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFを投与した後、6週経過(6-OHDA投与後4週)した後、マウスを犠牲にさせて脳を回収し、非特異的発色を防止するために、切片組織に1%のHを15分間処理した後、代表的なドーパミン作動性神経細胞マーカーと知られたTyrosine hydroxylase(TH)を検出するための、Anti-TH抗体を切片組織に処理し、4℃の温度で8時間以上インキュベートした。Biotinylatedされた抗体を組織に処理し、anti-TH抗体と接着させ、ABC KITを利用してavidin-biotin酵素結合体をbiotinylated抗体に結合させた後、DAB KITを利用して結合したbiotinを茶色で発色させた後、明視野で顕微鏡で観察した。
【0106】
その結果、図1aに示されたように、Striatumのドーパミン作動性神経細胞死滅レベルの場合、rAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理した群が、Saline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFのみを前処理した群に比べて、有意に低いレベルを示すことを確認でき、また、SNpcにおいてドーパミン作動性神経細胞死滅レベルは、rAAV5-hIL-10/hGDNFを前処理した場合にも、そうでない場合(Saline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFのみを前処理)に比べて、有意に低いレベルを示した(図1b)。
【0107】
1-3.rAAV5-hIL-10/hGDNFの神経変性疾患動物モデルの運動低下症状の改善効果の確認
また、Saline、rAAV5-hIL-10、rAAV5-hGDNFおよびrAAV5-hIL-10/hGDNFの運動機能改善効果を確認するために、Rotation testを行った。Rotation testは、0.4mg/mLのApomorphineをSalineに溶かした後、それぞれの神経変性疾患マウスモデルに4mg/kgで皮下投与し、5分が経過した後、動物が動く方向および動く程度を20分間カメラを利用して録画した後、撮影した動画を利用して動物が時計方向にどれぐらい回転するかを分析した。
【0108】
その結果、本発明の遺伝子治療(rAAV5-hIL-10/hGDNF)は、Saline、rAAV5-hIL-10またはrAAV5-hGDNFを投与したマウスと比較すると運動活性の改善が見られ、運動機能低下の改善効果が確された(図1c)。
【0109】
1-4.rAAV5-hIL-10/hGDNFの長期神経変性疾患治療効果の確認
本発明の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFの長期神経変性疾患治療効果を確認するために、6-OHDAで誘導された動物モデルに対して、1週が経過した後、本発明の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFを投与した。具体的な実験方法は、下記表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記実施例1-3と同様の方法でrAAV5-hGDNF/hIL-10を後処理し、rotation testを行った場合、神経変性疾患の異常動の改善効果を確認した結果、図2に示されたように、rAAV5-hIL-10/hGDNFのみを投与した場合にも、6-OHDAにより誘導された異常動が改善されることを確認でき、前記rAAV5-hIL-10/hGDNF投与後5週が経過した後にも、このような効果が長期間維持され得ることを確認することができた。
【0112】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の遺伝子治療剤(rAAV5-hIL-10/hGDNF)を投与する場合、神経変性疾患の運動低下症状を予防するだけでなく、治療することができ、このような予防および治療効果が長期間維持されるという事実を確認することができた。
【0113】
実施例2.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の同時投与時における神経変性疾患予防効果の確認
2-1.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の動物モデルのドーパミン作動性神経細胞保護効果の確認
本発明の遺伝子治療剤の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65(同時投与)のドーパミン作動性(dopaminergic)神経細胞の死滅抑制効果を確認するために、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理し、2週後に6-OHDAを投与し、神経変性疾患をマウスに対して誘導した。SNpc(Substantia nigra pars compacta)とSNpc神経細胞の軸索突起が伸びているStriatumのドーパミン作動性神経細胞の保護効果を確認するために、前記実施例2-2と同一に行った。
【0114】
その結果、図3aに示されたように、Striatumにおいてドーパミン作動性神経細胞死滅レベルは、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した群が、そうでない群に比べて、有意に低いレベルを示し、SNpcのドーパミン作動性神経細胞死滅レベルも、図3bに示されたように、rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した群が、6-OHDAのみを処理した群に比べて、有意に低いレベルを示すことを確認することができた。
【0115】
2-2.rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の神経変性疾患動物モデルの運動低下症状の改善効果の確認
前記実施例2-1の方法で疾患動物マウスを誘導する2週間前にあらかじめrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理し、上記のような方法を通じて製作された神経変性疾患マウスモデルにRotation test(Apomorphine induced rotation)およびRota-rod testを行った。具体的な実験方法は、下記表2に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
(1)Rotation testの結果
Rotation testは、実施例1-3と同一に行い、その結果、6-OHDA注入の4週間後にSaline注入群と比較して本発明の遺伝子治療剤を前注入した神経変性疾患モデルは有意な運動機能の善が確認された図4a)。また図4bに示されたように、遺伝子治療の前処理を行った6-OHDAで誘導された神経変性疾患モデルにおいて神経変性疾患モデル化の10週間後でもSaline注入群に比べて有意な運動低下の治療効果が確された(図4b)。
【0118】
上記のような結果を通じて、本発明者らは、本発明の遺伝子治療剤(rAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65の同時投与)を投与する場合、神経変性疾患の運動低下症状を予防することができ、このような予防効果が長期間維持されるという事実を確認することができた。
【0119】
(2)Rota-rod試験の結果
Rota-rod試験は、前記マウスをRota-rod行動実験機器の円筒上に位置させた後、2分間5RPMの速度で円盤を時計方向に回して、機器に適応する時間を与えた。様々なRPMで筒を回転させながら、マウスが円筒上で歩く時間を測定し、実験は、1個体当たり3回反復して行い、3個の測定値の平均を個体の代表値で示した。
【0120】
その結果、図4cに示されたように、本発明の1つであるrAAV5-hIL-10/hGDNFおよびrAAV5-hGAD65を前処理した場合には、6-OHDA注入によって運動機能が有意に減少した時点である2週目において0.1%のascorbic acidのみを投与したSham controlと同様のレベルで運動機能改善が観察された。
【0121】
実施例3.各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成されたhIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与の酸化ストレスによる神経細胞の死滅抑制効果の確認
hIL-10およびhGDNFの上清の併用投与またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与時に酸化ストレスによる神経細胞の抗アポトーシス効果を確認することを目的とした。併用上清は、各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成した。H または6-OHDAを適用して神経細胞死滅を誘発した後、細胞生存率(cell viability)を確認し、各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成されたhIL-10およびhGDNFの上清またはhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清を前処理した。
【0122】
その結果、図5aおよび図5bから分かるように、各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成されたhIL-10およびhGDNFの上清の併用投与または各治療遺伝子プラスミドトランスフェクションにより生成されたhIL-10、hGDNFおよびhGAD65の上清の同時投与の両方とも、神経細胞死滅が抑制されることを確認した。
【0123】
このような結果を通じて、hIL-10およびhGDNFの遺伝子だけでなく、それぞれのタンパク質も、神経変性疾患の予防または治療効能を有することが分かり、神経細胞死滅理由と関係なく、神経細胞保護効果を有するところ、パーキンソン病を含む様々な神経変性疾患に効果があることが分かった。
【0124】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【国際調査報告】