(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】小細胞肺がんおよび他の神経内分泌がんを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4995 20060101AFI20240312BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240312BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240312BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240312BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240312BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K31/4995
G01N33/53 Y
G01N33/574 D
A61K45/06
A61K31/5375
A61K31/497
A61P35/00
A61P43/00 121
C12Q1/68
C12Q1/04
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555537
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022019763
(87)【国際公開番号】W WO2022192549
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】バイヤーズ ローレン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガイ カール エム.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
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4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、バイオマーカーSLFN11を評価することによってSCLCおよび他の神経内分泌がんを処置するための新規の治療方法を提供する。本開示の局面は、小細胞肺がん(SCLC)を有するまたは神経内分泌がんを有する対象を処置するための方法であって、ルルビネクテジンおよびATR阻害剤の組み合わせを、対象由来の生物学的サンプルにおいてSLFN11発現について陰性であるまたは低SLFN11発現を有すると決定された該対象へ投与する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小細胞肺がん(SCLC)を有するまたは神経内分泌がんを有する対象を処置するための方法であって、ルルビネクテジンおよびATR(毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連タンパク質(taxia telangiectasia and Rad3-related protein))阻害剤の組み合わせを、対象由来の生物学的サンプルにおいてSLFN11発現について陰性であるまたは低SLFN11発現を有すると決定された該対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
ATR阻害剤が、VE-821、LR-02、RP-3500、SC-0245、M-1774、M4344、ATG-018、IMP-9064、nLs-BG-129、BAY-1895344、ベルゾセルチブ、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、BKT-300、AZ-20、セララセルチブ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ATR阻害剤がセララセルチブ(AZD6738)またはベルゾセルチブ(VX-970)を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
対象由来の生物学的サンプルに対して行われる免疫組織化学アッセイにおいてSLFN11を評価することによって該対象がSLFN11発現について評価された、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
生物学的サンプルが、血液、血清、血漿、リキッドバイオプシー、胸水、バイオプシー、または組織サンプルを含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプルが循環腫瘍細胞を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
生物学的サンプルが循環腫瘍DNAを含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
対象由来の生物学的サンプル中のSLFN11の発現レベルが定量された、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
SLFN11の発現レベルが正規化される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
対象が、該対象由来の生物学的サンプルにおいてSLFN11陰性細胞を有すると決定された、請求項1記載の方法。
【請求項11】
対象が、該対象由来の生物学的サンプルにおいて低レベルのSLFN11発現を有するかまたは有すると決定された、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
対象が、該対象由来の生物学的サンプルにおいて、対照発現レベルと比較して低いレベルまたは実質的に同じレベルのSLFN11発現を有するかまたは有すると決定された、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
対照が、ルルビネクテジン非感受性細胞中のSLFN11の発現レベル、またはルルビネクテジンのpIC50が-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、もしくは-0.04を超える細胞中のSLFN11の発現レベルに相当する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
対象が、1未満のSLFN11についてのHスコアを有すると決定された、請求項10~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
対象が、0.5未満のSLFN11についてのHスコアを有すると決定された、請求項14記載の方法。
【請求項16】
対象が、ルルビネクテジンで以前に処置されたことがない、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
がんが再発性とさらに定義される、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
がんがSCLCタイプAを含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
対象がヒト対象である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
神経内分泌がんまたはSCLCを有する対象におけるルルビネクテジンおよびATR阻害剤に対する応答を予測するための方法であって、
(a)対象由来の生物学的サンプル中のSLFN11を評価する工程;
(b)(i)SLFN11発現が患者由来の生物学的サンプルにおいて検出されなかった;
(ii)ルルビネクテジン非感受性細胞中のSLFN11の発現レベルに、または、ルルビネクテジンのpIC50が-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、もしくは-0.04を超える細胞中のSLFN11の発現レベルに相当する対照と比較して低いレベルまたは実質的に同じレベルのSLFN11発現を有すると患者が決定された;あるいは
(iii) iii)対象由来の生物学的サンプルにおける発現レベルについてのHスコアが1未満であった
後に該対象がルルビネクテジンおよびATR阻害剤の組み合わせに対して応答すると予測する工程
を含む、方法。
【請求項21】
対象由来の生物学的サンプルに対して行われる免疫組織化学アッセイにおいてSLFN11を評価することによって該対象がSLFN11発現について評価された、請求項20記載の方法。
【請求項22】
生物学的サンプルが、血液、血清、血漿、リキッドバイオプシー、胸水、バイオプシー、または組織サンプルを含む、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
生物学的サンプルが循環腫瘍細胞を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
生物学的サンプルが循環腫瘍DNAを含む、請求項20~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
対象由来の生物学的サンプル中のSLFN11の発現レベルが定量された、請求項20~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
SLFN11の発現レベルが正規化される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
対象を処置する工程をさらに含む、請求項20~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
対象を、ルルビネクテジンおよびATR阻害剤の組み合わせで処置する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ATR阻害剤が、VE-821、LR-02、RP-3500、SC-0245、M-1774、M4344、ATG-018、IMP-9064、nLs-BG-129、BAY-1895344、ベルゾセルチブ、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、BKT-300、AZ-20、セララセルチブ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項20~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
ATR阻害剤がセララセルチブ(AZD6738)またはベルゾセルチブ(VX-970)を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
対象が、ルルビネクテジンで以前に処置されたことがない、請求項20~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
がんが再発性とさらに定義される、請求項20~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
がんがSCLCタイプAを含む、請求項20~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
対象がヒト対象である、請求項20~33のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は、一般に、分子生物学および治療的診断の分野に関する。より詳細には、本発明は、SCLCおよび他の神経内分泌がんの予後、診断、および処置を含む方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
II.背景
小細胞肺がん(SCLC)は、肺がんの侵攻性サブタイプであり、米国における全肺がん症例のおよそ15%を占める。SCLCは、不明瞭な細胞境界および最小の細胞質、まれな核小体、および細かく顆粒状のクロマチンを有する小細胞を特徴とする。疾患の高侵襲性の性質、低い早期診断率、および有効な治療法の欠如のために、予後は一般的に不良である。未治療SCLC患者についての診断からの生存期間中央値はわずか2~4ヶ月である。化学療法および/または放射線療法が用いられる場合、SCLC患者における初期奏効率は高い(およそ60~80%)が、再発が治療患者の大多数において起こり、その後、彼らの大部分がさらなる全身療法に抵抗性である。したがって、現在の治療法でも、限局期疾患を有する患者についての生存期間中央値は16~24ヶ月であり、進展した疾患を有する患者については7~12ヶ月である。患者の生存率を向上させるためには、腫瘍が感受性である化学療法剤で患者を治療することが不可欠である。SCLCの治療における標的薬の使用は、主要な満たされていない医療ニーズの代表である。非小細胞肺がん(NSCLC)とは異なり、現在、この疾患を有する患者に有益であることが実証されている標的療法はない。したがって、SCLC患者を、個々の遺伝子プロファイルに基づいて適切な治療法に調整する必要がある。所与の腫瘍の遺伝子プロファイルを理解することはまた、早期の診断、発見、および治療法選択を可能にする。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示は、SCLC陰性またはSCLC低発現神経内分泌がんを処置するための新規の治療方法を提供する。本開示の局面は、小細胞肺がん(SCLC)を有するまたは神経内分泌がんを有する対象を処置するための方法であって、ルルビネクテジンおよびATR(毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連タンパク質(taxia telangiectasia and Rad3-related protein))阻害剤の組み合わせを、対象由来の生物学的サンプルにおいてSLFN11発現について陰性であるまたは低SLFN11発現を有すると決定された該対象へ投与する工程を含む、方法に関する。さらなる局面は、神経内分泌がんまたはSCLCを有する対象におけるルルビネクテジンおよびATR阻害剤に対する応答を予測するための方法であって、(a)対象由来の生物学的サンプル中のSLFN11を評価する工程;(b)(i)SLFN11発現が患者由来の生物学的サンプルにおいて検出されなかった後に;(ii)患者が、対照と比較して低いレベルまたは実質的に同じレベルのSLFN11発現を有すると決定された後であって、ここで、対照は、ルルビネクテジン非感受性細胞中のSLFN11の発現レベル、またはルルビネクテジンのpIC50が-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、もしくは-0.04を超える細胞中のSLFN11の発現レベルに相当し;または(iii) iii)対象由来の生物学的サンプルにおける発現レベルについてのHスコアが1未満であった後に、対象がルルビネクテジンおよびATR阻害剤の組み合わせに対して応答すると予測する工程を含む、方法に関する。
【0004】
いくつかの局面では、ATR阻害剤はセララセルチブ(AZD6738)および/またはベルゾセルチブ(VX-970)を含むかまたはからなる。いくつかの局面では、ATR阻害剤はセララセルチブを含むかまたはからなる。いくつかの局面では、ATR阻害剤はベルゾセルチブを含むかまたはからなる。いくつかの局面では、ATR阻害剤は、VE-821、LR-02、RP-3500、SC-0245、M-1774、M4344、ATG-018、IMP-9064、nLs-BG-129、BAY-1895344、ベルゾセルチブ、ART-0380、ATRN-119、ATRN-212、BKT-300、AZ-20、セララセルチブ、およびこれらの組み合わせより選択される。がんはSCLCまたは神経内分泌がんであってもよく、または対象は、SCLCまたは神経内分泌がんを有すると診断または決定されたものであってもよい。いくつかの局面では、対象は、対象由来の生物学的サンプルに対して行われる免疫組織化学アッセイにおいてSLFN11を評価することによってSLFN11発現について評価されたか、または本方法は、対象由来の生物学的サンプルに対して行われる免疫組織化学アッセイにおいてSLFN11を評価することによってSLFN11発現を評価もしくは決定する工程を含む。いくつかの局面では、生物学的サンプルは、血液、血清、血漿、バイオプシー、または組織サンプルを含む。生物学的サンプルはまた本明細書に記載される生物学的サンプルであってもよい。いくつかの局面では、生物学的サンプルは循環腫瘍細胞を含む。いくつかの局面では、生物学的サンプルは循環腫瘍DNAを含む。いくつかの局面では、対象由来の生物学的サンプル中のSLFN11の発現レベルは定量されているか、または本方法はSLFN11の発現レベルを定量する工程をさらに含む。いくつかの局面では、SLFN11の発現レベルは正規化されているか、または本方法はSLFN11の発現レベルを正規化する工程をさらに含む。いくつかの局面では、対象は、生物学的サンプルにおけるSLFN11発現について陰性であると決定された。いくつかの局面では、対象は、対象由来の生物学的サンプルにおいてSLFN11陰性細胞を有すると決定された。いくつかの局面では、対象は、対象由来の生物学的サンプルにおいて低レベルのSLFN11発現を有するかまたは有すると決定された。いくつかの局面では、対象は、対象由来の生物学的サンプルにおいて、対照発現レベルと比較して低いレベルまたは実質的に同じレベルのSLFN11発現を有するかまたは有すると決定された。いくつかの局面では、対照は、ルルビネクテジン非感受性細胞中のSLFN11の発現レベル、またはルルビネクテジンのpIC50が-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、もしくは-0.04を超える細胞中のSLFN11の発現レベルに相当する。いくつかの局面では、対照は非がん性細胞中のSLFN11の発現レベルであり得る。いくつかの局面では、対照はカットオフ値を含み、これを上回ると、SLFN11の高発現が定義され、これを下回ると、SLFN11の低発現が定義される。いくつかの局面では、カットオフ値はHスコアとさらに定義され、これは、SLFN11を発現する細胞のパーセンテージにSLFN11染色の強度(0~300の様々な可能なHスコアについて、0[染色/発現なしを意味する]対1+/2+/3+)を掛けたものと定義される。いくつかの局面では、Hスコアは1である。いくつかの局面では、Hスコアは、少なくとも0.1、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはその中の任意の導出可能な範囲であり、Hスコアは、多くとも0.1、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはその中の任意の導出可能な範囲であり、あるいはHスコアは、正確に0.1、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはその中の任意の導出可能な範囲である。さらなる局面は、Allison Stewart C, et al., Oncotarget. 2017 Apr 25;8(17):28575-28587およびPietanza MC, et al., LA.J Clin Oncol. 2018 Aug 10;36(23):2386-2394に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの局面では、方法は、対象におけるSLFN11発現についてのHスコアを決定する工程をさらに含む。いくつかの局面では、対象は、1未満であるHスコアを有すると決定される。いくつかの局面では、対象は、1以下のHスコアを有すると決定される。
【0005】
いくつかの局面では、対象はルルビネクテジンで以前に処置されたことがない。いくつかの局面では、がんは再発性とさらに定義される。いくつかの局面では、がんはSCLCタイプAを含む。対象は、ヒト、哺乳動物、非ヒト霊長動物、ラット、マウス、ブタ、ウマ、ネコ、またはイヌであり得る。いくつかの局面では、対象はヒトである。
【0006】
いくつかの局面では、測定されるバイオマーカーの発現レベルは、対照発現レベルと比較して有意差があると決定される/された;ここで、対照発現レベルは、SCLCまたは神経内分泌がんではないがんにおけるバイオマーカーの発現レベルを含む。いくつかの局面では、測定されるバイオマーカーの発現レベルは、対照発現レベルと比較して有意差がないと決定される/された;ここで、対照発現レベルは、非がん性サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベルを含む。いくつかの局面では、測定されるバイオマーカーの発現レベルは、対照発現レベルと比較して有意差があると決定される/された;ここで、対照発現レベルは、非がん性サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベルを含む。いくつかの局面では、測定されるバイオマーカーの発現レベルは、対照発現レベルと比較して有意差がないと決定される/された;ここで、対照発現レベルは、がん性サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベルを含み、ここで、がんは本明細書に記載されるがんを含む。いくつかの局面では、測定されるバイオマーカーの発現レベルは、対照発現レベルと比較して有意差があると決定される/された;ここで、対照発現レベルは、がん性サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベルを含み、ここで、がんは本明細書に記載されるがんを含む。
【0007】
いくつかの局面では、1つまたは複数のバイオマーカーは、0.025を超えるシグネチャー重みの絶対値を有する。「絶対値」という用語は、その符号に関係なく実数の大きさを指す。シグネチャー重みを表1~3に示す。いくつかの局面では、1つまたは複数のバイオマーカーは、0.000001、0.000002、0.000003、0.000004、0.000005、0.000006、0.000007、0.000008、0.000009、0.00001、0.000015、0.00002、0.000025、0.00003、0.000035、0.00004、0.000045、0.00005、0.000055、0.00006、0.000065、0.00007、0.000075、0.00008、0.000085、0.00009、0.000095、0.0001、0.00015、0.0002、0.00025、0.0003、0.00035、0.0004、0.00045、0.0005、0.00055、0.0006、0.00065、0.0007、0.00075、0.0008、0.00085、0.0009、0.00095、0.001、0.0015、0.002、0.0025、0.003、0.0035、0.004、0.0045、0.005、0.0055、0.006、0.0065、0.007、0.0075、0.008、0.0085、0.009、0.0095、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.021、0.022、0.023、0.024、0.025、0.026、0.027、0.028、0.029、0.03、0.031、0.032、0.033、0.034、0.035、0.036、0.037、0.038、0.039、0.04、0.041、0.042、0.043、0.044、0.045、0.046、0.047、0.048、0.049、もしくは0.05 (もしくはその中の導出可能な任意の範囲)を超える、または0.000001、0.000002、0.000003、0.000004、0.000005、0.000006、0.000007、0.000008、0.000009、0.00001、0.000015、0.00002、0.000025、0.00003、0.000035、0.00004、0.000045、0.00005、0.000055、0.00006、0.000065、0.00007、0.000075、0.00008、0.000085、0.00009、0.000095、0.0001、0.00015、0.0002、0.00025、0.0003、0.00035、0.0004、0.00045、0.0005、0.00055、0.0006、0.00065、0.0007、0.00075、0.0008、0.00085、0.0009、0.00095、0.001、0.0015、0.002、0.0025、0.003、0.0035、0.004、0.0045、0.005、0.0055、0.006、0.0065、0.007、0.0075、0.008、0.0085、0.009、0.0095、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.017、0.018、0.019、0.02、0.021、0.022、0.023、0.024、0.025、0.026、0.027、0.028、0.029、0.03、0.031、0.032、0.033、0.034、0.035、0.036、0.037、0.038、0.039、0.04、0.041、0.042、0.043、0.044、0.045、0.046、0.047、0.048、0.049、もしくは0.05 (もしくはその中の導出可能な任意の範囲)未満の、シグネチャー重みの絶対値を有する。
【0008】
本願全体を通して、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられる装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために、細胞および分子生物学の分野におけるその明白かつ通常の意味にしたがって用いられる。
【0009】
用語「含む」とともに使用される単語「1つの(a)」および「1つの(an)」の使用は「1つの」を意味し得るが、それはまた、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1よりも多い」の意味とも矛盾しない。
【0010】
本明細書において使用するとき、用語「または」および「および/または」は、互いに組み合わせたまたは互いを除いた複数の成分を記載するために使用される。例えば、「x、y、および/またはz」は、「x」のみ、「y」のみ、「z」のみ、「x、y、およびz」、「(xおよびy)またはz」、「xまたは(yおよびz)」、または「xまたはyまたはz」を指し得る。具体的には、x、y、またはzが局面または態様から具体的に除外されてもよいと考慮される。
【0011】
単語「含む」(および含むの任意の形、例えば「含み」)、「有する」(および有するの任意の形、例えば「有し」)、「包含する」(および包含するの任意の形、例えば「包含し」)、「特徴とする」(および特徴とするの任意の形、例えば「特徴とし」)または「含有する」(および含有するの任意の形、例えば「含有し」)は包括的または非限定的であり、挙げられていない追加的要素または方法段階を除外しない。
【0012】
組成物およびその使用のための方法は、本明細書全体を通して開示される成分または段階のいずれか「を含む」、「から本質的になる」または「からなる」ことができる。語句「からなる」は、特定されていない任意の要素、段階または成分を除外する。語句「から本質的になる」は、記載される主題の範囲を、特定された材料または段階およびその基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない材料または段階に限定する。用語「含む」の文脈において記載された態様および局面が、用語「からなる」または「から本質的になる」の文脈において実現されてもよいと考慮される。
【0013】
具体的に、本発明の1つの態様または局面に関して記載された任意の限定が本発明の任意の他の態様または局面に適用されてもよいことが考慮される。さらに、本発明の任意の組成物を本発明の任意の方法に使用してもよく、本発明の任意の方法を使用して、本発明の任意の組成物を製造または利用してもよい。実施例に記される態様の局面はまた、異なる実施例の他の箇所または本願の他の箇所、例えば、発明の概要、態様の詳細な説明、特許請求の範囲、および図面凡例の説明に記載される態様および局面の文脈において実現されてもよい。
【0014】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体例は、発明の特定の態様を示すものの、例示のためだけに与えられることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面は、本明細書の一部を構成し、そして、本発明の特定の局面をさらに示すために含まれる。これら図面のうちの1つまたは複数を、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、本発明をより深く理解することができる。
【
図1】SLFN11の低発現を伴う細胞が、より高いルルビネクテジンIC
50値を有することを示す。
【
図2】SCLC細胞株H211、H446、およびSHP77における、AZD673と組み合わせたルルビネクテジンでの処理からの結果を示し、ルルビネクテジンとAZD673との間の相乗性を実証する。
【
図3A】
図3A~3Cは、ルルビネクテジンおよびAZD6738の併用効果が、細胞内DNA損傷マーカーにも反映されることを実証する結果を示す。
【
図4A】
図4A~4C。ルルビネクテジンとATR阻害剤との組み合わせは、低SLFN11細胞株において、相加的よりも大きい(greater than additive)。A、示される濃度でのルルビネクテジン(Lurbi)、セララセルチブおよびそれらの組み合わせによる96時間処理後の、相加的よりも大きいおよび相加的な応答を表す細胞株の相対的増殖(平均±SEM)。B.SCLCサブタイプによって色分けされた、試験された全21細胞株についてのΔAUCを表す棒グラフ。ΔAUC値は、観察された薬物組み合わせの用量反応曲線下面積の差を意味し、単剤の予測相加効果は、BLISS独立モデルを用いて計算した。ΔAUC < -0.1は、組み合わせの、相加的よりも大きい効果を示す。C.0.6nMのルルビネクテジン、0.3μMのセララセルチブおよびそれらの組み合わせで処理されたH211およびH865細胞株中のpCHK1、pγH2Axおよび切断型カスパーゼ3の変化を示すウエスタンブロット。
【
図5A】示される濃度でのルルビネクテジン(Lurbi)、VX-970およびそれらの組み合わせによる96時間処理後の、相加的よりも大きい、および相加的な応答を表す細胞株の相対的増殖(平均±SEM)。
【
図5B】SCLCサブタイプによって色分けされた、試験された全てのSCLC細胞株についてのΔAUCを表す棒グラフ。
【
図5C】0.6nMのルルビネクテジン、0.3μMのVX-970およびそれらの組み合わせで処理されたH211およびH865細胞株中のpCHK1、pγH2Axおよび切断型カスパーゼ3の変化を示すウエスタンブロット。
【
図5D】4つのSCLCサブタイプSCLC-A、-N、-Pおよび-Iの細胞株間のルルビネクテジンおよびセララセルチブの組み合わせについてのΔAUC値の比較(スチューデントのt検定によるp値)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
I.サンプル調製
特定の局面では、方法は、対象からサンプルを採取する段階を含む。本明細書に提供される採取方法は、生検の方法、例えば細針吸引、コア針生検、真空補助下生検、切開生検、切除生検、パンチ生検、薄片生検または皮膚生検を含み得る。特定の局面では、サンプルは、前述の生検方法のいずれかにより、肺組織からの生検材料から採取される。他の局面では、サンプルは、非がん性またはがん性組織および血清、胆嚢、粘膜、皮膚、心臓、肺、乳房、膵臓、血液、肝臓、筋肉、腎臓、平滑筋、膀胱、結腸、腸、脳、前立腺、食道または甲状腺組織からの非がん性またはがん性組織を含むがこれらに限定されない、本明細書に提供される組織のいずれかから採取され得る。あるいはまた、サンプルは、血液、汗、毛包、口腔内組織、涙、月経分泌物、糞便または唾液を含むがこれらに限定されない、任意の他の供給源から採取されてもよい。現行の方法の特定の局面では、医師、看護師または医療技術者などの任意の医療専門家が検査のための生物学的サンプルを採取し得る。さらに、生物学的サンプルは、医療専門家の支援なしに採取することもできる。
【0017】
サンプルとしては、対象の組織、細胞、または細胞に由来する生物学的材料があるが、これらに限定されない。生物学的サンプルは、細胞または組織の不均一または均一な集団であり得る。生物学的サンプルは、本明細書に記載される分析方法に適したサンプルを提供することができる、当技術分野において公知の任意の方法を使用して採取され得る。サンプルは、皮膚または子宮頸部の掻き取り、口腔粘膜の拭き取り、唾液捕集、尿捕集、糞便捕集、月経分泌物、涙または精液の捕集を含むがこれらに限定されない非侵襲的方法によって、採取され得る。
【0018】
サンプルは、当技術分野において公知の方法によって採取され得る。特定の局面では、サンプルは生検によって採取される。他の局面では、サンプルは、拭き取り、内視鏡検査、掻き取り、静脈切開術、または当技術分野において公知の任意の他の方法によって採取される。場合によっては、サンプルは、本方法のキットのコンポーネントを使用して採取、保存または輸送されてもよい。場合によっては、複数の食道サンプルなどの複数のサンプルが、本明細書に記載される方法により、診断のために採取されてもよい。他の場合には、複数のサンプル、例えば、ある組織タイプ(例えば食道)からの1つまたは複数のサンプルおよび別の標本(例えば血清)からの1つまたは複数のサンプルが、本方法により、診断のために採取されてもよい。場合によっては、複数のサンプル、例えば、ある組織タイプ(例えば食道)からの1つまたは複数のサンプルおよび別の標本(例えば血清)からの1つまたは複数のサンプルが、同じ時間または異なる時間に採取されてもよい。サンプルは、異なる時間に採取され得、異なる方法によって保存および/または分析される。例えば、サンプルは、慣例的な染色法または任意の他の細胞学的分析法によって採取され、分析されてもよい。
【0019】
いくつかの局面では、サンプルは、遠心分離または他の分画技術によって分画された血液サンプルなどの分画されたサンプルを含む。サンプルは、白血球または赤血球を濃縮されたものであってもよい。いくつかの局面では、サンプルは、白血球またはリンパ球のために分画または濃縮されたものであってもよい。いくつかの局面では、サンプルは全血サンプルを含む。
【0020】
いくつかの局面では、生物学的サンプルは、医師、看護師または他の医療専門家、例えば医療技術者、内分泌科医、細胞学者、フレボトミスト、放射線科医または呼吸器科医によって採取され得る。医療専門家が、サンプルに対して実施すべき適切な検査またはアッセイを指示し得る。特定の局面では、分子プロファイリング業者が、どのアッセイまたは検査が最も適切に指示されるかに関して意見を述べてもよい。本方法のさらなる局面では、患者または対象は、医療専門家の支援なしに、全血サンプル、尿サンプル、糞便サンプル、口腔内サンプルまたは唾液サンプルを採取するなど、検査用の生物学的サンプルを採取し得る。
【0021】
他の場合、サンプルは、生検、針吸引、内視鏡検査または静脈切開術を含むがこれらに限定されない侵襲的手技によって、採取される。針吸引の方法はさらに、細針吸引、コア針生検、真空補助下生検またはラージコア生検を含み得る。いくつかの局面では、十分な量の生物学的材料を確保するために、本明細書における方法によって複数のサンプルが採取されてもよい。
【0022】
また、生物学的サンプルを採取するための一般的な方法が当技術分野において公知である。全体として参照により本明細書に組み入れられるRamzy, Ibrahim Clinical Cytopathology and Aspiration Biopsy 2001などの刊行物が、生検および細胞学的方法の一般的な方法を記載している。一局面では、サンプルは、食道または疑われる食道腫瘍もしくは新生物の細針吸引物である。場合によっては、細針吸引サンプリング手技は、超音波、X線または他のイメージングデバイスの使用によって誘導されてもよい。
【0023】
本方法のいくつかの局面では、分子プロファイリング業者は、対象から直接、医療専門家から、第三者から、または分子プロファイリング業者もしくは第三者によって提供されたキットから、生物学的サンプルを採取し得る。場合によっては、対象、医療専門家または第三者が生物学的サンプルを取得し、分子プロファイリング業者に送付した後、分子プロファイリング業者によって生物学的サンプルが採取されてもよい。場合によっては、分子プロファイリング業者が、生物学的サンプルの保存および分子プロファイリング業者への輸送に適した、容器および賦形剤を提供してもよい。
【0024】
本明細書に記載される方法のいくつかの局面では、医療専門家が初期診断またはサンプル取得に関与する必要はない。あるいはまた、個人が、店頭販売(OTC)キットを使用してサンプルを採取してもよい。OTCキットは、本明細書に記載されるように前記サンプルを採取するための手段と、検査に備えて前記サンプルを保存するための手段と、キットの正しい使用のための使用説明書とを含み得る。場合によっては、分子プロファイリングサービスがキットの購入価格に含まれる。他の場合、分子プロファイリングサービスは別途に請求される。分子プロファイリング業者による使用に適したサンプルは、検査される個人の組織、細胞、核酸、遺伝子、遺伝子フラグメント、発現産物、遺伝子発現産物または遺伝子発現産物フラグメントを含む任意の材料であり得る。サンプルの適性および/または妥当性を決定する方法が提供される。
【0025】
いくつかの局面では、対象は、腫瘍内科医、外科医または内分泌科医などの専門医に紹介される場合がある。専門医は同様に、検査のために生物学的サンプルを採取してもよいし、生物学的サンプルの提出のためにその個人を検査センターまたは研究施設に紹介してもよい。場合によっては、医療専門家は、生物学的サンプルの提出のために対象を検査センターまたは研究施設に紹介してもよい。他の場合、対象がサンプルを提供してもよい。場合によっては、分子プロファイリング業者がサンプルを採取してもよい。
【0026】
II.がんモニタリング
特定の局面では、患者が、上記のバイオマーカー発現に基づいて再発のリスクが高いまたは予後不良であると決定される場合、本開示の方法は、高い頻度で、1つまたは複数の他のがん診断またはスクリーニング検査と組み合わされ得る。
【0027】
いくつかの局面では、本開示の方法はさらに、1つまたは複数のモニタリング検査を含む。モニタリングプロトコルは、当技術分野において公知の任意の方法を含み得る。特に、モニタリングは、サンプルを採取すること、および診断のために該サンプルを検査することを含む。例えば、モニタリングは、内視鏡検査、生検、超音波内視鏡検査、X線、バリウム嚥下、CTスキャン、MRI、PETスキャン、腹腔鏡検査、またはがんバイオマーカー検査を含み得る。いくつかの局面では、モニタリング検査は放射線画像診断を含む。本開示の方法において有用である放射線画像診断の例は、肝臓超音波診断、コンピュータ断層撮影(CT)腹部スキャン、肝臓磁気共鳴画像診断(MRI)、全身CTスキャンおよび全身MRIを含む。
【0028】
本開示の方法は、尿検査、尿細胞診、尿培養、または尿腫瘍マーカー検査のうちの1つまたは複数をさらに含み得る。様々な尿検査により、がん細胞によって作られた特定の物質を探す。これらの検査のうちの1つまたは複数が、本開示の方法において使用され得る。これらには、NMP22(登録商標)(またはBladderChek(登録商標))、BTA Stat(登録商標)、Immunocyt(登録商標)、およびUroVysion(登録商標)と呼ばれる検査が含まれる。本開示の方法は膀胱鏡検査も含む。この方法では、泌尿器科医は、末端にライトとレンズまたは小型ビデオカメラを備えた長くて細い柔軟なチューブである膀胱鏡を使用する。蛍光膀胱鏡検査(青色光膀胱鏡検査としても公知)は、通常の膀胱鏡検査と一緒に行うことができる。この検査では、膀胱鏡検査中に光活性化薬を膀胱に入れる。それはがん細胞によって取り込まれる。その後、医師が膀胱鏡を通して青色光を当てると、薬を含む細胞はすべて光る(蛍光を発する)。これは、通常使用される白色光によって見逃された可能性のある異常な領域を医師が見るのに役立ち得る。
【0029】
本開示の方法はまた、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の使用を含む。単に経尿道的切除術(TUR)としても公知の、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は、異常な領域を生検するために使用される手技である。この手技の間に、医師は腫瘍および腫瘍の周りの膀胱筋の一部を取り出す。取り出されたサンプルは、次いで、がんを探すために検査室に送られる。膀胱がんは、時として膀胱の複数の領域(または尿路の他の部分)で発生し得る。このため、特にがんが強く疑われるが腫瘍が見られない場合、医師は膀胱の多くの異なる部分からサンプルを採取し得る。膀胱内の塩水洗浄液も採取し、がん細胞について試験することができる。
【0030】
いくつかの局面では、画像検査が行われる、または、対象は画像検査を受けている。画像検査は、X線、磁場、音波、または放射性物質を使用し得る。いくつかの局面では、画像検査は静脈性腎盂造影(IVP)を含む。静脈性腎盂造影(IVP)は、静脈性尿路造影(IVU)とも呼ばれ、特殊な色素を静脈に注入した後に撮影される泌尿器系のすべてのX線写真である。この色素は腎臓によって血流から取り出され、次いで尿管および膀胱に入る。これが起こっている間にX線が行われる。色素はX線写真上でこれらの臓器の輪郭を描き、尿路腫瘍を示すのに役立つ。いくつかの局面では、画像検査は逆行性腎盂造影を含む。この検査では、カテーテル(細いチューブ)を尿道から膀胱または尿管に入れる。次に、色素をカテーテルから注入して、膀胱、尿管、および腎臓の内壁をX線写真上で見やすくする。いくつかの局面では、画像検査はコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを含む。CTスキャンは、X線を使用して体の詳細な断面写真を作成する。CTガイド下針生検:CTスキャンはまた、生検針を疑わしい腫瘍に誘導するために使用することができる。これは、がんが広がっている可能性のある領域からサンプルを採取するために使用することができる。いくつかの局面では、画像検査は磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを含む。CTスキャンと同様に、MRIスキャンは体内の軟組織の詳細な画像を表示する。しかし、MRIスキャンはX線の代わりに電波および強力な磁石を使用する。いくつかの局面では、画像検査は超音波を含む。超音波は音波を使用して内臓の写真を作成する。超音波はまた、生検針を腹部または骨盤内のがんの疑いのある領域に誘導するために使用することができる。いくつかの局面では、画像検査は胸部X線または骨スキャンを含む。胸部X線または骨スキャンは、膀胱がんがそれぞれ肺または骨に拡がっているかどうかを確認するために行うことができる。
【0031】
III.ROC分析
統計学において、受信者動作特性(ROC)またはROC曲線は、識別閾値が変化するときの二項分類システムの性能を示すグラフィカルプロットである。曲線は、様々な閾値設定において偽陽性率に対して真陽性率をプロットすることによって作成される(真陽性率は、バイオメディカルインフォマティクスにおいては感度、または機械学習においては再現率としても知られる。偽陽性率はフォールアウトとしても知られ、1-特異度として計算することができる)。したがって、ROC曲線は、フォールアウトの関数としての感度である。一般に、検出と誤警報の両方の確率分布が既知であるならば、ROC曲線は、y軸の検出確率の累積分布関数(-無限大から+無限大までの確率分布下の区域)をx軸の誤警報確率の累積分布関数に対してプロットすることによって作成することができる。
【0032】
ROC分析は、コストコンテキストまたはクラス分布とは独立して(かつ、それらを指定する前に)、おそらくは最適なモデルを選択し、最適以下のモデルを破棄するためのツールを提供する。ROC分析は、診断意思決定の費用便益分析に直接的かつ自然な方法で関連する。
【0033】
)
ROC曲線は、当初、第二次世界大戦中、戦場で敵対象物を検出するために電気技師およびレーダー技師によって開発され、ほどなく、刺激の知覚的検出を説明するために心理学に導入された。それ以来、ROC分析は、医学、放射線学、生体認証および他の分野において何十年にもわたり使用されており、機械学習およびデータマイニングリサーチにおいてますます使用されている。
【0034】
ROCは、基準が変化するときの2つの動作特性(TPRおよびFPR)の比較であるため、相対動作特性曲線としても知られている。ROC分析曲線は、当技術分野において公知であり、全体として参照により本明細書に組み入れられるMetz CE (1978) Basic principles of ROC analysis. Seminars in Nuclear Medicine 8:283-298;Youden WJ (1950) An index for rating diagnostic tests. Cancer 3:32-35;Zweig MH, Campbell G (1993) Receiver-operating characteristic (ROC) plots: a fundamental evaluation tool in clinical medicine. Clinical Chemistry 39:561-577;およびGreiner M, Pfeiffer D, Smith RD (2000) Principles and practical application of the receiver-operating characteristic analysis for diagnostic tests. Preventive Veterinary Medicine 45:23-41に記載されている。ROC分析は、予後および/または診断目的でカットオフ値を作成するために使用されてもよい。
【0035】
IV.核酸アッセイ
方法の局面は、生物学的サンプル中のCXCL13発現細胞および/またはARID1A変異細胞の発現もしくは活性レベルおよび/または存在を決定するために核酸をアッセイすることを含む。アレイを使用して、2つのサンプル間の差を検出することができる。具体的に考慮される用途は、正常であるサンプルからのRNAと正常でないサンプルからのRNAとの間、がん性状態と非がん性状態との間で差を識別および/または定量化する用途を含む。また、RNAは、特定の疾患または状態に感受性であると考えられるサンプルと、その疾患または状態に感受性ではないまたは耐性であると考えられるサンプルとの間で比較されてもよい。正常ではないサンプルとは、疾患もしくは状態の表現型形質を示すサンプルまたはその疾患もしくは状態に関して正常ではないと考えられるサンプルである。それは、その疾患または状態に関して正常である細胞と比較されてもよい。表現型形質は、成分が遺伝的である、または遺伝的であり得る、もしくはあり得ない、または過剰増殖性もしくは新生細胞によって引き起こされる、または引き起こされ得る、もしくは引き起こされ得ない疾患もしくは状態の症状または疾患もしくは状態に対する感受性を含む。
【0036】
バイオマーカーの発現レベルを決定するために、アレイが使用されてもよい。アレイは、核酸プローブが支持体へ取り付けられた固体支持体を含む。アレイは通常、異なる既知の位置で基板の表面に結合されている複数の異なる核酸プローブを含む。「マイクロアレイ」または口語的には「チップ」とも記されるこれらのアレイは、当技術分野、例えば、それぞれが全体としてあらゆる目的のために参照により組み入れられる米国特許第5,143,854号、第5,445,934号、第5,744,305号、第5,677,195号、第6,040,193号、第5,424,186号およびFodor et al., 1991において一般に説明されている。機械的合成法を使用してこれらのアレイを合成するための技術が、例えば、全体としてあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,384,261号に記載されている。特定の局面では平面的なアレイ面が使用されるが、アレイは、事実上いかなる形状の表面に作製されてもよいし、複数の表面に作製されてもよい。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、光ファイバーなどのファイバー、ガラスまたは任意の他の適切な基板上の核酸であり得る。全体としてあらゆる目的のために本明細書に組み入れられる米国特許第5,770,358号、第5,789,162号、第5,708,153号、第6,040,193号および第5,800,992号を参照すること。
【0037】
バイオマーカー発現を決定するために有用なさらなるアッセイとしては、核増幅、ポリメラーゼ連鎖反応、定量的PCR、RT-PCR、インサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)(GenProbe)、分岐DNA(bDNA)アッセイ(Chiron)、ローリングサークル増幅(RCA)、単一分子ハイブリダイゼーション検出(US Genomics)、Invaderアッセイ(ThirdWave Technologies)および/またはBridge Litigation Assay(Genaco)があるが、これらに限定されない。
【0038】
バイオマーカー遺伝子を含む核酸などの核酸を定量化および/または同定するのに有用なさらなるアッセイがRNAseqである。全トランスクリプトームショットガンシーケンシングとも呼ばれるRNA-seq(RNAシーケンシング)は、次世代シーケンシング(NGS)を使用して、所与の瞬間における生物学的サンプル中のRNAの存在および量を明らかにする。RNA-Seqは、絶えず変化する細胞トランスクリプトームを分析するために使用される。具体的には、RNA-Seqは、選択的遺伝子スプライシングされた転写産物、転写後修飾、遺伝子融合、変異/SNPおよび遺伝子発現の変化を見る能力を促進する。RNA-Seqは、mRNA転写産物に加え、RNAの様々な集団を見て、全RNA、スモールRNA、例えばmiRNA、tRNAおよびリボソームプロファイリングを含めることができる。RNA-Seqはまた、エキソン/イントロン境界を決定し、事前にアノテーションされた5'および3'遺伝子境界を検証または修正するために使用されることもできる。
【0039】
V.タンパク質アッセイ
バイオマーカー発現レベルを決定するために、生物学的サンプル中のポリペプチドおよびタンパク質の発現レベルを測定するための様々な技術を用いることができる。そのようなフォーマットの例は、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含むが、これらに限定されない。当業者は、既知のタンパク質/抗体検出方法を、バイオマーカーのタンパク質発現レベルを決定する際の使用に容易に適合することができる。
【0040】
一局面では、抗体または抗体フラグメントもしくは誘導体を、ウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリーまたは免疫蛍光技術などの方法に使用して、CXCL13などのバイオマーカー発現を検出することができる。いくつかの局面では、抗体またはタンパク質のいずれかが固体支持体に固定化される。適切な固相支持体または担体としては、抗原または抗体に結合することができる任意の支持体がある。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩およびマグネタイトがある。
【0041】
当業者は、抗体または抗原に結合するのに適した他の多くの担体を知っており、本開示との使用のためにそのような支持体を適合させることができるであろう。次いで、支持体を適切な緩衝液で洗浄した後、検出可能に標識された抗体で処置を行うことができる。次いで、固相支持体を再び緩衝液で洗浄して、結合しない抗体を除去することができる。次いで、固体支持体に結合した標識の量を従来手段によって検出することができる。
【0042】
免疫組織化学法もまた、バイオマーカーの発現レベルを検出するのに適している。いくつかの局面では、抗体または抗血清、例えばポリクローナル抗血清と、各マーカーに特異的なモノクローナル抗体とを使用して発現を検出し得る。抗体は、抗体そのものを、例えば放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素で直接標識することによって検出することができる。あるいはまた、非標識の一次抗体が、抗血清、ポリクローナル抗血清または一次抗体に特異的なモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体とともに使用される。免疫組織化学プロトコルおよびキットは当技術分野において周知であり、市販されている。
【0043】
特定のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用してタンパク質発現の尺度として複合体形成を検出し測定するための免疫学的方法が当技術分野において公知である。そのような技術の例は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)および抗体アレイを含む。そのようなイムノアッセイは通常、タンパク質とその特異的抗体との間の複合体形成の測定を含む。これらのアッセイおよび、精製され標識された標準に対するそれらの定量化は、当技術分野において周知である。2つの非干渉性エピトープに反応する抗体を利用する2部位のモノクローナルベースのイムノアッセイまたは競合的結合アッセイが用いられてもよい。
【0044】
数多くの標識が当技術分野において利用可能であり、一般的に公知である。放射性同位元素標識としては、例えば、36S、14C、125I、3Hおよび131Iがある。抗体は、当技術分野において公知の技術を使用して、放射性同位元素で標識することができる。蛍光標識としては、例えば、希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンおよびテキサスレッドなどの標識が利用可能である。当技術分野において公知の技術を使用して、蛍光標識を抗体変異体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光光度計を使用して定量化することができる。様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号、第4,318,980号がこれらのいくつかのレビューを提供している。酵素は一般に、発色基質の化学的変質を触媒し、それを、様々な技術を使用して測定することができる。例えば、酵素は基質における色の変化を触媒し得、それを分光光度的に測定することができる。あるいはまた、酵素は基質の蛍光または化学発光を変化させる場合がある。蛍光の変化を定量化するための技術は先に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、すると、測定することができる(例えば、ケミルミノメーターを使用して)光を放出し得、または蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどを含む。酵素を抗体にコンジュゲートするための技術は、O'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzymology (Ed. J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73: 147-166 (1981)に記載されている。
【0045】
VI.治療組成物の投与
本明細書に提供される療法は、第1のがん療法および第2のがん療法などの治療物質の組み合わせの投与を含み得る。療法は、当技術分野において公知の任意の適切な様式で投与され得る。例えば、第1および第2のがん処置は、順次に(異なる時間に)または並行的に(同時に)投与され得る。いくつかの局面では、第1および第2のがん処置は別々の組成物として投与される。いくつかの局面では、第1および第2のがん処置は同じ組成物中にある。
【0046】
本開示の局面は、治療組成物を含む組成物および方法に関する。異なる治療が1つの組成物または1つよりも多い組成物、例えば2つの組成物、3つの組成物または4つの組成物として投与され得る。作用物質の様々な組み合わせが用いられてもよい。
【0047】
本開示の治療物質は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの局面では、がん治療は、静脈内的、筋内的、皮下的、局所的、経口的、経皮的、腹腔内的、眼窩内的、移植により、吸入により、髄腔内的、脳室内的または鼻腔内的に投与される。いくつかの局面では、抗生物質は、静脈内的、筋内的、皮下的、局所的、経口的、経皮的、腹腔内的、眼窩内的、移植により、吸入により、髄腔内的、脳室内的または鼻腔内的に投与される。適切な投与量は、処置される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、個人の臨床状態、個人の病歴および処置に対する応答ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0048】
処置は様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定量の治療組成物を含むものとして定義される。投与される量ならびに具体的な経路および製剤化は臨床分野の当業者の決定能力の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる持続的注入を含み得る。いくつかの局面では、単位用量は単一の投与可能な用量を含む。
【0049】
処置の回数と単位用量の両方にしたがう投与量は、所望の処置効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するために必要な量を指すものと理解される。特定の局面における実施では、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量がこれらの作用物質の保護能力に影響することができると考えられる。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195および200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、もしくはmg/日またはその中で導出可能な任意の範囲の用量を含むと考えられる。さらに、そのような用量は、1日に複数回投与されることもでき、かつ/または複数の日、週もしくは月にわたって投与されることもできる。
【0050】
特定の局面では、薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供することができる用量である。別の局面では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはこの中の任意の導出可能な範囲)の血中レベルを提供する。他の局面では、用量は、治療物質が対象に投与される結果として生じる、作用物質の以下の血中レベルを提供することができる:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100μM、またはこの中の任意の導出可能な範囲、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100μM、またはこの中の任意の導出可能な範囲、あるいは、多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100μM、またはこの中の任意の導出可能な範囲。特定の局面では、対象に投与される治療物質は、代謝された治療物質へと体内で代謝され、その場合、血中レベルは、その治療物質の量を指し得る。あるいはまた、治療物質が対象によって代謝されない限りでは、本明細書中に記載される血中レベルは、未代謝の治療物質を指す場合もある。
【0051】
治療組成物の正確な量もまた、施術者の判断に依存し、各個人に特有である。用量に影響する要因としては、患者の身体的および臨床的状態、投与経路、処置の意図される目標(症状の緩和 対 治癒)ならびに、対象が受けている場合がある特定の治療物質または他の治療の作用強度、安定性および毒性がある。
【0052】
当業者には、μg/kg体重またはmg/kg体重の投与量単位が、4μM~100μMなど、同等のμg/mlまたはmM(血中レベル)の濃度単位に変換され、その単位で表されることもできることが理解され、認識されるであろう。また、取り込みが種および器官/組織依存性であることが理解される。適用可能な変換係数ならびに取り込みおよび濃度測定に関して実施される生理学的推測は周知であり、当業者が、ある濃度測定値を別の濃度測定値に変換し、本明細書に記載される用量、効力および結果に関して合理的な比較および結論を下すことを可能にするであろう。
【0053】
VII.処置の方法
本明細書には、治療組成物の投与を通して対象におけるがんを処置する、またはその進行を遅らせる方法が提供される。
【0054】
いくつかの局面では、治療は、治療の中止後、個人において持続的な応答を生じさせる。本明細書に記載される方法は、がんの処置のために腫瘍免疫原性を増大させる際など、免疫原性の増強が望まれる状態を処置する際に、有用であり得る。
【0055】
いくつかの局面では、個人は、1つまたは複数の抗がん治療に対して耐性である(耐性であることが実証されている)がんを有する。いくつかの局面では、抗がん治療に対する耐性は、がんまたは難治性がんの再発を含む。再発とは、処置後、元の部位または新たな部位におけるがんの再出現を指し得る。いくつかの局面では、抗がん治療に対する耐性は、抗がん治療による処置中のがんの進行を含む。いくつかの局面では、がんは早期がんまたは末期がんである。
【0056】
本開示の方法のいくつかの局面では、がんは、低レベルのT細胞浸潤を有する。いくつかの局面では、がんは、検出可能なT細胞浸潤を有しない。いくつかの局面では、がんは非免疫原性がん(例えば非免疫原性結腸直腸がんおよび/または卵巣がん)である。理論によって拘束されるわけではないが、併用処置は、併用の投与前に比べ、T細胞(例えばCD4+T細胞、CD8+T細胞、メモリーT細胞)プライミング、活性化、増殖および/または浸潤を増大させ得る。
【0057】
がんは、固形腫瘍、転移性がんまたは非転移性がんであり得る。特定の局面では、がんは神経内分泌細胞に由来し得る。
【0058】
方法は、適切ながん「管理レジメン」の決定、投与または選択と、その結果の予測とを含み得る。本明細書において使用するとき、語句「管理レジメン」とは、それを必要とする対象(例えば、がんと診断された対象)に提供される検査、スクリーニング、診断、監視、ケアおよび処置のタイプ(例えば投与量、スケジュールおよび/または処置の期間)を規定する管理計画を指す。
【0059】
用語「処置」または「処置する」は、(i)疾患を予防すること、すなわち、疾患の誘導の前に保護的組成物の投与によって疾患の臨床症状を発現させないこと;(ii)疾患を抑制すること、すなわち、誘導事象の後であるが疾患の臨床的出現または再出現の前に保護的組成物の投与によって疾患の臨床症状を発現させないこと;(iii)疾患を阻害すること、すなわち、最初の出現後に保護的組成物の投与によって臨床症状の発現を阻止すること、および/または(iv)疾患を緩和すること、すなわち、最初の出現後に保護的組成物の投与によって臨床症状の退行を生じさせることを含む、哺乳動物における疾患に対する任意の処置を意味する。いくつかの局面では、処置は、疾患の予防を除外する場合もある。
【0060】
特定の局面では、特定の腸内細菌叢構成を有すると決定された患者におけるがんまたはがん転移の検出のために、さらなるがんもしくは転移検査もしくはスクリーニングまたはさらなる診断、例えばコントラスト増強コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影-CT(PET-CT)および磁気共鳴画像診断(MRI)が実施されてもよい。
【0061】
本開示の方法は、がんを有する対象の処置に関する。いくつかの局面では、方法は、そのようながんについて陽性であると判定された個人、がんの1つまたは複数の症状を有する個人、またはそのようながんを発症するリスクがあるとみなされる個人に関して用いられ得る。
【実施例】
【0062】
VIII.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって見いだされた技術を表し、したがって、その実施のための好ましい形態を構成するものとみなすことができることが当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示を鑑みて、発明の精神および範囲を逸脱することなく、開示される具体的な態様に数多くの変更を加えることができ、それでもなお、同様または類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0063】
IX.実施例1 - ルルビネクテジンおよびATR阻害剤の組み合わせでのSLFN11陰性または低小細胞肺がんの処理
ATR阻害剤AZD6738と組み合わせたルルビネクテジンの効果を、それらの細胞株上での96時間増殖アッセイにおいて確認した。ATRキナーゼ阻害剤AZD6738と組み合わせたルルビネクテジンでの処理は、ルルビネクテジンについてより高いIC
50値を有するSCLC細胞株において相乗効果を示した(
図1~3)。
【0064】
本発明者らは、SCLC細胞株におけるセララセルチブ(AZD6738)およびベルゾセルチブと、ルルビネクテジンとの組み合わせをさらに調べた。2つの薬物間の観察および予測される相加的相互作用を比較するBliss Delta AUC(ΔAUC)法を用いて、本発明者らは、相加的(ΔAUC >-0.1および<0.1)、および相加的よりも大きい(Δ <-0.1)の両方である、様々な相互作用(
図4A、5A)を観察した。セララセルチブとの組み合わせに対して相加的よりも大きい応答を有する3つの細胞株(H865、H211、およびH446)は、それぞれ、サブセットA、P、およびNのメンバーであり(
図4B)、予想通り、低SLFN11レベル、および単剤ルルビネクテジンに対する最小の感受性を有する細胞株のひとつである。潜在的なオフターゲット効果を説明するために、本発明者らはルルビネクテジンと2番目のATR阻害剤であるベルゾセルチブ(VX-970)も試験した。セララセルチブとの併用と同様に、ルルビネクテジン/ベルゾセルチブ併用は、相加的よりも大きい応答を有する3つの細胞株(SHP77、H211およびH446は、それぞれ、A、P、およびNサブタイプを表す)を用いて、様々な相互作用を示した(
図5B)。本発明者らは、より低いSLFN11発現を伴う細胞株が、ルルビネクテジンとセララセルチブまたはベルゾセルチブとの組み合わせに対してより良い応答を有することを見出した。ルルビネクテジンとセララセルチブまたはベルゾセルチブとの組み合わせに対して相加的よりも大きい応答が観察された3つの細胞株はすべてSLFN11低群にあり、単剤セララセルチブまたはベルゾセルチブに対して比較的耐性があった。H211およびH865細胞株をルルビネクテジンとセララセルチブまたはベルゾセルチブとの組み合わせで48時間処理した場合の作用機序を理解するために、ウエスタンブロッティングの結果は、単剤ルルビネクテジンおよびセララセルチブ(
図4C)およびベルゾセルチブ(
図5C)のいずれかと比較して、併用処理後のγH2AXおよび切断型カスパーゼ3レベルの顕著な増加を示した。ルルビネクテジンと比較して単剤ATR阻害剤および併用処理群におけるpCHK1の減少は、DNA損傷修復系における停止を表す(
図5C)。SCLC-A、-N、-P、および-Iサブタイプ間で、ルルビネクテジンをセララセルチブまたはベルゾセルチブと組み合わせることの有効性に差はないようである(
図5D)。このデータは、SLFN11低SCLC細胞が、ルルビネクテジンとセララセルチブまたはベルゾセルチブとの組み合わせによる処理に感受性であることを示している。
【0065】
本明細書に開示および特許請求されるすべての方法は、過度の実験なしに、本開示に照らして作製し、実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関して説明されてきたが、当業者には、発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された方法および本明細書に記載された方法のステップまたはステップの順序に変更を加え得ることが明らかであろう。より具体的には、本明細書に記載される作用物質の代わりに化学的および生理学的に関連する特定の作用物質を使用しても、同じまたは類似の結果が達成されることは明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の代替物および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって画定される発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【国際調査報告】